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特表2024-514230マルチビームビームフォーミングフロントエンド無線トランシーバのためのアンテナシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-29
(54)【発明の名称】マルチビームビームフォーミングフロントエンド無線トランシーバのためのアンテナシステム
(51)【国際特許分類】
   H01Q 23/00 20060101AFI20240322BHJP
   H01Q 21/24 20060101ALI20240322BHJP
   H04B 1/38 20150101ALI20240322BHJP
   H01Q 3/26 20060101ALI20240322BHJP
   H04B 7/06 20060101ALI20240322BHJP
   H04B 7/08 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
H01Q23/00
H01Q21/24
H04B1/38
H01Q3/26 Z
H04B7/06 950
H04B7/08 800
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022576824
(86)(22)【出願日】2021-06-11
(85)【翻訳文提出日】2023-02-10
(86)【国際出願番号】 US2021037058
(87)【国際公開番号】W WO2021252929
(87)【国際公開日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】63/038,043
(32)【優先日】2020-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522482566
【氏名又は名称】スカイギグ, エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】SKYGIG, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】ジャム, アーミン
(72)【発明者】
【氏名】クーチャック, コサリ, アヴィッシュ
【テーマコード(参考)】
5J021
5K011
【Fターム(参考)】
5J021AA05
5J021FA05
5J021FA26
5J021FA31
5J021HA02
5K011DA02
5K011JA01
5K011KA18
(57)【要約】
アンテナシステムは、1つ以上のビームを処理するように構成されたフロントエンド電子回路層に電気的に結合されたモジュールを含む。モジュールは、1つ以上のビームの送信と受信とうちの少なくとも一方を行うように構成された1つ以上の放射素子を含む放射層と、1つ以上のフィード素子を含むフィード層とを含み、1つ以上のフィード素子は、放射層を励起すること、1つ以上のビームを送信すること、1つ以上のビームを受信すること、又はこれらの組み合わせを行うように構成される。モジュールは、分配器を含む分配ネットワーク層をさらに含み、分配器は、1つ以上のビームをフロントエンド回路層からフィード層へ分配するように構成されている。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の空間領域のうちの1つ以上の空間領域において1つ以上のビームを送信又は受信するように構成されたアンテナシステムであって、
該1つ以上のビームを処理するように構成されたフロントエンド電子回路層に電気的に結合されたモジュールを有し、該モジュールが、
該1つ以上のビームの送信と受信とのうちの少なくとも一方を行うように構成された1つ以上の放射素子を含む放射層と、
該放射層の励起、該1つ以上のビームの送信、該1つ以上のビームの受信、又はそれらの組み合わせ、を行うように構成された1つ以上のフィード素子を備えるフィード層と、
該1つ以上のビームを該フロントエンド電子回路層から該フィード層に分配するように構成された分配器を含む分配ネットワーク層と、
を含む、アンテナシステム。
【請求項2】
該放射層が、ピクセル化アンテナ開口、連続アンテナ開口、平面アンテナ開口、コンフォーマルアンテナ開口、固定アンテナ開口、同調可能アンテナ開口、パッシブアンテナ開口、透過型アンテナ開口、反射性アンテナ開口、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のアンテナシステム。
【請求項3】
該放射層が、該1つ以上のビームの送信と受信とのうちの少なくとも一方を行うように構成された1つ以上のメタマテリアル素子を含み、該フィード層が、該1つ以上のメタマテリアル素子を励起して該1つ以上のビームの送信と受信とのうちの少なくとも一方を行うように構成されている、請求項1に記載のアンテナシステム。
【請求項4】
該放射層は、同調可能アンテナ開口を含み、
該複数の放射素子は、信号の位相、信号の振幅、信号の偏波、信号の変調、又はそれらの組み合わせを変更するように構成された変更デバイスを含み、
該変更デバイスは、同調可能デバイス、アクティブデバイス、パッシブデバイス、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のアンテナシステム。
【請求項5】
該1つ以上の放射素子は、少なくとも2つの層を備え、
該少なくとも2つの層の各層は、誘電体基板、空気充填基板、金属パターン層、キャビティバック構造体、同調可能デバイス、アクティブデバイス、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のアンテナシステム。
【請求項6】
該1つ以上のフィード素子は、平面アンテナ、2.5D形状アンテナ、3D形状アンテナ、アクティブアンテナ、パッシブアンテナ、シングルポートアンテナ、マルチポートアンテナ、空気充填アンテナ、誘電体充填アンテナ、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のアンテナシステム。
【請求項7】
該分配器は、1つ以上の導波路のネットワーク、1つ以上の伝送線のネットワーク、1つ以上のデバイダのネットワーク、1つ以上の結合器のネットワーク、ビームフォーマのネットワーク、レンズ構造体のネットワーク、ビームフォーミングマトリクス構造体のネットワーク、又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載のアンテナシステム。
【請求項8】
該1つ以上の導波路は、漏れ波導波路、スロット導波路、コプレーナ導波路、キャビティバック導波路、平行板導波路、又はこれらの組み合わせを含む、請求項7に記載のアンテナシステム。
【請求項9】
コントローラと、請求項1に記載のアンテナシステムとを含むフロントエンドアンテナシステムであって、
該コントローラが、放射パラメータに基づいて該1つ以上のビームの送信、該1つ以上のビームの受信、又はそれらの組み合わせを行うように、該アンテナシステムを制御するように構成された、フロントエンドアンテナシステム。
【請求項10】
複数のビームネットワークと複数のトランシーバとをさらに備え、
該複数のビームネットワークの各ビームネットワークが、複数のビームフォーミング回路、複数のスイッチング回路、又はそれらの組み合わせを有し、
該1つ以上のフィード素子の各フィード素子が、1つ以上のポートを有し、
該1つ以上のポートの各ポートが、該複数のビームネットワークのうちの1つ以上のビームネットワークに電気的に結合され、
該複数のビームネットワークの各ビームネットワークが、送信偏波と受信偏波とのうちの一方に対応する、請求項9に記載のフロントエンドアンテナシステム。
【請求項11】
該1つ以上のモジュールの各モジュールが、第1の基板層上に設けられ、
該1つ以上のモジュールの各モジュールが、複数のコネクタを介して第2の基板層に電気的に結合され、
該第2の層が、1つ以上の信号分配ネットワーク、1つ以上の回路、又はそれらの組み合わせを含み、該1つ以上のモジュールを電気的に結合するようにされた、請求項1に記載のアンテナシステム。
【請求項12】
該モジュールが、該1つ以上のビーム上で1つ以上の信号ストリームを同時に送信及び受信するように構成されている、請求項1に記載のアンテナシステム。
【請求項13】
該フィード層は、該1つ以上のフィード素子のうちの1組のフィード素子を絶縁するように構成された絶縁素子をさらに備え、
該絶縁素子は、複数のビア、人為的境界面、シールド、接地面、寄生素子、キャビティ構造体、フィルタネットワーク、キャンセルネットワーク、又はそれらの組み合わせを有する、請求項1に記載のアンテナシステム。
【請求項14】
該1組のフィード素子の各フィード素子は、送信モード、受信モード、又はそれらの組み合わせで動作可能であり、
該1組のフィード素子は、該1組のフィード素子の各フィード素子が該送信モード及び該受信モードの両方において動作可能である場合、1つのフィード素子を有する、請求項13に記載のアンテナシステム。
【請求項15】
該1組のフィード素子は、該1組のフィード素子の各フィード素子が該送信モードと該受信モードのうちの一方において動作可能である場合、2つ以上のフィード素子を有し、
該2つ以上のフィード素子は、平面的な配置と非平面的な配置とのうちの一方を有する、請求項13に記載のアンテナシステム。
【請求項16】
該フィード層は、該1つ以上のフィード素子のうちの1組のフィード素子を絶縁するように構成された絶縁素子をさらに有し、
該絶縁素子は、該1組のフィード素子の1組のポート、該1組のフィード素子の1組の信号ストリーム、又はそれらの組み合わせに対して、送信信号をサンプリングするように構成されたキャンセルネットワークを備え、
送信信号のために、該絶縁素子は、受信信号チェーンに二次信号を注入するように構成され、該二次信号は、該受信信号チェーン上での送信信号の干渉を抑制するようにされている、請求項1に記載のアンテナシステム。
【請求項17】
該キャンセルネットワークは、1つ以上の信号スプリッタ、1つ以上のフィルタ回路、1つ以上の遅延素子、1つ以上の減衰器、1つ以上の結合器、又はそれらの組み合わせを備え、
該キャンセルネットワークの各コンポーネントは、無線周波数(RF)ステージ、中間周波数(IF)ステージ、デジタルステージ、局部発振器(LO)ステージ、又はこれらの組み合わせに設けられる、請求項16に記載のアンテナシステム。
【請求項18】
複数のビームネットワークと、複数のトランシーバと、請求項16に記載のアンテナシステムとを備えるフロントエンドアンテナシステムであって、
該キャンセルネットワークは、集積回路チップ上に設けられ、少なくとも1つの同調可能なコンポーネントを含み、
該キャンセルネットワークの1つ以上の部分は、該複数のビームネットワーク、該複数のトランシーバ、又はそれらの組み合わせに設けられる、フロントエンドアンテナシステム。
【請求項19】
複数の空間領域のうちの1つ以上の空間領域において1つ以上のビームを出力するように構成されたアンテナシステムであって、
該1つ以上のビームを処理するように構成されたフロントエンド電子回路層に電気的に結合され、該1つ以上のビーム上で1つ以上の信号ストリームを同時に送信及び受信するように構成されたモジュールを備え、該モジュールが
該1つ以上のビームの送信と受信とのうちの少なくとも一方を行うように構成された1つ以上の放射素子を含む放射層と、
該放射層の励起、該1つ以上のビームの送信、該1つ以上のビームの受信、又はそれらの組み合わせを行うように構成された、1つ以上のフィード素子を備えるフィード層と、
該1つ以上のビームを該フロントエンド電子回路層から該フィード層へ分配するように構成された分配器を備える分配ネットワーク層と、
を備える、アンテナシステム。
【請求項20】
該フィード層が、該1つ以上のフィード素子のうちの1組のフィード素子を絶縁するように構成された絶縁素子をさらに備え、
該絶縁素子が、複数のビア、人為的境界面、シールド、接地面、寄生素子、フィルタネットワーク、キャビティ構造体、キャンセルネットワーク、又はそれらの組み合わせを含む、請求項19に記載のアンテナシステム。
【請求項21】
該1つ以上のフィード素子は、平面アンテナ、2.5D形状アンテナ、3D形状アンテナ、アクティブアンテナ、パッシブアンテナ、シングルポートアンテナ、マルチポートアンテナ、空気充填アンテナ、誘電体充填アンテナ、又はこれらの組み合わせを有する、請求項19に記載のアンテナシステム。
【請求項22】
複数の空間領域のうちの1つ以上の空間領域において1つ以上のビームを出力するように構成されたアンテナシステムであって、
該1つ以上のビームを処理するように構成されたフロントエンド電子回路層に電気的に結合され、該1つ以上のビーム上で1つ以上の信号ストリームを同時に送信及び受信するように構成されたモジュールを備え、該モジュールが、
該1つ以上のビームの送信と受信とのうちの少なくとも一方を行うように構成された1つ以上の放射素子を含む放射層であって、ピクセル化アンテナ開口、連続アンテナ開口、平面アンテナ開口、コンフォーマルアンテナ開口、固定アンテナ開口、同調可能アンテナ開口、パッシブアンテナ開口、透過型アンテナ開口、反射性アンテナ開口、複数のメタマテリアル素子、又はそれらの組み合わせを有する、放射層と、
1つ以上のフィード素子を含むフィード層であって、
該1つ以上のフィード素子が、該放射層の励起、該1つ以上のビームの送信、該1つ以上のビームの受信、又はそれらの組み合わせを行うように構成され、
該1つ以上のフィード素子が、平面アンテナ、2.5D形状アンテナ、3D形状アンテナ、アクティブアンテナ、パッシブアンテナ、シングルポートアンテナ、マルチポートアンテナ、空気充填アンテナ、誘電体充填アンテナ、又はこれらの組み合わせを有し、
該1つ以上のフィード素子のうちの1組のフィード素子を絶縁するように構成された絶縁素子を有する、フィード層と、
分配器を備える分配ネットワーク層であって、該分配器が、該1つ以上のビームを該回路層から該フィード層に分配するように構成され、1つ以上の導波路のネットワーク、1つ以上の伝送線のネットワーク、1つ以上のデバイダのネットワーク、1つ以上の結合器のネットワーク、又はこれらの組み合わせである、分配ネットワーク層と、
を備える、アンテナシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年6月11日に出願された米国仮出願第63/038,043号の優先権及びその利益を享受するものである。上記出願の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。本出願は、「SYSTEM AND METHOD FOR A MULTI-BEAM BEAMFORMING FRONT-END ARCHITECTURE FOR WIRELESS TRANSCEIVERS」と題する本願と同時に出願され且つ本願と同一出願人による米国出願に関連し、その内容は参照により本願に組み込まれるものとする。
【0002】
本開示は、無線電波トランシーバに関し、より具体的には、マルチビームビームフォーミングフロントエンドアンテナシステムに関するものである。
【背景技術】
【0003】
本節の記述は、単に本開示に関連する背景情報を提供するものであり、必ずしも先行技術を構成するものではない。
【0004】
電波無線技術はユビキタスであり、以下のものを含むがこれらに限定されない様々な用途で使用されている:電気通信及び衛星通信産業、モバイルプラットフォームにおけるセンサ及びナビゲーションシステム(例えば、自動車産業における自動運転車)、等々。
【0005】
無線通信技術は、より高いミリ波周波数帯に移行している。これらの周波数帯は、より広い帯域を利用できるため、通信速度を向上させることができるという利点がある。しかしながら、これらの利点にもかかわらず、現在の無線技術は、従来の無線技術と比較して、高度なアプローチ及びアーキテクチャを実装する場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、電波無線装置は、アンテナ、無線周波数(RF)回路、アナログ回路及びデジタル回路、並びに様々なコンポーネントの動作及び接続を制御するシステムアーキテクチャを含む場合がある。無線フロントエンドシステムは、無線デバイスの性能と機能を規定する。特にミリ波帯のような高データレートの無線通信では、実用的な範囲での信号の伝播損失を補償するために、ビームが狭く、送信時のパワーレベルが高く、受信時の感度レベルが高い高利得フロントエンドシステムが必要とされることが多い。そのため、この無線通信技術を可能にするために、高度なビームフォーミング機構を有する高利得フロントエンドシステムが必要とされる場合がある。
【0007】
無線フロントエンドにビームフォーミングを実装するアプローチは数多くあり、一般的なアプローチとしてフェーズドアレイシステムと同調可能(tunable)メタマテリアルアンテナがよく検討される。どちらのアプローチも、所望のビームフォーミング特性を作り出すために、個々の素子の位相及び/又は振幅を制御して、開口部上に放射素子を分布させることに基づくものである。しかしながら、フェーズドアレイ及びメタマテリアル技術は、特に、高いスペクトル非効率性、限られた容量、及び高いパワー非効率性(特に、大きな開口及び/又は多数の素子を有する場合)を有する場合がある。より具体的には、現在のアナログフェーズドアレイ及びメタマテリアルのアプローチは、信号の伝送及び/又は受信のためのシングルビーム動作にしばしば制限され、これは、それらの容量、(通信システム用の)集約スループット、及び全体的性能を阻害する。さらに、大口径の場合、高いRF損失(特に高利得フロントエンドの素子数が多い場合)により、これらのシステムのパワー効率は悪くなる。一方、デジタルビームフォーミングのアプローチは、マルチビーム動作が可能である。しかし、素子数が多く、動作帯域が広い場合(特にミリ波周波数帯)、デジタル回路やRF/アナログ回路(DACやADCなど)の過剰なパワー消費とパワー効率の悪さから、これらのアプローチは実装できない可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本節は、本開示の一般的な概要を提示するものであり、その全範囲又はその特徴のすべてを包括的に開示するものではない。
【0009】
本開示は、複数の空間領域のうちの1つ以上の空間領域において1つ以上のビームを送信又は受信するように構成されたアンテナシステムを提供する。アンテナシステムは、1つ以上のビームを処理するように構成されたフロントエンド電子回路層に電気的に結合されるモジュールを備える。モジュールは、1つ以上のビームの送信と受信とのうちの少なくとも一方を行うように構成された1つ以上の放射素子からなる放射層と、1つ以上のフィード素子を備えるフィード層とを有し、1つ以上のフィード素子は、放射層を励起すること、1つ以上のビームを送信すること、1つ以上のビームを受信すること、又はこれらの組み合わせを行うように構成される。モジュールは、分配器を含む分配ネットワーク層を含み、分配器は、1つ以上のビームをフロントエンド電子回路層からフィード層へ分配するように構成されている。
【0010】
一態様では、放射層は、ピクセル化アンテナ開口、連続アンテナ開口、平面アンテナ開口、コンフォーマルアンテナ開口、固定アンテナ開口、同調可能アンテナ開口、パッシブアンテナ開口、透過型アンテナ開口、反射性アンテナ開口、又はそれらの組み合わせを含んでいる。
【0011】
一態様では、放射層は、1つ以上のビームの送信と受信とのうちの少なくとも一方を行うように構成された1つ以上のメタマテリアル素子を備え、フィード層は、1つ以上のメタマテリアル素子を励起して1つ以上のビームの送信と受信とのうちの少なくとも一方を行うように構成される。
【0012】
一態様では、放射層は、同調可能アンテナ開口を含み、複数の放射素子は、信号の位相、信号の振幅、信号の偏波、信号の変調、又はそれらの組み合わせを変更するように構成された変更デバイスを含む。変更デバイスは、同調可能デバイス、アクティブデバイス、パッシブデバイス、又はそれらの組み合わせを含む。
【0013】
一態様では、1つ以上の放射素子は少なくとも2つの層を備え、少なくとも2つの層の各層は、誘電体基板、空気充填基板、金属パターン層、キャビティバック構造体、同調可能デバイス、アクティブデバイス、又はこれらの組み合わせを含む。
【0014】
一態様において、1つ以上のフィード素子は、平面アンテナ、2.5D形状アンテナ、3D形状アンテナ、アクティブアンテナ、パッシブアンテナ、シングルポートアンテナ、マルチポートアンテナ、空気充填アンテナ、誘電体充填アンテナ、又はこれらの組み合わせを含む。
【0015】
一態様では、分配器は、1つ以上の導波路のネットワーク、1つ以上の伝送線のネットワーク、1つ以上のデバイダのネットワーク、1つ以上の結合器のネットワーク、ビームフォーマのネットワーク、レンズ構造体のネットワーク、ビームフォーミングマトリクス構造体のネットワーク、又はこれらの組み合わせである。
【0016】
一態様において、1つ以上の導波路は、漏れ波導波路、スロット導波路、コプレーナ導波路、キャビティバック導波路、平行板導波路、又はそれらの組み合わせを含む。
【0017】
一態様では、本開示は、コントローラと、複数の空間領域の1つ以上の空間領域に1つ以上のビームを出力する、本明細書で提供されるようなアンテナシステムとを備えるフロントエンドアンテナシステムを提供する。
【0018】
一態様では、フロントエンドアンテナシステムは、複数のビームネットワークと複数のトランシーバとをさらに備え、複数のビームネットワークの各ビームネットワークは、複数のビームフォーミング回路、複数のスイッチング回路、又はそれらの組み合わせを有している。1つ以上のフィード素子の各フィード素子は、1つ以上のポートを有する。1つ以上のポートの各ポートは、複数のビームネットワークのうちの1つ以上のビームネットワークに電気的に結合される。複数のビームネットワークの各ビームネットワークは、送信偏波と受信偏波とのうちの一方に対応する。
【0019】
一形態では、1つ以上のモジュールの各モジュールは、第1の基板層上に設けられ、1つ以上のモジュールの各モジュールは、複数のコネクタを介して第2の基板層に電気的に結合され、第2の層は、1つ以上の信号分配ネットワーク、1つ以上の回路、又はそれらの組み合わせを含み、1つ以上のモジュールを電気的に結合させる。
【0020】
一形態では、モジュールは、1つ以上のビーム上で1つ以上の信号ストリームを同時に送信及び受信するように構成される。
【0021】
一形態では、フィード層は、1つ以上のフィード素子のうちの1組(セット)のフィード素子のセットを絶縁するように構成された絶縁素子をさらに備え、絶縁素子は、複数のビア、人為的境界面(artificial boundary plane)、シールド、接地面、寄生素子、キャビティ構造体、フィルタネットワーク、キャンセルネットワーク、又はそれらの組み合わせを有する。
【0022】
一形態では、1組のフィード素子の各フィード素子は、送信モード、受信モード、又はそれらの組み合わせで動作可能であり、1組のフィード素子の各フィード素子が送信モードと受信モードの両方で動作可能である場合、1組のフィード素子は1つのフィード素子を有する。
【0023】
一形態では、1組のフィード素子は、1組のフィード素子の各フィード素子が送信モードと受信モードのうちの一方において動作可能である場合、2つ以上のフィード素子を有し、2つ以上のフィード素子は、平面的な配置と非平面的な配置とのうちの一方を有している。
【0024】
一態様では、フィード層は、1つ以上のフィード素子のうちの1組のフィード素子を絶縁するように構成された絶縁素子をさらに備える。絶縁素子は、1組のフィード素子の1組のポート、1組のフィード素子の1組の信号ストリーム、又はそれらの組み合わせについて、送信信号をサンプリングするように構成されたキャンセルネットワークを備える。送信信号のために、絶縁素子は、受信信号チェーンに二次信号を注入するように構成され、二次信号は、受信信号チェーン上での送信信号の干渉を抑制するように構成される。
【0025】
一形態では、キャンセルネットワークは、1つ以上の信号スプリッタ、1つ以上のフィルタ回路、1つ以上の遅延素子、1つ以上の減衰器、1つ以上の結合器、又はそれらの組み合わせを備え、キャンセルネットワークの各コンポーネントは、無線周波数(RF)ステージ、中間周波数(IF)ステージ、デジタルステージ、局部発振器(LO)ステージ、又はそれらの組み合わせに設けられる。
【0026】
ある態様では、本開示は、フロントエンドアンテナシステムが、複数の空間領域のうちの1つ以上の空間領域において1つ以上のビームを出力するために、本明細書に提供されるようにアンテナシステムを構成する。フロントエンドアンテナシステムは、更に、複数のビームネットワーク及び複数のトランシーバを備える。
【0027】
いくつかの態様では、フィード層は、1つ以上のフィード素子のうちの1組のフィード素子を絶縁するように構成された絶縁素子をさらに備え、絶縁素子は、複数のビア、人為的境界面、シールド、接地面、寄生素子、キャビティ構造体、フィルタネットワーク、キャンセルネットワーク、又はそれらの組み合わせを含む。1組のフィード素子の各フィード素子は、送信モード、受信モード、又はそれらの組み合わせで動作可能であり、1組のフィード素子の各フィード素子が送信モードと受信モードの両方で動作可能であるとき、1組のフィード素子は1つのフィード素子を有する。キャンセルネットワークは、集積回路チップ上に設けられ、少なくとも1つの同調可能なコンポーネントを含み、キャンセルネットワークの1つ以上の部分は、複数のビームネットワーク、複数のトランシーバ、又はそれらの組み合わせに設けられる。
【0028】
本開示は、複数の空間領域のうちの1つ以上の空間領域において1つ以上のビームを送信又は受信するように構成されたアンテナシステムを提供する。アンテナシステムは、1つ以上のビームを処理するように構成されたフロントエンド電子回路層に電気的に結合されたモジュールを備える。モジュールは、1つ以上のビームの送信と受信とのうちの少なくとも一方を行うように構成された1つ以上の放射素子を含む放射層と、1つ以上のフィード素子を含むフィード層とを含み、1つ以上のフィード素子は、放射層の励起、1つ以上のビームの送信、1つ以上のビームの受信、又はそれらの組み合わせを行うように構成される。モジュールは、分配器を含む分配ネットワーク層を含み、分配器は、1つ以上のビームをフロントエンド電子回路層からフィード層へ分配するように構成されている。
【0029】
一態様では、フィード層は、1つ以上のフィード素子のうちの1組のフィード素子を絶縁するように構成された絶縁素子をさらに含み、絶縁素子は、複数のビア、人為的境界面、シールド、接地面、寄生素子、フィルタネットワーク、キャビティ構造体、キャンセルネットワーク、又はそれらの組み合わせを含む。
【0030】
一態様において、1つ以上のフィード素子は、平面アンテナ、2.5D形状アンテナ、3D形状アンテナ、アクティブアンテナ、パッシブアンテナ、シングルポートアンテナ、マルチポートアンテナ、空気充填アンテナ、誘電体充填アンテナ、又はこれらの組み合わせを含む。
【0031】
本開示は、複数の空間領域のうちの1つ以上の空間領域において1つ以上のビームを送信又は受信するように構成されたアンテナシステムを提供する。アンテナシステムは、1つ以上のビームを処理するように構成されたフロントエンド電子回路層に電気的に結合されたモジュールを備える。モジュールは、1つ以上のビームの送信と受信とのうちの少なくとも一方を行うように構成された1つ以上の放射素子を含む放射層を含み、放射層は、ピクセル化アンテナ開口、連続アンテナ開口、平面アンテナ開口、コンフォーマルアンテナ開口、固定アンテナ開口、同調可能アンテナ開口、パッシブアンテナ開口、透過型アンテナ開口、反射性アンテナ開口、複数のメタマテリアル素子、又はそれらの組み合わせを含む。モジュールは、1つ以上のフィード素子を含むフィード層を含み、1つ以上のフィード素子は、放射層の励起、1つ以上のビームの送信、1つ以上のビームの受信、又はそれらの組み合わせを行うように構成され、1つ以上のフィード素子は、平面アンテナ、2.5D形状アンテナ、3D形状アンテナ、アクティブアンテナ、パッシブアンテナ、シングルポートアンテナ、マルチポートアンテナ、空気充填アンテナ、誘電体充填アンテナ、又はそれらの組み合わせが含む。フィード層は、1つ以上のフィード素子のうちの1組のフィード素子を絶縁するように構成された絶縁素子を含む。モジュールは、分配器を含む分配ネットワーク層を含み、分配器は、1つ以上のビームをフロントエンド電子回路層からフィード層へ分配するように構成され、分配器は、1つ以上の導波路のネットワーク、1つ以上の伝送線のネットワーク、1つ以上のデバイダのネットワーク、又はこれらの組み合わせとされる。
【0032】
適用可能性のさらなる領域は、本明細書に提供される説明から明らかになるであろう。説明及び具体例は、例示のみを目的としており、本開示の範囲を限定することを意図していないことを理解されたい。
【0033】
次に、本開示がよく理解されるように、以下に簡単に説明する添付の図面を参照しながら、例として与えられるその様々な形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本開示の教示によるフロントエンドアンテナシステムの概略図である。
【0035】
図2A】本開示の教示による一形態で提供されるフロントエンドアンテナシステムの1つ以上のモジュールの概略図である。
【0036】
図2B】本開示の教示による別の形態でのフロントエンドアンテナシステムの1つ以上のモジュールの概略図である。
【0037】
図3】本開示の教示によるフロントエンドアンテナシステムのモジュールの様々な層の概略図である。
【0038】
図4】本開示の教示によるフロントエンドアンテナシステムのモジュールの放射層の概略図である。
【0039】
図5A】本開示の教示によるフロントエンドアンテナシステムのモジュールのフィード層の概略図である。
【0040】
図5B】本開示の教示によるフィード層の送信フィード素子及び受信フィード素子の概略図である。
【0041】
図5C】本開示の教示によるフィード層の送信/受信フィード素子の概略図である。
【0042】
図5D】本開示の教示によるフィード層のオーバーレイされた送信フィード素子及び受信フィード素子の概略図である。
【0043】
図5E】本開示の教示によるフィード層の送信フィード素子及び受信フィード素子を絶縁する複数のビアの概略図である。
【0044】
図5F】本開示の教示によるフィード層の送信フィード素子及び受信フィード素子を絶縁する人為的境界面の概略図である。
【0045】
図5G】本開示の教示によるフィード層の送信フィード素子及び受信フィード素子を絶縁する絶縁素子の概略図である。
【0046】
図5H】本開示の教示によるフィード層の送信フィード素子及び受信フィード素子を絶縁する複数の寄生素子の概略図である。
【0047】
図5I】本開示の教示によるフィード層の送信フィード素子及び受信フィード素子を絶縁するフィルタネットワークの概略図である。
【0048】
図5J】本開示の教示によるフィード層の送信フィード素子及び受信フィード素子を絶縁するキャンセルネットワークの概略図である。
【0049】
図5K】本開示の教示によるフィード層の送信フィード素子及び受信フィード素子を絶縁するキャビティの概略図である。
【0050】
図5L】本開示の教示によるフィード層の複数の絶縁素子及び複数のフィード素子の概略図である。
【0051】
図6A】本開示の教示によるフロントエンドアンテナシステムのモジュールの回路層の概略図である。
【0052】
図6B】本開示の教示による別の態様のフロントエンドアンテナシステムのモジュールの回路層の概略図である。
【0053】
図7A】本開示の教示によるフロントエンドアンテナシステムのモジュールの分配ネットワーク層の概略図である。
【0054】
図7B】本開示の教示によるフロントエンドアンテナシステムのモジュールの分配ネットワーク層の概略図である。
【0055】
図7C】本開示の教示によるフロントエンドアンテナシステムのモジュールの分配ネットワーク層の概略図である。
【0056】
図8】本開示の教示による別の例示的なモジュールの概略図である。
【0057】
図9】本開示の教示による別の例示的なモジュールの機能ブロック図である。
【0058】
図10】本開示の教示による全二重通信モードで動作するように構成されたフロントエンドアンテナシステムの機能ブロック図である。
【0059】
図11】本開示の教示による、全二重通信モードで動作するように構成される、マルチポートアンテナを有するフロントエンドアンテナシステムの機能ブロック図である。
【0060】
図12A】本開示の教示によるフロントエンドアンテナシステムの機能ブロック図である。
【0061】
図12B】本開示の教示による別のフロントエンドアンテナシステムの機能ブロック図である。
【0062】
図12C】本開示の教示によるさらに別のフロントエンドアンテナシステムの機能ブロック図である。
【0063】
図13】本開示の教示によるフロントエンドアンテナシステム及びコントローラの機能ブロック図である。
【0064】
本明細書に記載された図面は、説明のためだけのものであり、本開示の範囲をいかなる形でも制限することを意図していない。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下の説明は、単に例示的なものであり、本開示、適用、又は用途を限定することを意図していない。図面全体を通して、対応する参照数字は、同様又は対応する部品及び特徴を示すことを理解されたい。
【0066】
本開示は、マルチビームビームフォーミング、高パワー効率、高スペクトル効率、及び動作周波数とサイズにおけるスケーラビリティの独自の組み合わせを提供する無線フロントエンドトランシーバのためのアンテナシステムアーキテクチャを提供するものである。このアンテナシステムはフロントエンドアンテナシステムの一部として使用することができ、このフロントエンドアンテナシステムは、無線フロントエンドシステムとして動作して、ビームの生成及び/又は受信と、ビームの方向、パターン、パワー、偏波、及び/又は位相角などの様々な放射パラメータの高精度かつ独立した制御による無線周波数(RF)パターン及びビームの電子制御とを可能にする。一形態では、フロントエンドアンテナシステムは、1つのビーム(例えば、シングルビーム動作/モード)以上の同時ビーム(例えば、マルチビーム動作/モード)を送信、受信、又は同時送信・受信を行う。
【0067】
本開示のフロントエンドアンテナシステムのアンテナシステムは、特に、フロントエンドアンテナシステム、無線センシング及び画像システム、並びに無線パワー伝送システムなどの様々なタイプの信号又はパワー電波の送信及び/又は受信のために実装され得る。フロントエンドアンテナシステムの例としては、衛星信号、ネットワーク事業者及びインターネットサービスプロバイダ(ISP)のための無線通信、ブロードバンド、及び/又は一般的な電気通信が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例示的な無線センシング及び画像センシングシステムには、自動車レーダーセンサシステム、セキュリティ及び安全画像及びスクリーニングセンサシステム、医療画像システム等が含まれるが、これらに限定されるものではない。例示的な無線電力伝送システムには、電子及び電気装置の無線充電のために電力/エネルギーを伝送するために電波を使用するシステムが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
一形態では、フロントエンドアンテナシステムのアンテナシステムは、ミリ波周波数帯通信(例えば、5G/6G通信)のために実装されて、大きな開口及び/又は多数の放射素子(及び関連トランシーバ及びビームフォーミング回路)により、過度の信号伝播損失が軽減されるようにし得る。多数の放射素子の結果として、従来のフロントエンドアンテナシステムは、過剰な電力を消費(例えば、デジタルビームフォーミング方法に起因する電力消費)し、その機能(例えば、とりわけ、ビームの数、アンテナ利得、ビームフォーミング能力)が制限され、及び/又は開口サイズを制限する複雑なビームフォーミングネットワーク(例えば、とりわけ、大きなダイサイズ及び数、素子間の複雑な配線及び同期)が必要である。
【0069】
本開示のフロントエンドアンテナシステムのアンテナシステムは、ミッドバンド及び/又はローバンド5G信号帯を含む電気通信周波数帯、衛星通信帯(例えば、X-帯(バンド)、Ku-帯、Ka-帯、V-帯、W-帯)、自動車レーダー帯(例えば、W-帯)、又は他の認可周波数帯又は無認可周波数帯(例えば、60GHz)でさらに実装され得る。また、フロントエンドアンテナシステムは、他の周波数帯(例えば、とりわけ、RF、マイクロ波、ミリ波、サブミリ波、テラヘルツ)において実装され得る。
【0070】
マルチビームモードでは、本開示のアンテナシステムを有するフェーズドアレイフロントエンドアンテナシステムは、複数のRFビームの同時かつ連続的な送信(及び/又は受信)を可能にするマルチ入力/マルチ出力(MIMO)信号システムとして機能し得るものであり、各ビームは、強化された通信及び/又は検出目的のために独立した又は相関した信号を含むことが可能である。また、複数のビームは、無線電力伝送システムにおいて、複数の充電装置に電力を伝送することができる。アンテナシステムは、各ビームの形状(例えば、パターン)、ポインティング方向、パワーレベル、偏波などの、高精度の成形及び制御を提供し、それによってオペレータが所望の特性を独自に規定することを可能にする。
【0071】
本開示のアンテナシステムを有するフロントエンドアンテナシステムは、様々な利点を提供し得る。システム及び方法は、常にそのような利点を提供することに限定されず、システム及び方法がどのように使用され得るかについての例示的な表現としてのみ提示される。利点のリストは、網羅的であることを意図しておらず、他の利点が追加的に又は代替的に存在し得る。
【0072】
一例として、本開示のアンテナシステムを有するフロントエンドアンテナシステムは、無線通信における情報負荷容量(例えば、集約スループット又はデータレート)の増加を提供する。複数のビームは、特定の周波数帯域上の情報伝送の増加を提供し、それによって、スペクトル効率及びパワー効率を増加させることができる。
【0073】
別の例として、本開示のアンテナシステムを有するフロントエンドアンテナシステムは、複数のノードとの連続的かつ同時的な接続を提供し、それによって速度を向上させ、複雑なマルチノード通信又はより効率的な無線通信トポロジを可能にし得る複数のビームを提供する。
【0074】
さらに別の例として、本開示のアンテナシステムを有するフロントエンドアンテナシステムは、通信のためのマルチビームMIMO動作を提供し、それによって、フロントエンドアンテナシステムにおいて、周波数再利用、無線リンクの容量増加、及び改善されたスペクトル効率のための空間多重化方法を可能にする。
【0075】
さらに、従来のフェーズドアレイアンテナは、ビームホッピングを必要とする複数の場所とのシングルビーム信号伝達しか持っていない。本開示のフェーズドアレイアンテナが提供するマルチビーム機能は、複数の場所との連続的な接続を提供し、それによって、ビームホッピングを不要とする。
【0076】
本開示のフロントエンドアンテナシステムは、携帯電話ユーザ、飛行機、衛星、及び車などの移動する信号源を追跡することも提供する。本開示のフロントエンドアンテナシステムによって提供される連続接続は、連続的な信号追跡を可能にし、任意の信号を追跡するために必要な遅延を除去し、それによって接続待ち時間を最小にすることができる。
【0077】
本開示のアンテナシステムは、さらに、通信ネットワーク内の所定の方向又は所定のノード間でオーバーラップする信号ビームを提供し得る。従って、本開示のアンテナシステムを有するフロントエンドアンテナシステムは、通信ネットワークにおいて付加的な冗長性を提供する。
【0078】
別の例として、本開示のアンテナシステムを有するフロントエンドアンテナシステムは、1つ以上のノードに同時送受信を提供し、その結果、通信システムのレイテンシーを低減し、通信ネットワークのデータレートを増加させる。
【0079】
撮像システムの場合、本開示のアンテナシステムを有するフロントエンドアンテナシステムは、検出分解能(例えば、角度及び/又は範囲の分解能)を増加させる。さらに、フロントエンドアンテナシステムのマルチビーム動作は、例えば、シングルビームのビームステアリングシステムとは対照的に、より高速な撮像及び検出を可能にする。
【0080】
無線電力伝送システムに対しては、本開示のフロントエンドアンテナシステムは、複数の無線デバイスの同時充電のための複数のビームの生成を提供する。従って、フロントエンドアンテナシステムは、充電時間を短縮し、各デバイスの効率を向上させる。
【0081】
別の例として、本開示のフロントエンドアンテナシステムは、任意の所与の開口サイズに対して、またシングルビーム及びマルチビーム動作の両方に対して、複雑さ、サイズ、及びパワーを低減させる。さらに、本開示のフロントエンドアンテナシステムは、所与の開口寸法に対する全体的なダイ回路サイズ及びカウント要件を低減させる。その結果、フロントエンドアンテナシステムは、システムの小型化、軽量化、及び電力消費量の低減化を提供する。
【0082】
一態様では、フロントエンドアンテナシステムは、無線周波数(RF)ステージ、中間周波数(IF)ステージ、及びデジタルステージのうちの少なくとも1つを有する。特定のステージが提供されているが、フロントエンドアンテナシステムは、局部発振器ステージのような他のステージを有していてもよい。
【0083】
一態様では、図1に示すように、フロントエンドアンテナシステム1は、複数のアンテナ10(すなわち、アンテナのアレイ)と、複数のトランシーバ30と、複数のビームネットワーク50とを含む。一形態では、トランシーバ30は、アンテナ10をビームネットワーク50に電気的に接続する。一形態では、フロントエンドアンテナシステム1は、複数の同時ビームを提供するマルチ入力/マルチ出力(MIMO)システムとして動作可能であり、またビームの方向、パターン、パワー、偏波、及び位相角などの信号ビーム放射パラメータを独立して制御するように動作可能である。一形態では、フロントエンドアンテナシステム1は、送信タイプビーム、受信タイプビーム、及び同時受信・送信タイプビームなどのビームのビームタイプを独立して制御するように動作可能であり、ビームタイプは、送信タイプビーム、受信タイプビーム、及び同時受信・送信タイプビームのうちの一つを含む。一態様では、フロントエンドアンテナシステム1は、デジタル信号とアナログ信号の両用とすることができる。
【0084】
一形態では、フロントエンドアンテナシステム1は、電波のビームを送信及び受信するように構成される。一形態では、フロントエンドアンテナシステム1は、ビーム管理制御ルーチンによって規定される他の放射パラメータのうちのとりわけ、様々な方向、パターン、パワーレベルを有する複数の電波のビームを送信及び/又は受信する。一つの形態では、フロントエンドアンテナシステム1は、1つ以上の電波のビームを同時に送信及び受信する。
【0085】
一形態では、アンテナ10は、放射パラメータのうち特に、波/信号ビームパターン、方向などの、フロントエンドアンテナシステム1の放射パラメータを制御するように構成される。例示的なアンテナ10には、平面アンテナ(パッチ、スロット、リング、スパイラル、ボウタイなど)、キャビティバックアンテナ、及び膜面アンテナが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
一形態では、アンテナ10は、単一のアンテナ素子、1組の放射素子、又は連続的な放射開口部を含み得る。一例として、1組のアンテナ10は、開口アンテナ、連続開口アンテナ、平面アンテナ、レンズアンテナ(例えば、楕円レンズ、ルネンベルグ(Lunenberg)レンズ等)、平面レンズアンテナ(例えば、ロットマン(Rotman)レンズ)、ワイヤアンテナ、及び/又は反射器アンテナを含む。別の例として、メタマテリアルアンテナ、リーキー波アンテナ、ファブリペローアンテナ、スロットアレイアンテナ、導波路アンテナなどを含み得る。具体例として、グループ化された素子は、各サブセットアンテナに対して所望のパターン及び放射特性を生成するように配置されたメタマテリアル素子又はメタピクセルを有するメタマテリアルアンテナを含み得る。
【0087】
一形態では、1組のアンテナ10は、シングルポートアンテナ又はマルチポートアンテナを含み得るものであり、また、シングルポートアンテナ及びマルチポートアンテナの任意の数/組み合わせを含んでもよい。一例として、アンテナ10のマルチポート実装の場合、各ポートは、特定の領域においてビームを励起して生成し、ビームが集合的に選択された3D視野(FoV)空間にまたがるようにし得る。一態様では、マルチポートアンテナのビームは、オーバーラップする領域/パターンを有し得る。フロントエンドアンテナシステム1のマルチビームパターンの生成は、ビームネットワーク50を介して、マルチポートアンテナのセット、1組のアンテナのアレイ、又はそれらの組み合わせによって実施し得る。
【0088】
一態様では、アンテナ10は、パッシブアンテナ又はアクティブアンテナであり得る。一例として、アンテナ10は、所定のアンテナ特性(例えば、アンテナパターン、ビームパターンなど)の動的制御のために、そこに統合された同調可能なコンポーネント(バラクタ、ダイオードなど)及び/又は同調可能な材料、(例えば、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)、液晶など)を有するアクティブアンテナを含み得る。ある形態では、アクティブアンテナは、さらに詳細に後述するように、所望の放射特性をもたらすためにコントローラによって電子的に制御される。
【0089】
一形態では、アンテナ10は、追加のビームフォーミング動作を実行するように構成され得る。一例として、アンテナ10がマルチポートアンテナである場合、フロントエンドアンテナシステム1は、1組のアンテナや他のシステムコンポーネントを接続する少なくとも1組のスイッチングネットワークを含み、それによって、以下にさらに詳細に説明するように、マルチポートアンテナのポートの制御機能性を可能にすることができる。一例として、マルチポートアンテナは、複数のビームが同じ偏波、同じ周波数帯域、又はそれらの組み合わせを有するように、複数のビームの送信、複数のビームの受信、又はそれらの組み合わせを行なうように動作可能である。モジュールに関する追加の詳細はさらに詳細に後述する
【0090】
一形態では、トランシーバ30は、アンテナ10をビームネットワーク50に接続することによって、アンテナ10が信号、指向性ビーム、及び/又は多次元ビームを送信/受信することを選択的に可能にするように構成される。一形態では、トランシーバ30は、1組のトランシーバ30として実装され、所与の1組のトランシーバのうちの少なくとも1つのトランシーバ30が、1組のアンテナのうちの1つのアンテナ10を1組のビームネットワーク50に接続する。一形態では、所与の1組のトランシーバのうちの少なくとも1つのトランシーバ30は、1組のアンテナのうちの1つのアンテナ10を1組のビームネットワーク50に接続する。一態様では、各アンテナ10に接続するトランシーバ30の数は、アンテナ10のポートの数に等しい。一変形例では、各アンテナ10に接続するトランシーバ30の数は、アンテナ10のポートの数に等しくないようにできる。
【0091】
一形態では、トランシーバ30はそれぞれ、パワーアンプ32及び低ノイズアンプ34などの、入出力の信号を増幅する2つ以上のアンプを含む。一形態の変形例では、トランシーバ30は、パワーアンプ32と低ノイズアンプ34との間の切り替えを可能にし、よって信号の受信と送信との間の切り替えを可能にする1つ以上のスイッチ36を含み得る。あるいは、パワーアンプ32及び低ノイズアンプ34は、同時Tx/Rxを可能にするため、及び/又はスイッチ36に関連する損失を除外するために、スイッチ36を用いずにアンテナ10のアンテナポートに接続され得る。
【0092】
一形態では、低ノイズアンプ34は、最小限のノイズ/歪みを加えながら、アンテナ10によって受信された信号を増幅するように構成される。低ノイズアンプ34は、様々な利得、ノイズ指数、線形性、及びインピーダンス整合特性を有することができる。低ノイズアンプ34は、様々な利得、ノイズ指数、線形性、及びインピーダンス整合特性を有することができる。一形態では、パワーアンプ32は、アンテナポートに対して所定のパワーレベルまで信号を増幅するように構成される。従って、パワーアンプ32は、所与の方向/ビームにおける所望の等価等方放射電力(EIRP)に従って所与のパワーレベルまで信号を増幅するための利得及びパワー特性を有し得る。ある形態では、パワーアンプ32は、直交周波数分割多重変調などの様々な変調信号をサポートするために高い線形性及びパワー効率を有する。ある形態では、パワーアンプ32による出力は、インピーダンス変換アプローチ、パワー結合技術、及びトランジスタ積層を含むがこれらに限定されない様々な技術を使用して強化され得る。これらの技法は、高度なシリコンベースのプロセス(例えば、バルクCMOSサブミクロン、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)、及び/又はSiGe BiCMOS技法)などのオフチップ又はオンチップで実装され得る。
【0093】
一例として、パワーアンプ32は、ドハーティ(Doherty)パワーアンプ、アウトフェージング(outphasing)パワーアンプ、チアレックスアウトフェージング(Chireix outphasing)パワーアンプ、又はそれらの組み合わせであり得る。別の例として、パワーアンプ32は、線形タイプのパワーアンプ(例えば、A級アンプ、B級アンプ)又はスイッチングタイプのパワーアンプ(例えば、E級アンプ、F-1級アンプ)であり得る。追加の例として、パワーアンプ32は、例えば高周波ミリ波システム(すなわち、高周波は30~300ギガヘルツを含む)で実施される場合に、フロントエンドアンテナシステム1の信号伝播減衰損失及び高いRF損失を補償する高パワーアンプである。
【0094】
一形態では、パワーアンプ32は、出力信号の線形性を改善するためにプレディストーション回路を含み得る。プレディストーション回路は、デジタルステージ、アナログステージ、又はそれらの組み合わせに実装され得る。一例では、プレディストーション回路は、デジタルステージに実装されたデジタルプレディストーション回路(DPD回路)である。一形態では、DPD回路は、メモリレスモデル(例えば、メモリレス多項式アルゴリズム及び/又はルックアップテーブル(LUT)ベースのアルゴリズム)又はメモリを有するモデル(例えば、メモリ多項式モデル)に基づくことができる。別の例では、DPD回路は、各パワーアンプ32からの情報ではなく、フロントエンドアンテナシステム1の1つ以上のビームからの情報に基づいて実装される。
【0095】
一形態では、ビームネットワーク50は、アンテナ10への又はアンテナ10からの信号の建設的及び破壊的な組み合わせ、選択、及び/又は操作によって信号ストリーム(入出力の両方)を生成、提供、及び変更するように構成されたビームフォーマネットワーク51及び/又はスイッチングネットワーク58を含んでいる。ビームネットワーク50は、所望の信号ストリーム/ビームのためのビームフォーミング結合/処理のために、各アンテナ10及び/又はアンテナ10のセットからの各信号経路における特定の信号位相、振幅、及び/又は選択交替を指定するように構成される。ビームネットワーク50は、ビームフォーマネットワーク51及びスイッチングネットワーク58の両方を含むものとして示されているが、いくつかの変形例においてはビームフォーマネットワーク51とスイッチングネットワーク58のうちの一方のみを含み得ることが理解されるべきである。
【0096】
一形態では、ビームネットワーク50はセットで提供される。ビームネットワーク50の各セットは、マルチビーム、マルチストリーム信号の送信及び/又は受信のための多方向及び/又は多次元ビームを生成するように構成される。ビームネットワーク50のセットは、トランシーバ30を介して所定のセットの各アンテナ10に接続される。ある形態では、ビームネットワーク50及び/又はそのコンポーネントは、RFステージ、中間周波数IFステージ、ベースバンドステージ、デジタルステージ、又はそれらの組み合わせを含む様々なステージで実装され得る。ある形態では、アンテナ10がアクティブアンテナを含む場合、ビームネットワーク50は、ハイブリッドビームネットワークのためのアンテナ10と組み合わされ得る。
【0097】
ある形態では、ビームフォーマネットワーク51は、位相シフター(PS)回路52のネットワーク、時間遅延回路54のネットワーク、アンプネットワーク56、スプリッタ、結合器、又はそれらの組み合わせを含む。一形態では、位相シフター回路52のネットワーク(以下、「位相シフター52」と称する)は、入力信号を受信し、入力信号に関連するビームの位相及び振幅を変更するように構成される。一形態では、位相シフター52は、アナログ回路、デジタル回路、又はそれらの組み合わせ(例えば、ハイブリッドモデル)により実装され得る。位相シフター52は、アクティブ部品(例えば、ベクトル変調器ベースの位相シフター52)、パッシブ部品、又はそれらの組み合わせを含み得る。一例として、位相シフター52は、反射型位相シフター(RTPS:reflection-type phase shifter)、スイッチ伝送線位相シフター(STPS:switched-transmission line phase shifter)、負荷線ベースのパッシブ位相シフター、又はこれらの組み合わせを含み得る。
【0098】
一形態では、時間遅延回路54(以下、「時間遅延器54」と称する)のネットワークは、入力信号を受信し、入力信号に関連するビームの位相を変更するようにも構成される。一例として、時間遅延器54は、コントローラによって規定及び/又は動的に調整される制御可能な時間遅延によって信号を遅延させるように構成される。一形態では、時間遅延器54は、アナログ回路、デジタル回路、又はそれらの組み合わせ(例えば、ハイブリッドモデル)により実装され得る。
【0099】
一形態では、位相シフター52及び/又は時間遅延器54は、ビームフォーマネットワーク51のビームスクイント又はビーム歪みを最小化するために、実時間遅延(TTD)として実装される。一形態では、位相シフター52及び時間遅延器54は、本明細書において、「遅延素子」と総称されることがある。
【0100】
一形態では、ビームフォーマネットワーク51は、ビームフォーマネットワーク51がアナログ回路によって実装される場合、アンプネットワーク56を含む。アンプネットワーク56は、信号結合、分割、及び/又は操作が行われる前/後に、信号が所定の強度になるように、受信又は送信信号の振幅を変更するように構成される。一例として、アンプネットワーク56は、アナログ回路、デジタル回路、又はそれらの組み合わせ(例えば、ハイブリッドモデル)として実装される1つ以上の可変利得アンプを含み得る。
【0101】
いくつかの形態では、ビームネットワーク50は、例えば、アンテナ10がマルチポートアンテナを含む場合に、スイッチングネットワーク58を含む。一例として、各マルチポートアンテナについて、フロントエンドアンテナシステム1は、マルチポートアンテナポートのサブセットをトランシーバ30のセットに接続するスイッチングネットワーク58を含む。さらに、又は代替的に、フロントエンドアンテナシステム1は、トランシーバのセットをビームフォーマネットワーク51のセットに接続するスイッチングネットワーク58を含み得る。いくつかの形態では、スイッチングネットワーク58は、スイッチング回路なしに、シングルポート/マルチポートアンテナの全てのポートをトランシーバ30に接続する。スイッチングネットワーク58は、異なるレベルのコンポーネント接続性/活性を提供するように構成され、それによって、ビームを統合又は分割し、ビーム方向を制御する。スイッチングネットワーク58は、ビームフォーマの複雑さを単純化し、及び/又はフロントエンドアンテナシステム1のビームフォーミングマルチビーム、マルチストリーム機能を大幅に増加させることができる。スイッチングネットワーク58は、RFステージ、IFステージ、ベースバンドステージ、デジタルステージ、又はそれらの組み合わせなどの、様々なステージに実装され得る。一形態では、スイッチングネットワーク58は、1つ以上のスイッチ、1つ以上の結合器、1つ以上のスプリッタ、1つ以上のフィルタ、1つ以上の結合線路、又はそれらの組み合わせを含む。
【0102】
一形態では、ビームフォーマネットワーク51は、アナログビームフォーマ、デジタルビームフォーマ、又はそれらの組み合わせ(例えば、ハイブリッドビームフォーマ)であり得る。一例として、多数のアンテナ素子/セットを有する大きなアンテナ開口の場合、ビームフォーマネットワーク51は、デジタルビームフォーマでは過剰な電力消費量となるので、アナログビームフォーマ又はハイブリッドビームフォーマとされ得る。別の例として、より高い周波数帯(例えば、ミリ波帯)では、ビームフォーマネットワーク51は、より高い周波数帯でのRFコンポーネント及び分配/結合ネットワークの損失及び/又はRFコンポーネントのサイズを抑制するためにIFステージに設けられたアナログビームフォーマを含み得る。IF実装又はデジタルビームフォーマが採用されるいくつかの形態では、1組のアンテナ及び/又はサブセットレベルにミキサーの実装がなされ、局部発振器(LO)信号の同期がすべてのアンテナ素子及び/又は1組のアンテナにおいて実行され得る。いくつかの形態では、LO信号の同期は、アンテナ素子、1組のアンテナ、及び/又はアンテナサブセットレベルで実装される基準信号、位相同期ループ(PLL)回路、増幅回路、ミキサー、又はそれらの組み合わせによって実行され得る。
【0103】
いくつかの態様において、フロントエンドアンテナシステム1は、コントローラ90を含み得る。コントローラ90は、所望の出力を達成するためにフロントエンドアンテナシステム1のコンポーネントを動作させるように構成される。ある形態では、コントローラ90は、全てのアクティブなコンポーネントに接続され、特に、ビーム管理制御ルーチン、ビーム追跡ルーチン、ユーザ管理ルーチンを実行するように構成されている。一例として、コントローラ90は、ビームの1つ以上について、特に、パワーレベル、帯域幅、ビーム方向、ビーム幅、偏波、ストリーム/ユーザの数、通信範囲、及び変調を独立して設定し得る。一形態では、コントローラ90は、システムがフロントエンドアンテナシステム1との間の入力信号及び出力信号に特定の方法で応答するように自動化され得る。一形態では、コントローラ90は、任意の及び/又は全ての所望のフロントエンドアンテナシステムパラメータ(例えば、信号増幅のレベル、設定ビーム形態、及び方向)のユーザ管理を可能にする。一形態では、コントローラ90は、通信ネットワークにおける信号の流れの管理を可能にする。
【0104】
一形態では、フロントエンドアンテナシステム1は、アレイ(例えば、特に、ダイナミックアレイ、固定アレイ、アクティブアレイ、パッシブアレイ、デジタルアレイ、アナログアレイ、又はハイブリッドアレイ)として実装され得る。一例として図2A図2Bに示すように、フロントエンドアンテナシステム1は、集合的にアレイ2を形成する1つ以上のモジュール70-1、70-2、70-3、・・・70-n(ここではモジュール70と総称する)を含み得る。モジュール70の各々は、複数のアンテナ10のうちの1組のアンテナ10を含む。一例として、モジュール70-1は、複数のアンテナ10のうちのアンテナ10-1、10-2、10-3を含む1組のアンテナを含み得る。
【0105】
一態様において、1つ以上のモジュール70は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。一例として、各モジュール70は、図2Bに示すように、同じ幾何学的パラメータ(例えば、形状、サイズ、向き、長さ、幅、深さなど)を有し得る。別の例として、モジュール70の2つ以上が、図2Aに示すように、互いに異なる幾何学的パラメータのセットを有し得る。一態様では、モジュール70は、ランダムに配置されるか、又は格子状又は線状に配置される。一態様において、1つ以上のモジュール70は、様々な平面、非平面、又はコンフォーマル形状(例えば、長方形、円形、六角形など)を有し得る。さらに、1つ以上のモジュール70は、平面的な形態、非平面的な形態、又はコンフォーマルな形態で互いに一体化され得る。一態様では、1つ以上のモジュール70は、互いにインターリーブ又はオーバーラップし得る。一形態では、1つ以上のモジュール70は、フロントエンド開口を拡大するためにスパース構成を形成し、また1つ以上のモジュール70は、サイドローブを抑制するために互いに対して回転及びシフトされるようにされ得る。
【0106】
一形態では、フロントエンドアンテナシステム1のサイズ及びジオメトリは、アレイアンテナの数、各アンテナの素子数、及び/又は連続開口アンテナの寸法に基づき得る。一態様では、フロントエンドアンテナシステム1のサイズ及びジオメトリは、信号送信パラメータ及び/又は信号送信パラメータのうちの特に、所望の信号強度、周波数帯域幅、信号負荷容量、着信/発信信号の数に基づくものである。一例として、5G実装では、フロントエンドアンテナシステム1は、236個の素子(例えば、16×16アレイ)又は1024個の素子(32×32アレイ)を有するアレイ2を含む。別の例として、長距離通信の実装では、アレイ2は、2000個の素子(又は、アンテナ10が連続開口アンテナサブアレイによって実装される場合の2000個の素子のサイズに相当するもの)を含む。
【0107】
図3を参照すると、所与のモジュール70の様々な層が示されている。一形態では、モジュール70は、放射層72と、フィード層74と、分配ネットワーク層78とを含む。一形態では、放射層72は、1つ以上のビームを送信及び/又は受信するように構成される。一態様では、フィード層74は、1つ以上のビームを送信及び/又は受信するために放射層72を励起するように構成されている。フィード層74は、放射層72がフィード層74と統合(マージ)されている場合は、1つ以上の信号を送信及び/又は受信するようにされることが理解されるべきである。従って、放射層72とフィード層74が単一の物理層に統合されている場合、放射層72とフィード層74の機能は、同様の素子を用いて実行され得る。放射層72はフィード層74の上に配置されるように示されているが、放射層72が反射性材料を含む場合、フィード層74は放射層72の上に配置され得ることが理解されるべきである。
【0108】
一形態では、モジュール70は、フロントエンド電子回路層76に電気的に結合される。一態様では、フロントエンド電子回路層76は、1つ以上のビームを形成するように構成される。一態様では、分配ネットワーク層78は、フロントエンド電子回路層76からフィード層74に1つ又は複数を分配するように構成されている。一態様では、分配ネットワーク層78は、複数のビームを形成するように構成されている。層の順序、組み合わせ、及び位置決めは、他の形態においては異なってもよいことが理解されるべきである。
【0109】
一形態では、フロントエンド電子回路層76は、送信器又は受信器を含む。一形態では、フロントエンド電子回路層76は、1つ以上の送信信号を生成し、増幅する。別の形態では、フロントエンド電子回路層76は、1つ以上の受信信号を受信し、増幅し、再生する。別の例では、フロントエンド電子回路層76は、アンテナ10の1つ以上のアンテナポートに結合される1つ以上の信号のストリームを処理し、変更する。
【0110】
本明細書に記載された機能を実行するために、フロントエンド電子回路層76は、周波数変換器、デジタル・アナログ変換器(DAC)、アナログ・デジタル変換器(ADC)、パワーアンプ(PA)(例えば。パワーアンプ32)、低ノイズアンプ(LNA)(例えば、低ノイズアンプ34)、ミキサー、スイッチ、位相シフター(例えば、位相シフター52)、遅延線、可変利得アンプ(VGA)、位相同期ループ(PLL)、基準信号、ダイプレクサ、又はそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの形態では、フロントエンド電子回路層76は、ビームフォーマネットワーク、スイッチングネットワーク、トランシーバ、又はそれらの組み合わせを備える。
【0111】
いくつかの形態では、フロントエンド電子回路層76は、ビームネットワーク(例えば、ビームネットワーク50)、トランシーバ(例えば、トランシーバ30)、又はそれらの組み合わせを備える。いくつかの形態では、フロントエンド電子回路層76は、1つ以上の入力ポート、1つ以上の出力ポート、又はそれらの組み合わせを備える。いくつかの形態では、フロントエンド電子回路層76は、1つ以上の回路チップ、1つ以上の集積回路(IC)チップ、1つ以上のRF集積回路(RFIC)チップ、1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)、1つ以上のシステム・オン・チップ(SoC)等を備える。ある形態では、フロントエンド電子回路層76は、基板に搭載される1つ以上のチップを備える。ある形態では、フロントエンド電子回路層76は、RFステージ、IFステージ、デジタルステージ、LOステージ、又はそれらの組み合わせを提供するように構成される。
【0112】
図4を参照すると、放射層72の概略図が示されている。一形態では、放射層72は、1つ以上のビームを送信及び/又は受信するように構成された1つ以上の放射素子82Aを含む。従って、フィード層74は、放射素子82Aを励起して1つ以上のビームを送信及び/又は受信するように構成されている。例として、放射素子82Aは、ピクセル化アンテナ開口、連続アンテナ開口、平面アンテナ開口、コンフォーマルアンテナ開口、固定アンテナ開口、同調可能アンテナ開口、パッシブアンテナ開口、透過型アンテナ開口、反射型アンテナ開口、又はそれらの組み合わせを含むことができるが、それらに限定されるものではない。別の例として、放射素子82Aは、各モジュール70に対して所望のパターン及び放射特性を生成するように構成された複数のメタマテリアル素子及び/又はメタピクセルを含み得る。
【0113】
一形態では、放射素子82Aは、複数の層(すなわち、2つ以上の層)を有し得る。一形態では、各層は、誘電体基板、空気充填基板、金属パターン層、キャビティバック構造体、同調可能デバイス、アクティブデバイス、又はそれらの組み合わせを含み得るが、これらに限定されるものではない。
【0114】
一形態では、放射素子82Aは、複数のビームの位相、振幅、偏光、変調、又はそれらの組み合わせを変更するように構成された変更(modification)デバイス82Bを更に含む。例示的な変更デバイス82Bは、限定されないが、同調可能なデバイス/材料、アクティブデバイス、又はそれらの組み合わせを含む。
【0115】
一形態では、放射素子82Aは多層構造体(例えば、2層以上)であり、各層は、誘電体層、空気充填層、金属パターン層、誘電体パターン層、アクティブデバイス、パッシブデバイス、同調可能デバイス、又はこれらの組み合わせを含む。一態様では、層の数、各層の構造、層の全体的な形状及びサイズ、及び/又は同調可能なデバイスは、帯域幅(例えば、広帯域、狭帯域、マルチバンド、帯域幅選択又は遮断等)、同調範囲、(例えば、位相変動、振幅変動、偏波変動、周波数変動、変調変動等の調整)、又は放射信号の他のパラメータを向上させる。
【0116】
図5Aを参照すると、フィード層74の概略図が示されている。一形態では、フィード層74は、放射層72の放射素子82Aを励起し、及び/又はビームを送信/受信するように構成された複数のフィード素子84を含む。一例として、フィード素子84は、平面アンテナ、2.5D形状アンテナ、3D形状アンテナ、アクティブアンテナ、パッシブアンテナ、シングルポートアンテナ、マルチポートアンテナ、空気充填アンテナ、誘電体充填アンテナ、又はそれらの組み合わせを含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0117】
さらに、フィード素子84は、様々な空間配置を有し、送信モード、受信モード、又はその両方で動作可能であり得る。一例としては、また図5Bに示すように、フィード素子84-1、84-2が所定の平面上に配置され、フィード素子84-1が送信モードにおいて動作可能であり、フィード素子84-2が受信モードにおいて動作可能である。別の例としては、図5Cに示すように、フィード素子84-3は受信モードと送信モードの両方で動作可能である。さらに別の例としては、また図5Dに示すように、フィード素子84-4、84-5は物理的に互いに重なり、フィード素子84-4、84-5のうちの一方が、他方のフィード素子84-4、84-5の放射方向に配置されるような、非平面的な配置を有している。さらに、フィード素子84-4が送信モードで動作可能であり、フィード素子84-5が受信モードで動作可能であり得る(又はその逆でもあり得る)。
【0118】
一態様では、送信モードと受信モードのうちの一方で動作可能な一対のフィード素子84が、絶縁素子を介して絶縁され得る。また、一例として、図5Eに示すように、フィード素子84-6、84-7は、フィード素子84-6、84-7の間の電磁結合を抑制するために、フィード層74を通って延びてビアフェンスを集合的に形成する複数のビア85-1によって絶縁される。別の例として、また図5Fに示すように、フィード素子84-8,84-9は、フィード素子84-8,84-9間の電磁結合を抑制するために、人為的境界面85-2(例えば、とりわけ、完全磁気導体(PMC)壁、完全電気導体(PEC)壁)によって絶縁される。追加の例としては、また図5Gに示すように、フィード素子84-10、84-11は、フィード素子84-10、84-11間の電磁結合を抑制するために、接地シールド(又は接地平面)85-3によって絶縁されている。
【0119】
別の例として、図5Hに示すように、フィード素子84-12、84-13は、フィード素子84-12、84-13によって送信又は受信される信号の漏れを抑制するように構成された寄生素子85-4によって絶縁される。具体的には、パッシブ共振器又はアクティブ共振器として動作可能な寄生素子85-4は、干渉が変更、抑制、又はキャンセルされるように、フィード素子84-12、84-13によって送信又は受信される信号を制御することができる。一形態では、寄生素子85-4は、フィード素子84-12、84-13からの結合信号の位相及び/又は振幅を変化させる。一形態では、寄生素子85-4は、フィード素子84-12、84-13からの特定の結合経路を通る結合信号の位相及び/又は振幅を変化させる。
【0120】
さらなる例として、また図5Iに示すように、フィード素子84-14、84-15は、フィルタネットワーク85-5によって絶縁される。一形態では、フィルタネットワーク85-5は、高調波を抑制してフィード素子84-14、84-15の間の電磁結合を抑制するために、集合的にπ-ネットワーク、T-ネットワーク、L-ネットワーク、又はそれらの組み合わせを形成するコンデンサ及び/又はインダクタを含む。一形態では、フィルタネットワーク85-5は、高調波を抑制してフィード素子84-14、84-15間の電磁結合を抑制するために、集合的にπ-ネットワーク、T-ネットワーク、L-ネットワーク、又はそれらの組み合わせを形成するコンデンサ及び/又はインダクタの等価回路モデルを有する寄生素子を含む。一態様では、寄生素子及び/又はフィルタは、アンテナ10、アンテナポート、又はそれらの組み合わせに設けられ、及び/又はそれらに統合される。
【0121】
さらに別の例として、また図5Kに示すように、フィード素子84-20、84-21が、フィード素子84-20、84-21間の電磁結合を抑制するために、キャビティ85-7によって絶縁される。図5E図5Kに示されるフィード素子84は平面的な配置で図示されているが、それぞれのフィード素子84のいずれかが他の形態では非平面的な配置を有し得ることが理解されるべきである。
【0122】
一形態で、図5Jに示されるように、フィード素子84-16、84-17は、キャンセルネットワーク85-6によって絶縁される。キャンセルネットワーク85-6は、フィード素子84-16、84-17を絶縁するように示されているが、送信/受信モードのうちの1つにおいて動作可能であるフィード素子84の複数の組を絶縁し得る(例えば、キャンセルネットワーク85-6は、それぞれの送信モードのフィード素子をそれぞれの受信モードのフィード素子から絶縁し、逆もまた同様にすることができる)。
【0123】
一形態では、キャンセルネットワーク85-6は、送信(Tx)信号チェーン174-2上の信号によって引き起こされるRx信号チェーン174-1の干渉を抑制するために、受信(Rx)信号チェーン174-1に二次信号を選択的に注入するように構成される。一形態では、Rx信号チェーン174-1は、ビームのうちの1つ以上にわたって1つ以上の信号ストリームを受信するために利用されるフロントエンドアンテナシステム1の様々なコンポーネントを含み、Tx信号チェーン174-2は、複数のビームを介して複数の信号ストリームを送信するために利用されるフロントエンドアンテナシステム1の様々なコンポーネントを含む。一形態では、キャンセルネットワーク85-6は、フィード素子84-16の各ポート及び信号ストリームの送信信号をサンプリングするように構成される。送信信号の1つ以上について、キャンセルネットワーク85-6は、Rx信号チェーン上の送信信号によって引き起こされる干渉をキャンセルするために、Rx信号チェーン174-1上に二次信号を注入するように構成されている。一形態では、キャンセルネットワーク85-6は、サンプリングされた信号及び/又は注入された信号のパラメータを制御及び調整する、同調可能なネットワークである。
【0124】
本明細書で説明する機能を実行するために、キャンセルネットワーク85-6は、1つ以上の信号スプリッタ、1つ以上のフィルタ回路、1つ以上の位相シフター及び/又は時間遅延回路、1つ以上の減衰器、1つ以上の結合器、1つ以上の同調可能コンポーネント、又はそれらの組み合わせを含むことができる。一態様では、キャンセルネットワーク85-6は集積回路チップに実装され、キャンセルネットワーク85-6は、無線周波数(RF)ステージ、中間周波数(IF)ステージ、デジタルステージ、局部発振器(LO)ステージ、又はこれらの組み合わせに設けられる。一形態では、キャンセルネットワーク85-6は、ビームネットワーク50及び/又はトランシーバ30におけるコンポーネント、回路、又はそれらの組み合わせの一部を共有する。一形態では、信号チェーンからのサンプリングされた信号及び/又は注入された信号は、ビームネットワーク50の1つ以上のポートに結合され、ビームネットワーク50を通してキャンセルネットワーク85-6を実行する。
【0125】
絶縁素子(すなわち、複数のビア85-1、人為的境界面85-2、接地シールド85-3、寄生素子85-4、フィルタネットワーク85-5、キャンセルネットワーク85-6、及びキャビティ86-7)の任意の組み合わせを、一対のフィード素子84及び/又は複数のフィード素子84の間に設け得る。一例として、図5Lに示すように、フィード層74は、複数のビア85-1、人為的境界面85-2、接地シールド85-3、寄生素子85-4、フィルタネットワーク85-5、キャンセルネットワーク85-6、及びキャビティ86-7のそれぞれを含み、フィード素子84の様々なペアを互いから絶縁させることが可能である。
【0126】
図6A図6Bを参照すると、モジュール70の概略図が示されている。一形態では、放射層72は、フィード層74の1つ以上のフィード素子84に結合される1つ以上の放射素子82Aを含む。上述したように、放射層72とフィード層74は、ある形態では統合され得る。ある形態では、フロントエンド電子回路層76は、複数のビームを生成するように構成された1つ以上の回路86(例えば、集積回路(IC)、無線周波数IC(RFIC)等)を含む。従って、1つ以上の回路86は、トランシーバ30、ビームフォーマネットワーク50、及び/又はコントローラ90などの、フロントエンドアンテナシステム1の様々なコンポーネントを含み得る。一態様では、1つ以上の回路86は、本明細書に記載される機能を実行するためのシステム・オン・チップ(SoC)構成におけるベースバンド、デジタル、モデム、及び/又は制御回路を含み得る。一態様では、1つ以上の回路86の各々は、所定のモジュール70に関連付けられる(すなわち、1つ以上の回路86は、所定のモジュール70のフィード層74に電気的に結合される)。なお、1つ以上の回路86は、複数のモジュール70に関連付けられ得る(例えば、単一のIC86が複数のモジュール70に対して設けられる)。一態様では、モジュール70は、1つ以上のプリント回路基板(PCB)層を含む。
【0127】
図7Aを参照すると、複数のモジュール70-1、70-2と第2の層160との統合の概略図が示されている。一態様では、モジュール70-1,70-2は、1つ以上の接続素子150を含む。一形態では、接続素子150は、第1の基板層上に配置されるモジュール70-1、70-2のそれぞれを第2の層160に電気的に結合し、それによってモジュール70-1、70-2の様々なコンポーネントを互いに電気的に結合するように構成される。一形態において、接続素子150は、第2層160上に設けられる。一態様では、第2の層160は、プリント回路基板(PCB)層である。
【0128】
一形態において、第2の層160は、第1の分配ネットワーク層78A、第2の分配ネットワーク層78B、フロントエンドアンテナシステム1の回路、又はそれらの組み合わせを含む。一形態では、フロントエンドアンテナシステム1の回路は、ビームネットワーク50、トランシーバ30、又はそれらの組み合わせを含む。一態様では、第2の分配ネットワーク層78Bは、1つ以上の導波路、1つ以上の伝送線、1つ以上のデバイダ、1つ以上の結合器、又はそれらの組み合わせを含む1つ以上の分配器88を含む。例示的な分配器88は、限定されないが、漏れ波導波路、スロット導波路(例えば。空気充填導波路、基板集積導波路など)、コプレーナ導波路、キャビティバック導波路(例えば、カスタム形状の空気充填又は誘電体充填)、平行板導波路、レンズ構造体(平面レンズ構造体、ルネバーグ(Luneburg)レンズ供給ネットワーク、ロットマン(Rotman)レンズなど)、ビームフォーミングマトリクス構造体(例えば、バトラーマトリクス(Butler Matrix)、ハイブリッドカプラ、直交カプラ(Quadrature Coupler)、ブラスマトリクス(Blass Matrix)、ビームスイッチマトリクス(Beamswitch Matrix)など)、マイクロストリップ構造体、Hツリー構造体、又はそれらの組み合わせを有する。
【0129】
図3図6A図6B、及び図7Aを参照すると、分配ネットワーク層78、78Aは、複数のビームをRFIC層76からフィード層74に分配するように構成された分配器88を含む。一態様では、分配器88は、1つ以上の導波路、1つ以上の伝送線、1つ以上のデバイダ、1つ以上の結合器、又はそれらの組み合わせを含む。例示的な分配器88は、限定されないが、漏れ波導波路、スロット導波路(例えば。空気充填導波路、基板集積導波路など)、コプレーナ導波路、キャビティバック導波路(例えば、カスタム形状の空気充填又は誘電体充填)、平行板導波路、レンズ構造体(平面レンズ構造体、ルネバーグレンズネットワーク、ロットマンレンズなど)、ビームフォーミングマトリクス構造体(例えば、バトラーマトリクス、ハイブリッドカプラ、直交カプラ、ブラスマトリクス、ビームスイッチマトリクスなど)、マイクロストリップ構造体、Hツリー構造体、又はそれらの組み合わせを有する。具体例として、図7Bに示すように、分配器88は、1つ以上の矩形導波路88Aのネットワークであり得る。別の具体例として、また図7Cに示すように、分配器88は、平行板導波路88Bであり得る。
【0130】
図8を参照すると、別の例示的なモジュール70-3の断面図が示されている。一形態では、モジュール70-3は、放射層72と、フィード層74と、分配ネットワーク層78と、遷移層180とを含む。一形態では、放射層72の放射素子82Aは、複数のメタマテリアル素子を含み、フィード層74のフィード素子84は複数のスロットアンテナを含む。一形態では、放射層72とフィード層74は、エアギャップによって隔てられている。一形態では、フィード素子84は、分配器88(例えば、矩形導波路88Aと平行板導波路88Bの一方)上に配置される。一形態では、分配ネットワーク層78とフロントエンド電子回路層76のRFIC86は、遷移層180によって結合される。一形態では、遷移層は、コプレーナ導波路(CPW)からの導波路遷移、マイクロストリップからの導波路遷移、平面遷移、2.5D遷移、ステップ遷移、導波路プローブ遷移、又はこれらの組み合わせである。
【0131】
図9を参照すると、別の例示的なモジュール70-4の断面図が示されている。一形態では、モジュール70-4は、放射層72と、フィード層74と、分配ネットワーク層78とを含む。一形態において、放射層72の放射素子82Aは複数のメタマテリアル素子を含み、フィード層74のフィード素子84は、複数の平面アンテナ、マイクロストリップアンテナ、ワイヤアンテナ、スロットアンテナ、2.5D形状アンテナ、3D形状アンテナ、空気充填アンテナ、誘電体アンテナ、開口アンテナ等を含む。一形態では、放射層72とフィード層74は、エアギャップによって隔てられている。一形態では、フィード素子84は、分配ネットワーク層78の(分配器88としての)伝送線88Cを介してフロントエンド電子回路層76の1つ以上の回路86に電気的に結合される。
【0132】
図10を参照すると、マルチビームモードで動作するフロントエンドアンテナシステム1の機能ブロック図が示されている。一形態では、各アンテナ10-5は、1つ以上のポート18-1、18-2、・・・18-n(「ポート18」と総称する)を有し、ポート18の各々は、1組のスイッチングネットワーク58(例えば、スイッチングネットワーク58-1、58-2、58-3、58-4)に結合される。一形態では、1組のスイッチングネットワーク58は、パワーアンプ32-1及び低ノイズアンプ34-1を含む第1のトランシーバ30-1と、パワーアンプ32-2及び低ノイズアンプ34-2を含む第2のトランシーバ30-2とを含み得る1組のトランシーバ30に結合される。一形態では、アンテナ10-5の各ポート18は、全二重通信モード(すなわち、送信/受信モードでの同時動作)で1組のトランシーバ30に接続される。この形態では、アンテナ10の送信及び受信ポート、アンテナ10の送信及び受信チェーン、又はそれらの組み合わせを絶縁するために、絶縁素子85を設けてもよい(図10には示されていない)。
【0133】
一形態では、ビームフォーマネットワーク51(図10には示されていない)、スイッチングネットワーク58-1、及びパワーアンプ32-1は、フロントエンドアンテナシステム1の各アンテナ10-5の各ポート18について、ビームの送信水平偏波を制御するように構成される。一形態では、ビームフォーマネットワーク50、スイッチングネットワーク58-3、及びパワーアンプ32-2は、フロントエンドアンテナシステム1の各アンテナ10-5の各ポート18について、ビームの送信垂直偏波を制御するように構成されている。一形態では、ビームフォーマネットワーク50、スイッチングネットワーク58-2、及び低ノイズアンプ34-1は、フロントエンドアンテナシステム1の各アンテナ10-5の各ポート18について、ビームの受信水平偏波を制御するように構成されている。一態様では、ビームフォーマネットワーク50、スイッチングネットワーク58-4、及び低ノイズアンプ34-2は、フロントエンドアンテナシステム1の各アンテナ10-5の各ポート18について、ビームの受信垂直偏波を制御するように構成されている。スイッチングネットワーク58-3、パワーアンプ32-2、低ノイズアンプ34-3、アンテナ10-5、及びポート18は、円偏波、楕円偏波、直線偏波、又はそれらの組み合わせに対して構成され得ることが理解されるべきである。
【0134】
図11を参照すると、複数のマルチポートアンテナ10-6を含み、全二重通信モードで動作する、フロントエンドアンテナシステム1の機能ブロック図が示されている。上述したように、また図11に示すように、ビームフォーマネットワーク50及び/又はそのコンポーネントは、RFステージ190、中間周波数(IF)ステージ192、及び/又はデジタルステージ194を含む様々なステージに実装され得る。図11の機能ブロック図は、図10に示された機能ブロック図と同様であるが、この形態では、各マルチポートアンテナ10-6は、複数のポート19を含み、各ポート19は、同じ偏波、同じ周波数帯、同じ変調、又はそれらの組み合わせの複数のビームを送信及び/又は受信し得る。さらに、この形態では、各ポート19は、スイッチングネットワーク58の1つとトランシーバ30の1つとに結合される。
【0135】
図12Aを参照すると、ハイブリッドビームネットワーク処理を行うように構成されたフロントエンドアンテナシステム1の機能ブロック図の一例が示されている。一態様では、機能ブロック図の層は、フロントエンドアンテナシステム1―4の様々なステージ/機能に対応する。層は個別に示されているが、層のうちのいずれかを他の形態で互いに組み合わせてもよく、本明細書に記載されている配置に限定されない。
【0136】
一形態では、アンテナシステム1-4は、アンテナ層300、アナログ層310、及びデジタル層320を含む。一形態では、アンテナ層300は、分配層302と、アンテナフィード層304と、アンテナ10の放射層306とを含む。一形態では、アナログ層310は、本明細書に記載される機能を実行するためのIFビームネットワーク層312、RFビームネットワーク層314、及びTRX層316を含む。一形態では、デジタル層320は、ベースバンド処理を行うためのベースバンド層322と、デジタルビームネットワーク層324と、アナログ・デジタル変換/デジタル・アナログ変換を行うためのDAC/ADC層326と、を含んでいる。デジタル層320は、モデム及び他のデジタルシステムコンポーネントを含み得る。一態様では、アナロググループとデジタルグループの分離は、アナログ回路と、同じ技術ノードを有する単一のダイ、又はダイのセット上の及びブロックとの統合を提供することができる。
【0137】
図12Bを参照すると、フロントエンドアンテナシステム1―4の別の例示的な機能ブロック図が示されている。図12Bに示される機能ブロック図は、IFビームネットワーク層312がデジタル層320内に設けられることを除いて、図12Aに示される機能ブロック図と同様である。
【0138】
図12Cを参照すると、フロントエンドアンテナシステム1―4の追加の例示的な機能ブロック図が示されている。図12Cに図示された機能ブロック図は、RF層310及びデジタル層320が集積回路層330内に提供されることを除いて、図12A図12Bに図示された機能ブロック図と同様である。
【0139】
一態様では、アンテナ層300、アナログ層310、デジタル層320、及び/又は集積回路層330は、以下のものの上に設けられ及び/又はそれらを含むことができる:すなわち、とりわけ、PCB、3D又は2.5D成形及び/又は機械加工された構造体;誘電体、金属、及び/又は空気で満たされた構造体及び材料;パッシブ及び又はアクティブ電子デバイス(例えば、バラクタ、ダイオード、トランジスタ、薄膜トランジスタ(TFT)など)、同調可能な材料(例えば、BSTベース材料、液晶など)及び/又は構造体。一態様では、アンテナ層300、アナログ層310、デジタル層320、及び/又は集積回路層330は、以下のものの上に設けられ及び/又はそれらを含むことができる:すなわち、RFIC、特定用途向け集積回路(ASIC)、SoC及び/又はPCB上に集積されたそのようなブロック(特に、コンポーネント、接続線など)のセット。
【0140】
図13を参照すると、コンピューティングシステム1000及びフロントエンドアンテナシステム1の1つの実装の例示的なコンピュータアーキテクチャ図が示されている。いくつかの実装では、コンピューティングシステム1000は、通信チャネル及び/又はネットワークを介して通信可能に結合された複数のデバイスに実装される。いくつかの形態では、コンピューティングシステム1000のコンポーネントは、別々のコンピューティングデバイス及び/又はセンサデバイスに実装される。いくつかの形態では、コンピューティングシステム1000の2つ以上のコンポーネントは、同じデバイスに実装される。コンピューティングシステム1000及びその一部は、コンピューティング及び/又は無線デバイスに統合され得る。
【0141】
ある形態では、通信チャネル1001は、プロセッサ1002A~1002N、メモリコンポーネント(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)1003、リードオンリーメモリ(ROM)1004、及び/又はプロセッサ可読記憶媒体1005)、表示装置1006、ユーザ入力装置1007、ネットワーク装置1008、本明細書で説明したフロントエンドアンテナシステム1、及び/又は他の適切なコンピューティング装置とインターフェースで接続される。
【0142】
一形態では、プロセッサ1002A~1002Nは、中央処理装置(CPU)、グラフィック処理装置(GPU)、マイクロプロセッサ、機械学習/深層学習(ML/DL)処理装置(例えば、テンソル処理装置)、FPGA(Field Programmable Gate Arrays)、カスタムプロセッサ、及び/又は任意の適したタイプのプロセッサを含み得る。
【0143】
一形態では、プロセッサ1002A~1002N及びメモリコンポーネント1003は、集合的に処理ユニット1010を形成する。いくつかの実施形態では、処理ユニット1010は、メモリコンポーネント1003、ROM1004、及びプロセッサ可読記憶媒体1005のうちの1つ以上にバスを介して通信可能に結合されて、そこに記憶された命令を実行する1つ以上のプロセッサを含む。一態様では、処理ユニット1010は、ASIC、SoC、又はそれらの組み合わせである。
【0144】
一形態では、ネットワーク装置1008は、コンピューティングシステム1000及び/又は外部デバイスなどの他のデバイス間で情報を交換するための1つ以上の有線又は無線インターフェースを提供する。例示的なネットワーク装置1008は、ユニバーサルシリアルバス(USB)インターフェース、BLUETOOTH(登録商標)インターフェース、無線フィデリティ(Wi-Fi)インターフェース、イーサネットインターフェース、近距離無線通信(NFC)インターフェース、セルラーインターフェースなどを含むが、これらに限定されるものではない。
【0145】
一形態では、プロセッサ読み取り可能な記憶媒体1005は、ハードドライブ、フラッシュドライブ、DVD、CD、光ディスク、フロッピーディスク、フラッシュストレージ、ソリッドステートドライブ、ROM、EEPROM、電子回路、半導体メモリデバイス、又はこれらの組み合わせである。プロセッサ可読記憶媒体1005は、オペレーティングシステム、ソフトウェアプログラム、デバイスドライバ、及び/又は他の適切なサブシステム又はソフトウェアを含み得る。
【0146】
本明細書で特に明示しない限り、機械的/熱的特性、組成割合、寸法及び/又は公差、又は他の特性を示す全ての数値は、本開示の範囲を説明する際に「約」又は「およそ」という言葉によって修飾されるものとして理解されるべきものである。この修飾は、工業的慣行、材料、製造、及び組立の公差、並びに試験能力を含む様々な理由から望まれるものである。
【0147】
本明細書で使用されるように、フレーズ「A、B、及びCの少なくとも1つ」、及び「それらの組み合わせ」は、非排他的論理和を用いた論理(A OR B OR C)を意味すると解釈すべきであり、「Aの少なくとも一つ、Bの少なくとも一つ、及びCの少なくとも一つ」を意味すると解釈してはならない。
【0148】
本願において、「コントローラ」及び/又は「モジュール」という用語は、以下を指すか、その一部であるか、又は含み得る:ASIC(特定用途向け集積回路);デジタル・アナログ、又はアナログ・デジタルの混合ディスクリート回路;デジタル・アナログ、又はアナログ・デジタルの混合集積回路;組み合わせ論理回路;FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ);コードを実行する(共有、専用、又はグループ)プロセッサ回路;プロセッサ回路によって実行されるコードを格納する(共有、専用、又はグループ)メモリ回路;本明細書に記載の機能をもたらす他の適切なハードウェアコンポーネント;又はシステム・オン・チップのように上記の一部又は全ての組み合わせ。
【0149】
メモリという用語は、コンピュータ可読媒体という用語のサブセットである。本明細書で使用されるように、コンピュータ可読媒体という用語は、媒体(搬送波上など)を伝播する一過性の電気信号又は電磁信号を包含しない;したがって、コンピュータ可読媒体という用語は、有形かつ非一時的であり得る。非一時的で有形のコンピュータ可読媒体の非限定的な例は、不揮発性メモリ回路(フラッシュメモリ回路、消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ回路、又はマスク読み取り専用回路など)、揮発性メモリ回路(静的ランダムアクセスメモリ回路又は動的ランダムアクセスメモリ回路など)、磁気ストレージ媒体(アナログ又はデジタル磁気テープ又はハードディスクドライブなど)及び光ストレージ媒体(CD、DVD又はブルーレイディスクなど)である。
【0150】
本願で説明する装置及び方法は、コンピュータプログラムに具現化された1つ以上の特定の機能を実行するように汎用コンピュータを構成することによって作製された特殊目的コンピュータによって部分的又は完全に実施され得る。上述した機能ブロック、フローチャートコンポーネント、及び他の素子は、ソフトウェア仕様として機能し、熟練技術者又はプログラマーの日常作業によってコンピュータプログラムに変換され得る。
【0151】
本開示の説明は、本質的に単なる例示であり、したがって、本開示の本質から逸脱しない変形は、本開示の範囲内にあることが意図される。そのような変形は、本開示の精神及び範囲から逸脱するものとはみなされない。

図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図5I
図5J
図5K
図5L
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13
【国際調査報告】