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特表2024-514456導電性刺激応答性コロイドマイクロゲルおよびそれらのフィルム相同体:架橋剤およびドーピング剤としてカテコール基を使用する合成、ならびに機械電気的特性
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】導電性刺激応答性コロイドマイクロゲルおよびそれらのフィルム相同体:架橋剤およびドーピング剤としてカテコール基を使用する合成、ならびに機械電気的特性
(51)【国際特許分類】
   C08F 267/06 20060101AFI20240326BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20240326BHJP
   C08L 51/00 20060101ALI20240326BHJP
   C08F 220/02 20060101ALI20240326BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240326BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20240326BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 9/50 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 47/30 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 8/72 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C08F267/06
C08F2/44 C
C08L51/00
C08F220/02
A61Q19/00
A61P17/00
A61K45/00
A61K8/02
A61Q1/00
A61K9/14
A61K9/50
A61K47/30
A61K8/72
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558791
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(85)【翻訳文提出日】2023-11-14
(86)【国際出願番号】 EP2022057837
(87)【国際公開番号】W WO2022200534
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】21305379.6
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521458281
【氏名又は名称】ユニベルシテ デ ポー エ デュ ペイ ド ラドゥール
(71)【出願人】
【識別番号】513015441
【氏名又は名称】サントゥル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック - セーエヌエールエス
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE - CNRS
【住所又は居所原語表記】3,rue Michel Ange,F-75016 Paris 16,France
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】アギール ユギャルトゥ,ギャービンヌ
(72)【発明者】
【氏名】マーキャスザ,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ビヨン,ロラン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C084
4J002
4J011
4J026
4J100
【Fターム(参考)】
4C076AA61
4C076AA63
4C076AA64
4C076AA95
4C076BB31
4C076CC18
4C076EE16
4C076EE23
4C076EE47
4C076FF34
4C076GG16
4C076GG21
4C083AD011
4C083AD012
4C083AD041
4C083AD042
4C083AD071
4C083AD072
4C083CC02
4C083DD16
4C083DD41
4C083EE12
4C083EE13
4C083FF01
4C083FF04
4C084AA17
4C084MA38
4C084MA41
4C084MA63
4C084NA11
4C084NA13
4C084ZA891
4C084ZA892
4J002BC12X
4J002BG07W
4J002BG13W
4J002BN12W
4J002CE00X
4J002GB00
4J011AA05
4J011BA04
4J011PA69
4J011PC02
4J011PC08
4J026AA48
4J026AA50
4J026BA08
4J026DB02
4J026DB08
4J026DB14
4J026FA07
4J026GA02
4J026GA06
4J100AJ02S
4J100AL08Q
4J100AL66R
4J100AM21P
4J100BA03P
4J100BA08Q
4J100BA08R
4J100BC43P
4J100CA03
4J100CA23
4J100EA05
4J100FA03
4J100FA19
4J100JA50
4J100JA61
(57)【要約】
本発明は、カテコール架橋剤で架橋されたオリゴ(エチレングリコール)系ポリマーマイクロゲルを含む組成物に関し、前記マイクロゲルはマイクロゲル粒子を含み、前記マイクロゲル粒子は導電性ポリマーのシェルを有する。この組成物は、導電性および機械電気的特性が増強された粘着性フィルムを自発的に形成することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテコール架橋剤で架橋されたオリゴ(エチレングリコール)系ポリマーマイクロゲルを含む組成物であって、前記マイクロゲルがマイクロゲル粒子を含み、前記マイクロゲル粒子が導電性ポリマーのシェルを有する、組成物。
【請求項2】
前記カテコール架橋剤が、アクリルアミド基またはメタクリルアミド基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記カテコール架橋剤が、ドーパミン-アクリルアミドまたはドーパミンメタクリルアミドの中から選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記導電性ポリマーが、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、PEDOT誘導体およびポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)の中から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記導電性シェルが、不連続導電性シェルである、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記マイクロゲルが、
ジ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(MeOMA);
オリゴ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(M(EO)MA)(nは3~12の範囲の整数、好ましくは8~10の範囲の整数)、
式CR=CRで表されるモノマーであって、R、R、RおよびRが水素、ハロゲンまたは炭化水素基を表し、前記4つの基の少なくとも1つが-COOHまたは-COO基を含み、Mがカチオンを表す、モノマー
の内の1つ以上のモノマーの水相沈殿重合によって得ることができ、
上記モノマーはカテコール架橋剤で架橋される、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記マイクロゲルが、カテコール架橋剤で架橋されたモノマーの水相沈殿重合によって得られ、前記モノマーがジ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(MeOMA)、オリゴ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(OEGMA)およびメタクリル酸(MAA)である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物を調製する方法であって:
モノマーの沈殿重合を介してマイクロゲルを調製する工程を含み、
前記モノマーはカテコール架橋剤で架橋され、前記マイクロゲルは粒子を含み、前記モノマーは、
ジ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(MeOMA);
オリゴ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(M(EO)MA)(nは3~12の範囲の整数、好ましくは8~10の範囲の整数)、
式CR=CRで表されるモノマーであって、R、R、RおよびRが水素、ハロゲンまたは炭化水素基を表し、前記4つの基の少なくとも1つが-COOHまたは-COO基を含み、Mがカチオンを表す、モノマー
から選択され:
更に、マイクロゲルの粒子上での重合によって導電性シェルを調製する工程を含む、方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれかに記載の組成物の溶媒蒸発により得られる自己組織化マイクロゲルフィルム。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物をケラチン材料上に適用する工程を含む、自己組織化マイクロゲルフィルムを得る方法。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物と、少なくとも化粧剤とを含み、前記マイクロゲルの微粒子が前記化粧剤を含む、化粧製品。
【請求項12】
請求項11に記載の化粧製品をケラチン材料に適用する工程と、前記製品上に圧縮を加える工程とを含む、メイクアップまたはスキンケア方法。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物および治療剤を含む治療製品であって、前記マイクロゲルの微粒子が前記治療剤を含む、治療製品。
【請求項14】
治療に使用するための治療剤であって、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物を介して送達される、治療剤。
【請求項15】
請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物の溶媒、もしくは請求項9に記載の自己組織化マイクロゲルフィルムの溶媒を乾燥または蒸発させることによって得られる一連のフィルムであって、各フィルムもしくは自己組織化マイクロゲルフィルムが、別のフィルムもしくは自己組織化マイクロゲルフィルムにそれぞれ接続される、一連のフィルム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
局所治療の主な課題は、角質層として知られる一次皮膚バリアを介した治療化合物の浸透である。近年、皮膚のより深い層への治療化合物の浸透を促進することによって、皮膚バリアを克服し、皮膚悪性腫瘍に到達することを目的として、いくつかの技術および製剤が開発されている。
〔背景技術〕
【0002】
この点に関して、皮膚透過性を増加させるために開発された様々なアプローチの中で、イオンフォレーシスは関連する技術である。この技術は、皮膚と送達システムとの間に低い電位差を有する電場を印加することに基づき、角質層の既存の細孔を通じた、または新しい細孔を通じた、皮膚を通した送達を増強する。このシナリオでは、弱いわずかな機械的変形によって本質的に電場を発生させることができる材料が、機械的変形によって治療用分子を送達しながら皮膚バリアを破壊することができることが非常に興味深い。近年、いく人かの論文著者は、軟質イオン性巨視的ヒドロゲルの機械電気的特性を正確に研究することを試みた。
【0003】
第1世代の新しい生体適合性および多応答性オリゴ(エチレングリコール)系のマイクロクロゲルが合成された。前記マイクロゲルは、機械電気的挙動を示す自己組織化マイクロゲルフィルム(SAMF)を形成することができる。SAMF(ハイブリッドまたは非ハイブリッド)の機械電気特性に関して、これらのフィルムを圧縮することによって25mVの出力電圧が観察された(WO2016/110615号)。
【0004】
さらに、そのようなコロイド系によって、無機ナノ粒子と共に大量の活性分子をカプセル化する機会が示されており(Boularas et al、2015年、MacromolRapid Commun.,36:79)、送達システムとしてのそれらの潜在的な用途が拡大されている。活性分子の有効なカプセル化は、自己組織化マイクロゲルフィルム(SAMF)の場合にも観察されている。
【0005】
しかしながら、これらのマイクロゲルおよびSAMFの機械電気的特性は、活性成分を送達し、皮膚のより深い層へのそれらの浸透を促進するには不十分である。
【0006】
弱い機械的変形による電場の生成は皮膚バリアを破壊するための要件であるので、皮膚バリアを通して治療用または美容用化合物を送達するために、マイクロゲルの電気的特性を増強し、導電性および機械電気的特性を伴って自発的に凝集性フィルムを形成することができるマイクロゲルを開発することが必要である。
【0007】
〔発明の要約〕
本発明者らは、導電性および機械電気的特性が増強された粘着性フィルムを自発的に形成することができる導電性刺激応答性マイクロゲルを合成した。
【0008】
したがって、本発明は、カテコール架橋剤で架橋されたオリゴ(エチレングリコール)系ポリマーマイクロゲルを含む組成物であって、前記マイクロゲルはマイクロゲル粒子を含み、前記マイクロゲル粒子は導電性ポリマーのシェルを有する組成物に関する。請求項1。
【0009】
本発明はまた、上記の組成物を調製する方法であって、モノマーの沈殿重合を介して、粒子を含むマイクロゲルを調製し、前記モノマーをカテコール架橋剤で架橋する工程と、マイクロゲル粒子上での導電性ポリマーの重合を介して導電性シェルを調製する工程とを含む方法に関する。請求項8。
【0010】
本発明によるマイクロゲルは、マイクロゲルの水性懸濁液を乾燥または蒸発させるプロセスによって、マイクロゲルの1つまたは複数の層からなるフィルムを形成するために自己組織化することができる。
【0011】
したがって、別の態様では、本発明は、溶媒蒸発によって得られる自己組織化マイクロゲルフィルム、および本発明による組成物をケラチン材料上に適用する工程を含む自己組織化マイクロゲルフィルムを得る方法に関する。
【0012】
有利には、本発明により形成されたフィルムは、圧縮効果によって電位を生成する。本発明によるマイクロゲル自己組織化フィルムを指で圧縮した後に生成された出力電圧は約150mVであり、場合によっては200mVを超えていた。また、出力電圧は1分以上一定に保たれる。
【0013】
有利には、一連のフィルムまたは自己組織化マイクロゲルフィルムを使用する場合、高い電位を生成することができ、適切な数の連続したフィルムを組み合わせて、電位を増幅することが可能である。
【0014】
したがって、一実施形態では、本発明はまた、フィルムまたは自己組織化マイクロゲルフィルムが接続される、一連のフィルムまたは自己組織化マイクロゲルフィルムに関する。
【0015】
化粧および治療用途の観点から、細胞膜および脂質二重層膜における可逆的細孔誘導が、150~250mV(数秒)で観察されている(H.Inada、A.-H.Ghanem、W.I.Higure、Pharm Res.,1994年、11、687~697)。したがって、本発明によって形成されたフィルムは、活性分子の浸透を増強する新たな細孔を皮膚に形成することができるべきである。
【0016】
したがって、本発明はまた、化粧製品、およびそのような化粧製品をケラチン材料に適用する工程を含むメイクアップまたはスキンケア方法に関する。
【0017】
最後の態様において、本発明は、治療製品、治療におけるその使用、および角質層を通して活性薬剤を送達するためのその使用に関する。
【0018】
〔図面の簡単な説明〕
図1図1は、M2マイクロゲル(a)、M3マイクロゲル(b)の部分変換の進展を示している。
図2図2は、25℃におけるpHの関数としての平均流体力学的直径を示す。
図3図3は、合成されたマイクロゲルのpH6(a)およびpH3(b)における温度の関数としての平均流体力学的直径を表す。
図4図4は、M1マイクロゲル(a)、M2マイクロゲル(b)の乾燥状態でのAFM画像,及びM2マイクロゲル(c)のpHのアルカリ溶液に浸漬したAFM画像を示す。
図5図5は、M1マイクロゲル(a)およびM2マイクロゲル(b)の乾燥状態におけるTEM顕微鏡写真を示す。
図6図6は、自己組織化M2精製マイクロゲルフィルムの表面のAFM顕微鏡写真を示し、(a)は無着色領域、(b,c)は着色領域を示す。
図7図7は、合成されたマイクロゲルの乾燥状態におけるAFM画像を、高さモード(a)、および接着モード(b)で示す。
図8図8は、合成されたマイクロゲルの乾燥状態における透過型電子顕微鏡写真を示す。
図9図9は、M2-PEDOT25マイクロゲルの乾燥状態におけるSTEM-EDS顕微鏡写真を示す。
図10図10は、M2自己組織化フィルムの圧縮長さ(%)の関数としての電位差(mV)を表す。
図11図11はカテコール(a)、ドーパントとしてのPSS(b)を用いて形成されたマイクロゲル自己組織化フィルムに対する、指による一定の圧縮の後に生成された出力電圧(mV)を示す。
図12図12は、10重量%(a)および25重量%(b)のPEDOTフィルムを有し、自己組織化され、わずかに架橋されたコアシェルマイクロゲルのSTEM-EDS断面画像を表す。
図13図13は、加えられる力の関数としての生成される出力電圧を表す。
図14図14は、10重量%のPEDOTを有し、わずかに架橋された自己組織化マイクロゲルについての、出力電圧に対するフィルム面積の効果を表す。
図15図15は、10重量%のPEDOTを有し、わずかに架橋された自己組織化マイクロゲルについての、出力電圧に対するフィルム厚の効果を表す。
図16図16(a)は、直列に配置されたフィルムの概略図を表す。図16(b)は350μmおよび750μmの厚さを有する自己組織化マイクロゲルフィルムに対する、指による一定の圧縮後に生成される出力電圧(mV)を示す。
〔発明の詳細な説明〕
【0019】
第1の態様において、本発明はカテコール架橋剤で架橋されたオリゴ(エチレングリコール)系ポリマーマイクロゲルを含む組成物に関し、前記マイクロゲルはマイクロゲル粒子を含み、前記マイクロゲル粒子は導電性ポリマーのシェルを有する。
【0020】
〔マイクロゲル〕
本発明の意味における「マイクロゲル」は、マイクロゲル粒子の水性分散液の形態またはマイクロゲル粒子を含むフィルムの形態の組成物であり、マイクロゲル粒子は乾燥状態(すなわち、2重量%未満の水を含有する)で100nm~500nm、好ましくは125~450nm、好ましくは150~250nm、より好ましくは200nm程度のサイズを有する粒子の形態の架橋ポリマーである。典型的には、粒子は球状である。
【0021】
マイクロゲルはヒドロゲルとは異なることに留意しなければならない。ヒドロゲルは、化学的に形成される嵩高い材料であり、それを再成形する可能性は一切ない。マイクロゲルは、水媒体中に分散されたコロイド状態の粒子である。そのようなコロイド溶液は、いかなる化学反応もなく、物理的-化学的相互作用のみを伴って溶液を乾燥させることによって、その場で成形することができる。
【0022】
一実施形態では、マイクロゲルがオリゴ(エチレングリコール)系ポリマーマイクロゲルである。
【0023】
一実施形態では、マイクロゲルは、以下の3つのモノマーの水相沈殿重合によって得ることができ、モノマーはカテロール架橋剤で架橋されている:
ジ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(MeOMA);
オリゴ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(M(EO)MA)、nは3~12の範囲の整数、好ましくは8~10の範囲の整数である;
式CR=CRで表され、R、R、RおよびRが水素、ハロゲンまたは炭化水素基を表し、4つの基の少なくとも1つが-COOHまたは-COO-M+基を含み、M+がカチオンを表すモノマー。
【0024】
MeOMAは、例えば、モノマーの総モル数の50モル%~90モル%を占め、M(EO)MAは好ましくはモノマーの総モル数の10~50モル%を占め、式CR=CRのモノマーは好ましくはモノマーの総モル数の0.1モル%~20モル%を占め、これらの3つの含有量の合計は100%に等しい。
【0025】
MeOMAとM(EO)MAとのモル比率は、好ましくは1:1~20:1、例えば5:1~10:1である。
【0026】
一実施形態によれば、MeOMAは例えば、3つのモノマーの総モル数の80~90モル%を占め、M(EO)MAは好ましくはモノマーの総モル数の5~15モル%を占め、式CR=CRのモノマーは好ましくはモノマーの総モル数の0.1~10モル%を占め、これらの3つの含有量の合計は、100%に等しい。
【0027】
一実施形態では、M(EO)MAが、好ましくは、OEGMAとも表されるオリゴ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレートである。
【0028】
式CR=CRで表されるモノマーは、好ましくは、RおよびRはそれぞれ水素を表し、Rが水素またはアルキル基、好ましくは-OHまたは-COOHで置換されていてもよいC~Cのアルキル基を表し、RがRとは独立して、COOH基またはアルキル基、好ましくは-OHまたは-COOHで置換されていてもよいC~Cのアルキル基を表すようなものである。アルキル基は、メチル、エチルまたはn-ブチルであってもよい。1つの特定の実施形態によれば、RおよびRはそれぞれ、水素およびRを表し、Rは、独立して、-H、--COOH、またはCOOHを表す。
【0029】
式CR=CRで表されるモノマーは例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチルおよびメタクリル酸n-ブチル、カルボキシル基を含むビニルモノマーから選択することができる。
【0030】
一実施形態によれば、式CR=CRで表されるモノマーは、メタクリル酸またはイタコン酸であってもよい。
【0031】
ある場合には、アクリル酸は、化学式CR=CRで表されるモノマーの定義から除外されてもよい。
【0032】
特定の実施形態において、マイクロゲルは、ジ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(MeOMA)、オリゴ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(OEGMA)およびメタクリル酸(MAA)の水相沈殿重合によって得ることができ、これらのモノマーはカテコール架橋剤で架橋されている。
【0033】
さらに特定の実施形態において、MeOMAは、例えば、3つのモノマーの総モル数の80~90モル%を占め、OEGMAはモノマーの総モル数の5~15モル%を占め、メタクリル酸(MAA)は好ましくはモノマーの総モル数の0.1~10モル%を占め、これらの3つの含有量の合計は100%に等しい。
【0034】
〔カテコール架橋剤〕
本発明によれば、カテコール架橋剤は、唯一の架橋剤である。Xueらは、他の架橋剤を加えずに、カテコールとラジカルとの反応性を適用して架橋マイクロゲルを合成した(DOI:10.1021/acs.macromol.7b01304、Macromolecules 2017年、50、5285-5292)。
【0035】
Xueと共同研究者らは、カテコールが架橋構造を形成する伸長ラジカルと反応することができると報告した。彼らは、異なるモノマーおよびドーパミン-メタクリルアミドのラジカル共重合中の、架橋網目構造の形成のための3つの可能な機構を提唱した。これらの機構は、カテコール基の共有結合、カテコールのヒドロキシル基間の水素結合の形成、および1つのポリマー鎖のカテコール基と別の伸長鎖のラジカルとの間の反応である。
【0036】
架橋点のためのカテコールへと続く機構のタイプを決定する目的で、種々の実験を行った。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、1つのポリマー鎖のカテコール基と別の伸長鎖のラジカルとの間の反応を、コポリマー鎖間の架橋点形成のための主な機構とみなした。
【0037】
したがって、本明細書で使用される場合、「カテコール架橋剤」はカテコール基を有する任意の分子であって、重合による、好ましくは、1つのポリマー鎖のカテコール基と別の伸長鎖のラジカルとの間の反応による、架橋マイクロゲルの合成を可能にする分子を指す。
【0038】
有利には、カテコール架橋剤を用いた場合、任意の他の架橋剤および界面活性剤安定剤を添加することなく、水相沈殿重合を用いることによってマイクロゲルを達成することができた。
【0039】
また、有利には、マイクロゲルを形成するために反応媒体中にポリマーの既存の伸長ラジカルを必要とせずに、架橋剤の機能を有するカテコール基を使用することにより、一工程バッチ沈殿重合によってマイクロゲルを合成する可能性が開かれる。
【0040】
一実施形態では、カテコール架橋剤がアクリルアミドまたはメタクリルアミド基を含む。
【0041】
一実施形態では、カテコール架橋剤は、ドーパミン-アクリルアミドまたはドーパミンメタクリルアミドから選択され、好ましくはドーパミン-アクリルアミドである。
【0042】
ドーパミン-アクリルアミドまたはドーパミンメタクリルアミドの両方は、架橋マイクロゲルの合成を可能にする保護されていないカテコール基を有する。
【0043】
一実施形態では、カテコール架橋剤が、モノマーの総モル数の1~20モル%を占める。
【0044】
マイクロゲルの内部構造は、使用される架橋剤の量に依存し得る。いくつかの実施形態によれば、2つの異なるミクロ構造が得られた:モノマーの総モル数の10~20モル%のカテコール架橋剤、好ましくはモノマーの総モル数の10~15モル%のカテコール架橋剤を使用する、高度に架橋されたマイクロゲル、およびモノマーの総モル数の1~10モル%のカテコール架橋剤、好ましくはモノマーの総モル数の1~5モル%のカテコール架橋剤を使用するわずかに架橋したマイクロゲル。
【0045】
好ましい実施形態では、モノマーの総モル数の10モル%のカテコール架橋剤が使用される。
【0046】
〔導電性ポリマー〕
本明細書で使用するとき、「導電性ポリマー」という語は、本質的に又は内在的に導電性を有し得るポリマー又はオリゴマーを意味する。
【0047】
好ましくは、導電性ポリマーが生体適合性導電性ポリマーである。本明細書で使用するとき、「生体適合性」とは、ヒト組織と密接に接触して配置されたときに、ヒトに損傷もしくは死を引き起こさず、又はヒトにおいて有害反応を誘発しない任意の材料を意味するものとする。
【0048】
一実施形態では、導電性ポリマーは、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、PEDOT誘導体およびポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)から選択される。
【0049】
本明細書で使用するとき、「ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)」とは、EDOT(3,4-エチレンジオキシチオフェン)モノマーの重合によって得られるポリマーを意味する。用語「PEDOT誘導体」とは、ヒドロキシメチル-EDOT、ビニル-EDOT、アリルエーテル-EDOT、COOH-EDOT、MeOH-EDOT、シラン-EDOT、アクリレート-EDOT、スルホネート-EDOT、アミン-EDOTまたはそれらの混合物の中から選択されるEDOTモノマー誘導体の重合によって得られるポリマーを意味する。用語「ポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)」とは、3-ヘキシルチオフェンモノマーを重合して得られるポリマーを意味する。
【0050】
好ましい実施形態において、導電性ポリマーはPEDOTである。
【0051】
したがって、カテコール基は二重の機能を有し、架橋剤およびドーパントとして作用する。
【0052】
本明細書で使用するとき、用語「ドーパント」は、ドーパントと導電性ポリマーとの間の相互作用によって導電性ポリマーの導電性を著しく向上させることができる化合物を包含する。
【0053】
ドーパントとしてのカテコール基の使用は、EDOTのマイクロゲルへの直接重合を可能にし、PSSなどの従来のより毒性の高いドーパントに対する興味深い優れた代替物を提供する。
【0054】
有利には、本発明者らは、カテコール基が、PEDOTシェルをマイクロゲル粒子上に組み込む場合に、PSSよりもドーパント剤としてより効率的であり、マイクロゲル粒子を種として使用して導電性シェルの合成を可能にすることを実証する。
【0055】
〔導電性シェル〕
本明細書で使用するとき、「導電性シェル」又は「導電性ポリマーシェル」という語は、マイクロゲルの表面における導電性ポリマーの連続的又は不連続的な堆積物を意味し、導電性ポリマーの前記堆積物はマイクロゲルの微粒子に物理的に(すなわち、吸着されて)及び/又は化学的に(すなわち、グラフトされて)結合されている。
【0056】
本発明によれば、マイクロゲルの導電性シェルは、マイクロゲル粒子を種として用いて合成される。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、導電性ポリマーがマイクロゲル粒子上の表面で重合し、マイクロゲル粒子上にドメインを形成するが、マイクロゲルの表面を完全に覆うことはないと仮定される。
【0057】
マイクロゲルがフィルムを形成するために集合する場合、導電性ポリマーのこれらのドメインが導電性ポリマーの浸透相を形成することも仮定される。
【0058】
PEDOTの量とは無関係に、同様の導電値が得られた。その理由は、組み込まれたPEDOTの位置に関連し得る。わずかに架橋したマイクロゲルを種として用いる場合、PEDOTは主にマイクロゲルの表面で重合した。一方、高度に架橋されたマイクロゲルの場合、カテコール基の粒子への分布のために、あるPEDOTはマイクロゲル粒子の表面で重合されたが、マイクロゲル粒子の中で重合されたPEDOTもあった。したがって、両方の場合において、表面で重合されたPEDOTは同様であり、同様の導電率値をもたらした可能性がある。
【0059】
したがって、好ましい実施形態では、導電性シェルは不連続導電性シェルであり、導電性ポリマーが微粒子の表面で重合し、粒子の表面上にドメインを形成することを意味する。
【0060】
有利には、不連続な導電性シェルを有する場合であっても、本発明によるマイクロゲルは凝集性および弾性のフィルムを形成することができる。
【0061】
したがって、本発明者らは、導電性ポリマー、および好ましくはPEDOTをマイクロゲル粒子の表面に効率的に接着させるカテコール架橋剤の適合性を実証する。ドーパントとしてのカテコール架橋剤のこの機能は、PEDOTをマイクロゲル粒子の表面に付着させるための、従来のポリ(スチレンスルホネート)(PSS)ドーパントの使用よりも良好である。
【0062】
典型的には、導電性シェルが、EDOT(3,4-エチレンジオキシチオフェン)モノマー、又は、ヒドロキシメチル-EDOT、ビニル-EDOT、アリルエーテル-EDOT、COOH-EDOT、MeOH-EDOT、シラン-EDOT、アクリレート-EDOT、スルホネート-EDOT、アミン-EDOT、もしくはそれらの混合物から選択されるEDOTモノマー誘導体、または、3-ヘキシルチオフェンモノマーの重合によって得られる。
【0063】
好ましい実施形態では、モノマーはEDOTである。
【0064】
〔プロセス〕
さらなる態様において、本発明は組成物を調製する方法に関し、前記方法は、以下の工程を含む:
‐カテコール架橋剤の存在下で、モノマーの沈殿重合を介してマイクロゲルを調製する工程であって、前記マイクロゲルは粒子を含み、前記モノマーは以下から選択される:
‐ジ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(MeOMA);
‐オリゴ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(M(EO)MA)であって、nは3~12の範囲、好ましくは8~10の範囲の整数である、M(EO)MA、
‐式CR=CRで表されるモノマーであって、R、R、RおよびRが水素、ハロゲンまたは炭化水素基を表し、4つの基の少なくとも1つが-COOHまたは-COO基を含み、Mがカチオンを表す、モノマー、
‐マイクロゲル粒子上の重合によって導電性シェルを調製する工程。
【0065】
本発明によれば、導電性シェルは、有利には、架橋剤のカテコール基を用いて合成される。
【0066】
モノマーおよびカテコール架橋剤は、本明細書で前述したものである。
【0067】
一実施形態では、導電性シェルが、EDOT(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、EDOT誘導体および3-ヘキシルチオフェンの中から選択される少なくとも1つのモノマーの重合によって調製される。
【0068】
一実施形態では、沈殿重合が、カテコール架橋剤の存在下で、上述のモノマーを、40℃~90℃の温度、好ましくは70℃の温度で、水相中で接触させる工程を含む。
【0069】
一実施形態では、マイクロゲルを調製する工程において、モノマーの重合は、40℃~90℃の温度、好ましくは70℃の温度で、水溶性ラジカル開始剤、例えば過硫酸カリウム(KPS)の添加によって開始してもよい。
【0070】
一実施形態では、導電性シェルを調製する工程において、導電性モノマーの重合は、酸化剤、例えば、過硫酸アンモニウム(APS)の添加によって開始してもよい。
【0071】
一実施形態では、導電性シェルを調製する工程は、20℃~70℃、好ましくは40℃の温度で行われる。
【0072】
一実施形態では、導電性モノマーがマイクロゲルの重量に対して5~30重量%、好ましくはマイクロゲルの重量に対して7~27重量%を占める。
【0073】
〔フィルム、自己組織化マイクロゲルフィルム、フィルム及び自己組織化マイクロゲルフィルム及び一連の自己組織化マイクロゲルフィルムを得るプロセス〕
本発明によるマイクロゲルは、マイクロゲルの水性懸濁液を乾燥または蒸発させるプロセスによって、マイクロゲルの1つまたは複数の層からなるフィルムを形成するために組織化することができる。
【0074】
各層の厚さは、10~1000ミクロン、好ましくは100~800ミクロン、より好ましくは100~400ミクロンまたは400~800ミクロンの範囲である。
【0075】
一実施形態では、層の厚さは約350ミクロンである。
【0076】
別の実施形態では、層の厚さは約750ミクロンである。
【0077】
一実施形態では、フィルムの厚さは、電極上への異なる層の堆積によって増加させることができる。
【0078】
フィルムのいくつかの層を電極上に堆積させて、生成される出力電圧の増加を得ることができる。
【0079】
したがって、フィルムは、いくつかの実施形態では、10ミクロン~5.0ミリメートル、好ましくは350ミクロン~4.0ミリメートル、好ましくは700ミクロン~3.0ミリメートルの範囲で変化する厚さを有することができる。
【0080】
一実施形態では、フィルムの面積が、1E-05mと6E-05mとの間に含まれる。一実施形態では、フィルムが、20℃~40℃、好ましくは35℃の温度で溶媒を乾燥または蒸発させるプロセスによって調製される。
【0081】
典型的には、マイクロゲル粒子のフィルムを、例えば、上記の方法に従って調製された水溶液マイクロゲル分散液を型に入れる工程、および水分散液を乾燥させる工程に従って形成することができる。乾燥は、型を、30℃より高い温度、好ましくは約35℃または周囲温度に置くことによって行うことができる。
【0082】
本発明によるマイクロゲルはまた、凝集性および弾性フィルムを形成することができる。本発明の文脈においては、フィルムを形成するためにマイクロゲルをカプセル化または支持することは必要ではない;その結果、マイクロゲル粒子の水性分散液の水分蒸発後に、マイクロゲルが形成されるケラチン材料とマイクロゲルとの間の相互作用が最適である。
【0083】
したがって、本発明はまた、本発明による組成物をケラチン材料上に適用する工程を含む自己組織化マイクロゲルフィルムを得る方法に関し、前記自己組織化マイクロゲルフィルムは、組成物の溶媒蒸発によって得られる。
【0084】
典型的には、自己組織化マイクロゲルフィルムは、周囲温度での単純な乾燥によって得られる。
【0085】
典型的には、ケラチン材料は、皮膚、頭皮、毛髪、爪、唇、眉毛の中から選択される。好ましくは、本発明による組成物は、皮膚上に適用される。
【0086】
したがって、本発明のこれらの導電性マイクロゲルは、ケラチン材料上でのこれらの組成物の保持を改善し、それらの機械電気的特性によって角質層を通る活性剤の浸透を促進するために、治療用または化粧用組成物中のフィルム形成剤として使用することができる。
【0087】
〔一連の自己組織化マイクロゲルフィルム〕
一実施形態では、生成される電位を増加させる目的で、複数のフィルムまたは自己組織化マイクロゲルフィルムを直列に接続することができる。
【0088】
したがって、一実施形態では、本発明はまた、一連のフィルムまたは自己組織化マイクロゲルフィルムに関し、各フィルムまたは自己組織化マイクロゲルフィルムは、別のフィルムまたは自己組織化マイクロゲルフィルムにそれぞれ接続される。
【0089】
一実施形態では、フィルムまたは自己組織化マイクロゲルフィルムが、1つのフィルムまたは自己組織化マイクロゲルフィルムの底部電極を、他のフィルムの上側電極に連結する電気ケーブルまたはワイヤを介して接続される。
【0090】
一実施形態では、2~50枚のフィルムまたは自己組織化マイクロゲルフィルムが接続され、好ましくは2~10枚、より好ましくは2~6枚のフィルムまたは自己組織化マイクロゲルフィルムが接続される。
【0091】
有利には、一連のフィルムまたは自己組織化マイクロゲルフィルムを使用する場合、高い電位を生成することができ、適切な数の連続したフィルムを組み合わせて、電位を増幅することが可能である。
【0092】
〔機械電気的特性〕
本発明に従って形成された組成物およびフィルムは、圧縮効果によって電位を生成する。
【0093】
本発明によるマイクロゲル自己組織化フィルムの指による圧縮後に生成された出力電圧は約150mVであり、場合によっては200mVを超えていた。また、出力電圧は1分以上一定に保たれる。
【0094】
化粧および治療用途の観点から、細胞フィルムおよび脂質二重層フィルムにおける可逆的細孔誘導が、150~250mV(数秒)で観察されている(H.Inada、A-H.Ghanem、W.I.Higure、PharmRes.、1994年、11、687~697ページ)。したがって、本発明に従って形成されたフィルムは、活性分子の浸透を促進する新たな細孔を皮膚に形成可能であるべきである。
【0095】
これらの特性は、化粧製品または医薬品の調製のために、本発明の組成物およびそれらが形成するフィルムの使用を想定することを可能にする。これらの製品は、ケラチン材料、好ましくは皮膚を刺激して、圧縮効果を介して化粧剤または治療剤を送達する。化粧剤または治療剤は、マイクロゲル中に捕捉されていてもよく、または製品中に存在していてもよい。
【0096】
〔活性剤担持マイクロゲル〕
一実施形態では、マイクロゲルは活性剤を担持する。「担持する」とは、マイクロゲル粒子がある量の活性剤を含むことを意味する。したがって、ある量の活性剤がマイクロゲル粒子中に存在し、マイクロゲル粒子中に捕捉されていると見なすことができる。「捕捉」という語は、活性剤がマイクロゲルのポリマーの網目の内に位置することを意味する。架橋ポリマーの網目は、活性剤の周囲にバリアを形成することができ、活性剤は網目内の何らかの物理的変化によって抑圧されうる。捕捉された活性剤は、共有結合で架橋ポリマーに結合されていなくてもよい。捕捉された活性剤は、架橋ポリマーと、静電相互作用、ファンデルワールス結合または水素結合を有することができ、有機分子の-OH基のC=C結合と架橋ポリマーのエチレングリコール部分との間に係合されることができる。
【0097】
本発明によるマイクロゲルは、有利には活性剤を捕捉し、多量の異なる分子を封入することができる。
【0098】
一実施形態では、活性剤は疎水性分子である。
【0099】
一実施形態では、活性剤は化粧剤または治療剤であり得る。
【0100】
「担持マイクロゲル中の活性剤の量」は、担持マイクロゲル中の架橋ポリマー1mg当たりの架橋ポリマー中に封入される活性剤の重量(マイクログラム(μg))である。本明細書の残りの部分において、「担持されたマイクロゲル中の活性剤の量」を、「捕捉された物質量」とも呼ぶ。
【0101】
活性剤担持マイクロゲルの調製は、WO2019/07740号に記載されている。簡潔に述べると、活性剤担持マイクロゲルは、以下の工程に従って調製することができる:
‐水中で、無担持マイクロゲル粒子の分散液を調製する工程;
‐活性剤の供給溶液を調製する工程;
‐得られたマイクロゲルと活性剤の溶液とを混合し、マイクロゲル粒子中に活性剤を封入する工程、及び
‐活性剤担持マイクロゲル粒子を回収する工程。
【0102】
典型的には、カテコール架橋剤の存在下で、上記の沈殿重合法によって、無担持マイクロゲル粒子が調製される。
【0103】
活性物質溶液と無担持マイクロゲル分散液との混合工程は、無担持マイクロゲル粒子の体積相転移温度よりも高い温度で加熱する工程と、得られた無担持マイクロゲルの分散液を周囲温度(25℃)で冷却する工程とを含むことが好ましい。
【0104】
活性剤の供給溶液は、所定量の活性剤を、適切な溶媒に溶解させることによって得ることができる。溶媒中の活性物質の決定された量の完全な溶解は、周囲温度から無担持マイクロゲル粒子の体積相転移温度を超える温度までの温度で行うことができる。
【0105】
以下の説明において、「供給物質量」とも呼ばれる「供給溶液中の活性剤の量」は、活性物質を捕捉するために使用される無担持マイクロゲル粒子1mg当たりの供給溶液中の活性剤の重量(μgまたはmg単位)である。供給物質量の単位は、短く、「mg/mg」または「マイクログラム/mg」と記載してもよい。
【0106】
WO2019/077404号に記載されているように、このプロセスは、高い捕捉効率EE%を可能にする。
【0107】
捕捉効率(EE%)は、担持マイクロゲル中に捕捉される活性剤の重量と、供給溶液中に含有される活性剤の量との比率として定義される。捕捉効率(EE%)は、また、本出願において定義されるように、捕捉された物質量(A)と供給物質量(B)との比率A/Bとして定義され得る。
【0108】
活性剤は、水性分散液の形態であるマイクロゲル中に、または上記の記載によるフィルムの形態で調製されたマイクロゲル中に、封入することができる。
【0109】
典型的には、フィルムの形態の活性剤を担持したマイクロゲルの調製のためのプロセスは、以下の工程を含む:
‐溶媒中の活性剤の供給溶液を調製する工程、
‐無担持マイクロゲル粒子のフィルムを調製する工程、
‐フィルムの膨潤およびフィルム中への活性物質の拡散を引き起こすように、フィルムを供給溶液中に浸漬する工程、および、
‐活性物質担持マイクロゲルフィルムの形態であり得るマイクロゲルを回収する工程。
【0110】
フィルムは、上記のように調製される。
【0111】
フィルムを浸漬する工程は、25℃で、少なくとも12時間または24時間行うことができる。
【0112】
〔化粧製品〕
一実施形態では、本発明は、上記の組成物と、少なくとも1種の化粧剤とを含む化粧製品に関する。
【0113】
一実施形態では、マイクロゲル粒子が化粧剤を捕捉する。そこで、マイクロゲルを「担持マイクロゲル」または「担持マイクロゲル粒子」と称することができる。
【0114】
化粧剤としては、皮膚組織に対して少なくとも1つの効果を誘導すること、または引き起こすことが知られている化学物質、化合物、小分子もしくは大分子、抽出物、製剤または組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0115】
本発明による組成物のマイクロゲルは、水性分散液の形態、またはフィルムもしくは一連のフィルムの形態であり得る。
【0116】
化粧品組成物は、メイクアップ製品、スキンケア製品、ヘアケア製品の形態であり得る。
【0117】
本発明の目的および効果が損なわれない限り、本発明の化粧製品は、本発明の組成物に加えて、任意の許容される賦形剤をさらに含有することができる。
【0118】
〔メイクアップ又はスキンケア方法〕
一実施形態では、本発明はまた、ケラチン材料に上記の化粧製品を適用する工程と、前記製品に圧縮を加える工程とを含む、メイクアップまたはスキンケア方法に関する。
【0119】
一実施形態では、メイクアップまたはスキンケア方法は、以下の工程を含む:
‐ケラチン材料上に上記のような化粧製品を適用する工程(ここで、組成物のマイクロゲルは、水性分散体または一連の水性分散体の形態である);
‐自己組織化マイクロゲルフィルムを溶媒蒸発によって得るために待機する工程;
‐最終的に自己組織化マイクロゲルフィルムを接続する工程、
‐得られた自己組織化マイクロゲルフィルムに圧縮を加える工程。
【0120】
一実施形態では、メイクアップまたはスキンケア方法は、以下の工程を含む:
‐上記のような化粧製品を、ケラチン材料に適用する工程(ここで、組成物のマイクロゲルは、フィルムまたは一連のフィルムの形態である);
‐最終的に一連のフィルムを接続する工程
‐フィルムに圧縮を加える工程。
本発明による導電性マイクロゲルを含む製品の圧縮後に生成される出力電圧は、ケラチン材料を刺激し、角質層を介して皮膚の表層に化粧品物質を送達することを可能にする。
【0121】
典型的には、加えられる力は約10~15Nであり、これはクリームを普通に塗布する際に指で加えられる力と同様の値の範囲である。
本発明による組成物に適用される全ての特徴、及び前述の化粧用に適用される全ての特徴は、メイクアップ又はスキンケア方法にも適用される。
【0122】
〔治療製品〕
一実施形態では、本発明はまた、上記の組成物および少なくとも1つの治療剤を含む治療製品に関する。
【0123】
本明細書において、「治療剤」という語は、「薬物」または「活性剤」または治療活性剤と互換的に称され、対象に投与された場合に有益な薬理学的効果を示し、したがって、この薬理学的効果から利益を受ける状態の治療に使用することができる化合物を表す。
【0124】
本発明の目的および効果が損なわれない限り、本発明による治療製品は、本発明の組成物に加えて、少なくとも1種の治療剤および任意の許容される賦形剤を含有する。
【0125】
一実施形態では、マイクロゲル粒子が治療剤を捕捉する。そこで、マイクロゲルを「担持マイクロゲル」または「担持マイクロゲル粒子」と命名することができる。
【0126】
本発明による導電性マイクロゲルを含む製品の圧縮後に生成される出力電圧は、ケラチン材料を刺激し、治療剤を送達するために、角質層を通して皮膚の表層および深層に治療剤を送達することを可能にする。
【0127】
〔活性薬剤を送達するための方法〕
一実施形態では、本発明はまた、治療剤を送達するための方法であって、ケラチン材料上に上記の治療製品を適用する工程と、前記製品上に圧縮を加える工程とを含む方法に関する。
【0128】
さらに一実施形態では、本発明はまた、上記のような化粧製品をケラチン材料上に適用する工程と、前記製品上に圧縮を加える工程とを含む、化粧剤を送達するための方法に関する。
【0129】
一実施形態では、治療剤を送達するための方法は、以下のステップを含む:
‐ケラチン材料上に上記のような治療製品を適用する工程、ここで、組成物のマイクロゲルは、水性分散体または一連の水性分散体の形態である;
‐自己組織化マイクロゲルフィルムを溶媒蒸発によって得るために待機する工程;
‐最終的に自己組織化マイクロゲルフィルムを連結する工程;
‐得られた自己組織化マイクロゲルフィルムに圧縮を加える工程。
【0130】
別の実施形態では、治療剤を送達するための方法は、以下のステップを含む:
‐上記のような治療製品をケラチン材料上に適用する工程、ここで、組成物のマイクロゲルは、フィルムまたは一連のフィルムの形態である;
‐最終的に一連のフィルムを接続する工程;
‐フィルムに圧縮を加える工程。
【0131】
さらに一実施形態では、本発明は、治療に使用するための治療剤にも関し、前記治療剤は本発明による組成物を介して送達される。
【0132】
一実施形態では、治療に使用するための治療剤は、以下の工程を介して送達される:
‐ケラチン材料上に上記のような治療製品を適用する工程、ここで、組成物のマイクロゲルは、水性分散体または一連の水性分散体の形態である;
‐自己組織化マイクロゲルフィルムを溶媒蒸発によって得るために待機する工程;
‐最終的に自己組織化マイクロゲルフィルムを連結する工程
‐得られた自己組織化マイクロゲルフィルムに圧縮を加える工程。
【0133】
さらに別の実施形態では、治療に使用するための治療剤が、以下のステップを介して送達される:
‐上記のような治療製品をケラチン材料上に適用すること、ここで、組成物のマイクロゲルは、フィルムまたは一連のフィルムの形態である;
‐最終的に一連のフィルムを接続する工程
‐フィルムに圧縮をかける工程。
【0134】
本発明による導電性マイクロゲルを含む製品の圧縮後に生成される出力電圧は、ケラチン材料を刺激し、角質層を介して皮膚の表層および深層に治療物質を送達することを可能にする。
【0135】
典型的には、加えられる力は約10~15Nである。
【0136】
本発明による組成物に適用される全ての特徴、および以前に記載された治療製品に適用される全ての特徴は、治療剤を送達するための方法にも適用される。
【0137】
〔実施例〕
以下の実施例では、以下の試薬を使用した。
【0138】
【表1】
【0139】
〔実施例1:架橋剤としてドーパミン-アクリルアミド(DA)を使用するマイクロゲルの合成〕
以下の表2は、架橋剤としてDAを使用するマイクロゲルの合成において使用される手順書および反応条件を示す。
【0140】
【表2】
【0141】
マイクロゲル合成の前に、DAを合成し、Patil et al(N.Patil、C.Falentin-Daudre、C.Jerome、C.Detrembleur、Polym Chem.、2015年、6、2919-2933)に記載されている手順に従って特性決定した。
【0142】
次いで、マイクロゲルを、前記手順および処方に従って、250mLの3つ口丸底フラスコ中での沈殿重合によって合成した。簡単に説明すると、5.14mmolのMeOMA、0.573mmolのOEGMA、および57.5gの「Milli-Q」グレードの水を250mLの3つ口丸底フラスコに入れた。反応器内容物を150rpmで撹拌し、窒素で45分間パージして、室温で酸素を除去した。次いで、2mLの「Milli-Q」グレードの水に溶解した0.305mmolのMAAを、2mLのエタノールに溶解した可変量のDAと共に、ジャケット付きガラス反応器に添加し、混合物を70℃まで加熱した。開始剤(2.5mLの脱気水に溶解した14.3mgのKPS)を添加した後、重合反応を窒素雰囲気下で6時間撹拌しながら継続させた。最後に、攪拌を維持しながら、反応混合物を25℃に冷却し、「Milli-Q」グレードの水で数回の遠心分離-再分散サイクル(10,000rpm、30分)によって最終分散液を精製した。
1.沈殿共重合の速度論的研究
マイクロゲルの合成におけるMeOMAOEGMA、MAA、およびDAの部分変換の進展を、プロトン核磁気共鳴分光法(H‐NMR)により決定した。そのために、界面活性剤を含まない沈殿重合を上記のように行ったが、内部標準としてトリオキサン(10%モルM)を添加した。溶媒としてDO/HOを使用して、ブルカー分光器で、HNMRスペクトルを400MHzで記録した。MeOMA、OEGMA、MAA、およびDAの部分転化率は、以下の式によって決定した。
【数1】
【0143】
式中、IおよびIトリオキサンは、最初の時間tおよび試料採取時間tにおけるモノマーMおよび内部標準(トリオキサン)のピーク積分の数値である。
【0144】
単官能性メタクリレートモノマーおよびDA架橋剤の最終的な部分変換率を、図1に示す。見て分かるように、主要なモノマーの変換率が制限されるのが観察され、それらのうちの40%のみが反応する。理論に拘束されることを望むものではないが、この変換率の制限の理由はDAの捕捉効果であり得る。
【0145】
DA分子が反応し、マイクロゲル粒子に組み込むことができることを確認する目的で、様々な測定を行った。Xueと共同研究者らは、カテコールが架橋構造を形成する伸長ラジカルと反応することができると報告した。この意味で、彼らは、異なるモノマーおよびドーパミン-メタクリルアミドのラジカル共重合中の架橋網目構造の形成のための3つの可能な機構を提案する。これらの機構は、カテコール基の共有結合、カテコールのヒドロキシル基間の水素結合の形成、および1つのポリマー鎖のカテコール基と別の伸長鎖のラジカルとの間の反応である。
【0146】
架橋点のためのカテコールへと続く機構のタイプを決定する目的で、種々の実験を行った。カテコール基の共有結合の場合、λmax~280nmの特徴的な吸光度は、λmax~267nmにシフトする。しかしながら、両方のマイクロゲルは、280nmで1つの特徴的な吸光度しか示さず(結果は開示されていない)、共有結合カテコールが存在しないことを示している。
【0147】
カテコール基間の水素結合形成の判定のために、ホウ酸ナトリウム(3.25mM)を最終マイクロゲル分散液に添加した。ホウ砂は、マイクロゲル粒子の崩壊/膨潤を引き起こし得るカテコールと環状二座p-ベンゼンジオールサブユニットを形成し得ることが知られている。24時間のインキュベーション後、最大吸光度ピークは変化せず、両マイクロゲルの膨潤比は1に近く、このことは、それらの内部構造が最初のものと同じであることを意味する。
【0148】
したがって、いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明者らは1つのポリマー鎖のカテコール墓と別の伸長鎖のラジカルとの間の反応を、コポリマー鎖間の架橋点形成のための主な機構と考えた。
2.マイクロゲルの膨潤-崩壊転移
異なる温度およびpHでの平均流体力学的粒子直径などの、合成されたマイクロゲルのコロイド特性を、光子相関分光法(PCS、Zetasizer Nano ZS Instruments、Malvern Instruments)によって測定した。全ての測定において、pHは、1mMのイオン強度で異なる緩衝媒体を用いて制御した。
【0149】
pH感度を調べるために、pH3からpH8、20℃で測定を行い、1mg/mLの試料濃度でpHユニットごとに3回測定した。最適化された測定の安定化時間は5分であった。図2に見られるように、マイクロゲルのpH感度は、VPTpH未満のpHでマイクロゲル粒子が崩壊し、VPTpHを超えるpHでカルボキシル基のイオン化により膨潤すると予想されるものである。
【0150】
熱的挙動を研究するために、pH6、20~55℃で測定を実施し、グレード毎に実施した30~40℃を除いて、2℃毎に測定した。図3に見られるように、マイクロゲルの熱挙動は従来のものである:粒子はVPTT(体積相転移温度)未満に温度を下げることによって膨潤し、VPTTを超える温度で崩壊する。M1マイクロゲルの場合、55℃では、マイクロゲル粒子の完全な崩壊に至らなかった(図3a参照)。M1マイクロゲル粒子の崩壊を促進するために、pH3で熱応答性を調べた(図3b参照)。
【0151】
興味深いことに、合成されたマイクロゲル粒子のサイズが小さいため、それらは湿潤条件で色特性を示すが、これらは乾燥状態で失われる。湿潤状態での着色特性を確認するために、UV-Visキュベット中でフィルムを形成し、その吸光度を乾燥および湿潤状態で測定した(キュベットに水を添加)。フィルム形成のために、いくらかのマイクロゲル分散液をキュベット壁に添加した。湿潤状態と乾燥状態との間には吸光度に関して差異は観察されず、すなわち、現れる吸光度ピークは、カテコール基の特徴的なピークに関連する。おそらく、乾燥工程はマイクロゲル粒子を秩序化し、色特性を示すのに適したものではなかった。
【0152】
乾燥状態および湿潤状態の両方でのマイクロゲル粒子の原子間力顕微鏡(AFM)による画像を、マルチモード8(BrukerNano)で記録した。そのために、マイクロゲル分散液(10-3重量%)の水滴を、清浄なシリコンウェハー上に堆積させ、室温条件で乾燥させた後、大気上でAFM表面マッピングを行い、アルカリ性溶液(pH8)中に浸漬した。図4は、乾燥状態、およびpH8のアルカリ溶液の添加による湿潤状態におけるM1およびM2マイクロゲルの表面マッピングおよび断面分析を示す。M2マイクロゲルの場合、単分散粒子および球状粒子が観察される(図4bおよび4c)。対照的に、M1マイクロゲルの場合、マイクロゲル粒子の形状はあまり明確ではない(図4a)。これは、粒子の低い架橋密度に起因する可能性がある。
【0153】
加えて、アルカリ性溶液の添加後、マイクロゲル粒子のサイズは、アニオン性メタクリレート単位の静電反発力により大きくなる。しかしながら、膨潤した粒子の高さは幅よりも小さく、これは、基板とマイクロゲル粒子との間の引力によって、マイクロゲルの完全な膨潤が回避される可能性がある(表3参照)。
【0154】
【表3】
【0155】
3.TEMによる直接観察
M1およびM2マイクロゲルサンプルを、透過型電子顕微鏡(TEM)による特性評価のために、Bordeauxイメージングセンター(BIC)に送った。図5は、異なる量のDAを用いて合成されたM1およびM2マイクロゲルの写真を示す。観察され得るように、両方の場合において、球状および単分散マイクロゲル粒子が、DAの量にかかわらず得られる。加えて、DA(M2)の濃度を増加させると、マイクロゲル粒子のエッジがより良好に画定される。これは、架橋密度が高いほど、ダングリング鎖が少なくなるためと考えられる。
【0156】
4.フィルム形成:AFMによる表面特性評価
自己組織化マイクロゲルの多層からなるフィルムを、Boularasら(M.Boularas、S.Radji、E.Gombart、J.-FTranchat、V.Alard、L.Billon、Materials&Design、2018年、147、19-27)によって記載された方法に従って形成した。
【0157】
簡単に説明すると、30mLの精製水溶性マイクロゲル分散液を不活性プラスチック型に導入し、大気圧、35℃(±3℃)で48時間乾燥させた。
【0158】
自己組織化マイクロゲルフィルムの原子間力顕微鏡(AFM)による画像を、Bruker-probe(ScanAsyst-Air)からの窒化ケイ素カンチレバーを用いてマルチモード8(BrukerNano)で記録した。自己組織化マイクロゲルフィルムは、AFM表面マッピングによって観察される前に、シリコンウェハー基板上に堆積された。
【0159】
図6は、自己組織化M2精製マイクロゲルフィルムの表面におけるAFM顕微鏡写真を示す。その表面は、約200nmの粒径を有する球状および単分散マイクロゲル粒子の高い秩序を示す(図6b-6c)。さらに、この領域は青色の特性を示す。しかしながら、高い秩序性および着色特性は、フィルム全体に沿って観察されない(図6a)。フィルムは、鋳造の特定の技術を必要とせずに形成されたことを指摘することが重要である。おそらく、フィルムに沿って高い秩序を得るためには、制御鋳造が使用されるべきである。
【0160】
これまで、オリゴ(エチレングリコール)系の自己組織化フィルムの、水溶液中でその完全性を維持して膨潤する能力が実証された。
【0161】
カテコール系マイクロゲルで形成されたフィルムを、水溶液に24時間浸漬した。驚くべきことに、M1マイクロゲル粒子で形成されたフィルムは再分散された。マイクロゲルの外側シェルにおけるペンダントオリゴ(エチレングリコール)鎖間の引力は、反発力とバランスを取るのに十分ではないようだ。M2マイクロゲルで形成されたフィルムの場合、フィルムはその完全性を維持して膨潤した。
【0162】
〔実施例2:合成されたマイクロゲル上へのポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)シェルの組み込み〕
ドーピング剤として架橋剤のカテコール基を用いて合成されたマイクロゲル上へのポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)シェルの導入を以下のように行った。簡単に説明すると、1%の固体量のマイクロゲルの一定量を丸底フラスコに入れた。続いて、エタノールに溶解した異なる量(マイクロゲルに対して10~25重量%)の3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)を添加し、反応混合物を室温で数分間撹拌した。次いで、n(APS)/n(EDOT)=1を維持しながら、Milli-Q水に溶解した過硫酸アンモニウム(APS)を添加した。色が「暗緑色」に変化するまで、撹拌しながら重合を継続させた。
【0163】
さらに、外部ドーピング剤としてポリ(スチレンスルホネート)(PSS)を添加し、マイクロゲルに対してPEDOTを25重量%添加して、参照コアシェルマイクロゲルを合成した。その場合、2mol%のオリゴ(エチレングリコール)ジアクリレート(OEGDA)を有する、裸のマイクロゲル(BM)と呼ばれる、合成された従来のマイクロゲルを、種として使用した。
【0164】
まず、室温で反応を行った。しかし、合成を完了するのに必要な時間は、1週間より長かった。したがって、反応速度を増加させるために、温度を40℃まで上昇させ、反応時間を4~5日まで減少させた。さらに、マイクロゲル粒子(M1)中のカテコール基の量を減少させると、合成を完了するのに必要な時間が4~5日から1日に減少することが観察された。このことは、カテコール基がEDOT分子に対し、より接近可能であることを示唆し、このことは、カテコール基が主にマイクロゲル粒子の表面に位置するためである可能性がある。
【0165】
導電性マイクロゲル粒子の合成のための手順書および実験条件を表4に示す。第1列に、各反応の名称を示す。PEDOTに続く数字は、マイクロゲルに対して使用されるEDOTの重量%を示す。
【0166】
【表4】
【0167】
1.コロイド特性評価
1.1.AFMによる直接観察
乾燥状態でのマイクロゲル粒子の原子間力顕微鏡(AFM)による画像を、マルチモード8(BrukerNano)で記録した。そのために、マイクロゲル分散液(10-2重量%)の水滴を、清浄なシリコンウェハー上に堆積させ、周囲条件下で乾燥させ、その後、大気上でAFM表面マッピングを行った。図7に、合成された異なる導電性マイクロゲルの高さモードおよび接着モードの画像を示す。全ての場合において、導電性シェルの添加後、マイクロゲル粒子の形状は均一なサイズを呈するように、より良好に規定される。観察され得るように、わずかに架橋されたマイクロゲル(M1)を種として使用して合成された導電性マイクロゲルの場合、それは、粒子の表面上へのPEDOTドットの均一な分布のように見える(接着モード画像を参照されたい)。更に、添加されるPEDOTの量を増加させると、粒子の表面は、PEDOTドットによってより良く覆われるように見える。
【0168】
一方、高度に架橋されたマイクロゲルを種として使用する場合、マイクロゲル粒子の表面にいくつかのドットが観察されるが、表面は完全には覆われていない。これは、いくつかのカテコール基がマイクロゲル粒子中に位置し、添加されたEDOTの一部が表面ではなくマイクロゲル粒子中に重合しているためである可能性がある。PSSをドーパントとして使用して合成された参照導電性マイクロゲルの場合、同様の画像が得られる。すなわち、いくつかのドットが粒子の表面に観察されるが、粒子は完全には覆われていない。カテコール基は、PSS基よりも良好なドーパントであると思われる。しかし、これを確証し、より良好な分解能を有する画像を得るために、電子顕微鏡技術を用いて、合成されたマイクロゲルを分析すべきである。
【0169】
1.2.TEMによる直接観察
上記の仮説を裏付ける目的で、伝導性マイクロゲルサンプルをBordeauxイメージングセンターに送って、透過型電子顕微鏡(TEM)によって分析した。図8には、異なるDA濃度および異なるEDOT濃度で合成されたマイクロゲルを種として使用して合成された導電性マイクロゲルの画像が示されている。見て分かるように、わずかに架橋したマイクロゲル(M1)を種として、最低PEDOT量(M1-PEDOT10)を用いて合成されたマイクロゲルの場合、粒子の表面上へのPEDOTドットの均一な分布が観察される。更に、遊離PEDOTナノ粒子は観察されず、PEDOTがマイクロゲル粒子の表面でのみ重合したことを示唆する。しかしながら、PEDOT(M1-PEDOT25)の濃度を増加させると、遊離PEDOTナノ粒子が培地中で観察され、マイクロゲル粒子の表面では観察されない。これは、添加されたEDOTの量がマイクロゲル粒子中に存在するドーパントの量に対して高すぎたためであり得る。マイクロゲル粒子を完全に視ることを目的として、STEM-EDS分析が実施される。このようにして、PEDOTの濃度に関するマップが得られ、マイクロゲル粒子上/中へのPEDOTのより良好な分布を定義することができる。
【0170】
一方、高度に架橋されたマイクロゲルを種として使用する場合、マイクロゲル粒子の表面にいくつかのドットが観察されるが、表面は完全には覆われず、表面の半分のみが覆われているように見える。さらに、いくつかのPEDOTドットのマイクロゲル粒子への局在化が疑われる。同様に、ドーパントとしてPSSを用いて合成された導電性マイクロゲルの場合、いくつかのPEDOTドットがマイクロゲル粒子中に位置するように見える。さらに、この場合、媒体中に遊離PEDOTドットが観察される。PEDOTをマイクロゲル粒子の表面に付着させるためには、ドーパントとしてのカテコール基の使用は、従来のPSSドーパントを使用するよりも優れているようである。PEDOTドットのマイクロゲル粒子上/中への位置を確認する目的で、STEM-EDS分析を実施する。電子顕微鏡分析を完了するためにより多くの研究が必要である場合でも、得られたTEM画像がAFM画像に一致することを指摘するのは興味深い。
【0171】
Bordeaux Imaging Centerのグループは、PEDOTの局在化を伴うマップを得るために、より高度な顕微鏡技術の使用を提供した。そのために、M2-PEDOT25サンプルをSTEM-EDSによって分析し、図9に見られるように、PEDOTの環がマイクロゲル粒子の表面で観察される。この技術により、マイクロゲル粒子の表面にPEDOTが存在することが確認された。さらに、PEDOTを親水性マイクロゲル粒子に効率的に付着させるカテコール基の適合性が確認された。
【0172】
1.3.MEB-EDSによる直接観察
伝導性自己組織化マイクロゲルフィルムをBordeauxイメージングセンターに送って、エネルギー分散分光法(SEM-EDS)を用いた走査電子顕微鏡法によって分析した。図12に、異なるPEDOT濃度を有する導電性フィルムの画像を示す。見て分かるように、連続的なPEDOTの網目は、10重量%のPEDOTについて既に得られている。これは、たった10重量%のPEDOTで、浸透閾値が得られることを意味する。浸透閾値とは、この値を超えると、電荷の通過を可能にし、したがって、材料に導電特性を付与するのに十分な導電性構成要素が含まれるポイントとして定義される。これは、より多量のPEDOTを使用しても同様の導電率値を得る理由であり得る。
【0173】
1.4.電気泳動移動度測定
電気泳動移動度測定は、Zetasizer Nano ZS装置(Malvern Instruments)を使用して、電気泳動光散乱(ELS)によって実施した。マイクロゲル分散液は、緩衝溶液を使って、0.05重量%に希釈された。各試料は、25℃で、間を開けずに、5回測定した。
【0174】
表5に、合成された異なるマイクロゲルについて得られた電気泳動移動度の値を示す。得られた値は、AFM画像で観察された値に一致する。わずかに架橋された種(M1-PEDOT10およびM1-PEDOT25)を用いて合成された導電性マイクロゲルの場合、電気泳動移動度値は裸の種(M1)について得られたものよりも正の値であり、PEDOTによるイオン化カルボン酸基のスクリーニングのために、表面のイオン化カルボン酸基の量がより少ないことを意味する。対照的に、高度に架橋された種(M2-PEDOT25)を用いて合成された導電性マイクロゲルの場合、添加されたPEDOTの量がより多くても、裸の種と同様の電気泳動移動度値が得られた。AFM画像で観察されたように、マイクロゲル粒子の表面はPEDOTによって完全に覆われていなかったが、これはいくらかのPEDOTがマイクロゲル粒子に重合され、したがって、表面での電荷の量が一定に維持されたからであると考えられる。ドーパントとしてPSSを使用して合成された導電性マイクロゲルの場合、マイクロゲルの表面に位置する脱プロトン化スルホネート基のために、PEDOTの添加後に、より負の値が得られた。AFMによって観察されたように、いくつかのPEDOTドットが、得られた電気泳動移動度のより負の値の応答性である粒子の表面で観察される。
【0175】
【表5】
【0176】
2.フィルム特性評価
2.1.導電率測定
導電率測定は、四端子測定法に従って実施した。そのために、上述の手順に従ってフィルムを形成し、その厚さを考慮して導電率を計算した。しかし、フィルムを金型から取り出し、有線間で圧縮すると、時には、それらの柔らかさのために操作中に破損し、測定は信頼できなかった。したがって、電極を用いて、シリコーン型からフィルムを取り出すことなく、フィルムの抵抗を直接測定することが決定された。
【0177】
そして、以下のようにして導電率値を算出した:
【0178】
【数2】
【0179】
式中、Lおよびlはそれぞれ、最長辺および最短辺におけるフィルムの長さ(cm)を表し、Rは抵抗(kΩ)であり、eは、フィルムの厚さ(cm)である。
【0180】
表6に、合成したマイクロゲルの導電率値を示す。図から分かるように、最低値は、ドーパントとしてPSSを使用する場合に得られた。カテコール基は、通常使用されるPSSよりもPEDOT重合のためのより良好なドーパントであると思われる。カテコール系の種の粒子を用いて合成された導電性マイクロゲルの場合、PEDOTの量とは無関係に、同様の値が得られた。高度に架橋された種の場合、より多量のPEDOTが添加されたが、驚くべきことに、低量のPEDOTを有するわずかに架橋されたマイクロゲルについて得られた導電率と同様の導電率が観察された。その理由は、組み込まれたPEDOTの位置に関連し得る。わずかに架橋したマイクロゲルを種として用いる場合、PEDOTは主にマイクロゲルの表面で重合した。一方、高度に架橋されたマイクロゲルの場合、カテコール基の粒子への分布のために、いくらかのPEDOTがマイクロゲル粒子の表面に重合されたが、マイクロゲル粒子中にも重合された(図6参照)。したがって、両方の場合において、表面で重合されたPEDOTは同様であり、同様の導電率値をもたらすことができた。
【0181】
【表6】
【0182】
2.2.マイクロゲル自己組織化フィルムの機械電気的変換
更なる電位を検出するために、開回路電圧で接続されたプレート‐プレート形状のレオメーターを用いて、インジウムスズ酸化物(ITO)被覆ガラススライドの2つの電極間のフィルム(12Ωの表面抵抗率)を圧縮することにより、機械電気的特性の特性評価を家庭用セットアップで行った。フィルムへのタッチ感受性適用をシミュレートするために、Boularasらが提案したプログラムに従った(M.Boularas、Synthese de microgels hybrides,biocompatibles et stimulables pour des application cosmetiques.PhD Thesis、University of Pau et des Pays de l’Adour,2015年)。
【0183】
簡単に述べると、このプログラムは、水和フィルム厚に相当するゼロ変位での長い緩和時間(20s)と、0から60%までの異なる変位でのフィルム(2s)の短い圧縮期間とによって構成された。圧縮/緩和の各ステップを3回連続して繰り返した。電位(E)の変化を圧縮の大きさの機能として記録し、2つの電極間の出力電圧を、LabVIEWソフトウェアを用いて記録した。
【0184】
図10に、M2マイクロゲル自己組織化フィルムの繰り返し圧縮下で生成される出力電圧を示す。予想されるように、圧縮の大きさに伴う出力電圧の増加が観察される。さらに、連続する圧縮サイクルで一定の出力電圧値が得られる。各圧縮間の緩和期間は、水和フィルムの完全な緩和に十分であったようである。
【0185】
全てのフィルムについて、その柔らかさのために、全測定プロセスを完了することができなかったことに留意することが重要である。ある場合には、出力が圧縮の30~40%まで観察されず、他の場合には、大きな圧縮長さ(50~60%)ではそれらのいくつかが破壊された。したがって、さらなる部分では、30%変位サイクルの第1の圧縮を使用して、フィルムのタイプに従って、生成された電位に対する圧縮の影響を正確に特徴付けた(表7参照)。わずかに架橋された種および少量のPEDOT(M1-PEDOT10)で合成されたマイクロゲルの場合に、最大出力電圧が得られた。AFMによって観察されたように、その場合、粒子の表面はPEDOTによって十分に覆われていた。M2-PEDOT25(高度に架橋された種および多量のマイクロゲル)で形成されたフィルムの場合、裸の種(M2)よりも低い出力電圧が観察された。
【0186】
上述のように、PEDOTの一部はマイクロゲル粒子に重合され得、このためイオン化カルボキシル基をスクリーニングし、イオン移動を妨げ得る。最後に、従来のドーパント(BM-PEDOT:PSS25)を用いて合成した導電性マイクロゲルを用いて形成したフィルムは、裸のマイクロゲル(BM)が示した出力電圧と同様の出力電圧を示した。このことは、導電性ポリマーを加えた後に機械電気的特性の向上がなかったことを意味する。
【0187】
【表7】
【0188】
スキンケア用途を模倣する目的で、出力電圧を測定し、指でフィルムを直接圧縮した。そのために、いくつかの修正が、自家製のセットアップで実行された。ITOスライドを、膜蒸着のための小さな部分を節約する粘着テープで覆った。次に、第2の電極として使用するために、銅テープを指に固定した。最後に、フィルムを数秒間指で滑らかに圧縮し、LabVIEWソフトウェアを用いて出力電圧を記録した。
【0189】
表8に、指で圧縮した後に得られた出力電圧値を示す。見て分かるように、全ての場合において、値は、2つのITOスライド間で圧縮することによって得られる値よりも10~15倍高い。これは、指とフィルムとの間の接触が、ITOスライドとフィルムとの間の接触よりもはるかに良好であるためであり得る。さらに、スキンケア用途の観点から、細胞膜および脂質二重層膜における可逆的細孔誘導が、150~250mV(数秒)で観察されている(H.Inada、A-H.Ghanem、W.I.Higure、Pharm.Res.,1994年、11、687~697)。
【0190】
したがって、形成されたフィルムは、活性分子の浸透を増強する新しい孔を皮膚に作り出すことができなければならない。
【0191】
【表8】
【0192】
しかしながら、それらの間で得られた値を比較するために、指で行われる圧縮の基準が必要とされる。上記で説明したように、出力電圧は圧縮長さに依存し、したがって、それらの間の値を比較するために、同じ圧縮の圧力が指によって加えられるべきである。この点に関して、出力電圧と共に指で圧縮後に生成される力を測定するために、設定が修正された。そのために、粘着テープで覆われたITOスライドを、フィルム堆積のための小さな部分を節約して、力センサ上に堆積させた。次に、第2の電極として使用するために、銅テープを指に固定した。
【0193】
図11に指で一定の力を加えた後の出力電圧値を示す。加えられた力は、10~15Nに固定され、これは、指にクリームを普通に塗布して加えられた力と同様の値の範囲である。
【0194】
観察され得るように、出力電圧は、全ての場合において、少なくとも1分間は、一定に維持される。さらに、カテコール基を種として使用すると、PEDOT取り込み後に得られる出力電圧がより高くなり、ドーパントとしてのカテコール基の効率が確認される。対照的に、PSSをドーパントとして使用する場合、PEDOT取り込み後に得られる出力電圧はより低い(図11b)。カテコール基は、PEDOTシェルをマイクロゲル粒子に組み込む場合、PSSよりもドーパント剤としてより効率的であると思われる。最後に、PEDOT濃度を10重量%から25重量%に増加させると、予想通り、より高い出力電圧が得られる(図11a)。
【0195】
〔生成される出力電圧の向上〕
〔加えられる力〕
10重量%PEDOTを用いてわずかに架橋したマイクロゲル粒子の機械電気的変換特性に及ぼす種々のパラメータの影響を、指で力を加えて水和フィルムを圧縮することにより機械的応力を生成し、検討した。分析された第1のパラメータは、加えられた力であった。そのために、3つの異なる力:25N、55N、および電極をフィルム上に配置するだけのために加えられる力(1N未満)を加えた。図13に見られるように、電極をフィルム上に配置するだけのために加えられる力は、最大出力電圧を生成するのに十分である。したがって、加えられる力は、生成される出力電圧に影響を及ぼさないと考えることができる。
【0196】
〔面積〕
生成された出力電圧を高める目的で、10重量%PEDOTを有するわずかに架橋したマイクロゲル粒子を用いて形成されたフィルムの様々なパラメータ(面積および厚さ)を変更した。
【0197】
適用された力は10~15Nに固定され、これはクリームを普通に塗布する際に指で加えられたものと同様の値の範囲である。一方で、フィルム面積の増加は電位にほとんど影響を及ぼさないことが観察された、すなわち、最大出力電圧は、非常に小さいフィルム面積で得られた(図14参照)。しかし、1E-05mよりも小さい表面では、生成される出力電圧を制御することができた。
【0198】
一方、フィルムの厚さは、電極上に350μmおよび750μmの異なる層を堆積することによって増加させた。図15に見られるように、両方の場合において、出力電圧のわずかな増加が、いくつかの層の堆積後に観察された。実際、両タイプのフィルムについて、フィルムの厚さを3倍にした後に、~50mVのわずかな増加のみが観察された。その理由は、フィルムの異なる層間の不完全な接触である可能性がある。さらに、両方のフィルムについて、出力電圧の線形増加が観察されたが、フィルムがより厚い場合、出力電圧の増加がより低かった。これは、より厚いフィルムの内側により高い欠陥があることに起因する可能性がある。
【0199】
生成される電位を増加させる目的で、複数の小型フィルムユニット(9×10-6m)の接続を検討した。そのために、図16aの概略図に見られるように、異なる厚さ(350または750μm)を有する異なるフィルムユニットを直列に接続した。
【0200】
直列に配置された電極の数が増加すると、出力電圧の増加が観測され、両方のフィルムで約700mVの大きな値が得られた(図16b)。しかし、少なくとも検討した範囲では、フィルム厚の影響は観察されなかった。
【0201】
有利には、自己組織化マイクロゲルフィルムの小片(9×10-6m)を使用して、高電位を生成することができ、適切な数のフィルムを直列に組み合わせて増幅することができることが実証された。
【図面の簡単な説明】
【0202】
図1図1は、M2マイクロゲル(a)、M3マイクロゲル(b)の部分変換の進展を示している。
図2図2は、25℃におけるpHの関数としての平均流体力学的直径を示す。
図3図3は、合成されたマイクロゲルのpH6(a)およびpH3(b)における温度の関数としての平均流体力学的直径を表す。
図4図4は、M1マイクロゲル(a)、M2マイクロゲル(b)の乾燥状態でのAFM画像,及びM2マイクロゲル(c)のpHのアルカリ溶液に浸漬したAFM画像を示す。
図5図5は、M1マイクロゲル(a)およびM2マイクロゲル(b)の乾燥状態におけるTEM顕微鏡写真を示す。
図6図6は、自己組織化M2精製マイクロゲルフィルムの表面のAFM顕微鏡写真を示し、(a)は無着色領域、(b,c)は着色領域を示す。
図7図7は、合成されたマイクロゲルの乾燥状態におけるAFM画像を、高さモード(a)、および接着モード(b)で示す。
図8図8は、合成されたマイクロゲルの乾燥状態における透過型電子顕微鏡写真を示す。
図9図9は、M2-PEDOT25マイクロゲルの乾燥状態におけるSTEM-EDS顕微鏡写真を示す。
図10図10は、M2自己組織化フィルムの圧縮長さ(%)の関数としての電位差(mV)を表す。
図11図11はカテコール(a)、ドーパントとしてのPSS(b)を用いて形成されたマイクロゲル自己組織化フィルムに対して、指による一定の圧縮の後に生成された出力電圧(mV)を示す。
図12図12は、10重量%(a)および25重量%(b)のPEDOTフィルムを有し、自己組織化され、わずかに架橋されたコアシェルマイクロゲルのSTEM-EDS断面画像を表す。
図13図13は、加えられる力の関数としての生成される出力電圧を表す。
図14図14は、10重量%のPEDOTを有し、わずかに架橋された自己組織化マイクロゲルについての出力電圧に対するフィルム面積の効果を表す。
図15図15は、10重量%のPEDOTを有し、わずかに架橋された自己組織化マイクロゲルについての出力電圧に対するフィルム厚の効果を表す。
図16図16(a)は、直列に配置されたフィルムの概略図を表す。図16(b)は350μmおよび750μmの厚さを有する自己組織化マイクロゲルフィルムに対する、指による一定の圧縮後に生成される出力電圧(mV)を示す。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6
図7a
図7b
図8
図9
図10
図11
図12a)】
図12b)】
図13
図14
図15
図16
【国際調査報告】