(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-28
(54)【発明の名称】力平衡および内部冷却特徴を伴う油圧歯車ポンプ用組立体
(51)【国際特許分類】
F04C 2/18 20060101AFI20240321BHJP
F04C 14/00 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
F04C2/18 311C
F04C14/00 C
F04C2/18 311B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563994
(86)(22)【出願日】2022-01-14
(85)【翻訳文提出日】2023-10-18
(86)【国際出願番号】 US2022012415
(87)【国際公開番号】W WO2022231670
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513307933
【氏名又は名称】パーカー-ハネフィン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】PARKER-HANNIFIN CORPORATION
【住所又は居所原語表記】6035 Parkland Blvd. Cleveland, OH 44124 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】カリディンディ,サティシュ・クマール・ラジュ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ハオ
(72)【発明者】
【氏名】チュ,ユ-セン
【テーマコード(参考)】
3H041
3H044
【Fターム(参考)】
3H041AA02
3H041BB03
3H041CC10
3H041CC17
3H041CC20
3H041DD03
3H041DD04
3H041DD13
3H041DD14
3H041DD23
3H041DD27
3H041DD38
3H044AA02
3H044BB03
3H044CC16
3H044CC19
3H044DD03
3H044DD04
3H044DD13
3H044DD28
(57)【要約】
歯車ポンプの例は、ポンプ筐体であって、ポンプ筐体チャネル、およびポンプ筐体の内面の中に配置された弓状溝を有するポンプ筐体と、ポンプ筐体内部に配置されポンプ筐体に対して回転可能なポンプ内歯車と、ポンプ内歯車内部に配置され、その結果、歯がポンプ内歯車の内歯と係合するポンプピニオンと、第1のポートおよび第2のポートを有するポンプ・ポート・ブロックであって、ポンプピニオンがポンプ内歯車内部で回転するとき、流体は第1のポートを通して吸い込まれ、放出するために第2のポートに提供され、第2のポートに提供されている流体の一部分は、ポンプ筐体チャネルに提供され、ポンプ筐体チャネルから得られる流体は、弓状溝に提供されて半径方向内向きの力をポンプ内歯車に加えるポンプ・ポート・ブロックとを含む。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車ポンプであって、
ポンプ筐体であって、(i)ポンプ筐体チャネル、および(ii)前記ポンプ筐体の内面の中に配置された弓状溝を有するポンプ筐体と、
前記ポンプ筐体内部に配置され、前記ポンプ筐体に対して回転可能なポンプ内歯車と、
前記ポンプ内歯車内部に配置され、その結果、外歯が前記ポンプ内歯車の内歯と係合するポンプピニオンと、
第1のポートおよび第2のポートを有するポンプ・ポート・ブロックであって、前記ポンプピニオンが前記ポンプ内歯車内部で回転するとき、流体は、前記第1のポートから吸い込まれ、放出するために前記第2のポートに提供され、前記第2のポートに提供されている前記流体の一部は、前記ポンプ筐体チャネルに提供されて前記ポンプ筐体を冷却し、前記ポンプ筐体チャネルから得られる前記流体は、前記弓状溝に提供され、前記弓状溝内の前記流体は、半径方向内向きの力を前記ポンプ内歯車に加えるポンプ・ポート・ブロックと
を備える歯車ポンプ。
【請求項2】
前記ポンプ筐体は、前記ポンプ筐体チャネルに流体で結合した孔をさらに備え、その結果、前記流体は、前記ポンプ筐体チャネルから前記孔を通って前記弓状溝に流れる、請求項1に記載の歯車ポンプ。
【請求項3】
前記孔は、前記弓状溝内部に配置される、請求項2に記載の歯車ポンプ。
【請求項4】
前記弓状溝は、前記孔から前記ポンプ筐体の内面に沿って角度方向に間隔を置いて配置され、前記ポンプピニオンが回転するとき、前記ポンプ内歯車は回転し、それにより、前記孔を通して受け取った前記流体を前記弓状溝に提供する、請求項2に記載の歯車ポンプ。
【請求項5】
前記ポンプピニオンが回転するとき、前記第2のポートに提供されている、前記ポンプピニオンの前記外歯と前記ポンプ内歯車の前記内歯の間の流体は、半径方向外向きの力を前記ポンプ内歯車に加え、前記弓状溝内で前記流体が加える前記半径方向内向きの力は、前記ポンプ内歯車に加えられる前記半径方向外向きの力に対抗する、請求項1に記載の歯車ポンプ。
【請求項6】
前記ポンプ筐体チャネルは、第1のポンプ筐体チャネルであり、前記ポンプ筐体は、第2のポンプ筐体チャネルをさらに備え、前記ポンプ内歯車が回転するとき、前記第1のポンプ筐体チャネルを通して受け取った前記流体は、前記第2のポンプ筐体チャネルに提供され、前記第2のポンプ筐体チャネル内の前記流体は、次いで前記第1のポートを通して受け取った前記流体と合流する、請求項1に記載の歯車ポンプ。
【請求項7】
前記弓状溝は、第1の弓状溝であり、前記ポンプ筐体は、前記第1の弓状溝から前記ポンプ筐体の前記内面に沿って角度方向に間隔を置いて配置された第2の弓状溝をさらに備え、
前記ポンプピニオンが前記ポンプ内歯車内部で反対方向に回転するとき、流体は、前記第2のポートから吸い込まれ、放出するために前記第1のポートに提供され、前記第1のポートに提供されている前記流体の対応する一部分は、前記第2のポンプ筐体チャネルに方向転換させられて前記ポンプ筐体を冷却し、前記第2のポンプ筐体チャネルから得られる前記流体は、前記第2の弓状溝に提供され、前記第2の弓状溝内の前記流体は、対応する半径方向内向きの力を前記ポンプ内歯車に加える、
請求項6に記載の歯車ポンプ。
【請求項8】
前記ポンプ・ポート・ブロックと前記ポンプ筐体の間に置かれたポンプカバーであって、前記ポンプカバーは、前記ポンプ筐体チャネルと整列したチャネルを備え、前記ポンプ筐体チャネルに方向転換させられた前記流体の一部分は、前記ポンプカバーの前記チャネルを通って前記ポンプ筐体チャネルに流れるポンプカバー
をさらに備える、請求項1に記載の歯車ポンプ。
【請求項9】
前記ポンプカバーと前記ポンプ内歯車の間に置かれたスラストプレートと、
前記スラストプレートと前記ポンプカバーの間の界面に形成されたシールキャビティ内部に配置されたシールと
をさらに備える、請求項8に記載の歯車ポンプ。
【請求項10】
前記ポンプピニオンと前記ポンプ内歯車の間で前記ポンプ内歯車内部に配置された外側三日月形および内側三日月形を備える三日月形シール組立体と、
前記ポンプカバー内に形成されたキャビティの中に配置され、その結果、前記ポンプカバーから軸方向に突出する位置決めピンであって、前記スラストプレートは、位置決めピン貫通孔を含み、前記位置決めピンは、前記位置決めピン貫通孔を通って伸展し、前記スラストプレートから突出して前記三日月形シール組立体と連結し、それにより、前記三日月形シール組立体を軸方向に支持する位置決めピンと
をさらに備える、請求項9に記載の歯車ポンプ。
【請求項11】
組立体であって、
中に内部チャンバを有する主筐体と、
前記主筐体の前記内部チャンバの中に配置され、(i)前記主筐体の前記内部チャンバの中に固定して位置決めされた固定子、および(ii)前記固定子内部に位置決めされ前記固定子に対して回転可能な回転子を備える電気モータと、
前記主筐体の中で前記電気モータの前記回転子内部に少なくとも部分的に位置決めされた歯車ポンプであって、
ポンプ筐体であって、(i)ポンプ筐体チャネル、および(ii)前記ポンプ筐体の内面の中に配置された弓状溝を有するポンプ筐体、
前記ポンプ筐体内部に配置され前記ポンプ筐体に対して回転可能なポンプ内歯車、
前記ポンプ内歯車内部に配置され、その結果、外歯が前記ポンプ内歯車の内歯と係合し、ポンプ駆動軸に搭載され、前記電気モータの前記回転子に回転可能に結合するポンプピニオン、ならびに
第1のポートおよび第2のポートを有するポンプ・ポート・ブロックであって、前記電気モータの前記回転子が前記ポンプ内歯車内部で前記ポンプピニオンを回転させるとき、流体は、前記第1のポートから吸い込まれ、放出するために前記第2のポートに提供され、前記第2のポートに提供されている前記流体の一部分は、前記ポンプ筐体チャネルに提供されて前記ポンプ筐体を冷却し、前記ポンプ筐体チャネルから得られる前記流体は、前記弓状溝に提供され、前記弓状溝内の前記流体は、半径方向内向きの力を前記ポンプ内歯車に加えるポンプ・ポート・ブロック
を備える歯車ポンプと
を備える組立体。
【請求項12】
前記回転子は、(i)前記歯車ポンプが少なくとも部分的に配置される円筒状部分、および(ii)スピンドル部分を備え、前記ポンプ駆動軸は、前記回転子の前記スピンドル部分に回転可能に結合する、請求項11に記載の組立体。
【請求項13】
前記ポンプ駆動軸は、スプライン係合を介して前記回転子の前記スピンドル部分に回転可能に結合し、前記組立体は、第1のシールおよび第2のシールを備え、前記スプライン係合は、前記第1のシールと前記第2のシールの間に置かれ、その結果、潤滑剤は、前記第1のシールと前記第2のシールの間の前記スプライン係合で密封される、請求項12に記載の組立体。
【請求項14】
前記回転子の前記スピンドル部分の端部に配置されたキャップであって、前記第1のシールは、前記ポンプ駆動軸の外面の周囲の第1の溝の中に配置され、前記第2のシールは、前記キャップの対応する外面の周囲の第2の溝の中に配置されるキャップ
をさらに備える、請求項13に記載の組立体。
【請求項15】
前記主筐体に連結した電子機器筐体と、
電子機器筐体カバーであって、前記電子機器筐体に連結し、その結果、前記電子機器筐体カバーおよび前記電子機器筐体により密閉箱が形成される電子機器筐体カバーと、
前記密閉箱の中に配置された1つまたは複数の電子ボードと
をさらに備える、請求項11に記載の組立体。
【請求項16】
前記1つまたは複数の電子ボードは
上に搭載された半導体スイッチングマトリックスを有するインバータボードであって、前記半導体スイッチングマトリックスは、直流電力を、前記電気モータを駆動する三相交流電力に変換するように構成された複数の半導体スイッチング素子を備えるインバータボードと、
前記インバータボードから軸方向にずれ、前記インバータボードに電気的に結合し、スイッチング信号を発生させて前記半導体スイッチングマトリックスを動作させるように構成されたプロセッサを備えるコントローラボードと
を備える、請求項15に記載の組立体。
【請求項17】
前記コントローラボードは、前記コントローラボードに搭載され前記回転子に結合した磁石と相互作用して、前記回転子の回転位置を示すセンサ情報を前記プロセッサに提供するように構成された符号器をさらに備える、請求項16に記載の組立体。
【請求項18】
前記ポンプピニオンが回転するとき、前記第2のポートに提供されている、前記ポンプピニオンの前記外歯と前記ポンプ内歯車の前記内歯の間の流体は、半径方向外向きの力を前記ポンプ内歯車に加え、前記弓状溝内の流体が加える前記半径方向内向きの力は、前記ポンプ内歯車に加えられる前記半径方向外向きの力に対抗する、請求項11に記載の組立体。
【請求項19】
前記ポンプ筐体チャネルは、第1のポンプ筐体チャネルであり、前記ポンプ筐体は、第2のポンプ筐体チャネルをさらに備え、前記ポンプ内歯車が回転するとき、前記第1のポンプ筐体チャネルを通して受け取った前記流体は、前記第2のポンプ筐体チャネルに提供され、前記第2のポンプ筐体チャネル内の前記流体は、次いで前記第1のポートを通して受け取った前記流体と合流する、請求項11に記載の組立体。
【請求項20】
前記弓状溝は、第1の弓状溝であり、前記ポンプ筐体は、前記第1の弓状溝から前記ポンプ筐体の前記内面に沿って角度方向に間隔を置いて配置された第2の弓状溝をさらに備え、
前記回転子が前記ポンプ内歯車内部で前記ポンプピニオンを反対方向に回転させるとき、流体は、前記第2のポートから吸い込まれ、放出するために前記第1のポートに提供され、前記第1のポートに提供されている前記流体の対応する一部分は、前記第2のポンプ筐体チャネルに方向転換させられて前記ポンプ筐体を冷却し、前記第2のポンプ筐体チャネルから得られる前記流体は、前記第2の弓状溝に提供され、前記第2の弓状溝内の前記流体は、対応する半径方向内向きの力を前記ポンプ内歯車に加える、
請求項19に記載の組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、全体が参照により本明細書に組み入れられる、2021年4月30日に出願された米国仮特許出願第63/182,072号明細書の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
歯車ポンプは、押しのけ量だけ流体をポンプで押し出す歯車のかみ合いを使用する。2つの主要な変形形態、すなわち、2つの外部平歯車を使用する外接歯車ポンプ、および外部(たとえば、ピニオン)平歯車および内部(たとえばリング)平歯車を使用する内接歯車ポンプがある。歯車ポンプは、ポンプが回転するたびに一定量の流体を提供できる固定押しのけ量を有する。
【0003】
ポンプの歯車が回転するとき、歯車の歯は、ポンプの取入側で分離し、空隙および吸引力を生成し、空隙は、次いで流体により満たされる。流体は、歯車により、歯車のかみ合いが圧力を受けて流体を移す、ポンプの放出側または吐出口側に運ばれる。場合によっては、ポンプの吐出口側にある高圧流体は、ポンプの筐体に向けて内接歯車ポンプの内歯車を押すことがあり、それにより、摩擦が原因で摩耗する可能性が高まる。その結果、高圧流体が歯車に加える力を無効にして摩耗を低減することが望ましいことがある。
【0004】
さらに、ポンプの動作中、ポンプの筐体は加熱されることがある。その結果、ポンプ筐体を冷却して、ポンプ筐体を過熱することにより生じるどんな問題も軽減することが望ましいことがある。
【0005】
電気モータを使用してポンプを駆動できる。たとえば、電気モータの回転子をポンプの軸に結合でき、その結果、回転子の回転は、ポンプの回転するグループを回転させ流体の流れを提供できる。
【0006】
インバータおよびモータコントローラを含む電子駆動機器は、典型的にはモータと別個のものであり、ケーブルを介して電気モータの固定子の巻線に接続される。ポンプ、および電気モータを伴う電子駆動機器を一体化する組立体を有することが望ましいことがある。このように、油圧ポンプとモータの間で軸、軸受などのような機械的構成要素を共用でき、コントローラとモータの間に伸びるケーブルを排除できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国仮特許出願第63/182,072号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本明細書で行う本開示が提示するのはこれらおよび他の考慮事項に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、力平衡および内部冷却特徴を伴う油圧歯車ポンプ用組立体に関する実装形態について記述する。
【0010】
第1の実装形態の例では、本開示は、ポンプ筐体であって、(i)ポンプ筐体チャネル、および(ii)ポンプ筐体の内面の中に配置された弓状溝を有するポンプ筐体と、ポンプ筐体内部に配置されポンプ筐体に対して回転可能なポンプ内歯車と、ポンプピニオンであって、ポンプ内歯車内部に配置され、その結果、ポンプピニオンの外歯がポンプ内歯車の内歯と係合するポンプピニオンと、第1のポートおよび第2のポートを有するポンプ・ポート・ブロックであって、ポンプピニオンがポンプ内歯車内部で回転するとき、流体は、第1のポートから吸い込まれ、放出するために第2のポートに提供され、第2のポートに提供されている流体の一部分は、ポンプ筐体チャネルに提供されてポンプ筐体を冷却し、ポンプ筐体チャネルから得られる流体は、弓状溝に提供され、弓状溝内の流体は、半径方向内向きの力をポンプ内歯車に加えるポンプ・ポート・ブロックとを含む歯車ポンプについて記述する。
【0011】
実装形態の第2の例では、本開示は、組立体について記述する。組立体は、中に内部チャンバを有する主筐体と、主筐体の内部チャンバの中に配置され、(i)主筐体の内部チャンバの中に固定して位置決めされた固定子、および(ii)固定子内部に位置決めされ固定子に対して回転可能な回転子を備える電気モータと、第1の実装形態の例の歯車ポンプであって、歯車ポンプは、主筐体の中で少なくとも部分的に電気モータの回転子内部に位置決めされ、ポンプピニオンは、ポンプ駆動軸に搭載され電気モータの回転子に回転可能に結合した歯車ポンプとを含む。
【0012】
前述の要約は例示的でしかなく、決して限定することを意図するものではない。上記で記述する例示的様態、実装形態、および特徴に加えて、図および以下の詳細な記述を参照することにより他の様態、実装形態、および特徴が明らかになるであろう。
【0013】
例証する例に特徴的であると考えられる新規の特徴について、添付の特許請求の範囲に示す。しかしながら、例証する例だけではなく、例証する例の好ましい利用形態、他の目的、およびそれらについての記述も、添付図と併せて読んだとき、本開示の例証する例の以下の詳細な記述を参照することにより最もよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実装形態の例による組立体の斜視図を例示する。
【
図2】実装形態の例による、
図1の組立体の横断面側面図を例示する。
【
図3】実装形態の別の例による、
図1の組立体の斜視分解図を例示する。
【
図4】実装形態の例による歯車ポンプの斜視図を例示する。
【
図5】実装形態の例による、
図4の歯車ポンプの横断面側面図を例示する。
【
図6】実装形態の例による、
図4の歯車ポンプの斜視分解図を例示する。
【
図7】実装形態の例による、動作中の組立体内部の流体経路を示す、
図4の歯車ポンプの横断面上面図を例示する。
【
図8A】実装形態の例によるポンプ筐体の斜視図を例示する。
【
図8B】実装形態の例による、異なる角度から得られる、
図8Aのポンプ筐体の別の斜視図を例示する。
【
図9A】実装形態の例によるポンプ筐体の斜視図を例示する。
【
図9B】実装形態の例による、異なる角度から得られる、
図9Aのポンプ筐体の別の斜視図を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、力平衡および内部冷却特徴を伴う歯車ポンプに関する。本開示はまた、歯車ポンプ、ならびに構成要素を共用することにより費用を低減し空間を節約し信頼性を高める小型構成を提供する組立体を有する、電気モータを伴う電子駆動機器を(たとえば、モータコントローラだけではなくインバータも)一体化または埋め込むことに関する。
【0016】
実装形態の例によれば、
図1は組立体100の斜視図を例示し、
図2は組立体100の横断面側面図を例示し、
図3は組立体100の斜視分解図を例示する。
図1~
図3についてまとめて記述する。
【0017】
組立体100は、一緒に一体化された電気モータ102、歯車ポンプ104、および電子駆動機器106を備える。組立体100は、電気モータ102の構成要素および歯車ポンプ104が配置された、中に内部チャンバ110を有する主筐体108を含む。
【0018】
電気モータ102は、主筐体108の内部チャンバ110内部に固定して位置決めされた固定子112を含む。固定子112は、磁界を発生させるように構成される。詳細には、固定子112は、固定子112の本体(たとえば、積層スタック)の周囲に巻かれた巻線(図示せず)を含む可能性があり、巻線を通して電流を提供するとき、磁界が発生する。
【0019】
電気モータ102は、固定子112内部に位置決めされた回転子114をさらに含む。電気モータ102は、固定子112と回転子114の間の環状空間内で回転子114に搭載された磁石116をさらに含む可能性がある。例では、磁石116は、
図3に示すように回転子114の周辺に軸方向に間隔を置いて配置された2つの円周磁石アレイを含む。
【0020】
磁石116は、回転子114を回転させトルクを作り出すために、固定子112が発生させる磁界と相互作用するように構成される。他の実装形態の例では、永久磁石を含まない、異なるタイプの電気モータを使用してよい。
【0021】
歯車ポンプ104は、主筐体108内部に、少なくとも部分的に電気モータ102の回転子114および固定子112の内部に搭載される。組立体100は、第1のポート118、第2のポート119、および排出ポート120を有するポンプ・ポート・ブロック117を有する。
【0022】
歯車ポンプ104は、ポンプ筐体202内部に配置されたポンプピニオン122(たとえば、周辺の外面内に形成された外歯を有する平歯車)およびポンプ内歯車124(たとえば、周辺の内面内に形成された内歯を有する内歯車)を有する内接歯車ポンプとして構成される。
図2に描くように、ポンプピニオン122は、ポンプ駆動軸126に搭載され、またはポンプ駆動軸126の不可欠な部分であり、ポンプピニオン122の歯は、ポンプ内歯車124の歯と係合する。さらに、ポンプピニオン122は、ポンプ内歯車124に対して偏心に搭載される、すなわち、ポンプピニオン122の回転中心は、ポンプ内歯車124の回転中心に対して偏心である、またはポンプ内歯車124の回転中心からずれている。
【0023】
ポンプ・ポート・ブロック117は、複数の締結具、またはボルト127などのボルトを介して主筐体108に結合する。
【0024】
回転子114は、円筒状部分128およびスピンドル部分130を有する。スピンドル部分130は、主筐体108および電子機器筐体132に対して回転子114が回転するように、回転子114のスピンドル部分130の外面の周囲に配置された軸受134を介して電子駆動機器106の電子機器筐体132内部で支持される。
【0025】
ポンプ駆動軸126は、スプライン係合を介して回転子114に回転可能に結合する。詳細には、ポンプ駆動軸126は、ポンプ駆動軸126の外面の周囲に形成されて回転子114のスピンドル部分130の内面上に形成された対応するスプラインと係合するように構成されたスプライン(たとえば、
図4~
図6に関して以下で記述するスプライン204)を有する。このように、回転子114は、ポンプ駆動軸126に駆動可能に接続され、動作中に回転運動をポンプ駆動軸126に伝達するように構成される。
【0026】
上記で言及するように、回転子114、および詳細には回転子114のスピンドル部分130は、軸受134を介して回転子114の外面の周囲で支持される。それに加えて、ポンプ駆動軸126はまた、
図2に示すように、回転子114の内面のための支持を提供する、直径が増大した部分136で、回転子114を支持する。したがって、回転子114は、2つの部位または点で、すなわち、軸受134が支持する、回転子114の外面の周囲の部位、およびポンプ駆動軸126が回転子114を支持する、回転子114の内面の周囲の部位で支持される。この構成があれば、ポンプ駆動軸126は、回転子114のための支持を拡大して提供し、動作中に回転子114の誤整列またはねじれを妨げることがある。
【0027】
動作中、回転子114が回転するとき、ポンプ駆動軸126とのスプライン係合により、回転子114の回転運動は、ポンプ駆動軸126に伝達される。スプライン係合が注油されたままに保たれることが望ましいことがある。そのように注油することにより、組立体100の構成要素(たとえば、回転子114およびポンプ駆動軸126)の寿命が延びる。たとえば、グリースを使用してスプライン係合に注油してよい。
【0028】
スプライン係合の部位でグリースまたは任意の潤滑流体を維持することが望ましいことがある。したがって、組立体100は、ポンプ駆動軸126の外面の周囲に形成された溝139(
図5および
図7を参照されたい)の中に配置された第1のシール138(たとえばOリング)を含む。さらに、組立体100は、回転子114のスピンドル部分130内部に挿入されたキャップ140を含み、キャップ140は、キャップ140の対応する外面の周囲に形成された溝の中に配置された第2のシール142(たとえばOリング)を有する。
【0029】
第1のシール138および第2のシール142は、ポンプ駆動軸126およびスピンドル部分130のスプラインにまたがる。このように、スプライン係合部位でのどんな潤滑剤も密封され、第1のシール138と第2のシール142の間に残る。この構成があれば、潤滑剤は、スプライン係合の部位の外側に漏れなくてよい。
図2に示すように、組立体100は、同じくポンプ駆動軸126の外面の周囲に配置され、流体が歯車ポンプ104から電気モータ102の中に漏れるのを妨げるように構成された軸シール144をさらに含む。
【0030】
電子駆動筐体132は、
図3に示すボルト146などのボルトを介して主筐体に結合する。電子駆動筐体132は、
図1に示すボルト149など、複数の締結具を介して電子機器筐体カバー148に結合する。この構成があれば、電子機器筐体132および電子機器筐体カバー148は、電子駆動機器106の電子ボードおよび構成要素が配置される密閉箱を形成する。このように、電子駆動機器106は、組立体100の中に電気モータ102および歯車ポンプ104と一体化される。
【0031】
図2に示すように、電子駆動機器106は、描くように互いに電気的に結合し軸方向にずれたコントローラボード150およびインバータボード152など、1つまたは複数の電子ボードを含む可能性がある。コントローラボード150およびインバータボード152は、プリント回路基板(printed circuit board、PCB)として構成できる。PCBは、非導電性基板のシート層の上に、および/または非導電性基板のシート層の間で、1つまたは複数の銅積層シート層からエッチングされた伝導性トラック、パッド、および他の特徴を使用する電子的構成要素(たとえば、マイクロプロセッサ、集積チップ、コンデンサ、抵抗器など)を機械的に支持し電気的に接続する。構成要素は、一般に構成要素をPCBに電気的に接続するだけではなく機械的に締結するようにPCBの上にはんだづけされる。
【0032】
インバータボード152は、たとえば隔離絶縁器を介してコントローラボード150から分離しコントローラボード150に結合できる。インバータボード152は、複数の導電性バスバーを含む可能性があり、直流(direct current、DC)電力を受け取り、インバータボード152に搭載された構成要素に電力を提供するように構成される。
【0033】
例として、DC電力は、電池からインバータボード152に提供できる。この構成があれば、DC電力はバスバーに提供され、バスバーは、次いで電力をインバータボード152の他の構成要素に伝送する。
【0034】
インバータボード152は、インバータボード152で受け取ったDC電力を、固定子112の巻線に提供して電気モータ102を駆動できる三相交流(alternating current、AC)電力に変換する電力変換装置として構成できる。たとえば、インバータボード152は、インバータボード152に搭載され正のDC端子および負のDC端子に電気的に接続されるように構成された半導体スイッチングマトリックスを含む可能性がある。インバータボード152は、インバータボード152とコントローラボード150の間にある軸方向の空間の中に配置された複数のコンデンサをさらに含む可能性がある。
【0035】
半導体スイッチングマトリックスは、DCから三相電力への変換を支援する半導体スイッチング素子の任意の配列を含む可能性がある。たとえば、半導体スイッチングマトリックスは、三相を含む可能性があり、ブリッジ要素は、入力DC端子に電気的に結合し三相AC出力端子に接続される。
【0036】
例では、半導体スイッチングマトリックスは、複数のトランジスタ(たとえば、絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタまたは金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)を含む。トランジスタは、コントローラボード150に搭載されたマイクロプロセッサが提供するたとえばパルス幅変調(pulse width modulated、PWM)信号を介して、活動化状態または「オン」状態および非活動化状態または「オフ」状態の間で切り替え可能である。マイクロプロセッサは、1つまたは複数のプロセッサを備える可能性がある。プロセッサは、汎用プロセッサ(たとえば、インテル(登録商標)社のシングル・コア・マイクロプロセッサもしくはインテル(登録商標)社のマルチコアプロセッサ)または専用プロセッサ(たとえば、デジタル・シグナル・プロセッサ、グラフィックスプロセッサ、もしくは特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASIC)プロセッサ)を含む可能性がある。プロセッサは、本明細書全体を通して記述する動作を遂行するコンピュータ可読プログラム命令(computer-readable program instruction、CRPI)を実行するように構成できる。プロセッサは(たとえば、CRPIを介した)ソフトウェアコード化機能に加えて、またはその代わりに、ハードコード化機能を実行するように構成できる。
【0037】
PWM信号を介して特定の時間に半導体スイッチングマトリックスのトランジスタを活動化および非活動化するとき、AC出力端子にAC電圧波形が発生する。したがって、AC出力端子の電圧波形は、パルス幅変調され、電位DC+と電位DC-の間で振動する。次いでAC電圧波形を固定子112の巻線に提供して電気モータ102を駆動する。コントローラボード150およびインバータボード152は、互いの間で、および組立体100の他の構成要素、または外部構成要素へ、信号および電力の送受信を容易にするいくつかの接続を含む可能性がある。
【0038】
電子駆動機器106は、複数のセンサを含む可能性がある。たとえば、電子駆動機器106は、電気モータ102の動作温度、および/または歯車ポンプ104を通して流れる作動液の流体温度を示す情報を提供するように構成された温度センサを含む可能性がある。電子駆動機器106はまた、固定子112の巻線内の電流レベルを示す情報を提供するホール効果電流センサを含む可能性がある。
【0039】
電子駆動機器106は、組立体100内部の流体の圧力レベルを示す圧力センサをさらに含む可能性がある。電子駆動機器106はまた、回転子114およびポンプ駆動軸126の角度位置を示すセンサ情報を提供するように構成された回転位置センサを含む可能性がある。回転子114が作り出す速度およびトルクを閉ループフードバック制御構成で制御するように、電気モータ102を制御するマイクロプロセッサは、回転位置センサ情報を使用できる。
【0040】
たとえば、コントローラボード150は、
図2に示すように、回転子114のスピンドル部分130近くに搭載すべきセンサチップまたは符号器154を含む可能性がある。符号器154は、キャップ140内に配置された磁石156と相互作用するように構成できる。符号器154は、回転子114の角度位置または角度移動を、電気モータ102を制御するマイクロコントローラに提供されるアナログまたはデジタルの出力信号に変換する電気機械機器として構成される。
【0041】
図1~
図3に示すように、電子駆動機器106は、コントローラボード150の導電性トラックに電気的に接続された複数の導体ピンを収容する中空プラスチック構成要素として構成された電気コネクタ158をさらに含む可能性がある。メスピンを有するコネクタソケット(図示せず)は、導体ピンがコネクタソケットのメスピンと接触させるように電気コネクタ158に搭載できる、または電気コネクタ158の中に挿入できる。配線は、電気コネクタ158の導体ピンに信号を提供し導体ピンから信号を受信するようにメスピンに接続できる。
【0042】
この構成があると、電子駆動機器106は、電気コネクタ158を介してさまざまな入力信号およびセンサ信号を受信でき、受信した情報に応答してコマンドを提供できる。たとえば、電子駆動機器106は、中央コントローラから、または機械の入力機器(たとえば、ホイールローダ、バックホー、または掘削機などの水圧機器のジョイスティック)から、歯車ポンプ104が提供すべき所望の流体圧力および流体の流量を示すコマンド信号を受信できる。電子駆動機器106は、次いで固定子112に提供されるAC電力を制御して、ポンプ駆動軸126で特定の速度およびトルクを発生させて、所望の流体圧力レベルおよび流量を達成できる。電子駆動機器106はまた、電気コネクタ158を介して別の中央コントローラに(たとえば、符号器154から得た)センサ信号を提供できる。
【0043】
したがって、電子駆動機器106は、組立体100用コントローラとしてだけではなく組立体100が制御するアクチュエータとしても使用できる。詳細には、電子駆動機器106は、組立体100内部のセンサおよびアクチュエータに関連するセンサからコマンド信号およびセンサ信号を受信し、それに応答して、電気モータ102および歯車ポンプ104を制御して、命令された、アクチュエータの所望の動きを達成する。
【0044】
歯車ポンプ104について電気モータ102および電子駆動機器106を含む組立体100の中に一体化されるとして上記で記述するが、歯車ポンプ104は、独立型ポンプとして使用できる。次に歯車ポンプ104の詳細について記述する。
【0045】
実装形態の例によれば、
図4は歯車ポンプ104の斜視図を例示し、
図5は歯車ポンプ104の横断面側面図を例示し、
図6は歯車ポンプ104の斜視分解図を例示する。
図4~
図6についてまとめて記述する。
【0046】
歯車ポンプ104は、ポンプ・ポート・ブロック117と端部カバー200の間に搭載され置かれる。上記で記述するように、ポンプ・ポート・ブロック117は、第1のポート118、第2のポート119、および排出ポート120を含む。軸シール144は、端部カバー200内に形成されたキャビティの中に配置され、その結果、端部カバー200の内面とポンプ駆動軸126の外面の間に配置される。
【0047】
歯車ポンプ104は、歯車ポンプ104の構成要素を収容するように構成されたポンプ筐体202を有する。ポンプ駆動軸126は、スピンドル204を介して回転子114のスピンドル部分130に回転可能に結合して、ポンプ駆動軸126を介してポンプピニオン122およびポンプ内歯車124に回転運動を提供する。
【0048】
ポンプ内歯車124およびポンプピニオン122は、(i)ポンプ内歯車124およびポンプピニオン122の遠位側に配置された第1のスラストプレート206、ならびに(ii)ポンプ内歯車124およびポンプピニオン122の近位側の第2のスラストプレート208を介して、ポンプ筐体202内部で軸方向に支持される。したがって、ポンプピニオン122およびポンプ内歯車124は、スラストプレート206と208の間に置かれる、または挟まれる。以下で記述するように、スラストプレート206、208は、歯車ポンプ104内部の漏れを低減し歯車ポンプ104の効率を改善できる軸方向補償器として動作できる。
【0049】
スラストプレート206、208は、次に第1のポンプカバー210および第2のポンプカバー212により支持される。詳細には、スラストプレート206は、界面209でポンプカバー210と連結し、スラストプレート208は、界面211でポンプカバー212と連結する。本明細書では、2つの構成要素が接して相互作用する(たとえば、スラストプレート206、208がそれぞれポンプカバー210、212に接して相互作用する)点、平面、または空間(または平面もしくは空間の一部分)を指すために用語「界面」を使用する。
【0050】
図5および
図6に例示するように、第1のポンプカバー210は、ポンプ・ポート・ブロック117と連結する。同様に、第2のポンプカバー212は、端部カバー200と連結する。ポンプカバー210、212は、ポンプ筐体202を軸方向に支持する、対応する凹部または肩を有し、その結果、ポンプ筐体202は、ポンプカバー210と212の間に置かれる。歯車ポンプ104は、流体が歯車ポンプ104の外部環境に漏れるのを妨げるいくつかの面シールを、異なる構成要素の間の界面に含む可能性がある。
【0051】
ポンプ・ポート・ブロック117、第1のポンプカバー210、第2のポンプカバー212、および端部カバー200は、円形アレイの形で配置された締結具貫通孔を有し、その結果、
図6に示すボルト213(たとえば、ソケット・ヘッド・ボルト)を使用して、密着した軸方向の組立体の中にポンプ・ポート・ブロック117、第1のポンプカバー210、第2のポンプカバー212、および端部カバー200を軸方向に一緒に結合できる。したがって、ポンプ・ポート・ブロック117、第1のポンプカバー210、第2のポンプカバー212、および端部カバー200、ならびにこれらの間に配置された歯車ポンプ104の構成要素は、整列し積み重なり、次いでボルト213を使用して一緒に締めることができる。
【0052】
この構成があれば、歯車ポンプ104の構成要素は、ポンプカバー210、212の間に置かれポンプカバー210、212により支持され、ポンプカバー210、212は、次にポンプ・ポート・ブロック117および端部カバー200により支持される。
図5に描くように、端部カバー200、ポンプカバー210、212、およびスラストプレート206、208は、これらを通してポンプ駆動軸126に適応させる、対応する中央貫通孔を含む。ポンプ・ポート・ブロック117は、ポンプ駆動軸126の遠位端部が配置されるキャビティ214を有する。さらに、歯車ポンプ104は、歯車ポンプ104の外面とポンプカバー210、212およびスラストプレート206、208の内面の間でポンプ駆動軸126の周囲に配置された、ポンプ駆動軸126が回転できるようにするブッシュ216およびブッシュ218を含む。例では、ブッシュ216、218は、鋼鉄により強化された青銅またはテフロン(登録商標)から作られた乾燥無潤滑(dry unlubricated、DU)ブッシュである可能性がある。ブッシュ216、218は、ポンプ駆動軸126の回転を容易にする軸受として構成される。
【0053】
スラストプレート206、208は、ボルト213を用いて締められるのではなくむしろ、以下で記述するように軸方向に動いて任意の軸方向のすきまを埋め合わせて歯車ポンプ104内部での内部漏出を低減できる浮動構成要素として構成される。
【0054】
歯車ポンプ104は、双方向ポンプとして動作するように構成される。詳細には、第1のポート118は(たとえば、任意の油圧管路のホースを介して)組立体100に流体で結合した流体貯蔵器から流体を受け取るように構成された吸込口ポートとして動作でき、第2のポート119は、歯車ポンプ104から、組立体100に流体で結合した油圧アクチュエータに放出される加圧流体を提供するための吐出口ポートまたは放出ポートとして動作できる。油圧アクチュエータは、たとえば中で直線状に動くピストンを有する油圧シリンダである可能性がある、または油圧モータである可能性がある。この動作モードでは、ポンプピニオン122およびポンプ内歯車124は、第1の回転方向に回転し、油圧アクチュエータは、第1の方向に動くことができる。
【0055】
別の動作モードでは、第1のポート118は、歯車ポンプ104から放出される加圧流体を油圧アクチュエータに提供するための放出ポートとして動作でき、第2のポート119は、流体貯蔵器から流体を受け取るように構成された吸込口ポートとして動作できる。この動作モードでは、ポンプピニオン122およびポンプ内歯車124は、第1の回転方向と反対の第2の回転方向に回転し、油圧アクチュエータは、第1の方向と反対の第2の方向に動くことができる。
【0056】
次に、歯車ポンプ104が所与の方向に回転すると仮定して、歯車ポンプ104の動作について記述する。しかしながら、歯車ポンプ104は、ポートおよび流体体積の動作が逆になる反対方向でも同様に動作できることを理解されたい。
【0057】
動作中、ポンプ駆動軸126が回転するとき、ポンプピニオン122は、ポンプ内歯車124内部で回転する。ポンプピニオン122の外歯車の歯およびポンプ内歯車124の内歯車の歯は分離または離脱するので、膨張体積(すなわち、膨張チャンバ)を生成する。膨張体積は、分離する歯の間に形成された多数のポケットを集合的に表す。膨張体積は、吸込口ポート(たとえば、第1のポート118)に流体で結合する歯車ポンプ104の取入側で、分離する歯の間に形成された吸引空隙として動作する。その結果、吸込口ポートから得られる流体は、歯の間の膨張体積を満たす。
【0058】
流体は、ポンプピニオン122の歯車の歯およびポンプ内歯車124により、吐出口ポート(たとえば、第2のポート119)に流体で結合した歯車ポンプ104の放出側の別のチャンバまたは体積に運ばれる。ポンプピニオン122の歯車の歯およびポンプ内歯車124のかみ合いは、流体を移動させ、流体は、次いで吐出口ポートに提供される。したがって、ポンプピニオン122の歯およびポンプ内歯車124が歯車ポンプ104の放出側でかみ合うようになるとき、体積は減少し、流体は、圧力を受けて無理やり外に押し出される。
【0059】
ポンプピニオン122の歯およびポンプ内歯車124は、かみ合うとき、吸込口ポートから受け取った低圧流体を有する膨張体積と、放出ポートまたは吐出口ポートでかみ合っている、またはかみ合おうとしている歯の間の体積との間でシールを形成する。かみ合った歯が生成するシールは、流体を放出ポートの外に無理やり押し出し、流体が吸込口ポートに向けて逆流するのを防止する。
【0060】
さらに、
図5および
図6に示すように、歯車ポンプ104は、内側三日月形220、および上部三日月形または外側三日月形222を備える三日月形シール組立体を含む。用語「内側」および「外側」は、三日月形の半径方向の位置を指し、内側三日月形220は、外側三日月形222に対して半径方向内側に配置される。
【0061】
内側三日月形220および外側三日月形222は、
図2に描かれた第1の位置決めピン224および第2の位置決めピン226によりポンプ内歯車124とポンプピニオン122の間にある内部空間の内部で軸方向に支持される(位置決めピン226はまた
図3にも示されている)。
図5および
図6を一緒に参照すると、位置決めピン224は、第1のポンプカバー210内に形成された止り穴またはキャビティの中に部分的に配置され、スラストプレート206内の位置決めピン貫通孔225を通って伸展して、三日月形220、222の遠位端部と軸方向に連結する。同様に、位置決めピン226は、第2のポンプカバー212内に形成された止り穴またはキャビティの中に部分的に配置され、スラストプレート208内の位置決めピン貫通孔227を通って伸展して、三日月形220、222の近位端部と軸方向に連結する。
【0062】
この構成があれば、内側三日月形220および外側三日月形222は、位置決めピン224、226により軸方向に所定の位置に保持され、位置決めピン224、226はまた、三日月形220、222の配向を維持する。換言すれば、位置決めピン224、226は、三日月形シール組立体(内側三日月形220および外側三日月形222)を軸方向に支持する。
【0063】
歯車ポンプ104の動作中にポンプピニオン122およびポンプ内歯車124が回転するとき、三日月形220、222は、低圧吸引膨張体積から、放出ポートに結合した体積に流体が運ばれているとき、流体を分割する。その結果、三日月形220、222は、低圧体積と高圧体積の間のシールを形成できる。
【0064】
詳細には、外側三日月形222の外側表面(すなわち、半径方向外側表面)は、ポンプ内歯車124の内歯と連結して、間にシールを作成する。外側三日月形222の外側表面とポンプ内歯車124の内歯の間の効果的シールは、高圧体積から低圧体積への漏出を妨げることがある。流体の流れを「妨げる」または「遮断する」という用語は、本明細書ではたとえば毎分の液滴の最小の流れを除く流体の流れを実質的に防止することを示すために使用される。
【0065】
同様の手法で、内側三日月形220の内側表面(すなわち、半径方向内側表面)は、ポンプピニオン122の外歯と連結して、間にシールを作成する。内側三日月形220の内側表面とポンプピニオン122の外歯の間の効果的シールは、高圧体積から低圧体積への漏出を妨げることがある。
【0066】
三日月形220、222の三日月形シール組立体の構成は、効果的シールを提供し、三日月形220、222と歯車の歯の間の半径方向のすきまを埋め合わせて効果的シールを作成する。詳細には、膨張体積、または外側三日月形222と内側三日月形220の間の界面を通って漏れる高圧体積から得られる流体は、三日月形220、222を半径方向に離して押すことができる。その結果、三日月形220、222の間の流体は、外側三日月形222をポンプ内歯車124の内歯に向けて半径方向外側に押すことができ、それにより、間にあるどんな半径方向の空間またはすきまも除去し、効果的シールを形成する。同様に、三日月形220、222の間の流体は、内側三日月形220をポンプピニオン122の外歯に向けて半径方向内側に押し、それにより、間にあるどんな半径方向の空間またはすきまも除去し、効果的シールを形成する。
【0067】
さらに、三日月形220、222は、少なくとも1つのばねキャビティが間に形成されるように構成できる。ばねキャビティは、外側三日月形222の内側表面内の凹部として形成できる。他の実装形態の例では、ばねキャビティは、内側三日月形220の外側表面内の凹部として形成できる。別の例では、内側三日月形220も外側三日月形222も、間にばねキャビティを形成する、嵌合する面または向き合う面を有する可能性がある。
【0068】
ばねキャビティは、板ばねなどのばねを中に受け入れることができる。流体が三日月形220、222を半径方向に離して押すことに加えて、ばねキャビティの中に配置された板ばねはまた、三日月形220、222を半径方向に離して押すことができる。この構成があれば、板ばねは、外側三日月形222をポンプ内歯車124の内歯に向けて半径方向外側に押すことができ、それにより、外側三日月形222とポンプ内歯車124の内歯の間のシールの有効性を高める。同様に、板ばねは、内側三日月形220をポンプピニオン122の外歯に向けて半径方向内側に押すことができ、それにより、内側三日月形220とポンプピニオン122の間のシールの有効性を高める。本明細書では板ばねを付勢要素の例として使用する。波形ばねまたはコイルばねなど、他のタイプのばねを使用できる。
【0069】
さらに、三日月形シール組立体は、ポンプ駆動軸126の回転方向とは無関係に、高圧体積から低圧体積への流体の流れを妨げる逆止め弁を三日月形220と222の間に含む可能性がある。詳細には、外側三日月形222および内側三日月形220は、間に逆止め弁キャビティまたは凹部を形成する凹部または溝を有する可能性がある。止めピンは、そのような逆止め弁キャビティ内に位置決めできる。
【0070】
三日月形220、222の間で高圧体積から低圧体積に漏れる加圧流体は、止めピンのための取付位置を形成する三日月形220、222の表面に止めピンを押しつける。その結果、止めピンは、三日月形の表面と共にシールを作成し、シールを越える漏出を防ぐ。反対方向に配置された別の止めピンおよび逆止め弁キャビティは、ポンプ駆動軸126が反対の回転方向に回転するとき、反対方向での漏出を防ぐ、または遮断することができる。
【0071】
その結果、三日月形シール組立体のこの構成は、歯車ポンプ104が双方向になることを可能にする。流体が第1のポート118を通って吸い込まれ、次いで第2のポート119に移動させられようと、その逆であろうと、止めピンは、漏出流体の流れをいずれの方向でも遮断する反対方向の逆止め弁として動作する。追加止めピンを追加して、歯車ポンプ104の取入側と放出側の間のシールをさらに強化できる。
【0072】
図6に示すように、ポンプピニオン122およびポンプ内歯車124の遠位側では、第1のポンプカバー210は、第1のポンプカバー210を通る流体連通を可能にする、それぞれ第1のポート118および第2のポート119に対応し第1のポート118および第2のポート119と整列する貫通孔228および貫通孔230を有する可能性がある。同様に、スラストプレート206は、そこを通る流体連通を可能にする、おおむね腎臓形の貫通孔232および貫通孔234を有する。
【0073】
ポンプピニオン122およびポンプ内歯車124の近位側では、スラストプレート208は、そこを通る流体連通を可能にする、とりわけ貫通孔236、貫通孔238など、多数の貫通孔を有する。その結果、膨張体積、およびポンプピニオン122とポンプ内歯車124の間に形成された膨張体積および高圧体積内の流体は、スラストプレート206、208内の貫通孔を介して軸方向に両方向に連通できる。その結果、流体は、それぞれスラストプレート206、208とポンプカバー210、212の間の界面209、211に到達する(
図5を参照されたい)。
【0074】
スラストプレート206と第1のポンプカバー210の間の界面209で捕獲された流体は、ポンプピニオン122およびポンプ内歯車124の遠位端面に向けて軸方向の流体力をスラストプレート206に加える。このように、スラストプレート206とポンプピニオン122およびポンプ内歯車124の遠位端面の間に金属同士のシールが作成される。同様に、スラストプレート208と第2のポンプカバー212の間の界面211で捕獲された流体は、ポンプピニオン122およびポンプ内歯車124の近位端面に向けて軸方向の流体力をスラストプレート208に加える。このように、スラストプレート208とポンプピニオン122ポンプ内歯車124の近位端面の間に金属同士のシールが作成される。
【0075】
ポンプピニオン122およびポンプ内歯車124に向けてスラストプレート206、208に作用する流体力は、ポンプピニオン122およびポンプ内歯車124に対してスラストプレート206、208を軸方向に押し、または圧迫し、それにより、効果的シールを作成し、間にあるどんな軸方向のギャップも排除する。したがって、スラストプレート206、208は、間に配置されたスラストプレート206、208とポンプピニオン122およびポンプ内歯車124の間のどんな軸方向ギャップも埋め合わせることができ、それにより、漏出を低減し歯車ポンプ104の効率を改善するので、軸方向補償器と呼ぶことができる。
【0076】
図6を参照すると、歯車ポンプ104は、輪郭形成シールキャビティまたは凹部の中に配置できる第1組の腎臓形シール240などの第1組のシールをスラストプレート206の遠位側に含む可能性があり、凹部は第1組の腎臓形シール240の形状に調和する形状を有する。この構成があれば、第1組の腎臓形シール240は、スラストプレート206と第1のポンプカバー210の間の界面209に連通する(膨張体積から得られる)低圧流体から、スラストプレート206と第1のポンプカバー210の間の界面209に連通する(高圧体積から得られる)高圧流体を隔離または密封する。その結果、第1組の腎臓形シール240は、高圧側から低圧側へのクロスフローまたは漏出を防ぐことがある。
【0077】
同様に、歯車ポンプ104は、輪郭形成シールキャビティまたは凹部の中に配置された第2組の腎臓形シール242などの第2組のシールをスラストプレート208の近位側に含む可能性があり、凹部は第2組の腎臓形シール242の形状に調和する形状を有する。第2組の腎臓形シール242は、スラストプレート208と第2のポンプカバー212の間の界面211に連通する(膨張体積から得られる)低圧流体から、スラストプレート208と第2のポンプカバー212の間の界面211に連通する(高圧体積から得られる)高圧流体を隔離または密封してよい。その結果、第2組の腎臓形シール242は、高圧側から低圧側へのクロスフローまたは漏出を妨げることがある。
【0078】
図5に戻り参照すると、第2のポンプカバー212は、第2のポンプカバー212とスラストプレート208の間の界面211で端部カバー200内のキャビティまたは凹部244に流体を連通させるように構成されたチャネル(図示せず)を有する可能性がある。凹部244は、次に端部カバー200に到達する任意の高圧流体を排出して歯車ポンプ104内部の内部圧力を低減する排出通路246を通して排出ポート120に流体で結合する。
【0079】
同様に、第1のポンプカバー210は、ポンプ・ポート・ブロック117内のキャビティ214に流体を連通させることができるチャネル(図示せず)を有する可能性がある。キャビティ214は、次にポンプ・ポート・ブロック117に到達する任意の高圧流体を排出して歯車ポンプ104内部の内部圧力を低減する排出通路248を通して排出ポート120に流体で結合する。
【0080】
上記で言及するように、ポンプピニオン122の外歯が歯車ポンプ104の取入側でポンプ内歯車124の内歯から分離するとき、膨張体積が低圧で作成される。歯車ポンプ104の放出側では、ポンプピニオン122の外歯がポンプ内歯車124の内歯とかみ合うとき、減少体積により流体は圧力を受けて無理やり外に押し出される。
【0081】
放出側でポンプピニオン122とポンプ内歯車124の間でそのように加圧された流体は、ポンプ筐体202に向けて半径方向外向きの力をポンプ内歯車124に加えることができる。その結果、半径方向外向きの力がポンプ筐体202に向けてポンプ内歯車124を押す領域で、ポンプ内歯車124とポンプ筐体202の間の界面で摩擦および摩耗が発生することがある。
【0082】
そのような界面領域は、ポンプピニオン122の回転方向に基づき異なってよい。詳細には、ポンプピニオン122が第1の方向で回転しているとき(たとえば、第1のポート118が吸込口ポートであり、第2のポート119が吐出口ポートであるとき)摩耗する傾向がある、または摩擦を受ける領域は、ポンプピニオン122が第2の方向で回転しているとき(たとえば、第2のポート119が吸込口ポートであり、第1のポート118が吐出口ポートであるとき)摩耗する傾向がある、または摩擦を受ける、対応する領域と異なってよい。
【0083】
さらに、動作中に熱が発生し、歯車ポンプ104の構成要素に損傷を生じさせることがある。本明細書で開示する歯車ポンプ104は、高圧流体が半径方向外向きの力をポンプ内歯車124に加える結果生じる摩擦力を無効にしてそのような摩擦を軽減するように構成され、さらにまた歯車ポンプ104の構成要素の少なくともいくつかを冷却する冷却回路を提供するように構成される。
【0084】
図7は、実装形態の例による、動作中の組立体内部の流体経路を示す、歯車ポンプ104の横断面上面図を例示する。
図7の横断面上面図は、
図5の横断面側面図の対応する平面に垂直な平面に沿って得られる。
【0085】
図7では、第1のポート118は、流体貯蔵器から流体を受け取る吸込口ポートであり、第2のポート119は、歯車ポンプ104が油圧アクチュエータに加圧流体を放出する吐出口ポートである。第1のポート118で受け取った流体は、吸込口流体通路700を通り、ポンプピニオン122がポンプ内歯車124内部で回転するときに形成された膨張チャンバに流れる。ポンプピニオン122がポンプ内歯車124内部で回転するとき、流体は、圧力を受けて吐出口流体通路702に強制的に押し出され、吐出口流体通路702は、次いで第2のポート119に流体を提供する。
【0086】
さらに、第2のポート119に提供されている流体を使用して、ポンプ筐体202を冷却する。詳細には、吐出口流体通路から得られる流体の一部分は、分岐して、または方向転換して、ポンプ・ポート・ブロック117内に形成されたチャネル704を通り、次いでチャネル704と整列した、ポンプカバー210内に形成されたチャネル706を通り、次いでポンプ筐体202内に形成された第1のポンプ筐体チャネル708を通って流れる。
【0087】
実施形態の例によれば、
図8Aは、ポンプ筐体202の斜視図を例示し、
図8Bは、異なる角度から得られる、ポンプ筐体202の別の斜視図を例示する。
図7および
図8Aを一緒に参照すると、ポンプ筐体202内の第1のポンプ筐体チャネル708は傾斜し、ポンプ筐体内の開口部または孔800を通して、ポンプ筐体202の内面内に形成された第1の弓状溝802に流体を提供する。
【0088】
ポンプ内歯車124が回転するとき、孔800を通して受け取った流体は、ポンプ内歯車124の外面とポンプ筐体202の内面の間のすきままたは環状空間の中を循環でき、
図8Bに示す第2の弓状溝804に提供される。ポンプ筐体202は、第2の弓状溝804の中に配置された孔806を含む。図示するように、第2の弓状溝804は、ポンプ筐体202の周辺の内面に沿って第1の弓状溝802から角度方向に間隔を置いて配置される。
【0089】
図7および
図8Bを一緒に参照すると、第2の弓状溝804内の流体は、孔806を通して第2のポンプ筐体チャネル710に、次いでポンプカバー210内に形成されたチャネル712を通して、次いでポンプ・ポート・ブロック117内に形成されたチャネル714を通して提供され、チャネル714は、チャネル712と整列する。流体は、次いで第1のポート118から得られる流体と合流して、ポンプピニオン122の歯とポンプ内歯車124の間に形成された膨張チャンバに提供される。
【0090】
したがって、吐出口流体通路702から得られる流体は、ポンプ筐体202を通って循環し、その結果、ポンプ筐体202を冷却してポンプ筐体202の温度を低下させることがある。それに加えて、第1の弓状溝802に提供される流体は、ポンプ内歯車124とポンプ筐体202の間の摩耗および摩擦を低減させることがある。
【0091】
上記で言及するように、ポンプピニオン122とポンプ内歯車124の間の加圧流体は、ポンプ筐体202に向けて半径方向外向きの力をポンプ内歯車124に加える。吐出口流体通路702および第1のポンプ筐体チャネル708を通して提供される加圧流体は、流体のポケットとして動作する第1の弓状溝802の中に蓄積できる。第1の弓状溝802内の加圧流体は、ポンプ内歯車124に作用する半径方向外向きの力に対向する、またはそれと釣り合う半径方向内向きの力をポンプ内歯車124に加える。その結果、ポンプ内歯車124とポンプ筐体202の間の摩擦は低減され、ポンプ内歯車124およびポンプ筐体202の摩耗は軽減されることがある。
【0092】
とりわけ、上記で言及するように、歯車ポンプ104は、双方向であるように構成され、第2のポート119が吸込口ポートである反対方向にポンプ駆動軸126が駆動されるとき、摩耗を受ける領域は、異なることがある。この場合、加圧流体の対応する部分は、第1の弓状溝802ではなくむしろ第2の弓状溝804に提供され、第2の弓状溝804内の加圧流体は、ポンプピニオン122の歯およびポンプ内歯車124により圧迫されている流体の半径方向外向きの力に対抗する、対応する半径方向内向きの力を加える。換言すれば、歯車ポンプ104のチャネルおよび溝の動作は、歯車ポンプ104が方向を逆にするときに逆になる。
【0093】
孔800、806は、それらの対応する弓状溝の内部に配置されると示されているが、他の実装形態の例では、溝の内部に配置されない。換言すれば、弓状溝は、孔から円周方向または角度方向に間隔を置いて配置できる。
【0094】
実施形態の例によれば、
図9Aは、ポンプ筐体900の斜視図を例示し、
図9Bは、異なる角度から得られる、ポンプ筐体900の別の斜視図を例示する。ポンプ筐体900は、第1の弓状溝902および第2の弓状溝904を有する。
【0095】
ポンプ筐体900は、孔800が第1の弓状溝902の内部に配置されず、孔806が第2の弓状溝904の内部に配置されないという点でポンプ筐体202と異なる。むしろ、第1の弓状溝902は、孔800から角度方向に間隔を置いて配置され、第2の弓状溝904は、孔806から角度方向に間隔を置いて配置される。
【0096】
流体は、孔800を通して第1のポンプ筐体チャネル708から提供され、次いでポンプ内歯車124がポンプ筐体900内部で回転するとき、歯車ポンプ104が第1の方向に動作しているときに流体が蓄積する第1の弓状溝902に引っ張られる。歯車ポンプ104が第2の方向に動作するとき、流体は、孔806を通して第2のポンプ筐体チャネル710から提供され、次いでポンプ内歯車124がポンプ筐体900内部で回転するとき、流体が蓄積する第2の弓状溝904に引っ張られる。
【0097】
したがって、弓状溝(たとえば、弓状溝902、904)は、最も大きな摩擦を受ける、ポンプ筐体の内面の領域に位置する可能性がある。このように、摩耗を低減でき、ポンプ筐体およびポンプ内歯車の寿命は向上することがある。
【0098】
上記の詳細な記述は、添付図を参照して、開示するシステムのさまざまな特徴および動作について記述する。本明細書で記述する例示的実装形態は限定することを意味するものではない。開示するシステムのある種の様態は、すべて本明細書で企図する広範な異なる構成で配列および組み合わせることができる。
【0099】
さらに、前後関係がそうではないと連想させない限り、図の各々で例示する特徴は、互いに組み合わせて使用されてよい。したがって、図は、一般に1つまたは複数の実装形態全体の構成要素の様態として見るべきであり、例示する図すべてが各実装形態に必要であるわけではないことがわかる。
【0100】
それに加えて、この明細書または特許請求の範囲での要素、ブロック、またはステップのどんな列挙も、わかりやすくするためである。したがって、そのような列挙は、これらの要素、ブロック、またはステップが特定の配列に忠実である、または特定の順序で行われることを要求または意味すると解釈されるべきではない。
【0101】
さらに、機器またはシステムは、図に提示する機能を遂行するように使用または構成されてよい。いくつかの実例では、機器および/またはシステムの構成要素は、そのような性能を可能にするように(ハードウェアおよび/またはソフトウェアを用いて)実際に構成および構造化されるように、機能を遂行するように構成されてよい。他の例では、機器および/またはシステムの構成要素は、特有の手法で動作するときなど、機能を遂行するように適合するように、機能を遂行できるように、または機能を遂行するのにふさわしいように配列されてよい。
【0102】
「実質的に」という用語により、記載された特性、パラメータ、または値を正確に達成する必要があるわけではなく、たとえば許容範囲、測定誤差、測定精度限界、および当業者に公知の他の要因を含む偏差または変動が、特性が提供することを意図する効果を妨げない量で発生してよいことを意味する。
【0103】
本明細書で記述する配列は、例のためだけにある。したがって、他の配列および他の要素(たとえば、機械、界面、動作、順序、および動作のグループなど)を代わりに使用でき、所望の結果に従っていくつかの要素を完全に排除してよいことを当業者は認識されよう。さらに、記述する要素の多くは、任意の適切な組合せおよび場所で、別個の構成要素もしくは分散した構成要素として、または他の構成要素と併せて実装されてよい機能的実体である。
【0104】
本明細書でさまざまな様態および実装形態について記述してきたが、他の様態および実装形態が当業者に明らかであろう。本明細書で開示するさまざまな様態および実装形態は、例示のためにあり、限定することを意図するものではく、範囲は以下の特許請求の範囲により、そのような特許請求の範囲が権利を与える均等物の完全な範囲と共に示される。また、本明細書で使用する専門用語は、特定の実装形態を記述するためだけのものであり、限定するものではない。
【0105】
したがって、本開示の実施形態は、以下に記載する、列挙する実施形態の例(enumerated example embodiment、EEE)のうち1つに関する可能性がある。
【0106】
EEE1は、ポンプ筐体であって、(i)ポンプ筐体チャネル、および(ii)ポンプ筐体の内面の中に配置された弓状溝を有するポンプ筐体と、ポンプ筐体内部に配置され、ポンプ筐体に対して回転可能なポンプ内歯車と、ポンプ内歯車内部に配置され、その結果、外歯がポンプ内歯車の内歯と係合するポンプピニオンと、第1のポートおよび第2のポートを有するポンプ・ポート・ブロックであって、ポンプピニオンがポンプ内歯車内部で回転するとき、流体は、第1のポートから吸い込まれ、放出するために第2のポートに提供され、第2のポートに提供されている流体の一部分は、ポンプ筐体チャネルに提供されてポンプ筐体を冷却し、ポンプ筐体チャネルから得られる流体は、弓状溝に提供され、弓状溝内の流体は、半径方向内向きの力をポンプ内歯車に加えるポンプ・ポート・ブロックとを備える歯車ポンプである。
【0107】
EEE2は、EEE1の歯車ポンプであり、ポンプ筐体は、ポンプ筐体チャネルに流体で結合した孔をさらに備え、その結果、流体は、ポンプ筐体チャネルから歯車ポンプを通って弓状溝に流れる。
【0108】
EEE3は、EEE2の歯車ポンプであり、孔は、弓状溝内部に配置される。
【0109】
EEE4は、EEE2またはEEE3の歯車ポンプであり、弓状溝は、孔からポンプ筐体の内面に沿って角度方向に間隔を置いて配置され、ポンプピニオンが回転するとき、ポンプ内歯車は回転し、それにより、孔を通して受け取った流体を弓状溝に提供する。
【0110】
EEE5は、EEE1~EEE4のうちいずれかの歯車ポンプであり、ポンプピニオンが回転するとき、第2のポートに提供されている、ポンプピニオンの外歯とポンプ内歯車の内歯の間の流体は、半径方向外向きの力をポンプ内歯車に加え、弓状溝内で流体が加える半径方向内向きの力は、ポンプ内歯車に加えられる半径方向外向きの力に対抗する。
【0111】
EEE6は、EEE1~EEE5のうちいずれかの歯車ポンプであり、ポンプ筐体チャネルは、第1のポンプ筐体チャネルであり、ポンプ筐体は、第2のポンプ筐体チャネルをさらに備え、ポンプ内歯車が回転するとき、第1のポンプ筐体チャネルを通して受け取った流体は、第2のポンプ筐体チャネルに提供され、第2のポンプ筐体チャネル内の流体は、次いで第1のポートを通して受け取った流体と合流する。
【0112】
EEE7は、EEE6の歯車ポンプであり、弓状溝は、第1の弓状溝であり、ポンプ筐体は、第1の弓状溝からポンプ筐体の内面に沿って角度方向に間隔を置いて配置された第2の弓状溝をさらに備え、ポンプピニオンがポンプ内歯車内部で反対方向に回転するとき、流体は、第2のポートから吸い込まれ、放出するために第1のポートに提供され、第1のポートに提供されている流体の対応する一部分は、第2のポンプ筐体チャネルに方向転換させられてポンプ筐体を冷却し、第2のポンプ筐体チャネルから得られる流体は、第2の弓状溝に提供され、第2の弓状溝内の流体は、対応する半径方向内向きの力をポンプ内歯車に加える。
【0113】
EEE8は、EEE1~EEE7のうちいずれかの歯車ポンプであって、ポンプ・ポート・ブロックとポンプ筐体の間に置かれたポンプカバーであって、ポンプカバーは、ポンプ筐体チャネルと整列したチャネルを備え、ポンプ筐体チャネルに方向転換させられた流体の一部分は、ポンプカバーのチャネルを通ってポンプ筐体チャネルに流れるポンプカバーをさらに備える。
【0114】
EEE9は、EEE8の歯車ポンプであり、ポンプカバーとポンプ内歯車の間に置かれたスラストプレートと、スラストプレートとポンプカバーの間の界面に形成されたシールキャビティ内部に配置されたシールとをさらに備える。
【0115】
EEE10は、EEE9の歯車ポンプであり、ポンプピニオンとポンプ内歯車の間でポンプ内歯車内部に配置された外側三日月形および内側三日月形を備える三日月形シール組立体と、ポンプカバー内に形成されたキャビティの中に配置され、その結果、ポンプカバーから軸方向に突出する位置決めピンであって、スラストプレートは、位置決めピン貫通孔を含み、位置決めピンは、位置決めピン貫通孔を通って伸展し、スラストプレートから突出して三日月形シール組立体と連結し、それにより、三日月形シール組立体を軸方向に支持する位置決めピンとをさらに備える。
【0116】
EEE11は、中に内部チャンバを有する主筐体と、主筐体の内部チャンバの中に配置され、(i)主筐体の内部チャンバの中に固定して位置決めされた固定子、および(ii)固定子内部に位置決めされ固定子に対して回転可能な回転子を備える電気モータと、主筐体の中で電気モータの回転子内部に少なくとも部分的に位置決めされた歯車ポンプであって、ポンプ筐体であって、(i)ポンプ筐体チャネル、および(ii)ポンプ筐体の内面の中に配置された弓状溝を有するポンプ筐体、ポンプ筐体内部に配置されポンプ筐体に対して回転可能なポンプ内歯車、ポンプ内歯車内部に配置され、その結果、外歯がポンプ内歯車の内歯と係合し、ポンプ駆動軸に搭載され、電気モータの回転子に回転可能に結合するポンプピニオン、ならびに第1のポートおよび第2のポートを有するポンプ・ポート・ブロックであって、電気モータの回転子がポンプ内歯車内部でポンプピニオンを回転させるとき、流体は、第1のポートから吸い込まれ、放出するために第2のポートに提供され、第2のポートに提供されている流体の一部分は、ポンプ筐体チャネルに供給されてポンプ筐体を冷却し、ポンプ筐体チャネルから得られる流体は、弓状溝に提供され、弓状溝内の流体は、半径方向内向きの力をポンプ内歯車に加えるポンプ・ポート・ブロックを備える歯車ポンプとを備える組立体である。
【0117】
EEE12は、EEE11の組立体であり、回転子は、(i)歯車ポンプが少なくとも部分的に配置される円筒状部分、および(ii)スピンドル部分を備え、ポンプ駆動軸は、回転子のスピンドル部分に回転可能に結合する。
【0118】
EEE13は、EEE12の組立体であり、ポンプ駆動軸は、スプライン係合を介して回転子のスピンドル部分に回転可能に結合し、組立体は、第1のシールおよび第2のシールを備え、スプライン係合は、第1のシールと第2のシールの間に置かれ、その結果、潤滑剤は、第1のシールと第2のシールの間のスプライン係合で密封される。
【0119】
EEE14は、EEE13の組立体であり、回転子のスピンドル部分の端部に配置されたキャップであって、第1のシールは、ポンプ駆動軸の外面の周囲の第1の溝の中に配置され、第2のシールは、キャップの対応する外面の周囲の第2の溝の中に配置されるキャップをさらに備える。
【0120】
EEE15は、EEE11~EEE14のうちいずれかの組立体であり、主筐体に連結した電子機器筐体と、電子機器筐体カバーであって、電子機器筐体に連結し、その結果、電子機器筐体カバーおよび電子機器筐体により密閉箱が形成される電子機器筐体カバーと、密閉箱の中に配置された1つまたは複数の電子ボードとをさらに備える。
【0121】
EEE16は、EEE15の組立体であり、1つまたは複数の電子ボードは、上に搭載された半導体スイッチングマトリックスを有するインバータボードであって、半導体スイッチングマトリックスは、直流電力を、電気モータを駆動する三相交流電力に変換するように構成された複数の半導体スイッチング素子を備えるインバータボードと、インバータボードから軸方向にずれ、インバータボードに電気的に結合し、スイッチング信号を発生させて半導体スイッチングマトリックスを動作させるように構成されたプロセッサを備えるコントローラボードとを備える。
【0122】
EEE17は、EEE16の組立体であり、コントローラボードは、コントローラボードに搭載され回転子に結合した磁石と相互作用して、回転子の回転位置を示すセンサ情報をプロセッサに提供するように構成された符号器をさらに備える。
【0123】
EEE18は、EEE11~EEE17のうちいずれかの組立体であり、ポンプピニオンが回転するとき、第2のポートに提供されている、ポンプピニオンの外歯とポンプ内歯車の内歯の間の流体は、半径方向外向きの力をポンプ内歯車に加え、弓状溝内の流体が加える半径方向内向きの力は、ポンプ内歯車に加えられる半径方向外向きの力に対抗する。
【0124】
EEE19は、EEE11~EEE18のうちいずれかの組立体であり、ポンプ筐体チャネルは、第1のポンプ筐体チャネルであり、ポンプ筐体は、第2のポンプ筐体チャネルをさらに備え、ポンプ内歯車が回転するとき、第1のポンプ筐体チャネルを通して受け取った流体は、第2のポンプ筐体チャネルに提供され、第2のポンプ筐体チャネル内の流体は、次いで第1のポートを通して受け取った流体と合流する。
【0125】
EEE20は、EEE19の組立体であり、弓状溝は、第1の弓状溝であり、ポンプ筐体は、第1の弓状溝からポンプ筐体の内面に沿って角度方向に間隔を置いて配置された第2の弓状溝をさらに備え、回転子がポンプ内歯車内部でポンプピニオンを反対方向に回転させるとき、流体は、第2のポートから吸い込まれ、放出するために第1のポートに提供され、第1のポートに提供されている流体の対応する一部分は、第2のポンプ筐体チャネルに方向転換させられてポンプ筐体を冷却し、第2のポンプ筐体チャネルから得られる流体は、第2の弓状溝に提供され、第2の弓状溝内の流体は、対応する半径方向内向きの力をポンプ内歯車に加える。
【国際調査報告】