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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】セリノールの工業的合成
(51)【国際特許分類】
   C07D 263/24 20060101AFI20240326BHJP
   C07C 213/02 20060101ALI20240326BHJP
   C07C 215/10 20060101ALI20240326BHJP
   C07C 231/12 20060101ALI20240326BHJP
   C07C 237/32 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 31/167 20060101ALI20240326BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 49/04 20060101ALI20240326BHJP
   B01J 21/10 20060101ALI20240326BHJP
   B01J 31/02 20060101ALI20240326BHJP
   B01J 23/10 20060101ALI20240326BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240326BHJP
【FI】
C07D263/24
C07C213/02
C07C215/10
C07C231/12
C07C237/32
A61K31/167
A61P43/00
A61K49/04 210
B01J21/10 Z
B01J31/02 101Z
B01J23/10 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558146
(86)(22)【出願日】2022-03-21
(85)【翻訳文提出日】2023-11-21
(86)【国際出願番号】 EP2022057290
(87)【国際公開番号】W WO2022200247
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】21163929.9
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504448162
【氏名又は名称】ブラッコ・イメージング・ソシエタ・ペル・アチオニ
【氏名又は名称原語表記】BRACCO IMAGING S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ラットゥアーダ,ルチアーノ
(72)【発明者】
【氏名】ジョヴェンツァーナ,ジョヴァンニ バッティスタ
(72)【発明者】
【氏名】カバロッティ,カミラ
(72)【発明者】
【氏名】メネゴット,イヴァン
【テーマコード(参考)】
4C085
4C206
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4C085HH05
4C085KB39
4C206AA01
4C206AA04
4C206GA31
4C206MA90
4C206ZC78
4G169AA02
4G169AA06
4G169BA27A
4G169BA27B
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BB05A
4G169BB05B
4G169BC10A
4G169BC10B
4G169BC42A
4G169BC42B
4G169BE06A
4G169BE06B
4G169CB25
4G169CB38
4G169CB61
4G169CB67
4G169DA04
4G169DA08
4H006AA02
4H006AC41
4H006AC52
4H006BA69
4H006BB15
4H006BB31
4H006BE10
4H006BE21
4H006BJ50
4H006BM30
4H006BM74
4H006BN10
4H006BU32
4H006BV25
4H006BV72
4H039CA42
4H039CH10
(57)【要約】
本発明は、グリセロールと尿素を反応させることにより、次いで2-アミノ-1,3-プロパンジオール(セリノール)への加水分解が可能な、4-ヒドロキシメチル-2-オキサゾリジノン(セリノールカルバメート、SC)の合成に関する。
一般的には、グリセロールを尿素と触媒とともに、溶媒ありまたは溶媒なしで加熱し、主に4-ヒドロキシメチル-2-オキサゾリジノン(セリノールカルバメート、SC)を得、これを次の工程で加水分解して2-アミノ-1,3-プロパンジオール(セリノール)とする。
別法として、グリセロールの代わりにグリセロール1,2-カルボナートを使用することができる。
本発明の製造方法によって得られたセリノールは、イオパミドールの合成に使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II):
【化1】
で示される4-ヒドロキシメチル-2-オキサゾリジノン(セリノールカルバメート)の製造方法であって、以下の工程:
i)Mg、MgO、Mg(OMe)、Mg(OH)およびLaから選択される触媒の存在下、130℃以上の温度にてグリセロールまたはグリセロール1,2-カルボナートと尿素とを反応させる
を含む製造方法。
【請求項2】
さらに以下の工程:
ii)式(II)の4-ヒドロキシメチル-2-オキサゾリジノンを加水分解して、式(I):
【化2】
で示される2-アミノ-1,3-プロパンジオール(セリノール)を得る;および
iii)場合により、式(I)の2-アミノ-1,3-プロパンジオールをその塩に変換する
を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
工程i)で使用される触媒が、Mg、MgO、Mg(OMe)およびMg(OH)から選択される、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
工程i)で使用される触媒が金属のMgである、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
工程i)の反応が、無溶媒(ニート)条件下で行われる、請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
工程i)の反応が、沸点≧130℃の非プロトン性極性溶媒の存在下で行われる、請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
溶媒が、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグリム)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(プログリド)、イソソルビドジメチルエーテル、メトキシベンゼン(アニソール)、エチルフェニルエーテル(フェネトール)、n-デカン、n-ドデカン、デカヒドロナフタレン(デカリン)、1,2,3-トリメトキシプロパンおよびヘキサフルオロプロペンポリエーテルからなる群から選択される、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
溶媒がジエチレングリコールジメチルエーテルである、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
工程i)の反応が130℃~200℃の温度で行われる、請求項1~8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
工程i)の反応が150℃~180℃の温度で行われる、請求項1~9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
尿素/グリセロールまたは尿素/グリセロール1,2-カルボナートのモル比が1:1~4:1である、請求項1~10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
尿素/グリセロールまたは尿素/グリセロール1,2-カルボナートのモル比が3:1である、請求項1~11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
触媒/グリセロールまたは触媒/グリセロール1,2-カルボナートの比が0.1:1~1:1である、請求項1~12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
工程ii)の加水分解が、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物から選択される塩基を含む水溶液の存在下で好ましく行われる、請求項2~13のいずれかに記載の製造方法。
【請求項15】
塩基が、LiOH、NaOH、KOH、Ca(OH)またはBa(OH)、好ましくはNaOHまたはKOHである、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
式(III):
【化3】
で示されるイオパミドールの製造方法であって、以下の工程:
i)Mg、MgO、Mg(OMe)、Mg(OH)およびLaから選択される触媒の存在下、130℃以上の温度で、グリセロールまたはグリセロール1,2-カルボナートと尿素とを反応させ、式(II):
【化4】
で示される化合物を得る;
iii)式(II)の化合物を加水分解して、式(I):
【化5】
で示される2-アミノ-1,3-プロパンジオール(セリノール)を得る;
iv)得られた式(I)の化合物を式(V):
【化6】

で示される化合物と反応させる;
v)得られた式(IV):
【化7】
で示される化合物を、アセチル保護基を除去することにより加水分解する、
を含む、製造方法。
【請求項17】
式(III):
【化8】
で示されるイオパミドールの製造方法であって、以下の工程:
i)Mg、MgO、Mg(OMe)、Mg(OH)およびLaから選択される触媒の存在下、130℃以上の温度にて、グリセロールまたはグリセロール1,2-カルボナートと尿素とを反応させ、式(II):
【化9】
で示される化合物を得る;
ii)式(II)の化合物を加水分解して、式(I):
【化10】
で示される2-アミノ-1,3-プロパンジオール(セリノール)を得る;
vi)得られた式(I)の化合物を式(VII):
【化11】
[式中、Rは直鎖又は分岐鎖のC-Cアルキル基である]
で示される化合物と反応させて、5-アミノ-N,N’-ビス[2-ヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)エチル]-1,3-ベンゼンジカルボキサミド(VI):
【化12】
を得る;
vii)化合物(VI)を2、4、6位でヨウ素化して、5-アミノ-N,N’-ビス[2-ヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)エチル]-2,4,6-トリヨード-1,3-ベンゼンジカルボキサミド(VIII):
【化13】
を得る;
viii)化合物(VIII)をボロン酸、ボレートエステルまたはボロキシンで処理して、対応する化合物(IX):
【化14】
[式中、Xは-ORまたは-Rであり、RおよびRは、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、t-ブチルおよびフェニルから選択される基で置換されていてもよい、C-C直鎖または分枝鎖アルキル、C-CシクロアルキルまたはCアリールである]
を得る;
ix)化合物(IX)をアシル化剤(S)-2-(アセチルオキシ)プロパノイルクロリドと反応させ、得られた中間体を加水分解してイオパミドール(III)を得る、
を含む製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セリノールカルバメートの製造のための新しい合成方法およびそのセリノール(2-アミノ-1,3-プロパンジオール)への変換に関する。さらに、本発明は、ヨードX線造影剤であるイオパミドールの合成における、本発明の方法によって製造されたセリノールの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
セリノール(2-アミノ-1,3-プロパンジオール)は、重要なビルディングブロックであり、例えば非イオン性X線造影剤であるイオパミドールの製造などの製薬分野や、より一般的な化学工業において多くの用途が見出されている。
【0003】
イオパミドールはよく知られているX線造影剤であり、日常の診断現場で広く用いられている(The Merck Index, RSC Publishing, 15th Ed., 2013, 940-941; Lusic, H. et al., Chem.Rev. 2013, 113, 1641-1666)。
【0004】
イオパミドールの工業的合成はスキーム1に示すとおりであり、例えばUS 4001323に記載されている。
【化1】
【0005】
セリノールは、一般的にいくつかの方法による化学合成、あるいは最近では、特定の酵素の活性を利用した生体触媒作用によって製造されている。これらの既知の製造法の多くが報告されている(Andressen B. et al, AMB Express 2011, 1-12)。
【0006】
文献に報告されている方法は、収率が低い、高価で有毒または危険な試薬を使用する、処理に問題がある、分離や精製が困難なセリノール/イソセリノール混合物の形成など、いくつかの欠点がある。
【0007】
例えば、ある工業的製法(US4221740参照)は、爆発性のあるニトロメタンと発癌性のあるホルムアルデヒドを原料とし、触媒として重金属の存在下で中間体を水素化する。セリノール中にこれらの金属が微量に存在することは、特にセリノールを医薬品の合成に用いる場合、その毒性が問題となる。他の製法では、ジヒドロキシアセトンをアンモニア(US5023379参照)またはヒドロキシルアミン(WO9528379参照)と反応させるが、どちらも毒性が懸念され、さらに、重金属の存在下で中間体を水素化する。別の製法では、発癌性物質として知られるエピクロロヒドリンが出発物質として用いられている(US4503252参照)。さらに、再生可能資源を原料とするバイオテクノロジー的アプローチでセリノールを製造することが可能ではあるが、これらの製法は生産性が低く、発酵液からの生成物の単離が困難であるという特徴がある(Jost U. et al, Eng. Life Sci. 2017, 17, 479-488)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、温和な条件下で、安価で入手しやすい試薬を用いて、大規模な工業的生産に適用可能な、環境にやさしく安全かつ効率的な製造方法を見出すことが強く望まれる。
ここに、グリセロールまたはグリセロール1,2-カルボナートと尿素を特定の触媒の存在下で反応させ、セリノールカルバメート(SC)を形成し、これを加水分解してセリノールを得ることにより、セリノールを効率的に合成できることが見出された。
【0009】
グリセロールと尿素は安全で低コストであり、前者は、例えばバイオディーゼルの製造過程の副産物であり(Luo X. et al, Biores。Technol. 2016, 215, 144-154)、後者は、主に肥料として大量生産される(Meessen J.H., Urea, Ulmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, Wiley VCH, 2012, 657-695)。
【0010】
触媒の存在下でのグリセロールと尿素の反応は、グリセロールカルボナートの製造として広く知られている(例えばEP1156042参照)が、触媒の非存在下で同じ反応を行った場合、収率はわずか25%と報告されている(Turney T.W。et al, Green Chem. 2013, 15, 1925-1931).
【0011】
Dibenedetto et al., ChemSusChem 2013, 6, 345-352には、グリセロールと尿素を反応させて、セリノールカルバメート(SC)とイソセリノールカルバメート(ISC)を得ることが記載されている。反応は真空下180℃で4時間行われ、触媒として試験した様々な金属酸化物のなかでリン酸γ-Zrだけが中程度の活性を示したが、その結果は、セリノールカルバメート(SC)とイソセリノールカルバメート(ISC)の比が1/7の混合物(位置異性体ISCが優先的に生成)を14%という低い収率で得たというものであった。
【0012】
Nguyen-Phu H.ら、Applied Catalysis A 2018、561、28-40およびNguyen-Phu H.ら、Journal of Catalysis 2019、373、147-160には、Zn系触媒が、尿素によるグリセロールカルボニル化の反応において、グリセロールカルボナートに対して高い選択性を示したことが記載されている。特にZnAlOは、140℃で4時間後に91%のグリセロール変換率を示した。しかし、セリノールカルバメートが副生成物(IV)として得られ、その選択性はわずか17%であった。
【0013】
Razali N.A. ら、Catalysis Letters 2019、149、1403-1414には、Laを不均一系触媒として用い、グリセロールをカルボキシル化してグリセロールカルボナート、副生成物としてセリノールカルバメートおよびイソセリノールカルバメートが得られたることが記載されている(図4)。しかし、グリセロールの変換率は非常に低く、セリノールカルバメートに対する選択性に関するデータは記載されていない。
【0014】
Hammond C. et al., Dalton Trans.2011, 40, 3927-3937には、MgOなどの酸化物に担持された不均一系金触媒を用いて、グリセロールと尿素からグリセロールカルボネートを製造することが記載されている。Table 1では、触媒の担体としてMgOを用いた場合、69%のグリセロールが変換されるが、セリノールカルバメート(SC)が副生成物(7)として10%の選択性で得られるに過ぎない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
公知の製造方法とは異なり、本発明の製造方法は、意外にも、セリノールカルバメート(SC)を主生成物として、グリセロールカルボナート(GC)および位置異性体であるイソセリノールカルバメート(ISC)よりも選択的に提供することができる。これは主に、本発明の特定の触媒と反応条件を選択することによって達成され、予想外に、セリノールカルバメートを良好な収率と良好な選択性で得ることができた。
【0016】
本発明は、スキーム2に示すとおり、グリセロールと尿素を反応させることにより、次いで2-アミノ-1,3-プロパンジオール(セリノール)への加水分解が可能な、4-ヒドロキシメチル-2-オキサゾリジノン(セリノールカルバメート、SC)の合成に関する。
【化2】
【0017】
一般的には、グリセロールを尿素と触媒とともに、溶媒ありまたは溶媒なしで加熱し、主生成物として4-ヒドロキシメチル-2-オキサゾリジノン(セリノールカルバメート、SC)を得、これを次の工程で加水分解して2-アミノ-1,3-プロパンジオール(セリノール)とする。
別法として、出発原料としてグリセロールの代わりにグリセロール1,2-カルボナート(GC)を使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な記載
本発明は、式(II):
【化3】
で示される4-ヒドロキシメチル-2-オキサゾリジノン(セリノールカルバメート)の製造方法であって、以下の工程を含む:
i)Mg、MgO、Mg(OMe)、Mg(OH)およびLaから選択される触媒の存在下、130℃以上の温度にてグリセロールまたはグリセロール1,2-カルボナートと尿素とを反応させる。
【0019】
さらに、本発明は、以下の工程:
ii)式(II)の4-ヒドロキシメチル-2-オキサゾリジノンを加水分解して、式(I):
【化4】
で示される2-アミノ-1,3-プロパンジオール(セリノール)を得る;および
iii)場合により、式(I)の2-アミノ-1,3-プロパンジオールをその塩に変換する、
をさらに含む、上記で定義される製造方法である。
【0020】
工程i)
工程i)で使用される触媒は、好ましくは、Mg、MgO、Mg(OMe)およびMg(OH)から選択される。最も好ましくはMgまたはMgOであり、さらに好ましくは金属のMgである。好ましくは、金属のMgは粉末状である。工程i)の反応は、無溶媒(ニート)条件下で、または沸点≧130℃の非プロトン性極性溶媒(好ましくは、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグリム)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(プログリド)、イソソルビドジメチルエーテル、メトキシベンゼン(アニソール)、エチルフェニルエーテル(フェネトール)、n-デカン、n-ドデカン、デカヒドロナフタレン(デカリン)、1,2,3-トリメトキシプロパンおよびヘキサフルオロプロペンポリエーテルからなる群から選択される)の存在下で行うことができる。
【0021】
好ましくは、工程i)は無溶媒条件下またはジエチレングリコールジメチルエーテルの存在下で実施する。
【0022】
一実施形態では、工程i)は、触媒としてMg(OH)またはMgを用いて無溶媒条件で実施される。
【0023】
別の実施形態では、工程i)は、触媒としてMgを用いて、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)中で実施される。
【0024】
工程i)の反応は、130℃~200℃、好ましくは150℃~180℃の温度で行われる。特に、溶媒を使用しない場合は、好ましくは180℃で反応を行う。
【0025】
反応時間は1時間~20時間、好ましくは4時間~8時間である。
【0026】
尿素は好ましくは過剰量で使用される。尿素/グリセロールまたは尿素/グリセロール1,2-カルボナートのモル比は、好ましくは1:1~4:1の範囲であり、より好ましくは3:1である。
【0027】
触媒/グリセロールまたは触媒/グリセロール1,2-カルボナートの比は、好ましくは0.1:1~1:1の範囲である。
【0028】
工程ii)
工程ii)の加水分解は、好ましくは、LiOH、NaOH、KOH、Ca(OH)およびBa(OH)などの金属水酸化物から選択される塩基、好ましくはNaOHまたはKOHから選択される塩基、を含む水溶液の存在下で行われる。
好ましくは、加水分解は水中、またはMeOH/水、EtOH/水、2-プロパノール/水などのアルコールと水の混合物中で行われる。
加水分解の工程は、好ましくは還流下で行われる。
一実施形態では、工程i)で得られた生成物は、水を加えて不溶性の触媒を除去するために濾過した後、さらなる精製工程を経ることなく、工程ii)で直接使用される。
【0029】
工程iii)
2-アミノ-1,3-プロパンジオールを塩の形態に変換する場合、塩は、好ましくは塩化物またはシュウ酸塩である。2-アミノ-1,3-プロパンジオールの塩は、例えば塩酸またはシュウ酸二水和物で処理することによって得ることができる。
【0030】
さらに、本発明は、イオパミドールの合成における、本発明の製造方法によって製造されたセリノールの使用である。
【0031】
一実施形態では、式(III):
【化5】
で示されるイオパミドールを得るための製造方法であって、上記の製造方法で得られた2-アミノ-1,3-プロパンジオールを式(V):
【化6】
で示される化合物と反応させることにより、式(IV):
【化7】
で示される中間体を調製する工程を含む、製造方法を提供する。
手順と反応条件は、例えばUS4001323に開示されている。
【0032】
従って、本発明は、以下の工程:
i)Mg、MgO、Mg(OMe)、Mg(OH)およびLaから選択される触媒の存在下、130℃以上の温度で、グリセロールまたはグリセロール1,2-カルボナートと尿素とを反応させ、式(II):
【化8】
で示される化合物を得る;
iii)式(II)の化合物を加水分解して、式(I):
【化9】
で示される2-アミノ-1,3-プロパンジオール(セリノール)を得る;
iv)得られた式(I)の化合物を式(V):
【化10】
で示される化合物と反応させる;
v)得られた式(IV):
【化11】
で示される化合物を、アセチル保護基を除去することにより加水分解する、
を含む、イオパミドール(III)の製造方法である。
【0033】
好ましくは、工程i)は、無溶媒(ニート)条件下で、または沸点≧130℃の非プロトン性極性溶媒(好ましくは、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグリム)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(プログリド)、イソソルビドジメチルエーテル、メトキシベンゼン(アニソール)、エチルフェニルエーテル(フェネトール)、n-デカン、n-ドデカン、デカヒドロナフタレン(デカリン)、1,2,3-トリメトキシプロパンおよびヘキサフルオロプロペンポリエーテルからなる群から選択される)の存在下で実施される。
【0034】
より好ましくは、工程i)は、触媒としてMgを用い、溶媒としてジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)を用いるか、無溶媒条件下で行う。
好ましくは、工程i)における尿素/グリセロールまたは尿素/グリセロール1,2-カルボナートのモル比は、1:1~4:1の範囲であり、より好ましくは3:1である。一実施形態では、工程i)における触媒/グリセロールまたは触媒/グリセロール1,2-カルボナートの比は、0.1:1~1:1の範囲である。
別の実施形態では、工程i)は、130℃~200℃、好ましくは150℃~180℃の温度で実施される。
【0035】
さらに、本発明は、上記の方法で得られた2-アミノ-1,3-プロパンジオールを、式(VII):
【化12】
[式中、Rは直鎖または分岐鎖のC-Cアルキル基である]
で示される化合物と反応させることにより、式(VI):
【化13】
で示される中間体を調製する工程を含む、式(III)のイオパミドールを得るための製造方法である。上記化合物(VII)との反応の手順および条件は、例えば、WO0244125またはWO2015067601に記載されている。
【0036】
従って、本発明は、以下の工程:
i)Mg、MgO、Mg(OMe)、Mg(OH)およびLaから選択される触媒の存在下、130℃以上の温度にて、グリセロールまたはグリセロール1,2-カルボナートと尿素とを反応させ、式(II):
【化14】
で示される化合物を得る;
ii)式(II)の化合物を加水分解して、式(I):
【化15】
で示される2-アミノ-1,3-プロパンジオール(セリノール)を得る;
vi)得られた式(I)の化合物を式(VII):
【化16】
[式中、Rは、直鎖又は分岐鎖のC-Cアルキル基である]
で示される化合物と反応させて、5-アミノ-N,N’-ビス[2-ヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)エチル]-1,3-ベンゼンジカルボキサミド(VI):
【化17】
を得る;
vii)化合物(VI)を2、4、6位でヨウ素化して、5-アミノ-N,N’-ビス[2-ヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)エチル]-2,4,6-トリヨード-1,3-ベンゼンジカルボキサミド(VIII):
【化18】
を得る;
viii)化合物(VIII)をボロン酸、ボレートエステルまたはボロキシンで処理して、対応する化合物(IX):
【化19】
[式中、Xは、-ORまたは-Rであり、RおよびRは、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、t-ブチルおよびフェニルから選択される基で置換されていてもよい、C-C直鎖または分枝鎖アルキル、C-Cシクロアルキル、Cアリールである]
を得る;
ix)化合物(IX)をアシル化剤(S)-2-(アセチルオキシ)プロパノイルクロリドと反応させ、得られた中間体を加水分解してイオパミドール(III)を得る、
を含む、イオパミドール(III)の調製法を提供する。
【0037】
上記のvi)~ix)までの工程は、好ましくはWO2015/067601に記載されている方法に従って実施される。
【0038】
好ましいホウ酸エステルは、ホウ酸t-ブチル、ホウ酸n-プロピルおよびホウ酸エチルからなる群から選択される。異なるアルキル基を有するエステルも使用できる。
【0039】
好ましくは、工程i)は、無溶媒(ニート)条件下で、または沸点≧130℃の非プロトン性極性溶媒(好ましくは、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグリム)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(プログリド)、イソソルビドジメチルエーテル、メトキシベンゼン(アニソール)、エチルフェニルエーテル(フェネトール)、n-デカン、n-ドデカン、デカヒドロナフタレン(デカリン)、1,2,3-トリメトキシプロパンおよびヘキサフルオロプロペンポリエーテルからなる群から選択される)の存在下で実施される。
【0040】
より好ましくは、工程i)は、触媒としてMgを用い、溶媒としてジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)を用いるか、無溶媒条件下で行う。
【0041】
好ましくは、工程i)における尿素/グリセロールまたは尿素/グリセロール1,2-カルボナートのモル比は1:1~4:1の範囲であり、より好ましくは3:1である。
一実施形態では、工程i)における触媒/グリセロールまたは触媒/グリセロール1,2-カルボナートの比率は、0.1:1~1:1の範囲である。
別の実施形態では、工程i)は130℃~200℃、好ましくは150℃~180℃の温度で実施される。
【0042】
先行技術の製造方法とは異なり、本発明は、4-ヒドロキシメチル-2-オキサゾリジノン(II)(セリノールカルバメート)がワンポット反応により得られ、得られたカルバメートは、触媒の濾過後、直接加水分解して2-アミノ-1,3-プロパンジオールを得ることができる。
【0043】
以下の実施例においてよく示されるように、本発明の製造方法は、位置異性体である5-ヒドロキシメチル-2-オキサゾリジノン(X)(イソセリノールカルバメート)およびグリセロール1,2-カルボネート(XI)に対する顕著な選択性を提供しながら、良好な収率で4-ヒドロキシメチル-2-オキサゾリジノン(II)(セリノールカルバメート)を得ることが可能である。
【化20】
さらに、加水分解後に、2-アミノ-1,3-プロパンジオール(I)(セリノール)が良好な収率で得られる;これにより、温和な条件下で、安価で入手しやすい試薬を用いて、大規模な工業的生産に適用可能な、安全で効率的な製造方法が提供される。
【0044】
実験パート
略語一覧
GC:グリセロール1,2-カルボナート
ISC:イソセリノールカルバメートまたは5-ヒドロキシメチル-2-オキサゾリジノン
SC:セリノールカルバメートまたは4-ヒドロキシメチル-2-オキサゾリジノン

分析方法
以下の機器パラメータを使用して反応生成物をガスクロマトグラフィーで分析した:
キャピラリーカラム J&W Scientific DB-23, 30m, 0.25mm, 0.25μm
キャリアガス ヘリウム
初発流速 2.0mL/分
オーブン T=50℃~250℃に加熱(昇温速度15℃/分)し、20分維持
検出器 水素炎イオン化検出器(FID)(380℃にて)
水素フロー 30mL/分
エアフロ― 334mL/分
注入量 1.0μL
【0045】
ガスクロマトグラフィー分析で得られたデータは面積%で報告する。
Pallavicini M. et al., Tetrahedron Asymmetry, 2004, 15, 1659-1665に報告されている手順に従って、セリノールカルバメート(SC)およびイソセリノールカルバメート(ISC)を合成し、参照標準として使用した。
グリセロール1,2-カルボナート(GC)はTCI Europeから購入し、参照標準として使用した。
試薬、触媒および溶媒は市販で入手可能である:例えば、グリセロール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグリム)、Mg(OH)、およびLaはAldrichから購入し、尿素はFlukaから購入し、マグネシウムはRiedel de Haenから購入し、ヘキサフルオロプロペンポリエーテル(CAS Nr. 69991-67-9)はFluorochemから購入した。
固体のMg(OMe)は、Aldrichから購入したメタノール溶液(6-10%)を蒸発させて得た。
【実施例
【0046】
実施例1
無溶媒(ニート)条件下でのグリセロールと尿素からのセリノールカルバメートの合成
【化21】

グリセロール(250mg、2.72mmol、1当量)、尿素(489mg、8.15mmol、3当量)およびマグネシウムメトキシド(235mg、2.72mmol、1当量)の混合物を、溶媒を加えずに180℃で7時間加熱した。混合物の反応はガスクロマトグラフィーでモニターした。同じ反応を触媒としてMg(7mg、0.27mmol、0.1当量)を用いて4時間行い、結果を表1に報告する。セリノールカルバメート(SC)の収率は75%以上(GC-FIDピーク面積%)であり、セリノールカルバメート対イソセリノールカルバメートの選択性は少なくとも5:1であった。
【表1】
【0047】
実施例2
ジグリム中での異なる触媒を用いた、グリセロールと尿素からのセリノールカルバメートの合成
【化22】

グリセロール(250mg、2.72mmol、1当量)、ジグリム(2.5mL)、尿素(489mg、8.15mmol、3当量)、およびMg、MgO、Mg(OH)、Mg(OMe)およびLaから選択される触媒(1当量)の混合物を4時間加熱還流した。混合物をガスクロマトグラフィーでモニターした。上記の異なる触媒をジグリム中で用いた結果を表2に示す。セリノールカルバメート(SC)の収率は44%以上(GC-FIDピーク面積%)であり、セリノールカルバメート対イソセリノールカルバメートの選択性は最大で約12:1であった。
【表2】
【0048】
実施例3
触媒量のMgを用いたジグリム中でのグリセロールと尿素からのセリノールカルバメートの合成
【化23】

グリセロール(250mg、2.72mmol、1当量)、ジグリム(2.5mL)、尿素(489mg、8.15mmol、3当量)およびマグネシウム粉末(7mg、0.27mmol、0.1当量)の混合物を加熱還流した。混合物をガスクロマトグラフィーでモニターした。4時間の反応後に得られた結果を表3に示す。グリセロールの完全な変換が示され、セリノールカルバメート(SC)の収率は70%以上(GC-FIDピーク面積%)であり、セリノールカルバメート対イソセリノールカルバメートの選択性は約6:1であった。
【表3】
【0049】
実施例4
Mgを触媒として用いたプログリド中でのグリセロールと尿素からのセリノールカルバメートの合成
【化24】

グリセロール(250mg、2.72mmol、1当量)をジプロピレングリコールジメチルエーテル(プログリドTM、2.5mL)に懸濁し、尿素(489mg、8.15mmol、3当量)およびマグネシウム粉末(66mg、2.72mmol、1当量)を加え、反応混合物を加熱還流した。反応はガスクロマトグラフィーでモニターした。4時間の反応後に得られた結果を表4に示すが、セリノールカルバメート(SC)の収率は約86%(GC-FIDピーク面積%)であり、セリノールカルバメート対イソセリノールカルバメートの選択性は約12:1であった。
【表4】
【0050】
実施例5
ジグリム中でのグリセリン1,2-カルボネートからのセリノールカルバメートの合成
【化25】

グリセロール1,2-カルボナート(2.50g、21.2mmol、1.0当量)、ジグリム(10mL)、尿素(3.80g、63.6mmol、3.0当量)およびマグネシウム粉末(0.50g、21.2mmol、1.0当量)を加熱還流して撹拌し、ガスクロマトグラフィーで変換率をモニターした。4時間の反応後に得られた結果を表5に示す。グリセリン1,2-カルボネートの完全な変換が示され、セリノールカルバメート(SC)の収率は97%以上(GC-FIDピーク面積%)であり、セリノールカルバメート対イソセリノールカルバメートの選択性は約65:1であった。
【表5】
【0051】
実施例6
異なる溶媒中でのMgを触媒として用いたグリセロールと尿素からのセリノールカルバメートの合成
グリセロール(250mg、2.72mmol、1当量)、Mg(1当量)、尿素(489mg、8.15mmol、3当量)およびジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグリム)、イソソルビドジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(プログリド)、メトキシベンゼン(アニソール)およびエチルフェニルエーテル(フェネトール)から選択される溶媒(2.5mL)を130℃~200℃(溶媒による)の範囲で選択した温度で加熱し、撹拌した。混合物をガスクロマトグラフィーでモニターした。異なる溶媒で4時間反応させた結果を表6に示す。セリノールカルバメート(SC)の収率は55%以上(GC-FIDピーク面積%)であり、セリノールカルバメートとイソセリノールカルバメートの選択性は約50:1であった。
【表6】
【0052】
実施例7
ジグリム中のグリセロールと尿素からのセリノールの合成
【化26】

グリセロール(5.0g、54.3mmol、1当量)の混合物。ジグリム(10mL)、尿素(9.8g、163mmol、3当量)およびマグネシウム粉末(1.3g、54.3mmol、1当量)を加熱還流し、ガスクロマトグラフィーで変換をモニターしながら撹拌した。6時間後、反応混合物を冷却し、水(20mL)を加え、さらに15分間撹拌した。混合物を濾過し、マグネシウムと少量の不溶性の残留物を除去した。濾液に水酸化ナトリウム(10.9g、272mmol、5当量)を加え、混合物を100℃で1時間加熱した。水と有機溶媒を真空留去し、固形の残留物をメタノール(20mL)に懸濁し、室温で8時間撹拌した。不溶性の残留物をブフナー漏斗で濾過し、濾液を真空留去した。残留物を水(50mL)に再溶解し、濃塩酸でpH1に酸性化し、真空留去により半量まで濃縮した。この溶液をAmberlite IRA 120(H+-form、ベッド容積450mL)を充填したカラムに加えた。カラムを水で溶出し、無機塩を除去した後、1M水酸化アンモニウムで生成物を溶出した。生成物を含む溶出液の画分をプールし、真空留去した。残留物を水(10mL)に取り、80℃に加温し、シュウ酸二水和物を加えた。溶液を室温で一晩放置し、白色の結晶析出物を回収した。粗製のシュウ酸セリノールを-5℃の水/エタノールで再結晶し、分析的に純粋なシュウ酸セリノール(1.1g)を得た。
【0053】
実施例8
ジグリム中でのグリセロールと尿素からのセリノールの合成
【化27】

尿素(97.9g、1.63mol、3当量)およびマグネシウム粉末(10g、0.413mol、0.8当量)を、グリセロール(50g、0.543mol、1当量)およびジグリム(100mL)の混合物に添加した。混合物を加熱還流して攪拌し、ガスクロマトグラフィーで変換をモニターした。
反応が完了したら、水(200mL)を加えてさらに15分間撹拌した。混合物を濾過し、マグネシウムと不溶性の残留物を除去した。NaOH(65.18g、1.63mol、3当量)を濾液に加え、混合物を100℃で4時間加熱した。水とジグリムを減圧下で留去し、固形の残留物をメタノールに懸濁し、室温で一晩撹拌した。不溶性の残留物をブフナー漏斗で濾過し、濾液を真空留去した。水(250mL)に溶解した残留物に活性炭(10%w/w)を加え、濃塩酸でpH1に酸性化した。懸濁液をマグネティックスターラーで撹拌しながら、80℃で1時間加熱した後、セライト上で濾過し、水で洗浄した。濾液を半量まで濃縮し、イオン交換樹脂を重点したAmberlite IRA 120(H+-form、ベッド容積2L)カラムに加えた。カラムは中性pHまで水で溶出し、その後1Mアンモニア水で溶出した。生成物を含む溶出画分をプールし真空留去した。生成物は黄色の油状物として得られた(40.74g、総収率82,3%、セリノール/イソセリノール比5.5/1)。
【0054】
実施例9
ジグリム中でのグリセロールと尿素からのセリノールの合成
【化28】

尿素(9.79g、163mmol、3当量)およびマグネシウム粉末(1.0g、41.3mmol、0.8当量)を、グリセロール(5g、54.3mmol、1当量)およびジグリム(10mL)の混合物に添加した。混合物を4時間加熱還流して攪拌し、ガスクロマトグラフィーで変換をモニターした。
反応が完了したら、水(20mL)を加えてさらに15分間撹拌した。混合物を濾過し、マグネシウムと不溶性の残留物を除去した。NaOH(6.5g、163mmol、3当量)を濾液に加え、混合物を100℃で1時間加熱した。水とジグリムを減圧下で留去し、固形の残留物をメタノール(50mL)に懸濁し、室温で一晩撹拌した。固形の残留物をブフナー漏斗で濾過し、濾液を真空留去した。残留物を水(50mL)に溶解し、濃塩酸でpH4.5に酸性化し、半量まで濃縮し、イオン交換樹脂Amberlite IRA 120(H+-form、ベッド容積200mL)を充填したカラムに加えた。カラムは中性pHまで水で溶出し、その後1Mアンモニア水で溶出した。生成物を含む溶出画分をプールし、真空留去した。生成物は黄色の油状物として得られた(3.3g、総収率66%、ガスクロマトグラフィーによる純度94.5%)。
【0055】
実施例10
ジグリム中でのグリセロールと尿素からのセリノールの合成
【化29】

グリセロール(5.0g、54.3mmol、1当量)、ジグリム(10mL)、尿素(9.8g、163mmol、3当量)およびマグネシウム粉末(0.13g、5.4mmol、0.1当量)の混合物を加熱還流し、ガスクロマトグラフィーで変換をモニターしながら撹拌した。4時間後の結果を表7に示す。
【表7】

4時間後、反応混合物を冷却し、水(20mL)を加え、さらに15分間撹拌した。混合物を濾過して未反応のマグネシウムと少量の不溶性の残留物を除去した。濾液に水酸化ナトリウム(4.35g、109mmol、2当量)を加え、混合物を100℃で1時間加熱した。水と有機溶媒を真空留去し、固形の残留物をメタノール(20mL)に懸濁し、室温で8時間撹拌した。不溶性の残留物をブフナー漏斗で濾過し、濾液を真空留去した。残留物を水(50mL)に再溶解し、濃塩酸でpH4.5に酸性化し、真空留去により半量まで濃縮した。濃縮溶液をAmberlite IRA 120(H+-form、ベッド容積200mL)を充填したカラムに加えた。カラムを水で溶出し、無機塩を除去した後、1M水酸化アンモニウムで生成物を溶出した。生成物を含む溶出画分をプールし、真空留去して、淡黄色の粘性な油状物を得た(3.1g、総収率63%、ガスクロマトグラフィーによる純度96%)。
【0056】
参考文献
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【国際調査報告】