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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-28
(54)【発明の名称】セクタ回転浸漬装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/12 20060101AFI20240321BHJP
   H01F 5/00 20060101ALN20240321BHJP
【FI】
H02K15/12 D
H01F5/00 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562927
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(85)【翻訳文提出日】2023-11-20
(86)【国際出願番号】 EP2022055918
(87)【国際公開番号】W WO2022218609
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】102021001874.5
(32)【優先日】2021-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523386245
【氏名又は名称】バウフ、カール
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】マイス、ゲルハルト カール
(72)【発明者】
【氏名】バウフ、カール
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ、マルティン
(72)【発明者】
【氏名】バウツ、セバスティアン
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB01
5H615PP13
5H615RR07
5H615SS35
(57)【要約】
【課題】電気機械における丸線巻線や平角線巻線の含浸において、完全なスロット充填、短いサイクル時間、きれいな積層コア、並びに最小の含浸剤消費を可能にする、装置及び方法を提案する。
【解決手段】本発明は、ステータないしロータの形式の電気機械の構成部材を含浸するためのセクタ回転浸漬装置に関し、回転浸漬タンク(6)が、含浸剤開口部(11)を有する複数のセクタに分割されており、これらのセクタは、隔壁部(7)により互いに分離されており、隔壁部(7)と接続された少なくとも1つのシール要素(8)が、回転する構成部材(1)と接触状態にある。本発明は、同様に電気機械のステータないしロータを含浸するための方法に関する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータないしロータの形式の電気機械の構成部材を含浸するためのセクタ回転浸漬装置であって、
回転浸漬タンク(6)が、含浸剤開口部(11)を有する複数のセクタに分割されており、これらのセクタは、隔壁部(7)により互いに分離されており、隔壁部(7)と接続された少なくとも1つのシール要素(8)が、回転する構成部材(1)と接触状態にあること、
を特徴とするセクタ回転浸漬装置。
【請求項2】
個々の隔壁部(7)は、少なくとも部分的に弾性的なシール要素(8)として構成されていること、
を特徴とする、請求項1に記載のセクタ回転浸漬装置。
【請求項3】
回転する構成部材(1)及び/又は回転浸漬タンク(6)は、垂直方向において旋回可能に備えられており、旋回軸線は、好ましくは被制御式の駆動部と接続されており、構成部材(1)は、構成部材支持体(5)を介し、搬送装置(19)及び構成部材回転のための駆動部(18)と接続されていること、
を特徴とする、請求項1又は2のいずれかに記載のセクタ回転浸漬装置。
【請求項4】
回転浸漬タンク(6)の輪郭は、少なくとも部分的に、2mmから50mmまでの間隔を置いて構成部材(1)の輪郭に従い、変形可能なシール要素(8)は、それらの接合部において、特にそれらの端部において弾力をもって備えられているか、又は伸び要素として構成されていること、
を特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のセクタ回転浸漬装置。
【請求項5】
特にワインディングヘッド回転浸漬タンクセクタは、旋回方向において傾けられた底部及び/又は含浸剤リザーバ(9)を有すること、
を特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のセクタ回転浸漬装置。
【請求項6】
構成部材(1)及び/又は含浸剤(12)は、振動発生器と物理的に接続状態にあること、
を特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のセクタ回転浸漬装置。
【請求項7】
回転浸漬タンク(6)及び/又は構成部材(1)は、少なくとも部分的に真空ハウジング内にあること、
を特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のセクタ回転浸漬装置。
【請求項8】
隔壁部(7)は、弾性的で構成部材輪郭に適合するシール要素(8)として構成されており、シール要素(8)は、好ましくはポリマー及び/又はスプリングプレートから成ること、
を特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のセクタ回転浸漬装置。
【請求項9】
特に含浸剤を案内する回転浸漬タンク(6)のセクタは、冷却器具及び/又は加熱器具と接続されていること、
を特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のセクタ回転浸漬装置。
【請求項10】
請求項1~9の少なくともいずれか一項に記載のセクタ回転浸漬装置により実行される、電気機械のステータないしロータを含浸するための方法であって、
ワインディングヘッド(3)及び積層コアスロット(4)の平坦側面部が、含浸剤(12)で満たされたセクタ内にあり、回転浸漬タンク(6)内で回転し、これらは、回転して含浸剤(12)と接触し、積層コアの内径部並びに外径部は、含浸剤接触から免れたままであること、
を特徴とする方法。
【請求項11】
回転する構成部材(1)の含浸過程は、水平状態又は回転軸線(17)の傾斜角(複数)のもとで可変に行われ、回転浸漬タンク(6)は、構成部材(1)と一緒に旋回されるか、又は固定された所定傾斜角を有し、構成部材(1)は含浸のためにこの所定傾斜角へと旋回すること、
を特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
両方のワインディングヘッド(3)と、巻線(2)が通された積層コアスロット(4)との含浸は、相前後して連続する又は同時の3つの含浸ステップにおいて行われ、傾けられた構成部材(1)において、特に下側のワインディングヘッド(3)は、選択的に、供給された含浸剤(12)により充満状態で含浸されるか又は滴下状態で含浸されること、
を特徴とする、請求項10又は11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
半径方向において開いたロータ内の巻線(2)の含浸は、回転浸漬タンク(6)内で含浸剤(12)で満たされた1つの中央のセクタにより行われ、含浸剤(12)は、ロータの隣接する平坦ディスク及びハウジング部分から、シール部材(8)及び隔壁部(7)により遠ざけられて行われること、
を特徴とする、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
平坦側面部に開口部を有する閉じたロータにおける巻線(2)の含浸は、回転浸漬タンク(6)内で含浸剤(12)で満たされた2つの分離したセクタにより行われ、これらのセクタは、好ましくは、シール部材(8)を用い、平坦面部で穴部を有する領域だけを濡らして行い、構成部材(1)は、含浸過程の終わり近くに、好ましくは、過剰の含浸剤(12)を排出するために傾けられること、
を特徴とする、請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
構成部材(1)の回転軸線(17)に関して垂直方向において旋回可能な回転浸漬タンク(6)は、その組み込まれた含浸剤リザーバ(9)を用い、垂直方向の旋回により、含浸剤(12)を、含浸剤リザーバ(9)から、回転浸漬タンク(6)の少なくとも1つの含浸セクタに移し、含浸剤(12)は、水平状態に戻る旋回により含浸剤リザーバ(9)内に流れ戻り、それにより含浸剤(12)は、回転浸漬タンク(6)の各新しい構成部材(6)に関しても供給及び排出される必要はなく、それにより迅速に含浸箇所に提供されること、
を特徴とする、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
回転浸漬タンク(6)には、構成部材(1)が取り入れる量と正に同量の含浸剤(12)が供給され、浸漬タンクは、温度調節され、また回転浸漬タンク(6)内の含浸剤(12)の滞在時間を少なくし、減少された接触面と接触時間に基づき、構成部材(1)からの放熱を減少させるために、タンクの輪郭並びに寸法は、少なくとも、含浸剤(12)で充填されるセクタにおいて、2mmから50mmまでの僅かな間隔を有すること、
を特徴とする、請求項10~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
回転浸漬タンク(6)のセクタ内にある含浸剤(12)は、回転浸漬タンク(6)から構成部材(1)を取り出す前に、従ってシール要素(8)と構成部材(1)の間の接触の終了前に、好ましくはシリンダとして構成された予備容器内にもたらされ、次の構成部材(1)の取り込み後に回転浸漬タンク(6)内に戻され、含浸剤(12)の引き続く供給量は、正確に、構成部材(1)が現時点でそれぞれのセクタにおいて受け入れる又は受け入れるべき量に対応すること、
を特徴とする、請求項10~16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構成部材として特に電気機械のステータないしロータを、回転浸漬法(ロールディッピング法)において、積層コア(積層鉄心)の外径部及び/又は内径部を濡らすことなく、迅速に、効率的に且つ完全なスロット充填で含浸することを可能にする装置及び方法を示す。
【背景技術】
【0002】
特に、高加速度、膨大な出力密度、及び大きい温度変動を伴うモバイル電気駆動部では、信頼性がある熱伝導性の巻線固定が必要である。これらの高負荷の電気機械では、巻線のあらゆる箇所で、均等の熱流、巻線の優れた機械的な固定、及び最善の電気的な絶縁が要求される。電気的な絶縁は、通常は、硬化性の含浸剤又はワニスにより達成される。この際、不必要な含浸剤消費を防止し、予め定められた許容誤差からずれてしまう望まれない粘着性の又は含浸剤で被覆された表面部が得られないようにするために、できるだけ巻線だけが、また場合により積層コアのスロットだけが、含浸剤と接触すべきである。この際、特に平角線又は丸線が通された積層コアスロットを含浸剤で完全に充填することは、特に困難であることが分かっている。この際、迅速で、安価で、省資源の、含浸の工業的な提供が重要である。
【0003】
今までは、実質的に2つの方法が使用されてきた。第1の基本方法では、以下では構成部材と呼ばれるステータないしロータの回転中に含浸剤が施工される及び/又は取り込まれる。第2の基本方法では、構成部材が含浸剤内に浸漬される。この際、浸漬は、加熱された巻線の領域で含浸剤がゲル化するに至るまで行われるか、又は、数回の浸漬、ゲル化、その間の加熱による複数層の構築により行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0643467号
【特許文献2】独国特許出願公開第2358782号
【特許文献3】独国特許出願公開第2737917号
【特許文献4】独国特許出願公開第10139128号
【特許文献5】国際公開第2014/106941号(PCT/JP2013/084742)
【特許文献6】国際公開第03/013810号
【特許文献7】国際公開第2017/042013号
【特許文献8】独国特許出願公開第3631980号
【特許文献9】特開平10-271775号
【特許文献10】特開平08-317616号
【特許文献11】欧州特許出願公開第0321223号
【特許文献12】特開平2005-285933号
【特許文献13】国際公開第2019/211461号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
浸漬(ディッピング)は、良好なスロット充填の利点があり、また迅速な含浸法として知られている。この方法の欠点は、含浸剤の付着による構成部材全体の汚れ、それに伴う寸法精度の損失、含浸剤消費の増加、含浸剤排出による環境悪化、並びに必要となる含浸剤の再冷却である。
【0006】
回転のもとでの含浸剤の施工、即ち滴下法(Traeufeln)では、積層コアの汚れが通常は回避され、含浸剤消費は最小限に抑えられ、環境悪化も同様に大幅に減少される。しかし問題となるのは、含浸過程の所要時間、それに伴う長いゲル化時間、並びにこれらの方法における特に長尺の積層コアスロットの不完全な充填である。
【0007】
回転浸漬では、両方の方法の連係が実行され、この連係は、同時に両方の方法の利点と欠点の混在を伴っている。電気機械のステータは、通常は、内径部に沿って延在し且つ巻線が挿入されているスロットを備えたリング形状の積層コアから構成されている。積層コアの平坦面部(エンドフェース:端面部)からは、ワインディングヘッド(コイルエンド)が突出し、これらのワインディングヘッドは、銅線をスロットの間で方向転換させるか、又は銅線を接続するために用いられる。現在では、巻線は、益々銅棒又は平角線に置き換えられている。リング形状のステータの中央の穴部内で、後にはロータが回転する。従来の回転浸漬装置では、ステータがその内径部内で締付装置により支持される。
【0008】
その後、低速で回転するステータが、規定の含浸剤レベルで満たされたタンク内に浸漬される。そのレベルは、構成部材により取り入れられるよりも常に多くの含浸剤が供給されることにより、通常は溢流要素(オーバフロー要素)により決定される。回転浸漬時にステータは、その内径部が濡れないままであり、従って汚されない範囲でのみ、含浸剤タンク内に浸漬される。このことは、ロータシャフトがまだ取り付けられていない場合には、同様にロータにも当てはまる。ロータシャフトが既に取り付けられている場合には、ロータシャフトが含浸剤と接触しない範囲でのみ浸漬される。しかし欠点は、積層コアの外径部が濡らされ、含浸剤で汚染されることである。それに加え、積層コアスロットの巻線と平坦側面部は、沈み込み浸漬と比べ、部分的にのみ浸漬し、このことは、より長い含浸時間と、積層コアスロットの良好でない充填をもたらすことになる。水平で含浸剤槽内で回転する構成部材では、積層コアの両方の平坦側面部から同時に含浸剤がスロット内に流入することにより、閉じ込められた空気が、積層コアの中央領域のスロット充填を妨げる。
【0009】
回転浸漬タンクから持ち上げて外された後に、積層コアの外径部上の樹脂は、樹脂が後続のゲル化及び硬化プロセスで硬化する前に、できるだけ払い落される及び/又は吹き飛ばされる。
【0010】
回転浸漬法は、浸漬槽内には1つの媒体しか存在できないことに基づき、含浸剤が、通常は温度により活性化される既に反応性の材料であるという条件を有する。
【0011】
今までの通常の回転浸漬法では、構成部材が取り入れるよりも多くの含浸剤が浸漬タンク体内に連続的に供給される。過剰の含浸剤は、フィルタと冷却器を介して搬送循環路内に流れ戻る。通常は予熱された構成部材の外側表面部全体を浸漬することにより、含浸剤は、早く加熱され、また早すぎる反応がなされないために冷却されなくてはならない。含浸剤による構成部材からの多大な熱の受け入れは、有害であり、含浸プロセスを妨げ、遅くし、またエネルギーを無駄にする。それに加え、既に化学的な反応性に関して誘発された含浸剤は、繰り返し循環路内に戻され、このことは、最適で且つ特に長期にわたり信頼性のあるプロセスを困難にし、むしろ不可能にしてしまう。この従来技術は、例えば、上記特許文献1(EP 0 643 467 A2)、上記特許文献2(DE 23 58 782 A1)、上記特許文献3(DE 27 37 917 A1)、上記特許文献4(DE 101 39 128 A1)、上記特許文献5(PCT/JP 2013/084742)、上記特許文献6(WO 03/013810 A1)、上記特許文献7(WO 2017/042013 A1)に記載されている。
【0012】
上記特許文献8(DE 36 31 980 A1)は、電気機械の巻線を含浸するための方法を紹介し、該方法では、電気機械部材が、水平線に対して斜めに向けられた長手軸線で回転された状態で滴下され、引き続き、水平位置で回転浸漬のために部分的に樹脂浸漬槽内に浸漬され、この際、ワインディングヘッドには、追加的に注ぎかけが行われる。この際、積層コアの外殻部は、樹脂で汚染される。
【0013】
上記特許文献9(JP H10-271775 A)には、電気機械のロータのための含浸方法が紹介されており、該含浸方法では、巻線が通されたスロット内へのより良好な浸入を達成するために、含浸剤の滴下が、回転するロータの異なる斜め位置で行われる。
【0014】
上記特許文献10(JP H08-317616 A)は、ステータ用の積層コア内のスロットを回転浸漬含浸するための方法及び装置を紹介している。そこでは、通常に使用される挿入式のスロット絶縁部が代替される。空気がスロットからより良好に逃げることができるために、積層コアは、傾けられて含浸剤槽内に取り込まれる。この際、積層コアは、内側と外側の両方において樹脂で汚染される。それに加え、ステータに沿ったレベルの違いは、指摘されていない。
【0015】
上記特許文献11(EP 0 321 223 A2)は、銅巻線が通される前にロータスロットが回転浸漬を用いても絶縁される装置を示している。この際、絶縁媒体を有する浸漬タンクは、水平位置にある。
【0016】
上記特許文献12(JP 2005-285933 A)は、浸漬方法を紹介し、該浸漬方法では、巻線と積層コアの間の空所をより迅速に且つより良好に樹脂で充填するために、巻線を備えた構成部材が、超音波で付勢された浸漬槽内に入れられる。
【0017】
紹介された全ての浸漬方法において、積層コアの外殻部は、含浸剤で汚染される。
【0018】
更に追加し、上記特許文献13(WO 2019/211461 A1)は、含浸剤がキャリア媒体を用いて積層コアスロット内に取り込まれる方法が紹介されている。該方法は、現在でもまだ極めて高価であり、平角線巻線の僅かな空所、及び特にヘアピンステータの僅かな空所では、実現化が極めて困難であり、ないし今まで実現可能ではない。
【0019】
今までに使用され、上記文献で紹介された全ての回転浸漬装置において、ロータのために中央の軸線方向の穴部を有するステータは、樹脂が積層コアのスロット内に流れ込むことができ、巻線部分を包囲し、且つ樹脂レベルがステータの内径部に達しない、ないし内径部を濡らさない範囲で、含浸剤槽を有する水平に位置決め(配置)された回転浸漬タンク内に沈められる。より深い浸漬では、積層コアの内径部も樹脂で汚染される。
【0020】
巻線が通された周部の全てのスロットを通り、樹脂が流れること及び/又は拡散することが可能であるために、ステータは、樹脂槽内で低速で回転する。この際、巻線だけが樹脂で含浸されるのではなく、積層コアの外径部と平坦面部(端面部)も樹脂で汚染される。積層コア上の樹脂は、多くの場合は欠点であり、その理由は、積層コア上の樹脂は、強度と寸法精度が不足することに基づき、ハウジング内への収納時やステータの密閉時に問題を引き起こすためである。積層コアの外殻部上に付着する樹脂は、後から可能であるならば、削り取り及び/又は吹き飛ばしにより除去される。このことは、追加的な作業工程をもたらし、また樹脂蒸気の放出を多大に増加させる。
【0021】
それゆえ、新しい解決策の基礎となる課題は、電気機械における丸線巻線や平角線巻線の含浸において、完全なスロット充填、短いサイクル時間、きれいな積層コア、並びに最小の含浸剤消費を可能にする、装置及び方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明により、前記課題は、請求項1に記載されているようなセクタ回転浸漬装置により解決される。後続の請求項は、該装置の更なる構成形態を示している。請求項10以降は、該装置を稼働するための構成を有する方法を規定している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、発明を実施するための形態について説明する。
【0024】
開示されるセクタ回転浸漬装置は、特に積層コアスロットと巻線の間の空所内、並びにワインディングヘッドにおける巻線間の空所内に樹脂のような含浸剤を取り込むための回転浸漬装置の新しい構成である。含浸(インプリグネーション)は、追加的な絶縁、より良好な熱伝達、巻線と呼ばれる銅部材の機械的な固定のために用いられる。
【0025】
セクタ回転浸漬装置の特殊な構成は、複数のセクタに分割された浸漬タンク、並びに構成部材と浸漬タンクないし隔壁部との間に導入されたシール要素(密閉要素)である。隔壁部は、回転浸漬タンク内の複数のセクタを画定ないし規定する。シール要素(複数)は、次のことに寄与する、即ち隔壁部と接続されたシール要素が接する構成部材の箇所までのみ、個々のセクタ内にある樹脂レベルが接するということに寄与する。
【0026】
複数のセクタに分割された回転浸漬タンクは、様々なセクタ内における異なる樹脂レベルを可能にする。更にこれらのセクタは、回転浸漬タンクにおいて、相並んで位置し且つ含浸剤で満たされた領域と空の領域とを可能にする。更にそれにより、液状の媒体で満たされた回転浸漬タンクを傾けること、それにより回転浸漬タンク内に異なる液体レベルを生成することが初めて可能である。
【0027】
セクタ回転浸漬装置は、次のことにより傑出し、即ち傾けられた構成部材の回転浸漬が初めて可能であり、それに加え、傾けられた構成部材ポジション(配置状態)と水平の構成部材ポジションの両方において、最大の外径を有する外殻面部が含浸剤(の付着)から免れたままでいられるということにより傑出している。構成部材を傾けることにより、毛細管作用に並び、巻線が通された積層コアスロットを充填するために、追加的に重力を利用することができる。それにより可能な、含浸剤を用いたスロットの一方的な(一方向からの)充填により、回転浸漬時にさもないと生じてしまうスロットの中央領域における空気の含有が回避される。
【0028】
セクタ回転浸漬装置は、構成部材領域に応じて異なる含浸剤レベルを実現するために、セクタに分割されている回転浸漬タンクを特徴としている。それにより例えばステータのワインディングヘッドを、直径がより大きい又は同じ大きさの積層コアにおける外殻部を濡らして汚すことなく、含浸剤槽内で回転させることが可能でなる。浸漬タンクのセクタの間の隔壁部は、好ましくは、構成部材に対する接触領域においてシール要素を有する。代替的には、隔壁部自体が可撓性(フレキシブル)のシール要素として構成されており、該シール要素は、選択的に、シールすべき箇所における構成部材の輪郭を既に有するか、又はこの輪郭に適合するよう構成される。
【0029】
開示される装置の回転浸漬タンクは、構成部材搬送ユニットの旋回ユニットに結合(連結)されて構成部材と一緒に傾けられるか、又は構成部材に対し、独立した又は同期した傾斜角と直線運動とを実行することのできる別個の駆動部を有する。回転浸漬タンクの隔壁部は、要求に応じ、固定的に位置決めされているか、或いは手動で及び/又は電動式で摺動可能に備えられている。それにより複数のセクタを異なる構成部材に適合させることができ、場合により、シール要素を備えた隔壁部を構成部材のシール面部に対して当接させ、異なる強さで押し付けることができる。隔壁部とシール要素は、両方とも交換可能である。
【0030】
化学的な反応において構成部材の加熱により既に誘発された含浸剤が循環路内に流れ戻ることを防止し、持続的に信頼性のあるプロセスを保証するために、回転浸漬タンクを構成部材の輪郭に適合させることが提案されている(例えば回転浸漬タンクの輪郭と構成部材の輪郭との間は、少なくとも部分的に2mmから50mmまでの間隔とすることができる)。それによりタンク内にある含浸剤は、少なくて済み、このことは、一方では、通常の連続生産においてタンク内での滞留を短くし、他方では、新規に供給される冷たい含浸剤に対し、回転浸漬タンク内にある加熱された含浸剤の割合を多大に好ましいものとする。含浸すべき面部だけが含浸剤と接触することにより、構成部材から含浸剤に伝わる熱は、大幅に少なくなる。含浸剤を戻すことは、この理由からも、もはや不必要であり、過剰の熱を排出するためには、冷却された浸漬タンクで既に十分である。構成部材に適合された回転浸漬タンクの形状、及びそれと関連した新しい方式により、一度加熱され、従って活性化された含浸剤の適時の処理が保証されている。
【0031】
構成部材の取り込みと取り出しが水平位置で行われ、その双方に共通して、傾けられたポジションにおけるセクタ回転浸漬のために傾動が行われる場合には、特にそのために設計された浸漬タンクが推奨される。傾けられた使用のために設計された浸漬タンクは、好ましくは、含浸剤のための少なくとも1つのリザーバを有する。この含浸剤リザーバは、傾けられた作業ポジションにある浸漬タンクにおいて、少なくとも、含浸剤で満たすべきセクタが所望のレベルに達する限りにおいて、放流する(ないし空になる)機能を有する。それにより水平の停止ポジションにおいて、含浸剤リザーバは、含浸剤を含浸セクタから受け取るという役割、ないし新たに必要とされるまでの間中間貯蔵するという役割、を果たす。
【0032】
シール要素を備えてなく、かくてレベルを規定する隔壁部を越えて流れる含浸剤は、別個の含浸剤リザーバ又は中間貯蔵部に達し、次の構成部材(のセクタ回転浸漬)において供給される。
【0033】
隔壁部は、含浸すべきでない構成部材の箇所から含浸剤を遠ざけ、それにより含浸剤消費を著しく減少させ、それらの箇所における含浸剤による熱の受け入れを抑止し、それらの寸法的に繊細な箇所における構成部材の汚れを回避するために用いられる。それゆえ、隔壁部には、特に構成部材輪郭に適合可能なシール要素が備えられている。代替的には、隔壁部自体が可撓性(フレキシブル)のシール要素として構成されており、例えばゴムから構成されている。これらのシール要素を構成部材輪郭に適合可能に構成することが推奨される。輪郭適合可能なシール要素及び/又は隔壁部では、含浸剤は、最後にそこにある含浸剤が含浸セクタ内に留まる。構成部材の浸漬により含浸剤の液位は高くなり、それに対し、シール要素は、構成部材輪郭に対する密着のもとで低くなる。最大レベルは、高さ調節可能な隔壁部により規定される。代替的には、構成部材による含浸剤の取り入れ量と比べての含浸剤の供給流量によりレベルを制御することが推奨される。つまり構成部材により取り入れられる量、ないし取り入れられるべき量と正に同量の含浸剤が供給される。この方法は、少量で、構成部材特有の含浸剤の量的補償を可能にする。取り入れられた含浸剤質量は、好ましくは、追加的に、含浸の前後で構成部材を計量することにより決定される。
【0034】
シール要素及び/又は隔壁部は、これらが構成部材のシールすべき領域の輪郭を既に有するように構成されている場合には、含浸剤は、シール要素輪郭を越えて含浸剤が溢れることを回避するために、タンクから構成部材を取り出す前に少なくとも部分的に含浸剤リザーバ又は中間貯蔵部に戻される。浸漬タンク内での新しい構成部材の位置決め、及びそれと関連したシーリングの後に、含浸剤が浸漬セクタ内に戻される。含浸中には、引き続き、好ましくは、現在で構成部材により取り入れられた含浸剤量だけが供給される。それにより溢流を伴わない回転浸漬含浸解決策を実現することが初めて可能である。回転浸漬タンクが例えば旋回されないという理由で、回転浸漬タンク構成又は使用される方法に基づき、含浸剤が流れ戻ることができないのであれば、できるだけ液圧的に接続されたシリンダの形式の予備容器が、個々のセクタから含浸剤を一時的に受容するために用いられる。含浸が完了すると、シリンダは、構成部材の取り出しの前に、底部開口部を介して含浸剤の少なくとも大部分を吸引し、新しい構成部材の位置決めの後に、回転浸漬タンクの対応のセクタに対して迅速に供給する。この際、量は同じままであり、従ってレベルは同じままである。つまりそれぞれの時点でそれぞれのセクタにおいて構成部材により取り入れられる、ないし取り入れられてよい含浸剤量だけが供給される。また構成部材の輪郭に近い回転浸漬タンクにより、それぞれのセグメント内に貯蔵される含浸剤の量を大幅に減少させることができ、それにより一度供給されて加熱された含浸剤は、短期でのみ回転浸漬タンク内に留まる。通常は予熱される構成部材による過度の加熱から含浸剤を保護するためには、一方では、新規で供給される冷たい含浸剤の大部分が助けとなり、他方では、冷却された回転浸漬タンクと、また場合により含浸剤を受容する冷却されたシリンダが助けとなる。
【0035】
セクタ回転浸漬装置には、選択的に真空チャンバが装備されており、真空チャンバは、十分な空気除去のもとで含浸することを可能にする。真空チャンバは、選択的に、回転浸漬タンクと共に構成部材だけを包囲するか、又は回転浸漬ステーション全体を包囲する。構成部材と浸漬タンクをオプションにより真空気密で囲い込むことで、含浸剤は、使用前に真空下で調製され、つまり脱気及び脱湿される。含浸剤が構成部材の取り出しと取り込み時に湿った周囲空気と接触しないために、含浸剤のための真空気密の含浸剤リザーバが設けられている。そして含浸剤は、通気の前に含浸剤リザーバ内にもたらされ、真空化の後に浸漬セクタ内に押し戻される。この場合には、含浸剤リザーバとして好ましくはシリンダが使用される。真空化された空間をできるだけ小さく且つエネルギー需要を僅かとするために、浸漬タンクを、水平方向に分割された真空チャンバの下部として構成することが提案される。真空チャンバ内には、シールすべき構成部材支持体だけが突出し、そのシャフトは、両方のチャンバ半体により包囲される。つまり浸漬タンクないし下側の真空チャンバ半体の垂直軸線が、同時に、チャンバを開くため、及び含浸剤内への構成部材のための浸漬深さの適合のために用いられる。構成部材の真空化、特に含浸剤で満たすべき構成部材内の空所の真空化により、これらの空所は、より迅速に且つより広範囲に含浸剤で満たされる。
【0036】
含浸剤及び/又は構成部材に作用する振動、特に超音波範囲内の高周波の振動を用いることで、巻線の周りの空所の充填度と濡れがより良好になり、それにより含浸時間が更に減少される。媒体と構成部材に応じ、そのために20Hzから20MHzまでの周波数が使用される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】旋回可能な一セクタ回転浸漬装置を側面図として例示する図である。
図2】傾けられた回転浸漬タンク6を断面図として、構成部材1を側面図として、傾けられた含浸ポジションで示す図である。
図3】回転浸漬タンク6を断面図として、構成部材1の取り込み及び取り出し時における構成部材1を側面図として、また含浸剤リザーバ9内の含浸剤12を示す図である。
図4】異なる機能のための複数のセクタを備えた回転浸漬タンク6の例示の実施形態を上から見た図である。
【実施例
【0038】
図1により、セクタ回転浸漬装置は、電気機械の構成部材1の巻線2、特にステータないしロータの巻線2を回転浸漬含浸するために用いられる。構成部材1は、含浸過程中に構成部材支持体5により支持され、所定のプログラムにより予め規定されたセクタ回転浸漬装置の所定のポジションにおいて、特に回転浸漬タンク6のポジションにおいて回転する。回転軸線17の周りの構成部材1の位置固定的な回転駆動は、搬送装置19内の互いに反転するチェーン対(チェーンペア)により実現され、これらのチェーン対は、構成部材支持体5上に固定されたチェーンホイール(スプロケット)に作用する。
【0039】
開示される装置の回転浸漬タンク6は、旋回軸線16上に固定された搬送装置19の旋回ユニットに結合(連結)され、構成部材1と一緒に傾けられるか、又は、別個の駆動部を有し、該駆動部は、独立して又は同期して構成部材1の傾斜角に従うことを可能にし、また少なくとも1つの直線(リニア)軸線15を介して構成部材1に対する直線(リニア)運動を実行することを可能にする。直線軸線(ないし直線軸)15と、旋回軸線(ないし旋回軸)16と、回転軸線17の周りの構成部材1の並進運動及び回転運動とは、アクチュエータ18により駆動される。回転浸漬タンク6内の隔壁部7は、要求に応じ、固定的に位置決めされているか、或いは手動で及び/又は電動式で摺動可能に備えられている。それにより複数のセクタを異なる構成部材1に適合させることができ、場合により、シール要素8を備えた隔壁部7を構成部材1のシール面部に対して当接させ、異なる強さで押し付けることができる。隔壁部7とシール要素8は、両方とも交換可能である。
【0040】
構成部材支持体5は、構成部材支持体5に対して異なる構成部材1の中央(ないし中心)の固定を可能にする組込式の締付装置を有する。組込式の締付装置を有する構成部材支持体5は、予め規定された箇所における構成部材1の交換と、装置全体を通しての回転する構成部材1の確実な搬送とを可能にする。同時に回転を伴う構成部材1の並進運動は、シャフトとチェーンホイールを介して駆動される搬送装置19のチェーンの異なる速度及び/又は運動方向により行われる。また構成部材支持体5のチェーンホイールは、アクチュエータ18により駆動されるチェーンに係合する。
【0041】
構成部材1として、特にステータは、実質的に積層コア(積層鉄心)と巻線2から構成され、巻線2は、丸線、又は平角線ないしヘアピンから構成することもできる。巻線2は、ステータにおいて、内側に位置する積層コアスロット4内に設けられる。積層コアの外側にあり巻線2と呼ばれるワイヤ又はヘアピンの方向転換部と接続部は、ワインディングヘッド(コイルエンド)3と呼ばれる。
【0042】
積層コアの輪郭ができるだけ含浸剤12から免れた(frei)ままであるのに対し、ワインディングヘッド3と、積層コアスロット4内に挿入された巻線2とだけが含浸剤12と接触するように、回転浸漬タンク6は、特殊に形成されている。図面で示唆されているように、この構成は、複数の隔壁部7により達成され、これらの隔壁部7は、回転浸漬タンク6内に設けられており、またシール要素8を備えているか、又は少なくとも部分的にシール要素8から構成されている。後者の場合には、隔壁部7は、好ましくは、構成部材1の輪郭に適合し且つ同時にシール要素8として機能するエラストマから成る。この回転浸漬タンク構成により、回転浸漬タンク6の隣接するセクタ内で異なる含浸剤レベルを実現することが可能であり、従って構成部材1のどの部分が含浸剤12と接触するかを決定することが可能である。つまり例えば、ステータのワインディングヘッド3のためには、回転浸漬タンク6内の浸漬セクタ13が規定され、これらのセクタ13は、含浸剤開口部(複数)11を介して含浸剤12で満たされる。
【0043】
含浸すべきでない積層コアがあるセクタは、空のままである。つまり含浸剤12は、ステータが最大で内径部の下端部に至るまで浸漬されるのであれば、ワインディングヘッド3及び積層コアスロット4にだけ達することができる。低速の回転によりワインディングヘッド3及び積層コアスロット4は、周囲が含浸剤12で満たされ、それに対し、積層コアの内径部及び外径部は、きれいなままである。
【0044】
ロータとして、特に外側ジャケット部を有する閉じたロータでは、平坦面部(エンドフェース:端面部)においてシーリングが行われ、それにより含浸剤12は、平坦面部においてのみ流入ないし流出することができ、平坦側面部の環状面部(リング状面部分)だけが濡らされる。
【0045】
図2には、回転浸漬含浸用の、隔壁部7と、隔壁部7に固定されたシール要素8とを備えた一例の回転浸漬タンク6が傾けられたポジション(姿勢)で断面図として図示されており、それに対し、構成部材支持体5上に締付固定されたステータは、含浸ポジションにあり、切断されず側面図として見ることができる。隔壁部7により分割(区画)された複数のセクタを見ることができる。個々のセクタには、含浸剤開口部11が備えられており、これらの含浸剤開口部11は、含浸剤12の流入部と流出部の両方として用いられる。隔壁部7の一部は、シール要素8を備えず、それによりシール要素8が組み込まれた又は取り付けられたシール要素8を備えた隔壁部7よりも低い。これらの隔壁部7は、含浸剤溢流部10として用いられ、つまりレベル制限をもたらす。それにより均一の含浸剤レベルが達成され、従って信頼性のある浸漬深さが迅速で且つ再現精度をもって達成される。溢流する含浸剤12は、回転浸漬タンク6の旋回により元のセクタに戻されるか、又は固有のセクタ内に集められ、含浸剤供給部に優先的に送られる。
【0046】
図示の実施形態において、回転浸漬タンク6のより高い位置に置かれた浸漬セクタ13(図2の左側)は、回転浸漬タンク6が水平状態にもたらされると直ちに、同時に含浸剤リザーバ9として機能する。図3で示されているように、水平状態への回転浸漬タンク6の旋回により、含浸剤12は、より低い位置に置かれた領域内に流れ戻り、それにより構成部材1の領域における含浸剤レベルは、シール要素8又は隔壁部7の最も低い箇所の下に低下する。それにより構成部材1の取り出し時には、含浸剤12がシール要素8を越えて流れることはなく、また、以前にあったレベルは、含浸剤12の供給及び排出を伴わずに新しい構成部材1(の装着と回転浸漬タンク)の旋回(傾動)により即座に達成される。含浸剤12の供給と、選択的に含浸剤12の排出も、含浸剤開口部11を介して行われる。更に含浸剤12のレベルは、含浸剤溢流部10により制限されている。溢れ出る含浸剤12は、図3で見られるように溢流セクタ14内に捕らえられ、場合により排出される。それにより、一方では、含浸剤レベルが内径部の下端部(図2の左右のレベル参照)を越えて高くなることはなく、従って含浸剤12がステータの内部空間を汚すことはなく、他方では、積層コアがあるセクタは、含浸剤12から免れたままであることが保証される。
【0047】
含浸剤12内への構成部材1の浸漬深さは、回転浸漬タンク6に対する構成部材1の自由にプログラミング可能なポジションにより規定される。図2に図示された回転浸漬タンクの実施形態は、浸漬領域において、構成部材輪郭に適合されている隔壁部7とシール要素8を有するように構成されている。図示された円形のシール要素8は、好ましくは、シールリップとして構成されており、それにより構成部材1の持ち上げ時には含浸剤12の残りが溢れることはない。従って回転浸漬タンク6の軸方向の運動性と、構成部材傾斜に依存しない回転浸漬タンク傾斜により、シール部材の間への構成部材1の取り込みは、隔壁部7と、隔壁部7に固定されたシール要素8とが回転浸漬タンク6内に摺動不能に備えられている場合でも成し遂げられる。
【0048】
傾けられた構成部材1の含浸、特にステータの含浸は、提案されている方式で、巻線2を中に有する積層コアスロット4が上側(左上)の浸漬セクタ13から含浸されるだけでなく、反対側(右下)のワインディングヘッド3も積層コアスロット4を通して含浸されることにより、1つのシール要素8を有するだけでも実現される。回転浸漬タンク6の図示のバージョンでは、下側の浸漬セクタ13が同様に含浸剤開口部11を介して含浸剤12で充填され、従ってより低い位置に置かれたワインディングヘッド3の浸漬含浸が同時に可能となる。
【0049】
図3から、同時に浸漬セクタ13である含浸剤リザーバ9の二重機能が見てとれる。水平ポジションにおいて、含浸剤12の液位は、構成部材1の取り出し時に含浸剤12がシール要素8を越えて流れ出ない範囲に低下する。
【0050】
図4に例示された回転浸漬タンク6は、複数の隔壁部7を含み、これらの隔壁部7は、タンクをシーリングし、構成部材寸法に応じて様々なポジションに取り付けられる。隔壁部7は、交換可能であり、それによりそれらの高さと形状を変えることができる。選択的に提案される一実施形態において、隔壁部7は、無段で摺動可能に備えられており、手動で又はリニア駆動部を用いて自動で位置決め可能である。タンク内の最大の含浸剤レベル高さは、隔壁部7自体の高さか、又は高さに関して調節可能なスライド要素により規定される。これらのスライド要素、又はこれらがない場合には、シール要素8を伴わない隔壁部7が、場合により含浸剤溢流部10として用いられる。溢れ出る含浸剤12は、好ましくは溢流セクタ14内に捕らえられ、含浸剤流入部に供給される。特別な溢流セクタ14がない場合には、隣接し、含浸剤12が溢れていない、含浸剤開口部11を備えたセクタが、そのようなセクタとして用いられる。隔壁部7の中央領域は、シールすべき箇所の構成部材輪郭に従って湾曲部として構成されている。シール要素8は、湾曲輪郭に従って延在し、密閉するように、しかし交換可能に隔壁部7と接続されている。ポリマー又は金属から成るシール要素8における端部は、(構成部材1の)平坦面部で散発的に外側に流出する含浸剤12を再び捕らえるために、外側に向かって形成されている。
【符号の説明】
【0051】
1 構成部材
2 巻線
3 ワインディングヘッド
4 積層コアスロット
5 構成部材支持体
6 回転浸漬タンク
7 隔壁部
8 シール要素
9 含浸剤リザーバ
10 含浸剤溢流部
11 含浸剤開口部
12 含浸剤
13 浸漬セクタ
14 溢流セクタ
15 直線軸線
16 旋回軸線
17 回転軸線
18 アクチュエータ
19 搬送装置
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-11-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータないしロータの形式の電気機械の構成部材を含浸するためのセクタ回転浸漬装置であって、
セクタ回転浸漬装置の回転浸漬タンク(6)が、構成部材領域に応じて異なる含浸剤レベルを実現するために、含浸剤開口部(11)を有する複数のセクタに分割されており、これらのセクタは、隔壁部(7)により互いに分離されており、隔壁部(7)と接続された又は隔壁部(7)を構成する少なくとも1つのシール要素(8)が、回転する構成部材(1)と接触状態にあること、及び、
1つの構成部材(1)の少なくとも1つの含浸すべき部分が含浸されるように、含浸剤(12)で満たされた少なくとも1つのセクタが設けられていること、
を特徴とするセクタ回転浸漬装置。
【請求項2】
個々の隔壁部(7)は、少なくとも部分的に弾性的なシール要素(8)として構成されていること、
を特徴とする、請求項1に記載のセクタ回転浸漬装置。
【請求項3】
回転する構成部材(1)及び/又は回転浸漬タンク(6)は、垂直方向において旋回可能に備えられており、旋回軸線は、制御式の駆動部と接続されており、構成部材(1)は、構成部材支持体(5)を介し、搬送装置(19)及び構成部材回転のための駆動部(18)と接続されていること、
を特徴とする、請求項1又は2記載のセクタ回転浸漬装置。
【請求項4】
回転浸漬タンク(6)の輪郭は、少なくとも部分的に、2mmから50mmまでの間隔を置いて構成部材(1)の輪郭に従い、変形可能なシール要素(8)は、隔壁部(7)に対するそれらの接合部において、或いはそれらの端部において弾力をもって備えられているか、又は伸び要素として構成されていること、
を特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のセクタ回転浸漬装置。
【請求項5】
インディングヘッド回転浸漬タンクセクタは、旋回方向において傾けられた底部及び/又は含浸剤リザーバ(9)を有すること、
を特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のセクタ回転浸漬装置。
【請求項6】
構成部材(1)及び/又は含浸剤(12)は、振動発生器と物理的に接続状態にあること、
を特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のセクタ回転浸漬装置。
【請求項7】
回転浸漬タンク(6)及び/又は構成部材(1)は、少なくとも部分的に真空ハウジング内にあること、
を特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のセクタ回転浸漬装置。
【請求項8】
隔壁部(7)は、弾性的で構成部材輪郭に適合するシール要素(8)として構成されており、シール要素(8)は、リマー及び/又はスプリングプレートから成ること、
を特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のセクタ回転浸漬装置。
【請求項9】
浸剤を案内する回転浸漬タンク(6)のセクタは、冷却器具及び/又は加熱器具と接続されていること、
を特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のセクタ回転浸漬装置。
【請求項10】
請求項1~9のずれか一項に記載のセクタ回転浸漬装置により実行される、電気機械のステータないしロータを含浸するための方法であって、
少なくとも1つのワインディングヘッド(3)及び積層コアスロット(4)の少なくとも1つの平坦側面部が、含浸剤(12)で満たされた少なくとも1つのセクタ内にあり、回転浸漬タンク(6)内で回転され、これらは、回転して含浸剤(12)と接触し、積層コアの内径部並びに外径部は、含浸剤接触から免れていること、
を特徴とする方法。
【請求項11】
回転する構成部材(1)の含浸過程は、水平状態又は回転軸線(17)の傾斜角(複数)のもとで可変に行われ、回転浸漬タンク(6)は、構成部材(1)と一緒に旋回されるか、又は回転浸漬タンク(6)は、固定された所定傾斜角を有し、構成部材(1)は含浸のためにこの所定傾斜角へと旋回すること、
を特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
両方のワインディングヘッド(3)と、巻線(2)が通された積層コアスロット(4)との含浸は、相前後して連続する又は同時のそれらの3つの部分の含浸により行われ、傾けられた構成部材(1)において、側のワインディングヘッド(3)は、給された含浸剤(12)により、選択的に、充満状態で含浸されるか又は滴下状態で含浸されること、
を特徴とする、請求項10又は11記載の方法。
【請求項13】
半径方向において開いたロータ内の巻線(2)の含浸は、回転浸漬タンク(6)内で含浸剤(12)で満たされた1つの中央のセクタにより行われ、含浸剤(12)は、ロータ平坦側面部から、シール部材び隔壁部(7)により遠ざけられて行われること、
を特徴とする、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
平坦側面部に開口部を有する閉じたロータにおける巻線(2)の含浸は、回転浸漬タンク(6)内で含浸剤(12)で満たされた2つの分離したセクタにより行われ、これらのセクタは、ール部材用い、平坦面部で穴部を有する領域だけを濡らして行い、構成部材(1)は、含浸過程の終わり剰の含浸剤(12)を排出するために傾けられること、
を特徴とする、請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
直方向において旋回可能な回転浸漬タンク(6)は、従って構成部材(1)の回転軸線(17)に関して直角方向に旋回可能である回転浸漬タンク(6)は、回転浸漬タンク(6)内に組み込まれた含浸剤リザーバ(9)を用い、垂直方向の旋回により、含浸剤(12)を、含浸剤リザーバ(9)から、回転浸漬タンク(6)の少なくとも1つの含浸セクタに移し、含浸剤(12)は、水平状態に戻る旋回により含浸剤リザーバ(9)内に流れ戻り、それにより含浸剤(12)は、回転浸漬タンク(6)の各新しい構成部材(6)に関しても供給及び排出される必要はなく、それにより迅速に含浸箇所に提供されること、
を特徴とする、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
回転浸漬タンク(6)には、構成部材(1)が取り入れる量と正に同様の含浸剤(12)が供給され、回転浸漬タンク(6)は、温度調節され、また回転浸漬タンク(6)内の含浸剤(12)の滞在時間を少なくし、減少された接触面と接触時間に基づき、構成部材(1)からの放熱を減少させるために、回転浸漬タンク(6)の輪郭、少なくとも、含浸剤(12)で充填されるセクタにおいて、構成部材(1)の輪郭に対して2mmから50mmまでの隔を有すること、
を特徴とする、請求項10~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
回転浸漬タンク(6)のセクタ内にある含浸剤(12)は、回転浸漬タンク(6)から構成部材(1)を取り出す前に、従ってシール要素(8)と構成部材(1)の間の接触の終了前に、リンダとして構成された予備容器内にもたらされ、次の構成部材(1)の取り込み後に回転浸漬タンク(6)内に戻され、含浸剤(12)の引き続く供給量は、正確に、構成部材(1)が現時点でそれぞれのセクタにおいて受け入れる又は受け入れるべき量に対応すること、
を特徴とする、請求項10~16のいずれか一項に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
本発明により、前記課題は、請求項1に記載されているようなセクタ回転浸漬装置により解決される。後続の請求項は、該装置の更なる構成形態を示している。請求項10以降は、該装置を稼働するための構成を有する方法を規定している。
即ち本発明の第1の視点により、
ステータないしロータの形式の電気機械の構成部材を含浸するためのセクタ回転浸漬装置であって、
セクタ回転浸漬装置の回転浸漬タンクが、構成部材領域に応じて異なる含浸剤レベルを実現するために、含浸剤開口部を有する複数のセクタに分割されており、これらのセクタは、隔壁部により互いに分離されており、隔壁部と接続された又は隔壁部を構成する少なくとも1つのシール要素が、回転する構成部材と接触状態にあること、及び、
1つの構成部材の少なくとも1つの含浸すべき部分が含浸されるように、含浸剤で満たされた少なくとも1つのセクタが設けられていること、
を特徴とするセクタ回転浸漬装置が提供される。
更に本発明の第2の視点により、
前記セクタ回転浸漬装置により実行される、電気機械のステータないしロータを含浸するための方法であって、
少なくとも1つのワインディングヘッド及び積層コアスロットの少なくとも1つの平坦側面部が、含浸剤で満たされた少なくとも1つのセクタ内にあり、回転浸漬タンク内で回転され、これらは、回転して含浸剤と接触し、積層コアの内径部並びに外径部は、含浸剤接触から免れていること、
を特徴とする方法が提供される。
尚、本願の特許請求の範囲に付記された図面参照符号は、専ら本発明の理解の容易化のためのものであり、図示の形態への限定を意図するものではないことを付言する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
本発明において、以下の形態が可能である。
(形態1)
ステータないしロータの形式の電気機械の構成部材を含浸するためのセクタ回転浸漬装置であって、
回転浸漬タンクが、含浸剤開口部を有する複数のセクタに分割されており、これらのセクタは、隔壁部により互いに分離されており、隔壁部と接続された少なくとも1つのシール要素が、回転する構成部材と接触状態にあること。
(形態2)
個々の隔壁部は、少なくとも部分的に弾性的なシール要素として構成されていること、が好ましい。
(形態3)
回転する構成部材及び/又は回転浸漬タンクは、垂直方向において旋回可能に備えられており、旋回軸線は、好ましくは被制御式の駆動部と接続されており、構成部材は、構成部材支持体を介し、搬送装置及び構成部材回転のための駆動部と接続されていること、が好ましい。
(形態4)
回転浸漬タンクの輪郭は、少なくとも部分的に、2mmから50mmまでの間隔を置いて構成部材の輪郭に従い、変形可能なシール要素は、それらの接合部において、特にそれらの端部において弾力をもって備えられているか、又は伸び要素として構成されていること、が好ましい。
(形態5)
特にワインディングヘッド回転浸漬タンクセクタは、旋回方向において傾けられた底部及び/又は含浸剤リザーバを有すること、が好ましい。
(形態6)
構成部材及び/又は含浸剤は、振動発生器と物理的に接続状態にあること、が好ましい。
(形態7)
回転浸漬タンク及び/又は構成部材は、少なくとも部分的に真空ハウジング内にあること、が好ましい。
(形態8)
隔壁部は、弾性的で構成部材輪郭に適合するシール要素として構成されており、シール要素は、好ましくはポリマー及び/又はスプリングプレートから成ること、が好ましい。
(形態9)
特に含浸剤を案内する回転浸漬タンクのセクタは、冷却器具及び/又は加熱器具と接続されていること、が好ましい。
(形態10)
形態1~9の少なくともいずれか1つに記載のセクタ回転浸漬装置により実行される、電気機械のステータないしロータを含浸するための方法であって、
ワインディングヘッド及び積層コアスロットの平坦側面部が、含浸剤で満たされたセクタ内にあり、回転浸漬タンク内で回転し、これらは、回転して含浸剤と接触し、積層コアの内径部並びに外径部は、含浸剤接触から免れたままであること。
(形態11)
回転する構成部材の含浸過程は、水平状態又は回転軸線の傾斜角(複数)のもとで可変に行われ、回転浸漬タンクは、構成部材と一緒に旋回されるか、又は固定された所定傾斜角を有し、構成部材は含浸のためにこの所定傾斜へと旋回すること、が好ましい。
(形態12)
両方のワインディングヘッドと、巻線が通された積層コアスロットとの含浸は、相前後して連続する又は同時の3つの含浸ステップにおいて行われ、傾けられた構成部材において、特に下側のワインディングヘッドは、選択的に、供給された含浸剤により充満状態で含浸されるか又は滴下状態で含浸されること、が好ましい。
(形態13)
半径方向において開いたロータ内の巻線の含浸は、回転浸漬タンク内で含浸剤で満たされた1つの中央のセクタにより行われ、含浸剤は、ロータの隣接する平坦ディスク及びハウジング部分から、シール部材及び隔壁部により遠ざけられて行われること、が好ましい。
(形態14)
平坦側面部に開口部を有する閉じたロータにおける巻線の含浸は、回転浸漬タンク内で含浸剤で満たされた2つの分離したセクタにより行われ、これらのセクタは、好ましくは、シール部材を用い、平坦面部で穴部を有する領域だけを濡らして行い、構成部材は、含浸過程の終わり近くに、好ましくは、過剰の含浸剤を排出するために傾けられること、が好ましい。
(形態15)
構成部材の回転軸線に関して垂直方向において旋回可能な回転浸漬タンクは、その組み込まれた含浸剤リザーバを用い、垂直方向の旋回により、含浸剤を、含浸剤リザーバから、回転浸漬タンクの少なくとも1つの含浸セクタに移し、含浸剤は、水平状態に戻る旋回により含浸剤リザーバ内に流れ戻り、それにより含浸剤は、回転浸漬タンクの各新しい構成部材に関しても供給及び排出される必要はなく、それにより迅速に含浸箇所に提供されること、が好ましい。
(形態16)
回転浸漬タンクには、構成部材が取り入れる量と正に同様の含浸剤が供給され、浸漬タンクは、温度調節され、また回転浸漬タンク内の含浸剤の滞在時間を少なくし、減少された接触面と接触時間に基づき、構成部材からの放熱を減少させるために、タンクの輪郭並びに寸法は、少なくとも、含浸剤で充填されるセクタにおいて、2mmから50mmまでの僅かな間隔を有すること、が好ましい。
(形態17)
回転浸漬タンクのセクタ内にある含浸剤は、回転浸漬タンクから構成部材を取り出す前に、従ってシール要素と構成部材の間の接触の終了前に、好ましくはシリンダとして構成された予備容器内にもたらされ、次の構成部材の取り込み後に回転浸漬タンク内に戻され、含浸剤の引き続く供給量は、正確に、構成部材が現時点でそれぞれのセクタにおいて受け入れる又は受け入れるべき量に対応すること、が好ましい。
【国際調査報告】