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特表2024-514336放射性同位体を作製、分離、精製する方法、装置及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-01
(54)【発明の名称】放射性同位体を作製、分離、精製する方法、装置及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G21G 4/06 20060101AFI20240325BHJP
【FI】
G21G4/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563215
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(85)【翻訳文提出日】2023-12-18
(86)【国際出願番号】 IB2022052487
(87)【国際公開番号】W WO2022219431
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】202121017481
(32)【優先日】2021-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520093171
【氏名又は名称】エスユー-エヌ エナジー ホールディングス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100212509
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 知子
(72)【発明者】
【氏名】パレーク スニール ナヴニトダス
(72)【発明者】
【氏名】パレーク プラティナ スニール
(72)【発明者】
【氏名】パレーク ナヴニトダス ラダキシャン
(57)【要約】
医療、工業、農業及びエネルギー用途のために放射性同位体を作製、分離、精製する方法、装置及びシステム
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的材料の核変換から得られる少なくとも1つの放射性核種を回収する方法であって、前記少なくとも1つの放射性核種で濃縮された生成物は、質量分離工程において前記標的材料からの核変換後に抽出され、前記質量分離工程は、以下:
前記少なくとも1つの放射性核種を固体支持体に選択的に吸着させ、蒸発によって前記少なくとも1つの吸着させた放射性核種を脱着させる作業、又は
金属電極上に前記少なくとも1つの放射性核種若しくは前記標的材料を電気化学的に沈積させることによって前記少なくとも1つの放射性核種を電気化学的に分離する作業、又は
前記少なくとも1つの放射性核種が前記標的材料ほど揮発性ではない場合、真空下若しくは不活性雰囲気中で高温昇華によって前記標的材料を除去する作業
の少なくとも1つを含む、方法。
【請求項2】
前記分離動作は繰り返され、直前の繰返しで抽出される材料を、その後の繰返しでの出発材料とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記標的材料は、溶融状態、ガス形態、液体形態、固体形態、イオン形態、塩形態、又は少なくとも部分的なこれらの組合せの1つである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの放射性核種は、アクチニウム225である、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ラジウム223又はラジウム224又はラジウム225から選択される少なくとも1つの更なる放射性核種は、アクチニウム225と同時に抽出される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記標的材料は、励起状態の水銀ベース化合物である、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
標的材料の核変換によって放射性同位体を作製する方法であって、励起状態の水銀ベース化合物は、前記標的材料を核変換するエネルギー源としてとして使用される、方法。
【請求項8】
前記標的材料は、元素周期系内の超ウラン元素を含む元素の少なくとも1つ又はこれらの組合せである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記核変換は、前記水銀ベース化合物と接触する前記標的材料が溶融する状態で実行される、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
放射性同位体は、核変換後、前記標的材料から分離される、請求項7から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
分離は、特に、イオン交換、液体クロマトグラフィ、樹脂クロマトグラフィ、(乾式又は湿式)蒸留、昇華、沈降及び抽出、特に、固相抽出(SPE)、液液抽出(LLE)を含む化学的処理又は放射化学的処理によって実行される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
核変換によって得られた前記放射性同位体は、ラジオクロマトグラフィ分離によって精製される、請求項7から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
無担体の前記同位体は、原子形態若しくはイオン形態で得られる、又は分子イオンとして得られる、請求項7から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
核変換のエネルギー源としての、核が励起状態にある材料を通じた標的材料の核変換によって、放射性同位体を作製する装置であって、前記装置は、前記励起状態の標的材料を受け入れ、前記標的材料の溶解温度以上の加熱温度をもたらす溶解炉を備える、装置。
【請求項15】
前記溶解炉は、真空溶解炉である、請求項14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性同位体を作製、分離、精製する方法、装置、デバイス及びシステムに関する。
本開示は、一般に、化学、放射化学、放射線生物学、電気化学、核物理学、高エネルギー物理学、薬理学、医学物理学、核化学の分野に関し、詳細には、核変換から得られる標的材料から、アルファ線放出放射性核種、ベータ線放出放射性核種、ガンマ線/X線放出放射性核種を作製、分離、精製する方法、装置及びシステムに関し、標的材料は、低質量放射性核種、高質量放射性核種、高密度放射性核種、希土類放射性核種、ランタノイド放射性核種、アクチニド放射性核種、及び超重放射性核種を含み、これらの放射性核種は、標的元素(周期表の任意の1つ又は複数の元素、例えば、水素からウラン及び超ウラン元素までの元素)を、常磁性且つ励起状態の水銀ベース化合物(従来技術のPCT公開第WO2016/181204A1号明細書に基づく)と反応させる方法によって作製され、元素を核変換し、アルファ線放出放射性核種、ベータ線放出放射性核種、オージェ電子、電子捕獲放出、ガンマ線/X線放出放射性核種を作製するようにする。作製された放射性核種は、がん、心臓発作及び脳障害等、生命を脅かす疾患を治療する核医学、工業用途、アルファボルタ電池、ベータボルタ電池、放射性同位体ベースの熱電式発電機、放射性同位体ベースのバッテリのため、航空、海上及び道路輸送システム、住宅、商業、工業、輸送用エネルギーのため、並びに農業使用、及びエネルギー、薬物治療、研究、撮像の他の用途のために使用され、医療に関連しないいくつかの用途のためにも使用される。
【背景技術】
【0002】
概して、放射性同位体、放射性核種(radionuclide又はradioactive nuclide)としても公知である放射性同位元素は、エネルギー的に不安定な原子であり、アルファ線、ベータ線又はガンマ線の形態のエネルギー又は放射線を放出することによって(親状態から娘状態に遷移する)安定した又はより安定した、より低いエネルギー状態を達成する。同位体は、共通の元素と同じ化学的特性及び原子番号を有するが、原子量が異なる任意の元素である。放射性同位体のこの不安定な原子核は、自然に生じ得る、又は標的元素を多数の他の新たな元素に変換する核変換方法によって作製し得る。
【0003】
放射性同位体は、調査、放射性医薬品研究、工業、生物学、環境、医学、国家安全保障、農業及び生命科学といったいくつかの分野で使用される効果的なツールである。医療分野において、放射性同位体は、腫瘍学、放射線介入治療/心臓病学、及び診断、治療のための他の関連する専門分野、(診断目的の追跡子)、疾患の生化学的分析、例えば、放射免疫治療(RIT)、体内分布研究、PET画像法、単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)、ガンマ線分光法、標的アルファ線治療(TAT)、放射線塞栓治療、オージェ治療等で使用される。工業において、放射性同位体は、プラスチック又は金属シートの厚さを測定するために使用され、構造欠陥のため、製造した金属部品を調査する大型X線機械の代わりに採用し得る。他の重要な用途には、放射性同位体熱電式発電機(RTG)等、原子力電池又は核電池(アルファボルタ電池/ベータボルタ電池)を作製するための放射性同位体の使用を含み、放射性同位体熱電式発電機(RTG)は、宇宙船、ペースメーカ、医学的に植え込み可能なデバイス、遠隔地及び水中システムにおける自動化科学ステーション等、いくつかのエネルギー集約型機器のための小型電力源として使用し得る。いくつかの例は、メスバウアー分光法、原子核が関与する構造及び反応の調査、核デバイスの検出、放射性同位体熱電発電、並びに他の核電池、核拡散防止、がんの治療及び診断を含む。
工業用途は、中性子X線撮影、即発ガンマ線中性子放射化分析(「PGNAA」)及び放射性ガス漏れ検査を含む。医療用途は、放射性薬剤、密封小線源治療、医用画像、及びホウ素中性子捕捉治療(「BNCT」)を含む。
【0004】
現在、播種性の疾患には有効な治療はない。化学治療は、短期間にわたり転移性疾患と戦うのに有効である場合があるが、最終的に、化学治療薬剤に耐性をもつようになるがん細胞の能力のために再発が生じる。転移性疾患の治療は、がん治療において、おそらくは全ての医業において満たされていない最大の医学的なニーズである。アルファ線放出放射性核種は、適切ながん標的化ベクターと結合させると、転移性がんの有効な治療となる可能性を有し、区分に制限されたがん(例えば、卵巣がん及び膵臓がん)、並びに手術後の微小残存がんの治療の使用にも特に適している。標的アルファ線治療薬剤の開発には多数の未知の物があるが、これらを使用すると、多数のがん治療の結果をかなり改善させる可能性がある。
【0005】
放射性同位体のリスト、及び放射性同位体を何の目的で使用し得るか:
3H、7Be、8Be、10Be、10B、14C、13N、15O、18F、28Mg、26Al、32Si、32P、33P、36Cl、37Ar、39Ar、42Ar、32K、42K、43K、41Ca、45Ca、46Ca、47Ca、48Ca、44Sc、44mSc、46Sc、47Sc、44Ti、51Cr、52Mn、54Mn、56Mn、52Fe、54Fe、55Fe、59Fe、60Fe、55Co、56Co、57Co、58Co、60Co、59Ni、63Ni、62Cu、64Cu、67Cu、62Zn、65Zn、72Zn、68Ga、68Ge、72As,77As、72Se、73Se、75Se、79Se、82Se、75Br、76Br、77Br、75Kr、76Kr、77Kr、81mKr、85Kr、81Rb、82Rb、87Rb、82Sr、83Sr、85Sr、89Sr、90Sr、85Y、86Y、87Y、88Y、90Y、91Y、89Zr、93Zr、94Zr、96Zr、90Nb、93Nb、95Nb、93Mo、99Mo、99Tc、99mTc、97Ru、103Ru、106Ru、103Pd、107Pd、111Ag、103Cd、113Cd、111In、113Sn、117mSn、126Sn、119Sb、125Sb、121mTe、127Te、129Te、121I、122I、123I、124I、125I、126I、129I、130I、131I、121Xe、122Xe、123Xe、125Xe、127Xe、129mXe、131mXe、133Xe、133m,gXe、135Xe、134Cs、135Cs、137Cs、128Ba、137Ce、139Ce、141Ce、144Ce、134Ce/La、132La/135La、143Pr、138Nd/Pr、140Nd/Pr、147Nd、147Pm、149Pm、142Sm/Pm、147Sm、153Sm、154Eu、155Eu、147Gd、148Gd、149Gd、157Gd、149Tb、152Tb、155Tb、161Tb、157Dy、159Dy、165Dy、166Ho、165Er、169Er、165Tm、167Tm、169Yb、177Yb、172Lu、177Lu、172Hf、175Hf、178Ta、178W、188W、186R、188Re、188Ir、189Ir、190Ir、192Ir、192mIr、193Ir、194Ir、194mIr、195Au、198Au、194Hg、195Hg、197Hg、201Tl、202Tl、210Pb、211Pb、212Pb、206Bi、210Bi、211Bi、212Bi、213Bi、210Po、211Po、212Po、213Po、214Po、215Po、218Po、204At、205At、206At、207At、208At、209At、210At、211At、218At、219Rn、220Rn、221Rn、222Rn、220Fr、221Fr、223Ra、224Ra、225Ra、226Ra、225Ac、227Ac、201Th、227Th、228Th、229Th、230Th、232Th、234Th、231Pa、234Pa、233U、234U、235U、236U、238U、237Np、238Pu、239Pu、240Pu、241Pu、242Pu、244Pu、241Am、242mAm、243Am、242Cm、243Cm、244Cm、245Cm、247Cm、251Cf、252Cf
【0006】
放射性同位体を使用する核医学は、がんの臨床診断、予後及び治療に非常に有用である。がんは、世界で第2の主要な死因であり、年間で960万人の死者を占める。前立腺がん、肺がん、胃がん、直腸結腸がん及び肝臓がんは、男性の最も一般的な種類のがんである一方で、直腸結腸がん、胃がん及び乳がんは、女性の間で最も一般的である。世界的ながんの負担は、年間で1,810万の新たな症例及び960万人の死者に上昇していると推定される。世界で、がん診断の5年以内に生存している人の数は、約4,380万人である。
【0007】
放射性医薬品治療(RPT)/放射性医薬品は、がんを含む様々な疾患の診断及び治療に対する新規の治療ツールとして出現している。RPTは、腫瘍選択的生体分子に結合させた放射性同位体を、人体内の臓器、組織又は細胞を含む特定の腫瘍関連標的に送達することを可能にする。
放射性核種標識ペプチド治療(PRRT)は、放射性医薬品の一種である。この治療には、ペプチドを放射性物質と結合させ、放射性ペプチドを作製することを伴う。この放射性ペプチドは、投与されると、標的がん細胞に更に付着し、高い放射線量を細胞に直接送達する。
【0008】
従来の放射線治療とは異なり、RPTの放射線は、化学治療又は生物標的治療と同様に、組織的又は局所領域的に投与される。放射性医薬品治療は、従来の放射線治療より副作用が少なく、よりがん細胞に命中させられるようにする。RPTは、孤発性腫瘍、及び全身に広がる転移性がんの両方に有効であり得る。この放射線により生じるがん細胞又はこれらの微小環境の殺傷は、直接的に、又は送達担体を使用して、標的とする治療手法を可能にする。この送達担体は、特定の内在標的に結合するか、又は多種多様な生理学的機序によって蓄積する。がん以外に、RPTは、関節リウマチ及び多発性関節炎を含むいくつかの非腫瘍障害での用途もある。
別の種類の放射性医薬品は、放射免疫治療であり、放射性同位体に共役するモノクローナル抗体(mAb)を使用し、細胞傷害性放射線を標的がん細胞に送達して特定の内部放射線治療をもたらす。
放射免疫治療(RIT)の場合、アルファ粒子、ベータ粒子、オージェ又は低エネルギーX線等の粒子状非透過放射線と共に崩壊する放射性同位体が、利用される。放射線エネルギーが蓄積する部位、及び線エネルギー付与(LET)としても公知である、エネルギーが組織レベルで蓄積する距離は、細胞及び組織の全ての構成部分が等しく影響を受けるわけではないので、共に必須である。LETは、当該放射線によって生じる、飛程単位ごとの電離数を指す。線エネルギー付与(LET)に加えて、生物学的効果比(RBE)も必須の放射線生物学的概念である。生物学的効果比(RBE)は、同じレベルの生物学的効果を生じさせるのに、2つの異なる種類の電離放射線が必要とする生物学的放射線量の比率である。
臨床用途で放射性同位元素を選択する際、放射性核種の生化学的及び物理的特性を考慮する必要がある。生化学的特性は、組織の標的化、腫瘍内での放射能の保持、生体内安定性、及び毒性を含む。更に、RITに使用される放射性核種の選択は、放射性核種の別個の放射特性、及び標的とされる悪性病変又は細胞の種類に依存する。物理的特性は、放出の種類、放出エネルギー、物理的半減期、娘生成物、放射性核種純度、及び作製方法を含む。
【0009】
抗体と同位体との組合せの正確な選択は、放射免疫治療を標準的な治療モダリティにするために必須である。というのは、放射性同位体崩壊の間に放出されるアルファ線及びベータ線放出粒子は、著しく異なるためである。アルファ線放出放射性同位体は、短い路程(50~80μm)及び高い線エネルギー付与(LET)(約100keV/μm)を有する。従って、標的アルファ線治療は、より特定のがん細胞の殺傷を可能にし、ベータ線放出放射性同位体と比較して周囲の健常細胞への損傷は、より少ない。アルファ線放出放射性同位体は、組織のわずかな範囲内に高いLET沈積量を有し、これにより、周囲の健常組織を逃れさせ、治療すべき標的臓器内で放射線量を保つ。従って、α粒子は、微小転移細胞、微視的又は少量の疾患の治療により良好に適し得る。というのは、α粒子の短い飛程及び高いエネルギーは、特定の腫瘍細胞をより効率的に殺傷することが可能であるためである。これらの考慮事項に基づき、α粒子治療は、リンパ腫、グリオーマ、白血病、腹膜がん腫症及び黒色腫を含む様々な疾患の治療において研究されている。211At、213Bi、225Ac及び224Ra等のアルファ線放出放射性同位体を使用する放射免疫治療は、いくつかの生体外及び生体内実験モデル並びに臨床試験で活性を示している。
【0010】
α粒子放出放射性同位体を担体(通常、抗体)に共役させる標的アルファ線治療(TAT)は、特定の生物学的標的に向けられ、より多くの注目を得ている。アルファ粒子は、裸の4He原子核であり、+2の電荷を帯びている。電子の質量と比較すると極端なアルファ粒子の質量により、粒子の偏向を抑制し、アルファ粒子の飛跡はほぼ線形である。α粒子は、高いLET(80keV/μm)及び中程度の路程(50~100μm)を有し、α粒子に10細胞直径未満、即ち微視的腫瘍細胞集団以内という有効範囲をもたらす。この短い飛程のアルファ粒子の放出は、対象の標的がん細胞の周囲の正常組織への不要な照射を最小化する(周囲の健常細胞への毒性が最小である)。こうした特性は、微小残存又は微小転移性疾患を除去するのに標的アルファ線治療を理想的なものにする。重要なことには、α粒子の致死性は、二重鎖DNAの破壊及びDNA集団の破壊に関連し、従って、β粒子の損傷よりかなり修復が困難である。99.99%の確率で単細胞の殺傷を達成するのにわずかな数のアルファ粒子の崩壊が必要とされる一方で、同じ殺傷確率を達成するのに数千のベータ粒子の崩壊が必要とされる。アルファ粒子は生体内で直接画像化できないため、γ光子、特性X線、又は親放射性核種の崩壊に付随する制動放射放射線を使用し、標的取込み量、線量測定及び治療応答を定量化することが多い。アルファ粒子の致死力を増大させる間接的な機序は、クロスファイア効果(CF)、放射線誘発バイスタンダー効果(RIBE)及びアブスコパル効果(AbsE)を含む。α放射体を使用した前臨床及び臨床研究は、反復性卵巣がん、反復性脳腫瘍、非ホジキンリンパ腫、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER-2)陽性がん、転移性黒色腫、前立腺がんの骨転移、前立腺及び神経内分泌腫瘍を含め、様々ながんに対して実行されている。
【0011】
β粒子治療は、β粒子が低いLET(約0.2keV/μm)及び長い路程(0.05~12mm)を有するので、微小転移性腫瘍細胞より、かさのある腫瘍又は大きな体積の疾患に好適である。このβ粒子治療は、標的を表す微小転移性腫瘍内に主要エネルギーを単に沈着させるのではなく、β粒子の長い電子飛跡に沿って周囲の正常な健常細胞を破壊することによって、非特定的細胞障害効果をもたらし得る。
オージェ電子(AE)は、電子捕獲によって崩壊する放射性同位体(例えば、67Ga、111In、195mPt、99mTc、125I及び123I)よって放出される極めて低いエネルギー電子である。このエネルギーは、2~500mmという短い路程にわたり沈着し、4~26keV/μmという中間の線エネルギー付与(LET)をもたらし、単がん細胞内にかなり致死的な損傷を生じさせる。オージェ電子は、がん細胞膜を損傷することによって、又はクロスドーズ若しくはバイスタンダー効果を通じてがん細胞を殺傷し得る。従って、低エネルギーで、飛程が短く、LETが高い複数の電子を放出するAE放出放射線治療剤及びコスター-クローニッヒ電子遷移放射線治療剤の能力は、これらをがん治療の強力な候補にしている。
【0012】
治療用放射性核種又は補完的治療診断用放射性核種が、陽電子(β+)又はガンマ(γ)線を放出することも有利であり得る。このことにより、陽電子放出断層撮影法(PET)又は単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)により、患者体内の放射性医薬品の分散を画像化、視覚化することを可能にし、治療の監視を可能にする。
一方、内部照射治療は、小放射線源、通常はガンマ線又はベータ線放射体を標的領域内に植え込むことによって行われる。密封小線源治療又は近距離照射治療は、治療の主要な手段になりつつある。ヨウ素131は、非悪性甲状腺障害及び甲状腺がんを治療するために使用される。イリジウム192ワイヤインプラントは、頭部及び胸部内で使用され、正確な放射線量を投与した後に除去される。ヨウ素125又はパラジウム103は、永続的なインプラントシードの形態で初期の前立腺がんの密封小線源治療で使用される。代替的に、針の形態の放射性イリジウム192を15分間挿入し得る。密封小線源治療の処置は、費用対効果が高く、標的腫瘍により局所的であるため、体に与えられる放射線はより少ない。
【0013】
長年にわたり、放射性医薬品治療は、遷延性疾患の治療において、極めて低い有毒副作用でより成功するようになってきている。
放射性核種は、滅菌の分野においても多大な重要性をもつ。いくつかの医療製品は、従来の蒸気熱滅菌より安価でより効果的なCo60線源からのガンマ線を使用して滅菌される。放射線を使用して滅菌された物品は、密封が破壊されない限り、無期限に滅菌されている。注射器に加えて、放射線によって滅菌される医療製品には、原綿、心臓弁、やけど手当用品、手術用手袋、プラスチック、手術機器、ゴムシート及び包帯を含む。
現時点で、既存の作製経路を使用して世界で作製し得る放射性同位体の量は、需要を満たすのに十分でない。前臨床又は臨床試験に不十分であることに加えて、現在の作製方法は、許諾製品及び承認製品を含む市販製品を展開するには十分ではない。
本発明は、世界的な需要を満たす多量のアルファ線放出放射性核種を作製し、様々な生命を脅かす疾患に罹患している数百万の人々を治療可能にする。
標的アルファ線治療(TAT)は、有効な治療オプションがない播種性、化学治療抵抗性、及び放射線抵抗性の転移性疾患の治療において重要な役割を果たす。
しかし、現在、TATに適用可能な放射性核種の数は、限られている。しかし、様々な形態のがんに取り組むため、いくつかのアルファ線放出放射性同位体をより広範な地域社会で利用可能にすべきである。現在、既存の229Th供給源を使用して年間1.7Ci(63Gbq)の225Acしか世界で作製できず、225Acに対する需要を満たすには十分ではない。225Acの限られた年間作製量は、前臨床又は臨床試験には十分であるが、許諾製品及び承認製品を含む市販製品を展開するには十分ではない。現在の推定によれば、患者ごとに1mCiであり、1年当たり100,000~200,000人の患者がいると仮定すると、年間に必要な225Acの最小作製量は、約100~200Ci/年である。
【0014】
本発明、及び特許請求の範囲の本発明の主題は、世界的な需要を満たす211At、213Bi、225Ac及び224Ra等の多量のアルファ線放出放射性核種を作製し、がんに罹患している数百万の人々を治療可能にする。
アルファ線放出放射性同位体を広範に利用可能にするため、アルファ線放出放射性同位体を効率的により単純に作製する方法を展開する進行中の取組みがある。本発明は、我々の社会を費用対効果の高い様式で向上させるため、より広範な地域社会でアルファ線放出放射性核種を利用可能にし得る。
商業的に必須の主要同位体の作製は、現在、限られており、核研究用原子炉内の放射場所は、高額であり、将来、原子炉の寿命に関連する閉鎖のために、より少なくなりさえするであろう。アルファ線、ベータ線及びガンマ線/X線放射性同位体の利用可能性を向上させるため、強固で高収率の作製経路の拡張には、差し迫ったニーズがある。
【0015】
現在、あらゆる前臨床又は臨床試験に利用可能なアルファ線放出放射性同位体は、十分ではない。従って、供給が不足している放射性同位体の作製に対するニーズがある。というのは、放射性同位体の科学研究を妨げるのは、放射性同位体の供給自体であるためである。
放射性同位体の作製で現在使用される方法は限界に達しており、特に、より高い同位体純度、比放射能、及び広範囲に利用可能な放射性核種をもたらすという点で、方法の改善に対する強力なニーズがある。
放射性同位体の臨床適用を普及させるため、アルファ線放出放射性同位体の利用可能性を著しく増大させなければならず、アルファ線放出放射性同位体に対するより安価な作製計画が必要である。
【0016】
本発明は、更なるアルファ線、ベータ線及びガンマ線/X線放出放射性同位体の作製を可能にし、より大規模な前臨床及び臨床試験を更に可能にするものである。本発明者等が発明した技術は、放射性同位体のより多くの前臨床研究及び臨床試験も支持する。この技術は、TATの広範な使用をもたらし、工業、医療及び研究分野において、並びにがん治療として、いくつかの他の用途を有し得る。
本発明は、これまで市場で入手可能ではなく、今やかなり需要のあるいくつかの珍しい同位体の多量作製への道筋を開くものである。
【0017】
このために、放射性同位体、特に、無担体又は担体が追加されない放射性核種を作製、分離、精製する方法、装置、デバイス及びシステムを提供することは、本発明の一目的である。本発明は、いくつかの医療、生命科学、工業、農業及び研究用途で必須であるが現在供給が不足している既存の放射性同位体、更には、現在市場で入手可能ではなかったがかなりの需要があるいくつかの放射性同位体に対する世界的な需要を満たし、また、新たな医療用途で新規な放射性同位体を作製することが可能である。
この目的は、本明細書に記載の方法、装置、デバイス及びシステムによる放射性同位体の作製、分離、精製を通じて満たされる。
この方法、装置、デバイス及びシステムは、個別に、又は少なくとも部分的に組み合わせて、ステップ及び機器を以下のように備える:
ホットセル、セミホットセル、グローブ・ボックス、放射性同位体作製システム、
放射性核種移送システム、天井クレーン、放射性核種分離システム、
放射性核種精製システム、α線、β線、ガンマ線/X線、n線の測定デバイス
放射線シールド、安全機器、品質管理、支援機器、
放射性核種の充填システム、制御室、電化、分析実験室、計装、制御、安全インターロック、安全システム、換気システム、消耗品、機械設備、及び多種多様な機器。
加熱装置及びるつぼを有する真空チャンバ。るつぼは、水素からウラン及び超ウラン元素までの標的元素(周期表内の1つ若しくは複数の元素、又はこれらの組合せ)を融解させる
元素を核変換し、アルファ線、ベータ線、ガンマ線及びX線放出放射性同位体を作製するエネルギー源として、常磁性且つ励起状態の水銀ベース化合物((従来技術のPCT公開第WO2016/181204A1号明細書)に基づく)又は(常磁性且つ準安定性の励起状態の水銀ベース化合物を作製するための任意の他の従来技術))。
標的元素 水素からウラン及び超ウラン元素までの周期表のいずれか1つ又は複数の元素、並びにこれらの組合せ。
得られた標的材料から所望の放射性同位体を分離する方法
得られた標的材料から所望の放射性同位体を精製する方法
所望の放射性同位体を収容するカプセル/バイアルの作製
放射性同位体は、微粒子/ナノ粒子、巨大分子、ミクロスフィア、マクロアグリゲート、イオン交換樹脂、又はクロマトグラフィシステム内で使用される母材への植え込みによっても収集し得る
品質管理方法:放射性同位体の開放の確認に使用される品質管理方法は、イオンチャンバベースの線量較正器、アルファ線、ベータ線及びガンマ線のための識別及び定量化のための画像検出器による放射能の測定、ガンマ線分光法による放射性核種純度の測定、並びにTLC、HPLC、GCシステム、粒子計数管、発熱性物質試験機器、電気泳動法による放射化学純度の測定、並びに培養基上での成長及びLAL試験による微生物純度の制御を含む。
常磁性且つ準安定性の励起状態の水銀ベース化合物の作製、及び元素を核変換するエネルギー源としてのこの化合物(従来技術のPCT公開第WO2016/181204A1号明細書に基づく)の使用。常磁性且つ準安定性の励起状態の水銀ベース化合物を、標的元素(複数可)(標的元素は、水素からウラン及び超ウラン元素までの周期表の任意の1つ又は複数の元素とし得る)の原子核と反応させ、標的元素(複数可)を、低質量元素、高質量元素、高密度元素、希土類元素及び超重元素を含む多数の新たな元素に核変換させ、かなり高い核変換率を達成する。このかなり高い核変換率は、元素の核変換に現在使用される全ての他の技術、例えば、原子炉、加速器駆動システム(ADS)、高速炉、粒子加速器等の何倍にもなる。
【0018】
高純度ゲルマニウム(HPGe)は、高純度ゲルマニウム(HPGe)のパッシブガンマ線放出から放射性核種を確実、正確に識別するのに十分な情報をもたらし、X線検出器としても使用し得る。
硫化亜鉛等のシンチレータは、アルファ粒子の検出に使用される一方で、プラスチックシンチレータは、ベータ粒子の検出に使用される。ベータ粒子の検出には、有機シンチレータも使用し得る。純有機結晶は、アントラセン、スチルベン及びナフタレンの結晶を含むが、これらに限定されない。
【0019】
主な技術方法は、一般的な化学処理から放射化学分離技術まで、例えば、イオン交換、液体クロマトグラフィ、蒸留、抽出等に及ぶ。これらの手順は、放射性溶液の濃度を調節するための放射性溶液の希釈の制御、及び貯蔵溶液への送出によって補われる。
放射性同位体の開放の確認に使用される品質管理方法は、イオンチャンバベースの線量較正器による放射能の測定、ガンマ線分光法による放射性核種純度の測定、並びにTLC、HPLC、電気泳動法による放射化学純度の測定、培養基上での成長及びLAL試験による微生物純度の制御を含む。
【0020】
放射化学分離は、独立型ユニット又は一体型システムとして分離方法によって実施し得る。そのような方法は、固相抽出(SPE)、樹脂クロマトグラフィ、液液抽出(LLE)、沈降、蒸留(乾式又は湿式蒸留)及び昇華を含み、これらの全ては、放射線混合物に可能な限り直接適用する必要がある。
液液抽出方法は、2つの不混和性溶媒相、通常は水溶液(即ち、酸、塩基又は塩)と有機溶媒(例えば、ケトン、アミン、及びエーテル)との間で溶質を選択的に区分する一方で、位相の容量、pH、水相の組成及び混合時間を制御することに基づく。液液抽出方法は、低い濃度でさえ高い選択性を有する。というのは、区分条件は、概して、放射性核種的に及び化学的に不純物のない放射性同位体の収率をもたらすように容易に変更し得るためである。LLEは、迅速に行うことができ、このことは、より短い半減期を有する同位体を分離する際、特に重要であり、自動化に適度に容易でもある。
LLEの後、通常、抽出溶媒の蒸発、水相中での逆抽出を介する有機相からの放射性同位体の精製、又はSPE/クロマトグラフィが続き、最後に、後続の放射標識若しくは注入に適した液相への溶解が続く。
【0021】
乾式蒸留は、不活性環境中又は真空下で標的材料を蒸発させることによって標的材料を除去し、あまり揮発性ではない元素のみを後に残すものである。元素に応じて、残留物から所望の原子核を回収するための様々な手法を使用し得る。
同位体分離技法は、以下に基づき、3つの種類に分割し得る:
・直接的に、同位体の原子量
・様々な原子量の結果としての化学反応率のわずかな差
・原子量には直接関係しない、原子核共鳴等の特性
【0022】
他の分離及び精製技法
-真空又は不活性ガス下での高温脱着
-真空又は不活性ガス下での高温昇華
-適切な基体上への吸着
-化学的蒸発による脱着
-選択的吸着による採取
-貴ガス、ハロゲン、タリウムは、磁場内で分離される
-質量分離は、ウィーンフィルタ、無線周波数四極子及び磁場を含む質量選択デバイスを使用して実施されるが、これらに限定されない
-沈降
-電気化学分離
-抽出
-陽イオン交換クロマトグラフィ
-陰イオン交換クロマトグラフィ
-熱クロマトグラフィ
-ガスクロマトグラフィ
-電着
-昇華
-イオン交換
-抽出クロマトグラフィ
-湿式化学手法
-拡散
-レーザーベースの分離、例えば、AVLIS(原子蒸気レーザー同位体分離)、MLIS(分子レーザー同位体分離)、SILEX(レーザー励起による同位体の分離)、トロイの波束形成
-重力分離、例えば、低温蒸留
-例えば、Zippe型遠心分離機を使用する遠心分離、プラズマ遠心分離は、放射性廃棄物の低減、核再処理及び他の目的のために同位体を分離し、一連の元素を分離し得る。この方法は、「プラズマ質量分離」と呼ばれ、このデバイスは、「プラズマ遠心分離機」又は「プラズマ質量フィルタ」と呼ばれる。
-電磁分離
-ラジオクロマトグラフィによる分離
-標的の酸処理、その後の溶媒抽出
-蒸留
-小型カラムベースのクロマトグラフィ方法又はカートリッジ抽出クロマトグラフィ方法
-電子ろ過方法
-沈降
-電気融合
-樹脂分離方法(例えば、新規の抽出クロマトグラフィ(EXC)樹脂)
-カラムクロマトグラフィ
-電気化学
-マルチカラム選択的反転生成器。マルチカラム選択的反転生成器は、1つ又は複数の親放射性核種の溶液からの所望の娘放射性核種を1次分離カラムで選択的に保持すること、次に、1次カラムから娘放射性核種を除去すること、直後に、娘放射性核種を2次分離カラム又は保護カラムを通じて通過させることを伴う。2次分離カラム又は保護カラムは、親放射性核種を保持する一方で、娘放射性核種の溶離は制限されず、供給が調節されない。
-親同位体を吸着カラム上に永続的に吸着させる一方で、娘生成物を周期的に溶離させる、固定カラム生成器手法。
【0023】
上記方法の全ては、単独で又は組み合わせて、放射性核種の作製経路、対象の放射性核種、及び任意の不純物の存在に応じて、放射性核種の分離及び精製のために利用し得る。
無担体放射性同位体は、対応する側波帯(酸化物、ハロゲン化物、フッ化物)において原子/イオンの形態で、又は分子イオンとして得ることができる。
本発明は、放射性同位体の作製、分離、精製するデバイス、方法、システム及び装置に関し、このデバイス、方法、システム及び装置は、個別に、又は少なくとも部分的に組み合わせて、以下の特徴を含む、即ち:
1.ホットセル、セミホットセル、グローブ・ボックス、シールドルーム及びシールド領域
2.常磁性且つ励起状態の水銀ベース化合物(従来技術のPCT公開第WO2016/181204A1号明細書)に基づく)、又は水銀ベース化合物が常磁性であり、励起状態で存在する、若しくは水銀ベース化合物が準安定性である任意の従来技術。
3.標的元素は、水素からウラン及び超ウラン元素までの周期表の全ての元素、又はこれらの任意の組合せを溶融状態、液体状態、固体状態及びガス状態で、標的元素の任意の形態(例えば、酸化物、ハロゲン化物、フッ化物等)で含むが、これらに限定されない。
4.水素からウラン及び超ウラン元素までの標的元素の溶融点の溶解温度を有する真空溶解炉又は溶解炉。
5.標的元素の核変換エネルギー源として常磁性且つ励起状態の水銀ベース化合物を使用する放射性同位体の作製(標的元素は、周期表の任意の1つ若しくは複数の元素、又はこれらの組合せとし得る)
6.核変換工程の後、放射性同位体を含有する得られた標的材料は、質量分離のために採取される。
7.得られた標的材料から所望の放射性同位体を分離する方法の使用
8.放射性同位体の精製方法の使用
9.放射性同位体の活性及び半減期の測定
10.品質点検
11.バイアル内への放射性同位体の充填
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】2021年6月、インド、ムンバイのインド工科大学(IIT)における、純液体水銀金属(99.99%)について実施した、電子スピン共鳴(ESR/EPR)分析を示す。
図2】2021年6月、インド、ムンバイのインド工科大学(IIT)における、作製された水銀ベース化合物について実施した、電子スピン共鳴(ESR/EPR)分析を示す。
図3】2021年10月、インド、ムンバイのインド工科大学(IIT)における、純標的元素のカドミウム(99.9%)を核変換した後に得られた標的材料のフーリエ変換赤外分光分析(FTIR)を示す。
図4】2021年10月、インド、ムンバイのインド工科大学(IIT)における、純標的元素のスズ(99.9%)を核変換した後に得られた標的材料のフーリエ変換赤外分光分析(FTIR)を示す。
図5】2021年10月、インド、ムンバイのインド工科大学(IIT)における、純標的元素の水銀(99.9%)を核変換した後に得られた標的材料のフーリエ変換赤外分光分析(FTIR)を示す。
図6】2021年10月、インド、ムンバイのインド工科大学(IIT)における、純標的元素のビスマス(99.9%)を核変換した後に得られた標的材料のフーリエ変換赤外分光分析(FTIR)を示す。
図7】2021年10月、インド、ムンバイのインド工科大学(IIT)で、作製された常磁性且つ励起状態の水銀ベース化合物(従来技術のPCT公開第WO2016/181204A1号明細書による)により純標的元素のカドミウム(99.9%)を核変換した後に得られた標的材料のSEM/EDS分析を示す。
図8】2021年10月、インド、ムンバイのインド工科大学(IIT)で、作製された常磁性且つ励起状態の水銀ベース化合物(従来技術のPCT公開第WO2016/181204A1号明細書による)により純標的元素のスズ(99.9%)を核変換した後に得られた標的材料のSEM/EDS分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、様々な修正及び代替形態が可能であるが、説明の目的で与えられる一部の非限定実施形態を以下で詳細に説明する。しかし、開示される特定の実施形態に本発明を限定する意図はなく、反対に、本発明の意図は、特許請求の範囲内で規定される本発明の範囲内にある全ての修正物、代替構成物及び均等物を含むことであると理解されたい。
従って、以下の説明では、「例えば」、「等」、「又は」、「別様には」の使用は、別様に規定されない限り、非排他的代替形態を限定せずに示し、「~も」の使用は、別様に規定されない限り、「~を含むがこれらに限定されない」ことを意味し、「~を含む/備える」の使用は、別様に規定されない限り、「~を含む/備えるが、これらに限定されない」ことを意味する。
【0026】
常磁性且つ励起状態の「準安定性」水銀ベース化合物の作製、及び元素を核変換するエネルギー源としてのこの化合物の使用(従来技術のPCT公開第WO2016/181204A1号明細書に基づく)。常磁性且つ励起状態の「準安定性」水銀ベース化合物を、標的元素(複数可)(標的元素は、水素からウラン及び超ウラン元素までの周期表の任意の1つ又は複数の元素とし得る)の原子核と反応させ、標的元素(複数可)を、低質量元素、高質量元素、高密度元素、希土類元素及び超重元素を含む多数の新たな元素に核変換させ、かなり高い核変換率を達成する。このかなり高い核変換率は、元素の核変換に現在使用される全ての他の技術、例えば、原子炉、加速器駆動システム(ADS)、高速炉、粒子加速器等の何倍にもなる。
【0027】
線エネルギー付与(LET)及び生物学的効果比(RBE)は、必須の放射線生物学的概念である。LETは、当該放射線によって生じる、飛程単位ごとの電離数を指す。α粒子は、高いLET(約100keV/μm)を有する一方で、β粒子は、かなりより低いLET(0.2keV/μm)を有する。
アルファ線放出放射性同位体の短い路程(50~80ミクロン)及び高い線エネルギー付与(約100keV/ミクロン)のために、標的アルファ粒子治療は、ベータ放射体より周囲の健常組織への損傷が少ない状態で、より特定の腫瘍細胞を殺傷する可能性をもたらす。こうした特性は、最小の残存又は微小転移性疾患を除去するのに標的アルファ線治療を理想的なものにする。213Bi、211At、224Ra及び225Ac等のアルファ放射体を放射する放射性同位体を使用する放射免疫治療は、いくつかの生体外及び生体内実験モデルで活性を示している。臨床試験は、少量の細胞減少性疾患の治療において、標的アルファ粒子治療の安全性、実現可能性及び活性を実証している。
液液抽出及びイオン交換に基づく放射化学分離方法は、ホットセル内での遠隔制御操作に適するように特に展開又は修正されている。
【0028】
沈降は、複数のツールのうち、長年、放射化学者によって放射性元素の分離及び分析時の作業で最も広範に使用されている。必要な分離を達成するため、様々な化学的操作を組み込み可能であることは、この技法の主な利点である。
水溶性媒体から陽イオンを除去する方法の1つは、陽イオン交換樹脂が充填された固定床カラムの使用に基づく。従来の陽イオン交換樹脂は、スルホン酸官能基を有するポリ(スチレン-ジビニルベンゼン)母材に基づく。そのような樹脂は、水の脱塩のために陰イオン交換樹脂と共に日常的に使用されている。そのような樹脂は、様々な陽イオン間での選択性の差が低いので、これらの樹脂は、他の陽イオンの交換を防止する錯化剤の使用によって、又は充填カラムから所望の陽イオンを選択的に除去することによって、単一の陽イオンを選択的に回収するために使用し得る。
抽出クロマトグラフィは、50~150μmのサイズの小さな顆粒又はビーズを使用する単純なカラムクロマトグラフィ技法であり、選択的配位子を、多孔性固体支持体上に吸着させる、又は多孔性固体支持体に共有結合させる。
放射性核種ガスは、アルゴン及びクリプトンといった分圧がより低いガス相に空気飽和水を露出することによって抽出でき、この露出は、部分真空の適用によって、又は水と、アルゴン及びクリプトンの分圧が名目上ゼロであるヘリウム又はN2等の純粋な不活性ガスとを接触させることによって達成し得る。これらのガス抽出工程の間、貴ガスの元素と同位体との比率は、それぞれの溶解度に応じて細分することが予期される。
【0029】
放射性同位体は、研究、医療及び生命科学といったいくつかの分野で重要な役割を果たし、核医学の一部としての医療、腫瘍学、放射線介入治療/心臓病学及び他の関連専門分野、診断、照射治療、生化学分析、並びに診断治療医薬品、国家安全保障及び基礎研究に及ぶ。いくつかの例は、原子核を伴う構造及び反応の調査、メスバウアー分光法、放射性同位体熱電気変換、及び他の核電池、核デバイスの検出、核拡散防止、がんの診断及び治療を含む。放射性同位体は、放射性医薬品科学、産業用途、農業、環境追跡及び生物学的研究で使用される効果的なツールである。
医学分野では、様々な形態のがんの治療及び診断にいくつかの放射性同位体が使用されている。ラジウム-223、アクチニウム-225及びビスマス-213等のアルファ粒子を放出可能な放射性同位体は、がんの治療において特に有利である。というのは、これらの放射性同位体は、当該放射性同位体から遠くに透過しない高度な電離放射線をもたらすためである。アルファ放射体が腫瘍部位又はがん細胞の付近に置かれた場合、その影響は、これらの部位に局所化され、健常な周囲組織にあまり影響を及ぼさない。例えばBi-213は、娘同位体であるポロニウム-213を介して崩壊し、約8.4MeVという極度に高いエネルギーを有するアルファ線の放出をもたらす。
【0030】
本発明を使用して生成される放射性同位体は、原子力電池、核電池、放射性同位体電池又は放射性同位体生成器の形態で使用でき、放射性元素の崩壊によるエネルギーは、発電のために使用される。こうした放射性同位体電池は、熱変換器及び非熱変換器に分類し得る。熱変換器は、放射性崩壊による熱の一部を電力/電気に変換する。この熱変換器の一例は、放射性同位体熱電式発電機、即ちRTGであり、宇宙船、衛星、測候所及びナビゲーション信号内で使用されることが多い。RTGは、一種の核電池であり、一連の熱電対を使用し、放射性元素の崩壊によって放出された熱をゼーベック効果によって電気に変換する。
非熱変換器は、放射線が分解されて熱になる前に、放出された放射線からエネルギーを直接抽出する。非熱変換器は、小規模な用途の使用により適している。というのは、非熱変換器は、温度勾配を得る必要がなく、従って、小型化し得るためである。最も顕著な例は、放射性ボルタデバイスを含む。
【0031】
放射性ボルタデバイスは、半導体接合を使用して電離放射線エネルギーを電力に直接変換する。標的化される放射線の種類に応じて、これらのデバイスは、アルファボルタ電池、ベータボルタ電池又はガンマボルタ電池と呼び得る。
アルファボルタ電池は、アルファ線放出放射性同位体源からのアルファ粒子を電気エネルギーに変換する。
ベータ線ボルタ電池は、ベータ線放出放射性同位体源からのベータ粒子を電気エネルギーに変換する。トリチウムは、ベータ線崩壊源として一般に使用される。ベータボルタデバイスは、軍隊、宇宙での適用等、長寿命のエネルギー源が必要とされる低電力電気用途、又は植え込み可能医療デバイスにおいて好適である。
ガンマボルタデバイスは、ガンマ線放出放射性同位体源からのエネルギー値の高いガンマ粒子又は高エネルギー光子を電気エネルギーに変換する。
本発明を使用して生成される放射性同位体は、放射性光起電力デバイス又は光学電気変換において使用でき、放射性同位体から放出されたエネルギーは、まず、シンチレータ又は蛍光体等の放射性発光材料を使用して光に変換され、光は、光起電力セルを使用して電気エネルギーに更に変換される。標的化される放射性同位体粒子の種類に応じて、変換は、アルファ線光起電力変換、ベータ線光起電力変換、又はガンマ線光起電力変換とし得る。
【0032】
本発明を使用して生成されるいくつかの放射性同位体は、何十年にも及ぶ長い半減期を有することで、ペースメーカ及び多くの他の植え込み可能医療デバイスでも使用でき、これらの放射性同位体の長い半減期は、短い半減期のために頻繁に交換する必要があるペースメーカ及び他の現在使用される植え込み可能医療デバイスよりも優れた利点を可能にする。
本発明を使用して生成される放射性同位体は、放射性同位体ロケット又は放射性同位体熱ロケットに動力を供給するためにも使用でき、放射性同位体ロケット又は放射性同位体熱ロケットは、放射性元素の崩壊によって生成される熱を使用し、作動流体を加熱し、作動流体は、ロケットのノズルを通じて更に消耗され、推力を生成する。代替的に、放射性同位体は、放射性同位体電気ロケット内で使用でき、放射性崩壊からのエネルギーは、電気エネルギーを生成するために使用され、電気エネルギーは、電気推進システムに動力を供給するために使用される。
【0033】
放射性同位体は、放射性崩壊を通じて熱をもたらす小型デバイスである放射性同位体加熱ユニット、即ちRHU内で使用し得る。
本発明を使用して生成される放射性同位体は、隕石及び彗星の地球年齢の計算、表面露出年齢及び浸食率の決定、古環境変化に対する研究における氷河、堆積物の時期の算定、地下水浸透率の決定、生物起源シリカ(珪藻及び貝殻)の海洋沈殿の推定、並びに水中環境における放射性トレーサとしてのシリカ生成量の測定にも使用し得る。
いくつかの他の用途は、限定はしないが、(例えば、代謝経路を解明する際の)リン酸化分子のトレーサ、及び特に、医学、分子生物学及び生命科学分野におけるDNAの放射性標識;卵巣がん、前立腺がん、乳がん、神経内分泌腫瘍(NET)、神経芽細胞腫、グリオーマ、リンパ腫、膀胱がんに対するがん治療及び診断;例えば、心筋かん流及び脳かん流、骨転移、神経内分泌腫瘍、前立腺がん、腎臓かん流、ウィルソン病、膵島細胞腺腫、乳がんの評価のためのPET及びSPECT画像法;放射免疫治療及び抗体治療の効力の予測、標的発現の撮像、標的発現腫瘍の検出、抗がん化学治療の監視;骨痛緩和、関節炎の滑膜切除治療のための使用、冠状動脈疾患及び副甲状腺亢進の診断;科学分析、例えば、携帯用X線機器、例えば、X線蛍光分光計に理想的なX線回折のためのX線源;ガスクロマトグラフィ内での使用を伴うオージェ電子源;シリング試験での使用;食品の殺菌(低温殺菌)のための放射線処理;工業的X線撮影(例えば、溶接部の完全性のためのX線写真);密度測定(例えば、コンクリートの密度測定);例えば、目の黒色腫のためのプラーク治療;影響を受けやすい電気構成要素の熱源としての使用;静電気除去装置内での使用;沖合油田掘削装置内での使用、及び非職業労働者の被ばくを低減する、停電中の発電施設での使用;土壌及び植物における元素移動を追跡するための使用;水環境中で粒子を分析する電子捕獲検出器における電離源としての使用;宇宙条件を地上でシミュレーションするため、長期の惑星間ミッションの準備の間の使用;夜間照明デバイス又は自立照明源としての使用;核医学撮像デバイスとして利用し得るマルチワイヤガンマカメラ(MWGC)としての使用;金属構成要素内の欠陥を位置特定するための工業用X線撮影法におけるガンマ線源としての使用;標的アルファ線治療(AML、リンパ腫、前立腺がん、黒色腫、神経膠芽腫、膀胱がん、神経内分泌腫瘍、白血病)/卵巣がん、前立腺がん、膵臓がん、神経内分泌腫瘍/抵抗性転移性前立腺がん、卵巣癌)/神経膠芽腫、卵巣がん、血液由来のがん)での使用;時計、照準器、多数の機器及び器具の放射線ルミネセンス照明におけるエネルギー源としての使用を含む。
【0034】
医療用放射性同位体の他の用途:
・神経学での用途-脳卒中、アルツハイマー病、AIDSの変化の実証、認知症、患者の頸動脈手術の評価、てんかん焦点の位置特定、脳振とう後症候群の評価、多発脳梗塞性認知症の診断
・整形外科での用途-潜在的骨外傷の同定、骨髄炎の診断、関節炎の変化及び範囲の評価、腫瘍生検部位の位置特定、特定の腫瘍範囲の測定、鎌状赤血球症における骨梗塞の同定
・心臓病での用途-冠状動脈疾患、バイパス手術の効果の測定、心不全治療効果の測定、心移植拒絶反応の検出、バイパス術又は血管形成術に適した患者の選択、心臓発作の高リスク手術患者の識別、正しい心不全の識別、化学治療心臓への毒性の測定、心臓弁膜症の評価、シャントの識別及びシャントの定量化、酵素が変化する前の急性心臓発作の診断及び位置特定
・肺での用途-肺塞栓症の診断、AIDSの肺合併症の検出、肺換気及びかん流の定量化、肺移植拒絶反応の検出、並びに熱傷患者の気道熱傷の検出
・腎臓での用途-尿路閉塞の検出、腎血管性高血圧の診断、分腎機能の測定、腎移植拒絶反応の検出、腎盂腎炎の検出、腎はん痕の検出
・腫瘍での用途-腫瘍の位置特定、腫瘍の進行度診断、転移性部位の識別、治療に対する応答の判断、がんによる骨痛の緩和
・他の用途-潜在的な感染の検出、血液細胞障害の診断及び治療、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の診断及び治療、急性胆のう炎、慢性胆道機能異常の検出、急性消化管出血の検出、並びに精巣捻転症の検出
【0035】
複雑な陽電子放出断層撮影(PET)/単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)が増え、組織的な放射性同位体治療が展開されるにつれて、以前可能であったものよりも放射性同位体純度及び放射化学純度が高い放射性同位体の調製に対するニーズが増えつつある。放射性トレーサの比放射能は、新たな用途では特に必須である。
従って、本発明の一目的は、高純度放射性同位体、特に、無担体又は担体が追加されない放射性同位体の大規模な作製方法を提供することである。
本発明は、生命科学研究、医療用途、エネルギー用途及び工業のために放射性同位体調製物を産業規模で作製する一般的な方法に関する。本発明は、以前では市場で入手可能ではなかったが、今やかなり需要のある様々な珍しい同位体の大量作製を可能にする。
【0036】
従来技術の第WO2016/181204A1号明細書による水銀ベース化合物、又は作製される銀ベース化合物が常磁性であり励起状態の「準安定」で存在する任意の従来技術による水銀ベース化合物の使用による、標的元素(複数可)(標的元素は、水素からウラン及び超ウラン元素までの周期表の任意の1つ又は複数の元素とし得る)の核変換によって作製された、得られた標的材料からの対象同位体の分離は、不活性雰囲気(例えば、Ar、He)中又は真空下、標的表面からの高温脱着を使用して達成し得る。
標的元素が、標的材料ほど揮発性ではない場合、従来技術の第WO2016/181204A1号明細書による水銀ベース化合物、又は作製される水銀ベース化合物が常磁性であり励起状態の「準安定」で存在する任意の従来技術による水銀ベース化合物の使用による、標的元素(複数可)(標的元素は、水素からウラン及び超ウラン元素までの周期表内の任意の1つ又は複数の元素とし得る)の核変換によって作製された、得られた標的材料からの対象同位体の分離は、不活性雰囲気中又は真空下、昇華の使用による標的材料の除去によって達成し得る。
従来技術の第WO2016/181204A1号明細書による水銀ベース化合物、又は作製された水銀ベース化合物が常磁性であり励起状態の「準安定」で存在する任意の従来技術による水銀ベース化合物の使用による、標的元素(複数可)(標的元素は、水素からウラン及び超ウラン元素までの周期表内の任意の1つ又は複数の元素とし得る)の核変換によって作製された、得られた標的材料からの対象同位体の分離は、得られた標的材料及び冷却剤媒体の流れ内に存在する適切な基体上への吸着によって達成し得る。
従来技術の第WO2016/181204A1号明細書による水銀ベース化合物、又は作製される水銀ベース化合物が常磁性であり励起状態の「準安定」で存在する任意の従来技術による水銀ベース化合物の使用による、標的元素(複数可)(標的元素は、水素からウラン及び超ウラン元素までの周期表内の任意の1つ又は複数の元素とし得る)の核変換によって作製された、得られた標的材料からの対象放射性同位体の脱着は、化学蒸発技法、即ち、対象放射性同位体に対してより揮発性である化合物を現場で生成する化学反応ガスの添加によって達成し得る。
現在、アルファ線放出放射性同位体の作製は、原子炉-サイクロトロン及び発電機システム内で行われるが、原子炉-サイクロトロン及び発電機システムは、制限された量のアルファ線放出放射性同位体しか生成できず、かなり高額である。一方で、本発明、及び特許請求の範囲の本発明の主題は、より広範な地域社会のために、かなりより安価な費用で放射性同位体及びアルファ線放出放射性同位体を生成する。
【0037】
2018年、がんの負担は、世界で約1,810万の新たな症例及び960万人の死亡まで増大した。世界で、5年有病者数と呼ばれる、がん診断の5年以内に生存している人の総数は、約4,380万人と推定される。
現在、毎年、世界では既存の229Th供給源の使用で1.7Ci又は63Gbqの225Acしか作製できず、225Acに対する全ての需要をカバーするには十分ではない。
225Acの限られた年間作製量は、前臨床又は臨床試験には十分であるが、許諾製品及び承認製品を含む市販製品を展開するには十分ではない。
【0038】
現在の推定によれば、患者ごとに1mCiであり、1年当たり100,000~200,000人の患者がいると仮定すると、年間に必要な225Acの最小作製量は、約100~200Ci/年である。
本発明は、世界的な需要を満たすように、多量の225Ac等のアルファ線放出放射性核種の作製し、がんに罹患する数百万の人々を治療可能にする。
がんは、世界中で二番目に多い死因であり、2018年、960万の死亡者数を占め、即ち、6人に1人ががんで死亡している。前立腺がん、胃がん、直腸結腸がん、肝臓がん及び肺がんは、男性の最も一般的な種類のがんである一方で、直腸結腸がん、子宮けいがん、肺がん、甲状腺がん及び乳がんは、女性の間で最も一般的である。
【0039】
標的アルファ線治療は、有効な治療オプションがない播種性、化学治療抵抗性、放射線抵抗性の転移性疾患の治療において重要な役割を果たす。
原子炉-サイクロトロン及び発電機システムは、アルファ線放出放射性同位体をかなり限られた量でしか生成できず、高額である。現在、わずかな数の放射性同位体しか標的アルファ線治療に適用可能ではない。しかし、様々ながん疾患に取り組むため、いくつかのアルファ線放出放射性核種を更に研究し、より広範な地域社会で利用可能とすべきである。
しかし、多量のアルファ線放出放射性核種は、短い半減期のために、効果的な処理を達成する必要があり、がん治療に使用する費用は、大きな懸念である。
アルファ線放出放射性同位体をより広範に利用可能にするため、研究者等は、より効率的で単純な作製方法の展開のために励んでいる。
本発明は、我々の社会を費用対効果の高い様式で向上させるために、より広範な地域社会でアルファ線放出放射性核種を利用可能にし得る。
放射性治療医薬品のためのアルファ線放出放射性同位体は、がんを治療する著しい役割を果たしている。
アルファ線放射体は、他の治療放射性核種より明確な競合的利点を有する:
〇短い路程による毒性の低減
〇高いLETによるより多大な効力
〇アルファ粒子治療は、直接的なDNA溶解のために、ベータ線治療及び光子照射と比較して低酸素の影響をあまり受けない。
〇アルファ線治療のRBE、細胞殺傷への複数の過程、及びDNA損傷の修復が困難であることは全て、放射線耐性の発生率の低減へとつながる。
核廃棄物又は汚染物の分析に加えて、自動化された放射化学分離は、医療の目的で放射性核種の単離及び精製も可能にし、このことは、医療用同位体の「生成」として公知の方法である。例えば、短い半減期の放射性同位体は、がん治療及び医用画像で使用し得る。より長い半減期の親同位体の放射性崩壊により、これらの短い半減期の娘同位体を生成する。
【0040】
作製される水銀ベース化合物が常磁性であり励起状態の「準安定」で存在する、水銀ベース化合物を作製する従来技術のPCT公開第WO2016/181204A1号明細書の使用:
75mlの濃縮HClをビーカ内に置き、25mlの濃縮HNO3をビーカに添加し、王水を生成した。反応を開始させるため、生成された王水に50gの純水銀金属を徐々に添加した。反応が開始し、この反応をビーカ内で1時間、室温で保持した。反応混合物を収容するビーカをホットプレート上に置き、90℃から135℃までの範囲の温度まで、2.5時間の間加熱した。これにより、65.7gの水銀ベース化合物が粉末形態で得られた。作製された水銀ベース化合物は、常磁性であり、励起状態の「準安定」で存在する。
インド、ムンバイのインド工科大学(IIT)において、2021年6月、電子スピン共鳴(ESR/EPR)分析を純液体水銀金属(99.9%)について実施した。ESR分析のスペクトルは、ピークが存在しない、従って、純液体水銀金属(99.9%)が反磁性であることを明らかに示している。
インド、ムンバイのインド工科大学(IIT)において、水銀ベース化合物の常磁性を知るため、電子スピン共鳴(ESR)分析を、作製された水銀ベース化合物について実施した。ESRの結果は、明確なピークを明らかに示しており、作製された水銀ベース化合物が常磁性であることを証明している。
【0041】
元素を核変換するエネルギー源として、常磁性且つ励起状態の「準安定性」水銀ベース化合物(従来技術のPCT公開第WO2016/181204A1号明細書に基づく)の作製、及びこの化合物の使用。常磁性且つ励起状態の「準安定性」水銀ベース化合物を、標的元素(複数可)(標的元素は、水素からウラン及び超ウラン元素までの周期表の任意の1つ又は複数の元素とし得る)の原子核と反応させ、標的元素(複数可)を、低質量元素、高質量元素、高密度元素、希土類元素及び超重元素を含む多数の新たな元素に核変換させ、かなり高い核変換率を達成する。このかなり高い核変換率は、元素の核変換に現在使用される全ての他の技術、例えば、原子炉、加速器駆動システム(ADS)、高速炉、粒子加速器等の何倍にもなる。
【実施例1】
【0042】
高純度(99.9%)のカドミウム(Cd)を標的元素として使用した。50gの標的元素のカドミウムを溶解炉のグラファイトるつぼ内に入れ、カドミウムの溶融点を上回る溶融状態まで加熱した。温度は、450℃まで上昇させた。標的元素のカドミウムを溶融状態で存在するまで加熱した後、50mgの常磁性且つ励起状態の水銀ベース化合物(従来技術のPCT公開第WO2016/181204A1号明細書による)を50gの溶融したカドミウムに添加し、一定期間の間、混合物を撹拌させながら反応を生じさせた。この後、得られた溶融状態の標的材料を鋳型に注ぎ、室温まで冷却させ、得られた標的材料を固化させた。インド、ムンバイのインド工科大学IITで2021年10月に実施されたFEG SEM EDSの分析結果によると、得られた標的材料は、表1に概説する対象放射性同位体を含む以下の元素を含有する。
【実施例2】
【0043】
高純度(99.9%)のスズ(Sn)を標的元素として使用した。50gの標的元素のスズを溶解炉のグラファイトるつぼ内に入れ、スズの溶融点、即ち、360℃を上回る溶融状態まで加熱した。スズが溶融状態で存在するまで加熱した後、50mgの常磁性且つ励起状態の水銀ベース化合物(従来技術のPCT公開第WO2016/181204A1号明細書による)を50gの溶融したスズに添加し、一定期間の間、混合物を撹拌させながら反応を生じさせた。この後、得られた溶融状態の標的材料を鋳型に注ぎ、室温まで冷却させ、得られた標的材料を固化させるた。インド、ムンバイのインド工科大学IITで2021年10月に実施されたFEG SEM EDSの分析結果によると、得られた標的材料は、表1に概説する対象の放射性同位体を含む以下の元素を含有する。
【実施例3】
【0044】
高純度(99.9%)のビスマス(Bi)を標的元素として使用した。50gの標的元素のビスマスを溶解炉のグラファイトるつぼ内に入れ、ビスマスの溶融点、即ち、370℃を上回る溶融状態まで加熱した。ビスマスが溶融状態で存在するまで加熱した後、50mgの常磁性且つ励起状態の水銀ベース化合物(従来技術のPCT公開第WO2016/181204A1号明細書による)を50gの溶融したビスマスに添加し、一定期間の間、混合物を撹拌させながら反応を生じさせた。この後、得られた溶融状態の標的材料を鋳型に注ぎ、室温まで冷却させ、得られた標的材料を固化させた。インド、ムンバイのインド工科大学IITで2021年10月に実施されたFEG SEM EDSの分析結果によると、得られた標的材料は、表1に概説する対象の放射性同位体を含む以下の元素を含有する。
【0045】
以下の表1は、上記方法を使用して生成され、得られた標的材料の実施例1から4は、放射性同位体を含有することを示す。
【0046】
【表1】

【0047】
表1は、それぞれの得られた標的材料の実施例1から3のSEM-EDS測定の間に出現した化合物を示す。
表2は、フーリエ変換赤外分光分析(FTIR)を使用する、得られた標的材料(実施例1から4)の赤外スペクトルである。スペクトル内に見られるピークは、得られた標的材料内に存在する放射性同位体と共に、官能基錯体/ポリマー(アルカン、アルケン、アミン、エステル、アルコール、芳香族化合物、ケトン等)の存在を示している。スペクトル内で見られるピークを表2内に挙げる。
【0048】
【表2】

【0049】
表2は、最も顕著なピークの一部(波数cm-1)が、得られた標的材料の実施例1から3のFITRスペクトル内に存在することを示す。示される6つのピークは、常に最も顕著なピークではないが、スペクトル内に存在する様々なピークを示すように任意に選択される。
【0050】
図1
2021年6月、インド、ムンバイのインド工科大学(IIT)において、電子スピン共鳴(ESR/EPR)分析を純液体水銀金属(99.99%)について実施した。ESR分析のスペクトルは、ピークが存在しない、従って、純液体水銀金属(99.99%)が反磁性であることを明らかに示している。
図2
純液体水銀金属(99.99%)を使用し、本発明及び請求項の対象による水銀ベース化合物を作製した。インド、ムンバイのインド工科大学(IIT)で、2021年6月、電子スピン共鳴(ESR/EPR)を使用して、作製された水銀ベース化合物を分析した。分析結果は、明確な異なるピークの存在を明らかに示しており、作製された水銀ベース化合物が常磁性であることを証明している。
図3
図3は、2021年10月、インド、ムンバイのインド工科大学(IIT)における、純標的元素のカドミウム(99.9%)を核変換した後に得られた標的材料のフーリエ変換赤外分光分析(FTIR)を示す。
スペクトル内に見られるピークは、アミン、アルコール、ブロモアルカン、クロロアルカン及びエステルのそれぞれの存在を暗示する。スペクトル内に見られるピークは、得られた標的材料内に存在する放射性同位体と共に、官能基錯体/ポリマー(アルカン、アルケン、アミン、エステル、アルコール、芳香族化合物、ケトン等)の存在を示している。
図4
図4は、2021年10月、インド、ムンバイのインド工科大学(IIT)における、純標的元素のスズ(99.9%)を核変換した後に得られた標的材料のフーリエ変換赤外分光分析(FTIR)を示す。
スペクトル内に見られるピークは、アミン、アルコール、ブロモアルカン、クロロアルカン及びエステルのそれぞれの存在を暗示する。スペクトル内に見られるピークは、得られた標的材料内に存在する放射性同位体と共に、官能基錯体/ポリマー(アルカン、アルケン、アミン、エステル、アルコール、芳香族化合物、ケトン等)の存在を示している。
図5
図5は、2021年10月、インド、ムンバイのインド工科大学(IIT)における、純標的元素の水銀(99.9%)を核変換した後に得られた標的材料のフーリエ変換赤外分光分析(FTIR)を示す。
スペクトル内に見られるピークは、アミン、アルコール、ブロモアルカン、クロロアルカン及びエステルのそれぞれの存在を暗示する。スペクトル内に見られるピークは、得られた標的材料内に存在する放射性同位体と共に、官能基錯体/ポリマー(アルカン、アルケン、アミン、エステル、アルコール、芳香族化合物、ケトン等)の存在を示している。
図6
図6は、2021年10月、インド、ムンバイのインド工科大学(IIT)における、純標的元素のビスマス(99.9%)を核変換した後に得られた標的材料のフーリエ変換赤外分光分析(FTIR)を示す。
スペクトル内に見られるピークは、アミン、アルコール、ブロモアルカン、クロロアルカン及びエステルのそれぞれの存在を暗示する。スペクトル内に見られるピークは、得られた標的材料内に存在する放射性同位体と共に、官能基錯体/ポリマー(アルカン、アルケン、アミン、エステル、アルコール、芳香族化合物、ケトン等)の存在を示している。
図7
SEM/EDS分析の図7は、2021年10月、インド、ムンバイのインド工科大学(IIT)で、作製された常磁性且つ励起状態の水銀ベース化合物(従来技術のPCT公開第WO2016/181204A1号明細書による)により純標的元素のカドミウム(99.9%)を核変換した後に得られた標的材料について実施した。SEM/EDS分析結果は、Er、Yb、Ra、Ac等の放射性同位体を含め、多数の新たな元素が存在することを明らかに示している。
【0051】
【表3】

図8
SEM/EDS分析の図8は、2021年10月、インド、ムンバイのインド工科大学(IIT)で、作製された常磁性且つ励起状態の水銀ベース化合物(従来技術のPCT公開第WO2016/181204A1号明細書による)により純標的元素のスズ(99.9%)を核変換した後に得られた標的材料について実施した。SEM/EDS分析結果は、As、Mo、In、Te、I、Xe、La、Er、Yb、Pb等の放射性同位体を含め、多数の新たな元素が存在することを明らかに示している。
【0052】
【表4】
図9
SEM/EDS分析の図9は、インド、ムンバイのインド工科大学(IIT)で、2021年10月、作製された常磁性且つ励起状態の水銀ベース化合物(従来技術のPCT公開第WO2016/181204A1号明細書による)により純標的元素のビスマス(99.9%)を核変換した後に得られた標的材料について実施した。SEM/EDS分析結果は、Mo、Tc、Yb、Ta、W、Bi、Rn、Fr、Ra、Th等の放射性同位体を含め、多数の新たな元素が存在することを明らかに示している。
【0053】
【表5】
【0054】
常磁性且つ励起状態の水銀ベース化合物を使用し、標的元素(水素からウラン及び超ウラン元素までの周期表内の1つ又は複数の元素)と反応させ、次に、標的元素を濃縮、精製してモノアイソトピック試料にする、標的元素を多数の新たな元素に核変換した後に得られた標的材料から放射性同位体を作製、分離、精製する本発明の方法は、いくつかの分離及び精製方法の適用によって達成される。
標的元素は、溶融状態、ガス形態、液体形態、固体形態、イオン形態、塩形態、又はこれらの組合せで存在するが、これらに限定されない。
標的元素は、溶解炉のるつぼに入れ、常磁性且つ励起状態の水銀ベース化合物(従来技術のPCT公開第WO2016/181204A1号明細書)に基づく)、又は水銀ベース化合物が常磁性であり、準安定性の励起状態で存在する任意の従来技術と混合させる。
励起された分子は、通常、ガンマ線を短い時間量で放出する。一方で、特定の励起された原子核は、「準安定」であり、このことは、これらがガンマ線放出を延期し得ることを意味する。この延期は、1秒の何分の1か継続し得る、又は数分、数時間、数年若しくはこれらより長くさえ継続し得る。この延期は、原子核のスピンがガンマ崩壊を防止する際に生じる。更に、軌道を回る電子がガンマ線を吸収し、軌道から押し出される際、光電効果と呼ばれる別の特別な効果が生じる。
元素を核変換するエネルギー源として、常磁性且つ励起状態の「準安定性」水銀ベース化合物(従来技術のPCT公開第WO2016/181204A1号明細書に基づく)の作製、及びこの化合物の使用。常磁性且つ励起状態の「準安定性」水銀ベース化合物を、標的元素(複数可)(標的元素は、水素からウラン及び超ウラン元素までの周期表内の任意の1つ又は複数の元素とし得る)の原子核と反応させ、標的元素(複数可)を、低質量元素、高質量元素、高密度元素、希土類元素及び超重元素を含む多数の新たな元素に核変換させ、かなり高い核変換率を達成する。このかなり高い核変換率は、元素の核変換に現在使用される全ての他の技術、例えば、原子炉、加速器駆動システム(ADS)、高速炉、粒子加速器等の何倍にもなる。
【0055】
温度は、標的元素の溶融点/臨界点を上回って取られ、常磁性且つ励起状態の水銀ベース化合物は、標的元素の原子核と反応させる。この工程の間、標的元素は、低質量元素/同位体、高質量元素/同位体、高密度元素/同位体、希土類元素/同位体、及び超重元素/同位体を含む多数の新たな元素に核変換される。
炉を消し、得られた標的材料を冷却する。
高温のガス流又は分子流によって、対象同位体又は化学化合物を次の精製ステップに搬送する。
放射性同位体は、適切な化学製品の添加によって調整し、適切な化学製品とは、元素状態への高温化学還元、又は酸化/分子生成を可能にする一方で、質量分離工程を制御する、即ち質量をマークするものである。
対象同位体は、高温拡散を使用して標的材料の表面に移送し得る。
真空下若しくは不活性雰囲気中での、標的表面からの高温脱着による、得られた標的材料からの対象同位体の分離、及び/又は
真空下若しくは不活性雰囲気中での、高温昇華による標的材料の除去による、得られた標的材料からの対象同位体の分離、及び/又は
液体金属標的の流れ及び冷却剤媒体内に位置する適切な基体上への吸着による、得られた標的材料からの対象同位体の分離、及び/又は
化学蒸発による、かさのある標的材料からの対象同位体の脱着。
【0056】
得られた同位体は、疾患の診断及び治療のために、体内分布研究、PET及びSPECT撮影法、RIT、TAT、ガンマ線分光学、オージェ治療、放射線塞栓治療等を含め、医学及び研究においていくつかの生体内及び生体外での用途がある。
好ましくは、得られた標的材料からの同位体の分離は、標的を高温にする、例えば、真空下、例えば、約10-5mbar以上で、又は適切なガス雰囲気下、固体標的を固体標的の溶融点の60~95%にすることによって実行される。加熱される標的と反応しない貴ガス(He、Ne、Ar等)が、選択される適切なガス環境である。時として、O2、CF4等の反応ガスは、例えば、10-4mbarといった分圧で、標的に有害ではないが所望の同位体の放出に十分に高い量で供給される。
真空又は不活性ガス下での蒸発により、標的材料を除去し、残留物内にあまり揮発性ではない元素を残す。元素に応じて、残留物から所望の原子核を回収するための様々な手法を使用し得る。
質量分離は、無線周波数四極子、ウィーンフィルタ等を含む磁場又はアレイ又は質量選択デバイスを使用して実行し得るが、これらに限定されない。
同重体、異なる質量数を有する異なる元素の原子、又は同じシステム内で生成される同じ元素の同位体の可能性もある。この例では、いくつかの質量の同時収集を可能にする質量選択デバイスを有することが必須である。
所望の放射性同位体の留分をどのように得るかに関わらず、所望の放射性同位体の留分は、生体共役の標識処置のために直接利用されるか、又はクロマトグラフィシステム若しくは更なる精製のための他の適用可能な方法に直接注入し得る。
所望の放射性同位体をガス形態で得る必要がある場合、耐火性母材からの熱の放出を使用して、簡単な分離を達成し得る。
【0057】
水銀は、互いに結合する2つの水銀(I)イオンから構成される二原子金属陽イオンである。対内の実際の個々の水銀イオンは、+1電荷を有するので、この場合、+1電荷が基本粒子である。これは、個々の水銀イオンが+2電荷を有する水銀(II)イオンとは反対である。Hg+1は、単独では不安定すぎるため、生成されるとすぐに、別のHg+1イオンと融合してHg+2イオンを生成し、その後、そのままの状態である。
抽出、沈降、電気化学分離、陰イオン交換クロマトグラフィ、陽イオン交換クロマトグラフィ、熱クロマトグラフィ及びガスクロマトグラフィを含む、いくつかの従来のラジオクロマトグラフィによる方法及び放射化学方法を使用し、同じ質量設定で出現するフッ化物又は酸化物のような分子側波帯から得られるいくつかの同重体及び擬似同重体(pseudobar)から、並びに生じた不純物から、所望の放射性同位体を分離し得る。
【0058】
化学分離工程内で使用される配位子は、最後には、生成物留分となり、更なる標識作業に進む前に除去しなければならない。多くの状況では、蒸発は最良のオプションである。
分離及び精製の後に得られる所望の放射性同位体生成物は、無担体である、又は担体が追加されず、同位体として純粋である。
一連の作製、分離及び精製は、前述のように作業し得る。しかし、いくつかの段階は、それぞれの適用の純度要件を満たすように調節し得る。
常磁性且つ励起状態の「準安定性」水銀ベース化合物の作製、及び元素を核変換するエネルギー源としてのこの化合物の使用(従来技術のPCT公開第WO2016/181204A1号明細書に基づく)。常磁性且つ励起状態の「準安定性」水銀ベース化合物を、標的元素(複数可)(標的元素は、水素からウラン及び超ウラン元素までの周期表内の任意の1つ又は複数の元素とし得る)の原子核と反応させ、標的元素(複数可)を、低質量元素、高質量元素、高密度元素、希土類元素及び超重元素を含む多数の新たな元素に核変換させ、かなり高い核変換率を達成する。このかなり高い核変換率は、元素の核変換に現在使用される全ての他の技術、例えば、原子炉、加速器駆動システム(ADS)、高速炉、粒子加速器等の何倍にもなる。
【0059】
本発明は、アルファ線放出放射性同位体を作製、分離及び精製する方法に関し、より詳細には、本発明は、核変換から得られる標的材料から、アルファ線放出放射性核種、ベータ線放出放射性核種、ガンマ線/X線放出放射性核種を作製、分離、精製する方法、装置及びシステムに関し、標的材料は、低質量放射性核種、高質量放射性核種、高密度放射性核種、ランタノイド放射性核種、及びアクチニド放射性核種を含有し、これらの放射性核種は、標的元素(周期表の任意の1つ又は複数の元素、例えば、水素からウラン及び超ウラン元素までの元素)と、常磁性且つ励起状態の水銀ベース化合物とを反応させ、元素を核変換し、アルファ線放出放射性核種、ベータ線放出放射性核種、ガンマ線/X線放出放射性核種を作製する方法によって作製される。
本開示は、一般に、化学、放射化学、電気化学、核物理学、及び核化学の分野に関し、より詳細には、がん、心臓発作及び脳障害等、生命を脅かす疾患を治療する核医学、工業用途、アルファボルタ電池、ベータボルタ電池、放射性同位体ベースの熱電式発電機、放射性同位体ベースのバッテリ、航空、海上及び道路輸送システム、及び農業使用のため、アルファ線放出放射性同位体、ベータ線放出放射性同位体、ガンマ線/X線放出放射性同位体を分離、精製する方法、装置及びシステムに関する。
本発明は、アルファ線放出放射性同位体を分離、精製する方法に関し、より詳細には、本発明は、核変換から得られた標的材料から、アルファ線、ベータ線、ガンマ線/X線放出放射性核種を作製、分離、精製する方法、装置及びシステムに関し、標的材料は、低質量放射性核種、高質量放射性核種、高密度放射性核種、ランタノイド放射性核種、アクチニド放射性核種を含有し、これらの放射性核種は、標的元素(周期表の任意の1つ又は複数の元素、例えば、水素からウラン及び超ウラン元素までの元素)と、数百テラジュールに換算される内部静止エネルギーを有する常磁性且つ励起状態の水銀ベース化合物とを反応させ、元素を核変換し、アルファ線放出放射性核種、ベータ線放出放射性核種、ガンマ線/X線放出放射性核種を作製する方法によって作製される。
一実施形態では、本開示は、がん、心臓発作及び脳障害等、生命を脅かす疾患を治療する核医学、工業用途、アルファボルタ電池、ベータボルタ電池、放射性同位体ベースの熱電式発電機、放射性同位体ベースのバッテリ、航空、海上及び道路輸送システム、並びに医療、工業及び農業での使用のため、アルファ線、ベータ線、ガンマ線/X線放出放射性同位体を分離、精製する方法、装置及びシステムに関する。
【0060】
一実施形態では、本開示は、常磁性且つ励起状態の水銀ベース化合物により水素からウラン及び超ウラン元素までの元素を核変換することによって得られた標的材料から、低質量放射性同位体、高質量放射性同位体、高密度放射性同位体、希土類放射性同位体、ランタノイド放射性同位体及びアクチニド放射性同位体を分離、精製する方法、装置及びシステムに関する。
別の実施形態では、本開示は、水素からウラン及び超ウラン元素/同位体までの標的元素(周期表の1つ又は複数の元素、その同位体、混合体、塩、酸化物等)の核変換によって得られた標的材料から放射性同位体を分離、精製する方法、装置及びシステムに関する。
別の実施形態では、本開示は、溶融状態、固体状態、ガス状態及び液体状態で存在する、得られた標的材料から放射性同位体を分離、精製する方法、装置及びシステムに関する。
【0061】
別の実施形態では、本開示は、常磁性且つ励起状態の水銀ベース化合物の使用による、水素からウラン及び超ウラン元素/同位体までの標的元素の核変換によって得られた存在する標的材料から、アルファ線放出放射性同位体を分離、精製する方法、装置及びシステムに関し、常磁性且つ励起状態の水銀ベース化合物は、数百テラジュールに換算される内部静止エネルギーを有し、元素(溶融状態、固体状態、ガス状態及び液体状態で存在する、周期表の1つ又は複数の元素、その同位体、混合体、塩、酸化物等)を核変換可能である。
別の実施形態では、本開示は、常磁性且つ励起状態の水銀ベース化合物の使用による、水素からウラン及び超ウラン元素/同位体までの標的元素の核変換によって得られた存在する標的材料から、ベータ線放出放射性同位体を分離、精製する方法、装置及びシステムに関し、常磁性且つ励起状態の水銀ベース化合物は、数百テラジュールに換算される内部静止エネルギーを有し、元素(溶融状態、固体状態、ガス状態及び液体状態で存在する、周期表の1つ又は複数の元素、その同位体、混合体、塩、酸化物等)を核変換可能である。
別の実施形態では、本開示は、常磁性且つ励起状態の水銀ベース化合物の使用による、水素からウラン及び超ウラン元素/同位体までの標的元素の核変換によって得られた標的材料から、ガンマ線/X線放出放射性同位体を分離、精製する方法、装置及びシステムに関し、常磁性且つ励起状態の水銀ベース化合物は、数百テラジュールに換算される内部静止エネルギーを有し、元素(溶融状態、固体状態、ガス状態及び液体状態で存在する、周期表の1つ又は複数の元素、その同位体、混合体、塩、酸化物等)を核変換可能である。
【0062】
別の実施形態では、本開示は、放射性同位体生成器システムに関し、放射性同位体生成器システムは、周期表の任意の1つ又は複数の元素を使用するある化学元素から別の元素(複数可)への変換によって得られた放射性同位体含有標的材料から、アルファ線放出放射性同位体及び他の同位体を分離、精製する。
別の実施形態では、この方法、装置及びシステムは、本明細書では放射性同位体生成器システムと呼ぶ。
別の実施形態では、本開示は、放射性同位体生成器システムに関し、放射性同位体生成器システムは、アルファ線放出放射性同位体を分離、精製し、内部静止エネルギーを有する常磁性且つ励起状態の水銀ベース化合物を使用して複数の元素を核変換し、高比放射能を有する短い半減期のアルファ線放出放射性同位体を作製する核変換方法という大きな利点を有する。
別の実施形態では、本開示は、がん、心臓発作及び脳障害等、生命を脅かす疾患を治療する核医学のため、アルファ線放出放射性同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関する。
別の実施形態では、本開示は、比較的短い半減期を有するアルファ線放出放射性同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関し、アルファ線放出放射性同位体は、その所望の目的を果たした後、崩壊し、周囲の臓器及び組織に過剰な損傷を生じさせないようにする。
【0063】
別の実施形態では、本開示は、医療放射性核種として使用するのに適切な特性を有するランタノイド元素及びアクチニド元素を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関する。
診断目的では、放射性同位体は、撮像可能なガンマ線を有さなければならない。
治療用途では、放射性核種は、エネルギーレベルが標的組織への治療線量の送出に適しているベータ線又はアルファ線を放出すべきである。
別の実施形態では、本開示は、ランタノイド放射性同位体及びアクチニド放射性同位体を溶液中で分離、精製する放射性同位体生成器システムに関する。
別の実施形態では、本開示は、主に+3の原子価状態で存在し、全てが同様の化学特性を呈するランタノイド元素及びアクチニド元素を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関する。本開示は、様々なランタノイド化合物及びアクチニド化合物の合成に同じ合成経路及び手順を適用可能にする。
【0064】
別の実施形態では、本開示は、医療分野の最も重要な用途のために放射性同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関し、放射性同位体は、医用画像等の診断目的、及びがん治療等の治療用途で使用される。
別の実施形態では、本開示は、高比放射能を有する放射性同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関し、最小濃度を最大効果で投与し、化学毒性による合併症を防止し得るようにする。
別の実施形態では、本開示は、Th-227、Ac-225、Ra-224、Ra-223、Bi-213、Bi-212、Pb-211、At-211等のアルファ線放出放射性同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関し、この方法は、常磁性且つ励起状態の水銀ベース化合物の使用による、水素からウラン及び超ウラン元素/同位体までの標的元素の核変換によって得られた標的材料を溶解させるステップを有し、常磁性且つ励起状態の水銀ベース化合物は、数百テラジュールに換算される内部静止エネルギーを有し、元素(溶融状態、固体状態、ガス状態及び液体状態で存在する、周期表の1つ又は複数の元素、その同位体、混合体、塩、酸化物等)を核変換可能である。
別の実施形態では、本開示は、限定はしないが、医療、放射性医薬品、工業用途、宇宙開発のための放射性同位体発電システム、道路、航空及び海上輸送車両用燃料としてのアルファボルタ電池、ベータボルタ電池、核電池、科学研究及び農業及び多数の他の用途等の分野のため、革新的な実験機構を使用して高比放射能アルファ線放出放射性同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関する。
別の実施形態では、本開示は、医用画像等の診断目的、及びがん治療等の治療用途等の核医学用途のためにアルファ線、ベータ線、ガンマ線/X線放出放射性同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関する。
別の実施形態では、本開示は、深宇宙ミッションへの動力供給に使用される238Pu等の放射性同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関する。
【0065】
別の実施形態では、本開示は、大きな内部静止エネルギーを有する常磁性且つ励起状態の水銀ベース化合物の使用により、核変換技術によって生成される高比放射能を有する放射性核種を生成する放射性同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関し、常磁性且つ励起状態の水銀ベース化合物は、標的元素(周期表の任意の1つ又は複数の元素)の原子核と反応し、標的元素を、高比放射能を有する低質量放射性同位体、高質量放射性同位体、高密度放射性同位体、希土類放射性同位体、超重元素放射性同位体を含む多数の新たな元素に核変換する。
別の実施形態では、本開示は、様々なアルファ線放出放射性同位体、ベータ線放射性同位体及びガンマ線/X線放射性同位体を含む放射性同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関し、これらの放射性同位体は、水素からウラン及び超ウラン元素までの様々な標的元素(周期表の任意の1つ又は複数の元素)からの低質量元素、高質量元素、高密度元素、希土類元素及び超重元素を含む。標的元素は、溶融状態、液体状態、固体状態、ガス状態又はこれらの組合せで存在し得る。
別の実施形態では、本開示は、高比放射能を有する放射性同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関する。様々な態様では、回収された放射性核種は、無担体又は本質的に無担体であり得、例えば、約1ミリキュリー/マイクログラム(mCi/μg)から20mCi/μg、約1mCi/μgから10mCi/μg、約5mCi/μgから10mCi/μg、約5mCi/μgから15mCi/μg、約8mCi/μgから20mCi/μg、又は約10mCi/μgから20mCi/μg、約0.0001mCi/μgから1mCi/μgの高比放射能を有するが、これらに限定されない。
【0066】
別の実施形態では、本開示は、核変換により得られた標的材料から所望の放射性同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関し、この放射性同位体は、治療及び医療用途並びに放射線源の調製及び核燃料再処理に何にもまして重要である。
別の実施形態では、本開示は、放射性同位体生成器システムに関し、急性骨髄性白血病(AML)、乳がん、卵巣がん、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、前立腺がん、膀胱がん、リンパ腫、黒色腫、神経内分泌がん、膵臓がん、血液由来のがんの治療のため、治療用アルファ線放出放射性同位体を単離、精製する方法及びシステムを提供する。
別の実施形態では、本開示は、任意の二価陽イオン(例えば、Ca(II)、Sr(II) Ba(II)及びRa(II)等のアルカリ土類)、並びに三価陽イオン(例えば、Y-90、ランタノイド、Lu-177、Sm-153、Er-169、Tb-161、Gd-159、Pr-143、Pm-149、Dr-165、Ho-166、Pr-142、Th-227、Ac-225、Ra-224、Ra-223、Bi-213,Bi-212、Pb-211、At-211)、並びに第4族元素Ti、Zr、Hf、Thを他の材料から分離、精製する放射性同位体生成器システムに関する。
別の実施形態では、本開示は、放射性同位体生成器システムに関し、Th-227、Ac-225、Ra-224、Ra-223、Bi-213,Bi-212、Pb-211、At-211等を、核変換により得られた標的材料から単離、精製する方法及びシステムを提供する。
別の実施形態では、本開示は、Th-227、Ac-225、Ra-224、Ra-223、Bi-213、Bi-212、Pb-211、At-211を単離、精製するため、単一樹脂床の使用により分離、精製する放射性同位体生成器システムに関し、鉱酸は、Th-227、Ac-225、Ra-224、Ra-223、Bi-213、Bi-212、Pb-211、At-211を移送し、樹脂に吸着させる媒体として必要とされる。本発明の利点は、放射性医薬品として純粋な(例えば、約95パーセント超)Th-227、Ac-225、Ra-224、Ra-223、Bi-213,Bi-212、Pb-211、At-211がかなり短時間で生成されることである。
【0067】
別の実施形態では、本開示は、同質又は異質なバルク材料から分離、精製する放射性同位体生成器システムに関し、方法は、溶液を生成するために材料を溶解させることと、同位体を樹脂上に保持するため、溶液を樹脂と接触させることと、標的元素を含有する溶離液を生成することと、同位体含有樹脂と、不純物(例えば、低質量元素、高質量元素、高密度元素標的元素(複数可)、あらゆる残余イオン及び他のイオン)を樹脂から除去するため、第1の濃度の酸とを接触させることと、同位体含有樹脂と第2の濃度の酸とを接触させ、精製された同位体を樹脂から除去することとを含む。
【0068】
別の実施形態では、本開示は、+2、+3及び+4酸化状態部分を他の材料から分離、精製する放射性同位体生成器システムに関する。例えば、本発明は、限定はしないが、Sc-47、Lu-177、Y-90、及びTh-227、Ac-225、Ra-224、Ra-223、Bi-213,Bi-212、Pb-211、At-211を含むハードな三価酸化状態部分を単離、精製する容易な方法を提供する(「ハードな」イオンは、小さなイオン半径及び大きな陽イオン電荷を有する)。
別の実施形態では、本開示は、放射性同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関し、放射性同位体生成器システムは、溶解剤として硫酸、硝酸及び塩酸等の鉱酸を同位体液体相中に含む。
【0069】
別の実施形態では、本開示は、放射性同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関し、放射性同位体生成器システムは、硫酸と他の酸との混合物(フッ化水素酸/硫酸、硝酸/硫酸、塩酸/硫酸等)を同位体水溶液中に含む。概して、硫酸は、任意の酸混合物の主成分である。例えば、硫酸は、フッ化水素酸より多い。
別の実施形態では、本開示は、医療及び他の用途で高純度(95パーセントを上回る)の収率の放射性同位体を生成するため、放射性同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関する。純度は、高比放射能に関連する。
別の実施形態では、本開示は、核変換により得られた標的材料から医療用放射性同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関する。1つのそのような放射性同位体は、Ac-225である。アクチニウムは、ハードな三価(+3)酸化状態を有する。
別の実施形態では、本開示は、標的元素の核変換によって生成され、得られた標的材料を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関する。標的元素は、溶融相、固体相、ガス相及び液相の混合とすることもできる。標的元素は、得られた標的材料内に対象の放射性同位体を作製するため、大きな内部静止エネルギーを有する常磁性且つ励起状態の水銀ベース化合物を使用して核変換される。
別の実施形態では、本開示は、これらに限定されないが、純99.9%の鉛等の標的元素によって生成され、得られた標的材料を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関する。標的元素の純99.9%鉛は、Th-227、Ac-225、Ra-224、Ra-223、Bi-213、Bi-212、Pb-211、At-211等のアルファ線放出放射性同位体を作製するため、常磁性且つ励起状態の水銀ベース化合物と反応させる。
別の実施形態では、本開示は、アルファ線放出放射性同位体を含有する、得られた標的材料を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関し、標的材料は、酸と接触させ、60Cを超えるが水の沸点以下まで加熱され、溶解させる。
別の実施形態では、本開示は、放射性同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関し、水等の極性溶媒は、溶液の粘度を調節するために放射性同位体を含有する酸溶液に添加され、これにより、より自由に流動する溶液を作製する。樹脂の最初の充填は、pH約-0.5から約-1.5を有する酸濃度で約3M以上の液相の状態である。
別の実施形態では、本開示は、放射性同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関し、自由に流動する溶液は、分離工程を開始するため、溶液を樹脂に浸透させる次のステップを促進するのに好ましい。樹脂は、カラムの場合のように閉じ込められるか、又は自由に流動でき、対象分析物は、カラム上で保持され、希釈液が主に鉛等の標的元素を含むようにする。
別の実施形態では、本開示は、放射性同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関し、単一陽イオン交換樹脂カラム又は床がこの方法内で利用される。次に、樹脂は、約3Mから約8Mの間の硝酸にさらされ、アルファ線放出放射性同位体含有樹脂からの不純物(例えば、低質量元素、高質量元素、高密度元素、希土類元素等)の抽出を開始する。
【0070】
別の実施形態では、本開示は、放射性同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関し、第2の不純物放出洗浄は、軽度(約5Mから約8M)塩酸を使用して利用される。これにより、第2の不純物を含む希釈液が生成され、第1の洗浄から留まっている残余硝酸があれば除去される。しかし、最終生成物は、HNO3中が望ましく、HCl洗浄は不要である。そうではなく、希釈HNO3(0.1M)を使用する第2の洗浄は、最初の5~8MのHNO3洗浄の後に利用し得る。
別の実施形態では、本開示は、放射性同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関し、不純物は、以下の順で洗浄除去される。まず、樹脂にH2SO4を充填し、余分な鉛を除去し、次に、HNO3を樹脂に浸透させ、樹脂内の他の元素不純物を除去し、次に、HClを樹脂に添加し、HNO3を除去し、樹脂媒質を得てHCl形態にし、最終生成物がHCl中のみにあるようにする。これらの例では、同位体は、HCl中に供給される。
【0071】
別の実施形態では、本開示は、放射性同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関し、多量のアルファ線放出放射性同位体を含む樹脂を(0.15Mの塩酸等の)適度希釈酸に浸透させ、大部分が可溶性のアルファ線放出放射性同位体を含む希釈液を生成する。これにより、得られた樹脂を再利用に適したものにする。Ac-225等の得られた溶離液は、溶離Ac-225と無菌フィルタとの接触等によってろ過を受け、純粋な(例えば、95パーセント超)Ac-225希釈液をもたらす。
別の実施形態では、本開示は、放射性同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関し、核変換され、得られた鉛標的材料は、約2M以下、好ましくは1Mから約0.1Mの間の濃度で希釈硝酸を使用して溶解させる。鉛除去ステップが鉱酸溶液のみを必要とすることは、注目すべきである。
別の実施形態では、本開示は、放射性同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関し、不純物抽出ステップにおいて、核変換後に得られた鉛材料除去は、それぞれ、比較的濃縮された硝酸(例えば、約3Mを上回り、約8Mを下回る)、及び塩酸(例えば、約3Mを上回り、約8Mを下回る)を必要とする。
別の実施形態では、本開示は、放射性同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関し、核変換により得られた、硝酸、塩酸、フッ化水素酸等の鉱酸中に溶解する鉛の最初の加熱工程は、任意の温度及び圧力で行い得る。例えば、0Cから150Cの間の温度は、許容できる。
別の実施形態では、本開示は、標的元素の核変換エネルギー源として水銀ベース化合物を作製し、アルファ線放出放射性同位体、ベータ線放出放射性同位体及びガンマ線/X線放出放射性同位体を作製する方法のための、放射性同位体生成器システムに関し、作製される水銀ベース化合物は、常磁性であり励起状態で存在し、水銀ベース化合物を作製する。方法は、
-純鉱酸又は鉱酸の溶液を容器内に準備するステップと、
-液体水銀を容器に添加するステップと、
-水銀と鉱酸とを反応させて混合物を生成するステップと、
-室温及び環境圧力で混合物を乾燥させて水銀ベース化合物を紛形態で生成するステップと
を有し、鉱酸対液体水銀の比率は、少なくとも実質的に0.1:1から10:1の鉱酸対水銀の範囲から選択され、鉱酸は、mlに基づき、液体水銀はグラムに基づき、乾燥ステップは、80℃から150℃の範囲内で選択される温度で、30分から10時間の範囲内で選択される時間の間、実行される。
【0072】
別の実施形態では、本開示は、放射性同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関し、標的元素の核変換は、アルファ線放出放射性同位体、ベータ線放出放射性同位体、ガンマ線/X線放出放射性同位体を含有する、得られた標的材料の部分を核変換するようにする。
別の実施形態では、本開示は、放射性同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関し、液体とイオン交換媒体との接触によって同位体を精製し、交換媒体を再利用し、この工程を繰り返す。
別の実施形態では、本開示は、常磁性材料として核変換により生成された材料からアルファ線放出放射性同位体及び他の同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関し、常磁性材料は、不対電子を含有し、不対電子は、固体状態又は液体状態又はガス状態で存在し、電子が過剰である又は電子がより少ない(陰イオン若しくは陽イオン)周期表の任意の1つ又は複数の元素から得られる。
【0073】
多数のイオンの電子配置は、周期表内でこれらのイオンに最も近い貴ガスの電子配置である。陰イオンは、1つ又は複数の電子を得ているイオンであり、負電荷を獲得している。陽イオンは、1つ又は複数の電子を失っているイオンであり、正電荷を獲得している。
別の実施形態では、本開示は、常磁性材料として核変換により生成された材料からアルファ線放出放射性同位体及び他の同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関し、常磁性材料は、不対電子を含有し、不対電子は、湿式精錬工程を使用する電子の供与又は電子の受容によって回収し得る。
【0074】
別の実施形態では、本開示は、常磁性材料として核変換により生成された材料からアルファ線放出放射性同位体及び他の同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関し、常磁性材料は、電子がより少ない、固体状態又は液体状態又はガス状態で存在する周期表の任意の1つ又は複数の元素から得られる不対電子を含有し、不対電子は、求核材料/元素を使用する電子の供与によって回収し得る。
別の実施形態では、本開示は、アルファ線放出放射性同位体を作製する標的元素の核変換エネルギー源として水銀ベース化合物を作製する方法のための、放射性同位体生成器システムに関し、アルファ線放出放射性同位体は、官能基錯体、有機化合物及びカーボンナノチューブと結合し、官能基錯体、有機化合物及びカーボンナノチューブと結合するアルファ線放出放射性同位体を、得られた標的材料から更に分離、精製する。
別の実施形態では、本開示は、ベータ線放出放射性同位体を作製する標的元素の核変換エネルギー源として水銀ベース化合物を作製する方法のための、放射性同位体生成器システムに関し、ベータ線放出放射性同位体は、官能基錯体、有機化合物及びカーボンナノチューブと結合し、官能基錯体、有機化合物及びカーボンナノチューブと結合するベータ線放出放射性同位体を、得られた標的材料から更に分離、精製する。
別の実施形態では、本開示は、ガンマ線/X線放出放射性同位体を作製する標的元素の核変換エネルギー源として水銀ベース化合物を作製する方法のための、放射性同位体生成器システムに関し、ガンマ線/X線放出放射性同位体は、官能基錯体、有機化合物及びカーボンナノチューブと結合し、官能基錯体、有機化合物及びカーボンナノチューブと結合するガンマ線/X線放出放射性同位体を、得られた標的材料から更に分離、精製する。
有機化学において、求電子剤は、電子対受容体である。求電子剤は、正に帯電しているか、又は電子が豊富な中心に引きつけられる空軌道を有する中立種である。求電子剤は、求核剤に結合するために電子対を受容することによって化学反応に関与する。求電子剤は電子を受容するため、求電子剤はルイス酸である。大部分の求電子剤は、正に帯電しており、部分正電荷を担持する原子を有する、又は8個組の電子を有さない原子を有する。求電子剤は、電子を引きつけるらしく、まるで求電子剤が部分的に空であるように挙動するように見える。従って、これらの部分的に空の物質は、電子が豊富な中心を必要とするため、電子で満たされる。求電子剤は、電子反応性又は感光性として観測し得る。求電子剤は、1つの求核剤の大部分の電子集合部分によって攻撃される。
求核剤は、電子対を供与して、反応に関連する化学結合を生成する化学種である。自由対の電子又は少なくとも1つのπ結合を有する全ての元素、原子、分子又はイオンは、求核剤として行動し得る。
【0075】
別の実施形態では、本開示は、2KeVから9MeVのエネルギー範囲を有するアルファ線放出放射性同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関する。
別の実施形態では、本開示は、2KeVから9MeVのエネルギー範囲を有するベータ線放出放射性同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関する。
別の実施形態では、本開示は、100eVから8MeVのエネルギー範囲を有するガンマ線/X線放出放射性同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関する。
別の実施形態では、本開示は、常磁性材料として核変換により生成された材料から、アルファ線放出放射性同位体及び他の同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関し、常磁性材料は、より少ない電子を有する、固体状態又は液体状態又はガス状態で存在する周期表の任意の1つ又は複数の元素から得られる不対電子を含有し、不対電子は、求電子元素/材料を使用する電子の供与によって回収し得る。
【0076】
求核剤は、(結合に利用可能な電子対を有する)電子供与体であり、水素以外の原子に結合する。塩基は、電子供与体であり、水素に結合する。塩基又は求核剤の作用から得られる核変換は、多数で、様々である。
これらの核変換は、原理のセットに従い、カテゴリー化し、多数の状況にわたり適用し得る理解レベルをもたらし得る。求電子剤の種類及び求核剤の種類は、核変換に影響を及ぼし得る。電子供与体は、電子を他の化合物に供与する化学的実体である。電子供与体は、この供与電子のおかげで、工程中にそれ自体が酸化する還元剤である。
別の実施形態では、本開示は、常磁性材料として核変換により生成された材料からアルファ線放出放射性同位体及び他の同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関し、常磁性材料は、過剰な電子又はより少ない電子のいずれかを有する、固体状態又は液体状態又はガス状態で存在する周期表の任意の1つ又は複数の元素から得られる不対電子を含有し、不対電子は、求核材料/元素を使用する電子の供与によって回収し得る。
別の実施形態では、本開示は、得られた標的材料から、カーボンナノチューブと結合するアルファ線放出放射性同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関する。
別の実施形態では、本開示は、得られた標的材料から、カーボンナノチューブと結合するベータ線放出放射性同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関する。
別の実施形態では、本開示は、得られた標的材料から、カーボンナノチューブと結合するベータ線放出放射性同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関する。
電子供与体-受容体の移動における全体的なエネルギー平衡(ΔE)、即ち、得られた又は失ったエネルギーは、供与体の電子親和力(A)とイオン化ポテンシャル(I)との間の差によって決定される。
【0077】
電子受容体は、化学反応において酸化剤として働くイオン又は分子である。電子供与体は、電子を供与するイオン又は分子であり、還元剤である。水(H2O)を生成するガス状水素及び酸素の燃焼反応において、2つの水素原子は、水素原子の電子を酸素原子に供与する。この反応において、酸素は、-2の酸化状態に還元され、各水素は、+1に酸化される。酸素は、酸化剤(電子受容体)であり、水素は、還元剤(電子供与体)である。
酸素は、有機炭素分子から電子を受容する電子受容体である。この結果、酸素は-H2O中で2酸化状態に還元され、有機炭素は、CO2中で+4に酸化される。
【0078】
別の実施形態では、本開示は、常磁性材料として核変換により生成された材料から、アルファ線放出放射性同位体及び他の同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関し、常磁性材料は、過剰な電子又はより少ない電子のいずれかを有する固体状態又は液体状態又はガス状態で存在する周期表の任意の1つ又は複数の元素から得られる不対電子を含有し、不対電子は、還元剤の使用により回収し得る。
硝酸塩、硫酸塩並びに酸化鉄及び酸化マンガンは、電子受容体として働き得る。
他の一般的な電子受容体は、有機分子を酸化し得るので、過酸化物及び次亜塩素酸塩を含む。他の一般的な電子供与体は、亜硫酸塩のような抗酸化剤を含む。
別の実施形態では、本開示は、常磁性材料として核変換により生成された材料から、アルファ線放出放射性同位体及び他の同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関し、常磁性材料は、過剰な電子又はより少ない電子のいずれかを有する、固体状態又は液体状態又はガス状態で存在する周期表の任意の1つ又は複数の元素から得られる不対電子を含有し、不対電子は、酸化剤の使用により回収し得る。
酸化剤又は酸化体は、化学反応において電子を得て還元される。
電子受容体として公知である酸化剤は、通常、電子を得て還元されるので、より高い酸化可能状態の1つにある。酸化剤の例は、ハロゲン、硝酸カリウム、及び硝酸を含む。
還元剤又は還元体は、化学反応において電子を失い、酸化される。
還元剤は、典型的には、より低い酸化可能状態の1つにあり、電子供与体としても公知である。還元剤は、酸化還元反応において電子を失うために、酸化される。還元剤の例は、土類金属、ギ酸及び亜硫酸化合物を含む。
一般的な酸化剤:O2、O3、F2、Br2、H2SO4
一般的な還元剤:H2、CO、Fe、Zn、Al、Li
AAが電子を失う場合、AAは酸化されるので、還元剤である。
BBが電子を得る場合、BBは還元されるので、酸化剤である。
AAは酸化され、BBは還元される。
酸化還元反応において、常に酸化還元剤がある。
【0079】
別の実施形態では、本開示は、常磁性材料として核変換により生成された材料から、アルファ線放出放射性同位体及び他の同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関し、常磁性材料は、過剰な電子又はより少ない電子のいずれかを有する、固体状態又は液体状態又はガス状態で存在する周期表の任意の1つ又は複数の元素から得られる不対電子を含有し、不対電子は、酸化還元工程の使用により回収し得る。
別の実施形態では、本開示は、得られた標的材料から、官能基錯体と結合するアルファ線放出放射性同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関する。
別の実施形態では、本開示は、得られた標的材料から、官能基錯体と結合するベータ線放出放射性同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関する。
別の実施形態では、本開示は、得られた標的材料から、官能基錯体と結合するガンマ線/X線放出放射性同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関する。
別の実施形態では、本開示は、常磁性材料として核変換により生成された材料から、アルファ線放出放射性同位体及び他の同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関し、常磁性材料は、過剰な電子又はより少ない電子のいずれかを有する、固体状態又は液体状態又はガス状態で存在する周期表の任意の1つ又は複数の元素から得られる不対電子を含有し、不対電子は、電子供与体としての遊離基の使用により回収し得る。
別の実施形態では、本開示は、常磁性材料として核変換により生成された材料から、アルファ線放出放射性同位体及び他の同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関し、常磁性材料は、過剰な電子又はより少ない電子のいずれかを有する、固定状態又は液体状態又はガス状態で存在する周期表の任意の1つ又は複数の元素から得られる不対電子を含有し、不対電子は、電子受容体としての遊離基の使用により回収し得る。
【0080】
別の実施形態では、本開示は、治療処置、核医学、標的アルファ線治療(TAT)、原子力電池及び核燃料、工業用途に適用するため、Ac-5~6MeV、Am 5~6MeV、At 5~7MeV、Bk 5~6MeV、Bi 4~7MeV、Cf 5~7MeV、Cm 4~7MeV、Dy 2~3MeV、Es 6~7MeV、Fm 6~7MeV、Fr 6~7MeV、Gd 2~4MeV、Hf 2~3MeV、Md 6~7MeV、Nd 1~2MeV、NP 4~5MeV、Os 2~3MeV、Pt 3~4MeV、Pu 4~6MeV、Pa 4~6MeV、Ra 4~6MeV、Rn 5~7MeV、Sm 2~3MeV、Th 3~7MeV、U 4~6MeV等、1~7MeVのエネルギーを有するアルファ線放出放射性同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関する。
別の実施形態では、本開示は、治療有効量のAc-225、Ra-224、At-211、Pb-212及び/又はBi-213を得るための、アルファ線放出放射性同位体を分離、精製する放射性同位体生成器システムに関する。
別の実施形態では、本開示は、アルファ粒子放出放射性同位元素を含む溶液を作製する放射性同位体生成器システムに関する。そのようなアルファ粒子放出放射性同位元素は、標的アルファ線治療(「TAT」)で有用とし得る。例えば、標的アルファ線治療のがん治療は、放射免疫治療で使用し得る。この点について、本明細書で説明する方法及び生成物は、一般に、アルファ粒子放出放射性同位元素、及び放射性崩壊を介してアルファ粒子放出放射性同位元素を生成可能な元素に関する。
【0081】
別の実施形態では、本開示は、アルファ粒子放出同位体を含む溶液を作製する放射性同位体生成器システム、並びに治療量のアルファ線放出粒子同位体Pb-212、Bi-213及びAc-225を含む放射性同位体の生成器に関する。更に、方法は、治療量のRa-228、Th-228及び/又はRa-224を含む溶液の作製するに有用であり得、Ra-228、Th-228及び/又はRa-224のどちらも、Pb212の生成に使用し得る。更に、本明細書に記載の方法は、治療量のAc225及び/又はRa-225を含む溶液の作製に有用であり得、Ac-225及び/又はRa-225のどちらも、Bi213の生成に使用し得る。別の態様では、Ac-225自体は、アルファ粒子放出放射性同位体として使用し得る。この点について、Ac-225は、3つのその後のアルファ粒子放出を介して崩壊してBi-213になり、Bi-213自体は、第4のアルファ粒子放出を受け、Pb-209になり得る。
【0082】
別の実施形態では、本開示は、「吸着体」が別の材料を吸着する材料である放射性同位体生成器システムに関する。「吸着」等は、化学的、物理的及び/又は電気的引力等によって吸着体の表面に付着することを意味する。吸着材料は、吸着により、吸着体の表面に付着する材料である。吸着材料は、例えば、適切なpHを有する適切な溶媒及び/又は適切な溶液(例えば、抽出溶液)によって、吸着体の表面から除去し得る。即ち、溶媒/溶液は、吸着体(例えば、クラウンエーテル材料)から吸着材料(例えば、二価陽イオン)を脱着し得る。別の態様では、吸着体の表面は、吸着体の表面に(例えば、化学結合を介して)係留される分子(例えば、クラウンエーテル)を含み得、そのような分子は、吸着体の表面の一部であるとみなされる。
別の実施形態では、本開示は、吸着体を酸性洗浄溶液と接触させ、吸着体からアクチニド元素の少なくとも一部を除去し得る放射性同位体生成器システムに関する。酸性洗浄溶液及び少なくともいくつかのアクチニド(例えば、アクチニド元素の陽イオン)を含む酸性洗浄溶液の流出液は、充填カラムから排出させ、回収し得る。
別の実施形態では、本開示は、放射性同位体生成器システムに関し、溶液は、充填カラムの入口に供給し得、入口からの流出液は、出口から排出させ、回収し得る。充填カラムの適切な材料は、ガラス(例えば、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス等)、及びポリマー材料を含む。いくつかの適切なポリマー材料は、とりわけ、ポリメチルペンテン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、可塑剤不含ポリ塩化ビニルを含み得る。
【0083】
別の実施形態では、本開示は、吸着体が二価陽イオン元素に向かう選択性を有する放射性同位体生成器システムに関する。例えば、ラジウム及び/又はアクチニウムの二価陽イオンは、適切な吸着体を使用して本明細書に記載の溶液の1つ又は複数から選択的に除去し得る。
別の実施形態では、本開示は、放射性同位体生成器システムに関し、吸着体は、固定相(例えば、露出される溶液中に不溶性である固体材料)を含み得る。固定相は、二価陽イオンの選択的吸着を促進するように調整される他の材料を含み得る。他の材料は、(例えば、共有結合を介して)固定相に係留されるか、又はそれ以外の方法で固定相に組み込み得る。いくつかの実施形態では、吸着体の1つ又は複数は、1つ又は複数の大環状ポリエーテル材料を含む。そのような大環状ポリエーテル材料は、二価陽イオンの選択的吸着を促進し得る。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の大環状ポリエーテル材料は、とりわけ、18-クラウン-6クラウンエーテル材料及び/又は21-クラウン-7クラウンエーテル材料等の少なくとも1つのクラウンエーテルを含む。更に、二価陽イオンの選択的吸着を促進するように調整された材料の様々な組合せ(例えば、クラウンエーテルの組合せ)を使用し得る。
【0084】
別の実施形態では、本開示は、放射性同位体生成器システムに関し、溶液は、治療有効量のアルファ粒子放出放射性同位体(例えば、Pb-212、Bi-213、Ra-224 Ac-225、At-211、又は医療現場で使用可能な任意の他の適切なアルファ粒子放出放射性同位体)を含む。
いくつかのベータ粒子放出体は、長年、がん治療に有効であるとみなされている。より最近では、アルファ線放出体は、抗腫瘍剤での使用に標的化されている。アルファ線放出体は、いくつかの様式でベータ線放出体とは異なり、例えば、より高いエネルギー及び組織内でのより短い飛程を有する。生理学的周囲部における典型的なアルファ線放出体の放射範囲は、一般に、100μmであり、これは、わずか数細胞直径に相当する。この比較的短い飛程により、アルファ線放出体は、微小転移を含む腫瘍の治療に特に好適である。というのは、微小転移が標的化され、効果的に制御された場合、標的細胞を越えて通過する放射エネルギーは比較的わずかであり、従って、周囲の健常組織への損傷を最小化するためである。対照的に、ベータ粒子は、水中で1mm以上の飛程を有する。
【0085】
別の実施形態では、本開示は、放射性同位体生成器システムに関し、アルファ粒子の放射線エネルギーは、ベータ粒子、ガンマ線及びX線からの放射線エネルギーと比較して、典型的には、5~8MeV高い、又はベータ粒子の放射線より5から10倍高く、ガンマ線からの放射線エネルギーより少なくとも20倍高い。ベータ線又はガンマ線と比較すると、かなり短い路程でのかなり多量のエネルギーの供給のために、アルファ線に優れた高い線エネルギー付与(LET)をもたらす。このことは、アルファ線放出放射性同位体の優れた細胞毒性を説明するものであり、健常組織への照射による許容できない副作用を回避するのに必要な放射性同位体の制御及び研究レベルで、ひっ迫している需要に影響を及ぼすものでもある。
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【国際調査報告】