(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ポリペプチドの翻訳後修飾をオンラインで検出するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20240326BHJP
C12P 21/00 20060101ALI20240326BHJP
C07K 14/00 20060101ALI20240326BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240326BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20240326BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20240326BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20240326BHJP
G01N 30/72 20060101ALI20240326BHJP
C12Q 1/37 20060101ALN20240326BHJP
【FI】
G01N33/68
C12P21/00 C
C07K14/00
A61K45/00
G01N21/27 Z
G01N27/62 V
G01N27/62 X
G01N30/88 J
G01N30/72 C
C12Q1/37
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557068
(86)(22)【出願日】2022-03-15
(85)【翻訳文提出日】2023-11-06
(86)【国際出願番号】 IB2022052321
(87)【国際公開番号】W WO2022195473
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】391008951
【氏名又は名称】アストラゼネカ・アクチエボラーグ
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】アーン,ジューミ
(72)【発明者】
【氏名】アルバーグーティ,メタル
【テーマコード(参考)】
2G041
2G045
2G059
4B063
4B064
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041EA04
2G041FA12
2G041HA01
2G045AA40
2G045DA36
2G059AA01
2G059BB04
2G059CC16
2G059DD12
2G059EE01
2G059FF04
2G059HH03
2G059JJ01
2G059MM12
4B063QA01
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4B063QA18
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4B063QQ79
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4C084NA20
4H045AA10
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4H045BA10
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4H045BA53
4H045DA75
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本明細書では、ポリペプチドの翻訳後修飾及びグリコシル化をモニタリングするための方法及びシステム、特に、細胞培養で生産された組換えタンパク質の翻訳後修飾をリアルタイムでモニタリングするためのオンライン(即ち、自動)方法が提供される。タンパク質の翻訳後修飾を検出及び定量化するための方法及びシステムには、フローインジェクション分析(FIA)、アフィニティーカラム、分光測定、消化、及びペプチドマッピングが含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質の翻訳後修飾を検出するための方法であって、少なくとも1つのプロセッサによって制御されるフローインジェクション分析器(FIA)により行われ、
(a)前記タンパク質を含む第1の試料を保持リザーバ内に収容すること;
(b)前記FIAを介して、第1の体積の結合緩衝液を前記FIA内のアフィニティーカラムに送達すること;
(c)前記FIAを介して、前記第1の試料を前記保持リザーバから前記アフィニティーカラムに移送すること;
(d)前記FIAを介して、第1の体積の溶出緩衝液を前記アフィニティーカラムに送達し、それにより前記アフィニティーカラムから前記第1の試料中の前記タンパク質を溶出させて第1の溶出液を形成すること;
(e)前記FIAを介して、前記第1の溶出液をタンパク質濃度検出ユニットに移送すること;
(f)前記少なくとも1つのプロセッサによって前記第1の溶出液中の前記タンパク質の濃度を決定すること;
(g)前記タンパク質を含む第2の試料を前記保持リザーバ内に収容すること;
(h)前記FIAを介して、第2の体積の前記結合緩衝液を前記アフィニティーカラムに送達すること;
(i)前記FIAを介して、前記第2の試料を前記保持リザーバから前記アフィニティーカラムに移送すること;
(j)前記FIAを介して、第2の体積の溶出緩衝液を前記アフィニティーカラムに送達し、それにより前記アフィニティーカラムから前記第2の試料中の前記タンパク質を溶出させて第2の溶出液を形成すること;
(k)前記FIAを介して、前記第2の溶出液を消化チャンバに移送すること;
(l)前記FIAを介して、消化試薬を送達し、前記第2の溶出液中の前記タンパク質を消化してペプチド混合物を形成すること;及び
(m)前記FIAを介して、前記ペプチド混合物をペプチドマッピングユニットに移送し、前記タンパク質の前記翻訳後修飾を検出すること、
を含む、方法。
【請求項2】
前記FIAが、シーケンシャルインジェクション分析器(SIA)又はダイレクトインジェクション分析器(DIA)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の試料及び前記第2の試料が、細胞培養物から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞培養物が、バイオリアクタ内にある、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記バイオリアクタが、バッチバイオリアクタ、流加バイオリアクタ、又は灌流バイオリアクタを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記アフィニティーカラムが、プロテインAカラムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
(f)の前記第1の溶出液中の前記タンパク質の濃度を決定することが、所定の検量線に従って前記少なくとも1つのプロセッサによって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
(d)の前記第1の溶出液を形成するための前記アフィニティーカラムから溶出した前記第1の試料中の前記タンパク質の溶出時間を、所定の溶出時間に基づいて前記少なくとも1つのプロセッサによって制御することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
(j)の前記第2の溶出液を形成するための前記アフィニティーカラムから溶出した前記第2の試料中の前記タンパク質の溶出時間を、(d)の前記第1の試料と同じ所定の溶出時間に基づいて前記少なくとも1つのプロセッサによって制御することを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記タンパク質濃度検出ユニットが、分光光度計を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記分光光度計が、前記第1の溶出液のUV吸光度を測定し、前記少なくとも1つのプロセッサによって検量線に基づいてタンパク質濃度を算出する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の溶出液中の前記タンパク質が、(l)で酵素的に消化される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記タンパク質の酵素消化が、前記FIAを介して、トリプシン、キモトリプシン、ペプシン、サーモライシン、パパイン、プロナーゼ、エンドペプチダーゼArg-C、ペプチジル-Aspメタロエンドペプチダーゼ(エンドペプチダーゼAsp-N)、グルタミルエンドペプチダーゼ(Glu-Cエンドペプチダーゼ)、及びリシルエンドペプチダーゼ(Lys-Cエンドペプチダーゼ)から選択されるタンパク質分解酵素と前記第2の溶出液を接触させることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記タンパク質分解酵素が、トリプシンを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記タンパク質分解酵素が、熱安定性トリプシンを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
(l)が、
(i)前記FIAを介して、消化試薬を導入して消化混合物を形成すること;
(ii)前記消化混合物を混合すること;及び
(iii)前記消化混合物をインキュベートすること、
を含む、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記消化緩衝液が、約6.0~約7.5のpHの消化緩衝液を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記消化試薬が、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を含む還元剤を含む、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記消化試薬が、タンパク質分解酵素を含む、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記第2の溶出液を、(g)で決定された前記第1の溶出液の濃度に基づいて、前記少なくとも1つのプロセッサによって決定される量のタンパク質分解酵素と接触させる、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記タンパク質分解酵素が、トリプシンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の溶出液を、約1:10~約1:100のトリプシン:タンパク質比でトリプシンと接触させる、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の溶出液を、約1:20~約1:30のトリプシン:タンパク質比でトリプシンと接触させる、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項24】
前記消化混合物をインキュベートすることが、約36℃~約85℃の温度で約5分間~約30分間インキュベートすることを含む、請求項16~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記消化混合物をインキュベートすることが、約50℃~約75℃の温度で約15分間~約30分間インキュベートすることを含む、請求項16~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記消化混合物をインキュベートすることが、約70℃~約72℃の温度で約15分間~約30分間インキュベートすることを含む、請求項16~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記タンパク質分解酵素が、熱安定性トリプシンを含み、前記方法が、
(i)前記FIAを介して、第1の量の消化緩衝液、還元剤、及び熱安定性トリプシンを前記第2の溶出液に導入し、混合して第1の消化混合物を形成すること;
(ii)前記第1の反応混合物を約70℃~約75℃の温度で約10分間~約20分間インキュベートして、第1のインキュベート混合物を形成すること;
(iii)前記FIAを介して、第2の量の熱安定性トリプシンを前記インキュベート混合物に導入し、混合して第2の消化混合物を形成すること;並びに
(iv)前記第2の消化混合物を約70℃~約75℃の温度で約10分間~約20分間インキュベートして、ペプチド混合物を形成すること、
を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項28】
第2の量の消化緩衝液が、前記FIAを介して、(iii)の前記第2の量の熱安定性トリプシンとともに前記第1のインキュベート混合物に添加される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ペプチドマッピングユニットが、質量分析計(MS)を含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
翻訳後修飾を検出することが、質量分析(MS)を使用して実施されるペプチドマッピング分析を含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
翻訳後修飾を検出することが、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)を使用して実施されるペプチドマッピング分析を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
液体クロマトグラフィーが、超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
オンラインで実施される、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記翻訳後修飾が、グリコシル化、酸化、脱アミド化、異性化、糖化、N末端リーダー配列、N末端環化、C末端リジン保持、アミド形成、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
グリコシル化が、N-結合型グリコシル化、O-結合型グリコシル化、又はそれらの組み合わせを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
組換えタンパク質を生産する方法であって、
(a)前記組換えタンパク質が発現される条件下で宿主細胞を培養すること;
(b)請求項1~35のいずれか一項に記載の方法に従って前記タンパク質の翻訳後修飾を検出すること;
(c)(b)で検出された前記翻訳後修飾に基づいて1つ以上の細胞培養パラメータを修正すること、
を含む、方法。
【請求項37】
前記宿主細胞が、バッチバイオリアクタ、流加バイオリアクタ、又は灌流バイオリアクタを含むバイオリアクタ内で培養される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記宿主細胞が、哺乳動物宿主細胞である、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
前記宿主細胞が、CHO、HEK 293、COS、NS0、SP2、又はPER.C6宿主細胞である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
以下の細胞培養パラメータ:pH;CO
2レベル;溶存酸素量(dO
2);温度;栄養素の量若しくはタイプ;グリカン前駆体の存在及びタイプ;又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上が、(b)で検出された前記翻訳後修飾に基づいて修正される、請求項36~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記タンパク質が、少なくとも約1000個のアミノ酸残基を含む、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記タンパク質が、組換え生産される、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記タンパク質が、糖タンパク質を含む、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記タンパク質が、治療用タンパク質を含む、請求項1~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記タンパク質が、治療用抗体又はその抗原結合断片を含む、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記タンパク質が、融合タンパク質を含む、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
請求項35に記載の方法により生産される、組換えタンパク質。
【請求項48】
請求項46に記載の組換えタンパク質と、薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項49】
タンパク質の翻訳後修飾をモニタリングするためのオンライン方法であって、少なくとも1つのプロセッサによって制御されるシリンジポンプ及びマルチポートバルブを含むフローインジェクション分析器(FIA)により行われ、
(a)前記タンパク質を含む第1の試料を前記FIAの保持リザーバ内に収容すること;
(b)前記マルチポートバルブの動作によって、第1の体積の結合緩衝液を前記FIA内のアフィニティーカラムに導入すること;
(c)シリンジポンプの動作によって、前記第1の試料を前記保持リザーバから前記アフィニティーカラムへと進め、前記第1の試料中の前記タンパク質を前記アフィニティーカラムに結合させること;
(d)前記マルチポートバルブの動作によって、第1の体積の溶出緩衝液を前記アフィニティーカラムに導入し、前記結合したタンパク質を溶出させて第1の溶出液を形成すること;
(e)前記シリンジポンプの動作によって、前記第1の溶出液を前記FIA内の分光光度計へと進めること;
(f)前記少なくとも1つのプロセッサによって、測定されたUV吸光度に従って前記第1の溶出液中のタンパク質の濃度を決定すること;
(g)前記タンパク質を含む第2の試料を前記保持リザーバ内に収容すること;
(h)前記マルチポートバルブの動作によって、第2の体積の前記結合緩衝液を前記アフィニティーカラムに導入すること;
(i)前記シリンジポンプの動作によって、前記第2の試料を前記保持リザーバから前記アフィニティーカラムへと進め、前記第2の試料中の前記タンパク質を前記アフィニティーカラムに結合させること;
(j)前記マルチポートバルブの動作によって、第2の体積の溶出緩衝液を前記アフィニティーカラムに導入し、前記結合したタンパク質を溶出させて第2の溶出液を形成すること;
(k)前記シリンジポンプの動作によって、前記第2の溶出液を前記FIA内の消化チャンバへと進めること;及び
(l)前記マルチポートバルブの動作によって、前記消化チャンバ内の前記第2の溶出液に消化試薬を導入し、前記タンパク質を消化してペプチド混合物を形成すること;及び
(m)前記シリンジポンプの動作によって、前記ペプチド混合物をペプチドマッピングユニットへと進め、前記タンパク質の翻訳後修飾を検出すること、
を含む、オンライン方法。
【請求項50】
(m)の前記タンパク質を消化することが、
(i)前記マルチポートバルブの動作によって、消化緩衝液、還元剤、及びタンパク質分解酵素を前記消化チャンバ内の前記第2の溶出液に導入して、混合して第1の消化混合物を形成すること;
(ii)前記消化チャンバ内の前記第1の消化混合物をインキュベートして、第1のインキュベート混合物を形成すること;
(iii)前記マルチポートバルブの動作によって、第2の体積の消化緩衝液及びタンパク質分解酵素を前記インキュベート混合物に導入して、第2の消化混合物を形成すること;並びに
(iv)前記消化チャンバ内の前記第2の消化混合物をインキュベートして、ペプチド混合物を形成すること、
を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記消化緩衝液が、約6.0~約7.5のpHを有する、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記還元剤が、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を含む、請求項50又は51に記載の方法。
【請求項53】
(f)の前記第1の溶出液中の前記タンパク質の濃度が、所定の検量線に従って前記少なくとも1つのプロセッサによって実施される、請求項49~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
(d)の前記第1の溶出液を形成するための前記アフィニティーカラムから溶出した前記第1の試料中の前記タンパク質の溶出時間を、所定の溶出時間に基づいて前記少なくとも1つのプロセッサによって制御することを更に含む、請求項49~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
(j)の前記第2の溶出液を形成するための前記アフィニティーカラムから溶出した前記第2の試料中の前記タンパク質の溶出時間を、(d)の前記第1の試料と同じ所定の溶出時間に基づいて前記少なくとも1つのプロセッサによって制御することを更に含む、請求項41に記載の方法。
【請求項56】
(i)で導入されるタンパク質分解酵素の量が、(g)で決定された前記第1の溶出液の濃度に基づいて前記少なくとも1つのプロセッサによって決定される、請求項49~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記タンパク質分解酵素が、トリプシンを含む、請求項49~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
トリプシンが、熱安定性トリプシンを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記第2の溶出液を、約1:10~約1:100のトリプシン:タンパク質比でトリプシンと接触させる、請求項57又は58に記載の方法。
【請求項60】
前記第2の溶出液を、約1:20~約1:30のトリプシン:タンパク質比でトリプシンと接触させる、請求項57又は58に記載の方法。
【請求項61】
(ii)の前記第1の消化混合物が、約36℃~約85℃の温度で約5分間~約30分間インキュベートされる、請求項50~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
(ii)の前記第1の消化混合物が、約50℃~約75℃の温度で約15分間~約30分間インキュベートされる、請求項50~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
(ii)の前記第1の消化混合物が、約70℃~約72℃の温度で約15分間~約30分間インキュベートされる、請求項50~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
(iv)の前記第2の消化混合物が、約36℃~約85℃の温度で約5分間~約30分間インキュベートされる、請求項50~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
(iv)の前記第2の消化混合物が、約50℃~約75℃の温度で約15分間~約30分間インキュベートされる、請求項50~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
(iv)の前記第2の消化混合物が、約70℃~約72℃の温度で約15分間~約30分間インキュベートされる、請求項50~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記タンパク質分解酵素が、熱安定性トリプシンを含み、前記方法が、
(i)前記マルチポートバルブの動作によって、第1の量の消化緩衝液、還元剤、及び熱安定性トリプシンを前記第2の溶出液に導入し、混合して第1の消化混合物を形成すること;
(ii)前記消化混合物を約70℃~約75℃の温度で約10分間~約20分間インキュベートして、第1のインキュベート混合物を形成すること;
(iii)前記マルチポートバルブの動作によって、第2の量の消化緩衝液及び熱安定性トリプシンを前記インキュベート混合物に導入し、混合して第2の消化混合物を形成すること;並びに
(iv)前記第2の消化混合物を約70℃~約75℃の温度で約10分間~約20分間インキュベートして、ペプチド混合物を形成すること、
を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項68】
前記タンパク質が、少なくとも約1000個のアミノ酸残基を含む、請求項49~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記ペプチド混合物が、約100個未満のアミノ酸を含むペプチドを含む、請求項49~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
タンパク質の翻訳後修飾をモニタリングするためのオンラインシステムであって、
(a)前記タンパク質を含む第1の試料及び第2の試料を収容するように構成された保持リザーバ;
(b)前記第1の試料及び前記第2の試料を前記保持リザーバからフローインジェクション分析器(FIA)を通じて進めるように構成された第1のシリンジポンプ;
(c)第1のシリンジポンプと流体連通した第1のマルチポートバルブ;
(d)前記第1のマルチポートバルブと流体連通し、前記保持リザーバからの前記第1の試料及び前記第2の試料を収容するように構成されたアフィニティーカラム;
(e)前記アフィニティーカラムからの第1の溶出液を収容するように構成された分光光度計であって、前記第1の溶出液が、前記第1の試料からのタンパク質を含み、前記分光光度計が、UV吸光度を決定し且つ所定の検量線に基づいて前記第1の試料のタンパク質濃度を算出するように構成されている、分光光度計;
(f)第2の溶出液を前記アフィニティーカラムから消化チャンバへと進めるように構成された第2のシリンジポンプであって、前記第2の溶出液が、前記第2の試料からのタンパク質を含み、前記第2の溶出液中の前記タンパク質が、(e)で決定された前記第1の試料の前記タンパク質濃度に基づいて消化される、第2のシリンジポンプ;並びに
(g)前記第2のシリンジポンプと流体連通した第2の注入マルチポートバルブ、
を含む、オンラインシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年3月16日に出願された米国仮特許出願第63/200,576号明細書の米国特許法第119条(e)に基づく利益を主張するものであり、この仮特許出願は、その全体があらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、ポリペプチドの翻訳後修飾を検出するための方法、特に、細胞培養で生産された組換えタンパク質の翻訳後修飾をリアルタイムで検出するためのオンライン方法に関する。
【背景技術】
【0003】
融合タンパク質、増殖因子、サイトカイン、酵素、ホルモン、及びモノクローナル抗体(mAb)などの治療用タンパク質を含むバイオ医薬品は、製薬業界で最も急速に成長している分野を代表している。典型的には、バイオ医薬品は、遺伝子操作された宿主細胞(大腸菌(Escherichia coli)又はサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)などの微生物系、アスペルギルス(Aspergillus)などの真菌系、及びチャイニーズハムスター卵巣(CHO)、NS0、又はSp2/0などの哺乳動物系の宿主細胞を含む)を使用して、細胞培養で組換え生産される。哺乳動物系が好まれることが多いが、それは、多くのバイオ医薬品は微生物によって作製するには過度に大きく且つ複雑であるため、又はバイオ医薬品には哺乳動物宿主細胞でのみ可能である翻訳後修飾(PTM)が必要であるためである。しかしながら、PTMは、生体分子の物理化学的特徴に影響を及ぼす可能性があり、これにより、活性、タンパク質間相互作用、生物学的機能、有効性、及び安定性が影響を受ける可能性があり、結果として様々なレベルのタンパク質不均一性が生じるおそれがある。したがって、PTMは、バイオ医薬品のプロセス開発及び製造中に特性評価され、制御され、且つモニタリングされる、重要品質特性(CQA)である。
【0004】
一般的なPTMには、グリコシル化、脱アミド化、異性化、及び酸化、不完全なジスルフィド結合形成、糖化、N末端グルタミン環化、及びC末端リジンプロセシングが含まれる。これらの修飾のうち、最も多く見られ且つ自然に発生するものは、リン酸化、アセチル化、グリコシル化(O-結合型及びN-結合型)、脱アミド化、酸化、水酸化、メチル化、ユビキチン化、ピログルタミン酸、硫酸化、並びに切断である。非特許文献1。
【0005】
グリコシル化は、タンパク質上の特定の部位、例えば、アスパラギン残基(N-結合型グリコシル化)又はセリン(Ser)若しくはトレオニン(Thr)残基(O-結合型グリコシル化)でのグリカンの付着を伴う一般的なPTMである。N-結合型グリコシル化は、コンセンサス配列(Asn-X-Ser/Thr、ここでXはプロリンを除く任意のアミノ酸である)で起こり、小胞体(ER)で開始され、そこでグリカン鎖(Glc3Man9GlcNAc2)がコンセンサス配列のAsn残基に付加される。種々のグリコシドヒドロキシラーゼ酵素によってグリカン鎖がトリミングされた後、糖タンパク質はゴルジ装置に輸送され、そこでグリカンは更なるトリミング及び修飾を受け、様々なN-グリカン構造が生じる。O-結合型グリカンは、通常、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)とSer又はThr残基のヒドロキシル基(-OH)との間に形成されるα-O-グリコシド結合を介して、セリン(Ser)又はトレオニン(Thr)残基に付着する。O-グリカンの生合成は、ゴルジ体内で、UDP-GalNAcからSer又はThr残基へのGalNAcの転移により開始される。O-GalNAc前駆体がプロセシングされ、様々なO-GalNAcグリカンが生成される。非特許文献2。
【0006】
PTMを分析するための従来のプロセスには、細胞培養の終了時に試料を手動で収集すること、試料を検査機関に送り、そこで試料を分析のために濃縮、精製、及び調製することが含まれる。従来のプロセスの所要時間は3~5日となる可能性があり、その結果、開発及び製造の遅延及びコストの増加が生じ得る。分析は典型的にはプロセスの終了時に実施されるため、結果にはプロセスの総合結果が反映される。更に、生産物が必要な規格を満たしていない場合は、細胞培養から開始してプロセス全体を繰り返す必要がある。したがって、製造パラメータを調整して生産物を所望の規格内に保持することができるように、製造過程中に生産物を特性決定するためにリアルタイムで実施することができる分析方法が望まれている。
【0007】
非特許文献3には、抗体グリカンプロファイルをリアルタイムでモニタリングするための、超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)システムと連結されたマイクロシーケンシャルインジェクションシステムを試料調製プラットフォームとして使用した、グリコシル化をリアルタイムでモニタリングするための方法について記載されている。グリカン分析のために、グリカンはPNGase F(P0704,New England BioLabs,Ipswich,MA)を使用して酵素的に抗体から遊離され、UPLCカラムを使用して分離された。
【0008】
組換え生産されたタンパク質の翻訳後修飾(PTM)をリアルタイムでモニタリングするための向上したプロセスが依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Virag et al.(2020)“Current Trends in the Analysis of Post-translational Modifications,”Chromatographia.83:1-10(doi.org/10.1007/s10337-019-03796-9)
【非特許文献2】Zhang et al.(2016)“Glycan analysis of therapeutic glycoproteins,”MAbs.8(2):205-215
【非特許文献3】Tharmalingham et al.(2015)“A Framework for Real-Time Glycosylation Monitoring(RT-GM)in Mammalian Cell Culture,”Biotech.Bioeng.112(6):1146-1154
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、組換え生産されたタンパク質の翻訳後修飾(PTM)を検出する、同定する、又はモニタリングするための方法及びシステムに関し、特に、細胞培養中の組換え生産されたタンパク質のPTMをリアルタイムでモニタリングするためのオンライン方法又はシステムに関する。
【0011】
一態様では、タンパク質の翻訳後修飾を検出するための方法が提供され、本方法は、少なくとも1つのプロセッサによって制御されるフローインジェクション分析器(FIA)により行われる。一態様では、FIAは、シーケンシャルインジェクション分析器(SIA)である。一態様では、FIAは、ダイレクトインジェクション分析器(DIA)である。一態様では、本方法は、
(a)タンパク質を含む第1の試料を保持リザーバ内に収容すること;
(b)FIAを介して、第1の体積の結合緩衝液をFIA内のアフィニティーカラムに送達すること;
(c)FIAを介して、第1の試料を保持リザーバからアフィニティーカラムに移送すること;
(d)FIAを介して、第1の体積の溶出緩衝液をアフィニティーカラムに送達し、それによりアフィニティーカラムから第1の試料中のタンパク質を溶出させて第1の溶出液を形成すること;
(e)FIAを介して、第1の溶出液をタンパク質濃度検出ユニットに移送すること;
(f)少なくとも1つのプロセッサによって第1の溶出液中のタンパク質の濃度を決定すること;
(g)タンパク質を含む第2の試料を保持リザーバ内に収容すること;
(h)FIAを介して、第2の体積の結合緩衝液をアフィニティーカラムに送達すること;
(i)FIAを介して、第2の試料を保持リザーバからアフィニティーカラムに移送すること;
(j)FIAを介して、第2の体積の溶出緩衝液をアフィニティーカラムに送達し、それによりアフィニティーカラムから第2の試料中のタンパク質を溶出させて第2の溶出液を形成すること;
(k)FIAを介して、第2の溶出液を消化チャンバに移送すること;
(l)FIAを介して、消化試薬を送達し、第2の溶出液中のタンパク質を消化してペプチド混合物を形成すること;及び
(m)FIAを介して、ペプチド混合物をペプチドマッピングユニットに移送し、タンパク質の翻訳後修飾を検出すること、を含む。
【0012】
一態様では、第1の試料及び第2の試料は、細胞培養物から得られる。一態様では、細胞培養物は、バイオリアクタ内にある。一態様では、バイオリアクタは、バッチバイオリアクタ、流加バイオリアクタ、又は灌流バイオリアクタである。
【0013】
一態様では、アフィニティーカラムには、プロテインAカラムが含まれる。
【0014】
一態様では、(f)の第1の溶出液中のタンパク質の濃度を決定することは、所定の検量線に従って少なくとも1つのプロセッサによって実施される。
【0015】
一態様では、第1の溶出液を形成するためのアフィニティーカラムからの第1の試料中のタンパク質の溶出時間は、所定の溶出時間に基づいて少なくとも1つのプロセッサによって制御される。一態様では、第2の溶出液を形成するためのアフィニティーカラムからの第2の試料中のタンパク質の溶出時間は、所定の溶出時間に基づいて少なくとも1つのプロセッサによって制御される。一態様では、第1の試料及び第2の試料中のタンパク質の所定の溶出時間は、同じである。一態様では、第1の試料及び第2の試料中のタンパク質の所定の溶出時間は、実験的に決定される。一態様では、第1の試料及び第2の試料中のタンパク質の所定の溶出時間は、本明細書に記載のオンライン方法を実施する前に実験的に決定される。
【0016】
一態様では、タンパク質濃度検出ユニットは、分光光度計を含む。一態様では、分光光度計は、第1の溶出液のUV吸光度を測定し、少なくとも1つのプロセッサによって所定の検量線に基づいてタンパク質濃度を算出する。一態様では、検量線は、実験的に決定される。一態様では、検量線は、本明細書に記載のオンライン方法を実施する前に実験的に決定される。一態様では、分光光度計は、第1の溶出液のUV吸光度を280nmで測定し、少なくとも1つのプロセッサによって検量線に基づいてタンパク質濃度を算出する。一態様では、分光光度計は、第1の溶出液のUV吸光度を205nmで測定し、少なくとも1つのプロセッサによって検量線に基づいてタンパク質濃度を算出する。
【0017】
一態様では、第2の溶出液中のタンパク質は、(l)で酵素的に消化される。一態様では、タンパク質の酵素消化は、FIAを介して、トリプシン、キモトリプシン、ペプシン、サーモライシン、パパイン、プロナーゼ、エンドペプチダーゼArg-C、ペプチジル-Aspメタロエンドペプチダーゼ(エンドペプチダーゼAsp-N)、グルタミルエンドペプチダーゼ(Glu-Cエンドペプチダーゼ)、及びリシルエンドペプチダーゼ(Lys-Cエンドペプチダーゼ)から選択されるタンパク質分解酵素と第2の溶出液を接触させることを含む。一態様では、タンパク質分解酵素は、トリプシンを含む。
【0018】
一態様では、タンパク質分解酵素は、熱安定性トリプシンを含む。一態様では、本方法は、
(i)FIAを介して、消化試薬を第2の溶出液に導入して消化混合物を形成すること;
(ii)消化混合物を混合すること;及び
(iii)消化混合物をインキュベートすること、を含む。
【0019】
一態様では、消化試薬は、消化緩衝液、還元剤、及びタンパク質分解酵素を含む。一態様では、消化緩衝液は、約6.0~約7.5のpHを有する。一態様では、還元剤は、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を含む。一態様では、第2の溶出液を、第1の溶出液の濃度に基づいて、少なくとも1つのプロセッサによって決定される量のタンパク質分解酵素と接触させる。一態様では、タンパク質分解酵素は、トリプシンを含む。一態様では、タンパク質分解酵素は、熱安定性トリプシンを含む。一態様では、第2の溶出液を、約1:10~約1:100の酵素:タンパク質比でタンパク質分解酵素と接触させる。一態様では、第2の溶出液を、約1:20~約1:30の酵素:タンパク質比でタンパク質分解酵素と接触させる。一態様では、第2の溶出液を、約1:10~約1:100のトリプシン:タンパク質比でトリプシンと接触させる。一態様では、第2の溶出液を、約1:20~約1:30のトリプシン:タンパク質比でトリプシンと接触させる。
【0020】
一態様では、消化混合物をインキュベートすることは、約36℃~約85℃の温度で約5分間~約30分間インキュベートすることを含む。一態様では、消化混合物をインキュベートすることは、約50℃~約75℃の温度で約15分間~約30分間インキュベートすることを含む。一態様では、消化混合物をインキュベートすることは、約70℃~約72℃の温度で約15分間~約30分間インキュベートすることを含む。
【0021】
一態様では、タンパク質分解酵素は、熱安定性トリプシンを含み、本方法は、
(i)FIAを介して、消化緩衝液、還元剤、及び熱安定性トリプシンを含む第1の量の消化緩衝液を第2の溶出液に導入し、混合して第1の消化混合物を形成すること;
(ii)第1の消化混合物を約70℃~約75℃の温度で約10分間~約20分間インキュベートして、第1のインキュベート混合物を形成すること;
(iii)FIAを介して、第2の量の熱安定性トリプシンをインキュベート混合物に導入し、混合して第2の消化混合物を形成すること;並びに
(iv)第2の消化混合物を約70℃~約75℃の温度で約10分間~約20分間インキュベートして、ペプチド混合物を形成すること、を含む。
【0022】
一態様では、第2の量の消化緩衝液が、FIAを介して、(iii)の第2の量の熱安定性トリプシンとともに第1のインキュベート混合物に添加される。
【0023】
一態様では、ペプチドマッピングユニットは、質量分析計(MS)を含む。一態様では、翻訳後修飾を検出することは、質量分析(MS)を使用して実施されるペプチドマッピング分析を含む。一態様では、翻訳後修飾を検出することは、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)を使用して実施されるペプチドマッピング分析を含む。一態様では、液体クロマトグラフィーには、超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)が含まれる。
【0024】
一態様では、本方法は、オンラインで実施される。
【0025】
一態様では、翻訳後修飾には、グリコシル化、酸化、脱アミド化、異性化、糖化、N末端リーダー配列、N末端環化、C末端リジン保持、アミド形成、又はそれらの組み合わせが含まれる。一態様では、グリコシル化には、N-結合型グリコシル化、O-結合型グリコシル化、又はそれらの組み合わせが含まれる。
【0026】
一態様では、組換えタンパク質を生産する方法が提供される。一態様では、本方法は、
(a)組換えタンパク質が発現される条件下で宿主細胞を培養すること;
(b)本明細書に記載の方法に従ってタンパク質の翻訳後修飾を検出すること;
(c)(b)で検出された翻訳後修飾に基づいて1つ以上の細胞培養パラメータを修正すること、を含む。
【0027】
一態様では、宿主細胞は、バッチバイオリアクタ、流加バイオリアクタ、又は灌流バイオリアクタであるバイオリアクタ内で培養される。一態様では、宿主細胞は、哺乳動物宿主細胞である。一態様では、宿主細胞は、CHO、HEK 293、COS、NS0、SP2、又はPER.C6宿主細胞である。
【0028】
一態様では、以下の細胞培養パラメータ:pH;CO2レベル;溶存酸素量(dO2);温度;栄養素の量若しくはタイプ;グリカン前駆体の存在及びタイプ;又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上が、本明細書に記載の方法を使用して検出された翻訳後修飾に基づいて修正される。
【0029】
一態様では、タンパク質は、少なくとも1000個のアミノ酸残基を含む。一態様では、タンパク質は、組換え生産される。一態様では、タンパク質は、糖タンパク質を含む。一態様では、タンパク質は、治療用タンパク質を含む。一態様では、タンパク質は、治療用抗体又はその抗原結合断片を含む。一態様では、タンパク質は、融合タンパク質を含む。
【0030】
一態様では、本明細書に記載の方法により生産される組換えタンパク質が提供される。一態様では、本明細書に記載の方法により生産される組換えタンパク質と、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物が提供される。
【0031】
一態様では、タンパク質の翻訳後修飾をモニタリングするためのオンライン方法が提供される。一態様では、本方法は、フローインジェクション分析器(FIA)により行われる。一態様では、FIAは、シーケンシャルインジェクション分析器(SIA)である。一態様では、FIAは、ダイレクトインジェクション分析器(DIA)である。一態様では、FIAは、少なくとも1つのプロセッサによって制御される双方向ポンプを含む。一態様では、FIAは、少なくとも1つのプロセッサによって制御されるシリンジポンプ及びマルチポートバルブを含む。一態様では、FIAは、2つ以上のシリンジポンプ及び2つ以上のマルチポートバルブを含む。一態様では、FIAは、2つのシリンジポンプ及び2つのマルチポートバルブを含む。
【0032】
一態様では、本方法は、
(a)タンパク質を含む第1の試料をFIAの保持リザーバ内に収容すること;
(b)マルチポートバルブの動作によって、第1の体積の結合緩衝液をFIA内のアフィニティーカラムに導入すること;
(c)シリンジポンプの動作によって、第1の試料を保持リザーバからアフィニティーカラムへと進め、第1の試料中のタンパク質をアフィニティーカラムに結合させること;
(d)マルチポートバルブの動作によって、第1の体積の溶出緩衝液をアフィニティーカラムに導入し、結合したタンパク質を溶出させて第1の溶出液を形成すること;
(e)シリンジポンプの動作によって、第1の溶出液をFIA内の分光光度計へと進めること;
(f)少なくとも1つのプロセッサによって、測定されたUV吸光度に従って第1の溶出液中のタンパク質の濃度を決定すること;
(g)タンパク質を含む第2の試料を保持リザーバ内に収容すること;
(h)マルチポートバルブの動作によって、第2の体積の結合緩衝液をアフィニティーカラムに導入すること;
(i)シリンジポンプの動作によって、第2の試料を保持リザーバからアフィニティーカラムへと進め、第2の試料中のタンパク質をアフィニティーカラムに結合させること;
(j)マルチポートバルブの動作によって、第2の体積の溶出緩衝液をアフィニティーカラムに導入し、結合したタンパク質を溶出させて第2の溶出液を形成すること;
(k)シリンジポンプの動作によって、第2の溶出液をFIA内の消化チャンバへと進めること;及び
(l)マルチポートバルブの動作によって、消化チャンバ内の第2の溶出液に消化試薬を導入し、タンパク質を消化してペプチド混合物を形成すること;及び
(m)シリンジポンプの動作によって、ペプチド混合物をペプチドマッピングユニットへと進め、タンパク質の翻訳後修飾を検出すること、を含む。
【0033】
一態様では、タンパク質を消化することは、
(i)マルチポートバルブの動作によって、消化緩衝液、還元剤、及びタンパク質分解酵素を消化チャンバ内の第2の溶出液に導入して、混合して第1の消化混合物を形成すること;
(ii)消化チャンバ内の第1の消化混合物をインキュベートして、第1のインキュベート混合物を形成すること;
(iii)マルチポートバルブの動作によって、第2の体積の消化緩衝液及びタンパク質分解酵素をインキュベート混合物に導入して、第2の消化混合物を形成すること;並びに
(iv)消化チャンバ内の第2の消化混合物をインキュベートして、ペプチド混合物を形成すること、を含む。
【0034】
一態様では、(f)の第1の溶出液中のタンパク質の濃度を決定することは、所定の検量線に従って少なくとも1つのプロセッサによって実施される。一態様では、所定の溶出時間に基づいて、第1の試料中のタンパク質がアフィニティーカラムから溶出され、第1の溶出液が形成される。一態様では、所定の溶出時間に基づいて、第2の試料中のタンパク質がアフィニティーカラムから溶出され、第2の溶出液が形成される。
【0035】
一態様では、消化緩衝液は、約6.0~約7.5のpHを有する。一態様では、還元剤は、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)である。一態様では、消化チャンバに導入されるタンパク質分解酵素の量は、第1の溶出液の濃度(既に決定済み)に基づいて少なくとも1つのプロセッサによって決定される。一態様では、タンパク質分解酵素は、トリプシンを含む。一態様では、トリプシンは、熱安定性トリプシンを含む。一態様では、第2の溶出液を、約1:10~約1:100のトリプシン:タンパク質比でトリプシンと接触させる。一態様では、第2の溶出液を、約1:20~約1:30のトリプシン:タンパク質比でトリプシンと接触させる。
【0036】
一態様では、第1の消化混合物は、約36℃~約85℃の温度で約5分間~約30分間インキュベートされる。一態様では、第1の消化混合物は、約50℃~約75℃の温度で約15分間~約30分間インキュベートされる。一態様では、第1の消化混合物は、約70℃~約72℃の温度で約15分間~約30分間インキュベートされる。
【0037】
一態様では、第2の消化混合物は、約36℃~約85℃の温度で約5分間~約30分間インキュベートされる。一態様では、第2の消化混合物は、約50℃~約75℃の温度で約15分間~約30分間インキュベートされる。一態様では、第2の消化混合物は、約70℃~約72℃の温度で約15分間~約30分間インキュベートされる。
【0038】
一態様では、タンパク質分解酵素は、熱安定性トリプシンを含み、本方法は、
(i)マルチポートバルブの動作によって、第1の量の消化緩衝液、還元剤、及び熱安定性トリプシンを第2の溶出液に導入し、混合して第1の消化混合物を形成すること;
(ii)第1の消化混合物を約70℃~約75℃の温度で約10分間~約20分間インキュベートして、インキュベート混合物を形成すること;
(iii)マルチポートバルブの動作によって、第2の量の消化緩衝液及び熱安定性トリプシンをインキュベート混合物に導入し、混合して第2の消化混合物を形成すること;並びに
(iv)第2の消化混合物を約70℃~約75℃の温度で約10分間~約20分間インキュベートして、ペプチド混合物を形成すること、を含む。
【0039】
一態様では、タンパク質は、少なくとも約1000個のアミノ酸残基を含む。
【0040】
一態様では、ペプチド混合物は、約100個未満のアミノ酸を含むペプチドを含む。
【0041】
一態様では、目的タンパク質の翻訳後修飾をモニタリングするためのオンラインシステムが提供される。一態様では、本システムは、
(a)目的タンパク質をそれぞれ含む第1の試料及び第2の試料を収容するように構成された保持リザーバ;
(b)第1の試料及び第2の試料を保持リザーバからフローインジェクション分析器(FIA)を通じて進めるように構成された第1のシリンジポンプ;
(c)第1のシリンジポンプと流体連通した第1のマルチポートバルブ;
(d)第1のマルチポートバルブと流体連通し、保持リザーバからの第1の試料及び第2の試料を収容するように構成されたアフィニティーカラム;
(e)アフィニティーカラムからの第1の溶出液を収容するように構成されたFIA内の分光光度計であって、ここで、第1の溶出液が、第1の試料からのタンパク質を含み、分光光度計が、UV吸光度を決定し且つ所定の検量線に基づいて第1の試料のタンパク質濃度を算出するように構成されている、分光光度計;
(f)第2の溶出液をアフィニティーカラムから消化チャンバへと進めるように構成された第2のシリンジポンプであって、ここで、第2の溶出液が、第2の試料からのタンパク質を含み、第2の溶出液中のタンパク質が、(e)で決定された第1の試料のタンパク質濃度に基づいて消化される、第2のシリンジポンプ;並びに
(g)第2のシリンジポンプと流体連通した第2の注入マルチポートバルブ、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本明細書に記載の方法と一致する自動方法のプロセス実装を提供するように構成されたシステムの概略図である。
【
図2】本明細書に記載の方法と一致する自動方法のプロセス制御を提供するように構成されたコンピュータシステムの概略図である。
【
図3】本明細書に記載のオンライン自動方法を実施するための、第1のシリンジポンプ及び第1のバルブシステムの概略図である。
【
図4】本明細書に記載のオンライン自動方法を実施するための、第2のシリンジポンプ及び第2のバルブシステムの概略図である。
【
図5】本明細書に記載されるオンライン自動方法の概略図示である。
【
図6】本明細書に記載される代替方法の概略図示である。
【
図7】本明細書に記載されるオンライン自動方法の更なる概略図示である。
【
図8】本明細書に記載されるペプチドマッピングプロセスのフローチャートである。
【
図9A】プロテインA捕捉工程を使用したポリペプチドの検量線及びUV決定を示すグラフである。
【
図9B】第1の溶出液の濃度決定を行うために使用されたUVプロファイルであって、後にタンパク質消化に使用された第2の溶出液について同量のタンパク質が捕捉されたことを示しているものである。
【
図10A】本明細書に記載のオンラインペプチドマッピング法を使用して決定した試料IgG1モノクローナル抗体のグリコシル化%と、グリカン遊離(オリゴ2-AB)法を使用して決定したものとの間の相関関係を示すグラフである。
【
図10B】本明細書に記載のオンラインペプチドマッピング法を使用して、細胞培養中に経時的に(7日目、10日目、及び14日目)モニタリングしたマンノースの定量化%を示すグラフである。各時点の反復実験により、一定レベルの定量化%が示される。
【
図11A】オンラインペプチドマッピング法を使用したG0F検出とグリカン遊離(オリゴ2-AB)法を使用したG0F検出との間の直接的な線形関係を示すグラフである。
【
図11B】オンラインペプチドマッピング法を使用したG1F検出とグリカン遊離(オリゴ2-AB)法を使用したG1F検出との間の直接的な線形関係を示すグラフである。
【
図11C】オンラインペプチドマッピング法を使用したMan5検出とグリカン遊離(オリゴ2-AB)法を使用したMan5検出との間の直接的な線形関係を示すグラフである。
【
図11D】オンラインペプチドマッピング法を使用したG0F-GN検出とグリカン放出(オリゴ2-AB)法を使用したG0F-GN検出との間の直接的な線形関係を示すグラフである。
【
図12A】本明細書に記載のオンラインペプチドマッピング法を使用して決定した、細胞培養中の特定のメチオニン残基における酸化レベルを経時的に示すグラフである。
【
図12B】本明細書に記載のオンラインペプチドマッピング法を使用して決定した、細胞培養中のN末端環化のレベルを経時的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明は、組換え生産されたポリペプチドの翻訳後修飾(PTM)を検出する、同定する、又はモニタリングするための方法及びシステムに関し、特に、細胞培養中の組換え生産されたタンパク質のPTMをリアルタイムでモニタリングするためのオンライン方法又はシステムに関する。
【0044】
A.定義
特に定義されない限り、本明細書で使用される科学用語及び技術用語は、当業者が通常理解する意味を有するものとする。更に、文脈で別段の定めがない限り、単数形の用語には複数形が含まれ、複数形の用語には単数形が含まれるものとする。例えば、特に明記しない限り、「a」又は「an」には複数形、例えば、「1つ以上」又は「少なくとも1つ」が含まれ、「又は」という用語は「及び/又は」を意味し得る。「含む(including)」、「含む(includes)」、及び「含まれる(included)」という用語は、限定するものではない。本明細書に提供される任意のタイプの範囲には、記載される特定の範囲内の全ての値及び特定の範囲の端点に関する値が含まれる。
【0045】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、例えば、本発明の説明に用いられる、組成物中の成分の量、濃度、体積、プロセス温度、プロセス時間、収率、流量、圧力、及びそれらの範囲を修飾するために使用される。「約」という用語は、例えば、化合物、組成物、濃縮物、又は製剤の製造に使用される典型的な測定及び取扱いの手順により;これらの手順での偶発的エラーにより;方法を行うために使用される出発材料又は成分の製造、供給源又は純度及び他の類似の要件の差により、起こり得る数値量の変動を指す。「約」という用語は、特定の初期濃度又は初期混合を有する製剤の経時変化に起因して異なる量、及び特定の初期濃度又は初期混合を有する製剤の混合又は処理に起因して異なる量も包含する。「約」という用語により修飾された場合、本明細書に添付された特許請求の範囲は、そのような均等物を含む。
【0046】
一般的には、本明細書中に記載の細胞及び組織培養、分子生物学、並びにタンパク質及びオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド化学作用、並びにハイブリダイゼーションとの関連で使用される命名法及びそれらの技法は、当該技術分野で周知であり通常使用されるものである。本明細書では、アミノ酸は、一般に知られている3文字記号又はIUPAC-IUB生化学命名法委員会(Biochemical Nomenclature Commission)により推奨されている1文字記号のいずれかにより言及され得る。ヌクレオチドは、同様に、一般に受け入れられている1文字コードにより言及され得る。
【0047】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合によって互いに接合された2つ以上のアミノ酸残基を含む任意の長さの分子を指す。本明細書で使用される場合、「ペプチド」という用語は、ペプチド結合によって互いに接合された約2~約50個のアミノ酸を含むポリペプチドを指す。「タンパク質」という用語は、ペプチド結合によって互いに接合された約100個を超えるアミノ酸残基、又は約1000個を超えるアミノ酸残基を含むポリペプチドを指す。ポリペプチド内のアミノ酸の配列は、一次構造と称される。一態様では、タンパク質は、例えば第1のアミノ酸の酸素原子と第2のアミノ酸の窒素原子との間の水素結合形成の結果として二次元のアルファヘリックス又はベータプリーツシートが生じることにより、二次構造を有する。一態様では、タンパク質は、例えば、1つ以上の鎖間ジスルフィド(S-S)結合の形成、又はアミノ酸R基間の他の相互作用(水素結合、イオン結合、共有結合、及び疎水性相互作用を含むがこれらに限定されない)により、三次元の三次構造を有する。一態様では、タンパク質は、例えば2つ以上のポリペプチド鎖、例えば抗体が存在することにより、四次構造を有する。一態様では、ペプチドは二次、三次、又は四次構造を有さない。
【0048】
「タンパク質」という用語は、抗体及び他の非抗体タンパク質(酵素、受容体、リガンド、分泌タンパク質、融合タンパク質、又はそれらの断片を含むがこれらに限定されない)を指し得る。タンパク質は科学的又は商業的な関心対象であり得、タンパク質には治療用タンパク質が含まれ得るがこれに限定されない。「治療用タンパク質」という用語は、障害又は疾患を治療、予防、又は改善するのに有用な1つ以上の生物学的活性を有するタンパク質を指す。
【0049】
本明細書で使用される場合、「抗体」及び「免疫グロブリン」という用語は、互換的に使用することができ、抗原の抗原決定基の特徴部に相補的な内表面の形状及び電荷分布を伴う三次元結合空間を有するポリペプチド鎖のフォールディングにより形成されている少なくとも1つの結合ドメインを含むタンパク質又はポリペプチドの群を指す。従来の又は天然に存在する抗体は、典型的には2対のポリペプチド鎖の四量体形態を有し、各対は、1本の「軽」鎖と1本の「重」鎖とを有する。各軽鎖/重鎖対の可変領域は、抗体結合部位を形成する。各軽鎖は1つの共有結合性のジスルフィド結合により重鎖に連結されるが、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間ではジスルフィド結合の数は異なる。重鎖及び軽鎖の各々はまた、規則的に隔てられた鎖内ジスルフィド架橋を有する。各重鎖は一端に可変ドメイン(VH)を有し、それにいくつかの定常ドメイン(CH)が続く。各軽鎖は一端に可変ドメイン(VL)を有し、その他端に定常ドメイン(CL)を有しており、軽鎖の定常ドメインは重鎖の第1の定常ドメインと整列し、軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列する。軽鎖は、軽鎖定常領域のアミノ酸配列に基づいてラムダ鎖又はカッパ鎖のいずれかに分類される。抗体は、任意のアイソタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、サブアイソタイプ(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)、又はアロタイプ(例えば、Gm、例えばG1m(f、z、a、若しくはx)、G2m(n)、G3m(g、b、若しくはc)、Am、Em、及びKm(1、2、若しくは3))の抗体であり得、抗体には、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの異なるエピトープ結合断片から形成された多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、CDRグラフト化されたもの、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、キメラ抗体、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、細胞内抗体、及びそれらの望ましい抗原結合断片が含まれるがこれらに限定されず、組換え生産された抗体断片が含まれ得る。
【0050】
「抗原結合断片」又は「免疫学的に活性な断片」という用語は、少なくとも1つの抗原結合部位を含有し且つ抗原に特異的に結合する能力を保持している、抗体の断片を指す。組換え生産され得る抗体断片の例には、可変重鎖ドメイン及び軽鎖ドメインを含む抗体断片、例えば、一本鎖Fv(scFv)、一本鎖抗体、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片が含まれるがこれらに限定されない。抗体断片は、上で列挙された抗体のいずれかのエピトープ結合断片又は誘導体も含み得る。
【0051】
「組換え」という用語は、人間の介入によって(例えば組換えDNAプロセスを使用して)、人為的又は合成的に(即ち非天然に)変更又は生産された生体物質、例えば核酸又はタンパク質を指し、これには例えば、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現されたタンパク質が含まれる。
【0052】
「細胞培養」という用語は、目的生体分子、例えば目的タンパク質を生産することができる宿主細胞の集団を作製及び維持するために使用される方法及び技法、並びに目的生体分子を生産及び収集するための方法を指す。「細胞培養」中、タンパク質は、細胞内に生産され得るか、細胞膜周辺腔に生産され得るか、又は培地中に直接分泌され得る。一態様では、細胞培養物は、哺乳動物宿主細胞を含み得る。哺乳動物細胞に好適な培養条件は、当該技術分野で公知である。例えば、Animal cell culture:A Practical Approach,D.Rickwood,ed.,Oxford University Press,New York(1992)を参照されたい。哺乳動物宿主細胞は、例えば、流動床バイオリアクタ、中空糸バイオリアクタ、ローラーボトル、振盪フラスコ、又は撹拌タンクバイオリアクタ内で、マイクロキャリアの有無を問わず、懸濁液中で、又は固体基材に付着させながら培養することができる。
【0053】
「細胞培養培地」又は「培養培地」とは、細胞培養中の細胞の生存及び増殖に必要な適切なエネルギー源及び栄養素を含む液体又はゲルを指す。典型的な細胞培養培地には、アミノ酸;通常はグルコースなどの炭水化物の形態であるエネルギー源;ビタミン;遊離脂肪酸;緩衝液;塩;及び微量必須元素が含まれる。細胞培養培地には、培養される細胞の要件及び/又は所望の細胞培養パラメータに応じて、追加の成分又は濃度を増加させた成分、例えば、アミノ酸、塩、糖、ビタミン、ホルモン、増殖因子、緩衝液、抗生物質、脂質、又は微量元素も補充され得る。
【0054】
「馴化培地」とは、細胞によって細胞培養培地中に放出又は分泌される目的生体分子を含有する培養培地を指す。
【0055】
「清澄化細胞培養培地」とは、例えば、遠心分離、精密濾過、タンジェンシャルフロー濾過、交互タンジェンシャルフロー濾過、及び/又はデプス濾過により宿主細胞及び/又は細胞デブリが除去された培養培地を指す。一態様では、清澄化細胞培養培地には、細胞培養上清が含まれる。
【0056】
「バイオリアクタ」とは、細胞培養物の増殖を制御するように設計された容器を指す。バイオリアクタという用語は、個々のフラスコ及び振盪フラスコ又はウェーブバッグから、1リットルのバイオリアクタまで、また最大でラージスケールの工業用バイオリアクタに至るまでのあらゆるスケールの細胞培養を指し得る。一態様では、バイオリアクタは、例えば約125ml~約500mlの容積を有する、スモールスケールのバイオリアクタである。一態様では、バイオリアクタは、例えば約100リットル~約20,000リットル以上の容積を有する、ラージスケールのバイオリアクタである。様々なバイオリアクタが知られており、それらには、撹拌スタンク(stirred-stank)、固定床、流動床、気泡塔、及びエアリフトバイオリアクタが含まれるがこれらに限定されない。ラージスケール又は商業スケールの細胞培養(例えば、治療用タンパク質の生産のためのもの)は、数日間又は更には数週間維持され得る。この期間、培養物には、細胞培養の過程の間に消費される栄養素及びアミノ酸などの成分を含有する濃縮フィード培地が補充され得る。一態様では、バッチプロセスでの細胞培養プロセス中に、バイオリアクタ内の培地は補充されない。一態様では、流加バイオリアクタでの細胞培養プロセス中に、バイオリアクタ内の培地には追加の成分、例えば栄養素又は細胞培養培地が補充される。一態様では、培地はバイオリアクタに継続的に添加され、使用済み培地及び生産物は、灌流バイオリアクタでの細胞培養プロセス全体を通じて除去される。
【0057】
「宿主細胞」又は「組換え宿主細胞」は、発現ベクターが導入された細胞である。「宿主細胞」という用語は、特定の細胞のみならず、かかる細胞の子孫も指す。変異又は環境の影響のいずれかに起因して後代にある特定の修飾が起こる場合があることから、かかる子孫は、実際には親細胞と同一ではない場合があるが、「宿主細胞」という用語の範囲に依然として含まれる。宿主細胞には、原核細胞及び真核細胞が含まれ得る。一態様では、宿主細胞は、哺乳動物宿主細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、ヒト胎児腎細胞(例えば、HEK293)、サル腎細胞(例えば、COS)、マウス骨髄腫細胞(例えば、NS0若しくはSP2)、又はヒト初代胎児網膜細胞(PER.C6)である。
【0058】
「重要品質特性」(CQA)は、生産物の安全性及び/又は有効性に影響を及ぼし得る治療用タンパク質の化学的、物理的、又は生物学的特徴である。CQAには、例えばサイズ及び配列のバリアント、凝集又は断片化によるバリアント、並びに電荷バリアントを含む、生産物特異的バリアントが含まれ得る。他のバリアントには、グリコシル化、酸化、脱アミド化、異性化、N末端プロセシング、C末端プロセシングなどの翻訳後修飾(PTM)が含まれる。CQAには、宿主細胞タンパク質、DNA、浸出物、及び他の原料を含むがこれらに限定されない、プロセスに関連する不純物も含まれる。
【0059】
「翻訳後修飾」(PTM)とは、ポリペプチド鎖への官能基の共有結合付加又はポリペプチド鎖内のペプチド結合の切断の結果としてのポリペプチドの変化を指し、これには、グリコシル化、酸化、脱アミド化、異性化、糖化、N末端リーダー配列、N末端環化、C末端リジン保持、アミド形成、又はそれらの組み合わせが含まれるがこれらに限定されない。一態様では、グリコシル化には、N-結合型グリコシル化、O-結合型グリコシル化、又はそれらの組み合わせが含まれる。
【0060】
「糖タンパク質」とは、ポリペプチド鎖の全長に沿って付加された1つ以上の炭水化物又は糖部分を含むタンパク質を指す。「グリコペプチド」とは、ポリペプチド鎖の全長に沿って付加された1つ以上の炭水化物又は糖部分を含むペプチドを指す。
【0061】
「グリコフォーム」とは、グリコシル化プロファイル(即ち、付着したグリカンの数及び/又はタイプ)が異なるタンパク質のアイソフォームを指す。
【0062】
「グリカン」とは、ポリペプチド鎖に付着したオリゴ糖を指し、これにはN-結合型及びO-結合型グリカンが含まれる。N-結合型グリカン(N-グリカンとも呼ばれる)は、N-グリコシド結合を介してアスパラギン(Asp)又はアルギニン(Arg)残基のアミド窒素でポリペプチド鎖に付着する。N-結合型グリコシル化は、コンセンサス配列(Asn-X-Ser/Thr、ここでXはプロリンを除く任意のアミノ酸である)で起こる。O-結合型グリカン(又はO-グリカン)は、α-O-グリコシド結合を介してセリン(Ser)又はトレオニン(Thr)残基でポリペプチド鎖に付着する。O-結合型グリコシル化に関する一般的なコンセンサス配列は存在しない。N-結合型グリコシル化及びO-結合型グリコシル化は両方とも、個々の単糖の段階的な付加及び/又は除去を含む反応経路において、小胞体(ER)及びゴルジ体内で起こる。様々な末端糖の有無によって分類可能である多くのタイプのグリカンがあり、それらとしては、例えば、末端ガラクトース部分が0個のアガラクトシルグリカン(例えば、G0、G0-GlcNAc、G0F、G0F-GlcNAc)、末端ガラクトース部分が1個のグリカン(例えば、G1、G1F、G1F-GlcNAc)、及び末端ガラクトース部分が2個のグリカン(例えば、G2F、G2F+シアル酸)が挙げられる。タンパク質の機能に有益であり得るグリコシル化パターンもあれば、有害であり得るグリコシル化パターンもある。
【0063】
「プロセス分析技術」(PAT)とは、原料及びインプロセス材料並びにプロセスの重要な品質及び性能特性をタイムリーに(例えば、処理中に)測定することを通じて、製造を設計、分析、及び制御するためのシステムを指す。
【0064】
「オンライン」とは、人間の介入なしにプロセス溶液の自動試料採取が行われる分析プロセスを指す。「インライン」とは、流動する材料の流れの中にセンサを配置して分析を行う分析プロセスを指す。「アトライン」とは、試料がプロセスからプロセスに物理的に近接した分析装置に移送され、分析結果が比較的短時間で返される(即ち、数時間)プロセスを指す。「オフライン」とは、試料がプロセスから取り出され別の場所で分析されるプロセスであって、分析結果が比較的短時間以内には返されない(例えば、数日)プロセスを指す。オフライン分析とアトライン分析の両方で、試料をシステムから手動で採取し、続いて試料の調製及び分析を行うという人間の介入が必要である。オンライン分析及びインライン分析は完全に自動化され、人間の介入なしで実施することができる。
【0065】
「リアルタイム」とは、分析プロセスが大幅な時間の遅延なしで、例えば、分析プロセスから得られた情報をプロセス条件の最適化に関する決定に適用することができる十分に短い時間内に実施されることを意味し、例えば、試料を採取した細胞培養が依然進行中である間に、バイオリアクタ内の細胞培養条件を最適化することができる。一態様では、プロテインA捕捉工程とタンパク質濃度決定とを含む分析プロセスの結果は、約5時間未満、約4時間未満、又は約3時間未満内に入手可能である。一態様では、分析プロセスの結果は、約2.5時間未満内に入手可能である。対照的に、オフラインプロセスでは、分析プロセスの結果には一般に少なくとも1日、最大で2日を要する。
【0066】
「自動」とは、人間の発明なしに実施されるプロセスを指す。一態様では、自動プロセスは、1つ以上の装置により実施される。一態様では、自動プロセスには、試料調製がオンライン且つ自動であるプロセスが含まれる。一態様では、オンライン自動試料調製プロセスは、流体インジェクション分析器(FIA)で実施される。一態様では、流体インジェクション分析器は、シーケンシャルインジェクション分析器(SIA)である。一態様では、流体インジェクション分析器は、ダイレクトインジェクション分析器(DIA)である。一態様では、自動プロセスには、自動分析装置、例えば自動ペプチドマッピングユニットが含まれる。「自動」という用語には、オフライン自動プロセス、例えば、Hamilton液体ハンドリングシステム(Hamilton Company,Reno,NV,U.S.A.)又はTECAN液体ハンドリングシステム(TECAN Group Ltd.,Maennedorf,Swizerland)などの液体ハンドリングシステムを使用したプロセスは含まれない。
【0067】
「所定の」とは、プロセスの開始前、例えば、本明細書に記載の方法の開始前に決定されたものを指す。例えば、タンパク質濃度を決定する際に使用される「所定の検量線」とは、タンパク質濃度が既知の代表的な試料を使用して作成される検量線を指す。例えば、検量線は、濃度が既知の試料を得て、段階希釈、例えば10倍段階希釈を実施して、既知の濃度の約3~約10個の試料を得ることによって作成することができる。一態様では、次いで、段階希釈した試料のUV吸光度を、タンパク質を除く全ての試薬を含むブランクのUV吸光度とともに決定する。検量線は、試料の既知のタンパク質濃度に対してUV吸光度をプロットすることによって作成される。一態様では、「所定の溶出時間」は、既知量の代表的試料をカラムにロードし、カラムから試料を溶出するのに必要な時間量を決定することによって決定される。一態様では、溶出時間とは、溶出試薬を既知の速度でアプライした場合に、試料がカラムにロードされた時間と、試料がカラムからそれ以上溶出されなくなる時間との間で経過した時間量を指す。一態様では、溶出時間とは、溶出試薬を既知の速度でアプライした場合に、試料がカラムにロードされた時間と、最大濃度の試料がカラムから溶出される時間との間で経過した時間量を指す。一態様では、溶出時間は、カラムから全ての試料を溶出するのに必要となる既知の流量での溶出試薬の体積を指し得る。「所定の」翻訳後修飾とは、本明細書に記載の方法の前に同定される目的タンパク質の既知の翻訳後修飾を指しており、その方法は、所定の翻訳後修飾を同定及び/又は定量化するために使用される。
【0068】
「同時に」は、本明細書に記載の方法工程に関連して使用される場合、工程が実質的に同時間に実施される方法を指す。「実質的に同時間に」実施される動作は、動作が並行して実施されることを意味し得るが、2つの動作が互いに短い時間内に、例えば互いに約30分以内、又は互いに約15、約10、約5、約4、約3、約2、若しくは約1分以内に実施される状況も含み得る。一態様では、ある方法工程の少なくとも一部の実行が別の方法工程の一部の実行と時間的に重複する場合、方法工程は「同時に」実施される。「同時に」は、厳密に並行する作用を必要とするわけではない。例えば、全ての方法工程が同時間に開始又は終了する必要はない。一態様では、「同時に」は、反応が同じ反応体積で且つ/又は同じインキュベーション期間中に起こるように、方法工程に必要な全ての試薬が同じ反応混合物中で合わされることを意味し得る。
【0069】
「実質的に同じ」又は「実質的に一致する」とは、量、体積、時間、温度、圧力、濃度、及び流量を含むがこれらに限定されない2つのプロセスパラメータに関して使用される場合、2つのプロセスパラメータの量又は定量化が機能的に同等であること、例えば、2つのプロセスパラメータの差が、約10%未満、約5%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、又は約0.1%未満であることを意味する。
【0070】
「フローインジェクション分析」(FIA)とは、自動試料処理のためにマイクロリットル体積の試料をキャリア流に注入し、キャリア流により移動させる分析技法を指す。フローインジェクション分析は、フローインジェクション分析器(FIA)によって実施することができ、これは、本明細書で使用する場合、シーケンシャルインジェクション分析器(SIA)又はダイレクトインジェクション分析器(DIA)を含み得るか又は包含し得る。一態様では、フローインジェクション分析器は、分析器を通じて試料を移動させるために一定流量のキャリア流を使用する。一態様では、フローインジェクション分析器は、試料と試薬を混合するために、又は試料成分をアッセイするためにキャリア流の流れを逆転又は停止させることができる双方向ポンプ、例えばシリンジポンプを含む。
【0071】
本明細書で使用される場合、「流体連通した」とは、流体、例えば液体が、システム内のあるコンポーネント、機器、又はデバイスから別のコンポーネント、機器、又はデバイスに流れることができることを意味する。流れは、1つ以上の中間コンポーネント、機器、又はデバイスによって実現されてもよく、(例えばバルブによって)選択的に遮断可能であっても、又はそうでなくてもよい。
【0072】
本明細書で使用される場合、「連結された」とは、2つ以上のコンポーネント、機器、又はデバイスが、1つ以上の中間コンポーネント、機器、又はデバイスによって、可動的に又は固定してつなぎ合わされている又は他の方法で取り付けられていることを意味する。
【0073】
本明細書で使用される場合、「上流」及び「下流」とは、システム内のキャリア流の流れ方向に対する相対的位置を指す。「上流」という用語は、別のコンポーネント又は位置と比較して、システムの入力部により近いシステムコンポーネント又は位置を指す。「下流」という用語は、別のコンポーネント又は位置と比較して、システムの出口により近いシステムコンポーネント又は位置を指す。
【0074】
「カラムクロマトグラフィー」とは、液体試料中の成分が、試料の移動相が固定相上を流れる際の試料中の成分の差次的吸着に基づいて分離されるプロセスを指す。
【0075】
「アフィニティークロマトグラフィー」とは、等電点、疎水性、又はサイズなどのタンパク質の一般的特徴ではなく、クロマトグラフィー分離を生じさせる、目的成分とクロマトグラフィーマトリックス上に固定化された化合物との間の特異的で可逆的な結合相互作用(受容体とリガンド間、酵素と基質間、又は抗原と抗体間の相互作用を含むがこれらに限定されない)に基づいて、移動相中の目的生体分子、例えばタンパク質がクロマトグラフィーカラムの固定相によって保持されるクロマトグラフィープロセスを指す。
【0076】
「プロテインAクロマトグラフィー」とは、抗体のFc部分と固定相に固定化されたプロテインAのIgG結合ドメインとの間の親和性に基づいて試料から抗体が精製される、アフィニティークロマトグラフィープロセスを指す。
【0077】
「液体クロマトグラフィー」(LC)とは、液体試料がカラムを通過する際に、液体試料のうちの1種以上の成分が選択的に保持されるプロセスを指す。試料中の1種以上の成分の保持は、固定相と移動相の間での成分の分布から生じる。液体クロマトグラフィーには、逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、及び超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)が含まれるがこれらに限定されない。
【0078】
「質量分析」(MS)とは、化合物がその質量電荷比(m/z)に基づいて検出、同定、及び/又は測定される分析技法を指す。MSには、通常、化合物のイオン化、質量電荷比によるイオン化分子の分離、イオン化分子の検出、及び質量スペクトルの作成が含まれる。タンパク質イオン化の既知の方法は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)である。「質量分析計」とは、化合物をその質量電荷比に基づいて検出、同定、及び/又は定量化することができる分析装置を指す。質量分析計には通常、イオン源、質量分析器、及び検出器という3つの部分が含まれる。
【0079】
本明細書で使用される場合、「液体クロマトグラフィー/質量分析」(LC/MS)とは、試料中の成分、例えばペプチド混合物中のペプチドを液体クロマトグラフィーにより分離し、次いでイオン化して、それらの質量電荷比により特性決定する方法を指す。
【0080】
「タンデム質量分析」(MS/MS)とは、質量分析の2つ以上の工程を含む多段階プロセスを使用して化合物を検出、同定、及び/又は測定する技法であって、質量分析プロセスの間に断片化が実施されるものを指す。
【0081】
B.概要
ペプチドマッピングは、細胞培養プロセスの開発中、及び細胞培養プロセスを使用した生体分子の製造中に使用される重要な分析ツールである。一態様では、ペプチドマッピングは、生体分子の配列を確認するために使用され得る。一態様では、ペプチドマッピングは、細胞培養で生産されたペプチドの翻訳後修飾(PTM)を同定及び定量化するために使用され得る。一態様では、ペプチドマッピングは、重要品質特性(CQA)のマルチ特性モニタリング(MAM)のために使用され得る。
【0082】
PTMを分析するための多くの方法が開発されている。最も広く使用されているアプローチのうちの1つには、ペプチドマッピングが含まれ、これには液体クロマトグラフィー(LC)/質量分析(MS)が含まれる。一方法では、グリカンを、例えば2-アミノベンズアミド(2-AB)又は2-アミノ安息香酸(2-AA)を使用して化学標識し、糖タンパク質から酵素的又は化学的に切断し、精製して、蛍光検出器を使用して液体クロマトグラフィー(LC)により分析する。このプロセスは、「蛍光標識グリカン遊離」法と称される。グリカンがタンパク質から除去されるため、グリカンの遊離によって部位特異的情報を得ることができない。別の方法では、LC/MS分析の前に、トリプシンなどの酵素を使用して糖タンパク質をペプチドに消化する。グリカンがペプチド上に残るため、ペプチドのPTM、例えばグリコシル化に関する部位特異的情報を得ることができる。一態様では、質量分析計により同定されたペプチドは、細胞培養培地から得られるインタクトタンパク質の代理標本(surrogate representative)として使用される。
【0083】
本明細書では、細胞培養中の生産物品質及びプロセス制御をリアルタイムでモニタリングするための、インプロセス試料を分析するための自動オンラインシステム及び方法が提供される。完了までに2日超、例えば、最大約3日又は約4日を要する場合がある従来のペプチドマッピングアプローチとは対照的に、本明細書に記載のオンラインペプチドマッピング法は、グリコシル化傾向、翻訳後修飾、及び他の部位特異的情報に関する情報を、1日未満、更にはわずか2.5時間未満で提供することができる完全自動プロセスを提供する。一態様では、本明細書に記載のシステムは、試料調製及びペプチドマッピング分析のための完全自動方法を提供する。一態様では、本方法は、タンパク質捕捉、タンパク質濃度決定、及びタンパク質消化のための完全自動システムを提供する。一態様では、本明細書に記載のオンラインペプチドマッピング法は、目的タンパク質に関連する1つ以上の既知の翻訳後修飾(PTM)を検出するために使用される。一態様では、本明細書に記載のオンラインペプチドマッピング法は、目的タンパク質に関連する1つ以上の所定の翻訳後修飾を検出するために使用される。有利なことに、PTMに関する部位特異的情報は、本明細書に記載の方法を使用して得ることができる。
【0084】
図1~4は、本明細書に記載の自動方法を実行又は実施するように構成されたシステムの概要を提供する。
【0085】
図1は、本明細書に記載の自動方法及びシステムと一致する自動方法のプロセス実装を提供するように構成されたシステムの概略図である。
図1は、本明細書に記載の自動処理方法を実施するように構成された自動プロセス制御システム100を図示する。
図1には、ネットワーク環境の一態様が示されている。ネットワーク環境には1つ以上のプロセス制御デバイス200を含むことができ、これは、1つ以上のネットワーク202を介して、バイオリアクタ140、フローインジェクション分析器(FIA)150、1つ以上のデータ保持システム201、1つ以上の他のプロセス制御デバイス200、及び1つ以上の分析装置160のうちの1つ以上と通信している。
【0086】
図3及び
図4に示されるように、FIA150は、少なくとも第1のシリンジポンプ302、第2のシリンジポンプ402、第1のバルブ301、及び第2のバルブ401を含み得る。更に、FIA150は、少なくとも1つのアフィニティーカラム313、少なくとも1つの分光光度計414、及び少なくとも1つの消化チャンバ415を含み得る。加えて、FIA150は、流体を適切な行き先に送るために必要な管材料、T字形接続部、バルブ、及び他のコンポーネントなどの更なるコンポーネントを含み得る。更に、FIA150は、試料、試薬、反応物、水、還元剤、酵素、緩衝液などの供給源と、廃棄物を処分するための排水シンクとを含有し得るか、含み得るか、又は他の方法でそれらに接続され得る。FIA150は、フローインジェクション分析器として、及び/又はシーケンシャルインジェクション分析器(SIA)若しくはダイレクトインジェクション分析器(DIA)の機能のいずれか若しくは全てを備えて、構成され得る。
【0087】
自動プロセス制御システム100は、1つ以上のバイオリアクタ140を更に含み得る。自動プロセス制御システム100を介して処理するための試料は、手動で又はFIA150への自動供給プロセスを通じてのいずれかで、1つ以上のバイオリアクタ140から取得され得る。本明細書に記載の方法と一致するバイオリアクタ140の更なる説明は後述する。
【0088】
自動プロセス制御システム100の1つ以上の分析装置は、1つ以上の質量分析器を備えたペプチドマッピングシステムを含み得る。
【0089】
自動プロセス制御システム100によって格納されるデータ及び情報には、以下の情報が含まれ得る。本明細書で使用される場合、「自動プロセス制御システムデータ」とは、自動プロセス制御システム100に関連付けられたメモリ上又はメモリ内に記録及び格納され得るあらゆる全てのデータを指す。自動プロセス制御システムデータは、任意の好適なデータ形式で格納することができ、生産バッチ、生産日、又は任意の他の好適なパラメータによって並べ替えることができる。本明細書で使用される「プロセス情報」とは、タイミング、温度、添加量、較正係数、流量、及びモデルなどを含むがこれらに限定されない、試料処理方法及び技法の変数及びパラメータに関する情報を指す。本明細書で使用される「生産情報」とは、処理済み試料、過去の試料ランなどに関する情報を指す。上述のデータ及び/又は情報の各々は、本明細書で論じられるプロセス制御デバイス200によってほぼリアルタイムでアクセスされ得る。自動プロセス制御システム100に関連付けられたデータ及びプロセス情報は、例えば、後述するデータ保持システム201内に、及び/又は1つ以上のプロセス制御デバイス200のメモリ内に格納され得る。
【0090】
プロセス制御デバイス200は、サーバ(例えば、1つ以上のサーバブレード、プロセッサなどを有する)、パーソナルコンピュータ(例えば、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータなど)、スマートフォン、タブレットコンピューティングデバイス、FIA150に統合されたコンピューティングシステム、並びに/又はバイオリアクタ140、FIA150、及び/若しくは質量分析器160とインターフェースするようにプログラムされ得る他のデバイスとして構成され得る。一態様では、プロセス制御デバイス200の機能のいずれか又は全ては、クラウドコンピューティングプラットフォームの一部として実施され得る。プロセス制御デバイス200について、
図2を参照して更に後述する。
【0091】
図1に示すネットワーク環境は、本明細書に記載の自動方法を提供するように構成された自動プロセス制御システム100及びプロセス制御デバイス200の例を表している。ネットワーク202を介して接続されているように示されているが、任意の好適な一連の個々の接続又はネットワーク接続を用いて、プロセス制御デバイス200がバイオリアクタ140、FIA150、及び分析装置160を制御し、種々のデータ保持システム201などの必要なリソースにアクセスできるようにすることができる。
【0092】
ネットワーク202は、有線又は無線リンクを介して接続され得る。有線リンクには、デジタル加入者線(DSL)、同軸ケーブル回線、イーサネット、又は光ファイバー回線が含まれ得る。無線リンクには、Bluetooth(登録商標)、Bluetooth Low Energy(BLE)、ANT/ANT+、ZigBee、Z-Wave、Thread、Wi-Fi(登録商標)、Worldwide Interoperability for Microwave Access(WiMAX(登録商標))、モバイルWiMAX(登録商標)、WiMAX(登録商標)-Advanced、NFC、SigFox、LoRa、Random Phase Multiple Access(RPMA)、Weightless-N/P/W、赤外線チャネル、又は衛星帯域が含まれ得る。無線リンクには、2G、3G、4G、又は5Gとして認定される規格を含む、モバイルデバイス間で通信するための任意のセルラーネットワーク規格も含まれ得る。無線規格には、種々のチャネルアクセス方法、例えば、FDMA、TDMA、CDMA、又はSDMAが使用され得る。一態様では、異なるタイプのデータが、異なるリンク及び規格を介して送信され得る。別の態様では、同じタイプのデータが、異なるリンク及び規格を介して送信され得る。ネットワーク通信は、例えば、http、tcp/ip、udp、イーサネット、ATMなどを含む任意の好適なプロトコルを介して行われ得る。
【0093】
ネットワーク202は、任意のタイプ及び/又は形態のネットワークであり得る。ネットワークの地理的範囲は広範に変化してもよく、ネットワーク202は、ボディエリアネットワーク(BAN)、パーソナルエリアネットワーク(PAN)、ローカルエリアネットワーク(LAN)、例えば、イントラネット、メトロポリタンエリアネットワーク(MAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、又はインターネットであり得る。ネットワーク202のトポロジは、任意の形式であり得、例えば、以下のいずれか:ポイントツーポイント、バス、スター、リング、メッシュ、又はツリーを含み得る。ネットワーク202は、本明細書に記載の作動を補助することができる、当業者に公知の任意のそのようなネットワークトポロジのものであり得る。ネットワーク202は、例えば、イーサネットプロトコル、インターネットプロトコルスイート(TCP/IP)、ATM(非同期転送モード)技法、SONET(同期光ネットワーキング)プロトコル、又はSDH(同期デジタルハイアラーキ)プロトコルを含む、異なる技法及びプロトコルの層又はスタックを利用することができる。TCP/IPインターネットプロトコルスイートは、アプリケーション層、トランスポート層、インターネット層(例えば、IPv4及びIPv4を含む)、又はリンク層を含み得る。ネットワーク202は、ある種のブロードキャストネットワーク、電気通信ネットワーク、データ通信ネットワーク、又はコンピュータネットワークであり得る。
【0094】
データ保持システム201は、任意のタイプのコンピュータ可読記憶媒体及び/又はコンピュータ可読記憶デバイスを含み得る。そのようなコンピュータ可読記憶媒体又はデバイスは、データを格納し、データへのアクセスを提供するように構成され得る。コンピュータ可読記憶媒体又はデバイスの例としては、電子記憶デバイス、磁気記憶デバイス、光記憶デバイス、電磁記憶デバイス、半導体記憶デバイス、又はそれらの任意の好適な組み合わせ、例えば、コンピュータディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EPROM又はフラッシュメモリ)、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、ポータブルコンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、メモリスティックなどを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0095】
図2は、本明細書に記載の方法と一致する自動方法のプロセス制御を提供するように構成されたコンピュータシステム又はプロセス制御デバイスの概略図である。プロセス制御デバイス200は、1つ以上のプロセッサ110(本明細書では、便宜上、複数のプロセッサ(processors)110、プロセッサ(processor(s))110、若しくはプロセッサ(processor)110とも互換的に称される)、1つ以上の記憶デバイス120、及び/又は他のコンポーネントを含む。別の態様では、プロセッサの機能は、ハードウェアによって(例えば、特定用途向け集積回路(「ASIC」)、プログラマブルゲートアレイ(「PGA」)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(「FPGA」)などの使用を通じて)、又はハードウェアとソフトウェアの任意の組み合わせによって実施され得る。記憶デバイス120は、任意のタイプの非一時的なコンピュータ可読記憶媒体及び/又は非一時的なコンピュータ可読記憶デバイスを含む。このようなコンピュータ可読記憶媒体又はデバイスは、本明細書で説明する1つ以上の手法をプロセッサに実行させるためのコンピュータ可読プログラム命令を格納することができる。コンピュータ可読記憶媒体又はデバイスの例としては、限定されないが、電子記憶デバイス、磁気記憶デバイス、光記憶デバイス、電磁記憶デバイス、半導体記憶デバイス、又はそれらの任意の好適な組み合わせ、例えば、コンピュータディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EPROM又はフラッシュメモリ)、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、ポータブルコンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、メモリスティックを挙げることができる(但し、これらの例に限定されない)。
【0096】
プロセッサ110は、ソフトウェアプロトコルを表している、記憶デバイス120に格納された1つ以上のコンピュータプログラム命令によってプログラムされる。例えば、プロセッサ110は、プロセス制御マネージャ252、データ収集マネージャ254、較正マネージャ256、酵素決定マネージャ258、及びユーザインターフェースマネージャ260によってプログラムされる。本明細書で論じられる種々のマネージャの機能は代表的なものであり、限定的なものではないことが理解されよう。更に、記憶デバイス120は、データストレージを提供するデータ保持システム201として機能し得る。本明細書で使用される場合、便宜上、種々の「マネージャ」が作動を実施すると説明されるが、それは実際にはマネージャがプロセッサ110(したがってプロセス制御デバイス200)に作動を実施するようにプログラムする場合である。
【0097】
プロセス制御デバイス200の種々のコンポーネントは、協働して、1つ以上のFIAS150及び1つ以上の分析装置160の制御を提供し、またユーザ又は他のシステムがこれらのシステムとインターフェースするためのインターフェースを提供する。
【0098】
プロセス制御マネージャ252は、自動プロセス制御システム100上で作動するソフトウェアプロトコルである。プロセス制御マネージャ252は、1つ以上の制御信号をFIA150及び分析装置160に提供するように構成されている。プロセス制御マネージャ254によって提供される制御信号は、FIA150及び分析装置160の1つ以上のプロセスパラメータの調整を生じさせるように構成されている。本明細書で使用される場合、前述した「プロセスパラメータ」とは、プロセス制御デバイス200を通じてユーザが調整することができる生産プロセスの任意のパラメータ又は変数を指す。プロセスパラメータには、経路、流量、温度、インキュベーション期間、試薬の添加、種々のプロセス工程のタイミングなどが含まれるが、これらに限定されない。制御信号の決定は、本明細書で論じられるように、データ収集マネージャ254が受信したプロセス情報又は生産情報に基づき得る。
【0099】
プロセス制御マネージャ252によって提供される制御信号は、本明細書に記載のFIA150及び分析装置160が行うことのできる任意のプロセスを開始、制御、及び/又は更新するために使用され得る。例えば、プロセス制御マネージャ252は、FIA150の種々の駆動手段の自動制御を介して、自動プロセス中のFIA150の全体にわたる、全ての試料、流体、試薬、温度、撹拌、インキュベーション期間などの流れ、経路、及びタイミングを制御するように構成されている。
【0100】
一態様では、プロセス制御マネージャ252は、プロセスモニタリング機能を提供する。プロセス制御マネージャ252は、プロセス制御デバイス200によって測定、生成、及び/又は保存されたあらゆる全ての情報にアクセスするように構成され得る。プロセス制御マネージャ254は更に、ユーザインターフェースマネージャ260を介してそのような情報のいずれかをユーザに提供するように構成され得る。
【0101】
別の態様では、プロセス制御マネージャ252は、較正マネージャ256及び酵素決定マネージャ258と通信する、且つ/又は他の方法で相互作用するように構成され得る。較正マネージャ256及び酵素決定マネージャ258については、より詳細に後述する。
【0102】
一態様では、プロセス制御マネージャ252は、特に本明細書に記載の自動方法に関して更に後述するように、FIA150及び分析装置160の作動を制御するように構成されている。
【0103】
一態様では、プロセス制御マネージャ252は、より詳細に後述するように、所定の溶出時間にわたり、アフィニティーカラム313を通る試料の流れを制御する。別の態様では、プロセス制御マネージャ252は、アフィニティーカラム313を通る試料の流れを制御して、所定体積の溶出液を出力として実現する。プロセス制御マネージャ252は、所定の溶出時間内に所定体積の溶出液を実現するように試料の流れを制御し得る。プロセス制御マネージャ252は更に、後述するように、アフィニティーカラム313の出力部から分光光度計414への溶出液の流れを制御して、データ収集マネージャ254によって溶出液のタンパク質濃度を決定及び/又は測定することができるように構成されている。一態様では、プロセス制御マネージャ252は、後述するように、アフィニティーカラム313の出力部から消化チャンバへの溶出液の流れを制御して、プロセス制御マネージャ252によって決定された量の消化試薬を添加することによりタンパク質を消化することができるように構成されている。一態様では、プロセス制御マネージャ252は、消化チャンバ415内の試料のインキュベーション時間及び温度を制御するように構成されている。
【0104】
データ収集マネージャ254は、プロセス制御デバイス200上で作動するソフトウェアプロトコルである。データ収集マネージャ254は、FIA150、分析装置160、アフィニティーカラム155、分光光度計156、及び消化チャンバ415のうちの1つ以上にアクセスして、本明細書に記載の自動プロセスに関連付けられたデータ及び情報を採集及び/又は収集するように構成されている。自動システムデータには、例えば、ほぼリアルタイムで取得され得る生産情報、アーカイブデータ、及び/又は抽出データに加えて、プロセス情報及びプロセスパラメータ情報、並びにFIA150及び分析装置160によって作成又は測定された任意の他の情報又はデータが含まれ得る。データ収集マネージャ254は更に、1つ以上のデータ保持システム201にアクセスして、データ保持システム201に格納された自動処理システムデータを格納及び/又は受信するように構成されている。
【0105】
データ収集マネージャ254は、分光光度計156とインターフェースして、アフィニティーカラム313によって生成又は出力された溶出液に対してタンパク質濃度の測定/決定を実施するように構成されている。
【0106】
較正マネージャ256は、プロセス制御デバイス200上で作動するソフトウェアプロトコルである。較正マネージャ256は、分光光度計414により行われたUV吸光度測定に基づくタンパク質濃度の決定に関する較正情報を受信及び管理するように構成されている。較正マネージャ256は、プロセス制御マネージャ252及びデータ収集マネージャ254と通信及び協同して、分光光度計414から生データを収集するように構成されている。較正マネージャ256によって格納及び管理される較正情報を、プロセス制御マネージャ252によって、データ収集マネージャ254が収集した生データ(例えば、UV吸光度データ)に適用させて試料溶出液中のタンパク質濃度を決定することができる。
【0107】
酵素決定マネージャ258は、プロセス制御デバイス200上で作動するソフトウェアプロトコルである。酵素決定マネージャ258は、自動処理手順中に試料に添加される酵素の量を決定するように構成されている。以下により詳細に説明するように、自動処理手順中、プロセス制御マネージャ252によって制御された所定の溶出時間にわたり第1の試料をアフィニティーカラム313を介して溶出させて、試料溶出液を得ることができる。データ収集マネージャ254は、タンパク質濃度測定値を得るように作動し、この測定値は、較正情報と組み合わせて、プロセス制御マネージャ252が溶出試料中のタンパク質濃度レベルを決定するために使用することができる。酵素決定マネージャ258は、決定されたタンパク質濃度レベルを使用して、試料消化工程に添加される消化酵素の適切な量を決定することができる。
【0108】
作動中、酵素決定マネージャ258は、プロセス制御マネージャ252と通信及び協同して、第1の試料のタンパク質濃度決定により決定された、第2の試料への酵素添加量に関する決定された消化酵素の情報を提供することができる。前述のとおり、プロセス制御マネージャ252は、アフィニティーカラム313を通る試料の流れのタイミング及び体積を精密に制御するように構成されている。アフィニティーカラム313によって処理される第1の試料及び第2の試料に同じ所定のタイミング及び体積の処理パラメータを適用することにより、プロセス制御マネージャ252は、実質的に同様の濃度値を有する第1の試料溶出液及び第2の試料溶出液を実現することができる可能性がある。したがって、前述のとおり、第1の試料溶出液に対して実施されるタンパク質濃度の測定値は、第2の試料溶出液に添加される消化酵素の適切な量を決定するために酵素決定マネージャ258によって適用され得る。
【0109】
ユーザインターフェースマネージャ260は、プロセス制御デバイス200上で作動するソフトウェアプロトコルである。ユーザインターフェースマネージャ260は、プロセス制御デバイス200とのユーザの対話を可能にするユーザインターフェースを提供するように構成されている。ユーザインターフェースマネージャ260は、タッチスクリーン、キーボード、マウス、コントローラ、ジョイスティック、音声制御を含むがこれらに限定されない任意のユーザ入力ソースから入力を受信するように構成されている。ユーザインターフェースマネージャ260は、テキストベースのユーザインターフェース、グラフィカルユーザインターフェース、又は任意の他の好適なユーザインターフェースなどのユーザインターフェースを提供するように構成されている。ユーザインターフェースマネージャ260は、クライアントデバイスのタイプに応じて異なるユーザインターフェースサービスを提供するように構成され得る。例えば、ラップトップ又はデスクトップコンピュータには、インターフェースオプションの完全な一式を含むユーザインターフェースが設けられ得るが、一方、スマートフォン又はタブレットには、ステータス更新に限定されたユーザインターフェースが設けられ得る。
【0110】
一態様では、ユーザインターフェースマネージャ260は、ユーザインターフェースを介して、1人以上のユーザに自動プロセス制御システム100に関する任意の又は全てのプロセス及び/又は生産情報へのアクセスを提供し得る。ユーザインターフェースマネージャ260は、ユーザがバイオリアクタ140、FIA150、及び分析装置160上で種々のタスクを実施できるようにし得る。例えば、ユーザインターフェースマネージャ260は、ユーザが1つ以上のプロセスパラメータを直接調整又は制御できるようにし得る。
【0111】
図3は、本明細書に記載のオンライン自動方法を実施するための、FIA150に付随する第1のシリンジポンプ及び第1のバルブシステムの概略図である。作動中、プロセス制御デバイスのプロセス制御マネージャ252は、本明細書に記載の自動プロセス方法中に流体を適切に送り且つ混合するために、FIA150の第1のバルブ301及び第1のシリンジポンプ302を制御する。以下の表1は、第1のバルブ301及び第1のシリンジポンプ302への種々の接続の例示的な一覧表を提供する。
【0112】
第1のバルブ301は、複数の入力ポート304と、出力ポート308とを含む。「入力ポート」及び「出力ポート」という用語は、本明細書では第1のバルブ301の両端のポートを区別するために使用されており、必ずしもそれらに関連する流れの方向を指すものではない。第1のバルブ301は、例えばマルチポートロータリーバルブであり得る。プロセス制御マネージャ252は、バルブ301を回転させて選択された入力ポート304と出力ポート308との間の流体連通を提供するように構成された、バルブ自動セレクタ手段(例えば、ステッピングモータ、サーボモータ、又は他のアクチュエータデバイス。図示せず)を制御する。出力ポート308は、通信ライン309を介して第1のシリンジポンプ302に接続されている。第1のシリンジポンプ302は、ポート選択デバイス311及び駆動シリンジ306を含む。ポート選択デバイス311は、ポート選択デバイス311を操作して、選択された複数のシリンジポンプポート305のうちの1つをアクチュエータシリンジ306と位置合わせするように構成された、複数のシリンジポンプポート305及びシリンジポンプ自動セレクタ手段(例えば、ステッピングモータ、サーボモータ、又は他のアクチュエータデバイス。図示せず)を含む。シリンジポンプ自動セレクタ手段は、特定のシリンジポンプポート305を選択してアクチュエータシリンジ306と流体連通して配置するように、プロセス制御マネージャ252によって制御される。
【0113】
アクチュエータシリンジ306は、シリンジポンプ駆動手段(例えば、ステッピングモータ、リニアドライブ、サーボモータ、又は他のアクチュエータデバイス。図示せず)によって駆動されるシリンジであり、選択されたシリンジポンプポート305のうちの1つを通じて流体を吸引し、且つ押し出すための双方向圧力を提供する。アクチュエータシリンジ306は更に、シリンジポンプ駆動手段によって駆動される際にシリンジプランジャの押し下げ及び後退を介して流体をシリンジチャンバで混合するように構成されている。アクチュエータシリンジ306は、FIA150システムに双方向に圧力を印加して流体を吸引し且つ流体を押し出すように構成された任意のタイプのシリンジであり得る。
【0114】
図3には更に、V208入力ポート304によって第1のバルブ301に接続されている、アフィニティーカラム313が図示されている。
【0115】
作動中、プロセス制御マネージャ252は、第1のバルブ301を作動させ、選択された入力ポート304と出力ポート308との間に流体接続を確立し得る。プロセス制御マネージャ252は、ポート選択デバイス311を作動させ、選択されたシリンジポンプポート305とアクチュエータシリンジ306との間に流体接続を生じさせ得る。次いで、アクチュエータシリンジ306が駆動され、選択されたシリンジポンプポート305を介して特定量の流体がアクチュエータシリンジ306内へと吸引され得る。次いで、ポート選択デバイス311は、プロセス制御マネージャ252によって再度作動され、通信ライン309とシリンジポンプアクチュエータ306との間に流体連通を生じさせ得る。次いで、アクチュエータシリンジ306が再度作動され、第1のバルブ301からアクチュエータシリンジ306内に流体を吸引し得る。次いで、アクチュエータシリンジ306及びポート選択デバイス311は、追加の流体をアクチュエータシリンジ306内へと吸引するために、及び/又はアクチュエータシリンジ内の流体をシリンジポンプポート305のうちの1つを通じて外に移動させるために更に作動され得る。
【0116】
プロセス制御マネージャ252は、FIA150のシステムを通じて適量の流体を移送するために、アクチュエータシリンジ306の正確且つ精密な制御を提供することができる。
【0117】
図4は、本明細書に記載のオンライン自動方法を実施するための、FIA150に付随する第2のシリンジポンプ及び第2のバルブシステムの概略図である。作動中、プロセス制御デバイスのプロセス制御マネージャ252は、本明細書に記載の自動プロセス方法中に流体を適切に送り且つ混合するために、FIA150の第2のバルブ401及び第2のシリンジポンプ402を制御する。以下の表1は、第2のバルブ401及び第2のシリンジポンプ402への種々の接続の例示的な一覧表を提供する。
【0118】
第2のバルブ401は、複数の入力ポート404と、出力ポート408とを含む。第2のバルブ401は、例えばマルチポートロータリーバルブであり得る。「入力ポート」及び「出力ポート」という用語は、本明細書では第1のバルブ301の両端のポートを区別するために使用されており、必ずしもそれらに関連する流れの方向を指すものではない。プロセス制御マネージャ252は、バルブ401を回転させて選択された入力ポート404と出力ポート408との間の流体連通を提供するように構成された、バルブ自動セレクタ手段(例えば、ステッピングモータ、サーボモータ、又は他のアクチュエータデバイス。図示せず)を制御する。出力ポート408は、通信ライン409を介して第2のシリンジポンプ402に接続されている。第2のシリンジポンプ402は、ポート選択デバイス411及び駆動シリンジ406を含む。ポート選択デバイス411は、ポート選択デバイス411を操作して、選択された複数のシリンジポンプポート405のうちの1つをアクチュエータシリンジ406と位置合わせするように構成された、複数のシリンジポンプポート405及びシリンジポンプ自動セレクタ手段(例えば、ステッピングモータ、サーボモータ、又は他のアクチュエータデバイス。図示せず)を含む。シリンジポンプ自動セレクタ手段は、特定のシリンジポンプポート305を選択して通信ライン309を介してバルブ301と流体連通して配置するように、プロセス制御マネージャ252によって制御される。
【0119】
アクチュエータシリンジ406は、シリンジポンプ駆動手段(例えば、ステッピングモータ、リニアドライブ、サーボモータ、又は他のアクチュエータデバイス。図示せず)に接続されるシリンジであり、選択されたシリンジポンプポート405のうちの1つを通じて流体を吸引し、且つ押し出すための双方向圧力を提供する。アクチュエータシリンジ406は更に、シリンジポンプ駆動手段によって駆動される際にシリンジプランジャの押し下げ及び後退を介して流体をシリンジチャンバで混合するように構成されている。アクチュエータシリンジ406は、FIA150システムに双方向に圧力を印加して流体を吸引し且つ流体を押し出すように構成された任意のタイプのシリンジであり得る。
【0120】
図4には更に、入力端で第1のバルブ301に接続され、出力端で多方向接続部412に接続されている、アフィニティーカラム313が図示されている。多方向接続部412は更に、分光光度計414に接続されている。
図4には更に、シリンジポンプポート405を介して第2のシリンジポンプ402に接続されたS105消化チャンバ415が図示されている。
【0121】
作動中、第2のバルブ401及び第2のシリンジポンプ402は、第1のバルブ301及び第1のシリンジポンプ302と同様に作動する。プロセス制御マネージャ252は、バルブ自動セレクタ手段、シリンジポンプ自動セレクタ手段、及びシリンジポンプ駆動手段に制御信号を提供して、FIA150の接続を制御及び調整し、プロセス及び生産パラメータに従ってFIA150全体に流体の流体流れを発生させる/提供する。
【0122】
以下の表1は、本明細書に記載のシステムと一致するFIA150内における種々の流体接続、流体リザーバ/供給源、流体シンク/出口/ドレインなどの例を提供する。
【0123】
【0124】
上述した自動プロセスシステム100を参照して、オンライン自動方法の概略的全体像を
図5に提供する。簡潔に述べると、清澄化細胞培養培地は、タンパク質捕捉ユニットと、タンパク質濃度決定ユニットと、タンパク質消化ユニットと含む試料調製ユニットに送達される。一態様では、タンパク質捕捉ユニットは、クロマトグラフィーカラムを含む。一態様では、タンパク質捕捉ユニットは、アフィニティークロマトグラフィーカラム(本明細書ではアフィニティーカラムとも称される)を含む。一態様では、タンパク質濃度決定ユニットは、分光光度計を含む。一態様では、タンパク質消化ユニットは、消化チャンバを含む。一態様では、タンパク質消化チャンバは、シリンジポンプのバレルである。一態様では、消化チャンバの温度は制御され得る。一態様では、調製された試料は分析装置に移送される。一態様では、分析装置は、ペプチドマッピングユニットを含む。一態様では、ペプチドマッピングユニットは、データ取得ユニット及びデータ処理ユニットを含む。一態様では、データ取得ユニットは、液体クロマトグラフィーカラム(LC)及び質量分析計(MS)を含む。
【0125】
図6は、一部の工程が手動又はオフラインで実施される、本明細書に記載の方法の概略図である。一態様では、試料調製のためのタンパク質捕捉工程及び濃度決定工程はオフラインで実施され、タンパク質消化工程、データ取得工程、及びデータ処理工程はオンラインで実施される。一態様では、例えばタンパク質捕捉工程、濃度決定工程、及びタンパク質消化工程を含む試料調製工程は、オフラインで実施され、データ取得工程及びデータ処理工程は、オンラインで実施される。
【0126】
一態様では、タンパク質の翻訳後修飾(PTM)を検出するための方法が提供される。一態様では、本方法は、少なくとも1つのプロセッサによって制御されるフローインジェクション分析器(FIA)により行われる。一態様では、フローインジェクション分析器(FIA)は、シーケンシャルインジェクション分析器(SIA)である。一態様では、フローインジェクション分析器(FIA)は、ダイレクトインジェクション分析器(DIA)である。上述したように、オンラインの自動フローインジェクション分析のための方法又はシステムの例が
図1~4に示されている。
【0127】
一態様では、本方法は、目的タンパク質を含む第1の試料をFIA、例えば上記のFIA150の保持リザーバ内に収容することを含む。一態様では、第1の試料は、バイオリアクタ、例えば、上記のバイオリアクタ140から得られる。一態様では、バイオリアクタ140は、FIAに連結されている。一態様では、FIAは、バイオリアクタ140に連結され、且つバイオリアクタ140から細胞培養培地又は清澄化細胞培養培地を得るように構成された、試料採取デバイスを含む。一態様では、バイオリアクタ140とFIAとを連結させるために使用される自動システムインターフェース、例えば、Modular Automated Sampling Technology(MAST(商標))試料採取システム(Lonza,Bend,OR,U.S.A.)又はSeg-Flow自動試料採取システム(BioProcess International Europe,Vienna,Austria)。一態様では、試料は、バイオリアクタから手動で得られ、例えばFIAの保持リザーバを細胞培養試料を含有する容器に導入することによって、FIAの保持リザーバに導入される。一態様では、第1の試料は、細胞培養培地を含む。一態様では、第1の試料は、清澄化細胞培養培地を含む。一態様では、第1の試料は、約20μL~約1000μLの体積を有する。
【0128】
一態様では、本方法は、第1のタンパク質捕捉工程を含む。一態様では、タンパク質捕捉工程は、アフィニティークロマトグラフィー工程を含む。一態様では、アフィニティークロマトグラフィー工程は、カラム平衡化、試料ローディング、及び試料溶出を含む。一態様では、カラム平衡化工程は、FIAを介して、第1の体積の結合緩衝液をFIA内のアフィニティークロマトグラフィーカラムに送達することを含む。一態様では、試料ローディング工程は、FIAを介して、第1の試料を保持リザーバからアフィニティーカラムに移送することを含む。一態様では、試料溶出工程は、FIAを介して、第1の体積の溶出緩衝液をアフィニティークロマトグラフィーカラムに送達すること、及びアフィニティークロマトグラフィーカラムから第1の試料中のタンパク質を溶出させて第1の溶出液を形成すること、を含む。一態様では、所定の溶出時間に基づいて、第1の試料中のタンパク質がアフィニティークロマトグラフィーカラムから溶出され、第1の溶出液が形成される。一態様では、所定の溶出時間は、自動制御システムに関連付けられたプロセス制御デバイスのプロセス制御マネージャによって制御される。一態様では、所定の溶出体積に基づいて、第1の試料中のタンパク質がアフィニティーカラムから溶出され、第1の溶出液が形成される。一態様では、溶出体積は、自動制御システムに関連付けられたプロセス制御デバイスのプロセス制御マネージャによって制御される。
【0129】
一態様では、
図6に示されるように、タンパク質捕捉工程は手動で実施される。一態様では、タンパク質捕捉工程はオフラインで実施される。一態様では、タンパク質捕捉工程はアトラインで実施される。一態様では、アフィニティークロマトグラフィー工程は手動で実施される。一態様では、アフィニティークロマトグラフィー工程はオフラインで実施される。一態様では、アフィニティークロマトグラフィー工程はアトラインで実施される。
【0130】
一態様では、第1の溶出液は、プロセス制御マネージャの制御下でFIAを介してタンパク質濃度検出ユニットに移送される。一態様では、カラム平衡化から溶出までのタンパク質捕捉工程は、約15分~約1時間を要する。一態様では、タンパク質捕捉工程は、約30分未満を要する。
【0131】
一態様では、本方法は、少なくとも1つのプロセッサによって第1の溶出液中のタンパク質の濃度を決定することを含む。一態様では、第1の溶出液中のタンパク質の濃度を決定することは、所定の検量線に従って少なくとも1つのプロセッサによって実施される。一態様では、第1の溶出液中のタンパク質の濃度は、試料の吸光度を測定し、所定の検量線に基づいてタンパク質濃度を算出することにより決定される。例えば、プロセス制御マネージャは、データ収集マネージャと協同して分光光度計からUV吸光度データを取得することができ、且つ較正マネージャと協同して所定の検量線を取得し、取得したUV吸光度データにそれを適用することができる。一態様では、第1の溶出液中のタンパク質の濃度は、約190nm~約280nm、又は約205nm~約280nmで試料のUV吸光度を測定し、所定の検量線に基づいてタンパク質濃度を算出することにより決定される。一態様では、本方法は、タンパク質濃度を決定した後、FIAの動作を介して第1の溶出液を廃棄物容器T106に移送することを含む。一態様では、濃度決定工程は、約5分~約30分、又は約10分未満を要する。
【0132】
一態様では、
図6に示されるように、タンパク質濃度決定は手動で実施される。一態様では、タンパク質濃度決定はオフラインで実施される。一態様では、タンパク質濃度決定はアトラインで実施される。
【0133】
第1の溶出液のタンパク質濃度が決定された後、本方法は、タンパク質を含む第2の試料を保持リザーバ内に収容することを含む。一態様では、第2の試料は、バイオリアクタから得られる。一態様では、第2の試料は、細胞培養培地を含む。一態様では、第2の試料は、清澄化細胞培養培地を含む。一態様では、第2の試料は、第1の試料が得られたものと同じ細胞培養物から得られる。一態様では、第1の試料及び第2の試料は、細胞培養物から実質的に同時間に得られる。一態様では、第1の試料及び第2の試料は、細胞培養物から互いに少なくとも約30分以内、約15分以内、約10分以内、約5分以内、約4分以内、約3分以内、約2分以内、又は約1分以内に得られる。一態様では、第2の試料は、約20μL~約1000μLの体積を有する。
【0134】
一態様では、本方法は、第2のタンパク質捕捉工程を含む。一態様では、第2のタンパク質捕捉工程は、アフィニティークロマトグラフィー工程を含む。一態様では、第2のアフィニティークロマトグラフィー工程は、カラム平衡化、試料ローディング、及び試料溶出を含む。一態様では、カラム平衡化工程は、FIAを介して、第2の体積の結合緩衝液をアフィニティーカラムに送達することを含む。一態様では、試料ローディング工程は、FIAを介して、第2の試料を保持リザーバからアフィニティーカラムに移送することを含む。一態様では、試料溶出工程は、FIAを介して、第2の体積の溶出緩衝液をアフィニティーカラムに送達すること、及びアフィニティーカラムから第2の試料中のタンパク質を溶出させて第2の溶出液を形成すること、を含む。一態様では、所定の溶出時間に基づいて、第2の試料中のタンパク質がアフィニティーカラムから溶出され、第2の溶出液が形成される。一態様では、溶出時間(及び任意選択的に、溶出緩衝液体積などの他のプロセスパラメータ)は、第1の溶出液の所定の溶出時間に実質的に一致するように、例えばプロセス制御マネージャを介して、少なくとも1つのプロセッサによって制御され、それにより第2の溶出液が得られる。一態様では、第2の溶出液は、第1の溶出液のタンパク質濃度と実質的に同様のタンパク質濃度を有する。一態様では、所定の溶出体積に基づいて、第2の試料中のタンパク質がアフィニティーカラムから溶出され、第2の溶出液が形成される。一態様では、第2の試料の溶出時間は、第1の試料の溶出時間と実質的に一致するようにプロセス制御マネージャによって制御される。一態様では、第2の試料の溶出体積は、第1の試料の溶出体積と実質的に一致するようにプロセス制御マネージャによって制御される。
【0135】
一態様では、
図6に示されるように、タンパク質捕捉工程は手動で実施される。一態様では、タンパク質捕捉工程はオフラインで実施される。一態様では、タンパク質捕捉工程はアトラインで実施される。一態様では、アフィニティークロマトグラフィー工程は手動で実施される。一態様では、アフィニティークロマトグラフィー工程はオフラインで実施される。一態様では、アフィニティークロマトグラフィー工程はアトラインで実施される。
【0136】
一態様では、本方法は、第2の溶出液中のタンパク質を消化してペプチド混合物を形成することを含む。一態様では、第2の溶出液中のタンパク質は、酵素的に消化される。一態様では、第2の溶出液中のタンパク質を消化することは、FIAを介して、消化試薬を第2の溶出液に導入して消化混合物を形成することを含む。一態様では、第2の溶出液中のタンパク質を消化することは、FIAを介して、消化緩衝液、還元剤、及びタンパク質分解酵素を含む消化試薬を第2の溶出液に導入して消化混合物を形成することを含む。一態様では、第2の溶出液を、第1の溶出液の濃度に基づいて、少なくとも1つのプロセッサ、例えば酵素決定マネージャによって決定される量のタンパク質分解酵素と接触させる。一態様では、本方法は、例えばプロセス制御マネージャによって制御されるFIAのシリンジポンプを介して、消化混合物を混合することを含む。一態様では、本方法は、例えばプロセス制御マネージャの制御下で、消化混合物をインキュベートすることを含む。
【0137】
一態様では、タンパク質分解酵素は、熱安定性トリプシンを含む。一態様では、本方法は、FIAを介して、第1の量の消化緩衝液、還元剤、及び熱安定性トリプシンを第2の溶出液に導入し、混合して第1の消化混合物を形成することを含む。一態様では、第1の消化混合物を約65℃~約85℃の温度で約5分間~約30分間インキュベートして、インキュベート混合物を形成する。一態様では、消化混合物を約70℃~約75℃の温度で約10分間~約20分間インキュベートして、インキュベート混合物を形成する。一態様では、消化混合物を約70℃~約75℃の温度で約10分間~約20分間インキュベートして、インキュベート混合物を形成する。上記のインキュベーションプロセスの態様は、プロセス制御マネージャを介して制御され得る。
【0138】
一態様では、本方法は、FIAを介して、第2の量の熱安定性トリプシンをインキュベート混合物に導入し、混合して第2の消化混合物を形成することを含む。一態様では、第2の消化混合物を約65℃~約85℃の温度で約5分間~約30分間インキュベートして、ペプチド混合物を形成する。一態様では、第2の消化混合物を約70℃~約75℃の温度で約10分間~約20分間インキュベートして、ペプチド混合物を形成する。一態様では、第2の消化混合物を約70℃~約75℃の温度で約10分間~約20分間インキュベートして、ペプチド混合物を形成する。上記のインキュベーションプロセスの態様は、プロセス制御マネージャを介して制御され得る。
【0139】
一態様では、
図6に示されるように、タンパク質消化工程は手動で実施される。一態様では、タンパク質消化工程はオフラインで実施される。一態様では、タンパク質消化工程はアトラインで実施される。
【0140】
一態様では、本方法は、FIAを介して、分析装置、例えばペプチドマッピングユニット(例えば質量分析器を含み得る)にペプチド混合物を移送すること、及びタンパク質の所定の翻訳後修飾(PTM)を検出すること、を含む。
【0141】
一態様では、タンパク質の翻訳後修飾をモニタリングするためのオンライン方法が提供される。一態様では、本方法は、少なくとも1つのプロセッサを含むプロセス制御デバイスによって制御されるフローインジェクション分析器(FIA)により行われる。一態様では、フローインジェクション分析器は、少なくとも1つの双方向ポンプを含む。一態様では、FIAは、少なくとも1つのプロセッサによって制御される少なくとも1つのシリンジポンプを含む。一態様では、FIAは、少なくとも1つのプロセッサによって制御される少なくとも1つのマルチポートバルブを含む。一態様では、FIAは、2つのシリンジポンプを含む。一態様では、FIAは、2つのマルチポートバルブを含む。一態様では、マルチポートバルブは、10ポートバルブである。
【0142】
一態様では、本方法は、タンパク質を含む第1の試料をFIAの保持リザーバ内に収容することを含む。一態様では、試料は、少なくとも1つのプロセッサによって制御される1つ以上のシリンジポンプの動作によって、FIAを通じて進められる。一態様では、試料は、約10μL/秒~約200μL/秒の流量でFIAを通じて進められる。
【0143】
一態様では、第1の体積の結合緩衝液は、マルチポートバルブの動作によって、マルチポートバルブを介してFIA内のアフィニティーカラムに導入される。
【0144】
一態様では、試料は、シリンジポンプの動作によって、FIAシステムを通じてアフィニティーカラムへと進められる。一態様では、本方法は、シリンジポンプの動作によって、第1の試料を保持リザーバからアフィニティーカラムに移送することを含む。一態様では、第1の試料中のタンパク質は、アフィニティーカラムに結合する。一態様では、本方法は、マルチポートバルブの動作によって、第1の体積の溶出緩衝液をアフィニティーカラムに導入し、結合したタンパク質を溶出させて第1の溶出液を形成することを含む。一態様では、所定の溶出時間に基づいて、第1の試料中のタンパク質がアフィニティーカラムから溶出され、第1の溶出液が形成される。一態様では、所定の溶出体積に基づいて、第1の試料中のタンパク質がアフィニティーカラムから溶出され、第1の溶出液が形成される。いくつかの態様では、シリンジポンプの動作は、プロセス制御マネージャによって制御され得る。
【0145】
一態様では、本方法は、シリンジポンプの動作によって、第1の溶出液をタンパク質濃度検出ユニットに移送することを含む。一態様では、本方法は、シリンジポンプの動作によって、第1の溶出液を分光光度計へと進めることを含む。一態様では、本方法は、少なくとも1つのプロセッサによって、測定されたUV吸光度に従って第1の溶出液中のタンパク質の濃度を決定することを含む。一態様では、第1の溶出液は、タンパク質濃度が決定された後に廃棄物容器に移送される。一態様では、第1の溶出液中のタンパク質の濃度は、所定の検量線に従って少なくとも1つのプロセッサにより決定される。
【0146】
一態様では、本方法は、第2の試料をFIAの保持リザーバ内に収容することを含む。一態様では、本方法は、シリンジポンプの動作によって試料をFIAを通じて進めることを含む。一態様では、本方法は、マルチポートバルブを介して、第2の体積の結合緩衝液をアフィニティーカラムに送達することを含む。一態様では、本方法は、シリンジポンプの動作によって、第2の試料を保持リザーバからアフィニティーカラムに移送することを含む。一態様では、第2の試料中のタンパク質は、アフィニティーカラムに結合する。一態様では、本方法は、マルチポートバルブの動作によって、第2の体積の溶出緩衝液をアフィニティーカラムに導入し、結合したタンパク質を溶出させて第2の溶出液を形成することを含む。一態様では、所定の溶出時間に基づいて、第2の試料中のタンパク質がアフィニティーカラムから溶出され、第2の溶出液が形成される。一態様では、所定の溶出体積に基づいて、第2の試料中のタンパク質がアフィニティーカラムから溶出され、第2の溶出液が形成される。一態様では、第1及び第2の溶出液は、実質的に同じ溶出体積を有する。いくつかの態様では、シリンジポンプ及びマルチポートバルブの動作は、プロセス制御マネージャによって制御され得る。
【0147】
一態様では、本方法は、シリンジポンプの動作によって、第2の溶出液をFIA内の消化チャンバへと進めることを含む。一態様では、本方法は、マルチポートバルブの動作によって、第2の溶出液に消化試薬を導入し、第2の溶出液中のタンパク質を消化してペプチド混合物を形成することを含む。一態様では、タンパク質を消化することは、マルチポートバルブの動作によって、消化緩衝液、還元剤、タンパク質分解酵素、又はそれらの組み合わせを消化チャンバ内の第2の溶出液に導入して、第1の消化混合物を形成することを含む。一態様では、本方法は、第1の消化混合物を混合することを含む。一態様では、消化チャンバは、アクチュエータシリンジ、例えばアクチュエータシリンジの内部バレルであり、シリンジのプランジャを押し下げて後退させることにより第1の消化混合物が混合される。一態様では、第1の消化混合物を消化チャンバ内でインキュベートして、インキュベート混合物を形成する。一態様では、本方法は、マルチポートバルブの動作によって、第2の体積のタンパク質分解酵素を第1のインキュベート混合物に導入して、第2の消化混合物を形成することを含む。一態様では、第2の体積の消化緩衝液が、第1のインキュベート混合物に導入される。一態様では、第2の消化混合物をインキュベートして、ペプチド混合物を形成する。一態様では、本方法は、第2の消化混合物を混合することを含む。一態様では、シリンジのプランジャを押し下げて後退させることにより第2の消化混合物が混合される。一態様では、第2の消化混合物に導入されるタンパク質分解酵素の量は、第1の溶出液の濃度に基づいて少なくとも1つのプロセッサによって決定される。一態様では、シリンジポンプ及びマルチポートバルブの動作は、プロセス制御マネージャによって制御され得る。
【0148】
一態様では、タンパク質分解酵素は、熱安定性トリプシンを含む。一態様では、本方法は、マルチポートバルブの動作によって、第1の量の消化緩衝液、還元剤、及び熱安定性トリプシンを第2の溶出液に導入し、混合して第1の消化混合物を形成することを含む。一態様では、本方法は、第1の消化混合物を約70℃~約75℃の温度で約10分間~約20分間インキュベートすることを含む。一態様では、本方法は、マルチポートバルブの動作によって、第2の量の消化緩衝液及び熱安定性トリプシンを第1の消化混合物に導入し、混合して第2の消化混合物を形成することを含む。一態様では、本方法は、第2の消化混合物を約70℃~約75℃の温度で約10分間~約20分間インキュベートして、ペプチド混合物を形成することを含む。
【0149】
一態様では、本方法は、シリンジポンプの動作によって、ペプチド混合物をペプチドマッピングユニットへと進め、タンパク質の翻訳後修飾(PTM)を検出することを含む。一態様では、本方法は、シリンジポンプの動作によって、ペプチド混合物をペプチドマッピングユニットへと進め、タンパク質の所定のPTMを検出することを含む。
【0150】
C.細胞培養
一態様では、本方法は、試料中のタンパク質の翻訳後修飾(PTM)を検出するために使用される。一態様では、タンパク質は、組換えタンパク質である。一態様では、タンパク質は、治療用タンパク質である。一態様では、タンパク質は、組換え生産された治療用タンパク質である。一態様では、試料は細胞培養物から得られる。
【0151】
細胞培養物中で組換えタンパク質を発現させるための方法は公知である。一般に、タンパク質をコードするコード配列を含む発現ベクターが調製される。一態様では、コード配列は、1つ以上の調節配列と作動的に連結される。調節配列は公知であり、これには、プロモーター、エンハンサー、及びコード配列の転写又は翻訳を制御する他の発現制御エレメントが含まれるがこれらに限定されない。「作動的に連結された」又は「作動可能に連結された」とは、コード配列の発現をもたらすために、調節配列がコード配列に対して適切な位置に配置されていることを意味する。一態様では、調節配列は、コード配列と隣接している。一態様では、調節配列は、トランスで又は遠隔で作用してコード配列の発現を制御する。一態様では、組換え発現ベクターは、1つ以上の追加の配列、例えば複製起点及び/又は選択マーカーを含む。
【0152】
一態様では、組換えタンパク質は、2つ以上のポリペプチド鎖を含む。一態様では、組換えタンパク質は、抗体である。2つ以上のポリペプチド鎖を含むタンパク質の場合、個々のポリペプチド鎖のコード配列を同じ又は別々の発現ベクターに挿入することができる。遺伝子を発現ベクターに挿入するための方法は公知である。一態様では、組換え発現ベクターは、宿主細胞からのタンパク質の分泌を容易にするシグナルペプチドをコードする。
【0153】
タンパク質を組換え発現させるには、そのタンパク質をコードする組換え発現ベクターを宿主細胞にトランスフェクトする。トランスフェクション方法は公知である。
【0154】
宿主細胞には、原核生物、酵母、又は高等真核生物の細胞が含まれ得る。一態様では、宿主細胞は、哺乳動物宿主細胞である。好適な哺乳動物宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)、NS0骨髄腫細胞、COS細胞、SP2細胞、COS-7細胞、ヒト胎児腎細胞(HEK 293細胞)、ベビーハムスター腎細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(TM4)、サル腎細胞(CV1)、アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76)、ヒト子宮頸癌細胞(HELA)、イヌ腎細胞(MDCK)、バッファローラット肝細胞(BRL)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝細胞(Hep G2)、ヒト肝癌細胞(Hep G2)、マウス乳癌細胞(MMT)、TRI細胞、MRC 5細胞、及びFS4細胞が挙げられるが、これらに限定されない。一態様では、哺乳動物宿主細胞は、CHO、HEK 293、COS、NS0、SP2、又はPER.C6宿主細胞である。
【0155】
細胞培養中、形質転換された宿主細胞は、組換えタンパク質の発現のための好適な培養条件(例えば、温度、pH、撹拌、及び溶存酸素レベル)の下で、好適な細胞培養培地中で培養される。市販の細胞培養培地としては、Ham’s F10(商標)(Sigma)、Minimal Essential Medium(商標)(MEM)、(Sigma)、RPMI-1640(Sigma)、及びDulbecco’s Modified Eagle’s Medium(商標)(DMEM)(Sigma)、イスコフ改変ダルベッコ培地、及び最小必須培地-アルファ(MEM-アルファ)が挙げられるが、これらに限定されない。一態様では、細胞培養培地には、ホルモン及び/又は他の増殖因子、塩、緩衝液、ヌクレオチド、抗生物質、微量元素、並びにグルコース又は他のエネルギー源が補充される。
【0156】
一態様では、宿主細胞は、スモールスケールのバイオリアクタ内で培養される。一態様では、宿主細胞は、個々のフラスコ、振盪フラスコ、又はウェーブバッグ内で培養される。一態様では、宿主細胞は、約125ml~約500mlの容積を有するバイオリアクタ内で培養される。一態様では、宿主細胞は、ラージスケールのバイオリアクタ内で培養される。一態様では、宿主細胞は、約100リットル~約20,000リットル、又はそれを超える容積を有するバイオリアクタ内で培養される。一態様では、宿主細胞は、撹拌スタンク、固定床、流動床、気泡塔、又はエアリフトバイオリアクタ内で培養される。
【0157】
一態様では、細胞培養物には、細胞培養の過程中に、栄養素及びアミノ酸などの成分を含有する濃縮フィード培地が補充される。一態様では、バッチプロセスでの細胞培養プロセス中に、バイオリアクタ内の培地は補充されない。一態様では、流加バイオリアクタでの細胞培養プロセス中に、バイオリアクタ内の培地には追加の成分、例えば栄養素又は細胞培養培地が補充される。一態様では、培地はバイオリアクタに継続的に添加され、使用済み培地及び生産物は、灌流バイオリアクタでの細胞培養プロセス全体を通じて除去される。
【0158】
一態様では、本方法は、細胞培養物から第1の試料及び第2の試料を得ることを含む。一態様では、第1の試料及び第2の試料は、同じ細胞培養物から得られる。一態様では、第1の試料及び第2の試料は、細胞培養物から実質的に同時間に得られる。本明細書で使用される場合、「実質的に同時間に」実施される2つの動作は、2つの動作が並行して実施されることを意味し得るが、2つの動作が互いに短い時間内に実施される状況も含む。一態様では、第1の及び試料は、互いに約30分以内に得られる。一態様では、第1の及び試料は、互いに約15、約10、約5、約4、約3、約2、又は約1分以内に得られる。
【0159】
D.組換えタンパク質
一態様では、本方法は、試料中の目的タンパク質の翻訳後修飾(PTM)を検出するために使用される。一態様では、タンパク質は、組換え生産される。一態様では、組換え生産されたタンパク質は、少なくとも約1000個のアミノ酸残基を含む。一態様では、組換え生産されたタンパク質は、少なくとも約10kDa、又は少なくとも約20kDa、又は少なくとも約30kDaの分子量を有する。
【0160】
一態様では、タンパク質は、糖タンパク質である。一態様では、タンパク質は、治療用抗体又はその抗原結合断片である。一態様では、タンパク質は、受容体又は受容体リガンドである。一態様では、タンパク質は、融合タンパク質である。
【0161】
組換えタンパク質は、細胞内に生産されるか、細胞膜周辺腔に生産されるか、又は細胞培養培地中に直接分泌され得る。ポリペプチドタンパク質が細胞内で生産される場合、精製プロセスの第1の工程には通常、例えば機械的せん断、浸透圧ショック、又は酵素処理などによる細胞の溶解が含まれ、これにより、細胞の内容物全体がホモジネートに放出され、分画遠心分離又は濾過により除去され得る細胞デブリが生じる。
【0162】
一態様では、タンパク質は、治療用タンパク質である。本明細書で使用される場合、「治療用タンパク質」は、疾患又は疾患の少なくとも1つの症状を治療、予防、又は改善するのに有用な1つ以上の生物学的活性を有するタンパク質である。
【0163】
E.翻訳後修飾
「翻訳後修飾」(PTM)とは、タンパク質合成中又は合成後にポリペプチドに対して行われる1つ以上の共有結合修飾を指す。一態様では、PTMは、酵素又は酵素経路によって導入される。PTMは、様々なレベルのタンパク質不均一性をもたらす可能性があり、この不均一性は、組換え生産されたタンパク質の生物学的活性、結合活性、薬物動態(PK)、薬力学(PD)、及び免疫原性が含まれるがこれらに限定されないタンパク質の構造及び機能に重大な影響を及ぼし得る。治療用タンパク質の物理化学的特徴に有益であり得るPTMもある一方で、有害であり得るPTMもある。PTMの量及びタイプは、細胞培養条件の影響を受ける可能性があり、組換え生産された治療用タンパク質の製造中にモニタリングする必要がある重要品質特性(CQA)と見なされる。
【0164】
一態様では、タンパク質のPTMを検出するための方法が提供される。一態様では、組換え生産されたタンパク質のPTMを検出するための方法が提供される。一態様では、治療用タンパク質のPTMを検出するための方法が提供される。
【0165】
一態様では、PTMにはグリコシル化が含まれる。一態様では、グリコシル化には、N-結合型グリコシル化、O-結合型グリコシル化、又はそれらの組み合わせが含まれる。一態様では、PTMには、酸化、脱アミド化、異性化、糖化、又はそれらの組み合わせが含まれる。一態様では、PTMには、リジン保持、グリシン喪失、アミド形成、又はそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されないC末端修飾が含まれる。一態様では、PTMには、リーダー配列保持、N末端環化、又はそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されないN末端修飾が含まれる。
【0166】
一態様では、PTMには、N-結合型グリカンが含まれる。一態様では、PTMには、O-結合型グリカンが含まれる。一態様では、PTMには、末端ガラクトース部分が0個のアガラクトシルグリカン、例えば、G0、G0-GlcNAc、G0F、G0F-GlcNAc、又はそれらの組み合わせが含まれる。一態様では、PTMには、末端ガラクトース部分が1個のグリカン、例えば、G1、G1F、G1F-GlcNAc、又はそれらの組み合わせが含まれる。一態様では、PTMには、末端ガラクトース部分が2個のグリカン、例えば、G2F、G2F+シアル酸、又はそれらの組み合わせが含まれる。
【0167】
一態様では、PTMには高マンノースグリカンが含まれる。本明細書で使用される場合、「高マンノースグリカン」とは、約3、約4、約5、約6、約7、約8、又は約9個のマンノース残基を含有するN-グリカン構造を指し、それぞれMan4、Man5、Man6、Man7、Man8、又はMan9グリカンとも称され得る。
【0168】
F.試料調製
本明細書では、ポリペプチド内の翻訳後修飾(PTM)を検出するための自動オンラインシステム又は方法が提供される。一態様では、組換え生産されたポリペプチド内のPTMを検出するための方法又はシステムが提供される。一態様では、タンパク質内のPTMを検出するための方法又はシステムが提供される。一態様では、組換え生産されたタンパク質内のPTMを検出するための方法又はシステムが提供される。一態様では、治療用タンパク質内のPTMを検出するための方法又はシステムが提供される。一態様では、組換え生産された治療用タンパク質内のPTMを検出するための方法又はシステムが提供される。
【0169】
一態様では、自動オンライン試料調製システム又は方法が提供される。一態様では、自動オンライン試料調製システム又は方法は、タンパク質捕捉工程、濃度決定工程、及びタンパク質消化工程のうちの1つ以上を含む。一態様では、試料中のタンパク質が分析プロセス、例えば質量分析用に調製される、自動オンライン試料調製システム又は方法が提供される。一態様では、試料中のタンパク質が、(例えば1つ以上のPTMを検出するための)分析プロセス用に調製される、自動オンライン試料調製システム又は方法が提供される。一態様では、自動オンライン試料調製システム又は方法は、質量分析(MS)用に試料中のタンパク質を調製する。一態様では、自動オンライン試料調製システム又は方法は、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)用に試料中のタンパク質を調製する。一態様では、自動オンライン試料調製システム又は方法は、自動LC/MSシステム用に試料中のタンパク質を調製する。一態様では、自動オンライン試料調製システム又は方法は、統合LC/MSシステム用に試料中のタンパク質を調製する。
【0170】
オンライン自動方法の概略的全体像を
図5に提供する。簡潔に述べると、清澄化細胞培養培地は、タンパク質捕捉ユニットと、タンパク質濃度決定ユニットと、タンパク質消化ユニットと含む試料調製ユニットに送達される。次いで、調製された試料は、分析装置、例えばデータ取得ユニットとデータ処理ユニットとを含むペプチドマッピングユニットに移送される。一態様では、データ取得ユニットは、液体クロマトグラフィー(LC)及び質量分析(MS)を含む。
【0171】
図6に示すように、方法工程の一部は手動又はオフラインで実施され得る。一態様では、試料調製のためのタンパク質捕捉工程及び濃度決定工程はオフラインで実施され、タンパク質消化工程、データ取得工程、及びデータ処理工程はオンラインで実施される。一態様では、例えばタンパク質捕捉工程、濃度決定工程、及びタンパク質消化工程を含む試料調製工程は、オフラインで実施され、データ取得工程及びデータ処理工程は、オンラインで実施される。
【0172】
1.フローインジェクション分析
一態様では、自動試料調製は、
図1及び2に関して論じたように、1つ以上のプロセス制御デバイスを含む自動プロセス制御システム内に任意選択的に含まれるフローインジェクション分析器(FIA)を使用して実施される。フローインジェクション分析器は、例えば、FIAlab Instruments,Inc.(Seattle,WA,U.S.A.)から市販されている。一態様では、FIAは、シーケンシャルインジェクション分析器(SIA)である。一態様では、FIAは、ダイレクトインジェクション分析器(DIA)である。一態様では、FIAは、双方向ポンプ及びバルブを含む。一態様では、FIAは、2つ以上のポンプ及び2つ以上のバルブを含む。一態様では、FIAは、2つのポンプ及び2つのバルブを含む。一態様では、双方向ポンプは、シリンジポンプである。一態様では、バルブは、ロータリーバルブである。一態様では、バルブは、マルチポートバルブである。一態様では、バルブは、10ポートロータリーバルブである。一態様では、フローインジェクション分析器は、ProSIAデュアルポンプインジェクション分析器(FIAlab Instruments,Inc.,Seattle,WA,U.S.A.)である。
【0173】
少なくとも1つのプロセス制御デバイス200、少なくとも1つのバイオリアクタ140、少なくとも1つのFIA150、及び少なくとも1つの分析装置160を含む自動プロセス制御システム100によって実装される自動プロセスに関する以下の考察は、
図1~4及び表1を参照して理解され得る。FIA150の第1のバルブ301及び第2のバルブ401の種々の入力及び出力ポートに関するリザーバ、入力、出力、シンク、ドレイン、及び設備の配置は、単なる例にすぎない。本明細書に記載の方法及びシステムから逸脱することなく、他の配置及び構成を用いることができる。例えば、第1のバルブ301と第2のバルブ401、第1のシリンジポンプ302と第2のシリンジポンプ402の役割を入れ替えることができる。別の例では、代替又は追加のポート及び/又は接続を使用することができる。以下の考察では、
図2を参照して前述したように、第1のバルブ301、第2のバルブ401、第1のシリンジポンプ302、第2のシリンジポンプ402、及びシステムの任意の他の自動態様がプロセス制御デバイス200によって制御されることが理解される。
【0174】
一態様では、試料は、FIAの保持リザーバに導入される。試料は、手動及び自動方法を含む任意の適切な手段によって導入され得る。一態様では、バイオリアクタ140は、FIAに連結されている。一態様では、FIAは、バイオリアクタ140に連結され、且つバイオリアクタ140から細胞培養培地又は清澄化細胞培養培地を得るように構成された、試料採取デバイスを含む。一態様では、バイオリアクタ140とFIAとを連結させるために使用される自動システムインターフェース、例えば、Modular Automated Sampling Technology(MAST(商標))試料採取システム(Lonza,Bend,OR,U.S.A.)又はSeg-Flow自動試料採取システム(BioProcess International Europe,Vienna,Austria)。一態様では、試料は、バイオリアクタから手動で得られ、例えばFIAの保持リザーバを細胞培養試料を含有する容器に導入することによって、FIAの保持リザーバに導入される。一態様では、約20μL~約1000μLの体積を有する試料は、FIAの保持リザーバに導入される。一態様では、試料は細胞培養物から得られる。一態様では、試料は、細胞培養培地を含む。一態様では、試料は、清澄化細胞培養培地を含む。一態様では、細胞培養培地は、遠心分離又は濾過によって清澄化される。一態様では、濾過には、精密濾過又はデプス濾過が含まれる。一態様では、試料は、ポリペプチドを含む。一態様では、細胞培養物中の宿主細胞は、バイオリアクタから除去される。一態様では、細胞培養物中の宿主細胞は、(例えば灌流バイオリアクタでの)細胞培養中に除去される。一態様では、試料は、組換え生産されたポリペプチドを含む。一態様では、試料は、タンパク質を含む。一態様では、試料は、組換え生産されたタンパク質を含む。一態様では、試料は、組換え生産された治療用タンパク質を含む。
【0175】
2.タンパク質捕捉
一態様では、本方法は、試料中の目的タンパク質を、例えば試料中に存在する宿主細胞タンパク質又は他の生産物関連不純物などの不純物から目的タンパク質を分離するために精製する、タンパク質捕捉工程を含む。一態様では、試料は、細胞及び他の細胞デブリが除去された清澄化細胞培養培地を含む。一態様では、タンパク質捕捉工程は、アフィニティークロマトグラフィーを含む。
【0176】
「アフィニティークロマトグラフィー」とは、移動相中の目的生体分子、例えばタンパク質が、目的成分とクロマトグラフィーマトリックス上に固定化された化合物との間の特異的で可逆的な結合相互作用に基づいて、クロマトグラフィーカラムの固定相によって保持されるクロマトグラフィープロセスを指す。一態様では、アフィニティークロマトグラフィーは、カラム平衡化工程、試料ローディング工程、及び試料溶出工程を含む。一態様では、クロマトグラフィーカラムは、約50μL~約300μL、又は約50μL~約200μLの体積を有する。一態様では、アフィニティークロマトグラフィーには、低圧アフィニティークロマトグラフィーが含まれる。一態様では、アフィニティークロマトグラフィーは、約10μL/秒~約100μL/秒の流量で行われる。
【0177】
一態様では、本方法は、カラム平衡化工程、ローディング工程、洗浄工程、及び溶出工程を含む。一態様では、カラム平衡化工程、ローディング工程、及び洗浄工程のうちの1つ以上で同じ緩衝液が使用される。一態様では、平衡化工程、ローディング工程、及び洗浄工程のうちの1つ以上で異なる緩衝液が使用される。一態様では、「結合緩衝液」という用語は、平衡化緩衝液、ローディング緩衝液、及び/又は洗浄緩衝液として使用される緩衝液を指すために使用される。
【0178】
一態様では、タンパク質捕捉工程は、約15分~約2時間を要する。一態様では、タンパク質捕捉工程は、約15分~約1時間を要する。一態様では、タンパク質捕捉工程は、約30分未満を要する。
【0179】
一態様では、カラムは、試料をロードする前にカラム上に平衡化緩衝液を通過させることによって平衡化される。一態様では、平衡緩衝液は、結合緩衝液と称される場合がある。一態様では、カラムは、約5~約10カラム体積(CV)の平衡化緩衝液で平衡化される。一態様では、カラムは、約10μL/秒~約200μL/秒の流量で平衡化緩衝液を用いて平衡化される。結合緩衝液(又は平衡化緩衝液)は、S201入力ポートを介してFIA150によってアクセスされ、FIA150を通じてアフィニティーカラムT105に送られ得る。
【0180】
一態様では、試料は、平衡化したカラム上にロードされる。一態様では、試料は、平衡緩衝液と同じ組成を有するローディング緩衝液にロードされる。一態様では、「結合緩衝液」という用語は、平衡化緩衝液及びローディング緩衝液の両方として使用される緩衝液を指す。一態様では、約20μL~約1000μLの試料がローディング緩衝液中でカラムにロードされる。一態様では、試料は、約10μL/秒~約200μL/秒の流量でアフィニティーカラムにロードされる。試料は、V209入力ポート304でFIA105によってアクセスされ、第1のシリンジポンプ302によって、V208入力ポート304を介してアフィニティーカラム313に送られ得る。
【0181】
一態様では、本方法は、例えばアフィニティークロマトグラフィー樹脂と弱く又は非特異的に相互作用するタンパク質を除去するための、カラム洗浄工程を含む。一態様では、洗浄緩衝液は、平衡化緩衝液及び/又はローディング緩衝液と同じ組成を有する。一態様では、「結合緩衝液」という用語は、平衡化緩衝液、ローディング緩衝液、及び洗浄緩衝液として使用される緩衝液を指す。一態様では、洗浄緩衝液は、平衡化緩衝液及び/又はローディング緩衝液と異なる組成を有する。一態様では、ロードされたカラムは、約5~約10カラム体積(CV)の洗浄緩衝液で洗浄される。一態様では、ロードされたカラムは、約10μL/秒~約200μL/秒の流量で洗浄緩衝液を用いて洗浄される。一態様では、洗浄緩衝液は、S202シリンジポンプポート305でFIA105によってアクセスされ、第2のシリンジポンプ402によって、S108シリンジポンプポート405を介してアフィニティーカラム313に送られる。
【0182】
一態様では、目的タンパク質は、溶出工程においてカラムから溶出される。一態様では、目的タンパク質は、試料が固定化されているカラム上に溶出緩衝液を通過させることによってカラムから溶出される。一態様では、目的タンパク質は、ローディング緩衝液とは異なるpH又は塩濃度を有する溶出緩衝液を使用してカラムから溶出される。一態様では、溶出は、例えば溶出緩衝液の組成が経時的に線形変化する、勾配溶出である。一態様では、溶出は、段階溶出であって、例えば溶出緩衝液の組成が各段階で一定であるものである。一態様では、試料の溶出時間は予め定められている。本明細書で使用される場合、「溶出時間」とは、試料がカラムにロードされた時間と、試料がカラムから溶出される時間との間で経過した時間量を指す。一態様では、溶出時間は、試料がカラムにロードされた時間と、溶出液の最大濃度との間で経過した時間量である。一態様では、溶出緩衝液を約10μL/秒~約200μL/秒の流量でカラムにアプライして、目的タンパク質をカラムから溶出させる。一態様では、目的タンパク質を含有するカラムから溶出される溶液は、溶出液と称される。溶出緩衝液は、V203入力ポート305でFIA105によってアクセスされ、第1のシリンジポンプ302によって、V208入力ポート304を介してアフィニティーカラム313に送られ得る。
【0183】
一態様では、タンパク質は、抗体、抗体断片、又はFc領域を含む他のタンパク質、例えばFc融合タンパク質である。一態様では、アフィニティーカラムは、免疫グロブリン結合タンパク質を含む。一態様では、アフィニティーカラムは、免疫グロブリン結合細菌タンパク質を含む。一態様では、アフィニティーカラムは、プロテインA、プロテインG、プロテインA/G、又はプロテインLなどの免疫グロブリン結合細菌タンパク質を含む。一態様では、アフィニティーカラムは、プロテインAカラムである。一態様では、アフィニティーカラムは、プロテインGカラムである。一態様では、アフィニティーカラムは、プロテインA/Gカラムである。一態様では、アフィニティーカラムは、プロテインLカラムである。一態様では、カラムは、プロテインMカラムである。
【0184】
「プロテインAクロマトグラフィー」とは、免疫グロブリン分子のFc部分とプロテインAのIgG結合ドメインとの間の特異的で可逆的な相互作用を伴うクロマトグラフィーを指す。一態様では、プロテインAクロマトグラフィーは、スタフィロコッカス・アウレアス(Staphylococcus aureas)から得られたタンパク質を用いたカラムを含む。一態様では、プロテインAクロマトグラフィーは、組換え法又は合成法によって生産されたタンパク質を用いたカラムを含む。一態様では、プロテインAクロマトグラフィーは、免疫グロブリンのFc領域に結合する能力を保持するプロテインAバリアントを用いたカラムを含む。
【0185】
一態様では、目的タンパク質は、タンパク質精製を容易にするためのN末端タグ又はC末端タグを含み、これには、ストレプトアビジン、ビオチン、ポリ-ヒスチジン(His)、又はグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)を含むタグが含まれるがこれらに限定されない。
【0186】
一態様では、アフィニティーカラムマトリックスは、組換え生産されたタンパク質に特異的に結合するモノクローナル抗体を含む。
【0187】
図7に示されるように、タンパク質捕捉工程から得られた溶出液は、FIA150の動作を介して、タンパク質濃度検出ユニット又はタンパク質消化工程に移送され得る。一態様では、第1の試料はアフィニティークロマトグラフィーにより精製され、第1の溶出液はタンパク質濃度決定ユニットに移送される。第1の溶出液は、第2のシリンジポンプ402によりアフィニティーカラム313から吸い出され、多方向接続部412を介してタンパク質濃度決定ユニット(例えば、分光光度計414)に移送され得る。一態様では、第2の試料は、アフィニティーカラム313を使用するアフィニティークロマトグラフィーにより精製され、第2の溶出液が得られる。第2の溶出液は、タンパク質消化工程に移送される。第2の溶出液は、第2のシリンジポンプ402によってアフィニティーカラム313から吸い出され、第2のバルブ401のV104入力ポート404を介してS105消化チャンバ415に移送され得る。
【0188】
3.濃度決定
一態様では、アフィニティークロマトグラフィー工程からの溶出液は、タンパク質検出ユニットに移送される。一態様では、タンパク質検出ユニットは、分光光度計414を使用して試料タンパク質の濃度を測定する。一態様では、アフィニティーカラム313から分光光度計414への溶出液の移送は、S108シリンジポンプポート405を介して多方向バルブ412を通じてアフィニティーカラム313から溶出液を吸引し、多方向バルブ412を通じて分光光度計414に溶出液を押し戻す、第2のシリンジポンプ402の動作を通じて可能になり得る。一態様では、試料中のタンパク質の濃度は、UV吸光度を測定することにより決定される。一態様では、試料中のタンパク質の濃度は、約190nm~約280nmのUV吸光度を測定することにより決定される。一態様では、試料中のタンパク質の濃度は、アミノ酸であるチロシン及びトリプトファンの存在に起因するUV吸光度を測定して決定される。一態様では、試料中のタンパク質の濃度は、約175nm~約280nmのUV吸光度を測定して決定される。一態様では、試料中のタンパク質の濃度は、約280nmでのUV吸光度を測定することにより決定される。一態様では、試料中のタンパク質の濃度は、ペプチド骨格に起因するUV吸光度を測定することにより決定される。一態様では、試料中のタンパク質の濃度は、約190nm~約220nmのUV吸光度を測定することにより決定される。一態様では、試料中のタンパク質の濃度は、約205nmでのUV吸光度を測定することにより決定される。一態様では、試料中のタンパク質の濃度は、例えばブラッドフォード法又はローリー法を使用する、比色アッセイにより決定される。
【0189】
一態様では、第1の溶出液のUV吸光度は分光光度法により決定され、タンパク質濃度は所定の検量線に基づいて算出される。一態様では、濃度決定工程は、約5分~約30分、又は約10分未満を要する。UV吸光度データは、データ収集マネージャ254によって測定することができ、プロセス制御マネージャ252及び較正マネージャ256と連携させて、タンパク質濃度を前述したように決定することができる。
【0190】
4.溶液中での自動タンパク質消化
一態様では、タンパク質捕捉工程から得られた溶出液は、消化チャンバに移送される。一態様では、タンパク質捕捉工程から得られた第2の溶出液は、消化チャンバに移送される。一態様では、アフィニティークロマトグラフィー工程から得られた第2の溶出液は、消化チャンバに移送される。第2の溶出液は、第2のシリンジポンプ402によってアフィニティーカラム313から吸い出され、消化チャンバ415に、T101多方向バルブ412、S108シリンジポンプポートを介してS105消化チャンバ415に移送され得る。
【0191】
一態様では、アフィニティークロマトグラフィーカラムから得られる溶出液中のタンパク質は、消化されて、分析プロセス、例えばペプチドマッピングで使用するためのペプチド混合物を形成する。一態様では、アフィニティークロマトグラフィーカラムから得られる溶出液中のタンパク質は、平均サイズが約3000Da未満、約2500Da未満、約2000Da未満、又は約1500Da未満のペプチドに消化される。一態様では、アフィニティークロマトグラフィーカラムからの溶出液中のタンパク質は、平均サイズが約500Da~約5000Daのペプチドに消化される。一態様では、アフィニティーカラムからの溶出液中のタンパク質は、平均サイズが約1000Da~約5000Daのペプチドに消化される。一態様では、アフィニティークロマトグラフィーカラムからの溶出液中のタンパク質は、平均サイズが約500Da、約750Da、又は約1000Daから、最大約1500Da、2000Da、2500Da、又は約3000Daまでのペプチドに消化される。一態様では、アフィニティークロマトグラフィーカラムから得られる溶出液中のタンパク質は、消化されて、約2~約100アミノ酸長、少なくとも約5若しくは約10アミノ酸長、及び最大約15、約25、約50、若しくは約100アミノ酸長、又は約5~約50、若しくは約10~約25、若しくは約10~約15アミノ酸長のペプチドを含むペプチド混合物を形成する。
【0192】
従来の酵素によるタンパク質消化方法は、典型的には、変性工程、還元工程、アルキル化工程、緩衝液交換及び消化工程を含む。変性は、温度を上昇させることにより、又は化学変性剤、例えば、塩酸グアニジン及び尿素を含むがこれらに限定されない、カオトロピック剤、塩、若しくは界面活性剤を使用することにより達成することができる。タンパク質が変性すると、還元剤、例えば、ジチオスレイトール(DTT)、グルタチオン、b-メルカプトエタノール(b-ME)、又はトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を添加することにより、ジスルフィド結合が還元される。ジスルフィド結合の再形成を防止するために、アルキル化剤、例えば、ヨード酢酸、ヨードアセトアミド、アクリルアミド、又はクロロアセトアミドが添加される。
【0193】
従来のタンパク質消化方法で使用される試薬、例えば化学変性剤又はアルキル化剤はタンパク質分解酵素を分解する可能性があることから、試薬は典型的には、タンパク質分解酵素の添加前に、例えば緩衝液交換を使用して除去される。化学変性剤及びアルキル化剤が除去されたら、タンパク質分解酵素を添加してタンパク質を消化することができる。従来のタンパク質消化プロセスは、典型的には中性pHにて37℃で実施され、約12~約24時間、一般的にはおよそ18時間を要する。
【0194】
従来、タンパク質分解消化は、酸又は他の化学薬品、例えば、ギ酸(FA)、塩酸(HCl)、若しくは酢酸(HAc);若しくはL臭化シアン(CNBr)、2-ニトロ-5-チオシアノ安息香酸(NTCB)、若しくはヒドロキシルアミンを添加することにより停止される。
【0195】
本明細書では、時間効率の良い合理化されたタンパク質消化方法が提供される。一態様では、タンパク質消化方法は、自動且つオンラインである。従来のタンパク質消化プロセスが最大4時間を要し得るのに対し、一態様では、自動オンラインタンパク質消化方法は、約5分~最大約1時間を要する。一態様では、タンパク質消化は、約5分~約30分を要する。一態様では、タンパク質消化は、約15分~約30分を要する。一態様では、タンパク質消化は、約30分未満を要する。一態様では、オンラインタンパク質消化方法は、アルキル化又は緩衝液交換工程を含まない。
【0196】
一態様では、タンパク質の変性、還元、及び消化は、同じ反応混合物中で実施される。一態様では、タンパク質の変性、還元、及び消化は、同じ消化チャンバ内で実施される。一態様では、タンパク質の変性、還元、及び消化は、同時に実施される。一態様では、還元剤は、S103シリンジポンプポートを介して消化チャンバ415に導入される。一態様では、約5μL~約20μLの還元剤が、S103シリンジポンプポートを介して消化チャンバ415に導入される。一態様では、タンパク質分解酵素、例えばトリプシンが、S102シリンジポンプポートを介して消化チャンバ415に導入される。一態様では、約5μL~約20μLのタンパク質分解酵素が、S102シリンジポンプポートを介して消化チャンバ415に導入される。一態様では、約5μL~約20μLのトリプシンが、S102シリンジポンプポートを介して消化チャンバ415に導入される。一態様では、消化緩衝液は、第2のバルブ401のV104入力ポート404を介して消化チャンバ415に導入される。一態様では、消化緩衝液は、V111バルブ出力ポート408、S109シリンジポンプポート、及びS105シリンジポンプポートを介して消化チャンバ415に導入される。一態様では、約100μL~約400μLの消化緩衝液が、消化チャンバ415に導入される。一態様では、試薬は、402シリンジ406を使用して、消化チャンバ内で第2の溶出液と合わされる。一態様では、第2の溶出液中のタンパク質は、消化チャンバ415内で変性される。
【0197】
一態様では、タンパク質消化は、高温で実施される。一態様では、タンパク質は、高温変性を使用して変性される。一態様では、タンパク質消化は、耐熱性タンパク質分解酵素を使用して実施される。一態様では、タンパク質消化は、高温で、例えば約35℃~約85℃の温度で実施される。一態様では、タンパク質消化は、少なくとも約35℃、約40℃、約45℃、約50℃、約60℃、又は約70℃、及び最大約75℃、約80℃、又は約85℃の温度で実施される。一態様では、タンパク質消化は、少なくとも約35℃、約36℃、約37℃、約38℃、約39℃、又は約40℃、及び最大約71℃、約72℃、約73℃、約74℃、又は約75℃の温度で実施される。一態様では、タンパク質消化は、約50℃~約85℃の温度で実施される。一態様では、タンパク質消化は、約65℃~約80℃の温度で実施される。一態様では、タンパク質消化は、約70℃~約75℃の温度で実施される。一態様では、タンパク質消化は、約70℃~約72℃の温度で実施される。
【0198】
一態様では、タンパク質消化は、タンパク質溶液を消化試薬と接触させて、消化混合物を形成することを含む。一態様では、消化試薬は、消化緩衝液、還元剤、及びタンパク質分解酵素を含む。一態様では、アフィニティーカラムからの溶出液を消化試薬と接触させて、消化混合物を形成する。一態様では、アフィニティーカラムからの溶出液を、消化緩衝液、還元剤、及びタンパク質分解酵素を含む消化試薬と接触させて、消化混合物を形成する。一態様では、アフィニティーカラムからの第2の溶出液を、消化緩衝液、還元剤、及びタンパク質分解酵素と接触させて、消化混合物を形成する。
【0199】
一態様では、消化緩衝液は、約6.0~約8.0、又は約6.5~約7.5のpHを有する。一態様では、消化緩衝液は、約6.5からのpHを有する。一態様では、消化緩衝液は、Thermo Fisher SMART消化キット(Thermo Fisher,Waltham,MA,U.S.A.)からのものである。
【0200】
一態様では、還元剤は、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を含む。
【0201】
一態様では、タンパク質分解酵素は、例えば、トリプシン、キモトリプシン、ペプシン、サーモライシン、パパイン、プロナーゼ、エンドペプチダーゼArg-C、ペプチジル-Aspメタロエンドペプチダーゼ(エンドペプチダーゼAsp-N)、グルタミルエンドペプチダーゼ(Glu-Cエンドペプチダーゼ)、及びリシルエンドペプチダーゼ(Lys-Cエンドペプチダーゼ)を含む。一態様では、タンパク質分解酵素は、トリプシンを含む。一態様では、タンパク質分解酵素は、熱安定性トリプシンを含む。一態様では、タンパク質分解酵素は、SMARTトリプシン(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA,U.S.A.)を含む。
【0202】
一態様では、タンパク質消化に使用される試薬は、質量分析(MS)に干渉しない。例えば、MSにおけるイオン化は、塩及び/又は界面活性剤、特に高濃度の塩及び/又は界面活性剤を含むがこれらに限定されない試料中の夾雑物の存在によって妨げられる場合がある。一態様では、タンパク質消化に使用される試薬は、MSにおけるイオン化プロセスに干渉しない。一態様では、タンパク質消化方法は、緩衝液交換工程を含まない。
【0203】
代わりに、タンパク質消化方法は、緩衝液交換工程を含む。一態様では、タンパク質消化方法は、MSにおけるイオン化に干渉する可能性がある1種以上の試薬を含み、それらとしては、緩衝液交換工程を使用して除去される、化学変性試薬、例えば、塩酸グアニジン及び尿素などのカオトロピック剤;ジチオスレイトール(DTT)グルタチオン、若しくはb-メルカプトエタノール(b-ME)などの還元剤;又はヨード酢酸、ヨードアセトアミド、アクリルアミド、若しくはクロロアセトアミドなどのアルキル化剤が含まれるがこれらに限定されない。一態様では、緩衝液交換試薬は、マルチポートバルブを介して消化チャンバに送達される。一態様では、消化方法は室温で実施されるが、室温ではプロセスにより長い時間を要することになる。
【0204】
一態様では、第2の溶出液の消化混合物に使用されるタンパク質分解酵素の量は、第1の溶出液のタンパク質濃度に基づいて決定される。一態様では、第2の溶出液を、約1:10~約1:100のトリプシン:タンパク質比でトリプシンと接触させる。一態様では、第2の溶出液を、約1:20~約1:30のトリプシン:タンパク質比でトリプシンと接触させる。一態様では、トリプシン:タンパク質の比は、少なくとも約1:10及び最大約1:100、又は少なくとも約1:10若しくは1:20及び最大約1:30、約1:40、約1:50、若しくは約1:100、又は約1:10~約1:100、約1:10~約1:50、約1:10~約1:40、約1:10~約1:30、約1:10~約1:20、約1:20~約1:100、約1:20~約1:50、約1:20~約1:40、若しくは約1:20~約1:30である。
【0205】
一態様では、第2の溶出液を消化緩衝液、還元剤、及びタンパク質分解酵素と同時に接触させる。本明細書で使用される場合、「同時に」は、本明細書に記載の方法工程と関連して使用される場合、工程が実質的に同時間に実施される(即ち、ある方法工程の少なくとも一部の実行が別の方法工程の一部の実行と時間的に重複する)方法を指す。「同時に」は、厳密に並行する作用を必要とするわけではない。即ち、全ての方法工程が同時間に開始又は終了する必要はない。一態様では、「同時に」は、反応が同じ反応体積で且つ同じインキュベーション期間中に起こるように、方法工程に必要な全ての試薬が同じ反応混合物中で合わされることを意味し得る。一態様では、消化混合物は、消化緩衝液、還元剤、タンパク質分解酵素、及び第2の溶出液を含む。一態様では、消化混合物は、第2の溶出液及び他の試薬をシリンジのチャンバに導入することにより調製され、消化混合物は、シリンジのプランジャを押し下げて後退させることにより混合される。一態様では、消化チャンバは、インキュベーションチャンバとして使用される。例えば、第2の溶出液は、前述したようにアフィニティーカラム313から駆動シリンジ406のチャンバに移送され得る。駆動シリンジ406は更に、S102シリンジポンプポート405を介してタンパク質分解酵素にアクセスすることができる。次いで、第2の溶出液及びタンパク質分解酵素、並びに任意の他の好適な試薬を、駆動シリンジ406のチャンバ内で混合することができる。
【0206】
一態様では、第2の溶出液を消化緩衝液、還元剤、及びタンパク質分解酵素と逐次的に接触させる。本明細書で使用される場合、「逐次的に」は、本明細書に記載の方法工程と関連して使用される場合、工程が異なる時点で実施される方法、例えば、方法の実践において別々の事象が発生する方法を指す。一態様では、逐次的工程は、別々のインキュベーション期間中に実施される。一態様では、逐次的工程は、異なる反応混合物中で実施される。一態様では、逐次的方法工程は、異なる時間に、但し同じ反応チャンバ内で実施される。
【0207】
一態様では、インキュベーションチャンバの温度は、例えば消化混合物を約35℃~約85℃の温度でインキュベートするために、上昇させることができる。一態様では、消化混合物は、少なくとも約35℃、約40℃、約45℃、約50℃、約60℃、又は約70℃、及び最大約75℃、約80℃、又は約85℃の温度でインキュベートされる。一態様では、消化混合物は、少なくとも約35℃、約36℃、約37℃、約38℃、約39℃、又は約40℃、及び最大約71℃、約72℃、約73℃、約74℃、又は約75℃の温度でインキュベートされる。一態様では、消化混合物は、約50℃~約85℃の温度でインキュベートされる。一態様では、消化混合物は、約65℃~約80℃の温度でインキュベートされる。一態様では、消化混合物は、約70℃~約55℃の温度でインキュベートされる。一態様では、消化混合物は、約70℃~約72℃の温度でインキュベートされる。消化チャンバの温度は、例えばプロセス制御デバイスを介して、プロセスパラメータとして制御され得る。
【0208】
一態様では、消化混合物をインキュベートすることは、約36℃~約85℃の温度で約5分間~約30分間インキュベートすることを含む。一態様では、消化混合物をインキュベートすることは、約50℃~約75℃の温度で約15分間~約30分間インキュベートすることを含む。一態様では、消化混合物をインキュベートすることは、約70℃~約72℃の温度で約15分間~約30分間インキュベートすることを含む。
【0209】
一態様では、消化方法は、2つの工程を含む:一態様では、第1の消化混合物は、約36℃~約85℃の温度で約5分間~約30分間インキュベートされる。一態様では、第1の消化混合物は、約50℃~約75℃の温度で約15分間~約30分間インキュベートされる。一態様では、第1の消化混合物は、約70℃~約72℃の温度で約15分間~約30分間インキュベートされる。一態様では、追加のタンパク質分解酵素及び/又は消化緩衝液が第1の消化混合物に添加され、第2の消化混合物が形成される。一態様では、第2の消化混合物は、約36℃~約85℃の温度で約5分間~約30分間インキュベートされる。一態様では、第2の消化混合物は、約50℃~約75℃の温度で約15分間~約30分間インキュベートされる。一態様では、第2の消化混合物は、約70℃~約72℃の温度で約15分間~約30分間インキュベートされる。
【0210】
G.ペプチドマッピング分析
一態様では、ペプチド混合物は、分析装置に移送される。一態様では、分析装置は、ペプチドマッピングユニットを含む。一態様では、
図8に概略的に示されているように、ペプチドマッピングユニットは、ペプチド分離コンポーネント、検出又はデータ取得ユニット;及びデータ処理ユニットという3つのコンポーネントを含む。一態様では、データ取得ユニットは、イオン源及び質量分析器を含む。例えば、ペプチド混合物は、V108入力バルブ404を介して、第2のシリンジポンプ402の動作によって消化チャンバ415から分析装置、例えばペプチドマッピングユニットへと吸引され得る。
【0211】
一態様では、自動ペプチドマッピングシステムが使用される。自動ペプチドマッピングシステムは市販されており、それには例えば、BioAccord Peptide Mapping System(Waters Corporation,Milford,MA,USA)が含まれる。
【0212】
一態様では、ペプチドマッピングは、約30分~約2時間、又は1時間未満を要する。
【0213】
一態様では、ペプチドマッピングユニットは、ペプチド分離コンポーネントを含む。一態様では、ペプチド分離コンポーネントは、クロマトグラフィーカラムを含む。一態様では、ペプチド混合物中のペプチドは、カラムクロマトグラフィーにより分離される。一態様では、カラムクロマトグラフィーには、液体クロマトグラフィー(LC)が含まれる。液体クロマトグラフィーには、超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が含まれるがこれらに限定されない。一態様では、ペプチド混合物中のペプチドは、UPLCにより分離される。一態様では、ペプチド混合物中のペプチドは、HPLCにより分離される。
【0214】
一態様では、ペプチドマッピングユニットは、データ取得ユニットを含む。一態様では、データ取得ユニットは、質量分析計(MS)を含む。一態様では、データ取得ユニットは、イオン源及び質量分析器を含む。一態様では、データ取得ユニットは、ペプチド分離装置、イオン源、及び質量分析器を含む。
図8を参照されたい。
【0215】
一態様では、イオン源は、ペプチド混合物中のペプチドをイオン化する。ペプチドをイオン化するための方法は公知であり、それにはエレクトロスプレーイオン化(ESI)が含まれるがこれに限定されない。
【0216】
一態様では、質量分析器は、質量電荷比(m/z)によって気相イオンを分離する。一態様では、質量分析器は、タンデム質量分析(MS/MS)を含み、これは、質量分析プロセスの間に断片化が実施される質量分析の2つ以上の工程を含む。
【0217】
一態様では、ペプチドマッピングユニットは、データ処理ユニットを含む。一態様では、データ処理ユニットは、データ取得ユニットからのデータを処理して、タンパク質の翻訳後修飾(PTM)を同定及び/又は定量化するプロセッサを含む。一態様では、質量分析計により同定されたペプチドは、細胞培養培地から得られるインタクトタンパク質の代理標本として使用される。一態様では、データ処理は、タンパク質のアミノ酸配列、並びに/又は1つ以上のPTMの存在、位置、及び/若しくは量に関する情報を提供する。一態様では、データ処理ユニットは、所定のPTMに関する情報を提供する。一態様では、データ処理は、約5分~約30分、又は約10分未満を要する。態様では、ペプチドマッピングユニットのデータ処理ユニットは、プロセス制御デバイス200とインターフェースし、且つ/又は他の方法でそれと通信することができる。いくつかの態様では、ペプチドマッピングユニットのデータ処理ユニットの機能は、データ処理ユニットを必要とせずにプロセス制御デバイス200上で作動するソフトウェアによって行われ得る。
【0218】
H.翻訳後修飾のモジュレーション/細胞培養条件に対する修正
一態様では、組換えタンパク質を生産する方法が提供される。一態様では、本方法は、組換えタンパク質が発現される条件下で宿主細胞を培養すること;本明細書に記載の方法に従ってタンパク質の翻訳後修飾(PTM)を検出すること;及び検出された翻訳後修飾に基づいて1つ以上の細胞培養パラメータを修正すること、を含む。一態様では、本明細書に記載の方法により生産される組換えタンパク質が提供される。一態様では、本明細書に記載の方法により生産される組換えタンパク質と、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物が提供される。
【0219】
一態様では、以下の細胞培養パラメータ:pH;CO2レベル;溶存酸素量(dO2);温度;栄養素の量若しくはタイプ;グリカン前駆体の存在及びタイプ;又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上が、本明細書に記載の方法により検出されたPTMに基づいて修正される。一態様では、1つ以上の細胞培養パラメータは、本明細書に記載の方法により検出されたPTMに基づいて「リアルタイム」で調整される。一態様では、1つ以上の細胞培養パラメータは、試料が採取された細胞培養物又はバイオリアクタ内で調整される。一態様では、1つ以上の細胞培養パラメータは、細胞培養物又はバイオリアクタ内で、試料が細胞培養物又はバイオリアクタから採取された後の約1日未満以内、約12時間未満以内、約6時間未満以内、約5時間未満以内、約4時間未満以内、約3時間未満以内、又は約2.5時間未満以内に調整される。
【0220】
I.参照による組み込み
本明細書で引用される全ての参照文献(特許、特許出願、論文、教科書などを含む)、及びこれらに引用されている参照文献は、これらが既に引用されていない範囲内で、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0221】
実施例1.自動試料調製
試料IgG1モノクローナル抗体(IgG1 mAb)を発現する組換え細胞を、灌流バイオリアクタ内で培養した。細胞培養培地(CM)を灌流バイオリアクタ内で処理し、細胞及び細胞デブリを除去して、清澄化細胞培養培地(CCM)を得た。これをProSIAデュアルポンプインジェクション分析器(FIAlab(登録商標)Instruments,Inc.,Seattle,WA,U.S.A.)の保持リザーバに導入した。システムコンポーネントの制御並びにデータの収集及び分析には、独自のSIAsoft(登録商標)ソフトウェア(FIAlab(登録商標)Instruments,Inc.,Seattle,WA,U.S.A.)を使用した。2つのシリンジポンプ(シリンジポンプ1及びシリンジポンプ2)並びにそれらに付随する10ポートバルブ(それぞれバルブ1及びバルブ2)を介して、試料及び試薬を導入した。
【0222】
CCMの第1の試料0.3mLを保持リザーバから得て、FIAのバルブ1を介して、平衡化緩衝液で前処理したプロテインAアフィニティーカラムに注入した。第1の試料のIgG1 mAbを、プロテインAカラムから次のように溶出させた:結合緩衝液500μLを50μL/秒~100μL/秒でアフィニティーカラムに注入した。CM 300μLを50μL/秒~100μL/秒で注入した。結合緩衝液1mLを50μL/秒~100μL/秒で洗浄用に注入した。溶出緩衝液100~300μLを20μL/秒で注入した。
【0223】
溶出液を収集し、FIAを介してUV分光計に移送し、そこで280nmでの吸光度を測定して、第1の試料中のIgG1 mAbの濃度を決定した。
【0224】
CCMの第2の試料300μL(又はCCMの第1の試料と同体積)を保持リザーバから得て、FIAのバルブ1を介して、平衡化緩衝液で前処理したプロテインAアフィニティーカラムに注入した。第2の試料のIgG1 mAbを、上述した勾配溶出を使用してプロテインAカラムから溶出させた。溶出液を収集し、FIAを介してシリンジポンプ2のバレルに移送した。
【0225】
トリス(2-カルボキシエチル(carboxyehtyl))ホスフィン)(TCEP)0.01mL(濃度500mM)、消化緩衝液0.3mL、及びトリプシンを、FIAのバルブ2を介してシリンジポンプ2のバレルに注入した。添加したトリプシンの量を、第1の試料に対して決定したタンパク質濃度に基づいて算出した。次いで、シリンジのプランジャを押し下げて後退させることによって消化試薬を混合させ、混合物を70℃で15分間インキュベートして、トリプシン消化ペプチド(「トリプシンペプチド)を含有する試料を得た。
【0226】
実施例2.オンラインペプチドマッピング
実施例1のFIA試料調製物からのトリプシンペプチドのペプチドマッピングを、Waters BioAccord(商標)統合ペプチドマッピングシステム(ACQUITY RDa(商標)質量分析計にインラインで連結された紫外線(TUV)検出器を備えた、ACQUITY(商標)UPLC(商標)I-Class PLUSシステムを含む)を使用して、UV検出及び質量分析と連結された液体クロマトグラフィーにより分析した。
【0227】
クロマトグラフ条件は以下のとおりであった:温度65℃;移動相A:0.1%ギ酸水溶液;移動相B:0.1%ギ酸アセトニトリル溶液;勾配溶出(100%~40%);及び流量:0.2ml/分。移動相Aの分析時間は40分であった。220nmでのUV検出。
【0228】
質量分析については、MS及びタンデムMS(MS/MS)検出を使用して50~2000m/zの質量範囲でペプチドを検出した。
【0229】
実施例3.タンパク質濃度の決定
プロテインA溶出液のタンパク質濃度の決定に関する実行可能性を評価した。
【0230】
既知の濃度の参照標準物質(RS)を既知の体積でアフィニティーカラムに注入することにより、検量線を作成した。ブランク、較正物質1(RS 0.1mg/mL)、較正物質2(RS 0.5mg/mL)、較正物質3(RS 1.0mg/mL)、及び較正物質4(RS 2.0mg/mL)を、アフィニティーカラムに別々に注入した。UV応答の読取値を内蔵の較正物質表に記録した。算出した傾き及び係数を用いて検量線を作成した。較正データを較正ファイルとして保存した。
【0231】
消化プロセスを実施する前に、FIAソフトウェア内で較正ファイルを開いた。次いで、濃度が未知の細胞培養培地試料をアフィニティーカラムに注入した。UV応答を得て、それを較正ファイルに入力し、タンパク質濃度を算出した。消化方法の実行中に、力価情報のライブフィードバックを取り込み、それを酵素計算値に適合させた。
【0232】
試料検量線を
図9Aに示しており、x軸が濃度、y軸が対応するUV応答である。左側の検量線の各較正点は、IgG試料の既知濃度の参照標準物質(RS)の1つのUV測定値を表している。アフィニティーカラムのUVプロファイルを右パネルに示す。検量線は、4つの異なる濃度の参照標準物質(RS)を使用して作成した。1次の多項式適合モデルを使用して、検量線の傾きを算出した。
【0233】
図9Bは、第1の溶出液の濃度決定を行うために使用されたUVプロファイルであって、後にタンパク質消化に使用された第2の溶出液について同量のタンパク質が捕捉されたことを示しているものである。
【0234】
実施例4.グリカンプロファイリング:グリカン遊離と比較したオンライン方法
オンラインペプチドマッピング法を使用して決定したグリカンの傾向を、従来のグリカン遊離法(2-アミノベンズアミド(オリゴ2-AB)グリカン検出)を使用したグリカンの傾向の結果と比較した。簡潔に述べると、試料モノクローナルIgG1のグリコシル化プロファイルを、実施例1に記載のオンラインペプチドマッピング法及びProZyme 2AB標識キット(Agilent,Santa Clara,CA,U.S.A.)を製造業者の指示に従って使用して決定した。
【0235】
簡潔に述べると、IgG1含有試料をPNGase F酵素で処理して、タンパク質骨格からグリカンを切断した。遊離させたグリカンを固相抽出調製キットを使用して精製及び収集した。2AB標識試薬を調製した後、それらをグリカンと合わせ、65℃で3時間インキュベートした。次いで、標識したグリカンを洗浄し、アクセス試薬を除去して乾燥させた。
【0236】
10種のグリカン(G0、G0F、G0F-GlcNAc、G0-GlcNAc、G1、G1F、G2F、G2f+SA、Man5、及びMan6)のグリコシル化を、実施例1に記載のオンラインペプチドマッピング法及びOligo2-ABグリカン遊離法を使用して決定した。
図10Aに示すように、オンライン方法を使用して決定したグリコシル化プロファイルは、オリゴ-2AB手順を使用して決定したグリコシル化プロファイルと同様の傾向を示した。
図10Bは、細胞培養期間中にモニタリングしたグリカン種のうちの1つ(マンノース)の定量化%を示す。各時点の反復実験により、一定レベルの定量化%が示される。
【0237】
実施例5.グリカンプロファイリング:グリカン遊離と比較したオンライン方法
実施例4に記載の手順に従って、オンラインペプチドマッピング法及びオリゴ2-ABグリカン遊離法を使用して、3つの時点で4つの異なるバイオリアクタ(合計12時点)から得た試料IgG1 mAbについてグリカンの傾向を決定した。この2つの方法には直接的な線形関係があり、試験したグリコシル化のタイプについて結果が同等であったことが示される。
【0238】
図11A~Eは、5種のグリカンについて、2つの方法間の相関関係を示している:G0F(CC=0.9322);G1F(CC=0.9229);Man 5(CC=0.9979);C0F-GN(CC=0.9938);及びG2F+SA(CC=0.8488、アッセイ変動性及び定量限界(LOQ)の範囲内)。
【0239】
実施例6.翻訳後修飾の検出
酸化は、モノクローナル抗体内の種々のメチオニン部位で見られる一般的な翻訳後修飾である。メチオニンの酸化は、細胞培養プロセス中にモニタリングされる重要な生産物品質特性である。
図12Aは、参照標準物質(RS)と比較して、細胞培養の7、9、及び11日目に測定した場合、特定のメチオニン残基での酸化レベルが2%未満に維持されていたことを示す。
【0240】
N末端環化は、抗体の重鎖及び軽鎖のN末端配列に見られる一般的な翻訳後修飾である。
図12Bは、細胞培養の7日目、10日目、及び14日目に測定した場合、N末端環化のレベルが95%超で維持されていたことを示す。各時点の反復実験により、重鎖及び軽鎖における一定レベルの修飾が示される。
【0241】
実施例7.部位特異的グリコシル化
実施例2に記載の従来のオリゴ2-ABグリカン遊離法とは異なり、実施例1に記載のオンラインペプチドマッピング法は、部位特異的グリコシル化の情報を得るために使用することができる。
【0242】
分子が2つ以上のグリコシル化部位を有する場合、ペプチドマッピング分析により部位特異的グリコシル化の情報を得ることができる。例えば、グリコシル化が発生したアミノ酸をペプチドレベルで決定し、インタクトタンパク質の部位特異的グリコシル化に関する情報を得ることができる。対照的に、グリカン遊離法では、分析のためにグリカンがタンパク質から切断される際に、グリコシル化に関する全ての部位特異的情報が失われる。
【国際調査報告】