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特表2024-514224細胞療法に使用するためのB細胞拡大の方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-28
(54)【発明の名称】細胞療法に使用するためのB細胞拡大の方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20150101AFI20240321BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240321BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240321BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240321BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20240321BHJP
   C12N 5/0781 20100101ALI20240321BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240321BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240321BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20240321BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240321BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240321BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240321BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240321BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240321BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240321BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240321BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
A61K35/17
C12N15/12 ZNA
C12N15/62 Z
C12N5/10
C07K14/705
C12N5/0781
C07K16/28
C07K19/00
C07K14/725
C12N15/13
A61P35/00
A61P9/00
A61P29/00
A61P21/00
A61P25/00
A61K47/68
A61K39/395 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563993
(86)(22)【出願日】2022-04-18
(85)【翻訳文提出日】2023-11-14
(86)【国際出願番号】 US2022025252
(87)【国際公開番号】W WO2022225862
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】63/176,463
(32)【優先日】2021-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522384569
【氏名又は名称】ウォーキング フィッシュ セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ブレナン, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】コサコタ, スリニバス
(72)【発明者】
【氏名】セルビー, マーク ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90Y
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB06
4B065BA02
4B065BD39
4B065CA24
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC01
4C076CC04
4C076CC09
4C076CC11
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB12
4C085BB50
4C085CC03
4C085CC08
4C085DD24
4C085DD62
4C085EE01
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087CA04
4C087DA32
4C087NA20
4C087ZA01
4C087ZA36
4C087ZA94
4C087ZB02
4C087ZB11
4C087ZB26
4H045AA10
4H045BA09
4H045CA42
4H045DA02
4H045DA50
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書に開示される本発明は、細胞集団、特にB細胞集団を拡大するための改善された方法に関する。本発明は、改善されたB細胞拡大培地、拡大したB細胞を含む組成物、及びそのような拡大したB細胞を使用する方法に更に関する。本発明は、疾患又は障害を治療する方法であって、B細胞の集団が得られて培養され、当該B細胞がペイロード及び/又はキメラ受容体を発現するために操作され、当該B細胞が対象に投与される、方法に更に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疾患又は障害の治療を必要とする対象における疾患又は障害を治療する方法であって、
a.B細胞の集団を供給源から得ることと、
b.CD40L融合タンパク質及びCD40L架橋剤を含む培養培地中で前記B細胞を培養することと、
c.ペイロード、キメラ受容体、又はその両方のいずれかを発現するために、前記B細胞を操作することと、
d.前記対象に、前記B細胞を投与することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記供給源が、哺乳動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記供給源が、末梢単核血球を含む生体試料である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記CD40L融合タンパク質が、配列番号3と少なくとも85%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記CD40L融合タンパク質が、配列番号3と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記CD40L融合タンパク質が、配列番号3のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記CD40L架橋剤が、抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体が、配列番号5と少なくとも95%同一の前記アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号7と少なくとも95%同一の前記アミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体が、配列番号5の前記アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号7の前記アミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記B細胞が、CD40L融合タンパク質及びCD40L架橋剤を含む培地中で前記B細胞を培養する前に操作される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記B細胞が、CD40L融合タンパク質及びCD40L架橋剤を含む培地中で前記B細胞を培養した後に操作される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記B細胞をIL-4の存在下で培養することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記B細胞をIL-21の存在下で培養することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記培養B細胞が、以下のマーカー:CD62L、CCR7、CD80、CD86、CD54、ICAM、CD58、又はCD27、のうちの少なくとも1つを発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記疾患又は障害が、がん、心臓病、炎症性疾患、筋肉消耗性疾患、又は神経学的疾患のうちの少なくとも1つからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記がんが、乳がん、大腸がん、直腸がん、食道がん、肺がん、膵臓がん、胃がん、肝臓がん、肝細胞がん、GISTなどの間質腫瘍、グリア芽腫、及び神経膠腫のうちの少なくとも1つである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも約3×10個のB細胞が、前記対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記B細胞の集団が、少なくとも14日間培養される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
疾患又は障害の治療を必要とする対象における疾患又は障害を治療する方法であって、
a.B細胞の集団を供給源から得ることと、
b.CD40L融合タンパク質を含む培養培地中で前記B細胞を培養することであって、前記CD40L融合タンパク質が、配列番号3の前記アミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列と、軽鎖可変領域が配列番号5の前記アミノ酸配列と少なくとも95%同一であり、重鎖可変領域が配列番号7の前記アミノ酸配列と少なくとも95%同一であるCD40L架橋抗体とを含む、培養することと、
c.前記対象に、前記B細胞を投与することと、を含む、方法。
【請求項20】
前記供給源が、哺乳動物である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記CD40L融合タンパク質が、配列番号3のアミノ酸配列を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記抗体が、配列番号5の前記アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号7の前記アミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
ペイロード、キメラ受容体、又はその両方のいずれかを発現するために、前記B細胞を操作することを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記B細胞が、CD40L融合タンパク質及びCD40L架橋タンパク質を含む培地中で前記B細胞を培養する前に操作される、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記B細胞が、CD40L融合タンパク質及びCD40L架橋抗体を含む培地中で前記B細胞を培養した後に操作される、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記B細胞をIL-4の存在下で培養することを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記B細胞をIL-21の存在下で培養することを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記培養B細胞が、以下のマーカー:CD62L、CCR7、CD80、CD86、CD54、ICAM、CD58、又はCD27のうちの少なくとも1つを発現する、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
前記疾患又は障害が、がん、心臓病、炎症性疾患、筋肉消耗性疾患、又は神経学的疾患のうちの少なくとも1つからなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項30】
前記がんが、乳がん、大腸がん、直腸がん、食道がん、肺がん、膵臓がん、胃がん、肝臓がん、肝細胞がん、GISTなどの間質腫瘍、グリア芽腫、及び神経膠腫のうちの少なくとも1つである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
少なくとも約3×10個のB細胞が、前記対象に投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項32】
前記B細胞の集団が、少なくとも14日間培養される、請求項19に記載の方法。
【請求項33】
操作されたB細胞を製造するための方法であって、
a.B細胞の集団を供給源から得ることと、
b.CD40L融合タンパク質及びCD40L架橋剤を含む培養培地中で前記B細胞を培養することと、
c.ペイロード、キメラ受容体、又はその両方のいずれかを発現するために、前記B細胞を操作することと、を含む、方法。
【請求項34】
前記供給源が、哺乳動物である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記供給源が、末梢単核血球を含む生体試料である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記CD40L融合タンパク質が、配列番号3と少なくとも85%同一のアミノ酸配列を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記CD40L融合タンパク質が、配列番号3と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記CD40L融合タンパク質が、配列番号3のアミノ酸配列を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記CD40L架橋剤が、抗体である、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
前記抗体が、配列番号5と少なくとも95%同一の前記アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号7と少なくとも95%同一の前記アミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記抗体が、配列番号5の前記アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号7の前記アミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記B細胞が、CD40L融合タンパク質及びCD40L架橋剤を含む培地中で前記B細胞を培養する前に操作される、請求項33に記載の方法。
【請求項43】
前記B細胞が、CD40L融合タンパク質及びCD40L架橋剤を含む培地中で前記B細胞を培養した後に操作される、請求項33に記載の方法。
【請求項44】
前記B細胞をIL-4の存在下で培養することを更に含む、請求項33に記載の方法。
【請求項45】
前記B細胞をIL-21の存在下で培養することを更に含む、請求項33に記載の方法。
【請求項46】
前記培養B細胞が、以下のマーカー:CD62L、CCR7、CD80、CD86、CD54、ICAM、CD58、又はCD27のうちの少なくとも1つを発現する、請求項33に記載の方法。
【請求項47】
少なくとも約3×10個のB細胞が得られる、請求項33に記載の方法。
【請求項48】
前記B細胞の集団が、少なくとも14日間培養される、請求項33に記載の方法。
【請求項49】
操作されたB細胞を製造するための方法であって、
a.B細胞の集団を供給源から得ることと、
b.CD40L融合タンパク質を含む培養培地中で前記B細胞を培養することであって、前記CD40Lが、配列番号3の前記アミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列と、軽鎖可変領域が配列番号5の前記アミノ酸配列と少なくとも95%同一であり、重鎖可変領域が配列番号7の前記アミノ酸配列と少なくとも95%同一であるCD40L架橋抗体とを含む、培養することと、を含む、方法。
【請求項50】
前記供給源が、哺乳動物である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記CD40L融合タンパク質が、配列番号3のアミノ酸配列を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記抗体が、配列番号5の前記アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号7の前記アミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
ペイロード、キメラ受容体、又はその両方のいずれかを発現するために、前記B細胞を操作することを更に含む、請求項49に記載の方法。
【請求項54】
前記B細胞が、CD40L融合タンパク質及びCD40L架橋剤を含む培地中で前記B細胞を培養する前に操作される、請求項49に記載の方法。
【請求項55】
前記B細胞が、CD40L融合タンパク質及びCD40L架橋剤を含む培地中で前記B細胞を培養した後に操作される、請求項49に記載の方法。
【請求項56】
前記B細胞をIL-4の存在下で培養することを更に含む、請求項49に記載の方法。
【請求項57】
前記B細胞をIL-21の存在下で培養することを更に含む、請求項49に記載の方法。
【請求項58】
前記培養B細胞が、以下のマーカー:CD62L、CCR7、CD80、CD86、CD54、ICAM、CD58、又はCD27のうちの少なくとも1つを発現する、請求項49に記載の方法。
【請求項59】
少なくとも約3×10個のB細胞が得られる、請求項49に記載の方法。
【請求項60】
前記B細胞の集団が、少なくとも14日間培養される、請求項49に記載の方法。
【請求項61】
B細胞拡大培地であって、
a.CD40Lであって、前記CD40L融合タンパク質が、配列番号3の前記アミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む、CD40Lと、
b.軽鎖可変領域が配列番号5の前記アミノ酸配列と少なくとも95%同一であり、重鎖可変領域が配列番号7の前記アミノ酸配列と少なくとも95%同一である、CD40L架橋抗体と、
c.前記B細胞を前記対象に投与することと、を含む、B細胞拡大培地。
【請求項62】
前記CD40L融合タンパク質が、配列番号3のアミノ酸配列を含む、請求項61に記載の培地。
【請求項63】
前記抗体が、配列番号5の前記アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号7の前記アミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを含む、請求項61に記載の培地。
【請求項64】
IL-4を更に含む、請求項61に記載の培地。
【請求項65】
IL-21を更に含む、請求項61に記載の培地。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
B細胞は、体が感染及び疾患に抵抗するのを助けることを含む様々な機能を担う免疫細胞である。それらは、認識された抗原に応答して抗体を分泌し、抗原を提示し、またサイトカインを分泌することができる。がんにおいて、B細胞は、ある特定の腫瘍を取り囲む三次リンパ構造(「TLS」)において見出された。TLSは、免疫細胞(T細胞及びB細胞の両方を含む)の凝集体を含む。腫瘍中のそれらの存在は、良好な患者の転帰と関連している。例えば、Helmink,B.A.,et al.,Nature,2020,577(7791),549-555、Petitprez F et al.,Nature,2020,577(7791),556-560を参照されたい。
【0002】
チェックポイント阻害剤と組み合わせたB細胞を含むLPS活性化脾臓細胞の腫瘍内注射は、抗腫瘍応答を生じることが示されている。Soldevilla et al.,Oncoimmunology,2018,7:8,e1450711。更に、抗原を提示し、タンパク質を分泌するB細胞の自然な能力を考慮すると、ある特定の疾患細胞型を標的とし、治療ペイロードを分泌するための細胞療法として大いなる可能性がある。
【0003】
しかしながら、細胞療法のために操作されたB細胞の製造をスケーリングすることは、困難なプロセスである。数十年にわたり、インビトロでのB細胞の活性化及び増殖は、CD40-リガンド(「CD40L」)を発現するフィーダー細胞層系を介して達成されてきた。Banchereau,J.et al.(1991)Science 251:70-72、Schultze,J.L.et al.(1997)J.Clin.Invest.100:2757-2765、Liebig,T.M.et al.(2009)J.Vis.Exp.32:1373。これらの系は、CD40L発現フィーダー細胞層への依存性である共通の欠点を共有する。フィーダー細胞の使用は、活性化及び増殖プロセスの標準化を妨げ、プロトコルに変数を導入する。
B細胞の拡大は、CD40Lを使用して記載されており、混合された結果である。例えば、Wennhold et al.,2019,Transfus Med Hemother,46:36-46を参照されたい。いくつかの方法は、低い拡大収率をもたらし、細胞工学のために、及び患者への投与のための治療薬としてB細胞を使用するために不十分な量のB細胞を産生する。したがって、改善されたB細胞拡大技術、増殖培地などの必要性が存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Helmink,B.A.,et al.,Nature,2020,577(7791),549-555
【非特許文献2】Petitprez F et al.,Nature,2020,577(7791),556-560
【非特許文献3】Soldevilla et al.,Oncoimmunology,2018,7:8,e1450711
【非特許文献4】Banchereau,J.et al.(1991)Science 251:70-72
【非特許文献5】Schultze,J.L.et al.(1997)J.Clin.Invest.100:2757-2765
【非特許文献6】Liebig,T.M.et al.(2009)J.Vis.Exp.32:1373
【非特許文献7】Wennhold et al.,2019,Transfus Med Hemother,46:36-46
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、概して、細胞集団、特にB細胞集団を拡大するための改善された方法を提供する。本発明は更に、改善された細胞培地、その組成物、及びそのような拡大したB細胞の使用方法に関する。この新規の方法は、新規のCD40L融合タンパク質、架橋抗体、並びにIL-4及び/又はIL-21の使用を組み込む。そのような方法は、操作されたB細胞の効果的な活性化及び増殖のために重要であることが本明細書に示されており、その結果、機能的に拡大されたB細胞の所望のレベルが200倍増加する。
【0006】
B細胞を拡大させるための本明細書で提供する方法は、これまでの従来の拡大方法が望ましくない低い細胞拡大をもたらし、したがって、操作されたB細胞の収率を低減させるという点で、従来の方法よりも優れている。適切な細胞機能及び収率は、細胞療法において、同種異系治療のために、特に、患者の細胞を採取し、培養し、拡大し、そのような細胞の有効な用量を操作し、投与する単一の機会のみが頻繁に存在する自己治療環境において、重要である。
【0007】
様々な実施形態では、本発明は、疾患又は障害の治療を必要とする対象における疾患又は障害を治療する方法であって、B細胞の集団を供給源から得ることと、CD40L融合タンパク質及びCD40L架橋剤を含む培養培地中で当該B細胞を培養することと、ペイロード、キメラ受容体、又はその両方のいずれかを発現するために当該B細胞を操作することと、当該対象に、当該B細胞を投与することと、を含む、方法に関する。様々な実施形態では、供給源は、哺乳動物である。様々な実施形態では、当該供給源は、末梢単核血球を含む生体試料である。
【0008】
様々な実施形態では、CD40L融合タンパク質は、配列番号3と少なくとも85%同一のアミノ酸配列を含む。様々な実施形態では、CD40Lは、配列番号3と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。様々な実施形態では、CD40L融合タンパク質は、配列番号3の融合タンパク質のアミノ酸配列を含む。様々な実施形態では、CD40L架橋剤は、抗体である。様々な実施形態では、抗体は、配列番号5と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号7と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを含む。様々な実施形態では、抗体は、配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを含む。
【0009】
様々な実施形態では、B細胞は、CD40L融合タンパク質及びCD40L架橋剤を含む培地中で当該B細胞を培養する前に操作される。様々な実施形態では、B細胞は、CD40L融合タンパク質及びCD40L架橋剤を含む培地中で当該B細胞を培養した後に操作される。様々な実施形態では、本方法は、IL-4の存在下で当該B細胞を更に培養することを含む。様々な実施形態では、本方法は、IL-21の存在下で当該B細胞を更に培養することを含む。
【0010】
様々な実施形態では、培養B細胞は、以下のマーカー:CD62L、CCR7、CD80、CD86、CD54、ICAM、CD58、又はCD27のうちの少なくとも1つを発現する。様々な実施形態では、疾患又は障害は、がん、心疾患、炎症性疾患、筋肉消耗性疾患、又は神経学的疾患のうちの少なくとも1つからなる群から選択される。様々な実施形態では、がんは、乳がん、結腸がん、直腸がん、食道がん、肺がん、膵臓がん、胃がん、肝臓がん、肝細胞がん、GISTなどの間質腫瘍、グリア芽腫、及び神経膠腫のうちの少なくとも1つである。様々な実施形態では、少なくとも約3×10個のB細胞が、当該対象に投与される。様々な実施形態では、B細胞の集団が、少なくとも14日間培養される。
【0011】
様々な実施形態では、本発明は、疾患又は障害の治療を必要とする対象の疾患又は障害を治療する方法であって、B細胞の集団を供給源から得ることと、当該B細胞を、CD40L融合タンパク質を含む培養培地中で培養することであって、当該CD40L融合タンパク質が、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列と、軽鎖可変領域が配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であり、重鎖可変領域が配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるCD40L架橋抗体とを含む培地中で培養することと、当該対象に、当該B細胞を投与することと、を含む、方法に関する。
【0012】
様々な実施形態では、供給源は、哺乳動物である。様々な実施形態では、CD40L融合タンパク質は、配列番号3のアミノ酸配列を含む。様々な実施形態では、抗体は、配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを含む。様々な実施形態では、本発明は、ペイロード、キメラ受容体、又はその両方のいずれかを発現するために、当該B細胞を操作することを更に含む。
【0013】
様々な実施形態では、B細胞は、CD40L及びCD40L架橋抗体を含む培地中で当該B細胞を培養する前に操作される。様々な実施形態では、B細胞は、CD40L及びCD40L架橋抗体を含む培地中で当該B細胞を培養した後に操作される。様々な実施形態では、本発明は、IL-4の存在下で当該B細胞を培養することを更に含む。様々な実施形態では、本発明は、IL-21の存在下で当該B細胞を培養することを更に含む。様々な実施形態では、培養B細胞は、以下のマーカー:CD62L、CCR7、CD80、CD86、CD54、ICAM、CD58、又はCD27のうちの少なくとも1つを発現する。様々な実施形態では、疾患又は障害は、がん、心疾患、炎症性疾患、筋肉消耗性疾患、又は神経学的疾患のうちの少なくとも1つからなる群から選択される。様々な実施形態では、がんは、乳がん、結腸がん、直腸がん、食道がん、肺がん、膵臓がん、胃がん、肝臓がん、肝細胞がん、GISTなどの間質腫瘍、グリア芽腫、及び神経膠腫のうちの少なくとも1つである。様々な実施形態では、少なくとも約3×10個のB細胞が、当該対象に投与される。様々な実施形態では、B細胞の集団が、少なくとも14日間培養される。
【0014】
様々な実施形態では、本発明は、操作されたB細胞を製造するための方法であって、B細胞の集団を供給源から得ることと、CD40L融合タンパク質及びCD40L架橋剤を含む培養培地中で当該B細胞を培養することと、ペイロード、キメラ受容体、又はその両方のいずれかを発現するために、当該B細胞を操作することと、を含む、方法に関する。様々な実施形態では、供給源は、哺乳動物である。様々な実施形態では、当該供給源は、末梢単核血球を含む生体試料である。
【0015】
様々な実施形態では、CD40L融合タンパク質は、配列番号3と少なくとも85%同一のアミノ酸配列を含む。様々な実施形態では、CD40Lは、配列番号3と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。様々な実施形態では、CD40L融合タンパク質は、配列番号3の融合タンパク質のアミノ酸配列を含む。様々な実施形態では、CD40L架橋剤は、抗体である。様々な実施形態では、抗体は、配列番号5と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号7と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを含む。様々な実施形態では、抗体は、配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを含む。
【0016】
様々な実施形態では、B細胞は、CD40L及びCD40L架橋剤を含む培地中で当該B細胞を培養する前に操作される。様々な実施形態では、B細胞は、CD40L及びCD40L架橋剤を含む培地中で当該B細胞を培養した後に操作される。様々な実施形態では、本方法は、IL-4の存在下で当該B細胞を更に培養することを含む。様々な実施形態では、本方法は、IL-21の存在下で当該B細胞を更に培養することを含む。様々な実施形態では、培養B細胞は、以下のマーカー:CD62L、CCR7、CD80、CD86、CD54、ICAM、CD58、又はCD27のうちの少なくとも1つを発現する。様々な実施形態では、供給源は、哺乳動物である。様々な実施形態では、供給源は、末梢単核血球を含む生体試料である。
【0017】
様々な実施形態では、CD40L融合タンパク質は、配列番号3と少なくとも85%同一のアミノ酸配列を含む。様々な実施形態では、CD40Lは、配列番号3と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。様々な実施形態では、CD40L融合タンパク質は、配列番号3の融合タンパク質のアミノ酸配列を含む。様々な実施形態では、CD40L架橋剤は、抗体である。様々な実施形態では、抗体は、配列番号5と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号7と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを含む。様々な実施形態では、抗体は、配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを含む。
【0018】
様々な実施形態では、本方法は、IL-4の存在下で当該B細胞を培養することを更に含む。様々な実施形態では、本方法は、IL-21の存在下で当該B細胞を培養することを更に含む。様々な実施形態では、培養B細胞は、以下のマーカー:CD62L、CCR7、CD80、CD86、CD54、ICAM、CD58、又はCD27のうちの少なくとも1つを発現する。様々な実施形態では、少なくとも約3×10個のB細胞が、得られる。様々な実施形態では、B細胞の集団が、少なくとも14日間培養される。
【0019】
様々な実施形態では、操作されたB細胞を製造する方法が提供され、当該方法は、B細胞の集団を供給源から得ることと、当該B細胞を、CD40Lを含む培養培地中で培養することであって、当該CD40L融合タンパク質が、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列と、軽鎖可変領域が配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であり、重鎖可変領域が配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるCD40L架橋抗体とを含む培養培地中で培養することと、当該対象に、当該B細胞を投与することと、を含む。様々な実施形態では、供給源は、哺乳動物である。様々な実施形態では、CD40L融合タンパク質は、配列番号3のアミノ酸配列を含む。様々な実施形態では、抗体は、配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号7のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0020】
様々な実施形態では、本方法は、ペイロード、キメラ受容体、又はその両方のいずれかを発現するために、当該B細胞を操作することを更に含む。様々な実施形態では、B細胞は、CD40L及びCD40L架橋剤を含む培地中で当該B細胞を培養する前に操作される。様々な実施形態では、B細胞は、CD40L及びCD40L架橋剤を含む培地中で当該B細胞を培養した後に操作される。様々な実施形態では、本方法は、IL-4の存在下で当該B細胞を培養することを更に含む。様々な実施形態では、本方法は、IL-21の存在下で当該B細胞を培養することを更に含む。様々な実施形態では、培養B細胞は、以下のマーカー:CD62L、CCR7、CD80、CD86、CD54、ICAM、CD58、又はCD27のうちの少なくとも1つを発現する。様々な実施形態では、少なくとも約3×10個のB細胞が、得られる。様々な実施形態では、B細胞の集団が、少なくとも14日間培養される。
【0021】
様々な実施形態では、本発明は、CD40L融合タンパク質を含むB細胞拡大培地に関し、当該CD40L融合タンパク質が、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列と、軽鎖可変領域が配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であり、重鎖可変領域が配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるCD40L架橋抗体とを含み、当該対象に、当該B細胞を投与することを含む。
【0022】
様々な実施形態では、CD40L融合タンパク質は、配列番号3のアミノ酸配列を含む。様々な実施形態では、抗体は、配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを含む。様々な実施形態では、培地は、IL-4を更に含む。様々な実施形態では、培地は、IL-21を更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】ヒトB細胞は、HELA-CD40フィーダー細胞を含む培地中で成長及び拡大することができるが、MEGA-CD40L(Enzo Life Sciences)の存在下では拡大しないことを示す。精製したB細胞を、0日目に等価密度で約10,000細胞/mlで開始し、HELA-CD40Lフィーダー細胞上で成長させた。4日目に、培養物を2つの群に分割し、一方の群をHELA-CD40Lフィーダー細胞と同じ培地中で成長させ続けたが、他方の群は、MEGA-CD40L(0.1μg/ml)を補充した培地中であるが、HELAフィーダー細胞の不在下で、成長させた。8日目に、更なる100ng/mlのMEGA-CD40Lを、MEGA-CD40L条件下で成長培地に添加した。矢印は、MEGA-CD40L処置が行われた時間を示す。このデータは、HELA-CD40Lフィーダー細胞上で成長させた場合、11日目までにB細胞の有意な増殖があったが、MEGA-CD40Lで成長させた場合、11日目に有意な増殖は観察されなかったことを示す。
図2】ヒト細胞は、HELA-CD40Lフィーダー細胞の不在下であっても、CD40L及びCD40L架橋剤を含む培地中で、わずか2週間後に少なくとも約3×10個の細胞まで成長及び拡大することができることを示す。2つの密度(150K及び1MM)を研究の過程を通して維持した。低密度培養は、より高い成長速度を維持することができ、より大きな相対総質量を与えた。わずか2週間で、細胞は少なくとも200倍に拡大することができた。
図3】拡大された操作されたB細胞が導入遺伝子発現を維持することができることを示す。図3Aは、拡大された操作されたB細胞の67%が、アデノウイルスベクタートランスフェクションの72時間後にGPC B細胞受容体発現を示したことを示す。図3Bは、空のベクター(GPC3を発現しなかったもの)でトランスフェクトされた細胞におけるGPC-BCR発現細胞のパーセンテージを示す。図3Cは、全く任意のベクターで形質導入されなかった細胞を示す。
図4】Ad5RGD-GFP形質導入後のB細胞の拡大及び成長速度を示す。Ad5RGD-GFPは、B細胞におけるGFP発現の高効率をもたらした。発現は、全B細胞の約60%で少なくとも8~10日間維持された。GFP+B細胞は、形質導入後1週間を超えて増殖し続けた。
図5】RGDを介してマウスGPC3構築物(601)で形質導入したヒトB細胞の成功した拡大を示す。図5Aは、抗GPC3 scFv、CD8ヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、及びCD79aシグナル伝達ドメインを含む、形質導入した抗GPC3 scFVキメラ受容体の構造を示す。図5Bは、形質導入したGPC3キメラ受容体を発現するB細胞の相対パーセンテージを示す。
図6】RGDを介してマウスGPC3構築物(602)で形質導入したヒトB細胞の成功した拡大を示す。図6Aは、抗GPC3 scFv、CD8ヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、及びCD79bシグナル伝達ドメインを含む、形質導入した抗GPC3 scFVキメラ受容体の構造を示す。図6Bは、形質導入したGPC3キメラ受容体を発現するB細胞の相対パーセンテージを示す。
図7】GPC3を標的とするキメラ受容体を発現するRGD官能化非ウイルス遺伝子送達ベクターで形質導入したヒトB細胞の拡大を示す。図7Aは、抗GPC3 scFv、CD8ヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、及びCD79b又はCD79aシグナル伝達ドメインを含む、このキメラ受容体の構造を示す。図7Bは、形質導入したGPC3キメラ受容体を発現するB細胞の相対パーセンテージを示す。
図8】RGDを介してマウスGPC3構築物(463)で形質導入したヒトB細胞の成功した拡大を示す。図8Aは、抗GPC3 scFv、CD8ヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、及びCD79bシグナル伝達ドメインを含む、形質導入した抗GPC3 scFVキメラ受容体の構造を示す。図8Bは、形質導入したGPC3キメラ受容体を発現するB細胞の相対パーセンテージを示す。
図9】サルコグリカンを標的とするキメラ受容体を発現するRGD官能化非ウイルス遺伝子送達ベクター(394)で形質導入したヒトB細胞の拡大を示す。図9Aは、抗サルコグリカンscFv、マウスG2a Fcドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞質尾部を含む、このキメラ受容体の構造を示す。図9Bは、B細胞の形質導入及び拡大後にキメラ受容体を発現することが示された細胞のパーセンテージを示す。
図10】HPEG2腫瘍を有するマウスにおける、操作され拡大されたヒトB細胞の腫瘍排出リンパ節(「TDLN」)へのインビボホーミングを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書の説明は、単に例示的及び説明的なものに過ぎず、特許請求されたとおりの本発明を限定するものではないことを理解されたい。本出願において、単数形の使用は、特に明記しない限り、複数形を含む。
【0025】
I.概要
本発明は、操作されたB細胞の集団を産生、拡大及び/又は単離する方法に関することを理解されたい。例えば、本方法は、例えば、2020年9月2日に出願された米国仮特許出願第63/073799号、及び2020年3月31日に出願された米国仮特許出願第63/003120号に記載されているような様々な操作されたB細胞を産生するために使用することができる。これらには、以下が含まれるが、これらに限定されない:
1)例えば、scFv、抗体、リガンド、受容体、又はそれらの断片などの結合ドメインを使用して、目的とする部位/標的にホーミングするように修飾されているB細胞、
2)ホーミングドメインで修飾されたB細胞であって、活性化、及び任意選択的に共刺激ドメインを更に含み、B細胞がホーミングされ、それによって、所望の標的との相互作用時に活性化することができる、B細胞、
3)抗体、治療用タンパク質、ポリペプチド、核酸配列(RNAiなど)などの所望のタンパク質ペイロードを作製することができるように操作されたB細胞、
4)ホーミング/結合ドメイン、活性化ドメイン、任意選択的な共刺激ドメインを含む操作されたB細胞であって、抗体、治療用タンパク質、ポリペプチド、核酸配列(RNAiなど)などの所望のタンパク質ペイロードを発現するように更に操作された、B細胞、
5)B細胞が、目的とする特定の部位/標的(例えば、ホーミング組織)で特定のリガンド、ケモカイン、又は誘引剤に誘引され、それによって、例えば、所望のペイロードを送達するために、目的とする部位/標的にホーミングすることができるように、インテグリン、ホーミング抗体、タンパク質、又は受容体を発現するように修飾されているB細胞、
6)目的とする部位/標的に局在するB細胞の炎症及び自己免疫活性が減少し、それによって、陽性の治療応答をもたらすように、免疫阻害分子を発現するように修飾されているB細胞、
7)B細胞の輸送が、特定のB細胞インテグリン及び/又はホーミング受容体の発現によって変化するように、化合物又はその誘導体で処理されているB細胞、
8)(i)トール様受容体(TLR)アゴニストで処理されているB細胞、及び/又は(ii)構成的に活性なTLRを発現するように操作されたB細胞であって、対象における免疫応答を増加させるためのB細胞を増強し、及び/又は強力なエフェクターB細胞を産生するためのB細胞、
9)B細胞が、HLAクラスI及びクラスII分子の両方において、目的とする特定の抗原及び/又は抗原由来のエピトープを同時にかつ効率的に提示することができるように、リソソームタンパク質の標的化シグナルに融合した目的とする特定の抗原をコードするmRNAでエレクトロポレーションされたB細胞。
10)上記のパート1~9に記載されている任意の項目をコードする自己増幅RNAでエレクトロポレーションされたB細胞。
【0026】
本出願の操作された又は修飾されたB細胞の様々な実施形態は、互いに排他的ではなく、本明細書で企図される結果及び/又は治療応答のいずれかを促進することを達成するために、明示的に示されない限り、任意の方法及び任意の制限なしに互いに組み合わせることができることが理解されるであろう。
【0027】
より具体的には、本方法は、以下のB細胞実施形態の産生におけるB細胞の改善された拡大を産生するための製造技術として使用することができる。これらは、2020年9月2日に出願された米国仮特許出願第63/073799号、及び2020年3月31日に出願された米国仮特許出願第63/003120号に記載されており、これらの内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。本発明の構築物及び操作された免疫細胞を作製するためのある特定の方法は、PCT出願PCT/US2015/14520に記載されており、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。構築物及び細胞を作製する更なる方法は、米国仮特許出願第62/244,036号に見出すことができ、その内容は、参照によりその全体が本明細書に更に組み込まれる。
【0028】
本発明はまた、本明細書に記載の方法によって産生される操作されたB細胞を使用して疾患又は障害を治療する方法に関する。治療のために好適な疾患又は障害の例としては、がん、心臓病、炎症性疾患、筋肉消耗性疾患、神経学的疾患などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
II.定義
本明細書で使用される項の表題は、組織的な目的のみを目的としており、記載される主題を限定するものと解釈されるべきではない。特許、特許出願、記事、書籍、及び論文を含むが、これらに限定されない、本出願で引用される全ての文書、又は文書の一部は、いかなる目的に対しても、参照によりその全体が明確に本明細書に組み込まれる。本開示に従って使用される場合、別段の指示がない限り、以下の用語は、以下の意味を有すると理解されるものとする。
【0030】
本出願では、「又は」の使用は、別段の定めがない限り、「及び/又は」を意味する。更に、「含むこと(including)」という用語、並びに「含む(includes)」及び「含まれる(included)」などの他の形態の使用は、限定されない。また、「要素」又は「構成要素」などの用語は、特に明記しない限り、1つの単位を含む要素及び構成要素、並びに1つを超えるサブユニットを含む要素及び構成要素の両方を包含する。
【0031】
「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、又は「核酸」という用語は、一本鎖及び二本鎖ヌクレオチドポリマーの両方を含む。ポリヌクレオチドを含むヌクレオチドは、リボヌクレオチド若しくはデオキシリボヌクレオチド、又はいずれかのタイプのヌクレオチドの修飾形態であり得る。当該修飾には、ブロモウリジン及びイノシン誘導体などの塩基修飾物、2’,3’-ジデオキシリボースなどのリボース修飾物、並びにホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロ-ジセレノエート、ホスホロ-アニロチオエート、ホスホラニラデートなどのヌクレオチド間結合の修飾物が含まれる。
【0032】
「オリゴヌクレオチド」という用語は、200個以下のヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを指す。オリゴヌクレオチドは、例えば、変異遺伝子の構築で使用するために、一本鎖又は二本鎖であり得る。オリゴヌクレオチドは、センスオリゴヌクレオチド又はアンチセンスオリゴヌクレオチドであり得る。検出アッセイのために、オリゴヌクレオチドは、放射性標識、蛍光標識、ハプテン又は抗原標識を含む標識を含むことができる。オリゴヌクレオチドは、例えば、PCRプライマー、クローニングプライマー、又はハイブリダイゼーションプローブとして使用することができる。
【0033】
「制御配列」という用語は、それが連結されるコード配列の発現及びプロセシングに影響を及ぼすことができるポリヌクレオチド配列を指す。そのような制御配列の性質は、宿主生物に依存し得る。特定の実施形態では、原核生物の制御配列は、プロモーター、リボソーム結合部位、及び転写終結配列を含むことができる。例えば、真核生物の制御配列は、転写因子のための1つ以上の認識部位を含むプロモーター、転写エンハンサー配列及び転写終結配列を含むことができる。「制御配列」は、リーダー配列(シグナルペプチド)及び/又は融合パートナー配列を含むことができる。
【0034】
本明細書で使用される場合、「作動可能に連結される」は、その用語が適用される構成要素が、好適な条件下でそれらの固有の機能を果たすことを可能にする関係にあることを意味する。
【0035】
「ベクター」という用語は、タンパク質コード情報を宿主細胞に移すために使用される任意の分子又は実体(例えば、核酸、プラスミド、バクテリオファージ又はウイルス)を意味する。「発現ベクター」又は「発現構築物」という用語は、宿主細胞の形質転換に好適であり、それに作用可能に連結された1つ以上の異種コード領域の発現を指示及び/又は制御(宿主細胞と併せて)する核酸配列を含有するベクターを指す。発現構築物は、転写、翻訳、及びイントロンが存在する場合、それに作動可能に連結されるコード領域のRNAスプライシングに影響を及ぼす配列を含むことができるが、これらに限定されない。
【0036】
「宿主細胞」という用語は、核酸配列で形質転換されているか、又は形質転換されることが可能であり、それによって目的とする遺伝子を発現する細胞を指す。その用語は、目的とする遺伝子が存在する限り、子孫が形態学的に同一であるか、又は元の親細胞と遺伝子構成が同一であるかどうかにかかわらず、親細胞の子孫を含む。
【0037】
「形質転換」という用語は、細胞の遺伝的特徴の変化を指し、新しいDNA又はRNAを含むようにそれが修飾されている場合、細胞は形質転換されている。例えば、細胞は、トランスフェクション、形質導入、又は他の技術を介して新しい遺伝物質を導入することによって、細胞がその天然の状態から遺伝的に修飾される場合、細胞は形質転換される。トランスフェクション又は形質導入の後、形質転換DNAは、細胞の染色体に物理的に組み込まれることによって細胞のそれと組換えることができるか、又は複製されることなくエピソーム要素として一時的に維持することができるか、又はプラスミドとして独立して複製することができる。形質転換DNAが細胞分裂に従って複製される場合、細胞は「安定して形質転換された」と考えられる。
【0038】
「トランスフェクション」という用語は、細胞による外来の又は外因性のDNAの取り込みを指す。いくつかのトランスフェクション技術が当該技術分野で周知であり、本明細書に開示されている。例えば、Graham et al.,1973,Virology,1973,52:456、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2001,上記を参照、Davis et al.,Basic Methods in Molecular Biology,1986,Elsevier、Chu et al.,1981,Gene,13:197を参照されたい。
【0039】
「形質導入」という用語は、外来のDNAがウイルスベクターを介して細胞に導入されるプロセスを指す。例えば、Jones et al.,Genetics:Principles and Analysis,1998,Boston:Jones & Bartlett Publを参照されたい。
【0040】
「ポリペプチド」又は「タンパク質」という用語は、タンパク質のアミノ酸配列を有する巨大分子を指し、天然配列の1つ以上のアミノ酸からの欠失、付加、及び/又は置換を含む。「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、具体的には、抗原結合タンパク質の1つ以上のアミノ酸からの欠失、付加、及び/又は置換を有する抗原結合分子、抗体、又は配列を包含する。「ポリペプチド断片」という用語は、完全長天然タンパク質と比較して、アミノ末端欠失、カルボキシル末端欠失、及び/又は内部欠失を有するポリペプチドを指す。そのような断片は、天然タンパク質と比較して、修飾されたアミノ酸を含有することもできる。有用なポリペプチド断片は、抗原結合分子の免疫学的に機能的な断片を含む。
【0041】
「単離された」という用語は、(i)通常見出される少なくともいくつかの他のタンパク質を含まず、(ii)同じ源、例えば、同じ種からの他のタンパク質を本質的に含まず、(iii)少なくとも約50%のポリヌクレオチド、脂質、炭水化物、又は天然でそれが関連する他の物質から分離されており、(iv)天然でそれが関連していないポリペプチドと(共有結合又は非共有結合性相互作用によって)作動可能に関連しているか、又は(v)天然で起こらないことを意味する。
【0042】
ポリペプチド(例えば、抗原結合分子)の「バリアント」は、別のポリペプチド配列と比較して、1つ以上のアミノ酸残基が、アミノ酸配列に挿入されるか、アミノ酸残基から欠失されるか、及び/又はアミノ酸配列内に置換されるアミノ酸配列を含む。バリアントは、融合タンパク質を含む。
【0043】
「同一性」という用語は、配列のアライメント及び比較によって決定されるように、2つ以上のポリペプチド分子又は2つ以上の核酸分子の配列の間の関係を指す。「同一性パーセント」とは、比較する分子内のアミノ酸又はヌクレオチドの間の同一の残基のパーセントを意味し、比較する分子の最小サイズに基づいて計算される。これらの計算のために、特定の数学的モデル又はコンピュータプログラム(すなわち、「アルゴリズム」)によって、アライメント中のギャップ(存在する場合)は、好ましくは、対処される。
【0044】
同一性パーセントを計算するために、比較する配列は、典型的には、配列間で最大の一致を与えるように整列させる。同一性パーセントを決定するために使用することができるコンピュータプログラムの一例は、GAPを含むGCGプログラムパッケージである(Devereux et al.,Nucl.Acid Res.,1984,12,387、Genetics Computer Group,University of Wisconsin,Madison,Wis.)。コンピュータアルゴリズムGAPは、配列同一性パーセントを決定する2つのポリペプチド又はポリヌクレオチドを整列させるために使用される。配列は、それらのそれぞれのアミノ酸又はヌクレオチドの最適な一致のために整列させる(アルゴリズムによって決定される「一致スパン」)。ある特定の実施形態では、標準比較マトリックス(例えば、PAM 250比較マトリックスについては、Dayhoff et al.,1978,Atlas of Protein Sequence and Structure,5:345-352、BLO-SUM 62比較マトリックスについては、Henikoff et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,89,10915-10919を参照されたい)も、アルゴリズムによって使用される。
【0045】
本明細書で使用される場合、20個の従来の(例えば、天然に存在する)アミノ酸及びそれらの略語は、従来の使用法に従う。例えば、Immunology A Synthesis(2nd Edition,Golub and Green,Eds.,Sinauer Assoc.,Sunderland,Mass.(1991))を参照されたく、これは、任意の目的のために参照により本明細書に組み込まれる。20個の従来型アミノ酸、アルファ-、アルファ-二置換アミノ酸などの非天然アミノ酸、N-アルキルアミノ酸、乳酸、及び他の非従来型アミノ酸の立体異性体(例えば、D-アミノ酸)も、本発明のポリペプチドに関する好適な構成要素であり得る。非従来型アミノ酸の例には、4-ヒドロキシプロリン、ガンマ-カルボキシ-グルタミン酸塩、エプシロン-N,N,N-トリメチルリシン、e-N-アセチルリシン、0-ホスホセリン、N-アセチルセリン、N-ホルミルメチオニン、3-メチルヒスチジン、5-ヒドロキシリジン、シグマ-N-メチルアルギニン、並びに他の同様のアミノ酸及びイミノ酸(例えば4-ヒドロキシプロリン)が含まれる。本明細書で使用されるポリペプチド表記法において、標準の使用法及び慣例に従って、左手方向は、アミノ末端方向であり、右手方向は、カルボキシ末端方向である。
【0046】
保存的アミノ酸置換は、典型的には、生物系中での合成によってというよりはむしろ、化学的ペプチド合成によって組み込まれる、天然に存在しないアミノ酸残基を包含し得る。これらには、ペプチド模倣物及び他の逆型又は反転型のアミノ酸部分が含まれる。天然に存在する残基は、一般的な側鎖の特性に基づいてクラスに分けることができる:
a)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
b)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
c)酸性:Asp、Glu;
d)塩基性:His、Lys、Arg;
e)鎖配向に影響を与える残基:Gly、Pro;及び
f)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0047】
例えば、非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーと別のクラスのメンバーの交換を含み得る。
【0048】
ある特定の実施形態によれば、抗原結合分子、操作されたT細胞の共刺激又は活性化ドメインに変更を加える際に、アミノ酸のハイドロパシー指数を考慮され得る。各アミノ酸は、その疎水性及び電荷特性に基づいて、ハイドロパシー指数が割り当てられている。それらは、イソロイシン(+4.5)、バリン(+4.2)、ロイシン(+3.8)、フェニルアラニン(+2.8)、システイン/シスチン(+2.5)、メチオニン(+1.9)、アラニン(+1.8)、グリシン(-0.4)、トレオニン(-0.7)、セリン(-0.8)、トリプトファン(-0.9)、チロシン(-1.3)、プロリン(-1.6)、ヒスチジン(-3.2)、グルタミン酸塩(-3.5)、グルタミン(-3.5)、アスパラギン酸塩(-3.5)、アスパラギン(-3.5)、リジン(-3.9)、及びアルギニン(-4.5)である。例えば、Kyte et al.,1982,J.Mol.Biol.,157,105-131を参照されたい。ある特定のアミノ酸は、類似したハイドロパシー指数又はスコアを有する他のアミノ酸に置き換えられ得、依然として類似した生物学的活性を保持するということが知られている。当該技術分野では、特に、この場合のように、置換によって作られる生物学的機能的に同等なタンパク質又はペプチドが、免疫学的実施形態で使用するためのものである場合には、親水性に基づく類似アミノ酸の置換も効果的になされ得るということも理解されている。例示的なアミノ酸置換を、表1に示す。
【表1】
【0049】
「誘導体」という用語は、アミノ酸(又は核酸)の挿入、欠失、又は置換以外の化学修飾を含む分子を指す。ある特定の実施形態では、誘導体は、ポリマー、脂質、又は他の有機若しくは無機部分との化学結合を含むがこれらに限定されない共有結合修飾を含む。ある特定の実施形態では、化学修飾された抗原結合分子は、化学修飾されていない抗原結合分子よりも長い循環半減期を有することができる。いくつかの実施形態では、誘導体抗原結合分子は、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、又はポリプロピレングリコールを含むがこれらに限定されない、1つ以上の水溶性ポリマー結合を含むように共有結合的に修飾される。
【0050】
ペプチドアナログは、テンプレートペプチドの特性と類似した特性を有する非ペプチド薬物として製薬業界で一般的に使用される。これらのタイプの非ペプチド化合物は、「ペプチド模倣物(peptide mimetics)」又は「ペプチド模倣物(peptidomimetics)」と呼ばれる。Fauchere,J.L.,1986,Adv.Drug Res.,1986,15,29、Veber,D.F.& Freidinger,R.M.,1985,Trends in Neuroscience,8,392-396、及びEvans,B.E.,et al.,1987,J.Med.Chem.,30,1229-1239であり、これらは、任意の目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0051】
「治療有効量」という用語は、哺乳動物において治療応答を生じることが決定される免疫細胞又は他の治療剤の量を指す。そのような治療有効量は、当業者によって容易に確認される。
【0052】
「患者」及び「対象」という用語は、同義に使用され、ヒト及び非ヒト動物対象、並びに正式に診断された障害を有する対象、正式に認識された障害を有しない対象、医療を受ける対象、障害を発症する危険性がある対象などを含む。
【0053】
「処置する(treat)」及び「処置(treatment)」という用語は、治療的処置、予防的処置、及び対象が障害又は他の危険因子を発症するリスクを低減する用途を含む。処置は、障害の完全な治癒を必要とせず、症状又は基礎となる危険因子を低減する実施形態を包含する。「防止する」という用語は、事象の可能性を100%排除することを必要としない。むしろ、それは、事象の発生の可能性が、化合物又は方法の存在下で低減されたことを示す。
【0054】
標準的な技術は、組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、並びに組織培養及び形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)に使用することができる。酵素反応及び精製技術は、製造業者の仕様に従って、又は当該技術分野で一般的に達成されるように、又は本明細書に記載されるように実施することができる。前述の技術及び手順は、概して、当該技術分野で周知の従来の方法に従って、並びに本明細書全体を通して引用及び考察される様々な一般的及びより具体的な参考文献に記載されるように実施することができる。例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor, N.Y.(1989))を参照されたく、これは、任意の目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0055】
本明細書で使用される場合、「実質的に」又は「本質的に」という用語は、参照量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さと比較して約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%高い量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さを指す。一実施形態では、「本質的に同じ」又は「実質的に同じ」という用語は、参照量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さとほぼ同じである範囲を指し、量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さの範囲を指す。
【0056】
本明細書で使用される場合、「実質的に含まない」及び「本質的に含まない」という用語は、互換的に使用され、細胞集団又は培養培地などの組成物を説明するために使用される場合、指定された物質を含まない、例えば、指定された物質を95%含まない、96%含まない、97%含まない、98%含まない、99%含まない、又は従来の手段によって測定されるように検出不能である、組成物を指す。「の不在」という用語にも同様の意味を適用することができ、組成物の特定の物質又は構成要素の不在を指す。
【0057】
本明細書で使用される場合、「認識可能な」という用語は、量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、若しくは長さの範囲、又は1つ以上の標準方法によって容易に検出可能な事象を指す。「認識不可能(not-appreciable)」及び「認識可能ではない(not appreciable)」並びに等価物という用語は、量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、若しくは長さの範囲、又は標準的な方法によって容易に検出可能又は検出不可能な事象を指す。一実施形態では、事象が、5%、4%、3%、2%、1%、0.1%、0.001%、又はそれ未満の時間に生じる場合、事象は、認識可能ではない。
【0058】
本明細書全体を通して、文脈が別途必要とする場合を除き、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含むこと(comprising)」という単語は、表示されたステップ若しくは要素、又はステップ若しくは要素の群を含むことを暗示するが、任意の他のステップ若しくは要素、又はステップ若しくは要素の群の除外することを暗示しないと理解される。特定の実施形態では、「含む(include)」、「有する(has)」、「含む(contains)」、及び「含む(comprise)」という用語は、同義的に使用される。
【0059】
本明細書で使用される場合、「からなる(consisting of)」は、「からなる」という語句に続くものを含むことを意味し、これらに限定される。したがって、「からなる」という語句は、列挙された要素が必須又は必須であり、他の要素が存在し得ないことを示す。
【0060】
「から本質的になる(consisting essentially of)」とは、語句の後に列挙される任意の要素を含み、列挙された要素について本開示において指定される活性若しくは作用を妨げないか、又はそれに寄与しない他の要素に限定されることを意味する。したがって、「から本質的になる」という語句は、列挙される要素が必要とされるか又は必須であるが、他の要素は任意選択的であり、他の要素が列挙される要素の活性又は作用に物質的に影響を与えるかどうかによって、存在する場合又は存在しない場合があることを示す。
【0061】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「実施形態」、「特定の実施形態」、「関連する実施形態」、「ある特定の実施形態」、「追加の実施形態」、又は「更なる実施形態」、又はそれらの組み合わせへの言及は、実施形態に関連して説明される特定の特性、構造、又は特徴が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な場所での前述の語句の外観は、必ずしも全てが同じ実施形態を参照しているわけではない。更に、特定の特性、構造、又は特徴は、1つ以上の実施形態では、任意の好適な様式で組み合わされ得る。
【0062】
本明細書で使用される場合、「約(about)」又は「約(approximately)」という用語は、参照量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さが、参照量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さに対して30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1%まで変化する量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さを指す。特定の実施形態では、数値の前にあるときの「約」又は「およそ」という用語は、値プラス又はマイナス15%、10%、5%、若しくは1%の範囲、又はそれらの任意の介在範囲を示す。
【0063】
本明細書で使用される場合、「導入すること(introducing)」という用語は、細胞をポリヌクレオチド、ポリペプチド、又は小分子と接触させることを含むプロセスを指す。導入するステップはまた、細胞内へのポリヌクレオチド若しくはポリペプチドのマイクロインジェクション、ポリヌクレオチド若しくはポリペプチドを細胞内に送達するためのリポソームの使用、又はポリヌクレオチド若しくはポリペプチドを細胞透過性部分に融合して、それらを細胞内に導入することを含み得る。
【0064】
細胞療法のためにBリンパ球の集団を拡大する方法
【0065】
様々な実施形態では、操作されたBリンパ球の集団を拡大する改善された方法が、企図される。当該方法は、CD40リガンド及び架橋抗体を含む細胞培地を介した、B細胞上に発現されるCD40の架橋を伴う。CD40Lを、活性化したB細胞のための既知の成長因子であるIL-4と組み合わせることは、B細胞の有効な活性化及び増殖のために重要であることが示されている。Banchereau,J.et al.(1991)Science 251:70-72、Schultze,J.L.et al.(1997)J.Clin.Invest.100:2757-2765。同様に、IL-21はまた、B細胞の活性化及び増殖の有効な刺激であることも報告されている。しかしながら、追加的に、IL-21は、B細胞の成熟を形質細胞表現型に向かって駆動する。特に、本発明の様々な実施形態の細胞培地及び方法は、古典的なフィーダー細胞ベースのNIH3T3/tCD40Lプロトコルに匹敵する、操作されたB細胞が活性化及び増殖の結果を達成することを可能にする。
【0066】
1.CD-40リガンド
様々な実施形態では、操作されたB細胞は、CD40リガンド(「CD40L」)の存在下で拡大される。様々な実施形態では、CD40Lは、
【0067】
MQKGDQNPQIAAHVISEASSKTTSVLQWAEKGYYTMSNNLVTLENGKQLTVKRQGLYYIYAQVTFCSNREASSQAPFIASLCLKSPGRFERILLRAANTHSSAKPCGQQSIHLGGVFELQPGASVFVNVTDPSQVSHGTGFTSFGLLKL(配列番号1)である。
【0068】
様々な実施形態では、操作されたB細胞は、CD40L配列及び多量体化ドメインを含む融合タンパク質の存在下で拡大される。様々な実施形態では、多量体化ドメインは、テナンスシンに由来する。様々な実施形態では、多量体化ドメインは、
【0069】
ACGCAAAPDIKDLLSRLEELEGLVSSLREQ(配列番号2)を含む。
【0070】
様々な実施形態では、多量体化ドメインは、配列番号2であり、CD40Lは、配列番号1である。様々な実施形態では、多量体化ドメイン及びCD40Lを含む融合タンパク質は、
VGDGSSHHHHHHSSGGGRGSHHHHHHGGACGCAAAPDIKDLLSRLEELEGLVSSLREQGGGSGGGSGGGSMQKGDQNPQIAAHVISEASSKTTSVLQWAEKGYYTMSNNLVTLENGKQLTVKRQGLYYIYAQVTFCSNREASSQAPFIASLCLKSPGRFERILLRAANTHSSAKPCGQQSIHLGGVFELQPGASVFVNVTDPSQVSHGTGFTSFGLLKL(配列番号3)を含む。
【0071】
好ましい実施形態では、CD40L融合タンパク質は、配列番号3と少なくとも85%同一のアミノ酸配列を含む。様々な実施形態では、CD40L融合タンパク質は、配列番号3と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。様々な実施形態では、CD40Lは、配列番号3のアミノ酸配列を含む。
【0072】
架橋剤
本発明のB細胞は、CD40L架橋剤の存在下で拡大されることが企図される。様々な実施形態では、CD40L架橋剤は、抗体である。様々な実施形態では、架橋抗体の軽鎖領域は、
DIVMTQSPSSLSVSAGEKVTMNCKSSQSLLNSGNQRNYLAWYQQKPGQPPKLLIHGASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQAEDLAVYYCQNDHRYPLTFGAGTKLELKRADAAPTVSIFPPSSEQLTSGGASVVCFLNNFYPKDINVKWKIDGSERQNGVLNSWTDQDSKDSTYSMSSTLTLTKDEYERHNSYTCEATHKTSTSPIVKSFNRNEC(配列番号4)を含む。
【0073】
様々な実施形態では、架橋抗体の軽鎖可変領域は、
DIVMTQSPSSLSVSAGEKVTMNCKSSQSLLNSGNQRNYLAWYQQKPGQPPKLLIHGASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQAEDLAVYYCQNDHRYPLTFGAGTKLELK(配列番号5)を含む。
【0074】
様々な実施形態では、架橋抗体の重鎖領域は、
EVQLQQFGAELVKPGASVKISCKASGYTFTDYNMDWVKQSHGKSLEWIGDINPNYGSTSYNQKFKGKATLTVDKSSSTAYMELRSLTSEDTAVYYCARDWTGAMDYWGQGTSVTVSSAKTTPPSVYPLAPGCGDTTGSSVTLGCLVKGYFPESVTVTWNSGSLSSSVHTFPALLQSGLYTMSSSVTVPSSTWPSQTVTCSVAHPASSTTVDKKLEPSGPISTINPCPPCKECHKCPAPNLEGGPSVFIFPPNIKDVLMISLTPKVTCVVVDVSEDDPDVQISWFVNNVEVHTAQTQTHREDYNSTIRVVSTLPIQHQDWMSGKEFKCKVNNKDLPSPIERTISKIKGLVRAPQVYILPPPAEQLSRKDVSLTCLVVGFNPGDISVEWTSNGHTEENYKDTAPVLDSDGSYFIYSKLNMKTSKWEKTDSFSCNVRHEGLKNYYLKKTISRSPGK(配列番号6)を含む。
【0075】
様々な実施形態では、架橋抗体の軽鎖可変領域は、
EVQLQQFGAELVKPGASVKISCKASGYTFTDYNMDWVKQSHGKSLEWIGDINPNYGSTSYNQKFKGKATLTVDKSSSTAYMELRSLTSEDTAVYYCARDWTGAMDYWGQGTSVTVSS(配列番号7)を含む。
【0076】
様々な実施形態では、抗体は、配列番号5と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号7と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを含む。様々な実施形態では、抗体は、配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを含む。様々な実施形態では、抗体は、配列番号4の軽鎖及び配列番号6の重鎖を含む。様々な実施形態では、抗体は、配列番号4と少なくとも85%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖、及び配列番号6と少なくとも85%同一のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。様々な実施形態では、抗体は、配列番号4と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖、及び配列番号6と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0077】
III.操作されたB細胞
本明細書で使用される場合、「操作されたB細胞」という用語は、所望のタンパク質又は分子を発現するように遺伝的に改変されたB細胞を指す。そのようなタンパク質又は分子は、内因性又はキメラ受容体であり得る。そのような操作されたB細胞は、特定の組織/臓器型を標的とするか、又は腫瘍若しくは特定の細胞型を標的とする「ホーミング」受容体を発現するように遺伝的に改変され得る。
【0078】
1.抗原
腫瘍抗原。ある特定の実施形態では、B細胞の目的とする部位/標的は、腫瘍抗原である。本発明の抗原結合ドメイン(部分)の選択は、治療される特定のタイプのがんに依存する。いくつかの腫瘍抗原は、膜結合であり得るが、他の腫瘍抗原は、分泌され得る。例えば、腫瘍抗原は、細胞外マトリックス中に分泌及び蓄積され得るか、又は腫瘍抗原は、MHC複合体の一部として発現され得る。腫瘍抗原は、当該技術分野で周知であり、例えば、CD19、KRAS、HGF、CLL、神経膠腫関連抗原、がん胎児性抗原(CEA);β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、アルファフェトタンパク質(AFP)、レクチン反応性AFP、サイログロブリン、RAGE-1、MN-CA IX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、プロスターゼ、前立腺特異的抗原(PSA)、PAP、NY-ESO-1、LAGE-1a、p53、タンパク質、PSMA、Her2/neu、サバイビン及びテロメラーゼ、前立腺がん腫瘍抗原-1(PCTA-1)、MAGE、ELF2M、好中球エラスターゼ、エフリンB2、CD22、インスリン成長因子(IGF)-I、IGF-II、IGF-I受容体、メソセリン、EGFR、BCMA、KIT、及びIL-13を含み得る。
【0079】
感染症抗原。ある特定の実施形態では、目的とする部位/標的は、免疫応答が望まれ得る感染症抗原である。感染症抗原は、当業者に周知であり、ウイルス、細菌、原生生物、及び寄生抗原、例えば、寄生虫、真菌、酵母、マイコプラズマ、ウイルスタンパク質、細菌タンパク質及び炭水化物、並びに真菌タンパク質及び炭水化物を含み得るが、これらに限定されない。加えて、感染症抗原の感染症のタイプは、特に限定されず、AIDS、B型肝炎、エプスタインバーウイルス(EBV)感染、HPV感染、HCV感染などのウイルス感染症の中の難治性疾患を含み得るが、これらに限定されない。寄生抗原としては、マラリア寄生虫スポロゾイドタンパク質が挙げられるが、これに限定されない。
【0080】
ある特定の実施形態では、修飾されたB細胞は、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインを含む操作されたB細胞受容体(CAR-B)を発現する。ある特定の実施形態では、細胞外ドメインは、結合ドメイン及びヒンジドメインを含む。
【0081】
ある特定の実施形態では、細胞外ドメインは、scFv、リガンド、抗体、受容体、又はその断片などの結合ドメインを含み、修飾されたB細胞は、それらの細胞の表面に発現されたタンパク質に結合することによって、特異的な標的細胞を標的とすることができる。ある特定の実施形態では、修飾された腫瘍細胞は、腫瘍細胞の表面に発現されたタンパク質/抗原を標的とし、それらに結合する。ある特定の実施形態では、修飾されたB細胞は、ペイロードを更に発現する。ある特定の実施形態では、ペイロードは、腫瘍中の交差提示樹状細胞(DC)の数を増加させることができる。ある特定の実施形態では、ペイロードは、T細胞を活性化し、腫瘍に引き込むことが可能である。ある特定の実施形態では、ペイロードは、腫瘍における三次リンパ構造(TLS)の形成を促進することができる。本発明のある特定の実施形態では、修飾されたB細胞は、CAR-B及びペイロードの両方を発現する。ある特定の実施形態では、CAR-Bは、腫瘍細胞の表面に発現された抗原又はタンパク質に結合したときにペイロードの発現を活性化する刺激ドメインを含む。
【0082】
B細胞におけるキメラ抗原受容体(CAR-B)の設計及びドメイン配向
様々な実施形態では、本発明は、キメラB細胞受容体(CAR-B)を提供する。キメラB細胞受容体(CAR-B)は、遺伝的に操作された受容体であることが理解されよう。これらの操作された受容体は、当該技術分野で既知の技術に従って、B細胞に容易に挿入され、発現され得る。CAR-Bを用いて、単一の受容体を、腫瘍細胞上に発現される特定のタンパク質又は抗原の両方を認識するようにプログラムすることができ、当該タンパク質又は抗原に結合すると、抗腫瘍応答を誘発する。様々な実施形態では、CAR-Bは、B細胞を標的組織に送達するホーミング機構として部分的に機能する。
【0083】
受容体を有する細胞と比較して、本発明のキメラB細胞受容体は、細胞外ドメイン(これは、抗原結合ドメインを含み、細胞外シグナル伝達ドメイン及び/又はヒンジドメインを含み得る)、膜貫通ドメイン、並びに細胞内ドメインを含むことが理解されるであろう。細胞内ドメインは、少なくとも活性化ドメインを含み、好ましくは、CD79a(免疫グロブリンα)、CD79b(免疫グロブリンβ)、CD40、CD19、CD137、Fcγr2a、及び/又はMyD88からなる。抗原結合ドメインは、その標的を認識し、その標的に結合できるように、分子/構築物の細胞外プロティオンに位置するように操作されることを更に理解されたい。
【0084】
構造的に、これらのドメインは、免疫細胞に対する位置に対応することが理解されるであろう。本発明による例示的なCAR-B構築物は、表2に示される。
【表2】
【0085】
様々な実施形態では、キメラB細胞受容体は、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞質ドメインからなる。様々な実施形態では、細胞質ドメインは、活性化ドメインを含む。様々な実施形態では、細胞質ドメインはまた、共刺激ドメインも含み得る。様々な実施形態では、細胞外ドメインは、抗原結合ドメインを含む。様々な実施形態では、細胞外ドメインは、抗原結合ドメインと膜貫通ドメインとの間にヒンジ領域を更に含む。
【0086】
細胞外ドメイン。いくつかの細胞外ドメインが、本発明で使用され得る。様々な実施形態では、細胞外ドメインは、抗原結合ドメインを含む。様々な実施形態では、細胞外ドメインはまた、ヒンジ領域及び/又はシグナル伝達ドメインも含み得る。様々な実施形態では、IgG1定常ドメインを含む細胞外ドメインはまた、指向性cBCR形成を容易にするために、IgG1(ホール)又はIgG1(ノブ)のいずれかも含み得る。
【0087】
抗原結合ドメイン及び結合ドメイン。本明細書で使用される場合、「抗原結合ドメイン」、「抗原結合ドメイン」、又は「結合ドメイン」は、細胞の表面上に発現される抗原又はタンパク質を結合することが可能なB-CARの一部分を指す。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、過剰増殖性疾患に関与する細胞上の抗原又はタンパク質に結合する。好ましい実施形態では、抗原結合ドメインは、腫瘍細胞の表面上に発現される抗原又はタンパク質に結合する。抗原結合分子は、以下の定義及び説明を考慮して更に理解される。
【0088】
抗原結合ドメインは、解離定数(K)が1×10-7Mであるとき、その標的抗原又はタンパク質に「特異的に結合する」と言われる。抗原結合ドメインは、Kが1-5×10-9Mであるとき、「高親和性」で抗原に特異的に結合し、Kが1-5×10-10Mであるとき、「非常に高い親和性」で抗原に特異的に結合する。一実施形態では、抗原結合ドメインは、10-9MのKを有する。一実施形態では、オフ速度は、1×10-5未満である。他の実施形態では、抗原結合ドメインは、約10-7M~10-13MのKで抗原又はタンパク質に結合し、更に別の実施形態では、抗原結合ドメインは、1.0-5.0×10のKで結合する。
【0089】
抗原結合ドメインは、第2の標的に結合するよりも1つの標的により強く結合する場合、「選択的」であると言われる。
【0090】
「中和する」という用語は、リガンドに結合し、そのリガンドの生物学的効果を防止又は低減する抗原結合ドメインを指す。これは、例えば、リガンド上の結合部位を直接ブロックすることによって、又はリガンドに結合し、間接的な手段(リガンドの構造的又はエネルギー的変化など)を介して結合するリガンドの能力を変更することによって行うことができる。いくつかの実施形態では、この用語はまた、それが結合しているタンパク質が生物学的機能を実行するのを防ぐ抗原結合ドメインを示すことができる。
【0091】
「標的」又は「抗原」という用語は、抗原結合分子によって結合することができる分子又は分子の一部を指す。ある特定の実施形態では、標的は、1つ以上のエピトープを有することができる。
【0092】
「抗体」という用語は、免疫グロブリン、特定の抗原を認識するために免疫系によって産生されるY字形タンパク質として知られているものを指す。「抗体断片」という用語は、抗体の抗原結合断片及びFc断片を指す。抗原結合断片の種類としては、F(ab’)2、Fab、Fab’、及びFv分子が挙げられる。Fc断片は、免疫グロブリンの重鎖定常領域から完全に生成される。
【0093】
細胞外シグナル伝達ドメイン。細胞外ドメインは、シグナル伝達及びリンパ球の抗原に対する効率的な応答に有益である。本発明で特に使用される細胞外ドメインは、CD28、CD28T(例えば、米国特許出願第US2017/0283500A1号を参照されたい)、OX40、4-1BB/CD137、CD2、CD7、CD27、CD30、CD40、プログラム死-1(PD-1)、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1、CD1-1a/CD18)、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD247、CD276(B7-H3)、LIGHT、(TNFSF14)、NKG2C、CD79a(免疫グロブリンα)、CD79b(免疫グロブリンβ)、DAP-10、Fcガンマ受容体、MHCクラス1分子、TNF受容体タンパク質、免疫グロブリンタンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、活性化NK細胞受容体、BTLA、トールリガンド受容体、ICAM-1、B7-H3、CDS、ICAM-1、GITR、BAFFR、LIGHT、HVEM(LIGHTR)、KIRDS2、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD19、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL-2Rベータ、IL-2Rガンマ、IL-7Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD1 la、LFA-1、ITGAM、CD1 lb、ITGAX、CD1 lc、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、NKG2D、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRT AM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、CD19a、CD83と特異的に結合するリガンド、又はそれらの任意の組み合わせに由来し(すなわち、含み)得る。細胞外ドメインは、天然又は合成源のいずれかに由来し得る。
【0094】
ヒンジドメイン。本明細書に記載されるように、細胞外ドメインは、多くの場合、ヒンジ部分を含む。これは、細胞膜に近接する細胞外ドメインの一部分である。細胞外ドメインは、スペーサー領域を更に含み得る。上で考察されるような共刺激分子、並びに免疫グロブリン(Ig)配列、3X strep IIスペーサー、又は標的細胞からの所望の特別な距離を達成するための他の好適な分子を含む、様々なヒンジが、本発明に従って使用され得る。いくつかの実施形態では、細胞外領域全体は、ヒンジ領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒンジ領域は、本明細書に記載のCD28又はCD8の細胞外ドメイン、若しくはその一部を含む。
【0095】
膜貫通ドメイン。B-CARは、B-CARの細胞外ドメインに融合されるか、さもなければ連結される膜貫通ドメインを含むように設計することができる。同様に、B-CARの細胞内ドメインに融合することができる。一実施形態では、B-CARにおけるドメインのうちの1つと自然に関連する膜貫通ドメインが使用される。いくつかの場合では、膜貫通ドメインは、同じ又は異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインへのそのようなドメインの結合を回避して、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限に抑えるために、アミノ酸置換によって選択又は修飾することができる。膜貫通ドメインは、天然又は合成源のいずれかに由来し得る。源が天然である場合、ドメインは、任意の膜結合タンパク質又は膜貫通タンパク質に由来し得る。本発明で特に使用される膜貫通領域は、CD28、CD28T、OX40、4-1BB/CD137、CD2、CD7、CD27、CD30、CD40、プログラム死-1(PD-1)、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1、CD1-1a/CD18)、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD247、CD276(B7-H3)、LIGHT、(TNFSF14)、NKG2C、CD79a(免疫グロブリンα)、CD79b(免疫グロブリンβ)、DAP-10、Fcガンマ受容体、MHCクラス1分子、TNF受容体タンパク質、免疫グロブリンタンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、活性化NK細胞受容体、BTLA、トールリガンド受容体、ICAM-1、B7-H3、CDS、ICAM-1、GITR、BAFFR、LIGHT、HVEM(LIGHTR)、KIRDS2、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD19、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL-2Rベータ、IL-2Rガンマ、IL-7Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD1 la、LFA-1、ITGAM、CD1 lb、ITGAX、CD1 lc、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、NKG2D、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRT AM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、CD19a、CD83と特異的に結合するリガンド、又はそれらの任意の組み合わせに由来し(すなわち、含み)得る。
【0096】
任意選択的に、短いリンカーは、B-CARの細胞外、膜貫通、及び細胞内ドメインのうちのいずれか又はいくつかの間に結合を形成し得る。
【0097】
ある特定の実施形態では、本発明のB-CARにおける膜貫通ドメインは、CD28膜貫通ドメインである。一実施形態では、本発明のB-CARにおける膜貫通ドメインは、CD8膜貫通ドメインである。
【0098】
細胞内(細胞質)ドメイン。本発明のB-CAR受容体の細胞内(IC、又は細胞質)ドメインは、免疫細胞の正常なエフェクター機能のうちの少なくとも1つの活性化を提供することができる。
【0099】
好適な細胞内分子としては、CD79a(免疫グロブリンα)、CD79b(免疫グロブリンβ)、CD40、CD19、CD137、Fcγr2a、及びMyD88が挙げられるが、これらに限定されないことが理解されるであろう。細胞内分子は、CD28、CD28T、OX40、4-1BB/CD137、CD2、CD7、CD27、CD30、CD40、プログラム死-1(PD-1)、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1、CD1-1a/CD18)、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD247、CD276(B7-H3)、LIGHT、(TNFSF14)、NKG2C、Igアルファ(CD79a)、DAP-10、Fcガンマ受容体、MHCクラス1分子、TNF受容体タンパク質、免疫グロブリンタンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、活性化NK細胞受容体、BTLA、トールリガンド受容体、ICAM-1、B7-H3、CDS、ICAM-1、GITR、BAFFR、LIGHT、HVEM(LIGHTR)、KIRDS2、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD19、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL-2Rベータ、IL-2Rガンマ、IL-7Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD1 la、LFA-1、ITGAM、CD1 lb、ITGAX、CD1 lc、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、NKG2D、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRT AM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、CD19a、CD83と特異的に結合するリガンド、又はそれらの任意の組み合わせを更に含み得る。本発明のCAR-Bの細胞質シグナル伝達部分内の細胞質シグナル伝達配列は、ランダム又は指定された順序で互いに連結され得る。
【0100】
本明細書で使用される場合、「共刺激」ドメイン又は分子という用語は、細胞の初期活性化シグナルを増幅又は相殺するように作用する細胞表面分子の不均一な群を指す。
【0101】
1つの好ましい実施形態では、細胞質ドメインは、hCD19のシグナル伝達ドメインを含むように設計される。別の実施形態では、細胞質ドメインは、hCD40のシグナル伝達ドメインを含むように設計される。別の実施形態では、細胞質ドメインは、hCD40及びhCD79bのシグナル伝達ドメインを含むように設計される。別の実施形態では、細胞質ドメインは、hCD40及びhCD137のシグナル伝達ドメインを含むように設計される。別の実施形態では、細胞質ドメインは、hCD40及びhFcγr2aのシグナル伝達ドメインを含むように設計される。別の実施形態では、細胞質ドメインは、hCD40及びhMyd88のシグナル伝達ドメインを含むように設計される。別の実施形態では、細胞質ドメインは、hCD79aのシグナル伝達ドメインを含むように設計される。別の実施形態では、細胞質ドメインは、hCD79bのシグナル伝達ドメインを含むように設計される。これらの実施形態は、好ましくはヒト由来であるが、他の種に由来し得る。
【0102】
B.ペイロードを発現する修飾されたB細胞。
本発明の様々な実施形態では、ペイロードを発現することができる修飾されたB細胞が、提供される。本明細書で使用される場合、「ペイロード」という用語は、治療剤として使用するためのアミノ酸配列、ペプチド若しくはタンパク質をコードする核酸配列、又はRNA分子を指す。ある特定の実施形態では、ペイロードは、腫瘍又は腫瘍微小環境に送達するためのものである。ある特定の実施形態では、B細胞が、例えば、腫瘍内の交差提示樹状細胞(DC)の数を増加させることができるペイロードを腫瘍又は腫瘍微小環境に送達することが望ましい。DCを交差提示することは、腫瘍抗原の改善された提示を可能にする。様々な実施形態では、ペイロードは、T細胞を活性化し、腫瘍に引き込むことが可能であり得る。腫瘍内のより多くのT細胞を活性化することは、交差提示DCを補完し、腫瘍環境をより強力な抗腫瘍免疫能力を持つように作り変えることができる。ペイロードはまた、腫瘍における三次リンパ構造(TLS)の形成を促進し得る。臨床研究は、B細胞、TLS及び免疫チェックポイント遮断に対する応答との間に関係があることを示している。
【0103】
本発明のペイロードの非排他的な例としては、IL-1、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-17、IL-18、IL-21、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、TSLP、CCL21、FLT3L、XCL1、LIGHT(TNFSF14)、OX40L、CD137L、CD40L、ICOSL、抗CD3抗体、CD47、TIM4-FC、CXCL13、CCL21、CD80、CD40L、IFNα A2、LIGHT、4-1BBL、MDGF(C19orf10)、FGF10、PDGF、アグリン、TNF-α、GM-CSF、抗FAP抗体、抗TGF-β抗体;TGF-βトラップ、デコイ、又は他の阻害分子;抗BMP抗体;BMPトラップ、デコイ、又は他の阻害分子が挙げられる。
【0104】
ペイロード発現のためのシグナル伝達。本発明の様々な実施形態では、ペイロードは、活性化された転写経路の制御下で、DNA構築物として修飾されたB細胞において発現される。ある特定の実施形態では、ペイロードの発現は、活性化されたT細胞の核因子(「NFAT」)経路によって制御される。NFAT経路は、免疫応答中に活性化される転写因子経路であり、NFκBによって活性化される。様々な実施形態では、修飾されたB細胞は、ペイロード及びCAR-Bの両方を発現する。修飾されたB細胞がペイロード及びCAR-Bの両方を発現する様々な実施形態では、CAR-Bは、NFκB経路の活性化を誘導するシグナル伝達分子を更にコードし得る。そのような分子としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:CD79a(免疫グロブリンα)、CD79b(免疫グロブリンβ)、CD40、CD19、CD137、Fcγr2a、及びMyD88。
【0105】
様々な実施形態では、本発明は、少なくとも1つのペイロードを発現する単離されたB細胞に関する。様々な実施形態では、本発明は、1つを超えるペイロードを発現する単離されたB細胞に関する。様々な実施形態では、本発明は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12の異なるペイロードを発現する単離されたB細胞に関する。
【0106】
ホーミングのためのB細胞の修飾。本発明の様々な実施形態では、操作されたB細胞は、B細胞が目的とする部位/標的にホーミングし、標的との相互作用時に活性化することができるように、(例えば、図2に示されるように)ホーミングドメインで修飾することができる。追加的に、標的組織上のアドレスイン及びリガンドを認識するB細胞膜に発現するB細胞ホーミング受容体、特定の部位へのB細胞の輸送を変化させる化合物又はその誘導体、並びにB細胞の炎症及び自己免疫活性を抑制する分子が、B細胞のホーミング及び特殊な免疫応答の発達に関与し得る。
【0107】
目的とするインテグリンを発現する修飾されたB細胞。リンパ球によって発現される主要なホーミング受容体は、インテグリンであり、これらは、α鎖及びβ鎖のヘテロ二量体構造を特徴とする大きな分子群である。一般に、インテグリンの特定のα鎖とβ鎖の対合は、ホーミング受容体のタイプを決定する。例えば、α4鎖とβ7鎖との対合は、パイエル板(PP)及び胃腸(GI)管固有層内皮細静脈(LPV)中の高内皮細静脈(HEV)上に発現する粘膜アドレスイン細胞接着分子1(MAdCAM-1)へのリンパ球結合に関与する主要なインテグリン分子(α4β7)を特徴とする。同様に、α4鎖とβ1鎖との対合は、皮膚のホーミング受容体(α4β1)を特徴とする。
【0108】
本発明の様々な実施形態では、好ましい局在を媒介する特定の形質を有する、修飾されるB細胞を事前に選択することができる。例えば、CXCR3を発現するメモリB細胞は、濃縮され、次いで工学的に処理され得る。CXCR3細胞は、炎症部位で発現されるリガンドに誘引され得る。このように、修飾されたB細胞は、かかる部位に優先的に局在化することができる。
【0109】
本発明の様々な実施形態では、インテグリンのα4及びβ7鎖を発現する修飾されたB細胞が、提供される。α4β7インテグリンの発現が、修飾されたB細胞の結腸へのホーミングを促進することが望ましい。様々な実施形態では、インテグリンのα4鎖及びβ1鎖を発現する修飾されたB細胞が、提供される。α4β1インテグリンの発現が、修飾されたB細胞の皮膚へのホーミングを促進することが望ましい。様々な実施形態では、発現されたインテグリンが、修飾されたB細胞の目的とする所望の部位/標的へのホーミングを促進するように、インテグリンのα鎖及びβ鎖の所望の対合を発現する修飾されたB細胞が、提供される。したがって、様々な実施形態では、特定のインテグリンを発現する修飾されたB細胞が目的とする所望の部位/標的を標的とするように、インテグリンのα鎖及びβ鎖の任意の所望の組み合わせが、B細胞での発現のために企図される。
【0110】
目的とするホーミング受容体を発現する修飾されたB細胞。B細胞は、炎症性組織にホーミングする能力を有し、それらのホーミング受容体の発現を変化させることは、それらの天然ホーミング傾向を補完することができる。B細胞の局在はまた、特定の位置又は組織の炎症部位における誘引分子(例えば、リガンド及びケモカインなどの標的)の発現によっても駆動される。そのような分子はまた、細胞を末梢ノードアドレジン(PNAd)に標的とするMECA79抗体などの抗体も含むことができる。Bahmani et al.,J Clin Invest.2018;128(11):4770-4786、Azzi et al.,Cell Rep.2016;15(6):1202-13。したがって、B細胞は、B細胞が目的とする部位/標的にホーミングし、そのようなB細胞と所望の標的との相互作用を容易にする特定の抗体、タンパク質、及び受容体を発現するように操作することができる。ある特定の場合では、かかる受容体の発現は、B細胞を目的とする組織に方向転換する。
【0111】
本発明の様々な実施形態では、ホーミング抗体、タンパク質、又は受容体を発現することができるか、又はその発現がB細胞を目的とする特定の部位/標的に向けることができる修飾されたB細胞が、提供される。特定のホーミング受容体/リガンド対を使用した、特定のホーミング組織(標的組織)へのT細胞の例示的なホーミングを、表3に示す。同じ特異的ホーミング受容体/リガンド対はまた、B細胞の特定のホーミング組織(標的組織)へのホーミングを促進することができる。したがって、本発明の様々な実施形態では、修飾されたB細胞の例示的なホーミング組織(標的組織)へのホーミングが、表3に記載される対応するホーミング受容体/リガンド対を使用して促進される。
【表3-1】
【表3-2】
【0112】
例示的なホーミング組織(標的組織)型、及び本発明による組織制限されたB細胞ホーミングを可能にするリガンド又はケモカインを、表4に示す。
【表4】
【0113】
本発明の様々な実施形態では、表3に記載の特定のホーミング受容体/リガンド対を使用して、修飾されたB細胞の例示的な標的/ホーミング組織へのホーミングを容易にする抗体、タンパク質、又は受容体のうちの1つ以上を発現する修飾されたB細胞が、提供される。本発明の様々な実施形態では、表3及び/又は表4に記載のリガンド又はケモカインを使用して、修飾されたB細胞の例示的な標的/ホーミング組織へのホーミングを容易にするホーミング受容体のうちの1つ以上を発現する修飾されたB細胞が、提供される。本明細書で使用される場合、「B細胞ホーミング」という用語は、本出願のB細胞を、治療ペイロードの送達が望ましい、目的とする部位/標的、例えば、ホーミング又は標的組織、特定の位置若しくは組織内の炎症部位、又は腫瘍若しくは腫瘍微小環境に局在化、標的化、輸送、誘導、又は方向転換することを指す。B細胞ホーミングの文脈で使用される場合、「抗体」、「タンパク質」、又は「受容体」という用語は、治療剤として使用するためのアミノ酸配列、ペプチド若しくはタンパク質をコードする核酸配列、又はRNA分子を指し、本発明の修飾されたB細胞で発現されると、B細胞を目的とする部位/標的に誘導する。
【0114】
ある特定の実施形態では、ホーミング抗体、タンパク質、又は受容体分子は、そのような分子を発現する修飾されたB細胞を、目的とする部位/標的にホーミング/標的化するためのものである。ある特定の実施形態では、ホーミング抗体、タンパク質、又は受容体分子は、そのような分子を発現する修飾されたB細胞を、特定の位置又は組織の炎症部位にホーミング/標的化するためのものである。ある特定の実施形態では、ホーミング抗体、タンパク質、又は受容体は、B細胞を腫瘍又は腫瘍微小環境に標的化するためのものである。ある特定の実施形態では、本発明の操作された又は修飾されたB細胞が、治療用ペイロードを目的とする所望の位置、例えば、ホーミング又は標的組織、特定の位置若しくは組織内の炎症部位、又は腫瘍若しくは腫瘍微小環境に送達することができるように、B細胞を特定の位置に標的化することが、望ましい。したがって、ある特定の実施形態では、B細胞は、目的とする部位/標的、例えば、腫瘍若しくは腫瘍微小環境をホーミングし、例えば、目的とする部位/標的(例えば、腫瘍内)で交差提示樹状細胞(DC)の数を増加させることができるペイロードを目的とする部位/標的に送達することが、望ましい。
【0115】
様々な実施形態では、ホーミング抗体、タンパク質、又は受容体は、DNA構築物として修飾又は操作されたB細胞において発現される。様々な実施形態では、ホーミング抗体、タンパク質、又は受容体は、構成的に活性化された転写経路の制御下で、DNA構築物として修飾されたB細胞において発現される。様々な実施形態では、B細胞ホーミング/標的化に関与するホーミング抗体、タンパク質、又は受容体は、B細胞において天然に発現されないか、又はB細胞において天然に発現されるよりも高いレベルで発現される。本発明による特異的ホーミング受容体/リガンド対を使用した、特異的ホーミング/標的組織への修飾されたB細胞の例示的なホーミングを、表4に示す。表4に記載の例示的なホーミング組織、ホーミング受容体、及びリガンド対にもかかわらず、本発明の修飾されたB細胞は、修飾されたB細胞が目的とする特定の部位/標的に誘導されることができるように、任意のホーミング抗体、タンパク質、又は受容体(例えば、表5に記載された任意のホーミング受容体)を発現するように操作され得ることを理解されたい。
【表5】
【0116】
本発明の特定のホーミング受容体/リガンド対のホーミング(標的)組織型の非独占的な例としては、皮膚、胃腸(腸、結腸、腸間膜リンパ節(mLN)、パイエル板(PP)、小腸)、肝臓、肺、骨髄、心臓、末梢リンパ節(LN)、CNS、胸腺、及び骨髄が挙げられる。
【0117】
本発明の特異的又は対応する誘引剤/リガンド/ケモカインと対合させることができるホーミング受容体の非排他的な例としては、CLA(PSGL-1糖型)、CLA(PSGL-1糖型)、CCR10、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR9、CD43E、CD44、c-Met、CXCR3、CXCR4、LFA-1、LFA-1(αLβ2)、セレクチンリガンド、VLA-4、VLA-4(α4β1)、及びα4β7が挙げられる。
【0118】
本発明の特異的又は対応するホーミング受容体と対合させることができるリガンド/ケモカインの非排他的な例としては、CXCL16、CCL17、CCL17(22)、CCL20(MIP-3α)、CCL21、CCL25、CCL27、CCL28、CCL4、CCL5、CD62E、CD62P、CXCL10、CXCL12、CXCL13、CXCL16、CXCL9/CXCL10、CXCR3、E/P-セレクチン、E-セレクチン、GPR15L、HGF、ヒアルロン酸塩、ICAM-1、CCR1,2,5のリガンド、MAdCAM、MAdCAM-1、PNAd、VAP-1、VCAM、及びVCAM-1が挙げられる。
【0119】
本発明のある特定の実施形態では、修飾されたB細胞は、対応するリガンド/ケモカイン(例えば、表3及び/又は4に記載の)を発現する目的とする対応するホーミング組織を標的とするように、例示的なB細胞ホーミング受容体(例えば、表3に記載の)の発現を発現するか、又は発現の増加を有する修飾されたB細胞が、提供される。本発明のある特定の実施形態では、特定のα及びβ鎖の対合、並びに特定のB細胞ホーミング受容体(例えば、表3及び/又は4に記載の)とともにインテグリンを共発現する修飾されたB細胞が、提供され、そのインテグリン及び/又はホーミング受容体の発現が、修飾されたB細胞の、目的とする部位/標的へのホーミング/標的化を促進又は容易にする。いくつかの実施形態では、α4β7インテグリン及びCCR9を共発現する修飾されたB細胞が、提供される。α4β7及びCCR9の共発現が、本発明の修飾されたB細胞の小腸ホーミングを促進することが望ましい。いくつかの実施形態では、α4β1インテグリン及びCCR4を共発現する修飾されたB細胞が、提供される。α4β1及びCCR4の共発現が、本発明の修飾されたB細胞の小腸ホーミングを促進することが望ましい。
【0120】
免疫阻害分子を発現する修飾されたB細胞。B細胞は、多くの自己免疫疾患の主要な原因となっている。しかしながら、B細胞は、自己免疫を拮抗するために治療的に使用され得る。具体的には、B細胞は、少なくとも1つ以上の免疫阻害分子を発現するように操作することができ、これは、B細胞の自己免疫活性を減少させ、自己免疫疾患の減少をもたらし得る。免疫阻害分子は、当該技術分野で周知である。そのような阻害分子としては、IL-10、TGF-β、PD-L1、PD-L2、LAG-3、及びTIM-3が挙げられるが、これらに限定されない。本発明のある特定の実施形態では、部位における炎症及び部位に局在するB細胞の自己免疫活性が減少し、それによって陽性の治療応答をもたらすように、IL-10、TGF-β、PD-L1、PD-L2、LAG-3、及びTIM-3、又はそれらの任意の組み合わせから選択される阻害分子のうちの少なくとも1つ以上を発現するように操作される修飾されたB細胞が、提供される。
【0121】
B細胞の輸送を変化させる化合物。本発明のある特定の実施形態では、特定のB細胞インテグリン及び/又はホーミング受容体の発現を誘導することによってB細胞の輸送を変化させる少なくとも1つ以上の化合物又はその誘導体で処理される修飾されたB細胞が、提供される。B細胞の輸送を変化させる化合物又はその誘導体は、当該技術分野で周知である。ある特定の実施形態では、α4β7インテグリン及びCCR9ホーミング受容体の発現の増加により、B細胞の胃腸(小腸)へのホーミングを促進する、全トランスレチノイン酸(ATRA)又はその誘導体で処理される修飾されたB細胞が、提供される。本明細書で使用される場合、「化合物」という用語は、所望の様式でB細胞の輸送を変化させる化学物質、薬物、治療剤、又はその誘導体を指す。
【0122】
本発明の様々な実施形態では、特定のインテグリン(例えば、特定のα及びβ鎖対を有する)及び目的とする特定のB細胞ホーミング受容体を共発現するように操作された修飾されたB細胞が、特定のインテグリン及びホーミング受容体の発現の増加により、修飾されたB細胞の輸送を変化させ、目的とする特定の部位/標的への細胞のホーミングを促進する少なくとも1つ以上の化合物又はその誘導体で処理される。様々な実施形態では、特定のα及びβ鎖の対合とインテグリンを共発現するように修飾されたB細胞、並びに特定のB細胞ホーミング受容体は、炎症の特定の部位を標的とする修飾されたB細胞の自己免疫活性が減少し、自己免疫疾患の減少につながるように、少なくとも1つ以上の免疫阻害分子を更に発現する。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫阻害分子、例えば、IL-10、TGF-β、PD-L1、PD-L2、LAG-3、及びTIM-3、又はそれらの組み合わせを発現するように操作された修飾されたB細胞は、α4β7インテグリン及びCCR9ホーミング受容体の発現を誘導して、目的とする特定の部位/標的(例えば、胃腸)へのB細胞ホーミングを促進するが、その部位に局在するB細胞の自己免疫活性が減少し、陽性の治療応答をもたらすように、ATRA又はその誘導体で指定された期間、処理される。一実施形態では、1つ以上の免疫阻害分子、例えば、IL-10、TGF-β、又はそれらの組み合わせを発現するように操作された修飾されたB細胞は、α4β7インテグリン及びCCR9ホーミング受容体の発現を誘導して、目的とする特定の部位/標的(例えば、胃腸)へのB細胞ホーミングを促進するが、その部位に局在するB細胞の自己免疫活性が減少し、陽性の治療応答をもたらすように、ATRA又はその誘導体で指定された期間、処理される。
【0123】
B細胞を目的とする特定のホーミング/標的組織に標的化する特定のB細胞インテグリン及びホーミング受容体を共発現するように修飾された本発明の任意のB細胞は、その部位に局在するB細胞の炎症及び自己免疫活性を低減するための1つ以上の免疫阻害分子を発現するように更に操作され、及び/又は特定のB細胞インテグリン及び/若しくはホーミング受容体の発現を誘導することによって修飾されたB細胞のホーミング/標的化を変化させる化合物で処理され得ることが理解される。
【0124】
TLRアゴニスト及びTLRによるB細胞の活性化。B細胞は、その特定のB細胞受容体(BCR)によって認識される抗原を取り込み、提示する自然な能力を有する。トール様受容体(TLR)によって活性化されたB細胞は、免疫応答で体を防御する強力なエフェクターB細胞をもたらす。B細胞におけるTLRの発現又はTLRの発現の増加は、適応免疫応答を調節する固有のシグナルについてB細胞を増強するための機序を提供することができる。
【0125】
TLRアゴニストによるB細胞の活性化。本発明の様々な実施形態では、B細胞が提供され、B細胞は、少なくとも1つのTLRアゴニストでインビトロ又はエクスビボで処理される。様々な実施形態では、TLRは、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、TLR11、TLR12、及び/又はTLR13であり得る。様々な実施形態では、TLRアゴニストは、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、TLR11、TLR12、及びTLR13からなる群から選択される1つ以上のTLRに優先的に結合する。TLRアゴニストは、当該技術分野で周知であり、限定されないが、CpGリッチオリゴヌクレオチド及び二本鎖RNA模倣ポリイノシン酸:ポリシチジル酸(ポリ-I:C)を含み得る。様々な実施形態では、TLRアゴニストは、CpGオリゴヌクレオチドであり得る。
【0126】
様々な実施形態では、各B細胞は、1つのTLRアゴニストで処理され得る。様々な実施形態では、各B細胞は、1つを超えるTLRアゴニストで処理され得る。例えば、各B細胞は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12の異なるTLRアゴニストで処理され得る。代替的に、患者は、B細胞の不均一な集団を投与され得、各B細胞は、独自のTLRアゴニスト又はTLRアゴニストの組み合わせで処理される。いくつかの実施形態では、治療剤を使用するためのB細胞は、B細胞の対象又は投与を必要とする患者への投与と同時に、又はそれに先立って、1つ以上のTLRアゴニストで処理される。ある特定の実施形態では、1つ以上のTLRアゴニストによる処理は、免疫応答で体を防御するためのより強力なエフェクターB細胞を産生することができる。ある特定の実施形態では、1つ以上のTLRアゴニストによる処理は、免疫応答のためにB細胞を増強することができる。いくつかの実施形態では、本発明のB細胞を少なくとも1つ以上のTLRアゴニストで処理することは、1つ以上のTLRの発現又は活性化を誘導する。
【0127】
TLR発現によるB細胞の活性化。本発明の様々な実施形態では、構成的に活性なTLRを発現することができる修飾されたB細胞が、提供される。様々な実施形態では、TLRは、構成的に活性化された転写経路の制御下で、DNA構築物として修飾又は操作されたB細胞において発現される。様々な実施形態では、TLRは、B細胞において天然に発現されないか、又はB細胞において天然に発現されるよりも高いレベルで発現される。様々な実施形態では、TLRは、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、TLR11、TLR12、及び/又はTLR13であり得る。
【0128】
様々な実施形態では、各B細胞は、1つを超える構成的に活性なTLRを発現し得る。例えば、各B細胞は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、又は13の異なる構成的に活性なTLRを発現し得る。代替的に、患者は、B細胞の不均一な集団を投与され得、各B細胞は、構成的に活性である独自のTLR又はTLRの組み合わせを発現及び/又は分泌することができる。様々な実施形態では、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、又は13の異なる構成的に活性なTLRは、B細胞の異種集団を介して対象又は患者に投与され得る。
【0129】
本発明のある特定の実施形態では、B細胞は、少なくとも1つの構成的に活性なTLRを発現する修飾されたB細胞である。ある特定の実施形態では、少なくとも1つの構成的に活性なTLRを発現する修飾されたB細胞は、1つ以上のTLRアゴニストで処理される。ある特定の実施形態では、構成的に活性なTLRの発現は、免疫応答で体を防御するためのより強力なエフェクターB細胞を産生することができる。ある特定の実施形態では、構成的に活性なTLRの発現は、免疫応答のためにB細胞を増強することができる。ある特定の実施形態では、修飾されたB細胞は、構成的に活性であるTLR及び本出願の任意のCAR-Bの両方を発現する。様々な実施形態では、構成的に活性であるTLR及び/又はCAR-Bを発現する修飾されたB細胞は、修飾されたB細胞の対象又は投与を必要とする患者への投与と同時に、又はそれに先立って、1つ以上のTLRアゴニストで更に処理される。ある特定の実施形態では、B細胞は、腫瘍内投与のために、CAR-Bの不在下で、TLRなどのペイロード及び修飾因子を発現するように操作され得る。
【0130】
HLAクラスI及びクラスII分子において抗原を同時に提示する修飾されたB細胞。B細胞は、抗体産生におけるそれらの機能に加えて、高レベルのヒト白血球抗原(HLA)クラスII分子も発現し、CD4+T細胞に抗原を提示することができる。Hong et al.,2018,Immunity 49,695-708。本発明の様々な実施形態では、HLAクラスI及びクラスII分子の両方において、特定の抗原及び/又は腫瘍抗原若しくは感染症抗原などの目的とする抗原由来エピトープを同時に提示することができる修飾されたB細胞が、提供される。腫瘍抗原及び感染症抗原は、当該技術分野で周知であり、前述のセクションに記載されている。ある特定の実施形態では、目的とする特定の抗原、例えば、腫瘍抗原又は感染症抗原は、抗原をリソソームに標的化し、HLAクラスI及びクラスII分子の両方で抗原を同時にかつ効率的に提示するリソソームタンパク質の標的化シグナルに融合される。いくつかの実施形態では、標的化シグナルは、リソソーム関連膜タンパク質-1(LAMP1)の標的化シグナルである。いくつかの実施形態では、標的化シグナルは、エンドソームリサイクルコンパートメントに入ることができる。Clec9Aのc末端配列は、そのような標的化部分である。本明細書で使用される場合、標的化シグナルに融合した特定の腫瘍抗原又は感染症抗原は、治療剤として使用するためのアミノ酸配列、ペプチド若しくはタンパク質をコードする核酸配列、又はRNA分子(例えば、mRNA分子)を指す。一実施形態では、標的化シグナルに融合された特定の腫瘍抗原又は感染症抗原は、治療剤として使用するためのmRNA分子を指す。ある特定の実施形態では、LAMP1又はClec9Aの標的化シグナルなどの標的化シグナルに融合した特異的な腫瘍抗原及び/又は感染症抗原は、リソソーム又はエンドソームに標的化し、HLAクラスI及びクラスII分子の両方で同時にかつ効率的に提示されることが、望ましい。ある特定の実施形態では、B細胞(例えば、ヒトB細胞)を、LAMP1又はClec9Aの標的化シグナルなどの標的化シグナルに融合した目的とする特定の腫瘍抗原及び/又は感染症抗原をコードするmRNAを用いて、成熟前又は成熟後に、B細胞(例えば、ヒトB細胞)のエレクトロポレーションが、HLAクラスI及びクラスII分子の両方において、特異的な抗原及び/又は抗原由来エピトープを同時にかつ効率的に提示されることが可能であることが、望ましい。様々な実施形態では、目的とする特異的な腫瘍抗原及び/又は感染症抗原は、B細胞によって自然に提示されないか、HLAクラスI及びクラスII分子の両方において同時にB細胞によって提示されないか、又はHLAクラスI及びクラスII分子の両方で高い効率を有するB細胞によって自然に提示されないかのいずれかである。そのようなエレクトロポレーションされたB細胞を対象、例えば、ヒト宿主に導入することは、HLAクラスI及びクラスII分子の両方において、目的とする特異的な抗原及び/又は抗原由来エピトープを同時にかつ効率的に提示することによって、抗原特異的免疫応答の発達を促進又は増強することが、企図されている。
【0131】
様々な実施形態では、本発明は、HLAクラスI及びクラスII分子の両方において、特異的な抗原及び/又は抗原由来のエピトープを同時にかつ効率的に提示するためのB細胞のエレクトロポレーションにおける治療剤として使用するための、LAMP1の標的化シグナルなどの標的化シグナルに融合した、目的とする少なくとも1つの特異的な抗原、例えば腫瘍抗原又は感染症抗原をコードする核酸配列、例えばmRNA配列に関する。様々な実施形態では、本発明は、標的化シグナルに融合した目的とする、1つを超える(例えば、1、2、3、4、5つ、又はそれ以上)特異的な腫瘍抗原及び/又は感染症抗原をコードする核酸配列、例えば、mRNA配列に関する。様々な実施形態では、本発明は、上記のようなB細胞のエレクトロポレーションにおける治療剤として使用するための、異なる核酸配列のプール、例えば、異なるmRNA配列のプールに関し、各プールは、mRNA配列の他のプールとは異なる標的化シグナルに融合した、目的とする少なくとも1つの特異的な抗原、例えば、腫瘍抗原又は感染症抗原をコードする。したがって、いくつかの実施形態では、対象は、B細胞の均一な集団を投与され得、各B細胞は、標的化シグナルに融合した目的とする少なくとも1つの特異的な抗原をコードするmRNAでエレクトロポレーションされる。いくつかの実施形態では、対象は、B細胞の均一な集団を投与され得、各B細胞は、標的化シグナルに融合した目的とする1つを超える特異的な抗原をコードするmRNAでエレクトロポレーションされる。いくつかの実施形態では、対象は、B細胞の均一な集団を投与され得、各B細胞は、異なる標的化シグナルに融合した目的とする少なくとも1つの特異的な抗原をコードするmRNAの組み合わせでエレクトロポレーションされる。
【0132】
いくつかの実施形態では、上記のエレクトロポレーションで使用するためのB細胞は、本出願の修飾されたB細胞のうちのいずれかである。いくつかの実施形態では、修飾されたB細胞は、B細胞のキメラ抗原受容体(CAR-B)を含む。様々な実施形態では、修飾されたB細胞は、CAR-Bを発現し、HLAクラスI及びクラスII分子の両方において、目的とする特異的な抗原及び/又は抗原由来のエピトープを同時にかつ効率的に提示することができる。
【0133】
様々な実施形態では、本発明は、単離されたB細胞を、それを必要とする患者に投与する方法に関する。様々な実施形態では、B細胞の集団は、患者に投与され得る。様々な実施形態では、各B細胞は、1つを超えるペイロードペプチド又はタンパク質を発現し得る。例えば、各B細胞は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12の異なるペイロードを発現し得る。代替的に、患者は、B細胞の不均一な集団を投与され得、各B細胞は、独自のペイロード又はペイロードの組み合わせを発現及び/又は分泌することができる。様々な実施形態では、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12の異なるペイロードは、B細胞の異種集団を介して患者に投与され得る。
【0134】
IV.治療の方法
本発明の様々な態様では、B細胞の拡大した集団は、治療剤として、それを必要とする患者に送達される。様々な実施形態では、拡大したB細胞集団は、がんを含む様々な疾患又は障害を治療又は予防することができるであろう。
【0135】
いくつかの実施形態では、本発明は、対象に、有効量の本出願の拡大及び/又は操作されたB細胞を投与することを含む、対象におけるB細胞媒介性免疫応答の生成に関する。いくつかの実施形態では、B細胞媒介性免疫応答は、標的細胞に対して向けられる。いくつかの実施形態では、操作された免疫細胞は、B細胞のキメラ抗原受容体(B-CAR)を含む。いくつかの実施形態では、標的細胞は、腫瘍細胞である。いくつかの態様では、本発明は、悪性腫瘍を治療又は予防するための方法を含み、当該方法は、悪性腫瘍の治療又は予防を必要とする対象に、有効量の本明細書に記載される少なくとも1つの単離された抗原結合分子を投与することを含む。いくつかの態様では、本発明は、悪性腫瘍を治療又は予防するための方法を含み、当該方法は、悪性腫瘍の治療又は予防を必要とする対象に、有効量の少なくとも1つの免疫細胞を投与することを含み、この免疫細胞は、少なくとも1つのキメラ抗原受容体を含む。
【0136】
いくつかの態様では、本発明は、本明細書に記載の少なくとも1つの抗原結合分子と、薬学的に許容される賦形剤と、を含む、操作されたB細胞の拡大した集団を含む、薬学的組成物を含む。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、追加の活性剤を更に含む。
【0137】
いくつかの実施形態では、対象は、肝臓に局在する転移性疾患と診断される。他の実施形態では、転移性疾患は、がんである。更に他の実施形態では、がんは、乳房、結腸、直腸、食道、肺、膵臓、及び/又は胃における原発腫瘍から転移した。更に他の実施形態では、対象は、切除不能な転移性肝腫瘍と診断される。更に他の実施形態では、対象は、原発性結腸直腸がんからの切除不能な転移性肝臓腫瘍と診断される。いくつかの実施形態では、対象は、肝細胞がんと診断される。
【0138】
修飾されたB細胞の標的用量は、1×10~2×1010細胞/kg、好ましくは2×10細胞/kg、より好ましくはの範囲であり得ることを理解されたい。この範囲を上回る及び下回る用量は、特定の対象に適切であり得、適切な用量レベルは、必要に応じて医療提供者によって決定され得ることを理解されたい。追加的に、本発明に従って、複数回の用量の細胞が、提供され得る。
【0139】
対象における腫瘍のサイズを低減するための方法であって、対象に、本発明の修飾されたB細胞を投与することを含み、この細胞は、腫瘍上の抗原、ペイロード、又はCAR-B及びペイロードの両方に結合する抗原結合ドメインを含むCAR-B受容体を含む、方法も提供される。いくつかの実施形態では、対象は、固形腫瘍、又はリンパ腫若しくは白血病などの血液悪性腫瘍を有する。いくつかの実施形態では、修飾されたB細胞は、腫瘍ベッドに送達される。いくつかの実施形態では、がんは、対象の骨髄に存在する。
【0140】
対象における目的とする部位/標的にB細胞をホーミングするための方法であって、対象に、本発明の修飾されたB細胞を投与することを含み、細胞が、目的とする部位/標的でリガンド、ケモカイン、又は誘引剤に誘引されるインテグリン、ホーミング抗体、タンパク質、又は受容体を含む、方法も提供される。いくつかの実施形態では、目的とする部位/標的は、例えば、ホーミング又は標的組織、特定の位置若しくは組織内の炎症部位、又は腫瘍若しくは腫瘍微小環境であり、治療用ペイロードの送達が望ましい。
【0141】
対象における目的とする部位/標的におけるB細胞の炎症及び自己免疫活性を減少させるための方法であって、当該対象に、本発明の修飾されたB細胞を投与することを含み、細胞が、免疫阻害分子を含む、方法も提供される。いくつかの実施形態では、目的とする部位/標的は、例えば、ホーミング又は標的組織、特定の位置若しくは組織内の炎症部位、又は腫瘍若しくは腫瘍微小環境であり、治療用ペイロードの送達が望ましい。
【0142】
いくつかの実施形態では、操作されたB細胞の拡大した集団は、自己B細胞である。いくつかの実施形態では、修飾されたB細胞は、同種異系B細胞である。いくつかの実施形態では、修飾されたB細胞は、異種B細胞である。いくつかの実施形態では、本出願の修飾されたB細胞は、インビボでトランスフェクト又は形質導入される。他の実施形態では、操作された細胞は、エクスビボでトランスフェクト又は形質導入される。
【0143】
本明細書で使用される場合、「対象」又は「患者」という用語は、個体を意味する。いくつかの態様では、対象は、ヒトなどの哺乳動物である。いくつかの態様では、対象は、非ヒト霊長類であり得る。非ヒト霊長類には、いくつかを挙げると、マーモセット、サル、チンパンジー、ゴリラ、オランウータン、及びギボンが含まれる。「対象」という用語はまた、ネコ、イヌなどの家庭動物、家畜(例えば、ラマ、ウマ、ウシ)、野生動物(例えば、シカ、エルク、ムースなど)、実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、スナネズミ、モルモットなど)、及び鳥類種(例えば、ニワトリ、ターキー、アヒルなど)も含む。好ましくは、対象は、ヒト対象である。より好ましくは、対象は、ヒト患者である。
【0144】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示されるCAR発現免疫エフェクター細胞を含む組成物は、任意の数の化学療法剤と併せて投与され得る。化学療法剤の例には、チオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXAN(商標))などのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファンなどのアルキルスルホン酸塩;ベンゾドパ、カルボクオン、メツレドパ、及びウレドパなどのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスファオラミド、及びトリメチロールメラミンレジュームを含むエチレンイミン及びメチルアミン;クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなどのニトロソ尿素;アクラシノミシン、アクチノマイシン、オートラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリチアマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カージノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マーセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシンなどの抗生物質;メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗薬;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸アナログ;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリンアナログ;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモファー、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5-FUなどのピリミジンアナログ;カルステロン、ドロモスタノロンプロピオネート、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎薬;フロリン酸などの葉酸補充剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デフォアミン;デメコルシン;ジアジクオン;エルホルミチン;酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)及びドキセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer);クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン及びカルボプラチンなどの白金類似体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルチン(DMFO);TARGRETIN(商標)(ベキサロテン)、PANRETIN(商標)(アリトレチノイン)などのレチノイン酸誘導体;ONTAK(商標)(デニロイキン ディフチトックス);エスペラマイシン;カペシタビン;並びに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、又は誘導体が挙げられる。この定義には、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼを阻害する4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びトレミフェン(Fareston)を含む抗エストロゲン;並びにフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリンなどの抗アンドロゲン;並びに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、又は誘導体などの腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように作用する抗ホルモン剤も含まれる。必要に応じて、CHOP、すなわち、シクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標))ドキソルビシン(ヒドロキシドキソルビシン)、フルダラビン、ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標))、及びプレドニゾンを含むがこれらに限定されない、化学療法剤の組み合わせもまた、投与される。
【0145】
様々な追加の治療剤は、本明細書に記載の組成物と併せて使用され得る。例えば、潜在的に有用な追加の治療剤としては、ニボルマブ(OPDIVO(登録商標))、ペムブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標))、ペムブロリズマブ、ピディリズマブ、及びアテゾリズマブ(TECENTRIQ(登録商標))などのPD-1(又はPD-L1)阻害剤が挙げられる。
【0146】
本発明との組み合わせにおける使用のために好適な追加の治療剤としては、イブルチニブ(IMBRUVICA(登録商標))、オファツムマブ(ARZERRA(登録商標))、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標))、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))、トラスツズマブエムタンシン(KADCYLA(登録商標))、イマチニブ(GLEEVEC(登録商標))、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標))、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標))、カテマキソマブ、イブリツモマブ、オファツムマブ、トシツモマブ、ブレンツキシマブ、アレムツズマブ、ゲムツズマブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、バンデタニブ、アファチニブ、ラパチニブ、ネラチニブ、アキシチニブ、マシチニブ、パゾパニブ、スニチニブ、ソラフェニブ、トセラニブ、レスタウルチニブ、アキシチニブ、セディラニブ、レンバチニブ、ニンテダニブ、パゾパニブ、レゴラフェニブ、セマキサニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、チボザニブ、トセラニブ、バンデタニブ、エントレクチニブ、カボザンチニブ、イマチニブ、ダサチニブ、ニロチニブ、ポナチニブ、ラドチニブ、ボスチニブ、レスタウルチニブ、ルキソリチニブ、パクリチニブ、コビメチニブ、セルメチニブ、トラメチニブ、ビニメチニブ、アレクチニブ、セリチニブ、クリゾチニブ、アフリベルセプト、アジポチド、デニルイキンディフィチトックス、エベロリムス及びテムシロリムスなどのmTOR阻害剤、ソニデジブ及びビスモデギブなどのヘッジホッグ阻害剤、CDK阻害剤(パルボシクリブ)などのCDK阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0147】
更なる実施形態では、CAR含有免疫を含む組成物は、抗炎症剤とともに投与することができる。抗炎症剤又は薬剤としては、ステロイド及びグルココルチコイド(ベタメタゾン、ブデソニド、デキサメタゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロンを含む)、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、メトトレキサート、スルファサラジン、レフルノミドを含む非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、抗TNF薬、シクロホスファミド、及びミコフェノレートが挙げられるが、これらに限定されない。例示的なNSAIDとしては、イブプロフェン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、Cox-2阻害剤、及びシアリル酸塩が挙げられる。例示的な鎮痛剤としては、アセトアミノフェン、オキシコドン、塩酸プロポリキシフェンのトラマドールが挙げられる。例示的なグルココルチコイドとしては、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、又はプレドニゾンが挙げられる。例示的な生物学的応答修飾物質としては、細胞表面マーカー(例えば、CD4、CD5など)に対して指向される分子、TNFアンタゴニスト(例えば、エタネルセプト(ENBREL(登録商標))などのサイトカイン阻害剤、アダリムマブ(HUMIRA(登録商標))及びインフリキシマブ(REMICADE(登録商標)))、ケモカイン阻害剤、並びに接着分子阻害剤が挙げられる。生物学的応答修飾物質としては、モノクローナル抗体、並びに分子の組換え形態が挙げられる。例示的なDMARDとしては、アザチオプリン、シクロホスファミド、シクロスポリン、メトトレキサート、ペニシリラミン、レフルノミド、スルファサラジン、ヒドロキシクロロキン、Gold(経口(オーラノフィン)及び筋肉内)、及びミノサイクリンが挙げられる。
【0148】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、サイトカインと併せて投与される。本明細書で使用される場合、「サイトカイン」は、細胞間の介在物質として別の細胞に作用する1つの細胞集団によって放出されるタンパク質を指すことを意味する。サイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン、及び従来のポリペプチドホルモンである。サイトカインの中には、ヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、及びウシ成長ホルモンなどの成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラキシン;プロリラキシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及び黄体ホルモン(LH)などの糖タンパク質ホルモン;肝成長因子(HGF);線維芽細胞成長因子(FGF);プロラクチン;胎盤性ラクトゲン;ミュラー管抑制物質;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGF-ベータなどの神経成長因子(NGF);血小板成長因子;TGF-アルファ及びTGF-ベータなどの形質転換成長因子(TGF);インスリン様成長因子I及びII;エリスロポエチン(EPO);骨誘導因子;インターフェロン-アルファ、ベータ、及び-ガンマなどのインターフェロン;マクロファージ-CSF(M-CSF)などのコロニー刺激因子(CSF);顆粒球-マクロファージ-CSF(GM-CSF);並びに顆粒球-CSF(G-CSF);IL-1、IL-1アルファ、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-15などのインターロイキン(IL)、TNF-アルファ又はTNF-ベータなどの腫瘍壊死因子;並びにLIF及びキットリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子が含まれる。本明細書で使用される場合、サイトカインという用語は、天然源又は組換え細胞培養物からのタンパク質、及び天然配列サイトカインの生物学的に活性な等価物を含む。
【実施例
【0149】
前述の発明は、理解を明瞭にする目的のために例示及び例としてかなり詳細に記載されたが、本発明の教示に照らして、添付の特許請求の範囲の精神又は範囲から逸脱することなく、ある特定の変更及び修正がなされ得ることは、当業者には容易に明らかとなるであろう。以下の実施例は、限定としてではなく、例示としてのみ提供される。当業者らは、本質的に類似する結果を得るために変化させる又は修飾することができる、様々な重大でないパラメーターを容易に認識するであろう。
【0150】
実施例1:ヒトB細胞の精製及び濃縮
ヒトB細胞を収集し、以下のプロトコルに従ってPBMCから濃縮した。PBMCを、以下のとおりに、バフィーコートから調製した。ドナー(約25ml)当たりの体積は、PBSで最大120mlにした。次に、30mlを、4本の50mlチューブ中の15mlのFicollに層にした。次いで、これを、450gで20分間回転させた。次いで、上層を除去し、廃棄した。次いで、第1の層のすぐ下にあるPBMC界面を単離した(好中球は最も密度が高く、層の底部に向かって数が増加する)。4本のチューブの各々の界面を、各ドナーから採取し、2本の50mlの円錐形チューブに移した。各々を、PBSを使用して1チューブ当たり最大50mlにした。次いで、2つのチューブの各々を、500gで5分間回転させた。
【0151】
RBC溶解は、ペレットを吸引し、ACK溶解緩衝液の両方のペレットについて合わせた10mlの総体積で引き上げることによって実施した。次いで、溶液を、室温で5分間保持した。次に、40mlのPBSを添加し、溶液を混合し、次いで500gで5分間遠心分離した。次いで、PBMCの収率を数えるために、この混合物をPBS中で40mlの体積にした。各B細胞濃縮調製物について、1500万個のPBMCを使用した。
【0152】
B細胞の濃縮は、ヒトB細胞の製品ID17954 EASYSEP(登録商標)精製(Stem Cell Technologies)の説明書に従って行った。溶液をスピンダウンし、1億5000万個のPBMCを、3mlのEASYSEP(登録商標)単離緩衝液に再懸濁した。ペレットを、15mlのチューブ中の3mlのEASYSEP(登録商標)緩衝液中に再懸濁した。150μlのカクテルエンハンサーを添加した。150μlの単離カクテルを添加し、チューブを混合し、室温で5分間インキュベートした。急速球を30秒間ボルテックスし、150μlをチューブに添加し、次いで、混合し、磁石に移した。3分後、これを新しいチューブに注ぎ、磁石ステップを繰り返した。
【0153】
実施例2:HELA-CD40Lフィーダー細胞又はMEGA-CD40Lを使用したB細胞の拡大
ヒト末梢血中のB細胞の頻度が低いため、臨床細胞治療目的のために十分な数のB細胞を得ることは困難である。したがって、B細胞の拡大は、臨床グレードB細胞を製造する上で重要なステップである。ヒトB細胞は、成長のためにCD40Lを必要とする。B細胞は、CD40Lを発現するHEL細胞の単層上で成長させた場合、生存及び拡大することができることが確立されている。しかしながら、フィーダー細胞に依存しないB細胞成長のための方法を確立する必要がある。この目的のために市販のツールore試薬が存在するかどうかを判定する目的で、Enzo MEGA-CD40Lを、HELA-CD40Lフィーダー細胞上の成長と比較して試験した。
【0154】
HeLa-CD40Lフィーダー細胞上の成長培地条件。24ウェルプレート上のプレート当たり5×10でCD40L HeLa細胞を照射することによって、フィーダー細胞プレートを調製した。ベース培地は、RPMI-1640+10% FCS、Penn/strep(100u/ml、100ug/ml)、亜セレン酸ナトリウム(100nM)、及びIL-4(2ng/ml)(R&D 204-IL)からなった。フィーダー細胞を、少なくとも24時間成長させてから、B細胞をプレーティングした。
【0155】
MEGA-CD40Lを用いた成長培地条件。培地条件は、フィーダー細胞がなかったことを除いて、上記と同じであった。代わりに、B細胞を、RPMI-1640+10% FCS、Penn/strep(100u/ml、100ug/ml)、亜セレン酸ナトリウム(100nM)、IL-4(2ng/ml)(R&D 204-IL)、及びMEGA-CD40L(100ng/ml)を含む培地にプレーティングした。
【0156】
HeLa-CD40L及びMEGA-CD40L条件におけるB細胞成長速度を、図1に示す。この研究は、ヒトB細胞がHELA-CD40Lフィーダー細胞を含む培地中で成長及び拡大することができるが、MEGA-CD40Lの存在下では拡大しないことを実証した。
【0157】
精製したB細胞を、0日目に等価密度で約10,000細胞/mlで開始し、HELA-CD40Lフィーダー細胞上で成長させた。4日目に、培養物を2つの群に分割し、一方の群をHELA-CD40Lフィーダー細胞と同じ培地中で成長させ続けたが、他方の群は、MEGA-CD40L(0.1μg/mL)を補充した培地中であるが、HELAフィーダー細胞の不在下で、成長させた。8日目に、更なる100ng/mLのMEGA-CD40Lを、MEGA-CD40L条件下で成長培地に添加した。図1の矢印は、MEGA-CD40L処置が行われた時間を示す。
【0158】
このデータは、HELA-CD40Lフィーダー細胞上で成長させた場合、11日目までにB細胞の有意な増殖があったが、MEGA-CD40Lで成長させた場合、11日目に有意な増殖は観察されなかったことを示す。
【0159】
実施例3:フィーダー細胞を含まないB細胞の拡大
この実施例では、B細胞を、HELA-CD40Lを発現するフィーダー細胞の不在下で拡大させた。B細胞を、IL-4(5μg;5000IU/μgを100μLのHOに溶解して2.5×10IU/mlを達成する);CD40L(配列番号140、500μgを500μLに再懸濁した);CD40L架橋抗体(配列番号143及び144);ヒトAB血清(IC092938249 VWR);及び10μLのペニシリンストレプトマイシンを含む拡大培地中にプレーティングした。B細胞を、(i)100,000~150,000/ml、又は(ii)1,000,000/mLのいずれかの密度でプレーティングし、7日ごとに新鮮な培地で補充することにより、少なくとも15日間拡大した。
【0160】
100,000~150,000細胞/mLの密度で維持した細胞は、2週間で200倍を超えて拡大することができたが、1,000,000細胞/mlの密度で維持した細胞は、有意に少ない細胞成長を示した。図2を参照されたい。
【0161】
実施例4:拡大したB細胞の操作
拡大したヒトB細胞を、アデノウイルスベクターを使用して様々なキメラ受容体を発現するように操作した。B細胞を、まず、実施例1及び3に記載の技術を使用して精製し、濃縮し、拡大させた。B細胞を実施例3の拡大培地中で10日間培養し、次いで表6に列挙されるアデノウイルスで形質導入した。
【表6】
【0162】
次いで、B細胞を含んだいずれかのAd5アデノウイルスを、本明細書に記載のB細胞拡大培地を使用してインビトロで10日間培養した。次いで、拡大したB細胞を、以下のプロトコルに従って、アデノウイルスで形質導入した。
【0163】
B細胞を10日間成長させ、約1400万細胞の収量を達成した。ヒトBCRをコードするいくつかのアデノウイルスF35ウイルス構築物を、試験した。一例は、以下のとおりである。GPC3特異的BCRをコードするアデノウイルスを、使用した。アデノウイルスの空のベクター対照も、使用した。ウイルス偽対照は、使用されなかった。
【0164】
20μlの10/mlのウイルス粒子を、以下の条件下で、50万個のB細胞に添加した。
【0165】
B細胞を、0.2% BSA及びCD40L+Xリンカー(Miltenyi Product #130-098-775、上記の拡大培地に記載されるのと同じ濃度)、IL-4(拡大培地に記載される)、及び200μlの0.5μg/mLポリブレンを含むOPTIMEM(登録商標)に24ウェルプレート上にプレーティングした。ウイルスを添加した後、プレートを、1100gで1時間回転させ、次いで2.5時間インキュベーターに移し、2mLの新鮮な拡大培地を与えた。3日後、細胞を、GPC3-BVで染色して、BCRを発現するB細胞を検出した。結果を図2A~2Cに示し、形質導入の72時間後に少なくとも67%の細胞がGPC3 BCRを発現したことを示す。
【0166】
実施例5:ヒトB細胞におけるAd5RGD-GFPの発現
PBMCからのB細胞を、10日間培養した。B細胞を、GFPをコードするAd5-RGD構築物で形質導入し、0.2% BSA、CD40L+Xリンカー、5%ヒトAB血清、及びIL-4を含むOPTIMEM(登録商標)に配置した。次いで、ウイルスを添加し、1100gで1時間回転させ、次いで37℃で3時間インキュベートした。次いで、培地を、分析まで、正常なヒトB細胞成長培地に切り替えた。
【0167】
GFPの複数の時点の発現試験結果は、以下のとおりであった。
【表7】
【0168】
細胞生存率に対するウイルスの影響に対処するために、総細胞数及びGFP陽性数の割合を、VICELL(登録商標)及びFACSによって、6日目、8日目、及び10日目に試験する。結果を、図4に示す。Ad5-RGDで修飾されたGFP形質導入は、B細胞におけるGFP発現の高効率をもたらす。全B細胞の場合、少なくとも10日間、約60%の発現を維持した。形質導入したB細胞は、形質導入後少なくとも1週間増殖し続けた。
【0169】
実施例6:アデノウイルスによる形質導入によるヒトB細胞におけるマウスBCR構築物又はIL-10の発現
PBMCに由来するB細胞を、10日間培養した。次いで、B細胞を、マウスIL-10、又はいくつかのフォーマットのマウスBCRをコードするAd5-RGD構築物で形質導入した。(ヒトフォーマットを待つ間、マウスを使用した)。次いで、B細胞を、0.2% BSA、CD40L+Xリンカー、5%ヒトAB血清、及びIL-4を含むOPTIMEM(登録商標)を含む条件中で培養した。ウイルスを添加し、1100gで1時間回転させ、次いで37℃で3時間インキュベートし、次いで、分析するまで、正常なヒトB細胞増殖培地に切り替えた。ウイルスを、2つの比率(20μl:50万個のB細胞及び2μl:50万個のB細胞)で試験した。
【0170】
発現試験は、形質導入から96時間後の4日目に実施した。IL-10上清を-80℃で保管した。GPC3構築物を、ヒトGPC3-BVへの結合によって検出した。サルコグリカン構築物を、FITCstrepタグに結合することによって検出した。結果を、図5~9に示す。
【0171】
実施例7:アデノウイルスによる送達後のヒトB細胞におけるインビボホーミング及び発現ヒトBCRのモニタリング
PBMCからのB細胞を、10日間培養した。次いで、B細胞を、ルシフェラーゼ+/-GPC3-BCRをコードするAd5f35構築物で形質導入した。PWF-524/PWWF-684(Luc+GPC3 CAR)及びPWF-684(Luc)を形質導入し、次いで、Wennhold培地中で一晩培養して、BCR及びLucの発現時間を得た。その後、約90万個の細胞を、HEPG2腫瘍を有するマウスにIVで送達した。Lucを、生物発光によってモニタリングした。
【0172】
データを図10に示す。GPC3 CAR(524)が、HEPG2腫瘍を有するSHORNマウスのTDLNにヒトB細胞のホーミングを100倍濃縮することを示す。具体的には、SHORNマウスは、ヒトB細胞が拒絶されないことを可能にするT細胞、B細胞、及びNK細胞が欠損している。肺に比べてTDLNでは100倍の濃縮が認められた。HEPG2転移に起因する可能性がある、肺で2~5倍高いシグナルが観察された。図10は、操作されたGPC3 CARSが、B細胞に、炎症を起こしたリンパ器官にホーミングするように指示するのを助けることができることを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
2024514224000001.app
【国際調査報告】