(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】生物活性疎水性担体によって水産養殖システムから有害な味又は臭気化合物を除去するための方法
(51)【国際特許分類】
B01J 20/22 20060101AFI20240326BHJP
C02F 3/08 20230101ALI20240326BHJP
A01K 63/04 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B01J20/22 B
C02F3/08 B
A01K63/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558584
(86)(22)【出願日】2022-03-20
(85)【翻訳文提出日】2023-11-01
(86)【国際出願番号】 IL2022050308
(87)【国際公開番号】W WO2022201145
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513045677
【氏名又は名称】イッスム・リサーチ・ディベロップメント・カンパニー・オブ・ザ・ヘブルー・ユニバーシティ・オブ・エルサレム・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】YISSUM RESEARCH DEVELOPMENT COMPANY OF THE HEBREW UNIVERSITY OF JERUSALEM LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヌッシノヴィッチ、アモス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン リジン、ジャープ
【テーマコード(参考)】
2B104
4D003
4G066
【Fターム(参考)】
2B104AA01
2B104AA16
2B104AA22
2B104CA01
2B104EE01
2B104EE09
2B104EF09
4D003AA12
4D003AB01
4D003BA06
4D003DA28
4D003EA01
4D003EA21
4D003EA22
4D003EA26
4D003EA30
4G066AA63C
4G066AB06B
4G066AB07B
4G066AB29B
4G066AB30B
4G066AB30D
4G066BA09
4G066BA11
4G066BA20
4G066CA02
4G066CA21
4G066DA07
4G066EA13
(57)【要約】
【要約】
本発明は、水産養殖システムの水から有害な味又は臭気化合物(TOC)を除去する方法を提供し、方法は、当該TOCを吸着するよう構成されている疎水剤;及び親水コロイドを含む担体に水を接触させる段階を備え、担体は、当該TOCを分解することが可能である微生物のコロニー形成に適合される。とりわけ、TOCを吸着するよう構成されている疎水剤及び親水コロイドを含む複数の担体を含む反応器を含む、水産養殖種を維持するための再循環水産養殖システム(RAS)が更に提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水産養殖システムの水から有害な味又は臭気化合物(TOC)を除去するための方法であって、前記方法は、前記有害なTOCを吸着するよう構成されている疎水剤;及び親水コロイドを含む担体に前記水を接触させる段階を備え、前記担体は、前記TOCを分解することが可能である微生物のコロニー形成のために適合され、前記TOCはテルペノイドを含む、方法。
【請求項2】
前記親水コロイドは、前記疎水剤を封入するよう構成されている、又は、前記親水コロイドは、前記疎水剤内に分散されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記テルペノイドは、トランス-1,10-ジメチル-トランス-9-デカロール(ゲオスミン)及び2-メチルイソボルネオール(MIB)から選択され、約10~約1000ng/Lの範囲の濃度で水に存在する、請求項1又は2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記疎水剤は、油、ワックス、脂肪酸、脂肪族アルコール、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記疎水剤は前記油を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記油は、大豆油、ヤシ油、綿実油、落花生油、ナタネ油、菜種油、サフラワー油、落花生油、クルミ油、ゴマ油、オリーブ油、アマニ油、月見草油、シーバックソーン油、パーム油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、ホホバ油、骨髄油、グレープシード油、ヘーゼルナッツ油、アプリコット油、マカダミア油、アーモンド油、ヒマシ油、アサイーベリー油、アプリコット油、アボカド油、バオバブ油、ブラッククミン油、ブラックカシス種子油、ブルーベリー種子油、ボラージ油、カメリナ油、チェリーカーネル油、チア種子油、クランベリー種子油、ヘンプ種子油、マカダミアナッツ油、マルラ油、ニーム油、オーツ麦油、アルガン油、ザクロ種子油、桃核油、梅核油、バーバリフィグ種子油、ラズベリー種子油、米ぬか油、ローズヒップ種子油、タマヌ油、小麦胚芽油、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ワックスは、蜜蝋、ラノリン、硬獣脂、ジャパンワックス、キャスターワックス、サトウキビワックス、キャンデリラワックス、バーバリワックス、ココアバター、イリッペバター、セレシン、ペトロラタム、パラフィン、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記疎水剤は、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラノリンアルコール、2-オクチルドデカノール、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される脂肪族アルコール、及び/又は、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される脂肪酸を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記疎水剤は、大豆油、ヒマワリ油、及び蜜蝋のうちの少なくとも1つを含む、請求項6又は7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記疎水剤は、前記担体の総湿潤重量の約10%~約40%の範囲の重量パーセントで前記担体に存在する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記担体は、前記担体の総湿潤重量の約30%の重量パーセントで存在する大豆油を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記疎水剤は、前記担体の総乾燥重量の約88%~約99.5%の範囲の重量パーセントで前記担体に存在する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記親水コロイドは、天然親水コロイド、合成又は半合成親水コロイド、又は、それらの組み合わせから選択され、前記天然親水コロイドは、アルギン酸塩、寒天、アガロース、ゼラチン、低メトキシペクチン(LMP)、キトサン、ゲラン、カラギーナン、ローカストビーンガム(LBG)、グアーガム、カラギーナン、アラビノキシラン、セルロース、カードラン、ファーセレラン、ゲラン、β-グルカン、澱粉、加工デンプン、アラビアゴム、トラガカントガム、タマリンドガム、フェヌグリークガム、カシアガム、タラガム、キサンタン、プルラン、卵タンパク質、植物性タンパク質、乳製品タンパク質、及びそれらの組み合わせから成る群から選択され、前記合成又は半合成親水コロイドは、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリレート、高分子量ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリアクリル酸ポリマー、ポリビニルアルコール、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記親水コロイドはアルギン酸塩を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記親水コロイドは、前記担体の総湿潤重量の約0.1%~約5%の範囲の重量パーセントで前記担体に存在する、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記親水コロイドは、前記担体の総乾燥重量の約0.01%~約2%の範囲の重量パーセントで前記担体に存在する、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記担体は更に、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン、バリウムイオン、アルミニウムイオン、銅イオン、鉛イオン、ストロンチウムイオン、キトサン、ポリ(L-リシン)、ポリエチレンイミン(PEI)、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される架橋剤を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記架橋剤は、前記担体の総湿潤重量の約0.1%~約5%の範囲の重量パーセントで前記担体に存在する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記担体は更に、脂肪酸のエトキシ化ソルビタンエステル、コハク化モノグリセリド、脂肪酸のショ糖エステル、スクログリセリド、脂肪酸のポリグリセリンエステル、ポリグリセロールポリリシノレート、脂肪酸のプロパン-1,2-ジオールエステル、脂肪酸のプロピレングリコールエステル、グリセロール及びプロパン-1の乳酸脂肪酸エステル、脂肪酸のモノ及びジグリセリドと相互作用する熱酸化された大豆油、ジオクチルソジウムスルホサクシネート、ステアロイル-2-乳酸ナトリウム、ステアロイル-2-ラクチル酸カルシウム、酒石酸ステアリル、クエン酸ステアリル、ステアロイルフマル酸ナトリウム、フマル酸ステアリルカルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、エトキシ化モノ及びジグリセリド、メチルグルコシド-ヤシ油エステル、プロパン-1,2-ジオール、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、モノパルミチン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンポリマー、ヒマシ油の重縮合脂肪酸の部分ポリグリセリンエステル、スチグマステロールが豊富な植物ステロール、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される乳化剤を含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記乳化剤は、前記担体の総湿潤重量の約0.001%~約1%の範囲の重量パーセントで前記担体に存在する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記担体は更に、ベントナイト、カオリン、及びそれらの任意の組み合わせから選択される充填剤を含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記担体は、前記担体の総湿潤重量の
約10%(w/w)~約40%(w/w)の前記疎水剤;
約0.1%(w/w)~約5%(w/w)の前記親水コロイド;
約0.1%(w/w)~約5%(w/w)の前記架橋剤;
約0.001%(w/w)~約1%(w/w)の前記乳化剤;及び
約50%(w/w)~約95%(w/w)の水
を含む、請求項17に従属する請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記疎水剤は大豆油を含み、前記親水コロイドはアルギン酸塩を含み、前記架橋剤はカルシウムイオンを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記担体は、前記疎水剤が前記親水コロイドと均質に混合された粒子の形態である、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記粒子は、約100μm~約10cmの範囲の粒子サイズを有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記粒子は更に、追加の親水コロイドを含む透水性シェルを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記担体は、前記担体の総乾燥重量の
約88%(w/w)~約99.5%(w/w)の前記疎水剤;
約0.1%(w/w)~約2%(w/w)の前記親水コロイド;及び
約0.1%(w/w)~約10%(w/w)の前記充填剤
を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記疎水剤はヒマワリ油及び蜜蝋の組み合わせを含み、前記親水コロイドはアルギン酸塩を含み、前記充填剤はベントナイトを含む、前記請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記微生物は前記水産養殖システムに特有(endemic)である、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記水産養殖システムは、再循環水産養殖システム(RAS)、レースウェイ養魚場、多栄養水産養殖システム、アクアポニックスシステム、水産養殖種池、水産養殖種プール、水産養殖種コンテナ、水産養殖種タンク、生水産養殖種輸送装置、及び水産養殖浄化システムから成る群から選択される、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記水産養殖システムは、魚、小エビ、クルマエビ、イガイ、カキ、カニ、ロブスター、ホタテガイ、ホラガイ、ウナギ、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される少なくとも1つの種を含む、請求項1から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記担体は粒子の形態であり、前記方法は、前記水産養殖システム内のレセプタクルに含まれる複数の前記粒子に前記水を接触させる段階を備え、前記レセプタクルは、メッシュバッグ、積層充填カラム、反応器、又はそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項1から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記接触させる段階は、前記水産養殖システムの水産養殖種リザーバから水の一部を抽出する段階、前記水の一部を複数の前記粒子に接触させる段階、及び、任意選択的に、前記水の一部を前記水産養殖種リザーバに再導入する段階を含み、前記水の一部は、鉛直、水平、又は環状の方式で前記レセプタクルを通過させられる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記レセプタクルは、積層充填カラム又は反応器を含み、前記レセプタクルにおける水理学的滞留時間は、約0.1~約20時間の範囲である、請求項32及び33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記接触させる段階は、前記微生物を前記担体の表面上でコロニー形成させるために、少なくとも約2週間にわたって実行される予備接触小段階を含み、前記予備接触小段階は、複数の前記粒子を含む前記レセプタクルを通じて前記水産養殖システムからの前記水のサンプルを通過させる段階を含む、請求項32から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
水及び水産養殖種を保持するリザーバ ;
固形物除去フィルタ、メカニカルフィルタ、及び生物学的フィルタのうちの少なくとも1つ;及び
有害な味又は臭気化合物(TOC)を吸着するよう構成されている疎水剤、及び親水コロイドを含む複数の担体であって、前記担体は、前記TOCを分解又は変換することが可能である微生物のコロニー形成に適合されている、複数の担体、
を備える、水産養殖種を維持するための再循環水産養殖システム(RAS)。
【請求項37】
前記リザーバと流体流れ連通している反応器、及び、前記水の一部の流れを、前記リザーバから前記反応器に誘導する手段を更に備え、前記反応器は前記複数の担体を含む、請求項36に記載のRAS。
【請求項38】
前記疎水剤は、油、ワックス、脂肪酸、脂肪族アルコール、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項36又は37のいずれか一項に記載のRAS。
【請求項39】
前記油は、大豆油、ヤシ油、綿実油、落花生油、ナタネ油、菜種油、サフラワー油、落花生油、クルミ油、ゴマ油、オリーブ油、アマニ油、月見草油、シーバックソーン油、パーム油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、ホホバ油、骨髄油、グレープシード油、ヘーゼルナッツ油、アプリコット油、マカダミア油、アーモンド油、ヒマシ油、アサイーベリー油、アプリコット油、アボカド油、バオバブ油、ブラッククミン油、ブラックカシス種子油、ブルーベリー種子油、ボラージ油、カメリナ油、チェリーカーネル油、チア種子油、クランベリー種子油、ヘンプ種子油、マカダミアナッツ油、マルラ油、ニーム油、オーツ麦油、アルガン油、ザクロ種子油、桃核油、梅核油、バーバリフィグ種子油、ラズベリー種子油、米ぬか油、ローズヒップ種子油、タマヌ油、小麦胚芽油、及びそれらの組み合わせから成る群から選択され、及び/又は、前記ワックスは、蜜蝋、ラノリン、硬獣脂、ジャパンワックス、キャスターワックス、サトウキビワックス、キャンデリラワックス、バーバリワックス、ココアバター、イリッペバター、セレシン、ペトロラタム、パラフィン、及びそれらの組み合わせから成る群から選択され、及び/又は、前記脂肪酸は、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項38に記載のRAS。
【請求項40】
前記疎水剤は、前記担体の総湿潤重量の約10%~約40%、又は、前記担体の総乾燥重量の約88%~約99.5%の範囲の重量パーセントで前記担体に存在する、請求項36から39のいずれか一項に記載のRAS。
【請求項41】
前記親水コロイドは、天然親水コロイド、合成又は半合成親水コロイド、又は、それらの任意の組み合わせから選択され、前記天然親水コロイドは、アルギン酸塩、寒天、アガロース、ゼラチン、低メトキシペクチン(LMP)、キトサン、ゲラン、カラギーナン、ローカストビーンガム(LBG)、グアーガム、カラギーナン、アラビノキシラン、セルロース、カードラン、ファーセレラン、ゲラン、β-グルカン、澱粉、加工デンプン、アラビアゴム、トラガカントガム、タマリンドガム、フェヌグリークガム、カシアガム、タラガム、キサンタン、プルラン、卵タンパク質、植物性タンパク質、乳製品タンパク質、及びそれらの組み合わせから成る群から選択され、前記合成又は半合成親水コロイドは、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリレート、高分子量ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリアクリル酸ポリマー、ポリビニルアルコール、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項36から40のいずれか一項に記載のRAS。
【請求項42】
前記親水コロイドは、前記担体の総湿潤重量の約0.1%~約5%、又は、前記担体の総乾燥重量の約0.01%~約2%の範囲の重量パーセントで前記担体に存在する、請求項36から41のいずれか一項に記載のRAS。
【請求項43】
前記複数の担体は更に、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、バリウムイオン、アルミニウムイオン、銅イオン、鉛イオン、ストロンチウムイオン、キトサン、ポリ(L-リシン)、ポリエチレンイミン(PEI)、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される架橋剤を含む、請求項36から42のいずれか一項に記載のRAS。
【請求項44】
前記架橋剤は、前記担体の総湿潤重量の約0.1%~約5%の範囲の重量パーセントで前記担体に存在する、請求項43に記載のRAS。
【請求項45】
前記複数の担体は更に、脂肪酸のエトキシ化ソルビタンエステル、コハク化モノグリセリド、脂肪酸のショ糖エステル、スクログリセリド、脂肪酸のポリグリセリンエステル、ポリグリセロールポリリシノレート、脂肪酸のプロパン-1,2-ジオールエステル、脂肪酸のプロピレングリコールエステル、グリセロール及びプロパン-1の乳酸脂肪酸エステル、脂肪酸のモノ及びジグリセリドと相互作用する熱酸化された大豆油、ジオクチルソジウムスルホサクシネート、ステアロイル-2-乳酸ナトリウム、ステアロイル-2-ラクチル酸カルシウム、酒石酸ステアリル、クエン酸ステアリル、ステアロイルフマル酸ナトリウム、フマル酸ステアリルカルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、エトキシ化モノ及びジグリセリド、メチルグルコシド-ヤシ油エステル、プロパン-1,2-ジオール、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、モノパルミチン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンポリマー、ヒマシ油の重縮合脂肪酸の部分ポリグリセリンエステル、スチグマステロールが豊富な植物ステロール、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される乳化剤を含む、請求項36から44のいずれか一項に記載のRAS。
【請求項46】
前記乳化剤は、前記担体の総湿潤重量の約0.001%~約1%の範囲の重量パーセントで前記担体に存在する、請求項45に記載のRAS。
【請求項47】
前記複数の担体は更に、ベントナイト、カオリン、及びそれらの任意の組み合わせから選択される充填剤を含む、請求項36から46のいずれか一項に記載のRAS。
【請求項48】
前記反応器は、充填床反応器、固定床反応器、移動床反応器、回転床反応器、及び流動床反応器から成る群から選択される、請求項37に記載のRAS。
【請求項49】
前記反応器の体積は、約0.5L~約50,000Lの範囲であり、前記反応器における前記担体の質量は、約0.1~約10,000kgの範囲である、請求項37に記載のRAS。
【請求項50】
前記リザーバ、前記固形物除去フィルタ及びメカニカルフィルタのうちの少なくとも1つ、前記生物学的フィルタ、及び前記複数の担体を有する前記反応器は、流体的に接続され、前記水の一部は、前記リザーバから前記固形物除去フィルタ及び/又は前記メカニカルフィルタへ;前記固形物除去フィルタ及び/又はメカニカルフィルタから前記生物学的フィルタへ;前記生物学的フィルタから前記複数の担体を有する前記反応器へ;及び、前記反応器から再び前記リザーバへ流れ、又は、前記水の前記一部は、前記リザーバから前記固形物除去フィルタ及び/又は前記メカニカルフィルタへ;前記固形物除去フィルタ及び/又はメカニカルフィルタから、前記複数の担体を有する前記反応器へ;前記複数の担体を有する前記反応器から前記生物学的フィルタへ;及び前記生物学的フィルタから再び前記リザーバへ流れる、請求項37に記載のRAS。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水剤及び親水コロイドを含む生物活性疎水性担体によって水産養殖システムから有害な味又は臭気化合物を除去するための方法、及び、例えば当該担体を含む再循環水産養殖システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水産養殖は、1600億米ドルの価値があると推定され、もっとも速く成長している食品生産セクタの1つであり、現在、世界の魚供給の半分近くを占めている。捕獲漁業による世界中の漁獲量の低迷、及び、急速に拡大する世界中の魚需要を考慮すると、水産食品における増大する需給ギャップを水産養殖が満たし続けることは明らかである。
【0003】
水産養殖セクタの世界的な拡大は、他の要素の中でも特に、陸及び水の資源が効率的方式で活用される持続可能な慣行の発展に依存している。魚が高密度で成長させられる、そのような養殖システムの発展に伴い、いわゆる「オフフレーバ」魚の問題が増加している。この問題は主に、2つの有害な味及び臭気テルペノイド化合物、すなわち、ゲオスミン及び2-メチルイソボルネオール(本明細書において「MIB」とも呼ばれる)によって生じる。これらは、例えば、シアノバクテリア(「藍藻」とも呼ばれる)及び放線菌などの複数の微生物による二次代謝産物として生成される。ゲオスミン及びMIBの生成は、従来の水産養殖施設、及び、より集約的な水産養殖施設の両方において生じる。水産養殖用水塊に放出されるとき、当該疎水性化学物質は、魚の脂肪組織に蓄積し、それらの独特の泥臭い(又は土臭い)味及び臭気に起因して、魚を売り物にならなくする。両方の化合物は、非常に影響力があり、養殖水中に非常に低い濃度(例えば、約20ng/L)で存在するときでも、オフフレーバ魚を生じさせ得る。汚染された水産養殖施設において、ゲオスミン及びMIBは通常、100~500ng/Lの濃度範囲内で存在する。オフフレーバの問題は、水産養殖産業に対して、重い財政的制約を課している。
【0004】
現在、水からゲオスミン及びMIBを除去するための複数の方法が採用されている。方法の1つは、疎水性媒体上のゲオスミン及びMIB吸着に基づいている。飲料水産業においては、水がオフフレーバ汚染されると消費者の苦情の結果として重い財政的負担が生じるので、この目的のために活性炭が広く使用されている。この方法は、低い有機物質濃度の水を処理するのに効果的であるが、有機物が豊富な水産養殖システムでは、他の有機物が豊富な水塊の処理と同様に、フィルタが詰まりに起因して効果が無くなり得、活性炭を頻繁に交換する必要があるので、効率が低い。
【0005】
米国特許第4、398、937は、藍藻及び黄緑藻の成長を選択的に制御する方法に関し、方法は、9,10-ジヒドロキシステアリン酸、ドデカン酸、リノール酸、リシノール酸から成る群から選択される、約0.01~約100ppmの脂肪酸化合物を水性媒体に添加する段階を備える。
【0006】
米国特許第6、902、675は、疎水性吸収剤を使用することによって、水生環境においてテルペノイドを抽出し、それにより、水及び水産養殖産物における、シアノバクテリアが生成するテルペノイドによって生じるオフフレーバを低減又は除去するための方法に関し、方法は、水不溶性の疎水性吸着剤を用いて、テルペノイドが少ない水相及びテルペノイドが豊富な吸着材相の形成により、1又は複数の種類の当該テルペノイドを当該水から抽出し、吸着材相を当該水に残して、分解又は蒸発させる段階を備える。疎水性吸収剤は、テルペノイドを吸収し、それにより、そのようなテルペノイドを水及び水産養殖産物から除去する液体又は固体化合物を含み得、とりわけ、天然に生じるポリマー、合成ポリマー、ワックス及び油を含む。疎水性吸収剤は、フィルタ、袋、トラップ、又は、スクリーンケージなど、多孔性コンテナに配置され得、これにより、疎水性吸収剤の閉じ込め、収集、回収、再使用、処分、又は再生を可能にする。
【0007】
しかしながら、液体油を水産養殖システムに添加することは、急速なシステム障害をもたらし得る。なぜなら、再循環水産養殖システム(RAS)は、油物質を処理又は除去するように設計されていないからである。液体油は、RASに存在するとき、重要なバイオフィルム及び他の水処理ユニットを著しく損傷し得る。同様に、ワックスは、水流に接触するとき、急速に解離し、最終的には小さい油粒子に分割され、これがシステムの動作を損傷する。US第6,902,675号に開示される合成ポリマーは、ゲオスミン及び/又はMIBを水産養殖用水から効率的に除去することを示さなかった。加えて、US第6,902,675号に開示される方法は、オフフレーバ化合物を養殖水から分離することだけに基づき、オフフレーバ化合物の分解を提供しない。したがって、吸収マトリクスの頻繁な交換/廃棄が必要である。
【0008】
US第6,063,287号は、淡水をシクロデキストリンと接触させ、そのように接触された水を回収することによって、藻関連の匂い物質を淡水から除去するためのプロセスを開示する。このアプローチは、比較的高価であるシクロデキストリンの使用を必要とし、シクロデキストリンは、匂い物質の吸着の後に水から分離され、別個のプロセスにおいて再生される必要がある。
【0009】
JP 2019018179は、処理される水に含まれるゲオスミン及び2-メチルイソボルネオールのうちの少なくとも1つを含むカビ臭い臭気物質を除去するための方法に関し、とりわけ、処理される水を、ゲオスミン及び2-メチルイソボルネオールのうちの少なくとも1つとの包摂化合物を形成可能な環状化合物と混合する段階、及び、環状化合物と混合された水を、イオン交換器に接触させる段階を含む。環状化合物は、シクロデキストリン、カリックスアレーン、及びそれらの誘導体から選択され得る。
【0010】
オゾン及び塩素などの強い酸化剤を用いる酸化は、当該有害な味又は臭気テルペノイド化合物を除去するための追加の方法である。これらの酸化方法は主に、飲料水産業において使用され、水産養殖システムにはあまり適切でない。Schrader et al. (Schrader, K.K., et al., 2010, Aquacultural Engineering 43: 46-50)は、再循環水産養殖システム(RAS)におけるオゾン処理に関する研究において、RASにおける水品質パラメータの改善のために定期的に適用されるオゾンの用量は、養殖水からゲオスミン及びMIBを除去するのに十分に高くなかったと結論付けた。より高い用量の使用は、費用が高いことに加え、養殖水におけるオゾンのブレイクスルーのリスクを増加させ、それにより、魚を危険に晒し、場合によっては、システムの濾過ユニット内の重要な細菌のバイオフィルムを損傷する。
【0011】
有害な味又は臭気化合物(TOC)による水産養殖システム汚染を低減するための現在知られている方法は、高価であるか、有毒であるか、又は非効率的であるかのいずれである。疎水剤の使用の主な運用上の短所、及び、その経済的負担は、水産養殖システムから汚染物質を除去した後に疎水剤を再生する必要があることである。RASにおけるゲオスミン及びMIBの蓄積を防止するための効果的手段が無いので、市場価値のある魚の浄化は現在、もっとも一般的な軽減方法である。洗浄は労力がかかり、時間がかかり、高価なプロセスである。
【0012】
したがって、水産養殖システムからのゲオスミン及びMIB除去のための、商業的に費用効果が高く、環境に優しく、効率的で、容易に実装可能な方法に対する、満たされていない必要性が存在する。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、有害な味又は臭気化合物(TOC)を水産養殖システムから除去するための方法を提供する。除去方法は、単一の生物活性担体の使用によってもたらされる、当該化合物の吸着及び生分解に基づく。当該生物活性担体は、独自に設計された組成物及び/又は構造を有する。これは、有害な味又は臭気テルペノイド化合物を吸着し、当該吸着された化合物を分解又は変換する微生物の集団の成長を誘導する能力の要因である。生物活性担体は、水産養殖システムの動作温度において液体、半固体、又は固体である疎水剤、及び、親水コロイドの組み合わせを含む。好ましくは、親水コロイドは、疎水剤を支持又は封入するよう構成、疎水剤は、TOCを吸着するよう構成されている。疎水剤は、親水コロイドネットワーク内に分散され得るか、又は、親水コロイドは、固体又は半固体疎水剤内に配置され得る。例示的な実施形態の1つは、疎水剤が親水コロイドゲルネットワーク内に均質に分散される等方性粒子の形態である担体を含み、それにより、テルペノイド分解菌のコロニー形成に利用可能である表面積、及び、オフフレーバのテルペノイド化合物を吸着するよう構成されている容積を最大化する。例示的な実施形態の別のセットは、粉末化された親水コロイドが分散されている固体又は半固体剤を含む担体に関する。
【0014】
現在のTOC除去方法の物理生物学的アプローチは、効果的で、環境的に安全で、技術的に単純で、費用効果が高いことが分かった。本発明は部分的に、生物活性担体が本発明の原理に従って作られるとき、生物活性担体内又はその表面上に、テルペノイド分解微生物集団を事前に提供することは、ゲオスミン及びMIBの効率的な除去に重要でないという、予期されなかった発見に基づいている。予期せぬことに、担体が水産養殖システムの汚染された水と接触することにより、微生物の特有集団が、細菌を含まない担体の担体表面上で自発的に成長し、当該微生物の集団の構造(すなわち、微生物の種類、及び、それらの相対的な量)は、ゲオスミン及びMIBなどのTOCの分解に特に好適であることが分かった。作用の理論又は機構により拘束されることを望まないが、本発明の生物活性担体は、担体表面上の特有テルペノイドオフフレーバ分解細菌のコロニー形成に対して非常に選択的であると考えられる。RASにおいて頻繁に見つかる特有細菌の使用は、外部の培養液から単離されて担体内で予め形成された細菌の使用と比較して有益である。なぜなら、特有細菌は、処理される特定の水産養殖システムにおける主要な環境条件に特に適合しているからである。したがって、生物活性担体は、時間がかかる、高価で、技術的に困難な生物種増殖ステップを必要とすることなく、単純な化学製造プロセスによって調製され得る。有利なことに本発明の方法は、有毒な生物活性化学剤又は担体再生プロセス又はシステム(例えば、イオン交換カラム)を使用することなく、水産養殖システムにおいて発見された有害なTOCの吸着及び分解の組み合わせを提供する。処理水は水産養殖システムに再導入され得、生物活性担体は、任意の更なる脱離又は洗浄手順無しで再使用され得る。
【0015】
一態様において、本発明は、水産養殖システムの水から有害な味又は臭気化合物(TOC)を除去するための方法を提供し、方法は、当該有害なTOCを吸着するよう構成されている疎水剤;及び親水コロイドを含む担体に水を接触させる段階を備え、担体は、当該TOCを分解することが可能である微生物のコロニー形成のために適合され、当該TOCはテルペノイドを含む。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、親水コロイドは、疎水剤を封入するよう構成されている。いくつかの実施形態によれば、親水コロイドは、疎水剤内で分散されている。
【0017】
いくつかの実施形態によれば、テルペノイドは、トランス-1,10-ジメチル-トランス-9-デカロール(ゲオスミン)及び2-メチルイソボルネオール(MIB)から選択される。更なる実施形態によれば、テルペノイドは、約10~約1000ng/Lの範囲の濃度で水に存在する。
【0018】
疎水剤は、油、ワックス、脂肪酸、脂肪族アルコール、及びそれらの組み合わせから成る群から選択され得る。各可能性が、発明の別個の実施形態を表す。
【0019】
特定の実施形態において、疎水剤は油を含む。更なる実施形態において、油は、大豆油、ヤシ油、綿実油、落花生油、ナタネ油、菜種油、サフラワー油、落花生油、クルミ油、ゴマ油、オリーブ油、アマニ油、月見草油、シーバックソーン油、パーム油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、ホホバ油、骨髄油、グレープシード油、ヘーゼルナッツ油、アプリコット油、マカダミア油、アーモンド油、ヒマシ油、アサイーベリー油、アプリコット油、アボカド油、バオバブ油、ブラッククミン油、ブラックカシス種子油、ブルーベリー種子油、ボラージ油、カメリナ油、チェリーカーネル油、チア種子油、クランベリー種子油、ヘンプ種子油、マカダミアナッツ油、マルラ油、ニーム油、オーツ麦油、アルガン油、ザクロ種子油、桃核油、梅核油、バーバリフィグ種子油、ラズベリー種子油、米ぬか油、ローズヒップ種子油、タマヌ油、小麦胚芽油、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される。各可能性が、発明の別個の実施形態を表す。いくつかの例示的な実施形態において、疎水剤は大豆油を含む。追加の例示的な実施形態において、疎水剤はヒマワリ油を含む。
【0020】
特定の実施形態において、疎水剤はワックスを含む。ワックスは、蜜蝋、ラノリン、硬獣脂、ジャパンワックス、キャスターワックス、サトウキビワックス、キャンデリラワックス、バーバリワックス、ココアバター、イリッペバター、セレシン、ペトロラタム、パラフィン、及びそれらの組み合わせから成る群から選択され得る。各可能性が、発明の別個の実施形態を表す。いくつかの例示的な実施形態において、疎水剤は蜜蝋を含む。
【0021】
特定の実施形態において、疎水剤は脂肪族アルコールを含む。脂肪族アルコールは、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラノリンアルコール、2-オクチルドデカノール、及びそれらの組み合わせから成る群から選択され得る。各可能性が、発明の別個の実施形態を表す。
【0022】
特定の実施形態において、疎水剤は脂肪酸を含む。脂肪酸は、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、及びそれらの組み合わせから成る群から選択され得る。各可能性が、発明の別個の実施形態を表す。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、疎水剤は、大豆油、ヒマワリ油、及び蜜蝋のうちの少なくとも1つを含む。
【0024】
疎水剤は、担体の総湿潤重量の約10%~約40%の範囲の重量パーセントで担体に存在し得る。
【0025】
特定の実施形態において、担体は、担体の総湿潤重量の約30%の重量パーセントで存在する大豆油を含む。
【0026】
いくつかの実施形態によれば、疎水剤は、担体の総乾燥重量の約88%~約99.5%の範囲の重量パーセントで担体に存在する。
【0027】
いくつかの実施形態によれば、親水コロイドは、天然親水コロイド、合成又は半合成親水コロイド、及びそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される。天然親水コロイドは、アルギン酸塩、寒天、アガロース、ゼラチン、低メトキシペクチン(LMP)、キトサン、ゲラン、カラギーナン、ローカストビーンガム(LBG)、グアーガム、カラギーナン、アラビノキシラン、セルロース、カードラン、ファーセレラン、ゲラン、β-グルカン、澱粉、加工デンプン、アラビアゴム、トラガカントガム、タマリンドガム、フェヌグリークガム、カシアガム、タラガム、キサンタン、プルラン、卵タンパク質、植物性タンパク質、乳製品タンパク質、及びそれらの組み合わせから成る群から選択され得る。各可能性が、発明の別個の実施形態を表す。いくつかの例示的な実施形態において、親水コロイドはアルギン酸塩を含む。
【0028】
合成又は半合成親水コロイドは、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリレート、高分子量ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリアクリル酸ポリマー、ポリビニルアルコール、及びそれらの組み合わせから成る群から選択され得る。各可能性が、発明の別個の実施形態を表す。
【0029】
親水コロイドは、担体の総湿潤重量の約0.1%~約5%の範囲の重量パーセントで担体に存在し得る。いくつかの実施形態において、親水コロイドは、担体の総乾燥重量の約0.01%~約2%の範囲の重量パーセントで担体に存在する。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、担体は更に架橋剤を含む。架橋剤は、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン、バリウムイオン、アルミニウムイオン、銅イオン、鉛イオン、ストロンチウムイオン、キトサン、ポリ(L-リシン)、ポリエチレンイミン(PEI)、及びそれらの組み合わせから成る群から選択され得る。各可能性が、発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態において、架橋剤は、担体の総湿潤重量の約0.1%~約5%の範囲の重量パーセントで担体に存在する。
【0031】
いくつかの実施形態によれば、担体は更に乳化剤を含む。乳化剤は、脂肪酸のエトキシ化ソルビタンエステル、コハク化モノグリセリド、脂肪酸のショ糖エステル、スクログリセリド、脂肪酸のポリグリセリンエステル、ポリグリセロールポリリシノレート、脂肪酸のプロパン-1,2-ジオールエステル、脂肪酸のプロピレングリコールエステル、グリセロール及びプロパン-1の乳酸脂肪酸エステル、脂肪酸のモノ及びジグリセリドと相互作用する熱酸化された大豆油、ジオクチルソジウムスルホサクシネート、ステアロイル-2-乳酸ナトリウム、ステアロイル-2-ラクチル酸カルシウム、酒石酸ステアリル、クエン酸ステアリル、ステアロイルフマル酸ナトリウム、フマル酸ステアリルカルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、エトキシ化モノ及びジグリセリド、メチルグルコシド-ヤシ油エステル、プロパン-1,2-ジオール、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、モノパルミチン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンポリマー、ヒマシ油の重縮合脂肪酸の部分ポリグリセリンエステル、スチグマステロールが豊富な植物ステロール、及びそれらの組み合わせから成る群から選択され得る。各可能性が、発明の別個の実施形態を表す。乳化剤は、担体の総湿潤重量の約0.001%~約1%の範囲の重量パーセントで担体に存在し得る。
【0032】
いくつかの実施形態において、担体は更に、担体の総湿潤重量の約50%(w/w)~約99%(w/w)の水を含む。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、担体は更に、ベントナイト、カオリン、及びそれらの任意の組み合わせから選択される充填剤を含む。
【0034】
特定の実施形態において、担体は、担体の総湿潤重量の約10%(w/w)~約40%(w/w)の疎水剤;約0.1%(w/w)~約5%(w/w)の親水コロイド;約0.1%(w/w)~約5%(w/w)架橋剤;約0.001%(w/w)~約1%(w/w)乳化剤;及び約50%(w/w)~約95%(w/w)の水を含む。更なる実施形態によれば、疎水剤は大豆油を含み、親水コロイドはアルギン酸塩を含み、架橋剤はカルシウムイオンを含む。
【0035】
特定の実施形態において、担体は、疎水剤が親水コロイドと均質に混合される粒子の形態である。更なる実施形態において、粒子は、約100μm~約10cmの範囲の粒子サイズを有する。粒子は更に、親水コロイドを含む透水性シェルを含み得る。
【0036】
いくつかの実施形態によれば、担体は、担体の総乾燥重量の約88%(w/w)~約99.5%(w/w)の疎水剤;約0.1%(w/w)~約2%(w/w)の親水コロイド;及び約0.1%(w/w)~約10%(w/w)の充填剤を含む。更なる実施形態によれば、疎水剤は、ヒマワリ油及び蜜蝋の組み合わせを含む。親水コロイドはアルギン酸塩を含み、充填剤はベントナイトを含む。いくつかの実施形態によれば、TOCを分解可能である微生物は水産養殖システムに特有である。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、水産養殖システムは、再循環水産養殖システム(RAS)、レースウェイ養魚場、多栄養水産養殖システム、アクアポニックスシステム、水産養殖種池、水産養殖種プール、水産養殖種コンテナ、水産養殖種タンク、生水産養殖種輸送装置、及び水産養殖浄化システムから成る群から選択される。更なる実施形態において、水産養殖システムは、魚、小エビ、クルマエビ、イガイ、カキ、カニ、ロブスター、ホタテガイ、ホラガイ、ウナギ、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される少なくとも1つの種を含む。各可能性が、発明の別個の実施形態を表す。
【0038】
いくつかの実施形態によれば、担体は粒子の形態であり、方法は、水産養殖システム内のレセプタクルに含まれる複数の当該粒子に水を接触させる段階を備える。レセプタクルは、メッシュバッグ、積層充填カラム、反応器、又はそれらの任意の組み合わせから選択され得る。
【0039】
いくつかの実施形態によれば、当該接触は、水産養殖システムの水産養殖種リザーバから水の一部を抽出すること、当該水の部分を複数の粒子に接触させること、及び任意選択的に、当該水の一部をリザーバに再導入することを含む。特定の実施形態において、水の一部は、鉛直、水平、又は環状の方式でレセプタクルを通じて通過される。いくつかの例示的な実施形態において、レセプタクルは、積層充填カラム又は反応器を含み、当該レセプタクルにおける水理学的滞留時間は、約0.1~約20時間の範囲である。
【0040】
いくつかの実施形態によれば、当該接触させることは、担体表面上で微生物をコロニーするために少なくとも約2週間にわたって実行される予備接触小段階を含む。更なる実施形態において、当該予備接触小段階は、複数の当該粒子を含むレセプタクルを通じて、水産養殖システムからの水のサンプルを通過させることを含む。
【0041】
別の態様において、水及び水産養殖種を保持するリザーバ ;固形物除去フィルタ、メカニカルフィルタ、及び生物学的フィルタのうちの少なくとも1つ;及び、有害な味又は臭気化合物(TOC)を吸着するよう構成されている疎水剤、及び親水コロイドを含む複数の担体、当該担体は、当該TOCを分解又は変換することが可能である微生物のコロニー形成に適合されている、を備える、水産養殖種を維持するための再循環水産養殖システム(RAS)が提供される。
【0042】
いくつかの実施形態によれば、RASは更に、リザーバと流体流れ連通している反応器、及び、水の一部の流れをリザーバから反応器へ誘導するための手段を含み、反応器は複数の担体を含む。
【0043】
いくつかの実施形態によれば、親水コロイドは、疎水剤を封入するよう構成されている。いくつかの実施形態によれば、親水コロイドは、疎水剤内で分散されている。
【0044】
疎水剤は、油、ワックス、脂肪酸、脂肪族アルコール、及びそれらの組み合わせから成る群から選択され得る。各可能性が、発明の別個の実施形態を表す。
【0045】
いくつかの実施形態によれば、油は、大豆油、ヤシ油、綿実油、落花生油、ナタネ油、菜種油、サフラワー油、落花生油、クルミ油、ゴマ油、オリーブ油、アマニ油、月見草油、シーバックソーン油、パーム油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、ホホバ油、骨髄油、グレープシード油、ヘーゼルナッツ油、アプリコット油、マカダミア油、アーモンド油、ヒマシ油、アサイーベリー油、アプリコット油、アボカド油、バオバブ油、ブラッククミン油、ブラックカシス種子油、ブルーベリー種子油、ボラージ油、カメリナ油、チェリーカーネル油、チア種子油、クランベリー種子油、ヘンプ種子油、マカダミアナッツ油、マルラ油、ニーム油、オーツ麦油、アルガン油、ザクロ種子油、桃核油、梅核油、バーバリフィグ種子油、ラズベリー種子油、米ぬか油、ローズヒップ種子油、タマヌ油、小麦胚芽油、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される。各可能性が、発明の別個の実施形態を表す。
【0046】
いくつかの実施形態によれば、ワックスは、蜜蝋、ラノリン、硬獣脂、ジャパンワックス、キャスターワックス、サトウキビワックス、キャンデリラワックス、バーバリワックス、ココアバター、イリッペバター、セレシン、ペトロラタム、パラフィン、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される。各可能性が、発明の別個の実施形態を表す。
【0047】
いくつかの実施形態によれば、脂肪酸は、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される。各可能性が、発明の別個の実施形態を表す。
【0048】
疎水剤は、担体の総湿潤重量の約10%~約40%、又は担体の総乾燥重量の約88%~約99.5%の範囲の重量パーセントで担体に存在し得る。
【0049】
いくつかの実施形態によれば、親水コロイドは、アルギン酸塩、寒天、アガロース、ゼラチン、低メトキシペクチン(LMP)、キトサン、ゲラン、カラギーナン、ローカストビーンガム(LBG)、グアーガム、カラギーナン、アラビノキシラン、セルロース、カードラン、ファーセレラン、ゲラン、β-グルカン、澱粉、加工デンプン、アラビアゴム、トラガカントガム、タマリンドガム、フェヌグリークガム、カシアガム、タラガム、キサンタン、プルラン、卵タンパク質、植物性タンパク質、乳製品タンパク質、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される天然親水コロイドを含む。各可能性が、発明の別個の実施形態を表す。
【0050】
いくつかの実施形態によれば、親水コロイドは、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリレート、高分子量ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリアクリル酸ポリマー、ポリビニルアルコール、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される合成又は半合成親水コロイドを含む。各可能性が、発明の別個の実施形態を表す。
【0051】
親水コロイドは、担体の総湿潤重量の約0.1%~約5%、又は担体の総乾燥重量の約0.01%~約2%の範囲の重量パーセントで担体に存在し得る。
【0052】
いくつかの実施形態によれば、複数の担体は更に、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、バリウムイオン、アルミニウムイオン、銅イオン、鉛イオン、ストロンチウムイオン、キトサン、ポリ(L-リシン)、ポリエチレンイミン(PEI)、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される架橋剤を含む。各可能性が、発明の別個の実施形態を表す。
架橋剤は、担体の総湿潤重量の約01%~約5%の範囲の重量パーセントで担体に存在し得る。
【0053】
いくつかの実施形態によれば、複数の担体は更に、脂肪酸のエトキシ化ソルビタンエステル、コハク化モノグリセリド、脂肪酸のショ糖エステル、スクログリセリド、脂肪酸のポリグリセリンエステル、ポリグリセロールポリリシノレート、脂肪酸のプロパン-1,2-ジオールエステル、脂肪酸のプロピレングリコールエステル、グリセロール及びプロパン-1の乳酸脂肪酸エステル、脂肪酸のモノ及びジグリセリドと相互作用する熱酸化された大豆油、ジオクチルソジウムスルホサクシネート、ステアロイル-2-乳酸ナトリウム、ステアロイル-2-ラクチル酸カルシウム、酒石酸ステアリル、クエン酸ステアリル、ステアロイルフマル酸ナトリウム、フマル酸ステアリルカルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、エトキシ化モノ及びジグリセリド、メチルグルコシド-ヤシ油エステル、プロパン-1,2-ジオール、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、モノパルミチン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンポリマー、ヒマシ油の重縮合脂肪酸の部分ポリグリセリンエステル、スチグマステロールが豊富な植物ステロール、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される乳化剤を含む。各可能性が、発明の別個の実施形態を表す。乳化剤は、担体の総湿潤重量の約0.001%~約1%の範囲の重量パーセントで担体に存在し得る。
【0054】
特定の実施形態において、複数の担体は、担体の総湿潤重量の約10%(w/w)~約40%(w/w)の疎水剤;約0.1%(w/w)~約5%(w/w)の親水コロイド;約0.1%(w/w)~約5%(w/w)架橋剤;約0.001%(w/w)~約1%(w/w)乳化剤;及び約50%(w/w)~約95%(w/w)の水を含む。
【0055】
RASにおける反応器は、充填床反応器、固定床反応器、移動床反応器、回転床反応器、及び流動床反応器から成る群から選択され得る。いくつかの実施形態において、反応器の体積は、約0.5L~約50,000Lの範囲である。更なる実施形態において、反応器内の担体の質量は、約0.1~約10,000kgの範囲である。
【0056】
RASにおけるリザーバは、タンク、貯水池、及び池から成る群から選択され得る。
【0057】
いくつかの実施形態によれば、リザーバ、固体除去フィルタ及びメカニカルフィルタのうちの少なくとも1つ、生物学的フィルタ、及び複数の担体を有する反応器は、流体的に接続され、水の一部は、リザーバから固体除去フィルタ及び/又はメカニカルフィルタへ;固体除去フィルタ及び/又はメカニカルフィルタから生物学的フィルタへ;生物学的フィルタから複数の担体を有する反応器へ;及び、反応器から再びリザーバへ流れ、又は、水の一部は、リザーバから固体除去フィルタ及び/又はメカニカルフィルタへ;固体除去フィルタ及び/又はメカニカルフィルタから、複数の担体を有する反応器へ;複数の担体を有する反応器から生物学的フィルタへ;及び生物学的フィルタから再びリザーバへ流れる。
【0058】
本発明の更なる実施形態及び適用可能性の全体範囲は、以降で与えられる詳細な説明から明らかとなるであろう。しかしながら、詳細な説明及び特定の例は、発明の好ましい実施形態を示すが、単に例示として与えられることが理解されるべきである。発明の思想及び範囲内の様々な変更及び修正形態は、この詳細な説明から当業者に明らかとなるからである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1A】油-親水コロイド担体を用いたインキュベーション前(左の棒)及びインキュベーションの24時間後(右の棒)の水におけるゲオスミンのレベルを表すグラフであり、担体は、0、10、20、30、及び40%の油(w/w)を含む。
【0060】
【
図1B】油-親水コロイド担体を用いたインキュベーション前(左の棒)及びインキュベーションの24時間後(右の棒)の水におけるMIBレベルを表すグラフであり、担体は、0、10、20、30、及び40%の油(w/w)を含む。
【0061】
【
図2】再蒸留水(DDW)、又は、30%(w/w)油含有担体を有する再循環水産養殖システムからの水のいずれかにおける24時間のインキュベーションの前(左の棒)及び後(右の棒)のゲオスミン(GSM)及びMIBレベルを表すグラフである。対照として、同一条件下でインキュベートされた、担体無しのサンプルが使用された(中央の棒)。
【0062】
【
図3A】30%(w/w)油含有担体とのインキュベーションの前、24時間のインキュベーション後、及び、48時間のインキュベーション後の水におけるゲオスミンレベルを表すグラフであり、担体はまず、ゲオスミン及びMIB分解菌を含むことが知られている、再循環水産養殖システムからの粗スラッジを含む媒体においてインキュベートされた(中央の棒)。対照試験は、粗スラッジを含む媒体においてインキュベーションされていない担体(右の棒)、及び、油-親水コロイド担体を用いてインキュベーションされていない水サンプル(左の棒)を含む。
【0063】
【
図3B】30%(w/w)油含有担体を用いたインキュベーションの前、24時間のインキュベーション後、及び、48時間のインキュベーション後の水におけるMIBレベルを表すグラフであり、担体はまず、ゲオスミン及びMIB分解菌を含むことが知られている、再循環水産養殖システムからの粗スラッジを含む媒体においてインキュベートされた(中央の棒)。対照試験は、粗スラッジを含む媒体においてインキュベーションされていない担体(右の棒)、及び、油-親水コロイド担体を用いてインキュベーションされていない水サンプル(左の棒)を含む。
【0064】
【
図4】水産養殖システムからの水が循環される、上向流反応器(正方形)及び移動床反応器(ひし形)における操作の後の担体の細菌数を表すグラフである。
【0065】
【
図5A】10時間HRTにおける、含油親水コロイド担体(ひし形)又は油を含まない対照親水コロイド担体(正方形)のいずれかが充填された上向流カラムの動作中のゲオスミンの廃液及び流入液濃度の比率を表すグラフであり、データは反復サンプルの平均値を表す。
【0066】
【
図5B】10時間HRTにおける、含油親水コロイド担体(ひし形)又は油を含まない対照親水コロイド担体(正方形)のいずれかが充填された上向流カラムの動作中のMIBの廃液及び流入液濃度の比率を表すグラフであり、データは反復サンプルの平均値を表す。
【0067】
【
図5C】10時間HRTにおける、含油親水コロイド担体(正方形)又は油を含まない対照親水コロイド担体(三角形)のいずれかが充填された上向流カラムの動作中の流入液(ひし形)及び廃液の硝酸塩濃度を表すグラフであり、データは反復サンプルの平均値を表す。
【0068】
【
図5D】10時間HRTにおける、含油親水コロイド担体(正方形)又は油を含まない対照親水コロイド担体(三角形)のいずれかが充填された上向流カラムの動作中の流入液(ひし形)及び廃液のpHを表すグラフであり、データは反復サンプルの平均値を表す。
【0069】
【
図5E】5時間HRTにおける、含油親水コロイド担体(ひし形)又は油を含まない対照親水コロイド担体(正方形)のいずれかが充填された上向流カラムの動作中のゲオスミンの廃液及び流入液濃度の比率を表すグラフであり、データは3サンプルの平均値を表す。
【0070】
【
図6A】以下の組成物:アルギン酸塩-油、アルギン酸塩-油-ワックス、及びアルギン酸塩-油-ワックス-ベントナイト担体を有する担体で充填された3つの上向流カラム、及び、担体を含まず同様の条件下で動作する対照カラムによるRAS水からのMIBの除去。
【0071】
【
図6B】以下の組成物:アルギン酸塩-油、アルギン酸塩-油-ワックス、及びアルギン酸塩-油-ワックス-ベントナイト担体を有する担体で充填された3つの上向流カラム、及び、担体を含まず同様の条件下で動作する対照カラムによるRAS水からのゲオスミンの除去。
【発明を実施するための形態】
【0072】
本発明は、水産養殖システムから有害なTOCを除去するための方法を提供する。除去方法は、当該化合物の吸着及び生分解に基づき、疎水剤及び親水コロイドを含む生物活性担体の使用を伴う。いくつかの実施形態において、親水コロイドは、TOCを吸着するよう構成されている疎水剤を保持又は封入するよう構成されている。いくつかの実施形態において粒子性形態を有する生物活性担体の表面は、吸着された有害なTOCを分解することが可能である微生物のコロニー形成のために適合される。いくつかの実施形態において、親水コロイドは疎水剤内に配置される。
【0073】
水産養殖システムからオフフレーバ化合物を除去する、この物理生物学的アプローチは、効果的で、環境的に安全であり、技術的に単純であり、費用効果が高いことが分かった。予期せぬことに、生物活性担体がRASからの水と接触されたとき、微生物の特有集団が担体表面上で自発的に成長した。したがって、生物活性担体の製造は、担体の中又は上で生物種を増殖及び維持する必要がなく、単純に担体を処理される水と接触されるだけで好適な細菌の集団が形成され得る。有利なことに、そのような生物活性担体は、水産養殖システムにおいて見られる有害なTOCの単一ステップの吸着及び分解プロセスを提供する。
【0074】
複数の当該生物活性担体を含むフィルタ、及び、有害なTOCを除去するための当該生物活性担体を採用する再循環水産養殖システムが更に提供される。
【0075】
発明の一態様によれば、有害な味又は臭気化合物(TOC)を水産養殖システムの水から除去するための方法が提供され、方法は、(a)当該TOCを吸着するよう構成されている疎水剤、及び、(b)親水コロイドを含む担体に水を接触させる段階を備え、当該担体は、当該TOCを分解又は変換することが可能である微生物のコロニー形成に適合されている。
【0076】
別の態様において、水及び水産養殖種を保持するリザーバ;固形物除去フィルタ、メカニカルフィルタ、及び生物学的フィルタのうちの少なくとも1つ;及び、有害な味又は臭気化合物(TOC)を吸着するよう構成されている疎水剤及び親水コロイドを含む複数の担体を含む、水産養殖種を維持するための再循環水産養殖システム(RAS)が提供される担体は、当該TOCを分解又は変換することが可能である微生物のコロニー形成に適合されている。
【0077】
更に別の態様において、有害な味又は臭気化合物(TOC)を吸着するよう構成されている疎水剤及び親水コロイドを含む複数の担体を含む生物活性フィルタが提供され、担体は、当該TOCを分解又は変換することが可能である微生物のコロニー形成に適合され、当該生物活性フィルタは、有害な味又は臭気化合物(TOC)を水産養殖システムの水から除去することに使用される。
【0078】
本明細書において使用される「水」という用語は、水に加えて、これらに限定されないが、窒素含有化合物(例えば、アンモニア、アンモニウム、硝酸塩、亜硝酸塩)、塩、有機化合物(例えば、テルペノイド)、及び、生物学的物質(例えば、細菌)などの様々な化学物質を含み得る、水産養殖システムの水産養殖種リザーバにおいて見られる水性媒体を指す。水は海水、汽水、又は淡水であり得る。海水の塩分濃度は、約3.1%~約3.8%の範囲であり得る。
【0079】
本明細書において「オフフレーバ化合物」とも呼ばれる有害なTOCは、シアノバクテリア(一般には藍藻として知られる)及び/又は放線菌によって生成される疎水性テルペノイドであり、魚によって吸収されるとき、望ましくないオフフレーバ及び臭気をもたらす。ゲオスミン(トランス-1,10-ジメチル-トランス-9-デカロール)及び2-メチルイソボルネオール(MIB)は、シアノバクテリア及び/又は放線菌によって生成される既知の疎水性テルペノイドのうちの2つである。他の疎水性テルペノイドは、藍藻によって、代謝産物として直接的に、又は、2-イソプロピル-2-メチルオキシピラジンを含む代謝産物からの二次生成物として生成され得る。したがって、いくつかの実施形態において、当該TOCは、テルペノイドを含む。更なる実施形態によれば、当該テルペノイドは、これに限定されないがユレモ種などのシアノバクテリア、及び/又は、これに限定されないがStreptomyces spなどの放線菌によって生成される。なお更なる実施形態によれば、当該テルペノイドは、ゲオスミン、2-メチルイソボルネオール、2-イソプロピル-2-メチルオキシピラジン、及び、その類似体又は誘導体から選択される。特定の実施形態によれば、当該テルペノイドは、ゲオスミン及びMIBから選択される。
【0080】
本明細書において使用される「類似体」又は「誘導体」という用語は、構造及び機能が別の化学物質と同様であり、多くの場合、単一の元素又は基だけ構造的に異なる化学分子に関し、当該別の化学物質と同一の機能又は特徴(例えば、疎水性)を保持する場合、1より多くの基(例えば、2、3、又は4基)の修正により異なり得る。
【0081】
当該テルペノイドTOCは、約10~約10000ng/Lの範囲の濃度で水産養殖システムの水に存在し得る。いくつかの実施形態によれば、当該テルペノイドの濃度は、約10~約5000ng/Lの範囲である。更なる実施形態によれば、当該テルペノイドの濃度は、約10~約1000ng/Lの範囲である。なお更なる実施形態によれば、当該テルペノイドの濃度は、約50~約750ng/L、又は、約100~約500ng/Lの範囲である。追加の実施形態において、当該テルペノイドの濃度は、約10~約100ng/L、約100~約250ng/L、約250~約500ng/L、約500~約750ng/L、約500~約100ng/L、又は、約750~約1000ng/Lの範囲である。
【0082】
本明細書において交換可能に使用される「分解」、「変換」、及び「除去」という用語は、いくつかの実施形態において、水産養殖システムにおいてオフフレーバ及び/又は悪臭を生じさせない化合物へのTOCの変換を指す。更なる実施形態において、「分解」、「変換」、及び「除去」という用語は、処理水におけるテルペノイドの有害なTOCの濃度が10ng/Lより下に低減されることを示すことが意図されている。
【0083】
いくつかの現在の好ましい実施形態によれば、当該テルペノイドTOCを分解又は変換することが可能である微生物は、水が処理される水産養殖システムに特有である。特定の実施形態において、当該微生物は、グラム陰性細菌を含む。非限定的な例としての好適な微生物種は、Chryseobacterium sp.、Sinorhizobium sp.、Stenotrophomonas sp.、Sphingopyxis alaskensis、sp.、Novosphingobium stygiae sp.、Pseudomonas veronii sp.、Methylobacterium sp.、Micrococcus sp.、Flavobacterium sp.、Brevibacterium sp.、Pseudomonas sp.、Pseudomonas sp.、Rhodococcus wratislaviensis sp.、Acinetobacter sp.、及び、オキサロバクター及びアルファプロテオバクテリア科の種を含む。
【0084】
いくつかの実施形態によれば、担体は、粒子の形態を有する。本明細書において使用される「粒子」という用語は、小さい別個の物体、小さい別個のユニット、又は、小さい別個の部分を意味し、ビード、顆粒、グレイン、カプセルなどを包含すると理解される。好ましくは、粒子は固体又は半固体ユニットであり、球形、楕円、卵円、又は多角体の形状であり得、例えば、立方体、六面体、四面体、八面体、十二面体、又は二十面体などの形状を有し、又は不規則な形状を有し得る。
【0085】
いくつかの実施形態において、粒子は本質的に球形である。本明細書において使用される「本質的に球形」という用語は、いくつかの実施形態において、約0.90~約1のアスペクト比を有する粒子を指す。
【0086】
アスペクト比は以下の式に従って計算され得る。
【数1】
式(1)
ここで、D
maxは、第1寸法における粒子の最大の長さであり、D
minは、第2寸法における粒子の最小の長さである。いくつかの実施形態において、第1寸法は第2寸法に垂直である。
【0087】
更なる実施形態において、粒子のアスペクト比は、少なくとも約0.90%、少なくとも約0.91%、少なくとも約0.92%、少なくとも約0.93%、少なくとも約0.94%、又は、少なくとも約0.95%である。
【0088】
粒子は、約100μm~約10cmの範囲の粒子サイズを有し得る。いくつかの実施形態において、粒子は、約1mm~約1cmの範囲の粒子サイズを有する。様々な本明細書において使用される「粒子サイズ」という用語は、その最長寸法における粒子の長さを指す。粒子が球形である又は球形に近いとき、「粒子サイズ」という用語は、粒子の直径に対応する。
【0089】
いくつかの実施形態によれば、疎水剤は、親水コロイドと均質に混合される。
【0090】
いくつかの実施形態によれば、親水コロイドは、当該疎水剤を封入するよう構成されている。いくつかの関連する実施形態において、親水コロイドは、ゲル親水コロイドである。上で言及されたように、疎水剤を支持及び/又は封入する親水コロイドゲルネットワークは、テルペノイド分解菌のコロニー形成に利用可能である表面積、及び、オフフレーバのテルペノイド化合物を吸着するよう構成されている容積を最大化することを可能にする。
【0091】
更なる実施形態によれば、疎水剤は、親水コロイド内に配置される。更なる実施形態によれば、疎水剤は、親水コロイド内に分散される。なお更なる実施形態によれば、疎水剤は、親水コロイド内に均一に分散される。疎水剤は、親水コロイドネットワーク中に分散された、小さい島(isles)、マイクロ粒子、ナノ粒子、マイクロバブル、又はナノバブルの形態であり得る。
【0092】
いくつかの実施形態によれば、親水コロイドは、疎水剤内に配置される。更なる実施形態によれば、親水コロイドは疎水剤内に分散される。なお更なる実施形態によれば、親水コロイドは、疎水剤内に均一に分散される。例えば、親水コロイドは、疎水剤内に分散された粉末のマイクロ又はナノ粒子の形態であり得、当該疎水剤は、ワックス又は油ワックスの組み合わせを含む。作用の理論又は機構によって拘束されることを望まないが、疎水剤内の親水コロイドの存在は、水産養殖システムの疎水剤及び水の間の接触面積を増加させ、疎水剤の容積への当該水の拡散を増加させ、それにより、テルペノイド分解菌のコロニー形成効率及びTOC除去効率を増加させると考えられる。
【0093】
「均質」及び「均一」という用語は、交換可能に使用され、疎水剤及び/又は親水コロイドの体積百分率が粒子内の1つの位置から別の位置の間で、20%未満、好ましくは10%未満変動することを示す。なお更なる実施形態において、粒子は等方性である。本明細書において使用される「等方性」という用語は、粒子内の特定の方向における疎水剤及び/又は親水コロイドの濃度の独立性を指す。
【0094】
疎水剤は、親水コロイドと完全に混合され得るか、又は、均質化され得、親水コロイドネットワーク内により小さい油の島(isles)又は泡又はワックスのマイクロ又はナノ粒子が取得される。代替的に、疎水剤は、親水コロイドと完全に混合され得るか、又は、均質化され得、疎水剤ネットワーク内に親水コロイド粉末のマイクロ又はナノ粒子が取得される。追加の実施形態において、疎水剤は、第1及び第2疎水剤(本明細書において「追加の親水コロイド」とも呼ばれる)を含み、第1疎水剤は、親水コロイドと混合され、それらの混合物は次に、第2疎水剤において分散される。例えば、親水コロイドは、油と混合され得、当該混合物は次に、ワックスマトリックスにおいて分散される。
【0095】
いくつかの実施形態によれば、担体は、メンブレンによって囲まれた液体コアを含む粒子の形態を有する。更なる実施形態において、当該液体コアは疎水剤を含み、メンブレンは親水コロイドを含む。更なる実施形態において、本明細書の下で詳細に説明されるように、液体コアは疎水剤から成り、メンブレンは親水コロイド、及び任意選択的に、架橋剤から成る。特定のそのような実施形態において、疎水剤は粒子の液体コアを形成し、親水コロイドはそのメンブレンを形成する。メンブレンは固体又は半固体であり得る。
【0096】
いくつかの実施形態によれば、粒子の液体コアは、約10μm~約1cmの範囲の直径を有する。いくつかの実施形態によれば、粒子のメンブレンは、約1μm~約5mmの範囲の厚さを有する。更なる実施形態において、液体コアの直径及びメンブレンの厚さの間の比率は、約100,000:1~1:500の範囲である。
【0097】
本明細書において使用される「疎水剤」という用語は、水分子に対する静電引力が2つの水分子の間の静電引力より小さい分子、物質、又は組成物を指す。いくつかの実施形態によれば、疎水剤は、90°より高い水接触角を有する。更なる実施形態によれば、疎水剤は、100°より高い水接触角を有する。なお更なる実施形態によれば、疎水剤は、110°より高い水接触角を有する。なお更なる実施形態によれば、疎水剤は、約120°より高い水接触角を有する。
【0098】
いくつかの現在好ましい実施形態によれば、疎水剤は、70℃より下の融解温度を有する。更なる実施形態によれば、疎水剤は、65℃より下、約60℃より下、約50℃より下、又は約45℃より下の融解温度を有する。各可能性が、発明の別個の実施形態を表す。好適な疎水剤は、油、ワックス、脂肪酸、脂肪族アルコール、トコフェロール、トコトリエノール、及び、それらの組み合わせ及び誘導体から選択され得る。
【0099】
いくつかの例示的な実施形態において、疎水剤は油を含む。油は、オーガニック油、鉱油、シリコーン油、及びそれらの組み合わせから選択され得る。食用かつ非毒性の油だけが、食品目的の成長する水産養殖種に適合された水産養殖システムから有害なTOCを除去するために使用され得るが、他の使用(例えば、観賞の目的)が意図される種を含む水産養殖システムでは、追加の疎水剤が採用され得る。オーガニック油は、植物性、植物、及び動物油を含み得る。好適な植物性及び植物油の非限定的な例は、大豆油、ヤシ油、綿実油、落花生油、ナタネ油、菜種油、サフラワー油、落花生油、クルミ油、ゴマ油、オリーブ油、アマニ油、月見草油、シーバックソーン油、パーム油、パーム核油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、ホホバ油、骨髄油、グレープシード油、ヘーゼルナッツ油、アプリコット油、マカダミア油、アーモンド油、ヒマシ油、アサイーベリー油、アプリコット油、アボカド油、バオバブ油、ブラッククミン油、ブラックカシス種子油、ブルーベリー種子油、ボラージ油、カメリナ油、チェリーカーネル油、チア種子油、クランベリー種子油、ヘンプ種子油、マカダミアナッツ油、マルラ油、ニーム油、オーツ麦油、アルガン油、ザクロ種子油、桃核油、梅核油、バーバリフィグ種子油、ラズベリー種子油、米ぬか油、ローズヒップ種子油、タマヌ油、小麦胚芽油、メドウフォーム油、フラックスシード油、エゴマ油、オイチシカ油、グレープストーン油、シアバター、桐油、小麦胚芽油、及び、それらの組み合わせを含む。好適な動物油の非限定的な例は、タラ肝油、魚油、ラード油、ミンク油、牛脚油、タロウ油、ウールグリース、及びそれらの組み合わせを含む。本発明の方法において使用するための粒子(又は担体)における油は、精製及び/又は水素化され得る。
【0100】
特定の実施形態において、当該油は大豆油である。大豆油は、大豆(Glycine max)の種から抽出される植物性油である。有利なことに、大豆油は、もっとも広く消費される料理用の油の1つであり、従って、非常に豊富かつ安価である。大豆油における主な脂肪酸は、α-リノレン酸(C-18:3)、リノール酸(C-18:2)、オレイン酸(C-18:1)、ステアリン酸(C-18:0)、及びパルミチン酸(C-16:0)を含む。いくつかの実施形態によれば、大豆油は、精製油である。
【0101】
特定の実施形態において、当該油はヒマワリ油である。ヒマワリ油は主に、リノール酸及びオレイン酸から構成される。
【0102】
いくつかの実施形態によれば、疎水剤はワックスを含む。ワックスは、動物ワックス、昆虫ワックス、植物ワックス、鉱物ワックス、シリコーンワックス、及びそれらの組み合わせから選択され得る。好適な動物又は昆虫ワックスの非限定的な例は、蜜蝋、ラノリン、硬獣脂、及びそれらの組み合わせを含む。好適な植物性ワックスの非限定的な例は、ジャパンワックス、キャスターワックス、サトウキビワックス、キャンデリラワックス、バーバリワックス、ココアバター、イリッペバター、及びそれらの組み合わせを含む。好適な石油又は鉱物ワックスの非限定的な例は、セレシン、ペトロラタム、パラフィン、及びそれらの組み合わせを含む。
【0103】
いくつかの実施形態によれば、疎水剤は脂肪族アルコールを含む。好適な脂肪族アルコールの非限定的な例は、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラノリンアルコール、2-オクチルドデカノール、及びそれらの組み合わせを含む。
【0104】
いくつかの実施形態によれば、疎水剤は、脂肪酸を含む。好適な脂肪酸の非限定的な例は、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、及びそれらの組み合わせを含む。
【0105】
いくつかの実施形態によれば、疎水剤はビタミンEを含む。
【0106】
疎水剤は、上に記載されるように、油、ワックス、脂肪酸、脂肪酸アルコール、脂肪酸エステル、トコフェロール、及びトコトリエノールの変形形態を含み得、当業者においてによって容易に最適化され得る、分子量、分子量分布、鎖分岐、コポリマー及び鎖終端基における類似体、ホモログ、及び変形形態を含む。
【0107】
疎水剤は、担体又は粒子の総湿潤重量の約10%~約99.5%の範囲の重量パーセントで担体又は粒子に存在し得る。いくつかの実施形態において、疎水剤は、担体又は粒子の総湿潤重量の約10%~約99%の範囲の重量パーセントで担体又は粒子に存在する。更なる実施形態において、疎水剤は、担体又は粒子の総湿潤重量の約10%~約95%の範囲の重量パーセントで担体又は粒子に存在する。なお更なる実施形態において、疎水剤は、担体又は粒子の総湿潤重量の約10%~約90%の範囲の重量パーセントで担体又は粒子に存在する。なお更なる実施形態において、疎水剤は、担体又は粒子の総湿潤重量の約10%~約80%の範囲の重量パーセントで担体又は粒子に存在する。なお更なる実施形態において、疎水剤は、担体又は粒子の総湿潤重量の約10%~約70%の範囲の重量パーセントで担体又は粒子に存在する。なお更なる実施形態において、疎水剤は、担体又は粒子の総湿潤重量の約10%~約60%の範囲の重量パーセントで担体又は粒子に存在する。なお更なる実施形態において、疎水剤は、担体又は粒子の総湿潤重量の約10%~約50%の範囲の重量パーセントで担体又は粒子に存在する。更なる実施形態において、疎水剤は、担体又は粒子の総湿潤重量の約10%~約40%の範囲の重量パーセントで担体又は粒子に存在する。なお更なる実施形態において、疎水剤は、担体又は粒子の総湿潤重量の約15%~約35%の範囲の重量パーセントで担体又は粒子に存在する。
【0108】
特定の実施形態において、疎水剤は、粒子の総湿潤重量の約30%の重量パーセントで粒子に存在する。いくつかの関連する実施形態において、疎水剤は大豆油を含む。本発明の発明者によって、ゲオスミン及びMIBの除去は、粒子における油の相対量を40%(w/w)の濃度まで増加させることによって増加することが分かった。驚くべきことに、TOC除去効率の急激な増加が、30%(w/w)までの油濃度の増加に伴って確認されたが、油濃度を30%(w/w)から40%(w/w)に増加させるとき、TOC吸着効率の著しい改善は無かった。追加的に、30%(w/w)より高い油濃度は、粒子を使用して24時間後、圧縮応力及び圧縮ひずみの低減をもたらした。
【0109】
本明細書において使用される「親水コロイド」という用語は、少なくとも部分的に水溶性である親水性ポリマーを指し、当該ポリマーは、天然、合成、又は半合成であり、好ましくは水性システムにおいてゲル又は粘性溶液又は懸濁液を形成する。天然親水コロイドは典型的には、タンパク質又は多糖クラスに属し、大きな数の親水コロイドが天然、特に、陸上植物、藻類、動物及び細菌に由来する。親水コロイドは近年、水溶液の濃化及びゲル化、フォーム、エマルジョン、及びディスパージョンの安定化、氷及び糖結晶形成の阻害、及び、香りの放出の制御を含む複数の機能を実行するために、様々な産業セクタにおいて広く使用されている。親水コロイドは、化粧品及び食品産業の製品において、増粘剤として使用されることが多い。親水コロイドという用語の更なる詳細については、特に、G. O. Phillips and P. A. Williams. Handbook of Hydrocolloids. 2nd edition; CRC Press and Woodhead Publishing Limited, 2009のページ1を参照されたい。これに関連するその内容は、参照によって本明細書に完全に含まれる。
【0110】
本明細書において使用される「親水性ポリマー」という用語は、非水性媒体における溶解度と比べて、水性媒体における溶解度が、例えば少なくとも約10%高いポリマーを指す。いくつかの実施形態において、親水性ポリマーは、非水性媒体における溶解度と比べて、水性媒体における溶解度が、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%だけ高い。いくつかの実施形態において、親水性ポリマーは、非水性媒体における溶解度と比べて、水性媒体における溶解度が、少なくとも約1.5倍高く、例えば、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、又は少なくとも約9倍を含む。水性媒体の温度は、約15℃~約100℃の範囲であり得る。
【0111】
いくつかの実施形態によれば、親水コロイドは、天然親水コロイド、半合成親水コロイド、合成親水コロイド、及びそれらの組み合わせから選択され得る。更なる実施形態によれば、天然親水コロイドは、多糖、オリゴ糖、タンパク質、及びタンパク質-多糖複合体から選択される。天然親水コロイドは、例えば、植物、藻類、微生物、又は動物のソースなど、様々なソースから取得され得る。いくつかの現在好ましい実施形態によれば、親水コロイドは、ゲル親水コロイドである。好適な天然親水コロイドの非限定的な例は、アルギン酸塩、寒天、アガロース、ゼラチン、低メトキシペクチン(LMP)、キトサン、ゲラン、カラギーナン、ローカストビーンガム(LBG)、グアーガム、カラギーナン、アラビノキシラン、セルロース、カードラン、ファーセレラン、ゲラン、β-グルカン、澱粉、加工デンプン、アラビアゴム、トラガカントガム、タマリンドガム、フェヌグリークガム、カシアガム、タラガム、キサンタン、プルラン、卵タンパク質、植物性タンパク質、乳製品タンパク質、及びそれらの組み合わせを含む。半合成親水コロイドの非限定的な例は、メチルセルロース及びナトリウムカルボキシメチルセルロースを含む。合成親水コロイド(「ポリマー」とも称され、ポリマー、架橋ポリマー、及びコポリマーを含む)のいくつかの例は、例えばポリアクリルアミドなどのポリアクリレート、高分子量ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリアクリル酸ポリマー(例えばCARBOPOL)、ポリビニルアルコール、及びそれらの組み合わせを含む。
【0112】
いくつかの例示的な実施形態において、親水コロイドはアルギン酸塩を含む。アルギン酸塩は本明細書において、アルギンとも呼ばれ、褐藻の細胞壁に広く分散しているアニオン性の多糖であり、水との結合を通じて粘性ガムを形成する。アルギン酸塩は、D-マンヌロン酸(Mブロック)及びL-グルロン酸(Gブロック)から構成される直鎖ポリマー構造を有する。アルギン酸塩は食品及び皮膚の両方について安全である。アルギン酸塩の最大の特長は、水溶液における液体-ゲル挙動である。一価イオン(例えば、アルギン酸ナトリウムにおけるナトリウム)が二価イオン(特にカルシウム)と交換されるとき、反応はほぼ瞬時に進行し、低粘度溶液からゲル構造に変化する。ゲル質量は、2種類のモノマーユニットから構成されるコポリマーである。
【0113】
好ましくは、親水コロイドは架橋親水コロイドである。親水コロイドは、好適な架橋剤によって架橋され得る。いくつかの実施形態において、親水コロイドは、これらに限定されないが、カルシウム、マグネシウム、カリウム、バリウム、アルミニウム、銅、鉛、ストロンチウムイオン、及びそれらの組み合わせから選択されるイオンによって架橋される。架橋イオンの種類は、特定の親水コロイド、及び、水産養殖システムにおける種の種類(例えば、食用又は観賞用)に基づいて選択され得る。いくつかの例示的な実施形態において、親水コロイドは、カルシウムイオンによって架橋される。更なる実施形態において、親水コロイドは、カルシウムイオンによって架橋されるアルギン酸塩を含む。
【0114】
多くの親水コロイドは、ポリアニオン-ポリカチオン反応を介して、ポリカチオンと架橋又は相互作用し得、その結果、ゲルを生成する複合体が形成される。したがって、いくつかの実施形態において、親水コロイドは、ポリカチオンによって架橋される。好適なポリカチオンの非限定的な例は、キトサン、ポリ(L-リシン)、及び、ポリエチレンイミン(PEI)を含む。
【0115】
親水コロイドは、担体又は粒子の総湿潤重量の約0.05%~約10%の範囲である重量パーセントで担体又は粒子に存在し得る。いくつかの実施形態において、親水コロイドは、担体又は粒子の総湿潤重量の約0.1%~約5%の範囲の重量パーセントで担体又は粒子に存在する。更なる実施形態において、親水コロイドは、担体又は粒子の総湿潤重量の約0.5%~約5%の範囲の重量パーセントで担体又は粒子に存在する。
【0116】
いくつかの例示的な実施形態において、親水コロイドは、粒子の総湿潤重量の約1%~2%の重量パーセントで粒子に存在する。
【0117】
架橋剤は、担体又は粒子の総湿潤重量の約0.1%~約5%の範囲の重量パーセントで担体又は粒子に存在し得る。いくつかの実施形態において、架橋剤は、担体又は粒子の総湿潤重量の約0.5%~約2%の範囲の重量パーセントで担体又は粒子に存在する。更なる実施形態において、架橋剤は、担体又は粒子の総湿潤重量の約1%~約2%の範囲の重量パーセントで担体又は粒子に存在する。
【0118】
本明細書において使用される「総湿潤重量」という用語は、親水コロイドがゲル化状態である、すなわち大量の吸収された水を含む、担体又は粒子の重量を指す。典型的には、ゲル化状態にある親水コロイドは、担体の外側部分に存在し、例えば、疎水剤は、親水コロイド内に分散し、又は、担体は、疎水剤コア及び親水コロイドシェルを含む。いくつかの実施形態において、担体又は粒子は、担体又は粒子の総湿潤重量の約50%(w/w)~約99%(w/w)の水を含む。更なる実施形態において、担体又は粒子は、担体又は粒子の総湿潤重量の約60%(w/w)~約95%(w/w)の水を含む。なお更なる実施形態において、担体又は粒子は、担体又は粒子の総湿潤重量の約60%(w/w)~約85%(w/w)の水を含む。なお更なる実施形態において、担体又は粒子は、担体又は粒子の総湿潤重量の約65%(w/w)~約75%(w/w)の水を含む。
【0119】
いくつかの実施形態によれば、担体又は粒子は、本質的に水を含まない。本明細書において使用される「本質的に水を含まない」という用語は、いくつかの実施形態において、担体又は粒子の総乾燥重量の約0.1%(w/w)未満の水を含む担体又は粒子を指す。典型的には、本質的に水を含まない担体又は粒子は、担体の内側部分に存在する親水コロイドを含み、例えば、親水コロイドは疎水剤内に分散する。特定のそのような実施形態において、親水コロイドはゲル化状態でなく、(少なくとも、担体及び水産養殖システム用水の間の最初の接触まで)大量の吸収された水を含まない。したがって、本明細書において使用される「総乾燥重量」という用語は、いくつかの実施形態において、親水コロイドがゲル化状態にない担体又は粒子の重量を指す。更なる実施形態において、「総乾燥重量」という用語は、親水コロイドが、1gの親水コロイドあたり約0.1g未満の水を含む担体又は粒子の重量を指す。更なる実施形態において、「総乾燥重量」という用語は、約10%(w/w)未満の水を含む担体又は粒子の重量を指す。
【0120】
疎水剤は、担体又は粒子の総乾燥重量の約88%~約99.5%の範囲の重量パーセントで担体又は粒子に存在し得る。いくつかの実施形態において、疎水剤は、担体又は粒子の総乾燥重量の約90%~約99.5%の範囲の重量パーセントで担体又は粒子に存在する。更なる実施形態において、疎水剤は、担体又は粒子の総乾燥重量の約95%~約99%の範囲の重量パーセントで担体又は粒子に存在する。
【0121】
親水コロイドは、担体又は粒子の総乾燥重量の約0.01%~約2%の範囲である重量パーセントで担体又は粒子に存在し得る。いくつかの実施形態において、親水コロイドは、担体又は粒子の総乾燥重量の約0.1%~約2%の範囲の重量パーセントで担体又は粒子に存在する。
【0122】
いくつかの実施形態によれば、粒子(又は担体)は更に乳化剤を含む。乳化剤は、脂肪酸のエトキシ化ソルビタンエステル、コハク化モノグリセリド(すなわちポリソルベート)、脂肪酸のショ糖エステル、スクログリセリド、脂肪酸のポリグリセリンエステル、ポリグリセロールポリリシノレート、脂肪酸のプロパン-1,2-ジオールエステル、脂肪酸のプロピレングリコールエステル、グリセロール及びプロパン-1の乳酸脂肪酸エステル、脂肪酸のモノ及びジグリセリドと相互作用する熱酸化された大豆油、ジオクチルソジウムスルホサクシネート、ステアロイル-2-乳酸ナトリウム、ステアロイル-2-ラクチル酸カルシウム、酒石酸ステアリル、クエン酸ステアリル、ステアロイルフマル酸ナトリウム、フマル酸ステアリルカルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、エトキシ化モノ及びジグリセリド、メチルグルコシド-ヤシ油エステル、プロパン-1,2-ジオール、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、モノパルミチン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンポリマー、ヒマシ油の重縮合脂肪酸の部分ポリグリセリンエステル、及びスチグマステロールが豊富な植物ステロールから選択され得る。特定の実施形態において、界面活性剤はポリソルベートを含む。好適なポリソルベートの非限定的な例は、ポリソルベート80(Tween(登録商標)80)、ポリソルベート20(Tween(登録商標)20)、ポリソルベート40(Tween(登録商標)40)、ポリソルベート60(Tween(登録商標)60)、及びポリソルベート65(Tween(登録商標)65)を含む。いくつかの例示的な実施形態において、界面活性剤はTween(登録商標)80である。
【0123】
乳化剤は、担体又は粒子の総湿潤重量の約1%までの重量パーセントで担体又は粒子に存在し得る。いくつかの実施形態において、乳化剤は、担体又は粒子の総湿潤重量の約0.001%~約1%の範囲の重量パーセントで担体又は粒子に存在する。更なる実施形態において、乳化剤は、担体又は粒子の総湿潤重量の約0.01%~約1%、又は、担体又は粒子の総湿潤重量の約0.1%~約1%の範囲の重量パーセントで担体又は粒子に存在する。
【0124】
担体又は粒子は更に、当技術分野において知られている、充填剤、潤滑剤、色素、可塑剤、表面張力低下剤を含み得る。好適な充填剤の非限定的な例は、ベントナイト及びカオリンを含む。充填剤は、担体又は粒子の総湿潤又は乾燥重量の約0.1%~約10%の範囲の重量パーセントで担体に存在し得る。
【0125】
特定の実施形態によれば、担体又は粒子は、担体又は粒子の総湿潤重量の約10%(w/w)~約40%(w/w)の疎水剤;約0.1%(w/w)~約5%(w/w)の親水コロイド;約0.1%(w/w)~約5%(w/w)の架橋剤;約0.001%(w/w)~約1%(w/w)乳化剤;及び、約50%(w/w)~約95%(w/w)の水を含む。いくつかの例示的な実施形態において、疎水剤は油を含む。更なる例示的な実施形態において、当該油は大豆油である。追加の例示的な実施形態において、親水コロイドは、アルギン酸塩を含み、架橋剤はカルシウムイオンを含む。
【0126】
特定の実施形態によれば、担体又は粒子は、担体又は粒子の総乾燥重量の約88%(w/w)~約99.5%(w/w)の疎水剤及び約0.1%(w/w)~約2%(w/w)の親水コロイドを含む。いくつかの実施形態において、担体又は粒子は更に、約0.1%(w/w)~約10%(w/w)の充填剤を含む。いくつかの実施形態において、疎水剤は、油及びワックスの組み合わせを含む。ワックスは、約50%(w/w)~約89.5%(w/w)の範囲の重量パーセントで担体又は粒子に存在し得る。油は、約10%(w/w)~約40%(w/w)の範囲の重量パーセントで担体又は粒子に存在し得る。いくつかの例示的な実施形態において、当該油はヒマワリ油であり、当該ワックスは蜜蝋である。追加の例示的な実施形態において、親水コロイドはアルギン酸塩を含む。更なる例示的な実施形態において、充填剤はベントナイトを含む。
【0127】
本発明の方法において使用される担体(粒子の形態である)は、ゲオスミン及びMIBを含む水との接触後に安定であることが分かった。特に、粒子内の疎水剤の濃度は、本質的に変化しないままであり、粒子は、ゲオスミン及びMIBを含む水との接触後、機械的に安定であることが分かった。好ましくは、約6週間にわたって水産養殖システムの水と接触する間、粒子は少なくともその圧縮ひずみの約65%、及び、圧縮応力の約25%を維持する。
【0128】
いくつかの実施形態によれば、粒子は、疎水剤(本明細書において「第1疎水剤」とも呼ばれる)、親水コロイド(本明細書において、「第1親水コロイド」とも呼ばれる)、及び任意選択的に乳化剤を含む固体又は半固体コア、及び透水性シェルを含むコア-シェル粒子である。透水性シェルは、親水コロイド(本明細書において「第2親水コロイド」とも呼ばれる)を含み得る。第1親水コロイド及び第2親水コロイドは、同一であり得る、又は、異なり得る。透水性シェルは更に、疎水剤(本明細書において、「第2疎水剤」とも呼ばれる)を含み得る。第1疎水剤及び第2疎水剤は、同一であり得る、又は、異なり得る。
【0129】
いくつかの実施形態によれば、当該有害なTOCを分解可能である微生物は、粒子の容積に存在しない。更なる実施形態によれば、粒子は、水との接触が開始される前に当該有害なTOCを分解可能である微生物を含まない。上で説明されたように、粒子(又は担体)の独自の組成物及び構造は、その中で微生物を増殖させることなく粒子を製造できるように、水産養殖システムに特有である、及び、TOCの分解が可能である微生物の集団が粒子表面上に形成されることを可能にする。発明者は、生物活性担体内に微生物を増殖及び維持しようとするとき、予期せぬことに、わずかなバイオマスの小さい集団だけが効果的に増殖できることを発見した。追加的に、所望の期間にわたって集団の構造(すなわち、どの種が、どの相対的量で存在するか)を制御することは困難であった。したがって、本発明は、有害なTOCを水産養殖システムから除去するための、生物種を含む担体の開発中に遭遇する障害に対する、簡潔で費用及び時間効率の高い解決策を提供する。
【0130】
他の実施形態によれば、有害なTOCを分解可能である微生物は、水との接触が開始される前に担体内に存在する。
【0131】
本発明の方法において使用するために好適な粒子(又は担体)は、疎水性を親水コロイド溶液と混合する、例えば均質化することによって製造され得る。例えば、液体形態である疎水剤は、溶解された親水コロイドを含む水溶液に添加され得る。代替的に、親水コロイドを含む水溶液は、液体形態である疎水剤に添加され得る。水溶液は、約0.5~約5%(w/w)の親水コロイドを含み得る。均一な混合物の形成を促進するために混合物は撹拌され得る。追加的に又は代替的に、均質なエマルジョンの形成を誘導するために、乳化剤が疎水剤及び親水コロイドの混合物に添加され得る。
【0132】
いくつかの実施形態によれば、当該混合物は、約10~約60%(w/w)の疎水剤を含む。いくつかの実施形態によれば、当該混合物は、約0.01~約10%(w/w)の親水コロイドを含む。いくつかの実施形態によれば、当該混合物は、約0.1~約10%(w/w)の乳化剤を含む。いくつかの実施形態によれば、当該混合物は、約0.1~約10%(w/w)の乳化剤を含む。更なる実施形態によれば、当該混合物は、約0.5~約5%(w/w)の乳化剤を含む。なお更なる実施形態によれば、当該混合物は、約1%(w/w)の乳化剤を含む。
【0133】
疎水剤、親水コロイド、及び任意選択的に乳化剤の混合物は、架橋イオンを含む水溶液に添加され得る。架橋イオンは、約0.1~20%(w/w)の範囲の濃度で当該水性組成物に存在し得る。いくつかの実施形態において、混合物は、架橋溶液内に落下(又は滴下)される。いくつかの実施形態において、疎水剤、親水コロイド及び任意選択的に乳化剤の混合物の滴下される体積は、約1μL~約20mLの範囲である。いくつかの実施形態によれば、製造プロセスは更に、架橋溶液から、取得された粒子を分離することを含む。担体又は粒子は、例えば貯蔵の目的で、水産養殖システムからの水に接触させる段階の前に乾燥され得ることが理解される。乾燥は、当技術分野において知られている任意の好適な技法によって、例えば、天日乾燥、周囲温度における乾燥、真空乾燥、流動床乾燥、凍結乾燥(リョフィリゼーション)、及びそれらの任意の組み合わせによって実行され得る。いくつかの実施形態によれば、製造プロセスは、例えば、第2親水コロイドを含む溶液に取得された担体を懸濁することによって、第2親水コロイドを含む透水性シェルを形成することを含む。当該第2親水コロイドは、好適な架橋剤で架橋され得る。第2親水コロイドを含む溶液は更に、親水コロイドと混合された第2疎水剤、及び任意選択的に、第2乳化剤を含み得る。
【0134】
いくつかの実施形態によれば、製造プロセスは、疎水剤を乾燥形態の親水コロイドと混合することを含む。いくつかの実施形態において、疎水剤は、ワックス及び油の組み合わせを含む。更なる実施形態において、ワックスは融解され、次に油と混合される。更なる実施形態によれば、親水コロイドは混合前に乾燥される。いくつかの実施形態によれば、プロセスは更に、充填剤をワックス-油混合物に添加し、次に、親水コロイドを添加することを含む。製造プロセスは更に、混合物(好ましくは、混合物は約50~90℃まで加熱される)を低温又は室温の水に落下させて担体を形成することを含み得る。
【0135】
いくつかの実施形態において、当該製造プロセスは、担体又は粒子の容積の中で、又は、粒子表面上で細菌などの微生物を増殖させる段階を含まない。
【0136】
他の実施形態において、製造プロセスは、担体又は粒子の容積内において、又は、その表面上で、細菌などの微生物を増殖させる段階を含む。追加の実施形態において、製造プロセスは、担体又は粒子の容積内に、又は、その表面上に、細菌などの微生物を導入する段階を含む。
【0137】
疎水剤、親水コロイド、乳化剤、及び架橋剤は、上に記載された担体組成物に関する実施形態において詳細に説明されたように選択され得る。
【0138】
いくつかの実施形態によれば、親水コロイドと混合される疎水剤は大豆油である。
【0139】
いくつかの実施形態によれば、水溶液における親水コロイドはアルギン酸塩である。いくつかの実施形態によれば、アルギン酸塩は、アルギン酸、アルギン酸のエステル、アルギン酸塩、及びそれらの組み合わせから選択される。アルギン酸のエステルは、ポリプロピレングリコールアルギン酸塩(PGA)を含み得る。アルギン酸塩は、ナトリウム、カリウム、及びアンモニウム塩、及びそれらの組み合わせから選択され得る。いくつかの例示的な実施形態において、アルギン酸塩はアルギン酸ナトリウムである。いくつかの実施形態によれば、疎水剤及び親水コロイドと混合される乳化剤は、Tween(登録商標)80である。
【0140】
担体は、大きいバッチ、例えば、大きい長方形のスラブとして調製され得、それらは更に、任意の所望の形状を有する、より小さい粒子又は破片に分割される。
【0141】
有害なTOCの除去するための本発明の方法は、当技術分野において知られている任意の水産養殖システム、特に、高レベルのゲオスミン及びMIBを有するものにおいて使用され得る。発明の方法が有利に採用され得る水産養殖システムは、とりわけ、再循環水産養殖システム(RAS)、レースウェイ養魚場、多栄養水産養殖システム、アクアポニックスシステム、水産養殖種池、水産養殖種プール、水産養殖種コンテナ、水産養殖種タンク、生水産養殖種輸送装置、及び水産養殖浄化システムを含む。水産養殖システムは、海水水産養殖システム又は淡水水産養殖システムであり得る。
【0142】
いくつかの実施形態によれば、水産養殖は再循環水産養殖システムである。「再循環」という用語は、1日あたり僅か1%、又はより少ない水が交換されるという事実を指す。RASシステムの種類は多用であるが、プラスチックのバイオメディア上に微生物群を含む外部バイオフィルタ、及び、水カラムに懸濁された高密度の微生物群を有するバイオフロックシステムを有する浄水RASを含み得る。いくつかの実施形態によれば、RASは、これらに限定されないが、タンク、貯水池、又は池などの、少なくとも1つの水産養殖種リザーバを含む。当該リザーバの体積は、約0.1~約500m3の範囲であり得る。いくつかの実施形態によれば、当該リザーバの体積は、約1~約100m3の範囲である。RASは更に、メカニカルフィルタ、固体除去フィルタ、生物学的フィルタ、及び硝化ユニットから選択された少なくとも1つのフィルタを含み得る。
【0143】
本発明の方法は、水生脊椎動物及び無脊椎動物を含む任意の水産養殖種に適用可能である。水産養殖システムに存在し得る水産養殖種の非限定的な例は、魚、小エビ、クルマエビ、イガイ、カキ、カニ、ロブスター、ホタテガイ、ホラガイ、ウナギを含む。
【0144】
いくつかの実施形態によれば、有害なTOCを除去するための方法は、水産養殖システムの水を複数の当該担体と接触させる段階を備える。特定の実施形態において、複数の担体は複数の粒子を含む。本明細書において使用される「複数」という用語は、2又はより多くの担体又は粒子を包含することが意図されている。複数の担体は、レセプタクル内に含まれ、又は固定化され得る。「固定化」という用語は、水産養殖用水が担体と接触するときに著しく移動しないような方式で配置された担体を指す。複数の担体の当該固定化は、レセプタクルを通じた水産養殖用水の流れを可能にする。レセプタクルは、メッシュバッグ、積層充填カラム、反応器、又は、任意の他の保持デバイスを含み得る。レセプタクルは、水産養殖システム内に配置され得る。
【0145】
レセプタクルは、水を通過させるのに好適な入口及び出口を含み得る。いくつかの実施形態において、ふるいは、担体のサイズより小さい孔を有する。更なる実施形態において、ふるいは、約2mmより小さい孔を有する。なお更なる実施形態において、ふるいは、約0.5mmより小さい孔を有する。担体の固定化は、コンテナを2つの部分に分割するふるいを有するレセプタクル内で行われ得、第1部分は担体を含み、第2部分は、担体を含まない。処理される水は第1部分を流れ、担体と接触し、次に、第2部分に流れるが、担体はそれらのサイズに起因して、ふるいによってレセプタクルの第1部分に保持される。レセプタクルは、処理される水を入れるために、第1部分において入口を有し得、処理水を出すために、第2部分において出口を有し得る。
【0146】
いくつかの実施形態によれば、レセプタクルは反応器を含む。本発明の方法に従って使用され得る反応器の非限定的な例は、充填床反応器(本明細書において「カラム」及び「充填カラム」とも呼ばれる)、固定床反応器、移動床反応器、回転床反応器、及び流動床反応器を含む。
【0147】
いくつかの実施形態によれば、反応器はカラムを含む。担体は、カラム内に緊密に充填され得、使用されるときに水産養殖用水がそれを通過することを可能にする。カラム内の水産養殖用水の自由な流れを促進するために、流動性改良剤が担体の間に導入され得る。
【0148】
いくつかの実施形態によれば、接触させる段階は、水の一部(本明細書において「処理される水」とも呼ばれる)を水産養殖システムから抽出する段階、及び、当該一部を複数の担体と接触させる段階を含む。処理される水は、チューブ、バルブ、及びポンプの任意の好適な組み合わせによって水産養殖システムから抽出され得る。当該水の一部は、内部で処理されるために、水産養殖システム内に(しかし水産養殖種リザーバとは別に)含まれ得る。いくつかの現在好ましい実施形態において、少なくとも1つのリザーバがレセプタクルと流体流れ連通している。代替的に、当該水の一部は、外部で処理されるために、水産養殖システムから移される。
【0149】
更なる実施形態によれば、処理される水を複数の担体と接触させることは、複数の担体を通じて、処理される水を流す、通過させる、又は循環させることを含む。水は、鉛直又は水平方向に、又は、当該鉛直及び水平方向の間の任意の角度で、複数の担体を通じて流され得る。水は更に、上向流及び下向流の方向を含む直線的な方式で、及び、環状の方式で、複数の担体を通じて流され得る。上で言及されたように、担体は、レセプタクルに含まれ、又は固定化され得る。水は、当技術分野において知られている任意の好適なポンプによって、当該レセプタクルを通じて循環され得る。処理される水の流量は、水及び複数の担体の間の所望の接触時間に基づいて調節され得る。
【0150】
水及び複数の担体の間の接触は、担体が水産養殖システム用水からの有害なTOCを吸着及び分解することを可能にするのに十分な期間にわたって維持される。当業者にとって明らかであるが、当該期間の長さは、水の体積、担体の量、レセプタクルの種類、流れ方向及び方式、及び/又は、レセプタクルを通る処理される水の流量に依存し、特定のセットアップ条件に従って、又は、下のいくつかの例示的な実施形態において詳細に示されるように、容易に評価され得る。
【0151】
いくつかの例示的な実施形態において、接触させる段階は、複数の担体を含むカラムを通じて、水産養殖システムの水の一部を流すことを含む。カラムは、管状の容器であり得、水の一部は、上向流方式でカラムを通じて流される。いくつかの実施形態において、カラムの体積は、少なくとも約0.5Lである。カラムの体積は、約0.5L~約500,000Lの範囲であり得る。いくつかの実施形態において、カラムの体積は、約1L~約100,00Lの範囲である。更なる実施形態において、カラムの体積は、約1L~約50,000Lの範囲である。更なる実施形態において、カラムの体積は、約1L~約10,000Lの範囲である。いくつかの実施形態において、カラムの体積は、約1L~約100Lの範囲である。いくつかの例示的な実施形態において、カラムの体積は、約1Lである。
【0152】
いくつかの実施形態によれば、カラムは、約1g~約100,000kgの担体を含む。更なる実施形態によれば、カラムは、約1g~約50,000kgの担体を含む。いくつかの実施形態によれば、カラムは、少なくとも約0.1kgの担体を含む。更なる実施形態によれば、カラムは、約0.1kg~約10,000kgの担体を含む。なお更なる実施形態によれば、カラムは、約0.1kg~約2,500kgの担体を含む。追加の実施形態によれば、カラムは、約1g~約5kgの担体を含む。更なる実施形態において、カラムは、約10g~約100gの担体を含む。いくつかの例示的な実施形態において、カラムは、カラムの体積1Lあたり約50gの担体を含む。
【0153】
カラムが使用されるとき、カラムを通る水の流量は、カラム床における水の「水理学的滞留時間(HRT)」、従って、接触時間を決定する。いくつかの実施形態によれば、当該カラムにおける水理学的滞留時間は、約0.1~約72時間の範囲である。更なる実施形態によれば、当該カラムにおける水理学的滞留時間は、約0.1~約48時間の範囲である。なお更なる実施形態によれば、当該カラムにおける水理学的滞留時間は、約0.1~約20時間の範囲である。いくつかの実施形態によれば、水理学的滞留時間は、約3~約8時間の範囲である。特定の実施形態によれば、水理学的滞留時間は約5時間である。
【0154】
追加の例示的な実施形態において、接触させる段階は、水産養殖システムの水の一部を、複数の担体を含む反応器を通じて流すことを含む。更なる実施形態において、水の一部は、環状の方式で、反応器を通じて流される。特定の実施形態において、反応器は移動床反応器である。いくつかの関連する実施形態において、反応器は球形であり、水は、浸漬ポンプによって反応器内で循環される。
【0155】
いくつかの実施形態によれば、担体は、反応器体積の約75まで占有する。
【0156】
棒及び/又は反応器は、有害なTOCの効率的な除去のために十分な接触時間(又は水理学的滞留時間)を可能にするために設計され得る。追加的に又は代替的に、水の一部は、TOC濃度を更に低減するために、カラム又は反応器に複数回にわたって再導入され得る。
【0157】
好ましくは、処理水(すなわち、複数の担体と接触した、又は、それを通じて流された水の一部)は、水産養殖システムに再導入される。水におけるTOCの濃度は、連続的又は定期的にモニタリングされ得、所望のレベルに到達すると、処理水は、バルブ、ポンプ、チューブ、及び制御システムの好適な組み合わせによって、再び水産養殖種リザーバへ流され得る。いくつかの現在の好ましい実施形態によれば、水産養殖システムはRASであり、処理される水の部分は、水産養殖種リザーバ、及び、複数の担体を含む反応器の間で連続的に循環される。
【0158】
いくつかの現在好ましい実施形態によれば、発明の方法及び/又は接触させる段階は、予備小段階を含み、それは、複数の担体を水産養殖システムからの水のサンプル部分と接触させることを含み、当該予備小段階は、接触させる段階の前に、担体表面上において、有害なTOCを吸着及び分解するよう構成されている微生物のコロニー形成を可能する。予備小段階は、接触させる段階の一部であり得、複数の担体を水産養殖システム用水と接触させることにより、まず、担体の表面上に好適な微生物のコロニー形成をもたらし、次に、担体の表面上のTOCの吸着、及び、表面に結合された微生物によるそれらの分解をもたらす。接触させる段階は、典型的には、予備小段階の後、直ちに実行される。予備小段階は、上に記載される方法によって、レセプタクルに含まれる複数の担体を通じて水産養殖システムの水を流すことによって実行され得る。
【0159】
いくつかの実施形態によれば、予備小段階は、複数の担体を、十分な量のTOC分解菌を含む水のサンプル部分と共にインキュベートすることを含む。特定の実施形態において、担体の数及び水産養殖システム用水の体積の間の比率は、約50担体/L~約1000担体/Lの範囲である。更なる実施形態において、当該比率は、約100担体/L~約500担体/Lの範囲である。いくつかの例示的な実施形態において、当該比率は、50担体/Lである。
【0160】
予備小段階は、担体表面上での微生物集団の形成に十分な期間にわたって実行され得る。いくつかの実施形態によれば、予備小段階は、少なくとも約24時間にわたって実行される。更なる実施形態によれば、予備小段階は、少なくとも約48時間、少なくとも約4日間、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、又は、少なくとも約1月にわたって実行される。各可能性が、発明の別個の実施形態を表す。特定の実施形態において、予備小段階は、少なくとも約2週間にわたって実行される。好ましくは、予備小段階は、微生物集団の増殖が定常期に到達するまで実行される。
【0161】
有害なTOCを除去するための方法は、好気及び嫌気条件下で達成され得る。いくつかの実施形態において、接触させる段階は、好気条件下で達成される。他の実施形態において、接触させる段階は、嫌気条件下で達成される。
【0162】
本方法の追加的な特長の1つは、水産養殖システム用水の脱窒も促進することである。水産養殖システムにおける窒素の供給源は、タンパク質飼料からである。アンモニウム及びアンモニアは、水において平衡状態で存在する。より高いpH、より高い温度、及びより低い塩分濃度はすべて、非常に有毒であるアンモニア化合物に有利である。RASにおけるアンモニアを除去するために、硝化の微生物プロセスが通常採用され、これは、硝化の最終生成物である硝酸塩の蓄積をもたらす。硝酸塩は、アンモニア又は亜硝酸塩のいずれより、遥かに毒性が小さい。しかしながら、高濃度になると、水産養殖種の成長を低減し、生存率を減少させ得る。いくつかの実施形態によれば、水産養殖システム用水から有害なTOCを除去するための方法は、脱窒を介して、窒素原子への硝酸塩の還元をもたらす。複数の担体及び処理される水の間の接触時間は、水産養殖システムにおける硝酸塩の所望の最終レベルに基づいて調節され得る。いくつかの実施形態において、方法は、処理水の硝酸塩濃度を、例えば(処理前の)その初期濃度に調節する段階を含む。処理水のpHはまた、許容可能なレベルに調節され得る。
【0163】
上で言及されたように、発明は更に、水産養殖種を維持するための再循環水産養殖システム(RAS)を提供し、これはとりわけ、有害な味又は臭気化合物(TOC)を吸着するよう構成されている疎水剤及び親水コロイドを含む複数の担体を含み、担体は、当該TOCを分解又は変換することが可能である微生物のコロニー形成に適合されている。
【0164】
本発明の再循環水産養殖システムにおける使用に好適な担体の組成物、成分の濃度、担体の他の特性、例えば粒子サイズ、及びそれらの製造プロセスは、TOC除去の方法に関して実施形態に関連して上で詳述したのと同一であり得る。
【0165】
いくつかの実施形態によれば、RASは更に、リザーバと流体流れ連通する反応器、及び、水の一部の流れをリザーバから反応器に誘導するための手段を含む。特定のそのような実施形態において、複数の担体は反応器内に配置される。
【0166】
反応器内の担体の数は、反応器の体積に比例するべきである。いくつかの実施形態において、反応器は、反応器の体積1Lあたり少なくとも100の担体を含む。更なる実施形態において、反応器は、反応器の体積1Lあたり少なくとも200の担体を含む。なお更なる実施形態において、反応器は、反応器の体積1Lあたり少なくとも500の担体を含む。追加の実施形態において、反応器の体積の約75%までが,本明細書に詳細に記載される様々な実施形態による担体で充填される。
【0167】
複数の担体は反応器内に固定化され得る。複数の担体の当該固定化は、反応器を通じたRAS水の流れを可能にし、担体は、水がそれを流れるとき、著しく移動しない。
【0168】
好ましくは、反応器は、水を通過させるのに好適である入口及び出口を含み、水は、上向流、下向流、又は横方向、又は、当技術分野において知られる任意の好適な角度で、反応器を通じて流れる。
【0169】
好適な反応器の非限定的な例は、充填床反応器、固定床反応器、散水濾床反応器、移動床反応器、回転床反応器、及び流動床反応器を含む。
【0170】
充填床反応器は、複数の担体で充填された、中空のチューブ、管、又は、他の容器を含み得る。充填床の目的は典型的には、化学的又は同様のプロセスにおいて、2つの相の間の接触を改善することである。充填床反応器(又はカラム)は、ランダムに入れられた充填材料(すなわち、複数の担体、それにより、ランダム充填カラムを生成する)で充填され得る。充填床反応器は更に、例えばラッシングリングのような小さい物体などの流動性改良剤を含み得る。充填床反応器は更に、配置又は積層された(積層充填カラムを生成する)、構造化された充填セクションを含む、具体的に設計された構造化された充填を有し得る。カラムの体積は、約1~約50,000Lの範囲であり得る。
【0171】
固定床反応器は、複数の担体で充填された円筒形チューブを含み得、水は粒子床を通じて流れ、生成物に変換される。粒子は、それら自体のシェルにおいて、1つの大きい床、複数の水平床、複数の並列充填チューブ、又は、複数の床を含む複数の構成で存在し得る。固定床反応器を通じて流れる水は、典型的には下向きである。
【0172】
移動床反応器は一般に、細菌バイオフィルムによって覆われた固有の担体を含む反応器を含み、その中で、処理される流体が通過する、又は、反応器内で循環され得る。特定の実施形態において、移動床反応器は球形であり、水は浸漬ポンプによって反応器内で循環される。移動床の体積は、約10~約50,000Lの範囲であり得る。
【0173】
回転床反応器(RBR)は典型的には、中央孔を有するレセプタクル内に固定された充填床を保持する。レセプタクルが流体相において回転浸漬されるとき、回転運動によって生成される慣性力が流体を外側へ移動させ、それにより、回転充填床を通じた循環流を生成する。
【0174】
流動床反応器は、処理される水の上向運動によって懸濁される小さい粒子を含み得る。
【0175】
RASは更に、以下のコンポーネント:水及び水産養殖種を保持するリザーバ;固形物除去フィルタ、メカニカルフィルタ、及び生物学的フィルタのうちの少なくとも1つ;硝化ユニット;及び、リザーバから反応器へ水の一部の流れを誘導するための手段を備える。
【0176】
リザーバ(本明細書において「水産養殖種リザーバ」とも呼ばれる)は、これらに限定されないが、タンク、貯水池、又は池から選択され得る。当該リザーバの体積は、約0.1~約500m3の範囲であり得る。いくつかの実施形態によれば、当該リザーバの体積は、約0.5~約250m3の範囲である。更なる実施形態によれば、当該リザーバの体積は、約1~約100m3の範囲である。
【0177】
リザーバは、水生脊椎動物及び無脊椎動物を含む任意の水産養殖種を保持し得る。水産養殖システムのリザーバに存在し得る水産養殖種の非限定的な例は、魚、小エビ、クルマエビ、イガイ、カキ、カニ、ロブスター、ホタテガイ、ホラガイ、ウナギを含む。
【0178】
いくつかの実施形態によれば、RASは、固体除去フィルタ及びメカニカルフィルタのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態によれば、RASは少なくとも1つの生物学的フィルタを含む。いくつかの現在の好ましい実施形態によれば、RASは、固体除去フィルタ及びメカニカルフィルタ及び少なくとも1つの生物学的フィルタのうちの少なくとも1つを含む。
【0179】
生物学的フィルタは、水産養殖システム種によって分泌されるアンモニア及びアンモニウムを、亜硝酸塩を介して硝酸塩に変換することを可能にする。したがって、生物学的フィルタは、細菌群のための基質を提供するよう構成され得、その結果、バイオフィルムがフィルタ内で増殖し得る。バイオフィルタは、亜硝酸塩を介してアンモニアを硝酸塩に変換する、当技術分野において知られている任意の好適な硝化細菌を含み得る。いくつかの実施形態によれば、RASは更に、水の一部の流れをリザーバから少なくとも1つの生物学的フィルタへ誘導するための手段を含む。
【0180】
固体除去フィルタ及び/又はメカニカルフィルタは、システムから固体廃棄物を除去するよう構成されている。固体を除去することにより、細菌の増殖、酸素需要、及び病気の蔓延を低減する。典型的なRAS固体除去フィルタは、サンドフィルタ又は粒子フィルタを含み、ここに固体が留まり、定期的に逆流によりフィルタから除去され得る。別の好適なフィルタの種類は、機械的ドラムフィルタを含み、ここで、水は、加圧スプレーノズルによって定期的に洗浄される回転ドラムスクリーンを流れ、結果として生じるスラリーは処理される、又は排水溝へ送られる。非常に細かい粒子又はコロイド固体を除去するために、オゾンを添加して、又は添加することなく、タンパク質分画器が使用され得る。いくつかの実施形態によれば、RASは更に、水の一部の流れをリザーバから少なくとも1つの固体除去フィルタ及び/又はメカニカルフィルタへ誘導するための手段を含む。
【0181】
特定の実施形態によれば、リザーバ、固体除去フィルタ及びメカニカルフィルタのうちの少なくとも1つ、生物学的フィルタ、及び、複数の担体を有する反応器は、流体的に接続され、それにより、水の一部は、リザーバから固体除去フィルタ及び/又はメカニカルフィルタへ、固体除去フィルタ及び/又はメカニカルフィルタから生物学的フィルタへ、生物学的フィルタから複数の担体を有する反応器へ、及び、反応器から再びリザーバへ流れることができる。反応器は代替的に、固体除去フィルタ及び/又はメカニカルフィルタ及び生物学的フィルタの間に位置し得、それにより、水の一部は、リザーバから固体除去フィルタ及び/又はメカニカルフィルタへ、固体除去フィルタ及び/又はメカニカルフィルタから複数の担体を有する反応器へ、複数の担体を有する反応器から生物学的フィルタへ、生物学的フィルタから再びリザーバへ流れ得る。
【0182】
本発明の原理によるRASは更に、硝化ユニット、酸素化ユニット、pH制御ユニット、温度制御ユニット、及び水処理ユニットのうちの少なくとも1つを含み得る。硝化ユニットは、生物学的、化学的又は物理的手段によってアンモニアを除去可能な任意の硝化エンティティを含み得る。例えば、それは硝化細菌、又は、ゼオライトなど、アンモニアを吸着するために使用される適切な鉱物を含み得る。酸素化ユニットは、曝気及び酸素化を介して、RAS水の再酸素化を実行し得る。曝気空気は、水カラムにおいて小さい泡を生成するエアストーン又は同様のデバイスを通じてポンピングされ得、この結果、酸素が水に溶解され得る表面積が高くなる。追加的に又は代替的に、水は純粋な酸素をポンピングすることによって酸素化され得る。pH制御ユニットは、RAS水のpHを好適な範囲に維持するよう構成されている。pH制御ユニットは典型的には、これらに限定されないが、石灰(CaCO3)又は水酸化ナトリウム(NaOH)などのアルカリ性化合物を循環水の一部に導入するために動作する。pHはまた、充填カラムにおいてCO2を脱気することによって、又は、エアレータを用いて制御され得る。温度制御ユニットは、浸漬ヒーター、ヒートポンプ、チラー、及び熱交換器のうちの少なくとも1つを含み得る。水処理ユニットは、RAS水において自由に浮遊するウイルス及び細菌の数を低減するよう構成されている。水処理ユニットは、紫外線(UV)及び/又はオゾン水処理システムを含み得る。
【0183】
いくつかの実施形態によれば、RASは更に、水の部分の流れをリザーバから当該追加ユニットに誘導するための手段を含む。ユニットは更に、固体除去フィルタ、メカニカルフィルタ、生物学的フィルタ、及び/又は、複数の担体を有する反応器と流体流れ連通し得、当技術分野において知られている再循環水に沿って配置され得る。
【0184】
リザーバから、又は、複数の担体を有する反応器、固体除去フィルタ、メカニカルフィルタ、硝化ユニット、酸素化ユニット、pH制御ユニット、温度制御ユニット、及び/又は、水処理ユニットを含むRASシステムの異なるユニットの間で水の一部を誘導するための手段は、ポンプ、チューブ、バルブ、制御ユニット、及びそれらの任意の組み合わせから選択され得る。
【0185】
上で言及されたように、本発明は更に、有害な味又は臭気化合物(TOC)を吸着するよう構成されている疎水剤及び親水コロイドを含む複数の担体を含む生物活性フィルタが提供され、担体は、当該TOCを分解又は変換することが可能である微生物のコロニー形成に適合され、当該生物活性フィルタは、有害な味又は臭気化合物(TOC)を水産養殖システムの水から除去することに使用される。
【0186】
本発明の生物活性フィルタにおける使用に好適な担体の組成物、成分の濃度、担体の他の特性、例えば粒子サイズ、及びそれらの製造プロセスは、TOC除去の方法に関して実施形態に関連して上で詳述したのと同一であり得る。
【0187】
いくつかの実施形態において、生物活性フィルタは、ボディ、入口及び出口を含み、入口及び出口は、それに水を通過させるのに好適であり、水は、上向流、下向流、又は横方向、又は当技術分野において知られている任意の好適な角度で生物活性フィルタボディを通じて流れる。生物活性フィルタは、上で詳細に説明されたように、これらに限定されないが、充填床反応器、固定床反応器、散水濾床反応器、移動床反応器、回転床反応器、及び流動床反応器から選択される反応器の形態であり得る。特定の実施形態によれば、生物活性フィルタは、充填床反応器(すなわちカラム)の形態である。
【0188】
生物活性フィルタ内の担体の数は、フィルタの体積に比例するべきである。いくつかの実施形態において、生物活性フィルタは、フィルタの体積1Lあたり少なくとも100の担体を含む。更なる実施形態において、生物活性フィルタは、フィルタの体積1Lあたり少なくとも200の担体を含む。なお更なる実施形態において、生物活性フィルタは、フィルタの体積1Lあたり少なくとも500の担体を含む。複数の担体は、生物活性フィルタ内に固定化され得る。複数の担体の当該固定化は、処理される水をフィルタに流すことを可能にし、担体は、水がそれを流れるときに、著しく移動しない。
【0189】
本明細書及び添付の請求項において使用される単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上別段の明らかな定めが無い限り、複数の言及を含む。従って、例えば、「粒子」という言及は、複数のそのような粒子、及び、当業者に知られているその同等物などを含む。「及び」という用語又は「又は」という用語は一般に、文脈上別段の明らかな定めが無い限り、「及び/又は」を含む意味で採用されることに留意されるべきである。
【0190】
本明細書において使用される「約」という用語は、量、時間長、及び同様のものなどの測定可能値に言及するとき、開示された方法を実行するのに適切な変動である、指定された値からの±20%、より好ましくは±5%、更により好ましくは±1%、なお更に好ましくは±0.1%の変動を包含することが意図される。
【0191】
以下の例は、発明のいくつかの実施形態をより完全に例示するために存在する。しかしながら、それらは決して、発明の広い範囲を制限するものとして解釈されるべきでない。当業者であれば、発明の範囲から逸脱することなく、本明細書において開示される原理の多くの変形形態及び修正形態を容易に考案し得る。
例
【0192】
例1:油-親水コロイド担体の調製
1%(w/w)の乳化剤(Tween(登録商標)80、シグマ)を含む親水コロイド溶液に、精製された食用大豆油を乳化することによって、40%(w/w)までの油を含む担体が調製された。親水コロイドは、蒸留水に溶解された(1%w/w)、61%マンヌロン酸及び39%グルロン酸(シグマ、LV、ミズーリ州セントルイス)を含む、分子量60~70kDaのアルギン酸塩である。担体が形成されるまで(約30分間)、乳化された溶液が、1%(w/w)塩化カルシウムを含む、撹拌された架橋溶液に落下された。この手順の結果、平均直径約4mmの球形担体(滴下する溶液1mlあたり約15の担体)を生成した自発的架橋反応が生じた。
【0193】
例2:ゲオスミン及びMIB除去に対する、担体の油含有量の効果
例1において合成された担体によるゲオスミン及びMIBの除去が、異なる油含有量の担体を使用して試験された。油含有量0、10、20、30、及び40%(w/w)の新たに調製された担体が、(TOCの蒸発を防止するために)気密ブチルセプタムによって密封されることにより、セラムボトルにおいて、ゲオスミン又はMIBのいずれかを追加した50mlの無菌DDW(再蒸留水)と共に、(生物活性を回避する、又は少なくとも最小化するために)無菌的にインキュベートされた。マグネチックスターラを使用して、すべてのサンプルが、室温で24時間にわたって穏やかに混合された。
【0194】
水におけるインキュベーションの24時間後、TOC濃度がGC-FID(水素炎イオン化検出器を有するガスクロマトグラフィ)によって測定された。担体における油のレベルが30%の濃度まで増加することに伴い、脱イオン化水からの両方の化合物の除去が増加することが分かった(
図1A及び1B)。30%(w/w)の場合と比較して、40%(w/w)の油を含む担体のTOC吸着効率の著しい増加は確認されなかった。追加的に、30%油含有担体と比較して、24時間のインキュベーション後に、40%の油含有担体の機械的強度の著しい低下が検出された。
【0195】
例3:ゲオスミン及びMIB除去に対する水産養殖システムからの水の効果
30%(w/w)油含有量を有する担体は、50mlの無菌再蒸留水、又は、再循環水産養殖システムから取得された水のいずれかと共に無菌的にインキュベートされた。それらは200担体/Lの濃度でインキュベーション容器に添加された。ゲオスミン及びMIBレベルが、試験の開始時(担体の添加前)及び24時間のインキュベーション後に判定された。任意の生物活性を回避するために、水産養殖システムからの水が、限外濾過及び滅菌によって処理された。水産養殖システムに由来する水における担体によるゲオスミン及びMIB吸着は、蒸留水の場合と同様であることが分かった(
図2)。
【0196】
例4:油-親水コロイド担体によるゲオスミン及びMIB除去に対する吸着微生物の効果
ゲオスミン及びMIBの微生物分解が、比較的高濃度(50、000ng/L)のゲオスミン又はMIBのいずれかを含む再蒸留水において、30%(w/w)の油含有量を有する担体を事前にインキュベーションすることによって検査された。これらの条件下での24時間のインキュベーション後に、担体は、ゲオスミン及びMIB分解菌を含むことが知られている、再循環水産養殖システムからの粗スラッジを含む媒体においてインキュベートされた。24時間後、担体は洗浄され、マグネチックスターラを使用して、気密性のセラムボトルにおいてインキュベートされ、ゲオスミン及びMIBの存在下で48時間にわたって穏やかに混合された。スラッジに晒されない、30%油を有する標準的担体が対照として使用された。担体を有しない追加の対照が、他の除去プロセス(隔壁への吸着、揮発)を説明するために使用された。スラッジに晒されていない担体とは対照的に、スラッジに晒された担体を使用したとき、48時間のインキュベーション後に、水からゲオスミン及びMIBの両方が完全に除去されることが分かった(
図3A及び3B)。
【0197】
担体の微生物組成は、メタゲノム解析によって判定された。硝酸塩の還元、及び、ゲオスミン及びMIBの分解の両方が可能である細菌が担体の表面で成長した証拠が発見された。担体は主に、プロテオバクテリアによってコロニー形成され(80%の相対的存在量)、ベータプロテオバクテリアがもっとも優位のサブクラスであった(40%の相対的存在量)。後者の分類群は、多くの硝酸塩還元細菌種、及び、テルペン分解細菌を有することが知られている。存在量差異解析により、脱窒性条件下で、テルペン(ゲオスミン及びMIBを含む)分解に特化した細菌分類族であるタウエラ族の存在量の間に正の相関が明らかになった。
【0198】
例5:TOC分解菌をコロニー形成する油-親水コロイド担体の能力に対する水の流れ方式の効果
異なる水の流れ方式を使用するときの、ゲオスミン及びMIB分解細菌を形成又はコロニー形成する油-親水コロイド担体の能力が、上向流反応器(カラム)及び移動床(MB)反応器を動作させることによって評価された。移動床方式において、水は球形容器内を環状の方式で流れる。水は浸漬ポンプによって循環される。上向流方式において、水は、蠕動ポンプによって、1Lカラムの底から流れる。この実験において使用される水は、水産養殖システムから得られた。CFU(コロニー形成ユニット;細胞/ml)が、0.1mlの溶解された担体(0.1mL)が植え付けられ、かつ、制御された環境下で48時間インキュベートされたペトリ皿上に形成された可視細菌コロニーをカウントすることによって計算された。次に、コロニーの数が、1mlを占めるように、10倍に乗算された。移動床反応器を(
図4)を使用するとき、より大きい細菌集団が取得されることが分かった。作用の理論又は機構によって拘束されることを望まないが、2つの動作方式によって提供される細菌増殖条件の主な違いは、溶解された酸素の濃度であると考えられる。MB方式において、高い酸素濃度が維持され、一方、カラム上向流方式において、酸素濃度は、無視できるレベルまで下がる。したがって、細菌集団サイズが特定の限界内に維持される必要があるとき、特に水が上向流方式に循環されるカラム反応器が好ましい。
【0199】
例6:油-親水コロイド担体で充填されたカラムによる長期間のゲオスミン及びMIB除去
油-親水コロイド担体の長期間の活性が、1Lの体積を有する、30%油含有担体50グラムを含む上向流反応器(カラム)の操作によって判定された。反応器は、5時間及び10時間の水理学的滞留時間(HRT)で操作され、(各々)1000ng/Lのゲオスミン及びMIBを追加された租水産養殖用水を供給された。同一の水理学的滞留時間で操作された、標準のアルギン酸塩担体(油を有しない)を入れられた2つの追加のカラムが対照として機能した。8週から10時間HRTにわたる、これらのシステムの操作中、以下のことが分かった。(a)30%の油を含む親水コロイド担体が、油を有しない親水コロイド担体と比較して、ゲオスミン及びMIBの長期間の除去が可能であった(
図5A及び5B)。(b)ゲオスミン及びMIBの細菌分解が、確認されたゲオスミン及びMIB除去の基礎である。なぜなら、これらの化合物の除去の合計は、担体の吸着容量を遥かに超えているからである。(c)ゲオスミン及びMIB除去に加えて、担体は、水から硝酸塩を除去することが分かった(
図5C))。作用の理論又は機構によって拘束されることを望まないが、硝酸塩の除去は、流入液のものより著しく高いカラムの廃液pH値によって支持されるように、脱窒菌の活性によって説明され得る(
図5D)。(d)10時間HRTのカラムの操作は、5時間HRTの操作より効率的なゲオスミン除去をもたらした(
図5E)。しかしながら、10時間HRTの操作はまた、硝酸塩濃度を非常に少ない量に減少させた。これは、水産養殖システムにおいて望ましくない。なぜなら、有毒で生態学的に危険な化合物、例えば硫化物などの形成をもたらし得るからである。5時間HRTのカラムの操作は、硝酸塩濃度のより少ない減少をもたらした。
【0200】
例7:ワックス-油-親水コロイド担体
油及び親水コロイドに加えてワックスを含む担体によるゲオスミンの除去が試験された。試験された担体は以下の組成を有する。
【0201】
アルギン酸塩溶液(1%)、30%蜜蝋;64%蜜蝋、30%ヒマワリ油、5%アルギン酸塩粉末;69%蜜蝋、30%ヒマワリ油、1%アルギン酸塩粉末;及び64%蜜蝋、30%ヒマワリ油、1%アルギン酸塩粉末、5%ベントナイト粉末。
【0202】
ワックス含有担体は以下のように調製された。
【0203】
ワックスは融解するまでホットプレート上で加熱された。親水コロイド粉末は次に、融解したワックスに添加され、高温の混合物がモールド内に注がれ、凝固するまでそこで放置した。凝固後、担体はモールドから除去され、コンテナに格納され、更なる使用まで冷蔵された。
【0204】
ワックス及び油含有担体は以下のように調製された。
【0205】
70~80℃の温度に到達するまで、油がホットプレート上で加熱された。ワックスは油に徐々に添加された。ワックスが完全に溶解した後に、(必要な場合)乳化剤が添加された。次に、アルギン酸塩溶液又はアルギン酸塩粉末及びベントナイトが混合物に添加された。均質な混合物が取得されるまで、混合物は加熱撹拌器上で混合された。
【0206】
高温の均質な混合物は次に、モールド上に注がれ、凝固が達成されるまで室温で冷却された。凝固後、担体はモールドから除去され、コンテナに格納され、更なる使用まで冷蔵された。
【0207】
担体(3.5g/L)が、ゲオスミン(1000ng/L)を追加された無菌DDW又は無菌RAS水においてインキュベートされた。インキュベーションが、室温、90rpmで、24時間にわたって、オービタルシェーカにおいて実行された。溶液におけるゲオスミン濃度が、0時間に、及び、インキュベーションの24時間後に(2連で)判定された。担体を有しないボトルが対照として使用された。(例1の担体とも比較される)担体によるゲオスミン除去効率が表1にまとめられる。
【0208】
表1:ワックス含有担体によるゲオスミンの除去効率
【表1】
除去効率とは、インキュベーション中に溶液から除去されたゲオスミンの%を指す。
【0209】
標準偏差(SD)が%として表される。
【0210】
50g(湿潤重量)のワックスベースの担体で充填された3つの上向流カラム(1.3L)によるRAS水からのMIB及びゲオスミンの除去が更に試験され、例1の担体と比較された。試験されたキャリアは、69%アルギン酸塩溶液(1%)、30%ヒマワリ油、1%Tween(登録商標)80;69%蜜蝋、30%ヒマワリ油、1%アルギン酸塩粉末;64%蜜蝋、30%ヒマワリ油、1%アルギン酸塩粉末、5%ベントナイト粉末を含む。
【0211】
各カラムは、蠕動ポンプによって、各々1000ng/Lのゲオスミン及びMIBで改変された水産養殖再循環システムに由来する水を供給された。水理学的滞留時間(HTR)は4.3時間であった。追加のカラムが、同様の条件で、担体無しで操作され、対照として機能した。上向流カラム実験の結果が
図6A~6Bに示される。各値は、反復サンプルの平均を表す。標準偏差は5%より下であった。
【0212】
本発明は具体的に記載されたが、当業者であれば、多くの変形及び修正が行われ得ることを理解するであろう。したがって、発明は、具体的に記載された実施形態に制限されるものと解釈されず、発明の範囲及び概念は、以下の請求項を参照して容易に理解されるであろう。
【国際調査報告】