(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-01
(54)【発明の名称】低炭素高純度五酸化タンタル粉末およびそれを調製する方法およびその使用
(51)【国際特許分類】
C01G 35/00 20060101AFI20240325BHJP
【FI】
C01G35/00 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564248
(86)(22)【出願日】2022-08-24
(85)【翻訳文提出日】2023-10-19
(86)【国際出願番号】 CN2022114374
(87)【国際公開番号】W WO2023109171
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】202111532673.8
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507313113
【氏名又は名称】ニンシア オリエント タンタル インダストリー カンパニー、 リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【氏名又は名称】松山 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】グオ,シュン
(72)【発明者】
【氏名】ジェン,ジンフェン
(72)【発明者】
【氏名】グオ,タオ
(72)【発明者】
【氏名】リアン,ホンユアン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ユーウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,イン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,トン
(72)【発明者】
【氏名】キン,ホンジー
(72)【発明者】
【氏名】ズオ,ジンイー
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,リー
【テーマコード(参考)】
4G048
【Fターム(参考)】
4G048AA02
4G048AB02
4G048AD03
4G048AE06
(57)【要約】
本発明は、低炭素高純度五酸化タンタル粉末およびそれを調製する方法およびその使用に関連する。粉末は、15ppm以下、好ましくは10ppm~15ppm、より好ましくは3ppm~10ppmの炭素含有量を有する。調製する方法は、以下の工程:(1)フルオロタンタル酸(H2TaF7)溶液を反応釜中に加え、反応釜の温度を30~60℃に制御し、反応溶液のpHが8~10になるまで沈殿剤を添加し、次いで、アンモニアの導入を止め、エイジングして水酸化タンタルスラリーを得る工程;(2)工程(1)で得られた水酸化タンタルスラリーをろ過および洗浄し、次いで、固液分離を実行して水酸化タンタルろ過ケーキを得る工程;(3)工程(2)で得られたろ過ケーキを乾燥させて、白色水酸化タンタル粉末を得る工程;(4)工程(3)で得られた水酸化タンタル粉末をか焼し、か焼された試料を粉砕し、ふるい分けて、五酸化タンタル粉末を得る工程;および(5)工程(4)で得られた五酸化タンタル粉末に温度1000~1500℃の熱処理を施して、高純度五酸化タンタル粉末を得る工程、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
15ppm以下、好ましくは10ppm~15ppm、より好ましくは3ppm~10ppmの炭素含有量を有する五酸化タンタル粉末。
【請求項2】
五酸化タンタル粉末を調製する方法であって、以下の工程:
(1)フルオロタンタル酸(H
2TaF
7)溶液を反応釜中に加え、前記反応釜の温度を30~60℃(好ましくは40~50℃)に制御し、反応溶液のpHが8~10(好ましくは8~9.5、より好ましくは8~9)になるまで沈殿剤を添加し、次いで、アンモニアの導入を止め、エイジングして(例えば、2~5時間、好ましくは3~4時間のエイジング)水酸化タンタルスラリーを得る工程;
(2)工程(1)で得られた前記水酸化タンタルスラリーをろ過および洗浄し、次いで、固液分離を実行して水酸化タンタルろ過ケーキを得る工程;
(3)工程(2)で得られた前記ろ過ケーキを乾燥させて、白色水酸化タンタル粉末を得る工程;
(4)工程(3)で得られた前記水酸化タンタル粉末をか焼し、か焼された試料を粉砕し、ふるい分けて、五酸化タンタル粉末を得る工程;および
(5)工程(4)で得られた前記五酸化タンタル粉末に温度1000~1500℃の熱処理を施して、高純度五酸化タンタル粉末を得る工程
を含む、方法。
【請求項3】
工程(1)において、前記フルオロタンタル酸(H
2TaF
7)溶液が、Ta
2O
5として計算された酸化物含有量20~80g/L、好ましくは35~65g/Lを有し、および/または好ましくは前記沈殿剤が、限定されるものではないが、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、尿素、アンモニア水、アンモニアガス、および水酸化ナトリウムからなる群から選択される、1種または複数を含み、好ましくは、アンモニア水が前記沈殿剤として使用され、および/または撹拌が、好ましくは、前記反応釜において実施され、より好ましくは、撹拌時間が、5~10分である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(2)におけるエイジング時間が、2~5時間、より好ましくは3~4時間であり、および/または、好ましくは、工程(2)における、前記ろ過および洗浄が、複数回繰り返され、および/または工程(2)において、前記固液分離が、負圧吸引ろ過によって実行される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
工程(3)における乾燥が、熱風オーブン内に前記ろ過ケーキを静置し、80~180℃(好ましくは100~160℃、より好ましくは120~140℃)で、例えば、8~12時間(好ましくは10~11.5時間)乾燥させることによって実施される、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(4)におけるか焼が、工程(3)で得られた前記五酸化タンタル粉末をるつぼ中に入れ、炉内に静置することによって実行され、本明細書で使用される前記炉が、好ましくはマッフル炉であり、好ましくは、か焼温度が900~1000℃(好ましくは800~900℃)であり、か焼時間が8~12時間(好ましくは9~11時間)である、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(5)において、高温か焼熱処理の温度が、1200~1500℃(好ましくは1200~1400℃、例えば1400℃、より好ましくは1200~1300℃)であり、時間が、好ましくは1~3時間であり、および/または好ましくは、焼結熱処理雰囲気が、限定されるものではないが、真空、不活性雰囲気(例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオンなど)、および大気雰囲気を含み、真空がより好ましい、請求項2から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
好ましくは10ppm~15ppm、より好ましくは3ppm~10ppmの炭素含有量を有する、請求項2から7のいずれか一項に記載の方法によって得られた五酸化タンタル粉末。
【請求項9】
タンタル酸リチウム単結晶および触媒を製造するための、ならびに光学ガラスを製造するための、請求項1または8に記載の五酸化タンタル粉末の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末製造の分野、特に、低炭素高純度五酸化タンタル粉末およびそれを調製する方法およびその使用に関連する。
【背景技術】
【0002】
五酸化タンタル(酸化タンタルとしても一般的に公知である)は、金属タンタルを製造するための原材料であり、またタンタル酸リチウム単結晶を製造するために、および光学ガラス(とりわけ、高屈折低分散特殊光学ガラス)を製造するために電子産業において使用され、および触媒として化学産業において使用される。
【0003】
先行技術において、酸化タンタルは、主に中和沈殿法によって調製される。この方法は、原材料としてタンタル-ニオビウム濃縮物を使用して、液液抽出法によってタンタルとニオビウムとを分離する工程において、H2TaF7の形態のタンタルおよび一定量のHFおよびH2SO4を含むタンタル液を形成する工程と、タンタル液をアンモニア水でpH=8~10まで中和して、水に不溶の白色水酸化タンタルを得る工程と、次いで、乾燥させ、か焼して酸化タンタルを得る工程と、を含む。CN104386751AおよびCN104310323Aは、関連の技術を開示する。しかし、これらの技術は、酸化タンタルから炭素を十分に取り除くことが難しいという欠点を有する。残念ながら、高すぎる炭素含有量は、特に、五酸化タンタルの純度に悪影響を及ぼし、それにより、高純度材料の調製、例えば、高純度タンタル粉末の調製、および高純度タンタル酸リチウム結晶の成長における五酸化タンタルの使用を制限する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術において多くの研究が行われてきたが、五酸化タンタルの炭素含有量をさらに減らすという課題はまだ解決されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、低炭素高純度五酸化タンタルに関連する。本明細書において使用される場合、「低炭素高純度」五酸化タンタルまたは「高純度」五酸化タンタルは、15ppm以下の炭素含有量を有する五酸化タンタルを指す。好ましくは、その炭素含有量は、10ppm~15ppm、好ましくは3ppm~10ppmである。
【0006】
酸化タンタルは、五酸化タンタルの通称であるが、本明細書において、正確性のために、五酸化タンタルは主としてTb2O5と記すために使用される。
本発明は、下記の工程を含む五酸化タンタル粉末を調製する方法に関する。
【0007】
(1)フルオロタンタル酸(fluotantalic acid)(H2TaF7)溶液を反応釜中に加え、反応釜の温度を30~60℃(好ましくは40~50℃)に制御し、反応溶液のpHが8~10(好ましくは8~9.5)になるまで沈殿剤を添加し、次いで、アンモニアの導入を止め、エイジングして(例えば、2~5時間、好ましくは3~4時間のエイジング)水酸化タンタルスラリーを得る工程;
(2)工程(1)で得られた水酸化タンタルスラリーをろ過および洗浄し、次いで、固液分離を実行して水酸化タンタルろ過ケーキを得る工程;
(3)工程(2)で得られたろ過ケーキを乾燥させて、白色水酸化タンタル粉末を得る工程;
(4)工程(3)で得られた水酸化タンタル粉末をか焼し、か焼された試料を粉砕し、ふるい分けて、五酸化タンタル粉末を得る工程;および
(5)工程(4)で得られた五酸化タンタル粉末に温度1000~1500℃の熱処理を施して、高純度五酸化タンタル粉末を得る工程
を含む、方法に関連する。
【0008】
より好ましくは、工程(1)の反応溶液のpHが8~9である場合、沈殿剤の添加を止める。
【発明を実施するための形態】
【0009】
工程(1)において、フルオロタンタル酸(H2TaF7)溶液は、好ましくはTa2O5として計算された酸化物含有量20~80g/L、より好ましくは35~65g/Lを有する。用語「Ta2O5として計算された」は、当業者には明らかであろう。しかし、当業者により容易に理解させるために、本出願者は、用語「Ta2O5として計算された」を以下のように説明する。これは、フルオロタンタル酸溶液(時には、本明細書において「タンタル酸溶液」と称される)の濃度を表すための一般的な方法であり、フルオロタンタル酸溶液中に主に錯体形態で存在するタンタルの含有量が測定中に検出され、次いでタンタル酸溶液の濃度を表すために、Ta2O5含有量に変換される。この方法は、詳細には、中華人民共和国国家標準GB/T15076.1に従って実行される。
【0010】
工程(1)において、沈殿剤は、限定されるものではないが、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、尿素、アンモニア水、アンモニアガス、および水酸化ナトリウムからなる群から選択される、1種または複数を含む。好ましくは、アンモニア水が沈殿剤として使用され、この時、沈殿剤の添加は、アンモニアガスの導入とも称される。アンモニア水の導入速度は、限定されないが、ゆっくりとした導入が好ましい。工程(1)において、撹拌は、好ましくは、反応釜において実施される。より好ましくは、撹拌時間は5~10分である。
【0011】
好ましくは、工程(2)におけるエイジング時間(休止時間とも称される)は、2~5時間である。より好ましくは、エイジング時間は、3~4時間である。好ましくは、工程(2)における、ろ過および洗浄は、複数回繰り返される。例えば、ろ過および洗浄は、工程(1)で得られた水酸化タンタル溶液をろ過および洗浄槽へ加え、次いで、熱純水(例えば、90~100℃の熱純水)でろ過および洗浄することによって実施され得る。好ましくは、固液分離は、負圧吸引ろ過によって実行される。
【0012】
好ましくは、工程(3)における乾燥は、熱風オーブンにろ過ケーキを静置し、80~180℃(好ましくは100~160℃、より好ましくは120~140℃)で、例えば、8~12時間(好ましくは10~11.5時間)乾燥させることによって実施される。
【0013】
好ましくは、工程(4)におけるか焼は、工程(3)で得られた水酸化タンタル粉末をるつぼ中に入れ、炉内に静置することによって実行される。本明細書で使用される炉は、好ましくはマッフル炉である。好ましくは、か焼温度は900~1000℃(好ましくは800~900℃)であり、か焼時間は8~12時間(好ましくは9~11時間)である。
【0014】
工程(5)における高温か焼熱処理の温度は、好ましくは1200~1500℃(例えば1400℃)であり、時間は、好ましくは1~3時間である。工程(5)において、焼結熱処理雰囲気は、限定されるものではないが、真空、不活性雰囲気(例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオンなど)、および大気雰囲気を含む。真空がより好ましい。
【0015】
好ましくは、工程(5)における高温真空熱処理の温度は、1200~1400℃、より好ましくは1200~1300℃である。好ましくは、熱処理時間は1~3時間である。
【0016】
好ましくは、工程(5)で得られた高純度五酸化タンタル粉末の炭素含有量は、10~15ppm、好ましくは3~10ppmである。
本発明はまた、タンタル酸リチウム単結晶および触媒を製造するための、ならびに高屈折低分散光学ガラスなどの光学ガラスを製造するための、上記の五酸化タンタル粉末の使用にも関連する。
【0017】
一般的な理論に束縛されることなく、十分な研究の後、本発明者らは、先行技術において炭素含有量をさらに減らすことが難しい主な理由は、中和沈殿法によって高純度五酸化タンタルを調製する製造工程において、大量の有機物質が早期の液液抽出工程での抽出剤として大部分で使用され、その後の工程において、抽出剤を完全に取り除くことができず、したがって、高純度五酸化タンタル粉末が高い炭素含有量を有するためであると考えられる。炭素不純物含有量の「継承」ゆえに、五酸化タンタルを用いるタンタル粉末を調製する工程において、タンタル粉末の炭素含有量は、基準を超えることになるであろう。
【0018】
十分な研究の後、本発明者らは、本発明の方法により、望ましい低炭素高純度五酸化タンタル粉末を得ることができることを見出した。
【実施例】
【0019】
本発明をより良く説明するために、以下の実施例が提供される。これらの実施例は、当業者による本発明のより良い理解の目的のためだけであり、本発明を限定するものではない。
【0020】
実施例は、特定の条件が明記されない限り、従来の条件の下、実行された。使用される試薬または装置は、製造者が明記されない限り、市販の従来品である。
本明細書の目的のために、明細書および特許請求の範囲における、成分の量、反応条件などを表す、全ての数は、別段の指示がない限り、全ての場合において、用語「約」によって修飾されるものと理解されたい。したがって、以下の明細書および添付の特許請求の範囲において与えられる数値パラメータは、別段の指示がない限り、本発明によって得られようとする所望の特性に応じて変わることがある近似値である。最低でも、特許請求の範囲に記載の範囲の均等物の原理の適用を限定しようと意図するものではなく、それぞれの数値パラメータは、少なくとも、報告される有意桁の数、および通常の丸め手法(rounding technique)に従って解釈されるべきである。
【0021】
比較例1
1. Ta2O5として計算された酸化物含有量50g/Lを有するフルオロタンタル酸溶液100Lを反応釜中に加え、反応釜を温度40℃に制御した。反応溶液がpH=9を有するまで、アンモニア水をタンタル酸溶液中にゆっくりと導入し、水酸化タンタルスラリーを得、次いで、それを3時間エイジングした。
【0022】
2. 水酸化タンタルスラリーをろ過および洗浄槽へ移し、反応沈殿物を、温度95℃の熱純水によって繰り返しろ過および洗浄し、最後に、負圧吸引ろ過によって固液分離を実施して白色ろ過ケーキを得た。
【0023】
3. 白色ろ過ケーキを材料トレイに静置し、次いで、温度100℃の熱風オーブン内において10時間乾燥させて白色水酸化タンタル粉末を得た。
4. 白色水酸化タンタル粉末をるつぼ中に入れ、温度900℃のマッフル炉内において10時間か焼し、次いで、焼結試料を粉砕し、ふるい分けて、五酸化タンタル粉末を得た。
【0024】
五酸化タンタル粉末の炭素含有量を、中華人民共和国国家標準GB/T15076.8に従って分析し、結果を表1に示す。
実施例1
1. Ta2O5として計算された酸化物含有量50g/Lを有するフルオロタンタル酸溶液100Lを反応釜中に加え、反応釜を温度40℃に制御した。反応溶液がpH=9を有するまで、アンモニア水をタンタル酸溶液中にゆっくりと導入し、水酸化タンタルスラリーを得、次いで、それを3時間エイジングした。
【0025】
2. 水酸化タンタルスラリーをろ過および洗浄槽へ移し、反応沈殿物を、温度95℃の熱純水によって繰り返しろ過および洗浄し、最後に、負圧吸引ろ過によって固液分離を実施して白色ろ過ケーキを得た。
【0026】
3. 白色ろ過ケーキを材料トレイに静置し、次いで、温度100℃の熱風オーブン内において10時間乾燥させて白色水酸化タンタル粉末を得た。
4. 白色水酸化タンタル粉末をるつぼ中に入れ、温度900℃のマッフル炉内において10時間か焼し、次いで、焼結試料を粉砕し、ふるい分けて、五酸化タンタル粉末を得た。
【0027】
5. 五酸化タンタル粉末をるつぼ中に入れ、温度1200℃の高温真空炉内において、熱処理を2時間施して、低炭素五酸化タンタル粉末を得た。
五酸化タンタル粉末の炭素含有量を、中華人民共和国国家標準GB/T15076.8に従って分析し、結果を表1に示す。
【0028】
比較例2
1. Ta2O5として計算された酸化物含有量35g/Lを有するフルオロタンタル酸溶液100Lを反応釜中に加え、反応釜を温度60℃に制御した。反応溶液がpH=10を有するまで、アンモニア水をタンタル酸溶液中にゆっくりと導入し、水酸化タンタルスラリーを得、次いで、それを3時間エイジングした。
【0029】
2. 水酸化タンタルスラリーをろ過および洗浄槽へ移し、反応沈殿物を、温度95℃の熱純水によって繰り返しろ過および洗浄し、最後に、負圧吸引ろ過によって固液分離を実施して白色ろ過ケーキを得た。
【0030】
3. 白色ろ過ケーキを材料トレイに静置し、次いで、温度100℃の熱風オーブン内において10時間乾燥させて白色水酸化タンタル粉末を得た。
4. 白色水酸化タンタル粉末をるつぼ中に入れ、温度800℃のマッフル炉内において10時間か焼し、次いで、焼結試料を粉砕し、ふるい分けて、五酸化タンタル粉末を得た。
【0031】
五酸化タンタル粉末の炭素含有量を、中華人民共和国国家標準GB/T15076.8に従って分析し、結果を表1に示す。
実施例2
1. Ta2O5として計算された酸化物含有量35g/Lを有するフルオロタンタル酸溶液100Lを反応釜中に加え、反応釜を温度60℃に制御した。反応溶液がpH=10を有するまで、アンモニア水をタンタル酸溶液中にゆっくりと導入し、水酸化タンタルスラリーを得、次いで、それを3時間エイジングした。
【0032】
2. 水酸化タンタルスラリーをろ過および洗浄槽へ移し、反応沈殿物を、温度95℃の熱純水によって繰り返しろ過および洗浄し、最後に、負圧吸引ろ過によって固液分離を実施して白色ろ過ケーキを得た。
【0033】
3. 白色ろ過ケーキを材料トレイに静置し、次いで、温度100℃の熱風オーブン内において10時間乾燥させて白色水酸化タンタル粉末を得た。
4. 白色水酸化タンタル粉末をるつぼ中に入れ、温度800℃のマッフル炉内において10時間か焼し、次いで、焼結試料を粉砕し、ふるい分けて、五酸化タンタル粉末を得た。
【0034】
5. 五酸化タンタル粉末をるつぼ中に入れ、温度1350℃の高温真空炉内において熱処理を2時間施し、低炭素五酸化タンタル粉末を得た。
五酸化タンタル粉末の炭素含有量を、中華人民共和国国家標準GB/T15076.8に従って分析し、結果を表1に示す。
【0035】
【0036】
表1から分かるように、本発明の方法に従って得られた五酸化タンタル粉末の炭素含有量は、予想外に、桁違いに減少する。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
15ppm以下、好ましくは10ppm~15ppm、より好ましくは3ppm~10ppmの炭素含有量を有する五酸化タンタル粉末。
【請求項2】
五酸化タンタル粉末を調製する方法であって、以下の工程:
(1)フルオロタンタル酸(H
2TaF
7)溶液を反応釜中に加え、前記反応釜の温度を30~60℃(好ましくは40~50℃)に制御し、反応溶液のpHが8~10(好ましくは8~9.5、より好ましくは8~9)になるまで沈殿剤を添加し、次いで、アンモニアの導入を止め、エイジングして(例えば、2~5時間、好ましくは3~4時間のエイジング)水酸化タンタルスラリーを得る工程;
(2)工程(1)で得られた前記水酸化タンタルスラリーをろ過および洗浄し、次いで、固液分離を実行して水酸化タンタルろ過ケーキを得る工程;
(3)工程(2)で得られた前記ろ過ケーキを乾燥させて、白色水酸化タンタル粉末を得る工程;
(4)工程(3)で得られた前記水酸化タンタル粉末をか焼し、か焼された試料を粉砕し、ふるい分けて、五酸化タンタル粉末を得る工程;および
(5)工程(4)で得られた前記五酸化タンタル粉末に温度1000~1500℃の熱処理を施して、高純度五酸化タンタル粉末を得る工程
を含む、方法。
【請求項3】
工程(1)において、前記フルオロタンタル酸(H
2TaF
7)溶液が、Ta
2O
5として計算された酸化物含有量20~80g/L、好ましくは35~65g/Lを有し、および/または好ましくは前記沈殿剤が、限定されるものではないが、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、尿素、アンモニア水、アンモニアガス、および水酸化ナトリウムからなる群から選択される、1種または複数を含み、好ましくは、アンモニア水が前記沈殿剤として使用され、および/または撹拌が、好ましくは、前記反応釜において実施され、より好ましくは、撹拌時間が、5~10分である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(2)におけるエイジング時間が、2~5時間、より好ましくは3~4時間であり、および/または、好ましくは、工程(2)における、前記ろ過および洗浄が、複数回繰り返され、および/または工程(2)において、前記固液分離が、負圧吸引ろ過によって実行される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
工程(3)における乾燥が、熱風オーブン内に前記ろ過ケーキを静置し、80~180℃(好ましくは100~160℃、より好ましくは120~140℃)で、例えば、8~12時間(好ましくは10~11.5時間)乾燥させることによって実施される、請求項2
または3に記載の方法。
【請求項6】
工程(4)におけるか焼が、工程(3)で得られた前記五酸化タンタル粉末をるつぼ中に入れ、炉内に静置することによって実行され、本明細書で使用される前記炉が、好ましくはマッフル炉であり、好ましくは、か焼温度が900~1000℃(好ましくは800~900℃)であり、か焼時間が8~12時間(好ましくは9~11時間)である、請求項2
または3に記載の方法。
【請求項7】
工程(5)において、高温か焼熱処理の温度が、1200~1500℃(好ましくは1200~1400℃、例えば1400℃、より好ましくは1200~1300℃)であり、時間が、好ましくは1~3時間であり、および/または好ましくは、焼結熱処理雰囲気が、限定されるものではないが、真空、不活性雰囲気(例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオンなど)、および大気雰囲気を含み、真空がより好ましい、請求項2
または3に記載の方法。
【請求項8】
好ましくは10ppm~15ppm、より好ましくは3ppm~10ppmの炭素含有量を有する、請求項2
または3に記載の方法によって得られた五酸化タンタル粉末。
【請求項9】
タンタル酸リチウム単結晶および触媒を製造するための、ならびに光学ガラスを製造するための、請求項1に記載の五酸化タンタル粉末の使用。
【国際調査報告】