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特表2024-514449水中の静止物体の表面の清浄度の監視
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】水中の静止物体の表面の清浄度の監視
(51)【国際特許分類】
   B63C 11/48 20060101AFI20240326BHJP
   A01K 61/60 20170101ALI20240326BHJP
   B63B 79/10 20200101ALI20240326BHJP
   B63B 59/06 20060101ALI20240326BHJP
   B63B 35/00 20200101ALI20240326BHJP
【FI】
B63C11/48 Z
A01K61/60 324
B63B79/10
B63B59/06 Z
B63B35/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558620
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(85)【翻訳文提出日】2023-09-22
(86)【国際出願番号】 EP2022057632
(87)【国際公開番号】W WO2022200430
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】21386022.4
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21386042.2
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519316391
【氏名又は名称】ヨツン アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】ジョアナ コスタ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス クラップ
(72)【発明者】
【氏名】セルジュ パエレリ
(72)【発明者】
【氏名】チャルタン トビアス ボーマン
(72)【発明者】
【氏名】シームス マイケル ジャクソン
(72)【発明者】
【氏名】マノリス レバンティス
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104CC02
2B104CC35
2B104CG11
2B104CG17
(57)【要約】
水中の静止物体の表面の清浄度を監視するためのコンピュータ実行方法。方法は、コンピューティングデバイスで実行され、静止物体の環境条件に関連する環境データをコンピューティングデバイスのメモリから検索することと、少なくとも環境データに基づいて、表面がさらされるファウリングのレベルを示すファウリング値を決定することと、静止物体の表面に関連するファウリングに対する耐性を規定するファウリング防止値を決定することと、ファウリング防止値及びファウリング値を使用してファウリングリスク値を決定することによって、静止物体の表面のファウリングのリスクのレベルを確認することと、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中の静止物体の表面の清浄度を監視するためのコンピュータ実行方法であって、コンピューティングデバイスで実行され、
前記静止物体の環境条件に関連する環境データをコンピューティングデバイスのメモリから検索することと、
少なくとも前記環境データに基づいて、前記表面がさらされるファウリングのレベルを示すファウリング値を決定することと、
前記静止物体の表面に関連するファウリングに対する耐性を規定するファウリング防止値を決定することと、
前記ファウリング防止値及び前記ファウリング値を使用してファウリングリスク値を決定することによって、前記静止物体の表面のファウリングのリスクのレベルを確認することと、
を備える方法。
【請求項2】
前記環境データは、一つ以上の環境パラメータの各々に関連する値を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記環境データは、前記静止物体の地理的位置に関する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記環境データは、
前記静止物体の一つ以上のセンサと、
前記静止物体の表面をクリーニングするように構成されたクリーニングロボットに設けられた一つ以上のセンサと、
前記静止物体の表面を検査するように構成された遠隔操作水中ビークルの一つ以上のセンサと、のうちの少なくとも一つによって検知される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
複数の地理的位置に関連する環境データは、前記メモリに記憶され、前記静止物体の地理的位置に関連する環境データは、前記静止物体の地理的位置を使用して検索される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記ファウリング値は、サンプリング時間に前記表面がさらされるファウリングのレベルを示す瞬時ファウリング値であり、前記瞬時ファウリング値は、前記環境データにおいて規定される少なくとも一つの環境パラメータを含む複数のリスクパラメータの値の加重平均を計算することによって決定される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ファウリングリスク値は、(i)各々が期間内のそれぞれのサンプリング時間における前記静止物体の表面のファウリングのリスクのレベルを確認する複数の瞬時ファウリングリスク値及び(ii)前記期間に関連する時間係数に基づいて決定される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ファウリングリスク値が所定のしきい値を超えたことを判定することによって高リスクファウリング状態を識別し、それに応答して制御信号を出力することを更に備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ファウリングリスク値を出力することを更に備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ファウリングリスク値を前記コンピューティングデバイスの出力デバイスに出力すること又は前記ファウリングリスク値を遠隔コンピューティングデバイスに出力することを更に備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
制御動作が実行されることのユーザ確認を受信することに依存して制御信号を出力することを更に備える、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記静止物体の表面の検査を開始するために、前記制御信号を、前記静止物体の表面をクリーニングするように構成された遠隔操作水中ビークル又はクリーニングロボットに出力することを備える、請求項8又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記静止物体の表面の検査を開始するようにユーザに注意喚起するために、前記制御信号を、前記コンピューティングデバイスの出力装置又は前記静止物体の遠隔装置に出力することを備える、請求項8又は11に記載の方法。
【請求項14】
前記静止物体の表面のクリーニングを開始するために、前記制御信号を、前記静止物体の表面をクリーニングするように構成されたクリーニングロボットに出力することを備える、請求項8又は11に記載の方法。
【請求項15】
前記静止物体又はオンショア監視ステーションは、前記コンピューティングデバイスを備える、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記コンピューティングデバイスは、前記静止物体の表面をクリーニングするように構成されたクリーニングロボットであり、
前記静止物体の表面の検査を開始するために、前記制御信号を前記クリーニングロボットの検査装置に出力すること、又は、
前記静止物体の表面のクリーニングを開始するために、前記制御信号を前記クリーニングロボットのクリーニング装置に出力することを備える、請求項8又は11に記載の方法。
【請求項17】
前記制御信号の出力は、制御動作が実行されることのユーザ確認を受信することに更に基づく、請求項12~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ファウリング防止値は、ファウリングに対する前記表面の魅力を規定する値に基づいて決定される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
ファウリングに対する前記表面の魅力を規定する値は、(i)前記表面の表面エネルギー、(ii)前記表面のトポグラフィー、(iii)前記表面の多孔性、(iv)前記表面の弾性及び(v)前記表面の色のうちの一つ以上に基づいて決定される、 請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ファウリング防止値は、前記表面を移動する水の前記表面への影響を規定する値に基づいて決定される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記表面を移動する水の前記表面への影響を規定する値は、水の速度並びに(i)前記表面の表面エネルギー、(ii)前記表面のトポグラフィー及び(iii)前記表面の多孔性のうちの一つ以上を使用して決定される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記表面に設けられるコーティングは、研磨コーティングであり、前記表面を移動する水の前記表面への影響を規定する値は、前記コーティングに関連する研磨レートを使用して決定される、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記表面に設けられるコーティングは、ファウリング防止剤を含み、前記ファウリング防止値は、前記ファウリング防止剤の効果を規定する値に基づいて決定される、請求項17~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記一つ以上の環境パラメータは、(i)前記静止物体の水生環境の温度に関するパラメータ、(ii)前記静止物体の前記水生環境の水深に関するパラメータ、(iii)前記静止物体と海岸線との間の距離に関するパラメータ、(iv)日の長さに関するパラメータ、(v)前記水生環境の光強度に関するパラメータ、(vi)前記水生環境のクロロフィルの量に関するパラメータ、(vii)前記水生環境の塩分濃度に関するパラメータ、(viii)前記水生環境のpHレベルに関するパラメータ、(ix)前記水生環境の栄養水準に関するパラメータ、(x)前記水生環境の二酸化炭素量に関するパラメータ、(xi)前記水生環境の水に溶解している気体酸素量に関するパラメータ及び(xii)前記水生環境の水速に関するパラメータの一つ以上を含む、請求項2又はそれに従属する請求項に記載の方法。
【請求項25】
定期的に実行される、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記コンピューティングデバイスのプロセッサによって実行されるときに、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法を前記プロセッサに実行させる命令を備えるコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項27】
水中の静止物体の表面の清浄度を監視するためのコンピューティングデバイスであって、プロセッサを備え、前記プロセッサは、
前記静止物体の環境条件に関連する環境データをコンピューティングデバイスのメモリから検索し、
少なくとも前記環境データに基づいて、前記表面がさらされるファウリングのレベルを示すファウリング値を決定し、
前記静止物体の表面に関連するファウリングに対する耐性を定義するファウリング防止値を決定し、
前記ファウリング防止値及び前記ファウリング値を使用してファウリングリスク値を決定することによって、前記静止物体の表面のファウリングのリスクのレベルを確認するように構成された、コンピューティングデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水中の静止物体の表面の清浄度の監視に関する。
【背景技術】
【0002】
海水に浸漬されている全ての表面は、バクテリア、珪藻、藻類、ムール貝、チューブワーム及びフジツボのような生物によるファウリングを経験する。海洋生物付着は、海水に浸漬されている構造物上に微生物、藻類及び動物が望ましくない形で蓄積することである。汚損生物は、ファウリングコミュニティを形成しながら共生するミクロファウリング(バクテリア及び二原子バイオフィルム)とマクロファウリング(例えば、大藻、フジツボ、イガイ、チューブワーム、フナクイムシ)に分けられる。ファウリングプロセスを単純化して概観すると、最初のステップは、有機分子が表面に付着するコンディショニングフィルムの形成である。これは、表面が海水に浸漬されると瞬時に起こる。第1の付着物であるバクテリア及び珪藻は、1日以内に付着する。第2の付着物である大型藻類の胞子及び原生動物が、1週間以内に付着する。最後に、第3の付着物であるマクロファウリングの幼生が、2~3週間で付着する。
【0003】
海洋生物付着の発生は、既知の問題である。海水に浸漬されている静止した人工物のファウリングは、設置物の重量及び直径の増加による構造物への負荷の増加並びに表面の粗さの増加及び構造物の体積の増加による波及び潮流への負荷の増加につながる。これは、構造物の安定性を低下させるので回避する必要がある。また、汚損生物は、塗膜の中にまで繁殖し、塗膜を損傷して腐食につながることもある。これは、構造体が強度を失うとともに崩壊する可能性があるので有害である。
【0004】
静止した人工物のファウリング防止は、通常、ファウリング防止コーティング又は他のタイプのコーティングをクリーニングと組み合わせて施すことによって行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
海洋設備、例えば、石油、ガス、風力、潮汐及び魚の養殖を製造するとき、どのようにファウリング防止を行うかが決定される。ファウリング防止コーティング又はクリーニングを伴う別のタイプのコーティングのいずれかが選択される。これらの対象物の寿命は、20年以上になることもある。この間、水に浸される部分に塗られたコーティングを維持又は変更することは不可能である。
【0006】
コーティングは、通常、静止物体が置かれる環境に応じて指定される。しかしながら、施工前に、静止物体が置かれる場所を、製造及びコーティングの適用後に変更することができる。ファウリング防止コーティングの寿命は、通常3~7年程度であるが、季節と年の両方によって変化する環境要因の影響を受けるので、寿命が変化する。コーティングの寿命を超えるとき、浸漬されているパーツは、ファウリングを防止しなくなる。
【0007】
本発明者は、静止物体の全寿命期間中に十分なファウリング防止を維持するためのコーティング及びクリーニングスケジュールを設計するとともに指定することが困難であることを確認した。海洋設備の検査に時間及び資源を要するので、できるだけ検査を行わないことが望ましい。
【0008】
したがって、適切な時期に適切な措置を講じることができるようにするために静止物体を監視するとともにファウリングのリスクがあるときを予測する監視システムが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の他の態様によれば、水中の静止物体の表面の清浄度を監視するためのコンピュータ実行方法であって、コンピューティングデバイスで実行され、静止物体の環境条件に関連する環境データをコンピューティングデバイスのメモリから検索することと、少なくとも環境データに基づいて、表面がさらされるファウリングのレベルを示すファウリング値を決定することと、静止物体の表面に関連するファウリングに対する耐性を規定するファウリング防止値を決定することと、ファウリング防止値及びファウリング値を使用してファウリングリスク値を決定することによって、静止物体の表面のファウリングのリスクのレベルを確認することと、を備える方法を提供する。
【0010】
環境データは、一つ以上の環境パラメータの各々に関連する値を含んでもよい。
【0011】
環境データは、静止物体の地理的位置に関してもよい。
【0012】
環境データは、静止物体上の一つ以上のセンサと、静止物体の表面をクリーニングするように構成されたクリーニングロボットに設けられた一つ以上のセンサと、静止物体の表面を検査するように構成された遠隔操作水中ビークルの一つ以上のセンサと、のうちの少なくとも一つによって検知されてもよい。
【0013】
複数の地理的位置に関連する環境データは、メモリに記憶されてもよく、静止物体の地理的位置に関連する環境データは、静止物体の地理的位置を使用して検索されもよい。
【0014】
ファウリング値は、サンプリング時間に表面がさらされるファウリングのレベルを示す瞬時ファウリング値であってもよく、瞬時ファウリング値は、環境データにおいて規定される少なくとも一つの環境パラメータを含む複数のリスクパラメータの値の加重平均を計算することによって決定されてもよい。
【0015】
ファウリングリスク値は、(i)各々が期間内のそれぞれのサンプリング時間における静止物体の表面のファウリングのリスクのレベルを確認する複数の瞬時ファウリングリスク値及び(ii)期間に関連する時間係数に基づいて決定されてもよい。
【0016】
方法は、ファウリングリスク値が所定のしきい値を超えたことを判定することによって高リスクファウリング状態を識別し、それに応答して制御信号を出力することを更に備えてもよい。
【0017】
方法は、ファウリングリスク値を出力することを更に備えてもよい。
【0018】
ファウリングリスク値をコンピューティングデバイスの出力デバイスに出力すること又はファウリングリスク値を遠隔コンピューティングデバイスに出力することを更に備えてもよい。
【0019】
方法は、制御動作が実行されることのユーザ確認を受信することに依存して制御信号を出力することを更に備えてもよい。
【0020】
方法は、静止物体の表面の検査を開始するために、制御信号を、静止物体の表面をクリーニングするように構成された遠隔操作水中ビークル又はクリーニングロボットに出力することを備えてもよい。
【0021】
方法は、静止物体の表面の検査を開始するようにユーザに注意喚起するために、制御信号を、コンピューティングデバイスの出力装置又は静止物体の遠隔装置に出力することを備えてもよい。
【0022】
方法は、静止物体の表面のクリーニングを開始するために、制御信号を、静止物体の表面をクリーニングするように構成されたクリーニングロボットに出力することを備えてもよい。
【0023】
静止物体又はオンショア監視ステーションは、コンピューティングデバイスを備えてもよい。
【0024】
コンピューティングデバイスは、静止物体の表面をクリーニングするように構成されたクリーニングロボットであってもよく、方法は、静止物体の表面の検査を開始するために、制御信号をクリーニングロボットの検査装置に出力すること、又は、静止物体の表面のクリーニングを開始するために、制御信号をクリーニングロボットのクリーニング装置に出力することを備えてもよい。
【0025】
制御信号の出力は、制御動作が実行されることのユーザ確認を受信することに更に基づいてもよい。
【0026】
ファウリング防止値は、ファウリングに対する表面の魅力を規定する値に基づいて決定されてもよい。
【0027】
ファウリングに対する表面の魅力を規定する値は、(i)表面の表面エネルギー、(ii)表面のトポグラフィー、(iii)表面の多孔性、(iv)表面の弾性及び(v)表面の色のうちの一つ以上に基づいて決定されてもよい。
【0028】
ファウリング防止値は、表面を移動する水の表面への影響を規定する値に基づいて決定されてもよい。
【0029】
表面を移動する水の表面への影響を規定する値は、水の速度並びに(i)表面の表面エネルギー、(ii)表面のトポグラフィー及び(iii)表面の多孔性のうちの一つ以上を使用して決定されてもよい。
【0030】
表面に設けられるコーティングは、研磨コーティングであってもよく、表面を移動する水の表面への影響を規定する値は、コーティングに関連する研磨レートを使用して決定されてもよい。
【0031】
表面に設けられるコーティングは、ファウリング防止剤を含んでもよく、ファウリング防止値は、ファウリング防止剤の効果を規定する値に基づいて決定されてもよい。
【0032】
一つ以上の環境パラメータは、(i)静止物体の水生環境の温度に関するパラメータ、(ii)静止物体の水生環境の水深に関するパラメータ、(iii)静止物体と海岸線との間の距離に関するパラメータ、(iv)日の長さに関するパラメータ、(v)水生環境の光強度に関するパラメータ、(vi)水生環境のクロロフィルの量に関するパラメータ、(vii)水生環境の塩分濃度に関するパラメータ、(viii)水生環境のpHレベルに関するパラメータ、(ix)水生環境の栄養水準に関するパラメータ、(x)水生環境の二酸化炭素量に関するパラメータ、(xi)水生環境の水に溶解している気体酸素量に関するパラメータ及び(xii)水生環境の水速に関するパラメータの一つ以上を含んでもよい。
【0033】
方法は、定期的に実行されてもよい。
【0034】
本開示の他の態様によれば、コンピューティングデバイスのプロセッサによって実行されるときに、明細書に記載の方法をプロセッサに実行させる命令を備えるコンピュータ可読記憶媒体を提供する。
【0035】
命令を、ディスク、CD-ROM又はDVD-ROMのようなキャリア、読み取り専用メモリ(ファームウェア)のようなプログラムされたメモリ又は光信号キャリア若しくは電気信号キャリアのようなデータキャリア上で提供してもよい。本開示の実施形態を実施するためのコード(及び/又はデータ)は、C言語のような通常の(インタープリタ型又はコンパイル型)プログラミング言語のソースコード、オブジェクトコード若しくは実行可能コード、又は、アセンブリコード、ASIC(特定用途向け集積回路)又はFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)を設定若しくは制御するためのコード、又は、ハードウェア記述言語のコードを備えてもよい。
【0036】
本開示の別の態様によれば、水中の静止物体の表面の清浄度を監視するためのコンピューティングデバイスであって、プロセッサを備え、プロセッサは、本明細書に記載される方法のいずれかを実行するように構成された、コンピューティングデバイスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
本開示を更によく理解するとともに実施形態がどのように実施され得るかを示すために、添付図面を参照する。
【0038】
図1a図1aは、静止物体及びロボットを示す。
図1b図1bは、静止物体群と通信を行う監視ステーションを示す。
図2図2は、ロボットの概略ブロック図である。
図3図3は、コンピューティングデバイスの概略ブロック図である。
図4図4は、水中の静止物体の表面の清浄度を監視する方法を示す図である。
図5a図5aは、ファウリング値を決定する方法を示す。
図5b図5bは、ファウリング値を決定する方法を示す。
図6a図6aは、環境パラメータの値が時間と共にどのように変化するかを示す。
図6b図6bは、ファウリング値が時間と共にどのように変化するかを示す。
図7a図7aは、ファウリング値に対する水速パラメータの寄与を示す。
図7b図7bは、ファウリング値に対する海面水温パラメータの寄与を示す。
図7c図7cは、ファウリング値に対する海岸線までの距離の寄与を示す。
図8a図8aは、本開示の実施形態における監視されている水中の静止物体の表面の清浄度に対応して行うべき動作のユーザ確認に応答して実行してもよい例示的な制御動作を示す。
図8b図8bは、本開示の実施形態における監視されている水中の静止物体の表面の清浄度に対応して自動的に実行してもよい例示的な制御動作を示す。
図8c図8cは、本開示の実施形態における監視されている水中の静止物体の表面の清浄度に対応して行うべき動作のユーザ確認に応答してクリーニングロボットによって実行してもよい例示的な制御動作を示す。
図8d図8dは、本開示の実施形態における監視されている水中の静止物体の表面の清浄度に対応してクリーニングロボットによって自動的に実行してもよい例示的な制御動作を示す。
図9図9は、クリーニングロボットの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、実施形態について例示的に説明する。
【0040】
図1aは、海底油田プラットフォームの形をした静止物体100の例を示す。静止物体100は、水面下にあるように水に浸漬されている(すなわち水没した)表面101を備える。
【0041】
「静止物体」は、少なくとも一つの表面が水に浸かるように部分的又は完全に水に浸かっている人工物体を指す。静止物体は、例えば、川、海、海洋、フィヨルド等であってもよい塩水又は淡水の水生環境に位置することがある。静止物体は、使用中に移動しない。静止物体は、エンジン、モーター等のような自走機構を有していてもよいが、自走機構は、静止物体が動作している位置を変更する必要がある場合にのみ使用される。
【0042】
静止物体は、恒久的な構造物によって水中環境(例えば、海底)の底の地面に固定されてもよく、例えば、静止物体は、石油及び/又はガスプラットフォーム、石油及び/又はガスリグ、風力タービン、橋、水中ケーブル又は水中パイプ等であってもよい。恒久的な構造が静止物体のいかなる動きも阻止することが理解される。
【0043】
静止物体は、水面に浮かぶ物体であってもよい。例えば、静止物体は、恒久的に係留された船舶、沖合生産・貯油出荷施設(FPSO)、浮体式貯蔵積出設備(FSO)、養殖場又はブイであってもよい。したがって、そのような静止物体が水流、潮汐及び/又は環境条件(例えば、風)によって移動することができる又は操業の変更によって必要とされる場合に別の場所に移動することができることが理解される。
【0044】
いくつかの例では、水面に浮かぶ静止物体は、非恒久的な繋留手段(例えば、アンカーに取り付けられたロープ、チェーン又はケーブル)によって水中環境の底の地面に固定されてもよい。
【0045】
静止物体は、クリーニングロボット102を充電するために使用してもよいロボットステーション104(ドッキングステーション)を備えてもよい。ロボットステーション104を、海面上方の静止物体上に配置してもよい。ロボットステーション104は、ロボットによって実行されるクリーニング作業を一時停止させるときにロボット102のパーキングを可能にする。静止物体100の水に浸漬されている表面101のクリーニング中、ロボット102は、海洋生物付着が形成される可能性のある静止物体100の任意の表面(例えば、風車及び石油掘削装置の柱又は杭)を横断してもよい。本明細書では、「クリーニング」という言及は、静止物体100の表面101から汚損生物を除去することを指すために使用され、そのようなクリーニングは、「グルーミング」と呼ばれることもある。静止物体100の表面101の継続的なクリーニングを実行することによって、ロボット102は、典型的には、静止物体100の表面101に付着したファウリングの初期段階(例えば、第1の付着物及び第2の付着物)の除去を実行する。しかしながら、ロボット102によって実行されるクリーニングが第3の付着物及び任意の後続付着物の除去も含み得ることが理解される。
【0046】
図1aに示すように、コンピューティングデバイス106は、例えば、図1bに示すような監視ステーション110のロボット102及び/又はオンショアコンピューティングデバイス108のような遠隔装置と通信を行うために、静止物体(例えば、静止物体のデッキハウス)に設けられてもよい。
【0047】
図1bは、コンピューティングデバイス108を備えるそのような監視ステーション110を示す。コンピューティングデバイス108は、通信ネットワーク112を介して一つ以上の静止物体と通信を行う。
【0048】
本開示の実施形態において、水に浸漬されている静止物体の表面の清浄度を監視するためのコンピュータ実行方法を実行する。以下で更に詳しく説明するように、方法を、ロボット102、静止物体のコンピューティングデバイス106又はオンショアコンピューティングデバイス108で実行してもよい。
【0049】
図1bに示すように、オンショアコンピューティングデバイス108が本明細書に記載のコンピュータ実行方法を実行する実装において、これによって、静止物体のオペレータは、静止物体の浸漬領域の表面状態をリアルタイムで監視することができる。
【0050】
本開示の実施形態は、クリーニングロボット102が設けられた静止物体の水に浸漬されている表面の清浄度を監視することに限定されない。以下で更に詳しく説明するように、そのような静止物体の表面のファウリングのリスクが高いことを検出することに応答して、クリーニングロボットを伴わない他の動作を、検出に応答して行ってもよい。
【0051】
図2は、ロボット102の概略ブロック図である。図2に示すように、ロボット102は、中央処理装置(CPU)202を備えるコンピューティングデバイスである。CPU202は、CPU202に結合されるとともに水中の静止物体100の表面101から付着生物の除去を実行する(回転円筒ブラシの形態をとってもよい)クリーニング装置208を制御するように構成される。
【0052】
本開示の実施形態によれば、CPU202は、水に浸漬されている静止物体100の表面101の清浄度を監視するように構成されたファウリングリスク判定モジュール206を備えてもよい。ファウリングリスク判定モジュール206は、水中表面101の清浄度を動的に監視するように構成されてもよい。ロボット102がファウリングリスク判定モジュール206を備えてもよいが、代替の実施形態において、ファウリングリスク判定モジュール206がロボット102の外部のコンピューティングデバイスの構成要素であってもよいことは、以下から明らかである。
【0053】
CPU202は、電源214(例えば、一つ以上のバッテリー)に結合されている。電源214は、例えば、ロボットステーション104を使用して充電可能であってもよい。ロボット102は、当該技術分野で知られているように、データを記憶するためのメモリ210も備える。
【0054】
図2に示すように、ロボット102は、ファウリングリスク判定モジュール206にセンサ信号を出力するように構成された一つ以上のセンサ212を備えてもよい。本明細書で説明するセンサの各々は、物理的なセンサ(すなわち、物理的な測定器)又は仮想的なセンサ(すなわち、測定値を計算するために複数の物理的なセンサからの検知データを組み合わせるソフトウェア)であってもよい。
【0055】
(一つ以上の)センサ212は、静止物体100の環境条件に関する環境データを検知するように構成された一つ以上のセンサを備えてもよい。
【0056】
例えば、(一つ以上の)センサは、(i)静止物体の水生環境のクロロフィルの量を検知するように構成されたクロロフィルセンサ、(ii)静止物体の水生環境のpHレベルを検知するように構成されたpHセンサ、(iii)リン酸塩、硝酸塩のようなの栄養物を感知するように構成されてもよい、静止物体の水生環境の栄養水準を検知するように構成された栄養センサ、(iv)静止物体の水生環境の光強度を検知するように構成された太陽光強度センサ(v)静止物体の水生環境の塩分濃度を検知するように構成された塩分センサ(例えば、伝導度センサ)、(vi)静止物体の水生環境の温度を検知するように構成された温度センサ、(vii)静止物体の水生環境の二酸化炭素の量を検知するように構成された二酸化炭素センサ、(viii)静止物体の地理的位置を検知するように構成された位置センサ(例えば、GPSセンサ)、(ix)静止物体の水生環境の水中に溶解している気体酸素の量を検知するように構成された溶存酸素センサ、(x)静止物体の水生環境の深さを検知するように構成された深さセンサ及び(xi)静止物体100の水生環境の水の速度を検知するように構成された水速センサのうちの一つ以上を備えてもよい。そのようなセンサは当業者に知られているので、本明細書ではこれ以上詳しく説明しない。
【0057】
上記の位置センサを、静止物体と近くの海岸線との間の距離を判断するために使用することができる。
【0058】
本開示の実施形態において、同一の種類の複数のセンサを使用してもよい。例えば、異なる深さにおける静止物体の水生環境の温度を測定するために、複数の温度センサを使用してもよい。実施形態において、センサの種類に関連する単一の値を提供するために、同一の種類の複数のセンサからの読み取り値を組み合わせてもよい。
【0059】
上述したセンサがロボット102に配置されているものと説明したが、これらのセンサをロボットの外部に配置していてもよい。例えば、これらのセンサを、水に浸漬されている静止物体の表面を検査するように構成された遠隔操作水中ビークルに配置してもよく、これらのセンサを、静止物体100に配置してもよく、これらのセンサを、静止物体100と同一の水生環境の別の物体に配置してもよい。
【0060】
静止物体100に設置されたセンサは、インターフェース216を介してロボット102のファウリングリスク判定モジュール206に直接データを出力してもよい。代替的に、静止物体100に設置されたセンサは、インターフェース216を介してロボット102にデータを中継するコンピューティングデバイス106にデータを出力してもよい。
【0061】
(一つ以上の)センサ212は、画像データを含むカメラ信号を出力するように構成されたカメラを備えてもよい。カメラは、カメラ信号をコンピューティングデバイス106及び/又はコンピューティングデバイス108に出力してもよい。カメラによって、ロボット102は、静止物体100の表面101の目視検査を行うことができる。ロボット102は、目視検査を行うことなく静止物体の表面101を検査してもよい。したがって、カメラに加えて又はカメラの代替として、ロボット102は、電磁装置又は超音波装置のような水に浸漬されている表面の検査を行うための一つ以上の他の検査装置を備えてもよい。
【0062】
いくつかの実施形態において、ロボット102がコンピューティングデバイス106及びコンピューティングデバイス108に対するデータの送受信を行うことを可能にするインターフェース216を設ける。インターフェース216は、ロボットが静止物体のセンサからデータを受信することも可能にする。インターフェース216は、有線インターフェース及び/又は無線インターフェースを備えてもよい。
【0063】
上述したように、いくつかの実施形態において、ファウリングリスク判定モジュールは、静止物体のコンピューティングデバイス106又はオンショアコンピューティングデバイス108の構成要素である。図3は、そのようなコンピューティングデバイスを示す。
【0064】
図3に示すように、コンピューティングデバイス106,108は、中央処理装置(CPU)302を備える。CPU302は、当該技術分野で知られているようなデータを記憶するためのメモリ310及び出力装置312に結合されている。
【0065】
本開示の実施形態によれば、CPU302は、水中の静止物体の表面の清浄度を監視するように構成されたファウリングリスク判定モジュール306を備えてもよい。
【0066】
コンピューティングデバイス106,108は、コンピューティングデバイスがデータの送受信を行うことができるようにするためのインターフェース316を備える。インターフェース316は、コンピューティングデバイス106,108がロボット102(静止物体に存在する場合)からデータを受信すること及び/又は静止物体のセンサからデータを受信することを可能にする。例えば、コンピューティングデバイスは、インターフェース316を介して、上述した環境データを受信してもよい。インターフェース316によって、コンピューティングデバイスは、ロボット102及び/又は静止物体の遠隔操作水中ビークルと通信を行うことも可能にする。
【0067】
出力装置312は、コンピューティングデバイス106,108のユーザに情報を出力するように構成される。例えば、出力装置312は、情報を視覚的に出力するためのディスプレイを備えてもよい。追加的に又は代替的に、出力装置312は、情報を聴覚的に出力するためのスピーカを備えてもよい。
【0068】
上述した環境データの使用は、本明細書で説明する特定の実施形態に限定されるものではなく、環境データを、全ての実施形態で使用してもよい。
【0069】
本開示の実施形態において、水に浸漬されている静止物体の表面の清浄度を動的に監視してもよい。
【0070】
水に浸漬されている静止物体の表面は、通常、コーティングされている。静止物体の表面に存在するコーティングは、単層、同一のコーティングの複数の層又は多層コーティングすなわちコーティング系を含んでもよい。多層コーティングの場合、(プライマーコーティングと呼ばれることもある)最初のコーティングは、防食層であることが多い。プライマーコーティングは、オプションとして、リンクコート又はタイコートによって上塗りされ、その後、ファウリング防止性を有するか否かに関係なく一つ以上の最後のコート又はトップコートによって上塗りされる。別のタイプの多層コーティングにおいて、最初の(プライマー)コートを最後のコート又はトップコートでオーバーコートするだけでもよい。
【0071】
水に浸漬されている静止物体の表面の部分を、単一のコーティング又はコーティング系でコーティングしてもよい。 代替的に、静止物体の表面は、静止物体の異なる部分(例えば、喫水線/スプラッシュゾーン、柱及び杭の垂直断面、FPSOの船体の底部側及び平底)の異なるコーティング又はコーティング系の複数の部分を備えてもよい。静止物体の異なる部分に存在する異なるコーティング又はコーティング系は、異なるタイプ及び/又は異なる厚さであってもよい。
【0072】
水に浸漬されている静止物体のパーツに設けられるコーティングは、コーティングが研磨性か非研磨性かによってクラス分けすることができる。研磨コーティングは,コーティングの寿命の間に膜厚が減少するコーティングである。膜厚の減少は、化学反応、侵食又はその組合せによるものである。非研磨コーティングは、コーティングの寿命中に膜厚が減少しないコーティングである。
【0073】
研磨コーティングは、通常、様々な劣化メカニズムを持つバインダーシステムをベースにしている。自己研磨コーティングも一般的に使用される用語である。ほとんどの場合、劣化は、バインダー系の結合の加水分解であり、その結果、水溶性が増し、コーティングが研磨される。加水分解には、バインダーのポリマー主鎖のペンダント基又は側鎖の加水分解と、バインダーのポリマー主鎖の基の加水分解と、がある。
【0074】
研磨コーティングに存在するバインダーは、例えば、シリル(メタ)アクリレートコポリマー、ロジン系バインダー、(メタ)アクリレートバインダー、主鎖分解性(メタ)アクリレートコポリマー、金属(メタ)アクリレートバインダー、シリル(メタ)アクリレートバインダー、 (メタ)アクリルヘミアセタールエステルコポリマー、ポリ無水物バインダー、ポリオキサレートバインダー、非水分散バインダー、双性イオンバインダー、ポリエステルバインダー、ポリ(エステル-シロキサン)バインダー、ポリ(エステル-エーテル-シロキサン)バインダー又はその混合物を含んでもよい。
【0075】
代表的なシリル(メタ)アクリレートコポリマー及びこれらを含むコーティングは、英国特許第2558739号明細書、英国特許第2559454号明細書、国際特許出願公開第1990/96926号明細書、英国特許第2576431、国際特許出願公開第2010/071180号明細書、国際特許出願公開第2013/073580号明細書、国際特許出願公開第2012/026237号明細書、国際特許出願公開第2005/005516号明細書、国際特許出願公開第2013/000476号明細書、国際特許出願公開第2012/048712号明細書、国際特許出願公開第2011/118526号明細書、国際特許出願公開第0077102号明細書、国際特許出願公開第2019/198706号明細書、国際特許出願公開第03/070832号明細書及び国際特許出願公開第2019/216413号明細書に記載されている。
【0076】
シロキサン部位を有する代表的なシリル(メタ)アクリレートコポリマーは、国際特許出願公開第2011/046087号明細書に記載されている。代表的なロジン系バインダー及びそれを含むコーティングは、国際特許出願公開第1990/96928号明細書、独国特許第102018128725号明細書、独国特許第102018128727号明細書及び国際特許出願公開第97/44401号明細書に記載されている。
【0077】
代表的な(メタ)アクリレートバインダー及びそれを含むコーティングは、独国特許第102018128725a1号明細書、独国特許第102018128727a1号明細書、国際特許出願公開第1990/96928号明細書、国際特許出願公開第2018/086670号明細書及び国際特許出願公開第97/44401号明細書に記載されている。代表的な金属(メタ)アクリレートバインダーは、国際特許出願公開第1990/81495号明細書及び国際特許出願公開第2011/046086号明細書に記載されている。代表的なシリル(メタ)アクリレートバインダーのハイブリッドは、韓国特許出願公開第20140117986、国際特許出願公開第2016/063789号明細書、欧州特許出願公開第1323745号明細書、欧州特許出願公開第0714957号明細書、国際特許出願公開第2017/065172号明細書、特開平10-168350号公報及び国際特許出願公開第2016/066567号明細書に記載されている。代表的なポリ無水物バインダーは国際特許出願公開第2004/096927号明細書に記載されている。代表的なポリオキサレート結合剤は、国際特許出願公開第1990/81495号明細書及び国際特許出願公開第2015/114091号明細書に記載されている。代表的な非水系分散バインダーは、国際特許出願公開第1990/81495に記載されている。代表的な双性イオン結合剤は、国際特許出願公開第2004/018533号明細書及び国際特許出願公開第2016/066567号明細書に記載されている。代表的なポリエステルバインダーは、国際特許出願公開第1990/81495号明細書、欧州特許出願公開第1072625、国際特許出願公開第2007/3995号明細書及び米国特許出願公開第2015/0141562に記載されている。代表的なポリ(エステル-シロキサン)及びポリ(エステル-エーテル-シロキサン)バインダーは、国際特許出願公開第2017/009297号明細書、国際特許出願公開第2018/134291号明細書及び国際特許出願公開第2015/082397号明細書に記載されている。代表的な(メタ)アクリル酸ヘミアセタールエステル共重合体バインダーは、国際特許出願公開第2019/179917号明細書、国際特許出願公開第2016/167360号明細書、欧州特許出願公開第0714957号明細書及び国際特許出願公開第2017/065172号明細書に記載されている。代表的な主鎖分解性(メタ)アクリレートコポリマー結合剤は、国際特許出願公開第2015/010390号明細書、国際特許出願公開第2018/188488号明細書、国際特許出願公開第2018/196401号明細書及び国際特許出願公開第2018/196542号明細書に記載されている。
【0078】
非研磨コーティングは、一般的に、架橋されており、低量のVOC(揮発性有機化合物)を含むことが多い。非研磨コーティングに存在するバインダーは、例えば、ポリシロキサン、シロキサンコポリマー、シリコーンバインダー、エポキシ系バインダー、エポキシシロキサン、ポリウレタン又はその混合物を含んでもよい。
【0079】
代表的なポリシロキサンバインダー及びそれを含むコーティングは、国際特許出願公開第2019101912号明細書、国際特許出願公開第2011/076856号明細書、国際特許出願公開第2014/117786号明細書、国際特許出願公開第2016/088694号明細書及び国際特許出願公開第2013/024106号明細書に記載されている。代表的なシロキサン共重合体バインダーは、国際特許出願公開第2012/130861号明細書及び国際特許出願公開第2013/000479号明細書に記載されている。代表的なエポキシ系バインダー及びそれを含むコーティングは、国際特許出願公開第2018/046702号明細書、国際特許出願公開第2018/210861号明細書、国際特許出願公開第2009/019296号明細書、国際特許出願公開第2009/141438号明細書、欧州特許出願公開第3431560号明細書及び国際特許出願公開第2017/140610号明細書に記載されている。代表的なエポキシシロキサンバインダーは、米国特許出願公開第2009/281207号明細書、国際特許出願公開第2019/205078号明細書及び欧州特許出願公開第1086974号明細書に記載されている。他のタイプのシリコーンバインダーは、典型的には、MQ、DT、MDT、MTQ又はQDT樹脂として示されるシリコーン樹脂である。コーティングは、国際特許出願公開第2019/189412号明細書に記載されているような、リブレット構造の硬化性ポリシロキサンバインダーであってもよい。コーティングは、米国特許出願公開第2018/0229808号明細書に記載されているようなディンプル構造のコーティングであってもよい。そのようなコーティングを、コーティング又は接着箔として設けてもよい。
【0080】
コーティングは、例えば、国際特許出願公開第2018/100108号明細書に記載されているように、ファウリングリリーストップコートを有するリブレット構造の接着箔であってもよい。
【0081】
また、静止物体に設けられるコーティングは、コーティングがファウリング防止剤を含むか否かによってクラス分けされる。ファウリング防止剤を、付着生物に影響を及ぼす、付着生物を忌避する危険な働きをする有機化合物、有機金属化合物又は無機化合物とすることができる。
【0082】
ファウリング防止剤の群は、化学的手段又は生物学的手段によって付着生物の破壊、抑止、無害化、防止又は制御効果の発揮を行うことを意図した物質である殺生物剤である。殺生物剤、ファウリング防止剤、防汚剤、活性化合物、毒性物質という用語は、表面の海洋付着物を防止するために作用する既知の化合物を表すために業界で使用されている。殺生物剤は、無機、有機金属又は有機であってよい。
【0083】
一般的に使用される殺生物剤は、酸化銅(I)、チオシアン酸銅、ジンクピリチオン、銅ピリチオン、ジンクエチレンビス(ジチオカルバメート)[ジネブ]、 2-(tert-ブチルアミノ)-4-(シクロプロピルアミノ)-6-(メチルチオ)-l,3,5-トリアジン[キュブトリン]、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン[DCOIT]、N-ジクロロフルオロメチルチオ-N’ , N’-ジメチル-N-フェニルスルファミド[ジクロロフルアニド]、N-ジクロロフルオロメチルチオ-N’,N’-ジメチル-N-p-トリルスルファミド[トリルフルアニド]、 トリフェニルボランピリジン[TPBP]、4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリル[トラロピリル]、4-[1-(2,3-ジメチルフェニル)エチル]-1H-イミダゾール[メデトミジン]である。
【0084】
物理的な作用様式によってファウリング生物の付着を防止又は低減するファウリング防止剤の群は、シリコーンオイル、親水性改質シリコーンオイル及び疎水性改質シリコーンオイルである。代表的なシリコーンオイルは、国際特許出願公開第2018/134291号明細書に記載されている。
【0085】
研磨コーティングと非研磨コーティングの両方は、殺生物剤、シリコーンオイル又はその混合物のようなファウリング防止剤を含むことができる又は含まないことができる。
【0086】
本開示の実施形態を、水への浸漬中に静止物体のコーティングされた表面の清浄度(すなわち、静止物体に設けられたコーティングの表面の清浄度)又は静止物体のコーティングされていない表面の清浄度を監視するために使用することができる。
【0087】
図4は、ファウリングリスク判定モジュール206,306によって実行される水中の静止物体の表面の清浄度を監視するためのプロセス400のフローチャートを示す。その結果、プロセス400を、コンピューティングデバイスによって実行する。例えば、プロセス400を、ロボット102、静止物体のコンピューティングデバイス106又はオンショアコンピューティングデバイス108で実行してもよい。
【0088】
プロセス400は、静止物体が使用中にさらされる可能性のあるファウリングリスクを予測することを目的とし、ファウリングリスクは、水に浸漬されている静止物体の表面に発生又は存在し得るファウリングの程度を反映する。特に、水に浸漬されている静止物体の表面のファウリングリスクのレベルは、ファウリング防止値及びファウリング値を使用してファウリングリスク値を決定することによって確認される。後に説明するように、ファウリングリスク値を、0(低)から1(高)までの正規化スケールで考察することができる。ファウリングリスク値は、この正規化スケールの任意の値を取ることができる。
【0089】
ステップS402において、ファウリング値を決定する。ファウリング値は、静止物体の環境(海洋及び大気)の条件が水に浸漬されている静止物体の表面の海洋生物付着物の発生及び成長にどのように影響するかを反映する。
【0090】
ファウリング値を決定するために、ファウリングリスク判定モジュールは、例を上述した静止物体100の環境条件に関連する環境データを必要とする。環境データは、一つ以上の環境パラメータの各々に関連する値を含む。
【0091】
ファウリングリスク判定モジュールは、静止物体100の環境条件に関連する環境データを、多くの異なる方法で特定してもよい。
【0092】
図5aに示すように、プロセス500のステップS502において、ファウリングリスク判定モジュールは、メモリ(例えば、コンピューティングデバイスのローカルメモリ又はコンピューティングデバイスによってアクセス可能なリモートコンピューティングデバイスのメモリ)から環境データを検索する。検索された環境データが静止物体100の環境条件に関連する(例えば、環境データがロボット102のセンサ又は静止物体のセンサによって検知された)場合、ステップS402において、検索された環境データを、ファウリング値を決定するために使用することができる。
【0093】
図5aに示すように、プロセス500において、検索された環境データは、静止物体100の環境条件に関連するものを含むが特に関連しなくてもよい。すなわち、検索された環境データは、静止物体100が位置する地理的地域の環境条件に関連していてもよい。地理的地域は、ノルウェーのフィヨルドから一国の沿岸地域又は地球全体までのどのような規模であってもよい。検索された環境データは、国の気象サービスから取得してもよい又は測定装置を設けたブイから取得してもよい。検索された環境データは、地理的地域の環境条件に関連する衛星由来の海洋環境データであってもよい。これらの状況では、ステップS504において、ファウリングリスク判定モジュールは、静止物体の地理的位置を取得する。ファウリングリスク判定モジュールは、次に、ステップS402でファウリング値を決定するために使用される静止物体100の環境条件に関する環境データを決定するために、静止物体の地理的位置を、検索された地理的地域の環境データと共に使用する。この例において、静止物体の地理的位置を、ロボット102の位置センサ又は静止物体の位置センサ(例えば、GPSセンサ)によって検知してもよい。
【0094】
図5bに示すように、オンショアコンピュータ装置108がプロセス400を実行する実施形態では、プロセス550において、ファウリングリスク判定モジュール306は、ステップS506でファウリングマップを決定するために、ステップS502で環境データを検索する。ファウリングマップは、複数の場所の海洋生物付着状況を特定し、時間と共に変化してもよい。ファウリングマップは、グローバルファウリングマップであってもよい。代替的に、ファウリングマップは、地球の特定の(一つ以上の)地理的領域に焦点を当てたローカルファウリングマップであってもよい。
【0095】
ファウリングマップを決定するために使用されるステップS502で検索された環境データは、衛星由来の海洋環境データを備えてもよい。
【0096】
追加的に又は代替的に、ファウリングマップを決定するために使用されるステップS502で検索された環境データは、一つ以上の静止物体の各々について、静止物体の環境条件(例えば、環境データは、静止物体のロボットのセンサ又は静止物体のセンサによって検知される。)に関する環境データ及び静止物体の地理的位置を備えてもよい。この例において、静止物体の地理的位置を、静止物体のロボットの位置センサ又は静止物体の位置センサ(例えば、GPSセンサ)によって検知してもよい。
【0097】
ステップS504において、ファウリングリスク決定モジュール306は、監視される静止物体の地理的位置を取得し、監視される静止物体100に固有の環境条件に関する環境データを決定するために静止物体の地理的位置及びファウリングマップを使用し、環境データは、次にステップS402においてファウリング値を決定するために使用される。この例において、静止物体の地理的位置を、ロボット102の位置センサ又は静止物体の位置センサによって検知してもよい。
【0098】
ステップS402において、ファウリング値を決定するために、一つ以上の環境パラメータを使用する。
【0099】
一例として、各パラメータが全体のファウリング値に与えるおおよそのリスク/寄与をモデル化した式がメモリに記憶されていてもよい。
【0100】
そのような式を経験的に導出してもよい。静止物体100が任意の時点でさらされる可能性のある(ファウリング値によって規定される)海洋生物付着圧を決定するために、環境条件(例えば、表層海水温度、光の利用可能性、栄養素の濃度、クロロフィルの濃度、表層海水の塩分濃度、海岸線までの距離、水深)の量及びそれが水に浸漬されている静止物体の表面101の状態にどのように影響し得るかが、いくつかの場所について本開示の発明者によって研究及び分析された。恒久的な試験筏、船体の試験パッチ、ドッキング条件及び検査報告書から取得した経験的結果を、当該場所について収集された海洋環境条件及び大気環境条件と比較した。この研究に基づいて、各環境パラメータが全体的なファウリング値に与えるおおよそのリスク/寄与をモデル化するために、経験的に導かれた式が導出された。
【0101】
パラメータ例を以下に示す。
【数1】
ここで、上記のパラメータは、環境パラメータであり、tは時間の単位であり、通常は、時間又は日単位である。一日の長さのパラメータを、太陽照度又はこれら二つのパラメータの組合せに置き換えることができる。
【0102】
各パラメータに対して導き出されるとともに実現された式の例を、以下に示す。
【数2】
ここで、c及びcは定数である。
【数3】
ここでc及びcは定数である。
【数4】
ここで、c及びcは定数である。
【数5】
ここで、cは定数である。
【数6】
ここで、c及びcは定数である。
【数7】
ここで、c10及びc11は定数である。
【数8】
【0103】
同様の式を、本明細書で言及する他の環境パラメータについて導き出すこともできる。
【0104】
図6aは、ノルウェーのサンデフィヨルドにおける三つの環境パラメータ(太陽照度、海面水温及び日照時間)の値が、1年間に亘ってどのように変化するかを示す。特に、曲線602は、太陽照度が1年間でどのように変化するかを示し、曲線604は、日照時間が1年間でどのように変化するかを示し、曲線606は、気温が1年間でどのように変化するかを示す。
【0105】
図6bは、ファウリング値が正規化されたスケールで時間と共にどのように変化するかを示す。特に、曲線608は、ファウリング値が海面水温及び太陽照度という二つのパラメータに基づくときに1年間の期間に亘ってどのように変化するかを示す。曲線610は、ファウリング値が海面水温及び太陽照度という二つのパラメータに基づくときに1年間に亘ってどのように変化するかを示す。曲線612は、三つのパラメータ(太陽照度、海面水温及び日照時間)に基づいてファウリング値が1年間でどのように変化するかを示す。
【0106】
これらの式が0(低)から1(高)までの正規化されたスケールでのファウリング値によって規定される静止物体の表面がさらされる海洋付着物の総レベルに対する0(低)から1(高)までのスケールでの個別パラメータの各々の寄与をモデル化することを意図していることは明らかである。ファウリング値は、この正規化スケールの任意の値を取ってもよい。
【0107】
図7aを参照すると、静止物体100が0knの水流にさらされるときにファウリング値に対する水速パラメータの寄与が最大(すなわち、1に等しい)であり、これは、物体へのファウリング付着/発生のリスク/寄与がその時点で最大であることを意味する。しかしながら、水速が約4knの場合、寄与は、40%(速度係数の数値では0.4)にまで低下する。水速が6knの場合、速度パラメータのリスク/寄与は、ゼロに近い。
【0108】
ファウリング値に対する海面水温パラメータの寄与については、図7bに示すように、ファウリング発生の寄与が温度とともに増加するが直線的ではないことがわかる。低温域及び高温域では、中央値よりも増加の度合いが低い。
【0109】
図7cに示すように、海岸線までの距離は、ファウリングの付着及び発生のリスク/寄与が海岸線に近いほど高いが静止物体が海岸線から遠くなるにつれて急激に減少するパラメータである。導出された曲線は、海岸線から20kmの地点ではファウリング値への寄与が約10%(海岸線までの距離の図では0.1)であることを示す。
【0110】
上述した式が単なる例であることは明らかである。各パラメータが全体のファウリング値に与えるおおよそのリスク/寄与をモデル化するために上述した式を使用する場合、式は、時間の経過と共に変化する可能性があり、時間の経過と共に収集された経験的データの継続的な分析を通じて改善される可能性がある。さらに、ファウリング値を決定する際に使用される一つ以上の式は、静止物体のタイプに依存して変化してもよい。
【0111】
ステップS402において、いくつかのパラメータがファウリング値の決定に更に重要であると考えられる場合、各パラメータに重みを適用してもよい。
【0112】
したがって、上述した例示のパラメータを参照すると、総瞬時ファウリング値は、式(8)に示すように、種々のパラメータリスク因子の加重平均となり、ここで、Kは、定数であり、各要因に与えられる重みを表す。
【数9】
【0113】
表1は、各パラメータに適用される重みの例を示す。
【表1】
【0114】
図4に戻ると、ステップS404において、ファウリング防止値を決定する。ファウリング防止値は、静止物体の表面に関連する海洋生物付着に対する表面の耐性、例えば、水に浸される静止物体の表面のコーティングによって与えられる防止を規定する。上述したように、水に浸される静止物体の表面がコーティングされている場合があり、そのような状況では、ファウリング防止値は、コーティングの表面に関連する海洋生物付着に対する耐性すなわち静止物体の表面のコーティングによって与えられる防止を規定する。代替的に、静止物体の表面は、コーティングされていなくてもよく、そのような状況では、ファウリング防止値は、静止物体の表面に関連するファウリングに対する許容誤差を規定する。
【0115】
ファウリング防止値は、メモリに予め記憶されていてもよい。例えば、ファウリング防止値は、コンピューティングデバイスのローカルメモリ又はコンピューティングデバイスによってアクセス可能なリモートコンピューティングデバイスのメモリに事前に記憶されていてもよい。これらの実装において、ファウリング防止値は、事前に計算されており、ファウリングリスク決定モジュールは、メモリからファウリング防止値を検索することによってファウリング防止値を決定する。したがって、ファウリングリスク判定モジュールは、ファウリング防止値の計算自体を実行しなくてもよい。
【0116】
他の実装において、ファウリングリスク決定モジュールは、ファウリング防止値それ自体を計算することによってファウリング防止値を決定する。
【0117】
ファウリング防止値の算出方法については、後に詳しく説明する。ファウリング防止値を、0(低防止)から1(高防止)までの正規化スケールで計算することができる。ファウリング防止値は、この正規化スケールの任意の値を取ることができる。
【0118】
ステップS405において、(ステップS402で決定された)ファウリング値及び(ステップS404で決定された)ファウリング防止値を使用してファウリングリスク値を決定する。ファウリングリスク値は、静止物体の表面のファウリングのリスクのレベルを規定する。
【0119】
(例えば、1時間であってもよいサンプリング周期に依存する)各時点において、ファウリング値及びファウリング防止値を決定する。以下に示す式(9)は、ファウリングリスク値がファウリング値及びファウリング防止値の関数としてどのように計算されるかの例を示す。
【数10】
【0120】
ファウリング値及びファウリング防止値の関数としてファウリングリスク値を計算する他の式も使用できることが理解される。
【0121】
ファウリングリスク値を、0(低リスク)から1(高リスク)までの正規化スケールで計算することができる。表2に式(9)の適用例を示す。
【表2】
【0122】
ファウリングリスク値を、一定期間の瞬時ファウリングリスク値の加重平均として計算することができる。
【数11】
ここで、windowizeは、ファウリングリスク値の評価において考慮される日数(例えば3ヶ月)であり、wは、重み付け係数である。最近の瞬時値には高い重みが与えられ、古い瞬時値には低い重みが与えられる。重み付け係数の範囲は、0~1であり、ファウリングリスク値も0~1の範囲にする必要がある。
【0123】
したがって、いくつかの実施形態において、ファウリングリスク値は、複数の瞬時ファウリングリスク値に基づいて決定され、複数の瞬時ファウリングリスク値の各々は、期間中のそれぞれのサンプリング時間における静止物体の表面のファウリングのリスクのレベルを識別し、複数の瞬時ファウリングリスク値の各々は、サンプリング時間のリーセンシー(recency)を規定する重みで重み付けされる。
【0124】
ステップS405でファウリングリスク値を決定すると、プロセス400は、ステップS407に進んでもよい。ステップS407において、ファウリングリスク決定モジュールは、ファウリングリスク値を出力する。
【0125】
ロボット102がファウリングリスク判定モジュール206を備える実施形態では、ステップS407において、ファウリングリスク判定モジュール206は、ユーザへの出力のために、静ファウリングリスク値を、止物体のコンピューティングデバイス106又はオンショアコンピューティングデバイス108のような遠隔コンピューティングデバイスに出力する。これによって、ユーザは、ファウリングリスク値を見ることができ、制御動作を行うべきか否かを決定することができる。
【0126】
静止物体のコンピューティングデバイス106がファウリングリスク決定モジュール306を備える実施形態では、ステップS407において、ファウリングリスク決定モジュール306は、ユーザへの出力のために、ファウリングリスク値を、オンショアコンピューティングデバイス108のような遠隔コンピューティングデバイスに出力してもよい。これによって、ユーザは、ファウリングリスク値を見ることができ、制御動作を行うべきか否かを決定することができる。追加的に又は代替的に、ステップS407において、ファウリングリスク決定モジュール306は、コンピューティングデバイス106の出力デバイス312を介してファウリングリスク値を出力してもよい。
【0127】
オンショアコンピューティングデバイス108がファウリングリスク決定モジュール306を備える実施形態では、ステップS407において、ファウリングリスク決定モジュール306は、コンピューティングデバイス108の出力デバイス312を介してファウリングリスク値を出力してもよい。
【0128】
ステップS405でファウリングリスク値を決定すると、プロセス400は、代替的にステップS406に進んでもよい。ステップS406において、ファウリングリスク判定モジュールは、ファウリングリスク値が所定のしきい値を超えるか否かを判定することによって、高リスクのファウリング状態があるか否かを識別する。ファウリングリスク値が所定のしきい値より下である場合、これは、低リスクのファウリング状態があることを示し、プロセス400は、次のサンプリング時間を待機する(すなわち、サンプリング期間が経過するのを待機する)スタートにループバックする。
【0129】
ファウリングリスク値が所定のしきい値より上である場合、これは、高リスクのファウリング状態があることを示し、プロセス400は、ファウリングリスク判定モジュールが制御信号を出力するステップS408に進む。これについては、後で更に詳しく説明する。
【0130】
ここで、ファウリング防止値がどのように計算されるかを説明する。上述したように、ファウリングリスク判定モジュールは、ファウリング防止値を自ら計算してもよい又は(例えば、別のコンピューティングデバイスによって)事前に計算されたファウリング防止値を検索してもよい。
【0131】
ファウリング防止値は、静止物体の表面に関連する海洋生物付着に対する耐性を規定する。すなわち、ファウリング防止値は、水中領域、更に具体的には、水に浸漬されている静止物体のパーツに海洋生物付着物が付着して最終的に成長するのを防止する表面の能力を規定する。
【0132】
今日、静止物体のファウリング防止は、主にクリーニングと組み合わせたコーティングの適用によって達成される。表面の特性及び表面材料の組成は、ファウリング防止能力に影響を及ぼす。しかしながら、上述したように、実施形態は、コーティングされた表面の清浄度を監視することに限定されず、水に浸漬されている静止物体のコーティングされていない表面の清浄度を監視するためにも使用することができる。
【0133】
ファウリング防止値を、ファウリングに対する表面の魅力を規定する値に基づいて計算してもよい。付着生物は、定着及び付着のために特定のタイプの表面を好む傾向がある。これは、生物学的要因及び物理的要因に関連する。したがって、これらの特性及びこれらが表面の魅力にどのように影響するかを考慮するとともにモデル化することができる。 表面の魅力(P_c)は、海洋生物が静止物体の水中表面に付着する傾向を表す。付着生物は、暗くてざらざらした多孔性の表面を好む傾向がある。表面の魅力(P_c)を、(i)表面の表面エネルギー、(ii)表面のトポグラフィー(例えば、表面の粗さ及び/又は質感)、(iii)表面の多孔性、(iv)表面の弾性及び(iv)表面の色(例えば、表面の色がどの程度暗いか)のうちの一つ以上に基づいて決定してもよい。
【0134】
いくつかのパラメータが表面の魅力の決定の際に更に重要であると考えられる場合、各パラメータに重みを適用してもよい。
【0135】
当業者は、表面の上記の特性を決定する技術を知っている。例えば、多孔性を、表面の空隙をマッピングするために画像解析と(光又は走査電子)顕微鏡とを組み合わせることによって決定することができる。多孔性を、ASTM D6583に従って決定することもできる。表面エネルギーを、ゴニオメーターと異なる溶媒を使用して決定された接触角に基づいて計算することができる。表面粗さを、共焦点顕微鏡、重量光顕微鏡、レーザー顕微鏡又は触覚プロフィロメーターを使用して求めたx座標、y座標及びz座標に基づいて算出することができる。弾性を、動的機械試験(DMA)又は万能試験機で測定してもよい。暗い色とは、可視光の反射率が低い色である。RGB色モデルでは、色の暗さを、赤の値、緑の値及び青の値の合計で近似することができる。
【0136】
表面の魅力(P_c)の値は、正規化されるとともに0から1の間で変化してもよい。
【0137】
表面の魅力P_cの算出方法の一例を、以下に示す。
【数12】
ここで、normalized surface energy normalized surface energyは、例えば、エポキシコーティングの基準表面エネルギーに対するコーティング表面エネルギーの比であり、normalized roughnessは、基準粗さ値に対するコーティング表面粗さの比である。
【0138】
表面の魅力の係数が時間に依存するとも考えられるので、表面の経年変化による影響が及ぼされる。表面の経年変化を、上述したような経年変化の係数を使用して係数にすることができ、この係数は、0から1の間で変化してもよい。
【0139】
w_S及びw_rは、正規化された表面エネルギーの重み付け係数及び正規化された表面粗さの重み付け係数である。
【0140】
当業者であれば、付着生物にはさまざまなクラスがあること及び表面の魅力P_cを全てのクラスの付着生物を考慮して計算すること又は特定のタイプの付着生物だけを考慮して計算することもできることを理解する。
【0141】
追加的に又は代替的に、ファウリング防止値は、静止物体の表面を移動する水の静止物体の表面に対する影響を規定する値に基づいて計算することができる。
【0142】
ファウリングの沈殿/増殖を防ぐためのストラテジーは、水面を移動する水(例えば、潮流)から発生する機械的な力によってそのような生物を除去することである。このストラテジーを、二つの異なるアプローチに分けることができる。一方のアプローチは、水が表面を流れるときに加わるせん断力によって表面に付着した生物を除去するように表面をできるだけ滑らかで滑りやすくすることである。別のアプローチは、膜浸食及び研磨によってファウリングの沈着除去に寄与する自己再生表面を開発することである。
【0143】
表面を移動する水の表面への影響を規定する値(P_b)を、静止物体がさらされる水の速度並びに(i)表面の表面エネルギー、(ii)表面のトポグラフィー(例えば、表面の粗さ及び/又は質感)及び(iii)表面の多孔性のうちの一つ以上を用いて決定してもよい。
【0144】
表面を移動する水の表面への影響を規定する値(P_b)は、正規化されるとともに0から1の間で変化してもよい。
【0145】
本開示の実施形態が静止物体100の水中の部分に設けられたコーティングの表面の清浄度を監視するために使用される状況において、表面を移動する水の表面への影響を規定する値(P_b)は、コーティングの特性に依存する。
【0146】
上述したように、静止物体に設けられるコーティングを、コーティングが研磨性であるか非研磨性であるかによってクラス分けすることができる。
【0147】
研磨コーティングの場合、値P_bを、研磨レート及び表面特性の関数としてモデル化してもよい。
【数13】
【0148】
研磨レートは、コーティングの厚さが時間と共に減少するレートを規定する。研磨レートは、通常、コーティングの製造業者によって指定され、通常、年間研磨レートで表される。
【0149】
研磨レートを、コーティングされたパネルを世界の種々の場所において筏上で暴露することによって決定することができる。研磨レートを、国際特許出願公開第1990/096926号明細書に記載されている試験方法「海水中における回転円盤の防汚コーティング膜の研磨レートの決定(Determination of the polishing rates of antifouling coating films on rotating disc in seawater)」に従って実験室試験で決定することができる。実験室試験を、研磨レートに対する温度の影響を決定するために種々の温度の海水を使用して行うことができる。種々の水速における研磨レートを決定するために、種々の回転速度を使用して実験室試験を行うことができる。上述したことがコーティングの研磨レートをどのように計算することができるかの単なる例として提供されるとともに(実験室内又は海上で種々の水速度、種々の海水温を使用してもよい)代替的な試験条件を使用してもよいことが理解される。
【0150】
研磨レートを、基準研磨レートに正規化してもよく、基準研磨レートは、技術及び/又はコーティング固有のものであってもよい。基準研磨レートは、ファウリング防止剤の拡散と浸出層の厚さとの間のバランスが許容可能なレベルに維持される理論的な年間研磨レートを反映する。浸出層は、水溶性物質の損失により組成が変化した表面に向かっている領域である。浸出層の厚さを、研磨レートについて上述した方法で決定することができる。
【0151】
表面特性係数を、(i)表面の表面エネルギー、(ii)表面のトポグラフィー(例えば、表面の粗さ及び/又は質感)及び(iii)表面の多孔性のうちの一つ以上を使用して決定してもよい。
【0152】
当業者であれば、表面特性係数がコーティングの使用年数及び表面露出履歴に依存することが理解できる。表面露出履歴は、ファウリングが表面に効果的に付着しうる一定期間の累積時間を指す。これは、比較的高速で表面を移動する水と機械的手段(例えば、ブラシ、ウォータージェット等)のいずれによっても表面が更新されない時間である。
【0153】
表面特性係数の計算方法の一例を、以下に示す。
【数14】
ここで、normalized surface energyは、例えば、エポキシコーティングのような基準表面エネルギーに対するコーティング表面エネルギーの比であり、normalized roughnessは、基準粗さ値に対するコーティング表面粗さの比である。
【0154】
,w及びwは、水速の重み付け係数、正規化された表面エネルギーの重み付け係数及び正規化された表面粗さの重み付け係数である。
【0155】
表面の使用年数を、表面の使用年数を、上述したような使用年数の影響の係数を使用して係数にしてもよい。
【0156】
非研磨コーティングの場合、P_bを、水速及び表面特性(例えば、表面特性係数)の関数としてモデル化することができる。
【0157】
表面特性係数を、(i)表面の表面エネルギー、(ii)表面のトポグラフィー(例えば、表面の粗さ及び/又は質感)及び(iii)表面の多孔性のうちの一つ以上を使用して決定してもよい。
【0158】
例えば、表面を移動する水の表面への影響を規定する値(P_b)は、速度が所定のしきい値より上のときに最大であるとともに速度がゼロのときに最小と考えられる。速度のしきい値を、全てのタイプのファウリングが表面から除去できる速度として実験的に決定することができる。速度のしきい値は、生物種に依存し、種々の方法、例えば、フジツボについてのASTM D5618を使用して決定することができる。P_bの表面特性への依存について言えば、後者は、表面にかかる正味のせん断力に影響を及ぼす。
【0159】
上記に加えて、本開示の実施形態が水中の静止物体のパーツに設けられたコーティングの表面の清浄度を監視するために使用されるとともにコーティングがファウリング防止剤を含む状況において、ファウリング防止値を、海洋生物付着に対する表面のファウリング防止剤(例えば、殺生物剤)の効果を規定する値に基づいて計算してもよい。
【0160】
ファウリング防止剤を、有機物又は非有機物の任意の形態とすることができ、それは、付着生物に影響を及ぼし、付着生物を撃退し、又は、付着生物に有害な働きをして、表面への定着又は生存を困難にする又は不可能にする。
【0161】
海洋生物付着に対するファウリング防止剤の効果は、コーティングから表面へのファウリング防止剤の拡散によって説明される。大まかに言えば、ファウリング防止剤の効果(P_a)は、(i)水の速度、(ii)表面露出履歴及び(iii)コーティングの年数の関数としてモデル化される。
【0162】
ファウリング防止剤の効果を規定する値(P_a)は、正規化されるとともに0から1の間で変動してもよい。
【0163】
水流が遅いとき、ファウリング防止剤は、表面に拡散し、保護層が形成される。水流、潮の流れ又は波によって水流が速くなると、ファウリング防止剤が表面から遠ざかり、海洋生物に対する保護効果が低下する。
【0164】
表面露出履歴に関して、表面露出が表面更新によってバランスがとられていない場合、これは、ファウリング防止剤の効果に影響を及ぼす(ファウリング防止剤の拡散が阻害される)。例えば、殺生物剤による自己研磨表面では、殺生物剤が効果的に表面に拡散して表面を保護できるように、浸出層の厚さを許容レベル内に維持する必要がある。表面の暴露履歴が好ましくない場合(水の速度が遅い場合)、上記のバランスが崩れる。ある種の技術は、このバランスを更によく制御することができ、コーティングの寿命を通じて更に安定したファウリング防止剤の表面への拡散を保証することができる。
【0165】
ファウリング防止剤の効果をモデル化する一つの可能な方法は、以下の式で表される。
【数15】
ここで、
P_a(time: x)は、時間xにおけるファウリング防止剤の濃度であり、
P_a(time: x-1)は、時間x-1におけるファウリング防止剤の濃度であり、
leach layer factor(time: x)は、浸出層の厚さを示す係数であり、leach layer factorは、コーティングの年数及びコーティング技術に依存することができ、
mean release rateは、単位時間当たりのファウリング防止剤の濃度の平均変化であり、mean release rateを、研磨レート及び/又はコーティングのコーティング技術に関する知識に基づいて推定することができ、代わりに、release rateは、既知の方法(例えば、ISO10890:2010、ASTM D6442-99、ISO15181-2、ISO15181-3、ISO15181-6)を使用して実験的に決定してもよく、
removal agent factorは、海水中のファウリング防止剤の拡散を考慮した係数であり、除去剤係数は、温度、海水の粘度及び水速に依存してもよい。
【0166】
既に例示したように、理想的には、ファウリング防止剤の放出と表面の更新との間のバランスがある必要がある。このバランスにより、浸出層の厚さの変化が最小限に抑えられ、したがって、ファウリング防止剤の表面への拡散が容易になる。浸出層の厚さの変化を考慮するために、以下の式を使用することができる。
【数16】
ここで、deltaは、研磨による表面更新を考慮した補正係数である。研磨面の場合、deltaは、水速の関数としてモデル化される。できるだけ静止物体の表面に近い水速を測定することが望ましい。水速が所定のしきい値より大きいとき、deltaが負になると予想される。それに対し、水速が同一のしきい値より下であるとき、この補正係数は正となり、これは、水速が遅い状態が長く続くと浸出層の厚さが時間と共に増加することを意味する。使用するしきい値は、コーティング技術に依存し、研磨を開始する最低速度を反映する。非研磨コーティングの場合、deltaは、正であるとともにコーティングの寿命を通じて一定である。
【0167】
ファウリング防止剤がコーティング表面に到達すると、ファウリング防止剤は、海水に更に拡散する。これを考慮するために、「除去剤」係数を使用することができる。除去剤は、静止物体100の表面に近い水の速度の関数であり、水速が所定のしきい値(例えば3kn)より低いとき、除去剤係数は、小さいが決してゼロにはならない。一方、水速が同一のしきい値を超えるとき、除去剤係数は、大きくなる。
【0168】
ファウリング防止剤の効果は、ファウリング防止剤自体にも依存する。コーティング表面に拡散する全てのファウリング防止剤が同一の防止効果を有するとは限らない。さらに、コーティングが複数のファウリング防止剤を含む場合があり、それらは、異なる付着生物に対して有効である可能性がある。
【0169】
上記の式によって計算されたファウリング防止剤パラメータを補正するために、0と1との間で変動してもよい薬剤の有効性係数を使用することができる。したがって、任意の時点におけるファウリング防止剤の効果を規定する最終値(P_a)を、以下のように規定することができる。
【数17】
【0170】
ファウリング防止値の計算式の例を、以下に示す。
【数18】
ここで、P_aは、ファウリング防止剤の効果を表し、P_bは、表面にかかるせん断力の効果を表し、P_cは表面の吸着性の効果を表し、w_a,w_b,w_cは、重み付け係数である。
【0171】
本開示の実施形態がこれらのパラメータの全てを使用して計算されたファウリング防止値を使用することに限定されないことが理解される。
【0172】
式(17)に示すように、ファウリング防止値がこれらのパラメータのうち一つ以上を使用して計算される実施形態では、重み付け係数を使用してもよい。
【0173】
重み付け係数を、水流速度及び/又はコーティング技術の関数としてモデル化してもよく、w_a,w_b及びw_cの合計が1になるように提案される。例えば、研磨コーティングの場合、水の速度が遅い静止物体については、w_aがw_bよりも大きくなると予想される。ファウリング防止剤のない非研磨表面の静止物体の場合、w_aは、ゼロとなり、w_cは、w_bより大きくなる。
【0174】
式(17)の各パラメータは、正規化されるとともに0から1の間で変化してもよい。
【0175】
ファウリング防止値が海洋生物の種類によって異なることに注意することが重要である。例えば、異なる生物種は、異なる殺生物剤に対して異なる反応を示し、表面から除去されやすい又はされにくいか、及び/又は、表面に付着する傾向が異なるので、P_a、P_b、P_cは、変化する。
【0176】
一般化されたファウリング防止値の計算式の例を、以下に示す。
【数19】
ここで、iは、海洋生物の異なる種の数であり、Pは、種固有のファウリング防止値であり、gは、加重係数である。
【0177】
次に、高リスクのファウリング状態が検出されたことに応答して本開示の実施形態において実行してもよい例示的な制御動作を示す図8a~dを参照する。
【0178】
図8aは、静止物体のコンピューティングデバイス106又はオンショアコンピューティングデバイス108がファウリングリスク決定モジュール306を備える本開示の実施形態において実行してもよい例示的な制御動作を示す。
【0179】
特に、図8aは、監視対象である静止物体の表面の清浄度に応じた動作が行われるユーザ確認に応答して実行してもよい制御動作の例を示す。
【0180】
示すように、図8aは、ファウリングリスク判定モジュール306が高リスクのファウリング状態があることを示す制御信号を出力するステップを有し、それは、上述したステップS408に対応する。図8aに示す実施形態において、この制御信号は、高リスクのファウリング状態をユーザに注意喚起するために出力される。特に、制御信号は、高リスクのファウリング状態をユーザに注意喚起するために出力装置を制御する。
【0181】
静止物体のコンピューティングデバイス106がファウリングリスク決定モジュール306を備える実施形態では、ステップS408において、ファウリングリスク決定モジュール306は、ユーザへの出力のために、オンショアコンピューティングデバイス108のような遠隔コンピューティングデバイスにアラートを出力してもよい。これによって、ユーザは、制御動作を行うべきか否かを決定することができる。追加的に又は代替的に、ステップS408において、ファウリングリスク決定モジュール306は、静止物体のユーザが応答するために、コンピューティングデバイス106の出力デバイス312を介してアラートを出力してもよい。
【0182】
オンショアコンピューティングデバイス108がファウリングリスク判定モジュール306を備える実施形態では、ステップS408において、ファウリングリスク判定モジュール306は、コンピューティングデバイス108の出力デバイス312を介してアラートを出力してもよい。
【0183】
ステップS407でファウリングリスク決定モジュール306がファウリングリスク値を出力すること又はステップS408で制御信号を出力することに応答して、ステップS802において、ファウリングリスク決定モジュール306は、動作が行われるユーザ確認の受信を待機する。
【0184】
ファウリングリスク判定モジュール306は、ユーザがコンピューティングデバイスの(図3には示さない)入力デバイスを介して入力を供給することに応答して、動作が行われるユーザ確認を受信してもよい。制御信号が遠隔コンピューティングデバイスに出力される場合、ファウリングリスク判定モジュール306は、インターフェース316を介して受信した確認メッセージを受信することに応答して、動作が行われるユーザ確認を受信してもよい。
【0185】
ユーザが、動作が行われることを確認しない場合、プロセス400は、次のサンプリング時間を待機する(すなわち、サンプリング期間が経過するのを待機する)スタートにループバックする。
【0186】
ユーザが、動作が行われることを確認した場合、ファウリングリスク決定モジュール306は、適切な動作が適時に行われるように、更なる制御信号を出力する。これを、様々な方法で実施することができる。
【0187】
一例では、ステップS804において、ファウリングリスク判定モジュール306は、水に浸漬されている静止物体のパーツの検査を開始するための制御信号を出力する。
【0188】
ファウリングリスク判定モジュール306は、水中に浸漬されている静止物体のパーツの検査を開始するために、静止物体のロボット102又は静止物体の遠隔操作水中ビークルにこの制御信号を出力してもよい。理解されるように、静止物体のロボット102又は遠隔操作水中ビークルは、静止物体を横断するとともに検査装置(例えば、カメラ)を使用して水中に浸漬されている静止物体のパーツを検査することによって、水に浸漬されている静止物体のパーツの検査を行うことができる。代替的に、ファウリングリスク判定モジュール306は、ロボット102又は遠隔操作水中ビークル(例えば、遊泳用遠隔操作水中ビークル)を手動で起動させて静止物体の水に浸漬されている部分を検査するようにユーザに注意喚起するために、この制御信号を静止物体の遠隔コンピューティングデバイスに出力してもよい。オンショアコンピューティングデバイス108がファウリングリスク判定モジュール306を備える実施形態において、遠隔コンピューティングデバイスは、コンピューティングデバイス106に対応してもよい。コンピューティングデバイス106がファウリングリスク判定モジュール306を備える実施形態において、遠隔コンピューティングデバイスは、静止物体の更なるコンピューティングデバイス(例えば、静止物体作業員のモバイルコンピューティングデバイス)に対応してもよい。
【0189】
別の例では、ステップS808において、ファウリングリスク判定モジュール306は、水中に浸漬されている静止物体の表面のクリーニングを開始するための制御信号をロボット102に出力する。オンショアコンピューティングデバイス108がファウリングリスク判定モジュール306を備える実施形態において、この制御信号を、静止物体のコンピューティングデバイス106を介して送信してもよい。理解されるように、静止物体のロボット102は、クリーニング装置208を使用しながら静止物体を横断することによって、水に浸漬されている静止物体のパーツのクリーニングを行う。
【0190】
ステップS804に戻り、水に浸漬されている静止物体のパーツの検査に基づいて、水に浸漬されている静止物体のパーツの表面が汚れていることがステップS806で確認された場合、プロセスは、上述したステップS808に進んでもよい。ステップS806で行われる水に浸漬されている静止物体のパーツの表面が汚れていることの確認を、(ロボット102又は遠隔操作水中ビークルのような)検査ビークルの検査装置によって取り込まれたデータを処理することによって検査ビークルにより自動的に行ってもよい。例えば、水に浸漬されている静止物体のパーツを検査するためにカメラを使用する場合には、海洋生物付着を検出するために、撮影された画像データを処理してもよい。代替的に、ステップS806で実行される、水に浸漬されている静止物体のパーツの表面が汚れていることの確認は、検査ビークルが検査ビークルの検査装置によって取り込まれたデータをコンピューティングデバイス106,108に送信することを備えてもよい。そして、ユーザは、水に浸漬されている静止物体のパーツの表面が汚れているか否かを確認するために、受信したデータを見ることができる。ユーザが、水に浸漬されている静止物体のパーツの表面が汚れていることを確認しない場合、プロセス400は、次のサンプリング時間を待機する(すなわち、サンプリング期間が経過するのを待機する)スタートにループバックする。
【0191】
図8bは、静止物体のコンピューティングデバイス106又はオンショアコンピューティングデバイス108がファウリングリスク決定モジュール306を備える本開示の実施形態において実行してもよい例示的な制御動作を示す。
【0192】
特に、図8bは、水に浸漬されている静止物体のパーツの清浄度が監視されていることに応答して(ユーザが関与することなく)自動的に実行してもよい制御動作の例を示す。
【0193】
図8bに示すように、ステップS406におけるファウリングリスク判定モジュール306の高リスクのファウリング状態があるとの判定に応答して、ファウリングリスク判定モジュール306は、適切な動作が適時に行われるように、ステップS408において制御信号を出力する。
【0194】
これらの制御動作は、図8aを参照して説明したものに対応する。したがって、ステップS408において、ファウリングリスク判定モジュール306は、水に浸漬されている静止物体のパーツの検査を開始するための制御信号を出力してもよく、これを、図8bにおいて、ステップS408aとして図示する。代替的に、ステップS408において、ファウリングリスク判定モジュール306は、水に浸漬されている静止物体のパーツのクリーニングを開始するための制御信号をロボット102に出力してもよく、これを、図8bにおいて、ステップS408bとして図示する。
【0195】
図8cは、ロボット102がファウリングリスク判定モジュール206を備える本開示の実施形態において実行してもよい例示的な制御動作を示す。
【0196】
特に、図8cは、水に浸漬されている静止物体のパーツの清浄度が監視されていることに応答して動作が行われるユーザ確認したことに応答して実行してもよい制御動作の例を示す。
【0197】
示すように、図8cは、ファウリングリスク判定モジュール206が高リスクのファウリング状態があることを示す制御信号を出力するステップを有し、それは、上述したステップS408に対応する。図8cに示す実施形態において、この制御信号を、高リスクのファウリング状態をユーザに注意喚起するために、静止物体のコンピューティングデバイス106又はオンショアコンピューティングデバイス108に出力してもよい。特に、制御信号は、高リスクのファウリング状態をユーザに注意喚起するために遠隔装置を制御する。これによって、ユーザは、制御動作を行うべきか否かを判断することができる。
【0198】
ファウリングリスク判定モジュール206がステップS407でファウリングリスク値を出力すること又はステップS408で制御信号を出力することに応答して、ファウリングリスク判定モジュール206は、ステップS802において、例えば、インターフェース216を介して受信した確認メッセージを受信することによって、動作が行われるユーザ確認の受信を待機する。
【0199】
ユーザが、動作を行うことを確認しない場合、プロセス400は、次のサンプリング時間を待機する(すなわち、サンプリング期間が経過するのを待機する)スタートにループバックする。
【0200】
ユーザが、動作を行うことを確認した場合、ファウリングリスク判定モジュール206は、適切な動作が適時に行われるように、更なる制御信号を出力する。これを、様々な方法で実施することができる。
【0201】
一例では、ステップS804において、ファウリングリスク判定モジュール206は、水に浸漬されている静止物体のパーツの検査を開始するための制御信号を出力する。例えば、ファウリングリスク判定モジュール206は、ロボット102の検査装置を作動させるための制御信号を出力し、水に浸漬されている静止物体のパーツの表面を検査するためにロボット102を移動させるように制御する。
【0202】
別の例では、ステップS808において、ファウリングリスク判定モジュール206は、水に浸漬されている静止物体のパーツのクリーニングを開始するための制御信号を出力する。例えば、ファウリングリスク判定モジュール206は、ロボット102のクリーニング装置208を起動するための制御信号を出力し、水に浸漬されている静止物体のパーツの表面をクリーニングするためにロボット102を移動させるように制御する。
【0203】
ステップS804に戻ると、水に浸漬されている静止物体のパーツの検査に基づいて水に浸漬されている静止物体のパーツの表面が汚れていることがステップS806で確認された場合、上述したステップS808に進んでもよい。ステップS806で行われる水に浸漬されている静止物体のパーツの表面が汚れていることの確認を、検査ビークルの検査装置によって取り込まれたデータをロボット102が処理することによって自動的に行ってもよい。例えば、水に浸漬されている静止物体のパーツを検査するためにカメラを使用する場合、海洋生物付着を検出するために、撮影された画像データを処理してもよい。代替的に、ステップS806で行われる水に浸漬されている静止物体のパーツの表面が汚れていることの確認は、ロボット102がロボットの検査装置によって取り込まれたデータをコンピューティングデバイス106,108に送信することを備えてもよい。そして、ユーザは、水に浸漬されている静止物体のパーツの表面が汚れているか否かを確認するために、受信したデータを見ることができる。ユーザが、水に浸漬されている静止物体のパーツの表面が汚れていることを確認しない場合、プロセス400は、次のサンプリング時間を待機する(すなわち、サンプリング期間が経過するのを待機する)スタートにループバックする。
【0204】
図8dは、ロボット102がファウリングリスク判定モジュール206を備える本開示の実施形態において実行してもよい例示的な制御動作を示す。
【0205】
特に、図8dは、水に浸漬されている静止物体のパーツの清浄度を監視したことに応答して自動的に実行してもよい制御動作の例を示す。
【0206】
図8dに示すように、ファウリングリスク判定モジュール206が高リスクのファウリング状態があるとステップS406で判定したことに応答して、ファウリングリスク判定モジュール206は、ステップS408において、適切な動作が適時に行われるように制御信号を出力する。
【0207】
これらの制御動作は、図8cを参照して説明したものに対応する。したがって、ステップS408において、ファウリングリスク判定モジュール206は、水に浸漬されている静止物体のパーツの検査を開始するための制御信号を出力してもよく、これを、図8dにおいて、ステップS408aとして図示する。代替的に、ステップS408において、ファウリングリスク判定モジュール206は、水に浸漬されている静止物体のパーツのクリーニングを開始するための制御信号を出力してもよく、これを、図8dにおいて、ステップS408bとして図示する。
【0208】
上述したプロセス400を、静止物体の寿命の間に複数回実行してもよい。すなわち、プロセス400を、定期的に、例えば、サンプリング期間を規定する固定時間間隔で、又は、変動する時間間隔で実行してもよい。
【0209】
静止物体を、異なる領域に分割することができ、各領域を、上述したプロセス400を使用して異なるように評価することができる。
【0210】
上述した水に浸漬されている静止物体のパーツの検査の結果を、プロセス400のステップS402,S404及びS406の一つ以上で使用される式及び係数を導出するために使用することができる。
【0211】
さらに、クリーニングを行う場合(例えば、上述したステップS808又はS408b)、上述したパラメータの一部がリセットしてもよい。例えば、(ステップS404で決定された)ファウリング防止値及び(ステップS402で決定された)ファウリング値に基づくファウリングリスク評価を、クリーニングが行われた場合に、例えば、コーティングの暴露履歴が突然変更されるという事実によって変更してもよい。クリーニングは、ファウリングリスクの観点から表面状態をリセットし、溶出層の一部の除去、殺生物剤の洗い流し等によってコーティング表面それ自体を変化させてもよい。したがって、モデリングを、(1の最大値を有する)ファウリング防止値を増加させるとともに(0の最小値を有する)ファウリング防止値を減少させることによって当該影響に適合するように変更することができる。(ステップS405で決定される)ファウリングリスク値を、クリーニングが行われた日から初期化することもでき、履歴を「忘れる」ことによって、クリーニングの日からの瞬時のリスク値の新しい移動平均を構築する。
【0212】
図9は、水に浸漬されている静止物体の表面をクリーニングするロボット102の一例を示す。 ロボットの車輪4は、鉄の構造物に付着するように磁気を帯びている。ロボット102は、車輪4によって駆動され、車輪4は、電気モーター(図示せず)によって駆動される。図9において、ロボット102を、完全に組み立てられた状態の斜視図で示す。 ロボット1のシャーシ2は、電源(例えば、電池)を封入するとともに図2に示す電気部品の一つ以上を有してもよい密閉容器3を保持する周囲フレームである。 容器3は、水の浸入を防止するために防水密閉されている。二つの梁「車軸」5がシャーシ2に固定され、これらの梁5は、車輪4並びに車輪4のためのサスペンション配置及びステアリング機構の関連要素を支持する。ロボット102は、回転円筒形ブラシの形態をとることができるクリーニング装置208を有し、これもシャーシ2に固定されている。図9は、ロボット102がとりうる形態の一例を示しているにすぎず、他の例も可能であることが理解される。
【0213】
一般に、本明細書で説明する機能のいずれかを、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア(例えば、固定論理回路)又はこれらの実装の組合せを使用して実現することができる。本明細書で使用される「機能性」及び「モジュール」という用語は、一般に、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア又はその組合せを表す。 ソフトウェア実装の場合、機能性又はモジュールは、プロセッサ(例えば、一つ以上のCPU)で実行されたときに指定されたタスクを実行するプログラムコードを表す。プログラムコードを、一つ以上のコンピュータ可読記憶装置(例えば、メモリ210又はメモリ310)に記憶させることができる。以下で説明する技術の特徴は、プラットフォームに依存せず、技術を様々なプロセッサを有する様々な市販のコンピューティングプラットフォームで実施してもよいことを意味する。
【0214】
本開示を、特に、好適な実施形態を参照して示すとともに説明したが、形態及び詳細における様々な変更を添付の特許請求の範囲によって規定される本開示の範囲から逸脱することなく行ってもよいことが当業者には理解される。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6a
図6b
図7a
図7b
図7c
図8a
図8b
図8c
図8d
図9
【国際調査報告】