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特表2024-514231バッテリ蓄電装置の電極層の分析方法、バッテリ蓄電装置の製造方法、および製造ユニット
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  • 特表-バッテリ蓄電装置の電極層の分析方法、バッテリ蓄電装置の製造方法、および製造ユニット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-29
(54)【発明の名称】バッテリ蓄電装置の電極層の分析方法、バッテリ蓄電装置の製造方法、および製造ユニット
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
H01M4/04 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549617
(86)(22)【出願日】2022-02-01
(85)【翻訳文提出日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 EP2022052305
(87)【国際公開番号】W WO2022179810
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】21159596.2
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21162908.4
(32)【優先日】2021-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】シュルテ,サッシャ
(72)【発明者】
【氏名】ギグラー ,アレクサンダー,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】アルツベルガー,アルノ
(72)【発明者】
【氏名】バルダウフ,マンフレート
(72)【発明者】
【氏名】シュタインバッハー,フランク
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CB01
5H050GA28
5H050GA29
(57)【要約】
本発明は、バッテリ蓄電装置の電極層の分析方法、バッテリ蓄電装置の製造方法、製造ユニットおよびコンピュータプログラム製品に関する。電極層製造設備におけるバッテリ蓄電装置の電極層の分析方法は、複数のステップを含む。まず、画素を取得するハイパースペクトルカメラが準備される。続いて、電極層の少なくとも2つの画素を有する画像が取得され、第1の画素は電極層の第1の位置を描画し、第2の画素は電極層の第2の位置を描画し、第1の位置および第2の位置は隣接配置されている。続いて、計算ユニットにおいて、第1の画素に基づいて第1の位置における電極層の第1の材料特性が決定され、かつ第2の画素に基づいて第2の位置における電極層の第2の材料特性が決定される。第1の位置および第2の位置における材料特性が比較されて比較値が決定される。その比較値に基づいて電極層の特徴的特性が決定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極層製造設備(8)内のバッテリ蓄電装置(50)用の電極層(4)を分析する方法であって、
画素を取得するハイパースペクトルカメラ(5)を準備するステップと、
前記電極層(4)の少なくとも2つの画素を取得するステップであって、第1の画素が、前記電極層(4)の第1の位置を描画し、第2の画素が、前記電極層(4)の第2の位置を描画し、前記第1の位置および前記第2の位置が、互いに隣接して配置されている、ステップと、
計算ユニット(100)において、前記第1の画素に基づいて前記第1の位置における前記電極層(4)の第1の材料特性を決定し、前記第2の画素に基づいて前記第2の位置における前記電極層(4)の第2の材料特性を決定するステップと、
前記第1の位置における材料特性と前記第2の位置における材料特性とを比較して比較値を決定するステップと、
前記比較値に基づいて前記電極層(4)の特徴的特性を決定するステップと、
を有する方法。
【請求項2】
前記電極層(4)の層厚、材料組成勾配、材料均質性値および/又は水分値、および/又は前記電極層(4)内の亀裂が、特徴的特性として決定される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
材料特性を決定するために、第1のAIエンジン(111)がコンピュータ支援のもとで使用される、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記第1のAIエンジン(111)が、前記画素を材料特性のクラスに分類するために深層学習方法により訓練される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記バッテリ蓄電装置(50)の電池セルに前記電極層(4)が挿入され、前記バッテリ蓄電装置(50)が動作状態にされ、前記バッテリ蓄電装置(50)の動作データ(103)が確定され、前記動作データ(103)が前記バッテリ蓄電装置(50)の品質値を決定するために使用され、前記品質値が前記特徴的特性と相関する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
第2のAIエンジン(112)が、前記品質値を品質クラスに分類し、かつ前記品質クラスに基づいて前記特徴的特性の評価を実施するために訓練される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記品質値として、前記バッテリ蓄電装置(50)の経年特性、容量および/又は内部抵抗が用いられる、請求項5又は6記載の方法。
【請求項8】
前記電極層(4)の画像は、前記バッテリ蓄電装置(50)の製造工程中に取得される、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記電極層のペースト中の溶媒の量が前記水分値として決定される、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
バッテリ蓄電装置(50)の製造方法であって、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法に従って、前記バッテリ蓄電装置(50)用の電極層(4)を分析するステップと、
少なくとも1つの特徴的特性値および/又は少なくとも1つの品質値に基づいて、前記電極層(4)を製造するための少なくとも1つの製造条件を調整するステップと、
を有する、製造方法。
【請求項11】
前記電極層(4)を製造するための少なくとも1つの製造条件が、少なくとも2つの特徴的特性値および/又は少なくとも2つの品質値に基づいて調整される、請求項10記載の製造方法。
【請求項12】
温度、電極スラリー(2)の溶媒含有量、前記電極スラリー(2)の混合度及び/又は前記電極スラリー(2)の支持基板(3)への塗布速度が、前記製造条件として調整されることを特徴とする請求項10又は11に記載の製造方法。
【請求項13】
バッテリ蓄電装置(50)を製造するための製造ユニット(1)であって、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法を実施するように構成されたハイパースペクトルカメラ(5)および計算ユニット(100)を備えた電極層製造設備(8)を含む、製造ユニット(1)。
【請求項14】
プログラム可能な計算ユニット(100)のメモリに直接ロード可能であるコンピュータプログラム製品であって、前記計算ユニット(100)内で前記コンピュータプログラム製品が実行されるときに請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法を実施するためのプログラムコード手段を備えた、コンピュータプログラム製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ蓄電装置の電極層の分析方法、バッテリ蓄電装置の製造方法、製造ユニットおよびコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
以下においてリチウムイオンバッテリとも称するリチウムイオン蓄電池は、その高い出力密度およびエネルギー密度のため、携帯用および定置用のエネルギー貯蔵装置として使用される。
【0003】
リチウムイオンバッテリは、典型的には、複数のバッテリセルを含む。バッテリセル、特に、リチウムイオンバッテリセルは、複数の層を備えている。これらの層は、典型的には、アノード、カソード、セパレータおよび他の要素を含む。これらの層は、積層型として、又は巻回型として設計することができる。
【0004】
電極は、典型的には、金属箔、特に銅および/又はアルミニウムを含み、これらは活物質でコーティングされる。スラリーとして知られているリチウム含有ペーストが、典型的には、活物質として適用される。金属箔およびコーティングは、それぞれ数マイクロメータの厚さを有する。その結果、コーティングの厚さ又は材料特性、特に材料組成の偏差が数マイクロメートルであっても、電極の品質に悪影響を及ぼすことになる。したがって、不規則なコーティングは、劣った品質のバッテリセルを生じるという不利点がある。さらなる不利点は、バッテリセルの安全な動作が保証されていないことである。
【0005】
現在の技術水準では、欠陥のあるコーティングは、全体のバッテリセル生産プロセスの完了後、いわゆるエンドオブライン試験でのみ検出することができることが多い。場合によっては、バッテリセルが数年間動作した後にのみ、コーティングの不良が検出される。
【0006】
したがって、バッテリ生産は、不利なことに、高い不良品発生率にさらされる。これは、十分な量の高品質のバッテリセルを生産するために、生産プロセスには大量の材料とエネルギーの投入が必要であることを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の課題は、バッテリ製造の不良品発生率を低減する、電極層の分析方法、バッテリ蓄電装置の製造方法、製造ユニットおよびコンピュータプログラム製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、本発明によれば、請求項1記載の方法、請求項10記載の製造方法、請求項13記載の製造ユニットおよび請求項14記載のコンピュータプログラム製品によって解決される。
【0009】
電極層製造設備におけるバッテリ蓄電装置の電極層を分析する本発明による方法は、複数のステップを含む。まず、ハイパースペクトルカメラが準備される。ハイパースペクトルカメラが、画素を取り込む。ハイパースペクトルカメラが、電極層の少なくとも2つの画素を含む画像を取得する。第1の画素は、電極層の第1の位置を描画し、第2の画素は、電極層の第2の位置を描画する。第1の位置と第2の位置とは互いに隣接して配置されている。第1の画素に基づいて、第1の位置において電極層の第1の材料特性が決定される。第2画素に基づいて、第2位置において電極層の第2の材料特性が決定される。両決定は、計算ユニットで実行される。そして、第1の位置における材料特性と第2の位置における材料特性との比較が行われる。その比較に基づいて、比較値が決定される。そして、その比較値に基づいて、電極層の特徴的特性が決定される。
【0010】
バッテリ蓄電装置を製造する本発明による方法は、複数のステップを含む。バッテリ蓄電装置用の電極層が、本発明の分析方法に従って分析される。次いで、電極層を製造するための少なくとも1つの製造条件が、少なくとも1つの特徴的特性および/又は少なくとも1つの品質値に基づいて調整される。
【0011】
バッテリ蓄電装置を製造する本発明の製造ユニットは、ハイパースペクトルカメラと計算ユニットとを有する電極層製造設備を含む。計算ユニットは、本発明による方法を実施するように設計されている。
【0012】
本発明によるコンピュータプログラム製品は、プログラム可能な計算ユニットのメモリに直接ロード可能であり、本発明による方法を計算ユニットで実行するためのプログラムコード手段を含む。
【0013】
直接隣接する画素は、隣接して配置された画素とみなされる。また、画素間の材料特性を補間することができるように距離が非常に小さい画素も隣接配置されているものとみなす。特に、画素は、2cm離れていてもよく、特に、1cm離れているのが好ましい。
【0014】
材料特性は、特に、選択された波長における電極層の反射挙動に基づいて決定される。特に、材料特性は、ハイパースペクトルカメラの画素の事前較正を介して決定される。
【0015】
したがって、本発明によれば、電極層の材料特性は、ハイパースペクトルカメラの画像に基づいて分析される。ハイパースペクトルカメラの使用は、有利には、異なる波長を分析し、材料特性の特徴的画像を作成するべく適切に重ね合わせて使用することを可能にする。従来のグレースケール又は3チャネルイメージングとは対照的に、スペクトルの差異は、色特性として集合的に評価されるのではなく、むしろ、それぞれ別々に評価される異なる波長が、画像セグメンテーションおよび/又は材料特性の分析に寄与する。この方法は、それらの化学組成のために、異なる材料が異なる波長で異なる特性を示すという事実に基づいている。したがって、本発明による方法により、電極層を変化させることなく、又は破壊することなく、材料特性を決定することが有利に可能である。また、ハイパースペクトルカメラの使用は、電極層を、単にランダムなベースで分析するのではなく、連続的に分析することを有利に可能にする。これにより、電極層をはるかに精密に分析することができる。したがって、有利には、製造方法における製造条件は、より精密なデータに基づいて、より高い精度で変化させることができる。
【0016】
さらに、有利には、前記比較値に基づいて特徴的特性を決定することができる。特に、層厚さ、材料組成勾配、材料均質値および/又は水分値が特徴的特性として決定される。同様に、電極層のトポロジーの不規則性、特に亀裂又は孔を検出することができる。特に、したがって、有利には、生産中に発生する凹凸を決定することができる。特徴的特性は、特に基準値との比較に基づいて評価することができる。特徴的特性が基準値の限界値を超える場合は、製造条件を調整することができる。
【0017】
さらに、ハイパースペクトルカメラは、有利には、時間の経過に伴って連続的に測定することが可能である。したがって、材料特性の変化を、局所的な材料特性勾配としておよび/又は時間的な材料特性勾配として決定することができる。したがって、有利には、電極層生成中の変化を早い段階で検出することが可能である。
【0018】
本発明の有利な実施形態および発展形態では、材料特性を決定するために第1のAIエンジンが使用される。この方法は、コンピュータ支援方法で実行される。したがって、ハイパースペクトルカメラの画素の評価は有利に自動化される。したがって、有利には、人間の介入は、もはや不要である。これにより、非常に大量のデータを処理することが可能になる。加えて、有利に、極めて迅速に評価を行うことができる。
【0019】
本発明の別の有利な実施形態および発展形態では、第1のAIエンジンは、ディープラーニング方法によって、画素を材料特性のクラスに分類するように訓練される、したがって、有利には、ハイパースペクトルカメラの画像データの評価は自動化される。したがって、有利には、人間の介入は、もはや不要である。これにより、非常に大量のデータを処理することが可能になる。加えて、有利に、極めて迅速に評価を行うことができる。
【0020】
本発明の有利な実施形態および発展形態では、電極層がバッテリ蓄電装置に挿入され、バッテリ蓄電装置が動作状態にされ、バッテリ蓄電装置の動作データが決定される。この動作データは、バッテリ蓄電装置の品質値を決定するために使用され、品質値は特徴的特性と相関がある。したがって、第2のAIエンジンを訓練するために、電極層がバッテリ蓄電装置に設置され、バッテリ蓄電装置が作動させられる。そして、その動作データは、特徴的特性と相間がある。次に、動作データと特徴的特性に基づいて、品質値との相関を決定することができる。品質値としては、特に、バッテリ蓄電装置のエージング特性、能力、および/又は内部抵抗が使用される。
【0021】
第2のAIエンジンがこのデータでトレーニングされていれば、そのバッテリセルを稼動させることなく、特徴的特性だけに基づいて第2のAIエンジンで品質値を決定することが可能になる。したがって、この電極層をバッテリセルに設置するのか、バッテリセル内のこの電極層をより大きなエネルギー貯蔵装置に設置するのかを早い段階で決定することができる。したがって、不良品発生率が電極層の製造中に既に行われている分析によって有利に低減される。これは、有利には、製造プロセスの効率を著しく増加させる結果となる。
【0022】
本発明のさらなる有利な実施形態および発展形態では、第2のAIエンジンは、品質値を品質クラスに分類し、これらの品質クラスに基づいて特徴的特性の評価を実行するように訓練される。品質値をクラスに分類し、特徴的特性に品質値を割り当てると、評価プロセスが有利に高速化され、より堅牢になる。したがって、バッテリ製造の不良品発生率は、有利にはなお一層低減され得る。
【0023】
本発明の有利な実施形態および発展形態では、電極層の画像は、バッテリ蓄電装置の製造プロセス中に取得される。特に有利には、電極層は、したがって、製造中に殆どリアルタイムで分析することができる。さらに、電極層は、特徴的特性によって非常に迅速かつ確実に評価することができる。したがって、電極層は、最初に動作を開始しなくても、有利に評価することができる。有利には、バッテリセル全体に対する不良品発生率を低減することができる。
【0024】
本発明の別の有利な実施形態および発展形態では、電極層内の溶媒の量が水分値として決定される。電極層内の水分値が品質値と負の相関関係にある場合、又は、所定制限範囲を超えて特徴的特性が劣化する場合、電極層スラリーは、電極層が確実に所望の特性を発揮するように調整され得る。
【0025】
本発明のさらなる有利な実施形態および発展形態では、少なくとも1つの製造条件が、少なくとも2つの異なる品質クラスにおける少なくとも2つの品質値上で調整される。言い換えれば、調整は、2つの品質面、特に水分値とひび割れで品質が不足している場合にのみ行われる。これは、製造条件が不均衡に調整されることを有利に防止する。したがって、調整はより堅実に行われる。
【0026】
本発明の別の有利な実施形態および発展形態では、電極層スラリー中の温度、溶媒含有量および/または電極層スラリーの混合の程度は、特徴的特性およびそれに割り当てられる品質値が有利に増加するように、製造条件として調整される。さらに、電極スラリー(ペースト)の塗布速度を変えることができる。また、電極スラリーが基板上に流れることを確保するノズルが詰まっているかどうかをチェックすることができる(特に、電極層のRにおいて、層厚が設定値から絶えず外れている場合)。混合の程度は、特に攪拌速度および混合機の種類によって変化する。さらに、電極層の支持基板の望ましくない振動を防止するための対策を講じることができる。
【0027】
本発明のさらなる特徴、特性および利点は、添付図面を参照する以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、ハイパースペクトルカメラおよび計算ユニットを備えた電極層製造設備を示す。
図2図2は、電極層製造設備と2つのバッテリセルを示す。
図3図3は、バッテリ蓄電装置用の電極層を分析するための方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は製造ユニット1を示す。製造ユニット1は、電極層製造設備8と、ハイパースペクトルカメラ5と、計算ユニット100とを備えている。電極層製造設備8は、支持基板3を備えており、その支持基板上に、電極スラリー2からなる電極層4が塗布される。電極スラリー2は、ミキサー7によって容器内で均質化される。
【0030】
ハイパースペクトルカメラ5は、電極層4の少なくとも2つの画素を含む画像を取得する。両画素は互いに隣接する位置にある。両画素に基づいて、計算ユニット100で電極層の材料特性を決定することができる。この例では、画像データに基づいて、材料組成が材料特性として評価される。隣接する両位置で決定された材料組成を組み合わせて1つの比較値を形成する。この比較値は、特に、規定された材料組成の濃度勾配および/又は電極スラリー2の規定された成分の濃度勾配であり得る。そして、この比較値に基づいて、特徴的特性を決定することができる。この例では、特徴的特性は材料組成勾配である。この材料組成勾配に基づいて、特に材料均質性値を決定することもできる。
【0031】
これで、材料組成勾配および/又は材料均質性値を基準値と比較することが可能になる。これらの特徴的特性が規定された限界値から逸脱した場合、特にミキサー7の速度および/又は基板3の走行速度を調整することができる。
【0032】
代替可能性は、図2に示されるように、計算ユニット100を、AIエンジンを含むように拡張することである。このAIエンジンは、電極層が挿入されたバッテリセルを含むバッテリ蓄電装置50からの動作データを用いて訓練することができる。動作データに基づいて、品質値を決定することができ、AIエンジンは、品質値を特徴的特性と相関させるように訓練される。
【0033】
このように、訓練されたAIエンジンを用いることによって、ハイパースペクトルカメラと取得された画像とを用いて解析された特徴的特性に基づいて品質値を決定することができる。この品質値に基づいて、すでに第1の実施例に示されているように、製造ユニット1の製造条件を調整することができる。この例では、電極スラリー2のミキサー7が、第2の制御信号102によって調整され、かつ/又は電極基板3の走行速度が、第1の制御信号101によって調整される。
【0034】
さらに、隣接する画像取得を比較することによって、材料組成勾配および/又は層厚を決定することが可能である。この評価に基づいて、有利に、特に亀裂および/又は介在物などの欠陥が電極層のどこに存在するかを決定することができる。
【0035】
図3は電極層の分析方法を概略的に示す。まず、第1のステップS1では、ハイパースペクトルカメラを準備する。次いで、第2のステップS2では、少なくとも2つの画素を有する画像をハイパースペクトルカメラによって取得する。第3のステップS3では、第1の位置における第1の材料特性および第2の位置における第2の材料特性を決定する。第4のステップS4では、材料特性を比較する。それに基づいて、比較値を決定する。この比較値に基づいて、第5のステップS5では、電極層の特徴的特性を決定する。
【0036】
任意のさらなる方法ステップT1では、電極層をバッテリセルに挿入する。さらなるステップT2では、バッテリセルを動作状態にし、動作データを決定する。動作データに基づいてバッテリセルの品質値を決定し、AIエンジンを用いたハイパースペクトルカメラにより解析した特徴的特性と相関させる。したがって、ステップT1からT3は、品質値を評価するためのAIエンジンの訓練ステップと見なすことができる。
【0037】
さらなる任意選択の方法ステップK1では、別のAIエンジンを訓練して、ハイパースペクトルカメラによって決定された画素を材料特性のクラスに分類することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 製造ユニット
2 電極スラリー
3 支持基板
4 電極層
5 ハイパースペクトルカメラ
7 ミキサー
8 電極層製造設備
50 バッテリ蓄電装置
100 計算ユニット
101 第1の制御信号
102 第2の制御信号
103 動作データ
111 第1のAIエンジン
112 第2のAIエンジン
S1 ハイパースペクトルカメラの準備するステップ
S2 少なくとも2つの画素を有する画像を取得するステップ
S3 第1の材料特性および第2の材料特性を決定するステップ
S4 材料特性を比較するステップ
S5 電極層の特徴的特性の決定するステップ
T1 バッテリ蓄電装置へ電極層を挿入するステップ
T2 バッテリ蓄電装置を動作状態にし、動作データを決定するステップ
T3 品質値を決定し、特徴的特性と相間させるステップ
K1 第1のAIエンジンにより材料特性のクラスに画素を分類するステップ


図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-10-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極層製造設備(8)内のバッテリ蓄電装置(50)用の電極層(4)を分析する方法であって、
画素を取得するハイパースペクトルカメラ(5)を準備するステップと、
前記電極層(4)の少なくとも2つの画素を取得するステップであって、第1の画素が、前記電極層(4)の第1の位置を描画し、第2の画素が、前記電極層(4)の第2の位置を描画し、前記第1の位置および前記第2の位置が、互いに隣接して配置されている、ステップと、
計算ユニット(100)において、前記第1の画素に基づいて前記第1の位置における前記電極層(4)の第1の材料特性を決定し、前記第2の画素に基づいて前記第2の位置における前記電極層(4)の第2の材料特性を決定するステップと、
前記第1の位置における材料特性と前記第2の位置における材料特性とを比較して比較値を決定するステップと、
前記比較値に基づいて前記電極層(4)の特徴的特性を決定するステップと、
を有する方法。
【請求項2】
前記電極層(4)の層厚、材料組成勾配、材料均質性値および/又は水分値、および/又は前記電極層(4)内の亀裂が、特徴的特性として決定される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
材料特性を決定するために、第1のAIエンジン(111)がコンピュータ支援のもとで使用される、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記第1のAIエンジン(111)が、前記画素を材料特性のクラスに分類するために深層学習方法により訓練される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記バッテリ蓄電装置(50)の電池セルに前記電極層(4)が挿入され、前記バッテリ蓄電装置(50)が動作状態にされ、前記バッテリ蓄電装置(50)の動作データ(103)が確定され、前記動作データ(103)が前記バッテリ蓄電装置(50)の品質値を決定するために使用され、前記品質値が前記特徴的特性と相関する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
第2のAIエンジン(112)が、前記品質値を品質クラスに分類し、かつ前記品質クラスに基づいて前記特徴的特性の評価を実施するために訓練される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記品質値として、前記バッテリ蓄電装置(50)の経年特性、容量および/又は内部抵抗が用いられる、請求項5又は6記載の方法。
【請求項8】
前記電極層(4)の画像は、前記バッテリ蓄電装置(50)の製造工程中に取得される、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記電極層のペースト中の溶媒の量が前記水分値として決定される、請求項2、又は、請求項2を直接的又は間接的に引用する請求項3乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
バッテリ蓄電装置(50)の製造方法であって、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法に従って、前記バッテリ蓄電装置(50)用の電極層(4)を分析するステップと、
少なくとも1つの特徴的特性値および/又は少なくとも1つの品質値に基づいて、前記電極層(4)を製造するための少なくとも1つの製造条件を調整するステップと、
を有する、製造方法。
【請求項11】
前記電極層(4)を製造するための少なくとも1つの製造条件が、少なくとも2つの特徴的特性値および/又は少なくとも2つの品質値に基づいて調整される、請求項10記載の製造方法。
【請求項12】
温度、電極スラリー(2)の溶媒含有量、前記電極スラリー(2)の混合度及び/又は前記電極スラリー(2)の支持基板(3)への塗布速度が、前記製造条件として調整されることを特徴とする請求項10又は11に記載の製造方法。
【請求項13】
バッテリ蓄電装置(50)を製造するための製造ユニット(1)であって、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法を実施するように構成されたハイパースペクトルカメラ(5)および計算ユニット(100)を備えた電極層製造設備(8)を含む、製造ユニット(1)。
【請求項14】
プログラム可能な計算ユニット(100)のメモリに直接ロード可能であるコンピュータプログラム製品であって、前記計算ユニット(100)内で前記コンピュータプログラム製品が実行されるときに請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法を実施するためのプログラムコード手段を備えた、コンピュータプログラム製品。
【国際調査報告】