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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】量子粒子セルのパルスレーザ改質
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/06 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
H01L29/06 601Q
H01L29/06 601D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542851
(86)(22)【出願日】2022-02-14
(85)【翻訳文提出日】2023-09-04
(86)【国際出願番号】 US2022016356
(87)【国際公開番号】W WO2022177864
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】63/150,440
(32)【優先日】2021-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/493,155
(32)【優先日】2021-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523000950
【氏名又は名称】コールドクアンタ・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】COLDQUANTA,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒューズ・スティーブン・マイケル
(57)【要約】
【解決手段】パルスレーザは、セルの真空対向面を接合、アブレート、および/または、化学的に改質する目的で、量子粒子(例えば、アルカリ金属原子およびアルカリ土類金属原子)超高真空(UHV)セルを改質するために、短い(例えば、10ピコ秒未満)パルスを印加する。パルスは、セルの外側で生成され、真空境界壁を通して伝達される。一例において、まず、1つの真空境界壁が、一時的な密封シールを形成するのに十分な比較的低い温度(200℃未満)で他の真空境界壁へ接触接合される。パルスレーザ接合を用いて、接触接合を強化し、欠陥を修正し、シールのロバスト性を全体的に増大させる。パルスは、強い接合を保証するために高いピーク電力を提供するが、付近のセル構成要素への熱損傷を回避すると共にセル壁への量子粒子の吸収および吸着を制限するために低い総熱量を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子粒子セルの改質処理であって、
第1真空境界壁を備える真空セル構造を組み立て、前記真空セル構造は、10-9Torr未満の圧力を有する内部を規定し、前記真空セル構造は、同じ正の数の陽子および同じ正の数の中性子を有する複数の量子粒子を含み、
前記真空セルが、前記複数の量子粒子を含む時に、前記真空セルの真空対向面を改質するために、前記第1真空境界壁を通して前記真空セルの外側から1ナノ秒未満の持続時間のレーザパルスを方向付けること、
を備える、処理。
【請求項2】
請求項1に記載の量子粒子セルの製造処理であって、前記量子粒子は、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、または、希土類金属原子金属原子を含む、処理。
【請求項3】
請求項1に記載の量子粒子セルの製造処理であって、前記レーザパルスは、前記第1真空境界壁と第2真空境界壁との間の接合を形成し、または、接合を強化する、処理。
【請求項4】
請求項3に記載の量子粒子セルの製造処理であって、前記組み立ては、レーザパルスを利用することなしに、前記第1真空境界壁を前記第2真空境界壁に接触接合または陽極接合することを含む、処理。
【請求項5】
請求項4に記載の量子粒子セルの製造処理であって、前記接触接合または陽極接合は、200℃未満の温度でのみ実行される、処理。
【請求項6】
請求項1に記載の量子粒子セルの製造処理であって、前記レーザパルスは、前記真空セルの前記真空対向面の一部を化学的に改質する、処理。
【請求項7】
請求項1に記載の量子粒子セルの製造処理であって、前記レーザパルスは、前記真空セルの前記真空対向面の一部の導電率を変える、処理。
【請求項8】
請求項1に記載の量子粒子セルの製造処理であって、前記レーザパルスは、前記真空セルの前記真空対向面から材料を除去する、処理。
【請求項9】
請求項1に記載の量子粒子セルの製造処理であって、前記レーザパルスは、10ピコ秒未満の持続時間を有する、処理。
【請求項10】
請求項1に記載の量子粒子セルの製造処理であって、前記レーザパルスは、10フェムト秒未満の持続時間を有する、処理。
【請求項11】
請求項1に記載の量子粒子セルの製造処理であって、前記量子粒子セル内の前記真空の体積は、1ミリリットル未満である、処理。
【請求項12】
超高真空(UHV)量子粒子セルであって、
第1真空境界壁と、第2真空境界壁と、前記第1および第2真空境界壁を物理的に接続しているパルスレーザ接合とを備える量子粒子セル構造であって、10-9Torr未満の内部圧力を雰囲気から分離する量子粒子セル構造と、
同じ正の数の陽子および同じ正の数の中性子を有する量子粒子であって、前記量子粒子構造内に含まれている量子粒子と、
を備える、UHV量子粒子セル。
【請求項13】
請求項12に記載のUHV量子粒子セルであって、さらに、第3、第4、および、第5真空境界壁を備え、前記パルスレーザ接合は、前記第1真空境界壁を、前記第2、第3、第4、および、第5真空境界壁へ物理的に接続している、UHV量子粒子セル。
【請求項14】
請求項13に記載のUHV量子粒子セルであって、前記第2および第4真空境界壁は各々、前記第3および第5真空境界壁へ接触接合されている、UHV量子粒子セル。
【請求項15】
請求項12に記載のUHV量子粒子セルであって、さらに、前記第1および第2真空境界壁の間の接触接合または陽極接合を備える、UHV量子粒子セル。
【請求項16】
請求項12に記載のUHV量子粒子セルであって、前記量子粒子セル内の前記真空の体積は、1ミリリットル未満である、UHV量子粒子セル。
【発明の詳細な説明】
【他の出願への相互参照】
【0001】
本願は、「VACUUM CELL MANUFACTURING USING PULSED LASERS」と題する2021年2月17日出願の米国仮特許出願第63/150,440号、および、「PULSED-LASER MODIFICATION OF QUANTUM-PARTICLE CELLS」と題する2021年10月04日出願の米国特許出願第17/493,155号に基づく優先権を主張し、これらの出願は両方とも、すべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
量子粒子セルは、超高真空(UHV)条件下で量子状態キャリア(例えば、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の原子)を保持するよう設計されており、その時、それらの量子状態は、セルの窓および/または壁を通してそれらのキャリアにアクセスする電磁放射(EMR)を用いて制御および監視される。量子粒子を含むことに加えて、量子粒子セルは、粒子および/またはEMRを導くための構成要素と、UHV条件を確立、維持、および、復元するための構成要素と、を備えうる。
【0003】
量子粒子セルがよりコンパクトであれば、セルを組み込んだ量子システムが、よりコンパクトかつより経済的になりうる。さらに、よりコンパクトなセルを用いた場合、必要とされる高価な量子粒子原料が少量になりうるので、コスト削減を達成できる。しかしながら、よりコンパクトなセルの製造は、新たな課題に直面している。例えば、製造中に生じる温度が、様々なセル構成要素に悪影響を与え、量子粒子をセル壁へ向かって駆動しうる。大きいセルにおいては、影響を受ける実体が、より長い距離にわたる温度勾配によって保護されうるので、熱は管理可能でありうる。よりコンパクトなセルにおいては、熱に弱い構成要素へ到達する前に熱が弱まるために利用可能な空間が小さい。また、一部の製造処理は、粒子源およびゲッターを不動態化しうる酸素を放出し、それらの機能を低下させる。したがって、量子粒子セル製造は、よりコンパクトな量子粒子セルのもたらす課題に対処するために、何らかの革新を必要としている。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】量子粒子セル製造処理のフローチャート。
【0005】
図2図1で製造されている量子粒子セルのための製造システムを示す概略図。
【0006】
図3】複数の量子粒子セルの製造時の一段階を示す図。
【0007】
図4図3の量子粒子セルの上の所定位置に上部カバーを接合で保持した後の図3の量子粒子セルがパルスレーザ接合で補強された様子を示す図。
【0008】
図5】パルスレーザを用いてカバーが個々の量子粒子セルへ接合された後の図4の量子粒子セルおよびカバーを示す図。
【0009】
図6】パルスレーザ接合の位置が示されているマルチチャンバ量子粒子セルの図。
【0010】
図7】量子粒子セル構造の側面図および上面図。
【0011】
図8】上部カバーおよび底部カバー上に酸化インジウムスズコーティングを備える図7の粒子セル構造の分解図および上面図。
【0012】
図9】真空内レーザビームステアリングを有する超高真空ステーションを備える量子粒子セル製造システムを示す概略図。
【0013】
図10】超高真空ステーションおよび外部レーザビームステアリングを備える量子粒子セル製造システムを示す概略図。
【0014】
図11】可動レーザシステムを備える量子粒子セル製造システムを示す概略図。
【0015】
図12A】正方形セルのパルスレーザアブレーションを示す図。
図12B】正方形セルのパルスレーザアブレーションを示す図。
【0016】
図13】本発明に従って製造された2つの量子粒子セルの白黒写真の図。
【0017】
図14】ソース材料を入れることを可能にしおよび/またはメンテナンスサイクル時に材料の除去に利用されるポートを有する量子粒子セルの白黒写真の図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、量子粒子セルのパルスレーザ改質を提供する。本明細書において対象となるレーザは、パルスあたりに供給される総熱量がかなり小さくなるように、小面積へ短期間(例えば、1ナノ秒(ns)未満から1フェムト秒(fs)未満まで)にわたって高いピーク強度を供給できる。結果として、熱勾配は、近くの熱に弱い構成要素への損傷を避けるように急激に低下する。レーザの別の利点は、レーザが、量子粒子セルの典型的に透明な壁を通して集束されて、密封されたセルの内面の改質を可能にし、ひいては、コンパクトな量子粒子セル(ミリメートル未満の真空体積を有するセルなど)の製造後期段階および製造後の修理を可能できることである。
【0019】
量子粒子セル製造処理100が、図1に示されている。処理100の所望の最終産物は、図1の下部に示されているように、ルビジウム87(87Rb)などの量子粒子で満たされたしっかりと密封された蒸気セルである。あるいは、セルは、液体または固体の形態の量子粒子を含んでもよく、また、量子粒子は、87Rbの同位体、その他の原子種、および/または、その他の分子実体(例えば、イオン、多原子分子)であってもよい。図1の左上および右上は、まだ取り付けられていない上部カバー104と共に量子粒子セル本体102を示している。粒子セル本体102は、底部カバー(すなわち、ベース106)と、4つの側壁108と、を備える。
【0020】
工程110において、量子粒子または量子粒子源が、本体にロードされ、その後、カバーが、量子粒子セルを密封するために本体に接触接合される。量子粒子は、蒸気形態、液体形態、または、固体形態でロードされうる。いくつかのケースでは、量子粒子またはその可逆化合物が、後のリリースに向けてガラスアンプルまたは炭素ホストの中に保管されうる。接触接合は、促進されなければ、所望の接合強度を達成するために数週間ないし数ヶ月を要しうる。より迅速な接合が、電気的に促進された接触接合または化学的に促進された接触接合(例えば、水酸化物結合)などの方法を用いて達成されうる。接合される表面がガラスおよびシリコンである場合、陽極接合が利用されうる。パルスレーザ接合120が、任意のかかる接合を支援または強化するために適用されうる。レーザパルスが、完全な密封を形成するために、閉じた経路に沿って適用されうる。隣接するレーザ接合は、レーザ接合されたシールにギャップがなくなるように重なりうる。代替実施形態において、接触接合は、省略され、レーザ接合は、密封シールだけのために利用される。
【0021】
量子粒子セル製造システム200が、図2に示されており、コントローラ202、レーザシステム204、および、超高真空(UHV)ステーション206を備える。UHVステーション206は、直方体のガラス筐体208と、ツール、光学機器、電子機器、および、電源210と、を備える。図2に示すように、システム206は、その製造の過程で量子粒子セル124を収容する。レーザシステム204は、ガラス筐体208を通してセル124にアクセスする。UHV環境内で製造することの1つの利点は、製造されたセルで所望のUHVが自動的に達成されることである。別の利点は、製造中にセル124を劣化させうる汚染物質が少ないことである。
【0022】
一実施形態において、セル製造は、筐体208内で完結される。しかしながら、図の実施形態において、接触接合されたセルは、レーザ接合/補強/アニーリングの前にUHV環境から取り出される。カバーは、レーザ接合がセル製造を完了させる時、外圧によってセル本体に向かって引っ張られる。筐体208の外側でレーザ接合を実行することの利点は、透過すべき(潜在的に内側へ湾曲した)ガラス層が1つ減るため、電力損失の低減、ビーム品質、および、精度が得られることである。
【0023】
複数のセルを一度に製造することによって、スケールメリットを達成できる。図3に示すように、セルアレイ302が、アレイ間ギャップ306を規定するように、ベース304上に配置され、ベース304に接触接合されている。それらは、構成要素および/または量子粒子が導入される前に形成されるので、陽極接合が、比較的短時間で強力な接合を達成するために高温(例えば、300℃)で、または、その他の便利/適切な手段によって、形成されうる。各アレイ302は、一対のアレイ壁308と、アレイ壁の間に伸び、セル312およびセル間ギャップ314を規定している側壁310と、を備える。いくつかの実施形態において、周囲リム316が、ベース304に接合されている。結果として得られる構造は、UHV環境(図2に示したものなど)に挿入されうる。実施形態に応じて、構成要素および/または量子粒子は、アセンブリがUHV環境に挿入される前または後に、セルの中に挿入されうる。
【0024】
アセンブリがUHV環境にある間に、ガラスカバー402が、図4に示すように、リム316および/またはアレイ302に接触接合されうる。接合は、促進なしの接触接合、熱的に促進される接触接合、および/または、電気的に促進される接触接合であってよい。しかしながら、セル構成要素もいくは量子粒子または量子粒子源に関連する問題を回避するために、あらゆる加熱が制限される必要がありうる。結果は、密封シールでありうるが、セルを分離するための後のダイシングに耐えるに十分に頑丈でなくてよい。
【0025】
カバーバンドは、カバーされたアセンブリが、レーザステッチングのためのレーザステーションへ移動されることを可能にするのに十分でありうる。いくつかの実施形態において、レーザステッチングは、アセンブリがUHV環境にある間に実行されうる。いくつかのかかる実施形態において、カバーの接触接合は、省略されてもよい。しかしながら、レーザビーム経路にUHV環境の壁がなければ、カバーの底面がセルおよび/またはリムの上面と接触する正確な深さにレーザビームを集束させることが、より容易でありうる。
【0026】
レーザステーションにおいて、カバーは、密封的かつ頑丈にセルをシールするためにレザーステッチされてよく、結果として得られたパルスレーザ接合502が図5に示されている。個々の接合は、連続的なシールを保証するため重なり合っていてもよいし、潜在的な応力破壊/ひずみ破壊を低減して、ギャップが、隣接するレーザ接合によって効果的に適所に強化された接触接合になることを可能にするように離間されていてもよい。重なり合う接合は、順番になされる必要はない。その代わり、隣の接合が形成される前に各パルス接合が冷却することを可能にするために、個々の接合(パルスあたり1つの接合)が順番通りになされなくてよい。図5において、セルは、密封的にシールされているが、ギャップは、側壁でのみ接合され、アレイ壁に沿って接合されていない代替実施形態において、パルス接合は、さらに、すべてアレイ壁に沿って形成される。
【0027】
図6に示すように、マイクロチャネルUHVセル600は、本体602、底部カバー604、上部カバー(図示せず)、および、イオンポンプ608を備える。本体602は、チャンバおよびチャンバ間チャネルを規定するために材料を除去することによって、シリコンまたはガラスなどの材料のモノリシックスラブから形成されたものである。チャンバは、ソースチャンバ610、磁気光学トラップ(MOT)チャンバ612、および、(イオンポンプ606によって塞がれた)イオンポンプチャンバを備える。チャンバ間チャネルは、ソースからMOTへのチャネル614、MOTからポンプへのチャネル616、および、(メンテナンス手順中だけ開くのでゲートがある)ソースからポンプへのチャネル618を含む。
【0028】
カバーは、例えば、接触接合または水酸化物結合を用いて、本体602の隆起領域に接合されうる。本体がシリコンであり、上部カバーがガラスである変形例では、陽極接合を用いることができる。最も強力な接合は、熱的に促進される接触接合または高温(例えば、約300℃)での陽極接合を用いてなされうる。しかしながら、かかる高温は、ソースチャンバ内のソースおよびゲッターならびにMOTチャンバ内の原子チップなど内部構成要素に損傷を与えることがある。また、陽極接合は、酸素を放出し、放出される酸素の量は温度と相関する。酸素は、アルカリ金属源およびゲッター材料を不動態化するので、それらの有用性を低減しうる。
【0029】
かかる損傷を避けるために、接合温度は、レーザ最高温度(例えば、150℃)に制限されうる。より低い温度のさらなる利点は、例えば、より低いヘリウム透過性を有するカバー材料を利用できるように、カバーに対する熱膨張率(CTE)の制約を緩和することである。一方で、より低温の接合は、より弱くなり、非意図的な剥離を起こしやすくなりうる。比較的弱い陽極接合は、レーザパルス接合接合620で強化または完成されうる。あるいは、レーザパルス接合は、接触接合または陽極接合の代わりに密封接合を形成する必要に応じて、重複され、または、少なくとも間隔を密にされてよい。
【0030】
図7に示すように、量子粒子セル700は、側壁構造706を挟んでいる上部カバー702および底部カバー704を備える。上部カバー702および底部カバー704は、側壁構造706の外周を越えて広がっていることに注意されたい。これは、電気フィードスルーのための外部コンタクトの余地を残す。上部カバー702および底部カバー704は、真空対向面720および722上に、反射防止コーティング712および714ならびに酸化インジウムスズ(ITO)コーティング716および718を有する。
【0031】
ITOは、パルスレーザが抵抗領域(例えば、100Ω-cmの抵抗領域)を書き込むことができる透明な導電コーティングである。例えば、パルスレーザシステム204が、図8に示すように、ベース704上のITOコーティング718へ抵抗ストリップ802を書き込むために用いられてよい。結果として、ITOコーティング718は、4つの導電性の四半部分に分割される。各四半部分は、セル700の内部のフィールドプレートと、フィールドプレート上の電位が外部電位源によって制御されることを可能にするようにフィールドプレートへ電気接続されたコンタクト806と、を備える。(本明細書で用いる用語において、コンタクト806は、それらが載っている表面の一部が真空ではなく雰囲気に面していても、真空対向面上にあるとする)。上部カバー702のITOコーティング716の対応するパターニングが、4つのさらなるフィールドプレートおよびコンタクトをもたらす。合計で、8つのフィールドプレートおよび対応するコンタクトが、2021年6月6日出願のMark Saffman、Thomas William Noel、および、Steven Michael Hughesによる米国特許出願第17/340,039号に教示されているように、量子粒子セル700内の三次元電場制御を可能にする。
【0032】
抵抗ストリップを用いて達成可能な電場勾配は、抵抗ストリップの抵抗率によって制限される。単純にITO材料を変換するのではなくITO材料を除去することによって、より急な勾配が達成されることもある。しかしながら、そうすることで、コーティングの厚さが変わり、ITO材料が側壁構造の下または上で広がっている密封シールが損なわれる。絶縁材料のパターニングされた蒸着物が、ITOの除去によって失われた厚さを戻すために利用可能である。しかしながら、この蒸着は、セルアセンブリが完成する前に実行される必要があり、非実際的に薄い必要がありうる。
【0033】
ITOのパルスレーザ変換の主な利点は、セルアセンブリが完了した後に実行できることである。これは、ITOコートされたブランクが準備されてインベントリに格納されるスプリット製造モデルを可能にする。その結果、ブランクは、(顧客)要求に応じてパルスレーザによって書き込まれた導電材料および抵抗材料のカスタムパターンを有しうる。パターニングが、一度に1つの焦点に実行され、回折的に、ホログラフ的に、干渉的に、または、超高速パルスを用いるその他の手段によって、パターンをラスタしうる。導電率の変化は、アニーリング、拡散、酸化、ガス反応、または、アブレーションの結果でありうる。
【0034】
実施形態は、真空チャンバまたはセルの製造および修理のためにピコ秒および/またはフェムト秒レーザを利用し、したがって、冷却原子および量子真空システムを可能にする。実施形態は、同様の材料および/または異なる材料(異なる熱膨張率(CTE)を有する材料など)のパルスレーザ真空内接合を提供する。したがって、パルスレーザ接合は、例えば、より低いヘリウム透過性を有する材料を利用できるように、より幅広い材料の利用を可能にする。(ヘリウム透過性は、特にアクティブポンプが望ましくない場合に量子粒子セルがよりコンパクトになるのに伴って体積に対する表面積の比が増大するにつれて高まる懸念である)。パルスレーザの利用は、異なるCTEを有する材料の接合が、熱サイクリングによる不具合を避けるために低温でなされることを可能にする。すべてのかかる真空内接合は、水または熱またはその他の接合処理もしくはそれらの副生成物への暴露が構成要素を破壊するCTEに起因する材料の破損を防ぐために真空処理後に実行されうるが、ガラスまたはシーリング材料の局所的な加熱が、敏感な内部の構成要素の保護を可能にする。真空内パルスレーザ接合は、低温陽極接合と共に、もしくは、陽極接合から生じた酸素への暴露がセルまたはその内容物への有害な反応を引き起こしうる(例えば、ガラスに対するシリコンの)陽極接合の代わりに、利用可能である。
【0035】
パルスレーザ接合は、不完全または失敗した部分接合になりうる他のタイプの接合(陽極接合、接触接合、など)を完成または強化するために利用されうる。パルスレーザ接合は、失敗した領域の上に接合を引っ張ることにより、または、部分的にでも、接合修復の前または間に捕捉された障害物を部分的にマシニング/気化/溶発/浸食/除去することにより、部分接合の周囲を広げ完成させる助けとして利用されうる。
【0036】
パルスレーザは、破損の修復にも利用されうる。原子チップが、特に材料の遷移部(例えば、ガラス-シリコンなど)の近くで、破損およびその他の非密封の異常を起こしうる。パルスレーザ接合は、かかる不良部分を再湿潤、融合、接合、および、シールするために利用されうる。接合されたセル(例えば、ガラスセル)は、使用後または未使用での保管後に、接合などに起因する残留応力から破損を起こしうる。かかる破損は、破損が不完全な接合であるかのように、局所的な接合でシールされることが可能であり、レーザ接合は、ガラス充填材の有無にかかわらず、ほぼ共形の破損の上にシールを広げるために利用される。実質的に、これは、修復サービスまたはリサイクル努力でありうる。レーザ接合は、部分的に接合しなかったおよび/または破損した接合セルに利用されてもよい。破損部位は、修復され、接合が仕上げられてよく、あるいは、破損箇所は、接合(例えば、陽極接合)の変形および完成を可能にするために接合中に加熱されてもよい。シリコンのような非光透過性の材料については、その材料が十分に透過性を有する波長(例えば、シリコンに対してはミクロン(μm)の波長)の超高速レーザが、接合または破損修復に利用されうる。
【0037】
パルスレーザは、例えば微小電気機械システム(MEMS)の構成要素を分離または固定するため、例えば、自由に動くよう意図されたMEMSのような構造を解放するために利用されうる。かかる構造は、アブレーションまたは誘導破砕/切断によって、固定接続、スプルー、支持骨格などから解放されうる。拘束構造は、意図的であってよく、レーザアブレーションは、最終的な解放またはリフトオフ手順と類似している。あるいは、接触点は、偶発的であった場合があり、その場合、UHV用に清浄化された部品が自然に固着し、スティクションを克服するためにレーザリリースが用いられる。パルスレーザは、表面のフィーチャまたは活性化を部分的にアブレート/浸食または変化させてスティクションの可能性を低減させることによって、スティクションを起こしやすい場合がある表面を前処理するために利用されうる。あるいは、パルスレーザは、対向する面に無料の摩擦フィーチャを作ることによって摩擦を増大させるために利用されてもよい。また、電力およびスポットサイズを調整することで、材料を局所的に溶かし、それらの表面の酸化物またはメッキを利用して、それらを適所に固定することによって、接合または融合を誘導することもできる。
【0038】
パルスレーザは、アレイ状の積層構造(蒸気セルなど)において自動シンギュレーションを開始するために利用されうる。パルスレーザは、特に、単一の大きい材料基板またはアセンブリから製造されたが、最終的には個々の異なる構成要素になるよう意図されている蒸気セルのアレイに対して、自動シンギュレーションを起こさせるために、破損しやすい可能性がある材料(意図的に応力を加えられたシリコン-ガラス接合ペアなど)において破断を開始させるために用いられてもよい。
【0039】
パルスレーザは、修理または救出のためにセルの穴をステッチ切断または分割するために用いられてもよく、セル内の応力を利用してガラス/シリコンなどに切断された穴を「ポップアウト(出現)させ」、不純物の切断流体またはデブリがセルを破壊することなしにポートを切断することを可能にする。切断動作中、形状は、解放されたプラグの自己分離を促すように選択され、アブレートされて真空チャンバの内部を汚染する材料が最小限になる。洗浄後動作および内部補修動作の後、表面は、ポート(円錐/テーパ状のポート)を覆って共形なキャップが接合されるのに十分に平坦なままにされる。接合は、接触接合、陽極接合、あるいは、レーザ接合であってよい。
【0040】
シンギュレーション切断/分割は、円形のはめ合いシリコンジョイントの外周にぴったり沿って円錐部分を切断することなどによって、応力が切断プラグのシンギュレーション/単体分離処理に役立つように、特にガラス上に陽極接合された部品からの残留応力を利用するよう選択されうる。プラグの単体分離を促すために、プレストレッサ材料がプラグに接合されてよい。かかる材料は、ネイティブな材料とは大幅に異なる既知のCTEを有する接触接合、陽極接合、または、レーザ接合されたディスク形状またはその他の形状のシリコンまたはその他の材料くらい単純でありうる。ストレッサプレートの接合後の真空壁材料のシンギュレーション切断後、熱接触、放射線吸収、音響エネルギ、抵抗、エアジェット、クーラント暴露など、直接的な加熱または冷却を加えることで、CTE応力が増大されうる。
【0041】
パルスレーザは、プレタッキング接合に利用されうる。例えば、UHVなしに内部を温度測定できない場合に、陽極接合部品が、プレタッキングされうる。次いで、接合は、真空処理下の間に、陽極接合で再形成されうる。弱い密封シールを形成するために、繊細な接合部品が、内部の継ぎ目にパルスレーザを用いてプレタッキングされうる。次いで、弱いシールは、よりロバストでありまたはレーザ接合に勝る他の利点を提供しうるケイ酸塩溶液、水酸化物溶液、ゾルゲル、または、混和性/流動性の接合剤をキャピラリ塗布することで補強されうる。
【0042】
陽極接合または接触接合の時、その接合が、擦り傷、塵、または、欠陥により不完全であった場合、不完全な領域の上へ完成した接合領域を引っ張ることでセルをシールために、レーザ接合が利用可能である。小さな擦り傷または欠陥が、潜在的な見掛けのリーク(狭い捕捉されたまたはほぼ捕捉された貯留への極端に伝導性の低い経路)を引き起こした時、その経路を遮断してポケット/擦り傷をシールするために、レーザ接合が利用されうる。あるいは、パルスレーザは、見掛けのリークの可能性を排除するために、閉じた接合をポケット/擦り傷の上へ引っ張るために利用されうる。パルスレーザは、制御された拡散「メンブレン」として小さい継ぎ目を通る透過を利用するために、制御された非常に狭い接合幅にわたってレーザ誘導接合を形成することによって、制御されたヘリウムまたはその他のリークを生み出すために利用されうる。
【0043】
パルスレーザは、標的アニーリングに利用されうる。例えば、アニーリングは、将来の欠陥を防ぐ目的で、応力を標準化もしくは均一化または緩和するために、偏光器またはその他の応力検出手段によって発見された高応力備品を局所的にスティッチングすることを含みうる。応力低減は、集束パルスレーザの選択的な適用によって実行されてもよいし、制御された方法で局所的な熱効果を高めるようにパルスを部分的にデフォーカスまたはデコヒーレント化することによって達成されてもよい。より低い有効電力で同じ領域にパルスを繰り返すことが、局所的なアニーリングに役立ちうる。あるいは、高応力領域付近のパルス、特に、繰り返しパルスが、密封シールを損なうことなしに応力を緩和する目的で、制御された終結する破損(ドーム、泡、または、誘導された破損、など)を生成するために利用されうる。
【0044】
パルスレーザは、破損が予測される内部のコーナーにある機械加工部品の表面を局所的に「スティッチアニーリング」するために利用されうる。応力勾配を標準化するのに役立つように、内部ではなく高応力領域の周辺に応力を引き起こすことが有利でありうる。パルス(例えば、高応力領域の中、近く、または、反対側の低出力または拡散/デフォーカスパルス)が、応力を釣り合わせて、破損の可能性を低減させる。パルス(例えば、低出力または拡散/デフォーカスパルス)は、連続波(CW)またはナノ秒~ミリ秒のレーザ/エネルギ源で局所的に、もしくは、接合特性および応力特性を改善するためにホットプレートまたはオーブンで全体的に、材料を加熱しつつ材料に対して利用されうる。レーザでの局所的な加熱は、接触を改善するために局所的な膨張を引き起こすことができ、または、接合中にアニーリングのみを提供してもよい。
【0045】
光学機器または構成要素が材料によって保持されている場合、レーザパルスは、共振器または精密ビームステアリング光学マウントなど、精密なアライメントまたはチューニングの目的で、微小な動きの調整を行うように、局所的に加熱、変形、応力印加/解放、アブレートなどを行うために利用されうる。共振構造に対して、パルスレーザは、微細な空洞チューニングのために応力面を変形、応力印加、アニーリング、または、アブレーションすることによって、屈折率または微小機械アライメントを調整できる。また、パルスレーザは、真空チャンバの壁の一部として導波路構造を書き込み、または、真空チャンバにすでに組み込まれた導波路構造を微調整するために利用されうる。パルスレーザは、補償光学と同様に波面を局所的かつ正確に変形させるために、反射面の直下の光学機器(鏡など)を真空内で局所的に変形させるために利用されうる。パルスレーザは、マイクロスケールの屈折率の変化によって、または、回折構造を誘導することによって、窓またはレンズの波面誤差を局所的に調整するために利用されうる。
【0046】
パルスレーザは、均一なコーティングに穴を機械加工するために利用されうる。パルスレーザは、勾配インデックス構造で吸収し、または、厳密に制御された幾何学的表面構造に対する散乱角を選択的に制御する助けとなるように、部分的な反射、回折、または、散乱からの望ましくない入射光を有する領域または壁の上の勾配インデックス構造を形成することによって、真空セル内の光散乱を制御するために利用されうる。それらは、局所的にコーティングをアブレートしまたはその特性を光学的に変化させることによって、真空チャンバ内への設置前または設置後に反射防止(AR)、(高反射)HR、導電性コーティングを意図的に劣化させることにより、変更されたARまたはHR効果の空間アレイを効果的に作り出すために利用されうる。これは、回折効果を最小化する目的で、光の散乱を増大させ、微調整された光学システムにおける反射率または透過率を調整し、もしくは、コーティングの縁部またはコーティング内のひびなどにおける光学遷移の急峻性を調整するためになされてよい。
【0047】
パルスレーザは、損傷の影響を最小化する目的で、特にダメージを受けたARコーティングの部位において勾配インデックス構造を介して有効なAR面を意図的に構築するために利用されうる。構造は、真空セルの光学領域の幾何学的条件に起因して、対象となる特定の方向に散乱を幾何学的に制御するために調整されうる。パルスレーザは、封入/バリア/不動態化されたリザーバからの制御されたヘリウムリークもしくはアルカリまたはアルカリ土類の分配もしくはその他の金属の透過などのために、バリアを通した透過を増大させるように、不動態化コーティングまたはバリアコーティングの透過性を調整するために利用されうる。かかるバリアされたリザーバは、高温真空処理を可能にするよう、もしくは、組み立ておよび製造中の扱いやすさを向上させるよう、最初に意図されたものでありうるが、バリアは、後に、その他の点で真空チャンバの動作を妨げる。
【0048】
パルスレーザは、空気中または大気中での組み立て時に存在するが、シーリング後、真空処理中にブラスト/割り開かれる酸化物または窒化物、もしくは、スパッタリング、気化などされた金属またはその他のバリアコーティングで意図的または偶発的に被覆されたものであってよいストロンチウムまたはその他のアルカリ上の保護酸化物をブラストできる。パルスレーザは、有効ポンピング速度または能力を、かかる属性が表面積に依存する場合に、材料の表面積を劇的に増大させることで、増大させるように、静電的または機械的に捕捉される粒子を意図的にアブレートおよび生成するために利用されうる。
【0049】
パルスレーザは、チャネルセルまたはその他の真空セルに格子を書き込むために利用されうる。パルスレーザは、組み立ての前、間、または、後に真空チャンバの内壁上にカスタム格子を書き込むために利用されうる。格子は、シリコン、金属、または、透明または不透明なその他の構造に書き込まれうる。パルスレーザは、コーティングまたは材料のタイプに起因して通常の湿式または高温の手段によって接合できないカスタム格子を有しうるガラスを接合するのに役立つよう利用されうる。例えば、パルスレーザは、エッチングされたトポグラフィ上への接合を可能にしうる。密封ギャップが、充填材で充填され、パルスレーザを用いて融合されてよい。
【0050】
パルスレーザは、真空チャンバ内でまたは真空チャンバ壁の一部として利用される二次元または三次元的にガラス上に蒸着されまたはガラス積層構造内に積層された薄膜に電気構造を書き込むことができる。導電膜は、真空または雰囲気に暴露されてよく、もしくは、絶縁体またはその他のコーティング(窒化物または酸化物など)で被覆されてもよい。構造は、調整または問題解決のために組み立ておよび真空処理の後に改質されてもよい。例えば、絶縁体のギャップへのアルカリの透過、デンドライト成長、金のマイグレーション、ダスト堆積、または、その他のタイプの意図しない導電短絡に起因して、短絡を生じうる原子チップまたは真空壁または酸化物コーティング下の積層の上のメッキなど、事前パターニングされた導体のトレースが、表面または標的深さで、レーザパルスによって焼き切られ/アブレートされ/または他の方法で微細加工されることで除去されうる。パルスは、小さい金バンプを局所的にリフローしまたは特に強い電位の存在下で選択的イオン移動を促す助けなど、短絡緩和のための標的熱効果の助けとして、加熱を高めるように延長されデフォーカスされうる。
【0051】
パルスレーザは、イオントラップまたは原子チップなどの上の敏感な位置にあるダスト粒子のアブレーションの正確な運動量インパルスを標的として「破壊」し、または、それを通して移動しうる。パルスレーザは、ガラス、シリコン、金属、または、その他の材料における黒い構造のエッチングまたは直接アブレーションのための酸化物を標的とすることで黒いシリコン表面形成を行うために利用されうる。パルスレーザは、近赤外波長(例えば、1064ナノメートル(nm))および遠赤外波長(例えば、1550nm)で薄いシリコンを通して作用しうる。
【0052】
パルスレーザは、継ぎ目を修復するために、水酸化物またはシリコン/シリカ/ケイ酸塩溶液と併用されえ、ここで、レーザは、その材料をもう少し均質にするために用いられる。マイクロリークが、穴に砂利を埋めるように、ケイ酸塩、シリカナノ粒子、ゾルゲル、もしくは、その他のガラスまたはシリコンナノ粒子のようなガラス前駆体で充填され、その後、レーザがその他の手段によってシールできない可能性のある任意の隙間を充填するために局所的に「融解」されうる。
【0053】
図9に示すように、量子粒子セル製造システム900は、量子粒子セル906を製造するために、UHVステーション902およびレーザシステム904を備える。レーザシステム904は、UHVステーション902内に配置されて、レーザシステム904によって生成されたビームをステアリングするために用いられる一対の制御可能な鏡908を備える。UHVステーション902は、上部カバー910を備えており、上部カバー910は、雰囲気圧が高くUHVが低いことによる圧力差に起因して弓なりに示されている。UHVステーション902は、さらに、矢印912で示すように、UHVステーション902内で量子粒子セル906を三次元的に移動させるための手段を備える。図10に示す代替実施形態において、量子粒子製造システム1000は、UHVステーション1002と、UHVステーション1002の外部にある鏡を備えるレーザシステム1004と、を備える。
【0054】
図11に示すように、量子粒子セル製造システム1100は、セル(セル1106など)を製造するために、UHVステーション1102およびレーザシステム1104を備える。詳細図に示すように、パルスレーザシステム1104は、外部対向面1100および真空対向面1112にパターンをエッチングするために用いられる。レーザビームからの熱は、100μm深さの領域における材料を変換しつつも、近接部分に影響を与えずにおくことができる。図12に示すように、システム110は、アブレーションの残留物を取り除くために用いられる流動蒸気を導くために利用されうるインサート1202と共に利用されうる。
【0055】
図13は、一組の完成した量子粒子セル1302および1304を示す。図14は、例えばベークアウト手順の後に、真空を再確立するためのメンテナンスサイクルに利用されうるステンレス鋼ポート1404が取り付けられた量子粒子セル1402を示す。
【0056】
本明細書において、「量子粒子」は、アルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子の核を少なくとも含む分子実体である。「分子実体」は、個別に区別可能な実体として識別可能な、任意の構造上または同位体的に異なる原子、分子、イオン、イオン対、ラジカル、ラジカルイオン、錯体、配座異性体など、である。本明細書において、「原子」は、中性原子および単一原子イオンを含む。量子粒子種は、同じ正の数の陽子および同じ正の数の中性子を備えるすべての量子粒子を含む。例えば、ルビジウム87、ルビジウムのその他の同位体、その他のアルカリ金属、ストロンチウムおよびその他のアルカリ土類金属、ならびに、イットリウムおよびその他の希土類金属を含む分子実体が、量子粒子種である。
【0057】
「量子粒子セル」は、量子粒子を含む真空セルであり、量子粒子が第1量子状態、第2量子状態、および、それらの量子状態の重ね合わせを取りうるように利用されることを意図されている。量子粒子セルは、内部の真空を雰囲気から分離する1または複数の真空境界壁を備える。真空境界壁は、典型的には、真空対向面を備え、その面には、実際に真空に面している部分と、面していない部分とが存在しうる(例えば、他の壁に接合されているため)。
【0058】
本明細書の対象となるレーザは、1フェムト秒、10フェムト秒、1ピコ秒、10ピコ秒、および、1ナノ秒未満の持続時間のレーザパルスを生成できる。紫外波長、可視波長、および、赤外波長を含む電磁放射(EMR)波長が提供される。
【0059】
本明細書において、「従来技術」と表示されている技術があれば、従来技術として認められ、「従来技術」と表示されていない技術は、従来技術として認められない。上述の実施形態、その変更例、および、その変形例は、本発明によって提供され、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって規定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2023-09-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子粒子セルの製造処理であって、
第1真空境界壁を備える真空セル構造を組み立て、前記真空セル構造は、10-9Torr未満の圧力を有する内部を規定し、前記真空セル構造は、同じ正の数の陽子および同じ正の数の中性子を有する複数の量子粒子を含み、
前記真空セル構造が、前記複数の量子粒子を含む時に、前記真空セル構造の真空対向面を改質するために、前記第1真空境界壁を通して前記真空セル構造の外側から1ナノ秒未満の持続時間のレーザパルスを方向付けること、
を備える、処理。
【請求項2】
請求項1に記載の量子粒子セルの製造処理であって、前記量子粒子は、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、または、希土類金属原子金属原子を含む、処理。
【請求項3】
請求項1に記載の量子粒子セルの製造処理であって、前記レーザパルスは、前記第1真空境界壁と第2真空境界壁との間の接合を形成し、または、接合を強化する、処理。
【請求項4】
請求項3に記載の量子粒子セルの製造処理であって、前記組み立ては、レーザパルスを利用することなしに、前記第1真空境界壁を前記第2真空境界壁に接触接合または陽極接合することを含む、処理。
【請求項5】
請求項4に記載の量子粒子セルの製造処理であって、前記接触接合または陽極接合は、200℃未満の温度でのみ実行される、処理。
【請求項6】
請求項1に記載の量子粒子セルの製造処理であって、前記レーザパルスは、前記真空セル構造の前記真空対向面の一部を化学的に改質する、処理。
【請求項7】
請求項1に記載の量子粒子セルの製造処理であって、前記レーザパルスは、前記真空セル構造の前記真空対向面の一部の導電率を変える、処理。
【請求項8】
請求項1に記載の量子粒子セルの製造処理であって、前記レーザパルスは、前記真空セル構造の前記真空対向面から材料を除去する、処理。
【請求項9】
請求項1に記載の量子粒子セルの製造処理であって、前記レーザパルスは、10ピコ秒未満の持続時間を有する、処理。
【請求項10】
請求項1に記載の量子粒子セルの製造処理であって、前記レーザパルスは、10フェムト秒未満の持続時間を有する、処理。
【請求項11】
請求項1に記載の量子粒子セルの製造処理であって、前記量子粒子セル内の真空の体積は、1ミリリットル未満である、処理。
【請求項12】
超高真空(UHV)量子粒子セルであって、
第1真空境界壁と、第2真空境界壁と、前記第1および第2真空境界壁を物理的に接続しているパルスレーザ接合とを備える量子粒子セル構造であって、10-9Torr未満の内部圧力を雰囲気から分離する量子粒子セル構造と、
同じ正の数の陽子および同じ正の数の中性子を有する量子粒子であって、前記量子粒子セル構造内に含まれている量子粒子と、
を備える、UHV量子粒子セル。
【請求項13】
請求項12に記載のUHV量子粒子セルであって、さらに、第3、第4、および、第5真空境界壁を備え、前記パルスレーザ接合は、前記第1真空境界壁を、前記第2、第3、第4、および、第5真空境界壁へ物理的に接続している、UHV量子粒子セル。
【請求項14】
請求項13に記載のUHV量子粒子セルであって、前記第2および第4真空境界壁は各々、前記第3および第5真空境界壁へ接触接合されている、UHV量子粒子セル。
【請求項15】
請求項12に記載のUHV量子粒子セルであって、さらに、前記第1および第2真空境界壁の間の接触接合または陽極接合を備える、UHV量子粒子セル。
【請求項16】
請求項12に記載のUHV量子粒子セルであって、前記量子粒子セル内の真空の体積は、1ミリリットル未満である、UHV量子粒子セル。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
量子粒子セル製造システム200が、図2に示されており、コントローラ202、レーザシステム204、および、超高真空(UHV)ステーション206を備える。UHVステーション206は、直方体のガラス筐体208と、ツール、光学機器、電子機器、および、電源210と、を備える。図2に示すように、UHVステーション206は、その製造の過程で量子粒子セル124を収容する。レーザシステム204は、ガラス筐体208を通してセル124にアクセスする。UHV環境内で製造することの1つの利点は、製造されたセルで所望のUHVが自動的に達成されることである。別の利点は、製造中にセル124を劣化させうる汚染物質が少ないことである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
パルスレーザは、例えば微小電気機械システム(MEMS)の構成要素を分離または固定するため、例えば、自由に動くよう意図されたMEMSのような構造を解放するために利用されうる。かかる構造は、アブレーションまたは誘導破砕/切断によって、固定接続、スプルー、支持骨格などから解放されうる。拘束構造は、意図的であってよく、レーザアブレーションは、最終的な解放またはリフトオフ手順と類似している。あるいは、接触点は、偶発的であった場合があり、その場合、UHV用に清浄化された部品が自然に固着し、スティクションを克服するためにレーザリリースが用いられる。パルスレーザは、表面のフィーチャまたは活性化を部分的にアブレート/浸食または変化させてスティクションの可能性を低減させることによって、スティクションを起こしやすい場合がある表面を前処理するために利用されうる。あるいは、パルスレーザは、対向する面に相補的な摩擦フィーチャを作ることによって摩擦を増大させるために利用されてもよい。また、電力およびスポットサイズを調整することで、材料を局所的に溶かし、それらの表面の酸化物またはメッキを利用して、それらを適所に固定することによって、接合または融合を誘導することもできる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0054
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0054】
図11に示すように、量子粒子セル製造システム1100は、セル(セル1106など)を製造するために、UHVステーション1102およびレーザシステム1104を備える。詳細図に示すように、パルスレーザシステム1104は、外部対向面1100および真空対向面1112にパターンをエッチングするために用いられる。レーザビームからの熱は、100μm深さの領域における材料を変換しつつも、近接部分に影響を与えずにおくことができる。図12に示すように、システム1100は、アブレーションの残留物を取り除くために用いられる流動蒸気を導くために利用されうるインサート1202と共に利用されうる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0059
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0059】
本明細書において、「従来技術」と表示されている技術があれば、従来技術として認められ、「従来技術」と表示されていない技術は、従来技術として認められない。上述の実施形態、その変更例、および、その変形例は、本発明によって提供され、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって規定される。
[適用例1]量子粒子セルの改質処理であって、
第1真空境界壁を備える真空セル構造を組み立て、前記真空セル構造は、10 -9 Torr未満の圧力を有する内部を規定し、前記真空セル構造は、同じ正の数の陽子および同じ正の数の中性子を有する複数の量子粒子を含み、
前記真空セルが、前記複数の量子粒子を含む時に、前記真空セルの真空対向面を改質するために、前記第1真空境界壁を通して前記真空セルの外側から1ナノ秒未満の持続時間のレーザパルスを方向付けること、
を備える、処理。
[適用例2]適用例1に記載の量子粒子セルの製造処理であって、前記量子粒子は、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、または、希土類金属原子金属原子を含む、処理。
[適用例3]適用例1に記載の量子粒子セルの製造処理であって、前記レーザパルスは、前記第1真空境界壁と第2真空境界壁との間の接合を形成し、または、接合を強化する、処理。
[適用例4]適用例3に記載の量子粒子セルの製造処理であって、前記組み立ては、レーザパルスを利用することなしに、前記第1真空境界壁を前記第2真空境界壁に接触接合または陽極接合することを含む、処理。
[適用例5]適用例4に記載の量子粒子セルの製造処理であって、前記接触接合または陽極接合は、200℃未満の温度でのみ実行される、処理。
[適用例6]適用例1に記載の量子粒子セルの製造処理であって、前記レーザパルスは、前記真空セルの前記真空対向面の一部を化学的に改質する、処理。
[適用例7]適用例1に記載の量子粒子セルの製造処理であって、前記レーザパルスは、前記真空セルの前記真空対向面の一部の導電率を変える、処理。
[適用例8]適用例1に記載の量子粒子セルの製造処理であって、前記レーザパルスは、前記真空セルの前記真空対向面から材料を除去する、処理。
[適用例9]適用例1に記載の量子粒子セルの製造処理であって、前記レーザパルスは、10ピコ秒未満の持続時間を有する、処理。
[適用例10]適用例1に記載の量子粒子セルの製造処理であって、前記レーザパルスは、10フェムト秒未満の持続時間を有する、処理。
[適用例11]適用例1に記載の量子粒子セルの製造処理であって、前記量子粒子セル内の前記真空の体積は、1ミリリットル未満である、処理。
[適用例12]超高真空(UHV)量子粒子セルであって、
第1真空境界壁と、第2真空境界壁と、前記第1および第2真空境界壁を物理的に接続しているパルスレーザ接合とを備える量子粒子セル構造であって、10 -9 Torr未満の内部圧力を雰囲気から分離する量子粒子セル構造と、
同じ正の数の陽子および同じ正の数の中性子を有する量子粒子であって、前記量子粒子構造内に含まれている量子粒子と、
を備える、UHV量子粒子セル。
[適用例13]適用例12に記載のUHV量子粒子セルであって、さらに、第3、第4、および、第5真空境界壁を備え、前記パルスレーザ接合は、前記第1真空境界壁を、前記第2、第3、第4、および、第5真空境界壁へ物理的に接続している、UHV量子粒子セル。
[適用例14]適用例13に記載のUHV量子粒子セルであって、前記第2および第4真空境界壁は各々、前記第3および第5真空境界壁へ接触接合されている、UHV量子粒子セル。
[適用例15]適用例12に記載のUHV量子粒子セルであって、さらに、前記第1および第2真空境界壁の間の接触接合または陽極接合を備える、UHV量子粒子セル。
[適用例16]適用例12に記載のUHV量子粒子セルであって、前記量子粒子セル内の前記真空の体積は、1ミリリットル未満である、UHV量子粒子セル。
【国際調査報告】