(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】透明セラミックを製造及び成形するための材料及びプロセス
(51)【国際特許分類】
B28B 1/00 20060101AFI20240326BHJP
B22F 9/00 20060101ALI20240326BHJP
B28B 1/30 20060101ALI20240326BHJP
B28B 3/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B28B1/00 H
B22F9/00 B
B28B1/30
B28B3/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023558443
(86)(22)【出願日】2022-03-28
(85)【翻訳文提出日】2023-11-22
(86)【国際出願番号】 EP2022058116
(87)【国際公開番号】W WO2022200629
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519251243
【氏名又は名称】グラスソマー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラップ バスティアン
(72)【発明者】
【氏名】コッツ-ヘルマー フレデリック
【テーマコード(参考)】
4G052
4G054
4K017
【Fターム(参考)】
4G052DA05
4G052DB12
4G052DC06
4G054AA05
4G054AA15
4G054AB01
4G054BE00
4G054BE11
4G054DA03
4K017AA08
4K017BA09
4K017DA07
4K017EH18
(57)【要約】
本発明は、セラミック材料製の透明物品を製造するための成形可能なナノコンポジットであって、本発明による成形可能なナノコンポジットは、有機バインダーと、有機バインダー中に分散したセラミック材料の粉末であって、直径が5nm~700nmの範囲の粒子を含む、粉末、及び/又は有機バインダー中に分散したセラミック材料の前駆体であって、少なくとも1種の金属含有化合物である、前駆体と、有機バインダー中に分散した相形成剤であって、室温で固形又は粘性であり、有機バインダー中に内相を形成する、相形成剤とを含み、成形可能なナノコンポジット中のセラミック材料の粉末及び前駆体の合計含有量は、有機バインダー100体積部に対して、少なくとも5体積部であり、成形可能なナノコンポジットは、どのような低粘度溶媒も含有しない、成形可能なナノコンポジットに関する。さらに、本発明は、セラミック材料製の透明物品の製造方法に関し、本発明による方法は、本発明による成形可能なナノコンポジットを利用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック材料製の透明物品を製造するための成形可能なナノコンポジットであって、
有機バインダーと、
前記有機バインダー中に分散した前記セラミック材料の粉末であって、直径が5nm~700nmの範囲の粒子を含む、粉末、及び/又は前記有機バインダー中に分散した前記セラミック材料の前駆体であって、少なくとも1種の金属含有化合物である、前駆体と、
前記有機バインダー中に分散した相形成剤であって、室温で固形又は粘性であり、前記有機バインダー中に内相を形成する、相形成剤と、
を含み、
前記成形可能なナノコンポジット中の前記セラミック材料の粉末及び前駆体の合計含有量は、前記有機バインダー100体積部に対して、少なくとも5体積部であり、
前記成形可能なナノコンポジットは、どのような低粘度溶媒も含有しない、
成形可能なナノコンポジット。
【請求項2】
前記有機バインダーは、冷却した際に硬化可能な熱可塑性物である、請求項1に記載の成形可能なナノコンポジット。
【請求項3】
前記有機バインダーは、外部刺激により開始される固化又は重合の際に硬化可能な樹脂である、請求項1に記載の成形可能なナノコンポジット。
【請求項4】
前記成形可能なナノコンポジットは、前記有機バインダー中に分散した前記セラミック材料の粉末を含み、該粉末は、直径が5nm~700nmの範囲の前記粒子の他に、直径が1μm~50μmの範囲の粒子を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の成形可能なナノコンポジット。
【請求項5】
前記成形可能なナノコンポジットは、前記有機バインダー中に分散した前記セラミック材料の前駆体を含み、該前駆体は、有機金属化合物、金属錯体、及び金属塩からなる群より選択される少なくとも1種の金属含有化合物であるか、又はそれら2種以上の組合せである、請求項1~4のいずれか一項に記載の成形可能なナノコンポジット。
【請求項6】
前記セラミック材料は、アルミン酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸窒化アルミニウム、フッ化カルシウム、チタン酸バリウム、ジルコニア、及びイットリウムアルミニウムガーネットからなる群より選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の成形可能なナノコンポジット。
【請求項7】
前記成形可能なナノコンポジット中の前記セラミック材料の粉末及び前駆体の合計含有量は、前記有機バインダー100体積部に対して、少なくとも30体積部である、請求項1~6のいずれか一項に記載の成形可能なナノコンポジット。
【請求項8】
前記成形可能なナノコンポジット中の前記相形成剤の含有量は、前記有機バインダー100体積部に対して、少なくとも5体積部である、請求項1~7のいずれか一項に記載の成形可能なナノコンポジット。
【請求項9】
セラミック材料製の透明物品を製造する方法であって、以下の工程(a)~工程(d):
(a)前記有機バインダーの硬化前、硬化中、及び/又は硬化後、請求項1~8のいずれか一項に記載の成形可能なナノコンポジットを、所定の幾何学的形状へと成形することにより、一次構造体を得る工程と、
(b)工程(a)で得られた前記一次構造体を、前記有機バインダーを除去することにより脱脂することにより、中に空隙が形成されている二次構造体を得る工程と、
(c)任意選択で、工程(b)で得られた前記二次構造体の空隙を、少なくとも1種の添加剤で充填する工程と、
(d)工程(b)で得られ、任意選択で工程(c)において少なくとも1種の添加剤で充填された前記二次構造体を焼結することにより、前記透明物品を得る工程と、
を含む、方法。
【請求項10】
工程(a)において、前記成形可能なナノコンポジットは、除去造形プロセス、積層造形プロセス、複製プロセス、又はそれらの組合せにより成形される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程(b)において、工程(a)で得られた前記一次構造体は、熱処理、化学反応、減圧、溶媒抽出若しくは気相抽出、又はそれらの組合せにより脱脂される、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
工程(c)において、工程(b)で得られる前記二次構造体の空隙は、前記少なくとも1種の添加剤で充填され、前記少なくとも1種の添加剤は、顔料、ドーピング試薬、前記セラミック材料の粉末、及び前記セラミック材料の前駆体からなる群より選択される、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(c)において、前記少なくとも1種の添加剤を含有する溶液に、工程(b)で得られた前記二次構造体を浸漬するか、前記少なくとも1種の添加剤を含有する若しくは生成する雰囲気中で、前記二次構造体を物理蒸着若しくは化学蒸着に曝露するか、又はこれらの組合せによって、前記二次構造体の空隙を前記少なくとも1種の添加剤で充填する、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程(d)は、前記焼結した二次構造体を熱間等方圧加圧に供することを含む、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
以下の工程(e):(e)工程(b)で得られた前記二次構造体又は工程(d)で得られた前記透明物品を単結晶体に変換する工程を更に含む、請求項9~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック材料製の透明物品を製造するための成形可能なナノコンポジットに関する。さらに、本発明は、セラミック材料製の透明物品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミン酸マグネシウム(スピネルとも称する)、酸化アルミニウム、酸窒化アルミニウム、フッ化カルシウム、チタン酸バリウム、ジルコニア、及びイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)のような透明セラミックは、高性能光学素子の製造用として有望な材料である。透明セラミックの製造及び成形には様々なプロセスが当該技術分野で既知であり、最も重要なプロセスとして、粒子の熱間プレス及び水性分散液の鋳込成形が挙げられる。
【0003】
粒子の熱間プレスでは、例えば、非特許文献1に記載のとおり、粒子は、高温高圧下で緻密化される。一般に、粒子の熱間プレスは、平坦な表面を必要とし、この表面により圧を加えることができる。水性分散液の鋳込成形では、例えば、非特許文献2に記載のとおり、水性分散液を予備緻密化して粉末含有水にし、水を蒸発させ、粉末を焼結して透明セラミックにする。一般に、水性分散液の鋳込成形は、予備緻密化構造体を通じて水を除去することが可能であることを必要とする。水の除去により誘導される多孔性の結果として、固有の収縮及び反りが生じる。
【0004】
非特許文献3には、透過率が理論限界まで近づく透明スピネルセラミックの3D印刷が記載されている。
【0005】
特許文献1には、薄型透明セラミック部品の製造方法及び薄型透明セラミック部品が記載されている。
【0006】
特許文献2には、透明セラミック自己結紮ブラケットの調製法が記載されている。
【0007】
特許文献3には、透明セラミック歯科矯正用ブラケット及びその調製法が記載されている。
【0008】
特許文献4には、5Gソーラー携帯電話に使用される透明セラミックバックボードの調製法が記載されている。
【0009】
特許文献5には、アルミン酸マグネシウムスピネル透明セラミックの調製法が記載されている。
【0010】
特許文献6には、改良されたIsobamゲル系をベースとしたYAG透明セラミックの調製法が記載されている。
【0011】
特許文献7には、MgAl2O4スピネルのMgAl2O4スピネル形成法が記載されている。
【0012】
特許文献8には、3D印刷装置で使用するための焼結可能原料が記載されている。
【0013】
特許文献9には、歯科セラミックのステレオリソグラフィーによる調製用の光固化スリップが記載されている。
【0014】
特許文献10には、透明スピネル物品及びテープキャスティングによる作製方法が記載されている。
【0015】
特許文献11には、ナノ結晶性材料を用いた歯科修復物の製造方法が記載されている。
【0016】
非特許文献4には、焼結性添加剤前駆体溶液を含浸させた予備焼結体から半透明アルミナセラミックを製造することが記載されている。
【0017】
したがって、上記プロセスにおいて、透明セラミックの形状に関して厳しい制限が存在する。すなわち、上記プロセスのどれも、任意の所望の形状を有することができる、すなわち任意の幾何学的形状を自由選択することができる、セラミック材料製の透明物品をもたらすことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】国際公開第2020/120458号
【特許文献2】中国特許出願公開第109 650 853号
【特許文献3】中国特許出願公開第111 454 067号
【特許文献4】中国特許出願公開第112 299 828号
【特許文献5】中国特許出願公開第111 499 371号
【特許文献6】中国特許出願公開第108 516 818号
【特許文献7】韓国特許出願公開第2017 0058048号
【特許文献8】国際公開第2020/200424号
【特許文献9】米国特許第7,927,538号
【特許文献10】米国特許出願公開第2016/002117号
【特許文献11】米国特許出願公開第2009/321971号
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】G. Gilde et al., J. Am. Ceram. Soc. 2005, 88(10), 2747-2751
【非特許文献2】A. Krell et al., J. Am. Ceram. Soc. 2003, 86(1), 12-18
【非特許文献3】Haomin Wang et al., Adv. Mater. 2021, 33(15), 2007072
【非特許文献4】Guanwei Liu et al., J. Eur. Ceram. Soc. 2012, 32(4), 711-715
【発明の概要】
【0020】
上記に鑑みて、本発明は、当該技術分野で既知の透明セラミックの製造プロセス及び成形プロセスに関連する上述の欠点を克服することを目的とする。特に、本発明は、セラミック材料製の透明物品を製造する手段を提供することを技術課題とし、このセラミック材料は、自由選択された幾何学的形状を有する透明物品を得ることを可能にするはずである。
【0021】
上述の本発明の技術的課題は、添付の特許請求の範囲において特徴付けられる実施の形態を提供することにより解決されたのである。
【0022】
特に、1つの態様においては、上述の技術的課題は、セラミック材料製の透明物品を製造するための成形可能なナノコンポジットであって、本発明による成形可能なナノコンポジットは、
有機バインダーと、
有機バインダー中に分散したセラミック材料の粉末であって、直径が5nm~700nmの範囲の粒子を含む、粉末、及び/又は有機バインダー中に分散したセラミック材料の前駆体であって、少なくとも1種の金属含有化合物である、前駆体と、
有機バインダー中に分散した相形成剤であって、室温で固形又は粘性であり、有機バインダー中に内相を形成する、相形成剤と、
を含み、
成形可能なナノコンポジット中のセラミック材料の粉末及び前駆体の合計含有量は、有機バインダー100体積部に対して、少なくとも5体積部であり、
成形可能なナノコンポジットは、どのような低粘度溶媒も含有しない、
成形可能なナノコンポジットを提供することにより解決されたのである。
【0023】
特に、別の態様においては、上述の技術的課題は、セラミック材料製の透明物品を製造する方法であって、本発明による方法は、以下の工程(a)~工程(d):
(a)有機バインダーの硬化前、硬化中、及び/又は硬化後、本発明による成形可能なナノコンポジットを、所定の幾何学的形状へと成形することにより、一次構造体を得る工程と、
(b)工程(a)で得られた一次構造体を、有機バインダーを除去することにより脱脂することにより、中に空隙が形成されている二次構造体を得る工程と、
(c)任意選択で、工程(b)で得られた二次構造体の空隙を、少なくとも1種の添加剤で充填する工程と、
(d)工程(b)で得られ、任意選択で工程(c)において少なくとも1種の添加剤で充填された二次構造体を焼結することにより、透明物品を得る工程と、
を含む、方法を提供することにより解決されたのである。
【0024】
本発明者らの発見によれば、上記に定義される特徴により、本発明による方法で使用される本発明による成形可能なナノコンポジットは、自由選択された幾何学的形状を有するセラミック材料製の透明物品をもたらすことができる。その理由は、有機バインダーが、その中にセラミック材料の粉末及び/又は前駆体を分散させて含有することにある。有機バインダーを硬化させることにより、有機バインダー及びその中に分散したセラミック材料の粉末及び/又は前駆体を含む成形可能なナノコンポジットは、所定の幾何学的形状へと成形することができ、この所定の幾何学的形状は、得られる透明物品の幾何学的形状に対応する。
【0025】
有利なことに、成形可能なナノコンポジットは、以下で詳細に記載されるとおり、除去造形プロセス、積層造形プロセス、複製プロセス、又はそれらの組合せを含む当該技術分野で既知の任意の適切な手段により所定の幾何学的形状へと成形することができるため、所定の幾何学的形状について、更なる制限はない。このため、脱脂及び焼結により最終的に得られる透明物品の幾何学的形状にも、更なる制限はない。言い換えると、有機バインダー中に分散した粉末及び/又は前駆体を起源とするセラミック材料でできた透明物品の幾何学的形状は、自由選択することができる。有機バインダー中に分散して相形成剤が存在することにより、透明物品の製造中にクラックが生じることを有効に抑制することが可能である。結果として、本発明によるナノコンポジットを利用した本発明による方法により、比較的厚みのある透明物品を実現することができる。そのため、本発明によると、製造される「自由選択された幾何学的形状を有するセラミック材料製の透明物品」は、その物品の厚さが典型的には250μm超、好ましくは600μm超、更により好ましくは少なくとも1.0mmである限り、任意の恣意的形状を有する物品と解釈される。なお、透明物品の厚さは、透明物品内の最短距離を指す。
【0026】
以下において、本発明による成形可能なナノコンポジット及び本発明による方法を、
図1を参照して詳細に説明するが、その内容は何ら制限されないと解釈される。
【0027】
本発明によると、セラミック材料製の透明物品を製造するためのナノコンポジットは成形可能である。このことは、その中の有機バインダーが成形可能な状態にある又はそのような状態に移行可能であることを意味する。有機バインダーが成形可能な状態にある又はそのような状態に移行可能であることで、本発明による方法に関連して以下で記載するように、有機バインダーを硬化させることにより、成形可能なナノコンポジットを所定の幾何学的形状へと成形することができる。
【0028】
有機バインダーが成形可能な状態にある又はそのような状態に移行可能である限り、すなわち硬化可能である限り、有機バインダーは、本発明によると更に制限されることはない。有機バインダーが硬化した結果として、工程(a)で得られる一次構造体は、成形可能なナノコンポジットが成形された結果である所定の幾何学的形状を維持する。
【0029】
本発明の1つの実施の形態において、有機バインダーは、冷却した際に硬化可能な熱可塑性物である。したがって、冷却することで軟化した熱可塑性物が固体になるので、有機バインダーは、もはや成形可能な状態にない。
【0030】
有機バインダーが熱可塑性物である場合、これは、芳香族若しくは脂肪族ジカルボン酸とジオール及び/又はヒドロキシカルボン酸に基づくポリエステル、脂肪族若しくは芳香族ジオールに基づくポリカーボネート、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、ポリイソブテン、ポリ(エチレン酢酸ビニル)、エチレンプロピレンゴム(EPR)、ポリ(エチレンプロピレンジエン)、ポリ(ビニルブチラール)(PVB)、ポリアクリレート及びポリメタクリレート、シクロオレフィンポリマー等、並びにポリアミド、ポリアセタール、例えばポリオキシメチレン等、ビスフェノールに基づく芳香族ポリエーテルを含むポリエーテル、例えばポリエチレングリコール(PEG)等、若しくはポリウレタン、又はそれらの組合せから選択することが可能であるが、これらに限定されない。
【0031】
本発明の別の実施の形態において、有機バインダーは、外部刺激により開始される固化又は重合により硬化可能な樹脂である。この文脈において、外部刺激として、熱又は照射、特にUV照射を挙げることができる。場合によっては、混合でも外部刺激として十分である可能性があり、例えば、二成分樹脂において、樹脂の液体成分が互いに対して十分な反応性を呈する場合がそうである。さらに、必要に応じて、外部刺激として、有機バインダーの固化又は重合を促進するために有機バインダーに添加される開始剤を挙げることができる。適切な開始剤は、当業者に既知であり、そのような開始剤として、アセトフェノン、例えば、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(DMPAP)、アゾ化合物、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ベンゾフェノン誘導体、フルオレセイン及びその誘導体、例えば、ローズベンガル、キノン、例えば、カンファーキノン、並びにホスフィン誘導体、例えば、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド等があるが、これらに限定されない。したがって、外部刺激により開始された固化又は重合は、樹脂の液体成分(複数の場合もある)を固体にするので、有機バインダーは、もはや成形可能な状態にない。外部刺激に曝露すると、使用した樹脂に応じて、樹脂は固化して架橋構造体をもたらすか、重合して非架橋構造体をもたらすかのいずれかである。言い換えると、「樹脂」という用語には、本明細書において使用される場合、熱硬化性樹脂だけでなく、熱可塑性樹脂も包含される。すなわち、樹脂として、任意のモノマー及び/又はオリゴマー及び/又はポリマー組成物を本明細書において制限なく挙げることができる。
【0032】
有機バインダーが樹脂である場合、これは、アクリレート樹脂及びメタクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、チオール-エン樹脂、又はポリウレタン樹脂から選択することができるが、これらに限定されない。特に、有機バインダーが樹脂である場合、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)又は2-ヒドロキシエチルメタクリレートとテトラエチレングリコールジアクリレート(TEGDA)との混合物を、有機バインダーとして挙げることができる。
【0033】
成形可能なナノコンポジットは、有機バインダーの他に、必須部分としてセラミック材料の粉末及び/又は前駆体を含む。セラミック材料の粉末及び/又は前駆体は、有機バインダー中に分散している。セラミック材料の粉末及び/又は前駆体の分散は、使用される有機バインダーに応じて、当該技術分野で既知の任意の適切な手段により達成することができる。熱可塑性物が有機バインダーとして使用される場合、セラミック材料の粉末及び/又は前駆体を熱可塑性物に加える前に、熱可塑性物を軟化させることができ、又は適切な有機溶媒若しくはガス相に溶解させることができる。樹脂が有機バインダーとして使用される場合、セラミック材料の粉末及び/又は前駆体を、樹脂の液体成分(複数の場合もある)に直接加えることができる。セラミック材料の粉末とセラミック材料の前駆体の両方を含むことで、より高い充填レベルをもたらすことができ、これにより今度は、工程(d)における焼結中の収縮をより小さくすることができる。
【0034】
成形可能なナノコンポジットがセラミック材料の粉末を含む場合、粉末は、直径が、5nm~700nmの範囲、好ましくは7nm~400nmの範囲、より好ましくは20nm~350nmの範囲、更により好ましくは30nm~300nmの範囲、最も好ましくは50nm~250nmの範囲の粒子を含む。こうした粒子は、本明細書において、第1のタイプの粒子とも称する。粉末は、これらに加えて、直径が、1μm~50μmの範囲、好ましくは2μm~40μmの範囲の粒子を含むことができる。こうした粒子は、本明細書において、第2のタイプの粒子とも称する。粉末が、第1のタイプの粒子と第2のタイプの粒子とを含む、すなわち粒子の二峰性混合物を含む場合、径が小さい方の粒子が、径が大きい方の粒子間の隙間を埋めることができる。これにより、成形可能なナノコンポジット中に粒子をより高密度で充填することができ、これにより今度は、工程(d)における焼結中の収縮がより小さくなる。原則として、粉末は、第1のタイプの粒子の直径とも第2のタイプの粒子の直径とも異なる直径を有する任意の他のタイプの粒子を更に含むことができる。粒子のこのような多峰性混合物も、本発明の範囲内にある。
【0035】
本明細書において、第1、第2、及び任意の他のタイプの粒子の直径とは、ISO 9276-2に従って測定される平均直径と解釈されるものとする。本発明によると、粒子は、(完全な)球状であることを必要としない。すなわち、粒子は、回転楕円形状であることも可能、すなわち、それらは、球体様であることが可能である。例えば、直径が5nm~700nmの範囲、好ましくは7nm~400nmの範囲、より好ましくは20nm~350nmの範囲、更により好ましくは30nm~300nmの範囲、最も好ましくは50nm~250nmの範囲の第1のタイプの粒子について、このことは、これらの粒子が、実質的に、直径5nm未満の寸法を有し得ず、好ましくは直径7nm未満の寸法を有し得ず、より好ましくは直径20nm未満の寸法を有し得ず、更により好ましくは直径30nm未満の寸法を有し得ず、最も好ましくは直径50nm未満の寸法を有し得ず、また実質的に、直径700nm超の寸法を有し得ず、好ましくは直径400nm超の寸法を有し得ず、より好ましくは直径350nm超の寸法を有し得ず、更により好ましくは直径300nm超の寸法を有し得ず、最も好ましくは直径250nm超の寸法を有し得ないことを意味する。
【0036】
成形可能なナノコンポジットがセラミック材料の前駆体を含む場合、前駆体は、少なくとも1種の金属含有化合物である。特に制限なく、少なくとも1種の金属含有化合物は、有機金属化合物、金属錯体、及び金属塩からなる群より選択することができ、又はそれらのうち2種以上の組合せであることができる。すなわち、セラミック材料の前駆体は、セラミック材料の金属源として作用する。セラミック材料が1種類の金属のみを含有する場合、セラミック材料の前駆体は、典型的には、単一の金属含有化合物である。セラミック材料が2種以上の金属を含有する場合、セラミック材料の前駆体は、典型的には、2種以上の金属含有化合物の混合物であり、各金属含有化合物は、金属のうち1種を提供する。使用される有機バインダーに応じて、セラミック材料の前駆体は、微細に分割されたドメインとしてその中に分散していることができ、そのようなドメインは、分離した又は錯形成したイオンからイオンクラスターまで、また有機金属相までの範囲に及ぶ。
【0037】
上述のとおり、本発明による方法により本発明による成形可能なナノコンポジットから得られる透明物品は、有機バインダー中に分散した粉末及び/又は前駆体を起源とするセラミック材料でできている。本発明によると、セラミック材料には、それ以上の制限はない。特に、セラミック材料は、得られる透明物品の意図する用途に応じて、選択することができる。特に制限されないが、セラミック材料は、アルミン酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸窒化アルミニウム、フッ化カルシウム、チタン酸バリウム、ジルコニア、及びイットリウムアルミニウムガーネットからなる群より選択することができる。この文脈において、「セラミック材料の粉末(本明細書において、セラミック材料粉末とも称する)」という用語は、粉末に含まれる粒子がセラミック材料製であることを意味する。さらに、「セラミック材料の前駆体(本明細書において、セラミック材料前駆体とも称する)」という用語は、セラミック材料が、工程(d)において焼結中に少なくとも1種の金属含有化合物から形成されることを意味する。
【0038】
本発明によると、成形可能なナノコンポジット中のセラミック材料の粉末及び前駆体の合計含有量は、有機バインダー100体積部に対して、少なくとも5体積部、好ましくは少なくとも30体積部、より好ましくは少なくとも35体積部である。有機バインダーに対してセラミック材料の粉末及び前駆体の合計含有量が増えるほど、工程(d)で得られる透明物品中のセラミック材料の充填密度が高くなる。驚くべきことに、有機バインダーに対するセラミック材料の粉末及び前駆体の合計含有量が、相当高いとしても、例えば、有機バインダー100体積部に対し55体積部、更にはそれより多かったとしても、工程(a)において成形可能なナノコンポジットを所定の幾何学的形状へと成形することが依然として可能である。
【0039】
成形可能なナノコンポジットは、有機バインダー及びその中に分散したセラミック材料の粉末及び/又は前駆体の他に、有機バインダー中に分散した相形成剤を追加の作用剤として含む。相形成剤は、以下でより詳細に記載されるとおり、工程(b)において一次構造体の脱脂を促進することでクラックの発生を有効に抑制する。相形成剤とは、室温(本明細書において25℃であると解釈される)で固形又は粘性であるものであり、有機バインダー中に内相を形成するものである。本明細書において、「粘性」という用語は、DIN 53019に従って測定した場合の室温での粘度が、少なくとも1mPa・s、好ましくは少なくとも5mPa・sであることを指すと解釈されるものとする。相形成剤は、工程(b)の一次構造体の脱脂前又は脱脂中に、例えば、相形成剤の蒸発若しくは昇華を招くか又は相形成剤の分解を招く熱処理により、有機バインダーから除去することができる。さらに、相形成剤は溶媒抽出又は気相抽出によって除去することもできる。
【0040】
相形成剤の例として、アルコール、エーテル、及びシリコーンオイル、並びにそれらの組合せが挙げられ、これらの物質は、室温で固形又は粘性であるように、十分に高い分子量を有する、及び/又は適切な官能基を有する。具体例として、フェノキシエタノール(POE)を相形成剤として挙げることができる。POEは、室温での粘度が約30mPa・sであることから、粘性物質である。POEは、大気圧下、温度242℃で蒸発可能である。しかしながら、その高い蒸気圧故に、それより低い温度でも相当量がすでに除去される。さらに、上述したPEGもまた、相形成剤として作用することができる。
【0041】
典型的には、成形可能なナノコンポジット中の相形成剤の含有量は、有機バインダー100体積部に対して、少なくとも5体積部、好ましくは少なくとも10体積部、より好ましくは少なくとも15体積部である。これにより、以下で更に記載されるとおりの工程(b)における一次構造体の脱脂を促進するように、内相が有機バインダー中に十分に形成されることを確実にできる。
【0042】
成形可能なナノコンポジットは、相形成剤の他に、必要に応じて、得られる透明物品の製造を促進する1種以上の追加の作用剤を含むことができる。本発明によると、成形可能なナノコンポジット中の任意の追加の作用剤の全体での含有量は、成形可能なナノコンポジットの合計質量を100質量%として、30質量%超を占めず、より好ましくは15質量%以下、更により好ましくは10質量%以下、なおも更により好ましくは5質量%以下であることが好ましい。すなわち、本発明による成形可能なナノコンポジットは、有機バインダー及びその中に分散したセラミック材料の粉末及び/又は前駆体から本質的になり、有機バインダーに添加された任意の開始剤を含む。本明細書において、「~から本質的になる」という用語は、有機バインダー及びその中に分散したセラミック材料の粉末及び/又は前駆体の含有量が、有機バインダーに添加された任意の開始剤も含めて、成形可能なナノコンポジットの合計質量を100質量%として、好ましくは少なくとも70質量%、より好ましくは少なくとも85質量%、更により好ましくは少なくとも90質量%、なおも更により好ましくは少なくとも95質量%を占めることを意味する(残部は、相形成剤及び任意選択の他の追加の作用剤のみからなる)。
【0043】
例えば、セラミック材料の粉末及び/又は前駆体の有機バインダー中への分散を促進する目的で、分散剤を存在させることができる。分散剤として、非イオン性界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシメチレン等、及びアニオン性界面活性剤、例えば、脂肪酸及びそれらの塩又は脂肪族カルボン酸及びそれらの塩等、例えば、ステアリン酸及びその塩又はオレイン酸及びその塩等を挙げることができるが、これらに限定されない。本発明で適切に使用される分散剤の別の例として、2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸があり、これは相形成剤としても作用することができる。本発明によると、分散剤が存在することは、必須ではない。すなわち、本発明は、成形可能なナノコンポジットがどのような分散剤も含有しない実施形態も包含する。
【0044】
なお、いったん一次構造体が形成されてしまうと、有機バインダーは、固体になる(液体、ゲル状、又はペースト様状態ではない)。当業者には当然のとおり、固体とは、その粘度を特定することが不可能であることを特徴とする。典型的には、成形可能なナノコンポジットは、どのような増粘剤も含有していない。特に、成形可能なナノコンポジットは、水のような低粘度溶媒を何も含有していない。低粘度とは、DIN 53019に従って測定した場合の室温での粘度が5mPa・s未満であることを意味する。本発明の特定の実施の形態に従って、成形可能なナノコンポジットは、トリグリセリド、ワックス、及びパラフィンのどれも含有していなければ、フタル酸塩及びそれらの任意の誘導体等の可塑剤を何も含有していない。
【0045】
本発明による方法の工程(a)において、上記で詳細に記載してきた本発明による成形可能なナノコンポジットは、有機バインダーの硬化前、硬化中、及び/又は硬化後に、所定の幾何学的形状へと成形される。これにより、圧粉体とも称する一次構造体が得られる。使用される有機バインダーに応じて、硬化は、冷却によって達成されるか、外部刺激により開始される固化若しくは重合によって達成される。一次構造体の形状は、工程(d)で得られる透明物品の形状を反映している。
【0046】
成形可能なナノコンポジットを所定の幾何学的形状へと成形することは、当該技術分野で既知の任意の適切な手段により達成することができる。特に、成形可能なナノコンポジットは、工程(a)において、除去造形プロセス、積層造形プロセス、複製プロセス、又はそれらの組合せにより成形することができる。適用されるプロセス(複数の場合もある)に応じて、有機バインダーはその中に分散したセラミック材料の粉末及び/又は前駆体とともに、成形可能なナノコンポジットの成形前、成形中、及び/又は成形後に硬化される。
【0047】
除去造形プロセスの場合、有機バインダーはその中に分散したセラミック材料の粉末及び/又は前駆体とともに、成形可能なナノコンポジットの成形前に硬化させる。言い換えると、成形可能なナノコンポジットは、有機バインダーの硬化後に、所定の幾何学的形状へと成形される。適切な除去造形プロセスとして、レーザー使用構造化技法(laser-based structuring techniques)、並びにCNC機械加工技法、例えば、フライス加工、掘削、研削、のこ引き、木摺打ち、及び研磨等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
積層造形プロセスの場合、有機バインダーはその中に分散したセラミック材料の粉末及び/又は前駆体とともに、成形可能なナノコンポジットの成形中に硬化させる。言い換えると、成形可能なナノコンポジットは、有機バインダーの硬化中に、所定の幾何学的形状へと成形される。適切な積層造形プロセスとして、選択的レーザー焼結及び選択的レーザー溶融、熱溶解フィラメント製造(熱溶解積層造形法とも称する)、ステレオリソグラフィー、二光子重合、インクジェット印刷、並びに立体印刷技法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
複製プロセスの場合、有機バインダーはその中に分散したセラミック材料の粉末及び/又は前駆体とともに、成形可能なナノコンポジットの成形後に硬化させる。言い換えると、成形可能なナノコンポジットは、有機バインダーの硬化前に、所定の幾何学的形状へと成形される。適切な複製プロセスとして、鋳造、射出成形、(射出)圧縮成形、押出成形、熱成形、冷間又は熱間引抜、ホットエンボス、ナノインプリント、及びブロー成形が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
既に上述したとおり、成形可能なナノコンポジットを所定の幾何学的形状へと成形する目的で、1つ以上の除去造形プロセス、積層造形プロセス、及び複製プロセスを組み合わせることができる。例えば、成形可能なナノコンポジットを複製プロセスにより成形して、一次構造体に当該複製プロセスを原因とする視認できるアーチファクトがある場合、除去造形プロセスを、後加工として一次構造体に適用することができる。あるいは、工程(a)で得られた一次構造体の表面を滑らかにする目的で、後加工としてコーティング技法を適用することができる。
【0051】
本発明による方法の工程(b)において、工程(a)で得られた一次構造体は、有機バインダーの除去により脱脂される。これにより、二次構造体(脱脂体とも称する)が得られる。一次構造体を脱脂した、すなわち有機バインダーを除去した結果として、得られる二次構造体は、その中に空隙が形成されている。
【0052】
使用される有機バインダーに応じて、工程(a)で得られる一次構造体は、熱処理、化学反応、減圧、溶媒抽出若しくは気相抽出、又はそれらの組合せにより、工程(b)で脱脂することができる。例えば、一次構造体を、最初に溶媒抽出用の溶媒に浸漬してから、熱処理することができる。原則として、二次構造体を形成するセラミック材料の粉末及び/又は前駆体に悪影響を及ぼすことなく有機バインダーを除去することができる任意の手段を適用することができる。この文脈において、当業者なら、工程(b)において有機バインダーを除去するために適用する適切な条件を慣習的に選択する。
【0053】
例えば、熱処理により脱脂を行う場合、脱脂中に適用する温度は、典型的には、100℃~600℃の範囲、例えば150℃~550℃の範囲であり、加熱速度は、典型的には0.1℃/分~5℃/分の範囲、例えば0.5℃/分~1℃/分の範囲であり、保持時間は、得られる透明物品のサイズに応じて、典型的には、2分~12時間の範囲である。得られる透明物品のサイズがかなり小さい場合、工程(b)において一次構造体を脱脂するのに数秒でも十分である可能性がある。熱処理は段階的に行うこともできる。上述の検討に従って、有機バインダーの揮発性を高める減圧、すなわち大気圧より低い圧により、熱処理による脱脂を更に容易にすることができる。
【0054】
成形可能なナノコンポジットがセラミック材料の粉末を含む場合、粉末に含まれる粒子は、有機バインダーの除去後、水素結合により互いに付着している。これにより、二次構造体に機械的安定性が付与される。粒子のサイズを考慮すると、粒子の直径がナノメートル範囲であることから、粒子は、二次構造体を機械的に安定に維持するのに十分な相互作用を可能にする高い比表面積を有する。成形可能なナノコンポジットがセラミック材料の前駆体を含む場合、二次構造体は、少なくとも1種の金属含有化合物の固有凝集力により、及び存在する場合には、セラミック材料の粉末に含まれる粒子と少なくとも1種の金属含有化合物の相互作用により安定化する。例として、有機金属化合物は、副次的力、例えば、疎水的相互作用、ファン・デル・ワールス力、及び水素結合等を介して相互作用することができ、一方で金属塩は、静電相互作用を形成して、これが二次構造体を安定化させる。概して、工程(b)で得られる二次構造体は、非晶質又は半結晶性の形態を有する。
【0055】
工程(b)において有機バインダーを除去する前に、又は有機バインダーを除去する際に、相形成剤が、例えば、蒸発若しくは昇華によって、又は分解によって、一次構造体から除去する。相形成剤が、その除去を溶媒抽出又は気相抽出によって達成することもできる。原則として、有機バインダーの除去に関連して上で説明したものと同じ手段を適用することができる。
【0056】
相形成剤の除去により、工程(b)における一次構造体の脱脂が容易になる。これは、相形成剤によって形成された有機バインダー中の内相が除去されると、一次構造体に細孔が生成するからである。次いで、これらの細孔を通して、残存する有機バインダーをより制御された方法で除去することができる。これにより、特に厚い構造を採用する場合に、二次構造体がより損傷しにくくなる。有機バインダーを複数工程で除去する場合にも、同じことが当てはまる。例えば、有機バインダーが異なる熱分解挙動を示す2種以上のバインダー成分の組合せである場合、脱脂は、順次行うことができる。この場合、第1のバインダー成分、すなわち、分解温度が最も低いバインダー成分を除去した後、第1のバインダー成分の除去後に一次構造体中に生成した細孔により、それ以外のバインダー成分(複数の場合もある)の除去が容易になる。
【0057】
工程(b)における一次構造体の脱脂は、一次構造体内の消失模型として作用する埋没した鋳型構造体の除去も可能にする。埋没した鋳型構造体は、有機バインダーと同一又は化学的に類似の材料のみで構成されており、いったんこれが一次構造体の脱脂中に除去されると、これの逆形状が、得られる二次構造体内に中空構造として残される。この修飾は、犠牲鋳型(sacrificial template)複製とも称する。
【0058】
本発明による方法の工程(c)において、工程(b)で得られる二次構造体の空隙は、少なくとも1種の添加剤で充填することができる。本発明によると、工程(c)は任意選択である。充填剤とも称する少なくとも1種の添加剤は、二次構造体中に形成された空隙に導入可能であるように、適切なサイズを有することが必要である。本明細書において、少なくとも1種の添加剤は、更に制限されることはなく、適宜選択することができる。
【0059】
例えば、得られる透明物品に特定の色を付与するために、少なくとも1つの添加剤を顔料、例えば、塩化金(III)(AuCl3)、塩化バナジウム(III)(VCl3)、又は硝酸クロム(III)(Cr(NO3)3)等から選択することができる。以下で更に説明するように、二次構造体は工程(d)における焼結の際にかなりの高温に曝露されるため、顔料はこれらの温度に耐える必要がある。そのため、上述のような無機顔料は、焼結中に適用されるかなりの高温に加熱されると分解しやすい有機顔料と比較して好ましい。
【0060】
通常、得られる透明物品に特定の光学的特性を付与するために、少なくとも1つの添加剤を、工程(d)における焼結の際に分解してドーパント、例えば、Ag、Al、Au、B、Ti、F、Fe、Na、Ni、K、Ca、Cr、Ce、Co、Cu、Dy、Er、Eu、Gd、Ho、La、Lu、Nd、P、Pt、Pr、Pm、Rh、Sm、Sc、Tb、Tm、V、Yb、Y、Ge、Pb、Ba、Zr、Zn及びMg等をもたらすドープ試薬から選択することもできる。適切なドープ試薬は当業者に既知である。
【0061】
そのうえ、得られる透明物品の密度を高める目的で、少なくとも1種の添加剤を、セラミック材料の粉末及びセラミック材料の前駆体から選択することもできる。二次構造体をセラミック材料の粉末及び/又は前駆体で充填することにより、焼結中の二次構造体の収縮を低減することができる。したがって、工程(d)における焼結後、セラミック材料は、有機バインダー中に分散した粉末及び/又は前駆体から生じるだけでなく、少なくとも1種の添加剤として使用された粉末及び/又は前駆体からも生じている。この文脈において、有機バインダー中に分散したセラミック材料の粉末及び/又は前駆体について上記で概要を記載したとおりの検討事項は、少なくとも1種の添加剤として使用されるセラミック材料の粉末及び/又は前駆体にも等しく適用される。当業者には明白であるとおり、セラミック材料の粉末が少なくとも1種の添加剤として使用される場合、粉末に含まれる粒子は、上記で概要を述べたことに加えて、適切な直径、すなわち適切なサイズを有する必要がある。
【0062】
工程(c)において、少なくとも1種の添加剤を含有する溶液に二次構造体を浸漬するか、少なくとも1種の添加剤を含有する若しくは生成する雰囲気中で、二次構造体を物理蒸着若しくは化学蒸着に曝露するか、又はこれらの組合せによって、二次構造体の空隙を少なくとも1種の添加剤で充填することができる。しかしながら、原則として、この点に関して他のいかなる充填プロセスも同様に適用することができる。例えば、ゾル-ゲルプロセスを適用することもできる。工程(c)において二次構造体の空隙を充填するのに用いる少なくとも1種の添加剤に応じて、二次構造体を、最初に、添加剤のうち1種を含有する溶液に浸漬することができ、次いで、添加剤のうち別の1種を含有する若しくはそれを生成する物理蒸着又は化学蒸着に曝露させることができる。二次構造体の空隙は、一次構造体の脱脂が完了する前であっても、適宜、少なくとも1種の添加剤で充填することができる。この場合、少なくとも1種の添加剤で充填されるのは部分脱脂された一次構造体である。
【0063】
本発明による方法の工程(d)において、工程(b)で得られ、任意選択で工程(c)において少なくとも1種の添加剤で充填された二次構造体を焼結する。これにより、透明物品が得られる。
【0064】
適切な焼結条件は、当業者に既知であり、適宜、習慣的に選択する。制限はないが、得られる透明物品のサイズに応じて、焼結中に適用される温度は、典型的には700℃~2000℃の範囲であり、加熱速度は、典型的には1℃/分~10℃/分の範囲、例えば、5℃/分であり、保持時間は、典型的には0.5時間~48時間の範囲、例えば、4時間である。
【0065】
成形可能なナノコンポジットが有機バインダー中に分散したセラミック材料の前駆体を含む場合、及び/又はセラミック材料の前駆体が少なくとも1種の添加剤として使用される場合、セラミック材料の前駆体をセラミック材料に変換する目的で、工程(d)の前に二次構造体を中間温度で予備焼結することができる。例えば、予備焼結は、400℃~700℃の範囲の温度で行うことができる。
【0066】
工程(d)後、得られる透明物品は、その密度が典型的には理論密度の少なくとも90%あり、これを、室温に冷却して、得られたままで使用することができる。本明細書において、物品は、厚さ1.0mmに対して、波長範囲400nm~1000nmで、10%超、好ましくは30%超、より好ましくは50%超という光透過率を呈する場合に、透明であると解釈されるべきである。完全な緻密化を達成する目的で、工程(d)は、焼結した二次構造体を熱間等方圧加圧(HIP)に供することを含むことができる。すなわち、焼結した二次構造体を熱間等方圧加圧に供する場合、得られる透明物品は、理論密度のおよそ100%の密度を有する。
【0067】
熱間等方圧加圧は、不活性ガス雰囲気中、例えばアルゴン雰囲気中、高温及び高圧を適用することを含む。制限はないが、得られる透明物品のサイズに応じて、熱間等方圧加圧中に適用される温度は、典型的には1000℃~1800℃の範囲であり、加熱速度は、典型的には1℃/分~5℃/分の範囲、例えば3℃/分であり、保持時間は、典型的には0.5時間~4時間の範囲、例えば2時間である。熱間等方圧加圧中に適用される圧は、典型的には100MPa~300MPaの範囲、例えば150MPaであるが、これに限定されない。熱間等方圧加圧の結果として、得られる透明物品のバルク内にはどのような細孔もほとんど残存しない。
【0068】
既に上述したとおり、工程(b)で得られる二次構造体は、非晶質又は半結晶性形態を有する。同じことが工程(d)で得られる透明物品にも当てはまる。したがって、必要に応じて、工程(b)で得られる二次構造体又は工程(d)で得られる透明物品は、単結晶体へと変換させることができる。そうするため、工程(b)で得られる二次構造体又は工程(d)で得られる透明物品のいずれかを、外部刺激、例えば熱又は照射に曝露させる。変換は、例えば、種結晶を用いた異常粒成長により誘導することができる。制限はないが、異常粒成長による単結晶体変換を達成するため、工程(b)で得られる二次構造体又は工程(d)で得られる透明物品に種結晶を添加した後、水素雰囲気中で以下のプロトコルを適用することができる:
加熱速度:15℃/分:25℃→1880℃ 保持時間:3時間
冷却速度:15℃/分:1880℃→1750℃ 保持時間:100時間
冷却速度:15℃/分:1750℃→25℃ 終了
【0069】
上記プロトコルが工程(b)の後に行われる場合、例えば1300℃での保持工程が、追加で予め採用される場合がある。
【0070】
異常粒成長による単結晶体変換は当該技術分野で十分確立されている。その詳細は、例えば、米国特許第5,549,746号、C. Scott et al., J. Am. Ceram. Soc. 2002, 85(5), 1275-1280、及びS. Dillon et al., J. Am. Ceram. Soc. 2007, 90(3), 993-995に見つけることができる。
【0071】
本明細書において、工程(b)で得られる二次構造体又は工程(d)で得られる透明物品の単結晶体への変換は、工程(e)とも称する。本発明によると、工程(e)は、任意選択である。
【0072】
本発明による方法により本発明による成形可能なナノコンポジットから得られる透明物品は、その幾何学的形状が自由選択可能であることを考慮して、多種多様な用途、とりわけ、光学分野において、例えばレンズとしての用途に適している。有利なことに、本発明を用いると、比較的厚みのある透明物品を実現することさえ可能である。本明細書において、除去造形プロセス、積層造形プロセス、複製プロセス、又はそれらの組合せを含む当該技術分野で既知の任意の適切な手段を適用することができるため、本発明によるナノコンポジットを利用する本発明による方法は、高スループット及び高解像度を兼ね備えたセラミック材料製の透明物品の製造を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【
図1】工程(a)~工程(e)を参照して、本発明によるセラミック材料製の透明物品の製造例を示す図である:(a)有機バインダーと、その中に分散したセラミック材料の粉末とを含む成形可能なナノコンポジットから、一次構造体を得て、(b)一次構造体から二次構造体を得て、(c)少なくとも1種の添加剤で充填し、(d)二次構造体から透明物品を得て、(e)透明物品から単結晶体を得る。工程(c)及び工程(e)は任意選択である。セラミック材料粉末を使用する代わりに又はその使用に加えて、セラミック材料前駆体を使用することが可能である。さらに、工程(b)の後に直接工程(e)を行うことが可能である。
【
図2】以下で更に記載される実施例1において熱間等方圧加圧後に得られたとおりのスピネル製の透明物品のUV/Visスペクトルを示す図である。
【
図3】以下で更に記載される実施例2において熱間等方圧加圧後に得られたとおりのスピネル製の透明物品の写真を示す図である。
【
図4】以下で更に記載される実施例3において熱間等方圧加圧後に得られたとおりのスピネル製の透明物品の写真を示す図である。
【
図5】以下で更に記載される比較例において焼結後に得られたとおりのスピネル製の破損した物品の写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0074】
以下の実施例によって本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0075】
実施例1
鋳造によるスピネル製の透明物品の製造
平均径が200nmであるスピネルナノ粉末38体積部を、有機バインダーとしてのメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(68体積部)及びジアクリル酸テトラエチレングリコール(7体積部)と、分散剤としても相形成剤としても作用する2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸(25体積部)との混合物100体積部に分散させることにより、成形可能なナノコンポジットを得た。有機バインダーの光固化を促進するための開始剤として2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンを加えた。
【0076】
成形可能なナノコンポジットをポリエチレン型に鋳込み、有機バインダーを300nm~400nmの波長範囲を有する光で固化させることにより硬化させ、これにより圧粉体を得た。得られた圧粉体から、以下のプロトコルを適用して加熱脱脂することにより有機バインダーを除去して、脱脂体を得た:
加熱速度:0.5℃/分:25℃→150℃ 保持時間:4時間
加熱速度:0.5℃/分:150℃→280℃ 保持時間:4時間
加熱速度:1℃/分: 280℃→550℃ 保持時間:2時間
冷却速度:5℃/分: 550℃→25℃ 終了
【0077】
得られた脱脂体を、以下のプロトコルを適用して焼結することにより、理論密度の約96%~100%の密度に到達させた:
加熱速度:5℃/分: 25℃→1530℃ 保持時間:4時間
冷却速度:5℃/分: 1530℃→25℃ 終了
【0078】
完全緻密化は、アルゴン雰囲気中、150MPa圧下、以下のプロトコルを適用する熱間等方圧加圧により達成した:
加熱速度:3℃/分: 25℃→1700℃ 保持時間:2時間
冷却速度:3℃/分: 1700℃→25℃ 終了
【0079】
熱間等方圧加圧後、スピネル製の透明物品が得られた。これは、
図2からわかるとおり、多結晶形態を有し、厚さ1.0mmに対して、波長範囲400nm~1000nmで50%超の光透過率を呈した。
【0080】
実施例2
ステレオリソグラフィーによるスピネル製の透明物品の製造
平均径が200nmであるスピネルナノ粉末38体積部を、有機バインダーとしてのメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(68体積部)及びジアクリル酸テトラエチレングリコール(7体積部)と、分散剤としても相形成剤としても作用する2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸(25体積部)との混合物100体積部に分散させることにより、成形可能なナノコンポジットを得た。有機バインダーの光固化を促進するための開始剤として2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンを加えた。
【0081】
通常の3Dプリンター(Asiga Pico 2ステレオリソグラフィーシステム)を使用して、成形可能なナノコンポジットをプリントした。プリント中、有機バインダーは、プリンターに組み込んだ光源により提供される300nm~400nmの波長範囲を有する光で固化することにより硬化し、これにより圧粉体を得た。
【0082】
実施例1に関して上記で概要を記載したのと同じ様式で、加熱脱脂、焼結、及び熱間等方圧加圧を行い、これによりスピネル製の透明物品を得た。厚さ1.0mmのスピネル製の透明物品を
図3に示す。
【0083】
実施例3
射出成形によるスピネル製の透明物品の製造
平均径が200nmであるスピネルナノ粉末38体積部を、有機バインダーとしてのポリ(ビニルブチラール)(42.5体積部)と、分散剤としてのステアリン酸(15体積部)と、相形成剤としてのポリエチレングリコール(42.5体積部)との混合物100体積部に分散させることにより、成形可能なナノコンポジットを得た。スピネルナノ粉末を分散させるため、有機バインダーを予め加熱した。
【0084】
マイクロ射出成形機(microinjection molder)(DSM X-Plore)を使用して、成形可能なナノコンポジットを130℃及び8barで4秒間射出成形した。保持圧は、8barに設定し、成形温度は55℃に設定した。これにより、圧粉体を得た。
【0085】
実施例1に関して上記で概要を記載したのと同じ様式で、加熱脱脂、焼結、及び熱間等方圧加圧を行い、これによりスピネル製の透明物品を得た。厚さ4.5mmのスピネル製の透明物品を
図4に示す。
【0086】
比較例
相形成剤を用いない、鋳造によるスピネル製の透明物品の製造
平均径が200nmであるスピネルナノ粉末38体積部を、有機バインダーとしてのメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(93体積部)とジアクリル酸テトラエチレングリコール(7体積部)との混合物100体積部に分散させることにより、成形可能なナノコンポジットを得た。カチオン性ポリマー分散剤(Hypermer KD1)を用いて、スピネルナノ粉末を分散させた。有機バインダーの光固化を促進するための開始剤として2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンを加えた。
【0087】
成形可能なナノコンポジットをポリエチレン型に鋳込み、有機バインダーを300nm~400nmの波長範囲を有する光で固化させることにより硬化させ、これにより圧粉体を得た。得られた圧粉体から、以下のプロトコルを適用して加熱脱脂することにより有機バインダーを除去して、脱脂体を得た:
加熱速度:0.5℃/分:25℃→150℃ 保持時間:4時間
加熱速度:0.5℃/分:150℃→280℃ 保持時間:4時間
加熱速度:1℃/分: 280℃→550℃ 保持時間:2時間
冷却速度:5℃/分: 550℃→25℃ 終了
【0088】
得られた脱脂体を、以下のプロトコルを適用して焼結することにより、理論密度の約96%~100%の密度に到達させた:
加熱速度:5℃/分: 25℃→1530℃ 保持時間:4時間
冷却速度:5℃/分: 1530℃→25℃ 終了
【0089】
焼結後、スピネル製の物品が得られ、これは多結晶形態を有していた。成形可能なナノコンポジット中に相形成剤が存在しなかったため、加熱脱脂中にクラックが発生し、この結果、物品が破損した。厚さ1.5mmの破損した物品を
図5に示す。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック材料製の透明物品を製造するための成形可能なナノコンポジットであって、
有機バインダーと、
前記有機バインダー中に分散した前記セラミック材料の粉末であって、直径が5nm~700nmの範囲の粒子を
含み、その他に、直径が1μm~50μmの範囲の粒子を含む、粉末
と、及び/又は前記有機バインダー中に分散した前記セラミック材料の前駆体であって、少なくとも1種の金属含有化合物である、前駆体と、
前記有機バインダー中に分散した相形成剤であって、
固形であるか、又は、DIN 53019に従って測定した場合に25℃で少なくとも5mPa・sの粘度を有し、前記有機バインダー中に内相を形成する、相形成剤と、
を含み、
前記成形可能なナノコンポジット中の前記セラミック材料の粉末及び前駆体の合計含有量は、前記有機バインダー100体積部に対して、少なくとも5体積部であり、
前記成形可能なナノコンポジット中の前記相形成剤の含有量は、前記有機バインダー100体積部に対して、少なくとも5体積部であり、
前記成形可能なナノコンポジットは、
DIN 53019に従って測定した場合に25℃で5mPa・s未満の粘度を有するどのような溶媒も含有
せず、
前記有機バインダーは、冷却に際して硬化可能な熱可塑性物であるか、又は外部刺激により開始させる固化又は重合に際して硬化可能な樹脂であり、
前記有機バインダー及びその中に分散した前記セラミック材料の粉末及び/又は前駆体の含有量は、前記有機バインダーに添加された任意の開始剤を含めて、前記成形可能なナノコンポジットの合計質量を100体積%として、少なくとも70質量%を占める、
成形可能なナノコンポジット。
【請求項2】
前記成形可能なナノコンポジットは、前記有機バインダー中に分散した前記セラミック材料の前駆体を含み、該前駆体は、有機金属化合物、金属錯体、及び金属塩からなる群より選択される少なくとも1種の金属含有化合物であるか、又はそれら2種以上の組合せである、請求項1に記載の成形可能なナノコンポジット。
【請求項3】
前記セラミック材料は、アルミン酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸窒化アルミニウム、フッ化カルシウム、チタン酸バリウム、ジルコニア、及びイットリウムアルミニウムガーネットからなる群より選択される、請求項1
又は2に記載の成形可能なナノコンポジット。
【請求項4】
前記成形可能なナノコンポジット中の前記セラミック材料の粉末及び前駆体の合計含有量は、前記有機バインダー100体積部に対して、少なくとも30体積部である、請求項1~3のいずれか一項に記載の成形可能なナノコンポジット。
【請求項5】
前記成形可能なナノコンポジット中の前記相形成剤の含有量は、前記有機バインダー100体積部に対して、少なくとも10体積部である、請求項1~4のいずれか一項に記載の成形可能なナノコンポジット。
【請求項6】
セラミック材料製の透明物品の製造方法であって、以下の工程(a)~工程(d):
(a)前記有機バインダーの硬化前、硬化中、及び/又は硬化後に、請求項1~5のいずれか一項に記載の成形可能なナノコンポジットを所定の幾何学的形状へと成形することにより、一次構造体を得る工程と、
(b)前記有機バインダーを除去することにより、工程(a)で得られた前記一次構造体を脱脂し、これにより中に空隙が形成されている二次構造体を得る工程と、
(c)任意選択で、工程(b)で得られた前記二次構造体の空隙を、少なくとも1種の添加剤で充填する工程と、
(d)工程(b)で得られ、任意選択で工程(c)において少なくとも1種の添加剤で充填された前記二次構造体を焼結することにより、前記透明物品を得る工程と、
を含み、
前記相形成剤は、工程(b)の前記一次構造体の脱脂前又は脱脂中に、前記有機バインダーから除去される、
方法。
【請求項7】
工程(a)において、前記成形可能な
ナノコンポジットは、
除去造形プロセス、積層造形プロセス、複製プロセス、又はそれらの組合せにより成形される、請求項6に記載の
方法。
【請求項8】
工程(b)において、工程(a)で得られた前記
一次構造体は、
熱処理、化学反応、減圧、溶媒抽出若しくは気相抽出、又はそれらの組合せにより脱脂される、請求項
6又は7に記載の
方法。
【請求項9】
工程(
b)で得られる前記二次構造体
の空隙は、工程(c)
において前記少なくとも1種の添加剤で充填
され、前記少なくとも1種の添加剤
は、顔料、ドーピング試薬、前記セラミック材料の粉末、及び前記
セラミック材料の前駆体からなる群より選択される、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程(c)において、前記少なくとも1種の添加剤を含有する溶液に、工程(b)で得られた前記二次構造体を浸漬するか、前記少なくとも1種の添加剤を含有する若しくは生成する雰囲気中で、前記二次構造体を物理蒸着若しくは化学蒸着に曝露するか、又はこれらの組合せによって、前記二次構造体の空隙を前記少なくとも1種の添加剤で充填する、請求項
6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程(d)は、前記焼結した二次構造体を熱間等方圧加圧に供することを含む、請求項
6~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
以下の工程(e):(e)工程(b)で得られた前記二次構造体又は工程(d)で得られた前記透明物品
のいずれかを外部刺激に曝露させることにより、工程(b)で得られた前記二次構造体又は工程(d)で得られた前記透明物品を単結晶体に変換する工程を更に
含み、前記変換は、種結晶を用いた異常粒成長により誘導される、請求項
6~11のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】