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特表2024-514264耐火性、耐切断性、及び弾性回復性を有する糸及び布地、並びにこれを作製するためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-29
(54)【発明の名称】耐火性、耐切断性、及び弾性回復性を有する糸及び布地、並びにこれを作製するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   D02G 3/28 20060101AFI20240322BHJP
   D02G 3/36 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
D02G3/28
D02G3/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562759
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(85)【翻訳文提出日】2023-10-12
(86)【国際出願番号】 US2022018314
(87)【国際公開番号】W WO2022220938
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】63/173,705
(32)【優先日】2021-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520028531
【氏名又は名称】デュポン セイフティー アンド コンストラクション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100202603
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 智史
(72)【発明者】
【氏名】ハンクス ジェフリー アラン
(72)【発明者】
【氏名】キー エリック
(72)【発明者】
【氏名】ノート オリヴィエ ベアト
【テーマコード(参考)】
4L036
【Fターム(参考)】
4L036MA04
4L036MA06
4L036MA37
4L036MA39
4L036PA21
4L036PA31
4L036PA46
4L036UA06
(57)【要約】
諸撚り糸、並びにこの諸撚り糸を含む布地及び物品であって、諸撚り糸は、
(a)少なくとも50重量パーセントの耐熱性ポリマー繊維を含む少なくとも1つの第1の糸であって、前述の糸に存在するポリマー繊維の少なくとも30重量パーセントは、ASTM F2992-15に従う500グラム力以上の耐切断性を有する耐切断性の耐熱性ポリマー繊維である少なくとも1つの第1の糸と、
(b)ハロゲン化自己消火性短繊維のシース及び少なくとも1つの連続エラストマーフィラメントを含むコアを備えたシース/コア構造を有する少なくとも1つの第2の糸と、を含み、
(b)の60~95重量パーセントは、ハロゲン化自己消火性繊維であり、ハロゲン化自己消火性繊維は、エラストマーフィラメントと接触しており、無機繊維を含まない、又は実質的に含まない、諸撚り糸、並びにこの諸撚り糸を含む布地及び物品。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも50重量パーセントの耐熱性ポリマー繊維を含む少なくとも1つの第1の糸であって、前記少なくとも1つの第1の糸に存在する前記ポリマー繊維の少なくとも30重量パーセントは、ASTM F2992-15に従う500グラム力以上の耐切断性を有する耐切断性の耐熱性ポリマー繊維である少なくとも1つの第1の糸と、
(b)ハロゲン化自己消火性短繊維のシース及び少なくとも1つの連続エラストマーフィラメントを含むコアを備えたシース/コア構造を有する少なくとも1つの第2の糸と、を含む、耐燃性の耐切断性布地に使用するのに適した諸撚り糸であって、
前記少なくとも1つの第2の糸の60~95重量パーセントは、ハロゲン化自己消火性繊維であり、前記ハロゲン化自己消火性繊維は、前記少なくとも1つの連続エラストマーフィラメントと接触しており、前記第2の糸は、無機繊維を含まない、又は実質的に含まない、諸撚り糸。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第1の糸は、前記耐切断性の耐熱性ポリマー繊維を含むシース及び無機繊維を含むコアを備えたシース/コア構造を有する、請求項1に記載の諸撚り糸。
【請求項3】
前記耐熱性ポリマー繊維又は前記耐切断性の耐熱性ポリマー繊維は、アラミドコポリマー、パラ-アラミド、ポリベンザゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリイミド又はそれらの混合物である、請求項1又は2に記載の諸撚り糸。
【請求項4】
前記耐熱性ポリマー繊維又は前記耐切断性の耐熱性ポリマー繊維は、パラ-アラミドである、請求項3に記載の諸撚り糸。
【請求項5】
前記パラ-アラミド繊維は、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミドである、請求項4に記載の諸撚り糸。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第1の糸は、耐切断性でない耐燃性繊維を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の諸撚り糸。
【請求項7】
前記耐燃性繊維は、メタ-アラミド、ポリアミドイミド、難燃剤処理(FR)セルロース、FR綿、FRリヨセル、又はそれらの混合物である、請求項6に記載の諸撚り糸。
【請求項8】
前記耐燃性繊維は、メタ-アラミドである、請求項7に記載の諸撚り糸。
【請求項9】
前記メタ-アラミドは、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)である、請求項8に記載の諸撚り糸。
【請求項10】
前記少なくとも1つの第2の糸の総重量の80~95重量パーセントは、前記ハロゲン化自己消火性繊維である、請求項1~9のいずれか一項に記載の諸撚り糸。
【請求項11】
前記ハロゲン化自己消火性繊維は、モダクリル繊維である請求項1~10のいずれか一項に記載の諸撚り糸。
【請求項12】
前記少なくとも1つの第2の糸の総重量の5~40重量パーセントは、前記少なくとも1つの連続エラストマーフィラメントである、請求項1~11のいずれか一項に記載の諸撚り糸。
【請求項13】
前記少なくとも1つの連続エラストマーフィラメントは、スパンデックスフィラメントである、請求項1~12のいずれか一項に記載の諸撚り糸。
【請求項14】
前記無機繊維は、金属フィラメントである、請求項1~13のいずれか一項に記載の諸撚り糸。
【請求項15】
前記少なくとも1つの第2の糸のシースは、耐熱性ポリマー繊維を更に含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の諸撚り糸。
【請求項16】
前記少なくとも1つの第2の糸のシースは、耐切断性でない耐燃性繊維を更に含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の諸撚り糸。
【請求項17】
前記耐燃性繊維は、メタ-アラミド、ポリアミドイミド、又はそれらの混合物である、請求項16に記載の諸撚り糸。
【請求項18】
前記耐燃性繊維は、メタ-アラミドである、請求項17に記載の諸撚り糸。
【請求項19】
前記メタ-アラミドは、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)である、請求項18に記載の諸撚り糸。
【請求項20】
前記少なくとも1つの第2の糸のシースは、帯電防止繊維を更に含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の諸撚り糸。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項に記載の諸撚り糸を含む織布又は編布。
【請求項22】
NFPA-2112-2018に従って試験した場合、最大残炎時間が2秒以下、及び重量損失が5重量パーセント以下である、請求項21に記載の諸撚り糸を含む織布又は編布。
【請求項23】
請求項21又は23に記載の織布又は編布を含む物品。
【請求項24】
手袋、スリーブ、又はエプロンの形態である、請求項23に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野。本発明は、耐火性及び形状適合性を有し、並びに又耐切断性を有する防護服の物品に使用するのに適した糸及び布地に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明。耐切断性及び弾性回復性を有する諸撚り糸及び布地、これらを作製するためのプロセス、並びにこれらを防護服の物品に使用することは、米国特許第6,952,915号明細書に開示されている。
【0003】
アーク保護特性及び火炎保護特性を備える布地の作製に有用であるモダクリル繊維と、p-アラミド繊維と、m-アラミド繊維とを含む糸は、例えば、米国特許第7,065,950号明細書及び米国特許第7,348,059号明細書に開示されている。これらの糸は、任意の成分として、ナイロンなどの耐摩耗性繊維2~15重量パーセント及び/又は帯電防止成分1~5重量パーセントを更に含み得る。
【0004】
耐火性及び弾性回復性の組み合わせを有する糸及び布地は、例えば、米国特許第5,069,957号明細書、米国特許第5,527,597号明細書及び米国特許第5,694,981号明細書に記載されている。これらの既存の解決策は、耐火性繊維から作られた実質的な保護繊維の外側被覆で弾性コア糸を覆うことによって作られた糸を利用する。換言すれば、これらの参考文献は、同じ糸にある別の繊維を使用して弾性コアを火炎から構造的に遮蔽することによって弾性コアを保護することを記載している。
【0005】
本明細書で使用される場合、「構造的に遮蔽すること」及び「構造的遮蔽」という用語は、被覆繊維が、火炎に曝されたときに容易に炭化し、コア内の任意の弾性フィラメントを覆う糸において所定の位置に留まり、従って火炎と弾性コアとの間に構造的バリアを提供することを意味する。これらの特許で教示されているように、これらの糸には、極端な温度及び火に曝されたとき、弾性コア糸を劣化又は溶融から物理的に保護する耐火性繊維で作られた実質的な保護繊維の外側被覆が設けられている。
【0006】
残念なことに、多くの場合に又、適切な構造的に遮蔽する外側繊維の被覆を提供する繊維は、より硬い繊維である傾向があり、そのため、このような糸で作られた布地は、望まれるほど快適でない場合がある。これは最終的には、望まれるものよりも快適でない場合がある防護衣類になり、十分に快適でない場合、作業者らは、防護服を着用しない傾向があり自らを危険に曝すことがよく知られている。
【0007】
加えて、弾性コアを保護するためのいかなる解決策も、現在の保護衣類の基準を満たす必要がある。具体的には、新しいNFPA 2112-2018「Standard on Flame-Resistant Clothing for Protection of Industrial Personnel Against Short-Duration Thermal Exposures from Fire」では、最小限の設計、性能、試験、及び認証要件のための仕様、並びに火による短時間の熱曝露の危険性がある地域で使用するための耐燃性の衣服、覆う物(shroud)、フード、目出し帽(balaclava)、及び手袋のための試験方法が提供されている。この規格では、衣類に使用される布地の残炎時間が2秒以下であることが求められている。残炎時間は、バーナーを火炎から外した後、秒単位で0.2秒までである、試験片が燃え続ける時間である。
【0008】
この規格では、耐燃性試験で消費される材料は試験片の元の重量の5.0パーセントを超えてはいけないという、耐燃性手袋に対して更により厳しい要件がある。言い換えれば、規格の手順に従って、指定された12秒間の火炎を試験片に当てた後、布地の重量損失は、5.0パーセント以下でなければいけない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、必要とされているのは、耐切断性とともに、耐火性と弾性回復性の組み合わせを有し、具体的には弾性コア糸を組み込み、NFPA 2112-2018規格を満たし、更に、テキスタイルの感触(textile feel)を有する繊維を利用してより快適な保護衣料品を提供する可能性がある、糸及び/又は布地である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、耐燃性の耐切断性布地、並びにこれを含む布地及び物品に使用するのに適した諸撚り糸に関し、諸撚り糸は、
(a)少なくとも50重量パーセントの耐熱性ポリマー繊維を含む少なくとも1つの第1の糸であって、少なくとも1つの第1の糸に存在するポリマー繊維の少なくとも30重量パーセントは、ASTM F2992-15に従う500グラム力以上の耐切断性を有する耐切断性の耐熱性ポリマー繊維である少なくとも1つの第1の糸と、
(b)ハロゲン化自己消火性短繊維のシース及び少なくとも1つの連続エラストマーフィラメントを含むコアを備えたシース/コア構造を有する少なくとも1つの第2の糸と、を含み、
この場合、少なくとも1つの第2の糸の60~95重量パーセントは、ハロゲン化自己消火性繊維であり、ハロゲン化自己消火性繊維は、少なくとも1つの連続エラストマーフィラメントと接触しており、第2の糸は、無機繊維を含まない、又は実質的に含まない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、耐火性と形状適合性の両方を有し、更に切断保護を提供する、防護服の物品に使用するのに適した糸及び布地に関する。この特異的な組み合わせは、燃焼の間の布地の消費を制限するとともに糸又は布地において高い耐火性を与えるように、弾性材料、自己消火性繊維、及び強力な耐熱性のポリマー繊維を組み合わせることで生み出される。
【0012】
具体的には、本発明は、耐燃性の耐切断性布地に使用するのに適した諸撚り糸に関し、この諸撚り糸は、
(a)少なくとも50重量パーセントの耐熱性ポリマー繊維を含む少なくとも1つの第1の糸であって、少なくとも1つの第1の糸に存在するポリマー繊維の少なくとも30重量パーセントは、ASTM F2992-15に従う500グラム力以上の耐切断性を有する耐切断性の耐熱性ポリマー繊維である少なくとも1つの第1の糸と、
(b)ハロゲン化自己消火性短繊維のシース及び少なくとも1つの連続エラストマーフィラメントを含むコアを備えたシース/コア構造を有する少なくとも1つの第2の糸と、を含み、
この場合、少なくとも1つの第2の糸の60~95重量パーセントは、ハロゲン化自己消火性繊維であり、ハロゲン化自己消火性繊維は、少なくとも1つの連続エラストマーフィラメントと接触しており、第2の糸は、無機繊維を含まない、又は実質的に含まない。
【0013】
この糸は、NFPA-2112-2018に従って試験した場合、最大残炎時間が2秒以下、及び重量損失が5重量パーセント以下の布地を提供できる。
【0014】
「耐燃性の耐切断性布地」とは、「耐燃性」と「耐切断性」の両方である編布又は織布を意味する。布地に関して「耐燃性」という記述は、ASTM 6143-15に従って試験した場合に、布地の炭化長さが4インチ(100mm)以下であることを意味する。「耐切断性布地」とは、布地が、少なくとも最小レベルの耐切断性を有し、一般にASTM F2992-15に従って少なくとも200グラム力の耐切断性を有することを意味する。いくつかの好ましい実施形態では、本明細書に記載の繊維及び糸は、ASTM F2992-15に従って少なくとも500グラム力の耐切断性を有する耐燃性の耐切断性布地を提供することができる。しかしながら、いくつかの他の実施形態では、「耐燃性」布地であるとみさなれる本明細書に記載されている火炎性能要件が満たされ、布地が、ASTM F2992-15に従って少なくとも200グラム力の最小耐切断性を保持する限り、必ずしも耐切断性を提供する必要はないが、布地に他の望ましい品質を提供することができる他の繊維又は糸を布地に組み込むことができることが理解される。
【0015】
耐燃性布地は、熱事象からの熱保護を提供し、耐切断性布地は、ナイフ及び鋭利な刃物などの物からの機械的保護を提供する。加えて、このような布地から作られた保護手袋などの任意の物品が、快適であり、良好なフィット感及び器用性(dexterity)を有することが多くの場合に重要であり又は望ましい。「良好なフィット感及び器用性」とは、例えば、手袋が着用者の手の形状によく適合し、手袋を着用しながら小さい物体を掴むこと及び操作することができることを意味する。本明細書に記載の糸によって提供できる耐燃性の耐切断性布地は、高度に耐燃性及び耐切断性両方であり、又、柔らかく、柔軟性があり、形状に適合する物品を提供する。このような布地で作られた防護衣類は、非常に快適で、多角的な危険性の兆候(multiple threat)に対して効果的である。
【0016】
耐燃性の耐切断性布地は、耐熱性ポリマー繊維を提供する少なくとも第1の糸と、少なくとも1つの連続エラストマーフィラメントと接触しているハロゲン化自己消火性繊維で覆われた少なくとも1つの連続エラストマーフィラメントを提供する少なくとも第2の糸とから作られる。次いで、少なくとも第1の糸及び少なくとも第2の糸を使用して布地が作られる。
【0017】
少なくとも第1の糸及び少なくとも第2の糸は、撚り合わされて諸撚り糸を形成する。いくつかの実施形態では、諸撚り糸は、1つの第1の糸のみと1つの第2の糸のみからなる。他の実施形態では、諸撚り糸は、1つの第1の糸のみと複数の第2の糸からなり、他の実施形態では、諸撚り糸は、複数の第1の糸と1つの第2の糸のみからなる。同様に、いくつかの実施形態では、諸撚り糸は、複数の第1の糸と複数の第2の糸からなる。最後に、いくつかの実施形態では、諸撚り糸は、少なくとも1つの第1の糸と、少なくとも1つの第2の糸とを含み、最終の布地が本明細書で議論される性能基準を満たす限り、任意の数の繊維から作られた他の糸は、諸撚り糸に含まれることができる。
【0018】
少なくとも1つの第1の糸は、第1の糸の総重量に基づいて、少なくとも50重量パーセントの耐熱性ポリマー繊維を含み、少なくとも1つの第1の糸に存在するポリマー繊維の少なくとも30重量パーセントは、F2992-15に従って500グラム力以上の耐切断性を有する耐切断性の耐熱性ポリマー繊維であり、少なくとも1つの第1の糸は、耐切断性の耐熱性ポリマー繊維を含むシース及び無機繊維を含むコアを備えたシース/コア構造を更に有する。シース/コア構造が使用される理由は、シース短繊維が被覆を提供し、コア内の無機フィラメントを皮膚との直接の摩耗接触から遮蔽し、シース/コア糸を含む布地の快適性を向上させることである。
【0019】
「耐熱性ポリマー繊維」とは、空気中で毎分20℃の速度で500℃まで加熱したときに、その元の繊維重量の90パーセントを保持する合成有機ポリマーから作られた繊維を意味する。好ましい耐熱性ポリマー繊維は、少なくともデニール当たり3グラム(デシテックス当たり2.7グラム)の糸の靱性を有する。耐熱性ポリマー繊維には、パラ-アラミド繊維、アラミドコポリマー繊維、ポリベンザゾール繊維、ポリベンズイミダゾール繊維、ポリイミド繊維、及びそれらの混合物が含まれる。好ましい耐熱性ポリマー繊維は、パラ-アラミド繊維であり、好ましいパラ-アラミド繊維は、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド繊維である。
【0020】
少なくとも1つの第1の糸は、第1の糸の総重量に基づいて少なくとも50重量パーセントの耐熱性ポリマー繊維を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第1の糸は、第1の糸の総重量に基づいて少なくとも60重量パーセントの耐熱性ポリマー繊維を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第1の糸は、第1の糸の総重量に基づいて60~85重量パーセントの耐熱性ポリマー繊維を含み、いくつかの他の実施形態では、少なくとも1つの第1の糸は、第1の糸の総重量に基づいて60~80重量パーセントの耐熱性ポリマー繊維を含む。
【0021】
少なくとも1つの第1の糸に存在するポリマー繊維の少なくとも30重量パーセントは、F2992-15に従って500グラム力以上の耐切断性を有する耐切断性の耐熱性ポリマー繊維である。繊維の切断性能は、試験対象の繊維100%から織られる又は編まれる345グラム/平方メートル(10オンス/平方ヤード)の布地の切断性能を測定することによって決定され、次いで耐切断性(グラム力単位)は、ASTM F2992-15によって測定される。
【0022】
F2992-15に従って500グラム力以上の耐切断性を有する耐切断性の耐熱性ポリマー繊維には、パラ-アラミド繊維、アラミドコポリマー繊維、ポリベンザゾール繊維、ポリベンズイミダゾール繊維、及びそれらの混合物が含まれる。好ましい耐切断性の耐熱性ポリマー繊維は、パラ-アラミド繊維であり、好ましいパラ-アラミド繊維は、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド繊維である。耐熱性ポリマー繊維が十分な耐切断性を有する場合、少なくとも1つの第1の糸における耐切断性の耐熱性ポリマー繊維は、少なくとも1つの第1の糸における耐熱性ポリマー繊維と同じであり得る又は異なり得る。
【0023】
従って、耐切断性の耐熱性ポリマー繊維は、先に定義された耐熱性ポリマー繊維と、先に定義された耐切断性繊維の両方であることが理解される。少なくとも1つの第1の糸は、本明細書で定義される耐熱性ポリマー繊維であるが本明細書で定義される耐切断性繊維ではない繊維を含むことができることも理解される。表1は、少なくとも1つの第1の糸における総耐熱性(CH-HR)ポリマー繊維及び総無機フィラメントの可能なパーセントに関して、選択された例示の組成を示す指標基準を提供し、更に、非耐切断性の耐熱性(非CR-HR)ポリマー繊維及び耐切断性の耐熱性(CH-HR)ポリマー繊維の可能な量を示す可能なパーセントを提供する。
【0024】
【表1】
従って、少なくとも1つの第1の糸に存在するポリマー繊維の少なくとも30重量パーセントは、本明細書で定義される耐切断性及び耐熱性の両方であるポリマー繊維であることが理解される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第1の糸の50~85重量パーセントは、耐切断性及び耐熱性のポリマー繊維である。
【0025】
表1に示された耐切断性の耐熱性ポリマー繊維及び非耐切断性の耐熱性ポリマー繊維の様々な例示のパーセントに加えて、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第1の糸は、耐熱性ポリマー繊維ではない他の合成又は有機の繊維又はフィラメントを更に含み、即ち、それらは、本明細書で提供される耐熱性ポリマー繊維の定義を満たさない。最終の布地が本明細書で記載される組成及び本明細書で議論される性能基準を満たす限り、本質的に任意のタイプの繊維が含まれることができる。好ましくは、耐熱性ポリマー繊維ではない繊維又はフィラメントは、有機繊維であり、いくつかの実施形態では、ポリマー有機繊維である。又、いくつかの実施形態では、存在する場合、耐熱性ポリマー繊維ではない繊維又はフィラメントは、有機又は合成短繊維である。
【0026】
いくつかの好ましい実施形態では、耐熱性繊維及び耐切断性の耐熱性繊維に加えて、少なくとも1つの第1の糸は、耐燃性繊維を更に含むことができる。「耐燃性繊維」とは、その布地からのみ作られた布地は、ASTM D6143-99の垂直燃焼試験に従って、炭化長さが4インチ以下、及び残炎時間が2秒以下であるが、この繊維は、耐切断性の耐熱性ポリマー繊維について本明細書で前述した耐切断性の基準を満たしていないことを意味する。適切な耐燃性繊維には、メタ-アラミド繊維が含まれ、好ましいメタ-アラミドは、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)である。潜在的に有用な耐燃性繊維には、メタ-アラミド、ポリアミドイミド、難燃剤処理(FR)セルロース、FR綿、FRリヨセル、又はそれらの混合物が含まれる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第1の糸は、第1の糸におけるポリマー繊維の総重量に基づいて、好ましくは10重量パーセントから35重量パーセントもの耐燃性繊維を有する。
【0027】
少なくとも1つの第1の糸における耐熱性ポリマー繊維及び耐切断性の耐熱性ポリマー繊維は両方とも、好ましくは約2~20センチメートル、好ましくは約3.5~6センチメートルの長さを有する短繊維である。少なくとも1つの第1の糸における耐熱性ポリマー繊維及び耐切断性の耐熱性ポリマー繊維は両方とも、好ましくは5~25マイクロメートルの直径及び0.5~7デシテックスの線密度を有する短繊維である。又、いくつかの実施形態では、存在する場合、耐燃性繊維である又は耐熱性ポリマー繊維ではない繊維又はフィラメントは、耐熱性ポリマー繊維及び耐切断性の耐熱性ポリマー繊維の上記範囲と同様の寸法を有する短繊維である。
【0028】
いくつかの実施形態では、無機繊維は、第1の糸の総重量の15~40重量パーセントの量で存在する。同様に、これらのシース-コアの第1の糸における耐熱性ポリマー繊維の最大量は、第1の糸の総重量に基づいて85重量パーセントである。いくつかの好ましい実施形態では、シース/コア糸は、シースに60~80重量パーセントの耐熱性ポリマー繊維を有し、コアに20~40重量パーセントの無機繊維を有する。好ましくは、コアの無機繊維は、スチール又はタングステンである。好ましくは、コアの無機繊維は、1つ以上の連続フィラメントとして存在する。
【0029】
シース繊維は、無機フィラメントコアの周りに巻き付けられる又は紡がれることができる。具体的には、これは、COTSON技術を利用するもの、DREF紡績などのコア-スパン紡績、Murata(現Muratec)のジェット状紡績によるいわゆるコア挿入を使用したエアジェット紡績、オープンエンド紡績などの従来のプロセスの改良を含む従来のリング紡績などの公知の手段によって達成することができる。好ましくは、短繊維は、コアを覆うのに十分な密度で無機フィラメントコアの周りに固められる。被覆率は、糸を紡績するために使用されたプロセスによって異なり、例えば、DREF紡績などのコア-スパン紡績(例えば、米国特許第4,107,909号明細書、米国特許第4,249,368号明細書、及び米国特許第4,327,545号明細書に開示されている)は、リング紡績よりも良好な被覆を提供する。従来のリング紡績は、中心コアの部分的な被覆のみ提供するが、部分的な被覆であっても、適切なシース/コアの被覆を提供することができる。又、シースには、他の材料による、耐切断性の低下が許容できる範囲で、他の材料のいくらかの繊維が含まれることができる。
【0030】
少なくとも1つの無機フィラメントを第1の糸のコアとして組み込むことは、例えば、その最も簡易な実際の適用において、耐熱性及び耐切断性繊維、並びに任意に非耐熱性繊維のロービング、スライバー、又は集合体をドラフトロールのセットを通して通過させてドラフトされた繊維塊をリング撚りして単糸にすることによって達成することができる。少なくとも1つの無機フィラメントは、典型的には、ボビンからフィードロールのセットを通って供給され、続いてドラフトローラーの最終セットの前に短繊維に供給される。無機コアフィラメントはエラストマーではないため、糸に挿入する間に過剰な張力を加える必要がなく、従来使用されているようにシース繊維とコアのいずれかに十分な張力のみが加えられる。
【0031】
シース/コア糸の形態の少なくとも1つの第1の糸は、一般に、100~5000デシテックスの総線形シース/コア糸密度を有する15~50重量パーセントの無機フィラメントを含む。無機繊維を含むコアは、単一のフィラメントであり得る、又はマルチフィラメントであり得、特定の用途又は切断保護の度合いにおいて必要とされる又は望まれる、単一の金属フィラメント又はいくつかの金属フィラメントであることが好ましい。金属フィラメントとは、ステンレススチール、銅、アルミニウム、青銅、タングステンなどの延性金属、又は一般に「マイクロスチール(micro-steel)」として知られる金属繊維構造体から作られたフィラメント又はワイヤーを意味する。ステンレススチールが、好ましい金属である。金属フィラメントは、一般に連続したワイヤーである。有用な金属フィラメントは、直径1~150マイクロメートルであり、好ましくは直径25~75マイクロメートルである。
【0032】
いくつかの実施形態では、無機繊維は、ガラスフィラメントである。無機繊維は、例えば、110デシテックス(100デニール)のガラスフィラメントなどの、1つ以上のガラスフィラメントであり得る。しかしながら、ガラスは金属よりも線密度当たりの耐切断性が低いため、ガラスはあまり好ましくなく、糸が、布地が皮膚に接触している、手袋、スリーブなどに使用される場合、皮膚への刺激を最小限に抑えるために、ガラスが短繊維のシースで実質的に覆われていることがはるかに重要である。従って、多くの実施形態では、無機繊維は、ガラスフィラメントではなく金属フィラメントである。
【0033】
少なくとも1つの第2の糸は、ハロゲン化自己消火性短繊維のシース及び少なくとも1つの連続エラストマーフィラメントを含むコアを備えたシース/コア構造を有し、この場合、少なくとも1つの第2の糸の60~95重量パーセントは、第2の糸の総重量に基づいて、ハロゲン化自己消火性短繊維であり、ハロゲン化自己消火性繊維は、少なくとも1つの連続エラストマーフィラメントと接触しており、第2の糸は、無機繊維を含まない、又は実質的に含まない。
【0034】
少なくとも1つの第2の糸は、シース/コア構造を有し、ハロゲン化自己消火性短繊維のシースが、少なくとも1つの連続エラストマーフィラメントのコアと接触しておりこれを覆っている。ハロゲン化自己消火性短繊維は、少なくとも1つの連続エラストマーフィラメントのコアに活性な(active)火炎消火性被覆を提供すると考えられている。これは、コアの「構造的遮蔽」を提供する被覆繊維とは異なる、即ち、火炎に曝されたときに容易に炭化して所定の位置に留まり、従って、火炎と弾性コアの間に構造的バリアを提供する被覆繊維とは異なる。代わりに、ハロゲン化自己消火性短繊維のシースは、火炎のような高い熱流束の存在下で分解し、糸から局所的な酸素を追い出すハロゲンガスを放出し、少なくとも1つの連続エラストマーフィラメントのコアの燃焼を妨げる。従って、ハロゲン化自己消火性短繊維は、コアを覆うだけでなく、コアと直接接触しており、少なくとも1つの連続エラストマーフィラメントのコアの表面から酸素を局所的に追い出す必要があると考えられる。
【0035】
ハロゲン化自己消火性短繊維のシースは、少なくとも1つの連続エラストマーフィラメントの周りに巻き付けられる又は紡がれることができる。これは、COTSON技術、DREF紡績などのコア-スパン紡績、Murata(現Muratec)のジェット状紡績によるいわゆるコア挿入を使用したエアジェット紡績、オープンエンド紡績などを利用するものなどの従来のプロセスの改良を含む従来のリング紡績などの公知の手段によって達成されることができる。好ましくは、短繊維は、コアを覆うのに十分な密度で、少なくとも1つの連続エラストマーフィラメントのコアの周りに固められる。被覆率は、糸を紡ぐのに使用されるプロセスによって異なり、例えば、DREF紡績などのコア-スパン紡績(例えば、米国特許第4,107,909号明細書、米国特許第4,249,368号明細書、及び米国特許第4,327,545号明細書に開示されている)は、リング紡績よりも良好な被覆を提供する。従来のリング紡績は、中心コアの部分的な被覆のみ提供するが、本明細書では部分的な被覆であっても、可能性がある(possible)シース/コア構造と仮定される。
【0036】
ハロゲン化自己消火性短繊維の火炎消火効果は、第2の糸の総重量に基づいて、少なくとも1つの第2の糸の60~95重量パーセントがハロゲン化自己消火性繊維である場合に適切であると考えられる。いくつかの実施形態では、第2の糸の総重量に基づいて、少なくとも1つの第2の糸の80~95重量パーセントがハロゲン化自己消火性繊維であることが望ましい。シースには、他の材料による、火炎消火効果の低下が許容できる範囲で、他の材料の一部の繊維を含めることもできる。
【0037】
ハロゲン化自己消火性繊維には、ハロゲン化ポリマーから作られたものが含まれる。特に好ましいハロゲン化自己消火性繊維の1つは、モダクリルポリマーから作られた繊維である。「モダクリルポリマー」とは、好ましくはポリマーが30~70重量パーセントのアクリロニトリルと70~30重量パーセントのハロゲン含有ビニルモノマーとを含むコポリマーであることを意味する。ハロゲン含有ビニルモノマーは、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデンなどから選択される少なくとも1つのモノマーである。
【0038】
いくつかの実施形態では、モダクリルコポリマーは、塩化ビニリデンと組み合わされたアクリロニトリルのものである。いくつかの実施形態では、モダクリルコポリマーは、更にアンチモン酸化物又はアンチモン酸化物類を有する。いくつかの好ましい実施形態において、モダクリルコポリマーは、1.5重量パーセント未満のアンチモン酸化物又はアンチモン酸化物類を有する、又はコポリマーは、完全にアンチモンを含まないかのどちらかである。製造中にコポリマーに添加されるあらゆるアンチモン化合物の量を制限する又は完全に排除することによって、非常に低いアンチモン含有率のポリマー及びアンチモンを含まないポリマーを作製することができる。この方法で改質できるものを含む、モダクリルポリマーの代表的なプロセスは、2重量パーセントの三酸化アンチモンを有する米国特許第3,193,602号明細書、少なくとも2重量パーセント、好ましくは8重量パーセント以下の量で存在する様々なアンチモン酸化物を用いて作られる米国特許第3,748,302号明細書、及び8~40重量パーセントのアンチモン化合物を有する米国特許第5,208,105号明細書及び第5,506,042号明細書に開示されている。いくつかの実施形態では、モダクリルポリマーは、少なくとも26のLOIを有する。1つの好ましい実施形態では、モダクリルポリマーは、少なくとも26のLOIを有しながらもアンチモンを含まない。
【0039】
少なくとも1つの第2の糸におけるハロゲン化自己消火性短繊維は、好ましくは約2~9センチメートル、好ましくは約3.5~6センチメートルの長さを有する短繊維である。少なくとも1つの第2の糸におけるハロゲン化自己消火性短繊維は、好ましくは5~25マイクロメートルの直径及び0.5~7デシテックスの線密度を有する短繊維である。
【0040】
諸撚り糸は、ハロゲン化自己消火性短繊維のシース及び少なくとも1つの連続エラストマーフィラメントを含むコアを備えたシース/コア構造を有する少なくとも1つの第2の糸を含む。ハロゲン化自己消火性繊維は、少なくとも1つの連続エラストマーフィラメントと接触しており、この(これらの)エラストマーフィラメントの全表面が実際に短繊維シースによって完全に覆われる必要がなくなる。
【0041】
いくつかの実施形態では、弛緩した状態にて糸を顕微鏡下で観察されるように、コアの少なくとも90%がシースで覆われていることが好ましい、即ち、シース-コア糸は張力がかかっていない状態で観察される。コアの実際の被覆は、糸の張力の度合いによって異なり得るが、モダクリルは、エラストマーコアと接触している限り、その遮蔽効果を発揮すると考えられる。
【0042】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第2の糸の総重量の5~40重量パーセントは、少なくとも1つの連続エラストマーフィラメントである。いくつかの実施形態では、リング精紡された第2の糸は、少なくとも1つのエラストマーフィラメントを含むコア、及びハロゲン化自己消火性短繊維の部分的被覆を有する。いくつかの好ましい実施形態では、エラストマーフィラメントのコアは、100~1500デシテックスの総シース/コア単糸線密度の5~25重量パーセントを含む。
【0043】
本明細書で使用される場合、「少なくとも1つの連続エラストマーフィラメントを含むコア」とは、エラストマーのフィラメントから形成される、又はエラストマーのフィラメントを含むコアを意味し、このコアは、好ましくは、繰り返し伸縮した後迅速に、その元の長さに、更に少なくとも2回までその元の長さに戻る能力を有する。好ましいエラストマーコアには、スパンデックス又はエラスタンなどのポリウレタン系糸が含まれるが、一般に伸縮性と回復性を有する任意の繊維を使用できる。適切な周知のエラストマー糸には、商標名Dorlastan(登録商標)及びLycra(登録商標)で販売されている製品も含まれる。
【0044】
好ましい少なくとも1つの連続エラストマーフィラメントは、スパンデックス繊維である。本明細書で使用される場合、「スパンデックス」は、その通常の定義、即ち、繊維形成性物質が少なくとも85重量パーセントのセグメント化ポリウレタンから構成される長鎖合成ポリマーである製造された繊維を有する。スパンデックスタイプのセグメント化ポリウレタンの中では、例えば、米国特許第2,929,801号明細書、米国特許第2,929,802号明細書、米国特許第2,929,803号明細書、米国特許第2,929,804号明細書、米国特許第2,953,839号明細書、米国特許第2,957,852号明細書、米国特許第2,962,470号明細書、米国特許第2,999,839号明細書、及び米国特許第3,009,901号明細書に記載されているものである。
【0045】
スパンデックスエラストマーフィラメントを作製するための一部のプロセスでは、押出し直後にスパンデックスフィラメントを固めるために融合ジェット(coalescing jet)が使用される。乾式紡糸スパンデックスフィラメントが押出し直後に粘着性であることも周知である。このような粘着性フィラメントの群を一緒にすることと、融合ジェットを使用することとの組み合わせは、融合マルチフィラメント糸を生成し、次いでこれは典型的には巻き取り前にシリコーン又は他の仕上げ剤でコーティングされて、パッケージでのくっつきを防止する。実際にはそれらの長さに沿って互いに接着する多数のとても小さい個別のフィラメントである、このようなフィラメントの融合群化は、同じ線密度のスパンデックスの単一フィラメントに対して多くの点で優れている。
【0046】
エラストマー単糸におけるエラストマーフィラメントは、連続フィラメントであることが好ましく、第2の糸に1つ以上の個別のフィラメントの形態で又はフィラメントの1つ以上の融合群化の形態で存在することができる。しかしながら、好ましいエラストマー単糸では、フィラメントの融合群化を1つだけ使用することが好ましい。1つ以上の個別のフィラメント又はフィラメントの1つ以上の融合群化として存在するかどうかにかかわらず、緩和状態でのエラストマーフィラメントの全体線密度は、一般に17~560デシテックス(15~500デニール)であり、好ましい線密度範囲は、44~220デシテックス(40~200デニール)である。
【0047】
最終の第2の糸速度と比較して、少なくとも1つの連続エラストマーフィラメントのより遅い送出速度を使用して、短繊維と組み合わせる前に、少なくとも1つの連続エラストマーフィラメントを引き延ばすこと又は伸縮することによって、張力下で少なくとも1つの連続エラストマーフィラメントを第2の糸に組み込むことが好ましい。この引き延ばすことは、連続エラストマーフィラメントの伸縮比として記載されることができ、これは、最終の第2の糸速度を連続エラストマーフィラメントの送出速度で割ったものである。
【0048】
典型的な伸縮比は、1.5~5.0であり、1.5~3.50が好ましい。伸縮比が低いと弾性回復性が低くなるが、伸縮比が非常に高いと単糸の加工が難しくなり、布地がきつすぎて不快になる。最適な伸縮比は、エラストマーコアの重量%含有量にも依存する。張力装置を使用してエラストマー繊維を引張る及び伸縮することもできるが、張力及び伸縮の再現及び制御が難しいため、あまり好ましくない。最適な伸縮比は、布地の望まれるフィット感及び感触に基づいて、最終的に布地ごとに決定される。
【0049】
少なくとも1つの連続エラストマーフィラメントをハロゲン化自己消火性短繊維の第2の糸に組み込むことは、例えば、その最も簡易な実際の適用において、ハロゲン化自己消火性短繊維のロービング、スライバー、又は集合体をドラフトロールのセットを通して通過させてドラフトされた繊維塊をリング撚りして単糸にすることによって達成することができる。少なくとも1つの連続エラストマーフィラメントは、典型的には、ボビンからフィードロールのセットを通って供給され、続いてドラフトローラーの最終セットの前に短繊維に供給される。従来の技術を使用して、ドラフトローラーの表面速度に対するフィードローラーの遅い相対表面速度を増減して、最終のリング撚り単糸の弾性伸縮及び張力の量を決定する。
【0050】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第2の糸のシースは、本明細書で前述したような耐熱性ポリマー繊維を更に含むことができる。いくつかの他の実施形態では、少なくとも1つの第2の糸のシースは、本明細書で前述したような耐切断性の耐熱性ポリマー繊維を更に含むことができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第2の糸のシースは、耐燃性繊維を更に含むことができる。「耐燃性」繊維とは、その布地からのみ作られた布地が、ASTM D6143-99の垂直燃焼試験に従って、炭化長さが4インチ以下、及び残炎時間が2秒以下であることを意味する。適切な耐燃性繊維にはアラミド繊維が含まれ、メタ-アラミド繊維が特に好ましく、好ましいメタ-アラミドは、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)である。潜在的に有用な耐燃性繊維には、メタ-アラミド、ポリアミドイミド、難燃剤処理(FR)セルロース、FR綿、FRリヨセル、又はそれらの混合物が含まれる。第2の糸及び最終布地が本明細書で議論される性能基準を満たす限り、任意の数の繊維は、第2の糸に含まれることができる。
【0052】
第2の糸に使用される場合、耐熱性ポリマー繊維、耐切断性の耐熱性ポリマー繊維、又は耐燃性繊維は、好ましくは約2~20センチメートル、好ましくは約3.5~6センチメートルの長さを有する短繊維であることが好ましい。又、第2の糸に使用される場合、耐熱性ポリマー繊維、耐切断性の耐熱性ポリマー繊維、及び耐燃性繊維は、好ましくは直径5~25マイクロメートル、及び線密度0.5~7デシテックスの短繊維であることが好ましい。
【0053】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第2の糸のシースは、帯電防止繊維として当技術分野で知られているもの、或いは糸における又は得られる布地における電荷の蓄積を低減する能力を有する繊維を更に含むことができる。いくつかの好ましい実施形態では、少なくとも1つの第2の糸のシースは、少なくとも1つの第2の糸の総重量に基づいて、少なくとも1~5重量パーセントの帯電防止繊維を含む。好ましい帯電防止繊維は、炭素コーティング又は炭素粒子として繊維に炭素が存在することによって機能するものであり、特に、帯電の蓄積を除去するのに役立つが、実際の意味では導電性があるとは考えられていない帯電防止繊維である。いくつかの実施形態では、炭素粒子を含むアラミド繊維が好ましい。
【0054】
第2の糸は、無機繊維を含まない、又は実質的に含まない。諸撚り糸の耐切断性の利点は、第1の糸によってもたらされるため、意図した用途の大部分で第2の糸に無機繊維を追加する必要がなくなる。
【0055】
諸撚り糸は、少なくとも第1の糸と少なくとも第2の糸から形成される。諸撚り糸は、少なくとも2つの個別の単糸を撚り合わせて作られる。「少なくとも2つの個別の単糸を撚り合わせる」という句は、一方の糸が他方の糸を完全に覆うことなく、2つの単糸が撚り合わされることを意味する。これは、理想的には得られる被覆された糸の表面に第1の単糸のみが露出するように、諸撚り糸を、第1の単糸が第2の単糸の周りに実質的又は完全に巻き付けられる被覆された糸又は巻き付けられた糸と区別する。
【0056】
1つの好ましい実施形態では、諸撚り糸は、少なくとも2つの単糸から作られ、第1の単糸は、(a)第1の糸の総重量に基づいて、少なくとも50重量パーセントの耐熱性ポリマー繊維を含む少なくとも1つの第1の糸であり、この場合、少なくとも1つの第1の糸に存在するポリマー繊維の少なくとも30重量パーセントは、F2992-15に従って500グラム力以上の耐切断性を有する耐切断性の耐熱性ポリマー繊維であり、少なくとも1つの第1の糸は、耐切断性の耐熱性ポリマー繊維を含むシース及び無機繊維を含むコアを備えたシース/コア構造を更に有し、第2の単糸は、(b)ハロゲン化自己消火性短繊維のシース及び少なくとも1つの連続エラストマーフィラメントを含むコアを備えたシース/コア構造を有する少なくとも1つの第2の糸であり、この場合、第2の糸の総重量に基づいて、少なくとも1つの第2の糸の60~95重量パーセントは、ハロゲン化自己消火性繊維であり、ハロゲン化自己消火性繊維は、少なくとも1つの連続エラストマーフィラメントと接触しており、第2の糸は、無機繊維を含まない、又は実質的に含まない。単糸のそれぞれは、多少の撚りを有し得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、2つの単糸から作られた諸撚り糸は、200~3000デシテックスの総線密度を有する。単糸のいずれかの個々の短繊維は、0.5~7デシテックスの線密度を有することができ、好ましい線密度範囲は、1.5~3デシテックスである。諸撚り糸、及びそれらの諸撚り糸を構成する単糸は、糸又はその糸から作られた布地の機能又は性能が所望の使用に対して損なわれない限り、他の材料を含むことができる。
【0058】
諸撚り糸は、Prickettの米国特許第6,952,915号明細書に開示されたプロセスによって単糸から作られることができ、諸撚り糸は、そこに開示されているように広範囲の諸撚りを有することができる。例えば、2段階プロセス又は組み合わされたプロセスのいずれかを使用することができる。2段階プロセスの第1の段階では、2つ以上の単糸が諸撚りなしで互いに平行に組み合わされ、パッケージに巻き付けられる。次の工程では、次いで単糸(撚りがある場合)の逆撚りを使用して、2つ以上の組み合わされた単糸が一緒にリング撚り合わされて諸撚り糸を形成する。諸撚り糸は、通常「Z」撚りを有し、単糸は、通常「S」撚りを有する。或いは、これらの工程の両方を1回の操作で組み合わす、組み合わされたプロセスを使用して単糸を諸撚りすることができる。単糸を諸撚りするために一般的に使用される装置は、Volkmann及びMuratec(旧Murata)などの装置製造業者から販売されている。
【0059】
次いで、諸撚り糸を他の同じ又は異なる諸撚り糸と組み合わせて糸束を形成して布地を形成することができ、又は、所望の布地の要件に応じて、個々の諸撚り糸を使用して布地を形成することができる。例えば、記載の諸撚り糸の2つ以上を組み合わせて、撚りの有無にかかわらず編機に供給できる糸束を形成することができる。或いは、糸束は、最終の布地に所望の特性を付与するために、1つ以上の異なる単糸を有する上記の諸撚り糸の1つ以上を用いて作られることができる。現代の編機は複数の諸撚り糸を供給することで布地を編むことができるため、編機に供給された諸撚り糸の束には撚りを加える必要はないが、必要に応じて束に撚りを加えることができる。
【0060】
好ましい諸撚り糸に使用される少なくとも第1の糸は、好ましくはポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)(PPD-T)短繊維シースを有し、PPD-Tは、3.8cm(1.5インチ)の切断長さ及びフィラメント当たり1.7デシテックス(フィラメント当たり1.5デニール)のフィラメント密度を有する。短繊維シースは、14~29綿番手糸の形状であることができる。
【0061】
好ましい諸撚り糸に使用される少なくとも1つの第2の糸は、リング精紡される330デシテックス(295デニール、18綿番手に相当)の単糸である。この単糸は、エラストマーコアフィラメントを少なくとも部分的に覆うモダクリル短繊維シースを有し、モダクリル短繊維は、4.8cm(1.89インチ)の切断長さと、フィラメント当たり1.7デシテックス(フィラメント当たり1.5デニール)のフィラメント密度を有する。エラストマーコアは、3.0倍の伸縮比(約200パーセントの伸び)を有する78デシテックス(70デニール)のスパンデックス融合フィラメント糸である。いくつかの好ましい実施形態では、第2の糸の約92重量パーセントは、モダクリル短繊維から構成され、第2の糸の8重量パーセントは、エラストマーコアである。
【0062】
本発明は又、諸撚り糸、又は諸撚り糸を含む糸の束から作られた耐切断性織布又は編布に関し、諸撚り糸は、本明細書に記載の少なくとも1つの第1の糸と少なくとも1つの第2の糸とを含む。
【0063】
具体的には、本発明は、少なくとも2つの単糸から作られた諸撚り糸から作られた耐切断性織布又は編布に関し、第1の単糸は、(a)第1の糸の総重量に基づいて、少なくとも50重量パーセントの耐熱性ポリマー繊維を含む少なくとも1つの第1の糸であり、この場合、少なくとも1つの第1の糸に存在するポリマー繊維の少なくとも30重量パーセントは、F2992-15に従って500グラム力以上の耐切断性を有する耐切断性の耐熱性ポリマー繊維であり、少なくとも1つの第1の糸は、耐切断性の耐熱性ポリマー繊維を含むシース及び無機繊維を含むコアを備えたシース/コア構造を更に有し、第2の単糸は、(b)ハロゲン化自己消火性短繊維のシース及び少なくとも1つの連続エラストマーフィラメントを含むコアを備えたシース/コア構造を有する少なくとも1つの第2の糸であり、この場合、第2の糸の総重量に基づいて、少なくとも1つの第2の糸の60~95重量パーセントは、ハロゲン化自己消火性繊維であり、ハロゲン化自己消火性繊維は、少なくとも1つの連続エラストマーフィラメントと接触しており、第2の糸は、無機繊維を含まない、又は実質的に含まない。好ましくは、耐切断性織布又は編布は、NFPA-2112-2018に従って試験した場合、最大残炎時間が2秒以下、及び重量損失が5重量パーセント以下である。
【0064】
少なくとも1つの第1の糸と少なくとも1つの第2の糸は、諸撚り糸において一緒に相乗的に作用し、糸に組み込まれた少なくとも1つの連続エラストマーフィラメントは、改善された伸縮性及び回復性を提供し、一方、耐熱性短繊維は、火炎中での構造を提供し、耐熱性の耐切断性有機短繊維及び無機フィラメントは、布地に優れた耐切断性を提供する。このような糸から作られた布地は、柔らかく、快適で、摩耗性がなく、更に耐切断性である。
【0065】
第1の糸と第2の糸を諸撚りすることは、エラストマー単糸を、弛緩したときにそれ自体ループすることなく伸長状態に保持するのに役立つ。更に、束が諸撚り糸から構成されている場合、製編及び製織中の糸の張力の制御は、それほど重要でない。
【0066】
織布及び/又は編布は、本明細書に記載の諸撚り糸を含むことができる。好ましい織布及び編布は、NFPA-2112-2018に従って試験した場合、最大残炎時間が2秒以下、及び重量損失が5重量パーセント以下である。
【0067】
好ましい布地は、編布であり、任意の適切な編みパターンが許容される。耐切断性及び快適性は、編布のきつさに影響され、そのきつさは任意の具体的な要求を満たすように調節することができる。多くの耐切断性物品における耐切断性及び快適性の非常に効果的な組み合わせは、例えば、シングルジャージー及びテリーニットパターンで見出されている。好ましくは、布地は、約4~30オンス/ヤード2、好ましくは6~25オンス/ヤード2の坪量を有し、布地は、より高い熱保護及び切断保護を提供する坪量範囲の上限にある。
【0068】
物品は、本明細書に記載の諸撚り糸を含むことができ、又は物品は、本明細書に記載の諸撚り糸を含む前述の布地から作られることができる。特に有用な物品には、手袋、スリーブ、及びエプロンが含まれる。
【0069】
試験方法
残炎及び重量損失は、NFPA 2112-2018「Standard on Flame-Resistant Clothing for Protection of Industrial Personnel Against Short-Duration Thermal Exposures from Fire」、具体的には同規格のセクション8.8の手順概要に従って決定された。
【0070】
本明細書で論じられる「耐熱性ポリマー繊維」の決定は、ASTM E2105-2016-Standard Practice for General Techniques of Thermogravimetric Analysis(TGA)Coupled With Infrared Analysis(TGA/IR)を使用することによって達成することができる。合成有機ポリマーが元の繊維重量の90パーセントを保持しているかどうかの分析は、試料を空気中で毎分20℃の速度で500℃まで加熱することによって行われる。
【実施例
【0071】
諸撚り糸及びその糸から作られた編物を、実施例1、2、3及び比較例Aに例示し、表5にまとめる。
【0072】
実施例1
諸撚り弾性糸は、第1の糸と第2の糸を諸撚りすることによって作られた。
【0073】
第1の糸は、パラ-アラミド繊維のシースと50ミクロンのステンレススチールワイヤーコアを有する14綿番手のシース-コア糸であり、リング紡績フレームにて紡績された。パラ-アラミド繊維は、2インチのポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)短繊維であった。
【0074】
第2の糸は、70デニールのスパンデックスコアの周りに2インチのモダクリル短繊維のリング紡績フレームにてコア紡績することによって作られた18綿番手のシース-コア糸であり、スパンデックスコアは、シース-コア糸に組み込まれた(紡がれた)際に3倍に伸長された。
【0075】
第1の糸と第2の糸を諸撚りすることによって作られた得られた諸撚り弾性糸は、総綿番手が16/2、又は675デニールであった。糸成分の相対量を表2に示す。
【0076】
得られた諸撚り弾性糸を、Shima-Seiki手袋編機にて13ゲージのスリーブに編んだ。得られたスリーブは、優れた手への適合性及び形状適合性を有した。得られたスリーブからの布地試料を、NFPA-2112-2018規格に詳述されている耐火手袋試験法(fire-resistant glove test method)に従って燃焼試験した。得られた伸縮布地は、試験中に消費された4.8%の重量で0秒の残炎があることが判明したが、これは、仕様で許容されている2秒の最大残炎要件及び5%の重量損失制限を下回った。
【0077】
【表2】
実施例2
以下の点を除いて、実施例1の諸撚り弾性糸を繰り返した。第1の糸は、パラ-アラミド繊維シース及び35ミクロンのステンレススチールワイヤーコアで作られたステンレススチールワイヤーコアを有する26綿番手糸であった。第2の糸は、モダクリルシース及び紡糸中に3倍に伸張された40デニールのスパンデックスコアを有する32綿番手糸であった。
【0078】
実施例1と同様に、第1の糸と第2の糸を諸撚りして作られた得られた諸撚り弾性糸は、総綿番手が29/2、又は371デニールであった。糸成分の相対量を表3に示す。
【0079】
得られた諸撚り弾性糸を、Shima-Seiki手袋編機にて18ゲージのスリーブに編んだ。得られたスリーブは、優れた形状適合性を有した。得られたスリーブからの布地試料を洗浄して編み油(knitting oil)と仕上げ剤を除去し、NFPA-2112-2018規格に詳述されている耐火手袋試験法に従って燃焼試験した。得られた伸縮布地は、試験中に消費された3.3%の重量で0秒の残炎があることが判明したが、これは、仕様で許容されている2秒の最大残炎要件及び5%の重量損失制限を下回った。
【0080】
【表3】
実施例3
以下の点を除いて、実施例1の諸撚り弾性糸を繰り返した。
【0081】
第1の糸は、パラ-アラミド繊維シース及び45ミクロンのステンレススチールワイヤーコアで作られたステンレススチールワイヤーコアを有する19.5綿番手糸であった。第2の糸は、紡糸中に3倍に伸張された40デニールのスパンデックスコアを有する32綿番手のシース-コア糸であったが、シースは、82重量%のモダクリル短繊維と、10重量%の切断長さ2インチのメタ-アラミド短繊維ブレンドとのブレンドであり、具体的には、メタ-アラミドブレンドは、93重量%のポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)短繊維、5重量%のポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)短繊維、及び2重量%のカーボン-コアナイロン帯電防止繊維を含んだ。
【0082】
実施例1と同様に、第1の糸と第2の糸を諸撚りして作られた得られた諸撚り弾性糸は、総綿番手が24/2、又は439デニールであった。糸成分の相対量を表4に示す。
【0083】
得られた諸撚り弾性糸を、Shima-Seiki手袋編機にて18ゲージのスリーブに編んだ。得られたスリーブは、優れた形状適合性を有した。
【0084】
作製された得られたスリーブの布地試料を洗浄して編み油と仕上げ剤を除去し、次いでNFPA-2112-2018規格に詳述されている耐火手袋試験法に従って燃焼試験した。得られた伸縮布地は、試験中に消費された3.9%の重量で0秒の残炎があることが判明したが、これは、仕様で許容されている2秒の最大残炎要件及び5%の重量損失制限を下回った。
【0085】
作製されたスリーブの別の布地試料を、EN407:2020規格に詳述されている耐火手袋試験法に従って燃焼試験した。得られた伸縮布地は、火炎に曝してから3秒及び15秒後に、残炎が0秒、及び残光が0秒であることが判明したが、これは、仕様で許容されている2秒の最大残炎要件及び5秒の最大残光要件を下回った。
【0086】
【表4】
比較例A
実施例3のものと同様の比較用の諸撚り弾性糸が作られたが、パラ-アラミド繊維シース及びステンレススチールワイヤーコアを有する第1の糸は、1.5インチのポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)短繊維と45ミクロンのステンレススチールワイヤーコアで作られた。第2の糸は、再び32綿番手のシース-コア糸であったが、40デニールのスパンデックスコアの周りに切断長さ1.5インチのナイロン短繊維コア-スパンのみのシースを有した。
【0087】
得られた24’s-2番手(24’s-2 count)の諸撚り弾性糸を、Shima-Seiki手袋編機にて18ゲージのスリーブに編んだ。得られたスリーブは、優れた形状適合性を有した。
【0088】
しかしながら、作製された試料を、EN407:2020規格に詳述されている耐火手袋試験法に従って燃焼試験した。得られた伸縮布地は、火炎に3秒曝した後、少なくとも25秒の残炎があることが判明したが、これは、仕様に記載されている最低ランクさえを達成するための20秒の最大残炎要件よりも高かった。
【0089】
わずか3秒の火炎曝露で過度の残炎が発生したため、EN407試験の15秒の曝露についてもNFPA-2112試験の12秒の曝露についても、その後の試験は行わなかった。
【0090】
【表5】
【国際調査報告】