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特表2024-514320光源、MEMS光スイッチ、センサおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-01
(54)【発明の名称】光源、MEMS光スイッチ、センサおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/01 20060101AFI20240325BHJP
   G02B 26/08 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
G02F1/01 C
G02B26/08 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562312
(86)(22)【出願日】2022-03-15
(85)【翻訳文提出日】2023-11-27
(86)【国際出願番号】 NL2022050140
(87)【国際公開番号】W WO2022216150
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】2027948
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522193042
【氏名又は名称】ウニヴェルシテイト トゥヴェンテ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITEIT TWENTE
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ベレンスショット, ヨハン ウィレム
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア ブランコ, ソニア マリア
(72)【発明者】
【氏名】マルティヌッセン, シメン ミカルセン
(72)【発明者】
【氏名】タス, ニルス ルーロフ
(72)【発明者】
【氏名】ティッゲラー, ロアルド ミシェル
【テーマコード(参考)】
2H141
2K102
【Fターム(参考)】
2H141MA16
2H141MB32
2H141MB52
2H141MC06
2H141ME25
2K102AA09
2K102AA24
2K102BA19
2K102BB03
2K102BC01
2K102BC04
2K102CA01
2K102CA28
2K102DA04
2K102DA16
2K102DB01
2K102DB02
2K102DC07
2K102DD07
2K102EB20
(57)【要約】
本発明は、光周波数コムを生成する光源に関する。また、本発明は、この光源に用いられる光共振器の製造方法に関する。さらに、本発明は、微小電気機械システム、MEMS、光スイッチおよびそれを備えたシステムに関する。本発明はまた、センサおよびセンサに含まれる懸架された窒化シリコン構造体を製造する方法に関する。本発明によれば、単一ステップLPCVD堆積モノリシック化学量論Si層が、サファイアなどの単結晶酸化アルミニウム基板上に使用される。Si層の厚さは、500nmを超える。この層は、比較的低い残留応力で実現できる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光周波数コムを生成するための光源において、光共振器を備え、前記光共振器は、
単結晶の酸化アルミニウム基板と、
入力導波路と、
出力導波路と、
前記基板上に配置され、前記入力導波路および前記出力導波路に光学的に結合された閉ループ導波路と、
を備え、
前記閉ループ導波路は、
前記入力導波路からの光ビームの少なくとも一部を受け、
前記受けた光ビームを用いて前記閉ループ導波路の内側に光エネルギを蓄積し、
蓄積された前記光エネルギを用いて光周波数コムを生成し、
生成された前記光周波数コムの少なくとも一部を前記出力導波路に結合するように構成され、
前記閉ループ導波路は、厚さが500nm以上のモノリシック窒化シリコン導波路であり、前記基板上に堆積されている、光源。
【請求項2】
前記入力導波路内に光ビームを伝達するためのレーザ源を更に備える、請求項1に記載の光源。
【請求項3】
前記レーザ源は、連続波レーザである、請求項2に記載の光源。
【請求項4】
前記レーザ源は、第1の周波数で光ビームを生成するように構成され、前記閉ループ導波路は、前記第1の周波数の周囲に等間隔に配置された周波数成分を有する前記周波数コムを生成するように構成される、請求項2または3に記載の光源。
【請求項5】
前記閉ループ導波路は、カー光周波数コムを生成するように構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の光源。
【請求項6】
前記窒化シリコン導波路の厚さは、750nm以上、好ましくは、1μm以上、より好ましくは、1.5μm以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の光源。
【請求項7】
前記窒化シリコン導波路が、0.71<=(X/Y)<=0.76であるSiXNY層を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の光源。
【請求項8】
前記単結晶の酸化アルミニウム基板は、サファイア基板を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の光源。
【請求項9】
前記モノリシック窒化シリコン導波路が、前記単結晶酸化アルミニウム基板上に直接堆積される、請求項1~8のいずれか一項に記載の光源。
【請求項10】
前記モノリシック窒化シリコン導波路は、中間層を介して前記単結晶酸化アルミニウム基板上に堆積され、前記単結晶酸化アルミニウム基板と前記中間層との厚みの比率が100:1を超え、より好ましくは、1000:1である、請求項1~9のいずれか一項に記載の光源。
【請求項11】
前記閉ループ導波路、前記入力導波路および/または前記出力導波路は、隆起型導波路である、請求項1~10のいずれか一項に記載の光源。
【請求項12】
前記入力導波路および前記出力導波路の少なくとも一方は、前記閉ループ導波路の前記窒化シリコン導波路と同じ処理中に形成された窒化シリコン導波路である、請求項1~11のいずれか一項に記載の光源。
【請求項13】
前記入力導波路および前記出力導波路は、同一の導波路の一部である、請求項1~12のいずれか一項に記載の光源。
【請求項14】
前記入力導波路および前記出力導波路は、前記閉ループ導波路の、異なる、好ましくは反対側に配置される、請求項1~12のいずれか一項に記載の光源。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の光共振器の製造方法であって、
単結晶の酸化アルミニウム基板を提供するステップと、
750~950℃の温度での単一ステップ低圧化学蒸着(LPCVD)処理において、基板上に少なくとも500nm厚のモノリシック窒化シリコン膜を堆積するステップと、
前記堆積された窒化シリコン膜の上にマスキング層を設けるステップと、
前記マスキング層をパターニングするステップと、
パターニングされたマスキング層を用いてシリコン窒化膜をエッチングすることにより、前記入力導波路、出力導波路および閉ループ導波路のうち、少なくとも閉ループ導波路、好ましくは全ての閉ループ導波路を形成する、ステップと、
を含む、方法。
【請求項16】
堆積された窒化シリコン層の厚さは、750nm以上、好ましくは、1μm以上、より好ましくは、1.5μm以上である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記窒化シリコン層、SiXNYは、0.71<=(X/Y)<=0.76の組成を有する、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記単結晶の酸化アルミニウム基板は、サファイア基板を備える、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
微小電気機械システム(MEMS)光スイッチにおいて、
単結晶の酸化アルミニウム基板と、
前記基板上に堆積され、厚さが500nm以上のモノリシック窒化シリコン光導波路と、受光ユニットと、アクチュエータとを備え、
前記光導波路は、
前記基板上に堆積されたベース部分であって、前記第1のベース部は、光ビームを受光するように構成される、ベース部分と、
第1の端部および第2の端部を有する懸架部分であって、前記第1の端部には、前記懸架部分が前記ベース部分に一体的に接続され、前記第2の端部は前記光ビームを出射するように構成される、懸架部分と、
を備え、
前記受光ユニットは、光導波路を備え、
前記アクチュエータは、作動信号に応答して前記第2の端部を前記受光ユニットに対して変位させて、前記第2の端部によって出射された光ビームが前記受光ユニットの前記光導波路に入射することを可能にするか又は阻止するように構成される、MEMS光スイッチ。
【請求項20】
前記受光ユニットは、複数の光導波路を備え、前記アクチュエータは、前記作動信号に応答して、前記複数の光導波路のうち、前記第2の端部から出射された光ビームが入射可能な光導波路を1つ選択するように構成されている、請求項19に記載のMEMS光スイッチ。
【請求項21】
前記アクチュエータは、前記作動信号に応答して前記懸架部分を曲げるように構成される、請求項19又は20に記載のMEMS光スイッチ。
【請求項22】
前記アクチュエータは、前記懸架部分を曲げ、それによって前記第2の端部を前記基板に平行な方向および/または前記基板に垂直な方向に変位させるように構成される、請求項21に記載のMEMS光スイッチ。
【請求項23】
窒化シリコン光導波路は、400nm~5500nmの波長の光を案内するように構成されている、請求項19~21のいずれか一項に記載のMEMS光スイッチ。
【請求項24】
前記窒化シリコン導波路は、少なくとも750nm、より好ましくは、少なくとも1μm、さらに好ましくは、少なくとも1.5μmの厚さを有する、請求項19~23のいずれか一項に記載のMEMS光スイッチ。
【請求項25】
窒化シリコン導波路は、隆起型導波路である、請求項19~24のいずれか一項に記載のMEMS光スイッチ。
【請求項26】
窒化シリコン層、SiXNYは、0.75<=(X/Y)<=0.8、より好ましくは、X=3およびY=4の組成を有する、請求項24又は25に記載のMEMS光スイッチ。
【請求項27】
前記受光ユニットの各光導波路は、前記窒化シリコン光導波路と同じ処理中に形成された受光用窒化シリコン光導波路を備える、請求項19~26のいずれか一項に記載のMEMS光スイッチ。
【請求項28】
前記懸架部分は、
前記第1の端部と第3の端部との間で前記基板から少なくとも部分的に離れて延び、前記ベース部分に一体的に接続される、第1部と、
第4の端部と前記第2の端部との間で基板に対して実質的に平行に延びる第2部であって、前記第4の端部が前記第3の端部に一体的に接続される、第2部と、
を備える、請求項19~27のいずれか一項に記載のMEMS光スイッチ。
【請求項29】
前記アクチュエータは、前記基板に固定的に接続された非懸架電極と、懸架電極とを含む静電アクチュエータであり、前記電極に電気的作動信号を印加することによって前記懸架電極と前記非懸架電極との間隔を変化させることができ、前記懸架電極は、前記懸架部分に機械的に結合されている、請求項19~28のいずれか一項に記載のMEMS光スイッチ。
【請求項30】
前記懸架電極および前記非懸架電極は、それぞれ、一つ又は複数の導電層を用いて形成される、請求項29に記載のMEMS光スイッチ。
【請求項31】
前記懸架電極の前記一つ又は複数の導電層が前記懸架部分上に形成される、請求項30に記載のMEMS光スイッチ。
【請求項32】
前記懸架部分の前記窒化シリコン光導波路と前記懸架電極の前記一つ又は複数の導電層との間に配置されたクラッド層を更に備える、請求項31に記載のMEMS光スイッチ。
【請求項33】
前記懸架電極を前記懸架部分に機械的に結合する支持梁を更に備える、請求項29~31のいずれか一項に記載のMEMS光スイッチ。
【請求項34】
一端が前記基板に固定接続され、他端が前記懸架電極に固定接続された懸垂バネを更に備える、請求項29~33のいずれか一項に記載のMEMS光スイッチ。
【請求項35】
前記バネおよび/または支持梁は、前記窒化シリコン光導波路を形成するために使用される窒化シリコン層と同じ窒化シリコン層を用いて形成される、請求項33又は34に記載のMEMS光スイッチ。
【請求項36】
請求項19~35のいずれか一項に記載のMEMS光スイッチと、レーザビームを生成するように構成され、生成されたビームが前記窒化シリコン導波路の前記ベース部分に入射するように、MEMS光スイッチと相互に配置されたレーザ源と、を備えるシステム。
【請求項37】
センサにおいて、
単結晶の酸化アルミニウム基板と、
前記基板に固定接続された少なくとも一端部を有する、懸架された窒化シリコン構造体を備える、感知部材と、
前記感知部材の曲げを感知する感知ユニットと、
を備え、
前記懸架された窒化シリコン構造体は、前記基板上に500nm以上の厚さを有するモノリシック窒化シリコン膜を堆積することによって実現される、センサ。
【請求項38】
前記単結晶の酸化アルミニウム基板は、サファイア基板を備える、請求項37に記載のセンサ。
【請求項39】
特定のタンパク質、DNA、イオン化合物、細菌、またはウイルスなどの少なくとも100ダルトンの粒子および/または分子を捕捉するための捕捉剤または被覆層を更に備える、請求項37又は38に記載のセンサ。
【請求項40】
第1の本体と、前記第1の本体から離間して配置された第2の本体とを更に備え、前記第1の本体および第2の本体は、それぞれ、犠牲層で作られ、前記感知部材は、前記第1の本体および第2の本体にそれぞれ配置された第1のベース部分および第2のベース部分を備え、前記懸架部分は、前記第1のベース部分および第2のベース部分の間に延びる、請求項37~39のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項41】
前記第1のベース部分および第2のベース部分のセグメントのみが、前記第1の本体および第2の本体上にそれぞれ配置され、前記第1のベース部分および第2のベース部分の残りのセグメントは、前記基板上に直接配置される、請求項40に記載のセンサ。
【請求項42】
前記懸架された窒化シリコン構造体の下に配置された前記基板内の凹部または前記基板を貫通する貫通孔のうちの1つを備える、請求項37~39のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項43】
前記懸架された窒化シリコン構造体が、直線または曲線の梁または導波路、螺旋構造体、または膜のうちの1つである、請求項37~42のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項44】
請求項37~43のいずれか一項に記載のセンサであって、
前記基板上に配置され、前記第1の端部と分割端部との間に延びる、入力導波路と、
前記基板上に配置され、合成端部と第2の端部との間に延びる、出力導波路と、
前記基板上に配置され、その一端が、前記入力導波路の分割端部に、好ましくは一体的に接続され、その他端が、前記出力導波路の前記合成端部に、好ましくは一体的に接続される、基準導波路と、
を備え、
前記感知部材は、
前記基板上に配置され、その一端が、前記入力導波路の前記分割端部に、好ましくは一体的に接続され、その他端が、前記懸架された窒化シリコン構造体の端部に、好ましくは一体的に接続される、第1の導波路セグメントと、
前記基板上に配置され、その一端が、前記出力導波路の前記合成端部に、好ましくは一体的に接続され、その他端が、前記懸架された窒化シリコン構造体の対向端部に、好ましくは一体的に接続される、第2の導波路セグメントと、
を備え、
前記懸架された窒化シリコン構造体は、窒化シリコン導波路を備える、センサ。
【請求項45】
前記第1の導波路セグメント、前記第2の導波路セグメント、前記入力導波路および前記出力導波路は、全て、懸架された前記窒化シリコン構造体と同じ窒化シリコン層を用いて作られる、請求項44に記載のセンサ。
【請求項46】
前記第1の導波路セグメントは、前記第1のベース部分に対応し、前記第2の導波路セグメントは、前記第2のベース部分に対応する、請求項44又は45に記載のセンサ。
【請求項47】
前記入力導波路の前記第1の端部に光ビームを出射するレーザ源等の光源と、前記出力導波路の前記第2の端部で出力される光の強度を測定する光強度測定部と、を更に備える、請求項44~46のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項48】
前記感知部材は、前記感知部材の曲げに応じて電気的特性の変化を表示するように構成され、前記感知部材は、前記感知部材の電気的特性を測定するように構成された処理ユニットを備える、請求項37又は38に記載のセンサ。
【請求項49】
前記検知部材は、歪みゲージを備える、請求項48に記載のセンサ。
【請求項50】
前記センサは、加速度計である、請求項48又は49に記載のセンサ。
【請求項51】
前記懸架された窒化シリコン構造体は、750nm以上、好ましくは、1μm以上、より好ましくは、1.5μm以上の厚さを有する、窒化シリコン層から作られる、請求項37~50のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項52】
窒化シリコン層、SiXNYは、0.71<=(X/Y)<=0.76の組成を有する、請求項51に記載のセンサ。
【請求項53】
懸架された窒化シリコン構造体を製造する方法において、
単結晶の酸化アルミニウム基板を提供するステップと、
前記基板上に犠牲層を堆積させるステップであって、前記犠牲層が犠牲材料を備えるステップと、
堆積された前記犠牲層の上に第1のマスキング層を提供するステップと、
前記第1のマスキング層をパターニングするステップと、
パターニングされた第1のマスキング層を使用して前記犠牲層をエッチングし、それによって前記犠牲材料の本体を形成するステップと、
750~950℃の温度で、単一ステップの低圧化学蒸着(LPCVD)ステップにおいて、犠牲材料の基板および本体上に、少なくとも500nm厚のモノリシック窒化シリコン膜を堆積するステップと、
堆積された前記窒化シリコン膜の最上部に第2のマスキング層を提供するステップと、
前記第2のマスキング層をパターニングするステップと、
パターニングされた前記第2のマスキング層を用いて前記窒化シリコン膜をエッチングし、前記窒化シリコン構造体を形成するステップと、
犠牲材料の前記本体をエッチングして、それによって窒化シリコン構造体を懸架させるステップと、
を含む、方法。
【請求項54】
堆積された前記窒化シリコン層の厚さは、750nm以上、好ましくは、1μm以上、より好ましくは、1.5μm以上である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
窒化シリコン層、SiXNYは、0.71<=(X/Y)<=0.76の組成を有する、請求項53又は54に記載の方法。
【請求項56】
前記単結晶の酸化アルミニウム基板は、サファイア基板を備える、請求項53~55のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光周波数コムを生成する為の光源に関する。また、本発明は、この光源に用いられる光共振器の製造方法に関する。本発明はさらに、微小電気機械システム、MEMS、光スイッチおよびそれを備えたシステムに関する。本発明はまた、センサおよびセンサに含まれる懸架された窒化シリコン構造体を製造する方法に関する。
【0002】
当該技術分野で公知の光周波数コムを生成するための光源は、光共振器およびレーザ源を備える。光共振器は、閉ループ導波路が直接または間接的に堆積された基板を備える。閉ループ導波路は、基板上に均等に配置された入力導波路および出力導波路に光学的に結合される。レーザ源は、コヒーレント光のビームを入力導波路に伝送するように構成される。
【0003】
上述したタイプの光共振器は、集積非線形光回路における最も一般的で汎用性のある構築ブロックの一つである。基本設計はそれ自身にループバックされた導波路から成り、それは共振器の入出力導波路に光学的に結合される。閉ループ導波路は、光共振器を形成する。キャビティの形状およびサイズは、一つ又は複数の共振周波数および対応する共振波長を規定する。この共振周波数/波長を有する共振器によって光が受け取られる場合、このキャビティを通って光は循環し、それによってキャビティ内に光エネルギを蓄積する。この光エネルギの蓄積を利用して、通常は高い強度を必要とする現象(例えば、光周波数コムの生成)のために、低出力レーザ源、特にポンプレーザ源の使用を可能にする。
【0004】
光共振器は、4波混合(FWM)を可能にするので、周波数コムを生成するために使用されてもよい。4波混合は、2つの光子が消滅し、2つの新しい光子が生成される非線形光学媒質中で起こる処理である。図9Aは縮退したFWMを示し、2つの消滅した光子は同一のエネルギであるが、図9Bは等しくないエネルギの光子を有する非縮退FWMを示す。FWMは材料に損失を与えることなくエネルギ保存を受けるので、エネルギスプリッティングは両方の場合に対称である必要がある。モードは、図9Cに示すように、低集積分散を有する共振器内でほぼ等間隔に配置される。先に説明した閉ループ導波路のようにFWMが光共振器内で発生する場合、FWMは、異常分散を経験する波長範囲内の共振器モードの大部分または全てを満たし、周波数コムを生成する。
【0005】
光学材料内側で発生するよく知られた非線形効果はカー効果であり、二次電気光学効果とも呼ばれる。この効果は、印加された電界に応答する光学材料の屈折率の変化に対応する。光共振器において、印加された電界は、光そのものに起因する。従って、光共振器内に十分な光エネルギがある場合には、例えばカー効果やその他の非線形効果により、光学材料は非線形的に振る舞い、上記4波混合処理に対応して周波数コムが発生する。主にカー効果の発生により周波数コムが生成される場合、周波数コムはカー周波数コムと呼ばれる。
【0006】
光周波数コムを生成するために使用される周知の光源は、シリコン基板上に堆積された窒化シリコン導波路を使用し、より具体的には、導波路とシリコン基板との間に存在するシリコン酸化物クラッド上に堆積される。このような光源は、一般に、近赤外スペクトル、または代替的に、約800nm~2500nmの光周波数コムを生成するのに適している。酸化シリコン上に堆積された窒化シリコン導波路の組み合わせは、2つの材料間の屈折率のコントラストが大きいので、窒化シリコン内に光を十分に光学的に閉じ込めることができるため、この用途に非常に適していると考えられる。しかしながら、より低い周波数スペクトルにおける光周波数コムの生成は、まだ達成されていない。
【0007】
【概要】
【0008】
本出願の目的は、より広い周波数範囲にわたって光周波数コムを生成するための、より用途の広い光源を提供することである。さらなる目的は、より大きな波長で光周波数コムを生成するための光源を提供することである。より具体的には、約380nm~約800nmの範囲の可視光スペクトル、約800nm~約2500nmの範囲の近赤外スペクトル、および2500nm~5000nmの範囲の基本的な赤外線スペクトルの波長の光周波数コムを生成することができる光源を提供することを目的とする。これは、光共振器の光学性能を損なうことなく達成されるべきである。
【0009】
本発明は、請求項1に記載の光周波数コム生成用光源を提供することにより、上記課題を解決するものである。この光源は、光共振器を備えている。光共振器は、単結晶の酸化アルミニウム基板と、入力導波路と、出力導波路と、閉ループ導波路とを備える。閉ループ導波路は基板上に配置され、入力導波路および出力導波路に光学的に結合される。閉ループ導波路は、入力導波路からの光ビームの少なくとも一部を受け取り、受け取った光ビームを用いて閉ループ導波路内に光エネルギを蓄積し、蓄積された光エネルギを用いて、たとえば、4波混合処理を用いて光周波数コムを生成し、生成された光周波数コムの少なくとも一部を出力導波路に結合するように構成される。閉ループ導波路は、基板上に堆積された厚さ500nm以上のモノリシック窒化シリコン導波路である。
【0010】
本出願人は、シリコン酸化物クラッド上に堆積されたシリコン窒化物導波路は、約3μmを超える波長を有する光を確実に導くことができないことを認識した。これは、これらの波長に対してクラッド内部の光エネルギの高い吸収に起因する。
【0011】
さらに、本出願人は、たとえば、カー効果のために、シリコン基板上のシリコン窒化物導波路またはシリコン酸化物クラッドにおける非線形光学現象を、より大きな波長では確実に達成することができないことを認識した。その結果、FWM処理は、これらの波長で周波数コムを生成しないか、ほとんど生成しない。
【0012】
当技術分野において、化学蒸着処理を用いて窒化シリコン層を製作することは、一度に400nmの厚さの層に限定されると考えられる。400nmより厚いシリコンおよび/または酸化シリコンクラッド上に窒化シリコン層を堆積させると、導波路および/または窒化シリコン層に亀裂が生じやすくなることが示された。出願人は、これが、窒化シリコンの熱膨張係数と下にあるシリコン基板との間の大きな不整合によって引き起こされる高い残留応力によって生じることに気付いた。それにもかかわらず、窒化シリコン導波路において波長1550nmでの異常分散または他の非線形光学現象を達成するために必要とされる厚さは、すでに約700nmである。上述の異常分散が更に大きな波長で必要とされる場合、窒化シリコンのさらに厚い層が必要とされる。
【0013】
必要とされる厚さを有するシリコン上に窒化シリコン導波路を製作することを可能にする多くの方法が当技術分野で知られている。たとえば、比較的薄い窒化シリコン層が互いの後に成長され、次の層が堆積される前に各層を冷却することを可能にする多堆積処理を使用することができる。比較的厚い窒化シリコン層を成長させるための更に知られた方法は、いわゆるダマシン処理である。
【0014】
シリコンまたはシリコン酸化物クラッド上に窒化シリコン導波路を製作するために知られた方法の各々は、残念ながら、導波路の内部の界面を生じる。このような界面は導波路の光学性能に有害であり、損失をもたらす。したがって、これらの方法によって製作され、1550nmを超える波長での異常分散に必要とされる厚さを有する導波路は、可能であっても、比較的多数の内部界面を有し、その結果、光学性能を低下させる。この問題は、これらの比較的長い波長でのクラッドにおける光エネルギの高い吸収に追加される。
【0015】
本発明の目的は、本発明の光源において少なくとも部分的に達成される。単結晶酸化アルミニウムは、比較可能な波長、特に可視スペクトル、近IRスペクトル、および/または基本IRスペクトルの波長において、酸化シリコンよりも低い吸収係数を有する。しかしながら、本出願人は、窒化シリコンと単結晶酸化アルミニウムとの間の屈折率コントラストが、窒化シリコンと酸化シリコンとの間の屈折率コントラストよりも小さいことを認識した。従って、単結晶酸化アルミニウム基板上に堆積された場合、同様のサイズの窒化シリコン導波路は、酸化シリコンクラッド上に堆積された場合よりも少ない光閉じ込めを示す。従って、同様の光閉じ込めを達成するためには、より厚い導波路が必要とされる。この要件は、より大きな波長での異常分散の為にはより厚い導波路が必要であるという先に議論された要件の上に来る。
【0016】
これを達成するために、本出願人は、モノリシック窒化シリコン層の厚さが400nmに制限されるという当該技術分野信念を無視してきた。その代わりに、本出願人は、単結晶酸化アルミニウム基板を使用して、室温で残留応力をほとんど示さない窒化シリコン層を堆積することができることを認識している。したがって、単結晶酸化アルミニウム基板を使用する場合、比較的厚い窒化シリコン層を、窒化シリコン層の亀裂または剥離を導入する危険性をほとんどまたは全く伴わずに堆積することができる。その結果、モノリシック窒化シリコン導波路は、この基板上に堆積されたとき、少なくとも500nmの厚さで確実に製作することができる。
【0017】
本出願の文脈において、導波路またはそのような導波路を作ることができる材料で作られた任意の他の本体は、導波路全体が特定の材料の1つの連続領域を含む場合、モノリシックであると言われることに留意されたい。本発明によれば、モノリシック窒化シリコンは、単一ステップの低圧化学蒸着処理を用いて作ることができる。これは、たとえば、これらの領域間の界面が電子顕微鏡を用いて可視であることによって、窒化シリコンの複数の領域を同定することができる上述の多堆積処理に反する。既知のダマシン処理のような他の処理もまた、界面が依然として材料内部で識別可能なので、モノリシック窒化シリコン層をもたらさない。
【0018】
光源は、光ビームを入力導波路に伝送するためのレーザ源を更に備えることができる。好ましくは、このレーザ源は連続波レーザである。
【0019】
レーザ源は、第1の周波数で光ビームを生成するように構成することができる。さらに、閉ループ導波路は、第1の周波数の周囲に等間隔に配置された周波数成分を有する周波数コムを生成するように構成されてもよい。
【0020】
閉ループ導波路は、カー光周波数コムを生成するように構成されてもよい。
【0021】
窒化シリコン導波路の厚さは、750nm以上、好ましくは、1μm以上、より好ましくは、1.5μm以上である。先に述べたように、波長の増加に対して異常分散を達成するために、および/または、そのような波長を有する光に対して十分な光閉じ込めを提供するために、厚さの増加した導波路が必要とされる。前述したように、モノリシック窒化シリコン層と単結晶酸化アルミニウムの組み合わせを使用することによって、そのような厚さを達成することができる。
【0022】
窒化シリコン導波路は、好ましくはSiXNY層を含み、ここで0.71<=(X/Y)<=0.76である。X=3およびY=4の化学量論的窒化シリコンを使用することができる。
【0023】
単結晶酸化アルミニウム基板は、サファイア基板、α-Al2O3を含むことができるが、他の結晶形態の酸化アルミニウムも除外されない。窒化シリコン導波路は、基板上に直接堆積される代わりに、窒化シリコン導波路と基板との間の中間層上に堆積されてもよい。中間層は、SiXNY層を堆積する前にパターニングされてもよいことに留意されたい。単結晶酸化アルミニウム基板と中間層との厚みの比は、100:1を超えることが好ましく、1000:1を超えることがより好ましい。そのような中間層は、当業者に知られている多くの有用な特性を有することができ、厚さ比は、中間層が、堆積および冷却後に窒化シリコン層内に蓄積される残留応力にほとんどまたは全く影響を及ぼさないことを確実にする。
【0024】
閉ループ導波路、入力導波路および/または出力導波路は、全て、隆起型(ridge)導波路とすることができる。このような導波路を使用することは、一般に、基板または基板上の層のパターニング、例えばトレンチのエッチングなどの追加の処理ステップを必要とし、この目的のために、このようなパターンを製作することは、複雑かつ/またはコストがかかる可能性があるため、好ましい。
【0025】
入力導波路および出力導波路の少なくとも1つ、好ましくは全ては、閉ループ導波路の窒化シリコン導波路と同じ処理中に形成される窒化シリコン導波路である。より具体的には、入力導波路および出力導波路は、同一の厚さおよび材料組成を有してもよい。
【0026】
先に示した入力導波路および出力導波路に対しては、多数の構成が可能である。たとえば、入力導波路および出力導波路は、同じ導波路の一部とすることができる。他の実施形態において、入力導波路および出力導波路は、閉ループ導波路の異なる好ましくは反対側に配置される。
【0027】
別の態様によれば、本発明は、上記光共振器の製造方法を提供する。この方法は、単結晶酸化アルミニウム基板を提供するステップと、750~950℃の温度での単一ステップ低圧化学蒸着(LPCVD)処理において、基板上に少なくとも500nm厚の窒化シリコン膜を堆積するステップと、堆積された窒化シリコン膜の上にマスキング層を提供するステップと、マスキング層をパターニングするステップと、パターニングされたマスキング層を使用して窒化シリコン膜をエッチングするステップとを含み、それによって、入力導波路、出力導波路、および閉ループ導波路のうちの少なくとも、好ましくは全ての閉ループ導波路を形成する。
【0028】
出願人は、上記の処理が光共振器の製造に限定されないことを認識している。代わりに、導波路のような一般的な窒化シリコン構造体を、上記の方法で単結晶酸化アルミニウム基板上に実現することができる。より具体的には、上記の処理では、窒化シリコン構造体の形状が規定される最後のステップのみを修正する必要がある。
【0029】
堆積された窒化シリコン層の厚さは、750nm以上、好ましくは、1μm以上、より好ましくは、1.5μm以上である。追加適または代替的に、窒化シリコン層、SiXNYは、0.71<=(X/Y)<=0.76、好ましくは、0.75、および/または、単結晶酸化アルミニウム基板がサファイア基板を含む組成を有してもよい。
【0030】
本出願人は、窒化シリコン導波路が堆積された単結晶酸化アルミニウム基板を含む任意の光回路素子において、室温で驚くほど低い応力を有する、500nm以上の厚さを有するモノリシック窒化シリコン導波路を実現できることを見出した。本出願人はさらに、そのような低応力モノリシック窒化シリコン層が、微小電気機械システム、MEMSにおいても重要な利点を提供することを認識した。
【0031】
したがって、本発明は、請求項19に記載の微小電気機械システム、MEMS、光スイッチにも関する。
【0032】
本発明によれば、光スイッチは、単結晶の酸化アルミニウム基板と、この基板上に堆積された500nm以上の厚さを有するモノリシック窒化シリコン光導波路とを備える。この光導波路は、基板上に、好ましくは直接堆積され、光ビームを受けるように構成されたベース部分を備える。光導波路は、懸架部分を更に備え、この懸架部分は、第1の端部と第2の端部とを有し、第1の端部には、懸架部分がベース部分に一体的に接続され、第2の端部は、前記光ビームを出射するように構成される。
【0033】
光スイッチは、光導波路を備える受光ユニットと、第2の端部から出射された光ビームが受光ユニットの光導波路に入射することを許可または阻止するために、作動信号に応答して第2の端部を受光ユニットに対して変位させるように構成されたアクチュエータとを更に備える。
【0034】
単結晶の酸化アルミニウム基板上に成長させたとき、モノリシック窒化シリコンの内部の応力が低いので、大きな曲げを示さない懸架された導波路またはその部分を実現することが可能となる。従って、これらの導波路は、上述の懸架部分のようなMEMSデバイス内部の可動要素を構成するために、より確実に使用することができる。
【0035】
受光ユニットは、複数の光導波路を備えてもよく、アクチュエータは、作動信号に応答して、第2の端部から出射された光ビームが入射する複数の光導波路のうちの1つの光導波路を選択するように構成されてもよい。従って、本発明によれば、1個の入力とn個の出力を有する1×n個の光スイッチを実現することができる。
【0036】
アクチュエータは、作動信号に応答して懸架部分を曲げるように構成することができる。一実施形態において、曲げの大部分は、懸架部分がベース部分に接続される位置で生じる。さらに、アクチュエータは、懸架部分を曲げ、それによって第2の端部を基板に平行な方向および/または基板に垂直な方向に変位させるように構成することができる。窒化シリコン導波路の厚さおよび幅は、所望の運動に従って選択することができる。たとえば、窒化シリコン導波路の厚さを増加させると、基板に垂直な方向の曲げに関する機械的剛性が増加する。
【0037】
窒化シリコン光導波路は、400nm~5500nmの間の波長の光を案内するように構成することができる。追加的または代替的に、窒化シリコン導波路は、少なくとも750nm、より好ましくは、少なくとも1μm、さらにより好ましくは、少なくとも1.5μmの厚さを有することができる。窒化シリコン導波路は、対応する窒化シリコン層、SiXNYが0.71<=(X/Y)<=0.76、より好ましくは、X=3およびY=4の組成を有し、後者の組成は化学量論的窒化シリコンに対応する隆起型導波路であってもよい。
【0038】
受光ユニットの各光導波路は、窒化シリコン光導波路と同じ処理中に形成された受光用窒化シリコン光導波路を備えてもよい。より具体的には、これらの導波路の組成および厚さを同一にすることができる。
【0039】
懸架部分は、第1の端部と第3の端部との間で基板から少なくとも部分的に離れて延びる第1の部分を備えてもよく、第1の端部は、ベース部分に一体的に接続される。懸架部分は、第4の端部と第2の端部との間で基板に対して実質的に平行に延びる第2の部分をさらに備え、第4の端部は、第3の端部に一体的に接続される。
【0040】
アクチュエータは、基板に固定接続された非懸架電極と懸架電極とを備えた静電アクチュエータであってもよい。ここで、電極に電気的作動信号を印加することにより、懸架電極と非懸架電極との間隔を変化させることができる。さらに、非懸架電極と懸架電極との間の運動が懸架部分の運動に伝達されるように、懸架電極は懸架部分に機械的に結合される。
【0041】
懸架電極および非懸架電極はそれぞれ、一つ又は複数の金属層などの一つ又は複数の導電層を使用して形成することができる。懸架電極の一つ又は複数の導電層は、懸架部分上に形成することができる。この場合、光スイッチは、懸架部分の窒化シリコン光導波路と懸架電極の一つ又は複数の導電層との間に配置されたクラッド層を更に備えることができる。あるいは、光スイッチは、懸架電極を懸架部分に機械的に結合する支持梁を備えてもよい。
【0042】
光スイッチは、一端部が基板に固定接続され、他端部が懸架電極に固定接続された懸架バネを更に備えることができる。追加的または代替的に、バネおよび/または支持梁は、それぞれ、窒化シリコン光導波路を形成するために使用される窒化シリコン層と同じ窒化シリコン層を使用して形成可能である。より具体的には、これらの層の厚さおよび組成は同一でもよい。
【0043】
更なる態様によれば、本発明はさらに、上記のようなMEMs光スイッチと、レーザビームを生成するように構成され、生成されたビームが窒化シリコン導波路のベース部分に入射するようにMEMs光スイッチと相互に配置されたレーザ源とを備えたシステムを提供する。
【0044】
さらに別の態様によれば、本発明はさらにセンサを提供する。本発明によれば、センサは、単結晶の酸化アルミニウム基板と、少なくとも一端部が基板に固定接続された懸架された窒化シリコン構造体を備える感知部材と、感知部材の曲げを感知する感知ユニットとを備える。この懸架された窒化シリコン構造体は、窒化シリコン膜が500nm以上の厚さを有するモノリシック窒化シリコン膜を基板上に堆積することにより実現される。好ましくは、単結晶酸化アルミニウム基板は、サファイア基板を含む。
【0045】
センサは、少なくとも100ダルトンの特定の粒子および/または分子(例えば、特定のタンパク質、DNA、イオン化合物、細菌、またはウイルス)を捕捉するための捕捉剤または被覆層を更に備えてもよい。たとえば、センサは、ウイルス粒子または細菌の存在を検出するように構成されてもよい。より具体的には、ウイルス粒子または細菌が被覆層に付着し、それによって感知部材の重量が増加する場合、感知部材は曲がる。そのような曲げは、その後、感知ユニットによって検出することができ、それによってウイルス粒子または細菌の存在を証明する。
【0046】
センサは、第1の本体と、第1の本体から離間された第2の本体とを更に備えてもよく、第1の本体および第2の本体はそれぞれ犠牲層で構成される。ここで、犠牲層は、少なくとも大部分がエッチングされて除去された層であり、これにより、上部分に位置する構造体が、たとえば、空気中に懸架されるように懸架可能になる。それに加えて、懸架構造体は、層によって基板に向かう方向に支持されない。このような構造体は、たとえば、片持ち梁を用いて、基板に一点で固定して取り付けることができ、または複数点で基板に固定して取り付けることができる。
【0047】
感知部材は、第1の本体および第2の本体上にそれぞれ配置された第1のベース部分および第2のベース部分を備えることができる。懸架部分は、第1のベース部分と第2のベース部分との間に延びることができる。
【0048】
第1のベース部分および第2のベース部分のセグメントのみを、第1の本体および第2の本体上にそれぞれ配置することができる。第1のベース部分および第2のベース部分の残りのセグメントは、基板上に直接配置することができる。
【0049】
代替的に、センサは、懸架された窒化シリコン構造体の下に配置された基板内の凹部または基板を貫通する貫通孔のうちの1つを備えることができる。
【0050】
懸架された窒化シリコン構造体は、直線または曲線の梁または導波路、螺旋構造体、または膜のうちの1つでもよい。
【0051】
センサはさらに、基板上に配置され、第1の端部と分割端部との間に延びる入力導波路と、基板上に配置され、結合端部と第2の端部との間に延びる出力導波路とを備えてもよい。センサは、基板上に配置され、その一端部が好ましくは一体的に入力導波路の分割端部に接続され、その他端部が好ましくは一体的に出力導波路の結合端部に接続された基準導波路を更に含むことができる。この場合、感知部材は、第1の導波路セグメントを備えることができ、第1の導波路セグメントは、基板上に配置され、その一端部が、好ましくは一体的に入力導波路の分割端部に接続され、その他端部が、好ましくは一体的に懸架された窒化シリコン構造体の端部に接続される。感知部材は、第2の導波路セグメントを更に備えることができ、第2の導波路セグメントは、基板上に配置され、その一端部が、好ましくは一体的に出力導波路の結合端部に接続され、その他端部が、好ましくは一体的に懸架された窒化シリコン構造体の対向端部に接続される。ここで、懸架された窒化シリコン構造体は、窒化シリコン導波路を備える。
【0052】
第1の導波路セグメント、第2の導波路セグメント、入力導波路および出力導波路は全て、懸架された窒化シリコン構造体と同じ窒化シリコン層を使用して作ることができる。追加的または代替的に、第1の導波路セグメントが第1のベース部分に対応し、第2の導波路セグメントが第2のベース部分に対応してもよい。
【0053】
センサは、入力導波路の第1の端部に光ビームを出射するレーザ源などの光源と、出力導波路の第2の端部で出力される光の強度を測定する光強度測定ユニットとを更に備えてもよい。このタイプのセンサにおいて、基準導波路を通過する光は、感知部材を通過する光と干渉する。感知部材の曲げは、その有効屈折率を変化させる。これは、次に、感知部材を通過する光と基準導波路との間の干渉を変化させる。このような変化は、たとえば、光強度測定ユニットまたは光干渉の変化を検出するための何らかの他の手段を用いて検出することができる。
【0054】
感知部材は、感知部材の曲げに応じて電気特性の変化を表示するように構成することができる。さらに、感知ユニットは、感知部材の電気特性を測定するように構成された処理ユニットを備えることができる。たとえば、感知部材は、歪みゲージを備えることができる。このようにして、センサを加速度計として構成することができる。
【0055】
懸架された窒化シリコン構造体は、750nm以上、好ましくは、1μm以上、より好ましくは。1.5μm以上の厚さを有する窒化シリコン層から作ることができる。さらに、窒化シリコン層、SiXNYは、0.71<=(X/Y)<=0.76、より好ましくは、0.75の組成を有することができる。
【0056】
更なる態様によれば、本発明は、懸架された窒化シリコン構造体を製造する方法を提供する。本発明によれば、この方法は、単結晶酸化アルミニウム基板を提供するステップと、基板上に犠牲層を堆積するステップとを含み、犠牲層は犠牲材料を備える。この方法は、堆積された犠牲層の上に第1のマスキング層を提供するステップと、第1のマスキング層をパターニングするステップと、パターニングされた第1のマスキング層を用いて犠牲層をエッチングして、それによって前記犠牲材料の本体を形成するステップとを含む。
【0057】
この方法は、少なくとも500nm厚のモノリシック窒化シリコン膜を、基板および犠牲材料の本体上に、750~950℃の温度で、単一ステップの低圧化学蒸着(LPCVD)ステップにおいて堆積させ、堆積された窒化シリコン膜の上に第2のマスキング層を提供し、第2のマスキング層をパターニングし、パターニングされた第2のマスキング層を用いて窒化シリコン膜をエッチングして、それによって窒化シリコン構造体を形成する追加のステップを含む。最後のステップとして、犠牲材料の本体がエッチングされ、それによって窒化シリコン構造体を懸架させることができる。
【0058】
堆積された窒化シリコン層の厚さは、750nm以上、好ましくは、1μm以上、より好ましくは、1.5μm以上である。追加適または代替的に、窒化シリコン層、SiXNYは、0.71<=(X/Y)<=0.76、より好ましくは、0.75、および/または、単結晶酸化アルミニウム基板がサファイア基板を含む組成を有してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
次に、添付の図面を参照して本発明をさらに詳細に説明する。
図1図1は、本発明に従ってサファイア上にSi微細構造体を実現するための方法を例示する。
図2図2は、本発明によるサファイア上の懸架されたSi4微細構造体を実現するための第1の方法を例示する。
図3図3は、本発明によるサファイア上の懸架されたSi微細構造体を実現するための第2の方法を例示する。
図4図4は、本発明によるサファイア上の懸架されたSi微細構造体を実現するための第3の方法を例示する。
図5図5は、本発明によるサファイア上の懸架されたSi導波路を実現するための第4の方法を例示する。
図6図6は、本発明によるサファイア上の懸架されたSi導波路を実現するための第5の方法を例示する。
図7図7は、本発明による光スイッチの実施形態を例示する。
図8図8は、本発明によるセンサの実施形態を例示する。
図9図9の分図(a)-(c)は、4波混合によって生成されたスペクトルを示す。
図10A図10Aは、光共振器の可能な構成のトップダウン図を示す。
図10B図10Bは、光共振器の可能な構成のトップダウン図を示す。
図10C図10Cは、光共振器の可能な構成のトップダウン図を示す。
図11図11は、導波路内の光の透過と分散の種類を表示するグラフを示す。
【詳細な説明】
【0060】
図1は、本発明によるサファイア上のSi微細構造体を実現するための方法を例示する。この方法では、第1のステップとして、HNO、オゾン蒸気、またはピラニア溶液、即ち、硫酸HSO、水、および過酸化水素Hの混合物を用いて洗浄されたサファイア基板1が提供される。追加的または代替的に、RCA洗浄ステップを実施することができる。
【0061】
次のステップS1として、単一ステップの低圧化学蒸着(LPCVD)処理を用いて、化学量論的Si層2をサファイア基板1上に堆積する。典型的には、NHおよびSiHClは流量比3:1で前駆体として使用され、堆積温度は750~950℃、好ましくは、800~850℃、より好ましくは、825℃で、圧力は約200ミリトールで使用される。Si層2の厚さは、10ナノメートルから10マイクロメートルの範囲にすることができ、好ましくは750nmを超える。
【0062】
化学量論的窒化シリコンの代わりに、0.71<=(X/Y)<=0.76の組成を有する窒化シリコン層SiXNYを堆積してもよい。
【0063】
更なるステップとして、フォトレジスト層3が、堆積されたSi層2上に加えられる。次のステップS2として、フォトリソグラフィ技術を使用して、フォトレジスト層3のパターンを画定する。これを図1の平面図および横断面図に示す。次に、ステップS3において、たとえば、CHF/Oプラズマを用いた反応性イオンエッチングなどのプラズマエッチングにより、フォトレジスト3のパターンをSi層2に転写する。次のステップとして、フォトレジスト層3が除去される。
【0064】
図2は、本発明に従ってサファイア上に懸架されたSi微細構造体を実現するための第1の方法を例示する。図1と比較して、図2の処理は、懸架されたSi微細構造体が形成されるという点で異なる。
【0065】
この方法の最初のステップは、図1と同じである。サファイア基板1が提供され、洗浄される。次のステップとして、単一ステップLPCVD処理を使用して、SiHを前駆体として用いて非晶質シリコン層4を堆積する。この層の厚さは、10nm~10μmの範囲とすることができる。この堆積後、サファイア基板1の洗浄に用いた洗浄ステップと同一または類似の洗浄ステップを用いてもよい。
【0066】
次のステップS4として、図1のLPCVD処理を用いて、化学量論的Si層2をサファイア基板1上に堆積する。さらに、図1と同様に、ステップS5でフォトレジスト層3を加えてパターニングし、ステップS6でパターンをSi層2に転写する。
【0067】
この方法は、ステップS7において、基板1上の所定の位置でSi層2の下の非晶質シリコンをエッチングすることによって継続される。この点において、アモルファスシリコンは、犠牲層として作用する。このエッチングは、典型的には、Si層2内に形成された開口部を通る湿式化学エッチングステップを用いて、たとえば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、TMAHを用いて実施される。このエッチングステップは、リソグラフィステップ中に使用されるマスク層を設計するときに考慮されるべきアンダーエッチングを引き起こす。さらに、Si層2の組成は、図1に関連して説明したように、非化学量論的であってもよい。
【0068】
図2の最終図に示されるように、Si層2は、サファイア基板1から離間された懸架部分2Aを備える。
【0069】
図3は、本発明に従ってサファイア上に懸架されたSi微細構造を実現するための第2の方法を例示する。第1のステップとして、サファイア基板1を提供し、図1と同様に洗浄する。次のステップS7として、図2に関連して説明したのと同様のまたは同一の処理を用いて、アモルファスシリコン層4をサファイア基板1上に堆積させる。ステップS8では、フォトレジスト層3を加えてパターニングする。ステップS9で転写されたパターンは、SF/CHF/Oプラズマを用いた反応性イオンエッチングなどのプラズマエッチングを用いて、アモルファスシリコン層4に転写される。次に、ステップS9において、フォトレジスト層3を除去し、基板1を洗浄する洗浄ステップと同様の洗浄ステップを行う。ステップS9を実施した後、アモルファスシリコン層4の小体が基板1上に残る。
【0070】
次に、ステップS10において、単一ステップLPCVD処理を用いて、図1および図2の堆積処理と同様または同一のSi層2を堆積する。次に、ステップS11において、さらにフォトレジスト層5を加えて、パターニングする。具体的には、蛇行するSiトラックを実現するためのパターン5Aを形成する。他の形状も同様に可能である。このパターンは、ステップS12において、図1および図2のエッチングステップと同様または同一のプラズマエッチングステップによってSiに転写される。エッチング後、更なるフォトレジスト層3がステップS12で除去される。
【0071】
次のステップS13として、非晶質シリコン層4を湿式エッチングおよび乾式エッチングにより除去する。第1に、図2に示すように、TMAHを使用する湿式化学エッチング処理を使用して、湿式化学エッチングステップを実施する。この処理は、Si構造体がほとんど懸架または解放されるまで続く。その後、XeFを使用して気相エッチングなどの乾式エッチングステップを実施し、完全に懸架されたSi構造を得る。
【0072】
図4は、本発明に従ってサファイア上に懸架されたSi微細構造体を実現するための第3の方法を示す。第1のステップとして、図1に示すものと同様にまたは同一に洗浄されたサファイア基板1が提供される。次のステップS14として、単一ステップLPCVD堆積処理を実施して、図2のものと類似または同一の非晶質シリコン層4を堆積する。さらに、SiO層およびSi層を上記の順序で堆積する(図示せず)。次に、これらの層は、ステップS15でパターニングされるフォトレジスト層3で覆われる。フォトレジスト層3内のパターンは、乾式エッチング技術を用いてSi層に転写され、その後、フォトレジスト層3が除去される。その後、シリコンの局所酸化(LOCOS)処理を適用して、非晶質シリコン層4をSiO層を介して局所的に酸化する。SiO層の存在により、酸素は横方向に拡散し、酸化された非晶質シリコン層内に垂直なテーパを生じさせる。酸化後、ステップS16において、Si層を除去するために一つ又は複数の選択的エッチングステップを実施し、それによって、堆積され形成されたSiOが残りの非晶質シリコン層4を残す。このステップの後、垂直方向にテーパを有するテーパ状のアモルファスシリコン層4が得られる。
【0073】
次のステップとして、図1の基板1を洗浄するステップと同様又は同一の洗浄ステップを実施する。次いで、ステップS17において、図1と同様または同一のSi層を堆積するために、単一ステップLPCVD堆積処理を実施する。ステップS18において、図3のものと類似または同一の蛇行構造体5Aを形成するために、更なるフォトレジスト層5が堆積され、パターニングされる。このパターンは、図3と同様または同一のプラズマエッチングステップを用いてステップS19において、Si層2に転写され、フォトレジスト層5が除去される。次のステップS20として、非晶質シリコン層4は、図3のステップと同様または同一の湿式エッチングステップと乾式エッチングステップの組み合わせを使用して除去される。
【0074】
上記の図1図4において、随意のクラッド層(図示せず)を、形成されたSi層上に堆積させることができる。このようなクラッド層は、たとえば、テトラエチルオルトシリケート、TEOS、前駆体を使用する単一ステップLPCVD処理を使用して堆積されるSiO層を備えることができる。このような層の厚さは、1μmのオーダーであってよい。さらに、クラッド層は、N雰囲気中、1100℃で1~3時間のアニーリングステップを受けてもよい。クラッド層はまた、原子層堆積またはAlのスパッタリングを用いて堆積されてもよい。SiOと比べると、Alは中赤外スペクトル範囲で透過性があるという利点を有する。
【0075】
さらに、アモルファスシリコンの代わりに、異なる犠牲材料の犠牲層を使用することができる。
【0076】
さらに、必要に応じて、上記および任意選択的に他の処理ステップを完了した後、サファイア基板1を個々のダイにダイシングすることができる。
【0077】
図5および図6は、本発明に従ってサファイア上に懸濁されたSi微細構造を実現するための第4および第5の方法を示す。ここで、図5図3に示される処理に対応し、図6図4に示される処理に対応する。より具体的には、図5および図6は、矢印によって示される光信号の伝送のために犠牲層上にSi導波路を堆積することの結果を示す。図5に示されるように、Bによって表示される位置での非晶質シリコン層4の強い垂直境界のために、図5において光はほとんど又は全く出力されない。一方、図6の垂直テーパにより、全てではないにしても大部分の入力光が出力される。
【0078】
図4および図6に例示されたテーパ付けは、縮尺通りではないことに留意されたい。より具体的には、典型的なテーパ付けは、水平方向に1nmから50nmの垂直オフセット/μmの範囲内である。
【0079】
図7は、本発明による光スイッチの実施形態を例示する図である。
【0080】
図示するように、光スイッチはサファイア基板1を備えている。サファイア基板1上に、犠牲SiO層が堆積され、パターニングされ、選択的に除去されている。区域IIでは、この犠牲層は完全に除去されるのに対して、区域Iでは、図6に関連して説明したように、犠牲層が垂直テーパを有する遷移区域を示す。
【0081】
光スイッチは、区域Iおよび区域IIの外側に、サファイア基板1上に直接形成された部分10Aを有する入力Si隆起型導波路10を備える。区域Iの内側に、導波路10は、徐々に厚くなる犠牲層によって基板1から徐々に持ち上げられる部分10Bを有する。区域IIの内側では、犠牲層がエッチング除去されている。従って、導波路10は、懸架部分10Cを備える。
【0082】
出力導波路11は、所定の水平間隔ではあるが、導波路10に対向して配置される。導波路10および導波路11の端面は、導波路10および導波路11が整列されていれば、適切な光結合を可能にするように成形される。
【0083】
入力導波路10と同様に、出力導波路11は、サファイア基板1に直接接触する部分11Aと、サファイア基板1から徐々に離れる部分11Bおよび10Bの端部を垂直方向に整列させる部分11Bとを備える。
【0084】
懸架部分10Cは、懸架されたSi梁から形成される支持梁12に固定的に接続されている。別の端部において、支持梁12が懸架電極14Aに接続されている。この電極は、Siベース上に電極金属層が堆積されたものを備える。その反対側には、入力導波路10と同様に、サファイア基板1に直接接続された部分と、犠牲層によって基板1から徐々に持ち上げられた部分と、基板1上に懸架された部分とを有するSiバネ13A、13Bを用いて、懸架電極14Aがサファイア基板1に接続されている。
【0085】
非懸架電極14Bは、Siベースを備え、このSiベースは、犠牲層上に配置され、犠牲層は、次にサファイア基板1上に堆積される。Siベースの最上部上に電極金属層を堆積した。
【0086】
電極14A、電極14Bの間に電圧を印加することによって、これらの電極は、一緒に引っ張られるか、または押し離される。これにより、印加された電圧は作動信号を形成し、それに応じて懸架部分10Cは矢印で示すように側方運動を実施する。このようにして、入力導波路10と出力導波路11との間の光結合を確立または切断することができる。
【0087】
複数の出力導波路を隣接して配置することにより、1×nスイッチを実現することができる。より具体的には、入力導波路とn個の出力導波路のうちの1つとの間の光結合を、作動信号に依存して確立することができる。
【0088】
図7に示されるような支持梁12を使用することのあり得る欠点は、支持梁12が懸架部分10Cに接続される地点の光損失に関連する。この問題に対処するために、Si支持梁12と懸架部分10Cとの間に、この間隔をSiO層などのクラッド層で満たすことが可能である。このようにして、クラッド層またはクラッド層として使用されるのに適した材料が、懸架部分10Cと支持梁12とを接続するために使用される。
【0089】
さらに他の実施形態において、懸架電極14Aは懸架部分10Cの上、下または側部に直接形成される。光損失を防止するために、SiO層などのクラッド層を、懸架部分10Cと電極14Aの金属層との間に設けることができる。
【0090】
図8は、本発明による一般的なセンサの一実施形態を例示する。このセンサは、サファイア基板1上にSi導波路を備えた基準アーム20と、サファイア基板1上にSi導波路を備えた検出アーム21とを備えている。
【0091】
感知アーム21は、サファイア基板1上に直接配置された部分21Aと、区域22内でエッチング除去された犠牲層を使用してサファイア基板1上に懸架部分21Bとを備える。テーパ付け(図示せず)を使用して、部分21Aと部分21Bとの間の遷移部を設けることができる。
【0092】
入力Si導波路23に入力された光は、基準アーム20および感知アーム21にわたって、好ましくは等しく分割される。出力Si導波路24において、これらのアームからの光は結合され、光強度計(図示せず)に送られる。
【0093】
感知アーム21の懸架部分21Bは変形してもよい。たとえば、懸架部分21Bは、基板1に向かって、または基板1から離れるように曲げられてもよい。代替的または追加的に、懸架部分21Bは、サファイア基板1に平行な方向に曲げられてもよい。
【0094】
運動の方向に拘わらず、ほとんどの場合、懸架部分21Bの変形は、懸架部分21Bの有効屈折率を変化させる。その結果、感知アーム21を通る有効光路長は変化するが、基準アーム20を通る光路長は本質的に一定である。
【0095】
一部の実施形態において、特に、必ずしもそうではないが、懸架部分21Bが螺旋のように示されるよりも複雑な形状を有するものでは、基準アーム20はまた、感知アーム21に関して説明されたものと同様の懸架部分を備えることができ、および/または、感知窓22はセンサの両方のアームに延びることができる。これにより、基準アームは、より類似した環境に置かれ、したがって、より良い基準を提供することが可能になる。
【0096】
出力導波路24では、両方のアーム20,21からの光が干渉する。相対的位相オフセットに依存するが、干渉は、建設的または破壊的であり得る。この差は、出力導波路24に接続された光強度計を用いて決定することができる。
【0097】
図8のセンサは、測定された光強度値を見て、この値を既知の基準値または前に決定された値、好ましくはアームが曲げられていない感知アーム21の状態を表す値と比較することによって、懸架部分21Bの曲げを決定するために使用することができる。より具体的には、これらの値を比較することによって、曲げの量を決定または推定することができる。
【0098】
センサアーム21Bの曲げは、センサの種類によって様々な要因によって生じ得る。たとえば、少なくとも懸架部分21Bは、特定の種、粒子、分子、病原体などを捕捉するための捕捉剤または被覆層を備えてもよい。これらの種、粒子、分子または病原体が懸架部分21Bに付着すると、この部分は、蓄積された重量の結果として曲がり得る。このようにして、センサを付着粒子の存在および/または量を検出するための検出器として使用することができる。一部の実施形態において、捕獲剤はまた、基準アーム20上に加えることができる。さらに、捕捉剤が感知アーム21にのみ加えられる一部の実施形態において、基準アーム20はまた、感知アーム21と同様の懸架部分を有してもよい。
【0099】
懸架部分21Bは、センサ自体の加速度の結果として曲げられてもよい。従って、図8のセンサを加速度計として使用することが可能である。また、懸架部分21Bは、超音波との衝突により曲げられてもよい。従って、図8のセンサを超音波センサとして使用することが可能である。
【0100】
図8では、犠牲層を使用して、部分21Bを基板1上に懸架させた。また、懸架部分21Bは、基板1の貫通孔に凹部を配置することにより実現することもできる。このような貫通孔は、HSO-HPO混合物のような適切な湿式エッチング剤および裏側に堆積されたSiOのような適切なマスク層を使用して、サファイア基板1の裏側からエッチングされる。このようなエッチング液は、サファイヤ基板1の前側に到達した時点で、懸架部分21Bをエッチングしないか、ほとんどエッチングしないことが好ましい。貫通孔を実現するために湿式エッチング液を用いる場合には、C面配向サファイアを用いることが好ましい。貫通孔を使用する利点は、センサが、検出されるべき粒子の流れの内側に、この流れの内側の粒子を完全にブロックすることなく置かれることである。
【0101】
感知アーム21は、直線導波路として示されている。懸架される膜、懸架される相互連結構造体、および懸架される螺旋部などの他の形状も除外されない。
【0102】
図8に描写されるセンサは光学用途であるが、本発明はこれに限定されない。たとえば、感知アーム21の曲げを検出するために干渉に依存する代わりに、歪みゲージまたは他の電気的手段などの非光学的手段を使用することができる。この場合、基準アーム20を省略してもよい。
【0103】
次に、図9図11を参照して、非線形光学用途のためのサファイア基板上のモノリシック窒化ケイ素の用途をより詳細に説明する。
【0104】
閉ループ導波路を用いた光共振器は、光周波数コムを生成するために4波混合に依存する。図9Aおよび図9Bに示すように、FWMは、2つの光子が消滅し、2つの新しい光子が非線形光学材料内に生成される非線形光学処理である。具体的には、図9Bは、2つの消滅した光子が同一のエネルギ(w)である縮退FWMを示し、一方、図9Bは、2つの消滅した光子が等しくないエネルギ(w、w)である非縮退FWMを示す。元の光子と新たに生成された光子との間の周波数の差(D)は、隣接する共振器モード間の距離、またはこの距離の整数倍に対応する。
【0105】
FWMは材料に損失を与えることなくエネルギ保存を受けるので、エネルギスプリッティングは両方の場合に対称である必要がある。モードは、図9Cに示されるように、低集積分散を有する共振器内でほぼ等間隔である。この場合、FWMはすべてのキャビティモードを満たし、周波数コムを作成する。コム形成の動力学は非常に複雑であり、必ずしも隣接しないモードの縮退FWMと非縮退FWMの両方を含む。
【0106】
図10A図10Cは、それぞれ、本発明による光源の一部であり得る光共振器を示す。具体的には、これらの図の各々は、結合セクション102C;102C’を有する入力導波路102Aと、結合セクション102C;102C’’も有する出力導波路102Bと、少なくとも1つの閉ループ導波路101;101A、101Bとを示す。入力導波路および/または出力導波路の結合セクションは、それぞれの導波路を閉ループ導波路と光学的に結合する。
【0107】
示された実施形態における閉ループ導波路101は、リング共振器またはリングキャビティとも呼ばれるものである。しかしながら、導波路101は、レーストラック導波路のような他の形状をとることもできる。レーストラック導波路は、複数の半円形部と複数の直線部とが一体的に接続され、導波路全体がループバックする閉ループ導波路である。
【0108】
閉ループ導波路は光結合により周囲と相互作用する独立した構造である。これは、自由空間を介して、または導波路に直接接続されたファイバを介して、導波路上にレーザを直接向けるなど、多くの方法で達成することができる。このような結合は、導波路101に前記レーザを内部結合するためのプリズムを設けることによって、または導波路101に結合格子を設けることによって可能にすることができる。示された実施形態において、光結合は、閉ループ導波路101に隣接して結合部102C;102C’、102C’’を配置することによって可能になる。結合部とそれに隣接する閉ループ導波路の部分とは、互いに十分に近接して配置されると、方向性結合器を形成する。したがって、光は、結合部102C;102C’、102C’から閉ループ導波路101にジャンプし、その逆も同様である。
【0109】
閉ループ導波路101は、好ましくはサファイア基板を備える単結晶酸化アルミニウム基板100上に堆積された窒化ケイ素導波路である。入力導波路102Aおよび出力導波路102Bもまた、この材料上に製作することができ、好ましくは隆起型導波路である。しかしながら、これらの導波路を他の材料で作ることも可能である。閉ループ導波路101は、500nm以上の厚さを有する。示される上面視は、導波路のいずれかの高さに対する洞察を提供するものとして解釈されるべきではない。他の導波路は、好ましくは閉ループ導波路101と同じ厚さであるが、これらはまた、互いに異なるだけでなく、閉ループ導波路101の厚さと異なる厚さを有することができる。同様に、導波路の幅および長さ、ならびにそれらの間の距離は、図10A図10Cに示されるように、正確な尺度ではない。
【0110】
図10Aは、入力導波路102A、結合セクション102C、および出力導波路102B特定の実施形態を示すが、ここには、が全て一体的に接続され、特定の実施形態は、単一の直線導波路によって集合的に実施形態である。入力導波路および/または出力導波路が曲げられ、および/または、湾曲される更なる実施形態が可能である。光が直線導波路内を移動する方向は、閉ループ導波路に結合された光が前記閉ループ導波路内を移動する方向を決定する。同様に、光が閉ループ導波路内を移動する方向は、出力導波路に結合された光が前記出力導波路内を移動する方向を決定する。この特定の実施形態において、光は、入力導波路102A内を左から右に進み、その結果、入力導波路の結合セクションに隣接する閉ループ導波路の部分内を左から右に進む。閉ループ導波路101では、光は時計回りに進行する。この実施形態において、入力導波路および出力導波路の結合セクションは、同じ導波路片によって具体化される。したがって、光はまた、出力導波路の結合セクションにおいて左から右に移動する。
【0111】
図10Bは、入力導波路102Aおよび出力導波路102Bが、閉ループ導波路101の異なる側、具体的には反対側に配置される特定の実施形態を示す。この特定の実施形態において、光は、入力導波路102A内を左から右に移動し、その結果、入力導波路の結合部に隣接する閉ループ導波路の部分内を左から右に移動する。閉ループ導波路101では、光は時計回りに移動する。一部の光は、閉ループ導波路と入力導波路の結合セクションとによって形成された方向性結合器を通って漏れる。この実施形態において、入力導波路および出力導波路の結合セクションは、異なる導波路片によって具体化される。出力導波路102Bの結合部102C’’は、光が右から左に移動する閉ループ導波路の一部に隣接しているので、出力導波路に結合された閉ループ導波路の一部から結合された光もまた、右から左に移動する。その結果、光は光共振器から受信したのと同じ方向に出射される。
【0112】
図示されていない一部の実施態様において、入力導波路102Aは、結合セクション102C’を越えて延び、ループバックして出力導波路102Bの結合セクション102C’’に一体的に接続する。そのような実施形態において、結合セクション102C’を越えて漏洩する任意の入力光が、最終的に出射される光ビームの一部であることを可能にし、一方、閉ループ導波路のイン結合およびアウト結合挙動は、別個に構成することができる。図示されていない一部の実施形態において、結合セクション102C’および結合セクション102C’’は、複数の閉ループ導波路がそれらの間に配置されるのに十分な長さにすることができ、複数の閉ループ導波路の各々は、入力導波路および出力導波路に光学的に結合され、互いに光学的に結合されない。
【0113】
図10Cは、隣接して配置された2つの閉ループ導波路101A、閉ループ導波路101Bが互いに光学的に結合される特定の実施形態を示す。ループの寸法は同一である必要はない。しかしながら、ループ寸法が同一であれば、より急峻なフィルタ効果が得られる。
【0114】
図10Bの実施形態と同様に、入力導波路102Aおよび出力導波路102Bは、閉ループ導波路101A、閉ループ導波路101Bの異なる側、具体的には反対側に配置される。
【0115】
この特定の実施形態において、光は、先に説明したのと同じ方向結合機構によって、閉ループ導波路101A、閉ループ導波路101Bの間で結合される。その結果、光は閉ループ導波路101A内を時計回りに移動するのに対して、閉ループ導波路101B内を反時計回りに移動する。
【0116】
図11は、窒化ケイ素導波路において1550nmの波長を有する光に対して起こり得る分散のタイプを示す。具体的には、水平X軸は、そのような導波路が有することができる多くの可能な幅、特に0.5~2マイクロメートルを示す。垂直Y軸は、そのような導波路が有することができる多くの可能な高さ、特に0.1~2マイクロメートルを示す。幅/高さの組合せが前記導波路を領域Cに入れる導波路において、この波長の光は全く導波されない。幅/高さの組合せが前記導波路を領域Bに入れる導波路において、この波長の光は通常の分散を経験する。幅/高さの組合せが前記導波路を領域Aに入れる導波路において、この波長の光は異常分散を経験する。図から分かるように、波長1550nmの光が異常分散を起こすためには、厚さ約900nmの導波路が必要であり、これは、比較的厚い窒化ケイ素導波路が、赤外スペクトルの波長に対して異常分散を達成するために必要であるという以前の主張を示している。以上、本発明の詳細な実施形態を用いて説明した。しかしながら、添付の特許請求の範囲およびその等価物によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、これらの実施形態に対して様々な修正が可能であることは、当業者には明らかである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11
【国際調査報告】