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特表2024-514270工業的プロセス用の原料を提供するための方法
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  • 特表-工業的プロセス用の原料を提供するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-29
(54)【発明の名称】工業的プロセス用の原料を提供するための方法
(51)【国際特許分類】
   C10L 5/40 20060101AFI20240322BHJP
   C10B 53/00 20060101ALI20240322BHJP
   C10B 53/02 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
C10L5/40
C10B53/00 A
C10B53/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563826
(86)(22)【出願日】2022-04-20
(85)【翻訳文提出日】2023-11-10
(86)【国際出願番号】 EP2022060403
(87)【国際公開番号】W WO2022223605
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】LU500064
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500173376
【氏名又は名称】ポール ヴルス エス.エイ.
【氏名又は名称原語表記】PAUL WURTH S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 恵司
(74)【代理人】
【識別番号】100099472
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 猛
(74)【代理人】
【識別番号】100150773
【弁理士】
【氏名又は名称】加治 信貴
(72)【発明者】
【氏名】キンゼル、クラウス ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ストリューバー、ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】デ フルートス サンタマリア、フアン ルイス
【テーマコード(参考)】
4H012
4H015
【Fターム(参考)】
4H012HA01
4H012JA01
4H012JA09
4H015AA01
4H015AA12
4H015AA26
4H015AB01
4H015BA04
4H015BB03
4H015CB01
(57)【要約】
本発明は、とくに鋼製造のための、工業的プロセス用の原料を提供するための方法を開示する。その方法は、バイオ炭を得るために、バイオマス(生物体量)を含む焙焼材料を、反応器内で200°C~600°Cで熱化学的に処理することで焙焼し、600°Cまでの第1の温度で反応器からバイオ炭を抽出し、0°Cと100°C間の第2の温度でバルク材料を提供し、バイオ炭をバルク材料と混合し、それによってバイオ炭をバルク材料で冷却し、かつ混合物の自己着火温度未満の第3の温度で、バルク材料とバイオ炭の混合物を得ること、及び工業的プロセス用の原料を提供するために、この混合物を使用する、工程を含む。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオ炭を得るために、バイオマスを含む焙焼材料を、反応器内で200°C~600°Cの温度で熱化学的に処理することで焙焼し、
600°Cまでの第1の温度で反応器からバイオ炭を抽出し、
0°Cと100°C間の第2の温度でバルク材料を提供し、
バイオ炭をバルク材料と混合し、それによってバイオ炭をバルク材料で冷却し、かつ
混合物の自己着火温度未満の第3の温度で、バルク材料とバイオ炭の混合物を得、かつ工業的プロセス用の原料を提供するためにこの混合物を使用する、ことを含む、
とくに鋼製造のための、工業的プロセス用の原料を提供するための方法。
【請求項2】
5%v/vと95%v/v間のバイオ炭を95%v/vと5%v/v間のバルク材料と混合することを特徴とする、請求項1に記載された方法。
【請求項3】
バルク材料が残留水分を含んでいることを特徴とする、請求項1又は2に記載された方法。
【請求項4】
冷却流体が冷却工程において添加され、上記冷却流体は水と、窒素のような不活性ガスの中から選択されることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載された方法。
【請求項5】
バイオ炭をバルク材料と混合する前にすり潰し及び/又は粉砕することを含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載された方法。
【請求項6】
バイオ炭のすり潰し及び/又は粉砕、及び/又はバイオ炭とバルク材料との混合は不活性雰囲気下で実施されることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載された方法。
【請求項7】
バイオ炭は、500°C以下、好ましくは200と450°C間の第1の温度で反応器から抽出されることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載された方法。
【請求項8】
バルク材料は、50°C以下、好ましくは15と35°C間の第2の温度を有することを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載された方法。
【請求項9】
バルク材料とバイオ炭の混合物をすり潰し及び/又は粉砕することを含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載された方法。
【請求項10】
バイオマスが、専用エネルギー作物、農作物残渣、林業残渣、藻類、木材加工残渣、都市廃棄物、生分解性廃棄物、作物廃棄物、目的栽培草、木質エネルギー作物、産業廃棄物、分別された都市固形廃棄物[MSW]、都市木材廃棄物、解体木材、家具廃棄物及び/又は家具製造からの廃棄物を含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載された方法。
【請求項11】
バルク材料は、通常は脈石鉱物及び廃棄物又は残留材料、焼結及び/又はペレット供給と共に、鉄鉱石のような少なくとも1つの鉄含有材料、マグネタイト(Fe)又はヘマタイト(Fe)のような酸化鉄を含み、鉄含有材料は、少なくとも5重量%の鉄を含むことを特徴とする、請求項1から10のいずれかに記載された方法。
【請求項12】
バルク材料は、時には廃棄物または残留材料及び/又は添加剤と共に、石炭、ペットコークスのような少なくとも1つの粒状材料を含むことを特徴とする、請求項1から11のいずれかに記載された方法。
【請求項13】
焙焼材料は、少なくとも5%v/vのプラスチック及び/又はゴムなどの非バイオマス廃棄物を含むことを特徴とする、請求項1から12のいずれかに記載された方法。
【請求項14】
焙焼材料は、少なくとも5%v/vの、油性汚泥及び/又はミルスケールのような、鉄鋼生産に由来する鉄含有副産物を含むことを特徴とする、請求項1から13のいずれかに記載された方法。
【請求項15】
更に、バルク材料とバイオ炭の混合物から複合体を形成することを特徴とする、請求項1から14のいずれかに記載された方法。
【請求項16】
各複合体は固体であり、かつ粒子状の鉄含有材料及びバイオ炭を含むことを特徴とする、請求項15に記載された方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業的プロセス用の原料(raw material)を提供するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業的、とくに鉄鋼業や発電所で、CO排出量の削減が大きな課題となっている。興味ある可能性の1つは、バイオマスの使用である。しかしながら、バイオマスからの炭(charcoal)の生産は化石燃料と比較して非常に高価である、そのためこれは経済的に実行可能ではないことが分かっている。
【0003】
したがって、本発明の目的は、別のプロセス、特に製鋼プロセスに統合することにより、バイオマスの生産及び利用の技術的実現可能性及び経済的実行可能性を高め得る方法を提供することである。
【0004】
WHOによれば、炭素のフットプリント(総使用量)は、活動(この場合は鉄鋼の生産)が化石燃料の燃焼によって生成される二酸化炭素(CO)の量に与える影響の尺度であり、生成されるCO排出量の重量としてトンで表される。
【0005】
製鋼プロセスにおけるバイオマスの使用は、バイオマスに多量かつ様々な量の揮発性物質が含まれているため非常に困難である。その結果、製鋼プロセスにバイオマスを直接適用することは逆効果になる。
a 高炉に注入する場合には、羽口での条件は通常>2000°Cである必要温度を維持するために大量の酸素が必要である。そのためには、石炭及び/又はコークスを更に燃焼させる必要がある。これにより経済的な悪影響を受けることに加えて、バイオマスの利用による達成可能なCO節減効果も大幅に縮小する。
b 焼結プラントの場合、焼結床でのバイオマスのような揮発性の高い固体燃料の利用も推奨されない。実際、揮発性物質はオフガスに蓄積し、焼結プラントのガス洗浄設備で火災を引き起こす可能性があるため、安全性の観点から高揮発成分(highly volatile contents)は避ける必要がある。
c ペレットプラントの場合、鉄鉱石ペレットに揮発性の高い固体燃料を使用することも推奨されない。高揮発成分は、オフガス中に蓄積することになり、ペレットプラントのガス洗浄設備で火災を引き起こす可能性がある。
d 電気アーク炉の場合、例えば電気アーク炉内で石油コークス(ペットコークス)と置き換える場合、バイオマスは非常に低い揮発成分を有する必要がある。この場合の課題は、炭素をガス化してスラグを発泡させることである。これには一定の滞留時間が必要であり、揮発成分が高い場合には達成できない。
【0006】
さらに、揮発性の高い固体燃料は、焼結及びペレットプラントの生成物の品質を低下させる可能性があり、したがってプラントの生産性に悪影響を与え得る。
【0007】
したがって、バイオマスを製鋼プロセスで使用可能にする前に、バイオマスを処理してその揮発成分を減らす必要がある。これは、高炉(BF)で、または焼結プラントとペレットプラントの燃料として、既に基本的に知られており、実施されている。
【0008】
しかしながら、このことはバイオマスの利用を経済的に実行可能にするにはなお十分ではないことが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、工業的プロセスのCOフットプリントを削減し、同時にバイオマスの利用を経済的に実行可能にする方法を提案することである。この目的は、請求項1に記載された方法で解決される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
a バイオ炭を得るために、バイオマスを含む焙焼(torrefaction)材料を、反応器内で200°Cから600°Cの温度で熱化学的に処理することで焙焼し、
b 600°Cまでの第1の温度で反応器からバイオ炭を抽出し、
c 0°Cと100°C間の第2の温度でバルク材料を提供し、
d バイオ炭をバルク材料と混合し、それによってバイオ炭をバルク材料で冷却し、かつ混合物の自己着火温度未満の第3の温度でバルク材料とバイオ炭の混合物を得ること、及び
e 工業的プロセス用の原料を提供するために、この混合物を使用する、
ことを含む、とくに鋼製造のための、工業的プロセス用の原料を提供するための方法を提案する。
【0011】
したがって、この方法は、高温のバイオ炭(焙焼されたバイオマス、バイオ炭、炭とも呼ばれる)を迅速かつ効率的に冷却することを可能にし、かつ同時に工業的生産及び発電、特に製鋼プロセスにおいて一層有用にすることを可能にする。
【0012】
化石燃料がバイオマスに置き換わるために、工業的生産と発電、特に製鋼プロセスのCOフットプリントが削減される。
【0013】
好ましくは、5%v/vと95%vv/v間のバイオ炭が95%v/vと5%v/v間のバルク材料と混合される。粒子状材料及び/又はバルク材料の大半がそうであるように、一定容量のバイオ炭またはバルク材料は、通常、粒子間の空間または空隙を含んでいる。例えば、1m3のバイオ炭は、通常、バイオ炭自体で決まる一定程度までしか充填されず、バイオ炭粒子間の空間はガス、例えば空気で満たされている。各成分の体積百分率を決定するために、個々の成分(バイオ炭またはバルク材料)を、成分の面レベル(surface level)が特定の体積に対応する測定容器に充填することができる。粒子間の空隙により、混合物の体積は減少し得る、例えば、1m3のバイオ炭と1m3のバルク材料、を混合すると、バルク材料粒子の一部がバイオ炭粒子間の空隙に収まる又はその逆が起こるため、2m3未満の混合物が生じ得ることが理解されよう。
【0014】
用語「バルク材料」は、均質な組成を有する単一の材料を指すだけではなく、幾つかのバルク材料の混合物または他の組み合わせをも指す。バルク材料は乾燥していてもよい。代替的には残留水分を含んでいてもよい。
【0015】
実施形態では、冷却工程において冷却流体が添加され、その冷却流体は水と、窒素のような不活性ガスの中から選択し得る。
【0016】
実施形態において、この方法は、バイオ炭をバルク材料と混合する前にすり潰し(grinding)及び/又は粉砕(crushing)することを含む。
【0017】
一実施形態において、バイオ炭のすり潰し及び/又は粉砕、及び/又はバイオ炭とバルク材料との混合は不活性雰囲気下で実施し得る。この不活性雰囲気は、例えば窒素及び水蒸気、及び/又は高温のバイオ炭と接触して水蒸気を生成する際に蒸発する水を添加することによって、大気の酸素含有量を低減することにより得ることができる。
【0018】
好ましくは、バイオ炭は、500°C以下、より好ましくは200と450°C間の第1の温度で反応器から抽出される。
【0019】
バルク材料は、50°C以下、より好ましくは15と35°C間の第2の温度を有することが好ましい。
【0020】
この方法は、バルク材料とバイオ炭の混合物をすり潰し及び/又は粉砕することも含み得る。
【0021】
この焙焼プロセスの生成物は、鉄(Fe)含有材料と混合することもでき、その後、例えば焼結及び/又はペレット化プロセスで一体化したり、EAF及び/又は高炉に燃料として添加したりすることができる。このような鉄(Fe)含有材料は、通常、脈石鉱物(gangue minerals)、廃棄物または残留材料、焼結及び/又はペレット供給(pellet feed)と共に、鉄鉱石、マグネタイト(Fe)又はヘマタイト(Fe)のような酸化鉄から選択可能である。
【0022】
実施形態では、バルク材料とバイオ炭との冷却された混合物は、例えばコークスまたは石炭などの別の固体燃料などの別の材料と混合することができ、いかなる工業的生産及び発電においても容易に使用することができる。
【0023】
この方法の想定外の利点の1つは、100%バイオ炭を取り扱う場合と比較して、輸送及び保管し易い安全な生成物が得られるということである。実際、両材料の混合物は安全な生成物であり、輸送及び保管中に自着火することはない。生成物は不活性雰囲気下で保管する必要がないため、取り扱いを容易かつ低コストにしている。
【0024】
バルク材料の第2の流れ(second stream)でバイオ炭を冷却し、一緒の混合物として輸送及び保管することで、不活性化が不要になり、自着火が常に回避されるという利点が得られる。
【0025】
更なる利点は、バルク材料の第2の流れで高温のバイオ炭を冷却することが、専用の高温バイオ炭冷却システムを備えた設備と比較して、投資と運用コストの削減につながることである。
【0026】
典型的な焙焼されたバイオ炭は、保管及び輸送中に容易に再着火する傾向があり、そのため、鉱物炭と比較して、窒素による不活性化などのより高い予防措置を講じる必要がある。このことは、バイオ炭の製造で伝統的に使用されている冷却システムの稼働中及びその後におけるバイオ炭生産施設で特に言えることである。バイオ炭をバルク材料の第2の流れと混合し、混合物として輸送及び保管する上記のような方法は、不活性化を必要とせず、自着火がいかなる時も常に回避されるという利点をもたらす。
【0027】
バイオ炭は混合物の特定の場所では自然再着火する可能性があるが、炎が伝播して長時間の火災や危険な状況に変わることはあり得ない。これは、バルク材料が、第2の材料塊(material mass)が再着火したバイオ炭から熱を完全に放散して、完全な材料混合物内では連鎖反応が起こるのを防ぐことができるような比率で混合されている、という事実によるものである。混合比は、混合物に使用されるバルク材料に応じて変更可能であるが、典型的には、バルク材料と比較してバイオ炭の体積比5%~95%の範囲である。
【0028】
使用する材料に依存することで、混合物はバイオ炭自体とは反対に2014/34/EUの指令(Directive 2014/34/EU)で規定されているATEX指令に該当しない。したがって、混合物の輸送と取り扱いは、バイオ炭のみの取り扱いよりもはるかに安全で安価である。
【0029】
提案する方法の利点は、製造したバイオ炭を容易に燃えない別の材料と混合することである。
【0030】
この提案する高温のバイオ炭を冷却する方法は、バイオ炭を生産する典型的な焙焼プラントと比較した場合、専用の冷却施設を設けなくても済むようにできる。
【0031】
「焙焼する」または「焙焼」は、出発材料が特定の熱処理に供されるプロセスを意味する。焙焼は、バイオマスの熱化学的処理(例えばhttps://en.wikipedia.org/wiki/Thermochemicalを参照)または熱分解の一形態である。200°Cと320°C間の温度範囲が「焙焼」という用語に関連付けられる場合があるが、本発明の文脈では、より広い範囲である。これに関連して、焙焼プロセスの温度は、約200°C~約600°C、好ましくは少なくとも250°C、275°C、300°C、325°C、350°C、375°C又は400°Cであり得る。最高温度は、好ましくは、600°C、575°C、550°C、525°C、500°C、475°C、450°C、452°C未満、または400°C未満である。典型的には、それは大気圧下でかつ酸素の非存在下で、即ち空気なしで行われる。焙焼プロセス中に、バイオマスに含まれる水分と余分な揮発性物質が放出され、かつ生体高分子(セルロース、ヘミセルロース、リグニン)が部分的に分解して、さまざまな種類の揮発性物質を出す。最終生成物は、残りの固体で乾燥した、黒くなった材料であり、焙焼されたバイオマスまたはバイオ炭と呼ばれる。以下で明らかになるように、焙焼はバイオマスだけでなく、他の有機物に対しても行い得る。
【0032】
焙焼プロセス中、バイオマス(または焙焼材料)は通常、その質量の最大80%を失う(カラカラに乾ききった状態になる)が、体積に顕著な変化はない。気体エネルギー(揮発性物質)は、焙焼プロセスや、例えば温水や電気エネルギー生成などの二次プロセスの加熱燃料として使用できる。焙焼材料を焙焼した後、通常は従来の緻密化装置を使用してブリケットまたはペレットに緻密化して、その質量とエネルギー密度を高め、疎水性を向上させることができる。最終生成物は水を弾くことができ、かつそのため元のバイオマス/焙焼材料とは異なり、含湿量や発熱量に顕著な変化が生じることなしに、湿った空気や雨中で保管することができる。
【0033】
焙焼プロセスは、有機化合物が部分的に分解して可燃性ガスが形成される「軽度の熱分解(mild pyrolysis)」としても表されることもよくある。しかしながら、熱分解及び炭化プロセスも、「焙焼」という用語により本文献に含まれる。より一般的には、本発明の文脈における焙焼は「熱分解」とも称することができ、焙焼材料は「熱分解材料」と呼ぶこともできる。
【0034】
バイオマスを含む焙焼材料を焙焼すると、いわゆる焙焼されたバイオマス(バイオ炭)が得られ、多くの特別な特性を持つことができる。第1の特性は疎水性である;この材料は、吸湿性及び生物学的分解性に係るその自然な特性を失う、従って保管中は、親水性の非焙焼のバイオマス(例えば、木材及びわらなど)を燃焼するよりも一層安定している。加えて、焙焼されたバイオマスを燃焼させた場合、非焙焼のバイオマスを燃焼させた場合と比較して、煙の発生が少ない。
【0035】
実際に、バイオマスの焙焼により大量のガスが生成される。初期生成物(initial product)の固定炭素含有量(fix carbon content)に応じて、通常、焙焼材料/バイオマスのエネルギーの20~50%が気体/液体の形で回収される。このエネルギーのごく一部は焙焼プロセスに使用し、別の部分は例えばバイオマスの乾燥に使用することができる。
【0036】
高いC固定含有量が必要な場合に、焙焼材料/バイオマス(揮発性物質)の部分的なガス化を行うことで、固体生成物に対するガス状生成物の関係比が増加して、気体のエネルギーが余剰になる。この余剰の気体のエネルギーは、工業的プロセスにおける他の化石エネルギーの消費を低減しかつその炭素フットプリントをさらに低減するために、容易に使用することができる。多くの工業的活動で水蒸気が必要である。したがって、専用のボイラーで水蒸気を生成するためにガスが使用できる。また、余剰の気体エネルギーをバーナーシステムで使用することもできる。鉄又は鋼プラントの場合、それは、圧延機などにおいて、カウパー(cowpers)の加熱のため、石炭GAD(すり潰し及び乾燥)プラント内で、焼結機の点火フードへ又はペレットプラントの燃焼室へ導入できる。
【0037】
この方法で使用されるバイオマスの種類は、それに限定するものではないが、専用エネルギー作物、農作物残渣、林業残渣、藻類、木材加工残渣、都市廃棄物、生分解性廃棄物(wet waste)、作物廃棄物、目的栽培草、木質エネルギー作物、産業廃棄物、分別された都市固形廃棄物[MSW](sorted municipal solid waste)、都市木材廃棄物、解体木材、家具廃棄物及び/又は家具製造からの廃棄物が含まれる。
【0038】
本方法のためのバルク材料は、バイオ炭の発火温度を低下させる傾向があるあらゆる種類の粒状または粉末材料を含む。より具体的には、材料は、通常は脈石鉱物及びまた廃棄物または残留材料、焼結及び/又はペレット供給と共に、鉄鉱石、マグネタイト(Fe)又はヘマタイト(Fe)のような酸化鉄のような少なくとも1つの鉄含有材料を含み得る。鉄含有材料は、少なくとも5重量%の鉄を含む。追加的または代替的に、バルク材料は、時には廃棄物または残留材料及び/又は添加剤と共に、石炭、ペットコークス(石油コークス)などを含み得る。バルク材料は、プラスチック材料をも含み得る。上述の材料のいずれかの混合物も同様に使用し得ることが理解されよう。
【0039】
本方法では、バイオ炭は、好ましくは、バルク材料の最大90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%または30%v/vまで混合することができる。
【0040】
本方法では、バイオ炭は、好ましくは10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%または80%v/vを超えるバルク材料と混合することができる。
【0041】
本方法ではプラスチック及び/又はゴムなどの非バイオマス廃棄物も利用することもできる。本方法では、焙焼材料は、少なくとも5%v/vの非バイオマス材料を含み得る。また、最大5%、7%、10%、12%、15%、17%、20%、23%、25%、30%、35%または40%v/vまでの非バイオマス材料を含み得る。
【0042】
実施形態によれば、焙焼材料は、油性汚泥(oily sludge)及び/又はミルスケール(mill scales)のような鉄鋼生産に由来する鉄含有副産物を含む。したがって、これらの副産物は、好ましくは上述の方法においてバイオマスの一部と置き換えることができる。したがって、このような副産物は、少なくとも5%v/vの量及び/又は焙焼材料の最大5%、7%、10%、12%、15%、17%、20%、23%、25%、30%、35%又は40%v/vまでの量で使用できる。このような油性汚泥及び/又はミルスケールを焙焼プロセスにおいて一体化すると、コスト状況を飛躍的に改善できる。油性ミルスケールから出る油はガス状に分解され、焙焼ガスと共に焙焼プロセスを離れる。現在、一部の焼結プラントの操業では、ガス浄化システムの制限により、副産物の使用が制限されている。このような副産物を別のプロセスに統合することで、法的制限に準拠するために焼結プラントのガス洗浄ユニットに追加投資することが不要になる、という利点が得られる。
【0043】
一実施形態では、揮発性物質及びガスの生産を最大化し、焙焼プロセスからの生成物の価値化(valorization)を最大化するために、工業的施設(industrial operations)、発電所、製鉄所など及び/又は高炉ガスなどの産業ガスの利用、からの廃熱が焙焼プロセスで使用されている。工業的施設における焙焼プロセスの統合により、熱分解プロセスから得られる生成物の価値化を最大化するために、例えば製鉄所や発電所の廃熱及び/又は他のガスの利用など、他の供給源から低コストのエネルギーを供給することが可能になる。
【0044】
バイオ炭に加えて、気相も作成される。その気相を冷却すると、凝縮可能な液相が生成される。他のエネルギー源は製鉄所や発電所で「無料で」容易に利用できるため、この液相を分離して他の産業で別のCOリーン生産物(lean product;無駄を省いた生成物)として使用して、COフットプリントをさらに低減できる。
【0045】
混合は、適切な容器中でバルク材料とバイオ炭粒子(プラス任意の他の成分)との機械的混合によって積極的に行うなど、様々な方法で行い得る。好適な装置には、ピンミキサー、パドルミキサー、または回転ドラムミキサーが含まれる。混合はまた、例えば、バルク材料粒子とバイオ炭粒子をコンベヤベルト上又は容器内に同時に注ぐことによって、多かれ少なかれ消極的に行い得る、これによってもまた、少なくともある程度の混合が行われるであろう。当技術分野で知られている他の適切な混合方法も同様に使用し得る。任意の選択で、混合は、トラック、コンテナ、列車の貨車、船舶などの輸送容器の充填(charging)と組み合わせることができる。これは、上記に示したような消極的混合の一形態であり得、粒子状材料を輸送容器に充填する直前に積極的混合と組み合わせてもよい。
【0046】
好ましくは、この方法はまた、バルク材料とバイオ炭の混合物から複合体(compound bodies)を形成することを含む。特に、各複合体は固体であってもよく、かつ粒子状の鉄含有材料及びバイオ炭を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】好ましい実施形態で使用される異なる設備を表す図である。
図2】好ましい実施形態の異なる動作のフローチャートを表す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1で明らかなように、焙焼された材料は、一般的に熱分解される廃棄物の供給源である森(forest)、リサイクルセンターなどの供給原料(feedstock)プラント1に集められる。ここで、焙焼材料の成分、すなわち、バイオマス、木材、森林の残骸、プラスチック、ゴム、または熱分解するのに適した他の種類の副産物などの材料が収集及び保管され、その後コンベヤベルト2を介して粉砕及び分級(classification)ユニット3に移送され、そこで供給原材料(feedstock materials)の粒径は容易に輸送及び更なる処理が可能なサイズ範囲に縮小される。今や20mmと50cmの間の均一なサイズを有する粉砕及び分級された供給原料は、コンベヤベルト4によって乾燥ユニット5に移送される。このユニット5では、供給原料の含湿量が約30%w/w以下に低減される。乾燥後、材料はその後、コンベヤベルト6を介して焙焼ユニット7に輸送され、そこで酸素なしで約200°C~550°Cの温度で焙焼される。
【0049】
焙焼された供給原料は、次に焙焼ユニット7からコンベヤベルト8を介してバイオ炭排出ユニット9に排出される。高温のバイオ炭は、ここから、コンベヤベルト10に載って粉砕ユニット15に、かつ粉砕した後、さらにコンベヤベルト16を経て混合ユニット17に輸送される。この混合ユニット17は、典型的には、混合ドラム、パドル型混合ユニット等である。
【0050】
サイロ11内には、冷却材料(cooling material)として使用する鉄鉱石、石灰石、ドロマイト(dolomite)等のバルク材料がストックされている。バルク材料は、必要時にコンベヤベルト12を介してサイロ11からバルク材料調整ユニット13に移送され、典型的にはすり潰し(grinding)、乾燥などのために、更なるコンベヤベルト14を介して上記混合ユニット17に移送される。ここでは、それは高温のバイオ炭と混合されて、バイオ炭とバルク材料の冷却された混合物が形成される。
【0051】
混合物の特性を調整するために使用される更なる材料が混合ユニット17において添加され得る。これらの更なる材料は、固体又は液体であり得、混合物の特性を調整するために使用されるが、冷却目的のためには使用されない。そのような材料の1つは結合剤であり得、それによってバイオ炭とバルク材料の混合物を一層容易に処理することができるペレットに一層容易に形成することができる。それはコンベヤベルト18を介して混合ユニット17に添加され得る。
【0052】
バイオ炭及びバルク材料及び任意の選択で追加材料を含む混合物は、混合ユニット17からコンベヤベルト19を介してサイロに、又は使用前の更なる処理のために排出される。
【0053】
なお、図1の*を付したステップ3、4、5、6、12、13及び18は、任意のステップであることに注意されたい。
【0054】
コンベヤベルトの代わりに、スクリューコンベヤ、チェーンコンベヤ、又は他の種類の適切なコンベヤなどの他のタイプの搬送装置を、上記のステップのいずれかで使用することができる。材料を長距離輸送するために、トラック又は船が使用できる。
【0055】
プロセス全体を一か所で行うことができ、又は特定の手順を異なる場所で行うことができる。
【0056】
図2において、好ましい実施形態の異なる動作のフローチャートは、プロセスのステップを記述する一連の異なる四角枠によって表されている。
【0057】
四角枠「スタート」の下のフローチャートの最上部の、最初のステップ(工程)で、プロセス用の供給原料が提供される。焙焼/熱分解用の供給原料(すなわち、焙焼材料)は、典型的には、落葉樹及び針葉樹の木材チップ(樹皮除去済み又は非除去)として、SFR(固体回収燃料)などの他の廃棄物と混合された、森林の残骸及び他の新鮮な木材を含む。
【0058】
次のステップ「供給原料の乾燥」では、乾燥された供給原料を焙焼/熱分解反応器に供給する前に、焙焼/熱分解供給原料を含湿量が5%w/w以下でしかない含水量にまで下げるように乾燥し得る。次のステップ「供給原料の焙焼/熱分解-炭」では、供給原料を200~600°Cの範囲の温度で焙焼する。焙焼プロセスの最後に、焙焼された供給原料(炭/バイオ炭)は冷却システムに排出される。その段階では、焙焼された供給原料は設定された焙焼温度(200~600°C)と同じ温度である。
【0059】
水と空気による専用の冷却システムでバイオ炭/炭を完全に冷却する代わりに、通常20°C前後の温度を有するバルク材料が冷却剤として提供される。
【0060】
任意の選択で、混合及び冷却動作を改善するために、バルク材料に加えて、水を混合物に注入する冷気供給による間接冷却が使用できる。
【0061】
「冷却剤としてバルク材料を提供する」ステップでは、約20°Cの温度を有するバルク材料が提供され、「成分の混合と炭の冷却」のステップのこの段階で350°Cを超える温度を有する高温のバイオ炭/炭と混合される。バイオ炭/炭と低温のバルク材料との混合体積比範囲1:19~19:1が使用できる。この混合比は、必要に応じた適合が可能である。一例として、これは1:9の混合質量比に対応し得る。炭の冷却中にバルク材料は加熱される。このような混合操作により、60°C未満の温度の混合物が得られる。このプロセスのステップは、不活性条件の下で行うことができる。不活性化ガスは、窒素又は水蒸気であり得る。混合ユニットに水が注入されている場合、それによって水蒸気の発生による不活性状態が生成され得る。
【0062】
最後に、最終ステップ「混合・冷却炭の保管(不活性化不必要)」では、混合及び冷却された材料は、更なる使用まで保管される。
【符号の説明】
【0063】
1.供給原料プラント、2.コンベヤベルト、3.* 粉砕及び分級ユニット、4.コンベヤベルト、5.* 供給原料のための乾燥ユニット、6.* コンベヤベルト、7.焙焼ユニット、8.コンベヤベルト、9.バイオ炭排出ユニット、10.コンベヤベルト、11.サイロ、12.* コンベヤベルト、13.バルク材料調整ユニット、14.コンベヤベルト、15.* 粉砕ユニット、16.* コンベヤベルト、17.混合ユニット、18.* 追加材料、19.コンベヤベルト、*任意のルート-任意の装置

図1
図2
【国際調査報告】