(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-28
(54)【発明の名称】抗ウイルス治療のためのTKTL1阻害剤
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240321BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240321BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240321BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20240321BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240321BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20240321BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240321BHJP
A61K 31/661 20060101ALI20240321BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P31/12
A61P31/14
A61K31/05
A61K31/7088
A61K31/7105
A61K48/00
A61K31/661
A61P43/00 111
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563119
(86)(22)【出願日】2022-04-07
(85)【翻訳文提出日】2023-10-13
(86)【国際出願番号】 DE2022100262
(87)【国際公開番号】W WO2022218471
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】102021109341.4
(32)【優先日】2021-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522490136
【氏名又は名称】タヴァールジェニクス ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】TAVARGENIX GmbH
【住所又は居所原語表記】Graefenhaeuser Strasse 26, 64293 Darmstadt, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス エフ. コイ
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ シーアル
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZB33
4C084ZC20
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA38
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB33
4C086ZC20
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4C206MA01
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4C206ZB33
4C206ZC20
(57)【要約】
トランスケトラーゼTKTL1の少なくとも1つの阻害剤が、患者のウイルス感染症、特にRNAウイルス感染症、特にまたSARS-CoV-2感染症の処置に使用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルス感染症、特にRNAウイルス感染症、特にまたSARS-CoV-2感染症の処置に使用するためのトランスケトラーゼTKTL1の阻害剤。
【請求項2】
TKTL1遺伝子の転写を特異的に制限または阻止することが可能であり、かつそれに適した物質または物質混合物であることを特徴とする、請求項1記載の阻害剤。
【請求項3】
細胞のTKTL1プロモーターに結合し、それによってその活性を制限または阻止することが可能であり、かつそれに適した物質または物質混合物であることを特徴とする、請求項1または2記載の阻害剤。
【請求項4】
前記阻害剤がレスベラトロールであることを特徴とする、請求項3記載の阻害剤。
【請求項5】
前記阻害剤が、TKTL1-mRNAの翻訳を特異的に阻害するのに適した物質または物質混合物であることを特徴とする、請求項1記載の阻害剤。
【請求項6】
前記阻害剤が、TKTL1-mRNAにそれぞれ特異的なアンチセンス構築物、siRNA、リボザイムおよび他の阻害性RNAを含む群から選択されることを特徴とする、請求項5記載の阻害剤。
【請求項7】
前記阻害剤が、TKTL1および/またはTKTL1-TKTヘテロ二量体複合体の酵素反応を制限または阻止するのに適した物質または物質混合物であることを特徴とする、請求項1記載の阻害剤。
【請求項8】
前記阻害剤が、抗チアミン化合物およびTKTL1ポリペプチドの補因子の他のアンタゴニストを含む群から選択されることを特徴とする、請求項7記載の阻害剤。
【請求項9】
前記阻害剤が、阻害性チアミンアナログ、特にオキシチアミン、ベンフォオキシチアミンおよび/またはベンフォオキシチアミンアナログであり、ベンフォオキシチアミンの場合、これは患者の体重1kg当たりかつ1日当たり7μg~430μg、有利には14μg~215μg、とりわけ好ましくは14μg~130μgのベンフォオキシチアミンの用量で使用されることを特徴とする、請求項7または8記載の阻害剤。
【請求項10】
前記阻害性チアミンアナログが有効成分ベンフォオキシチアミンであり、患者の体重1kg当たりかつ1日当たり7μg~430μg、有利には14μg~215μg、とりわけ好ましくは14μg~130μgのベンフォオキシチアミンの用量で使用されることを特徴とする、請求項8または9記載の阻害剤。
【請求項11】
前記阻害剤が、TKTL1-TKTヘテロ二量体複合体の形成を制限または阻止することが可能であり、かつそれに適した物質または物質混合物であることを特徴とする、請求項1記載の阻害剤。
【請求項12】
TKTL1阻害剤としてのベンフォオキシチアミンの場合、前記ベンフォオキシチアミンが、患者の体重1kg当たりかつ1日当たり7μg~430μg、有利には14μg~215μg、とりわけ好ましくは14μg~130μgのベンフォオキシチアミンの用量で使用される、請求項1から11までのいずれか1項記載の阻害剤。
【請求項13】
患者の体重1kg当たりかつ1日当たりの前記用量が、ベンフォオキシチアミン14μg~215μg、有利にはベンフォオキシチアミン14μg~130μgであることを特徴とする、請求項12記載の阻害剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗ウイルス治療、特にRNAウイルス、特にまたSARS-CoV-2感染症およびCovid-19疾患の治療に使用するためのトランスケトラーゼTKTL1の阻害剤(以下、略して「TKTL1阻害剤」)に関する。
【0002】
2019年、SARS-CoV-2という名前の新たなコロナウイルスが中国で報告され、人々に感染し、急速に広がっている。感染者の一部はCOVID-19と呼ばれる疾患を発症し、肺に損傷が起こり、これは酸素欠乏および呼吸困難も引き起こす。2020年3月、WHOはSARS-CoV-2感染症の流行をパンデミックと宣言した。SARS-CoV-2ウイルスの感染は、インフルエンザウイルスの感染とは異なり、無症候(無症候性)で進行する可能性もあるため、一見健康な人が他の人にSARS-CoV-2ウイルスを感染させる可能性がある。このことはSARS-CoV-2感染症の封じ込めを非常に困難にしている。SARS-CoV-2にかかった人の中には、無症候性の感染経過の他に、咳、咽頭痛、下痢または発熱などのインフルエンザに似た症候を示す人も多い。また、インフルエンザとは異なり、味覚の喪失などの症候および神経細胞の機能に関連した他の症候または欠損も見られる。例えば認知機能障害、疲労、慢性疲労症候群などのそのような神経学的関連症候は、急性SARS-CoV-2感染が消失した後も長期にわたって発現し、感染者の健康上の大きな問題となっている。SARS-CoV-2感染者のサブグループは、肺炎、時には両側肺炎も発症する。SARS-CoV-2感染により、多臓器不全が生じて致命的な結果を伴うこともある。SARS-CoV-2感染のそのような重篤な経過では、過剰反応、すなわち免疫系の強すぎる応答が起こることが多く、例えば免疫細胞が肺に移動してその機能を阻害する。例えばデキサメタゾンなどの免疫系の活性を阻害する医薬品は、この病気の経過に良い効果を示す。とはいえ、SARS-CoV-2感染の重篤な経過をたどる患者の高い割合が死亡する。今のところ、Covid-19疾患の重篤な経過の予防または治療に使用することができる十分有効な治療はない。
【0003】
他の多くのウイルス性疾患の場合においても、患者のウイルス感染と闘うために十分効果のある有効成分はまだない。例えば、ウイルスによって引き起こされるデング熱または失明につながる重度の目のヘルペス感染に対する適切な治療法はまだない。
【0004】
当該技術分野で知られているウイルス性疾患の治療制御戦略のほとんどは、ウイルス自体を無害化することを目的としており、例えば、ワクチンによる予防治療または抗ウイルス有効成分の投与による緩和および治癒療法である。これらの戦略に共通しているのは、ウイルス特異的な構造(エピトープ/酵素)を攻撃することである。しかしながら、ウイルスには非常に短時間でゲノムを変化させる能力があるため、ウイルスは、新しい環境条件に非常に迅速に適応することができる。このことは、現在、SARS-CoV-2ウイルスの新しいバリアントによって明確にされており、これらは、より良好に拡散することができたり、身体自身の免疫システムからより良好に防御することができたり、ワクチン接種からより良好に防御することができたり、さらには感染症の致死率を高める結果となることさえある。そのため、ウイルス特異的な構造に基づく治療戦略は、すぐに失敗に終わる可能性がある。なぜなら、天然に存在する数多くのウイルス突然変異体の中には、かかる有効成分またはワクチンに対して反応しないものも発生しているからである。また、どのウイルス突然変異またはどのウイルスが次に新たに出現し、将来人々に脅威をもたらすかを予測することは基本的に不可能である。したがって、ウイルス特異的な治療戦略をタイムリーに開発および計画することは非常に困難であり、ほぼ不可能ですらある。
【0005】
ウイルスのゲノムはRNAまたはDNAのいずれかで構成される。SARS-CoV-2ウイルスはRNAウイルスに属する。
【0006】
RNAウイルスは、細胞内に感染してウイルスRNAを放出した後、このウイルスRNAの複製(増幅)に基づいて迅速かつ可能な限り大量に発生することになる。この複製には、宿主細胞からのリボース-5-リン酸(R5P)が絶対に必要である。
【0007】
DNAウイルスも宿主細胞内での増殖にR5Pを必要とする。というのも、DNAの必須構成要素であるデオキシリボース-5-リン酸はリボース-5-リン酸から作られるからである。このように、RNAウイルスとDNAウイルスのいずれも宿主細胞のR5P合成に依存している。
【0008】
哺乳動物細胞では、R5Pはペントースリン酸代謝経路(PPP)を介して提供される。一般的な学説によれば、これはPPPの酸化部分と非酸化部分との両方を介して行われ得る。
【0009】
トランスケトラーゼ(TKT)はPPPの重要な酵素である。それらは二量体を形成し、チアミン二リン酸分子と二価カチオンとの結合によって活性化される。このトランスケトラーゼ酵素活性は、TKTとトランスケトラーゼ様-1(TKTL1)タンパク質とからのヘテロ二量体の形成によって変化する可能性がある(Li et al., 2019)。
【0010】
Li et al. (2019)は、TKTL1-TKTヘテロ二量体の形成により、細胞がR5P代謝を再プログラムできることを記載している。より多くのR5Pが必要な場合、これは主に細胞のS期におけるヌクレオチド合成およびDNA合成の場合に該当するが、TKTL1レベルの上昇は、TKTL1-TKTヘテロ二量体の形成を増加させる。これらはR5P産生を促進する。換言すれば、簡略化すると、Li et al.は、細胞のR5P基本供給がTKT-TKTホモ二量体を介して提供されることを示している。細胞がさらに大量のR5Pを必要とする場合、TKTL1の発現とその結果生じるTKT-TKTL1ヘテロ二量体の形成とを介して、細胞分裂ひいては細胞増殖を可能にするためにR5Pの形成増加を促進するいわば「細胞内ターボプログラム」が開始される。
【0011】
ヒト細胞株Caco-2のSARS-CoV-2感染細胞を用いたBojkova et al. (2020)の調査により、SARS-CoV-2感染細胞では細胞のPPPが活性化されることが示された。
【0012】
Bojkova et al. (2020)は、SARS-CoV-2の複製がTKT阻害剤によって影響を及ぼされ得るかどうかも調べた。TKT阻害剤オキシチアミンのプロドラッグであるTKT阻害剤ベンフォキシチアミン(Benfooxythiamin)(B-OT)(チアミンの阻害性アナログである)の使用により、宿主細胞におけるSARS-CoV-2ウイルスの複製が阻害された。しかしながら、SARS-CoV-2ウイルスの増殖を阻害するには、B-OTは、少なくとも5mMのB-OT濃度で必要であった。ヒトに置き換えると、これは体重1kg当たり少なくとも1gのB-OTのB-OT投与量に相当し、すなわち体重70kgのヒトの場合、70gのB-OTを投与することになる。この値は、通常または例外的にのみ使用される有効成分の量からも外れており、B-OTに移行できる、先行技術でヒトに対して知られているオキシチアミンの耐容量をはるかに超えている。したがって、当業者は、B-OTおよびTKT阻害剤それ自体は、ウイルス阻害の有効成分に照らして使用可能な選択肢ではないと想定している。
【0013】
本発明は、ウイルス感染症、特にRNAウイルス感染症と闘うための、特にSARS-CoV-2ウイルスと闘うのにも適した薬剤を提供するという課題に基づいている。
【0014】
この課題の解決策は、ウイルス感染症の医学的治療処置(抗ウイルス治療)、特にRNAウイルス感染症の処置(治療)、特にまたSARS-CoV-2感染症および例えばCOVID-19などの関連疾患の処置(治療)に使用するためのトランスケトラーゼTKTL1の少なくとも1つの阻害剤(以下、略して「TKTL1阻害剤」)を提供することにある。
【0015】
換言すれば、この課題の解決策は、抗ウイルス効果、特に静ウイルス性(ウイルス阻害性)効果を有する薬剤の有効成分としての、トランスケトラーゼTKTL1の少なくとも1つの阻害剤(略して「TKTL1阻害剤」)の使用の技術的教示にある。
【0016】
用語の定義:
- 「阻害剤」という用語は、本明細書において、個体または個体の細胞におけるTKTL1ポリペプチドの活性の低下を直接的または間接的にもたらす(引き起こす)のに適した薬剤(すなわち、原則として任意の薬剤)、特に(任意の)材料物質、すなわち、医薬組成物を含む物質または物質混合物の文脈で使用される。これらの薬剤または材料物質には、特に次のものが含まれる:
(a)TKTL1遺伝子の転写の阻害剤、例えば、TKTL1プロモーターに結合し、それによってその活性を制限または阻止する物質、例えば、用量依存的にTKTL1プロモーターを阻害するレスベラトロールなど。
(b)TKTL1-mRNAの翻訳の阻害剤、例えば、アンチセンス構築物、siRNA、sh-RNA、リボザイムなどの阻害性RNA。
(c)TKTL1および/またはTKTL1-TKTヘテロ二量体複合体の酵素反応の阻害剤、特にこの酵素反応を制限または阻止する有効成分。これらには、特に、例えば抗チアミン化合物などのTKTL1ポリペプチドの補因子のアンタゴニストが含まれる。
(d)TKTL1-TKTヘテロ二量体複合体の形成の阻害剤、特にヘテロ二量体の形成を制限または阻止する有効成分。
- 「RNA」という用語は、本明細書において、リボ核酸と同義である。
- 「DNA」という用語は、本明細書において、デオキシリボ核酸と同義である。
【0017】
本発明は、ヒト細胞における酵素TKTL1の阻害ひいてはTKTL1/TKTヘテロ二量体の酵素活性の阻害が、ウイルスRNAまたはウイルスDNAの増殖(複製)を有意に阻害するが、宿主細胞自体は生存可能なままであり、ヒトの身体は永久的かつ不可逆的な損傷を被らないという驚くべき認識に基づいている。
【0018】
細胞の分裂ひいては増殖はヒトの身体にとって不可欠であるため、TKTL1および/またはTKTL1/TKTヘテロ二量体を、Bojkova et al. (2020)によればウイルス増殖を減速または阻止するのに必要な程度に阻害すると、細胞分裂の阻害ひいては死に至るまでの重篤な副作用がもたらされることが予想されていた。また、トランスケトラーゼ、特にTKTL1は、細胞周期および細胞分裂の制御における重要な酵素として、細胞の生存に基本的に関係しているとまさに考えられているため、一般的な学説によれば、重篤な副作用が予想されるため、それらは抗ウイルス治療戦略の可能な標的としては不適切であると思われていた。
【0019】
しかしながら、驚くべきことに、ウイルス感染ヒト宿主細胞におけるTKTL1/TKTヘテロ二量体の酵素活性の阻害により、ウイルス核酸の生合成ひいてはウイルス核酸(RNAもしくはDNA)の増殖に必要なリボース-5-リン酸(R5P)産生の大量の(強力な)増加が宿主細胞の代謝を介して阻止されるかまたは有利に阻害されるが、他方で宿主細胞の生存に必要なR5Pの量は維持されることが見出された。
【0020】
換言すれば、ウイルス感染症、特にSARS-CoV-2感染症の処置におけるTKTL1阻害剤の使用は、宿主細胞の生存を危険にさらすことなく、ひいては人体への損傷の危険もなく、ヒト宿主細胞におけるウイルス核酸の生合成ひいてはウイルス増殖(ウイルス複製)をTKTL1阻害剤によって有意に阻害または減少させることができるという驚くべき認識に基づいている。
【0021】
本発明によるTKTL1阻害剤の使用は、宿主細胞ひいては人体全体の代謝を妨害し、ウイルス複製に利用可能な十分なリボース-5-リン酸構成要素(R5P)をもはや存在させなくし、したがって細胞および人体全体を不可逆的に損傷することなく、ウイルス増殖が減速されるかまたは完全に防止される。このことは、ウイルス自体が(直接)有効成分の標的ではなく、むしろ宿主細胞の代謝であり、したがっていかなるウイルス突然変異も本発明による適用の成功を損なわないという利点を伴う。
【0022】
本発明によるTKTL1阻害剤の使用は、ウイルス特異的な構造ではなく、むしろ感染宿主細胞に由来し、ウイルスがその増殖に必要とする因子に対処する治療戦略である。したがって、第一に、広範なウイルスに対して有望に使用することができ、第二に、ウイルスの突然変異(ウイルス突然変異体)に対しても有効な抗ウイルス治療戦略が利用可能である。これはまた、将来出現するであろうウイルスに対する防御を可能にする。本発明は、ウイルスのRNA配列やDNA配列を知らなくてもウイルスに対する防御を可能にする。したがって、ワクチン接種と比較して、医薬品の開発にリードタイムを必要としないため、すぐに治療法が実現することになる。これにより、人類および哺乳類全般を、既存および将来のウイルスと、ウイルスに由来しかつ由来するであろう疾患から防御することが可能になる。ウイルス性疾患に対する現存在保護(Daseinsschutz)が初めて実現する。
【0023】
好ましい実施形態において、阻害剤は、TKTL1遺伝子の転写を特異的に制限もしくは阻止することが可能であり、かつそれに適した物質または物質混合物である。これに関して、特に、細胞のTKTL1プロモーターに結合することができ、それによってその活性を制限または阻止することが可能であり、かつそれに適した物質が考慮される。実際には、特にレスベラトロールがTKTL1プロモーターの適切な阻害剤であることが証明されている(Kumar B, 2018)。
【0024】
同様に好ましい実施形態において、阻害剤は、TKTL1-mRNAの翻訳を特異的に阻害するのに適した物質または物質混合物である。これに関して、特に、TKTL1-mRNA特異的アンチセンス構築物、TKTL1-mRNA特異的siRNA、TKTL1-mRNA特異的sh-RNA、TKTL1-mRNA特異的リボザイムおよび他のTKTL1-mRNA特異的阻害RNAの群から選択される少なくとも1つの物質が考慮される。
【0025】
更なる好ましい実施形態において、阻害剤は、TKTL1および/またはTKTL1-TKTヘテロ二量体複合体の酵素反応を制限または阻止するのに適した物質または物質混合物である。これに関して、特に、抗チアミン化合物および他のアンタゴニスト、特に酵素TKTL1の補因子の群からのアンタゴニストの群から選択される少なくとも1つの物質が考慮される。
【0026】
実際に試験された一実施形態において、TKTL1阻害剤は、阻害性チアミン類似体である。TKTL1を含むこれまでに知られている全てのトランスケトラーゼ酵素は、補酵素としてチアミン(ビタミンB1)に機能的に依存している。例えばオキシチアミンなどのチアミン類似体は、チアミンアンタゴニストとして作用し、トランスケトラーゼを阻害するために使用することができる(欧州特許出願公開第1354961号明細書を参照されたい)。
【0027】
好ましい阻害性チアミン類似体は、ベンフォオキシチアミン(B-OT)の物質である。
【0028】
B-OTは、オキシチアミンの前駆体(「プロファルマコン」、「プロドラッグ」)であり、経口投与が可能であり、哺乳類生物に吸収された直後にオキシチアミンを放出する。B-OTは血流を介して身体のあらゆる部分のあらゆる細胞に到達することができる。インビボ薬物動態データは、オキシチアミンが血液脳関門を通過でき、その結果、脳のウイルス感染症にも成功裏に使用できることを示している。
【0029】
ベンフォオキシチアミンの化学構造(構造式)は、例えば欧州特許出願公開第1354961号明細書から知られている。
【0030】
驚くべきことに、ヒトの身体におけるTKTL1/TKTヘテロ二量体のTKTL1の酵素活性を阻害するためには、Bojkova et al. (2020)がヒトCaco-2細胞株に対して細胞培養レベルで記載した最低濃度よりも1000倍を超えて低いB-OT濃度で十分であることが判明した。その調査において、Bojkova et al. (2020)は、SARS-CoV-2感染Caco-2細胞株においてSARS-CoV-2ウイルスの増殖を阻害するには、少なくとも5mMの濃度のB-OTが必要であることを示している。しかしながら、当業者には予想外かつ驚くべきことに、本発明の基礎となる調査の過程で、1日当たりかつ患者の体重70kg当たり35mg未満のB-OT、すなわち1日当たり体重1kg当たり0.5mg未満、それに応じて体重1kg当たりかつ1日当たり1ナノモル(1nM)未満の濃度のB-OTを投与すれば、人体でSARS-CoV-2ウイルスの増殖を阻害するのに十分であることが示された。
【0031】
したがって、本発明によれば、TKTL1阻害剤としてのベンフォオキシチアミンの場合、B-OTは、患者の体重1kg当たりかつ1日当たり7μg~430μg(μg=マイクログラム)、有利には14μg~215μg、とりわけ好ましくは14μg~130μgのB-OTの用量/投与量で適用/投与される。換言すれば、TKTL1阻害剤ベンフォオキシチアミンの患者の体重1kg当たりかつ1日当たりの用量/投与量は、7μg≦μg B-OT≦430μg、有利には14μg≦μg B-OT≦215μgであり、とりわけ好ましくは14μg≦μg B-OT≦130μgである。
【0032】
一般に、本発明によれば、TKTL1阻害剤としてのベンフォオキシチアミンの場合、ベンフォオキシチアミンは、患者の体重1kg当たりかつ1日当たり0.5mg未満、有利には0.3mg未満の用量で使用される。
【0033】
ヒトおよび動物用薬剤のEU GMPガイドラインに従ったベンフォオキシチアミン(B-OT)の製造は従来技術で確立されており、哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ)、特にヒトでのベンフォオキシチアミンの使用が可能である。
【0034】
更なる好ましい実施形態において、TKTL1阻害剤は、TKTL1-TKTヘテロ二量体複合体の形成(生成)を制限または阻止するのに適した物質または物質混合物である。
【0035】
以下、本発明を、表および図を用いた実施形態例によりさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】TKTL1特異的siRNAを用いたTKTL1翻訳の阻害後のSARS Cov-2ウイルス量の減少およびCaco-2細胞の生存率を示す図である。
【
図2】TKT特異的siRNAを用いたTKT翻訳の阻害後のSARS Cov-2ウイルス量の減少およびCaco-2細胞の生存率を示す図である。
【
図3】TKTL1特異的siRNAを用いたTKTL1翻訳の阻害後のヒトサイトメガロウイルス(HCMV)ウイルス量の減少およびCaco-2細胞の生存率を示す図である。
【
図4】TKT特異的siRNAを用いたTKT翻訳の阻害後のヒトサイトメガロウイルス(HCMV)ウイルス量の減少およびCaco-2細胞の生存率を示す図である。
【
図5】異なる投与量のレスベラトロールを用いたTKTL1プロモーターの阻害後のSARS-Cov-2ウイルス量の用量依存的減少およびCaco-2細胞の生存率を示す図である。
【0037】
ウイルス量の減少は、それぞれの場合において、表記されたパーセント値の減少として示されている。
【0038】
実施例1:SARS-CoV-2感染哺乳動物細胞における(a)TKTL1のsiRNA阻害と(b)TKTのsiRNA阻害との比較
SARS-CoV-2感染Caco-2細胞を、ポリカチオン性脂質と中性脂質とからなるトランスフェクション試薬(ここでは、ミュンヘン在のBiontex Laboratories GmbHのMETAFECTENE(登録商標))を用いて、(a)ヒトTKTL1特異的siRNAおよび(b)ヒトTKT特異的siRNA、ならびに(c)siRNAネガティブコントロール(ここでは、QiagenのAllStarsネガティブコントロールsiRNA、メーカーの情報によれば、既知の哺乳類遺伝子と相同性を有しない)でトランスフェクトした(siRNAまたは低分子干渉RNAは、タンパク質をコードせず、相補的な一本鎖RNA分子と結合し、それによってその正常な機能を妨げる短いRNA分子である)。
【0039】
以下のsiRNA配列を用いた:
(a)TKTL1特異的:
1. 5’-GGAGUUGCAUGUGGAAUGG-3’(Diaz-Morelli et al. 2016)
2. 5’-UUAUUCACGAAGGAAACACUU-3’(Heller et al. 2018)
3. 5’-UAAAUAACCAUAGUUUCUGGU-3’(Heller et al. 2018)
(b)TKT特異的:5’-AAUGAUGGCUGUUGGCUGGTT-3’(Lu et al. 2017)。
【0040】
SARS-CoV-2に感染しsiRNAでトランスフェクトしたCaco-2細胞における(a)TKTL1および(b)TKTの効果的なサイレンシング(すなわち、遺伝子サイレンシング、RNA干渉による遺伝子発現ノックダウン)を、RTqPCR(逆転写酵素定量PCR)およびウェスタンブロット分析を用いて実証した。TKTL1/TKT-mRNAおよびTKTL1/TKT-タンパク質の測定および定量化のために、SARS-CoV-2に感染しsiRNAでトランスフェクトしたCaco-2細胞において、トランスフェクションの72時間後および96時間後にRTqPCR(逆転写酵素定量PCR)およびウェスタンブロット分析を行った。
【0041】
Caco-2細胞を異なるsiRNAでトランスフェクトした後のSARS-CoV-2ウイルスの複製能力は、SARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質の免疫染色により決定した。スパイクタンパク質染色を用いて、(c)siRNAネガティブコントロールでトランスフェクトした細胞と比較して、(a)TKTL1または(b)TKT siRNAでトランスフェクトした細胞におけるウイルス阻害のパーセント割合を算出した。
【0042】
異なるsiRNAでトランスフェクトしたSARS-CoV-2感染Caco-2細胞の細胞生存率を、メチルチアゾリルジフェニル-テトラゾリウムブロミド(MTT)アッセイにより集計した。
【0043】
これらの調査の結果を表1ならびに
図1および
図2に示す。
【表1】
【0044】
異なるsiRNA配列に応じて、AllStarsネガティブコントロールsiRNAでトランスフェクトしたCaco-2細胞と比較して、SARS-CoV-2感染Caco-2細胞のウイルス量の減少および生存率に関して以下の効果が確認された。
【0045】
TKTL1特異的siRNAでトランスフェクトした細胞では(非標的コントロール二重鎖でトランスフェクトした細胞と比較して)、TKTL1翻訳の阻害が起こった。ここで、細胞がさらに生存可能なままのレベルでTKTL1翻訳を阻害すると、SARS-CoV-2ウイルスの複製能力が有意に低下した。
【0046】
したがって、これらの実験は、細胞の生存率に影響を与えない程度にTKTL1を阻害することにより、SARS-CoV-2ウイルスの増殖を大幅に阻害できることを示している。
【0047】
TKT-mRNA翻訳の阻害剤としてTKT特異的siRNAを用いた並行アプローチにより、TKT翻訳の阻害がSARS-CoV-2感染Caco-2細胞におけるウイルス量の大幅な減少にもつながることが示された。しかしながら、細胞の生存率も著しく低下する。このことは、SARS-CoV-2ウイルス増殖を阻害するTKT阻害のヒト治療域が、ヒト細胞の損傷と大きく重なっており、事実上存在しないことを示している。換言すれば、SARS-CoV-2ウイルス増殖を阻害させるのに必要なTKTの阻害の程度は、ヒト細胞が死滅するほど深刻な損傷を受けるほど大きい。トランスケトラーゼTKTの阻害剤がSARS-CoV-2ウイルス増殖の阻害をもたらす用量で投与された場合、人体への損傷は非常に深刻なものとなるため、人体におけるSARS-CoV-2ウイルス増殖を阻害する目的でTKT阻害を治療に使用することは除外されなければならない。
【0048】
結論:この結果は、SARS-CoV-2感染Caco-2細胞にTKTL1の阻害剤としてTKTL1特異的siRNAを適用すると、宿主細胞内でのウイルス増殖が阻止され、宿主細胞はその過程で生存することを示している。
【0049】
ヒトサイトメガロウイルス(HMCV)を用いたインビトロでの並行調査(ここでの実施例2を参照されたい)により、TKTL1のsiRNA阻害の手段が、宿主細胞の生存を危険にさらすことなく、宿主細胞内でのウイルス増殖を阻止できることが確認される。
【0050】
実施例2:ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)感染哺乳動物細胞における(a)TKTL1のsiRNA阻害と(b)TKTのsiRNA阻害との比較
ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)に感染させたCaco-2細胞を用いて、一方ではTKTL1、他方ではTKTのsiRNA阻害の効果を調べた。Dal Pozzo et al. (2008)が記載しているように、Caco-2細胞の感染には、増強黄色蛍光タンパク質EYFP(enhanced yellow fluorescent protein)をコードする組み換えHCMV-EYFPウイルスを用いた。これにより、蛍光ベースの抗ウイルスアッセイを用いてHCMウイルスの複製能力を決定することができる(例えば、Dal Pozzo et al. (2008))。
【0051】
Caco-2細胞に、実施例1に示したTKTL1およびTKTのsiRNA配列をトランスフェクトした。効果的なサイレンシングは、RTqPCR(逆転写酵素定量PCR)およびウェスタンブロット分析を用いて実証された。これらの分析は、トランスフェクションの72時間後および96時間後に行った。HMCV感染細胞の生存率をMMTアッセイにより決定した。
【0052】
Caco-2細胞を異なるsiRNAでトランスフェクトした後のHCMウイルスの複製能力は、蛍光ベースの抗ウイルスアッセイを用いて決定した(Dal Pozzo et al. (2008))。組み換えウイルスのEYFPシグナルを用いて、(c)siRNAネガティブコントロールでトランスフェクトした細胞と比較して、(a)TKTL1または(b)TKT siRNAでトランスフェクトした細胞におけるウイルス阻害のパーセント割合を算出した。結果を
図3および
図4に示す。
【0053】
これらの結果により、HMCV感染細胞についても、SARS-CoV-2を用いた実施例1で得られた結果が確認される:阻害剤としてTKTL1特異的siRNAを用いてTKTL1を阻害すると、宿主細胞内でのHMCウイルスの増殖が阻止され、宿主細胞はその過程で生存する。対照的に、TKT特異的siRNAを用いたTKT阻害も、HMCV感染Caco-2細胞におけるウイルス量の大幅な減少をもたらすが、細胞の生存率は著しく低下する。
【0054】
実施例3:ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)感染哺乳動物細胞におけるTKTL1阻害剤としてのB-OTの使用
さらに、ヒト哺乳動物細胞におけるB-OTに対するHCMV複製の感受性を調べた。このために、Dal Pozzo et al. (2008)の論文に記載されているように、B-OTを用いた実験を行った:ヒト胚性肺線維芽細胞(HEL)を、増強黄色蛍光タンパク質(EYFP)をさらにコードする組み換えHCMV-EYFPウイルスに感染させた(Dal Pozzo et al. (2008))。HCMV-EYFP感染後のウイルス増殖の指標として、EYFPタンパク質の発光を測定した(励起波長:485nm/発光:530nm)。ここで、自動的に測定された一定の低い細胞関連バックグラウンド発光を、蛍光発光値から差し引いた。B-OTの抗ウイルス効果を調べるために、HCMV-EYFP感染細胞を異なるB-OT濃度(0~20mMのB-OT)で48時間インキュベートした。(ウイルス増殖の指標として)蛍光の用量依存的阻害が明らかになった。未処理のコントロール(0mMのB-OT)と比較してEYFP発光を半減させるのに必要な物質濃度を、蛍光ベースの抗ウイルスアッセイにおける50%阻害濃度(IC50)と定義した。ここで出されたIC50は0.5mMのB-OTであった。
【0055】
実施例4:人体におけるSARS-CoV-2ウイルス増殖を阻害するためのTKTL1阻害剤としてのB-OTの使用
SARS-CoV-2感染およびCovid-19疾患を有する患者において、疾患の重症度の評価は、免疫炎症マーカーの臨床値によってなされ得ることが、Zhu et al 2020から知られている。炎症誘発性サイトカインIL-6および/またはC反応性タンパク質(CRP)の高い値は、重篤な疾患および非常に高リスクの疾患経過を示す。炎症誘発性サイトカインIL-6は、その多面発現特性により、SARS-CoV-2感染患者について説明される「サイトカインストーム」において重要な役割を果たしている。その構成的発現は、臓器損傷と激しい痛みとを引き起こす(Zhu et al 2020; Gupta et al. 2020)。
【0056】
SARS-CoV-2感染症およびCOVID-19疾患の入院患者における個々の治癒試験の一環として、患者の体重70kg当たり20mg未満のB-OTを1日1回投与した場合、すなわち体重1kg当たり0.3mg未満、それに応じて体重1kg当たり1ナノモル(1nM)未満の濃度のB-OTを1日1回投与した場合、7日間の経過で、PCR法で検出されたウイルス量の有意な減少だけでなく、炎症パラメータであるC反応性タンパク質(CRP)およびインターロイキン-6(IL-6)の大幅な減少も確認された:7日間のB-OT治療で、CRP値は平均77pg/mlから5pg/mlに低下し、IL-6レベルは平均63pg/mlから5pg/mlに低下した。
【0057】
実施例5:SARS-CoV-2感染Caco-2細胞におけるウイルス増殖を阻害するためのTKTL1阻害剤としてのレスベラトロールの使用
ポリフェノールの群の有機化合物レスベラトロール(分子式C14H12O3)は、TKTL1プロモーターの阻害剤として当業者に知られている。Kumar B. (2018)には、HeLa細胞を50μMのレスベラトロールで48時間処理すると、未処理の細胞と比較してTKTL1プロモーター活性が75%低下したことが記載されている。しかしながら、これはHeLa細胞の生存率の著しい低下も同時にもたらした。
【0058】
この実施例5の枠組みにおける調査では、レスベラトロールを用いてSARS-CoV-2感染Caco-2細胞のウイルス複製を阻止した。このために、SARS-CoV-2感染Caco-2細胞を異なるレスベラトロール濃度で24時間処理した。TKTL1-mRNA産生に対するプロモーター活性低下の影響を確認するために、RTqPCRを行った。このRTqPCRの結果は、使用したレスベラトロール濃度に依存して、TKTL1-mRNAの減少を示す:濃度が高いほど、減少は大きくなる。さらに、本明細書の実施例1に記載したように、Caco-2細胞の生存率をMTTアッセイにより決定し、SARS-CoV-2ウイルスの複製能力をSARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質の免疫染色により決定した。レスベラトロールで処理を行わなかったSARS-CoV-2感染Caco-2細胞をコントロールとして用いた。
【0059】
レスベラトロール処理下におけるSARS-CoV-2ウイルスの複製能力は、コントロールと比較してレスベラトロールの投与量が増加するにつれて低下したが、SARS-CoV-2感染Caco-2細胞の生存率は十分なレベルのままであることが明らかになった。したがって、25μMのレスベラトロールで48時間処理すると、SARS-CoV-2ウイルスの複製能力はコントロールに比べて68%減少したが、Caco-2細胞の生存率は93%であった。結果を
図5にグラフで示す。
【0060】
引用された非特許文献:
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Targeting pentose phosphate pathway for SARS-CoV-2 therapy.
bioRxiv preprint https://doi.org/10.1101/2020.08.19.257022
Dal Pozzo F, Andrei G, Daelemans D, Winkler M, Piette J, De Clercq E, Snoeck R, (2008): Fluorescence-based antiviral assay for the evaluation of compounds against vaccinia virus, varicella zoster virus and human cytomegalovirus. Journal of Virological Methods 151 66-73.
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Diaz-Moralli S, Aguilar E, Marin S, Coy JF, Dewerchin M, Antoniewicz MR, Meca-Cortes O, Notebaert L, Ghesquiere B, Eelen G, Thomson TM, Carmeliet P, Cascante M. (2016):
A key role for transketolase-like 1 in tumor metabolic reprogramming.
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【手続補正書】
【提出日】2023-10-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルス感染症、特にRNAウイルス感染症、特にまたSARS-CoV-2感染症の処置に使用するためのトランスケトラーゼTKTL1の阻害剤。
【請求項2】
TKTL1遺伝子の転写を特異的に制限または阻止することが可能であり、かつそれに適した物質または物質混合物であることを特徴とする、請求項1記載の阻害剤。
【請求項3】
細胞のTKTL1プロモーターに結合し、それによってその活性を制限または阻止することが可能であり、かつそれに適した物質または物質混合物であることを特徴とする、請求項1または2記載の阻害剤。
【請求項4】
前記阻害剤がレスベラトロールであることを特徴とする、請求項3記載の阻害剤。
【請求項5】
前記阻害剤が、TKTL1-mRNAの翻訳を特異的に阻害するのに適した物質または物質混合物であることを特徴とする、請求項1記載の阻害剤。
【請求項6】
前記阻害剤が、TKTL1-mRNAにそれぞれ特異的なアンチセンス構築物、siRNA、リボザイムおよび他の阻害性RNAを含む群から選択されることを特徴とする、請求項5記載の阻害剤。
【請求項7】
前記阻害剤が、TKTL1および/またはTKTL1-TKTヘテロ二量体複合体の酵素反応を制限または阻止するのに適した物質または物質混合物であることを特徴とする、請求項1記載の阻害剤。
【請求項8】
前記阻害剤が、抗チアミン化合物およびTKTL1ポリペプチドの補因子の他のアンタゴニストを含む群から選択されることを特徴とする、請求項7記載の阻害剤。
【請求項9】
前記阻害剤が、阻害性チアミンアナログ、特にオキシチアミン、ベンフォオキシチアミンおよび/またはベンフォオキシチアミンアナログであり、ベンフォオキシチアミンの場合、これは患者の体重1kg当たりかつ1日当たり7μg~430μg、有利には14μg~215μg、とりわけ好ましくは14μg~130μgのベンフォオキシチアミンの用量で使用されることを特徴とする、請求項7または8記載の阻害剤。
【請求項10】
前記阻害性チアミンアナログが有効成分ベンフォオキシチアミンであり、患者の体重1kg当たりかつ1日当たり7μg~430μg、有利には14μg~215μg、とりわけ好ましくは14μg~130μgのベンフォオキシチアミンの用量で使用されることを特徴とする、請求
項9記載の阻害剤。
【請求項11】
前記阻害剤が、TKTL1-TKTヘテロ二量体複合体の形成を制限または阻止することが可能であり、かつそれに適した物質または物質混合物であることを特徴とする、請求項1記載の阻害剤。
【請求項12】
TKTL1阻害剤としてのベンフォオキシチアミンの場合、前記ベンフォオキシチアミンが、患者の体重1kg当たりかつ1日当たり7μg~430μg、有利には14μg~215μg、とりわけ好ましくは14μg~130μgのベンフォオキシチアミンの用量で使用される、請求項
1記載の阻害剤。
【請求項13】
患者の体重1kg当たりかつ1日当たりの前記用量が、ベンフォオキシチアミン14μg~215μg、有利にはベンフォオキシチアミン14μg~130μgであることを特徴とする、請求項12記載の阻害剤。
【国際調査報告】