(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-01
(54)【発明の名称】核酸カプセル化粒子の送達用埋め込み型医療デバイス
(51)【国際特許分類】
A61K 9/00 20060101AFI20240325BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240325BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240325BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240325BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240325BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240325BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20240325BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240325BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20240325BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240325BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240325BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240325BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
A61K9/00
A61K47/32
A61K31/7088
A61K48/00
A61K47/42
A61K47/36
A61K47/44
A61K47/24
A61K47/28
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K47/38
A61K47/34
A61P17/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560309
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(85)【翻訳文提出日】2023-11-10
(86)【国際出願番号】 US2022022239
(87)【国際公開番号】W WO2022212300
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520433115
【氏名又は名称】セラニーズ・イーブイエイ・パフォーマンス・ポリマーズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196243
【氏名又は名称】運 敬太
(72)【発明者】
【氏名】ヘイリー,ジェフリー・シー
(72)【発明者】
【氏名】ギャナニ,ビジャイ
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン,ブライアン・ディー
(72)【発明者】
【氏名】パテル,ハーシュ
(72)【発明者】
【氏名】デバナサン,ナーシ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076AA99
4C076BB32
4C076BB40
4C076CC18
4C076CC29
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4C076FF65
4C084AA13
4C084MA34
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4C084ZA89
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4C086AA01
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA34
4C086MA67
4C086NA03
4C086ZA89
(57)【要約】
埋め込み型医療デバイスが提供される。デバイスは薬剤放出層を含み、薬剤放出層は、ポリマーマトリックス内に分散された粒子を含有する。脂質粒子は、担体(例えば、ペプチド、タンパク質、炭水化物、脂質、ポリマーなど)を含有し、かつ核酸をカプセル化する担体成分を含み、ポリマーマトリックスは、エチレン酢酸ビニルコポリマーを含む。エチレン酢酸ビニルコポリマーの溶融温度の担体の溶融温度に対する比は、約2℃/℃以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーマトリックス内に分散された粒子を含む埋め込み型医療デバイスであって、前記粒子が、担体を含有し、かつ核酸をカプセル化する担体成分を含み、前記ポリマーマトリックスが、エチレン酢酸ビニルコポリマーを含み、前記エチレン酢酸ビニルコポリマーの溶融温度の前記担体の溶融温度に対する比が、約2℃/℃以下である、埋め込み型医療デバイス。
【請求項2】
前記ポリマーマトリックスの前記粒子に対する重量比が、約1~約10である、請求項1に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項3】
前記エチレン酢酸ビニルコポリマーが、ASTM D3418-15に従って決定すると、約20℃~約100℃の溶融温度を有する、請求項1に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項4】
前記担体が約25℃~約105℃の溶融温度を有する、請求項1に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項5】
前記担体成分が約25℃~約105℃の溶融温度を有する、請求項1に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項6】
前記エチレン酢酸ビニルコポリマーが、前記ポリマーマトリックスの全ポリマー含有量を構成する、請求項1に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項7】
前記ポリマーマトリックスが可塑剤を更に含む、請求項1に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項8】
前記ポリマーマトリックスが疎水性ポリマーを更に含む、請求項1に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項9】
前記ポリマーマトリックスが、第1のエチレン酢酸ビニルコポリマーおよび第2のエチレン酢酸ビニルコポリマーを含む、請求項8に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項10】
前記コポリマーの酢酸ビニル含有量が約10wt%~約60wt%である、請求項1に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項11】
前記エチレン酢酸ビニルコポリマー(ethylene vinyl acetate polymer)が、190℃の温度および2.16キログラムの荷重でASTM D1238-20に従って決定すると、10分あたり約0.2~約100グラムのメルトフローインデックスを有する、請求項1に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項12】
前記核酸がリボ核酸を含む、請求項1に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項13】
前記リボ核酸がmRNAを含む、請求項12に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項14】
前記mRNAが、少なくとも1個の抗原ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有する少なくとも1個のリボ核酸ポリヌクレオチドを含有する治療用mRNAを含む、請求項13に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項15】
前記担体成分の前記核酸に対するモル比が、約2:1~約50:1である、請求項1に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項16】
前記担体が、ペプチド、タンパク質、炭水化物、脂質、ポリマー、またはこれらの組み合わせである、請求項1に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項17】
前記担体が脂質である、請求項1に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項18】
前記粒子が、リン脂質を含む脂質成分を含有する脂質小胞である、請求項17に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項19】
前記リン脂質がアルキルホスホコリンを含む、請求項18に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項20】
前記脂質成分が、構造脂質、PEGコンジュゲート脂質、またはこれらの組み合わせを更に含む、請求項18に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項21】
前記粒子が、脂質成分を含有する固体脂質粒子である、請求項17に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項22】
前記脂質成分が陽イオン性脂質を含む、請求項21に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項23】
前記脂質成分が、ヘルパー脂質、構造脂質、PEGコンジュゲート脂質、またはこれらの組み合わせを更に含む、請求項22に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項24】
前記ヘルパー脂質が、炭素が少なくとも8個の脂肪酸鎖を有する脂肪酸を含む、請求項23に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項25】
前記ヘルパー脂質が、リン脂質部分および任意選択で脂肪酸部分を有するリン脂質を含む、請求項23に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項26】
前記構造脂質がステロールを含む、請求項23に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項27】
前記固体粒子が約10~約1,000ナノメートルの平均直径を有する、請求項21に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項28】
前記デバイスが全体的に円形の断面形状を有する、請求項1に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項29】
前記デバイスが約0.5~約50ミリメートルの直径を有する、請求項28に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項30】
前記デバイスが円筒の形態である、請求項1に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項31】
前記デバイスがディスクの形態である、請求項1に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項32】
薬剤放出層がリボ核酸分解阻害剤を更に含む、請求項1に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項33】
前記リボ核酸阻害剤が抗リボヌクレアーゼ抗体を含む、請求項32に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項34】
前記リボ核酸阻害剤がキレート剤を含む、請求項32に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項35】
薬剤放出層が細胞透過性向上剤を更に含む、請求項1に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項36】
前記ポリマーマトリックスが親水性化合物も含有する、請求項1に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項37】
前記親水性化合物が親水性ポリマーを含む、請求項36に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項38】
前記親水性ポリマーが、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウムもしくはアルギン酸カルシウム、カルボキシメチルセルロース、寒天、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール、コラーゲン、ペクチン、キチン、キトサン、ポリ-1-カプロラクトン、ポリビニルピロリドン、ポリ(ビニルピロリドン-co-酢酸ビニル)、多糖、親水性ポリウレタン、ポリヒドロキシアクリレート、デキストラン、キサンタン、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、タンパク質、エチレンビニルアルコールコポリマー、水溶性ポリシラン、水溶性シリコーン、水溶性ポリウレタン、またはこれらの組み合わせを含む、請求項37に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項39】
前記デバイスが薬剤放出層を含み、前記薬剤放出層が前記粒子および前記ポリマーマトリックスを含有する、請求項1に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項40】
前記粒子が、前記薬剤放出層の約1wt%~約60wt%を構成し、前記ポリマーマトリックスが、前記薬剤放出層の約40wt%~約99wt%を構成する、請求項39に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項41】
前記薬剤放出層の外表面に隣接して位置する膜層を更に含む、請求項39に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項42】
担体を含有し、かつ核酸をカプセル化する担体成分を含む粒子を、前記膜層が含まない、請求項41に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項43】
前記膜層が、疎水性ポリマーを含む膜ポリマーマトリックスを含む、請求項41に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項44】
前記疎水性ポリマーがエチレン酢酸ビニルコポリマーを含む、請求項43に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項45】
前記膜ポリマーマトリックスが、全体的に疎水性ポリマーから形成される、請求項43に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項46】
前記膜ポリマーマトリックスが親水性化合物も含有する、請求項43に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項47】
請求項1に記載の埋め込み型医療デバイスを形成する方法であって、前記粒子および前記ポリマーマトリックスを押出機内で溶融ブレンドするステップを含む方法。
【請求項48】
溶融ブレンドするステップが約30℃~約100℃の温度で発生する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記押出機が、長さおよび直径を有する回転可能なスクリューを含み、前記長さの前記直径に対する比が約10~約50である、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
患者の状態、疾患および/または美容状態を抑制および/または治療する方法であって、請求項1に記載のデバイスを患者の皮下に埋め込むステップを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、2021年3月30日の出願日を有する米国特許仮出願第63/167,718号および2021年4月26日の出願日を有する米国特許仮出願第63/179,627号の出願の利益を主張し、これらは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
[0002]核酸、例えば、mRNAおよびsiRNAは、近年、相当量の遺伝子療法治療、例えば、癌治療、ワクチンなどの焦点になってきた。例えば、DNAと比較して、リボ核酸(例えば、RNA)は、トランスフェクトされた細胞のゲノムに安定して統合されず、故に、導入された遺伝子材料が必須遺伝子の正常な機能を破壊する懸念を排除する。外来プロモーター配列もコード化タンパク質の有効な翻訳にとって必要ではなく、ここでも有害な副作用の可能性を回避する。しかし、リボ核酸遺伝子療法の1つの問題は、とりわけ、細胞の細胞質に到達し、分解酵素に曝露された場合、DNAより安定性がかなり低いことである。例えば、mRNAの糖部分における第2炭素のヒドロキシル基の存在は、mRNAがより安定したDNA二重らせん構造を形成することを妨げる立体障害を引き起こし、故に、mRNAが加水分解的な分解を被りやすくする。上記を考慮して、リボ核酸は一般に、細胞外RNアーゼ分解から保護し、同時に細胞取り込みおよびエンドソーム脱出を促進するために脂質粒子(例えば、リポソーム、固体脂質粒子など)にカプセル化される。しかし残念ながら、それでも多くの用途における使用に問題が残存している。例えば、核酸カプセル化脂質粒子を持続的な期間にわたって制御的に送達することが困難である。この困難さの1つの理由は、粒子に用いられる脂質が比較的低い融点を有する傾向があることであり、このことは、最も慣用的な埋め込み型医療デバイスの形成に使用される方法およびポリマー材料に組み込むことを困難にする。
【0003】
[0003]このように、核酸カプセル化粒子を持続的な期間にわたって送達することができる埋め込み型送達デバイスの存在が、継続的に必要である。
【発明の概要】
【0004】
[0004]本発明の1つの実施形態によると、埋め込み型医療デバイスが開示される。デバイスは、ポリマーマトリックス内に分散された粒子を含む。粒子は、担体を含有し、かつ核酸をカプセル化する担体成分を含み、ポリマーマトリックスは、エチレン酢酸ビニルコポリマーを含む。エチレン酢酸ビニルコポリマーの溶融温度の担体の溶融温度に対する比は、約2℃/℃以下である。
【0005】
[0005]本発明の他の特徴および態様は、下記により詳細に記載される。
【0006】
[0006]当業者を対象とする、最適な様式を含む本発明の完全および可能な開示は、添付の図面を参照しながら、本明細書の残りの部分に、より特定的に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】[0007]本発明の埋め込み型医療デバイスの1つの実施形態の斜視図である。
【
図2】[0008]
図1の埋め込み型医療デバイスの断面図である。
【
図3】[0009]本発明の埋め込み型医療デバイスの別の実施形態の斜視図である。
【
図4】[0010]
図3の埋め込み型医療デバイスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[0011]本明細書および図において繰り返し使用される参照符合は、本発明の同じまたは類似の特徴または要素を表すことが意図される。
【0009】
[0012]本考察は例示的な実施形態のみを記載しており、本発明のより広い態様を制限することを意図しないことが、当業者に理解されるべきである。
【0010】
[0013]一般的に言えば、本発明は、患者(例えば、ヒト、愛玩動物、家畜、競走馬など)に持続的な期間にわたって核酸を送達して、患者の状態、疾患および/または美容状態の抑制および/または治療を助けることができる、埋め込み型医療デバイスを対象とする。埋め込み型医療デバイスは、1つ以上のエチレン酢酸ビニルコポリマーを含むポリマーマトリックス内に分散されている核酸カプセル化粒子を含む。ポリマーマトリックスの粒子に対する重量比は、典型的には約1~約10、いくつかの実施形態では約1.1~約8、いくつかの実施形態では約1.2~約6、およびいくつかの実施形態では約1.5~約4である。例えば、1つの実施形態において、埋め込み型医療デバイスは薬剤放出層を含有しうる。核酸カプセル化粒子は、薬剤放出層の約1wt%~約60wt%、いくつかの実施形態では約5wt%~約50wt%、およびいくつかの実施形態では約10wt%~約45wt%を構成し、一方、ポリマーマトリックスは、薬剤放出層の約40wt%~約99wt%、いくつかの実施形態では約50wt%~約95wt%、およびいくつかの実施形態では約55wt%~約90wt%を構成しうる。
【0011】
[0014]粒子は、1つ以上の種類および/または層の担体、例えば、ペプチド、タンパク質、炭水化物(例えば、糖)、ポリマー、脂質などを含有する担体成分を含む。1つの特定の実施形態において、例えば、担体は、疎水性または両親媒性を有する小分子と一般に呼ばれる脂質、例えば、脂肪、ワックス、ステロール含有代謝産物、ビタミン、脂肪酸、グリセロ脂質、グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、糖脂質(saccharolipid)、ポリケチドおよびプレノール脂質(prenol lipid)でありうる。そのような脂質の例は、例えば、リン脂質、例えばアルキルホスホコリンおよび/または脂肪酸修飾ホスホコリン(例えば、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)または1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC));陽イオン性脂質、例えば2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)、ジリノレイル-メチル-4-ジメチルアミノブチレート(DLin-MC3-DMA)またはジ((Z)-ノナ-2-エン-1-イル)9-((4-(ジメチルアミノ)-ブタノイル)オキシ)ヘプタデカンジオエート(L319);ヘルパー脂質(例えば、脂肪酸);構造脂質(structural lipid)(例えば、ステロール);ポリエチレングリコール(PEG)コンジュゲート脂質など、ならびに前述のいずれかの組み合わせを含みうる。それと無関係に、担体成分に用いられる少なくとも1つの担体(例えば、脂質)は、ポリマーマトリックス内のエチレン酢酸ビニルコポリマーの溶融温度に類似している、またはより高い溶融温度を有するように選択される。事実、ある特定の実施形態において、担体成分内の多数の担体、またはさらにはすべての担体は、ポリマーマトリックス内のエチレン酢酸ビニルコポリマーの溶融温度に類似している、またはより高い溶融温度を有するように選択されうる。このようにして、カプセル化粒子は、ポリマーマトリックスに用いられるエチレン酢酸ビニルコポリマーの溶融加工温度またはそれに近い温度で安定したままであることができ、この溶融加工温度は、そのようなコポリマーの溶融温度より一般に高い。例えば、ポリマーマトリックス内のエチレン酢酸ビニルコポリマーの溶融温度(℃)の、担体成分内の担体(例えば、脂質)の溶融温度(℃)に対する比は、約2℃/℃以下、いくつかの実施形態では約1.8℃/℃以下、いくつかの実施形態では約0.1~約1.6℃/℃、いくつかの実施形態では約0.2~約1.5℃/℃、およびいくつかの実施形態では約0.4~約1.2℃/℃でありうる。エチレン酢酸ビニルコポリマーおよび得られたポリマーマトリックスは、例えばASTM D3418-15に従って決定すると、例えば、約20℃~約100℃、いくつかの実施形態では、約25℃~約80℃、いくつかの実施形態では約30℃~約70℃、いくつかの実施形態では約35℃~約65℃、およびいくつかの実施形態では約40℃~約60℃の溶融温度を有しうる。担体(例えば、脂質)も同様に、約25℃~約105℃、いくつかの実施形態では約30℃~約85℃、いくつかの実施形態では約35℃~約75℃、いくつかの実施形態では約40℃~約70℃、およびいくつかの実施形態では約45℃~約65℃の溶融温度を有しうる。
【0012】
[0015]ここで本発明の様々な実施形態をより詳細に記載する。
【0013】
I.ポリマーマトリックス
[0016]上記に示されたように、ポリマーマトリックスは、少なくともエチレン酢酸ビニルコポリマーを含有し、これは、一般に少なくとも1つのエチレンモノマーおよび少なくとも1つの酢酸ビニルモノマーから誘導される。本発明者たちは、コポリマーのある特定の態様を選択的に制御して、望ましい放出特性の達成を助けることができることを発見した。例えば、コポリマーの酢酸ビニル含有量は、コポリマーの約10wt%~約60wt%、いくつかの実施形態では約20wt%~約60wt%、いくつかの実施形態では約25wt%~約55wt%、いくつかの実施形態では約30wt%~約50wt%、いくつかの実施形態では約35wt%~約48wt%、およびいくつかの実施形態では約38wt%~約45wt%の範囲内であるように選択的に制御されうる。逆に言えば、コポリマーのエチレン含有量も同様に、約40wt%~約80wt%、45wt%~約75wt%、いくつかの実施形態では約50wt%~約80wt%、いくつかの実施形態では約52wt%~約65wt%、およびいくつかの実施形態では約55wt%~約62wt%の範囲内でありうる。とりわけ、そのようなコモノマー含有量は、核酸カプセル化粒子の制御可能な持続放出プロファイルの達成を助けることができ、同時に、粒子に用いられる担体の溶融温度により類似した性質の比較的低い溶融温度を依然として有することもできる。またエチレン酢酸ビニルコポリマーおよび得られたポリマーマトリックスのメルトフローインデックスは、190℃の温度および2.16キログラムの荷重でASTM D1238-20に従って決定すると、約0.2~約100g/10分、いくつかの実施形態では約5~約90g/10分、いくつかの実施形態では約10~約80g/10分、およびいくつかの実施形態では約30~約70g/10分の範囲でありうる。またエチレン酢酸ビニルコポリマーの密度は、ASTM-D1505-18に従って決定すると、約0.900~約1.00グラム/立方センチメートル(g/cm3)、いくつかの実施形態では約0.910~約0.980g/cm3、およびいくつかの実施形態では約0.940~約0.970g/cm3の範囲でありうる。用いてもよい特に適切なエチレン酢酸ビニルコポリマーの例には、名称ATEVA(登録商標)(例えば、ATEVA(登録商標)4030AC)でCelaneseから、名称ELVAX(登録商標)(例えば、ELVAX(登録商標)40W)でDowから、および名称EVATANE(登録商標)(例えば、EVATANE40-55)でArkemaから入手可能なものが含まれる。
【0014】
[0017]ある特定の実施形態において、エチレン酢酸ビニルコポリマーと、疎水性ポリマー、例えば下記に記載されているもの(例えば、エチレン酢酸ビニルコポリマー)とのブレンドを、ブレンドおよびポリマーマトリックスの全体が上記に示された範囲内の溶融温度および/またはメルトフローインデックスを有するように用いることが望ましいこともある。例えば、ポリマーマトリックスは、第1のエチレンコポリマー、および第1のエチレンコポリマーの溶融温度より高い溶融温度を有する第2のエチレンコポリマーを含有することができる。第2のエチレンコポリマーも同様に、第1のエチレンコポリマーの対応するメルトフローインデックスと同じ、より低い、またはより高いメルトフローインデックスを有することができる。第1のエチレン酢酸ビニルコポリマーは、例えば、ASTM D3418-15に従って決定すると、約20℃~約60℃、いくつかの実施形態では約25℃~約55℃、およびいくつかの実施形態では約30℃~約50℃の溶融温度、ならびに/または190℃の温度および2.16キログラムの荷重でASTM D1238-20に従って決定すると、約40~約900g/10分、いくつかの実施形態では約50~約500g/10分、およびいくつかの実施形態では約55~約250g/10分のメルトフローインデックスを有することができる。第2のエチレン酢酸ビニルコポリマーも同様に、ASTM D3418-15に従って決定すると、約50℃~約100℃、いくつかの実施形態では約55℃~約90℃、およびいくつかの実施形態では約60℃~約80℃の溶融温度、ならびに/または190℃の温度および2.16キログラムの荷重でASTM D1238-20に従って決定すると、約0.2~約55g/10分、いくつかの実施形態では約0.5~約50g/10分、およびいくつかの実施形態では約1~約40g/10分のメルトフローインデックスを有することができる。第1のエチレンコポリマーは、ポリマーマトリックスの約20wt%~約80wt%、いくつかの実施形態では約30wt%~約70wt%、およびいくつかの実施形態では約40wt%~約60wt%を構成してもよく、第2のエチレンコポリマーも同様に、ポリマーマトリックスの約20wt%~約80wt%、いくつかの実施形態では約30wt%~約70wt%、およびいくつかの実施形態では約40wt%~約60wt%を構成してもよい。エチレン酢酸ビニルコポリマーと他の疎水性ポリマー、例えば下記に記載されているものとのブレンドをポリマーマトリックス内に用いることもできる。
【0015】
[0018]当該技術において知られているように、様々な技術のいずれかを一般に使用して、望ましい特性を有するエチレン酢酸ビニルコポリマーを形成することができる。1つの実施形態において、ポリマーは、エチレンモノマーと酢酸ビニルモノマーを高圧反応で共重合させることにより生成される。酢酸ビニルは、ブタンを酸化して無水酢酸およびアセトアルデヒドを生じ、これらを一緒に反応させて、二酢酸エチリデンを形成することによって生成されうる。次いで二酢酸エチリデンを酸触媒の存在下で熱分解して、酢酸ビニルモノマーを形成することができる。適切な酸触媒の例には、芳香族スルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、キシレンスルホン酸およびナフタレンスルホン酸)、硫酸、ならびに米国特許第2,425,389号、Oxley et al.、同第2,859,241号、Schnizerおよび同第4,843,170号、Isshiki et alに記載されたものなどのアルカンスルホン酸が含まれる。酢酸ビニルモノマーは、アセトアルデヒドの代わりに触媒の存在下で無水酢酸を水素と反応させることによっても生成されうる。この方法は、二酢酸エチリデンを生成する必要なく、無水酢酸および水素から酢酸ビニルを直接変換する。なお別の実施形態において、酢酸ビニルモノマーは、ペルフルオロスルホン酸樹脂またはゼオライトなどの適切な固体触媒の存在下で、アセトアルデヒドとケトンの反応によって生成されうる。
【0016】
[0019]ある特定の場合において、エチレン酢酸ビニルコポリマーは、ポリマーマトリックスの全ポリマー含有量を構成する。しかし他の場合では、他のポリマー、例えば、他の疎水性ポリマーおよび/または親水性ポリマー、例えば、下記に記載されているものを含むことが望ましいことがある。用いられる場合、そのような他のポリマーは、ポリマーマトリックスのポリマー含有量の約0.001wt%~約30wt%、いくつかの実施形態では約0.01wt%~約20wt%、およびいくつかの実施形態では約0.1wt%~約10wt%を構成することが一般に望ましい。そのような場合において、エチレン酢酸ビニルコポリマーは、ポリマーマトリックスのポリマー含有量の約70wt%~約99.999wt%、いくつかの実施形態では約80wt%~約99.99wt%、およびいくつかの実施形態では約90wt%~約99.9wt%を構成しうる。
【0017】
[0020]望ましい場合、ポリマーマトリックスは、1つ以上の可塑剤を含有して、加工温度を下げることを助けることもでき、それによって高融点コポリマーを、カプセル化粒子の分解を伴うことなく使用することを可能にする。適切な可塑剤には、例えば、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸塩、脂肪酸アミド、有機リン酸エステル、炭化水素ワックスなど、ならびにこれらの混合物が含まれうる。脂肪酸は、一般に、約8~22個の炭素原子、およびいくつかの実施形態では約10~約18個の炭素原子の炭素鎖長さを有する任意の飽和または不飽和酸でありうる。望ましい場合、酸は置換されていてもよい。適切な脂肪酸には、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リシノール酸、カプリン酸、ネオデカン酸、水素化獣脂脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸、水添ヒマシ油の脂肪酸、エルカ酸、ヤシ油脂肪酸など、ならびにこれらの混合物が含まれうる。脂肪酸誘導体を用いることもでき、例えば、脂肪酸アミド、例えば、オレアミド、エルカミド(erucamide)、ステアラミド(stearamide)、エチレンビス(ステアラミド)など;脂肪酸塩(例えば、金属塩)、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸鉄、ステアリン酸マンガン、ステアリン酸ニッケル、ステアリン酸コバルトなど;脂肪酸エステル、例えば、脂肪族アルコールの脂肪酸エステル(例えば、2-エチルヘキサノール、モノエチレングリコール、イソトリデカノール、プロピレングリコール、ペンタエリトリトールなど)、グリセロールの脂肪酸エステル(例えば、ヒマシ油、ゴマ油など)、ポリフェノールの脂肪酸エステル、糖脂肪酸エステルなど;ならびに前述のいずれかの混合物でありうる。パラフィンワックス、ポリオレフィンおよび酸化ポリオレフィンワックス、ならびに微晶ワックスを含む炭化水素ワックスを用いることもできる。特に適切なものは、ステアリン酸の酸、塩またはアミド、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ペンタエリトリトールテトラステアレートまたはN,N’-エチレン-ビス-ステアラミドである。用いられる場合、可塑剤は、典型的には、ポリマーマトリックスの約0.05wt%~約1.5wt%、およびいくつかの実施形態では約0.1wt%~約0.5wt%を構成する。
【0018】
II.カプセル化粒子
A.核酸
[0021]上記に示されたように、核酸カプセル化粒子は、ポリマーマトリックス内に分散されている。本明細書で使用されるとき、用語「核酸」は、核酸塩基および酸部分を含む化合物、例えば、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはこれらの組み合わせを一般に指す。「ヌクレオシド」は、糖分子(例えば、ペントースもしくはリボース)またはその誘導体を、有機塩基(例えば、プリンもしくはピリミジン)またはその誘導体(本明細書において「核酸塩基」とも呼ばれる)と組み合わせて含有する化合物を一般に指す。「ヌクレオチド」は、リン酸塩基を含むヌクレオシドを一般に指す。修飾ヌクレオチドは、任意の有用な方法、例えば、化学的、酵素的または組み換え的な合成により、1個以上の修飾または非天然ヌクレオシドを含むことができる。ポリヌクレオチドは、連結ヌクレオシドの領域を含むことができる。そのような領域は、可変主鎖連結を有してもよい。連結は、標準ホスホジエステル連結であってもよく、この場合には、ポリヌクレオチドがヌクレオチドの領域を含む。例えば、ポリヌクレオチドは、隣接ヌクレオチドがホスホジエステル連結により互いに連結している直鎖分子である3つ以上のヌクレオチドを含有してもよい。用語「核酸」は、RNA、ならびに一本および/または二本鎖DNAも包含する。より特定的には、核酸は、例えば、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、トレオース核酸(TNA)、グリコール核酸(GNA)、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(locked nucleic acid)(LNA、β-D-リボ立体配置を有するLNA、α-L-リボ立体配置を有するα-LNA(LNAのジアステレオマー)、2’-アミノ機能化を有する2’-アミノ-LNAおよび2’-アミノ機能化を有する2’-アミノ-c-LNAを含む)、エチレン核酸(ENA)、シクロヘキセニル核酸(CeNA)、またはこれらのキメラもしくは組み合わせでありうる、またはこれらを含んでもよい。
【0019】
[0022]核酸は、例えば、ゲノム、転写物、mRNA、tRNA、rRNA、siRNA、snRNA、プラスミド、コスミド、染色体、染色分体または他の天然に生じる核酸分子の文脈において天然に生じるものでありうる。一方で核酸分子は、非天然に生じる分子、例えば、組換えDNAもしくはRNA、人工染色体、改変ゲノムもしくはその断片、または合成DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッドでありうる、あるいは非天然に生じるヌクレオチドまたはヌクレオシドを含みうる。核酸は、天然源から精製されうる、組換え発現系を使用して産生され、任意選択で精製されうる、化学合成されうる、などでありうる。核酸は、ヌクレオシド類縁体、例えば、化学的に修飾された塩基または糖を有する、および主鎖修飾を有する類縁体を含むこともできる。いくつかの実施形態において、核酸は、天然ヌクレオシド(例えば、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシンおよびデオキシシチジン);ヌクレオシド類縁体(例えば、2-アミノアデノシン、2-チオチミジン、イノシン、ピロロ-ピリミジン、3-メチルアデノシン、5-メチルシチジン、2-アミノアデノシン、C5-ブロモウリジン、C5-フルオロウリジン、C5-ヨードウリジン、C5-プロピニル-ウリジン、C5-プロピニル-シチジン、C5-メチルシチジン、2-アミノアデノシン、7-デアザアデノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソアデノシン、8-オキソグアノシン、O(6)-メチルグアニンおよび2-チオシチジン);化学修飾塩基;生物学的修飾塩基(例えば、メチル化塩基);介在塩基;修飾糖(例えば、2’-フルオロリボース、リボース、2’-デオキシリボース、アラビノースおよびヘキソース);ならびに/または修飾リン酸塩基(例えば、ホスホロチオエートおよび5’-N-ホスホラミダイト連結)である、またはこれらを含有する。
【0020】
[0023]修飾ヌクレオチド塩基対形成を用いることができ、標準のアデノシン-チミン、アデノシン-ウラシルまたはグアノシン-シトシン塩基対のみならず、ヌクレオチド間および/または非標準塩基もしくは修飾塩基を含む修飾ヌクレオチド間で形成される塩基対も包含し、水素結合ドナーおよび水素結合アクセプターの配置は、非標準塩基と標準塩基との間または2つの相補的な非標準塩基構造間の水素結合を許容する。そのような非標準塩基対形成の1つの例は、修飾ヌクレオチドのイノシンとアデニン、シトシンまたはウラシルとの塩基対形成である。塩基/糖またはリンカーの任意の組み合わせを、本開示のポリヌクレオチドに組み込むことができる。
【0021】
[0024]ある特定の実施形態において、核酸は、1個以上核酸塩基が治療目的で修飾されているポリヌクレオチド(例えば、RNAポリヌクレオチド、例えばmRNAポリヌクレオチド)でありうる。事実、ある特定の実施形態において、少なくとも2個(例えば、2、3、4個、またはそれ以上)の修飾核酸塩基の組み合わせを含むポリヌクレオチド(例えば、RNAポリヌクレオチド、例えば、mRNAポリヌクレオチド)を用いることができる。例えば、ポリヌクレオチド中の適切な修飾核酸塩基は、修飾シトシン、例えば、5-メチルシトシン、5-メチル-シチジン(m5C)、N4-アセチル-シチジン(ac4C)、5-ハロ-シチジン(例えば、5-ヨード-シチジン)、5-ヒドロキシメチル-シチジン(hm5C)、1-メチル-プソイドイソシチジン、2-チオ-シチジン(s2C)、2-チオ-5-メチル-シチジンなど;修飾ウリジン、例えば、5-シアノウリジン、4’-チオウリジン、プソイドウリジン(ψ)、N1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)、N1-エチルプソイドウリジン、2-チオウリジン(s2U)、4’-チオウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオ-ジヒドロプソイドウリジン、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-プソイドウリジン、4-メトキシ-2-チオ-プソイドウリジン、4-メトキシ-プソイドウリジン、4-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、4-チオ-プソイドウリジン、5-アザ-ウリジン、ジヒドロプソイドウリジン、5-メチルウリジン(mo5U)、5-メトキシウリジン、2’-O-メチルウリジンなど;修飾グアノシン、例えば、α-チオ-グアノシン、イノシン(I)、1-メチル-イノシン(m1I)、ウイオシン(imG)、メチルウイオシン(mimG)、7-デアザ-グアノシン、7-シアノ-7-デアザ-グアノシン(preQ0)、7-アミノメチル-7-デアザ-グアノシン(preQ1)、7-メチル-グアノシン(m7G)、1-メチル-グアノシン(m1G)、8-オキソ-グアノシン、7-メチル-8-オキソ-グアノシンなど;修飾アデニン、例えば、α-チオ-アデノシン、7-デアザ-アデニン、1-メチル-アデノシン(m1A)、2-メチル-アデニン(m2A)、N6-メチル-アデノシン(m6A)、2,6-ジアミノプリンなど;ならびにこれらの組み合わせでありうる。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチド(例えば、RNAポリヌクレオチド、例えば、mRNAポリヌクレオチド)は、少なくとも2個(例えば、2、3、4個、またはそれ以上)の前述の修飾核酸塩基の組み合わせを含む。
【0022】
[0025]いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチド(例えば、RNAポリヌクレオチド、例えば、mRNAポリヌクレオチド)は、特定の修飾で均一に修飾されうる(例えば、完全に修飾されうる、全配列にわたって修飾されうる)。例えば、ポリヌクレオチドは、5-メチル-シチジン(m5C)で均一に修飾されてもよく、これは、mRNA配列のすべてのシトシン残基が5-メチル-シチジン(m5C)に置き換えられていることを意味する。同様に、ポリヌクレオチドは、修飾残基、例えば上記に記載されたうちのいずれかに置き換えられることにより、配列に存在する任意の種類のヌクレオシド残基に均一に修飾されうる。
【0023】
[0026]いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、メッセンジャーRNA(mRNA)として機能する。「メッセンジャーRNA」(mRNA)は、(少なくとも1個の)ポリペプチド(アミノ酸の天然に生じる、非天然に生じる、または修飾されたポリマー)をコードする任意のポリヌクレオチドを一般に指し、インビトロ、インビボ、インサイツまたはエキソビボでコード化ポリペプチドを産生するように翻訳されうる。mRNA分子の塩基性成分は、典型的には、少なくとも1つのコード領域、5’-非翻訳領域(UTR)、3’-UTR、5’キャップおよびポリ-A尾部を含む。ポリヌクレオチドは、mRNAとして機能しうるが、有効なポリペプチド発現についての現存する問題を核酸ベース治療薬の使用により克服することに役立つ機能的および/または構造設計的な特徴の点において、野生型mRNAと区別されうる。mRNAは、少なくとも1個の目的のポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有する少なくとも1個(1個以上)のリボ核酸(RNA)ポリヌクレオチドを含有しうる。いくつかの実施形態において、mRNAのRNAポリヌクレオチドは、2~10個、2~9個、2~8個、2~7個、2~6個、2~5個、2~4個、2~3個、3~10個、3~9個、3~8個、3~7個、3~6個、3~5個、3~4個、4~10個、4~9個、4~8個、4~7個、4~6個、4~5個、5~10個、5~9個、5~8個、5~7個、5~6個、6~10個、6~9個、6~8個、6~7個、7~10個、7~9個、7~8個、8~10個、8~9個または9~10個のポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態において、mRNAのRNAポリヌクレオチドは、少なくとも10個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個または100個のポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態において、mRNAのRNAポリヌクレオチドは、少なくとも100個または少なくとも200個のポリペプチドをコードする。
【0024】
[0027]いくつかの実施形態において、核酸は治療用mRNAである。本明細書で使用されるとき、用語「治療用mRNA」は、治療用タンパク質をコードするmRNAを指す。治療用タンパク質は、宿主細胞または対象に様々な効果を媒介して、疾患を治療する、または疾患の徴候および症状を改善する。例えば、治療用タンパク質は、欠損している、もしくは異常であるタンパク質を置き換える、内在性タンパク質の機能を増強する、細胞に新規機能を提供する(例えば、内在性細胞活性を阻害もしくは活性化する)、または別の治療化合物(例えば、抗体薬物複合体)の送達剤として作用することができる。治療用mRNAは、様々な疾患および状態、例えば、細菌感染、ウイルス感染、寄生虫感染、細胞増殖障害、遺伝性障害、および自己免疫性障害の治療に有用でありうる。mRNAは、生物製剤、抗体、ワクチン、治療用タンパク質またはペプチド、細胞透過性ペプチド、分泌タンパク質、細胞膜タンパク質、細胞質または細胞骨格タンパク質、細胞内膜結合タンパク質、核タンパク質、ヒト疾患に関連するタンパク質が含まれるが、これらに限定されない、治療適応症が確認されていないが、それでも研究および発見の分野に有用性を有する、ヒトゲノムによりコードされる部分またはタンパク質を標的にするいくつかの標的分類のいずれかから選択される目的のポリペプチドをコードするように設計されうる。
【0025】
[0028]特に適切な治療用mRNAは、少なくとも1個の抗原ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有する少なくとも1個のリボ核酸(RNA)ポリヌクレオチドを含むものであり、RNAのRNAポリヌクレオチドは少なくとも1個の化学修飾を含む。化学修飾は、例えば、プソイドウリジン、N1-メチルプソイドウリジン、N1-エチルプソイドウリジン、2-チオウリジン、4’-チオウリジン、5-メチルシトシン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオ-ジヒドロプソイドウリジン、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-プソイドウリジン、4-メトキシ-2-チオ-プソイドウリジン、4-メトキシ-プソイドウリジン、4-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、4-チオ-プソイドウリジン、5-アザ-ウリジン、ジヒドロプソイドウリジン、5-メチルウリジン、5-メトキシウリジン、および2’-O-メチルウリジンでありうる。
【0026】
[0029]必ずしも必要ではないが、核酸の特定の性質を、ポリマーマトリックス内に分散され、かつ著しい分解なしに患者に送達される能力を改善する助けとなりうるように選択することもできる。例えば、従来のRNA(例えば、mRNA)を自己増殖性RNAと共に同時送達することが望ましいこともある。従来のmRNAは、例えば、非翻訳領域にフランクし、かつ末端ポリ(A)尾部を有する、標的抗原用のオープンリーディングフレームを一般に含む。トランスフェクトした後、一過性抗原発現を駆動する。一方で自己増殖性RNAは、RNA依存性RNAポリメラーゼ複合体の合成を介して自己増幅を導き、抗原コード化mRNAの多数のコピーを生成することができ、宿主細胞の細胞質に導入されると、高レベルの異種遺伝子を発現する。頭尾結合一本鎖RNAである環状RNA(circRNA)を用いることもできる。標的RNAは、例えば非哺乳類外来性イントロンのバックスプライシング(backsplicing)により、または直鎖RNAの5’および3’末端のスプリントライゲーション(splint ligation)によって環状化されうる。適切なcircRNAの例は、例えば、米国特許公開第2019/0345503号に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。アンチセンスRNAを用いることもでき、これは一般に、モルホリノ主鎖基から構成される主鎖サブユニットに担持される塩基を有し、主鎖基は、化合物中の塩基がワトソン・クリック塩基対形成によりRNA中の標的配列とハイブリダイズし、それによって標的配列内におけるRNA:オリゴヌクレオチドヘテロ二重鎖の形成を可能にするサブユニット間連結(荷電と非荷電の両方)により連結されている。アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む非荷電主鎖連結を有するモルホリノオリゴヌクレオチドは、例えば、米国特許第5,698,685号、同第5,217,866号、同第5,142,047号、同第5,034,506号、同第5,166,315号、同第5,185,444号、同第5,521,063号、および同第5,506,337号に詳述されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。他の例示的なアンチセンスオリゴヌクレオチドは、米国特許第9,464,292号、同第10,131,910号、同第10,144,762号、および同第10,913,947号に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0027】
[0030]ある特定の場合において、核酸は、アプタマー、例えばRNAアプタマーでありうる。RNAアプタマーは、それ自体独立型分子として使用されうる、または多数の機能を有するより大型のRNA分子、例えばRNA干渉分子の一部として統合されうる、任意の適切なRNA分子であってもよい。例えば、RNAアプタマーは、shRNA分子の露出領域(例えば、shRNA分子のループ領域)に配置されて、shRNAまたはmiRNA分子が標的細胞の表面受容体と結合することを可能にすることができる。内部移行した後、標的細胞のRNA干渉経路により処理されうる。核酸アプタマーを形成する核酸には、天然に生じるヌクレオシド、修飾ヌクレオシド、1個以上ヌクレオシド間に挿入された炭化水素リンカー(例えば、アルキレン)および/もしくはポリエーテルリンカー(例えば、PEGリンカー)を有する天然に生じるヌクレオシド、1個以上ヌクレオシド間に挿入された炭化水素もしくはPEGリンカーを有する修飾ヌクレオシド、またはこれらの組み合わせが含まれてもよい。いくつかの実施形態において、核酸アプタマーのヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチドは、炭化水素リンカーまたはポリエーテルリンカーに置き換えられていてもよい。適切なアプタマーは、例えば、米国特許第9,464,293号に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0028】
[0031]タンパク質融合核酸も本発明における使用に適切でありうる。例えば、タンパク質(例えば、抗体)は、RNA(例えば、mRNA)に共有結合的に連結しうる。そのようなRNAタンパク質融合体は、3’末端に結合したペプチド受容体を含有するmRNAプールのインビトロまたはインサイツ翻訳により合成されうる。1つの実施形態において、メッセージのオープンリーディングフレームを通読した後、リボソームは、指定の休止部位に達すると休止し、受容体部分がリボソームA部位を占有し、P部位のペプチジル-tRNAから新生ペプチド鎖を受け取って、RNAタンパク質融合体を生成する。タンパク質とRNAの共有結合的連結(mRNAの3’末端と、mRNAがコードするタンパク質のC末端とのアミド結合の形態)は、RNAの逆転写による選択の後に、タンパク質の遺伝子情報が回収および増幅されること(例えば、PCRにより)を可能にする。融合体が生成されると、選択または濃縮がmRNAタンパク質融合体の特性に基づいて実行される、あるいは、逆転写は、選択における一本鎖RNAの影響を回避するため、タンパク質に結合している間にmRNA鋳型を使用して実行することができる。そのようなタンパク質融合核酸の例は、例えば、米国特許第6,518,018号に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。RNAを酵素的に切断する配列を有する核酸に接合しているリボザイム(例えば、DNAザイムおよび/またはRNAザイム)を用いることもでき、例えば、米国特許第10,155,946号に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0029】
[0032]例えば上記に記載された一本鎖核酸の他に、様々な特定の種類の二本鎖核酸を用いて安定性の改善を助けることもできる。環状DNA(cDNA)およびDNAの閉環状形態であるプラスミド核酸(例えば、pDNA)を、ある特定の実施形態に用いることができる。そのような核酸の例は、例えば、国際公開第2004/060277号に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。長い二本鎖DNAを用いることもできる。例えば、足場DNAオリガミ(scaffolded DNA origami)を用いることができ、ここでは、長い一本鎖DNAが、足場に相補的な配列のセグメントまたは領域を含有する短いオリゴヌクレオチド(「ステープル(staple)」)の存在下で足場をアニーリングすることにより、ある特定の形状に折り畳まれる。そのような構造の例は、例えば、米国特許公開第2019/0142882号および同第2018/0171386号に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0030】
B.担体成分
[0033]粒子内の担体成分の核酸(例えば、mRNA)に対するモル比は変動しうるが、典型的には約2:1~約50:1、いくつかの実施形態では約5:1~約40:1、いくつかの実施形態では約10:1~約35:1、およびいくつかの実施形態では約15:1~約30:1である。
【0031】
[0034]上記に示されたように、担体成分は担体を含み、例えば、ペプチド(例えば、RALA)、タンパク質、炭水化物(例えば、糖)、ポリマー(例えば、デキストランポリマー、例えばジエチルアミノエチルデキストラン、ポリエチレンイミン、ポリ(アミノエステル)、脂肪族ポリエステル、例えばポリ乳酸など)、脂質など、ならびに前述のいずれかの組み合わせ、例えば、ペプチド/ポリマーハイブリッド(例えば、RALA-PLA)である。1つの特定の実施形態において、例えば、担体成分は、1つ以上の脂質を含む脂質成分でありうる。そのような脂質粒子の性質は、一般にばらつきがあってもよく、このことは当業者に知られている。1つの実施形態において、例えば、脂質成分は、1つ以上の種類および/または層の脂質を含む脂質小胞(例えば、リポソーム)である。例えば、リポソームは一般に、1つ以上の脂質二重層に組み立てることができるリン脂質を含む。リン脂質は、リン脂質部分および任意選択で1つ以上の追加の部分(例えば、脂肪酸部分)を有する。リン脂質部分は、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、2-リソホスファチジルコリン、およびスフィンゴミエリンを含みうる。用いられる場合、脂肪酸部分は、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アルファリノレン酸、エルカ酸、フィタン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ベヘン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸などを同様に含みうる。分岐、酸化、環状化およびアルキレンを含む修飾および置換を有する天然種を含む非天然種も、企図される。例えば、リン脂質は、1つ以上のアルキン(例えば、1つ以上の二重結合が三重結合に置き換えられているアルケニル基)で機能化または架橋されうる。適正な反応条件下では、アルキン基を、アジドへの曝露による銅触媒環化付加を受けさせることができる。そのような反応は、ナノ粒子組成物の脂質二重層を機能化して膜浸透または細胞認識を容易にすることに有用でありうる。適切なリン脂質の例には、例えば、アルキルホスホコリン、例えば、ヘキサデシルチオホスホコリン、テトラデシルホスホコリン、ヘキサデシルホスホコリン、ドコサノイルホスホコリン、1,2-ジヘキサデシル-rac-グリセロ-3-ホスホコリン、DL-α-リソホスファチジルコリン-r-o-ヘキサデシルなど;脂肪酸修飾ホスホコリン、例えば、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジウンデカノイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DUPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:0ジエーテルPC)、1-オレオイル-2-コレステリルヘミスクシノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(OChemsPC)、1-ヘキサデシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(C16LysoPC)、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(ME16.0 PE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセロール)ナトリウム塩(DOPG)、スフィンゴミエリンなど;ならびに前述のいずれかの混合物が含まれうる。
【0032】
[0035]望ましい場合、小胞の脂質成分は、他の種類の脂質を含むこともできる。例えば、脂質成分は、1つ以上の構造脂質を含有して、粒子中の他の脂質の凝集を緩和することを助けることができる。例えば、適切な構造脂質には、例えば、ステロイド;ステロール、例えば、コレステロール、フェコステロール、シトステロール、エルゴステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、フィトステロールなど;グリコアルカロイド、例えば、トマチジン、トマチンなど;テルペノイド、例えば、ウルソール酸;トコフェロール、例えば、アルファトコフェロール;ホパノイド(hopanoid)、スタノールエステル(stanol ester);ならびにこれらの混合物が含まれうる。脂質成分は、1つ以上のPEGコンジュゲート脂質を含んで、血漿タンパク質の特異的吸収を低減し、かつ粒子を覆うように水和層を形成することによって、生物学的環境にある粒子のコロイド安定性を改善することを助けることもできる。適切なPEGコンジュゲート脂質の例には、例えば、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾セラミド、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール、PEG修飾ジアルキルグリセロールなど、ならびにこれらの混合物が含まれうる。例えば、PEG脂質は、(R-3-[(Ω-メトキシ-ポリ(エチレングリコール)2000)カルバモイル)]-1,2-ジミリスチルオキシプロピル-3-アミン)(PEG-c-DOMG)、PEG-ジステアロイルグリセロール(PEG-DMG)、PEG-1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(PEG-DPPC)、PEG-DLPE、PEG-DMPE、PEG-DSPEなど、ならびにこれらの混合物でありうる。PEGコンジュゲート脂質を、PEG鎖にヒドロキシル基を含むように修飾して、PEG-OH脂質を形成することもできる。本明細書において一般的に定義されるように、「PEG-OH脂質」(本明細書において「ヒドロキシPEG化脂質」とも呼ばれる)は、脂質に1つ以上のヒドロキシル(-OH)基を有するPEG化脂質である。ある特定の実施形態において、PEG-OH脂質は、PEG鎖に1つ以上のヒドロキシル基を含む。ある特定の実施形態において、PEG-OHまたはドロキシPEG化脂質は、PEG鎖の末端に-OH基を含む。
【0033】
[0036]様々な技術を用いて、核酸がカプセル化されている脂質小胞を形成することができる。例えば、核酸を最初に水性溶媒、例えば水または生体適合性緩衝液(例えば、リン酸塩緩衝生理食塩水、HEPES、TRISなど)に溶解することができる。有機溶媒を用いることもでき、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、プロパノール、プロパングリコール、ブタノール、イソプロパノール、ペンタノール、ペンタン、フルオロカールボン(例えば、フレオン)、エーテルなどである。界面活性剤を任意選択で用いて、溶媒中の薬剤の分散を助けることができる。脂質は、また、核酸の前、後または核酸と共に溶媒に溶解される。核酸および脂質は、約3:1~約100:1以上、いくつかの実施形態では約3:1~約10:1、およびいくつかの実施形態では約5:1~約7:1の脂質核酸モル比で混合されうる。溶媒に溶解されると、核酸および脂質は、任意の既知の技術を使用して混合されうる。1つの適切な技術は、例えばプローブまたはバスソニファイアー(sonifier)(例えば、Bransonチップソニファイアー)を、脂質の融点により決定された制御温度で用いる超音波処理を含む。ホモジナイゼーションは、大型小胞を小型小胞に断片化する剪断エネルギーに依存する別の方法である。典型的なホモジナイゼーションの手順では、多層小胞が標準的なエマルションホモジナイザーを介して再循環される。他の適切な技術には、ボルテックス、押出、顕微溶液化(microfluidization)、ホモジナイゼーションなどが含まれうる。膜(例えば、小さいポアを有するポリカーボネート、または非対称セラミック)を介した押出を使用することもできる。典型的には、懸濁液を、望ましいサイズ分布が達成されるまで膜を介して1回以上循環させる。小胞を、より小さいポアを有する膜を介して連続的に押し出して、サイズの勾配低減を達成することができる。好ましくは、小胞は約0.05マイクロメートル(ミクロン)~約0.5マイクロメートル、およびいくつかの実施形態では約0.05~約0.2マイクロメートルのサイズを有する。
【0034】
[0037]調製されると、ポリマーマトリックスに組み込む前に、小胞を脱水して、乾燥粒子の形態にすることができる。例えば、小胞を、標準的な乾燥機器(例えば、フリーズドライもしくは噴霧乾燥)または同等の装置を使用して、減圧下で脱水することができる。脂質小胞および周囲媒体を、脱水前に液体窒素で凍結し、次いで減圧下に設置することもできる。噴霧乾燥を乾燥粒子の形成に用いることもできる。
【0035】
[0038]脂質小胞の他に、他の種類の脂質粒子を核酸のカプセル化に用いることもできる。固体脂質粒子を、例えば、本発明のある特定の実施形態に用いることができる。一般的に言えば、そのような固体粒子は、例えばレーザー回折技術により決定すると、約10~約1,000ナノメートル、いくつかの実施形態では約20~約800ナノメートル、いくつかの実施形態では約30~約600ナノメートル、およびいくつかの実施形態では約40~約300ナノメートルの平均直径を有するナノ粒子の形態である。脂質小胞と同様に、固体粒子は、1つ以上の種類および/または層の脂質を含む脂質成分も含有する。
【0036】
[0039]1つの実施形態において、例えば固体粒子の脂質成分は、陽イオン性脂質を含む。陽イオン性脂質は、正荷電極性頭部基および疎水性尾部ドメインを含有する両親媒性分子であり、水溶液の中では、自発的に自己組織化して、高次凝集体になる。陽イオン性基(例えば、アミノ基)のため、核酸分子(例えば、mRNA)の負荷電リン酸塩基と静電気的に相互作用して、脂質ナノ粒子内への捕捉を可能にすることができる。カチオン性脂質の正電荷は、また、負荷電細胞膜との会合を促進して、細胞取り込みの向上を助け、負荷電脂質との組み合わせによって、細胞内層送達を容易にする非二重層構造を誘導することができる。用語「陽イオン性」は、生理的pHで実効正荷電を有する脂質を含むこと、または酸性pHでは実効正電荷を取得するが、生理的pHでは中性電荷を維持するイオン化脂質を含むことが理解されるべきである。適切な陽イオン性脂質にはアミノ基を有するものが含まれてもよく、例えば、3-(ジドデシルアミノ)-N1,N1,4-トリドデシル-1-ピペラジンエタンアミン(KL10)、N1-[2-(ジドデシルアミノ)エチル]N1,N4,N4-トリドデシル-1,4-ピペラジンジエタンアミン(KL22)、14,25-ジトリデシル-15,18,21,24-テトラアザ-オクタトリアコンタン(KL25)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLin-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)、ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル-4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(DLin-MC3-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)、1,2-ジオレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DODOMA)、2-({8[(3β)-コレスタ-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-1-アミン(オクチル-CLinDMA)、(2R)-2-({8-[(3β)-コレスタ-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z-,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-1-アミン(オクチル-CLinDMA(2R))、および(2S)2-({8-[(3β)-コレスタ-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z-,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-1-アミン(オクチル-CLinDMA(2S))である。これらに加えて、陽イオン性脂質は、また、環状アミン基を含む脂質であってもよく、例えば、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)、ジリノレイル-メチル-4-ジメチルアミノブチレート(DLin-MC3-DMA)、および/またはジ((Z)-ノナ-2-エン-1-イル)9-((4-(ジメチルアミノ)-ブタノイル)オキシ)ヘプタデカンジオエート(L319)である。
【0037】
[0040]適切な陽イオン性脂質のなお他の例には、(20Z,23Z)-N,N-ジメチルノナコサ-20,23-ジエン-10-アミン、(17Z,20Z)-N,N-ジメチルヘキサコサ(dimemylhexacosa)-17,20-ジエン-9-アミン、(1Z,19Z)-N5N-ジメチルペンタコサ-16、19-ジエン-8-アミン、(13Z,16Z)-N,N-ジメチルドコサ-13,16-ジエン-5-アミン、(12Z,15Z)-N,N-ジメチルヘンイコサ-12,15-ジエン-4-アミン、(14Z,17Z)-N,N-ジメチルトリコサ-14,17-ジエン-6-アミン、(15Z,18Z)-N,N-ジメチルテトラコサ-15,18-ジエン-7-アミン、(18Z,21Z)-N,N-ジメチルヘプタコサ-18,21-ジエン-10-アミン、(15Z,18Z)-N,N-ジメチルテトラコサ-15,18-ジエン-5-アミン、(14Z,17Z)-N,N-ジメチルトリコサ-14,17-ジエン-4-アミン、(19Z,22Z)-N,N-ジメチルオクタコサ(dimeihyloctacosa)-19,22-ジエン-9-アミン、(18Z,21Z)-N,N-ジメチルヘプタコサ-18,21-ジエン-8-アミン、(17Z,20Z)-N,N-ジメチルヘキサコサ-17,20-ジエン-7-アミン、(16Z,19Z)-N,N-ジメチルペンタコサ-16,19-ジエン-6-アミン、(22Z,25Z)-N,N-ジメチルヘントリアコンタ-22,25-ジエン-10-アミン、(21Z,24Z)-N,N-ジメチルトリアコンタ-21,24-ジエン-9-アミン、(18Z)-N,N-ジメチルヘプタコサ(dimetylheptacos)-18-エン-10-アミン、(17Z)-N,N-ジメチルヘキサコサ-17-エン-9-アミン、(19Z,22Z)-N,N-ジメチルオクタコサ-19,22-ジエン-7-アミン、N,N-ジメチルヘプタコサン-10-アミン、(20Z,23Z)-N-エチル-N-メチルノナコサ-20,23-ジエン-10-アミン、1-[(11Z,14Z)-1-ノニルイコサ-11,14-ジエン-1-イル]ピロリジン、(20Z)-N,N-ジメチルヘプタコサ-20-エン-10-アミン、(15Z)-N,N-ジメチルエプタコサ-15-エン-10-アミン、(14Z)-N,N-ジメチルノナコサ-14-エン-10-アミン、(17Z)-N,N-ジメチルノナコサ-17-エン-10-アミン、(24Z)-N,N-ジメチルトリトリアコンタ-24-エン-10-アミン、(20Z)-N,N-ジメチルノナコサ-20-エン-10-アミン、(22Z)-N,N-ジメチルヘントリアコンタ-22-エン-10-アミン、(16Z)-N,N-ジメチルペンタコサ-16-エン-8-アミン、(12Z,15Z)-N,N-ジメチル-2-ノニルヘンイコサ-12,15-ジエン-1-アミン、(13Z,16Z)-N,N-ジメチル-3-ノニルドコサ-13,16-ジエン-1-アミン、N,N-ジメチル-1-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]エプタデカン-8-アミン、1-[(1S,2R)-2-ヘキシルシクロプロピル]-N,N-ジメチルノナデカン-10-アミン、N,N-ジメチル-1-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ノナデカン-10-アミン、N,N-ジメチル-21-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ヘンイコサン-10-アミン、N,N-ジメチル-1-[(1S,2S)-2-{[(1R,2R)-2-ペンチルシクロプロピル]メチル}シクロプロピル]ノナデカン-10-アミン,N,N-ジメチル-1-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル-]ヘキサデカン-8-アミン、N,N-ジメチル-[(1R,2S)-2-ウンデシルシクロプロピル]テトラデカン-5-アミン、N,N-ジメチル-3-{7-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ヘプチル}ドデカン-1-アミン、1-[(1R,2S)-2-ヘプチルシクロプロピル]-N,N-ジメチルオクタデカン-9-アミン、1-[(1S,2R)-2-デシルシクロプロピル]-N,N-ジメチルペンタデカン-6-アミン、N,N-ジメチル-1-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ペンタデカン-8-アミン、R-N,N-ジメチル-1-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、S-N,N-ジメチル-1-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、1-{2-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]-1-[(オクチルオキシ)メチル]エチル}ピロリジン、(2S)-N,N-ジメチル-1-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]-3-[(5Z- )-オクタ-5-エン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、1-{2-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]-1-[(オクチルオキシ)メチル]エチル}アゼチジン、(2S)-1-(ヘキシルオキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、(2S)-1-(ヘプチルオキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、N,N-ジメチル-1-(ノニルオキシ)-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、N,N-ジメチル-1-[(9Z)-オクタデカ-9-エン-1-イルオキシ]-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、(2S)-N,N-ジメチル-1-[(6Z,9Z,12Z)-オクタデカ-6,9,12-トリエン-1-イルオキシ]-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、(2S)-1-[(11Z,14Z)-イコサ-11,14-ジエン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチル-3-(ペンチルオキシ)プロパン-2-アミン、(2S)-1-(ヘキシルオキシ)-3-[(11Z,14Z)-イコサ-11,14-ジエン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチルプロパン-2-アミン、1-[(11Z,14Z)-イコサ-11,14-ジエン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチル-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、1-[(13Z,16Z)-ドコサ-13,16-ジエン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチル-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、(2S)-1-[(13Z,16Z)-ドコサ-13,16-ジエン-1-イルオキシ]-3-(ヘキシルオキシ)-N,N-ジメチルプロパン-2-アミン、(2S)-1-[(13Z)-ドコサ-13-エン-1-イルオキシ]-3-(ヘキシルオキシ)-N,N-ジメチルプロパン-2-アミン、1-[(13Z)-ドコサ-13-エン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチル-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、1-[(9Z)-ヘキサデカ-9-エン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチル-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、(2R)-N,N-ジメチル-H(1-メチルオクチル(metoyloctyl))オキシ]-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、(2R)-1-[(3,7-ジメチルオクチル)オキシ]-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、N,N-ジメチル-1-(オクチルオキシ)-3-({8-[(1S,2S)-2-{[(1R,2R)-2-ペンチルシクロプロピル]-メチル}シクロプロピル]オクチル}オキシ)プロパン-2-アミン、N,N-ジメチル-1-{[8-(2-オシルシクロプロピル)オクチル]オキシ}-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミンおよび(11E,20Z,23Z)-N,N-ジメチルノナコサ-11,20,2-トリエン-10-アミン、またはこれらの薬学的に許容される塩もしくは立体異性体が含まれうる。
【0038】
[0041]陽イオン性脂質の他に、固体粒子の脂質成分は、他の種類の脂質を含むこともできる。例えば、脂質成分はヘルパー脂質を含有することができ、ヘルパー脂質は、一般に、生理的pHで中性または非陽イオン性である。そのようなヘルパー脂質には、上記に記載されたリン脂質、脂肪酸、グリセロ脂質(例えば、モノ-、ジ-およびトリ-グリセリド)、プレノール脂質などが含まれうる。適切な脂肪酸には、炭素原子が少なくとも8個の脂肪酸を有するもの、例えば、不飽和脂肪酸(例えば、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレイド酸(linoelaidic acid)、アルファリノレイド酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸など、またはこれらの任意のシス/トランス二重結合異性体)、飽和脂肪酸(例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸など、またはこれらの任意のシス/トランス二重結合異性体)、ならびにこれらの組み合わせが含まれうる。特に適切なヘルパー脂質には、例えば、オレイン酸またはその類縁体、ならびに脂肪酸修飾リン脂質、例えば、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)および/もしくは1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、ならびにホスホコリン部分が異なる双性イオン性基、例えばアミノ酸またはその誘導体に置き換えられている化合物の類縁体が含まれうる。
【0039】
[0042]上記に記載された構造脂質および/またはPEGコンジュゲート脂質を、固体粒子の脂質成分に用いることもできる。特に好ましい構造脂質は、コレステロールなどのステロールである。1つの特定の実施形態において、固体脂質粒子の脂質成分は、陽イオン性脂質、ヘルパー脂質(例えば、リン脂質および/または脂肪酸)、および構造脂質(例えば、ステロール)の組み合わせを含有する。陽イオン性脂質は、例えば、脂質成分の約10mol%~約90mol%、いくつかの実施形態では約15mol%~約80mol%、およびいくつかの実施形態では約20mol%~約60mol%を構成しうる。ヘルパー脂質は、脂質成分の約1mol%~約50mol%、いくつかの実施形態では約2mol%~約40mol%、およびいくつかの実施形態では約5mol%~約25mol%を構成しうる。構造脂質も同様に、脂質成分の約5mol%~約70mol%、いくつかの実施形態では約15mol%~約65mol%、およびいくつかの実施形態では約25mol%~約55mol%を構成しうる。ある特定の場合において、脂質成分は、一般にPEGコンジュゲート脂質を含まなくてもよい。他の場合では、PEGコンジュゲート脂質が用いられてもよく、例えば、脂質成分の約0.1mol%~約30mol%、いくつかの実施形態では約0.2mol%~約20mol%、およびいくつかの実施形態では約0.5mol%~約15mol%の量である。
【0040】
[0043]核酸をカプセル化する固体脂質粒子の形成は、当該技術に既知の様々な方法によって達成されうる。そのような方法の例は、例えば、米国特許第5,795,587号、同第7,655,468号、同第7,993,672号、同第8,492,359号、同第8,771,728号および同第8,956,572号、ならびに米国特許公開第2004/0262223号、同第2010/015218号、同第2012/0225129号、同第2012/0276209号、同第2012/0302622号、同第2013/0037977号、同第2013/0156845号、同第2014/0296322号および同第2015/0209440号に記載されており、これらの内容は、参照により本明細書に組み込まれる。例えば、固体脂質粒子は、顕微溶液ミキサーを使用して合成されうる。例示的な顕微溶液ミキサーには、スリット・インターデジタル・マイクロミキサー(slit interdigitial micromixer)および/またはスタッガード・ヘリンボーン・マイクロミキサー(staggered herringbone micromixer)(SHM)が含まれうるが、これらに限定されない。マイクロミキサー内では、例えば脂質および核酸は、微細構造誘導性カオス的移流によって一緒に混合されうる。この方法によると、流体の流れは、ヘリンボーンパターンに存在するチャンネルを通って流動し、回転流を引き起こし、周囲の流れを互いに折り重ねる。この方法は、また、流体混合の表面を含むこともあり、流体循環の際に表面が方向を変える。いったん形成されると、固体粒子は、ポリマーマトリックスに組み込まれる前に脱水されうる。例えば、粒子は、標準的なフリーズドライ機器または同等の装置を使用して、減圧下で脱水されうる。噴霧乾燥を用いることもできる。噴霧乾燥の際に湿気が粒子の周りにフィルムを形成することがあり、そのことが外部環境の温度より低く温度を下げ、故に、乾燥過程で任意の脂質が溶融する可能性を最小限にする。加えて、様々な技術(例えば、静電気的手法)を用いて、液滴を霧化することができ、より低い温度の使用を可能にすることができる。
【0041】
[0044]上記で考察された実施形態において、脂質小胞(例えば、リポソーム)および固体脂質粒子は、核酸をカプセル化する脂質成分の主要なものとして形成される。しかし、本発明にとって必ずしも必要というわけではない。ある特定の実施形態において、例えば、ポリマー成分、脂質成分および核酸を含むハイブリッド粒子を用いることができる。そのようなハイブリッド粒子は、リポソームと従来のポリマーナノ粒子の利益および特徴を一緒に合わせることができる。例えば、ハイブリッド粒子は、核酸をカプセル化し、かつポリマーを含有するコア、コアを取り囲み、かつ脂質を含有する中間層(例えば、単層または二重層)、およびPEGコンジュゲート脂質を含有する外側シェルを含有することができる。適切なポリマーには、例えば、生分解性ポリマー、例えば脂肪族ポリエステル(例えば、ポリ乳酸)、脂肪族芳香族コポリエステルなどが含まれうる。中間層および/または外側シェルは、上記に記載された陽イオン性脂質、ヘルパー脂質およびPEGコンジュゲート脂質の組み合わせを含有することができる。
【0042】
III.賦形剤
[0045]薬剤放出層は、任意選択で1つ以上の賦形剤、例えば、細胞透過性向上剤、リボ核酸分解阻害剤(例えば、RNアーゼおよび/またはDNアーゼ阻害剤)、造影剤、親水性化合物、増量剤、可塑剤、界面活性剤、架橋剤、流動助剤、着色剤(例えば、クロロフィル、メチレンブルーなど)、抗酸化剤、安定剤、滑沢剤、他の種類の抗微生物剤、防腐剤などを含有して、特性および加工性を向上させることもできる。用いられる場合、任意選択の賦形剤は、典型的には、薬剤放出層の約0.01wt%~約20wt%、およびいくつかの実施形態では約0.05wt%~約15wt%、およびいくつかの実施形態では約0.1wt%~約10wt%を構成する。1つの実施形態において、例えば、造影剤を用いて、デバイスがX線ベース画像化技術(例えば、コンピュータ断層撮影法、投影X線撮影法(projectional radiography)、蛍光透視法など)において検出されうることを確実にすることを助けることができる。そのような薬剤の例には、例えば、バリウムベース化合物、ヨウ素ベース化合物、ジルコニウムベース化合物(例えば、二酸化ジルコニウム)などが含まれる。そのような薬剤の1つの特定例は、硫酸バリウムである。他の既知の抗微生物剤および/または防腐剤も用いて、細菌の表面成長および付着を防止するのを助けることもでき、例えば、金属化合物(例えば、銀、銅または亜鉛)、金属塩、第四級アンモニウム化合物などである。
【0043】
[0046]細胞透過性向上剤を用いて核酸の送達の助けとしてもよい。そのような向上剤の例には、例えば、密着結合調節剤、シクロデキストリン、トリヒドロキシ塩(例えば、胆汁塩、例えばグリココール酸ナトリウムまたはフシジン酸ナトリウム)、界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、ラウリルベタイン、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテートなど)、サポニン、フシジン酸およびその誘導体、脂肪酸およびその誘導体(例えば、オレイン酸、モノオレイン、カプリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウムなど)、ピロリドン(例えば、2-ピロリドン)、アルコール(例えば、エタノール)、グリコール(例えば、プロピレングリコール)、アゾン(例えば、ラウロカプラム)、テルペン、キレート剤(例えば、EDTA)、デンドリマー、オキサゾリジン、ジオオキソラン(例えば、2-n-ノニル-1,3-ジオキソラン)、脂質(例えば、リン脂質)などが含まれうる。
【0044】
[0047]核酸分解のリスクを最小限にすることを助けるために、リボ核酸阻害剤を用いることができる。この目的の代表的な阻害剤には、例えば、アンチヌクレアーゼ抗体および/または非抗体阻害剤が含まれうる。適切なヌクレアーゼ抗体は、アンチリボヌクレアーゼ抗体またはアンチデオキシリボヌクレアーゼ抗体でありうる。アンチリボヌクレアーゼ抗体は、以下のリボヌクレアーゼまたはデオキシリボヌクレアーゼ:RNアーゼA、RNアーゼB、RNアーゼC、RNアーゼ1、RNアーゼT1、小球菌ヌクレアーゼ、S1ヌクレアーゼ、哺乳類リボヌクレアーゼ1ファミリー、リボヌクレアーゼ2ファミリー、哺乳類アンジオゲニン、RNアーゼHファミリー、RNアーゼL、好酸球RNアーゼ、メッセンジャーRNAリボヌクレアーゼ(5’-3’エキソリボヌクレアーゼ、3’-5’エキソリボヌクレアーゼ)、デキャッピング酵素、デアデニラーゼ(deadenylase)、大腸菌エンドリボヌクレアーゼ(RNアーゼP、RNアーゼIII、RNアーゼE、RNアーゼI,I*、RNアーゼHI、RNアーゼHII、RNアーゼM、RNアーゼR、RNアーゼIV、F;RNアーゼP2,O、PIV、PC、RNアーゼN)、大腸菌エキソリボヌクレアーゼ(RNアーゼII、PNPアーゼ、RNアーゼD、RNアーゼBN、RNアーゼT、RNアーゼPH、オリゴRNアーゼ、RNアーゼR)、RNアーゼSa、RNアーゼF1、RNアーゼU2、RNアーゼMs、RNアーゼSt、DNアーゼ1、S1ヌクレアーゼおよび小球菌ヌクレアーゼのうちの1つ以上を阻害する抗体でありうる。適切な非抗体ヌクレアーゼ阻害剤も同様に、ピロ炭酸ジエチル、エタノール、ホルムアミド、チオシアン酸グアニジニウム、バナジル-リボヌクレオシド複合体、マカロイド(macaloid)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、プロテイナーゼK、ヘパリン、ヒドロキシルアミン-酸素第二銅イオン、ベントナイト、硫酸アンモニウム、ジチオトレイトール(DTT)、β-メルカプトエタノール、システイン、ジチオエリトリトール、尿素、ポリアミン(スペルミジン、スペルミン)、洗剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム)、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフェン塩酸塩(TCEP)などを含みうるが、これらに限定されない。キレート剤も適切な非抗体ヌクレアーゼ阻害剤であり、それはこのような化合物がそうでなければ分解を引き起こす陽イオン(例えば、カルシウム、鉄など)に結合することを助けることができるからである。キレート剤には、例えば、アミノカルボン酸(例えば、エチレンジアミン四酢酸)およびその塩、ヒドロキシカルボン酸(例えば、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸など)およびその塩、ポリリン酸(例えば、トリポリリン酸、ヘキサメタリン酸など)およびその塩などが含まれうる。望ましくは、キレート剤は、金属イオンと多重配位結合を形成して、いずれかの自由金属イオンの可能性を低減することができる点において、多座配位である。1つの実施形態において、例えば、2つ以上のアミノ二酢酸(時には、イミノ二酢酸と呼ばれる)基またはその塩を含有する多座配位キレート剤を利用することができる。そのようなキレート剤の1つの例は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。適切なEDTA塩の例には、EDTAカルシウム二ナトリウム、EDTA二アンモニウム、EDTA二ナトリウムおよびEDTA二カリウム、EDTA三ナトリウムおよびEDTA三カリウム、EDTA四ナトリウムおよびEDTA四カリウムが含まれる。同様のアミノ二酢酸キレート剤のなお他の例には、ブチレンジアミン四酢酸、(1,2-シクロヘキシレンジアミン四酢酸(CyDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミンテトラプロピオン酸、(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、トリエタノールアミンEDTA、トリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン-N,N,N’,N’-四酢酸(DHPTA)、メチルイミノ二酢酸、プロピレンジアミン四酢酸、エチレンジイミノジプロパン二酸(EDDM)、2,2’-ビス(カルボキシメチル)イミノ二酢酸(ISA)、エチレンジイミノジブタン二酸(EDDS)などが含まれるが、これらに限定されない。なお他の適切な多座配位キレート剤には、N,N,N’,N’-エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン)酸(EDTMP)、ニトリロトリメチルホスホン酸、リン酸二水素2-アミノエチル、2,3-ジカルボキシプロパン-1,1-ジホスホン酸、メソ-オキシビス(ブタン二酸)(ODS)などが含まれる。
【0045】
[0048]埋め込み型医療デバイスからの放出速度の更なる制御を助けるため、例えば、親水性化合物を、水溶性および/または水膨張性である薬剤放出層に組み込むこともできる。用いられる場合、薬剤放出層内のエチレン酢酸ビニルコポリマーの親水性化合物に対する重量比は、約0.25~約200、いくつかの実施形態では約0.4~約80、いくつかの実施形態では約0.8~約20、いくつかの実施形態では約1~約16、およびいくつかの実施形態では約1.2~約10の範囲でありうる。そのような親水性化合物は、例えば、薬剤放出層の約1wt%~約60wt%、いくつかの実施形態では約2wt%~約50wt%、およびいくつかの実施形態では約5wt%~約40wt%を構成してもよく、一方、エチレン酢酸ビニルコポリマーは、典型的には、薬剤放出層の約40wt%~約99wt%、いくつかの実施形態では約50wt%~約98wt%、およびいくつかの実施形態では約60wt%~約95wt%を構成する。適切な親水性化合物には、例えば、ポリマー、非ポリマー材料、例えば、脂肪酸またはその塩(例えば、ステアリン酸、クエン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、リノール酸など、ならびにこれらの塩)、生体適合性塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウムなど)、下記に記載されているヒドロキシ機能性化合物などが含まれうる。適切な親水性ポリマーの例には、例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウムおよびアルギン酸カルシウム、セルロース化合物(例えば、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロースなど)、寒天、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール)、コラーゲン、ペクチン、キチン、キトサン、ポリ-1-カプロラクトン、ポリビニルピロリドン、ポリ(ビニルピロリドン-co-酢酸ビニル)、多糖、親水性ポリウレタン、ポリヒドロキシアクリレート、デキストラン、キサンタン、タンパク質、エチレンビニルアルコールコポリマー、水溶性ポリシランおよびシリコーン、水溶性ポリウレタンなど、ならびにこれらの組み合わせが含まれる。特に適切な親水性ポリマーは、ポリアルキレングリコールであり、例えば、1モルあたり約100~500,000グラム、いくつかの実施形態では1モルあたり約500~200,000グラム、およびいくつかの実施形態では1モルあたり約1,000~約100,000グラムの分子量を有するものである。そのようなポリアルキレングリコールの特定例には、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエピクロロヒドリンなどが含まれる。
【0046】
[0049]1つ以上の非イオン性、陰イオン性および/または両性界面活性剤を用いて、均一の分散を作り出すことを助けることもできる。用いられる場合、そのような界面活性剤は、典型的には、膜層の約0.05wt%~約8wt%、およびいくつかの実施形態では約0.1wt%~約6wt%、およびいくつかの実施形態では約0.5wt%~約3wt%を構成する。疎水性基剤(例えば、長鎖アルキル基またはアルキル化アリール基)と親水性鎖(例えば、エトキシおよび/またはプロポキシ部分を含有する鎖)とを典型的に有する非イオン性界面活性剤が、特に適している。使用してもよいいくつかの適切な非イオン性界面活性剤には、エトキシル化アルキルフェノール、エトキシル化およびプロポキシル化脂肪アルコール、メチルグルコースのポリエチレングリコールエーテル、ソルビトールのポリエチレングリコールエーテル、エチレンオキシド-プロピレンオキシドブロックコポリマー、脂肪(C8~C18)酸のエトキシル化エステル、エチレンオキシドと長鎖アミンまたはアミドとの縮合生成物、エチレンオキシドとアルコールとの縮合生成物、脂肪酸エステル、長鎖アルコールのモノグリセリドまたはジグリセリド、ならびにこれらの混合物が含まれうるが、これらに限定されない。特に適切な非イオン性界面活性剤には、脂肪アルコールのエチレンオキシド縮合物、脂肪酸のポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルおよびソルビタン脂肪酸エステルなどが含まれうる。そのような乳化剤を形成するために使用される脂肪成分は、飽和または不飽和、置換または非置換であってもよく、6~22個の炭素原子、いくつかの実施形態では8~18個の炭素原子、およびいくつかの実施形態では12~14個の炭素原子を含有しうる。ポリオキシエチレンで変性されているソルビタン脂肪酸エステル(例えば、モノエステル、ジエステル、トリエステルなど)は、非イオン性界面活性剤の特に有用な一群である。これらの物質は、典型的には1,4-ソルビタンエステルへのエチレンオキシドの添加によって調製される。ポリオキシエチレンの添加は、親油性ソルビタンエステル界面活性剤を、水に一般に可溶性または分散性である親水性界面活性剤に変換する。そのような物質は、名称TWEEN(登録商標)(例えば、TWEEN(登録商標)80またはポリエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)で市販されている。
【0047】
IV.デバイスの構成
A.薬剤放出層
[0050]上記に示されたように、薬剤放出層は、ポリマーマトリックス、カプセル化粒子および任意選択で賦形剤から形成されうる。薬剤放出層および/または埋め込み型医療デバイスは、様々な異なる幾何学的形状、例えば、円筒形(ロッド)、ディスク、リング、ドーナッツ形、らせん形、楕円形、三角形、卵形などを有することができる。1つの実施形態において、例えば、薬剤放出層および/または埋め込み型医療デバイスは全体の構造が円筒(ロッド)またはディスクの形態になるように、全体的に円形の断面形状を有していてもよい。そのような実施形態において、薬剤放出層および/または埋め込み型医療デバイスは、典型的には、約0.5~約50ミリメートル、いくつかの実施形態では約1~約40ミリメートル、およびいくつかの実施形態では約5~約30ミリメートルの直径を有する。薬剤放出層および/または埋め込み型医療デバイスの長さは変動しうるが、典型的には、約1~約25ミリメートルの範囲である。円筒形デバイスは、例えば、約5~約50ミリメートルの長さを有していてもよく、一方、ディスク形状のデバイスは、約0.5~約5ミリメートルの長さを有していてもよい。
【0048】
[0051]薬剤放出層は、様々な既知の技術、例えば、ホットメルト押出、圧縮成形(例えば、真空圧縮成形)、射出成形、溶液流延、ディップコーティング、スプレーコーティング、マイクロ押出成形(microextrusion)、コアセルベーションなどを介して形成されうる。1つの実施形態において、ホットメルト押出技術を用いることができる。ホットメルト押出は一般に無溶媒法であり、薬剤放出層の成分(例えば、エチレン酢酸ビニルコポリマー、核酸、担体成分、任意選択の賦形剤など)を溶融ブレンドし、連続製造過程で任意選択に造形して、高い処理率(throughput rate)で一貫した出力品質を可能にすることができる。この技術はエチレン酢酸ビニルコポリマーに特に適しており、それはこれらが、典型的には広い分子量分布を伴って比較的高い程度の長鎖分岐を示すからである。この特質の組み合わせは、押出過程の際にコポリマーの剪断減粘をもたらして、ホットメルト押出を容易にすることの助けとなりうる。更に、極性酢酸ビニルコモノマー単位は、ポリエチレン鎖セグメントの結晶化を阻害することによって「内部」可塑剤として機能することができる。このことはコポリマーの融点の低下をもたらすことができ、これは、カプセル化粒子と共に加工される能力を更に向上させる。
【0049】
[0052]ホットメルト押出法の際に、溶融ブレンドは、一般に、カプセル化粒子に用いられている担体(例えば、脂質)の溶融温度に類似した温度、または更にそれより低い温度であっても発生する。溶融ブレンドは、エチレン酢酸ビニルコポリマーの溶融温度に類似した温度、または僅かに上回る温度でも発生しうる。溶融ブレンド温度の、カプセル化粒子中の担体の溶融温度に対する比は、例えば約2以下、いくつかの実施形態では約1.8以下、いくつかの実施形態では約0.1~約1.6、いくつかの実施形態では約0.2~約1.5、およびいくつかの実施形態では約0.4~約1.2でありうる。溶融ブレンド温度は、例えば、約30℃~約100℃、いくつかの実施形態では約40℃~約80℃、およびいくつかの実施形態では約50℃~約70℃でありうる。様々な溶融ブレンド技術のいずれかを一般に用いることができる。例えば、成分を別々にまたは組み合わせて、バレル(例えば、円筒バレル)内に回転可能に装填および収容されている少なくとも1本のスクリューを含む押出機に供給することができる。押出機は、一軸スクリューまたは二軸スクリュー押出機でありうる。例えば、一軸スクリュー押出機の1つの実施形態は、ハウジングまたはバレル、ならびに適切な駆動機(典型的にはモーターおよびギヤボックスを含む)により一端が回転的に駆動されるスクリューを含むことができる。望ましい場合、2本の別々のスクリューを含む二軸スクリュー押出機を用いてもよい。スクリューの構成は特に重要ではなく、任意の数および/または方向のねじ山および溝を含んでもよく、このことは当該技術において知られている。例えば、スクリューは、典型的には、スクリューの中心の周囲に遠心方向に伸びて全体的にらせん溝を形成するねじ山を含む。供給セクションおよび溶融セクションが、スクリューの長さに沿って画定されうる。供給セクションはバレルの投入部分であり、そこにエチレン酢酸ビニルコポリマーおよび/またはカプセル化粒子が添加される。溶融セクションは相変化セクションであり、そこではコポリマーが固体から液体様状態に変化する。押出機が製造されるときに、これらのセクションに正確に画定された線引きはないが、供給セクション、および固体から液体への相変化が発生する溶融セクションを確実に確認することは、十分に当業者の通常の技能の範囲内である。必ずしも必要ではないが、押出機は、バレルの押出端に隣接し、溶融セクションの下流に配置されている混合セクションを有することもできる。望ましい場合、1つ以上の分配および/または分散混合要素を、押出機の混合および/または溶融セクション内に用いてもよい。一軸スクリュー押出機に適切な分配ミキサーには、例えば、Saxon、Dulmage、Cavity Transferミキサーなどが含まれうる。同様に、適切な分散ミキサーには、Blisterリング、Leroy/Maddock、CRDミキサーなどが含まれうる。当該技術に良く知られているように、混合は、ポリマー溶融物の折り畳みおよび再方向付けを作り出すバレル内のピンを使用することによって更に改善することができ、例えば、Buss Kneader押出機、Cavity TransferミキサーおよびVortex Intermeshing Pinミキサーに使用されているものである。
【0050】
[0053]望ましい場合、スクリューの長さ(「L」)の直径(「D」)に対する比を選択して、成分の処理量(throughput)とブレンドの最適なバランスを達成することができる。L/D値は、例えば、約10~約50、いくつかの実施形態では約15~約45、およびいくつかの実施形態では約20~約40の範囲でありうる。スクリューの長さは、例えば、約0.1~約5メートル、いくつかの実施形態では約0.4~約4メートル、およびいくつかの実施形態では約0.5~約2メートルの範囲でありうる。同様にスクリューの直径は、約5~約150ミリメートル、いくつかの実施形態では約10~約120ミリメートル、およびいくつかの実施形態では約20~約80ミリメートルでありうる。長さおよび直径に加えて、押出機の他の態様を選択して、望ましい程度のブレンドを達成することを助けることもできる。例えば、スクリューの速度を選択して、望ましい滞留時間、剪断速度、溶融加工温度などを達成することができる。例えば、スクリュー速度は、約10~約800毎分回転数(「rpm」)、いくつかの実施形態では約20~約500rpm、およびいくつかの実施形態では約30~約400rpmの範囲でありうる。また溶融ブレンドの際の見掛け剪断速度は、約100秒-1~約10,000秒-1、いくつかの実施形態では約500秒-1~約5000秒-1、およびいくつかの実施形態では約800秒-1~約1200秒-1の範囲でありうる。見掛け剪断速度は、4Q/ΠR3に等しく、ここで、Qはポリマー溶融物の体積流量(「m3/s」)であり、Rは溶融ポリマーが流れるキャピラリー(例えば、押出機ダイ)の半径(「m」)である。
【0051】
[0054]一緒に溶融ブレンドされると、得られたポリマー組成物は、オリフィス(例えば、ダイ)を通して押し出され、ペレット、シート、ファイバー、フィラメントなどに形成されてもよく、その後にこれらを様々な既知の造形技術、例えば、射出成形、圧縮成形、ナノ成形(nanomolding)、オーバー成形(overmolding)、ブロー成形、三次元印刷などを使用して薬剤放出層に造形することができる。射出成形は、例えば、2つの主要な段階、すなわち、射出段階および保持段階を生じることがある。射出段階では、成形型キャビティを溶融ポリマー組成物で充填する。保持段階は、射出段階が終了した後に開始され、保持圧力を制御して、追加の物質をキャビティに詰め、冷却の際に生じる体積収縮を補う。ショット(shot)を造った後、次いでこれを冷却することができる。冷却が完了すると、成形型を開け、成形型内の排出ピンの助けを借りながら、部品を排出させて、成形サイクルを完了させる。任意の適切な射出成形機器を一般に本発明に用いることができる。1つの実施形態では、薬剤放出層の形状を有する成形型キャビティを一緒に画定する第1の成形型ベースおよび第2の成形型ベースを含む、射出成形装置を用いることができる。成形装置は、第1の成形型の半分の外側外表面からスプルーを通って成形型キャビティまで伸びている樹脂流路を含む。ポリマー組成物を、様々な技術を使用して樹脂流路に供給することができる。例えば、組成物を、回転スクリュー(示されず)を含有する押出機バレルに取り付けられた供給ホッパーに(例えば、ペレットの形態で)供給することができる。スクリューが回転すると、ペレットは前進して、圧力および摩擦を受け、そのことが熱を発生してペレットを溶融させる。冷却機構を備えて、樹脂を成形型キャビティ内で望ましい薬剤放出層の形状(例えば、ディスク、ロッドなど)に凝固させることもできる。例えば、成形型ベースは、1つ以上の冷却ラインを含んでもよく、冷却媒体がその中を流れて、溶融物質の凝固のために望ましい成形型温度を成形型ベースの表面に付与する。成形型温度(例えば、成形型の表面の温度)は、約50℃~約120℃、いくつかの実施形態では約60℃~約110℃、およびいくつかの実施形態では約70℃~約90℃の範囲でありうる。
【0052】
[0055]上記に示されたように、望ましい形状およびサイズの薬剤放出層を形成するのに適切な別の技術は、三次元印刷である。この方法では、ポリマー組成物を、プリンターシステムによる使用に容易に適合されるプリンターカートリッジに組み込むことができる。プリンターカートリッジは、例えば、ポリマー組成物を担持するスプールまたは他の同様のデバイスを含有することができる。例えば、フィラメントの形態で供給される場合、スプールは全体的に円筒形のリムを有してもよく、その周りにフィラメントが巻かれている。スプールは、同様に、使用時にプリンターに容易に装填されるようにボアまたはスピンドルを画定してもよい。様々な三次元プリンターシステムのいずれかを本発明に用いることができる。特に適切なプリンターシステムは、押出ベースシステムであり、これは多くの場合「熱溶解積層法(fused deposition modeling)」システムと呼ばれる。例えば、ポリマー組成物を、プラテンおよびガントリーを含有するプリントヘッドの造形チャンバー(build chamber)に供給することができる。プラテンは、コンピュータ操作コントローラーから提供される信号に基づいて、垂直z軸に沿って移動することができる。ガントリーは、コントローラーから提供される信号に基づいて、造形チャンバー内でプリントヘッドを水平x-y平面に移動させるように構成されうる。プリントヘッドはガントリーにより支持され、コントローラーから提供される信号に基づいて、造形構造をプラテンに交互積層法(layer-by-layer manner)で印刷するように構成される。例えば、プリントヘッドは、二重チップ押出ヘッドであってもよい。
【0053】
[0056]圧縮成形(例えば、真空圧縮成形)を用いることもできる。そのような方法では、真空下にある間にポリマー圧縮物(polymer compression)を所望の形状に加熱および圧縮することによって、デバイスの層を形成することができる。より詳細には、この方法は、ポリマー組成物を、圧縮成形型のチャンバー内に適合する前駆体に形成し、前駆体を加熱し、前駆体を加熱している間に、前駆体を圧縮成形して望ましい層にすることを含むことができる。ポリマー組成物は、様々な技術を介して、例えば乾式粉末混合、押出などにより前駆体に形成されうる。圧縮の際の温度は、約50℃~約120℃、いくつかの実施形態では約60℃~約110℃、およびいくつかの実施形態では約70℃~約90℃の範囲でありうる。真空供給源は、また、成形の際に負圧を前駆体に適用して、正確な形状の保持を確実にすることを助けることができる。そのような圧縮成形技術の例は、例えば、Trefferらの米国特許第10,625,444号に記載されており、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0054】
B.膜層
[0057]いくつかの場合において、埋め込み型医療デバイスは、薬剤放出層(すなわち、「コア」)の外表面に隣接して位置する少なくとも1つの膜層を含有するという点において多層でありうる。膜層の数は、デバイス特定の構成、核酸の性質および望ましい放出プロファイルに応じて変わりうる。例えば、デバイスは、1つの膜層のみを含有してもよい。例えば、
図1および2を参照すると、全体的に円形の断面形状を有するコア40を含有し、かつ得られたデバイスが全体的に本質的に円筒状になるように伸長されている、埋め込み型医療デバイス10の1つの実施形態が示されている。コア40は、膜層20が周囲に配置されている外側周囲表面61を画定する。コア40と同様に、膜層20も全体的に円形の断面形状を有し、コア40の全長を覆うように伸長されている。デバイス10を使用すると、核酸は、コア40から膜層20を通って放出され、それによってデバイスの外部表面21から出る。
【0055】
[0058]当然のことながら、他の実施形態において、デバイスは、多重膜層を含有してもよい。例えば、
図1および2のデバイスでは、1つ以上の追加の膜層(示されず)を膜層20の上に配置して、核酸の更なる制御放出を助けることができる。他の実施形態では、コアが別々の膜層の間に位置するまたは挟まるように、デバイスを構成することができる。例えば、
図3および4を参照すると、全体的に円形の断面形状を有するコア140を含有し、かつ得られたデバイスが全体的に本質的にディスク形状になるように伸長されている、埋め込み型医療デバイス100の1つの実施形態が示されている。コア140は、第1の膜層120が位置している上部外表面161および第2膜層122が位置している下部外表面163を画定する。コア140と同様に、第1の膜層120および第2の膜層122も、コア140を全体的に覆っている、全体的に円形の断面形状を有する。望ましい場合、膜層120および122の縁がコア140の周辺を越えて延長してもよく、それによって、コア140の外部周囲表面170の任意の露出領域を覆うように一緒に封止することができる。デバイス100を使用すると、核酸は、コア140から第1の膜層120および第2の膜層122を通って放出され、それによってデバイスの外部表面121および123から出ることができる。当然のことながら、望ましい場合は、1つ以上の追加の膜層(示されず)を第1の膜層120および/または第2の膜層122の上に配置して、核酸の更なる制御放出を助けることもできる。
【0056】
[0059]用いられる特定の構成にかかわらず、膜層は、一般に、疎水性ポリマーを含有する膜ポリマーマトリックスを含有する。膜ポリマーマトリックスは、典型的には、膜層の約30wt%~100wt%、いくつかの実施形態では約40wt%~約99wt%、およびいくつかの実施形態では約50wt%~約90wt%を構成する。多重膜層を用いる場合、各膜層は、そのような疎水性ポリマーを含む膜ポリマーマトリックスを含有することが、典型的に望ましい。例えば、第1の膜層は第1の膜ポリマーマトリックスを含有することができ、第2膜層は第2の膜ポリマーマトリックスを含有することができる。そのような実施形態において、第1および第2の膜ポリマーマトリックスは、それぞれ疎水性ポリマーを含有し、これらは同一であっても、異なっていてもよい。
【0057】
[0060]膜ポリマーマトリックスに使用されるポリマーは、哺乳動物の身体などの水性環境に設置された場合にある特定の期間にわたって構造整合性を保持できるように、および使用前に長期間にわたって保存するのに十分に安定でありうるように、一般に本質的に疎水性である。この目的に適切な疎水性ポリマーの例には、例えば、シリコーンポリマー、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスルホン、スチレンアクリロニトリルコポリマー、ポリウレタン、シリコーンポリエーテル-ウレタン、ポリカーボネート-ウレタン、シリコーンポリカーボネート-ウレタンなど、ならびにこれらの組み合わせが含まれてもよい。当然のことながら、疎水性ポリマーでコートされている、そうでなければカプセル化されている親水性ポリマーも、膜ポリマーマトリックスにおける使用に適している。ある特定の実施形態において、膜ポリマーマトリックスは、半結晶オレフィンコポリマーを含有してもよい。そのようなオレフィンコポリマーの溶融温度は、例えばASTM D3418-15に従って決定すると、例えば、約20℃~約100℃、いくつかの実施形態では、約25℃~約80℃、いくつかの実施形態では約30℃~約70℃、いくつかの実施形態では約35℃~約65℃、およびいくつかの実施形態では約40℃~約60℃の範囲でありうる。そのようなコポリマーは、少なくとも1つのオレフィンモノマー(例えば、エチレン、プロピレンなど)、ならびにポリマー主鎖にグラフトされている、および/またはポリマーの構成成分として組み込まれている(例えば、ブロックもしくはランダムコポリマー)少なくとも1つの極性モノマーから、一般に誘導される。適切な極性モノマーには、例えば、酢酸ビニル、ビニルアルコール、無水マレイン酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸など)、(メタ)アクリレート(例えば、アクリレート、メタクリレート、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなど)などが含まれる。多種多様なそのようなコポリマーは、一般にポリマー組成物において使用され、例えば、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレン(メタ)アクリル酸ポリマー(例えば、エチレンアクリル酸コポリマーおよびこれらのコポリマーの部分中和イオノマー、エチレンメタクリル酸コポリマーおよびこれらのコポリマーの部分中和イオノマーなど)、エチレン(メタ)アクリレートポリマー(例えば、エチレンメチルアクリレートコポリマー、エチレンアクリル酸エチルコポリマー、エチレンアクリル酸ブチルコポリマーなど)などでありうる。選択される特定のモノマーにかかわらず、本発明者たちは、コポリマーのある特定の態様を選択的に制御して、望ましい放出特性の達成を助けることができることを発見した。例えば、コポリマーの極性モノマー含有量は、コポリマーの約20wt%~約60wt%、いくつかの実施形態では約25wt%~約55wt%、いくつかの実施形態では約30wt%~約50wt%、いくつかの実施形態では約35wt%~約48wt%、およびいくつかの実施形態では約38wt%~約45wt%の範囲内であるように選択的に制御されうる。逆に言えば、コポリマーのオレフィンモノマー含有量も同様に、約40wt%~約80wt%、45wt%~約75wt%、いくつかの実施形態では約50wt%~約80wt%、いくつかの実施形態では約52wt%~約65wt%、およびいくつかの実施形態では約55wt%~約62wt%の範囲内でありうる。
【0058】
[0061]膜ポリマーマトリックスに使用される疎水性ポリマーは、また、薬剤放出層に用いられるエチレン酢酸ビニルコポリマーと同一であっても、異なっていてもよい。1つの実施形態において、例えば、薬剤放出層(コア)および膜層は、両方とも同じポリマー(例えば、エチレン酢酸ビニルコポリマー)を用いる。なお他の実施形態において、膜層は、薬剤放出層に用いられるエチレン酢酸ビニルコポリマーより低いメルトフローインデックスを有する疎水性ポリマー(例えば、α-オレフィンコポリマー)を用いてもよい。とりわけ、このことはデバイスからの核酸の放出の制御を更に助けることができる。例えば、薬剤放出層に用いられるエチレン酢酸ビニルコポリマーのメルトフローインデックスの、膜層に用いられる疎水性ポリマーのメルトフローインデックスに対する比は、約1~約20、いくつかの実施形態では約2~約15、およびいくつかの実施形態では約4~約12でありうる。膜層の疎水性ポリマーのメルトフローインデックスは、例えば、190℃の温度および2.16キログラムの荷重でASTM D1238-13に従って決定すると、約1~約80g/10分、いくつかの実施形態では約2~約70g/10分、およびいくつかの実施形態では約5~約60g/10分の範囲でありうる。用いてもよい適切なエチレン酢酸ビニルコポリマーの例には、名称ATEVA(登録商標)(例えば、ATEVA(登録商標)4030ACまたは2861A)でCelaneseから入手可能なものが含まれる。
【0059】
[0062]デバイスに使用される膜層は、膜層ポリマーマトリックス内に分散されている上記に記載された核酸カプセル化粒子を任意選択で含有することができる。膜層中のカプセル化粒子の核酸および担体成分は、コアに用いられるものと同一であっても、異なっていてもよい。それと無関係に、そのようなカプセル化粒子が膜層に用いられる場合、膜層は、一般に、コア中のカプセル化粒子の濃度(wt%)の膜層中のカプセル化粒子の濃度(wt%)に対する比が1を超える、いくつかの実施形態では約1.5以上である、およびいくつかの実施形態では約1.8~約4であるような量で粒子を含有することが一般的に望ましい。用いられる場合、カプセル化粒子は、典型的に、膜層の僅か約1wt%~約40wt%、いくつかの実施形態では約5wt%~約35wt%、およびいくつかの実施形態では約10wt%~約30wt%を構成する。当然のことながら、他の実施形態において、膜層は、一般に、薬剤放出層から放出される前にそのような核酸カプセル化粒子を含まない。多重膜層が用いられる場合、各膜層は、薬剤放出層中のカプセル化粒子の重量百分率の膜層中の粒子の重量百分率に対する比が1を超える、いくつかの実施形態では約1.5以上である、およびいくつかの実施形態では約1.8~約4であるような量で、一般にカプセル化粒子を含有しうる。
【0060】
[0063]膜層は、任意選択で上記に記載された1つ以上の賦形剤、例えば、造影剤、親水性化合物、増量剤、可塑剤、界面活性剤、架橋剤、流動助剤、着色剤(例えば、クロロフィル、メチレンブルーなど)、抗酸化剤、安定剤、滑沢剤、他の種類の抗微生物剤、防腐剤などを含有して、特性および加工性を向上させることもできる。用いられる場合、任意選択の賦形剤は、典型的には、膜層の約0.01wt%~約60wt%、およびいくつかの実施形態では約0.05wt%~約50wt%、およびいくつかの実施形態では約0.1wt%~約40wt%を構成する。
【0061】
[0064]埋め込み型医療デバイスからの放出速度の更なる制御を助けるため、例えば、親水性化合物を上記に記載された膜層に組み込むこともできる。用いられる場合、膜層内の疎水性ポリマーの親水性化合物に対する重量比は、約0.25~約200、いくつかの実施形態では約0.4~約80、いくつかの実施形態では約0.8~約20、いくつかの実施形態では約1~約16、およびいくつかの実施形態では約1.2~約10の範囲でありうる。そのような親水性化合物は、例えば、膜層の約1wt%~約50wt%、いくつかの実施形態では約2wt%~約40wt%、およびいくつかの実施形態では約5wt%~約30wt%を構成してもよく、一方、疎水性ポリマーは、典型的には、膜層の約50wt%~約99wt%、いくつかの実施形態では約60wt%~約98wt%、およびいくつかの実施形態では約70wt%~約95wt%を構成する。
【0062】
[0065]1つの特定の実施形態において、膜層は、膜ポリマーマトリックス内に分布した複数の水溶性粒子の形態である親水性化合物を含有してもよい。そのような実施形態では、水溶性粒子の粒径を制御して、望ましい送達率を達成することを助けることができる。より詳細には、粒子の直径中央値(D50)は、例えばレーザー散乱粒径分布分析器(例えば、HoribaのLA-960)を使用して決定すると、約100マイクロメートル以下、いくつかの実施形態では約80マイクロメートル以下、いくつかの実施形態では約60マイクロメートル以下、およびいくつかの実施形態では約1~約40マイクロメートルでありうる。粒子は、粒子量の90%以上(D90)が上記に示された範囲内の直径を有するような狭いサイズ分布を有することもできる。様々な異なる物質を用いてそのような粒子を形成することができ、例えば、脂肪酸またはその塩(例えば、ステアリン酸、クエン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、リノール酸など、ならびにこれらの塩)、セルロース化合物(例えば、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロースなど)、生体適合性塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウムなど)、ヒドロキシ機能性化合物などである。特に適切な実施形態において、水溶性粒子は、一般に、ポリマーではないヒドロキシ機能性化合物を含有する。用語「ヒドロキシ機能性」は、少なくとも1個のヒドロキシル基、ある特定の場合では多数のヒドロキシル基、例えば2個以上、いくつかの実施形態では3個以上、いくつかの実施形態では4~20個、およびいくつかの実施形態では5~16個のヒドロキシル基を含有する化合物を一般に意味する。同様に用語「非ポリマー」も、大きい数の反復単位を含有しない、例えば10個以下の反復単位、いくつかの実施形態では5個以下の反復単位、いくつかの実施形態では3個以下の反復単位、およびいくつかの実施形態では2個以下の反復単位を含有する化合物を一般に意味する。いくつかの場合において、そのような化合物は任意の反復単位を欠いている。故に、そのような非ポリマー化合物は比較的低い分子量を有し、例えば、1モルあたり約1~約650グラム、いくつかの実施形態では1モルあたり約5~約600グラム、いくつかの実施形態では1モルあたり約10~約550グラム、いくつかの実施形態では1モルあたり約50~約500グラム、いくつかの実施形態では1モルあたり約80~約450グラム、およびいくつかの実施形態では1モルあたり約100~約400グラムである。本発明に用いることができる特に適切な非ポリマーヒドロキシ機能性化合物には、例えば、糖およびその誘導体、例えば、単糖(例えば、デキストロース、フルクトース、ガラクトース、リボース、デオキシリボースなど)、二糖(例えば、スクロース、ラクトース、マルトースなど)、糖アルコール(例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、エリスリトール、ガラクチトール、イソマルト、イノシトール、ラクチトールなど)など、ならびにこれらの組み合わせが含まれる。
【0063】
[0066]上記に記載された1つ以上の非イオン性、陰イオン性および/または両性界面活性剤を用いて、均一の分散を作り出すことを助けることもできる。用いられる場合、そのような界面活性剤は、典型的には、膜層の約0.05wt%~約8wt%、およびいくつかの実施形態では約0.1wt%~約6wt%、およびいくつかの実施形態では約0.5wt%~約3wt%を構成する。
【0064】
[0067]膜層は、コアの形成に使用されるものと同じまたは異なる技術、例えば、ホットメルト押出、射出成形、溶液流延、ディップコーティング、スプレーコーティング、マイクロ押出成形、コアセルベーションなどを使用して形成されうる。1つの実施形態において、ホットメルト押出技術を用いることができる。コアおよび膜層を別々または同時に形成することもできる。1つの実施形態において、例えば、コアおよび膜層は別々に形成され、次いで既知の接合技術を使用して、例えば、スタンピング(stamping)、ホットシール(hot sealing)、接着剤接合などにより一緒に合わされる。圧縮成形(例えば、真空圧縮成形)を用いて、埋め込み型デバイスを形成することもできる。上記に記載されたように、薬剤放出層および膜層は、それぞれ個別に、真空下にある間に対応するポリマー圧縮物の加熱および圧縮により所望の形状に形成されうる。形成されると、薬剤放出層および膜層は積層されて、多層前駆体を形成し、その後、上記に記載された方法で圧縮成形されて、得られる埋め込み型デバイスを形成することができる。
【0065】
V.デバイスの使用
[0068]デバイスの特定の性質におよぶ、およびそれが形成される方法におよぶ選択的制御によって、得られたデバイスは、核酸の長期間にわたる持続放出に有効でありうる。例えば、埋め込み型医療デバイスは、約5日間以上、いくつかの実施形態では約10日間以上、いくつかの実施形態では約20日間~約60日間、およびいくつかの実施形態では約25日間~約50日間(例えば、約30日間)にわたって、核酸を放出することができる。更に、核酸は放出時間にわたって制御的な方法(例えば、ゼロ次またはほぼゼロ次)で放出されうる。例えば15日の期間後に、埋め込み型医療デバイスの累積放出率は、約20%~約70%、いくつかの実施形態では約30%~約65%、およびいくつかの実施形態では約40%~約60%でありうる。同様に、30日の期間後に、埋め込み型医療デバイスの累積放出率は、依然として、約40%~約85%、いくつかの実施形態では約50%~約80%、およびいくつかの実施形態では約60%~約80%でありうる。「累積放出率」は、特定の時間間隔で放出された核酸の量を、初めに存在した核酸の総量で割り、次いでこの数値に100を掛けることによって決定することができる。
【0066】
[0069]当然のことながら、送達される核酸の実際の投与量レベルは、用いられる特定の核酸およびその放出が意図される期間に応じて変わる。投与量レベルは、望ましい治療結果をもたらす核酸の治療有効量を提供するため、すなわち、核酸が投与される状態の症状を低減または緩和させるのに有効なレベルまたは量を提供するために、一般に十分に高いものである。必要とされる正確な量は、数ある要因のなかで、治療される対象、核酸が送達される対象の年齢および一般的な状態、対象の免疫系の能力、望ましい効果の程度、治療される状態の重症度、選択される特定の核酸、ならびに組成物の投与様式に応じて変わる。適正な有効量は、当業者によって容易に決定することができる。例えば、有効量は、典型的には、約5μg~約200mg、いくつかの実施形態では1日あたり約5μg~約100mg、およびいくつかの実施形態では、1日あたり送達される核酸の約10μg~約1mgの範囲である。
【0067】
[0070]デバイスは、標準的な技術を使用して、皮下、経口的、粘膜などに埋め込むことができる。送達経路は、肺内、胃腸内、皮下、筋肉内、中枢神経系内(例えば、髄腔内)、腹膜内、または臓器内などでありうる。1つの実施形態において、埋め込み型デバイスは、がん治療のために核酸を送達するのに特に適しうる。そのような実施形態では、デバイスを腫瘍、例えば、膵臓、胆道系、胆嚢、肝臓、小腸、結腸、脳、肺、目などの腫瘍の中、腫瘍の上、腫瘍に隣接する、または腫瘍の近くの患者の組織部位に設置することができる。デバイスを現在の全身化学療法、外部放射線および/または外科手術と一緒に用いることもできる。デバイスを、様々な状態、例えば、がん、神経疾患(例えば、神経変性疾患、例えば、脊髄性筋萎縮症または筋萎縮性側索硬化症など)を治療および/もしくは抑制するため、ならびに/または疼痛管理に使用するために髄腔内に送達することもできる。そのような実施形態では、デバイスを、脊柱管に、または脳脊髄液を保持する空間である髄腔内の空間(くも膜下の空間)に直接埋め込むことができる。例えば、髄腔内投与は、デバイスをオマヤレザバー(手術の際に頭皮の下に設置され、薬剤を、小管から脳内に流すように保持する、ドーム型容器)に埋め込むことによって、または脊柱の下部の脳脊髄液の中に直接埋め込むことによって、達成することができる。
【0068】
[0071]望ましい場合、デバイスは、使用前にパッケージ(例えば、滅菌ブリスターパッケージ)内に封止されていてもよい。パッケージを封止する物質および方法は様々であり、当該技術において知られている。1つの実施形態において、例えば、パッケージは、望ましいレベルの保護特性を達成するのに望ましい任意の数の層、例えば、1つ以上、いくつかの実施形態では1~4つの層、およびいくつかの実施形態では1~3つの層を含む基材を含有してもよい。典型的には、基材は、ポリマーフィルムを含有し、例えば、ポリオレフィン(例えば、エチレンコポリマー、プロピレンコポリマー、プロピレンホモポリマーなど)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、塩化ビニルポリマー、ビニルクロリジンポリマー、イオノマーなど、ならびにこれらの組み合わせから形成されるものである。フィルムの1つまたは多数のパネルを、例えば周辺の縁で一緒に封止(例えば、熱封止)して、デバイスが保存されうるキャビティを形成することができる。例えば、単一フィルムを1つ以上の地点で折り畳み、周辺に沿って封止して、デバイスが中に配置されるキャビティを画定することができる。デバイスを使用するため、パッケージを、例えばシールを破って開封し、次いでデバイスを取り出し、患者に埋め込むことができる。
【0069】
試験方法
[0072]核酸(例えば、mRNA)の放出は、インビトロ方法を使用して決定されうる。より詳細には、埋め込み型デバイス試料を150ミリリットルのアジ化ナトリウム水溶液に入れることができる。溶液を、UV保護された250mlのDuran(登録商標)フラスコ内に封入することができる。次いでフラスコを温度制御水浴の中に置き、100rpmで連続的に振とうすることができる。37℃の温度を、放出実験の全体を通して維持して、インビボ条件を模倣することができる。アジ化ナトリウム水溶液を完全に交換することによって、試料を定期的に取り出すことができる。溶液中の核酸の濃度は、Cary 1スプリットビーム器具を使用して、UV/Vis吸収分光分析法を介して決定することができる。このデータから、試料採取間隔毎に放出された核酸の量(1時間あたりのマイクログラム)を計算し、経時的に(時間で)プロットすることができる。更に、核酸の累積放出率も、それぞれの試料採取間隔で放出された核酸の量を、初めに存在した核酸の総量で割り、次いでこの数値に100を掛けることによって百分率として計算する。次いで、この百分率を経時的に(時間で)プロットする。
【0070】
[0073]本発明のこれらおよび他の変更および変形は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当業者によって実践されうる。加えて、様々な実施形態の態様は、全体的にも部分的にも交換されうることが理解されるべきである。更に、当業者は、前述の記載は単なる例であり、本発明を制限することを意図せず、添付の特許請求の範囲に更に記載されていることを理解する。
【国際調査報告】