(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】イジェクタの深絞り部品を製造する方法、ならびにこのような種類の深絞り部品を有するインジェクタ
(51)【国際特許分類】
F02M 51/06 20060101AFI20240326BHJP
F02M 61/16 20060101ALI20240326BHJP
B21D 22/20 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
F02M51/06 U
F02M51/06 H
F02M51/06 J
F02M51/06 T
F02M61/16 F
B21D22/20 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557385
(86)(22)【出願日】2022-02-16
(85)【翻訳文提出日】2023-11-14
(86)【国際出願番号】 EP2022053758
(87)【国際公開番号】W WO2022199946
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】102021202851.9
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ヘンマネン,ヘルムート
(72)【発明者】
【氏名】フォーゲル,クリストフ
【テーマコード(参考)】
3G066
4E137
【Fターム(参考)】
3G066BA36
3G066BA54
3G066CC01
3G066CD04
3G066CD10
4E137BB01
4E137CA09
4E137CA26
4E137GA02
4E137GA17
4E137GB01
(57)【要約】
本発明は、インジェクタ深絞り部品を、特に磁気カップを、製造する方法に関し、次の各ステップを含み、第1の軸方向端部(21a)と、第2の軸方向端部(21b)と、第2の軸方向端部(21b)の外側円周にある円筒形のシールシート(7)とを有する第1の円筒状の領域が形成されるように、パンチによってブランクが深絞りされ、深絞りされたブランクからパンチが第2の軸方向端部(21b)で第1の円筒状の領域(21)から引き戻され、第1の円筒状の領域(21)の第1の軸方向端部(21a)における第1の外径(D1)が、円筒形のシールシート(7)の上に配置される弾性的なシール部材(5)のシールシート(7)からの滑り落ちが防止される寸法まで拡大される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インジェクタ深絞り部品を、特に磁気カップを、製造する方法において、次の各ステップを含み、
第1の軸方向端部(21a)と、第2の軸方向端部(21b)と、前記第2の軸方向端部(21b)の外側円周にある円筒形のシールシート(7)とを有する第1の円筒状の領域が形成されるように、パンチによってブランクが深絞りされ、
深絞りされたブランクから前記パンチが前記第2の軸方向端部(21b)で前記第1の円筒状の領域(21)から引き戻され、
前記第1の円筒状の領域(21)の前記第1の軸方向端部(21a)における第1の外径(D1)が、前記円筒形のシールシート(7)の上に配置される弾性的なシール部材(5)の前記シールシート(7)からの滑り落ちが防止される寸法まで拡大される、方法。
【請求項2】
前記第1の外径(D1)は、前記第1の円筒状の領域(21)の前記第2の軸方向端部(21b)にある前記円筒形のシールシート(7)における第2の外径(D2)よりも大きいか、またはこれに等しい寸法まで拡大される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の軸方向端部(21a)における前記第1の外径(D1)の拡大は、前記第1の円筒状の領域(21)の内側から前記第1の軸方向端部(21a)が拡張されることによって行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の軸方向端部(21a)における前記第1の外径(D1)の拡大は、前記第1の軸方向端部(21a)の外側での前記第1の円筒状の領域(21)の前記第1の軸方向端部(21a)のアプセットによって、前記第1の軸方向端部(21a)が楕円形になるように行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記深絞りのステップの後に、前記第1の円筒状の領域(21)の前記第1の軸方向端部(21a)に残っている底面またはフランジ領域が、当該底面または当該フランジ領域が存在していた場合に次のステップで除去され、特に打ち抜かれる、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記インジェクタ深絞り部品は前記インジェクタの磁気アクチュエータの磁気カップ(2)である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記深絞りのステップのときに外方を向く段部(20)および第2の円筒状の領域(22)がさらに製作され、前記段部(20)は前記第1の円筒状の領域(21)を前記第2の円筒状の領域(22)とつなぐ、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
インジェクタの深絞り部品において、
第1の外径(D1)を有する第1の軸方向端部(21a)と、第2の外径(D2)を有する第2の軸方向端部(21b)とを有する第1の円筒状の領域(21)を含み、
前記第2の軸方向端部(21b)は弾性的なシール部材のためのシールシート(7)としてセットアップされ、前記第1の外径(D1)は前記第2の外径(D2)よりも大きいか、またはこれに等しい、深絞り部品。
【請求項9】
前記第2の軸方向端部(21b)に隣接して外方を向く段部(20)が配置され、特に第2の円筒状の領域(22)が前記段部(20)に配置される、請求項8に記載の深絞り部品。
【請求項10】
インジェクタにおいて、第1の軸方向端部(21a)および第2の軸方向端部(21b)と、第1の円筒状の領域(21)の外側円周にある円筒形のシールシート(7)と、前記第1の円筒状の領域(21)の上に配置された弾性的なシール部材(5)とを有する少なくとも1つの第1の円筒状の領域(21)を有する深絞り部品(20)を含み、
前記第1の円筒状の領域(21)の前記第1の軸方向端部(21a)における第1の外径(D1)の寸法は、前記第1の円筒状の領域(21)の上に配置される前記弾性的なシール部材(7)の滑り落ちを防止するために構成される、インジェクタ。
【請求項11】
前記第1の軸方向端部(21a)は円筒形に構成され、前記第1の軸方向端部(21a)の前記第1の外径(D1)は前記第1の円筒状の領域(21)の前記第2の軸方向端部(21b)における第2の外径(D2)よりも大きいか、またはこれに等しく、または、
前記第1の軸方向端部(21a)は非円形に、または長半軸を有する楕円形に構成され、前記長半軸は前記第2の軸方向端部(21b)の前記第2の外径(D2)よりも大きいか、またはこれに等しい、請求項10に記載のインジェクタ。
【請求項12】
前記深絞り部品は、段部(20)によって前記第1の円筒状の領域(21)とつながる第2の円筒状の領域(22)を有する、請求項10または11に記載のインジェクタ。
【請求項13】
磁気アクチュエータと磁気カップとをさらに含み、前記磁気カップが前記深絞り部品(2)である、請求項10から12までのいずれか1項に記載のインジェクタ。
【請求項14】
前記弾性的なシール部材(5)は、前記第2の軸方向端部(21b)にある前記シールシート(7)に載る内側の円筒面(50)を有する、請求項10から13までのいずれか1項に記載のインジェクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イジェクタの深絞り部品を、特にインジェクタの磁気カップを、製造する方法、深絞り部品、ならびにこのような種類の深絞り部品を有するインジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
インジェクタは従来技術からさまざまな実施形態で知られている。磁気アクチュエータを有するインジェクタでは、通常、できる限り低コストな製造という理由から磁気カップが深絞り部品として構成される。このような深絞り部品は円筒状の領域を有していて、その外側円周に、たとえばOリングやグロメットなどのシール部材のための円筒形のシールシートが設けられる。このようなシール部材は、たとえば吸入パイプの円筒形のボアへのインジェクタの取付後に、ボアの壁部で径方向に封止をして、内燃機関の吸入マニホールドを周囲に対して封止する。いくつかのケースでは、インジェクタの組付後に深絞り部品の円筒状の領域に張り渡されるシール部材が、その後に顧客のもとで、意図されるシール個所に位置決めされなくなったり、完全に紛失したりすることが確認されている。その原因は、深絞りのステップの後に深絞りされた部品からさらに引き出されなければならないパンチを用いて深絞り部品が製作され、パンチがその自由端で最小限だけテーパ状に構成されていることにある。そのために深絞り部品も円筒状の領域の自由端で、同じく軽微な円錐度ないし若干低減された外径を備える傾向を有する。そのためインジェクタの輸送時に、シール部材が滑動したり紛失したりする危険が生じる。
【発明の概要】
【0003】
それに対して、請求項1の構成要件を有するインジェクタの深絞り部品を製造する本発明の方法は、外側円周に張り渡される弾性的なシール部材が滑動することがなく紛失することがない、第1の円筒状の領域を有する深絞り部品を製造することができるという利点を有する。この深絞り方法は、さらに、非常に低コストかつ量産適合的に実施することができる。このとき本発明によると、第1の円筒状の領域を製作するためにブランクが深絞りされて、第1の円筒状の領域からパンチが引き戻された後に、第1の円筒状の領域の第1の軸方向端部における第1の外径を、特に弾性的なシール部材の内側直径許容差の範囲内で、外側円周に張り渡された弾性的なシール部材の滑り落ちが防止される寸法まで拡大する追加のステップが意図される。このようにして、第1の円筒状の領域を有するこのような種類の部品の深絞りのとき、第1の円筒状の領域の自由端が、パンチの若干テーパ状の構成に基づいて最小限だけ低減された外径を傾向的に有するという傾向に対処することができる。
【0004】
円筒許容差の枠内で大きいほうの外径が弾性的なシール部材の領域に位置し、それに伴い、第1の円筒状の領域の特別に短い設計形態を可能にすることができるのが好ましい。
【0005】
従属請求項は本発明の好ましい発展例を示している。
【0006】
第1の円筒状の領域の第1の外径は、弾性的なシール部材のための円筒形のシールシートにおける第2の外径に等しいか、またはこれより最小限だけ大きい寸法まで拡大されるのが好ましい。それにより、張り渡された弾性的なシール部材が深絞り部品の第1の円筒状の領域から滑り落ちるのが確実に防止される。
【0007】
第1の円筒状の領域の第1の軸方向端部における第1の外径の拡大は、第1の円筒状の領域の内側からの拡張によって行われるのが好ましい。このとき、たとえば深絞りの後のステップで、相応に構成された追加の工具を第1の円筒状の領域の内側領域に挿入し、第1の円筒状の領域の第1の外径の拡張工程およびそれによる拡大を実現することができる。
【0008】
その代替として、第1の円筒状の領域の第1の軸方向端部における第1の外径の拡大は、第1の軸方向端部の外側での第1の軸方向端部のアプセットによって、第1の軸方向端部が非円形または若干楕円形になるように行われる。このとき、このようにして作成される楕円の長半軸は、第1の円筒状の領域のシールシートにおける第2の外径に等しいか、またはこれよりも最小限だけ大きい。
【0009】
深絞りのステップの後に、第1の円筒状の領域の第1の端部に残る底面が、または、内方を向くフランジ領域が、その次のステップでたとえば打抜きによって除去されるのがさらに好ましい。そして、引き続いて第1の円筒状の領域の第1の端部における外側寸法が拡大される。このとき深絞り工程をたとえば板状の部品で行うことができ、それにより、深絞りステップの後に、第1の円筒状の領域の第1の端部には底面が残る。
【0010】
深絞り部品は、インジェクタの磁気アクチュエータの磁気カップであるのが特別に好ましい。
【0011】
さらに深絞りのステップで、外方を向く段部と第2の円筒状の領域とが製作されるのがさらに好ましく、段部は第1および第2の円筒状の領域を互いにつなぐ。第2の円筒状の領域に、たとえば凹部や周回する溝などの追加の幾何学形状が設けられるのがさらに好ましく、それにより、第2の円筒状の領域でインジェクタのためのオーバーモールドプラグを確実に固定することができる。
【0012】
さらに本発明は、第1の外径を有する第1の軸方向端部と、第2の外径を有する第2の軸方向端部とを有する第1の円筒状の領域を含む、インジェクタの深絞り部品に関する。このとき第2の軸方向端部は、弾性的なシール部材のためのシールシートとしてセットアップされる。さらに、第1の外径は第2の外径よりも大きいか、またはこれに等しい。第1の円筒状の領域の第2の軸方向端部に隣接して、外方を向く段部が形成されるのがさらに好ましい。
【0013】
さらに本発明は、第1の円筒状の領域と、第1の円筒状の領域に配置されたエラストマーのシール部材、特にOリングまたはグロメットとを有する深絞り部品を有するインジェクタに関する。深絞り部品の第1の円筒状の領域は第1および第2の軸方向端部を有し、ならびに、第1の円筒状の領域の外側円周に円筒形のシールシートを有する。このときシールシートは、第1の円筒状の領域の第2の軸方向端部に配置される。このとき第1の円筒状の領域の第1の軸方向端部の第1の外径の寸法は、第1の円筒状の領域に張り渡された弾性的なシール部材の滑り落ちが防止されるように構成される。そのようにして、第1の円筒状の領域の第2の軸方向端部にあるシールシートに弾性的なシール部材が確実にとどまることができる。
【0014】
第1の円筒状の領域の第1の軸方向端部は円筒形に構成され、第1の軸方向端部の第1の外径は、第1の円筒状の領域の第2の軸方向端部における第2の外径よりも大きいか、またはこれに等しいのがさらに好ましい。その代替として第1の軸方向端部は非円形または楕円形に構成され、第1の軸方向端部における楕円形の長半軸は、第1の円筒状の領域の第2の軸方向端部の第2の外径よりも大きいか、またはこれに等しい。それにより、弾性的なシール部材の滑り落ちを確実に防止することができる。
【0015】
本発明の別の好ましい実施形態では、深絞り部品は第2の円筒状の領域を有し、段部が第1の円筒状の領域を第2の円筒状の領域とつなぐ。この段部は、深絞り部品の長軸に対して垂直に配置されるのが好ましい。弾性的なシール部材のためのシールシートは、段部に直接的に隣接するように第1の円筒状の領域に配置されるのが好ましい。それにより、第1の円筒状の領域でも軸方向に段部でも封止を行うことができる。
【0016】
インジェクタは磁気アクチュエータを含むのがさらに好ましく、深絞り部品は磁気アクチュエータの磁気カップである。
【0017】
弾性的なシール部材は、Oリング、またはグロメット、または、第1の円筒状の領域において第2の端部でシールシートに載る内側の円筒面を有するシール部材であるのが好ましい。
【0018】
インジェクタは、燃料または水を注入するためのインジェクタであるのが好ましい。このとき燃料を注入するためのインジェクタはガスインジェクタであってよく、または液体動力燃料のための動力燃料インジェクタであってよい。
【0019】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。図面には次のものを示す。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の好ましい実施例に基づく深絞り部品を有するインジェクタを示す模式的な側面図である。
【
図3】
図1の深絞り部品を示す模式的な断面図である。
【
図4】
図1のインジェクタの弾性的なシール部材を示す模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下において
図1から4を参照しながら、本発明の第1の好ましい実施例に基づくインジェクタ1について詳細に説明する。
【0022】
図1から明らかなとおり、インジェクタ1は磁気アクチュエータを含んでいて、そのうち
図1では磁気カップ2だけが示されている。磁気カップ2は円筒形のバルブハウジング3とともに、インジェクタ1の外面の一部を形成する。
【0023】
さらにインジェクタ1は燃料流入部4を含んでいて、これを介して燃料(矢印A)がインジェクタの内部領域に供給される。そして燃料は、インジェクタの軸方向X-Xで反対向きに位置する側で吸入マニホールド100に吐出され、このことは
図1では詳細には示していない。
【0024】
さらに磁気カップ5にはその外側円周に、プラスチックからなるオーバーモールドプラグ6がさらに取り付けられていて、これを介して、側方に取り付けられるアームによってインジェクタ1への電力供給が可能となる。
【0025】
さらにインジェクタ1は、同じくインジェクタ1の外面で磁気カップ2の円筒状の領域に配置された弾性的なシール部材5を含んでいる。ここでは弾性的なシール部材5は、ガスが吸入マニホールド100から軸方向X-Xへ吸入パイプのボアを介して周囲に達し得るのを防止するために、インジェクタをその外側円周において吸入パイプの円筒形のボアで封止する。
【0026】
図2および3は磁気カップ2を詳細に示している。磁気カップ2は、第1の円筒状の領域21と第2の円筒状の領域22とを含んでいる。これら両方の円筒状の領域21,22は、段部20を介して互いにつながっている。段部20は、軸方向X-Xに対して垂直に配置された段差である。第2の円筒状の領域22には複数の溝23がさらに形成されていて、これらの中にオーバーモールドプラグ6の材料が侵入し、オーバーモールドプラグ6の軸方向のスライド可能性を防止する。
【0027】
図2および3からさらに明らかなとおり、第1および第2の円筒状の領域21,22の直径は相違している。ここでは第1の円筒状の領域21の直径は、第2の円筒状の領域22の直径よりも小さい。
【0028】
ここでは磁気カップ2は深絞り部品であり、円筒状の領域21,22のうちの一方について、それぞれ1回の深絞りステップまたは2回の深絞りステップのいずれかで製造することができる。
【0029】
特に
図3から明らかなように、第1の円筒状の領域21は、吸入マニホールドの方向に位置している第1の円筒状の領域21の端部を形成する、第1の軸方向端部21aを有している。さらに第1の円筒状の領域21は、段部20に直接的に隣接して配置された第2の軸方向端部21bを含んでいる。ここでは第2の軸方向端部21bに、弾性的なシール部材5のためのシールシート7が外側円周に配置される。
【0030】
図4は、円筒形の内面50を有する弾性的なシール部材5を詳細に示している。ここでは弾性的なシール部材5は、円筒形の内面50によってシールシート7で封止をする。このとき軸方向X-Xでは、弾性的なシール部材5は段部20で封止をする。
【0031】
磁気カップ2がバルブハウジング3を収容できるようにするために、燃焼室のほうを向いている磁気カップ2の端部には打抜き部24がさらに設けられている。
【0032】
このとき第1の軸方向端部21aにおける第1の外径D1は、シールシート7のところでの第2の軸方向端部21bにおける第2の外径D2に等しい大きさであるか、またはその代替としてこれより最小限だけ大きい。それにより、顧客へのインジェクタ1の納入状態のときに第1の円筒状の領域21に張り渡されている弾性的なシール部材5がシールシート7で位置を変えたり、完全に紛失したりするのを防止することができる。外径D1は、弾性的なシール部材5の封止領域に位置することができ、それに伴って第1の円筒状の領域21の短い設計形態を可能にすることができる。
【0033】
このことを保証するために、深絞り部品の製造時に、1つまたは複数の深絞りステップと、深絞りされた磁気カップ2からのパンチの引き戻しとの後で、第1の円筒状の領域21の第1の軸方向端部21aにおける外径D1が拡大される別のステップが意図される。このとき第1の外径D1は、弾性的なシール部材5の滑り落ちや紛失を防止する寸法まで拡大される。第1の外径D1は、第2の軸方向端部21bに等しい外径D2まで拡大されるのが好ましい。
【0034】
この拡大は2つの異なるステップで行うことができる。第1に、第1の円筒状の領域21の内面から第1の軸方向端部21aを拡張することによって、第1の外径D1を製作することができる。その代替として、第1の円筒状の領域21の第1の軸方向端部21aのアプセットによって、第1の軸方向端部21aの外面から第1の外径の寸法の拡大を行うこともでき、それにより第1の軸方向端部21aが最小限だけ楕円形になる。それに伴って第1の軸方向端部21aは、第1の円筒状の領域21の第2の軸方向端部21bにおける第2の外径D2と長半軸が等しい大きさであるか、またはこれよりも大きい楕円形を形成する。
【0035】
このように本発明は、第1の円筒状の領域21での弾性的なシール部材5の滑り落ちや紛失が防止される、インジェクタのための深絞り部品として構成された磁気カップの提供を可能にする。このようにして
図1に示すインジェクタ1の顧客への納入状態が、輸送後も、および考えられるその他の取り扱いの後も、最終組立された状態のままに保たれ、弾性的なシール部材5が滑り落ちたり紛失したりしないことを保証することができる。
【0036】
それにより、本発明の方法および本発明の深絞り部品によって、円形クリティカルな円筒領域を、本来の円筒状の領域の若干テーパ状の構成を有する許容される許容範囲内で、深絞りのときに調整することができる。本発明により、第1の外径D1が第2の外径D2よりも大きい寸法に拡張されていれば、エラストマー部材が第2の軸方向端部21bから第1の軸方向端部21aに向かう方向へ動くときに、これを固定する初期応力をいっそう高くすることができる。
【0037】
このようにして、深絞り部品が深絞りステップの完了後に深絞り端部に向かって先細になり、これに取り付けられるべき弾性的なシール部材がたとえば振動やその他の取り扱いステップによって滑り落ち、および/または紛失し得ることを防止することができる。
【0038】
このようにして、深絞りされた好ましくは正確に円筒形の領域で、滑り落ちや紛失が起きないように弾性的なシール部材5を防護することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 インジェクタ
2 磁気カップ
5 弾性的なシール部材
7 シールシート
20 段部
21 第1の円筒状の領域
21a 第1の軸方向端部
21b 第2の軸方向端部
22 第2の円筒状の領域
50 内側の円筒面
D1 第1の外径
D2 第2の外径
【国際調査報告】