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特表2024-514475セキュリティー文書のためのカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】セキュリティー文書のためのカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニス
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20240326BHJP
   C09D 11/101 20140101ALI20240326BHJP
   C09D 11/102 20140101ALI20240326BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20240326BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20240326BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240326BHJP
   C08K 5/06 20060101ALI20240326BHJP
   C08K 5/375 20060101ALI20240326BHJP
   C08G 59/24 20060101ALI20240326BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20240326BHJP
   C08K 5/03 20060101ALI20240326BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C09D11/101
C09D11/102
C09D163/00
C09D5/16
C09D7/63
C08K5/06
C08K5/375
C08G59/24
C08G59/40
C08K5/03
B41M5/00 100
B41M5/00 134
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023559842
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(85)【翻訳文提出日】2023-09-27
(86)【国際出願番号】 EP2022058310
(87)【国際公開番号】W WO2022207658
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】21166712.6
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】311007051
【氏名又は名称】シクパ ホルディング ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】SICPA HOLDING SA
【住所又は居所原語表記】Avenue de Florissant 41,CH-1008 Prilly, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ガルニエ, ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェヤ, パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ホフシュテッター, ピエール‐イヴ
【テーマコード(参考)】
2H186
4J002
4J036
4J038
4J039
【Fターム(参考)】
2H186AB09
2H186AB11
2H186AB23
2H186AB51
4J002CD021
4J002EB106
4J002ED027
4J002EV308
4J002FD156
4J002FD317
4J002FD318
4J002GH01
4J036AJ08
4J036GA24
4J036HA01
4J036JA01
4J038DB001
4J038KA04
4J038NA05
4J038PA17
4J038PB02
4J038PC10
4J039AE05
4J039BE27
4J039EA38
4J039FA03
4J039GA09
4J039GA10
4J039GA24
(57)【要約】
本発明は銀行券のようなセキュリティー文書を使用の際及び経時的に汚れ及び/又は湿気の早過ぎる有害な影響に対して早過ぎる有害な影響に対して保護するためのワニスの技術分野に関する。特に、本発明はa)約65wt-%~約90wt-%の脂環式エポキシド、又は脂環式エポキシド及び脂環式エポキシド以外の1種又は複数のカチオン硬化性モノマーの混合物;b)約1wt-%~約10wt-%のジアリールヨードニウム塩;c)約0.01wt-%~約5wt-%の非イオン性界面活性剤;及びd)一般式(I)

の光増感剤を含み、ここで重量パーセントはカチオン性のUV-LED硬化性保護ワニスの総重量に基づく、カチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニス、及びセキュリティー文書を前記カチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスでコーティングする方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)約65wt-%~約90wt-%の脂環式エポキシド、又は脂環式エポキシド及び脂環式エポキシド以外の1種又は複数のカチオン硬化性モノマーの混合物;
b)約1wt-%~約10wt-%、好ましくは約2wt-%~約5wt-%、より好ましくは約3wt-%のジアリールヨードニウム塩;
c)約0.01wt-%~約5wt-%の非イオン性界面活性剤;及び
d)一般式(I)
【化1】

[一般式(I)中
及びAは互いに独立して水素及び次の構造:
【化2】

の部分から選択され;
-L-は
【化3】

から選択され;
-L-は
【化4】

から選択され;
n1及びn2は0以上の整数であり;
mは0を表し;
Bは水素を表し;
Cは水素、
【化5】

から選択され;
及びAは互いに独立して水素及び次の構造:
【化6】

の部分から選択され;
-L-及び-L-は互いに独立して
【化7】

から選択され;
n3及びn4は0以上の整数であり、ここで
和n1+n2は2~8であり;
和n1+n2+n3は3~12であり;
和n1+n2+n3+n4は4~16であるか;
又は
mは1を表し;
Bはエチル、及び
【化8】

から選択され;
Cは
【化9】

から選択され;
、A、A及びAは互いに独立して水素及び次の構造:
【化10】

の部分から選択され;
-L-、-L-、-L-及び-L-は互いに独立して
【化11】

から選択され;
n3、n4、n5及びn6は0以上の整数であり、ここで
和n1+n2+n3は3~12であり;
和n1+n2+n3+n4は4~16であり;
和n1+n2+n3+n4+n6は5~15であり;
和n1+n2+n3+n5は4~16であり;
和n1+n2+n3+n4+n5は5~15であり;
和n1+n2+n3+n4+n5+n6は6~18である]
の光増感剤
を含むカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスであって、
前記カチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスは一般式(I)の光増感剤中に存在する部分
【化12】

をカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニス100g当たり約1.3mmol~約4.7mmolの前記部分の濃度で含み;
重量パーセントはカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスの総重量に基づく、カチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニス。
【請求項2】
-L-が
【化13】

を表し、-L-、-L-、-L-、-L-及び-L-が
【化14】

を表す、請求項1に記載のカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニス。
【請求項3】
-L-が
【化15】

を表し、-L-、-L-、-L-、-L-及び-L-が
【化16】

を表す、請求項1に記載のカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニス。
【請求項4】
光増感剤が一般式(I-a)
【化17】

[式中、
、A、C、n1及びn2は請求項1で定義された意味を有し、
-L-及び-L-は請求項1~3のいずれか一項で定義された意味を有する]
のものである、請求項1~3のいずれか一項に記載のカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニス。
【請求項5】
光増感剤が一般式(I-b)
【化18】

[式中、
、A、C、n1及びn2は請求項1で定義された意味を有し、
-L-及び-L-は請求項1~3のいずれか一項で定義された意味を有する]
のものである、請求項1~3のいずれか一項に記載のカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニス。
【請求項6】
光増感剤が一般式(I-c)
【化19】

[式中、
、A、A、C、n1、n2及びn5は請求項1で定義された意味を有し、
-L-、-L-及び-L-は請求項1~3のいずれか一項で定義された意味を有する]
のものである、請求項1~3のいずれか一項に記載のカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニス。
【請求項7】
Cが
【化20】

[式中、
及びn3は請求項1で定義された意味を有し、-L-は請求項1~3のいずれか一項で定義された意味を有する]を表す、請求項1~6のいずれか一項に記載のカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニス。
【請求項8】
カチオン性のUV-LED硬化性保護ワニス中の部分
【化21】

の濃度がカチオン性のUV-LED硬化性保護ワニス100g当たり約1.6mmol~約2.9mmolである、請求項1~7のいずれか一項に記載のカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニス。
【請求項9】
ジアリールヨードニウム塩が一般式(II)
【化22】

[式中、
~R10は互いに独立して水素、C-C18-アルキル基、及びC-C12-アルキルオキシ基から選択され;
AnはBF 、B(C 、PF 、AsF 、SbF 、CFSO 、(CH)SO 、(C)SO 、(CF)CO 、(C)CO 、及び(CFSOから選択されるアニオンである]
のものである、請求項1~8のいずれか一項に記載のカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニス。
【請求項10】
脂環式エポキシド以外の1種又は複数のカチオン硬化性モノマーが、ビニルエーテル、プロペニルエーテル、脂環式エポキシド以外の環状エーテル、ラクトン、環状チオエーテル、ビニルチオエーテル、プロペニルチオエーテル、ヒドロキシル含有化合物、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載のカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニス。
【請求項11】
ワニスがフレキソ印刷ワニス、インクジェット印刷ワニス、及びスクリーン印刷ワニスから選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載のカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニス。
【請求項12】
基材及び基材の一部分に適用又は挿入された1つ又は複数のセキュリティー機能を含むセキュリティー文書をコーティングする方法であって、以下のステップ:
i)好ましくはインクジェット印刷、フレキソ印刷、及びスクリーン印刷から選択される印刷方法により、請求項1~11のいずれか一項に記載のカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスを基材の表面及び/又はセキュリティー文書の1つ又は複数のセキュリティー機能の表面に適用してワニス層を形成するステップ;並びに
ii)前記ワニス層をUV-LED源により放出されたUV光への曝露により硬化させて基材の表面及び/又はセキュリティー文書の1つ又は複数のセキュリティー機能の表面を覆う保護コーティングを形成するステップ
を含む、方法。
【請求項13】
基材、基材の一部分に適用又は挿入された1つ又は複数のセキュリティー機能、及び基材の表面及び/又はセキュリティー文書の1つ又は複数のセキュリティー機能の表面を覆う保護コーティングを含むセキュリティー文書であって、前記保護コーティングが請求項12に記載の方法により得られる、セキュリティー文書。
【請求項14】
セキュリティー文書が銀行券、証書、チケット、小切手、領収書、収入印紙、タックスラベル、契約書、及び身分証明書、例えばパスポート、身分証明カード、ビザ、バンクカード、クレジットカード、トランザクションカード、アクセス文書、及び入場券から選択される、請求項13に記載のセキュリティー文書。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は使用の際及び経時的に汚れ及び/又は湿気の早過ぎる有害な影響に対して銀行券のようなセキュリティー文書を保護するためのワニスの技術分野に関する。
【0002】
[発明の背景]
カラーコピー及び印刷の常に向上する質と共に、偽造、変造又は違法複製に対して銀行券、有価文書又はカード、輸送券又はカード、タックスバンデロール、及び製品ラベルのようなセキュリティー文書を保護しようとして、各種のセキュリティー機能をこれらの文書に組み込むことが従来の慣例であった。セキュリティー機能の典型的な例にはセキュリティースレッド、ウィンドウ、ファイバー、プランシェット、ホイル、パッチ、ステッカー、ホログラム、ウォーターマーク、セキュリティー材料、例えば磁性顔料、UV吸収顔料、IR吸収顔料、光学的可変顔料、偏光顔料、発光性顔料、導電性顔料及び表面増強ラマン分光粒子を含むセキュリティーインクから得られるセキュリティー機能がある。
【0003】
セキュリティー文書、特に銀行券に防汚(dirt-repellent)保護コーティングを設けてその耐用期間及び流通適性を延ばすことは公知である。保護コーティングは文書の環境に面する保護層であり、熱的に(溶媒を含有する)硬化性のワニス、放射線硬化性のワニス、又はこれらの組合せから得られる。
【0004】
欧州特許出願公開第0256170号は1~10重量%の微粉化ワックスを含有するインクで印刷された紙幣をコーティングするための本質的にセルロースエステル又はセルロースエーテルからなる保護層を提案する。保護層は紙幣の表面に溶媒を含有するワニスを噴霧するか、浸すか又はローラー塗りにより適用し、前記ワニスを熱気流で硬化させることにより得られる。
【0005】
環境問題に対する市民の感性の高まり、並びに環境規制に対する化学工業の必要な反応性により、産業界は、有機溶媒(揮発性有機成分、VOC)を含有しないか、又はかなり低減した量で含有する放射線硬化性の保護ワニス(即ちUV-可視光放射線、又は電子ビーム放射線のいずれかにより硬化するワニス)を開発することを動機付けられた。溶媒を含有する保護ワニスより環境に優しいことに加えて、放射線硬化性の保護ワニスは、増大した化学的及び物理的抵抗性を有する保護コーティングの製造を可能にし、都合よく硬化し、それにより放射線硬化性の保護ワニスでコーティングされたセキュリティー文書の製造時間を短縮する。
【0006】
例えば、米国特許出願公開第20070017647号はセキュリティー文書の耐用期間及び流通適性を延ばすための防汚保護層を記載しており、ここで前記防汚保護層は少なくとも2つのラッカー層を含み、第1の下側のラッカー層は紙基材に直接適用されて紙基材の孔を塞ぐ役割をする物理的に乾燥したラッカー層、及び物理的及び化学的な影響から基材を保護する第2の上側のラッカー層により形成される。米国特許出願公開第20070017647号は第2の上側ラッカー層に高い化学的及び物理的抵抗性を付与するためにラジカル架橋性又はカチオン架橋硬化性のラッカーのようなUV放射線硬化性ラッカーを使用することを規定している。ラジカル架橋性又はカチオン架橋性のUV放射線硬化性ラッカーの具体的な例は開示されていない。
【0007】
放射線、特にUV光の作用の際にフリーラジカルを遊離することができる1種又は複数のフリーラジカル光開始剤を活性化し、次にこれら開始剤が重合を開始して硬化した層を形成することからなるフリーラジカル機構により硬化するフリーラジカルUV放射線硬化性のコーティングは、不充分な接着特性、限られた物理的抵抗性及び硬化中の不必要に高いレベルの収縮を示す。1種又は複数のカチオン光開始剤のUV-Vis光による活性化からなり、これが酸のようなカチオン種を遊離し、次にこれがモノマーの重合を開始して硬化したバインダーを形成することからなるカチオン機構により硬化するカチオンUV放射線硬化性のコーティングはフリーラジカルUV放射線硬化性のコーティングと比較して増大した接着及び機械的抵抗性を示す。
【0008】
セキュリティー文書に汚れ抵抗性を付与するためのカチオン硬化性の化合物及びフッ素化された化合物を含むカチオンUV-Vis放射線硬化性の保護ワニスの使用が国際公開第2014067715号により開示されている。そこに記載されているカチオンUV-Vis放射線硬化性の保護ワニスはスクリーン印刷又はフレキソ印刷により適用され、標準的な水銀UV-ランプにより放出されたUV光への曝露によって硬化される。
【0009】
大量のエネルギーを要し、効率的且つ高価な熱放散システムを必要とする水銀ランプはオゾン発生の傾向があり、限られた寿命を有する。費用が少なく、介入をあまり要せず、且つより環境に優しい解決策を提供する目的で、UV-LEDに基づくランプ及びシステムがインク及びワニスを硬化させるために開発された。電磁スペクトルのUV-A、UV-B及びUV-C領域に発光バンドを有する中圧水銀ランプと対照的に、UV-LEDランプはUV-A領域の放射線を放出する。さらに、現在のUV-LEDランプは準単色放射線を放出し、即ち365nm、385nm、395nm又は405nmのような1つの波長を放出するのみである。
【0010】
ワニス又はインク層のUV-硬化効率は、取り分け、前記硬化に使用される照射源の発光スペクトルと前記ワニス又はインクに含まれる光開始剤の吸収スペクトルの重なりに依存する。従って、慣習上使用されるカチオン光開始剤を含むカチオンUV放射線硬化性のコーティング又はインク層のUV-LEDランプによる硬化はUV-LEDランプの発光スペクトルと慣習上使用される光開始剤の吸収の不十分な重なりの結果として低下した硬化効率を示し、従って遅い若しくは不十分な硬化又は硬化不良となる。
【0011】
カチオンUV-LED放射線硬化性の組成物が文献に記載されている。前記カチオンUV-LED放射線硬化性の組成物はUV-LEDランプにより放出された光のエネルギーを吸収し、そのエネルギーをカチオン光開始剤に移すことにより供与体として機能する光増感剤と組み合わせてカチオン光開始剤を含有する。国際公開第2006093680号はUV-LED曝露により硬化可能なホットメルトカチオン性製剤を開示している。カチオン性製剤はカチオン硬化性モノマー、プロピレンカーボネート、2.5wt-%のチオキサンテニウム塩光開始剤及び2wt-%のイソプロピルチオキサントン(ITX)光増感剤の混合物を含有する。国際公開第2007017644号は395nmで発光するUV-LED源への曝露により硬化可能なカチオン性インクジェットインクを記載している。例示されたカチオン性のインクジェットインクは36.25wt-%のエポキシUVR-6105、33.5wt-%のジオキセタン、11.25wt-%のプロピレンカーボネート、光開始剤として3wt-%のジ-トリルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、及び1wt-%の増感剤、例えばイソプロピル-チオキサントン(ITX)、1-クロロ-4-プロポキシ-9H-チオキサンテン-9-オン(CPTX)及びジ(ブトキシ)アントラセン(DBA)を含む。国際公開第2007017644号は、インクを硬化するのに必要とされるUV-LED放射線線量が光開始剤及び増感剤の量を倍増しながら光開始剤のwt-%と増感剤のwt-%との3:1の比を維持することによりかなり低減し得ることを教示している。当技術分野で公知のカチオンLED-硬化性の放射線インクに使用される光開始システム、及び特に良好な硬化を達成するのに必要とされるイソプロピル-チオキサントン(ITX)、1-クロロ-4-プロポキシ-9H-チオキサンテン-9-オン(CPTX)及びジ(ブトキシ)アントラセン(DBA)のような増感剤の量のために、当技術分野で公知のカチオンLED-硬化性の放射線インクはUV光での励起の際、特に254nm又は366nmの波長を有するUV光による励起の際に高い蛍光を示す。
【0012】
周知のように、UV光で励起可能な発光性のセキュリティー機能はセキュリティー文書の分野で、特に銀行券に対して、前記セキュリティー文書に付加的な秘密のセキュリティー機能を付与するために広く使用されて来ており、ここで前記セキュリティー文書の偽造及び違法複製に対する保護はかかる機能が通例その検出には特別な機器及び知識を必要とするという概念に依拠している。UV光で励起可能な発光性のセキュリティー機能には例えばUV光で励起可能な発光性ファイバー、UV光で励起可能な発光性スレッド、UV光で励起可能な発光性のパッチ、ストライプ又はホイル(ここで前記パッチ、ストライプ又はホイルの少なくとも一部はUV光での励起の際に発光を示す)及び印刷されたUV光で励起可能な発光性機能がある。前記印刷されたUV光で励起可能な発光性機能には発光性ナンバリング(凸版印刷により印刷される)、印刷されたパッチ(レターセットにより印刷される)、並びにオフセットにより印刷された発光性機能がある。セキュリティー文書は一般に保護ワニスから得られる保護コーティングにより覆われているUV光で励起可能な発光性セキュリティー機能を含有するので、当技術分野で公知の光開始システムはセキュリティー文書のために保護ワニスに使用することが許容されない。その理由は、254nm又は366nmのような波長を有するUV光での励起の際に保護コーティングにより示される蛍光の高いレベルがUV光で励起可能な発光性セキュリティー機能の機械検出及び/又は人物認識を損なうからである。
【0013】
従って、セキュリティー文書のための保護コーティングを高速(即ち工業的スピード)で提供するための、その耐用期間及び流通適性を延ばすカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスに対するニーズが残されており、ここで前記カチオン性のUV-LED放射線硬化性ワニスは最適な硬化特性を示し、硬化した後254nm励起及び366nm励起に応答して、コーティングされたセキュリティー文書に含有される、UV光、特に254nm又は366nmのような波長を有するUV光で励起可能な発光性のセキュリティー機能の機械検出及び/又は人物認識を損なわない低い蛍光を示す。
【0014】
[発明の概要]
従って、本発明の目的は、セキュリティー文書の耐用期間及び流通適性を延ばすためにセキュリティー文書を高速(即ち工業的速度)でコーティングするためのカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスを提供することであり、ここで前記カチオン性のUV-LED放射線硬化性ワニスは最適な硬化特性を示し、硬化した後366nmの励起及び254nmの励起のようなUV光による励起に応答して低い蛍光を示す。これは特許請求の範囲に記載の、
a)約65wt-%~約90wt-%の脂環式エポキシド、又は脂環式エポキシド及び脂環式エポキシド以外の1種又は複数のカチオン硬化性モノマーの混合物;
b)約1wt-%~約10wt-%、好ましくは約2wt-%~約5wt-%、より好ましくは約3wt-%のジアリールヨードニウム塩;
c)約0.01wt-%~約5wt-%の非イオン性界面活性剤;及び
d)一般式(I)
【化1】

[一般式(I)中
及びAは互いに独立して水素及び次の構造:
【化2】

の部分から選択され;
-L-は
【化3】

から選択され;
-L-は
【化4】

から選択され;
n1及びn2は0以上の整数であり;
mは0を表し;
Bは水素を表し;
Cは水素、
【化5】

から選択され;
及びAは互いに独立して水素及び次の構造:
【化6】

の部分から選択され;
-L-及び-L-は互いに独立して
【化7】

から選択され;
n3及びn4は0以上の整数であり、ここで
和n1+n2は2~8であり;
和n1+n2+n3は3~12であり;
和n1+n2+n3+n4は4~16であるか;
又は
mは1を表し;
Bはエチル、及び
【化8】

から選択され;
Cは
【化9】

から選択され;
、A、A及びAは互いに独立して水素及び次の構造:
【化10】

の部分から選択され;
-L-、-L-、-L-及び-L-は互いに独立して
【化11】

から選択され;
n3、n4、n5及びn6は0以上の整数であり、ここで
和n1+n2+n3は3~12であり;
和n1+n2+n3+n4は4~16であり;
和n1+n2+n3+n4+n6は5~15であり;
和n1+n2+n3+n5は4~16であり;
和n1+n2+n3+n4+n5は5~15であり;
和n1+n2+n3+n4+n5+n6は6~18である]
の光増感剤
を含むカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスであって、
カチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスは一般式(I)の光増感剤中に存在する部分
【化12】

をカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニス100g当たり約1.3mmol~約4.7mmol、好ましくは約1.45mmol~約4.5mmol、より好ましくは約1.6mmol~約4.25mmolの前記部分の濃度で含み;
重量パーセント(wt-%)はカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスの総重量に基づく、カチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスによって達成される。
【0015】
好ましくは、本発明によるカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスに含まれる光増感剤は一般式(I-b)
【化13】

[式中、
、A、C、n1、n2、-L-及び-L-は本明細書中で定義されている意味を有する]の化合物である。より好ましくは、本発明によるカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスに含まれる光増感剤は、Cが
【化14】

を表し、A、n3及び-L-が本明細書に記載されている意味を有する一般式(I-b)の化合物である。
【0016】
特許請求の範囲に記載され本明細書に記載されているカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスはUV-LED光源により放出されたUV光への曝露により、好ましくは約365nm~約405nmの1つ又は複数の波長への曝露により、より好ましくは365nm及び/又は385nm及び/又は395nmのUV光への曝露により硬化可能である。それ故に、本発明に従う別の局面は、基材及び基材の一部分に適用又は挿入された1つ又は複数のセキュリティー機能を含むセキュリティー文書をコーティングする方法であって、以下のステップ:
i)好ましくはフレキソ印刷、インクジェット印刷、及びスクリーン印刷から選択される印刷方法により、特許請求の範囲に記載され本明細書に記載されているカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスを基材の表面及び/又はセキュリティー文書の1つ又は複数のセキュリティー機能の表面に適用してワニス層を形成するステップ;並びに
ii)ワニス層をUV-LED源により放出されたUV光への曝露により硬化させて基材の表面及び/又はセキュリティー文書の1つ又は複数のセキュリティー機能の表面を覆う保護コーティングを形成するステップ
を含む、方法に関する。
本発明によるコーティングプロセスは環境に優しく、366nmの励起及び254nmの励起のようなUV光による励起に応答して許容できるレベルの蛍光を示すセキュリティー文書のための防汚保護コーティングの都合の良い方法(即ち工業的速度)での製造を可能にする。
【0017】
本発明に従う更なる局面は基材、基材の一部分に適用又は挿入された1つ又は複数のセキュリティー機能、及び基材の表面及び/又はセキュリティー文書の1つ又は複数のセキュリティー機能の表面を覆う保護コーティングを含むセキュリティー文書に関し、保護コーティングは特許請求の範囲に記載され本明細書に記載されているコーティングプロセスによって得られる。
【0018】
[詳細な説明]
(定義)
以下の定義が明細書で論じられ、特許請求の範囲で記載される用語の意味を解釈するために使用される。
【0019】
本明細書で使用されるとき、冠詞「a/an」は1つ並びに1つより多いことを示し、必ずしも指示対象の名詞を単数に限定するものではない。
【0020】
本明細書で使用されるとき、用語「約」は、問題になっている量又は値が指定されている具体的な値又はその近くの他の値であり得ることを意味する。一般に、ある値を表示する用語「約」はその値の±5%以内の範囲を示すことが意図されている。1つの例として、句「約100」は100±5の範囲、即ち95~105の範囲を示す。好ましくは、用語「約」により示される範囲はその値の±3%、より好ましくは±1%以内の範囲を示す。一般に、用語「約」が使用されるとき、本発明に従う類似の結果又は効果は示された値の±5%の範囲内で得ることができると期待することができる。
【0021】
本明細書で使用されるとき、用語「及び/又は」は述べられた群の要素のうちの全て又は1つのみが存在し得ることを意味する。例えば、「A及び/又はB」は「Aのみ、又はBのみ、又はA及びBの両方」を意味する。「Aのみ」の場合、この用語はBが存在しない、即ち「Aのみであって、Bでない」可能性も包含する。
【0022】
本明細書で使用される用語「含む(comprising)」は非排他的でありオープンエンドであることが意図されている。従って、例えば化合物Aを含む溶液はAに加えて他の化合物を含んでいてもよい。しかし、用語「含む(comprising)」は、その特定の態様として、「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」のより限定的な意味も包含し、結果として、例えば「A、B、及び任意選択でCを含む溶液」は(本質的に)A、及びBからなってもよいし、又は(本質的に)A、B、及びCからなってもよい。
【0023】
本明細書で「好ましい」実施形態/特徴に言及する場合、「好ましい」実施形態/特徴の特定の組合せが技術的に意味がある限りにおいてこれらの「好ましい」実施形態/特徴の組合せも開示されているものとする。
【0024】
本明細書で使用されるとき、用語「1つ又は複数」は1つ、2つ、3つ、4つ、等を意味する。
【0025】
用語「UV-LED放射線硬化可能」、「UV-LED放射線硬化性」、「UV-LED硬化可能」及び「UV-LED硬化性」は1つ又は複数のUV-LED源により放出された365nm及び/又は385nm及び/又は395nmのような約365nm~約405nmの波長を有する1つ又は複数の放射線の影響の下で光重合により放射線硬化することをいう。
【0026】
用語「カチオン性のUV-LED放射線硬化性ワニス」は、1つ又は複数のUV-LED源により放出された365nm及び/又は385nm及び/又は395nmのような約365nm~約405nmの波長を有する1つ又は複数の放射線により活性化されるカチオン機構によって硬化するワニスを意味する。
【0027】
本明細書で使用されるとき、「2-ケト-チオキサントン部分」又は「2-ケト-9H-チオキサンテン-9-オン」は次の構造を有する部分を指す:
【化15】
【0028】
驚くべきことに、
a)約65wt-%~約90wt-%の脂環式エポキシド、又は脂環式エポキシド及び脂環式エポキシド以外の1種又は複数のカチオン硬化性モノマーの混合物;
b)約1wt-%~約10wt-%、好ましくは約2wt-%~約5wt-%、より好ましくは約3wt-%のジアリールヨードニウム塩;
c)約0.01wt-%~約5wt-%の非イオン性界面活性剤;及び
d)一般式(I)
【化16】

[一般式(I)中
及びAは互いに独立して水素及び次の構造:
【化17】

の部分から選択され;
-L-は
【化18】

から選択され;
-L-は
【化19】

から選択され;
n1及びn2は0以上の整数であり;
mは0を表し;
Bは水素を表し;
Cは水素、
【化20】

から選択され;
及びAは互いに独立して水素及び次の構造:
【化21】

の部分から選択され;
-L-及び-L-は互いに独立して
【化22】

から選択され;
n3及びn4は0以上の整数であり、ここで
和n1+n2は2~8であり;
和n1+n2+n3は3~12であり;
和n1+n2+n3+n4は4~16であるか;
又は
mは1を表し;
Bはエチル、及び
【化23】

から選択され;
Cは
【化24】

から選択され;
、A、A及びAは互いに独立して水素及び次の構造:
【化25】

の部分から選択され;
-L-、-L-、-L-及び-L-は互いに独立して
【化26】

から選択され;
n3、n4、n5及びn6は0以上の整数であり、ここで
和n1+n2+n3は3~12であり;
和n1+n2+n3+n4は4~16であり;
和n1+n2+n3+n4+n6は5~15であり;
和n1+n2+n3+n5は4~16であり;
和n1+n2+n3+n4+n5は5~15であり;
和n1+n2+n3+n4+n5+n6は6~18である]
の光増感剤
を含むカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスであって、カチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスは、一般式(I)の光増感剤中に存在する部分
【化27】

をカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニス100g当たり約1.3mmol~約4.7mmol、好ましくは約1.45mmol~約4.5mmol、より好ましくは約1.6mmol~約4.25mmolの前記部分の濃度で含み、重量パーセントはカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスの総重量に基づく、カチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスは、最適な硬化特性を示し、且つ硬化後、366nmの励起及び254nmの励起のようなUV光による励起に応答してセキュリティー文書の分野で許容できるレベルの蛍光を示すことが判明した。カチオン光開始剤としてジアリールヨードニウム塩、及び1つ又は複数の2-ケト-チオキサントン部分を含有する一般式(I)の光増感剤を含有し、カチオン性のUV-LED硬化性保護ワニスの一般式(I)の光増感剤中に存在する2-ケト-チオキサントン部分の濃度がカチオン性のUV-LED硬化性保護ワニス100g当たり約1.3mmol~約4.7mmol、好ましくは約1.45mmol~約4.5mmol、より好ましくは約1.6mmol~約4.25mmolの前記2-ケト-チオキサントン部分である、光開始システムの使用は、カチオン性のUV-LED硬化性保護ワニスが最適な硬化特性を示し、且つ366nmの励起及び254nmの励起のようなUV光による励起に応答してセキュリティー文書の分野にとって許容できるレベルの蛍光を保護コーティングに付与することを確実にする。
【0029】
特許請求の範囲に記載され本明細書に記載されているカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスは
d)一般式(I)
【化28】

[一般式(I)中
及びAは互いに独立して水素及び次の構造:
【化29】

の部分から選択され;
-L-は
【化30】

から選択され;
-L-は
【化31】

から選択され;
n1及びn2は0以上の整数であり;
mは0を表し;
Bは水素を表し;
Cは水素、
【化32】

から選択され;
及びAは互いに独立して水素及び次の構造:
【化33】

の部分から選択され;
-L-及び-L-は互いに独立して
【化34】

から選択され;
n3及びn4は0以上の整数であり、ここで
和n1+n2は2~8であり;
和n1+n2+n3は3~12であり;
和n1+n2+n3+n4は4~16であるか;
又は
mは1を表し;
Bはエチル、及び
【化35】

から選択され;
Cは
【化36】

から選択され;
、A、A及びAは互いに独立して水素及び次の構造:
【化37】

の部分から選択され;
-L-、-L-、-L-及び-L-は互いに独立して
【化38】

から選択され;
n3、n4、n5及びn6は0以上の整数であり、ここで
和n1+n2+n3は3~12であり;
和n1+n2+n3+n4は4~16であり;
和n1+n2+n3+n4+n6は5~15であり;
和n1+n2+n3+n5は4~16であり;
和n1+n2+n3+n4+n5は5~15であり;
和n1+n2+n3+n4+n5+n6は6~18である]の光増感剤
を含み、
一般式(I)の光増感剤中に存在する部分
【化39】

の濃度はカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニス100g当たり約1.3mmol~約4.7mmol、好ましくは約1.45mmol~約4.5mmol、より好ましくは約1.6mmol~約4.25mmolの前記部分である。
【0030】
カチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスはカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニス100g当たり約1.3mmol~約4.7mmol、好ましくは約1.45mmol~約4.5mmol、より好ましくは約1.6mmol~約4.25mmolの前記部分の濃度の光増感剤中に存在する2-ケト-チオキサントン部分を含むので、前記ワニスにより含有される一般式(I)の光増感剤の対応する量(カチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスの総重量に基づくwt-%)は一般式(I)の光増感剤中の2-ケト-チオキサントン部分のモル濃度(2-ケト-チオキサントン部分mmol/一般式(I)の光増感剤g)に基づいて容易に計算することができる。一般式(I)の光増感剤中の2-ケト-チオキサントン部分のモル濃度(2-ケト-チオキサントン部分mmol/光増感剤g)は前記一般式(I)の光増感剤中のイオウモル濃度(イオウmmol/光増感剤g)に等しく、これは2-ケト-チオキサントン部分により含有されるイオウ原子の信号を用いてエネルギー分散X線蛍光(ED-XRF)により決定することができる。ED-XRF測定は内部標準添加技術により公知の構造の9H-チオキサンテン-9-オン(チオキサントン)を含有する化合物、例えば2-イソプロピル-9H-チオキサンテン-9-オン(ITX)を内部標準として用いることによって分光計Spectro XEFOSで実施し得る。
【0031】
本発明に従う好ましい実施形態において、mは0を表し、Bは水素を表す。従って、一般式(I-a)
【化40】

[式中、A、A、C、n1、n2、-L-及び-L-は本明細書中で定義された意味を有する]の光増感剤を含有するカチオン性のUV-LED硬化性保護ワニスが好ましい。
【0032】
本発明に従う代わりの好ましい実施形態において、mは1を表す。それ故に、特許請求の範囲に記載され本明細書に記載されているカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスは一般式(I-d)
【化41】

[式中、A、A、B、C、-L-、-L-、n1及びn2は本明細書中で定義された意味を有する]の光増感剤を含有し得る。
【0033】
本発明に従う殊に好ましい実施形態は、mが1を表し、Bがエチルを表す特許請求の範囲に記載され本明細書に記載されているカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスに関する。それ故に、一般式(I-b)
【化42】

[式中、A、A、C、n1、n2、-L-及び-L-は本明細書中で定義された意味を有する]の光増感剤を含有する特許請求の範囲に記載され本明細書に記載されているカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスが殊に好ましい。
【0034】
本発明に従う更なる好ましい実施形態は、mが1を表し、Bが
【化43】

[ここで、-L-、n5及びAは本明細書中で定義された意味を有する]を表す特許請求の範囲に記載され本明細書に記載されているカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスに関する。それ故に、一般式(I-c)
【化44】

[式中、A、A、A、C、n1、n2、n5、-L-、-L-及び-L-は本明細書中で定義された意味を有する]の光増感剤を含有する特許請求の範囲に記載され本明細書に記載されているカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスも好ましい。
【0035】
好ましくは、Cは
【化45】

[ここで、-L-、n3及びAは本明細書中で定義された意味を有する]を表す。従って、一般式(I)、(I-a)、(I-b)、(I-c)又は(I-d)[式中、Cは
【化46】

を表し、-L-、n3及びAは本明細書中で定義された意味を有する]の光増感剤を含有する特許請求の範囲に記載され本明細書に記載されているカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスが好ましい。一般式(I-e)
【化47】

[式中、A、A、A、-L-、-L-、-L-、n1、n2及びn3は本明細書中で定義された意味を有する]の光増感剤を含有する特許請求の範囲に記載され本明細書に記載されているカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスが殊に好ましい。
【0036】
好ましくは-L-は
【化48】

を表し、-L-、-L-、-L-、-L-及び-L-は
【化49】

を表す。従って、-L-が
【化50】

を表し、-L-、-L-、-L-、-L-及び-L-が
【化51】

を表す一般式(I)、(I-a)、(I-b)、(I-c)、(I-d)又は(I-e)の光増感剤を含むカチオン性のUV-LED硬化性保護ワニスが好ましい。
【0037】
本発明に従う特に好ましい実施形態は一般式(I-f)
【化52】

[式中、A、A、A、n1、n2及びn3は本明細書中で定義された意味を有する]の光増感剤を含むカチオン性のUV-LED硬化性保護ワニスに関する。一般式(I-f)において、A、A、及びAの1つ又は複数、好ましくは2つ又はそれ以上は次の構造:
【化53】

の2-ケト-チオキサントン部分を表す。
【0038】
カチオン性のUV-LED硬化性保護ワニスは一般式(I)、(I-a)、(I-b)、(I-c)、(I-d)、(I-e)又は(I-f)の光増感剤の混合物を含み得るが、但しワニスはカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニス100g当たり約1.3mmol~約4.7mmol、好ましくは約1.45mmol~約4.5mmol、より好ましくは約1.6mmol~約4.25mmolの2-ケト-チオキサントン部分の濃度の前記部分を含有する。本発明による特に好ましいカチオン性のUV-LED硬化性保護ワニスはA、A、及びAが2-ケト-チオキサントン部分である一般式(I-f)の光増感剤、A及びAが2-ケト-チオキサントン部分であり、Aが水素を表す一般式(I-f)の光増感剤、及びAが2-ケト-チオキサントン部分であり、A及びAが水素を表す一般式(I-f)の光増感剤を含み、カチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニス100g当たり約1.3mmol~約4.7mmol、好ましくは約1.45mmol~約4.5mmol、より好ましくは約1.6mmol~約4.25mmolの前記部分の2-ケト-チオキサントン部分の濃度によって特徴付けられる。
【0039】
本発明に従う更なる好ましい実施形態において、-L-は
【化54】

を表し、-L-、-L-、-L-、-L-及び-L-は
【化55】

を表す。
【0040】
一般式(I)、(I-a)、(I-b)、(I-c)、(I-d)、(I-e)、及び(I-f)の光増感剤は好ましくは約700g/mol eq PS以上、より好ましくは900g/mol eq PS以上の重量平均分子量(M)を有し、ここで前記重量平均分子量はOECD(Organisation for Economic Cooperation and Development)試験法118に準じてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により決定され、ここでMalvern Viskotek GPCmaxが使用され、6つのポリスチレン(PS)標準(472~512000g/molの範囲の分子量)を用いて較正曲線(log(分子量)=f(保持容量))が確立される。デバイスはアイソクラティックポンプ、脱ガス装置、オートサンプラー及び示差屈折計を含むトリプル検出器TDA 302、粘度計及び倍角光散乱検出器(7°及び90°)を具備する。この特定の測定には示差屈折計のみが使用される。2つのカラムViskotek TM4008L(カラム長30.0cm、内径8.0mm)を直列に結合した。固定相はスチレン-ジビニルベンゼンコポリマー製で、粒径6μm、最大細孔径3000Åであった。測定中、温度は35℃に固定し、サンプルは分析される10mg/mLの化合物を含有し、THF(Acros、99.9%、無水)に溶かした。後述の実施例に記載されるように、サンプルは1ml/minの速度で独立に注入する。化合物の分子量はクロマトグラムからポリスチレン当量重量平均分子量(PS eq M)として、95%信頼水準及び同じ溶液の3つの測定の平均として、次式を用いて計算される:
【数1】

ここでHは保持容量Vについてベースラインからの検出器信号のレベルであり、Mは保持容量Vでのポリマー部分の分子量であり、nはデータ点の数である。デバイスと共に供給されるOmnisec 5.12をソフトウェアとして使用する。
【0041】
好ましくは、カチオン性のUV-LED硬化性保護ワニス中の2-ケト-チオキサントン部分の濃度はカチオン性のUV-LED硬化性保護ワニス100g当たり約1.3mmol~約4.7mmol、好ましくは約1.45mmol~約4.5mmol、より好ましくは約1.6mmol~約4.25mmol、殊に好ましくは約1.6mmol~約2.9mmol、例えば約1.63mmol~約2.9mmolの2-ケト-チオキサントン部分である。
【0042】
特許請求の範囲に記載され本明細書に記載されているカチオン性のUV-LED硬化性保護ワニスは
b)約1wt-%~約10wt-%、好ましくは約2wt-%~約5wt-%、より好ましくは約3wt-%のジアリールヨードニウム塩
を含む。
【0043】
本明細書で使用されるとき、用語「ジアリールヨードニウム塩」はカチオン性の部分としてのジアリールヨードニウムと、限定されないがBF (テトラフルオロホウ酸、CAS Nr 14874-70-5)、B(C (テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸、CAS Nr 47855-94-7)、PF (ヘキサフルオロリン酸、CAS Nr 16919-18-9)、AsF (ヘキサフルオロヒ酸、CAS Nr 16973-45-8)、SbF (ヘキサフルオロアンチモン酸、CAS Nr 17111-95-4)、CFSO (トリフルオロメタンスルホン酸、CAS Nr 37181-39-8)、(CH)SO (4-メチルベンゼンスルホン酸、CAS Nr 16722-51-3)、(C)SO (1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロ-1-ブタンスルホン酸、CAS Nr 45187-15-3)、(CF)CO (トリフルオロ酢酸、CAS Nr 14477-72-6)、(C)CO (2,2,3,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロ-1-ペンタン酸、CAS Nr 45167-47-3)、及び(CFSO(トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、CAS Nr 130447-45-9)を始めとするいずれかの適切なアニオン性の部分とを含有するカチオン光開始剤をいう。
【0044】
ジアリールヨードニウムカチオン部分の2つのアリール基は互いに独立して任意選択で1つ又は複数のハロゲン及び/又は1つ又は複数のヒドロキシ基により置換されていてもよい1つ又は複数の線状又は分岐アルキル基(例えば、メチル、エチル、イソプロピル、イソブチル、tertブチル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル等);任意選択で1つ又は複数のハロゲン及び/又は1つ又は複数のヒドロキシ基により置換されていてもよい1つ又は複数のアルキルオキシ基;1つ又は複数のニトロ基;1つ又は複数のハロゲン;1つ又は複数のヒドロキシ基;又はこれらの組合せにより置換され得る。本明細書に記載されているジアリールヨードニウムカチオン部分の例にはビス(4-ドデシルフェニル)ヨードニウム(CAS Nr 71786-69-1)、ビス[4-(1,1-ジメチルエチル)フェニル]ヨードニウム(CAS Nr 61267-44-5)、(4-イソプロピルフェニル)(4-メチルフェニル)ヨードニウム(CAS Nr 178233-71-1)、ビス(4-メチルフェニル)ヨードニウム(CAS Nr 46449-56-3)、(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウム(CAS Nr 344562-79-4)、ビス(2,4-ジメチルフェニル)]ヨードニウム(CAS Nr 78337-07-2)、ビス(3,4-ジメチルフェニル)]ヨードニウム(CAS Nr 66482-57-3)、(4-メチルフェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)ヨードニウム(CAS Nr 758629-51-5)、ビス[(4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウム(CAS Nr 157552-66-4)、ビス(4-ブチルフェニル]ヨードニウム(CAS Nr 76310-29-7)、ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)ヨードニウム(CAS Nr 94564-97-3)、ビス(4-ヘキシリルフェニル]ヨードニウム(CAS Nr 249300-48-9)、ビス(4-デシルフェニル)ヨードニウム(CAS Nr 137141-44-7)、(4-デシルフェニル)(4-ウンデシルフェニル)ヨードニウム(CAS Nr 167997-83-3)、ビス(4-ウンデシルフェニル)ヨードニウム(CAS Nr 167997-61-7)、ビス(4-トリデシルフェニル)ヨードニウム(CAS Nr 124053-08-3)、ビス(4-テトラデシルフェニル)ヨードニウム(CAS Nr 167997-63-9)、ビス(4-ヘキサデシルフェニル)ヨードニウム(CAS Nr 137141-41-4)、ビス(4-ヘプタデシルフェニル)ヨードニウム(CAS Nr 144095-91-0)、ビス(4-オクタデシルフェニル)ヨードニウム(CAS Nr 202068-75-5)、(4-デシルフェニル)(4-ドデシルフェニル)ヨードニウム(CAS Nr 167997-67-3)、(4-デシルフェニル)(4-トリデシルフェニル)ヨードニウム(CAS Nr 167997-77-5)、(4-デシルフェニル)(4-テトラデシルフェニル)ヨードニウム(CAS Nr 167997-81-1)、(4-ドデシルフェニル)(4-ウンデシルフェニル)ヨードニウム(CAS Nr 167997-71-9)、(4-ドデシルフェニル)(4-トリデシルフェニル)ヨードニウム(CAS Nr 167997-69-5)、(4-ドデシルフェニル)(4-テトラデシルフェニル)ヨードニウム(CAS Nr 167997-65-1)、(4-トリデシルフェニル)(4-ウンデシルフェニル)ヨードニウム(CAS Nr 167997-73-1)、(4-テトラデシルフェニル)(4-ウンデシルフェニル)ヨードニウム(CAS Nr 167997-79-7)、(4-テトラデシルフェニル)(4-トリデシルフェニル)ヨードニウム(CAS Nr 167997-75-3)、p-(オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウム(CAS Nr 121239-74-5)、[4-[(2-ヒドロキシテトラデシル)オキシ]フェニル]フェニルヨードニウム(CAS Nr 139301-14-7)、フェニル[3-(トリフルオロメチル)フェニル]ヨードニウム(CAS Nr 789443-26-1)、ビス(4-フルオロフェニル)ヨードニウム(CAS Nr 91290-88-9);(4-ニトロフェニル)フェニルヨードニウム(CAS Nr 46734-23-0)、及び(4-ニトロフェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)ヨードニウム(CAS Nr 1146127-10-7)がある。
【0045】
好ましくは、ジアリールヨードニウム塩は一般式(II)
【化56】

[式中、
~R10は互いに独立して水素、C-C18-アルキル基、及びC-C12-アルキルオキシ基から選択され;
AnはBF 、B(C 、PF 、AsF 、SbF 、CFSO 、(CH)SO 、(C)SO 、(CF)CO 、(C)CO 、及び(CFSOから選択され、好ましくはBF 、B(C 、PF 、AsF 、SbF 、及びCFSO から選択されるアニオンである]
の化合物である。
【0046】
用語「C-C18-アルキル基」は本明細書で使用されるとき1~18個の炭素原子(C-C18)の飽和直鎖又は分岐鎖一価炭化水素基を意味する。C-C18-アルキル基の例には、限定されることはないがメチル(Me、-CH)、エチル(Et、-CHCH)、1-プロピル(n-Pr、n-プロピル、-CHCHCH)、2-プロピル(i-Pr、iso-プロピル、-CH(CH)、1-ブチル(n-Bu、n-ブチル、-CHCHCHCH)、2-メチル-1-プロピル(i-Bu、i-ブチル、-CHCH(CH)、2-ブチル(s-Bu、s-ブチル、-CH(CH)CHCH)、2-メチル-2-プロピル(t-Bu、t-ブチル、-C(CH)、1-ペンチル(n-ペンチル、-CHCHCHCHCH)、2-ペンチル(-CH(CH)CHCHCH)、3-ペンチル(-CH(CHCH)、2-メチル-2-ブチル(-C(CHCHCH)、3-メチル-2-ブチル(-CH(CH)CH(CH)、3-メチル-1-ブチル(-CHCHCH(CH)、2-メチル-1-ブチル(-CHCH(CH)CHCH)、1-ヘキシル(-CHCHCHCHCHCH)、2-ヘキシル(-CH(CH)CHCHCHCH)、3-ヘキシル(-CH(CHCH)(CHCHCH))、2-メチル-2-ペンチル(-C(CHCHCHCH)、3-メチル-2-ペンチル(-CH(CH)CH(CH)CHCH)、4-メチル-2-ペンチル(-CH(CH)CHCH(CH)、3-メチル-3-ペンチル(-C(CH)(CHCH)、2-メチル-3-ペンチル(-CH(CHCH)CH(CH)、2,3-ジメチル-2-ブチル(-C(CHCH(CH)、3,3-ジメチル-2-ブチル(-CH(CH)C(CH)、1-ヘプチル(-CH(CHCH)、1-オクチル(-CH(CHCH)、1-ノニル(-CH(CHCH)、1-デシル(-CH(CHCH)、1-ウンデシル(-CH(CHCH)及び2-ドデシル(-CH(CH10CH)がある。
【0047】
用語「C-C12-アルキルオキシ」はC-C12-アルキル基(即ち1~12個の炭素原子(C-C12)の飽和で直鎖又は分岐鎖の一価炭化水素基)を意味し、酸素原子を介して分子の残りに結合する。
【0048】
好ましくは、一般式(II)で置換基R、R、R、R、R、R、R及びR10は水素を表す。それ故に、好ましいカチオン光開始剤は一般式(II-a)
【化57】

[式中、
Anは本明細書中で定義された意味を有し;
及びRは互いに独立して水素、C-C18-アルキル基、及びC-C12-アルキルオキシ基から選択され、好ましくは水素及びC-C18-アルキル基から選択され、より好ましくは水素及びC-C12-アルキル基から選択され、殊に好ましくはC-C-アルキル基から選択される]
の化合物である。
【0049】
好ましくは、一般式(II)及び(II-a)において、アニオンAnはPF を表す。
【0050】
一般式(II)及び(II-a)の特に適切なジアリールヨードニウム塩はDEUTERON UV 1240(CAS Nr 71786-70-4)、DEUTERON UV 1242(CAS Nr 71786-70-4及びCAS Nr 68609-97-2の混合物)、DEUTERON UV 2257(CAS Nr 60565-88-0及びCAS Nr 108-32-7の混合物)、DEUTERON UV 1250(分岐ビス-((C10-C13)アルキルフェニル)-ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート及びCAS Nr 68609-97-2の混合物)、及びDEUTERON UV 3100(分岐ビス-((C-C10)アルキルフェニル)-ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート及びCAS Nr. 68609-97-2の混合物)、以上全てDEUTERONから入手可能、OMNICAT 250(CAS Nr 344562-80-7)、OMNICAT 440(CAS Nr 60565-88-0)、及びOMNICAT 445(CAS Nr 60565-88-0及びCAS Nr 3047-32-3の混合物)、以上全てIGM Resinsから入手可能、SpeedCure 937(CAS Nr 71786-70-4)、SpeedCure 938(CAS Nr 61358-25-6)及びSpeedCure 939(CAS Nr 178233-72-2)、以上全てLambsonから入手可能、という名称で市販され公知である。
【0051】
本発明によるカチオン性のUV-LED硬化性保護ワニスは
a)約65wt-%~約90wt-%、好ましくは約70wt-%~約90wt-%の脂環式エポキシド、又は脂環式エポキシド及び脂環式エポキシド以外の1種又は複数のカチオン硬化性モノマーの混合物
を含む。
【0052】
好ましくは、特許請求の範囲に記載され本明細書に記載されているカチオン性のUV-LED硬化性保護ワニスは約65wt-%~約90wt-%、好ましくは約70wt-%~約90wt-%の脂環式エポキシド及び脂環式エポキシド以外の1種又は複数のカチオン硬化性モノマーの混合物を含む。より好ましくは、特許請求の範囲に記載され本明細書に記載されているカチオン性のUV-LED硬化性保護ワニスは約70wt-%~約90wt-%の脂環式エポキシド及び脂環式エポキシド以外の1種又は複数のカチオン硬化性モノマーの混合物を含み、ここで脂環式エポキシドは少なくとも70wt-%の量で存在し、重量パーセントはカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスの総重量に基づく。
【0053】
当業者に周知のように、脂環式エポキシドは少なくとも置換又は非置換のエポキシシクロヘキシル残基:
【化58】

を含有するカチオン硬化性のモノマーである。
【0054】
好ましくは、本明細書に記載されている脂環式エポキシドは少なくとも1個のシクロヘキサン環、及び少なくとも2個のエポキシド基を含む。より好ましくは、脂環式エポキシドは一般式(III):
【化59】

の化合物である[式中、-L-は単結合又は1個又は複数の原子を含む二価の基を表す]。一般式(III)の脂環式エポキシドは任意選択で1~10個の炭素原子を含有する1個又は複数の線状又は分岐したアルキル基(例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、オクチル、及びデシル)、好ましくは1~3個の炭素原子を含有するアルキル基(例えばメチル、エチル、n-プロピル、及びi-プロピル)により置換されてもよい。
【0055】
一般式(III)で、二価の基-L-は1~18個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖のアルキレン基であり得る。前記直鎖又は分岐鎖のアルキレン基の例には制限なしにメチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、及びトリメチレン基がある。
【0056】
一般式(III)で、二価の基-L-は二価の脂環式炭化水素基又はシクロアルキリデン(cycloalkydene)基、例えば1,2-シクロペンチレン基、1,3-シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2-シクロヘキシレン基、1,3-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキシレン基、及びシクロヘキシリデン基であり得る。
【0057】
一般式(III)で、-L-は1個又は複数の酸素含有結合基を含む二価の基であり得、前記酸素含有結合基は-C(-O)-、-OC(=O)O-、-C(=O)O-、及び-O-からなる群から選択される。好ましくは、脂環式エポキシドは一般式(III)の脂環式エポキシドであり[式中、-L-は1個又は複数の酸素含有結合基を含む二価の基であり、前記酸素含有結合基は-C(=O)-、-OC(=O)O-、-C(=O)O-、及び-O-からなる群から選択される]、より好ましくは以下に定義される一般式(III-a)、(III-b)、又は(III-c)の脂環式エポキシドである
【化60】

[式中、
はそれぞれの存在において同一、又は異なることができ、1~10個の炭素原子を含有する線状又は分岐したアルキル基(例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、オクチル、及びデシル)であり、好ましくは1~3個の炭素原子を含有し(例えばメチル、エチル、n-プロピル、及びi-プロピル);
はそれぞれの存在において同一、又は異なることができ、1~10個の炭素原子を含有する線状又は分岐したアルキル基(例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、オクチル、及びデシル)であり、好ましくは1~3個の炭素原子を含有し(例えばメチル、エチル、n-プロピル、及びi-プロピル);
及びlは互いに独立して0~9、好ましくは0~3、より好ましくは0の整数である];
【化61】

[式中、
はそれぞれの存在において同一、又は異なることができ、1~10個の炭素原子を含有する線状又は分岐したアルキル基(例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、オクチル、及びデシル)、好ましくは1~3個の炭素原子を含有し(例えばメチル、エチル、n-プロピル、及びi-プロピル);
はそれぞれの存在において同一、又は異なることができ、1~10個の炭素原子を含有する線状又は分岐したアルキル基(例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、オクチル、及びデシル)、好ましくは1~3個の炭素原子を含有し(例えばメチル、エチル、n-プロピル、及びi-プロピル);
及びlは互いに独立して0~9、好ましくは0~3、より好ましくは0の整数であり;
-L-は単結合、又は1~10個の炭素原子を含有し、好ましくは3~8個の炭素原子を含有する線状又は分岐した二価の炭化水素基、例えばアルキレン基、例えばトリメチレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン、及び2-エチルヘキシレン、及びシクロアルキレン基、例えば1,2-シクロヘキシレン基、1,3-シクロヘキシレン基、及び1,4-シクロヘキシレン基、及びシクロヘキシリデン基である];
【化62】

[式中、
はそれぞれの存在において同一、又は異なることができ、1~3個の炭素原子を含有する線状又は分岐したアルキル基、例えばメチル、エチル、n-プロピル、及びi-プロピルであり;
はそれぞれの存在において同一、又は異なることができ、1~3個の炭素原子を含有する線状又は分岐したアルキル基、例えばメチル、エチル、n-プロピル、及びi-プロピルであり;
及びlは互いに独立して0~9、好ましくは0~3、より好ましくは0の整数である]。
【0058】
一般式(III-a)の好ましい脂環式エポキシドには、限定されることはないが、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチル-シクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-2-メチル-シクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-2-メチル-シクロヘキサンカルボキシレート、及び3,4-エポキシ-4-メチル-シクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-4-メチルシクロヘキサンカルボキシレートがある。
【0059】
一般式(III-b)の好ましい脂環式エポキシドには、限定されることはないが、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)オキサレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)ピメレート、及びビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)セバケートがある。
【0060】
一般式(III-c)の好ましい脂環式エポキシドは2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタ-ジオキサンである。
【0061】
更なる脂環式エポキシドには一般式(IV-a)の脂環式エポキシド及び一般式(IV-b)の脂環式エポキシドがあり、これらは任意選択で1~10個の炭素原子を含有する1個又は複数の線状又は分岐したアルキル基(例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、オクチル、及びデシル)、好ましくは1~3個の炭素原子を含有する前記アルキル基(例えばメチル、エチル、n-プロピル、及びi-プロピル)により置換されてもよい。
【化63】
【0062】
本明細書に記載されている脂環式エポキシドはヒドロキシで変性され得るか又は(メタ)アクリレートで変性され得る。例はDaicel Corp.によりCyclomer A400(CAS:64630-63-3)及びCyclomer M100(CAS番号:82428-30-6)という名称で、又はTetraChem/JiangsuによりTTA 15及びTTA16 46という名称で市販されている。
【0063】
本明細書に記載されている脂環式エポキシド以外の1種又は複数のカチオン硬化性モノマーは、ビニルエーテル、プロペニルエーテル、脂環式エポキシド以外の環状エーテル、例えば脂環式エポキシド以外のエポキシド、オキセタン、及びテトラヒドロフラン、ラクトン、環状チオエーテル、ビニルチオエーテル、プロペニルチオエーテル、ヒドロキシル含有化合物、及びこれらの混合物からなる群から、好ましくは、ビニルエーテル、脂環式エポキシド以外の環状エーテル、特にオキセタン、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0064】
ビニルエーテルは硬化を加速し、粘着性を低減し、従ってコーティングした直後にコーティングしたシートを積み重ねたときブロック(blocking)及びセットオフ(set-off)のリスクを制限することが当技術分野で公知である。また、保護コーティングの物理的及び化学的抵抗性も改良し、その柔軟性及びその基材への接着を高め、これはプラスチック及びポリマー基材をコーティングするのに特に有利である。ビニルエーテルはまたワニスの粘度を低減するのに役立つ一方でワニスビヒクルと共に強固に共重合する。特許請求の範囲に記載のカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスに使用される好ましいビニルエーテルの例にはメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、iso-ブチルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、tert-アミルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、4-(ビニルオキシメチル)シクロヘキシルメチル ベンゾエート、フェニルビニルエーテル、メチルフェニルビニルエーテル、メトキシフェニルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールモノビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジビニルエーテル、4-(ビニルオキシ)ブチルベンゾエート、ビス[4-(ビニルオキシ)ブチル]アジペート、ビス[4-(ビニルオキシ)ブチル]スクシネート、ビス[4-(ビニルオキシメチル)シクロヘキシルメチル]グルタレート、4-(ビニルオキシ)ブチルステアレート、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンカーボネートのプロペニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールブチルビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールメチルビニルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ポリ(テトラヒドロフラン)ジビニルエーテル、ポリエチレングリコール-520メチルビニルエーテル、プロリオール-E200ジビニルエーテル、トリス[4-(ビニルオキシ)ブチル]トリメリテート、1,4-ビス(2-ビニルオキシエトキシ)ベンゼン、2,2-ビス(4-ビニルオキシエトキシフェニル)プロパン、ビス[4-(ビニルオキシ)メチル]シクロヘキシル]メチル]テレフタレート、ビス[4-(ビニルオキシ)メチル]シクロヘキシル]メチル]イソフタレートがある。適切なビニルエーテルはBASFによりEVE、IBVE、DDVE、ODVE、BDDVE、DVE-2、DVE-3、CHVE、CHDM-di、HBVEという名称で市販されている。本明細書に記載されている1又は複数のビニルエーテルはヒドロキシ変性されても、又は(メタ)アクリレート変性されてもよい(例えば:Nippon ShokubaiのVEEA、2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレート(CAS:86273-46-3))。
【0065】
特許請求の範囲に記載され本明細書に記載されているカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニス中の脂環式エポキシド以外のエポキシドの使用は、硬化を加速し、粘着性を低減すると共に、ワニスの粘度を低下させ、一方ワニスビヒクルと共に強く共重合させるのに役立つ。本明細書に記載されている脂環式エポキシド以外のエポキシドの好ましい例には、限定されることはないが、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノール-Aジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、ヘキサデシルグリシジルエーテル、2-エチル-ヘキシルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、C12/C14-アルキルグリシジルエーテル、C13/C15-アルキルグリシジルエーテル及びこれらの混合物がある。脂環式エポキシド以外の適切なエポキシドはEMS GriltechによりGrilonit(登録商標)(例えばGrilonit(登録商標)V51-63又はRV 1806)という商標で市販されている。
【0066】
本発明に従う好ましい実施形態は
a)約65wt-%~約90wt-%、好ましくは約70wt-%~約90wt-%の脂環式エポキシド及び1種又は複数のオキセタンの混合物
を含む特許請求の範囲に記載され本明細書に記載されているカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスに関する。
【0067】
オキセタンは、硬化を加速し、粘着性を低減し、従ってコーティングした直後印刷されたシートを積み重ねたときにブロック及びセットオフのリスクを制限することが当技術分野で公知である。また、ワニスの粘度を低減する一方で、ワニスビヒクルと共に強く共重合させるのも助ける。オキセタンの好ましい例にはトリメチレンオキシド、3,3-ジメチルオキセタン、トリメチロールプロパンオキセタン、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-[(2-エチルヘキシルオキシ)メチル]オキセタン、3,3-ジシクロメチルオキセタン、3-エチル-3-フェノキシメチルオキセタン、ビス([1-エチル(3-オキセタニル)]メチル)エーテル、1,4-ビス[3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、3,3-ジメチル-2(p-メトキシ-フェニル)-オキセタン、3-エチル-[(トリ-エトキシシリルプロポキシ)メチル]オキセタン、4,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル及び3,3-ジメチル-2(p-メトキシ-フェニル)オキセタンがある。本明細書に記載されている1種又は複数のオキセタンはヒドロキシ変性されていても(例えば:PerstorpのCuralite(商標)Ox(CAS Nr: 3047-32-3))又は(メタ)アクリレート変性されていてもよい(例えば:LambsonのUVi-Cure S170(CAS Nr: 37674-57-0))。
【0068】
特許請求の範囲に記載され本明細書に記載されているカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスは
c)約0.01wt-%~約5wt-%、好ましくは約0.05wt-%~約3wt-%、より好ましくは約0.1wt-%~約2wt-%、更により好ましくは約0.2wt-%~約1wt-%の非イオン性界面活性剤
を含む。
【0069】
当業者に周知のように、非イオン性界面活性剤は親水性部分及び疎水性部分を含有し、電荷をもたない。好ましくは、特許請求の範囲に記載され本明細書に記載されているカチオン性のUV-LED硬化性保護ワニス中に使用される非イオン性界面活性剤は約200g/mol~約3000g/molの分子量を有するか、及び/又はヒドロキシル及びエポキシド基から選択される1つ又は複数の官能基を含有する。より好ましくは、非イオン性界面活性剤は非イオン性のフッ素化された界面活性剤及び非イオン性のシリコーン界面活性剤から選択される。
【0070】
本明細書で使用される用語「非イオン性のフッ素化された界面活性剤」には非イオン性のペルフルオロポリエーテル界面活性剤及び非イオン性のフルオロ界面活性剤が包含される。
【0071】
本明細書で使用されるとき、用語「非イオン性のペルフルオロポリエーテル界面活性剤」はペルフルオロポリエーテル骨格並びにヒドロキシル、エポキシド、アクリレート、メタクリレート及びトリアルコキシシリルからなる群から選択され、好ましくはヒドロキシル及びエポキシドからなる群から選択される1つ又は複数、好ましくは2つ又はそれ以上の末端官能基を含む非イオン性界面活性剤を意味する。好ましくは、非イオン性のペルフルオロポリエーテル界面活性剤は約2000[g/mol]未満の平均分子量(M)により特徴付けられる。本明細書で使用されるとき、ペルフルオロポリエーテル主鎖はペルフルオロメチレンオキシ(-CFO-)及びペルフルオロエチレンオキシ(-CF-CFO-)から選択されるランダムに分布した繰返し単位を含むペルフルオロポリエーテルポリマーの残基を示す。ペルフルオロポリエーテル残基は直接又はメチレン(オキシエチレン)、1,1-ジフルオロエチレン-(オキシエチレン)、メチレン-ジ(オキシエチレン)、1,1-ジフルオロエチレン-ジ(オキシエチレン)、メチレン-トリ(オキシエチレン)、1,1-ジフルオロエチレン-トリ(オキシエチレン)、メチレン-テトラ(オキシエチレン)、1,1-ジフルオロエチレン-テトラ(オキシエチレン)、メチレン-ペンタ(オキシエチレン)、1,1-ジフルオロエチレン-ペンタ(オキシエチレン)、及び任意選択でスペーサーをペルフルオロポリエーテル残基に連結する炭素原子でフッ素化されてもよく、1又は複数のウレタン基、又は1若しくは複数のアミド基、及び任意選択で1又は複数の環状部分、例えば飽和した環状部分(例えばシクロヘキシレン)及び芳香族環式部分(例えばフェニレン)を含有する線状又は分岐した炭化水素基から選択されるスペーサーを介して末端の官能基に連結される。好ましくは、非イオン性のペルフルオロポリエーテル界面活性剤は1又は複数のヒドロキシル及び/又はエポキシド官能基で官能化される。
【0072】
好ましくは、非イオン性のペルフルオロポリエーテル界面活性剤は約1200[g/mol]~約2000[g/mol]の平均分子量(M)を有する一般式(V)の化合物である
【化64】

[式中、
f及びeは互いに独立して1、2及び3から選択される整数であり;
FG及びFGは互いに独立して
【化65】

-OH、-OC(O)CH=CH、-OC(O)C(CH)=CH、及び-Si(OR20からなる群から選択される末端官能基であり;
20はC-Cアルキル基であり;
-S-は単結合又は
【化66】

から選択されるスペーサーを表し、
ここで、
-J-は
【化67】

から選択され、
ここで、jは1~12、好ましくは4~10の整数であり;
はそれぞれ同一、又は異なることができ、1~10個の炭素原子を含有する(例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、オクチル、及びデシル)、好ましくは1~3個の炭素原子を含有する(例えばメチル、エチル、n-プロピル、及びi-プロピル)線状又は分岐したアルキル基であり;
はそれぞれ同一、又は異なることができ、1~10個の炭素原子を含有する(例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、オクチル、及びデシル)、好ましくは1~3個の炭素原子を含有する(例えばメチル、エチル、n-プロピル、及びi-プロピル)線状又は分岐したアルキル基であり;
及びlは互いに独立して0~4、好ましくは0~1の整数であり;
-J-は-O-、-CH-、-CH(CH)-、及び-C(CH-から選択され;
-J-は
【化68】

から選択され、
aは1~6、好ましくは1~3の整数であり;
bは1~6、好ましくは2~4の整数であり;
-S-は単結合又は
【化69】

から選択されるスペーサーを表し、
ここで
-J-は
【化70】

から選択され、
ここで
は1~12、好ましくは4~10の整数であり;
はそれぞれ同一、又は異なることができ、1~10個の炭素原子を含有する(例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル)、好ましくは1~3個の炭素原子を含有する(例えばメチル、エチル、n-プロピル、及びi-プロピル)線状又は分岐したアルキル基であり;
はそれぞれ同一、又は異なることができ、1~10個の炭素原子を含有する(例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、オクチル、及びデシル)、好ましくは1~3個の炭素原子を含有する(例えばメチル、エチル、n-プロピル、及びi-プロピル)線状又は分岐したアルキル基であり;
及びlは互いに独立して0~4、好ましくは0~1の整数であり;
-J-は-O-、-CH-、-CH(CH)-、及び-C(CH-から選択され;
-J-は
【化71】

から選択され、
rは1~6、好ましくは1~3の整数であり;
wは1~6、好ましくは2~4の整数であり;
s及びtは一般式(V)の化合物の平均分子量(M)が約1200[g/mol]~約2000[g/mol]であるような整数である]。
【0073】
好ましくは、一般式(V)で、FG及びFGは互いに独立して-OC(O)CH=CH、又は-OC(O)C(CH)=CHを表し;
-S-は
【化72】

を表し、ここでbは本明細書で定義されている意味を有し;
-S-は
【化73】

を表し、ここでwは本明細書で定義されている意味を有する。
【0074】
より好ましくは、一般式(V)で、FG及びFGは-OHを表し;
-S-は単結合又は
【化74】

を表し、ここでaは本明細書で定義されている意味を有し;
-S-は単結合又は
【化75】

を表し、ここでrは本明細書で定義されている意味を有し;
o及びrの総和は3~9である。
【0075】
また好ましくは、一般式(V)で、FG及びFGは-Si(OR20を表し;
20はC-Cアルキル基、好ましくはエチル基であり;
-S-は
【化76】

を表し、ここでbは本明細書で定義されている意味を有し;
-S-は
【化77】

を表し、ここでwは本明細書で定義されている意味を有する。従って、好ましいペルフルオロポリエーテル界面活性剤は一般式(V-a)の化合物である
【化78】

[式中、
b及びwは1~6、好ましくは2~4の整数であり;
sは2~6の整数であり;
qは2~4の整数である]。
【0076】
非イオン性のペルフルオロポリエーテル界面活性剤の特に適切な例はSolvayからFluorolink(登録商標)E10H、Fluorolink(登録商標)MD700、Fluorolink(登録商標)MD500、Fluorolink(登録商標)AD1700、Fluorolink(登録商標)E-シリーズ、及びFluorolink(登録商標)S10という名称で市販されている。
【0077】
本明細書で使用される用語「非イオン性のフルオロ界面活性剤」はペルフルオロアルキル鎖CF(CFを含有する非イオン性界面活性剤を意味し、ここでxは2~18の整数である。好ましくは、非イオン性のフルオロ界面活性剤は約200[g/mol]~約2000[g/mol]の平均分子量(M)により特徴付けられる。
【0078】
好ましくは、非イオン性のフルオロ界面活性剤は一般式(VI)
CF(CF(CHE (VI)
[式中、
xは2~18の整数であり;
yは0~8の整数であり;
Eは
【化79】

-(CRCRO)H、及び-OSi(OR20から選択され、
ここでzは0~15の整数であり;
Rはそれぞれの存在において同一、又は異なることができ、水素及びメチルから選択され;
20はC-Cアルキル基である]
の化合物である。一般式(VI)において、Rは好ましくは水素を表す。
【0079】
一般式(VI-a)
CF(CF(CH(CRCRO)H (VI-a)
[式中、
xは2~18の整数であり;
yは0~8の整数であり;
zは0~15の整数であり;
Rはそれぞれの存在において同一、又は異なることができ、水素及びメチルから選択され、好ましくは水素である]の非イオン性のフルオロ界面活性剤が殊に好ましい。一般式(VI-a)の非イオン性のフルオロ界面活性剤は、いずれもCHEMGUARDにより商業化されたCHEMGUARD S550-100又はCHEMGUARD S550、CHEMGUARD S222N、CHEMGUARD S559-100又はCHEMGUARD S559;いずれもChemoursにより商業化されたCapstone(商標) FS-31、Capstone(商標) FS-35、Capstone(商標) FS-34、Capstone(商標) FS-30、Capstone(商標) FS-3100という名称で市販されている。
【0080】
一般式(VI-b)
CF(CF(CHOSi(OR20) (VI-b),
[式中、
xは2~18の整数であり;
yは0~8の整数であり;
20はC-Cアルキル基である]の非イオン性のフルオロ界面活性剤も好ましい。一般式(VI-b)の非イオン性のフルオロ界面活性剤はEvonikにより商業化されDynasylan F8261及びDynasylan F8263という名称で市販されている。
【0081】
一般式(VI-c)
【化80】

[式中、
xは2~18の整数であり;
yは0~8の整数であり;
21は水素及びメチル基から選択される]の非イオン性のフルオロ界面活性剤も好ましい。一般式(VI-c)の非イオン性のフルオロ界面活性剤の例には、限定されることはないが:1H,1H,2H,2H-ペルフルオロオクチルアクリレート(Sigma-Aldrich)、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロオクチルメタクリレート(Sigma-Aldrich)、1H,1H-ペルフルオロオクチルアクリレート(Sigma-Aldrich)、1H,1H-ペルフルオロオクチルメタクリレート(Sigma-Aldrich)、1H,1H-ペルフルオロヘプチルアクリレート(Sigma-Aldrich)及び1H,1H-ペルフルオロヘプチルメタクリレート(Sigma-Aldrich)がある。
【0082】
本発明で使用される非イオン性のシリコーン界面活性剤は、ジ(メチル)シロキサン(-(CHSiO-)及び/又はメチル-(C-C10-アルキル)-シロキサン(-(CH)(C-C10-アルキル)SiO-)から選択されるランダムに分布した繰返し単位を含有するシリコーン骨格を含む非イオン性界面活性剤を意味し、ここで1つ又は複数のメチル基及び/又はC-C10-アルキル基は互いに独立してアリール基、任意選択でヒドロキシル、エポキシド、及び(メタ)アクリレートから選択される末端官能基を提示してもよいポリエステル、任意選択でヒドロキシル、エポキシド及び(メタ)アクリレートから選択される末端官能基を提示してもよいポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールを含むポリアルキレングリコールのようなポリエーテル、ヒドロキシル基、エポキシド基、又は(メタ)アクリレート基により置換され得、及び/又はシリコーン骨格は直接に又はスペーサーを介してヒドロキシル基、エポキシド基、及び(メタ)アクリレート基から選択される末端官能基に結合され得る。本明細書に記載されているシリコーン骨格は脂肪族ウレタンアクリレート又はフッ素含有脂肪族ウレタンアクリレートに結合し得る。好ましくは、非イオン性のシリコーン界面活性剤は約3000[g/mol]未満の平均分子量により特徴付けられる。
【0083】
非イオン性のシリコーン界面活性剤には、限定されることはないがポリ-メチル-アルキル-シロキサン、例えばBYKにより商業化されたBYK-077及びBYK-085、ポリエステル変性ポリ-ジメチル-シロキサン、例えばBYKにより商業化されたBYK 310、ポリエーテル変性ポリ-ジメチル-シロキサン、例えばBYKにより商業化されたBYK-377、BYK-333、BYK-345、BYK-346及びBYK-348、ポリエステル変性ポリ-メチル-アルキル-シロキサン、例えばBYKにより商業化されたBYK-315、ポリエーテル変性ポリ-メチル-アルキル-シロキサン、例えばBYKにより商業化されたBYK-341、BYK-320及びBYK-325、ヒドロキシ官能性ポリ-ジメチル-シロキサン、例えばEvonikにより商業化されたTEGOMER(登録商標)HSI-2311、ポリエステル変性ヒドロキシ官能性ポリ-ジメチル-シロキサン、例えばBYKにより商業化されたBYK-370及びBYK-373、ポリエーテル変性ヒドロキシ官能性ポリ-ジメチル-シロキサン、例えばBYKにより商業化されたBYK-308、ポリエーテル-ポリエステル変性ヒドロキシ官能性ポリ-ジメチル-シロキサン、例えばBYKにより商業化されたBYK-375、エポキシ官能性ポリ-ジメチル-シロキサン、例えばEvonikにより商業化されたTEGOMER(登録商標)E-Si 2330、アクリルオキシ官能性ポリ-ジメチル-シロキサン、例えばEvonikにより商業化されたTEGOMER(登録商標)V-SI 2250及びTEGO(登録商標)Rad 2700、ポリエステル変性アクリル官能性ポリ-ジメチル-シロキサン、例えばBYKにより商業化されたBYK-371、ポリエーテル変性アクリル官能性ポリ-ジメチル-シロキサン、例えばEvonikにより商業化されたTEGO(登録商標)Rad 2100及びTEGO(登録商標)Rad 2500、シリコーン変性脂肪族ウレタンアクリレート、例えばPolygonにより商業化されたSUO-S3000及びSUO-S600NM、シリコーン及びフッ素変性脂肪族ウレタンアクリレート、例えばPolygonにより商業化されたSUO-FS500がある。
【0084】
セキュリティー文書の保管、積み重ね及び把持、特に銀行券の保管、積み重ね及び把持を容易にするために、特許請求の範囲に記載され本明細書に記載されているカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスは、より良好な把持を有する艶消し保護コーティングを提供する艶消し剤を含有し得る。その上、艶消し保護コーティングは触覚によるセキュリティー文書のユーザーのいつもの知覚を保持する利点を有し、光沢のある保護コーティングよりずっと少ない反射を生じ、それにより機械検査及び慣習的に使用される光学センサーでのセキュリティー文書の認証を可能にする。艶消し剤は約1wt-%~約12wt-%の量で存在し得、重量パーセント(wt-%)はカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスの総重量に基づく。
【0085】
当業者には周知のように、艶消し剤の使用は、例えばセキュリティー文書に存在する公然のセキュリティー機能の表面を保護するのに有用であることができる光沢のある保護コーティングの生産を意図したカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスにおいては避けるべきである。艶消し剤を含まない、特許請求の範囲に記載され本明細書に記載されているカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスは、光沢のあるラッカーにより覆われたセキュリティー機能に一般人の注意を引き付けることにより、未経験のユーザーがセキュリティー文書上のセキュリティー機能を容易に見つける役に立つ目立つ光沢のある保護コーティングを提供する。かかるカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスはセキュリティー文書に存在するセキュリティー機能の表面に直接適用することができる。また、かかる艶消し剤を含まないカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスは、セキュリティー文書の表面に直接適用される艶消し保護コーティング及び艶消し保護コーティングの表面を部分的に覆う光沢のある保護コーティングを提示する国際公開第2011120917号に記載されたセキュリティー文書のための光沢のある不連続な保護コーティングを生産するのに有用であり得る。
【0086】
艶消し剤は好ましくは無機粒子及び樹脂粒子から選択される。無機粒子及び樹脂粒子の例には、限定されることはないが熱可塑性ポリマー艶消し剤、例えば熱可塑性ポリマーミクロスフェア及び微粉化ポリオレフィンワックス、炭酸カルシウム艶消し剤、例えば炭酸カルシウムコア及びヒドロキシアパタイトシェルを含み、Omyaにより商品名Omyamatt(登録商標)100で販売されているコア/シェル微小粒子、酸化アルミニウム艶消し剤、アルミノシリケート艶消し剤、並びに多孔性構造を有する非晶質二酸化ケイ素粒子、例えばヒュームド非晶質二酸化ケイ素粒子、沈降非晶質二酸化ケイ素粒子及びゾル-ゲルプロセスで得られた非晶質二酸化ケイ素粒子がある。
【0087】
好ましくは、艶消し剤は有機表面処理非晶質二酸化ケイ素粒子を含む多孔性構造を有する非晶質二酸化ケイ素粒子から選択される。かかる艶消し剤は良好な透過特性をもたらす低い屈折率を示す。
【0088】
艶消し剤は好ましくはレーザー回折により決定して約1μm~約25μm、好ましくは2μm~約15μm、より好ましくは約3μm~約10μmの範囲のD50値により特徴付けられる。
【0089】
適切な多孔性構造を有する非晶質二酸化ケイ素粒子はGraceからSyloid(登録商標)(例えばSyloid(登録商標)C906、Rad 2105、7000、ED30)、EvonikからAcematt(登録商標)(例えばAcematt(登録商標)OK412、OK500、OK520、OK607、OK900、3600、TS 100)、PPGからPPG Lo-Vel(登録商標)(例えばPPG Lo-Vel(登録商標)66、2023、8100、8300)、PQ CorporationからGasil(登録商標)(例えばGasil(登録商標)UV55C、UV70C、HP210、HP240、HP380、HP860)という名称で市販されている。
【0090】
カチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスは10wt-%以下の有機溶媒を含有し得、重量パーセントはカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスの総重量に基づく。好ましくは、有機溶媒は約1wt-%~約7.5wt-%、より好ましくは約2wt-%~約5wt-%の量で存在する。好ましくは、有機溶媒は、好ましくは約80℃より高い、より好ましくは約100℃より高い沸点を有する、アルコール、グリコール、グリコールエーテル、グリコールエステル及び環状カーボネートから選択される極性の有機溶媒である。
【0091】
特許請求の範囲に記載され本明細書に記載されているカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスは、1種又は複数の添加剤、例えば限定なしに消泡剤、泡止め剤、UV吸収剤、沈殿防止安定剤、抗菌剤、殺ウイルス剤、殺生剤、殺菌剤、及びこれらの組合せを更に含有してもよい。
【0092】
記載されている特許請求の範囲に記載のカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスは、脂環式エポキシド、又は脂環式エポキシド及び脂環式エポキシド以外の1種又は複数のカチオン硬化性モノマーの混合物を、存在するときの有機溶媒、存在するときの1種又は複数の添加剤、存在するときの艶消し剤、非イオン性界面活性剤、一般式(I)の光増感剤及びジアリールヨードニウム塩と混合することにより調製し得る。好ましくは、カチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスの固体成分を前記保護ワニスに含有される液体成分の混合物に分散させる。非イオン性界面活性剤、一般式(I)の光増感剤及びジアリールヨードニウム塩は、全ての他の成分の分散若しくは混合ステップ中、又はその後の段階で(即ちセキュリティー文書の基材の表面上及び/又はセキュリティー文書の1つ又は複数のセキュリティー機能の表面上へのカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスの適用直後)同時に、又は順に混合物に加えればよい。
【0093】
好ましくはカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスはフレキソ印刷ワニス、インクジェット印刷ワニス、又はスクリーン印刷ワニス、より好ましくはフレキソ印刷ワニスである。
【0094】
好ましい実施形態において、カチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスはフレキソ印刷ワニスである。フレキソ印刷は好ましくはドクターブレード、好ましくはチャンバードクターブレード、アニロックスローラー及びプレートシリンダーを備えた装置を使用する。アニロックスローラーは小さいセルを有するのが有利であり、その容積及び/又は密度は硬化性ワニス適用速度を決定する。ドクターブレードはアニロックスローラーに対向しており、余分なワニスを同時に掻き落とす。アニロックスローラーはワニスをプレートシリンダーに移し、このプレートシリンダーが最終的にワニスを基材に移す。具体的な設計は計画されたフォトポリマープレートを用いて達成されるかもしれない。プレートシリンダーはポリマー又はエラストマー材料から作製することができる。ポリマーは主として板状のフォトポリマーとして、時にはスリーブ上のシームレスコーティングとして使用される。フォトポリマープレートは紫外(UV)光により硬化する感光性ポリマーから作製される。フォトポリマープレートは所要の大きさに切断され、UV光曝露装置に入れられる。プレートの一方の面は、プレートの土台を硬化する(harden)か又は硬化する(cure)ために完全にUV光に曝露される。次いでプレートを反転させ、ジョブのネガを未硬化の面の上に載せ、プレートをUV光に更に曝露する。これにより、プレートの画像領域が硬化する。次いでプレートを加工処理して未硬化のフォトポリマーを非画像領域から除くと、これらの非画像領域のプレート表面が下がる。加工処理後、プレートを乾燥し、後露光線量のUV光で全プレートを硬化させる。フレキソ印刷のためのプレートシリンダーの調製はPrinting Technology, J. M. Adams and P.A. Dolin, Delmar Thomson Learning, 5th Edition, pages 359-360に記載されている。フレキソ印刷により印刷するのに適切であるために、カチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスは、25℃で100mPas~500mPasの粘度を測定するための100rpmのスピンドルS21を備えたBrookfield粘度計(モデル“DV-I Prime)を用いるか、又は25℃及び1000s-1で100mPas未満の粘度のためのTA Instrumentsの回転粘度計DHR-2(コーンプレーン形状、直径40mm)を用いて測定して25℃で約50~約500mPasの範囲の粘度をもたなければならない。
【0095】
本発明に従う更なる好ましい実施形態において、カチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスはインクジェット印刷ワニス、好ましくはドロップオンデマンド式(drop-on-demand)(DOD)インクジェット印刷ワニスである。ドロップオンデマンド式(DOD)印刷は非接触式印刷方法であり、印刷に必要とされるときだけ、ジェットを不安定化するのではなく一般に排出(ejection)機構により液滴が生成する。液滴を生成するためにプリントヘッドで使用される機構に応じて、DOD印刷はピエゾインパルス、サーマルジェット及びバルブジェットに分けられる。DODインクジェット印刷に適するために、カチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスはジェット噴出温度で約20cP未満の低い粘度及び約45N/m未満の表面張力を有していなければならない。
【0096】
本発明に従う更に好ましい実施形態において、カチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスはスクリーン印刷ワニスである。当業者には周知のように、スクリーン印刷(当技術分野でシルクスクリーン印刷ともいわれる)は、通例インクブロッキングステンシルを支えるために織ったメッシュ製のスクリーンを使用する印刷技術である。付属のステンシルは、ワニスを鋭い縁の画像として基材上に移すメッシュのオープンな領域を形成する。スキージーがインクブロッキングステンシルと共にスクリーンを横切って移動し、オープンな領域の織ったメッシュの糸を越してワニスを通させる。スクリーン印刷の重要な特徴は他の印刷技術より大きい厚さのワニスを基材に適用することができるということである。従ってスクリーン印刷は、他の印刷技術では(容易に)達成することができない約10~50μm又はそれ以上の値を有する厚さのワニス付着量が必要とされるときにも好ましい。一般に、スクリーンは、例えばアルミニウム又は木材の枠を覆って広げられたメッシュと呼ばれる1枚の多孔性で目の細かい織物から作られる。現在殆どのメッシュは合成又はスチール糸のような人工の材料で作製される。好ましい合成材料はナイロン又はポリエステル糸である。
【0097】
合成又は金属糸に基づく織物メッシュに基づいて作製されたスクリーンに加えて、穴の格子を有する固体の金属シートからスクリーンが開発された。かかるスクリーンは第1の電解槽で分離剤を含む母材上にスクリーン骨格を形成し、形成されたスクリーン骨格を母材から剥ぎ取り、スクリーン骨格を第2の電解槽で電気分解に付して前記骨格に金属を付着させることにより金属スクリーンを電解で形成することを含むプロセスにより調製される。
【0098】
3つの種類のスクリーン印刷機、即ち平床式、シリンダー及びロータリースクリーン印刷機がある。平床式及びシリンダースクリーン印刷機は、双方とも平坦なスクリーン及び3ステップの回帰プロセスを使用して印刷作業を行う点で類似である。スクリーンは最初に基材の上方の所定位置に移動され、次いでスキージーがメッシュに押し付けられ、画像領域を越えて引き出され、次にスクリーンが基材から持ち上げられてプロセスが完了する。平床式のプレス機では印刷される基材は通例スクリーンと平行である水平なプリントベッド上に配置される。シリンダープレス機の場合基材はシリンダーに載せられる。平床式及びシリンダースクリーン印刷プロセスは不連続なプロセスであり、その結果として一般にウェブにおいて最大で45m/min又はシート供給プロセスにおいて3’000枚/時に限定される。
【0099】
逆に、ロータリースクリーンプレス機は連続した高速印刷用に設計されている。ロータリースクリーンプレス機に使用されるスクリーンは例えば通常上に記載した電鋳法を用いて得られるか又は織ったスチール糸で作製される薄い金属シリンダーである。開口シリンダーは両端がキャッピングされ、プレス機の側でブロックに嵌め込まれる。印刷中、ワニスはシリンダーの一端にポンプで送り込まれ、従って新鮮な供給が絶えず維持される。スキージーは回転するスクリーンの内側に固定され、スキージー圧力は良好で一定の印刷品質を可能にするように維持され調節される。ロータリースクリーンプレス機の利点はウェブにおいて150m/min又はシート供給プロセスにおいてシート供給プロセスにおいて10’000枚/時を容易に達成することができる速度である。
【0100】
スクリーン印刷は、例えばThe Printing Ink Manual, R.H. Leach and R.J. Pierce, Springer Edition, 5th Edition, pages 58-62、Printing Technology, J. M. Adams and P.A. Dolin, Delmar Thomson Learning, 5th Edition, pages 293-328及びHandbook of Print Media, H. Kipphan, Springer, pages 409-422 and pages 498-499に更に記載されている。
【0101】
特許請求の範囲に記載され本明細書に記載されているカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスは、1つ又は複数のUV-LED光源により放出されたUV光への曝露により、好ましくは約365nm~約405nmの1つ又は複数の波長への曝露により、より好ましくは365nm及び/又は385nm及び/又は395nmのUV光への曝露により硬化可能である。当業者により周知のように、特許請求の範囲に記載され本明細書に記載されているカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスはまた中圧水銀ランプを用いて硬化させるのにも適している。
【0102】
本発明に従う別の局面は、基材及び基材の一部分に適用又は挿入された1つ又は複数のセキュリティー機能を含むセキュリティー文書をコーティングする方法であって、以下のステップ:
i)好ましくはフレキソ印刷、インクジェット印刷、及びスクリーン印刷から選択される印刷方法により、特許請求の範囲に記載され本明細書に記載されているカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスを基材の表面及び/又はセキュリティー文書の1つ又は複数のセキュリティー機能の表面に適用してワニス層を形成するステップ;並びに
ii)ワニス層をUV-LED源により放出されたUV光への曝露により硬化させて基材の表面及び/又はセキュリティー文書の1つ又は複数のセキュリティー機能の表面を覆う保護コーティングを形成するステップ
を含む、方法に関する。
【0103】
好ましくは、コーティングされるセキュリティー文書の基材の一部分に適用又は挿入された1つ又は複数のセキュリティー機能の少なくとも1つはUV光で励起可能な発光性のセキュリティー機能、即ちUV光、特に254nm又は366nmの波長を有するUV光による励起に応答して光を放出するセキュリティー機能である。
【0104】
好ましくは、本明細書に記載されているステップii)は1つ又は複数のUV-LED源により放出された約365nm~約405nmの1つ又は複数の波長にワニス層を曝露して基材の表面及び/又はセキュリティー文書の1つ又は複数のセキュリティー機能の表面を覆う保護コーティングを形成することからなる。通例、市販のUV-LED源は例えば365nm、385nm、395nm及び405nmのような1つ又は複数の波長を使用する。好ましくは、本明細書に記載されているステップii)はUV-LED源により放出された例えば365nm、385nm、395nm又は405nmのような365nm~405nmの単一の波長にワニス層を曝露して基材の表面及び/又はセキュリティー文書の1つ又は複数のセキュリティー機能の表面を覆う保護コーティングを形成することからなる。ワニス層は好ましくは、少なくとも150mJ/cmの線量、より好ましくは少なくとも200mJ/cmの線量、殊に好ましくは少なくとも220mJ/cmの線量でUV光に曝露してワニス層を硬化すると共に基材の表面及び/又はセキュリティー文書の1つ又は複数のセキュリティー機能の表面を覆う保護コーティングを形成する。以下に記載するように、線量はEIT, Inc.、U.S.AのUV Power Puck(登録商標)II放射計を用いて測定し得る。
【0105】
本明細書で使用されるとき、用語「基材」はあらゆるセキュリティー文書基材を包含し、但しその一部にセキュリティー機能が挿入されることができるか、及び/又はセキュリティー機能を適用することができる。セキュリティー文書基材としては、制限なしに、紙又は他の繊維質材料、例えばセルロース、紙含有材料、プラスチック及びポリマー、複合材料、及びこれらの混合物又は組合せがある。典型的な紙、紙様又は他の繊維質材料は制限なしにマニラ麻、綿、リネン、木材パルプ、及びこれらのブレンドを始めとする様々な繊維から作製される。当業者には周知のように、綿及び綿/リネンブレンドは銀行券に好ましく、一方木材パルプは通常非銀行券セキュリティー文書に使用される。プラスチック及びポリマーの典型的な例にはポリポリオレフィン、例えばポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)、ポリアミド、ポリエステル、例えばポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(1,4-ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(エチレン 2,6-ナフトエート)(PEN)及びポリ塩化ビニル(PVC)がある。複合材料の典型的な例には制限なしに紙及び少なくとも1つのプラスチック又はポリマー材料、例えば上に記載したものの多層構造体又は積層体がある。セキュリティー文書の基材は、あらゆる表象、画像及びパターンを始めとするあらゆる所望の象徴を印刷し得るか、及び/又は発光性のセキュリティー機能を含めて1つ又は複数のセキュリティー機能を含み得る。
【0106】
本発明に従う更なる局面は、基材、基材の一部分に適用又は挿入された1つ又は複数のセキュリティー機能及び基材の表面及び/又はセキュリティー文書の1つ又は複数のセキュリティー機能の表面を覆う保護コーティングを含むセキュリティー文書であって、保護コーティングが、以下のステップ:
i)好ましくはフレキソ印刷、インクジェット印刷、及びスクリーン印刷から選択される印刷方法により、より好ましくはフレキソ印刷により、特許請求の範囲に記載され本明細書に記載されているカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスを基材の表面及び/又はセキュリティー文書の1つ又は複数のセキュリティー機能の表面に適用してワニス層を形成するステップ;並びに
ii)ワニス層をUV-LED源により放出されたUV光への曝露により硬化させて基材の表面及び/又はセキュリティー文書の1つ又は複数のセキュリティー機能の表面を覆う保護コーティングを形成するステップ
を含む、特許請求の範囲に記載され本明細書に記載されているコーティング方法によって得られる、セキュリティー文書に関する。
【0107】
本発明によるセキュリティー文書はその面の1つに基材表面の約5~約15%の保護コーティングのない領域を含み得、ここでパーセントはセキュリティー文書の全表面に基づく。好ましくは、前記保護コーティングのない領域は基材の少なくとも1つの縁又は隅に存在する。保護コーティングのない領域は例えばセキュリティー文書のナンバリングに使用し得る。セキュリティー文書が銀行券であれば、コーティングのない領域は、国際公開第2013127715号に記載されているように盗難及び強奪に対して銀行券を保護するために染みを付ける(消去できない)インクを吸着させるために更に使用し得る。
【0108】
本発明に従う更なる局面は基材、及び基材の一部分に適用又は挿入された1つ又は複数のセキュリティー機能を含むセキュリティー文書のための保護コーティングに関し、ここで保護コーティングは特許請求の範囲に記載され本明細書に記載されているカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスから得られる。特に、上述の保護コーティングは、
i)好ましくはフレキソ印刷、インクジェット印刷、及びスクリーン印刷から選択される印刷方法により、より好ましくはフレキソ印刷により、特許請求の範囲に記載され本明細書に記載されているカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスを基材の表面及び/又はセキュリティー文書の1つ又は複数のセキュリティー機能の表面に適用してワニス層を形成し;
ii)UV-LED源により放出されたUV光への曝露によりワニス層を硬化させて基材の表面及び/又はセキュリティー文書の1つ又は複数のセキュリティー機能の表面を覆う保護コーティングを形成すること
により得られる。
【0109】
好ましくは、コーティングされるセキュリティー文書の基材の一部分に適用又は挿入された1つ又は複数のセキュリティー機能の少なくとも1つはUV光で励起可能な発光性のセキュリティー機能、即ちUV光、特に254nm又は366nmの波長を有するUV光による励起に応答して光を放出するセキュリティー機能である。
【0110】
本明細書で使用されるとき、用語「セキュリティー文書」は、潜在的に偽造又は違法の複製が試みられるおそれがあるような価値を有し、通常少なくとも1つのセキュリティー機能により保護される文書を意味する。セキュリティー文書の典型的な例には限定なしに銀行券、証書、チケット、小切手、領収書、収入印紙及びタックスラベル、契約書など、身分証明書、例えばパスポート、身分証明カード、ビザ、バンクカード、クレジットカード、トランザクションカード、アクセス文書(access document)、入場券などがある。
【実施例
【0111】
以下、非限定的な実施例を参照して本発明をより詳細に記載する。以下の実施例及び比較例は本発明によるカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスの調製に関する更なる詳細を提供する。
【0112】
(光増感剤)
【表1】

【0113】
(重量平均分子量測定)
オリゴマー性の光増感剤S1-S2の重量平均分子量は以下に記載する方法に準じて(OECD試験方法118に基づいて)独立に決定した:
Malvern Viskotek GPCmaxを用いた。デバイスはアイソクラティックポンプ、脱ガス装置、オートサンプラー並びに示差屈折計、粘度計及び倍角光散乱検出器(7°及び90°)を含むトリプル検出器TDA 302を具備していた。この特定の測定には示差屈折計のみを用いた。較正曲線(log(分子量)=f(保持容量))は6つのポリスチレン標準(分子量は472~512000g/molの範囲)を用いて確立した。2つのカラムViskotek TM4008L(カラム長さ30.0cm、内径8.0mm)はcoup UV-LED直列であった。固定相は粒径6μm及び最大細孔径3000Åのスチレン-ジビニルベンゼンコポリマー製であった。測定中、温度は35℃に固定した。分析したサンプルはTHF(Acros、99.9%、無水)に溶解した10mg/mLの研究した化合物を含有し、1mL/minの速度で注入した。化合物の分子量は次の式を用いてクロマトグラムからポリスチレン当量重量平均分子量(PS eq M)として95%信頼水準及び同じ溶液の3つの測定の平均で計算した。
【数2】

[式中、Hは保持容量Vに対する検出器信号のベースラインからの高さレベルであり、Mは保持容量Vでの複分数の分子量であり、nはデータ点の数である]。デバイスと共に提供されるOmnisec 5.12をソフトウェアとして用いた。S1及びS2に対して測定されたPS eq Mを上の表1Aに示した。
【0114】
(チオキサントンベースの光増感剤S1~S4中のイオウモル濃度)
イオウモル濃度(mmolイオウ/g光増感剤)は反応性のチオキサントンベース部分のモル濃度(mmol反応性チオキサントンベース部分/g光増感剤)に対応し、全てのチオキサントンベースの光増感剤が等価なモル濃度の反応性チオキサントンベース部分で使用されることを確実にするために使用される。
【0115】
(ED-XRFによるオリゴマー性光増感剤S1-S2中イオウモル濃度の決定)
オリゴマー性の光増感剤S1及びS2中のイオウモル濃度は内部標準添加技術及びイオウ原子信号を用いてED-XRF(Spectro XEPOS)により決定した。表1Aのオリゴマー性の光増感剤S1-S2の各々に対して、3つの50mL溶液をアセトニトリル中(Sigma-Aldrich、99.9%)2mg/mLの対応する光増感剤で調製した。各々の溶液に対して、5mLのサンプルを集め、増大する量のGenocure ITX(Rahn、分析証明書によると99.3%)のアセトニトリル中5mg/mL溶液を加えた。各々のサンプルをアセトニトリルで10mLにした。以下の溶液が得られ、表1Bに示す。
【表2】
【0116】
各々のサンプルを独立にED-XRF測定(Spectro XEPOS)に供し、スペクトルを記録した。ブランクの測定(純粋なアセトニトリル)は全てのスペクトルから推定した。各一連のサンプル(三重測定)に対して、2.31keV(S Kα1ピーク)で測定された蛍光強度は加えたGenocure ITXに含まれるイオウのモル濃度(mmol/ml)の関数として示され、線形回帰が行われた。回帰直線のx-切片の絶対値は各サンプル中にレベル0で存在するイオウモル濃度を示した。平均値(3つの測定値の平均)を表1Cに示す。対応する平均値を用いて、各々のオリゴマー性の光増感剤S1-S2中のイオウモル濃度(mmolイオウ/g光増感剤)を決定し、実施例及び比較例の調製のために加えるべきオリゴマー性の光増感剤S1-S2の量(wt-%)を計算した。チオキサントン光増感剤S3-S4については、それらの公知の分子構造から直接イオウモル濃度[mmol/g]を計算した。
【0117】
表1Cに、反応性チオキサントンベース部分のモル濃度(mmol反応性チオキサントンベース部分/g光増感剤)に対応する決定した(光増感剤S1及びS2)及び計算した(光増感剤S3及びS4)イオウモル濃度(mmolイオウ/g光増感剤)を要約して示す。
【表3】
【0118】
(カチオン光開始剤)
【表4】
【0119】
(他の成分)
【表5】
【0120】
(カチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニス(E1~E5及びC1~C9)並びにそれから得られる保護コーティングの調製)
(A1.本発明によるカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニス(E1~E5)の調製及び比較の実験(C1~C9)(表2A))
最初にDispermat(モデルCV-3)を用いて表2Aの2つの第1の成分(脂環式エポキシド及びオキセタン)を予備混合し(10min、1000rpm)、次いで艶消し剤を加え、約15分1500rpmで分散させ、最後に他の成分を加え、そうして得られた混合物を約10分1000rpmで更に混合することにより、カチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスE1~E5及び比較のワニスC1~C9の各100gを調製した。カチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスE1~E5はフレキソ印刷及びスクリーン印刷に適した粘度特性を有する。
【0121】
(A2.保護コーティングの調製)
n°0バー付きのハンドコーター装置(RK-プリント)を用いてワニスE1~E5及びC1~C9を1枚のフィデューシャリー(fiduciary)ポリマー基材(Guardian(商標)、CCL Secure)に手で適用して大きさがおよそ5cm×10cmで厚さ約4μmを有するワニス層を設けた。その後、各々のワニス層を、制御された相対湿度下、IST Metz GmbHの385nmを放出するUV-LED硬化装置LUV20(100%ランプ出力、70%デューティーサイクル、公称ランプ-サンプル間隔20mm、およその合計照射線量220mJ/cm)により、150m/minの速度で前記ワニス層を二回UV光に曝露することにより硬化した。線量は、UV-LED下硬化したサンプルと同様な条件(同じ速度及び同じランプ及びサンプル/検出器間の距離)でPowerpuck II装置に通すことにより測定した。線量は装置内の特定のフィルターにより選定されたUV-A2範囲(370-415nm)に対する。コーティングした基材を硬化させるのに使用した条件は工業環境で予測される硬化条件と類似である。
【表6】

【0122】
(A3.MEK摩擦試験を用いたカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスE1~E5及び比較のワニスC1~C9の硬化性能の評価)
上記A2に記載したように得られた保護コーティングを暗所に24時間保存した。その期間の後、前記保護ワニスを得るのに使用したワニスの硬化特性を表す各保護コーティングの深部硬化性能を以下の手順により評価した:
綿棒をメチルエチルケトン(MEK)99.5%(Brenntag)に浸した;
各々の保護コーティングのおよそ0.5cm×5cmの領域を手の優しい圧力によって綿棒で50回擦り、30秒後、擦った領域を目視で評価した。表2Bに要約した目視評価の結果は次のように分類した:
「不十分」:MEK摩擦試験の結果、保護ワニスが部分的又は全体的に除去され、保護コーティングの硬化が不充分であり、ワニスが不十分な硬化特性を示すことを意味する、
「許容可能」:MEK摩擦試験が目視で検出可能であり、保護コーティングの除去がない、これは保護コーティングの硬化が許容でき、ワニスが許容できる硬化特性を示すことを意味する、
「最適」:MEK摩擦試験が目視で検出可能でなく、これは保護コーティングの硬化が最適であり、ワニスが最適な硬化特性を示すことを意味する。本明細書に記載した硬化条件下で最適な硬化特性をもつワニスはセキュリティー文書のための保護コーティングの工業生産に使用するのに適している。
【表7】
【0123】
(A4.MEK摩擦試験により決定して最適な硬化特性を示す保護コーティングにより示される蛍光の評価)
MEK摩擦試験により決定して最適な硬化特性を示すワニスから得られた保護コーティング、即ちカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスE1~E5並びに比較のワニスC2、C4、C6、C8及びC9から得られた保護コーティングが示す蛍光を、以下に記載する方法を用いて評価した。表2Cに蛍光結果を示す。
【0124】
保護コーティングの残留蛍光を、Fluorolog II(Spex)デバイスを用いて254nm及び366nmで次のパラメーターを用いて評価した:
検出器:R928/0115/0381
角度:30°
位置:前面
励起スリット:2nm(254nm)及び2nm(366nm)
積分時間:0.1秒
波長範囲:400-700nm(増分1nm)
検出スリット:1nm(254nm)及び1nm(366nm)、UV-フィルター(400nm及びそれ以下)、励起光の検出を避けるため
得られたスペクトルから、蛍光の最大強度を決定した。得られた値は表2Cに示すように絶対値として光子/秒で記録した。
【0125】
本発明によるカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスE1~E5及び最適な硬化特性をもつ比較のワニス(C2、C4、C6、C8、C9)から得られた各々の保護コーティングに対して測定された最大蛍光の絶対強度(光子/秒)を比較標準(ST1~ST4)の最大蛍光の絶対強度と比較した。前記比較標準は標準水銀ランプ下で硬化させるためのカチオン性のワニス、当業者により低い固有の蛍光を示すと考えられるか、及び/又は硬化の際に最小量のみの蛍光減成産物を生成することができる化合物で調製されている。比較標準(ST1~ST4)は比較標準として役立つ保護コーティングと同時に調製した。
【0126】
比較標準(ST1~ST4)の残留蛍光を比較標準として役立つ保護コーティングの残留蛍光と同時に測定した。
【表8】
【0127】
表2Cに記載した標準的なカチオン性の保護ワニスを、n°0バーをもつハンドコーター装置を用いて(RK-プリント)1枚のフィデューシャリーポリマー基材(Guardian(商標)、CCL Secure)に適用しておよそ5cm×10cmの大きさ及び約4μmの厚さを有するワニス層を形成した。前記ワニス層を水銀ランプ装置(IST Metz GmbH;2つのランプ:鉄ドープ水銀ランプ+水銀ランプ)下100m/minの速度で二回UV-Vis光に曝露することにより制御された相対湿度でワニス層を硬化させて比較標準ST1~ST4を生成した。
【0128】
暗所に24h保存後、上記A3に記載したMEK摩擦試験を用いて各々独立の比較標準ST1~ST4の硬化を評価した。比較標準ST1~ST4は最適な硬化を示した。
【0129】
表2Dに、ワニスE1~E5、C2、C4、C6、C8、C9から得られた保護コーティングの最大蛍光の絶対強度及び対応する比較標準(ST1~ST4)の最大蛍光の絶対強度(光子/秒)、並びに各々の保護コーティングの最大蛍光の絶対強度及び対応する比較標準ST1~ST4の最大蛍光の絶対強度の比(相対蛍光値)を示す。
【表9】
【0130】
本発明によるカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスE1~E5及び比較のワニスC2、C4、C6、C8及びC9から得られた保護コーティングの蛍光も、CAMAG UV Cabinet 4(254nm及び366nm、各々8Wの2つのUV管を具備する)を用いて目視で評価した。目視認知を上記のように決定された測定した相対蛍光値と関連付けた。表2Eは目視認知と測定した相対蛍光値との相関を要約する。
【表10】
【0131】
保護ワニスは通常セキュリティー文書の両面全面に適用される。それ故に、(比較標準ST1~ST4と比較して)1.6より高い相対蛍光を示す保護コーティングは前記セキュリティー文書上に存在する発光性セキュリティー機能の目視観察及び/又は機械可読性を困難、又は不可能にさえする傾向がある。
【0132】
本発明による保護ワニスE1~E5を用いて行った実験で示されたように、一般式(I)の光増感剤及び保護ワニス100g当たり約1.3mmol~約4.7mmolの濃度の2-ケト-チオキサントン部分を含むカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスは254nm及び366nmの両方で最適な硬化性能及び低い~許容できる蛍光の両方を示す。一般式(I)の光増感剤を含むが、例えば比較のワニスC1のように保護ワニス100g当たり約1.3mmolより低い濃度の2-ケト-チオキサントン部分を含むカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスは不十分な硬化性能を示す。一般式(I)の光増感剤を含むが、例えば比較のワニスC2のように保護ワニス100g当たり4.7mmolより高い濃度の2-ケト-チオキサントン部分を含むカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスは良好な硬化性能を有するが高過ぎる蛍光を示す保護コーティングを生じる。
【0133】
比較のワニスC3、C5及びC7を用いて行った実験により示されたように、本明細書に記載されている一般式(I)の光増感剤以外のチオキサントンを含有する光増感剤を低い量で含有するワニスは不十分な硬化特性を有し、工業的コーティングプロセスに適した硬化条件を用いて不充分に硬化したコーティングとなる。
【0134】
比較のワニスC4、C6及びC8を用いて行った実験により示されているように、一般式(I)の光増感剤以外の反応性チオキサントンベース部分を含有する光増感剤を含み、反応性チオキサントンベース部分の濃度が特許請求の範囲に記載の範囲内であるカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスは良好な硬化性能を有するが、特に254nmで高過ぎる蛍光を示す保護コーティングを生じる。
【0135】
比較のワニスC9を用いて行った実験により示されているように、ジアリールヨードニウム光開始剤の代わりにスルホニウム光開始剤を、そして9,10-ジブトキシアントラセンを光増感剤として含むカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスは良好な硬化性能を有するが、極端に高い蛍光を示す保護コーティングを生じる。
【0136】
高過ぎる蛍光、特に上記のように測定して約1.6より高い相対蛍光値を示すカチオン性のUV-LED放射線硬化性保護ワニスはセキュリティー文書に適用するのに適していない。その理由は、前記セキュリティー文書上に存在する下にある発光性のセキュリティー機能の機械検出可能性が困難、又は不可能にさえなるからである。
【国際調査報告】