IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コウシュウ・バイオシール・バイオテック・カンパニー・リミテッドの特許一覧 ▶ エシコン・インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特表-流動性止血ペースト 図1
  • 特表-流動性止血ペースト 図2
  • 特表-流動性止血ペースト 図3A
  • 特表-流動性止血ペースト 図3B
  • 特表-流動性止血ペースト 図3C
  • 特表-流動性止血ペースト 図3D
  • 特表-流動性止血ペースト 図4
  • 特表-流動性止血ペースト 図5
  • 特表-流動性止血ペースト 図6
  • 特表-流動性止血ペースト 図7
  • 特表-流動性止血ペースト 図8
  • 特表-流動性止血ペースト 図9
  • 特表-流動性止血ペースト 図10
  • 特表-流動性止血ペースト 図11
  • 特表-流動性止血ペースト 図12
  • 特表-流動性止血ペースト 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-28
(54)【発明の名称】流動性止血ペースト
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/36 20060101AFI20240321BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20240321BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20240321BHJP
   A61L 15/32 20060101ALI20240321BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240321BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240321BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240321BHJP
   A61K 31/717 20060101ALI20240321BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240321BHJP
   A61L 15/28 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
A61K38/36
A61K38/17
A61P7/04
A61L15/32
A61K47/18
A61K47/02
A61K9/10
A61K31/717
A61K47/10
A61L15/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562999
(86)(22)【出願日】2021-04-14
(85)【翻訳文提出日】2023-11-21
(86)【国際出願番号】 CN2021087167
(87)【国際公開番号】W WO2022217492
(87)【国際公開日】2022-10-20
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517274590
【氏名又は名称】コウシュウ・バイオシール・バイオテック・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Guangzhou Bioseal Biotech Co., Ltd.
(71)【出願人】
【識別番号】512080321
【氏名又は名称】エシコン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Ethicon, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】チェン・シュアン
(72)【発明者】
【氏名】シエ・ティンワン
(72)【発明者】
【氏名】ワン・ヤーリン
(72)【発明者】
【氏名】リー・ユーフー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA16
4C076BB40
4C076CC50
4C076DD23
4C076DD50Z
4C076DD51Z
4C076EE31
4C076FF61
4C076FF68
4C081AC16
4C081BA11
4C081CD02
4C081CD18
4C081CD23
4C081CE11
4C081DA14
4C084AA02
4C084BA44
4C084CA36
4C084DC11
4C084DC12
4C084MA05
4C084MA28
4C084NA10
4C084ZA531
4C086EA25
4C086MA03
4C086MA05
4C086NA14
4C086ZA53
(57)【要約】
(i)酸化セルロースのフィブリノゲンに対する重量比がそれぞれ約1:5~約2:1の範囲である、酸化セルロース、フィブリノゲン及びトロンビンの粉末と、(ii)グリセロール及び水溶液で構成される分散媒とで構成される2成分流動性組成物であって、室温でペースト状懸濁物の形態である組成物が、本明細書に開示される。出血組織を治療するための組成物の使用及び組成物を作製する方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)酸化セルロース、フィブリノゲン及びトロンビンを含み、酸化セルロースのフィブリノゲンに対する重量比がそれぞれ約1:5~約2:1の範囲である粉末と、(ii)グリセロール及び水溶液を含む分散媒と、を含み、室温でペースト状懸濁物の形態である、2成分流動性組成物。
【請求項2】
前記OCのフィブリノゲンに対する前記重量比が、1:2~2:1の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記OCが、酸化再生セルロース(ORC)を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記粉末の少なくとも一部が、凝集形態である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記グリセロールが、前記分散媒の約15体積%を超える濃度で存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記グリセロールが、前記分散媒の約40体積%を超える濃度で存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記グリセロールが、前記分散媒の約70体積%以下の濃度で存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記分散媒が、それぞれ3:1~4:1(v/w;mL/g)の範囲の分散媒対粉末比で存在する、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記OCが、粉砕された形態である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
フィブリンを更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記フィブリンが、少なくとも部分的に架橋している、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記トロンビンが、粉末1g当たり約2000~約4000IUの量で存在する、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
カルシウム塩を更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
緩衝剤を更に含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記緩衝剤が、粉末の形態である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記緩衝剤が、トリス、リシン、又はこれらの組み合わせから選択されたものである、請求項14又は15に記載の組成物。
【請求項17】
前記粉末の少なくとも90%の粒径が、10~2,000μmの範囲である、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記粒径が、約200~約900μmの範囲である、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
pH4~6.5、室温で少なくとも約20時間安定である、請求項1~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記水溶液が、生理食塩水を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記粉末が、噴霧乾燥及び/又は高せん断混合されたものである、請求項1~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記フィブリノゲンが、前記粉末の60重量%~95重量%又は70重量%~90重量%の濃度範囲で存在する、請求項1~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
組織の出血部位において止血剤として使用するための、請求項1~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
請求項1~23のいずれか一項に記載の組成物を作製する方法であって、OC繊維、フィブリノゲン、及びトロンビンの凝集形態を形成することを可能にする条件下で、前記OC繊維をフィブリノゲン粉末及びトロンビン粉末と合わせることと、前記凝集体を、グリセロール及び水溶液を含む分散媒と合わせることと、を含む、方法。
【請求項25】
前記条件が、フィブリノゲンのフィブリンへの少なくとも部分的な変換を可能にする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記条件が、前記フィブリンの少なくとも部分的な架橋を可能にする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記条件が、以下の(i)~(iii):(i)0~30℃の範囲の温度、(ii)4.5~6.5の範囲の前記分散媒のpH、及び(iii)それぞれ3:1~4:1(v/w;mL/g)の範囲の分散媒対粉末比である分散媒、のうちの1つ以上から選択される、請求項24、請求項26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
キットであって、
(a)それぞれ約1:5~約2:1の範囲の酸化セルロース対フィブリノゲンの重量比を有する、酸化セルロース、フィブリノゲン、及びトロンビンを含む粉末を収容する容器と、
(b)グリセロール及び任意選択で水溶液を含む分散媒を収容する容器と、任意選択で
(c)取扱説明書と、を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、フィブリノゲン、トロンビン、及び分散媒(dispersant)のブレンドを含む流動性止血組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
手術中の様々な状況において、手術後の出血を防ぐために治療薬がヒトの体内に広げられる。既存の薬剤は欠点を有しており、例えば、最小侵襲手術(MIS)においてシートを配置することは困難である。
【0003】
出血を制御するための適切な方法又は製品の選択は、出血の重症度、出血源の解剖学的位置及び隣接する重要な構造の近接性、出血が別個の出血源からであるか又はより広い表面領域からであるか、出血源の可視性及び正確な同定、並びに出血源へのアクセスを含むがこれらに限定されない多くの要因に依存する。
【0004】
上述の問題に対処する取り組みにおいて、過剰な出血を制御するための物質が開発されてきた。局所用吸収性止血材(TAH)は、外科用途で広く使用されている。TAHは、酸化セルロース(OC)、ゼラチン、コラーゲン、キチン、キトサンなどに基づく製品を包含する。止血性能を改善するために、上述の物質に基づくスキャフォールドは、トロンビン及びフィブリノゲンなどの生物学的に誘導された凝固因子と組み合わせることができる。
【0005】
その生分解性、並びにその殺菌特性及び止血特性により、酸化再生セルロース(ORC)などの酸化セルロース(OC)系材料は、局所止血剤として長く使用されてきた。OC及びORC系材料は癒着バリアとしても使用される。ORC系の製品は、神経手術、腹部手術、心臓血管手術、胸部手術、頭頸部手術、骨盤手術、並びに皮膚及び皮下組織手技を含む、様々な外科手技で使用される。粉末、織布、不織布、ニット布、及び他の形態で作られるか否かにかかわらず、OC材料に基づいた様々な種類の止血剤を形成するためのいくつかの方法が知られている。現在利用されている止血剤としては、粉末、又はORCを含む布地が挙げられる。
【0006】
しかしながら、出血の制御は、失血を最小限に抑えるため、術後の合併症を低減するため、及び手術室における手術時間を短縮するために外科手技において不可欠かつ重要であるため、特に出血部位及び手の到達困難な領域において適用の容易さを促進する改善された形態及び材料が必要とされている。
【0007】
米国特許出願第2020/0,139,021号には、酸化セルロース(OC)及びグリセロールで構成される組成物であって、グリセロールのOCに対する比が、少なくとも約0.5:1w/wグリセロール:OCであり、及び/又は組成物の粘度が、グリセロールの粘度よりも少なくとも10%高く、かつ約2.6×10cP未満であり、総含水量が約8w/w%未満である組成物が開示されている。
【0008】
米国特許第9,265,858号には、水性媒体の添加時に、止血手技において使用するのに好適な実質的に均質なペーストを形成する乾燥組成物が開示されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、特に、フィブリノゲン、トロンビン、及び分散媒(dispersant)のブレンドを含む流動性止血組成物に関する。
【0010】
本発明の目的は、特に身体の到達困難な領域を含む必要な部位に容易に塗布することができる、薬効又は薬理効果を有するペースト状の展延可能な止血剤を調製するための組成物を提供することである。
【0011】
フィブリノゲンは、水性媒体中でトロンビンと相互作用する。水又は親水性分散媒等の一般的に使用される分散媒は、ペースト性、接着性、及び/又は止血機能を損なうことなく使用することができないため、適切な粘稠度を有する好適な製剤を見出すことは容易ではない。したがって、フィブリノゲン及びトロンビンを両方含む安定な液体/流動可能な組成物については、一般的に、例えば封鎖及び止血のために出血部位に塗布する前に非水性媒体(分散媒)を使用する。一般的に使用される溶媒和物又は非溶媒和物、例えば水又は油は、OCの活性機能を損なうことなく使用することができないため、OCを適切な稠度にするのに好適な製剤を見出すことは容易ではない。
【0012】
本発明者らは、必要な部位に容易に塗布することができる、止血剤として使用するための展延可能なペースト又は粉末を調製するための、例えば酸化セルロース(OC)を含む組成物を開発した。
【0013】
したがって、本発明は、例えばグリセロール及び水溶液を含む分散媒中に分散しているOC、フィブリノゲン、トロンビンの粉末を含むそのようなペースト状懸濁物が優れた止血機能を提供するという驚くべき知見に基づく。したがって、そのような組成物は、特に身体の到達困難な領域において出血を制御する等の生物学的活性を得るために、必要な部位に塗布することができる。
【0014】
そのような懸濁物において水溶液を使用するというのは直感に反しているが、いかなる特定の理論又は機構にも束縛されることなく、分散媒中で粉末を混合した後、均一に分散した生物製剤がグリセロール/生理食塩水系においてフィブリンを形成し、これがOCと一緒に多孔質ペーストを形成し、豊富なトロンビンが系内に残ると仮定することができる。その後、出血部位に塗布すると、多孔質の流動性ORC-フィブリンマトリックス(水に不溶性である)によって、血液がその空間を通って容易に浸透し、高濃度のトロンビンに曝露されるようになり、それによって、血液と接触した際に内因性フィブリン塊の形成が加速される。したがって、理論に束縛されることなく、OC-フィブリンのそのような多孔質マトリックスは赤血球及び血小板が接着及び凝集するための環境も提供し、流動性マトリックスが深い裂孔及び不規則な部位に流れ込んで、優しく圧迫された後に出血部位に密接に付着することができると仮定することができる。
【0015】
このように、開示された組成物は、使いやすく、安定であり、かつ有効な止血剤となることが実証されている。
【0016】
本開示の態様によれば、(i)酸化セルロース、フィブリノゲン、及びトロンビンを含み、酸化セルロースのフィブリノゲンに対する重量比がそれぞれ1:5~2:1の範囲である粉末と、(ii)グリセロール及び水溶液を含む分散媒と、を含み、室温でペースト状懸濁物の形態である、2成分流動性組成物が提供される。
【0017】
幾つかの実施形態では、OCのフィブリノゲンに対する重量比は、1:2~2:1の範囲である。
【0018】
図2を参照すると、提供される粉末1.2g当たり3mLの分散媒(50体積%のグリセロールを含む水溶液)では組成物が濃くなりすぎ、5mL使用すると、組成物は非常に薄くなることが示されている。したがって、幾つかの実施形態では、分散媒は、それぞれ約2.5:1~約5:1(v/w、mL/g単位)の範囲(これらの間の任意の値及び範囲を含む)、例えば、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1、又は5:1の分散媒対粉末比で存在する。
【0019】
いくつかの実施形態では、OCは、酸化再生セルロース(ORC)を含む。
【0020】
幾つかの実施形態では、粉末の少なくとも一部は凝集形態である。幾つかの実施形態では、OCは粉砕された形態である。
【0021】
幾つかの実施形態では、組成物は、フィブリンを更に含む。幾つかの実施形態では、フィブリンは、少なくとも部分的に架橋されている。
【0022】
幾つかの実施形態では、トロンビンは、粉末1g当たり約2000~約4000IUの量で存在する。
【0023】
幾つかの実施形態では、組成物は、カルシウム塩を含む。
【0024】
幾つかの実施形態では、組成物は、例えば粉末の形態の緩衝剤を含む。幾つかの実施形態では、緩衝剤は、トリス、リシン、又はこれらの組み合わせから選択される。
【0025】
幾つかの実施形態では、粉末のうちの少なくとも90%の粒径は、10~2,000μmの範囲である。幾つかの実施形態では、粒径は、約200~約900μmの範囲である。
【0026】
幾つかの実施形態では、グリセロールは、分散媒の約15体積%を超える濃度で存在する。幾つかの実施形態では、グリセロールは、分散媒の約40体積%を超える濃度で存在する。幾つかの実施形態では、グリセロールは、分散媒の約70体積%以下の濃度で存在する。
【0027】
幾つかの実施形態では、組成物は、約室温において4.5~6.5のpHで少なくとも約20時間安定である。
【0028】
幾つかの実施形態では、水溶液は、生理食塩水を含む。
【0029】
幾つかの実施形態では、粉末は、噴霧乾燥及び/又は高せん断混合される。
【0030】
幾つかの実施形態では、フィブリノゲンは、粉末の60重量%~95重量%又は70重量%~90重量%の濃度範囲で存在する。幾つかの実施形態では、組成物は、組織の出血部位において止血剤として使用するためのものである。
【0031】
一態様では、出血組織を治療する方法であって、その任意の実施形態の組成物を出血組織上に塗布することを含む方法における、当該組成物の使用が提供される。幾つかの実施形態では、方法は、腹腔鏡下手術等の最小侵襲手術(MIS)を含む。
【0032】
別の態様では、その任意の実施形態の組成物を作製する方法であって、OC(例えば、ORC)繊維/粉末、フィブリノゲン、及びトロンビンの凝集形態を形成することを可能にする条件でOC繊維/粉末をフィブリノゲン粉末及びトロンビン粉末と合わせることと、凝集体を、グリセロール及び水溶液を含む分散媒と合わせることと、を含む方法が提供される。
【0033】
幾つかの実施形態では、条件は、フィブリノゲンのフィブリンへの少なくとも部分的な変換を可能にする。幾つかの実施形態では、条件は、フィブリンの少なくとも部分的な架橋を可能にする。幾つかの実施形態では、条件は、以下の(i)~(iii):(i)0~30℃の範囲の温度、(ii)4.5~6.5の範囲のpH、及び(iii)それぞれ3:1~4:1(v/w mL/g)の範囲の分散媒対粉末比である分散媒、のうちの1つ以上から選択される。
【0034】
別の態様では、その任意の実施形態の組成物を収容する容器と、組成物を組織上に塗布するためのアプリケータと、任意選択で使用説明書と、を含む、キットが提供される。
【0035】
別の態様では、それぞれ約1:5~約2:1の範囲の酸化セルロースのフィブリノゲンに対する重量比を有する、酸化セルロース、フィブリノゲン、及びトロンビンを含む粉末を収容する容器と、グリセロール及び水溶液を含む分散媒を収容する容器と、任意選択で使用説明書と、を含む、キットが提供される。
【0036】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び/又は科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されている意味と同一の意味を有する。本明細書に記載されているものと同様又は同等の方法及び材料を、本発明の実施形態の実行又は試験に使用することが可能であるが、例示的な方法及び/又は材料を以下に記載する。矛盾のある場合、定義を含め本特許明細書が適用される。なお、材料、方法、及び実施例は、単に例解的なものであり、必ずしも限定を意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
本発明のいくつかの実施形態について、例示のみを目的として、添付図面を参照して本明細書において説明する。ここで図面を詳細に具体的に参照すると、示される詳細は、例としてのものであり、本発明の実施形態の例解的な考察を目的としていることが強調される。この点に関し、図面を用いた説明は、本発明の実施形態がどのように実施され得るかを当業者に明らかにする。
図1】実施例2に記載するように、選択された試料(生理食塩水中50体積%グリセロール4mL中1.2gの粉末)の流動性を示す比較写真画像を提示する、左から右へ:それぞれ2:1のORC対フィブリノゲン重量比を有する粉末(トロンビンを含む、すなわち1.2g当たり3300IUの用量)、(ii)それぞれORC対フィブリノゲン重量比が2:1であり、トロンビンを含まない粉末、(iii)ORC及びBSA(ウシ血清アルブミン)を含み、ORC対BSA重量比が2:1であり、トロンビンを含む粉末、(iv)ORC、(v)ORC及びトロンビンを含む(フィブリノゲンを含まない)粉末。
図2】以下の実施例の章における表1に従って、選択された試料の流動性を示す比較写真画像を提示する(各パネルは、左から右へ、対応する試料番号を記す)。
図3A】それぞれ2:1~1:5の範囲の様々なORC対フィブリノゲン重量比(「比」)を有する試験した試料の流動性及びそれぞれの凝固時間を示す比較写真画像を提示する、2:1、1:1、1:2、及び1:5の比の生理食塩水中70体積%又は80体積%グリセロール:80体積%グリセロール(図3A、左から右へ)、1:2及び1:5の比を有する70%グリセロール(図3B、左から右へ)、血液凝固(1:5の比を有する80%グリセロール、180秒超後、図3C)、血液凝固(1:2及び1:5のそれぞれの比を有する70%グリセロール、70秒後、図3D、左から右)。
図3B】それぞれ2:1~1:5の範囲の様々なORC対フィブリノゲン重量比(「比」)を有する試験した試料の流動性及びそれぞれの凝固時間を示す比較写真画像を提示する、2:1、1:1、1:2、及び1:5の比の生理食塩水中70体積%又は80体積%グリセロール:80体積%グリセロール(図3A、左から右へ)、1:2及び1:5の比を有する70%グリセロール(図3B、左から右へ)、血液凝固(1:5の比を有する80%グリセロール、180秒超後、図3C)、血液凝固(1:2及び1:5のそれぞれの比を有する70%グリセロール、70秒後、図3D、左から右)。
図3C】それぞれ2:1~1:5の範囲の様々なORC対フィブリノゲン重量比(「比」)を有する試験した試料の流動性及びそれぞれの凝固時間を示す比較写真画像を提示する、2:1、1:1、1:2、及び1:5の比の生理食塩水中70体積%又は80体積%グリセロール:80体積%グリセロール(図3A、左から右へ)、1:2及び1:5の比を有する70%グリセロール(図3B、左から右へ)、血液凝固(1:5の比を有する80%グリセロール、180秒超後、図3C)、血液凝固(1:2及び1:5のそれぞれの比を有する70%グリセロール、70秒後、図3D、左から右)。
図3D】それぞれ2:1~1:5の範囲の様々なORC対フィブリノゲン重量比(「比」)を有する試験した試料の流動性及びそれぞれの凝固時間を示す比較写真画像を提示する、2:1、1:1、1:2、及び1:5の比の生理食塩水中70体積%又は80体積%グリセロール:80体積%グリセロール(図3A、左から右へ)、1:2及び1:5の比を有する70%グリセロール(図3B、左から右へ)、血液凝固(1:5の比を有する80%グリセロール、180秒超後、図3C)、血液凝固(1:2及び1:5のそれぞれの比を有する70%グリセロール、70秒後、図3D、左から右)。
図4】生理食塩水中80体積%グリセロール溶液中に分散した2:1(「1」)、1:1(「2」)、1:2(「3」)、及び1:5(「4」)のORC対フィブリノゲン重量比の種々の試料の比較時間依存性粘度曲線を示すグラフを提示する。
図5】生理食塩水中50体積%グリセロール溶液中に分散した2:1(「1」、「1’」)、1:1(「2」、「2’」)、1:2(「3」、「3’」)、及び1:5(「4」、「4’」)のORC対フィブリノゲン重量比の種々の試料に対して実施した振幅掃引試験の結果を示すグラフを提示する。プロット中、四角記号はG’を指し、三角記号はG’’を指す。
図6】実施例4に記載の通り、再構成の2時間後及び20時間後(生理食塩水及び種々の濃度のグリセロール)に異なる処方の試料を用いた、ブタ血液凝固時間(エクスビボ試験)を示すグラフを提示する(「安定性に対するpH及びグリセロール濃度の影響」を参照、丸は試料6についての20時間後の固液相分離を示す)。
図7】実施例4に記載の通り、再構成の0.5時間後、2時間後、及び20時間後(生理食塩水及び種々の濃度のグリセロール)の種々の試料及びpHのブタ血液凝固時間を示すグラフを提示する(表3を参照)。
図8】実施例5に記載の通り、(生理食塩水+種々の濃度のグリセロール中)種々のpH値での2:1及び1:1の比のORC対フィブリノゲン製剤の経時的なトロンビン安定性に対するグリセロール濃度の影響を示すグラフを提示する(表4を参照)。
図9】実施例5に記載の通り、(生理食塩水+50体積%グリセロール中)種々のpH値での2:1及び1:1のORC対フィブリノゲン比製剤の経時的なトロンビン安定性に対するpHの影響を示すグラフを提示する(表5を参照)。
図10】実施例6に記載の通り、選択されたORC対フィブリノゲン比の試料(4mLの50体積%グリセロール+生理食塩水中1.2g)のmm単位の厚さを経時的に示すグラフを提示する(表6を参照)。
図11】脾臓生検パンチモデルで使用される出血レベルのグレードの概略図を示す画像を提示する。白色の円はパンチを表し、灰色の円は、背景を表し、黒色の円は、生検パンチ部位から流れる血液を表す(左から右のパネルへ:出血なし「0」、滲出「1」、非常に軽度「2」、軽度「3」、中等度「4」、重度「5」)。
図12】種々の製剤についての、ヘパリン化条件下で脾臓生体パンチモデルを使用した6mm生体パンチャーによるインビボブタパンチモデル試験において判定された止血成功率をまとめた棒グラフを提示する(N=5、実施例7を参照)。
図13】種々の製剤についての、ヘパリン化条件下で脾臓生体パンチモデルを使用した6mm生体パンチャーによるインビボイヌパンチモデル試験において判定された止血成功率をまとめた棒グラフを提示する(N=5、実施例7を参照)。
【発明を実施するための形態】
【0038】
容易に調製され、アクセスが困難な出血部位において術中に使用するために塗布されるフィブリン複合体マトリックスの流動性止血剤の生成は、特に、例えば内視鏡下手術等の最小侵襲手術(MIS)中には困難である。
【0039】
本発明の目的は、特に身体の到達困難な領域において、必要な出血部位に容易に塗布することができる組成物を提供することである。本発明の組成物の更なる利点は、それらが生体吸収性であり、したがって、副作用を引き起こすことなく術後に留置することができることである。
【0040】
「必要な出血部位に塗布される」とは、例えば、組織の出血している手術部位又はその近傍に組成物を局所的に塗布することを指すことを意味する。
【0041】
本開示の態様によれば、(i)酸化セルロース、フィブリノゲン及びトロンビンを含む粉末と、(ii)ポリオール化合物及び水溶液を含む分散媒と、を含む、流動性組成物が提供される。幾つかの実施形態では、組成物は、約室温で懸濁物の形態である。幾つかの実施形態では、懸濁物は、ペースト状懸濁物である。幾つかの実施形態では、ポリオール化合物は、糖アルコール、例えばグリセロールを含む。幾つかの実施形態では、酸化セルロースのフィブリノゲンに対する重量比は、それぞれ約1:5~約2:1である。幾つかの実施形態では、組成物は、2成分組成物である。
【0042】
幾つかの実施形態では、組成物は、生体吸収性である。用語「生体吸収性」とは、留置後に、最終的に身体から除去されるか又は代謝される非毒性産物へと体内で分解される組織適合性材料の能力を指す。
【0043】
本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、「重量比」、「重量で」、「w/w」、「重量パーセント」、又は「重量%」という用語は、本明細書では互換的に使用され、対応する混合物、溶液、懸濁物、製剤、又は組成物の総重量のうちの特定の物質の濃度を記述する。本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、「体積比」、「体積で」、「v/v」、「体積パーセント」、又は「体積%」という用語は、本明細書では互換的に使用され、対応する混合物、分散媒、溶液、懸濁物、製剤、又は組成物の総体積のうちの特定の物質の濃度を記述する。
【0044】
2成分組成物は、第1の成分及び第2の成分を混合して懸濁物を作製することによって調製することができる。本明細書で使用される場合、用語「2成分組成物」とは、少なくとも2つの成分を含む組成物を指す。典型的には、限定するわけではないが、2つの成分を別々の容器に保存し、混合してその混合物又は懸濁物を作製した後、混合物又は懸濁物を基材に塗布する。具体的には、本発明において使用される2成分組成物の実施形態では、基材、例えば出血部位に混合物を塗布する前2時間以内に、又は場合によっては0.5時間以内に、第1の成分及び第2の成分を混合して、その分散混合物を作製する。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「混合物」とは、任意の物理的形態、例えば、ブレンド、溶液、懸濁物、分散物等の成分の組み合わせを指すが、これに限定されない。
【0046】
用語「懸濁物」又はその任意の文法上の派生語は、本明細書で使用される場合、液体又は溶媒様相中に分散した微細な溶質様微粒子の形態の固体の不均一な混合物を指す。典型的には、懸濁物は沈降する傾向を有する、すなわち、固形物質の微粒子は、幾つかの実施形態では20時間を超える期間の後に沈殿する傾向を有し得る。この期間は、微粒子及び液体の物質、温度、pH、並びに撹拌及び振盪等の他の物理的パラメータ、並びに分散剤、乳化剤、界面活性剤、増粘剤等の他の物質の存在等の多くの要因に依存し得る。
【0047】
本明細書で使用するとき、「出血」という用語は、循環系の任意の構成要素からの血液溢出を指す。したがって、「出血」は、手術、外傷、又は他の形態の組織損傷に関連した望ましくない、制御されていない、多くの場合過度の出血、並びに、出血性疾患を有する患者における望ましくない出血を包含する。用語「血液」又はその任意の文法上の語形変化は、血漿等の血液画分も含む。
【0048】
用語「外傷」とは、物理的な力によって引き起こされる傷害として定義され、非限定的な例としては、車両事故、銃撃、及び火傷の結果が挙げられる。
【0049】
用語「粉末」は、固体粒子状材料、典型的には分散した乾燥固体粒子、例えば、典型的には0.1~1000マイクロメートルの範囲内、時には100マイクロメートル未満である、その少なくとも1つの寸法の小さなサイズを特徴とする固体の複数の粒子の形態のものを指す。
【0050】
用語「固体」は、室温(例えば、25℃)及び大気圧(760mmHg)での化合物又は組成物の状態、すなわち、保存中にその形態を保持する高粘稠度の化合物又は組成物を特徴付ける。本出願におけるこの用語は、非流体粒子、又は溶解物質にも関する。「液体」化合物及び組成物とは対照的に、固体はその自重下では流動しない。「粉末化」及び「微粒子」は、本明細書において互換的に使用できる。
【0051】
本明細書で使用するとき、「ペースト」という用語は、室温付近の少なくとも1つの温度における組成物の稠度に関し、固体粒子の流体混合物を定義する。典型的には、ペーストは一定の形状を有さないので、固体でも気体でもない。本開示による「ペースト」という用語は、スラリー、膏薬、及び軟膏を含んでもよい。スラリーは、機能的には、薄く油っぽいペーストであるとみなすことができる。本開示によるペーストはまた、空気等の膨張性ガスを含む細孔を含んでいてもよい。したがって、幾つかの実施形態では、組成物は、室温付近の少なくとも1つの温度でペーストであるか、又はペースト状の粘稠度である。
【0052】
用語「流動性」とは、粘性溶液も包含する。用語「粘性溶液」とは、流れ抵抗が高いが、流動可能な溶液を指す。幾つかの実施形態では、酸化セルロースのフィブリノゲンに対する重量比は、それぞれ1:5~2:1の範囲であり、組成物は、約400を超える粘度を有し、約3000Pa・s未満である。これについては図4を参照されたい。
【0053】
幾つかの実施形態では、ペーストは、400~2950,例えば400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、又は2990Pa・s(これらの間の任意の値及び範囲を含む)の粘度を特徴とする。
【0054】
用語「粘度」とは、せん断応力のせん断速度に対する比として定義される、流れ抵抗を示す流体及びスラリーの特性を指す。粘度は、典型的には、記述又は理解されているせん断速度を有する。本明細書全体を通して、別段の記載がない限り、粘度に関して、せん断速度は0.5秒-1であり、粘度は周囲圧力及び温度条件で測定される(「周囲条件」と呼ばれる、すなわち室温及び大気圧付近)。用語「せん断速度」とは、パイプ、環、又は他の形状である場合、流体流路の直径にわたって測定される速度勾配を指す。せん断速度は、流体のある層が隣接する層の上を通過する速度の変化率である。
【0055】
幾つかの実施形態では、組成物は、注射可能な形態である。本明細書で使用される場合、語句「注射可能な形態」とは、流動性組成物(例えば、ヒト被験体に注射、例えばシリンジ及び針を介して注射できる程度に十分に小さい粒子の形態の、架橋フィブリノゲン、重合フィブリン、及び/又は架橋フィブリンを含み得る)であり、更に好適な純度及び被験体に注射する場合に非毒性であることを指す。組成物は、均質でなければならず、様々な内径(例えば、14~32ゲージ)の針を通して注射されている間滑らかに通過するためのレオロジー特性を有していなければならない。したがって、幾つかの実施形態では、組成物はアプリケータを通過することができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、組成物は均質である。本明細書で使用される場合、「均質」とは、全体にわたって組成及びテクスチャが均一である、すなわち、粉末が分散媒全体にわたって実質的に均一に分散していることを指すことを意味する。本明細書において、「実質的に均一に分散している」とは、分散媒内の粉末の濃度が分散媒全体にわたって±30重量%未満、±20重量%未満、±10重量%未満、±5重量%未満の範囲内で変化すること、すなわち著しい固液相分離がないことを意味する。典型的には、用語「均質」は、8~40℃、10~30℃、又は20~30℃で液体/固体相分離に耐える(例えば、4重量%未満)、均一に見える生成物(例えば、ペースト)を指す。
【0057】
用語「液体媒体」、「媒体」、又は「分散媒」は、本明細書全体を通して互換的に使用され得る。本明細書では、用語「分散媒」とは、液体媒体、任意選択で、ペースト状の粘稠度を有するか又はそれを提供することができる粘度を有する液体媒体を指すことを意味する。したがって、用語「分散媒」は、一般的な意味で使用され、例えば、フィブリノゲン、トロンビン、及びOC繊維又は粉末で構成される開示されたブレンド又は粉末が、このような液体媒体に実質的に可溶性ではなく、むしろ固液系を形成することを明確にするためにのみ、用語「溶媒」ではなく使用され得る。
【0058】
「室温付近」とは、10℃~40℃又は15℃~37℃の範囲内の少なくとも1つの温度値(これらの間の任意の値を含む)、例えば、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、37℃、又は40℃を指すことを意味する。
【0059】
幾つかの実施形態では、OCのフィブリノゲンに対する重量比は、それぞれ1:5~2:1の範囲である。幾つかの実施形態では、OCのフィブリノゲンに対する重量比は、それぞれ1:4~2:1の範囲である。幾つかの実施形態では、OCのフィブリノゲンに対する重量比は、それぞれ1:3~2:1の範囲である。幾つかの実施形態では、OCのフィブリノゲンに対する重量比は、それぞれ1:2~2:1の範囲である。実施例の章、例えば図10を参照すると、ORC対フィブリノゲン比が2:1未満(1:1、1:2、及び1:5)であると、再構成されたペーストがより硬くなり、厚みがより厚くなり、約1:5の比では硬くなりすぎることが示されている。
【0060】
用語「酸化セルロース」(又は「OC」)とは、一級アルコール基の少なくとも一部、例えば、無水グルコース単位の6位の炭素がカルボン酸に酸化され、任意選択で官能化されたセルロース誘導体を指す。
【0061】
OCは、酸化剤をセルロースに適用することによって生成することができる。酸化剤は、これらに限定されるものではないが、塩素、過酸化水素、過酢酸、二酸化塩素、二酸化窒素、過硫酸塩、過マンガン酸塩、二クロム酸塩-硫酸、次亜塩素酸、次亜ハロゲン酸、過ヨウ素酸塩、若しくはこれらの任意の組み合わせ、及び/又は各種の金属触媒から選択することができる。酸化セルロースは、酸化剤の性質及び反応条件に応じて、出発物質であるセルロースの元のヒドロキシル基の代わりに、又はそれに加えて、カルボン酸、アルデヒド、及び/又はケトン基を含有してもよい。
【0062】
本開示の組成物で使用されるOCは、典型的には、繊維又は粉末(顆粒状OC、粉砕/摩砕されたOC、又は凝集形態の粉砕/摩砕されたOCとも呼ばれる)の形態であるが、これらに限定されない。摩砕/粉砕されたOCは、既存の製品からのものを含む様々な方法によって調製され得、そのような製品のいくつかの非限定的な例について以下に記載する。既存の製品のいくつかは布地の形態であるため、OC粉末は、布地を粉砕又は摩砕して粉末を得ることによって調製されてもよい。
【0063】
いくつかの実施形態では、OCは、酸化再生セルロース(ORC)を含む。
【0064】
織布若しくは不織布のORC材料、細断又はボールミル粉砕されたORC材料は、所望の低アスペクト比及び高密度のORC粒子に達するように更にローラー圧縮され得る。
【0065】
凝集形態であるか又は粉砕若しくは摩砕され得、したがって組成物の粒子を調製するために利用することができるOC系製品の例としては、INTERCEED(登録商標)吸収性癒着バリア、SURGICEL(登録商標)Original吸収性止血剤、SURGICEL(登録商標)NU-KNIT(登録商標)吸収性止血剤、SURGICEL(登録商標)FIBRILLAR(商標)吸収性止血剤、SURGICEL(登録商標)SNoW(商標)吸収性止血剤、及びSURGICEL(登録商標)粉末吸収性止血剤、GelitaCel(登録商標)吸収性セルロース包帯(Gelita Medical BV(Amsterdam,The Netherlands)製)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
OCの通常の供給源は植物材料であるが、OCは細菌源由来であってもよいことが理解される。幾つかの実施形態では、OCは、植物源由来である。
【0067】
本明細書に記載の通り、一実施形態では、開示される組成物を作製するための繊維又は粉末は、セルロース系材料を粉砕することによって調製される。摩砕工程に先行して、セルロース系原材料を細長く切って切断して材料片を形成する工程を行うことができる。
【0068】
幾つかの実施形態では、開示される組成物は、約12%~約24%のカルボキシ含有量を有するOCを有する。
【0069】
OCを参照して本明細書で使用するとき、「酸化レベル」、「酸化度」、「カルボキシル含有量」、及び「カルボキシル化レベル」という用語は互換可能であり、米国薬局方(USP)23-NF18に従って決定され得る。
【0070】
したがって、幾つかの実施形態では、OCのカルボキシル含有量は、約12%~24%(w/w)である。幾つかの実施形態では、OCのカルボキシル含有量は、12~23%(w/w)である。幾つかの実施形態では、OCのカルボキシル含有量は、12~22%(w/w)である。幾つかの実施形態では、OCのカルボキシル含有量は、約12%~約21%(w/w)である。
【0071】
非限定的な例示的な粉末は、ORC繊維及び/又は顆粒(「顆粒状ORC」とも呼ばれる)を含む固体粒子を含む。
【0072】
用語「グリセロール」とは、1,2,3-プロパントリオールを意味し、「グリセリン」としても知られており、その誘導体も包含することも意味し得る。用語「誘導体」は、親物質の必須要素を含有する化合物を指す。
【0073】
本明細書で使用するとき、「トロンビン」は、プロトロンビン(因子II)のタンパク質分解切断から生じる活性化酵素を示す。トロンビンは、当該技術分野において既知の様々な製造方法によって製造されてもよく、組換えトロンビン及び血漿由来トロンビンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
ヒトトロンビンは、ジスルフィド結合によって接合された2つのポリペプチド鎖から構成される、295アミノ酸タンパク質である。ヒトトロンビン及び非ヒト(例えば、ウシ)トロンビンの両方を、本開示の範囲内で使用することができる。
【0075】
本開示において使用されるトロンビンの起源は、血漿(例えば、ブタ血漿)、組換え細菌、及び/又は細胞(例えば、Vu et al.,2016,J.Viet.Env.8(1):21-25)、全血(幾つかの輸血からプールされてもされなくてもよい)、及び/又は血液画分(複数の輸血からプールされてもよい、例えば血漿)を含むがこれらに限定されない1つ又は複数の供給源に由来し得る。トロンビンは、Johnson and Johnson、Baxter、及びCSL Behring等の製造業者によって、スタンドアロン製品、例えばEVITHROM(登録商標)として、又は製品の成分、例えばEVICEL(登録商標)、TISEEL(登録商標)、Beriplast(登録商標)等として入手可能である。
【0076】
幾つかの実施形態では、トロンビンは、粉末1g当たり約2000~約4000IUの量で存在する。幾つかの実施形態では、トロンビンは、粉末1gr当たり約3000IUの量で存在する。幾つかの実施形態では、トロンビンは、粉末1gr当たり約2000、3000、又は4000IU(これらの間の任意の値及び範囲を含む)の量で存在する。
【0077】
本明細書において、「U」は、凝固因子単位を示し、すなわち、1mLのヒト正常血漿中の凝固因子の生理学的測定値の単位である。
【0078】
「IU」は、適切な国際標準と比較したときの、例えば、世界保健機関(World Health Organization、WHO)のSecond International Standard for Thrombin,01/580に対して較正された効力濃度測定のための内部参照標準に対する凝固アッセイによって求めたときの所与の試料における生理学的測定値である凝固因子の国際単位を指す。
【0079】
用語「フィブリノゲン」とは、それ以上記載していなくても、任意の種類のフィブリノゲンを含むことが意図される。「フィブリノゲン」とは、天然に存在していようと、修飾されていようと、又は合成であろうと、モノマー構造(AαBβγ)を有する単量体及び二量体のフィブリノゲン分子、ハイブリッド分子、及びそれらのバリアントを指す。用語「フィブリノゲン」とは、ヒト由来のフィブリノゲンを指し得るが、任意の種、特に哺乳動物種のフィブリノゲン、例えばブタ血漿から生成されるフィブリノゲンも含み得る。
【0080】
用語「水溶液」とは、溶媒として水を含む溶液を指す。この用語は、水、生理食塩水、又は出血部位を含み得る。幾つかの実施形態では、水性媒体は、水、生理食塩水、塩化カルシウム溶液、又は緩衝水性媒体から選択される。
【0081】
例示的な実施形態では、水溶液は、生理食塩水を含む。本明細書で使用される場合、用語「生理食塩水」とは、約0.5重量%超かつ約20重量%未満の濃度の塩を含有する水、例えば、脱塩水中約0.9w/w%塩化ナトリウム溶液を指す。
【0082】
幾つかの実施形態では、粉末の少なくとも一部は、凝集体又は顆粒の形態である。「凝集体」という用語は、合わせられた構成要素から形成された粒子を説明する。凝集体は、任意選択で、粉末組成物を加湿する工程、粉末を、例えば、ローラーによって圧縮して及び/又は粉末を強打して凝集体を形成する工程、除湿する工程、摩砕する工程、凝集体をふるい分けする工程、任意選択で、得られた凝集体を貯蔵容器又は送達装置内に投入する工程、のうちの1つによって作製されてもよい。用語「顆粒」又は「顆粒材料」とは、特に、典型的には900マイクロメートル未満、800マイクロメートル未満、700マイクロメートル未満、又は更には500マイクロメートル未満の粒子の集塊を意味し得る。すなわち、粒子の少なくとも一部は、離散固体の形態ではない。幾つかの実施形態では、高せん断混合を利用して、フィブリノゲン、トロンビン、及び任意選択でCaCl、及びORCの粒子から凝集体を構築する。
【0083】
別の実施形態では、組成物は、混合物の形態である。混合物は、例示的な実施形態では、フィブリノゲンを含む噴霧乾燥された第1の微粒子をトロンビン、例えばヒトトロンビンを含む噴霧乾燥された第2の微粒子と組み合わせて含んでいてよく、これらは例えば10マイクロメートル~約250マイクロメートル又はそれを超える粒子を一緒に形成する。
【0084】
追加的に又は代替的に、繊維及び化合物を含む本開示による粉末組成物は、任意選択で、例えば、米国特許第10,034,957号に記載されているように乾燥、粉砕/摩砕、及び篩分けの工程を使用して、凝集体の形態に圧縮される。使用されるふるいは、粉末の粒径を規定する。
【0085】
本開示の任意の態様の幾つかの実施形態では、複数の粒子は、最大約900μmの中央粒径を特徴とする。
【0086】
幾つかの実施形態では、粉末のうちの少なくとも90%の粒径は、10~2,000μmの範囲である。幾つかの実施形態では、粉末のうちの少なくとも90%の粒径は、10~1,000μmの範囲である。幾つかの実施形態では、粉末のうちの少なくとも90%の粒径は、100~1,000μmの範囲である。幾つかの実施形態では、粉末のうちの少なくとも90%の粒径は、200~1,000μmの範囲である。幾つかの実施形態では、粉末のうちの少なくとも90%の粒径は、100~900μmの範囲である。幾つかの実施形態では、粉末のうちの少なくとも90%の粒径は、200~900μmの範囲である。
【0087】
本開示の任意の態様の幾つかの実施形態では、複数の粒子は、約100~約900μmの中央粒径を特徴とする。本開示の任意の態様の幾つかの実施形態では、複数の粒子は、約200~約900μmの中央粒径を特徴とする。
【0088】
「D50」とも称される用語「中央値」とは、粒径に関して、集団の50%がこのサイズよりも大きいか又は小さくなるように集団を半分に分ける粒径を指す。
【0089】
用語「粉末の少なくとも一部が凝集形態である」とは、粉末中の粒子の集団の一部、例えば少なくとも10%~100%が凝集体を形成することを指す。
【0090】
幾つかの実施形態では、組成物は、フィブリンを更に含む。
【0091】
用語「フィブリン」とは、完全に凝固したフィブリノゲンを指すだけでなく、トロンビンを使用してフィブリノゲンからフィブリンを形成している間に生じ得るフィブリンとフィブリノゲンとの任意の混合物を更に含み、したがって、組成物の最終的なペースト状のテクスチャに悪影響を及ぼさない限り、考えられ得る任意の比のフィブリノゲン/フィブリン並びに任意の程度のゲル化及び/又は凝固を含む。更に、用語「フィブリン」は、任意の部分的に又は完全に架橋された、ゲル化した、又は凝固した形態を更に含む。
【0092】
したがって、フィブリンそれ自体は、フィブリルを含む高分子不溶性マトリックスとして存在し、各フィブリルは多くのフィブリン分子を含むことが理解される。
【0093】
幾つかの実施形態では、グリセロールは、分散媒の約15体積%を超える濃度で存在する。幾つかの実施形態では、グリセロールは、分散媒の約40体積%を超える濃度で存在する。幾つかの実施形態ではグリセロールは、分散媒の約80体積%以下の濃度で存在する。幾つかの実施形態ではグリセロールは、分散媒の約70体積%以下の濃度で存在する。幾つかの実施形態では、グリセロールは、分散媒の約60体積%以下の濃度で存在する。
【0094】
幾つかの実施形態では、グリセロールは、分散媒の約15体積%超~約80体積%の濃度で存在する。幾つかの実施形態では、グリセロールは、分散媒の約15体積%超~約80体積%の濃度で存在する。幾つかの実施形態では、グリセロールは、分散媒の約15体積%超~約60体積%の濃度で存在する。幾つかの実施形態では、グリセロールは、分散媒の約40体積%超~約80体積%の濃度で存在する。幾つかの実施形態では、グリセロールは、分散媒の約40体積%超~約60体積%の濃度で存在する。
【0095】
幾つかの実施形態では、グリセロールは、分散媒の約15体積%、約20体積%、約25体積%、約30体積%、約35体積%、約40体積%、約45体積%、約50体積%、約55体積%、約60体積%、約65体積%、約70体積%、約75体積%、又は約80体積%(これらの間の任意の値及び範囲を含む)の濃度で存在する。
【0096】
図3A図3Dを参照すると、70%グリセロール試料は、上述の分散媒中に分散させるとペースト状組成物を提供したが、80%グリセロール試料は、主にORC対フィブリノゲン重量比(「比」)が2:1~1:2の試料について、より高い流動性を示し、その結果、組成物が創傷部位に留まる能力が低くなり、凝固速度も遅くなる(1:5試料については180秒を超え、70%グリセロール試料(1:2及び1:5の比)についての血液凝固時間は、70秒であった)。更なる結果は、図6に示す通り、(i)2:1~1:1のORC対フィブリノゲン重量比では、分散媒中のグリセロールの好ましい濃度(以下に記載の通り、酵素活性を損なわない)は15体積%超~50体積%未満であり、各時点について60秒未満の凝固時間を提供すること、及び(ii)20時間後に15%グリセロール試料について液体-固体相分離が生じたことを示した。
【0097】
幾つかの実施形態では、粉末は、噴霧乾燥及び/又は高せん断混合される。
【0098】
用語「噴霧乾燥」とは、本明細書では広い意味で使用され、液体中に溶解又は懸濁している固体を粉末に変換するためのプロセスを含むが、これらに限定されない。典型的には、噴霧乾燥は、噴霧ノズルを通して高温空気流中に噴霧し、即座に乾燥させる、溶液、懸濁物、又はエマルジョンから粉末を作製するために使用される乾燥方法である。その活性を維持しているトロンビン及びフィブリノゲン粉末を生成するための噴霧乾燥プロセスは、幾つかのプロセスパラメータによって制御することができ、その中には、カラム空気流及び温度、ノズルサイズ及び噴霧空気流速、並びに材料流速があるが、これらに限定されない。その活性を維持しているトロンビン及びフィブリノゲンのブレンド(例えば、粉末形態)を生成するためのロバストなプロセスを確立するために使用される非限定的な例示的パラメータについては、以下の実施例の章に提供する。
【0099】
用語「高せん断混合」とは、一般に、乱流タイプの混合を意味する。幾つかの実施形態では、高せん断混合は、150~500rpmの範囲の混合ブレードの速度及び/又は切断ブレードの速度を特徴とする。
【0100】
追加的に又は代替的に、例えばフィブリノゲン溶液及び/又はトロンビン溶液を凍結乾燥し、続いて微粉化する等であるがこれらに限定されない他の方法を、乾燥組成物を得るために使用してもよい。典型的には、溶液の凍結乾燥後、「ケーキ」(本明細書では「固体組成物」と称する場合もある)と呼ばれる多孔質かつスポンジ状の固体材料が得られる。
【0101】
用語「微粉化」とは、例えば固体組成物から生成される粒子の直径がわずか数マイクロメートルである場合に使用される。微粉化は、ジェットミル粉砕、パールボールミル粉砕、高圧ホモジナイゼーション、RESS(超臨界溶液の急速膨張)プロセス、SAS(超臨界貧溶媒)法、又はPGSS(ガス飽和溶液からの粒子)法を含むがこれらに限定されないプロセスによって達成することができる。典型的には、微粉化の結果、タンパク質粉末はその元のサイズから30~400倍サイズが減少するが、これに限定されない。
【0102】
幾つかの実施形態では、組成物は安定である。
【0103】
用語「安定である」及び「安定性」とは、開示されるペーストに言及する場合、例えば、トロンビン内の活性成分が特定の温度で特定の期間後に少なくとも70%活性が残っている、すなわち、フィブリン塊を形成することができることを意味する。
【0104】
幾つかの実施形態では、組成物は、保存安定性組成物である。用語「保存安定性である」とは、典型的には、製剤の予め選択された保存温度、予め選択された物理的状態を含む予め選択された保存条件(例えば、pH)下で安定である、容器、例えばバイアル又はシリンジ内に存在する製剤、組成物を指すものとして理解される。安定性は、当技術分野において既知の方法によって、例えば製剤が液体又はペースト形態であるとき、予め選択された保存条件下で製剤中に視認できる凝集体、レムナント、及び/又はフィブリン塊が存在しないかどうかを試験することによって判定することができる。更に、本開示によれば、安定なシーラント組成物又は製剤に言及するとき、それは、使用時に、幾つかの製剤の保存条件に関係なく有効な凝固時間を有すると理解され、例えば、シーラント製剤は、室温(例えば、8~40℃)で保存されたか、更に低い温度(例えば、8℃未満)で保存されたかどうかに関係なく本質的に同じ期間で凝固する。
【0105】
幾つかの実施形態では、組成物は、約室温で約4~約6.5のpHを有する。これに関しては、以下の実施例の章、例えば図7~9を参照されたい。幾つかの実施形態では、組成物は、約室温で約4、4.5、5、5.5、6、又は約6.5(これらの間の任意の値及び範囲を含む)のpHを有する。
【0106】
幾つかの実施形態では、その任意の実施形態における組成物は、約室温において4~6.5のpHで少なくとも約20時間にわたって安定したままである。幾つかの実施形態では、その任意の実施形態における組成物は、約室温において4~5のpHで少なくとも約20時間にわたって安定したままである。
【0107】
幾つかの実施形態では、約室温において4~6.5のpHで少なくとも20時間、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、又は少なくとも7日後に、25重量%未満、24重量%未満、23重量%未満、23重量%未満、22重量%未満、21重量%未満、又は20重量%未満のレムナントが検出された。
【0108】
幾つかの実施形態では、組成物は、その任意の実施形態において、組成物内に含有されている又は組成物の表面上にある追加の薬学的活性剤を更に含む。
【0109】
幾つかの実施形態では、薬学的活性剤は、治療的活性剤及び標識剤からなる群から選択される。
【0110】
幾つかの実施形態では、治療的活性剤は、幹細胞、成長因子、骨形成タンパク質、細胞、サイトカイン、ホルモン、医薬、ミネラル、治療能を有するプラスミド、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。本明細書に記載の通り、幾つかの実施形態では、組成物は、少なくとも1つの生物学的活性剤を更に含んでもよい。組成物に含まれ得る非限定的な生物学的活性剤としては、カルシウム、並びに抗生物質、抗炎症剤、増殖因子、又は凝固因子などの治療薬が挙げられる。具体的には、開示される組成物は、カルシウム塩、第VIII因子、第XIII因子、フィブロネクチン、ビトロネクチン、フォンヴィレブランド因子(vWF)等であるがこれらに限定されない塊の形成を促す成分を含むことも可能であり、これらの成分は、別々の成分として提供されてもよく又はブレンド若しくはペーストと共に配合されてもよい。
【0111】
任意選択で、薬学的活性剤をタンパク質(すなわち、フィブリノゲン又はフィブリン)マトリックスに結合させる(例えば、タンパク質に共有結合させる)。この剤は、マトリックスを調製した後にマトリックスに結合させてもよく、及び/又は成分(例えば、タンパク質及び/又は還元糖)に結合させてもよく、次いで、これを使用してタンパク質マトリックス、例えば、架橋フィブリンを調製する。
【0112】
代替的又は追加的に、剤は架橋タンパク質マトリックスによって吸収される。吸収は、例えば、架橋フィブリノゲン若しくはフィブリンマトリックス又は非架橋フィブリンマトリックスを、剤を含有する溶液と接触させることによって(例えば、液浸、浸漬、洗浄によって)、あるいは架橋前に剤を添加する(例えば、架橋溶液中に剤を含める、フィブリノゲン及びトロンビンの溶液中に剤を含める)ことによって得ることができる。
【0113】
本明細書に記載される組成物、並びに上述のキットの内容物は、所望であれば、組成物又は組成物を調製するための成分(例えば、フィブリノゲン)及び/若しくは試薬(例えば、分散媒)を含有する1つ以上の単位剤形を含有し得るパック又はディスペンサー装置で提供され得る。ブリスターパック等のパックは、例えば、金属又はプラスチック箔を含んでいてよい。パック又はディスペンサー装置には、投与説明書が添付されていてもよい。パック又はディスペンサー装置には、医薬品の製造、使用、又は販売を規制する政府機関によって規定された形態で通知を添付してもよいが、この通知は、ヒト又は動物に投与するための組成物の形態の当該政府機関による承認を反映している。このような通知は、例えば、処方薬について米国食品医薬品局(FDA)によって承認された表示、又は承認された製品添付文書を含み得る。薬学的に許容可能な担体中に配合された本発明の調製物を含む組成物はまた、本明細書に更に詳述される通り、指定の用途のための使用及び/又は指定の状態の治療のために調製され、適切な容器に入れられ、そしてラベル付けされてもよい。用語「調製物」とは、治療的使用に生理学的に適したものを指す。
【0114】
本開示の実施形態の組成物は、例えば、創傷治癒を促進するために、医療デバイスに添付されてもよく又は医療デバイスに含まれてもよいことが理解される。
【0115】
本開示の別の態様では、任意の態様又はその実施形態における開示される組成物は、例えば、任意の態様及び/又はその実施形態における開示される組成物を組織の表面に塗布することによって、被験体の損傷組織の中/上でフィブリンシーラントを調製する方法において使用するためのものである。
【0116】
本開示の別の態様では、例えば、任意の態様及び/又はその実施形態における開示される組成物を組織の表面上に止血剤として塗布することによって、被験体の損傷組織の中/上でフィブリンシーラントを調製する方法が提供される。
【0117】
本開示の別の態様では、その実施形態による組成物を作製する方法であって、ORC繊維、フィブリノゲン、及びトロンビンの凝集形態を形成することを可能にする条件で、OC又はORC繊維をフィブリノゲン粉末及びトロンビン粉末と組み合わせることと、凝集体を、グリセロール及び水溶液を含む分散媒と組み合わせることと、を含む、方法が提供される。
【0118】
幾つかの実施形態では、そのような条件は、フィブリノゲンのフィブリンへの少なくとも部分的な変換を可能にする。幾つかの実施形態では、この条件は、本明細書全体を通して詳述される通り、例えば分散媒に特定の量の水溶液を添加することによって、フィブリンの少なくとも部分的な重合を可能にする。
【0119】
ORC繊維、フィブリノゲン、及びトロンビンの粉末/凝集形態の形成を可能にする条件としては、例えば高せん断プロセスによる粉末及びOC繊維の微粉化、例えば4~6の分散媒のpH、及び限定されるものではないが10~50℃、45~50℃、又は20~30℃等の温度範囲が挙げられるが、これらに限定されない。
【0120】
本発明の状況において、「フィブリンシーラント」及び「生物学的糊」とも呼ばれる用語「シーラント」とは、組織及び/又は血液と接触又は近接すると、反応してその後塊を形成し、更に組織接着剤として作用し、それによって出血を阻止、低減、若しくは停止する、構造物を接合する、及び/又は例えば脳脊髄液(CSF)、リンパ液、胆汁、胃腸(GI)内容物の生理学的漏出、肺からの漏気等を封止することができる成分を有する、例えば開示された組成物を起源とするか又はそれに由来するもの等の接着剤、糊、又は止血剤であると理解されるべきである。幾つかの実施形態では、シーラント製剤は1つ以上の治療薬も含み、その結果、体内で形成された塊が自然に分解したときに治療薬が放出される。治療薬は、抗生物質、鎮痛剤、抗炎症薬、制癌薬等の薬物、例えば、ヒト又は他の起源由来の任意の種類の幹細胞、例えば胚幹(ES)細胞、成体幹細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)等を含む細胞であってよいが、これらに限定されない。
【0121】
用語「止血」とは、例えば血餅形成を促進することによって、手術創又は外傷等の創傷からの失血を阻止、低減、又は停止する能力を指す。
【0122】
「止血(hemostasis)」(又は「止血(haemostasis)」)は、創傷治癒の第1段階を指す。これは、出血を止めるプロセスである。「止血を助ける」とは、出血を低減する又は止めるのを助けることを意味する。「出血している組織に塗布する」とは、出血を制御するために出血部位、例えば手術部位に組成物を局所的に塗布することを指すことを意味する。出血の制御は、創傷の治療を含む様々な状況において必要とされる。
【0123】
本明細書で使用される場合、用語「制御する」、「阻止する」、又は「低減する」とは、出血に関して本明細書で互換的に使用してよく(そのあらゆる文法的な語形変化を含む)、これは、溢血の速度を、本質的に無効にする(nullified)か又は開示される組成物が出血部位中/上に接触していない状況と比較して、初期出血速度の10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は更には100%低下させることを示す。出血の出現のレベルを決定するための方法は、当該技術分野において既知である。
【0124】
更に、幾つかの実施形態では、出血に関して、用語「制御する」、「阻止する」、又は「低減する」とは、例えば軟組織の出血部位において血管を少なくとも部分的に封止することを包含することも意味する。
【0125】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、任意の動物を意味するものとし、限定されないが、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、又は任意の他の哺乳動物が含まれる。いくつかの実施形態では、対象は、ヒト(例えば、ヒト患者)である。対象は、雄性又は雌性であり得る。
【0126】
本明細書で使用される場合、用語「傷害組織」(又は「損傷組織」)とは、手術によって引き起こされる切開等の物理的(例えば、機械的)力、生物学的手段(例えば、熱又は化学線の力)、又は化学的手段によって引き起こされる構造物の正常な連続性の破壊を指す。用語「傷害組織」とは、挫傷した組織、及び切傷、刺傷、又は裂傷を受けた組織、並びに開口、穿刺、並びに例えば、引き裂き、引っ掻き、圧力、及び咬傷によって引き起こされた傷害も包含する。用語「傷害組織」はまた、本明細書全体を通して記載されるような創傷及び出血部位も包含する。
【0127】
用語「組織」とは、軟組織及び骨組織から選択される組織を指し得る。
【0128】
「軟組織」という用語は、明細書で使用するとき、固化又は石灰化されていない身体組織に関する。この用語は、血管新生されており、したがって出血源であり得る軟組織に関する。このような組織の例としては、結合組織(腱、靱帯、筋膜、皮膚、繊維性組織、脂肪、及び滑膜など)、筋肉、及び内臓器官が挙げられるが、これらに限定されない。一般に、軟組織は、骨組織を除外することを意味する。
【0129】
したがって、幾つかの実施形態では、開示される組成物は、その任意の実施形態において、例えば、内視鏡下手術等の最小侵襲手術(MIS)中に、到達困難な出血部位に塗布して使用され得る。内視鏡下手術の一般的な形態の1つは、腹腔内部の最小侵襲性検査及び手術である腹腔鏡下手術である。
【0130】
用語「手術」はまた、外科的又は診断的手技中又はその後の時間も包含する。手技の更なる非限定的な例としては、神経手術、腹部手術、心臓血管手術、胸部手術、頭頸部手術、骨盤手術、並びに皮膚及び皮下組織手技が挙げられる。これらの状況のうちの少なくとも1つについて、本発明の組成物は、出血している創傷に接着することができ、したがって、創傷組織の状態、例えば、出血の重症度に依存することなく止血に対処することができる、好適なシーラントとして機能し得る。シーラントの形成は、任意の態様及び/又はその実施形態における開示される組成物を傷害組織に塗布した後、比較的短い凝固時間で起こる。典型的には、1~3分のタンポン充填後に使用すると、不完全な塊が形成される場合があり、これにより出血を停止することが可能になるが、凝固反応がペースト表面に達して完全な塊を形成するためにはより多くの時間が必要とされ得る。
【0131】
本発明の別の態様では、創傷を治療する方法であって、それを必要とする被験体の創傷上及び/又は中に、任意の態様及び/又はその実施形態における開示される組成物を塗布する(例えば、接触させる)工程を含む方法が提供される。
【0132】
「創傷を治療する」とは、例えば、手術を受けている患者において、(インビボで)組織の出血部位における失血を低減することを包含することを更に意味する。図12及び図13を参照すると、本明細書に開示される試験された試料の高い止血成功率(60%超)が示されている。
【0133】
したがって、幾つかの実施形態では、方法は、例えば、手術を受けている患者において、組織の出血部位における失血を低減する及び/又はそのような組織中/上にシーラント層を形成するためのものであり、その実施形態における開示される組成物を出血部位及び/又はその近傍と接触させることを含む。任意選択で、この方法は、迅速な凝固時間を促進するために、このような組織に生理食塩水等の水溶液を最初に塗布し、その後、開示される組成物を水溶液上に塗布することを含む。したがって、幾つかのこのような実施形態では、組成物は、その任意の実施形態において、組織の出血部位で止血剤として使用するためのものである。
【0134】
本発明の実施形態の別の態様によれば、本明細書に記載の組成物を生成するためのキットが提供される。組成物の稠度は、例えば、組成物を出血部位の上に直接塗り広げることによって又は付着させることによって適用することができるようなものであることが理解される。したがって、組成物は、出血部位に塗布するのに適切な形態とするために、固体表面、物体、又はストリップ若しくはフィルム等の他の固体媒体上に更に広げる必要も、塗布する必要もない。それにもかかわらず、組成物を出血部位上に適用する、塗り広げる、又は付着させるために、容易なアクセス及び取り扱いを目的として、例えば、注射器などの好適なアプリケータを使用してもよい。
【0135】
更なる態様及び/又は実施形態では、本発明は、a)上記の本発明の組成物を収容する容器と、b)組成物を組織に塗布するためのアプリケータと、c)任意選択で使用説明書と、を含む、キットを提供する。
【0136】
別の実施形態では、本発明は更に、その実施形態において本明細書に開示される組成物を収容する容器を含む止血キットを提供する。
【0137】
幾つかの実施形態によれば、(i)酸化セルロース、フィブリノゲン、及びトロンビンを含み、酸化セルロースのフィブリノゲンに対する重量比がそれぞれ1:5~2:1の範囲である粉末と、任意選択で(ii)グリセロール及び任意選択で水溶液を含む分散媒と、を含み、室温でペースト状懸濁物の形態である組成物を調製するためのキットが提供される。(i)及び(ii)は各々、別個の容器中に存在していてもよい。
【0138】
本明細書全体を通して開示される組成物の任意の態様及び実施形態は、組成物、分散媒、及び/又は粉末の実施形態を含む、キットの態様及び実施形態に組み込まれ得る。
【0139】
任意選択で、フィブリノゲン及びトロンビンは、それぞれ個別に(例えば、乾燥形態又は溶液で)キットに包装される。したがって、2つの成分は各々、キット全体の包装材料に加えて、別個の包装材料に包装される。
【0140】
あるいは、フィブリノゲン、トロンビン、及び酸化セルロースは、同じ包装材料においてキットに(例えば、乾燥粉末として)一緒に包装され、任意選択で、分散媒は、追加の容器で提供される。幾つかの実施形態では、キットは、所望の組成物を生成するために、キットの成分をどのように組み合わせるか及び/又はキットの成分を追加の成分(例えば、分散媒)とどのように組み合わせるかに関する説明書を更に含む。
【0141】
任意選択で、キットは分散媒を更に含む。グリセロール等の分散媒は、純粋な形態であってもよく、別の液体(例えば、水、生理食塩水、又は水性バッファ)との溶液であってもよい。任意選択で、分散媒は、粉末とは別に個別に包装される。あるいは、分散媒は、例えば、本明細書に記載される使用準備完了組成物として、粉末と組み合わせて包装される。そのような実施形態では、キットは、分散媒又はその成分の体積を測定するための測定手段、例えば、測定シリンダーを更に含んでいてもよい。
【0142】
追加的に又は代替的に、止血キットは、ブレンド、混合物、又は粉末を収容するシリンジと、分散媒を収容する別のシリンジと、を含んでいてもよい。例えば、デュアルシリンジ混合装置は、当初は別々の液体及び粉末を混合し、次いで、ブレンドされた内容物を、相互連結された出口を介して2本の連結されたシリンジ間で前後に送ることによって、実質的に均質なペースト混合物を生成することができる。したがって、ペーストをシリンジから分配するための圧出力が低いことが、混合を容易にするために、また究極的には、結果として得られるペーストを展開するために好ましい場合がある。所望の圧出力は、1.51lbf未満であり得る。
【0143】
幾つかの実施形態では、キットにおける容器のうちの少なくとも1つは、プレフィルドシリンジである。幾つかの実施形態では、キットの容器(複数可)に加えてシリンジが提供される。幾つかの実施形態では、容器は、バイアル又はシリンジ等のアプリケータ等の特定のタイプである。
【0144】
幾つかの実施形態では、キットにおける容器のうちの少なくとも1つは、プレフィルドシリンジである。幾つかの実施形態では、キットの容器に加えてシリンジが提供される。用語「容器」とは、ペーストを収容することができる容器又はバイアル等の任意の一般的な構造物を指し得る。
【0145】
キットは、組成物の注射液を数回連続して投与するために使用され得るアプリケータデバイスを使用して適用され得る。一実施形態では、アプリケータデバイスによれば、デバイスを移動させながら、組織の2D表面上に一定用量の混合成分を複数回注射することができる。一実施形態では、アプリケータは、注射針を備えたシリンジを有し、当該注射針は、任意選択で、注射が完了した後に投与者がデバイスを注射表面から上方に持ち上げる必要なく患者の皮膚から自動的に後退する。一実施形態では、キットは、シーラントを投与するために使用され得る。
【0146】
本発明の止血キットは、例えば開放創における血流の低減、阻止、又は停止に使用するためのキットであってもよく、それは、外科手技、例えば、腹腔鏡下手術、神経手術、腹部手術、心臓血管手術、胸部手術、頭頸部手術、骨盤手術、並びに皮膚及び皮下組織手術の間、前、又は後に血流を低減、阻止、又は停止するために使用することができる。キットは、皮膚又は内臓からの血流を低減又は阻止するために使用することができる。
【0147】
一実施形態では、このキットは、室温で、例えば8~40℃の範囲の温度で、又はより低温で保存され得る。
【0148】
本明細書に開示されるキット又は組成物の任意の態様の幾つかの実施形態では、粉末又はブレンドは、添加剤、例えばカルシウム塩並びに/又は例えば、限定されるものではないが、1つ以上のアミノ酸、アルブミン、糖類、及び/若しくは糖誘導体から選択される1つ以上の賦形剤を含んでいてもよい。
【0149】
用語「添加剤」は、組成物に添加され得る任意の物質として理解されることを意味し、以下に記載する通りのカルシウム塩等の活性添加剤も含み得る。
【0150】
本明細書で使用される場合、用語「賦形剤」とは、例えば、所望の粘稠度又は安定化効果を提供するために医薬組成物に添加される非活性又は非治療剤を意味する。
【0151】
カルシウムは、凝固カスケードにおける重要な元素であり、第XIII因子を活性化して、フィブリンを架橋及び安定化させて不溶性塊を生成する第XIIIa因子にするために必要であり得る。
【0152】
したがって、開示されるキット及び/又は組成物の任意の態様の幾つかの実施形態では、ブレンド、混合物、又は粉末は、例えば、限定されるものではないが、カルシウム等の添加剤を更に含む。本発明で使用されるカルシウムは、塩、例えば塩化カルシウム塩の形態であってもよい。代替的に、酢酸カルシウム及び/又はクエン酸カルシウムなどの追加の塩を使用してもよい。キットにおいて、カルシウム塩は、粉末を含む組成物で提供され得る。あるいは、賦形剤及び/若しくはカルシウム塩は、キットにおいて別個の容器で提供されてもよく、又は賦形剤及び/若しくはカルシウム塩は、キットにおいて、ブレンド/混合物/粉末成分を含む同じ容器で提供されてもよい。
【0153】
キット又は組成物の幾つかの実施形態では、カルシウム塩、例えば塩化カルシウム(CaCl)は、粉末の0.5重量%~約4重量%、又は2重量%~4重量%、又は2.5重量%~3.5重量%の濃度で存在する。幾つかの実施形態では、カルシウム塩、例えば塩化カルシウムは、ブレンドの0.5重量%、1重量%、1.5重量%、2重量%、2.5重量%、3重量%、3.5重量%、又は4重量%(これらの間の任意の値及び範囲を含む)の濃度で存在する。
【0154】
OCは酸性であることが知られており、この酸性により、トロンビン及びフィブリノゲン等の血漿タンパク質は直ちに変性するので、酸化セルロースとトロンビン及び/又はフィブリノゲンとを同時投与すると、血漿タンパク質の効果がなくなる恐れがある。
【0155】
幾つかの実施形態では、緩衝剤は、pHを調整するために組成物に添加される。
【0156】
幾つかのそのような実施形態では、(例えば、pH約7に)pHを調整するために、緩衝剤、例えばトリス、又はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンバッファ、又はリシンが、フィブリノゲン、トロンビン、及びORCブレンド/混合物/粉末に粉末形態で添加される。幾つかの実施形態では、緩衝剤、例えばトリス又はリシンは、ブレンド/混合物/粉末の0~25重量%、4重量%~8重量%、又は5重量%~7重量%の濃度で存在する。幾つかの実施形態では、緩衝剤、例えばトリス又はリシンは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は約25重量%(これらの間の任意の値及び範囲を含む)の濃度で存在する。
【0157】
キット及び/又は組成物の任意の態様の幾つかの実施形態では、粉末は、アミノ酸、例えばリシンから選択される賦形剤を更に含む。キット及び/又は組成物の任意の態様の幾つかの実施形態では、ブレンド又は粉末は、OC及びリシンを含む。
【0158】
幾つかの実施形態では、フィブリノゲンは、粉末の20重量%~80重量%、60重量%~95重量%、又は70重量%~90重量%の濃度範囲で存在する。幾つかの実施形態では、フィブリノゲンは、粉末の20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、又は90重量%(これらの間の任意の値及び範囲を含む)の濃度で存在する。
【0159】
例示的な実施形態では、ブレンド又は粉末は、粉末の総重量に対して20~80重量%のフィブリノゲン粉末、2000~4000IUのトロンビン/用量粉末、粉末の総重量に対して10~50%のORC粉末、粉末の総重量に対して2~4%のCaCl粉末、粉末の総重量に対して0~25%のリシン粉末を含む。本明細書において、「用量」は約1.2gを意味する。
【0160】
キット及び/又は組成物の任意の態様の幾つかの実施形態では、開示される組成物は、創傷の表面を被覆するための機械的強度を与えるために裏材、パッド、包帯、ガーゼ、スポンジ、スカフォールド、又はマトリックスと併せて使用することもできる。この場合、本マトリックスは、適用又はタンポン充填を容易にするためのパッド上で支持される。
【0161】
キット及び/又は組成物の任意の態様の幾つかの実施形態では、組成物は無菌である。特に、血液製品を取り扱う場合、無菌性の問題、具体的には、ウイルス不活性化の問題が重要である。一般に、ウイルス不活性化は、溶媒洗剤、熱不活性化、照射、及びナノ濾過を含む任意の数の方法によって実施され得る。典型的には、ウイルス不活性化の標準では、2つの異なる方法を使用する必要がある。更に、無菌性についてのFDA規格では濾過を必要とする。
【0162】
本明細書で使用される場合、用語「無菌」とは、生物汚染度が低い、有効に病原体を含まない、例えば、微生物、例えば細菌及びウイルスを本質的に又は絶対的に含まないことを意味する。滅菌は、有効に病原体を含まないレベルまで生物汚染度を低下させるプロセスである。無菌液体又はペーストは、一般に、滅菌濾過を受けた液体又はペーストとして定義される。
【0163】
用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(having)」及びそれらの複合体は、「含むが、これらに限定されない(including but not limited to)」を意味する。「~からなる(consisting of)」という用語は、「包含し、限定される(including and limited to)」ことを意味する。「~から本質的になる(consisting essentially of)」という用語とは、組成物、方法又は構成が、追加の成分、工程及び/又は部分を含み得ることを意味するが、追加の成分、工程及び/又は部分が、特許請求される組成物、方法又は構成の基本的かつ新規の特性を実質的に変えない場合に限る。
【0164】
「例示的な」という語は、本明細書では、「実例、事例、又は例解としての役割を果たす」ことを意味する。「例示的な」として記載される任意の実施形態は、他の実施形態よりも好ましい又は有利であると必ずしも解釈される必要はない、及び/又は他の実施形態からの特徴の組み込みを必ずしも排除する必要はない。
【0165】
本明細書では、「任意選択的に(optionally)」という語は、「いくつかの実施形態では提供され、他の実施形態では提供されない」ことを意味する。本発明の任意の特定の実施形態は、このような特徴が矛盾しない限り、複数の「任意選択的な(optional)」特徴を含み得る。
【0166】
本発明で使用する場合、その内容に別段の明確な指示がない限り、単数形「a」、「an」及び「the」は複数の指示物を含むものとする。例えば、用語「化合物(compound)」又は「少なくとも1つの化合物(at least one compound)」は、これらの混合物を含む複数の化合物を含んでよい。
【0167】
本出願全体を通して、本発明の種々の実施形態が範囲形式にて提示され得る。範囲形式の説明は単に便宜上及び簡潔さのためのものであり、本発明の範囲上の確固とした制限として解釈されるべきではないことが理解されるべきである。したがって、範囲の説明は、全ての可能な部分範囲、並びにその範囲内の個々の数値を具体的に開示しているとみなされるべきである。例えば、1~6などの範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの具体的に開示される部分範囲、並びにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、3、4、5、及び6を有するとみなされるべきである。これは、範囲の広さにかかわらず適用される。
【0168】
数値範囲が本明細書に示される場合はいつでも、示された範囲内の任意の引用された数字(分数又は整数)を含むことを意味する。用語、第1の表示番号と第2の表示番号との「間の範囲(ranging)/範囲(ranges)」、及び第1の表示番号「から」第2の表示番号「までの範囲(ranging)/範囲(ranges)」が本明細書で互換的に使用されるが、これは、第1及び第2の表示番号並びにこれらの間の全ての分数及び整数を含むことを意味する。
【0169】
本発明で使用する場合、用語「方法」とは、所与のタスクを達成するための方法、手段、技術及び手順を意味し、化学的、薬理学的、生物学的、生化学的及び医学的分野の施術者による既知の方法、手段、技術及び手順として、知られるか又は容易に開発されるか、のいずれかの方法、手段、技術及び手順のようなものを含むが、これらに限定されない。
【0170】
本発明で使用する場合、用語「治療する(treating)」は、病状の進行を抑制すること、実質的に阻害すること、緩徐化すること、若しくは逆行させること、状態の臨床症状若しくは審美的症状を実質的に改善すること、又は状態の臨床症状若しくは審美的症状の外観を実質的に予防することを含む。
【0171】
「A、B、及びCなどのうちの少なくとも1つ」に類する表記が用いられる場合、一般に、このような構文は、当業者がその表記を理解するであろう意味で意図されている(例えば、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つを有する組成物」は、限定するものではないが、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとBの両方、AとCの両方、BとCの両方及び/又はAとBとCの全てなどを有する組成物を含む)。明細書、特許請求の範囲、又は図面のいずれにおいても、2つ以上の代替用語を提示する事実上全ての分離語及び/又は句は、用語のうちの1つ、用語のいずれか、又は両用語を含む可能性を考慮すると理解されるべきであることを当業者は更に理解するであろう。例えば、語句「A又はB」は、「A」若しくは「B」又は「A及びB」の可能性を含むものと理解されよう。
【0172】
本発明の特定の特徴は、明確性のために別個の実施形態の文脈において記載されているが、これはまた、単一の実施形態において組み合わせて提示され得ることが理解されている。逆に、本発明の様々な特徴は、簡潔さのために、単一の実施形態の文脈において記載されているが、これはまた、別個に、若しくは任意の好適な部分的組み合わせで、又は本発明の任意の他の記載される実施形態において、好適にもたらされてもよい。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしには動作不可能である場合を除き、それらの実施形態の必須特徴であるとして考慮されるべきではない。
【0173】
本明細書で使用される場合、用語「約」とは、指定の値よりも10%高い又は低い値も含むことが意図されることを意味する。特に指示がない限り、例えば、比、重量、モル/モル、量、粘度、温度などを表すものなどの全ての数は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、特に逆の指定がない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載されている数値パラメータは、本発明が得ようとする所望の特性に応じて最大で±10%変化し得る近似値である。
【0174】
本明細書の上記で詳述され、以下の特許請求の範囲において特許請求されるような、本発明の種々の実施形態及び態様は、以下の実施例において実験的な裏付けを見出す。
【実施例
【0175】
ここで、上記の説明と併せて、非限定的な方法で、本発明のいくつかの実施形態を例解する、以下の実施例を参照する。
【0176】
実施例1:ORC、トロンビン、及びフィブリノゲン粉末の生成プロセス
材料及び方法:
フィブリノゲン及びトロンビンの供給源は、フィブリノゲン及びトロンビンを得るために分画された、Guangzhou(China)に所在するBioseal Biotech CO.LTDによって供給されるブタ血漿、
ウシ血清アルブミン(BSA)-SIGMA VETEC、V900933、
L-リシン-ALADDIN、L103479-500g、
酸化再生セルロース(ORC):ORCの特徴:粒径<70μm、繊維形態であった。SURGICEL(登録商標)オリジナル布地を加工することによって、ORC粉末を得た。簡単に説明すると、SURGICEL(登録商標)オリジナル布地を以下の工程で加工することによってORC粉末を得た:1)布地を約2インチ×8インチ片に分割し、切断する、2)既知の粉砕方法を用いて、布地を粉末粒径(典型的には94マイクロメートル未満のD50であるが、これらに限定されない)に粉砕し、約100グラムの布地を500mLのジルコニア製ジャーに入れ、次いで、12~13個の20mmジルコニア製ボール(ビー玉)を同じジャーに入れ、ジャーに蓋をし、Retsch遊星ボールミル(型番PM100)に固定し、布地を450rpmで20分間粉砕し、粉砕された粉末を直径8インチ及び目開き300マイクロメートルの篩上に移し、少し振盪することによってビー玉と粉末とを分離し、最後に粉末を回収する。
【0177】
例示的な手順において、特に噴霧乾燥法を使用することによって、以下の通り本発明の止血組成物を調製した。フィブリノゲンの重量に対して1重量部のORC繊維を、1重量部、又は2重量部、又は5重量部、又は0.5重量部のフィブリノゲン又はフィブリンシーラント(フィブリノゲン及びトロンビンのブレンド)粉末と合わせた。したがって、一例として、ORC粉末10gを、フィブリンシーラント混合粉末中のフィブリノゲン5gと合わせた。
【0178】
噴霧乾燥は、噴霧ノズルを通して高温空気流中に噴霧し、即座に乾燥させる、溶液、懸濁物、又はエマルジョンから粉末を作製するために使用される乾燥方法である。噴霧乾燥プロセスは、幾つかのプロセスパラメータによって制御され、その中には、カラム空気流及び温度、ノズルサイズ及び噴霧空気流速、材料流速等がある。
【0179】
例示的な手順では、以下の通り噴霧乾燥法(噴霧乾燥機:4M8-TriX噴霧乾燥機を使用した(ProCepT NV,Zelzate,Belgiumによる))を使用して(別々に1つずつ)トロンビン及びフィブリノゲン粉末を生成した。
【0180】
調製したトロンビン及びフィブリノゲンブタフィブリノゲン溶液をシリンジに引き込み、噴霧乾燥機のシリンジポンプ内に様々な量で入れた。フィードバルブを閉じて所望される流量にシリンジポンプをセットした。シリンジポンプのフィードバルブが閉じている間に、噴霧乾燥機を起動し、所望の噴霧ガス流速、乾燥ガス流速、乾燥ガス温度、冷却ガス流速、及びサイクロンガス流量を設定した。
【0181】
冷却ガス流量及び温度は、乾燥塔の層流を乱さないが、粉末がガラス部分に粘着するのを防ぐためにガス流の温度を組成物のガラス転移温度より下に下げるように選択した。
【0182】
噴霧乾燥機を、実際に測定されたパラメータの値がセットしたレベルに達し、一定を維持した定常状態に達するまで実行させた。次いで、フィードバルブを開き、トロンビン/フィブリノゲン溶液を、フィード入口を通してスプレーノズルに流して、噴霧ガス流により小さな液滴に霧化し、次に乾燥塔内で乾燥させた。噴霧乾燥粉末を形成し、次いで、噴霧乾燥機のサイクロンの粉末出口で回収した。
【0183】
サイクロンから回収した噴霧乾燥粉末を、30%未満の相対湿度の除湿器に秤量し、100~200mgの試料に分割した。各試料を栓付き試験管に個々に密封し、評価するまでParafilm(登録商標)(Bemis,Oshkosh,Wisconsin,USA)で密封した。
【0184】
噴霧パラメータ:ファン圧力0.3バール、噴霧圧:3bar、流速130mL/分、液圧16kpa、ノズル直径0.7mm、撹拌速度90rpm/分。
【0185】
例示的な手順では、高せん断プロセスを用いて粉末を更に顆粒化した。
【0186】
装置の詳細:天秤:SS1000、高せん断ミキサー:Mini-CG 1L、シリンジポンプ:LSP01-1C、真空乾燥:Vacucell 111、振動篩:Fritsch analysette 3。
【0187】
環境:温度:22~26℃、相対湿度:50%~70%。
【0188】
例示的な手順では、150~500rpmの速度の混合ブレード及び150~1000rpmの切断ブレードを有する高せん断混合/せん断反応器内で顆粒化粉末を作製した。具体的には、予備混合工程において、全重量が100gとなるように材料を秤量した。材料を高せん断ミキサーの1Lボウルに入れた。チョッパー速度を100rpmに設定し、インペラー速度を200rpmに設定し、5分間混合した。次に、顆粒化工程では、チョッパー速度を300rpmに設定し、インペラー速度を1000rpmに設定し、密封圧力を0.05MPaに設定した。シリンジポンプを使用して、8~16mLのグリセロール溶液を、4mL/分の流速及び0.4mmのノズルサイズでボウルに噴霧して粒子を結合させた。噴霧圧力は0.05MPaであった。顆粒化時間:2~4分。
【0189】
次に、顆粒化後工程では、チョッパー速度を300rpmに調整し、インペラー速度を1000rpmに調整した。次いで、40~120秒間顆粒化を続けた。グリセロール-水をプロセス中に結合剤として使用したので、液体が見えなかったことに留意されたい。
【0190】
次に、第1の真空乾燥を適用した:得られた組成物をトレイに移し、真空乾燥ボックスに入れた。0.5~1時間かけて真空圧を約0Paに設定した。次に、粉末を篩にかけた:粉末を振動篩のトレイに移し、篩サイズは適切な順序で500/355マイクロメートルであった。振幅を1.5mmに設定した、篩い分け時間:10分。次に、第2の真空乾燥を適用した:粉末を真空乾燥ボックスに移し、真空圧力が約0Paである状態で乾燥させるために3時間維持した。最後に、生成物を回収した。
【0191】
製剤中の材料:20~80重量%のフィブリノゲン粉末、2000~4000IU/用量のトロンビン粉末、10~50重量%のORC粉末、2~4重量%のCaCl粉末、0~25重量%のリシン粉末。
【0192】
例示的な予備手順において、1.2~1.5gの試験される粉末試料を、特定の比(v/v):15%グリセロール、30%グリセロール、40%グリセロール、50%グリセロール、及び70%グリセロールで生理食塩水及びグリセロールを含む分散媒4~5mLと合わせた。比較試料として、以下の試料を更に試験した:1:1 ORC対フィブリノゲン、トロンビンを含まない、2:1 ORC対BSA、トロンビンを含まない(比は重量による)。試験した試料の詳細を、以下の実施例2に提供する。
【0193】
実施例2:選択された試料の流動性特性の特性評価-予備試験
例示的な手順において、様々な試料をそのペースト状粘稠度に関して試験するために実験を行った。
【0194】
予備試験:例示的な手順において、1.2gの量の試験される粉末試料を、生理食塩水及び50%グリセロール(v/v)を含む分散媒4mLに分散させた。試験した試料は、(i)2:1のORC対フィブリノゲンの重量比を有する上述の粉末(トロンビンを含む、1.2g当たり3300IU)、(ii)2:1のORC対フィブリノゲンの重量比を有するが、トロンビンを含まない上述の粉末、(iii)ORC及びBSAを含み、ORC対BSAの重量比が2:1であり、トロンビンを含む粉末、(iv)ORC、並びに(v)ORC及びトロンビンを含む(フィブリノゲンを含まない)粉末、であった。
【0195】
結果を図1に示す(写真は、分散媒にブレンドを組み込んだ直後に撮影したものである)。結果は、試料(i)のみが上記分散媒に分散した際にペースト状組成物を提供したことを示す。他の試料は、より高い流動性を示し、その結果、組成物が創傷部位に留まることができず、ゲル化速度がより遅くなった。
【0196】
分散媒の量の決定:例示的な手順において、生理食塩水及び50%グリセロール(v/v)を含む分散媒、並びに1:1及び2:1のORC対フィブリノゲン重量比を有する粉末(トロンビンあり又はなし、3300IU/用量、すなわち1.2g)を選択した。試料は、上記の実施例1で詳述した通りカルシウム及びリシンを更に含んでいた。一方では濃すぎず(押し出すことが困難になる)、他方では薄すぎない流動性組成物を提供する目的で、試料をその流動性に関して評価した。試験した試料を以下の表1に要約する。
【0197】
【表1】
【0198】
3mLの分散媒によって提供される組成物は濃すぎ、5mLでは組成物が非常に薄くなることが分かる。結果を図2に示す。これらの結果を考慮して、以下の実施例の試験される試料は、4mLの分散媒中に分散した1.2gの粉末を含む。
【0199】
70%~80%グリセロールと1:2~1:5の比を有する試験した試料の流動性及び凝固時間:ORC対フィブリノゲン重量比2:1、1:1、1:2、及び1:5について、追加の例示的な試験を行った。例示的な手順において、1.2gの試験試料を、生理食塩水及び70%又は80%グリセロール(v/v)を含む分散媒4mLに分散させた。試料は、上記の実施例1で詳述した通り、トロンビン、カルシウム及びリシンを更に含んでいた。
【0200】
インビトロにおけるブタ血液凝固時間についての結果を図3に示す(写真は、分散媒にブレンドを組み込んだ直後に撮影したものである)。結果は、分散媒中70%グリセロール試料は、上述の分散媒中に分散させるとペースト状組成物を提供したが、80%グリセロール試料は、(主に2:1~1:2の試料について)より高い流動性を示し、その結果、組成物が創傷部位に留まる能力が低くなり、凝固速度も遅くなる(1:5試料については180秒を超える、70%グリセロール試料(1:2及び1:5の比)についての血液凝固時間は、70秒であった)。約70%グリセロールが、本明細書に開示される組成物の濃度上限であると結論付けることができる。
【0201】
実施例3:レオロジー特性
例示的な手順において、試料をその粘度に関して試験した。
【0202】
1.2gの量の試験される粉末試料を、1:5~2:1のORC対フィブリノゲン重量比を有する生理食塩水及び50%グリセロール(v/v)を含む分散媒4mL中に分散させた。試料は、トロンビン(上記の実施例1で詳述した通り、1.2g当たり3300IU、カルシウム、及びリシン)を更に含んでいた。
【0203】
粘度:混合した試料を25mmの平行板とペルチエ板表面との間に挟んだ。全ての測定について、2枚の板の間の間隙を1.00mmに設定した。せん断速度を0.5 1/s、温度を25℃に設定した回転モード試験を全ての測定に使用した。
【0204】
粘度は、せん断応力のせん断速度に対する比によって求めた。結果を図4に提示すが、これは、ORC対フィブリノゲンの重量比が1:5~2:1の範囲であり、粘度が約400を超え、約3000Pa・s未満であることを示す。
【0205】
振幅掃引試験:例示的な一連の実験において、試料のせん断損失(G’)及びせん断貯蔵(G”)弾性率を、せん断レオメーターを介して評価した。測定は、Anton Paar Modular Compact Rheometer MCR102を用いて行った。全ての試験を25℃の温度で行った。歪み掃引試験では、試験の周波数を固定し、振幅を徐々に増加させる。歪み掃引試験を実施して、試料の線形粘弾性レジームを求めた。次に、0.01~100%のせん断歪み(振動)範囲、10rad/秒までの範囲の角周波数で掃引試験を行った。振幅は振動運動の最大値である。分析のために、貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G”を変形に対してプロットする。G’>G”である場合、試料はゲル様又は固体構造を示し、粘弾性材料と呼ぶことができる。最初に線形粘弾性領域の限界も決定する。線形粘弾性領域において、G’及びG”の関数は一定のプラトー値を示すが、これは試料の構造を破壊することなく試験を実施することができる範囲を示す。G’とG”の交点が降伏点(τ)である。τ=F/A(式中、せん断応力τ(タウ)、せん断力F(単位N)、及びせん断面積A(単位m)である)。
【0206】
図5に提示される結果は、貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)は変化しないままである線形粘弾性領域を示すが、これは、1:5~2:1のORC対フィブリノゲンの重量比を有する試料が強い安定性を有することを意味する。結果はまた、2:1試料のタウ値が最も高い降伏点を有し、より長い線形粘弾性領域を有し、1:5試料が最も短い線形粘弾性領域を有することを示すが、これは、1:5のORC対フィブリノゲン比があまり好ましくない可能性があることを意味する。
【0207】
実施例4:凝固及び安定性試験
ブタ血液のエクスビボ凝固:エクスビボにおける幾つかの本発明の組成物、及び比較組成物による血液凝固を以下の通り試験した。1.2gの量の各試料を4mLの生理食塩水+グリセロール(v/v)に20~40分間溶解させて、ペーストを形成した。2mLの量の血液をペニシリンボトルに取り、1mL(約0.24gの粉末又は0.5gのSURGIFLO(登録商標)ゼラチンマトリックス)試料を添加し、続いて、ボルテックスメーター(IKA VORTEX 3)で3回穏やかに振盪した。凝固時間を観察し、異なる時点での各試料の状態と共に記録した。経時的にバイアルを傾けることによって、凝固形成の時間を評価した。試料調製(再構成し、次いで粉末を分散媒と前後に数回混合してペーストを形成する)後0.5時間、2時間、及び20時間目に試料を試験した。逆さにした試料バイアルを通る血流の目視観察によって凝固時間を求めた。凝固時間の終点において、血餅はバイアルから剥がれない。結果を以下の表2にまとめる。
【0208】
【表2】
【0209】
結果は、2:1~1:1のORC対フィブリノゲン重量比では、分散媒中のグリセロールの好ましい濃度(以下に記載の通り、酵素活性を損なわない)は15体積%超~50体積%未満であり、各時点について60秒未満の凝固時間を提供することを示す。
【0210】
安定度に対するpH及びグリセロール濃度の影響:pHを調整するためにL-リシンを使用して、その安定性に関して様々なpH値で再構成した後の種々の試料を試験するために、追加の実験を行った。試験した試料:(1)ORC対フィブリノゲン2:1、生理食塩水+50%グリセロール、pH4.48(「2:1、50%、4.48」)、それに応じて、(2)2:1、50%、5.38、(3)2:1、50%、6.53、(4)2:1、40%、4.44、(5)2:1、30%、4.44、(6)2:1、15%、4.33、(7)1:1、50%、5.03、(8)1:1、50%、5.46、(9)1:1、40%、5.05、(10)1:1、30%、4.81、(11)1:1、15%、4.82、(12)SURGIFLO(登録商標)+トロンビン。試料は、上記の実施例1で詳述した通り、トロンビン、カルシウム及びリシンを更に含む。図6に提示される結果は、20時間後の15%グリセロール試料について液相分離を示す。
【0211】
凝固時間に対するpHの影響:例示的な手順において、凝固時間に対するpHの影響を、2:1及び1:1の製剤(50%グリセロール(v/v)、生理食塩水溶液)を用いて更に試験した。トロンビン活性を試験するためのプロトコルは上に詳述されており、室温で実施した。結果を以下の表3及び図7に提示する。
【0212】
【表3】
【0213】
この結果は、好ましいpH範囲が約4.5~6.5であり、この範囲では、血液凝固時間が少なくとも2回の試験で50秒以下であることを更に確認する。
【0214】
実施例5:経時的な活性試験
2:1~1:1比の試験した試料:試験した試料におけるトロンビン活性は、IU/mgとして報告される比活性によって表される。トロンビン活性を制限し、フィブリン形成を最小化するために、試験した試料をアルカリ炭酸塩で水和した。炭酸塩溶液中に溶解させた少量の試料を大量の緩衝フィブリノゲン溶液で中和して凝固反応を可能にした。例示的な手順では、試験した試料1.2gを、生理食塩水中に様々な濃度のグリセロール(%v/v)及びpH値を有する分散媒4mLに分散させた。表4は、以下のプロトコルに従って0.5時間、1.5時間、2.5時間、4.5時間、20時間後のトロンビン(酵素)活性(IU/1.2g)に関する、特定のORC対フィブリノゲン重量比2:1又は1:1、及びグリセロール濃度(%v/v)を有する各試験した試料の結果を示す。
【0215】
結果を図8に更に示す。
【0216】
【表4】
【0217】
経時的なトロンビン安定性に対するpHの影響:例示的な手順において、2:1及び1:1の製剤(50%グリセロール(v/v)、生理食塩水溶液)を用いて、経時的なトロンビン安定性に対するpHの影響を試験した。L-リシン粉末を用いてpHを調整し、表面電極付きpHメーター(METTLER TOLEDO)を用いてpHを測定した。トロンビン活性を試験するためのプロトコルは上に詳述されており、室温で実施した。結果を以下の表5及び図9に提示する。
【0218】
【表5】
【0219】
総合すると、結果は、トロンビンの活性が、異なる製剤及びpH条件下で20時間以内に有意には減少しなかったことを示すので、製剤は20時間以内では良好な安定性を示した。それにもかかわらず、好ましいpH範囲は約4.5~6.5であるが、それは、この範囲内では、トロンビン活性が20時間以内に認識できるほど減少することはなく、安定に保たれたからである。
【0220】
実施例6:厚みへの影響
例示的な手順では、特定の量の様々な試料を採取し、厚み試験機(CDK)の試験プラットフォーム上に積み重ねた。試料を圧縮しながら、試料の厚みを自然に減少させた。次いで、試料の厚みを記録し、経時的な試料の厚みの変化を観察した。特定のORC対フィブリノゲン重量比2:1又は1:1、及びグリセロール濃度(%v/v、4mL/1.2g)を有する種々の試料を試験し、結果を表6に提示する。試料は、上記の実施例1で詳述した通り、トロンビン、カルシウム及びリシンを更に含んでいた。
【0221】
【表6】
【0222】
ORC対フィブリノゲン比が2:1未満(1:1、1:2、及び1:5)であると、再構成されたペーストはより硬くなり、厚みがより厚くなり、1:5の比では硬くなりすぎると結論付けることができる。代表的な試験した試料の結果を提示する図10は、この特徴を更に示す。
【0223】
実施例7:ブタ肝臓及び脾臓モデルにおけるインビボ評価
例示的な手順において、選択された試料を試験して、ヘパリン化条件下でブタパンチ出血モデル(脾臓及び肝臓生検パンチ出血モデル)を使用して流動性止血組成物の止血効力を評価した。
【0224】
例示的な手順では、表8に提示される試料を試験した(50%v/vグリセロール/生理食塩水中)。
【0225】
例示的な手順において、6mmパンチャーを用いて脾臓又は肝臓の表面に深く5mmのパンチ穴を作製した。物品の塗布について試験する前に、出血表面を有する出血部位に止血ペーストを直接塗布できるように、過剰な血液をガーゼで又は吸引を使用することによって標的出血部位から吸い取った/除去した。十分な量のペーストを部位に塗布して、出血領域全体を複数の層で覆った。
【0226】
最初にタンポン充填を3分間維持し、次いで、ガーゼを部位から持ち上げ、部位を最大60秒間観察した。観察期間中のいずれかの時点で自由に流動する血液が観察された場合、タンポン充填を再びガーゼ上に適用し、更に1分間保持した。適用の3分、5分、及び10分後のプレス試料で、止血の成功又は失敗を判定した。試験を中断し、結果を10分超として生データに記録した。出血が止まったら、過剰な試料を10mLの生理食塩水で洗い流した。
【0227】
許容基準:出血を測定するための0~5の評価尺度(表7及び図11)を使用して、塗布の1分、2分、3分、及び4分後における自由流動出血の停止によって、止血の効力を判定した。
【0228】
物品塗布後に「出血なし-0」又は「滲出-1」が達成された場合、止血に成功したとみなした。
【0229】
【表7】
【0230】
結果を表8にまとめる。
【0231】
【表8】
【0232】
更なる結果を図12に提示する。
【0233】
別のセットのインビボ実験では、異なる製剤を用いたイヌパンチモデル試験(n=5)を、肝臓と同様のプロトコルで実施した。イヌは、100~300IU/kgのヘパリンナトリウムの初期負荷静脈内ボーラスを受けた。活性化凝固時間(ACT)を注射の約10分後に測定した。ACTが>×3ベースライン読み取り値である場合、動物がヘパリン化されたとみなした。結果を表13にまとめる。
【0234】
総合すると、上記の結果は、試験した試料の高い止血成功率(60%超)を示し、1:1の比が若干優れている。
【0235】
本発明は、その特定の実施形態と共に記載されてきたが、多くの代替、変更、及び変形形態が当業者には明白となることは明らかである。したがって、これは、添付の特許請求の趣旨及び広義の範囲内にある、このような代替、変更、及び変形形態の全てを包含することを目的としている。
【0236】
〔実施の態様〕
(1) (i)酸化セルロース、フィブリノゲン及びトロンビンを含み、酸化セルロースのフィブリノゲンに対する重量比がそれぞれ約1:5~約2:1の範囲である粉末と、(ii)グリセロール及び水溶液を含む分散媒と、を含み、室温でペースト状懸濁物の形態である、2成分流動性組成物。
(2) 前記OCのフィブリノゲンに対する前記重量比が、1:2~2:1の範囲である、実施態様1に記載の組成物。
(3) 前記OCが、酸化再生セルロース(ORC)を含む、実施態様1又は2に記載の組成物。
(4) 前記粉末の少なくとも一部が、凝集形態である、実施態様1~3のいずれかに記載の組成物。
(5) 前記グリセロールが、前記分散媒の約15体積%を超える濃度で存在する、実施態様1~4のいずれかに記載の組成物。
【0237】
(6) 前記グリセロールが、前記分散媒の約40体積%を超える濃度で存在する、実施態様1~5のいずれかに記載の組成物。
(7) 前記グリセロールが、前記分散媒の約70体積%以下の濃度で存在する、実施態様1~6のいずれかに記載の組成物。
(8) 前記分散媒が、それぞれ3:1~4:1(v/w;mL/g)の範囲の分散媒対粉末比で存在する、実施態様1~7のいずれかに記載の組成物。
(9) 前記OCが、粉砕された形態である、実施態様1~8のいずれかに記載の組成物。
(10) フィブリンを更に含む、実施態様1~9のいずれかに記載の組成物。
【0238】
(11) 前記フィブリンが、少なくとも部分的に架橋している、実施態様10に記載の組成物。
(12) 前記トロンビンが、粉末1g当たり約2000~約4000IUの量で存在する、実施態様1~11のいずれかに記載の組成物。
(13) カルシウム塩を更に含む、実施態様1~12のいずれかに記載の組成物。
(14) 緩衝剤を更に含む、実施態様1~13のいずれかに記載の組成物。
(15) 前記緩衝剤が、粉末の形態である、実施態様14に記載の組成物。
【0239】
(16) 前記緩衝剤が、トリス、リシン、又はこれらの組み合わせから選択されたものである、実施態様14又は15に記載の組成物。
(17) 前記粉末の少なくとも90%の粒径が、10~2,000μmの範囲である、実施態様1~16のいずれかに記載の組成物。
(18) 前記粒径が、約200~約900μmの範囲である、実施態様1~17のいずれかに記載の組成物。
(19) pH4~6.5、室温で少なくとも約20時間安定である、実施態様1~18のいずれかに記載の組成物。
(20) 前記水溶液が、生理食塩水を含む、実施態様1~19のいずれかに記載の組成物。
【0240】
(21) 前記粉末が、噴霧乾燥及び/又は高せん断混合されたものである、実施態様1~20のいずれかに記載の組成物。
(22) 前記フィブリノゲンが、前記粉末の60重量%~95重量%又は70重量%~90重量%の濃度範囲で存在する、実施態様1~21のいずれかに記載の組成物。
(23) 組織の出血部位において止血剤として使用するための、実施態様1~22のいずれかに記載の組成物。
(24) 出血組織を治療する方法における実施態様1~23のいずれかに記載の組成物の使用であって、前記方法が、前記組成物を前記出血組織に塗布することを含む、使用。
(25) 前記方法が、最小侵襲手術、例えば、腹腔鏡下手術を含む、実施態様24に記載の使用。
【0241】
(26) 実施態様1~23のいずれかに記載の組成物を作製する方法であって、OC繊維、フィブリノゲン、及びトロンビンの凝集形態を形成することを可能にする条件下で、前記OC繊維をフィブリノゲン粉末及びトロンビン粉末と合わせることと、前記凝集体を、グリセロール及び水溶液を含む分散媒と合わせることと、を含む、方法。
(27) 前記条件が、フィブリノゲンのフィブリンへの少なくとも部分的な変換を可能にする、実施態様26に記載の方法。
(28) 前記条件が、前記フィブリンの少なくとも部分的な架橋を可能にする、実施態様27に記載の方法。
(29) 前記条件が、以下の(i)~(iii):(i)0~30℃の範囲の温度、(ii)4.5~6.5の範囲の前記分散媒のpH、及び(iii)それぞれ3:1~4:1(v/w;mL/g)の範囲の分散媒対粉末比である分散媒、のうちの1つ以上から選択される、実施態様26、実施態様28のいずれかに記載の方法。
(30) キットであって、
(a)それぞれ約1:5~約2:1の範囲の酸化セルロース対フィブリノゲンの重量比を有する、酸化セルロース、フィブリノゲン、及びトロンビンを含む粉末を収容する容器と、
(b)グリセロール及び任意選択で水溶液を含む分散媒を収容する容器と、任意選択で
(c)取扱説明書と、を含む、キット。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】