IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パオロ エル マンフレディの特許一覧 ▶ チャールズ・イー・イントゥリッシの特許一覧

特表2024-514316エナンチオ純粋な(S)-メサドン、(R)-メサドン、ラセミ(R,S)-メサドン、及び関連類似体物質を合成するための新規方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-01
(54)【発明の名称】エナンチオ純粋な(S)-メサドン、(R)-メサドン、ラセミ(R,S)-メサドン、及び関連類似体物質を合成するための新規方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 221/00 20060101AFI20240325BHJP
   C07C 225/16 20060101ALI20240325BHJP
   C07C 255/42 20060101ALI20240325BHJP
   C07C 255/30 20060101ALI20240325BHJP
   C07D 291/04 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
C07C221/00
C07C225/16 CSP
C07C255/42
C07C255/30
C07D291/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562287
(86)(22)【出願日】2022-04-08
(85)【翻訳文提出日】2023-12-08
(86)【国際出願番号】 US2022023950
(87)【国際公開番号】W WO2022217013
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】63/172,901
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519278516
【氏名又は名称】パオロ エル マンフレディ
(71)【出願人】
【識別番号】519278527
【氏名又は名称】チャールズ・イー・イントゥリッシ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】パオロ・エル・マンフレディ
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・イー・イントゥリッシ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア・マッタレイ
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・バンツァート
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト・フルラン
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト・オンガロ
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・エイチ・ヒースリー
(72)【発明者】
【氏名】ザカリー・ディー・タッカー
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB20
4H006AC44
4H006AC83
4H006BJ50
4H006BR10
4H006BU32
4H006QN30
(57)【要約】
光学的に活性な又はラセミのN置換環状スルファミデート又はN置換アジリジンから出発する、立体化学配置の保持を伴ったエナンチオ純粋な(S)-メサドン、(R)-メサドン、(R,S)-メサドン、及び関連類似体の合成のための方法。本方法は、既報の条件下で、すなわち対応する1,1,2-トリメチルアジリジン-1-イウム塩と2,2-ジフェニルアセトニトリルアニオンとの開環反応下で観察されるイソメサドン-ニトリル副生成物の形成を回避するものであり、これにより収率が向上し、精製操作が容易になる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的に純粋な((S)-若しくは(R)-)又はラセミのN保護4-メチル-環状スルファミデート又はN保護2-メチルアジリジンから(S)-メサドン、(R)-メサドン、又は(R,S)-メサドンを調製するための方法であって、以下を含む方法:
立体配置の保持を伴って((S)-若しくは(R)-)又はラセミN保護ジノルメサドンニトリルを得るための、塩基の存在下での光学的に純粋な((S)-若しくは(R)-)又はラセミのN保護4-メチル-環状スルファミデート又はN保護2-メチルアジリジンとジフェニルアセトニトリルとの開環反応;
(R)-、(S)-、又は(R,S)-メサドンニトリルを得るためのN保護ジノルメサドンニトリルの2工程/ワンポットの脱保護/還元的アミノ化;及び
エチル-イミン中間体を形成するための(R)-、(S)-、又は(R,S)-メサドンニトリルと有機マグネシウムハロゲン化物試薬との反応、続いて(R)-、(S)-、又は(R,S)-メサドンを得るためのイミン加水分解。
【請求項2】
有機マグネシウムハロゲン化物試薬がEtMgXであり、XがCl、Br、及びIから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
N保護4-メチル-環状スルファミデート又はN保護2-メチルアジリジンのN保護基がフルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、カルボキシベンジル(Cbz)、アセチル(C(O)CH3)、トリフルオロアセチル(C(O)CF3)、ベンジル(Bn)、トリフェニルメチル(CPh3)、及びp-トルエンスルホニル(Ts)から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
鏡像異性体過剰率(e.e.)が90%、95%、97%、99%、99.5%、及び99.9%から選択されるパーセンテージを超える、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法により調製される、下記式を有する単離化合物、又はその薬学的に許容される塩
【化1】
[式中、
R1~R10は出現ごとに独立して水素、重水素、ハロゲン、アルキルエステル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、ホルミル、アリールオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミド、アルキルアミド、チオール、チオアルキル、チオアリール、アルキルスルホニル、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、ニトロ、シアノ、硝酸基、C1~C8アルキル、C2~C8アルケニル、C2~C8アルキニル、C3~C8シクロアルキル、C3~C8シクロアルケニル、アリール、又はヘテロシクリルであり、1個又は複数の位置において重水素、ハロゲン、アルキル、アルキルエステル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、ホルミル、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミド、アルキルアミド、チオール、チオアルキル、チオアリール、アルキルスルホニル、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、ニトロ、シアノ、硝酸基で置換されていてもよく;
R11及びR12は出現ごとに独立して水素、重水素、C1~C8アルキル、C2~C8アルケニル、C2~C8アルキニル、C3~C8シクロアルキル、C3~C8シクロアルケニル、アリール、又はヘテロシクリルであり、1個又は複数の位置において重水素、ハロゲン、アルキル、アルキルエステル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、ホルミル、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミド、アルキルアミド、チオール、チオアルキル、チオアリール、アルキルスルホニル、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、ニトロ、シアノ、硝酸基で置換されていてもよく;或いは、R11及びR12は出現ごとに独立してハロゲン、アルキルエステル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、ホルミル、アリールオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミド、アルキルアミド、チオール、チオアルキル、チオアリール、アルキルスルホニル、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、ニトロ、シアノ、硝酸基からなる群から選択され;
NR13R14は、いずれも1個又は複数の位置において重水素、ハロゲン、アルキル、アルキルエステル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、ホルミル、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミド、アルキルアミド、チオール、チオアルキル、チオアリール、アルキルスルホニル、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、ニトロ、シアノ、硝酸基で置換されていてもよい、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルを通じて環化されていてもよく;
NR13R14が環化されていない場合、R13及びR14は出現ごとに独立して水素、重水素、C1~C8アルキル、C2~C8アルケニル、C2~C8アルキニル、C3~C8シクロアルキル、C3~C8シクロアルケニル、アリール、又はヘテロシクリルであり、1個又は複数の位置において重水素、ハロゲン、アルキル、アルキルエステル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、ホルミル、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミド、アルキルアミド、チオール、チオアルキル、チオアリール、アルキルスルホニル、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、ニトロ、シアノ、硝酸基で置換されていてもよく、或いは、R13及びR14は出現ごとに独立してアルキルエステル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、ホルミル、アリールオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミド、アルキルアミド、チオール、チオアルキル、チオアリール、アルキルスルホニル、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、ニトロ、シアノ、硝酸基からなる群から選択され;
Yはシアノ、-C(O)R15、-C(OH)R15、-C(OR16)R15であり、R15及びR16は出現ごとに独立して水素、重水素、C1~C8アルキル、C2~C8アルケニル、C2~C8アルキニル、C3~C8シクロアルキル、C3~C8シクロアルケニル、アリール、又はヘテロシクリルであり、1個又は複数の位置において重水素、ハロゲン、アルキル、アルキルエステル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、ホルミル、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミド、アルキルアミド、チオール、チオアルキル、チオアリール、アルキルスルホニル、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、ニトロ、シアノ、硝酸基で置換されていてもよく;或いは、R15及びR16は出現ごとに独立してアルキルエステル、アルコキシ、カルボキシ、ホルミル、アリールオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミド、アルキルアミド、チオール、チオアルキル、チオアリール、アルキルスルホニル、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、ニトロ、シアノ、硝酸基からなる群から選択され;
*は(R)-、(S)-、又は(R,S)-立体配置から選択される立体中心であり、ここで立体中心はR立体配置であり、化合物はS異性体に比べて90%、95%、97%、99%、99.5%、又は99.9%を超える鏡像異性体過剰率(e.e)で存在し、或いは、立体中心はS立体配置であり、化合物はR異性体に比べて90%、95%、97%、99%、99.5%、又は99.9%を超える鏡像異性体過剰率(e.e)で存在する]。
【請求項6】
(S)-メサドン塩酸塩、(R)-メサドン塩酸塩、又は(R,S)-メサドン塩酸塩を調製するための方法であって、以下を含む方法:
立体配置の保持を伴って((S)-若しくは(R)-)又はラセミN保護ジノルメサドンニトリルを得るための、塩基の存在下での光学的に純粋な((S)-若しくは(R)-)又はラセミのN保護4-メチル-環状スルファミデート又はN保護2-メチルアジリジンとジフェニルアセトニトリルとの開環反応;
(R)-、(S)-、又は(R,S)-メサドンニトリルを得るためのN保護ジノルメサドンニトリルの2工程/ワンポットの脱保護/還元的アミノ化;及び
エチル-イミン中間体を形成するための(R)-、(S)-、又は(R,S)-メサドンニトリルと有機マグネシウムハロゲン化物試薬との反応、続いて(R)-、(S)-、又は(R,S)-メサドン塩酸塩を得るための塩酸媒介イミン加水分解。
【請求項7】
有機マグネシウムハロゲン化物試薬がEtMgXであり、XがCl、Br、及びIから選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
N保護4-メチル-環状スルファミデート又はN保護2-メチルアジリジンのN保護基がフルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、カルボキシベンジル(Cbz)、アセチル(C(O)CH3)、トリフルオロアセチル(C(O)CF3)、ベンジル(Bn)、トリフェニルメチル(CPh3)、及びp-トルエンスルホニル(Ts)から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
鏡像異性体過剰率(e.e.)が90%、95%、97%、99%、99.5%、及び99.9%から選択されるパーセンテージを超える、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
ベンジル(S)-4-メチル-1,2,3-オキサチアゾリジン-3-カルボキシレート 2,2-ジオキシド、(R)-4-メチル-1,2,3-オキサチアゾリジン-3-カルボキシレート 2,2-ジオキシド、及び(R,S)-4-メチル-1,2,3-オキサチアゾリジン-3-カルボキシレート 2,2-ジオキシドから選択される環状スルファミデート出発原料のクロマトグラフィーフリー及びスケーラブルな調製のための方法。
【請求項11】
(R)-、(S)-、又は(R,S)-メサドンニトリルを調製するための方法であって、以下を含む方法:
立体配置の保持を伴って((S)-若しくは(R)-)又はラセミN保護ジノルメサドンニトリルを得るための、塩基の存在下での光学的に純粋な((S)-若しくは(R)-)又はラセミのN保護4-メチル-環状スルファミデート又はN保護2-メチルアジリジンとジフェニルアセトニトリルとの開環反応;
(R)-、(S)-、又は(R,S)-メサドンニトリルを得るためのN保護ジノルメサドンニトリルの2工程/ワンポットの脱保護/還元的アミノ化。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月9日出願の米国特許出願第63/172,901号の優先権、及びその出願日の利益を主張するものであり、その開示は全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は一般に、エナンチオ純粋な(S)-メサドン、(R)-メサドン、(R,S)-メサドン、及び関連類似体の合成のための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
本節は、以下に記載及び/又は特許請求される本発明の様々な態様に関連しうる、当技術分野の様々な態様を読者に紹介するように意図されている。本説明は、本発明の様々な態様の理解向上を促進するための背景情報を読者に提供する上で有用であると考えられる。したがって、これらの記載が、この観点で読まれるべきであって、先行技術の承認として読まれるべきではないということを理解すべきである。
【0004】
本出願人らが最初に発見したように、メサドンの右旋性異性体である(S)-メサドン(本明細書ではデキストロメサドン、エスメサドン、及び/又はREL-1017と呼ばれることもある)は、病理学的及び持続的に開口された機能亢進性のイオンチャネルに対する指向性を示し、したがって精神異常作用なしに十分に忍容される投与量で多数の疾患及び障害に対する潜在的な有効性を発揮する、非競合性、低親和性、低効力のN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体アンタゴニストである(Gorman AL, Elliott KJ, Inturrisi CE. The d- and l-isomers of methadone bind to the non-competitive site on the N-methyl-D-aspartate (NMDA)receptor in rat forebrain and spinal cord. Neurosci Lett. 1997 Feb 14;223(1):5-8. doi:10.1016/s0304-3940(97)13391-2. PMID:9058409;Bernstein G, Davis K, Mills C, Wang L, McDonnell M, Oldenhof J, Inturrisi C, Manfredi PL, Vitolo OV. Characterization of the Safety and Pharmacokinetic Profile of D-Methadone, a Novel N-Methyl-D-Aspartate Receptor Antagonist in Healthy, Opioid-Naive Subjects:Results of TWOPhase 1 Studies. J Clin Psychopharmacol. 2019 May/Jun;39(3):226-237. doi:10.1097/JCP.0000000000001035. PMID:30939592;Fava M, Stahl S, Pani L, De Martin S, Pappagallo M, Guidetti C, Alimonti A, Bettini E, Mangano RM, Wessel T, de Somer M, Caron J, Vitolo OV, DiGuglielmo GR, Gilbert A, Mehta H, Kearney M, Mattarei A, Gentilucci M, Folli F, Traversa S, Inturrisi CE, Manfredi PL. REL-1017 (Esmethadone)as Adjunctive Treatment in Patients With Major Depressive Disorder:A Phase 2a Randomized Double-Blind Trial. Am J Psychiatry. 2022 Feb;179(2):122-131. doi:10.1176/appi.ajp.2021.21020197. Epub 2021 Dec 22. PMID:34933568)。エスメサドンは、鏡像異性体(R)-メサドンに比べて20倍低い、オピオイド受容体に対する親和性を示し(Codd EE, Shank RP, Schupsky JJ, Raffa RB. Serotonin and norepinephrine uptake inhibiting activity of centrally acting analgesics:structural determinants and role in antinociception. J Pharmacol Exp Ther. 1995 Sep;274(3):1263-70. PMID:7562497)、嗜癖傾向などの意味のあるオピオイドアゴニストとしての作用を示さない。
【0005】
ラセミメサドンはオピオイド使用障害(OUD)の処置及び疼痛の処置に使用される。臨床的及び実験的エビデンスに基づいて、(R,S)-メサドンの代わりに半量の(R)-メサドンを患者に投与することがある(Gutwinski S, Schoofs N, Stuke H, Riemer TG, Wiers CE, Bermpohl F. Opioid tolerance in methadone maintenance treatment:comparison of methadone and levomethadone in long-term treatment. Harm Reduct J. 2016 Feb 16;13:7. doi:10.1186/s12954-016-0095-0. PMID:26879120;PMCID:PMC4754801;Soyka M, Zingg C. Feasability and safety of transfer from racemic methadone to (R)-methadone in primary care:clinical results from an open study. World J Biol Psychiatry. 2009;10(3):217-24. doi:10.1080/15622970802416057. PMID:19629858)。(R)体の投与は、メサドンの血漿中濃度を2倍減少させ、それにより、μオピオイド受容体に対する活性に影響を与えずに、安全性プロファイルをより安全なものにするであろう。また、(R)-メサドンの処方は、心毒性作用に対するCYP2B6の代謝の遅れによる臨床上の懸念を減少させるであろう。したがって、(R)-メサドンは、OUD及び疼痛を処置するために使用される用量において、QTc間隔(Q波の開始からT波の終了までの時間、心室脱分極及び心室再分極に要する時間)の延長の危険性を低下させることができ、これにより安全性プロファイルが(R,S)-メサドンに比べて向上する(Grilo LS, Carrupt PA, Abriel H. Stereoselective Inhibition of the hERG1 Potassium Channel. Front Pharmacol. 2010 Nov 22;1:137. doi:10.3389/fphar.2010.00137. PMID:21833176;PMCID:PMC3153011)。
【0006】
これら2種のメサドン異性体の重要性の顕在化、及びそれらを別々の薬物として投与すること(ラセミメサドンの投与ではなく)の利点は、高い光学純度でのメサドン異性体の合成のための費用対効果の高い手順を開発することの重要性を明白に示すものである。
【0007】
Beckettらは1957年に、(R)-アラニンから出発する(R)-メサドンの合成の立体選択的合成のための最初のプロトコルを報告した[Beckett, A. H., and N. J. Harper. "162. Configurational studies in synthetic analgesics:the synthesis of (-)-methadone from D-(-)-alanine." Journal of the Chemical Society (Resumed)(1957):858-861]。このプロトコルは、最終レボメサドンが全収率約5%及び光学純度約72%で得られる7工程の手順を含んだ。この手順は原則的に(R)-メサドン及び(S)-メサドンの両方の調製に利用することができる。しかし、合成経路が複雑で、光学純度が低く、全収率が低いため、実用的ではなく、特に製薬業界における利用に関してその使用が断念される。
【0008】
2000年に、Scheinmannらによる米国特許第6,143,933号は、ラセミ中間体1-(ジメチルアミノ)プロパン-2-オールの酵素分割、続いて鏡像異性体から光学活性(R)-及び(S)-メサドンへの全収率約3%及び鏡像異性体過剰率99%超での変換を包含する、方法を提供した。優れた鏡像異性体過剰率が実現されたにもかかわらず、この方法の全収率は極端に低く、また、酵素反応の包含は実用的ではなくて、工業規模のプロセスでの高コスト負担を伴うとみられる。更に、メサドンのラセミ合成とそれに続く鏡像異性体の分割に基づく方法(米国特許出願公開第2014/0350302号に開示の方法を含む)は、望ましくない不純物の導入、複雑な操作、及び所望の鏡像異性体の全収率の著しい減少という問題があり、このため、大規模製造のための戦略が魅力的なものとならない。
【0009】
Mkrtchyanらによる米国特許出願公開第2017/0057909号は、(R)-又は(S)-メサドンのキラル合成に関する最新技術の進歩を示すものであり、(R)-又は(S)-アラニンからそれぞれ出発する光学活性メサドンの全収率約20%及び鏡像異性体過剰率99%超での合成のための更に効率的な方法を提供する。光学的に純粋なメサドンの合成に関してMkrtchyanらが提供した最も好成績のエナンチオ選択的手順は、(R)-又は(S)-アラニンを対応するエナンチオ純粋なN,N-ジメチル-アラニンに変換すること;N,N-ジメチル-アラニンを還元してN,N-ジメチル-アラニノールを形成すること;N,N-ジメチル-アラニノールを置換反応によって対応する塩化物中間体に変換すること;塩化物中間体と塩基とを混合して1,1,2-トリメチルアジリジン-1-イウムをその場で形成し、次に2,2-ジフェニルアセトニトリルで処理してエナンチオ純粋なメサドン-ニトリルを得ること;最後にメサドン-ニトリルを臭化エチルマグネシウムに曝露してエチルイミン中間体を形成し、続いてこれを塩酸の存在下で加水分解して光学的に純粋なメサドン塩酸塩を得ることからなる((S)-メサドンに関するこの合成戦略を示す図1を参照)。
【0010】
この合成戦略を使用するMkrtchyanの米国特許出願公開第2017/0057909号に示される実施例においてこれら2種の鏡像異性体の間で最良の結果を探す場合、選択される試薬及び条件(並びに得られる収率)はi)CH2O、Pd/C、H2、水、50℃で20時間、次に還流温度で1時間(収率85%);ii)LiAlH4、THF、0℃~還流温度、16時間(収率68%);iii)SOCl2、CHCl3、0℃~還流温度、1時間(収率93%);iv)KOtBu、Ph2CHCN、DMF、室温で2.5時間、次に45℃で15時間(収率38%);v)EtMgBr、トルエン、110℃で3時間、次に6M HCl、75℃で3時間(収率88%)となる。全収率:18%
【0011】
文献(例えばWO2013/168000、WO2017/35224、WO2013/77720、及び米国特許出願公開第2015/152081号)に開示されるすべての合成手順は、図1中の工程「iv」に示される1つの主要工程、すなわち塩基性条件下での(一般に)1-ジメチルアミノ-2-クロロプロパンの分子内SN2反応により生成される1,1,2-トリメチルアジリジン-1-イウムに対する2,2-ジフェニルアセトニトリルアニオンの攻撃に基づく。次にジフェニルアセトニトリルアニオンはアジリジニウム塩の2つの側面から攻撃することができ、これにより位置化学的区別が低レベルである競合的開環反応が生じる。アジリジニウム塩の最も置換度の低いC原子における攻撃の場合に、所望のメサドン-ニトリルが形成される。しかし、高次C原子において攻撃が行われる場合、副生成物イソメサドン-ニトリルが形成される(図2参照)。塩基、溶媒、及び反応条件の最適な組み合わせの下で、この反応の結果はせいぜい2種の位置異性体生成物の1:3(イソメサドン-ニトリル:メサドン-ニトリル)混合物となる。次に、得られた混合物を、溶解性がより高いイソメサドン-ニトリルを利用する複雑な結晶化プロセスを採用して精製すると、所望のメサドン-ニトリルの回収が非効率になり、精製収率が低くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6,143,933号
【特許文献2】米国特許出願公開第2014/0350302号
【特許文献3】米国特許出願公開第2017/0057909号
【特許文献4】WO2013/168000
【特許文献5】WO2017/35224
【特許文献6】WO2013/77720
【特許文献7】米国特許出願公開第2015/152081号
【特許文献8】米国特許出願公開第2020/0277250 A1号
【特許文献9】WO2017/035225 A1
【特許文献10】米国特許出願公開第2000/6143933号
【特許文献11】米国特許出願公開第2018/10040752 B2号
【特許文献12】WO1997/45551 A1
【特許文献13】IN2014/MU04118 A
【特許文献14】米国特許出願公開第2015/9212128 B2号
【特許文献15】WO2012/014109
【特許文献16】WO2019/52545
【特許文献17】WO2014/159224
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Gorman AL, Elliott KJ, Inturrisi CE. The d- and l-isomers of methadone bind to the non-competitive site on the N-methyl-D-aspartate (NMDA)receptor in rat forebrain and spinal cord. Neurosci Lett. 1997 Feb 14;223(1):5-8. doi:10.1016/s0304-3940(97)13391-2. PMID:9058409
【非特許文献2】Bernstein G, Davis K, Mills C, Wang L, McDonnell M, Oldenhof J, Inturrisi C, Manfredi PL, Vitolo OV. Characterization of the Safety and Pharmacokinetic Profile of D-Methadone, a Novel N-Methyl-D-Aspartate Receptor Antagonist in Healthy, Opioid-Naive Subjects:Results of TWOPhase 1 Studies. J Clin Psychopharmacol. 2019 May/Jun;39(3):226-237. doi:10.1097/JCP.0000000000001035. PMID:30939592
【非特許文献3】Fava M, Stahl S, Pani L, De Martin S, Pappagallo M, Guidetti C, Alimonti A, Bettini E, Mangano RM, Wessel T, de Somer M, Caron J, Vitolo OV, DiGuglielmo GR, Gilbert A, Mehta H, Kearney M, Mattarei A, Gentilucci M, Folli F, Traversa S, Inturrisi CE, Manfredi PL. REL-1017 (Esmethadone)as Adjunctive Treatment in Patients With Major Depressive Disorder:A Phase 2a Randomized Double-Blind Trial. Am J Psychiatry. 2022 Feb;179(2):122-131. doi:10.1176/appi.ajp.2021.21020197. Epub 2021 Dec 22. PMID:34933568
【非特許文献4】Codd EE, Shank RP, Schupsky JJ, Raffa RB. Serotonin and norepinephrine uptake inhibiting activity of centrally acting analgesics:structural determinants and role in antinociception. J Pharmacol Exp Ther. 1995 Sep;274(3):1263-70. PMID:7562497
【非特許文献5】Gutwinski S, Schoofs N, Stuke H, Riemer TG, Wiers CE, Bermpohl F. Opioid tolerance in methadone maintenance treatment:comparison of methadone and levomethadone in long-term treatment. Harm Reduct J. 2016 Feb 16;13:7. doi:10.1186/s12954-016-0095-0. PMID:26879120;PMCID:PMC4754801
【非特許文献6】Soyka M, Zingg C. Feasability and safety of transfer from racemic methadone to (R)-methadone in primary care:clinical results from an open study. World J Biol Psychiatry. 2009;10(3):217-24. doi:10.1080/15622970802416057. PMID:19629858
【非特許文献7】Grilo LS, Carrupt PA, Abriel H. Stereoselective Inhibition of the hERG1 Potassium Channel. Front Pharmacol. 2010 Nov 22;1:137. doi:10.3389/fphar.2010.00137. PMID:21833176;PMCID:PMC3153011
【非特許文献8】Beckett, A. H., and N. J. Harper. "162. Configurational studies in synthetic analgesics:the synthesis of (-)-methadone from D-(-)-alanine." Journal of the Chemical Society (Resumed)(1957):858-861
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の特定の例示的態様を以下に記載する。これらの態様が本発明が取りうる特定の形態の簡潔な概要を読者に示すためだけに提示されるということ、及び、これらの態様が本発明の範囲を限定するようには意図されていないということを理解すべきである。実際、本発明は、以下に明確に記載されていないことがある種々の態様を包含しうる。
【0015】
上記のように、これら2種のメサドン異性体の重要性の顕在化、及びそれらを別々の薬物として投与することの利点は、高い光学純度でのメサドン異性体の合成のための費用対効果の高い手順を開発することの重要性を明白に示すものである。したがって、本発明の1つの態様は、(S)-メサドン、(R)-メサドン、(R,S)-メサドン、及びそれらの類似体の合成のための新規エナンチオ選択的アプローチに関する。特に、1つの態様は、光学的に純粋な((S)-若しくは(R)-)又はラセミのN保護4-メチル-環状スルファミデート又はN保護2-メチルアジリジンから(S)-メサドン、(R)-メサドン、又は(R,S)-メサドンを調製するための方法を含む。特定の実施形態では、本方法は、立体配置の保持を伴って((S)-若しくは(R)-)又はラセミN保護ジノルメサドンニトリルを得るための、塩基の存在下での光学的に純粋な((S)-若しくは(R)-)又はラセミのN保護4-メチル-環状スルファミデート又はN保護2-メチルアジリジンと2,2-ジフェニルアセトニトリルとの開環反応を含む。この開環反応に続いて、(R)-、(S)-、又は(R,S)-メサドンニトリルを得るためのN保護ジノルメサドンニトリルの2工程/ワンポットの脱保護/還元的アミノ化を行う。次にエチル-イミン中間体を形成するための(R)-、(S)-、又は(R,S)-メサドンニトリルと有機マグネシウムハロゲン化物試薬との反応を行い、続いて(R)-、(S)-、又は(R,S)-メサドンを得るためのイミン加水分解を行う。
【0016】
本発明の別の態様は、光学的に純粋な((S)-若しくは(R)-)又はラセミのN保護4-メチル-環状スルファミデート又はN保護2-メチルアジリジンから(S)-メサドン塩酸塩、(R)-メサドン塩酸塩、又は(R,S)-メサドン塩酸塩を調製するための方法に関する。特定の実施形態では、本方法は、立体配置の保持を伴って((S)-若しくは(R)-)又はラセミN保護ジノルメサドンニトリルを得るための、塩基の存在下での光学的に純粋な((S)-若しくは(R)-)又はラセミのN保護4-メチル-環状スルファミデート又はN保護2-メチルアジリジンとジフェニルアセトニトリルとの開環反応を含む。この開環反応に続いて、(R)-、(S)-、又は(R,S)-メサドンニトリルを得るためのN保護ジノルメサドンニトリルの2工程/ワンポットの脱保護/還元的アミノ化を行う。エチル-イミン中間体を形成するための(R)-、(S)-、又は(R,S)-メサドンニトリルと有機マグネシウムハロゲン化物試薬との反応を行い、続いて(R)-、(S)-、又は(R,S)-メサドン塩酸塩を得るための塩酸媒介イミン加水分解を行う。
【0017】
本発明の別の態様は、上記の2つの態様の方法により調製される化合物(又はその薬学的に許容される塩)に関する。様々な実施形態では、本化合物(又はその薬学的に許容される塩)は下記式を有する:
【0018】
【化1】
【0019】
式中、(1)R1~R10は出現ごとに独立して水素、重水素、ハロゲン、アルキルエステル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、ホルミル、アリールオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミド、アルキルアミド、チオール、チオアルキル、チオアリール、アルキルスルホニル、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、ニトロ、シアノ、硝酸基、C1~C8アルキル、C2~C8アルケニル、C2~C8アルキニル、C3~C8シクロアルキル、C3~C8シクロアルケニル、アリール、又はヘテロシクリルであり、1個又は複数の位置において重水素、ハロゲン、アルキル、アルキルエステル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、ホルミル、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミド、アルキルアミド、チオール、チオアルキル、チオアリール、アルキルスルホニル、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、ニトロ、シアノ、硝酸基で置換されていてもよく;(2)R11及びR12は出現ごとに独立して水素、重水素、C1~C8アルキル、C2~C8アルケニル、C2~C8アルキニル、C3~C8シクロアルキル、C3~C8シクロアルケニル、アリール、又はヘテロシクリルであり、1個又は複数の位置において重水素、ハロゲン、アルキル、アルキルエステル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、ホルミル、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミド、アルキルアミド、チオール、チオアルキル、チオアリール、アルキルスルホニル、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、ニトロ、シアノ、硝酸基で置換されていてもよく;或いは、R11及びR12は出現ごとに独立してハロゲン、アルキルエステル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、ホルミル、アリールオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミド、アルキルアミド、チオール、チオアルキル、チオアリール、アルキルスルホニル、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、ニトロ、シアノ、硝酸基からなる群から選択され;(3)NR13R14は、いずれも1個又は複数の位置において重水素、ハロゲン、アルキル、アルキルエステル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、ホルミル、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミド、アルキルアミド、チオール、チオアルキル、チオアリール、アルキルスルホニル、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、ニトロ、シアノ、硝酸基で置換されていてもよい、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルを通じて環化されていてもよく;(4)NR13R14が環化されていない場合、R13及びR14は出現ごとに独立して水素、重水素、C1~C8アルキル、C2~C8アルケニル、C2~C8アルキニル、C3~C8シクロアルキル、C3~C8シクロアルケニル、アリール、又はヘテロシクリルであり、1個又は複数の位置において重水素、ハロゲン、アルキル、アルキルエステル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、ホルミル、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミド、アルキルアミド、チオール、チオアルキル、チオアリール、アルキルスルホニル、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、ニトロ、シアノ、硝酸基で置換されていてもよく、或いは、R13及びR14は出現ごとに独立してアルキルエステル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、ホルミル、アリールオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミド、アルキルアミド、チオール、チオアルキル、チオアリール、アルキルスルホニル、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、ニトロ、シアノ、硝酸基からなる群から選択され;(5)Yはシアノ、-C(O)R15、-C(OH)R15、-C(OR16)R15であり、R15及びR16は出現ごとに独立して水素、重水素、C1~C8アルキル、C2~C8アルケニル、C2~C8アルキニル、C3~C8シクロアルキル、C3~C8シクロアルケニル、アリール、又はヘテロシクリルであり、1個又は複数の位置において重水素、ハロゲン、アルキル、アルキルエステル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、ホルミル、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミド、アルキルアミド、チオール、チオアルキル、チオアリール、アルキルスルホニル、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、ニトロ、シアノ、硝酸基で置換されていてもよく;或いは、R15及びR16は出現ごとに独立してアルキルエステル、アルコキシ、カルボキシ、ホルミル、アリールオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミド、アルキルアミド、チオール、チオアルキル、チオアリール、アルキルスルホニル、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、ニトロ、シアノ、硝酸基からなる群から選択され;(6)*は(R)-、(S)-、又は(R,S)-立体配置から選択される立体中心であり、ここで立体中心はR立体配置であり、化合物はS異性体に比べて90%、95%、97%、99%、99.5%、又は99.9%を超える鏡像異性体過剰率(e.e)で存在し、或いは、立体中心はS立体配置であり、化合物はR異性体に比べて90%、95%、97%、99%、99.5%、又は99.9%を超える鏡像異性体過剰率(e.e.)で存在する。
【0020】
本発明の更なる態様は、ベンジル(S)-4-メチル-1,2,3-オキサチアゾリジン-3-カルボキシレート 2,2-ジオキシド、(R)-4-メチル-1,2,3-オキサチアゾリジン-3-カルボキシレート 2,2-ジオキシド、及び(R,S)-4-メチル-1,2,3-オキサチアゾリジン-3-カルボキシレート 2,2-ジオキシドから選択される環状スルファミデート出発原料のクロマトグラフィーフリー及びスケーラブルな調製のための方法に関する。
【0021】
本発明の更なる態様は、(R)-、(S)-、又は(R,S)-メサドンニトリルを調製するための方法に関する。この態様では、本方法は、立体配置の保持を伴って((S)-若しくは(R)-)又はラセミN保護ジノルメサドンニトリルを得るための、塩基の存在下での光学的に純粋な((S)-若しくは(R)-)又はラセミのN保護4-メチル-環状スルファミデート又はN保護2-メチルアジリジンとジフェニルアセトニトリルとの開環反応を含む。また、この工程に続いて、(R)-、(S)-、又は(R,S)-メサドンニトリルを得るためのN保護ジノルメサドンニトリルの2工程/ワンポットの脱保護/還元的アミノ化を行う。
【0022】
本発明の別の態様は、立体配置の保持を伴って((S)-若しくは(R)-)又はラセミN保護ジノルメサドンニトリルを得るための、塩基の存在下での光学的に純粋な((S)-若しくは(R)-)又はラセミのN保護4-メチル-環状スルファミデート又はN保護2-メチルアジリジンとジフェニルアセトニトリルとの開環反応に関する。
【0023】
本明細書に組み込まれてその一部を構成する添付図面は、本発明の実施形態を例示するものであり、また、上記に示される本発明の一般的説明及び下記に示される実施形態の詳細な説明と併せて、本発明の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】米国特許出願公開第2017/0057909号に提唱された戦略を使用する(S)-メサドンの合成を示す模式図である。
図2】(R)-、(S)-、及び(R,S)-メサドンの合成のための既報の手順における主要工程を示す模式図である。
図3】(R)-、(S)-、又は(R,S)-メサドンの調製のための手順の模式図である。
図4】N保護環状スルファミデート出発原料の調製のための手順の模式図である。
図5】N保護2-メチルアジリジン出発原料の調製の模式図である。
図6】本開示の方法を使用して合成しうるエナンチオ純粋な又はラセミのメサドン類似体の一般的構造を示す。
図7】Cbz保護(S)-環状スルファミデート出発原料の合成を示す模式図である。
図8】ベンジル(S)-(1-ヒドロキシプロパン-2-イル)カルバメートの1H NMRスペクトルを示すグラフである。
図9】ベンジル(S)-4-メチル-1,2,3-オキサチアゾリジン-3-カルボキシレート 2,2-ジオキシドの1H NMRスペクトルを示すグラフである。
図10】ベンジル(S)-4-メチル-1,2,3-オキサチアゾリジン-3-カルボキシレート 2,2-ジオキシドの13C NMRスペクトルを示すグラフである。
図11】Boc保護(R)-アジリジン出発原料の合成を示す模式図である。
図12】tert-ブチル(R)-(1-ヒドロキシプロパン-2-イル)カルバメートの1H NMRスペクトルを示すグラフである。
図13】tert-ブチル(R)-(1-ヒドロキシプロパン-2-イル)カルバメートの13C NMRスペクトルを示すグラフである。
図14】tert-ブチル(R)-2-メチルアジリジン-1-カルボキシレートの1H NMRスペクトルを示すグラフである。
図15】tert-ブチル(R)-2-メチルアジリジン-1-カルボキシレートの13C NMRスペクトルを示すグラフである。
図16】Cbz保護(S)-環状スルファミデート出発原料を使用する(S)-メサドンニトリルの合成を示す模式図である。
図17】ベンジル(S)-(4-シアノ-4,4-ジフェニルブタン-2-イル)カルバメートの1H NMRスペクトルを示すグラフである。
図18】ベンジル(S)-(4-シアノ-4,4-ジフェニルブタン-2-イル)カルバメートの13C NMRスペクトルを示すグラフである。
図19A】(R,S)-メサドンニトリルのキラルHPLCクロマトグラムを示すグラフ及び表である。
図19B】(S)-メサドンニトリルのキラルHPLCクロマトグラムを示すグラフ及び表である。
図20】(S)-メサドンニトリルの1H NMRスペクトルを示すグラフである。
図21】(S)-メサドンニトリルの13C NMRスペクトルを示すグラフである。
図22】Boc保護(R)-2-メチルアジリジン出発原料を使用する(R)-メサドンニトリルの合成を示す模式図である。
図23】tert-ブチル(R)-(4-シアノ-4,4-ジフェニルブタン-2-イル)カルバメートの1H NMRスペクトルを示すグラフである。
図24】tert-ブチル(R)-(4-シアノ-4,4-ジフェニルブタン-2-イル)カルバメートの13C NMRスペクトルを示すグラフである。
図25A】(R,S)-メサドンニトリルのキラルHPLCクロマトグラムである。
図25B】(R)-メサドンニトリルのキラルHPLCクロマトグラムである。
図26】(R)-メサドンニトリルの1H NMRスペクトルを示すグラフである。
図27】(R)-メサドンニトリルの13C NMRスペクトルを示すグラフである。
図28】(S)-4-(ジメチルアミノ)-2,2-ジフェニルペンタンニトリルからの(S)-メサドン塩酸塩の合成を示す模式図である。
図29A】(R,S)-メサドンのキラルHPLCクロマトグラムである。
図29B】(S)-メサドンのキラルHPLCクロマトグラムである。
図30】(S)-メサドン*HClの1H NMRスペクトルを示すグラフである。
図31】(S)-メサドン*HClの13C NMRスペクトルを示すグラフである。
図32】(R)-4-(ジメチルアミノ)-2,2-ジフェニルペンタンニトリルからの(R)-メサドン塩酸塩の合成を示す模式図である。
図33A】(R,S)-メサドンのキラルHPLCクロマトグラムである。
図33B】(R)-メサドンのキラルHPLCクロマトグラムである。
図34】(R)-メサドン*HClの1H NMRスペクトルを示すグラフである。
図35】(R)-メサドン*HClの13C NMRスペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の1つ又は複数の具体的な実施形態を以下に記載する。これらの実施形態の簡潔な説明を示すために、実際の実施態様のすべての特徴を本明細書に記載しないことがある。任意のそのような実際の実施態様の開発において、任意のエンジニアリング又は設計プロジェクトと同様に、実施態様ごとに異なりうる開発者らの特定の目標、例えばシステム関連及びビジネス関連の制約の遵守を実現するために、実施態様に特有の数多くの決定を行わなければならないということを認識すべきである。更に、そのような開発の試みが、複雑で時間がかかることがあるが、それにもかかわらず、本開示の利点を享受する当業者にとっては日常的な設計、製作、及び製造の作業であろうということを認識すべきである。
【0026】
上記のように、本発明の1つの態様は、光学的に純粋な((S)-若しくは(R)-)又はラセミのN保護4-メチル-環状スルファミデート又はN保護2-メチルアジリジンから(S)-メサドン、(R)-メサドン、又は(R,S)-メサドンを調製するための方法に関する。特定の実施形態では、本方法は、立体配置の保持を伴って((S)-若しくは(R)-)又はラセミN保護ジノルメサドンニトリルを得るための、塩基の存在下での光学的に純粋な((S)-若しくは(R)-)又はラセミのN保護4-メチル-環状スルファミデート又はN保護2-メチルアジリジンと2,2-ジフェニルアセトニトリルとの開環反応を含む。この開環反応に続いて、(R)-、(S)-、又は(R,S)-メサドンニトリルを得るためのN保護ジノルメサドンニトリルの2工程/ワンポットの脱保護/還元的アミノ化を行う。次にエチル-イミン中間体を形成するための(R)-、(S)-、又は(R,S)-メサドンニトリルと有機マグネシウムハロゲン化物試薬との反応を行い、続いて(R)-、(S)-、又は(R,S)-メサドンを得るためのイミン加水分解を行う。
【0027】
本発明の別の態様は、光学的に純粋な((S)-若しくは(R)-)又はラセミのN保護4-メチル-環状スルファミデート又はN保護2-メチルアジリジンから(S)-メサドン塩酸塩、(R)-メサドン塩酸塩、又は(R,S)-メサドン塩酸塩を調製するための方法に関する。特定の実施形態では、本方法は、立体配置の保持を伴って((S)-若しくは(R)-)又はラセミN保護ジノルメサドンニトリルを得るための、塩基の存在下での光学的に純粋な((S)-若しくは(R)-)又はラセミのN保護4-メチル-環状スルファミデート又はN保護2-メチルアジリジンとジフェニルアセトニトリルとの開環反応を含む。この開環反応に続いて、(R)-、(S)-、又は(R,S)-メサドンニトリルを得るためのN保護ジノルメサドンニトリルの2工程/ワンポットの脱保護/還元的アミノ化を行う。エチル-イミン中間体を形成するための(R)-、(S)-、又は(R,S)-メサドンニトリルと有機マグネシウムハロゲン化物試薬との反応を行い、続いて(R)-、(S)-、又は(R,S)-メサドン塩酸塩を得るための塩酸媒介イミン加水分解を行う。
【0028】
本発明の別の態様は、上記の2つの態様の方法により調製される化合物(又はその薬学的に許容される塩)に関する。様々な実施形態では、本化合物(又はその薬学的に許容される塩)は下記式を有する:
【0029】
【化2】
【0030】
式中、(1)R1~R10は出現ごとに独立して水素、重水素、ハロゲン、アルキルエステル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、ホルミル、アリールオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミド、アルキルアミド、チオール、チオアルキル、チオアリール、アルキルスルホニル、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、ニトロ、シアノ、硝酸基、C1~C8アルキル、C2~C8アルケニル、C2~C8アルキニル、C3~C8シクロアルキル、C3~C8シクロアルケニル、アリール、又はヘテロシクリルであり、1個又は複数の位置において重水素、ハロゲン、アルキル、アルキルエステル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、ホルミル、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミド、アルキルアミド、チオール、チオアルキル、チオアリール、アルキルスルホニル、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、ニトロ、シアノ、硝酸基で置換されていてもよく;(2)R11及びR12は出現ごとに独立して水素、重水素、C1~C8アルキル、C2~C8アルケニル、C2~C8アルキニル、C3~C8シクロアルキル、C3~C8シクロアルケニル、アリール、又はヘテロシクリルであり、1個又は複数の位置において重水素、ハロゲン、アルキル、アルキルエステル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、ホルミル、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミド、アルキルアミド、チオール、チオアルキル、チオアリール、アルキルスルホニル、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、ニトロ、シアノ、硝酸基で置換されていてもよく;或いは、R11及びR12は出現ごとに独立してハロゲン、アルキルエステル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、ホルミル、アリールオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミド、アルキルアミド、チオール、チオアルキル、チオアリール、アルキルスルホニル、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、ニトロ、シアノ、硝酸基からなる群から選択され;(3)NR13R14は、いずれも1個又は複数の位置において重水素、ハロゲン、アルキル、アルキルエステル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、ホルミル、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミド、アルキルアミド、チオール、チオアルキル、チオアリール、アルキルスルホニル、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、ニトロ、シアノ、硝酸基で置換されていてもよい、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルを通じて環化されていてもよく;(4)NR13R14が環化されていない場合、R13及びR14は出現ごとに独立して水素、重水素、C1~C8アルキル、C2~C8アルケニル、C2~C8アルキニル、C3~C8シクロアルキル、C3~C8シクロアルケニル、アリール、又はヘテロシクリルであり、1個又は複数の位置において重水素、ハロゲン、アルキル、アルキルエステル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、ホルミル、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミド、アルキルアミド、チオール、チオアルキル、チオアリール、アルキルスルホニル、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、ニトロ、シアノ、硝酸基で置換されていてもよく、或いは、R13及びR14は出現ごとに独立してアルキルエステル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、ホルミル、アリールオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミド、アルキルアミド、チオール、チオアルキル、チオアリール、アルキルスルホニル、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、ニトロ、シアノ、硝酸基からなる群から選択され;(5)Yはシアノ、-C(O)R15、-C(OH)R15、-C(OR16)R15であり、R15及びR16は出現ごとに独立して水素、重水素、C1~C8アルキル、C2~C8アルケニル、C2~C8アルキニル、C3~C8シクロアルキル、C3~C8シクロアルケニル、アリール、又はヘテロシクリルであり、1個又は複数の位置において重水素、ハロゲン、アルキル、アルキルエステル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、ホルミル、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミド、アルキルアミド、チオール、チオアルキル、チオアリール、アルキルスルホニル、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、ニトロ、シアノ、硝酸基で置換されていてもよく;或いは、R15及びR16は出現ごとに独立してアルキルエステル、アルコキシ、カルボキシ、ホルミル、アリールオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミド、アルキルアミド、チオール、チオアルキル、チオアリール、アルキルスルホニル、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、ニトロ、シアノ、硝酸基からなる群から選択され;(6)*は(R)-、(S)-、又は(R,S)-立体配置から選択される立体中心であり、ここで立体中心はR立体配置であり、化合物はS異性体に比べて90%、95%、97%、99%、99.5%、又は99.9%を超える鏡像異性体過剰率(e.e)で存在し、或いは、立体中心はS立体配置であり、化合物はR異性体に比べて90%、95%、97%、99%、99.5%、又は99.9%を超える鏡像異性体過剰率(e.e)で存在する。
【0031】
本発明の更なる態様は、ベンジル(S)-4-メチル-1,2,3-オキサチアゾリジン-3-カルボキシレート 2,2-ジオキシド、(R)-4-メチル-1,2,3-オキサチアゾリジン-3-カルボキシレート 2,2-ジオキシド、及び(R,S)-4-メチル-1,2,3-オキサチアゾリジン-3-カルボキシレート 2,2-ジオキシドから選択される環状スルファミデート出発原料のクロマトグラフィーフリー及びスケーラブルな調製のための方法に関する。
【0032】
本発明の更なる態様は、(R)-、(S)-、又は(R,S)-メサドンニトリルを調製するための方法に関する。この態様では、本方法は、立体配置の保持を伴って((S)-若しくは(R)-)又はラセミN保護ジノルメサドンニトリルを得るための、塩基の存在下での光学的に純粋な((S)-若しくは(R)-)又はラセミのN保護4-メチル-環状スルファミデート又はN保護2-メチルアジリジンとジフェニルアセトニトリルとの開環反応を含む。また、この工程に続いて、(R)-、(S)-、又は(R,S)-メサドンニトリルを得るためのN保護ジノルメサドンニトリルの2工程/ワンポットの脱保護/還元的アミノ化を行う。
【0033】
また、本発明の別の態様は、立体配置の保持を伴って((S)-若しくは(R)-)又はラセミN保護ジノルメサドンニトリルを得るための、塩基の存在下での光学的に純粋な((S)-若しくは(R)-)又はラセミのN保護4-メチル-環状スルファミデート又はN保護2-メチルアジリジンとジフェニルアセトニトリルとの開環反応に関する。
【0034】
本明細書に開示される(S)-メサドン、(R)-メサドン、(R,S)-メサドン、及び類似体の合成のための方法は、塩酸塩の形態での(R)、(S)、又は(R,S)-メサドンの単離をもって終了するエナンチオ保持性でスケーラブルな3段階の方法として本発明者らにより構想及び開発された。図3を参照すると、これらの方法の主要な特徴は、(R)、(S)、若しくは(R,S)-アラニノール由来N保護環状4-メチル-スルファミデート(1)、又はN保護2-メチルアジリジン(2)を合成方法の主要出発原料として使用するキラルプールの戦略的利用である。N保護基は、アミンに対する最も一般的なカルバメート保護基[例えばフルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、カルボキシベンジル(Cbz)、アセチル(C(O)CH3)、トリフルオロアセチル(C(O)CF3)、ベンジル(Bn)、トリフェニルメチル(CPh3)、p-トルエンスルホニル(Ts)]の間で選択可能である。
【0035】
(R)-及び(S)-メサドンの合成のための既報の方法は、アジリジニウムの求核開環反応からなる。しかし、これらの技術は低い位置選択性という問題があり、これにより、所望のニトリル中間体の精製及び単離を困難にする異性体不純物が生じる(例えば米国特許出願公開第2020/0277250 A1号;WO, 2017/035225 A1;WO2017/035524 A1;米国特許出願公開第2000/6143933号;及び米国特許出願公開第2018/10040752 B2号に開示の方法を参照)。更に、N保護環状4-メチル-スルファミデート(1)又はN保護2-メチルアジリジン(2)の開環とは異なって、アジリジニウム戦略は光学純度を喪失させることがあり、このためエナンチオ純粋な材料の単離のための分解技術が必要になる(WO2013/077720 A1;WO1997/45551 A1;IN2014/MU04118 A;米国特許出願公開第2015/9212128 B2号におけるように)。
【0036】
本発明の態様に係る本開示の方法では、また、図3をなお参照すると、本方法の段階1は、以前の合成において観察された位置異性体副生成物(すなわちイソメサドン-ニトリル)の最小化に有用であった。N保護環状4-メチル-スルファミデート(1)を塩基の存在下での2,2-ジフェニルアセトニトリル(3)との反応の出発原料として使用することで、結晶化後に優れた収率及び純度のN保護中間体(4)が得られた。同様に、塩基の存在下でのN保護2-メチルアジリジン(2)と2,2-ジフェニルアセトニトリル(3)との反応によって、精製後に良好な収率及び効率でN保護中間体(4)に変換された。
【0037】
本方法(上記の通り)の段階2は、N保護中間体(4)の2工程/ワンポットの脱保護/還元的アミノ化であり、これにより一般的な中間体(R)-、(S)-、又は(R,S)-メサドンニトリル(5)が良好な収率及び純度で合成される。以下に示される実施例に示すように、段階2の反応条件は採用されるN保護基に依存する。
【0038】
本方法(上記の通り)の段階3では、既に開示のように、中間体(R)-、(S)-、又は(R,S)-メサドンニトリル(5)をわずかに過剰のEtMgBr(有機マグネシウムハロゲン化物剤の一例)で処理することで対応するエチル-イミンを生成し、これを酸性条件下で加水分解して(R)-、(S)-、又は(R,S)-メサドンを得た。所望の(R)-、(S)-、又は(R,S)-メサドンをシード結晶化によって良好な収率及び高い純度で単離した。
【0039】
ここで図4を参照すると、N保護環状4-メチル-スルファミデート(1つのありうる出発原料)を、(R)-、(S)-、又は(R,S)-2-アミノプロパン-1-オール(1.1)から出発する2段階の方法で生成することができる。第1の段階は、対応するN保護(R)-、(S)-、又は(R,S)-2-アミノプロパン-1-オール(1.2)を得るための、選択される保護基によるアミノ基の保護である。第2の段階は、最初に塩基の存在下での塩化チオニルとの環化反応によってN保護環状スルファミダイト中間体(段階2aにおける1.3)を得て、次に酸化剤としての過ヨウ素酸ナトリウム及び触媒としての塩化ルテニウムの存在下での硫黄原子の酸化(段階2b)によって所望のN保護環状スルファミデート(1)を結晶化後に良好な収率及び純度で得るための、2工程/ワンポットのプロセスである(図4参照)。
【0040】
N保護2-メチルアジリジン(代替の出発原料)を、(R)-、(S)-、又は(R,S)-2-アミノプロパン-1-オール(1.1)から出発する、既に例えばWO2012/014109又はWO2019/52545に開示の2段階の方法で生成することができる。図5を参照すると、この生成における第1の段階は、対応するN保護(R)-、(S)-、又は(R,S)-2-アミノプロパン-1-オール(1.2)を得るための、選択されるカルバメート保護基によるアミノ基の保護である。第2の段階は、最初に塩基の存在下での塩化p-トルエンスルホニルとの反応によってN保護(R)-、(S)-、又は(R,S)-2-アミノプロパン-1-トシレート中間体(段階2aにおける2.1)を得て、次にアジリジン閉環(段階2b)によって所望のN保護2-メチルアジリジン(2)を良好な収率及び純度で得るための、2工程/ワンポットのプロセスである。
【0041】
上記で言及したように、本明細書に開示の方法は、以下及び図6に示す一般式(I)に係るメサドン類似体の合成にも適用可能である:
【0042】
【化3】
【0043】
[式中、
R1~R10は出現ごとに独立して水素、重水素、ハロゲン、アルキルエステル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、ホルミル、アリールオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミド、アルキルアミド、チオール、チオアルキル、チオアリール、アルキルスルホニル、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、ニトロ、シアノ、硝酸基、C1~C8アルキル、C2~C8アルケニル、C2~C8アルキニル、C3~C8シクロアルキル、C3~C8シクロアルケニル、アリール、又はヘテロシクリルであり、1個又は複数の位置において重水素、ハロゲン、アルキル、アルキルエステル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、ホルミル、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミド、アルキルアミド、チオール、チオアルキル、チオアリール、アルキルスルホニル、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、ニトロ、シアノ、硝酸基で置換されていてもよく;
R11及びR12は出現ごとに独立して水素、重水素、C1~C8アルキル、C2~C8アルケニル、C2~C8アルキニル、C3~C8シクロアルキル、C3~C8シクロアルケニル、アリール、又はヘテロシクリルであり、1個又は複数の位置において重水素、ハロゲン、アルキル、アルキルエステル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、ホルミル、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミド、アルキルアミド、チオール、チオアルキル、チオアリール、アルキルスルホニル、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、ニトロ、シアノ、硝酸基で置換されていてもよく;或いは、R11及びR12は出現ごとに独立してハロゲン、アルキルエステル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、ホルミル、アリールオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミド、アルキルアミド、チオール、チオアルキル、チオアリール、アルキルスルホニル、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、ニトロ、シアノ、硝酸基からなる群から選択され;
NR13R14は、いずれも1個又は複数の位置において重水素、ハロゲン、アルキル、アルキルエステル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、ホルミル、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミド、アルキルアミド、チオール、チオアルキル、チオアリール、アルキルスルホニル、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、ニトロ、シアノ、硝酸基で置換されていてもよい、C3~C12シクロアルキル、又はヘテロシクリルを通じて環化されていてもよく;
NR13R14が環化されていない場合、R13及びR14は出現ごとに独立して水素、重水素、C1~C8アルキル、C2~C8アルケニル、C2~C8アルキニル、C3~C8シクロアルキル、C3~C8シクロアルケニル、アリール、又はヘテロシクリルであり、1個又は複数の位置において重水素、ハロゲン、アルキル、アルキルエステル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、ホルミル、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミド、アルキルアミド、チオール、チオアルキル、チオアリール、アルキルスルホニル、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、ニトロ、シアノ、硝酸基で置換されていてもよく、或いは、R13及びR14は出現ごとに独立してアルキルエステル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、ホルミル、アリールオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミド、アルキルアミド、チオール、チオアルキル、チオアリール、アルキルスルホニル、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、ニトロ、シアノ、硝酸基からなる群から選択され;
Yはシアノ、-C(O)R15、-C(OH)R15、-C(OR16)R15であり、R15及びR16は出現ごとに独立して水素、重水素、C1~C8アルキル、C2~C8アルケニル、C2~C8アルキニル、C3~C8シクロアルキル、C3~C8シクロアルケニル、アリール、又はヘテロシクリルであり、1個又は複数の位置において重水素、ハロゲン、アルキル、アルキルエステル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、ホルミル、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミド、アルキルアミド、チオール、チオアルキル、チオアリール、アルキルスルホニル、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、ニトロ、シアノ、硝酸基で置換されていてもよく;或いは、R15及びR16は出現ごとに独立してアルキルエステル、アルコキシ、カルボキシ、ホルミル、アリールオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミド、アルキルアミド、チオール、チオアルキル、チオアリール、アルキルスルホニル、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、ニトロ、シアノ、硝酸基からなる群から選択され;
*は(R)-、(S)-、又は(R,S)-立体配置から選択される立体中心であり、ここで立体中心はR立体配置であり、化合物はS異性体に比べて90%、95%、97%、99%、99.5%、又は99.9%を超える鏡像異性体過剰率(e.e)で存在し、或いは、立体中心はS立体配置であり、化合物はR異性体に比べて90%、95%、97%、99%、99.5%、又は99.9%を超える鏡像異性体過剰率(e.e)で存在する]。
【実施例
【0044】
以下の実施例における化合物構造を、以下の方法のうち1つ又は複数によって確認した:1H NMR、13C NMR、質量分析(LC-MS)、FTIR分光法、HPLC-UV、キラル-HPLC。1H NMRスペクトルを、300MHz又は400MHzの磁場で動作するNMR分光計を使用して確定した。化学シフトの基準を以下のように重水素化溶媒中の残留プロトンからの信号とした:CDCl3=7.25ppm、DMSO-d6=2.49ppm、CD3OD= .30ppm。ピークの多重度を以下のように表す:s、一重項;d、二重項;dd、二重項の二重項;t、三重項;dt、三重項の二重項;q、四重項;br、ブロード;m、多重項。結合定数をヘルツ(Hz)で示す。
【0045】
質量スペクトル(MS)データを、ESIイオン源を備えた質量分析計、及びイオントラップ又はTOF質量分析計を使用して得る。
【0046】
以下の実施例では、別途指示がない限り、試薬及び溶媒を商業的供給業者から購入することができ、更に精製せずに使用することができる。
【0047】
実施例1:ベンジル(S)-4-メチル-1,2,3-オキサチアゾリジン-3-カルボキシレート 2,2-ジオキシド((S)-1')
この実施例1では、ベンジル(S)-4-メチル-1,2,3-オキサチアゾリジン-3-カルボキシレート 2,2-ジオキシド((S)-1')を調製するために使用した、図7に示す2工程の方法が記載される。
【0048】
工程1:ベンジル(S)-(1-ヒドロキシプロパン-2-イル)カルバメート((S)-1.2')を形成するための(S)-2-アミノプロパン-1-オール((S)-1.1)のCbz保護
オーバーヘッドメカニカルスターラー、熱電対、N2入口、及び添加漏斗を備えた5L丸底フラスコに(S)-2-アミノプロパン-1-オール((S)-1.1)(100.0g、1331mmol、1.0当量)、EtOAc(1000mL、10体積)、及び7.5%(w/v)NaHCO3(水溶液)(1000mL、10体積)を加えた。撹拌溶液を氷水浴によって0℃に冷却し、CbzCl(209.0mL、1460mmol、1.1当量)を添加漏斗によって25分かけて加えた。二相反応液を16時間かけて内温20℃に平衡化した。1H-NMR及びTLC(DCM:MeOH[9:1比]、モリブデン酸アンモニウムセリウム染色使用、Rf=約0.6)により(S)-1.1の消費に基づいて確定された反応完了時に、撹拌を中断し、二相混合物を安定(settle)させた。有機画分を分離し、水性画分をIPAc(2x500mL、5体積)で更に抽出した。合わせた有機層を36%(w/v)NaCl(水溶液)(100mL、1体積)で洗浄し、減圧蒸発させて無色油状物を得た。粗材料をIPAc(2.8体積、280mL)で希釈し、回転撹拌しながら45℃に昇温させた。45分後に溶解は完了せず、そこで追加のIPAc(2.8体積、280mL)を加え、撹拌下での加熱を続けた。1時間後に溶解は完了した。加熱を中断し、溶液に標準の((S)-1.2')(約100mg)をシード添加した。20℃に平衡化しながら中程度の撹拌(200~250rpm)を16時間にわたり続けて自由流動性スラリーを得た。固体を減圧濾過により収集し、45℃で減圧乾燥させて1回の収集によりベンジル(S)-(1-ヒドロキシプロパン-2-イル)カルバメート((S)-1.2')を白色固体(185.9g、収率67%)として得た。母液の濃縮、続いて標準の((S)-1.2')のシード添加によって、更なる結晶化の試みを行って自由流動性スラリーを得て、続いてこれを濾過し、減圧乾燥させて更に21.4gのベンジル(S)-(1-ヒドロキシプロパン-2-イル)カルバメート((S)-1.2')を白色固体として得た。2回目の収集後の合計単離量:207.3g、収率74%。1H NMR (400 MHz, アセトニトリル-d3) δ 7.41 - 7.28 (m, 5H), 5.51 (s, 1H), 5.10 - 5.01 (m, 2H), 3.72 - 3.59 (m, 1H), 3.47 - 3.35 (m, 2H), 2.89 (s, 1H), 1.08 (d, J = 6.8 Hz, 3H)、図8に示す通り。
【0049】
工程2:ベンジル(S)-4-メチル-1,2,3-オキサチアゾリジン-3-カルボキシレート 2,2-ジオキシド((S)-1')を形成するための2工程/ワンポットの結晶化/酸化
オーバーヘッドメカニカルスターラー、熱電対、及びN2入口を備えた400mL Easy Max反応器にイミダゾール(32.54g、477.9mmol、4.0当量)、DCM(100mL、4体積)、及びNEt3(37mL、262.8mmol、2.2当量)を加えた。容器をN2で30分間パージし、内温-35℃に冷却した。撹拌懸濁液に塩化チオニル(9.5mL、131.4mmol、1.1当量)のDCM(50mL、2体積)溶液をシリンジポンプによって2時間かけて加え、更に15分間撹拌した。得られた懸濁液にベンジル(S)-(1-ヒドロキシプロパン-2-イル)カルバメート((S)-1.2')(25.00g、119.5mmol、1.0当量)のDCM(100mL、4体積)溶液をシリンジポンプによって1時間かけて加えた。反応液を-30℃に昇温させ、15時間撹拌した。HPLC及び1H NMRにより2の消費に基づいて確定された反応完了時に、反応液を2時間かけて0℃に昇温させた。反応液をH2O(2x10体積)で洗浄し、有機画分を減圧濃縮した。粗油状物をMeCN(100mL、4体積)及びH2O(125mL、5体積)中で再構成し、次に内温0℃に冷却した。撹拌溶液にNaIO4(28.11g、131.4mmol、1.1当量)、続いてRuCl3(25mg、0.12mmol、0.001当量)を加え、溶液を0℃で3時間撹拌した。HPLC及び1H NMRにより中間体スルファミダイトの消費に基づいて確定された反応完了時に、反応液をpH=7 KH2PO4/KOH緩衝液(水溶液)(250mL、10体積)及びPhMe(100mL、4体積)で処理した。MeCNを減圧除去し、有機画分と水性画分とを分離した。水性画分(pH=7)をIPAc(2x4体積)で更に抽出し、合わせた有機層を推定50mL(約2体積)まで減圧濃縮した。溶液を45℃に昇温させ、標準の(S)-3-Cbz-4-メチル-1,2,3-オキサチアゾリジン 2,2-ジオキシド3をシード添加した。撹拌懸濁液にn-ヘプタン(250mL、10体積)を1時間かけて滴下して白色スラリーを得た。懸濁液を冷却し、20℃で1時間撹拌し、-20℃に2時間かけて徐冷し、次に更に15時間撹拌した。スラリーを濾過し、固体をn-ヘプタン(4体積)で洗浄した。収集された固体を20℃で減圧乾燥させてベンジル(S)-3-Cbz-4-メチル-1,2,3-オキサチアゾリジン 2,2-ジオキシド((S)-1')を白色固体(27.17g、収率84%)として得た。1H NMR (400 MHz, アセトニトリル-d3) δ 7.48 - 7.34 (m, 5H), 5.36 - 5.23 (m, 2H), 4.72 (dd, J = 9.4, 5.8 Hz, 1H), 4.56 - 4.45 (m, 1H), 4.35 (dd, J = 9.4, 2.3 Hz, 1H), 1.44 (d, J = 6.4 Hz, 3H)、図9に示す通り。13C NMR (101 MHz, アセトニトリル-d3) δ 150.70, 136.16, 129.65, 129.61, 129.13, 73.69, 69.91, 55.70, 18.41、図10に示す通り。
【0050】
実施例2:tert-ブチル(R)-2-メチルアジリジン-1-カルボキシレート((R)-2'')
この実施例2では、tert-ブチル(R)-2-メチルアジリジン-1-カルボキシレート((R)-2'')を調製するために使用した、図11に示す2工程の方法が記載される。
【0051】
工程1:tert-ブチル(R)-(1-ヒドロキシプロパン-2-イル)カルバメート((R)-2.2'')を形成するための(R)-2-アミノプロパン-1-オール((R)-1.1)のBoc保護
この工程は、修正を加えた上で文献の手順(全体として参照により本明細書に組み入れられるWO2014/159224を参照)に従って行った。
【0052】
250mL丸底フラスコにN2雰囲気下で(R)-2-アミノプロパン-1-オール((R)-1.1)(10.0g、133.1mmol、1.0当量)及び無水THF(100mL)を加えた。フラスコを0℃に冷却し、Boc2O(30.52g、139.8mmol、1.05当量)の無水THF(40mL)溶液を30分間かけて滴下した。反応混合物を0℃で更に1時間撹拌し、次に更に16時間かけて20℃に昇温させた。1H-NMR及びTLC(DCM:MeOH[9:1比]、過マンガン酸カリウム染色使用、Rf=約0.6)により(R)-1.1の消費に基づいて確定された反応完了時に、撹拌を中断した。有機層を減圧濃縮し、残渣をn-ヘキサンでトリチュレートした。得られた固体を濾過し、風乾させて標記化合物((R)-2.2'')を無色固体(20.81g、収率89%)として得た。HRMS (ESI): m/z C8H17NO3 + Na+ [M+Na]+の計算値: 198.1101. 実測値: 198.0791. 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 3.81 - 3.69 (m, 1H), 3.62 (dd, J = 10.9, 3.9 Hz, 1H), 3.49 (dd, J = 10.9, 6.1 Hz, 1H), 1.44 (s, 9H), 1.14 (d, J = 6.8 Hz, 3H) ppm、図12に示す通り。13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 156.42, 79.69, 66.95, 48.63, 28.46, 17.40 ppm、図13に示す通り。
【0053】
工程2:tert-ブチル(R)-2-メチルアジリジン-1-カルボキシレート((R)-2'')を形成するための2工程/ワンポットのトシル化/環化
この工程は、修正を加えた上で文献の手順(全体として参照により本明細書に組み入れられるWO2012/14109を参照)に従って行った。
【0054】
250mL丸底フラスコにN2雰囲気下でtert-ブチル(R)-(1-ヒドロキシプロパン-2-イル)カルバメート((R)-2.2'')(10.00g、57.1mmol、1当量)、無水ジエチルエーテル(120ml)、及び塩化トシル(14.14g、74.2mmol、1.3当量)を加えた。反応混合物を15分間撹拌し、次に0℃に冷却した。破砕水酸化カリウム(25.62g、456.8mmol、8当量)を30分かけて数回に分けて加えた。反応混合物を約3時間かけて45℃に昇温させ、1H-NMR及びTLC(Hex:EtOAc[8:2比]、過マンガン酸カリウム染色使用、Rf=約0.3)により(R)-2.2'の消費に基づいて確定された反応完了時に、撹拌を中断した。反応混合物を水(100mL)で希釈し、有機画分を分離し、水性画分をジエチルエーテル(2x50mL)で更に抽出した。合わせた有機層を36%(w/v)NaCl(水溶液)(100mL)で洗浄し、減圧蒸発させてtert-ブチル(R)-2-メチルアジリジン-1-カルボキシレート((R)-2'')を透明無色油状物(7.04g、収率78%)として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 2.48 - 2.39 (m, 1H), 2.23 (d, J = 5.8 Hz, 1H), 1.88 (d, J = 3.8 Hz, 1H), 1.45 (s, 9H), 1.27 (d, J = 5.5 Hz, 3H) ppm、図14に示す通り。13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 162.61, 81.06, 33.71, 32.63, 28.08, 17.52 ppm、図15に示す通り。
【0055】
実施例3:(S)-4-(ジメチルアミノ)-2,2-ジフェニルペンタンニトリル((S)-5)
この実施例3では、(S)-4-(ジメチルアミノ)-2,2-ジフェニルペンタンニトリル((S)-5)を調製するために使用した、図16に示す2工程の方法が記載される。
【0056】
工程1:ベンジル(S)-(4-シアノ-4,4-ジフェニルブタン-2-イル)カルバメート((S)-4')を形成するための2,2-ジフェニルアセトニトリル(3)アニオン上でのベンジル(S)-4-メチル-1,2,3-オキサチアゾリジン-3-カルボキシレート 2,2-ジオキシド((S)-1')の開環反応
オーバーヘッドメカニカルスターラー、熱電対、及びN2入口を備えた400mL Easy Max反応器にベンジル(S)-4-メチル-1,2,3-オキサチアゾリジン-3-カルボキシレート 2,2-ジオキシド((S)-1')(10.00g、36.9mmol、1当量)及びジフェニルアセトニトリル(3)(7.85g、40.6mmol、1.1当量)を加えた。容器をN2で30分間パージし、2-MeTHF(100mL、10体積)で希釈し、内温-20℃に冷却した。撹拌溶液にNaHMDS(1M THF溶液、44.3mL、44.3mmol、1.2当量)をシリンジポンプによって1時間かけて滴下し、更に15時間撹拌した。混合物を0℃に昇温させ、1時間撹拌した。HPLCにより(S)-1'の消費に基づいて確定された反応完了時に、溶液に5%(w/v)クエン酸(水溶液)(50mL、5体積)を1時間かけて滴下して処理した。二相混合物を20℃に昇温させ、有機画分と水性画分とを分離した。水性画分を2-MeTHF(2x50mL、5体積)で更に抽出した。合わせた有機層を35℃で推定20mL(約2体積)まで減圧濃縮した。撹拌溶液にn-ヘプタン(100mL、10体積)を1時間かけて滴下し、次に標準のベンジル(S)-(4-シアノ-4,4-ジフェニルブタン-2-イル)カルバメート((S)-4')をシード添加して帯黄白色スラリーを得た。スラリーを20℃で6時間撹拌し、-20℃に15時間(約3℃/時)かけて徐冷し、次に更に15時間撹拌した。スラリーを濾過し、固体をn-ヘプタン(3x10体積)で洗浄した。収集された固体を20℃で減圧乾燥させてベンジル(S)-(4-シアノ-4,4-ジフェニルブタン-2-イル)カルバメート((S)-4')を白色固体(13.62g、収率96%)として得た。HPLC純度:97.9%。HRMS (ESI) m/z: [M+H]+ C25H24N2O2 385.19の計算値; 実測値385.20. 1H NMR (400 MHz, CDCl3 ) δ 7.51 - 7.20 (m, 15H), 5.06 (s, 2H), 4.99 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 3.86 - 3.74 (m, 1H), 2.83 (dd, J = 14.4, 8.0 Hz, 1H), 2.48 (dd, J = 14.4, 4.7 Hz, 1H), 1.24 (d, J = 6.7 Hz, 3H) ppm、図17に示す通り。13C NMR (400 MHz, CDCl3) δ 155.13, 139.96, 139.74, 136.57, 128.88, 128.82, 128.35, 127.93, 127.90, 126.84, 126.77, 122.31, 66.31, 49.25, 45.09, 44.89, 21.90 ppm、図18に示す通り。
【0057】
工程2:(S)-メサドンニトリル((S)-5)を形成するためのベンジル(S)-(4-シアノ-4,4-ジフェニルブタン-2-イル)カルバメート((S)-4')の2工程/ワンポットの脱保護/還元的アミノ化
磁気撹拌子を備えた100mL Morton型丸底フラスコにベンジル(S)-(4-シアノ-4,4-ジフェニルブタン-2-イル)カルバメート((S)-4')(1.00g、2.60mmol、1当量)及びPd(OH)2/C 20%担持活性炭(460mg、0.65mmol、25mol%)を加えた。容器をN2で約30分間パージし、EtOH(20mL、20体積)で希釈した後、撹拌溶液にCH2O 37% w/w水溶液(2mL、2体積)を加えた。容器にH2バルーンを備え付け、25℃で24時間撹拌した。HPLCにより((S)-4')の消費に基づいて確定された反応完了時に、容器をN2で約30分間パージした。懸濁液をセライトベッドを通じて濾過し、EtOH(2x5体積)で溶離し、約2体積に減圧濃縮した。撹拌エタノール溶液にH2O(14mL、14体積)を1時間かけて加え、スラリーを25℃で15時間撹拌した。氷水浴によって約5℃に冷却し、次に更に5時間撹拌した。固体を減圧濾過により収集し、H2O(5mL、5体積)で洗浄した。収集された固体を50℃で減圧乾燥させて(S)-4-(ジメチルアミノ)-2,2-ジフェニルペンタンニトリル((S)-5)を白色固体(630mg、収率87%)として得た。キラルHPLC:1個の単一の鏡像異性体(e.e.>99%)、図19に示す通り。HRMS (ESI) m/z: [M+H]+ C19H22N2 279.18の計算値; 実測値279.20. 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.49 - 7.22 (m, 10H), 2.69 (dd, J = 13.7, 6.4 Hz, 1H), 2.54 (h, J = 6.4 Hz, 1H), 2.23 (dd, J = 13.6, 6.0 Hz, 1H), 2.13 (s, 6H), 0.91 (d, J = 6.6 Hz, 3H). ppm、図20に示す通り。13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 141.42, 140.80, 128.84, 128.76, 127.88, 127.73, 127.47, 127.30, 122.93, 55.54, 49.75, 43.42, 40.03, 13.16 ppm、図21に示す通り。
【0058】
実施例4:(R)-4-(ジメチルアミノ)-2,2-ジフェニルペンタンニトリル((R)-5)
この実施例4では、(R)-4-(ジメチルアミノ)-2,2-ジフェニルペンタンニトリル((R)-5)を調製するために使用した、図22に示す2工程の方法が記載される。
【0059】
工程1:tert-ブチル(R)-(4-シアノ-4,4-ジフェニルブタン-2-イル)カルバメート((R)-4'')を形成するための2,2-ジフェニルアセトニトリル(3)アニオン上でのtert-ブチル(R)-2-メチルアジリジン-1-カルボキシレート((R)-2'')の開環反応
KOH(35mg)の無水DMSO(1.44mL)溶液にジフェニルアセトニトリル(3)(0.669g、3.5mmol、1.25当量)、及びtert-ブチル(R)-2-メチルアジリジン-1-カルボキシレート((R)-2'')(0.4365g、2.8mmol、1.0当量)の無水DMSO(2.91mL)溶液を加えた。反応混合物を90℃で6時間撹拌した。1H-NMR及びTLC(Hex:EtOAc[8:2比]、過マンガン酸カリウム染色使用、Rf=約0.6)により(R)-2''の消費に基づいて確定された反応完了時に、撹拌を中断した。次に得られた混合物を水/ブライン1:1 50mLに注ぎ、DCM(50mL)を加えた。有機層を分離し、水相をDCM(20mL×3)で更に抽出した。合わせた有機層を減圧蒸発させ、粗生成物を、DCM/酢酸エチル98:2を溶離液として使用するカラムクロマトグラフィーで精製して、tert-ブチル(R)-(4-シアノ-4,4-ジフェニルブタン-2-イル)カルバメート((R)-4'')を淡黄色固体(0.756g、収率78%)として得た。HRMS (ESI) m/z: [M+H]+ C22H26N2O2の計算値351.2067; 実測値: 351.2078. 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.48 - 7.27 (m, 10H), 4.38 (s, 1H), 3.76 - 3.63 (m, 1H), 2.80 - 2.67 (m, 1H), 2.44 (dd, J = 14.2, 5.2 Hz, 1H), 1.40 (s, 9H), 1.19 (d, J = 6.6 Hz, 3H) ppm、図23に示す通り。13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 154.69, 140.15, 140.05, 129.10, 129.06, 128.12, 127.08, 127.01, 122.53, 79.29, 49.37, 45.60, 44.48, 28.52, 22.27 ppm、図24に示す通り。
【0060】
工程2:(R)-メサドンニトリル((R)-5)を形成するためのtert-ブチル(R)-(4-シアノ-4,4-ジフェニルブタン-2-イル)カルバメート((R)-4'')の2工程/ワンポットの脱保護/還元的アミノ化
tert-ブチル(R)-(4-シアノ-4,4-ジフェニルブタン-2-イル)カルバメート((R)-4'')(0.200g、0.57mmol、1当量)のDCM(2mL)中氷冷溶液にHCl(4Mジオキサン溶液、2mL、14mmol、25当量)を窒素雰囲気下で滴下し、混合物を0℃で3時間撹拌した。次に溶媒及び残留HClを減圧除去してBoc脱保護(R)-4''のわずかに黄色の油状物を得て、これをDMF(4.3mL)に再溶解させ、氷浴中で冷却した。ホルムアルデヒド(37%水溶液、1.15mL、15mmol、25当量)及びNaCNBH3(76mg、1.22mmol、2当量)を加え、混合物を室温で1時間撹拌した。次に溶液を飽和NaHCO3 50mLに注ぎ、DCM(3x50mL)で抽出した。合わせた有機画分を減圧蒸発させ、粗生成物を、CHCl3/メタノール95:5を溶離液として使用するカラムクロマトグラフィーで精製して、(R)-4-(ジメチルアミノ)-2,2-ジフェニルペンタンニトリル((R)-5)(138mg、収率87%)を得た。キラルHPLC:1個の単一の鏡像異性体(e.e.>99%)、図25に示す通り。HRMS (ESI) m/z: [M+H]+ C19H22N2の計算値279.1861; 実測値279.1924. 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.48 - 7.24 (m, 10H), 2.68 (dd, J = 13.8, 6.5 Hz, 1H), 2.59 - 2.47 (m, 1H), 2.23 (dd, J = 13.9, 6.0 Hz, 1H), 2.13 (s, 6H), 0.91 (d, J = 6.6 Hz, 3H) ppm、図26に示す通り。13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 141.34, 140.75, 128.85, 128.77, 127.89, 127.74, 127.46, 127.28, 122.93, 55.56, 49.70, 43.33, 40.02, 13.16 ppm、図27に示す通り。
【0061】
実施例5:(S)-6-(ジメチルアミノ)-4,4-ジフェニル-3-ヘプタノン塩酸塩((S)-メサドン*HCl)
この実施例5では、(S)-6-(ジメチルアミノ)-4,4-ジフェニル-3-ヘプタノン塩酸塩((S)-メサドン*HCl)を調製するために使用した、図28に示す1工程の方法が記載される。この工程は、修正を加えた上で文献の手順(全体として参照により本明細書に組み入れられるWO2017/35224及び米国特許出願公開第2020/277250号を参照)に従って行った。
【0062】
熱電対、磁気撹拌子、及びN2入口を備えた200mL二つ口丸底フラスコに(S)-4-(ジメチルアミノ)-2,2-ジフェニルペンタンニトリル((S)-5)(6.62g、23.78mmol、1当量)を加えた。容器をN2で30分間パージし、PhMe(66mL、10体積)で希釈し、得られた溶液に3M EtMgBr 2-MeTHF溶液(12mL、35.68mmol、1.5当量)を30分かけて滴下した。次に反応混合物を加熱マントルによって100℃に昇温させ、24時間撹拌した。HPLCにより確定された(S)-5の消費時に、溶液を0℃に冷却し、2M HCl水溶液(13mL、2体積)を加えた。次に二相混合物を50℃に昇温させ、24時間激しく撹拌した。有機画分と水性画分とを分離し、水層を氷水浴によって0℃に冷却した。粘稠溶液に(S)-メサドン塩酸塩の種結晶を加えて自由流動性スラリーを得た。スラリーを24時間熟成させ、0℃に冷却し、固体を減圧濾過により収集し、50℃で24時間減圧乾燥させて(S)-6-(ジメチルアミノ)-4,4-ジフェニル-3-ヘプタノン塩酸塩((S)-メサドン*HCl)を白色固体(5.20g、収率66%)として得た。HPLC純度:99.6%。キラルHPLC:1個の単一の鏡像異性体(e.e.>99%)、図29に示す通り。HRMS (ESI) m/z: [M+H]+ C21H27NOの計算値310.2165; 実測値: 310.2193. 1H NMR (400 MHz, DMSOd6) δ 10.60 (s, 1H), 7.48 - 7.24 (m, 10H), 3.10 (d, J = 13.9 Hz, 1H), 2.90 (p, J = 6.9 Hz, 1H), 2.63 (dd, J = 22.7, 4.7 Hz, 6H), 2.47 - 2.35 (m, 1H), 2.31 - 2.14 (m, 2H), 0.72 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 0.48 (d, J = 6.5 Hz, 3H) ppm、図30に示す通り。13C NMR (400 MHz, DMSOd6) δ 210.64, 140.53, 140.07, 129.23, 129.06, 128.75, 128.53, 127.61, 64.57, 59.00, 38.78, 38.31, 38.05, 32.40, 14.72, 9.33 ppm、図31に示す通り。
【0063】
実施例6:(R)-6-(ジメチルアミノ)-4,4-ジフェニル-3-ヘプタノン塩酸塩((R)-メサドン*HCl)
この実施例6では、(R)-6-(ジメチルアミノ)-4,4-ジフェニル-3-ヘプタノン塩酸塩((R)-メサドン*HCl)を調製するために使用した、図32に示す1工程の方法が記載される。この工程は、修正を加えた上で文献の手順(全体として参照により本明細書に組み入れられるWO2017/35224及び米国特許出願公開第2020/277250号を参照)に従って行った。
【0064】
熱電対、磁気撹拌子、及びN2入口を備えた100mL二つ口丸底フラスコに(R)-4-(ジメチルアミノ)-2,2-ジフェニルペンタンニトリル((R)-5)(2.80g、10.06mmol、1当量)を加えた。容器をN2で30分間パージし、PhMe(28mL、10体積)で希釈し、得られた溶液に3M EtMgBr 2-MeTHF溶液(5mL、15.09mmol、1.5当量)を30分かけて滴下した。次に反応混合物を加熱マントルによって100℃に昇温させ、24時間撹拌した。HPLCにより確定された(R)-5の消費時に、溶液を0℃に冷却し、2M HCl水溶液(6mL、2体積)を加えた。次に二相混合物を50℃に昇温させ、24時間激しく撹拌した。有機画分と水性画分とを分離し、水層を氷水浴によって0℃に冷却した。粘稠溶液に(R)-メサドン塩酸塩の種結晶を加えて自由流動性スラリーを得た。スラリーを24時間熟成させ、0℃に冷却し、固体を減圧濾過により収集し、50℃で24時間減圧乾燥させて(R)-6-(ジメチルアミノ)-4,4-ジフェニル-3-ヘプタノン塩酸塩((R)-メサドン*HCl)を白色固体(2.44g、収率70%)として得た。HPLC純度:99.5%。キラルHPLC:1個の単一の鏡像異性体(e.e.>99%)、図33に示す通り。HRMS (ESI) m/z: [M+H]+ C21H27NOの計算値310.2165; 実測値: 310.2234. 1H NMR (400 MHz, DMSOd6) δ 10.39 (s, 1H), 7.48 - 7.24 (m, 10H), 3.08 (d, J = 13.9 Hz, 1H), 2.91 (p, J = 7.0 Hz, 1H), 2.64 (dd, J = 21.5, 4.5 Hz, 6H), 2.48 - 2.36 (m, 1H), 2.29 - 2.13 (m, 2H), 0.73 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 0.47 (d, J = 6.6 Hz, 3H) ppm、図34に示す通り。13C NMR (400 MHz, DMSOd6) δ 210.57, 140.58, 140.15, 129.28, 129.10, 128.76, 128.56, 127.63, 64.58, 58.83, 38.78, 38.02, 37.85, 32.38, 14.74, 9.38 ppm、図35に示す通り。
【0065】
本発明の好ましい実施形態の詳細を参照して本発明を開示してきたが、本発明の精神内及び補正された特許請求の範囲の範囲内で当業者が修正形態を容易に想到するであろうということが予想されるため、本開示が限定的な意味でというよりはむしろ例示的なものとして意図されているということを理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19A
図19B
図20
図21
図22
図23
図24
図25A
図25B
図26
図27
図28
図29A
図29B
図30
図31
図32
図33A
図33B
図34
図35
【国際調査報告】