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特表2024-514168可変平均電力および安定した熱負荷を伴う非線形周波数変換
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-28
(54)【発明の名称】可変平均電力および安定した熱負荷を伴う非線形周波数変換
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/37 20060101AFI20240321BHJP
【FI】
G02F1/37
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562888
(86)(22)【出願日】2022-03-09
(85)【翻訳文提出日】2023-12-01
(86)【国際出願番号】 EP2022056098
(87)【国際公開番号】W WO2022218611
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】17/231,919
(32)【優先日】2021-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519061387
【氏名又は名称】コヒーレント カイザースラウテルン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リューマン, マルクス
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー, クリストフ オー.
(72)【発明者】
【氏名】ニードリッヒ, シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】クナッペ, ラルフ
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA07
2K102AA08
2K102AA30
2K102AA32
2K102BA07
2K102BA18
2K102BB02
2K102BC01
2K102BC07
2K102CA10
2K102DA01
2K102DC07
2K102EA21
2K102EB04
2K102EB10
2K102EB20
(57)【要約】
非線形周波数変換のためのシステムは、入力レーザビームの一部を1次ビームとして回折し、入力レーザビームの非回折部分をゼロ次ビームとして透過するための音響光学変調器を含む。システムは、非線形結晶も含み、非線形結晶は、ゼロ次ビームおよび1次ビームの各々を受信し、周波数変換し、2つの各々の周波数変換レーザビームを発生させるように配置され、それによって、音響光学変調器がゼロ次ビームと1次ビームとの間の平均電力比率を変更するとき、非線形結晶における熱負荷の変動が、最小化される。2つの周波数変換レーザビームのうちのいずれか一方は、システムの出力レーザビームとして使用され得る一方、2つの周波数変換レーザビームのうちの他方は、音響光学変調器が出力レーザビームにおける平均電力を変更するように動作させられるとき、非線形結晶における熱負荷を安定させる役割を果たす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非線形周波数変換のためのシステムであって、前記システムは、
入力レーザビームの一部を1次ビームとして回折し、前記入力レーザビームの非回折部分をゼロ次ビームとして透過するための音響光学変調器と、
前記ゼロ次ビームおよび1次ビームの各々を受信および周波数変換し、2つのそれぞれの周波数変換レーザビームを発生させるように配置された非線形結晶と
を備え、
それによって、前記音響光学変調器が前記ゼロ次ビームと1次ビームとの間の平均電力比率を変更するとき、非線形結晶における熱負荷の変動が、最小化される、システム。
【請求項2】
コントローラをさらに備え、前記コントローラは、
(a)前記音響光学変調器に印加される無線周波数電力を調整することによって、前記ゼロ次ビームと1次ビームとの間の前記平均電力比率を設定することと、
(b)前記ゼロ次ビームと1次ビームとの間の前記平均電力比率を変更するとき、変更された周波数変換効率の前記熱負荷への影響を補正するように前記入力レーザビームの前記平均電力を設定することと
を行うように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ゼロ次ビームおよび1次ビームは、前記非線形結晶内で少なくとも50パーセント空間的に重複する、請求項1または請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記音響光学変調器と前記非線形結晶との間に位置し、前記非線形結晶内で前記ゼロ次ビームおよび1次ビームを空間的に重複させるように配置された1つ以上のレンズをさらに備えている、請求項1-3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
前記1つ以上のレンズは、前記音響光学変調器からの前記ゼロ次ビームおよび1次ビームを前記非線形結晶に結像するように構成されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記入力レーザビームは、パルス状であり、前記システムは、1つ以上のガラスプレートをさらに備え、前記1つ以上のガラスプレートは、前記ゼロ次ビームおよび1次ビームの両方ではなく、一方と交差し、そのパルスを遅らせる、請求項1-5のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
前記1つ以上のガラスプレートは、前記1つ以上のガラスプレートによって交差される前記ゼロ次ビームおよび1次ビームのうちの前記一方を操向するための少なくとも1つの楔を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前駆レーザビームを周波数変換することによって前記入力レーザビームを発生させるための追加の非線形結晶をさらに備えている、請求項1-7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
前記非線形結晶および前記追加の非線形結晶の各々は、周波数倍増結晶である、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記非線形結晶における周波数変換に先立つ前記ゼロ次ビームおよび1次ビームの追加の周波数変換のための追加の非線形結晶をさらに備えている、請求項1-9のいずれかに記載のシステム。
【請求項11】
前記非線形結晶および前記追加の非線形結晶の各々は、周波数倍増結晶である、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
非線形周波数変換のための方法であって、前記方法は、
音響光学変調器を用いて入力レーザビームを変調し、前記入力レーザビームの一部を1次ビームとして回折し、前記入力レーザビームの非回折部分をゼロ次ビームとして透過するステップと、
前記音響光学変調器を制御することによって、前記ゼロ次ビームと1次ビームとの間で平均電力を移転するステップと、
非線形結晶内で前記ゼロ次ビームおよび1次ビームを周波数変換し、2つのそれぞれの周波数変換レーザビームを発生させるステップと
を含み、
それによって、前記音響光学変調器が前記ゼロ次ビームと1次ビームとの間の平均電力比率を変更するとき、前記非線形結晶における熱負荷の変動が、最小化される、方法。
【請求項13】
前記音響光学変調器を制御するステップが前記ゼロ次ビームと1次ビームとの間で平均電力を前記音響光学変調器に分配させるとき、前記入力レーザビームの源を制御することによって、変更された周波数変換効率の前記熱負荷への影響を補正するように前記入力レーザビームの平均電力を設定することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ゼロ次回折次数および1次回折次数を前記非線形結晶内で少なくとも50パーセント空間的に重複させることをさらに含む、請求項12または請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記周波数変換するステップは、前記ゼロ次ビームおよび1次ビームの各々の高調波を発生させ、前記周波数変換レーザビームは、紫外線である、請求項12-14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記入力レーザビームは、少なくとも1キロワットの平均電力を有する、請求項12-15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記音響光学変調器からの前記ゼロ次ビームおよび1次ビームを前記非線形結晶に結像することをさらに含む、請求項12-16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記結像するステップは、前記ゼロ次ビームおよび1次ビームの直径を増加または減少させることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記変調するステップにおいて、前記音響光学変調器は、前記ゼロ次ビームおよび1次ビームの間で20ミリラジアン以下の角度でそれらを出力し、前記方法は、前記非線形結晶まで前記角度を維持することをさらに含む、請求項12-18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記入力レーザビームは、パルス状であり、前記方法は、前記ゼロ次ビームおよび1次ビームの両方ではなく、一方のパルスを遅らせるステップをさらに、含む、請求項12-19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
追加の非線形結晶において、前記入力レーザビームを前駆レーザビームの高調波として発生させるステップをさらに含む、請求項12-20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記前駆レーザビームは、赤外線であり、
前記発生させるステップは、前記前駆レーザビームを周波数倍増することによって前記入力レーザビームを発生させ、前記入力レーザビームは、緑色であり、
前記周波数変換するステップは、前記ゼロ次ビームおよび1次ビームの各々を周波数倍増することによって前記周波数変換レーザビームを発生させ、前記周波数変換レーザビームは、紫外線である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記非線形結晶における前記周波数変換するステップに先立って、追加の非線形結晶において、前記ゼロ次ビームおよび1次ビームに追加の周波数変換を受けさせるステップをさらに含む、請求項12-22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記受けさせるステップは、前記ゼロ次ビームおよび1次ビームの各々の高調波を発生させ、
前記周波数変換するステップは、前記ゼロ次ビームおよび1次ビームの前記高調波のさらなる高調波として前記周波数変換レーザビームをそれぞれ発生させる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記受けさせるステップは、前記ゼロ次回折次数および1次回折次数の各々を周波数倍増することによって、前記ゼロ次回折次数および1次回折次数の各々の第2高調波を発生させ、
前記周波数変換するステップは、前記ゼロ次ビームおよび1次ビームの各々の前記第2高調波を周波数倍増することによって、前記入力レーザビームの第4高調波として前記周波数変換レーザビームの各々を発生させる、請求項23または請求項24に記載の方法。
【請求項26】
第4高調波レーザ装置であって、前記第4高調波レーザ装置は、
基本周波数レーザビームから2つの第2高調波レーザビームを発生させるための第2高調波発生器であって、前記第2高調波発生器は、
第1の周波数倍増結晶であって、前記第1の周波数倍増結晶は、それに入射するレーザ放射を周波数倍増する、第1の周波数倍増結晶と、
音響光学変調器であって、前記音響光学変調器は、それに入射するレーザビームのゼロ次回折次数および1次回折次数を発生させ、前記音響光学変調器は、前記2つの第2高調波レーザビーム間の平均電力比率を制御するように配置されている、音響光学変調器と
を含む、第2高調波発生器と、
前記2つの第2高調波レーザビームの各々を受信し、周波数倍増し、2つのそれぞれの第4高調波レーザビームを発生させるように配置された第2の周波数倍増結晶と
を備え、
それによって、前記音響光学変調器が前記2つの第2高調波レーザビーム間の平均電力比率を変更するとき、前記第2の周波数倍増結晶における熱負荷の変動が、最小化される、第4高調波レーザ装置。
【請求項27】
前記第1の周波数倍増結晶は、前記基本周波数レーザビームを周波数倍増し、初期第2高調波ビームを発生させるために配置され、
前記音響光学変調器は、前記初期第2高調波ビームを空間的に変調し、前記初期第2高調波ビームのゼロ次回折次数および1次回折次数として前記2つの第2高調波レーザビームを発生させるように配置されている、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記音響光学変調器は、前記基本周波数レーザビームを空間的に変調し、そのゼロ次回折次数および1次回折次数を発生させるように配置され、
前記第1の周波数倍増結晶は、前記基本周波数レーザビームの前記ゼロ次回折次数および1次回折次数の各々を周波数倍増し、前記2つの第2高調波レーザビームを発生させるように配置されている、請求項26に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権)
本願は、その開示が参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる2021年4月15日に出願された米国特許出願第17/231,919号の優先権を主張する。
【0002】
(発明の技術分野)
本発明は、一般に、周波数変換出力レーザビームの電力変調を伴う非線形結晶における周波数変換に関し、特に、非線形結晶における熱負荷を管理するための技法に関する。
【背景技術】
【0003】
非線形結晶における周波数変換は、レーザ放射の波長を転換するための一般的に使用される技法である。多くの状況では、高電力の可視または紫外線レーザ放射が必要とされるとき、好ましいアプローチは、最初に、近赤外線におけるレーザ放射を発生させ、次いで、近赤外線レーザを周波数変換することによってそれを可視光線または紫外線に転換することである。このアプローチに関する主要な理由は、高電力レーザ放射の発生のためのいくつかの魅力的な解決策が存在するからある。例えば、より一般的なレーザ源のうちのいくつかは、ランタノイドドープイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)結晶に基づく。ランタノイドドープYAG結晶は、いくつかの異なる近赤外線波長におけるレーザ照射、特に、ネオジムドープYAG結晶の場合の1,064ナノメートルおよびイッテルビウムドープYAG結晶の場合の1,030ナノメートルにおけるレーザ照射の発生のための効率的かつ信頼性のあるレーザ利得媒体である。近赤外線レーザ源によって発生させられると、近赤外線レーザ放射は、高調波発生のために非線形結晶に通され、可視光線に到達し、その後、必要とされる場合、さらなる周波数変換が、所望の波長に到達するために、1つ以上の追加の非線形結晶において行われ得る。そのような高調波発生および適用できるときのさらなる周波数変換は、特に、パルス状レーザ放射のために効果的であり、パルス状レーザ放射において、高いピーク電力は、高い変換効率を促進する。
【0004】
非線形結晶における効率的な周波数変換は、入力レーザビーム(または複数のビーム)が周波数変換レーザビームと位相整合させられることに依拠し、したがって、入力レーザビームと周波数変換レーザビームとが、非線形結晶を通して伝搬しているとき、各空間場所において発生させられた周波数変換レーザ放射は、先行する空間場所において発生させられた周波数変換レーザ放射と建設的に干渉する。使用される波長および非線形結晶のタイプに応じて、臨界または非臨界位相整合が、使用され得る。
【0005】
「温度位相整合」としても公知である非臨界位相整合では、非線形結晶は、これらのビームが非線形結晶の軸に沿って進行している間、屈折率が入力レーザビームと周波数変換レーザビームとのそれぞれの波長に関して同じである温度に保たれる。非臨界位相整合は、そのような温度が存在するときにのみ可能である。非臨界位相整合は、典型的に、非線形結晶を高温に加熱することを要求する。
【0006】
「角度位相整合」としても公知である臨界位相整合は、複屈折非線形結晶を利用し、この複屈折非線形結晶の屈折率の偏光依存性を活用する。結晶軸に対する入力レーザビーム(または複数のビーム)の入射の角度は、屈折率が入力レーザビームと周波数変換レーザビームとに関して同じであるように調整される。臨界位相整合は、概して、入力および周波数変換レーザビームのそれぞれの波長および偏光における屈折率の温度依存性に起因して、温度感受性でもある。臨界位相整合は、典型的に、非線形結晶を高温に加熱することなく遂行されるが、入力レーザビームの特定の入射角を伴い一定の温度で動作することを要求する。
【0007】
高電力パルスレーザビームは、レーザ機械加工、レーザ溶接、およびレーザ焼鈍等の重要な産業プロセスを含む多くの異なる用途において使用される。産業材料処理を実施するためのレーザの使用は、新しいプロセスが開発され、既存のプロセスが改良され、レーザシステムがこれらのプロセスを実施するために開発、調整、および/または最適化されるにつれて、急速に拡大している。いくつかのプロセスは、数十マイクロジュールまたはそれを上回るパルスエネルギーを伴い、数十または数百ワット以上の平均電力をもたらすパルス繰り返し率を伴う可視または紫外線パルスレーザビームを要求する。
【0008】
産業材料処理および他の用途の両方では、多くの場合、レーザビームの平均電力を変動させることが、必要である。その最も単純な形態では、そのような電力変動は、レーザビームをオンおよびオフに切り替えることから成る。例えば、産業材料処理では、レーザビームは、レーザ露光量をプロセスの他の側面(例えば、レーザビームに対するワークピースの機械的移動、またはワークピースに対するレーザビームの走査)と同期させるために、繰り返しオンおよびオフに切り替えられる必要があり得る。しかしながら、要求される切り替え時間は、多くの場合、機械的シャッタにあまりにも速く、概して、実際のレーザ源を繰り返しオンおよびオフに切り替えることは、実行可能ではない。近赤外線レーザ放射の周波数変換に基づく可視または紫外線高電力パルスレーザビーム発生の文脈内では、現在の最新技術の切り替え技法は、周波数変換の前に赤外線レーザビームをオンおよびオフに切り替えるために、音響光学または電気光学変調器を使用する。この技法は、近赤外線において利用可能な、高い損傷閾値を伴う比較的に入手可能な音響光学および電気光学変調器から利益を享受する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
周波数変換出力レーザビームの平均電力を変動させながら、非線形結晶において安定した熱負荷を維持するレーザ放射の非線形周波数変換のためのシステムおよび方法が、本明細書において開示され。これらのシステムおよび方法は、非線形結晶における周波数変換の前に入力レーザビームまたは複数のビームの平均電力を変動させる既存のシステムを悩ませる熱負荷問題を克服する。周波数変換レーザビームおよび/または入力レーザビームが、非線形結晶内でかなりの平均電力を有するとき、非線形結晶によるレーザ放射の低レベルの吸収であっても、結晶温度を上昇させ得る。結果として、特に、紫外線への周波数変換に先立って入力レーザビームの平均電力を変動させるとき、変換効率は、結晶温度変化によって引き起こされる劣化した位相整合に悩まされ得る。本開示されるシステムおよび方法は、2つの回折次数間で入力レーザビームを音響光学的に切り替え、周波数変換のために非線形結晶に両方の回折次数を向かわせることによって、この問題を克服する。2つの回折次数のうちの一方からの周波数変換レーザビームは、周波数変換出力レーザビームとして使用される。他方の回折次数の周波数変換は、音響光学変調器が2つの回折次数間の平均電力比率を変更するとき、非線形結晶における熱負荷を安定させる役割を果たす。周波数変換出力レーザビームの平均電力は、2つの回折次数間で電力を切り替え、それによってこの平均電力比率を変更することによって、変更される。
【0010】
殆どの非線形結晶が紫外線において比較的に高い吸収を示すことに起因して、本開示されるアプローチは、特に、可視または近赤外線レーザ放射の周波数変換による紫外線レーザ放射の発生において有利である。しかしながら、このアプローチの利益は、紫外線レーザ放射の発生に限定されない。概して、このアプローチは、(a)周波数変換レーザビームの平均電力が、変動させられる、例えば、オンおよびオフに切り替えられる必要があり、(b)周波数変換プロセスに関与するレーザビームのうちの1つ以上が非線形結晶においてかなりの熱負荷を生成するほど十分な平均電力を有する任意の形態の非線形周波数変換において有利であり得る。例えば、このアプローチは、中赤外線への周波数変換において、または可視光線への高電力レーザビームの周波数変換のために有利であり得る。
【0011】
一側面では、非線形周波数変換のためのシステムは、入力レーザビームの一部を1次ビームとして回折し、入力レーザビームの非回折部分をゼロ次ビームとして透過するための音響光学変調器を含む。システムは、非線形結晶をさらに含み、非線形結晶は、ゼロ次ビームおよび1次ビームの各々を受信および周波数変換し、2つのそれぞれの周波数変換レーザビームを発生させるように配置され、それによって、音響光学変調器がゼロ次ビームと1次ビームとの間の平均電力比率を変更するとき、非線形結晶における熱負荷の変動が、最小化される。
【0012】
別の側面では、非線形周波数変換のための方法は、音響光学変調器を用いて入力レーザビームを変調し、入力レーザビームの一部を1次ビームとして回折し、入力レーザビームの非回折部分をゼロ次ビームとして透過することを含む。方法は、音響光学変調器を制御することによって、ゼロ次ビームと1次ビームとの間で平均電力を移転することと、非線形結晶においてゼロ次ビームおよび1次ビームを周波数変換し、2つのそれぞれの周波数変換レーザビームを発生させることとをさらに含み、それによって、音響光学変調器がゼロ次ビームと1次ビームとの間の平均電力比率を変更するとき、非線形結晶における熱負荷の変動が、最小化される。
【0013】
さらなる側面では、第4高調波レーザ装置は、基本周波数レーザビームから2つの第2高調波レーザビームを発生させるための第2高調波発生器を含む。第2高調波発生器は、入射するレーザ放射を周波数倍増するための第1の周波数倍増結晶と、入射するレーザビームのゼロ次回折次数および1次回折次数を発生させるための音響光学変調器とを含む。音響光学変調器は、2つの第2高調波レーザビーム間の平均電力比率を制御するように配置される。装置は、2つの第2高調波レーザビームの各々を受信し、周波数倍増し、2つのそれぞれの第4高調波レーザビームを発生させるように配置された第2の周波数倍増結晶をさらに含み、それによって、音響光学変調器が2つの第2高調波レーザビーム間の平均電力比率を変更するとき、第2の周波数倍増結晶における熱負荷の変動が、最小化される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本明細書に組み込まれ、その一部を成す付随の図面は、本発明の好ましい実施形態を図式的に図示し、上記に与えられる一般的な説明および下記に与えられる好ましい実施形態の詳細な説明とともに、本発明の原理を解説する役割を果たす。
【0015】
図1図1は、ある実施形態による非線形結晶におけるレーザビームの非線形周波数変換のためのシステムを図示する。システムは、周波数変換出力レーザビームの平均電力を変動させながら、非線形結晶において安定した熱負荷を維持することが可能である。
図2図2は、100%切り替えシナリオにおける図1のシステムの平均電力出力を1つのみの回折次数を周波数変換に転送するシステムのそれと比較する。
図3図3は、50%切り替えシナリオにおける図1のシステムの平均電力出力を1つのみの回折次数を周波数変換に転送するシステムのそれと比較する。
図4図4は、図1のシステムの非線形結晶におけるゼロ次ビームと1次ビームとの間の空間的重複の例を図示する。
図5図5は、ある実施形態によるゼロ次ビームおよび1次ビームの相対的伝搬角度がAOMと非線形結晶との間で変化しない図1のシステムの構成を図示する。
図6図6は、ある実施形態によるゼロ次ビームおよび1次ビームを非線形結晶に向かわせる少なくとも1つのレンズをさらに含む図1のシステムの別の構成を図示する。
図7図7は、ある実施形態による周波数変換出力レーザビームの平均電力の変動のための音響光学変調に先行する2段階高調波発生のためのシステムを図示する。システムは、周波数変換出力レーザビームの平均電力を変動させながら、第2の非線形結晶において安定した熱負荷を維持することが可能である。
図8図8は、ある実施形態による周波数変換出力レーザビームの平均電力の変動のための段階間音響光学変調を伴う2段階高調波発生のためのシステムを図示する。システムは、周波数変換出力レーザビームの平均電力を変動させながら、第2の非線形結晶において安定した熱負荷を維持することが可能である。
図9図9は、ある実施形態による和または差周波数混合によって周波数変換出力レーザビームを発生させるためのシステムを図示する。
図10図10は、ある実施形態による和または差周波数混合によって周波数変換出力レーザビームを発生させるための別のシステムを図示する。
図11図11は、ある実施形態による入力レーザビームに部分的高調波発生の第1の段階を受けさせることを伴い、結果として生じる高調波ビームを入力レーザビームの残りの部分と和周波数混合する第2の段階が続く2段階高調波発生のためのシステムを図示する。
図12図12は、ある実施形態による非線形結晶におけるレーザビームの非線形周波数変換のための方法に関するフローチャートである。方法は、周波数変換出力レーザビームの平均電力を変動させながら、非線形結晶において安定した熱負荷を維持するように構成される。
図13図13は、ある実施形態によるレーザビームの2段階非線形周波数変換のための方法に関するフローチャートである。方法は、周波数変換出力レーザビームの平均電力を変動させながら、第2の非線形結晶において安定した熱負荷を維持するように構成される。
図14図13は、ある実施形態によるレーザビームの2段階非線形周波数変換のための別の方法に関するフローチャートである。方法は、周波数変換出力レーザビームの平均電力を変動させながら、第2の非線形結晶において安定した熱負荷を維持するように構成される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここで、同様のコンポーネントが同様の番号によって指定される図面を参照すると、図1は、非線形結晶120におけるレーザビーム190の非線形周波数変換のための1つのシステム100を図示する。システム100は、周波数変換出力レーザビームの平均電力を変動させながら、非線形結晶120において安定した熱負荷を維持することが可能である。非線形結晶120に加えて、システム100は、非線形結晶120に先立ってレーザビーム190の経路内に位置付けられた音響光学変調器(AOM)110を含む。システム100は、レーザビーム190を発生させるレーザ130をさらに含み得る。レーザビーム190は、パルス波または連続波であり得る。
【0017】
能動的に変調するとき、AOM110は、レーザビーム190の一部を1次回折次数に回折し、1次ビーム192(1)を生成する。レーザビーム190の非回折部分は、ゼロ次回折次数においてAOM110によって透過され、ゼロ次ビーム192(0)を形成する。AOM110は、レーザビーム190の一部を高次回折次数、例えば、2次回折次数にも回折し得る。
【0018】
非線形結晶120は、ゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)の両方の周波数を変換し、それぞれの周波数変換ビーム198(0)および198(1)を発生させる。一実施形態では、非線形結晶120によって実施される周波数変換は、高調波発生、例えば、第2高調波発生である。別の実施形態では、ゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)の各々は、非線形結晶120において1つ以上の追加のレーザビームと混合し、和周波数混合または差周波数混合によって周波数変換ビーム198(0)および198(1)を発生させる。
【0019】
周波数変換ビーム198(0)および198(1)のうちのいずれか一方は、周波数変換出力レーザビームとして使用され、ワークピース、サンプル、または別の光学要素またはシステム等の標的に向かわせられ得る。システム100は、コントローラ140を含み得、コントローラ140は、所望の平均電力を伴う周波数変換出力レーザビームを発生させるために、ゼロ次ビーム192(0)と1次ビーム192(1)との間の所望の平均電力比率を設定するようにAOM110を制御する。一例では、コントローラ140は、AOM110の音響トランスデューサへのRF発生器によって供給される無線周波数(RF)電力を調整し、音響トランスデューサは、AOM110の結晶に接合されている。
【0020】
1つの使用シナリオでは、周波数変換ビーム198(1)は、標的に向かわせられる周波数変換出力レーザビームとして使用される。このシナリオでは、非線形結晶120におけるゼロ次ビーム192(0)および周波数変換ビーム198(0)の存在は、AOM110が、ゼロ次ビーム192(0)と1次ビーム192(1)との間の平均電力比率を変更することによって周波数変換ビーム198(1)の平均電力を変更するとき、非線形結晶120における熱負荷を安定させる役割を果たす。ビームダンプ180が、周波数変換ビーム198(0)を遮断し得る。代替として、その役割は、周波数変換ビーム198(0)が、周波数変換出力レーザビームとして使用される一方、非線形結晶120における1次ビーム192(1)および周波数変換ビーム198(1)の存在が、非線形結晶120における熱負荷を安定させる役割を果たすように、交換される。この使用シナリオでは、ビームダンプ180が、周波数変換ビーム198(1)を遮断するように位置付けられ得る。
【0021】
ゼロ次ビーム192(0)、1次ビーム192(1)、周波数変換ビーム198(0)、および周波数変換ビーム198(1)のうちのいずれか1つの吸収は、非線形結晶120における熱負荷をもたらす。ベータバリウムボレート(BBO)、三ホウ酸リチウム(LBO)、三ホウ酸セシウムリチウム(CLBO)、および四ホウ酸リチウム(LTB)等の多くの一般的に使用される非線形結晶(特に、紫外線発生のために使用されるもの)に関して、吸収は、近赤外線および可視光線全体を通して比較的に小さいが、紫外線におけるある波長より上でかなりになる。したがって、システム100は、特に、ゼロ次ビーム192(0)、1次ビーム192(1)、周波数変換ビーム198(0)、および周波数変換ビーム198(1)のうちの少なくともいくつかが紫外線であるとき、有利である。
【0022】
一実施形態では、非線形結晶120は、倍増結晶であり、ゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)は、可視光線であり、周波数変換ビーム198(0)および198(1)は、紫外線である。本実施形態の一例では、レーザ130は、周波数倍増ネオジムドープイットリウムアルミニウムガーネット(Nd:YAG)レーザまたは周波数倍増ネオジムドープイットリウムオルトバナデート(Nd:YVO)レーザであり、したがって、レーザビーム190は、532ナノメートル(nm)の波長を有し、周波数変換ビーム198(0)および198(1)は、266nmの波長を有する。別の例では、レーザは、周波数倍増イッテルビウムドープYAG(Yb:YAG)であり、したがって、レーザビーム190は、515ナノメートル(nm)の波長を有し、周波数変換ビーム198(0)および198(1)は、258nmの波長を有する。本実施形態のまた別の例では、レーザ130は、488nmの波長を伴うレーザビーム190を発生させるアルゴンイオン(または固体)レーザであり、したがって、周波数変換ビーム198(0)および198(1)は、244nmの波長を有する。
【0023】
別の実施形態では、非線形結晶120は、和周波数混合のために構成され、少なくとも周波数変換ビーム198(0)および198(1)は、紫外線である。また別の実施形態では、非線形結晶120は、差周波数混合のために構成され、(a)ゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)、および/または(b)周波数変換ビーム198(0)および198(1)は、紫外線である。しかしながら、可視光線であっても、多くの一般的に使用される非線形結晶の吸収は、十分に高く、高平均電力の可視レーザ放射は、かなりの熱負荷を生成する。システム100は、したがって、関与するレーザビームのうちのいくつかが高平均電力の(例えば、キロワット範囲内の平均電力を伴う)可視または近赤外線レーザビームであるとき、紫外線以外でも有利であり得る。
【0024】
従来のAOMは、平均電力の100%を回折することが可能ではない。典型的に、AOM110は、したがって、ゼロ次ビーム192(0)を完全にオフに切り替えることが可能ではない。AOM110は、レーザビーム190の平均電力の約60~95%を1次ビーム192(1)に回折する一方、レーザビーム190の残りの平均電力のほぼ全てをゼロ次ビーム192(0)に透過することが可能であり得る。その結果、周波数変換出力レーザビームを完全にオフに切り替えるための能力が目的であるとき、周波数変換ビーム198(1)は、システム100の好ましい出力ビームであり得る。加えて、1次ビーム192(1)に関するビーム品質は、AOM変調範囲全体にわたって維持され、ビームパラメータは、ほぼ一定に保たれることができ、それは、典型的に、ゼロ次ビーム192(0)に関して当てはまらない。他方、周波数変換出力レーザビームの平均電力を最大化することが、ほぼ一定のビームパラメータを維持し、ゼロ平均電力に到達することが可能であることより重要である場合、システム100の好ましい出力ビームは、典型的に、周波数変換ビーム198(0)である。さらに、少なくとも高調波発生の場合、非線形結晶120の非線形周波数変換効率は、レーザビーム190の比較的に小さい割合のみがゼロ次ビーム192(0)において透過されるとき、周波数変換ビーム198(1)の電力に対する周波数変換ビーム198(0)の電力をさらに抑制する。
【0025】
ゼロ次ビーム192(0)は、周波数変換ビーム198(0)に位相整合させられ、1次ビーム192(1)は、周波数変換ビーム198(1)に位相整合させられる。位相整合が臨界または非臨界であるかどうかにかかわらず、周波数変換効率は、入力レーザビームおよび周波数変換出力レーザビームからの非線形結晶120における熱負荷に敏感である。システム100は、温度安定化装置150を含み得、温度安定化装置150は、非臨界位相整合のために要求される温度、または臨界位相整合のために選定される温度に非線形結晶120の温度を安定させる。温度安定化装置150による非線形結晶120への熱送達またはそれからの熱抽出は、レーザ誘起熱負荷と組み合わせられ、位相整合温度を達成する。
【0026】
一実施形態では、非線形結晶120は、臨界位相整合のために構成された複屈折結晶である。本実施形態では、非線形結晶120の結晶軸または複数の軸に対するゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)の位相整合角度は、非線形結晶の温度、したがって、レーザ誘起熱負荷に敏感である。したがって、臨界位相整合で動作するとき、非線形結晶120上へのゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)の入射角は、レーザ誘起熱負荷の標的化された値に従って設定される。
【0027】
特に、臨界位相整合で動作するとき、システム100の最適な性能は、ゼロ次ビーム192(0)と1次ビーム192(1)とが非線形結晶120において等しく位相整合させられ、
等しい周波数変換効率を有することから利益を享受する。AOM110は、(少なくとも補正ビーム操向の不在下で)ゼロ次ビーム192(0)と1次ビーム192(1)とがわずかに異なる角度において非線形結晶120に入射させられるようにするので、ゼロ次ビーム192(0)と1次ビーム192(1)との等位相整合は、最適ではないが、ゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)の各々に関して、等くそうである角度において非線形結晶120を向けることを要求し得る。臨界位相整合を使用する一実装では、非線形結晶120は、その光軸がゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)と同一平面上にあるように向けられた一軸結晶であり、それによって、ゼロ次ビーム192(0)と1次ビーム192(1)とは、同程度に位相整合させられる。システム100は、ゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)を同程度に位相整合させるように、ゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)の伝搬方向に対する非線形結晶120の向きを設定するための機構を含み得る。この機構は、システム100を通したゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)の不整合に関する調節可能な補償も促進し得る。一例では、システム100は、非線形結晶120を回転させるように構成されたステージを含む。別の例では、システム100は、非線形結晶120に入るゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)の像を回転させるように構成されたドーブプリズム等の光学系を含む。
【0028】
図2は、100%切り替えシナリオにおけるシステム100の平均電力出力を1つのみの回折次数を周波数変換に転送するシステムの平均電力出力と比較するタイミング図である。このシナリオでは、周波数変換ビーム198(1)が、周波数変換出力レーザビームとして使用され、最初に、平均電力Pを有し、非線形結晶120は、臨界または非臨界位相整合のいずれかに関して最適な温度にある。図2は、時間的に同期した略図202、204、206、および208を示す。略図202は、コントローラ140によってAOM110に供給される無線周波数(RF)電気信号の電力PRFをプロットする。略図204は、周波数変換ビーム198(1)の平均電力PAVE,198(1)をプロットする。略図206は、周波数変換ビーム198(0)の平均電力PAVE,198(0)をプロットする。略図208は、理想的な100%切り替えを伴わないシナリオにおけるレーザビーム190の平均電力PAVE,190をプロットする。
【0029】
時間tにおいて周波数変換ビーム198(1)をオフに切り替え、次いで、時間tにおいて、平均電力Pにおいて周波数変換ビーム198(1)をオンに戻るように切り替えることを意図している。本100%切り替えシナリオを実行するために、コントローラ140は、AOM110が時間tまでレーザビーム190の全てを1次ビーム192(1)に回折するように、時間tまでRF電力P100を用いてAOM110を駆動する(略図202の曲線250参照)。時間tにおいて、コントローラ140は、RF電気信号をオフにし、レーザビーム190の全てを透過されるゼロ次ビーム192(0)に切り替える。時間tにおいて、コントローラ140は、P100に戻るようにRF電気信号をオンにし、レーザビーム190の全てを回折される1次ビーム192(1)に戻るように切り替える。この100%切り替えシナリオは、レーザビーム190の平均電力の100%を1次ビーム192(1)に回折することが可能な「理想的」AOMを仮定する。
【0030】
図204の曲線210は、AOM110が時間tにおいてオフにされ、次いで、時間tにおいて再びオンにされるときの周波数変換ビーム198(1)の平均電力PAVE,198(1)を示す。略図206の曲線230は、周波数変換ビーム198(0)の対応する平均電力PAVE,198(0)を示す。比較のために、略図204の曲線220は、修正されたシステムにおける周波数変換ビーム198(1)の平均電力PAVE,198(1)を示し、1次ビーム192(1)のみが、非線形結晶120に転送され、ゼロ次ビーム192(0)が、それに転送されない。
【0031】
第1の曲線220を考慮すると、レーザビーム190の1つのみの回折次数が、非線形結晶120に転送され、平均電力は、その初期値Pから時間tにおいてゼロに低下する。この時点で、ゼロ次ビーム192(0)は、非線形結晶120に転送されていないので、非線形結晶120は、もはやレーザ誘起熱負荷を経験せず、その温度は、したがって、減少する。AOM110が、時間tにおいてオンに戻ると、非線形結晶120の温度は、適切な位相整合のために低すぎる。結果として、周波数変換ビーム198(1)の平均電力は、時間tにおいてPよりかなり低く、過渡期間Δtにわたって徐々しか増加せず、後の時点でPに到達する。
【0032】
ここで、システム100に関連する曲線210を考慮する。曲線210は、時間tまで曲線220と同一である。しかしながら、AOM110が、時間tにおいてオフになると、時間tより前に1次ビーム192(1)にあった平均電力は、ゼロ次ビーム192(0)に移転され、それによって、依然として、非線形結晶120に転送される。時間tから時間tまでの期間において、非線形結晶120は、ゼロ次ビーム192(0)を周波数変換し、略図206の曲線230によって示されるように、平均電力Pを伴う周波数変換ビーム198(0)を発生させる。したがって、非線形結晶120におけるレーザ誘起熱負荷は、変化しない。同様に、レーザ誘起熱負荷は、AOM110が時間tにおいてオンに戻ると、変化しない。その結果、AOM110が、時間tにおいてオンに戻されたとき、非線形結晶の温度は、位相整合のために適切なままであり、周波数変換ビーム198(1)の平均電力は、ゼロからPに直ちにジャンプする。言い換えると、システム100は、このシナリオでは、周波数変換ビーム198(1)の過渡事象なしの電力変調を実施する。
【0033】
殆どの実践的な状況では、AOM110が100%のコントラストでゼロ次ビーム192(0)と1次ビーム192(1)との間の平均電力を切り替えることは、可能ではない。上記に議論されるように、60~95%の範囲内のコントラストが、より現実的である。したがって、より現実的な100%切り替えシナリオでは、AOM110は、常時、レーザビーム190の非ゼロ部分をゼロ次ビーム192(0)として透過する。非線形結晶120において行われる周波数変換の形態に応じて、100%未満の切り替えコントラストは、過渡位相整合劣化を引き起こし得る。具体的に、周波数変換の効率が、ゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)の各々の電力に非線形的に依存するとき、周波数変換ビーム198(0)と198(1)との組み合わせられた平均電力は、ゼロ次ビーム192(0)と1次ビーム192(1)との組み合わせられた平均電力に比例しない。例えば、非線形結晶120が、周波数倍増のために構成されるとき、周波数変換ビーム198(0)と198(1)との組み合わせられた平均電力は、第1近似において、ゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)のそれぞれの平均電力の2乗の和に比例する。したがって、さらなる軽減がないと、周波数変換ビーム198(0)および198(1)からの非線形結晶120における組み合わせられた熱負荷は、AOM110がゼロ次ビーム192(0)と1次ビーム192(1)との間でレーザビーム190の平均電力を分配するときより、AOM110がレーザビーム190の全てをゼロ次ビーム192(0)に透過するときに大きくなる。結果として生じる過渡位相整合劣化は、曲線220における過渡事象と比較して、高次効果であり、したがって、あまり深刻ではない。それにもかかわらず、そのような過渡挙動を回避することが、有益であり得る。
【0034】
周波数変換効率の変化によって引き起こされる過渡位相整合劣化は、ゼロ次ビーム192(0)と1次ビーム192(1)との間の平均電力比率が変更されるとき、周波数変換効率の変化を補償するようにレーザビーム190の平均電力を調節することによって軽減され得る。コントローラ140は、レーザビーム190の平均電力のそのような調節を行うようにレーザ130を制御し得る。故に、第2高調波発生の例では、コントローラ140は、(a)AOM110を切り替えると同時にレーザビーム190の平均電力を増加させ、ゼロ次ビーム192(0)と1次ビーム192(1)との間の平均電力の不一致を減少させ、(b)AOM110を制御すると同時にレーザビーム190の平均電力を減少させ、ゼロ次ビーム192(0)と1次ビーム192(1)との間の平均電力の不一致を増加させ得る。略図208は、そのような軽減の一例を図示する。この例では、曲線240によって示される、レーザビーム190の平均電力PAVE,190は、初期レベルP1Nから時間tにおいてより低いレベルP’1Nまで減少させられ、次いで、時間tにおいて再びP1Nまで増加させられる。レーザビーム190の平均電力のこの調節は、レーザビーム190の平均電力が、ゼロ次ビーム192(0)と1次ビーム192(1)との間で分配されることと対照的に、完全にゼロ次ビーム192(0)にあるとき、時間tとtとの間の増加させられた周波数変換効率を補償する。
【0035】
本明細書の範囲から逸脱することなく、図2のシナリオは、周波数変換ビーム198(0)が周波数変換出力レーザビームとして使用される状況に適用され得る。ゼロ次ビーム192(0)と1次ビーム192(1)との間の平均電力比率の変化によって引き起こされる周波数変換効率の変化に関する軽減は、上記に議論されるように、周波数変換ビーム198(1)が周波数変換出力レーザビームとして使用されるときと同様の様式において、この状況において実装され得る。
【0036】
図3は、50%切り替えシナリオにおけるシステム100の平均電力出力を1つのみの回折次数を周波数変換に転送するシステムの平均電力出力と比較するタイミング図である。図3は、時間的に同期した略図302、304、306、および308を示す。略図302は、コントローラ140によってAOM110に供給されるRF電気信号の電力PRFをプロットする。略図304は、周波数変換ビーム198(1)の平均電力PAVE,198(1)をプロットする。略図306は、周波数変換ビーム198(0)の平均電力PAVE,198(0)をプロットする。略図308は、レーザビーム190の平均電力PAVE,190をプロットする。
【0037】
図3のシナリオでは、周波数変換ビーム198(1)が、周波数変換出力レーザビームとして使用される。最初に、コントローラ140は、レーザビーム190の全てを1次ビーム192(1)に回折するように、電力P100のRF電気信号を用いてAOMを駆動する。これは、平均電力P(1)における周波数変換ビーム198(1)の発生をもたらし、非線形結晶120は、臨界または非臨界位相整合のいずれかに関して最適な温度にある。周波数変換ビーム198(1)の平均電力を時間tにおいてP(1)の50%まで減らすことを意図している。この50%切り替えシナリオを実行するために、コントローラ140は、時間tまでレーザビーム190平均電力の少なくとも一部を1次ビーム192(1)に回折するように、電力P100のRF電気信号を用いてAOM110を駆動する(略図302の曲線350参照)。時間tにおいて、コントローラ104は、AOM110が、平均電力の一部を1次ビーム192(1)からゼロ次ビーム192(0)に移転するように、RF電気信号をより低い電力P50まで減らす。時間tにおけるこの変化は、周波数変換ビーム198(1)の平均電力を減らす。
【0038】
図304にプロットされる曲線310は、AOM110が、時間tにおいて、1次ビーム192(1)に回折される平均電力の量を減らすときの周波数変換ビーム198(1)の平均電力PAVE,198(1)を示し、略図306の曲線330は、周波数変換ビーム198(0)の対応する平均電力PAVE,198(0)を示す。比較のために、同様に略図304にプロットされる曲線320は、1次ビーム192(1)のみが非線形結晶120に転送され、ゼロ次ビーム192(0)がそれに転送されない修正されたシステムにおける周波数変換ビーム198(1)の平均電力PAVE,198(1)を示す。
【0039】
レーザビーム190の1つのみの回折次数が非線形結晶120に転送される、第1の曲線320を考慮すると、平均電力は、その初期値P(1)から時間tにおいてP(1)/2に低下する。その結果、非線形結晶120におけるレーザ誘起熱負荷は、時間tにおいて低下し、位相整合は、非線形結晶120の温度が低下するにつれて徐々に劣化する。位相整合劣化に起因して、周波数変換ビーム198(1)の平均電力は、過渡期間Δt後の後の時点で、量ΔPAVEだけP(1)/2を下回る値に落ち着く。ΔPAVEを補正するために、AOM110の回折効率を調節すること、またはレーザビーム190の平均電力を調節することが、可能であり得るが、そのような手段によって、時間t後の曲線320の過渡挙動を防止することは、可能ではない。
【0040】
対照的に、曲線310によって示されるように、システム100は、非線形結晶120において安定した熱負荷を維持することによって、そのような過渡事象を回避することが可能である。システム100では、時間tにおいて、AOM110は、1次ビーム192(1)からゼロ次ビーム192(0)に平均電力を移転し、周波数変換ビーム198(1)の平均電力をP(1)/2まで減らす。周波数変換効率が、ゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)の平均電力に非線形的に依存する場合、コントローラ140は、図2を参照して上記に議論されるそれに類似する様式において、周波数変換効率の変化を補償するために、時間tにおいてレーザビーム190の平均電力を調節し得る。システム100は、それによって、曲線310が、いかなる過渡事象も伴わずに時間tにおいてP(1)/2まで完全に低下するように、非線形結晶120において安定した熱負荷を維持する。
【0041】
図308は、周波数変換の変化に関する補償の一例を示す。最初に、曲線340によって示されるように、レーザビーム190は、平均電力PINを有する。時間tにおいて、AOM110は、平均電力が、ゼロ次ビーム192(0)と1次ビーム192(1)との間でより等しく分配されるように、1次ビーム192(1)からゼロ次ビーム192(0)に平均電力を移転する。周波数変換効率の結果として生じる低減を補償するために、レーザビーム190の平均電力は、時間tにおいてより高いレベルP’INまで増加させられる。
【0042】
本明細書の範囲から逸脱することなく、図3のシナリオは、周波数変換ビーム198(0)が周波数変換出力レーザビームとして使用される状況に適用され得る。
【0043】
再び図1を参照すると、非線形結晶120は、熱インピーダンスを有し、したがって、レーザビームからの非線形結晶120における熱負荷は、レーザビームから離れたところよりレーザビームの包絡線内により大きい温度増加を引き起こす。非線形結晶120の熱伝導率の厳密な値に応じて、ゼロ次ビーム192(0)と1次ビーム192(1)との間のある程度の空間的重複が、したがって、非線形結晶120における熱負荷を安定させるために、好ましくあり得る(または、必要とさえされ得る)。
【0044】
図4は、非線形結晶120におけるゼロ次ビーム192(0)と1次ビーム192(1)との間の空間的重複の一例を図示する。ゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)は、それぞれの1/e直径492D(0)および492D(1)を有し、直径492D(0)および492D(1)が、非線形結晶120の長さ全体を通して重複するように、非線形結晶120に入る。ゼロ次ビーム192(0)と1次ビーム192(1)との間の空間的重複の領域400は、1/e直径492D(0)および492D(1)が重複する領域として定義される。ある非線形結晶の評価に基づいて、本発明者らは、最適な性能が、空間的重複が少なくとも90%であるとき、すなわち、空間的重複領域400がゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)の各々の電力の少なくとも90%を含有するときに達成される可能性が高いと推定する。穏やかな過渡挙動が、50%~90%の範囲内の空間的重複で予期される。50%を下回ると、より著しい過渡挙動が、生じる可能性が高い。したがって、一実施形態では、非線形結晶120におけるゼロ次ビーム192(0)と1次ビーム192(1)との間の空間的重複は、少なくとも50%である。
【0045】
図5は、ゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)の相対的伝搬角度がAOM110と非線形結晶120との間で変化しない、システム100の1つの構成500を図示する。構成500では、非線形結晶120上へのゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)の入射角は、AOM110の外部回折角592Aによって定義される。非線形結晶120におけるゼロ次ビーム192(0)と1次ビーム192(1)との間の空間的重複に関する要件は、回折角592AおよびAOM110から非線形結晶120までの伝搬距離510の両方に対してある限界を課す。例えば、2~3ミリメートル(mm)のビーム直径492D(0)および492D(1)、および約100mmの伝搬距離510の場合、回折角592Aが、約10~20ミリラジアン(mrad)未満である場合にのみ、非線形結晶120への入口における約50%の空間的重複が、達成されることができる。したがって、一実施形態では、回折角592Aは、20mrad未満である。非線形結晶120の中への入射に応じたゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)の屈折は、非線形結晶120の内側では、ゼロ次ビーム192(0)と1次ビーム192(1)との間の相対角度を減らす。非線形結晶120の長さ520Lが、典型的に、伝搬距離510未満、例えば、10mmまたはそれ未満であることをさらに考慮すると、入口におけるゼロ次ビーム192(0)と1次ビーム192(1)との間の空間的重複は、非線形結晶120全体を通して大部分が維持される。
【0046】
図6は、システム100の別の構成600を図示し、システム100は、ゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)を非線形結晶120に向かわせる少なくとも1つのレンズ630をさらに含む。レンズ630は、構成500を用いて可能であるものより良好な非線形結晶120におけるゼロ次ビーム192(0)と1次ビーム192(1)との間の空間的重複を達成するために使用され得る。構成600は、したがって、依然として所望の空間的重複を達成しながら、より大きい回折角592Aおよび/またはAOM110と非線形結晶120との間のより長い伝搬距離510を可能にする。一実装では、構成600は、最大50mradの回折角592Aを伴って動作する。構成600は、非線形結晶120におけるゼロ次ビーム192(0)と1次ビーム192(1)との間の所望の空間的重複を維持しながら、周波数変換ビーム198(0)と198(1)との間のより大きい角度分離の好都合ももたらし得る。
【0047】
ある実施形態では、レンズ630は、AOM110からのゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)を非線形結晶120に結像させ、非線形結晶120における空間的重複を最大化する。レンズ630は、ゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)のビームサイズが非線形結晶120においてAOM110におけるものと同じであるように、1倍率を用いてそのような結像を実施し得る。代替として、レンズ630は、拡大または縮小を伴って結像を実施し、AOM110におけるものと比較して非線形結晶120におけるビームサイズを増加または減少させるように配置され得る。レーザビーム190が比較的に強力なパルスレーザビームであるとき等のいくつかのシナリオでは、AOM110において比較的に小さいビームサイズで動作し、非線形結晶120において若干より大きいビームサイズで動作することが、好ましくあり得る。例えば、より大きいビームサイズは、非線形結晶120において、高い空間的重複、例えば、90%以上を達成することに役立つ。そのようなシナリオでは、レンズ630は、有利なこととして、拡大を伴って結像するように構成され得る。一実装では、レンズ630は、2~4の範囲内の倍率で拡大する。レーザビーム190が連続波レーザビームであるとき等の他のシナリオでは、AOM110において非線形結晶120におけるものより大きいビームサイズで動作することが、好ましくあり得、レンズ630は、したがって、有利なこととして、縮小を伴って結像するように構成され得る。
【0048】
再び図1を参照すると、非線形結晶120におけるゼロ次ビーム192(0)と1次ビーム192(1)との間の良好な空間的重複が存在するとき、1次ビーム192(1)とのゼロ次ビーム192(0)の和周波数混合が、周波数変換ビーム198(0)と198(0)との間で伝搬する追加の出力レーザビームの発生につながり得る。この追加のレーザビーム(図1に図示せず)は、(a)システム100の所望の周波数変換出力レーザビームとしての単一の出力レーザビームの分離をより困難にし、(b)所望の周波数変換出力レーザビームの達成可能な平均電力を減らし、(c)例えば、図2および3を参照して上記に議論される過渡事象なしの挙動を達成するために要求される電力変調スキームを複雑にし得る。しかしながら、入力レーザビーム190が、例えば、ピコ秒範囲内のパルス持続時間を伴ってパルス状であるとき、これらの問題は、ゼロ次ビーム192(0)のパルスと1次ビーム192(1)のパルスとの間に時間遅延を導入することによって、回避され得る。この趣旨で、システム100は、ゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)の両方ではなく、一方の伝搬経路と交差する1つ以上のガラスプレート160を含み得る。ガラスプレート160は、非線形結晶120におけるそれらのそれぞれのレーザパルスの時間的重複を排除することによって、ゼロ次ビーム192(0)と1次ビーム192(1)との和周波数混合を防止する。
【0049】
一実装では、ガラスプレート160は、それを通して伝播するビームを遅らせるだけではなく、それを操向し、非線形結晶120におけるゼロ次ビーム192(0)と1次ビーム192(1)との間の空間的重複も改善する。この実装では、ガラスプレート160は、1つ以上のガラス楔、例えば、リスレープリズム対を含み得る。
【0050】
図7は、周波数変換出力レーザビームの平均電力の変動のための音響光学変調によって先行される2段階高調波発生のための1つのシステム700を図示する。システム700は、(a)非線形結晶120における高調波発生のために構成され、(b)AOM110と非線形結晶120との間の高調波発生の追加の段階を実装するシステム100のある実施形態である。システム700は、レーザビーム190の第4高調波以上を発生させ得る。
【0051】
システム700は、AOM110と、2つの非線形結晶720および740とを含む。非線形結晶720は、非線形結晶120のある実施形態である。非線形結晶740は、AOM110から非線形結晶720へのゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)の伝搬経路内に設置される。非線形結晶740は、高調波発生の第1の段階をゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)の各々に適用する。非線形結晶740は、それによって、少なくとも部分的にゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)をゼロ次高調波ビーム792H(0)および1次高調波ビーム792H(1)にそれぞれ変換する。AOM110および非線形結晶740は、したがって、レーザビーム190から2つの高調波ビーム792H(0)および792H(1)を発生させる高調波発生器702を形成するように協働する。その後、システム700は、高調波発生の第2の段階のために、高調波ビーム792H(0)および792H(1)を非線形結晶720に向かわせる。非線形結晶720は、少なくとも部分的にゼロ次高調波ビーム792H(0)を高調波レーザビーム798HH(0)に変換し、少なくとも部分的に1次高調波ビーム792H(1)を高調波レーザビーム798HH(1)に変換する。高調波レーザビーム798HH(0)および798HH(1)は、それぞれ、高調波ビーム792H(0)および792H(1)の少なくとも第2高調波であり、レーザビーム190の少なくとも第4高調波である。
【0052】
高調波ビーム798HH(0)および798HH(1)は、それぞれ、周波数変換ビーム198(0)および198(1)の実施形態である。図1-3を参照して上記に議論されるように、動作時、高調波ビーム798HH(0)および798HH(1)のうちのいずれか一方は、システム700の周波数変換出力レーザビームとして使用され得る一方、高調波ビーム798HH(0)および798HH(1)のうちの他方は(可能性として、高調波ビーム792H(0)および792H(1)のうちの対応するもの一緒に)、非線形結晶720における熱負荷を安定させる役割を果たす。システム700は、周波数変換出力レーザビームとして使用されない高調波ビーム798HH(0)および798HH(1)のうちの一方を遮断するように配置されたビームブロック180を含み得る。図7は、高調波ビーム798HH(1)が周波数変換出力レーザビームの役割を有するシナリオを描写するが、本明細書の範囲から逸脱することなく、高調波ビーム798HH(0)が、代わりに、この役割を有し得る。
【0053】
システム700は、レーザビーム190がパルス状であるとき、(a)非線形結晶740におけるゼロ次ビーム192(0)と1次ビーム192(1)との間の和周波数混合および(b)非線形結晶720におけるゼロ次高調波ビーム792H(0)と1次高調波ビーム792H(1)との間の和周波数混合の両方を防止するために、ガラスプレート160も含み得る。システム700内に含まれるとき、ガラスプレート160は、それを通して伝搬するビームをさらに操向し、非線形結晶720におけるゼロ次高調波ビーム792H(0)と1次高調波ビーム792H(1)との間の空間的重複を改良し得る。ガラスプレート160によって実施されるビーム操向は、非線形結晶720におけるゼロ次高調波ビーム792H(0)および1次高調波ビーム792H(1)の位相整合を最適化および均等化する役割を果たし得る。
【0054】
非線形結晶740におけるゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)の両方の存在は、非線形結晶740においても熱負荷の安定化を提供する。しかしながら、殆どの一般的に使用される非線形結晶の吸収は、少なくとも近赤外線、可視光線、および紫外線スペクトルから及ぶ波長範囲内のより短い波長に関して最も高いので、非線形結晶740におけるレーザ誘起熱負荷は、非線形結晶720における熱負荷をはるかに下回る可能性が高い。同様の理由から、それぞれの残留ビーム792R(0)および792R(1)として進行する、ゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)の非周波数変換残留部分からの非線形結晶720における熱負荷寄与は、高調波ビーム798HH(0)および798HH(1)からの熱負荷寄与と比較して、比較的に小さい可能性が高い。非線形結晶720における熱負荷への支配的な寄与は、高調波ビーム798HH(0)および798HH(1)に由来する可能性が最も高いので、システム700の性能は、特に、ゼロ次高調波ビーム792H(0)および1次高調波ビーム792H(1)の両方のそれぞれの高調波ビーム798HH(0)および798HH(1)に対する適切な位相整合に依存し得る。
【0055】
一実装では、システム700は、2つの周波数倍増段階における第4高調波発生によって紫外線レーザビームを発生させるように構成される。この実装では、レーザビーム190は、近赤外線であり、高調波ビーム792H(0)および792H(1)は、緑色であり、高調波ビーム798HH(0)および798HH(1)は、紫外線である。例えば、レーザ130(図7に図示せず)が、Nd:YAG、Nd:YVO、またはYb:YAGレーザであるとき、レーザビーム190は、1,064nmまたは1,030nmの波長を有し得、したがって、高調波ビーム798HH(0)および798HH(1)の波長は、266nmまたは258nmである。BBO、CLBO、およびLTB等の一般的に使用される倍増結晶は、そのような短い波長においてかなりの吸収を示す。システム700のこの実装によって発生させられる第4高調波出力レーザビームが比較的に高い平均電力、例えば、約1ワット以上を有するとき、非線形結晶720における結果として生じる熱負荷は、かなりのものである。非線形結晶720の熱負荷を安定させる役割を果たす追加の第4高調波レーザビームを発生させることなしで、第4高調波出力レーザビームの出力電力を変動させるときの過渡事象を回避することは、可能ではないであろう。システム700は、第4高調波出力レーザビームの平均電力の過渡事象なしの変動を促進する。
【0056】
AOM110と非線形結晶720との間の伝搬距離は、実践的な理由から、ある形態のビーム操向を実装しないと、非線形結晶720における高調波ビーム792H(0)と792H(1)との間の十分な空間的重複を達成するためにあまにも長くあり得る。したがって、システム700は、図7に描写されないが、AOM110と非線形結晶720との間に1つ以上のレンズを含み得る。これらのレンズは、レンズ630のそれに類似する様式において動作し得る。一例では、第1のレンズまたはレンズの組が、AOM110からのゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)を非線形結晶720に結像する。
【0057】
ビーム伝搬角度は、図7に描写されるそれらと異なり得る。例えば、高調波ビーム792H(0)および792H(1)のウォークオフが、AOM110の回折平面に直交する平面において起こり得る。
【0058】
図7に示されないが、システム700は、ゼロ次高調波ビーム792H(0)および1次高調波ビーム792H(1)を同程度に位相整合させるように、ゼロ次高調波ビーム792H(0)および1次高調波ビーム792H(1)の伝搬方向に対する非線形結晶720の向きを調節するための機構を含み得る。この機構は、図1を参照して上記に議論され、非線形結晶120における位相整合に関連するそれに類似し得る。ビーム回転光学系としてシステム700に実装されるとき、この光学系は、非線形結晶740と720との間のゼロ次高調波ビーム792H(0)および1次高調波ビーム792H(1)の伝搬経路内に、または、AOM110と非線形結晶740との間のゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)の経路内に設置され得る。
【0059】
図8は、周波数変換出力レーザビームの平均電力の変動のための段階間音響光学変調を伴う2段階高調波発生のための1つのシステム800を図示する。システム800は、システム100のある実施形態であり、システム800は、(a)非線形結晶120における高調波発生のために構成され、(b)レーザビーム190を前駆レーザビーム890の高調波として発生させる。システム800は、前駆レーザビーム190の第4高調波またはより高い高調波を発生させ得る。
【0060】
システム800は、AOM110と、非線形結晶720および740とを含む。システム800では、非線形結晶740は、AOM110に先立って前駆レーザビーム890の伝搬経路内に設置される。非線形結晶740は、レーザ130内に統合され得る。非線形結晶740は、少なくとも部分的に前駆レーザビーム890を周波数変換し、レーザビーム190を前駆レーザビーム890の高調波として形成する。次に、AOM110および非線形結晶720は、図1を参照して上記に議論されるようにレーザビーム190を処理し、非線形結晶720は、ゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)の高調波を発生させる。非線形結晶720は、それによって、少なくとも部分的にゼロ次ビーム192(0)を高調波レーザビーム898HH(0)に周波数変換し、少なくとも部分的に1次ビーム192(1)を高調波レーザビーム898HH(1)に周波数変換する。高調波レーザビーム898HH(0)および898HH(1)は、レーザビーム190の少なくとも第2高調波であり、前駆レーザビーム890の少なくとも第4高調波である。
【0061】
システム700におけるように、システム800における非線形結晶720における熱負荷への支配的な寄与は、高調波ビーム898HH(0)および898HH(1)に由来する可能性が最も高い。システム800の性能は、したがって、特に、ゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)の両方のそれぞれの高調波ビーム898HH(0)および898HH(1)に対する適切な位相整合に依存し得る。
【0062】
一実装では、システム800は、2つの周波数倍増段階における第4高調波発生によって紫外線レーザビームを発生させるように構成される。この実装では、前駆レーザビーム890は、近赤外線であり、レーザビーム190は、緑色であり、高調波ビーム898HH(0)および898HH(1)は、紫外線である。例えば、前駆レーザビーム890が、Nd:YAG、Nd:YVO、またはYb:YAGレーザによって発生させられるとき、前駆レーザビーム890は、1,064nmまたは1,030nmの波長を有し得、したがって、高調波ビーム898HH(0)および898(1)の波長は、266nmまたは258nmである。システム800は、そのような短い波長の第4高調波出力レーザビームの平均電力であっても、過渡挙動を伴わずに変動させられ得るように、非線形結晶720における熱負荷を安定させることが可能である。
【0063】
図8に描写されないが、システム800は、図6を参照して上記に議論されるように、AOM110と非線形結晶720との間に1つ以上のレンズ630を含み得る。システム800は、レーザビーム190がパルス状であるとき、非線形結晶720におけるゼロ次ビーム192(0)と1次ビーム192(1)との間の和周波数混合を防止するために、ガラスプレート160も含み得る。システム800内に含まれるとき、ガラスプレート160は、ビーム操向も提供し得る。
【0064】
非線形結晶740において周波数変換されない前駆レーザビーム890の残留部分は、残留ビーム890Rとして非線形結晶720まで伝搬し得る。AOM110は、(a)残留ビーム890Rの全てをゼロ次ビーム892(0)として透過するか、または、(b)残留ビーム890Rの一部を回折し、ゼロ次残留ビーム892R(0)および、例えば、1次残留ビーム892R(1)の両方を発生させ得る。残留ビーム892R(0)および892R(1)は、非線形結晶720まで伝搬し、それにおける熱負荷に寄与し得るが、それらのより長い波長に起因して、より低いレベルである可能性が高い。これは、非線形結晶720における熱負荷の安定性を劣化させない。
【0065】
ビーム伝搬角度は、図8に描写されるそれらと異なり得る。例えば、レーザビーム190のウォークオフが、AOM110の回折平面に直交する平面において起こり得る。
【0066】
図8に示されないが、システム800は、図1を参照して上記に議論されるように、ゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)を同程度に位相整合させるように、ゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)の伝搬方向に対する非線形結晶720の向きを設定するための機構を含み得る。
【0067】
システム700と比較して、システム800は、AOM110が非線形結晶720により近く、それによって、レンズを使用することなく、非線形結晶720における回折ビームの間の十分な空間的重複を達成する可能性を増加させることから利益を享受する。他方、システム700の少なくともいくつかの実装は、近赤外線におけるAOMが、概して、可視光線におけるそれらより高い電力に耐えることが可能であり、かつ、多くの場合、あまり高価ではないことから利益を享受し得る。
【0068】
システム800では、AOM110および非線形結晶740は、前駆レーザビーム890の2つの高調波ビーム、すなわち、ゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)を発生させる高調波発生器802を形成するように協働する。高調波発生器802は、AOM110および非線形結晶740の順序が交換されることを除いて、システム700の高調波発生器702に類似する。高調波発生器702および802の各々は、非線形結晶740が倍増結晶であるとき、第2高調波発生器である。
【0069】
図9は、和または差周波数混合によって周波数変換出力レーザビームを発生させるための1つのシステム900を図示する。システム900は、システム100のある実施形態であり、非線形結晶120が、非線形結晶920として実装され、非線形結晶920は、ゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)の各々に第2の入力レーザビーム990との和または差周波数混合を受けさせる。非線形結晶920は、それによって、それぞれの周波数変換レーザビーム998(0)および998(1)を発生させ、そのうちのいずれか一方は、システム900の周波数変換出力レーザビームとして使用され得る。システム900は、レーザビーム990を発生させるレーザ930を含み得る。図示の明確化のために、図9は、ゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)からオフセットされて非線形結晶920に入るものとしてレーザビーム990を描写する。実践的実装では、レーザビーム990は、非線形結晶920における効率的な周波数変換のために、ゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)のうちの少なくとも1つと空間的に重複するように向かわせられる。レーザビーム990は、ゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)のうちの一方と共線的に非線形結晶920に入射し得る。
【0070】
非線形結晶920が、和周波数混合を実施するとき、周波数変換ビーム998(0)および998(1)は、レーザビーム990、ゼロ次ビーム192(0)、および1次ビーム192(1)より短い波長を有し、したがって、非線形結晶920におけるレーザ誘起熱負荷の主要な源であり得る。これは、特に、周波数変換ビーム998(0)および998(1)が、紫外線である一方、レーザビーム990、ゼロ次ビーム192(0)、および1次ビーム192(1)が、可視光線または近赤外線である場合、当てはまることが予期される。そのようなシナリオでは、システム900の性能は、特に、ゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)の両方(およびレーザビーム990)のそれぞれの周波数変換ビーム998(0)および998(1)に対する適切な位相整合に依存し得る。
【0071】
非線形結晶920が、代わりに、差周波数混合を実施するとき、周波数変換ビーム998(0)および998(1)は、非線形結晶920に入るレーザビームより長い波長(例えば、中赤外線)を有し、したがって、入射レーザビームは、非線形結晶920におけるレーザ誘起熱負荷の主要な源であり得る。このシナリオでは、ゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)の両方を適切に位相整合させ、周波数変換レーザビーム998(0)および998(1)の両方を発生させることは、あまり重要ではないか、または、不必要でさえあり得る。例えば、図4を参照して上記に議論されるような空間的重複を伴ってゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)の両方を非線形結晶920に向かわせるが、実質的な平均電力を伴う周波数変換レーザビーム998(0)および998(1)のうちの一方のみを発生させるように、ゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)のうちの一方のみを位相整合させることで十分であり得る。したがって、本明細書の範囲から逸脱することなく、システム900は、周波数変換レーザビーム998(0)および998(1)のうちの一方のみを発生させるように構成され得る。
【0072】
図9に描写されないが、システム900は、図6を参照して上記に議論されるように、AOM110と非線形結晶920との間に1つ以上のレンズ630を含み得る。さらに、周波数変換レーザビーム998(0)および998(1)のうちのいずれか一方は、システム900の周波数変換出力レーザビームとして使用され得、ビームブロック180が、それに応じて位置付けられ得る。
【0073】
図10は、和または差周波数混合によって周波数変換出力レーザビームを発生させるための別のシステム1000を図示する。システム1000は、レーザビーム990をAOM110の中に向かわせることを除いて、システム900に類似する。図示の明確化のために、図10は、レーザビーム190からオフセットされてAOM110に入るものとしてレーザビーム990を描写する。実践的実装では、非線形結晶920における効率的な周波数変換の目的のために、レーザビーム990は、AOM110に入ると、レーザビーム190と少なくともほぼ共線であり得る。レーザビーム990に関する回折条件が満たされるかどうかに応じて、AOM110は、レーザビーム990を効果的に回折することも、そうでないこともある。AOM110は、1次ビーム1092(1)への回折を殆どまたは全く伴わずに、レーザビーム990の全てまたは少なくとも大部分をゼロ次ビーム1092(0)として透過し得る。代替として、AOM110は、レーザビーム990の実質的な部分を1次ビーム1092(1)に回折し得る。ゼロ次ビーム1092(0)、および発生させられる場合、1次ビーム1092(1)は、図9を参照して上記に議論されるように、非線形結晶920に進行し、ゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)との和または差周波数混合に関与する。
【0074】
システム900と比較して、システム1000の動作は、AOM110によるレーザビーム990の可能性として考えられる回折に起因して、より複雑であり得る。他方、AOM110に先立つレーザビーム990の入射を用いることで、システム1000は、AOM110と非線形結晶920との間のより短い伝搬距離を可能にし得る。このより短い伝搬距離は、レンズ630を組み込まない実施形態では、非線形結晶920におけるゼロ次ビーム192(0)と1次ビーム192(1)との間のより大きい空間的重複を促進し得る。
【0075】
システム900および1000の各々は、レーザビーム190がパルス状であるとき、非線形結晶920におけるゼロ次ビーム192(0)と1次ビーム192(1)との間の和周波数混合を防止するために、かつビーム操向を提供するために、ガラスプレート160を含み得る。システム900および1000のうちのいずれか一方では、レーザビーム990は、第2のレーザ930を使用する代わりに、レーザ130から発し得る。一実施形態では、レーザビーム190は、AOM110の前に高調波発生を受け、それによって、レーザビーム190の高調波(レーザビーム990の例)とレーザビーム190の残留非変換部分との間の和周波数混合が、非線形結晶920において起こり得る。別の実施形態では、ゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)は、AOM110の後、高調波発生のために非線形結晶を通過し、それによって、ゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)の高調波とゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)の残留非変換部分との間の和周波数混合が、非線形結晶920において起こり得る。そのような実施形態は、図11を参照して下記にさらに詳細に議論される。
【0076】
図11は、2段階高調波発生のための1つのシステム1100を図示し、システム1100は、レーザビーム190に部分的高調波発生の第1の段階を受けさせることを伴い、第1の段階において周波数変換されていないレーザビーム190の残りの部分との結果として生じる高調波の和周波数混合の第2の段階が続く。システム1100は、システム100のある実施形態であり、システム700の修正と見なされ得る。
【0077】
システム700と比較して、システム1100は、非線形結晶720を和周波数発生非線形結晶1120として実装し、システム1100は、非線形結晶740が、ゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)の各々を部分的にのみ周波数変換することに依拠する。非線形結晶1120は、(a)ゼロ次高調波ビーム792H(0)と残留ビーム792R(0)との和周波数混合からの周波数変換レーザビーム1198SF(0)および(b)1次高調波ビーム792H(1)と残留ビーム792R(1)との和周波数混合からの周波数変換レーザビーム1198SF(1)を発生させる。システム1100が、非線形結晶740を倍増結晶として実装するとき、周波数変換ビーム1198SF(0)および1198SF(1)は、レーザビーム190の第3高調波である。
【0078】
周波数変換ビーム1198SF(0)および1198SF(1)のうちのいずれか一方は、システム1100の周波数変換出力レーザビームとして使用され得、システム1100は、それに応じてビームブロック180を実装し得る。ビーム伝搬角度は、図11に描写されるそれらと異なり得る。例えば、高調波ビーム792H(0)および792H(1)のウォークオフが、AOM110の回折平面に直交する平面において起こり得る。
【0079】
和周波数混合を伴うシステム1100を形成するためのシステム700のこの修正に類似する様式において、システム800は、非線形結晶720における和周波数混合のために修正され得る。この修正は、非線形結晶740が、前駆レーザビーム890をレーザビーム190に部分的にのみ周波数変換することに依拠する。例えば、レーザビーム190および残留ビーム890Rのそれぞれの偏光に応じて、AOM110は、レーザビーム190および残留ビーム890Rのうちの一方を他方より効率的に回折し得る。非線形結晶720における和周波数混合は、(a)残留ビーム890R(またはその1つ以上の回折次数)とのゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)の各々の混合、または、(b)レーザビーム190(またはその1つ以上の回折次数)とのゼロ次残留ビーム892R(0)および1次残留ビーム892R(1)の各々の混合のいずれかを伴う。
【0080】
図12は、非線形結晶におけるレーザビームの非線形周波数変換のための1つの方法1200に関するフローチャートである。方法1200は、周波数変換出力レーザビームの平均電力を変動させるが、非線形結晶において安定した熱負荷を維持するように構成される。方法1200は、システム100によって実施され得る。方法1200は、ステップ1220、1230、および1250を含む。
【0081】
ステップ1220は、AOMを用いて入力レーザビームを空間的に変調する。AOMは、入力レーザビームの一部を1次回折次数に回折し、1次ビームを発生させる。AOMは、入力レーザビームの非回折部分をゼロ次ビームとして透過する。ステップ1220の一例では、AOM110は、レーザビーム190の一部を1次ビーム192(1)に回折し、レーザビーム190の非回折部分をゼロ次ビーム192(0)として透過する。
【0082】
ステップ1230は、ゼロ次ビームと1次ビームとの間の平均電力比率を変更するようにAOMを制御する。ステップ1230の一例では、コントローラ140は、AOM110へのRF電力を変更し、ゼロ次ビーム192(0)と1次ビーム192(1)との間で平均光強度を移転する。コントローラ140は、それによって、ゼロ次ビーム192(0)における平均電力を増加させ、1次ビーム192(1)における平均電力を減少させ、逆も同様である。
【0083】
ステップ1250は、非線形結晶におけるゼロ次ビームおよび1次ビームを周波数変換し、2つのそれぞれの周波数変換レーザビームを発生させる。ステップ1250は、ゼロ次ビームおよび1次ビームの各々を非線形結晶においてそれぞれの周波数変換レーザビームと位相整合させ、ゼロ次ビームおよび1次ビームの両方の効率的な周波数変換を確実にするステップ1252を含む。図1-3を参照して上記に議論されるそれらと同様の理由から、それらのうちの一方のみと対照的に、ゼロ次ビームおよび1次ビームの両方を周波数変換することによって、ステップ1250は、ステップ1230がゼロ次ビームと1次ビームとの間の平均電力比率を変更するときの非線形結晶における熱負荷の変動を最小化した。ステップ1250の一例では、非線形結晶120は、図1を参照して上記に議論されるように、少なくとも部分的にゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)の各々を周波数変換し、それぞれの周波数変換ビーム198(0)および198(1)を発生させる。
【0084】
ステップ1250において発生させられる、2つの周波数変換レーザビームのうちのいずれか一方は、周波数変換出力レーザビームとして使用され得る。方法1200は、図2および3を参照して上記に議論されるシナリオのうちのいずれか1つに従って、周波数変換出力レーザビームの平均電力を変動させ得る。
【0085】
ステップ1250における周波数変換は、例えば、図1、7、8、9、および10を参照して上記に議論されるように、高調波発生、和周波数混合、または差周波数混合であり得る。
【0086】
一実施形態では、ステップ1230は、1次ビームおよびゼロ次ビームの各々が無視できない平均電力を有するように、ゼロ次ビームと1次ビームとの間で平均電力を分配するステップ1232を実装する。ステップ1232を実装するとき、ステップ1230は、ゼロ次ビームおよび1次ビームのうちの一方の平均電力を本質的にゼロから無視できないレベルまで増加させるか、または、ステップ1230は、各々において無視できない平均電力を維持しながら、ゼロ次ビームと1次ビームとの間の平均電力比率を変更する。方法1200の本実施形態は、図3のシナリオに従って、または理想的な100%切り替えコントラスト未満で図2のシナリオに従って、周波数変換出力レーザビームの平均電力を変動させ得る。方法1200の本実施形態は、ゼロ次ビームと1次ビームとの間の平均電力比率を変更すると、非線形結晶における熱負荷への変更された周波数変換効率の影響を補正するステップ1210をさらに含む。ステップ1210は、入力レーザビームの平均電力を適切なレベルに設定するように入力レーザビームの源を制御することによって、これを達成する。ステップ1210の一例では、コントローラ140は、レーザビーム190の平均電力を調節するようにレーザ130を制御する。
【0087】
図12に示されないが、方法1200の一実施形態では、AOMは、ステップ1230において、20ミリラジアン以下の角度でゼロ次ビームおよび1次ビームを出力する。本実施形態は、それらがAMOから非線形結晶に伝搬するとき、ゼロ次ビームと1次ビームとの間の角度を変更することなく、非線形結晶におけるゼロ次ビームと1次ビームとの間の十分な空間的重複(例えば、50%)を達成し得る。方法1200の本実施形態の一例では、AOM110は、ゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)を出力し、図5を参照して上記に議論されるように、それらの間の角度592Aは、20ミリラジアン以下である。
【0088】
別の実施形態では、方法1200は、AOMからのゼロ次ビームおよび1次ビームを非線形結晶に結像するステップ1240をさらに含む。ステップ1240は、非線形結晶におけるゼロ次ビームと1次ビームとの間の所望の空間的重複(例えば、50%)を達成する役割を果たし得る。ステップ1240は、ゼロ次ビームおよび1次ビームのビーム直径を増加させるステップ1242を含み得る。ステップ1240の一例では、レンズ630は、図6を参照して上記に議論されるように、AOM110からのゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)を非線形結晶120に結像する。レンズ630は、ゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)のビーム直径を増加または減少させるように、非1倍率で結像させ得る。
【0089】
パルス状入力レーザビームに適用されるとき、方法1200は、ステップ1250において、ゼロ次ビームと1次ビームとの和周波数混合を防止するように、ゼロ次ビームおよび1次ビームのうちの他方に対してゼロ次ビームおよび1次ビームのうちの一方のパルスを遅らせるステップ1270を含み得る。ステップ1270は、例えば、図1を参照して上記に議論されるようなガラスプレート160によって実施される。
【0090】
図13は、レーザビームの2段階非線形周波数変換のための1つの方法1300に関するフローチャートである。方法1300は、ステップ1220における音響光学変調とステップ1250における非線形周波数変換との間の非線形周波数変換の追加のステップ1340を実装する、方法1200のある実施形態である。方法1300は、例えば、システム700または1100によって実施される。
【0091】
ステップ1340は、ステップ1220において発生させられるゼロ次ビームおよび1次ビームの各々に追加の非線形結晶における追加の非線形周波数変換を受けさせる。ステップ1340は、周波数変換を高調波発生として実施するステップ1342を実装し得る。代替として、ステップ1340は、和または差周波数混合を実施する。ステップ1340の一例では、非線形結晶740は、図7を参照して上記に議論されるように、または図11を参照して上記に議論されるように、ゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)から、それぞれ、ゼロ次高調波ビーム792H(0)および1次高調波ビーム792H(1)を発生させる。
【0092】
システム700によって実施され得る一実施形態では、ステップ1340は、ステップ1342を実装し、ステップ1250は、ゼロ次ビームおよび1次ビームのさらなる高調波として周波数変換レーザビームをそれぞれ発生させるステップ1354を実装する。例えば、ステップ1342および1354の各々は、周波数変換レーザビームが、入力レーザビームの第4高調波であるように、周波数倍増を実施し得る。方法1300は、それによって、近赤外線レーザビームを周波数4倍化し、例えば、図7を参照して上記に議論されるように、266nmまたは258nmの波長を伴う紫外線レーザビームを発生させ得る。
【0093】
システム1100によって実施され得る別の実施形態では、ステップ1340は、ステップ1342およびステップ1344を実装し、ステップ1250は、ステップ1356を実装する。ステップ1344は、ゼロ次ビームおよび1次ビームの各々の残留部分を周波数変換されないままにし、結果として生じる非周波数変換レーザビームをステップ1250において使用される非線形結晶上に通す。ステップ1344を実装するステップ1340の一例では、非線形結晶740は、図11を参照して上記に議論されるように、ゼロ次ビーム192(0)および1次ビーム192(1)の各々を部分的にのみ周波数変換し、次いで、それぞれの残留ビーム792R(0)および792R(1)を非線形結晶1120に転送する。ステップ1356は、(a)周波数変換ゼロ次ビームの対応する非周波数変換ビームとの和周波数混合からの周波数変換レーザビームのうちの一方、および、(b)周波数変換1次ビームの対応する非周波数変換ビームとの和周波数混合からの周波数変換レーザビームのうちの他方を発生させる。ステップ1340が、第2高調波発生を実施するとき、ステップ1356において発生させられる周波数変換レーザビームは、入力レーザビームの第3高調波である。ステップ1356の一例では、非線形結晶1120は、図11を参照して上記に議論されるように、周波数変換ビーム1198SF(0)および1198SF(1)を発生させる。方法1300は、それによって、近赤外線レーザビームを周波数3倍化し、例えば、図11を参照して上記に議論されるように、355nmの波長を伴う紫外線レーザビームを発生させ得る。
【0094】
加えて、方法1300は、ステップ1360を含み得、ステップ1360は、ステップ1220において使用されるAOMからのゼロ次ビームおよび1次ビームをステップ1250(周波数変換の第2の段階)において使用される非線形結晶に結像する。ステップ1360は、ステップ1340の前または後に実施され得る。ステップ1360は、図6を参照して上記に議論されるように、レンズ630または1つ以上の類似するレンズを利用し、1倍率、1を上回る倍率、または1を下回る倍率を用いて結像を実施し得る。ステップ1360は、図6および7を参照して上記に議論されるように、ステップ1250において使用される非線形結晶における所望の空間的重複を達成することに役立ち得る。
【0095】
図14は、レーザビームの2段階非線形周波数変換のための別の方法1400に関するフローチャートである。方法1400は、ステップ1230における音響光学変調に先立って実施される初期周波数変換ステップ1410において、入力レーザビームを前駆レーザビームの高調波として発生させる方法1200のある実施形態である。ステップ1410は、非線形結晶740によって実施され得る。方法1400は、例えば、和周波数混合のために構成されたシステム800またはその修正によって実施される。ステップ1410は、図8を参照して上記に議論されるように、前駆レーザビームを周波数倍増(例えば、近赤外線前駆レーザビームを周波数倍増)し、可視(例えば、緑色)入力レーザビームを発生させるステップ1412を実装し得る。
【0096】
システム800によって実施され得る方法1400の一実施形態では、ステップ1250は、周波数変換レーザビームをゼロ次ビームおよび1次ビームの高調波として発生させるステップ1454を実装する。例えば、ステップ1410および1454の各々は、ステップ1250において発生させられる周波数変換レーザビームが、前駆レーザビームの第4高調波であるように、第2高調波を発生させ得る。方法1300は、それによって、近赤外線レーザビームを周波数4倍化し、例えば、図8を参照して上記に議論されるように、266nmまたは258nmの波長を伴う紫外線レーザビームを発生させ得る。
【0097】
システム1200によって実施され得る方法1400の別の実施形態では、ステップ1410は、ステップ1412およびステップ1414を実装し、ステップ1250は、ステップ1456を実装する。ステップ1414は、前駆レーザビームの残留部分を周波数変換されないままにし、結果として生じる非周波数変換残留ビームをステップ1220において使用されるAOMに通す。AOMは、いかなる回折も伴わずに残留ビームを完全に、またはその大部分を透過し得る。代替として、AOMは、例えば1次回折次数に残留ビームの一部を回折し得る。ステップ1414を実装するステップ1410の一例では、非線形結晶740は、前駆レーザビーム890を部分的にのみ周波数変換し、次いで、入力レーザビーム190および残留ビーム890Rの両方をAOM110に転送する。ステップ1456は、ゼロ次ビームとステップ1410において周波数変換されていない残留ビーム(および/またはステップ1220において使用されるAOMによって発生させられるその回折次数)との和周波数混合からの周波数変換レーザビームのうちの一方を発生させる。ステップ1456は、1次ビームとステップ1410において周波数変換されてない残留ビーム(および/またはステップ1220において使用されるAOMによって発生させられるその回折次数)との和周波数混合からの周波数変換レーザビームのうちの他方を発生させる。ステップ1410が、第2高調波発生を実施するとき、ステップ1456において発生させられる周波数変換レーザビームは、前駆レーザビームの第3高調波である。方法1400は、それによって、近赤外線レーザビームを周波数3倍化し、例えば、355nmの波長を伴う紫外線レーザビームを発生させ得る。
【0098】
方法1400は、図12を参照して上記に議論されるようなステップ1232および1210を含み得る。方法1400において実装されるとき、ステップ1210は、図14に示されるように、前駆レーザビームの源に適用され得るか、または、ステップ1210は、前駆レーザビームからのその発生後、必要に応じて、入力レーザビームの平均電力を減衰させ得る。
【0099】
加えて、方法1400は、ステップ1250において使用される非線形結晶におけるゼロ次ビームと1次ビームとの間の空間的重複を改良するために、ステップ1360を含み得る。方法1400は、ステップ1270も含み得る。
【0100】
本明細書の範囲から逸脱することなく、方法1400は、それから発生させられる入力レーザビームではなく、前駆レーザビームの回折のために、ステップ1220における音響光学変調を最適化するように修正され得る。
【0101】
本発明は、好ましい実施形態および他の実施形態の観点から上記に説明される。しかしながら、本発明は、本明細書に説明および描写される実施形態に限定されない。むしろ、本発明は、本明細書に添付される請求項によってのみ限定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2023-12-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非線形周波数変換のためのシステムであって、前記システムは、
入力レーザビームの一部を1次ビームとして回折し、前記入力レーザビームの非回折部分をゼロ次ビームとして透過するための音響光学変調器と、
前記ゼロ次ビームおよび1次ビームの各々を受信および周波数変換し、2つのそれぞれの周波数変換レーザビームを発生させるように配置された非線形結晶と
を備え、
前記ゼロ次ビームおよび1次ビームの各々は、前記それぞれの周波数変換レーザビームと位相整合させられている、システム。
【請求項2】
コントローラをさらに備え、前記コントローラは、
(a)前記音響光学変調器に印加される無線周波数電力を調整することによって、前記ゼロ次ビームと1次ビームとの間の前記平均電力比率を変更することと、
(b)更された周波数変換効率の前記非線形結晶における前記熱負荷への影響を補正するように前記入力レーザビームの前記平均電力を設定することと
同時に行うように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ゼロ次ビームおよび1次ビームは、前記非線形結晶内で少なくとも50パーセント空間的に重複する、請求項に記載のシステム。
【請求項4】
前記音響光学変調器と前記非線形結晶との間に位置し、前記非線形結晶内で前記ゼロ次ビームおよび1次ビームを空間的に重複させるように配置された1つ以上のレンズをさらに備えている、請求項に記載のシステム。
【請求項5】
前記1つ以上のレンズは、前記音響光学変調器からの前記ゼロ次ビームおよび1次ビームを前記非線形結晶に結像するように構成されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記入力レーザビームは、パルス状であり、前記システムは、1つ以上のガラスプレートをさらに備え、前記1つ以上のガラスプレートは、前記ゼロ次ビームおよび1次ビームの両方ではなく、一方と交差し、そのパルスを遅らせる、請求項に記載のシステム。
【請求項7】
前記1つ以上のガラスプレートは、前記1つ以上のガラスプレートによって交差される前記ゼロ次ビームおよび1次ビームのうちの前記一方を操向するための少なくとも1つの楔を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前駆レーザビームを周波数変換することによって前記入力レーザビームを発生させるための追加の非線形結晶をさらに備えている、請求項に記載のシステム。
【請求項9】
前記非線形結晶および前記追加の非線形結晶の各々は、周波数倍増結晶である、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記非線形結晶における周波数変換に先立つ前記ゼロ次ビームおよび1次ビームの追加の周波数変換のための追加の非線形結晶をさらに備えている、請求項に記載のシステム。
【請求項11】
前記非線形結晶および前記追加の非線形結晶の各々は、周波数倍増結晶である、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
非線形周波数変換のための方法であって、前記方法は、
音響光学変調器を用いて入力レーザビームを変調し、前記入力レーザビームの一部を1次ビームとして回折し、前記入力レーザビームの非回折部分をゼロ次ビームとして透過するステップと、
前記音響光学変調器を制御することによって、前記ゼロ次ビームと1次ビームとの間で平均電力を移転するステップと、
非線形結晶内で前記ゼロ次ビームおよび1次ビームを周波数変換し、2つのそれぞれの周波数変換レーザビームを発生させるステップと
を含み、
前記ゼロ次ビームおよび1次ビームの各々は、前記それぞれの周波数変換レーザビームと位相整合させられている、方法。
【請求項13】
前記音響光学変調器を制御するステップは、前記ゼロ次ビームと1次ビームとの間で平均電力を前記音響光学変調器に分配させ、前記方法は、前記入力レーザビームの源を制御することによって、変更された周波数変換効率の前記熱負荷への影響を補正するように前記入力レーザビームの平均電力を設定することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ゼロ次回折次数および1次回折次数を前記非線形結晶内で少なくとも50パーセント空間的に重複させることをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記周波数変換するステップは、前記ゼロ次ビームおよび1次ビームの各々の高調波を発生させ、前記周波数変換レーザビームは、紫外線である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記入力レーザビームは、少なくとも1キロワットの平均電力を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記音響光学変調器からの前記ゼロ次ビームおよび1次ビームを前記非線形結晶に結像することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記結像するステップは、前記ゼロ次ビームおよび1次ビームの直径を増加または減少させることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記変調するステップにおいて、前記音響光学変調器は、前記ゼロ次ビームおよび1次ビームの間で20ミリラジアン以下の角度でそれらを出力し、前記方法は、前記非線形結晶まで前記角度を維持することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記入力レーザビームは、パルス状であり、前記方法は、前記ゼロ次ビームおよび1次ビームの両方ではなく、一方のパルスを遅らせるステップをさらに、含む、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
追加の非線形結晶において、前記入力レーザビームを前駆レーザビームの高調波として発生させるステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
前記前駆レーザビームは、赤外線であり、
前記発生させるステップは、前記前駆レーザビームを周波数倍増することによって前記入力レーザビームを発生させ、前記入力レーザビームは、緑色であり、
前記周波数変換するステップは、前記ゼロ次ビームおよび1次ビームの各々を周波数倍増することによって前記周波数変換レーザビームを発生させ、前記周波数変換レーザビームは、紫外線である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記非線形結晶における前記周波数変換するステップに先立って、追加の非線形結晶において、前記ゼロ次ビームおよび1次ビームに追加の周波数変換を受けさせるステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項24】
前記受けさせるステップは、前記ゼロ次ビームおよび1次ビームの各々の高調波を発生させ、
前記周波数変換するステップは、前記ゼロ次ビームおよび1次ビームの前記高調波のさらなる高調波として前記周波数変換レーザビームをそれぞれ発生させる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記受けさせるステップは、前記ゼロ次回折次数および1次回折次数の各々を周波数倍増することによって、前記ゼロ次回折次数および1次回折次数の各々の第2高調波を発生させ、
前記周波数変換するステップは、前記ゼロ次ビームおよび1次ビームの各々の前記第2高調波を周波数倍増することによって、前記入力レーザビームの第4高調波として前記周波数変換レーザビームの各々を発生させる、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記非線形結晶は、一軸結晶であり、前記一軸結晶は、その光軸が前記ゼロ次ビームおよび1次ビームと同一平面上にあるように向けられており、それによって、前記ゼロ次ビームと1次ビームとは、同程度に位相整合させられる、請求項1に記載のシステム。
【請求項27】
前記非線形結晶は、前記ゼロ次ビームと1次ビームとが前記非線形結晶において等しく位相整合させられるように向けられている、請求項1に記載のシステム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
さらなる側面では、第4高調波レーザ装置は、基本周波数レーザビームから2つの第2高調波レーザビームを発生させるための第2高調波発生器を含む。第2高調波発生器は、入射するレーザ放射を周波数倍増するための第1の周波数倍増結晶と、入射するレーザビームのゼロ次回折次数および1次回折次数を発生させるための音響光学変調器とを含む。音響光学変調器は、2つの第2高調波レーザビーム間の平均電力比率を制御するように配置される。装置は、2つの第2高調波レーザビームの各々を受信し、周波数倍増し、2つのそれぞれの第4高調波レーザビームを発生させるように配置された第2の周波数倍増結晶をさらに含み、それによって、音響光学変調器が2つの第2高調波レーザビーム間の平均電力比率を変更するとき、第2の周波数倍増結晶における熱負荷の変動が、最小化される。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
非線形周波数変換のためのシステムであって、前記システムは、
入力レーザビームの一部を1次ビームとして回折し、前記入力レーザビームの非回折部分をゼロ次ビームとして透過するための音響光学変調器と、
前記ゼロ次ビームおよび1次ビームの各々を受信および周波数変換し、2つのそれぞれの周波数変換レーザビームを発生させるように配置された非線形結晶と
を備え、
それによって、前記音響光学変調器が前記ゼロ次ビームと1次ビームとの間の平均電力比率を変更するとき、非線形結晶における熱負荷の変動が、最小化される、システム。
(項目2)
コントローラをさらに備え、前記コントローラは、
(a)前記音響光学変調器に印加される無線周波数電力を調整することによって、前記ゼロ次ビームと1次ビームとの間の前記平均電力比率を設定することと、
(b)前記ゼロ次ビームと1次ビームとの間の前記平均電力比率を変更するとき、変更された周波数変換効率の前記熱負荷への影響を補正するように前記入力レーザビームの前記平均電力を設定することと
を行うように構成されている、項目1に記載のシステム。
(項目3)
前記ゼロ次ビームおよび1次ビームは、前記非線形結晶内で少なくとも50パーセント空間的に重複する、項目1または項目2に記載のシステム。
(項目4)
前記音響光学変調器と前記非線形結晶との間に位置し、前記非線形結晶内で前記ゼロ次ビームおよび1次ビームを空間的に重複させるように配置された1つ以上のレンズをさらに備えている、項目1-3のいずれかに記載のシステム。
(項目5)
前記1つ以上のレンズは、前記音響光学変調器からの前記ゼロ次ビームおよび1次ビームを前記非線形結晶に結像するように構成されている、項目4に記載のシステム。
(項目6)
前記入力レーザビームは、パルス状であり、前記システムは、1つ以上のガラスプレートをさらに備え、前記1つ以上のガラスプレートは、前記ゼロ次ビームおよび1次ビームの両方ではなく、一方と交差し、そのパルスを遅らせる、項目1-5のいずれかに記載のシステム。
(項目7)
前記1つ以上のガラスプレートは、前記1つ以上のガラスプレートによって交差される前記ゼロ次ビームおよび1次ビームのうちの前記一方を操向するための少なくとも1つの楔を含む、項目6に記載のシステム。
(項目8)
前駆レーザビームを周波数変換することによって前記入力レーザビームを発生させるための追加の非線形結晶をさらに備えている、項目1-7のいずれかに記載のシステム。
(項目9)
前記非線形結晶および前記追加の非線形結晶の各々は、周波数倍増結晶である、項目8に記載のシステム。
(項目10)
前記非線形結晶における周波数変換に先立つ前記ゼロ次ビームおよび1次ビームの追加の周波数変換のための追加の非線形結晶をさらに備えている、項目1-9のいずれかに記載のシステム。
(項目11)
前記非線形結晶および前記追加の非線形結晶の各々は、周波数倍増結晶である、項目10に記載のシステム。
(項目12)
非線形周波数変換のための方法であって、前記方法は、
音響光学変調器を用いて入力レーザビームを変調し、前記入力レーザビームの一部を1次ビームとして回折し、前記入力レーザビームの非回折部分をゼロ次ビームとして透過するステップと、
前記音響光学変調器を制御することによって、前記ゼロ次ビームと1次ビームとの間で平均電力を移転するステップと、
非線形結晶内で前記ゼロ次ビームおよび1次ビームを周波数変換し、2つのそれぞれの周波数変換レーザビームを発生させるステップと
を含み、
それによって、前記音響光学変調器が前記ゼロ次ビームと1次ビームとの間の平均電力比率を変更するとき、前記非線形結晶における熱負荷の変動が、最小化される、方法。
(項目13)
前記音響光学変調器を制御するステップが前記ゼロ次ビームと1次ビームとの間で平均電力を前記音響光学変調器に分配させるとき、前記入力レーザビームの源を制御することによって、変更された周波数変換効率の前記熱負荷への影響を補正するように前記入力レーザビームの平均電力を設定することをさらに含む、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記ゼロ次回折次数および1次回折次数を前記非線形結晶内で少なくとも50パーセント空間的に重複させることをさらに含む、項目12または項目13に記載の方法。
(項目15)
前記周波数変換するステップは、前記ゼロ次ビームおよび1次ビームの各々の高調波を発生させ、前記周波数変換レーザビームは、紫外線である、項目12-14のいずれかに記載の方法。
(項目16)
前記入力レーザビームは、少なくとも1キロワットの平均電力を有する、項目12-15のいずれかに記載の方法。
(項目17)
前記音響光学変調器からの前記ゼロ次ビームおよび1次ビームを前記非線形結晶に結像することをさらに含む、項目12-16のいずれかに記載の方法。
(項目18)
前記結像するステップは、前記ゼロ次ビームおよび1次ビームの直径を増加または減少させることを含む、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記変調するステップにおいて、前記音響光学変調器は、前記ゼロ次ビームおよび1次ビームの間で20ミリラジアン以下の角度でそれらを出力し、前記方法は、前記非線形結晶まで前記角度を維持することをさらに含む、項目12-18のいずれかに記載の方法。
(項目20)
前記入力レーザビームは、パルス状であり、前記方法は、前記ゼロ次ビームおよび1次ビームの両方ではなく、一方のパルスを遅らせるステップをさらに、含む、項目12-19のいずれかに記載の方法。
(項目21)
追加の非線形結晶において、前記入力レーザビームを前駆レーザビームの高調波として発生させるステップをさらに含む、項目12-20のいずれかに記載の方法。
(項目22)
前記前駆レーザビームは、赤外線であり、
前記発生させるステップは、前記前駆レーザビームを周波数倍増することによって前記入力レーザビームを発生させ、前記入力レーザビームは、緑色であり、
前記周波数変換するステップは、前記ゼロ次ビームおよび1次ビームの各々を周波数倍増することによって前記周波数変換レーザビームを発生させ、前記周波数変換レーザビームは、紫外線である、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記非線形結晶における前記周波数変換するステップに先立って、追加の非線形結晶において、前記ゼロ次ビームおよび1次ビームに追加の周波数変換を受けさせるステップをさらに含む、項目12-22のいずれかに記載の方法。
(項目24)
前記受けさせるステップは、前記ゼロ次ビームおよび1次ビームの各々の高調波を発生させ、
前記周波数変換するステップは、前記ゼロ次ビームおよび1次ビームの前記高調波のさらなる高調波として前記周波数変換レーザビームをそれぞれ発生させる、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記受けさせるステップは、前記ゼロ次回折次数および1次回折次数の各々を周波数倍増することによって、前記ゼロ次回折次数および1次回折次数の各々の第2高調波を発生させ、
前記周波数変換するステップは、前記ゼロ次ビームおよび1次ビームの各々の前記第2高調波を周波数倍増することによって、前記入力レーザビームの第4高調波として前記周波数変換レーザビームの各々を発生させる、項目23または項目24に記載の方法。
(項目26)
第4高調波レーザ装置であって、前記第4高調波レーザ装置は、
基本周波数レーザビームから2つの第2高調波レーザビームを発生させるための第2高調波発生器であって、前記第2高調波発生器は、
第1の周波数倍増結晶であって、前記第1の周波数倍増結晶は、それに入射するレーザ放射を周波数倍増する、第1の周波数倍増結晶と、
音響光学変調器であって、前記音響光学変調器は、それに入射するレーザビームのゼロ次回折次数および1次回折次数を発生させ、前記音響光学変調器は、前記2つの第2高調波レーザビーム間の平均電力比率を制御するように配置されている、音響光学変調器と
を含む、第2高調波発生器と、
前記2つの第2高調波レーザビームの各々を受信し、周波数倍増し、2つのそれぞれの第4高調波レーザビームを発生させるように配置された第2の周波数倍増結晶と
を備え、
それによって、前記音響光学変調器が前記2つの第2高調波レーザビーム間の平均電力比率を変更するとき、前記第2の周波数倍増結晶における熱負荷の変動が、最小化される、第4高調波レーザ装置。
(項目27)
前記第1の周波数倍増結晶は、前記基本周波数レーザビームを周波数倍増し、初期第2高調波ビームを発生させるために配置され、
前記音響光学変調器は、前記初期第2高調波ビームを空間的に変調し、前記初期第2高調波ビームのゼロ次回折次数および1次回折次数として前記2つの第2高調波レーザビームを発生させるように配置されている、項目26に記載の装置。
(項目28)
前記音響光学変調器は、前記基本周波数レーザビームを空間的に変調し、そのゼロ次回折次数および1次回折次数を発生させるように配置され、
前記第1の周波数倍増結晶は、前記基本周波数レーザビームの前記ゼロ次回折次数および1次回折次数の各々を周波数倍増し、前記2つの第2高調波レーザビームを発生させるように配置されている、項目26に記載の装置。
【国際調査報告】