(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-28
(54)【発明の名称】間葉系幹細胞および血管内皮前駆細胞を有効性分として含む、閉鎖性血管疾患またはその合併症予防または治療用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/44 20150101AFI20240321BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20240321BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240321BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240321BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
A61K35/44
A61K35/28
A61P9/00
A61P9/10 101
A61P9/10
A61P43/00 121
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563330
(86)(22)【出願日】2022-04-08
(85)【翻訳文提出日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 KR2022005118
(87)【国際公開番号】W WO2022220501
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】10-2021-0049817
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】512139102
【氏名又は名称】ユニバーシティ-インダストリー コーオペレイション グループ オブ キョンヒ ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY-INDUSTRY COOPERATION GROUP OF KYUNG HEE UNIVERSITY
(71)【出願人】
【識別番号】523013466
【氏名又は名称】エルピス・セル・セラピューティクス
【氏名又は名称原語表記】ELPHIS CELL THERAPEUTICS
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ヒョン スク
(72)【発明者】
【氏名】ファン,デ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソンア
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ヨンスク
【テーマコード(参考)】
4C087
【Fターム(参考)】
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB44
4C087BB63
4C087MA02
4C087MA65
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA36
4C087ZA39
4C087ZA40
4C087ZA45
4C087ZC75
(57)【要約】
本発明は、血管内皮前駆細胞および間葉系幹細胞を有効性分として含む、閉鎖性血管疾患またはその合併症予防または治療用組成物に関し、血管内皮前駆細胞および間葉系幹細胞を複合処理する場合、血管形成能が顕著に向上することを確認することで、閉鎖性血管疾患またはこれによる潰瘍の予防または治療のための新たな細胞治療剤およびその製造方法を提供することができる効果がある。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内皮前駆細胞および間葉系幹細胞を有効性分として含む、閉鎖性血管疾患またはこれによる潰瘍の予防または治療用細胞治療剤薬学組成物。
【請求項2】
前記血管内皮前駆細胞および間葉系幹細胞は、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞であることを特徴とする、請求項1に記載の閉鎖性血管疾患またはこれによる潰瘍の予防または治療用細胞治療剤薬学組成物。
【請求項3】
前記閉鎖性血管疾患は、脳血管疾患(cerebrovascular disease、CVD)、心血管疾患(cardiovascular disease)、動脈硬化性血管疾患(arteriovascular disease)、冠動脈疾患(coronary artery disease、CAD)および末梢血管疾患(peripheral artery disease、PAD)からなる群より選択される疾患であることを特徴とする、請求項1に記載の閉鎖性血管疾患またはこれによる潰瘍の予防または治療用細胞治療剤薬学組成物。
【請求項4】
前記細胞治療剤は、1.2×10
5~1.2×10
7細胞/kg体重の投与用量で投与されることを特徴とする、請求項1に記載の閉鎖性血管疾患またはこれによる潰瘍の予防または治療用細胞治療剤薬学組成物。
【請求項5】
前記血管内皮前駆細胞は、個体に投与時に血管細胞に位置することを特徴とする、請求項1に記載の閉鎖性血管疾患またはこれによる潰瘍の予防または治療用細胞治療剤薬学組成物。
【請求項6】
前記間葉系幹細胞は、個体に投与時に血管周囲細胞(pericyte)に位置することを特徴とする、請求項1に記載の閉鎖性血管疾患またはこれによる潰瘍の予防または治療用細胞治療剤薬学組成物。
【請求項7】
血管内皮前駆細胞および間葉系幹細胞を混合するステップを含む、閉鎖性血管疾患またはこれによる潰瘍の予防または治療用細胞治療剤の製造方法。
【請求項8】
前記血管内皮前駆細胞および間葉系幹細胞は、2:1の割合で混合されることを特徴とする、請求項7に記載の閉鎖性血管疾患またはこれによる潰瘍の予防または治療用細胞治療剤の製造方法。
【請求項9】
前記血管内皮前駆細胞および間葉系幹細胞は、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞であることを特徴とする、請求項7に記載の閉鎖性血管疾患またはこれによる潰瘍の予防または治療用細胞治療剤の製造方法。
【請求項10】
血管内皮前駆細胞および間葉系幹細胞を有効性分として含む、閉鎖性血管疾患またはこれによる潰瘍の予防または治療用薬学組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の薬学組成物を個体に投与するステップを含む、閉鎖性血管疾患またはこれによる潰瘍の予防または治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間葉系幹細胞および血管内皮前駆細胞を有効性分として含む、閉鎖性血管疾
またはその合併症予防または治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
血管内皮前駆細胞(EPC: endothelial progenitor cell)は、末梢血液で初めて突き止められた細胞であって、血管新生を促進する細胞である。
【0003】
新たな血管は、新生血管形成(angiogenesis)、動脈新生(arteriogenesis)および脈管形成(vasculogenesis)過程によって生成されるが、新生血管形成過程は、既に存在する成熟した血管内皮細胞(endothelial cell)から育つ血管内皮細胞の増殖および移動と関連があり、動脈新生は、既に存在する小動脈連結(arteriolar connection)を側部血管(collateral vessels)でリモデリングする過程であり、脈管形成は、血管内皮前駆細胞(endothelial progenitor cells)が成熟した血管内皮細胞へ分化される過程を通じて進行される。したがって、骨髄から出て循環する血管内皮前駆細胞は、血管損傷部位に移動し、新たに形成される血管への直接的な挿入または多様な新生血管形成および栄養因子の分泌を通じて新たな血管形成に関与する。
【0004】
したがって、血管内皮前駆細胞は、再生医学分野および再血管新生を通じた治療目的に潜在的な標的として注目されている。よって、血管内皮前駆細胞の機能を増加させるための研究が進行されているが、一例として、生体外(ex vivo)遺伝子を変形させた組換えEPCsの製造に対する研究が進行されたことがあり、血管内皮成長因子(vascular endothelial growth factor(VEGF))または低酸素症誘導因子-1α(hypoxiainducible factor-1α)を利用してEPCsの新生血管形成能力(pro-angiogenic capacity)を増加させる技術が研究されたことがある。
【0005】
一方、現在、閉鎖性血管疾患における細胞治療として利用される大きく2種の細胞に分けられる。虚血環境(Ischemic niche)における直接的に血管へ分化できるG-CSF mobilized MNCとBM(Bone Marrow)-EPCと血管の生成に寄与するgrowth factorを多量に分泌して間接的に血管形成に役立つParacrine effect方式のBM-MSC(間葉系幹細胞)とADSC(脂肪由来幹細胞)がある。
【0006】
しかし、これらの細胞治療方式は単一細胞投与であるため、複雑な構造の血管への分化および機能が難しく、直接的な血管形成なしにparacrine effectのみで治療的効果を期待することは難しいという限界がある。このような血管構造的機能的問題を解決するためには、血管内皮細胞(Endothelial cell)だけでなく、血管周囲細胞(Pericyte)、特に、arterioleなどの再生のためには平滑筋細胞(smooth muscle cells)の役割が重要であるが、間葉系幹細胞がこのような血管周囲細胞および平滑筋細胞の役割をして、形成された血管の安定および機能に寄与すると知られている。
【0007】
これにより、本発明者らは、既存の単一投与方式ではなく複合投与方式でIschemic nicheで血管内皮細胞へ直接的に分化できる血管内皮細胞および血管周囲細胞および平滑筋細胞の役割が可能な骨髄由来間葉系幹細胞を複合処理する場合、下肢動脈閉鎖性疾患における安定した血管を形成し、血流量を回復することを確認して、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、血管内皮前駆細胞および間葉系幹細胞を有効性分として含む、閉鎖性血管疾患またはこれによる潰瘍予防または治療用細胞治療剤組成物を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、閉鎖性血管疾患またはこれによる潰瘍予防または治療用細胞治療剤の製造方法を提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、血管内皮前駆細胞および間葉系幹細胞を有効性分として含む、閉鎖性血管疾患またはこれによる潰瘍予防または治療用薬学組成物を提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、閉鎖性血管疾患またはこれによる潰瘍予防または治療方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記のような目的を達成するために、本発明は、血管内皮前駆細胞および間葉系幹細胞を有効性分として含む、閉鎖性血管疾患またはこれによる潰瘍予防または治療用細胞治療剤組成物を提供する。
【0013】
続いて、本発明は、血管内皮前駆細胞および間葉系幹細胞を混合するステップを含む、閉鎖性血管疾患またはこれによる潰瘍予防または治療用細胞治療剤の製造方法を提供する。
【0014】
さらに、本発明は、血管内皮前駆細胞および間葉系幹細胞を有効性分として含む、閉鎖性血管疾患またはこれによる潰瘍予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0015】
最後に、本発明は、前記薬学組成物を個体に投与するステップを含む、閉鎖性血管疾患またはこれによる潰瘍予防または治療方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、血管内皮前駆細胞および間葉系幹細胞を複合処理する場合、血管形成能が顕著に向上することを確認することで、閉鎖性血管疾患またはこれによる潰瘍予防または治療のための新たな細胞治療剤およびその製造方法を提供することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】血流量分析実験方法を簡略に示した写真である。
【
図2】蛍光映像分析器を通じたDiR-EL-100の分布試験方法を簡略に示した写真である。
【
図3】細胞割合変化による血管網形成能の観察結果を示した写真である。
【
図4】培養期間による血管網形成能の観察結果を示した写真である。
【
図5】閉鎖性血管疾患動物モデルで複合幹細胞による血流量回復による足部保存実験結果を示した写真である。
【
図6】複合幹細胞による生体内血管網形成能の観察結果を示した写真である。
【
図7】複合幹細胞の生体内細胞の移動および残存有無の確認結果を示した写真およびグラフである。
【
図8】複合幹細胞の臓器体内分布観察結果を示した写真である。
【
図9】複合幹細胞投与後の組織分析結果を示した写真である。
【
図10】複合幹細胞の投与用量別の治療効能評価実験の模式図である。
【
図11】複合幹細胞の投与用量別の手術病弁の外形変化観察結果を示した写真およびグラフである。
【
図12】複合幹細胞の投与用量別の血流量分析結果を示した写真およびグラフである。
【
図13】複合幹細胞の虚血組織における血管網形成能の観察結果を示した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施例により本発明を詳しく説明することにする。ただし、下記の実施例は、本発明に対する例示として提示されるものであって、当業者に周知著名な技術または構成に対する具体的な説明が本発明の要旨を不要に曇ることができるものと判断される場合には、その詳細な説明を省略することができ、これにより本発明が制限されていない。本発明は、後述する特許請求の範囲の記載およびそれから解析される均等範疇内で多様な変形および応用が可能である。
【0019】
また、本明細書において使用される用語(terminology)は、本発明の好ましい実施例を適切に表現するために使用された用語であって、これは、使用者、運用者の意図または本発明の属する分野の慣例などによって変わることがある。したがって、本用語に対する正義は、本明細書の全般にわたった内容に基づいて下されなければならない。明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0020】
本明細書の全体にわたって、特定物質の濃度を示すために使用される「%」は、別途の言及がない場合、固体/固体は(w/w)%、固体/液体は(w/v)%、そして液体/液体は(v/v)%である。
【0021】
本発明の「血栓」は、血液因子の凝集物であって、主に血小板およびフィブリンの凝集物からなり、通常的に血管の過度な出血を防ぐために形成される。血小板が内皮下層の表面と接触時に血栓を生成させて血管系を遮断する反応が開始されるが、このような過程を止血と言い、前記過程は、傷部位から過度な出血を防ぐのに非常に重要である。動脈血栓は、局所閉塞による深刻な疾患を引き起こすのに対し、静脈血栓は、主に遠距離閉塞、または塞栓を引き起こす。
【0022】
この際、「閉塞(occlusion)」は、血管が完全に詰まるか、または部分的に詰まって血管が細くなっている状態を包括する用語である。閉塞の程度は、測定された血流量に基づいて判断されることができる。すなわち、閉塞の程度は、部分的閉塞(partial occlusion)または完全閉塞(complete occlusion)に分類され、部分的閉塞は、正常血流量(baseline blood flow)の50-60%水準に減少された場合を意味し、完全閉塞は90-100%水準に減少された場合を意味する。
【0023】
現在、閉鎖性血管疾患における細胞治療として利用される大きく2種の細胞に分けられる。虚血環境(Ischemic niche)における直接的に血管へ分化できるG-CSF mobilized MNCとBM(Bone Marrow)-EPCと血管の生成に寄与するgrowth factorを多量に分泌して間接的に血管形成に役立つParacrine effect方式のBM-MSC(間葉系幹細胞)とADSC(脂肪由来幹細胞)がある。
【0024】
しかし、これらの細胞治療方式は単一細胞投与であるため、複雑な構造の血管への分化および機能が難しく、直接的な血管形成なしにparacrine effectのみで治療的効果を期待することは難しいという限界がある。
【0025】
よって、本発明者らは、既存の単一投与方式ではなく複合投与方式でIschemic nicheから血管内皮細胞へ直接的に分化できる血管内皮細胞および血管周囲細胞および平滑筋細胞の役割が可能な骨髄由来間葉系幹細胞を複合処理する場合、下肢動脈閉鎖性疾患における安定した血管を形成し、血流量を回復することを確認して本発明を完成した。
【0026】
したがって、本発明は、血管内皮前駆細胞および間葉系幹細胞を有効性分として含む、閉鎖性血管疾患またはこれによる潰瘍の予防または治療用細胞治療剤組成物を提供する。
【0027】
本発明において使用される用語「間葉系幹細胞(MSC)」は、骨、軟骨、脂肪、筋肉細胞を含む多様な中胚葉性細胞へ分化できる多能性幹細胞(multipotent stem cell)を意味する。前記間葉系幹細胞は、臍帯、臍帯血、骨髄、脂肪、筋肉、神経、皮膚、羊膜、絨毛膜、脱落膜または胎盤に由来したものであってよく、好ましくは、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC、Bone Marrow- Mesenchymal Stem Cell)であってよい。間葉系幹細胞は、身体損傷が発生した部位に直接移動して損傷した組織および細胞を再生する能力を有しており、体外で容易に増殖することができ、様々な細胞形態へ分化が可能な多能性細胞であって、遺伝子治療と細胞治療において有用な標的として利用されている。
【0028】
また、本発明の一実施例において、前記血管内皮前駆細胞および間葉系幹細胞は、2:1の割合で混合されるものであってよいが、これに制限されるものではない。
【0029】
また、本発明の一実施例において、前記血管内皮前駆細胞および間葉系幹細胞は、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞であってよいが、これに制限されるものではない。
【0030】
また、本発明の一実施例において、前記閉鎖性血管疾患は、脳血管疾患(cerebrovascular disease、CVD)、心血管疾患(cardiovascular disease)、動脈硬化性血管疾患(arteriovascular disease)、冠動脈疾患(coronary artery disease、CAD)および末梢血管疾患(peripheral artery disease、PAD)からなる群より選択される疾患であってよく、好ましくは、冠動脈疾患(coronary artery disease、CAD)および末梢血管疾患(peripheral artery disease、PAD)であってよい。具体的に、前記閉鎖性血管疾患は、脳卒中、脳梗塞、脳血栓症、脳塞栓症、ラクナ梗塞、急性冠動脈症候群、狭心症、大動脈狭窄症、心筋梗塞症、脚ブロック、脳虚血、急性虚血性心血管疾患(acute ischemic arteriovascular event)、血栓性静脈炎、静脈血前塞栓症、深部静脈血栓症(deep vein thrombosis)、肺塞栓症(pulmonary embolism)、末梢血管疾患、アテローム性動脈硬化症、血管痙攣、再狭窄症、血管炎による血管閉塞症などが含まれる。
【0031】
本発明において使用される用語「脳血管疾患(cerebrovascular disease、CVD)」とは、酸素-豊富血液を顔面および脳に供給する血管で起こる動脈硬化性血管疾患であって、一般的に、CADおよび/またはPAD(peripheral artery disease)とともに発生する同伴疾患(comorbid disease)だけでなく、虚血性疾患または血流量の不足を引き起こす疾患も含む。例えば、CVDは、虚血性脳血管疾患、急性脳梗塞、脳卒中、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、静脈瘤、軽度認知障害(mild cognitive impairment、MCI)または一過性脳虚血発作(transient ischemic attacks、TIA)を含むが、これに限定されるものではない。
【0032】
本発明において使用される用語「心血管疾患(cardiovascular disease)」または「動脈硬化性血管疾患(arteriovascular disease)」とは、心臓、心臓弁膜、血液および体の血管構造(vasculature)に影響を及ぼす数多くの状態を分類するのに利用される一般的な用語であって、心臓または血管に影響を及ぼす疾病を含む。好ましくは、代謝症候群、症候群X、アテローム性動脈硬化症、粥状血栓症、冠動脈疾患、安定および不安定狭心症、脳卒中、大動脈狭窄症または大動脈瘤のような大動脈疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患または急性虚血性動脈硬化性イベントを含むが、これに限定されるものではない。
【0033】
本発明において使用される用語「冠動脈疾患(coronary artery disease、CAD)」とは、心筋に血液を供給する動脈(冠動脈)が粥状硬化(atherosclerotic)、カルシウム沈殿による硬化および/または細くなって発生する動脈硬化性血管疾患を意味する。CADは、心筋への血流量減少を招き、これにより心筋が十分な量の酸素を供給されず、究極的に壊死(necrosis)を引き起こす。CADは、急性冠動脈症候群、心筋梗塞(心臓麻痺)、狭心症(安定および不安定)または心臓へ血液を供給する血管で発生するアテローム性動脈硬化症および粥状血栓症を含むが、これに限定されるものではない。
【0034】
本発明において使用される用語「末梢血管疾患(peripheral artery disease、PAD)」とは、心臓および脳以外の箇所で発生するアテローム性動脈硬化症および粥状血栓症のような疾患であって、一般的にCADとともに発生する同伴疾患(comorbid disease)を含む。
【0035】
本発明において使用される用語「潰瘍(ischaemic ulcer)」は、粘膜筋肉板を超えて組織が欠損される状態を言い、本発明においては、静脈性潰瘍(venous ulcer)または末梢静脈疾患(peripheral vascular disease、PVD)による潰瘍であるうっ血性潰瘍(stasis ulcer)、動脈性潰瘍(arterial ulcer)である虚血性潰瘍(ischemic ulcer)または糖尿病患者からよく現れる潰瘍である末梢神経病症潰瘍(neuropathic ulcer)を意味する。
【0036】
また、前記血管内皮前駆細胞は、個体に投与時に血管細胞に位置するものであってよい。
【0037】
また、前記間葉系幹細胞は、個体に投与時に血管周囲細胞(pericyte)に位置するものであってよい。
【0038】
また、前記個体は、治療、観察または実験の対象である哺乳動物を意味し、好ましくはヒトを意味する。
【0039】
本発明において使用される用語「血管周囲細胞(pericyte)」は、血管内皮と特異な局所接触を形成する、微小血管系の基底膜内に位置した血管壁細胞を意味する。Rouget細胞、外膜細胞(adventitial cell)または壁細胞(mural cell)とも呼ばれる小血管周囲の結合織細胞であって、血管内皮外部の10%~50%を取り囲んでいることと知られている。細長い収縮性細胞であり、基底膜外部で毛細血管前細動脈周囲を囲んでいる。
【0040】
前記血管周囲細胞は、相対的に未分化した多能性細胞であり、血管を支持する機能をし、必要に応じて線維芽細胞、平滑筋または大食細胞へも分化することができる。また、前記血管周囲細胞は、血管新生だけでなく、血-脳障壁安定性に重要な役割をし、血管内細胞に対する接着力で微小血管系で血流を調節することができる。
【0041】
そのため、本発明に係る前記細胞治療剤は、血管内皮前駆細胞および間葉系幹細胞の複合投与を通じて、血管新生、血管再生および血管障壁の安定性をさらに増進させ得る。
【0042】
本発明において使用される用語「細胞治療剤」は、個体から分離、培養および特殊な操作を通じて製造された細胞および組織で治療、診断および予防の目的に使用される医薬品(米国FDA規定)であって、細胞あるいは組織の機能を復元させるために生きている自己、同種または異種細胞を体外で増殖選別するか、他の方法で細胞の生物学的特性を変化させるなどの一連の行為を通じて、治療、診断および予防の目的に使用される医薬品を意味する。
【0043】
前記細胞治療剤組成物の投与経路は、目的組織に到達することができる限り、非経口の経路を通じて投与されることができる。非経口投与、例えば、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、局所投与、鼻腔内投与、肺内投与、直腸内投与されることができるが、これに制限されない。
【0044】
本発明の細胞治療剤組成物は、凍結されていない状態で使用されるか、今後の使用のために凍結されることができる。凍結されなければならない場合、標準冷凍保存剤(例えば、DMSO、グリセロール、エピライフ(Epilife)細胞凍結培地(Cascade Biologics))が凍結前の細胞集団に添加されることができる。
【0045】
また、前記細胞治療剤組成物は、薬学分野の通常の方法により、患者の身体内投与に適した単位投与形の薬学製剤で剤形化させて投与することができ、前記製剤は、1回または数回投与により効果的な投与量を含む。このような目的に適した剤形としては、非経口投与製剤として注射用アンプルのような注射剤、注入バッグのような注入剤、およびエアロゾル製剤のような噴霧剤などが好ましい。前記注射用アンプルは、使用直前に注射液と混合調剤することができ、注射液としては、生理食塩水、ブドウ糖、マンニトール、リンゲル液などを使用することができる。また、注入バッグは、塩化ポリビニルまたはポリエチレン材質のものを使用することができ、バクスター(Baxter)、ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson)、メドセップ(Medcep)、ナショナルホスピタル・プロダクツ(National Hospital Products)またはテルモ(Terumo)社の注入バッグを例示することができる。
【0046】
前記薬学製剤には、前記有効性分の他に一つまたはそれ以上の薬学に許容可能な通常の不活性担体、例えば、注射剤の場合には、保存剤、無痛化剤、可溶化剤または安定化剤などを、局所投与用製剤の場合には、基剤(base)、賦形剤、潤滑剤または保存剤などをさらに含むことができる。
【0047】
また、前記細胞治療剤組成物は、前記細胞を収容するための支持体、好ましくは、生分解性支持体をさらに含むことができる。前記生分解性支持体は、フィブリングルー、ヒアルロン酸、ゼラチン、コラーゲン、アルギン酸、セルロース、ペクチン、キチン、ポリグリコール酸、またはポリ乳酸のようなヒドロゲルであってよいが、これに限定されるものではない。
【0048】
また、前記細胞治療剤は、薬学に許容可能な担体をさらに含んでよく、前記薬学に許容可能な担体は、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノールおよびこれらの成分のうち1種以上を混合して使用することができ、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液および静菌剤など他の通常の添加剤を添加することができる。
【0049】
前記緩衝液は、選択的にアセテート、シトレート、タルトレート、ラクテート、スクシネート、またはホスフェートであってよい。前記安定剤は、マンニトール、ヒスチジン、リシン、グリシン、スクロース、フルクトース、トレハロース、ラクトースまたはこれらの混合物であってよい。前記等張剤は、グリセリン、ラクトース、マンニトール、デキストロース、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムまたはソルビトールであってよい。前記抗酸化剤は、アセトン、重亜硫酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、システイン、システイン酸HCl、ジチオナイトナトリウム、ゲンチジン酸、ゲンチジン酸エタノールアミン、グルタメートモノナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシレートナトリウム、メタビスルファイトカリウム、メタビスルファイトナトリウム、モノチオグリセロール、プロピルガレート、亜硫酸ナトリウム、チオグリコレートナトリウム、またはアスコルビン酸であってよい。前記バルク化剤は、マンニトール、グリシン、ラクトース、スクロース、トレハロース、デキストリン、ヒドロキシエチルデンプン、フィコールまたはゼラチンであってよい。
【0050】
このように製造された本発明の細胞治療剤組成物または薬学製剤は、当業界において通常的に使用する投与方法を利用して移植およびその他の用途に使用される他の幹細胞とともに、またはこのような幹細胞との混合物の形態で投与されることができ、好ましくは、治療が必要な患者の疾患部位に直接生着または移植するか、腹腔に直接移植または注入することが可能であるが、これに限定されない。また、前記投与は、カテーテルを用いた非外科的投与および疾患部位切開後の注入または移植などの外科的投与方法も全て可能であるが、カテーテルを用いた非外科的投与方法がより好ましい。また通常の方法によって非経口的に、例えば、直接病弁に投与すること以外に、造血系幹細胞移植の一般的な方法である血管内注入による移植も可能である。
【0051】
また、血管内皮前駆細胞および間葉系幹細胞の混合物の1日投与量は、1.0×101~1.0×1010細胞/kg体重、好ましくは1.0×105~1.0×109細胞/kg体重、さらに好ましくは1.2×105~1.2×107細胞/kgを1回または数回に分けて投与することができる。しかし、有効性分の実際の投与量は、治療しようとする疾患、疾患の重症度、投与経路、患者の体重、年齢および性別などの様々な関連因子に照らして決定されなければならないものと理解すべきであり、したがって、前記投与量は、如何なる面でも本発明の範囲を限定するものではない。
【0052】
続いて、本発明は、血管内皮前駆細胞および間葉系幹細胞を混合するステップを含む、閉鎖性血管疾患またはこれによる潰瘍予防または治療用細胞治療剤の製造方法を提供する。
【0053】
本発明の細胞治療剤の製造方法は、上述の細胞治療剤を含むため、上述の本発明の細胞治療剤と重複した内容は、重複した内容の記載による本明細書の過度な複雑性を避けるために、その記載を省略する。
【0054】
さらに、本発明は、血管内皮前駆細胞および間葉系幹細胞を有効性分として含む、閉鎖性血管疾患またはこれによる潰瘍予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0055】
本発明の薬学組成物は、上述の血管内皮前駆細胞および間葉系幹細胞を含むため、上述の本発明の血管内皮前駆細胞および間葉系幹細胞と重複した内容は、重複した内容の記載による本明細書の過度な複雑性を避けるために、その記載を省略する。
【0056】
本発明の組成物は、個別治療剤で投与するか、他の治療剤と併用して投与されることができ、従来の治療剤と順次にまたは同時に投与されることができ、単一または多重投与されることができる。上記の要素をすべて考慮して、副作用なしに最小限の量で最大効果を得ることができる量を投与することが重要であり、これは、当業者によって容易に決定されることができる。
【0057】
本発明に係る組成物は、薬学に有効な量の血管内皮前駆細胞および間葉系幹細胞の混合物を単独で含むか、一つ以上の薬学に許容される担体、賦形剤または希釈剤を含むことができる。前記で薬学に有効な量とは、免疫疾患の症状を予防、改善および治療するのに十分な量を言う。前記において「薬学に許容される」とは、生理学的に許容され、ヒトに投与されるとき、通常的に胃腸障害、めまいのようなアレルギー反応またはこれと類似した反応を起こさない組成物を言う。
【0058】
また、薬学に許容可能な担体を含む組成物は、経口または非経口の様々な剤形であってよい。製剤化する場合には、普通使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調剤されることができる。前記担体、賦形剤および希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、澱粉、アカシアガム、アルジネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微結晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、生理食塩水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよび鉱物油 、デキストリン、炭酸カルシウム、プロピレングリコールおよびリキッドパラフィンからなる群より選択された一つ以上であってよいが、これに限定されるものではなく、通常の担体、賦形剤または希釈剤のすべてを使用可能である。前記成分は、前記有効性分である血管内皮前駆細胞および間葉系幹細胞の混合物に独立してまたは組み合わせて追加されることができる。
【0059】
また、経口投与のための固形製剤には、錠剤丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれることができ、このような固形製剤は、一つ以上の化合物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、炭酸カルシウム、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混合して調剤されることができる。また、単なる賦形剤の以外に、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどのような潤滑剤も使用されることができる。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、通常使用される単なる希釈剤である水、リキッドパラフィンの以外にも様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれることができる。
【0060】
非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁用剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤などが含まれる。非水性溶剤、懸濁用剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使用されることができる。坐剤の基剤としては、ウイテプゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイーン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロール、ゼラチンなどが使用されることができる。
【0061】
また、本発明の薬学組成物は、錠剤、丸剤、散剤 、顆粒剤、カプセル剤、懸濁液剤、内用液剤、類題、シロップ剤、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁液剤、乳剤、凍結乾燥製剤および坐剤からなる群より選択されるいずれか一つの剤形を有することができる。坐剤の基剤としては、ウイテプゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイーン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロール、ゼラチンなどが使用されることができる。
【0062】
また、本発明の血管内皮前駆細胞および間葉系幹細胞の混合物の人体に対する効果的な投与量は、患者の年齢、体重、性別、投与形態、健康状態および疾患程度によって変わり、一般的に約0.01-1000mg/kg/日であり、好ましくは0.01-350mg/kg/日である。体重が60kgである大人の患者を基準にすると、一般的に0.6-60000mg/日であり、好ましくは0.6-2100mg/日であり、医者または薬剤師の判断によって一定時間の間隔で1日1回~数回に分割投与することもできる。
【0063】
最後に、本発明は、前記薬学組成物を個体に投与するステップを含む、閉鎖性血管疾患またはこれによる潰瘍の予防または治療方法を提供する。
【0064】
本発明において、用語「個体」とは、疾病の予防、調節または治療方法を要する対象を意味し、ヒト、犬、サル、猫、げっ歯類、例えば、マウス、遺伝子組換えられたマウスなど、制限なしに使用されることができる。より具体的には、ヒトまたは非-ヒトである霊長類、マウス(mouse)、ラット(rat)、犬、猫、馬、牛などの哺乳類を意味する。
【0065】
本発明の薬学組成物は、治療学的に有効な量、または薬学に有効な量で投与されることができる。
【0066】
本発明において、用語「治療学的に有効な量」は、対象疾患を予防または治療するのに有効な組成物の薬学に許容可能な塩の量を意味し、本発明の組成物の治療的に有効な量は、様々な要素、例えば、投与方法、目的部位、患者の状態などによって変わる。よって、人体に使用時に投与量は、安全性および効率性を共に考慮して適正量で決定されなければならない。動物実験を通じて決定した有効量からヒトに使用される量を推定することも可能である。有効な量の決定時に考慮すべきこのような事項は、例えば、Hardman and Limbird、eds.、Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、10th ed.(2001)、Pergamon Press;およびE.W. Martin ed.、Remington’s Pharmaceutical Sciences、18th ed.(1990)、Mack Publishing Co.に記述されている。
【0067】
本発明において、用語「薬学に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的な受益/危険割合で疾患を治療するのに十分であり、副作用を引き起こさない程度の量を意味し、有効用量水準は、患者の健康状態、疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与方法、投与時間、投与経路および排出割合、治療期間、配合または同時使用される薬物を含む要素およびその他の医学分野によく知られている要素によって決定されることができる。本発明の組成物は、個別治療剤で投与するか、他の治療剤と併用して投与されることができ、従来の治療剤と順次にまたは同時に投与されることができ、単一または多重投与されることができる。上記の要素をすべて考慮して、副作用なしに最小限の量で最大効果を得ることができる量を投与することが重要であり、これは、当業者によって容易に決定されることができる。
【0068】
以下、本発明を実施例を通じてより詳しく説明することにする。これらの実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0069】
実験材料および方法。
【0070】
ヒト骨髄単核球細胞(MNC)を準備して、各細胞選別培地でseeding後、骨髄由来血管内皮前駆細胞および間葉系幹細胞を分離した。ヒト骨髄単核球細胞(MNC)は、STEMCELL Technologies Inc(カナダバンクーバー)で購入して使用した。
【0071】
EPC培養のために、分離したBM-MNCは、I型コラーゲン(CellMatrix、VA、USA)でコーティングされた100mmディッシュで内皮成長培地-2(EGM-2、Lonza、Basel、Switzerland)で培養した。培地は7日まで毎日入れ替わり、以後には、3日ごとに入れ替った。EPCは、70~80%のコンフルエンス(confluency)状態で継代培養した。
【0072】
MSC培養のためには、BM-MNCを100mmディッシュで間葉系幹細胞成長培地(Stem MACS、Miltenyi)で培養した。培地は、3日ごとに入れ替わり、70~80%のコンフルエンス(confluency)状態で継代培養した。
【0073】
Balb/c-nu mouseをKetamin(100mg/Kg)とRompun(5mg/kg)を腹腔投与麻酔後、仰臥位姿勢(supine position)で寝かし、医療用テープを利用して足固定させた後、肌を足首から大腿部位まで切開して、大腿動脈(common femoral artery)を露出させた。以後、総大腿動脈(common femoral artery)をNeedle holderと縫合6-0 silkを利用して結紮させて、血流の流れを防いた。浅大腿動脈(superficial femoral artery)のproximal部位を6-0 silkで利用して結紮させた。結紮進行時、浅大腿動脈と神経と非常に隣接しているため、micro-fine forcepを利用して分離した後、縫合針を気を付けて入れてから結紮した。浅大腿動脈のdistal部位を6-0silkを利用して結紮させた。
【0074】
浅大腿動脈のDistal結紮部位をmicro-fine forcepsを利用して取った後、気を付けて分離してから持ち上げた後、手術用はさみを利用して血管を除去した。切開された皮膚を5-0silk縫合した後、血流量を測定して虚血が現れるのか否かを確認した。その後、ポビドンで縫合部位を消毒した。
【0075】
投与方法は、insulin注射器(1 mL、29G)を利用して浅大腿動脈除去した血管近くである虚血区域(IR)筋肉部位に2.0mm~2.5mm間隔で5ヶ所(Yellow spot)に分けて1spot当たり10μLずつ投与して計50μLを最初1回のみ投与した。
【0076】
乾燥が完了したスライドを、Xyleneを通じて脱パラフィンさせた後、高濃度アルコールから低濃度アルコールへ経た後、水洗した。組織スライドを緩衝溶液である0.01Mクエン酸(pH6.0)に漬けた後、電子レンジで10分間加熱し、常温で十分に冷やした後、PBS洗浄した。組織のAutofluorescence防ぐために、0.1%sodium borohydride(in PBS)常温で遮光維持して1時間漬けてPBSで十分に洗浄した。抗体浸透のために、0.1%Triton-Xに10分漬けた後、ウォシングした。2%NHSでblocking溶液を作った後、常温で1時間処理した。
【0077】
続いて、希釈した1次抗体(primary Ab)を処理した。4℃温度でovernight間遮光状態で保管し、乾かないように注意する。十分にPBSでwashingした後、2次抗体(Second Ab)を常温で1時間処理した。2%NHS blocking溶液にWGAを5μg/mL濃度で希釈した後、37℃で1時間処理し、DAPIを10~20μ/mL濃度でDWに希釈した後、常温で5分処理した。
【0078】
Laser doppler装備設置および機器作動させた後(
図1A)、マウス動物モデルの腹部部位をアルコール綿で消毒し、ketamineとrompunを腹腔注射して麻酔を進行した(
図1B)。以後、マウス動物モデルを腹位(prone)姿勢で寝かした後、Laser doppler装備を利用して血流量を測定した(
図1C、D)。
【0079】
Matrigel(Corning Inc、NY、USA)をウェル当たり10μlでμ-スライド(Ibidi、Grafelfing、Germany)に処理した。EPCとMSCの混合細胞を多様な割合で準備する。0.2%FBSが含有されたα-MEM(GIBCO、NY、USA)培地で懸濁し、Matrigelにシーディングした後、以後、イメージは顕微鏡(Leica)で修得した。
【0080】
蛍光映像分析器(MaestroII、Whole Body Image)を通じたDiR-EL-100の分布試験は、下記の方法で遂行した。
【0081】
蛍光映像分析器(MaestroII)電源および機器と連結されたコンピュータのMaestro softwareをオンし、Initializationされるまで1分ぐらい待った(
図2A)。
【0082】
腹部部位をアルコール綿で消毒した後、ketamineとrompunを腹腔注射して麻酔を進行する。機器の門を開いた後、麻酔されたMouseを仰臥位姿勢(Supine position)で寝かした後、門を閉じる(
図2B、C)。機器のinterior illuminationを押した後、Mouseの位置および撮影領域を設定する。適したFilterを選択した後、撮影サイズおよび露出感度などを設定して最適の条件を設定する(
図2D)。
【0083】
Sacrifice後、体内蛍光映像分析器で(MaestroII)撮影後、剖検を実施した。腹腔を切開して伏在靜脈と後大静脈を切断して放熱致死させた。主要臓器/組織(投与位置である大腿筋、肝、脾臓、脳、腎臓、心臓、肺、腸間膜リンパ節、投与位置の反対側大腿筋)を摘出し、Cold PBSで十分に洗い出す。摘出した臓器/組織を蛍光映像分析器(MaestroII)で撮影する。
【0084】
すべてのデータは、平均±標準偏差で表示し、P値<0.05未満の場合、有意な値と考慮した(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。
【実施例2】
【0085】
複合幹細胞の割合および培養期間による欠陥網形成能分析。
【0086】
血管内皮前駆細胞および間葉系幹細胞割合および培養期間による血管網形成能変化を確認するために、血管内皮前駆細胞および間葉系幹細胞を0:1、1:0、2:1、1:2、5:1、10:1および100:1の割合で混合した後、複合幹細胞を製造し、同一の細胞数の実験群をそれぞれ処理して血管網形成可否を観察した。その結果は、
図3および
図4に示した。
【0087】
細胞割合別の血管網形成能の確認結果、EPC単独処理群(1:0)でも血管形成能が観察されたが、血管内皮前駆細胞および間葉系幹細胞を混合した複合幹細胞処理群で優れた血管形成能が観察された。特に、血管内皮前駆細胞および間葉系幹細胞が2:1の割合で混合した複合幹細胞の場合、1:2、5:1、10:1、100:1の割合で混合した複合幹細胞と比較して顕著に優れた血管形成能を有することを確認した(
図3参照)。
【0088】
また、培養期間別の血管網形成能の確認結果、血管内皮前駆細胞および間葉系幹細胞を混合した複合幹細胞処理群の場合、短時間内に精巧な細胞再配列が観察されたが、血管内皮前駆細胞およびfibroblast(LF)を混合した複合幹細胞の場合、前記のような細胞再配列が観察されていない(
図4A参照)。また、血管内皮前駆細胞の老化によって血管網形成能が減少するが、血管内皮前駆細胞および間葉系幹細胞を混合する場合、血管内皮前駆細胞の老化によって減少された血管網形成能が回復することを確認した(
図4B参照)。
【0089】
このような結果は、間葉系幹細胞が血管内皮前駆細胞の血管形成能を顕著に向上するということを意味する。以後、実験では、血管網形成能に最も優れた血管内皮前駆細胞および間葉系幹細胞が2:1の割合で混合した複合幹細胞を使用した。
【実施例3】
【0090】
閉鎖性末梢動脈疾患で複合幹細胞による有効性および血管形成能分析。
【0091】
閉鎖性末梢動脈疾患で複合幹細胞の有効性および血管形成能の確認のために下肢動脈閉鎖性疾患非臨床動物モデルで血流量回復による足部保存可否および生体内で複合幹細胞の血管形成可否を確認した。その結果は、
図5および
図6に示した。
【0092】
下肢動脈閉鎖性疾患非臨床動物モデルで血流量回復による足部保存可否の確認結果、複合幹細胞が投与されていない動物モデルでは足部保存が観察されていないが、複合幹細胞が投与された動物モデルで足部保存が観察された(
図5参照)。また、生体内で複合幹細胞の血管形成の確認結果、生体内で血管内皮前駆細胞および間葉系幹細胞が複合幹細胞投与によって保存された足部に存在することを確認した(
図6参照)。
【実施例4】
【0093】
複合幹細胞の移植後の体内分布観察。
【0094】
複合幹細胞の移植後の体内分布観察のために、複合幹細胞(EPC+MSC)total 1.2×10
6/Mouse用量でDiRで染色した後、balb/c-nu大腿筋肉に注入後、蛍光映像分析装備(Maestro II)のNIR波長を利用して生体内細胞の移動および残存有無を蛍光信号が消えるまで持続観察した。また、蛍光信号が消えた後、剖検して臓器および組織内の投与した複合幹細胞の残存有無を確認した。その結果は、
図7および
図8に示した。
【0095】
図7および
図8に示したように、大腿筋肉に細胞投与30分後に蛍光発現強度が最も強く測定され、2週(14日)までは高い水準で維持され、3週(21日)まで蛍光強度が次第に減少する傾向を見せた。また、4週(28日)後からは類似した蛍光強度で約16週(116日)まで維持し、これは、投与した細胞が体内に生着したことを意味する。また、16週(116日)後、複合幹細胞が投与されたマウスを剖検した結果、投与位置である大腿筋肉でのみ蛍光発現が感知され、他の臓器および組織では蛍光が観察されていない。すなわち、生体内に移植された複合幹細胞は投与位置でのみ存在し、他の組織および臓器へ移動するか残留しないことを意味する。
【0096】
続いて、血管内皮前駆細胞および間葉系幹細胞が体内でそれぞれどのような形態で存在するのかを確認するために、組織学的分析を遂行し、その結果は、
図9に示した。
図9に示したように、血管内皮前駆細胞(EPC)は血管細胞に位置しており、間葉系幹細胞(MSC)は血管周囲細胞(pericyte)に位置することと示された。このような結果は、移植細胞が虚血性部位で維持され、host tissue内で新生血管形成に直接参加したことを意味する。
【実施例5】
【0097】
複合幹細胞の用量別の治療効能評価。
【0098】
複合幹細胞(EPC+MSC)の用量別の治療効能を評価するために、細胞用量(移植細胞数)別の手術病弁の外形変化観察実験および血流量測定実験を遂行した。実験は、下記表1の細胞用量で1個の対照群と4個の実験群でデザインし、全体volumeは同一に維持し、高用量から低用量まで細胞を移植し、2週間観察した(
図10参照)。その結果は、
図11および
図12に示した。
【0099】
【0100】
手術病弁の外形変化の観察結果、対照群であるG1グループと比較的少ない数の細胞を移植したG5グループはseverityが非常に高く示された。これに対し、複合幹細胞を移植したG2~G4グループでは、いずれも有意な治療効果を示した(
図11参照)。このような結果を通じて、複合幹細胞の閉鎖性血管疾患の治療効果を示す有効な範囲は、G2(1.2×10
6)~G4(1.2×10
5)であることを確認した。
【0101】
細胞用量による血流量測定結果、対照群G1は、時間による血流量減少および組織消失が現れる様相で観察された。これに対し、複合幹細胞を移植した実験群は、血流量が次第に回復して組織保存が示されるようになることを確認した(
図12A参照)。また、血液灌流率(blood perfusion ratio)測定結果、G2、G3およびG4グループが時間経過によって次第に血流量が改善して組織が回復することを観察し、このような結果を通じて、複合幹細胞の最小有効用量(minimal effective dose、MED)は1.2×10
5であることが分かる。
【実施例6】
【0102】
複合幹細胞の虚血組織における血管形成の確認。
【0103】
複合幹細胞(EPC+MSC)の虚血組織で血管形成および血流量改善関係を確認するために、前記実施例5のG3およびG4グループの動物モデルで組織免疫染色を遂行した。WGAは、筋肉および血管構造を確認するために実施し、観察proteinは、血管マーカーであるCD31とalpha SMAを確認した。その結果は
図13に示した。
【0104】
図13に示したように、G3およびG4のいずれも虚血環境(ischemic environment)で血管形成をすることを確認し、細胞数による血管形成差は観察することができなかった。
【国際調査報告】