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特表2024-514291芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種の開環方法及び触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-01
(54)【発明の名称】芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種の開環方法及び触媒
(51)【国際特許分類】
   C10G 47/18 20060101AFI20240325BHJP
   B01J 23/42 20060101ALI20240325BHJP
   B01J 27/13 20060101ALI20240325BHJP
   B01J 23/58 20060101ALI20240325BHJP
   B01J 29/12 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
C10G47/18
B01J23/42 M
B01J27/13 M
B01J23/58 M
B01J29/12 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558806
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(85)【翻訳文提出日】2023-09-25
(86)【国際出願番号】 US2022018861
(87)【国際公開番号】W WO2022211968
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】63/167,293
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523259215
【氏名又は名称】シェブロン・ユー.エス.エイ. インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】ギルギス,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ゾーンズ,ステイシー・イアン
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA01B
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BB08B
4G169BC03B
4G169BC04B
4G169BC23B
4G169BC32A
4G169BC33A
4G169BC50A
4G169BC67B
4G169BC68A
4G169BC69A
4G169BC70A
4G169BC71A
4G169BC72A
4G169BC73A
4G169BC74A
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169BD03A
4G169BD12B
4G169CB02
4G169CB38
4G169CB62
4G169CB65
4G169DA06
4G169EA04Y
4G169FA02
4G169FB14
4G169FB30
4G169FB40
4G169FB44
4G169FB53
4G169FC08
4G169ZA01A
4G169ZA04A
4G169ZA11A
4G169ZA12A
4G169ZA16A
4G169ZA33A
4G169ZA37A
4G169ZA41A
4G169ZA42A
4G169ZD06
4G169ZD10
4G169ZE04
4G169ZF05A
4G169ZF05B
4H129AA01
4H129DA21
4H129KA12
4H129KC16X
4H129KC19X
4H129KC20X
4H129KC21X
4H129KD18X
4H129KD20X
4H129KD21X
4H129KD24X
4H129KD25X
4H129KD26X
4H129NA15
4H129NA16
(57)【要約】
本開示の実施形態は、炭化水素供給材料中の芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種を開環させて開環生成物を生成する方法を含む。特に、この方法は、外部ポケットを含有する低酸性度の結晶性物質上の貴金属を含む開環触媒の存在下で、芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種を水素と接触させて、芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種の開環を促進させるステップを含む。この方法は、多核芳香族炭化水素(PAHs)から開環生成物への変換において有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族環及びシクロパラフィン環の選択的開環の方法であって、外部ポケットを含む低酸性度の結晶性物質上の貴金属を含む開環触媒の存在下で、芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種を水素と接触させて、芳香族環及びシクロパラフィン環を含む前記炭化水素種の開環を促進させるステップを含む、方法。
【請求項2】
前記低酸性度の結晶性物質の前記外部ポケットがゼオライトの層間剥離によって形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記低酸性度の結晶性物質が、少なくとも0.05重量パーセントのホウ素及び1000重量ppm未満のアルミニウムを含有するホウケイ酸塩若しくはアルミノホウケイ酸塩モレキュラーシーブ、又はチタンケイ酸塩モレキュラーシーブ;アルミノケイ酸塩;並びにシリコアルミニウムリン酸塩、並びにそれらの混合物から選択される、1つ又は複数のタイプのゼオライトの層間剥離から形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記低酸性度の結晶性物質が、SSZ-33、SSZ-46、SSZ-53、SSZ-55、SSZ-57、SSZ-58、SSZ-59、SSZ-60、SSZ-64、SSZ-70、ZSM-5、ZSM-11、TS-1、MTT(例えば、SSZ-32、ZSM-23など)、H-Y、及びそれらの組み合わせから選択される1つ又は複数のタイプのゼオライトの層間剥離から形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記低酸性度の結晶性物質が、1つ又は複数タイプのアルミノケイ酸塩ゼオライトの層間剥離から形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記貴金属が、白金、パラジウム、ニッケル、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
約200℃~約400℃の温度、約1.38MPaG(200psig)~約13.8MPaG(2000psig)の範囲の圧力、及び約0.4~約0.7WHSV hr-1の範囲の重量空間速度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
多核芳香族炭化水素(PAHs)を開環生成物へ転化させる方法であって、(i)PAHsを水素化触媒及び水素により水素化して芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種を生成するステップと;(ii)外部ポケットを含む低酸性度の結晶性物質上の貴金属を含む開環触媒の存在下で、芳香族環及びシクロパラフィン環を含む前記炭化水素種を水素と接触させて、芳香族環及びシクロパラフィン環を含む前記炭化水素種の開環を促進させるステップとを含む、方法。
【請求項9】
前記PAHsがC10~C32PAHsを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記PAHsが水素化分解装置のリサイクル流に由来する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記低酸性度の結晶性物質の前記外部ポケットが、ゼオライトの層間剥離によって形成される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記低酸性度の結晶性物質が、少なくとも0.05重量パーセントのホウ素及び1000重量ppm未満のアルミニウムを含有するホウケイ酸塩若しくはアルミノホウケイ酸塩モレキュラーシーブ、又はチタンケイ酸塩モレキュラーシーブ;アルミノケイ酸塩;並びにシリコアルミニウムリン酸塩、並びにそれらの混合物から選択される、1つ又は複数のタイプのゼオライトの層間剥離から形成される、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記低酸性度の結晶性物質が、SSZ-33、SSZ-46、SSZ-53、SSZ-55、SSZ-57、SSZ-58、SSZ-59、SSZ-60、SSZ-64、SSZ-70、ZSM-5、ZSM-11、TS-1、MTT(例えば、SSZ-32、ZSM-23など)、H-Y、及びそれらの組み合わせから選択される1つ又は複数のタイプのゼオライトの層間剥離から形成される、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記低酸性度の結晶性物質が、1つ又は複数タイプのアルミノケイ酸塩ゼオライトの層間剥離から形成される、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記貴金属が、白金、パラジウム、ニッケル、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
約200℃~約400℃の温度、約1.38MPaG(200psig)~約13.8MPaG(2000psig)の範囲の圧力、及び約0.4~約0.7WHSV hr-1の範囲の重量空間速度で行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
請求項1の方法に従って処理される芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種から生成される、開環炭化水素種を含む組成物。
【請求項18】
請求項8の方法に従って処理される芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種から生成される、開環炭化水素種を含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は2021年3月29日出願の米国仮特許出願第63/167293号の優先権を主張し、その全体の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002]本開示は、低酸性度の結晶性物質上の金属触媒により、炭化水素供給材料中の芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種を転化する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]水素化分解プロセスは、炭化水素の混合物を、容易にグレードアップさせることができる生成物へ変換させるための精製において、日常的に使用される。水素化分解ユニットの転化率を高めるために、未転化の供給材料の一部が、既に通過した反応セクションか、又は独立した反応セクションのいずれかへリサイクルされる。分解反応中に形成される多核芳香族炭化水素(PAHs)は、水素化分解ユニットのリサイクル流に蓄積する。これらの種は装置のつまりを引き起こし水素化処理触媒を害する。
【0004】
[0004]PAHsはいくつかの縮合ベンゼン核又は環を含む。少なくとも3個のベンゼン環を各分子中に含む、重質多核芳香族炭化水素は、より水素化しにくく触媒をより害しやすい場合がある。PAHsは低揮発性及び低劣化速度を有する固体物質である。したがって、PAHsは、例えばクレオソート及びアスファルトにおいて長期にわたって優勢である傾向がある。数百種類のPAHs化合物がこれらの材料において特定されてきた。
【0005】
[0005]特定の水素化条件下で、PAHsを処理して芳香族環及びシクロパラフィン環を含有する部分水素化炭化水素種を形成させることができる。
[0006]水素化分解プロセスでは、シクロパラフィンの環を開いてn-パラフィン及び分岐パラフィンを生成することが望ましい。特に、シクロパラフィン開環は石油流を潤滑剤ベースストックへアップグレードするための重要な反応である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0007]PAHs及びPAH前駆体(例えば部分水素化多核炭化水素)をより軽い種に転化し、それにより加工上の問題を軽減しPAHsから価値の高い生成物への転化を促進するための方法が依然として必要とされている。
【0007】
[0008]前述のことを考慮して、シクロパラフィン開環触媒、及び炭化水素供給材料中のシクロパラフィンの水素化転化を改善する方法を提供することが継続的に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0009]この概要は、単純化した形態で様々な概念を紹介するために示され、これは詳細な説明において下記でさらに説明される。この概要は、特許請求の範囲に記載される主題の必要な又は本質的な特徴を特定することを意図しておらず、またこの概要は特許請求の範囲に記載される主題の範囲を限定することも意図していない。
【0009】
[0010]この開示の態様は、炭化水素供給材料中の芳香族環及びシクロパラフィン環を選択的に開環して開環生成物を生成する方法を対象とする。有利には、この方法は、シクロパラフィン環の開環を選択的にもたらすのに使用することができ、多核芳香族炭化水素(polynuclear aromatic hydrocarbons)(PAHs)をより軽い種に転化するのに使用することができる。
【0010】
[0011]一態様において、芳香族環及びシクロパラフィン環の選択的開環の方法は、外部ポケットを含有する低酸性度の結晶性物質(low-acidity crystalline material)上の貴金属を含む開環触媒の存在下で、芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種を水素と接触させて、芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種の開環を促進させるステップを含む。
【0011】
[0012]別の態様において、多核芳香族炭化水素(PAHs)を開環生成物へ転化させる方法は、(i)PAHsを水素化触媒及び水素により水素化して芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種(すなわち、芳香族環及びシクロパラフィン環を含む部分水素化種)を生成するステップと;(ii)外部ポケットを含有する低酸性度の結晶性物質上の貴金属を含む開環触媒の存在下で、芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種を水素と接触させて、芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種の開環を促進させるステップとを含む。
【0012】
[0013]別の態様において、本明細書に記載の方法に従って芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種の開環を促進するために、水素、及び外部ポケットを含有する低酸性度の結晶性物質上の貴金属を含む開環触媒が使用される。
【0013】
[0014]別の態様において、組成物は、本明細書に記載の方法に従って処理される芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種から生成される開環炭化水素種を含む。
[0015]この概要及び以下の詳細な説明は例を提供し、本開示の単に説明的なものである。したがって、前述の概要及び以下の詳細な説明は制限的と考えられるべきではない。本明細書において示されるものに加えて、さらなる特徴又はその変化形、例えば、詳細な説明に記載されるものの様々な特徴の組み合わせ及び部分組み合わせなどを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
定義
[0016]本明細書で使用される用語をより明確に定義するために、以下の定義を示す。別段の指定がない限り、以下の定義はこの開示に適用可能である。用語がこの開示で使用されるが本明細書において具体的に定義されていない場合、IUPAC Compendium of Chemical Terminologyの定義を適用することができ、ただしその定義が本明細書において適用される任意の他の開示若しくは定義と対立しない、又はその定義が適用される任意の請求項をあいまいな若しくは使用不可能なものにしない限りにおいてである。参照により本明細書に組み込まれる任意の文書により示される任意の定義又は使用法が、本明細書において示される定義又は使用法と対立する限りにおいては、本明細書において示される定義又は使用法が支配する。
【0015】
[0017]組成物及び方法は、様々な成分又はステップを「含むこと(comprising)」に関して記載されるが、別段の指定がない限り、組成物及び方法は様々な成分又はステップ「から本質的になる」又は「からなる」こともある。
【0016】
[0018]「a」、「an」、及び「the」という用語は、複数の代替物、例えば少なくとも1つを含むことを意図する。本明細書で使用する、「含む(including)」、「有する(with)」、及び「有する(having)」という用語は、別段の指定がない限り、含む(comprising)(すなわち、オープンランゲージ)として定義される。
【0017】
[0019]様々な数値範囲が本明細書で開示される。出願人が何らかのタイプの範囲を開示する又は特許請求の範囲に記載する場合、出願人の意図は、別段の指定がない限り、その範囲の終点並びにそれに包含される任意の部分範囲及び部分範囲の組み合わせを含めて、そのような範囲が合理的に包含し得るそれぞれの考えられる数を個々に開示する又は特許請求の範囲に記載することである。例えば、但し書きにより除外されない限り、本明細書で開示される範囲のあらゆる数値の終点はおおよそのものである。
【0018】
[0020]値又は範囲は、本明細書において「約」、「およその」1つの特定の値から、及び/又は「およその」別の特定の値までとして表されてもよい。そのような値又は範囲を表す場合、開示される他の実施形態は、1つの特定の値から、及び/又は他の特定の値までの、列挙される具体的な値を含む。同様に、先行する「約」の使用により値がおおよそのものとして表される場合、特定の値は別の実施形態を成すことが理解されることになる。そこで開示されるいくつかの値が存在すること、及びそれぞれの値がその値自体に加えて「およその」その特定の値としても本明細書に開示されることが、さらに理解されることになる。別の態様において、「約」という用語の使用は、記載される値の±20%、記載される値の±15%、記載される値の±10%、記載される値の±5%、記載される値の±3%、又は記載される値の±1%を意味する。
【0019】
[0021]「周期表」は、2007年6月22日の日付のIUPAC元素周期表の版を指し、周期表の族の付番方法はChemical and Engineering News、63(5)、27(1985)に記載される通りである。
【0020】
[0022]「炭化水素質」及び「炭化水素」は、炭素及び水素原子のみを含有する化合物を指す。他の識別子は、存在する場合は炭化水素中の特定の基の存在を示すのに使用することができる(例えば、ハロゲン化炭化水素は、炭化水素中の当量数の水素原子を置き換える1つ又は複数のハロゲン原子の存在を示す)。
【0021】
[0023]「水素化処理」又は「水素化転化」とは、望ましくない不純物を除去する、及び/又は供給原料を所望の生成物に転化する目的で、より高温及びより高圧で炭質供給原料を水素及び触媒と接触させるプロセスを指す。そのようなプロセスとしては、限定はされないが、メタン化、水性ガスシフト反応、水素化、水素化処理、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化脱金属、水素化脱芳香族、水素化異性化、水素化脱ワックス、及び選択的水素化分解を含めた水素化分解が挙げられる。水素化処理のタイプ及び反応条件に応じて、水素化処理のタイプ及び反応条件に応じて、水素化処理の生成物は、改善された粘度、粘度指数、飽和含量、低温特性、揮発性、及び脱分極などの、改善された物理特性を示し得る。
【0022】
[0024]「水素化分解」とは、水素化及び脱水素が炭化水素の分解/断片化を伴う、例えば、重質炭化水素から軽質炭化水素への転化、又は芳香族及びシクロパラフィンから非環状パラフィンへの転化を伴うプロセスを指す。
【0023】
[0025]「シクロパラフィン」は、一般式C2nを有する化合物を指し、飽和炭素原子の1つ又は複数の環を有することにより特徴づけられる。複数の環を有するシクロパラフィンにおいて、環は縮合していてもよい。シクロパラフィンは置換基及び芳香族環を含んでいてもよいが、飽和炭素原子の1つ又は複数の環も含有していなければならない。
【0024】
[0026]「バインダー」又は「支持体」という用語は、特に「触媒担体」という用語において使用される場合、典型的には触媒材料が付着する広い表面積を有する固体である、従来の材料を指す。支持材料は不活性であるか又は触媒反応に関与してもよく、多孔質又は非多孔質であってもよい。典型的な触媒担体としては、様々な種類の炭素、アルミナ、シリカ、及びシリカ-アルミナ、例えば、アモルファスシリカアルミン酸塩、ゼオライト、アルミナ-ボリア、シリカ-アルミナ-マグネシア、シリカ-アルミナ-チタニア、並びに他のゼオライト及び他の複合酸化物をそれらに加えることにより得られる材料が挙げられる。
【0025】
[0027]「モレキュラーシーブ」とは、骨格構造内に分子寸法の均一な細孔を有し、その結果モレキュラーシーブのタイプに応じて特定の分子のみがモレキュラーシーブの細孔構造を利用可能であり、一方他の分子は例えば分子サイズ及び/又は反応性に起因して排除される、結晶性微小孔性固体を指す。ゼオライト、結晶性アルミノリン酸塩、及び結晶性シリコアルミノリン酸塩はモレキュラーシーブの代表例である。
【0026】
[0028]「触媒粒子」、「触媒組成物」、「触媒混合物」、「触媒系」などの用語は、組成物の初期出発成分、並びにこれらの初期出発成分を接触させることにより生じ得るいかなる生成物(複数可)も包含し、これは不均一及び均一の両方の触媒系又は組成物を含む。
【0027】
[0029]出願人は、例えば出願人が出願の時点で気づかない可能性がある参考文献について釈明するために、出願人が何らかの理由で開示の最大限よりも少なく特許請求の範囲に記載することを選択する場合、グループ内の任意の部分範囲又は部分範囲の組み合わせを含めた、任意のそのような値又は範囲のグループの任意の個々の構成要素を但し書きにより外す又は除外する権利を有し、これは範囲によって又は任意の同様の方法で特許請求の範囲に記載することができる。さらに、出願人は、特許請求の範囲に記載されるグループの任意の構成要素を但し書きにより外す又は除外する権利を有する。
【0028】
[0030]本明細書に記載のものと同様又は等価の任意の方法及び材料を本発明の実施又は試験において使用できるが、典型的な方法及び材料が本明細書に記載される。
[0031]本明細書で言及されるあらゆる公開物及び特許は、例えば本発明に関連して使用される可能性がある公開物に記載されている構造物及び方法を説明及び開示する目的で、参照により本明細書に組み込まれる。本文の全体を通して論じられる公開物は、単にその開示のために本出願の出願日よりも前に掲載されている。本明細書のいかなるものも、以前の発明のおかげで発明者らがそのような開示に先行する権利がないという承認として解釈されるべきではない。
【0029】
[0032]本開示はその適用において、以下の説明に示される又は図面に示される部材の構成及び配置の詳細に限定されないことを理解するべきである。
[0033]本開示は一般に、多核芳香族炭化水素PAHs及びPAH前駆体(例えば部分水素化多核炭化水素又は芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種)を開環生成物に転化し、それにより加工上の問題を軽減しPAHsから価値の高い生成物への転化を促進するための方法に関する。特に、本開示は、水素化分解装置のリサイクル流などの任意の炭化水素供給材料中に存在する、芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種の開環を促進する、例示的な開環触媒に関する。実施形態による方法は、外部ポケットを含有する低酸性度の結晶性物質上の貴金属を含む開環触媒の存在下で、芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種を水素と接触させて、芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種の開環を促進するステップを少なくとも含む。例示的な開環触媒としては、例えば、少なくとも0.05重量パーセントのホウ素及び1000重量ppm未満のアルミニウムを含有するホウケイ酸塩(ボロシリケート)(borosilicate)若しくはアルミノホウケイ酸塩(アルミノボロシリケート)(aluminoborosilicate)モレキュラーシーブ、又はチタンケイ酸塩(チタノシリケート)(titanosilicate)モレキュラーシーブ;アルミノケイ酸塩(アルミノシリケート)(aluminosilicate);並びにシリコアルミニウムリン酸塩(シリコアルミニウムフォスフェート)(silico-aluminium phosphates)、並びにそれらの混合物から選択される、ゼオライトの層間剥離から形成される低酸性度の結晶性物質上の1つ又は複数の貴金属が挙げられる。特定の実施形態において、低酸性度の結晶性物質は、SSZ-33、SSZ-46、SSZ-53、SSZ-55、SSZ-57、SSZ-58、SSZ-59、SSZ-60、SSZ-64、SSZ-70、ZSM-5、ZSM-11、TS-1、MTT(例えば、SSZ-32、ZSM-23など)、H-Y、及びそれらの組み合わせから選択される、1つ又は複数のタイプのゼオライトの層間剥離から形成させることができる。
【0030】
[0034]特定の実施形態において、低酸性度の結晶性物質は、SSZ-35、SSZ-54、SSZ-70、SSZ-74、SSZ-91、SSZ-95、SSZ-109、SSZ-31、SSZ-42、SSZ-43、SSZ-48、SSZ-55、SSZ-57、SSZ-63、SSZ-64、SSZ-65、SSZ-96、SSZ-106、Y、USY、Beta、ZSM-4、MFI(例えば、ZSM-5)、ZSM-12、ZSM-18、ZSM-20、MTT(例えば、ZSM-23)、FER(例えば、ZSM-35)、*MRE(例えば、ZSM-48)、L、及びそれらの組み合わせから選択される、1つ又は複数のタイプのゼオライトの層間剥離から形成させることができる。
【0031】
[0035]一般に、この方法は、芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素供給材料(例えば、水素化分解装置のリサイクル流)に適用される。特定の実施形態において、この方法は、外部ポケットを含有する低酸性度の結晶性物質上の貴金属を含む開環触媒の存在下で、芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種を水素と接触させて、芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種の開環を促進するステップを含む。
【0032】
[0036]特定の実施形態において、この方法は、(i)水素化触媒及び水素によりPAHsを水素化して、芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種(すなわち、芳香族環及びシクロパラフィン環を含む部分水素化種)を生成するステップと;(ii)外部ポケットを含有する低酸性度の結晶性物質上の貴金属を含む開環触媒の存在下で、芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種を水素と接触させて、芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種の開環を促進するステップとを含む。
【0033】
[0037]PAHsの水素化
[0038]多核(又は多環)芳香族炭化水素(PAHs)は、2個以上の芳香族環を含む炭化水素、例えばC10~C32PAHsである。PAHsは、それらの芳香族環の非局在化電子に一部起因する際だった特性を有する、非荷電性の非極性分子である。重質PAHsは、少なくとも4個、又は少なくとも6個のベンゼン環を各分子中に含む。
【0034】
[0039]多核芳香族炭化水素はビチューメンなどの天然源において主に見られる。有機堆積物が石油及び石炭などの化石燃料へ化学的に変換される際に地質学的にPAHsも生成され得る。希少鉱物であるイドリア石、カーチス石、及びカルパチア石は、そのような堆積物に由来するPAHsからほぼ完全になる。PAHsの例を表1に示す。
【0035】
[0040]
【0036】
【表1-1】
【0037】
【表1-2】
【0038】
[0041]実施形態による方法において、PAHsの水素化は、PAHs、又はPAHsを含む炭化水素供給材料を、水素化触媒及び水素と接触させて、芳香族環及びシクロパラフィン環を含む部分水素化種(すなわち、芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種)を生成することにより行われる。多様な供給材料が水素化ステップにおいて処理されてもよい。供給材料中の化合物の沸点は特に制限されない。特定の実施形態において、供給材料は、少なくとも10体積%、少なくとも20体積%、又は少なくとも80体積%の、沸点が340℃を超える化合物を含む。
【0039】
[0042]一般に、供給材料は、主成分が炭化水素からなり窒素含量及び硫黄含量が低い任意の供給材料であってもよい。特定の実施形態において、供給材料は約50ppm以下の窒素を有する。特定の実施形態において、供給材料は約50ppm以下の硫黄を有する。供給材料は、例えば、水素化分解装置のリサイクル流、接触分解ユニットから得られる軽油、並びに潤滑油ベースから芳香族を抽出するためのユニットから生じる若しくは潤滑ベース油の溶媒脱ワックスから得られる供給材料であってもよく、又は供給材料は実際には脱アスファルト油、フィッシャー・トロプシュユニットからの排出物、若しくは実際には上記で引用される供給材料の任意の混合物であってもよい。上記のリストは非制限的である。
【0040】
[0043]一般に、供給材料は150℃を超えるT5沸点を有する(すなわち供給材料中に存在する化合物の95%が150℃を超える沸点を有する)。軽油の場合、T5点は一般におよそ150℃である。VGOの場合、T5は一般に340℃を超えるか、又は370℃さえも超える。使用することができる供給材料はこのように幅広い沸点の範囲に含まれる。この範囲は一般に軽油からVGOにおよび、他の供給材料との、例えばLCOとのあらゆる考えられる混合物を包含する。
【0041】
[0044]水素化ステップのための水素化触媒及び条件は、当技術分野において既知の任意の適切な水素化触媒及び条件であってもよい。特定の実施形態において、水素化触媒は、白金、パラジウム、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、及び金からなる群から選択される金属、例えば白金を、アルミナ又はシリカなどの支持体上に含む、活性の高い水素化触媒である。
【0042】
[0045]水素化ステップでは、2個以上の水素がPAH構造に付加され、HPAHが形成され、式中、nは2以上の偶数の整数である。一般に、PAH化合物は完全に水素化されるのではなく、HnPAH化合物は部分水素化された又は完全水素化された化合物を含む場合がある。HPAH生成物は、芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種を含む。フェナントレン及びその水素化生成物の例が下記のスキーム1に示される。
【0043】
[0046]
【0044】
【化1】
【0045】
[0047]シクロパラフィン環は、シクロパラフィンの残基であり、一般式C2n及び飽和炭素原子の1つ又は複数の環を有する化合物である。複数の環を有するシクロパラフィンにおいて、環は縮合していてもよい。シクロパラフィンは置換基及び芳香族環を含んでいてもよいが、飽和炭素原子の1つ又は複数の環も含有していなければならない。
【0046】
[0048]芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種の触媒開環
[0049]実施形態による方法において、PAHs-水素化生成物、又は芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種の触媒開環は、外部ポケットを含有する低酸性度の結晶性物質上の貴金属を含む開環触媒の存在下で、芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種を水素と接触させて、芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種の開環を促進させることにより行われる。
【0047】
[0050]特定の実施形態において、この方法は、低酸性度の結晶性物質上の貴金属を含む開環触媒の存在下でシクロパラフィンを水素と接触させることによる、シクロパラフィン開環を含む。一般に、開環触媒は、PAHs-水素化生成物、又は芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種のシクロパラフィン環において、シクロアルキル部分の非置換炭素原子間の開環(すなわち、炭素-炭素結合切断)を促進する、外部ポケットを有する貴金属含有、低酸性度の結晶性物質を含む。
【0048】
[0051]特定の実施形態において、本明細書で開示される方法は、高温及び高圧の条件において水素及び開環触媒粒子の存在下で芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種を含む供給材料を反応させて、供給材料中のシクロパラフィン環を開環させる、すなわちシクロパラフィン環を分岐パラフィン部分に転化させるのに使用されてもよい。
【0049】
[0052]シクロパラフィン開環は、石油流をアップグレードするための重要な反応である。より優れた低温流動特性(すなわち、低流動点)は、シクロパラフィンを分岐パラフィンへ転化させることにより実現できる。芳香族環飽和も本明細書に記載のプロセスの間に生じることがある。特定の実施形態において、この方法は、芳香族環を含有する成分を分岐パラフィン又は分岐シクロパラフィンへアップグレードし、それにより粘度指数低温流動特性を改善するのに使用することができる。
【0050】
[0053]例示的な開環触媒としては、例えば、少なくとも0.05重量パーセントのホウ素及び1000重量ppm未満のアルミニウムを含有するホウケイ酸塩若しくはアルミノホウケイ酸塩モレキュラーシーブ、又はチタンケイ酸塩モレキュラーシーブ;アルミノケイ酸塩;並びにシリコアルミニウムリン酸塩、並びにそれらの混合物から選択される、ゼオライトの層間剥離から形成される低酸性度の結晶性物質上の1つ又は複数の金属が挙げられる。特定の実施形態において、低酸性度の結晶性物質は、SSZ-33、SSZ-46、SSZ-53、SSZ-55、SSZ-57、SSZ-58、SSZ-59、SSZ-60、SSZ-64、SSZ-70、ZSM-5、ZSM-11、TS-1、MTT(例えば、SSZ-32、ZSM-23など)、H-Y、及びそれらの組み合わせから選択される、1つ又は複数のタイプのゼオライトの層間剥離から形成させることができる。
【0051】
[0054]特定の実施形態において、低酸性度の結晶性物質は、SSZ-35、SSZ-54、SSZ-70、SSZ-74、SSZ-91、SSZ-95、SSZ-109、SSZ-31、SSZ-42、SSZ-43、SSZ-48、SSZ-55、SSZ-57、SSZ-63、SSZ-64、SSZ-65、SSZ-96、SSZ-106、Y、USY、Beta、ZSM-4、MFI(例えば、ZSM-5)、ZSM-12、ZSM-18、ZSM-20、MTT(例えば、ZSM-23)、FER(例えば、ZSM-35)、*MRE(例えば、ZSM-48)、L、及びそれらの組み合わせから選択される、1つ又は複数のタイプのゼオライトの層間剥離から形成させることができる。
【0052】
[0055]特定の実施形態において、開環触媒は、白金、パラジウム、ニッケル、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される貴金属を含む。特定の実施形態において、貴金属は、白金、ニッケル、ロジウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される。特定の実施形態において、貴金属は白金を含む。
【0053】
[0056]金属は、当技術分野において既知の任意の適切な方法により、例えば含浸又はゼオライト上の交換などにより触媒組成物中に取り込まれてもよい。金属は、カチオン性、アニオン性、又は中性の錯体の形態で取り込まれてもよい。例えば、[Pt(NH+及びこのタイプのカチオン性錯体は、ゼオライト上の白金の交換において好都合であることが分かるであろう。特定の実施形態において、ゼオライト上の金属の量は、約0.003~約10重量パーセント、約0.01~約10重量パーセント、約0.1~約2.0重量パーセント、又は約0.1~約1.0重量パーセントである。特定の実施形態において、ゼオライト上の白金の量は、約0.01~約10重量パーセント、約0.1~約2.0重量パーセント、又は約0.1~約1.0重量パーセントである。特定の実施形態において、触媒合成における白金の供給源は白金テトラアミンジニトレートである。特定の実施形態において、金属はpHが中性又は塩基性の溶液により触媒組成物中に導入される。特定の実施形態において、白金はpHが中性又は塩基性の溶液により触媒組成物中に導入される。
【0054】
[0057]触媒又は触媒組成物中の高度な金属の分散が一般に好ましい。例えば、白金の分散は水素化学吸着技術により測定され、H/Pt比に関して表される。H/Pt比が高いほど、白金の分散が高い。特定の実施形態において、ゼオライトは約0.8を超えるH/Pt比を有するべきである。
【0055】
[0058]1つ又は複数のバインダー材料もゼオライトと共に使用されてもよい。バインダー材料の一般に望ましい特性は、良好な混合/押出成形特性、焼成後の良好な機械的強度、並びに触媒使用時の潜在的な拡散の問題を防ぐための妥当な表面積及び多孔性である。適切なバインダー材料の例としては、限定はされないが、シリカ含有バインダー材料、例えばシリカ、シリカアルミナ、シリカ-ボリア、シリカ-マグネシア、シリカ-ジルコニア、シリカ-トリア、シリカ-ベリリア、シリカ-チタニア、シリカ-アルミナ-ボリア、シリカアルミナ-トリア、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナマグネシア、又はシリカ-マグネシア-ジルコニアなど;無機酸化物;リン酸アルミニウム;及びそれらの組み合わせが挙げられる。特定の実施形態において、バインダー材料はゼオライト材料を含まない。
【0056】
[0059]使用する場合、バインダー対ゼオライトの比は、典型的には約9:1~約1:9、より一般的には約3:1~約1:3(重量による)で様々となる。
[0060]一般に、本明細書に記載の触媒組成物及び方法において有用であるゼオライトは、低アルミナ含量及び高いシリカ対アルミナのモル比を含む、低酸性度を有するアルミノケイ酸塩である。一実施形態において、ゼオライトはアルミノケイ酸塩である。特定の実施形態において、ゼオライトは低アルミナ含量及び高いシリカ対アルミナのモル比を有するアルミノケイ酸塩である。
【0057】
[0061]典型的には、この方法は、使用される特定の触媒における適切な水素化分解条件下で行われる。特定の実施形態において、この方法は約200℃~約400℃の温度で行われる。特定の実施形態において、この方法は約6.9kPaG(1psig)~約17.2MPaG(2500psig)の範囲の圧力で行われる。特定の実施形態において、この方法は約0.4~約2.0WHSV hr-1の範囲の重量空間速度(1時間当たり重量空間速度)(weight hourly space velocity)で行われる。
【0058】
[0062]この方法で存在する水素の量は、H/シクロパラフィンのモル比に関して約2~約10の範囲であってもよい。典型的には、この方法で存在する水素の量は、H/シクロパラフィンのモル比に関して約3~約5の範囲である。
【0059】
[0063]一実施形態において、従来の水素化処理触媒を使用した水素化処理ステップを行って、窒素及び硫黄を除去し実質的な沸点範囲を変換することなく芳香族を飽和させてナフテンとすることもできる。適切な水素化処理触媒は一般に、金属水素化成分、通常は第6族又は第8族~10族金属を含む。水素化処理は通常、触媒性能を改善し、より低い温度、より高い空間速度、より低い圧力、又はこれらの条件の組み合わせが採用されることを可能にすることになる。
【0060】
[0064]本開示の方法は、高転化率及び高選択性で非置換炭素間でのシクロパラフィンの開環を促進することを含めた、以下の実施例により裏付けられるようないくつかの利点を提供する。特定の実施形態において、この方法は炭化水素供給材料中のシクロパラフィンの約90%を超える転化率をもたらす。特定の実施形態において、この方法は炭化水素供給材料中のシクロパラフィンの約60%超又は約65%超の開環生成物の選択性をもたらす。有利なことに、実施形態による方法は、あまり価値の高くない軽質生成物(例えば、メタン、エタン、及びプロパンなどのガス)を過度に形成させることなくシクロパラフィンの開環を促進するのに使用できる。
【0061】
[0065]低酸性度の結晶性物質及び触媒の調製方法
[0066]実施形態による開環触媒は、適切なゼオライトの層間剥離から形成される低酸性度の結晶性物質上の1つ又は複数の貴金属を含む。低酸性度の結晶性物質は、ゼオライトの層間剥離により形成される外部ポケットを含む。適切なゼオライトは大きい空洞を含有し、これは層間剥離したときに大きい外部ポケットになる。これらのポケットは多核芳香族炭化水素の吸着において有利である。低酸性度の結晶性物質はまた広い外表面積も有し、高濃度の触媒部位を可能にし、それにより反応が工業用途に良く適した速度で進行することを可能にする。
【0062】
[0067]ゼオライト触媒は石油精製及びファインケミカル合成において広く使用される。ゼオライトの明確に定義された活性部位は、骨格位置内で置換されたヘテロ原子からなり、触媒反応におけるこれらの材料の有用性及び形状選択性に影響を与える。多くの小さい分子基質は、大部分の活性部位が位置している、ゼオライトのミクロ細孔内に容易に適合する。より大きい分子を含むように基質の範囲を広げるために、特大細孔ゼオライト、剥離層状ゼオライト前駆体材料、単一ユニットセルゼオライトナノシート、階層ナノ多孔質ゼオライト様材料、及び自己柱状化ゼオライトナノシートなどのゼオライト系材料が開発されてきた。これらの材料は、内部ミクロ細孔内の活性部位に近づくことができない立体的にかさ高い基質(又は反応物)との触媒反応を促進する。
【0063】
[0068]Ouyangらは、3D焼結材料と比較して剥離ホウケイ酸塩ゼオライト前駆体材料がその触媒の初期速度の2.3倍の向上を示し、これは2.5倍の外表面積の測定された増加にほぼ等しいことを報告している(X.Ouyangら、J.Am.Chem.Soc.2014年、136、1449~1461頁を参照)。層状ホウケイ酸塩ゼオライト前駆体ERB-1P(Si/B=11)が硝酸アルミニウム水溶液処理を使用したホウ素に対するアルミニウムの同形置換により剥離されて剥離ゼオライト触媒を生成した。
【0064】
[0069]米国特許第9795951号は、剥離アルミノケイ酸塩ゼオライトの特定の、界面活性剤を使用しない1ステップ合成を記載している。特定の実施形態において、低酸性度の結晶性物質は、本明細書に記載の1つ又は複数のタイプのゼオライトの層間剥離から形成することができる。層間剥離とは、ゼオライトの層が剥離することを指す。層間剥離プロセスによって、実施形態による低酸性度の結晶性物質が形成される。層間剥離は多くの場合、10倍にもなる場合がある材料の外表面積の増加を伴う。好ましくは、層間剥離ステップは、アモルファス相などの他の相による寄与よりもむしろ露出した外表面積の増加が主因である、表面積の増加を促進する。
【0065】
[0070]低酸性度の結晶性物質は、全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9795951号に記載されるものなどの剥離メタロシリケートゼオライトを含んでいてもよい。例えば、低酸性度の結晶性物質は、金属塩温溶液での処理による層間の水素結合の破壊によってゼオライト(例えば、ホウケイ酸塩ゼオライト)を剥離するステップを含む方法により、調製されてもよい。そのような層間剥離(剥離)の方法において、金属塩溶液は、溶媒中の溶解した金属塩、又は接触の条件下でそれ自体が本質的に液体である金属塩の場合はそのままの状態の金属塩のいずれかであってもよい。金属塩とは、金属カチオンと、硝酸及び塩化物イオンなどの無機アニオン並びに酢酸及びクエン酸などの有機アニオンを含めたアニオン、並びにアルコキシド、カルボン酸、ハロゲン化物イオン、アルキルなどの有機配位子との任意の配位を指す。
【0066】
[0071]特定の実施形態において、ゼオライトの剥離は、Al(NO温水溶液中でのゼオライトの処理を含む。この処理の間、BのAlへの置換により誘発される格子歪みによりゼオライトの層間水素結合が破壊される(550℃での焼結後であっても持続する)。
【0067】
[0072]特定の実施形態において、ゼオライトの剥離は、約1のpHのZn(NO温水溶液中でのゼオライトの処理を含む。ゼオライトの層間水素結合が破壊され、骨格からのBの除去により誘発されるシラノールネストの形成を伴う。この文脈内で、シラノールネストとはBによって占有されるように使用されるテンプレート内に配置される複数のシラノールを指す。剥離ゼオライトの広い表面積及びシラノールネストは550℃での焼結後であっても持続する。
【0068】
[0073]特定の実施形態において、層間剥離後、例えば結晶性物質を部分的に脱金属してより活性の高い触媒を得てもよい。部分的脱金属とは、触媒内のヘテロ原子の部分、典型的にはより弱く結合している部分の除去を指し、典型的にはこれはゼオライト骨格に完全には縮合していない部分である。Al金属に適用される場合、脱金属のプロセスは脱アルミニウムと呼ばれる。脱アルミニウムのいくつかの好ましい方法があり、この明細書は実施される脱金属の方法に基づいて決して限定されるべきではない。例えば、脱アルミニウムは、(i)短時間の酸水溶液処理(Barrer,R.M.、Makki,M.B.(1964)Can J Chem 42:1481);(ii)蒸気処理(Scherzer,J. The Preparation and Characterization of Aluminum Deficient Zeolite、「Catalytic Materials」ACS Symposium Series.1984年、248:157~200頁);及び(iii)フルオロケイ酸アンモニウム処理(Breck,D.W.、Blass,H.、Skeels,G.W.(1985)米国特許第4503023号、Union Carbide Corp)のいずれかによって実現できることが当技術分野において良く知られている。
【0069】
[0074]特定の実施形態において、低酸性度の結晶性物質は剥離アルミノケイ酸塩ゼオライトである。特定の実施形態において、低酸性度の結晶性物質は1つ又は複数のタイプのアルミノケイ酸塩ゼオライトの層間剥離から形成される。金属塩溶液から回収されたら、剥離アルミノケイ酸塩ゼオライトを焼結することができる。
【0070】
[0075]特定の実施形態において、低酸性度の結晶性物質はc軸に沿って薄いシートの不規則な積層を含む。一般に、低酸性度の結晶性物質は外表面上に高密度の強酸部位を有する。
【0071】
[0076]特定の実施形態において、低酸性度の結晶性物質は剥離シラノールネスト含有ゼオライトを含む。
[0077]低酸性度の結晶性物質は、全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許公開第2012/0148487号に記載されるものなどの、剥離ゼオライトを含んでいてもよい。例えば、低酸性度の結晶性物質は、有機溶媒及び剥離しようとするゼオライトを含む、塩化物イオン及びフッ化物イオンの非水性混合物を調製するステップと、所望の層間剥離を行うのに十分な長さの時間、約50~約150℃の範囲の温度で混合物を維持するステップと、次いで低酸性度の結晶性物質を回収するステップとを含む、ゼオライトの剥離を含む方法によって調製することができる。有機溶媒はジメチルホルムアミドなどの任意の適切な有機溶媒であってもよい。一般に、酸性化を使用しては生成物を回収する。
【0072】
[0078]特定の実施形態において、低酸性度の結晶性物質は、MCM-22(P)、SSZ-25、ERB-1、PREFER、SSZ-70(例えば、Al-SSZ-70、又はB-SSZ-70)、及びNu-6(1)から選択される1つ又は複数のタイプのゼオライトの層間剥離から形成させることができる。塩化物アニオン及びフッ化物アニオンはアニオンの任意の供給源から得ることができる。塩化物アニオン対フッ化物アニオンのモル比は約100:1~1:100の範囲であってもよい。水溶液中でアニオンを供給することになる任意の化合物を使用できる。層間剥離プロセスにおいて任意の適切なカチオンを使用できる。特定の実施形態において、カチオンはアルキルアンモニウムカチオンを含み、ここでアルキル基はC~C20アルキル基である。
【0073】
[0079]一態様において、本開示は、本明細書に記載の実施形態による方法において、水素、及び外部ポケットを含有する低酸性度の結晶性物質上の貴金属を含む開環触媒を使用して、芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種の開環を促進するステップを提供する。
【0074】
[0080]別の態様において、本開示は、本明細書に記載の実施形態による方法で処理された、芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種から生成した開環炭化水素種を含む組成物を提供する。
【実施例
【0075】
[0081]開示される実施形態は以下の実施例によりさらに説明され、これはこの開示の範囲に制約を課すものとして決して解釈されるべきではない。本明細書における説明を読んだ後では、本開示の範囲又は添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な他の態様、実施形態、その修正物、及び等価物が当業者にとって明らかとなり得る。
【0076】
[0082]実施例1
[0083]1/16インチの球を含むアルミナキャリア材料は、実質的に純粋なアルミニウムペレットを塩酸溶液中に溶解させ、ヘキサメチレンテトラアミンを得られるアルミナゾルへ添加し、得られる溶液を油浴中に滴下してアルミナヒドロゲルの球状粒子を形成させることによりゲル化させ、得られる粒子にエージング及び洗浄を行い、最後にエージングされ洗浄された粒子を乾燥及び焼結させて約0.3wt%の化合した塩化物を含有するガンマ-アルミナの球状粒子を形成させることにより、アルミニウムヒドロキシクロリドゾルを形成させることによって調製される。
【0077】
[0084]測定した量の所望の貴金属化合物、例えばクロロ白金酸を、塩化水素などの強酸により適切な溶媒、例えば水に溶解させて、含浸溶液を形成させる。1種を超える金属化合物を使用して触媒を形成させる場合、同じ又は異なる溶媒中の金属化合物の別々の溶液を調製し、次いで合わせることができる。必要に応じて、金属溶液を合わせて含浸溶液を形成させる前に、例えば、室温で平衡条件が成立するまで溶液をエージングしてもよい。
【0078】
[0085]アルミナ担体材料をその後含浸溶液と混合する。この含浸溶液中に含有される金属の量は元素ベースで約0.3~約1.5wt%の範囲であってもよい。担体材料全体にわたる金属成分の均一な分散を保証するために、この含浸溶液で使用される塩化水素の量はアルミナ粒子の約3wt%である。この含浸ステップは、絶えず撹拌しながら担体材料粒子を含浸混合物へ添加することにより行われる。さらに、すべての粒子が含浸溶液中に浸漬されるように、溶液の体積は担体材料粒子の空隙容量とおよそ同じである。含浸混合物は約21℃(70°F)の温度で約1/2~約3時間にわたって担体材料粒子と接触して維持される。その後、含浸混合物の温度を約107℃(225°F)まで上昇させ、過剰な溶液を約1時間にわたって蒸発させる。次いで得られる乾燥済みの含浸粒子に乾燥気流中で約524℃(975°F)の温度及び約500hr-1のGHSVにおいて約1/2時間酸化処理を施す。この酸化ステップは金属成分のほぼすべてを対応する酸化物の形態に転化するように設計されている。触媒粒子のハロゲン含量を約1.09wt%の値に調整するために、得られる酸化球体をその後ハロゲン処理ステップにおいてHO及びHClを約30:1のモル比で含有する気流と約524℃(975°F)及び約500hr-1のGHSVで約2時間接触させる。ハロゲン処理済み球体に、その後約524℃(975°F)及び約500hr-1のGHSVの乾燥気流によりさらに約1/2時間にわたって第2の酸化ステップを施す。約566℃(1050°F)の温度、大気圧よりもわずかに高い圧力、約400hr-1のGHSVに相当する触媒粒子を通る水素流の流量において、酸化されハロゲン処理された触媒粒子を、5体積ppm未満のHOを含有する実質的に炭化水素を含まない乾燥水素流と1時間接触させることにより、次に、酸化されハロゲン処理された触媒粒子に、少なくとも白金成分を元素状体まで還元するように設計された乾燥予備還元処理を施してもよい。
【0079】
[0086]得られる還元触媒粒子の試料を分析し、元素ベースで約0.30~約1.5wt.%の所望の金属、及び約1.09wt.%の塩化物を含有することが分かる。
【0080】
[0087]実施例2
[0088]この実施例では、本発明は、ベンゼン、トルエン、様々なキシレン、ナフタレンなどの芳香族炭化水素の水素化に適用されて、対応する環状パラフィンを形成させるものとして例証される。芳香族核の水素化から生じる対応する環状パラフィンとしては、シクロヘキサン、モノ-、ジ-、トリ-置換シクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、テトラヒドロナフタレンなどの化合物が挙げられ、これはナイロンの製造において、様々な脂肪、油、ワックスなどのための溶媒として、様々な商用産業で普及している。
【0081】
[0089]芳香族濃縮物は多様な技術により得られる。例えば、ベンゼン含有留分に蒸留を施してベンゼンを含有する中間留分を得てもよい。次いでこれに、直鎖又はイソ-パラフィン成分、及びそこに含有されるナフテンからベンゼンを分離する溶媒抽出プロセスを施す。ベンゼンは、選択された溶媒から蒸留により99.0%以上の純度で容易に回収される。本発明の方法に従って、ベンゼンは0.01~約12.0重量%の金属成分、例えば白金成分又は金属の混合物、及び約0.01~約1.5重量%のアルカリ金属成分を含有する低酸性度の触媒性複合材料と接触して水素化される。操作条件は、約93℃(200°F)~約427℃(800°F)の範囲の最大触媒床温度と、3.45MPaG(500psig)~約17.2MPaG(2,500psig)の圧力と、約1.0~約10.0の液体空間速度、最後の反応ゾーンからの生成排出物において実質的に約4.0:1以上の水素対シクロヘキサンのモル比を得るのに十分な量の水素循環速度とを含む。必須ではないが、1つの好ましい操作技術は、3つの反応ゾーンの使用を必要とし、そのそれぞれが使用される触媒の総量のおよそ1/3を含む。このプロセスは、新しいベンゼンの全量がおよそ等しく3分割で、それぞれの1つが3つの反応ゾーンのそれぞれの入口に加えられる場合に、さらに促進される。
【0082】
[0090]使用される触媒は、約0.3~約1.5重量%の金属、例えば白金など、及び約0.90重量%のリチウムと組み合わせたアルミナ担体材料であり、それらのすべてが元素金属を基準として計算される。水素化プロセスを、全体で約237m(1,488バレル)/日の新しいベンゼンの供給能力を有する商業規模のユニットに関して説明することにする。反応器排出物から回収される水素と共に約741.6モル/時間の量のメイクアップガスが2,396Bbl/日(約329モル/時間)のシクロヘキサンリサイクル流と混合され、混合物は約58℃(137°F)の温度であり、96.24モル/時間(582Bbl/日)のベンゼン供給材料とさらに混合され;最終混合物は第1の反応ゾーンへの装入物全体を構成する。様々な高温の排出物流との適切な熱交換の後、第1の反応ゾーンへの全体の供給材料は196℃(385°F)の温度及び3.17MPaG(460psig)の圧力である。反応ゾーン排出物は319℃(606°F)の温度及び約3.10MPaG(450psig)の圧力である。第1の反応ゾーンからの排出物全体を流れ発生装置において熱交換媒体として利用し、それにより温度を約285℃(545°F)のレベルまで低下させる。冷却した排出物を37.8℃(100°F)の温度の約98.5モル/時間(95m(596Bbl)/日)の新しいベンゼン供給材料と混合する;得られる温度は204℃(400°F)であり、混合物は約3.03MPag(440psig)の圧力の第2の反応ゾーンに入る。2.93MPaG(425psig)の圧力及び322℃(611°F)の温度の、第2の反応ゾーン排出物は、51.21モル/時間(49m(310Bbl)/日)の新しいベンゼン供給材料と混合され、得られる混合物は3198℃(5788°F)の温度である。これを熱交換媒体として使用した後、温度は204℃(400°F)まで低下し、混合物は2.86MPaG(415psig)の圧力の第3の反応ゾーンに入る。第3の反応ゾーン排出物は約260℃(500°F)の温度及び約2.76MPag(400psig)の圧力である。熱交換媒体として利用により、温度は約118℃(244°F)のレベルまで低下し、その後空冷凝縮器の使用により約46.1℃(115°F)のレベルまで低下する。冷却された第3の反応ゾーン排出物を約2.55MPaG(370psig)の圧力で高圧セパレーターに導入する。
【0083】
[0091]水素リッチな蒸気相を高圧セパレーターから取り出し、約3.28MPaG(475psig)の圧力で圧縮手段により第1の反応ゾーンの入口へリサイクルする。通常は液体である相の一部を上記のシクロヘキサン濃縮物として第1の反応ゾーンへリサイクルする。約1.72MPaG(250psig)の操作圧力、約71℃(160°F)の上部温度及び約221℃(430°F)の底部温度で機能する安定化カラムへ通常液相の残りを通す。シクロヘキサン生成物を安定化装置から底部流として取り出し、オーバーヘッド流は燃料に放出される。シクロヘキサン濃縮物は約245.80モル/時間の量で回収され、そのうち約0.60モル/時間のみが他のヘキサンを構成する。要約すると、8712kg(19,207ポンド)/時間の新しいベンゼン供給材料から、9383kg(20,685ポンド)/時間のシクロヘキサン生成物が回収される。
【0084】
[0092]実施例3
[0093]本発明が適用可能である別の炭化水素水素化処理スキームは、コークス形成性炭化水素留出物の水素化精製を必要とする。炭化水素留出物は一般にモノ-オレフィン系、ジ-オレフィン系、及び芳香族炭化水素を含有する。貴金属成分を含む触媒性複合材料の利用によって、操作の選択性及び安定性の向上が得られ;選択性は、芳香族の保持に関して、並びに共役ジオレフィン系及びモノオレフィン系炭化水素の水素化において最も顕著である。そのような原料油は一般に、石油の接触分解及び/又はパイロリシスとも呼ばれることがある熱分解、木材又は石炭の分解蒸留、シェール油の乾留などを含めた、多様な転化プロセスから得られる。留出物がその意図する用途に適したものである前にこれらの蒸留留分中の不純物は必ず除去されなければならず、又は除去された場合、さらなる加工における蒸留留分の価値を高める。しばしば、共役ジオレフィンを除去し同時に芳香族炭化水素を保持するのに十分な程度までこれらの原料油を飽和させることを意図している。汚染の影響を除去する目的のために水素化精製を施す場合、コークス及び他の炭質材料の形成に起因して、所望の度合いの反応を行うのに困難に直面する。
【0085】
[0094]本明細書において使用される「水素化」は、「水素化精製」と同義であることを意図している。目的はコークス形成性炭化水素留出物を水素化するための選択性が高く安定な方法を提供することであり、これは金属触媒成分を利用する固定床触媒反応系の使用により実現される。コークス形成性留出物、例えば熱分解ナフサ副生成物を処理するための、2つの別々の望ましい経路が存在する。1つのそのような経路は、特定のガソリン調合での使用に適した生成物に向けられている。これにより望ましい目的として、第1段階の触媒として以下に具体的に記載される触媒性複合材料により、プロセスを1段階で、又は1つの反応ゾーンで行うことができる。この場合に得られる選択性は反応性の高い二重結合の水素化に主に存する。共役ジオレフィンの場合、与えられる選択性は水素化を制限してモノオレフィンを生成し、例えばスチレンに関しては、「環」の飽和をさせることなく、水素化を阻害してアルキルベンゼンを生成する。「ゴム状物質」、又はガソリンへのブレンドが可能になる前に生成物の再処理を必要とすることになるより低分子量ポリマーへの、最小限のポリマー形成を伴って、選択性が実現される。モノオレフィンは、未処理であれ、又はジオレフィンの部分飽和の生成物であれ、1段階で、又は第1段階の反応ゾーンでは変化しないことに注意すべきである。しかし所望の最終結果がその後の抽出を意図している芳香族炭化水素の保持である場合、2段階の経路が必要である。現在利用される方法によって芳香族の抽出を促進するためには、モノオレフィンは第2段階で実質的に飽和されなければならない。したがって、所望の必要な水素化はモノオレフィンの飽和を含む。芳香族核の部分飽和さえも避ける必要性がこれに伴う。
【0086】
[0095]触媒性複合材料に関しては、その主要な機能は共役ジオレフィン系炭化水素からモノオレフィン系炭化水素への選択的水素化を含む。触媒性複合材料は、アルミナ含有耐火性無機酸化物、白金などの貴金属成分、及びアルカリ金属成分を含み、後者は好ましくはカリウム及び/又はリチウムである。特定の順序の加工ステップの利用、及び前述の触媒複合物質の使用により、長時間にわたる加工を可能にする程度まで高分子量ポリマーの形成が阻害される。簡潔に言えば、これはコークス形成反応が促進されない約260℃(500°F)未満の温度で水素化精製反応を開始させることにより実現される。
【0087】
[0096]炭化水素留出物原料油、例えば、約34.0API度の比重、約35.0の臭素価、約17.5のジエン値を有し75.9体積%の芳香族炭化水素を含有する、エチレンの製造のために設計及び操作される商業用分解ユニットからの軽質ナフサ副生成物を、リサイクルされた水素と混合する。この軽質ナフサ副生成物は約73℃(164°F)の初留点及び約167℃(333°F)の最終沸点を有する。水素循環速度は約178~1780m/m(1,000~約10,000scf/Bbl)の範囲であり、好ましくは267~1068m/m(1,500~約6,000scf/Bbl)のより狭い範囲である。様々な生成排出物流との熱交換により、最大触媒温度が約93℃(200°F)~約260℃(500°F)の範囲であるような温度まで原料油を加熱し、約0.5~約10.0の範囲のLHSVで第1の反応ゾーンへ導入する。反応ゾーンを2.76~6.89MPaG(400~約1,000psig)の圧力、好ましくは3.45~6.21MPaG(500~約900psig)の範囲のレベルで維持する。
【0088】
[0097]第1の反応ゾーンからの生成排出物の温度を約260℃(500°F)を超えるレベルまで上昇させて、好ましくは316~482℃(600~900°F)の範囲の最大触媒温度をもたらす。第1のゾーンの排出物に含有されるモノオレフィンの飽和は、第2のゾーンで行われる。プロセスが効率的に機能している場合、第2の触媒反応ゾーンに入る液体装入物のジエン値は約10.0未満、多くの場合は約0.3未満である。第2の触媒反応ゾーンは約2.76~6.89MPaG(400~約1,000psig)の加圧下、好ましくは約3.45~6.21MPaG(500~約900psig)のレベルで維持される。圧力制御の焦点が第2の触媒反応ゾーンからの生成排出物を分離するように機能する高圧セパレーターである場合、2段階プロセスが促進される。したがって、システムを通って流れる流体の結果として、これは第1の触媒反応ゾーンよりもわずかに低い圧力で維持されることになる。第2の反応ゾーンを通るLHSVは、新しい供給材料のみを基準として、約0.5~約10.0である。水素循環速度は約178~1780m/m(1,000~約10,000scf/Bbl)、好ましくは約178~1424m/m(1,000~約8,000scf/Bbl)の範囲となる。リサイクル水素が新しい炭化水素原料油と混合されると、システム全体を通る一連の流れが促進される。プロセス全体で消費されるものに取って代わるためのメイクアップ水素は、任意の適切な外部供給源から導入されてもよいが、好ましくは第1の触媒反応ゾーンから第2の触媒反応ゾーンへの排出物ラインによってシステムへ導入される。
【0089】
[0098]生成排出物のナフサ沸点範囲部分に関しては、芳香族濃度は約75.1体積%、臭素価は約0.3未満であり、ジエン値は本質的に「ゼロ」である。
[0099]非常に高いジエン値を有する原料油について、反応系における過度の温度上昇を防ぐためにリサイクル希釈剤が採用される。そのように利用される場合、希釈剤の供給源は好ましくは第2の触媒反応ゾーンからの通常液体の生成排出物の一部である。リサイクル材料の正確な量は供給原料ごとに異なる;しかし、任意の指定時間における速度は、第1の反応ゾーンへの合計の液体供給材料のジエン値をモニタリングすることにより制御される。ジエン値が約25.0のレベルを超えるとき、リサイクルの量を増加させ、それにより合計の液体供給材料の比を増加させる;ジエン値が約20.0以下のレベルに近づく場合、リサイクル希釈剤の量を減少させてもよく、それにより合計の液体供給材料の比を減少させる。
【0090】
[00100]実施例4
[00101]発明者らの発明に包含される炭化水素水素化処理スキームのこの例証は、重質炭化水素質材料をより低沸点の炭化水素生成物へ水素化分解することを必要とするものである。この事例において、好ましい触媒は、フォージャサイト及び少なくとも90.0重量%がゼオライトであるものなどの結晶性アルミノケイ酸塩担体材料と組み合わせた、ゲルマニウム成分、白金族金属成分、コバルト成分、及びハロゲン成分を含有する。
【0091】
[00102]水素化分解を意図している、未処理原料の大部分は、硫黄化合物及び窒素化合物によって汚染されており、重質原料油の場合は、様々な金属不純物、不溶性アスファルトなどにより汚染されている。汚染された原料油は一般に、水素化分解に適した装入物を調製するために水素化精製される。したがって、本発明の触媒プロセスは2段階プロセスの第2段階として有益に利用することができ、その第1段階では新しい供給材料が水素化精製される。
【0092】
[00103]水素化分解反応は一般に、約5.5~34.5MPaG(800~5,000psig)の範囲の高圧で、好ましくは6.9~約24.1MPaG(1,000~約3,500psig)の中間レベルで行われる。約0.25~約10.0の液体空間速度が適切となり、より低い範囲は一般に重質の原料のために確保される。水素循環速度は、新しい供給材料を基準として少なくとも約534m/m(3,000scf/Bbl)、上限が約890m/m(50,000scf/Bbl)となる。供給原料の大部分について、890~3560m/m(5,000~20,000scf./Bbl)の範囲の水素循環で十分となる。約1.25~約6.0の範囲の合計の液体供給材料比を与えるリサイクル原料を使用するが、LHSVに関しては、新しい供給材料を基準とする。動作温度はやはり反応ゾーン内の触媒の温度を示唆し、約204~約482℃(約400~約900°F)の範囲である。主要な反応は本来は発熱性であるので、原料油が触媒床を通過するときに経験する上昇温度勾配は、触媒床への入口よりも高い出口温度をもたらす。最大触媒温度は約482℃(900°F)を超えないべきであり、温度上昇を38℃(100°F)以下までに制限するのに好ましい技術である。
【0093】
[00104]約10.0~約90.0重量%のシリカを含有するアルミナ及びシリカのアモルファス複合材料は本発明の方法で採用される触媒性複合材料での使用に適しているが、好ましい担体材料は、少なくとも約90.0重量%がゼオライトである、結晶性アルミノケイ酸塩、好ましくはフォージャサイトを構成する。この担体材料、及び同材料を調製する方法は、本明細書において上記に記載されている。
【0094】
[00105]この炭化水素水素化処理技術の具体的な例証は、約90.0重量%がフォージャサイトを構成する結晶性アルミノケイ酸塩材料と組み合わせた、約0.4~約2.8重量%の白金、0.7重量%の合計の塩素の触媒性複合材料の使用を含む。この触媒は、2544m(16,000Bbl)/日の軽油のブレンドを転化して最大量のヘプタン~204℃(400°F)のガソリン沸点範囲留分を生成するのに利用することを意図している。原料油は33.8API度の比重を有し、187℃(369°F)の初留点、257℃(494°F)の50体積%留出温度、及び346℃(655°F)の最終沸点を有する。原料油に最初に、399℃(750°F)の最大触媒温度、1.0のLHSVにおいて、約890m/m(5000scf/Bbl)の水素循環速度でクリーンアップ操作を施す。反応ゾーン内の触媒に加えられる圧力は約10.3MPaG(1,500psig)である。ブレンドされた軽油原料の少なくとも一部がより低沸点の炭化水素生成物へ転化されることになるので、このクリーンアップ反応ゾーンからの排出物を分離して、通常液体、本明細書において上記に記載される触媒を含有する水素化分解反応ゾーンへの204℃(400°F)以上の沸点の装入物を得る。第2の反応ゾーンに加えられる圧力は約10.3MPaG(1,500psig)であり、水素循環速度は約1424m/m(8,000scf/Bbl)である。クリーンアップ反応ゾーンへの新しい供給材料の元の量は約2544m(16,000Bbl)/日であり;204℃(400°F)以上の沸点の装入物を第2の反応ゾーンへ供給するための第1のゾーンの排出物の分離の後、第2の反応ゾーンへの装入物は約1932m(12,150Bbl)/日の量であり、0.85のLHSVが得られる。触媒床への入口の温度は352℃(665°F)であり、従来の水素クエンチ流を利用して約371℃(700°F)の最大反応器出口温度を維持する。第2の反応ゾーンからの生成排出物の分離の後、所望のガソリン沸点範囲留分を濃縮するために、残留する204℃(400°F)以上の沸点の通常液体材料を1159m(7,290Bbl)/日の量で第2の反応ゾーンの入口へリサイクルし、それにより約1.60の合計の液体供給材料比が得られる。
【0095】
[00106]段階1及び段階2における成分の分析を行って、アンモニア、硫化水素、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、C7~204℃(400°F)、及び204℃(400°F)以上の沸点の生成物の収量を評価する。合わせたペンタン/ヘキサンの留分の比重値の分析を行う。85.0の比重はクリアリサーチオクタン価に相当し、99.0の比重はペンタン/ヘキサンについての加鉛リサーチオクタン価に相当する。この範囲の試料は自動車燃料の優れたブレンド成分を構成する。クリアリサーチオクタン価における所望のヘプタン~204℃(400°F)生成物の比重は72.0であり、加鉛リサーチオクタン価は88.0である。
【0096】
[00107]前述のものに加えて、本開示の様々な実施形態は、限定はされないが、以下の項目に示される実施形態を含む。
[00108]項目1. 芳香族環及びシクロパラフィン環の選択的開環の方法であって、外部ポケットを含む低酸性度の結晶性物質上の貴金属を含む開環触媒の存在下で、芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種を水素と接触させて、芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種の開環を促進させるステップを含む、方法。
【0097】
[00109]項目2. 低酸性度の結晶性物質の外部ポケットがゼオライトの層間剥離によって形成される、項目1に記載の方法。
[00110]項目3. 低酸性度の結晶性物質が、少なくとも0.05重量パーセントのホウ素及び1000重量ppm未満のアルミニウムを含有するホウケイ酸塩若しくはアルミノホウケイ酸塩モレキュラーシーブ、又はチタンケイ酸塩モレキュラーシーブ;アルミノケイ酸塩;並びにシリコアルミニウムリン酸塩、並びにそれらの混合物から選択される、1つ又は複数のタイプのゼオライトの層間剥離から形成される、項目1に記載の方法。
【0098】
[00111]項目4. 低酸性度の結晶性物質が、SSZ-33、SSZ-46、SSZ-53、SSZ-55、SSZ-57、SSZ-58、SSZ-59、SSZ-60、SSZ-64、SSZ-70、ZSM-5、ZSM-11、TS-1、MTT(例えば、SSZ-32、ZSM-23など)、H-Y、及びそれらの組み合わせから選択される1つ又は複数のタイプのゼオライトの層間剥離から形成される、項目1に記載の方法。
【0099】
[00112]項目5. 低酸性度の結晶性物質が、1つ又は複数タイプのアルミノケイ酸塩ゼオライトの層間剥離から形成される、項目1に記載の方法。
[00113]項目6. 貴金属が、白金、パラジウム、ニッケル、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される、項目1に記載の方法。
【0100】
[00114]項目7. 約200℃~約400℃の温度、約1.38MPaG(200psig)~約13.8MPaG(2000psig)の範囲の圧力、及び約0.4~約0.7WHSV hr-1の範囲の重量空間速度で行われる、項目1に記載の方法。
【0101】
[00115]項目8. 多核芳香族炭化水素(PAHs)を開環生成物へ転化させる方法であって、(i)PAHsを水素化触媒及び水素により水素化して芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種を生成するステップと;(ii)外部ポケットを含む低酸性度の結晶性物質上の貴金属を含む開環触媒の存在下で、芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種を水素と接触させて、芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種の開環を促進させるステップとを含む、方法。
【0102】
[00116]項目9. PAHsがC10~C32PAHsを含む、項目8に記載の方法。
[00117]項目10. PAHsが水素化分解装置のリサイクル流に由来する、項目8に記載の方法。
【0103】
[00118]項目11. 低酸性度の結晶性物質の外部ポケットが、ゼオライトの層間剥離によって形成される、項目8に記載の方法。
[00119]項目12. 低酸性度の結晶性物質が、少なくとも0.05重量パーセントのホウ素及び1000重量ppm未満のアルミニウムを含有するホウケイ酸塩若しくはアルミノホウケイ酸塩モレキュラーシーブ、又はチタンケイ酸塩モレキュラーシーブ;アルミノケイ酸塩;並びにシリコアルミニウムリン酸塩、並びにそれらの混合物から選択される、1つ又は複数のタイプのゼオライトの層間剥離から形成される、項目8に記載の方法。
【0104】
[00120]項目13. 低酸性度の結晶性物質が、SSZ-33、SSZ-46、SSZ-53、SSZ-55、SSZ-57、SSZ-58、SSZ-59、SSZ-60、SSZ-64、SSZ-70、ZSM-5、ZSM-11、TS-1、MTT(例えば、SSZ-32、ZSM-23など)、H-Y、及びそれらの組み合わせから選択される1つ又は複数のタイプのゼオライトの層間剥離から形成される、項目8に記載の方法。
【0105】
[00121]項目14. 低酸性度の結晶性物質が、1つ又は複数タイプのアルミノケイ酸塩ゼオライトの層間剥離から形成される、項目8に記載の方法。
[00122]項目15. 約200℃~約400℃の温度、約1.38MPaG(200psig)~約13.8MPaG(2000psig)の範囲の圧力、及び約0.4~約0.7WHSV hr-1の範囲の重量空間速度で行われる、項目8に記載の方法。
【0106】
[00123]項目16. 約200℃~約400℃の温度、約1.38MPaG(200psig)~約13.8MPaG(2000psig)の範囲の圧力、及び約0.4~約0.7WHSV hr-1の範囲の重量空間速度で行われる、項目8に記載の方法。
【0107】
[00124]項目17. 項目1の方法に従って芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種の開環を促進するための、水素、及び外部ポケットを含有する低酸性度の結晶性物質上の貴金属を含む開環触媒の使用。
【0108】
[00125]項目18. 項目1の方法に従って処理される芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種から生成される、開環炭化水素種を含む組成物。
[00126]項目19. 項目8の方法に従って芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種の開環を促進するための、水素、及び外部ポケットを含有する低酸性度の結晶性物質上の貴金属を含む開環触媒の使用。
【0109】
[00127]項目20. 項目8の方法に従って処理される芳香族環及びシクロパラフィン環を含む炭化水素種から生成される、開環炭化水素種を含む組成物。
[00128]本開示は限られた数の実施形態を含むが、この開示の利益を有する当業者は、本開示の範囲から逸脱しない他の実施形態が考案され得ることを認識することになる。
【国際調査報告】