(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-29
(54)【発明の名称】動的栄養制御プロセス
(51)【国際特許分類】
C12N 1/00 20060101AFI20240322BHJP
C12Q 3/00 20060101ALI20240322BHJP
C12Q 1/06 20060101ALI20240322BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20240322BHJP
【FI】
C12N1/00 B
C12Q3/00
C12Q1/06
C12N5/071
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562763
(86)(22)【出願日】2022-04-12
(85)【翻訳文提出日】2023-11-15
(86)【国際出願番号】 US2022024404
(87)【国際公開番号】W WO2022221269
(87)【国際公開日】2022-10-20
(32)【優先日】2021-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100141025
【氏名又は名称】阿久津 勝久
(72)【発明者】
【氏名】プライス,ジェイムス
(72)【発明者】
【氏名】バージェス-ヴォーサンガー,ステファニー
(72)【発明者】
【氏名】レヴィ,アマリー
(72)【発明者】
【氏名】サヴェージ,スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイス,アビー
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ08
4B063QQ68
4B063QS39
4B063QX01
4B065AA90X
4B065BB15
4B065BC11
4B065BC13
4B065CA44
(57)【要約】
細胞培養プロセスにおける栄養供給を制御するための材料及び方法が提供される。サンプルは、細胞培養物を含む生物反応器から受け取られる。栄養素の残留量は、受け取ったサンプルから決定される。現在の培養日と前日との間の細胞増殖速度が計算される。翌日の積算生細胞密度が予測される。翌日の栄養目標が計算される。栄養素は、計算された栄養目標に従って生物反応器に供給される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養プロセスにおいて栄養供給を制御する方法であって、
細胞培養物を含む生物反応器からサンプルを受け取ることと、
受け取った前記サンプルから栄養素の残留量を測定することと、
測定された前記栄養素の残留量に基づいて、現在日の生細胞密度を決定することと、
前記現在日の決定された前記生細胞密度に少なくとも基づいて、前記現在の培養日と前日との間の細胞増殖速度を計算することと、
計算された前記細胞増殖速度に少なくとも基づいて、翌日の生細胞密度を予測することと、
前記翌日の前記予測生細胞密度に少なくとも基づいて、前記翌日の積算生細胞密度を予測することと、
前記翌日の前記予測積算生細胞密度に少なくとも基づいて、前記翌日の栄養目標を計算することと、
前記翌日の計算された前記栄養目標に従って、栄養素を前記生物反応器に供給することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記細胞増殖速度は、前記現在日の決定された前記生細胞密度、及び前日に測定された生細胞密度に基づいて、前記現在の培養日と前日との間で計算される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記前日に測定された前記生細胞密度は、非一時的記憶媒体から取り出される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記翌日の前記生細胞密度は、前記現在日の計算された前記細胞増殖速度及び前記決定された生細胞密度に基づいて予測される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記翌日の前記積算生細胞密度は、前記翌日の前記予測生細胞密度、前記現在日の決定された前記生細胞密度、及び前記現在日の積算生細胞密度に基づいて予測される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記現在日の前記積算生細胞密度は、非一時的記憶媒体から取り出される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
計算された前記細胞増殖速度に少なくとも基づいて、前記前日の一日当たりの特定の栄養消費率を計算することと、
前記一日当たりの特定の栄養消費率に基づいて、前記現在日と前記翌日との間に消費される栄養素の量を予測することと、
消費される予測された前記栄養素の量に少なくとも基づいて、前記栄養目標を計算することと、を更に含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記前日の前記一日当たりの特定の栄養消費率は、計算された前記細胞増殖速度、前記現在日の積算生細胞密度、及び前記前日の積算生細胞密度に基づいて計算される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記現在日の前記積算生細胞密度及び前記前日の前記積算生細胞密度は、非一時的記憶媒体から取り出される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記現在日と前記翌日との間に消費される栄養素の前記量は、前記一日当たりの特定の栄養消費率、前記翌日の前記予測積算生細胞密度、及び前記現在日の積算生細胞密度に基づいて予測される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記栄養目標は、消費される前記予測栄養素及び値を維持するために経験的に決定された栄養素に基づいて計算される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
値を維持するための前記経験的に決定された栄養素は、非一時的記憶媒体から取り出される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記栄養素は、グルコース、グルタメート、ガラクトース、ラクテート及びグルタミンから選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記栄養素は1つ以上の単糖を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記残留栄養測定は、前記生物反応器内の栄養濃度を分析することを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記残留栄養測定は、オフライン栄養測定及びインライン栄養測定のうちの1つ以上を行うことを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記残留栄養測定は、NovaFlex装置及びラマンプローブのうちの1つ以上によって行われる、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記生物反応器は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞生物反応器及び5L生物反応器のうちの1つ以上である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記生物反応器内の細胞は哺乳動物細胞である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記細胞はCHO細胞である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
細胞培養プロセスにおいてグルコース供給を制御する方法であって、
細胞培養物を含む生物反応器からサンプルを受け取ることと、
受け取った前記サンプルからグルコースの残留量を測定することと、
測定された前記グルコースの残留量に基づいて現在日の生細胞密度を決定することと、
前記現在日の決定された前記生細胞密度に少なくとも基づいて、前記現在の培養日と前日との間の細胞増殖速度を計算することと、
計算された前記細胞増殖速度に少なくとも基づいて、翌日の生細胞密度を予測することと、
前記翌日の前記予測生細胞密度に少なくとも基づいて、前記翌日の積算生細胞密度を予測することと、
前記翌日の前記予測積算生細胞密度に少なくとも基づいて、前記翌日のグルコース目標を計算することと、
前記翌日の計算された前記グルコース目標に従って、グルコースを前記生物反応器に供給することと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年4月13日に出願された米国仮出願第63/174,143号の特許協力条約(PCT)出願であり、そのPCTの第8条の下での優先権を主張し、その全体は、以下に完全に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
細胞培養の生産性は、高い細胞密度を可能にする培養培地管理の最適化に依存する。栄養供給は、プロセス最適化のための重要なパラメータである。高細胞密度プロセスは、かなりの量の栄養素を必要とする可能性があり、一日当たりの必要量は、細胞タイプ又は密度によって変化する。
【0003】
グルコース供給は、生物反応器プロセス最適化のための重要な因子である。高い細胞密度及び生産性は、多くの場合、かなりの量のグルコース(通常、ピーク細胞密度で1日当たり10g/Lを超える)を供給する必要性を意味する。既存のグルコース供給アルゴリズムは、計算能力及びリソースを消費する履歴データベースに依存する。
【0004】
細胞株についての一日当たりのグルコース必要量は、細胞株間で大きく異なり得る。生産生物反応器目標播種密度及び基本培地グルコース濃度などのプロセスパラメータの変化は、一日当たりのグルコース必要量に影響を及ぼし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
履歴データベースに依存することなく、グルコース供給プロセスなどの栄養供給プロセスを自動化する細胞培養溶液が必要とされている。また、プロセスパラメータの変化を考慮に入れる予測細胞ベースグルコースアルゴリズムも必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
所与の細胞株についての一日当たりの栄養目標必要量を予測するための改善された材料及び方法が必要とされ、本発明によって対処される。開示される技術の一態様は、細胞培養プロセスにおける栄養供給を制御する方法に関する。サンプルは、細胞培養物を含む生物反応器から受け取ることができる。栄養素の残留量は、受け取られたサンプルから測定され得る。現在日の可変細胞密度は、測定された栄養素の残留量に基づいて決定され得る。現在日の決定された生細胞密度に少なくとも基づいて、現在の培養日と前日との間の細胞増殖速度が計算されてもよい。計算された細胞増殖速度に少なくとも基づいて、翌日の生細胞密度が予測されてもよい。翌日の予測生細胞密度に少なくとも基づいて、翌日の積算生細胞密度が予測されてもよい。翌日の予測積算生細胞密度に少なくとも基づいて、翌日の栄養目標が計算されてもよい。翌日の計算された栄養目標に従って、栄養素が生物反応器に供給されてもよい。
【0007】
一実施形態では、細胞増殖速度は、現在日の決定された生細胞密度、及び前日に測定された生細胞密度に基づいて、現在の培養日と前日との間で計算されてもよい。
【0008】
一実施形態では、翌日の生細胞密度は、現在日の計算された細胞増殖速度及び決定された生細胞密度に基づいて予測されてもよい。
【0009】
一実施形態では、翌日の積算生細胞密度は、翌日の予測生細胞密度、現在日の決定された生細胞密度、及び現在日の積算生細胞密度に基づいて予測されてもよい。
【0010】
一実施形態では、計算された細胞増殖速度に少なくとも基づいて、前日の一日当たりの特定の栄養消費率が計算されてもよい。一日当たりの特定の栄養消費率に基づいて、現在日と翌日との間に消費される栄養素の量が予測されてもよい。消費される予測された栄養素の量に少なくとも基づいて、栄養目標が計算されてもよい。
【0011】
一実施形態では、前日の一日当たりの特定栄養消費率は、計算された細胞増殖速度、現在日の積算生細胞密度、及び前日の積算生細胞密度に基づいて計算されてもよい。
【0012】
一実施形態では、現在日と翌日との間に消費される栄養素の量は、一日当たりの特定の栄養消費率、翌日の予測積算生細胞密度、及び現在日の積算生細胞密度に基づいて予測されてもよい。
【0013】
一実施形態では、栄養目標は、消費される予測栄養素及び値を維持するために経験的に決定された栄養素に基づいて計算されてもよい。
【0014】
一実施形態では、前日に測定された生細胞密度、現在日の積算生細胞密度、前日の積算生細胞密度、及び値を維持するために経験的に決定された栄養素のうちの1つ以上が、非一時的コンピュータ可読媒体から読み出され得る。
【0015】
一実施形態では、栄養素は、グルコース、グルタメート、ガラクトース、ラクテート及びグルタミンから選択され得る。
【0016】
一実施形態では、栄養素は、1つ以上の単糖を含んでもよい。
【0017】
一実施形態では、残留栄養測定は、生物反応器内の栄養濃度を分析することを含んでもよい。
【0018】
一実施形態では、残留栄養測定は、オフライン栄養測定及びインライン栄養測定のうちの1つ以上を行うことを含んでもよい。
【0019】
一実施形態では、残留栄養測定は、NovaFlex装置及びラマンプローブのうちの1つ以上によって行われてもよい。
【0020】
一実施形態では、生物反応器は、チャイニーズハムスター卵巣(Chinese hamster ovary、CHO)細胞生物反応器及び5L生物反応器のうちの1つ以上であってもよい。CHO以外の生物製剤の製造において使用され得る他の哺乳動物細胞型は、組換え細胞などを含む。このような哺乳動物細胞型の非限定的な例としては、HEK、293及びPerC6が挙げられる。このプロセスは、例えば酵母や細菌などの他の非哺乳動物細胞型にも使用し得る。
【0021】
一実施形態では、生物反応器内の細胞は哺乳動物細胞であってもよい。
【0022】
一実施形態では、細胞はCHO細胞であり得る。
【0023】
開示される技術の別の態様は、細胞培養プロセスにおけるグルコース供給を制御する方法に関する。サンプルは、細胞培養物を含む生物反応器から受け取ることができる。グルコースの残留量は、受け取られたサンプルから測定され得る。現在日の可変細胞密度は、グルコースの測定された残留量に基づいて決定され得る。現在日の決定された生細胞密度に少なくとも基づいて、現在の培養日と前日との間の細胞増殖速度が計算されてもよい。計算された細胞増殖速度に少なくとも基づいて、翌日の生細胞密度が予測されてもよい。予測生細胞密度に少なくとも基づいて、翌日の積算生細胞密度が予測されてもよい。翌日の予測積算生細胞密度に少なくとも基づいて、翌日のグルコース目標が計算されてもよい。グルコースは、翌日の計算されたグルコース目標に従って、生物反応器に供給されてもよい。
【0024】
本開示の更なる特徴及びそれによって提供される利点は、添付の図面に示される特定の実施形態を参照して以下でより詳細に説明され、同様の要素は同様の参照符号によって示される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
ここで、添付の図面を参照するが、これらの図面は、必ずしも縮尺通りに描かれておらず、本開示に組み込まれて本開示の一部を構成し、開示される技術のさまざまな実装形態及び態様を示し、説明とともに、開示される技術の原理を説明する。図面のうち:
【
図1】本開示の1つ以上の実施形態を実施するために使用され得る例示的な環境の概略図である。
【
図2】本開示の1つ以上の実施形態を実施するために使用され得る例示的な環境の概略図である。
【
図3】開示される技術の一態様による、グルコースアルゴリズムのフローチャートである。
【
図4】開示された技術の一態様による、グルコースを供給するための自動化プロセスの例である。
【
図5】開示された技術の一態様による、栄養供給制御システムのブロック図である。
【
図6】消費された予測-実際グルコース及び平均対培養日を示すチャートである。
【
図7】測定されたグルコース及び平均対培養日を示すチャートである。
【
図8】グルコース測定値対アルゴリズムを示すチャートである。
【
図9】細胞培養プロセスにおける栄養供給を制御するプロセスを示す例示的なフローチャートである。
【
図10】細胞培養プロセスにおけるグルコース供給を制御するプロセスを示す別の例示的なフローチャートである。
【
図11】モノクローナル抗体1(「MAB1」)を増殖させるための開発(「Ambr250」)規模の生物反応器、パイロット規模の生物反応器、及び適正製造プロセス(「GMP」)規模の生物反応器におけるグルコース測定値対アルゴリズムを示すチャートである。
【
図12】MAB1について測定されたグルコース及び平均対培養日を示すチャートである。
【
図13】二重特異性抗体1(「BsAb1」)を増殖させるための開発規模(Ambr250)の生物反応器、パイロット規模の生物反応器、及びGMP規模の生物反応器におけるグルコース測定値対アルゴリズムを示すチャートである。
【
図14】BsAB1について測定されたグルコース及び平均対培養日を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
開示される技術のいくつかの実装形態は、添付の図面を参照してより十分に説明される。しかしながら、この開示された技術は、多くの異なる形態で具現化されてもよく、本明細書に記載の実施態様に限定されると解釈されるべきではない。開示される技術のさまざまな要素を構成するものとしてここに説明される構成要素は、例示的なものであって、制限的ではないことが意図されている。本明細書に説明された構成要素と同じか又は類似の機能を果たす多くの好適な構成要素は、開示される電子装置及び方法の範囲内に含まれることを意図されている。本明細書において説明されていない他の構成要素には、例えば、開示される技術の開発後に開発された構成要素が挙げられ得るが、それに限られない。
【0027】
また、1つ又は2つ以上の方法工程への言及が、明示的に識別されたそれらの工程間の追加の方法工程又は介在する方法工程の存在を除外しないことも理解されたい。
【0028】
文脈から他に明らかでない限り、「a」又は「an」の実体という用語は、その実体の1つ以上を指すことに留意されたい。例えば、「アミノ酸」は、1つ以上のタンパク質を表すと理解される。したがって、用語「a」(又は「an」)、「1つ以上」、及び「少なくとも1つ」は、本明細書において互換的に使用することができる。
【0029】
「栄養素」という用語は、生物が生存、成長、さもなければバイオマスを加えるために使用する任意の化合物、分子、又は物質を指すことができる。栄養素の例としては、炭水化物源(例えば、グルコース、ガラクトース、マルトース若しくはフルクトースなどの単糖、又はより複雑な糖類)、アミノ酸、ビタミン(例えば、B群ビタミン(例えば、B12)、ビタミンA、ビタミンE、リボフラビン、チアミン及びビオチン)を挙げることができる。本発明では、1つ以上の栄養素を代用分子として利用して、生物反応器に添加する総栄養培地の量を決定することができる。いくつかの実施形態では、「栄養素」という用語は、単糖類、ビタミン、及びアミノ酸を指し得る。
【0030】
「アミノ酸」という用語は、20個の標準アミノ酸のいずれか、すなわちグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、システイン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸及びグルタミン酸、それらの単一の立体異性体、並びにそれらのラセミ混合物のいずれかを指す場合がある。「アミノ酸」という用語はまた、既知の非標準アミノ酸、例えば、4-ヒドロキシプロリン、ヒドロキシプロリン、s-スフロシステイン、ホスホチロシン、ε-N,N,N-トリメチルリジン、3-メチルヒスチジン、5-ヒドロキシリジン、O-ホスホセリン、γ-カルボキシグルタメート、ε-N-アセチルリジン、ω-N-メチルアルギニン、N-アセチルセリン、N,N,N-トリメチルアラニン、N-ホルミルメチオニン、γ-アミノ酪酸、ヒスタミン、ドーパミン、チロキシン、シトルリン、オルニチン、β-シアノアラニン、ホモシステイン、アザセリン、及びS-アデノシルメチオニンを指す場合がある。いくつかの実施形態において、アミノ酸は、グルタメート、グルタミン、リジン、チロシン又はバリンである。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、グルタメート又はグルタミンである。
【0031】
「栄養培地」、「供給培地」、「供給物」、「総供給物」、及び「総栄養培地」という用語は互換的に使用され得、細胞株を繁殖させ、増殖させ、バイオマスを細胞株に添加するために使用される「完全」培地を含み得る。栄養培地は、それ自体では細胞株を繁殖及び増殖させるのに十分ではない物質又は単純培地と区別され得る。したがって、例えば、グルコース又は単糖類は、他の必要な栄養素が存在しない場合、細胞株を増殖及び繁殖させるのに十分ではないので、それ自体は栄養培地ではない。
【0032】
一実施形態では、開示されるシステムは、細胞培養プロセス中にフィードバック制御を伴う自動化プロセスを含む。
【0033】
一実施形態では、ラクテート及びグルコースの両方が測定され、グルコース目標に対して段階的変更(一度に0.5g/L)が行われる。
【0034】
一実施形態では、グルコースのみが測定される。グルコースのみを使用することによって、研究室におけるプロセスを合理化し、生物反応器オペレータがアルゴリズムを使用して、グルコースを適切に供給することをより容易にする。
【0035】
一実施形態では、グルコース目標は1日1回計算される。アルゴリズムは、複数の測定を可能にするように更新されてもよく、目標は、次の24時間のものである。
【0036】
本アルゴリズムの概念は、人間のオペレータが使用した思考プロセスを採用し、それを、測定されたグルコース及びラクテートを使用してグルコース目標を増加又は減少させる段階的変更を行うフロー図に変換することに由来する。
【0037】
本開示のグルコースアルゴリズムは、人間のオペレータがグルコースを過小評価する(枯渇事象をもたらす)か、又はグルコースが枯渇しないことを確実にするためにグルコース目標を過大評価する傾向があるため、人間のオペレータよりも正確である傾向がある。本開示のアルゴリズムは、おそらくは人間のオペレータが制御し得るよりもグルコースを所望の濃度に制御するのに優れている。
【0038】
本開示の方法は、他の単糖類、栄養素などに使用し得る。そのような単糖類又は栄養素の非限定的な例として、グルタメート、ガラクトース、ラクテート、及びグルタミンが挙げられる。
【0039】
本開示の技術によれば、グルコースを最小限に抑えて糖化を回避することができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、生物反応器プロセス全体を通してアミノ酸の実質的に安定した濃度を維持するのに十分な量で、追加の栄養培地を生物反応器細胞培養物に添加し得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、生物反応器細胞培養物は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HEK-293細胞、又はVERO細胞を含み得る。いくつかの実施形態では、生物製剤は、抗体又は抗体様ポリペプチドであり得る。
【0042】
一実施形態では、本発明の方法は、任意の細胞培養培地の存在下で実施し得る。例えば、生物反応器プロセスは、無血清培地、無タンパク質培地(限定するものでもないが、タンパク質加水分解物を含有するタンパク質非含有培地など)、又は化学的に定義された培地の存在下で実施し得る。
【0043】
本発明では、さまざまな分析装置を使用し得る。分析装置は、代用分子又はマーカー、例えば細胞培養培地(例えば、ビタミン、ミネラル、イオン、糖など)のアミノ酸又は他の置換基を検出及び/又は定量することができる任意の機器又はプロセスを含み得る。分析装置は、ガスクロマトグラフィー、HPLC、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、酵素触媒アッセイ、及び/又は化学反応アッセイを行うための装置であり得る。
【0044】
図1に示すように、産生反応器102は、哺乳動物細胞培養物を含み得る。産生反応器102は、生物反応器、細胞培養反応器、又はサンプル生物反応器であり得る。産生反応器102は、ウェルプレート、振盪フラスコ、ベンチトップ容器、及び商業規模(例えば、15kL)のステンレス鋼反応器のうちの少なくとも1つであり得る。反応サンプルは、産生反応器102から取り出され、栄養供給制御システム110に送られ得る。栄養供給制御システム110は、グルコース測定を実行するグルコース測定システム104を含んでもよい。グルコース測定は、オフライン又はオンラインのいずれかで行うことができる。栄養供給制御システム110はまた、グルコース測定システム104からグルコース測定値を受け取り、グルコース目標の予測を実行するグルコース目標予測システム106を含み得る。栄養供給制御システム110は、グルコース計算システム108を含み得、次いで、予測されたグルコース目標を使用して、添加するグルコースの量を算出し、栄養供給システム120に命令を送信し得る。一実施形態では、グルコース測定システム104、グルコース目標予測システム106及びグルコース計算システム108によって実行されるプロセスは、1つ以上のプロセッサによって達成され得る。
【0045】
栄養供給システム120は、グルコース供給部112から産生反応器102に正しい量のグルコースを供給するポンプ111を含み得る。
【0046】
図2は、本開示の1つ以上の実施形態を実施するために使用し得る例示的な環境の概略図である。栄養供給制御システム110は、ネットワーク180を介して産生反応器102及び栄養供給システム120と通信し得る。栄養供給制御システム110は、栄養供給システム120に対して、産生反応器102に1つ以上の栄養素を供給するように指示し得る。
【0047】
図3は、グルコースアルゴリズムのフロー図を示す。302において、産生反応器102はサンプルを供給し得る。304において、グルコース測定システム104は、サンプルを受け取り、グルコース測定を行うことができる。306において、グルコース目標予測システム106は、産生反応器102に添加するグルコースの量を予測し得る。308において、グルコース計算システム108は、加えるグルコースの正しい量を算出して出力し得る。310において、正しい量のグルコースを産生反応器102に供給し得る。このアルゴリズムは、前培養に適用可能であり得る。例えば、本アルゴリズムは、強化されたシードトレインにグルコースを供給するために使用され得る。本アルゴリズムは、N-1灌流プロセス及び生産灌流プロセスにも適用可能であり得る。
【0048】
図4は、自動化プロセスの一例を示す。402において、産生反応器102はサンプルを供給し得る。404において、グルコース測定を行うことができ、例えば、404aでインライングルコース測定(例えば、NovaFlex)を、又は404bでラマンプローブを行うことができる。機器を使用して、オフラインpH並びにグルコース及びラクテートを測定し得る。406において、栄養供給制御システム110は、グルコース供給目標を予測し得る。408において、反応器制御ステーションは、予測されたグルコース供給目標を処理し得る。410において、コントローラは、グルコース供給量を算出し得る。412において、コントローラは、グルコースを産生反応器102に供給し得る。
【0049】
本明細書に開示される方法は、後続の生物反応器細胞培養における産生を増加させ得る。いくつかの実施形態では、本方法は、抗体(又は他の生物製剤)を産生する生物反応器細胞培養物における、産生される抗体(又は他の生物製剤)の量を増大させるか、又は抗体(又は他の生物製剤)の産生時間を短縮させ得る。本方法は、自動化サンプリング装置(例えば、オフライン、オンライン、インライン又はアットラインのサンプル分析など)によって培養サンプルを分析すること(生物反応器からサンプルを抽出してもしなくてもよい)を含み得る。本方法は、自動化分析装置によって培養サンプル(例えば、残留グルコースの濃度)を分析して、栄養素(又は他の代用マーカー)の量を表すデータを生成することを含み得る。本方法は、アルゴリズム又はコンピュータベースの処理プログラムを用いて、生成されたデータ(例えば、サンプルからの残留グルコースの分析から得られた)を処理することを含むことができ、ここで、処理されたデータは、生物反応器に添加する追加の栄養培地の量を決定するために使用される。本方法は、自動化供給装置によって決定された栄養培地の決定された量を生物反応器に添加することを含み得る。本方法は、各栄養培地添加の時間及び量を記録することを含み得る。
【0050】
哺乳動物細胞は、培養で成長することができる任意の哺乳動物細胞を含み得る。例示的な哺乳動物細胞としては、例えば、CHO細胞(CHO-K1、CHOK1SV(登録商標)、CHO DUKX-B11、CHO DG44など)、VERO、BHK、HeLa、CV1(Cos、Cos-7など)、MDCK、293、3T3、C127、骨髄腫細胞株(特にマウス)、PC12、HEK-293細胞(HEK-293T及びHEK-293Eなど)、PERC6、Sp2/0、NS0及びW138細胞が挙げられる。前述の細胞のいずれかに由来する哺乳動物細胞もまた使用することができる。いくつかの実施形態では、生物反応器細胞培養物は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HEK-293細胞、又はVERO細胞を含み得る。
【0051】
本開示の方法のステップは繰り返されてもよく、さまざまな間隔で行ってもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるステップは、生物反応器プロセス全体を通して、10回超、又は生物反応器プロセス全体を通して10から1000回、20から500回、又は30から100回繰り返され得る。いくつかの実施形態では、ステップは、生物反応器プロセス全体を通して、約4分、10分、30分、60分、2時間、3時間、6時間、8時間、12時間、16時間、18時間、又は24時間ごと、又は生物反応器プロセス全体を通して、約4から18時間ごと、又は約10分から約6時間ごとに繰り返され得る。特定の実施形態では、本方法は、約1日の期間で又は約24時間後に生成された栄養素(グルコース)の目標濃度を用いて、1日に1回、残留栄養素(例えば、残留グルコース)の量を測定することを含む。特定の実施形態では、本方法は、約24時間の測定期間に生成された栄養素(例えば、グルコース)の目標濃度を用いて、1日に複数回、例えば1日に2回、3回又は4回、残留栄養素(例えば、残留グルコース)の量を測定することを含む。
【0052】
本明細書に開示される方法のステップは、比較的短時間で行われ得、すなわち、追加の栄養培地のサンプリング、分析、及び添加は、比較的迅速に行われ得る。いくつかの実施形態では、本開示の方法のステップは、約1分から約2時間以内に行われる。
【0053】
いくつかの実施形態では、本開示の方法のステップは、1つ以上の自動化装置によって実行される。「自動」、「自動的に」、又は「自動化」という用語は、タスク実行のために1つ以上の装置を最初に準備するのに必要な、あるいは、1つ以上の装置の自動動作を維持するために必要とされる場合がある、人間の介入又は動作を除いて、人間の介入又は動作なしに1つ以上のタスクを実行する1つ以上の機械的装置を表す。1つ以上のタスクを自動的に実行する「機械的装置」は、任意選択で、例えば、実行するタスクのタイミング、持続時間、頻度、種類、及び/又は特性を制御するに際して、1つ以上の装置の実行を制御及び指示する意思決定を行う目的でその中で使用され得る収集されたデータを処理するためのコンピュータ及び必要な命令(コード)を含み得る。
【0054】
さまざまな実施形態では、「オフライン」分析は、データ分析がインプロセス状態に関するリアルタイム又はほぼリアルタイムの情報を伝達しないように、生産プロセスからサンプルを恒久的に取り出し、そのサンプルを後の時点で分析することを指す。いくつかの実施形態では、1つ以上の分析装置がオフラインで使用される。
【0055】
一実施形態では、分析装置(又はそれに接続されたセンサ部分)は、生物反応器又は精製ユニットに直接導入されていてもよく、あるいは、その装置又はセンサ部分は、適切なバリア又は膜によって生物反応器又は精製ユニットから分離されていてもよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、分析装置は、細胞濃度を迅速に決定できるようにするためにサンプルと接触させて配置することができるキット、例えば、試験ストリップであり得る。いくつかの実施形態では、キットは、代用マーカー、又は特定の濃度の代用マーカーの存在下で検出可能なシグナルを生成する化学反応及び/又は酵素結合反応を生成する基質を含み得る。検出可能な信号は、例えば、比色変化又は他の視覚信号を含み得る。いくつかの実施形態では、分析装置は、使い捨ての分析装置、例えば、使い捨ての試験ストリップであり得る。そのようなキットは、他のより大きく、より複雑な分析装置と比較して、操作の容易さ及びコストの削減に役立つ可能性がある。そのようなキットはまた、小規模の細胞培養増殖において、培養物の最適な健康状態及び生産性を決定するのに有用であり得る。
【0057】
さまざまな実施形態では、本明細書に記載のグルコースアルゴリズム及び方法は、0~3g/L、0.5~2g/L、2~5g/L、1g/L未満、又は2g/L未満の摂食後1日目の残留グルコース濃度を達成するのに有効であり得る。
【0058】
本発明においては、さまざまな生物製剤を想定し得る。いくつかの実施形態では、生物製剤は、抗体、組換えタンパク質、糖タンパク質、又は融合タンパク質であり得る。いくつかの実施形態では、生物製剤は、可溶性タンパク質であり得る。いくつかの実施形態では、生物製剤は、抗体、抗体断片又は修飾抗体(例えば、多価抗体、ドメイン欠失抗体、多量体抗体、ヒンジ修飾抗体、安定化抗体、多重特異性抗体、線状抗体、scFv、連結ScFv抗体、多価線状抗体、Fcを含まない多価抗体、Fab、多価Fabなど)であり得る。
【0059】
ここで、その例が添付の図面に示され、本明細書に開示されている本開示の技術の例示的な実施形態を詳細に参照する。便宜上、同一の参照符号は、同一又は類似の部品を指すために図面全体を通じて使用される。
【0060】
図5は、本開示の技術の一態様による栄養供給制御システム110のブロック図である。栄養供給制御システム110は、1つ以上のプロセッサ510を含み得る。グルコース測定システム104、グルコース目標予測システム106及びグルコース計算システム108によって実行されるプロセスは、1つ以上のプロセッサ510によって達成され得る。
【0061】
図5を参照すると、プロセッサ510は、記憶された命令を実行し、記憶されたデータに基づいて動作することができるマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、コプロセッサなど、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含み得る。プロセッサ510は、Intel(商標)製のPentium(商標)ファミリー又はAMD(商標)製のTurion(商標)ファミリーのマイクロプロセッサなどの、1つ以上の既知の処理装置であり得る。プロセッサ510は、シングルコアであってもよいし、並列処理を同時に実行するマルチコアプロセッサであってもよい。例えば、プロセッサ510は、仮想処理技術で構成されたシングルコアプロセッサであり得る。特定の実施形態では、プロセッサ510は、複数のプロセスを同時に実行及び制御するために論理プロセッサを使用し得る。プロセッサ510は、複数のソフトウェアプロセス、アプリケーション、プログラムなどを、実行、制御、起動、操作、記憶などする能力を実現するために、仮想マシン技術、又は他の同様の既知の技術を実装し得る。当業者であれば、本明細書に開示された能力を提供する他のタイプのプロセッサ構成を実装し得ることを理解するであろう。
【0062】
非一時的コンピュータ可読媒体520は、いくつかの実装形態では、オペレーティングシステム522、アプリケーションプログラム(例えば、ウェブブラウザアプリケーション、ウィジェット又はガジェットエンジン、及び/又は必要に応じて他のアプリケーションなど)、実行可能命令及びデータを含むファイルを格納するための、1つ以上の適切なタイプのメモリ(例えば、揮発性又は不揮発性メモリ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、プログラマブル読み出し専用メモリ(PROM)、消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、磁気ディスク、光ディスク、フロッピーディスク、ハードディスク、リムーバブルカートリッジ、フラッシュメモリ、独立ディスク冗長アレイ(RAID)など)を含み得る。一実施形態では、本明細書に記載の処理技術は、非一時的コンピュータ可読媒体520内の実行可能命令とデータとの組み合わせとして実装される。非一時的コンピュータ可読媒体520は、本開示の実施形態の1つ以上の特徴を実行するために使用されるデータ及び命令を記憶する1つ以上のメモリ装置を含み得る。非一時的コンピュータ可読媒体520はまた、文書管理システム、Microsoft(商標)SQLデータベース、SharePoint(商標)データベース、Oracle(商標)データベース、Sybase(商標)データベース、又は他のリレーショナルデータベース若しくは非リレーショナルデータベースなどの、メモリコントローラ装置(例えば、サーバなど)又はソフトウェアによって制御される1つ以上のデータベースの任意の組み合わせを含み得る。非一時的コンピュータ可読媒体520は、プロセッサ510によって実行されると、本開示の実施形態と整合する1つ以上のプロセスを実行するソフトウェア構成要素を含み得る。いくつかの実施形態では、非一時的コンピュータ可読媒体520は、本開示の実施形態に関連するプロセス及び機能のうちの1つ以上を実行するためのデータベース524を含み得る。非一時的コンピュータ可読媒体520は、本開示の実施形態の1つ以上の機能を実行するための1つ以上のプログラム526を含み得る。更に、プロセッサ510は、システム110から遠隔に配置された1つ以上のプログラム526を実行し得る。例えば、システム110は、実行されると、開示された実施形態に関連する機能を実行する、1つ以上のリモートプログラム526にアクセスし得る。
【0063】
システム110はまた、装置から信号又は入力を受信し、信号又は出力を1つ以上の装置に提供するための、システム110によってデータが受信及び/又は送信されることを可能にする1つ以上のインタフェースを備え得る1つ以上のI/O装置560を含み得る。例えば、システム110は、システム110が一人以上のユーザからデータを受信することを可能にする、1つ以上のキーボード、マウス装置、タッチスクリーン、トラックパッド、トラックボール、スクロールホイール、デジタルカメラ、マイクロフォン、センサなどの1つ以上の入力装置へのインタフェースを提供し得るインタフェースコンポーネントを含み得る。システム110は、画像、ビデオ、データ、又は他の情報を表示するためのディスプレイ、画面、タッチパッドなどを含み得る。I/O装置560は、グラフィカルユーザインタフェース562を含み得る。
【0064】
本開示の技術の例示的な実施形態では、システム110は、任意の動作を容易にするために実行される任意の数のハードウェア及び/又はソフトウェアアプリケーションを含み得る。1つ以上のI/Oインタフェース560は、多種多様な入力装置からデータ及び/又はユーザ命令を受信又は収集するために利用され得る。受信データは、本開示の技術のさまざまな実装形態において所望されるように1つ以上のコンピュータプロセッサによって処理されてもよく、かつ/又は1つ以上のメモリ装置に記憶されてもよい。
【0065】
ネットワーク180は、より一般的にはインターネットと呼ばれる相互接続されたコンピューティング装置のネットワークを含み得る。ネットワーク180は、セルラー又はWiFiネットワークなどのインターネットを介した個々の接続を含む、任意の適切なタイプのものであり得る。いくつかの実施形態では、ネットワーク180は、無線周波数識別(RFID)、近距離無線通信(NFC)、Bluetooth(商標)、低エネルギーBluetooth(商標)(BLE)、WiFi(商標)、ZigBee(商標)、周囲後方散乱通信(ABC)プロトコル、USB、WAN、又はLANなどの直接接続を使用して端末、サービス、及びモバイル装置を接続し得る。送信される情報は個人的又は機密的なものであり得るので、セキュリティ上の懸念により、これらのタイプの接続のうちの1つ以上が暗号化されるか、又は他の方法で保護されることが定められ得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、送信される情報は個人的なものではない場合があり、したがって、ネットワーク接続は、セキュリティよりも利便性のために選択され得る。ネットワーク180は、データを交換するために使用される任意のタイプのコンピュータネットワーク構成を備えることができる。例えば、ネットワーク180は、インターネット、プライベートデータネットワーク、公共ネットワークを使用する仮想プライベートネットワーク、及び/又はシステム環境内のコンポーネントがシステム100のコンポーネント間で情報を送受信することを可能にする他の適切な接続であり得る。ネットワーク180はまた、公衆交換電話網(「public switched telephone network、PSTN」)及び/又は無線ネットワークを含み得る。ネットワーク180はまた、局所的なエリア内でデータを交換するために使用される任意のタイプのコンピュータネットワーキング構成を含むローカルネットワーク、例えば、WiFi、Bluetooth(商標)、イーサネット、及びシステム環境のコンポーネントが互いに対話することを可能にする他の適切なネットワーク接続を含み得る。
【0066】
プロセッサ510は、予測細胞ベースのグルコースアルゴリズムを実装して、一日当たりのグルコース目標必要量を推定することができる。プロセッサ510は、各培養日の各生物反応器に対する一日当たりのグルコース目標を計算してもよい。翌日に必要とされるグルコース要件を予測するために、アルゴリズムは、重要な仮定を行うことができ、前日の細胞増殖速度及びグルコース消費率は、翌日についても同じままである。これらの仮定を行う際に、翌日の生細胞密度(viable cell density、VCD)は、現在日のVCD測定値及び前日からの増殖速度に基づいて予測することができる。翌日のIVCDを予測することができ、それに応じて、予想される一日当たりの総グルコース消費を計算することができる。
【0067】
現在開示されているアルゴリズムは、履歴データベースに基づかなくてもよい。本明細書に記載される本開示のアルゴリズムを使用することによって、グルコースレベルは、1.5~3.5g/Lの間に維持され得る。
【0068】
1.細胞増殖の計算
式1~3は、翌日の培養増殖を予測するために、現在及び前日からのデータがどのように活用され得るかを示す。この予測されたIVCDの根拠となる仮定は、増殖速度がわずか1日の間に感知できるほどには変化しないということである。IVCDは、数学的平均アプローチを使用して計算され得る。
【0069】
培養0日目については、増殖速度、予測VCD、及び予測IVCDは計算されなくてもよい。式1は、全ての他の培養日についての増殖速度を決定するために使用され得る。式2及び3は、翌日のVCD及びIVCDを予測するために、現在日からの増殖速度がどのように使用され得るかを示す。
【0070】
【0071】
2.グルコース消費の計算
一旦計算されると、予測されたIVCDは、翌日に必要とされるグルコースの量を推定するためにグルコース消費計算に適用され得る。式4は、比代謝率に対するIVCD法を使用して、前日にわたる一日当たりの比グルコース消費率を計算することができる。次に、消費される予測された一日当たりのグルコースは、式5に示すように、現在日からの比グルコース消費率と、翌日の予測IVCDと現在のIVCDとの差との積として計算することができる。最後に、グルコース目標(GTn)は、式6に示されるように、消費される予測された一日当たりのグルコース(GCn+1)と、値を維持するために経験的に決定されたグルコース(GMn+1)との合計と見なされ得る。
【0072】
【0073】
標準的な実践では、GMは、各培養日について2g/Lに設定され得るが、プロジェクトチームは、培養中のグルコースの枯渇又は蓄積を防止するために、後続の生物反応器の実行において必要と判断した場合には、この値を調整してもよい。
【0074】
3.検証
本明細書に開示されるグルコースアルゴリズムは、2つの異なる組換え細胞株、すなわち、第1の宿主細胞株及び第2の宿主細胞株において評価されている。これらの群は、異なる宿主細胞株及びプロセスパラメータ(例えば、目標播種密度、基本培地中のグルコース濃度)についてのアルゴリズムの精度を確実にするように選択される。例えば、第1の細胞株プロセス生物反応器は、4.2g/Lグルコースを含有する基本培地中に0.5×10
6vc/mLで播種され、一方、第2の細胞株生物反応器は、12g/Lグルコースを含有する基本培地中に1.5×10
6vc/mLの目標播種密度で播種される(別段の指示がある場合を除く)。以下の表1は、本開示のアルゴリズムが実装され、既存のグルコースアルゴリズムと比較される、生物反応器の実行についての関連詳細を列挙する。組換え細胞株を使用する6つの生物反応器の実行は、本開示のアルゴリズムを使用して供給されるが、これらの反応器のうちの4つは、12g/Lグルコースを含有する基本培地を使用し、他の2つの反応器は、4.2g/Lグルコースを含有する基本培地を使用した。この区別は、以下に説明する
図6~
図8で強調されている。これら6つの反応器の各々は、本明細書に開示されるグルコースアルゴリズムを使用して供給される。
【0075】
【0076】
各生物反応器の実行について、グルコース目標は、既存のグルコースアルゴリズム又は現在開示されているグルコースアルゴリズムのいずれかを使用して、毎日計算される。生物反応器の実行からのVCDデータ及びグルコース測定値は、毎日グルコースアルゴリズムに入力され、予測グルコース消費及びグルコース目標は、各生物反応器及び培養日について計算される。実行が完了した後、各生物反応器及び培養日について消費されたグルコースの実際の量を計算する。消費されたグルコースの実際の量は、消費されたグルコースの予測された量から減算されて、各生物反応器及び培養日について予測されたグルコース消費値のエラーを計算する。以下に、個々のデータ及び要約統計量(平均及び標準偏差)を各培養日について
図6に報告する。
図6は、グルコースアルゴリズムが翌日のグルコース消費を予測する性能を評価するために、各培養日について消費された予測グルコースから消費された実際のグルコースが減算されることを示す。矢印は、グルコース供給が培養物に最初に添加された日を示す。現在開示されているアルゴリズムの平均差は、予測細胞ベースのグルコースアルゴリズムの中央残留グルコース値間であり、既存のグルコースアルゴリズムの-1.35~1.94g/Lと比較して-0.86~1.67g/Lである。各細胞株及びグルコースアルゴリズムにわたる全ての培養日の平均を以下の表1にまとめて表にする。
【0077】
【0078】
両方の細胞株に対して、本アルゴリズムは、グルコース消費についてより正確な予測をもたらす。加えて、本アルゴリズムは、既存のグルコースアルゴリズムと比較して、より高い予測-実際グルコース消費を示す。結果として、本グルコースアルゴリズムは、既存のグルコースアルゴリズムと比較して、培養に必要なグルコースを過小評価する可能性が低い。
【0079】
インプロセスグルコース測定はまた、以下の
図7~
図8に報告され、これは、本開示のグルコースアルゴリズムが、流加プロセスの間に極端な枯渇又は蓄積をもたらさないことを実証する。
【0080】
図7を参照すると、一日当たりのグルコースを測定して、本開示のグルコースアルゴリズムがグルコースを1~3g/Lの望ましい範囲内に制御する能力を評価する。現在開示されているグルコースアルゴリズムは、実行全体を通して既存のグルコースアルゴリズムと同様に、グルコースを適切に制御するようである。M20K069についての11日目及び12日目のグルコース値は、オペレータによる10日目の意図しない過剰供給のため、考慮されない。更に、反応器M20K196~M20K206は、5日目のグルコースレベルに影響を及ぼす可能性が高い不正確な細胞数を有していた。
図7の矢印は、グルコース供給が最初に必要とされ、プロセスにおいて添加される日を示す。
【0081】
図8を参照すると、アルゴリズムが前日のグルコース供給を求めた培養日数にわたる総グルコース測定値は、ほとんどのグルコースの一日当たりの測定値が所望の1~3g/L範囲内に維持されることを示す。結果として、本開示のグルコースアルゴリズムは、プロセス全体を通してグルコースレベルを所望のレベルに確実に維持することができる。
【0082】
サンプリング及び供給の24時間後のグルコース濃度の所望の範囲は、1~3g/Lである。現在開示されているグルコースアルゴリズムは、グルコースレベルを適切に制御し、ほとんどのデータは1~3g/Lの範囲に入る。データの中央の50%もまた、データの中央の50%が1.33~3.21g/Lであった第1の組換え細胞株を用いた本グルコースアルゴリズムを除いて、全ての条件についてこの範囲内に入る。加えて、本開示のグルコースアルゴリズムは、
図7で言及した第2の反応器M20K069との不一致を除いて、グルコースレベルのより厳密な制御(より狭い範囲)を維持する。
【0083】
わずかに高いグルコース値が、本開示のグルコースアルゴリズムを用いて第1の組換え細胞株を使用して維持され、これは、グルコース枯渇のリスクが低減されることを意味する。これは、履歴アルゴリズムを構築するために使用されるデータベースが、現在開示されているアルゴリズムによる1.5×106vc/mLの目標播種密度と比較して、既存のアルゴリズムによる0.5×106vc/mLの目標播種密度での生物反応器の実行に基づいているためである可能性が高い。これは、本開示のグルコースアルゴリズムを利用することの重要な利点を強調する。具体的には、モデルの予測的性質は、アルゴリズムの実行前に一日当たりのグルコース消費の大きなデータベースを蓄積する必要性を回避する。
【0084】
上記を考慮して、本開示のグルコースアルゴリズムは、一日当たりの総グルコース消費を確実に予測し、グルコースレベルを望ましい範囲約1~3g/Lに維持することができる。本開示のグルコースアルゴリズムが実装されるにつれて、より多くのデータが、これらの傾向を検証するために、このデータベースと集約され得る。グルコース目標が生成され、アルゴリズムを使用して試験されると、プロジェクトチームは、値を維持するために残留グルコースを増加又は減少させることによって目標を調整することを選択することができる。必要と思われる場合、目標は、プロジェクトの目標プロセスにおける測定された一日当たりのグルコース消費に基づいて調整されてもよい。
【0085】
図9は、細胞培養プロセスにおける栄養供給を制御するプロセスを示す例示的なフローチャートである。902において、サンプルは、細胞培養物を含む生物反応器から受け取ることができる。904において、栄養素の残留量は、受け取られたサンプルから測定され得る。906において、プロセッサ510は、現在日の可変細胞密度を、栄養素の測定された残留量に基づいて決定し得る。908において、プロセッサ510は、現在日の決定された生細胞密度に少なくとも基づいて、現在の培養日と前日との間の細胞増殖速度を計算してもよい。910において、プロセッサ510は、計算された細胞増殖速度に少なくとも基づいて、翌日の生細胞密度を予測してもよい。912において、プロセッサ510は、翌日の予測生細胞密度に少なくとも基づいて、翌日の積算生細胞密度を予測してもよい。914において、プロセッサ510は、翌日の予測積算生細胞密度に少なくとも基づいて、翌日の栄養目標を計算してもよい。916において、翌日の計算された栄養目標に従って、栄養素が生物反応器に供給されてもよい。
【0086】
一実施形態では、プロセッサ510は、細胞増殖速度を、現在日の決定された生細胞密度、及び前日に測定された生細胞密度に基づいて、現在の培養日と前日との間で計算してもよい。
【0087】
一実施形態では、プロセッサ510は、翌日の生細胞密度を、現在日の計算された細胞増殖速度及び決定された生細胞密度に基づいて予測してもよい。
【0088】
一実施形態では、プロセッサ510は、翌日の積算生細胞密度を、翌日の予測生細胞密度、現在日の決定された生細胞密度、及び現在日の積算生細胞密度に基づいて予測してもよい。
【0089】
一実施形態では、プロセッサ510は、計算された細胞増殖速度に少なくとも基づいて、前日の一日当たりの特定の栄養消費率を計算してもよい。プロセッサ510は、一日当たりの特定の栄養消費率に基づいて、現在日と翌日との間に消費される栄養素の量を予測してもよい。プロセッサ510は、消費される予測された栄養素の量に少なくとも基づいて、栄養目標を計算してもよい。
【0090】
一実施形態では、プロセッサ510は、前日の一日当たりの特定栄養消費率を、計算された細胞増殖速度、現在日の積算生細胞密度、及び前日の積算生細胞密度に基づいて計算してもよい。
【0091】
一実施形態では、プロセッサ510は、現在日と翌日との間に消費される栄養素の量を、一日当たりの特定の栄養消費率、翌日の予測積算生細胞密度、及び現在日の積算生細胞密度に基づいて予測してもよい。
【0092】
一実施形態では、プロセッサ510は、栄養目標を、消費される予測栄養素及び値を維持するために経験的に決定された栄養素に基づいて計算してもよい。
【0093】
一実施形態では、非一時的コンピュータ可読媒体520は、非一時的コンピュータ可読媒体520から読み出され得る前日に測定された生細胞密度、現在日の積算生細胞密度、前日の積算生細胞密度、及び値を維持するために経験的に決定された栄養素のうちの1つ以上を記憶してもよい。
【0094】
一実施形態では、栄養素は、グルコース、グルタメート、ガラクトース、ラクテート及びグルタミンから選択され得る。
【0095】
一実施形態では、栄養素は、1つ以上の単糖を含んでもよい。
【0096】
一実施形態では、残留栄養測定は、生物反応器内の栄養濃度を分析することを含んでもよい。
【0097】
一実施形態では、残留栄養測定は、オフライン栄養測定及びインライン栄養測定のうちの1つ以上を行うことを含んでもよい。
【0098】
一実施形態では、残留栄養測定は、NovaFlex装置及びラマンプローブのうちの1つ以上によって行われてもよい。
【0099】
一実施形態では、生物反応器は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞生物反応器及び5L生物反応器のうちの1つ以上であってもよい。CHO以外の生物製剤の製造において使用され得る他の哺乳動物細胞型は、組換え細胞などを含む。このような哺乳動物細胞型の非限定的な例としては、HEK、293及びPerC6が挙げられる。このプロセスは、例えば酵母や細菌などの他の非哺乳動物細胞型にも使用し得る。
【0100】
一実施形態では、生物反応器内の細胞は哺乳動物細胞であってもよい。
【0101】
一実施形態では、細胞はCHO細胞であり得る。
【0102】
図10は、細胞培養プロセスにおけるグルコース供給を制御するプロセスを示す別の例示的なフローチャートである。1002において、サンプルは、細胞培養物を含む生物反応器から受け取ることができる。1004において、グルコースの残留量は、受け取られたサンプルから測定され得る。1006において、プロセッサ510は、現在日の可変細胞密度を、グルコースの測定された残留量に基づいて決定し得る。1008において、プロセッサ510は、現在日の決定された生細胞密度に少なくとも基づいて、現在の培養日と前日との間の細胞増殖速度を計算してもよい。1010において、プロセッサ510は、計算された細胞増殖速度に少なくとも基づいて、翌日の生細胞密度を予測してもよい。1012において、プロセッサ510は、翌日の予測生細胞密度に少なくとも基づいて、翌日の積算生細胞密度を予測してもよい。1014において、プロセッサ510は、翌日の予測積算生細胞密度に少なくとも基づいて、翌日のグルコース目標を計算してもよい。1016において、グルコースは、翌日の計算されたグルコース目標に従って、生物反応器に供給されてもよい。
【0103】
別の例では、
図11は、MAB1を増殖させるための開発規模の生物反応器、パイロット規模の生物反応器、及びGMP規模の生物反応器におけるグルコース測定値対アルゴリズムを示すチャートである。MAB1についてのGMP生物反応器プロセスのために開発された一日当たりのグルコース目標を、本アルゴリズムを使用してパイロット(Ambr250)実験中に予測した。本アルゴリズムは、後続の培養日で測定される残留グルコースレベルが2g/Lになるように、一日当たりのグルコース供給目標を提供した。
図11は、実験計画内の対照条件と、パイロット(Ambr250)実験についての0.75g/Lとしての2g/Lの残留グルコース濃度との間の中央値差を示す。次いで、予測されたグルコース目標を使用して、パイロット規模の生物反応器実験(250L規模)及びGMP規模の生物反応器(1000L規模)についてグルコースを1g/L~3g/Lに制御した。
【0104】
図12に示されるように、開発規模及びGMP規模プロセスの両方は、MAB1を成長させるためのパイロット(Ambr250)実験において同定された同じ目標を使用することができる。いくつかの例において、7日目及び8日目の目標は、各生物反応器プロセスについてグルコース濃度を1~3g/Lの対照範囲内にするために、パイロット実験と比較して、開発規模及びGMP規模の生物反応器プロセスについてそれぞれ1.5g/L減少させることができる。
図12は、本アルゴリズムを使用することによって、グルコースが、各生物反応器プロセスについて所望の範囲内に良好に制御されたことを示す。
図12において、破線の参照線は、生成物の糖化を最小限に抑えるためのグルコースの目標制御領域(例えば、1~3g/L)を表す。
図12の線は、複数回の生物反応器の実行の平均を表す。
【0105】
別の例では、
図13に示すように、本アルゴリズムを使用して、BsAb1の生産生物反応器プロセスのために一日当たりのグルコース目標を開発した。パイロット(Ambr250)実験を使用して、一日当たりのグルコース目標を予測した。本アルゴリズムは、後続の培養日で測定される残留グルコースレベルが2g/Lになるように、一日当たりのグルコース供給目標を提供した。
図13は、実験計画内の対照条件と、パイロット(Ambr250)実験についての0.62g/Lとしての2g/Lの残留グルコース濃度との間の中央値差を示す。次いで、予測されたグルコース目標を使用して、パイロット規模の生物反応器実験(250L規模)及びGMP規模の生物反応器(1000L規模)についてグルコースを1g/L~3g/Lに制御した。
【0106】
図14に示されるように、開発規模及びGMP規模プロセスの両方は、BsAb1を成長させるためのパイロット(Ambr250)実験において同定された同じ目標を使用することができる。いくつかの例では、グルコース濃度を1~3g/Lの制御範囲内に維持するために、開発規模及びGMP規模のプロセスの結果を微調整するために、本アルゴリズムによって予測された1日グルコース目標に小さな修正(例えば、1g/L未満)を行った。
図14は、本アルゴリズムを使用することによって、グルコースが、各生物反応器プロセスについて所望の範囲内に良好に制御されたことを示す。
図14において、破線の参照線は、生成物の糖化を最小限に抑えるためのグルコースの目標制御領域(例えば、1~3g/L)を表す。
図14の線は、複数回の生物反応器の実行の平均を表す。
【0107】
図11~
図14に示されるMAB1及びBsAb1のグルコース供給を制御するために本アルゴリズムを利用した結果は、本アルゴリズムが、パイロット(Ambr250)規模、開発(250L)規模、及びGMP(1000L)規模などのさまざまな生物反応器規模にわたってロバストでありかつ転移可能であるグルコース目標を提供するために有効であり得ることを示す。
【0108】
以下は、略語及び定義のリストである。
【0109】
BioTD APIは、生物療法開発活性医薬品成分を指す場合がある。
【0110】
BioTD CDSは、生物療法開発セル及び開発可能性科学を指す場合がある。
【0111】
ELNは、電子ラボラトリノートブックを指し得る。
【0112】
GCnは、現在日と前日との間に消費されたグルコース(g/L)を指し得る。
【0113】
GCn+1は、現在日と翌日との間に消費されるグルコース(g/L)を指し得る。
【0114】
GMn+1は、翌日に維持するグルコース(g/L)を指すことができる。
【0115】
GRnは、現在日と前日との間の計算された細胞増殖速度(日-1)を指し得る。
【0116】
GTnは、現在日のグルコース目標(g/L)を指してもよい。
【0117】
HTは高力価を意味し得る。
【0118】
IQRは、四分位範囲を指し得る。
【0119】
IVCDnは、現在日に計算された積算生細胞密度(細胞/mL*日)を指し得る。
【0120】
IVCDn-1は、前日に計算された積算生細胞密度(細胞/mL*日)を指し得る。
【0121】
IVCDn+1は、翌日に計算された積算生細胞密度(細胞/mL*日)を指し得る。
【0122】
qglc,nは、現在日の比グルコース消費速度(mg/(細胞*日))を指し得る。
【0123】
VCDnは、現在の培養日で測定された生細胞密度(細胞/mL)を指し得る。
【0124】
VCDn-1は、以前の培養日で測定された生細胞密度(細胞/mL)を指し得る。
【0125】
VCDn+1は、次の培養日についての生細胞密度(細胞/mL)を指し得る。
【0126】
MAB1は、モノクローナル抗体1を指す場合がある。
【0127】
BsAB1は、二重特異性抗体1を指す場合がある。
【0128】
GMPは、良好な製造プロセスを指す場合がある。
【0129】
本明細書は、最良の形態を含む、開示された技術の特定の実装形態を開示するために、また、任意の装置又はシステムの製作及び使用並びに任意の組み込まれた方法の実行を含む、開示された技術の特定の実装形態を当業者が実施することを可能にするために、例を使用する。開示される技術のある特定の実装形態の特許請求可能な範囲は、特許請求の範囲に定められており、当業者が考えつくその他の実施例を含み得る。そのような他の例は、それらが、特許請求の範囲の文言と異ならない構造的要素を有する場合、又はそれらが、特許請求の範囲の文言とごくわずかに異なる同等の構造的要素を含む場合、請求項の範囲内であることが意図される。
【0130】
本開示のある実施例が、現段階で最も実用的と考えられるもの、及びさまざまな実施例と関連させてここまで説明されてきたが、本開示は、開示された実施例に制限されず、むしろ、添付の特許請求の範囲に含まれるさまざまな修正例、均等変形例を含むよう意図されていることが理解されるべきである。本明細書において特定の用語が用いられるが、それらは、限定の目的のためではなく、一般的かつ説明的な意味で使用される。
【0131】
開示される技術のいくつかの実装形態は、開示される技術の例示的な実装形態によるシステム及び方法並びに/又はコンピュータプログラム製品のブロック図及びフロー図を参照して上記で説明されている。ブロック図及びフロー図の1つ以上のブロック、並びにそれぞれブロック図及びフロー図のブロックの組み合わせは、コンピュータ実行可能プログラム命令によって実装できることが理解されよう。同様に、ブロックダイヤグラム及びフローダイヤグラムのいくつかのブロックは、必ずしも提示された順序で実行される必要がないこともあり、あるいは、開示された技術のいくつかの実施態様によれば、必ずしも実行される必要が全くないこともある。
【0132】
これらのコンピュータプログラム命令はまた、コンピュータ又は他のプログラム可能なデータ処理装置に特定の方法で機能するように命令することができるコンピュータ可読メモリに記憶されてもよく、その結果、コンピュータ可読メモリに記憶された命令は、1つ以上のフロー図ブロックで指定された1つ以上の機能を実施する命令手段を含む製品を製造する。
【0133】
開示される技術の実装形態は、コンピュータ可読プログラムコード又はプログラム命令が具現化されたコンピュータ使用可能媒体を備えるコンピュータプログラム製品を提供することができ、当該コンピュータ可読プログラムコードは、フロー図の1つ以上のブロックにおいて指定された1つ以上の機能を実装するために実行されるように適合される。コンピュータプログラム命令はまた、コンピュータ又は他のプログラム可能なデータ処理装置にロードされ、一連の操作要素又は工程がコンピュータ又は他のプログラム可能なデータ処理装置の上で実行されることにより、コンピュータ実装プロセスを作り出すこともでき、コンピュータ又は他のプログラム可能な装置の上で実行されるそれらの命令は、フロー図のブロックで指定された機能を実装するための要素又は工程を提供する。
【0134】
したがって、ブロック図及びフロー図のブロックは、指定された機能を実行するための手段の組み合わせ、指定された機能を実行するための要素又は工程の組み合わせ、及び指定された機能を実行するためのプログラム命令の手段に対応する。また、ブロック図及びフロー図の各ブロック、並びにブロック図及びフロー図のブロックの組み合わせは、指定された機能、要素若しくは工程を実行する専用ハードウェアベースのコンピュータシステム、又は専用ハードウェアとコンピュータ命令の組み合わせによって実装され得ることも理解されるであろう。
【国際調査報告】