(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-29
(54)【発明の名称】CLDN18.2抗原結合タンパク質およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20240322BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20240322BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240322BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20240322BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240322BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240322BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240322BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240322BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240322BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20240322BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240322BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240322BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20240322BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240322BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240322BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20240322BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K16/18 ZNA
C07K19/00
C07K14/705
C12N15/13
C12N15/12
C12N5/10
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61P35/00
A61K38/02
A61K31/7088
A61K48/00
A61K35/12
A61K35/17
A61P35/02
A61K47/65
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560013
(86)(22)【出願日】2022-04-01
(85)【翻訳文提出日】2023-10-27
(86)【国際出願番号】 CN2022084922
(87)【国際公開番号】W WO2022206975
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】202110359711.8
(32)【優先日】2021-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210016145.5
(32)【優先日】2022-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520358863
【氏名又は名称】オリセル セラピューティクス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤン シャーシャー
(72)【発明者】
【氏名】フー シャオウェン
(72)【発明者】
【氏名】リー モン
(72)【発明者】
【氏名】ワン フワジン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ファンフォン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AB04
4B065AB06
4B065AC14
4B065BA02
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4B065CA25
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC27
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4C084AA02
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4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZB27
4C085AA13
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4C085EE01
4C086AA01
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4C086ZB27
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB65
4C087CA12
4C087CA20
4C087NA13
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4C087ZB26
4C087ZB27
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
【要約】
【課題】CLDN18.2抗原結合タンパク質およびその使用を提供することを課題とする。
【解決手段】CLDN18.2に結合できる単離された抗原結合タンパク質を提供する。また、前記単離された抗原結合タンパク質を含むキメラ抗原受容体、ならびに前記抗原結合タンパク質とキメラ抗原受容体の調製方法および使用にも提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HCDR3を含み、前記HCDR3は、配列番号:67で示されるアミノ酸配列を含む、単離された抗原結合タンパク質。
【請求項2】
前記HCDR3は、配列番号:4、配列番号:12および配列番号:18のいずれかで示されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項3】
HCDR2を含み、前記HCDR2は、配列番号:68または配列番号:11で示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項4】
前記HCDR2は、配列番号:3または配列番号:17で示されるアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項5】
HCDR1を含み、前記HCDR1は、配列番号:2、配列番号:10および配列番号:16のいずれかで示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項6】
H-FR1を含み、前記H-FR1のC末端は、前記HCDR1のN末端に直接的または間接的に連結され、前記H-FR1は配列番号:72で示されるアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項7】
前記H-FR1は、配列番号:34、配列番号:43および配列番号:49のいずれかで示されるアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項8】
H-FR2を含み、前記H-FR2は、前記HCDR1と前記HCDR2との間に位置し、配列番号:73で示されるアミノ酸配列を含む、請求項5~7のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項9】
前記H-FR2は、配列番号:35または配列番号:44で示されるアミノ酸配列を含む、請求項8に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項10】
H-FR3を含み、前記H-FR3は、前記HCDR2と前記HCDR3との間に位置し、配列番号:80または配列番号:45で示されるアミノ酸配列を含む、請求項3~9のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項11】
前記H-FR3は、配列番号:36または配列番号:42で示されるアミノ酸配列を含む、請求項10に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項12】
H-FR4を含み、前記H-FR4のN末端は、前記HCDR3のC末端に連結され、前記H-FR4は配列番号:74で示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項13】
前記H-FR4は、配列番号:46または配列番号:37で示されるアミノ酸配列を含む、請求項12に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項14】
VHを含み、前記VHは、配列番号:78で示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項15】
前記VHは、配列番号:1、配列番号:9、配列番号:15および配列番号:19のいずれかで示されるアミノ酸配列を含む、請求項14に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項16】
LCDR3を含み、前記LCDR3は、配列番号:69で示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項17】
前記LCDR3は、配列番号:8、配列番号:14、配列番号:23および配列番号:25のいずれかで示されるアミノ酸配列を含む、請求項16に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項18】
LCDR2を含み、前記LCDR2は、配列番号:70で示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項19】
前記LCDR2は、配列番号:7または配列番号:22で示されるアミノ酸配列を含む、請求項18に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項20】
LCDR1を含み、前記LCDR1は、配列番号:71で示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項21】
前記LCDR1は、配列番号:6または配列番号:21で示されるアミノ酸配列を含む、請求項20に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項22】
L-FR1を含み、前記L-FR1のC末端は、前記LCDR1のN末端に直接的または間接的に連結され、前記L-FR1は配列番号:75で示されるアミノ酸配列を含む、請求項20~21のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項23】
前記L-FR1は、配列番号:38、配列番号:47、配列番号:50および配列番号:53のいずれかで示されるアミノ酸配列を含む、請求項22に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項24】
L-FR2を含み、前記L-FR2は、前記LCDR1と前記LCDR2との間に位置し、配列番号:39で示されるアミノ酸配列を含む、請求項20~23のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項25】
L-FR3を含み、前記L-FR3は、前記LCDR2と前記LCDR3との間に位置し、配列番号:76で示されるアミノ酸配列を含む、請求項18~24のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項26】
前記L-FR3は、配列番号:40、配列番号:48および配列番号:51のいずれかで示されるアミノ酸配列を含む、請求項25に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項27】
L-FR4を含み、前記L-FR4のN末端は、前記LCDR3のC末端に連結され、前記L-FR4は配列番号:77で示されるアミノ酸配列を含む、請求項16~26のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項28】
前記L-FR4は、配列番号:41、配列番号:52および配列番号:54のいずれかで示されるアミノ酸配列を含む、請求項27に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項29】
VLを含み、前記VLは、配列番号:79で示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項30】
前記VLは、配列番号:5、配列番号:13、配列番号:20および配列番号:24のいずれかで示されるアミノ酸配列を含む、請求項29に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項31】
以下の任意の群から選択されるVHおよびVLを含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
1)配列番号:1で示されるアミノ酸配列を含むVH、配列番号:5で示されるアミノ酸配列を含むVL
2)配列番号:15で示されるアミノ酸配列を含むVH、配列番号:5で示されるアミノ酸配列を含むVL
3)配列番号:9で示されるアミノ酸配列を含むVH、配列番号:13で示されるアミノ酸配列を含む前記VL
4)配列番号:19で示されるアミノ酸配列を含むVH、配列番号:20で示されるアミノ酸配列を含むVL、および
5)配列番号:19で示されるアミノ酸配列を含むVH、配列番号:24で示されるアミノ酸配列を含む前記VL
【請求項32】
抗体重鎖定常領域を含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項33】
前記抗体重鎖定常領域は、ヒトIgG重鎖定常領域に由来する、請求項32に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項34】
前記抗体重鎖定常領域は、ヒトIgG1重鎖定常領域に由来する、請求項32~33のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項35】
抗体軽鎖定常領域を含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項36】
前記抗体軽鎖定常領域は、ヒトIgκ定常領域に由来する、請求項35に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項37】
抗体またはその抗原結合断片を含む、請求項1~36のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項38】
前記抗原結合断片には、Fab、Fab’、Fv断片、F(ab’)
2、F(ab)
2、scFv、di-scFvおよび/またはdAbが含まれる、請求項37に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項39】
前記抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体および完全ヒト抗体から成る群の1種以上から選択される、請求項37~38のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項40】
FACSで検証されるように、CLDN18.2への結合に関して参照抗体と実質的に競合せず、前記参照抗体は重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、前記参照抗体のVHは配列番号55で示されるアミノ酸配列を含み、前記参照抗体のVLは配列番号56で示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~39のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項41】
CLDN18.2に特異的に結合するが、CLDN18.1には実質的に結合しない、請求項1~40のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項42】
前記CLDN18.2は、マウスCLDN18.2、カニクイザルCLDN18.2および/またはヒトCLDN18.2を含む、請求項40~41のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項43】
CDC活性を有する、請求項1~42のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項44】
腫瘍の成長および/または腫瘍細胞の増殖を抑制することができる、請求項1~43のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項45】
請求項1~44のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質を含む標的部分を含む、キメラ抗原受容体。
【請求項46】
共刺激ドメインを含み、前記共刺激ドメインは、CD28、4-1BB、CD27、CD2、CD7、CD8、OX40、CD226、DR3、SLAM、CDS、ICAM-1、NKG2D、NKG2C、B7-H3、2B4、FcεRIγ、BTLA、GITR、HVEM、DAP10、DAP12、CD30、CD40、CD40L、TIM1、PD-1、LFA-1、LIGHT、JAML、CD244、CD100、ICOS、CD83のリガンド、CD40およびMyD88からなる群から選択される1種以上のタンパク質に由来する共刺激ドメインを含む、請求項45に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項47】
前記共刺激ドメインは、4-1BB由来の細胞内共刺激シグナル伝達領域である、請求項45~46のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項48】
前記共刺激ドメインは、配列番号:85で示されるアミノ酸配列を含む、請求項46~47のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項49】
細胞内シグナル伝達ドメインを含み、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζ、CD3δ、CD3γ、CD3ε、CD79a、CD79b、FcεRIγ、FcεRIβ、FcγRIIa、ウシ白血病ウイルスgp30、エプスタイン・バーウイルス (EBV)LMP2A、サル免疫不全ウイルスPBj14 Nef、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(HSKV)、DAP10、DAP-12および少なくとも1つのITAMを含むドメインからなる群から選択される1種以上のタンパク質に由来する細胞内シグナル伝達ドメインを含む、請求項45~48のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項50】
前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来するシグナル伝達ドメインである、請求項49に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項51】
前記細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号:86で示されるアミノ酸配列を含む、請求項49~50のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項52】
膜貫通ドメインを含み、前記膜貫通ドメインは、CD8、CD28、4-1BB、CD4、CD27、CD7、PD-1、TRAC、TRBC、CD3ε、CD3ζ、CTLA-4、LAG-3、CD5、ICOS、OX40、NKG2D、2B4、CD244、FcεRIγ、BTLA、CD30、GITR、HVEM、DAP10、CD2、NKG2C、LIGHT、DAP12、CD40L、TIM1、CD226、DR3、CD45、CD80、CD86、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD134、CD137、CD154およびSLAMからなる群から選択される1種以上のタンパク質に由来する膜貫通ドメインを含む、請求項45~51のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項53】
前記膜貫通ドメインは、CD8に由来する膜貫通ドメインである、請求項52に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項54】
前記膜貫通ドメインは、配列番号:84で示されるアミノ酸配列を含む、請求項52~53のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項55】
標的部分と膜貫通ドメインとの間にヒンジ領域を含み、前記ヒンジ領域は、CD28、IgG1、IgG4、IgD、4-1BB、CD4、CD27、CD7、CD8、PD-1、ICOS、OX40、NKG2D、NKG2C、FcεRIγ、BTLA、GITR、DAP10、CD40L、TIM1、CD226、SLAM、CD30およびLIGHTからなる群から選択される1種以上のタンパク質に由来するヒンジ領域を含む、請求項45~54のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項56】
前記ヒンジ領域は、CD8に由来するヒンジ領域である、請求項55に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項57】
前記ヒンジ領域は、配列番号:83で示されるアミノ酸配列を含む、請求項55~56のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項58】
シグナルペプチドをさらに含む、請求項45~57のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項59】
前記シグナルペプチドは、CD8タンパク質に由来するシグナルペプチドである、請求項58に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項60】
前記シグナルペプチドは、配列番号:88で示されるアミノ酸配列を含む、請求項58~59のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項61】
低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片をさらに含む、請求項45~60のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項62】
前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1~12およびその機能的断片からなる群から選択される1種以上を含む、請求項61に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項63】
前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片は、配列番号:91で示されるアミノ酸配列を含む、請求項61~62のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項64】
請求項1~44のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質または請求項45~63のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体を含む、ポリペプチド分子。
【請求項65】
融合タンパク質を含む、請求項64に記載のポリペプチド分子。
【請求項66】
請求項1~46のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質を含む、免疫複合体。
【請求項67】
請求項1~44のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質、請求項45~63のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体または請求項64~65のいずれか一項に記載のポリペプチド分子をコードする、単離された1種以上の核酸分子。
【請求項68】
配列番号:26、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31、配列番号:32および配列番号:33のいずれかで示される塩基配列を含む、請求項67に記載の核酸分子。
【請求項69】
以下の任意の群から選択される塩基配列を含む、請求項67~68のいずれか一項に記載の核酸分子。
1)配列番号26で示される塩基配列、および配列番号27で示される塩基配列
2)配列番号30に示される塩基配列、および配列番号27で示される塩基配列
3)配列番号28に示される塩基配列、および配列番号29で示される塩基配列
4)配列番号31に示される塩基配列、および配列番号32で示される塩基配列、ならびに
5)配列番号31に示される塩基配列、および配列番号33で示される塩基配列
【請求項70】
請求項67~69のいずれか一項に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項71】
請求項1~44のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質、請求項45~63のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体、請求項64~65のいずれか一項に記載のポリペプチド分子、請求項67~69のいずれか一項に記載の核酸分子または請求項70に記載のベクターを含む、細胞。
【請求項72】
免疫エフェクター細胞である、請求項71に記載の細胞。
【請求項73】
T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、マクロファージ、NKT細胞、単球、樹状細胞、顆粒球、リンパ球、白血球、末梢血単核球、胚性幹細胞、リンパ球前駆細胞および/または多能性幹細胞を含む、請求項71~72のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項74】
T細胞である、請求項71~73のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項75】
低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片をさらに含み、および/または発現する、請求項71~74のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項76】
前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1~12およびその機能的断片からなる群から選択される1種以上を含む、請求項75に記載の細胞。
【請求項77】
前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5および/もしくは6またはその断片である、請求項75~76のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項78】
前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片は、配列番号:91で示されるアミノ酸配列を含む、請求項75~77のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項79】
請求項1~44のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質、請求項45~63のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体、請求項64~65のいずれか一項に記載のポリペプチド分子、請求項66に記載の免疫複合体、請求項67~69のいずれか一項に記載の核酸分子、請求項70に記載のベクターおよび/または請求項71~78のいずれか一項に記載の細胞、および任意に薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項80】
前記抗原結合タンパク質が発現される条件下で、請求項71に記載の細胞を培養することを含む、請求項1~44のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質の調製方法。
【請求項81】
疾患および/または障害を予防、緩和および/または治療するために用いられる医薬品の調製における、請求項1~44のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質、請求項45~63のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体、請求項64~65のいずれか一項に記載のポリペプチド分子、請求項66に記載の免疫複合体、請求項67~69のいずれか一項に記載の核酸分子、請求項70に記載のベクター、請求項71~78のいずれか一項に記載の細胞および/または請求項79に記載の医薬組成物の使用。
【請求項82】
前記疾患および/または障害には、癌が含まれる請求項81に記載の使用。
【請求項83】
前記癌には、固形腫瘍および/または血液腫瘍(hematomas)が含まれる、請求項81~82のいずれか一項に記載の使用。
【請求項84】
前記癌には、胃癌および/または結腸癌が含まれる、請求項82~83のいずれか一項に記載の使用。
【請求項85】
請求項1~44のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質、請求項45~63のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体、請求項64~65のいずれか一項に記載のポリペプチド分子、請求項66に記載の免疫複合体、請求項67~69のいずれか一項に記載の核酸分子、請求項70に記載のベクター、請求項71~78のいずれか一項に記載の細胞および/または請求項79に記載の医薬組成物を投与することを含む、サンプル中のCLDN18.2を検出する方法。
【請求項86】
請求項1~44のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質、請求項45~63のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体、請求項64~65のいずれか一項に記載のポリペプチド分子、請求項66に記載の免疫複合体、請求項67~69のいずれか一項に記載の核酸分子、請求項70に記載のベクター、請求項71~78のいずれか一項に記載の細胞および/または請求項79に記載の医薬組成物を含む、サンプル中のCLDN18.2を検出するための試薬またはキット。
【請求項87】
サンプル中のCLDN18.2の存在および/または含有量を検出するために用いられるキットの調製における、請求項1~44のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質、請求項45~63のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体、請求項64~65のいずれか一項に記載のポリペプチド分子、請求項66に記載の免疫複合体、請求項67~69のいずれか一項に記載の核酸分子、請求項70に記載のベクター、請求項71~78のいずれか一項に記載の細胞および/または請求項79に記載の医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、バイオ医薬品の技術分野に関し、特に、CLDN18.2に結合することができる抗原結合タンパク質に関する。
【背景技術】
【0002】
胃癌は、世界で2番目に致死率が高い悪性腫瘍である。世界保健機関の2015年のデータによると世界中で毎年75.4万人が胃癌で命を落としている。膵臓癌は、最も悪性度の高い腫瘍の1つであり、非特許文献1のデータによると、世界中で毎年20万以上の人が膵臓癌で命を落としている。進行または再発胃癌の標準的な第一選択治療は、化学療法である。化学療法としてトラスツズマブを追加することで、HER2-陽性腫瘍患者の延命効果がある程度もたらされているが、HER2-陽性胃癌は、全体の15%のみである。安全で有効な治療法の開発が急務となっている。
【0003】
CLDN18.2(Claudin 18.2)は、分化胃壁細胞でのみ発現され、正常組織において発現されない。最新の研究では、CLDN18.2が胃癌患者の77%以上、膵臓癌患者の80%以上で過剰発現しており、また肺がん、食道癌、および卵巣癌などの固形腫瘍でも過剰発現していることが示されている。CLDN18.2は、層状細胞間の分子の流れを制御する密着結合タンパク質ファミリーに属する。しかし腫瘍では、密着結合が破壊され、CLDNタンパク質はその主要な役割を失う。CLDN18.2は、胃腫瘍に大量存在するため、研究者らは進行胃癌患者の半数がCLDN18.2抗体を標的とする新たな治療法の候補者となる可能性があると推定している。なおこのユニークな標的は、胃壁以外の健康な組織に存在しないため、治療の副作用が最小限に抑えられる。これらの特徴は、CLDN18.2が治療用モノクローナル抗体開発の理想的な標的であることを示している。
【0004】
CLDN18.2 は、膜タンパク質であるため、従来の抗体スクリーニング方法を使用してネイティブタンパク質に対抗する高品質な抗体を得ることは困難であった。現在、in vivo免疫化方法(例えばDNA注射方法)が多く用いられているが、動物に対する複数回の免疫化が必要である。CLDN18には、2つのスプライスバリアント(CLDN18.1およびCLDN18.2)があり、この2つのバリアントは第1細胞外ループに存在し、N末端69番目のアミノ酸配列のみが異なり、残りの配列が同じである。CLDN18.1は、正常な肺組織で発現しているため、CLDN18.2に結合するがCLDN18.1には結合しない抗体をスクリーニングする必要がある。一方CLDN18.2配列は、ヒトとマウス間で極めて高い相同性を持っている。このため、CLDN18.2に特異的に結合する抗体を得ることが急務となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際出願第WO 06/030220号公報
【特許文献2】国際出願第WO 06/003388号公報
【特許文献3】米国特許第6,150,584号公報
【特許文献4】米国特許第6,458,592号公報
【特許文献5】米国特許第6,420,140号公報
【特許文献6】国際出願第WO2015/036583号公報
【特許文献7】中国特願第CN103509114A号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】医学誌《ランセット》2016
【非特許文献2】Korndorferら,2003,Proteins:Structure,Function,andBioinformatics,53(1):121-129(2003)
【非特許文献3】Roqueら,Biotechnol. Prog.20:639-654(2004)
【非特許文献4】Kabat et al,Sequences of Immunological Interest,Fifth Edition,National Institute of Health,Bethesda,Md.(1991)
【非特許文献5】Basic and Clinical Immunology,8th Edition,Daniel P.Sties,Abba I. Terr and Tristram G. Parsolw (eds),Appleton & Lange,Norwalk,Conn.,1994,71頁目および第6章
【非特許文献6】Hamers-Casterman et al.,Nature 363:446-448(1993);Sheriff et al,Nature Struct.Biol.3:733-736(1996)
【非特許文献7】Wardら(Nature,1989Oct 12;341(6242):544-6)
【非特許文献8】Holtら,Trends Biotechnol.,2003,21(11):484-490
【非特許文献9】W.R.PearsonおよびD.J.Lipmanの「生物学的配列比較のための改善されたツール」
【非特許文献10】全米科学アカデミーのジャーナル議事録(Proc.Natl.Acad.Sci.),85:2444-2448,1988
【非特許文献11】D.J.LipmanおよびW.R.Pearsonの「高速かつ高感度のタンパク質類似性検索」、Science,227:1435-1441,1989
【非特許文献12】S.Altschul、W.Gish、W.Miller、E.W.MyersおよびD.Lipmanの「基本的なローカルアラインメント(alignment)検索ツール」、分子生物学ジャーナル、215:403-410,1990
【非特許文献13】Brummell et al.,(1993)Biochem 32:1180-8
【非特許文献14】de Wildt et al.,(1997)Prot.Eng.10:835-41
【非特許文献15】Komissarov et al.,(1997)J.Biol.Chem.272:26864-26870
【非特許文献16】Hall et al.,(1992)J.Immunol.149:1605-12
【非特許文献17】Kelley and O’Connell (1993)Biochem.32:6862-35
【非特許文献18】Adib-Conquy et al.,(1998)Int.Immunol.10:341-6 and Beers et al.,(2000)Clin.Can.Res.6:2835-43
【非特許文献19】Kufer et al,cited supra;Cao and Suresh,Bioconjugate Chemistry,9 (6), 635-644 (1998)
【非特許文献20】van Spriel et al., Immunology Today, 21 (8),391-397 (2000)
【非特許文献21】Lotta von Boehmerが発表したPROTOCOL(doi:10.1038/nprot.2016.102)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願は、例えばヒトCLDN18.2に特異的に結合することができること、ヒトCLDN18.1に本質的に結合しないこと、CDC活性および/または抗腫瘍活性を持つ可能性があるなどの1つ以上の所望の機能特性を示し、CLDN18.2に結合することができる抗原結合タンパク質を提供する。本出願は、単離された抗原結合タンパク質をコードする核酸分子、発現ベクター、宿主細胞、および前記単離された抗原結合タンパク質を調製する方法も提供する。本出願の単離された抗原結合タンパク質は、腫瘍および/または癌などの疾患および/または障害症を予防および/または治療するために用いられることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様において、本出願は、配列番号:67で示されるアミノ酸配列を含むHCDR3を、含む単離された抗原結合タンパク質を提供する。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質のHCDR3は、配列番号:4、配列番号:12および配列番号:18のいずれかで示されるアミノ酸配列を含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、HCDR2を含み、前記HCDR2は配列番号:68または配列番号:11で示されるアミノ酸配列を含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質のHCDR2は、配列番号:3または配列番号:17で示されるアミノ酸配列を含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、HCDR1を含み、前記HCDR1は配列番号:2、配列番号:10および配列番号:16のいずれかで示されるアミノ酸配列を含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、H-FR1を含み、前記H-FR1のC末端は前記HCDR1のN末端に直接的または間接的に連結され、前記H-FR1は配列番号:72で示されるアミノ酸配列を含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質のH-FR1は、配列番号:34、配列番号:43および配列番号:49のいずれかで示されるアミノ酸配列を含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、H-FR2を含み、前記H-FR2は前記HCDR1と前記HCDR2との間に位置し、配列番号:73で示されるアミノ酸配列を含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質のH-FR2は、配列番号:35または配列番号:44で示されるアミノ酸配列を含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、H-FR3を含み、前記H-FR3は前記HCDR2と前記HCDR3との間に位置し、配列番号:80または配列番号:45で示されるアミノ酸配列を含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質のH-FR3は、配列番号:36または配列番号:42で示されるアミノ酸配列を含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、H-FR4を含み、前記H-FR4のN末端は前記HCDR3のC末端に連結され、前記H-FR4は配列番号:74で示されるアミノ酸配列を含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質のH-FR4は、配列番号:46または配列番号:37で示されるアミノ酸配列を含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、VHを含み、前記VHは配列番号:78で示されるアミノ酸配列を含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質のVHは、配列番号:1、配列番号:9、配列番号:15および配列番号:19のいずれかで示されるアミノ酸配列を含む。
【0023】
いくつかの実施形態において,前記単離された抗原結合タンパク質は、LCDR3を含み、前記LCDR3は配列番号:69で示されるアミノ酸配列を含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質のLCDR3は、配列番号:8、配列番号:14、配列番号:23および配列番号:25のいずれかで示されるアミノ酸配列を含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、LCDR2を含み、前記LCDR2は配列番号:70で示されるアミノ酸配列を含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質のLCDR2は、配列番号:7または配列番号:22で示されるアミノ酸配列を含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、LCDR1を含み、前記LCDR1は配列番号:71で示されるアミノ酸配列を含む。
【0028】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質のLCDR1は、配列番号:6または配列番号:21で示されるアミノ酸配列を含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、L-FR1を含み、前記L-FR1のC末端は前記LCDR1のN末端に直接的または間接的に連結され、前記L-FR1は配列番号:75で示されるアミノ酸配列を含む。
【0030】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質のL-FR1は、配列番号:38、配列番号:47、配列番号:50および配列番号:53のいずれかで示されるアミノ酸配列を含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、L-FR2を含み、前記L-FR2は前記LCDR1と前記LCDR2との間に位置し、配列番号:39で示されるアミノ酸配列を含む。
【0032】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、L-FR3を含み、前記L-FR3は前記LCDR2と前記LCDR3との間に位置し、配列番号:76で示されるアミノ酸配列を含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質のL-FR3は、配列番号:40、配列番号:48および配列番号:51のいずれかで示されるアミノ酸配列を含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、L-FR4を含み、前記L-FR4のN末端は前記LCDR3のC末端に連結され、前記L-FR4は配列番号:77で示されるアミノ酸配列を含む。
【0035】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質のL-FR4は、配列番号:41、配列番号:52および配列番号:54のいずれかで示されるアミノ酸配列を含む。
【0036】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、VLを含み、前記VLは配列番号:79で示されるアミノ酸配列を含む。
【0037】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質のVLは、配列番号:5、配列番号:13、配列番号:20および配列番号:24のいずれかで示されるアミノ酸配列を含む。
【0038】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、以下の任意の群から選択されるVHおよびVLを含み、
1)配列番号:1で示されるアミノ酸配列を含むVH、配列番号:5で示されるアミノ酸配列を含むVL、
2)配列番号:15で示されるアミノ酸配列を含むVH、配列番号:5で示されるアミノ酸配列を含むVL、
3)配列番号:9で示されるアミノ酸配列を含むVH、配列番号:13で示されるアミノ酸配列を含むVL、
4)配列番号:19で示されるアミノ酸配列を含むVH、配列番号:20で示されるアミノ酸配列を含むVL、および
5)配列番号:19で示されるアミノ酸配列を含むVH、配列番号:24で示されるアミノ酸配列を含むVL。
【0039】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、抗体重鎖定常領域を含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、前記抗体重鎖定常領域は、ヒトIgG重鎖定常領域に由来する。
【0041】
いくつかの実施形態において、前記抗体重鎖定常領域は、ヒトIgG1重鎖定常領域に由来する。
【0042】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、抗体軽鎖定常領域を含む。
【0043】
いくつかの実施形態において、前記抗体軽鎖定常領域は、ヒトIgκ定常領域に由来する。
【0044】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、抗体またはその抗原結合断片を含む。
【0045】
いくつかの実施形態において、前記抗原結合断片には、Fab、Fab’、Fv断片、F(ab’)2、F(ab)2、scFv、di-scFvおよび/またはdAbが含まれる。
【0046】
いくつかの実施形態において、前記抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体および完全ヒト抗体から成る群の1種以上から選択される。
【0047】
いくつかの実施形態において、FACSで検証されるように、前記単離された抗原結合タンパク質は、CLDN18.2への結合に関して参照抗体と実質的に競合せず、前記参照抗体は重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、前記参照抗体のVHは配列番号55で示されるアミノ酸配列を含み、前記参照抗体のVLは配列番号56で示されるアミノ酸配列を含む。
【0048】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、CLDN18.2に特異的に結合することができるが、CLDN18.1には実質的に結合しない。
【0049】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質が特異的に結合することができるCLDN18.2は、マウスCLDN18.2、カニクイザルCLDN18.2および/またはヒトCLDN18.2を含む。
【0050】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、CDC活性を有する。
【0051】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、腫瘍の成長および/または腫瘍細胞の増殖を抑制することができる。
【0052】
別の態様において、本出願は、本出願に記載の抗原結合タンパク質を含む標的部分を、含むキメラ抗原受容体も提供する。
【0053】
いくつかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体は、共刺激ドメインを含み、前記共刺激ドメインはCD28、4-1BB、CD27、CD2、CD7、CD8、OX40、CD226、DR3、SLAM、CDS、ICAM-1、NKG2D、NKG2C、B7-H3、2B4、FcεRIγ、BTLA、GITR、HVEM、DAP10、DAP12、CD30、CD40、CD40L、TIM1、PD-1、LFA-1、LIGHT、JAML、CD244、CD100、ICOS、CD83のリガンド、CD40およびMyD88からなる群から選択される1種以上のタンパク質に由来する共刺激ドメインを含む。
【0054】
いくつかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の共刺激ドメインは、4-1BB由来の細胞内共刺激シグナル伝達領域である。
【0055】
いくつかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の共刺激ドメインは、配列番号:85で示されるアミノ酸配列を含む。
【0056】
いくつかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体は、細胞内シグナル伝達ドメインを含み、前記細胞内シグナル伝達ドメインはCD3ζ、CD3δ、CD3γ、CD3ε、CD79a、CD79b、FcεRIγ、FcεRIβ、FcγRIIa、ウシ白血病ウイルスgp30、エプスタイン・バーウイルス (EBV)LMP2A、サル免疫不全ウイルスPBj14 Nef、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(HSKV)、DAP10、DAP-12および少なくとも1つのITAMを含むドメインを含む。
【0057】
いくつかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来するシグナル伝達ドメインである。
【0058】
いくつかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号:86で示されるアミノ酸配列を含む。
【0059】
いくつかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体は、膜貫通ドメインを含み、前記膜貫通ドメインはCD8、CD28、4-1BB、CD4、CD27、CD7、PD-1、TRAC、TRBC、CD3ε、CD3ζ、CTLA-4、LAG-3、CD5、ICOS、OX40、NKG2D、2B4、CD244、FcεRIγ、BTLA、CD30、GITR、HVEM、DAP10、CD2、NKG2C、LIGHT、DAP12,CD40L、TIM1、CD226、DR3、CD45、CD80、CD86、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD134、CD137、CD154およびSLAMからなる群から選択される1種以上のタンパク質に由来する膜貫通ドメインを含む。
【0060】
いくつかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記膜貫通ドメインは、CD8に由来する膜貫通ドメインである。
【0061】
いくつかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記膜貫通ドメインは、配列番号:84で示されるアミノ酸配列を含む。
【0062】
いくつかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体は、標的部分と膜貫通ドメインとの間にヒンジ領域を含み、前記ヒンジ領域はCD28、IgG1、IgG4、IgD、4-1BB、CD4、CD27、CD7、CD8、PD-1、ICOS、OX40、NKG2D、NKG2C、FcεRIγ、BTLA、GITR、DAP10、CD40L、TIM1、CD226、SLAM、CD30およびLIGHTからなる群から選択される1種以上のタンパク質に由来するヒンジ領域を含む。
【0063】
いくつかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記ヒンジ領域は、CD8に由来するヒンジ領域である。
【0064】
いくつかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記ヒンジ領域は、配列番号:83で示されるアミノ酸配列を含む。
【0065】
いくつかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体は、シグナルペプチドをさらに含む。
【0066】
いくつかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記シグナルペプチドは、CD8タンパク質に由来するシグナルペプチドである。
【0067】
いくつかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体の前記シグナルペプチドは、配列番号:88で示されるアミノ酸配列を含む。
【0068】
いくつかの実施形態において、前記キメラ抗原受容体は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片をさらに含む。
【0069】
いくつかの実施形態において、前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1~12およびその機能的断片からなる群から選択される1種以上を含む。
【0070】
いくつかの実施形態において、前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片は、配列番号:91で示されるアミノ酸配列を含む。
【0071】
別の態様において、本出願は、前記単離された抗原結合タンパク質または前記キメラ抗原受容体を含むポリペプチド分子も提供する。
【0072】
いくつかの実施形態において、前記ポリペプチド分子は、融合タンパク質を含む。
【0073】
別の態様において、本出願は、前記単離された抗原結合タンパク質を含む免疫複合体も提供する。
【0074】
別の態様において、本出願は、前記単離された抗原結合タンパク質、前記キメラ抗原受容体または前記ポリペプチド分子をコードする単離された1種以上の核酸分子も提供する。
【0075】
いくつかの実施形態において、前記核酸分子は、配列番号:26、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31、配列番号:32および配列番号:33のいずれかで示される塩基配列を含む。
【0076】
いくつかの実施形態において、前記核酸分子は、以下の任意の群から選択される塩基配列を含み、
1)配列番号26で示される塩基配列、および配列番号27で示される塩基配列、
2)配列番号30に示される塩基配列、および配列番号27で示される塩基配列、
3)配列番号28に示される塩基配列、および配列番号29で示される塩基配列、
4)配列番号31に示される塩基配列、および配列番号32で示される塩基配列、および
5)配列番号31に示される塩基配列、および配列番号33で示される塩基配列。
【0077】
別の態様において、本出願は、前記核酸分子を含むベクターも提供する。
【0078】
別の態様において、本出願は、前記単離された抗原結合タンパク質、前記キメラ抗原受容体、前記ポリペプチド分子、前記核酸分子または前記ベクターを含む細胞も提供する。
【0079】
いくつかの実施形態において、前記細胞は、免疫エフェクター細胞である。
【0080】
いくつかの実施形態において、前記細胞は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、マクロファージ、NKT細胞、単球、樹状細胞、顆粒球、リンパ球、白血球、末梢血単核球、胚性幹細胞、リンパ球前駆細胞および/または多能性幹細胞を含む。
【0081】
いくつかの実施形態において、前記細胞は、T細胞である。
【0082】
いくつかの実施形態において、前記細胞は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片をさらに含み、および/または発現する。
【0083】
いくつかの実施形態において、前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1~12およびその機能的断片からなる群から選択される1種以上を含む。
【0084】
いくつかの実施形態において、前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5および/または6あるいはその断片である。
【0085】
いくつかの実施形態において、前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片は、配列番号:91で示されるアミノ酸配列を含む。
【0086】
別の態様において、本出願は、前記単離された抗原結合タンパク質、前記キメラ抗原受容体、前記ポリペプチド分子、前記免疫複合体、前記核酸分子、前記ベクターおよび/または前記細胞、および任意で薬学的に許容される担体を含む医薬組成物も提供する。
【0087】
別の態様において、本出願は、前記抗原結合タンパク質が発現される条件下で、前記細胞を培養することを含む前記単離された抗原結合タンパク質の調製方法も提供する。
【0088】
別の態様において、本出願は、疾患および/または障害を予防、緩和および/または治療するための医薬品の調製における前記単離された抗原結合タンパク質、前記キメラ抗原受容体、前記ポリペプチド分子、前記免疫複合体、前記核酸分子、前記ベクター、前記細胞および/または前記医薬組成物の使用も提供する。
【0089】
いくつかの実施形態において、前記疾病および/または障害には、癌が含まれる。
【0090】
いくつかの実施形態において、前記癌には、固形腫瘍および/または血液腫瘍が含まれる。
【0091】
いくつかの実施形態において、前記癌には、胃癌および/または結腸癌が含まれる。
【0092】
別の態様において、本出願は、前記単離された抗原結合タンパク質、前記キメラ抗原受容体、前記ポリペプチド分子、前記免疫複合体、前記核酸分子、前記ベクター、前記細胞および/または前記医薬組成物を投与することを含む、サンプル中のCLDN18.2を検出する方法も提供する。
【0093】
別の態様において、本出願は、前記単離された抗原結合タンパク質、前記キメラ抗原受容体、前記ポリペプチド分子、前記免疫複合体、前記核酸分子、前記ベクター、前記細胞および/または前記医薬組成物を含む、サンプル中のCLDN18.2を検出するための試薬またはキットも提供する。
【0094】
別の態様において、本出願は、サンプル中のCLDN18.2の存在および/または含有量を検出するためのキットの調製における前記単離された抗原結合タンパク質、前記キメラ抗原受容体、前記ポリペプチド分子、前記免疫複合体、前記核酸分子、前記ベクター、前記細胞および/または前記医薬組成物の使用も提供する。
【0095】
当業者は、下記の詳細な説明から本出願の他の態様および利点を容易に理解することができる。下記の詳細な説明では、本出願の例示的な実施形態のみを示して説明する。当業者が理解するように、本出願の内容により、当業者は、本出願に係る発明の精神および範囲から逸脱することなく、開示された具体的実施形態に変更を加えることができる。また、本出願の添付の図面および明細書における説明は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0096】
本出願に係る発明の具体的特徴は、添付の特許請求の範囲に記載されている。下記の詳細に説明する例示的な実施形態および図面を参照して本出願に係る発明の特徴および利点をさらに理解することができる。
【0097】
【
図1】本出願の抗原結合タンパク質と高発現ヒトCLDN18.2細胞のフローサイトメトリーによる結合活性アッセイを示すグラフである。
【
図2】本出願の抗原結合タンパク質と高発現ヒトCLDN18.1細胞のフローサイトメトリーによる結合活性アッセイを示すグラフである。
【
図3】本出願の抗原結合タンパク質と腫瘍細胞系のフローサイトメトリーによる結合活性アッセイを示すグラフである。
【
図4】本出願の抗原結合タンパク質の種交差結合活性解析を示すグラフである。
【
図5a-5b】本出願の抗原結合タンパク質のCDC活性アッセイを示すグラフである。
【
図6】本出願の抗原結合タンパク質の競合結合活性解析を示すグラフである。
【
図7】投与後のマウスの体重変化を示すグラフである。
【
図8】投与後のマウスの体重の相対変化(%)を示すグラフである。
【
図9】投与後のマウスの腫瘍体積の変化を示すグラフである。
【
図10】投与後のマウスの腫瘍抑制率を示すグラフである。
【
図11】投与後のマウスの生存曲線を示すグラフである。
【
図12A-B】CLDN18.2一本鎖抗体の抗原結合活性の同定を示すグラフである。
【
図13】CLDN18.2一本鎖抗体と非標的細胞の結合活性の同定を示すグラフである。
【
図14】ヒト胃癌のマウスモデルにおける、本出願のCLDN18.2抗原結合タンパク質の抗腫瘍活性を示すグラフである。
【
図15A-D】T細胞におけるCLDN18.2特異的CARの発現状況を示すグラフである。
【
図16】CAR-T細胞のインビトロ殺傷活性アッセイを示すグラフである。
【
図17A-B】CLDN18.2特異的CARの因子分泌の検出を示すグラフである。
【
図18A-D】マウス結腸癌CDXモデルにおけるCLDN18.2特異的CAR-T細胞の抗腫瘍作用を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0098】
以下、特定の具体的実施例を挙げて本出願の発明の実施形態を説明し、当業者は本明細書に開示された内容から本出願の発明その他の利点および効果を容易に理解することができる。
【0099】
(用語定義)
本出願において、「CLDN18.2」または「Claudin18.2」という用語は、互換的に使用され、一般的に細胞結合クローディンClaudin18のアイソフォーム2を指す。この用語には、「完全長」の未プロセシングCLDN18.2、および細胞プロセシングから生じるあらゆる形態のCLDN18.2が含まれる。CLDN18.2には、完全なCLDN18.2および断片、機能的変異体、アイソフォーム、物種相同体、誘導体、類似体、およびCLDN18.2と共通の少なくとも1つのエピトープを有する類似体が含まれ得る。CLDN18.2(例えばヒトCLDN18.2)のアミノ酸配列は、当技術分野で既知のものであり得る。例えばヒトCLDN18.2塩基配列は、GeneBankアクセッション番号NM_001002026.3で示すことができる。例えばマウスCLDN18.2塩基配列は、GeneBankアクセッション番号NM_001194921.1で示すことができる。例えばカニクイザルCLDN18.2塩基配列は、GeneBankアクセッション番号XM_001114708.4で示すことができる。
【0100】
本出願において、「CLDN18.1」または「Claudin18.1」という用語は、互換的に使用され、一般的に細胞結合クローディンClaudin18のアイソフォーム1を指す。この用語には、「完全長」の未プロセシングCLDN18.1、および細胞プロセシングから生じるあらゆる形態のCLDN18.2が含まれる。CLDN18.2には、完全なCLDN18.1および断片、機能的変異体、アイソフォーム、物種相同体、誘導体、類似体、およびCLDN18.1と共通の少なくとも1つのエピトープを有する類似体が含まれ得る。CLDN18.1(例えばヒトCLDN18.1)のアミノ酸配列は、当技術分野で既知のものであり得る。例えばヒトCLDN18.1塩基配列は、GeneBankアクセッション番号NM_016369.4で示すことができる。例えばマウスCLDN18.1塩基配列は、GeneBankアクセッション番号NM_019815.3で示すことができる。例えばカニクイザルCLDN18.1塩基配列は、GeneBankアクセッション番号XM_005545863.2で示すことができる。
【0101】
本出願において、「単離された」という用語は通常、人工的手段によって自然状態から得られることを意味する。自然界に「分離された」物質または成分が存在する場合、「分離された」物質または成分が位置する自然環境は変更されたか、自然環境から該物質が分離されたか、あるいはその両方である可能性がある。例えば生きている動物には単離されていないポリヌクレオチドまたはポリペプチドが自然に存在し、この自然状態から単離された高純度の同じポリヌクレオチドあるいはポリペプチドを単離という。用語「単離された」は、人工または合成物質の混合、物質の活性に影響を与えない他の不純物質の存在を排除するものではない。
【0102】
本出願において、「単離された抗原結合タンパク質」という用語は、通常、人工的手段によって自然状態から得られ、抗原結合能を有するタンパク質を意味する。該「単離された抗原結合タンパク質」は、抗原結合部分と、任意選択で抗原への前記抗原結合部分の結合を促進するコンフォメーションを抗原結合部分がとることを可能にする枠組みあるいは枠組み部分とを含み得る。抗原結合タンパク質は、例えば抗体由来タンパク質枠組み領域(FR)またはCDRあるいはCDR誘導体が移植された代替タンパク質枠組み領域もしくは人工枠組み領域を含み得る。このような枠組みには、例えば抗原結合タンパク質の三次元構造を安定化するために導入された変異を含む抗体由来の枠組み領域、および例えば生体適合性ポリマーを含む完全に合成された枠組み領域が含まれるが、これらに限定されない。例えば非特許文献2、非特許文献3を参照する。抗原結合タンパク質の例として、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、組換え抗体、一本鎖抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、Fab、Fab’、Fv断片、F(ab’)2、F(ab)2、scFv、di-scFv、dAb、IgD抗体、IgE抗体、IgM抗体、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、またはIgG4抗体およびその断片が挙げられる。
【0103】
本出願において、「可変ドメイン」および「可変領域」という用語は、互換的に使用され、一般的に抗体の重鎖および/または軽鎖の一部を指す。重鎖および軽鎖の可変ドメインは、それぞれ「VH」および「“VL」(あるいはそれぞれ「VH」および「VL」)と呼ぶことができる。これらのドメインは通常、(同じクラスの他の抗体と比較して)抗体の最も変化しやすい部分であり、抗原結合部位を含む。
【0104】
本出願において、「可変」という用語は、一般的に可変ドメインのある部分が抗体間の配列で非常に異なることを意味する。可変ドメインは、抗原結合を媒介し、特定の抗原に対する特定の抗体の特異性を決定する。ただし、可変性は可変ドメイン全体に均等に分散されていない。通常、軽鎖および重鎖の両方の可変ドメイン中の超可変領域(CDRまたはHVR)と呼ばれる3つの部分に集中している。可変ドメインの中でより高度に保存された部分は、枠組み領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインは主としてβ-シート構造を持ち、3つのループ状連結を形成し、場合によりβ-シート構造の部分を形成するCDRにより連結された4つのFR領域を含む。各鎖中のCDRは、FR領域により非常にもう一方の鎖のCDRと近接して保持され、抗体の抗原結合部位の形成に一役買う(非特許文献4参照)。
【0105】
本出願において、「抗体」という用語は、一般的にインビトロまたはインビボで産生されたかどうかにかかわらず、抗原結合部位を含む任意のポリペプチドを包含する、免疫グロブリンあるいはその断片もしくは誘導体を指す。この用語には、ポリクローナル、モノクローナル、単一特異性、多重特異性、非特異性、ヒト化、一本鎖、キメラ、合成、組換え、ハイブリッド、変異および移植の抗体が含まれるが、これらに限定されない。「インタクト抗体」のように、「インタクト」という用語によって特に修飾されない限り、本発明の目的のため、「抗体」という用語は、Fab、F(ab’)2、Fv、scFv、Fd、dAbなどの抗体断片および抗原結合機能を保持する他の抗体断片(例えばヒトCLDN18.2に特異的に結合する)を含む。このような断片は、抗原結合ドメインを含む。基本的な4鎖抗体ユニットは、2つの同一の軽(L)鎖と2つの同一の重(H)鎖で構成されるヘテロ四量体糖タンパク質である。IgM抗体は、5つの基本的なヘテロ四量体ユニットとJ鎖と呼ばれる別のポリペプチドで構成され、10個の抗原結合部位を含むが、IgA抗体には、J鎖と結合・重合して多価組み合わせを形成する2~5個の基本的な4鎖ユニットを含む。IgGの場合、4鎖ユニットは一般的に約150,000ダルトンである。各L鎖は共有ジスルフィド結合によってH鎖につながっているが、2つのH鎖はH鎖のアイソタイプに応じて1つ以上のジスルフィド結合によって互いにつながっている。各H鎖およびL鎖はまた、規則的に間隔があいた鎖内ジスルフィド架橋も有する。各H鎖は、N末端において、可変ドメイン(VH)、続いてα鎖およびγ鎖のそれぞれに関する3個の定常ドメイン(CH)、並びにμアイソタイプおよびεアイソタイプに関する4個のCHドメインを有する。各L鎖は、N末端に可変ドメイン(VL)、続いてもう一方の末端に定常ドメインを有する。VLはVHとアライメントされ、CLは重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)とアライメントされる。特定のアミノ酸残基は軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間に界面を形成すると考えられている。VHおよびVLの対合は、単一の抗原結合部位を共に形成する。様々なクラスの抗体の構造および特性に関して、例えば非特許文献5を参照する。任意の脊椎動物種に由来するL鎖を、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、κおよびλと呼ばれる2種の明確に異なるタイプのうちの一方に帰属させることができる。重鎖(CH)の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンを様々なクラスまたはアイソタイプに帰属させることができる。5つのクラスの免疫グロブリン:それぞれα、δ、ε、γおよびμと命名された重鎖を有するIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMが存在する。CH配列と機能の比較的小さな違いに基づいてγおよびαをサブクラスさらに分類し、例えばヒトはIgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgK1のサブクラスを発現する。
【0106】
本出願において、「CDR」という用語は、「相補性決定領域」とも呼ばれ、一般的に抗体の可変ドメイン内の領域を指し、その配列は超可変であり、および/または構造ループを形成する。一般的に抗体は、VHにある3つ(HCDR1、HCDR2、HCDR3)、VLにある3つ(LCDR1、LCDR2、LCDR3)という6つのCDRを含む。いくつかの実施形態において、重鎖のみからなる天然に存在するラクダ科動物抗体は、軽鎖がない場合においてその機能も正常で安定化することができる。例えば非特許文献6を参照する。
【0107】
本出願において、「FR」という用語は、一般的に抗体可変ドメインの中でより高度に保存された部分を指し、枠組み領域と呼ばれる。通常、天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインはそれぞれ4つのFR領域を含み、すなわちVHに4つ(H-FR1、H-FR2、H-FR3、およびH-FR4)、VLに4つ(L-FR1、L-FR2、L-FR3およびL-FR4)がある。例えば、本出願の単離された抗原結合タンパク質のVLは、枠組み領域L-FR1、L-FR2、L-FR3、およびL-FR4を含み得る。本出願の単離された抗原結合タンパク質のVHは、枠組み領域H-FR1、H-FR2、H-FR3、およびH-FR4を含み得る。
【0108】
本出願において、「抗原結合断片」という用語は、一般的に抗原(例えばCLDN18.2)に特異的に結合する能力を有する1つ以上の断片を指す。本出願において、抗原結合断片には、Fab、Fab’、F(ab)2、Fv断片、F(ab’)2,scFv、di-scFvおよび/またはdAbが含まれることができる。
【0109】
本出願において、「Fab」という用語は、一般的に抗体の抗原結合断片を指す。上記のようにパパインでインタクト抗体を消化できる。抗体は、パパイン消化により、2つの同一の抗原結合断片、すなわち「Fab」断片、および残りの「Fc」断片(すなわち、Fc領域、同上)を生成する。Fab断片は、1本の完全なL鎖と重鎖の可変領域およびH鎖(VH)の第1の定常領域(CH1)からなり得る。
【0110】
本出願において、「Fab’断片」という用語は、一般的にFab断片よりわずかに大きい断片である、ヒトモノクローナル抗体の一価抗原結合断片を指す。例えばFab’断片は、軽鎖の全て、重鎖の可変ドメインの全て、および重鎖の第1と第2の定常領域の全てまたは一部を含み得る。例えばFab’断片は、重鎖の220~330個のアミノ酸残基の一部または全部も含み得る。
【0111】
本出願において、「F(ab’)2」という用語は、一般的にペプシンでインタクト抗体を消化して生成される抗体断片を指す。F(ab’)2断片には、ジスルフィド結合した2つのFab断片とヒンジ領域の一部が含まれる。F(ab’)2断片は二価の抗原結合活性を持ち、抗原を架橋することができる。
【0112】
本出願において、「Fv断片」という用語は、一般的に重鎖可変領域および軽鎖可変領域の全部または一部を含み、重鎖定常領域および軽鎖定常領域を欠くヒトモノクローナル抗体の一価の抗原結合断片を指す。重鎖可変領域および軽鎖可変領域には、例えばCDRが含まれる。例えばFv断片は、重鎖および軽鎖の約110個のアミノ酸のアミノ末端可変領域の全部または一部を含む。
【0113】
本出願において、「scFv」という用語は、一般的に軽鎖の可変領域を含む少なくとも1つの抗体断片と、重鎖の可変領域を含む少なくとも1つの抗体断片とを含む融合タンパク質を指し、前記軽鎖および重鎖の可変領域は、(例えば短い柔軟なポリペプチドリンカーなどの合成リンカーを介して)隣接し、且つ単鎖ポリペプチドの形態で発現することができ、前記scFvが由来するインタクト抗体の特異性を保留する。特記しない限り、本出願で使用されるように、scFvは、任意の順序で(例えばポリペプチドのN末端およびC末端に対して)前記VLおよびVHの可変領域を有し得、scFvはVLリンカー-VHあるいはVH-リンカー-VLを含み得る。
【0114】
本出願において、「dAb」という用語は、一般的にVHドメイン、VLドメインを有するあるいはVHドメインまたはVLドメインを有する抗原結合断片を指す。例えば非特許文献7、非特許文献8、および例えば特許文献1、特許文献2およびDomantisLtdの他の公開特許出願を参照する。
【0115】
本出願において、「モノクローナル抗体」という用語は、一般的に単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体は単一の抗原部位に対する高い特異性を有する。抗原決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含む、従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的で、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の抗原決定基を対象とする。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンにより汚染されていないハイブリドーマ培養により合成される点で有利である。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体集団から得られる抗体の特徴を示し、いかなる特定の方法による抗体の産生が必要であると解釈されない。例えば本出願で使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ細胞で作製することができ、もしくは組換えDNA法によって作製することができる。
【0116】
本出願において、「キメラ抗体」という用語は、一般的に可変領域が1つの物種に由来し、定常領域が別の物種に由来する抗体を指す。通常、可変領域は齧歯類などの実験動物の抗体(「親抗体」)に由来し、定常領域はヒト抗体に由来するため、得られるキメラ抗体は親(例:マウス由来)抗体に比べ、ヒト個体において有害な免疫反応を引き起こす可能性が低くなる。
【0117】
本出願において、「ヒト化抗体」という用語は、一般的に非ヒト抗体(例:マウス抗体)のCDR領域以外のアミノ酸の一部または全部が、ヒト免疫グロブリン由来の対応するアミノ酸で置換されている抗体を指す。CDR領域において、アミノ酸の小さな付加、欠失、挿入、置換もしくは修飾もまた、それらが特定の抗原に結合する抗体の能力を保留している限り許容され得る。ヒト化抗体は、任意選択でヒト免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部を含む。「ヒト化抗体」は、元の抗体に似ている抗原特異性を保留している。非ヒト(例:マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリン由来の配列のキメラ抗体を最低限で含み得る。場合により、ヒト免疫グロブリン(受容体抗体)のCDR領域残基を、所望の特性、親和性および/または能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)(例:マウス、ラットまたは非ヒト霊長類)CDR領域における残基に置き換えることができる。場合により、ヒト免疫グロブリンのFR領域残基を対応する非ヒト残基で置換し得る。なお、ヒト化抗体は、受容体抗体あるいはドナー抗体に存在しないアミノ酸修飾を含み得る。これらの修飾は、結合親和性などの抗体特性をさらに改良するために行うことができる。
【0118】
「完全ヒト抗体」という用語は、一般的にヒト免疫グロブリンタンパク質配列のみを含む抗体を指す。完全ヒト抗体は、マウス、マウス細胞、あるいはマウス細胞由来のハイブリドーマで産生される場合、マウス糖鎖を含む可能性がある。同様に、「マウス抗体」あるいは「ラット抗体」は、それぞれマウスあるいはラット免疫グロブリン配列のみを含む抗体を指す。ファージディスプレイまたは他の分子生物学的方法により、ヒト、ヒト免疫グロブリン生殖系列配列を有するトランスジェニック動物において完全ヒト抗体を産生することができる。抗体を作製するために使用できる例示的な技術は、特許文献3、特許文献4、特許文献5に記載されている。ライブラリを使用するなどの他の技術は、当技術分野で知られている。
【0119】
本出願において、「直接的に連結された」という用語は、「間接的に連結された」という用語と対比され、一般的に直接的に連結されたことを意味する。例えば直接的に連結されたことは、スペーサーを介さずに物質同士が直接的に連結される場合であり得る。前記スペーサーは、リンカーであってもよい。例えばリンカーは、ペプチドリンカーであり得る。「間接的に連結された」という用語は、一般的に物質同士が直接的に連結されていない場合を意味する。例えば間接的に連結されたことは、スペーサーを介した連結であってもよい。例えば本出願の単離された抗原結合タンパク質において、前記L-FR1のC末端と前記LCDR1のN末端は、直接的または間接的に連結され得る。
【0120】
本出願において、「単離された核酸分子」という用語は、一般的に単離された形態の任意の長さのヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、あるいはそれらの自然環境から単離されたもしくは人工的に合成された類似体を指す。
【0121】
本出願において、「ベクター」という用語は、一般的にタンパク質をコードするポリヌクレオチドを挿入し、タンパク質を発現させることができる核酸送達ビヒクルを指す。ベクターは、宿主細胞を形質転換、形質導入、またはトランスフェクトすることで、ベクターによって運ばれる遺伝物質エレメントを宿主細胞で発現させることができる。例えばベクターには、プラスミド、ファージミド、コスミド、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)あるいはP1由来人工染色体(PAC)などの人工染色体、λファージまたはM13ファージなどのファージおよび動物ウイルスなどが含まれる。ベクターとして使用される動物ウイルス種類には、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルスなど)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、およびパポバウイルス(SV40など)が含まれる。ベクターは、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択エレメント、およびレポーター遺伝子を含む、発現を制御する多種エレメントを含む場合がある。なお、ベクターは複製起点を含んでいてもよい。ベクターには、ウイルス粒子、リポソーム、あるいはカプシドなど、細胞への侵入を促進する成分も含まれる場合があるが、これらだけではない。
【0122】
本出願において、「細胞」という用語は、一般的に本発明に記載の核酸分子または本発明に記載のベクターを含む、被験体のプラスミドあるいはベクターのレシピエントであるもしくはあった単一の細胞、細胞系もしくは細胞培養物を指す。細胞は、単一細胞の子孫を含み得る。自然、偶発的、または意図的な変異により、子孫は元の親細胞と必ずしも(全DNA補体の形態またはゲノムで)同一であるとは限らない。細胞は、本出願に記載のベクターを用いてインビトロでトランスフェクトされた細胞を含み得る。細胞は、細菌細胞(例:大腸菌)、酵母細胞、またはCOS細胞、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞、CHO-K1細胞、LNCAP細胞、HeLa細胞、HEK293細胞、COS-1細胞、NS0細胞または幹細胞(例:ES細胞、iPS細胞、間葉系幹細胞)あるいは免疫細胞(例:T細胞、NK細胞、NKT細胞、マクロファージ)などの他の真核細胞であり得る。いくつかの実施形態において、細胞は哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態において、哺乳動物細胞はHEK293細胞である。
【0123】
本出願において、「医薬組成物」という用語は、一般的に疾患または障害を予防/治療するための組成物を指す。前記医薬組成物は、本出願に記載の単離された抗原結合タンパク質、本出願に記載の核酸分子、本出願に記載の担体および/または本出願に記載の細胞、および任意で薬学的に許容されるアジュバントを含み得る。なお、前記医薬組成物は、1種以上の(薬学的に有効な)担体、安定剤、賦形剤、希釈剤、可溶化剤、界面活性剤、乳化剤および/または保存剤の適切な製剤を含んでもよい。組成物の許容される成分は、好ましくは使用される投与量および濃度でレシピエントに対して無毒である。本発明の医薬組成物には、液体、凍結および凍結乾燥組成物が含まれるが、これらに限定されない。
【0124】
本出願において、「薬学的に許容される担体」という用語は、一般的に使用される投与量および濃度で曝露される細胞あるいは哺乳動物に対して無毒である、薬学的に許容されるベクター、賦形剤もしくは安定剤を含む。生理学的に許容される担体の例としては、緩衝剤、抗酸化剤、低分子量(約10残基未満)のポリペプチド、タンパク質、親水性ポリマー、アミノ酸、単糖類、二糖類および他の炭水化物、キレート剤、糖アルコール、塩形成対立イオン(例:ナトリウム)および/または非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0125】
本出願において、「特異的に結合する」または「特異的な」という用語は、一般的に標的と抗体との間の結合など、分子(生体分子を含む)の不均一な集団の存在下で標的の存在を決定できる、測定可能かつ再現可能な相互作用を指す。例えば標的(エピトープであり得る)に特異的に結合する抗体は、他の標的に結合するよりも高い親和性、結合力、容易さ、および/または長い持続時間で該標的に結合する抗体であり得る。いくつかの実施形態において、抗体は、異なる種のタンパク質間で保存されているタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。いくつかの実施形態において、特異的結合は排他的結合を含み得るが、これを必要としない。
【0126】
本出願において、「参照抗体」という用語は、一般的に抗原(例:CLDN18.2)に結合できる抗体を指す。場合によって本出願に記載の抗原結合タンパク質は、参照抗体と比較して競合結合活性を有さない。場合によって本出願に記載の参照抗体は、ゾルベツキシマブであり得る。
【0127】
本出願において、「実質的に結合しない」という用語は、一般に結合しないこと、または非常に弱い結合活性で結合することを意味する。ここで、非常に弱い結合活性とは、例えばフローサイトメトリーによる結合活性アッセイにおいて、CLDN18.1に結合することが検出される抗体の平均蛍光強度値は、CLDN18.1抗体陽性対照より約50%、約55%、約60%、約70%、約80%、約90%、約91%、約91%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約100%少なくとも低い。
【0128】
本出願において、「被験体」という用語は、一般的にネコ、イヌ、ウマ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウサギ、マウス、ラット、またはサルを含むがこれらに限定されない、ヒトあるいはヒト以外の動物を指す。
【0129】
本出願において「腫瘍」という用語は、一般的に異常な細胞増殖によって形成される新生物または充実性病変を指す。本出願において腫瘍は、固形腫瘍または血液腫瘍であり得る。例えば本出願において、腫瘍は、CLDN18.2陽性腫瘍であり得る。
【0130】
「癌」という用語は、一般的に異常細胞の急速かつ制御不能な増殖を特徴とする疾患を指す。癌細胞は、血流やリンパ系を介して局所的に広がること、または体の他の部分に広がることができる。本出願における癌には、胃癌および/または結腸癌などが含まれるが、これらに限定されない。「腫瘍」および「癌」という用語は、本明細書では互換的に使用され、例えば両方の用語は、固形腫瘍および血液腫瘍、例えば、びまん性腫瘍あるいは循環性腫瘍を包含する。本明細書で使用される場合、用語「癌」または「腫瘍」には、前癌性および悪性の癌および腫瘍が含まれ得る。
【0131】
本出願において、かかるタンパク質、ポリペプチドおよび/またはアミノ酸配列は、該タンパク質またはポリペプチドと同一あるいは類似の機能を有するバリアントまたはホモログを少なくとも含むと理解されるべきである。
【0132】
本出願において、前記バリアントは、例えば前記タンパク質および/または前記ポリペプチド(例えばCLDN18.2タンパク質に特異的に結合する抗体あるいはその断片)のアミノ酸配列中の1つ以上のアミノ酸が置換、欠失、または付加されたタンパク質またはポリペプチドであり得る。例えば機能的バリアントは、1~30個、1~20個あるいは1~10個などの少なくとも1個、さらに例えば1個、2個、3個、4個または5個のアミノ酸が置換、欠失、または付加されることにより、アミノ酸改変を有するタンパク質またはポリペプチドを含み得る。前記機能的バリアントは、改変(例えば置換、欠失または付加)前の前記タンパク質または前記ポリペプチドの生物学的特性を実質的に維持し得る。例えば機能的バリアントは、改変前の前記タンパク質または前記ポリペプチドの生物学的活性(例えば抗原結合能)の少なくとも60%、70%、80%、90%、あるいは100%を維持し得る。例えば前記置換は、保存的置換であり得る。
【0133】
本出願において、前記ホモログは、前記タンパク質および/または前記ポリペプチド(例えばCLDN18.2タンパク質に特異的に結合する抗体またはその断片)のアミノ酸配列に対して少なくとも約85%(例えば少なくとも約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%またはこれ以上を有する)の配列相同性を有するタンパク質またはポリペプチドであり得る。
【0134】
本出願において、相同性は、一般的に2つ以上の配列間の近似性、類似性あるいは関連性を意味する。次の方法により「配列相同性のパーセンテージ」を計算できる。比較ウィンドウでアラインされる2本の配列を比較し、2本の配列に同じ核酸塩基(例えばA、T、C、G、I)あるいは同じアミノ酸残基(例えばAla、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、Cys、およびMet)が存在する位置の数を確認して一致する位置の数を得、一致する位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数(すなわち、ウィンドウの大きさ)で割り、その結果に100を掛けて配列相同性のパーセンテージを求める。配列相同性のパーセンテージを確認するためのアラインメントは、当技術分野で知られている様々な方法で実現でき、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、もしくはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを用いて実現できる。当業者は、配列をアラインメントさせるための適切なパラメータを確認することができ、これには、比較されている配列の全長にわたり、あるいはターゲットする配列の領域にわたり、最大のアラインメントを実現するために必要な任意のアルゴリズムが含まれる。前記相同性は、FASTAおよびBLASTの方法によっても測定できる。FASTAアルゴリズムに関する説明は、非特許文献9、非特許文献10、非特許文献11を参照する。BLASTアルゴリズムの説明については、非特許文献12を参照する。
【0135】
本出願において、「含む」という用語は、一般的に、含む、総括する、含有する、または包含するという意味を指す。場合により、「のため」、「……からなる」を意味することもある。
【0136】
本出願において、「約」という用語は、一般的に、所定値の上下0.5%~10%の範囲内で変動することを意味し、例えば所定値の上下0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、または10%の範囲内で変動する。
【0137】
(発明の詳細な説明)
抗体のCDRは、相補性決定領域とも呼ばれ、可変領域の一部である。この領域のアミノ酸残基は、抗原または抗原エピトープと接触することができる。抗体のCDRは、CCG、Kabat、Chothia、IMGT、総合考慮Kabat/Chothiaなどの複数種の番号付けシステムによって決定できる。これらの番号付けシステムは、当技術分野で知られ、具体的にはhttp://www.bioinf.org.uk/abs/index.html#kabatnumを参照できる。当業者は、抗体の配列および構造に基づいて、異なる番号付けシステムでCDR領域を決定できる。異なる番号付けシステムを使用する場合、CDR領域に違いが生じる場合がある。本出願において、前記CDRは、任意のCDR割り当て方法により割り当てて得られたCDR配列を包含でき、そのバリアントも包含する。前記バリアントは、1つ以上のアミノ酸が置換、欠失および/または付加された前記CDRのアミノ酸配列を含む。例えば1~30個、1~20個または1~10個、また例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個あるいは9個のアミノ酸が置換、欠失および/または挿入され、これらのホモログも包含し、前記ホモログは、前記CDRのアミノ酸配列に対して少なくとも約85%(例えば少なくとも約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%またはこれ以上を有する)の配列相同性を有するアミノ酸配列であり得る
【0138】
一態様において、本出願は、HCDR3を含み得る単離された抗原結合タンパク質を提供する。本出願において、前記HCDR3は、配列番号:67で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記HCDR3は、配列番号:4で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記HCDR3は、配列番号:12で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記HCDR3は、配列番号:18で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0139】
本出願において、前記単離された抗原結合タンパク質は、HCDR2を含み得る。本出願において、前記HCDR2は配列番号:68で示されるアミノ酸配列を含み得る。本出願において、前記HCDR2は、配列番号:11で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記HCDR2は、配列番号:3で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記HCDR2は、配列番号:17で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0140】
本出願において、前記単離された抗原結合タンパク質は、HCDR1を含み得る。本出願において、前記HCDR1は、配列番号:2で示されるアミノ酸配列を含み得る。本出願において、前記HCDR1は、配列番号:10で示されるアミノ酸配列を含み得る。本出願において、前記HCDR1は、配列番号:16で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0141】
本出願において、前記単離された抗原結合タンパク質は、HCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み得る。本出願において、前記HCDR1は、配列番号:2、配列番号:10および配列番号:16のいずれかで示されるアミノ酸配列を含み得、前記HCDR2は配列番号:68または配列番号:11で示されるアミノ酸配列を含み得、前記HCDR3は配列番号:67で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0142】
本出願において、前記単離された抗原結合タンパク質のHCDR1は、配列番号:2、配列番号:10および配列番号:16のいずれかで示されるアミノ酸配列を含み得、前記HCDR2は配列番号:3、配列番号:17および配列番号:11のいずれかで示されるアミノ酸配列を含み得、前記HCDR3は配列番号:4、配列番号:12および配列番号:18のいずれかで示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0143】
本出願において、前記単離された抗原結合タンパク質のHCDR1,HCDR2およびHCDR3は、は、以下の任意の群から選択されるアミノ酸配列を含み得、
1)前記HCDR1は、配列番号:2で示されるアミノ酸配列を含み得、前記HCDR2は配列番号:3で示されるアミノ酸配列を含み得、前記HCDR3は配列番号:4で示されるアミノ酸配列を含み得、
2)前記HCDR1は、配列番号:10で示されるアミノ酸配列を含み得、前記HCDR2は配列番号:11で示されるアミノ酸配列を含み得、前記HCDR3は配列番号:12で示されるアミノ酸配列を含み得、
3)前記HCDR1は、配列番号:16で示されるアミノ酸配列を含み得、前記HCDR2は配列番号:17で示されるアミノ酸配列を含み得、前記HCDR3は配列番号:18で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0144】
本出願において、前記単離された抗原結合タンパク質は、H-FR1を含み得、前記H-FR1のC末端は前記HCDR1のN末端に直接的または間接的に連結され、前記H-FR1は配列番号:72で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記H-FR1は、配列番号:34で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記H-FR1は、配列番号:43で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記H-FR1は、配列番号:49で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0145】
本出願において、前記単離された抗原結合タンパク質は、H-FR2を含み得、前記H-FR2は前記HCDR1と前記HCDR2との間に位置し、配列番号:73で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記H-FR2は、配列番号:35で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記H-FR2は、配列番号:44で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0146】
本出願において、前記単離された抗原結合タンパク質は、H-FR3を含み得、前記H-FR3は前記HCDR2と前記HCDR3との間に位置し、配列番号:80で示されるアミノ酸配列を含み得る。本出願において、前記H-FR3は、配列番号:45で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記H-FR3は、配列番号:36で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記H-FR3は、配列番号:42で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0147】
本出願において、前記単離された抗原結合タンパク質は、H-FR4を含み得、前記H-FR4のN末端は前記HCDR3のC末端に連結され、前記H-FR4は配列番号:74で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記H-FR4は、配列番号:46で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記H-FR4は、配列番号:37で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0148】
本出願において、前記単離された抗原結合タンパク質は、H-FR1、H-FR2、H-FR3およびH-FR4を含み得る。本出願において、前記H-FR1は、配列番号:72で示されるアミノ酸配列を含み得、前記H-FR2は配列番号:73で示されるアミノ酸配列を含み得、前記H-FR3は配列番号:80または配列番号:45で示されるアミノ酸配列を含み得、前記H-FR4は配列番号:74で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0149】
本出願において、前記H-FR1は、配列番号:34、配列番号:43および配列番号:49のいずれかで示されるアミノ酸配列を含み得、前記H-FR2は配列番号:35または配列番号:44で示されるアミノ酸配列を含み得、前記H-FR3は配列番号:36または配列番号:42で示されるアミノ酸配列を含み得、前記H-FR4は配列番号:46または配列番号:37で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0150】
本出願において、前記単離された抗原結合タンパク質のH-FR1、H-FR2、H-FR3およびH-FR4は、以下の任意の群から選択されるアミノ酸配列を含み得、
1)前記H-FR1は、配列番号:34で示されるアミノ酸配列を含み得、前記H-FR2は配列番号:35で示されるアミノ酸配列を含み得、前記H-FR3は配列番号:36で示されるアミノ酸配列を含み得、前記H-FR4は配列番号:37で示されるアミノ酸配列を含み得、
2)前記H-FR1は、配列番号:43で示されるアミノ酸配列を含み得、前記H-FR2は配列番号:44で示されるアミノ酸配列を含み得、前記H-FR3は配列番号:45で示されるアミノ酸配列を含み得、前記H-FR4は配列番号:46で示されるアミノ酸配列を含み得、
3)前記H-FR1は、配列番号:34で示されるアミノ酸配列を含み得、前記H-FR2は配列番号:35で示されるアミノ酸配列を含み得、前記H-FR3は配列番号:42で示されるアミノ酸配列を含み得、前記H-FR4は配列番号:37で示されるアミノ酸配列を含み得、
4)前記H-FR1は、配列番号:49で示されるアミノ酸配列を含み得、前記H-FR2は配列番号:35で示されるアミノ酸配列を含み得、前記H-FR3は配列番号:42で示されるアミノ酸配列を含み得、前記H-FR4は配列番号:37で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0151】
本出願において、前記単離された抗原結合タンパク質は、HCDR1、HCDR2、HCDR3、H-FR1、HFR2、HFR3およびH-FR4を含み得る。例えば前記HCDR1、HCDR2、HCDR3、H-FR1、H-FR2、H-FR3およびH-FR4は、それぞれ配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:34、配列番号:35、配列番号:36および配列番号:37で示されるアミノ酸配列、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:43、配列番号:44、配列番号:45および配列番号:46で示されるアミノ酸配列、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:34、配列番号:35、配列番号:42および配列番号:37で示されるアミノ酸配列、または配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:49、配列番号:35、配列番号:42および配列番号:37で示されるアミノ酸配列を順に含んでもよい。
【0152】
本出願において、前記単離された抗原結合タンパク質は、VHを含み得る。本出願において、前記VHは、配列番号:78で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記VHは、配列番号:1で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記VHは、配列番号:9で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記VHは、配列番号:15で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記VHは、配列番号:19で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0153】
本出願において、前記単離された抗原結合タンパク質は、LCDR3を含み得る。本出願において、前記LCDR3は、配列番号:69で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記LCDR3は、配列番号:8で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記LCDR3は、配列番号:14で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記LCDR3は、配列番号:23で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記LCDR3は、配列番号:25で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0154】
本出願において、前記単離された抗原結合タンパク質は、LCDR2を含み得る。本出願において、前記LCDR2は、配列番号:70で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記LCDR2は、配列番号:7で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記LCDR2は、配列番号:22で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0155】
本出願において、前記単離された抗原結合タンパク質は、LCDR1を含み得る。本出願において、前記LCDR1は、配列番号:71で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記LCDR1は、配列番号:6で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記LCDR1は、配列番号:21で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0156】
本出願において、前記単離された抗原結合タンパク質は、LCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み得る。例えば前記LCDR1は、配列番号:71で示されるアミノ酸配列を含み得、前記LCDR2は配列番号:70で示されるアミノ酸配列を含み得、前記LCDR3は配列番号:69で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0157】
本出願において、前記単離された抗原結合タンパク質のLCDR1は、配列番号:6または配列番号:21で示されるアミノ酸配列を含み得、前記LCDR2は配列番号:7または配列番号:22で示されるアミノ酸配列を含み得、前記LCDR3は配列番号:8、配列番号:14、配列番号:23および配列番号:25のいずれかで示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0158】
本出願において、前記単離された抗原結合タンパク質のLCDR1、LCDR2およびLCDR3は、以下の任意の群から選択されるアミノ酸配列を含み得、
1)前記LCDR1は、配列番号:6で示されるアミノ酸配列を含み得、前記LCDR2は配列番号:7で示されるアミノ酸配列を含み得、前記LCDR3は配列番号:8で示されるアミノ酸配列を含み得、
2)前記LCDR1は、配列番号:6で示されるアミノ酸配列を含み得、前記LCDR2は配列番号:7で示されるアミノ酸配列を含み得、前記LCDR3は配列番号:14で示されるアミノ酸配列を含み得、
3)前記LCDR1は、配列番号:21で示されるアミノ酸配列を含み得、前記LCDR2は配列番号:22で示されるアミノ酸配列を含み得、前記LCDR3は配列番号:23で示されるアミノ酸配列を含み得、
4)前記LCDR1は、配列番号:6で示されるアミノ酸配列を含み得、前記LCDR2は配列番号:7で示されるアミノ酸配列を含み得、前記LCDR3は配列番号:25で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0159】
本出願において、前記単離された抗原結合タンパク質は、L-FR1を含み得、前記L-FR1のC末端は前記LCDR1のN末端に直接的または間接的に連結される。本出願において、前記L-FR1は、配列番号:75で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記L-FR1は、配列番号:38で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記L-FR1は、配列番号:47で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記L-FR1は、配列番号:50で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記L-FR1は、配列番号:53で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0160】
本出願において、前記単離された抗原結合タンパク質は、L-FR2を含み得、前記L-FR2は前記LCDR1と前記LCDR2との間に位置する。本出願において、前記L-FR2は、配列番号:39で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0161】
本出願において、前記単離された抗原結合タンパク質は、L-FR3を含み得、前記L-FR3は前記LCDR2と前記LCDR3との間に位置する。本出願において、前記L-FR3は、配列番号:76で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記L-FR3は、配列番号:40で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記L-FR3は、配列番号:48で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記L-FR3は、配列番号:51で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0162】
本出願において、前記単離された抗原結合タンパク質は、L-FR4を含み得、前記L-FR4のN末端は前記LCDR3のC末端に連結される。本出願において、前記L-FR4は、配列番号:77で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記L-FR4は、配列番号:41で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記L-FR4は、配列番号:52で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記L-FR4は、配列番号:54で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0163】
本出願において、前記単離された抗原結合タンパク質は、L-FR1、L-FR2、L-FR3およびL-FR4を含み得る。例えば前記L-FR1は、配列番号:75で示されるアミノ酸配列を含み得、前記L-FR2は配列番号:39で示されるアミノ酸配列を含み得、前記L-FR3は配列番号:76で示されるアミノ酸配列を含み得、前記L-FR4は配列番号:77で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0164】
本出願において、前記単離された抗原結合タンパク質のL-FR1は、配列番号:38、配列番号:47、配列番号:50および配列番号:53のいずれかで示されるアミノ酸配列を含み得、前記L-FR2は配列番号:39で示されるアミノ酸配列を含み得、前記L-FR3は配列番号:40、配列番号:48および配列番号:51のいずれかで示されるアミノ酸配列を含み得、前記L-FR4は配列番号:41、配列番号:52および配列番号:54のいずれかで示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0165】
本出願において、前記単離された抗原結合タンパク質のL-FR1、L-FR2、L-FR3およびL-FR4は、以下の任意の群のアミノ酸配列を含み得、
1)前記L-FR1は、配列番号:38で示されるアミノ酸配列を含み得、前記L-FR2は配列番号:39で示されるアミノ酸配列を含み得、前記L-FR3は配列番号:40で示されるアミノ酸配列を含み得、前記L-FR4は配列番号:41で示されるアミノ酸配列を含み得、
2)前記L-FR1は、配列番号:47で示されるアミノ酸配列を含み得、前記L-FR2は配列番号:39で示されるアミノ酸配列を含み得、前記L-FR3は配列番号:48で示されるアミノ酸配列を含み得、前記L-FR4は配列番号:41で示されるアミノ酸配列を含み得、
3)前記L-FR1は、配列番号:50で示されるアミノ酸配列を含み得、前記L-FR2は配列番号:39で示されるアミノ酸配列を含み得、前記L-FR3は配列番号:51で示されるアミノ酸配列を含み得、前記L-FR4は配列番号:52で示されるアミノ酸配列を含み得、
4)前記L-FR1は、配列番号:53で示されるアミノ酸配列を含み得、前記L-FR2は配列番号:39で示されるアミノ酸配列を含み得、前記L-FR3は配列番号:40で示されるアミノ酸配列を含み得、前記L-FR4は配列番号:54で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0166】
本出願において、前記単離された抗原結合タンパク質は、LCDR1、LCDR2、LCDR3、L-FR1、L-FR2、L-FR3およびL-FR4を含む。例えば前記LCDR1、LCDR2、LCDR3、L-FR1、L-FR2、L-FR3およびL-FR4は、それぞれ配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:38、配列番号:39、配列番号:40および配列番号:41で示されるアミノ酸配列、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:14、配列番号:47、配列番号:39、配列番号:48および配列番号:41で示されるアミノ酸配列、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23、配列番号:50、配列番号:39、配列番号:51および配列番号:52で示されるアミノ酸配列、または配列番号:6、配列番号:7、配列番号:25、配列番号:53、配列番号:39、配列番号:40および配列番号:54で示されるアミノ酸配列を順に含んでもよい。
【0167】
本出願において、前記単離された抗原結合タンパク質は、VLを含む。本出願において、前記VLは、配列番号:79で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記VLは、配列番号:5で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記VLは、配列番号:13で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記VLは、配列番号:20で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記VLは、配列番号:24で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0168】
本出願において、前記単離された抗原結合タンパク質は、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み得る。本出願において、前記HCDR1は、配列番号:2、配列番号:10および配列番号:16のいずれかで示されるアミノ酸配列を含み得、前記HCDR2は配列番号:68または配列番号:11で示されるアミノ酸配列を含み得、前記HCDR3は配列番号:67で示されるアミノ酸配列を含み得、前記LCDR1は配列番号:71で示されるアミノ酸配列を含み得、前記LCDR2は配列番号:70で示されるアミノ酸配列を含み得、前記LCDR3は配列番号:69で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0169】
本出願において、前記HCDR1は、配列番号:2、配列番号:10および配列番号:16のいずれかで示されるアミノ酸配列を含み得、前記HCDR2は配列番号:3、配列番号:17および配列番号:11のいずれかで示されるアミノ酸配列を含み得、前記HCDR3は配列番号:4、配列番号:12および配列番号:18のいずれかで示されるアミノ酸配列を含み得、前記LCDR1は配列番号:6または配列番号:21で示されるアミノ酸配列を含み得、前記LCDR2は配列番号:7または配列番号:22で示されるアミノ酸配列を含み得、前記LCDR3は配列番号:8、配列番号:14、配列番号:23および配列番号:25のいずれかで示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0170】
本出願において、前記単離された抗原結合タンパク質のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3は、以下の任意の群のアミノ酸配列を含み得、
1)前記HCDR1は、配列番号:2で示されるアミノ酸配列を含み得、前記HCDR2は配列番号:3で示されるアミノ酸配列を含み得、前記HCDR3は配列番号:4で示されるアミノ酸配列を含み得、前記LCDR1は配列番号:6で示されるアミノ酸配列を含み得、前記LCDR2は配列番号:7で示されるアミノ酸配列を含み得、前記LCDR3は配列番号:8で示されるアミノ酸配列を含み得、
2)前記HCDR1は、配列番号:10で示されるアミノ酸配列を含み得、前記HCDR2は配列番号:11で示されるアミノ酸配列を含み得、前記HCDR3は配列番号:12で示されるアミノ酸配列を含み得、前記LCDR1は配列番号:6で示されるアミノ酸配列を含み得、前記LCDR2は配列番号:7で示されるアミノ酸配列を含み得、前記LCDR3は配列番号:14で示されるアミノ酸配列を含み得、
3)前記HCDR1は、配列番号:16で示されるアミノ酸配列を含み得、前記HCDR2は配列番号:17で示されるアミノ酸配列を含み得、前記HCDR3は配列番号:18で示されるアミノ酸配列を含み得、前記LCDR1は配列番号:6で示されるアミノ酸配列を含み得、前記LCDR2は配列番号:7で示されるアミノ酸配列を含み得、前記LCDR3は配列番号:8で示されるアミノ酸配列を含み得、
4)前記HCDR1は、配列番号:16で示されるアミノ酸配列を含み得、前記HCDR2は配列番号:17で示されるアミノ酸配列を含み得、前記HCDR3は配列番号:18で示されるアミノ酸配列を含み得、前記LCDR1は配列番号:21で示されるアミノ酸配列を含み得、前記LCDR2は配列番号:22で示されるアミノ酸配列を含み得、前記LCDR3は配列番号:23で示されるアミノ酸配列を含み得、
5)前記HCDR1は、配列番号:16で示されるアミノ酸配列を含み得、前記HCDR2は配列番号:17で示されるアミノ酸配列を含み得、前記HCDR3は配列番号:18で示されるアミノ酸配列を含み得、前記LCDR1は配列番号:6で示されるアミノ酸配列を含み得、前記LCDR2は配列番号:7で示されるアミノ酸配列を含み得、前記LCDR3は配列番号:25で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0171】
本出願において、前記単離された抗原結合タンパク質は、VHおよびVLを含み得る。本出願において、前記VHは、配列番号:78で示されるアミノ酸配列を含み得、前記VLは配列番号:79で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0172】
本出願において、前記単離された抗原結合タンパク質のVHは、配列番号:1、配列番号:9、配列番号:15および配列番号:19のいずれかで示されるアミノ酸配列を含み得、前記VLは配列番号:5、配列番号:13、配列番号:20および配列番号:24のいずれかで示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0173】
本出願において、前記単離された抗原結合タンパク質は、以下の群のいずれかから選択されるVHおよびVLを含み得、
1)配列番号:1で示されるアミノ酸配列を含み得るVH、配列番号:5で示されるアミノ酸配列を含み得るVL、
2)配列番号:15で示されるアミノ酸配列を含み得るVH、配列番号:5で示されるアミノ酸配列を含み得るVL、
3)配列番号:9で示されるアミノ酸配列を含み得るVH、配列番号:13で示されるアミノ酸配列を含み得るVL、
4)配列番号:19で示されるアミノ酸配列を含み得るVH、配列番号:20で示されるアミノ酸配列を含み得るVL、および
5)配列番号:19で示されるアミノ酸配列を含み得るVH、配列番号:24で示されるアミノ酸配列を含み得るVL。
【0174】
本出願において、前記単離された抗原結合タンパク質は、抗体重鎖定常領域を含み得る。前記抗体重鎖定常領域は、ヒトIgG重鎖定常領域に由来し得る。いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、抗体重鎖定常領域を含み得、前記抗体重鎖定常領域はヒトIgG1重鎖定常領域に由来し得る。
【0175】
本出願において、前記単離された抗原結合タンパク質は、抗体軽鎖定常領域を含み得る。前記抗体軽鎖定常領域は、ヒトIgκ定常領域に由来し得る。
【0176】
なお特筆すべきことは、本出願の単離された抗原結合タンパク質は、1つ以上の保存配列修飾を伴う重鏈および/または軽鎖配列を含み得る。いわゆる「保存配列修飾」とは、抗体の結合特性に大きな影響を与えないか、改変させないアミノ酸修飾を意味する。このような保存修飾には、アミノ酸の置換、付加および欠失が含まれる。部位変異およびPCR媒介変異などの当技術分野で知られている標準的な技術を通じて、修飾を本明細書に記載の単離された抗原結合タンパク質に導入することができる。保存的アミノ酸置換は、類似した側鎖を有するアミノ酸残基によるアミノ酸残基の置換である。類似した側鎖を有するアミノ酸残基群には、当技術分野で知られている。これらのアミノ酸残基群には、塩基性側鎖(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。いくつかの実施形態において、本出願の単離された抗原結合タンパク質のCDR領域中の1つ以上のアミノ酸残基は、同じ側鎖群の他のアミノ酸残基で置換することができる。当業者は、いくつかの保存配列修飾が抗原結合性を喪失しないことを知り、具体的には例えば非特許文献13、非特許文献14、非特許文献15、非特許文献16、非特許文献17、非特許文献18を参照できる。
【0177】
当技術分野で知られている様々なアッセイによって、本出願のCLDN18.2抗原結合タンパク質の物理的/化学的特性および/または生物活性の同定、スクリーニングまたはキャラクタリゼーションを行うことができる。
【0178】
いくつかの実施形態において、例えば酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、免疫ブロッティング(例えばウエスタンブロット)、フローサイトメトリー(例えばFACS)、免疫組織化学、免疫蛍光などの既知の方法で本出願の抗原結合タンパク質または融合タンパク質の抗原結合活性を測定できる。
【0179】
本出願において、前記単離された抗原結合タンパク質は、CLDN18.2抗原に特異的に結合することができる。CLDN18.2抗原に「特異的に結合する」抗原結合タンパク質は通常、CLDN18.2に結合するが、CLDN18.2配列を欠く他のタンパク質には結合しない、または実質的に結合しない。抗原結合タンパク質(例:抗体)が抗原CLDN18.2に結合するかどうかは、当技術分野で知られている任意のアッセイを使用して確認することができる。例えば蛍光活性化細胞選別技術(FACS)を使用して前記単離された抗原結合タンパク質のCLDN18.2に対する特異的結合活性を測定することができる。いくつかの実施形態において、前記特異的結合は、濃度依存性の結合であり得る。例えばFACS結合活性実験において、前記CLDN18.2の平均蛍光強度は、CLDN18.2抗体濃度の増加とともに増加する。
【0180】
本出願において、前記抗原結合タンパク質は、ヒトCLDN18.2タンパク質に結合することができる。場合により本出願の抗原結合タンパク質は、マウス(例えばマウス)および/またはサル(例えばカニクイザル)CLDN18.2とも交差反応することができ、例えばFACSで検出される。本出願において、「交差反応」とは、抗体が他の物種の相同タンパク質と反応する能力を意味する。
【0181】
本出願において、前記抗原結合タンパク質は、CDC効果を誘発することができる。例えば本出願のCLDN18.2抗原結合タンパク質は、SP2/0-ヒトCLDN18.2細胞に対して強力なCDC効果を誘導することができる。例えば本出願のCLDN18.2抗原結合タンパク質は、MC38-ヒトCLDN18.2細胞に対して強力なCDC効果を誘導することができる。例えば誘導方法は、用量依存的な様式であり得る。
【0182】
本出願において、FACSで検証されるように前記単離された抗原結合タンパク質は、CLDN18.2への結合に関して参照抗体と実質的に競合しない。前記参照抗体は、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み得、前記参照抗体のVHは配列番号55で示されるアミノ酸配列を含み得、前記参照抗体のVLは配列番号56で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0183】
本出願において、前記抗原結合タンパク質は、腫瘍の成長および/または腫瘍細胞の増殖を抑制することができる。前記腫瘍は、CLDN18.2発現腫瘍(例:結腸癌)であり得る。前記結腸癌の細胞は、MC38-ヒトCLDN18.2細胞であってもよい。
【0184】
キメラ抗原受容体
別の態様において、本出願は、CLDN18.2タンパク質に結合する標的部分を含み得るキメラ抗原受容体(CAR)も提供し、例えばCLDN18.2タンパク質に結合する標的部分は本出願の抗原結合タンパク質であり得る。例えば前記標的部分は、scFvの形式で存在し得る。例えば前記scFvは、本出願の単離された抗原結合タンパク質のCDR、VHおよび/またはVLを含み得る。例えば前記scFvのVHとVLは、配列番号89により連結され得る。例えば前記scFvは、配列番号90で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0185】
本出願において,前記CARは、CLDN18.2タンパク質に結合する細胞外標的部分以外に、他のドメインも含み得る。
【0186】
本出願において、前記CARは、刺激シグナルを提供できる共刺激シグナル領域を含むことができる。例えば前記共刺激シグナル領域は、CD28、4-1BB、CD27、CD2、CD7、CD8、OX40、CD226、DR3、SLAM、CDS、ICAM-1、NKG2D、NKG2C、B7-H3、2B4、FcεRIγ、BTLA、GITR、HVEM、DAP10、DAP12、CD30、CD40、CD40L、TIM1、PD-1、LFA-1、LIGHT、JAML、CD244、CD100、ICOS、CD83のリガンド、CD40およびMyD88からなる群から選択される1種以上のタンパク質に由来する細胞内共刺激シグナル伝達領域を含み得る。
【0187】
例えば前記共刺激シグナル領域は、4-1BB由来する細胞内共刺激シグナル伝達領域であってもよい。例えば前記共刺激シグナル領域は、配列番号:85で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0188】
場合によっては、前記CARは、少なくとも1つのITAMモチーフを有するドメインを含み得る細胞内シグナル伝達領域を含んでもよい。前記細胞内シグナル伝達ドメインは、活性化シグナルを細胞の内部に伝達することができる。例えば前記細胞内シグナル伝達領域は、CD3ζ、CD3δ、CD3γ、CD3ε、CD79a、CD79b、FcεRIγ、FcεRIβ、FcγRIIa、ウシ白血病ウイルスgp30、エプスタイン・バーウイルス(EBV)LMP2A、サル免疫不全ウイルスPBj14 Nef、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(HSKV)、DAP10、DAP-12および他の少なくとも1つのITAMを含むドメインからなる群から選択される1種以上のタンパク質に由来する細胞内シグナル伝達領域を含み得る。
【0189】
例えば前記細胞内シグナル伝達領域は、CD3ζに由来するシグナル伝達ドメインであってもよい。例えば前記細胞内シグナル伝達領域は、配列番号:86で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0190】
場合によっては、前記CARは、膜貫通ドメインを含み得、前記膜貫通ドメインは細胞膜を貫通する細胞表面タンパク質内の配列であり、疎水性αヘリックスを含み得る。前記膜貫通ドメインは、任意のI型膜貫通タンパク質に由来することができる。膜貫通ドメインは、疎水性ヘリックスを形成すると予測される合成配列であり得る。例えば前記膜貫通ドメインは、CD8、CD28、4-1BB、CD4、CD27、CD7、PD-1、TRAC、TRBC、CD3ε、CD3ζ、CTLA-4、LAG-3、CD5、ICOS、OX40、NKG2D、2B4、CD244、FcεRIγ、BTLA、CD30、GITR、HVEM、DAP10、CD2、NKG2C、LIGHT、DAP12,CD40L、TIM1、CD226、DR3、CD45、CD80、CD86、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD134、CD137、CD154およびSLAMからなる群から選択される1種以上のタンパク質に由来する膜貫通ドメインであり得る。
【0191】
例えば前記膜貫通ドメインは、CD8に由来する膜貫通ドメインであってもよい。例えば前記膜貫通ドメインは、配列番号:84で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0192】
場合によっては、前記CARは、細胞外標的部分と膜貫通ドメインとの間に位置し得るヒンジ領域を含み得る。例えば前記ヒンジ領域は、CD28、IgG1、IgG4、IgD、4-1BB、CD4、CD27、CD7、CD8、PD-1、ICOS、OX40、NKG2D、NKG2C、FcεRIγ、BTLA、GITR、DAP10、CD40L、TIM1、CD226、SLAM、CD30およびLIGHTからなる群から選択される1種以上のタンパク質に由来するヒンジ領域であり得る。
【0193】
例えば前記ヒンジ領域は、CD8に由来するヒンジ領域であってもよい。例えば前記ヒンジ領域は、配列番号:83で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0194】
本出願において、前記CARは、前記結合CLDN18.2タンパク質に結合する標的部分のN末端にはシグナルペプチドをさらに含み得る。例えば前記シグナルペプチドは、CD8タンパク質に由来するシグナルペプチドであってもよい。例えば前記シグナルペプチドは、配列番号:88で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0195】
本出願において、前記CARは、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片も含み得る。例えば前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片は、前記CARのC端に位置し得る。例えば前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1~12およびその機能的断片を含み得る。例えば前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5および/または6あるいはその断片であってもよい。例えば前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片は、配列番号:91で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0196】
本出願において、前記CAR内の前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片の配列は、自己切断ペプチド(例えばT2A、P2A、E2Aなどの2Aペプチド)を介してCARのC端配列に連結することができる。例えば前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片は、T2Aを介して細胞内シグナル伝達領域のC端に連結することができる。例えば前記切断ペプチドは、配列番号:87で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0197】
本出願において、前記CARは、N末端からC末端に向けてCLDN18.2タンパク質に結合する標的部分(例えば抗原結合タンパク質)、前記ヒンジ領域、前記膜貫通ドメイン、前記共刺激シグナル伝達領域および前記細胞内シグナル伝達領域を順に含み得る。例えば前記CARは、N末端からC末端に向けて前記scFv、CD8に由来するヒンジ領域、CD8に由来する膜貫通ドメイン、4-1BBに由来する共刺激シグナル領域、およびCD3ζに由来する細胞内シグナル伝達領域を順に含んでもよい。
【0198】
本出願において、前記CARまたは免疫エフェクター細胞を発現することができるベクターも含み、前記ベクターにおいて、CLDN18.2タンパク質に結合する標的部分(例えば前記抗原結合タンパク質)をコードする核酸分子、前記ヒンジ領域をコードする核酸分子、前記膜貫通ドメインをコードする核酸分子、前記共刺激シグナル領域をコードする核酸分子、前記細胞内シグナル伝達領域をコードする核酸分子および前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片をコードする核酸分子を順に含み得る。
【0199】
本出願において、前記CARまたは免疫エフェクター細胞を発現することができるベクターも含み、前記ベクターにおいて、CLDN18.2タンパク質に結合する標的部分(例えば前記抗原結合タンパク質)をコードする核酸分子、前記ヒンジ領域をコードする核酸分子、前記膜貫通ドメインをコードする核酸分子、前記共刺激シグナル領域をコードする核酸分子、前記細胞内シグナル伝達領域をコードする核酸分子、前記切断ペプチドをコードする核酸分子および前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片をコードする核酸分子を順に含み得る。
【0200】
ポリペプチド分子、免疫複合体、核酸分子、ベクター、細胞および医薬組成物
別の態様において、本出願は、本出願の単離された抗原結合タンパク質または本出願のキメラ抗原受容体を含み得るポリペプチド分子を提供する。
【0201】
本出願において、前記ポリペプチド分子は、融合タンパク質を含み得る。例えば本出願の単離された抗原結合タンパク質は、他の機能分子(例えば抗体または受容体リガンド)と融合して、二重特異性分子または多重特異性分子を形成することができる。前記二重特異性分子または多重特異性分子は、少なくとも2つの異なる結合部位あるいは標的分子に特異的に結合することができる。前記二重特異性分子または多重特異性分子は、遺伝子改変、体細胞ハイブリダイゼーション、もしくは化学的方法により調製することができる。詳細については、例えば非特許文献19および非特許文献20を参照されたい。
【0202】
別の態様において、本出願は、本出願の単離された抗原結合タンパク質を含み得る免疫複合体も提供する。
【0203】
本出願において、本出願の単離された抗原結合タンパク質またはその断片を化学療法剤、毒素、免疫療法剤、イメージングプローブ、分光プローブなどの別の試薬に連結することができる。該連結は、1つ以上の共有結合または非共有結合性相互作用によるものであり得、キレート作用を含み得る。複数種のリンカー(リンカーは、当技術分野で知られている)を使用して免疫複合体を形成することができる。なお、免疫複合体は、免疫複合体をコードするポリヌクレオチドから発現させることができる融合タンパク質の形態で提供することができる。前記免疫複合体は、例えば抗体-薬物複合体(ADC)を含んでもよい。ADCにおいて、ペプチドリンカー、ジスルフィドリンカー、あるいはヒドラゾンリンカーなどの切断可能なリンカーを介して抗体および治療薬を架橋することができる。
【0204】
別の態様において、本出願は、本出願の単離された抗原結合タンパク質または本出願のキメラ抗原受容体をコードし得る1種以上の核酸分子を提供する。例えば核酸分子は、(i)インビトロでの増幅、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅により産生されること、(ii)組換えクローニングにより産生されること、(iii)例えば酵素的切断およびゲル電気泳動分画によって精製されること、あるいは(iv)例えば化学合成によって合成されることといった方法で産生もしくは合成されることができる。
【0205】
本出願において、前記核酸分子は、配列番号:26、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31、配列番号:32および配列番号:33のいずれかで示される塩基配列を含み得る。
【0206】
本出願において、前記核酸分子は、以下の任意の群から選択される塩基配列を含み得、
1)配列番号26で示される塩基配列、および配列番号27で示される塩基配列、
2)配列番号30に示される塩基配列、および配列番号27で示される塩基配列、
3)配列番号28に示される塩基配列、および配列番号29で示される塩基配列、
4)配列番号31に示される塩基配列、および配列番号32で示される塩基配列、
5)配列番号31に示される塩基配列、および配列番号33で示される塩基配列。
【0207】
別の態様において、本出願は、本出願の核酸分子を含み得るベクターを提供する。なお、前記ベクターには適切な宿主細胞および適切な条件下での該ベクターの選択を可能にするマーカー遺伝子などの他の遺伝子を含めることもできる。また、前記ベクターは、適切な宿主におけるコード領域の適切な発現を可能にする発現制御エレメントも含み得る。このような制御エレメントは当業者にはよく知られ、例えばプロモーター、リボソーム結合部位、エンハンサー、および遺伝子転写またはmRNA翻訳などを調節する他の制御エレメントも含み得る。ベクターは、宿主細胞を形質転換、形質導入、またはトランスフェクトすることで、ベクターによって運ばれる遺伝物質エレメントを宿主細胞で発現させることができる。前記ベクターとしては、プラスミド、コスミド、ウイルス、ファージ、あるいは遺伝子工学で一般的に使用される他のベクターが挙げられる。例えばベクターは発現ベクターである。なお、前記ベクターは、例えばウイルス粒子、リポソーム、あるいはカプシドなどであるがこれらに限定されない、細胞への侵入を促進する成分を含んでもよい。
【0208】
別の態様において、本出願は、本出願の単離された抗原結合タンパク質、本出願のキメラ抗原受容体、本出願のポリペプチド分子、本出願の核酸分子または本出願のベクターを含み得る細胞を提供する。いくつかの実施形態において、各種または各々宿主細胞は、1つまたは1種の本出願の核酸分子あるいはベクターを含み得る。いくつかの実施形態において、各種または各々宿主細胞は、複数(例えば2つ以上)あるいは複数種(例えば2種以上)の本出願の核酸分子もしくはベクターを含み得る。例えば本出願のベクターを前記宿主細胞(植物由来の細胞、真菌あるいは酵母細胞などの真核細胞)に導入することができる。いくつかの実施形態において、前記細胞は、細菌細胞(例えば大腸菌)、酵母細胞あるいはその他の真核細胞であり得る。当技術分野で知られている方法により、本出願のベクターを前記宿主細胞に導入することができる。
【0209】
いくつかの実施形態において、前記細胞は、免疫エフェクター細胞であり得る。いくつかの実施形態において、前記細胞は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、マクロファージ、NKT細胞、単球、樹状細胞、顆粒球、リンパ球、白血球、末梢血単核球、胚性幹細胞、リンパ球前駆細胞および/または多能性幹細胞であり得る。
【0210】
いくつかの実施形態において、前記細胞は、T細胞であり得る。
【0211】
本出願において、前記細胞は、前記CARを含み、かつ/または発現し得る。本出願において、前記細胞は、前記CARおよび前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片を含み得、かつ/または発現し得る。
【0212】
別の態様において、本出願は、本出願の単離された抗原結合タンパク質、本出願のキメラ抗原受容体、本出願のポリペプチド分子、本出願の免疫複合体、本出願の核酸分子、本出願のベクターおよび/または本出願の細胞、および任意で薬学的に許容される担体を含み得る医薬組成物も提供する。
【0213】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、1種以上(薬学的に有効な)アジュバント、安定剤、賦形剤、希釈剤、可溶化剤、界面活性剤、乳化剤および/または防腐剤の適切な製剤を含み得る。組成物の許容される成分は、好ましくは使用される投与量および濃度でレシピエントに対して無毒である。本発明の医薬組成物には、液体、凍結および凍結乾燥の組成物が含まれるが、これらに限定されない。
【0214】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、1種以上の活性化合物、例えば一般的に互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有する活性化合物を含み得る。このような薬物のタイプおよび有効量は、例えば製剤中に存在するアンタゴニストの量およびタイプ、ならびに被験体の臨床パラメータに決め得る。
【0215】
いくつかの実施形態において、前記薬学的に許容される担体は、薬物投与に適合するあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、等張化剤および吸収遅延剤を含み得、一般的に安全で無毒である。
【0216】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、非経口、経皮、腔内、動脈内、くも膜下腔内および/または鼻腔内投与、あるいは組織への直接注射を含み得る。例えば前記薬学的組成物は、注入または注射を介して患者あるいは被験体に投与することができる。いくつかの実施形態において、前記医薬組成物の投与は、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所あるいは皮内投与などの異なる手段を介して行うことができる。いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、中断することなく投与することができる。特許文献6に記載されているように、患者の体内へ流入する治療薬を測定するために患者が装着する小さなポンプシステムによって、中断のない(または連続的な)投与を実現することができる。
【0217】
調製方法
別の態様において、本出願は、前記抗原結合タンパク質の調製方法を提供する。前記方法は、前記単離された抗原結合タンパク質が発現される条件下で、本出願に記載の細胞を培養することを含む。例えば適切な培地の使用、適切な温度および培養時間などを通じて実施でき、これらの方法は当業者には理解されている。
【0218】
モノクローナル抗体を産生するのに適した任意の方法は、本出願の抗原結合タンパク質を産生することができる。例えば結合したまたは天然に存在するCLDN18.2タンパク質またはその断片で動物を免疫することができる。アジュバント、免疫刺激剤、反復ブースター免疫を含む適切な免疫接種方法を使用することができ、1種以上の経路を使用することができる。
【0219】
任意の適切な形態のCLDN18.2は、免疫原(抗原)としてCLDN18.2に特異的な非ヒト抗体を産生し、前記抗体の生物学的活性をスクリーニングするために使用することができる。プライミング免疫原は、天然のホモ二量体を含む完全長の成熟ヒトCLDN18.2、あるいは単一/複数のエピトープ含有ペプチドであり得る。免疫原は、単独で、もしくは当技術分野で知られている1種以上の免疫増強剤と組み合わせて使用することができる。
【0220】
キメラヒト抗体は、IgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEを含む免疫グロブリンの任意の種類から選択されることができる。本出願において、抗体はIgG抗体であってもよく、IgG1サブタイプが使用されてもよい。以下の実施例に記載の生物学的アッセイを使用して抗体をスクリーニングすることによって、必要な定常ドメイン配列の最適化を実現して所望の生物学的活性を産生することができる。同様に、いずれのタイプの軽鎖も、本出願の化合物および方法で使用することができる。例えば本出願の化合物および方法において、κ鎖またはそのバリアントを使用することができる。
【0221】
方法および使用
別の態様において、本出願は、疾患および/または障害を予防、緩和および/または治療するための医薬品の調製における前記単離された抗原結合タンパク質、前記キメラ抗原受容体、前記ポリペプチド分子、前記免疫複合体、前記核酸分子、前記ベクター、前記細胞および/または前記医薬組成物の使用も提供する。
【0222】
別の態様において、本出願は、疾患および/または障害を予防、緩和および/または治療するための方法も提供し、前記方法は本出願の前記単離された抗原結合タンパク質、前記キメラ抗原受容体、前記ポリペプチド分子、前記免疫複合体、前記核酸分子、前記ベクター、前記細胞および/または前記医薬組成物を必要な被験体に投与することを含み得る。本出願において、前記投与は、静脈内、腫瘍内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所または皮内の投与などの異なる手段により実施され得る。
【0223】
別の態様において、本出願の前記単離された抗原結合タンパク質、前記キメラ抗原受容体、前記ポリペプチド分子、前記免疫複合体、前記核酸分子、前記ベクター、前記細胞および/または前記医薬組成物は、疾患および/または障害を予防、緩和および/または治療するために用いることができる。
【0224】
本出願において、前記疾病および/または障害には、癌が含まれ得る。
【0225】
本出願において、前記癌には、固形腫瘍および/または血液腫瘍が含まれ得る。
【0226】
本出願において、前記癌には、CLDN18.2陽性腫瘍が含まれ得る。
【0227】
本出願において、前記癌には、胃癌および/または結腸癌が含まれ得る。
【0228】
本出願において、前記単離された抗原結合タンパク質は、被験体における腫瘍の成長を効果的に抑制するため、1種以上の他の抗体と一緒に投与され得る。前記単離された抗原結合タンパク質は、化学療法剤とともに投与することもできる。
【0229】
別の態様において、本出願は、サンプル中のCLDN18.2を検出する方法も提供する。前記方法は、本出願の前記単離された抗原結合タンパク質、前記キメラ抗原受容体、前記ポリペプチド分子、前記免疫複合体、前記核酸分子、前記ベクター、前記細胞および/または前記医薬組成物を投与することを含む。前記方法は、エクスビボ法および/またはインビトロ法であり得る。
【0230】
別の態様において、本出願は、前記単離された抗原結合タンパク質、前記キメラ抗原受容体、前記ポリペプチド分子、前記免疫複合体、前記核酸分子、前記ベクター、前記細胞および/または前記医薬組成物を含み得る、サンプル中のCLDN18.2を検出するための試薬またはキットも提供する。
【0231】
別の態様において、本出願は、前記CLDN18.2を検出するための試薬またはキットの調製における前記単離された抗原結合タンパク質、前記キメラ抗原受容体、前記ポリペプチド分子、前記免疫複合体、前記核酸分子、前記ベクター、前記細胞および/または前記医薬組成物の使用も提供する。
【0232】
本出願において、前記試薬またはキットは、サンプル中のCLDN18.2の存在および/または含有量を検出するために用いられることができる。
【0233】
いかなる理論にも拘束されることなく、以下の実施例は本出願の抗原結合タンパク質、調製方法及び使用などを説明するためのものであって、本出願の発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0234】
(実施例1 CLDN18.1およびCLDN18.2陽性対照抗体の調製)
CLDN18.1陽性対照抗体は、市販の抗CLDN18ウサギモノクローナル抗体(abcam,Cat#ab203563)を選択し、該抗体はCLDN18.1およびCLDN18.2を同時に識別でき、抗原結合部位は細胞内にある。本出願において、この抗体をCLDN18.1陽性対照抗体とし、抗CLDN18抗体(Anti-Claudin18 antibody)と名付けた。
【0235】
特許文献7により提供される175D10クローン(IMAB362)抗体重鎖・軽鎖の全長アミノ酸配列(例えば配列番号:81および配列番号:82で示されるアミノ酸配列)に従い蘇州金唯智生物科技有限公司に従来の遺伝子合成を依頼し、当社が提供する真核生物用発現ベクターpCMV-k、pCMV-IgG1(NDL)にクローニングし、pCMV-IMAB362-VLおよびpCMV-IMAB362-VHを含むプラスミドを構築し、以上の2つのベクタープラスミドを、一過性発現のため3:2(VL:VH)の比率でExpi293細胞に同時トランスフェクトし、5日後、細胞培養上清を回収し、Protein Aアフィニティークロマトグラフィーで精製し、BCAを定量してCLDN18.2陽性対照抗体を得、ゾルベツキシマブと名付けた。
【0236】
(実施例2 CLDN18.1およびCLDN18.2を安定かつ高発現する細胞株の構築)
表1に示すヒトCLDN18.1、ヒトCLDN18.2、マウスCLDN18.1、マウスCLDN18.2、カニクイザルCLDN18.1、カニクイザルCLDN18.2の塩基配列に従い、蘇州金唯智生物科技有限公司に従来の遺伝子合成を依頼し、当社が提供するレンチウイルス発現ベクターpHAGE-full EF1a-IzsGreenにクローニングし、得られたプラスミドを含む穿刺細菌を活性化した後、プラスミド抽出を行った後、当社のレンチウイルスパッケージングおよび感染システムを用いて、293T細胞、CHO、SP2/0細胞にレンチウイルスを感染させ、感染後に得られた細胞をFACSで感染効率を検出した後、勾配希釈法で細胞を勾配希釈法でモノクローナル化し、FACS選別により検証して、CLDN18.1およびCLDN18.2を安定かつ高発現するモノクローナル細胞株を得た。
【0237】
【0238】
CLDN18.2を安定かつ高発現する細胞株のFACS検証のため、30,000個のトランスフェクト細胞をV字型96ウェルプレートに播種し、陽性抗体ゾルベツキシマブを添加し、PBS陰性対照ウェルを設け、4℃で1時間インキュベートした後、96ウェルプレートをFACSバッファーで 1回洗浄し、二次抗体(ヤギF(ab’)2抗ヒトIgG-Fc(DyLight(登録商標)650)(abcam,Cat#ab98593))を加え、4℃で30分間インキュベートした後、96ウェルプレートをFACSバッファーで2回洗浄し、その後、iQue Screenerフローサイトメーター(IntelliCyt社から購入)で細胞の蛍光強度をモニタリングし、増殖のために最も高いMFI値を持つモノクローナル細胞を選択しまし、培養を拡大して凍結保存した。
【0239】
CLDN18.1を安定かつ高発現する細胞株のFACS検証のため、細胞を2つの処理方法に分け、1つは、細胞を計数した後、FACSバッファーで直接再懸濁してウェルプレートにプレーティングする方法で、一次抗体は実施例1で提供されるCLDN18.2陽性抗体ゾルベツキシマブである。もう一つの方法は、細胞計数後に固定化および膜破壊処理(固定液FXP008および膜破壊剤FXP009、四正柏生物社製)を行うことで、抗体が細胞内にある抗原部位に結合できるようにする。一次抗体は実施例1で提供される市販のCLDN18抗体であり、同時に機器にセットして測定し、市販のCLDN18抗体に強く結合するがゾルベツキシマブには結合しないモノクローナル細胞を選択して培養を拡大して凍結保存した。
【0240】
構築されたCLDN18を安定かつ高発現する細胞株は、それぞれ293T-ヒトCLDN18.1(293T-human CLDN18.1)、293T-ヒトCLDN18.2(293T-human CLDN18.2)、CHO-ヒトCLDN18.1(CHO-human CLDN18.1)、CHO-ヒトCLDN18.2(CHO-human CLDN18.2)、SP2/0-ヒトCLDN18.1(SP2/0-human CLDN18.1)、SP2/0-ヒトCLDN18.2(SP2/0-human CLDN18.2)、293T-マウスCLDN18.1(293T-mouseCLDN18.1)、293T-マウスCLDN18.2(293T-mouseCLDN18.2)、293T-カニクイザルCLDN18.1(293T-macacaCLDN18.1)、293T-カニクイザルCLDN18.2(293T-macacaCLDN18.2)として標識され、どちらもモノクローナル安定細胞株である。
【0241】
(実施例3 CLDN18.2マウス抗原結合タンパク質の生成)
1.マウス免疫
ヒトCLDN18.2の第一細胞外セグメントの全長塩基配列を用いて、蘇州金唯智生物科技有限公司に従来の遺伝子合成を依頼し、当社が提供する真核生物用発現ベクターにクローニングし、構築されたプラスミドはpCMV-CLDN18.2-D1であり、得られた穿刺細菌液からプラスミド抽出を行ってDNA免疫原を得た。細胞免疫原は、実施例2で構築したSP2/0-ヒトCLDN18.2細胞であった。この実験では、合計9匹のBalb/cマウスを免疫化し、うち6匹のマウスは細胞抗原とDNA抗原の組み合わせで免疫化され、他の3匹のマウスは全細胞免疫化で免疫化され、古典的なマウスの免疫化スケジュールを用い、2回の免疫後、マウス血清を回収し、293TヒトCLDN18.2細胞を使用してFACSによる血清力価を測定し、力価要件を満たすマウスを最後の追加免疫に選択した。力価が要件を満たさない場合、血清力価が要件を満たすまで免疫を1~2回増やす必要があり、最後の免疫から3日後に、滅菌条件下でマウスの脾臓組織を収集して脾臓細胞を粉砕して懸濁液にし、脾臓細胞の赤血球溶血処理を施して、脾細胞を溶解し、その後小分けして-80℃の冷蔵庫で冷凍して用意しておく。
【0242】
2.ハイブリドーマ細胞融合
マウスミエローマ細胞SP2/0を予め蘇生させ、10%ウシ胎児血清を含むDMEM培地を用いて37℃、5%CO2条件下で培養、継代した。融合当日、PEG 1450溶液(Solution)(Sigma Aldrich、Cat#25322-68-3)と高グルコースDMEM培地を予め37℃の水浴で予熱した。SP2/0細胞の状態を顕微鏡で観察し、細胞は対数増殖期にあるのが最適であり、400gで5分間遠心分離してSP2/0細胞を回収し、適量の予熱したDMEM培地に再懸濁してトリパンブルーで計数し、細胞生存率が90%以上である必要があり、その後37℃の水浴に入れて用意しておく。マウス脾細胞を37℃の水浴中で蘇生させ、予熱したDMEM 20mlで洗浄し、400gで5分間遠心分離し、上清を捨て、予熱したDMEM 25mlを加えて細胞を再懸濁し、一定の比率に希釈し、血球計数器で計数する。 細胞数比(脾臓細胞:SP2/0=4:1)に従い混合し、400g、5分間で遠心分離し、上清を捨てた。予熱したPEG1450溶液1mLをゆっくりと加えて細胞融合を実施した。総量1×107個の脾臓細胞を各96ウェルプレートにプレーティングし、培地には10%FBS、1%二重抗体、2%HATサプリメント(Supplement)および10%ClonaCellTM-HY Medium C(STEMCELL,CAT#:03803)の高グルコースDMEM培地であった。測定前日に培地交換を行い、交換後の培地は10%FBS、1%二重抗体、1%HTサプリメント(Supplement)を含む高グルコースDMEM培地で、24時間後の96ウェルプレートの細胞培養上清をとってフローサイトメトリー検出を実施した。
【0243】
3.ハイブリドーマ細胞のフローサイトメトリースクリーニング
実施例2で構築した293T-ヒトCLDN18.2細胞およびCHO-ヒトCLDN18.2細胞を選択して融合後に得られた母クローンハイブリドーマ細胞の第1ラウンドのフローサイトメトリー初期スクリーニングを実施し、すなわち、細胞を別々に消化や計数し、フローサイトメトリー染色バッファー(0.1%BSAを含むPBS)に再懸濁し、1×106/mlの細胞密度に調整し、96ウェルV底プレートに30μl/ウェルを添加し、ハイブリドーマ細胞培養上清50μl/ウェルを、細胞抗原をプレーティングした96ウェルV底プレートに加え、同時に陽性対照(5μg/mlのゾルベツキシマブ抗体、30μl/ウェル)および陰性対照(30μl/ウェルのPBSバッファー)を設け、4℃で1時間共インキュベートし、フローサイトメトリー染色バッファーで1回洗浄し、対応する二次抗体を30μl/ウェルで添加し、4℃で30分間共インキュベートし、フローサイトメトリー染色バッファーを加えて2回洗浄し、細胞を振盪して分散させ、各ウェルに25μlのFACSバッファーを加え、機器にセットして検出を行った(iQue Screenerフローサイトメーター、IntelliCyt社製)。初期スクリーニングでCLDN18.2陽性を示す母クローンを選択し、24ウェル細胞培養プレートへ培養を拡大し、3日後に細胞上清を採取し、FACS再スクリーニングを行ってCHO-ヒトCLDN18.2、CHO-ヒト CLDN18.1および293T-ヒトCLDN18.2、293T-ヒトCLDN18.1の4種類の細胞を選択して別々にプレーティングし、その中からCLDN18.2陽性およびCLDN18.1陰性のハイブリドーマ母クローンをスクリーニングした。陽性ハイブリドーマ母クローンを勾配希釈法でモノクローニングし、2~3ラウンドのサブクローニングとFACS選別を経て、CLDN18.2特異的抗体を分泌するハイブリドーマモノクローナル細胞が得られ、293T-ヒトCLDN18.2細胞およびCHO-ヒトCLDN18.2細胞とは陽性結合を生成できるが、293T-ヒトCLDN18.1、CHO-ヒトCLDN18.1細胞とは陰性結合を生成する。
【0244】
結果を表2に示す。ハイブリドーマ細胞培養上清中のCLDN18.2への結合について陽性であったサブクローンには、3A6、7E3、5E6、14E12および17B10、合計5株のモノクローナル細胞が含まれる。
【0245】
【0246】
(実施例4 CLDN18.2マウス抗原結合タンパク質の可変領域のシーケンシング)
縮重プライマー増幅法を用いてシーケンシングしてCLDN18.2マウス抗原結合タンパク質の重鎖可変領域および軽鎖可変領域の配列を得た。使用したプライマーは非特許文献21を参照し、蘇州金唯智会社にプライマー合成を依頼した。具体的には、実施例3の5個のCLDN18.2陽性ハイブリドーマモノクローナル細胞を回収し、QIAGEN RNeasy Plus Mini Kitを使用して全細胞RNAを抽出し、1%アガロースゲル電気泳動によりRNAの完全性を検出し、NanoDrop核酸定量分析装置でRNA濃度を測定した。RNA逆転写キットで1ugのRNAを cDNAに逆転写し、-20℃で保存して用意しておく。5μlのcDNAをテンプレートとして使用し、PCR高忠実度酵素(北京泉石金社製、AP231)の操作説明に従いPCR反応系を構成し、PCR手順を設定し、アニーリング温度は勾配降下法を用い、直接第1ラウンドPCR産物1ulをテンプレートとして第2ラウンドPCRを行い、PCRの反応系および手順は上記と同じである。第2ラウンドPCR産物はすべて1%アガロースゲル電気泳動用にサンプルをロードし、適切なサイズの特定の目的に適したバンドを切り出し、ゲル回収を実施し、平滑末端クローニングベクター(北京全式金社製、CB501)を連結し、Trans1-T1コンピテントセルを形質転換し、2YTプレートに塗布し、37℃のインキュベーターで逆さにして12~16時間インキュベートし、超クリーンの作業台でピペットチップを使用してシングルクローンコロニーを選択し、コロニーが活性化された後、蘇州金唯智会社にシーケンシングを依頼した。シーケンシング後、表3に示すように、5株のハイブリドーマクローンのVHおよびVL遺伝子配列が得られた。
【0247】
【0248】
(実施例5 CLDN18.2抗原結合タンパク質の調製)
実施例4でシーケンシングして得られた5つの重鎖・軽鎖可変領域配列をテンプレートとしてプライマーをそれぞれ設計し、蘇州金唯智生物科技有限公司にプライマー合成を依頼し、高忠実度酵素を使用してPCR増幅、アガロースゲル電気泳動およびゲル回収を行い、回収して得られたプラスミドDNAを、ヒトIgG1定常領域を含み酵素で切断した真核生物発現ベクター(pCMV-IgG1NDLおよびpCMV-κ)に相同組換え(Vazyme、C112)し、蘇州金唯智生物科技有限公司に正しいポジティブ組換えベクターをシーケンシングして同定するよう依頼した。シーケンシングが正しい後、プラスミドを抽出し、重鎖と軽鎖がExpi293細胞に同時トランスフェクトされ、5日後遠心分離して細胞培養上清を回収して、ProteinAアフィニティークロマトグラフィーで精製し、完全なヒトおよびマウスIgG1、Igκ抗原結合タンパク質が得られた。 これらの5つの抗原結合タンパク質は、それぞれc5E6、c7E3、c3A6、c14E12、c17B10と名付けられた。
【0249】
(実施例6 CLDN18.2抗原結合タンパク質およびCLDN18.2の特異的結合活性の測定)
蛍光活性化細胞選別技術(FACS)により、iQue Screenerフローサイトメーター(IntelliCyt社から購入)を使用し、バッファーとして0.1%BSAを含むPBSを用いて上記キメラ抗体の標的細胞に対する特異的結合活性を検出し、ヒトCLDN18.2発現の安定な形質転換細胞株、ヒトCLDN18.1発現の安定な形質転換細胞株、および腫瘍細胞系の3つの標的細胞を選択して、結合活性をそれぞれ測定した。
【0250】
1.実施例5の抗原結合タンパク質と高発現ヒトCLDN18.2細胞のフローサイトメトリーによる結合活性検出
細胞は、実施例2で構築した293T-ヒトCLDN18.2、CHO-ヒトCLDN18.2、およびSP2/0-ヒトCLDN18.2細胞であった。細胞を消化して計数し、細胞をフローサイトメトリー染色バッファーに再懸濁し、1×10
6/mlの細胞密度に調整し、96ウェルV底プレートに30μl/ウェルを添加した。一次抗体を30μl/ウェルで添加し、抗体を開始濃度30μg/mlからフローサイトメトリー染色バッファーで2倍または3倍の勾配で希釈して7つの濃度勾配を形成し、各抗体について、PBS陰性対照を設け、陽性対照抗体は実施例1で精製して得られたゾルベツキシマブであり、4℃で1時間インキュベートし、フローサイトメトリー染色バッファーで1回洗浄し、二次抗体(abcam,Cat#ab98593)を30μl/ウェル加え、4℃で30分間インキュベートし、フローサイトメトリー染色バッファーで2回洗浄し、細胞を振盪して分散させ、各ウェルに25μlのフローサイトメトリー染色バッファーを加え、機器にセットするまで待機した。元のデータをGraphPad8.0ソフトウェアに代入してグラフ化および計算した結果を
図1に示す。
【0251】
2.実施例5の抗原結合タンパク質と高発現ヒトCLDN18.1細胞のフローサイトメトリーによる結合活性検出
陽性対照抗体は、市販の抗CLDN18抗体(Anti-Claudin18 antibody)(abcam,Cat#ab203563)であり、抗原結合部位はCLDN18.2 4回膜貫通タンパク質の細胞内部分に位置し、フローサイトメトリーによる細胞内染色分析が必要である。具体的には、細胞は、実施例1で構築した293T-ヒトCLDN18.1細胞およびSP2/0-ヒトCLDN18.1細胞であった。細胞消化や計数後、細胞を固定化し、膜破壊処理を施し、処理後の細胞をフローサイトメトリー染色バッファーに1×10
6/mlになるように再懸濁し、96ウェルV底プレートに30μl/ウェルを添加した。一次抗体を30μl/ウェルで添加し、抗体を開始濃度30μg/mlからフローサイトメトリー染色バッファーで3倍の勾配で希釈して7つの濃度勾配を形成し、各抗体について、PBS陰性対照を設け、陽性対照抗体の希釈条件は上記と同じである。4℃で1時間インキュベートし、フローサイトメトリー染色バッファーで1回洗浄し、二次抗体(abcam,Cat#ab98593およびCat#ab150079)を30μl/ウェル加え、4℃で30分間インキュベートし、フローサイトメトリー染色バッファーで2回洗浄し、細胞を振盪して分散させ、各ウェルに25μlのフローサイトメトリー染色バッファーを加え、機器にセットするまで待機した。元のデータをGraphPad8.0ソフトウェアに代入してグラフ化および計算した結果を
図2に示す。
【0252】
3.実施例5における抗原結合タンパク質および腫瘍細胞系のフローサイトメトリーによる結合活性検出
実施例2に示した方法に従い構築したヒトCLDN18.2を安定かつ高発現するMC38-ヒトCLDN18.2腫瘍細胞を標的細胞として選択し、細胞を消化して計数し、フローサイトメトリー染色バッファーに再懸濁し、1×10
6/mlに調整し、96ウェルV底プレートに30μl/ウェルを添加した。一次抗体を30μl/ウェルで添加し、抗体を開始濃度30μg/mlからフローサイトメトリー染色バッファーで3倍の勾配で希釈して7つの濃度勾配を形成し、各抗体について、PBS陰性対照を設け、陽性対照抗体は実施例1で精製したゾルベツキシマブであり、希釈条件は上記と同じである。4℃で1時間インキュベートし、フローサイトメトリー染色バッファーで1回洗浄し、二次抗体(abcam,Cat#ab98593)を30μl/ウェル加え、4℃で30分間インキュベートし、フローサイトメトリー染色バッファーで2回洗浄し、細胞を振盪して分散させ、各ウェルに25μlフローサイトメトリー染色バッファーを加え、機器にセットするまで待機した。元のデータをGraphPad8.0ソフトウェアに代入してグラフ化および計算した結果を
図3に示す。
【0253】
上記の手順により、5種類のヒトおよびマウスの抗原結合タンパク質を発現・精製し、フローサイトメトリーで抗原結合活性を検証した。
図1に示すように、5種類の抗原結合タンパク質はいずれもヒトCLDN18.2に対して濃度依存的な結合活性を示し、大部分がゾルベツキシマブ陽性抗体よりも強力であり、3種類の細胞の検出結果は一致した。
図2に示すように5種類の抗原結合タンパク質は、いずれもヒトCLDN18.2に特異的に結合できるが、ヒトCLDN18.1に結合しなかった。
図3に示すように5種類の抗原結合タンパク質は、いずれもヒトCLDN18.2を安定かつ高発現するマウス結腸癌MC38細胞に強く結合し、結合活性の強さは濃度依存性を示し、一部はゾルベツキシマブ陽性抗体よりも強力であった。
【0254】
(実施例7 CLDN18.2抗原結合タンパク質の種交差結合活性の解析)
蛍光活性化細胞選別技術(FACS)により、CytoFLEXフローサイトメーター(BECKMAN COULTER社から購入)を使用し、バッファーとして0.1%BSAを含むPBSを使用して、上記抗原結合タンパク質とマウス(mouseCLDN18.2)、カニクイザル(macacaCLDN18.2)の種交差結合活性を検出した。具体的には、293TマウスCLDN18.2細胞および293TカニクイザルCLDN18.2細胞は、実施例2で構築された安定な形質転換細胞株であり、細胞を消化して計数し、1×10
6/mlの細胞密度までフローサイトメトリー染色バッファーに再懸濁し、96ウェルV底プレートに30μl/ウェルを添加した。一次抗体を開始濃度10μg/mlからフローサイトメトリー染色バッファーで3倍に勾配希釈し、6つの濃度勾配を形成した。各抗体についてPBS陰性対照を設け、陽性対照はゾルベツキシマブであり、希釈条件は上記と同じである。4℃で1時間インキュベートし、フローサイトメトリー染色バッファーで1回洗浄し、二次抗体(abcam,Cat#ab98593)を30μl/ウェル加え、4℃で30分間インキュベートし、フローサイトメトリー染色バッファーで2回洗浄し、細胞を振盪して分散させ、各ウェルに30μlフローサイトメトリー染色バッファーを加え、機器にセットして測定した。元のデータをGraphPad8.0ソフトウェアに代入してグラフ化および計算した結果を
図4に示す。5種類のCLDN18.2キメラ抗原結合タンパク質と陽性対照抗体ゾルベツキシマブは、どちらもマウス(mouseCLDN18.2)およびカニクイザル(macacaCLDN18.2)に結合し、結合活性は勾配依存性を示す。これは、これら5種類のキメラ抗原結合タンパク質およびゾルベツキシマブがヒトはヒトCLDN18.2(humanCLDN18.2)に特異的に結合するだけでなく、ヒト、マウス、およびカニクイザルにおいて種交差の結合活性も有することを示している。
【0255】
(実施例8 CLDN18.2抗原結合タンパク質のCDC活性)
使用細胞毒性検出キット(Promega,Cat#G1780)でSP2/0-ヒトCLDN18.2細胞に対するCDC効果を誘導するCLDN18.2抗原結合タンパク質の能力を検出し、具体的なプロセスは次の通りであり、
(1)培地を調製(A:DMEM+2%FBS+1%二重抗体、B:DMEM+2%FBS+1%二重抗体+10%ウサギ補体)し、
(2)標的細胞SP2/0-ヒトCLDN18.2を400gで5分間遠心分離し、次いで、標的細胞密度が4×105細胞/mlとなるように細胞を上記培地Aに再懸濁し、96ウェル細胞培養プレートに100μl/ウェルを添加し、
(3)抗体を上記培地Bで10ug/ml、2ug/ml、および0.4ug/mlの3つの濃度に希釈し、100μl/ウェルを検出ウェルに添加し、各濃度点で2つの重複ウェルを設け、ゾルベツキシマブを陽性対照抗体、ヒトIgG-Fcを陰性対照とし、
(4)補体は、PelFreez Bio社から購入したRabbit Complent 3~4週(Cat#31061-3)で、実験で使用した補体の最終濃度は5%であり、
(5)キットの要件に従いコントロールウェルを設け、得られた混合物を37℃のインキュベーターで4時間共インキュベートした後、マイクロプレートリーダーで490nMの吸光度値を記録し、キットから与えられる計算式で標的細胞の溶解率を計算し、GraphPad prism 8でデータを分析・処理した。
【0256】
結果は
図5aに示され、SP2/0-ヒトCLDN18.2細胞を殺傷標的細胞とした場合、検出した全ての抗原結合タンパク質は、用量依存的に強力なCDC効果を誘導でき、すなわち、有意なCDC活性を有し、特にc5E6、c7E3、およびc17B10はゾルベツキシマブよりも高いCDC活性を示した。
【0257】
ヒトCLDN18.2を安定かつ過剰発現するCHO細胞に対してCDC効果を誘導するc5E6抗原結合タンパク質の能力についてさらに検出した。簡単に言えば、CHO-ヒトCLDN18.2 細胞は実施例1に示したように当社のレンチウイルストランスフェクションシステムにより構築されて得られ、操作方法は上記と同じ、ウェルあたり1.2×104個の細胞密度でプレーティングし、ウサギ補体の最終濃度は5%、抗原結合タンパク質を5倍の勾配、すなわち10ug/ml、2ug/ml、0.4ug/ml、0.08ug/ml、0.016ug/ml、0.0032ug/ml、0.64ng/mlで希釈し、各濃度に2つの重複ウェルを設け、ゾルベツキシマブを陽性対照抗体、ヒトIgG-Fcをアイソタイプコントロール抗体とし、4時間の共インキュベーション後の吸光度値をマイクロプレートリーダーで測定し、標的細胞の溶解率を計算し、GraphPad prism 8でデータを分析・処理した。
【0258】
結果は
図5bに示され、c5E6抗原結合タンパク質はCHO-ヒトCLDN18.2細胞に対して用量依存的に強力なCDC効果を誘導することができ、ゾルベツキシマブよりも高いCDC活性を示している。
【0259】
(実施例9 CLDN18.2抗原結合タンパク質の競合結合活性解析)
ビオチン(EZ-Link Sulfo-NHS-LC-Biotin,Thermo,A39257)でc5E6およびゾルベツキシマブを標識し、各々500ug標識し、ビオチン化抗原結合タンパク質分子は、分子相互作用分析装置OctetRED384(sartorius)で標識効果を測定し、抗体を固化させるため、SAセンサーを選択し、抗体濃度は100nM、標識時間は180秒で、標識されたビオチン化抗原結合タンパク質は、ビオチン化-c5E6(Biotinyrated-c5E6)、ビオチン化-c7E3(Biotinylated-c7E3)、ビオチン化-c17B10(Biotinylated-c17B10)、ビオチン化-ゾルベツキシマブ(Biotinylated-ゾルベツキシマブ)と名付けられた。
【0260】
蛍光活性化細胞選別技術(FACS)により、iQue Screenerフローサイトメーター(IntelliCyt社から購入)を使用し、バッファーとして0.1%BSAを含むPBSで上記抗原結合タンパク質およびCHO-ヒトCLDN18.2細胞(実施例2で得られた)のエピトープ競合結合活性を検出し、具体的なプロセスは以下の通りであり、
(1)バッファーを使用してCHO-ヒトCLDN18.2細胞を1×106 細胞/mlの濃度で調製し、96ウェルV底プレート(corning 3894)の各ウェルに30μlを加え、
(2)ビオチン化-c5E6(Biotinylated-c5E6)抗原結合タンパク質の最終濃度が0.5μg/mlとなるように、試験対象となる抗原結合タンパク質をそれぞれバッファーで調製し、30μl/ウェルを96ウェルV底プレートに加え、ビオチン化-ゾルベツキシマブ(Biotinylated-zolbetuximab)抗原結合タンパク質の最終濃度は5μg/mlで、30μl/ウェルを96ウェルV底プレートに添加し、
(3)バッファーで競合抗原結合タンパク質(c5E6、c7E3、c17B10 およびゾルベツキシマブ)を調製し、抗体の最終濃度は333ug/mlから始まり、抗体を4倍の勾配で希釈して10つの濃度勾配を形成し、PBSを陰性対照ウェルとして設け、調製した異なる濃度の抗体を、標的細胞と試験対象となる抗体をプレーティングした96ウェルV底プレートに30μl/ウェルで添加し、よく混合し、
(4)4℃の冷蔵庫で1時間インキュベートし、
(5)各ウェルに110μlのバッファーを加え、500gで5分間遠心分離し、上清を捨て、細胞を振盪して分散させ、
(6)工程(5)を繰り返し、
(7)バッファーで蛍光二次抗体(BD phamingen APC Streptavidin、Cat#554067)を1:500の配合比で調製し、ウェルあたり30μlを細胞に加え、よく混合し、4℃の冷蔵庫で30分間インキュベートし、
(8)各ウェルに170μlのバッファーを加え、500gで5分間遠心分離し、上清を捨て、細胞を振盪して分散させ、
(9)工程(8)を繰り返し、
(10)25μlのバッファーを各ウェルに加え、よく混合した後、フローサイトメーターで検出した。
【0261】
フローサイトメトリーエピトープ競合結合活性検出の解析結果を
図6に示す。本出願の単離された抗原結合タンパク質c17B10/c7E3とビオチン化-c5E6(Biotinyrated-c5E6)はどちらも競合があり、c17B10/c7E3抗原結合タンパク質は、高濃度(333ug/ml)でビオチン化-c5E6(Biotinylated-c5E6)と細胞抗原の結合について完全に競合し、これらは同じ抗原結合エピトープであると推測された。対照的に、ゾルベツキシマブとビオチン化-c5E6(Biotinylated-c5E6)との間には弱い競合があり、ゾルベツキシマブ抗体濃度が増加するとともに、シグナル中央値は減少し、一定の濃度依存性を示すが、ゾルベツキシマブ抗体濃度を333ug/mlに引き上げても競合活性と強度は他の抗原結合タンパク質に比べてはるかに弱く、ビオチン化-c5E6(Biotinylated-c5E6)抗原結合タンパク質と完全に競合することはできず、ゾルベツキシマブとc5E6の抗原結合エピトープは完全に同一ではなく、交差または包含(ゾルベツキシマブ抗体のエピトープはc5E6に含まれている)関係を示していると推測された。
【0262】
(実施例10 CLDN18.2抗原結合タンパク質のインビボ抗腫瘍活性)
実施例5の抗原結合タンパク質(c5E6、c7E3、c17B10)、陽性対照抗体ゾルベツキシマブ、およびアイソタイプコントロール抗体ヒトIgG-Fcを選択して、マウス結腸癌細胞を接種したC57BL/6マウスのインビボ抗腫瘍活性を測定した。当社のExpi293一過性トランスフェクションシステムを用いて精製して上記6種類の抗原結合タンパク質が得られ、抗原結合タンパク質のエンドトキシンは4EU/mg以下に制御された。具体的な実施スキームは以下の通りである。
【0263】
115匹の雌C57BL/6マウスの右腹部にMC38ヒトCLDN18.2細胞を皮下接種し、接種細胞量は1.1×106で、接種7日後に腫瘍サイズは31.33~116.31mm3(平均腫瘍サイズは71.59mm3)の80匹のマウスを選択して腫瘍体積に応じて各群8匹ずつ10群に分け、マウスをランダムに群分けした日をDay0と定義した。群分け後、マウスの尾静脈に週1回、4週間連続投与し、用量を30mg/kgと7.5mg/kgの2群に分け、マウスの群分けと投与計画を表4に示す。投与期間中、週に体重および腫瘍サイズを3回測定し、下式で腫瘍体積を計算し、腫瘍サイズで腫瘍成長抑制率(TGI)およびT/Cを計算した。腫瘍体積が2000mm3に達したとき、実験を中止し、マウスを安楽死させた。
【0264】
[数1]
TV=(長さ×幅2)/2
【0265】
【0266】
皮下MC38-ヒトCLDN18.2マウス結腸癌モデルを介して尾静脈経路から投与されたゾルベツキシマブ、c17B10、c5E6、およびc7E3の抗腫瘍効果を雌C57BL/6マウスの中で評価した。結果は、MC38-ヒトCLDN18.2荷瘤C57BL/6マウスでは、すべての投与されたマウスは忍容性が良好で、体重は副作用なく安定したままであることを示した。マウスの体重の変化と相対変化(%)をそれぞれ
図7および
図8に示す。17日目以前の腫瘍体積変化曲線および腫瘍成長抑制曲線を解析したところ、PBS対照群と比較して、c5E6およびゾルベツキシマブ高用量投与群はより良好な抗腫瘍効果を示し、抗腫瘍効果には有意差が示され(****、P<0.0001)、
図9および
図10に示す。40日目以前のカプランマイヤー生存曲線を解析したところ、PBS対照群と比較して、c5E6低用量投与群、c5E6高用量投与群、およびゾルベツキシマブ高用量投与群はいずれもマウス生存率が高く、有意差(*、P<0.05)を示し、その中でc5E6抗原結合タンパク質が最も強い抗腫瘍活性を持ち、結果を
図11に示す。
【0267】
(実施例11 CLDN18.2一本鎖抗体の産生および抗原結合活性の同定)
本実施例は、レンチウイルス感染および蛍光活性化セルソーティングを用いてヒトCLDN18.2を安定に発現する細胞、すなわちSP2/0-hCLDN18.2細胞を得た。Balb/cマウスで細胞性免疫を実施し、免疫原はSP2/0-hCLDN18.2細胞であり、マウスハイブリドーマ技術、フローサイトメトリースクリーニングとサブクローニングを使用してCLDN18.2陽性モノクローナル細胞を得、インビトロ培養でIgG種類のCLDN18.2マウスモノクローナル抗体を得た。縮重プライマー増幅法によりシーケンシングして重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)の配列を得、合成リンカーペプチド(Linker)遺伝子を介して抗体の重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)を組換え遺伝子に結合し、該組換え遺伝子により発現される抗体がCLDN18.2一本鎖抗体、すなわち5E6-scFv(配列番号:90)である。レンチウイルス感染と蛍光活性化セルソーティングを同時に行い、ヒトCLDN18.1を安定に発現するSP2/0-hCLDN18.1細胞を得た。
【0268】
フローサイトメトリー方法による5E6-scFv一本鎖抗体および標準抗体(VHは配列番号:92で示されるアミノ酸配列を含み、VLは配列番号:93で示されるアミノ酸配列を含む)の特異的結合活性の同定:SP2/0-hCLDN18.2細胞を計数し、細胞をフローサイトメトリー染色バッファーに再懸濁して、1×10
6/mlに調整し、30μl/ウェルを96ウェルV底プレートに添加した。一次抗体を30μl/ウェルで添加し、一次抗体を使用濃度80μg/mlからフローサイトメトリー染色バッファーを使用して4倍の勾配で希釈して7つの濃度勾配を形成し、各抗体について、PBS陰性対照を設けた。4℃で1時間インキュベートし、フローサイトメトリー染色バッファーで1回洗浄し、二次抗体:ヤギF(ab’)2抗ヒトIgG-Fc(DyLight(登録商標)650)(abcam,Cat#ab98593)を30μl/ウェルで添加し、4℃で30分間インキュベートし、フローサイトメトリー染色バッファーで2回洗浄し、細胞を振盪して分散させ、フローサイトメトリー染色バッファーを25μl/ウェルで添加し、機械にセットするのを待つ。同時に、SP2/0-hCLDN18.1細胞を計数してプレーティングし、一次抗体を使用濃度10ug/mlから3倍の勾配で希釈して5つの濃度勾配を形成し、二次抗体はヤギF(ab’)2抗ヒトIgG-Fc(DyLight(登録商標) 650)(abcam,Cat#ab98593)であり、元のデータをGraphPad8.0ソフトウェアに代入してグラフ化および計算し、標準抗体と同様に、5E6-scFv一本鎖抗体はヒトCLDN18.2に特異的に結合できるという結果を
図12に示す。
【0269】
(実施例12 CLDN18.2一本鎖抗体の非標的細胞に対する結合活性の同定)
本実施例は、蛍光活性化細胞選別技術(FACS)で5E6-scFv一本鎖抗体のヒト組織内の様々な非標的細胞に対する結合活性を同定した。細胞は、それぞれヒト包皮線維芽細胞(HFF)、ヒト不死化表皮角化細胞(HaCaT)、ヒト正常肝細胞(LO2)、間葉系幹細胞(MSC)、正常ヒト表皮角化細胞(KERA)、ヒト肺胞基底上皮腺癌細胞(A549)、ヒト乳癌細胞(MCF-7)、ヒト皮膚線維芽細胞(BJ)であった。抗体を使用濃度30ug/mlから3倍の勾配で希釈して7つの濃度勾配を形成し、二次抗体はヤギF(ab’)2抗ヒトIgG-Fc(DyLight(登録商標)650)(abcam、Cat#ab98593)であり、インキュベーション後に遠心分離し、フローサイトメトリー染色バッファーに再懸濁して機器にセットし、結果をGraphPad8.0ソフトウェアに代入してグラフ化した。5E6-scFv一本鎖抗体はヒト組織内の様々な非標的細胞に対して非特異的結合を示さず、標準抗体と同様に腫瘍標的に対する特異性が初期検証され、すなわち「オフターゲット効果」現象はないという結果を
図13に示す。
【0270】
(実施例13 ヒト胃癌マウスモデルにおけるCLDN18.2抗原結合タンパク質の抗腫瘍活性)
実施例10のように、ヒトCLDN18.2抗原結合タンパク質(c5E6)、陽性対照抗体ゾルベツキシマブおよびアイソタイプコントロール抗体ヒトIgG-Fcを選択して、ヒト胃がん細胞(NUGC-4)を接種された雌ヌードマウスのインビボ抗腫瘍活性を測定する。具体的な実施スキームは次の通りである。
【0271】
28匹の雌ヌードマウスにNUGC-4細胞を皮下接種し、接種細胞量は3×106で、接種7日後に腫瘍サイズは80mm3の20匹のマウスを選択して腫瘍体積に応じて各群5匹ずつ4群に分け、マウスをランダムに群分けした日をDay0と定義した。群分け後、マウスの腹腔内に週2回、3週間連続投与し、マウスの群分けと投与計画を表5に示す。投与期間中、週に体重および腫瘍サイズを3回測定し、下式で腫瘍体積を計算した。腫瘍体積が2000mm3に達したとき、実験を中止し、マウスを安楽死させた。
【0272】
[数2]
TV=(長さ×幅2)/2
【0273】
【0274】
皮下NUGC-4ヒト胃癌腫瘍モデルを用いて、ヌードマウスにゾルベツキシマブとc5E6抗体を腹腔内投与した場合の抗腫瘍効果を評価し、実験は投与後の25日間まで観察し、結果はNUGC-4荷瘤の雌ヌードマウスにおいて投与されたすべてのマウスは忍容性が良好で体重は副作用もなく安定したままであることを示し、マウスの体重の変化を
図14Aに示す。観察期間中、マウスの腫瘍体積の変化曲線を
図14Bに示す。G3:ゾルベツキシマブ、10mg/kg群およびG4:c5E6,10mg/kg群のマウスは、G2アイソタイプ対照群と比較して一定の抗腫瘍活性を示し、統計的に有意な差(p<0.05)がある。G3とG4との間の抗腫瘍活性に有意差がなく、近似の抗腫瘍レベルを有する。
【0275】
(実施例14 T細胞でのCLDN18.2特異的CARの安定発現)
図15Aに示すように、本実施例におけるCLDN18.2特異的CAR構造は、ヒトCD8シグナルペプチド(配列番号:88)、抗ヒトCLDN18.2一本鎖抗体(配列番号:90)、ヒトCD8ヒンジ領域(配列番号:83)、ヒトCD8膜貫通ドメイン(配列番号:84)、ヒト4-1BB細胞内共刺激ドメイン(配列番号:85)、ヒトCD3ζ細胞内活性化ドメイン(配列番号:86)および追加されたOri新要素(配列番号:91)からなる。まず、本実施例はヒトT細胞におけるCLDN18.2特異的CARの発現状況および従来のインビトロ培養条件下でのCART細胞の増幅倍率を探究する。具体的な方法は、次の通りである。
【0276】
1)液体窒素で凍結させたヒトPBMC細胞を37℃の水浴で蘇生し、11ml PBS+1ml PBMC の系で遠心分離・再懸濁・リンス(500g、5分、400g、5分、300g、5分)を3回行い、リンス後のヒトPBMC細胞をCD3 MicroBeads、human(Miltenyi社製、130-050-101)と混合し、磁気スタンドを使用してCD3陽性選択を実施(すなわちCD3+T細胞を分離および保持する)した。CD3+T細胞を(4%FBS+X-VIVO(Lonza社製)+20ng/ml第1因子+10ng/ml第2因子)を含む培地に細胞密度が1×106cells/mlになるように再懸濁し、1:3の比率(細胞:磁気ビーズ)でCD3/CD28磁気ビーズ(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製40203Dで、磁気ビーズは培地で2回洗浄し、磁気スタンドで吸引し、1分間静置する)を添加し、T細胞を活性化した。T細胞を磁気ビーズに加え、よく混ぜ、12ウェルプレートの各ウェルに培地を700μlまで加え、細胞数は7×105/ウェル、密度は1×106細胞/mlであり、ソーティングの日を0日目とした。
【0277】
2)活性化されたT細胞を37℃のCO2インキュベーター内に静置して20時間培養した後、ウイルス感染多重度(MOI)が4の比率で対応するウイルス上清を加え、polybreneを最終濃度10ug/mlになるように加え、ピペッティングでよく混ぜた後、水平遠心分離機を用いて1200rpmで1時間遠心分離し、ウェルプレートを37℃ CO2インキュベーターに戻して24時間インキュベートし、感染当日を1日目とした。
【0278】
3)24時間後、12ウェルプレートの各ウェル細胞を繰り返しピペッティングでよく混ぜ、1.5mlEP チューブに移し、400gで5分間遠心分離し、上清を除去し、細胞密度が7×105cells/mlになるまで細胞を1mlの新鮮なX-VIVO完全培地に再懸濁し、37℃ CO2インキュベーターに入れて培養し、培地が黄色くなったら培地を補充し、2日ごとに細胞を計数し、新鮮なX-VIVO完全培地を補充て細胞密度を7×105cells/mlに戻し、統計的計数結果を記録し、GraphPad8.0ソフトウェアを使用してグラフ化し、従来の培養下でのCART細胞の増幅倍率を計算した。
【0279】
4)9~14日間培養したCAR-T細胞の細胞陽性率の検出:細胞を感染するためのウイルスにはMycタグが付いているため、ウイルスが細胞を感染した後、フローサイトメメーターでMyc陽性率を検出して、CAR発現陽性率が得られ、使用する直接標識・検出抗体は、Myc-Tag(9B11)Mouse mAb(Alexa Fluor(登録商標)488 Conjugate)(Cell Signaling、2279S)であった。
【0280】
MOI=4に従い、5E6配列および標準配列ウイルスを含むヒトCLDN18.2配列ウイルスにそれぞれ感染させた。結果を
図15Bに示す。インビトロでのCART細胞培養の12日目にフローサイトメトリーによりCARの陽性率を検出し、5E6-CARTの陽性率は72.6%であり、Positive control CAR-Tの陽性率は65.4%であった。本実施例では、計6つの異なるPBMC donarを使用してCAR陽性率を検証した。
図15Cは、6つの異なるPBMC donarにおける5E6-CARTの陽性率が60%程度に留まり、Positive control CAR-Tと同じであることを示している。
図15Dは、通常インビトロで12日間培養した5E6-CART細胞の累積増幅倍率が約240倍であり、Standard-CARTの増幅倍率といくらも変わらないことを示す。
【0281】
(実施例15 CLDN18.2特異的CARはインビトロで標的細胞を特異的に殺傷できる)
本実施例では、まずレンチウイルス感染および蛍光活性化セルソーティングを介してヒトCLDN18.2を安定かつ高発現するCHO-hCLDN18.2細胞およびヒトCLDN18.1を安定かつ高発現するCHO-hCLDN18.1細胞が得られた。本実施例ではさらに、細胞毒性検出キット(Promega,Cat#G1780)を使用し、LDH法によりインビトロでのCAR-T細胞の特異的殺傷能力を評価し、手順は次の通りである。
【0282】
上記実施例14で通常9日間培養したCAR-T細胞およびMockT細胞をそれぞれ遠心分離した後、ブランクX-VIVO培地に再懸濁して細胞密度を1×10
5/mlにさせる。標的細胞はCHO、CHO-hCLDN18.2およびCHO-hCLDN18.1の3種類で、3種類の標的細胞をそれぞれ消化した後で計数し、続いてブランクX-VIVO培地に再懸濁して細胞密度を5××10
5/mlにし、その後、ウェル当たり標的細胞懸濁液100μl+CAR-T/MockT細胞懸濁液100μlの体積系を混合し、滅菌96ウェルV底プレートに加えた。キットの要件に従い対照ウェルを設け、得られた混合物を37℃のインキュベーターで24時間共インキュベートした後、マイクロプレートリーダーで490nMの吸光度値を記録し、キットから与えられる計算式でターゲット細胞の溶解率を計算し、Graphpad prism 8でデータを分析・処理した。結果を
図16に示し、5E6-CARTは、インビトロでCLDN18.2陽性標的細胞の溶解を特異的に誘導するが、陰性およびCLDN18.1陽性細胞には溶解作用を持たず、Standard-CARTと同様に、5E6-CART細胞はインビトロでヒトCLDN18.2の高度に特異的な標的細胞殺傷活性を有することが示唆されている。
【0283】
(実施例16 CLDN18.2特異的CARの因子分泌状況)
本実施例は、Human IFN-γ ELISAキット(R&D,DY285B)およびHuman IL-2 ELISAキット(R&D,DY202)を使用して標的細胞を殺傷させる過程中のIFN-γおよびIL-2に対するCAR-Tの分泌量を分析した。具体的には、1ウェルあたり1×10
4個の細胞量に基づいてCLDN18.2を高発現する標的細胞(CHO-hCLDN18.2)、CLDN18.1を高発現する対照細胞(CHO-hCLDN18.1)および陰性細胞CHOを滅菌96ウェルプレートにそれぞれ播種し、標的細胞にエフェクター細胞(Effector):標的細胞(Target)=5:1の比率でCAR-T細胞(5E6-CARTおよびPositive control CAR-T)および未修飾のT細胞(Mock T cell)などのエフェクター細胞を加えた。24時間インキュベートした後、キットの説明書に従い操作し、上清を採取して酵素免疫測定法(ELISA)でIL-2およびIFN-γ含有量を検出した。結果を
図17Aおよび
図17Bに示す。5E6-CARTは、CLDN18.2陽性細胞と共インキュベートした場合、より高いレベルの因子を分泌したが、陰性細胞およびCLDN18.1陽性細胞と共インキュベートした場合、有意な因子の分泌はなく、Standard-CARTと同じであった。したがって、5E6-CART細胞は、CLDN18.2を高発現する腫瘍細胞に対して特異的なサイトカイン誘導効果を持っている。
【0284】
(実施例17 マウス結腸癌CDXモデルにおけるCLDN18.2特異的CAR-T細胞の抗腫瘍作用)
本実施例は、まずヒトCLDN18.2遺伝子を、レンチウイルスを介してMC38細胞に導入し、次にフローサイトメメーターでヒトCLDN18.2を高発現するマウス結腸癌細胞、すなわちMC38-hCLDN18.2細胞を選別した。雌B-NDG高度免疫マウスの皮下注射経路を介してマウス結腸癌腫瘍モデルを構築し、マウス体内におけるCLDN18.2特異的CAR-T細胞の抗腫瘍作用を検証した。MC38-hCLDN18.2細胞を1.5×10
6/マウスの用量で接種し、マウスに腫瘍を接種してから8日後に、腫瘍サイズ41.68~120.6mm
3(平均腫瘍サイズ80.01mm
3)のマウスを選択して各群8匹を3群にランダムに分け、10日間培養したCAR-T(またはMock T)細胞を尾静脈に再注入し、5E6-CART群および Standard-CART群のCAR-T再注入量は3×10
6細胞/マウス、ブランク対照Mock T細胞群の再注入量は1×10
7細胞/マウスであった。
図18Aに示すように、マウスの腫瘍サイズおよび体重を週に3回測定し、4週間観察した。 CAR-T(またはMock T)細胞をマウスの尾静脈に再注入した後、5E6-CART群のマウスは13日目に体重の10%以上減少し、15 日目の1匹のマウスの体重の相対変化は-34.51%で、13日目に1匹目のマウスは死亡した。Standard-CART群のマウスは、16日目に体重の10%以上減少し、16日目における1匹のマウスの体重の相対変化は-36.93%であり、18日目に1匹目のマウスは死亡し、マウスの体重減少が激しいため、PG-D22に実験を終了し、
図18Bおよび
図18Cに示すように実験の終了時に明らかな抗腫瘍作用が観察されなかった。マウスを安楽死させて解剖した後、
図18Dに示すように、5E6-CART群およびStandard-CART群のマウスの両方に異常な胃損傷・出血現象があることが判明した。要するに、5E6-CART群のマウスは、この腫瘍モデルにおいて低い忍容性と明らかな副作用を現れ、特に体重減少、後ろ髪が逆立つ、丸まる、胃出血として現れ、Mock T群のマウスは忍容性に優れ、体重は正常であった。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-11-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HCDR3
、HCDR2及びHCDR1を含み、前記HCDR3は、配列番号:67で示されるアミノ酸配列を含
み、前記HCDR2は、配列番号:68または配列番号:11で示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR1は、配列番号:2、配列番号:10および配列番号:16のいずれかで示されるアミノ酸配列を含む、単離された抗原結合タンパク質。
【請求項2】
前記HCDR3は、配列番号:4、配列番号:12および配列番号:18のいずれかで示されるアミノ酸配列を含
み、前記HCDR2は、配列番号:3または配列番号:17で示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR1は、配列番号:2、配列番号:10および配列番号:16のいずれかで示されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項3】
VHを含み、前記VHは、配列番号:78で示されるアミノ酸配列を含む、請求項
1に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項4】
前記VHは、配列番号:1、配列番号:9、配列番号:15および配列番号:19のいずれかで示されるアミノ酸配列を含む、請求項
3に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項5】
LCDR3
、LCDR2及びLCDR1を含み、前記LCDR3は、配列番号:69で示されるアミノ酸配列を含
み、前記LCDR2は、配列番号:70で示されるアミノ酸配列を含み、前記LCDR1は、配列番号:71で示されるアミノ酸配列を含む、請求項
1に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項6】
前記LCDR3は、配列番号:8、配列番号:14、配列番号:23および配列番号:25のいずれかで示されるアミノ酸配列を含
み、前記LCDR2は、配列番号:7または配列番号:22で示されるアミノ酸配列を含み、前記LCDR1は、配列番号:6または配列番号:21で示されるアミノ酸配列を含む、請求項
5に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項7】
VLを含み、前記VLは、配列番号:79で示されるアミノ酸配列を含む、請求項
1に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項8】
前記VLは、配列番号:5、配列番号:13、配列番号:20および配列番号:24のいずれかで示されるアミノ酸配列を含む、請求項
7に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項9】
以下の任意の群から選択されるVHおよびVLを含む、請求項
1に記載の単離された抗原結合タンパク質。
1)配列番号:1で示されるアミノ酸配列を含むVH、配列番号:5で示されるアミノ酸配列を含むVL
2)配列番号:15で示されるアミノ酸配列を含むVH、配列番号:5で示されるアミノ酸配列を含むVL
3)配列番号:9で示されるアミノ酸配列を含むVH、配列番号:13で示されるアミノ酸配列を含む前記VL
4)配列番号:19で示されるアミノ酸配列を含むVH、配列番号:20で示されるアミノ酸配列を含むVL、および
5)配列番号:19で示されるアミノ酸配列を含むVH、配列番号:24で示されるアミノ酸配列を含む前記VL
【請求項10】
抗体重鎖定常領域を含む、請求項
1に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項11】
前記抗体重鎖定常領域は、ヒトIgG1重鎖定常領域に由来する、請求項
10に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項12】
抗体軽鎖定常領域を含む、請求項
1に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項13】
前記抗体軽鎖定常領域は、ヒトIgκ定常領域に由来する、請求項12に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項14】
請求項
1に記載の抗原結合タンパク質を含む標的部分を含む、キメラ抗原受容体。
【請求項15】
共刺激ドメイン
、細胞内シグナル伝達ドメイン、膜貫通ドメイン、標的部分と膜貫通ドメインとの間のヒンジ領域、およびシグナルペプチドを含み、
前記共刺激ドメインは、CD28、4-1BB、CD27、CD2、CD7、CD8、OX40、CD226、DR3、SLAM、CDS、ICAM-1、NKG2D、NKG2C、B7-H3、2B4、FcεRIγ、BTLA、GITR、HVEM、DAP10、DAP12、CD30、CD40、CD40L、TIM1、PD-1、LFA-1、LIGHT、JAML、CD244、CD100、ICOS、CD83のリガンド、CD40およびMyD88からなる群から選択される1種以上のタンパク質に由来する共刺激ドメインを含
み、
前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζ、CD3δ、CD3γ、CD3ε、CD79a、CD79b、FcεRIγ、FcεRIβ、FcγRIIa、ウシ白血病ウイルスgp30、エプスタイン・バーウイルス(EBV)LMP2A、サル免疫不全ウイルスPBj14 Nef、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(HSKV)、DAP10、DAP-12および少なくとも1つのITAMを含むドメインからなる群から選択される1種以上のタンパク質に由来する細胞内シグナル伝達領域を含み、
前記膜貫通ドメインは、CD8、CD28、4-1BB、CD4、CD27、CD7、PD-1、TRAC、TRBC、CD3ε、CD3ζ、CTLA-4、LAG-3、CD5、ICOS、OX40、NKG2D、2B4、CD244、FcεRIγ、BTLA、CD30、GITR、HVEM、DAP10、CD2、NKG2C、LIGHT、DAP12、CD40L、TIM1、CD226、DR3、CD45、CD80、CD86、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD134、CD137、CD154およびSLAMからなる群から選択される1種以上のタンパク質に由来する膜貫通ドメインを含み、
前記ヒンジ領域は、CD28、IgG1、IgG4、IgD、4-1BB、CD4、CD27、CD7、CD8、PD-1、ICOS、OX40、NKG2D、NKG2C、FcεRIγ、BTLA、GITR、DAP10、CD40L、TIM1、CD226、SLAM、CD30およびLIGHTからなる群から選択される1種以上のタンパク質に由来するヒンジ領域を含む、請求項
14に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項16】
前記共刺激ドメインは、
配列番号:85で示されるアミノ酸配列を含む4-1BB由来の細胞内共刺激シグナル伝達領域で
あり、
前記細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号:86で示されるアミノ酸配列を含むCD3ζに由来するシグナル伝達ドメインであり、
前記膜貫通ドメインは、配列番号:84で示されるアミノ酸配列を含むCD8に由来する膜貫通ドメインであり、
前記ヒンジ領域は、配列番号:83で示されるアミノ酸配列を含むCD8に由来するヒンジ領域であり、
前記シグナルペプチドは、配列番号:88で示されるアミノ酸配列を含むCD8タンパク質に由来するシグナルペプチドである、
請求項
15に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項17】
低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片をさらに含む、請求項
14に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項18】
前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1~12およびその機能的断片からなる群から選択される1種以上を含む、請求項
17に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項19】
前記低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質またはその断片は、配列番号:91で示されるアミノ酸配列を含む、請求項
17に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項20】
請求項1~
13のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質または請求項
14~
19のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体を含む、ポリペプチド分子。
【請求項21】
請求項1~
13のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質を含む、免疫複合体。
【請求項22】
請求項1~
13のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質、請求項
14~
19のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体または請求項
20に記載のポリペプチド分子をコードする、単離された1種以上の核酸分子。
【請求項23】
請求項1~
13のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質、請求項
14~
19のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体、請求項
20に記載のポリペプチド分子
または請求項
22に記載の核酸分
子を含む、細胞。
【請求項24】
請求項1~
13のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質、請求項
14~
19のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体、請求項
20に記載のポリペプチド分子、請求項
21に記載の免疫複合体、請求項
22に記載の核酸分
子および/または請求項
23に記載の細胞、および任意に薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項25】
疾患および/または障害を予防、緩和および/または治療するために用いられる
、請求項24に記載の医薬組成物、
ここで、前記疾患および/または障害には、癌が含まれる。
【請求項26】
前記癌には、胃癌および/または結腸癌が含まれる、請求項
25に記載の
医薬組成物。
【国際調査報告】