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特表2024-514463処理用流体を処理するための方法、及びこの方法を実施するためのフィルタ装置
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  • 特表-処理用流体を処理するための方法、及びこの方法を実施するためのフィルタ装置 図1
  • 特表-処理用流体を処理するための方法、及びこの方法を実施するためのフィルタ装置 図2
  • 特表-処理用流体を処理するための方法、及びこの方法を実施するためのフィルタ装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】処理用流体を処理するための方法、及びこの方法を実施するためのフィルタ装置
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/00 20210101AFI20240326BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20240326BHJP
   B01D 29/11 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B1/04
B01D29/10 510C
B01D29/10 530A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023559062
(86)(22)【出願日】2022-03-09
(85)【翻訳文提出日】2023-11-22
(86)【国際出願番号】 EP2022056041
(87)【国際公開番号】W WO2022207261
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】102021001631.9
(32)【優先日】2021-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521377627
【氏名又は名称】ハイダック インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100126848
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン ケーニヒ
【テーマコード(参考)】
4D116
4K021
【Fターム(参考)】
4D116AA07
4D116BB01
4D116BC23
4D116BC27
4D116BC45
4D116BC77
4D116DD06
4D116KK04
4D116QA27C
4D116QA27D
4D116QA27G
4D116UU10
4D116VV30
4K021AA01
4K021BA02
4K021BA17
4K021CA11
4K021DB31
4K021DB36
(57)【要約】
処理用液体を電解セル(10)内で電流によって互いに異なるプロセスガスに分解するときに生じるような処理用流体を処理するための方法であって、電解セルが少なくとも1つの流体回路を備えており、流体回路内に、プロセスガスの少なくとも1種が、処理用液体中に含有された形態を成して、処理用流体を形成しながら存在しており、流体回路の部分として少なくとも1つの流体貯蔵タンク(22)が設けられている形式のものにおいて、流体貯蔵タンク(22)内に少なくとも1つのフィルタ装置(24)が収容されており、フィルタ装置によって、処理用流体を清浄化して、場合によっては生じる粒子汚染物を除去し、そして同時に、含有されたプロセスガスを処理用流体から、処理用液体を留めておきながら分離することを特徴とする、処理用流体を処理するための方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理用液体を電解セル(10)内で電流によって互いに異なるプロセスガスに分解するときに生じるような複数の処理用流体を処理するための方法であって、前記プロセスガスの少なくとも1種を前記処理用液体に含有することによって、処理用流体を形成する少なくとも1つの流体回路を備え、前記流体回路の部分として少なくとも1つの流体貯蔵タンク(22)が設けられている方法において、流体貯蔵タンク(22)が少なくとも1つフィルタ装置(24)を備えており、前記フィルタ装置によって、前記処理用流体は、可能な限りの粒子汚染物が除去され、同時に、溶解された前記プロセスガスが処理用流体から分離され、前記処理用液体が保持されることを特徴とする、処理用流体を処理するための方法。
【請求項2】
水又は苛性カリ溶液が前記処理用液体として使用され、水素及び酸素が前記プロセスガスとして生成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つのプロトン交換膜が、前記処理用液体として水を使用して前記プロセスガスを生成するために分離エレメントとして使用され、前記プロトン交換膜の酸素側に発生する前記処理用流体が、貯蔵タンク(22)内に配置された前記フィルタ装置(24)によって、前記処理用流体の成分である水と酸素とに再び分離されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
プロトン交換膜の水素側に発生する水素が、前記処理用液体としての水に溶解され、それによって前記処理用流体を形成し、前記フィルタ装置(24)によって、前記処理用流体の成分である水と酸素とに再び分離されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記プロセスガスを生成するために、少なくとも1つダイヤフラム又はアニオン交換膜(AEM)が分離エレメントとして使用され、苛性カリ溶液を前記処理用液体として使用し、前記ダイヤフラムの酸素側及び水素側に発生する前記処理用流体が、前記流体貯蔵タンク(22)内の割り当て可能な前記フィルタ装置(24)によって、その構成成分である苛性カリ溶液と、酸素及び水素の形態のそれぞれの前記プロセスガスと、に分離されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の処理用流体を処理する方法を実施するためフィルタ装置であって、少なくとも1つの、好ましくは交換可能なフィルタエレメント(44)を有し、このフィルタエレメント(44)を通して流体が内側から外側へ流れることができ、前記フィルタエレメント(44)がそれぞれの場合において、予め規定可能な半径方向間隔を保持しながらハウジング壁(36)によって取り囲まれ、流体フローチャンバ(60)を形成し、前記ハウジング壁は、流出管として形成され、複数の貫通個所(38,40)を有しており、前記貫通個所のうちの一部が、前記流体貯蔵タンク内のそれぞれの可変の流体レベル(28)の下方に配置され、残りのものは、前記流体レベル(28)の上方に配置されていることを特徴とする、フィルタ装置。
【請求項7】
前記ハウジング壁(36)内のそれぞれの前記貫通個所(38)が窓状に形成されており、清浄化された流体中に位置するあらゆる気泡が、前記窓状の貫通開口(38)を介して分離され、流体レベル近くで排出のために収集できることを特徴とする、請求項6に記載のフィルタ装置。
【請求項8】
窓状の前記貫通開口(38)を備えた前記ハウジング壁(36)が、蓋部分(34)によって前記流体貯蔵タンク(22)内に固定することができ、前記フィルタエレメントの内部への前記処理用流体の供給が、前記流体貯蔵タンク(22)内の流入部(20)を介して行われることを特徴とする、請求項6又は7に記載のフィルタ装置。
【請求項9】
前記貫通個所(38,40)のための開口断面が、気泡の表面張力の影響下で前記気泡の放出を容易にするために、前記気泡の体積を増加させることができるように選択されることを特徴とする、請求項6から8のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理用液体(Prozessfluessigkeit)を電解セル内で電流によって互いに異なるプロセスガス(Prozessgase)に分解するときに生じるような複数の処理用流体(Prozessfluiden)を処理するための方法であって、前記プロセスガスの少なくとも1種を前記処理用液体中に含有することによって、処理用流体を形成する少なくとも1つの流体回路を備え、前記流体回路の部分として少なくとも1つの流体貯蔵タンクが設けられている方法に関する。本発明はさらに、この方法を実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、水素と酸素とを生成するための方法並びに装置を開示しており、特に風力発電所からの余剰の電気エネルギーをこの目的に使用することができる。この方法を実施するための関連する装置は、プロトン交換膜(PEM)を備えた可逆的な固体高分子形燃料電池(PEMFC)を電解槽として使用する。燃料電池プロセスを反転させることにより、このような燃料電池は、処理用液体としての水から、互いに異なるプロセスガスとして一方では水素を、そして他方では酸素を製造するために利用することもできる。燃料電池は更に電解槽として働き、複数の燃料電池を燃料電池スタックとして組み合わせることも可能であって、電力を供給しなければならない。このために必要な電流は例えば、風力タービンに接続された発電機に由来することができる。水素と酸素とを生成するための電解セルの形態を成す一般に使用される電解装置は、通常は大気圧において運転されるか又は圧力電解と接続して運転されるような装置である。前述の可逆的な燃料電池のプロトン交換膜は、マイナス側をプラス側から分離する。電流を印加すると可逆的な燃料電池内で行われる電解によって、プラス側又はアノード側では水分子が水素と酸素とに分解され、水素はプロトンとして、プロトン交換膜と通ってマイナス側又はカソード側へ移動する。これに対して酸素はプラス側に留まる。
【0003】
このような反応を実施するためには、プラス側に水が処理用液体として存在しなければならない。それぞれの水の供給は独立した回路を介してもたらされる。処理用液体として使用される水は実際には純水であり、したがってできる限り異物を含まない状態で供給される。回路導管の枠内で必要とされる水量は、電解反応のために必要とされる水の量(1kgの水素の発生は通常9kgの水を必要とする)に依存するだけでなく、処理用水は同時に電解運転のための冷却媒体として機能するため、電解セル又は電解セルスタックそれぞれの冷却要件にも依存する。これにより、それぞれのPEM電解は、通常、プラス側又は酸素側に水回路を有する。
【0004】
プロセスガスとして生成される酸素は溶解し、関連供給回路に供給される処理用液体としての水と混合され、それによって、処理用流体が形成される。処理用液体は所属の供給回路内で案内されている。このプロセスでは、様々な大きさの気泡が酸素の形態で水回路中を運ばれ、いわゆる重力分離器が関連する水回路の下流に接続され、前記重力分離器は、通常、水平方向を向いた流体貯蔵タンクで構成され、前記タンクは大きな容積を持つように設計され、溶解した酸素を含む処理用流体である水が前記タンク内に流入する。プロセスガスである酸素が貯蔵タンク内で処理用流体から脱気されるのに十分に長い時間を与えることにより、純水を処理用流体として回収する。水平方向の大容積流体貯蔵タンクを使用することにより、プロセスガスを効果的に脱気し得るように、タンク内に流体高さとして大きな流体表面積が形成される。処理用流体の脱気後、処理用液体としての純水を再び得ることが望ましいが、使用される装置技術によって、例えば配管の取り回し方によって、不注意に処理用液体中へ粒子が入り込み、それによって汚染される可能性があり、また、不完全に脱気されたプロセスガスの残留分も生じ、鋭敏な電解セル又は電解セルスタックへの再投入を疑わしい使用と見なされるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2011/012507号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来技術に基づき、本発明の課題は、プロセスガスの脱気プロセスを容易にすると同時に、電解セル運転時の再使用のために処理用液体を清浄に保つのに役立つ、改善された方法並びに装置を提供することである。このような課題は、請求項1に記載の特徴を有する方法、並びに請求項6に記載の特徴を有するフィルタ装置によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の方法は、流体貯蔵タンクが少なくとも1つフィルタ装置を備えており、前記フィルタ装置によって、前記処理用流体は、可能な限りの粒子汚染物が除去され、同時に、前記溶解されたプロセスガスが処理用流体から分離され、前記処理用液体が保持されることを特徴としている。こうして、フィルタ装置を使用するこの方法は、処理用流体中の微細に分散されたプロセスガスを、流体貯蔵タンクのガス側へ放出し得ることを保証し、小さな体積の気泡は表面張力によって、より大きい気泡を形成し、処理用流体から排出されやすくなる。フィルタ装置によって可能な限りの粒子汚染物が除去されてきわめて純粋になった処理用液体は、電解セル運転時の新たな除去プロセスのために流体貯蔵タンクの液体側に残る。従って、これは従来技術にはないものである。こうして、流体貯蔵タンク内のPEM電解槽の酸素側における処理用水の脱気が確実に行われる。特に、この目的に適したフィルタ装置内の濾材によって、可能な限り小さな気泡を流体から除去することができる。こうして、そうでなければ処理用液体に蓄積する可能性のある最も小さな気泡でさえも有効に除去される。したがって、特許請求の範囲において、プロセスガスの少なくとも1種が処理用液体中に含有されると記載されている場合、これはガスと液体との緩い結合を意味し、この結合において、ガスは液体に結合することなく液体とともに運ばれ、例えば流体とともに運ばれる。しかしこのことはまた、ガスが液体中に少なくとも部分的に溶解された状態で、例えば微細分散された形態で存在することをも意味する。
【発明の効果】
【0008】
プロセス工学の観点からは、水素生成の一環として、マイナス側に追加的な液体回路を使用することは絶対に必要というわけではない。電解セルの運転の一部としてマイナス側に達する水素原子(プロトン)は、確かに一般的な規則として、常に数個の水分子を伴っているものの、理論的にはPEM電解のマイナス側は「乾式」操作することができ、すなわちカソード側には独立した液体回路は設けられていない。
【0009】
しかしながら、酸素側の液体回路から独立している液体回路の一部としてマイナス側又はカソード側を操作することもできる。このことはより均一な冷却を可能にし、そして水は電解槽から水素を十分に排出することができる。このため、PEM電解槽の水素側で処理用水を脱気する装置と一緒に、上記方法並びに装置を用いることができる。このプロセスでは、気泡の形態を成す水素は、処理用流体としての処理用水によって、多かれ少なかれ溶解した状態で運ばれ、そして独立した流体貯蔵タンク内へ運ばれ、そこでフィルタ装置によって水素を脱気することができる。
【0010】
開示されたPEM電解の他に、水素ガス及び酸素ガスを得るために、アルカリ電解を使用することも可能であり、アルカリ電解の場合、プロトン交換膜の代わりに分離エレメントとして、いわゆるダイヤフラムが使用され、ダイヤフラムは通常、微細な金属格子構造から成る。この場合、本来の電解反応は今やマイナス側で行われ、マイナス側では、生成された水素が残り、そして生成された酸素だけが、いわゆる水酸化物分子として、ダイヤフラムを通ってプラス側へ移動し、そこで電子と再結合して酸素になる。前述のプロセスを確実に機能させるためには、水酸化物イオンが十分に処理用液体中に存在しなければならない。このことは、ここで純水ではなく苛性カリ水溶液、有利には30%苛性カリ水溶液を使用することにより達成される。このような苛性カリ溶液は、必要なイオンの極めて多くを含有しており、良好な導電性が確保され、ひいては極めて効率的な電解プロセスが可能になる。水酸化物イオンがプラス側で再結合することにより酸素になることを確実にするために、水酸化物イオンが液体中で正電極又はアノードに到達するまでほぼ浮遊していなければならない。したがって、ダイヤフラムを備えたアルカリ電極の場合、PEM電解の場合のように、固有の液体回路なしに水素が電極と作用することは基本的には不可能であり、その代わりに常に2つの液体回路、すなわち酸素側に1つの液体回路及び水素側に1つの液体回路が設けられている。ダイヤフラムの代わりに、いわゆるアニオン交換膜(AEM)を使用しても、同等の結果がもたらされる。PEM電解と同様に、ダイヤフラムの代わりにAEMを備えたアルカリ性システムも、「乾式」水素側を用いて、固有の液体回路なしで設計することができる。
【0011】
両液体回路は、電解セルスタックの後ろに再び流体貯蔵タンクを含み、流体貯蔵タンク内では、それぞれのケースで使用されるフィルタ装置によって、プラス側では酸素を、そしてマイナス側では水素を液体から放出することができる。両プロセスガスは、それぞれのセルから液体によって種々の大きさの気泡として輸送され、それぞれ1つの流体貯蔵タンク、並びに流体貯蔵タンク内に配置されたフィルタ装置を有する、2つの別個の液体回路を形成することにより、脱気プロセスが促進され、次いで、実際の電解セル運転のために、粒子汚染物及び気泡が除去された高純度の処理用液体が、再びそれぞれの液体回路内に供給される。そのため、電解液(苛性カリ溶液)の脱気がアルカリ電解槽の酸素側と水素側の両方で、確実に実施される。
【0012】
本発明による方法を実施するために使用されるフィルタ装置は、好ましくは、内側から外側へ向かって処理用流体が流れることができる交換可能なフィルタエレメントを有しており、前記フィルタエレメントは、それぞれの場合において、予め規定可能な半径方向間隔を保持しながらハウジング壁によって取り囲まれ、そして流体フローチャンバを形成し、前記ハウジング壁は、流出管として形成され、複数の貫通個所を有しており、前記貫通個所のうちの一部が、前記流体貯蔵タンク内のそれぞれの可変の流体レベルの下方に配置され、残りのものは、前記流体レベルの上方に配置されている。しかしながら、ハウジング壁を追加することなく、それぞれの濾材を介して、効果的な気泡排出を達成することもできる。
【0013】
改善されたガス分離プロセスのために、それぞれの貫通個所はフィルタ装置のハウジング壁内に窓状に形成されることが提案される。このような特に窓状の貫通個所には、ハウジング壁の縁部に気泡が集まり、個々の気泡は、それらのガス体積に対して大きくなるので、浮力が増大し、処理用流体からリアルタイムで分離される。流体貯蔵タンク内では、処理用液体の表面に沿って液面近くの排出が行われるにもかかわらず、前記処理用液体の発泡を引き起こさず、その結果、さらなる電解セル運転のための処理用液体の中断されない取り出しが可能になる。濾材の勾配が適切に形成されていると、フィルタエレメントの中空円筒形の内側でも、流体からの気泡排出を改善することができる。
【0014】
特に有利には、本発明によるフィルタ装置はその蓋部分によって流体貯蔵タンクの内部に固定することができ、処理用流体の流入は、流体貯蔵タンクの反対側の底部ハウジング壁からフィルタエレメントの内部に行われる。また必要な場合には、1つの流体貯蔵タンク内に複数のこのようなフィルタ装置を収納することもでき、使用済みのフィルタエレメントは、蓋部分を介して解放することにより新しいエレメントと交換することができる。
【0015】
本発明による流体貯蔵タンク内の滞留時間が短くなることにより、流体貯蔵タンクは容積を縮小することができ、これは技術用語ではダウンサイジングと呼ばれる。このようにして、タンクのための容器コストを削減することができ、さらに、タンク内の流体レベルの上方に位置するガス室を縮小できるので、デッドスペースが少なくなり、このことはシステム全体の動力学的特性を高める。これによれば、水又は苛性カリ溶液のような処理用液体の所要量も少なくなり、このことは電解セル運転時のいわゆるコールド・スタートの挙動を改善する。
【0016】
水素放出側の少なくとも1つのガス室がより小さいことは、安全性の理由から有用である。それというのも既知のように水素は、非常に可燃性が高く、特に空気中の酸素と結合すると、いわゆる爆発性ガスが発生をもたらすことが知られているからである。例えば現実には常にいくらかの水素もそれぞれの膜(PEM又はAEM)又はダイヤフラムを通して酸素側へ拡散しており、電解セル運転の部分的な負荷範囲では、酸素側でこのような爆発性混合ガスが発生するおそれがある。酸素側において流体貯蔵タンク内のガス容積がより小さいことは、この限りにおいても明らかに有用である。
【0017】
フィルタ装置を使用した本発明による方法解決手段を、図面に基づき以下に詳述する。図面は原理的なものであり、原寸に比例するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、電解プロセス並びに脱気を、原理的なフローチャートにより、概略的に著しく簡略化した形で示す図である。
図2図2及び3は、図1のフローチャートにおいて使用されたフィルタ装置を、1つは上から見て、そして1つは断面で見てそれぞれ示す斜視図である。
図3図2及び3は、図1のフローチャートにおいて使用されたフィルタ装置を、1つは上から見て、そして1つは断面で見てそれぞれ示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1には、ブラックボックス表示の形態で、電解セル又は電解セルスタックが全体として符号10で示されている。電解セル10は、電流ライン12を介して電流源(図示せず)に、例えば風力発電所の発電機に接続されている。さらに、電解セル10は、水又は苛性カリ溶液の形態を成す処理用液体のための供給導管14を有している。電解セル10のための冷却回路は、図をより単純にするために省かれている。
【0020】
セル10の運転中には、このようなセルは、電流によって、そしてプロトン交換膜(図示せず)を使用することによって、処理用液体である水を水素と酸素とに分解し、水素は水素導管16を介して排出され、酸素は処理用液体中に溶解され、あるいは微細に分散され、また流れに乗って運ばれ、処理用流体として放出導管18を介して、電解セル10から排出される。放出導管18は、流体搬送方式で流体貯蔵タンク22の入口20に接続され、流体貯蔵タンク22は、全体として符号24で示されたフィルタ装置を収容している。流体貯蔵タンク22は、流体レベル26の下方に位置する出口26を有し、また頂部において、プロセスガスである酸素のためのさらなる出口30を有している。処理用液体のための流体出口28は、電解セルの運転に必要な清浄化されたプロセス液を得るために、回路導管(図示せず)を形成する供給導管14に接続されている。フィルタ装置24によって、入口20にある処理用流体(水及び酸素)はあらゆる粒子状汚染から清浄化されて、そして同時に、溶解されたプロセスガスである酸素は、処理用流体から、処理用液体である水を保持したまま分離される。このように清浄化された処理用水は、次いで、タンク22の液体側31から出口26を経由して戻され、分離されたガスは、酸素の形態で、タンクのガス側33を経由して、頂部側のさらなる出口30を経由して流体貯蔵タンク22から排出される。具体的には図1がさらに示すように、脱気・清浄化プロセスは、流体貯蔵タンク22内の流体レベル28がフィルタ装置24を部分的にのみ覆うように制御され、フィルタ装置24は、予め規定可能な軸方向の構造長さをもって流体レベル28上に突出するようになっている。
【0021】
図1に示されたものとは異なり、水素電極が固有の流体回路なしで「乾式」操作されるのではなく、固有の液体回路を有するいわゆる湿式電極として運転される場合には、水素導管16には対応する後処理装置を接続することができ、当該装置は、構成部品、すなわち、流体貯蔵タンク22とフィルタ装置24とから構成される。
【0022】
さらに、水の代わりに、処理用液体として苛性カリ溶液を使用することができ、苛性カリ溶液は次いで供給導管14を介して電解セル10へ供給される。従って、酸素が導管18を介して分離され、そして水素が導管16を介して分離される。詳細には示されていないダイヤフラムが、例えば微細な金属格子又はアニオン交換膜の形態で、セル10内の分離エレメントとして機能する。このような場合には、酸素側と水素側の両方の液体回路は、図1に示されているような後処理装置を備える。
【0023】
図2及び3に示されたフィルタ装置は、清浄化・脱気プロセスのために重要である。いわゆるタンク内ソリューション(In-Tank-Foesung)として設計されたフィルタ装置は、図2及び3に全体的に示されており、そして全体が符号32で示されたフィルタハウジングを有し、このフィルタハウジングは、頂部の蓋部分34と、一種の流出管として設計されたハウジング壁36を有している。ハウジング壁36は窓38(図2)の形態の流体貫通部を有し、窓状の貫通個所38の代わりに、図3に示されたパーフォレーション40もハウジング壁36内に収納されていてもよい。対応するパーフォレーション40は、ハウジング壁36内に設けられた個々の円形の貫通穴41からなり、有利には貫通孔の形態である。図示のフィルタ装置の代わりに、異なるフィルタ装置が使用されてもよく、この異なるフィルタ装置は専ら濾材を介して、その内側でもガス分離を行い、貫通窓を備えたハウジング壁を全く使用せずにガス分離を行う。
【0024】
図3は、フィルタハウジング32の部分を示しており、この部分は蓋部分34から出発して、流体貯蔵タンク22の内部へ延びており、そして流出管36の一体的な構成部分としてフィルタエレメント44から形成された、構造ユニットから構成される。フィルタエレメント44は、通常どおり、中空円筒状のエレメント材料46を有し、このエレメント材料46は、流体貫通個所を備えた外側の支持管48とともに、上側エンドキャップ50と下側エンドキャップ52との間で延びている。蓋部分34に割り当てられた上側エンドキャップ50は、個々の係止ウェブ54によって、蓋部分34に接続可能である。蓋部分34は、貯蔵タンク22の上側56に、詳細には示されていないねじ部によって再び取り外すことができるように接続することができる。流体貫通部を有する支持管48は、長手方向ロッドと横方向ロッドとから成る互いに係止された個々の部分セグメント58によって形成され、貫通部38,41を備えたハウジング壁36は、その間に流体フローチャンバ60が形成されるように、予め規定可能な半径方向間隔を置いてフィルタエレメント44をその支持管48とともに取り囲む。
【0025】
図3は、下側エンドキャップ52の構成をさらに示している。下側エンドキャップを介して、濾過・脱気運転のために、処理用流体がフィルタ中空空間62内へ達することができ、この目的のために下側エンドキャップ52は中心開口64を備えている。このため、図1の外形図とは逆に、流体の流入は、貯蔵タンク22のタンク壁の側面を通らないが、詳細には示されていない、ノズルの形態でフィルタ装置の内部に通じ、さらに、上側端部ストッパを備えた周囲66によって取り囲まれた、底部側の入口開口を介して下方から係合する入口を介して行われる。
【0026】
このようにして、それぞれの処理用流体は下側の中心開口64を経由して、フィルタ中空空間62内へ流入し、続いて内側から外側へ向かって、フィルタエレメント44のエレメント材料46を通過する。この操作において、処理用流体は、特に、流体中に微細に分散しているか、または一緒に運ばれている粒子状汚染物および小さな気泡の形態の汚染物から清浄化され、関連するハウジング壁36の窓状の貫通開口38(図2)又は穴状のパーフォレーション40(図3)を通過した後、流体フローチャンバ60を経由してタンク22の内部へと通過し、清浄化された処理用流体が、このようにしてフィルタ装置の濾液側へ、ひいては可変の流体レベル28を有する流体貯蔵タンク22の液体側31へと通過する。
【0027】
このプロセスにおいて、ハウジング壁36内のそれぞれの貫通開口38,40に、気泡が蓄積し、これらの気泡はより大きい気泡群を形成し、次いでハウジング壁36の外側で上昇し、そして貯蔵タンク22のガス側33へ達し、ガス側のさらなる出口30によって、タンク22から排出されるように選択できる。
【0028】
フィルタエレメント44を新しいエレメントと交換するためには、蓋部分34をタンク22の上側56からねじを外し、図3に示されたユニットを、蓋部分34と一緒に、タンク22から取り出すことができる。係止ウェブ54を介して、蓋部分34をフィルタ装置の他の部分から分離した後、フィルタエレメント44をフィルタハウジング32から、上側の放出開口を介して取り外し、新しいエレメントと交換することができる。対応する逆の順序で、フィルタ装置を再びタンク22内へ挿入することができる。粒子濾過は実質的に貫流方向(図1)に対して水平に行われるのに対して、脱気はハウジング壁36の内側及び外側に沿って垂直方向に行われ、巻き込まれた流体は重力によって流下し、タンク22内の流体レベル28の上昇に寄与する。このようにして、フィルタ装置24によって、電解セル運転の一部として、複数の処理用流体から水素もしくは酸素を脱気することが著しく容易になり、関連する装置は、アルカリ電解にも問題なく使用することができる。ここで記載された方法及びフィルタ装置は、他の電解方法、例えば塩素製造にも容易に使用できる。
図1
図2
図3
【国際調査報告】