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特表2024-514324低ヤング率結合マトリックス材料を有する光ファイバローラブルリボン
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  • 特表-低ヤング率結合マトリックス材料を有する光ファイバローラブルリボン 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-01
(54)【発明の名称】低ヤング率結合マトリックス材料を有する光ファイバローラブルリボン
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20240325BHJP
【FI】
G02B6/44 371
G02B6/44 366
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562840
(86)(22)【出願日】2021-08-30
(85)【翻訳文提出日】2023-12-06
(86)【国際出願番号】 US2021048129
(87)【国際公開番号】W WO2022220860
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】63/174,125
(32)【優先日】2021-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509094034
【氏名又は名称】オーエフエス ファイテル,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【弁理士】
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100209808
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 高志
(72)【発明者】
【氏名】リ,ヘン
(72)【発明者】
【氏名】スカルパーチ,アナベル,ジェー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイマン,ピーター,エー
【テーマコード(参考)】
2H201
【Fターム(参考)】
2H201AX13
2H201BB06
2H201BB08
2H201BB12
2H201BB22
2H201BB23
2H201BB55
2H201BB65
2H201BB68
2H201BB75
2H201BB80
2H201DD06
2H201DD14
2H201KK02
2H201KK22C
2H201KK29C
2H201KK33C
2H201KK34C
2H201KK36C
2H201KK45C
2H201KK62
2H201KK63
2H201KK65
2H201KK72
2H201KK76
(57)【要約】
本発明の実施形態は、低ヤング率結合マトリックス材料を有する光ファイバリボンを含む。光ファイバリボンは、互いに隣接して直線状に配列された複数の光ファイバを含む。光ファイバリボンはまた、少なくとも2つの隣接する光ファイバの外面の少なくとも一部に塗布される複数の結合マトリックス材料部分を含む。結合マトリックス材料部分は、低いヤング率を有する。また、複数の結合マトリックス材料部分は、光ファイバの線形アレイが部分的に結合された光ファイバリボンを形成するように、少なくとも2つの隣接する光ファイバの外面の少なくとも一部に塗布される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部分的に結合された光ファイバリボンであって、
線形アレイ状に隣接して配置された複数の光ファイバと、
少なくとも2つの隣接する前記光ファイバの外面の少なくとも一部に塗布される複数の結合マトリックス材料部分とを含み、
前記複数の結合マトリックス材料部分は低ヤング率を有し、
前記複数の結合マトリックス材料部分は、前記光ファイバの線形アレイが部分的に結合された光ファイバリボンを形成するように、前記少なくとも2つの隣接する光ファイバの外面の少なくとも一部に塗布されることを特徴とする光ファイバリボン。
【請求項2】
前記複数の結合マトリックス材料部分の前記ヤング率は、約0.1メガパスカル(MPa)から約30MPaの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバリボン。
【請求項3】
前記複数の結合マトリックス材料部分の前記ヤング率は、約0.2メガパスカル(MPa)から約30MPaであることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバリボン。
【請求項4】
前記結合マトリックス材料は、前記結合マトリックス材料の前記ヤング率を制御するためのオリゴマーを含むことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバリボン。
【請求項5】
前記オリゴマーは、前記結合マトリックス材料の全体積の約50パーセントから約70パーセントの範囲内であることを特徴とする請求項4に記載の光ファイバリボン。
【請求項6】
前記結合マトリックス材料は、前記結合マトリックス材料の前記ヤング率を制御するためにモノマーを含むことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバリボン。
【請求項7】
前記複数の結合マトリックス材料部分は、長さが約5ミリメートル(mm)から約20ミリメートル(mm)であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバリボン。
【請求項8】
前記同じ2つの隣接する光ファイバに沿った前記結合マトリックス材料部分間の距離は、約20ミリメートル(mm)から約20ミリメートル(mm)であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバリボン。
【請求項9】
前記同じ2つの隣接する光ファイバに沿った前記結合マトリックス材料部分間の距離は、約40ミリメートル(mm)であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバリボン。
【請求項10】
前記光ファイバリボンは、前記光ファイバリボンのキロメートル(km)当たり約0.010から約0.030キログラム(kg)の前記結合マトリックス材料を有することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバリボン。
【請求項11】
前記光ファイバリボンは、前記光ファイバリボンのキロメートル(km)当たり約0.024キログラム(kg)の前記結合マトリックス材料を有することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバリボン。
【請求項12】
前記結合マトリックス材料は、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂またはエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバリボン。
【請求項13】
実質的に円形であり、複数の光ファイバを受容するように寸法決めされた複数のマルチファイバユニットチューブと、
少なくとも1つのマルチファイバチューブ内に配置された複数の部分的に結合された光ファイバリボンと、
前記複数のマルチファイバユニットチューブを囲むジャケットとを含み、
前記複数の部分的に結合された光ファイバリボンは、少なくとも2つの隣接する光ファイバの外面の少なくとも一部に塗布された複数の結合マトリックス材料部分を用いて部分的に結合され、
前記結合マトリックス材料部分は低ヤング率を有することを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項14】
前記複数の結合マトリックス材料部分の前記ヤング率は、約0.2メガパスカル(MPa)から約30MPaであることを特徴とする請求項13に記載の光ファイバケーブル。
【請求項15】
前記結合マトリックス材料は、前記結合マトリックス材料の前記ヤング率を制御するためのオリゴマーを含むことを特徴とする請求項13に記載の光ファイバケーブル。
【請求項16】
前記オリゴマーは、前記結合マトリックス材料の全体積の約50パーセントから約70パーセントの範囲内であることを特徴とする請求項15に記載の光ファイバケーブル。
【請求項17】
前記結合マトリックス材料は、前記結合マトリックス材料の前記ヤング率を制御するためにモノマーを含むことを特徴とする請求項13に記載の光ファイバケーブル。
【請求項18】
前記光ファイバリボンは、前記光ファイバリボンのキロメートル(km)当たり約0.024キログラム(kg)の前記結合マトリックス材料を有することを特徴とする請求項13に記載の光ファイバケーブル。
【請求項19】
前記複数のマルチファイバユニットチューブは、12本の前記マルチファイバユニットチューブをさらに含み、12本の前記マルチファイバユニットチューブの各々は、部分的に結合された12本の光ファイバリボンを含むことを特徴とする請求項13に記載の光ファイバケーブル。
【請求項20】
前記部分的に結合された光ファイバリボンの少なくとも1つは、前記光ファイバリボンが実質的に円形に巻かれるように結合されることを特徴とする請求項13に記載の光ファイバケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の参照]
本特許出願は、「Low Modulus Matrix in Rollable Ribbon」と題する米国特許法119条(e)~米国特許仮出願63/174,125(2021年4月13日)の優先権を主張するその内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、光ファイバのローラブルリボンに関する。より具体的には、本発明は、低ヤング率結合マトリックス材料を有する光ファイバローラブルリボンに関する。
【背景技術】
【0003】
光ファイバリボンは、その長さに沿って互いに結合された2つ以上の平行な光ファイバを含む。一般にマトリックスまたは結合マトリックスと呼ばれる材料は、ファイバを互いに結合する。「平坦な」または「カプセル化された」光ファイバリボンにおいて、平行光ファイバは、結合マトリックス材料内に完全に封入され得る。
【0004】
ローラブル(rollable)リボンまたはローラブルリボンユニットとも呼ばれる部分的に結合された光ファイバリボンでは、光ファイバリボンを形成する光ファイバは、その全長にわたってマトリックス材料で結合されない。むしろ、光ファイバは、マトリクス材料と断続的に結合され、したがって、光ファイバリボンが、略円筒形状に折り畳まれるか、または巻かれることを可能にし、円形ケーブルのより良好な充填を可能にし、従来の完全に結合されたリボン構造を有する光ファイバケーブルと比較して、所与のケーブル直径に含まれるより多くの光ファイバをもたらす。
【0005】
しかしながら、従来の部分的に結合された光ファイバリボンでは、各光ファイバの全部分を完全に被覆する均一な結合マトリックス材料の欠如は、光ファイバのうちの1つ以上を光信号伝送損失に比較的敏感にさせ得る。すなわち、ローラブルリボン内の光ファイバに断続的に塗布される従来の結合マトリックス材料は、光ファイバのうちの1つ以上に外部応力を誘発し、望ましくない光信号伝送損失を引き起こし得る。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、低いヤング率の結合マトリックス材料を有する光ファイバリボンにおいて構成される。光ファイバリボンは、互いに隣接して直線状に配列された複数の光ファイバを含む。光ファイバリボンはまた、少なくとも2つの隣接する光ファイバの外面の少なくとも一部に塗布される複数の結合マトリックス材料部分を含む。結合マトリックス材料部分は、低いヤング率を有する。また、複数の結合マトリックス材料部分は、光ファイバの線形アレイが部分的に結合された光ファイバリボンを形成するように、少なくとも2つの隣接する光ファイバの外面の少なくとも一部に塗布される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態による、部分的に結合された光ファイバリボンまたはローラブルリボンの斜視図である。
図2】本発明の実施形態による、別の部分的に結合された光ファイバリボンまたはローラブルリボンの上面図である。
図3A】本発明の実施形態による、ロールされる前の、部分的に結合された光ファイバリボンまたはローラブルリボンの斜視図である。
図3B】本発明の実施形態による、巻かれた後の、図3Aの部分的に結合された光ファイバリボンまたはローラブルリボンの斜視図である。
図4】本発明の実施形態による比較的低いヤング率の結合マトリックス材料を有する部分的に結合された光ファイバリボンおよび従来の比較的高いヤング率の結合マトリックス材料を有する部分的に結合された光ファイバリボンについてのリボンスプール上の伝送損失のグラフである。
図5】本発明の実施形態による比較的低いヤング率の結合マトリックス材料を有する部分的に結合された光ファイバリボンのケーブル化後の伝送損失と、従来の比較的高いヤング率の結合マトリックス材料を有する部分的に結合された光ファイバリボンのケーブル化後の伝送損失とのグラフである。
図6A】本発明の実施形態による、部分的に結合された光ファイバリボンの断続的に塗布された結合マトリックス材料部分が低ヤング率の結合マトリックス材料である、複数の部分的に結合された光ファイバリボンを含む光ファイバケーブルまたはルースチューブケーブル構造の斜視図である。
図6B】本発明の実施形態による、複数の部分的に結合された光ファイバリボンを含む図6Aの光ファイバケーブルまたはルースチューブケーブル構造の断面図であり、部分的に結合された光ファイバリボンの断続的に塗布された結合マトリックス材料部分は、低ヤング率の結合マトリックス材料である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の説明において、同様の参照番号は、図面の説明を通して本発明の理解を高めるために同様の構成要素を示す。また、特定の特徴、構成、および配置が、以下で論じられるが、そのようなものは、例証目的のみのために行われることを理解されたい。当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、他のステップ、構成、および配置が有用であることを認識するであろう。
【0009】
図1は、4ファイバ部分結合光ファイバリボンまたはローラブルリボン30の斜視図である。光ファイバリボン30は、リボン状に直線状(線形)に配列された複数の光ファイバ32を有し、各光ファイバ32は、ガラス部34と被覆部36とを有する。光ファイバリボン30において、光ファイバ32の周囲の部分は、結合またはリボンマトリックス材料部分38で断続的に覆われている。示されるように、マトリックス材料部分38は、隣接する光ファイバ32の間の光ファイバ32の外面の様々な部分に沿って(均一に又は不均一に)塗布され、結合される。マトリックス材料部分38は、結合マトリックス材料が、結果として生じる部分的に結合された光ファイバリボンが実質的に平らに横たわることができるように充分に高密度であるが、結果として生じる部分的に結合された光ファイバリボンが実質的に円形の形状に巻かれることを可能にするように充分に疎であるような方法で、隣接する光ファイバの部分にわたって塗布される。
【0010】
図2は、8本のファイバ部分結合光ファイバリボンまたはローラブルリボン40の上面図である。光ファイバリボン40は、複数の光ファイバ42がリボン状に直線状に配列され、各光ファイバ42は、ファイバ部と、ファイバ部の周囲の被覆部とを有する。光ファイバリボン40はまた、適切な方法で塗布され、隣接する光ファイバ42間の様々な部分に結合する複数の結合またはリボンマトリックス材料部分44を含む。示されるように、マトリクス材料部分44は、光ファイバ42にわたって互い違いの均一なパターンで塗布され得るが、マトリクス材料部分44は、隣接する光ファイバ42が相互に接続されたままであり、したがって光ファイバリボンを残すように、しかし、光ファイバリボン40が、複数のより密集して構成されたユニット形状のうちの1つに巻かれる及び/又は折り畳まれることを可能にするように、光ファイバ42に塗布される。
【0011】
マトリックス材料部分44は、隣接する光ファイバ42に沿って繰り返しパターンで塗布され得る。本発明の実施形態によれば、各マトリックス材料部分44は、長さが約5ミリメートル(mm)から約20ミリメートル(mm)である。また、本発明の実施形態によれば、同じ隣接する光ファイバ42に沿ったマトリックス材料部分44間の距離、すなわちピッチは、約20ミリメートル(mm)から約100ミリメートル(mm)である。例えば、本発明の実施形態によれば、同じ隣接する光ファイバ42に沿ったマトリックス材料部分44間の距離(ピッチ)は、約40ミリメートル(mm)である。
【0012】
本発明の実施形態によれば、部分的に結合された光ファイバリボンに使用されるマトリックス材料の量は、光ファイバリボンのキロメートル(km)当たり約0.010キログラム(kg)から約0.030キログラム(kg)である。部分的に結合された光ファイバリボンに使用されるマトリックス材料の量は、マトリックス材料部分44間の距離(ピッチ)およびマトリックス材料部分44の各々の長さに依存する。本発明の実施形態によれば、長さが5~20mmであり、約40mm離間したマトリックス材料部分44を有する部分的に結合された光ファイバリボンの場合、部分的に結合された光ファイバリボンに使用されるマトリックス材料の量は、光ファイバリボンのkm当たり約0.024kgである。
【0013】
図3Aは、本発明の実施形態による、ロールされる前の、部分的に結合された光ファイバリボンまたはローラブル光ファイバリボン50の斜視図である。光ファイバリボン50は、4ファイバローラブル光ファイバリボン用の複数の光ファイバ52、例えば光ファイバ52A~Dを含む。巻かれる前に、光ファイバリボン50内の光ファイバ52A~Dは、部分的に結合された光ファイバの線形アレイとして存在する。光ファイバリボン50はまた、複数の結合またはリボンマトリックス材料部分54、例えばマトリックス材料部分54A~Bを含み、これらは適切な方法で塗布され、隣接する光ファイバ52間の様々な部分に結合される。
【0014】
図3Bは、本発明の実施形態による、巻かれた後の図3Aの光ファイバリボン50の斜視図である。示されるように、光ファイバ52A-Dは、より高密度に構成されたユニット形状、例えば、示されるように、略円形形状に巻かれ、および/または折り畳まれる。上述のように、例えば、部分的に結合された光ファイバリボンまたは他の適切な構造を有する光ファイバリボンである、ローラブル光ファイバリボン50の特定の構造のために、ローラブル光ファイバリボン50は、より高密度に構成されたユニット形状に巻かれ、および/または折り畳まれることができる。
【0015】
従来、結合またはリボンマトリックス部分に使用される材料は、光ファイバの線形アレイを一緒に結合して光ファイバリボンにする任意の適切な材料であってよく、これは上記で説明された特性を含む。例えば、結合マトリックス材料は、任意の好適な紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、または他の好適な結合マトリックス材料であり得る。また、従来、結合マトリックス材料は、典型的には、約40~600メガパスカル(MPa)またはニュートン/ミリメートル2(N/mm2)の範囲内のヤング率を有する。
【0016】
上述したように、従来の部分的に結合された又はローラブル光ファイバリボンでは、各光ファイバの全部分を完全に覆う均一な結合又はリボンマトリックス材料の欠如により、光ファイバの1つ以上が光信号伝送損失に対して比較的敏感になり得る。さらに、結合またはリボンマトリックス材料の比較的高いヤング率は、光信号伝送損失にさらに寄与する。
【0017】
本発明の実施形態によれば、部分的に結合された又はローラブル光ファイバリボンは、比較的低いヤング率、例えば約0.2MPaのヤング率を有する結合又はリボンマトリックス材料部分を含む。部分的に結合された又はローラブル光ファイバリボンは、線形配列で互いに隣接して配置された2つ以上の光ファイバと、少なくとも2つの隣接する光ファイバの外面の少なくとも一部に塗布された結合又はリボンマトリックス材料とを含むことであって、結合またはリボンマトリックス材料は、比較的低いヤング率を有する。本発明の実施形態によれば、比較的低いヤング率のマトリックス材料部分は、マトリックス材料部分が結合される光ファイバに対してより少ない外部応力を誘起し、したがって、マトリックス材料が光ファイバの光信号伝送損失に及ぼす影響を低減する。
【0018】
本発明の実施形態によれば、結合またはリボンマトリックス材料は、光ファイバの線形アレイを結合して光ファイバリボンにし、比較的低いヤング率、例えば約0.1~30メガパスカル(MPa)またはニュートン/ミリメートル2(N/mm2)の範囲内のヤング率を有する任意の適切な材料であり得る。例えば、結合またはリボンマトリックス材料は、任意の適切な紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、または例えば約0.1~30MPaの範囲内の比較的低いヤング率を有する他の適切な結合またはリボンマトリックス材料であり得る。
【0019】
ボンディングまたはリボンマトリックス材料は、典型的には以下の4つの成分からなる:(1)ヤング率を制御し、場合によっては粘度を制御するためのオリゴマー(総体積の約50~70%)、(2)粘度を制御し、場合によってはヤング率を制御するためのモノマー(総体積の約15~40%)、(3)剥離を容易にするかまたは固着を防止するための剥離剤または滑り剤(総体積の約1~10%)、(4)硬化を促進し、かつ/または全ての成分を互いに反応および/または混合させるための光開始剤(全体積の約1~6%)。本発明の実施形態によれば、従来のボンディングまたはリボンマトリックス材料のヤング率と比較して、ボンディングまたはリボンマトリックス材料のヤング率が低いオリゴマーが使用される。
【0020】
どのタイプのオリゴマーが結合またはリボンマトリックス材料に使用されるかに応じて、特定のオリゴマーの量を結合またはリボンマトリックス材料の総体積の割合として調整することにより、結合またはリボンマトリックス材料のヤング率を増加または減少させることができる。例えば、他のオリゴマーと比較して比較的低いヤング率値を有するオリゴマーの場合、比較的低いヤング率オリゴマーの量を結合またはリボンマトリックス材料の全体積の割合として増加させると、結合またはリボンマトリックス材料の全体的なヤング率が減少する。本発明の実施形態によれば、比較的低いヤング率のオリゴマーは、従来のボンディングまたはリボンマトリックス材料のものと比較して、ボンディングまたはリボンマトリックス材料のより低いヤング率をもたらすボンディングまたはリボンマトリックス材料の総体積の割合として好適な量で使用される。
【0021】
また、結合またはリボンマトリックス材料の硬化の量は、結合またはリボンマトリックス材料のヤング率に影響を及ぼし得る。典型的には、より多くの硬化(例えば、より高い硬化力および/またはより長い硬化時間)は、結合またはリボンマトリクス材料のより高いヤング率をもたらす。本発明の一実施形態によれば、結合またはリボンマトリックス材料は、従来の結合またはリボンマトリックス材料のヤング率と比較して、結合またはリボンマトリックス材料のより低いヤング率をもたらす方法で硬化される。
【0022】
図4は、本発明の実施形態による、比較的低いヤング率マトリックス材料を有する部分的に結合されたまたはローラブル光ファイバリボン、および従来の比較的高いヤング率マトリックス材料を有する部分的に結合されたまたはローラブル光ファイバリボンのリボンスプール上の伝送損失のグラフ60である。本発明の実施形態による、比較的低いヤング率マトリックス材料を有する部分的に結合されたまたはローラブル光ファイバリボンの伝送損失は、概して損失62として示される。従来の比較的高いヤング率のマトリックス材料を有する部分的に結合されたまたはローラブル光ファイバリボンの伝送損失は、概して損失64として示される。各光ファイバリボンの伝送損失は、1300ナノメートル(nm)の光伝送について、ファイバのキロメートル当たりのデシベル(dB/km)で測定される。
【0023】
グラフ60に示されるように、比較的低いヤング率マトリックス材料を有する部分的に結合されたまたはローラブル光ファイバリボンの損失62は、約0.78dB/km~約0.96dB/kmである。比較すると、従来の比較的高いヤング率のマトリックス材料を有する部分的に結合された又はローラブル光ファイバリボンの損失64は、約0.85dB/km~約1.24dB/kmである。したがって、リボンスプール上に製造された部分的に結合されたまたはローラブル光ファイバリボンの場合、光ファイバリボンを部分的に結合するための比較的低いヤング率マトリックス材料の使用は、光ファイバリボンを部分的に結合するための比較的高いヤング率マトリックス材料の使用よりも低い光伝送損失をもたらす。
【0024】
図5は、本発明の実施形態による、比較的低いヤング率マトリックス材料を有する部分的に結合されたまたはローラブル光ファイバリボンの、ケーブル化された後の伝送損失、および従来の比較的高いヤング率マトリックス材料を有する部分的に結合されたまたはローラブル光ファイバリボンの、ケーブル化された後の伝送損失のグラフ70である。損失は、様々な温度、例えば23℃、-40℃および70℃について示される。各光ファイバリボンの損失は、1300ナノメートル(nm)の光伝送について、ファイバのキロメートル当たりのデシベル(dB/km)で測定される。
【0025】
本発明の実施形態による、比較的低いヤング率マトリックス材料を有する部分的に結合されたまたはローラブル光ファイバリボンの損失は、概して、損失72(23℃で)、損失76および86(-40℃で)、ならびに損失82および92(70℃で)として示される。従来の比較的高いヤング率のマトリックス材料を有する部分的に結合されたまたはローラブル光ファイバリボンの損失は、概して、損失74(23℃で)、損失78および88(-40℃で)、ならびに損失84および94(70℃で)として示される。
【0026】
グラフ70に示されるように、23℃における比較的低いヤング率のマトリックス材料を有する部分的に結合された又はローラブル光ファイバリボンの損失72は、約0.51dB/km~約0.65dB/kmである。比較すると、23℃における従来の比較的高いヤング率のマトリックス材料を有する部分的に結合された又はローラブル光ファイバリボンのリボン損失74は、約0.61dB/km~約0.81dB/kmである。
【0027】
-40℃において、比較的低いヤング率マトリックス材料を有する部分的に結合されたまたはローラブル光ファイバリボンの損失76、86は、約0.59dB/km~約0.74dB/km(第1の測定値)および約0.62dB/km~約0.74dB/km(第2の測定値)である。比較すると、-40℃では、従来の比較的高いヤング率のマトリックス材料を有する部分的に結合されたまたはローラブル光ファイバリボンの損失78、88は、約0.67dB/km~約0.99dB/km(第1の測定値)および約0.69dB/km~約0.98dB/km(第2の測定値)である。
【0028】
70℃において、比較的低いヤング率マトリックス材料を有する部分的に結合されたまたはローラブル光ファイバリボンの損失82、92は、約0.52dB/km~約0.57dB/km(第1の測定値)および約0.50dB/km~約0.56dB/km(第2の測定値)である。比較すると、70℃において、従来の比較的高いヤング率のマトリックス材料を有する部分的に結合されたまたはローラブル光ファイバリボンの損失84、94は、約0.56dB/km~約0.67dB/km(第1の測定値)および約0.58dB/km~約0.65dB/km(第2の測定値)である。
【0029】
したがって、ケーブル化された部分的に結合されたまたはローラブル光ファイバリボンの場合、光ファイバリボンを部分的に結合するための比較的低いヤング率マトリックス材料の使用は、光ファイバリボンを部分的に結合するための比較的高いヤング率マトリックス材料の使用よりも低い光伝送損失をもたらす。さらに、比較的高いヤング率マトリックス材料を有する部分的に結合されたケーブル付き光ファイバリボンまたはローラブル光ファイバリボンと比較して、比較的低いヤング率マトリックス材料を有する部分的に結合されたケーブル付き光ファイバリボンまたはローラブル光ファイバリボンのより低い光伝送損失は、いくつかの異なる温度にわたって一貫して生じる。
【0030】
図6は、本発明の実施形態による、部分的に結合された光ファイバリボンが組み込まれた光ファイバケーブルまたはルースチューブケーブル構造100の斜視図である。本発明の実施形態によれば、部分的に結合された光ファイバリボンは、比較的低いヤング率、例えば約0.2MPaまたはN/mmを有する断続的に塗布された結合マトリックス材料部分を含む。
【0031】
ケーブル構造100は、ケーブルジャケット104内に配置された複数のマルチファイバユニットチューブまたはルーズチューブ102を含む。マルチファイバユニットチューブ102の各々は、実質的に円形であり、複数の部分的に結合された光ファイバリボン106をその中に受け入れるように寸法決めされる。複数のマルチファイバユニットチューブ102は、中央強度部材108の周囲に配置することができる。あるいは、第2の複数のマルチファイバユニットチューブ(図示せず)を、第1の複数のマルチファイバユニットチューブ102の周囲に配置することができる。
【0032】
ケーブル構造100は、ケーブルジャケット104とマルチファイバユニットチューブ102との間に強化強度ヤーン(例えば、アラミドまたはガラスファイバ)の層112を含むことができる。また、ケーブル構造100は、ケーブルジャケット104とマルチファイバユニットチューブ102との間に超吸収性テープ(図示せず)を含むことができる。
【0033】
マルチコアユニットチューブ102は、任意の適切な材料で作ることができる。例えば、多ファイバユニットチューブ102は、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン、ナイロン、ポリカーボネート、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリ(ビニルクロリド)(PVC)、又は他の好適な材料(単数又は複数)で作製することができる。難燃性添加剤は、耐火性を付与するのを助けるためにマルチファイバチューブ102に組み込むことができる。マルチファイバユニットチューブ102は、均質なチューブであってもよく、又は共押出によって製造された多層チューブであってもよい。
【0034】
ジャケット104は、任意の適切な材料で作ることができる。例えば、ジャケット104は、ポリエチレン、熱可塑性ポリウレタン、ナイロン12、または他の好適な材料から作製することができる。難燃添加剤は、耐火性を付与するためにジャケット104に組み込まれてもよい。
【0035】
図6に示すように、複数のマルチファイバユニットチューブ102は、実質的に円形の断面を形成するように中央強度部材108の周りに概ね配置される第1の(内側の)複数のマルチファイバユニットチューブ102としてジャケット104内に配置することができる。代替的に、第2の(外側の)複数のマルチファイバユニットチューブ(図示せず)は、概して、実質的に円形の断面を形成する方法で、第1の複数のマルチファイバユニットチューブ102の周りに配置され得る。
【0036】
本発明の実施形態によれば、ケーブル構造100は、合計で72~3456本の光ファイバを含むことができる。例えば、72ファイバケーブル構造は、6つのマルチファイバユニットチューブ102を含み、各マルチファイバユニットチューブ102は、12ファイバ部分結合光ファイバリボンを有する。本発明の実施形態によれば、ケーブル構造100は、144本の光ファイバ、すなわち、12本のマルチファイバユニットチューブ102を含み、各マルチファイバユニットチューブは、その中に12本のファイバが部分的に結合された光ファイバリボンを有する。
【0037】
添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の全範囲によって定義される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される本発明の実施形態に多くの変更および置換を行うことができることは、当業者には明らかであろう。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
【国際調査報告】