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  • 特表-血液凝固測定装置の品質管理配合物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-01
(54)【発明の名称】血液凝固測定装置の品質管理配合物
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/86 20060101AFI20240325BHJP
【FI】
G01N33/86
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560342
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(85)【翻訳文提出日】2023-11-06
(86)【国際出願番号】 US2022021687
(87)【国際公開番号】W WO2022212162
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】63/168,838
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594202615
【氏名又は名称】ヘモネティクス・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Haemonetics Corporation
【住所又は居所原語表記】125 Summer Street Boston MA 02110 UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】チアン,シャオホワ
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA10
2G045JA20
(57)【要約】
ヒトドナー由来の血液成分を必要としない、粘弾性分析試薬の有効性を試験するために使用される品質管理配合物、およびそうした配合物を調製するための方法が記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの粘弾性分析試薬の有効性を試験するための配合物であって、目標クエン酸加ウシ血漿濃度、目標ヒト組織因子濃度、および目標ヘパリン濃度を有する配合物を調製するための方法であって:
クエン酸加ウシ血漿希釈系列を調製し、このクエン酸加ウシ血漿希釈系列は少なくとも2つの構成員を有し、
クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員について第1の粘弾性特性を測定してクエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員について第1の値を取得し、この第1の粘弾性特性は目標値を有し、
クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員の第1の値から第1の線形回帰を計算し、そして
第1の線形回帰から第1の粘弾性特性目標値に対応する予測クエン酸加ウシ血漿濃度を外挿し、この予測クエン酸加ウシ血漿濃度が目標クエン酸加ウシ血漿濃度であること;
によって配合物についてのクエン酸加ウシ血漿の目標濃度を決定し:
ヒト組織因子希釈系列を調製し、このヒト組織因子希釈系列は少なくとも2つの構成員を有し、
ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員について第2の粘弾性特性を測定してヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員について第2の値を取得し、この第2の粘弾性特性は目標値を有し、
ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員の第2の値から第2の線形回帰を計算し、そして
この第2の線形回帰から第2の粘弾性特性目標値に対応する予測ヒト組織因子濃度を外挿し、この予測ヒト組織因子濃度が目標ヒト組織因子濃度であること;
によって配合物についてのヒト組織因子の目標濃度を決定し:
ヘパリン希釈系列を調製し、このヘパリン希釈系列は少なくとも2つの構成員を有し、
ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員について第3の粘弾性特性を測定してヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員について第3の値を取得し、この第3の粘弾性特性は目標値を有し、
ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員の第3の値から第3の線形回帰を計算し、そして
この第3の線形回帰から第3の粘弾性特性目標値に対応する予測ヘパリン濃度を外挿し、この予測ヘパリン濃度が目標ヘパリン濃度であること;
によって配合物についてのヘパリンの目標濃度を決定し:そして
配合物が目標クエン酸加ウシ血漿濃度のクエン酸加ウシ血漿、目標ヒト組織因子濃度のヒト組織因子、および目標ヘパリン濃度のヘパリンを含むようにして、クエン酸加ウシ血漿、ヒト組織因子、およびヘパリンを一緒に組み合わせることによって配合物を調製することを含む、方法。
【請求項2】
請求項1による配合物の調製方法であって、
手順(a)において、
クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員はクエン酸加ウシ血漿濃度を有し、クエン酸加ウシ血漿希釈系列のいずれか1つの構成員におけるクエン酸加ウシ血漿の濃度はクエン酸加ウシ血漿希釈系列の他のいずれかの構成員におけるクエン酸加ウシ血漿の濃度と異なり、そして
クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員はヒト組織因子濃度を有し、クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員のヒト組織因子濃度は同じであり;
手順(b)において、
ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員はヒト組織因子濃度を有し、ヒト組織因子希釈系列のいずれか1つの構成員におけるヒト組織因子の濃度はヒト組織因子希釈系列の他のいずれかの構成員におけるヒト組織因子濃度と異なり、
ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員はクエン酸加ウシ血漿濃度を有し、ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員のクエン酸加ウシ血漿濃度は目標クエン酸加ウシ血漿濃度であり、そして
ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員はヘパリン濃度を有し、ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員のヘパリン濃度は同じであり;そして
手順(c)において、
ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員はヘパリン濃度を有し、ヘパリン希釈系列のいずれか1つの構成員におけるヘパリンの濃度はヘパリン希釈系列の他のいずれかの構成員におけるヘパリンの濃度と異なり、
ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員はクエン酸加ウシ血漿濃度を有し、ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員のクエン酸加ウシ血漿濃度は目標クエン酸加ウシ血漿濃度であり、そして
ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員はヒト組織因子濃度を有し、ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員のヒト組織因子濃度は目標ヒト組織因子濃度である。
【請求項3】
請求項1による配合物の調製方法であって、
手順(a)において、
クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員はクエン酸加ウシ血漿濃度を有し、クエン酸加ウシ血漿希釈系列のいずれか1つの構成員におけるクエン酸加ウシ血漿の濃度はクエン酸加ウシ血漿希釈系列の他のいずれかの構成員におけるクエン酸加ウシ血漿の濃度と異なり、そして
クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員はヒト組織因子濃度を有し、クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員のヒト組織因子濃度は同じであり;
手順(c)において、
ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員はヘパリン濃度を有し、ヘパリン希釈系列のいずれか1つの構成員におけるヘパリンの濃度はヘパリン希釈系列の他のいずれかの構成員におけるヘパリンの濃度と異なり、
ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員はクエン酸加ウシ血漿濃度を有し、ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員のクエン酸加ウシ血漿濃度は目標クエン酸加ウシ血漿濃度であり、そして
ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員はヒト組織因子濃度を有し、ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員のヒト組織因子濃度は同じであり;そして
手順(b)において、
ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員はヒト組織因子濃度を有し、ヒト組織因子希釈系列のいずれか1つの構成員におけるヒト組織因子の濃度はヒト組織因子希釈系列の他のいずれかの構成員におけるヒト組織因子濃度と異なり、
ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員はクエン酸加ウシ血漿濃度を有し、ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員のクエン酸加ウシ血漿濃度は目標クエン酸加ウシ血漿濃度であり、そして
ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員はヘパリン濃度を有し、ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員のヘパリン濃度は目標ヘパリン濃度である。
【請求項4】
少なくとも1つの粘弾性分析試薬の有効性を試験するための配合物であって、クエン酸加ウシ血漿の目標濃度、ヒト組織因子の目標濃度、およびヘパリンの目標濃度を有する配合物を調製するための方法であって:
クエン酸加ウシ血漿希釈物について第1の粘弾性特性を測定してクエン酸加ウシ血漿希釈物について第1の値を取得し、この第1の粘弾性特性は目標値を有し、そして
第1の値に基づき第1の粘弾性特性目標値に対応して予測クエン酸加ウシ血漿濃度を決定し、予測クエン酸加ウシ血漿濃度は目標クエン酸加ウシ血漿濃度であること;
によって配合物についてのクエン酸加ウシ血漿の目標濃度を決定し:
ヒト組織因子希釈物について第2の粘弾性特性を測定してヒト組織因子希釈物について第2の値を取得し、この第2の粘弾性特性は目標値を有し、そして
第2の値に基づき第2の粘弾性特性目標値に対応して予測ヒト組織因子濃度を決定し、予測ヒト組織因子濃度は目標ヒト組織因子濃度であること;
によって配合物についてのヒト組織因子の目標濃度を決定し:
ヘパリン希釈物について第3の粘弾性特性を測定してヘパリン希釈物について第3値を取得し、この第3の粘弾性特性は目標値を有し、そして
第3の値に基づき第3の粘弾性特性目標値に対応して予測ヘパリン濃度を決定し、予測ヘパリン濃度は目標ヘパリン濃度であること;
によって配合物についてのヘパリンの目標濃度を決定し:そして
配合物が目標クエン酸加ウシ血漿濃度のクエン酸加ウシ血漿、目標ヒト組織因子濃度のヒト組織因子、および目標ヘパリン濃度のヘパリンを含むようにして、クエン酸加ウシ血漿、ヒト組織因子、およびヘパリンを一緒に組み合わせることによって配合物を調製することを含む、方法。
【請求項5】
少なくとも1つの粘弾性分析試薬の有効性を試験するための配合物であって、目標クエン酸加ウシ血漿濃度、目標ヒト組織因子濃度、および目標ヘパリン濃度を有する配合物を調製するための方法であって:
クエン酸加ウシ血漿希釈系列を調製し、クエン酸加ウシ血漿希釈系列は少なくとも2つの構成員を有し、
クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員について第1の粘弾性特性を測定してクエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員について第1の値を取得し、この第1の粘弾性特性は目標値を有し、
クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員の第1の値から第1の線形回帰を計算し、そして
第1の線形回帰から第1の粘弾性特性目標値に対応する予測クエン酸加ウシ血漿濃度を外挿し、予測クエン酸加ウシ血漿濃度は目標クエン酸加ウシ血漿濃度であること;
によって配合物についての目標クエン酸加ウシ血漿濃度を決定し:
ヒト組織因子希釈物セットを調製し、ヒト組織因子希釈物セットは少なくとも2つのヘパリン希釈系列を有し、それぞれのヘパリン希釈系列は少なくとも2つの構成員を有し、ここでそれぞれのヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員はヒト組織因子濃度およびヘパリン濃度を有し、
それぞれのヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員について第2の粘弾性特性を測定してそれぞれのヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員について第2の値を取得し、この第2の粘弾性特性は目標値を有し、
ヒト組織因子希釈物セットの他の構成員よりも第2の粘弾性特性目標値に近い測定された第2の粘弾性特性を有するヒト組織因子希釈物セットからの選択構成員を識別し、選択構成員のヒト組織因子濃度が目標ヒト組織因子濃度であり、そして選択構成員のヘパリン濃度が目標ヘパリン濃度であること;
によって配合物についての目標ヒト組織因子濃度および目標ヘパリン濃度を決定し:そして
配合物が目標クエン酸加ウシ血漿濃度のクエン酸加ウシ血漿、目標ヒト組織因子濃度のヒト組織因子、および目標ヘパリン濃度のヘパリンを含むようにして、クエン酸加ウシ血漿、ヒト組織因子、およびヘパリンを一緒に組み合わせることによって配合物を調製することを含む、方法。
【請求項6】
請求項5による配合物の調製方法であって、
手順(a)において、
クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員はクエン酸加ウシ血漿濃度を有し、クエン酸加ウシ血漿希釈系列のいずれか1つの構成員におけるクエン酸加ウシ血漿の濃度はクエン酸加ウシ血漿希釈系列の他のいずれかの構成員におけるクエン酸加ウシ血漿の濃度と異なり、そして
クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員はヒト組織因子濃度を有し、クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員のヒト組織因子濃度は同じであり;そして
手順(b)において、
ヘパリン希釈物のそれぞれの系列のそれぞれの構成員はクエン酸加ウシ血漿濃度を有し、それぞれのヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員のクエン酸加ウシ血漿濃度は目標クエン酸加ウシ血漿濃度であり、
ヘパリン希釈系列のいずれか1つにおけるヒト組織因子の濃度は他のいずれかのヘパリン希釈系列におけるヒト組織因子の濃度と異なり、
ヘパリン希釈系列のいずれか1つのすべての構成員のヒト組織因子の濃度は同じであり、そして
いずれか1つのヘパリン希釈系列のいずれか1つの構成員におけるヘパリンの濃度は、同じヘパリン希釈系列の他のいずれかの構成員におけるヘパリンの濃度と異なる。
【請求項7】
第1の粘弾性特性は粘弾性分析用デバイスを使用して測定される、先行する請求項のいずれか1の方法。
【請求項8】
第2の粘弾性特性は粘弾性分析用デバイスを使用して測定される、先行する請求項のいずれか1の方法。
【請求項9】
第3の粘弾性特性は粘弾性分析用デバイスを使用して測定される、先行する請求項のいずれか1の方法。
【請求項10】
粘弾性分析用デバイスはマイクロ流体カートリッジである、先行する請求項のいずれか1の方法。
【請求項11】
第1の粘弾性特性はMA値である、先行する請求項のいずれか1の方法。
【請求項12】
第1の粘弾性特性目標値は約63である、請求項11の方法。
【請求項13】
第2の粘弾性特性はR値である、先行する請求項のいずれか1の方法。
【請求項14】
第2の粘弾性特性目標値は約6である、請求項13の方法。
【請求項15】
第3の粘弾性特性はR値である、先行する請求項のいずれか1の方法。
【請求項16】
第3の粘弾性特性目標値は約6である、請求項15の方法。
【請求項17】
手順(b)および手順(c)は同時に行われる、請求項1および4のいずれかの方法。
【請求項18】
少なくとも1つの粘弾性分析試薬の有効性を試験するための配合物であって:
60~90%のクエン酸加ウシ血漿、
0.05~0.20%のヒト組織因子、および
0.05~0.30U/mlのヘパリン
を含む配合物。
【請求項19】
さらに安定剤を含む、請求項18の配合物。
【請求項20】
安定剤はグリシン、HEPES緩衝液、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項19の配合物。
【請求項21】
さらに防腐剤を含む、請求項18から20のいずれか1の配合物。
【請求項22】
防腐剤はアジ化ナトリウムである、請求項21の配合物。
【請求項23】
配合物は約7.3から約7.9のpHを有する、請求項18から22のいずれか1の配合物。
【請求項24】
配合物は約6.4g/dLより大きい合計タンパク質含有量を有する、請求項18から23のいずれか1の配合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
本出願は2021年3月31日に出願された米国仮出願第63/168,838号の優先権を主張し、その開示はすべて参照によって本願に取り入れられる。
【0002】
本発明は、粘弾性分析試薬の有効性を試験するために使用される品質管理配合物およびそれらの配合物を調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
粘弾性分析は、多種多様な医療状況において、患者の血液サンプルの評価を行うについて非常に重要である。したがって、粘弾性分析に使用される試薬は、例えば病院や臨床検査室で使用された場合に正確な結果をもたらすことが必要不可欠である。こうした試薬が正確で信頼性のある結果をもたらすことを確実にするためには、試薬がエンドユーザーに届く前に、試薬の品質管理試験を行うことが重要である。
【0004】
粘弾性分析試薬の品質管理試験を行うための現在の配合物は、ヒトドナー、ヒト血液、ヒト血漿、またはヒト血液から得られた成分、例えばヒト赤血球を含む、ヒトドナーを必要とする。ヒトドナー由来の血液成分を有する品質管理配合物の使用は、相対的にコストがかかり、またドナーに対して感染リスクをもたらす。
【0005】
したがって、ヒトドナー由来の血液成分を含有しない、粘弾性分析試薬を試験するための信頼性のある品質管理配合物に対するニーズが存在する。
【発明の概要】
【0006】
本発明の1つの実施形態によれば、少なくとも1つの粘弾性分析試薬の有効性を試験するための配合物を調製するための方法が提供され、この配合物は目標クエン酸加ウシ血漿濃度、目標ヒト組織因子濃度、および目標ヘパリン濃度を有する。この方法は、a)クエン酸加ウシ血漿希釈系列を調製することによって、配合物についてのクエン酸加ウシ血漿の目標濃度を決定し、このクエン酸加ウシ血漿希釈系列は少なくとも2つの構成員を有し;クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員について第1の粘弾性特性を測定してクエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員について第1の値を取得し、上記第1の粘弾性特性は目標値を有し;クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員の第1の値から第1の線形回帰を計算し;そして第1の線形回帰から第1の粘弾性特性目標値に対応する予測クエン酸加ウシ血漿濃度を外挿することを含み、この予測クエン酸加ウシ血漿濃度が目標クエン酸加ウシ血漿濃度である。この方法はさらに、b)ヒト組織因子希釈系列を調製することによって配合物についてのヒト組織因子の目標濃度を決定し、ヒト組織因子希釈系列は少なくとも2つの構成員を有し;ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員について第2の粘弾性特性を測定してヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員について第2の値を取得し、上記第2の粘弾性特性は目標値を有し;ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員の第2の値から第2の線形回帰を計算し;そして第2の線形回帰から第2の粘弾性特性目標値に対応する予測ヒト組織因子濃度を外挿することを含み、予測ヒト組織因子濃度が目標ヒト組織因子濃度である。この方法はまた、c)ヘパリン希釈系列を調製することによって配合物についてのヘパリンの目標濃度を決定し、ヘパリン希釈系列は少なくとも2つの構成員を有し、ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員について第3の粘弾性特性を測定してヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員について第3の値を取得し、上記第3の粘弾性特性は目標値を有し、ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員の第3の値から第3の線形回帰を計算し;そして第3の線形回帰から第3の粘弾性特性目標値に対応する予測ヘパリン濃度を外挿することを含み、予測ヘパリン濃度が目標ヘパリン濃度である。この方法はさらに、配合物が目標クエン酸加ウシ血漿濃度のクエン酸加ウシ血漿、目標ヒト組織因子濃度のヒト組織因子、および目標ヘパリン濃度のヘパリンを含むようにして、クエン酸加ウシ血漿、ヒト組織因子、およびヘパリンを一緒に組み合わせることによって配合物を調製することを含んでいる。
【0007】
幾つかの実施形態において、手順b)およびc)は同時に行ってよい。
【0008】
幾つかの実施形態においては、手順(a)において、クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員はクエン酸加ウシ血漿濃度を有し、クエン酸加ウシ血漿希釈系列のいずれか1つの構成員におけるクエン酸加ウシ血漿の濃度はクエン酸加ウシ血漿希釈系列の他のいずれかの構成員におけるクエン酸加ウシ血漿の濃度と異なり、またクエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員はヒト組織因子濃度を有し、クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員のヒト組織因子濃度は同じである。手順(b)において、ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員はヒト組織因子濃度を有し、ヒト組織因子希釈系列のいずれか1つの構成員におけるヒト組織因子の濃度はヒト組織因子希釈系列の他のいずれかの構成員におけるヒト組織因子濃度と異なり、ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員はクエン酸加ウシ血漿濃度を有し、ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員のクエン酸加ウシ血漿濃度は目標クエン酸加ウシ血漿濃度であり、またヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員はヘパリン濃度を有し、ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員のヘパリン濃度は同じである。手順(c)において、ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員はヘパリン濃度を有し、ヘパリン希釈系列のいずれか1つの構成員におけるヘパリンの濃度はヘパリン希釈系列の他のいずれかの構成員におけるヘパリンの濃度と異なり、ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員はクエン酸加ウシ血漿濃度を有し、ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員のクエン酸加ウシ血漿濃度は目標クエン酸加ウシ血漿濃度であり、またヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員はヒト組織因子濃度を有し、ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員のヒト組織因子濃度は目標ヒト組織因子濃度である。
【0009】
他の実施形態においては、手順(a)において、クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員はクエン酸加ウシ血漿濃度を有し、クエン酸加ウシ血漿希釈系列のいずれか1つの構成員におけるクエン酸加ウシ血漿の濃度はクエン酸加ウシ血漿希釈系列の他のいずれかの構成員におけるクエン酸加ウシ血漿の濃度と異なり、そしてクエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員はヒト組織因子濃度を有し、クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員のヒト組織因子濃度は同じである。手順(c)において、ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員はヘパリン濃度を有し、ヘパリン希釈系列のいずれか1つの構成員におけるヘパリンの濃度はヘパリン希釈系列の他のいずれかの構成員におけるヘパリンの濃度と異なり、ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員はクエン酸加ウシ血漿濃度を有し、ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員のクエン酸加ウシ血漿濃度は目標クエン酸加ウシ血漿濃度であり、またヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員はヒト組織因子濃度を有し、ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員のヒト組織因子濃度は同じである。手順(b)において、ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員はヒト組織因子濃度を有し、ヒト組織因子希釈系列のいずれか1つの構成員におけるヒト組織因子の濃度はヒト組織因子希釈系列の他のいずれかの構成員におけるヒト組織因子濃度と異なり、ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員はクエン酸加ウシ血漿濃度を有し、ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員のクエン酸加ウシ血漿濃度は目標クエン酸加ウシ血漿濃度であり、またヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員はヘパリン濃度を有し、ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員のヘパリン濃度は目標ヘパリン濃度である。
【0010】
本発明の別の実施形態によれば、少なくとも1つの粘弾性分析試薬の有効性を試験するための配合物を調製するための方法が提供され、この配合物はクエン酸加ウシ血漿の目標濃度、ヒト組織因子の目標濃度、およびヘパリンの目標濃度を有する。この方法は、a)クエン酸加ウシ血漿希釈物について第1の粘弾性特性を測定してクエン酸加ウシ血漿希釈物について第1の値を取得し、上記第1の粘弾性特性は目標値を有し、そして第1の値に基づき第1の粘弾性特性目標値に対応して予測クエン酸加ウシ血漿濃度を決定し、予測クエン酸加ウシ血漿濃度が目標クエン酸加ウシ血漿濃度であることによって、配合物についてのクエン酸加ウシ血漿の目標濃度を決定し;またb)ヒト組織因子希釈物について第2の粘弾性特性を測定してヒト組織因子希釈物について第2の値を取得し、上記第2の粘弾性特性は目標値を有し、そして第2の値に基づき第2の粘弾性特性目標値に対応して予測ヒト組織因子濃度を決定し、予測ヒト組織因子濃度が目標ヒト組織因子濃度であることによって、配合物についてのヒト組織因子の目標濃度を決定し;c)ヘパリン希釈物について第3の粘弾性特性を測定してヘパリン希釈物について第3値を取得し、上記第3の粘弾性特性は目標値を有し、そして第3の値に基づき第3の粘弾性特性目標値に対応して予測ヘパリン濃度を決定し、予測ヘパリン濃度が目標ヘパリン濃度であることによって、配合物についてヘパリンの目標濃度を決定し;そしてd)配合物が目標クエン酸加ウシ血漿濃度のクエン酸加ウシ血漿、目標ヒト組織因子濃度のヒト組織因子、目標ヘパリン濃度のヘパリンを含むようにして、クエン酸加ウシ血漿、ヒト組織因子、およびヘパリンを一緒に組み合わせることによって配合物を調製することを含んでいる。
【0011】
幾つかの実施形態において、手順b)およびc)は同時に行ってよい。
【0012】
本発明の別の実施形態によれば、少なくとも1つの粘弾性分析試薬の有効性を試験するための配合物を調製するための方法が提供され、この配合物は目標クエン酸加ウシ血漿濃度、目標ヒト組織因子濃度、および目標ヘパリン濃度を有する。この方法は、a)クエン酸加ウシ血漿希釈系列を調製し、このクエン酸加ウシ血漿希釈系列は少なくとも2つの構成員を有し、クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員について第1の粘弾性特性を測定してクエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員について第1の値を取得し、上記第1の粘弾性特性は目標値を有し、クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員の第1の値から第1の線形回帰を計算し、そして第1の線形回帰から第1の粘弾性特性目標値に対応する予測クエン酸加ウシ血漿濃度を外挿することを含み、この予測クエン酸加ウシ血漿濃度が目標クエン酸加ウシ血漿濃度であることによって、配合物について目標クエン酸加ウシ血漿濃度を決定し;b)ヒト組織因子希釈物セットを調製することによって配合物について目標ヒト組織因子濃度および目標ヘパリン濃度を決定し、ヒト組織因子希釈物セットは少なくとも2つのヘパリン希釈系列を有し、それぞれのヘパリン希釈系列は少なくとも2つの構成員を有し、ここでそれぞれのヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員はヒト組織因子濃度およびヘパリン濃度を有し、それぞれのヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員について第2の粘弾性特性を測定してそれぞれのヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員について第2の値を取得し、上記第2の粘弾性特性は目標値を有し、ヒト組織因子希釈物セットの他の構成員よりも第2の粘弾性特性目標値に近い測定された第2の粘弾性特性を有するヒト組織因子希釈物セットからの選択構成員を識別し、選択構成員のヒト組織因子濃度が目標ヒト組織因子濃度であり、また選択構成員のヘパリン濃度が目標ヘパリン濃度であり;そしてc)配合物が目標クエン酸加ウシ血漿濃度のクエン酸加ウシ血漿、目標ヒト組織因子濃度のヒト組織因子、および目標ヘパリン濃度のヘパリンを含むようにして、クエン酸加ウシ血漿、ヒト組織因子、およびヘパリンを一緒に組み合わせることによって配合物を調製することを含んでいる。
【0013】
幾つかの実施形態においては、手順(a)において、クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員はクエン酸加ウシ血漿濃度を有し、クエン酸加ウシ血漿希釈系列のいずれか1つの構成員におけるクエン酸加ウシ血漿の濃度はクエン酸加ウシ血漿希釈系列の他のいずれかの構成員におけるクエン酸加ウシ血漿の濃度と異なり、そしてクエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員はヒト組織因子濃度を有し、クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員のヒト組織因子濃度は同じである。手順(b)において、それぞれのヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員はクエン酸加ウシ血漿濃度を有し、それぞれのヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員のクエン酸加ウシ血漿濃度は目標クエン酸加ウシ血漿濃度であり、ヘパリン希釈系列のいずれか1つにおけるヒト組織因子の濃度は他のいずれかのヘパリン希釈系列におけるヒト組織因子の濃度と異なり、ヘパリン希釈系列のいずれか1つのすべての構成員のヒト組織因子の濃度は同じであり、そしていずれか1つのヘパリン希釈系列のいずれか1つの構成員におけるヘパリンの濃度は、同じヘパリン希釈系列の他のいずれかの構成員におけるヘパリンの濃度と異なる。
【0014】
第1、第2、および/または第3の粘弾性特性は、粘弾性分析のためのデバイスを使用して測定してよい。粘弾性分析のためのデバイスは、マイクロ流体カートリッジであってよい。
【0015】
第1の粘弾性特性はMA値であってよく、また第1の粘弾性特性目標値は約63であってよい。第2の粘弾性特性はR値であってよく、また第2の粘弾性特性目標値は約6であってよい。第3の粘弾性特性はR値であってよく、また第3の粘弾性特性目標値は約6であってよい。
【0016】
本発明の1つの実施形態によれば、配合物は少なくとも1つの粘弾性分析試薬の有効性を試験するためであり、この配合物は60~90%のクエン酸加ウシ血漿、0.05~0.20%のヒト組織因子、および0.05~0.30U/mlのヘパリンを含む。
【0017】
幾つかの実施形態において、配合物は安定剤を含んでいてよい。安定剤はグリシンまたはHEPES緩衝液であってよい。配合物は防腐剤を含んでいてよい。防腐剤はアジ化ナトリウムであってよい。配合物のpHは約7.3から約7.9であってよい。配合物のタンパク質の合計含有量は約6.4g/dLを超えてよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
上記の実施形態の特徴は、添付図面を参照して以下の詳細な説明を参照することによって、より容易に理解される。添付図面において:
【0019】
図1は、本発明の実施形態による、模擬劣化CaCl条件の下で、ヒトドナー血液を使用して得られたTEGグローバル血液凝固カートリッジの試験結果を示している。
【0020】
図2は、本発明の実施形態による、模擬劣化CaCl条件の下で、本願に記載の品質管理配合物を使用して得られたTEGグローバル血液凝固カートリッジの試験結果を示している。
【0021】
図3は、本発明の実施形態による、模擬劣化ヘパリナーゼ条件の下で、本願に記載の品質管理配合物を使用して得られたTEGグローバル血液凝固カートリッジの試験結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義。この詳細な説明および添付の特許請求の範囲において使用するところでは、文脈が他のことを示すのでない限り、以下の用語はここに示す意味を有している:
【0023】
数値に関して「約」は、示された数値の±10%を意味する。
【0024】
「粘弾性分析」は、弾性固体(例えば、フィブリン固体)および流体の特性を測定するための、何らかの分析方法を意味している。換言すれば、粘弾性分析は、血液、血漿、または血液サンプルのような粘稠な流体の特性を研究することを可能にする。幾つかの実施形態において、粘弾性分析は、血液凝固をもたらすインビボ状態を模倣した条件の下で行われる。例えばこの条件は、体温を模倣した温度(例えば、37℃の温度)を含んでいてよい。この条件はまた、血管中で見出される流量を模倣した流量における血餅の形成および溶解を含んでいてよい。粘弾性分析は、限定するものではないが、トロンボエラストグラフィ(TEG)、トロンボエラストメトリー(TEM)、およびマイクロ流体カートリッジ、例えばTEG6s血液凝固分析システム(マサチューセッツ州ボストンのヘモネティクス社)で使用するのに適したTEGグローバル血液凝固アッセイカートリッジを使用して行われるもののような、粘弾性アッセイおよび凝固アッセイを包含している。
【0025】
「粘弾性特性」、「パラメータ」、「凝固測定」およびその類語は、粘弾性分析、例えば血餅形成の測定を通じて得られる測定を意味していてよい。この測定は、限定するものではないが、フィブリンが最初に形成される時点、または血餅が所定レベルの強度を達成する時点を含む、血餅が形成される間の任意の時点で行うことができる。
【0026】
粘弾性特性またはパラメータの1つの非限定的な例は初期血餅形成時間(「R」)であり、これはフィブリンが最初に形成される時間である。粘弾性特性またはパラメータの別の非限定的な例は「MA」(mm単位の最大振幅)であり、これはフィブリンと血小板の結合の最大動的性質の直接的な関数であり、フィブリン-血小板血餅の最終的な強度を表している。試験された血液成分が有する血小板の機能が低下したものである場合、MA値はフィブリンのみに基づく血餅の強度を表す。粘弾性特性は、被験者から直接に得られた血液成分について、カオリンのような凝固活性化剤で処理された血液成分について、またはカルシウムの添加によって適宜補充されたクエン酸塩のような凝固阻止剤で処理された血液成分について測定することができる。
【0027】
「粘弾性分析用デバイス」およびその類語は、弾性固体および流体の粘弾性特性を測定するために使用可能な装置またはデバイス、例えば血液または血液成分が血餅を形成する能力を測定するのに使用されるデバイスを意味する。TEG6s血液凝固分析システム(マサチューセッツ州ボストンのヘモネティクス社)について使用するのに適しているTEGグローバル血液凝固アッセイカートリッジのようなマイクロ流体カートリッジは、粘弾性分析のためのデバイスの非限定的な例である。
【0028】
「粘弾性分析試薬」およびその類語は、試験サンプルに対して粘弾性分析を実行するために用いられる、血液または血漿試験サンプル以外の、任意の化合物を意味している。粘弾性分析試薬の非限定的な例には、塩化カルシウム(CaCl)、並びにヘパリナーゼのような生体分子が含まれる。
【0029】
「目標値」およびその類語は、本願で使用するところでは、特定の凝固アッセイについての粘弾性特性またはパラメータのある値(または値の範囲)を意味しており、それは検知しうる程には劣化しておらずまたは有効性を失っていない粘弾性分析試薬を使用して、その特定のアッセイが健康な被験者からの血液成分に対して行われた場合に好ましい値である。
【0030】
「目標濃度」およびその類語は、本願で使用するところでは、品質管理配合物の成分のある濃度を意味しており、それは品質管理配合物中にその濃度で存在する場合に、検知しうる程には劣化しておらずまたは有効性を失っていない粘弾性分析試薬で特定のアッセイが行われた場合に、そのアッセイについて目標値を達成することが決定または予測される濃度である。
【0031】
ヒトの血液の粘弾性分析のために使用される試薬の品質管理は、そうした試薬を含有しているデバイスの品質管理を含めて、エンドユーザーが正確な粘弾性分析結果を得ることを確実にするために非常に重要である。粘弾性凝固アッセイは、塩化カルシウム、並びに種々の生体分子、例えばヘパリナーゼといった試薬を用いる。これらの試薬は経時的に劣化しうるものであり、それらを使用して得られる結果は不正確で信頼できないものになる。
【0032】
これらの試薬および試薬を含有するデバイスを試験するために使用される現在の品質管理配合物はヒトドナーを必要とし、またヒト血液、ヒト血漿、またはヒト血液から得られた成分、例えばヒト赤血球を含有している。ヒトドナー由来の血液成分を含有する品質管理配合物の使用は、相対的にコストがかかり、またドナーに対して感染リスクをもたらす。さらにまた、ヒト由来の血液成分の使用は大量生産には不便である。
【0033】
粘弾性分析試薬の有効性を試験するのに使用される、本願に記載される品質管理配合物は、製造のためにヒトドナーを必要としない。幾つかの実施形態において、この品質管理配合物は、クエン酸加ウシ血漿、組み換えヒト組織因子、およびヘパリン(好ましくは低分子量ヘパリン)を含有する。幾つかの実施形態において、この品質管理配合物はさらに、緩衝液、安定剤、および防腐剤からなる群より選択された、少なくとも1つの追加成分を含む。本願に記載の品質管理配合物の実施形態の使用に関する指針は付録Aに記載されており、これは本願に添付されておりその全体は参照によって本願に取り入れられる。
【0034】
本願に記載の粘弾性分析方法およびアッセイは、TEG6s血液凝固分析装置について使用するのに適した、試薬含有TEGグローバル血液凝固アッセイカートリッジを利用する。しかしながら、本技術の当業者には理解されるように、本願に記載された方法および配合物はまた、異なる粘弾性分析方法および凝固アッセイを使用して、また異なる粘弾性分析デバイスを使用して適用されてもよい。
【0035】
TEGグローバル血液凝固アッセイカートリッジ(「TEGカートリッジ」)は、凝固因子、血小板およびフィブリノゲン、並びにフィブリノシスの機能測定を示す、4つの凝固アッセイを提供するクエン酸添加された多チャンネルのマイクロ流体カートリッジである。これらの4つのアッセイに含まれるものは、(i)カオリンアッセイ(「CK」)、これは止血特性、出血リスクおよび血栓形成リスクを識別する内因系活性化アッセイである;(ii)カオリンおよびヘパリナーゼアッセイ(「CKH」)、これは試験サンプルにおけるヘパリンの影響を排除し、またCKと併用することで、系内のヘパリンまたはヘパリノイドの存在を評価する;(iii)カオリンおよび組織因子の両方を取り入れたRAPIDTEGTMアッセイ(「CRT」)、これは内因系経路および外因系経路で活性化されたアッセイであり、患者の血液凝固能をより迅速に評価することができる;および(iv)機能性フィブリノゲンアッセイ(「CFF」)、外因系経路で活性加されたアッセイであり、GPIIb/IIIa血小板インヒビターを使用して凝固の強度に対するフィブリンの寄与を単離し、またCKと共に使用することで全体の凝固の強度に対する血小板とフィブリノゲンの相対的な寄与を評価する。
【0036】
幾つかの実施形態においては、本発明の品質管理配合物が、CKのR時間およびCKHのR時間の両方の延伸という結果をもたらすことは、TEGカートリッジに対するCaClの量/活性が、そのカートリッジ、および同一ロットの他のカートリッジがもはや信頼できる結果を生ずることができない程に低下し、したがって患者のサンプルを試験するために使用できなくなったことを示す。
【0037】
幾つかの実施形態においては、ヘパリンが品質管理配合物に含められて、CKのR値およびCKHのR値を離れさせる。CKHのR値が増大して、CKのR値とより近く一致するようになった場合、そのことはカートリッジに対するヘパリナーゼの量/活性が、そのカートリッジ、および同一ロットの他のカートリッジがもはや信頼できる結果を生ずることができない程に低下し、したがって患者のサンプルを試験するために使用できなくなったことを示す。
【0038】
幾つかの実施形態においては、少なくとも1つの粘弾性分析試薬の有効性を試験するために、クエン酸加ウシ血漿の目標濃度、ヒト組織因子の目標濃度、およびヘパリンの目標濃度を有する品質管理配合物を調製するための方法が提供される。
【0039】
幾つかの実施形態においては、この方法は、目標値を有する第1の粘弾性特性をクエン酸加ウシ血漿希釈物について測定してクエン酸加ウシ血漿希釈物の第1の値を取得することによって、配合物についてのクエン酸加ウシ血漿の目標濃度を決定することを含む。この第1の値に基づいて予測クエン酸加ウシ血漿濃度が、第1の粘弾性特性目標値に対応して決定される。この予測クエン酸加ウシ血漿濃度が目標クエン酸加ウシ血漿濃度である。
【0040】
この方法はさらに、目標値を有する第2の粘弾性特性をヒト組織因子希釈物について測定してヒト組織因子希釈物の第2の値を取得することによって、配合物についてのヒト組織因子の目標濃度を決定することを含む。この第2の値に基づいて予測ヒト組織因子濃度が、第2の粘弾性特性目標値に対応して決定される。この予測ヒト組織因子濃度が目標ヒト組織因子濃度である。
【0041】
この方法はまた、目標値を有する第3の粘弾性特性をヘパリン希釈物について測定してヘパリン希釈物の第3の値を取得することによって、配合物についてのヘパリンの目標濃度を決定することを含む。この第3の値に基づいて予測ヘパリン濃度が、第3の粘弾性特性目標値に対応して決定される。この予測ヘパリン濃度が目標ヘパリン濃度である。
【0042】
配合物は次いで、配合物が目標クエン酸加ウシ血漿濃度のクエン酸加ウシ血漿、目標ヒト組織因子濃度のヒト組織因子、および目標ヘパリン濃度のヘパリンを含むように、クエン酸加ウシ血漿、ヒト組織因子、およびヘパリンを一緒に組み合わせることによって調製される。
【0043】
幾つかの実施形態において、この方法は、クエン酸加ウシ血漿希釈系列を調製することによって配合物についてのクエン酸加ウシ血漿の目標濃度を決定することを含み、クエン酸加ウシ血漿希釈系列は少なくとも2つの構成員を有する。目標値を有する第1の粘弾性特性が、クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員について測定され、クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員について第1の値が取得される。クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員についての第1の値から線形回帰が計算され、この線形回帰から第1の粘弾性特性の目標値に対応する予測クエン酸加ウシ血漿濃度が外挿される。この予測クエン酸加ウシ血漿濃度が目標クエン酸加ウシ血漿濃度である。
【0044】
この方法はさらに、ヒト組織因子希釈系列を調製することによって配合物についてのヒト組織因子の目標濃度を決定することを含み、ヒト組織因子希釈系列は少なくとも2つの構成員を有する。目標値を有する第2の粘弾性特性が、ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員について測定され、ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員について第2の値が取得される。ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員についての第2の値から線形回帰が計算され、この線形回帰から第2の粘弾性特性目標値の目標値に対応する予測ヒト組織因子濃度が外挿される。この予測ヒト組織因子濃度が目標ヒト組織因子濃度である。
【0045】
この方法はまた、ヘパリン希釈系列を調製することによって配合物についてのヘパリンの目標濃度を決定することを含み、ヘパリン希釈系列は少なくとも2つの構成員を有する。目標値を有する第3の粘弾性特性が、ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員について測定され、ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員について第3の値が取得される。ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員についての第3の値から線形回帰が計算され、この線形回帰から第3の粘弾性特性目標値の目標値に対応する予測ヘパリン濃度が外挿される。この予測ヘパリン濃度が目標ヘパリン濃度である。
【0046】
配合物は次いで、配合物が目標クエン酸加ウシ血漿濃度のクエン酸加ウシ血漿、目標ヒト組織因子濃度のヒト組織因子、および目標ヘパリン濃度のヘパリンを含むように、クエン酸加ウシ血漿、ヒト組織因子、およびヘパリンを一緒に組み合わせることによって調製される。
【0047】
クエン酸加ウシ血漿の目標濃度を決定する場合、クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員が有するクエン酸加ウシ血漿の濃度は異なっているが、クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員が有するヒト組織因子の濃度は一定である。
【0048】
ヒト組織因子の目標濃度を決定する場合、ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員が有するヒト組織因子の濃度は異なっているが、ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員は目標クエン酸加ウシ血漿濃度であるクエン酸加ウシ血漿濃度を有し、また一定濃度のヘパリンを有する。幾つかの実施形態において、ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員におけるヘパリンの一定濃度は目標ヘパリン濃度である。
【0049】
ヘパリンの目標濃度を決定する場合、ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員が有するヘパリンの濃度は異なっているが、ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員は目標クエン酸加ウシ血漿濃度であるクエン酸加ウシ血漿濃度を有し、また一定濃度のヒト組織因子を有する幾つかの実施形態において、ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員におけるヒト組織因子の一定濃度は目標ヒト組織因子濃度である。
【0050】
幾つかの実施形態において、ヒト組織因子の目標濃度およびヘパリンの目標濃度はヒト組織因子希釈系列を調製することによって一度に決定してよく、ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員は異なるヒト組織因子濃度を有し、また目標クエン酸加ウシ血漿濃度であるクエン酸加ウシ血漿濃度を有する。ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員は次いで、幾つかの部分構成員に分割されてよく、特定の構成員から誘導されたそれぞれの部分構成員は異なるヘパリン濃度を有する。
【0051】
第1の粘弾性特性、第2の粘弾性特性、および第3の粘弾性特性の1つまたはより多くは、粘弾性分析用デバイスを使用して測定されてよい。粘弾性分析用デバイスは、マイクロ流体カートリッジを含んでいてよい。
【0052】
幾つかの実施形態において、第1の粘弾性特性はMA値であり、また第1の粘弾性特性目標値は約63である。第1の粘弾性特性および第1の粘弾性目標値は、CK凝固アッセイから決定することができる。
【0053】
幾つかの実施形態において、第2の粘弾性特性および第3の粘弾性特性の少なくとも1つはR値であり、そして第2の粘弾性特性および第3の粘弾性特性の少なくとも1つの目標値は約6である。幾つかの実施形態において、第2の粘弾性特性および第3の粘弾性特性の少なくとも1つの目標値は約4である。第2の粘弾性特性および第3の粘弾性特性の1つまたはより多く、および第2の粘弾性目標値および第3の粘弾性目標値の1つまたはより多くは、CK凝固アッセイおよびCKH凝固アッセイから決定することができる。ヘパリンを含有する配合物をヘパリナーゼを利用しない凝固アッセイ(CKのような)を使用して評価する場合、粘弾性特性R値についての目標値は約6である。ヘパリンを含有する配合物をヘパリナーゼを利用する凝固アッセイ(CKHのような)を使用して評価する場合、粘弾性特性R値についての目標値は4である。ヘパリンを欠いている配合物を評価する場合、粘弾性特性R値についての目標値は約4である。
【0054】
幾つかの実施形態においては、少なくとも1つの粘弾性分析試薬の有効性を試験するための品質管理配合物が提供され、この配合物は60~90%のクエン酸加ウシ血漿、0.05~0.20%のヒト組織因子、および0.05~0.30U/mlのヘパリンを有する。
【0055】
品質管理配合物はさらに、技術分野において周知の安定剤、例えばグリシン、HEPES緩衝液、および技術分野で周知の他の緩衝液を含んでいてよい。
【0056】
品質管理配合物はさらに、技術分野において周知の1つまたはより多くの防腐剤、例えばアジ化ナトリウムを含んでいてよい。
【0057】
幾つかの実施形態において、品質管理配合物は約7.3から約7.9のpHを有する。配合物の合計タンパク質含有量は、好ましくは約6.4g/dLよりも大きい。
【実施例
【0058】
実施例1:品質管理配合物の調製
【0059】
クエン酸加ウシ血漿(BCP)(クエン酸ナトリウム3.8%)のロットからサンプル量を取り、触って温かい水槽内で解凍した。1M HEPESで緩衝した5mlの生理食塩水(HBS)を500mlのBCPに対して添加して、最終的に9.9mMのHEPES濃度を得た。得られた溶液は5分間にわたり混合した。
【0060】
次いで、BCPの濃度を変化させ、また組み換えヒト組織因子であるリコンビプラスチン2G(R2G)を一定濃度(0.05%)として、試験用配合物の系列を調製した。TEGグローバル血液凝固カートリッジを使用してそれぞれの配合物に対してTEG6s分析装置で粘弾性分析を行い、そのデータを以下の表1に示している。
【0061】
【表1】
【0062】
CKのMA値データの線形回帰に基づき、CKアッセイについての粘弾性特性(MA値)の目標値(63)に対応して、目標BCP濃度は83.6%と予測される。
【0063】
次いで、最終的なBCP濃度が目標BCP濃度(線形回帰に基づき~83.6%、上述)となるようにして、R2Gの希釈物(R2Gの25%R2G作業溶液を使用)およびLOVENOX登録商標(ヘパリン)希釈物(10U/mlのLOVENOX登録商標作業溶液を使用)の系列を調製した。これらの希釈物は、他の緩衝液および安定剤を含んでおり、表2に示されている。
【0064】
【表2】
【0065】
表2からのR2G/LOVENOX登録商標希釈物のそれぞれ1mlを個別のガラスバイアルに分注した。バイアルは≦-35℃で冷凍し、サンプルを凍結乾燥した。サンプルが凍結乾燥されたところで、凍結乾燥されたR2G/LOVENOX登録商標希釈物のそれぞれを蒸留脱イオン水で再構成した。
【0066】
再構成したR2G/LOVENOX登録商標希釈物のそれぞれについて、TEGグローバル血液凝固カートリッジを使用してTEG6s分析装置で粘弾性分析を行った。
【0067】
再構成したR2G/LOVENOX登録商標希釈物の粘弾性分析から、R2G濃度0.075%およびLOVENOX登録商標濃度0.100U/mlに対応する希釈物番号10が、公称CKアッセイR目標値である6.0に最も近い表3に示すCK R値の結果をもたらし、また同時に表4に示す許容範囲内に入る付加的な粘弾性分析結果を生ずることが決定された。
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
【0070】
以上に提示した結果に基づいて、~83.6%の目標BCP濃度、0.075%の目標R2G濃度、および0.100U/mlの目標LOVENOX登録商標濃度を有する品質管理配合物を選択して製造プロセスに進んだ。
【0071】
実施例2:品質管理配合物の使用
【0072】
本願に記載した品質管理配合物は、カートリッジ粘弾性分析試薬の劣化を検出するために使用することができる。図1および図2は、異なる模擬CaCl(必須成分)劣化レベルのTEGカートリッジを使用した、ヒトドナー血液サンプルと本願記載の品質管理配合物サンプルの応答の比較を示している。明らかに、品質管理配合物はCaClの劣化を50%で検出可能であり、そのレベルより上ではCKHチャンネルのR値時間は著しく延長され、またCKチャンネルでは凝固は生じない。
【0073】
品質管理配合物はまた、TEGカートリッジでのヘパリナーゼの劣化を検出することができ(図3参照)、これは模擬劣化レベルが90%を超える場合にCKHのR値が増大してCKのR値に合致することによって示されている。
【0074】
本発明の種々の実施形態は、この段落に続く段落において(そして出願末尾に提示された実際の請求よりも前に)列挙された潜在的請求項によって特徴付けられてよい。これらの潜在的請求項は、本願の発明の詳細な説明の一部を形成する。したがって、以下の潜在的請求項の特定事項は、本願または本願に基づく優先権が主張される任意の出願が関連する後の手続きにおいて、実際の請求項として提示されてよい。このような潜在的請求項を含むことは、実際の請求項が潜在的請求項の特定事項を包含しないことを意味するものと解釈してはならない。よって、これらの潜在的請求項を後の手続きにおいて提示しないという決定は、その特定事項を一般に提供したものと解釈されてはならない。
【0075】
限定なしに、特許請求され得る潜在的な特定事項(後で提示する実際の請求項との混同を避けるために文字「P」が前置されている)は以下を含んでいる:
P1.少なくとも1つの粘弾性分析試薬の有効性を試験するための配合物であって、目標クエン酸加ウシ血漿濃度、目標ヒト組織因子濃度、および目標ヘパリン濃度を有する配合物を調製するための方法であって:
クエン酸加ウシ血漿希釈系列を調製し、このクエン酸加ウシ血漿希釈系列は少なくとも2つの構成員を有し、
クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員について第1の粘弾性特性を測定してクエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員について第1の値を取得し、この第1の粘弾性特性は目標値を有し、
クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員の第1の値から第1の線形回帰を計算し、そして
第1の線形回帰から第1の粘弾性特性目標値に対応する予測クエン酸加ウシ血漿濃度を外挿し、この予測クエン酸加ウシ血漿濃度が目標クエン酸加ウシ血漿濃度であること;によって配合物についてのクエン酸加ウシ血漿の目標濃度を決定し:
ヒト組織因子希釈系列を調製し、このヒト組織因子希釈系列は少なくとも2つの構成員を有し、
ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員について第2の粘弾性特性を測定してヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員について第2の値を取得し、この第2の粘弾性特性は目標値を有し、
ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員の第2の値から第2の線形回帰を計算し、そして
この第2の線形回帰から第2の粘弾性特性目標値に対応する予測ヒト組織因子濃度を外挿し、この予測ヒト組織因子濃度が目標ヒト組織因子濃度であること;によって配合物についてのヒト組織因子の目標濃度を決定し:
ヘパリン希釈系列を調製し、このヘパリン希釈系列は少なくとも2つの構成員を有し、
ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員について第3の粘弾性特性を測定してヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員について第3の値を取得し、この第3の粘弾性特性は目標値を有し、
ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員の第3の値から第3の線形回帰を計算し、そして
この第3の線形回帰から第3の粘弾性特性目標値に対応する予測ヘパリン濃度を外挿し、この予測ヘパリン濃度が目標ヘパリン濃度であること;によって配合物についてのヘパリンの目標濃度を決定し:そして
配合物が目標クエン酸加ウシ血漿濃度のクエン酸加ウシ血漿、目標ヒト組織因子濃度のヒト組織因子、および目標ヘパリン濃度のヘパリンを含むようにして、クエン酸加ウシ血漿、ヒト組織因子、およびヘパリンを一緒に組み合わせることによって配合物を調整することを含む、方法。
P2.請求項P1による配合物の調製方法であって、
手順(a)において、
クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員はクエン酸加ウシ血漿濃度を有し、クエン酸加ウシ血漿希釈系列のいずれか1つの構成員におけるクエン酸加ウシ血漿の濃度はクエン酸加ウシ血漿希釈系列の他のいずれかの構成員におけるクエン酸加ウシ血漿の濃度と異なり、そして
クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員はヒト組織因子濃度を有し、クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員のヒト組織因子濃度は同じであり;
手順(b)において、
ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員はヒト組織因子濃度を有し、ヒト組織因子希釈系列のいずれか1つの構成員におけるヒト組織因子の濃度はヒト組織因子希釈系列の他のいずれかの構成員におけるヒト組織因子濃度と異なり、
ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員はクエン酸加ウシ血漿濃度を有し、ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員のクエン酸加ウシ血漿濃度は目標クエン酸加ウシ血漿濃度であり、そして
ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員はヘパリン濃度を有し、ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員のヘパリン濃度は同じであり;そして
手順(c)において、
ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員はヘパリン濃度を有し、ヘパリン希釈系列のいずれか1つの構成員におけるヘパリンの濃度はヘパリン希釈系列の他のいずれかの構成員におけるヘパリンの濃度と異なり、
ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員はクエン酸加ウシ血漿濃度を有し、ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員のクエン酸加ウシ血漿濃度は目標クエン酸加ウシ血漿濃度であり、そして
ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員はヒト組織因子濃度を有し、ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員のヒト組織因子濃度は目標ヒト組織因子濃度である、
P3.請求項P1による配合物の調製方法であって、
手順(a)において、
クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員はクエン酸加ウシ血漿濃度を有し、クエン酸加ウシ血漿希釈系列のいずれか1つの構成員におけるクエン酸加ウシ血漿の濃度はクエン酸加ウシ血漿希釈系列の他のいずれかの構成員におけるクエン酸加ウシ血漿の濃度と異なり、そして
クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員はヒト組織因子濃度を有し、クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員のヒト組織因子濃度は同じであり;
手順(c)において、
ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員はヘパリン濃度を有し、ヘパリン希釈系列のいずれか1つの構成員におけるヘパリンの濃度はヘパリン希釈系列の他のいずれかの構成員におけるヘパリンの濃度と異なり、
ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員はクエン酸加ウシ血漿濃度を有し、ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員のクエン酸加ウシ血漿濃度は目標クエン酸加ウシ血漿濃度であり、そして
ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員はヒト組織因子濃度を有し、ヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員のヒト組織因子濃度は同じであり;そして
手順(b)において、
ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員はヒト組織因子濃度を有し、ヒト組織因子希釈系列のいずれか1つの構成員におけるヒト組織因子の濃度はヒト組織因子希釈系列の他のいずれかの構成員におけるヒト組織因子濃度と異なり、
ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員はクエン酸加ウシ血漿濃度を有し、ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員のクエン酸加ウシ血漿濃度は目標クエン酸加ウシ血漿濃度であり、そして
ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員はヘパリン濃度を有し、ヒト組織因子希釈系列のそれぞれの構成員のヘパリン濃度は目標ヘパリン濃度である。
P4.少なくとも1つの粘弾性分析試薬の有効性を試験するための配合物であって、クエン酸加ウシ血漿の目標濃度、ヒト組織因子の目標濃度、およびヘパリンの目標濃度を有する配合物を調製するための方法であって:
クエン酸加ウシ血漿希釈物について第1の粘弾性特性を測定してクエン酸加ウシ血漿希釈物について第1の値を取得し、この第1の粘弾性特性は目標値を有し、そして
第1の値に基づき第1の粘弾性特性目標値に対応して予測クエン酸加ウシ血漿濃度を決定し、予測クエン酸加ウシ血漿濃度は目標クエン酸加ウシ血漿濃度であること;
によって配合物についてのクエン酸加ウシ血漿の目標濃度を決定し:
ヒト組織因子希釈物について第2の粘弾性特性を測定してヒト組織因子希釈物について第2の値を取得し、この第2の粘弾性特性は目標値を有し、そして
第2の値に基づき第2の粘弾性特性目標値に対応して予測ヒト組織因子濃度を決定し、予測ヒト組織因子濃度は目標ヒト組織因子濃度であること;
によって配合物についてのヒト組織因子の目標濃度を決定し:
ヘパリン希釈物について第3の粘弾性特性を測定してヘパリン希釈物について第3値を取得し、この第3の粘弾性特性は目標値を有し、そして
第3の値に基づき第3の粘弾性特性目標値に対応して予測ヘパリン濃度を決定し、予測ヘパリン濃度は目標ヘパリン濃度であること;
によって配合物についてのヘパリンの目標濃度を決定し:そして
配合物が目標クエン酸加ウシ血漿濃度のクエン酸加ウシ血漿、目標ヒト組織因子濃度のヒト組織因子、および目標ヘパリン濃度のヘパリンを含むようにして、クエン酸加ウシ血漿、ヒト組織因子、およびヘパリンを一緒に組み合わせることによって配合物を調製することを含む、方法。
P5.少なくとも1つの粘弾性分析試薬の有効性を試験するための配合物であって、目標クエン酸加ウシ血漿濃度、目標ヒト組織因子濃度、および目標ヘパリン濃度を有する配合物を調製するための方法であって:
クエン酸加ウシ血漿希釈系列を調製し、クエン酸加ウシ血漿希釈系列は少なくとも2つの構成員を有し、
クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員について第1の粘弾性特性を測定してクエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員について第1の値を取得し、この第1の粘弾性特性は目標値を有し、
クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員の第1の値から第1の線形回帰を計算し、そして
第1の線形回帰から第1の粘弾性特性目標値に対応する予測クエン酸加ウシ血漿濃度を外挿し、予測クエン酸加ウシ血漿濃度は目標クエン酸加ウシ血漿濃度であること;
によって配合物についての目標クエン酸加ウシ血漿濃度を決定し:
ヒト組織因子希釈物セットを調製し、ヒト組織因子希釈物セットは少なくとも2つのヘパリン希釈系列を有し、それぞれのヘパリン希釈系列は少なくとも2つの構成員を有し、ここでそれぞれのヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員はヒト組織因子濃度およびヘパリン濃度を有し、
それぞれのヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員について第2の粘弾性特性を測定してそれぞれのヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員について第2の値を取得し、この第2の粘弾性特性は目標値を有し、
ヒト組織因子希釈物セットの他の構成員よりも第2の粘弾性特性目標値に近い測定された第2の粘弾性特性を有するヒト組織因子希釈物セットからの選択構成員を識別し、選択構成員のヒト組織因子濃度が目標ヒト組織因子濃度であり、そして選択構成員のヘパリン濃度が目標ヘパリン濃度であること;
によって配合物についての目標ヒト組織因子濃度および目標ヘパリン濃度を決定し:そして
配合物が目標クエン酸加ウシ血漿濃度のクエン酸加ウシ血漿、目標ヒト組織因子濃度のヒト組織因子、および目標ヘパリン濃度のヘパリンを含むようにして、クエン酸加ウシ血漿、ヒト組織因子、およびヘパリンを一緒に組み合わせることによって配合物を調製することを含む、方法。
P6.請求項P5による配合物の調製方法であって、
手順(a)において、
クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員はクエン酸加ウシ血漿濃度を有し、クエン酸加ウシ血漿希釈系列のいずれか1つの構成員におけるクエン酸加ウシ血漿の濃度はクエン酸加ウシ血漿希釈系列の他のいずれかの構成員におけるクエン酸加ウシ血漿の濃度と異なり、そして
クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員はヒト組織因子濃度を有し、クエン酸加ウシ血漿希釈系列のそれぞれの構成員のヒト組織因子濃度は同じであり;そして
手順(b)において、
ヘパリン希釈物のそれぞれの系列のそれぞれの構成員はクエン酸加ウシ血漿濃度を有し、それぞれのヘパリン希釈系列のそれぞれの構成員のクエン酸加ウシ血漿濃度は目標クエン酸加ウシ血漿濃度であり、
ヘパリン希釈系列のいずれか1つにおけるヒト組織因子の濃度は他のいずれかのヘパリン希釈系列におけるヒト組織因子の濃度と異なり、
ヘパリン希釈系列のいずれか1つのすべての構成員のヒト組織因子の濃度は同じであり、そして
いずれか1つのヘパリン希釈系列のいずれか1つの構成員におけるヘパリンの濃度は、同じヘパリン希釈系列の他のいずれかの構成員におけるヘパリンの濃度と異なる。
P7.第1の粘弾性特性は粘弾性分析用デバイスを使用して測定される、先行する請求項のいずれか1の方法。
P8.第2の粘弾性特性は粘弾性分析用デバイスを使用して測定される、先行する請求項のいずれか1の方法。
P9.第3の粘弾性特性は粘弾性分析用デバイスを使用して測定される、先行する請求項のいずれか1の方法。
P10.粘弾性分析用デバイスはマイクロ流体カートリッジである、先行する請求項のいずれか1の方法。
P11.第1の粘弾性特性はMA値である、先行する請求項のいずれか1の方法。
P12.第1の粘弾性特性目標値は約63である、請求項P11の方法。
P13.第2の粘弾性特性はR値である、先行する請求項のいずれか1の方法。
P14.第2の粘弾性特性目標値は約6である、請求項P13の方法。
P15.第3の粘弾性特性はR値である、先行する請求項のいずれか1の方法。
P16.第3の粘弾性特性目標値は約6である、請求項P15の方法。
P17.手順(b)および手順(c)は同時に行われる、請求項P1およびP4のいずれかの方法。
P18.少なくとも1つの粘弾性分析試薬の有効性を試験するための配合物であって:
60~90%のクエン酸加ウシ血漿、
0.05~0.20%のヒト組織因子、および
0.05~0.30U/mlのヘパリン
を含む配合物。
P19.さらに安定剤を含む、請求項P18の配合物。
P20.安定剤はグリシン、HEPES緩衝液、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項P19の配合物。
P21.さらに防腐剤を含む、請求項P18からP20のいずれか1の配合物。
P22.防腐剤はアジ化ナトリウムである、請求項P21の配合物。
P23.配合物は約7.3から約7.9のpHを有する、請求項P18からP22のいずれか1の配合物。
P24.配合物は約6.4g/dLより大きい合計タンパク質含有量を有する、請求項P18からP23のいずれか1の配合物。
【0076】
以上に記載した本発明の実施形態は、例示的であることのみを意図している;本技術分野の当業者には、多くの変形および修正が明らかである。そうした変形および修正はすべて、添付の特許請求の範囲に規定された本発明の範囲内にあることが意図されている。
図1
図2
図3
【国際調査報告】