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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-28
(54)【発明の名称】カンナビノイドの製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/05 20060101AFI20240321BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20240321BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20240321BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240321BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240321BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240321BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240321BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240321BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240321BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240321BHJP
   A61P 25/00 20060101ALN20240321BHJP
   A61P 25/18 20060101ALN20240321BHJP
   A61P 25/20 20060101ALN20240321BHJP
   A61P 29/00 20060101ALN20240321BHJP
【FI】
A61K31/05
A61K31/352
A61K9/16
A61K47/10
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/04
A61K47/26
A61K47/22
A61P25/00
A61P25/18
A61P25/20
A61P29/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562926
(86)(22)【出願日】2022-04-19
(85)【翻訳文提出日】2023-12-11
(86)【国際出願番号】 EP2022060276
(87)【国際公開番号】W WO2022219198
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】21168880.9
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21173344.9
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521446381
【氏名又は名称】アド アドヴァンスト ドラッグ デリヴァリー テクノロジーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ADD ADVANCED DRUG DELIVERY TECHNOLOGIES LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】ノヴァク,レインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ノヴァク,ミルコ
(72)【発明者】
【氏名】ノヴァク,ジェスコ ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ドクトル ペリンガー,ノルベルト
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076BB01
4C076CC01
4C076CC04
4C076DD09
4C076DD29
4C076DD59S
4C076EE16E
4C076EE31
4C076EE32
4C076FF05
4C076FF06
4C076FF23
4C076FF34
4C076FF36
4C076FF51
4C076FF63
4C076GG13
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086MA03
4C086MA05
4C086NA02
4C086NA11
4C086ZA02
4C086ZA05
4C086ZA08
4C086ZA18
4C086ZB11
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA19
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA05
4C206NA02
4C206NA11
4C206ZA02
4C206ZA05
4C206ZA08
4C206ZA18
4C206ZB11
(57)【要約】
固体分散体の形態の医薬製剤であって、固体分散体は、カンナビノイド、可溶化剤としての両親媒性ブロックコポリマー、および水溶性フィルム形成剤を混合して含む。製剤を調製する方法であって、該方法は以下の工程を含む:(i)カンナビノイド、両親媒性ブロックコポリマー、およびカンナビノイドおよび両親媒性ブロックコポリマーを少なくとも部分的に溶解することができる溶媒を含む液体組成物を調製する工程;(ii)液体組成物を流動床造粒機に導入する工程;(iii)溶媒を除去して微粒子形態の固体分散体を得る工程;および(iv)流動床造粒機から粒子形態の固体分散体を回収する工程。
を含む、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体分散体の形態の医薬製剤であって、前記固体分散体は、カンナビノイド、可溶化剤としての両親媒性ブロックコポリマー、および水溶性フィルム形成剤を混合して含むことを特徴とする、医薬製剤。
【請求項2】
前記カンナビノイドおよび前記両親媒性ブロックコポリマーは、カンナビノイド:両親媒性ブロックコポリマーが1:0.11~0.41、好ましくは1:0.16~0.36、より好ましくは1:0.21~0.31の重量比で存在することを特徴とする、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記両親媒性ブロックコポリマーは、少なくとも1つのポリオキシエチレンブロックおよび少なくとも1つのポリオキシプロピレンブロックを含むブロックコポリマーであることを特徴とする、請求項1または2に記載の製剤。
【請求項4】
前記両親媒性ブロックコポリマーは、ポロキサマー、特にpoloxamer 188であることを特徴とする、請求項3に記載の製剤。
【請求項5】
前記カンナビノイドおよび前記水溶性フィルム形成剤は、カンナビノイド:水溶性フィルム形成剤が1:0.03~0.33、好ましくは1:0.08~0.28、より好ましくは1:0.13~0.23の重量比で存在することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項6】
前記水溶性フィルム形成剤は、ポリビニルピロリドン、特にPVPK-30であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項7】
前記水溶性フィルム形成剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項8】
前記成分は、カンナビノイド:両親媒性ブロックコポリマー:水溶性フィルム形成剤が1:0.11~0.41:0.03~0.33、好ましくは1:0.16~0.36:0.08~0.28、より好ましくは1:0.21~0.31:0.13~0.23の重量比で存在することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項9】
前記固体分散体はさらに抗酸化剤を含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項10】
前記抗酸化剤は、前記カンナビノイドの量に対して0.5~2.5質量%、好ましくは0.8~2質量%、特に1.0~1.8質量%の量で使用されることを特徴とする、請求項9に記載の製剤。
【請求項11】
前記抗酸化剤はパルミチン酸アスコルビルであることを特徴とする、請求項9または10に記載の製剤。
【請求項12】
前記固体分散体は希釈剤を含むことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項13】
前記カンナビノイドおよび前記希釈剤は、カンナビノイド:希釈剤が1:0.5~2.7、好ましくは1:0.9~2.3、特に1:1.3~1.9の重量比で存在することを特徴とする、請求項12に記載の製剤。
【請求項14】
前記希釈剤は、微結晶性セルロースおよび/またはマンニトールであることを特徴とする、請求項12または13に記載の製剤。
【請求項15】
前記固体分散体は水分吸着剤を含むことを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項16】
前記カンナビノイドおよび前記水分吸着剤は、カンナビノイド:水分吸着剤が0.14~0.44、好ましくは0.19~0.39、特に0.24~0.34の重量比で存在することを特徴とする、請求項15に記載の製剤。
【請求項17】
前記水分吸着剤は二酸化ケイ素を含むことを特徴とする、請求項15または16に記載の製剤。
【請求項18】
前記固体分散体は、トリグリセリド;および/またはモノ-およびジグリセリド;および/または脂肪酸を、含まないかまたは本質的に含まないことを特徴とする、請求項1~17のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項19】
前記カンナビノイドは、カンナビジオール(2-[(1R,6R)-3-メチル-6-(1-メチルエテニル)-2-シクロヘキセン-1-イル]-5-ペンチル-1,3-ベンゼンジオール)であることを特徴とする、請求項1~18のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項20】
カンナビノイド、可溶化剤としての両親媒性ブロックコポリマー、水溶性フィルム形成剤、抗酸化剤、希釈剤、および水分吸着剤、ならびに、10質量%以下の他の成分、好ましくは5質量%以下の他の成分、特に2質量%以下の他の成分からなることを特徴とする、請求項1~19のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項21】
前記カンナビノイドはカンナビジオールであり;前記両親媒性ブロックコポリマーは、ポロキサマー、特にpoloxamer 188であり;前記水溶性フィルム形成剤は、ポリビニルピロリドン、特にPVPK-30であることを特徴とする、請求項20に記載の製剤。
【請求項22】
前記成分は、カンナビノイド:両親媒性ブロックコポリマー:ポリビニルピロリドンが1:0.21~0.31:0.13~0.23の重量比で存在することを特徴とする、請求項21に記載の製剤。
【請求項23】
前記製剤を水性媒体と組み合わせるとミセル溶液が形成されることを特徴とする、請求項1~22のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項24】
前記製剤は、USPパドル法に従って0.1N HCl+2%CTAB中でのインビトロ溶解試験に供した場合、60分以内に少なくとも75質量%、好ましくは60分以内に少なくとも90質量%のカンナビノイドを放出することを特徴とする、請求項1~23のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項25】
前記製剤は、USPパドル法に従って0.1N HCl+2%CTAB中でのインビトロ溶解試験に供した場合、45分以内に少なくとも75質量%、好ましくは45分以内に少なくとも85質量%のカンナビノイドを放出することを特徴とする、請求項1~24のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項26】
参照生成物としての油性カンナビノイド溶液100mg/mlのバイオアベイラビリティと比較して劣らないバイオアベイラビリティが達成されることを特徴とする、請求項1~25のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項27】
前記バイオアベイラビリティは、24時間の間隔にわたるAUCによって表されることを特徴とする、請求項26に記載の製剤。
【請求項28】
前記AUCを測定する24時間の間隔内の各投与の30分前以内に摂取した350~600kcalの軽食後に前記AUCを測定することを特徴とする、請求項27に記載の製剤。
【請求項29】
請求項1~28のいずれか一項に記載の製剤を調製する方法であって、
(i)カンナビノイド、両親媒性ブロックコポリマー、およびカンナビノイドおよび両親媒性ブロックコポリマーを少なくとも部分的に溶解することができる溶媒を含む液体組成物を調製する工程;
(ii)前記液体組成物を流動床造粒機に導入する工程;
(iii)前記溶媒を除去して微粒子形態の固体分散体を得る工程;および
(iv)前記流動床造粒機から粒子形態の固体分散体を回収する工程
を含む、方法。
【請求項30】
前記液体組成物は、水溶性フィルム形成剤をさらに含むことを特徴とする、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記液体組成物を、既に固体粒子を含有する流動床造粒機に噴霧することを特徴とする、請求項29または30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カンナビノイド、特にカンナビジオールの製剤、ならびにそのような製剤を調製する方法に関する。本発明は、カンナビノイド、特にカンナビジオールの経口投与のための固体製剤を提供する。
【背景技術】
【0002】
カンナビノイド、特にカンナビジオール(CBD)は、薬物として考えられている。カンナビノイドが、痛み、炎症、てんかん、睡眠障害、多発性硬化症の症状、食欲不振、および統合失調症を含む多くの臨床状態を処置するのに有益であり得ることを示す証拠がある(非特許文献1)。
【0003】
様々な適応症におけるカンナビノイドの使用が示唆されているが、これまでのところ、限られた用途しか市場認可を受けていない。
【0004】
カンナビノイド、特にカンナビジオールは、その高い親油性の性質のために製剤化することが困難である。特に経口投与の際、カンナビノイドの低くかつ可変のバイオアベイラビリティにより、これらの化合物の有効な臨床的使用が妨げられる。
【0005】
実際、カンナビノイドは、高親油性の分子(logP 6~7)であり、水溶性が非常に低い(2~10μg/ml)。logPは、n-オクタノール/水分配係数の常用対数である。分配係数は実験的に決定することができる。値は、典型的には、室温(25℃)での値を指す。分配係数は、分子構造から大まかに算出することもできる。
【0006】
溶解度が低いことに加えて、カンナビノイド、特にCBDは、高い初回通過代謝を受けやすく、これはさらに、経口投与後の低い全身アベイラビリティに寄与する。
【0007】
カンナビノイドの様々な製剤が提案されてきた。
【0008】
カンナビノイドの高い親油性により、塩形成(すなわち、pH調整)、共溶媒和(例えば、エタノール、プロピレングリコール、PEG400)、ミセル形成(例えば、ポリソルベート80、Cremophor-ELP)、マイクロエマルション形成およびナノエマルション形成を含む、エマルション化(乳化)、複合体形成(例えば、シクロデキストリン)、および脂質ベース製剤(例えば、リポソーム)中への封入が、従来技術において製剤戦略の中で検討されている。ナノ粒子系も提案されている(非特許文献1)。
【0009】
様々な経口固形製剤が、例えば特許文献1および2などの特許文献において提案されている。これらの文献は、放出挙動に関するデータを含まないため、カンナビノイドの投与のために提案された形態の実際の適合性は不明なままである。
【0010】
特許文献3は、カンナビジオールに加えて、乳糖およびショ糖脂肪酸モノエステルを含む圧縮錠剤について記載する。
【0011】
ドロナビノール(Dronabinol)(Δ9-THC)は、カプセル形態(Marinol(登録商標))、および経口溶液(Syndros(登録商標))として市販されている。Marinol(登録商標)カプセルは、ゴマ油中に活性成分を含むソフトゼラチンカプセルである。
【0012】
ナビキシモルス(nabiximols)を含有する医薬品Sativex(登録商標)は、頬の内側に噴霧される口腔スプレーである。
【0013】
油、界面活性剤の混合物であり、任意選択的に親水性溶媒を含有する自己乳化型ドラッグデリバリーシステム(SEDDS)もまた、特定のカンナビノイドの経口バイオアベイラビリティを改善するためのアプローチに関心を集めている(非特許文献2)。胃液または腸液などの水相と接触すると、SEDDSは、穏やかな撹拌条件下で自然に乳化する。
【0014】
Vesifact AG(Baar,Switzerland)によって開発された自己乳化型ドラッグデリバリー製剤技術であるVESIsorb(登録商標)は、特定の親油性分子の経口バイオアベイラビリティの増加を示した。
【0015】
特定の形態のてんかんを処置するためのオーファンドラッグとしてUS-FDAによって最近承認された製剤であるEpidiolex(登録商標)は、活性成分であるカンナビジオールに加えて、賦形剤である無水エタノール、ゴマ油、ストロベリー香料、およびスクラロースを含む経口溶液の形態で提供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開第2008/024490号
【特許文献2】国際公開第2018/035030号
【特許文献3】国際公開第2015/065179号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】N. Bruni et al., Cannabinoid Delivery Systems for Pain and Inflammation Treatment. Molecules 2018, 23, 2478
【非特許文献2】K. Knaub et al. (2019). A Novel Self-Emulsifying Drug Delivery System (SEDDS) Based on VESIsorb Formulation Technology Improving the Oral Bioavailability of Cannabidiol in Healthy Subjects. Molecules, 24(16), 2967
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
これらの全ての提案にもかかわらず、カンナビジオールなどのカンナビノイドのための改良された剤形、特に固体経口剤形に対する必要性が依然として存在する。
【0019】
特に、カンナビノイドの高いバイオアベイラビリティおよび/または食物効果の低減および/または薬物動態パラメータの変動性の低減を示す固体経口剤形が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、固体分散体の形態の医薬製剤を提供し、固体分散体は、カンナビノイドと、可溶化剤としての両親媒性ブロックコポリマーと、水溶性フィルム形成剤とを混和して含む。
【0021】
両親媒性ブロックコポリマーは、好ましくは、少なくとも1つのポリオキシエチレンブロックおよび少なくとも1つのポリオキシプロピレンブロックを含むブロックコポリマー、例えばポロキサマーである。
【0022】
水溶性フィルム形成剤は、好ましくはポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0023】
上記の成分は、カンナビノイド:両親媒性ブロックコポリマー:水溶性フィルム形成剤の重量比で、典型的には1:0.11~0.41:0.03~0.33、好ましくは1:0.16~0.36:0.08~0.28、より好ましくは1:0.21~0.31:0.13~0.23で存在する。
【0024】
カンナビノイドは、特にカンナビジオール(2-[(1R,6R)-3-メチル-6-(1-メチルエテニル)-2-シクロヘキセン-1-イル]-5-ペンチル-1,3-ベンゼンジオール)である。
【0025】
本発明による製剤は、カンナビノイド、可溶化剤としての両親媒性ブロックコポリマー、水溶性フィルム形成剤、抗酸化剤、希釈剤および水分吸着剤、ならびに製剤の全成分に対して10質量%以下、好ましくは5質量%以下の他の成分、特に2%以下の他の成分から構成され得る。
【0026】
本発明による製剤は、好ましくは抗酸化剤、特にパルミチン酸アスコルビルを含有する。
【0027】
本発明は、カンナビノイドの高いバイオアベイラビリティを達成する製剤を提供する。バイオアベイラビリティは、24時間の間隔でAUCによって評価することができる。決定は、例えば、AUCを決定する24時間の間隔内の各投与の30分前以内に350~600kcalの軽食を摂取した後である。
【0028】
本発明はまた、カンナビノイド含有製剤を調製するための方法を提供し、この方法は、以下を含む:(i)カンナビノイド、両親媒性ブロックコポリマー、およびカンナビノイドおよび両親媒性ブロックコポリマーを少なくとも部分的に溶解することができる溶媒を含む液体組成物を調製する工程;(ii)液体組成物を流動床造粒機に導入する工程;(iii)溶媒を除去して粒子形態の固体分散体を得る工程;および(iv)流動床造粒機から粒子形態の固体分散体を回収する工程。
【0029】
さらなる目的およびそれらの解決策は、以下の本発明の詳細な説明から結論付けることができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
活性成分
カンナビノイドは、いわゆるカンナビノイド受容体と親和性を有する不均質な薬理活性物質の群である。カンナビノイドには、例えば、テトラヒドロカンナビノール(THC)および非精神活性カンナビジオール(non-psychoactive cannabidiol)(CBD)が含まれる。
【0031】
カンナビノイドは、フィトカンナビノイドおよび合成カンナビノイドの両方であり得る。
【0032】
フィトカンナビノイドは、約70種のテルペンフェノール化合物の群である(V.R. Preedy (ed.), Handbook of Cannabis and Related Pathologies (1997))。これらの化合物は、典型的には、フェノール環に結合したモノテルペン基を含み、フェノール性ヒドロキシル基に対してメタ位にあるC~Cアルキル鎖を有する。
【0033】
カンナビノイドの好ましい群は、以下の一般式(1)のテトラヒドロカンナビノールである:
【化1】
式中、Rは、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、またはC~C20アルキニルから選択され、任意選択で1つまたは複数の置換基を有する。
【0034】
上記の一般式(1)の化合物のさらに好ましい群において、Rは、C~C10アルキル、またはC~C10アルケニルから選択され、任意選択で1つまたは複数の置換基を有する。
【0035】
特に、式(1)において、Rは式C11のアルキル基である。
【0036】
一般式(1)の化合物は、立体異性体の形態で存在してもよい。好ましくは、中心6aおよび10aはそれぞれR立体配置を有する。
【0037】
テトラヒドロカンナビノールは、特に化学名(6aR,10aR)6,6,9-トリメチル-3-ペンチル-6a,7,8,10a-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[c]クロメン-1-オールを有するΔ9-THCである。その構造は以下の式(2)で表される:
【化2】
【0038】
カンナビノイドの別の好ましい群は、以下の一般式(3)のカンナビジオールである:
【化3】
式中、Rは、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、またはC~C20アルキニルから選択され、任意選択で1つまたは複数の置換基を有する。
【0039】
上記の一般式(3)の化合物のさらなる好ましい群において、Rは、C~C10アルキル、またはC~C10アルケニルから選択され、任意選択で1つまたは複数の置換基を有する。
【0040】
特に、式(3)において、Rは式C11のアルキル基である。
【0041】
カンナビジオールは、特に、2-[(1R,6R)-3-メチル-6-(1-メチルエテニル)-2-シクロヘキセン-1-イル]-5-ペンチル-1,3-ベンゼンジオールである。本明細書において、カンナビジオールまたはその略語CBDという用語が使用される場合、別段の記載がない限り、この特定の化合物を意味する。
【0042】
CBDは、カンナビス種(Cannabis sp.)の主要な構成成分である-その他に向精神性Δ9-THC。THCの向精神作用は、主にニューロン上で発現されるカンナビノイド受容体CB1によって媒介される。THCとは対照的に、CBDは、向精神活性を有さない末梢および中枢に作用する化合物である。
【0043】
本発明によれば、Δ9-THC((6aR,10aR)-6,6,9-トリメチル-3-ペンチル-6a,7,8,10a-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[c]クロメン-1-オール)およびCBD(2-[(1R,6R)-3-メチル-6-(1-メチルエテニル)-2-シクロヘキセン-1-イル]-5-ペンチル-1,3-ベンゼンジオール)の組み合わせを使用することができる。
【0044】
カンナビノイドの別の好ましい群は、以下の一般式(4)を有するカンナビノールである:
【化4】
式中、Rは、C~C20アルキル、C~C20アルケニルまたはC~C20アルキニルの中から選択され、任意選択で1つまたは複数の置換基を有する。
【0045】
上記一般式(4)を有する化合物のさらに好ましい群において、Rは、C~C10アルキルまたはC~C10アルケニルの中から選択され、任意選択で1つまたは複数の置換基を有する。
【0046】
特に、式(4)において、Rは、式C11を有するアルキル基である。
【0047】
カンナビノールは、特に6,6,9-トリメチル-3-ペンチル-6H-ジベンゾ[b,d]ピラン-1-オールである。
【0048】
本発明によれば、大麻(ヘンプ)抽出物のカンナビノイドまたはカンナビノイド混合物も使用することができる。
【0049】
例えば、ナビキシモルス(Nabiximols)は、標準化された含有量のテトラヒドロカンナビノール(THC)およびカンナビジオール(CBD)を含む、大麻草(カンナビス・サティバ (Cannabis sativa L.))の葉および花の薬物として使用される植物エキス混合物である。
【0050】
合成カンナビノイドも使用することができる。
【0051】
それらには、3-(1,1-ジメチルヘプチル)-6,6a,7,8,10,10a-ヘキサヒドロ-1-ヒドロキシ-6,6-ジメチル-9H-ジベンゾ[b,d]ピラン-9-オンが含まれる。この化合物は、2つのキラル中心を含む。薬物ナビロン(nabilone)は、(6aR,10aR)形態と(6aS,10aS)形態の1:1混合物(ラセミ体)である。ナビロンは、本発明による好ましいカンナビノイドである。
【0052】
合成カンナビノイドのさらなる例は、JWH-018(1-ナフチル-(1-ペンチルインドール-3-イル)メタノン)である。
【0053】
カンナビノイド、特にカンナビジオールの使用は、それらの薬力学的特性に基づく。カンナビノイド受容体には、主に脳で発現されるCB1、および主に免疫系の細胞で見出されるCB2が含まれる。CB1およびCB2受容体の両方が免疫細胞で見出されているという事実は、カンナビノイドが免疫系の調節において重要な役割を果たすことを示唆している。この知見とは別に、いくつかの研究では、カンナビノイドがサイトカインおよびケモカインの産生をダウンレギュレートし、いくつかのモデルにおいて、炎症反応を抑制するメカニズムとしてT調節細胞(Treg)をアップレギュレートすることが示される。エンドカンナビノイド系はまた、免疫調節にも関与する。
【0054】
ガレヌス製剤(Galenics)
本発明は、カンナビノイド、特にカンナビジオールを含む固体分散体である医薬製剤を提供する。以下にさらに詳述するように、満足のいくバイオアベイラビリティを示す経口投与用の固体剤形をこのようにして得ることができる。本発明による剤形はまた、食事効果の低減を示す。
【0055】
ほぼ水不溶性のCBDのような高親油性カンナビノイドは、両親媒性ブロックコポリマーおよび水溶性フィルム形成剤と組み合わされて固体分散体を形成する。可溶化剤および水溶性フィルム形成剤の組み合わせを製剤に組み込むことにより、カンナビノイドの放出速度を調整することが可能になる。
【0056】
カンナビノイド、特にカンナビジオール、両親媒性ブロックコポリマーおよび水溶性フィルム形成剤を含む固体分散体は、水または胃腸液などの他の水性媒体と接触するとミセルを形成する。ミセルは、可溶化賦形剤によって囲まれた薬物から本質的に形成される(図1参照)。
【0057】
したがって、本発明の一態様は、ミセルが分散している水相を含むミセル組成物であり、ミセルは、カンナビノイド、特にカンナビジオール、および可溶化賦形剤、特に両親媒性ブロックコポリマーおよび水溶性フィルム形成剤を含む。
【0058】
本発明の製剤中に存在する両親媒性ブロックコポリマーは、可溶化剤として作用する。両親媒性ブロックコポリマーへの言及は、複数のそのようなコポリマーが存在する可能性を含む。
【0059】
カンナビノイドおよび両親媒性ブロックコポリマーは、典型的には1:0.11~0.41、好ましくは1:0.16~0.36、より好ましくは1:0.21~0.31のカンナビノイド:両親媒性ブロックコポリマーの重量比で存在する。
【0060】
両親媒性ブロックコポリマーは、周囲温度で固体である。
【0061】
これらは界面活性剤特性を有し、水性媒体、特に水中で適切な濃度範囲で使用される場合、ミセル溶液を形成することができる。
【0062】
特に、少なくとも1つのポリオキシエチレンブロックおよび少なくとも1つのポリオキシプロピレンブロックを含むブロックコポリマーを使用することができる。
【0063】
好ましいブロックコポリマーはポロキサマーである。ポロキサマーは、分子量が1,100~14,000を超える範囲のブロックコポリマーである。異なるポロキサマーは、製造中に添加されるプロピレンおよびエチレンオキシドの相対量のみが異なる。
【0064】
ポロキサマーは、以下の一般式を有する:
【化5】
【0065】
この一般式において、nはポリオキシエチレン単位の数を示し、mはポリオキシプロピレン単位の数を示す。
【0066】
一実施形態では、可溶化剤は、Poloxamer 188(Kolliphor P188;旧商品名Lutrol F68)/BASF;CAS番号:9003-11-6)である。
【0067】
Kolliphor P188は、nが約79でありmが約28である上記一般式のポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーである。
【0068】
Kolliphor P188は、52~57℃の融点を有するマイクロパールの形態の白色~わずかに黄色がかったワックス状物質として入手可能である。これは、Poloxamer 188についてのPh.Eur.,USP/NFの要件を満たす。
【0069】
さらなる賦形剤として、本発明の製剤は水溶性フィルム形成剤を含有する。水溶性フィルム形成剤への言及はまた、2種以上のこのようなフィルム形成剤の組み合わせが使用される可能性を含む。
【0070】
カンナビノイドおよび水溶性フィルム形成剤は、典型的には1:0.03~0.33、好ましくは1:0.08~0.28、より好ましくは1:0.13~0.23のカンナビノイド:水溶性フィルム形成剤の重量比で存在する。
【0071】
水溶性フィルム形成剤は、本製剤においてポリマー結合剤および追加の可溶化剤として作用する。
【0072】
好適な水溶性フィルム形成剤の例は、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Na-CMC)およびポリビニルピロリドン(PVP)である。
【0073】
好ましいフィルム形成剤は、PVP、特にPVP K30(Kollidon(登録商標)30など)である。
【0074】
別の好ましいフィルム形成剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、特に、20℃で2%(w/w)水溶液の粘度が6mPa・s以下であるHPMCのような、低粘度HPMCである。
【0075】
上記の成分は、典型的には1:0.11~0.41:0.03~0.33、好ましくは1:0.16~0.36:0.08~0.28、より好ましくは1:0.21~0.31:0.13~0.23のカンナビノイド(特にカンナビジオール):両親媒性ブロックコポリマー:水溶性フィルム形成剤(ポリビニルピロリドン)の重量比で存在する。
【0076】
カンナビノイド、特にカンナビジオールを酸化から保護するために、抗酸化剤または抗酸化剤の組み合わせをさらに含むことが特に考慮される。
【0077】
カンナビノイド、特にカンナビジオールは酸化されやすい。例えば、カンナビジオールは、単量体および二量体ヒドロキシキノンに酸化され得る。酸化は変色につながり得る。
【0078】
酸化は、分子酸素によってだけでなく、使用される1つまたは複数の賦形剤によって製剤に導入され得る過酸化物によっても起こり得る。
【0079】
製剤に含まれ得る有用な抗酸化剤は、パルミチン酸アスコルビル、α-トコフェロール、ブチルヒドロキシトルオール(BHT、E321)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA、E320)、アスコルビン酸、およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)ナトリウムを包含する。
【0080】
パルミチン酸アスコルビルは好ましい抗酸化剤である。酸化による変色を効果的に抑制することができる。
【0081】
抗酸化剤は、典型的には、カンナビノイド(特にカンナビジオール)の量に対して0.5~2.5質量%、好ましくは0.8~2質量%、特に1.0~1.8質量%の量で使用される。
【0082】
他の賦形剤がさらに存在してもよい。
【0083】
好ましい実施形態では、製剤はさらに希釈剤を含有する。固体経口剤形において典型的に使用されるような希釈剤(または充填剤)を使用することができる。そのような希釈剤は、セルロース系材料、糖、または無機塩である。好ましい希釈剤は、微結晶性セルロース(Avicel(登録商標)PH 101など)である。別の好ましい希釈剤は、マンニトール(Pearlitol 160 Cなど)である。
【0084】
希釈剤を含有する製剤では、典型的には2つの相が存在し、一方の相は上記で詳述したポリマー賦形剤中に埋め込まれた活性剤を含み、他方の相は希釈剤を含む。
【0085】
活性成分および希釈剤は、典型的には、1:0.5~2.7、好ましくは1:0.9~2.3、特に1:1.3~1.9のカンナビノイド(特にカンナビジオール):希釈剤(特に微結晶性セルロース)の重量比で存在する。
【0086】
さらなる実施形態において、二酸化ケイ素(Syloid(登録商標)244 FP Silicaなど)および/またはコロイド状二酸化ケイ素(Aerosil(登録商標)200など)は、特に水分吸着剤としての役割を果たすために製剤中に含まれる。
【0087】
活性成分および総二酸化ケイ素成分は、典型的には、0.14~0.44、好ましくは0.19~0.39、特に0.24~0.34のカンナビノイド(特にカンナビジオール):全二酸化ケイ素成分の総量の重量比で存在する。
【0088】
本発明による製剤は、上記で論じた賦形剤を含有するものに限定されないが、製剤は、好ましくはトリグリセリドを含まないか、または本質的に含まない。本質的に含まないとは、製剤が、全成分に対して5質量%未満のトリグリセリドを含有することを意味する。
【0089】
固体分散体は、好ましくはトリグリセリドを含まないか、または本質的に含まない。本質的に含まないとは、製剤が、全成分に対して5質量%未満のトリグリセリドを含有することを意味する。
【0090】
さらに、固体分散体は、好ましくはモノグリセリドおよびジグリセリドを含まないか、または本質的に含まない。本質的に含まないとは、製剤が、全成分に対して5質量%未満のモノグリセリドおよびジグリセリドを含有することを意味する。
【0091】
さらに好ましくは、固体分散体は、脂肪酸を含まないか、または本質的に含まない。本質的に含まないとは、製剤が、全成分に対して5質量%未満の脂肪酸を含有することを意味する。
【0092】
好ましくは、モノ-、ジ-およびトリグリセリドおよび脂肪酸の総量は、全成分に対して5質量%未満である。
【0093】
固体分散体の形態の本発明の医薬製剤は、湿式造粒技術によって得ることができる。造粒はブレンダー中で行うことができる。好ましくは、流動床造粒技術を使用することができる。
【0094】
本発明によれば、カンナビノイド含有製剤を調製する方法は、以下を含む:(i)カンナビノイド、両親媒性ブロックコポリマー、およびカンナビノイドおよび両親媒性ブロックコポリマーを少なくとも部分的に溶解することができる溶媒を含む液体組成物を調製する工程;(ii)液体組成物を流動床造粒機に導入する工程;(iii)溶媒を除去して粒子形態の固体分散体を得る工程;および(iv)流動床造粒機から粒子形態の固体分散体を回収する工程。
【0095】
本発明によれば、カンナビノイド、両親媒性ブロックコポリマーおよび溶媒を含む液体組成物はまた、好ましくは、水溶性フィルム形成剤を少なくとも部分的に溶解した形態で含む。
【0096】
さらに本発明によれば、カンナビノイド、両親媒性ブロックコポリマーおよび溶媒ならびに任意選択で水溶性フィルム形成剤を含む液体組成物は、好ましくは、抗酸化剤を少なくとも部分的に溶解した形態で含む。
【0097】
液体組成物はまた、1つまたは複数のさらなる賦形剤を含んでもよい。これらは、任意の好適な形態で、例えば、溶解形態または分散形態で存在することができる。
【0098】
例として、二酸化ケイ素は、液体組成物中に分散形態で存在することができる。
【0099】
カンナビジオールおよび賦形剤は、好ましくは、医薬製剤について本明細書に示される重量比で液体組成物中に存在する。
【0100】
液体組成物を調製するために使用される溶媒は、カンナビノイド、両親媒性ブロックコポリマー、および好ましくは水溶性フィルム形成剤および/または抗酸化剤を少なくとも部分的に溶解することができる任意の溶媒であり得る。
【0101】
好ましい溶媒は、10%v/v以下の水を含むエタノール、例えば4%v/v以下の水を含むエタノール、例えば96%v/vのエタノールである。
【0102】
上述のように、液体組成物を流動床造粒機に導入する。好ましい実施形態では、液体組成物は、固体粒子を既に含有する流動床造粒機に噴霧される。
【0103】
造粒機に含まれる固体粒子は、1つまたは複数の賦形剤を含むことができる。好ましい実施形態では、固体粒子は、微結晶性セルロースなどの希釈剤を含む。
【0104】
コロイド状二酸化ケイ素などの1つまたは複数の追加の賦形剤も存在し得る。
【0105】
流動床造粒機は、溶媒が除去され、粒子形態の固体分散体が得られるように操作される。例えば、45±10℃の入口空気温度を選択することができる。
【0106】
溶媒除去は、所定の乾燥減量(LOD)に達するまで継続することができる。例えば、生成物は、2.0%以下の乾燥減量まで乾燥させることができる。
【0107】
乾燥後、生成物を排出し、ふるいにかける。
【0108】
得られる顆粒のサイズは限定されない。好適なサイズは、50μm~2000μmの範囲、例えば100μm~1000μmの範囲である。
【0109】
本発明による製剤は、好ましくは変色に対して安定である。色は、長期条件(25℃/60%rh)下で3ヶ月間、好ましくは6ヶ月間、特に12ヶ月間の保存時に安定なままであるか、またはオフホワイトにわずかに変化するだけである。
【0110】
顆粒は、自己乳化型固体分散体を表す。水性媒体と組み合わせると、ミセル溶液を得ることができる。
【0111】
本発明による製剤は、USPパドル法に従って0.1N HCl中でのインビトロ溶解試験に供された場合、60分以内に少なくとも60質量%、好ましくは60分以内に少なくとも90質量%、特に45分以内に少なくとも90質量%のカンナビノイドを放出する。
【0112】
固体分散体顆粒は、市販の標準的な技術および装置を使用して、ボトル、サシェまたはスティックパックに充填することができる。固体分散顆粒は、食品に振りかけられるか、または液体、例えば水中に分散される。
【0113】
固体分散体顆粒を液体に分散させることにより得られる組成物は、胃管を介してシリンジで嚥下できない患者に適用することができる。
【0114】
単位当たりの最終投与強度に応じて、固体分散体顆粒は、嚥下可能なカプセルに充填することもできる(例えば、25mg/用量用のカプセルサイズ2-1)。あるいは、高用量単位については、より大きなカプセルを顆粒の一次包装材料として使用することができる。このようなカプセルは嚥下用ではない(例えば、100~200mg/用量に対して最大000/スプリンクルキャップのカプセルサイズ)。むしろ、固体分散顆粒は、食品に振りかけられるか、または液体、例えば水に分散される。
【0115】
あるいは、固体分散顆粒を錠剤に加工することもできる。固体分散顆粒は、崩壊剤、流動化剤、および/または滑沢剤などの1つまたは複数の賦形剤と組み合わされる。次いで、得られた混合物を錠剤に圧縮する。
【0116】
一実施形態では、それらは経口分散性錠剤に加工される。
【0117】
本発明による固体剤形は、油性カンナビジオール溶液と比較して、バイオアベイラビリティの増加、特に絶食状態での変動性の低減、および食物相互作用に対するより良好なロバスト性を示す。
【0118】
経口投与後にカンナビノイドの高いバイオアベイラビリティを示す、カンナビノイドを含有する本発明による固体剤形が提供される。
【0119】
例えば、本発明によれば、約9000(h*ng/mL)の、本発明の固体製剤の形態で1500mgの用量のカンナビジオールを1日2回の反復経口投与した後の24時間にわたるカンナビジオールの定常状態AUCが達成される。
【0120】
カンナビジオールのAUCは、例えば、9000±3000(hng/mL)以内であり得る。
【0121】
上記のAUCは、AUCを決定する24時間の間隔内の各投与の30分前以内に摂取した350~600kcalの軽食後に達成することができる。
【0122】
1500mgの1日2回の反復投与後の24時間にわたるカンナビジオールの定常状態ピークトラフ変動(PTF)は、約250%である。ピークトラフ変動は、PTF={[Cmax-Cmin]/Cav}×100として決定することができ、ここで、Cmax、Cminおよび平均Cavは、24時間間隔の定常状態値を表す。
【0123】
カンナビジオールの定常状態ピークトラフ変動(PTF)は、例えば、250±60%以内であり得る。
【0124】
上記のPTFは、ピークおよびトラフ濃度を決定する24時間の間隔内の各投与の30分前以内に摂取した350~600kcalの軽食後に達成され得る。
【0125】
さらに、本発明によれば、参照製品としての油性カンナビジオール溶液100mg/mlのバイオアベイラビリティと比較して劣らないバイオアベイラビリティを達成する固体経口剤形が提供される。カンナビノイドがカンナビジオールである場合、カンナビジオール溶液(DAC C-052「カンナビジオール」/NRF 22.10「Olige Cannabidiol-Losung 100mg/ml」(「油性カンナビジオール溶液100mg/ml」))が参照製品である。この文脈において、バイオアベイラビリティは、24時間の時間にわたるAUCによって反映される全身曝露を意味する。AUCは、特に、AUCを決定する24時間の間隔内の各投与の30分前以内に摂取される350~600kcalの軽食後に達成される。
【実施例
【0126】
本発明を具体的な実施例を用いて説明するが、それによって何ら限定されない。
【0127】
実施例1
顆粒の調製
29.7%w/wの活性成分を含有するカンナビジオール(CBD)顆粒を、以下のバッチ式に従って調製する:
【表1】
【0128】
第1の処理工程では、CBDおよび医薬賦形剤であるポロキサマー188、パルミチン酸アスコルビル、微結晶セルロース、二酸化ケイ素、コロイド状二酸化ケイ素およびポリビニルピロリドンが造粒される。
【0129】
造粒には流動床造粒技術を用いる。
【0130】
薬剤物質カンナビジオールおよび医薬賦形剤ポロキサマー188、パルミチン酸アスコルビルおよびポリビニルピロリドンをエタノール96%v/vに溶解する。二酸化ケイ素(Syloid(登録商標)244FP)を溶液中に分散させる。
【0131】
微結晶セルロースおよびコロイド状二酸化ケイ素(Aerosil(登録商標)200)を流動床造粒機に充填し、上記の溶液で造粒する。顆粒を取り出し、ふるいにかける。
【0132】
96%v/vの揮発性成分エタノールは、流動床乾燥機における乾燥段階中に顆粒から除去される。入口空気温度は45±10℃であり、生成物温度は30~35℃である。
【0133】
顆粒は、2.0%以下の乾燥減量(LOD)パーセンテージの基準値まで乾燥される。
【0134】
剤形
29.7%w/wのカンナビジオールを含有するカンナビジオール顆粒をHDPEボトルに充填して、1500mgの総用量のカンナビジオールを提供する。顆粒を合計240mlの水道水(室温)と共に投与する。顆粒を最初に100mlの水に分散させる。残りの量の水を使用して、容器を2回すすぐ。
【0135】
カンナビジオール顆粒の安定性
試料を加速条件下(40℃/75%)、中間条件下(30℃/65%rh)および長期条件下(25℃/60%rh)で保存する。
【0136】
加速貯蔵条件下での貯蔵では、外観は、1ヶ月後に白色から黄色がかった色に、2ヶ月後に黄色に変色した。色は、長期条件では3ヶ月後および中間条件では4ヶ月後にオフホワイトにわずかに変化しただけである。
【0137】
溶解性は、3ヶ月後の加速条件下での貯蔵についてわずかに減少するが、依然として仕様の範囲内である。溶解性は、長期条件では3ヶ月後および中間条件では4ヶ月後も変化しないままである。
【0138】
加速条件下で3ヶ月後に約6%のアッセイの減少が観察されるが、生成物は依然として貯蔵寿命仕様内にある。中間および長期条件において、それぞれ4ヶ月後および3ヶ月後にはアッセイの有意な減少は観察されない。
【0139】
水性分散液の安定性
1500mgのカンナビジオールを含有する水性分散体の化学的安定性を、保持時間試験において試験した。この目的のために、約5gの開発バッチ(Aerosil200を含まない製剤)を240mlの水に分散させ、周囲温度で撹拌した。不純物プロファイルを2時間モニタリングした。
【0140】
不純物プロファイルは、2時間の試験期間にわたって変化しないままである。したがって、投与用の水中への生成物の分散は、投与に必要な期間にわたって安定であろう。
【0141】
CBD放出
放出を、EP2.9.3/USP<711>に従って試験する。パドル溶解装置を使用する。溶解試験は、37℃±0.5℃の標準温度および100rpmの撹拌機速度で実施する。
【0142】
0.1M HCl+2%セチルトリメチルアンモニウム-ブロミド(CTAB)中で、45分後に完全な放出が観察される。
【0143】
バイオアベイラビリティおよび薬物動態特性
29.7%w/wのカンナビジオールを含有する上記のCBD顆粒の形態で経口投与した場合のカンナビジオールのバイオアベイラビリティおよび薬物動態特性を臨床試験において評価した。
【0144】
この試験は、参照生成物である油性カンナビジオール溶液(DACC-052「カンナビジオール」/NRF 22.10「Olige Cannabidiol-Losung 100mg/ml」(「油性カンナビジオール溶液100mg/ml」))との比較を含み、非盲検として設定され、無作為化(処置の順序)、平衡化、複数回投与試験を、直接的な切り替えを伴う2期間の2配列交差設計で実施した。
【0145】
男女18名の健常被験者を無作為化した。組み入れ基準は、体格指数(BMI)≧18.5kg/mおよび≦30.0kg/mを含んだ。
【0146】
治験薬は、1500mgのカンナビジオール(すなわち、水または15ml溶液に分散させた5.051gの顆粒)の単回経口用量として、7日間連続で1日2回(すなわち、12時間毎に)軽食後に投与した。
【0147】
定常状態の特徴付けを2回の投与間隔にわたって行った。丸1日の間隔をあけた複数回投与後の薬物動態パラメータを特徴付けるために、24時間にわたる13回目、それにより14回目の投与を含む、の投与後に血液サンプリングを行った。さらに、定常状態の構築相を特徴付けるために、投与前試料を期間Iの1回目の投与の前に採取し、試験5日目および6日目の朝および夕方の投与ならびに試験7日目の朝の投与の前にスルー値を得た。
【0148】
食物および飲料の摂取を以下のように標準化した。
【0149】
試験1~6日目の朝および夕方(それぞれ、外来または入院中)に、被験者は、治験薬の投与前30分以内に約350~600kcalの軽食を摂取した。軽食の内容/組成は、カロリー含量の範囲を除いて標準化されなかった。
【0150】
さらに、試験6日目の食事を適切な時間に提供した。夕食(軽い食事)は、試験7日目の朝の朝食(軽い食事)の開始の予定された時間の少なくとも8時間前に終了した。水分の摂取は自由に行った。
【0151】
PKプロファイリング日(試験7日目)の間、被験者は以下の時点で標準化された食事を摂取した:
・試験7日目の朝の投与の30分前に開始する軽い食事;
・前記の投与の4時間後および8時間後;
・試験7日目の夕方の投与の30分前に開始する軽い食事。
スリーシードロール、チーズ1切れ、鶏胸肉フィレ2切れ、バター1片、蜂蜜、トマト1個、およびバナナ1本からなる軽食が提供され、総カロリー含有量が543kcalであった。
【0152】
水分摂取は、PKプロファイリング日(試験7日目)に以下の方法で標準化した:
・0時から1時:水分摂取なし。
・1時から10時:朝の投与後、150mlの非炭酸水(室温)を1時間ごとに与えた、すなわち150mlを10回与えた。
・10時から11時:非炭酸水の摂取は自由に行った。11時から12時(すなわち、次の投与の1時間前以内):水分摂取なし。
・1時から4時:夕方の投与後、150mlの非炭酸水(室温)を1時間ごとに与えた、すなわち150mlを4回与えた。
【0153】
その後、非炭酸水の摂取は自由に行った。
【0154】
薬物動態決定のために、血液サンプルを以下の時点で採取した(1被験者当たり、1投与前サンプル+2×31サンプル=63サンプル):
・投与前サンプル:I期における治験薬の1回目の投与の1.0時間前以内
・トラフサンプル:9、10、11、12、および13回目の投与の5分前以内
・13回目の投与後(14回目の投与を含む)の投与後サンプル:13回目の投与の0.5時間後、1時間後、1.5時間後、2時間後、2.5時間後、3時間後、3.5時間後、4時間後、4.5時間後、5時間後、6時間後、8時間後、12時間後、12.5時間後、13時間後、13.5時間後、14時間後、14.5時間後、15時間後、15.5時間後、16時間後、16.5時間後、17時間後、18時間後、20時間後および24時間後。
血漿サンプル中のカンナビジオール(CBD)およびその代謝産物7-ヒドロキシカンナビジオール(7-OH-CBD)を、有効なLC-MS/MSを用いて分析した;CBDのLLOQは5.00ng/mlであり、7-OH-CBDのLLOQは1.000ng/mlであった。
【0155】
以下の表(表1)は、13回目および14回目の投与後(投与期間の144時間~168時間)の最後の2回の投与間隔について24時間にわたって得られた、軽食の後に7日間連続で1日2回(単回投与当たり1,500mgのCBD;治療当たり21,000mgのCBD)のカンナビジオール顆粒の経口複数回投与後のカンナビジオールの薬物動態パラメータを示す。
【表2】
【0156】
上記の表は、本発明による1500mgのカンナビジオール顆粒を1日2回の反復投与した後の24時間にわたる平均定常状態AUCが約9000(hng/ml)、例えば9000+/-3000(hng/ml)であることを示す。
【0157】
1500mgの1日2回の反復投与後の24時間にわたる平均定常ピークトラフ変動(PTF)は、PTF={[Cmax,144-168,ss-Cmin,144-168,ss]/Cav,144-168,ss}×100として決定することができ、約250%、例えば250+/-60%である。
【0158】
以下の表(表2)は、13回目および14回目の投与後(投与期間の144時間~168時間)の最後の2回の投与間隔について24時間にわたって得られた、軽食の後に7日間連続で1日2回(単回投与当たり1,500mgのCBD;治療当たり21,000mgのCBD)の参照生成物の経口複数回投与後のカンナビジオールの薬物動態パラメータを示す。
【表3】
【0159】
上記のデータは、本発明の固体製剤が、AUCによって表される、参照生成物に劣らないバイオアベイラビリティを達成することを示す。
【0160】
「参照生成物に劣らない」という用語は、バイオアベイラビリティが統計的に有意に低くないことを意味する。
【0161】
同様の考察が、本発明の固体製剤について観察されたPTFに関して適用され、これは、参照生成物について観察されたものよりも統計的に有意に高くはない。
【0162】
これらの観察は、特に、上記の軽食後に医薬品を投与する場合に当てはまる。
【0163】
以下の表(表3)は、13回目および14回目の投与後(投与期間の144時間~168時間)の最後の2回の投与間隔について24時間にわたって得られた、軽食の後に7日連続で1日2回(単回投与当たり1,500mgのCBD;治療当たり21,000mgのCBD)のカンナビジオール顆粒の経口複数回投与後の7-ヒドロキシカンナビジオールの薬物動態パラメータを示す
【表4】
【0164】
以下の表(表4)は、13回目および14回目の投与後(投与期間の144時間~168時間)の最後の2回の投与間隔について24時間にわたって得られた、軽食の後に7日連続で1日2回(単回用量当たり1,500mgのCBD;治療当たり21,000mgのCBD)の参照生成物の経口複数回投与後の7-ヒドロキシカンナビジオールの薬物動態パラメータを示す。
【表5】
【0165】
実施例2
実施例1に概説した方法に従って、さらなる顆粒を調製した。組成に関する情報は、以下の表に含まれる。
【表6】
【0166】
Pearlitol 160Cは、160μmの平均粒径を有する結晶性Dマンニトール粉末である。
【0167】
放出は、インビトロ溶解法(1000mLの0.1M HCl+2%(w/v)CTAB)を用いて測定した。
【国際調査報告】