(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】溶融金属フィルタ
(51)【国際特許分類】
C22B 9/02 20060101AFI20240326BHJP
B01D 27/08 20060101ALI20240326BHJP
B01D 29/00 20060101ALI20240326BHJP
B01D 29/31 20060101ALI20240326BHJP
B01D 39/20 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C22B9/02
B01D27/08
B01D23/02 A
B01D23/06
B01D39/20 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556990
(86)(22)【出願日】2022-03-17
(85)【翻訳文提出日】2023-11-09
(86)【国際出願番号】 US2022020763
(87)【国際公開番号】W WO2022197931
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515257689
【氏名又は名称】パイロテック インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ヘンダーソン リチャード エス.
(72)【発明者】
【氏名】ハルナン アンドリュー
【テーマコード(参考)】
4D019
4D116
4K001
【Fターム(参考)】
4D019AA03
4D019BA01
4D019BA04
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4D116VV30
4K001AA02
4K001BA23
4K001EA06
(57)【要約】
別の実施形態によれば、2つの対向するプレートを有する溶融金属フィルタが提供される。多孔質耐火材料を含む少なくとも1つの中空の長尺部材は、第1の端部において第1のエンドプレートに取り付けられ、第2の端部において第2のエンドプレートに取り付けられる。第1のエンドプレートは、第1のエンドプレートの幅を通って延びる通路と、長尺部材の第1の端部を受けるレッジとを有する。第2のエンドプレートは、長尺部材の第2の端部を受ける開口部を有する。開口部は、第2のエンドプレートの幅を通り、長尺部材の円周よりも大きい寸法を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの対向するプレートと、多孔質耐火材料を含み、第1の端部において第1のエンドプレートに取り付けられ、第2の端部において第2のエンドプレートに取り付けられた少なくとも1つの中空の長尺部材とを含み、前記第1のエンドプレートは、当該エンドプレートの幅を通って延び、前記長尺部材の前記第1の端部を受ける通路を有し、前記第2のエンドプレートは、前記長尺部材の前記第2の端部を受ける開口部を有し、前記第2のエンドプレートは、前記長尺部材の熱膨張を収容するように構成された要素を含む、溶融金属フィルタ。
【請求項2】
前記要素は、前記開口部内に配置されたタブを含む、請求項1に記載の溶融金属フィルタ。
【請求項3】
前記要素は、前記開口部内又は前記開口部に隣接して配置されたセメントのフィレットを含む、請求項1に記載の溶融金属フィルタ。
【請求項4】
前記通路は、前記長尺部材の前記第1の端部を受けるように適合されたリセスを含む、請求項1に記載の溶融金属フィルタ。
【請求項5】
前記開口部は、前記第2のエンドプレートの幅を通って延び、前記長尺部材の前記第2の端部を収容するように寸法設計された、請求項1に記載の溶融金属フィルタ。
【請求項6】
複数の前記長尺部材、複数の前記通路、及び複数の前記開口部を含む、請求項1に記載の溶融金属フィルタ。
【請求項7】
前記長尺部材が結合された酸化アルミナを含む、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項8】
前記複数のエンドプレートが、グラファイト、又は炭化珪素、及び/又はアルミナ炭化珪素を含む、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項9】
前記長尺部材の前記第2の端部が閉じている、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項10】
前記第1のエンドプレートの前記通路は、前記第2のエンドプレートの前記開口部と同様に構成されている、請求項1に記載の溶融金属フィルタ。
【請求項11】
2つの対向するプレートと、多孔質耐火材料を含み、第1の端部において第1のプレートに取り付けられ、第2の端部において第2のプレートに取り付けられた少なくとも1つの中空の長尺部材とを含み、前記第1のプレートは、当該プレートの幅を通って延びる通路と、前記長尺部材の前記第1の端部を受ける前記通路内のレッジとを有し、前記第2のプレートは、前記長尺部材の前記第2の端部を受ける開口部を有し、当該開口部は、前記第2のプレートの幅を通り、前記長尺部材の円周よりも大きい寸法を有する、溶融金属フィルタ。
【請求項12】
前記長尺部材の前記第1の端部は開口し、前記長尺部材の前記第2の端部は閉じている、請求項11に記載の溶融金属フィルタ。
【請求項13】
対向する2つのプレートと、それらの間に延びる少なくとも1つの中空の長尺部材とを含み、前記長尺部材及び少なくとも第1の前記プレートは多孔質耐火材料を含み、前記多孔質耐火材料プレートは、前記長尺部材の一方の端部を受ける開口部を有し、当該開口部は当該プレートの幅を通り、前記プレートの前記長尺部材に対向する表面の少なくとも一部がセメントコーティングを含む、溶融金属フィルタ。
【請求項14】
前記プレートの前記長尺部材に対向する前記表面の全体がセメントコーティングを含む、請求項13に記載のフィルタ。
【請求項15】
前記表面の周辺部がセメントコーティングを含み、前記表面の中央部がコーティングされていない、請求項13に記載のフィルタ。
【請求項16】
前記第1のプレート及び前記長尺部材が、ガラス結合粒子、又は炭化珪素、又は酸化アルミニウムを含む、請求項13に記載のフィルタ。
【請求項17】
前記多孔質耐火材料が、CaO-Al
2O
3及びMgO-Al
2O
3-B
2O
3から選択されるバインダを含む、請求項16に記載のフィルタ。
【請求項18】
前記第1のプレートを形成する前記粒子は、前記長尺管を形成する粒子以下の粒子サイズを有する、請求項16に記載のフィルタ。
【請求項19】
前記セメントが珪酸ナトリウム及びクレイを含む、請求項13に記載のフィルタ。
【請求項20】
前記対向する2つのプレートのうちの第2のプレートは、結合粒子を含み、前記長尺部材に対向する表面を含み、当該表面は、前記セメントコーティングの少なくとも実質的に完全な被覆を含む、請求項13に記載のフィルタ。
【請求項21】
前記第2のプレートの外表面はセメントコーティングを含み、前記第1のプレートの外表面は、内表面のコーティングに位置が対応したセメントコーティングを含む、請求項20に記載のフィルタ。
【請求項22】
2つの対向するプレートと、少なくとも1つの中空の長尺部材とを有し、前記長尺部材及び少なくとも第1の前記プレートは多孔質耐火材料を含み、前記第1のプレートは、前記長尺部材の一方の端部を受ける開口部を有し、当該開口部は当該プレートの幅を通り、前記長尺部材に対向する前記第1のプレートの少なくとも一部の表面がセメントコーティングを含み、入口サイドと出口サイドとを有するフィルタボックス内に配置されたカートリッジフィルタを提供し、
溶融金属が、前記長尺部材の前記多孔質耐火材料と、セメントコーティングを含まない前記第1のプレートの前記多孔質耐火材料の一部とを通って、出口に到達するように、溶融金属を前記フィルタボックスの前記入口サイドに導入する、溶融金属の濾過方法。
【請求項23】
前記第1のプレートの周辺部は、前記出口の関連する周辺部よりも大きく、これらの周辺部の重なりに対応する当該プレートの表面のみがコーティングされた、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年3月18日に出願された米国仮出願第63/162,896号の優先権を主張し、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
本例示的な実施形態は、フィルタに関する。それは特に、溶融金属から固体介在物を除去するのに使用されるカートリッジフィルタの用途に利用でき、特にそれに言及して説明する。しかしながら、本例示的な実施形態は、他の同様の用途にも適用可能であることが理解されるべきである。
【背景技術】
【0002】
溶融アルミニウムは一般的に、最終鋳造金属製品に有害な固体介在物を含む。これらの固体介在物は通常、3つの発生源に由来する。いくつかは、表面に浮遊している酸化物層から液体流に引き込まれる酸化物粒子であり、いくつかの介在粒子は、炉内ライニング、移送トラフ、及び溶融アルミニウム処理装置の他の部分の破片であり、これらは腐食され、流れるアルミニウム流に引き込まれ、いくつかの粒子は、金属間化合物、ホウ化物、炭化物、又は塩化アルミニウム等の他のアルミニウム化合物の沈殿物等の不溶性不純物の沈殿物である。
【0003】
溶融アルミニウムが凝固した後に最終鋳造製品に介在物が現れると、そのような最終製品は、延性が低下し、強度が低下し、又は仕上げ特性が不良になる。したがって、そのまま使用されてもよいし、圧延、鍛造、押出等の成形作業をされてもよい固形体に鋳造する前に、溶融アルミニウムから固体介在物を除去することが望ましい。
【0004】
カートリッジフィルタプロセスは、固体を含んだ液体を、その上にケーキが形成される多孔質の均一なフィルタ媒体に通すことによって、液体から固体介在物を除去する。ケーキ形成は、過剰な二ホウ化チタン等のケーキ形成添加剤を溶融金属に導入することによって促進することができる。ケーキ形成は、濾過プロセスを調整するために制御することができる。通常、濾過プロセスは、ケーキが放出されると終了する。
【0005】
一般的に溶融金属、特に溶融アルミニウムの濾過は、液体が非常に攻撃的であるため、その攻撃的な化学的及び熱的環境に耐えることができる濾材を見つけることが困難であるという特別な問題を有する。このようなシステムでは、耐熱性材料の濾材又は濾材要素が使用される。好ましい材料は、高温での溶融、金属との化学反応、及び浸食による劣化に抵抗する。濾材はまた、そのような高温で構造的完全性を維持しなければならず、そして、もちろん、化学反応及び/又はそこを通るそれらの流れの機械的防止により、固体及び半液体の流れを捕捉又は阻止しなければならない。
【0006】
濾過を達成するための様々な手段は、当業者に知られている。この例は、米国特許第4,964,993号明細書;第4,444,377号明細書;第4,426,287号明細書;第4,413,813号明細書;第4,384,888号明細書;第4,330,328号明細書;第4,330,327号明細書;第4,302,502号明細書;第4,298,187号明細書;第4,258,099号明細書;第4,179,102号明細書;第4,159,104号明細書;第4,081371号明細書;第4,032,124号明細書;第3,869,282号明細書;及び第5,126,047号明細書に見られ、参照により本明細書に組み込まれる。米国特許第5,369,063号明細書は、参照により本明細書に組み込まれ、プレートに成形できるアルミナのフォームフィルタ(foam filter)を開示する。また、当技術分野では、濾過管によって相互接続された複数の長方形のエンドプレートを含むカートリッジフィルタが利用される(例えば、米国特許第3,747,765号明細書及び米国特許第5,741,422号明細書を参照されたい。それらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,964,993号明細書
【特許文献2】米国特許第4,444,377号明細書
【特許文献3】米国特許第4,426,287号明細書
【特許文献4】米国特許第4,413,813号明細書
【特許文献5】米国特許第4,384,888号明細書
【特許文献6】米国特許第4,330,328号明細書
【特許文献7】米国特許第4,330,327号明細書
【特許文献8】米国特許第4,302,502号明細書
【特許文献9】米国特許第4,298,187号明細書
【特許文献10】米国特許第4,258,099号明細書
【特許文献11】米国特許第4,179,102号明細書
【特許文献12】米国特許第4,159,104号明細書
【特許文献13】米国特許第4,081,371号明細書
【特許文献14】米国特許第4,032,124号明細書
【特許文献15】米国特許第3,869,282号明細書
【特許文献16】米国特許第5,126,047号明細書
【特許文献17】米国特許第5,369,063号明細書
【特許文献18】米国特許第3,747,765号明細書
【特許文献19】米国特許第5,741,422号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
カートリッジフィルタは、優れたスループット、濾過能力、及び寿命を有するため、しばしば優れたフィルタと考えられる。従来のカートリッジフィルタ設計に固有の問題の1つは、フィルタボックスの出口端のエンドプレートが割れて、濾過されない溶融金属のバイパスを可能にする傾向があることである。本開示は、高度の構造的完全性と優れた濾過特性を有するカートリッジフィルタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、基本的な理解を提供するために、本開示の様々な詳細を要約する。この要約は、本開示の広範な概要ではなく、本開示の特定の要素を特定することも、その範囲を明確にすることも意図していない。むしろ、この要約の主な目的は、以下に示すより詳細な説明の前に、本開示の概念を簡略化して提示することである。
【0010】
第1の実施形態によれば、2つの対向するプレートと少なくとも1つの中空の長尺部材とを含む溶融金属フィルタが提供される。長尺部材は、多孔質耐火材料(porous refractory material)から形成され、第1の端部において第1のエンドプレートに取り付けられ、第2の端部において第2のエンドプレートに取り付けられる。第1のエンドプレートは、このエンドプレートの幅を通って延び、長尺部材の第1の端部を受ける通路を有する。第2のエンドプレートは、長尺部材の第2の端部を受ける開口部を有する。第2のエンドプレートの開口部は、長尺部材の熱膨張を収容するように構成された要素を含む。
【0011】
別の実施形態によれば、2つの対向するプレートを有する溶融金属フィルタが提供される。多孔質耐火材料(porous refractory material)を含む少なくとも1つの中空の長尺部材は、第1の端部において第1のプレートに取り付けられ、第2の端部において第2のプレートに取り付けられる。第1のプレートは、このプレートの幅を通って延びる通路と、長尺部材の第1の端部を受ける通路内のレッジとを有する。第2のプレートは、長尺部材の第2の端部を受ける開口部を有する。この開口部は、第2のプレートの幅を通り、長尺部材の円周よりも大きい寸法を有する。
【0012】
さらなる実施形態によれば、2つの対向するプレートとそれらの間に延びる少なくとも1つの中空の長尺部材とを含む溶融金属フィルタが提供される。長尺部材及び少なくとも第1のプレートは多孔質耐火材料(porous refractory material)を含む。多孔質耐火材料プレートは、長尺部材の一方の端部を受ける開口部を有する。この開口部はこのプレートの幅を通る。このプレートの長尺部材に対向する表面の少なくとも一部はセメントコーティングを含む。
【0013】
別の実施形態によれば、溶融金属の濾過方法が提供される。この方法は、2つの対向するプレートと、少なくとも1つの中空の長尺部材とを有するカートリッジフィルタを提供することを含む。長尺部材及び少なくとも第1のプレートは多孔質耐火材料(porous refractory material)を含む。第1のプレートは、長尺部材の一方の端部を受ける開口部を有する。この開口部はこのプレートの幅を通る。長尺部材に対向する第1のプレートの少なくとも一部の表面がセメントコーティングを含む。カートリッジフィルタは、入口サイドと出口サイドとを有するフィルタボックス内に配置される。溶融金属が、長尺部材及びセメントコーティングを含まない第1のプレートの一部の多孔質耐火材料を通って、出口に到達するように、溶融金属がフィルタボックスの入口サイドに導入される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
以下に、図面の簡単な説明を示すが、これらは本明細書に開示される例示的な実施形態を説明する目的のために提示されており、それを制限することを目的とするものではない。
【0015】
本発明は、示され、説明される新規な部分、構成、配置、組合せ、及び改良からなる。明細書に組み込まれ、明細書の一部を構成する添付図面は、本発明の一実施形態を示し、明細書とともに本発明の原理を説明するのに役立つ。
【0016】
【
図1】従来技術による溶融金属カートリッジフィルタアセンブリの断面図である。
【0017】
【
図2】本開示のカートリッジフィルタのエンドプレートの斜視図である。
【0018】
【
図3】本開示にしたがって構成されたカートリッジフィルタアセンブリの構成要素としての個々の管の断面図である。
【0019】
【
図4】本開示の別の実施形態にしたがって構成された溶融金属カートリッジフィルタのエンドプレートの通路の断面図である。
【0020】
【
図5】本開示のさらに別の実施形態にしたがって構成された溶融金属カートリッジフィルタのエンドプレートの通路の断面図である。
【0021】
【
図6】本開示のさらなる実施形態によるフィルタボックスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
添付図面を参照することにより、本明細書に開示されている構成部品、プロセス、及び装置のより完全な理解を得ることができる。これらの図は、単に本開示を示す便宜性及び容易性に基づく概略図であり、したがって、装置又はその構成部品の相対的なサイズ及び寸法を示すこと、及び/又は、例示的な実施形態の範囲を定義又は制限することを意図していない。
【0023】
以下の説明では、明確にするために特定の用語を使用するが、これらの用語は、図面で説明するために選択された実施形態の特定の構造のみを参照することを意図しており、開示の範囲を定義又は制限することを意図していない。以下の図面及び以下の説明において、数値符合類は、機能などを持つ構成要素を指すことを理解されたい。
【0024】
単数形「a」、「an」、及び「the」は、特に明記しない限り、複数形を含む。
【0025】
ここでの使用において、「約(about)」という用語は、一般的かつ実質的に、そのような用語によって変更された要素又は数の目的に大きな影響を与えない構造的又は数値的変更を包含することを意図している。
【0026】
明細書及び特許請求の範囲の使用において、用語「含む(comprising)」は、「からなる(consisting of)」及び「から実質的になる(consisting essentially of)」の実施形態を含むことができる。ここでの使用において、用語「含む(comprise(s))」、「含む(include(s))」、「有している(having)」、「有する(has)」、「できる(can)」、「含む(contain(s))」、及びそれらの変形は、指定された成分/工程の存在を必須とし、他の成分/工程の存在を許容する、オープンエンドの移行語句、用語、又は単語であることを意図している。しかしながら、そのような記述は、組成物又はプロセスを、列挙された成分/工程「からなる(consisting of)」及び「から実質的になる(consisting essentially of)」としても記述していると解釈されるべきであり、これは、指定された成分/工程と、それから生じる可能性のある不純物のみの存在を許容し、他の成分/工程を除外する。
【0027】
図1を参照して、従来技術による溶融金属カートリッジフィルタは、符号2で示されている。それは、水平方向に配列した4つの円筒状の管4(それらのうちの2つのみが図示されている)を含み、それらは、それらの端部において、一対の平行なプレート6、8に接続されている。プレート6は、管4の中空開端部と連通する開口部10を含む。プレート8は、中空管4の閉端部を受ける4つのリセス9を含む。フィルタボックス12の蓋内に発熱体11を設けることができる。
【0028】
フィルタボックス12内にフィルタ2を配置する。溶融金属が入口14を通ってフィルタボックス12内に入ると、溶融金属は強制的に管壁を通って中空管内部21に入り、開口部10を通って出口16に到達する。溶融金属は、各中空管の表面に形成されるケーキを通過する際に濾過される。
【0029】
通路10は、プレート6の内面23から外面25まで延びている。各通路10には、管4の端部を受けるレッジ27が形成されている。プレート8は、管4の反対側の端部を受けるリセス29を含む。プレート6はプレート8よりも材料が少ないため(通路対リセス)、ガスケットが使用されている場合でも、管の熱膨張はプレート6にクラックを生じやすいことが見出されている。プレート6のクラックは、フィルタボックス12から出口16及び下流の鋳造操作への濾過されていない金属の望ましくない流れを可能にする。
【0030】
ここで、
図2を参照して、カートリッジプレート106が、カートリッジプレート108に隣接して示されている。カートリッジプレート106はフィルタボックスの出口サイドに設置されるように意図され、カートリッジプレート108はフィルタボックスの入口サイドに配置されるように意図される。組立て状態では、濾過管はプレート106/108の間に延びる。これらのプレートは、例えば、グラファイト、炭化珪素、又はセラミックシリケートで構成することができ、管は、例えば、ガラス、炭化珪素、又はアルミナの結合粒子で構成することができる。
【0031】
管の第1の閉端部は開口部110に受け入れられ、管の第2の開端部は通路112に受け入れられる。通路112は、カートリッジプレート106の幅を通るが、管の端部に当接するレッジ113を含む。開口部110は、プレート108の幅を通る。開口部110は、開口部の長さに渡って管の全円周を受け入れるのに充分な寸法を有することができる。開口部110は、開口部内の管の長さ方向の熱膨張を許容するように設けられる。この点に関して、開口部110は、エンドプレートの全幅を貫通するように示されているが、開口部は、熱膨張を収容するのに充分な深さのみであることが想定される(
図3を参照されたい。)。ただし、プレートを完全に貫通する開口部は、濾過管の端壁が付加的な濾過表面となるという点で有利であり得ることに留意されたい。エンドプレート108は、移送及び設置のためにカートリッジフィルタの組立てを可能にする要素を含むようにさらに変更することができる。
【0032】
ここで、
図3を参照して、カートリッジフィルタの構成、移送、設置、及び熱膨張を可能にするための1つの設計が示されている。特に、濾過管200は、膨張ギャップ204が残るように部分的にのみリセス202に挿入される。長尺管200は、セメントのフィレット210を用いてエンドプレート208に固定される。長尺管200の反対側の端部は、エンドプレート212内の通路にセメントで固定される。セメントの量は、移送と設置を可能にするために組み立てられたカートリッジフィルタの充分な構造的完全性を提供するが、熱膨張が発生したときにフィレットでの優先的破壊を提供するように選択される。
【0033】
この点に関して、使用されるセメントの量は、エンドプレート106よりも構造的完全性の低い接合部を形成すべきである。さらに、フィレット210は、長尺管206の長さの拡張時にフィレットがクラックされ、管の端部がいずれかのエンドプレートをクラックするのではなく、膨張ギャップ204内に膨張するように、最小である。ここで、セメントのフィレットは、管の全円周に渡って、薄い、不連続、又はその両方であることができる。
【0034】
ここで、
図4を参照して、別の実施形態が示されている。この実施形態では、入口側のエンドプレート308は、エンドプレートの幅を完全に通る開口部310(1つのみが図示されている)を含む。開口部310の寸法は、濾過管311の閉端部の挿入を容易にするのに充分な大きさであろう。開口部は、少なくとも1つのタブ312をさらに備える。タブ312は、セメントの単一体であり得る。セメントは、開口部310又は管311の表面の一方又は両方にコーティングとして適用され得る。管を開口部に挿入すると、セメントは、管内のリセス316内及びエンドプレート内のリセス318内に流れ込み、硬化後にタブ312を形成することができる。
【0035】
代替的又は追加的に、溝320(又は複数の溝)を設けて、リセス318内へのセメント注入を可能にすることができる。リセスは、任意の形状(例えば、円形状又は長方形状)であることができる。同様に、リセスは、管とエンドプレートとの界面の全円周に渡って連続又は不連続であることができることに留意されたい。
【0036】
ここで、
図5を参照して、さらに別の実施形態が示されている。この実施形態では、濾過管411はまた、エンドプレート408に形成された通路410に挿入される。タブ412は、濾過管411の閉端部の末端部414を受ける。濾過管411とタブ412との間の界面は、セメントで固定することができる。濾過管411の熱膨張が起こり、それが通路410内にさらに広がると、タブ412は破損又は脱落し、末端部414が通路内のより深いところに膨張することを可能とする。いくつかの実施形態において、膨張は、濾過管411の末端部414が第2のタブ418に接するに充分であり得る。
【0037】
上記の実施形態のいずれにおいても、タブは、管の熱膨張中に破損するサイズ、材料、及び/又は設計で構成することができ、管がエンドプレートをクラックすることなく開口部内にさらに侵入することを可能にする。例えば、タブ412は、優先的に破損する厚さ(5mmで示されている)を有することができる。代替的に、タブ412は、濾過管の熱膨張中にエンドプレートからのタブの脱落を可能にするために、最小のディテント416内に受容することができる。さらなる代替として、タブは、アルミニウム又はマグネシウム等の溶融金属に溶解する材料で構成することができる。
【0038】
濾過管は、断面視円形状であることができるが、断面構成は重要ではなく、必要に応じて他の形状を選択することができる。しかしながら、エンドプレートのリセスが少なくとも一般的な類似の形状であれば、有利であろう。プレートの表面と各管との間には、2,000°F超の温度で有用なアルミナ-シリカ繊維シート材料であるファイバーフラックスのガスケット(パイロテック社製)等の、圧縮性のアルミニウム適合シーラント材料を介在させることができる。
【0039】
ここで、
図6の実施形態を参照して、円筒状の管504が2つの対向するエンドプレート506、508の間に延びるカートリッジフィルタ502が提供される。円筒状の管と少なくともエンドプレート506は、多孔質耐火材料(porous refractory material)で構成することができる。
【0040】
一実施形態において、エンドプレート506の内表面の全体(例えば、領域510、512、及び515)が、少なくとも実質的に耐火性セメントでコーティングされる。さらに、管504によって遮られないエンドプレート506の内表面は、このコーティングを含むことができる。
【0041】
有利なことに、本開示のセメントコーティング結合粒子プレートは、キャスタブル炭化珪素又はキャスタブルアルミナ炭化珪素で形成された従来のプレートよりも安価で強度があり得ることが見出されている。このようにして、熱膨張によるクラックの起こりにくい安価なエンドプレートが提供される。
【0042】
代替的に、管に面するエンドプレート506の表面の一部はセメントコーティングを含み、一方、出口516に向けて通過するように溶融金属を濾過するのに適した部分はセメントコーティングを含まない。例えば、領域510及び512はセメントコーティングを含むことができる。領域515は、セメントコーティングを含まないであろう。この設計は、溶融金属がエンドプレート506の領域515を通って出口516に流れることを可能にする。
【0043】
さらに、セメントコーティング部分は、溶融金属が結合粒子材料に入るのを防ぐように構成され、非コーティング領域は、濾過に利用できる表面積を増加させ、カートリッジフィルタの効率を改善する。コーティング領域は、フィルタボックスの望ましくない領域への溶融金属の流れを防止し、エンドプレートにおける熱膨張クラックに抵抗する強度の有意な増加を提供する。
【0044】
ここで、実施可能な構成では、出口516への開口部518と並ばない任意の位置で、エンドプレート506の内表面及び任意に外表面をコーティングすることであろう。プレート508は、内表面及び任意に外表面にコーティングすることができる。
【0045】
例示的なセメントコーティングは、約1~5mmの厚さを有するであろう。例示的なセメントは、珪酸ナトリウム/クレイ系、又は、アルミナシリカ/クレイ系等の、高耐熱と低CTEを有するものである。適切なセメントは、パイロテック社から入手可能なFrakset(登録商標)セメントであることができる。
【0046】
プレート506(任意でプレート508)及び管は、炭化珪素のガラス結合粒子の結合粒子、又は、酸化アルミニウムの結合粒子から構成することができる。粒子は、CaO-Al2O3-B2O3及びMgO-Al2O3-B2O3等のバインダを用いて結合できる。
【0047】
プレートを形成する粒子は、長尺管を形成する粒子以下の粒径を有することができる。このようにして、溶融金属は、エンドプレート506と同等又はそれより高い速度で管を通過するであろう。
【0048】
図6の実施形態によれば、溶融金属の濾過方法は、溶融金属が長尺部材504の多孔質耐火材料及び第1のプレート506の多孔質耐火材料の領域515(コーティングされていない場合)を通って出口に通過するように、溶融金属をフィルタボックスの入口サイド514に導入することを可能にする。
【0049】
例示的な実施形態は、好ましい実施形態を参照して説明された。明らかに、修正及び変更は、先の詳細な説明を読んで理解したときに、他のものにも起こるであろう。例示的な実施形態は、それらが添付の特許請求の範囲又はその同等物の範囲内にある限り、すべてのそのような修正及び変更を含むと解釈されることを意図している。
【0050】
本出願及びその結果得られる特許の読者が、ここに添付された特許請求の範囲を解釈するのを助けるために、出願人は、「ための手段(means for)」又は「ための工程(step for)」という語が特定の請求項において明示的に使用されない限り、添付の特許請求の範囲又は請求項の要素が35 U.S.C112(f)を援用することを意図しない。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの対向するプレートと、
多孔質耐火材料を含み、第1の端部において第1のエンドプレートに取り付けられ、第2の端部において第2のエンドプレートに取り付けられた少なくとも1つの中空の長尺部材とを含み、
前記第1のエンドプレートは、当該エンドプレートの幅を通って延び、前記長尺部材の前記第1の端部を受ける通路を有し、
前記第2のエンドプレートは、前記長尺部材の前記第2の端部を受ける開口部を有し、前記第2のエンドプレートは、前記長尺部材の熱膨張を収容するように構成された要素を含む、溶融金属フィルタ。
【請求項2】
前記要素は、前記開口部内に配置されたタブを含む、請求項1に記載の溶融金属フィルタ。
【請求項3】
前記要素は、前記開口部内又は前記開口部に隣接して配置されたセメントのフィレットを含む、請求項1に記載の溶融金属フィルタ。
【請求項4】
前記開口部は、前記第2のエンドプレートの幅を通って延び、前記長尺部材の前記第2の端部を収容するように寸法設計された、請求項1に記載の溶融金属フィルタ。
【請求項5】
前記長尺部材の前記第2の端部が閉じている、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項6】
前記第1のエンドプレートの前記通路は、前記第2のエンドプレートの前記開口部と同様に構成されている、請求項1に記載の溶融金属フィルタ。
【請求項7】
対向する2つのプレートと、それらの間に延びる少なくとも1つの中空の長尺部材とを含み、
前記長尺部材及び少なくとも第1の前記プレートは多孔質耐火材料を含み、
前記
第1のプレートは、前記長尺部材の一方の端部を受ける開口部を有し、当該開口部は当該プレートの幅を通り、前記プレートの前記長尺部材に対向する表面の
全体がセメントコーティングを含む
か、
前記表面の周辺部がセメントコーティングを含み、前記表面の中央部がコーティングされていない、溶融金属フィルタ。
【請求項8】
前記第1のプレート及び前記長尺部材が、
ガラス、炭化珪素、又は酸化アルミニウム
の結合粒子を含む、
請求項7に記載のフィルタ。
【請求項9】
前記多孔質耐火材料が、CaO-Al
2O
3及びMgO-Al
2O
3-B
2O
3から選択されるバインダを含む、
請求項8に記載のフィルタ。
【請求項10】
前記第1のプレートを形成する前記粒子は、前記長尺
部材を形成する粒子以下の粒子サイズを有する、
請求項8に記載のフィルタ。
【請求項11】
前記対向する2つのプレートのうちの第2のプレートは、結合粒子を含み、前記長尺部材に対向する表面を含み、当該表面は、前記セメントコーティングの少なくとも実質的に完全な被覆を含む、
請求項7に記載のフィルタ。
【請求項12】
前記第2のプレートの外表面はセメントコーティングを含み、前記第1のプレートの外表面は、内表面のコーティングに位置が対応したセメントコーティングを含む、
請求項11に記載のフィルタ。
【請求項13】
前記第1のエンドプレートが多孔質耐火材料を含み、入口サイドと出口サイドとを有するフィルタボックス内に配置された
、請求項1に記載の溶融金属フィルタを提供し、
溶融金属が、前記長尺部材の前記多孔質耐火材料と、セメントコーティングを含まない前記第1の
エンドプレートの前記多孔質耐火材料の一部とを通って、出口に到達するように、溶融金属を前記フィルタボックスの前記入口サイドに導入する、溶融金属の濾過方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0046
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0046】
プレート506(任意でプレート508)及び管は、ガラスの結合粒子、炭化珪素の結合粒子、又は、酸化アルミニウムの結合粒子から構成することができる。粒子は、CaO-Al2O3-B2O3及びMgO-Al2O3-B2O3等のバインダを用いて結合できる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】