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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-01
(54)【発明の名称】前立腺がんの診断方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 51/04 20060101AFI20240325BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240325BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240325BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240325BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240325BHJP
【FI】
A61K51/04 200
A61K47/02
A61K47/04
A61K9/08
A61K47/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560269
(86)(22)【出願日】2022-04-01
(85)【翻訳文提出日】2023-10-23
(86)【国際出願番号】 EP2022058754
(87)【国際公開番号】W WO2022207906
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】21305432.3
(32)【優先日】2021-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭子
(72)【発明者】
【氏名】カタファウ,アナ
(72)【発明者】
【氏名】パレラ ピエッラ,エリザベト
(72)【発明者】
【氏名】へ,ベイレイ
(72)【発明者】
【氏名】クパメガン,ユーロージ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB11
4C076CC50
4C076DD23D
4C076DD26Z
4C076DD37Q
4C085HH03
4C085JJ02
4C085KB59
4C085LL18
(57)【要約】
本開示は、診断方法の分野、より具体的には前立腺がん撮像に関する。特に、本開示は、それを必要とする対象においてPSMA陽性腫瘍の存在および/または局在化を決定するのに使用するための放射性医薬品PSMA結合化合物であって、前記対象が、特に根治的前立腺摘除または放射線療法の後に、生化学的再発と診断されており、前記放射性医薬品化合物が、式(III)の化合物である、放射性医薬品PSMA結合化合物に関する。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象においてPSMA陽性腫瘍の存在および/または局在化を決定するための診断方法での使用のための放射リガンド造影剤であって、特に前記対象が前立腺がんを有し、前記PSMA陽性腫瘍が前立腺がんであり、前記対象が生化学的再発と診断されており、特に前記生化学的再発が根治的前立腺摘除または放射線療法後のものであり、前記放射リガンド造影剤がホスホロアミデート基および[18F]-フルオロ基を含むPSMA結合化合物である、放射リガンド造影剤。
【請求項2】
前記剤が、式(I):
【化1】
[式中、
各Rは、独立して水素または保護基、好ましくはt-ブチルもしくはベンジルであり、
各R2は、独立して水素またはC1~C6アルキルであり、
R3は、各々[18F]-フルオロ基で置換されており、ハロ、シアノおよびニトロからなる群から選択される第2の基で場合により置換されている、フェニルまたはピリジルであり、
L1は、1つまたは複数のアミノ酸、C1~C18アルキレン、ならびに1~35個の炭素原子および1~15個のヘテロ原子を含むヘテロアルキレンから選択される1つまたは複数の基を好ましくは含む、リンカーであり、前記ヘテロアルキレンは、オキソおよびC1~C6アルキルから選択される1つまたは複数の置換基で場合により置換されており、より好ましくは、L1は、1~6個のアミノ酸から選択されるリンカーである]
のPSMA結合化合物または任意の薬学的に許容されるその塩である、請求項1に記載の使用のための放射リガンド造影剤。
【請求項3】
式(II):
【化2】
[式中、
Lは、式-NH-CHCH-(OCHCH-)y-C(O)-の部分、または式
【化3】
(式中、yは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12であり;
mは、1、2、3、または4であり;
各nは、独立して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12である)
の基を含むリンカーであり、
R1は、各々[18F]-フルオロ基で置換されており、ハロ、シアノおよびニトロからなる群から選択される第2の基で場合により置換されている、フェニルまたはピリジルであり;
各R2は、独立して水素またはC1~C6アルキルであり;
各Rは、独立して水素または保護基(例えばt-ブチルもしくはベンジル)であり、
但し、Lが、式
【化4】
の基である場合、
mおよびnの組合せは、3~21個の原子の直鎖状のリンカーの長さになる]
のPSMA結合化合物および任意の薬学的に許容されるその塩である、請求項1または2に記載の使用のための放射リガンド造影剤。
【請求項4】
式(III):
【化5】
のPSMA結合化合物または任意の薬学的に許容されるその塩である、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のための放射リガンド造影剤。
【請求項5】
前記対象が、根治的前立腺摘除または放射線療法の後に生化学的再発と診断されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用のための放射リガンド造影剤。
【請求項6】
較正時間で150~1000MBq/mL、例えば370MBq/mL±10%の体積放射能をもたらす濃度で、注射または注入用溶液として製剤化される、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用のための放射リガンド造影剤。
【請求項7】
250~450MBqの間、典型的には約370MBqで含まれる有効用量で静脈内投与される、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用のための放射リガンド造影剤。
【請求項8】
対象の第1のPETスキャン撮像を注射後の60~120分の間に実施し、場合により第2のスキャン撮像を注射後の最大180分後に実施する、請求項6または7に記載の使用のための放射リガンド造影剤。
【請求項9】
前記方法が、
[i]前記対象に有効用量の請求項1から6のいずれか一項に記載の放射リガンド造影剤を投与するステップ、
[ii]PETスキャン、PET/CTまたはPET/MRIスキャンのいずれかにより前記対象を撮像するステップ、
[iii]前記PETスキャンで得られる画像を分析するステップ、ならびに
[iv]前記対象においてPSMA陽性腫瘍の存在および/または局在化を決定するステップ
を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用のための放射リガンド造影剤。
【請求項10】
150~1000MBq/mLの間、例えば約370MBq/mLの体積放射能をもたらす濃度で請求項1から5のいずれか一項に記載の前記放射リガンド造影剤、および1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を含む水溶液である、注射または注入用溶液。
【請求項11】
式(IV)
【化6】
の前駆体化合物が、5.0μg/mL以下、好ましくは4.0μg/mL以下、より好ましくは3.0μg/mL以下、さらにより好ましくは2.0μg/mL以下、さらにより好ましくは1.0μg/mL以下の濃度で存在する、請求項10に記載の溶液。
【請求項12】
5.0~8.0、好ましくは6.0~8.0、より好ましくは6.5~7.5の間のpHのための緩衝液、および等張剤、好ましくは塩化ナトリウムをさらに含み、好ましくは前記緩衝液が、リン酸緩衝液である、請求項10または11に記載の溶液。
【請求項13】
放射線分解に対する安定剤、好ましくは前記溶液の製造中に溶離剤として好適である安定剤をさらに含み、好ましくは前記安定剤および/または溶離剤が、アルコール、好ましくはエタノールである、請求項10から12のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項14】
[i]8.0~9.5mg/mL;好ましくは8.6~8.9mg/mLの濃度での、NaCl、
[ii]0.03~0.3mg/mL;好ましくは0.1~0.2mg/mLの濃度での、NaHPO
[iii]0.2~1.2mg/mL;好ましくは0.3~1.1mg/mLの濃度での、NaHPO
[iv]5~50mg/mL;好ましくは10.0~39.5mg/mLの濃度での、エタノール、および
[v]5.0μg/mL以下、好ましくは4.0μg/mL以下、より好ましくは3.0μg/mL以下、さらにより好ましくは2.0μg/mL以下、さらにより好ましくは1.0μg/mL以下の濃度での、前記前駆体化合物
を含む、請求項13に記載の溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、診断方法の分野、より具体的には前立腺がん撮像に関する。
【背景技術】
【0002】
前立腺特異的膜抗原(Prostate-specific membrane antigen)は、葉酸加水分解酵素またはグルタミン酸カルボキシペプチダーゼIIとしても知られる膜貫通タンパク質である。既知のPSMA過剰発現腫瘍全てから、前立腺がんは、PSMAの役割が最も広く研究されているがんである。前立腺がんは、男性において、米国(US)で2番目に死亡率の高いがんであり、ヨーロッパではがん関連死の3番目の主要な原因であるがんである(Siegel RL, Miller KD, Jemal A (2017) Cancer Statistics, 2017. CA Cancer J Clin; 67(1):7-30、Malvezzi M, Carioli G, Bertuccio P, et al (2019) European cancer mortality predictions for the year 2019 with focus on breast cancer. Ann Oncol; 30(5):781-7)。また、2019年に全部で174,650例のうち、9,960例の新規例の推定される増加と共に最も診断されたがんである(Siegel RL, Miller KD, Jemal A (2018) Cancer Statistics, 2018. CA Cancer J Clin; 68(1):7-30、Siegel RL, Miller KD, Jemal A (2019) Cancer statistics, 2019. CA Cancer J Clin; 69(1):7-34)。診断した症例の多くは、PSA検査の使用のため、より先進的な地域にあるが、死亡率には世界的にわずかな差しかなく、それは転移性、そしてしばしば去勢抵抗性疾患によるものである(Bray F, Ren JS, Masuyer E, et al (2013). Int J Cancer; 132:1133-45)。その後の処置は多面的であり、観察、手術(前立腺摘除)、放射線療法(体外ビームまたは短距離放射線療法)、ホルモン療法、化学療法を含み得る。腫瘍から非腫瘍組織までPSMAの発現が異なるため、PSMA-PET撮像を使用する疾患の局在化ならびに治療的介入の両方に関与する多くの標的化戦略がもたらされている。疾患の位置および程度の正確な同定は、前立腺がんの患者に対して処置の決定を判断する。ゆえに、前立腺がんの初期段階での遠隔転移性疾患の同定は、前立腺がんの管理を計画する際に重要である。
【0003】
前立腺がんの患者の最大40%が、初期処置後の10年以内に生化学的再発(BCR)を発症する(Isbarn et al 2010. BJU の患Int; 106:37-43)。通常、PSAレベルは、臨床的に検出可能な再発の数か月から数年先んじて上昇する。(Van Poppel et al 2006, (EORTC 30001). Eur J Cancer; 42:1062-7)。しかし、さらなる疾患の管理に必須である必要な精度で、局所性、限局性、または全身性の疾患を区別することはできない(Bott 2004. Prostate Cancer and Prostatic Dis; 7:211-6)。
【0004】
したがって、特に生化学的再発の患者において、できるだけ初期により小さい遠隔病変を検出することが適切である。
【0005】
前立腺がんに対する通常の診断ツールとして、PSA検査、デジタル直腸指診、経直腸超音波検査、前立腺生検、および組織病理学検査が挙げられる(Schwarzenbock S, Souvatzoglou M, Krause BJ (2012). Theranostics; 2(3):318-30;Smith RA, Andrews K, Brooks D, et al (2016) Cancer screening in the United States, 2016: A review of current American Cancer Society guidelines and current issues in cancer screening. CA Cancer J Clin; 66(2):95-114;Prasad V, Steffen IG, Diederichs G, et al (2016). Mol Imaging Biol; 18:428-36)。加えて、磁気共鳴画像法(MRI)、骨シンチグラフィ、CT、ならびに[18F]フルオロデオキシグルコース(FDG)、[18F]コリン、[11C]コリン、および最近承認された[18F]フルシクロビンのPET/CTのようなさらなる撮像技術は(Nanni C, Zanoni L, Pultrone C, et al (2016) (18)F-FACBC (anti1-amino-3-(18)F-fluorocyclobutane-1-carboxylic acid) versus (11)C-choline PET/CT in prostate cancer relapse: results of a prospective trial. Eur J Nucl Med Mol Imaging; 43:1601-10、Odewole OA, Tade FI, Nieh PT, et al (2016) Recurrent prostate cancer detection with anti-3-[(18)F]FACBC PET/CT: comparison with CT. Eur J Nucl Med Mol Imaging; 43:1773-83)、原発性前立腺がんの病期分類および生化学的再発の病期再分類に使用される(Schwarzenbock S, Souvatzoglou M, Krause BJ (2012) Choline PET and PET/CT in Primary Diagnosis and Staging of Prostate Cancer. Theranostics; 2(3):318-30)。
【0006】
CTおよびMRIは、充実性腫瘍での応答評価基準(RECIST)1.1による応答評価に対して選択されたベースラインでの腫瘍および病変を測定するためのケア撮像手順の標準である(Eisenhauer EA, Therasse P, Bogaerts J, et al (2009) New response evaluation criteria in solid tumours: revised RECIST guideline (version 1.1). Eur J Cancer; 45:228-47)。しかし、これらの撮像様式は、前立腺がんの患者において骨盤リンパ節の段階で限定的に得られることを示している。
【0007】
したがって、現在利用可能な標準治療試験より高感度で正確な撮像試験を必要とする。新規なPET放射性トレーサーは、この制限を克服するのに有望である。PET撮像は、患者の病期分類および腫瘍生検への知見の療法を提供する可能性をもたらすため、注目される選択である。様々な利用可能なPETプローブの中で、PSMAの68Ga標識リガンドは、後向き研究の複数のメタ分析において処置の前例のない正確性および効果に関連した(Perera M, Papa N, Christidis D, et al (2016). Eur Urol; 70:926-37;Han S, Woo S, Kim YJ, et al (2018). Eur Urol; 74:179-90、Von Eyben FE, Picchio M, von Eyben R, et al (2018). Eur Urol Focus; 4:686-93)。特に、いくつかの直接比較研究は、生化学的再発の患者において、前立腺がん腫瘍の局在化に対して[18F]フルシクロビン対[68Ga]Ga-PSMA-11の取込みを実施した。検出率は、患者毎および領域毎で、PSA<2.0ng/mlで患者における根治的前立腺摘除の後の[68Ga]Ga-PSMA-11対[18F]フルシクロビンの方が優れていた(Calais et al 2018 Potential Impact of 68Ga-PSMA-11 PET/CT on the Planning of Definitive Radiation Therapy for Prostate Cancer. J Nucl Med; 59(11):1714-21)。しかし、前立腺がんの生化学的再発の患者における[18F]フルシクロビン対[68Ga]Ga-PSMA-11でのより大きな予期された直接比較研究は、2つの異なる放射リガンド間の前立腺がん再発に対する全体の検出率で統計学的差は見られなかった(Pernthaler et al 2019 A Prospective Head-to-Head Comparison of 18F-Fluciclovine With 68Ga-PSMA-11 in Biochemical Recurrence of Prostate Cancer in PET/CT. Clin Nucl Med; 44(10):e566-e73)。
【0008】
ゆえに、改善した検出率および/または局在化をもって、生化学的再発を伴う前立腺がん患者における腫瘍を検出し、局在化することが可能な放射リガンドを同定する必要性が依然として存在する。
【0009】
18F]CTT1057は、有望で新規なPSMA標的化する18F標識したPET造影剤である(国際公開第2014143736号パンフレット)。尿素骨格を共有する68Gaまたは18Fのいずれかで標識した多くの他のPSMA剤(例えば、[68Ga]Ga-PSMA-11、[18F]PSMA1007、[18F]DCFPyL)と異なり、[18F]CTT1057は、PSMAに高いナノモル親和性で不可逆的に結合するホスホロアミデート足場に基づき、これによって、より高く長期的な腫瘍取込みを説明することができる(Behr SC, Aggarwal R, VanBrocklin HF, et al (2019) Phase I Study of CTT1057, an 18F-Labeled Imaging Agent with Phosphoramidate Core Targeting Prostate-Specific Membrane Antigen in Prostate Cancer. J Nucl Med; 60(7):910-6)。
【0010】
20名の前立腺がん患者(n=5の一次病期分類およびn=15の転移性-去勢抵抗性の前立腺がん(mCRPC))での[18F]CTT1057第1相試験は、いかなる放射性トレーサー関連の有害反応も伴わずに許容される安全性プロファイルを示している。第1相試験はまた、転移性病変が従来の撮像より[18F]CTT1057撮像でのより高い感度で検出されることも示した(Behr et al 2019)。別のより小規模な研究では、[18F]CTT1057 PET撮像での画質が、[68Ga]Ga-PSMA-11 PETで得られるものと質的に類似していたことが示された(Behr S, Aggarwal R, Flavell R, et al (2017) [abstract]. J Nucl Med; 58 Suppl 1:733A)。
【発明の概要】
【0011】
本開示は、生化学的再発と診断された患者、特に前立腺がんの患者において、PSMA陽性の検出および局在化のためのPET造影剤の新規な使用方法を提供する。
【0012】
特に、本開示の目的は、PSMA発現がん細胞、好ましくは非常に高い腫瘍対バックグラウンド比をもたらす前立腺がん細胞への標的に対する高い親和性を伴うPET造影剤を使用してPSMA陽性腫瘍を検出する方法を提供することである。
【0013】
本開示の別の目的は、疾患の非常に小さな体積の部位を同定するための方法を提供することである。
【0014】
本開示の別の目的は、前立腺床、骨盤リンパ節、および骨のような疾患の典型的な部位の検出に好ましい生体内分布を有するPET造影剤で、PSMA陽性腫瘍、好ましくは前立腺がん腫瘍を検出する、方法を提供することである。
【0015】
本開示の別の目的は、PSMA陽性腫瘍、好ましくは前立腺がん腫瘍を検出する方法であって、初期の病期分類、生化学的再発時の病期再分類、放射線または手術の計画を含む多種の異なる臨床状況の中で確実に作用する、方法を提供することである。
【0016】
本開示の別の目的は、患者の高スループットを可能にする高い放射化学的収率を有する造影剤で、PSMA陽性腫瘍、好ましくは前立腺がん腫瘍を検出する方法を提供することである。
【0017】
ゆえに、本開示は、対象においてPSMA陽性腫瘍の存在および/または局在化を決定するのに使用するための放射リガンド造影剤であって、前記対象が生化学的再発と診断されており、前記放射リガンド造影剤がホスホロアミデート基および[18F]-フルオロ基を含むPSMA結合化合物である、放射リガンド造影剤に関する。
【0018】
本開示はまた、150~1000MBq/mL、例えば約370MBq/mLの体積放射能をもたらす濃度でホスホロアミデート基および[18F]-フルオロ基を含むPSMA結合化合物、ならびに1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を含む水溶液である、注射または注入用溶液に関する。
【0019】
また本明細書で開示されるのは、対象、好ましくは前立腺がんの対象においてPSMA陽性腫瘍の存在および/または局在化を決定するための方法であって、前記対象が、生化学的再発と診断されており、前記方法が、
[i]前記対象に有効用量の以下に定義される放射リガンド造影剤を投与するステップ、
[ii]PETスキャン、PET/CTまたはPET/MRIスキャンのいずれかにより前記対象を撮像するステップ、
[iii]PETスキャンで得られる画像を分析するステップ、
を含み、
それにより、前記対象においてPSMA陽性腫瘍の存在および/または局在化を決定する、方法である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
定義
本明細書で使用する場合、用語「PSMA陽性腫瘍」とは、PSMA結合部分を含むトレーサー化合物、典型的には以下に記載される式(I)、(II)または(III)の18F放射標識したPSMA結合化合物のような放射リガンド造影剤で検出することができる腫瘍病変を指す。
【0021】
国際単位系と一致して、「MBq」は、放射能の単位「メガベクレル」に対する略号である。
【0022】
本明細書で使用する場合、「PET」は、陽電子放出断層撮影法を表す。
【0023】
本明細書で使用する場合、「SPECT」は、単光子放射型コンピューター断層撮影法を表す。
【0024】
本明細書で使用する場合、「MRI」は、磁気共鳴画像法を表す。
【0025】
本明細書で使用する場合、「CT」は、コンピューター断層撮影法を表す。
【0026】
本明細書で使用する場合、本開示の方法による使用のための放射リガンド造影剤の用語「有効用量」とは、前記造影剤を使用する撮像研究から、患者においてPSMA陽性病変の存在または局在化を決定するのに十分な量の造影剤を指す。特に、具体的な実施形態では、存在および/または局在化は、従来の撮像法より確実に本開示の方法で決定される。有効用量は、注射時間に注射した溶液の放射能で決定することができる。注射した溶液の放射能は、典型的には注射用溶液の生成後の「較正時間」とも称される基準時間で、注射用溶液の体積放射能の測定値に由来し得る。医師は、注射時間での推定される体積放射能と較正時間での既知の体積放射能とに基づいて注射する体積を調節する。
【0027】
したがって、本明細書で使用する場合、用語「較正時間」とは、組成物の体積放射能の放射能について言及する場合、基準データおよび時間で、例えば生成物を製造した後の60分以内で、測定した放射能を指す。
【0028】
「放射化学的純度」は、記載した化学的または生物学的形態で存在する記載した放射性核種の百分率である。ラジオクロマトグラフィー法、例えばHPLC法または薄層クロマトグラフィー法(TLC)は、放射薬学において放射化学的純度を決定するための通常許容される方法である。具体的な実施形態では、放射リガンド造影剤の放射化学的純度は95%以上である。
【0029】
本明細書で使用する場合、「水溶液」とは、1つまたは複数の溶質の水中の溶液を指す。用語「水溶液」とはまた、水およびアルコール、好ましくはエタノールを含む水性アルコール溶液も指し、例えば、アルコールは、0%~20%、好ましくは0%~10%、例えば2%~8%の間、より好ましくは約5%含まれる。
【0030】
用語「約」または「およそ」は、続く値が±20%、好ましくは±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±2%、さらにより好ましくは±1%で変動し得ることを本明細書では意味する。
【0031】
本明細書で使用する場合、用語「アミノ酸」は、少なくとも1つのアミノ基および少なくとも1つのカルボン酸基を含む有機化合物に関し、天然および非天然アミノ酸の両方を含む。
【0032】
本明細書で使用する場合、用語「ヘテロアルキレン」とは、二価ヘテロアルキルを指し、1~35個、好ましくは1~20個の炭素原子ならびにO、NおよびSからなる群から選択される1~15個のヘテロ原子からなる直鎖または分枝鎖炭化水素鎖であり、窒素および硫黄原子は、場合により酸化され(例えば、スルホキシドまたはスルホン)、窒素ヘテロ原子は、場合により四級化される。ヘテロ原子(1つまたは複数)、O、NおよびSは、ヘテロアルキレン基のいずれかの内部位置、および鎖末端のどちらかまたは両端に配置され得る。
【0033】
本開示の方法での使用のための放射リガンド造影剤
本開示による使用のための放射リガンド造影剤は、少なくとも1つのホスホロアミデート基および[18F]-フルオロ基を含むPSMA結合化合物、または任意の薬学的に許容されるその塩である。
【0034】
18F放射標識したPSMA結合化合物は、先行技術で記載されており、国際公開第2013173583号パンフレットまたは国際公開第2014143736号パンフレットに記載されるものを含む。
【0035】
ある特定の実施形態では、本開示による使用のための放射リガンド造影剤は、式(I):
【0036】
【化1】
[式中、
各Rは、独立して水素または保護基(例えばt-ブチルもしくはベンジル)であり、
各R2は、独立して水素またはC1~C6アルキルであり、
R3は、各々[18F]-フルオロ基で置換されており、ハロ、シアノおよびニトロからなる群から選択される第2の基で場合により置換されている、フェニルまたはピリジルであり、
L1は、1つまたは複数のアミノ酸、C1~C18アルキレン、ならびに1~35個の炭素原子および1~15個のヘテロ原子を含むヘテロアルキレンから選択される1つまたは複数の基を好ましくは含む、リンカーであり、前記ヘテロアルキレンは、オキソおよびC1~C6アルキルから選択される1つまたは複数の置換基で場合により置換されており、より好ましくは、L1は、1~6個のアミノ酸から選択されるリンカーである]
のPSMA結合化合物または薬学的に許容されるその塩である。
【0037】
ある特定の実施形態では、本開示による使用のための放射リガンド造影剤は、式(II):
【0038】
【化2】
[式中、
Lは、式-NH-CHCH-(OCHCH-)y-C(O)-の部分、または式
【0039】
【化3】
(式中、yは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12であり;
mは、1、2、3、または4であり;
各nは、独立して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12である)
の基を含むリンカーであり、
R1は、各々[18F]-フルオロ基で置換されており、クロロおよびシアノからなる群から選択される第2の基で場合により置換されている、フェニルまたはピリジルであり、
各R2は、独立して水素またはC1~C6アルキルであり;
各Rは、独立して水素または保護基(例えばt-ブチルもしくはベンジル)であり、
但し、Lが、式
【0040】
【化4】
の基である場合、
mおよびnの組合せは、3~21個の原子の直鎖状のリンカーの長さになる]
のPSMA結合化合物または任意の薬学的に許容されるその塩である。例えば、mが2であり、各nが4である場合、リンカーは12原子の長さである。mが1であり、nが10である場合も、リンカーの長さは12である。リンカーの長さは、式m・(n+2)を使用して算出する。
【0041】
本明細書で使用する場合、本明細書で使用する「保護基」は、その後の化学変換で化学選択性を可能にする官能基(例えば、亜リン酸またはカルボン酸)に導入される基である。このような基、具体的にはカルボン酸およびリン酸保護基は、Greene's Protective Groups in Organic Synthesis, 4th Editionに記載されている(その関連部分は参照により組み込まれる)。
【0042】
一部の実施形態では、「保護基」は、アルキル、アルケニル、またはハロアルキルである。これは、限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、アリル、トリフルオロメチルまたはトリフルオロエチルを含む。一部の実施形態では、「保護基」は、ベンジルまたは置換ベンジルであり、限定されないが、トリフェニルメチル(トリチル)、ジフェニルメチル、o-ニトロベンジル、2,4,6-トリメチルベンジル、p-ブロモベンジル、p-ニトロベンジル、p-メトキシベンジル(PMB)、2,6-ジメトキシベンジル、4-(メチルスルフィニル)ベンジル、4-スルホベンジル、4-アジドメトキシベンジル、およびピペロニルを含む。
【0043】
好ましい実施形態では、本開示による使用のための放射リガンド造影剤は、式(III):
【0044】
【化5】
のPSMA結合化合物または任意の薬学的に許容されるその塩である。
【0045】
式(III)の化合物はまた、[18F]CTT1057として文献で言及される。
【0046】
本開示による使用のための他のPSMA結合化合物およびそのような化合物の合成方法は、特に国際公開第2014/143736号パンフレットに記載されており、その内容は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0047】
具体的な実施形態では、本開示による使用のためのPSMA結合化合物は、以下の式(IV):
【0048】
【化6】
の前駆体CTT1298から、特に、以下の反応スキーム:
【0049】
【化7】
に記載されるようにスクシンイミジル-18F-フルオロベンゾエートを一級アミン前駆体にカップリングすることにより、合成することができる。
【0050】
18F]SFBは、以下の反応スキーム:
【0051】
【化8】
を通して合成することができる。
【0052】
化合物CTT1298を得るための方法は、当該技術分野、特に国際公開第2014143736号パンフレットに記載されている(実施例1、その内容は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0053】
ORA Neptis(登録商標)Perform Synthesizerでの合成方法の他の例は、Jivan et al 2017 (J Labelled Comp Radiopharm 2017: 60:1)にさらに記載されている。
【0054】
本開示の医薬組成物
本開示による使用のためのPSMA結合化合物は、医薬組成物、典型的には注射または注入用溶液として製剤化する。
【0055】
前記注射または注入用溶液は、好ましくは、本明細書に記載されるPSMA結合化合物および1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を含む水溶液または水性アルコール溶液である。
【0056】
典型的には、前記PSMA結合化合物は、較正時間で、150~1000MBq/mL、好ましくは200~700MBq/mL、より好ましくは250~450MBq/mLの間、例えば約370MBq/mLの体積放射能をもたらす濃度で前記医薬組成物中に存在し得る。
【0057】
薬学的に許容される賦形剤は、従来使用されるもののいずれかであり得る。特に、1つまたは複数の賦形剤は、緩衝液、放射線分解に対する安定剤、等張剤、およびその混合物から選択することができる。
【0058】
本明細書で使用する場合、「放射線分解に対する安定剤」とは、放射線分解に対する有機分子を保護する安定化剤を指し、例えば、放射性核種から放射されるガンマ線が有機分子の原子間の結合を切断し、ラジカルを形成する場合、これらのラジカルは、次いで、ラジカルが望ましくない、潜在的に無効な、またはさらに毒性のある分子をもたらし得る任意の他の化学反応を経験することを回避する安定剤により捕捉される。したがって、これら安定剤はまた、「フリーラジカルスカベンジャー」または短く「ラジカルスカベンジャー」とも称す。これら安定剤の他の代替的な用語は、「放射線安定性エンハンサー」、「放射線分解安定剤」、または単に「クエンチャー」である。好ましい実施形態では、放射線分解に対する安定剤はエタノールである。
【0059】
緩衝液として、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、もしくはクエン酸緩衝液、またはその組合せ、好ましくはリン酸緩衝液が挙げられる。具体的な実施形態では、緩衝液または緩衝液の組合せは、6.5~7.5のpHに好適である。
【0060】
等張剤は、特に約0.9%の濃度で塩化ナトリウムを含む。
【0061】
具体的な実施形態では、前記注射または注入用溶液は、較正時間で150~1000MBq/mL、好ましくは200~700MBq/mL、より好ましくは250~450MBq/mLの間、典型的には較正時間で約370MBq/mLの体積放射能で提供される濃度での、上述した節に記載される放射リガンド造影剤、例えば、式(I)、(II)または(III)のPSMA結合化合物、好ましくは式(III)の化合物、ならびに場合により、リン酸緩衝液および塩化ナトリウムを含む。
【0062】
具体的な実施形態では、注射または注入用溶液は、6.5~7.5の間のpHのための緩衝液、好ましくはリン酸緩衝液、および等張剤、好ましくは塩化ナトリウムをさらに含む。
【0063】
具体的な実施形態では、溶液は、合成で使用する最大量の前駆体化合物をさらに含み得る。例えば、式(IV)の前駆体化合物(CTT1298とも称す)は、5μg/mL以下、好ましくは4μg/mL以下、より好ましくは3μg/mL以下、さらにより好ましくは2μg/mL以下、さらにより好ましくは1μg/mL以下の濃度で存在する。
【0064】
具体的な実施形態では、溶液は、溶液の製造中に溶離剤として好適であり得る放射線分解に対する安定剤をさらに含み得、好ましくは前記安定剤および/または溶離剤は、アルコール、好ましくはエタノールである。実際に、好ましい実施形態によると、特に、例えば以下の実施例に記載されるような放射リガンドの自動合成で、溶液は、その前駆体化合物から分離するための放射リガンドの溶出から得られる。
【0065】
したがって、好ましい実施形態では、注射用溶液は、
(i)較正時間で250~450MBq/mL、典型的には較正時間で約370MBq/mLの体積放射能で提供される濃度での、上述した節に記載される放射リガンド造影剤、例えば、式(I)、(II)または(III)のPSMA結合化合物、好ましくは式(III)の化合物、
(ii)8.0~9.5mg/mL;好ましくは8.6~8.9mg/mLの濃度での、NaCl、
(iii)0.03~0.3mg/mL;好ましくは0.1~0.2mg/mLの濃度での、NaH2PO4、
(iv)0.2~1.2mg/mL;好ましくは0.3~1.1mg/mLの濃度での、Na2HPO4、
(v)5~50mg/mL;好ましくは10.0~39.5mg/mLの濃度での、エタノール、および
(vi)場合により、5.0μg/mL以下、好ましくは4.0μg/mL以下、なおより好ましくは3.0μg/mL以下、さらにより好ましくは2.0μg/mL以下、好ましくは1.0μg/mL以下の濃度での、前駆体化合物(例えば、式IVのCTT1298前駆体化合物)
を含む。
【0066】
生化学的再発の対象
本開示による放射リガンド造影剤の検出方法および使用は、生化学的再発の対象、好ましくは生化学的再発を伴う前立腺がんの対象を意図している。
【0067】
具体的な実施形態では、本開示による放射リガンド造影剤の検出方法および使用は、根治的前立腺摘除後または放射線療法後の生化学的再発を伴う前立腺がんの対象を意図している。
【0068】
本明細書で使用する場合、用語「生化学的再発」とは、米国泌尿器学会基準で提案されるその一般的な意味を指す。より具体的には、根治的前立腺摘除後の生化学的再発の定義は、Cookson et al 2007 J Urol;177(2):540-5に提供される。具体的な実施形態では、根治的前立腺摘除を経験し、0.2ng/ml以上である、手術の6~13週後に測定したPSAレベルの検出可能または上昇、および場合により、厳密に0.2ng/ml超である、第1の測定の少なくとも2週間後に測定した第2の確認のレベルを伴う、前立腺がんの対象に関する。放射線療法後の生化学的再発の対象の定義は、Roach et al 2006 Int J Radiat Oncol Biol Phys;65(4):965-74に提供され得る。具体的な実施形態では、American Society for Radiation Oncology(ASTRO)-Phoenix基準(達成した最小のPSAとして定義される最低PSAより大きい、2ng/ml以上のPSA(最低PSA+2))による生化学的再発を伴う、治療目的の放射線療法を経験している対象に関する。
【0069】
生化学的再発の対象において陽性腫瘍の存在および局在化を決定するための方法
本開示の目的は、生化学的再発の対象、典型的には前立腺がんの対象においてPSMA陽性腫瘍の存在または局在化を決定するための方法を提供することである。
【0070】
典型的には、PSMA陽性腫瘍の存在および局在化は、放射性トレーサーの注射後のPSMA結合化合物、例えば、生化学的再発と診断されている前記対象におけるPSMA結合化合物の取込みを分析することにより検出する。
【0071】
したがって、本開示は、対象においてPSMA陽性腫瘍の存在および/または局在化を決定するための方法であって、前記対象が、生化学的再発と診断されており、前記方法が、
[i]前記対象に有効用量の前述した放射リガンド造影剤、好ましくは式(I)、(II)または(III)のPSMA結合化合物、最も好ましくは以下の式(III):
【0072】
【化9】
のPSMA結合化合物または任意の薬学的に許容されるその塩を投与するステップ、
[ii]PETスキャン、例えばPET/CTまたはPET/MRIスキャンにより前記対象を撮像するステップ、
[iii]PETスキャンで得られる画像を分析するステップ、
を含み、
それにより、前記対象においてPSMA陽性腫瘍の存在および/または局在化を決定する、
方法に関する。
【0073】
したがって、本開示は、前立腺がんの対象においてPSMA陽性腫瘍の存在および/または局在化を決定するための方法であって、前記対象が、典型的には根治的前立腺摘除後または放射線療法後の生化学的再発と診断されており、前記方法が、
[i]前記対象に有効用量の前述した放射リガンド造影剤、好ましくは式(I)、(II)または(III)のPSMA結合化合物、最も好ましくは以下の式(III):
【0074】
【化10】
のPSMA結合化合物または任意の薬学的に許容されるその塩を投与するステップ、
[ii]PETスキャン、例えばPET/CTまたはPET/MRIスキャンにより前記対象を撮像するステップ、
[iii]PETスキャンで得られる画像を分析するステップ、
を含み、
それにより、前記対象においてPSMA陽性腫瘍の存在および/または局在化を決定する、方法に関する。
【0075】
一般に、有効用量は、臨床用途に利用可能である装置を使用する許容される撮像を得るのに十分な造影剤の量である。本開示の方法で使用される造影剤の量および撮像するステップの期間は、とりわけ、患者の体重、検出される状態の性質および重症度、患者が経験している治療的処置の性質などに依存する。最終的に、医師は、個々の各患者に投与する造影剤の量および撮像するステップの期間を決定することができる。
【0076】
具体的な実施形態では、生化学的再発と診断されている対象は、前述した前記放射リガンド造影剤を含む注射または注入用溶液の静脈内注射により、250~450MBq、典型的には約370MBqの単回有効用量を受ける。具体的な実施形態では、注射の体積は10mLを超えず、例えば500μL~10mL、好ましくは800μL~5mL、例えば800μL~2mLの間、および好ましくは約1mLで含まれる。
【0077】
次いで、患者の身体の画像は、陽電子放出断層撮影法-磁気共鳴画像法(PET/MRI)または陽電子放出断層撮影法-コンピューター断層撮影法(PET/CT)の撮像により得られる。PET/MRIまたはPET/SCANによる画像の取得のための方法は当該技術分野で周知されている。
【0078】
典型的には、第1のPETスキャンは、注射/注入後の60~120分、例えば90分の窓で実施し、第2のPETスキャンが放射リガンド造影剤の注射の最大180分後に実施される可能性を有する。
【0079】
次いで、画像を、目視評価、定量的評価、またはその両方により分析して、1つもしくは複数のPSMA陽性病変の存在を同定し、および/または、1つもしくは複数のPSMA陽性病変の局在化を決定する。画像は、PSMAに接触した場合に部位に蓄積する造影剤の空間分布での差により生成することができる。空間分布は、いずれかの方法、例えばPET機器を使用して測定することができる。造影剤の蓄積の程度は、放射能放出を定量化するための既知の方法を使用して定量化することができる。特に有用なアプローチは、2種類以上の造影剤を利用して、同時研究を実施することができる。
【0080】
具体的な実施形態では、用語「PSMA陽性腫瘍」または「PSMA陽性病変」とは、以下の通り、PET/CTまたはPET/MRIでの病理学放射リガンド造影剤の取込みを示す、対象、好ましくは前立腺がんの対象において目視で同定された病変を指す:
・血液プール(隣接または縦隔血液プール)より優れると考えられる、目視的なPET陽性リンパ節;
・生理学的な骨髄より優れると考えられる、PET陽性骨病変;
・前述した通り、関与する臓器または解剖学的部位の生理学的なバックグラウンド活性より優れると考えられる、PET陽性前立腺、前立腺床、および内臓病変(Fendler WP, Calais J, Eiber M, et al (2019) JAMA Oncol; 5(6):856-63、Eiber M, Maurer T, Souvatzoglou M, et al (2015) J Nucl Med; 56(5):668-74、Ceci F, Uprimny C, Nilica B, et al (2015) Eur J Nucl Med Mol Imaging; 42:1284-94)。
【0081】
方法のある特定の実施形態では、生化学的再発の対象は、従来の撮像で検出されるPSMA陽性病変を有しない。
【0082】
方法のある特定の実施形態では、方法は、特に生化学的再発を伴う前立腺がんの対象において、[68Ga]-PSMA-11化合物と比較して、PSMA陽性腫瘍の検出に対して改善した感度および/または特異性を示すことが期待される。
【0083】
18F標識したトレーサーは、以下の実用的な利点を有する:18Fは、68Gaより長い半減期を有し、トレーサーがサイクロトロンを伴わずにPET中心に分布し、臨床慣例での容易な取り扱いを可能にする。加えて、18F(96.9%)対68Ga(87.7%)の高陽電子の分岐崩壊は、18Fのより短い陽電子範囲と共に、18F標識した放射性医薬品で達成されるより高いPET画像解像度で確認する(Conti M, Eriksson L (2016) EJNMMI Physics; 3(1):1-17)。尿素骨格を共有する68Gaまたは18Fのいずれかで標識した多くの他のPSMA剤(例えば、[68Ga]Ga-PSMA-11、[18F]PSMA1007、[18F]DCFPyL)と異なり、[18F]CTT1057は、PSMAに高いナノモル親和性で不可逆的に結合するホスホロアミデート足場に基づく。これは、PETスキャンのより高い解像度、ならびに腫瘍のさらに非常に小さい病変を検出するより高い精度および正確性をもたらす。
【0084】
具体的な実施形態では、方法は、再発を処置するための患者の管理に特に有用である。
【0085】
ゆえに、本開示はまた、生化学的再発の対象の疾患状態をモニタリングするための方法であって、前記方法が、
[i]前記対象に有効用量の前述した放射リガンド造影剤、例えば式(I)、(II)もしくは(III)のPSMA結合化合物または任意の薬学的に許容されるその塩、より好ましくは以下の式(III):
【0086】
【化11】
のPSMA結合化合物または任意の薬学的に許容されるその塩を、好ましくは前述するように注射の溶剤を静脈内注射することにより、投与するステップ、
[ii]例えば、注射後の60~120分からの窓で、好ましくは約90分での第1の陽電子放出断層撮影法(PET)スキャン、および場合により、注射の最大180分後の第2のPETスキャンにより前記対象を撮像するステップ、
[iii]PETスキャンで得られる画像を分析するステップ、
[iv]前記対象においてPSMA陽性腫瘍の存在および/または局在化を決定するステップ、
[v]前記対象においてPSMA陽性腫瘍の存在および/または局在化に依存する処置選択肢を決定するステップ、
[vi]場合により、前記処置選択肢で対象を処置するステップ
を含む、方法に関する。
【0087】
疾患の局在化および程度の正確な同定は、患者、典型的には前立腺がんの患者に対して処置の決定を判断する。前立腺がんの初期段階での遠隔転移性疾患の同定は、前立腺がんの管理を計画する際に重要である。前立腺がんに対する初期のランディング部位が拡大した骨盤リンパ節の切開(ePLND)のテンプレートの外側にある証拠が増加している。ePLNDの外側の初期のリンパ節ランディング部位は、68Ga-PSMA PET/CTでリンパ節陽性疾患の疑いの男性の47.7%で報告されている(Yaxley JW, Raveenthiran S, Nouhaud FX, et al (2019a) BJU Int; 124:401-7)。治療目的の1つから、原発性前立腺腫瘍の処置の後に多様式アプローチを必要とする管理への管理での変化があった場合、手術の発生を回避するので、非常に重要である(Yaxley JW, Dagher J, Delahunt B, et al (2018) World J Urol; 36:15-20、Yaxley JW, Raveenthiran S, Nouhaud FX, et al (2019b) J Urol; 201:815-20)。
【0088】
ゆえに、処置選択肢は、手術、放射線単独、放射線およびアンドロゲン除去療法、アンドロゲン除去療法単独、観察/監視などのような異なるアプローチの中でその後、変化させることができる。
【0089】
本開示は、前述した対象の疾患状態をモニタリングするためのキットであって、前記キットが、少なくとも有効用量の前述した放射リガンド造影剤、例えば式(I)、(II)または(III)のPSMA結合化合物、より好ましくは以下の式(III):
【0090】
【化12】
のPSMA結合化合物もしくはその薬学的に許容されるその塩のいずれか
または前述した放射リガンド造影剤を含む前記注射もしくは注入用溶液を含む、キットにさらに関する。
【0091】
本開示は、前述した方法の使用のためのキットであって、前記キットが、薬学的に許容される担体と組み合わせて、有効用量、例えば約370MBqの放射リガンド造影剤または前述した合成のためのその前駆体を含む、キットにさらに関する。造影剤、その前駆体、および担体は、溶液中に提供される。
【0092】
ある特定の実施形態では、本開示の方法における使用のためのキットは、K[18F]またはNa[18F]のような放射標識試薬とその場で組み合わせる非放射標識前駆体、典型的には式(IV)の化合物を含む。
【0093】
本開示にしたがって、以下の実施形態E1~E30を提供する。
【0094】
E1:対象においてPSMA陽性腫瘍の存在および/または局在化を決定するための診断方法での使用のための放射リガンド造影剤であって、特に前記対象が前立腺がんの対象であり、前記PSMA陽性腫瘍が前立腺がんであり、前記対象が生化学的再発と診断されており、前記放射リガンド造影剤がホスホロアミデート基および[18F]-フルオロ基を含むPSMA結合化合物である、使用のための放射リガンド造影剤。
【0095】
E1b:前記方法が、
[i]前記対象に有効用量の前記放射リガンド造影剤を投与するステップ、
[ii]PETスキャン、PET/CTまたはPET/MRIスキャンのいずれかにより前記対象を撮像するステップ、
[iii]前記PETスキャンで得られる画像を分析するステップ、ならびに
[iv]前記対象においてPSMA陽性腫瘍の存在および/または局在化を決定するステップ
を含む、E1に記載の使用のための放射リガンド造影剤。
【0096】
E2:前記薬剤が、式(I):
【0097】
【化13】
[式中、
各Rは、独立して水素または保護基(例えばt-ブチルもしくはベンジル)であり、
各R2は、独立して水素またはC1~C6アルキルであり、
R3は、各々[18F]-フルオロ基で置換されており、ハロ、シアノおよびニトロからなる群から選択される第2の基で場合により置換されている、フェニルまたはピリジルであり、
L1は、1つまたは複数のアミノ酸、C1~C18アルキレン、ならびに1~35個の炭素原子および1~15個のヘテロ原子を含むヘテロアルキレンから選択される1つまたは複数の基を好ましくは含む、リンカーであり、前記ヘテロアルキレンは、オキソおよびC1~C6アルキルから選択される1つまたは複数の置換基で場合により置換されており、より好ましくは、L1は、1~6個のアミノ酸から選択されるリンカーである]
のPSMA結合化合物または任意の薬学的に許容されるその塩である、E1またはE1bに記載の使用のための放射リガンド造影剤。
【0098】
E3:式(II):
【0099】
【化14】
[式中、
Lは、式-NH-CHCH-(OCHCH-)y-C(O)-の部分、または式
【0100】
【化15】
(式中、yは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12であり;
mは、1、2、3、または4であり;
各nは、独立して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12である)
の基を含むリンカーであり、
R1は、各々[18F]-フルオロ基で置換されており、ハロ、シアノおよびニトロからなる群から選択される第2の基で場合により置換されている、フェニルまたはピリジルであり;
各R2は、独立して水素またはC1~C6アルキルであり;
各Rは、独立して水素または保護基(例えばt-ブチルもしくはベンジル)であり、
但し、Lが、式
【0101】
【化16】
の基である場合、
mおよびnの組合せは、3~21個の原子の直鎖状のリンカーの長さになる]
のPSMA結合化合物および任意の薬学的に許容されるその塩である、E1、E1bまたはE2のいずれか一実施形態に記載の使用のための放射リガンド造影剤。
【0102】
E4:式(III):
【0103】
【化17】
のPSMA結合化合物または任意の薬学的に許容されるその塩である、E1からE3のいずれか一実施形態に記載の使用のための放射リガンド造影剤。
【0104】
E5:前記対象が、根治的前立腺摘除または放射線療法の後に生化学的再発と診断されている、E1からE4のいずれか一実施形態に記載の使用のための放射リガンド造影剤。
【0105】
E6:較正時間で150~1000MBq/mL、例えば370MBq/mL±10%の体積放射能をもたらす濃度で、注射または注入用溶液として製剤化する、E1からE5のいずれか一実施形態に記載の使用のための放射リガンド造影剤。
【0106】
E7:250~450MBqの間、典型的には約370MBqで含まれる有効用量で静脈内投与する、E1からE6のいずれか一実施形態に記載の使用のための放射リガンド造影剤。
【0107】
E8:対象の第1のPETスキャン撮像を注射または注入後の60~120分の間に実施し、場合により第2のスキャン撮像を注射または注入後の最大180分後に実施する、E6またはE7に記載の放射リガンド造影剤。
【0108】
E9:150~1000MBq/mLの間、例えば約370MBq/mLの体積放射能をもたらす濃度でE1からE5のいずれかに定義される前記放射リガンド造影剤、および1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を含む水溶液である、注射または注入用溶液。
【0109】
E10:式(IV):
【0110】
【化18】
の前駆体化合物が、5.0μg/mL以下、好ましくは4.0μg/mL以下、より好ましくは3.0μg/mL以下、さらにより好ましくは2.0μg/mL以下、さらにより好ましくは1.0μg/mL以下の濃度で存在する、E9に記載の溶液。
【0111】
E11:5.0~8.0、好ましくは6.0~8.0、より好ましくは6.5~7.5の間のpHのための緩衝液、好ましくはリン酸緩衝液、および等張剤、好ましくは塩化ナトリウムをさらに含む、E9またはE10に記載の溶液。
【0112】
E12:放射線分解に対する安定剤、好ましくは溶液の製造中に溶離剤として好適である安定剤をさらに含み、好ましくは前記安定剤および/または溶離剤が、アルコール、好ましくはエタノールである、E11に記載の溶液。
【0113】
E13:
[i]8.0~9.5mg/mL;好ましくは8.6~8.9mg/mLの濃度での、NaCl、
[ii]0.03~0.3mg/mL;好ましくは0.1~0.2mg/mLの濃度での、NaHPO
[iii]0.2~1.2mg/mL;好ましくは0.3~1.1mg/mLの濃度での、NaHPO
[iv]5~50mg/mL;好ましくは10.0~39.5mg/mLの濃度での、エタノール、および
[v]場合により、5.0μg/mL未満の濃度での、前駆体化合物
を含む、E12に記載の溶液。
【0114】
E14:対象、好ましくは前立腺がんの対象においてPSMA陽性腫瘍の存在および/または局在化を決定するための方法であって、前記対象が、生化学的再発と診断されており、前記方法が、
[i]前記対象に有効用量の実施形態E1~E7のいずれかに定義される放射リガンド造影剤を投与するステップ、
[ii]PETスキャン、PET/CTまたはPET/MRIスキャンのいずれかにより前記対象を撮像するステップ、
[iii]PETスキャンで得られる画像を分析するステップ、
を含み、
それにより、前記対象においてPSMA陽性腫瘍の存在および/または局在化を決定する、方法。
【0115】
E15:前記放射リガンド造影剤が、250~450MBq、典型的には約370MBqで含まれる有効用量で静脈内投与する、E14に記載の方法。
【0116】
E16:5~10mmのサイズのPSMA陽性腫瘍病変の存在および/または局在化を決定する、E14またはE15に記載の方法。
【0117】
E17:撮像するステップ(ii)が、注射/注入の60~120分後、典型的には注射/注入の約90分後に実施した第1のPETスキャンを含み、場合により、第2のスキャンが、注射/注入の最大180分後に実施する、E14からE16に記載の方法。
【0118】
E18:前記放射リガンド造影剤が、実施形態E9からE13のいずれか一実施形態に定義される注射または注入用溶液として製剤化する、E14からE17のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0119】
E19:生化学的再発の対象の疾患状態をモニタリングするための方法であって、前記方法が、
[i]前記対象に有効用量の前述した放射リガンド造影剤、例えば式(I)、(II)もしくは(III)のPSMA結合化合物または任意の薬学的に許容されるその塩、より好ましくは以下の式(III):
【0120】
【化19】
のPSMA結合化合物または任意の薬学的に許容されるその塩を、好ましくは前述するように注射の溶剤を静脈内注射することにより、投与するステップ、
[ii]例えば、60~120分からの窓で、好ましくは約90分での第1の陽電子放出断層撮影法(PET)スキャン、および場合により、注射の最大180分後の第2のPETスキャンにより前記対象を撮像するステップ、
[iii]PETスキャンで得られる画像を分析するステップ、
[iv]前記対象においてPSMA陽性腫瘍の存在および/または局在化を決定するステップ、
[v]前記対象においてPSMA陽性腫瘍の存在および/または局在化に依存する処置選択肢を決定するステップ、ならびに
[vi]場合により、前記処置選択肢で対象を処置するステップ
を含む、方法。
【0121】
E20:前記対象が前立腺がんを伴う、E19に記載の方法。
【0122】
E21:前記対象が、根治的前立腺摘除または放射線療法の後に生化学的再発と診断されている、E20に記載の方法。
【0123】
E22:前記放射リガンド造影剤が、E1からE9のいずれかに定義される、E14からE18のいずれか一実施形態に定義されるステップを含む診断方法での使用のための放射リガンド造影剤を製造するための方法。
【0124】
E23:150~1000MBq/mL、例えば約370MBq/mLの体積放射能をもたらす濃度でホスホロアミデート基および[18F]-フルオロ基を含むPSMA結合化合物である放射リガンド造影剤、および1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を含む水溶液である、注射または注入用溶液。
【0125】
E24:前記放射リガンド造影剤が、式(I):
【0126】
【化20】
[式中、
各Rは、独立して水素または保護基(例えばt-ブチルもしくはベンジル)であり、
各R2は、独立して水素またはC1~C6アルキルであり、
R3は、各々[18F]-フルオロ基で置換されており、ハロ、シアノおよびニトロからなる群から選択される第2の基で場合により置換されている、フェニルまたはピリジルであり、
L1は、1つまたは複数のアミノ酸、C1~C18アルキレン、ならびに1~35個の炭素原子および1~15個のヘテロ原子を含むヘテロアルキレンから選択される1つまたは複数の基を好ましくは含む、リンカーであり、前記ヘテロアルキレンは、オキソおよびC1~C6アルキルから選択される1つまたは複数の置換基で場合により置換されており、より好ましくは、L1は、1~6個のアミノ酸から選択されるリンカーである]
のPSMA結合化合物または任意の薬学的に許容されるその塩である、E23に記載の溶液。
【0127】
E25:前記放射リガンド造影剤が、式(II):
【0128】
【化21】
[式中、
Lは、式-NH-CHCH-(OCHCH-)y-C(O)-の部分、または式
【0129】
【化22】
(式中、yは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12であり;
mは、1、2、3、または4であり;
各nは、独立して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12である)
の基を含むリンカーであり、
R1は、各々[18F]-フルオロ基で置換されており、ハロ、シアノおよびニトロからなる群から選択される第2の基で場合により置換されている、フェニルまたはピリジルであり;
各R2は、独立して水素またはC1~C6アルキルであり;
各Rは、独立して水素または保護基(例えばt-ブチルもしくはベンジル)であり、
但し、Lが、式
【0130】
【化23】
の基である場合、
mおよびnの組合せは、3~21個の原子の直鎖状のリンカーの長さになる]
のPSMA結合化合物および任意の薬学的に許容されるその塩である、E23またはE24のいずれか一実施形態に記載の溶液。
【0131】
E26:前記放射リガンド造影剤が、式(III):
【0132】
【化24】
のPSMA結合化合物または任意の薬学的に許容されるその塩である、E23からE25のいずれか一実施形態に記載の溶液。
【0133】
E27:式(IV):
【0134】
【化25】
の前駆体化合物が、5.0μg/mL以下、好ましくは4.0μg/mL以下、より好ましくは3.0μg/mL以下、さらにより好ましくは2.0μg/mL以下、さらにより好ましくは1.0μg/mL以下の濃度で存在する、E23からE26のいずれか一実施形態に記載の溶液。
【0135】
E28:5.0~8.0、好ましくは6.0~8.0、より好ましくは6.5~7.5の間のpHのための緩衝液、好ましくはリン酸緩衝液、および等張剤、好ましくは塩化ナトリウムをさらに含む、E23からE27のいずれか一実施形態に記載の溶液。
【0136】
E29:放射線分解に対する安定剤、好ましくは溶液の製造中に溶離剤として好適である安定剤をさらに含み、好ましくは前記安定剤および/または溶離剤が、アルコール、好ましくはエタノールである、E23からE28のいずれか一実施形態に記載の溶液。
【0137】
E30:
[i]8.0~9.5mg/mL;好ましくは8.6~8.9mg/mLの濃度での、NaCl、
[ii]0.03~0.3mg/mL;好ましくは0.1~0.2mg/mLの濃度での、NaHPO
[iii]0.2~1.2mg/mL;好ましくは0.3~1.1mg/mLの濃度での、NaHPO
[iv]5~50mg/mL;好ましくは10.0~39.5mg/mLの濃度での、エタノール、および
[v]5.0μg/mL未満の濃度での、前駆体化合物
を含む、E29に記載の溶液。
【実施例
【0138】
[実施例1]
放射リガンド造影剤を含む溶液の製造
医薬品は、370MBq/mL±10%(Tc)で最終溶液の体積活性を調節する、NaCl0.9%中の[18F]CTT1057濃縮母液の希釈溶液(放射性原薬、15±1mL、Tmでの約1685~6667MBq/mL)である。添加した生理食塩水の体積は、合成の終了時(Tm)に得られる[18F]CTT1057の活性、較正の時間(Tc)に補正した減衰にしたがって算出する。Tmは、母液における活性の測定の時間である。Tmは、EOS後の数分である。
【0139】
医薬品の最終体積は15~59mLの範囲であり、したがって、[18F]CTT1057最終生成物の定量的組成は様々である。
【0140】
15mLおよび59mLの規格体積で医薬品の定性的および定量的組成を、表1に記載する。
【0141】
【表1】
【0142】
原薬([18F]CTT1057)の合成および医薬品([18F]CTT1057の370MBq/mL注射用溶液)への製剤化は、次の節に記載される自動化連続プロセスの一部である。
【0143】
原薬の合成
18F]CTT1057活性物質(母液)を二段階の合成経路で得る。
【0144】
第一段階(ステップ1)では、[18F]SFB補欠分子族を、FB出発物質の放射性フッ素化で開始し、続くエチルエステル(ethyl esther)のけん化およびTSTUでのカップリングという1ポット3ステップの手順で調製する。
【0145】
【化26】
【0146】
第二段階(ステップ2)では、緩和な塩基性条件下での単離した[18F]SFBでの前駆体CTT1298の標識化は、[18F]CTT1057の形成をもたらす。
【0147】
【化27】
【0148】
2ステップ精製プロセスにより、副産物および残余試薬の分離を誘導し、放射化学的純度≧95%の最終的に製剤化した[18F]CTT1057を得る。
【0149】
全合成および精製は、以下に記載される合成器で自動的に行われる。
【0150】
原薬を含有する母液の製造法
18O]HOから放射性核種前駆体([18F]フッ化物)の生成
放射性核種は、加速陽子の強いビームによる97%以上の純度の[18O]水の衝撃により[18F]フッ化物イオンの形態で得られる。この核反応は、サイクロトロン標的で生じる。
【0151】
放射能の移動およびクリーンルームでの18Fの回収
衝撃後、[18F]フッ化物を含有する照射した[18O]水は、専用合成モジュールに自動的に移動する。
【0152】
18F]フッ化物からの[18F]CTT1057の生成
18F]フッ化物からの[18F]CTT1057の生成は、以下に記載される2ステップでの鉛遮断アイソレーター内で行われる。
【0153】
18F]SFB補欠分子族の製造
18F]SFB補欠分子族は、Et-4-[18F]FBのFB前駆体出発物質の放射性フッ素化、次いで[18F]FBAを得るためのエチルエステルのけん化、ならびにTSTU(N,N,N',N'-テトラメチル-O-(N-スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボレート)での[18F]SFBへの[18F]FBAのカップリングを含む1ポット3ステップの手順で調製する。
【0154】
次いで、[18F]SFB(N-スクシンイミジル-4-[18F]フルオロベンゾエート)を、HLB精製カートリッジを通して精製する。[18F]SFBはカートリッジ内に留まる一方、反応していない[18F]フッ化物は廃棄物に移動する。
【0155】
最終的に、純粋な[18F]SFBを、アセトニトリルでHLBから、溶液中に前駆体CTT1298を含有する第2の反応器に溶出する。
【0156】
[18F]CTT1057原薬の製造
18F]CTT1057は、以下を含む、補欠分子族[18F]SFBと前駆体CTT1298との間の反応により得られる。
【0157】
CTT1298へのカップリング - [18F]SFBをHLBからCTT1298溶液を含有する第2の反応器に溶出する。反応は、40℃で12分間、第2の反応器で実行する。
【0158】
CTT1057精製 - 粗生成物を水で希釈し、2ステップ精製プロセスは副産物および残余試薬の分離を誘導する。希釈した粗生成物を廃棄物へとQMAカートリッジを通過させる。[18F]CTT1057は、他の望ましくない種と共にQMAに留まる。QMAを溶液0.09%NaCl/20%EtOHで廃棄物へとすすぎ、[18F]CTT1057を、pH2.0で20mMリン酸緩衝液で溶出し、時間制御のステップでHLBに再び捕捉して、酸性媒体で[18F]CTT1057の分解を最小にする。
【0159】
CTT1057製剤化 - 純粋で最終的に製剤化した[18F]CTT1057を、溶出し、中和し、pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水溶液配合溶液中の5%エタノールにより1つの単一ステップにおいてHLBから製剤化する。
【0160】
製造プロセスの開発
原薬[18F]CTT1057は、補欠分子族[18F]SFBと化学前駆体CTT1298との間の1ステップ反応において開発された。効果的な転換反応を確実にするために、非放射性[19F]SFBおよびCTT1298を使用し、いくつかのカップリング反応条件:7~11のpHの範囲、およそ25℃~60℃の温度、5~10分の期間にわたる異なる緩衝化媒体を試験した。
【0161】
反応の時間の最終調節は、実際の濃度条件を有し、反応時間対減衰のバランスを考慮に入れるために[18F]CTT1057生成を使用して最適化した。
【0162】
SPEカートリッジでの[18F]CTT1057の最終精製ステップは、適切な純度で生成物を送達する鍵であった。塩基性媒体での反応粗生成物を希釈し、最初に、放射化学不純物の大部分の除去を可能にするQMA(第四級メチルアンモニウム)カートリッジで精製した。
【0163】
しかし、生理食塩水で精製した[18F]CTT1057の溶出は、多量の化学前駆体CTT1298の存在を証明した。
【0164】
したがって、[18F]CTT1057からのCTT1298の分離は、2つの分子の類似性のために困難である。最終的な戦略として、[18F]CTT1057芳香環に起因する極性の小さい差にフォーカスした。この方法は、HLBカートリッジを使用して最終生成物の選択的な保持を可能にする。[18F]CTT1057原薬の最終溶出および製剤化は、5%エタノールを含有するリン酸緩衝生理食塩水溶液を使用する1ステップに最適化した。
【0165】
注射用溶液の調製
医薬品は、370MBq/mL±10%(Tc)で最終溶液の体積活性を調節する、NaCl0.9%中の[18F]CTT1057濃縮母液の希釈溶液(放射性原薬、15±1mL)である。添加した生理食塩水の体積は、合成の終了時(Tm)に得られる[18F]CTT1057の活性、較正の時間(Tc)に補正した減衰にしたがって算出する。医薬品の最終体積は15~59mLの範囲であり、したがって、[18F]CTT1057最終生成物の定量的組成は様々である。
【0166】
15mLおよび59mLの規格体積で医薬品の定性的および定量的組成を、表2に記載する。
【0167】
【表2】
【0168】
原薬([18F]CTT1057)の合成および医薬品([18F]CTT1057の370MBq/mL注射用溶液)への製剤化は、以下のステップを含む自動化連続プロセスの一部である。
【0169】
分注するセルにおいて受け取るステップ - 最終的に製剤化した[18F]CTT1057バルク濃縮母液を、合成セルから分注するセルに移動させる。
【0170】
母液の重量および放射能を測定するステップ
25mLバイアルを秤量する。[18F]CTT1057バルク濃縮母液の正味の重量は、生成物バイアルと空のバイアルの重量差により定義する。バイアルに含有される活性を用量較正器で測定する。
【0171】
18F-CTT1057溶液を移動させるステップ - [18F]CTT1057バルク濃縮母液を、25mlバイアルから空の滅菌マザーバイアルに移動させる。
【0172】
希釈するステップ - [18F]CTT1057バルク濃縮母液を含むマザーバイアルを天秤に置く。所定量のNaCl0.9%を、適切な量のNaClを自動的に添加するまで、マザーバイアルに移動させる。較正時間Tc(Tc=T0+4h)で、370MBq/ml±10%の濃度での[18F]CTT1057希釈母液を得る。
【0173】
最終18F-CTT1057溶液を均質化するステップ(混合するステップ) - 最終[18F]CTT1057希釈母液を混合する。
【0174】
最終15mlバイアルを最終ろ過し、分布させるステップ - [18F]CTT1057希釈母液を、半自動分配システムを使用して分布させる。
【0175】
バイアル中の最終[18F]CTT1057希釈母液を、滅菌チューブを介したポンプを通して、分配オートマトンに固定したフィルター(最終ろ過で使用)および滅菌針で接続する。
【0176】
[実施例2]
臨床試験
プロトコールの概要
【0177】
【表3-1】
【0178】
【表3-2】
【0179】
【表3-3】
【0180】
【表3-4】
【0181】
【表3-5】
【0182】
【表3-6】
【0183】
【表3-7】
【0184】
【表3-8】
【0185】
研究設計
これは、基準として複合性の真の標準を使用して、根治的前立腺摘除または放射線療法の後の生化学的再発(BCR)と診断された前立腺がん患者におけるPSMA陽性腫瘍の検出および局在化用のPET造影剤として[18F]CTT1057の診断性能を評価する、予期されたオープンラベル、多施設、単治療群の第3相試験である。
【0186】
およそ190名の参加者が登録し、少なくとも152名の参加者がPET/CTスキャン撮像に対する[18F]CTT1057を完了することを確実にするが、任意の他の患者データについて盲検とした3名の独立した核医学医師により中心の研究受諾機関(CRO)で読み出される。
【0187】
基準として使用されるCTSは、3レベルのSoT手順を伴う本質的に階層性であり、以下のように適用する:
【0188】
レベル1)
利用可能ならば組織病理学([18F]CTT1057 PET/CTスキャン後の8週間以内に実行される前向き生検もしくはサルベージ術から);または、組織病理学が利用可能でない、不確定もしくは陰性である場合:
【0189】
レベル2)
18F]CTT1057 PET/CTスキャンの(前後いずれか)8週間以内に実行するコントラストを伴う少なくとも高い解像度のCTスキャンおよび[68Ga]Ga-PSMA-11 PET/CTを含む必要がある、SoC毎に臨床学的に示された各患者で実行した撮像診断手順。3か月のフォローアップの撮像(ベースラインから)はまた、特定の病変の診断に対して臨床的に必要な場合、CTSレベル2の一部として使用する;または、上記2つのいずれも実行可能でない、もしくは適切と考えられない場合:
【0190】
レベル3)
PCWG3基準毎に放射線療法に続くPSAでの50%以下の低下(併用アンドロゲン剥奪療法(ADT)を与えない限り)(Scher et al 2016 Trial Design and Objectives for Castration-Resistant Prostate Cancer: Updated Recommendations From the Prostate Cancer Clinical Trials Working Group 3. J Clin Oncol; 34(12):1402-18)。
【0191】
病理学が利用可能である場合、局所病理学者による評価は、SoC毎に実行され、結果は手術後の2週間以内に利用しなければならない。病理学者は、任意のPSMA-PETデータ(すなわち、両方のPET/CTスキャン)に盲検とする。この場合、病理学のみをSoTとして使用するので、撮像手順は、共主要エンドポイントの算出に使用しない。
【0192】
病理学を利用しない場合、CTSレベル2)に対する各参加者で実施される撮像診断手順の中心的な読出し結果は、共主要エンドポイントの算出に対して真の標準として使用する。
【0193】
全ての患者は、CTSレベル2(真の標準として必要とする場合)および患者レベルで病変の検出に対して[18F]CTT1057と[68Ga]Ga-PSMA-11との間の一致の評価の副次的エンドポイントの両方に対して、研究の一部として[68Ga]Ga-PSMA-11 PET/CTを経験する。
【0194】
中心的な再考に加えて、SoC画像([68Ga]Ga-PSMA-11を含む)の局所的な再考を実行して、患者管理の決定および全体評価に対して処置する医師/臨床試験責任医師により使用される。
【0195】
計画した患者管理の質問票は、[18F]CTT1057 PET/CTスキャンの結果を知る前(質問票1)および結果を知った後の14日以内(質問票2)に、処置する医師/臨床試験責任医師により記入される。[18F]CTT1057 PET/CT画像の局所的な再考はまた、腫瘍学PET/CTスキャンを読み出す際の専門的技術を有する局所的な核医学医師または放射線科医により実行され、結果は、質問票2の完了に対して処置する医師/臨床試験責任医師に提供される。選択肢は、a)手術、b)放射線単独、c)放射線およびADT、d)ADT単独、e)観察/監視、f)その他(フリーテキストボックス)のように、利用可能な管理プランを獲得するために質問票に与えられる。質問票1と質問票2との間の患者管理プランでの任意の変更は、治験用診断撮像製品であるので[18F]CTT1057 PET/CTスキャン結果のみに基づいてはならない。他の診断手順は、変更した管理プランを確認し、実行するためにSoC毎に実行しなければならない。
【0196】
スクリーニング期間
書面でのインフォームドコンセント形式(ICF)を任意のスクリーニング手順の前に得る必要がある。参加者は、スクリーニングのために双方向応答技術(IRT)に登録しなければならない。評価スケジュールに記載される全ての手順を実行し、検査および撮像の評価を優先順位付けして、計画した第1のPET撮像日(1日目)の少なくとも14日前に結果を得る時間を取らなければならない。次いで、適格性は、遅くとも-14日目に確認しなければならない。スクリーニング期間は最大で28日継続しなければならない。
【0197】
適格性を確認すると、参加者は、IRTに無作為化して、1:1の比で無作為に以下の2つのPET/CTスキャンシーケンスの1つに割り当てる。
【0198】
・シーケンス1:1日目の[18F]CTT1057(目的の治験用造影剤)と、続く少なくとも14日離れた[68Ga]Ga-PSMA-11(必要ならばCTSの一部として、副次的エンドポイントに対して)
【0199】
・シーケンス2:1日目の[68Ga]Ga-PSMA-11(必要ならばCTSの一部として、副次的エンドポイントに対して)と、続く少なくとも14日離れた[18F]CTT1057(目的の治験用造影剤)
【0200】
PET撮像日
2つのPET撮像手順を少なくとも14日離れて行う。第1のPET造影剤注射の日は、試験1日目と考えられる。
【0201】
研究設計
18F]CTT1057 PET/CTスキャンの中心的な読出しは、患者の臨床状態、組織病理学/生検の結果、従来の撮像およびPSAレベルの結果を含む患者データについて盲検としたPETの読出しの経験が豊富な3名の独立した核医学医師または放射線科医により実行される。患者および領域は、各リーダーにより2点尺度で段階付けする(0=陰性、1=陽性)。3名のPETリーダーの結果は、SoTを個別に比較して、リーダー毎の成績を作成する。個別のPETリーダーは、共主要エンドポイント両方に対して予め規定した閾値を満たす場合に成功と考え、3名のリーダーの少なくとも2名は、研究の陽性全体に対して成功しなければならない。
【0202】
PET陽性に対して適用すべき基準は、以下の通りである。
・患者は、任意の領域の少なくとも1つの病変(すなわち、前立腺床、骨盤リンパ節(PLN)、骨格、および他の遠隔部位(骨盤外リンパ節および内臓))が目視的に陽性である場合に陽性と判断される。
・領域は、領域の少なくとも1つの病変が目視的に陽性である場合に陽性と判断される。
・目視的なPET陽性リンパ節は、血液プール(隣接または縦隔血液プール)より優れると考えられる。
・PET陽性骨病変は、生理学的な骨髄より優れると考えられる。
【0203】
PET陽性前立腺、前立腺床、および内臓病変は、前述した通り、関与する臓器または解剖学的部位の生理学的なバックグラウンド活性より優れると考えられる(Eiber et al 2015 Evaluation of Hybrid 63Ga-PSMA Ligand PET/CT in 248 Patients with Biochemical Recurrence After Radical Prostatectomy. J Nucl Med; 56(5):668-74、Ceci et al 2015 (68)Ga-PSMA PET/CT for restaging recurrent prostate cancer: which factors are associated with PET/CT detection rate? Eur J Nucl Med Mol Imaging; 42:1284-94、Fendler et al 2019 Assessment of 68Ga-PSMA-11 PET Accuracy in Localizing Recurrent Prostate Cancer: A Prospective Single-Arm Clinical Trial. JAMA Oncol; 5(6):856-63)。
【0204】
異なるリーダー間およびリーダー内の両方でのPETスキャンの解釈の一貫性は、施設間の結果の運用性に影響を及ぼし、患者のケアに影響を及ぼし得るので、医用撮像において重要な課題である。[18F]CTT1057 PET/CT画像の定性的評価におけるリーダー間およびリーダー内変動の程度は、解釈の一貫性、およびそれゆえの信頼できる診断を確実にするために副次的エンドポイントとして評価され、患者の管理において中心的な役割を有する。
【0205】
全ての患者は、2つのPET/CTスキャン:[18F]CTT1057 PET/CTスキャン(治験用造影剤)ならびに[68Ga]Ga-PSMA-11 PET/CTスキャン(必要な場合CTSレベル2の一部として、および患者レベルで病変の検出に対して[18F]CTT1057と[68Ga]Ga-PSMA-11との間の一致の評価の副次的エンドポイントに対して)を経験する。2つのスキャンは、各PET撮像の放射性医薬品に対する明らかな安全性プロファイル評価を確実にするために各参加者に対して少なくとも2週間離れて実行する。さらに、2つのPET/CTスキャン間の病変における任意の潜在的な変化を相殺するために、各患者のPET/CTスキャンシーケンスは、登録後1:1の比で無作為に割り当てる。
【0206】
処置の用量/レジメンおよび期間に対する根拠
PET診断用放射性医薬品に対して、単回投与のみ、通常静脈内投与を必要とする。したがって、治験用PET放射性医薬品[18F]CTT1057は、およそ370MBqの単回静脈内(i.v.)用量(266~407MBqの範囲)として投与する。この用量は、第1相試験で安全で忍容性が良好であることを示し(Behr et al 2019 Phase I Study of CTT1057, an 18F-Labeled Imaging Agent with Phosphoramidate Core Targeting Prostate-Specific Membrane Antigen in Prostate Cancer. J Nucl Med; 60(7):910-6)、欧州核医学会(EANM)および核医学会ガイドラインの両方にしたがって市販の[18F]FDGの奨励される用量に沿っている(Delbeke D, Coleman RE, Guiberteau MJ, et al (2006) Procedure guideline for tumor imaging with 18F-FDG PET/CT 1.0. J Nucl Med; 47(5):885-95、Boellaard R, Delgado-Bolton R, Oyen WJG, et al (2015) FDG PET/CT: EANM procedure guidelines for tumour imaging: version 2.0. Eur J Nucl Med Mol Imaging; 42:328-54)。ヒトの線量測定は第1相試験で研究した。有効用量は、0.023±0.007mSv/MBqと推定され、EANMガイドラインにしたがって市販の[18F]FDGの有効用量(0.019mSv/MBq)(Boellaard R, Delgado-Bolton R, Oyen WJG, et al (2015) FDG PET/CT: EANM procedure guidelines for tumour imaging: version 2.0. Eur J Nucl Med Mol Imaging; 42:328-54)、および他の刊行物(0.020~0.025mSv/MBq)(Kaushik A, Jaimini A, Tripathi M, et al (2015) Estimation of radiation dose to patients from (18) FDG whole body PET/CT investigations using dynamic PET scan protocol. Indian J Med Res; 142:721-31)、ならびに他のPSMA PET剤の有効用量(Behr SC, Aggarwal R, VanBrocklin HF, et al (2019) Phase I Study of CTT1057, an 18F-Labeled Imaging Agent with Phosphoramidate Core Targeting Prostate-Specific Membrane Antigen in Prostate Cancer. J Nucl Med; 60(7):910-6)に沿っている。370MBqの[18F]CTT1057のi.v.投与から推定される放射線量は、8.51mSVである。さらに、この用量は、最適な画像品質を得ることが可能であり、2名の経験豊富な核医学医師により1~100の視覚アナログ尺度(VAS)(1=非診断的、100=完璧な研究)の76±5.4で格付けした(Behr SC, Aggarwal R, VanBrocklin HF, et al (2019) Phase I Study of CTT1057, an 18F-Labeled Imaging Agent with Phosphoramidate Core Targeting Prostate-Specific Membrane Antigen in Prostate Cancer. J Nucl Med; 60(7):910-6)。
【0207】
リスクおよび利益
前立腺がん参加者のPSMA-PET走査の使用は、生化学的再発(BCR)および進行性/転移性疾患の両方の状況で疾患負荷を評価するために、多くは[68Ga]Ga-PSMA-11と共に、2011年から継続している。臨床用途を報告する刊行物は、非常に低い有害事象率と共に、PCa用のコリン系PET撮像より良好な感度および特異性を示している。[68Ga]Ga-PSMA-11は、1007名の参加者の後向き分析において注入に続く有害事象がなく忍容性が良好であることを示している(Afshar-Oromieh A, Avtzi E, Giesel FL, et al (2015) The diagnostic value of PET/CT imaging with the (68)Ga-labelled PSMA ligand HBED-CC in the diagnosis of recurrent prostate cancer. Eur. J. Nucl. Med. Mol. Imaging; 42:197-209)。最近、[68Ga]Ga-PSMA-11は、初期の決定的な療法の候補であり転移が疑われる、または血清PSAレベル([68Ga]Ga-PSMA-11 USPI)の上昇に基づいて再発が疑われる、前立腺がんの男性において放射性診断用PET造影剤として米国で承認されている(2020年12月)。その後、他のPSMA-PET剤を検討し、臨床開発下にあり、これらの全ては、良好な安全性および忍容性プロファイルを示す。一次病期分類で局所化した疾患と診断されている前立腺がん患者は、技術の診断的収率を決定する組織病理学的比較を必要とする研究に登録している。20名の前立腺がん患者(n=5の一次病期分類、n=15のmCRPC(NCT02916537))での[18F]CTT1057第1相試験は、いかなる放射性トレーサー関連の有害反応も伴わずに許容される安全性プロファイルを示している。ヒトにおける[18F]CTT1057の生体内分布は、他のPSMA標的化剤のものと類似しており、[18F]CTT1057の曝露率もまた、腎臓および唾液腺へのより低い曝露を有利に除いて、尿素系PET化合物のものと類似している。[18F]CTT1057を伴う臨床前研究、線量測定研究、および臨床経験は、良好な画質特性および好ましい安全性プロファイルを示唆する(Behr SC, Aggarwal R, VanBrocklin HF, et al (2019) Phase I Study of CTT1057, an 18F-Labeled Imaging Agent with Phosphoramidate Core Targeting Prostate-Specific Membrane Antigen in Prostate Cancer. J Nucl Med; 60(7):910-6)。
【0208】
これが治験用PET剤の診断性能の研究であるので、登録した患者は、直接的な利点を起こすことが期待されていない。遠隔疾患が本研究の結果として一部の患者で同定され、これらの患者が、治験用手順単独に基づかないが、SoC診断手順により確認される、より適切な管理プランから利益を得ることができることが期待されている。リスク利益比は、[18F]CTT1057造影剤が好ましいことが期待されている。
【0209】
本治験での参加者に対する任意のリスクは、適格性基準および研究手順、ならびに近接の臨床モニタリングに準拠することにより最小限にする。適切な適格性基準は、本プロトコールに含まれる。
【0210】
治験用および対照薬物
説明および組成
医薬品[18F]CTT1057の370MBq/mL注射用溶液は、基準データおよび時間(較正時間)で370MBq/mLの体積活性で、原薬として[18F]CTT1057を含有する無菌の直ちに使用可能な多回用量の溶液である。放射性核種の自然減衰は、経時的な医薬品の比活性、総放射活性、および放射能濃度の継続的な減少をもたらす。
【0211】
放射性原薬は、濃縮水溶液(いわゆる母液)として自動化連続プロセスで生成するフッ素(18F)標識したPSMA剤である[18F]CTT1057である。出発18F活性、得られた放射化学的収率、較正時間での370MBq/mLの標的とする放射能濃度を考慮して、母液を更に希釈し、最終製品[18F]CTT1057の直ちに使用可能な注射用溶液にする。最終生成物の組成を、以下の表2に示す。
【0212】
【表4】
【0213】
注:NaClおよびWFIは、NaCl0.9%の注射用溶液の成分であり、NaHPOは、水和した塩形態として使用する。
【0214】
保存条件
25℃未満で保存。貯蔵寿命は、Tの10時間後である(T:第1の品質管理バイアルの活性測定の時間)。Tの10時間後は、較正時間[T]の6時間後に相当する(T=T0+4h)。
【0215】
治験用PET造影剤
【0216】
【表5】
【0217】
18F]CTT1057放射性医薬品は、およそ370MBqの用量(266~407MBqの範囲)で静脈内投与する。
【0218】
68Ga]Ga-PSMA-11放射性医薬品は、およそ150MBqの単一の静脈内(i.v.)用量として投与する。投与した用量は、いずれかの場合で、111MBqより低いまたは185MBqより高くてはならない。各患者に投与している正確な用量は、用量較正器で投与前後の両方でシリンジの測定後、CRFで記録されている。
【0219】
治験用造影剤[18F]CTT1057は、以下のように提供される:
基準日および時間(較正時間(Tc))で370(±10%)MBq/mLの体積活性で、単一の1回用量のシリンジ(米国用)または単一の多回用量のバイアル(欧州(EU)用)の直ちに使用可能な放射性医薬品注射用溶液として。
【0220】
放射性核種の自然減衰は、経時的な比活性、総放射活性、および放射能濃度(体積活性)の継続的な減少をもたらす。したがって、注射した溶液の体積は、注射の日および時間で放射能の必要な量を提供するために異なっている。
【0221】
成分[68Ga]Ga-PSMA-11は、以下のように提供される:
放射性医薬品調製用のキットとして:承認された68Ge/68Ga生成器から溶出したHCl中の塩化ガリウム-68(68GaCl)の溶液で局所的に再構成する白色の凍結乾燥した粉末を含む単一のバイアル(承認された68Ge/68Ga生成器を備えた臨床部位に対して)。
単回用量の直ちに使用可能な放射性医薬品溶液として:パートナー放射薬学で提供される放射性医薬品溶液を含むバイアルまたはシリンジ(承認された68Ge/68Ga生成器を備えていない臨床部位に対して)。
【0222】
投与される放射能用量に相当する[68Ga]Ga-PSMA-11注射用溶液の体積は、生成器により生じる現在の活性および放射性核種の物理的減衰に基づいて(半減期=68分)、注射の推定時間にしたがって算出する。再構成後、[68Ga]Ga-PSMA-11溶液は、薬局マニュアルで提供される指示書にしたがって使用することができる。
【国際調査報告】