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特表2024-514474ポリイソシアヌレート-プリプレグおよびそれから製造される繊維複合コンポーネント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ポリイソシアヌレート-プリプレグおよびそれから製造される繊維複合コンポーネント
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/02 20060101AFI20240326BHJP
   C08G 18/09 20060101ALI20240326BHJP
   C08G 18/18 20060101ALI20240326BHJP
   C08G 18/75 20060101ALI20240326BHJP
   C08G 18/73 20060101ALI20240326BHJP
   C08G 18/79 20060101ALI20240326BHJP
   D06M 15/564 20060101ALI20240326BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240326BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C08G18/02 020
C08G18/09 020
C08G18/18
C08G18/75
C08G18/73
C08G18/79
C08G18/79 020
D06M15/564
H05K1/03 610H
C08J5/04 CFF
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023559762
(86)(22)【出願日】2022-03-28
(85)【翻訳文提出日】2023-11-16
(86)【国際出願番号】 EP2022058061
(87)【国際公開番号】W WO2022207532
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/083529
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】21171053.8
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】リウ,シンチェン
(72)【発明者】
【氏名】デン,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ユ,チン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ジンメイ
(72)【発明者】
【氏名】タン,ミン
(72)【発明者】
【氏名】ル,ウェイシ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ルチ
(72)【発明者】
【氏名】ヘッキング,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】レックスマン,ビアンカ
【テーマコード(参考)】
4F072
4J034
4L033
【Fターム(参考)】
4F072AA07
4F072AB05
4F072AB06
4F072AB08
4F072AB09
4F072AB28
4F072AB29
4F072AB30
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4F072AF28
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4F072AG03
4F072AG17
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4F072AH31
4F072AJ04
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4F072AL13
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4J034HC71
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4J034RA14
4L033AB01
4L033AB03
4L033AC11
4L033CA50
(57)【要約】
本発明は、2つの異なるタイプのポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物、プリプレグの製造におけるそれらの使用、および前記プリプレグから作製されるポリイソシアヌレート複合体に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート反応性基を含まないか、またはイソシアネート成分のイソシアネート基対イソシアネート反応性基のモル比が少なくとも2.0:1.0である重合性組成物であって、
a) 少なくとも1つの脂肪族ポリイソシアネート;
b) 少なくとも1つの脂環式ポリイソシアネート;および
c) 少なくとも1つの三量体化触媒;
を含み、
ここで、脂環式ポリイソシアネートの濃度は、重合性組成物中に存在する全てのポリイソシアネートの総質量に基づいて25重量%~75重量%であり;および
ここで、組成物中のウレトジオン形成触媒の濃度は、重合性組成物中に存在するウレトジオン形成触媒および三量化触媒の総質量の10重量%以下である、前記重合性組成物。
【請求項2】
全てのポリイソシアネート、全ての三量化触媒および全ての溶剤の合計に基づいて、10重量%~50重量%の少なくとも1つの不活性溶剤をさらに含む、請求項1に記載の重合性組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの脂肪族ポリイソシアネートが、前記重合性組成物中に存在する全てのポリイソシアネートの総量の10重量%~80重量%を構成する、請求項1または2に記載の重合性組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの脂肪族ポリイソシアネートおよび/または前記少なくとも1つの脂環式ポリイソシアネートが、それぞれのポリイソシアネート中に存在するウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよびオキサジアジントリオン構造からなる群からのオリゴマー構造の合計に基づいて、少なくとも50モル%のイソシアヌレート構造を含有するオリゴマーポリイソシアネートである、請求項1~3のいずれか一項に記載の重合性組成物。
【請求項5】
式(I)
【化1】
〔式中、RおよびRは、互いに独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、分岐C5-アルキル、非分岐C5-アルキル、分岐C6-アルキル、非分岐C6-アルキル、分岐C7-アルキルおよび非分岐C7-アルキルからなる群から選択され;
Aは、O、SおよびNRからなる群より選択され、ここで、Rは、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルおよびイソブチルからなる群より選択され;
Bは、Aから独立して、OH、SH、NHRおよびNHからなる群より選択され、ここで、Rは、メチル、エチルおよびプロピルからなる群より選択される〕
による三量化触媒またはそのアダクト体が使用される、請求項1~5のいずれか一項に記載の重合性組成物。
【請求項6】
有機または無機フィラーをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の重合性組成物。
【請求項7】
以下の
a) 請求項1~6のいずれか一項に記載の重合性組成物を提供する工程;および
b) 150℃~200℃の温度で重合性組成物を硬化させ、それにより、半製品が得られる工程
を含む方法。
【請求項8】
方法工程b)が、重合性組成物が30,000~750,000mPasの粘度に達するまで継続される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
方法工程b)の開始時に存在する遊離イソシアネート基の2%~60%が消費されるまで、方法工程が継続される、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
方法工程a)において提供される重合性組成物で少なくとも1つの有機または無機繊維を被覆する方法工程a1)をさらに含む、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記半製品を硬化させ、それによって最終製品が得られる方法工程c)をさらに含む、請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
方法工程c)が、方法工程b)が終了してから1日~30日後に開始される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項7~10のいずれか一項に記載の方法によって得られるか、または得ることができる半製品。
【請求項14】
請求項11または12に記載の方法によって得られるか、または得ることができる最終製品。
【請求項15】
請求項11または12に記載の製品を含む銅張積層板またはプリント回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの異なるタイプのポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物、プリプレグの製造におけるそれらの使用、および前記プリプレグから製造されたポリイソシアヌレート複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維やガラス繊維などの繊維で強化された複合材料はその特性、すなわち、軽量でありながら良好な耐熱性および良好な機械的強度のために、注目されている。それらは、プリント回路基板、シャーシ、ならびに自動車および航空機の様々な部材などの様々な構造的用途において、より広く使用されている。このような繊維強化樹脂複合材料の成形方法として、プリプレグと呼ばれる中間材料を用いる方法が多用されている。プリプレグでは、強化繊維が、熱硬化性樹脂で含浸される。次いで、含浸繊維は、硬化され、オートクレーブ成形またはプレス成形によって成形される。
【0003】
典型的にプリプレグ用樹脂には、室温でも貯蔵安定性と加熱等による硬化性の両立が要求される。さらなる所望の特徴は、切削工具がしばしば粘着性のマトリックス材料で汚染されることなく、プリプレグを所定のサイズに切削する可能性である。一般に、エポキシ樹脂組成物などの熱硬化性樹脂が使用されることが多い。しかしながら、エポキシ樹脂を含有するプリプレグは、硬化が常温で既に進行しているため、低温で貯蔵する必要があるという欠点がある。エポキシ系をベースとするプリプレグおよびそれから製造される複合コンポーネントは、例えばEP0981427に記載されている。
【0004】
ここ数年、室温での貯蔵安定性を特徴とするポリウレタン系プリプレグの開発も行われている。エポキシ樹脂をベースとするプリプレグとは異なり、貯蔵安定性PUプリプレグは、加工前にコストのかかる方法で冷却する必要はない。DE10200900193.3およびDE102009001806.9には、本質的にA)少なくとも1種の繊維状支持体およびB)マトリックス材料として粉末形態の少なくとも1種の反応性ポリウレタン組成物からなる貯蔵安定性プリプレグの製造方法が記載されている。
【0005】
エポキシ系プリプレグの最大の用途領域の1つは、銅張積層板(CCL)およびプリント回路基板(PCB)を製造するためのものである。上記のポリウレタン系プリプレグはプリプレグの貯蔵安定性の問題を解決することができるが、誘電率(Dk)および散逸率(Df)が高いため、その誘電特性は、高周波信号伝送のための包括的な要件を満たすことができない。これは、最終的に硬化した樹脂中の多量の極性ウレタン基のためである。特に無線周波数基地局やレーダアンテナなどの高周波(2GHz以上)通信分野では、信号伝送損失や信号伝送遅延に対して高い要件が設定されている。PCBのためのポリウレタンプリプレグ用途の別の障壁はそれらの低耐熱性であり、例えば、WO2012/038105に報告されているPUベースのプリプレグのガラス転移点は、約70℃のTgのみであり、WO2013/139704では、最終的に硬化したレジンのTgは、146℃であり、両方とも、通常150℃を超えるPCBの要件を満たすには低すぎる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】EP0981427
【特許文献2】DE10200900193.3
【特許文献3】DE102009001806.9
【特許文献4】WO2012/038105
【特許文献5】WO2013/139704
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、簡単なプロセスで製造することができ、室温で数週間貯蔵安定性を有するプリプレグを提供することである。プリプレグはさらに、それらを容易にさらに加工することができるように、ほぼタックフリーであることが意図されている。また、本発明の他の目的は、低誘電率で高いガラス転移温度を有するプリント配線板を得ることができる樹脂組成物を提供することにある。
【0008】
二段硬化(dual curing)機構に基づくポリイソシアヌレート材料が記載されている。WO2018/087395は、異なる機構、電離放射線および熱によって活性化され得る2つの異なる架橋機構が利用できるように、アクリレートおよびポリイソシアネートの組み合わせを開示している。WO2020/152107は、少量のポリオールまたはポリアミンを含むポリイソシアネートの使用を開示している。第1の工程において、ウレタンまたはウレア基が、より低い温度で第1の触媒によって形成される。この反応は、利用可能なアミンまたはヒドロキシル基の数によって制限される。第2の工程において、残りのイソシアネート基からイソシアヌレート基を形成するためにより高い温度が使用される。
【0009】
プリプレグを提供するために両方の機構が使用され得る。しかしながら、両方の場合において、得られる材料は、イソシアヌレート基以外の相当量の架橋基を含むこと受け入れなければならない。イソシアヌレート基が特に有利な特性を有するので、用途に応よってはこれは望ましくない場合がある。
【0010】
したがって、本発明の根底にある課題は、貯蔵安定性を有する半製品(semi-finished product)が第1の硬化工程で得られ、第2の硬化工程で完全に硬化され得るように、2つの異なる硬化工程でポリイソシアヌレートプラスチックの製造を可能にする二段硬化機構の提供である。
【0011】
この課題は、特許請求の範囲および以下の説明で定義される実施形態によって解決される。
【0012】
第1の実施形態において、本発明は、イソシアネート反応性基を含まないか、またはイソシアネート成分のイソシアネート基対イソシアネート反応性基のモル比が少なくとも2.0:1.0である重合性組成物であって、
a)少なくとも1つの脂肪族ポリイソシアネート;
b)少なくとも1つの脂環式ポリイソシアネート;および
c)少なくとも1つの三量化触媒;
を含み、
ここで、脂環式ポリイソシアネートの濃度が、重合性組成物中に存在する全てのポリイソシアネートの総質量に基づいて25重量%~75重量%であり、および
ここで、組成物中のウレトジオン形成触媒の濃度は、重合性組成物中に存在するウレトジオン形成触媒および三量化触媒の総質量の10重量%以下である、
前記組成物に関する。
【0013】
「重合性組成物」は、上記で定義された成分を、場合により、以下に記載されるさらなる成分を含む組成物である。「重合性組成物」において、前記成分は、単純な加熱によってポリマーを形成するために組成物を使用することができるような方法で混合される。
【0014】
本発明の重合性組成物は、プリプレグ材料の製造に特に適している。プリプレグ材料は、材料を取り扱うかまたは輸送することができるように部分的に硬化された熱硬化性ポリマーを含む材料である。しかしながら、プリプレグの製造中の硬化は、材料が例えば、曲げによって加工するには硬く脆くなりすぎる点まで進行してはならない。本発明の重合性組成物において、これは、異なる反応性を有する少なくとも2つの異なるポリイソシアネートの組み合わせによって達成される。したがって、より低い温度での第1の硬化工程は主に、より反応性の高いポリイソシアネートのイソシアネート基を架橋することによって、プリプレグを作り出し、次いで、意図された用途に適合する硬く、完全に硬化された材料を得るために、第2の硬化工程を使用することができる。上記のポリイソシアネートのうち、芳香族ポリイソシアネートが最も高い反応性を有し、芳香脂肪族ポリイソシアネートが2番目に高い反応性を有し、脂肪族ポリイソシアネートが2番目に低い反応性を有し、脂環式ポリイソシアネートが最も低い反応性種である。したがって、本発明によって所望される二段硬化機構を達成するために、脂肪族ポリイソシアネートは、異なる反応性を有する少なくとも1つのポリイソシアネートと対にされなければならない。この要件を満たす種は、脂環式、芳香族および芳香脂肪族ポリイソシアネートである。脂肪族ポリイソシアネートのより遅い硬化種との組み合わせが望ましい場合、それは少なくとも1つの脂環式ポリイソシアネートと混合されるべきである。脂肪族ポリイソシアネートのより速い硬化種との組み合わせが望ましい場合、それは、少なくとも1つの芳香脂肪族および/または芳香族ポリイソシアネートと混合されるべきである。脂肪族ポリイソシアネートを、より速い硬化およびより遅い硬化ポリイソシアネートの両方と組み合わせることも可能である。本発明の好ましい実施形態において、重合性組成物は、少なくとも1つの脂肪族ポリイソシアネートおよび少なくとも1つの脂環式ポリイソシアネートを含む。
【0015】
少なくとも1つの脂肪族ポリイソシアネートは、重合性組成物中に存在する全てのポリイソシアネートの総量の10重量%~80重量%、好ましくは25重量%~65重量%を構成することが好ましい。
【0016】
脂環式ポリイソシアネートの好ましい含有量は、25重量%~75重量%、より好ましくは30重量%~70重量%である。
【0017】
本発明の好ましい実施形態において、芳香脂肪族および芳香族ポリイソシアネートは、重合性組成物中に存在する全てのポリイソシアネートの総量の10重量%以下、より好ましくは5重量%以下を構成する。最も好ましくは、重合性組成物は、前述のポリイソシアネートを含まない。
【0018】
本発明の重合性組成物を重合することによって得られるポリマーは、非常に実質的にイソシアネート基同士の架橋を介して、その有利な特性を享受する。したがって、本発明にとっては、重合性組成物中のイソシアネート反応性基の総量に対するイソシアネート基の比が、イソシアネート基の明確なモル過剰が存在するように制限されることが必須である。反応性樹脂中のイソシアネート成分のイソシアネート基対イソシアネート反応性基のモル比は、結果として、少なくとも2.0:1.0、好ましくは少なくとも3.0:1.0、より好ましくは少なくとも4.0:1.0、さらにより好ましくは少なくとも8.0:1.0である。組成物はまた、イソシアネート反応性基を含まなくてもよい。本出願の文脈における「イソシアネート反応性基」は、ヒドロキシル、チオール、カルボキシルおよびアミノ基、アミド、ウレタン、酸無水物およびエポキシドである。
【0019】
本発明の好ましい実施形態において、重合性組成物は、「不活性溶剤」とも称される、イソシアネート反応性基を含有しない少なくとも1つの有機溶剤をさらに含む。好ましくは、この溶剤の濃度は、重合性組成物の粘度が100mPas~2,000mPasであるような濃度である。典型的には、このような値は、重合性組成物が全てのポリイソシアネート、全ての三量化触媒および全ての溶剤の合計に基づいて、好ましくは10重量%~50重量%の不活性溶剤を含む場合に、達成される。
【0020】
本発明の別の好ましい実施形態において、重合性組成物は、有機または無機充填剤をさらに含む。
【0021】
本明細書で使用される「ポリイソシアネート」という用語は、分子中に2個以上のイソシアネート基を含有する化合物の総称である(これは一般構造-N=C=Oの遊離イソシアネート基を意味すると当業者によって理解される)。これらのポリイソシアネートの最も単純で最も重要な代表例は、ジイソシアネートである。これらは一般構造O=C=N-R-N=C=Oを有し、式中、Rは、典型的には脂肪族、脂環式および/または芳香族基を表す。「ポリイソシアネート成分」は、この種に属する全てのポリイソシアネートの全体を指す。したがって、「脂肪族ポリイソシアネート成分」は、重合性組成物中に存在する全ての脂肪族ポリイソシアネートの合計を指し、「芳香族ポリイソシアネート成分」という用語は、全ての芳香族ポリイソシアネートを指し、「脂環式ポリイソシアネート成分」という用語は、全ての脂環式ポリイソシアネートの合計を指す。
【0022】
多官能性(≧2イソシアネート基)のために、多数のポリマー(例えば、ポリウレタン、ポリ尿素およびポリイソシアヌレート)および低分子量化合物(例えば、ウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよび/またはオキサジアジントリオン構造を有するもの)を製造するために、ポリイソシアネートを使用することが可能である。
【0023】
本出願における用語「ポリイソシアネート」は同様に、モノマーおよび/またはオリゴマーのポリイソシアネートを指す。しかしながら、本発明の多くの態様を理解するために、モノマージイソシアネートとオリゴマーポリイソシアネートとを区別することが重要である。本出願において「オリゴマーポリイソシアネート」に言及する場合、これは少なくとも2つのモノマージイソシアネート分子から形成されるポリイソシアネート、すなわち、少なくとも2つのモノマージイソシアネート分子から形成される反応生成物を構成または含有する化合物である。
【0024】
モノマージイソシアネートからのオリゴマーポリイソシアネートの調製は、本明細書ではモノマージイソシアネートの変性とも呼ばれる。この「変性」は、本明細書で使用される場合、ウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよび/またはオキサジアジントリオンを有するオリゴマーポリイソシアネートを得るためのモノマージイソシアネートの反応を意味する。
【0025】
例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)は、2個のイソシアネート基を含有し、少なくとも2個のポリイソシアネート分子の反応生成物ではないので、「モノマージイソシアネート」である:
【化1】
【0026】
少なくとも2個のHDI分子から形成され、それでもなお少なくとも2個のイソシアネート基を有する反応生成物は対照的に、本発明の文脈内の「オリゴマーポリイソシアネート」である。このような「オリゴマーポリイソシアネート」の代表例は、モノマーHDIから始まり、例えば、HDIイソシアヌレートおよびHDIビウレットであり、これらの各々は、3個のモノマーHDI単位から形成される:
【化2】
【0027】
本発明によれば、重合性組成物中に存在する全てのポリイソシアネートの総量に基づくイソシアネート基の割合は、少なくとも15重量%である。
【0028】
原則として、モノマーおよびオリゴマーポリイソシアネートは、本発明における使用に等しく好適である。したがって、任意のポリイソシアネートは、モノマーポリイソシアネートから本質的になるか、またはオリゴマーポリイソシアネートから本質的になることができる。あるいは、任意の所望の混合比で、オリゴマーおよびモノマーポリイソシアネートを含んでもよい。
【0029】
しかしながら、本発明の好ましい実施形態において、三量化において反応物として使用されるポリイソシアネートが低レベルのモノマー(すなわち、低レベルのモノマージイソシアネート)を有し、オリゴマーポリイソシアネートを既に含有する。ポリイソシアネート組成物のモノマー含有量が高すぎる場合、第1の硬化工程は、貯蔵安定性の半製品をもたらさない。「低レベルのモノマーを有する」および「低レベルのモノマージイソシアネートを有する」という表現は、本明細書では同義的に使用される。
【0030】
ポリイソシアネートが、それぞれのポリイソシアネートの重量に基づいて、20重量%以下、特に15重量%以下または10重量%以下のモノマージイソシアネートの割合を有する場合、特に実用的な関連性の結果が確立される。好ましくは、ポリイソシアネートは、それぞれのポリイソシアネートの重量に基づいて、5重量%以下、好ましくは2.0重量%以下、より好ましくは1.0重量%以下のモノマージイソシアネートの含有量を有する。特に良好な結果は、ポリイソシアネートがモノマージイソシアネートを本質的に含まない場合に確立される。ここで「本質的に含まない」とは、モノマージイソシアネートの含有量が、ポリイソシアネートの重量に基づいて、0.5重量%以下であることを意味する。
【0031】
本発明の特に好ましい実施形態において、各イソシアネートは、それぞれのポリイソシアネートの重量に基づいて、全体的に少なくとも80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、98重量%、99重量%または99.5重量%のオリゴマーポリイソシアネートから構成されるか、または少なくとも80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、98重量%、99重量%または99.5重量%の程度までのオリゴマーポリイソシアネートから構成される。ここで、少なくとも99重量%のオリゴマーポリイソシアネートの含有量が好ましい。オリゴマーポリイソシアネートのこの含有量は、提供されるポリイソシアネートに関する。言い換えれば、オリゴマーポリイソシアネートは、本発明の任意のプロセス中に中間体として形成されず、任意の反応の開始時に重合性組成物中に既に存在する。
【0032】
低レベルのモノマーを有するか、またはモノマーイソシアネートを本質的に含まないポリイソシアネート組成物は、実際の変性反応の後に、それぞれの場合において、未変換の過剰のモノマージイソシアネートを除去するための少なくとも1つのさらなるプロセス工程を行うことによって得ることができる。モノマーのこの除去は、それ自体公知の方法により、好ましくは高真空下での薄膜蒸留により、またはイソシアネート基に対して不活性である好適な溶剤、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロペンタンまたはシクロヘキサンなどの脂肪族または脂環式炭化水素での抽出により、特に実用的な方法で行うことができる。
【0033】
本発明の好ましい実施形態において、本発明のポリイソシアネート成分は、モノマージイソシアネートを変性し、その後、未変換のモノマーを除去することによって得られる。
【0034】
オリゴマーポリイソシアネートは本発明によれば、特にウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよび/またはオキサジアジントリオン構造を有し得る。本発明の一実施形態において、オリゴマーポリイソシアネートは、以下のオリゴマー構造型またはそれらの混合物のうちの少なくとも1つを有する:
【化3】
【0035】
本発明の好ましい実施形態において、脂肪族ポリイソシアネート成分が使用され、ここで、この成分のイソシアヌレート構造含量は、脂肪族ポリイソシアネート成分中に存在するウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよびオキサジアジントリオン構造からなる群からのオリゴマー構造の合計に基づいて、少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも60モル%、より好ましくは少なくとも70モル%、さらにより好ましくは少なくとも80モル%、さらにより好ましくは少なくとも90モル%、特に好ましくは少なくとも95モル%である。
【0036】
脂環式ポリイソシアネート成分が存在する場合、脂環式ポリイソシアネート成分中に存在するウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよびオキサジアジントリオン構造からなる群からのオリゴマー構造の合計に基づいて、少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも60モル%、より好ましくは少なくとも70モル%、さらにより好ましくは少なくとも80モル%、さらにより好ましくは少なくとも90モル%、特に好ましくは少なくとも95モル%のイソシアヌレート構造含有量を有することも好ましい。
【0037】
本発明の基礎となる研究において、イソシアヌレート基を含有するオリゴマーポリイソシアネートの使用は、最終生成物の耐熱性を改善することが見出された。
【0038】
ポリイソシアネート中のウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよび/またはオキサジアジントリオン構造の割合は例えば、NMR分光法によって決定することができる。ここで、言及されたオリゴマー構造が特徴的なシグナルを与えるため、好ましくはプロトンデカップリング型の13C NMR分光法を使用することが可能である。
【0039】
基礎となるオリゴマー構造(ウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよび/またはオキサジアジントリオン構造)にかかわらず、本発明で使用するためのオリゴマーポリイソシアネートは、好ましくは2.0~5.0、好ましくは2.3~4.5の(平均)NCO官能価を有する。
【0040】
本発明に従って使用されるそれぞれのポリイソシアネートが、それぞれのポリイソシアネートの重量に基づいて、8.0重量%~28.0重量%、好ましくは14.0重量%~25.0重量%のイソシアネート基の含有量を有する場合、特に実用的な関連性の結果が確立される。
【0041】
本発明に従って使用されるウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよび/またはオキサジアジントリオン構造を有するオリゴマーポリイソシアネートの製造プロセスは例えば、J.Prakt.Chem.336(1994)185-200、DE-A 1 670 666、DE-A 1 954 093、DE-A 2 414 413、DE-A 2 452 532、DE-A 2 641 380、DE-A 3 700 209、DE-A 3 900 053およびDE-A 3 928 503またはEP-A 0 336 205、EP-A 0 339 396およびEP-A 0 798 299に記載されている。
【0042】
本発明の有利な効果は異なる種のポリイソシアネートの存在を必要とするので、これらの種は以下でさらに詳細に定義される。
【0043】
脂肪族ポリイソシアネート
脂肪族ポリイソシアネートにおいて、全てのイソシアネート基は、開いた炭素鎖の一部である炭素原子に結合している。これは、1つ以上の部位で不飽和であってもよい。脂肪族結合イソシアネート基は、好ましくは炭素鎖の末端炭素原子で結合される。
【0044】
本発明に従って特に好適な脂肪族ポリイソシアネートは、1,4-ジイソシアナトブタン(BDI)、1,5-ジイソシアナトペンタン(PDI)、1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)、2-メチル-1,5-ジイソシアナトペンタン、1,5-ジイソシアナト-2,2-ジメチルペンタン、2,2,4-または2,4,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサンおよび1,10-ジイソシアナトデカンならびにそれらから誘導されるオリゴマーである。
【0045】
脂環式ポリイソシアネート
脂環式ポリイソシアネートにおいて、全てのイソシアネート基は、炭素原子の閉環の一部である炭素原子に結合している。この環は、二重結合の存在の結果として芳香族性を獲得しない限り、1つ以上の部位で不飽和であってもよい。
【0046】
本発明に従って特に好適な脂環式ポリイソシアネートは、1,3-および1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,4-ジイソシアナト-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,3-ジイソシアナト-2-メチルシクロヘキサン、1,3-ジイソシアナト-4-メチルシクロヘキサン、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート;IPDI)、1-イソシアナト-1-メチル-4(3)-イソシアナトメチルシクロヘキサン、2,4’-および4,4’-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(H12MDI)、1,3-および1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI)、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジイソシアナト-3,3’,5,5’-テトラメチルジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジイソシアナト-1,1’-ビ(シクロヘキシル)、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチル-1,1’-ビ(シクロヘキシル)、4,4’-ジイソシアナト-2,2’,5,5’-テトラメチル-1,1’-ビ(シクロヘキシル)、1,8-ジイソシアナト-p-メンタン、1,3-ジイソシアナトアダマンタンおよび1,3-ジメチル-5,7-ジイソシアナトアダマンタンならびにそれから誘導されるオリゴマーである。
【0047】
芳香脂肪族ポリイソシアネート
芳香脂肪族ポリイソシアネートにおいて、全てのイソシアネート基はメチレン基に結合し、これが次に芳香環に結合する。
【0048】
本発明に従って特に好適な芳香脂肪族ポリイソシアネートは、1,3-および1,4-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(キシリレンジイソシアネート(xyxlylene diisocyanate);XDI)、1,3-および1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(TMXDI)およびビス(4-(1-イソシアナト-1-メチルエチル)フェニル)カーボネートならびにそれらから誘導されるオリゴマーである。
【0049】
芳香族ポリイソシアネート
芳香族ポリイソシアネートにおいて、全てのイソシアネート基は、芳香族環の一部である炭素原子に直接結合している。
【0050】
本発明に従って特に好適な芳香族ポリイソシアネートは、2,4-および2,6-ジイソシアナトトルエン(TDI)、2,4’-および4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)および1,5-ジイソシアナトナフタレンならびにそれらから誘導されるオリゴマーである。
【0051】
触媒
本出願において理解される「三量化触媒」は、イソシアヌレート構造へのイソシアネート基の付加を触媒する触媒である。前記触媒は、重合性組成物中のイソシアネート基の20モル%以下、より好ましくは10モル%以下、最も好ましくは5モル%以下をウレトジオン基に変換することが好ましく、これらの基が、安定性が低く、材料の化学的および物理的特性を損なうからである。さらに、組成物中のウレトジオン形成触媒の濃度は、重合性組成物中に存在するウレトジオン形成触媒および三量化触媒の総質量の好ましくは10重量%以下、より好ましくは3重量%以下である。最も好ましくは、組成物は、ウレトジオン形成触媒を含まない。
【0052】
好適な三量化触媒は例えば、単純な第三級アミン、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N-エチルピペリジンまたはN,N’-ジメチルピペラジンである。好適な触媒としてはまた、GB 2 221 465に記載されている第三級ヒドロキシアルキルアミン、例えばトリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、N-イソプロピルジエタノールアミンおよび1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン、または第三級二環式アミン、例えばDBUと低分子量の単純な脂肪族アルコールとの混合物からなるGB 2 222 161から公知の触媒系が挙げられる。
【0053】
さらなる三量化触媒は例えば、DE-A 1 667 309、EP-A 0 013 880およびEP-A 0 047 452から公知の第四級アンモニウム水酸化物、例えば、テトラエチルアンモニウム水酸化物、トリメチルベンジルアンモニウム水酸化物、N,N-ジメチル-N-ドデシル-N-(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム水酸化物、N-(2-ヒドロキシエチル)-N,N-ジメチル-N-(2,2’-ジヒドロキシメチルbutyl)アンモニウム水酸化物および1-(2-ヒドロキシエチル)-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン水酸化物(1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンへのエチレンオキシドと水の一アダクト体)、EP-A 37 65またはEP-A 10 589から公知の第四級ヒドロキシアルキルアンモニウム水酸化物、例えば、N,N,N-トリメチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム水酸化物、DE-A 2631733、EP-A 0 671 426、EP-A 1 599 526およびUS 4,789,705から公知のトリアルキルヒドロキシルアルキルアンモニウムカルボキシレート、例えばN,N,N-トリメチル-N-2-ヒドロキシプロピルアンモニウムp-tert-ブチルベンゾエートおよびN,N,N-トリメチル-N-2-ヒドロキシプロピルアンモニウム 2-エチルヘキサノエート、EP-A 1 229 016から公知の第四級ベンジルアンモニウムカルボキシレート、例えばN-ベンジル-N,N-ジメチル-N-エチルアンモニウムピバロレート、N-ベンジル-N,N-ジメチル-N-エチルアンモニウム2-エチルヘキサノエート、N-ベンジル-N,N,N-トリブチルアンモニウム2-エチルヘキサノエート、N,N-ジメチル-N-エチル-N-(4-メトキシベンジル)アンモニウム2-エチルヘキサノエートまたはN,N,N-トリブチル-N-(4-メトキシベンジル)アンモニウムピバレート、WO2005/087828から公知の四置換アンモニウムα-ヒドロキシカルボキシレート、例えばテトラメチルアンモニウムラクテート、EP-A 0 339 396、EP-A 0 379 914およびEP-A 0 443 167から公知の第四級アンモニウムまたはフッ化ホスホニム、例えばC8-C10-アルキル基を有するN-メチル-N,N,N-トリアルキルアンモニウムフルオリド、N,N,N,N-テトラ-n-ブチルアンモニウムフルオリド、N,N,N-トリメチル-N-ベンジルアンモニウムフルオリド、テトラメチルホスホニウムフルオリド、テトラエチルホスホニウムフルオリドまたはテトラ-n-ブチルホスホニウムフルオリド、EP-A 0 798 299、EP-A 0 896 009およびEP-A 0 962 455から公知の第四級アンモニウムおよびポリフッ化ホスホニウム、例えばベンジルトリメチルアンモニウムポリフッ化水素、EP-A 0 668 271から知られており、第三級アミンとジアルキルカーボネートとの反応によって得ることができるテトラアルキルアンモニウムアルキルカーボネート、またはベタイン構造の四級アンモニオアルキルカーボネート、WO1999/023128から公知の第四級アンモニウム炭酸水素塩、例えば重炭酸コリン、EP 0 102 482から公知であり、第三級アミンおよびリン酸のアルキル化エステルから得られる第四級アンモニウム塩、このような塩の例はトリエチルアミン、DABCOまたはN-メチルモルホリンとジメチルメタンホスホネートとの反応生成物であり、またはWO2013/167404から公知のラクタムの四置換アンモニウム塩、例えば、トリオクチルアンモニウムカプロラクタメートまたはドデシルトリメチルアンモニウムカプロラクタメートである。
【0054】
好適な塩は、14個までの炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルカンカルボン酸、例えば、酪酸、吉草酸、カプロン酸、2-エチルヘキサン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸およびより高級な同族体、の公知のナトリウム塩およびカリウム塩。
【0055】
三量化触媒として同様に適しているのは、多数の異なる金属化合物である。好適な例は、DE-A 3 240 613に触媒として記載されているマンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、セリウムまたは鉛のオクタン酸塩およびナフテン酸塩またはそれらとリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムまたはバリウムの酢酸塩との混合物、DE-A 3 219 608により開示されているプロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸およびウンデシル酸のような、10個までの炭素原子を有する直鎖または分岐アルカンカルボン酸のナトリウムおよびカリウム塩、EP-A 0 100 129により開示されている安息香酸ナトリウムまたは安息香酸カリウムのような、2~20個の炭素原子を有する脂肪族、脂環式または芳香族モノカルボン酸またはポリカルボン酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、ナトリウムフェノキシドまたはカリウムフェノキシドのような、GB-A 1 391 066およびGB-A 1 386 399に開示されているアルカリ金属フェノキシド、GB 809 809により開示されたアルカリ金属およびアルカリ土類金属酸化物、水酸化物、炭酸塩、アルコキシドおよびフェノキシド、エノール化可能な化合物のアルカリ金属塩および弱脂肪族または脂環式カルボン酸のアルカリ金属塩、例えばナトリウムメトキシド、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、アセト酢酸ナトリウム、2-エチルヘキサン酸鉛、およびナフテン酸鉛、EP-A 0 056 158およびEP-A 0 056 159により開示されているクラウンエーテルまたはポリエーテルアルコールと錯体を形成した塩基性アルカリ金属化合物、例えば錯体を形成したカルボン酸ナトリウムまたはカルボン酸カリウムおよび/またはEP-A 0 0 303 581により開示されているピロリジノンカリウム塩、出願EP 13196508.9により開示されているチタン、ジルコニウムおよび/またはハフニウムの単核または多核錯体、例えばジルコニウムテトラ-n-ブトキシド、ジルコニウムテトラ-2-エチルヘキサノエートおよびジルコニウムテトラ-2-エチルヘキソキシド、ならびにEuropean Polymer Journal、vol.16,147-148(1979)に記載されているタイプのスズ化合物、例えば、ジブチルスズジクロリド、ジフェニルスズジクロリド、トリフェニルスタンナノール、トリブチルスズアセテート、スズオクトエート、ジブチル(ジメトキシ)スタンナン、およびトリブチルスズイミダゾレートである。
【0056】
本発明の方法に適したさらなる三量化触媒は例えば、J.H.Saunders and K.C.Frisch、Polyurethanes Chemistry and Technology、p.94 ff.(1962)およびそこに引用されている文献に見出すことができる。
【0057】
三量化触媒は本発明による方法において、個々に、または互いに任意の所望の混合物の形態で使用することができる。
【0058】
同様に特に適しているのは、2~20個の炭素原子を有する脂肪族、脂環式または芳香族モノ-およびポリカルボン酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩である。上記のカルボン酸のいずれかのカリウム塩がさらにより好ましい。酢酸カリウムが特に好ましい。
【0059】
しかしながら、WO2016/170057、WO2016/170059またはWO2016/170061に記載されている全ての触媒は原則として、上記の温度範囲で架橋反応を触媒するのであれば、適している。
【0060】
三量化触媒として特に適しているのは、式(I)の触媒およびそれらのアダクト体である。
【化4】
【0061】
〔式中、RおよびRは、互いに独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、分岐C5-アルキル、非分岐C5-アルキル、分岐C6-アルキル、非分岐C6-アルキル、分岐C7-アルキルおよび非分岐C7-アルキルからなる群から選択され;
Aは、O、SおよびNRからなる群より選択され、ここで、Rは、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルおよびイソブチルからなる群より選択され;および
Bは、Aとは独立して、OH、SH NHRおよびNHからなる群より選択され、ここで、Rは、メチル、エチルおよびプロピルからなる群より選択される〕
好ましい実施形態において、Aは、NRであり、ここで、Rは、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルおよびイソブチルからなる群より選択される。Rは、好ましくはメチルまたはエチルである。Rは、特に好ましくはメチルである。
【0062】
この実施形態の第1の変形において、Bは、OHであり、RおよびRは、互いに独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、分岐C5-アルキル、非分岐C5-アルキル、分岐C6-アルキル、非分岐C6-アルキル、分岐C7-アルキルおよび非分岐C7-アルキルからなる群から選択される。RおよびRが、互いに独立して、メチルまたはエチルである場合が好ましい。RおよびRは、特に好ましくはメチルである。
【0063】
この実施形態の第2の変形において、Bは、SHであり、RおよびRは、互いに独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、分枝C5-アルキル、非分枝C5-アルキル、分枝C6-アルキル、非分枝C6-アルキル、分枝C7-アルキルおよび非分枝C7-アルキルからなる群から選択される。RおよびRが、互いに独立して、メチルまたはエチルである場合が好ましい。RおよびRは、特に好ましくはメチルである。
【0064】
この実施形態の第3の変形において、Bは、NHRであり、RおよびRは、互いに独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、分岐C5-アルキル、非分岐C5-アルキル、分岐C6-アルキル、非分岐C6-アルキル、分岐C7-アルキルおよび非分岐C7-アルキルからなる群から選択される。RおよびRが、互いに独立して、メチルまたはエチルである場合が好ましい。RおよびRは、特に好ましくはメチルである。この変形において、R4は、メチル、エチルおよびプロピルからなる群から選択される。R4がメチルまたはエチルである場合が好ましい。R4は、特に好ましくはメチルである。
【0065】
この実施形態の第4の変形において、Bは、NHであり、RおよびRは、互いに独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、分枝C5-アルキル、非分枝C5-アルキル、分枝C6-アルキル、非分枝C6-アルキル、分枝C7-アルキルおよび非分枝C7-アルキルからなる群から選択される。RおよびRが、互いに独立して、メチルまたはエチルである場合が好ましい。RおよびRは、特に好ましくはメチルである。
【0066】
さらに好ましい実施形態において、Aは、酸素である。
【0067】
この実施形態の第1の変形において、Bは、OHであり、RおよびRは、互いに独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、分岐C5-アルキル、非分岐C5-アルキル、分岐C6-アルキル、非分岐C6-アルキル、分岐C7-アルキルおよび非分岐C7-アルキルからなる群から選択される。RおよびRが、互いに独立して、メチルまたはエチルである場合が好ましい。RおよびRは、特に好ましくはメチルである。
【0068】
この実施形態の第2の変形において、Bは、SHであり、RおよびRは、互いに独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、分枝C5-アルキル、非分枝C5-アルキル、分枝C6-アルキル、非分枝C6-アルキル、分枝C7-アルキルおよび非分枝C7-アルキルからなる群から選択される。RおよびRが、互いに独立して、メチルまたはエチルである場合が好ましい。RおよびRは、特に好ましくはメチルである。
【0069】
この実施形態の第3の変形において、Bは、NHRであり、RおよびRは、互いに独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、分枝C5-アルキル、非分枝C5-アルキル、分枝C6-アルキル、非分枝C6-アルキル、分枝C7-アルキルおよび非分枝C7-アルキルからなる群から選択される。RおよびRが、互いに独立して、メチルまたはエチルである場合が、好ましい。RおよびRは、特に好ましくはメチルである。この変形において、Rは、メチル、エチルおよびプロピルからなる群から選択される。R4が、メチルまたはエチルである場合が好ましい。R4は、特に好ましくはメチルである。
【0070】
この実施形態の第4の変形において、Bは、NHであり、RおよびRは、互いに独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、分枝C5-アルキル、非分枝C5-アルキル、分枝C6-アルキル、非分枝C6-アルキル、分枝C7-アルキルおよび非分枝C7-アルキルからなる群から選択される。RおよびRが、互いに独立して、メチルまたはエチルである場合が好ましい。RおよびRは、特に好ましくはメチルである。
【0071】
さらに別の好ましい実施形態において、Aは、硫黄である。
【0072】
この実施形態の第1の変形において、Bは、OHであり、RおよびRは、互いに独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、分岐C5-アルキル、非分岐C5-アルキル、分岐C6-アルキル、非分岐C6-アルキル、分岐C7-アルキルおよび非分岐C7-アルキルからなる群から選択される。RおよびRが、互いに独立して、メチルまたはエチルである場合が好ましい。RおよびRは、特に好ましくはメチルである。
【0073】
この実施形態の第2の変形において、Bは、SHであり、RおよびRは、互いに独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、分枝C5-アルキル、非分枝C5-アルキル、分枝C6-アルキル、非分枝C6-アルキル、分枝C7-アルキルおよび非分枝C7-アルキルからなる群から選択される。RおよびRが、互いに独立して、メチルまたはエチルである場合が好ましい。RおよびRは、特に好ましくはメチルである。
【0074】
この実施形態の第3の変形において、Bは、NHRであり、RおよびRは、互いに独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、分枝C5-アルキル、非分枝C5-アルキル、分枝C6-アルキル、非分枝C6-アルキル、分枝C7-アルキルおよび非分枝C7-アルキルからなる群から選択される。RおよびRが、互いに独立して、メチルまたはエチルである場合が好ましい。RおよびRは、特に好ましくはメチルである。この変形において、Rは、メチル、エチルおよびプロピルからなる群から選択される。R4が、メチルまたはエチルである場合が好ましい。R4は、特に好ましくはメチルである。
【0075】
この実施形態の第4の変形において、Bは、NHであり、RおよびRは、互いに独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、分枝C5-アルキル、非分枝C5-アルキル、分枝C6-アルキル、非分枝C6-アルキル、分枝C7-アルキルおよび非分枝C7-アルキルからなる群から選択される。RおよびRが、互いに独立して、メチルまたはエチルである場合が好ましい。RおよびRは、特に好ましくはメチルである。
【0076】
式(I)の化合物と少なくとも1つのイソシアネート基を有する化合物とのアダクト体も好適である。
【0077】
包括的な用語「アダクト体」は、式(I)の化合物と少なくとも1つのイソシアネート基を有する化合物とのウレタン、チオウレタンおよびウレアアダクト体を意味すると理解される。ウレタンアダクト体が特に好ましい。本発明のアダクト体は、イソシアネートが式(I)で定義される化合物の官能基Bと反応するときに形成される。Bがヒドロキシル基である場合、ウレタンアダクト体が形成される。Bがチオール基である場合、チオウレタンアダクト体が形成される。BがNHまたはNHRである場合、ウレアアダクト体が形成される。
【0078】
好適な触媒溶剤は例えば、イソシアネート基に対して不活性である溶剤、例えば、ヘキサン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルまたはモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルおよびブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、1-メトキシ-2-プロピルアセテート、3-メトキシ-n-ブチルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトンおよびε-メチルカプロラクトンなどのラクトン類、ならびにN-メチルピロリドンおよびN-メチルカプロラクタム、1,2-プロピレンカーボネート、塩化メチレン、ジメチルスルホキシド、トリエチルホスフェートなどの溶剤、またはそのような溶剤の任意の所望の混合物である。
【0079】
触媒溶剤が重合性組成物中で使用される場合、イソシアネートに対して反応性の基を有し、ポリイソシアヌレート樹脂中に組み込むことができる触媒溶剤を使用することが好ましい。そのような溶剤の例は、一価または多価の単純なアルコール類、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、n-ヘキサノール、2-エチル-1-ヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、異性体ブタンジオール、2-エチルヘキサン-1,3-ジオールまたはグリセロール;エーテルアルコール類、例えば1-メトキシ-2-プロパノール、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールまたは他の液体高分子量ポリエチレングリコール類、ポリプロピレングリコール類、混合ポリエチレン/ポリプロピレングリコール類およびそれらのモノアルキルエーテル類;エステルアルコール類、例えばエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノラウレート、グリセロールモノ-およびジアセテート、グリセロールモノブチレートまたは2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオールモノイソブチレート;不飽和アルコール類、例えばアリルアルコール、1,1-ジメチルアリルアルコールまたはオレイルアルコール;芳香脂肪族アルコール類、例えばベンジルアルコール;N-モノ置換アミド類、例えば、N-メチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、シアノアセトアミドもしくは2-ピロリジノン、またはそのような溶剤の任意の所望の混合物である。
【0080】
溶剤
好適な溶剤はイソシアネート基に対して不活性でなければならず、すなわち、それらは、本出願において上で定義されたようなイソシアネート反応性基を含有してはならない。溶剤は、好ましくはヘキサン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルまたはモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルおよびブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、1-メトキシプロプ-2-イルアセテート、3-メトキシ-n-ブチルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトンおよびε-メチルカプロラクトンなどのラクトン類、N-メチルピロリドン、N-メチルカプロラクタム、1,2-プロピレンカーボネート、塩化メチレン、ジメチルホルムアミド、トリクロロエチレン、ジメチルスルホキシドおよびリン酸トリエチルからなる群から選択される。より好ましくは、少なくとも1つの溶剤が酢酸ブチルからなる群から選択される。
【0081】
フィラー(Filler)
当技術分野で公知の任意のタイプの無機または無機フィラーを使用することができる。好ましい無機フィラーは、金属酸化物、亜硝酸塩、ケイ化物、特にシリカ、ホウ化物、特に窒化ホウ素、ウォラストナイト、タルク、カオリン、クレー、マイカ、アルミナ、ジルコニア、チタニアおよびそれらの混合物からなる群から選択される。好ましい有機フィラーは、フッ素系ポリマー、ポリスチレン系ポリマー、ジビニルベンゼン系ポリマー、ポリイミド系ポリマー、ポリフェニルエーテル系ポリマー、ポリ(トリアリルイソシアヌレート)系ポリマーおよびそれらの混合物からなる群から選択される。本出願において以下にさらに記載される有機および無機繊維は、本段落において理解されるようなフィラーではない。
【0082】
添加剤
さらに、本発明の重合性組成物は、酸化防止剤、難燃剤、熱安定剤、帯電防止剤、UV吸収剤、顔料、湿潤剤、消泡剤、着色剤、潤滑剤、接着促進剤、追加のモノマーおよび相溶化剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含んでもよい。好ましい追加のモノマーは、スチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン、パラ-メチルスチレン、フタル酸ジアリル、2,4-エチルメチルイミダゾール、ポリフェニルエーテル、トリアリルイソシアヌレート、ブタジエン、イソプレンおよび1,2-ブタジエンからなる群から選択される。好ましい相溶化剤は、スチレン-ブタジエンブロックコポリマー、スチレン-イソプレンブロックコポリマー、1,2-ポリブタジエン、1,4-ポリブタジエン、マレイン酸変性ポリブタジエン、アクリル酸変性ポリブタジエン、エポキシ変性ポリブタジエンおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0083】
半製品の製造方法
別の実施形態において、本発明は、以下の
a) 本出願において上記で定義された重合性組成物を提供する工程;および
b) 150℃~200℃の温度で重合性組成物を硬化させ、それにより、半製品が得られる工程
を含む方法に関する。
【0084】
「重合性組成物を提供する」という用語は、上記の重合性組成物をもたらすプロセスを指す。適切な方法は、当技術分野で公知である。
【0085】
方法工程における硬化は、「半製品」、すなわち、さらに加工または輸送することができるが、依然として、例えば、金型にプレスすることによって加工するのに十分な柔軟性および可撓性を有する材料をもたらす。
【0086】
好ましい一実施形態において、方法工程b)は、得られたポリマーがタックフリーになるまで継続される。
【0087】
別の好ましい実施形態において、方法工程b)の開始時に存在する遊離イソシアネート基の2%~60%が消費されるまで、方法工程b)が継続される。
【0088】
さらに別の好ましい実施形態において、方法工程b)は、重合性組成物が30,000~750,000mPas、好ましくは50,000~750,000mPas、最も好ましくは100,000~750,000mPasの粘度に達するまで継続される。粘度は、好ましくは23℃の温度および1/sの剪断速度で、コーンプレート型粘度計を使用して決定される。
【0089】
特に好ましい実施形態において、方法工程b)は、ISO6721-10:2015-09に従い、23℃、1/sのせん断速度で、プレート-プレートレオメーターによって決定されるモジュールG’が5×10Paに達するまで継続される。
【0090】
不活性有機溶剤が重合性組成物中に存在する場合、方法工程b)は、好ましくは少なくとも90重量%の有機溶剤が蒸発するまで継続される。この基準は、好ましくは、ポリマーネットワークの状態に関連する上記で定義された基準のうちの1つ以上と組み合わされる。
【0091】
いずれの場合も、方法工程b)の終了時に、方法工程b)の開始時に存在する遊離イソシアネート基の少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%が、第2の硬化工程が可能であるようになお存在することが好ましい。
【0092】
方法工程b)は、好ましくは150℃~200℃の温度で1~20分間実施される。第1の硬化工程のための温度および持続時間の組み合わせは、生成物の幾何学的形状、ならびに使用される重合性組成物中に存在するポリイソシアネートおよび触媒のタイプに依存する。これは、上記の方法工程b)の好ましい終点の1つを適用する簡単な予備実験によって容易に決定することができる。
【0093】
方法工程b)は、60℃以下、好ましくは40℃以下の温度に温度を下げることによって容易に停止することができる。
【0094】
本発明の重合性組成物の好ましい実施形態において、繊維または金属シートは、方法工程b)を開始する前に、方法工程a)において提供される重合性組成物で被覆される。繊維は、複合材料を製造するために当該技術分野で使用される任意の無機または有機繊維であってもよい。繊維は、サイズを有することができる。金属シートは、好ましくは銅シートである。
【0095】
好ましい無機繊維は、ガラス繊維、玄武岩繊維、ボロン繊維、セラミック繊維、ウィスカー、シリカ繊維および金属強化繊維である。好ましい有機繊維は、天然繊維、アラミド繊維、炭素繊維、カーボンナノチューブ、ポリエステル繊維、ナイロン繊維およびプレキシグラス繊維である。好ましい天然繊維は、亜麻繊維、麻繊維、木繊維、セルロース繊維およびサイザル繊維である。
【0096】
方法工程b)を開始する前に、1つ以上の繊維または1つ以上の金属シートが重合性組成物で被覆される場合、方法工程b)から得られる半製品は、いわゆる「プリプレグ」である。この用語は、前記繊維または繊維または金属シートが輸送または加工され得るように部分的に硬化された重合性組成物でプレコートされた繊維または複数の繊維または金属シートを指す。
【0097】
三量化によるイソシアネート基の架橋が室温をはるかに上回る温度でのみ進行し、その結果、半製品を室温で数週間貯蔵することができ、その結果、さらに加工される能力を失うことがないので、本発明の方法は、特に有利な半製品をもたらす。
【0098】
さらに別の実施形態において、本発明は、本発明の方法によって得られるか、または得ることができる半製品に関する。
【0099】
方法工程a)およびb)は、販売され、輸送され、さらに顧客によって加工され得る半製品をもたらす。好ましい実施形態において、前記半製品は、プリプレグである。
【0100】
完全硬化製品の製造方法
別の好ましい実施形態において、本発明の方法は、半製品を硬化させる追加の方法工程c)を含み、それによって最終製品が得られる。
【0101】
方法工程c)は、好ましくは、方法工程b)の開始時に重合性組成物中に元々存在するイソシアネート基の少なくとも90%が消費されるまで進行する。
【0102】
方法工程c)については、200℃~250℃の間の温度が好ましい。方法工程c)の好ましい持続時間は、1時間~8時間、より好ましくは2時間~6時間である。
【0103】
方法工程c)は、方法工程b)が終了してから、1日~30日、より好ましくは3日~14日後に開始されることが好ましい。さらに、方法工程c)が実施される場所は、方法工程b)が実施される場所から少なくとも1km、より好ましくは少なくとも10km離れていること、すなわち、半製品が、第2の硬化工程の前に異なる場所に輸送されることが好ましい。
【0104】
方法工程c)は、完全に硬化した製品をもたらす。
【0105】
さらに別の実施形態において、本発明は、上記で定義された方法工程a)、b)およびc)を含む、本発明の方法によって得られるか、または得ることができる最終製品に関する。
【0106】
好ましくは、最終製品は、積層板、金属張積層板またはプリント回路基板の一部を形成し、より好ましくは銅張積層板またはプリント回路基板の一部を形成する。
【0107】
最終製品はポリイソシアヌレートプラスチックであり、すなわち、架橋基が主にイソシアヌレート基であるポリマーである。他のポリマーと比較して、この製品は、優れた硬度および耐熱性を特徴とする。さらに、専用の難燃剤を添加しなくても、それは本質的に難燃性である。
【0108】
以下の実施例は、単に本発明を説明することを意図するものである。それらは、特許請求の範囲を決して限定するものではない。
【実施例
【0109】
実施例
この実験のセクションでは、現在一般的な周囲温度の25℃が室温(RT)として記載されている。
【0110】
FT-IRによるNCO含有量の決定:
IRスペクトルは、ATRユニットを備えたPerkin Elmer、Inc.製のSpectrum of FT-IR分光計で記録した。残留窒素含有量は、イソシアネート基の変化(2270cm-1でのバンド)を記録することによってモニターした。
【0111】
DSCによる硬化樹脂のTg値の決定:
後硬化後のプリプレグのガラス転移温度(Tg)は、IPC-TM-650 2.4.25に準拠してTA DSC Q20で示差走査熱量測定(DSC)によって決定した。
【0112】
DMAによるCCLのTg値の決定:
IPC-TM-650 2.4.24.4に準拠した動的粘弾性測定(dynamic mechanical analysis)を用いて、クラッディングなしのベース積層材料のガラス転移温度Tgを決定した。
【0113】
DMAによるCCLのTd値の決定:
IPC-TM-650 2.4.24.6に準拠した熱重量分析を用いて、クラッディングなしのベース積層材料の熱分解温度Tを決定し、試料の質量が50℃で測定した質量より5.0%少ない温度T(5%)を記録した。
【0114】
SPDRによるCCLのDkおよびDf値の決定:
IEC 61189-2-721に準拠して、10Gマイクロ波周波数でスプリットポスト誘電体共振器(SPDR)を使用して、クラッディングなしのベース積層材料の誘電率(dielectric constant)(Dk)および誘電正接(dissipation factor)(Df)を決定した。
【0115】
原材料:
Desmodur N 3600は、23.0重量%のNCO含有量を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)三量体(NCO官能価>3)であり、粘性が、23℃で約1200mPasであり(DIN EN ISO 3219/A.3)、Covestro AG製である。
【0116】
Desmodur N 3900は、23.5重量%のNCO含有量を有するHDI三量体(NCO官能価>3)であり、粘性が、23℃で約730mPasであり(DIN EN ISO 3219/A.3)、Covestro AG製である。
【0117】
Desmodur eco N 7300は、21.9重量%のNCO含有量を有するバイオベースのペンタメチレンジイソシアネート(PDI)三量体(NCO官能価>3)であり、粘性が、23℃で約9500mPasであり(DIN EN ISO 3219/A.3)、Covestro AG製である。
【0118】
Desmodur Z4470は、70重量%の固形分、11.9重量%のNCO含有量を有する酢酸ブチル(BA)または溶剤ナフサ(SN)中のイソホロンジイソシアネート(IPDI)三量体(NCO官能価>3)であり、粘性が、23℃で約1500mPasであり(DIN EN ISO 3219/A。3)、Covestro AG製である。
【0119】
Desmodur ILは、51重量%の固形分、8.0重量%のNCO含量を有する酢酸ブチル(BA)または酢酸エチル(EA)中のトルエンジイソシアネート(TDI)三量体(NCO官能価>3)であり、粘度が、23℃で700~2000mPasであり(DIN EN ISO 3219/A.3)、Covestro AG製である。
【0120】
Desmodur XP 2489は、21.0重量%のNCO含有量を有するHDIイソホロンジイソシアネート(IPDI)ポリイソシアネート(NCO官能価>3)であり、粘性が、23℃で約22,500mPasであり(DIN EN ISO 3219/A.3)、Covestro AG製である。
【0121】
触媒:2-[2-(ジメチルアミノ)エチル-メチルアミノ]エタノールは、TCI Co.Ltd.から購入される。
【0122】
溶剤:酢酸ブチルは、Sinopharm Chemical Reagent Co.,Ltd.から純度≧99.0%で購入される。
【0123】
シリカ粉末は、Denka Co.,jpから購入される。
【0124】
タイプ2116Eガラス繊維織布は、CTM glass fiber Co.,Ltd.から購入される。
【0125】
樹脂組成物およびプリプレグの一般的な製造方法
1.表1および表2に列挙した成分を混合容器に添加する;
2.室温でSpeedMixer DAC 400 FVを使用して、60~300秒間、2500rpmで成分を混合する。この時点で、組成物は使用の準備ができている。
【0126】
3.十分に混合された組成物に2116ガラス織布を含浸させ、適切な厚さを有するように調製した。
【0127】
3.前記含浸ガラスクロスを180~200oCで2~15分間焼成して溶剤を除去し、部分的に硬化させてプリプレグを製造した。
【0128】
残留NCO含有量をFT-IRによってモニターした。
【0129】
貯蔵安定性は、FT-IRを用いて数日後に残留NCO含有量をモニタリングすることによってチェックした。
【0130】
4.次いで、プリプレグを200-220℃でプレスし、好ましくは、ある程度の加圧、例えば、5バールを与えて、繊維複合コンポーネントを得る。
【0131】
後硬化後の残留NCO含有量をFT-IRによってモニターした。
【0132】
組成物中の硬化樹脂のTgおよびTdをDSCおよびTGAによってモニターした。
【0133】
適用実施例:
CCLを作製するために、実施例1、実施例2および比較例2からの樹脂組成物を、それぞれ、酢酸ブチル中で一定の割合で30重量%のシリカ粉末と混合し、接着剤溶液の固形分を65%に調整した。2116ガラスクロスを上記の接着剤溶液に含浸し、適切な厚さに調整した後、180~200℃の炉内で2~15分間焼成し、プリプレグをプリプレグした。次に、両面に銅箔を重ねて6枚のプリプレグを積層し、硬化温170~250℃、硬化圧25~50barで200~300分間硬化させ、銅張積層板を得た。
【0134】
CCLのTgをDMAによってモニターした
CCLのTdをTGAによってモニターした
CCLのDK、DfをSPDRによってモニターした。
【0135】
CCLの性能を表3に示した。
【0136】
【表1】
【0137】
【表2】
【0138】
【表3】
【0139】
実施例1~7は、本発明の樹脂組成物が良好な貯蔵安定性を有する実現可能なプリプレグ溶液を提供することを示す。付加的な特性として高い耐熱性が要求される場合、実施例1~6は、実施例7と比較して、イソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート(実施例1~6)が非対称三量体(実施例7)よりもむしろ使用されるべきであることを示す。
【0140】
比較例1(10%IPDI三量体+90%HDI三量体)および比較例4(20%IPDI三量体+80%PDI三量体)は、IPDI三量体の低含有量も低Tgをもたらすことを示す。
【0141】
比較例2は、(i)系のTgが低すぎてCCL適用要件を満たすことができないこと、および(ii)脂肪族ポリイソシアネートのみを有する系が第1の硬化工程後に既にほぼ完全に硬化され、第2の硬化工程の間に、わずかなNCO基のみがさらに消費され、その結果、複合体を作製するための接着性または中間層強度が悪くなることを示した。この問題は、比較適用例1に示された。
【0142】
比較例3は、純粋な芳香族三量体が系を感湿性にし、繊維を含浸させるために容易に使用することができない高粘度系に迅速になることを示す。貯蔵中、遊離イソシアネートは容易に消費され、その結果、第2の硬化工程のためのさらなるプレスに十分な残存NCO含有量が残らない。したがって、この系は、工業的用途には実用的ではない。
【国際調査報告】