(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-01
(54)【発明の名称】劣化を制御し性能を向上させるために、燃料電池の電力を不均衡にすること
(51)【国際特許分類】
B60L 58/30 20190101AFI20240325BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20240325BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20240325BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20240325BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20240325BHJP
H01M 8/04664 20160101ALI20240325BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20240325BHJP
B60L 50/70 20190101ALI20240325BHJP
【FI】
B60L58/30
H01M8/00 Z
H01M8/04 Z
H01M8/04313
H01M8/04858
H01M8/04664
B60L3/00 N
B60L50/70
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553411
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(85)【翻訳文提出日】2023-10-30
(86)【国際出願番号】 US2022018660
(87)【国際公開番号】W WO2022187456
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508108718
【氏名又は名称】トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】ヨコオ,タケヒト
【テーマコード(参考)】
5H125
5H127
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC07
5H125BD02
5H125EE33
5H125EE38
5H127AB04
5H127BA02
5H127BB02
5H127DA20
5H127DB02
5H127DB49
5H127DB66
5H127DB74
5H127DC45
(57)【要約】
方法及びシステムは、自動車のシステム内の複数の燃料電池の間の不均衡な劣化を検出し、その不均衡な劣化に基づいて複数の燃料電池の全体に不均衡化された制御を適用する技術を提供することができる。一例では、不均衡化された制御は、複数の燃料電池の間で劣化を均衡化させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のシステムであって、
複数の燃料電池と、
前記複数の燃料電池に結合されたコントローラであって、前記コントローラは記憶された一連の命令を含む、コントローラと、
を含み、
前記一連の命令が前記コントローラによって実行されると、前記一連の命令は前記コントローラに、
前記複数の燃料電池の間の不均衡な劣化を検出することと、
前記不均衡な劣化に基づいて、前記複数の燃料電池の全体に対して不均衡化された制御を適用することと、
を行わせる、自動車のシステム。
【請求項2】
前記不均衡化された制御が、前記複数の燃料電池の間で前記劣化を均衡化させることである、請求項1に記載の自動車のシステム。
【請求項3】
前記不均衡化された制御を適用するために、前記命令が実行されると、前記命令は前記コントローラに、
前記複数の燃料電池のうちの第1の燃料電池の出力電力を減少させることと、
前記複数の燃料電池のうちの第2の燃料電池の出力電力を増大させることと、
を行わせ、
前記第1の燃料電池は、前記第2の燃料電池より大きな劣化率を有する、請求項1に記載の自動車のシステム。
【請求項4】
前記第1の燃料電池の出力電力を減少させるために、前記命令が実行されると、前記命令は前記コントローラに、前記第1の燃料電池に出力電力キャップを適用させる、請求項3に記載の自動車のシステム。
【請求項5】
前記不均衡な劣化を検出するために、前記命令が実行されると、前記命令は前記コントローラに、前記複数の燃料電池における第1の燃料電池と前記複数の燃料電池における第2の燃料電池との間の動作パラメータ差を検出させる、請求項1に記載の自動車のシステム。
【請求項6】
前記動作パラメータ差が、累積水素注入量差、累積出力電力差、冷却水温度差、空気吸入量差、および水素消費量差のうちの1つ以上である、請求項5に記載の自動車のシステム。
【請求項7】
前記第1の燃料電池の発生する出力電力と前記第2の燃料電池の発生する出力電力とが均衡している間に、前記冷却水温度差、前記空気吸入量差、または前記水素消費量差のうちの1つ以上が決定される、請求項6に記載の自動車のシステム。
【請求項8】
一連の命令を含み、
前記一連の命令は、自動車のシステムによって実行されたときに、自動車のシステムに、
前記自動車のシステム中の複数の燃料電池間の不均衡な劣化を検出することと、
前記不均衡な劣化に基づいて、前記複数の燃料電池の全体に不均衡化された制御を適用することと。
を行わせる、少なくとも1つのコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項9】
前記不均衡化された制御は、前記複数の燃料電池の間で前記劣化を均衡化させることである、請求項8に記載の少なくとも1つのコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項10】
前記不均衡化された制御を適用するために、前記命令が実行されると、前記命令は前記自動車のシステムに、
前記複数の燃料電池における第1の燃料電池の出力電力を減少させることと、
前記複数の燃料電池における第2の燃料電池の出力電力を増大させることと、
を行わせ、
前記第1の燃料電池は前記第2の燃料電池より大きな劣化率を有する、請求項8に記載の少なくとも1つのコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項11】
前記第1の燃料電池の出力電力を減少させるために、前記命令が実行されると、前記命令は前記自動車のシステムに、前記第1の燃料電池に出力電力キャップを適用させる、請求項10に記載の少なくとも1つのコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項12】
前記不均衡な劣化を検出するために、前記命令が実行されると、前記命令は前記自動車のシステムに、前記複数の燃料電池における第1の燃料電池と前記複数の燃料電池における第2の燃料電池との間の動作パラメータ差を検出させる、請求項8に記載の少なくとも1つのコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項13】
前記動作パラメータ差が、累積水素注入差、累積出力電力差、冷却水温度差、吸気量差、および水素消費量差のうちの1つ以上である、請求項12に記載の少なくとも1つのコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項14】
前記第1の燃料電池の発生する出力電力と前記第2の燃料電池の発生する出力電力とが均衡している間に、前記冷却水温度差、前記吸気量差、および前記水素消費量差のうちの1つ以上が決定される、請求項13に記載の少なくとも1つのコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項15】
自動車のシステムにおける複数の燃料電池の間の不均衡な劣化を検出することと、
前記不均衡な劣化に基づいて、前記複数の燃料電池の全体に不均衡化された制御を適用することと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項16】
前記不均衡化された制御は、前記複数の燃料電池の間で前記劣化を均衡化させる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記不均衡化された制御を適用することは、
前記複数の燃料電池における第1の燃料電池の出力電力を減少させることと、
前記複数の燃料電池における第2の燃料電池の出力電力を増大させることと、
を含み、
前記第1の燃料電池は前記第2の燃料電池より大きな劣化率を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の燃料電池の出力電力を減少させることが、
前記第1の燃料電池に出力電力キャップを適用すること
を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記不均衡な劣化を検出することが、
前記複数の燃料電池における第1の燃料電池と前記複数の燃料電池における第2の燃料電池との間の動作パラメータ差を検出すること
を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記動作パラメータ差が、累積水素注入量差、累積出力電力差、冷却水温度差、空気吸入量差、および水素消費量差のうちの1つ以上である、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願に対する相互参照]
本出願は、PCT国際特許出願であり、2021年3月5日に出願された米国非仮特許出願第17/193,188号の優先権を主張し、その主題をその全体で組み込む。
【0002】
実施形態は、一般に燃料電池に関する。より詳細には、実施形態は、劣化を制御し性能を向上させるために、燃料電池の電力を不均衡にすることに関する。
【背景技術】
【0003】
複数の燃料電池から電力を供給されるシステムは、概して、該複数の燃料電池の全出力電力を、該複数の燃料電池の全体にわたって均等にバランスさせようと試み得る(例えば、各燃料電池が目標出力電力の50%を供給する2つの燃料電池)。しかし、製造プロセスのばらつきのため、一部の燃料電池は、時間の経過に伴って他の燃料電池よりも早く劣化する可能性がある。結果として、一旦、均衡制御アプローチの下でもはや目標出力電力が達成され得ない点まで一部の燃料電池が劣化すると、システムは性能の問題に直面する可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一の実施形態において、自動車のシステムは、複数の燃料電池と、該複数の燃料電池に結合されたコントローラとを含み、該コントローラは記憶された一連の命令を含み、該一連の命令が前記コントローラによって実行されると、前記コントローラは、前記複数の燃料電池の間の不均衡な劣化を検出し、該不均衡な劣化に基づいて前記複数の燃料電池の全体に不均衡化された制御を適用する。
【0005】
他の一の実施形態において、少なくとも1つのコンピュータ読み取り可能な記憶媒体が一連の命令を含み、該一連の命令が自動車のシステムによって実行されると、該自動車のシステムは、該自動車のシステム内の複数の燃料電池の間の不均衡な劣化を検出し、該不均衡な劣化に基づいて複数の燃料電池の全体に不均衡化された制御を適用する。
【0006】
さらに他の一の実施態様において、方法は、自動車のシステム内の複数の燃料電池の間の不均衡な劣化を検出することと、前記不均衡な劣化に基づいて前記複数の燃料電池の全体に不均衡化された制御を適用することとを含む。
【0007】
本発明の実施形態の様々な利点は、以下の明細書および添付の特許請求の範囲を読み、以下の図面を参照することによって当業者に明らかになるであろう:
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態によるシステムの一例のブロック図である。
【
図2】
図2は、一実施形態による、燃料電池の電力を不均衡化する場合のタイムラインの一例のプロットである。
【
図3】
図3Aは、一実施形態による累積水素注入量の差の一例のプロットである。
図3Bは、一実施形態による累積出力電力の差の一例のプロットである。
図3Cは、一実施形態による冷却水温度の差の一例をプロットした図である。
図3Dは、一実施形態による吸気量の差の一例をプロットした図である。
図3Eは、一実施形態による水素消費量の差の一例を示すプロット図である。
【
図4】
図4Aは、一実施形態による、複数の燃料電池にわたる不均衡化された制御の一例のプロットである。
図4Bは、一実施形態による出力電力キャップの例のプロットである。
図4Cは、一実施形態による、
図4Bの出力電力キャップの結果の例のプロットである。
【
図5】
図5は、一実施形態によるコントローラを動作させる方法の一例のフローチャートである。
【
図6】
図6は、一実施形態による複数の燃料電池の全体に不均衡化された制御を適用する方法の一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[詳細な説明]
図1を参照すると、例えば自動車のシステム(例えば、自動車、トラック、オートバイ、バス等)等のシステム10が示され、ここでは、電力を消費する装置12(例えば、車両牽引モータ、ドライブシャフト等)が、複数の燃料電池14(14a~14n+1)によって電力供給される。一の実施形態において、各燃料電池14は、電解質の周りに挟まれた負極(例えば、アノード)および正極(例えば、カソード)の2つの電極を含む。水素(例えば、H
2)等の燃料をアノードに注入し、空気をカソードに供給することができる。燃料として水素を使用する場合、アノードの触媒は、水素分子をプロトンおよび電子に分離し、これらは、カソードへの異なる経路をとる。一例では、電子は、電力消費装置12(例えば、負荷)に電力を供給する外部回路(例えば、直流-直流/DC-DCコンバータ、インバータ等)を通る。さらに、プロトンは、電解質を通ってカソードに移動し、酸素および電子と結合して、水および熱を生成し得る。
【0010】
製造プロセスのばらつきのために、燃料電池14のいくつかは、他の燃料電池14よりも、経時的により速く劣化し得る。例えば、第1の燃料電池14aは、第2の燃料電池14bよりも大きな劣化速度を有し得る。図示の例では、複数のコントローラ16(16a~16n+1)は、複数の燃料電池14の間の不均衡な劣化を自動的に検出し、不均衡な劣化に基づいて複数の燃料電池14の全体に不均衡化された制御を適用するための劣化制御ロジック18(例えば、論理命令、構成可能ロジック、固定機能ハードウェアロジック)を含む。より詳細に論じられるように、不均衡化された制御は、複数の燃料電池14間の劣化を均衡化させることができる。従って、システム10は、均衡制御アプローチの下では目標出力電力をもはや達成できないポイントまで一部の燃料電池14が劣化することに関連付けられる性能問題を、遅らせること及び/又は回避することができる。
【0011】
劣化制御ロジック18は、複数のコントローラ16の全体に分散して配置されているように示されているが、劣化制御ロジック18は、代わりに、複数の燃料電池14のうちの1つに(例えば、スーパーバイザコントローラとして選択されて)配置されてもよく、または複数のコントローラ16の外部の別の構成要素に配置されてもよい。
【0012】
図2は、タイムライン20(20a、20b)の第1の部分20a(例えば、時刻t
0で開始する)を示しており、そこでは第1の劣化曲線22が第1の燃料電池(例えば、燃料電池/FC A)に関連付けられ、第2の劣化曲線24が第2の燃料電池(例えば、FC B)に関連付けられている。タイムライン20の第1の部分20aの間、例えば、第1の燃料電池が合計電力出力の約50%を提供し、第2の燃料電池が合計電力出力の約50%を提供するように、均衡制御が第1の燃料電池と第2の燃料電池とに適用され得る。図示の例では、第2の燃料電池は、第1の燃料電池よりも大きな劣化速度を有する。より詳細に論じられるように、不均衡な劣化は、種々の動作パラメータを介して検出され得る。例えば、第1の劣化曲線22と第2の劣化曲線24との間の差異26が所定のしきい値を超えたことが検出された場合、不均衡な劣化に基づいて、タイムライン20の第2の部分20b(例えば、時刻t
1において開始する)の間に、不均衡化された制御が当該複数の燃料電池の全体に適用され得る。一の実施形態において、不均衡化された制御は、第1の燃料電池をより速く劣化させ、第2の燃料電池をより遅く劣化させる。時刻t
2において、不均衡化された制御は、複数の燃料電池の間で劣化を均衡化する。示されるように劣化の不均衡を修正することは、性能および/または耐久性を著しく高め得る。
【0013】
次に
図3Aを参照すると、プロット30が示されており、そこでは(例えば、FC Aに関連付けられた)第1の曲線32と(例えば、FC Bに関連付けられた)第2の曲線34との間の累積水素注入量の差(d
HI、例えば、累積/合計水素注入器開放時間)が動作パラメータとして監視され、適切なしきい値と比較される。一の実施形態において、ある燃料電池の水素注入の累積量が増加したことは、その燃料電池内での劣化を示す。いったん累積水素注入量の差がしきい値を超えると、劣化を均衡化させるために、不均衡化された制御が当該複数の燃料電池の全体に自動的に適用され得る。
【0014】
次に
図3Bを参照すると、プロット40が示されており、そこでは累積出力電力差(d
OP、例えば、燃料電池スタックによって発生される出力電力の累積/合計量)が、(例えば、FC Aに関連付けられた)第1の曲線42と(例えば、FC Bに関連付けられた)第2の曲線44との間で、動作パラメータとして監視され、適切なしきい値と比較される。一の実施形態において、ある燃料電池の出力電力の累積量が増加したことは、その燃料電池内での劣化を示す。いったん累積出力電力の差が閾値を超えると、劣化を均衡化させるために、不均衡化された制御が当該複数の燃料電池の全体に自動的に適用され得る。
【0015】
次に
図3Cを参照すると、プロット50が示されており、そこでは第1の曲線52(例えば、FC Aに関連付けられた)と第2の曲線54(例えば、FC Bに関連付けられた)との間の冷却水の温度差(d
WT、例えば、燃料電池スタックを冷却するために使用された水の温度)が、動作パラメータとして監視され、適切なしきい値と比較される。一の実施形態において、(例えば、1つまたは複数の他の燃料電池と比較して)ある燃料電池の冷却水が比較的高温であることは、その燃料電池が他の燃料電池と同じ量の電力(例えば、均衡した出力電力)を発生している場合には、その燃料電池内での劣化を示す。冷却水温度の差が閾値を上回る場合、劣化を均衡化するために、不均衡化された制御が当該複数の燃料電池の全体に自動的に適用され得る。
【0016】
次に、
図3Dを参照すると、プロット60が示されており、第1の曲線62(例えば、FC Aに関連付けられた)と第2の曲線64(例えば、FC Bに関連付けられた)との間の空気吸入量の差(d
IA、例えば、燃料電池スタックに流入する空気の量)が、動作パラメータとして監視され、適切なしきい値と比較される。一の実施形態において、(例えば、1つまたは複数の他の燃料電池と比較して)ある燃料電池の吸気量が比較的多いことは、その燃料電池が他の燃料電池と同じ量の電力(例えば、均衡した出力電力)を発生している場合、その燃料電池内での劣化を示す。累積吸気量の差が閾値を上回る場合、劣化を均衡化させるために、不均衡化された制御が当該複数の燃料電池の全体に自動的に適用され得る。
【0017】
次に
図3Eを参照すると、プロット70が示されており、そこでは(例えば、FC Aに関連付けられた)第1の曲線72と(例えば、FC Bに関連付けられた)第2の曲線74との間の水素消費量の差(d
HC、例えば、燃料電池スタックによって消費された水素の量)が、動作パラメータとして監視され、適切なしきい値と比較される。一の実施形態において、(例えば、1つまたは複数の他の燃料電池と比較して)ある燃料電池の水素消費量が比較的多いことは、その燃料電池が他の燃料電池と同じ量の電力(例えば、均衡した出力電力)を発生している場合、その燃料電池内での劣化を示す。水素消費量差が閾値を上回る場合、劣化を均衡化させるために、不均衡化された制御が当該複数の燃料電池全体に自動的に適用され得る。不均衡な劣化を検出するために、他の動作パラメータを使用することもできる。
【0018】
図4Aは、タイムライン80(80a、80b)を示しており、そこでは均衡した出力電力がタイムライン80の第1の部分80aの間に複数の燃料電池によって発生される。図示の例では、第1の燃料電池(例えばFC A)及び第2の燃料電池(例えばFC B)は共に、第1の部分80aの間に合計電力出力の50%を発生する。対照的に、タイムライン80の第2の部分80bの間、第1の燃料電池は合計電力出力の70%を発生し、第2の燃料電池は合計電力出力の30%を発生する。このように、図示した不均衡化された制御は、第2の燃料電池が第1の燃料電池よりも速く劣化していると判断される場合に使用され得る。
【0019】
図4Bは、燃料電池の出力電力を減少させるための一つのアプローチが、出力電力キャップ90をその燃料電池に適用することであることを示している。図示の例では、FC Bの出力電力はキャップ90のレベルに制限されている。
【0020】
図4Cは、出力電力キャップ90が適用される前には、燃料電池の出力電力が比較的高いダイナミックレンジを有し、キャップ90より上のレベルでピークに達することが許されることを示す。しかし、キャップ90が適用された後では、燃料電池の出力電力はより低いダイナミックレンジを有し、キャップ90のレベルを超えることは許されない。燃料電池の出力電力を減少させる他のアプローチの例としては、水素注入器の脈動の数を制限すること、動作の総時間を減少させること等を挙げることができる。
【0021】
図5は、例えば上記説明したシステム10(
図1)等のシステム、および/または、例えば上記説明したコントローラ16(
図1)のうちの1つ以上等のコントローラを動作させる方法100を示す。方法100は、論理命令(例えば、ソフトウェア)、構成可能ロジック、固定機能ハードウェアロジック等、またはそれらの任意の組合せで実装され得る。図示された処理ブロック102は、自動車のシステムにおける複数の燃料電池の間の不均衡な劣化の検出を提供する。一の実施形態において、ブロック102は、複数の燃料電池のうちの第1の燃料電池と複数の燃料電池のうちの第2の燃料電池との間の動作パラメータの差を検出することを含む。一例では、動作パラメータの差は、累積水素注入量の差、累積出力電力の差、冷却水温度の差、空気吸入量の差、水素消費量の差等、またはそれらの任意の組み合わせである。さらに、第1の燃料電池の発生する出力電力と第2の燃料電池の発生する出力電力とが均衡している間に、冷却水温度の差、吸入空気量の差および/または水素消費量の差が決定されてもよい。
【0022】
ブロック104は、不均衡な劣化に基づいて、複数の燃料電池の全体に対して不均衡化された制御を適用する。図示の例では、不均衡化された制御は、複数の燃料電池の間で劣化を均衡化させる。したがって、図示された方法100は、少なくとも、意図的に不均衡化された制御により、複数の燃料電池が目標とされた合計出力電力量を集合的に提供することができる時間の長さが延びる程度に、性能および/または耐久性を高める。
【0023】
図6は、複数の燃料電池の全体に不均衡化された制御を適用する方法110を示す。方法110は、一般に、既に説明したブロック104(
図5)に組み込むことができる。一の実施形態において、方法110は、論理命令(例えば、ソフトウェア)、構成可能ロジック、固定機能ハードウェアロジック等、またはそれらの任意の組合せで実装される。図示された処理ブロック112は、当該複数の燃料電池中の第1の燃料電池の出力を低下させる。一例では、ブロック112は、出力電力キャップを第1の燃料電池に適用することを含む。ブロック114は、当該複数の燃料電池における第2の燃料電池の出力電力を増加させることができ、第1の燃料電池は第2の燃料電池よりも大きな劣化率(degradation rate)を有する。図示された方法110は、少なくとも、第1の燃料電池の出力電力を意図的に減少させることによって第1の燃料電池の劣化速度が遅くなり、システムの寿命が延びる程度に、性能及び/又は耐久性をさらに高める。
【0024】
「結合された」という用語は、本明細書では、問題の構成要素間の直接的または間接的な任意のタイプの関係を指すために使用することができ、電気的、機械的、流体的、光学的、電磁的、電気機械的または他の接続に適用することができる。さらに、用語「第1の」、「第2の」等は、議論を容易にするためにのみ本明細書で使用され得て、別段の指示がない限り、特定の時間的または実際的重要性を有しない。
【0025】
当業者は、上記の説明から、本発明の実施形態の広範な技術を様々な形態で実施できることを理解するであろう。したがって、本発明の実施形態は、その特定の例に関連して説明されてきたが、本発明の実施形態の真の範囲はそれらに限定されるべきではない、なぜなら他の修正が図面、明細書、および以下の特許請求の範囲の研究によって当業者に明らかになるからである。
【国際調査報告】