(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】植込み型パルス発生器のリード位置決め
(51)【国際特許分類】
A61N 1/368 20060101AFI20240326BHJP
A61N 1/372 20060101ALI20240326BHJP
A61B 5/363 20210101ALI20240326BHJP
A61B 5/33 20210101ALI20240326BHJP
A61B 5/352 20210101ALI20240326BHJP
【FI】
A61N1/368
A61N1/372
A61B5/363
A61B5/33 110
A61B5/352 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555655
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(85)【翻訳文提出日】2023-09-11
(86)【国際出願番号】 IB2022052878
(87)【国際公開番号】W WO2022208339
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520490624
【氏名又は名称】インパルス ダイナミクス エヌヴイ
【氏名又は名称原語表記】IMPULSE DYNAMICS NV
【住所又は居所原語表記】Schottegatweg Oost 10, Unit A1K, Willemstad, Curacao, Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プラッチ デビッド
(72)【発明者】
【氏名】ベン デイビッド タミール
【テーマコード(参考)】
4C053
4C127
【Fターム(参考)】
4C053JJ06
4C053JJ23
4C053KK02
4C053KK07
4C127AA02
4C127BB05
4C127GG02
4C127GG05
4C127GG13
4C127GG16
4C127GG18
4C127LL08
(57)【要約】
心臓信号処理方法は、心臓内に配置された少なくとも2つの電極から測定値を受信することと、測定値を使用して、少なくとも2つの電極の互いに対する相対的位置決めを決定することと、どの心周期が心収縮性変調刺激を受けるべきかを決定するために、心臓活動の測定のための少なくとも2つの電極の相対的位置決めの適合性を評価することとを含む。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心刺激のためのシステムであって、
植込み型コントローラを備え、前記コントローラは、
心臓内に配置された少なくとも2つの電極から測定値を受信することと、
前記測定値から、前記少なくとも2つの電極のうちの第1の電極と、前記少なくとも2つの電極のうちの第2の電極とを指定することと、
心室事象が前記第1の電極で検出され、次に適切な時間遅延後に前記第2の電極で検出された場合に、前記心臓に心収縮性変調刺激を適用することと、
を含む方法を行うように構成される、前記システム。
【請求項2】
前記指定することが、複数の心周期について前記測定値を監視することと、前記少なくとも2つの電極のうち、前記心周期の過半数で、心室事象を最初に感知する電極を前記第1の電極に指定することとを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記測定値が、右心室中隔に配置された前記少なくとも2つの電極からの心臓電気測定信号を含む、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記指定することが、前記測定値から、前記少なくとも2つの電極における心筋活動電位波面の到着のタイミングを特定することを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも2つの電極が、隔壁に配置された第1及び第2の電極と、少なくとも1つの追加の電極とを含み、前記測定値が、前記追加の電極に対する、前記第1の電極及び前記第2の電極それぞれでの電位の測定値を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記遅延が少なくとも1ms、最大で4msである、請求項1~5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記遅延が所望の範囲内にない場合に警告を生成するように構成された、請求項1~6のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
前記2つの電極において、及び/または前記2つの電極の間でインピーダンス測定を実行するように構成される、請求項1~7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記システムが、時間的に重複して、前記電極の両方で前記適用することを実行するように構成される、請求項1~8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記システムが、同じ心周期で、少なくとも一部で時間的に重複せずに、前記電極の両方で前記適用することを実行するように構成される、請求項1~8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
監視方法であって、
それぞれが心臓上の異なる点に配置された2つの電極への心筋活動電位波面の到達間の時間差を経時的に監視することを含み、
前記監視に基づいて、
どの心周期が心収縮性変調刺激を受けるべきかを決定するために、前記時間差に基づいて、前記2つの電極の相対的位置を指定することの1つまたは複数を含む、前記監視方法。
【請求項12】
前記2つの電極が、それぞれ心臓中隔上の異なる点に配置される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記監視することが、複数の心周期に対して、
前記2つの電極から心臓電気測定信号を受信することと、
前記測定信号から前記2つの電極のそれぞれに心筋活動電位波面が到達するタイミングを特定することと、
複数の心周期について、前記2つの電極における前記心筋活動電位波面の到達間の時間差を決定することと、
前記複数の心周期について決定された時間差から、前記時間差の統計的表現を生成することと、
を含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記決定することが、前記時間差の符号を決定することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記統計的表現が、前記2つの電極のうちのどちらの電極が前記心筋活動電位波面を最初に感知するかという傾向を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記指定することが、過半数の波面が最初に感知される電極を房室結節に近いものとして指定することを含む、請求項11~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記診断することが、前記統計的表現を閾値と比較することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記複数の心周期について心拍数測定値を受信することを含み、
前記生成することが、心拍数に関する前記時間差の統計的表現を生成することを含む、請求項13~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記統計的表現が、心拍数の増加に伴う時間差の変動の増加を示す場合、誘発性虚血の可能性を診断する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記心拍数の増加が、閾値数を超える心拍数についての前記時間差の統計的表現を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記統計的表現が、1つまたは複数の心拍数の時間差の変動の増加を示す場合、心不整脈の可能性を診断する、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記時間差の前記統計的表現が、ある期間における前記時間差の中央値である、請求項13~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
1分未満の期間にわたって前記中央値が閾値を超えて逸脱する場合、リードの外れが特定される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
心臓内に延びるように事前に配置された電極の心臓信号処理方法であって、
心臓内に配置された少なくとも2つの電極から測定値を受信することと、
前記測定値を使用して、前記少なくとも2つの電極の互いに対する相対的位置決めを決定することと、
どの心周期が心収縮性変調刺激を受けるべきかを決定するために、心臓活動の測定に対する前記少なくとも2つの電極の前記相対的位置決めの適合性を評価することと、を含む、前記方法。
【請求項25】
前記評価することが、前記電極の1つまたは複数を再配置すべきか、または定位置に固定すべきかを示す信号を生成することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記測定値が、右心室中隔に配置された前記少なくとも2つの電極からの心臓電気測定信号を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記決定することが、前記測定信号から、心筋活動電位波面の通過のタイミングを特定することを含む、請求項24~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記波面が中隔内心筋活動電位波面である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記少なくとも2つの電極が第1の電極及び第2の電極を含み、
前記決定することが、前記第1の電極における前記波面の検出と前記第2の電極における前記波面の検出との間の遅延を決定することを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記評価することが前記遅延を評価することを含み、前記遅延が少なくとも1msで最大4msである場合、前記遅延は適切な位置決めを示すとみなされる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記評価することが、前記相対的位置決めに関して、心収縮性変調刺激を受けるのに適した心周期の割合を決定することを含む、請求項24~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記評価することが、心収縮性変調刺激を受けるのに適していると決定された異常な心周期の割合を評価することを含む、請求項24~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
心収縮性変調刺激を受けるのに適していると決定された異常な心周期の前記割合が心周期の5%を超える場合、前記信号が、前記電極を再配置すべきであることを示す、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記評価することが、心収縮性変調刺激を受けるのに適していないと決定された正常な心周期の割合を評価することを含む、請求項24~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
心収縮性変調刺激を受けるのに適していると決定されない正常な心周期の前記割合が前記心周期の20%を超える場合、前記信号が、前記電極を再配置すべきであることを示す、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
心収縮性変調を受けるのに適した心周期の割合を前記決定することが、前記測定値に基づく、請求項31~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記少なくとも2つの電極が、隔壁に配置された第1及び第2の電極と、少なくとも1つの追加の電極とを含み、前記測定値が、前記追加の電極に対する、前記第1の電極及び前記第2の電極それぞれでの電位の測定値を含む、請求項24~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記測定値が、複数の心周期に関する、請求項24~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記測定値が、心臓が刺激されている間の測定値を含む、請求項24~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記評価に基づいて、
前記少なくとも2つの電極のうちの1つまたは複数を再配置すること、及び、
前記少なくとも2つの電極のうちの前記1つまたは複数を固定すること、のうちの1つまたは複数を実行することを含む、請求項24~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記受信することが、複数の遅延を決定するために複数回、実行され、
前記評価することが、前記遅延の統計的表現を決定することを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記遅延の前記統計的表現が、前記複数の遅延の中央値である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記評価することが、前記統計的表現を閾値と比較することを含む、請求項41~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記決定することが、前記少なくとも2つの電極間の組織インピーダンスを決定することを含む、請求項24~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記決定することが、電気刺激パルスを注入することを含み、
前記測定値は、前記刺激パルスによって影響を受ける電気信号を含み、
前記決定することは、前記刺激パルスによって影響を受ける前記電気信号から1つまたは複数のパラメータを決定することを含む、請求項24~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記注入することが、前記心臓の心周期の不応期中である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記注入することが、前記少なくとも2つの電極間である、請求項45または46に記載の方法。
【請求項48】
心臓に心収縮性変調刺激を適用するための装置であって、
少なくとも2つの電極と、
回路と、を備え、前記回路は、
前記電極で収集された測定値を使用して、前記電極の相対的位置決めを決定すること、及び
前記位置に基づいて、前記電極に心収縮性変調刺激をいつ適用するべきかを決定すること
のうちの1つまたは複数を行うように構成される、前記装置。
【請求項49】
第1のリードと、
第2のリードと、を備え、
前記少なくとも2つの電極が、
前記第1のリードによってホストされる第1の電極及び第2の電極と、
前記第2のリードによってホストされる第3の電極及び第4の電極と、を含む4つの電極を含む、
請求項48に記載の装置。
【請求項50】
前記第1及び第3の電極が心臓の中隔に取り付けられるように構成される、請求項49に記載の装置。
【請求項51】
心刺激のためのシステムであって、
請求項48に記載の装置と、
どの心周期が心収縮性変調刺激を受けるべきかを決定するために、心臓活動の測定のための前記少なくとも2つの電極の前記相対的位置決めの適合性を評価するように構成された回路と、
前記回路に接続され、前記適合性をユーザに送信するように構成されたユーザインタフェースと、を備える、前記システム。
【請求項52】
心臓信号処理の方法であって、
心臓内に事前に配置された少なくとも2つの電極から測定値を受信することと、
前記測定値を使用して、前記少なくとも2つの電極の前記心臓内での位置を決定することと、
どの心周期が心収縮性変調刺激を受けるべきかを決定するために、心臓活動の測定のための前記少なくとも2つの電極の前記位置決めの適合性を評価することと、を含む、前記方法。
【請求項53】
前記決定することが、前記測定信号から、心筋活動電位波面の通過のタイミングを特定することを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記決定することが、前記少なくとも2つの電極の第1の電極と前記少なくとも2つの電極の第2の電極との間の前記心筋活動電位波面の検出間の遅延を決定することを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記評価することが、前記遅延を評価することを含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
監視方法であって、
それぞれが心臓上の異なる点に配置された2つの電極への心筋活動電位波面の到達間の時間差を経時的に監視することと、
前記監視に基づいて、電極の外れを特定することと、を含む、前記方法。
【請求項57】
心臓信号処理のシステムであって、
心臓内に配置するのに適した少なくとも2つの電極と、
回路と、を備え、前記回路は、
心臓内に配置された前記2つの電極のうちの第1の電極で電気刺激パルスを注入することと、
前記刺激パルスによって影響を受ける電気信号の測定値を前記心臓内に配置された前記2つの電極のうちの第2の電極から受信することと、
前記測定値を使用して、前記第1及び前記第2の電極の相対的位置決めを決定することと、を含む方法を実行するように構成された、前記システム。
【請求項58】
前記回路が、どの心周期が心収縮性変調刺激を受けるべきかを決定するために、心臓活動の測定のための前記第1の電極及び前記第2の電極の前記相対的位置決めの適合性を評価するように構成される、請求項57に記載のシステム。
【請求項59】
前記測定値が測定パルスを含み、
前記決定することが、前記注入されたパルスと前記測定パルスとの間の振幅の変化を決定することを含む、請求項58に記載のシステム。
【請求項60】
前記注入することが、心周期の不応期中である、請求項57~59のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項61】
前記注入することが、心周期の不応期中とは異なる部分中である、請求項57~58のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項62】
前記決定することが、前記パルスを注入することと前記パルスを測定することとの間の遅延を決定することを含む、請求項61に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年3月29日に出願され、「LEAD POSITIONING FOR AN IMPLANTABLE PULSE GENERATOR」の名称を有する米国仮出願番号63/167,192号の、119(e)に基づく優先権の利益を主張し、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、心刺激のための装置に関し、より詳細には、心臓シミュレーションのための装置の電極の位置決めに関するが、これに限定されない。
【背景技術】
【0003】
背景技術としては、国際特許出願公開第WO2020/152619号が挙げられる。この出願の内容は、参照により、その全体が本明細書に記載されるかのように組み込まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
以下は、本発明の実施形態のいくつかの実施例を含む非排他的なリストである。本発明はまた、以下に明示的に列挙されない場合でも、ある実施例のすべての特徴よりも少ない特徴を含む実施形態、及び複数の実施例からの特徴を使用する実施形態も含む。
【0005】
実施例1.心刺激方法であって、
心臓内に配置された少なくとも2つの電極から測定値を受信することと、
前記測定値から、前記少なくとも2つの電極のうちの第1の電極と、前記少なくとも2つの電極のうちの第2の電極とを指定することと、
心室事象が前記第1の電極で検出され、次に適切な時間遅延後に前記第2の電極で検出された場合に、前記心臓に心収縮性変調刺激を適用することと、を含む、前記方法。
【0006】
この方法及び以下の方法は、これらの方法を実行するために(例えば、回路及び/またはソフトウェアを使用して)適切に構成されたコントローラを使用して実行されてもよい。
【0007】
実施例2.前記指定することが、複数の心周期について前記測定値を監視することと、前記少なくとも2つの電極のうち、前記心周期の過半数の心周期で、最初に心室事象を感知する電極を前記第1の電極に指定することと、を含む、実施例1に記載の方法。
【0008】
実施例3.前記測定値が、右心室中隔に配置された前記少なくとも2つの電極からの心臓電気測定信号を含む、実施例1または2にいずれか1つに記載の方法。
【0009】
実施例4.前記指定することが、前記測定値から、前記少なくとも2つの電極における心筋活動電位波面の到着のタイミングを特定することを含む、実施例1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0010】
実施例5.前記少なくとも2つの電極が、隔壁に配置された第1及び第2の電極と、少なくとも1つの追加の電極とを含み、前記測定値が、前記追加の電極に対する、前記第1の電極及び前記第2の電極それぞれでの電位の測定値を含む、実施例1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0011】
実施例6.前記遅延が少なくとも1ms、最大で4msである、実施例1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0012】
上記実施例のいずれかにおいて、方法は、前記遅延が所望の範囲内にない場合に警告を生成することを含み得る。
【0013】
上記実施例のいずれかにおいて、方法は、前記2つの電極において、及び/または前記2つの電極の間でインピーダンス測定を実行することを含み得る。
【0014】
上記実施例のいずれかにおいて、方法は、時間的に重複して、前記電極の両方で前記適用することを実行することを含み得る。
【0015】
上記実施例のいずれかにおいて、方法は、同じ心周期で、少なくとも一部で時間的に重複して、前記電極の両方で前記適用することを実行することを含み得る。
【0016】
実施例7.監視方法であって、
それぞれが心臓上の異なる点に配置された2つの電極への心筋活動電位波面の到達間の時間差を経時的に監視することと、
前記監視に基づいて、
どの心周期が心収縮性変調刺激を受けるべきかを決定するために、前記時間差に基づいて2つの電極の相対的位置を指定すること、及び、
必須ではないが任意選択で、心臓の状態を診断すること、のうちの1つまたは複数を行うことと、を含む、前記方法。
【0017】
実施例8.前記2つの電極が、それぞれ心臓中隔上の異なる点に配置される、実施例7に記載の方法。
【0018】
実施例9.前記監視することが、複数の心周期に対して、
前記2つの電極から心臓電気測定信号を受信することと、
前記測定信号から前記2つの電極のそれぞれに心筋活動電位波面が到達するタイミングを特定することと、
複数の心周期について、前記2つの電極における前記心筋活動電位波面の到達間の時間差を決定することと、
前記複数の心周期について決定された時間差から、前記時間差の統計的表現を生成することと、を含む、実施例7~8のいずれか1つに記載の方法。
【0019】
実施例10.前記決定することが、前記時間差の符号を決定することを含む、実施例7に記載の方法。
【0020】
実施例11.前記統計的表現が、前記2つの電極のうちのどちらの電極が前記心筋活動電位波面を最初に感知するかという傾向を含む、実施例9に記載の方法。
【0021】
実施例12.前記指定することが、過半数の波面が最初に感知される電極を房室結節に近い電極として指定することを含む、実施例7~11のいずれか1つに記載の方法。
【0022】
実施例13.前記診断することが、前記統計的表現を閾値と比較することを含む、実施例9に記載の方法。
【0023】
実施例14.前記複数の心周期について心拍数測定値を受信することを含み、
前記生成することが、心拍数に対する前記時間差の統計的表現を生成することを含む、実施例9~13のいずれか1つに記載の方法。
【0024】
実施例15.前記統計的表現が心拍数の増加と共に時間差の変動の増加を示す場合、前記診断することは、誘発性虚血の可能性を診断することを含む、実施例14に記載の方法。
【0025】
実施例16.前記心拍数の増加が、閾値心拍数を超える心拍数の前記時間差の統計的表現を含む、実施例15に記載の方法。
【0026】
実施例17.前記統計的表現が、1つまたは複数の心拍数の時間差の変動の増加を示す場合、前記診断することは、心不整脈の可能性を診断することを含む、実施例14に記載の方法。
【0027】
実施例18.前記時間差の前記統計的表現が、ある期間における前記時間差の中央値である、実施例9~17のいずれか1つに記載の方法。
【0028】
実施例19.1分未満の期間にわたって前記中央値が閾値を超えて逸脱する場合、リードの外れが特定される、実施例18に記載の方法。
【0029】
実施例20.任意選択で心臓内に延びるように事前に配置された電極の心臓信号処理方法であって、
心臓内に配置された少なくとも2つの電極から測定値を受信することと、
前記測定値を使用して、前記少なくとも2つの電極の互いに対する相対的位置決めを決定することと、
どの心周期が心収縮性変調刺激を受けるべきかを決定するために、心臓活動の測定のための前記少なくとも2つの電極の前記相対的位置決めの適合性を評価することと、を含む、前記方法。
【0030】
実施例21.前記評価することが、前記電極の1つまたは複数を再配置すべきか、または定位置に固定すべきかを示す信号を生成することを含む、実施例20に記載の方法。
【0031】
実施例22.前記測定値が、右心室中隔に配置された前記少なくとも2つの電極からの心臓電気測定信号を含む、実施例20に記載の方法。
【0032】
実施例23.前記決定することが、前記測定信号から、心筋活動電位波面の通過のタイミングを特定することを含む、実施例20~22のいずれか1つに記載の方法。
【0033】
実施例24.前記波面が中隔内心筋活動電位波面である、実施例23に記載の方法。
【0034】
実施例25.前記少なくとも2つの電極が第1の電極及び第2の電極を含み、
前記決定することが、前記第1の電極における前記波面の検出と前記第2の電極における前記波面の検出との間の遅延を決定することを含む、実施例24に記載の方法。
【0035】
実施例26.前記評価することが前記遅延を評価することを含み、前記遅延が少なくとも1msで最大4msである場合、前記遅延は適切な位置決めを示すとみなされる、実施例25に記載の方法。
【0036】
実施例27.前記評価することが、前記相対的位置決めに関して、心収縮性変調刺激を受けるのに適した心周期の割合を決定することを含む、実施例20~26のいずれか1つに記載の方法。
【0037】
実施例28.前記評価することが、心収縮性変調刺激を受けるのに適していると決定された異常な心周期の割合を評価することを含む、実施例20~27のいずれか1つに記載の方法。
【0038】
実施例29.前記信号が、心収縮性変調刺激を受けるのに適していると決定された異常な心周期の前記割合が心周期の5%を超える場合に、前記電極を再配置すべきであることを示す、実施例28に記載の方法。
【0039】
実施例30.前記評価することが、心収縮性変調刺激を受けるのに適していないと決定された正常な心周期の割合を評価することを含む、実施例20~29のいずれか1つに記載の方法。
【0040】
実施例31.前記信号が、心収縮性変調刺激を受けるのに適していると決定されない正常な心周期の前記割合が心周期の20%を超える場合に、前記電極を再配置すべきであることを示す、実施例30に記載の方法。
【0041】
実施例32.心収縮性変調を受けるのに適した心周期の割合を前記決定することが、前記測定値に基づく、実施例27~31のいずれか1つに記載の方法。
【0042】
実施例33.前記少なくとも2つの電極が、隔壁に配置された第1及び第2の電極と、少なくとも1つの追加の電極とを含み、前記測定値が、前記追加の電極に対する、前記第1の電極及び前記第2の電極それぞれでの電位の測定値を含む、実施例20~32のいずれか1つに記載の方法。
【0043】
実施例34.前記測定値が、複数の心周期に関する、実施例20~33のいずれか1つに記載の方法。
【0044】
実施例35.前記測定値が、心臓が刺激されている間の測定値を含む、実施例20~34のいずれか1つに記載の方法。
【0045】
実施例36.実施例20~35のいずれか1つに記載の方法であって、
前記評価することに基づいて、
前記少なくとも2つの電極のうちの1つまたは複数を再配置すること、及び、
前記少なくとも2つの電極のうちの前記1つまたは複数を固定すること、の1つまたは複数を実行すること、を含む、前記方法。
【0046】
実施例37.前記受信することが、複数の遅延を決定するために複数回、実行され、
前記評価することが、前記遅延の統計的表現を決定することを含む、実施例36に記載の方法。
【0047】
実施例38.前記遅延の前記統計的表現が、前記複数の遅延の中央値である、実施例37に記載の方法。
【0048】
実施例39.前記評価することが、前記統計的表現を閾値と比較することを含む、実施例37~38のいずれか1つに記載の方法。
【0049】
実施例40.前記決定することが、前記少なくとも2つの電極間の組織インピーダンスを決定することを含む、実施例20~39のいずれか1つに記載の方法。
【0050】
実施例41.前記決定することが、電気刺激パルスを注入することを含み、
前記測定値が、前記刺激パルスによって影響を受ける電気信号を含み、かつ、
前記決定することが、前記刺激パルスによって影響を受ける前記電気信号から1つまたは複数のパラメータを決定することを含む、実施例20~40のいずれか1つに記載の方法。
【0051】
実施例42.前記注入することが、前記心臓の心周期の不応期中である、実施例41に記載の方法。
【0052】
実施例43.前記注入することが、前記少なくとも2つの電極間である、実施例41~42のいずれか1つに記載の方法。
【0053】
実施例44.心臓に心収縮性変調刺激を適用するための装置であって、
少なくとも2つの電極と、
回路と、を備え、前記回路は、
前記電極で収集された測定値を使用して、前記電極の相対的位置決めを決定すること、及び、
前記位置に基づいて、前記電極に心収縮性変調刺激をいつ適用するかを決定すること、の1つまたは複数を行うように構成された、前記装置。
【0054】
実施例45.第1のリードと、
第2のリードと、
を備え、
前記少なくとも2つの電極が、
前記第1のリードによってホストされる第1の電極及び第2の電極と、
前記第2のリードによってホストされる第3の電極及び第4の電極と、を含む4つの電極を含む、実施例44に記載の装置。
【0055】
実施例46.前記第1及び第3の電極が、前記心臓の中隔に取り付けられるように構成される、実施例45に記載の装置。
【0056】
実施例47.心刺激のためのシステムであって、
実施例44による装置と、
どの心周期が心収縮性変調刺激を受けるべきかを決定するために、心臓活動の測定のための前記少なくとも2つの電極の前記相対的位置決めの適合性を評価するように構成された回路と、
前記適合性をユーザに送信するように構成された、前記回路に接続されたユーザインタフェースと、を備える、前記システム。
【0057】
実施例48.心臓信号処理の方法であって、
任意選択で心臓内に事前に配置された少なくとも2つの電極から測定値を受信することと、
前記測定値を使用して、前記少なくとも2つの電極の前記心臓内での位置を決定することと、
どの心周期が心収縮性変調刺激を受けるべきかを決定するために、心臓活動の測定のための前記少なくとも2つの電極の前記位置決めの適合性を評価することと、を含む、前記方法。
【0058】
実施例49.前記決定することが、前記測定信号から、心筋活動電位波面の通過のタイミングを特定することを含む、実施例48に記載の方法。
【0059】
実施例50.前記決定することが、前記少なくとも2つの電極の第1の電極と前記少なくとも2つの電極の第2の電極との間の前記心筋活動電位波面の検出間の遅延を決定することを含む、実施例49に記載の方法。
【0060】
実施例51.前記評価することが、前記遅延を評価することを含む、実施例50に記載の方法。
【0061】
実施例52.監視方法であって、
それぞれが心臓上の異なる点に配置された2つの電極への心筋活動電位波面の到達間の時間差を経時的に監視することと、
前記監視に基づいて、電極の外れを特定することと、を含む、前記方法。
【0062】
実施例53.心臓信号処理の方法であって、任意選択で、心臓内に回路(任意選択で植込み型)及び少なくとも2つの電極を備え、この方法を実行するように構成されたシステムを使用して実行され、
心臓内に配置された第1の電極に電気刺激パルスを注入することと、
前記刺激パルスによって影響を受ける電気信号の測定値を心臓内に配置された第2の電極から受信することと、
前記測定値を使用して、前記第1の電極及び前記第2の電極の相対的位置決めを決定することと、を含む、前記方法。
【0063】
実施例54.どの心周期が心収縮性変調刺激を受けるべきかを決定するために、心臓活動の測定のための前記第1の電極及び前記第2の電極の前記相対的位置決めの適合性を評価することを含む、実施例53に記載の心臓信号処理の方法。
【0064】
実施例55.前記測定が測定パルスを含み、
前記決定することが、前記注入パルスと前記測定パルスとの間の振幅の変化を決定することを含む、実施例54に記載の方法。
【0065】
実施例56.前記注入することが、心周期の不応期中である、実施例53~55のいずれか1つに記載の方法。
【0066】
実施例57.前記注入することが、不応期とは異なる心周期の部分中である、実施例53~54のいずれか1つに記載の方法。
【0067】
実施例58.前記決定することが、前記パルスの注入と前記パルスの測定との間の遅延を決定することを含む、実施例57に記載の方法。
【0068】
別段の定義の無い限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び/または科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。本発明の実施形態の実践または試験には、本明細書に記載したものと類似または同等の方法及び材料を用いることができるが、例示的な方法及び/または材料を以下に記載する。矛盾がある場合、定義を含む特許明細書が優先する。さらに、材料、方法、及び実施例は例示のためのみであり、必ずしも限定することを意図していない。
【0069】
本発明の実施形態の方法及び/またはシステムの実施は、選択されたタスクを手動で、自動で、またはそれらの組み合わせで実行または完了することを含み得る。さらに、本発明の方法及び/またはシステムの実施形態の実際の計装機器及び設備によれば、いくつかの選択されたタスクは、オペレーティングシステムを使用して、ハードウェアによって、ソフトウェアによって、またはファームウェアによって、またはそれらの組み合わせによって実施することができる。
【0070】
例えば、本発明の実施形態による選択されたタスクを実行するためのハードウェアは、チップまたは回路として実装することができる。ソフトウェアとして、本発明の実施形態による選択されたタスクは、任意の適切なオペレーティングシステムを使用してコンピュータによって実行される複数のソフトウェア命令として実施することができる。本発明の例示的な実施形態では、本明細書に記載の方法及び/またはシステムの例示的な実施形態による1つまたは複数のタスクは、複数の命令を実行するためのコンピューティングプラットフォームなどのデータプロセッサによって実行される。任意選択で、データプロセッサは、命令及び/またはデータを記憶するための揮発性メモリ、及び/または命令及び/またはデータを記憶するための不揮発性ストレージ、例えば、磁気ハードディスク及び/またはリムーバブル媒体を含む。任意選択で、ネットワーク接続も設けられる。ディスプレイ、及び/またはキーボードもしくはマウスなどのユーザ入力装置も任意選択で提供される。
【0071】
当業者には理解されるように、本発明のいくつかの実施形態は、システム、方法、またはコンピュータプログラム製品として具現化されてよい。したがって、本発明のいくつかの実施形態は、完全にハードウェアの実施形態、完全にソフトウェアの実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)、またはソフトウェアとハードウェアの態様を組み合わせた実施形態の形を取ってよく、これらはすべて、本明細書では一般に「回路」、「モジュール」、または「システム」と呼ばれてよい。さらに、本発明のいくつかの実施形態は、コンピュータ可読プログラムコードが具現化される1つまたは複数のコンピュータ可読媒体に具現化されるコンピュータプログラム製品の形を取ってよい。本発明のいくつかの実施形態の方法及び/またはシステムの実施は、選択されたタスクを手動で、自動で、またはそれらの組み合わせで実行及び/または完了することを含み得る。さらに、本発明の方法及び/またはシステムのいくつかの実施形態の実際の計装機器及び設備によれば、いくつかの選択されたタスクは、ハードウェア、ソフトウェア、またはファームウェア、及び/またはそれらの組み合わせによって、例えばオペレーティングシステムを使用して実施することができる。
【0072】
例えば、本発明のいくつかの実施形態による選択されたタスクを実行するためのハードウェアは、チップまたは回路として実施することができる。ソフトウェアとしては、本発明のいくつかの実施形態による選択されたタスクは、任意の適切なオペレーティングシステムを使用してコンピュータによって実行される複数のソフトウェア命令として実施することができる。本発明の例示的な実施形態では、本明細書に記載の方法及び/またはシステムのいくつかの例示的な実施形態による1つまたは複数のタスクは、複数の命令を実行するためのコンピューティングプラットフォームなどのデータプロセッサによって実行される。任意選択で、データプロセッサは、命令及び/またはデータを記憶するための揮発性メモリ、及び/または命令及び/またはデータを記憶するための不揮発性ストレージ、例えば、磁気ハードディスク及び/またはリムーバブル媒体を含む。任意選択で、ネットワーク接続も設けられる。ディスプレイ、及び/またはキーボードもしくはマウスなどのユーザ入力装置も任意選択で提供される。
【0073】
1つまたは複数のコンピュータ可読媒体の任意の組み合わせが、本発明のいくつかの実施形態に利用されてよい。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読信号媒体またはコンピュータ可読記憶媒体であってよい。コンピュータ可読記憶媒体は、例えば、限定ではないが、電子、磁気、光、電磁気、赤外線、もしくは半導体のシステム、装置、もしくはデバイス、またはこれらの任意の適切な組み合わせであってよい。コンピュータ可読記憶媒体のより多くの具体例(包括的でないリスト)は、1つまたは複数の配線を有する電気的接続、ポータブルコンピュータディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、電気的消去可能読み取り専用メモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、光ファイバ、ポータブルコンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD-ROM)、光学記憶装置、磁気記憶装置、またはこれらの任意の適切な組み合わせを含み得る。本文書の文脈において、コンピュータ可読記憶媒体は、命令実行システム、装置、もしくはデバイスによって、またはそれらと接続して使用されるプログラムを含むまたは記憶することができる任意の有形媒体であってよい。
【0074】
コンピュータ可読信号媒体は、例えば、ベースバンドでまたは搬送波の一部として、コンピュータ可読プログラムコードが具現化された伝搬データ信号を含み得る。このような伝搬信号は、電磁気、光、またはそれらの任意の組み合わせを含むが、これに限定されない様々な形のいずれかを取ってよい。コンピュータ可読信号媒体は、コンピュータ可読記憶媒体ではなく、命令実行システム、装置、もしくはデバイスによって使用される、またはそれらと接続して使用されるために、プログラムを通信、伝搬、または運ぶことができる任意のコンピュータ可読媒体であってよい。
【0075】
コンピュータ可読記憶媒体上に具現化されるプログラムコード及び/またはそれによって使用されるデータは、無線、有線、光ファイバケーブル、RF等、またはこれらの任意の適切な組み合わせを含むが、これに限定されない任意の適切な媒体を使用して、伝達されてよい。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態のための動作を実行するためのコンピュータプログラムコードは、例えばJava、Smalltalk、C++等のオブジェクト指向プログラミング言語、ならびに「C」プログラミング言語もしくは類似するプログラミング言語などの従来の手続き型プログラミング言語を含む、1つまたは複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで作成されてよい。プログラムコードは、スタンドアローンのソフトウェアパッケージとして、完全にユーザのコンピュータ上で、もしくは部分的にユーザのコンピュータ上で実行、部分的にユーザのコンピュータ上で、部分的にリモートコンピュータ上で実行、または完全にリモートコンピュータもしくはサーバ上で実行することが可能である。後者のシナリオでは、リモートコンピュータは、ローカルエリアネットワーク(LAN)もしくはワイドエリアネットワーク(WAN)を含む、任意の種類のネットワークを介してユーザのコンピュータに接続されてよい、または外部のコンピュータに(例えば、インターネットサービスプロバイダを使用してインターネット経由で)接続されてよい。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態は、本発明の実施形態による方法、装置(システム)、及びコンピュータプログラム製品のフローチャート図及び/またはブロック図を参照して以下に記載される。フローチャート図及び/またはブロック図の各ブロック、及びフローチャート図及び/またはブロック図のブロックの組み合わせは、コンピュータプログラム命令によって実施できることが理解されよう。これらのコンピュータプログラム命令は、汎用コンピュータ、特殊用途コンピュータ、または他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサに提供されて、コンピュータまたは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサを介して実行される命令が、フローチャート及び/またはブロック図のブロック(複数可)で指定される機能/行為を実施するための手段を作成するような機械を作り出し得る。
【0078】
コンピュータ、他のプログラム可能データ処理装置、または他のデバイスに特定の方法で機能するように命令できるこれらのコンピュータプログラム命令は、コンピュータ可読媒体に記憶されてもよく、これによりコンピュータ可読媒体に記憶された命令は、フローチャート及び/またはブロック図のブロック(複数可)に指定される機能/行為を実施する命令を含む製品を生産する。
【0079】
コンピュータプログラム命令は、コンピュータ、他のプログラム可能データ処理装置、または他のデバイス上にロードされて、一連の操作ステップを、コンピュータ、他のプログラム可能装置、または他のデバイス上で実行させて、コンピュータまたは他のプログラム可能装置で実行する命令が、フローチャート及び/またはブロック図のブロック(複数可)で指定される機能/行為を実施するためのプロセスを提供するように、コンピュータ実装プロセスを作り出してよい。
【0080】
本明細書に記載する方法のいくつかは、一般に、コンピュータによる使用のみを目的として設計され、人間の専門家が完全に手動で実行するには実現不可能または実用的ではない場合がある。心臓測定値の収集など、類似のタスクを手動で実行したい人間の専門家は、全く異なる方法、例えば、専門知識及び/または人間の脳のパターン認識能力を利用する方法を用いることが予想され、これは、本明細書に記載の方法のステップを手動で行うよりもはるかに効率が良い。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態を、本明細書では、単なる例示として、添付の図面を参照して記載する。このとき図面を詳細にわたって具体的に参照するが、図示されている細部は例示として本発明の実施形態を説明的に考察することを目的としたものであることを強調しておく。この点に関して、図面を用いた記載は、本発明の実施形態がどのように実践され得るかを当業者に明らかにするものである。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【
図1】本発明のいくつかの実施形態による、心刺激のためのシステムの簡略化された概略図である。
【
図2】本発明のいくつかの実施形態による、電極位置を評価する方法である。
【
図3】Aは、本発明のいくつかの実施形態による、植込み型パルス発生器を制御する方法であり、Bは、本発明のいくつかの実施形態による、植込み型パルス発生器を制御する方法の動作の概略表現である。
【
図4】本発明のいくつかの実施形態による、心収縮性変調刺激を適用する方法である。
【
図5】Aは、本発明のいくつかの実施形態による、植込み型パルス発生器を制御する方法を実施するための電極選択の方法であり、Bは、本発明のいくつかの実施形態による、監視の方法である。
【
図6】A~Dは、本発明のいくつかの実施形態による、心室中隔636を通過する伝導パターンの識別の概略図である。
【
図7】A~Dは、本発明のいくつかの実施形態による、心臓伝導波面の感知の簡略化された概略図であり、Eは、本発明のいくつかの実施形態による、感知された心室事象のタイムラインの簡略化された概略図である。
【
図8】A~Dは、本発明のいくつかの実施形態による、心臓伝導波面の感知の簡略化された概略図であり、Eは、本発明のいくつかの実施形態による、感知された心室事象のタイミングの簡略化された概略図である。
【
図9】本発明のいくつかの実施形態による、心室中隔を通過する伝導パターンの3つのセンサの識別の概略図である。
【
図10】本発明のいくつかの実施形態による、刺激信号及び測定信号を示す簡略化された概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0083】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、心刺激のための装置に関し、より詳細には、心臓シミュレーションのための装置の電極の位置決めに関するが、これに限定されない。
【0084】
概要
本発明のいくつかの実施形態の広範な態様は、電極自体を使用して収集された測定値を使用して、心臓内の心臓電気活動を感知するための電極の位置決めを決定することに関する。
【0085】
いくつかの実施形態では、電極による心臓電気活動の感知を使用して、(例えば、周期ベースで)どの心周期が心収縮性変調(心収縮性変調)刺激を受けるかを決定する。ここで、いくつかの実施形態では、心収縮性変調は、例えば、中隔に配置された(例えば、固定された)2つの電極の間で中隔に適用される。追加及び任意選択で、いくつかの実施形態では、電極による心臓電気活動の感知を使用して、植込み型除細動器(ICD)シミュレーション及び/または心臓再同期療法(CRT)刺激がいつ適用されるかを決定する。
【0086】
いくつかの実施形態では、電極の位置を決定するために、電極で収集された心臓電気活動の測定値とともに、正常な(例えば、非不整脈の)心周期についての想定及び/または決定された電気心臓信号伝搬が使用される。
【0087】
ここで、いくつかの実施形態では、心臓電気活動の測定は、第1の測定位置と第2の測定位置との間の心臓伝導波面の到着の相対的なタイミングを含む。
【0088】
ここで、いくつかの実施形態では、第1の測定位置での測定は第1の電極対を使用して収集され、第1の電極対の第1の電極は第1の測定位置に配置され、第1の電極対の第2の電極は第1の測定位置から離して配置される。ここで、いくつかの実施形態では、第2の測定位置での測定は第2の電極対を使用して収集され、第2の電極対の第1の電極は第2の測定位置に配置され、第2の電極対の第2の電極は第2の電極対の第1の電極から離して配置される。
【0089】
いくつかの実施形態では、両方の電極対の第1の電極は、例えば心臓中隔に接触し、中隔に接続される(例えば固定される)。いくつかの実施形態では、両方の対の第1の電極はそれぞれ、異なる心臓リードによってホストされる。いくつかの実施形態では、第2の電極は、第1の電極から離れた1つまたは複数のリードによってホストされ、例えば、第2の電極は、心腔内、例えば、右心室(RV)内に配置される。
【0090】
いくつかの実施形態では、例えば、第1の対の第1の電極での測定と第2の対の第1の電極での測定の両方が単一の第2の電極に対するように、単一の第2の電極が存在する。いくつかの実施形態では、各リードは第2の電極をホストし、ここで、いくつかの実施形態では、それぞれの第1の電極における測定は、第1の電極と同じリードによってホストされる第2の電極に対する。
【0091】
いくつかの実施形態では、心臓伝導波面が第1の電極で検出され、次に第2の電極で検出されたときに、心収縮性変調刺激が心臓に適用される。いくつかの実施形態では、第1の電極と第2の電極での検出の間に十分な遅延があるときに刺激が適用される。
【0092】
本発明のいくつかの実施形態のある態様は、2つの電極が心臓内に配置されると、電極自体で収集された測定値を使用して、どの電極が第1の電極であるとみなされ、どの電極が第2の電極であるとみなされるかを指定することに関する。例えば、いくつかの実施形態では、配置されると、心臓伝導波面を検出する第1の電極が、第1の電極であると指定され、第1の電極の後(例えば、適切な時間遅延で)第2の電極で心臓伝導波面が検出された心周期のみ、心収縮性変調刺激を受ける。
【0093】
いくつかの実施形態では、どの電極が最初に心臓伝導波面を感知するかの統計分析に基づいて、電極に指定が与えられる。例えば、いくつかの実施形態では、所与の期間において、所与の期間における心周期の過半数で心臓伝導波面を最初に検出する電極が、第1の電極として指定される。
【0094】
いくつかの実施形態では、正常な心周期の電気心臓信号伝搬の特徴(複数可)は、電極を使用して決定される。ここで、いくつかの実施形態では、複数の測定値を使用して、正常伝搬及び/または正常な心周期の予測発生率(expected prevalence)を構成するものの統計的理解を提供する。
【0095】
いくつかの実施形態では、電極で収集された測定値の単一セットを使用して、電極の位置と対象の心周期(複数可)の特徴(複数可)との両方を決定する。
【0096】
いくつかの実施形態では、電極及び/またはリードの位置は、ある電極(及び/または電極対間)で提供される電気刺激によって決定され、一方、別の電極(及び/または別の電極対の間)では、刺激の効果(複数可)が感知される。任意選択で、いくつかの実施形態では、心臓伝導波面を感知するために使用されるのと同じ電極が、インピーダンス測定(複数可)に使用される。
【0097】
例えば、いくつかの実施形態では、電極間の距離は、組織インピーダンス測定値(複数可)から決定され、組織インピーダンスは、いくつかの実施形態では、心臓組織の近位の、及び/または心臓組織に結合された、及び/または心臓組織に固定された、及び/または心臓組織に埋め込まれた電極間(例えば、2つの電極間)で測定される。
【0098】
いくつかの実施形態では、刺激及び測定は単一の電極対を使用し、シミュレーションは一方の電極で注入され、他方の電極で測定される。いくつかの実施形態では、組織インピーダンス測定値は、2対の電極を使用して収集され、ここで、電気刺激は第1の電極対の間に供給され、測定は第2の電極対の間で行われる。いくつかの実施形態では、測定電極対は、心臓組織、例えば中隔組織に近位の(例えば、取り付けられた、例えば固定された)電極によって形成される。いくつかの実施形態では、測定電極対は2つのリードによってホストされ、各リードは、例えばリード先端で測定電極をホストする。
【0099】
いくつかの実施形態では、インピーダンス測定値は、刺激電極対の電極間に電気刺激パルスを注入し、パルスの振幅減少を測定することによって収集される。
【0100】
いくつかの実施形態では、電極間の距離は、電極間の活動電位移動時間を測定することによって、例えば心臓組織を刺激し、その後、1つまたは複数の他の電極で検出される、結果として生じる心室収縮性に関連する電気活動の時間を測定することによって決定される。任意選択で、いくつかの実施形態では、心臓伝導波面及び/またはインピーダンスを感知するために使用されるのと同じ電極が、活動電位測定(複数可)に使用される。
【0101】
例えば、いくつかの実施形態では、刺激は刺激電極対の間に提供され、活動電位は測定電極対の間で測定される。ここで、いくつかの実施形態では、測定電極対の各電極は隔壁の異なる領域に接続される。
【0102】
いくつかの実施形態では、組織インピーダンス及び活動電位移動速度の測定値は、同じ適用刺激(例えば、刺激パルス)を使用して収集される。例えば、心臓組織の活動電位の細胞間活性化移動よりも組織伝導の潜在的に速い速度を利用する。例えば、いくつかの実施形態では、刺激パルスの後、測定電極対で検出された第1のパルスは組織インピーダンスを決定するために使用され、検出された第2のパルスは活動電位移動時間を示すために使用される。本発明のいくつかの実施形態のある態様は、例えば、心刺激装置を設置したとき、電極測定値から決定される位置フィードバックを使用して、心臓内の心臓電気活動を感知するための電極を位置決めすることに関する。いくつかの実施形態では、電極の位置決めは、電極をホストするリード(複数可)を位置決めすることによって行われる。
【0103】
いくつかの実施形態では、電極リードが心臓に導入され、電極測定値を使用して電極の位置が決定され、次に、決定された位置が評価され、評価は、リードが再配置されるべきであること、及び/またはリードの位置が例えば固定によって維持されるべきであることを示す。
【0104】
いくつかの実施形態では、測定フィードバックを使用して電極リードを配置することにより、リードを使用して収集された心臓電気測定値が、例えば、1つまたは複数の電極で心周期異常及び/または心臓伝導波面の到着検出の失敗を示し、心収縮性変調刺激を抑制すべきという指示を生成するのが最小になる。
【0105】
例えば、例示的な実施形態では、第1及び第2の電極の位置は、両方の電極で心臓伝導波面の感知を提供するように選択され、ここで、2つの電極のうちの一方が他方よりも先に、波面の感知間で十分な遅延を伴って、波面を感知する。
【0106】
いくつかの実施形態では、例えばリード設置中の電極の位置決めは、所望の位置に到達するまで、繰り返し、電極が配置され、及び/または測定が行われる反復プロセスである。ここで、いくつかの実施形態では、所望の位置は、心臓波面の感知のタイミング及び/または心収縮性変調刺激が抑制されるべきであるという指示の発生によって規定される。
【0107】
いくつかの実施形態では、最大遅延の位置が特定されるまで、電極が配置され、再配置される。いくつかの実施形態では、遅延が閾値持続時間を超えるまで(及び/または許容範囲内になるまで)、電極は再配置される。
【0108】
本発明のいくつかの実施形態のある態様は、リードで収集された測定値を使用して、電極リードの位置決め及び/または心臓の健康状態を監視することに関する。
【0109】
いくつかの実施形態では、心周期測定値は、例えば経時的な変化について監視される。いくつかの実施形態では、その後、変化(複数可)が評価されて、心臓挙動の変化及び/またはリード位置の変化(例えば、外れ)の指示が提供される。いくつかの実施形態では、評価には追加の測定値を収集することが含まれる。
【0110】
いくつかの実施形態では、異なる電極位置での検出された心臓波面到達間の相対的なタイミング(例えば、心臓波面到達間の遅延)が監視される。ここで、いくつかの実施形態では、遅延は心拍数によって監視される。
【0111】
いくつかの実施形態では、遅延の1つまたは複数の統計的表現(例えば、平均)が監視される。
【0112】
いくつかの実施形態では、遅延、及び/または遅延の統計的表現が正常範囲外である場合、リードの外れ及び/または心臓の状態が診断される。いくつかの実施形態では、正常範囲は個々の患者に合わせて調整され、例えば、既存の心機能不全(複数可)を有する対象の場合、心臓の挙動及び/または健康状態の変化の追跡を有効にすることが可能である。
【0113】
いくつかの実施形態では、検出された心臓波面間の遅延中央値が監視される。いくつかの実施形態では、例えば、閾値及び/または許容範囲外の遅延中央値の変化を使用して、対象の心臓の健康状態の変化を診断する。遅延中央値は、心臓の挙動の変化を示すために使用することが可能である。例えば、不整脈を患っている対象であっても、予測される不整脈周期の発生率は20%未満である。
【0114】
いくつかの実施形態では、時間遅延(及び/または時間遅延の統計的表現)の変化の迅速性が監視される。例えば、ここで、いくつかの実施形態では、時間遅延の急速な変化及び/または時間遅延の統計的表現(例えば、平均時間遅延)が、リードの外れを特定するために使用される。一方、いくつかの実施形態では、心臓の挙動の変化を予測するために、より緩やかな変化が使用される。
【0115】
いくつかの実施形態では、遅延自体は、リードの外れを特定し、及び/または任意選択で心臓挙動を診断するために使用され、ここで、遅延(及び/または遅延の統計的表現)は心拍数(例えば、異なる範囲または心拍数の平均遅延)を用いて評価される。代替的または追加的に、いくつかの実施形態では、リードの外れを特定し、及び/または心臓の挙動を診断するために、遅延がどの程度変動するかが使用される。
【0116】
いくつかの実施形態では、誘発性虚血は、心拍数が例えば閾値を超えて増加したとき、検出された心臓波面間の遅延の変動の増加と関連付けられる。
【0117】
例示的な実施形態では、検出された心臓伝導波面間の時間差の統計的表現(例えば中央時間差)が心拍数とともに(例えば閾値を超えて)増加する場合、誘発性虚血の可能性が診断される。
【0118】
本発明のいくつかの実施形態のある態様は、電極間への刺激パルスの注入によって、心臓内に配置された電極間の距離、例えば、電極間の相対距離を決定することに関する。いくつかの実施形態では、電極は心臓の中隔に配置される(例えば、固定される)。いくつかの実施形態では、刺激パルスは第1の電極で適用され、第2の電極で測定される。いくつかの実施形態では、パルスは、例えば、心臓の心周期の不応期中に適用されて、測定パルスを(例えば、第2の電極で)生成し、第2の電極で、振幅の減少を使用して電極間の距離を決定する。代替的または追加的に、刺激パルスは、心周期の不応期中ではないときに適用され、電極間の組織における刺激心筋活動電位の第2の測定パルスを刺激し、いくつかの実施形態では、その測定(例えば、刺激と測定パルスの検出との間の遅延)を使用して、電極(例えば、シミュレーション電極及び測定電極)間の距離及び/または相対的位置決めを決定する。
【0119】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載される、及び/または図面及び/または実施例に示される、構造の詳細ならびに構成要素及び/または方法の配列に必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能である、または様々な方法で実践もしくは実行することが可能である。
【0120】
例示的なシステム
図1は、本発明のいくつかの実施形態による、心刺激のためのシステム100の簡略化された概略図である。
【0121】
いくつかの実施形態では、システム100は、収縮性変調を適用するためのシステムである。追加的または代替的に、いくつかの実施形態では、システム100は、他のタイプ(複数可)の心刺激、例えばペーシングを適用するように構成される。
【0122】
いくつかの実施形態では、システム100は、心臓116内の、例えば心臓116の右心室RV内の少なくとも2つの点から心臓伝導波面測定値を収集するように構成される。例示的な実施形態では、隔壁136を通過する心臓波面の測定値が収集される。
【0123】
いくつかの実施形態では、少なくとも2つの電極を使用して測定値が収集される。例示的な実施形態では、少なくとも2つの電極セットを使用して双極測定値が収集される。ここで、例えば、各セットについて、測定は第1の電極と第2の電極の間で行われる。いくつかの実施形態では、各セットは、それぞれ個別の第1の電極103、105及び個別の第2の電極106、110を有する。例示的な実施形態では、第1のリード102は第1の電極セットの第1の電極103及び第2の電極106をホストし、第2のリード104は第2の電極セットの第1の電極105及び第2の電極110をホストする。あるいは、いくつかの実施形態では、第2の電極の数は第1の電極よりも少ない。
【0124】
いくつかの実施形態では、「双極電極」は、例えば本明細書の他の箇所に記載するように、双極電極が第1及び第2の電極を含む場合の測定値を収集するために使用される。例えば、単一リード上では、例えば、一方の電極(例えば「第1の電極」)が測定対象の組織と接触し、他方の電極(例えば「第2の電極」)が測定対象の組織から離れている。
【0125】
例示的な実施形態では、電極103、105はリング電極である。
【0126】
例示的な実施形態では、1つまたは複数の電極セットは、隔壁136と接触する及び/または隔壁136に近接する第1の電極106、110を含み、セットの第2の電極103、105は、第1の電極から距離を置いて、例えば右心室内に位置する。いくつかの実施形態では、リード102、104の一方または両方が、同じ血管(例えば、上大静脈)を通って右心室内に延びる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のセットの第1の電極106、110は、第1のリード102及び第2のリード104の先端部分に配置される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のセットの第2の電極103、105は、それぞれリード102、104の本体部分にホストされる。
【0127】
任意選択で、いくつかの実施形態では、電極103、105、106、110の1つまたは複数は、(例えば、
図4のステップ406、407、408の1つまたは複数に関連して図示及び/または記載するような1つまたは複数の特徴を含む電極間の距離を測定するために等)心臓に電気エネルギーを送達するように構成される。
【0128】
いくつかの実施形態では、右心室リード102、104の一方または両方は、それぞれアンカー106a、110aを含む。ここで、いくつかの実施形態では、アンカー106、110は、リード102、104を心臓組織に保持し、電極103、105をRV内に配置するように設計される。アンカー106a、110aは、例えば、リード102、104を心臓116の中隔136に固定するように構成される。いくつかの実施形態では、リード102、104及び/またはアンカー105、110の1つまたは複数の遠位端は、導電性材料を含む。導電性材料は、いくつかの実施形態では、(例えば、
図4のステップ412に関して記載したように)測定電極106、110として使用される。
【0129】
いくつかの実施形態では、治療用電流送達(例えば、心収縮性変調)が心臓内の1つまたは複数の電極に適用される。例えば、隔壁136に配置(例えば固定)された1つまたは複数の電極106、110(例えば電極間)において。治療電流の送達は任意選択で、相対的及び/または絶対的不応期中に提供されることに留意されたい。任意選択または追加的に、この電流は、例えば、心不全を伴う心臓の胎児性遺伝子プログラムを改変及び/または逆転させることによって、心臓のリモデリングを引き起こすように構成される。このような治療信号は、例えば、米国ニュージャージー州マールトンのImpulse Dynamics社が販売する「Optimizer(登録商標)Smart」植込み型装置を使用して適用されてよい。
【0130】
いくつかの実施形態では、治療用電流送達(例えば、心収縮性変調)が心臓内の1つまたは複数のリードで適用される。例えば、1つまたは複数のリード102、104において、1つまたは複数の双極電極セット、例えば、電極103及び電極106を含むセット、及び/または電極105及び電極110を含むセットを介して。
【0131】
代替的または追加的に、いくつかの実施形態では、システム100は、心臓116への治療電流送達(例えば植込み型除細動器(ICD)シミュレーション及び/または心臓再同期療法(CRT)刺激)のための1つまたは複数の要素108、例えばショックコイル108を含む。例示的な実施形態では、ショックコイル108は第2のリード104によってホストされる。いくつかの実施形態では、ショックコイル108は、第2の電極105が所望の位置に配置されるとき、及び/または第2のリード104が隔壁136に固定されるときに、ショックコイル108が少なくとも部分的にRV内に配置されるように、第2のリード104上に配置される。いくつかの実施形態では、ショックコイル108は、例えば
図1に示すように、右心房(RA)内に延びるほど十分に長い。
【0132】
任意選択で、いくつかの実施形態では、システムは、心臓の電気活動の測定及び/または電気刺激の送達のための1つまたは複数の追加の電極を含む。例えば、1つまたは複数の心房電極142、144及び/または1つまたは複数の左心室壁電極140である。
【0133】
いくつかの実施形態では、システム100は、1つまたは複数の追加のリード132、134を含む。例えば、いくつかの実施形態では、システム100は、右心房(RA)リード132を含み、右心房(RA)リード132は、いくつかの実施形態では、1つまたは複数の心房電極142、144をホストする。
【0134】
例えば、いくつかの実施形態では、システム100は、左心室(LV)リード134を含み、左心室(LV)リード134は、いくつかの実施形態では、1つまたは複数の電極140をホストする。いくつかの実施形態では、LVリード134は、LVの血管、例えば静脈内に延びる。いくつかの実施形態では、リード134は、リードに沿って配置された複数の電極、例えば4つの電極を含む。いくつかの実施形態では、リード134は少なくとも2つの電極140をホストする。例示的な実施形態では、リード134は4つの電極140をホストする。いくつかの実施形態では、電気刺激は、電極140の1つまたは複数の電極対の間に提供される。ここで、例えば、刺激は、ICD及び/またはCRTのうちの1つまたは複数である。
【0135】
いくつかの実施形態では、システム100は植込み型パルス発生器(IPG)120を含む。いくつかの実施形態では、IPG120は、ハウジング122を含み、ハウジング122は、移植用に構成される、例えば皮下移植されるサイズ及び/または形状にされ、及び/または生体適合性材料、例えば生体適合性コーティングを含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、IPG120は、制御信号を生成及び/または送信するように構成されたコントローラ126を含む。
【0137】
任意選択で、いくつかの実施形態では、IPGは、例えば収集されたメッセージを受信機に送信するように構成された送信機128を含む。例えば、患者の体外にある受信機である。いくつかの実施形態では、外部受信機は、ユーザ(複数可)(患者自身及び/または医療専門家(複数可))に警告(複数可)を発するためにユーザインタフェースに接続される。いくつかの実施形態では、送信機128は、例えばコントローラ126に対する、例えばIPGの動作の変更などの制御命令を受信するように構成された受信機を含む。
【0138】
いくつかの実施形態では、IPG120は、システム100の1つまたは複数の部分に電力を供給するように構成された電源124を含む。例えば、ショックコイル108、コントローラ126、送信機128、及びメモリ130のうちの1つまたは複数に。例えば、いくつかの実施形態では、電源124はショックコイル108に電力を供給する。いくつかの実施形態では、コントローラ126は、1つまたは複数のセンサ(例えば、リード電極103、105、106、110、142、144、140)から測定データを受信する。
【0139】
電極位置を評価する例示的な方法
図2は、本発明のいくつかの実施形態による、電極位置を評価する方法である。
【0140】
いくつかの実施形態では、200において、心臓の心臓電気活動が測定される。例えば、心臓内に配置された1つまたは複数の電極を使用して。例示的な実施形態では、中隔を通過する心臓伝導波面の通過は、少なくとも2つの電極セット、例えば
図1の電極セット103、106及び電極セット105、110を使用して測定される。
【0141】
いくつかの実施形態では、202において、ステップ200で収集された測定値を使用して、心臓内に配置された1つまたは複数の電極の位置を評価する。ここで、いくつかの実施形態では、評価には、
図4のステップ412及び/またはステップ422に図示及び/または関連して記載される1つまたは複数の特徴が含まれる。
【0142】
心収縮性変調刺激の例示的な方法
図3Aは、本発明のいくつかの実施形態による、植込み型パルス発生器を制御する方法である。
【0143】
いくつかの実施形態では、300において、心臓電気活動波面(「心臓伝導波面」とも呼ばれ、本明細書では「心室事象」とも呼ばれる)の到達が、RV電極対であるとして指定された電極対によって収集された測定値から決定される。いくつかの実施形態では、心室事象は、心電図(ECG)のR波成分の到着のタイミングである。R波成分は、振幅が比較的大きく、比較的速いため、この用途に潜在的な利点がある。しかしながら、進行中の周期的な心臓の電気活動波形の任意の他の成分が、R波に加えて、またはR波の代わりに検出される。いくつかの実施形態では、心室事象のタイミングは、R波のピークを特定することによって決定される。代替的にまたは追加的に、テンプレート相関がR波を特定するために使用される。
【0144】
いくつかの実施形態では、302において、任意選択で、心室事象が検出された後に遅延時間(例えば、
図3Bの遅延302)が導入される。
【0145】
いくつかの実施形態では、遅延時間は、約0~100ミリ秒の間、もしくは約0~50ミリ秒の間、またはそれらより短い、もしくはそれらより長い、もしくはそれらの間の持続時間もしくは範囲である。
【0146】
いくつかの実施形態では、304において、識別ウィンドウ(例えば、
図3Bの識別ウィンドウ304)が開始される。
【0147】
いくつかの実施形態では、識別ウィンドウは、開始後約1~75ミリ秒、もしくは開始後約1~40ミリ秒、またはそれらより短い、それらより長い、もしくはそれらの間の範囲もしくは持続時間で閉じる。
【0148】
いくつかの実施形態では、306において、識別ウィンドウ中に、LS指定電極セットで心室事象が検出された場合(本明細書では「ローカルセンス(LS)事象」とも呼ばれる)、任意選択で、遅延時間(例えば、
図3Bの遅延306)が導入される。遅延時間は、例えばLS事象の検出時に実施される。
【0149】
いくつかの実施形態では、308において、LS事象の検出後(または、ステップ306における遅延時間の場合には、遅延時間の後)すぐに、心臓収縮変調が適用される。いくつかの実施形態では、LS事象が識別ウィンドウ内で検出されない場合、心収縮性変調は、例えばその心周期中には適用されない。追加的または代替的に、いくつかの実施形態では、LS事象が識別ウィンドウ内で検出されない場合、心収縮性変調は、1つまたは複数の後続の心周期中には適用されない。
【0150】
いくつかの実施形態では、遅延時間302、識別ウィンドウ304、遅延時間306、及び心収縮性変調刺激持続時間308のうちの1つまたは複数の持続時間は、調整可能及び/または可変である。例えば、持続時間の1つまたは複数は、心拍数に依存する。例えば、いくつかの実施形態では、持続時間の1つまたは複数は、心拍数のパーセンテージとして決定される。例えば、心拍数は、持続時間及び/またはサイクル数の心拍数測定値から決定される。例えば、2~100サイクル、もしくは2~50サイクル、もしくは1~30秒、またはそれらより短い、もしくはそれらより長い、もしくはそれらの間の数の心周期または持続時間である。いくつかの実施形態では、心拍数は、最新のデータで継続的に調整される。いくつかの実施形態では、心拍数は最新のデータから周期的に決定され、ここで、決定された値は新しい値が決定されるまで使用される。
【0151】
いくつかの実施形態では、心収縮性変調は、心臓調律周波数が最小閾値を上回る、及び/または最大閾値未満、例えば許容範囲内である場合に実行される。
【0152】
例えば、いくつかの実施形態では、運動中に心収縮性変調が提供される。例えば、上限閾値までの心拍数の場合。ここで、いくつかの実施形態では、個人の上限閾値は(一分当たりの心拍数、BBMで)最大運動レートである。ここで、いくつかの実施形態では、個人の最大運動レートM(Aは個人の年齢)は、M=220-Aとして決定される。
【0153】
いくつかの実施形態では、個人の上限閾値は、最大運動レートの60%、もしくは70%、もしくは80%、もしくは85%、もしくは90%、もしくは95%、またはそれらより小さい、もしくはそれらより大きい、もしくはそれらの間の範囲もしくはパーセンテージである。
【0154】
いくつかの実施形態では、下限閾値を超える心拍数に対して心収縮性変調が提供される。ここで、いくつかの実施形態では、下限閾値は、約100BPM、もしくは約110BPM、もしくは約120BPM、またはそれらより小さい、もしくはそれらより大きい、もしくはそれらの間のレートもしくは範囲である。
【0155】
例えば、心収縮性変調の許容範囲は、例えば上記のように、下限閾値と上限閾値との間にある。
【0156】
本明細書では、ウィンドウ処理アルゴリズムが例示目的で説明されている。これには、最小限の計算リソースで計算できる、及び/またはアナログタイミング回路によって実装できるという潜在的な利点がある。いくつかの実施形態では、同じ心臓電気刺激(例えば、心収縮性変調刺激)及び/または刺激結果の抑制が、別の方法で得られる。例えば、いくつかの実施形態では、心臓伝導ベクトル(例えば、
図6A~6Dの615)の見かけの速度及び方向が明示的に決定され、その速度及び/または方向について特定のパラメータ範囲内に入る伝導ベクトルが使用されて、心収縮性変調を適用するかどうかを決定する。
【0157】
図3Bは、本発明のいくつかの実施形態による、植込み型パルス発生器を制御する方法の動作の概略表現である。
【0158】
図3Bに示すのは、心周期のP、Q、R、及びT部分を示す心周期トレース300である。
【0159】
いくつかの実施形態では、右心室事象(RV事象とも呼ばれる)は、例えば心周期のQ部分とR部分との間の移行時に検出される。ここで、いくつかの実施形態では、RV事象の検出は、RV電極として指定された電極(例えば、
図1の第1の電極103)によって測定された電気信号から行われる。次に、識別ウィンドウ304の開始前に遅延302が導入される。識別ウィンドウ304中にローカルセンスLS事象が(例えば、
図1の第2の電極105によって測定された電気信号から)検出される場合、最適には、いくつかの実施形態では、遅延306(遅延302が実施された場合、「第2の遅延」と呼ばれ、遅延302は「第1の遅延」と呼ばれる)が、LS事象検出時に導入され、その後、いくつかの実施形態では、心収縮性変調刺激308が適用される。
【0160】
心収縮性変調刺激の例示的な方法の詳細
図4は、本発明のいくつかの実施形態による、心収縮性変調刺激を適用する方法である。
【0161】
いくつかの実施形態では、400において、心臓装置の(例えば、1つまたは複数のリードによってホストされる)1つまたは複数の電極が心臓内の初期位置に配置される。
【0162】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリード、例示的な実施形態では、複数のリードが、心臓の内腔(複数可)に送達される。ここで、1つまたは複数のリードが1つまたは複数の電極をホストする。ここで、各電極は、心臓の電気活動を感知するように構成され、及び/または心収縮性変調を送達するように構成される。
【0163】
例示的な実施形態では、少なくとも第1の電極及び第2の電極は、心臓の中隔を通過する電気心臓波面の通過を検出するように構成される。いくつかの実施形態では、第1及び第2の電極は、隔壁に近接して配置されたときに波面を検出する。例えば、本明細書の他の箇所に記載されているように、心臓波面の(例えば中隔を通した)到達のタイミング、詳細には、第1の電極と第2の電極の間の心臓波面の検出間の遅延(本明細書では「遅延」と呼ぶ)は、第1及び第2の電極の測定信号から特定される。
【0164】
いくつかの実施形態では、リードの送達は、カテーテル挿入手順を通じて行われ、任意選択で、イメージング、例えば、1つまたは複数の超音波、X線(例えば、蛍光透視法)によって支援される。いくつかの実施形態では、リード(複数可)は、カテーテル挿入プロセスを使用して心臓内に進められ、ここで、いくつかの実施形態では、リードの遠位部分に圧力が加えられてリードの近位部分が心臓内に進められる、及び/または張力がリードの遠位部分に加えられて近位部分が心臓から引き抜きかれる。
【0165】
いくつかの実施形態では、(例えば、リード(複数可)を配置する前に)1つまたは複数のリード部分の位置が選択される。
【0166】
例えば、いくつかの実施形態では、医師は、例えば、医師が心刺激システムを植え込む準備をするとき、及び/または植え込まれたシステム(例えば、
図1のシステム100に図示され、及び/またはシステム100に関して記載された1つまたは複数の特徴を含むシステム)の部分(複数可)を配置及び/または再配置するときに、リード部分の位置決めを選択する。
【0167】
代替的または追加的に、いくつかの実施形態では、リード部分の位置決めの選択は患者データに基づく。患者データには、例えば、患者の診断、患者のイメージング、患者の年齢、患者の体重、患者を測定する植込み型装置、例えばIPGからのデータのうちの1つまたは複数が含まれる。
【0168】
代替的または追加的に、いくつかの実施形態では、リード部分の位置決めの選択は、自動的である、例えば、患者データに基づいて自動的に決定される。ここで、いくつかの実施形態では、自動選択提案がユーザ(例えば医療従事者)に提示され、ユーザはその提案をリード位置(複数可)の選択に使用する。
【0169】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリードが、心室、例えば心臓のRV内に延びて配置される。例示的な実施形態では、2つのリードがRV内に配置される。いくつかの実施形態では、リードの1つまたは複数が、取り付け部からIPG(例えば、
図1のIPG120に関して図示及び/または記載した1つまたは複数の特徴を含むIPG)に延びる。代替的または追加的に、いくつかの実施形態では、リードの1つまたは複数は、IPG(例えば、電源及び/またはコントローラ回路)に接続されておらず、例えば後に接続される。
【0170】
いくつかの実施形態では、位置の選択には、例えば、1つまたは複数のランドマーク、例えば解剖学的及び/またはマーカに対する1つまたは複数の寸法が含まれる。いくつかの実施形態では、位置の選択には、患者の外側の装置の1つまたは複数の寸法、例えばリードが例えば患者の外側から患者内にどれだけ挿入されるか、が含まれる。
【0171】
いくつかの実施形態では、リードは、上下軸に沿って配置される(例えば、少なくとも0.5cm、もしくは1cm、もしくは2cm、またはそれらより短い、それらより長い、もしくはそれらの間の距離だけ離れて配置される)。この軸は、いくつかの実施形態では、上室で開始された伝達が中隔を通過するときに通常それに沿って進む軸に対応する。
【0172】
任意選択で、1つまたは複数の追加のリードが配置される。例えば、心房内に延びる(例えば、
図1のリード132)及び/または左心室LV内に延びる(例えば、
図1のリード134)1つまたは複数のリードである。
【0173】
いくつかの実施形態では、リード(例えば、少なくとも2つのリード)は、心臓内(例えば、
図1のリード102、104によって示されるような右心室内)の初期位置に配置される。任意選択で、いくつかの実施形態では、位置決めは、1つまたは複数の測定を使用して支援される。例えば、位置決め中にイメージングを使用する。例えば、第1のリードの電極(複数可)によって収集された(例えば、心臓の電気信号(複数可)の)測定値、及び/または身体及び/または心臓内の他の電極及び/または例えば対象の皮膚表面と接触して外部に配置された感知電極によって収集された測定値を使用する。
【0174】
いくつかの実施形態では、第1のリードが配置され、その後、第2のリードの配置前に、(例えば、ステップ402~409の1つまたは複数に記載されるような1つまたは複数のタイプの測定値を使用して)第1のリードの位置が決定される。ここで、いくつかの実施形態では、第2のリードの選択及び/または計画された位置決めは、第1のリードの決定された位置に基づいて調整される。あるいは、いくつかの実施形態では、第1及び第2の右心室リード(例えば、
図1のリード102、104)の両方が同時に配置される。
【0175】
402で、リード電極を使用して測定値が収集される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のタイプの測定値(例えば、ステップ404~409に記載した測定値の1つまたは複数)が、複数の心周期について収集される。
【0176】
いくつかの実施形態では、404において、異なる電極の心臓伝導波面の到着のタイミングが測定される。
【0177】
いくつかの実施形態では、刺激を受けていない心周期の測定値が収集される。代替的または追加的に、いくつかの実施形態では、測定値は、例えば異なる心拍数で心臓が刺激される(例えばペーシング、例えば心房ペーシング)場合に収集される。例えば、ここで、心臓は薬によって刺激される。
【0178】
いくつかの実施形態では、心臓の部分(複数可)内の電波伝搬が測定される。いくつかの実施形態では、例えば中隔の組織を通る心室波の伝搬が測定される。いくつかの実施形態では、例えば個々の心臓についての電波伝搬の統計的変動の詳細を提供するために、複数の心周期について測定値が収集される。任意選択で、様々な心拍数の電波伝搬が測定される。
【0179】
いくつかの実施形態では、刺激された(例えば、ペーシングされた、例えば心房ペーシングされた)心周期の測定を使用して、「正常な」心拍のデータが提供される。いくつかの実施形態では、不整脈の発生率に関するデータを提供するために、非刺激の心周期の測定値が使用される。ここで、いくつかの実施形態では、不整脈は、中隔を通過するが房室結節(AV結節)で発生しない伝導波面として定義される。
【0180】
代替的または追加的に、いくつかの実施形態では、正常な心臓の伝搬は、例えば任意選択で患者に合わせて(例えば年齢及び/または性別及び/または体重及び/または病歴によって)調整された当該患者及び/または他の対象(複数可)の以前に収集されたデータを使用して決定される。
【0181】
いくつかの実施形態では、第1及び第2の電極における心臓電気活動波面(本明細書では「心室事象」とも呼ばれる)の到着の相対時間が評価される。いくつかの実施形態では、例えば電極植込み部位における波面移動の統計的表現の計算を可能にするために、伝導波面の到着間の遅延が複数の心周期について測定される。
【0182】
任意選択で、統計的表現は、平均遅延、及び/またはその遅延の標準偏差を含む。任意選択で、相対遅延の測定が複数の心拍数で実行される。
【0183】
いくつかの実施形態では、心室事象は、心電図(ECG)のR波成分の到着のタイミングである。R波成分は、振幅が比較的大きく、比較的速いため、この用途に潜在的な利点がある。ただし、進行中の周期的な心臓電気活動波形の任意の他の成分が、R波に加えて、またはR波の代わりに検出される。
【0184】
いくつかの実施形態では、電極間の心室事象の検出順序を使用して、AV結節までの電極の相対距離を決定する。例えば、
図3A~3Bの方法を実施するために電極をRV及びLSとして指定するために。いくつかの実施形態では、2つの電極のうちどちらの電極がAV結節(例えば、
図1のAV結節138)に近いかが決定される。いくつかの実施形態では、2つの電極のAV結節に対する位置は、
図5Aに図示及び/または記載される1つまたは複数の特徴を使用して決定される。
【0185】
いくつかの実施形態では、RV及びLSとしての電極の指定(例えば、
図3A~3Bの方法を実施する目的のため)は、電極の位置決め(例えば、決定された位置決め)、及び/または規則的な心周期の電気伝搬に基づく。いくつかの実施形態では、指定は、例えば医師によって選択されるように手動で、及び/またはリード電極及び/または他の測定装置を使用して収集された予備測定値(例えば外部ECGセンサ測定値)に基づいて自動で行われる。
【0186】
代替的または追加的に、いくつかの実施形態では、406において、組織インピーダンスが2つの電極間で測定される。いくつかの実施形態では、電極間の心臓組織の組織インピーダンスを使用して、電極間の距離を決定する。例えば、
図1の電極106、110、隔壁136などの隔壁に近位の、及び/または隔壁に接触している、及び/または隔壁に固定されている電極間の距離を決定するために。いくつかの実施形態では、電極間の(例えば隔壁の)組織インピーダンスは、電極間に電流を注入し、電極間の電位を測定することによって測定される。
【0187】
例示的な実施形態では、インピーダンス測定値(複数可)は心周期の不応期中に収集される。例えば、心周期が監視される場合、ある周期の不応期はその周期の測定値から決定され、及び/または不応期は以前の心周期の測定値を使用して決定される。次に、インピーダンス測定値が、不応期であると特定された心周期の部分で収集される。
【0188】
代替的または追加的に、いくつかの実施形態では、407において、第1及び第2の電極の一方で電気刺激(例えば刺激パルス、例えば電流または電圧刺激、例えば電流または電圧刺激パルス)を適用し、他方の電極でパルスの振幅の減少(及び/または到着タイミング)を測定することによって、第1の電極と第2の電極の間の距離が測定される。ここで、測定値を使用して、第1の電極と第2の電極間の距離を決定する。
【0189】
代替的または追加的に、いくつかの実施形態では、408において、第1の電極と第2の電極との間の距離は、(例えば、一方の電極での)心臓組織の刺激と、その刺激によって誘発される心臓組織の活動電位の移動時間の(例えば、他の電極での)測定によって測定される。例えば、電気刺激が一方の電極で与えられ、心室収縮性が他方の電極で測定される場合、心室収縮性の特性(例えば、遅延及び/または振幅)が、第1の電極と第2の電極との間の距離を決定するために使用される。
【0190】
いくつかの実施形態では、同じ刺激パルスが、(例えば、ステップ406に記載するように)組織インピーダンスを測定するためと、例えば、ステップ408に記載するように、心臓組織の活動電位を誘発するために使用される。いくつかの実施形態では、同じ刺激パルスを使用して、ステップ406、407、及び408に記載される測定のうちの1つまたは複数を実施する。
【0191】
いくつかの実施形態では、ステップ406、407、及び408の1つまたは複数について、
図10を参照してさらに記載する。
【0192】
任意選択で、いくつかの実施形態では、409において、心拍数測定値は、例えば1つまたは複数の他の測定値、例えば404、406、407、408で収集された測定値の1つまたは複数と併せて収集される。例えば、測定値に対する心拍数の影響を提供するために。いくつかの実施形態では、例えばペーシング、例えばオーバーペーシング及び/または個人にストレス(例えば物理的及び/または化学的ストレス)を与えることによって、測定(複数可)中に異なる心拍数が誘発される。
【0193】
任意選択で、410において、リード及び/または電極の位置が、1つまたは複数の他の測定モダリティ、例えばイメージング、例えば外部ECG測定(複数可)を使用して測定される。
【0194】
いくつかの実施形態では、412において、ステップ404~410のうちの1つまたは複数で、リードで収集された測定値(複数可)を使用して、リードの位置決めが評価される。
【0195】
いくつかの実施形態では、(例えばステップ402で仮定及び/または測定された)正常な心臓活動に関するデータ、及び
図3A~3Bのウィンドウ処理アルゴリズムの1つまたは複数のパラメータの値を変更する能力に基づいて、電極及び/またはリードの位置が評価される。
【0196】
例えば、いくつかの実施形態では、最適化プロセスが実行され、ここで、心臓活動測定値及びウィンドウ処理アルゴリズム内で利用可能な柔軟性が与えられると、電極位置について、心収縮性変調刺激が適用される心周期の予測発生率が決定される。いくつかの実施形態では、例えば異なる心拍数に対して、複数の予測発生率が決定される。
【0197】
いくつかの実施形態では、
図3A~3Bの方法の遅延時間302、識別ウィンドウ304、遅延時間306、及び心収縮性変調刺激持続時間308の1つまたは複数は、調整可能である。
【0198】
いくつかの実施形態では、最適化プロセスは、ウィンドウ処理アルゴリズムへの入力として心室事象の検出を変化させることを含む。ここで、例えば、心周期のR波を特定するためのパラメータ(複数可)は変更される。例えば、R波のピークが特定される場合、ピーク検出アルゴリズムのパラメータ(複数可)が変更される。
【0199】
例えば、いくつかの実施形態では、
図3A~3Bの方法の識別ウィンドウは、ステップ404で収集された波面遅延測定値に基づいて選択される。例えば、いくつかの実施形態では(例えば、相対遅延の一般的なガウス分布の場合)、識別ウィンドウ持続時間は、平均遅延の標準偏差の±2、±3、±4、または別の数の範囲内の遅延範囲として選択される。任意選択で、ウィンドウ持続時間(例えば、
図3A~3Bのウィンドウ304)及び/またはオフセット(
図3A~3Bの遅延302)は、相対到着時間のすべての測定値、または測定値の少なくとも大部分、例えば、測定値の少なくとも99%、または測定値の少なくとも99.9%を含むように選択される。
【0200】
任意選択で、選択された識別ウィンドウは、例えば、心拍数の関数としての波面速度の潜在的な差を考慮するために、動的であり、例えば心拍数に依存、及び/または現在の心拍数に従って選択される。ウィンドウの心拍数調整は、様々な心拍数での遅延の測定値に基づいて任意選択で実行される。任意選択で、ウィンドウの心拍数調整は、患者集団の観察から導き出された標準に基づいて実行される。
【0201】
いくつかの実施形態では、最適化には1つまたは複数の要件が含まれる。例えば、いくつかの実施形態では、第1の電極と第2の電極で検出される心室事象間の最小遅延が必要とされる。いくつかの実施形態では、閾値は固定時間であり、ここで、例えば遅延の平均及び/またはパーセンテージが閾値を超える必要がある。いくつかの実施形態では、閾値は、1~8ms、もしくは2~5ms、もしくは1~4ms、もしくは3~4ms、もしくは約3ms、またはそれらより短い、またはそれらより長い、もしくはそれらの間の持続時間または範囲である。
【0202】
いくつかの実施形態では、第1の電極と第2の電極で検出された事象間の遅延は、許容時間範囲内、例えば、0.5~8ms、もしくは0.5~5ms、もしくは1~5ms、もしくは2~5ms、もしくは2~8ms、またはそれらより短い、もしくはそれらより長い、もしくはそれらの間の持続時間または範囲内の必要がある。
【0203】
いくつかの実施形態では、414において、412での評価に基づいて、1つまたは複数のリードが再配置される。例えば、リード(複数可)を前進及び/または後退させることによって。
【0204】
いくつかの実施形態では、例えば、遅延が閾値を超える、及び/または閾値の範囲内であることが必要な場合、所望の遅延に達するまでリード(複数可)が再配置される。
【0205】
いくつかの実施形態では、ステップ402~414が何度も繰り返される。例えば、(ステップ402~410の1つまたは複数で)測定値(複数可)が収集され、その後、リードが第1の方向に移動される。移動後、測定値(複数可)が再度収集され、リードの移動により測定値(複数可)が改善されたことが(例えばステップ412で)評価で示された場合、リードは再び第1の方向に移動される。逆に、いくつかの実施形態では、リードの移動に伴って測定値が低下した場合、リードは異なる方向に移動される。
【0206】
いくつかの実施形態では、416において、412での評価に基づいて、リードの位置決めが維持される。例えば、リードを隔壁などに固定することによって。いくつかの実施形態では、その後、リード送達及び/または位置決めのための装置が引き抜かれ、及び/またはIPGが接続及び/または移植される。
【0207】
例えば、いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリードの1つまたは複数の電極に電気刺激を送達するように構成されたIPGが、例えば皮下に移植される。例えば、
図1のIPG120に関して図示及び/または記載した1つまたは複数の特徴を含むIPGである。いくつかの実施形態では、IPGは、心臓内に延びるように予め配置された1つまたは複数のリードに接続される。いくつかの実施形態では、IPGはリードに接続されるが、皮下には移植されず、例えば皮膚表面を通って延びるリードを用いて患者の外部に接続される。
【0208】
いくつかの実施形態では、420において、電極の決定された位置を使用して、心収縮性変調刺激が例えば心周期ごとに適用されるかどうかを決定する。例えば、決定された位置は、
図3A及び
図3Bで記載された方法の1つまたは複数の特徴への入力として使用される。例えば、遅延持続時間302、識別ウィンドウ304、遅延時間306、及び心収縮性変調刺激持続時間308の1つまたは複数が、電極位置に基づいて選択される。
【0209】
いくつかの実施形態では、422において、ステップ420で収集された測定値が評価される。例えば、周期的に。例えば、ここで、1つまたは複数の評価パラメータが継続的に更新される。
【0210】
いくつかの実施形態では、第1の電極と第2の電極で検出された波面間の時間差の持続時間が評価パラメータである。いくつかの実施形態では、評価パラメータには、時間差の中央値、平均、及び変動のうちの1つまたは複数が含まれる。
【0211】
いくつかの実施形態では、心室事象のタイミングが、1つまたは複数の心周期について評価される。いくつかの実施形態では、例えば、評価期間について、感知された心室事象の1つまたは複数のタイミングパラメータの中央値及び/または平均及び/または変動が評価される。ここで、いくつかの実施形態では、タイミングパラメータは、心室事象の感知間の遅延、及び/または心室事象の感知順序(例えば、遅延の符号)を含む。
【0212】
いくつかの実施形態では、心室事象のタイミングは、測定された心室事象に関連付けられた心拍数に基づいて評価される。例えば、各心周期の心拍数及び/または一定期間の心拍数である。ここで、心拍数期間は、いくつかの実施形態では、評価期間と同じであるか、または異なる。
【0213】
例えば、いくつかの実施形態では、第1の電極と第2の電極で検出された波面間の測定された時間差が、測定時の心拍数とともに保存される。
【0214】
いくつかの実施形態では、評価は、評価パラメータ(複数可)の変化が心機能の変化、及び/または心臓内の測定電極及び/またはリードの位置の変化に関連しているかどうかを決定することを含む。
【0215】
いくつかの実施形態では、電極(複数可)の移動及び/またはリードの外れがタイミングデータから特定される。例えば、いくつかの実施形態では、1つまたは複数の閾値を超えてタイミングが変化し、変化に心室事象(複数可)の順序及び/または心室事象間の時間的遅延、任意選択で心拍数による遅延が含まれる場合、電極及び/またはリードの位置異常及び/または外れの可能性を示す警告が発せられる。例示的な実施形態では、平均遅延及び中央値遅延の1つまたは複数が予測範囲外に変化した場合、リードの移動(例えば、外れ)が特定される。ここで、いくつかの実施形態では、平均遅延が閾値を超えて、例えば、10%を超えて、もしくは20%を超えて、もしくは30%を超えて、もしくは40%を超えて、またはそれらより小さい、もしくはそれらより大きい、もしくはそれらの間のパーセンテージまたは範囲で変化する場合、リードの移動が特定される。代替的または追加的に、いくつかの実施形態では、中央値遅延が閾値を超えて、例えば、10%を超えて、もしくは20%を超えて、もしくは30%を超えて、もしくは40%を超えて、またはそれらより小さい、もしくはそれらより大きい、もしくはそれらの間のパーセンテージまたは範囲で変化する場合、リードの移動が特定される。
【0216】
任意選択で、いくつかの実施形態では、規則的な心周期の波面伝搬は、リード電極測定値を使用して更新及び/または再決定される。
【0217】
いくつかの実施形態では、424において、例えば心収縮性変調刺激を送達する目的で、リード位置が更新される。
【0218】
例えば、ステップ424からのフィードバックは、いくつかの実施形態では、ステップ420への入力であり、ここで、いくつかの実施形態では、どの心周期が
図3A~Bの心収縮性変調を受けるべきかを決定する方法の1つまたは複数の部分は、(例えば、ステップ424で更新されるように)リード位置に基づいて調整される。例えば、
図3A~3Bの遅延302、識別ウィンドウ304、遅延306の1つまたは複数を調整する。例えば、
図3A~
図3Bの方法について、リードの指定をrv及びlsとして変更し、指定は、リード位置に基づき、ここで、いくつかの実施形態では、指定は、例えば、
図5Aの方法に関して図示及び/または記載した1つまたは複数の特徴に従って変更される。調整により、心収縮性変調刺激を受ける心周期の割合が増加する可能性がある。
【0219】
いくつかの実施形態では、リード(複数可)及び/または電極(複数可)の位置が評価される。例えば、電極測定(及び任意選択でイメージングなどの追加の測定)を使用する。いくつかの実施形態では、電極(複数可)の移動及び/またはリードの外れが、測定値から、例えば、電極によって測定された事象のタイミングデータから特定される。任意選択で、例えばリード外れ警告などの警告が、特定に基づいて、開始される。
【0220】
いくつかの実施形態では、426において、ステップ422での評価に基づいて、患者が診断される。例えば、いくつかの実施形態では、心臓の状態は、評価を使用して診断される。ここで、いくつかの実施形態では、診断には、
図5Bに関して図示及び/または記載された1つまたは複数の特徴が含まれる。任意選択で、いくつかの実施形態では、診断(複数可)は、例えば
図1の送信機128を通じてユーザ、例えば、ユーザインタフェースに通信される。
【0221】
図4の動作420以降を適用すると、測定値に基づいて警告を生成することができる。一例では、2つの電極間の遅延が所望の範囲内、例えば1~4ms以内にない場合に、変更が送信される。いくつかの実施形態では、警告は毎回生成される。任意選択または追加で、事象の数または頻度に基づいて警告が生成される。任意選択または追加で、報告が周期的に、例えば、週一回、生成される。
【0222】
本発明のいくつかの実施形態では、警告は、例えば、無線接続を使用して、遠隔監視サイト(例えば、またはクラウドロケーション)に送信される。任意選択または追加で、(例えば、BlueToothまたは他のローカル無線接続を使用して)携帯電話などのローカルデバイスに送信され、ローカルデバイスは、任意選択で処理後に受信データを送信し得る。任意選択または追加で、そのような警告に関するデータは、ローカルデバイス、例えばデバイスプログラマを使用して、任意選択で報告及び/または概要としてダウンロードされる。
【0223】
本発明のいくつかの実施形態では、測定には、電極の一方または両方で、及び/または電極間の遅延測定及び/またはインピーダンス測定が含まれる。このようなインピーダンス測定は、電極と心臓組織との間の接触の質(例えば、外れ)、及び/または電極及び/またはリードへの損傷を示すのに有用であり得る。
【0224】
特に動作420を参照すると、本発明のいくつかの実施形態では、心収縮性変調刺激は、同時、または(例えば、同じ心周期、ならびに心周期内の同じもしくは重複する時間ウィンドウの)10%と99%の間の重複、例えば、10%と30%の間、30%と70%の間、及び/または70%と99%の間の重複などを有する重複時間に、両方の電極に任意選択で適用される。
【0225】
例示的なリード選択
図5Aは、本発明のいくつかの実施形態による、植込み型パルス発生器を制御する方法を実施するための電極選択の方法である。
【0226】
いくつかの実施形態では、500において、第1及び第2の電極(例えば、
図1の電極106、110)を通過する心室事象が特定される。いくつかの実施形態では、特定することは、
図4のステップ404に関して記載した1つまたは複数の特徴に従って行われる。
【0227】
いくつかの実施形態では、特定された心室事象間の時間差が測定値から決定される。いくつかの実施形態では、第1の電極と第2の電極との間で感知された心室事象の順序は、電極測定データを使用して決定される。いくつかの実施形態では、順序は、例えば心周期において、異なる電極で感知された心室事象間の遅延の符号から決定される。いくつかの実施形態では、決定することは、複数のn個の心周期から収集された測定値に対するものである。
【0228】
いくつかの実施形態では、502において、心室事象順序優位(order prevalence)が、例えばn個の心周期について決定される。ここで、いくつかの実施形態において、ある期間に対する順序優位とは、その期間の大部分において、どの電極が心室事象を最初に検出するかである。
【0229】
500において、n個の心周期を測定して、n周期の順序優位を決定する代わりに、またはそれらに追加して、いくつかの実施形態では、順序の決定は、継続的である、及び/または順序優位が、例えば測定値が収集されると、継続的に更新される。
【0230】
504において、決定された心室事象順序優位に基づいて、RV及びLSが指定される。例えば、
図3A及び/または
図3Bに関して図示及び/または記載した1つまたは複数の特徴に従って、例えば、心収縮性変調刺激をいつ適用すべきかを決定する目的である。
【0231】
いくつかの実施形態では、RV電極及びLS電極は周期的に指定される。例えば、ステップ500~504は、例えば設定された心周期数及び/または持続時間の間、周期的に繰り返される。例えば、ステップ500~504の繰り返しの、1時間に1回、1日1~5回、1日1回、1日おきに1回、または、それらより少ない、それらより多い、もしくはそれらの間の頻度または頻度範囲である。
【0232】
追加的または代替的に、いくつかの実施形態では、ステップ500~504は、ユーザが評価を要求し、及び/または手動で電極順序を指定するユーザ入力に応じて繰り返される。
【0233】
追加的または代替的に、いくつかの実施形態では、ステップ500及び502は継続的に実行され、ステップ504は変化の検出時に実行される。例えば、一定期間(例えば、所定の期間)における過半数順序優位が変化したときである。例えば、順序優位の(例えば、閾値を超える)変動である。
【0234】
例示的な監視
図5Bは、本発明のいくつかの実施形態による、監視の方法である。
【0235】
いくつかの実施形態では、501において、例えば本文書内の他の箇所に記載されるように、異なる電極における伝導波形の検出間の相対的なタイミング(例えば、時間差)が、電極で収集された測定値から決定される。いくつかの実施形態では、時間差は複数の心周期について測定される。任意選択で、いくつかの実施形態では、心拍数が測定される。
【0236】
いくつかの実施形態では、任意選択で、503において、正常な時間差の境界(複数可)及び/または正常な時間差の値(複数可)が、任意選択で心拍数とともに、501で収集された測定値を使用して決定される。ここで、例えば、経時的及び/または心拍数を用いて測定された時間差を使用して、特定の対象の予測の値(複数可)及び/または範囲(複数可)が提供される。いくつかの実施形態では、正常な時間差の値は、測定された正常な時間差の統計的表現によって提供される。例えば、平均、中央値、標準偏差、分散、歪み、尖度、極値、最大値、最小値、範囲、二次モーメントの1つまたは複数である。
【0237】
あるいは、いくつかの実施形態では、統計的表現値(複数可)及び/または正常境界は、患者データ(例えば、年齢、診断)を使用して固定及び/または推定される。
【0238】
いくつかの実施形態では、正常範囲(複数可)及び/または予測平均値及び/または統計的表現値(複数可)は、固定値または推定値を使用して決定され、その後、測定値を使用して調整される。
【0239】
いくつかの実施形態では、(例えば、統計的表現(複数可)の)正常の範囲及び/または値(複数可)は、測定値を使用して周期的に更新される。
【0240】
いくつかの実施形態では、例えば、本文書の他の箇所に記載されているように、心収縮性変調(及び/または他の治療及び/または刺激)に適さないと決定された心周期からの測定値は、(例えば、統計的表現値(複数可)の)正常な範囲(複数可)及び/または値(複数可)を決定するために使用される測定値から除外される。
【0241】
いくつかの実施形態では、統計的表現は、ある期間にわたる時間差の変動を記述するものである。
【0242】
いくつかの実施形態では、505において、測定された時間差が正常な値(複数可)及び/または範囲(複数可)と比較される。いくつかの実施形態では、比較は個々の心周期に対して行われる。代替的または追加的に、いくつかの実施形態では、比較は、ある期間について測定された時間差の統計的表現値(複数可)の比較である。例えば、いくつかの実施形態では、比較は、ある期間の平均(例えば、中央)値である。ここで、いくつかの実施形態では、平均は、同様の心拍数の時間差値を使用して決定される。
【0243】
いくつかの実施形態では、507で、ステップ505で実行された比較に基づいて、対象が診断される。
【0244】
いくつかの実施形態では、時間差の変動が心拍数とともに増加する場合、誘発性虚血の可能性及び/または不整脈リスクの増加が診断される。
【0245】
いくつかの実施形態では、高い心拍数で、時間差の変動が増加する場合、誘発性虚血の可能性及び/または不整脈リスクの増加が診断される。ここで、いくつかの実施形態では、誘発性虚血の可能性は、100bpmを超える心拍数、もしくは110bpmを超える心拍数、もしくは120bpmを超える心拍数、またはそれらより低い、もしくはそれらより高い、もしくはそれらの間の心拍数について診断されるが、これらの高い心拍数において、時間差の統計的表現が、(例えば、閾値を超える)時間差の変動の増加を示す。
【0246】
図4に関して述べたように、そのような測定値及び/またはその分析は、植込み型装置から、またはそのコントローラから、例えば警告及び/または報告及び/または生データもしくは処理済みデータとして出力されてよい。
【0247】
心臓伝導パターンの例示的識別
ここで
図3A~3Bを再度参照する。いくつかの実施形態では、
図6A~6Dは、例えば、正常な心周期に対してのみ心収縮性変調を提供するために、例えば
図3A~3Bに関して記載及び/または図示されるようなアルゴリズムをどのように使用して正常な洞調律と不整脈とを識別するかを示す。
【0248】
図6A~6Dは、本発明のいくつかの実施形態による、心室中隔636を通過する伝導パターンの区別の概略図である。
【0249】
図6A~8Dのそれぞれには、心臓616内に配置されたリード602、604、及び感知(電極)位置611A、612Aが示されている。また、中隔内伝導ベクトル615の異なる推定値も示されており、これは、感知位置611Aと612Aとの間の波面伝導の見かけの方向及び速度に応じて、方向及び長さが変化する。
【0250】
図6A~6Dのそれぞれの下部のタイムラインにおいて、マーク611、612は、それぞれ、伝導波面が感知位置611A及び612Aに到達する時間を表す。時間範囲613は、いくつかの実施形態では、識別ウィンドウを表す(いくつかの実施形態では、
図3A~3Bの識別ウィンドウの1つまたは複数の特徴を含む)。
【0251】
本発明のいくつかの実施形態では、正常洞調律と異常洞調律の第1の区分は、心室中隔を通る順行性伝導(例えば、
図6A、6C)及び逆行性伝導(例えば、
図6B、6D)を含み得る。
【0252】
図6Aを参照すると、正常な洞調律及び一部の上室性頻拍(SVT)が、心室中隔内の正常伝導装置(ヒス線維とプルキンエ線維の束)を介して順行性方向に心室に伝わる心臓伝導波面ベクトル(すなわち、波面位置610Aから波面位置610Bに向かう伝導ベクトル615)を有する。順行性方向のSVTには、心房頻拍、心房粗動、心房細動、房室結節リエントリ性頻拍(AVNRT)、及び順行性ウルフ・パーキンソン・ホワイト房室リエントリ性頻拍(順行性WPW-AVRT)の1つまたは複数が含まれる可能性がある。
【0253】
一方、真性心室頻拍は、伝導系を通って逆行性方向に伝導され、及び/または伝導系自体内に障害を引き起こす。例えば、
図6Bでは、伝導は波面位置610Cから波面位置610Dに向かって逆行性である。
図6Dにおいて、波面が波面位置610Hと波面位置610Gとの間で移動するとき、伝導は逆行成分を含む。
図6Cの伝導は正行性であるが、上室から始まるのではなく、波面位置610Eから波面位置610Fに向かって移動する。
【0254】
図6A~6Dのタイムラインは、本発明のいくつかの実施形態において、
図3A~3Bの方法がどのように実施されるかの例(複数可)を表す。
【0255】
図6A~6Dのそれぞれにおいて、マーク611は、識別ウィンドウ613の内(
図6A)または外(
図6B~6D)のいずれかにある。
【0256】
マーク611が識別ウィンドウ613内にある場合、いくつかの実施形態では、これは心収縮性変調刺激を適用すべきであることを示すものとみなされる。
【0257】
図7A~7E及び
図8A~8Eは、異なる伝導ベクトル、及び伝導ベクトルに関する異なる電極位置に対する心室事象検出のタイミングを示す。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の図は、ウィンドウ処理アルゴリズム及び/または電極位置の最適化が心収縮性変調の適用を最適化するためにどのように使用されるかを示す。
【0258】
図7A~7Dは、本発明のいくつかの実施形態による、心臓伝導波面の感知の簡略化された概略図である。
【0259】
いくつかの実施形態では、アーチ状の破線で示される波面は中隔組織750を通過する。ここで、正常な波面はAV結節738で始まり、中隔組織736を通ってAV結節738から離れる下方向に進む。
【0260】
いくつかの実施形態では、
図7A~7Cは、第1の電極空間構成について、異なる波面の通過を示す。
【0261】
図7Aにおいて、伝搬は、「正常な」伝導波面750の伝搬であり、これは、AV結節738から発せられ、中隔組織736を通って下方向に進む。
【0262】
図7Bはまた、いくつかの実施形態では、正常伝導波面を示すが、波面752の進行方向は、電極703、704を接続するベクトル760に対してわずかに角度をなしている。
【0263】
図7Cは、いくつかの実施形態では、例えば波面がAV結節738から生じない不整脈の波面を示す。
【0264】
図7Dは、いくつかの実施形態において、正常な波面を示すが、
図7A~7Dに示すものとは異なる電極空間構成を示す。
【0265】
図7Eは、本発明のいくつかの実施形態による、感知された心室事象のタイムラインの簡略化された概略図である。
【0266】
いくつかの実施形態では、
図7Eは、
図7A~7Dの概略図のタイミングを示す。
【0267】
注目すべきは、
図7Cに示す感知された不整脈のタイムラインは、電極のうちの1つが
図7A~7Cに示す位置から移動した、例えば、外れた
図7Eのタイムラインと同じということである。
【0268】
図8A~8Dは、本発明のいくつかの実施形態による、心臓伝導波面の感知の簡略化された概略図である。
【0269】
図8Eは、本発明のいくつかの実施形態による、感知された心室事象のタイミングの簡略化された概略図である。
【0270】
いくつかの実施形態では、
図8A~8Dは、第2の電極空間構成について異なる方向で伝搬する心臓電波の感知を示す。いくつかの実施形態では、
図8Eは、
図8A~
図8Dに示すものに対応する感知された心室事象のタイムラインを示す。
【0271】
心臓の波面が、中隔を通過する方向に、例えば中隔836の左側に向かって(本明細書における方向は、
図8A~8Dに関する方向を指す)頻繁に通過する場合、いくつかの実施形態では、電極は、例えば
図8A~8Dに示すように、それに対応して配置される。潜在的に、より多くの波面に対応する構成に電極を配置すると、心収縮性変調刺激が適用される正常な波面(及び心周期)の割合が増加する可能性がある。
【0272】
しかしながら、
図8Cを参照すると、
図8A~8Cに示されるような角度のついた電極構成は、例えば
図7A~7Dの電極構成よりも、正常な心周期に対して遅延間の時間差が小さい。
【0273】
しかしながら、
図8Dを参照すると、角度の付いた電極構成は、より多いと特定された方向とは異なる方向の心周期の割合を潜在的に減少させる。
【0274】
図9は、本発明のいくつかの実施形態による、心室中隔を通過する伝導パターンの3つのセンサの識別の概略図である。
【0275】
いくつかの実施形態では、心臓伝導波形を感知するために3つ以上の電極が使用される場合、(例えば、本文書の他の箇所に記載されるように)最適な心収縮性変調刺激を生成するために電極(複数可)を配置する方法及び/またはウィンドウ処理アルゴリズムを調整する方法が使用される。
【0276】
不整脈の残りの2つの形態、つまり逆行性ウルフ・パーキンソン・ホワイト房室リエントリ性頻拍(逆行性WPW-AVRT)とウルフ・パーキンソン・ホワイト心房細動(WPW-AF)は、SVTを含み、SVTは、心室中隔を素早く通過する脱分極波面の伝導速度及び方向の分析だけでは、真性心室頻拍と識別できない可能性がある。
【0277】
図9に示すように、心臓916の中隔に配置されたリード102、104に加えて、別の心室領域に配置された第3のリード103が示されている。リード103は、リード104、102と同じ血管(例えば、上大静脈)を通って心臓916に入っているのが示されている。ただし、任意選択で別の方向からルーティングされる。したがって、感知(電極)位置911A、912Aに、リード103の電極の位置に対応する第3の感知位置914Aが追加される。いくつかの実施形態では、リード103は、冠状静脈洞に沿って通るリードなど、例えば心臓再同期療法(RCT)で使用されるようなLVリードである。いくつかの実施形態では、リード103は、左心房の心尖に配置されるリードである。
【0278】
この例では、中隔内伝導ベクトル915の推定値は、正常な順行性伝導と区別がつかないように見え、実際、
図9のタイムライン上のマーク911は、識別ウィンドウ913内に収まる。これにより、同時発生する頻拍がもともと上室性であると判断される可能性がある。
【0279】
しかしながら、いくつかの実施形態では、感知位置914Aを通過する伝導波面の検出は、所定の抑制ウィンドウ913Bの作動をもたらす。抑制ウィンドウ913Bは、識別ウィンドウ913の除細動識別機能を抑制するため、たとえマーク911が除細動ショックの送達を妨げる期間内にあっても、除細動は抑制されない。
【0280】
いくつかの実施形態では、抑制ウィンドウ913Bは、伝導が波面位置910Jと波面位置910Kとの間を迂回して通過するのにかかる時間をカバーするのに十分な長さであるが、SVTの識別を抑制する可能性があるほど長くはない(例えば、約100~250ミリ秒、または他の適切な期間)。任意選択で、抑制ウィンドウ913Bは、遅延913A(例えば、約1~50ミリ秒)の後に始まる。いくつかの実施形態では、例えば、感知位置914Aに最初に到着し、その後、数ミリ秒後に、例えば、感知位置912Aに到達する心房由来の波面が、心室起源の波面開始と混同されないように、遅延913Aは十分に長く設定される。いくつかの実施形態では、例えば、感知位置912Aを通過する伝導波面の検出が、波面が位置915Aを通過する直前に、または通過後のかなり短い期間内にある場合、抑制ウィンドウ913B自体が抑制されてよい。
【0281】
電気刺激を使用した電極位置の例示的な測定
図10は、本発明のいくつかの実施形態による、刺激信号1046及び測定信号1048を示す簡略化された概略図である。
【0282】
いくつかの実施形態では、電気刺激パルス1050は、心臓内、例えば心臓組織(例えば、
図1の電極106、110のうちの1つで)適用される。
【0283】
いくつかの実施形態では、電極間の距離は、パルス1050の測定値を使用して決定される。例えば2つの隔壁電極のうちの、別の隔壁電極、例えば、第2の電極で測定された電気測定信号を使用すると、例えば、刺激パルスが電極106に適用されると、測定信号が電極110で測定される(
図1の電極106、110を参照)。
【0284】
いくつかの実施形態では、測定は、例えば、第2のパルス1054が発生しない場合、結果として生じる単一のパルス1052の測定である。
【0285】
例えば、不応期中に刺激パルスが適用される場合、いくつかの実施形態では、心臓組織における心収縮性変調のシミュレーションに関連付けられた第2のパルスは生じないか、または最小限しか生じない。
【0286】
いくつかの実施形態では、パルス1052の後に第2の測定パルス1054が観察される。例えば、心周期の不応期中でないときに刺激パルス1050が適用されるとき。いくつかの実施形態における測定パルス1052、1054の間の遅延、及び/またはパルス1050と1054の間の遅延は、パルス1050によって刺激される心収縮性変調の移動速度とは対照的に、組織を通る電気パルスの移動速度の差に関連付けられる。いくつかの実施形態では、電極(例えば、
図1の106、110)の位置は、追加的にまたは代替的に、第2のパルス1054の測定を使用して決定される。
【0287】
いくつかの実施形態では、パルス1052、1054の一方または両方のタイミングを使用して、電極の位置が決定される。代替的または追加的に、いくつかの実施形態では、任意選択で適用パルス1050の振幅に対するパルス1052、1054の一方または両方の振幅が、電極の位置を決定するために使用される。
【0288】
いくつかの実施形態では、例えば、いくつかの実施形態におけるパルス1052は、パルス1050の注入とほぼ瞬時に測定されるため、パルス1052の振幅(例えば、パルス1050の振幅とパルス1052の振幅との差)が、電極間の距離を決定するために使用される。
【0289】
いくつかの実施形態では、パルス1050及び/またはパルス1042とパルス1054との間の遅延を使用して、電極間の距離が決定される。
【0290】
この出願から特許の存続が満了する期間中に、多くの関連する心刺激技術が開発されることが予測され、心刺激という用語の範囲は、そのようなすべての新技術を先験的に含むことを意図している。
【0291】
本明細書で使用される「約」という用語は、±20%を指す。
【0292】
「備える/含む(comprises)」、「備える/含む(comprising)」、「備える/含む(includes)」、「備える/含む(including)」、「有する(having)」という用語及びそれらの同根語は、「限定ではないが、~を含む」を意味する。
【0293】
用語「~から成る(consisting of)」は、「を含み、~に限定される」を意味する。
【0294】
用語「本質的に~からなる(consisting essentially of)」は、組成、方法または構造が、追加の成分、ステップ及び/または部分を含み得ることを意味するが、追加の成分、ステップ及び/または部分は、特許請求された組成、方法または構造の基本的かつ新規な特性を実質的に変えない場合に限る。
【0295】
本明細書で使用する場合、文脈上明らかに別段に指示されている場合を除き、単数形「a」、「an」及び「the」は、複数の指示対象を含む。例えば、用語「化合物(a compound)」または「少なくとも1つの化合物(at least one compound)」は、それらの混合物を含む複数の化合物を含み得る。
【0296】
本願を通して、本発明の様々な実施形態は、範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は、単に便宜上及び簡潔にするためのものであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない制限として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の記載は、その範囲内の個々の数値だけでなく、可能性のあるすべてのサブ範囲を具体的に開示したものと見なされるべきである。例えば、「1~6」などの範囲の記述は、「1~3」、「1~4」、「1~5」、「2~4」、「2~6」、「3~6」などのサブ範囲と、その範囲内の個々の数値、例えば、1、2、3、4、5、及び6とを具体的に開示していると見なされるべきである。これは、範囲の広さに関係なく該当する。
【0297】
本明細書で数値範囲が示されるときはいつでも、示された範囲内の任意の引用された数字(分数または整数)を含むことを意味する。第1の示された数と第2の示された数との「間の範囲(ranging/ranges between)」という句、及び第1の示された数「から」第2の示された数「まで(to)」の「範囲(ranging/ranges from)」という句は、本明細書では互換的に使用され、第1の示された数及び第2の示された数と、それらの間の分数及び整数の数字のすべてを含むことを意味する。
【0298】
本明細書で使用される場合、用語「方法」は、化学、薬理学、生物学、生化学及び医学の技術の実践者によって知られている方法、手段、技術及び手順、またはそれらの実践者たちによって既知の方法、手段、技術及び手順から容易に開発される方法、手段、技術及び手順を含むが、これらに限定されない、所与のタスクを達成するための方法、手段、技術及び手順を指す。
【0299】
本明細書で使用される場合、「治療する」という用語は、状態の進行を無効にする、実質的に阻害する、遅らせる、もしくは逆転させる、状態の臨床的もしくは審美的症状を実質的に改善する、または状態の臨床的もしくは審美的症状の出現を実質的に防止することを含む。
【0300】
当然ながら、明確にするために別個の実施形態の文脈において記載した本発明のある特徴は、単一の実施形態において組み合わされて提供されてよい。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈において記載した本発明の様々な特徴を、別々に、または任意の適切な副次的な組み合わせで、または本発明に記載した任意の他の実施形態において適切なものとして提供することもできる。様々な実施形態の文脈で記載したある特徴は、実施形態がそれらの要素なしでは機能しない場合を除いて、それらの実施形態の必須の特徴と見なすべきではない。
【0301】
本発明をその特定の実施形態に関連して記載したが、多くの代替形態、修正形態及び変形形態が当業者には明らかであろうことは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨及び広い範囲に含まれるそのようなすべての代替形態、修正形態及び変形形態を包含することが意図されている。
【0302】
本明細書で参照されるすべての刊行物、特許、及び特許出願は、各個別の刊行物、特許、または特許出願が、参照により本明細書に組み込まれることが示されているとき、これらが具体的かつ個別に記載されているかのように、参照によりその全体が本明細書に組み込まれることが出願人(出願人ら)の意図である。さらに、本願におけるいずれかの参考文献の引用または特定は、そのような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であるということの承認として解釈するべきではない。セクションの見出しが使用されている場合、それらは必ずしも限定であると解釈されるべきではない。さらに、本願のいずれかの優先権書類(複数可)は、本明細書により、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】