(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-01
(54)【発明の名称】カーゴの細胞への送達方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/87 20060101AFI20240325BHJP
A61K 41/00 20200101ALI20240325BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240325BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20240325BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240325BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240325BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240325BHJP
C12N 5/0781 20100101ALI20240325BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20240325BHJP
C12N 5/0784 20100101ALI20240325BHJP
C12N 5/0786 20100101ALI20240325BHJP
C12N 5/0787 20100101ALI20240325BHJP
C12N 5/079 20100101ALI20240325BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
C12N15/87 Z
A61K41/00
A61K31/7088
A61K9/51
A61K48/00
A61P43/00 105
C12N5/10
C12N5/0781
C12N5/0783
C12N5/0784
C12N5/0786
C12N5/0787
C12N5/079
C12N15/63 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023554348
(86)(22)【出願日】2022-03-11
(85)【翻訳文提出日】2023-10-25
(86)【国際出願番号】 EP2022056333
(87)【国際公開番号】W WO2022189627
(87)【国際公開日】2022-09-15
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522108677
【氏名又は名称】トリンス ビーブイ
【氏名又は名称原語表記】TRINCE BV
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100225060
【氏名又は名称】屋代 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン ブレックマンズ
(72)【発明者】
【氏名】アラニト ハリザジ
(72)【発明者】
【氏名】ステファーン ドゥ スメ
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス ソヴァージュ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
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4C086ZB21
(57)【要約】
本発明は、細胞内にカーゴを送達するためのin vitroまたはex vivoの方法であって、細胞を、1つ以上の光応答性有機粒子およびカーゴと接触させ、カーゴは、1つ以上の光応答性有機粒子に結合しておらず、有機粒子は、ポリマーベースの粒子、タンパク質ベースの粒子、脂質ベースの粒子、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、それによって、細胞、カーゴ、および1つ以上の光応答性有機粒子の混合物を得る、ステップと、細胞、カーゴ、および1つ以上の光応答性有機粒子の混合物に電磁放射線を照射し、それによって細胞のバリアの透過化を引き起こし、カーゴを細胞内に送達するステップと、を含む方法に関する。本発明はさらに、本明細書で定義される1つ以上の光応答性有機粒子、およびカーゴを対象の細胞に送達するin vivoの方法で使用するためのカーゴに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞内にカーゴを送達するためのin vitroまたはex vivoの方法であって、
細胞を1つ以上の光応答性有機粒子およびカーゴと接触させ、前記カーゴは、1つ以上の前記光応答性有機粒子に結合しておらず、前記有機粒子は、ポリマーベースの粒子、タンパク質ベースの粒子、脂質ベースの粒子、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、それによって、前記細胞、前記カーゴ、および前記1つ以上の光応答性有機粒子の混合物を得る、ステップと、
前記細胞、前記カーゴ、および前記1つ以上の光応答性有機粒子の前記混合物に電磁放射線を照射し、それによって前記細胞のバリアの透過化を引き起こし、前記カーゴを前記細胞内に送達するステップと、を含むか、または
細胞を1つ以上の光応答性有機粒子と接触させ、前記有機粒子は、ポリマーベースの粒子、タンパク質ベースの粒子、脂質ベースの粒子、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、それによって前記細胞と前記1つ以上の光応答性有機粒子との混合物を得る、ステップと、
前記細胞と前記1つ以上の光応答性有機粒子の前記混合物に電磁放射線を照射し、それによって前記細胞のバリアの透過化を引き起こすステップと、
前記細胞および前記1つ以上の光応答性有機粒子の前記混合物をカーゴと接触させ、それによって前記カーゴを前記細胞内に送達するステップと、を含む、
細胞内にカーゴを送達するためのin vitroまたはex vivoの方法。
【請求項2】
前記1つ以上の光応答性有機粒子の2点間の最大距離は、約250nm~約1250nm、好ましくは約300nm~約1200nm、約400nm~約1100nm、または約500nm~約1000nmである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カーゴは、核酸、タンパク質、化学物質、多糖類、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは、前記カーゴは、核酸であり、より好ましくは、前記カーゴは、mRNAまたはプラスミドDNAである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記光応答性有機粒子は、光応答性ポリマーベースの粒子であり、好ましくは、前記光応答性有機粒子は、ポリドーパミン(PD)粒子、ポリ(N-フェニルグリシン)(PNPG)粒子、ポリ-2-フェニル-ベンゾビスチアゾール(PPBBT)粒子、ポルフィリン粒子、フタロシアニン粒子、またはポリピロール粒子から選択される光応答性ポリマーベースの粒子である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記光応答性有機粒子は、光吸収分子を含むポリマーベースの粒子、タンパク質ベースの粒子、または脂質ベースの粒子であり、好ましくは、前記光応答性有機粒子は、光吸収分子を搭載または官能化したポリマーベースの粒子、タンパク質ベースの粒子、または脂質ベースの粒子である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記光吸収分子は、光吸収色素、天然に存在する光吸収剤、および合成光吸収剤からなる群から選択される分子である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリマーベースの粒子は、ポリ(DL-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、エチルセルロース、セルロースアセトフタレート、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、コラーゲン、絹、アルギン酸、ヒアルロン酸、デキストラン、デンプン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリスチレン、メトキシ-PEG-ポリ乳酸、ポリ(シアノアクリル酸アルキル)(PACA)、ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド(PLGH))、ポリ(塩酸アリルアミン)、またはポリオキサゾリンを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記光応答性有機粒子は、表面で官能化されており、好ましくは、前記光応答性有機粒子は、アルブミン、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)(PDDAC)、ポリ(アリルアミン塩酸塩)(PAH)、ポリアミドアミン(PAA)、ポリ(アミノ-co-エステル)(PAE)、ポリ[2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート](PDMAEMA)、ヒアルロン酸(HA)、ゼラチン、ポリグリセリン、シクロデキストリン(CD)、デキストラン、セルロース、シリカ、ポリオキサゾリン、スルホベタインシラン(SBS)、カチオン性脂質、中性脂質、アニオン性脂質、キトサン、ポリ-L-リジンからなる群から選択される1つ以上の化合物でコーティングされている、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記光応答性有機粒子は、生分解性である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記光応答性有機粒子は、ポリドーパミン粒子であり、好ましくは、前記光応答性有機粒子は、アルブミンでコーティングされたポリドーパミン粒子である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞は、動物細胞であり、好ましくは、前記細胞は、ヒト細胞である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞は、免疫細胞であり、好ましくは、前記免疫細胞は、T細胞、リンパ球、マクロファージ、樹状細胞、単球、NK細胞、NKT細胞、B細胞、好中球、顆粒球、ミクログリア細胞、またはランゲルハンス細胞である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記電磁放射は、パルスレーザーなどのレーザーによって生成され、好ましくは、
前記レーザーのパルス強度は、少なくとも10
4W/cm
2、例えば10
4~10
17W/cm
2であり得、
前記レーザーのパルスのフルエンスは、少なくとも0.01mJ/cm
2、例えば0.01J/cm
2~100J/cm
2であり得、
前記レーザーのパルス数は、少なくとも1レーザーパルス、例えば1~1000レーザーパルスであり得、および/または、
前記レーザーの前記パルスの持続時間は、少なくとも1fs、例えば1fs~100sであり得る、
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
対象の細胞内にカーゴを送達するための、請求項1から10のいずれか一項に定義される1つ以上の光応答性有機粒子および請求項1から10のいずれか一項に定義されるカーゴであって、前記細胞は、続いて、対象における治療方法において使用され、前記方法は、
前記対象の前記細胞の周囲に前記1つ以上の光応答性有機粒子を投与するステップと、
前記対象の前記細胞の周囲の少なくとも一部に照射し、それによって前記細胞のバリアの透過化を引き起こすステップと、
前記対象の前記細胞の周囲に前記カーゴを投与し、それによって前記カーゴを前記細胞内に送達するステップと、
を含むか、または、
前記方法は、
前記対象の前記細胞の周囲に前記1つ以上の光応答性有機粒子および前記カーゴを投与するステップと、
前記対象の前記細胞の周囲の少なくとも一部に照射し、それによって前記細胞のバリアの透過化を引き起こし、前記細胞を前記カーゴに送達するステップと、
を含む、
対象の細胞内にカーゴを送達するための、請求項1から10のいずれか一項に定義される1つ以上の光応答性有機粒子および請求項1から10のいずれか一項に定義されるカーゴ。
【請求項15】
前記1つ以上の光応答性有機粒子の2点間の最大距離は、約250nm~約1250nm、好ましくは約300nm~約1200nm、約400nm~約1100nm、または約500nm~約1000nmである、使用のための請求項14に記載の1つ以上の光応答性有機粒子およびカーゴ。
【請求項16】
前記細胞は、動物細胞であり、
前記細胞は、ヒト細胞であり、
前記細胞は、免疫細胞であり、好ましくは、免疫細胞は、T細胞、リンパ球、マクロファージ、樹状細胞、単球、NK細胞、NKT細胞、B細胞、好中球、顆粒球、ミクログリア細胞、またはランゲルハンス細胞であり、および/または、
電磁放射線は、パルスレーザーなどのレーザーによって生成される、
使用のための請求項14または15のいずれか一項に記載の1つ以上の光応答性有機粒子およびカーゴ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広範には細胞工学の分野に属し、より正確には、核酸またはタンパク質などのカーゴを細胞に送達する分野に属する。
【背景技術】
【0002】
さまざまな高分子をさまざまな細胞型の細胞質ゾルに送達することは、がん免疫療法、幹細胞療法、その他の生物医学研究分野などのさまざまな用途に必要である。細胞膜は多くの化合物に対して非透過性であるため、大部分の高分子は自発的に細胞膜を通過し得ない。したがって、このような細胞不透過性化合物の細胞質ゾルへの送達を可能にするためには、異なる技術が必要である。何年もの間、エレクトロポレーションは標準的な送達ツールとして使用されてきた。エレクトロポレーションは、電気パルスの適用後に細胞膜に細孔を形成する機能を有する。細胞不透過性化合物は、これらの細孔を通って周囲の培地から細胞内部に移動し得る。エレクトロポレーションはさまざまな細胞型に対して高い送達効率を達成し得るにもかかわらず、高い細胞毒性、ゲノム変化の誘導、表現型変化の誘導、いくつかの初代(免疫)細胞における送達効率の低さなど、いくつかの限界が報告されている。したがって、細胞の遺伝子型または表現型に影響を与えず、高い生存率で高い送達効率を達成し得る新しい技術が必要とされる。
【0003】
例えば、キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞の安全かつ効率的な生成は、細胞ベースのがん免疫療法にとって非常に重要である。歴史的に、ウイルスベクターはT細胞の形質導入に優先的に使用されてきたが、安全性への懸念があり、カーゴの種類およびサイズの点で柔軟性が限られている。したがって、さまざまな細胞型および多種多様なカーゴ分子に容易に適合可能な物理的トランスフェクション法が重要性を増している。特に、金属、金属酸化物、または炭素同素体で構成されるナノ粒子を使用するナノ粒子増感フォトポレーションは、細胞を一時的に透過化させ、その後の外部カーゴ分子の細胞への侵入を可能にする穏やかな方法として近年導入されている。残念ながら、これらのナノ粒子は時間が経っても分解しない(または、非常にゆっくりしか分解しない)ため、臨床応用が妨げられる。実際、非分解性ナノマテリアルの医療用途には、より厳しい規制問題が適用される。さらに、金ナノ粒子などの無機ナノ粒子の使用には一般的な安全上の懸念がある。特に懸念されるのは、フォトポレーション用の金ナノ粒子(例えば、60nmの初期サイズを有する)は、レーザー処理後、非常に小さなナノ粒子(10nm未満)に断片化する傾向があり、これは核膜を通過してDNAに侵入し、遺伝毒性効果を引き起こし得る。
【0004】
光応答性金ナノ粒子を使用して細胞のトランスフェクションにフォトポレーションを適用する方法は、従来技術(L.Raesら、「Intracellular delivery of mRNA in adherent and suspension cells by vapor nanobubble photoporation」NANO-MICRO LETTERS,vol.12,no.1,2020)に開示されている。特に、記載されたトランスフェクション方法を使用したJurkat細胞へのmRNAの送達が開示されている。
【0005】
他のいくつかの文献(J.Liuら、「Surface functionalization with polyethylene glycol and polyethyleneimine improves the performance of graphene-based materials for safe and efficient intracellular delivery by laser-induced photoporation,」INTERNATIONAL JOURNAL OF MOLECULAR SCIENCES,vol.21,no.4,2020;J.Liuら、「Repeated photoporation with graphene quantum dots enables homogeneous labeling of live cells with extrinsic markers for fluorescence microscopy,」LIGHT-SCIENCE&APPLICATIONS,vol.7,2018)には、光応答性グラフェンナノ粒子を使用して細胞のトランスフェクションにフォトポレーションを適用する方法が開示されている。
【0006】
上で引用した方法はすべて、光応答性無機ナノ粒子の使用を含む。上記のように、医療目的での光応答性無機ナノ粒子の使用には、例えば遺伝毒性効果に関連した一般的な安全性の懸念があり、したがって、引用された方法は治療用途に適している可能性が低い。
【0007】
金ナノ粒子などの無機ナノ粒子から生じる小さな(金)断片への細胞の曝露を回避するために、従来技術の方法では、金層で覆われたマイクロサイズの角錐のアレイからなる光応答性微細機械加工基板が使用されている。細胞はこれらの金で覆われた角錐の上で成長し、照射される。角錐は、特に細胞と接触している先端で加熱され、これらの位置で細胞膜を一時的に透過化して、外因性分子の流入を可能にする(Saklayenら、ACS Nano、2017、11(4):3671)-3680)。しかしながら、そのような方法は技術的に複雑である。
【0008】
上記を考慮すると、当技術分野では、核酸などのカーゴ分子を細胞内に送達するためのさらなるおよび/または改良された方法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
広範な実験によって、本発明者らは、光応答性有機粒子を使用してmRNAなどのカーゴを細胞内に送達する方法を発見した。本実験では、電磁放射線の照射による光応答性有機粒子からの蒸気泡の形成およびカーゴの送達の成功が初めて実証された。
【0010】
したがって、本発明の第1の態様は、
細胞を、1つ以上の光応答性有機粒子およびカーゴと接触させ、カーゴは、1つ以上の光応答性有機粒子に結合しておらず、有機粒子は、ポリマーベースの粒子、タンパク質ベースの粒子、脂質ベースの粒子、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、それによって、細胞、カーゴ、および1つ以上の光応答性有機粒子の混合物を得る、ステップと、
細胞、カーゴ、および1つ以上の光応答性有機粒子の混合物に電磁放射線を照射し、それによって細胞のバリアの透過化を引き起こし、カーゴを細胞内に送達するステップと、を含む、または、
細胞を1つ以上の光応答性有機粒子と接触させ、有機粒子は、ポリマーベースの粒子、タンパク質ベースの粒子、脂質ベースの粒子、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、それによって細胞と1つ以上の光応答性有機粒子の混合物を得る、ステップと、
細胞および1つ以上の光応答性有機粒子の混合物に電磁放射線を照射し、それによって細胞のバリアの透過化を引き起こすステップと、
細胞および1つ以上の光応答性有機粒子の混合物をカーゴと接触させ、それによってカーゴを細胞内に送達するステップと、を含む、
細胞内にカーゴを送達するためのin vitroまたはex vivoの方法に関する。
【0011】
広範な実験の後、本発明者らは、本発明の原理を使用する方法によって、蒸気泡の形成および核酸、例えばmRNAなどのカーゴを、細胞、例えばHeLa細胞、さらにはトランスフェクションが難しいヒトT細胞に送達することが成功可能になることを発見した。本発明の方法は、高い効率、例えば、高いトランスフェクションを可能にしながら、低い細胞毒性、高い細胞生存率、それによる高い送達収率を可能にする。重要なことは、ヌクレオフェクションと比較して、本発明の方法の後に、約2倍多くの生mRNAトランスフェクション初代ヒトT細胞が得られたことである。光応答性有機粒子がポリドーパミンなどの臨床的に承認された前駆体から調製され得ることを考慮すると、本方法は、CAR-T細胞などの遺伝子操作された治療用細胞生成物の生成を可能にする可能性を切り開く。
【0012】
さらに、光応答性有機粒子を使用する本発明の方法は、従来技術の方法に比べて下記の利点を有する。
1.光応答性有機ナノ粒子を使用する本方法は、細胞を光応答性有機粒子に曝露し、電磁波を照射することのみを必要とする、技術的に単純なアプローチであるという利点を有する。
2.光応答性有機粒子は、無機粒子と比較して生分解性および生体適合性に優れており、これは安全性および規制の観点から有利である。
3.光応答性有機粒子は、すでに臨床的に承認されている前駆体分子、例えば、ドーパミン塩酸塩から調製され得る。これは、光応答性有機粒子、例えば、優れた光熱特性を有する、ポリドーパミン粒子の作成に使用され得る。
4.このような光応答性有機粒子は、金ナノ粒子などの無機ナノ粒子の場合でははるかに困難である、さまざまなサイズで容易に合成され得る。
【0013】
それを考慮すると、光応答性有機粒子を含むこれらの方法は、対象の細胞にカーゴを送達するためのin vivo方法に容易に変換され得る。
【0014】
したがって、さらなる態様は、対象における治療方法に使用するための、本明細書で定義される1つ以上の光応答性有機粒子および本明細書で定義されるカーゴを提供し、カーゴは対象の細胞に送達され、本方法は、
対象の細胞の周囲に1つ以上の光応答性有機粒子を投与するステップと、
対象の細胞の周囲の少なくとも一部に照射し、それによって細胞のバリアの透過化を引き起こすステップと、
対象の細胞の周囲にカーゴを投与し、それによってカーゴを細胞内に送達するステップと、
を含むか、または、
方法は、
対象の細胞の周囲に1つ以上の光応答性有機粒子およびカーゴを投与するステップと、
対象の細胞の周囲の少なくとも一部に照射し、それによって細胞のバリアの透過化を引き起こし細胞をカーゴに送達するステップと、を含む。
【0015】
実施例の項で説明するように、興味深い追加の発見は、より大きな光応答性有機粒子、例えば、直径300nm、500nm、750nm、および1000nmのナノ粒子は、より小さな60nmの金ナノ粒子および100nmの光応答性有機粒子の使用と比較して、mRNAおよびpDNAなどの非常に大きな核酸の送達を強化する能力を持っていたことである。
【0016】
したがって、本発明は、好ましくは、細胞内にカーゴを送達するためのin vitroまたはex vivoの方法であって、本方法は、
細胞を、1つ以上の光応答性有機粒子およびカーゴと接触させ、カーゴは、1つ以上の光応答性有機粒子に結合しておらず、1つ以上の光応答性有機粒子の2点間の最大距離は、約100nm~約2000nm、例えば約250nmから約1250nmであり、有機粒子は、ポリマーベースの粒子、タンパク質ベースの粒子、脂質ベースの粒子、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、それによって、細胞、カーゴ、および1つ以上の光応答性有機粒子の混合物を得る、ステップと、
細胞、カーゴ、および1つ以上の光応答性有機粒子の混合物に電磁放射線を照射し、それによって細胞のバリアの透過化を引き起こし、カーゴを細胞内に送達するステップと、を含む、または、
細胞を1つ以上の光応答性有機粒子と接触させ、1つ以上の光応答性有機粒子の2点間の最大距離は、約100nm~約2000nm、例えば約250nmから約1250nmであり、有機粒子は、ポリマーベースの粒子、タンパク質ベースの粒子、脂質ベースの粒子、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、それによって細胞と1つ以上の光応答性有機粒子の混合物を得る、ステップと、
細胞および1つ以上の光応答性有機粒子の混合物に電磁放射線を照射し、それによって細胞のバリアの透過化を引き起こすステップと、
細胞および1つ以上の光応答性有機粒子の混合物をカーゴと接触させ、それによってカーゴを細胞内に送達するステップと、を含む。
【0017】
実施例は、そのような方法が十分な細胞生存率を維持しながら高い送達効率を提供し、それによって細胞へのカーゴの高い送達収率をもたらすことを示している。約250nm~約1250nmのサイズを有する光応答性有機粒子を使用する場合の送達収率は、約100nmのサイズを有する光応答性有機粒子を用いた送達収率と比較して、または約60nmのサイズを有する金ナノ粒子を用いた送達収率と比較して、著しく改善される。
【0018】
本発明の上記およびさらなる態様および好ましい実施形態は、下記の項および添付の特許請求の範囲で説明される。添付の特許請求の範囲の主題は、特に本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】細胞へのmRNAのポリドーパミン増感送達のための、本発明の実施形態による方法の概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるむきだしの(コーティングされていない)NPおよび本発明の一実施形態によるBSAでコーティングされたポリドーパミン(PD)ナノ粒子(NP)の物理化学的特徴を示す。(A)動的光散乱(DLS)で最大7時間測定した、合成中の時間の関数としてのPD NPの流体力学的直径(nm)を表すグラフである。最後に超音波処理を適用して、合成中に形成された場合のあり得る残留凝集物を除去した。(B)むきだしの500nm PD NPの代表的なSEM画像(スケールバー=500nm)である。(C)むきだしの500nm PD NPの対応するサイズ分布を表すグラフである。平均サイズは454± 96nmを示す。(D)Opti-MEMでの明らかなサイズの増加を示す、DLS(インキュベーション時間10分以下)によって水(黒色の曲線)およびOpti-MEM(薄い灰色の曲線)でそれぞれ測定されたむきだしのPD NPの流体力学的直径を表すグラフである。(E)DLS(インキュベーション時間10分以下)によって水(黒色の曲線)およびOpti-MEM(薄い灰色の曲線)でそれぞれ測定された、BSAコーティングされたPD NPの流体力学的直径を表すグラフである。(F)それぞれドーパミン・HCl(黒い縞線)、むきだしのPD NP(濃い灰色の点線)、およびBSAコーティングされたPD NP(明るい灰色の点線)のUV/VISスペクトルを表すグラフである。(G)レーザーパルス(7nsパルス幅、561nm波長、1.6J/cm
2)の適用前のPD NPの暗視野顕微鏡画像(スケールバー=50μm)である。(H)レーザーパルス(7nsパルス幅、561nm波長、1.6J/cm
2)の適用後のPD NPの暗視野顕微鏡画像(スケールバー=50μm)である。(I)暗視野顕微鏡画像からのVNBの数の定量化をレーザーフルエンスの関数として示すグラフである。灰色に塗りつぶされた領域の左側の点線は、照射されたPD NPの90%が蒸気泡を形成するレーザーフルエンスの閾値を表す。
【
図3】HeLa細胞上の500nmポリドーパミン-ウシ血清アルブミン(PD-BSA)NPに対する本発明の実施形態による2つのインキュベーション方法の比較である。(A)インキュベーションを伴う方法を介する接着HeLa細胞内の500kDa FITC-デキストラン(FD500)の送達効率(左y軸、濃い灰色のバー)および細胞生存率(フォトポレーションの2時間後、右y軸、明るい灰色のバー)を表すグラフである。UTC:未処理の対照、Ctrl:モックFD500対照、PD Ctrl:PD-BSA NPおよびFD500対照、Laser Ctrl:レーザーおよびFD500対照、Photo Ctrl:モックフォトポレーション対照(32x10
7PD-BSA NP/mL)である。(B)接着HeLa細胞における混合法によるFD500の送達効率(左y軸、濃い灰色のバー)および生存率(2時間、右y軸、薄い灰色のバー)を表すグラフである。(C)浮遊HeLa細胞(すなわち、トリプシン処理後)における混合方法によるFD500の送達効率(左y軸、濃い灰色のバー)および生存率(2時間、右y軸、薄い灰色のバー)を表すグラフである。(D)さまざまな方法での生存FD500陽性細胞の収率を表すグラフである。接着HeLa細胞でのインキュベーション方法(左の斜線のバー)、接着HeLa細胞での混合方法(中央の水平ドットのバー)、および浮遊HeLa細胞での混合方法(右側の横縞模様のバー)である。(E)混合法(8x10
7NPs/mL)による、浮遊HeLa細胞中のeGFPをコードするmRNAのトランスフェクション効率(左y軸、濃い灰色のバー)および対応する生存率(24時間、左y軸、薄い灰色のバー)を表すグラフである。トランスフェクション収率(右のy軸、縞模様のバー)は、初期細胞集団全体に対する生存eGFP陽性細胞の割合である。(F)eGFP-mRNAの存在下で、それぞれ(I)mRNA対照および(II)フォトポレーションについてeGFP-mRNAをトランスフェクションしたHeLa細胞の共焦点顕微鏡画像である。スケールバー=100μmである。データは平均±SDとして示されている。統計的有意性:一元配置分散分析である。n.s.は、重要ではないことを指す。
【
図4】増感剤としてPD-BSA NPを用いた混合フォトポレーション法によって、FD500およびeGFP-mRNAをJurkat細胞に送達するための本発明の実施形態による方法を示す。(A)PD500-BSA NPの濃度を増加させた場合のフォトポレーション後のJurkat細胞へのFD500の送達効率(左y軸、黒いバー)および相対平均蛍光強度(右y軸、縞模様のバー)を表すグラフである。対応する生存率は、代謝CellTiter Gloアッセイを使用して24時間後に測定された(左のy軸、明るい灰色の点)。UTC:未処理の対照、Ctrl:モックFD500対照、Photo Ctrl:モックフォトポレーション対照(つまり、PD-BSA NP によるレーザー照射のみ)である。(B)固定濃度のPD-BSA NP(64x10
7PD-BSA NP/mL)を用いたフォトポレーションによるeGFP-mRNAの送達効率(左y軸、黒いバー)を表すグラフである。対応する生存率は、CellTiter Gloアッセイを使用して24時間後に測定された(左のy軸、明るい灰色のバー)である。トランスフェクション収率(右のy軸、縞模様のバー)は、初期の細胞集団と比較した生細胞とトランスフェクションされた細胞の割合を表す。(C)(I)未処理の対照(UTC)、(II)mRNA対照、(III)モックフォトポレーション対照(64x10
7NP/mL)、および(IV)存在下でのフォトポレーションによってeGFP-mRNAをトランスフェクションしたJurkat細胞の共焦点顕微鏡画像mRNAの量(64x10
7NP/mL)である。スケールバー=100μmである。データは平均±SDとして示される。
【
図5】PD-BSA NPとの混合フォトポレーションプロトコールによるヒトT細胞へのFD500およびeGFP-mRNAの送達のための本発明の実施形態による方法を示す。(A)PD-BSA NP濃度を増加させた場合のフォトポレーション後のヒトT細胞へのFD500の送達効率(左y軸、黒いバー)および相対平均蛍光強度(rMFI)(右y軸、縞模様のバー)を表すグラフである。対応する生存率は、CellTiter Gloアッセイを使用して24時間後に測定された(左のy軸、明るい灰色の点)。UTC:未処理の対照、Ctrl:モックFD500対照、Photo Ctrl:モックフォトポレーション対照である。(B)(I)フォトポレーションなしおよびPD-BSA NP 濃度がそれぞれ(II)250x10
7NPs/mL、(III)500x10
7NPs/mLおよび(IV)1000x10
7NPs/mL(スケールバー=100μm)の場合のフォトポレーションあり(II-IV)のFD500に「ロードされた」ヒトT細胞の代表的な共焦点顕微鏡画像である。(C)PD-BSA NPの濃度を増加させたフォトポレーション後のeGFP-mRNAの送達効率(左y軸、黒バー)および対応する相対平均蛍光強度(右y軸、縞模様のバー)を表すグラフである。対応する生存率は、CellTiter Gloアッセイを使用して24時間後に測定された(左のy軸、明るい灰色の点)である。UTC:未処理の対照、Ctrl:モックmRNA対照、Photo Ctrl:モックフォトポレーション対照である。(D)ヒトT細胞へのeGFPをコードするmRNAを含まないフォトポレーション(フォトポレーション対照)およびeGFPをコードするmRNA(フォトポレーションmRNA)を含むフォトポレーションの共焦点顕微鏡画像(それぞれ250x10
7NPs/mLのPD-BSA NP濃度)である。スケールバー=100μmである。(E)ヒトT細胞のヌクレオフェクション後のeGFP-mRNAの送達効率(左y軸、黒いバー)および対応する相対平均蛍光強度(右y軸、縞模様のバー)を表すグラフである。対応する生存率は、代謝Gloアッセイを使用して24時間後に測定された(左のy軸、明るい灰色のバー)。(F)ヌクレオフェクションとPD500-BSA NP増感フォトポレーションとのそれぞれのトランスフェクション収率(右y軸)の比較である。データは平均±SDとして示されている。統計的有意性:スチューデントのt検定、***p≦0.001である。
【
図6】異なるサイズのPD-BSA NPの物理化学的特性評価である。(A)DLSによってHyclone水中で測定された、さまざまなサイズのPD-BSA NPの流体力学的直径を表すグラフである。(B)DLSおよび多分散指数によってHyclone水中で測定された、さまざまなサイズのPD-BSA NPの流体力学的直径を表す表である。
【
図7】流体力学的直径100nmのPD-BSA増感剤を用いたHeLa細胞のフォトポレーションである。(A)強度設定5を使用したFD500の送達効率(左y軸、濃い灰色のバー)および生存率(2時間、右y軸、明るい灰色の点)を表すグラフである。(B)強度設定7を使用したFD500の送達効率(左y軸、濃い灰色のバー)および生存率(2時間、右y軸、明るい灰色の点を表すグラフ)である。
【
図8】100nm PD-BSA NPの生存FD500陽性細胞の収率を表すグラフである。(A)強度設定5を使用した、生存FD500陽性細胞の収率パーセンテージを表すグラフである。(B)強度設定7を使用した、生存FD500陽性細胞の収率パーセンテージを表すグラフである。最大収率は
図8A=11%、
図8B=11%である。
【
図9】流体力学的直径300nmのPD-BSA増感剤を用いたHeLa細胞のフォトポレーションを表すグラフである。(A)強度設定5を使用したFD500の送達効率(左y軸、濃い灰色のバー)および生存率(2時間、右y軸、明るい灰色の点)を表すグラフである。(B)強度設定7を使用したFD500の(左y軸、濃い灰色のバー)および生存率(2時間、右y軸、明るい灰色の点)を表すグラフである。
【
図10】300nm PD-BSA NPの生存FD500陽性細胞の収率パーセンテージを表すグラフである。(A)強度設定5を使用した、生存FD500陽性細胞の収率パーセンテージを表すグラフである。(B)強度設定7を使用した、生存FD500陽性細胞の収率パーセンテージを表すグラフである。最大収率は
図10A=23%、
図10B=26%である。
【
図11】流体力学的直径500nmのPD-BSA増感剤を用いたHeLa細胞のフォトポレーションである。(A)強度設定3を使用したFD500の送達効率(左y軸、濃い灰色のバー)および生存率(2時間、右y軸、明るい灰色の点)を表すグラフである。(B)強度設定5を使用したFD500の送達効率(左y軸、濃い灰色のバー)および生存率(2時間、右y軸、明るい灰色の点)を表すグラフである。
【
図12】500nm PD-BSA NPの生存FD500陽性細胞の収率を表すグラフである。(A)強度設定3を使用した、生存FD500陽性細胞の収率パーセンテージを表すグラフである。(B)強度設定5を使用した、生存FD500陽性細胞の収率パーセンテージを表すグラフである。最大収率は
図12A=34%、
図12B=36%である。
【
図13】流体力学的直径750nmのPD-BSA増感剤を用いたHeLa細胞のフォトポレーションである。(A)強度設定3を使用したFD500の送達効率(左y軸、濃い灰色のバー)および生存率(2時間、右y軸、明るい灰色の点)を表すグラフである。(B)強度設定5を使用したFD500の送達効率(左y軸、濃い灰色のバー)および生存率(2時間、右y軸、明るい灰色の点)を表すグラフである。
【
図14】750nm PD-BSA NPの生存FD500陽性細胞の収率を表すグラフである。(A)強度設定3を使用した、生存FD500陽性細胞の収率パーセンテージを表すグラフである。(B)強度設定5を使用した、生存FD500陽性細胞の収率パーセンテージを表すグラフである。最大収率は
図14A=53%、
図14B=53%である。
【
図15】流体力学的直径1000nmのPD-BSA増感剤を用いたHeLa細胞のフォトポレーションである。(A)強度設定3を使用したFD500の送達効率(左y軸、濃い灰色のバー)および生存率(2時間、右y軸、明るい灰色の点)を表すグラフである。(B)強度設定4を使用したFD500の送達効率(左y軸、濃い灰色のバー)および生存率(2時間、右y軸、明るい灰色の点)を表すグラフである。
【
図16】1000nm PD-BSA NPの生存FD500陽性細胞の収率パーセンテージを表すグラフである。(A)強度設定3を使用した、生存FD500陽性細胞の収率パーセンテージを表すグラフである。(B)強度設定4を使用した、生存FD500陽性細胞の収率パーセンテージを表すグラフである。最大収率は
図16A=39%、16B=38%である。
【
図17】流体力学的直径500nmのPD-PEI 増感剤を使用したHeLa細胞のフォトポレーションである。(A)強度設定3を使用したFD500の送達効率(左y軸、濃い灰色のバー)および生存率(2時間、右y軸、明るい灰色の点)を表すグラフである。(B)強度設定5を使用したFD500の送達効率(左y軸、濃い灰色のバー)および生存率(2時間、右y軸、明るい灰色の点)を表すグラフである。
【
図18】500nm PD-PEI NPの生存FD500陽性細胞の収率を表すグラフである。(A)強度設定3 を使用した、生存FD500陽性細胞の収率パーセンテージを表すグラフである。(B)強度設定5 を使用した、生存FD500陽性細胞の収率パーセンテージを表すグラフである。最大収率は
図18A=30%、
図18B=29%である。
【
図19】流体力学的直径500nmのコーティングされていないPD粒子を使用したHeLa細胞のフォトポレーションである。(A)強度設定1を使用したFD500の送達効率(左y軸、濃い灰色のバー)および生存率(2時間、右y軸、明るい灰色の点)を表すグラフである。(B)強度設定2を使用したFD500の送達効率(左y軸、濃い灰色のバー)および生存率(2時間、右y軸、明るい灰色の点)を表すグラフである。
【
図20】500nm PD NPの生存FD500陽性細胞の収率を表すグラフである。(A)強度設定1 を使用した、生存FD500陽性細胞の収率パーセンテージを表すグラフである。(B)強度設定2を使用した、生存FD500陽性細胞の収率パーセンテージを表すグラフである。最大収率は
図20A=33%、20B=32%である。
【
図21】PVAコーティングされたポリピロールNPの物理化学的特性評価である。DLSによってHyclone水中で測定されたPPy NPの流体力学的直径とゼータ電位を示すグラフおよび表である。
【
図22】レーザー誘発VNBの形成を示すレーザーパルス(パルス幅7ns、波長561nm、1.1J/cm
2)(スケールバー=50μm)の適用前(左の画像)と適用後(右の画像)とのポリピロールナノ粒子の暗視野顕微鏡画像である。
【
図23】接着HeLa細胞における混合法による500kDaFITC-デキストラン(FD500)の送達効率(左y軸、濃い灰色のバー)および細胞生存率(フォトポレーションの2時間後、右y軸、薄い灰色のバー)を表すグラフである。UTC:未処理の対照、Ctrl:FD500インキュベーション対照、PPy ctrl:PPy NPおよびFD500インキュベーション対照、Photo ctrl:PPyNPs/mL(16x10
7NPs/mL)ありおよびFD500なしのフォトポレーション対照である。
【
図24】PPy増感フォトポレーションにおける生存FD500陽性細胞の収率を表すグラフである。
【
図25】Hyclone水中で測定されたトリパンブルー担持脂質ナノ粒子の物理化学的特性である。DLSによってHyclone水中で測定されたLNP-TB NPの流体力学的直径とゼータ電位を示すグラフおよび表である。
【
図26】レーザーパルス(パルス幅7ns、波長561nm、3.15J/cm
2)の適用前(左の画像)と適用後(右の画像)のトリパンブルー担持脂質ナノ粒子の暗視野顕微鏡画像(スケールバー=50μm)レーザー誘起VNBの形成を示す。
【
図27】接着HeLa細胞における混合法による500kDa FITC-デキストラン(FD500)の送達効率(左y軸、濃い灰色のバー)および細胞生存率(フォトポレーションの2時間後、右y軸、薄い灰色のバー)を表すグラフである。UTC:未処理の対照、対照:FD500インキュベーション対照、LNP-TB ctrl:LNP-TB NPおよびFD500インキュベーション対照、Photo ctrl:LNP-TBNPs/mL(16x10
8NPs/mL)およびFD500なしのフォトポレーション対照である。
【
図28】蒸留水中で測定されたヒト血清アルブミンICGナノ粒子(HSA-ICGNP)の物理化学的特性である。DLSによって水中で測定されたHSA-ICGNPの流体力学的直径とゼータ電位を示すグラフおよび表である。
【
図29】レーザー誘発VNBの形成を示すレーザーパルス(パルス幅7ns、波長561nm、4.5J/cm
2)の適用前(左)と適用後(右)のHSA-ICGNPの暗視野顕微鏡画像(スケールバー=100μm)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、単数および複数の両方の指示対象を含む。
【0021】
本明細書で使用される「備えている」、「備える」、および「~を備える」という用語は、「含んでいる」、「含む」、または「含有している」、「含有する」と同義であり、これらは包括的または無制限であり、列挙されていない追加の要素、要素、または方法のステップを除外するものではない。この用語には、「~からなる」および「実質的に~からなる」も含まれる。
【0022】
端点による数値範囲の記載には、記載された端点だけでなく、それぞれの範囲内に包含されるすべての数値および分数が含まれる。
【0023】
本明細書で使用される「約」という用語は、パラメータ、量、持続時間などの測定可能な値を指すとき、開示された発明においてそのような変動が実施するのに適切である限り、指定された値の変動、特に+/-10%以下、好ましくは+/-5%以下、より好ましくは+/-1%以下、さらにより好ましくは+/-0.1%以下の変動を包含することを意味する。修飾語「約」が指す値自体も、具体的に、かつ好ましくは、開示されることを理解されたい。
【0024】
要素のグループの1つ以上の要素などの「1つ以上の」という用語は、それ自体明らかであるが、さらなる例示によって、この用語は、とりわけ、1つ以上の当該要素、例えば、当該要素の任意の3以上、4以上、5以上、6以上、または7以上など、および最大ですべての当該要素などの、当該要素のいずれか1つまたは任意の2つへの言及を包含する。
【0025】
本明細書で引用されるすべての文書は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0026】
特に指定しない限り、技術用語および科学用語を含む本発明の開示に使用されるすべての用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。さらなる手引きによって、本発明の教示をよりよく理解するために用語の定義を含め得る。
【0027】
他に指示がない限り、本明細書で教示される「使用」への言及には、医療用途または医療方法が含まれる。
【0028】
広範な実験試験によって、本発明者らは、ポリマーベースの粒子、タンパク質ベースの粒子、脂質ベースの粒子(例えば、リポソームまたは固体脂質粒子)、および固体脂質粒子からなる群から選択される光応答性有機粒子が、これらを組み合わせることによって、効率的かつ安全にカーゴを細胞に、例えばmRNAをヒトT細胞に、送達することが可能になることを明らかにした。
【0029】
細胞内にカーゴを送達するためのin vitroまたはex vivoの方法であって、方法は、
細胞を、1つ以上の光応答性有機粒子およびカーゴと接触させ、有機粒子は、ポリマーベースの粒子、タンパク質ベースの粒子、脂質ベースの粒子、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、それによって、細胞、および1つ以上の光応答性有機粒子の混合物を得る、ステップと、
細胞、および1つ以上の光応答性有機粒子の混合物に電磁放射線を照射し、それによって細胞のバリアの透過化を引き起こし、カーゴを細胞内に送達するステップと、
細胞と1つ以上の光応答性有機粒子との混合物をカーゴと接触させ、カーゴは1つ以上の光応答性有機粒子に結合しておらず、それによってカーゴを細胞内に送達するステップと、を含む、または
細胞を1つ以上の光応答性有機粒子と接触させ、カーゴは、1つ以上の光応答性有機粒子に結合しておらず、有機粒子は、ポリマーベースの粒子、タンパク質ベースの粒子、脂質ベースの粒子、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、それによって細胞、カーゴ、および1つ以上の光応答性有機粒子の混合物を得る、ステップと、
細胞および1つ以上の光応答性有機粒子の混合物に電磁放射線を照射し、それによって細胞のバリアの透過化を引き起こし細胞にカーゴを送達するステップと、を含む。
【0030】
上に示したように、本明細書に教示される方法は、in vitro法であってもex vivo法であってもよい。本明細書で使用される「in vitro」という用語は、動物または人体の外側、または外部を意味する。本明細書で使用される「in vitro」という用語は、「ex vivo」を含むと理解されたい。「ex vivo」という用語は通常、動物または人体から取り出され、体外、例えば培養容器の中で維持または増殖される組織または細胞を指す。
【0031】
あるいは、本明細書で教示される方法は、in vivo方法であり得る。本明細書で使用される「in vivo」という用語は、動物または人体の内側または内部を意味する。
【0032】
本明細書で使用される「カーゴをセルに送達する」という記述は、カーゴをセルに持ち込む(または提供もしくは導入する)ことを指す。
【0033】
実施形態では、本明細書で教示されるカーゴは、1つ以上の光応答性有機粒子に結合されていない。換言すれば、実施形態では、カーゴと1つ以上の光応答性有機粒子とは互いに結合していない。したがって、本明細書で教示される方法の実施形態では、カーゴおよび1つ以上の光応答性有機粒子は、細胞、カーゴ、および1つ以上の光応答性有機粒子の混合物に別々に添加される。
【0034】
「結合していない」または「非結合」という用語は、本明細書では互換的に使用され得、第1の成分が第2の成分と結合または化学的に結合していないことを意味する。例えば、第1の成分は、共有結合によって、または静電相互作用または疎水性相互作用などの非共有結合によって第2の成分に結合されない。「カーゴは1つ以上の光応答性有機粒子に結合していない」という表現は、カーゴが1つ以上の光応答性有機粒子と結合または化学結合していないことを意味する。カーゴは、1つ以上の光応答性有機粒子に結合(例えば、グラフト)されていないか、またはその中に封入(例えば、カプセル化)されていない。例えば、カーゴは、共有結合によって、または静電相互作用または疎水性相互作用などの非共有結合相互作用によって、1つ以上の光応答性有機粒子に結合していない。
【0035】
実施形態では、本明細書で教示されるカーゴは、1つ以上の光応答性有機粒子に共有結合していない。換言すれば、実施形態では、カーゴと1つ以上の光応答性有機粒子とは互いに共有結合していない。
【0036】
本明細書で使用される「カーゴ」または「薬剤」という用語は、任意の化学物質(例えば、無機または有機)、生化学または生物学的物質、分子または高分子(例えば、生体高分子)、粒子(例えば、ナノ粒子)、その組み合わせ、またはその混合物、未決定の組成のサンプル、または細菌、植物、菌類、または動物の細胞または組織などの生物学的材料から作られた抽出物を広く指す。好ましい「カーゴ」または「薬剤」には、核酸、オリゴヌクレオチド、リボザイム、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、ペプチド模倣物、ペプチド核酸、抗体、抗体断片、抗体様タンパク質足場、アプタマー、光アプタマー、シュピーゲルマー、化学物質、脂質、炭水化物、多糖類など、および例えばCRISPR/Cas.である、遺伝子編集システムなどのそれらの組み合わせが含まれる。文脈に応じて、「薬剤」という用語は、疾患の治療、治癒、予防、または診断に有用な、または疾患の処置、治癒、予防、または診断に使用される「治療剤」または「薬物」を意味し得る。本明細書で教示されるカーゴには、溶液中のカーゴ、およびカーゴの粉末などの乾燥または凍結乾燥されたカーゴが含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
実施形態では、カーゴは、互いに組み合わされた、または化学的に結合した2つ以上の薬剤を含み得、またはそれらから構成され得る。実施形態では、カーゴは、互いに共役した(例えば、共有結合した)2つ以上の薬剤を含み得るか、またはそれらから構成され得る。例えば、カーゴは、互いに共役した(例えば、共有結合した)2、3、4、5、6またはそれより多い薬剤を含み得るか、またはそれらからなる薬剤であり得る。
【0038】
実施形態では、本明細書で教示されるカーゴは、ナノ粒子(光応答性有機粒子ではない)などの粒子に結合され得る。実施形態では、カーゴは、ナノ粒子、例えばナノ粒子などの粒子と組み合わせるか、または化学的に結合され得る。カーゴは、ナノ粒子などの粒子に結合(例えば、グラフト)され得るか、またはその中に封入(例えば、カプセル化)され得る。
【0039】
本明細書で使用される「核酸」という用語は、通常、実質的にヌクレオシド単位から構成される任意の長さのポリマー(好ましくは直鎖ポリマー)を指す。ヌクレオシド単位には通常、複素環塩基と糖基が含まれる。複素環塩基には、とりわけ、天然に存在する核酸中に存在するアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)およびウラシル(U)などのプリンおよびピリミジン塩基、その他の天然に存在する塩基(例えば、キサンチン、イノシン、ヒポキサンチン)、ならびに化学的または生化学的に修飾された(例えば、メチル化)、非天然または誘導体化された塩基が含まれ得る。例示的な修飾核酸塩基としては、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン、および2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシンを含むN-2、N-6およびO-6置換プリンが挙げられるがこれらに限定されない。特に、5-メチルシトシン置換は、核酸二本鎖の安定性を高めることが示されており、特に2’-O-メトキシエチル糖修飾と組み合わせた場合には、例えばアンチセンス剤における好ましい塩基置換となり得る。糖基には、とりわけ、好ましくは天然の核酸に一般的なリボースおよび/または2-デオキシリボースなどのペントース(ペントフラノース)基、またはアラビノース、2-デオキシアラビノース、トレオースまたはヘキソース糖基、ならびに修飾または置換された糖基(例えば、これらに限定されないが、2’-O-アルキル化糖、例えば、リボースなどの2’-O-メチル化糖または2’-O-エチル化糖;2’-O-アルキルオキシアルキル化糖、例えば、リボースなどの2’-O-メトキシエチル化糖、または2’-O,4’-C-アルキレン結合、例えば、リボースなどの2’-O,4’-C-メチレン結合または2’-O,4’-C-エチレン結合の糖;2’-フルオロ-アラビノースなど)が含まれ得る。少なくとも1つのリボヌクレオシド単位を含む核酸分子は、通常、リボ核酸またはRNAと呼ばれ得る。このようなリボヌクレオシド単位は2’-OH部分を含み、-Hはリボヌクレオシドについて当技術分野で知られているように(例えば、メチル、エチル、アルキル、またはアルキルオキシアルキルによって)置換され得る。好ましくは、リボ核酸またはRNAは、主に、リボヌクレオシド単位から構成され得、例えば核酸分子を構成するヌクレオシド単位の80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、またはさらには100%(数量)がリボヌクレオシド単位であり得る。少なくとも1つのデオキシリボヌクレオシド単位を含む核酸分子は、通常、デオキシリボ核酸またはDNAと呼ばれ得る。このようなデオキシリボヌクレオシド単位は、2’-Hを含む。好ましくは、デオキシリボ核酸またはDNAは、主に、デオキシリボヌクレオシド単位から構成され得、例えば核酸分子を構成するデオキシリボヌクレオシド単位の80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、またはさらには100%(数量)がリボヌクレオシド単位であり得る。ヌクレオシド単位は、とりわけ天然の核酸に一般的なホスホジエステル結合、およびホスホロチオエートなどのさらに修飾されたホスフェートベースまたはホスホネートベースの結合、メチルホスホロチオエートなどのアルキルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネートなどのアルキルホスホネート、アルキルホスホノチオエート、アルキルホスホトリエステルなどのホスホトリエステル、ホスホラミデート、ホスホロピペラジデート、ホスホロモルホリデート、架橋ホスホルアミデート、架橋メチレンホスホネート、架橋ホスホロチオエート;さらに、シロキサン、カーボネート、スルファメート、カルボアルコキシ、アセトアミデート、3’-N-カルバメートなどのカルバメート、モルホリノ、ボラノ、チオエーテル、3’-チオアセタール、およびスルホンヌクレオシド間結合を含む、多数の既知のヌクレオシド間結合のいずれか1つによって互いに結合され得る。好ましくは、ヌクレオシド間結合は、修飾されたリン酸ベースの結合を含むリン酸ベースの結合、より好ましくはホスホジエステル、ホスホロチオエートもしくはホスホロジチオエート結合、またはそれらの組み合わせであり得る。「核酸」という用語は、ペプチド核酸(PNA)、リン酸基を有するペプチド核酸(PHONA)、ロックド核酸(LNA)、モルホリノホスホロジアミデート骨格核酸(PMO)、シクロヘキセン核酸(CeNA)、トリシクロDNA(tcDNA)、およびアルキルリンカーまたはアミノリンカーを有する骨格セクションを有する核酸(例えば、Kurreck 2003(Eur J Biochem 270:1628-1644を参照))。を含むがこれらに限定されない、核酸模倣物などのポリマーを含有する他の任意の核酸塩基も包含する。本明細書で使用される「アルキル」は、特に、低級炭化水素部分、例えば、メチル、エチル、エテニル、プロピル、1-プロペニル、2-プロペニル、およびイソプロピルなどの、C1~C4の直鎖状または分枝状の飽和または不飽和炭化水素を包含する。本明細書で意図される核酸には、天然に存在するヌクレオシド、修飾されたヌクレオシド、またはそれらの混合物が含まれ得る。修飾ヌクレオシドには、修飾複素環塩基、修飾糖部分、修飾ヌクレオシド間結合、またはそれらの組み合わせが含まれ得る。「核酸」という用語は、好ましくは、DNA、RNA、およびDNA/RNAハイブリッド分子を包含し、具体的には、hnRNA、プレmRNA、mRNA、cDNA、ゲノムDNA(gDNA)、プラスミドDNA(pDNA)、増幅生成物、オリゴヌクレオチド、および合成(例:化学合成)DNA、RNA、またはDNA/RNAハイブリッドを包括する。RNAには、RNAi(阻害性RNA)、dsRNA(二本鎖RNA)、siRNA(低分子干渉RNA)、mRNA(メッセンジャーRNA)、miRNA(マイクロRNA)、tRNA(転移RNA、対応するアシル化アミノ酸で充電または放電されているかどうかを問わない)、およびcRNA(相補的RNA)が含まれる。核酸は、天然に存在するもの、例えば自然界に存在するもの、または自然界から単離されたもの、組換え体、すなわち組換えDNA技術によって生成されたもの、および/または部分的または全体的に化学的または生化学的に合成されたものであり得る。「核酸」は、二本鎖、部分的に二本鎖、または一本鎖であり得る。一本鎖の場合、核酸はセンス鎖でもアンチセンス鎖であり得る。さらに、核酸は環状または直鎖状であり得る。
【0040】
本明細書全体にわたって使用される「オリゴヌクレオチド」という用語は、本明細書で定義される核酸(核酸類似体および模倣体を含む)オリゴマーまたはポリマーを指す。好ましくは、オリゴヌクレオチド、より具体的にはアンチセンスオリゴヌクレオチドは、(実質的に)一本鎖である。本明細書で意図されるオリゴヌクレオチドは、約10~約100ヌクレオシド単位(すなわち、ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体)の長さを有し得、好ましくは約15~約50、より好ましくは約20~約40、また好ましくは約20~約30ヌクレオシド単位(すなわち、ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体)の長さを有し得る。本明細書で意図されるオリゴヌクレオチドは、1つ以上もしくはすべての非天然複素環塩基および/または1つ以上もしくはすべての非天然糖基および/または1つ以上もしくはすべての非天然ヌクレオシド間結合を含み得る。これらは、例えば、ヌクレアーゼ存在下での安定性の向上、ハイブリダイゼーション親和性の向上、ミスマッチに対する耐性の向上などの特性を改善し得る。
【0041】
オリゴヌクレオチド結合剤などの核酸結合剤は、通常、目的の標的核酸に対して少なくとも部分的にアンチセンスである。「アンチセンス」という用語は概して、例えば標的DNA、hnRNA、プレmRNAまたはmRNAなどの標的核酸内の所定の配列と特異的にアニールする(ハイブリダイズする)ように構成された薬剤(例えば、オリゴヌクレオチド)を指し、通常、当該標的核酸配列に相補的または実質的に相補的な核酸配列を含むか、実質的にそれからなるか、またはそれからなる。本明細書での使用に適したアンチセンス剤(例えば、ハイブリダイゼーションプローブ、増幅もしくは配列決定プライマーおよびプライマー対)は、通常、高ストリンジェンシー条件でそれぞれの標的核酸配列とアニーリング(ハイブリダイズ)し得、生理学的条件下で標的に特異的にハイブリダイズすることが可能である。核酸に関して本明細書を通じて使用される「相補的」または「相補性」という用語は、塩基対形成、好ましくはワトソンクリック塩基対形成による、許容塩(イオン強度)および温度条件下での一本鎖核酸の正常な結合を指す。例として、相補的なワトソンクリック塩基対形成は、塩基AとT、AとU、またはGとCの間で発生する。例えば、配列5’-A-G-U-3’は配列5’-A-C-U-3’に相補的である。
【0042】
オリゴヌクレオチドへの言及には、特に、核酸検出技術で一般的に使用されるハイブリダイゼーションプローブおよび/または増幅プライマーおよび/または配列決定プライマーなどが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0043】
本明細書で使用される「リボザイム」または「リボ核酸酵素」という用語は、特定の生化学反応、例えば遺伝子発現におけるRNAスプライシングを触媒する能力を有するRNA分子を指す。リボザイムの機能はタンパク質酵素の作用に類似する。リボザイムの最も一般的な活動は、RNAとDNAの切断またはライゲーション、およびペプチド結合の形成である。リボソーム内では、リボザイムは大サブユニットリボソームRNAの一部として機能し、タンパク質合成中にアミノ酸を結合する。また、RNAスプライシング、ウイルス複製、トランスファーRNA生合成など、さまざまなRNAプロセシング反応にも関与する。リボザイムの例としては、ハンマーヘッドリボザイム、VSリボザイム、リードザイムおよびヘアピンリボザイムが挙げられる。
【0044】
本明細書で使用される「タンパク質」という用語は、概して、1つ以上のポリペプチド鎖、すなわち、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸残基のポリマー鎖を含む巨大分子を包含する。この用語は、天然、組換え、半合成、または合成的に生成されたタンパク質を包含し得る。この用語はまた、ポリペプチド鎖の1つ以上の共発現型または発現後型の修飾、例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化、スルホン化、メチル化、ユビキチン化、シグナルペプチド除去、N-末端Metの除去、プロ酵素またはプレホルモンの活性型への変換などを有するタンパク質も包含するが、それらに限定されない。この用語はさらに、例えばアミノ酸の欠失、付加および/または置換など、対応する天然タンパク質に対してアミノ酸配列の変化を有するタンパク質の変異体または変異をも含む。この用語は、全長タンパク質およびタンパク質部分または断片、例えば、そのような全長タンパク質のプロセシングから生じる天然に存在するタンパク質部分の両方を意図する。
【0045】
本明細書で使用される「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合によって結合されたアミノ酸残基のポリマー鎖を包含する。したがって、特にタンパク質が単一のポリペプチド鎖のみから構成されるとき、用語「タンパク質」および「ポリペプチド」は、本明細書においてそのようなタンパク質を示すために互換的に使用され得る。この用語は、任意のポリペプチド鎖の最小長に限定されない。この用語は、天然、組換え、半合成、または合成的に生成されたポリペプチドを包含し得る。この用語はまた、これらに限定されないが、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、スルホン化、メチル化、ユビキチン化、シグナルペプチド除去、N末端Met除去、プロ酵素またはプレホルモンの活性型への変換などの、ポリペプチド鎖の1つ以上の共発現型または後発現型修飾を実行するポリペプチドをも包含する。この用語はさらに、例えばアミノ酸の欠失、付加および/または置換など、対応する天然ポリペプチドに対してアミノ酸配列の変異を有するポリペプチド変異体または変異をも含む。この用語は、全長ポリペプチドおよびポリペプチド部分または断片、例えば、そのような全長ポリペプチドのプロセシングから生じる天然に存在するポリペプチド部分の両方を意図する。
【0046】
本明細書を通して使用される「ペプチド」という用語は、好ましくは、本明細書で使用される場合、実質的に50個以下のアミノ酸、例えば45個以下のアミノ酸、好ましくは40個以下のアミノ酸、例えば35個以下のアミノ酸、より好ましくは、30個以下のアミノ酸、例えば、25個以下、20個以下、15個以下、10個以下、または5個以下のアミノ酸、からなるポリペプチドを指す。
【0047】
「ペプチド模倣物」という用語は、対応するペプチドのトポロジー的類似体である非ペプチド薬剤を指す。ペプチドのペプチド模倣物を合理的に設計する方法は、当技術分野で知られている。例えば、硫酸化8量体ペプチドCCK26-33に基づく3つのペプチド模倣物、および11量体ペプチドの物質Pに基づく2つのペプチド模倣物の合理的設計、および関連するペプチド模倣物の設計原理は、Horwell 1995(Trends Biotechnol 13:132-134)に記載されている。
【0048】
「ペプチド核酸」または「PNA」という用語は、ペプチド結合によって連結されたN-(2-アミノエチル)-グリシン(AEG)単位を含む人工合成ポリマーを指す。さまざまなプリン塩基およびピリミジン塩基は、メチレン架橋(-CH2-)およびカルボニル基(-(C=O)-)によって主鎖に結合している。PNAはペプチドのように描かれており、N末端が最初(左側)の位置にあり、C末端が最後(右側)の位置にある。
【0049】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、概して任意の免疫学的結合剤を指す。この用語は、特に、無傷のモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの無傷の抗体から形成される多価(例えば、2、3またはそれ以上の価)および/または多重特異性抗体(例えば、二重またはそれ以上の特異性抗体)、および抗体断片は、それらが所望の生物学的活性(特に、対象の抗原に特異的に結合する能力、すなわち、抗原結合断片)を示す限り、ならびにそのような断片の多価および/または多重特異性複合物を包含する。「抗体」という用語は、免疫化を含む方法によって生成される抗体を含むだけでなく、任意のポリペプチド、例えば、対象の抗原上のエピトープに特異的に結合可能である少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を包含するように作製される組換え発現ポリペプチドも含む。したがって、この用語は、in vitroまたはin vivoで生成されたかどうかに関係なく、そのような分子に適用される。
【0050】
抗体は、IgA、IgD、IgE、IgG、IgMクラスのいずれでもあり得、好ましくはIgGクラスの抗体である。抗体は、ポリクローナル抗体、例えば、抗血清、またはそこから精製された(例えば、アフィニティー精製された)免疫グロブリンであり得る。抗体は、モノクローナル抗体またはモノクローナル抗体の混合物であり得る。モノクローナル抗体は、より高い選択性および再現性で特定の抗原または抗原内の特定のエピトープを標的にし得る。限定ではなく例として、モノクローナル抗体は、Kohlerら、1975(Nature 256:495)によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製され得、または組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号)によって作製され得る。モノクローナル抗体は、例えば、Clacksonら、1991(Nature 352:624-628)およびMarksら、1991年(J Mol Biol 222:581-597)によって記載されている技術を使用して、ファージ抗体ライブラリーから単離され得る。抗体結合剤は抗体断片であり得る。「抗体断片」は、その抗原結合領域または可変領域を備える、無傷の抗体の一部を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、FvおよびscFv断片、単一ドメイン(sd)Fv、例えばVHドメイン、VLドメインおよびVHHドメイン、ダイアボディ、直鎖状抗体、単鎖抗体分子、特に重鎖抗体、ならびに抗体断片(例えば、ジボディ、トリボディ、およびマルチボディ)から形成される多価および/または多重特異性抗体が挙げられる。上記のFab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFvなどの名称は、技術的に確立された意味を有することを意図している。
【0051】
抗体という用語には、任意の動物種、好ましくは例えば鳥類および哺乳類を含む脊椎動物種に由来する抗体、またはそれに由来する1つ以上の部分を含む抗体が含まれる。限定されないが、抗体はニワトリ、七面鳥、ガチョウ、アヒル、ホロホロ鳥、ウズラまたはキジであり得る。また、これらに限定されないが、抗体は、ヒト、ネズミ(例えば、マウス、ラットなど)、ロバ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、モルモット、ラクダ(例えば、ラクダ・バクトリアヌスおよびラクダ・ドロマデリウス)、ラマ(例えば、ラマ・パッコス)、ラマ・グラマまたはラマ・ヴィクーニャ)または馬であり得る。
【0052】
当業者であれば、抗体は、そのような改変がそれぞれの抗原の結合を保存する限り、1つ以上のアミノ酸の欠失、付加および/または置換(例えば、保存的置換)を含み得ることを理解するであろう。抗体には、その構成アミノ酸残基の1つ以上の天然または人工の修飾(例えば、グリコシル化など)が含まれ得る。
【0053】
ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体ならびにその断片を産生する方法は、組換え抗体またはその断片を産生する方法と同様に、当技術分野で既知である(例えば、Harlow and Lane、「Antibodies:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨーク、1988年;Harlow and Lane、「Using Antibodies:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbour Laboratory、ニューヨーク、1999年、ISBN 0879695447;「Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques」、Zola編、CRC Press 1987、ISBN 0849364760;「Monoclonal Antibodies:A Practical Approach」、Dean&Shepherd編、Oxford University Press 2000、ISBN 0199637229;Methods in Molecular Biology、vol.248:「Antibody Engineering:Methods and Protocols」、Lo、編、Humana Press 2004、ISBN 1588290921。を参照されたい)
【0054】
特定の実施形態では、薬剤はNanobody(登録商標)であり得る。「Nanobody(登録商標)」および「Nanobodies(登録商標)」という用語は、Alynx NV(ベルギー)の商標である。「ナノボディ」という用語は、当技術分野で既知であり、本明細書でその最も広い意味で使用される場合、(1)重鎖抗体、好ましくはラクダ科動物由来の重鎖抗体の、VHHドメインを単離することによって;(2)VHHドメインをコードするヌクレオチド配列の発現によって;(3)天然に存在するVHHドメインの「ヒト化」によって、またはそのようなヒト化VHHドメインをコードする核酸の発現によって;(4)任意の動物種由来の、特に、ヒト由来などの哺乳動物種由来の、VHドメインの「ラクダ化」によって、またはそのようなラクダ化VHドメインをコードする核酸の発現によって;(5)当技術分野で記載されている「ドメイン抗体」または「dAb」の「ラクダ化」によって、またはそのようなラクダ化dAbをコードする核酸の発現によって;(6)それ自体既知のタンパク質、ポリペプチド、または他のアミノ酸配列を調製するための合成または半合成技術を使用することによって;(7)それ自体公知の核酸合成技術を用いてナノボディをコードする核酸を調製し、その後、こうして得られた核酸を発現させることによって;および/または(8)上記のうちの1つ以上の任意の組み合わせによって、得られる免疫学的結合剤を包含する。本明細書で使用される「ラクダ科動物」は、旧世界のラクダ科動物(ラクダ属バクテリアヌスおよびラクダ属ドロマデリウス)および新世界のラクダ科動物(例えば、ラマ・パッコス、ラマ・グラマおよびラマ・ヴィクーニャ)を含む。
【0055】
「抗体様タンパク質足場」または「操作されたタンパク質足場」という用語は、通常はコンビナトリアルエンジニアリング(ファージディスプレイまたは他の分子選択技術と組み合わせた部位特異的ランダム突然変異誘発など)によって得られる、タンパク質性の非免疫グロブリン特異的結合剤を広く包含する。通常、このような足場は、堅牢で小さな可溶性単量体タンパク質(クニッツ阻害剤またはリポカリンなど)、または細胞表面受容体の安定して折りたたまれた膜外ドメイン(プロテインA、フィブロネクチン、アンキリンリピートなど)に由来する。このような足場は、Binzら、Gebauer and Skerra、Gill and Damle、Skerra 2000、およびSkerra 2007で広範に概説されており、ブドウ球菌プロテインAのZドメインに基づくアフィボディ、その2つのアルファヘリックス(Nygren)に界面を提供する58残基の3ヘリックスバンドル;異なるプロテアーゼ特異性のために改変可能であり得る(NixonおよびWood)、通常、ヒト由来(例えば、LACI-D1)、小型(約58残基)で強力なジスルフィド架橋セリンプロテアーゼ阻害剤に基づいて改変されたクニッツドメイン;2~3個の露出ループを有するIg様ベータサンドイッチフォールド(94残基)を採用しているが、中央のジスルフィド架橋を欠く(KoideおよびKoide)、ヒトフィブロネクチンIII(10Fn3)の10番目の細胞外ドメインに基づくモノボディまたはアドネクチン;リポカリンに由来するアンチカリン、人間、昆虫、および他の多くの生物(Skerra 2008)に豊富に存在する、開放端にある4つの構造的に可変なループによって小さなリガンドの結合部位を自然に形成する8本鎖のベータバレルタンパク質(約180残基)の多様なファミリーである、リポカリン;アンキリン反復ドメイン(166残基)を設計し、通常3回繰り返されるベータターンから生じる剛直な界面を提供する(Stumppら)、DARPins;(Silvermanら)アビマー(多量体化LDLR-Aモジュール);およびシステインに富むノッティンペプチド(コルマー)を含むが、これらに限定されない。
【0056】
「アプタマー」という用語は、ペプチドなどの標的分子に特異的に結合する一本鎖もしくは二本鎖のオリゴDNA、オリゴRNAもしくはオリゴDNA/RNA、またはその任意の類似体を指す。有利なことに、アプタマーは、その標的に対してかなり高い特異性と親和性(例えば、1×109M-1程度のKA)を示す。アプタマーの生成は、とりわけ米国特許第5,270,163号、Ellington&Szostak 1990(Nature 346:818-822)、Tuerk&Gold 1990(Science 249:505-510);または、「The Aptamer Handbook:Functional Oligonucleotides and Their Applications」、クルスマン編、ワイリー-VCH 2006年、ISBN 3527310592(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0057】
「光アプタマー」という用語は、標的分子と共有結合または架橋され得る1つ以上の光反応性官能基を含むアプタマーを指す。
【0058】
「シュピーゲルマー」という用語は、L-DNA、L-RNA、または他の左手型ヌクレオチド誘導体またはヌクレオチド様分子を含むアプタマーを指す。左手型のヌクレオチドを含むアプタマーは、通常は右手型のヌクレオチドを含む基質に作用する天然酵素による分解に耐性がある。
【0059】
実施形態では、化学物質は有機分子、好ましくは小(有機)分子である。「小分子」という用語は、医薬品で一般的に使用される有機分子に匹敵するサイズを有する化合物、好ましくは有機化合物を指す。この用語には、生体高分子(タンパク質、ペプチド、核酸など)は含まれない。好ましい有機小分子は、最大約5000Da、最大約4000Da、好ましくは最大3000Da、より好ましくは最大2000Da、さらにより好ましくは最大約1000Da、例えば最大約900、800、700、600、または最大約500Daのサイズの範囲を有する。化学物質、特に小分子は、造影剤などの造影剤であり得る。
【0060】
本明細書で使用される「脂質」という用語は、非極性溶媒に可溶な巨大分子を指す。脂質は、グリセロ脂質;グリセロリン脂質;スフィンゴ脂質;糖脂質;ポリケチド;ステロール脂質もしくはステロール;およびプレノール脂質もしくはプレノールの、8つのカテゴリーに分類され得る。
【0061】
「炭水化物」という用語は、概して、炭素(C)、水素(H)、および酸素(O)原子からなる生体分子を指す。通常、炭水化物は水素と酸素の原子比が2:1(水と同様)であるため、実験式Cm(H2O)n(mは、nと異なっていても異なっていなくてもよい)となる。炭水化物には、ポリヒドロキシアルデヒド、ケトン、アルコール、酸、それらの単純な誘導体、およびアセタール型の結合を有するそれらのポリマーが含まれる。それらは重合度に従って分類され得、最初は3つの主要なグループ、すなわち糖、オリゴ糖、および多糖され得る。
【0062】
「多糖」という用語は、概して、グリコシド結合によって結合した単糖単位からなるポリマーまたは高分子を指す。多糖類は、直鎖状であっても分枝鎖状であってもよい。
【0063】
本明細書で使用される「遺伝子編集システム」または「ゲノム編集システム」という用語は、細胞内の特定のDNAまたはRNA配列に、DNAまたはRNA修飾などの1つ以上の核酸修飾を誘導するためのツールを指す。標的ゲノム修飾は、哺乳類を含む細胞および生物の遺伝子操作のための強力なツールである。ゲノム内のDNAの挿入、欠失、置換などのゲノム改変または遺伝子編集は、さまざまな既知の遺伝子編集システムを使用して実行され得る。遺伝子編集システムは通常、核酸修飾を誘導できる薬剤を利用する。特定の実施形態では、核酸修飾を誘導することが可能である作用物質は、(エンド)ヌクレアーゼ、または活性が変化または修飾されたその変異体であり得る。(エンド)ヌクレアーゼは通常、非特異的なDNAまたはRNA切断ドメインに結合したプログラム可能な配列特異的なDNAまたはRNA結合モジュールを含む。DNAでは、これらのヌクレアーゼはゲノム内の目的の位置に部位特異的な二本鎖切断を作成する。誘導された二本鎖切断は、非相同末端結合または相同組換えによって修復され、その結果、標的変異が生じる。特定の実施形態では、当該(エンド)ヌクレアーゼはRNA誘導性であり得る。特定の実施形態では、当該(エンド)ヌクレアーゼは、Cas9、Cpf1、またはC2c2などのクラスター化規則的に間隔をあけた短いパリンドロームリピート(CRISPR)関連(Cas)(エンド)ヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、またはそれらの修飾体などの操作されたヌクレアーゼであり得る。TALEN技術、Zinc Finger技術、およびCRISPR/Cas技術を使用する方法は、当業者には既知である。
【0064】
本明細書で教示される方法(本明細書で教示されるin vitro方法、および本明細書で教示されるin vivo方法または使用を含む)の実施形態では、カーゴは、例えば、CRISPR/Casシステムなどの、例えば遺伝子編集システムである核酸、タンパク質、化学物質、多糖類、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。このようなカーゴは、本明細書で教示されるカーゴおよび光応答性有機粒子と細胞を接触させ、細胞、カーゴ、および光応答性有機粒子の混合物に電磁放射線を照射することによって、細胞内に効率的に送達させ得きる。
【0065】
本明細書で教示される方法の実施形態では、カーゴは核酸であり得る。本明細書で教示される方法の実施形態では、カーゴはmRNAまたはプラスミドDNAであり得る。mRNAまたはプラスミドDNAなどの核酸をカーゴとして使用することによって、所望の遺伝子構築物を細胞内に送達することが有利に可能になる。mRNAをカーゴとして使用すると、ゲノム組み込みを必要とせずに構築物を細胞内に一時的に発現させることができるため、発現期間を制御でき、ゲノム組み込みによる意図しない突然変異のリスクを回避し得る。
【0066】
実施形態では、カーゴは、少なくとも0.5キロベース(kb)のサイズを有する、mRNAまたはプラスミドDNAなどの核酸であり得る。例えば、カーゴは、少なくとも0.6kb、少なくとも0.7kb、少なくとも0.8kb、少なくとも0.9kb、少なくとも1.0kb、少なくとも1.5kb、少なくとも2.0kb以上、またはそれ以上のサイズを有する、mRNAまたはプラスミドDNAなどの核酸であり得る。例えば、カーゴは、少なくとも3.0kb、少なくとも4.0kb、少なくとも5.0kb、少なくとも6.0kb、少なくとも7.0kb、少なくとも8.0kb、少なくとも9.0kb、少なくとも10.0kb、またはそれ以上のサイズを有する、mRNAまたはプラスミドDNAなどの核酸であり得る。このような(大きな)核酸は、本発明の方法によって効率的に細胞内に送達することができる。
【0067】
本明細書で教示される方法の実施形態では、カーゴはタンパク質であり得る。本発明の方法は、有利なことに、所望のタンパク質の細胞への送達を可能にする。
【0068】
実施形態では、カーゴは、生理学的pH(例えば、約6~約8のpH)で負に荷電したタンパク質(IEP)であり得る。実施形態では、カーゴは、生理学的pH(例えば、約6~約8のpH)において中性タンパク質であり得る。本発明の方法は、有利には、そのようなタンパク質の細胞への効率的な送達を可能にする。
【0069】
本明細書で教示される方法の実施形態では、カーゴは化学物質であり得る。本発明の方法は、有利なことに、所望の化学物質を細胞内に送達することを可能にする。
【0070】
本明細書で教示される方法の実施形態では、カーゴは分子造影剤であり得る。例えば、カーゴは、ガドリニウムキレート、発蛍光団、または発色団などの分子造影剤であり得る。
【0071】
本明細書で教示される方法の実施形態では、カーゴは多糖類であり得る。本発明の方法は、有利なことに、所望の多糖類を細胞内に送達することを可能にする。
【0072】
本明細書で教示される方法の実施形態では、カーゴは、例えば、発光または感知ナノ粒子である、ナノ粒子などの粒子であり得る。例えば、カーゴは、超常磁性酸化鉄ナノ粒子などの発光または感知ナノ粒子、例えば金ナノ粒子などのプラズモニックナノ粒子、量子ドット、アップコンバーティングナノ粒子、燐光ナノ粒子、持続発光ナノ粒子、またはカーボンドットであり得る。
【0073】
実施形態では、カーゴは、少なくとも200kDaのサイズを有するタンパク質、化学物質、多糖、またはそれらの組み合わせであり得る。実施形態では、カーゴは、少なくとも250kDa、少なくとも300kDa、少なくとも350kDa、少なくとも400kDa、少なくとも450kDa、少なくとも450kDa、少なくとも500kDa、少なくとも600kDa、少なくとも700kDa、少なくとも800kDa、少なくとも900kDa、または少なくとも1000kDaのサイズを有するタンパク質、多糖類、化学物質、またはそれらの組み合わせであり得る。実施形態では、カーゴは、約250kDa~約3500kDa、約300kDa~約3000kDa、約350kDa~約2500kDa、約400kDa~約2000kDa、約450kDa~約1500kDa、約500kDa~約1000kDa、のサイズを有するタンパク質、多糖類、化学物質、またはそれらの組み合わせであり得る。このような(大きな)タンパク質、化学物質、多糖、またはそれらの組み合わせは、本発明の方法によって効率的に細胞内に送達され得る。
【0074】
本明細書で教示される方法の実施形態では、カーゴは溶液中にある。
【0075】
実施形態では、混合物中のカーゴの濃度は、約0.001~約100mg/ml(すなわち、μg/μl)であり得る。例えば、混合物中のカーゴの濃度は、約0.01mg/ml~約10mg/ml、または約0.1mg/ml~約1.0mg/mlであり得る。カーゴは、水または細胞培養培地などの水溶液中の混合物として提供されることが好ましい。
【0076】
カーゴは、本明細書でさらに説明されるように、医薬製剤または部品のキットなどの組成物または製剤に含まれ得る。組成物は、約0.005mg/ml~100mg/ml、例えば約0.01mg/ml~約50mg/mlの範囲の濃度でカーゴを含み得る。
【0077】
「細胞」という用語は、真核細胞および原核細胞を含むあらゆる種類の生物学的細胞を指す。本明細書で使用される場合、用語「細胞」および「生体細胞」は互換的に使用される。
【0078】
本明細書で教示される方法の実施形態では、細胞は植物細胞であり得る。
【0079】
本明細書で教示される方法の実施形態では、細胞は動物細胞であり得る。本明細書で教示される方法の実施形態では、細胞はヒト細胞であり得る。実施例の項に示すように、本明細書で教示する方法は、動物細胞、特にヒト細胞、例えばヒトT細胞への高い送達収率を有利に可能にする。
【0080】
本明細書で教示される方法の実施形態では、細胞は微生物であり得る。本明細書で教示される方法の実施形態では、細胞は細菌、酵母、または真菌細胞であり得る。
【0081】
本明細書で教示される方法の実施形態では、細胞は合成細胞であり得る。
【0082】
細胞は、生体サンプル、好ましくはヒト対象の生体サンプル、例えば、血液、骨髄、海綿骨、臍帯、胎盤、胎児卵黄嚢、皮膚(真皮)、特に胎児および青年の皮膚、骨膜、歯髄、腱および脂肪組織から得られ得る(例えば、単離し得る、由来し得る)。本明細書で使用される「生体サンプル」または「サンプル」という用語は、生物源、例えば、植物、動物またはヒト対象などの生物、細胞培養物、組織サンプルなどから得られるサンプルを指す。植物、動物、またはヒト対象の生物学的サンプルとは、植物、動物、またはヒト対象から採取され、それらの細胞を含むサンプルを指す。植物、動物、またはヒト対象の生物学的サンプルは、1つ以上の組織型を含み得、1つ以上の組織型の細胞を含み得る。植物、動物、またはヒト対象の生物学的サンプルを取得する方法、例えば、組織生検または採血は、当技術分野で既知である。
【0083】
生物学的サンプルは、植物、ヒトまたは非ヒト動物、好ましくは温血動物、さらにより好ましくは例えば非ヒト霊長類、げっ歯類、イヌ科、ネコ科、ウマ科、ヒツジ科、ブタ科などの動物などの哺乳動物などの生物学的起源に由来し得る。「非ヒト動物」という用語には、すべての脊椎動物、例えば非ヒト霊長類(特に高等霊長類)、ヒツジ、イヌ、げっ歯類(例えばマウスまたはラット)、モルモット、ヤギ、ブタ、ネコ、ウサギ、ウシ、およびニワトリ、両生類、爬虫類などの非哺乳動物である。好ましくは、生体サンプルはヒト由来である。
【0084】
生体サンプルは、体液または非液体生体サンプルであり得る。本明細書で教示される方法の前または最中のサンプル調製によって、例えば非流体生物学的サンプルから細胞が放出される可能性があることを理解されたい。したがって、本明細書で教示される方法は、細胞組織などの非流体生体サンプルから細胞を放出するステップを含むことができる。
【0085】
実施形態では、細胞は、植物起源の生物学的サンプル、植物組織培養物、または植物細胞培養物から得られ得る。例えば、細胞は植物細胞懸濁培養物から得ることができる。実施形態では、細胞は生植物の植物細胞であり得る。
【0086】
実施形態では、細胞は、血液、骨髄、海綿骨、臍帯、胎盤、胎児卵黄嚢、皮膚(真皮)、具体的には胎児および思春期の皮膚、骨膜、歯髄、腱および脂肪組織などの動物由来の生体サンプルから得られ得る。
【0087】
実施形態では、細胞は全血から得られ得る。実施形態では、細胞はバフィーコートから得られ得る。全血を遠心分離した後、3つの層。透明な液体(つまり、血漿)の層、赤血球と顆粒球とを含む赤い液体の層、そしてその間にあるバフィーコートと呼ばれる薄い層、を区別し得る。バフィーコートは、白血球と血小板との大部分を含有する。
【0088】
実施形態では、細胞は骨髄から得られ得る。
【0089】
実施形態では、細胞は、血液細胞、幹細胞、またはそれらに由来する細胞であり得る。
【0090】
「血球」、「造血細胞」、「血球」または「血球」という用語は、概して、造血によって生成され、主に血液中に見出される細胞を指す。血液細胞の主な種類には、赤血球(赤血球)、白血球(白血球)、および血小板(血小板)が含まれる。
【0091】
「幹細胞」という用語は、概して、自己複製能力があり、すなわち分化せずに増殖することができ、その子孫が少なくとも1つの比較的特殊な細胞タイプを生じ得る、未分化または比較的分化が少ない増殖能を有する細胞を指す。この用語は、実質的に無制限の自己複製が可能な幹細胞を包含し、すなわち、幹細胞の子孫またはその少なくとも一部が、母幹細胞の非特殊化または比較的特殊化されていない表現型、分化能、および増殖能力を実質的に保持する、幹細胞を包含し、ならびに限られた自己複製を示す幹細胞、すなわち、子孫またはその一部のさらなる増殖および/または分化の能力が、母細胞と比較して明らかに低下している幹細胞をも包含する。限定ではなく例として、幹細胞は、1つ以上の系統に沿って分化して、相対的により特殊化した細胞を生成する子孫を生じさせ得、そのような子孫および/またはますます比較的より特殊化した細胞は、それ自体が本明細書で定義される幹細胞であり得、最終分化細胞、すなわち、有糸分裂後であり得る完全に特殊化された細胞を生成することさえあり得る。
【0092】
本明細書で教示される方法の実施形態では、細胞は、T細胞、リンパ球、マクロファージ、樹状細胞、単球、NK細胞、NKT細胞、B細胞、好中球、顆粒球、ミクログリア細胞、またはランゲルハンス細胞などの免疫細胞であり得る。実施形態では、免疫細胞は、T細胞などのリンパ球である。本発明の方法は、有利なことに、mRNAなどのカーゴの免疫細胞、例えばT細胞などの、免疫細胞への高い送達収率を可能にする。
【0093】
動物またはヒト対象からT細胞などの免疫細胞を取得する方法は、当技術分野で既知である。
【0094】
実施形態では、細胞は、単離細胞または培養細胞であり得る。
【0095】
特定の成分に関して本明細書全体で使用される「単離された」という用語は、概して、そのような成分が、その成分の1つ以上の他の自然環境成分から分離して存在する(例えば、その成分の1つ以上の他の成分から分離されているか、または分離された状態で調製および/または維持されている)ことを意味する。より具体的には、細胞または組織に関して本明細書で使用される「単離された」という用語は、そのような細胞または組織が植物、動物または人体の一部を形成しないか、またはもはやその一部を形成していないことを意味する。
【0096】
単離された細胞または組織は、適切に培養され得るか、またはin vitroで培養され得る。「培養」または「細胞培養」という用語は当技術分野で一般的であり、in vitroでの細胞の維持および潜在的な細胞の拡大(増殖、繁殖)を広く指す。通常、植物細胞、またはヒト細胞などの哺乳類細胞などの動物細胞は、in vitro細胞培養に役立つ既知の条件で目的に適した管または容器内(例えば、96、24、または6ウェルプレート、T-25、T-75、T-150またはT-225フラスコ、または細胞工場)の適切な細胞培養培地にそれらを曝露する(すなわち、それらを接触させる)ことによって培養される。
【0097】
実施形態では、混合物中の細胞の濃度は、ミリリットル(ml)当たり約102~約1010細胞、より好ましくは約103~約109細胞/ml、例えば約104~約108細胞/ml、または105~約108細胞/ml約1mlであり得る。細胞は、好ましくは、細胞培養培地または適切なトランスフェクション緩衝液などの水溶液中の混合物中に存在する。
【0098】
実施形態では、カーゴを細胞に送達すること(またはカーゴを細胞に送達すること)は、カーゴを細胞にトランスフェクションすること(またはカーゴをトランスフェクションすること)であり得る。したがって、実施形態では、本明細書に教示される方法は、細胞へのカーゴのトランスフェクションまたはトランスフェクションのためのものであり得る。
【0099】
「トランスフェクション」という用語は、動物細胞に核酸を導入するプロセスを指す。
【0100】
実施形態では、カーゴを細胞に送達すること(またはカーゴを細胞に送達すること)は、カーゴを細胞に変換すること(またはカーゴを細胞に変換すること)であり得る。したがって、実施形態では、本明細書に教示される方法は、カーゴを細胞に形質転換するためのものであり得る。
【0101】
「形質転換」という用語は、植物細胞などの非動物真核細胞に核酸を導入するプロセスを指す。
【0102】
本明細書で教示される方法の実施形態では、有機粒子は、ポリマーベースの粒子、タンパク質ベースの粒子、脂質ベースの粒子、例えば、リポソームまたは固体脂質粒子である、脂質ベースの粒子およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0103】
上で定義した有機粒子の材料との関連で使用される「ベースの」という用語は、主に当該材料を含む、または当該材料で作られる粒子として理解されたい。換言すれば、当該タンパク質ベースの粒子は、1つ以上のタンパク質またはペプチドを主に含むかまたは完全にそれらからなる粒子として理解されたい。脂質ベースまたは「脂質粒子」は、本明細書では互換的に使用され得、1つ以上の脂質を含む、実質的にそれからなる、または1つ以上の脂質からなる粒子を指す。
【0104】
「ポリマーベースの粒子」または「ポリマー粒子」という用語は、本明細書では互換的に使用され得、1つ以上のポリマーを含む、実質的にそれからなる、または1つ以上のポリマーからなる粒子を指す。
【0105】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、繰り返しのサブユニットまたはモノマーから構成される高分子を指す。好ましくは、各モノマーは、炭素と、水素、酸素または窒素などの1つ以上の追加元素とを含む。この用語には合成ポリマーと天然ポリマーの両方が含まれるが、核酸やタンパク質などの生体ポリマーは含まれない。
【0106】
実施形態では、有機粒子はポリマーベースの粒子であり得る。
【0107】
実施形態では、ポリマーベースの粒子は、炭素ベースの微粒子または炭素ベースのナノ粒子などの炭素ベースの粒子ではない。実施形態では、ポリマーベースの粒子は炭素の同素体ではない。実施形態では、ポリマーベースの粒子は、グラフェン粒子(例えば、ナノリボン)、酸化グラフェン粒子、カーボンナノチューブ、カーボンドット、フラーレン、グラファイト、もしくはダイヤモンド、またはカーボンナノバッドなどのそれらの組み合わせからなる群から選択される粒子ではない。実施形態では、ポリマーは炭素から構成されていない。実施形態では、ポリマーはグラフェンなどの炭素の同素体ではない。実施形態では、ポリマーは、ダイヤモンドなどの固体形態の炭素ではない。実施形態では、ポリマーは、グラファイトなどの炭素の結晶形ではない。
【0108】
本明細書で教示される方法または生成物の実施形態では、ポリマーベースの粒子は、ポリ(DL-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、エチルセルロース、セルロースアセトフタレート、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、コラーゲン、シルク、アルギン酸塩、ヒアルロン酸、デキストラン、デンプン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリスチレン、メトキシ-PEG-ポリラクチド、ポリ(アルキルシアノアクリレート)(PACA)、ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド(PLGH)、ポリ(アリルアミン塩酸塩)、またはポリオキサゾリンを含み得るか、これらからなり得る。例えば、PLGAベースのICGナノ粒子(PLGA-ICGNP)は、Saxenaら、2004,Int J Pharm,278(2):293-301に記載されているように調製され得る。
【0109】
PACAの適切な例としては、ポリ(ブチルシアノアクリレート)(PBCA)、ポリ(オクチルシアノアクリレート)(POCA)、およびポリ(エチル2-シアノアクリレート)(PECA)が挙げられる。
【0110】
実施形態では、ポリマーベースの粒子は、メトキシ-PEG-ポリラクチド、ポリ(アルキルシアノアクリレート)(PACA)、ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(PLGH)、およびポリ(アリルアミン塩酸塩)などの1つ以上の臨床的に承認されたポリマーを含むか、またはそれらから構成され得る。
【0111】
実施形態では、有機粒子はタンパク質ベースの粒子であり得る。タンパク質ベースの粒子は安定性が高く、生体適合性があり、生分解性があるため、細胞に毒性を与えることなくカーゴを細胞に送達可能である。
【0112】
「タンパク質ベースの粒子」または「タンパク質粒子」という用語は、本明細書では互換的に使用され得、1つ以上のタンパク質を含む、実質的にそれからなる、またはそれからなる粒子を指す。
【0113】
タンパク質ベースの粒子には、フェリチン、熱ショックタンパク質(Hsp)、飢餓細胞由来のDNA結合タンパク質(Dps)、カプセルリン、ピルビン酸デヒドロゲナーゼのE2タンパク質、ルマジンシンターゼ、ボールトタンパク質に基づく非ウイルス粒子、およびウイルス様粒子(VLP)などの、タンパク質ベースのナノ粒子(PNP)が含まれる。
【0114】
実施形態では、タンパク質は、ヒト血清アルブミン(HSA)などのアルブミンであり得る。例えば、ヒト血清アルブミンICGナノ粒子(HSA-ICGNP)は、Shengら、2014、ACS Nano、8(12):12310-22に記載されているように調製され得る。
【0115】
実施形態では、有機粒子は、アルブミン結合ナノ粒子(例えば、アブラキサン)などの1つ以上の臨床的に承認されたタンパク質を含むタンパク質ベースの粒子であり得る。実施形態では、有機粒子は、IL-2およびジフテリア毒素を組み合わせた人工タンパク質(例:Ontak);PEG-アスパラギナーゼ(例:Oncaspar);PEG-フィルグラスチム(PEG化顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)タンパク質)(例:Neulasta);PEG化ブタ様ウリカーゼ(例:Krystexxa);PEG化第VIII因子(例:ADYNOVATE);PEG化IFN α-2aタンパク質(例:PegIntron);PEG化アデノシンデアミナーゼ酵素(例:アダゲン/ペガデマーゼウシ);PEG化抗体断片(例:Cimzia/セルトリズマブペゴル);L-グルタミン酸、L-アラニン、L-リジン、L-チロシンのランダム共重合体(例:Copaxone/Glatopa);PEG化抗血管内皮増殖因子(VEGF)アプタマー(例:Macugen)、メトキシポリエチレングリコール-エポエチンベータ(例:Mircera)、PEG化GCSFタンパク質(例:Neulasta);PEG化IFN α-2aタンパク質(例:Pegasys)などの、1つ以上の臨床的に承認されたタンパク質ベースの薬物を含むタンパク質ベースの粒子であり得る。
【0116】
「脂質ベースの粒子」または「脂質粒子」という用語は、本明細書では互換的に使用され得、1つ以上の脂質を含む、実質的にそれからなる、またはそれからなる粒子を指す。脂質ベースの生成物は生体適合性があり、生分解性があるため、細胞に毒性を与えることなくカーゴを細胞に送達し得る。
【0117】
脂質ベースの粒子はリポソームであっても、固体脂質粒子であり得る。
【0118】
実施形態では、脂質ベースの粒子は、天然脂質、細菌脂質、または合成脂質を含み得る。実施形態では、脂質ベースの粒子は、アニオン性脂質、中性脂質、カチオン性脂質、イオン化可能脂質、またはステロールを含み得る。
【0119】
アニオン性脂質の適切な例としては、ホスファチジルセリン(PS)およびホスファチジルグリセロール(PG)が挙げられる。
【0120】
中性脂質の適切な例としては、プロスタグランジン、エイコサノイド、グリセリド、グリコシル化ジアシルグリセロール、酸素化脂肪酸、超長鎖脂肪酸(VLCFA)、ヒドロキシステアリン酸のパルミチン酸エステル(PAHSA)、N-アシルグリシン(NAGly)、およびプレノールが挙げられる。
【0121】
カチオン性脂質の適切な例としては、多価カチオン性脂質;1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA);エチルホスホコリン(EPC);ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB);N1-[2-((1S)-1-[(3-アミノプロピル)アミノ]-4-[ジ(3-アミノ-プロピル)アミノ]ブチルカルボキサミド)エチル]-3,4-ジ[オレイルオキシ]-ベンズアミド(MVL5);pH感受性脂質;1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP);3β-[N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール(DC-コレステロール);N4-コレステリル-スペルミン(GL67);1,2-ジオレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DODMA);Dlin-MC3-DMA(MC3);DLinDAP;DLinDMA;DLinKDMA;またはDLinKC2-DMAが挙げられる。
【0122】
このような脂質は、Avanti Polar Lipids(アラバマ州、米国)から市販されている。例えば、適切な多価カチオン性脂質は、(N1-[2-((1S)-1-[(3-アミノプロピル)アミノ]-4-[ジ(3-アミノ-プロピル)アミノ]ブチルカルボキサミド)エチル]-3,4-ジ[オレイルオキシ]-ベンズアミド)である。エチルPCの例には、1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(塩化物塩)(12:0 EPC Cl塩);1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(塩化物塩)(14:0 EPC Cl塩);1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(塩化物塩)(16:0 EPC Cl塩);1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(塩化物塩)(18:0 EPC Cl塩);1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(塩化物塩)(18:1 EPC Cl塩);1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(塩化物塩)(16:0-18:1 EPC Cl塩);および1,2-ジミリストオレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(Tf 塩)(14:1 EPC Tf塩)が含まれる。
【0123】
pH感受性脂質の例には、N-(4-カルボキシベンジル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(オレオイルオキシ)プロパン-1-アミニウム(DOBAQ);1,2-ジステアロイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(18:0 DAP);1,2-ジパルミトイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(16:0 DAP);1,2-ジミリストイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(14:0 DAP);1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(18:1 DAPまたはDODAP))が含まれる。
【0124】
イオン化可能な脂質の適切な例には、Dlin-MC3-DMA(MC3);DLinDAP;DLinDMA;DLinKDMA;またはDLinKC2-DMAが含まれる。
【0125】
ステロールの適切な例としては、オキシステロール、天然ステロール、胆汁酸、コレステリルエステル、グリコシル化ステロール、または酸化ステロールが挙げられる。
【0126】
脂質ベースの粒子の調製方法は、当技術分野で知られている。実施形態では、脂質ベースの粒子は、MC3ベースの脂質粒子であり得る(Patelら、2019,J.Control.Release,303,91-100)。ICGを封入したリポソーム(Lip-ICG)は、Lajunenら、2018、J.Control.Release 284、213-223に記載されている通りに調整され得る。
【0127】
本明細書で教示される方法または生成物の実施形態では、リポソームは、薄膜再水和法(例えば、光吸収分子をリポソームのコアに組み込むための押出または超音波処理を含む)、マイクロ流体混合、または、例えば、脂質および光吸収分子を含む溶媒を生理学的緩衝液に滴下することを含む、注入方法などの当技術分野で知られている方法によって調製され得る。
【0128】
例えば、リポソームは、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、および1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[アミノ(ポリエチレングリコール)-2000](DSPE-PEG(2000)アミン)を特定のモル比で混合することによって調製され得る。次いで、ICGなどの光吸収分子を、押出成形および/または超音波処理ステップ(チップ/バス超音波処理)によって組み込み得る。精製は、超遠心分離および/または透析によって得られ得る。
【0129】
本明細書で教示される方法または生成物の実施形態では、固体脂質粒子は、高せん断均質化(例えば、高温または低温均質化)、超音波処理/高速ホモジナイズ、溶媒の乳化/蒸発、マイクロエマルジョンベースの固体脂質粒子の調製、超臨界流体を使用した固体脂質粒子の調製、噴霧乾燥法、およびそしてダブルエマルション方式などの当技術分野で知られている方法によって調製され得る。
【0130】
実施形態では、光応答性有機粒子は、ポリマーベースの粒子、タンパク質ベースの粒子、脂質ベースの粒子であり得、またはポリマーベースの粒子、タンパク質ベースの粒子、脂質ベースの粒子のうちの2つ以上の組み合わせであり得る。ポリマーベースの粒子、タンパク質ベースの粒子、脂質ベースの粒子、またはそれらの組み合わせは、それ自体、ポリドーパミン粒子などの光応答特性を有し得る。あるいは、ポリマーベースの粒子、タンパク質ベースの粒子、脂質ベースの粒子、またはそれらの組み合わせは、光吸収分子(光応答特性を有する)を含み得、それによって、ポリマーベースの粒子、タンパク質ベースの粒子、脂質ベースの粒子、または光応答特性を備えたそれらの組み合わせが提供される。どちらのタイプの光応答性有機粒子も、臨床的に承認された前駆体分子を使用して調製され得る。
【0131】
「光応答性」、「光感受性」、「光増感」という用語は、同じ意味で使用され、例えば可視光などの、電磁放射に応答する能力を指す。
【0132】
本明細書で教示される方法または本明細書で教示される生成物(本明細書で教示される光応答性有機粒子を含む)の実施形態では、光応答性有機粒子は、光応答性ポリマーベースの粒子、光応答性タンパク質ベースの粒子、光応答性脂質ベースの粒子、またはそれらの組み合わせであり得る。このような光応答性有機粒子は、臨床的に承認された前駆体を使用して調製され得、それによって、CAR-T細胞などの操作された治療用細胞生成物の生成のための、本明細書で教示されるような送達方法の臨床移行が促進される。
【0133】
本明細書で教示される方法または生成物の実施形態では、光応答性有機粒子は、光応答性ポリマーベースの粒子であり得る。実施形態では、光応答性有機粒子は、ポリドーパミン(PD)粒子、ポリ(N-フェニルグリシン)(PNPG)粒子、ポリ-2-フェニル-ベンゾビスチアゾール(PPBBT)粒子、ポルフィリン粒子、フタロシアニン粒子、またはポリピロール粒子から選択される、光応答性ポリマーベースの粒子であり得る。実施形態では、光応答性有機粒子は、ポリドーパミン、ポリ(N-フェニルグリシン)、ポリ-2-フェニル-ベンゾビスチアゾール、ポルフィリン、フタロシアニン、またはポリピロールを含み得るか、またはそれらから構成され得る。実施形態では、光応答性有機粒子は、ドーパミン塩酸塩などの臨床的に承認されたモノマーから調製(生成または合成)され得、それによって、操作された治療用細胞生成物、例えば、CAR-T細胞、の生成のための、本明細書で教示される方法の臨床移行が促進される。
【0134】
本明細書で教示される方法または生成物の実施形態では、光応答性有機粒子は、光吸収分子を含むポリマーベースの粒子、タンパク質ベースの粒子、脂質ベースの粒子(例えば、リポソームまたは固体脂質粒子)、またはそれらの組み合わせであり得る。実施形態では、光応答性有機粒子は、光吸収分子を含むポリマーベースの粒子であり得る。実施形態では、光応答性有機粒子は、光吸収分子を含むタンパク質ベースの粒子であり得る。実施形態では、光応答性有機粒子は、光吸収分子を含む脂質ベースの粒子であり得る。実施形態では、光応答性有機粒子は、光吸収分子を含む固体脂質粒子であり得る。実施形態では、光応答性有機粒子は、光吸収分子を含むポリマーベースの粒子、タンパク質ベースの粒子、脂質ベースの粒子のうちの2つ以上の組み合わせであり得る。このような光応答性有機粒子は、臨床的に承認された分子を使用して調製され得、それによって、CAR-T細胞などの操作された治療用細胞生成物の生成のための、本明細書で教示されるような送達方法の臨床移行が促進される。
【0135】
本明細書で教示される方法または生成物の実施形態では、光応答性有機粒子は、光吸収分子を搭載または官能化したポリマーベースの粒子、タンパク質ベースの粒子、脂質粒子であり得る。
【0136】
実施形態では、光吸収分子は、ナノ粒子またはマイクロ粒子などの粒子上にグラフトされ得る。例えば、光吸収分子は、粒子の表面(例えば、ポリ(エチレン)グリコール鎖またはヒアルロン酸鎖の遠位端などのポリマー鎖の端)での「クリックケミストリー」によって粒子上にグラフトされ得る。例えば、光吸収分子のグラフト化は、粒子上にグラフト化されたPEG鎖の末端で起こり得る。
【0137】
実施形態では、光吸収分子は、ナノ粒子またはマイクロ粒子などの粒子内にカプセル化され得る。実施形態では、光吸収分子は、物理的または化学的カプセル化によって粒子内にカプセル化され得る。例えば、リポソームへのICGの物理的カプセル化は、脂質の再水和中にICGを添加することによって実行され得る。ヒト血清アルブミン-ICG粒子の場合、化学的カプセル化は、ICGをHSAのジスルフィド結合と反応させることによって行われ得る。
【0138】
光応答性タンパク質ベースの粒子の例としては、PLGAベースのICG粒子が挙げられる。
【0139】
光応答性タンパク質ベースの粒子の例には、ヒト血清アルブミン(HSA)粒子に結合したヘプタメチン色素(CySCOOH);Ce6に結合したHSA(HSA-Ce6);スクアライン(SQ)色素に結合したHSA(HAS-SQ);HSA-IR825複合体;Cys-Asp-Cys-Arg-Gly Asp-Cys-Phe-Cys(RGD4C)修飾フェリチン(RFRT)への亜鉛ヘキサデカフルオロフタロシアニン(ZnF16Pc)の充填;アポフェリチン粒子へのメチレンブルーのカプセル化;IR820色素担持フェリチン粒子;水溶性亜鉛Pc(ZnPc)を含むササゲ緑斑ウイルス(CCMV)タンパク質からなる粒子;5,10,15,20-テトラキス(m-ヒドロキシフェニル)ポルフィリン(mTHPP)および/または5,10,15,20-テトラキス(m-ヒドロキシフェニル)クロリン(mTHPC)と結合したアルブミン;ヘマトポルフィリン結合アルブミンナノ粒子(HP-ANP);ポリピロール(PPy)複合体アルブミンナノ粒子;アルブミンおよびCe6粒子と複合体を形成したポリピロール(PPy);Ce6を含むアルブミン粒子と複合体を形成したポリ-L-リジン(PLL);プロトポルフィリンIXを含むアルブミン粒子と複合体を形成したポリ-L-リジン(PLL);ベルテポルフィンを含むアルブミン粒子と複合体を形成したポリ-L-リジン(PLL);メソ-テトラ-(N-メチル-4-ピリジル)四塩化ポルフィン(TMPyP)を含むヒドロゲル;およびHSA-IR780粒子が含まれる。
【0140】
光応答性リポソームの例には、例えばICGを含むリポソームが含まれる。
【0141】
光応答性固体脂質粒子の例としては、例えば、疎水性IR-780色素を含む固体脂質粒子、ICGを含む固体脂質粒子およびドキソルビシンを含む固体脂質粒子が挙げられる。
【0142】
本明細書で教示される方法または生成物の実施形態では、光吸収分子は、光吸収染料、天然光吸収剤、および合成光吸収剤からなる群から選択される分子であり得る。
【0143】
光吸収分子は、親油性、親水性、または両親媒性であり得る。光吸収分子は、有機粒子の脂質膜または脂質コアに埋め込まれた親油性化合物であり得る。光吸収分子は、有機粒子の水性コアにカプセル化された親水性化合物であり得る。光吸収分子は、有機粒子の脂質膜または脂質コアに埋め込まれた、および/または有機粒子の水性コアにカプセル化された両親媒性化合物であり得る。
【0144】
光吸収染料は、天然染料であっても合成染料であってもよい。
【0145】
光吸収染料は、ANEP色素;7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール-4-イル標識リン脂質;1-オレオイル-2-[6-[(7-ニトロ-2-1,3-ベンゾオキサジアゾール-4-イル)アミノ]ヘキサノイル]-3-トリメチルアンモニウムプロパン(蛍光DOTAP);ビス-(1,3-ジブチルバルビツール酸)トリメチンオキソノール(DiBAC4(3));N-(3-トリエチルアンモニウムプロピル)-4-(4-(ジブチルアミノ)スチリル)ピリジニウムジブロミド;エチジウムブロマイド;ヨウ化プロピジウム;クロリンe6(Ce6);プルプリン-18(P18);およびヘプタメチン色素(CySCOOH)からなる群から選択され得る。
【0146】
ANEP色素の例には、ThermoFisher Scientificから市販されている、Di-4-ANEPPS;Di-4-ANEPPDHQ;Di-3-ANEPPDHQ;およびDi-8-ANEPPSのような色素が含まれる。
【0147】
7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール-4-イル標識リン脂質の例には、[2-(4-ニトロ-2,1,3-ベンゾオキサジアゾール-7-イル)アミノエチル]トリメチルアンモニウム(NBD-TMA);N-(7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール-4-イル)-1,2-ジヘキサデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、トリエチルアンモニウム塩)(NBD-PE);およびNBD-DOPEが含まれる。
【0148】
光吸収染料は、アゾ色素、アリールメタン色素、シアニン色素、チアジン色素、キサンテン色素、カルボシアニン色素、およびアミノスチリル色素からなる群から選択され得る。アゾ色素の例には、トリパンブルー(Membrane Blue、Vision Blue、CAS番号:72-57-1)およびヤヌスグリーン B(Diazine Green S、Union Green B、CAS番号:2869-83-2)が含まれる。
【0149】
アリールメタン色素の例としては、ゲンチアナバイオレット(クリスタルバイオレット、メチルバイオレット10B、ヘキサメチルパラロアニリンクロリド、CAS番号:548-62-9);ブロモフェノールブルー(CAS番号:115-39-9);パテントブルー(Blueron、CAS番号:3536-49-0);ブリリアントブルー(アシッドブルー、クーマシーブリリアントブルー、Brilliant Peel、CAS番号:6104-59-2);ライトグリーン(ライトグリーンSF、ライトグリーンSFイエローイッシュ、CAS番号:5141-20-8);およびファストグリーン(ファストグリーンFCF、Food green 3、FD&C Green No.3、Green 1724、Solid Green FCF、CAS番号:2353-45-9)が挙げられる。
【0150】
シアニン色素の例には、インドシアニングリーン(カーディオグリーン、フォックスグリーン、カーディオグリーン、フォックスグリーン、ICグリーン、CAS番号:3599-32-4)およびインフラシアニングリーンが含まれる。インフラシアニングリーン(IfCG)は、ICGと同じ化学式と同様の薬理特性を持つ緑色色素である。IfCG色素には、ICGと比較した場合、2つの薬理学的な違いがある。まず、ICGにヨウ素が含まれていない場合、色素合成中にヨウ素をICGに添加する必要がある。第二に、ICG溶液中にヨウ素ナトリウムが存在するため、水での希釈が必要となり、結果として低張溶液が生じる。
【0151】
チアジン色素の例には、メチレンブルー(塩化メチルチオニニウム、CAS番号:61-73-4)およびトルイジンブルー(CAS番号:92-31-9)が含まれる。
【0152】
キサンテン色素の例には、フルオレセインナトリウム(CAS番号:518-47-8);ローズベンガル(CAS番号:4159-77-7);およびローダミン6G(ローダミン590、Rh6G、C.I.Pigment Red 81、C.I.Pigment Red 169、Basic Rhodamine Yellow、C.I.45160、CAS番号:989-38-8)が含まれる。
【0153】
カルボシアニン色素の例としては、DiI(カタログ番号D282、D3911、N22880、Invitrogen);DiO(カタログ番号D275、Invitrogen);DiD(カタログ番号D307、D7757、Invitrogen);DiR(カタログ番号D12731、Invitrogen)、およびその誘導体が挙げられる。カルボシアニン色素の誘導体には、DiIC12(3)(カタログ番号D383、Invitrogen);DiIC16(3)(カタログ番号D384、Invitrogen);DiOC16(3)(カタログ番号D1125、Invitrogen);、例えば、DiIおよびDiOの一不飽和または二不飽和誘導体などの、DiIおよびDiOの不飽和誘導体、例えばΔ9-DiI;(カタログ番号D3886、インビトロジェン);DiIおよびDiOのスルホン化誘導体およびCM-DiI(チオール反応性DiI誘導体)が含まれる。
【0154】
アミノスチリル色素の例には、DiA(カタログ番号D3883、Invitrogen)、4-Di-10-ASP(カタログ番号D291、Invitrogen)、およびDiAの二不飽和誘導体(カタログ番号D7758、Invitrogen)が含まれる。
【0155】
本明細書で教示される方法または生成物の実施形態では、光吸収染料は、インドシアニングリーン(ICG)、トリパンブルー、ヤヌスグリーンB、ゲンチアナバイオレット、ブロモフェノールブルー、パテントブルー、ブリリアントブルー、ライトグリーン、ファストグリーン、インフラシアニングリーン、メチレンブルー、トルイジンブルー、フルオレセインナトリウム、ローズベンガル、ローダミン6G、DiD、DiO、DiI、DiA、DiR、およびDiI、DiO、またはDiAの誘導体からなる群から選択され得る。本明細書で教示される方法または生成物の実施形態では、光吸収染料は、インドシアニングリーン(ICG)、トリパンブルー、ヤヌスグリーンB、ゲンチアナバイオレット、ブロモフェノールブルー、パテントブルー、ブリリアントブルー、ライトグリーン、ファストグリーン、インフラシアニングリーン、メチレンブルー、トルイジンブルー、フルオレセインナトリウム、ローズベンガル、ローダミン6Gからなる群から選択され得る。このような光吸収染料は、臨床使用が有利に承認されている。
【0156】
臨床的に承認されている他の光吸収分子には、ポルフィマーナトリウム(例えば、商品名Photofrinで販売されている);δ-アミノレブリン酸(例えば、Levulanとして販売されている);バーテポルフィン(例えば、Visudyneとして販売されている);テモポルフィン(例えば、Foscanとして販売されている);スルホン化アルミニウムフタロシアニン(例えば、Photosenseとして販売されている);アミノレブリン酸メチル(MAL)(例えば、Metvixとして販売されている);タラポルフィンまたはモノ-L-アスパルチルクロリンe6(例:Laserphyrinとして販売されている)が含まれる。
【0157】
他の光吸収分子としては、例えばフェオフォルバイド;フタロシアニン誘導体(例えば、亜鉛(II)フタロシアニン、シリコンフタロシアニン4);シアニンIR-768;ヒペリシン;ヒポクレリンA;C60またはC70フラーレンケージ;およびフェオフォルバイドA(PheA)が挙げられる。
【0158】
天然に存在する光吸収剤は、ヘモグロビン、シトクロムC、ポルフィリン、および色素からなる群から選択され得る。色素は、例えば、メラニン、ロドプシン、フォトプシン、ヨードプシン、クロロフィルa、クロロフィルb、フィコエリトリン、β-カロテン、フィコシアニン、またはアロフィコシアニンであり得る。
【0159】
合成光吸収剤は、ポリドーパミン、ポリ(N-フェニルグリシン、ポリ-2-フェニル-ベンゾビスチアゾール、ポルフィリン、フタロシアニン、またはポリピロールからなる群から選択され得る。
【0160】
光応答性有機粒子は、1つ以上の光応答性有機粒子の2点間の最大距離が約100nm~約2000nm(2μm)であるようなサイズを有し得る。例えば、1つ以上の光応答性有機粒子の2点間の最大距離は、約200nm~約2000nm、約250nm~約2000nm、約250nm~約1750nm、約250nm~約1500nm、または約250nm~約1300nmであり得る。
【0161】
本明細書で教示される方法または生成物の実施形態では、1つ以上の光応答性有機粒子の2点間の最大距離は、約250nm~約1250nm(1.25μm)であり得る。実施形態では、1つ以上の光応答性有機粒子の2点間の最大距離は、約300nm~約1200nm(1.2μm)、約400nm~約1100nm(1.1μm)、約300nm~約1000nm(1.0μm)、または約500nm~約1000nm(1μm)であり得る。例えば、1つ以上の光応答性有機粒子の2点間の最大距離は、約550nm~約950nm、約600nm~約900nm、約650nm~約850nm、または約700nm~約800nmであり得る。このような光応答性有機粒子は、十分な細胞生存率を維持しながら、mRNAを含む核酸などのカーゴの細胞への効率的な送達を有利に可能にし、それによって細胞へのカーゴの高い送達収率をもたらす。
【0162】
本明細書で教示される方法の実施形態では、約250nm~約1250nm、例えば約300nm~約1200nm、約400nm~約1100nm、300nm~約1000nm、または約500nm~約1000nmなどの、最大寸法を有する光応答性有機粒子を使用した場合の送達収率は、少なくとも20%であり得る。例えば、約250nm~約1250nm、例えば約300nm~約1200nm、約400nm~約1100nm、約300nm~約1000nm、または約500nm~約1000nmの範囲の最大寸法を有する光応答性有機粒子を使用した場合の送達収率は、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、または少なくとも50%であり得る。
【0163】
本明細書で使用される「送達収率」という用語は、本明細書に教示される方法を実施した後のカーゴを構成する生(生存)細胞の量(例えば、送達方法の後に検出されるカーゴを構成する生細胞の量)と本明細書に教示される方法を実施する前の生(生存)細胞の量(例えば、送達方法の前に検出された生細胞の量)との相対的な比を指す。
【0164】
パーセンテージ(%)として表される送達収率は、本明細書に教示される方法を実施した後の細胞の生存率(例えば、パーセンテージとして表される)と、本明細書に教示される方法の効率(例えば、パーセンテージとして表される)とを乗算し、続いて結果の値を100で除算することによって決定され得る。
【0165】
送達収率(%)={[細胞生存率(%)]x[効率(%)]}/100
【0166】
本明細書に教示される方法を実行した後の細胞の生存率(%)は、本明細書に教示される方法を実行した後に得られる生存細胞の、数などの量を、ここで教示される方法を実行する前の(合計)生存細胞の数などの量で割ることによって、その後、結果の値に100を乗算することによって、決定され得る。
【0167】
本明細書で教示される方法の効率(%)は、本明細書で教示される方法を実行した後に得られるカーゴを含む生存細胞の数などの量を、ここで教示される方法を実行した後に得られた(合計)生存細胞数などの量で割ることによって、その後、結果の値に100を乗算することによって、決定され得る。
【0168】
送達収率(%)={[(送達方法後の生存細胞数/送達方法前の生存細胞数)×100]×[(送達方法後のカーゴを構成する生存細胞数/送達方法後の生存細胞数)×100]}/100
【0169】
本明細書で教示される方法の実施形態では、約250nm~約1250nm、例えば約300nm~約1200nm、約400nm~約1100nm、約300nm~約1000nm、または約500nm~約1000nmの最大寸法を有する光応答性有機粒子を使用したときの送達収率(例えば、最大送達収率)は、この範囲外の最大寸法(例えば、約100nmまたは約2000nm)を有する光応答性有機粒子を使用する場合の送達収率(例えば、最大送達収率)に対して(すなわち、比較して)少なくとも約5%増強(すなわち、増加)し得る。本明細書で教示される方法の実施形態では、約250nm~約1250nm、例えば約300nm~約1200nm、約400nm~約1100nm、約300nm~約1000nm、または約500nm~約1000nmの最大寸法を有する光応答性有機粒子を使用したときの送達収率(例えば、最大送達収率)は、この範囲外の最大寸法(例えば、約100nmまたは約2000nm)を有する光応答性有機粒子を使用する場合、送達収率(例えば、最大送達収率)に対して比較して(すなわち、比較して)、少なくとも約10%、少なくとも約15%、20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約400%、または少なくとも約500%増強(すなわち増加)され得る。
【0170】
例えば、増加は、比較対象となる送達収率の第2の値に対して、送達収率の第1の値の少なくとも約5%、少なくとも約6%、少なくとも約7%、少なくとも約8%、少なくとも約9%、または少なくとも約10%、または少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約400%、または少なくとも約500%の増加を包含し得るが、これらに限定されない。
【0171】
例えば、第1の例では、増加は、送達収率の第1の値(例えば、10%の送達収率)の比較対象となる送達収率の第2の値(例:12%の送達収率)に対する20%(すなわち、2%/10%×100%)の増加を包含し得る。第2の例では、偏差は、送達収率の第1の値(例えば、10%の送達収率)の比較対象となる送達収率の第2の値(例えば、30%の送達収率)に対する200%(すなわち、20%/10%×100%)の増加を包含し得る。
【0172】
したがって、本明細書では、光応答性有機粒子も提供され、有機粒子は、ポリマーベースの粒子、タンパク質ベースの粒子、脂質ベースの粒子、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、1つ以上の光応答性有機粒子の2点間の最大距離は、約250nm~約1250nm(1.25μm)であり得る。実施例の項で広く実証されているように、このような光応答性有機粒子は、満足のいく細胞生存率を維持しながら、mRNAを含む核酸などのカーゴの細胞への効率的な送達を有利に可能にし、それによって細胞へのカーゴの高い送達収率をもたらす。
【0173】
「1つ以上の光応答性有機粒子の2点間の最大距離」という語句は、1つ以上の光応答性有機粒子の最大寸法を指す。
【0174】
光応答性有機粒子は、個々の粒子、または互いに近接または接触して配置された2つ以上の粒子のグループ、凝集体、またはクラスターを含み得る。
【0175】
実施形態では、光応答性有機粒子は、例えば細胞培養培地などの水溶液中に、個々の粒子として存在し得る。これらの実施形態では、「1つ以上の光応答性有機粒子の2点間の最大距離」という語句は、個々の粒子の2点間の最大距離を指す。
【0176】
実施形態では、光応答性有機粒子は、例えば細胞培養培地などの水溶液中に、2つ以上の粒子の群、凝集体、またはクラスターを含み得る。これらの実施形態では、「1つ以上の光応答性有機粒子の2点間の最大距離」という語句は、2つ以上の粒子のグループ、凝集体、またはクラスターの2点間の最大距離を指す。
【0177】
最大距離は、粒子のグループにわたって計算された平均最大距離であり得る。本明細書で使用される「粒子」という用語は、約1nm~約2000nm(2μm)の寸法(より具体的には粒子の最大寸法)を有する粒子、または2つ以上の粒子の群、凝集体、もしくはクラスターを指す。
【0178】
本明細書で使用される「微粒子」という用語は、1000nm超(1μm超)かつ最大2000nm(2μm以下)の寸法(より具体的には粒子の最大寸法)を有する粒子、または2つ以上の粒子の群、凝集体、またはクラスターを指す。
【0179】
「ナノ粒子」という用語は、少なくとも1nm(1nm以上)かつ最大1000nm(1μm以下)の寸法(粒子の最大寸法)を有する粒子、または2つ以上の粒子のグループ、凝集体、またはクラスターを指す。
【0180】
粒子の寸法、例えば粒子の幅、高さ、または直径は、透過電子顕微鏡法(TEM)、走査電子顕微鏡法(SEM)、または原子間力顕微鏡法(AFM)を使用して測定し得る。
【0181】
実施形態では、本明細書で教示される方法は、細胞を、1種類の光応答性有機粒子、または異なる光応答性有機粒子の組み合わせ、例えば、異なるサイズ、異なる組成および/または異なる形状を有する光応答性有機粒子、と接触させることを含み得る。
【0182】
粒子はいかなる形状であってもよい。例えば、粒子は、球形、楕円形、棒状、角錐形、分岐状であってもよく、または不規則な形状を有していてもよい。
【0183】
本明細書で教示される方法または生成物の実施形態では、光応答性有機粒子は、楕円形粒子、棒状粒子、角錐形粒子、分岐状粒子、または不規則な形状の粒子であってもよい。このような粒子のサイズは、好ましくは等価球直径(等価体積直径とも呼ばれる)によって定義される。不規則な形状の物体の等価球直径(またはESD)は、等価体積の球の直径である。
【0184】
実施形態では、光応答性有機粒子は、約250nm~約2000nmの等価球直径を有し得る。実施形態では、光応答性有機粒子は、約250nm~約1250nmの等価球直径を有し得る。例えば、光応答性有機粒子は、約300nm~約1200nm、または約500nm~約1000nmの等価球直径を有し得る。このような光応答性有機粒子は、有利なことに、大きな高分子などのカーゴを細胞内に効率的に送達することを可能にする。
【0185】
粒子の形状は球状であり得る。本明細書で教示される方法または生成物の実施形態では、光応答性有機粒子は球状粒子であり得る。実施形態では、光応答性有機粒子は、約250nm~約2000nmの平均直径を有する球形粒子であり得る。実施形態では、光応答性有機粒子は、約250nm~約1250nmの平均直径を有する球形粒子であり得る。例えば、光応答性有機粒子は、平均直径が約300nm~約1200nm、または約500nm~約1000nmの球形粒子であり得る。このような光応答性有機粒子は、有利なことに、大きな高分子などのカーゴを細胞内に効率的に送達することを可能にする。
【0186】
本明細書で教示される方法または生成物の実施形態では、光応答性有機粒子は、表面をコーティングするなど、表面上で官能化され得る。実施形態では、光応答性有機粒子は、アルブミン、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)(PDDAC)、ポリ(アリルアミン塩酸塩)(PAH)、ポリアミドアミン(PAA)、ポリ(アミノ-co-エステル)(PAE)、ポリ[2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート](PDMAEMA)、ヒアルロン酸(HA)、ゼラチン、ポリグリセリン、シクロデキストリン(CD)、デキストラン、セルロース、シリカ、ポリオキサゾリン、スルホベタインシラン(SBS)、カチオン性脂質、中性脂質、アニオン性脂質、キトサン、ポリ-L-リジンからなる群から選択される1つ以上の化合物で被覆されているなど、官能化され得る。有利には、アルブミンで官能化されたポリドーパミン粒子などのさらに官能化された光応答性有機粒子は、細胞膜または細胞壁などの細胞のバリアに付着する粒子の能力を妨げたり、さらにはそれを改善したりすることなく、コロイド安定性を改善することを可能にする。
【0187】
本明細書で教示される方法または生成物の実施形態では、光応答性有機粒子はポリドーパミン粒子であり得る。本明細書で教示される方法または生成物の実施形態では、光応答性有機粒子は、アルブミンでコーティングされたポリドーパミン粒子であり得る。このような光応答性有機粒子は、有利には生体適合性および生分解性であり、例えば適切な細胞培地またはトランスフェクション緩衝液中で十分なコロイド安定性を有し得る。
【0188】
実施形態では、光応答性有機粒子は細胞に結合することが可能である。実施形態では、光応答性有機粒子は、細胞を光応答性有機粒子と接触させた後、細胞に結合する(または細胞に蓄積する)ことが可能であり得る。光応答性有機粒子の細胞への結合は、共有結合による結合であり得、静電相互作用や疎水性相互作用などの非共有結合による結合であり得る。
【0189】
実施形態では、本明細書で教示される方法は、細胞を光応答性有機粒子と接触させ、それによって、細胞、特に細胞の細胞壁または細胞膜などの、細胞のバリアへの光応答性有機粒子の結合(における光応答性有機粒子の蓄積)を誘導することを含み得る。
【0190】
本明細書で教示される方法および生成物の実施形態では、光応答性有機粒子は、照射されると、細胞内、特に細胞のバリアで蒸気ナノバブルを形成することが可能であり得る。本発明の実施形態に従って光応答性有機粒子を使用する場合、光応答性有機粒子は、照射されると、細胞、特に細胞のバリアで蒸気ナノバブルを形成し得る。
【0191】
実施形態では、本明細書で教示される方法は、細胞、カーゴ、および光応答性有機粒子の混合物に電磁放射線を照射することによって、細胞のバリアの透過化を引き起こし、細胞へのカーゴの流入を可能にするステップを含み得る。実施形態では、方法は、細胞の少なくとも一部に結合した光応答性有機粒子に照射し、それによって細胞のバリアに蒸気ナノバブルを形成し、細胞バリアの透過化を誘導することを含み得る。
【0192】
本明細書で教示される方法または生成物の実施形態では、光応答性有機粒子は生分解性であり得る。実施形態では、光応答性有機粒子は生体適合性であり得る。実施形態では、光応答性有機粒子は生分解性および生体適合性であり得る。実施形態では、光応答性有機粒子は、ポリマー、タンパク質、脂質、固体脂質、および/または光吸収分子などの臨床的に承認された成分を含むか、またはそれらから構成され得る。有利には、これによって、光応答性有機粒子が生体適合性および/または生分解性となる。
【0193】
本明細書で教示される方法の実施形態では、光応答性有機粒子は固体支持体、例えば担体に結合されない。光応答性有機粒子は、固体支持体または固体材料に結合(例えばグラフト)または封入(例えば埋め込み)されていない。本明細書で教示される方法の実施形態では、光応答性有機粒子は、ポリマーシートまたはポリマーフォイルなどの非多孔質構造内に封入(例えば、埋め込み)されない。本明細書で教示される方法の実施形態では、光応答性有機粒子は、繊維を含む構造(例えばポリマー繊維)、微粒子を含む構造(例えばポリマー微粒子)、繊維と微粒子との組み合わせ(例えば、ポリマー繊維および/またはポリマー微粒子の組み合わせ)を含む構造、および発泡体を含む構造(例えば、ポリマー発泡体)などの、多孔質ポリマー構造中に封入(例えば埋め込まれ)されない。本明細書で教示される方法の実施形態では、光応答性有機粒子は溶液中にある。
【0194】
実施形態では、混合物は、例えば効率的な透過処理と細胞生存率のバランスをとるため、1ミリリットル(ml)当たり約105~約1011粒子、より好ましくは約106~約1010粒子/ml、例えば約107~約109粒子/mlの濃度で光応答性有機粒子を含み得る。混合物は、光応答性有機粒子が十分なコロイド安定性を有する、細胞培養培地または適切なトランスフェクション緩衝液などの水溶液中に光応答性有機粒子を含むことが好ましい。
【0195】
光応答性有機粒子は、本明細書でさらに説明されるように、医薬製剤または部品のキットなどの組成物または製剤中に含まれ得る。組成物は、光応答性有機粒子を、約108~約1015粒子/ml、例えば約1010~約1012粒子/mlの範囲の濃度で含み得る。
【0196】
本明細書で教示される方法の実施形態では、細胞、光応答性有機粒子、およびカーゴは、約102~約1010細胞/ml、約105~約1011粒子/ml、および約105~約1011粒子/ml、および0.001~約10mg/ml(すなわち、μg/μl)カーゴ/ml(mlは混合物の体積を指す)の濃度で混合物中で接触され得る。
【0197】
本明細書で教示される方法の実施形態では、カーゴは、キメラ抗原受容体(CAR)をコードするプラスミドDNAまたはCARをコードするmRNAなどの核酸であり得、細胞はT細胞であり得る。本明細書で教示される方法の実施形態では、カーゴは、CARをコードするプラスミドDNAまたはCARをコードするmRNAなどの核酸であり得る、応答性有機粒子は、ポリドーパミン粒子、好ましくはアルブミンでコーティングされたポリドーパミン粒子であり得、および細胞はT細胞であり得る。本発明の方法は、有利には、所望の遺伝子構築物の送達を可能にし、例えば、キメラ抗原受容体をヒトT細胞にコードし、キメラ抗原受容体T細胞を生成する。
【0198】
「キメラ抗原受容体」または「CAR」(キメラ免疫受容体、キメラT細胞受容体、または人工T細胞受容体としても知られる)という用語は、T細胞に特定のタンパク質を標的とする新たな能力を与えるように操作された受容体タンパク質を指す。これらの受容体は、抗原結合機能とT細胞活性化機能との両方を単一の受容体に結合しているため、キメラである。
【0199】
本明細書で教示される方法の実施形態では、カーゴはCARをコードするmRNAであり得、細胞はT細胞であり得る。本明細書で教示される方法の実施形態では、カーゴは、CARをコードするmRNAであり得、光応答性有機粒子はポリドーパミン粒子、好ましくはアルブミンでコーティングされたポリドーパミン粒子であり得、細胞はT細胞であり得る。本発明の方法は、有利なことに、T細胞へのmRNAの送達および一過性の発現を可能にし、それによって、ゲノム組み込みによる意図しない突然変異の危険を伴うことなく、発現期間の制御を提供する。
【0200】
実施形態では、方法は、細胞を1つ以上の光応答性有機粒子と接触させることを含む。実施形態では、方法は、細胞を1つ以上の光応答性有機粒子およびカーゴと接触させることを含む。
【0201】
本明細書で使用される「接触する」または「接触している」という用語は、1つ以上の第1の成分(1つ以上の分子、生物学的実体、細胞、または材料など)を1つ以上の第2の成分(1つ以上の分子、細胞、物質など)生物学的実体、細胞、物質など)を、第1の成分が(可能であれば)第2の成分と結合または調節などの相互作用ができるような方法で、または第2の成分が(可能であれば)その第1の成分と結合または調節などの相互作用ができるような方法で、一緒にすることを意味する。このような変調は、直接的に、つまり、第1の成分と第2の成分との間の直接相互作用によって発生し得、または間接的に、例えば、第1の成分が1つ以上のさらなる成分と相互作用または調節し、その1つ以上が次に第2の成分と相互作用または調節する場合、またはその逆の場合、発生し得る。「接触する」という用語は、文脈によっては、「曝露する」、「一緒にする」、「混合する」、「反応する」、「処理する」などと同義であり得る。
【0202】
実施形態では、接触ステップ(例えば、懸濁液中で)は、ピペッティングまたはマイクロ流体工学を含み得る。
【0203】
本明細書で教示される方法では、光応答性有機粒子が細胞と相互作用(結合など)できるような方法で、細胞を光応答性有機粒子と接触させ得る。
【0204】
本明細書で教示される方法の実施形態では、細胞と1つ以上の光応答性有機粒子とが接触し、細胞と1つ以上の光応答性有機粒子との混合物は、細胞と1つ以上の光応答性有機粒子との混合物がカーゴと接触する前に(すなわち、カーゴが細胞と1つ以上の光応答性有機粒子の混合物に添加される前に)照射される。
【0205】
実施形態では、本明細書で教示される方法は、
細胞を、1つ以上の光応答性有機粒子と接触させ、有機粒子は、ポリマーベースの粒子、タンパク質ベースの粒子、脂質ベースの粒子、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、それによって、細胞、および1つ以上の光応答性有機粒子の混合物を得る、ステップと、
細胞、カーゴ、および1つ以上の光応答性有機粒子の混合物に電磁放射線を照射し、それによって細胞のバリアの透過化を引き起こす、ステップと、
細胞と1つ以上の光応答性有機粒子との混合物をカーゴと接触させ(例えば、細胞と1つ以上の光応答性有機粒子の混合物にカーゴを添加する)、それによってカーゴを細胞内に送達するステップと、
を含み得る。
【0206】
本明細書で教示される方法の実施形態では、細胞、1つ以上の光応答性有機粒子、およびカーゴの混合物が照射される前に、細胞、1つ以上の光応答性有機粒子、およびカーゴが互いに接触する。
【0207】
実施形態では、本明細書で教示される方法は、
細胞を、1つ以上の光応答性有機粒子およびカーゴと接触させ、カーゴは、1つ以上の光応答性有機粒子に結合しておらず、有機粒子は、ポリマーベースの粒子、タンパク質ベースの粒子、脂質ベースの粒子、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、それによって、細胞、カーゴ、および1つ以上の光応答性有機粒子の混合物を得る、ステップと、
細胞、カーゴ、および1つ以上の光応答性有機粒子の混合物に電磁放射線を照射し、それによって細胞のバリアの透過化を引き起こし、カーゴを細胞内に送達するステップと、を含み得る。
【0208】
実施形態では、細胞、1つ以上の光応答性粒子、およびカーゴは、任意の順序で相互に接触させ得る。実施形態では、細胞とカーゴとの混合物を光応答性有機粒子と接触させる前に、カーゴを細胞と接触させ得る。好ましい実施形態では、細胞を光応答性有機粒子と接触させた後、カーゴを細胞と接触させ得る。さらに、実施形態では、光応答性有機粒子とカーゴとの混合物を細胞と接触させる前に、カーゴを光応答性有機粒子と接触させ得る。
【0209】
したがって、好ましい実施形態では、本明細書で教示される方法は、
細胞を1つ以上の光応答性有機粒子と接触させるステップであって、有機粒子は、ポリマーベースの粒子、タンパク質ベースの粒子、脂質ベースの粒子、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、それによって、細胞および1つ以上の光応答性有機粒子を得る、ステップと、
細胞と1つ以上の光応答性有機粒子との混合物をカーゴと接触させる(例えば、細胞と1つ以上の光応答性有機粒子の混合物にカーゴを添加する)ステップと、
記細胞および1つ以上の光応答性有機粒子の混合物に電磁放射線を照射し、それによって細胞のバリアの透過化を引き起こし、カーゴを細胞内に送達するステップと、を含み得る。
【0210】
実施形態では、本明細書で教示される方法は、
カーゴを細胞と接触させる(例えば、カーゴを細胞懸濁液に添加する)ことによって、細胞とカーゴの混合物を得るステップと、
混合物を、ポリマーベースの粒子、タンパク質ベースの粒子、脂質ベースの粒子、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、1つ以上の光応答性有機粒子と接触させるステップと、
混合物に電磁放射線を照射し、それによって細胞のバリアの透過化を引き起こし、カーゴを細胞内に送達するステップと、
を含み得る。
【0211】
実施形態では、本明細書で教示される方法は、
カーゴを1つ以上の光応答性有機粒子と接触させるステップであって、カーゴは1つ以上の光応答性有機粒子に結合しておらず、有機粒子は、ポリマーベースの粒子、タンパク質ベースの粒子脂質ベースの粒子、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、それによって、カーゴと1つ以上の光応答性有機粒子との混合物が得られるステップと、
混合物を細胞と接触させるステップと、
混合物に電磁放射線を照射し、それによって細胞のバリアの透過化を引き起こし、カーゴを細胞内に送達するステップと、
を含み得る。
【0212】
実施形態では、本明細書で教示される方法は、細胞を1つ以上の光応答性有機粒子と接触させることを含み得、それによって、1つ以上の光応答性有機粒子(の少なくとも一部)が例えば、細胞膜または細胞壁への結合によって、またはエンドサイトーシスプロセスによる活発な内部移行によって、細胞に会合することを可能にする。実施形態では、本明細書で教示される方法は、非結合の光応答性有機粒子を細胞から洗浄することを含み得る。
【0213】
実施形態では、本明細書で教示される方法は、細胞を1つ以上の光応答性有機粒子と接触させ、それによって細胞と1つ以上の光応答性有機粒子との混合物を得るステップと、必要に応じて、非結合の光応答性有機粒子を細胞から洗浄するステップと、を含み得る。
【0214】
実施形態では、本明細書で教示される方法は、
細胞を1つ以上の光応答性有機粒子と接触させ、それによって細胞と1つ以上の光応答性有機粒子との混合物を得るステップと、
必要に応じて、非結合の光応答性有機粒子を細胞から洗浄するステップと、
細胞と1つ以上の光応答性有機粒子との混合物をカーゴと接触させる(例えば、細胞と1つ以上の光応答性有機粒子の混合物にカーゴを添加する)ステップと、
細胞および1つ以上の光応答性有機粒子の混合物に電磁放射線を照射し、それによって細胞のバリアの透過化を引き起こし、カーゴを細胞内に送達するステップと、
を含み得る。
【0215】
実施形態では、本明細書で教示される方法は、
細胞を1つ以上の光応答性有機粒子と接触させ、それによって細胞と1つ以上の光応答性有機粒子との混合物を得るステップと、
必要に応じて、非結合の光応答性有機粒子を細胞から洗浄するステップと、
細胞と1つ以上の光応答性有機粒子との混合物に電磁放射線を照射し、それによって細胞のバリアの透過化を引き起こすステップと、
細胞および1つ以上の光応答性有機粒子の混合物をカーゴと接触させ(例えば、細胞と1つ以上の光応答性有機粒子の混合物にカーゴを添加する)、それによってカーゴを細胞内に送達するステップと、
を含み得る。
【0216】
実施形態では、本明細書で教示される方法は、細胞と光応答性有機粒子の混合物をインキュベートすることを含み得る。インキュベーションによって、1つ以上の光応答性有機粒子の細胞への結合が増加し得る。
【0217】
実施形態では、本明細書で教示される方法は、細胞を1つ以上の光応答性有機粒子と接触させ得、それによって細胞と1つ以上の光応答性有機粒子との混合物を得るステップを含み、必要に応じて、細胞と光応答性有機粒子の混合物をインキュベートする。
【0218】
実施形態では、本明細書で教示される方法は、
細胞を1つ以上の光応答性有機粒子と接触させ、それによって細胞と1つ以上の光応答性有機粒子との混合物を得るステップと、
細胞と光応答性有機粒子の混合物のインキュベートするステップと、
必要に応じて、非結合の光応答性有機粒子を細胞から洗浄するステップと、
細胞と1つ以上の光応答性有機粒子との混合物をカーゴと接触させる(例えば、細胞と1つ以上の光応答性有機粒子の混合物にカーゴを添加する)ステップと、
細胞および1つ以上の光応答性有機粒子の混合物に電磁放射線を照射し、それによって細胞のバリアの透過化を引き起こし、カーゴを細胞内に送達するステップと、
を含み得る。
【0219】
実施形態では、本明細書で教示される方法は、
細胞を1つ以上の光応答性有機粒子と接触させ、それによって細胞と1つ以上の光応答性有機粒子との混合物を得るステップと、
細胞と光応答性有機粒子の混合物をインキュベートするステップと、
必要に応じて、非結合の光応答性有機粒子を細胞から洗浄するステップと、
細胞と1つ以上の光応答性有機粒子との混合物に電磁放射線を照射し、それによって細胞のバリアの透過化を引き起こすステップと、
細胞および1つ以上の光応答性有機粒子の混合物をカーゴと接触させ(例えば、細胞と1つ以上の光応答性有機粒子の混合物にカーゴを添加する)、それによってカーゴを細胞内に送達するステップと、
を含み得る。
【0220】
本明細書で教示される方法の実施形態では、細胞および光応答性有機粒子は、次のステップを実行する直前に接触され得る。これによって、セルへのカーゴの迅速な送達を有利に実行できるようになる。実施形態では、細胞と光応答性有機粒子とを接触させた(例えば、混合した)後、細胞および光応答性有機粒子を少なくとも1分間インキュベートし得る。実施形態では、細胞と光応答性有機粒子とを接触させた(例えば、混合した)後、細胞と光応答性有機粒子は、少なくとも5分間、例えば少なくとも10分間、少なくとも15分間、少なくとも30分間、または少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、または少なくとも6時間インキュベートされ得る。
【0221】
本明細書で教示される方法の実施形態では、細胞と光応答性有機粒子とを接触させた(例えば、混合した)後、細胞と光応答性有機粒子は、カーゴを細胞と光応答性有機粒子との混合物と接触させる前に(すなわち、事前に)インキュベートされ得る。実施形態では、細胞と光応答性有機粒子とを接触させた(例えば、混合した)後、細胞と光応答性有機粒子とは、カーゴを細胞と光応答性有機粒子との混合物と接触させる前に(すなわち、前に)少なくとも1分間インキュベートされ得る。いくつかの実施形態では、細胞と光応答性有機粒子とを接触させた(例えば、混合した)後、カーゴを細胞と光応答性有機粒子との混合物と接触させる前に(すなわち、事前に)、細胞と光応答性有機粒子とを少なくとも5分間、例えば少なくとも10分間、少なくとも15分間、少なくとも30分間、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、または少なくとも6時間または少なくとも5分間インキュベートし得る。
【0222】
実施形態では、本明細書で教示される方法は、細胞培養培地、通常は液体細胞培養培地などの水溶液中で、細胞を光応答性有機粒子およびカーゴと接触させることを含み得る。通常、細胞培養培地は、当技術分野で知られている基礎培地製剤を含むであろう。Thermo Fisher Scientific(米国マサチューセッツ州ウォルサム)から入手可能である、イーグル最小必須培地(MEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、アルファ改変最小必須培地(alpha-MEM)、基本培地必須培地(BME)、BGJb、F-12栄養混合物(Ham)、イスコブ改変ダルベッコ培地(IMDM)、またはOpti-MEM(減少血清培地)、およびその修飾および/またはその組み合わせを含むがこれらに限定されない、多くの基礎培地製剤(例えば、American Type Culture Collection、ATCCから、またはThermo Fisher Scientific(米国、マサチューセッツ州ウォルサム)から入手可能)を使用して本明細書の細胞を培養し得る。上記の基礎培地の組成は当技術分野で一般的に知られており、培養される細胞に必要に応じて培地および/または培地添加物の濃度を改変または調整することは当業者の技術の範囲内である。このような基礎培地製剤は、それ自体既知である、細胞の発達に必要な成分を含む。限定ではなく例示として、これらの成分は、無機塩(特に、Na、K、Mg、Ca、Cl、P、および場合によってはCu、Fe、Se、およびZnを含む塩)、生理学的緩衝剤(例えば、HEPES、重炭酸塩)、ヌクレオチド、ヌクレオシドおよび/または核酸塩基、リボース、デオキシリボース、アミノ酸、ビタミン、抗酸化剤(例えば、グルタチオン)および炭素源(例えば、グルコース、ピルビン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム)などが含まれ得る。
【0223】
実施形態では、本明細書で教示される方法は、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)などの適切なトランスフェクション緩衝液などの水溶液中で、細胞を光応答性有機粒子およびカーゴと接触させることを含み得る。
【0224】
実施形態では、本明細書で教示される方法は、細胞、カーゴ、および光応答性有機粒子を提供する先行ステップを含み得る。細胞、カーゴおよび光応答性有機粒子のそれぞれは、本明細書で教示されるように水溶液中で提供され得る。
【0225】
実施形態では、本明細書で教示される方法は、細胞を提供することを含み得る。実施形態では、本明細書で教示される方法は、細胞培養培地、通常は液体細胞培養培地などの水溶液中に細胞を提供することを含み得る。
【0226】
実施形態では、本明細書で教示される方法は、カーゴを提供することを含み得る。実施形態では、本明細書で教示される方法は、水などの水溶液中でカーゴを提供することを含み得る。
【0227】
いくつかの実施形態では、本明細書で教示される方法は、光応答性有機粒子を提供することを含み得る。実施形態では、本明細書で教示される方法は、細胞培養培地、通常は液体細胞培養培地などの水溶液中に光応答性有機粒子を提供することを含み得る。
【0228】
実施形態では、本明細書で教示される方法は、細胞を接着細胞として提供することを含み得る。実施形態では、本明細書で教示される方法は、付着細胞を1つ以上の光応答性有機粒子と接触させることを含み得る。実施形態では、本明細書で教示される方法は、接着細胞を1つ以上の光応答性有機粒子およびカーゴと接触させることを含み得る。
【0229】
実施形態では、本明細書に教示される方法は、懸濁液中の細胞を提供することを含み得る。実施形態では、本明細書で教示される方法は、懸濁液中の細胞を光応答性有機粒子およびカーゴと接触させることを含み得る。
【0230】
「懸濁液」および「細胞懸濁液」という用語は、概して、液相中に分散された細胞を含む不均一混合物を指す。混合物は概して液体であるため、原則として細胞は混合物から沈降または沈殿し得るが、必ずしもそうする必要はない。
【0231】
ヒト細胞を含む動物細胞などの細胞は、「接着性」である場合があり得、すなわち、増殖のために表面を必要とし、通常、培地(懸濁培養)中で浮遊細胞としてではなく、当該表面上の接着単層(すなわち、接着細胞培養物)として増殖する。組織培養プラスチック容器の表面などの表面への細胞の接着は、倒立顕微鏡による目視検査によって容易に検査され得る。接着培養で増殖した細胞は定期的な継代を必要とし、細胞は酵素的に(例えば、トリプシンを使用して)表面から除去され、増殖培地に懸濁され、新しい培養容器に再播種される。概して、細胞の接着を可能にする表面または基板は、任意の実質的に親水性の基板であり得る。当技術分野で知られているように、組織培養容器、例えば、培養フラスコ、ウェルプレート、ディッシュなどは、通常、親水性基板表面を提供するために、成形後に適切に表面処理またはコーティングされた、多種多様なポリマー材料で作製され得る。
【0232】
したがって、実施形態では、本明細書に教示される方法は、細胞培養培地などの水溶液中に細胞を懸濁する事前ステップを含み得る。実施形態では、接着細胞は、まず、当技術分野で知られている方法、例えば、細胞培養容器を軽くたたくか、表面をこすることによって、または酵素的に(例えば、トリプシンまたはAccutase(登録商標)を使用し、続いて洗浄する)によって、表面から除去され得る。
【0233】
本明細書で教示される方法の実施形態では、この方法は、水溶液中において;生理学的条件で;15℃~40℃の範囲の温度、好ましくは20℃~25℃または32℃~37℃の温度;および/または約3~約11、好ましくは約5~約7の範囲のpHで実行され得る。
【0234】
実施形態では、本明細書で教示される方法は、細胞と1つ以上の光応答性有機粒子との混合物に電磁放射線を照射し、それによって細胞のバリアの透過化を引き起こすことを含み得る。実施形態では、本明細書で教示される方法は、細胞、カーゴ、および光応答性有機粒子の混合物に電磁放射線を照射することを含み得る。
【0235】
混合物に照射することによって、電磁放射線を吸収可能である光応答性有機粒子を光学的に活性化し得る。光応答性有機粒子による電磁放射の吸収によって、光熱効果または光化学効果が誘発され得る。特に興味深いのは、熱またはプラズマによって引き起こされる蒸気バブル、例えば蒸気マイクロバブルまたは蒸気ナノバブルの生成である。蒸気泡の発生によって、局所的な高圧波が誘発され、近くの細胞、例えば近くの細胞の細胞バリアを変化させ得る。
【0236】
「蒸気泡の生成」という表現には、蒸気泡の膨張、蒸気泡の崩壊、または蒸気泡の膨張と崩壊との組み合わせ、および圧力波や周囲の媒体の流れなど、気泡の膨張と崩壊の結果として起こり得る副次的な効果が含まれる。本明細書で使用される「蒸気泡」または「泡」という用語は、蒸気ナノバブルおよび蒸気マイクロバブルを指す。好ましくは、蒸気泡は、10nmから100μmの範囲の直径を有し得る。蒸気泡は、水蒸気泡を含み得る。
【0237】
「細胞バリア」または「細胞のバリア」という語句は、真核細胞および原核細胞の細胞膜(原形質膜)または細胞壁、ならびにエンドソーム膜、核膜、ミトコンドリア膜などの細胞内膜を指す。
【0238】
用語「改変する」、「改変している」または「改変」は、細胞の1つ以上の特性を、例えば細胞のバリアなど、少なくとも局所的に変化させる任意の方法を指す。変更には、構成要素の追加、除去、破壊、または再組織化による細胞の組成の局所的な変化、例えば細胞のバリアの組成の誘発が含まれるが、これに限定されない。変更には、例えば、粘度、多孔度、密度、剛性、弾性などの1つ以上の物理化学的特性を変更することが含まれる。変化には、細胞バリアの構成成分の局所的な破壊または再配置も含まれ、その結果、細胞バリアの組成および/または物理化学的特性が変化する。変更には、変形、透過性付与、穿孔などが含まれる。
【0239】
「変形する」、「変形している」および「変形」という用語は、細胞、特に細胞バリアの空間構成または構造を少なくとも部分的に、例えば少なくとも局所的に変更する任意の方法を指す。変形の例には、細胞バリアにくぼみまたは陥入を設けることが含まれる。
【0240】
「透過化する」、「透過化している」および「透過化」という用語は、細胞の透過性、特に細胞バリアの透過性を少なくとも部分的に、例えば少なくとも局所的に変化させる任意の方法を指す。透過化の例には、カーゴに対してより透過性になるようにバリアの組成または構造を変更することが含まれる。
【0241】
「穿孔する」、「穿孔している」、または「穿孔」という用語は、細胞、特に細胞バリアに、少なくとも部分的に、例えば少なくとも局所的に、1つ以上の開口、穴、または細孔を提供する任意の方法を指す。細胞バリアに穴を開けることによって、バリアに開口が作成され、そのバリアを越えてまたはその中にカーゴを輸送できるようになる。
【0242】
「穿孔する」、「穿孔している」、「穿孔」という用語と、「透過性を高める」、「透過化する」、「透過化している」、「透過化」という用語は互換的に使用される。同様に、「開口部」、「穴」、および「細孔」という用語は、本明細書では互換的に使用され得る。
【0243】
混合物は、パルス放射線源などのレーザーによって照射されることが好ましいが、連続波放射線源による照射も考慮し得る。混合物は、1つ以上のパルスで照射され得る。
【0244】
「放射線」および「電磁放射線」という用語は、本明細書では同じ意味で使用され得る。
【0245】
放射線源の波長は、紫外領域から赤外領域までの範囲にわたり得る。好ましい方法では、使用される放射線の波長範囲は、近赤外領域を含む可視から赤外領域にある。
【0246】
本明細書で教示される方法の実施形態では、電磁放射線は、パルスレーザーなどのレーザーによって生成され得る。パルスレーザー、例えばピコ、フェムト、および/またはナノ秒パルスレーザーによる照射などのレーザー照射は、本発明の実施形態に従って光応答性有機粒子と組み合わせて、細胞のバリア、例えばレーザー誘起蒸気ナノバブル生成によって効率的に透過化し得る。レーザー照射が有利な場合もあり得るが、同じまたは同様の効果を得るために、例えば、キセノンフラッシュランプなどの、別の(強力な)光源による照射が必ずしも排除されるわけではない。
【0247】
レーザーパルスはそれぞれ、104~1017W/cm2の範囲、例えば、106~1015W/cm2、107~1014W/cm2、または108~1013W/cm2の範囲の、出力密度または強度を有し得る。
【0248】
レーザーパルスは各々、0.01J/cm2~100J/cm2、0.05J/cm2~50J/cm2、0.1J/cm2~10J/cm2、または0.5J/cm2~10J/cm2、例えば1J/cm2~10J/cm2の範囲でフルエンス(単位面積あたりに送達される電磁エネルギー)を有し得る。
【0249】
レーザーパルスは、1~500レーザーパルス、1~100レーザーパルス、1~20レーザーパルス、または1~10レーザーパルスなどの、1~1000レーザーパルス(細胞当たりまたは細胞サンプル当たり)から構成され得る。レーザーパルスの数は、光応答性有機粒子、カーゴの種類、細胞の種類によって異なり得る。
【0250】
レーザーパルスは、1フェムト秒~100秒(秒)の範囲、例えば100フェムト秒~1秒の範囲、例えば1ps~0.1sの範囲、または1ns~100μsの範囲の持続時間を有し得る。
【0251】
本明細書で教示される方法の実施形態では、電磁放射線は、パルスレーザーなどのレーザーによって生成され得、
レーザーのパルス強度は、少なくとも104W/cm2、例えば104~1017W/cm2であり得、
レーザーのパルスのフルエンスは、少なくとも0.01mJ/cm2、例えば0.01J/cm2~100J/cm2であり得、
レーザーのパルス数は、少なくとも1レーザーパルス、例えば1~1000レーザーパルスであり得、および/または、
レーザーのパルスの持続時間は、少なくとも1fs、例えば1fs~100sであり得る。
【0252】
本明細書で教示される方法の実施形態では、電磁放射線は、パルスレーザーなどのレーザーによって生成され得、レーザーのパルスの強度は、108~1013W/cm2であり得、レーザーのパルスのフルエンスは1J/cm2~10J/cm2であり得、レーザーのパルス数は1~10レーザーパルスであり得、および/またはレーザーのパルスの持続時間は1ns~100μsであり得る。
【0253】
本明細書で教示される方法の実施形態では、細胞、光応答性有機粒子、および必要に応じてカーゴは、細胞、光応答性有機粒子、および必要に応じてカーゴの混合物を照射する直前に接触され得る。これによって、セルへのカーゴの迅速な送達を有利に実行することが可能になる。
【0254】
本明細書で教示される方法の実施形態では、細胞、光応答性有機粒子、および必要に応じてカーゴを接触させた(例えば、混合した)後、混合物を照射する前に(すなわち、事前に)、細胞、光応答性有機粒子、および必要に応じてカーゴの混合物を、インキュベートし得る。実施形態では、細胞、光応答性有機粒子、および必要に応じてカーゴを接触(例えば、混合)した後、細胞、光応答性有機粒子、および必要に応じてカーゴの混合物は、混合物を照射する少なくとも1分前に(すなわち、事前に)インキュベートし得る。実施形態では、細胞、光応答性有機粒子、および必要に応じてカーゴを接触(例えば、混合)した後、細胞、光応答性有機粒子、および必要に応じてカーゴの混合物は、混合物を照射する少なくとも5分前、例えば少なくとも10分前、少なくとも15分前、少なくとも30分前、少なくとも1時間前、少なくとも2時間前、少なくとも3時間前、少なくとも4時間前、または少なくとも6時間前に(すなわち、事前に)、インキュベートされ得る。
【0255】
実施形態では、細胞と1つ以上の光応答性有機粒子との混合物は、混合物を照射する(例えば、レーザー照射を適用する)直前にカーゴと接触する(すなわち、カーゴが混合物に添加される)。実施形態では、細胞と1つ以上の光応答性有機粒子との混合物は、混合物を照射する前に最大15分間、最大10分間、最大5分間、最大2分間、最大1分間、最大30秒間、または最大10秒間カーゴと接触される(すなわち、カーゴが混合物に添加される)。これによって、カーゴは混合物中に存在し、細胞のバリアの透過化により細胞内に入る。
【0256】
実施形態では、細胞と1つ以上の光応答性有機粒子との混合物は、混合物を照射した直後にカーゴと接触される(すなわち、カーゴが混合物に添加される)。実施形態では、細胞と1つ以上の光応答性有機粒子との混合物は、混合物を照射した後、最長15分間、最長10分間、最長5分間、最長2分間、最長1分、最長30秒、または最長10秒、カーゴと接触される(すなわち、カーゴが混合物に添加される)。これによって、透過処理された細胞は、細胞内に生じた細孔が再び閉じる前に、カーゴが細胞内に侵入することを可能にする。
【0257】
本明細書で教示される方法は、細胞を改変、操作、および/または処理するのに適し得る。実施形態では、この方法は、細胞、特に細胞バリアを穿孔または透過化するのに特に適し得る。本明細書で教示される方法によって、細胞膜または細胞壁などの細胞バリアに一時的な細孔を形成することができ、細胞内へのカーゴの送達を可能にする。実施形態では、本明細書で教示される方法は、薬物送達、カーゴの細胞内送達、細胞療法、免疫療法、遺伝子療法、および細胞、例えば幹細胞またはT細胞のトランスフェクションにおける使用に特に適し得る。
【0258】
実施形態では、本明細書で教示される方法は、オリゴヌクレオチド、siRNA、mRNA、またはpDNAを含む核酸の細胞内送達における使用に適し得る。実施形態では、本明細書で教示される方法は、Cas9/gRNAなどのリボ核タンパク質を含む核タンパク質の細胞内送達における使用にも適し得る。さらに、本明細書で教示される方法は、ナノボディまたは抗体などのペプチドおよびタンパク質の細胞内送達における使用に適している可能性がある。さらに、この方法は、細胞の検出を可能にする標識多糖類などの多糖類の細胞内送達における使用に適し得る。さらに、本明細書で教示される方法は、ハイスループットで細胞を改変、処理および/または操作することを可能にし得る。
【0259】
本明細書で教示される方法は、人体または動物の体の細胞内へのカーゴの送達にも同様に有用であり得る。
【0260】
さらなる態様は、対象の細胞にカーゴを送達するin vivo方法で使用するための、本明細書に定義される光応答性有機粒子および本明細書に定義されるカーゴを提供する。例えば、光応答性有機粒子およびカーゴは、例えば皮下注射などの組織への注射によって、例えば対象の細胞の近くにおける、対象に、in vivoで投与され得、細胞に電磁放射線を照射することによって、細胞のバリアの透過性を引き起こし、カーゴを細胞内に送達し得る。カーゴは治療薬剤であり得る。この方法は、有利には処置方法であり得る。
【0261】
したがって、さらなる態様は、対象における疾患の治療または処置方法において使用するための、本明細書で定義される光応答性有機粒子および本明細書で定義されるカーゴを提供し、カーゴは対象の細胞に送達される。
【0262】
一態様は、対象の細胞にカーゴを送達するin vivo方法で使用するための、本明細書に定義される1つ以上の光応答性有機粒子および本明細書に定義されるカーゴを提供し、この方法は、
1つ以上の光応答性有機粒子を対象の細胞の周囲(すなわち近接)に投与するステップと、
対象の細胞の周囲の少なくとも一部を照射し、それによって細胞のバリアの透過化を引き起こすステップと、
カーゴを対象の細胞の周囲に投与し、それによってカーゴを細胞内に送達するステップと、
を含むか、あるいはこの方法は、
1つ以上の光応答性有機粒子を対象の細胞の周囲に投与するステップと、
対象の細胞の周囲の少なくとも一部を照射し、それによって細胞のバリアの透過化を引き起こし、カーゴを細胞内に送達するステップと、
を含む。
【0263】
さらなる態様は、対象における疾患の治療または処置方法において使用するための、本明細書に定義される1つ以上の光応答性有機粒子および本明細書に定義されるカーゴに関し、カーゴは対象の細胞に送達され、この方法は、
1つ以上の光応答性有機粒子を対象の細胞の周囲(すなわち近接)に投与するステップと、
対象の細胞の周囲の少なくとも一部を照射し、それによって細胞のバリアの透過化を引き起こすステップと、
カーゴを対象の細胞の周囲に投与し、それによってカーゴを細胞内に送達するステップと、
を含むか、あるいはこの方法は、
1つ以上の光応答性有機粒子を対象の細胞の周囲に投与するステップと、
対象の細胞の周囲の少なくとも一部を照射し、それによって細胞のバリアの透過化を引き起こし、カーゴを細胞内に送達するステップと、
を含む。
【0264】
関連する態様は、
対象における疾患の処置方法であって、そのような処置を必要とする対象の細胞にカーゴがin vivoで送達される方法であって、治療有効量の本明細書に定義される1つ以上の光応答性有機粒子および 本明細書で定義されるカーゴを対象に投与することを含む方法、
疾患の治療または処置のための薬剤の製造のための、本明細書で定義される1つ以上の光応答性有機粒子および本明細書で定義されるカーゴの使用であって、カーゴが対象の細胞に送達される、使用、
対象における疾患の治療または処置のための、本明細書に定義される1つ以上の光応答性有機粒子および本明細書に定義されるカーゴの使用であって、カーゴが対象の細胞にin vivoで送達される、使用、
を提供する。
【0265】
実施形態では、本明細書で教示される光応答性有機粒子と、本明細書で教示される治療薬剤などのカーゴは、別々に投与され得る。実施形態では、本明細書で教示される光応答性有機粒子、および治療薬剤などの本明細書で教示されるカーゴは、独立して投与され得、すなわち、異なる単位用量または剤形の部品のキット中に存在する。当該別個の剤形は、同時におよび/または異なる時点で、例えば時系列的にずらして、すなわち異なる時点で投与され得る。本明細書で教示される光応答性有機粒子および本明細書で教示されるカーゴは、同じ経路によって、または異なる経路によって投与され得る。
【0266】
実施形態では、本明細書で教示される光応答性有機粒子、および本明細書で教示される治療薬剤などのカーゴは、連続的に投与され得る。実施形態では、本明細書で教示される光応答性有機粒子、および本明細書で教示される治療薬剤などのカーゴは、別々に、連続して投与され得る。
実施形態では、光応答性有機粒子は、治療薬剤などのカーゴの前に投与され得る。実施形態では、光応答性有機粒子は、治療薬剤などのカーゴの直前に投与され得る。
【0267】
実施形態では、光応答性有機粒子は、治療薬剤などのカーゴの投与の少なくとも1分前に細胞の周囲に投与され得る。実施形態では、光応答性有機粒子は、治療薬剤などのカーゴの投与の少なくとも5分前、例えば少なくとも10分前、少なくとも15分前、少なくとも30分前、少なくとも1時前、少なくとも2時前、少なくとも3時間前、少なくとも4時間前、または少なくとも6時間前、細胞の周囲に投与され得る。
【0268】
実施形態では、照射ステップは、1つ以上の光応答性有機粒子の投与後に実行される。実施形態では、照射ステップは、カーゴの投与の前または後に実行される。
【0269】
本明細書で教示される方法または使用の実施形態では、方法は、
1つ以上の光応答性有機粒子を対象の細胞の周囲(すなわち近接)に投与するステップと、
対象の細胞の周囲の少なくとも一部を照射し、それによって細胞のバリアの透過化を引き起こすステップと、
カーゴを対象の細胞の周囲に投与し、それによってカーゴを細胞内に送達するステップと、
を含み得る。
【0270】
実施形態では、本明細書に教示される光応答性有機粒子と、本明細書に教示される治療薬剤などのカーゴとを同時に投与し得る。実施形態では、本明細書で教示される光応答性有機粒子および治療薬剤などの本明細書で教示されるカーゴは、別々に、かつ同時に投与され得る。
【0271】
本明細書で教示される方法または使用の実施形態では、方法は、
1つ以上の光応答性有機粒子を対象の細胞の周囲(すなわち近接)に投与するステップと、
対象の細胞の周囲の少なくとも一部を照射し、それによって細胞のバリアの透過化を引き起こすステップと、
を含み得る。
【0272】
実施形態では、本明細書で教示される光応答性有機粒子、および治療薬剤などの本明細書で教示されるカーゴは、同時投与用の組成物、または同時または逐次投与用の部品のキットに含まれ得る。
【0273】
本明細書で使用される場合、「1つ以上の光応答性有機粒子を細胞の周囲に投与する」または「1つ以上の光応答性有機粒子を細胞の近傍に投与する」という表現は、1つ以上の光応答性有機粒子を電磁放射線の照射後に細胞のバリアの透過化を誘導することを可能にする細胞の周囲に投与することを指す。
【0274】
本明細書で教示される方法の特定の実施形態では、光応答性有機粒子と細胞との間の距離は、約0μm~約10μmなど、最大10μm、であり得る。例えば、光応答性有機粒子と細胞との間の距離は、最大1μm、最大100nm、最大10nm、または最大1nmであり得る。
【0275】
本明細書で教示されるように使用される光応答性有機粒子およびカーゴの実施形態では、1つ以上の光応答性有機粒子の2点間の最大距離は、約100nm~約2000nm、約250nm~約1250nmであり得、好ましくは、約300nm~約1200nm、約400nm~約1100nm、または約500nm~約1000nmであり得る。
【0276】
本明細書で教示されるように使用するための光応答性有機粒子およびカーゴの実施形態では、細胞は動物細胞であり得、細胞はヒト細胞であり得、および/または細胞は免疫細胞であり得、好ましくは、免疫細胞は、T細胞、リンパ球、マクロファージ、樹状細胞、単球、NK細胞、NKT細胞、B細胞、好中球、顆粒球、ミクログリア細胞、またはランゲルハンス細胞である。
【0277】
本明細書で教示されるように使用される光応答性有機粒子およびカーゴの実施形態では、電磁放射線は、パルスレーザーなどのレーザーによって生成される。
【0278】
実施形態では、処置は、本明細書で教示される光応答性有機粒子のレーザー照射、特に本明細書で教示される光応答性有機粒子のパルスレーザー照射を実行することを含み得る。したがって、実施形態では、本明細書で教示される処置は、レーザー支援処置を含む。本明細書で教示されるように使用するための光応答性有機粒子およびカーゴの実施形態では、光応答性有機粒子およびカーゴを細胞の周囲に投与することは、皮下注射または血管内注射などの注射を含み得る。実施形態では、光応答性有機粒子およびカーゴを細胞の周囲に投与することは、腫瘍内注射を含み得る。注射により、光応答性の有機粒子および/または治療薬剤などのカーゴを低侵襲技術によって細胞の周囲に直接送達できるため、患者のリスクと痛みが軽減され、患者の健康状態が向上する。
【0279】
実施形態では、in vivo方法はワクチン接種の目的に有用であり得る。例えば、細胞は、ワクチン接種の目的で、mRNAおよび/またはタンパク質などのカーゴで、in vivoでトランスフェクションされ得る。
【0280】
本明細書で教示される光応答性有機粒子、および治療薬剤などの本明細書で教示されるカーゴは、対象における疾患または状態のレーザー支援処置などの処置を可能にする。
【0281】
「対象」、「個体」または「患者」という用語は、本明細書では互換的に使用され得、通常、ヒトを指すことが好ましいが、ヒト以外の動物、好ましくは温血動物、さらにより好ましくは哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、げっ歯類、イヌ科、ネコ科、ウマ科、ヒツジ科、ブタ科などへの言及も包含し得る。「非ヒト動物」という用語には、すべての脊椎動物、例えば非ヒト霊長類(特に高等霊長類)、ヒツジ、イヌ、げっ歯類(例えばマウスまたはラット)、モルモット、ヤギ、ブタ、ネコ、が含まれ、特定の実施形態では、対象は、非ヒト哺乳動物である。特定の実施形態では、対象はヒト対象である。この用語は特定の年齢や性別を指すものではない。したがって、男性か女性かを問わず、成人および新生児の対象、さらには胎児も対象となることが意図されている。被験者の例としては、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、マウスなどが挙げられる。対象という用語はさらに、トランスジェニック種を含むことを意図する。
【0282】
適切な対象には、疾患または状態のスクリーニングのために医師を受診する対象、疾患または状態を示す症状および徴候を医師に提示する対象、疾患状態と診断された対象、および疾患または状態の代替(成功しない)処置を受けた対象が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0283】
本明細書で使用される場合、「処置を必要とする対象」などの語句には、所与の状態の処置から恩恵を受けるであろう対象が含まれる。このような対象には、限定されないが、当該状態と診断された対象、当該状態を発症する傾向のある対象、および/または当該状態を予防すべき対象が含まれ得る。
【0284】
「処置する」または「処置」という用語は、すでに発症している疾患または状態の処置などの、すでに発症している疾患または状態の治療的処置と、疾患または状態の発生、発症、進行を防ぐためなど、望ましくない苦痛が発生する可能性予防または軽減することを目的とする予防的または予防的措置と、の両方を包含する。有益なまたは望ましい臨床結果には、1つ以上の症状または1つ以上の生物学的マーカーの緩和、疾患の程度の減少、疾患の状態の安定化(すなわち、悪化していない)、疾患の進行の遅延または減速、病状の改善などが含まれ得るが、これらに限定されない。この用語は、ex vivoまたはin vivoの処置を包含し得る。
【0285】
本明細書で教示される使用および方法は、本明細書で教示される光応答性有機粒子および/または本明細書で教示されるカーゴなどの治療有効量の活性化合物を、そのような処置から恩恵を受けるであろう疾患を有する対象に投与することを可能にする。本明細書で使用される「治療有効量」という用語は、外科医、研究者、獣医師、医師または他の臨床医が求めている、対象において生物学的または医学的反応を誘発する活性化合物の量を指し、これにはとりわけ、処置される疾患または状態の緩和が含まれ得る。
【0286】
「治療有効用量」という用語は、本明細書で教示される光応答性有機粒子および/または本明細書で教示されるカーゴなどの、投与された場合に処置中の病気または状態を有する患者の処置に関して肯定的な治療反応をもたらす活性化合物の量を指す。
【0287】
本明細書で教示される光応答性有機粒子および/または本明細書で教示されるカーゴなどの活性化合物の適切な治療有効量は、薬剤の性質、疾患状態および重症度、および患者の年齢、体の大きさ、状態を十分に考慮して資格のある医師によって決定され得る。
【0288】
特定の実施形態では、本明細書に教示される光応答性有機粒子および/または本明細書に教示されるカーゴなどの活性化合物、例えば、治療薬剤は、医薬製剤または医薬組成物として製剤化され、投与され得る。
【0289】
特定の実施形態では、本明細書に教示される光応答性有機粒子および/または本明細書に教示されるカーゴなどの活性化合物、例えば、治療薬剤は、複数の部分からなるキットに配合され、同時にまたは逐次的に投与され得る。
【0290】
実施形態では、光応答性有機粒子は医薬製剤中に含まれ得る。実施形態では、治療薬剤などのカーゴは、医薬製剤に含まれ得る。
【0291】
実施形態では、光応答性有機粒子および治療薬剤などのカーゴは、医薬製剤中に含まれ得る。
【0292】
光応答性有機粒子もしくはその薬学的に許容される塩、および/または治療薬剤もしくはその薬学的に許容される塩などのカーゴは、水溶液として製剤化され得る。
【0293】
したがって、一態様は、本明細書に教示される光応答性有機粒子を含む医薬製剤に関する。さらなる態様は、本明細書で教示される光応答性有機粒子と本明細書で教示される治療薬剤などのカーゴとを含む医薬製剤を提供する。
【0294】
さらなる態様は、対象における療法または処置の方法において使用するための、本明細書に教示される医薬製剤に関する。好ましくは、対象はヒト対象である。
【0295】
「医薬組成物」、「医薬製剤」、または「医薬調製物」という用語は、本明細書では互換的に使用され得、活性成分を含む混合物を指し得る。「組成物」または「配合物」という用語も同様に、本明細書では互換的に使用され得る。
【0296】
「活性成分」、「活性化合物」または「活性成分」という用語は互換的に使用され得、有効量で提供されたときに所望の結果を達成する化合物または物質を広く指す。望ましい結果は、治療的および/または予防的なものであり得る。通常、有効成分は、生細胞または生物と相互作用および/または調節することによってそのような結果を達成し得る。
【0297】
「活性成分」または「活性成分」という記述における「活性」という用語は、「薬理学的に活性」および/または「物理的に活性」を指す。
【0298】
実施形態では、本明細書で教示される医薬製剤は、光応答性有機粒子および治療薬剤などのカーゴに加えて、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含み得る。
【0299】
本明細書で使用される「薬学的に許容される」という用語は、当該技術分野と一致しており、医薬組成物の他の成分と適合可能であり、その受容者にとって有害ではないことを意味する。
【0300】
本明細書で使用される「担体」または「賦形剤」には、あらゆる溶媒、希釈剤、緩衝液(例えば、中性緩衝食塩水またはリン酸緩衝食塩水など)、可溶化剤、コロイド、分散媒、ビヒクル、充填剤、キレート剤(例えば、EDTAまたはグルタチオンなど)、アミノ酸(例えばグリシンなど)、タンパク質、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色料、香料、芳香剤、増粘剤、デポ効果を達成するための薬剤、コーティング、抗真菌剤、防腐剤、酸化防止剤、等張化剤、吸収遅延剤などを含む。薬学的活性物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野でよく知られている。従来の媒体または薬剤が活性物質と不適合である場合を除いて、治療用組成物におけるその使用が企図され得る。
【0301】
本明細書で意図される医薬組成物は、経口投与(例えば、経口摂取など)、非経口投与(例えば、皮下、静脈内または筋肉内注射または注入)などであるが、これらに限定されない、実質的に任意の投与経路用に製剤化され得る。
【0302】
例えば、経口投与の場合、医薬組成物は、丸薬、錠剤、ラッカー錠剤、コーティング(例えば、糖衣)錠剤、顆粒、硬ゼラチンカプセルおよび軟ゼラチンカプセル、水溶液、アルコール溶液または油溶液、シロップ、乳液または懸濁液、の形態に製剤化され得る。一例において、限定されないが、経口剤形の調製は、粉末の形態の活性化合物の適切な量を均一かつ緊密に共に混合し、必要に応じて細かく分割された1つ以上の固体担体を含み、その混合物を丸剤、錠剤、またはカプセルに製剤化することによって、適切に達成され得る。例示的だが非限定的な固体担体としては、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖類(例えば、グルコース、マンノース、ラクトースまたはスクロースなど)、糖アルコール(例えば、マンニトールなど)、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、ポリビニルピロリジン、低融点ワックスおよびイオン交換樹脂が挙げられる。医薬組成物を含有する圧縮錠剤は、活性成分を上記のような固体担体と均一かつ緊密に混合して、必要な圧縮特性を有する混合物を提供し、次いで混合物を適切な機械で所望の形状およびサイズに圧縮することによって調製し得る。成型錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を適切な機械で成型することによって製造され得る。ソフトゼラチンカプセルおよび坐剤に適した担体は、例えば、脂肪、ワックス、半固体および液体ポリオール、天然油または硬化油などである。
【0303】
好ましくは、医薬製剤は、例えば注射によって、非経口投与用に製剤化され得る。
【0304】
実施形態では、医薬組成物は水溶液として製剤化され得る。例えば、非経口投与の場合、医薬組成物は、適切な溶媒、希釈剤、可溶化剤または乳化剤などを含む溶液、懸濁液または乳液として有利に製剤化され得る。適切な溶媒は、これらに限定されないが、グルコース、転化糖、スクロースまたはマンニトール溶液などの糖溶液に加えて、水、生理食塩水、または例えばエタノール、プロパノール、グリセロールなどのアルコールあるいは上記の様々な溶媒の混合物である。注射可能な溶液または懸濁液は、マンニトール、1,3-ブタンジオール、水、リンゲル液もしくは等張塩化ナトリウム溶液などの、非経口的に許容される適切な非毒性の希釈剤もしくは溶媒、または合成モノグリセリドまたは合成ジグリセリドを含む無菌の刺激性の固定油およびオレイン酸を含む脂肪酸などの、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用して、既知の技術に従って製剤化され得る。光応答性有機粒子および/またはカーゴまたはその薬学的に許容される塩は、凍結乾燥され得る。得られた凍結乾燥物は、例えば、注射剤もしくは輸液製剤、または注射剤もしくは輸液製剤の生成に使用され得る。
【0305】
ある実施形態では、光応答性有機粒子は部品のキットに含まれ得る。
【0306】
実施形態では、光応答性有機粒子および治療薬剤などのカーゴは、部品のキットに含まれ得る。
【0307】
さらなる態様は、本明細書で教示される光応答性有機粒子を含む部品のキットに関する。さらなる態様は、本明細書で教示される光応答性有機粒子と本明細書で教示される治療薬剤などのカーゴとを含む部品のキットを提供する。
【0308】
したがって、さらなる態様は、対象における治療または処置の方法で使用するための、本明細書で教示される部品のキットに関する。好ましくは、対象は、ヒト対象である。
【0309】
本明細書で使用される「部品のキット」、「部品キット」、または「キット」という用語は、特定の使用または方法を実行するために必要な構成要素を含み、輸送および保管ができるように梱包された生成物を指す。キットに含まれる構成要素を梱包するのに適した材料には、結晶、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート)、ボトル、フラスコ、バイアル、アンプル、紙、封筒、または他のタイプの容器、担体または支持体が含まれる。キットが複数の構成要素を含む場合、構成要素の少なくともサブセット(例えば、複数の構成要素のうちの2つ以上)またはすべての構成要素は、物理的に分離され得、例えば、別個の容器、担体または支持体の中または上に含まれ得る。キットに含まれる成分は、特定の使用または方法を実施するのに十分である場合もあれば、十分でない場合もあり得、そのため、外部の試薬または物質は、それぞれ、方法を実施するのに必要でない場合もあれば、必要である場合もあり得る。通常、キットは、液体処理装置、環境(温度など)制御装置、分析機器などの標準的な実験室装置と組み合わせて使用される。本明細書で教示される光応答性有機粒子、および/または本明細書で教示される治療薬剤などのカーゴ(必要に応じてアレイまたはマイクロアレイ上に提供される)に加えて、本キットはまた、特定の使用または方法において有用な溶媒などの賦形剤を含み得る。通常、キットには、印刷された挿入物またはコンピュータ可読媒体などの、その使用説明書も含まれ得る。これらの用語は、「生成物」という用語と交換可能に使用される場合があり、本文脈で使用される場合、人工の有形構造生成物を広く包含する。
【0310】
本出願は、以下の記載に記述される態様および実施形態も提供する。
【0311】
1.細胞内にカーゴを送達するためのin vitroまたはex vivoの方法であって、
細胞を、1つ以上の光応答性有機粒子およびカーゴと接触させ、カーゴは、1つ以上の光応答性有機粒子に結合しておらず、有機粒子は、ポリマーベースの粒子、タンパク質ベースの粒子、脂質ベースの粒子、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、それによって、細胞、カーゴ、および1つ以上の光応答性有機粒子の混合物を得る、ステップと、
細胞、カーゴ、および1つ以上の光応答性有機粒子の混合物に電磁放射線を照射し、それによって細胞のバリアの透過化を引き起こし、カーゴを細胞内に送達するステップと、を含む、または
細胞を1つ以上の光応答性有機粒子と接触させ、有機粒子は、ポリマーベースの粒子、タンパク質ベースの粒子、脂質ベースの粒子、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、それによって細胞と1つ以上の光応答性有機粒子の混合物を得る、ステップと、
細胞および1つ以上の光応答性有機粒子の混合物に電磁放射線を照射し、それによって細胞のバリアの透過化を引き起こすステップと、
細胞および1つ以上の光応答性有機粒子の混合物をカーゴと接触させ、それによってカーゴを細胞内に送達するステップと、を含む、
細胞内にカーゴを送達するためのin vitroまたはex vivoの方法。
【0312】
2.1つ以上の光応答性有機粒子の2点間の最大距離は、約250nm~約1250nm、好ましくは約300nm~約1200nm、約400nm~約1100nm、または約500nm~約1000nmである、記載1に記載の方法。
【0313】
3.カーゴは、核酸、タンパク質、化学物質、多糖類、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは、カーゴは、核酸であり、より好ましくは、カーゴは、mRNAまたはプラスミドDNAである、記載1または2に記載の方法。
【0314】
4.光応答性有機粒子は、光応答性ポリマーベースの粒子であり、好ましくは、光応答性有機粒子は、ポリドーパミン(PD)粒子、ポリ(N-フェニルグリシン)(PNPG)粒子、ポリ-2-フェニル-ベンゾビスチアゾール(PPBBT)粒子、ポルフィリン粒子、フタロシアニン粒子、またはポリピロール粒子から選択される光応答性ポリマーベースの粒子である、記載1から3のいずれか一項に記載の方法。
【0315】
5.光応答性有機粒子は、光吸収分子を含むポリマーベースの粒子、タンパク質ベースの粒子、または脂質ベースの粒子であり、好ましくは、光応答性有機粒子は、光吸収分子を搭載または官能化したポリマーベースの粒子、タンパク質ベースの粒子、または脂質ベースの粒子である、記載1から3のいずれか一項に記載の方法。
【0316】
6.光吸収分子は、光吸収色素、天然に存在する光吸収剤、および合成光吸収剤からなる群から選択される分子である、記載5に記載の方法。
【0317】
7.ポリマーベースの粒子は、ポリ(DL-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、エチルセルロース、セルロースアセトフタレート、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、コラーゲン、絹、アルギン酸、ヒアルロン酸、デキストラン、デンプン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリスチレン、メトキシ-PEG-ポリ乳酸、ポリ(シアノアクリル酸アルキル)(PACA)、ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド(PLGH))、ポリ(塩酸アリルアミン)、またはポリオキサゾリンを含む、記載1から6のいずれか一項に記載の方法。
【0318】
8.光応答性有機粒子は、表面で官能化されており、好ましくは、光応答性有機粒子は、アルブミン、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)(PDDAC)、ポリ(アリルアミン塩酸塩)(PAH)、ポリアミドアミン(PAA)、ポリ(アミノ-co-エステル)(PAE)、ポリ[2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート](PDMAEMA)、ヒアルロン酸(HA)、ゼラチン、ポリグリセリン、シクロデキストリン(CD)、デキストラン、セルロース、シリカ、ポリオキサゾリン、スルホベタインシラン(SBS)、カチオン性脂質、中性脂質、アニオン性脂質、キトサン、ポリ-L-リジンからなる群から選択される1つ以上の化合物でコーティングされている、記載1から7のいずれか一項に記載の方法。
【0319】
9.光応答性有機粒子は、生分解性である、記載1から8のいずれか一項に記載の方法。
【0320】
10.光応答性有機粒子は、ポリドーパミン粒子であり、好ましくは、光応答性有機粒子は、アルブミンでコーティングされたポリドーパミン粒子である、記載1から9のいずれか一項に記載の方法。
【0321】
11.細胞は、動物細胞であり、好ましくは、細胞は、ヒト細胞である、記載1から10のいずれか一項に記載の方法。
【0322】
12.細胞は、免疫細胞であり、好ましくは、免疫細胞は、T細胞、リンパ球、マクロファージ、樹状細胞、単球、NK細胞、NKT細胞、B細胞、好中球、顆粒球、ミクログリア細胞、またはランゲルハンス細胞である、記載1から11のいずれか一項に記載の方法。
【0323】
13.電磁放射は、パルスレーザーなどのレーザーによって生成され、好ましくは、
レーザーのパルス強度は、少なくとも104W/cm2、例えば104~1017W/cm2であり得、
レーザーのパルスのフルエンスは、少なくとも0.01mJ/cm2、例えば0.01J/cm2~100J/cm2であり得、
レーザーのパルス数は、少なくとも1レーザーパルス、例えば1~1000レーザーパルスであり得、および/または、
レーザーのパルスの持続時間は、少なくとも1fs、例えば1fs~100sであり得る、
記載1から12のいずれか一項に記載の方法。
【0324】
14.対象における治療方法に使用するための、記載1から10のいずれか一項に定義される1つ以上の光応答性有機粒子、および記載1から10のいずれか一項に定義されるカーゴであって、カーゴは対象の細胞に送達され、この方法は、
対象の細胞の周囲に1つ以上の光応答性有機粒子を投与するステップと、
対象の細胞の周囲の少なくとも一部に照射し、それによって細胞のバリアの透過化を引き起こすステップと、
対象の細胞の周囲にカーゴを投与し、それによってカーゴを細胞内に送達するステップと、
を含むか、または、
この方法は、
対象の細胞の周囲に1つ以上の光応答性有機粒子およびカーゴを投与するステップと、
対象の細胞の周囲の少なくとも一部に照射し、それによって細胞のバリアの透過化を引き起こし細胞をカーゴに送達するステップと、を含む。
【0325】
15.1つ以上の光応答性有機粒子の2点間の最大距離は、約250nm~約1250nm、好ましくは約300nm~約1200nm、約400nm~約1100nm、または約500nm~約1000nmである、記載14に記載の1つ以上の光応答性有機粒子および使用のためのカーゴ。
【0326】
16.細胞は、動物細胞であり、
細胞は、ヒト細胞であり、
細胞は、免疫細胞であり、好ましくは、免疫細胞は、T細胞、リンパ球、マクロファージ、樹状細胞、単球、NK細胞、NKT細胞、B細胞、好中球、顆粒球、ミクログリア細胞、またはランゲルハンス細胞であり、および/または、
電磁放射線は、パルスレーザーなどのレーザーによって生成される、
記載14または15のいずれか一項に記載の1つ以上の光応答性有機粒子および使用のためのカーゴ。
【0327】
上記の態様および実施形態は、下記の非限定的な例によってさらに裏付けられる。
【実施例】
【0328】
実施例1:接着細胞(HeLa細胞)および浮遊細胞(JurkatおよびヒトT細胞)の両方におけるmRNAまたはデキストランの送達のための本発明の実施形態による方法
【0329】
(材料および方法)
(ポリドーパミンナノ粒子(NP)の合成)
ポリドーパミンナノ粒子の合成を、以前に記載されたプロトコル(Juら,Biomacromolecules,2011,12,625)にいくつかのわずかな修正を加えたものに従って実行した。簡単に説明すると、70mgのドーパミン塩酸塩(Sigma-Aldrich)を45~50℃の20mL HyClone水(VWR、HyPure、細胞培養グレード)に溶解した。次に、295μLの1M NaOH溶液を激しく撹拌しながら加えた(モル比:1/0.8)。溶液の色はすぐに黄色みを帯びた色に変わり、しばらくすると暗褐色に変化した。溶液を約7時間撹拌させた。粒子のサイズを、DLSによって1時間ごとに注意深く測定した。溶液を収集し、遠心分離(4,000rcf、10分間)によってHyClone水で数回洗浄した。次に、潜在的な凝集を減らすために、チップ超音波処理(10% A、Bransonデジタル超音波装置、ダンベリー、米国)を30秒間適用した。
【0330】
(ウシ血清アルブミンによるポリドーパミンナノ粒子の機能化)
500nm PD NPのコロイド安定性を高めるために、ウシ血清アルブミン(BSA、VWR Chemicals、Biotechnology grade、米国)層による官能化を実行した。簡単に言うと、PD NPを、DPBSと10mg/mL BSA溶液とを体積比1:1で混合して調製した溶液と混合した。次いで、混合物を一晩激しく撹拌することによって反応させ、残りの非結合のBSAをHyClone水での数回の洗浄ステップ(4000rcf、5分)によって除去した。最後に、BSAコーティングされた500nm PD NPをHyClone水に分散させて4℃で保存した。
【0331】
(ポリドーパミンナノ粒子(PD NP)の物理化学的特性評価)
SEM画像を、20kVの加速電圧で動作するFEI Quanta 200F(Thermo Scientific)を使用して取得した。PD NPを、SEM測定の1日前にシリコンウェーハ上で乾燥させた。乾燥したサンプルをさらに金層でコーティングした。
【0332】
動的光散乱(DLS、Zetasizer Nano ZS、Malvern Instruments Co.,Ltd.)およびナノ粒子追跡分析(NTA、NanoSight LM10、Malvern Panalytical、英国)を使用して流体力学的直径を測定した。NTAを、488nmレーザーを使用して散乱モードで実行した。NTAは、ナノ粒子濃度の測定にも使用された。UV/VISスペクトルを、Nanodrop2000c分光光度計(Thermofischer、Rockford、USA)を用いて測定した。
【0333】
(蒸気ナノバブル生成および閾値)
PD NPからのVNB生成を、パルスナノ秒レーザー(OpoletteTM HE 355 LD、OPOTEK Inc、カリフォルニア州、7nsパルス持続時間、561nm波長)を適用した暗視野顕微鏡によって視覚化した。レーザーパルスエネルギーを、パルスレーザーと同期したエネルギーメーター(J-25MBHE&LE、Energy Max-USB/RSセンサー、Coherent)を使用して測定した。EMCCDカメラ(Cascade II:512、Photometrics、ツーソン、米国)を使用してショートムービーを記録し、NISエレメントソフトウェア(ニコン、日本)で処理した。照射領域内のPD NPがVNBを形成する90%の確率である泡閾値を、データをボルツマンシグモイド関数でフィッティングした後に決定した。
【0334】
(細胞培養)
HeLa細胞(ATTC(登録商標)CCL-2(商標))を、10%ウシ胎児血清(FBS)、100U/mLペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco-Invitrogen)、および2mM L-グルタミン(Gibco-invitrogen)をさらに添加したDMEM/F-12培地(Gibco-Invitrogen)で培養した。細胞を、コンフルエントに達すると頻繁に継代し、加湿インキュベーター(37℃、5%CO2)内に保管した。
【0335】
Jurkat細胞(American Type Culture Collection、ATCC(登録商標)TIB-152)を、10%ウシ胎児血清(FBS)、100U/mLペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco-Invitrogen)および2mM L-グルタミン(Gibco-invitrogen)をさらに添加したRPMI 1640培地で培養した。実験中、Jurkat細胞は加湿インキュベーター(37℃、5%CO2)内で培養され、頻繁に継代された。
【0336】
ヒトT細胞は、インフォームドコンセント(Biobank Red Cross Flanders)を得た後、献血者のバフィーコートから生成され、ゲント大学病院(ベルギー、ゲント)の医療倫理委員会のガイドラインに従って使用された。まず、Lymphoprep(Alere Technologies AS、オスロ、ノルウェー)を使用した密度遠心分離を介してバフィーコートから末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。次に、単離されたPBMCをImmunocult Human CD3/CD28 T cell Activator(Stemcell Technologies、バンクーバー、カナダ)で刺激した。PBMCを、10%ウシ胎児血清(FCS、Bovogen、メルボルン、オーストラリア)、100U/mlペニシリン(Invitrogen、メレルベーケ、ベルギー)、100μg/mlのストレプトマイシン、2mMのグルタミンおよび5ng/mlのIL-2(Roche)を7日間投与したIMDM培地(Invitrogen、メレルベーケ、ベルギー)中で7日間培養した。次に、増殖したT細胞を収集し、照射されたPBMC(40Gy)とJY細胞(50Gy)とからなるフィーダー混合物の存在下で1μg/mlフィトヘマグルチニン(Remel Europe、ケント、英国)で再刺激した。4日後、5ng/mlのIL-2(Roche Diagnostics、マンハイム、ドイツ)を添加した。10~14日後、これらの培養で増殖させたT細胞を使用し、本稿ではヒトT細胞と呼ぶ。
【0337】
(接着および浮遊HeLa細胞へのデキストランのインキュベーションおよび混合フォトポレーション)
(接着HeLa細胞上でのデキストランのインキュベーションフォトポレーション)
HeLa細胞を96ウェルプレートに1ウェルあたり20,000細胞で播種し、インキュベーター(37℃、5%CO2)内で一晩インキュベートした。次に、接着HeLa細胞をDPBSで1回洗浄し、濃度を増加させたPD-BSA NPを含む新しいHeLa細胞培地を添加し、30分間インキュベートした。30分間のインキュベーション後、細胞をOpti-MEM培地で1回洗浄して、過剰な非結合のPD-BSA NPを除去した。洗浄後、1mg/mLの500kDaフルオレセインイソチオシアネートデキストラン(FD500)を含む新鮮なOpti-MEM培地50μLを細胞に添加した。次に、特注のフォトポレーションセットアップ(パルス幅:3ns、波長 532nm)で1.6J/cm2のフルエンスでフォトポレーションを実行した。モックフォトポレーションは、PD-BSA NPを使用して、カーゴなしで実行された。次いで、細胞を細胞培養培地で数回洗浄して過剰なFD500を除去し、飲作用によるマーカーのさらなる自発的取り込みを回避した。
【0338】
(接着HeLa細胞上でのデキストランの混合フォトポレーション)
HeLa細胞を96ウェルプレートに1ウェルあたり20,000細胞で播種し、インキュベーター(37℃、5%CO2)内で一晩インキュベートした。次に、接着HeLa細胞をOpti-MEM培地で1回洗浄し、PD500-BSA NPの濃度を増加させた25μLのOpti-MEM培地を添加した。混合物中のFD500の最終濃度が1mg/mLとなるように、FD500を含むOpti-MEMをさらに25μL加えた。次に、フォトポレーション設定で1.6J/cm2のフルエンスでフォトポレーションを実行した(パルス持続時間:3ns、波長532nm)。次いで、細胞を細胞培養培地で数回洗浄して、過剰なFD500を除去した。
【0339】
(浮遊HeLa細胞上でのデキストランの混合フォトポレーション)
まず、トリプシン処理を行った後、HeLa細胞の懸濁液を回収した。細胞を細胞培養培地に分散させ、計数し、Opti-MEM培地で2回洗浄した。次に、40,000個の細胞(HeLa細胞の倍加時間は約24時間)を含む24μLのOpti-MEM培地を、96ウェルプレートのウェルごとに加えた。次いで、細胞に、PD500-BSA NPおよびFD500の濃度を増加させた別の25μLのOpti-MEM培地を補充した。50μL混合物中のFD500の最終濃度は1mg/mLであった。すべての条件の最終体積は50μLであり、細胞が96ウェルプレートの底に沈殿するように96ウェルプレートの迅速なスピンダウン(5~10秒、500rcf)を実施した。注:さまざまなメソッドすべてに対してクイックスピンダウンが実行された。次いで、細胞を細胞培養培地で数回洗浄して、過剰なFD500を除去した。
【0340】
(mRNAトランスフェクションのための浮遊HeLa細胞の混合フォトポレーション)
上記と同様のプロトコルに従った。簡単に説明すると、40,000個の細胞を含む20μLのOpti-MEM培地を96ウェルプレートのウェルごとに添加した。次いで、細胞に、16×107NP/mLを含有する別の25μLのOpti-MEM培地を補充した。次に、混合物に強化緑色蛍光タンパク質(eGFP-mRNA、353kDa、996ヌクレオチド)をコードするmRNA 5μLを追加し、最終mRNA濃度は0.3μMまたは0.1μg/μLになった。すべての条件の最終体積は50μLであり、細胞が96ウェルプレートの底にあるように96ウェルプレートの迅速なスピンダウン(5~10秒、500rcf)を実施した。フォトポレーションは1.6J/cm2のフルエンスで実行され、細胞には200μLの完全DMEM/F-12培地が補充された。24時間のインキュベーション後、細胞をeGFP読み取り(フローサイトメトリーまたは共焦点顕微鏡による)および24時間後の生存率測定のために採取する準備が整った(以下の詳細を参照)。
【0341】
(デキストラン送達のためのJurkat細胞およびヒトT細胞のフォトポレーション)
JurkatおよびヒトT細胞のフォトポレーションは、前述と同様の方法で実行された。簡単に説明すると、培地を除去するために、まず細胞をOpti-MEMで数回洗浄した(3分、500rcf)。次に、250,000個のJurkat細胞または100万個のヒトT細胞を含む24μLのOpti-MEMを、96ウェルプレート(VWR、プラスチック底)の単一ウェルに入れた。次に、所望の濃度でPD-BSA NPを含む25μLのOpti-MEMを細胞に直ちに添加した。最後に、FD500(ストック濃度50mg/mL)を含むOpti-MEM1μLを49μL混合物に添加した。陰性対照として機能する未処理細胞(UTC)については、細胞を総量50μLのOpti-MEM培地に分散させた。追加の「FD500対照」は、細胞によるFD500の自発的取り込みを補正するために含まれており、最初に細胞を49μLのOpti-MEMに分散し、1μLのFD500(ストック濃度50mg/mL)を混合物に添加した。また、カーゴのない状態でフォトポレーション手順を実行する効果をチェックするための「フォトポレーション対照」条件も含まれていた。ここでは、細胞を25μLのOpti-MEMに分散し、所望の濃度のPD-BSA NPを含む別の25μLのOpti-MEMを補充した。PD-BSA NPの存在下でのバックグラウンド蛍光のシフトに対してFD500送達を補正できるように、試験したPD-BSA NP濃度ごとにフォトポレーション対照を実行した。すべての条件の最終体積は50μLであり、細胞が96ウェルプレートの底にあるように96ウェルプレートの迅速なスピンダウン(5~10秒、500rcf)を実施した。次に、1.6J/cm2のフルエンスで操作してフォトポレーションを実行し、1ウェルあたりわずか3~4秒かかった。次いで、ウェルに200μLの新鮮な完全細胞培養培地を補充した。フォトポレーション手順の細胞毒性を評価するために、フォトポレーションプロセス中にFD500を省略したことを除いて、まったく同じ手順を実行した。フォトポレーション後、細胞に200μLの細胞培養培地を補充し、指定された時間インキュベートした(つまり、Jurkat細胞:24時間、ヒトT細胞:4時間、24時間、および48時間)。
【0342】
(mRNAトランスフェクションのためのJurkat細胞とヒトT細胞のフォトポレーション)
mRNAのトランスフェクションを、FD500のフォトポレーションと同様に実行した。簡単に説明すると、まず細胞をOpti-MEM培地で数回洗浄した。20μLOpti-MEMに懸濁したJurkat(250,000細胞)とヒトT細胞(100万細胞)との両方を96ウェルプレートの単一ウェルに移し、PD-BSA NPを希望の濃度で含む25μLのOpti-MEMと混合した。次に、5μLのeGFP-mRNA(ストック濃度1μg/μL、CleanCap、Trilink Biotechnologies、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国)を45μL混合物に素早く添加し、細胞が96ウェルプレートの底に来るように細胞を素早く遠心分離(500rcfで5秒の遠心分離)した。次に、前述のようにフォトポレーションを実行した。未処理細胞(UTC)の場合、細胞は総量50μLのOpti-MEM培地に分散された。mRNA対照では、まず細胞を45μLのOpti-MEMに分散し、5μLのmRNA eGFP(ストック濃度1μg/μL)を細胞に添加した。フォトポレーション対照では、細胞を25μLのOpti-MEMに分散し、所望の濃度でPD-BSA NPを含む別の25μLのOpti-MEMを補充した。フォトポレーション処理後、さらに200μLの完全細胞培養培地を細胞に添加し、インキュベーター(37℃、5%CO2)内で24時間インキュベートした。
【0343】
(フローサイトメトリー)
フローサイトメトリーを使用して、フォトポレーション手順の送達効率(FD500)またはトランスフェクション効率(eGFP-mRNA)を評価した。フォトポレーション後、細胞をDPBS(-/-)で数回(3分間、500rcf)洗浄して、過剰なFD500または細胞破片を除去した。洗浄ステップの後、DPBS、1%ウシ血清アルブミン(BSA)および0.1% NaN3を含むフロー緩衝液を細胞に添加した。さらに、0.5μM TO-PRO-3ヨウ化物を使用して死細胞を染色した。次いで、サンプルを、それぞれ488nmおよび637nmの励起レーザーを使用するCytoFLEXフローサイトメトリー(Beckman Coulter、クレーフェルト、ドイツ)で測定した。eGFP蛍光は525/40nmバンドパスフィルターで検出され、TO-PRO-3プローブのシグナルは660/20nmバンドパスフィルターで検出された。TO-PRO-3陽性細胞(つまり、死細胞)は、FD500およびeGFPシグナルの定量化のために除外された。
【0344】
(共焦点顕微鏡)
室温で動作するNikon A1R HD レーザー走査型共焦点顕微鏡を使用して、それぞれ10倍(CFI Plan Apo Lambda 10X、0.45NA)、20倍(CFI Plan Apochromat VC 20X、0.75 NA)、および60倍(CFI SR Plan Apo IR 60XAC WI、NA 1.27)対物レンズで共焦点画像を記録した。励起は488nmレーザーで実行され、蛍光シグナルはA1-DUG-2 GaAsP マルチ検出器ユニットによって525/50nm(MHE57030、A1 Filter Cube 525/50)で検出された(これは、488nm用GaAsp PMTの検出器/チャネルを意味する)。
【0345】
(生存率アッセイ)
細胞生存率は、製造元の推奨に従ってCellTiter Glo(登録商標)代謝生存率アッセイを使用して測定した。簡単に説明すると、接着および浮遊(つまりトリプシン処理)HeLa細胞の両方について、96 ウェルプレートの各ウェルで100μLのHeLa細胞培養培地に100μLのCellTiter Glo溶液を補充した。浮遊細胞(つまり、Jurkat細胞およびヒトT細胞)の場合、50,000個の細胞を100μLの細胞培養培地で希釈し、さらに100μLのCellTiter Glo 溶液を96ウェルプレートに添加した。次いで、プレートをシェーカー上で約10分間撹拌し(100rpm)、混合物100μLを白色不透明の96ウェルプレート(Greiner Bio-One、ベルギー)に移した。発光シグナルの読み取りを、ルミノメーター(プレートリーダー、GloMax、Promega)によって実行した。
【0346】
(ヌクレオフェクションによるmRNAトランスフェクション)
活性化初代ヒトT細胞は、P3 Primary Cell 4D-Nucleofector(商標)X キット(V4XP-3032)(Lonza、Breda、オランダ)を使用して、製造元の指示に従って 4D-Nucleofector(商標)によってeGFP-mRNAでトランスフェクションされた。簡単に説明すると、1x106細胞をP3 nucleofector溶液に再懸濁し、2μg eGFP-mRNA(総濃度:0.3μM)と混合し、16ウェルNucleocuvette(商標)ストリップに移した。トランスフェクションはパルスプログラムEO-115(高機能)を使用して得られた。トランスフェクションの直後、細胞に80μLの予熱した培地を補充し、40μLを160μLの予熱した培地を含む96ウェルプレートに移した(総mRNA濃度:0.1μg/μLまたは0.3μM)。フローサイトメトリーによる細胞生存率とmRNA発現の分析の前に、細胞を37℃、5%CO2で24時間インキュベートした。
【0347】
(結果)
(ポリドーパミンナノ粒子の合成、官能化および物理化学的特性評価)
実験はポリドーパミンナノ粒子(PD NP)の合成から開始された。大きなmRNA分子が細胞内に効率的に侵入するのに十分な大きさのVNBおよび膜細孔を生成するために、0.5μmの比較的大きな粒径が目標とされた(
図1)。
図1は、mRNAなどのカーゴを細胞内に送達するためのポリドーパミン増感フォトポレーションの概略図を示す。まず、ポリドーパミン(PD)ナノ粒子(NP)およびmRNAが細胞に添加され、その後、強力なナノ秒レーザーパルスが印加される。これによって、PD NPの周囲にVNBが生成され、最終的には崩壊して細胞を一時的に透過化し、mRNA子が細胞に侵入可能になる。mRNAをトランスフェクションした細胞は濃い灰色で示されている。
【0348】
PD NPの合成には、ドーパミン塩酸塩(ドーパミンHCl)の自発的酸化とその後の重合が含まれる。温度やドーパミンHCl:NaOHの比など、いくつかのパラメータが最適化された。ドーパミンHCl:NaOH(1:0.8)の固定比と温度(45~50℃)を使用すると、反応時間の関数としてナノ粒子が徐々に成長することが観察できた(混合物は黄色になり、最終的には暗褐色の溶液に変わる)。7時間の撹拌後、636±41nmの流体力学的直径(Z平均)を有するPD NPが得られた(
図2A)。続いて、PD NPをチップソニケーターで30秒間超音波処理して、凝集したPD NPを除去し、最終流体力学的直径465±6nmのPD NPを得た(
図2A、矢印)。簡単にするために、今後はこれらの粒子を0.5 μm PD NPと呼ぶ。球状PD NPの合成を、走査電子顕微鏡法(SEM)によって確認した(
図2B)。対応するサイズ分布は、454±96nmのコアサイズを示し(
図2C)、これはDLSで測定した流体力学的直径に非常に類似している。PD NPは、HyClone 水中で+17.9±2.1mVというわずかに正のゼータ電位を示したが、これはおそらくアミン基のプロトン化によるものと考えられる。次に、これらのコーティングされていない PD NPのコロイド安定性をOpti-MEMで評価した。Opti-MEMは、mRNA分解が制限されたmRNAトランスフェクションに適した媒体であることが以前に示されている。Opti-MEM培地(インキュベーション時間10分以下)中での急速なサイズ増加が観察された(
図2D)。これは、コーティングされていないPD NPは水中では優れたコロイド安定性を示すが、リン酸緩衝食塩水(PBS)中ではそうではないことが判明した、以前の報告と一致している。したがって、トランスフェクション培地としてのOpti-MEM中でPD NPのコロイド安定性を維持するために、ウシ血清アルブミン(BSA)を使用した追加の官能化ステップが実行された。官能化はBSAのアミン基およびポリドーパミンのカテコール/キニーネ間の反応に基づいており、室温で一晩インキュベートすることで達成され得る。HyClone水で数回洗浄した後、粒子の流体力学的直径は513±6nmまでわずかに増加し、BSAによるコーティングが成功したことが最初に示された。さらに、ゼータ電位はコーティング手順後にわずかに負に変化し(HyClone水中で-19.4±0.8mV)、BSAコーティングが成功したことのさらなる証拠を提供した。最も重要なことは、BSAでコーティングされたPD NPがOpti-MEM中で凝集しなくなったことである(
図2E)。この向上したコロイド安定性は、それぞれBSA分子の静電反発力と立体反発力に起因し得る。
【0349】
PD-BSA NPはレーザー光の吸収が重要な要件であるフォトポレーションに使用されるため、追加でUV/VIS測定を実行した。ドーパミンHClの出発溶液は、UV領域に鋭い消光ピークを有していた(
図2F、縞線)。その代わりに、500nm PD NPは、UVから近赤外(NIR)領域までの広い消光スペクトルを有し(
図2F、濃い灰色の点)、BSAコーティング後も実質的に変化しなかった(
図2F、明るい灰色の点)。次のステップでは、PD-BSA NPにパルスレーザー光(パルス幅7ns、波長561nm)を照射してVNBを作成できる可能性をテストした。VNBはその寿命中に光を強く散乱するため、VNBの発生は暗視野顕微鏡によって視覚化した。レーザー照射前にはVNBは見られなかったが(
図2G)、レーザーパルスで照らすといくつかのVNBが現れた(
図2H)。適用されたレーザーパルスフルエンスの関数としてVNBの数を数え、プロットされたデータをボルツマンシグモイド関数でフィッティングすることによって、気泡の閾値を決定し得る。泡閾値は、VNBを生成する照射領域において気泡内の粒子の90%が到達するレーザーフルエンスとして定義される。これによって、泡閾値は1.06J/cm
2となり(
図2I、灰色領域の左側の破線)、これは、AuNPからVNBを生成することが以前に報告されているフルエンスの範囲内に入る。細胞実験の場合、さらなるフォトポレーション実験のために1.60J/cm
2のフルエンスが選択されるように、すべてのPD NPがVNBを作成することが好ましい。
【0350】
(HeLa細胞へのデキストランまたはmRNAのフォトポレーションのための本発明の実施形態によるインキュベーションおよび混合方法の比較)
次に、高分子を細胞に送達するためのフォトポレーション増感剤としてのPD-BSA NPの可能性を調査した。概念実証を行うために、これはまず、フォトポレーションによく使用されるモデル細胞株としてHeLa細胞で行われた。この実験では、500kDaのFITCデキストラン(FD500)が、eGFP-mRNA(353kDa、996ヌクレオチド)と同等の分子量を有する大きなモデル高分子として送達された。細胞をナノ粒子に曝露するための2種類のプロトコルをテストした。最初のプロトコルでは、感光性粒子をHeLa細胞とともに30分間インキュベートし、続いて洗浄ステップとレーザー曝露を行った。このプロトコルは、本明細書では「インキュベーション法」と呼ばれる。この方法は、AuNPを使用したフォトポレーションが通常実行される方法と同じである。第2のプロトコルでは、PD NPを細胞培地に単純に添加し、さらにインキュベートまたは洗浄することなく直ちに照射した。このプロトコルは、本明細書では「混合法」と呼ばれる。最終的な目的は浮遊細胞であるT細胞をトランスフェクションすることであるため、第2のプロトコルは懸濁液中のトリプシン処理HeLa細胞でさらにテストされた。
【0351】
FD500陽性細胞のパーセンテージは、生存細胞(すなわち、TO-PRO-3ヨウ化物陰性)のゲーティング後のフローサイトメトリーによって決定され(「%効率」)、3つのケースすべてにおいてPD-BSA NPの濃度が増加するにつれて徐々に増加した(
図3A~C)。これには、CellTiter-Glo アッセイによる処理の 2時間後に測定された細胞生存率の緩やかな減少が伴った。このアッセイが選択されたのは、トリパンブルー カウンティングと同様の結果が得られるためである。
【0352】
生存細胞の割合とFD500陽性細胞の割合を乗算することとによって、開始集団に対する生FD500 陽性細胞の割合である送達収率を計算し得る。最も高い収率値は、インキュベーション法、接着細胞での混合法、浮遊細胞での混合法でそれぞれ8x10
7NPs/mL、8x10
7NPs/mL、および16x10
7NPs/mL で得られた。しかしながら、対応する収率値間の差異は統計的に有意ではなかった(
図3D)。また、細胞あたりの相対平均蛍光はこれらの条件で実質的に同じであり、rMFI値は約15であった。これらの結果を総合すると、細胞をPD-BSA NP と30分間インキュベートしても追加の利点はなく、より単純で高速な「混合方法」が接着細胞と浮遊細胞との両方でBSA-PD NPに対して同様にうまく機能することがわかる。
【0353】
混合方法には非結合のPD-BSA NPを除去するための洗浄ステップが含まれていないため、結合したナノ粒子と非結合のナノ粒子が送達効果にどの程度寄与しているかを明らかにしたいと考えた。これをテストするために、混合プロトコルと同様に、8x107NP/mL PD-BSA NPを接着HeLa細胞に添加した。次に、細胞を直ちにOpti-MEMで 2 回洗浄し、非結合のPD-BSA NPを除去した。残った PD NPは細胞に吸着される必要がある。レーザー照射によって、FD500 陽性細胞の割合はわずかに減少するだけであったが、rMFIには有意差はなかった。この結果は、混合法における細胞透過性効果が、明らかに細胞に非常に迅速に結合し得る細胞関連BSAでコーティングされたPD NPに由来していることを証明している。溶液中に存在する非結合の PD NP は依然として蒸気泡を生成するが、送達プロセスには寄与しない。
【0354】
次に、HeLaでのmRNA送達の成功を検証したいと考えた。この実験では、HeLa細胞をトリプシン処理し、0.3 μM eGFP-mRNAおよび16x10
7NPs/mL PD-BSA NP/mL を含むOpti-MEMに移した。混合プロトコルに従って、サンプルはその後すぐにパルスレーザー光で照射された。mRNAによるフォトポレーション後、細胞に完全細胞培養培地を24時間再度補充し、その後トランスフェクション効率と生存率とを定量した。46±1%のGFP陽性細胞(
図3E、黒色のバー)のトランスフェクション効率が得られ、24時間生存率は88±13%(
図3E、薄灰色のバー)であった。これを組み合わせると、トランスフェクションされた生細胞のトランスフェクション収率は41±7%になる(
図3E、縞模様のバー)。共焦点顕微鏡画像は、HeLa細胞のフォトポレーションが明るいeGFP発現細胞をもたらしたことをさらに裏付けるものとなった(
図3F)。この結果は、AuNPを増感剤として使用した結果、HeLa細胞におけるeGFP-mRNA トランスフェクション収率16%(細胞生存率80%でトランスフェクション効率20%)をもたらした結果と比較して著しく良好である(結果は示されていない)。PD-BSA NPのより良い結果は、サイズが大きい(つまり、PD-BSA NPが約70nmであるのに対し、PD-BSA NPが約70nmである)ことで説明され得、その結果、蒸気泡と膜細孔が大きくなり、大きなmRNA分子のより効率的な侵入について有益となり得る。さらに、孔が大きいと修復に時間がかかるため、分子が細胞に入るまでの時間が長くなる。トランスフェクション効率の向上を説明できるもう1つの理由は、AuNP クラスターについても同様に以前に提案されているように、大きなPD NPによって引き起こされる蒸気泡からの液体ジェットの生成であり得る。
【0355】
(デキストランまたはmRNAをJurkat細胞にフォトポレーションするための本発明の一実施形態による方法)
HeLa細胞での概念実証実験が成功したことに続き、我々は初代ヒトT細胞のモデルとして頻繁に使用される不死化ヒトリンパ球浮遊細胞株としてのJurkat細胞に移った。懸濁液中のHeLa細胞に対して以前に実行した混合手順と同様に、Opti-MEMに分散したJurkat細胞を、FD500とともに濃度を増加させた PD-BSA NPと混合し、すぐに(つまり1分未満)1.60J/cm
2(パルス幅3ns、波長532nm)のレーザーフルエンスでフォトポレーションを行った。FD500陽性細胞のパーセンテージ(「%効率」)および相対平均蛍光強度(rMFI)の両方が、PD-BSA NPの濃度の増加とともに増加することが判明した(
図4A)。いつものように、これには細胞生存率の緩やかな低下が伴ったが、ここではCellTiter Glo代謝アッセイにより24時間後に測定した(
図4A)。16×10
7PD-BSA NP/mLから開始すると、送達収率は30~35%でほぼ一定のままであった。まとめると、これは、より高いナノ粒子濃度を使用することでFD500陽性細胞のパーセンテージを増加できるが、細胞生存率の損失により全体の送達収率はさらに増加しないことを示している。いずれの場合でも、30~35%の送達収率は、収率が約20%に制限されていたAuNPを使用したフォトポレーションで以前に得られたものよりも大幅に高い(送達効率は約50%、2時間生存率は約40%、結果は示されていない)。さらに注目すべきことに、PD-BSA NPで得られたrMFI(±38)は、AuNPでのrMFI(±5)と比較して約8倍高く、これもまた、より大きな細孔が作成され、細胞質ゾルへの大きな高分子のより効率的な流入が可能になるという事実によって説明され得る。
【0356】
次に、eGFP-mRNAをJurkat細胞に送達する可能性を評価した。したがって、上記と同様に、Opti-MEMに分散したJurkat細胞(250,000細胞/ウェル)を、mRNA(0.3μM)とともにPD-BSA NP(64x10
7NP/mL)と混合した。フォトポレーションの結果、トランスフェクション効率は45±14%(
図4B、黒色のバー)、生存率は50±15%(
図4B、明るい灰色のバー)となり、細胞トランスフェクション収率は約21%(
図4B、縞模様のバー)となった。Jurkat細胞のトランスフェクションは、フローサイトメトリーの結果(図示せず)および共焦点顕微鏡画像(
図4C)からも明らかであった。この結果は、AuNPを用いたJurkat細胞のeGFP-mRNAフォトポレーションについて以前に報告され、16%のトランスフェクション収率が得られたものよりも良好であった。最も重要なことは、Jurkat細胞でeGFP-mRNAトランスフェクション収率がわずか4%しか得られなかったヌクレオフェクション、つまり最先端のエレクトロポレーションプラットフォームと比較して、はるかに優れていたことである。
【0357】
(ヒトT細胞へのデキストランまたはmRNAのフォトポレーションのための本発明の実施形態による方法)
最後に、混合法を使用した、トランスフェクションが難しいヒトT細胞のex vivo修飾に進んだ。実験は、1ウェルあたり100万個のT細胞を播種したことを除いて、Jurkat細胞の場合と同じ方法で実行された。まず、PD-BSA NPの最適濃度をFD500送達によってスクリーニングした。Jurkat細胞の場合と同様に、FD500陽性細胞の割合およびrMFI値の両方について送達効率の増加が観察できた(
図5A)。24時間後の対応する生存率は、PD-BSA NPの濃度が増加するにつれて減少した(
図5A、黒点)。250および500x10
7NP/mLはどちらも送達収率の点で同様に良好な結果を示し、生細胞およびFD500陽性細胞が約30%に達し、Jurkat細胞で得られたものと非常に類似していた。1000x10
7NPs/mLの場合、送達収率はわずかではあるが、主に細胞毒性が高いため、顕著に減少した(約25%)。共焦点顕微鏡画像によって、対照(
図5B、I)と比較してPD-BSA NP濃度を増加させるためにヒトT細胞へのFD500の送達が成功したことが確認された(
図5B、II~IV)。
【0358】
次に、ヒトT細胞に mRNA をトランスフェクションする可能性を評価した。PD-BSA NPの濃度が増加すると、トランスフェクション効率の増加が再び観察された。
【0359】
実際、それぞれ250×10
7、500×10
7、および1000×10
7PD-BSA NP/mLの濃度で22±2%、29±3%、および30±6%のトランスフェクション効率を得ることができた(
図5C、黒いバー)。24時間後の対応する細胞生存率は、それぞれ約87±4%、63±2%、および44±9%であった(
図5C、黒点)。rMFIは、同じ増加するNP濃度に対して4±1、5±2、および6±3であった(
図5C)。共焦点画像の例は、
図5Dに示され、フローサイトメトリーによって確認された(結果は示されていない)。繰り返すと、これらの結果は、より高いナノ粒子濃度を使用するとトランスフェクションされた細胞の割合が増加するが、特定のNP濃度では、細胞生存率の損失により全体のトランスフェクション収率が再び低下する可能性があることを示した。
【0360】
最後の実験では、フォトポレーションによってmRNAがヒトT細胞に送達され、ベンチマーク技術としてヌクレオフェクションと比較した。0.3μM mRNAの存在下でのヒトT細胞のヌクレオフェクション(最適化パルスプログラムEO-115を使用)は、62.4±27.9%のトランスフェクション効率をもたらした(
図5E、黒いバー)。しかし、代謝CellTiter Gloアッセイで測定したところ、24時間後の細胞生存率の大幅な低下が観察された。実際、ヌクレオフェクションの24時間後、エレクトロポレーションされたヒトT細胞の11.5±3.6%のみが生存していた(
図5E、明るい灰色のバー)。これは、ヌクレオフェクションが初代T細胞において非常に高レベルの急性細胞死を誘導することが示された以前の研究とも一致している。これによって、フォトポレーションのトランスフェクション収率は18.7±1.0%となり、トランスフェクション収率はわずか7.5±4.8%でヌクレオフェクションを明らかに上回った(
図5F)。さらに、ヌクレオフェクションの場合はトランスフェクション結果のばらつきがはるかに大きかったのに対し、フォトポレーションの場合はばらつきが大きくはなかった。
【0361】
結論として、サイズ約500nmのポリドーパミンナノ粒子の合成に成功した。これらのPD NPはBSAでさらに官能化され、粒子の細胞膜への接着能力を妨げることなくコロイドの安定性が向上した。この結果は、nsパルスレーザー光の照射によるPD NPからの蒸気泡形成の成功を実証した。これは、有機ナノ粒子からの蒸気泡形成の最初の実証である。興味深いことに、ポリドーパミン増感レーザー支援フォトポレーションは、ナノ粒子を細胞と混合し、直ちにレーザー照射を適用するだけで、接着細胞と浮遊細胞の両方に適用され得る。この方法によって、500kDa FITC-デキストランとeGFP コード化mRNAとが、HeLa細胞だけでなく、トランスフェクションが難しいJurkat細胞およびヒトT細胞にもうまく送達された。重要なことは、ヌクレオフェクションと比較して、フォトポレーション後には約2倍の生トランスフェクション初代ヒトT生細胞が得られたことである。PD-BSA NPが臨床的に承認された前駆体から調製されたことを考慮すると、これらの方法は、CAR-T細胞などの遺伝子操作された治療用細胞生成物の生成のためのフォトポレーションの臨床応用を可能にする可能性を切り開く。
【0362】
(実施例2:細胞へのカーゴの送達収率に対する光応答性有機粒子のサイズの影響を調査するための本発明の実施形態による方法)
【0363】
(材料および方法)
異なるサイズを有するBSA官能化ポリドーパミン粒子を、異なる反応時間を使用することによって上記(実施例1、PD NPの合成および官能化)のように生成した。さまざまなPD-BSA NPの流体力学的直径は、DLSを介して実行した。フォトポレーション実験は、混合フォトポレーション法を使用して(つまり、インキュベーションステップなしで)接着HeLa細胞に対して実行され、送達されるカーゴはFD500であった。
【0364】
(結果)
送達効率に対する細孔サイズの増加の影響を評価するために、異なるサイズのPD-BSA NPの合成を実行した。
図6Aは、サイズが増大したPD-BSA NPのサイズ分布(強度%)の増大を示す。DLSによって測定した、HyClone水中のさまざまなPD-BSA NPのZ平均は、それぞれ134±2nm(PDI:0.104)、282±1nm(PDI:0.027)、449±2nm(PDI:0.101)、753±5nm(PDI:0.060)、および1079±24nm(PDI:0.177)(
図6B)。
【0365】
異なるサイズのポリドーパミン粒子を用いたフォトポレーション実験は、接着HeLa細胞上で混合法により(つまり、インキュベーションステップなしで)実行され、FD500がモデル巨大分子として提供された。次の設定がフォトポレーションに使用された(
図7から開始):強度3=0.88J/cm
2、強度5=1.8J/cm
2、強度7=2.72J/cm
2。これらはレーザーパルスあたりのフルエンスである。W/cm
2 に変換するには、これらの値を単一レーザーパルスの持続時間、つまり5nsで割る必要がある。強度3=1.8 10
8W/cm
2。強度5=3.6 10
8W/cm
2;強度7=5.4 10
8W/cm
2である。
【0366】
100nmPD-BSANPの場合、PD-BSANPの濃度を増加させても送達効率のごくわずかな増加のみが観察され、これは両方の強度(強度設定5および7、それぞれ
図7Aおよび7B)で観察された。CellTiter-Gloアッセイによる処理の2時間後に測定した生存率も、両方のフルエンス(すなわち80%超)において優れたままであり、これは非常に高濃度であっても優れたままであった(
図7A、7B)。送達効率の欠如は、生成された細孔のサイズがFD500巨大分子の通過を可能にするほど大きくないことに潜在的に起因し得る。両方のフルエンスについての送達収率の飽和は、100nm PD-BSA NPの送達効率に対する影響が限定的であることも示唆している(
図8A、8B)。
【0367】
約300nmのPD-BSA NPを用いたフォトポレーションは、ポリドーパミンの濃度の増加に伴う送達効率の明らかな増加を示し、これは両方のレーザー強度(強度設定5および7、それぞれ
図9Aおよび9B)で示された。強度7の増加は強度5と比較してわずかに高く、これはより大きな孔の生成に起因すると考えられる。さらに、14.3x10
8 PD-BSA NP/mLの濃度から開始して、より高濃度のPD-BSA NPでは生存率が80%未満に低下し始めた。強度7および6.54×10
8PD-BSA NP/mLの濃度を使用すると、26%の最高収率値が得られた(
図10A、10B)。
【0368】
PD-BSANPサイズを約500nmに増加させることによって、より低いポリドーパミン濃度で高い送達効率を達成することができるが、より高い毒性も伴う(
図11A、11B)。レーザー強度を強度3および5に下げる必要があった。さらに、おそらく生成される泡がはるかに大きいため、100nmおよび300nmの粒子と比較して、より低い濃度のポリドーパミンを使用する必要があった。強度5および0.77×10
8PD-BSA NP/mLの濃度を使用すると、約36%の最適な送達収率を得ることができた(
図12A、12B)。
【0369】
ここでも、PD-BSA NPサイズ(すなわち、750nm)をさらに増加させることによって、高い送達効率を得ることができた(
図13A、13B)。約53%の最適な送達収率は、両方の強度(すなわち、3および5)およびそれぞれ1.2×10
8および0.77×10
8PD-BSA NP/mLの濃度を使用して得ることができた(
図14A、14B)。この実験は、強度2および強度4の750nm粒子に対しても実行され、同様に高い送達収率が得られた(結果は示されていない)。
【0370】
ポリドーパミンのサイズを1000nmまでさらに増加させると、同様のレーザー強度(強度設定3および4、それぞれ
図15A、15B)ではるかに高い毒性が観察され得る。これは、1000nmのPD-BSA NPの場合、生成された細孔のサイズが修復するには大きすぎることを示唆し得る。生存率が80%を超えたままである最良の結果は、0.32×10
8PD-BSA NP/mLの濃度で得ることができた(
図16A、16B)。この場合、送達収率は約39%であり、約750nmのPD-BSA NPと比較して低かった。この実験は、強度2および強度5の1000nm粒子に対しても実行された(結果は示されていない)。
【0371】
結論として、接着HeLa細胞において最適な送達収率を示す最適なサイズは、流体力学的直径が約750nmのPD-BSA NPであった。
【0372】
(実施例3:細胞へのカーゴの送達収率に対する光応答性有機粒子のコーティングの影響を調査するための本発明の実施形態による方法)
【0373】
(材料および方法)
送達効率、ひいてはPD NPと細胞膜の結合が表面電荷に依存しないことを示すために、分岐ポリエチレンイミン(bPEI、25kDa、Sigma Aldrich、セントルイス、アメリカ合衆国)のカチオン層で500nm PD NPを官能化した。簡単に説明すると、5mLのbPEI 25kDa 10%m/V溶液を、Hyclone水中の5mLのPD NPに添加した。次いで、混合物をチップ超音波処理器(Branson Ultrasonic Corporation、米国ダンベリー)で20~30秒間超音波処理した(10%A)。懸濁液を、IKA(登録商標)MS3ベーシックシェーカー(IKA、Staufen im Breisgau、ドイツ)中で一晩激しく振盪した。最後に、懸濁液をHyClone水で少なくとも3回洗浄することによって、非結合のbPEIを除去した(4000rcf、5分間)。
【0374】
PD-BSA粒子を用いたフォトポレーション実験と同様に、PD-PEI NPを用いたフォトポレーション実験は、混合フォトポレーション法(つまり、インキュベーションステップなし)を使用して接着HeLa細胞に対して実行され、送達されるカーゴはFD500であった。
【0375】
(結果)
PD-PEI NPの流体力学的直径は、Hyclone水中でDLSによって測定すると522±24nmであった。PD-PEI NPのゼータ電位は約+30±1mVであり、bPEIによるコーティングが成功したことが確認された。PD-BSA NPで観察されたのと同様に、PD-PEI NPの濃度を増加させると高い送達効率を達成することができた(強度設定3および5、それぞれ
図17A、17B)。これはまた、PD-PEI NPの濃度の増加に対するより高い毒性を伴った(
図17A、17B)。PD-BSA NPであるPD-BSA 500nmの送達収率(
図12A:最大収率34%、
図12B:最大収率36%)と比較して、PD-PEI粒子は、PD-BSA 500nmの両方のフルエンスについて約30%のわずかに低い送達収率を示す(
図18A、18B)。
【0376】
(実施例4:コーティングされていない光応答性有機粒子を有する細胞内へカーゴを送達するための本発明の実施形態による方法)
【0377】
(材料および方法)
この実験は、コーティングされていないポリドーパミンNPもフォトポレーション手順で使用できるかどうかをテストするために使用された。概念実証として、コーティングされていないPD粒子を使用して(つまり、インキュベーションを行って)接着HeLa細胞に対して従来のフォトポレーションを実行した。コーティングされていないPD NPはOpti-MEMなどの生物学的培地では不安定であるため、タンパク質コロナの形成を通じてPD NPのコロイド安定性を高めることができる完全細胞培養培地を使用することを選択した。
【0378】
(結果)
コーティングされていないPD NPの濃度が増加すると、FD500陽性細胞の割合が徐々に増加した。これは、CellTiter-Gloアッセイでの処理の2時間後に測定される、細胞生存率の徐々に減少を伴った(
図19A、19B)。強度1および2の両方で得られた最大収率は約33%および32%であり、コーティングなしでフォトポレーションを実行できる可能性を示した(
図20A、20B)。
【0379】
(実施例5:接着HeLa細胞におけるデキストランの送達のための本発明の実施形態による方法)
【0380】
(材料および方法)
(ポリビニルアルコールでコーティングされたポリピロールナノ粒子(PPy NP)の合成)
ポリビニルアルコール(PVA)でコーティングされたポリピロールNPの合成は、わずかに変更を加えた以前のプロトコルに従って実行された(S.E.Zayanら、AIP Conference Proceedings、2019、2190、020025)。簡単に説明すると、250mgのFeCl3(Sigma-Aldrich)と20mgのPVAとを20mLの純水(Hyclone、VWR)に溶解した。混合物を磁気撹拌によって1時間撹拌した。次に、100μLのピロールモノマー(TCI Chemical)を1.4mLのHyclone水と混合し、次いで室温で18.5mLの混合物に滴下した。重合反応の成功は、混合物の色の変化(色が徐々に黒色の溶液に変化する)によって視覚化し得る。3時間後、混合物を遠心分離により数回洗浄し、最後にHyclone水に分散させた。溶液をチップ超音波処理により30秒間超音波処理した(10%A)。
【0381】
(ポリビニルアルコールでコーティングされたポリピロールナノ粒子(PPy NP)の物理化学的特性評価)
動的光散乱(DLS、Zetasizer Nano ZS、Malvern Instruments Co.,Ltd.)およびナノ粒子追跡分析(NTA、NanoSight LM10、Malvern Panalytical、英国)を使用して、流体力学的直径とゼータ電位を測定した。NTAは488nmレーザーを使用して散乱モードで実行された。NTA は、ナノ粒子濃度の測定にも使用された。
【0382】
(蒸気ナノバブルの発生)
パルスナノ秒レーザー(OpoletteTM HE 355 LD、OPOTEK Inc、CA、パルス幅7ns、波長561nm)を適用した際のPPy NPからの蒸気ナノバブルの生成を暗視野顕微鏡で可視化した。レーザーパルスエネルギーは、パルスレーザーと同期したエネルギーメーター(J-25MBHE&LE、Energy Max-USB/RSセンサー、Coherent)を使用して測定された。sCMOSカメラ(Prime RM16C、Photometrics、Tucson、米国)を使用してショートムービーを記録し、NIS elementsソフトウェア(Nikon、日本)で処理した。
【0383】
(細胞培養)
HeLa細胞(ATTC(登録商標)CCL-2(商標))を、10%ウシ胎児血清(FBS)、100U/mLペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco-Invitrogen)および2mM L-グルタミン(Gibco-invitrogen)をさらに添加したDMEM/F-12培地(Gibco-Invitrogen)で培養した。細胞を、加湿インキュベーター(37℃、5%CO2)内に保管し、コンフルエントに達すると頻繁に継代した。
【0384】
(フローサイトメトリー)
フローサイトメトリーを使用して、フォトポレーション手順の送達効率(FD500)を評価した。フォトポレーション後、細胞をDPBS(-/-)で数回(3分間、500rcf)洗浄して、過剰なFD500または細胞破片を除去した。洗浄ステップの後、DPBS、1%ウシ血清アルブミン(BSA)および0.1%NaN3を含むフロー緩衝液を細胞に添加した。さらに、0.5μM TO-PRO-3ヨウ化物を使用して死細胞を染色した。次いで、サンプルを、それぞれ488nmおよび637nmの励起レーザーを使用するCytoFLEXフローサイトメトリー(Beckman Coulter、クレーフェルト、ドイツ)で測定した。eGFP蛍光は525/40nmバンドパスフィルターで検出され、TO-PRO-3 プローブのシグナルは660/20nmバンドパスフィルターで検出された。TO-PRO-3陽性細胞(つまり、死細胞)は、FD500およびeGFPシグナルの定量化のために除外された。
【0385】
(生存率アッセイ)
細胞生存率は、製造元の推奨に従ってCellTiter Glo(登録商標)代謝生存率アッセイを使用して測定した。簡単に説明すると、接着HeLa細胞をトリプシン処理し、100μLのHeLa細胞懸濁液を 96 ウェルプレートに移し、100μLのCellTiter Glo溶液を補充した。次いで、プレートをシェーカー上で約10分間撹拌し(100rpm)、混合物100μLを白色不透明の96ウェルプレート(Greiner Bio-One、ベルギー)に移した。発光シグナルの読み取りは、ルミノメーター(プレートリーダー、GloMax、Promega)によって実行した。
【0386】
(接着HeLa細胞へのデキストランのインキュベーションと混合フォトポレーション)
(接着HeLa細胞上でのデキストランのインキュベーションフォトポレーション)
HeLa細胞を96ウェルプレートに1ウェルあたり20,000細胞で播種し、インキュベーター(37℃、5%CO2)内で一晩インキュベートした。次に、接着HeLa細胞をDPBSで1回洗浄し、濃度を増加させたPPY NPを含む新しいHeLa細胞培地を添加し、30分間インキュベートした。30分間のインキュベーション後、細胞をOpti-MEM培地で1回洗浄して、非結合のPPy NPを除去した。洗浄後、1mg/mL 500kDa フルオレセインイソチオシアネートデキストラン(FD500)を含む新鮮なOpti-MEM培地50μLを細胞に添加した。次に、特注のフォトポレーションセットアップ(パルス幅:3ns、波長532nm)で1.6J/cm2のフルエンスでフォトポレーションを実行した。模擬フォトポレーションは、PPy NPを使用して、カーゴなしで実行された。次いで、飲作用によるマーカーのさらなる取り込みを避けるために、細胞を細胞培養培地で数回洗浄して過剰なFD500を除去した。
【0387】
(接着HeLa細胞上でのデキストランの混合フォトポレーション)
HeLa細胞を96ウェルプレートに1ウェルあたり20,000細胞で播種し、インキュベーター(37℃、5%CO2)内で一晩インキュベートした。次に、接着HeLa細胞をOpti-MEM培地で1回洗浄し、濃度を増加させたFD500-PPy NPを含むOpti-MEM培地25μLを添加した。混合物中のFD500の最終濃度が1mg/mLとなるように、FD500を含むOpti-MEMをさらに25μL加えた。次に、フォトポレーション設定で1.6J/cm2のフルエンスでフォトポレーションを実行した(パルス持続時間:3ns、波長532nm)。次いで、細胞を細胞培養培地で数回洗浄して、過剰なFD500を除去した。
【0388】
(結果)
ポリビニルアルコール(PVA)でコーティングされたポリピロールNPの合成は、パルスレーザーによる励起時にPPy NPが蒸気ナノバブルを形成する能力を実証するために実行された。
図21は、合成されたPVAコーティングPPy NPの物理化学的特性を示す。HyClone水中での DLS によって測定したPPy NPのZ平均およびゼータ電位は、それぞれ614±1nmおよび+24.3±0.7mVであった。+24.3±0.7mVのゼータ電位によって、PVAによるコーティングが成功したことが確認された。VNBの発生は暗視野顕微鏡で視覚化された。レーザー照射前にはVNBは見えなかったが(
図22、左の画像)、レーザーパルスで照らすといくつかのVNBが現れた(
図22、右の画像)。
【0389】
次に、高分子を細胞に送達するためのフォトポレーション増感剤としてのPPy NPの可能性を調査した。概念実証を行うために、これは、フォトポレーションによく使用されるモデル細胞株としてHeLa細胞で行われた。この実験では、500kDaのFITCデキストラン(FD500)が、eGFP-mRNA(353kDa、996ヌクレオチド)と同等の分子量を有する大きなモデル高分子として送達された。
【0390】
図23は、接着HeLa細胞における混合法による500kDa FITC-デキストラン(FD500)の送達効率および細胞生存率(フォトポレーション後2時間)を示す。FD500陽性細胞のパーセンテージは、生存細胞(すなわち、TO-PRO-3ヨウ化物陰性)のゲーティング後のフローサイトメトリーによって決定され(「%効率」)、PPy-PVA NPの濃度が増加するにつれて徐々に増加した(
図3A~C)。これには、CellTiter-Gloアッセイによる処理の2時間後に測定された細胞生存率の緩やかな減少が伴った。
【0391】
生存細胞の割合とFD500陽性細胞の割合を乗算することとによって、開始集団に対する生FD500陽性細胞の割合である送達収率を計算し得る。
図24は、PPy増感フォトポレーションについての生存FD500陽性細胞の収率百分率を示す。最高の収率値は32x10
7NP/mLで得られた。
【0392】
(実施例6:接着HeLa細胞におけるデキストランの送達のための本発明の実施形態による方法)
(材料および方法)
【0393】
(トリパンブルー担持脂質ナノ粒子(LNP-TB)の合成)
トリパンブルーを担持した脂質ナノ粒子の合成は、いくつかの変更を加えた以前のプロトコルに基づいていた(D.Mirandaら、Biomater.Sci.2019,7,3158)。簡単に説明すると、クロロホルム中の486μLのDOTAP(25mg/ml、Avanti Lipids)および215μLのDSPE-PEG2000(25mg/ml、Avanti Lipids)を丸底フラスコに移した。次に、7.46mgのコレステロール粉末(Avanti Lipids)を800μLの過剰なクロロホルムとともに添加した。DOTAP:DSPE-PEG:コレステロールの最終比は10:9:1であった。次いで、混合物をロータリーエバポレーターに移した。溶液を真空条件下、250rpm、40℃で20~30分間回転させて、乾燥脂質フィルムを形成した。500μLのトリパンブルーストック溶液(0.4%、Gibco)を2mLの脱イオン水で希釈することによって、トリパンブルー作業溶液を調製した。次いで、得られた脂質フィルムを2mLの1mg/mlトリパンブルー作業溶液で再水和し、約30秒間渦動させた。50kDa MWCOカセット(Spectra/Por、Float-A-Lyzer G2)を使用して一晩透析を実行し、共役していないトリパンブルーを除去した。
【0394】
(トリパンブルー担持脂質ナノ粒子(LNP-TB)の物理化学的特性評価)
動的光散乱(DLS、Zetasizer Nano ZS、Malvern Instruments Co.,Ltd.)およびナノ粒子追跡分析(NTA、NanoSight LM10、Malvern Panalytical、英国)を使用して、流体力学的直径およびゼータ電位を測定した。NTAは488nmレーザーを使用して散乱モードで実行された。NTAは、ナノ粒子濃度の測定にも使用された。
【0395】
(蒸気ナノバブルの発生)
パルスナノ秒レーザー(OpoletteTM HE 355 LD、OPOTEK Inc、CA、パルス幅7ns、波長561nm)を適用した際のLNP-TBからの蒸気ナノバブルの生成を暗視野顕微鏡で可視化した。レーザーパルスエネルギーは、パルスレーザーと同期したエネルギーメーター(J-25MBHE&LE、Energy Max-USB/RSセンサー、Coherent)を使用して測定された。EMCCDカメラ(Prime RM16C、Photometrics、Tucson、米国)を使用してショートムービーを記録し、NIS elementsソフトウェア(Nikon、日本)で処理した。
【0396】
(細胞培養)
HeLa細胞(ATTC(登録商標)CCL-2(商標))を、10%ウシ胎児血清(FBS)、100U/mLペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco-Invitrogen)および2mM L-グルタミン(Gibco-invitrogen)をさらに添加したDMEM/F-12培地(Gibco-Invitrogen)で培養した。細胞を、加湿インキュベーター(37℃、5%CO2)内に保管し、コンフルエントに達すると頻繁に継代した。
【0397】
(フローサイトメトリー)
フローサイトメトリーを使用して、フォトポレーション手順の送達効率(FD500)を評価した。フォトポレーション後、細胞をDPBS(-/-)で数回(3分間、500rcf)洗浄して、過剰なFD500または細胞破片を除去した。洗浄ステップの後、DPBS、1%ウシ血清アルブミン(BSA)および0.1% NaN3を含むフロー緩衝液を細胞に添加した。さらに、0.5 μMTO-PRO-3ヨウ化物を使用して死細胞を染色した。次いで、サンプルを、488nmおよび637nmの励起レーザーを使用するCytoFLEXフローサイトメトリー(Beckman Coulter、クレーフェルト、ドイツ)で測定した。eGFP蛍光は525/40nmバンドパスフィルターで検出され、TO-PRO-3プローブのシグナルは 660/20nmバンドパスフィルターで検出された。TO-PRO-3陽性細胞(つまり、死細胞)は、FD500およびeGFPシグナルの定量化のために除外された。
【0398】
(生存率アッセイ)
細胞生存率は、製造元の推奨に従ってCellTiter Glo(登録商標)代謝生存率アッセイを使用して測定した。簡単に説明すると、接着HeLa細胞をトリプシン処理し、100μLのHeLa細胞懸濁液を 96 ウェルプレートに移し、100μLのCellTiter Glo溶液を補充した。次いで、プレートをシェーカー上で約10分間撹拌し(100rpm)、混合物100μLを白色不透明の96ウェルプレート(Greiner Bio-One、ベルギー)に移した。発光シグナルの読み取りは、ルミノメーター(プレートリーダー、GloMax、Promega)によって実行した。
【0399】
(接着HeLa細胞へのデキストランのインキュベーションと混合フォトポレーション)
(接着HeLa細胞上でのデキストランのインキュベーションフォトポレーション)
HeLa細胞を96ウェルプレートに1ウェルあたり20,000細胞で播種し、インキュベーター(37℃、5%CO2)内で一晩インキュベートした。次に、接着HeLa細胞をDPBSで1回洗浄し、濃度を増加させたLNP-TBを含む新しいHeLa細胞培地を添加し、30分間インキュベートした。30 分間のインキュベーション後、細胞をOpti-MEM培地で1回洗浄して、非結合のLNP-TBを除去した。洗浄後、1mg/mL 500kDaフルオレセインイソチオシアネートデキストラン(FD500)を含む新鮮なOpti-MEM培地50μLを細胞に添加した。次に、特注のフォトポレーションセットアップ(パルス幅:3ns、波長532nm)で1.6J/cm2のフルエンスでフォトポレーションを実行した。模擬フォトポレーションは、LNP-TBを使用して、カーゴなしで実行された。次いで、飲作用によるマーカーのさらなる取り込みを避けるために、細胞を細胞培養培地で数回洗浄して過剰なFD500を除去した。
【0400】
(接着HeLa細胞上でのデキストランの混合フォトポレーション)
HeLa細胞を96ウェルプレートに1ウェルあたり20,000細胞で播種し、インキュベーター(37℃、5%CO2)内で一晩インキュベートした。次に、接着HeLa細胞をOpti-MEM培地で1回洗浄し、濃度を増加させたFD500-LNP-TBを含むOpti-MEM培地25μLを添加した。混合物中のFD500の最終濃度が1mg/mLとなるように、FD500を含むOpti-MEMをさらに25μL加えた。次に、フォトポレーション設定で1.6J/cm2のフルエンスでフォトポレーションを実行した(パルス持続時間:3ns、波長532nm)。次いで、細胞を細胞培養培地で数回洗浄して、過剰なFD500を除去した。
【0401】
(結果)
トリパンブルー担持脂質ナノ粒子(LNP-TB NP)の合成は、パルスレーザーによる励起時にLNP-TB NPが蒸気ナノバブルを形成する能力を実証するために実行された。
図25は、合成されたLNP-TB NPの物理化学的特性を示す。HyClone水中でのDLSによって測定したLNP-TBNPのZ平均およびゼータ電位は、それぞれ372±1nmおよび+21.1±1.6mVであった。VNBの発生は、生涯にわたって光を激しく散乱させるため、暗視野顕微鏡で視覚化された。レーザー照射前にはVNBは見えなかったが(
図26、左の画像)、レーザーパルスで照らすといくつかのVNBが現れた(
図26、右の画像)。
【0402】
次に、高分子を細胞に送達するためのフォトポレーション増感剤としてのLNP-TBの可能性を調査した。概念実証を行うために、これは、フォトポレーションによく使用されるモデル細胞株としてHeLa細胞で行われた。この実験では、500kDaのFITCデキストラン(FD500)が、eGFP-mRNA(353kDa、996ヌクレオチド)と同等の分子量を有する大きなモデル高分子として送達された。
【0403】
図27は、接着HeLa細胞における混合法による500kDa FITC-デキストラン(FD500)の送達効率および細胞生存率(フォトポレーション後2時間)を示す。FD500陽性細胞のパーセンテージは、生存細胞(すなわち、TO-PRO-3ヨウ化物陰性)のゲーティング後のフローサイトメトリーによって決定され(「%効率」)、PPy-PVA NPの濃度が増加するにつれて徐々に増加した(
図3A~C)。これには、CellTiter-Gloアッセイによる処理の2時間後に測定した、LNP-TB NPのすべての濃度で 100% 近くを維持する細胞生存率が伴った。
【0404】
生存細胞の割合とFD500陽性細胞の割合を乗算することとによって、開始集団に対する生FD500陽性細胞の割合である送達収率を計算し得る。
図24は、PPy増感フォトポレーションについての生存FD500陽性細胞の収率百分率を示す。最高の収率値は 32x10
7NP/mLで得られた。
【0405】
(実施例7:タンパク質ベースのナノ粒子を使用した蒸気ナノバブルの生成を示す本発明の実施形態による方法)
【0406】
(材料および方法)
(ヒト血清アルブミンICGナノ粒子(HSA ICGNP)の合成)
ヒト血清アルブミンICGナノ粒子の合成は、以前のプロトコル(Z.Shengら、ACS Nano 2014、8、12310)に従って実行された。ICGおよびHSAを、それぞれ20mg/mLおよび80mg/mLの濃度で50mM GSH(Sigma-Aldrich、セントルイス、米国)溶液に溶解した。1mLのICG溶液を1mLのHSA溶液と混合した。続いて、2mLのエタノールを加えて HSA-ICGNPを沈殿させた。懸濁液を室温で30分間磁気撹拌した(Heidolph Instruments GmbH&CO.KG、Schwabach、Germany)。次に、懸濁液をシリンジでカットオフ 10,000 Daの 8 mLの透析カセット(Thermo Fisher Scientific、Waltham、USA)に移した。懸濁液を移した後、別のシリンジを使用して残りの空気をカセットから除去した。透析カセットを、脱イオン水で満たされた大きなビーカー(約1L)にSlide-A-Lyzer(カセットが沈むのを防ぐため)(Thermo Fisher Scientific、Waltham、米国)とともに置き、ビーカーを4℃で24時間マグネティックスターラーの上に置いた。透析後、懸濁液をシリンジでカセットから取り出し、ファルコンチューブに入れて遮光し、4℃で保存した。
【0407】
(ヒト血清アルブミン ICGナノ粒子(HSA ICGNP)の物理化学的特性評価)
動的光散乱(DLS、Zetasizer Nano ZS、Malvern Instruments Co.,Ltd.)およびナノ粒子追跡分析(NTA、NanoSight LM10、Malvern Panalytical、英国)を使用して、流体力学的直径およびゼータ電位を測定した。NTAは488nmレーザーを使用して散乱モードで実行された。NTA は、ナノ粒子濃度の測定にも使用された。
【0408】
(蒸気ナノバブルの発生)
パルスナノ秒レーザー(OpoletteTM HE 355 LD、OPOTEK Inc、CA、パルス幅7ns、波長561nm)を適用した際のHSA ICGNPからの蒸気ナノバブルの生成を暗視野顕微鏡で可視化した。レーザーパルスエネルギーは、パルスレーザーと同期したエネルギーメーター(J-25MBHE&LE、Energy Max-USB/RSセンサー、Coherent)を使用して測定された。EMCCDカメラ(Prime RM16C、Photometrics、Tucson、米国)を使用してショートムービーを記録し、NIS elements ソフトウェア(Nikon、日本)で処理した。
【0409】
(結果)
ヒト血清アルブミンICGナノ粒子(HSA ICGNP)の合成は、パルスレーザーによる励起時にHSA ICGNPが蒸気ナノバブルを形成する能力を実証するために実行された。
図28は、合成されたHSA ICGNPの物理化学的特性を示す。HyClone水中でのDLSによって測定したHSA ICGNPのZ平均およびゼータ電位は、それぞれ309nmおよび-11.9mVであった。
【0410】
VNBの発生は、生涯にわたって光を激しく散乱させるため、暗視野顕微鏡で視覚化された。レーザー照射前にはVNBは見えなかったが(
図29、左の画像)、レーザーパルスで照らすといくつかのVNBが現れた(
図29、右の画像)。
【0411】
上述の例は、少なくとも1つのポリマーベースの光応答性有機粒子、少なくとも1つのタンパク質ベースの光応答性有機粒子、および少なくとも1つの脂質ベースの光応答性有機粒子の使用を記載している。
さらに、さまざまなポリマーベース、タンパク質ベース、脂質ベースの光応答性有機粒子および/またはそれらの組み合わせを使用して実験を実行した(データは追加されていない)。結果は、上で議論した結果と同等であった。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞内にカーゴを送達するためのin vitroまたはex vivoの方法であって、
細胞を1つ以上の光応答性有機粒子およびカーゴと接触させ、前記カーゴは、1つ以上の前記光応答性有機粒子に結合しておらず、前記有機粒子は、ポリマ
ー粒子、タンパク
質粒子、脂
質粒子、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、それによって、前記細胞、前記カーゴ、および前記1つ以上の光応答性有機粒子の混合物を得る、ステップと、
前記細胞、前記カーゴ、および前記1つ以上の光応答性有機粒子の前記混合物に電磁放射線を照射し、それによって前記細胞のバリアの透過化を引き起こし、前記カーゴを前記細胞内に送達するステップと、を含むか、または
細胞を1つ以上の光応答性有機粒子と接触させ、前記有機粒子は、ポリマ
ー粒子、タンパク
質粒子、脂
質粒子、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、それによって前記細胞と前記1つ以上の光応答性有機粒子との混合物を得る、ステップと、
前記細胞と前記1つ以上の光応答性有機粒子の前記混合物に電磁放射線を照射し、それによって前記細胞のバリアの透過化を引き起こすステップと、
前記細胞および前記1つ以上の光応答性有機粒子の前記混合物をカーゴと接触させ、それによって前記カーゴを前記細胞内に送達するステップと、を含む、
細胞内にカーゴを送達するためのin vitroまたはex vivoの方法。
【請求項2】
前記1つ以上の光応答性有機粒子の2点間の最大距離は、約250nm~約1250nm、好ましくは約300nm~約1200nm、約400nm~約1100nm、または約500nm~約1000nmである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カーゴは、核酸、タンパク質、化学物質、多糖類、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは、前記カーゴは、核酸であり、より好ましくは、前記カーゴは、mRNAまたはプラスミドDNAである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記光応答性有機粒子は、光応答性ポリマ
ー粒子であり、好ましくは、前記光応答性有機粒子は、ポリドーパミン(PD)粒子、ポリ(N-フェニルグリシン)(PNPG)粒子、ポリ-2-フェニル-ベンゾビスチアゾール(PPBBT)粒子、ポルフィリン粒子、フタロシアニン粒子、またはポリピロール粒子から選択される光応答性ポリマ
ー粒子である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記光応答性有機粒子は、光吸収分子を含むポリマ
ー粒子、タンパク
質粒子、または脂
質粒子であり、好ましくは、前記光応答性有機粒子は、光吸収分子を搭載または官能化したポリマ
ー粒子、タンパク
質粒子、または脂
質粒子である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記光吸収分子は、光吸収色素、天然に存在する光吸収剤、および合成光吸収剤からなる群から選択される分子である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリマ
ー粒子は、ポリ(DL-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、エチルセルロース、セルロースアセトフタレート、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、コラーゲン、絹、アルギン酸、ヒアルロン酸、デキストラン、デンプン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリスチレン、メトキシ-PEG-ポリ乳酸、ポリ(シアノアクリル酸アルキル)(PACA)、ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド(PLGH))、ポリ(塩酸アリルアミン)、またはポリオキサゾリンを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記光応答性有機粒子は、表面で官能化されており、好ましくは、前記光応答性有機粒子は、アルブミン、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)(PDDAC)、ポリ(アリルアミン塩酸塩)(PAH)、ポリアミドアミン(PAA)、ポリ(アミノ-co-エステル)(PAE)、ポリ[2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート](PDMAEMA)、ヒアルロン酸(HA)、ゼラチン、ポリグリセリン、シクロデキストリン(CD)、デキストラン、セルロース、シリカ、ポリオキサゾリン、スルホベタインシラン(SBS)、カチオン性脂質、中性脂質、アニオン性脂質、キトサン、ポリ-L-リジンからなる群から選択される1つ以上の化合物でコーティングされている、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記光応答性有機粒子は、生分解性である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記光応答性有機粒子は、ポリドーパミン粒子であり、好ましくは、前記光応答性有機粒子は、アルブミンでコーティングされたポリドーパミン粒子である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞は、動物細胞であり、好ましくは、前記細胞は、ヒト細胞である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞は、免疫細胞であり、好ましくは、前記免疫細胞は、T細胞、リンパ球、マクロファージ、樹状細胞、単球、NK細胞、NKT細胞、B細胞、好中球、顆粒球、ミクログリア細胞、またはランゲルハンス細胞である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記電磁放射は、パルスレーザーなどのレーザーによって生成され、好ましくは、
前記レーザーのパルス強度は、少なくとも10
4W/cm
2、例えば10
4~10
17W/cm
2であり得、
前記レーザーのパルスのフルエンスは、少なくとも0.01mJ/cm
2、例えば0.01J/cm
2~100J/cm
2であり得、
前記レーザーのパルス数は、少なくとも1レーザーパルス、例えば1~1000レーザーパルスであり得、および/または、
前記レーザーの前記パルスの持続時間は、少なくとも1fs、例えば1fs~100sであり得る、
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
対象における治療方法において使用するための、請求項1から10のいずれか一項に定義される1つ以上の光応答性有機粒子および請求項1から10のいずれか一項に定義されるカーゴであって
、前記方法は、
前記対象の前記細胞の周囲に前記1つ以上の光応答性有機粒子を投与するステップと、
前記対象の前記細胞の周囲の少なくとも一部に照射し、それによって前記細胞のバリアの透過化を引き起こすステップと、
前記対象の前記細胞の周囲に前記カーゴを投与し、それによって前記カーゴを前記細胞内に送達するステップと、
を含むか、または、
前記方法は、
前記対象の前記細胞の周囲に前記1つ以上の光応答性有機粒子および前記カーゴを投与するステップと、
前記対象の前記細胞の周囲の少なくとも一部に照射し、それによって前記細胞のバリアの透過化を引き起こし、前記細胞を前記カーゴに送達するステップと、
を含む、
対象における治療方法において使用するための、請求項1から10のいずれか一項に定義される1つ以上の光応答性有機粒子および請求項1から10のいずれか一項に定義されるカーゴ。
【請求項15】
前記1つ以上の光応答性有機粒子の2点間の最大距離は、約250nm~約1250nm、好ましくは約300nm~約1200nm、約400nm~約1100nm、または約500nm~約1000nmである、使用のための請求項14に記載の1つ以上の光応答性有機粒子およびカーゴ。
【請求項16】
前記細胞は、動物細胞であり、
前記細胞は、ヒト細胞であり、
前記細胞は、免疫細胞であり、好ましくは、免疫細胞は、T細胞、リンパ球、マクロファージ、樹状細胞、単球、NK細胞、NKT細胞、B細胞、好中球、顆粒球、ミクログリア細胞、またはランゲルハンス細胞であり、および/または、
電磁放射線は、パルスレーザーなどのレーザーによって生成される、
使用のための請求項14または15のいずれか一項に記載の1つ以上の光応答性有機粒子およびカーゴ。
【国際調査報告】