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特表2024-514194変形性関節症の治療に使用するためのPSG1
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-28
(54)【発明の名称】変形性関節症の治療に使用するためのPSG1
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/16 20060101AFI20240321BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240321BHJP
   A61P 19/04 20060101ALI20240321BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240321BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240321BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240321BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240321BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20240321BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20240321BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20240321BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240321BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240321BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20240321BHJP
   C12N 15/63 20060101ALN20240321BHJP
【FI】
A61K38/16
A61P19/02
A61P19/04
A61K47/68
A61K48/00
A61P17/02
A61P3/10
C07K14/47 ZNA
C07K16/00
C07K19/00
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563180
(86)(22)【出願日】2022-04-14
(85)【翻訳文提出日】2023-12-04
(86)【国際出願番号】 EP2022060148
(87)【国際公開番号】W WO2022219168
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】21168470.9
(32)【優先日】2021-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500489473
【氏名又は名称】ユニバーシティ・カレッジ・コークーナショナル・ユニバーシティ・オブ・アイルランド,コーク
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムーア、トム
(72)【発明者】
【氏名】クローバー、アントニー ジェイムス ピーターソン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA16
4C076AA17
4C076BB11
4C076BB16
4C076BB31
4C076CC09
4C076CC18
4C076CC19
4C076CC21
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA34
4C084BA41
4C084CA53
4C084CA59
4C084MA16
4C084MA22
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA89
4C084ZA96
4C084ZC35
4C084ZC61
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA53
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA45
(57)【要約】
PSG1が関節内注射によって投与される、ヒトの変形性関節症または損傷軟骨の治療におけるFcタグ付き妊娠特異的糖タンパク質1(PSG1-Fc)の使用が記載される。また、CC49が関節内注射によって投与される、ウマ哺乳動物の変形性関節症または損傷軟骨の治療方法におけるCC49の使用も記載される。(図3A~C)哺乳動物の創傷、瘢痕化、火傷および糖尿病性潰瘍の治療方法におけるPSG1の使用も記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PSG1が、関節内注射によって投与される、ヒトの変形性関節症または損傷軟骨の治療方法に使用するための妊娠特異的糖タンパク質1(PSG1)。
【請求項2】
Fcタグ付きPSG1(PSG1-Fc)である、請求項1の使用のための、請求項1に記載のPSG1。
【請求項3】
PSG1発現ベクターまたはPSG1-Fc発現ベクターが、前記ヒトに投与される、請求項1の使用のための、請求項1または2に記載のPSG1。
【請求項4】
CC49が、関節内注射によってウマ哺乳動物に投与される、ウマ哺乳動物の変形性関節症または損傷軟骨の治療方法に使用するためのCC49。
【請求項5】
前記CC49がFcタグ付きCC49(CC49-Fc)であり、前記Fcタグが場合によりウマFcタグである、請求項4の使用のための、請求項4に記載のCC49。
【請求項6】
CC49発現ベクターまたはCC49-Fc発現ベクターが、前記ウマ哺乳動物に投与される、請求項4の使用のための、請求項4または5に記載のCC49。
【請求項7】
ヒトの糖尿病性潰瘍の治療方法に使用するための妊娠特異的糖タンパク質1(PSG1)。
【請求項8】
Fcタグ付きPSG1(PSG1-Fc)である、請求項7の使用のための、請求項7に記載のPSG1。
【請求項9】
前記PSG1が、局所組成物として提供され、前記局所組成物が、前記糖尿病性潰瘍に局所投与される、請求項7の使用のための、請求項7または8に記載のPSG1。
【請求項10】
哺乳動物の創傷の治療方法に使用するための妊娠特異的糖タンパク質1(PSG1)。
【請求項11】
前記創傷に局所的に適用される、請求項10の使用のための、請求項10に記載のPSG1。
【請求項12】
前記創傷が、肥厚性瘢痕の切除によって引き起こされる、請求項10または11の使用のための、請求項10に記載のPSG1。
【請求項13】
前記創傷が、ケロイド瘢痕を含む、請求項10または11の使用のための、請求項10に記載のPSG1。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疾患を治療するための胎盤発現タンパク質の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
妊娠特異的糖タンパク質(pregnancy-specific glycoprotein)(PSG)は、母体-胎児境界面(maternal-fetal interface)、および妊娠中の母体循環では、免疫応答、血管新生応答および血小板応答の調節に関与すると考えられている。PSGタンパク質は、それ自体が免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである癌胎児性抗原細胞接着分子(CEACAM)ファミリーの一部である。PSGタンパク質は、霊長類、ウマ類および齧歯類の間で構造がかなり異なるが、保存された機能を保持している(Aleksic D,et al.Convergent evolution of pregnancy-specific glycoproteins in human and horse.Reproduction.2016 Sep;152(3):171-84.doi:10.1530/REP-16-0236.Epub 2016 Jun 8.Moore T,Dveksler GS.Pregnancy-specific glycoproteins:complex gene families regulating maternal-fetal interactions.Int J Dev Biol.2014;58(2-4):273-80.doi:10.1387/ijdb.130329gd.Review.PMID:25023693.)。ヒトおよびマウスには、それぞれ、PSGタンパク質をコードする11個および17個の異なるPSG遺伝子が存在する。ヒトPSGは、1つのN末端免疫グロブリン可変(IgV)様ドメイン(Nドメイン)、それに続く2つの異なるタイプ(AおよびBと命名される)の一般に2~3つのIg定常(IgC)様ドメインから構成されるが、齧歯類PSGは、2~9つの連続するNドメイン、それに続く1つのIgC様ドメインを含有する。7つのウマCEACAM由来PSG様タンパク質は、単一のNドメインおよびA2ドメインを有する(Aleksic et al.,2016)。
【0003】
PSG1は、11個の異なるヒトPSG遺伝子の豊富に発現されるメンバーであり、ある試験では、妊娠の第三期に総PSGタンパク質濃度が100μg/mlを超えると推定された。妊娠中、形質転換増殖因子ベータ(TGF-β)は、栄養膜浸潤、血管新生および細胞外マトリックス産生を調節する。様々な細胞をPSG1または他のPSGを用いて処理すると、ELISAによって決定した場合、上清中の総TGF-β1の分泌が増加し、潜在型TGF-β1の活性化も増加した[Ballesteros A,Mentink-Kane MM,Warren J,Kaplan GG,Dveksler GS.
Induction and activation of latent transforming growth factor-β1 are carried out by two distinct domains of pregnancy-specific glycoprotein 1(PSG1).
J Biol Chem.2015 Feb 13;290(7):4422-31.doi:10.1074/jbc.M114.597518.Epub 2014 Dec 29.]。
【0004】
国際公開第2017049082号は、1つの特異的PSGタンパク質、PSG1、および免疫寛容の誘導に供される経路におけるその関与を記載している。PSG1は、炎症性T細胞の抑制に必須であり、移植片対宿主病(GvDH)の予防に重要であることが示されている細胞集団である寛容誘導性CD4+CD25+FoxP3+制御性T細胞(Treg)の分化に重要なサイトカインである形質転換増殖因子-β1(TGFβ1)の活性化に関与している。
【0005】
Jones et al.(Biology of Blood and Marrow Transplantation,1 September 2018)は、急性移植片対宿主病のマウスモデルに組換えPSG1が果たす保護的役割を記載している。
【0006】
Blois et al.(Mucosal Immunology,Vol.7,No.2,14 August 2013)は、マウスのDSS誘発性大腸炎の予防におけるPSG1の使用を記載している。
【発明の概要】
【0007】
一態様では、本発明は、軟骨の喪失または軟骨への損傷を特徴とする状態を治療または予防する方法に使用するための妊娠特異的糖タンパク質(例えば、PSG1)を提供する。一実施形態では、状態は変性関節状態である。一実施形態では、変性関節状態は変形性関節症である。別の実施形態では、状態は、外傷(例えば、転倒またはスポーツ外傷)によって引き起こされる損傷軟骨である。一実施形態では、PSG1は、関節内注射によって投与される。一実施形態では、方法は、罹患した関節内の軟骨の喪失を遅らせるか、停止させるか、または逆転させる方法である。一実施形態では、方法は、膝、股関節または手の変形性関節症を治療するためのものである。一実施形態では、治療は原因治療である。別の実施形態では、治療は、対症療法、例えば、変形性関節症の症状、例えば、関節痛または硬直を治療する方法である。一実施形態では、方法は、対象の損傷軟骨を修復する方法である。図3A~Cは、PSG1-FcおよびCC49-Fcを使用した変形性関節症の有効な治療を実証する。
【0008】
本発明の別の態様によれば、哺乳動物の創傷を治療する方法に使用するための妊娠特異的糖タンパク質、例えば、妊娠特異的糖タンパク質1(PSG1)が提供される。PSG1は、マウス動物モデルおよびブタ動物モデルでは、未処置創傷と比較して、創傷拘縮、または創傷の再上皮化を促進し、創傷閉鎖を促進することが示されている。
【0009】
典型的には、本発明の方法は、未処置創傷と比較して創傷の閉鎖を促進するためのものである。
【0010】
典型的には、創傷は皮膚創傷である。ただし、本発明は、非皮膚創傷、例えば、皮膚以外の器官への創傷の治療にも適用される。そのような創傷は、例えば、手術、外傷、薬物使用または疾患によって引き起こされ得る。一実施形態では、創傷は、糖尿病性潰瘍、例えば、糖尿病性食物潰瘍(diabetic food ulcer)である。
【0011】
典型的には、PSG1は、創傷に局所投与される。典型的には、方法は、創傷、特に創傷の周辺部にPSG1局所製剤を適用することを含む。
【0012】
任意の実施形態では、PSG1は、典型的には皮下注射によって、創傷に皮下投与され得る。
【0013】
PSG1は、典型的には、皮膚創傷の部位でケラチノサイトによる上皮化を促進するのに有効な量で投与される。
【0014】
任意の実施形態では、創傷は瘢痕を含む。任意の実施形態では、PSG1は、瘢痕に投与される。
【0015】
任意の実施形態では、創傷は、肥厚性瘢痕の切除の結果として生じる創傷である。
【0016】
任意の実施形態では、創傷は、ケロイド瘢痕を含むか、またはケロイド瘢痕からなる。
【0017】
本発明の別の態様によれば、哺乳動物のケロイド瘢痕を治療する方法に使用するための妊娠特異的糖タンパク質、例えば、妊娠特異的糖タンパク質1(PSG1)が提供される。
【0018】
本発明の別の態様によれば、哺乳動物の肥厚性瘢痕化を治療または予防する方法に使用するための妊娠特異的糖タンパク質、例えば、妊娠特異的糖タンパク質1(PSG1)が提供される。任意の実施形態では、方法は、肥厚性瘢痕を切除すること、および次いで、瘢痕の切除によって生じた創傷に妊娠特異的糖タンパク質を投与することを含む。
【0019】
さらなる態様では、本発明は、哺乳動物の創傷、特に皮膚創傷を治療する方法に使用するためのFcタグ付き妊娠特異的糖タンパク質1(PSG1-Fc)を提供する。一実施形態では、PSG1-Fcは、創傷に局所投与されるか、または皮内(IV)投与によって創傷に投与される。
【0020】
さらなる態様では、本発明は、薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて妊娠特異的糖タンパク質1(PSG1)の治療有効量を含むPSG1局所製剤を提供する。PSG1局所製剤は、クリーム、軟膏、ゲル、油懸濁液またはローションであり得る。
【0021】
さらなる態様では、本発明は、医薬品として使用するためのFcタグ付き妊娠特異的糖タンパク質1(PSG1-Fc)を提供する。
【0022】
一実施形態では、PSG1は、皮下、皮内、静脈内もしくは腹腔内送達によって、または患部への注射によって投与される。一実施形態では、PSG1は、関節内注射によって投与される。
【0023】
任意の実施形態では、PSG1は、哺乳動物にPSG1(またはPSG1-Fc)発現ベクターをトランスフェクトすることによって、哺乳動物に投与される。
【0024】
任意の実施形態では、PSG1は、PSG1(またはPSG1-Fc)発現ベクターによってトランスフェクトされた細胞を哺乳動物に投与することによって、哺乳動物に投与される。任意の実施形態では、PSG1は、PSG1を用いて前処理された細胞(例えば、PSG1とともにインキュベートされたか、またはPSG1の存在下で培養された細胞)を哺乳動物に投与することによって、哺乳動物に投与される。任意の実施形態では、PSG1と細胞(例えば、間葉系幹細胞)とは、哺乳動物に同時投与される。任意の実施形態では、細胞は幹細胞である。任意の実施形態では、細胞は間葉系幹細胞である。任意の実施形態では、ドナー細胞はレシピエントから得られる。一実施形態では、ドナー細胞は、同じ種の哺乳動物から得られる(例えば、ヒトからヒト、またはウマからウマへ)(同種細胞療法)。任意の実施形態では、細胞は、エクスビボでトランスフェクトされる。
【0025】
上記で提供された本発明の方法は、治療におけるPSG1、およびPSG1の改変バージョン、例えば、PSG1-Fcを列挙している。ただし、本発明はまた、上記の治療方法におけるPSG1(およびその改変バージョン)以外のPSGタンパク質の使用に関する。
【0026】
任意の実施形態では、PSG1(またはPSG)は、官能性部分によって改変される。官能性部分は、改変PSG1の血漿半減期を増加させるように構成され得る。官能性部分は、改変PSG1の細胞透過官能性を増加させるように構成され得る。官能性部分は、改変PSG1の活性を増加させるように構成され得る。官能性部分は、改変PSG1の精製を容易にするように構成され得る。PSG1ポリペプチドの改変の例は以下に提供され、PSG1ポリペプチドの改変の例には、抗体断片、例えば、Fc部分の付加、PEG官能基の付加、L-異性体による天然アミノ酸の置換が挙げられる。一実施形態では、官能基はFc部分である。一実施形態では、Fc部分は、天然Fc部分と比較して増加した血漿半減期を有するように改変される。改変Fcタグは、以下の論文に記載されている:Algirdas Grevys,Malin Bern,Stian Foss,Diane Bryant,Terje Bratlie,Anders Moen,Kristin Stoen Gunnarsen,Audun Aase,Terje Einar Michaelsen,Inger Sandlie and Jan Andersen.Fc Engineering of Human IgG1 for Altered Binding to the Neonatal Fc Receptor Affects Fc Effec-tor Functions.Journal of Immunology June 1,2015,194(11)5497-5508.Dall’Acqua WF,Kiener PA,Wu H.Properties of human IgG1s engineered for enhanced binding to the neonatal Fc receptor(FcRn).The Journal of Biological Chemistry.281:23514-23524(2006).(2006).Abhishek Saxena and Donghui Wu.Advances in Therapeutic Fc Engineering-Modulation of IgG-Associated Effector Functions and Serum Half-life.Frontiers in Immunology.2016;7:580.ヒトFcタグに対する例示的な改変には、安定性および半減期を増加させるためのCH2ドメイン内の三重置換YTE(M252Y/S254T/T256E)およびCH3ドメイン内の(H433K/N434F)が含まれる(配列番号3)。これらの改変は、部位特異的変異誘発を使用して行われ得る。一実施形態では、本発明は、配列番号3によってコードされるFcタグとコンジュゲートされたPSG1タンパク質を提供する。
【0027】
別の態様では、本発明は、哺乳動物、典型的には非ヒト哺乳動物の創傷を治療する方法に使用するためのCC49(典型的には、組換えCC49)を提供する。好ましい実施形態では、哺乳動物はウマ(equine)(すなわち、ウマ(horse))である。本明細書で提供されるデータは、CC49が、PSG1と同様の組織修復作用と一致する一連の遺伝子調節活性を示すことを示している。例えば、CC49は、PSG1と同様に、それぞれケラチノサイトおよびリンパ球の系統を表すヒト細胞株(HaCaT、Jurkat)内でサイトカイン発現を調節する。CC49は、インビトロ擦過創傷アッセイでは、HaCaTおよび間葉系幹細胞(MSC)の遊走を増強する(図1A~C)。
【0028】
別の態様では、本発明は、軟骨の喪失または軟骨への損傷を特徴とする、哺乳動物の状態を治療する方法に使用するためのCC49(典型的には、組換えCC49)を提供する。好ましい実施形態では、哺乳動物はウマ(equine)(すなわち、ウマ(horse))である。任意の実施形態では、状態は、関節の変性状態(例えば、変形性関節症などの関節疾患)である。任意の実施形態では、状態は、例えば、転倒または他の種類の外傷によって引き起こされた、軟骨の外傷性損傷である。任意の実施形態では、状態は、刺激(例えば、傷害)に応答した組織損傷に起因する跛行を引き起こす。任意の実施形態では、CC44は、損傷組織への直接注射によって、または関節内注射のために投与される。特定の一態様では、本発明は、ウマ哺乳動物の関節状態(典型的には、変形性関節症)を治療または予防する方法に使用するためのCC49、特にCC49-Fcなどの改変CC49を提供し、CC49は、罹患した関節への関節内注射によってウマ哺乳動物に投与される。
【0029】
任意の実施形態では、CC49は、官能基によって改変される。任意の実施形態では、官能基は、改変CC49の血漿半減期を増加させるように構成される。任意の実施形態では、官能基は、ウマIgG1由来のFc部分である(一例は、Wagner B1,Robeson J,McCracken M,Wattrang E,Antczak DF.Horse cytokine/IgG fusion proteins--mammalian expression of biologically active cytokines and a system to verify antibody specificity to equine cytokines.Vet Immunol Immunopathol.2005 May 1;105(1-2):1-14.DOI:10.1016/j.vetimm.2004.11.010に記載されている)。Fcタグは、医薬品製造中にタンパク質を精製するのにも有用である。
【0030】
任意の実施形態では、CC49は非経口投与される。任意の実施形態では、CC449は、関節内注射によって投与される。
【0031】
別の態様では、本発明は、医薬品として使用するための組換えCC49を提供する。
【0032】
別の態様では、本発明は、Fcタグ付きCC49(例えば、Fc標識組換えCC49)を提供する。
【0033】
別の態様では、本発明は、医薬品として使用するためのFcタグ付きCC49を提供する。
【0034】
本発明の他の態様および好ましい実施形態は、以下に記載される他の特許請求の範囲において定義および説明される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】PSG1タンパク質およびCC49タンパク質は、細胞株擦過創傷アッセイでは創傷閉鎖を増強する。A)16時間後の、PSG1-Fc、PSG1-V5His、CC49-Fc、CC49-V5Hisまたは50μl PBSによって処理したウマMSC細胞(n=3)。B)16時間後の、PSG1-Fc、PSG1-V5His、CC49-Fc、CC49-V5Hisまたは50μl PBSによって処理したヒトMSC(n=3)。C)16時間後の、PSG1-Fc、PSG1-V5His、CC49-Fc、CC49-V5Hisまたは50μlのPBSによって処理したHaCaT細胞(n=3)。(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001)。D)RT2 Profiler(商標)PCR Array Human Wound Healing(330231、カタログ番号PAHS-121ZE-4;Qiagen,UK)を使用して、遺伝子発現変化について、PSG1-V5Hisまたは50μlのPBSによって処理したヒトHaCaT細胞を分析した。
図2】A)およびB)PSG1は、対照群と比較してブタ皮膚創傷の上皮化を増強する。C)およびD)PSG1は、対照群と比較してマウス皮膚創傷の閉鎖を増強する。正常マウスおよび糖尿病マウスでは、同様の結果が得られた。
図3】PSG1-FcおよびCC49-Fcは、マウスコラゲナーゼ誘発性変形性関節症(CIOA)モデルでは、変形性関節症を減少させる。A)PSG1-FcおよびCC49-Fcは、PBS処置(対照)群と比較して、処置群の骨小柱の厚さを増加させる。B)PSG1-FcおよびCC49-Fcは、PBS処置群と比較した場合、処置群のミネラル密度を増加させる。C)PSG1-FcおよびCC49-Fcは、PBS処置群と比較して、処置群の骨棘密度を減少させる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許、特許出願および他の参考文献は、あたかも各個々の刊行物、特許または特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示され、その内容が完全に引用されているかのように、あらゆる目的のために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0037】
定義および一般的な選好
本明細書で使用される場合、特に具体的な指示がない限り、以下の用語は、当技術分野で享受され得る任意のさらに広い(またはさらに狭い)意味に加えて、以下の意味を有することが意図される。
【0038】
文脈上特に必要とされない限り、本明細書における単数形の使用は、複数形を含むように読まれるべきであり、その逆も同様である。実体に関して使用される用語「a」または「an」は、その実体のうちの1つ以上を指すように読まれるべきである。したがって、用語「a」(または「an」)、「1つ以上」および「少なくとも1つ」は、本明細書では区別なく使用される。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprise)」またはその変形例、例えば、「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」は、任意の列挙された整数(例えば、機構、要素、特性、特性、方法/プロセス工程または限定)または整数群(例えば、機構、要素、特性、特性、方法/プロセス工程または限定)を含むが、任意の他の整数または整数群を除外しないことを示すように読まれるべきである。したがって、本明細書で使用される場合、用語「含む(comprising)」は、包括的またはオープンエンドであり、追加の列挙されていない整数または方法/プロセス工程を除外しない。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「疾患」は、生理学的機能を損ない、特定の症状に関連する任意の異常な状態を定義するために使用される。該用語は、病因の性質(または実際に疾患の病因学的基礎が確立されているかどうか)にかかわらず生理学的機能が損なわれている任意の障害、疾病、異常、病態、病気、状態または症候群を包含するために広く使用される。したがって、該用語は、感染、外傷、傷害、手術、放射線学的アブレーション、年齢、中毒または栄養不足から生じる状態を包含する。
【0041】
本明細書で使用される場合、用語「治療(treatment)」または「治療する(treating)」は、疾患の症状を治癒させる、改善するもしくは軽減する、またはその原因を除去する(またはその原因の影響を軽減する)介入(例えば、対象への薬剤の投与)を指す。この場合、該用語は、用語「療法(therapy)」と同義に使用される。
【0042】
さらに、用語「治療(treatment)」または「治療する(treating)」は、疾患の発症もしくは進行を予防するもしくは遅延させる、または治療された集団内でのその発生率を低下させる(または根絶する)介入(例えば、対象への薬剤の投与)を指す。この場合、治療(treatment)という用語は、用語「予防(prophylaxis)」と同義に使用される。
【0043】
本明細書で使用される場合、薬剤の有効量または治療有効量は、合理的な利益/リスク比に見合った、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応または他の問題もしくは合併症を伴わず対象に投与され得るが、所望の効果、例えば、対象の状態の持続的または一時的な改善によって現れる治療または予防を提供するのに十分な量を定義する。量は、個体の年齢および全身状態、投与様式、ならびに他の要因に応じて、対象ごとに変動する。したがって、正確な有効量を特定することは不可能であるが、当業者であれば、常用的な実験、および背景技術の一般知識を使用して、いずれかの個々の場合に適切な「有効」量を決定することができるであろう。これに関連して、治療結果には、症状の根絶または軽減、疼痛または不快感の低減、生存期間の延長、可動性の改善、および臨床的改善の他のマーカーが含まれる。治療結果は、完全な治癒である必要はない。改善は、生物学的/分子的マーカー、臨床的または観察的改善に観察され得る。好ましい実施形態では、本発明の方法は、ヒト、大型競走用動物(ウマ、ラクダ、イヌ)および飼育伴侶動物(ネコおよびイヌ)に適用可能である。
【0044】
上記で定義される治療および有効量に関連して、対象という用語(文脈上許容される場合、「個体」、「動物」、「患者」または「哺乳動物」を含むように読まれるべきである)は、治療が適応される任意の対象、特に哺乳動物対象を定義する。哺乳動物対象には、限定するものではないが、ヒト、飼育動物、家畜、動物園動物、スポーツ動物、ペット動物、例えば、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ラクダ、バイソン、畜牛、乳牛;霊長類、例えば、類人猿、サル、オランウータンおよびチンパンジー;イヌ科動物、例えば、イヌおよびオオカミ;ネコ科動物、例えば、ネコ、ライオン、トラ;ウマ類、例えば、ウマ、ロバおよびシマウマ;食用動物、例えば、乳牛、ブタおよびヒツジ;有蹄動物、例えば、シカおよびキリン;ならびに齧歯類、例えば、マウス、ラット、ハムスターおよびモルモットが含まれる。好ましい実施形態では、対象はヒトである。本明細書で使用される場合、用語「ウマ(equine)」は、ウマ(horse)、ロバ(donkey)、ロバ(ass)、チベットノロバおよびシマウマを含むウマ科(Equidae)の哺乳動物を指す。
【0045】
本明細書で使用される場合、PSGタンパク質という用語は、細胞膜アンカーを欠き、胎盤組織内で主に発現されるCEACAM関連タンパク質を指す。そのようなタンパク質は、例えば、霊長類、齧歯類、ウマ類、コウモリを含む哺乳動物のサブセットに見られるが、例えば、有蹄動物およびイヌ科動物には見られない(Robert Kammerer,Wolfgang Zimmermann.Coevolution of activating and inhibitory receptors within mammalian carcinoembryonic antigen families.BMC Biol.2010;8:12.Published online 2010 Feb 4.doi:10.1186/1741-7007-8-12)。PSGの遺伝子およびタンパク質配列の例が利用可能である(McLellan AS,Fischer B,Dveksler G,Hori T,Wynne F,Ball M,Okumura K,Moore T,Zimmermann W.Structure and evolution of the mouse pregnancy-specific glycoprotein(Psg)gene locus.BMC Genomics.2005 Jan 12;6:4.PMID:15647114;Kammerer&Zimmermann,2010;Aleksic et al.,2016)。一般に、PSG(すなわち、PSG1)は組換えタンパク質である。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語「妊娠特異的糖タンパク質1」または「PSG1」は、シグナル配列(アミノ酸残基1~34)、成熟ペプチド(残基35~419)を含む、以下の配列番号1によって表される全長タンパク質を指す。該用語には、シグナル配列を有しない成熟ペプチドも含まれる。
【0047】
配列番号1:
【0048】
用語「PSG1」はまた、Fcタグ付きPSG1タンパク質(PSG1-Fc)を含み、その一例は、Fcタグが、MTS変異M252Y/S254T/T256EおよびHN変異H433K/N434Fを導入する部位特異的変異誘発によって改変されている以下の配列番号2に提供される:
【0049】
配列番号2
【0050】
配列番号3は、MTS変異M252Y/S254T/T256EおよびHN変異H433K/N434Fを組み込んだ改変Fcタグに対するオープンリーディングフレームを提供する:
【0051】
配列番号3
改変ヒトFc ORF
【0052】
本明細書で使用される場合、用語「CC49」は、シグナル配列(アミノ酸残基(通常、残基1~32または38である))、成熟ペプチドを含む、以下の配列番号4によって表されるウマPSG様CEACAM49全長タンパク質を指す。該用語には、シグナル配列を有しない成熟ペプチドも含まれる。
【0053】
配列番号4:
【0054】
用語「CC49」はまた、Fcタグ付きCC49タンパク質(CC49-Fc)を含み、その一例は、以下の配列番号5に提供される:
【0055】
配列番号5
【0056】
配列番号6は、配列番号5の一部を形成するウマFcタグに対するオープンリーディングフレームを提供する
【0057】
配列番号6
ウマFc ORF
【0058】
用語「PSG1」および「CC49」はまた、野生型PSG1タンパク質または野生型CC49タンパク質、典型的には、ヒト野生型PSG1タンパク質およびウマ野生型CC49タンパク質と実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質である変異体を含む。したがって、例えば、該用語は、1つ以上のアミノ酸残基に関して変化したタンパク質またはポリペプチドを含むと解釈されるべきである。好ましくは、そのような変化は、5個以下のアミノ酸、さらに好ましくは4個以下、さらになお好ましくは3個以下、最も好ましくは1個または2個のアミノ酸のみの挿入、付加、欠失および/または置換を伴う。天然アミノ酸および改変アミノ酸による挿入、付加および置換が想定される。変異体は、保存的アミノ酸変化を有してもよく、導入されるアミノ酸は、置換されるアミノ酸と構造的、化学的または機能的に類似している。典型的には、触媒的に重要な残基の置換または欠失によって変化したタンパク質は、用語「変異体」から除外される。このような触媒的に重要な残基の詳細は、タンパク質モデリングの分野の当業者に周知である。一般に、変異体は、野生型タンパク質(上記のシグナルペプチドを除く)と少なくとも70%のアミノ酸配列相同性、好ましくは少なくとも80%の配列相同性、さらに好ましくは少なくとも90%の配列相同性、理想的には少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の配列相同性を有する。これに関連して、配列相同性は、配列同一性および配列類似性の両方を含み、すなわち、野生型タンパク質と70%のアミノ酸相同性を共有するポリペプチド配列は、アライメントした残基の任意の70%が、野生型タンパク質の対応する残基と同一であるかまたは野生型タンパク質の対応する残基の保存的置換であるものである。PSG1に関して、本発明の範囲内に含まれる特定の変異体は、国際特許出願公開番号WO2017049082の段落25~38で特定される変異体PSG1タンパク質である。該用語はまた、ヒトFcタグまたはウマFcタグを含むFcタグなどのタグによって改変されたPSG1タンパク質またはCC49タンパク質を含む。Fcタグは、血漿半減期および/または安定性の増加を示すように改変され得る。そのようなFcタグは、文献から公知であり、本明細書に記載されている。安定性および半減期を増加させるためのCH2ドメイン内の三重置換YTE(M252Y/S254T/T256E)およびCH3ドメイン内の(H433K/N434F)を含む、ヒトFcタグに対する改変の例。一実施形態では、本発明は、Fcタグ、典型的には、ウマ抗体、典型的には、ウマIgG抗体に由来するFcタグによって改変されたCC49タンパク質を提供する。
【0059】
本発明で使用するためのPSG1またはCC49は、化学合成によって、または核酸からの発現(すなわち、組換え)によって、全体的または部分的に生成され得る。例えば、本発明のタンパク質、および本発明で使用するためのタンパク質は、当技術分野で公知の十分に確立された標準的な液相タンパク質合成方法または好ましくは固相タンパク質合成方法に従って容易に調製され得る(例えば、J.M.Stewart and J.D.Young,Solid Phase Peptide Synthesis,2nd edition,Pierce Chemical Company,Rockford,Illinois(1984),in M.Bodanzsky and A.Bodanzsky,The Practice of Peptide Synthesis,Springer Verlag,New York(1984))を参照。必要に応じて、本発明で使用されるタンパク質のいずれも、それらの安定性を増加させるために化学的に改変され得る。化学的に改変されたタンパク質またはタンパク質類似体には、本発明の実施に関してインビボまたはインビトロでの安定性および/または有効性および/または半減期の増加を特徴とするタンパク質の任意の機能的な化学的同等物が含まれる。タンパク質類似体という用語はまた、本明細書に記載のタンパク質の任意のアミノ酸誘導体を指す。タンパク質類似体は、限定するものではないが、側鎖への改変、タンパク質合成中の非天然アミノ酸および/またはそれらの誘導体の組込み、ならびにタンパク質またはそれらの類似体に配座制約を課す架橋剤および他の方法の使用を含む手順によって生成され得る。側鎖改変の例には、例えば、アルデヒドとの反応、それに続くNaBHによる還元による還元アルキル化;メチルアセトイミダートによるアミド化;無水酢酸によるアセチル化;シアナートによるアミノ基のカルバミル化;2,4,6,トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によるアミノ基のトリニトロベンジル化;無水コハク酸およびテトラヒドロ無水フタル酸によるアミノ基のアルキル化;ならびに5’-リン酸ピリドキサールによるリジンのピリドキシル化、それに続くNaBHによる還元によるアミノ基の改変が挙げられる。アルギニン残基のグアニジノ基は、2,3-ブタンジオン、フェニルグリオキサールおよびグリオキサールなどの試薬との複素環縮合生成物の形成によって改変され得る。カルボキシル基は、o-アシルイソ尿素形成を介したカルボジイミド活性化、続いて、例えば、対応するアミドへのその後の誘導体化によって改変され得る。スルフヒドリル基は、ヨード酢酸またはヨードアセトアミドによるカルボキシメチル化;システイン酸への過ギ酸酸化;他のチオール化合物との混合ジスルフィドの形成;マレイミド、無水マレイン酸または他の置換マレイミドとの反応;4-クロロメルクリ安息香酸、4-クロロメルクリフェニルスルホン酸、塩化フェニル水銀、2-クロロメルクリック-4-ニトロフェノールおよび他の水銀を使用する水銀誘導体の形成;アルカリ性pHでのシアナートによるカルバミル化などの方法によって改変され得る。トリプトファン残基は、例えば、N-ブロモスクシンイミドによる酸化、または2-ヒドロキシ-5-ニトロベンジルブロミドもしくはハロゲン化スルホニルによるインドール環のアルキル化によって改変され得る。チロシン残基は、3-ニトロチロシン誘導体を形成するためのテトラニトロメタンによるニトロ化によって変化させてもよい。ヒスチジン残基のイミダゾール環の改変は、ヨード酢酸誘導体によるアルキル化、またはジエチルピロカーボナートによるN-カルベトキシル化によって達成され得る。タンパク質合成中の非天然アミノ酸および誘導体の組込みの例には、限定するものではないが、ノルロイシン、4-アミノ酪酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ-5-フェニルペンタン酸、6-アミノヘキサン酸、t-ブチルグリシン、ノルバリン、フェニルグリシン、オルニチン、サルコシン、4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸、2-チエニルアラニン、および/またはアミノ酸のD-異性体の使用が挙げられる。タンパク質構造の改変には、D-アミノ酸によってコードされる逆配列を含むレトロインベルソタンパク質の生成が含まれる。変化は、タンパク質分解に対する感受性を低下させ、酸化に対する感受性を低下させ、変異体配列の結合親和性を変化させ(典型的には、望ましくは親和性を増加させ)、および/または関連する変異体/類似体タンパク質に対して他の物理化学的もしくは機能的特性を付与もしくは改変するものであり得る。
【0060】
本明細書では、用語「配列同一性」は、配列同一性および配列類似性の両方を含むと理解されるべきであり、すなわち、参照配列と70%の配列同一性を共有する変異体(またはホモログ)は、その変異体(またはホモログ)のアライメントされた残基の任意の70%が、配列の全長にわたって、参照配列内の対応する残基と同一であるかまたは参照配列内の対応する残基の保存的置換であるものである。配列同一性は、2つの異なる配列間で正確に一致する文字の量である。これにより、ギャップはカウントされず、測定値は2つの配列のうちの短い方に関係する。「配列相同性」に関して、該用語は、変異体(またはホモログ)のアライメントされた残基のパーセンテージが、参照配列内の対応する残基と同一であるかまたは参照配列内の対応する残基の保存的置換であり、変異体(またはホモログ)が参照配列と同じ機能を共有する場合に、定義されたパーセント類似性またはパーセント同一性を参照配列と共有する変異体(またはホモログ)を意味すると理解されるべきである。このアライメントおよびパーセント相同性またはパーセント配列同一性は、当技術分野で公知のソフトウェアプログラムを使用して決定され得、例えば、1つのアライメントプログラムは、デフォルトパラメータを使用するBLASTである。これらのプログラムの詳細は、以下のインターネットアドレス:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/Blast.cgiで見出され得る。
【0061】
用語「PSG1」には、官能基による改変によるアミノ酸残基の挿入、欠失または置換以外によって改変されたPSG1タンパク質(改変タンパク質)も含まれる。同様に、「CC49」には、官能基による改変によるアミノ酸残基の挿入、欠失または置換以外によって改変されたCC49タンパク質(改変タンパク質)も含まれる。
【0062】
本明細書で使用される場合、用語「創傷」は、創傷、または創傷の結果として形成された瘢痕を意味すると理解されるべきである。瘢痕は、肥厚性瘢痕またはケロイド瘢痕であり得る。
【0063】
本明細書で使用される場合、用語「皮膚創傷」は、哺乳動物の皮膚および場合により下にある組織の創傷を指す。
【0064】
本明細書で使用される場合、創傷に適用される用語「上皮化」および「再上皮化」は、開放創、または皮膚のケロイド瘢痕などの瘢痕が、創傷周囲から場合により遊走する上皮(ケラチノサイト)細胞によって覆われる過程を指す。本発明の方法は、創傷、創傷によって残された瘢痕、ケロイド瘢痕、および瘢痕、特に肥厚性瘢痕または瘢痕化の切除によって引き起こされた創傷の治療に関する。本発明の方法はまた、火傷、または火傷によって引き起こされた瘢痕化の治療を含む。
【0065】
本明細書で使用される場合、用語「PSG1局所製剤」は、哺乳動物の皮膚への局所投与に適した、PSG1の製剤を指す。局所組成物は、クリーム、多重エマルジョン、無水組成物、水性分散液、油、ミルク、バルサム、フォーム、ローション、ゲル、クリームゲル、水-アルコール溶液、水-グリコール溶液、化粧品、パーソナルケア製品、ヒドロゲル、リニメント剤、セラム、石鹸、粉剤、ペースト、半固体製剤、リニメント、セラム、シャンプー、コンディショナー、軟膏、任意のリンスオフ製剤、タルク、ムース、粉末、スプレー、エアロゾル、溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エリキシル、多糖フィルム、パッチ、ゲルパッチ、包帯、接着剤系、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョンおよびシリコーンエマルジョンを含む群から選択される製剤で提供され得る。本発明の局所組成物は、化粧的または薬学的に有効な量で投与される。換言すれば、無毒であるが、所望の効果を提供するのに十分な量で。当業者であれば、過度の実験を伴わず、投与するために本発明の局所組成物の適切な用量を決定することができることが理解される。あるいは、医師であれば、治療またはケアされる特定の状態、疾患または障害、ならびに人の年齢、体重および/または健康状態に応じて、患者に最も適した実際の用量を決定するであろう。それは、使用される特定の化合物の活性、その化合物の代謝安定性および作用の長さ、年齢、体重、全身の健康状態、性別、食事、投与様式および投与時間、排泄速度、薬物の組合せ、特定の状態の重症度、ならびに治療を受けている個体を含む様々な要因に依存する。言うまでもなく、さらに高いまたは低い投与量範囲が見合った個々の例が存在する可能性があり、それは本発明の範囲内である。例えば、組成物は、0.01~50mg/kg体重、例えば、0.1~30mg/kg、さらに好ましくは0.1~20mg/kg体重、さらに好ましくは0.1~10mg/kg体重、好ましくは0.1~5mg/kg体重の用量で投与され得る。例示的な実施形態では、10~300mg/日、またはさらに好ましくは10~150mg/日の1つ以上の用量が患者に投与される。組織への注射(関節内など)では、0.01~1.0mg、好ましくは0.05~0.5mg、理想的には約0.1mgの投与量が想定される。この量および頻度は、この目的に最も適している。適用または投与の頻度は、各対象の必要性に応じて大きく変動し得、適用または投与の推奨範囲は、月に1回~1日10回、好ましくは週に1回~1日4回、さらに好ましくは週に3回~1日3回、さらになお好ましくは1日に1回または2回である。本発明の一実施形態では、エマルジョンは、脂質または油を含有する。エマルジョンは、限定するものではないが、水中油型、油中水型、水中油中水型およびシリコーン中水中油型エマルジョンであり得る。エマルジョンは、保湿剤を含有し得る。エマルジョンは、シリコーンなどの消泡剤を含有し得る。エマルジョンは、任意の好適な粘度を有し得る。エマルジョンは、乳化剤および/または消泡剤をさらに含有し得る。エマルジョンを調製する方法は、当業者に公知である。
【0066】
活性剤(PSG1またはCC49)は、所望の効果を達成するための薬学的または治療的に有効な濃度で、組成物の総重量に関して0.00000001%(重量基準)~100%(重量基準)、典型的には0.00000001%(重量基準)~40%(重量基準)、好ましくは0.000001%(重量基準)~15%(重量基準)、さらに好ましくは0.0001%(重量基準)~10%(重量基準)、さらになお好ましくは0.0001%(重量基準)~5%(重量基準)の好ましい形態で、本発明の局所組成物または医薬組成物に使用される。理想的には、組成物の約0.00001%w/w~約0.5%w/w、さらに好ましくは0.00005w/w~約0.05w/w、最も好ましくは約0.0001w/w~約0.01w/wのPSG1が好ましくは使用される。理想的には、組成物の約0.0001%w/w~約0.004%w/wのPSG1またはCC49が好ましくは使用される。
【0067】
本発明の組成物は、個別に、または他の薬理学的に活性な薬剤と組み合わせて投与され得る。そのような併用療法は、限定するものではないが、単一剤形または別個の個々の剤形の複数の薬剤を一緒に投与することを含む様々な治療レジメンを包含することが理解される。薬剤が異なる剤形で存在する場合、投与は、同時もしくはほぼ同時であり得るか、または異なる薬剤の投与を包含する任意の所定のレジメンに従い得る。好適な活性剤は、本明細書に記載される通りであり得る。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態では、組成物は、リポソーム、混合リポソーム、オレオソーム、ニオソーム、エトソーム、ミリカプセル、カプセル、マクロカプセル、ナノカプセル、ナノ構造脂質担体、スポンジ、シクロデキストリン、小胞、ミセル、界面活性剤の混合ミセル、界面活性剤-リン脂質混合ミセル、ミリスフェア、スフェア、リポスフェア、粒子、ナノスフェア、ナノ粒子、ミリ粒子、固体ナノ粒子、ならびに逆ミセルの内部構造を有する油中水型マイクロエマルジョンを含むマイクロエマルジョン、およびナノエマルジョン、マイクロスフェア、マイクロ粒子のいずれか1つを介して送達され得る。
【0069】
リポソームを調製するための様々な方法が利用可能である。例えば、Szoka et al.,Ann.Rev.Biophys.Bioeng.9:467(1980)、米国特許第4,186,183号明細書、米国特許第4,217,344号明細書、米国特許第4,235,871号明細書、米国特許第4,261,975号明細書、米国特許第4,485,054号明細書、米国特許第4,501,728号明細書、米国特許第4,774,085号明細書、米国特許第4,837,028号明細書、米国特許第4,235,871号明細書、米国特許第4,261,975号明細書、米国特許第4,485,054号明細書、米国特許第4,501,728号明細書、米国特許第4,774,085号明細書、米国特許第4,837,028号明細書、米国特許第4,946,787号明細書、PCT公開番号WO91/17424、Deamer&Bangham,Biochim.Biophys.Acta 443:629-634(1976);Fraley,et al.,PNAS 76:3348-3352(1979);Hope et al.,Biochim.Biophys.Acta 812:55-65(1985);Mayer et al.,Biochim.Biophys.Acta 858:161-168(1986);Williams et al.,PNAS 85:242-246(1988);Liposomes(Ostro(ed.),1983,Chapter 1);Hope et al.,Chem.Phys.Lip.40:89(1986);Gregoriadis,Liposome Technology(1984)およびLasic,Liposomes:from Physics to Applications(1993)を参照されたい。好適な方法には、例えば、超音波処理、押出、高圧/ホモジナイゼーション、マイクロフルイダイゼーション、洗剤透析、小型リポソームビヒクルのカルシウム誘導融合、およびエーテル融合法が含まれ、これらはいずれも当技術分野で周知である。
【0070】
これらの送達系は、本発明の化合物および/またはペプチドのさらに大きな浸透を達成するように適合され得る。これにより、薬物動態特性および薬力学特性が改善され得る。送達系は、本発明の化合物またはペプチドが一定期間中に、好ましくは一定期間にわたって一定の放出速度で徐々に放出される持続放出系であり得る。送達系は、当技術分野で公知の方法によって調製される。持続放出系に含有されるペプチドの量は、組成物がどこに送達されるか、および放出の持続時間、ならびに治療またはケアされる状態、疾患および/または障害の種類に依存する。
【0071】
本発明の化合物は、経口投与によって投与され得る。化合物(および所望により他の成分)はまた、硬質もしくは軟質シェルゼラチンカプセルに封入されてもよいか、錠剤に圧縮されてもよいか、または対象の食事に直接組み込まれてもよい。経口治療的投与のために、化合物を賦形剤とともに組み込んでもよく、摂取可能な錠剤、口腔錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハなどの形態で使用してもよい。化合物は、その不活性化を防止するために、何らかの材料を用いてコーティングまたは同時投与され得る。コーティングは、胃を通過する間に活性剤を保護し、回腸内で活性剤を放出するように構成され得る。
【0072】
本明細書で使用される場合、用語「軟骨の喪失または軟骨への損傷を特徴とする状態」は、変形性関節症、または外傷、例えば、転倒もしくはスポーツ外傷、摩耗および裂傷、もしくは他の疾患過程によって損傷した軟骨を指す。本発明の方法は、軟骨の喪失を遅らせるかもしくは阻害することによって、ならびに/または軟骨の成長および/もしくは修復を引き起こすことによって状態を治療することに関する。関節軟骨への損傷または関節軟骨の変性を特徴とする状態の治療が想定される。
【0073】
本発明の方法は、インビボで活性剤(PSG1またはCC49)を発現するように構成された核酸構築物を投与することを伴い得る。本明細書で使用される場合、用語「PSG1発現ベクター」または「CC49発現ベクター」は、細胞内のPSG1またはCC49(またはFcタグ付きタンパク質などのその改変バージョン)の発現に適した染色体ベクター、非染色体ベクターおよび合成核酸ベクター(好適な一連の発現制御エレメントを含む核酸配列)を含む任意の好適なベクターであり得る。そのようなベクターの例には、SV40の誘導体、細菌プラスミド、ファージDNA、バキュロウイルス、酵母プラスミド、プラスミドとファージDNAとの組合せに由来するベクター、およびウイルス核酸(RNAまたはDNA)ベクターが挙げられる。一実施形態では、PSG1アミノ酸配列またはCC49アミノ酸配列をコードする核酸分子は、例えば、線状発現エレメント(例えば、Sykes and Johnston,Nat Biotech 12,355-59(1997)に記載されているように)、圧縮核酸ベクター(例えば、米国特許第6,077,835号明細書および/または国際公開第00/70087号に記載されているように)またはpBR322、pUC 19/18もしくはpUC 118/119などのプラスミドベクターを含む裸のDNAベクターまたはRNAベクターに含まれる。そのような核酸ベクターおよびその使用法は、当技術分野で周知である(例えば、米国特許第5,589,466号明細書および米国特許第5,973,972号明細書を参照)。一実施形態では、DNAは、発現制御配列を含む。
【0074】
任意の実施形態では、ベクターは、細菌細胞内のタンパク質の発現に適している。そのようなベクターの例には、BlueScript(Stratagene)、pINベクター(Van Heeke&Schuster,1989,J Biol Chem 264,5503-5509)、pETベクター(Novagen,Madison,Wis.)などのような発現ベクターが挙げられる。任意の実施形態では、発現ベクターは、同じくまたは代替的に、酵母系内での発現に適したベクターであり得る。酵母系内での発現に適した任意のベクターが使用され得る。好適なベクターには、例えば、酵母アルファ因子、アルコールオキシダーゼおよびPGHなどの構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターを含むベクターが含まれる(F.Ausubel et al.,ed.,1987,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing and Wiley InterScience New York;およびGrant et al.,1987,Methods in Enzymol 153,516-544に概説されている)。他の実施形態では、発現ベクターは、バキュロウイルス感染昆虫細胞内での発現に適している。(Kost,T;and Condreay,J P,1999,Current Opinion in Biotechnology 10(5):428-33.)
【0075】
発現制御配列は、目的の遺伝子の転写、およびその後の様々な細胞系内のタンパク質の発現を制御および促進するように操作される。プラスミドは、目的の発現可能な遺伝子を、例えば、プロモーター、エンハンサー、選択マーカー、オペレーターなどの望ましいエレメントを含む発現制御配列(すなわち、発現カセット)と組み合わせる。本発明の発現ベクターでは、PSG1アミノ酸配列またはCC49アミノ酸配列をコードする核酸分子は、任意の好適なプロモーター、エンハンサー、選択マーカー、オペレーター、リプレッサータンパク質、ポリA終結配列および他の発現促進エレメントを含み得るか、またはそれらと会合し得る。
【0076】
本明細書で使用される「プロモーター」は、適切なシグナルが存在する場合、それが作動可能に連結されている、すなわち、タンパク質コードヌクレオチド配列の転写を可能にするように連結されているDNA配列の転写を導くのに十分なDNA配列を示す。タンパク質コードヌクレオチド配列の発現は、当技術分野で公知の任意のプロモーターエレメントまたはエンハンサーエレメントの制御下に置かれ得る。そのようなエレメントの例には、強力な発現プロモーター(例えば、ヒトCMV IEプロモーター/エンハンサー、またはCMV主要IE(CMV-MIE)プロモーター、ならびにRSV、SV40後期プロモーター、SL3-3、MMTV、ユビキチン(Ubi)、ユビキチンC(UbC)およびHIV LTRプロモーター)が挙げられる。いくつかの実施形態では、ベクターは、SV40、CMV、CMV-IE、CMV-MIE、RSV、SL3-3、MMTV、Ubi、UbCおよびHIV LTRからなる群から選択されるプロモーターを含む。
【0077】
本発明の核酸分子はまた、有効なポリ(A)終結配列、大腸菌(E.coli)内のプラスミド産物のための複製起点、選択マーカーとしての抗生物質耐性遺伝子、および/または簡便なクローニング部位(例えば、ポリリンカー)に作動可能に連結され得る。核酸はまた、CMV IEなどの構成的プロモーターとは対照的な調節可能な誘導性プロモーター(発達的に調節される誘導性、抑制性)を含み得る(当業者であれば、そのような用語が、特定の条件下での遺伝子発現の程度の実際の記述語であることを認識するであろう)。
【0078】
選択マーカーは、当技術分野で周知のエレメントである。選択条件下では、適切な選択マーカーを発現する細胞のみが生存することができる。一般に、選択マーカー遺伝子は、細胞培養では、様々な抗生物質に対する耐性を付与するタンパク質、通常は酵素を発現する。他の選択条件では、蛍光タンパク質マーカーを発現する細胞が可視化され、したがって、選択可能である。実施形態には、ベータラクタマーゼ(bla)(ベータラクタム抗生物質耐性遺伝子またはアンピシリン耐性遺伝子、すなわち、ampR)、bls(ブラストサイジン耐性アセチルトランスフェラーゼ遺伝子)、bsd(ブラストサイジン-Sデアミナーゼ耐性遺伝子)、bsr(ブラストサイジン-S耐性遺伝子)、Sh ble(Zeocin(登録商標)耐性遺伝子)、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(hpt)(ハイグロマイシン耐性遺伝子)、tetM(テトラサイクリン耐性遺伝子、すなわち、tetR)、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(npt)(ネオマイシン耐性遺伝子、すなわち、neoR)、kanR(カナマイシン耐性遺伝子)およびpac(ピューロマイシン耐性遺伝子)が含まれる。
【0079】
ある特定の実施形態では、ベクターは、bla、bls、bsd、bsr、Sh ble、hpt、tetR、tetM、npt、kanRおよびpacからなる群から選択される1つ以上の選択マーカー遺伝子を含む。他の実施形態では、ベクターは、緑色蛍光タンパク質(GFP)、増強緑色蛍光タンパク質(eGFP)、シアノ蛍光タンパク質(CFP)、増強シアノ蛍光タンパク質(eCFP)または黄色蛍光タンパク質(YFP)をコードする1つ以上の選択マーカー遺伝子を含む。
【0080】
本発明の目的のために、真核細胞内の遺伝子発現は、オペレーターによって制御される強力なプロモーターを使用して厳密に調節され得、オペレーターは、組換え「調節融合タンパク質」(RFP)であり得る調節タンパク質によって調節される。RFPは、転写阻止ドメインと、その活性を調節するリガンド結合ドメインとから本質的になる。そのような発現系の例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第20090162901号明細書に記載されている。
【0081】
本明細書で使用される場合、「オペレーター」は、遺伝子がオペレーターへのRFPの結合によって調節され得、その結果、目的の遺伝子、すなわち、本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチドの転写を防止するかまたは可能にするように、遺伝子内または遺伝子の近くに導入されるDNA配列を示す。原核細胞およびバクテリオファージでは、いくつかのオペレーターがよく特性評価されている(Neidhardt,ed.,Escherichia coli and Salmonella;Cellular and Molecular Biology 2d.Vol 2 ASM Press,Washington D.C.1996)。これらには、限定するものではないが、LexAペプチドに結合する大腸菌(E.coli)のLexA遺伝子のオペレーター領域、ならびに大腸菌(E.coli)のLad遺伝子およびtrpR遺伝子によってコードされるリプレッサータンパク質に結合するラクトースオペレーターおよびトリプトファンオペレーターが含まれる。これらには、ラムダcIおよびP22 arcによってコードされるリプレッサータンパク質に結合するラムダPR遺伝子およびファージP22 ant/mnt遺伝子由来のバクテリオファージオペレーターも含まれる。いくつかの実施形態では、RFPの転写阻止ドメインがNotIなどの制限酵素である場合、オペレーターは、その酵素に対する認識配列である。当業者であれば、プロモーターによる転写を制御することができるように、オペレーターがプロモーターに隣接して、またはプロモーターの3’側に位置しなければならないことを認識するであろう。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,972,650号明細書は、tetO配列がTATAボックスから特定の距離内にあることを指定している。特定の実施形態では、オペレーターは、プロモーターのすぐ下流に配置されることが好ましい。他の実施形態では、オペレーターは、プロモーターの10塩基対以内に配置される。
【0082】
例示的な細胞発現系では、細胞は、テトラサイクリンリプレッサータンパク質(TetR)を発現するように操作され、目的のタンパク質は、その活性がTetRによって調節されるプロモーターの転写制御下に置かれる。2つのタンデムTetRオペレーター(tetO)が、ベクター内のCMV-MIEプロモーター/エンハンサーのすぐ下流に配置される。そのようなベクター内のCMV-MIEプロモーターによって導かれる、目的のタンパク質をコードする遺伝子の転写は、テトラサイクリンまたは他の何らかの好適な誘導因子(例えば、ドキシサイクリン)の非存在下でTetRによって阻止され得る。誘導因子の存在下では、TetRタンパク質はtetOに結合することができないため、転写後に目的のタンパク質の翻訳(発現)が起こる。(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,435,553号明細書を参照)。
【0083】
本発明のベクターはまた、Cre-lox組換えツールを使用して、宿主ゲノムへの目的の遺伝子の組込みを促進し得る。Cre-lox戦略は、少なくとも2つの成分、すなわち、1)Creリコンビナーゼ、2つのloxP部位間の組換えを触媒する酵素;および2)loxP部位(例えば、組換えが起こる8bpのコア配列と、2つの隣接する13bpの逆方向反復とからなる、配列ごとの特定の34塩基対)または変異体lox部位を必要とする。(例えば、いずれも参照により本明細書に組み込まれるAraki et al.,1995,PNAS 92:160-4;Nagy,A.et al.,2000,Genesis 26:99-109;Araki et al.,2002,Nuc Acids Res 30(19):e103;および米国特許第20100291626号明細書を参照)。別の組換え戦略では、コンセンサス配列FRTとともに、酵母由来FLPリコンビナーゼが利用され得る(例えば、Dymecki,S.M.,1996,PNAS 93(12):6191-6196も参照)。
【0084】
本明細書で使用される場合、用語「宿主細胞」は、組換え核酸配列を発現するのに適した任意の細胞を含む。細胞には、原核生物および真核生物の細胞(単細胞または複数細胞)、細菌細胞(例えば、大腸菌(E.coli)、バチルス(Bacillus)種、ストレプトマイセス(Streptomyces)種などの株)、マイコバクテリア細胞、真菌細胞、酵母細胞(例えば、S・セレビシエ(S.cerevisiae)、S.ポンベ(S.pombe)、P.パートリス(P.partoris)、P.メタノリカ(P.methanolica)など)、植物細胞、昆虫細胞(例えば、SF-9、SF-21、バキュロウイルス感染昆虫細胞、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)など)、非ヒト動物細胞、哺乳動物細胞、ヒト細胞、または細胞融合物、例えば、ハイブリドーマもしくはクアドローマなどが含まれる。ある特定の実施形態では、細胞は、ヒト、ウマ、イヌ、ネコ、スパイン(supine)、サル、類人猿、ハムスター、ラットまたはマウスの細胞である。他の実施形態では、細胞は、真核細胞であり、以下の細胞、すなわち、CHO(例えば、CHO K1、DXB-11 CHO、Veggie-CHO)、COS(例えば、COS-7)、網膜細胞、Vero、CV1、腎臓(例えば、HEK 293、293 EBNA、MSR 293、MDCK、HaK、BHK21)、HeLa、HepG2、WI38、MRC5、Colo25、HB 8065、HL-60、Jurkat、Daudi、A431(表皮)、CV-1、U937、3T3、L細胞、C127細胞、SP2/0、NS-0、MMT細胞、腫瘍細胞、および前述の細胞に由来する細胞株から選択される。いくつかの実施形態では、細胞は、1つ以上のウイルス遺伝子、例えば、ウイルス遺伝子を発現する網膜細胞(例えば、PER.C6(登録商標)細胞)を含む。いくつかの実施形態では、細胞はCHO細胞である。他の実施形態では、細胞はCHO K1細胞である。一実施形態では、宿主細胞は細菌である。
【0085】
本明細書で使用される場合、用語「形質転換細胞」は、PSG1タンパク質またはCC49タンパク質の発現をコードするヌクレオチド配列を含む、細胞ゲノムに安定に組み込まれた核酸を含む宿主細胞を指す。別の実施形態では、本発明は、PSG1タンパク質またはCC49タンパク質の発現をコードする配列を含む、プラスミド、コスミド、ファージミドまたは線状発現エレメントなどの非組込み(すなわち、エピソーム)核酸を含む細胞を提供する。他の実施形態では、本発明は、本発明の発現ベクターを含むプラスミドによって宿主細胞を安定にトランスフェクトすることによって産生された細胞株を提供する。
【0086】
本明細書で使用される場合、細胞に適用される用語「操作された」は、組換えDNA技術を使用して遺伝子操作されたことを意味し、一般に、好適な発現ベクター(上記を参照)を合成し、次いで、発現ベクターを宿主細胞にトランスフェクトする工程(一般に安定なトランスフェクション)を伴う。
【0087】
本明細書で使用される場合、用語「異種発現」は、核酸を天然に有しない宿主細胞内の核酸の発現を指す。異種宿主への核酸の挿入は、組換えDNA技術によって行われる。
【0088】
本明細書で使用される場合、治療に関連して、用語「投与する」は、静脈内送達、経口送達、筋肉内送達および吸入送達を含む、活性剤を対象に送達することができる任意の形態の送達を含むように解釈されるべきである。これらの送達手段を達成するための方法は、薬物送達の当業者に周知であり、以下を含む:
・ミニ浸透圧ポンプによって髄腔内送達される。(参照:Ignacio et al.,Ann.N.Y.Acad.Sci.2005,1053:121-136)。
・シリンジまたはミニ浸透圧ポンプによる筋肉内への直接送達(Azzouz et al.,Nat Med.2005;11(4):429-33)。
・腹腔内-全身投与のために-シリンジまたはミニ浸透圧ポンプによって腹膜に直接投与される(Kieran et al.,Nat Med 2004;10(4):402)。
・皮下-全身投与のために-シリンジによって皮膚の下に直接投与される(Reinholz et al.,Exp Neurol.1999;159(1):204-16)。
・インプラント-活性物質を放出するインプラント(例えば、小さなシリコンインプラント)で調製され得るインプラントは、筋肉に配置され得る(Kieran and Greensmith,2004 Neurosci 125(2):427-39)。
【0089】
改変タンパク質
任意の実施形態では、PSG1タンパク質またはCC49タンパク質(タンパク質断片および変異体を含む)は、改変タンパク質であり得る。用語「改変タンパク質」は、用語「タンパク質の誘導体」と区別なく使用される。任意の実施形態では、用語「改変タンパク質」は、未改変タンパク質と比較して、以下の特性のうちの1つ以上を示すように改変されたタンパク質を意味する:血漿半減期を増加させる;タンパク質の親油性を増加させる;改変タンパク質の腎クリアランスを減少させる;改変タンパク質の活性を増加させ、タンパク質分解に対する改変タンパク質の耐性を増加させる(すなわち、哺乳動物および特にヒトの消化管プロテアーゼによる)。これらの特性を示すように本発明のタンパク質を改変する様々な方法が本明細書に開示され、それには、タンパク質を結合パートナー(例えば、アルブミン結合小分子、大型ポリマー、長寿命血漿タンパク質(long life plasma protein)、または抗体もしくは抗体断片)とコンジュゲートすること、環化、N末端もしくはC末端または側鎖の付加、保護基、1つ以上のL-アミノ酸をD-異性体によって置換すること、アミノ酸改変、血漿タンパク質結合の増加、アルブミン結合の増加が含まれる。改変タンパク質には、限定するものではないが、本明細書で定義される1つ以上の基によって置換された、または結合パートナーとコンジュゲートされた、または環化されたタンパク質が含まれる。一般に、タンパク質は、動物ではインビボで半減期を増加させるように改変される。様々な改変方法が以下に提供される。
【0090】
任意の実施形態では、改変は、細胞を透過する能力が増加した、本発明のタンパク質および/または組成物を提供する任意の改変であり得る。任意の実施形態では、改変は、本発明の組成物またはタンパク質の半減期を増加させる任意の改変であり得る。一実施形態では、改変は、組成物またはタンパク質の活性を増加させる任意の改変であり得る。任意の実施形態では、改変は、組成物またはタンパク質の選択性を増加させる任意の改変であり得る。
【0091】
任意の実施形態では、基は保護基である。保護基は、N末端保護基、C末端保護基または側鎖保護基であってよい。タンパク質は、これらの保護基のうちの1つ以上を有し得る。
【0092】
当業者であれば、アミノ酸をこれらの保護基と反応させるための好適な技術を認識している。これらの基は、当技術分野で公知の調製方法、例えば、米国特許第2014120141号明細書の段落[0104]~[0107]に概説されている方法によって付加され得る。基は、タンパク質上に残っていてもよいか、または除去されてもよい。保護基は、合成中に付加されてもよい。
【0093】
本発明の任意の実施形態では、タンパク質は、1つ以上の直鎖もしくは分岐鎖、長鎖もしくは短鎖、飽和もしくは不飽和から選択される基によって置換されていてもよいか、ヒドロキシル基、アミノ基、アミノアシル基、スルファート基もしくはスルフィド基によって置換されていてもよいか、または1~29個の炭素原子を有する非置換であってよい。N-アシル誘導体は、酢酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、オクタン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リノール酸、リノレン酸、リポ酸、オレイン酸、イソステアリン酸、エライジン酸、2-エチルヘキサン酸、ヤシ油脂肪酸、獣脂脂肪酸、硬化獣脂脂肪酸、パーム核脂肪酸、ラノリン脂肪酸または類似の酸に由来するアシル基を含む。これらは、置換されていてもよいか、または非置換であってもよい。置換される場合、それらは、ヒドロキシル基、または硫黄含有基、例えば、限定するものではないが、SOH、SHもしくはS-Sによって置換されることが好ましい。
【0094】
本発明の任意の実施形態では、タンパク質はR1-X-R2である。
【0095】
R1および/またはR2基は、タンパク質配列のアミノ末端(N末端)およびカルボキシル末端(C末端)にそれぞれ結合した。
【0096】
一実施形態では、タンパク質はR1-Xである。あるいは、タンパク質はX-R2である。
【0097】
好ましくは、R1は、H、C1~4アルキル、アセチル、ベンゾイルまたはトリフルオロアセチルであり、
Xは、本発明のタンパク質活性物質(例えば、PSG1またはFcタグ付きPSG1、CC49またはFcタグ付きCC49)であり、
R2は、OHまたはNHである。
【0098】
任意の実施形態では、R1は、H、非環状の置換または非置換の脂肪族基、置換または非置換のアリシクリル(alicyclyl)、置換または非置換のヘテロシクリル、置換または非置換のヘテロアリールアルキル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のアラルキル、tert-ブチルオキシカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、およびR5-CO-によって形成される群から選択され、式中、R5は、H、非環状の置換または非置換の脂肪族基、置換または非置換のアリシクリル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のアラルキル、置換または非置換のヘテロシクリル、および置換または非置換のヘテロアリールアルキルによって形成される群から選択され、
R2は、-NR3R4、-OR3および-SR3によって形成される群から選択され、式中、R3およびR4は、H、非環状の置換または非置換の脂肪族基、置換または非置換のアリシクリル、置換または非置換のヘテロシクリル、置換または非置換のヘテロアリールアルキル、置換または非置換のアリール、および置換または非置換のアラルキルによって形成される群から独立して選択され、ただし、R1およびR2は、α-アミノ酸ではないことを条件とする。
【0099】
別の好ましい実施形態によれば、R2は、-NR3R4、-OR3または-SR3であり、式中、R3およびR4は、H、置換または非置換のC1~C24アルキル、置換または非置換のC2~C24アルケニル、tert-ブチルオキシカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、置換または非置換のC2~C24アルキニル、置換または非置換のC3~C24シクロアルキル、置換または非置換のC5~C24シクロアルケニル、置換または非置換のC8~C24シクロアルキニル、置換または非置換のC6~C30アリール、置換または非置換のC7~C24アラルキル、3~10員の置換または非置換のヘテロシクリル環、ならびに2~24個の炭素原子および炭素以外の1~3個の原子の置換または非置換のヘテロアリールアルキルによって形成される群から独立して選択され、アルキル鎖は、1~6個の炭素原子のものである。場合により、R3およびR4は、飽和または不飽和の炭素-炭素結合によって結合され、窒素原子との環を形成することができる。さらに好ましくは、R2は、-NR3R4または-OR3であり、式中、R3およびR4は、H、置換または非置換のC1~C24アルキル、置換または非置換のC2~C24アルケニル、置換または非置換のC2~C24アルキニル、置換または非置換のC3~C10シクロアルキル、置換または非置換のC6~C15アリール、ならびに3~10員の置換または非置換のヘテロシクリル、3~10員の環および1~6個の炭素原子のアルキル鎖を有する置換または非置換のヘテロアリールアルキルによって形成される群から独立して選択される。さらに好ましくは、R3およびR4は、H、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシルまたはヘキサデシルによって形成される群から選択される。さらになお好ましくは、R3はHであり、R4は、H、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシルまたはヘキサデシルによって形成される群から選択される。さらになお好ましい実施形態によれば、R2は、-OHおよび-NHから選択される。
【0100】
本発明の別の実施形態によれば、R1は、H、アセチル、ラウロイル、ミリストイルまたはパルミトイルによって形成される群から選択され、R2は、-NR3R 4または-OR3であり、式中、R3およびR4は、H、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシルおよびヘキサデシルから独立して選択され、好ましくは、R2は、-OHまたは-NHである。さらに好ましくは、R1はアセチルまたはパルミトイルであり、R2は-NHである。
【0101】
好ましい実施形態では、アシル(またはアセチル)基は、タンパク質の少なくとも1つのアミノ酸のN末端に結合している。
【0102】
本発明の任意の実施形態では、タンパク質は、側鎖保護基を含むように改変される。側鎖保護基は、ベンジル基またはベンジル系基、t-ブチル系基、ベンジルオキシ-カルボニル(Z)基およびアリルオキシカルボニル(alloc)保護基を含む基のうちの1つ以上であり得る。側鎖保護基は、アキラルグリシンなどのアキラルアミノ酸に由来し得る。アキラルアミノ酸の使用は、得られたタンパク質を安定化するほか、本発明の合成経路を促進するのに役立つ。好ましくは、タンパク質は、改変されたC末端、好ましくはアミド化されたC末端をさらに含む。アキラル残基は、アルファ-アミノイソ酪酸(メチルアラニン)であり得る。使用される特定の側鎖保護基は、タンパク質の配列、および使用されるN末端保護基のタイプに依存することが理解される。
【0103】
本発明の一実施形態では、タンパク質は、1つ以上のポリエチレングリコールポリマーまたは他の化合物、例えば、分子量増加化合物にコンジュゲート、連結または融合される。分子量増加化合物は、得られたコンジュゲートの分子量を典型的には10%~90%、または20%~50%増加させる任意の化合物であり、200~20,000、好ましくは500~10,000の分子量を有し得る。分子量増加化合物は、PEG、任意の水溶性(両親媒性または親水性)ポリマー部分、PEGのホモまたはコポリマー、PEG(mPEG)およびポリオキシエチレングリセロール(POG)のモノメチル置換ポリマー、ポリアミノ酸、例えば、ポリリジン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、特にL配座のもの、薬理学的に不活性なタンパク質、例えば、アルブミン、ゼラチン、脂肪酸、多糖、脂質アミノ酸ならびにデキストランであり得る。ポリマー部分は、直鎖または分岐であってよく、500~40000ダルトン(DA)、5000~10000Da、10000~5000Daの分子量を有してもよい。化合物は、任意の好適な細胞透過性化合物、例えば、tatタンパク質、ペネトラチン、pep-1であってよい。化合物は抗体分子であり得る。化合物は、親油性部分またはポリマー部分であり得る。
【0104】
親油性置換基およびポリマー置換基は、当技術分野で公知である。親油性置換基は、エステル、スルホニルエステル、チオエステル、アミドまたはスルホンアミドの一部を形成するアシル基、スルホニル基、N原子、O原子またはS原子を含む。親油性部分は、4~30個のC原子、好ましくは8~12個のC原子を有する炭化水素鎖を含み得る。親油性部分は、直鎖または分岐、飽和または不飽和であり得る。炭化水素鎖は、さらに置換されていてもよい。炭化水素鎖は、シクロアルカンまたはヘテロシクロアルカンであり得る。
【0105】
タンパク質は、N末端、C末端またはその両方で改変され得る。ポリマーまたは化合物は、アミノ基、カルボキシル基またはチオール基に好ましくは連結され、任意のアミノ酸残基の側鎖のN末端またはC末端によって連結されてもよい。ポリマーまたは化合物は、任意の好適な残基の側鎖にコンジュゲートされてもよい。
【0106】
ポリマーまたは化合物は、スペーサーを介してコンジュゲートされてもよい。スペーサーは、天然または非天然アミノ酸、コハク酸、リシル、グルタミル、アスパラギル、グリシル、ベータ-アラニル、ガンマ-アミノブタノイルであり得る。
【0107】
ポリマーまたは化合物は、エステル、スルホニルエステル、チオエステル、アミド、カルバマート、尿素、スルホンアミドを介してコンジュゲートされてもよい。
【0108】
当業者であれば、記載されたコンジュゲートを調製するための好適な手段を認識している。
【0109】
タンパク質は、例えば、それらの循環半減期を増加させるために、ポリマーへの共有結合コンジュゲーションによって化学的に改変され得る。そのようなポリマーをタンパク質に結合させる例示的なポリマーおよび方法は、例えば、米国特許第4,766,106号明細書、米国特許第4,179,337号明細書、米国特許第4,495,285号明細書および米国特許第4,609,546号明細書に例示されている。追加の例示的なポリマーには、ポリオキシエチル化ポリオール部分およびポリエチレングリコール(PEG)部分が含まれる。
【0110】
本発明のタンパク質は、貯蔵安定性、薬物動態、ならびに/またはタンパク質の生物活性の任意の態様、例えば、効力、選択性および薬物相互作用などを操作するための1つ以上の改変に供され得る。タンパク質が供され得る化学的改変には、限定するものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)、モノメトキシ-ポリエチレングリコール、デキストラン、ポリ-(N-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)およびポリビニルアルコール、コロミン酸または他の炭水化物系ポリマー、アミノ酸のポリマー、ならびにビオチン誘導体のうちの1つ以上のタンパク質へのコンジュゲーションが含まれる。Cys残基でのタンパク質のPEGコンジュゲーションは、例えば、Goodson,R.J.&Katre,N.V.(1990)Bio/Technology 8,343およびKogan,T.P.(1992)Synthetic Comm.22,2417に開示されている。
【0111】
改変タンパク質はまた、1つ以上の残基が改変された配列(すなわち、リン酸化、硫酸化、アシル化、アミド化、PEG化などによって)、および親配列に対して1つ以上の改変残基を含む変異体を含み得る。アミノ酸配列はまた、限定するものではないが、放射性同位体標識、蛍光標識および酵素標識を含む、検出可能なシグナルを直接的または間接的に提供することができる標識によって改変され得る。蛍光標識には、例えば、Cy3、Cy5、Alexa、BODIPY、フルオレセイン(例えば、FluorX、DTAFおよびFITC)、ローダミン(例えば、TRITC)、オーラミン、Texas Red、AMCAブルーおよびLucifer Yellowが含まれる。好ましい同位体標識には、3H、14C、32 P、35S、36Cl、51Cr、57Co、58Co、59Fe、90Y、125I、131Iおよび286Reが含まれる。好ましい酵素標識には、ペルオキシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、β-D-グルコシダーゼ、β-D-ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼ+ペルオキシダーゼ、およびアルカリホスファターゼが含まれる(例えば、米国特許第3,654,090号明細書、米国特許第3,850,752号明細書および米国特許第4,016,043号明細書を参照)。酵素は、カルボジイミド、ジイソシアナート、グルタルアルデヒドなどのような架橋分子との反応によってコンジュゲートされ得る。酵素標識は、視覚的に検出され得るか、または熱量測定技術、分光光度技術、蛍光分光光度技術、電流測定技術もしくは気体定量技術によって測定され得る。アビジン/ビオチン、Tyramide Signal Amplification(TSA(商標))などの他の標識系は、当技術分野で公知であり、市販されている(例えば、ABC kit,Vector Laboratories,Inc.,Burlingame,Calif.;NEN(登録商標)Life Science Products,Inc.,Boston,Mass.を参照)。
【0112】
一実施形態では、タンパク質、変異体および/または組成物は、薬物性能能力を増加させるように改変される。一実施形態では、タンパク質、変異体および/または組成物は、安定性、透過性を増加させ、効力を維持し、毒性を回避し、および/または半減期を増加させるように改変される。改変は、上記の通りであり得る。例えば、改変は、N末端およびC末端を保護するためのものであり得、改変アミノ酸、環化、アミノ酸の置換、および/または巨大分子もしくは大型ポリマーもしくは長寿命血漿タンパク質へのコンジュゲーションであり得る。半減期を延長する戦略は、Strohl,et al(BioDrugs,2015)、Schlapschy,et al(Protein Eng Des Sel.2013)、Podust,VN,et al(Protein Eng Des Sel.2013)、Zhang,L et al(Curr Med Chem.2012)、Gaberc-Porekar,V,et al(Curr Opin Drug Discov Devel.2008)によって記載されている通りであり得る。例には、PEG化、脂質化(タンパク質側鎖への脂肪酸の共有結合)、Fcドメインおよびヒト血清アルブミンへの融合、親水性アミノ酸ポリマー、例えば、XTENもしくはPASとの融合、ならびに/または半減期延長タンパク質との融合の使用が挙げられる。
【0113】
タンパク質またはタンパク質は、タンパク質分解性が強化された環境内、例えば、血液中または消化管内にある際にタンパク質分解切断を受けやすい弱い部位をそれらの配列内に含む可能性がある。一実施形態では、タンパク質、変異体および/または組成物は、未改変タンパク質または未改変タンパク質と比較して、タンパク質、変異体および/もしくは組成物がタンパク質分解破壊/切断を受けないか、またはタンパク質、変異体および/もしくは組成物のタンパク質分解破壊/切断の量が減少するように、1つ以上の弱い部位の改変を含む。したがって、タンパク質は、哺乳動物消化管プロテアーゼに対するタンパク質分解に対する改変タンパク質の耐性を増加させるように改変され得る。好適な改変は、Diao et al(Clinical pharmacokinetics 52.10(2013):855-868)に記載されている。
【0114】
タンパク質のインビボ半減期を延長するためのタンパク質の改変は、文献、例えば、以下に記載されている:
Strategies to improve plasma half life time of protein and protein drugs.Werle M,Bernkop-Schnurch A.Amino Acids.2006 Jun;30(4):351-67.
【0115】
長時間作用性のタンパク質およびタンパク質薬物の明白な利点のために、そのような化合物の血漿半減期時間を延長するための戦略は、極めて需要に応じたものである。短い血漿半減期時間は、一般に、急速な腎クリアランスと、全身循環中に起こる酵素分解とに起因する。タンパク質/タンパク質の改変は、血漿半減期時間の延長をもたらし得る。ソマトスタチンの全アミノ酸量を減少させ、L:-類似体アミノ酸をD:-アミノ酸によって置換することにより、誘導体オクトレオチドの血漿半減期時間は、ソマトスタチンのわずか数分と比較して1.5時間であった。INF-アルファ-2bのPEG(2.40K)コンジュゲートは、天然タンパク質と比較して330倍長い血漿半減期時間を示した。この概説の目的は、N末端およびC末端の改変、またはPEG化などの血漿半減期時間を延長するための可能な戦略の概要、ならびに薬物改変の有効性を評価する方法を提供することであった。さらに、全身循環中のタンパク質およびタンパク質薬物の酵素的切断を予測するために、ヒトの血液、肝臓および腎臓の最も重要なタンパク質分解酵素、ならびにそれらの切断特異性および阻害剤に関する基本データが提供される。
【0116】
Strategic Approaches to Optimizing Protein ADME Properties.Li Di AAPS J.2015 Jan;17(1):134-143.
【0117】
タンパク質分解からタンパク質を安定化するための戦略
構造改変を介してタンパク質の安定性を増強するために、多くの手法が利用可能である。いくつかの手法は、安定性を改善するだけでなく、他のADME特性も増強し、例えば、環化は、安定性および透過性を増加させることができ、巨大分子とのコンジュゲーションは、安定性を改善することができ、腎クリアランスを減少させることができる。タンパク質の安定性およびADME特性を改善しながら、効力を維持し、毒性を回避することが重要である。
【0118】
・N末端およびC末端の保護
血液/血漿中、肝臓または腎臓内のいくつかのタンパク質分解酵素には、エキソペプチダーゼ、アミノペプチダーゼおよびカルボキシペプチダーゼがあり、それらは、N末端およびC末端からタンパク質配列を分解する。N末端または/およびC末端の改変は、多くの場合、タンパク質安定性を改善することができる。多くの例では、N-アセチル化およびC-アミド化が、タンパク質分解に対する耐性を増加させることが報告されている。
【0119】
・D-アミノ酸によるL-アミノ酸の置換
天然L-アミノ酸を非天然D-アミノ酸によって置換すると、タンパク質分解酵素の基質認識および結合親和性が低下し、安定性が増加する。一例にはバソプレシンがあり、バソプレシンは、L-Argを含有し、ヒトでは10~35分の半減期を有する。D-Arg類似体、デスモプレシンは、健康なヒトボランティアでは3.7時間の半減期を有する。癌関連プロテアーゼウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)の二環式タンパク質阻害剤の試験では、特定のグリシンをD-セリンによって置換すると、マウス血漿中の効力が1.8倍改善するだけでなく、安定性も4倍増加する。
【0120】
・アミノ酸の改変
天然アミノ酸の改変は、立体障害の導入、または酵素認識の妨害によって、タンパク質の安定性を改善することができる。例えば、ゴナドトロピン放出ホルモンは非常に短い半減期(分)を有するが、一方のGlyがt-ブチル-D-Serによって置換され、他方のGlyがエチルアミドによって置換されているブセレリンは、ヒトでは、はるかに長い半減期を有する。
【0121】
・環化
環化は、配座制約を導入し、タンパク質の柔軟性を低下させ、安定性および透過性を増加させる。官能基に応じて、タンパク質は、頭部から尾部、頭部/尾部から側鎖、または側鎖から側鎖に環化され得る。環化は、一般に、ラクタム化、ラクトン化およびスルフィド系架橋によって達成される。ジスルフィド架橋は、効力、選択性および安定性を改善することができるフォールディングおよび配座制約をもたらす。いくつかのジスルフィド結合に富むタンパク質、例えば、リナクロチド、レピルジンおよびジコノチドが市販されているか、または前臨床開発中もしくは臨床開発中である。
【0122】
・巨大分子へのコンジュゲーション
巨大分子(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、アルブミン)へのコンジュゲーションは、タンパク質の安定性を改善し、腎クリアランスを減少させるための有効な戦略である。
【0123】
腎クリアランス
多くのタンパク質は、有望なインビトロ薬理活性を示すが、非常に短いインビボ半減期(分)のためにインビボでの有効性を示すことができない。タンパク質の急速なクリアランスおよび短い半減期は、それらを良好な薬物に開発することを妨げる。全身循環からのタンパク質の急速なクリアランスの主な原因は、酵素的タンパク質分解または/および腎クリアランスである。糸球体は約8nmの孔径を有し、MW<2~25kDaの親水性タンパク質は、腎臓の糸球体を通る急速な濾過を受けやすい。タンパク質は尿細管を介して容易に再吸収されないため、高い腎クリアランスおよび短い半減期を有することが多い。タンパク質クリアランスの他の小規模な経路には、エンドサイトーシス、ならびにプロテアソームおよび肝臓による分解がある。動物モデルにおける全身クリアランスと腎クリアランスとの比較は、腎クリアランスが主要な排出経路である可能性が高いかどうかに関して有用な情報を提供する。
【0124】
腎機能障害患者の場合、腎機能障害患者に対する不適切な投与は毒性を引き起こすかまたは治療を無効にする可能性があるため、タンパク質薬物の蓄積および薬物曝露の増大を回避するために用量調整が必要となる場合がある。タンパク質腎クリアランスを減少させ、半減期を延長するためのいくつかの戦略が開発されている。これらについては、次に概説する。
【0125】
・血漿タンパク質結合の増加
タンパク質の腎クリアランスは、それらが膜タンパク質または血清タンパク質に結合すると減少する。一例には、環状タンパク質薬物であるオクトレオチドがあり、オクトレオチドは、内分泌腫瘍の治療薬であり、リポタンパク質への結合に起因して、ヒトでは約100分の半減期を有する(非結合画分0.65)。
【0126】
・アルブミン結合小分子への共有結合
アルブミン結合小分子をタンパク質に共有結合させると、高度に結合した小分子を介してアルブミンと間接的に相互作用することによって、糸球体濾過を減少させ、タンパク質分解安定性を改善し、半減期を延長することができる。
【0127】
・大型ポリマーへのコンジュゲーション
大型の合成または天然のポリマーまたは炭水化物へのタンパク質のコンジュゲーションは、それらの分子量および流体力学的体積を増加させ、したがって、それらの腎クリアランスを減少させることができる。タンパク質コンジュゲーションに使用される一般的なポリマーは、PEG、ポリシアル酸(PSA)およびヒドロキシエチルデンプン(HES)である。
【0128】
・長寿命血漿タンパク質への融合
アルブミンおよび免疫グロブリン(IgG)断片などの血漿タンパク質は、ヒトでは19~21日という長い半減期を有する。高いMW(67~150kDa)のために、これらのタンパク質では腎クリアランスが低く、新生児型Fc受容体(FcRn)へのそれらの結合は、血管上皮による飲作用を介した排出を減少させる。アルブミンまたはIgG断片へのタンパク質の共有結合は、腎クリアランスを減少させ、半減期を延長することができる。
【0129】
Fusion Proteins for Half-Life Extension of Biologics as a Strategy to Make Biobetters William R.Strohl BioDrugs.2015;29(4):215-239.
【0130】
Schlapschy,M,Binder,U,Borger,C et al.PASYlation:a biological alternative to PEGylation for extending the plasma half-life of pharmaceutically active proteins.Protein Eng Des Sel.2013;26(8):489-501.
【0131】
Podust,VN,Sim,BC,Kothari,D et al.Extension of in vivo half-life of biologically active proteins via chemical conjugation to XTEN protein polymer.Protein Eng Des Sel.2013;26(11):743-53.
【0132】
Zhang,L,Bulaj,G.Converting Proteins into Drug Leads by Lipidation.Curr Med Chem.2012;19(11):1602-18.
【0133】
Gaberc-Porekar,V,Zore,I,Podobnik,B et al.Obstacles and pitfalls in the PEGylation of therapeutic proteins.Curr Opin Drug Discov Devel.2008;11(2):242-50.
【0134】
Dr Ronald V.Swanson-Long live proteins evolution of protein half-life extension technologies and emerging hybrid approaches.From Drug Discovery World on line.Spring 2014
【0135】
PEG化
目的の分子への親水性ポリマーポリエチレングリコールの長鎖の結合、PEG化は、元々、免疫系による外来タンパク質の認識を防止し、それによって、治療薬としてのそれらの有用性を可能にするための改変として着想された。未改変薬物に対する抗体は、形成されると、タンパク質薬物を迅速に中和し、除去する可能性がある。予想外にも、PEG化は、抗薬物抗体の非存在下であっても、タンパク質の薬物動態を改善した1。単純に薬物分子をさらに大きくすることによって、PEG化は、腎臓によってさらにゆっくりと濾過される薬物をもたらした。サイズまたは流体力学的半径の増加が腎クリアランスの減少および半減期の増加をもたらしたという経験的観察は、タンパク質およびタンパク質薬物のPEG化に関する主要な理論的根拠となった。PEG化は、タンパク質またはタンパク質をさらに水溶性にし、タンパク質分解酵素による分解からそれらを保護することを含む、分子に対する様々な効果を有することができる。PEG化はまた、同族細胞受容体への治療用タンパク質の結合に影響を及ぼし、通常、親和性を低下させ得る。PEGポリマーのサイズ、構造および結合様式の変化は、結合した薬物の生物学的活性に影響を及ぼし得る。
【0136】
第1世代のPEG化方法には、課題が満載であった。しかし、PEG化の化学的性質は極めて単純である。このプロセスは、タンパク質またはタンパク質の反応性側鎖へのポリエチレングリコール鎖の共有結合を伴う。例えば、PEGは、タンパク質またはタンパク質の表面上のリジンの-アミノ基に容易に結合する2。反応はpH依存性である。高いpH(8.0以上)では、リジン側鎖アミノ基は、N-ヒドロキシスクシンイミドを介してPEGに共有結合している。この方法は、典型的には、単一の別個の生成物ではなく、タンパク質上の様々な部位に結合した様々な数のPEG鎖を含有する生成物のファミリーをもたらす3。最初に承認されたPEG化医薬品は、重症複合免疫不全のための酵素補充療法としてのPegademase bovine(PEG化ウシアデノシンデアミダーゼ)、および急性リンパ芽球性白血病の治療のためのPegaspargase(PEG化アスパラギナーゼ)であった1。これらの薬物は、様々なPEG化種の複雑な混合物であったが、血清半減期の増加、およびタンパク質の免疫原性の低下を含め、天然酵素よりも治療のための改善された特性を有する。PEGの固有の多分散性のために、品質およびバッチ間再現性は困難であった。この制約にもかかわらず、多数のモノ-PEG化位置異性体の異種集団である2つのPEG化インターフェロン(ペグインターフェロンアルファ-2bおよびペグインターフェロンアルファ-2a)が、C型肝炎の治療のためにFDAによって承認されている。これらの薬物は、それぞれ2001年および2002年に上市された。
【0137】
基本的なPEG化技術に対して様々な改良および改変が施されている。第2世代のPEG化プロセスは、PEG結合のための分岐構造および代替化学の使用を導入した。特に、マレイミドまたはヨードアセトアミドなどのシステイン反応性基を有するPEGは、タンパク質またはタンパク質内の単一の残基へのPEG化の標的化を可能にし、最終生成物の不均一性を低下させるが、PEG自体の多分散性に起因して最終生成物の不均一性を排除しない。
【0138】
PEG化の元々の理論的根拠は免疫原性を低下させることであったが、それにもかかわらず、免疫原性PEG化タンパク質のいくつかの例が存在している。一例には、痛風患者の血漿尿酸レベルを低下させる酵素であるPEG化尿酸オキシダーゼがある。臨床試験では、比較的高い割合の痛風患者が治療に応答せず、PEGに特異的であるがウリカーゼタンパク質には特異的でない抗体を発現した2。一般に非免疫原性であるとも考えられるPEG化リポソームは、いくつかの試験では、免疫原性であることが見出されている。PEG化リポソームは、強力な抗PEG免疫グロブリンM(IgM)応答を誘発する。さらに、PEG-グルクロニダーゼの複数回の注射は、特異的抗PEG IgM抗体の生成を誘発し、したがって、身体からのPEG改変タンパク質のクリアランスを加速することが示された。
【0139】
PEGを改変因子として使用することの主な潜在的欠点は、PEGが非生分解性であることである。米国食品医薬品局(FDA)は、注射用、局所用、直腸用および経鼻用製剤を含む医薬品に対するビヒクルとしてのPEGの使用を承認している。PEGは、毒性をほとんど示さず、腎臓によって(PEG<30kDaの場合)、または糞便中に(PEG>20kDaの場合)体内から無傷で排除される1。動物にいくつかのPEG化タンパク質を反復投与すると、腎尿細管細胞空胞化が観察された。近年、大型(≧40kDa)PEGとコンジュゲートしたタンパク質を用いた毒性試験では、脈絡叢上皮細胞の空胞化も見られている。脈絡叢上皮細胞は、脳脊髄液を産生し、血液CSFバリアを形成する。細胞空胞化の長期的な負の結果は不明であるが、いくつかの潜在的な治療法にとって望ましくない結果を表す。1つの可能な代替案は、PEGに代えた生分解性ポリマーの置換であろう。ヒドロキシエチルデンプン(HES)などのポリマーが可能な代替物である。HESは、非毒性かつ生分解性であり、血液増量剤として使用される。HES化のプロセスは、タンパク質の流体力学的半径を増加させることによって腎クリアランスを減少させるPEG化と同様に機能するが、生分解性に起因して、蓄積する傾向が低くなる可能性がある。しかし、HESおよび他の提案されている生分解性ポリマーPEG代替物は、PEGのように多分散性であり、最終生成物および代謝産物の特性評価を困難にする。両方の懸念を軽減する1つの新たな解決策は、ポリマー成分として定義されたポリタンパク質を使用することである。この手法については、本論説で後述する。
【0140】
脂質化
タンパク質半減期を増加させるための第2の主要な化学的改変方法は、タンパク質側鎖への脂肪酸の共有結合を伴う脂質化である4。インスリンの半減期を延長するための方法として最初に考えられ開発された脂質化は、PEG化と同じ、共通の半減期延長の基本的機構、すなわち、流体力学的半径を増加させて腎濾過を減少させることを共有する。しかし、脂質部分自体は比較的小さく、その効果は、循環アルブミンへの脂質部分の非共有結合を介して間接的に媒介される。ヒト血清(35~50g/L)中の大型(67kDa)で非常に豊富なタンパク質であるアルブミンは、脂質を含む分子を全身に輸送するように天然に機能する。血漿タンパク質への結合はまた、やはりPEG化で見られるものと同様に、立体障害を介してペプチダーゼによる攻撃からタンパク質を保護することができる。脂質化の1つの結果は、それがタンパク質の水溶性を低下させるが、タンパク質と脂肪酸との間のリンカーの操作により、例えば、リンカー内のグルタマートまたはミニPEGの使用によってこれを調節することができることである。リンカーの操作、および脂質部分の変化は自己凝集に影響を及ぼし得、自己凝集は、アルブミンとは無関係に、体内分布を遅くすることによって半減期の増加に寄与し得る5。
【0141】
インスリンを用いた先駆的研究に続いて6、様々なタンパク質、特に、糖尿病領域では、とりわけヒトグルカゴン様タンパク質-1(GLP-1)類似体、グルコース依存性インスリン分泌性ポリタンパク質およびGLP-1R/グルカゴン受容体コアゴニストを含むタンパク質の脂質化が研究されてきた。2つの脂質化タンパク質薬物が、現在、ヒトに対する使用についてFDAによって承認されている。これらはいずれも持続型抗糖尿病薬、GLP-1類似体リラグルチドおよびインスリンデテミルである。
【0142】
PEG化と脂質化との間の潜在的に薬理学的に重要な差は、治療活性タンパク質がはるかに大きなPEGに共有結合しているのに対して、それよりも小さな脂肪アシル-タンパク質コンジュゲートが、平衡状態で存在するさらに大きな結合形態および非結合形態のアルブミンと非共有結合していることである。これにより、異なる薬理をもたらし得る体内分布の差がもたらされ得、これは、異なる組織に局在する受容体へのアクセスが異なる効果を誘発し得るためである。場合によっては、さらに制限された体内分布が望ましい場合があるが、他の場合では、さらに大きな組織浸透が重要であり得る。予測可能な切断速度を有する放出可能なPEGコンジュゲートが利用される、この問題に対処するPEG手法の興味深い変形例が、Santi et alによって開発されている7。
【0143】
PEG化および脂質化はいずれも、立体障害を介して遮蔽することによってプロテアーゼおよびペプチダーゼに対する保護を付与し、直接的または間接的に、流体力学的半径の増加を介して循環半減期を延長する。両方法は、化学的コンジュゲーションを利用し、生物学的または合成的に生成されるかどうかにかかわらず、改変しているタンパク質を生成するために使用される手段に依存しないという点で柔軟である。合成タンパク質を使用する利点は、既知のタンパク質分解性切断の欠点による不安定性を含むいくつかの特定の問題に対処するように設計された非天然アミノ酸を組み込むことができることである。それらはまた、活性または効力が遊離末端、またはC末端アミドなどの改変残基に高度に依存する場合に重要な結合部位の選択に関してさらに柔軟であり得る。
【0144】
従来の遺伝子融合:FcおよびHSA
長寿命血清タンパク質への従来の遺伝子融合は、PEGまたは脂質への化学的コンジュゲーションとは異なる半減期延長の代替方法を提供する。2つの主要なタンパク質、すなわち、抗体Fcドメイン(特にヒトIgG1 FcタグおよびウマIgG1 Fcタグ)、およびヒト血清アルブミン(HAS)が、融合パートナーとして従来使用されてきた。Fc融合は、抗体のFc部分へのタンパク質、タンパク質または受容体細胞外ドメインの融合を伴う。Fc融合およびアルブミン融合はともに、タンパク質薬物のサイズを増加させることによって半減期を延長するだけでなく、身体の天然のリサイクル機構、すなわち、新生児型Fc受容体、FcRnを利用する。FcRnへのこれらのタンパク質のpH依存的結合は、エンドソーム内で融合タンパク質の分解を防止する。これらのタンパク質に基づく融合物は、典型的なPEG化タンパク質または脂質化タンパク質よりもはるかに長い3~16日間の範囲の半減期を有することができる。抗体Fcへの融合は、タンパク質またはタンパク質薬物の溶解度および安定性を改善することができる。タンパク質Fc融合物の例には、現在後期臨床試験中のGLP-1受容体アゴニストであるデュラグルチドがある。ヒト血清アルブミンは、脂肪アシル化タンパク質によって利用されるのと同じタンパク質であり、他の一般的な融合パートナーである。アルビグルチドは、このプラットフォームに基づくGLP-1受容体アゴニストである。Fcとアルブミンとの間の主な差は、融合パートナーの選択に応じて二量体または単量体として融合タンパク質の提示をもたらす、HASの単量体構造と対比したFcの二量体性である。タンパク質Fc融合物の二量体性は、標的受容体が互いに十分に近接して離隔されているか、またはそれ自体が二量体である場合、結合活性効果をもたらし得る。これは、標的に応じて望ましい場合もあれば、そうでない場合もある。一実施形態では、Fcドメインは、変異を含むように操作される。Fcドメインへの変異を操作する方法は、Rath et al(2013;doi=10.3109/07388551.2013.834293)に記載されている。
【0145】
設計されたポリタンパク質融合物:XTENおよびPAS
組換え融合概念の興味深い変形例は、融合パートナーとしての設計された低複雑性配列、基本的には、PEGの機能的類似体である非構造化親水性アミノ酸ポリマーの開発であった。ポリタンパク質プラットフォームの固有の生分解性は、それをPEGの潜在的にさらに良性の代替物として魅力的にする。別の利点は、PEGの多分散性とは対照的に、組換え分子の正確な分子構造である。融合パートナーの三次元フォールディングが維持される必要があるHSAタンパク質融合およびFcタンパク質融合とは異なり、非構造化パートナーへの組換え融合は、多くの場合、さらに高温、またはHPLC精製などの過酷な条件に供され得る。
【0146】
このクラスのポリタンパク質の最も進歩したものは、XTEN(Amunix)と呼ばれ、864アミノ酸長であり、6アミノ酸(A、E、G、P、SおよびT)から構成される。これは、ポリマーの生分解性によって可能になることであるが、典型的に使用される40KDaのPEGよりもはるかに大きく、付随してさらに長い半減期延長を付与する。タンパク質薬物へのXTENの融合は、天然分子の60~130倍の半減期延長をもたらす。2つの完全に組換え生産されたXTEN化(XTENylated)生成物、すなわち、VRS-859(Exenatide-XTEN)およびVRS-317(ヒト成長ホルモン-XTEN)が臨床試験に入っている。第Ia相試験では、VRS-859は、2型糖尿病患者では忍容性が高く有効であることが分かった。VRS-317については、以前に試験されたrhGH生成物と比較して優れた薬物動態特性および薬力学特性が報告され、月1回投与の可能性を有する。
【0147】
同様の概念的考察に基づく第2のポリマーは、PAS(XL-Protein GmbH)9である。ランダムコイルポリマーは、3つの小さい非荷電アミノ酸、プロリン、アラニンおよびセリンのみのさらに制限されたセットから構成される。PASと高度に負に荷電したXTENとの生物物理学的特性の差が生体内分布および/またはインビボ活性の差に寄与し得るかどうかは未だ不明であるが、これらのポリタンパク質がさらに多くの治療薬に組み込まれ、融合物の挙動が特性評価されるにつれて明らかにされるであろう。
【0148】
タンパク質-タンパク質融合物はいずれも、パートナーがFc、HSA、XTENまたはPASであるかどうかにかかわらず、遺伝的にコードされており、その結果、同様の制約を被る。1つの制限は、非天然アミノ酸を組み込む合成タンパク質の使用を可能にする化学的コンジュゲーションを使用する方法とは異なり、天然に存在するアミノ酸のみが組み込まれることである。遺伝暗号を拡張することによってこれを克服する方法が、AmbrxまたはSutroなどの企業によって開発されているが、未だ広く使用されていない。第2の制限は、タンパク質のN末端またはC末端のいずれかがパートナーに融合される必要があることである。多くの場合、タンパク質末端は受容体相互作用に関与し、一方または両方の末端への遺伝子融合は活性を大きく損なう可能性がある。PEGコンジュゲーションまたは脂質コンジュゲーションの部位はタンパク質上のいずれの場所でもあり得るため、得られる治療薬の生物学的活性を最大化するように最適化することができる。
【0149】
半減期延長タンパク質と合成タンパク質を統合するハイブリッド法
遺伝子融合は、さらに長い半減期延長の可能性を従来提供してきたが、結合部位、およびタンパク質骨格への非天然アミノ酸または改変の組込みの柔軟性に関して、化学的コンジュゲーション、PEG化および脂質化を利用する方法によって提供される利点を欠いている。半減期延長のために遺伝子融合の利点を化学的コンジュゲーションと統合する最初の試みの1つは、La JollaのScripps Research Instituteの研究者によって、後にバイオテクノロジー企業CovXの基礎を形成した技術を用いて行われた。これらの研究者らは、触媒性アルドラーゼ抗体を使用して、抗体の活性部位リジンがタンパク質または小分子に組み込まれたベータ-ジケトンと可逆的共有結合性エナミン結合を形成するプラットフォームを開発した。得られた複合体は、CovXBody(商標)と呼ばれる。この手法は、遺伝子融合によるのではなく、むしろ化学結合によって、タンパク質薬物または小分子の機能的性質を抗体の長い血清半減期と組み合わせる。この技術の初期の実証に続いて、研究者らは、インテグリンを標的とするペプチド模倣ファーマコフォアに基づき、CovX-Body(商標)プロトタイプの使用を拡大した。この構造に基づく少なくとも3つの分子、すなわち、Glp-1RアゴニストであるCVX-096;アンジオポエチン-2結合タンパク質であるCVX-060;およびトロンボスポンジン模倣体であるCVX-045が臨床開発に入っている。
【0150】
近年、XTENポリタンパク質はまた、それをPEGにさらになお直接的に類似させる化学的コンジュゲーション様式12で使用されている。この方法を使用して作製されたXTEN化タンパク質の第1の例は、タンパク質がマレイミド-チオール化学を使用してXTENタンパク質ポリマーに化学的にコンジュゲートされているGLP2-2G-XTENである。化学的にコンジュゲートされたGLP2-2GXTEN分子は、ラットでは、組換え融合GLP2-2G-XTENに匹敵する同等のインビトロ活性、インビトロ血漿安定性および薬物動態を示した。
【0151】
XTENポリタンパク質またはPASポリタンパク質の完全に設計された配列内のリジン側鎖またはシステイン側鎖などの反応性基の数および間隔は、それらが構成される制限されたアミノ酸セットによる部位特異的変化によって正確に制御され得る。これは、その配列が多くの反応性基を天然に含有するFcまたはアルブミンを利用し得る方法を上回る付加的な柔軟性を提供し、高度に特殊化された活性部位内の反応性残基に依存するCovX技術とは対照的である。さらに、XTENまたはPASの三次構造の欠如は、カップリングとコンジュゲートの精製とに使用される条件および化学的性質よりも高い柔軟性を提供するはずである。
【0152】
要約すると、利点を組み合わせ、化学的コンジュゲーションおよび遺伝子融合法の個々の制限を克服するハイブリッドタンパク質半減期延長法が出現している。これらの方法は、さらに長い半減期を付与するが、天然のL-アミノ酸のみから構成されるか、またはN末端もしくはC末端のいずれかで融合された直鎖の一方向性ポリタンパク質としてのみ構成されるという制限から治療用タンパク質部分を解放する、組換えポリタンパク質系パートナーに基づく分子の作製を可能にするため、幅広いさらに長時間作用性のタンパク質系薬物への扉を開く。
【0153】
例示的な投与量および投与戦略
上記のように、本発明の組成物は、本発明のタンパク質の「治療有効量」または「予防有効量」(または本発明のタンパク質と第2の成分とを含む組合せ組成物の場合、第1および第2の量;本発明の2つのタンパク質と本発明の二次作用物質もしくはタンパク質と2つの二次作用物質とを含む組合せ組成物の場合、第1、第2および第3の量など)を含み得る。特定の態様をさらによく例示するために、投与量原理の詳細な説明をここでさらに提供する。
【0154】
本発明を実施する際に、使用されるタンパク質の量もしくは投与量範囲は、典型的には、(創傷治療に関連して)創傷の上皮化を効果的に誘導、促進もしくは増強するものであるか、または使用されるタンパク質の量もしくは投与量範囲は、典型的には、神経変性状態の進行を遅らせるように神経系の細胞の遺伝子発現プロファイルを効果的に改変するものであるか、または使用されるタンパク質の量もしくは投与量範囲は、典型的には、ウマ哺乳動物の組織変性状態の治療に関連して、細胞の遺伝子発現プロファイルを改変するものである。
【0155】
さらに別の態様では、体重1キログラム当たり約0.01~100ミリグラムの活性成分(例えば、本発明のタンパク質)の1日投与量が患者に提供される。通常、1日に約1~約6回の分割用量で、または持続放出形態で与えられる1日当たり約1~約5、または約1~約10ミリグラムが、所望の結果を得るために有効であり得る。一実施形態では、投与量は、10~100、30~70、40~60、理想的には約50μg/mlである。
【0156】
非限定的な例として、ヒトまたは動物の疾患の治療は、約24、12、8、6、4もしくは2時間ごとの単回用量もしくは分割用量、またはそれらの任意の組合せを使用して、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、31日、32日、33日、34日、35日、36日、37日、38日、39日もしくは40日のうちの少なくとも1つ、もしくは代替的には、1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週、11週、12週、13週、14週、15週、16週、17週、18週、19週もしくは20週のうちの少なくとも1つ、またはそれらの任意の組合せに、約0.1~100mg/kg、例えば、0.5、0.9、1.0、1.1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、45、50、60、70、80、90または100mg/kgの量での本発明のタンパク質の1日投与量の投与によって提供され得る。
【0157】
例示
以下、具体的な例を参照して本発明を説明する。これらは単なる例示であり、例示のみを目的とするものであり、特許請求される独占権の範囲、または記載される発明を限定することを決して意図するものではない。これらの例は、本発明を実施するために現在企図されている最良の形態を構成する。
【0158】
例1
pTT3発現ベクターの構築
ベクターはいずれも、pBlueBac4.5-V5-Hisベクターから得られたカルボキシ末端V5-HisタグとインフレームでpTT3発現ベクターにサブクローニングされた関連するPSG1オープンリーディングフレーム(ORF)またはCC49オープンリーディングフレーム(ORF)を含む。全長PSG1を発現するベクターは以前に記載された。(Shanley et al.,2013;Houston et al.,2016)。CC49配列をPCRによって得て、EcoRI制限部位およびHindIII制限部位を含有するPCRプライマーを使用してpTT3に指向的にサブクローニングした。部位特異的変異誘発を使用して、前もって操作されたV5-Hisタグを除去した。
【0159】
Fcタグクローニング
エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)形質転換リンパ球cDNAの試料から、ヒトFcタグをPCR増幅した。Bettina Wagnerによって寄贈されたpcDNA-IGHG1ベクターから、ウマFcタグを増幅した。ヒトFcタグおよびウマFcタグの両方を、プライマーテールになるように操作したHindIII部位を使用してpTT3ベクターにサブクローニングし、PSG1/CC49のORFの3’末端にインフレーム挿入した。Fcタグを挿入した後、FcタグによるPSG1 ORFまたはCC49 ORFのインフレーム転写を可能にするために、部位特異的変異誘発を使用して内部HindIII部位を除去した。
【0160】
部位特異的変異誘発を使用して、安定性および半減期を増加させるためのCH2ドメイン内のヒトFcタグ(三重置換YTE(M252Y/S254T/T256E)およびCH3ドメイン内の(H433K/N434F)への改変を行った(Rath et al,2015を参照、Fc改変については、https://doi.org/10.3109/07388551.2013.834293)。部位特異的変異誘発を使用して(Phusion Site-Directed Mutagenesis Kit-Thermo Fisher Scientific)、ヒトFcタグへの改変を行った。
【0161】
例2
ヒト不死化ケラチノサイト細胞株(HaCaT;Boukamp et al.,1988)をGerman Cancer Research Center(DKFZ)から購入した。細胞を10%FBS;100μg/mlストレプトマイシン;100U/mlペニシリン;2mM L-グルタミンを補充したDMEM(D6429、Sigma-Aldrich,UK)中で増殖させ、37°C、5%COで培養した。ヒト間葉系幹細胞(MSC)を10%FBS;100μg/mlストレプトマイシン;100U/mlペニシリン;1ng/ml FGF2(SRP4037、Sigma-Aldrich,UK)を補充したMEM(M2279、Sigma-Aldrich,UK)中で増殖させ、37°C、5%COで培養した。ウマMSCを10%FBS;100μg/mlストレプトマイシン;100U/mlペニシリン;2mM L-グルタミンを補充したDMEM(D6429、Sigma-Aldrich,UK)中で増殖させ、37°C、5%COで培養した。1ウェル当たり1つのIBIDI Culture Insertを用いて、HaCaT細胞(1×10細胞/ml)と、ヒトMSC細胞またはウマMSC細胞(2×10細胞/ml)とを6ウェルプレートに1mlで播種した。24時間後、インサートおよび培地を除去し、50μgのPSG1-Fc、PSG1-V5His、CC49-Fc、CC49-V5His、または50μlのPBSを補充した1mlの細胞培養培地を用いて各ウェルを処理した。創傷閉鎖の程度を決定するために、EVOS FL AutoおよびWimasis WimScratch分析またはImageJ分析を使用して、処理の16時間後に擦過創傷を画像化した。本発明者らは、ヒトHaCaTケラチノサイト細胞株ならびにヒト間葉系幹細胞(MSC)およびウマ間葉系幹細胞(MSC)を使用して、PSG1またはCC49が創傷治癒に関連する細胞型の遊走を増強することを決定した。結果を図1A~Cに示す。
【0162】
例3
ブタにおける創傷閉鎖に対するPSG1の効果
ブタ5匹の各脇腹に6つの2×2cm(4cm)全層切除創傷を作製し、0日目に、創縁の周囲の8つの部位での皮内注射によって、1mlのPBS、またはPBS中250μgのPSG1を用いて処置し、3日目に反復処置を行った。3および7日目に包帯を交換し、0、3、7および10日目に創傷を撮影し、10日目にサンプリングした。代表的な写真を図2Aに示す。10日目の創傷上皮化の程度を図2Bに示す。
【0163】
例4
マウスにおける創傷閉鎖に対するPSG1の効果
C57Bl/6J系統の成体雄マウスに直径0.4cmの円形の全層切除創傷を作製し、創縁の周りの4つの等距離部位に100ulのPBS、または100ulのPBS中50ugのPSG1のいずれかを皮内注射した。予備的用量反応実験では、最大創傷閉鎖を達成するPSG1の最低有効用量が50ugであったことが示され、この用量をその後の実験で使用した。創傷を測定し、PSG1投与直後(1日目)および創傷後5日目に撮影した。結果を図2Cおよび図2Dに示す(治癒していない5日目の創傷の%)。
【0164】
例5
HaCaTヒト細胞株内の遺伝子発現に対するPSG1の効果
PSG1を用いてHaCaTヒトケラチノサイト細胞株をインビトロで処理し、Qiagen Wound Healing Profiler qRT-PCRアレイを使用して遺伝子発現変化を分析した。細胞を50ug/mlのPSG1とともに1×10細胞/mlの密度で6ウェルプレートに24時間かけて播種し、cDNAを調製し、処理後24時間の時点で分析した。2つの反復実験の結果を図1Dに示す。
【0165】
例6
変形性関節症のマウスモデル
Farrell et al.(Farrell E,Fahy N,Ryan AE,Flatharta CO,O’Flynn L,Ritter T,Murphy JM.vIL-10-overexpressing human MSCs modulate naive and activated T lymphocytes following induction of collagenase-induced osteoarthritis.Stem Cell Res Ther.2016 May 18;7(1):74.doi:10.1186/s13287-016-0331-2.PMID:27194025)の方法に従って、変形性関節症のマウスモデルを作製する。
【0166】
膝関節内へのコラゲナーゼの関節内注射のためのプロトコル(CIOAモデル)
1.イソフルランを用いて、1処置群当たり最大9匹のC57Bl/6系統の成体雄マウスおよび成体雌マウスを麻酔する。
2.後肢を剃毛し、脱毛クリームを塗布して体毛全部を確実に除去する。
3.ヨウ素溶液を用いて注射領域を消毒する。
4.27G針付き10μl Hamiltonシリンジを使用して、7μlのコラゲナーゼ、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、またはPBS中PSGタンパク質(100ug/ml)をシリンジに吸引する。
5.膝をわずかに曲げ、触診によって関節内空間の位置を突き止める。
6.膝蓋靱帯に損傷を与えないように、針を横方向に挿入する。
7.滑液包の後部を穿刺するのを避けるために、針を上方に向け、膝頭に入れ、大腿顆に接触させる。
8.滑膜腔内に入れた後、ピストン棒をゆっくりと押して流体を投与する。
9.針を後退させ、後肢を穏やかに動かして流体の分布を促進する。
10.処置後、動物を加熱パッド上に維持し、完全に動き回り、麻酔から回復するまでモニタリングする。
【0167】
実験プロトコルの時系列(日):
D-7:マウスの受領、および1週間の順化
D0:膝への1回目のコラゲナーゼ注射
D1:膝への2回目のコラゲナーゼ注射
D7:膝へのPBSまたはPSG1-FcもしくはCC49-Fcの注射(1処置当たり最大18匹のマウス)
D42:安楽死および剖検
【0168】
剖検時に、組織学的分析のために両膝関節(未処置および処置)を採取し、フローサイトメトリーおよびサイトカインELISAアッセイのために血液試料を採取して、免疫細胞集団に対する全身変化を同定する。実験結果の測定は、軟骨測定基準、滑膜肥厚および異所性骨形成を評価するための半定量的スコアリングシステムを使用して、処置された関節の組織学的検査に主に焦点を当てている。分析のサブセットは、血液中およびリンパ節内の免疫細胞プロファイルとサイトカインパネルのELISAとを調査するためのフローサイトメトリーを伴う。結果を図3A~Cに示し、結果は、PSG1-FcおよびCC49-Fcを使用した変形性関節症の有効な治療を実証する。
【0169】
均等物
上記の説明は、本発明の目下好ましい実施形態を詳述している。これらの説明を考慮した当業者は、その実施において多くの修正および変形例を想起すると予測される。これらの修正および変形例は、添付の特許請求の範囲内に包含されることが意図されている。
【配列表フリーテキスト】
【0170】
配列表3 <223>改変ヒトFc ORF
配列表6 <223>ウマFc ORF
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
【配列表】
2024514194000001.app
【国際調査報告】