IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プラスチック・オムニウム・ニュー・エナジーズ・フランスの特許一覧

特表2024-514242巻き付け支持体の周りにフィラメントを巻き付けるためのプロセスおよびシステム
<>
  • 特表-巻き付け支持体の周りにフィラメントを巻き付けるためのプロセスおよびシステム 図1
  • 特表-巻き付け支持体の周りにフィラメントを巻き付けるためのプロセスおよびシステム 図2
  • 特表-巻き付け支持体の周りにフィラメントを巻き付けるためのプロセスおよびシステム 図3
  • 特表-巻き付け支持体の周りにフィラメントを巻き付けるためのプロセスおよびシステム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-29
(54)【発明の名称】巻き付け支持体の周りにフィラメントを巻き付けるためのプロセスおよびシステム
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/32 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
B29C70/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023559073
(86)(22)【出願日】2022-04-20
(85)【翻訳文提出日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 EP2022060413
(87)【国際公開番号】W WO2022223614
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】LU500070
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521525527
【氏名又は名称】プラスチック・オムニウム・ニュー・エナジーズ・フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ベイエンス
(72)【発明者】
【氏名】ヘールト・ナウエン
【テーマコード(参考)】
4F205
【Fターム(参考)】
4F205AD16
4F205AG07
4F205AH55
4F205HA02
4F205HA23
4F205HA37
4F205HA46
4F205HB01
4F205HC02
4F205HL02
4F205HT22
(57)【要約】
ドーム形状の長手方向端部を備えた略円筒形状を有するとともにロール軸(8)を有する巻き付け支持体(6)の周りにフィラメント(22)を巻き付けるためのプロセスにおいて、巻き付け支持体(6)は、ベース(16)に固定された保持装置(4)によって保持され、次のステップ、すなわち、(i)少なくとも1つの一次供給装置(18)および少なくとも1つの二次供給装置(20)によって、巻き付け支持体(6)に向けてフィラメント(22)を供給するステップと、(ii)一次供給装置(18)および二次供給装置(20)を巻き付け支持体(6)のロール軸(8)と平行にベース(16)に対して並進させるステップと、(iii)巻き付け支持体(6)をそのロール軸(8)を中心にベース(16)に対して回転させるステップと、が同期して行われ、一次供給装置(18)と二次供給装置(20)との移動は互いに対称である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドーム形状の長手方向端部を備えた略円筒形状を有するとともにロール軸(8)を有する巻き付け支持体(6)の周りにフィラメント(22)を巻き付けるためのプロセスであって、前記巻き付け支持体(6)は、ベース(16)に固定された保持装置(4)によって保持され、前記プロセスは、
(i)少なくとも1つの一次供給装置(18)および少なくとも1つの二次供給装置(20)によって、前記巻き付け支持体(6)に向けてフィラメント(22)を供給するステップと、
(ii)前記少なくとも1つの一次供給装置(18)および前記少なくとも1つの二次供給装置(20)を前記巻き付け支持体(6)の前記ロール軸(8)と平行に前記ベース(16)に対して並進させるステップと、
(iii)前記巻き付け支持体(6)をそのロール軸(8)を中心に前記ベース(16)に対して回転させるステップと、
(iv)前記少なくとも1つの一次供給装置(18)および前記少なくとも1つの二次供給装置(20)を前記ベース(16)に対して前記巻き付け支持体(6)のピッチ軸(10)に沿って移動させるステップと、
からなる、同期して行われるステップを含み、
前記少なくとも1つの一次供給装置(18)と前記少なくとも1つの二次供給装置(20)との移動は互いに対称である、
プロセス。
【請求項2】
前記少なくとも1つの一次供給装置(18)と前記少なくとも1つの二次供給装置(20)との移動は前記巻き付け支持体(6)の前記ロール軸(8)に関して互いに対称である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
ステップ(ii)の間、前記少なくとも1つの一次供給装置(18)および前記少なくとも1つの二次供給装置(20)は一次方向において前記巻き付け支持体(6)の前記ロール軸(8)と平行に前記ベース(16)に対して並進し、前記プロセスは、
(v)前記巻き付け支持体(6)をそのロール軸(8)に沿って前記一次方向とは反対の二次方向において前記ベース(16)に対して並進させるステップ
からなる、他のステップと同期して行われるステップをさらに含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記少なくとも1つの一次供給装置(18)と前記少なくとも1つの二次供給装置(20)との移動は前記巻き付け支持体(6)の体積中心に関して互いに対称である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記少なくとも1つの一次供給装置(18)と前記少なくとも1つの二次供給装置(20)との移動は、前記巻き付け支持体(6)の前記ロール軸(8)に垂直で前記巻き付け支持体(6)の体積中心を通る平面に関して互いに対称である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
好ましくは前記巻き付け支持体(6)の前記ロール軸(8)の周りに規則的に配置されたいくつかの一次供給装置(18)と、好ましくは前記巻き付け支持体(6)の前記ロール軸(8)の周りに規則的に配置されたいくつかの二次供給装置(20)と、を含み、一次供給装置(18)の数は二次供給装置(20)の数に等しい、請求項1から5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
圧力容器を製造するためのプロセスであって、請求項1から6のいずれか一項に記載の巻き付け支持体の周りにフィラメントを巻き付けるための前記プロセスを含む、プロセス。
【請求項8】
ドーム形状の長手方向端部を備えた略円筒形状を有するとともにロール軸(8)を有する巻き付け支持体(6)上にフィラメント(22)を巻き付けるためのシステム(2、102、202)であって、前記システムは、
ベース(16)と、
前記ベース(16)に接続され、前記巻き付け支持体(6)がそのロール軸(8)を中心に前記ベース(16)に対して回転すること、およびそのロール軸(8)に沿って前記ベース(16)に対して並進することが可能であるように前記巻き付け支持体(6)を保持するように構成された保持装置(4)と、
前記保持装置(4)に向けてフィラメント(22)を供給するように配置された少なくとも1つの一次供給装置(18)および少なくとも1つの二次供給装置(20)と、
を含み、
前記システムは、前記少なくとも1つの一次供給装置(18)および前記少なくとも1つの二次供給装置(20)を互いに同期して移動させるように、ならびに前記少なくとも1つの一次供給装置(18)および前記少なくとも1つの二次供給装置(20)を前記ベース(16)に対して前記巻き付け支持体(6)のピッチ軸(10)に沿って移動させるように構成されていることを特徴とする、
システム(2、102、202)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの一次供給装置(18)と前記少なくとも1つの二次供給装置(20)との移動は前記巻き付け支持体(6)の前記ロール軸(8)に関して互いに対称である、請求項8に記載のシステム(2)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの一次供給装置(18)と前記少なくとも1つの二次供給装置(20)との移動は前記巻き付け支持体(6)の体積中心に関して互いに対称である、請求項8に記載のシステム(102)。
【請求項11】
前記少なくとも1つの一次供給装置(18)と前記少なくとも1つの二次供給装置(20)との移動は、前記巻き付け支持体(6)の前記ロール軸(8)に垂直で前記巻き付け支持体(6)の体積中心を通る平面に関して互いに対称である、請求項8に記載のシステム(202)。
【請求項12】
好ましくは前記巻き付け支持体(6)の前記ロール軸(8)の周りに規則的に配置されたいくつかの一次供給装置(18)と、好ましくは前記巻き付け支持体(6)の前記ロール軸(8)の周りに規則的に配置されたいくつかの二次供給装置(20)と、を含み、一次供給装置(18)の数は二次供給装置(20)の数に等しい、請求項8から11のいずれか一項に記載のシステム(2、102、202)。
【請求項13】
前記保持装置(4)の移動、前記供給装置(18、20)の移動を同期して指令し、前記供給装置(18、20)によって適用される前記フィラメント(22)の速度を上げるように構成された、前記保持装置(4)および前記供給装置(18、20)の両方に共通の指令装置(26)を含む、請求項8から12のいずれか一項に記載のシステム(2、102、202)。
【請求項14】
前記一次および二次供給装置(18、20)はフィラメント樹脂含浸ユニットをそれぞれ含む、請求項8から13のいずれか一項に記載のシステム(2、102、202)。
【請求項15】
プロセッサによって実行されるとき、請求項1から7のいずれか一項に記載のプロセスを前記プロセッサに実施させる命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用の高圧容器に関する。より正確には、本発明は、巻き付け支持体の周りにフィラメントを巻き付けるためのプロセス、および巻き付け支持体の周りにフィラメントを巻き付けるためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の高圧容器は一般に、ドーム形状の長手方向端部を備えた略円筒形状を有し、プラスチック材料、軽量で製造するのが安価であるように選択されるこのような材料、または他の素材で作製された、マンドレルの形態下のブラダのような、中空のコンテナを含む。このコンテナは、圧力容器を装備した車両が、動力源のような多様な機能に使用するため、圧力下のガス、たとえば二水素を貯蔵するように意図されている。圧力下のガスはコンテナの内面に強い拘束を及ぼし、これは、特に二水素のような可燃性ガスで、コンテナの完全性を損傷し、危険な漏れを引き起こす可能性がある。
【0003】
コンテナの機械的特性を改善するため、強化繊維、たとえば炭素繊維で作製されたフィラメントを供給装置によってコンテナの全周囲に巻き付けて巻き付け支持体を形成することが知られている。フィラメントは、巻き付けを容易にするとともに巻き付け支持体の外面の各部分を確実に覆うために樹脂に埋め込まれる。この巻き付け作業は必要であるが、かなり長い時間がかかり、圧力容器の製造時間が過度に長くならないようにこの作業の継続時間をできるだけ短縮することが望ましい。特許文献1は、巻き付けシステム、および巻き付け作業を高速化するために2つ以上の供給装置の使用を伴う上記巻き付けシステムによって実装される巻き付けプロセスを開示している。
【0004】
この文献は、巻き付け支持体の周りにフィラメントを巻き付けるためのいくらか高速なプロセスを提案しているが、まだ改善の余地がある。しかし特に、複数の供給装置を使用すると、巻き付けパターンのプログラミングがかなり複雑になったり、実装するのが困難になったりする可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/344512号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上の観点から、巻き付け作業を実施するときに供給装置の指令を複雑にすることなく巻き付け作業の継続時間を最適化するための必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のため、本発明によれば、ドーム形状の長手方向端部を備えた略円筒形状を有するとともにロール軸を有する巻き付け支持体の周りにフィラメントを巻き付けるためのプロセスが提供され、巻き付け支持体は、ベースに固定された保持装置によって保持され、このプロセスは、
(i)少なくとも1つの一次供給装置および少なくとも1つの二次供給装置によって、巻き付け支持体に向けてフィラメントを供給するステップと、
(ii)少なくとも1つの一次供給装置および少なくとも1つの二次供給装置を巻き付け支持体のロール軸と平行にベースに対して並進させるステップと、
(iii)巻き付け支持体をそのロール軸を中心にベースに対して回転させるステップであって、
少なくとも1つの一次供給装置と少なくとも1つの二次供給装置との移動は互いに対称である、ステップと、
(iv)少なくとも1つの一次供給装置および少なくとも1つの二次供給装置をベースに対して巻き付け支持体のピッチ軸に沿って移動させるステップと、
からなる、同期して行われるステップを含む。
【0008】
少なくとも1つの一次供給装置と少なくとも1つの二次供給装置との移動を互いに対称にすることによって、少なくとも1つの一次供給装置と少なくとも1つの二次供給装置のいずれか1つの経路を決定することが必要であるのみであり、他方の1つは対称性によって推定可能である。したがって、複数の供給装置の存在によって可能となる高速巻き付けプロセスを得ること、および上で議論した先行技術の1つを参照して巻き付けプロセスの実装を簡素化および最適化することが可能である。また、巻き付け支持体の機械抵抗の均一性および巻き付けプロセスの再現性が向上する。
【0009】
ステップ(iv)によって、巻き付け支持体の短いドーム形状の長手方向端部の周りに巻くとき、および通常、より多くのフィラメントを占める、巻き付け支持体の中央円筒状部分の周りに巻くときに巻き付け支持体の近くに移動するとき、巻き付け支持体および供給装置を相対的に移動させることによって、フィラメント上に誘発される瞬間的な応力および歪みが最小化されるように、空間内の移動がフィラメントの堆積経路と調整される。これにより、本発明のいくつかの他の改良も可能になり、すなわち、フィラメントの層が敷設されることによる巻き付け作業中の巻き付け支持体の増加する厚さを考慮し、たとえばその適用中の巻き付け支持体でフィラメントを引っ張ることによって、フィラメント適用速度の変動がより良好に補償され、供給装置を巻き付け支持体のできるだけ近くに配置することができるためレイオフ精度が増加し、また、空間内でのフィラメントのより安定した配置を構成することができる。供給装置が巻き付け支持体に対して近くに配置されるほど、フィラメント巻き付けの高精度が可能になる。正確さ、精度および安定性が増加することにより、プロセスの再現性が向上する。
【0010】
「フィラメント」という表現によって、複合材料を形成するように液体マトリックスを含浸させた連続繊維トウ、好ましくは炭素繊維、ガラス繊維またはアラミド繊維を意味する。使用されるマトリックスのタイプに応じて、複合材料には主に2つのファミリーがある。熱硬化性複合体および熱可塑性複合体は、熱硬化性樹脂または熱可塑性ポリマーをマトリックスとして形成される。
【0011】
熱硬化性樹脂は、反応性熱硬化性前駆体を形成する2つ以上の反応性成分を混合することによって形成され、これらは、硬化条件(たとえば、熱、UVまたは他の放射線、または単に互いに接触させることによってなど)に曝露されると反応して熱硬化性樹脂を形成する。高性能複合体を得るには熱硬化性マトリックスを完全に硬化させなければならない。一度硬化すると、熱硬化性樹脂は固体となり、樹脂はもはや流動するのが不可能になるため、さらに加工または再成形することができない。熱硬化性樹脂の例は、不飽和ポリエステル、エポキシ、ビニルエステル、ポリウレア、イソシアヌレート、およびポリウレタン樹脂を含む。部分的にのみ硬化して、粘着性であるが、まだ柔らかい、反応性樹脂を含浸させた繊維で作製される熱硬化性プリプレグを製造することが可能である。プリプレグを保管し、後で樹脂を加熱またはUVに曝露することによって圧力下でさらに加工して、プリプレグの硬化および固化を完了することができる。
【0012】
熱可塑性ポリマーは、温度を上昇および低下させることによって、それぞれ、固体状態(または非流動性状態)から液体状態(または流動性状態)に移行し、また、戻ることができる。半結晶性ポリマーの場合、熱可塑性プラスチックの温度を下げることにより、結晶の形成および熱可塑性プラスチックの固化が促進される。逆に、半結晶性ポリマーをその融解温度の上方に加熱することにより、結晶は融解し、熱可塑性プラスチックは流動することができる。半結晶性熱可塑性プラスチックの例は、PEEK、PEKK、PEKKEKのようなポリエーテルケトン、PA6、PA66、PA10、PA12のようなポリアミド、PE、PPのようなポリオレフィンなどを含む。非晶質熱可塑性プラスチックは結晶を形成せず、融解温度を有さない。非晶質熱可塑性プラスチックは、材料温度がそのガラス転移温度の下方か上方かに応じて固化するか流動可能になる。非晶質熱可塑性プラスチックの例は、PEI、PSU、PES、PC、PS、TPUなどを含む。半結晶性および非晶質の熱可塑性プラスチックはしたがって両方とも、その融解またはガラス転移温度の上方に加熱することによって再成形すること、および、これに応じて温度を下げることによってその新たな形状に凍結することができる。物理的な観点からは厳密には正しくないが、簡単にするため、液体状態の半結晶性および非晶質の熱可塑性プラスチックの両方を本明細書では「熱可塑性プラスチック溶融物」と呼ぶ。
【0013】
本発明の第1の実施形態によれば、少なくとも1つの一次供給装置と少なくとも1つの二次供給装置との移動は巻き付け支持体のロール軸に関して互いに対称である。
【0014】
本発明の第2の実施形態によれば、少なくとも1つの一次供給装置と少なくとも1つの二次供給装置との移動は巻き付け支持体の体積中心に関して互いに対称である。
【0015】
本発明の第3の実施形態によれば、少なくとも1つの一次供給装置と少なくとも1つの二次供給装置との移動は、巻き付け支持体のロール軸に垂直で巻き付け支持体の体積中心を通る平面に関して互いに対称である。
【0016】
本発明はしたがって、少なくとも1つの一次供給装置と少なくとも1つの二次供給装置の移動の間の対称性を異なる構成の中から選択することができるため、その実装において大きな柔軟性を提供する。換言すれば、本発明は、さまざまなタイプの巻き付けシステム、特に、供給装置間の非常に多くのタイプの対称性のみを可能にすることができるシステムに適用可能であり、実装するのが容易である。
【0017】
好ましくは、本発明の第1の実施形態において、ステップ(ii)の間、少なくとも1つの一次供給装置および少なくとも1つの二次供給装置は一次方向において巻き付け支持体のロール軸と平行にベースに対して並進し、このプロセスは、
(v)巻き付け支持体をそのロール軸に沿って一次方向とは反対の二次方向においてベースに対して並進させるステップ
からなる、他のステップと同期して行われるステップをさらに含む。
【0018】
巻き付け支持体をそのロール軸に沿って並進させることによって形成される別の移動を追加することによって、巻き付け支持体上にフィラメントを敷設するための新たな経路を作成すること、および巻き付けプロセスをさらに高速化することが可能である。具体的には、供給装置の並進の方向と反対の方向に巻き付け支持体を並進させることによって、供給装置に対する巻き付け支持体の逆運動が生成され、これにより供給装置に対する巻き付け支持体の相対速度が増加し、したがってフィラメントの敷設速度が増加する。
【0019】
有利には、このプロセスは、好ましくは巻き付け支持体のロール軸の周りに規則的に配置されたいくつかの一次供給装置と、好ましくは巻き付け支持体のロール軸の周りに規則的に配置されたいくつかの二次供給装置と、を伴い、一次供給装置の数は二次供給装置の数に等しい。
【0020】
追加の供給装置により巻き付け速度を倍増させることが可能になる。2つの一次供給装置および2つの二次供給装置の場合、巻き付け速度は最大2倍となるが、巻き付けプロセスはそれほど複雑化せず、実装するのがほぼ同等に容易である。
【0021】
本発明によれば、圧力容器を製造するためのプロセスも提供され、このプロセスは、上に提示したような巻き付け支持体の周りにフィラメントを巻き付けるためのプロセスを含む。
【0022】
本発明によれば、ドーム形状の長手方向端部を備えた略円筒形状を有するとともにロール軸を有する巻き付け支持体上にフィラメントを巻き付けるためのシステムが提供され、このシステムは、
ベースと、
ベースに接続され、巻き付け支持体がそのロール軸を中心にベースに対して回転すること、およびそのロール軸に沿ってベースに対して並進することが可能であるように巻き付け支持体を保持するように構成された保持装置と、
保持装置に向けてフィラメントを供給するように配置された少なくとも1つの一次供給装置および少なくとも1つの二次供給装置と、
を含み、
このシステムは、少なくとも1つの一次供給装置と少なくとも1つの二次供給装置とを互いに対称に移動させるように構成されている。
【0023】
本発明の第1の実施形態によれば、少なくとも1つの一次供給装置と少なくとも1つの二次供給装置との移動は巻き付け支持体のロール軸に関して互いに対称である。
【0024】
本発明の第2の実施形態によれば、少なくとも1つの一次供給装置と少なくとも1つの二次供給装置との移動は巻き付け支持体の体積中心に関して互いに対称である。
【0025】
本発明の第3の実施形態によれば、少なくとも1つの一次供給装置と少なくとも1つの二次供給装置との移動は、巻き付け支持体のロール軸に垂直で巻き付け支持体の体積中心を通る平面に関して互いに対称である。
【0026】
本発明はしたがって、少なくとも1つの一次供給装置と少なくとも1つの二次供給装置の移動の間の対称性を異なる構成の中から選択することができるため、その実装において大きな柔軟性を提供する。換言すれば、本発明は、さまざまなタイプの巻き付けシステム、特に、供給装置間の非常に多くのタイプの対称性のみを可能にすることができるシステムに適用可能であり、実装するのが容易である。
【0027】
有利には、このシステムは、少なくとも1つの一次供給装置および少なくとも1つの二次供給装置をベースに対して巻き付け支持体のピッチ軸に沿って移動させるように構成されている。
【0028】
これにより、ステップ(v)が行われる上述したような巻き付けプロセスの実装が可能になる。
【0029】
有利には、このシステムは、好ましくは巻き付け支持体のロール軸の周りに規則的に配置されたいくつかの一次供給装置と、好ましくは巻き付け支持体のロール軸の周りに規則的に配置されたいくつかの二次供給装置と、を含み、一次供給装置の数は二次供給装置の数に等しい。
【0030】
有利には、このシステムは、保持装置の移動、供給装置の移動を同期して指令し、供給装置によって適用されるフィラメントの速度を上げるように構成された、保持装置および供給装置の両方に共通の指令装置を含む。
【0031】
システムのすべての要素の指令はしたがって、唯一の指令装置によって集中化され、これにより巻き付けプロセスのステップのより容易な同期が可能になる。
【0032】
有利には、一次および二次供給装置はフィラメント樹脂含浸ユニットをそれぞれ含む。
【0033】
本発明によれば、プロセッサによって実行されるとき、上に提示したようなプロセスをプロセッサに実施させる命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体も提供される。
【0034】
例示的かつ非制限的な一例として与えられる次の説明を読むことによって、また、添付の図面によって、他の特徴および利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の第1の実施形態による巻き付け支持体上にフィラメントを巻き付けるためのシステムの三次元図である。
図2図1のシステムによって実行される本発明による巻き付けプロセスによって可能になる巻き付けパターンを示す図である。
図3】本発明の第2の実施形態による巻き付け支持体上にフィラメントを巻き付けるためのシステムの三次元図である。
図4】本発明の第3の実施形態による巻き付け支持体上にフィラメントを巻き付けるためのシステムの三次元図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は本発明の第1の実施形態による巻き付け支持体上にフィラメントを巻き付けるためのシステム2を表す。次の説明において、このシステム2を「巻き付けシステム」と呼ぶ。
【0037】
巻き付けシステム2は、本発明による巻き付けプロセスを実行することによって巻き付けられるべき巻き付け支持体6を保持するように構成された保持装置4を含む。巻き付け支持体6は、車両用の高圧容器の一部を形成するように意図されている。「高圧容器」という表現によって、350バールまでの内圧に耐えることが可能な加圧下でガスを貯蔵するように意図された圧力容器を意味する。したがって、巻き付け支持体6はマンドレルの形態下のブラダであってもよい。巻き付け支持体6は、巻き付け支持体6の長手軸を画定する略円筒形状を有する。
【0038】
巻き付け支持体6の体積中心によって形成される原点を考慮することによって、たとえばClancy, L.J.によるマニュアル「Aerodynamics」、Pitman Publishing Limited (1975)、ISBN 0-273-01120-0、セクション16.6において定義された航空機の主軸の名前を参照することによって、3つの軸、すなわち、ロール軸8、ピッチ軸10およびヨー軸12を含む三次元座標系を定義することができる。ロール軸8は長手軸と同一直線上にあり、巻き付け支持体6の体積中心を通過する。ヨー軸12は鉛直であり、巻き付け支持体6の体積中心を通過する。ピッチ軸10はロール軸8に垂直であり、巻き付け支持体6の体積中心を通過する。巻き付け支持体6の体積中心、ロール軸8、ピッチ軸10およびヨー軸12は図1上に表されている。
【0039】
巻き付け支持体6は、円筒形状を有する中央部分と、ロール軸8に対して中央部分の両側に配置された2つのドーム形状長手方向端部14と、を有する。巻き付け支持体6は、ドーム形状長手方向端部14の一方に配置された少なくとも1つのボスを含む。好ましくは、巻き付け支持体6は、ドーム形状長手方向端部14の両方に配置された2つのボスを含む。
【0040】
保持装置4は、巻き付けシステム2のベース16に接続された関節アームを含む。巻き付け支持体6は、巻き付け支持体6がそのロール軸8を中心に回転することが可能であるように巻き付け支持体6のボスの1つまたは複数のボスをクランプすることによって関節アームによって保持されている。ここで、関節アームは6軸ロボットまたはデカルト座標ロボットによって形成することができるが、これらのタイプのロボットを、保持装置を移動させる任意の他の適切な手段によって置き換えることが可能である。
【0041】
巻き付けシステム2は、保持装置4および巻き付け支持体6に向けてフィラメント22を供給するように構成された少なくとも1つの一次供給装置18および少なくとも1つの二次供給装置20を含む。フィラメント22は、巻き付け支持体6の全周囲に巻き付けられるべき帯として成形された樹脂に埋め込まれる強化繊維で作製されている。少なくとも1つの一次供給装置18および少なくとも1つの二次供給装置20は、巻き付け支持体6のロール軸8と平行に、および、巻き付け支持体6のピッチ軸10と平行に移動するようにそれぞれ構成されている。
【0042】
巻き付けシステム2のこの実施形態において、少なくとも1つの一次供給装置18と少なくとも1つの二次供給装置20との移動は巻き付け支持体6のロール軸8に関して互いに対称である。たとえば、少なくとも1つの一次供給装置18がロール軸8に沿って設定方向に特定の速度で並進するとき、少なくとも1つの二次供給装置20もロール軸8に沿って同じ速度で、同じ方向に並進する。
【0043】
ここで、巻き付けシステム2は、1つの一次供給装置18および1つの二次供給装置20を含む。本発明の一変形によれば、より多くの一次および二次供給装置を設けることができ、一次供給装置の数は二次供給装置の数に等しい。好ましくは、一次供給装置は巻き付け支持体のロール軸の周りに規則的に配置され、二次供給装置は巻き付け支持体のロール軸の周りに規則的に配置される。2つの一次供給装置および2つの二次供給装置を含む巻き付けシステムで、巻き付け速度、再現性および実装の容易さに関して良好な結果が観察されている。
【0044】
一次および二次供給装置18、20のそれぞれは、フィラメント22が巻き付け支持体6の方向に通過する巻き付け穴を含む。フィラメント22は、ベース16に接続された、フィラメント材料巻き出し装置(図示せず)および/またはインライン含浸を提供せねばならない場合におけるフィラメント樹脂含浸システム(図示せず)が装備された供給ステーション24によって連続的に提供される。ここで、一次および二次供給装置18、20は、フィラメント樹脂含浸ユニット(図示せず)をそれぞれ含む。
【0045】
一次および二次供給装置18、20のそれぞれに、巻き付け中に巻き付け支持体6に供給されるフィラメント22の量を加速または減速するように構成されたアクチュエータおよびブレーキを装備することができる。供給ステーション24にもこのようなアクチュエータおよびブレーキを装備することができる。
【0046】
巻き付けシステム2は、保持装置4の移動、一次および二次供給装置18、20の移動を同期して指令し、一次および二次供給装置18、20によって適用されるフィラメント22の速度を上げるように構成された、保持装置4と一次および二次供給装置18、20との両方に共通の指令装置26を含む。
【0047】
指令装置26は、指令装置26によって同期して行われる、
(i)一次供給装置18および二次供給装置20によって、巻き付け支持体6に向けてフィラメント22を供給するステップと、
(ii)一次供給装置18および二次供給装置20を巻き付け支持体6のロール軸8と平行にベース16に対して並進させるステップと、
(iii)巻き付け支持体6をそのロール軸8を中心にベース16に対して回転させるステップと、
からなるステップを含む巻き付けプロセスを実装するのに適しており、
少なくとも1つの一次供給装置18と少なくとも1つの二次供給装置20との移動は互いに対称である。
【0048】
本発明によれば、巻き付け支持体6の形状および巻き付けプロセス中のその増加する厚さをよりよく考慮するため、指令装置26は、上のステップと同期して行われる、次のステップを実装することもでき、これは、
(iv)一次供給装置18および二次供給装置20をベース16に対して巻き付け支持体6のピッチ軸10に沿って移動させるステップ
からなる。
【0049】
巻き付けプロセスの継続時間を減らすため、本発明の第1の実施形態によれば、指令装置26は、上のステップと同期して行われる、次のステップを実装することもでき、これは、
(v)巻き付け支持体6をそのロール軸8に沿ってロール軸8と平行に供給装置18、20の並進の方向とは反対の方向においてベース16に対して並進させるステップ
からなる。
【0050】
巻き付けプロセスにより異なるタイプの巻き付けパターンが可能になる。図2は、フィラメント22が低角度螺旋巻きにしたがって巻き付け支持体6の周りに巻き付けられる巻き付けプロセスの好ましい一実装形態を示す。フィラメント22は、20°より低い巻き付け支持体6のロール軸8に対する角度で敷設される。
【0051】
図3は、本発明の第2の実施形態による巻き付け支持体上にフィラメントを巻き付けるための巻き付けシステム102を表す。これは、少なくとも1つの一次供給装置18と少なくとも1つの二次供給装置20との移動が巻き付け支持体6の体積中心に関して互いに対称である点で第1の実施形態の巻き付けシステムとは異なる。第1の実施形態の供給システムのすべての他の特徴は巻き付けシステム102に置き換え可能である。
【0052】
図4は、本発明の第3の実施形態による巻き付け支持体上にフィラメントを巻き付けるための巻き付けシステム202を表す。これは、少なくとも1つの一次供給装置18と少なくとも1つの二次供給装置20との移動が、巻き付け支持体6のロール軸8に垂直で巻き付け支持体6の体積中心を通る平面に関して互いに対称である点で、第1および第2の実施形態の巻き付けシステムとは異なる。第1および第2の実施形態の供給システムのすべての他の特徴は巻き付けシステム202に置き換え可能である。
【0053】
上の実施形態は例示的であり、制限的な実施形態ではない。明らかに、本発明の多くの修正および変形が、その発明の概念から逸脱することなく上の教示に照らして可能である。したがって、本発明は、具体的に説明した以外の方法で実践することができるということが理解されなければならない。
【符号の説明】
【0054】
2、102、202 巻き付けシステム
4 保持装置
6 巻き付け支持体
8 巻き付け支持体のロール軸
10 巻き付け支持体のピッチ軸
12 巻き付け支持体のヨー軸
14 巻き付け支持体のドーム形状端部
16 ベース
18 一次供給装置
20 二次供給装置
22 フィラメント
24 供給ステーション
26 指令装置
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】