(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】窒素ガス発生器
(51)【国際特許分類】
C06D 5/00 20060101AFI20240326BHJP
C06B 31/02 20060101ALI20240326BHJP
C06B 23/00 20060101ALI20240326BHJP
B01J 7/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C06D5/00 Z
C06B31/02
C06B23/00
B01J7/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560400
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(85)【翻訳文提出日】2023-11-20
(86)【国際出願番号】 EP2022058336
(87)【国際公開番号】W WO2022207672
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523371230
【氏名又は名称】エックスファイヤー・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デミンク,ヨハンネス・フランシスクス
(72)【発明者】
【氏名】デン・ブル,レネ・ヨハンネス・ビルヘルムス
(72)【発明者】
【氏名】スフールビアーズ,コルネリス・アントニウス・フベルトゥス
(72)【発明者】
【氏名】フィールディング,ジェレミー・ジェームズ
【テーマコード(参考)】
4G068
【Fターム(参考)】
4G068DA03
4G068DB13
4G068DB15
4G068DD12
(57)【要約】
本発明は、2つの端部を有するハウジング、ハウジングの一方の端部における点火手段、及びハウジングの他方の端部におけるガス流出開口部と、流出開口部におけるある体積のフィルタと、アジ化ナトリウム、結合剤、冷却剤及び1~10重量%の間の酸化鉄(III)を含むある体積の固体噴射剤と、を含み窒素ガス発生器を対象とする。点火手段とある体積の固体噴射剤との間に、活性層が存在する。活性層は、60~90重量%の間のアジ化ナトリウム、1~15重量%の間の結合剤、0.1~10重量%の間の冷却剤、及び5~30重量%の間の酸化鉄(III)を含む。活性層中の酸化鉄(III)の含有量は、固体噴射剤中の酸化鉄(III)の含有量よりも高い。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素ガス発生器であって、
2つの端部を有するハウジング、ハウジングの一方の端部における点火手段、及びハウジングの他方の端部におけるガス流出開口部と、
流出開口部におけるある体積のフィルタと、
70~90重量%の間のアジ化ナトリウム、1~15重量%の間の結合剤、0.1~20重量%の間の冷却剤、及び点火手段とある体積のフィルタとの間に存在する1~10重量%の間の酸化鉄(III)を含むある体積の固体噴射剤と、
を含み、点火手段とある体積の固体噴射剤との間に活性層が存在し、活性層は、60~90重量%の間のアジ化ナトリウム、1~15重量%の間の結合剤、0.1~10重量%の間の冷却剤、及び5~30重量%の間の酸化鉄(III)を含み、活性層中の酸化鉄(III)の含有量は、固体噴射剤中の酸化鉄(III)の含有量よりも高い、窒素ガス発生器。
【請求項2】
前記固体噴射剤が、1~4重量%の間の酸化鉄(III)を含む、請求項1に記載のガス発生器。
【請求項3】
前記活性層中の酸化鉄(III)の含有量が、前記固体噴射剤中の酸化鉄(III)の含有量の少なくとも2倍である、請求項1~2のいずれか一項に記載のガス発生器。
【請求項4】
前記活性層中の酸化鉄(III)の含有量が、前記固体噴射剤中の酸化鉄(III)の含有量の少なくとも3倍である、請求項3に記載のガス発生器。
【請求項5】
前記点火手段が、スクイブ及びエンハンサーパケットを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のガス発生器。
【請求項6】
前記エンハンサーパケットがKBNO
3を含む、請求項5に記載のガス発生器。
【請求項7】
前記点火手段がグロープラグを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のガス発生器。
【請求項8】
前記グロープラグが、活性層によって封入された加熱素子を有する、請求項7に記載のガス発生器。
【請求項9】
前記固体噴射剤及び/又は活性層中の結合剤が、非有機結合剤材料から構成される、請求項1~8のいずれか一項に記載のガス発生器。
【請求項10】
前記固体噴射剤及び/又は活性層中の結合剤が、アルカリ性非有機結合剤材料から構成される、請求項9に記載のガス発生器。
【請求項11】
前記結合剤がケイ酸カリウム(K
2SiO
3)である、請求項10に記載のガス発生器。
【請求項12】
前記冷却剤がLiFである、請求項1~11のいずれか一項に記載のガス発生器。
【請求項13】
前記固体噴射剤が、50~500mm
3の間の体積を有する錠剤として存在する、請求項1~12のいずれか一項に記載のガス発生器。
【請求項14】
前記錠剤が互いに結合される、請求項13に記載のガス発生器。
【請求項15】
前記固体噴射剤の体積における錠剤間の空隙が、ハウジング内の固体噴射剤によって占められる全体積の40~60%(体積/体積)の間である、請求項13~14のいずれか一項に記載のガス発生器。
【請求項16】
前記活性層が均質な粉末の層であり、前記点火手段がグロープラグを含む、請求項13~15のいずれか一項に記載のガス発生器。
【請求項17】
前記活性層の体積と前記固体噴射剤の体積との体積比が、5:95~30:70(体積/体積)の間である、請求項1~16のいずれか一項に記載のガス発生器。
【請求項18】
前記フィルタのある体積と前記固体噴射剤の体積との体積比が、30:70~60:40(体積/体積)の間である、請求項1~17のいずれか一項に記載のガス発生器。
【請求項19】
前記ハウジングが管状ハウジングである、請求項1~18のいずれか一項に記載のガス発生器。
【請求項20】
前記固体噴射剤の体積を前記点火手段が存在する前記活性層の側面と流体接続するチャネルが、前記活性層を通って存在する、請求項1~19のいずれか一項に記載のガス発生器。
【請求項21】
前記チャネルが、5~20mmの間の最大断面寸法を有する、請求項20に記載のガス発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの端部を有するハウジング、ハウジングの一方の端部における点火手段、及びハウジングの他方の端部におけるガス流出開口部と、流出開口部におけるある体積のフィルタと、点火手段とある体積のフィルタとの間に存在する、アジ化ナトリウム、結合剤及び冷却剤及び酸化鉄(III)を含むある体積の固体噴射剤とを含み、窒素ガス発生器を対象とする。窒素ガスは、固体噴射剤が燃焼するときに生成される。
【背景技術】
【0002】
このようなガス発生器は、出願人らのWO2014/073970から知られている。この公報には、管状ハウジング内に存在する窒素ガス発生器が記載されている。一方の端部には、従来の火薬による点火器であり得る点火手段が存在する。これらの点火手段と砂フィルタであってもよいフィルタとの間に、アジ化ナトリウム、ケイ酸カリウム、酸化鉄(III)及びフッ化リチウムからなる組成物が固体噴射剤又は窒素発生組成物として存在する。窒素発生組成物の一方の端部で点火されると、窒素ガスが形成され、これはまだ燃焼していない窒素発生組成物及び砂フィルタを介して流出開口部に流れる。前記流出開口部を介して、比較的冷たい窒素ガスが環境に放出される。このような窒素ガス発生器は、有利には、コンピュータサーバなどの電気デバイスを火災から保護するために使用される。これは、比較的冷たい窒素ガスが、例えば、火の近くにある他の設備又はサーバ等の電気部品を損傷しないためである。
【0003】
US4203787は、アジ化ナトリウムをベースとする、窒素ガス発生組成物とも呼ばれる固体噴射剤を記載する。この公報によれば、アジ化ナトリウム組成物の燃焼を首尾よく開始するには、開始剤の充分な高温燃焼生成物が、曝露されたアジ化ナトリウム組成物に充分に接触して自己持続性火炎前面をあおることを確実にするのに充分な量の開始剤を必要とする。硝酸ホウ素カリウム-アジ化鉛開始剤が、この公報に記載されている。
【0004】
US4817828は、61~68重量%のアジ化ナトリウム、0~5重量%の硝酸ナトリウム、0~5重量%のベントナイト、23~28重量%の酸化鉄及び2~6重量%のグラファイト繊維及び1~2重量%のヒュームド二酸化ケイ素の粒子からなる窒素ガス発生器を記載している。記載された火薬による点火器は硝酸ホウ素カリウムからなり、ピーク圧力を最小限に抑えることができ、そのため粒子損傷を回避することができるので好ましい。
【0005】
EP0619284は窒素ガス発生器を記載する。その固体噴射剤は、互いに対してほぼ化学量論比のガンマ酸化鉄及びアジ化ナトリウムからなる。より好ましくは、約29~40重量%の間のガンマ酸化鉄及び約71~60重量%の間のアジ化ナトリウムがこのような組成物中に存在する。好ましい点火器は、US4902036に記載された従来の点火器であってもよい。この点火器は、密閉空間に存在する硝酸ホウ素カリウムを含むエンハンサーパケットを点火するために存在するようなスクイブを含む。導線はスクイブに電流を伝え、それによってスクイブを点火し、エンハンサーパケットにも点火する。急速可燃性材料の点火は、窒素ガス発生組成物を点火するのに必要な閾値エネルギーを提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2014/073970号
【特許文献2】米国特許第4203787号明細書
【特許文献3】米国特許第4817828号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0619284号明細書
【特許文献5】米国特許第4902036号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
先行技術の窒素ガス発生器の問題は、その性能の信頼性である。窒素ガス発生器、特に火災を消火するために設置された窒素ガス発生器は、点火時に故障しないことが好ましい。しかし、実際には、設置された窒素発生器のごくわずかな割合が、最適な量の窒素ガスを発生させることができない場合が起こり得る。本発明は、点火時に故障しないか又は少なくとも常に最小量の窒素ガスを発生させる窒素ガス発生器に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これは、以下の窒素ガス発生器によって達成される。
2つの端部を有するハウジング、ハウジングの一方の端部における点火手段及び、ハウジングの他方の端部におけるガス流出開口部と、
流出開口部におけるある体積のフィルタと、
70~90重量%の間のアジ化ナトリウム、1~15重量%の間の結合剤、0.1~20重量%の間の冷却剤、及び点火手段とある体積のフィルタとの間に存在する1~10重量%の間の酸化鉄(III)を含むある体積の固体噴射剤と、
を含み、点火手段とある体積の固体噴射剤との間に活性層が存在し、活性層は、60~90重量%の間のアジ化ナトリウム、1~15重量%の間の結合剤、0.1~10重量%の間の冷却剤、及び5~30重量%の間の酸化鉄(III)を含み、活性層中の酸化鉄(III)の含有量は、固体噴射剤中の酸化鉄(III)の含有量よりも高い、窒素ガス発生器。
【発明を実施するための形態】
【0009】
出願人らは、比較的高い酸化鉄含有量を含む活性層が使用される場合、より信頼性の高い窒素ガス発生器が得られることを見出した。さらに、窒素ガスがより迅速に発生する。次の利点は、さらに、アジ化ナトリウム含有活性層が窒素ガスも生成し、したがって、本発明による単一の窒素ガス発生器によって生成され得る窒素ガスの体積を増やす。
【0010】
本発明は、スクイブ及びエンハンサーパケットを含む点火手段を有するガス発生器に特に適している。好適には、エンハンサーパケットは硝酸ホウ素カリウム、すなわち、KBNO3を含む。本発明に従って活性層が存在する場合、開始後の伝播が高められることが見出される。この向上は、同量のBKNO3における信頼性を改善し、さらにはBKNO3の量の低減を可能にすることが実証されている。本発明による窒素ガス発生器は、活性層を有さず、硝酸ホウ素カリウムの含有量が高い窒素発生器よりも迅速に窒素を放出することができる。この特徴は、脅威に対する迅速な応答を必要とする用途に関連する。硝酸ホウ素カリウムの使用量を少なくすることは、製造時の安全性を改善し、製品の安全性を改善するので有利である。さらなる利点は、硝酸ホウ素カリウムの使用量が少ないと、放出される窒素ガスの純度が高くなることである。
【0011】
スクイブ及びエンハンサーパケットを含む上記のシステムに関する問題は、窒素ガス発生器を組み立てるときに、それらの爆発特性のために特別な安全対策を講じなければならないことである。さらなる欠点は、窒素ガス発生器内の特別な区画がスクイブ及びエンハンサーパケットのために存在しなければならないことである。この理由から、点火手段は、電気加熱開始剤、例えば、グロープラグを含むことが好ましい場合がある。電気加熱開始剤は、硝酸ホウ素カリウムエンハンサーパケットと組み合わせてスクイブを必要としないので有利である。したがって、窒素ガス発生器のはるかに簡単で安全な組立てが可能になる。さらに、硝酸ホウ素カリウムを含むエンハンサーパケットのための特別な区画は必要とされず、設計がより単純になる。硝酸ホウ素カリウムを使用する必要がないことのさらなる利点は、窒素ガス発生器が使用されるとき、一酸化窒素が形成されないか、又は著しく少ない一酸化窒素しか形成されないことである。さらなる利点は、電気加熱開始剤が、ガス発生器を損傷し得る窒素ガス発生器内のガスのサージ又は衝撃波を引き起こさないことである。ガスのそのようなサージ又は衝撃波は、スクイブ及びエンハンサーパケットが点火手段として使用されるときに生じ得る。次の利点は、電気加熱開始剤と活性層との組み合わせが、マイナス25℃などのより低い周囲温度での動作のためのより信頼性の高い窒素ガス発生器が得られることを提供することである。
【0012】
電気加熱開始剤は、例えば、ディーゼルエンジンのような自己着火エンジンで使用されるようなグロープラグであってもよい。多くの用途では1つのグロープラグで充分であろう。航空用途などの信頼性の高い用途では、デュアル、つまり冗長システムを達成するために2つのグロープラグを有することが有益であり得る。グロープラグは、典型的には、好ましくは電気抵抗加熱によって、短時間の間に200~1200℃の範囲の予め選択された温度になるように一時的に通電されるように設計される。グロープラグは、好ましくは、ブラインドボアを画定する比較的薄く概ね環状の壁を有するシース、有利にはモノリシックのシース、及びブラインドボア内に配置され、熱を放出するように適合された加熱素子を含む加熱素子アセンブリと、好ましくは、加熱素子からシースに熱を伝達するように適合された熱伝達デバイスとを備える。
【0013】
グロープラグは、好ましくは、その先端に又はその近傍に、耐熱性金属又はセラミックシース内に封入された金属コイル又は金属フィラメントを含む従来の加熱素子を有することができる。
【0014】
加熱素子は、好ましくは高い電気抵抗を有する少なくとも1つ以上の金属フィラメント又は金属コイルを含むことが好ましく、それにより、1つ以上の金属フィラメント又は金属コイルの少なくとも1つは、電流が加熱素子を通過すると急速に加熱され、それにより加熱素子の周囲のシースを急速に加熱する。加熱素子は、好ましくは、シースとの直接接触から加熱素子を保護するための絶縁体をさらに備えてもよい。この絶縁体は、任意の適切な材料、好ましくはセラミック材料から形成することができる。
【0015】
1つ以上の加熱フィラメント又はコイルは、好ましくは、絶縁体内に封入されることによって、シースとの直接接触から保護されてもよく、それにより加熱フィラメント又はコイル及び絶縁体の両方を含む加熱アセンブリは、シース内に封入される。
【0016】
シースは、熱応力、酸化及び/又は腐食によって引き起こされる加熱素子アセンブリの故障を最小限に抑え、固体噴射剤に近接することによるあらゆる安定性又は性能問題を回避するように選択及び構成される、予め選択された材料から形成されることができる。シースは、特に、蒸発するか又は他の方法で移動し、したがってガス発生器内で爆発性及び/若しくは毒性の重金属アジド又は他の望ましくない化合物を形成し得る、銅、鉛、鉄、ニッケル、銀及び水銀などの重金属を含有してはならない。これは、重金属の合金を含む従来の金属コイル又はフィラメントが採用され得るという利点を有し、そうでなければ、噴射剤装填との直接接触に関与するリスクのため、不適切となるであろう。
【0017】
グロープラグの加熱素子の金属コイル又はフィラメントは、電源に接続される。好ましい電源は、少なくとも5~20秒間グロープラグに10~30の間のボルトを提供し、5~20の間のアンペア(amps)を提供することができ、その結果、グロープラグのシースは、少なくとも200℃、より好ましくは少なくとも250℃、より好ましくは少なくとも500℃、さらにより好ましくは少なくとも750℃、好ましくは900~1200℃の間、さらにより好ましくは900~1000℃の間の定常状態動作温度まで急速に加熱される。特に好ましい電気源は、少なくとも10秒間グロープラグに少なくとも12ボルト及び少なくとも10アンペアを供給することができ、ガス発生器に取り付けることができる電池である。少なくとも達成されるべき実際の温度は、好ましくは、活性層の自己分解温度以上である。この温度は、活性層を点火するのに充分であるべきである。
【0018】
グロープラグの加熱素子の金属コイルに通電すると、コイルは、その電気抵抗により温まり、そのシースを発光するまで加熱する。グロープラグに部分的な電力のみを印加することによって、グロープラグのシースは、その動作温度よりも著しく低い温度まで加熱され、この状態で、発生器の周囲の固体噴射剤を温めるために使用され得、その結果、噴射剤はすぐに起動できる。全電力がグロープラグの加熱素子のコイルに供給されると、そのシースは発光し始め、発生器の周囲の固体噴射剤を非常に著しく加熱する。グロープラグの発光しているシースを取り囲む活性層の部分が分解温度に達すると、活性層のそのような部分は起動し始め、グロープラグのシースからより離れた活性層の他の部分を燃焼させる。
【0019】
好ましくは、活性層の部分、特に該層のアジ化ナトリウム噴射剤は、グロープラグの加熱素子のコイルに完全な電力が供給された後、10秒以内、より好ましくは5秒以内に起動し始めることができる。固体噴射剤層自体は、グロープラグの加熱素子のコイルに完全な電力が供給された後、20~90秒以内、より好ましくは30~60秒以内に起動することができる。
【0020】
好ましくは、グロープラグは、一旦起動すると、5秒未満、より好ましくは3秒未満、より好ましくは2秒未満で所望の温度に達する。活性層の分解を開始するために本発明によるグロープラグに供給されなければならない電力の量は、該層の組成及び物理的外観に依存する。適切には、少なくとも30ワット、好ましくは約50~100ワットの電気が、通常、活性層の制御された自己持続性分解を開始するのに充分でなければならない。
【0021】
グロープラグの加熱素子は、好ましくは、ガス発生器のハウジング内の中央に配置される。グロープラグの加熱素子は、好ましくは活性層によって封入される。より具体的には、高い電気抵抗を有する1つ以上の金属フィラメント又は金属コイルを取り囲むシースは、活性層によって少なくとも部分的に封入される。これは、商業的に入手可能なグロープラグの簡単に使用することができる。
【0022】
固体噴射剤及び活性層は、先行技術において知られており、先に参照した出願人のWO2014/073970に記載されているように結合剤及び冷却剤を含むことができる。
【0023】
固体噴射剤及び活性層に含まれる結合剤は、同じでも異なってもよく、好ましくは同じである。結合剤はポリテトラゾールであることができ、好ましくはアルカリ性非有機結合剤材料、より好ましくはケイ酸カリウム(K2SiO3)等のアルカリ金属ケイ酸塩である。好ましくは、結合剤は、固体噴射剤及び活性層のためのケイ酸カリウム(K2SiO3)である。
【0024】
固体噴射剤及び活性層に含まれる冷却剤は、同じでも異なってもよい。好ましい冷却剤は、充分な冷却を提供するために600Kで測定して少なくとも1400J/K/kgの熱容量を有する無機塩である。冷却剤はまた、ガス発生器の機能化後にスラグを適所に維持するのに役立つスラグ改質剤としての重要な機能を有する。冷却剤の熱容量は、少なくとも1900J/K/kgであることが好ましい。冷却剤は、ガス発生の反応温度において、分解又は発生器内の他の成分と反応しないように、不活性であるべきである。冷却剤としては、LiF、Li3N3、Li2SO4、Li2SiO3、又はNaCl、NaF、KF、CaF2、Li2B2O4、Li2B4O7から選択される1種以上の化合物が好ましい。スラグ改質剤としての優れた組み合わせ特性の観点から、リチウム化合物がより好ましく、LiFが最も好ましい。
【0025】
固体噴射剤は、1~10重量%の間の酸化鉄(III)、好ましくは1~5重量%の間の酸化鉄(III)、さらにより好ましくは1~4重量%の間の酸化鉄(III)を含む。
【0026】
固体噴射剤は、押出物として、又はより好ましくは錠剤として適切に存在する。押出物又は錠剤は、好ましくは均一なサイズ及び形状のものである。これは、明確に画定された空隙を有する均一な充填物がこれらの押出物又はペレットの中に存在することを保証する。空隙の存在は、点火された活性層によって、続いて固体噴射剤によって最初に生成され、続いて固体噴射剤によって生成される窒素ガスのための流路、及び窒素ガスが、未反応の押出物又は固体噴射剤の錠剤間に存在するようなこの空隙を介して、ハウジングの他端の流出開口部に向かって流れる流路を提供するため、好ましい。好ましくは、固体噴射剤の押出物又は錠剤は、25~1000mm3の間、より好ましくは50~500mm3の間の体積を有するある体積の固体噴射剤中に存在する。固体噴射剤の体積における押出物又は錠剤間の空隙は、適切には、ハウジング内の固体噴射剤によって取り込まれる全体積の20~75%(体積/体積)の間、より好ましくは40~60%(体積/体積)の間である。
【0027】
好ましい錠剤は、好ましくは互いに結合している。これは、粒子間結合剤を添加することによって達成することができ、そのようなものは、好ましくは、錠剤が窒素ガス発生器のハウジング内に配置されるとき、固体噴射剤の錠剤に対して10~30重量%の間のK2SiO3含有量有するK2SiO3の水溶液である。錠剤を互いに結合することは、経時的にその構造を維持することができ、すなわち関連する空隙を維持することができ、短い切れ目及び不感帯などのパッキング欠陥の形成を回避する改善されたパッキングをもたらすので有利である。
【0028】
活性層は、均質な粉末の層として、又は押出物若しくは錠剤のような積層粒子として存在し得る。例えば、活性層は、管状ハウジング内の配置をちょうど可能にする直径を有する円柱形錠剤であってもよい。
【0029】
好ましくは、活性層は均質な粉末の層として存在する。さらにより好ましくは、均質な粉末のそのような活性層は、好ましくは、錠剤として存在するある体積の固体噴射剤と組み合わされる。非常に好ましい実施形態は、均質な粉末のそのような活性層が、錠剤として存在するある体積の固体噴射剤と組み合わされる場合であり、点火手段はグロープラグを含む。さらにより好ましくは、固体噴射剤の体積と、点火手段も存在する活性層の側面と流体接続するチャネルが活性層を通って存在する。そのようなチャネルは、適切には、5~20mmの間の最大断面寸法、例えば、直径を有し得る。
【0030】
活性層は、60~90重量%の間のアジ化ナトリウム、1~15重量%の間の結合剤、0.1~10重量%の間の冷却剤、及び5~30重量%の間の酸化鉄(III)を含む。
【0031】
活性層の体積と固体噴射剤の体積との体積比は、5:95~30:70(体積/体積)の間である。体積は、個々の錠剤によって占有される空間ではなく、あらゆる空隙を含む、活性層及び全固体噴射剤の合計によって占有されるハウジング内の空間の体積である。
【0032】
フィルタは、窒素ガスを通過させるとともに、窒素ガスの温度を下げる熱容量を有するあらゆる中間材料であり得る。適切なフィルタは、先に引用したWO2014/073970に記載されており、活性炭、砂、ゼオライト又は金属であることができる。フィルタの体積と固体噴射剤の体積との体積比は、20:80~60:40(体積/体積)の間、より好ましくは30:70~60:40(体積/体積)の間である。
【0033】
ハウジングは任意の形状を有し得る。好ましくは、ハウジングは、一方の端部から流出開口部を含む端部まで移動する固体噴射剤の燃焼前線を可能にするような細長いハウジングである。その断面は任意の形状を有し得る。好ましい形状は、ハウジングの質量当たりの最適な強度を提供するため、管状形状である。
【実施例】
【0034】
本発明は、以下の非限定的な実施例によって説明される。
【0035】
[実施例1]
2つの端部を有するハウジング、ハウジングの一方の端部における点火手段、及びハウジングの他方の端部におけるガス流出開口部と、を有する管に、表1に記載される組成を有する固体噴射剤LE錠剤の層を充填する。固体噴射剤LE錠剤の体積は117mm3/錠剤であった。この層の空隙は約49%(体積/体積)であった。層の長さは168mmであった。
【0036】
固体噴射剤の層とガス流出開口部との間に、90mmの砂の層が存在した。その反対側に、表1の組成を有するTL粉末の12mmの活性層が存在する。この層には、約12mmの直径を有する小さな軸方向チャネルが存在し、点火器と固体噴射剤LE錠剤の層とを接続した。活性層において、スクイブ、及びKBNO3粒子を含有するエンハンサーパケットが点火器として存在した。
【0037】
【0038】
上記管を周囲温度で数時間保持した後、活性層に点火し、窒素がガス発生器から放出される圧力、温度及び時間を測定した。ガス流出開口部における最高圧力の時間を測定した。理論的に可能な量の窒素ガスの75重量%(T75)及び95重量%(T95)が放出される時間を測定した。結果を表2に示す。
【0039】
[実施例2]
LE錠剤の代わりにHE錠剤を使用したことを除いて、実施例1を繰り返した。結果を表2に示す。
【0040】
[実施例3]
軸チャネルがTL粉末の層中に存在しなかったことを除いて、実施例2を繰り返した。結果を表2に示す。
【0041】
[比較実験A]
TL粉末の活性層が存在しないことを除いて、実施例2を繰り返した。スクイブ、及びKBNO3粒子を含有するエンハンサーパケットは、固体噴射剤HE錠剤に直接接触する点火器として存在した。結果を表2に示す。
【0042】
【0043】
表2の結果は、活性層が存在する場合、そのような活性層が存在しない場合と比較して、より短い時間でより多くの窒素ガスが生成及び放出されることを示す。
【0044】
[実施例4]
実施例2を周囲条件で3回繰り返し、結果を表3(実施例4a、4b、4c)に示す。この表において、転化率も重量%として示す。転化率は、HE錠剤及びTL粉末中の利用可能なNaN3に基づいて生成され得る理論的最大可能窒素と比較した、生成された窒素の割合である。
【0045】
[比較実験B]
比較実験Aを3回繰り返した。全ての実験において、伝播は失敗し、非常に低い転化率をもたらした。結果を表3にB1、B2、B3、B4として示す。
【0046】
【0047】
表3の結果から、活性層を備えた窒素ガス発生器の再現性及び信頼性は、そのような活性層を備えていない窒素ガス発生器で得られた結果と比較して良好であることがわかる。
【0048】
[実施例5]
活性層に点火する前に、管をマイナス25℃(-25℃)に数時間維持したことを除いて、実施例1を繰り返した。結果を表4に示す。
【0049】
[比較実験C]
管を点火前にマイナス25℃(-25℃)で数時間維持したことを除いて、比較実験Aを繰り返した。結果を表4に示す。
【0050】
[実施例6]
活性層に点火する前に管を65℃(+65℃)で数時間維持したことを除いて、実施例1を繰り返した。結果を表4に示す。
【0051】
[比較実験D]
管を点火前に65℃(+65℃)で数時間維持したことを除いて、比較実験Aを繰り返した。結果を表4に示す。
【0052】
【0053】
実施例5及び実験Cの結果並びに実施例6及び実験Dの結果を比較すると、極低温及び高温において、活性層の存在は、より短いT75及びT95によって示されるように、はるかに迅速な窒素ガスの生成をもたらすことが示される。
【0054】
実施例4~6及び実験B~Dの全ての発生器を放冷し、制御された条件で開放した。活性層を有するガス発生器は、軸方向の所望のより信頼性の高い伝播に寄与すると考えられる半径方向のより良好な転化を示すことが観察された。
【0055】
[比較実験E]
HE錠剤(表1)から構成される58グラムのN2発生能力及び以前の実施例と同様の多孔度を有する小規模の冷却ガス発生器を、標準的なグロープラグを使用して起動した。グロープラグの活性化から20秒後に分解反応が開始され、起動から10秒後(又はグロープラグの活性化から30秒後)に完全分解に達した。
【0056】
[比較実験F]
実験Eで使用した装置と同様の第2の小規模冷却ガス発生器を、高速高Tグロープラグを使用して起動させた。グロープラグの活性化から7秒後に分解反応が開始され、起動から10秒後(又はグロープラグの活性化から17秒後)に再び完全分解に達した。
【0057】
[実施例7]
実験Fで使用した装置と同様の小規模発生器において、10重量%のHE錠剤粒子を、TL粉末(表1)から構成される高エネルギー最上層で置き換えた。ここで、グロープラグの活性化から3秒後に分解反応が開始され、起動から4秒後(又はグロープラグの活性化から7秒後)に完全分解に達した。実施例7は、活性層の存在が、グロープラグによって開始され、そのような活性層を有さないガス発生器と比較して、2倍を超える高速起動及び完全分解をもたらすことを示す。
【国際調査報告】