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特表2024-514365逆構成の直接プラズモニック光起電性電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-01
(54)【発明の名称】逆構成の直接プラズモニック光起電性電池
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/06 20120101AFI20240325BHJP
   H01L 31/0352 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
H01L31/06
H01L31/04 342Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505492
(86)(22)【出願日】2022-04-11
(85)【翻訳文提出日】2023-12-08
(86)【国際出願番号】 EP2022059607
(87)【国際公開番号】W WO2022218912
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】21020201.6
(32)【優先日】2021-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519347867
【氏名又は名称】ピーファウル プラズモニクス アクチエボラグ
【氏名又は名称原語表記】Peafowl Plasmonics AB
【住所又は居所原語表記】Ulls vag 33C, 756 51 Uppsala, Sweden
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100188802
【弁理士】
【氏名又は名称】澤内 千絵
(72)【発明者】
【氏名】サー,ジャシント
(72)【発明者】
【氏名】パウン,クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】ペン,フェイ
(72)【発明者】
【氏名】カプデビラ,ライア
(72)【発明者】
【氏名】ケナウィ アブデラー,モハメド アフメド
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251AA20
5F251BA03
5F251BA16
5F251CB13
5F251DA02
5F251DA11
5F251FA03
(57)【要約】
直接プラズモニック光起電性電池(1)、及び、該光起電性電池の製造方法が提供される。光電池(1)は、第1導電性基板(2);正孔輸送層HTL(3)としてのp型半導体層;金属プラズモニックナノ粒子層(41,42);電子輸送層ETL(5)としてのn型半導体層;及び、第2導電性基板(6)を含む。HTL(3)は、第1導電性基板(2)に直接物理的に接触しており、第2導電性基板(6)は、ETL(5)に直接物理的に接触する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
a)正孔輸送層(HTL)(3)と第1導電性基板(2)とが直接物理的に接触するように、第1導電性基板(2)上にHTL(3)を付着する工程、
b)HTL(3)上に金属ナノ粒子(41,42)を設け、金属プラズモニックナノ粒子層を適用する工程、
c)金属プラズモニックナノ粒子層上に、電子輸送層(ETL)(5)を付着する工程、及び
d)第2導電性基板とETL(5)とが直接物理的に接触するように、ETL(5)上に第2導電性基板(6)を付着する工程
を含む、直接プラズモニック光起電性電池(1)を製造する方法。
【請求項2】
光起電性電池(1)が透明である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
HTL(3)は、CuSCN又はAgSCNである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
HTL(3)は、スプレー又は印刷により付着する、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
HTLを付着する工程は、以下の工程:
a.1)第1導電性基板上に第1インク層を適用する工程であって、第1インクはp型半導体粒子を含むこと、及び
a.2)HTLを形成するために第1インク層を処理する工程であって、第1導電性基板(2)に最も近いp型半導体粒子を、第1導電性基板(2)と直接相互作用するように処理し、その後、p型半導体粒子の多層構造を形成するように、第1インク層を構成すること、
を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
金属ナノ粒子は、銅、金、銀、又はアルミニウムからなる群から選ばれる、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
金属プラズモニックナノ粒子層は、準単層である、又は、準単層を形成する、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
金属ナノ粒子は、三角柱、角錐、又はウニ型形状から選択される少なくとも2つの異なる形状を有する、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
金属ナノ粒子は、スプレー又は印刷により付着される、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ETLは、SnO又はZnOから形成される、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ETLは、スパッタリングにより付着される、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
第2導電性基板(6)は、Agナノワイヤ及び導電性酸化物の混合物から形成される、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
第1導電性基板(2);
正孔輸送層HTL(3)としてのp型半導体層;
金属プラズモニックナノ粒子層(41,42);
電子輸送層ETL(5)としてのn型半導体層;及び
第2導電性基板(6)
を含み、
HTL(3)は、第1導電性基板(2)に直接物理的に接触し、第2導電性基板(6)は、ETL(5)に直接物理的に接触する、
直接プラズモニック光起電性電池(1)。
【請求項14】
HTL(3)は、p型半導体粒子の複数層構造であり、
第1導電性基板(2)に最も近いp型半導体粒子は、第1導電性基板(2)に直接相互作用する、
請求項13に記載の直接プラズモニック光起電性電池。
【請求項15】
電子デバイスを充電するための透明ホイルであって、
ホイルは、請求項13又は14に記載の直接プラズモニック光起電性電池(1)を含む、透明ホイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、低温法を使用することにより逆構成を有する直接プラズモニック光起電性(プラズモニック)電池を製造する方法、及び、前記方法により得られる逆構成の直接プラズモニック光起電性電池に関する。
【背景技術】
【0002】
光起電システムは、光を電気へ転換するプロセスを用いるシステムである。光は、太陽又は任意の人工光源から生じるものであってもよい。光起電性電池の例としては、太陽光を電気に転換することができる太陽電池を挙げることができ、これについて、近年関心が高まり続けている。
【0003】
多くの種類の従来の光起電電池(太陽電池)が存在するが、これらの中でも、シリコン電池が最も知られており、有機太陽電池、薄膜太陽電池(例えば、CIGS、CdTe)、ペロブスカイト太陽電池等も知られている。直接プラズモニック太陽電池は、最新の光起電技術である。これは、光を吸収して電荷を生成する方法において、他のものと異なる。
【0004】
従来の光起電技術では、光子が活物質に吸収されると、一定量のエネルギーが、電子を占有電子準位から空準位に励起するために使用され、この電子が、電池が生成する電流の原因となる。所定の材料において、特定量のエネルギーが電子を励起する(「追い出す」)ために必要とされ、通常、エネルギーギャップ又はバンドギャップと呼ばれる。光子が必要とされるよりも低いエネルギーを有する場合、電子は励起されない。光子が余分なエネルギーを有する場合、余分なエネルギーは熱として失われる。
【0005】
従来の光起電性電池の特殊なタイプは、プラズモニック増強太陽電池と呼ばれるタイプである。これは、活物質によって光を散乱したり、あるいは、光吸収を高めたりする、プラズモニックナノ粒子を用いる通常の太陽電池である。
【0006】
これに対し、直接プラズモニック太陽電池では、エネルギー変換は、プラズモニックナノ粒子上、つまり、光吸収体、又は活物質上で直接生じる。直接プラズモニック太陽電池は、プラズモン電子共鳴機構に依存する。各光子が1つの特定の電子を励起するのではなく、各光子が、電流を生成する材料における電子の集団励起(共鳴)に寄与する。このメカニズムは、光子の全てのエネルギーを電気に変換できる。損失する余分なエネルギーない。変換を引き起こす(電池の電圧を生成する)ための光子エネルギーには、下限があるが、太陽電池の他のタイプよりも、通常低い値である。
【0007】
エネルギーの変換のためにプラズモニック電子共鳴を用いることは、同じ数の光子からより多くのエネルギーを変換できることから、はるかに多くのエネルギー変換を可能にする。これは、同じ量の電気を生成するために、光の取り込み量は少なくてよいことを意味する。
【0008】
プラズモン電子共鳴機構において、金属ナノ粒子に緩く結合された価電子は、加熱され、ホットエレクトロンガスを生成する。ランダウ減衰機構を経た電子加熱ガスの位相ずれとデコヒーレンスとにより、電気ホットキャリア、即ち、ホットエレクトロン・ホールが形成される。概念的には、プラズモニックナノ構造は、太陽電池に直接使用できる可能性があるが、光生成されたエレクトロン-ホール対の寿命は短い(わずかなfsである)。このようなデバイスから電流を取り出すことが問題となる。電荷分離寿命を延ばすために、電荷キャリアを、例えば(色素増感太陽電池と同様に)半導体に移すなどして、反応が生じると考えられる空間的に離れた場所に閉じ込めることができる。加熱電子は、ホットエレクトロン(例えば、TiO)の伝導帯に注入するための十分なエネルギーを有していることから、その寿命を大幅に長くできる。
【0009】
従って、光起電性の(太陽電池)デバイスを形成するために、ホットエレクトロンがETL材料に輸送され、加熱孔が正孔輸送層(HTL)に輸送される。その後、電荷は、導電性電極によって取り出される。
【0010】
プラズモニックナノ材料は、光吸収体として用いるときに他の重要な利点を有し、つまり、他の光吸収体よりも、少なくとも10倍以上の光子を吸収し、設計及び配置(屋外及び屋内)に多用途性をもたらす。この新しいメカニズムにより、高透明であり無色である光起電太陽電池の新たなタイプを開発することが可能となる。
【0011】
これまでに、TiOのETL層とHTLとの間に挟まれた、380-450nmの光を捕捉する銀ナノ粒子の層を有する直接プラズモニック光起電電池が開発されている。電荷は、ETLと接触するフッ素ドープ酸化スズ(FTO)ガラスと、HTLに設けられたAZO透明のバックコンタクトという2つの導電性電極により付着される。製造方法は、500℃で噴霧熱分解によってFTOガラス上にTiO層をローディング(蒸着)し、続いて、500℃でアニールし、Agナノ粒子を設けることを含む。続いて、有機溶媒を用いたスピンコーティングによりHTLが付着され、さらにスパッタリングによってバックコンタクトが加えられる。このようにして、エレクトロクロミックダイナミックガラス、IoTデバイス及び低電力ディスプレイに電力を供給するのに十分な電流出力を備えた透明な太陽電池が実現される。
【0012】
しかし、このような方法では、エネルギー消費、拡張性、及び化学薬品の適合性に関して、要求が厳しくなる。エネルギー消費に関しては、2つの重要なエネルギーを必要とする工程、即ち、噴霧熱分解付着(蒸着)とETLのアニーリングがある。化学薬品の不適切な使用に関しては、HTLの付着の間、Agナノ粒子の保全性(又は安定性)を維持する必要があるため、材料の処理に使用できる溶媒は大幅に制限される。さらに、HTLの付着は、スピンコーティングによって行われるが、これには拡張性がない。また、溶媒は、ナノ粒子に使用し得るプラズモニック形状の範囲を制限し、このことは、光吸収を制限し、その結果、出力を制限する。
【0013】
したがって、例えば、建築用ガラスに組み込むことができるように、電池の高い透明性と無色の性質を確保しながら、直接発電性能を向上することが望まれている。さらに、国連の持続可能な目標7(エネルギーをみんなに、そしてクリーンに)及び目標12(作る責任、使う責任)を遵守するために、直接プラズモニック太陽電池においては、低エネルギーで製造され、持続可能な化学材料を用いて製造され、より高い性能を達成する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
[目的]
提案される技術における目的の1つは、再現が容易で、低エネルギー使用であり(高温で行わない)、持続可能な化学配合物を使用できる、直接プラズモニック光起電性電池の製造方法を提供することにある。さらに、この方法は、既知の直接プラズモニック光起電性電池よりも多くの電力を生成し得、高い透明性を有し得、同時に無色である、逆転構成(逆アーキテクチャ)を有する直接プラズモニック光起電性電池を得るために使用することができる。また、前記方法によって得られる直接プラズモニック光起電性電池を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
[概要]
提案される技術における第1の要旨によれば、直接プラズモニック光起電性電池の取得方法又は製造方法が提供される。前記方法は、以下の工程を含む。a)第1導電性基板又は第1導電性層に正孔輸送層(HTL)を付着する工程;b)正孔輸送層に金属ナノ粒子を設け、金属プラズモニックナノ粒子層をローディングする工程;c)金属プラズモニックナノ粒子層に電子輸送層(ETL)を付着する工程;及び、d)ETLに、第2導電性基板又は第2導電性層を付着する工程。上記工程は、記載された順で行われる。
【0016】
提案された技術における第2の要旨によれば、第1導電性基板又は第1導電性層;正孔輸送層(HTL)であるp型半導体層又は正孔輸送層(HTL)を形成するp型半導体層;金属プラズモニックナノ粒子層;電子輸送層(ETL)であるn型半導体層又は電子輸送層(ETL)を形成するn型半導体層;及び、第2導電性基板又は第2導電性層を有する、直接プラズモニック電池が得られる。
【0017】
基板及び層は記載された順で配置される。さらに、用語「導電性基板」及び用語「導電性層」は、本明細書全体を通じて相互に互換できる。別の言い方をすると、HTLは、第1導電性基板と金属プラズモニック粒子の間にあってもよく、金属プラズモニック粒子層は、ETLとHTLとの間にあってもよく、ETLは、第2の導電性基板と金属プラズモニック粒子との間にあってよい。直接プラズモニック光起電性電池は、提案される技術における第1の要旨による方法によって製造又は取得できる。
【0018】
第1導電性基板は、フロントコンタクトであるか、フロントコンタクトを形成してよい。第2導電性基板は、バックコンタクトであるか、バックコンタクトを形成してよい。「コンタクト」とは、光起電電池から電流を取り出すことのできる要素である。金属プラズモニックナノ粒子層は、それ自体で活性光発電材料を形成又は構成できる。
【0019】
金属ナノ粒子は、非球形であってよい。金属プラズモニックナノ粒子層は少なくとも2つの異なる形状を有していてよい。言い換えれば、金属プラズモニックナノ粒子層は、少なくとも2つの異なる形状を有する金属ナノ粒子を含んでいてよい。前記形状は、三角柱、角錐、立方体、ウニ型、又は星型から選ばれてもよい。金属プラズモニックナノ粒子層が2つの異なる形状の金属ナノ粒子を有する場合、1つの形状は球状であってよい。ナノ粒子の形状については、さらに、以下において説明する。
【0020】
提案される技術における両方の要旨において、光起電電池は逆構成である。逆構成において、HTLは、製造時にETLより前に供給又は付着される。HTLの付着に関する説明において、以下で説明するが、これには大きな利点を有する。第1導電性基板は、第2導電性基板より厚くてよい。これは、ETLに最も近い基板が、HTLに最も近い基板よりも薄いことを意味し、p型半導体材料をより広範囲で利用できる点から、製造上有利である。
【0021】
光起動性電池は、透明であってよい。吸光率は、5%未満であってよい。反射率は、10%未満であってよい。全透過率は、80%を超えてよい。前記表示された限界値において、入射光は光起動性電池に対して直角である。
【0022】
用語「透明」は、最も広い意味で用いられており、物体又は物質が透けて見える場合、又は下にある素材の認識に大きな影響を与えない場合に、その物体又は物質が持つ性質を意味する。本明細書で開示される太陽電池の使用目的に応じて、異なる透明性度が求められる。例えば、太陽電池が窓ガラスに組み込まれる場合には、高い透明度が求められ、他の建材に組み込まれる場合には、より低い透明度でも適当である。
【0023】
ここで使用される用語「無色」は、例えば、層、システム、又はデバイスに関連して、1931年の国際照明委員会(CIE)によって定められたCIE 1931 RGB色空間を用いて測定した、識別可能な色を有さない無彩色の層又はデバイスを示す。
【0024】
第1導電性基板は、一方の側に導電性層を有する透明なガラス材料であってもよく、導電性ポリマーで構成されていてよい。透明ガラス材料の好ましい例は、フッ素化スズ酸化物(FTO)、インジウムスズ酸化物(ITO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、又はインジウムドープ酸化亜鉛(IZO)である。第1導電性基板は、導電性ポリマー基板であってよい。これは、一方の側に導電層を有するポリマー基板、真性導電性ポリマー等の導電性ポリマー材料で形成された基板、又は導電性熱可塑性複合材料で形成された基板であってよい。
【0025】
ここで用いられる用語「p型半導体」は、「正孔輸送層(HTL)」と同じ意味であり、正孔が多数キャリア又は正に帯電したキャリアであり、電子が少数キャリアである半導体材料を示す。
【0026】
HTLは以下の化合物を含んでいてよく、p型半導体は以下の化合物から選ばれてよい。CuSCN、AgSCN、CuI、CuBr、PEDOT-PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホネート)、Spiro:OMeTAD(2,2’,7,7’-テトラキス[N,N-ジ(4-メトキシフェニル)アミノ]-9,9’-スピロビフルオレン)、PTAA(ポリ[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)アミン)、CuXO(ここで、Xは、例えば、Cr、B、Al、Ga、In、Sc、Fe)、及びこれらの組み合わせ。好ましくは、HTLはCuSCN又はAgSCNである。
【0027】
HTLは、約500nm以下、好ましくは250nm以下、より好ましくは150nm以下、例えば、120nm、100nm、50nm以下の平均厚さを有していてよい。HTLは、透明であってよい。HTLの厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定することができる。好ましくは、HTLは無色透明である。
【0028】
HTLは連続的であってよい。これは、層に、例えばピンホール等のホールやギャップがないことを意味する。HTLは中実層であってよい。例えば、これは、電着によって達成できる。又は、HTLは、p型半導体粒子の複数層構造であってもよい。粒子は、ナノ粒子であってよい。複数層構造において、粒子は重なり合って付着し、粒子-粒子間に相互作用があり、場合によっては、粒子-粒子間接着も存在してよい。
【0029】
好ましくは、HTLと第1導電性基板との間には分子リンカーが存在しない。HTLは、第1導電性基板と直接機械的に接触していてもよく、直接物理的に接触してよい。別の言い方をすれば、HTLは第1導電性基板上に直接付着されていてよい。これは、層が互いに直接相互作用し、HTLと第1導電性基板との間に分子リンカーが存在し得ないことを意味する。HTLが中実層である場合、HTLは第1導電性基板と直接相互作用する。HTLがp型半導体粒子の複数層構造である場合、第1導電性基板に最も近い半導体粒子は、第1導電性基板と直接接触するか、又は直接相互作用する。これは、HTLと第1導電性基板との間に分子リンカーが存在し得ないことを意味する。
【0030】
直接プラズモニック光起電性電池を製造する既知の方法において、HTLは、ETL上に設けられた金属ナノ粒子の上に付着される。HTLの付着は、ナノ粒子が脆弱であるため、制限される。金属ナノ粒子の元の状態(integrity)を維持するために、溶液のpHを中性付近に保つ必要があり、それにより、材料を処理するために用いられる水系配合物や溶媒の使用において制限を受ける。
【0031】
さらに、溶媒の存在下でのさらなる処理に対して、より安定し、かつ、耐久性を有することから、球状のナノ粒子のみを用いてよい。これにより、以下に説明するように、電池の吸収能力は制限される。
【0032】
提案される技術において、HTLは金属プラズモニックナノ粒子層の形成前に付着されるため、水を含むより広範囲の溶媒を使用できる。水系溶媒を使用することにより、持続性可能で、加工性が良好であり、及び拡張性の高い製造方法、例えば、印刷やスプレーを行うことが可能となる。ETLの前にHTLを付着すると、エネルギーの削減と持続可能な化学組成の使用との両方において、製造上有利である。これは、プラズモニックナノ粒子の元の状態(又は元の状態としての安定性)に影響を与えることなく、プラズモニックナノ粒子の上に付着できるHTL及び溶媒に適した適切な材料が少ないためである。これに対し、低温で処理でき、適切なpHで持続可能な溶媒(例えば、水系)を用いてプラズモニックナノ粒子の上に付着できるETL用の材料を見つけることは比較的容易である。提案される付着順とすることにより、水系溶媒から作成され、ピンホールを発生させることなく、100℃未満又は135℃未満の温度でアニールできる、透明なHTLを製造できる。
【0033】
良好な性能の太陽電池デバイスを得るために、ピンホールを有しない第1層が必要である。ピンホールは、太陽電池に3つの性能パラメータ、つまり、短絡光電流、開放電圧及び曲線因子に悪影響を与える。ピンホールは、不均一な導電性基板、及び付着層の不均一な堆積によって生じ得、これは、通常、厚い層を付着することにより回避できる。しかしながら、これにより、全体の透明性が低下するという欠点がある。厚い付着層において良好な導電性を確保するために、高温(>300℃)でアニールする必要があり、亀裂やピンホールが形成されやすくなる。提案された方法によれば、薄くてピンホールのないHTLを、比較的低温で得ることができ、太陽電池全体の透明性が向上し、エネルギー消費を削減できる。
【0034】
第1導電性基板上にHTLを付着する可能な方法は、特に限定されないが、電着、スプレーコーティング、インクジェット印刷、スロットダイ印刷、スクリーン印刷、ドロップキャスティング、スピンコーティング、ディップコーティング、原子層堆積、スパッタリング、又は連続的なHTLの形成が可能な他の方法を含む。好ましくは、付着は、100℃以下、又は135℃以下の温度で行われる。好ましくは、HTLはスプレー(噴霧)又は印刷により付着される。
【0035】
好ましくは、HTLは、間に分子リンカーを形成することなく第1導電性基板上に付着される。HTLの付着は、HTL及び第1導電性基板間に、直接機械的又は物理的接触をもたらし得る。HTLは、第1導電性基板上に直接付着されてよい。別の言い方をすると、この方法は、a)HTLを第1導電性基板に付着してこれらの間で、直接機械的又は直接物理的に接触させ、又は、そのような接触を確立する工程、を含む。
【0036】
好ましくは、HTLは、電着、例えば、電気めっきにより、第1導電性基板上に付着される。あるいは、HTLの付着は、a.1)第1導電性基板上に第1インク層を適用する工程;及び、a.2)第1インク層を処理して、HTLを形成する工程、を含んでいてよい。例えば、処理する工程は、乾燥及び/又は硬化を含んでいてよい。
【0037】
第1インク層は、連続的であってよい。第1インクは、p型半導体粒子を含んでいてよく、これは、ナノ粒子を含んでいてよい。さらに、溶媒及び/又は硬化性樹脂等の結合剤を含んでいてよい。溶媒は、処理工程において除去されてよく、結合剤は、硬化工程において硬化されてよい。
【0038】
第1インク層は、スプレー又は印刷によって設けられてよい。第1インク層は、例えば、スプレーコーティング、インクジェット印刷、スロットダイ印刷、又はスクリーン印刷によって設けられてよい。第1インク層は、第1インク層の処理後に、p型半導体粒子の複数層構造を形成するように構成されてよい。第1導電性基板(2)に最も近いp型半導体粒子は、第1導電性基板(2)と直接相互作用してよい。例えば、p型半導体粒子の濃度及び第1インク層の厚さは、p型半導体粒子が少なくとも3層に配置されるように選択されてよい。
【0039】
HTLの付着は、100℃以下、又は135℃以下の温度で行われ得る。例えば、第1インク層の乾燥及び/又は硬化は、100℃以下、又は135℃以下に第1インク層を加熱することを含み得る。
【0040】
インクは、一般に、連続層を作成するために処理できる溶液であると理解される。これは、例えば、キャリア液体又は溶媒中に懸濁又は溶解された、ナノ粒子、結合剤、樹脂、界面活性剤、及び分散剤等の成分を有する液体を含むと理解される。例えば、CuSCN及びAgSCNを使用する場合には、インクはこれらの化合物及び溶媒のみから構成されてよい。結合剤又は樹脂は必要でない。実際的な理由から、一部の配合物は、さらに、配合物の粘度を調整し、安定性を向上させるために、界面活性剤又は安定剤を含むことを必要とする。
【0041】
UV-Visの光吸収及び反射率により測定された、UVから近赤外線(300-1200nm)までの範囲の電磁スペクトルとして定義される光学範囲において、光吸収を提供する限り、任意の幾何学的形状を有する金属ナノ粒子層に、金属ナノ粒子を用いてよい。
【0042】
好ましくは、光の散乱及び反射をさらに減少させるために、ナノ粒子は、これらの幾何学的形状に関係なく、200nm未満のサイズである。提案される技術において、粒子径は、動的光散乱(DLS)によって評価される。
【0043】
金属ナノ粒子は、球形、立方体、三角柱、角錐、ウニ状、及び星状から選ばれる2つの異なる幾何学的形状を有していてよい。好ましくは、金属ナノ粒子は、球形又は角柱の幾何学的形状を有する。異なる幾何学的形状の金属ナノ粒子が存在すると、光の吸収がかなり増加する。これは、ナノ粒子の光吸収が形状により変化するためである。銀ナノ粒子は、380~450nmの範囲の光を吸収し得る。例えば、三角柱ナノ粒子のような他の形状を加えると、光吸収は、最大1200nmまでの電磁スペクトルを含むように拡張され得る。
【0044】
光吸収は、ナノ粒子のサイズによっても変化し得る。例えば、厚さ(高さ)5~10nmかつ底面の長さが約20nmの三角柱形状の銀ナノ粒子は、400~600nmの範囲の光を吸収し得る。長さが約30nmでは、500~650nmの範囲の光を吸収し得、長さが約50nmでは、550~800nmの範囲の光を吸収し得る。
【0045】
光吸収は、幾何学的形状ではなく、ナノ粒子のサイズを変更することによって増加させることができる。但し、サイズを増加すると、プラズモニック効果が減少し、反射率が増加することがあり、電池の有効性の低下につながる。代わりに、同様のサイズを有する異なる幾何学的形状のものを用いると、プラズモニック効果を維持しながら光吸収を強化できる。
【0046】
球状ナノ粒子と角柱ナノ粒子との比率は、所望の光源スペクトル及び所望の透明性レベルに基づいて選択することができる。例えば、太陽スペクトルに対応する光を利用するためには、ほぼ同量のナノ球状粒子と三角柱とを用いてよいことが分かっている。
【0047】
金属ナノ粒子は、銅、金、銀、又はアルミニウムからなる群より選択されてよい。言い換えると、金属ナノ粒子は、銅、金、銀、又はアルミニウムのナノ粒子であってよい。好ましくは、金属ナノ粒子は、銀ナノ粒子である。
【0048】
ナノ粒子層は、準単層として形成してよく、この場合、ナノ粒子は、互いに離れて位置し、好ましくは、互いに少なくとも3nmの距離で離れて位置する。言い換えると、金属プラズモニックナノ粒子層は、準単層であってよく、又は、準単層を含んでいてよい。これにより、個々のナノ粒子のプラズモニック効果の干渉が低くなることが分かっている。
【0049】
準単層におけるナノ粒子の濃度は、緻密な、又は、連続した単層に対して10~20%であり得る。これにより、通常、無色、又は、透明度の高い光発電システムが得られることが分かっている。
【0050】
ナノ粒子層は、約15~約250nmの範囲の厚さを有し得る。例えば、厚さはSEMにより測定できる。言い換えると、ナノ粒子のサイズ又は最大長さ(extension)は、15~250nmの範囲にあってよい。
【0051】
金属ナノ粒子は、還元剤と安定化剤を用いて合成できる。言い換えると、開示された方法において、金属ナノ粒子は、還元剤及び/又は安定化剤にさらされるか、又は、還元剤及び/又は安定化剤を用いて変性してよい。還元剤の例としては、NaBH、N、アスコルビン酸、ベタニン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のポリオールが挙げられる。安定化剤又は増殖制限剤としては、ベタニン、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のポリオール、又はアスコルビン酸が挙げられる。還元剤は、これらの中から選択することができる。アスコルビン酸は、安定化剤として使用してよい。
【0052】
金属プラズモニックナノ粒子の層は、金属ナノ粒子をHTLに連結する第1分子リンカーを含んでよい。HTLがp型半導体粒子の複数層構造である場合、第1分子リンカーは、金属ナノ粒子をp型半導体粒子に連結し得る。第1分子リンカーは、準単層を形成してよい。
【0053】
金属プラズモニックナノ粒子層は、金属ナノ粒子をETLに連結する第2分子リンカーを含んでよい。第2分子リンカーは、準単層を形成してよい。分子リンカーは、ナノ粒子をHTL及びETLに結合すると理解される。分子リンカーは、国際公開第2018/178153号において広範囲にわたって説明されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0054】
工程b)において、金属ナノ粒子は、印刷又はスプレー、例えば、インクジェット印刷、スクリーン印刷、ドロップキャスティング、スピンコーティング、浸漬コーティング、スプレーコーティングにより、HTL上に設けられてよい。金属ナノ粒子をローディングすることにより、準単層を形成してよい。好ましくは、スプレーコーティングが用いられ、言い換えると、金属ナノ粒子は、スプレーコーティングにより設けられる。
【0055】
直接プラズモニック光起電性電池を得るための既知の方法では、金属ナノ粒子は、ETL上に設けられ、続いて、HTLが付着される。HTLを付着する場合には、金属ナノ粒子の完全な元の状態に影響を与える可能性のある溶媒が使用される。このため、より堅牢で耐性のある球形のナノ粒子のみが用いられる。
【0056】
提案される技術において、HTLの付着は、ナノ粒子を設ける前に行われ、このため、非球形のナノ粒子の使用が可能になる。その後のETLの付着は、上述したように、非球形の形状の元の状態に影響を与えないように選択できる。
【0057】
HTL上に金属ナノ粒子を設けることは、b.1)HTL上に第2インク層を適用する工程、b.2)第2インク層を処理して、金属プラズモニック粒子の層を形成する工程、を含んでよい。例えば、上記処理は、乾燥及び/又は硬化を含んでよい。
【0058】
第2インク層は連続的であってよい。第2インクは、上述した金属ナノ粒子を含むと理解される。
【0059】
第2インクは、上述した第1分子リンカーをさらに含んでいてよく、又は、第1分子リンカーによって金属粒子をHTLに結合するように構成されていてよい。上述したように、HTLがp型半導体粒子の複数層構造である場合、第1分子リンカーは、金属ナノ粒子をp型半導体粒子へ結合してよい。
【0060】
第2インクは、上述した第2分子リンカーをさらに含んでいてよく、又は、第2分子リンカーによって金属ナノ粒子をETLに結合するように構成されていてよい。
【0061】
第2インク層は、スプレー又は印刷により塗布されてよい。例えば、スプレーコーティング、インクジェット印刷、スロットダイ印刷、又はスクリーン印刷により塗布されてよい。
【0062】
使用されている用語「n型半導体」は、「電子輸送層(ETL)」と同じ意味で用いられ、電子が多数キャリアであり、正孔が少数キャリアである半導体材料を示す。
【0063】
適切なETL材料の例としては、SnO、ZnO、TiO、ドープされたZnO(例えば、Al:ZnO、In:ZnO)、SrTiO、BrTiO、Sb、ドープされたSb(例えば、Sn-Sb)及びこれらの組み合わせを挙げることができる。好ましくは、ETL材料は、SnO及びZnOであるか、言い換えると、ETLは、SnO又はZnOで形成される。
【0064】
ETLは、200nm以下の厚さを有していてもよく、好ましくは150nm以下、より好ましくは120nm以下、例えば、100nm、80nm、50nm以下であってよい。ETLは透明であってよい。好ましくは、ETLは透明かつ無色である。例えば、ETLの厚さは、SEMを用いて測定できる。
【0065】
ETLは連続的であってよい。これは、層において、ピンホール等のホールやギャップがないことを意味する。ETLは、n型半導体粒子の複数層構造であってもよい。粒子は、ナノ粒子であってよい。上記のように、複数層構造では、粒子は互いの上に付着し、粒子-粒子間に相互作用があり、場合によっては、粒子-粒子間に接着が存在してよい。
【0066】
ETLがn型半導体粒子の複数層構造である場合、第2分子リンカーは、金属ナノ粒子をn型半導体粒子に結合してよい。第2分子リンカーは、準単層を形成してよい。
【0067】
工程c)において、ETLは、スプレー又は印刷、例えば、スプレーコーティング、スピンコーティング、又はインクジェット印刷によって付着されてよい。これは、比較的低い温度である100℃以下、又は135℃以下の温度で行ってよい。金属ナノ粒子上にETLを付着させる他の方法としては、スクリーン印刷、スロットダイ印刷、ドロップキャスティング、スピンコーティング、ディップコーティング、原子層付着、スパッタリング、又はその他の方法が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、これらは比較的低い温度である100℃以下、135℃以下の温度におけるものである。
【0068】
ETLは、金属プラズモニックナノ粒子層上に直接付着されてよい。ETLの付着は、c.1)金属プラズモニックナノ粒子層の上に、第3インク層を適用する工程;及び、c.2)第3インク層を処理してETLを形成する工程、を含んでいてよい。例えば、上記処理は、乾燥及び/又は硬化を含んでいてよい。
【0069】
第3インク層は、連続的であってよい。第3インクは、n型半導体粒子を含んでいてもよく、これは、ナノ粒子であってよい。第3インクは、溶媒及び/又は硬化性樹脂等の結合剤を、さらに有していてよい。溶媒は、乾燥工程において除去されてよく、結合剤は、硬化工程において硬化されてよい。
【0070】
第3インク層は、スプレー又は印刷によって適用され得る。例えば、スプレーコーティング、インクジェット印刷、スロットダイ印刷、又は、スクリーン印刷により適用されてよい。第3インク層は、第3インクの処理後、n型半導体粒子の複数層構造を形成するように構成されてよい。第3インク層におけるn型半導体粒子の濃度及び厚さは、n型半導体粒子が少なくとも3層に配置されるように選択することができる。
【0071】
ELTの付着は、100℃以下、又は135℃以下の温度で行われてよい。例えば、第3インク層の乾燥及び/又は硬化は、100℃以下、又は135℃以下の温度に第3インク層を加熱することを含み得る。
【0072】
上記のように、第2インクは第2分子リンカーを含んでいてよく、又は第2分子リンカーによって、金属ナノ粒子をETLに結合するように構成されていてよい。ETLがn型半導体粒子の複数層構造である場合、第2分子リンカーは、金属ナノ粒子をn型半導体粒子に結合してよい。
【0073】
第2導電性基板又はバックコンタクトは、ITO、AZO又はIZO等のスパッタリングされた導電性酸化物から構成されてよい。さらに、又は、その代わりに、一方の側に導電性層を有する透明性ガラス材料、又は、導電性ポリマーから形成されてよい。透明導電性ガラス材料の好ましい例は、FTO、ITO、AZO又はISOである。導電性ポリマー基板の好ましい例は、片側に導電層を有するポリマー基板、真性導電性ポリマー等の導電性ポリマー材料から形成された基板、又は、導電性熱可塑性複合材料から形成された基板である。
【0074】
好ましくは、第2導電性基板は、Agナノワイヤ及び1種もしくはそれ以上の導電性酸化物(例えばSnO又はAZO)又は導電性ポリマー(例えばPEDOT-PSS)の混合物、Agナノワイヤ及び導電性ポリマーの混合物あるいはグラフェンと導電性混合物を含んでよい。これらは、無色かつ透明の太陽電池に組み込むことができる。
【0075】
好ましくは、第2導電性基板とETLとの間には、分子リンカーが存在しない。第2導電性基板は、ETLと機械的又は物理的に直接接触してよい。これは、層が直接相互作用し、第2導電性基板とETLとの間には分子リンカーが存在できないことを意味する。ETLがn型半導体粒子の複数層構造である場合、第2導電性基板に最も近い半導体粒子は、それぞれ、第2導電性基板と直接接触するか直接相互作用する。これは、ETLと第2導電性基板との間に分子リンカーが存在し得ないことを意味する。
【0076】
第2導電性基板は、スパッタリングされてよく、又はスパッタリングにより形成されてよい。これにより、良好な導電性がもたらされ、良好な透明性を有する薄層となる。第2導電性基板は、第1導電性基板よりも薄くてよい。
【0077】
上記のように、第2導電性基板は、工程e)において、ETLの上に付着される。好ましくは、第2伝導性基板は、スパッタリングにより付着される。好ましくは、第2導電性基板は、ETL上に、これらの間に分子リンカーを形成することなく、付着される。第2導電性基板の付着は、第2導電性基板とETLとの間の、直接の機械的又は物理的な接触により、構成されてよい。別の言い方をすると、この方法は、e)ETL(5)上に第2導電性基板(6)を付着させる、又は、第2導電性基板とETL(5)との間に直接機械的な接触又は直接物理的な接触を確立すること、を含む。
【0078】
第2導電性基板は、ETL上に直接付着されてよい。あるいは、第2導電性基板は、例えば、導電性ガラス又はプラスチック等のETL上に適用されてよい。好ましくは、Agナノワイヤと導電性酸化物又は導電性ポリマーとの混合物は、第2導電性基板として使用される。第2導電性基板は、スロットダイコーティングにより付着されてよい。これにより、エネルギーの面において高価であり、高度な機械を必要とする、一般的に使用されるスパッタリング技術の使用を回避できる。さらに、スロットダイコーティングにおいて、真空は必要でない。スパッタリングは、短絡電池を形成するという欠点も有する。
【0079】
分子リンカー等のさらなる層又は化合物は、上述した層の間に存在してよい。他の層が存在する場合、その付着は、金属ナノ粒子又は他の層の状態(安定性)に影響しない限り、上述した方法の何れによって行ってよい。
【0080】
上述したように、p型半導体又はHTLと、金属ナノ粒子とは、分子リンカーによって共有結合することができる。同様に、金属ナノ粒子とn型半導体又はELTは、分子リンカーによって共有結合することができる。
【0081】
分子リンカーは、良好なπ共役特性、剛性及び平面性に基づき、優れた電子結合を提供する必要がある。好ましくは、各成分に対し選択的な反応性基を有する分子を使用する必要があり、例えば、カルボン酸又はホスホン酸をp型半導体とともに用いる、及び、アミン又はチオールをナノ粒子とともに用いることが挙げられる。適切な分子リンカーの例は、国際公開第2018/178153号に記載されており、それらは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0082】
プラズモニック光起電電池は、金属ナノ粒子層とETLとの間に位置する絶縁層を含んでいてよい。絶縁層は、金属ナノ粒子層からETLへ電子のトンネリングを可能にするように構成されてよい。言い換えると、トンネリングは、金属プラズモニック粒子層からETLへ向けて、又は、金属ナノ粒子を絶縁層へ結合する第2分子リンカーから生じ得る。後者については、以下で更に説明する。
【0083】
上記に示すように、金属プラズモニックナノ粒子層は、金属ナノ粒子をETLに結合する第2分子リンカーを含み得る。代わりに、金属ナノ粒子を絶縁層に結合する第2分子リンカーを含んでよい。これらの第2分子リンカーは、準単層を形成してよい。これは、分子リンカーは、共有結合によって、ナノ粒子を絶縁層に結合することが理解される。ETLは、絶縁層と直接機械的又は物理的に接触していてよい。
【0084】
第2導電性基板は、ETL上に直接付着されてよい。ETL上に第2導電性基板を付着する代わりに、この方法では、d)ETL上に絶縁層を付着する工程;及び、e)絶縁層上に第2導電性基板(6)を付着する工程、を含んでよい。
【0085】
上記のように、第2インクは、第2分子リンカーを含んでよく、又は、第2分子リンカーにより、ETLに金属ナノ粒子を結合するように構成されてよい。代わりに、第2分子リンカーは、金属ナノ粒子を絶縁層に結合してよい。
【0086】
絶縁層は、価電子帯と伝導帯との間の大きなエネルギー差、即ち、大きなバンドギャップ及びゼロの又は非常に低い導電率を有する材料により構成されてよい。伝導帯の端は、真空から3.5eV以下にあり、価電子帯は、真空から6.5eV以上にある必要がある。
【0087】
絶縁層は、SiO、Al、ZrO、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)、(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、オルガノホスフェート(C2n+1-PO(OH))、アミノ-オルガノホスフェート(HN-C2n-PO(OH))、チオール-オルガノホスフェート(HS-C2n-PO(OH))、オルガノカルボキシレート(C2n+1-CO(OH))、アミノ-オルガノカルボキシレート(HN-C2n+1-CO(OH))又はチオール-オルガノカルボキシレート(HS-C2n+1-CO(OH))から形成される、又は、これらを含んでいてよい。
【0088】
絶縁層の厚さは、10nm以下、好ましくは1nm以下、より好ましくは1nm以下であってよい。絶縁層の厚さが10nm以下であると、ホットエレクトロンが絶縁層をトンネリングして、金属ナノ粒子層からETLに効果的に転送されるのが確保される。絶縁層は、0.5nm超の厚さを有していてよい。絶縁層の厚さが0.5nm未満であると、絶縁効果が得られないことがあることが判明した。
【0089】
光起電電池は、さらに、第2導電性基板を覆う、支持層(X)又は保護層を含んでいてよい。支持層(X)は、第2導電性基板に隣接して又は並置されており、第2導電性基板は、支持層及び第1導電性基板の間にあることが理解される。これは、第2導電性基板がスパッタリングされているか、第2導電性基板がスパッタリングにより形成されている場合(第2導電性基板は機械的損耗に対して敏感である)に特に有利である。支持層(X)は、外側接着面を有していてよい。例えば、接着面は、例えば、ガラス板又はプラスチック外装等の滑らかな表面において、光起電電池を取り付けるように構成されてよい。言い換えると、支持層は、滑らかな面に接着するように構成されていてよい。
【0090】
上記の方法は、さらに、ETL上に支持層(X)を付着する、又は、供給すること、を含んでよい。支持層(X)は、上記の特徴を有していてよい。
【0091】
提案される技術のさらなる要旨では、直接プラズモニック光起電電池を含むホイル(箔)が提供される。ホイルは、透明であってよい。ホイルは、柔軟であってよい。ホイルは、薄いシート状の構成を有すると理解される。さらに、直接プラズモニック光起電性電池層は、ホイルと整列状態にあり、又は、ホイルと平行に延在すると理解される。ホイルの厚さは、層の厚さに依存する。
【0092】
ホイルは、電子デバイス又は建築部材を、充電するように構成されてよい。電子デバイスは、例えば、例えば、日常使用を目的とした家庭用の電子デバイスであってよい。好ましくは、電子デバイスは、電力消費が少ない。これは、電子ペーパーディスプレイ、電子書籍リーダー、IoT(internet of things)デバイス又はセンサー、スマートデバイス、スマートウォッチ、携帯電話、又はタブレットであってよい。建築部材は、窓、屋根部材、又は壁部材であってよい。
【0093】
提案される技術の様々な実施形態及び実施例について、図面を参照して、以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0094】
図1図1は、提案される技術の1つの態様に基づく、直接プラズモニック太陽電池の概念的構造を概略的に示す。
図2図2は、プラズモン形状及びサイズの変化に対する光吸収の変化を示すグラフである。
図3図3は、直接プラズモニック太陽電池の製造の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、図3に関連して説明する製造から得られる直接プラズモニック太陽電池を概略的に示す。
図5図5は、直接プラズモニック太陽電池の製造の別の例を示すフローチャートである。
図6図6は、図5に関連して説明する製造から得られる直接プラズモニック太陽電池を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0095】
(実施例1)
銀金属ナノ粒子は、例えばAgNOである金属前駆体、還元剤、及び安定化剤から合成された。還元剤及び安定化剤の例は、上記のとおりである。全ての試薬は、Sigma-Aldrich/Merck社から購入し、分析品質を備えていた。
【0096】
Dong,H.,Chen,Y.-C.,Feldmann,C.「ナノ粒子のポリオール合成:金属、酸化物、カルコゲニド、及び非金属元素に関するステータス及びオプション(Polyol synthesis of nanoparticles: status and options regarding metals, oxides, chalcogenides, and non-metal elements)」、Green.Chem.17,4107-4132(2015)に従った手順により、ナノ粒子の作製を行った。Aherne,D.,Ledwith,D.M.,Gara,M.&Kelly,J.M.「室温での再現性の高い迅速な合成によって生成される銀ナノプリズムの光物性及び成長態様(Optical properties and growth aspects of silver nanoprisms produced by a highly reproducible and rapid synthesis at room temperature)」Adv.Funct.Mater.18,2005-2016(2008)に従って、ナノ三角柱の作製を行った。これらの2つの文献の内容は、参照により本明細書に組み入れられる。ナノ粒子の形状及びサイズ分布を最適化するために、成分の濃度、溶媒、反応温度、及び反応時間等のパラメータが選択された。
【0097】
リンカーが用いられる場合、Agナノ粒子懸濁液のpHは4~5に調整され、粒子は、pABA(Sigma-Aldrich社)により、コーティングされ、-NHを介してAg表面に固定された。
【0098】
別の実施形態では、金、銅、及びアルミニウムのナノ粒子は、それぞれ、金属前駆体、例えば、銅ナノ粒子の場合についてはCuSO又はCuCl、又は金ナノ粒子のHAuClから合成することができる。
【0099】
厚さ100nmを有するCuSCNのHTLは、12mMのCuSO及び12mMのKSCNの電着を経て得られた。厚さ30nmを有するSnOであるETLは、HOコロイド分散液における15%のSnOのコロイド分散液から得られた。別の実施形態では、厚さ30nmを有するZnOであるETLは、Sigma-Aldrich社のインクジェット分散液から得られた。
【0100】
厚さ2mmを有するFTOガラスの第1導電層を、使用した。FTOガラスは、NSG-Pilkington社から得た。
【0101】
第2導電層として、導電性酸化物(SnO2、AZO)を用いたスロットダイ被覆銀ナノワイヤ又はポリマー(PEDOT-PSS)が使用された。
【0102】
別の実施形態では、厚さ150~200nmのスパッタリングされたAZOの第2導電層が使用された。
【0103】
(実施例2)
図1は、逆構成を用いた直接太陽電池の一実施形態を示す。CuSCNのHTL3を、FTOガラスからなる第1導電性基板2上に付着する。球形41及び立方体形42を有する銀ナノ粒子は、HTL3の上に及びSnO又はZnOからなるETL5の下に設けられる。銀ナノ粒子。別の実施形態において、ナノ粒子は、他の幾何学的形状、例えば、三角柱形状を有する。Agナノワイヤと導電性酸化物SnOとの混合物からなるバックコンタクト6を、ETL5の上に配置する。別の実施態様において、導電性酸化物はAZOである。
【0104】
説明されている構成において、金属ナノ粒子の様々な種類の幾何学的形状により、より効果的な光の吸収が可能になる。銀ナノ粒子の吸収特性を、図2に示す。球状の銀ナノ粒子(球形)は、プラズモニック効果を維持し、380~450nmの範囲の光を吸収する。銀ナノ粒子(SA)は、高さ5~10nm及び辺長約20nmの三角形底面の三角柱であり、400~600nmの範囲の光を吸収する。ナノ粒子(SB)が代わりに辺長約30nmの三角形底面を有する場合、500~650nmの範囲の光を吸収する。ナノ粒子(SB)が代わりに辺長約50nmの三角形底面を有する場合、550~800nmの範囲の光を吸収する。即ち、金属ナノ粒子の形状及びサイズを変えることによって、太陽の光スペクトルに上手く適合する累積吸収(点線で表示している)を得ることができる。
【0105】
(実施例3)
一実施形態では、太陽電池は、以下に説明するように得られた。FTOガラスは、14mm×24mmの長方形のサンプルに切断された。これらの寸法は、最終的な付着工程及び測定におけるガラス片の許容誤差を見込んで選択された。サンプルは、化学的エッチングによりパターン化された。各サンプルの長辺において、各端の約2mmを覆うようにテープ(3M-マジックテープ(登録商標)又はKapton)が貼り付けられた。サンプルは、亜鉛粉末(1ピンチ必要であった)で覆われた。続いて、2MのHClをサンプルに滴下して、エッチング反応を始めた。約2分後、エッチングが完了し、エッチング液は水を用いて洗い流し、第1導電性基板が提供された。サンプルを、さらに、30分間、2%ヘルマネックス溶液(DI水で希釈)中で、超音波洗浄した。その後、サンプルは、15分間DI水で、続いて、IPAで15分間超音波洗浄した。洗浄処理は、15分間のUV-オゾン処理で終了する。
【0106】
CuSCNのHTLは、第1導電基板に付着された。チオシアン酸銅(CuSCN)電着の前駆体溶液は、12mMの硫酸銅(CuSO)、12mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、及び12mMのチオシアン酸カリウム(KSCN)を有した。サンプルは、この溶液に浸漬され、作用極として機能し、白金ワイヤが対極として機能し、銀/塩化銀(Ag/AgCl)電極が参照極として機能した。フィルムは、-0.455Vを20秒間3回印加し、各回の間は0Vを30秒間印加することにより形成された。付着終了後、サンプルは、蒸留水ですすぎ、Nガスで乾燥された。ピンホールを除去するために、50%のアンモニア水溶液中のCuSCN(濃度10mg/mL)を用いて、薄いCuSCN層(約10nm)は、電着層の上にスピンコート(3000rpm、30秒)され、第1導電性基板上にHTLが提供された。
【0107】
金属ナノ粒子層は、その後、HTL上に設けられる。この実施形態では、銀の球形状物と三角柱状物とが用いられた。銀のナノ粒子は、0.8mlのグリセロール、8.2HO、0.1mlのAgNO、及び0.5mlのクエン酸Naから合成され、マイクロ波管内で混合された。95℃で30分後、Agナノ粒子の溶液が得られた。これは、20分間14.8Krpmで遠心分離機によって精製された。ナノ粒子は、2mlのHO中に再分散された。銀の三角柱状物は、2段階の方法を使用して合成された。第1段階では、シード溶液が合成され、第2段階では、シードがナノ角柱に成長された。シード溶液は、クエン酸三ナトリウム水溶液(5mL、2.5mm)、ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム)(PSSS)水溶液(0.25mL、500mg/L)、水素化ホウ素ナトリウム水溶液(0.3mL、10mM、新たに調製)、及び、硝酸銀水溶液(5mL、0.5mM、2mL/分)を強く撹拌して、混合し得られた。得られた黄色がかった溶液を第2工程のために冷蔵庫に保管した。ナノ角柱を成長させるために、水(5mL)、アスコルビン酸水溶液(75μL、10mM)、シード溶液(異なるプリズムサイズを得るために様々な量(シード原液から0.1~1mL)を使用)及び硝酸銀水溶液(3mL、0.5mM、1mL/分)を、強く撹拌して混合した。AgNOの添加が終了すると、クエン酸三ナトリウム水溶液(0.5mL、25mM)を直ちに混合物に加え、約1分間撹拌した。サンプルは、使用するまで最低48時間、冷蔵庫で調製したままで保管した。銀プラズモニックナノ粒子は、以下のように、HTL(CuSCN)上に付着した。分子リンカー(4-アミノピリジン及びp-アミノ安息香酸)で覆われた予め調整した銀の球形と角柱が、混合され、HTL上に室温にて付着された。ナノ粒子。即ち、少なくとも2種の銀ナノ粒子形状が使用された。得られたサンプルは、DI-水を用いて十分に洗浄し、Arガスを用いて乾燥させ、HTL上に金属プラズモニックナノ粒子層を形成した。
【0108】
SnOのETLは、スピンコーティングにより金属ナノ粒子層上に付着された。溶液は、水で1:4に希釈した15%HOコロイド分散液においてSn(IV)酸化物ナノ粒子を有した。スピンコーティングは、30秒間3000rpmにおいて行われた。形成された層は、45分間100℃でアニールされた。付着されたSnO層上のピンホールを除くために、薄いSnCl層(約10nm)が、3000rpmで30秒間スピンコートされた。濃度1mg/mLのSnCl溶液が使用された。付着後、層は100℃で15分間アニールし、SnClをSnOに変換し、その結果、金属ナノ粒子層上にETLが得られた。
【0109】
Sigma-Aldrich製の銀ナノワイヤ(Ag NW)は、スロットダイコーティングにより、太陽電池のためのバックコンタクトとして、ETL上に付着された。Ag NW(直径×長さ=50nm(±10nm)×40μm(±5μm)、イソプロピールアルコールにおいて5mg/mL)の1.2wt%の溶液は、イソプロピルアルコール(98vol%)におけるエチレングリコール(2vol%)の溶液に分散された。Dupon製のD520 Nafion分散液アルコールベース 1000EW 0.005g/mLの分散剤が、Ag NWの凝集を避けるために加えられた。スロットダイコーターと太陽電池との間のギャップは0.05mmに設定され、厚さ0.03mmのシムプレートが使用され、印刷速度は50RPMとした。Ag NWの付着後、サンプルにSnCl.5HOの6%溶液をスプレーした。その後、サンプルを、乾燥及び80℃で15分間アニールし、Ag NW間の接続性を高め、かつ、ワイヤ間のギャップを埋めることによって、ETL上に第2導電性板を提供した。
【0110】
この手順に従うことにより、球形及び三角柱(図示せず)形状の銀ナノ粒子を含む、図1に示される太陽電池が得られた。
【0111】
(実施例4)
図3は、直接プラズモニック太陽電池の製造方法100を示すフローチャートである。得られるプラズモニック太陽電池10を、図4に概略的に示す。透明の第1導電性基板12が提供される。第1導電性基板12は、FTOガラスである。
【0112】
第1工程において、102a:第1導電性基板12上に第1インクの連続層を印刷すること、及び、102b:第1インク層を乾燥することによって、HTL14を形成することにより、102:透明かつ連続的な正孔輸送層(HTL)14は、第1導電基板12上に付着される。第1インクは、ジメチルスルホキシド(DMSO)のキャリア液中に懸濁されたCuSCNのp型半導体ナノ粒子16を含む。p型半導体ナノ粒子16は、乾燥後、複数層構造に配置され、それにより粒子-粒子間の相互作用及び接着が確立される。これらは、第1導電性基板12と並置されたp型半導体ナノ粒子16との間に直接的な物理的接触及び相互作用も存在する。第1導電性基板12とHTL14との間には、分子リンカーが存在しない。
【0113】
別の製造方法では、HTL14は、電着によって設けられる中実層である。
【0114】
第2工程104において、プリズム形状の金属ナノ粒子22は、HTL14上に配置され、金属プラズモニックナノ粒子層18が形成される。金属ナノ粒子22は、銀からなる。金属ナノ粒子22は、104a:HTL14上に第2インクの連続的な層を印刷することにより配置される。第2インクは、金属ナノ粒子22を含み、水のキャリア液体中に懸濁されている。第2インクは、その後、104b:乾燥され、金属プラズモニックナノ粒子層18が形成される。金属ナノ粒子22の濃度及び印刷される第2インクの量は、金属ナノ粒子22の透明な準単層が形成されるようなものである。
【0115】
第2インクは、金属ナノ粒子22をHTL14のp型半導体粒子16に連結する第1分子リンカー20を含む。第1分子リンカー20は、4-アミドピリジンである。他の例において、第1分子リンカー20は、4-メルカプトピリジンである。第2インクは、さらに、金属ナノ粒子22を電子輸送層(ETL)26に連結するp-アミノ安息香酸の第2分子リンカー24を含み、これについては以下で、さらに説明する。
【0116】
第3工程106において、106a:金属プラズモニックナノ粒子層18上に第3インクの連続層を付着すること、及び、106b:第3インク層を乾燥し、ETLを形成することにより、透明なETL26が金属プラズモニックナノ粒子層18上に堆積される。第3インクは、イソプロパノールのキャリア液中に懸濁されたZnOのn型半導体ナノ粒子28を含む。n型半導体ナノ粒子28は、乾燥後、複数層構造に配置され、それにより粒子-粒子間の相互作用及び接着が確立される。第2分子リンカー24は、金属ナノ粒子22をETL26のn型半導体粒子28に結合する。
【0117】
第4工程108において、ELT26上にAZOの中実層をスパッタリングすることにより、透明な第2導電性基板30がETL26上に付着される。このようにして、第2導電性層30とn型半導体ナノ粒子28の最も近いものとの間に、直接的な物理的接触及び相互作用が存在する。これは、ETL26と第2導電性基板30との間に分子リンカーが存在しないことを意味する。
【0118】
(実施例5)
図5は、直接プラズモニック太陽電池の製造方法200を示すフローチャートである。得られたプラズモニック太陽電池(20)を、図6に概略的に示す。図3に概説した前述の方法と同様に、製造方法は、FTOの導電性基板12から始まる。第1工程202及び第2工程204は、前述した方法の工程102及び104と同じである。唯一の相違点は、第2インクが、金属ナノ粒子22を絶縁層32に結合するp-アミノ安息香酸を含むことであるが、これについては以下でさらに説明する。
【0119】
第3工程206において、3-アミノプロピルトリエトキシシランの透明な絶縁層32は、金属プラズモニックナノ粒子層18上に、スロットダイコーティングにより、付着される。第4工程208では、208a:絶縁層32上に第3インクの連続層を印刷すること、及び、208b:第3インク層を乾燥することにより、ETL26を形成することにより、透明なETL26が絶縁層32上に付着される。第3インクは、イソプロパノールのキャリア液中に懸濁されたZnOのn型半導体ナノ粒子28を含む。n型半導体ナノ粒子28は、乾燥後、複数層構造として配置されている。絶縁層32は、1nmの平均厚さを有し、これにより、第2分子リンカー24からETL26へ、電子が効率的にトンネルすることが可能となる。
【0120】
第5工程210において、図3に概説した前記方法の第4工程108に対応して、AZOの中実層をスパッタリングすることにより、透明な第2導電性基板30がETL26上に付着される。第6工程212において、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)形態の透明な支持層34が、第2導電性基板30上に適用され、これにより、プラズモニック太陽電池10のフィルム36が形成される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】