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特表2024-514512フェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ合金、フェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ合金の製造並びにその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】フェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ合金、フェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ合金の製造並びにその使用
(51)【国際特許分類】
   C22C 35/00 20060101AFI20240326BHJP
   C22B 34/20 20060101ALI20240326BHJP
   C22B 5/04 20060101ALI20240326BHJP
   C22C 1/00 20230101ALI20240326BHJP
   C22C 30/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C22C35/00
C22B34/20
C22B5/04
C22C1/00 G
C22C30/00
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023560656
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(85)【翻訳文提出日】2023-11-29
(86)【国際出願番号】 NO2022050077
(87)【国際公開番号】W WO2022211641
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】20210412
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518170804
【氏名又は名称】エルケム エイエスエイ
【氏名又は名称原語表記】ELKEM ASA
【住所又は居所原語表記】Drammensveien 169, 0277 OSLO NORWAY
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【弁理士】
【氏名又は名称】八木田 智
(72)【発明者】
【氏名】オット,エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】ホエル,エイヴィン グスタフ
(72)【発明者】
【氏名】ミシエル,リエンダー
(72)【発明者】
【氏名】ハルトゥング,キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】クレヴァン,オーレ スヴェイン
(72)【発明者】
【氏名】ハウンホルスト,ティロ
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA10
4K001AA18
4K001AA23
4K001AA28
4K001BA23
4K001DA05
(57)【要約】
本発明は、15~80重量%のSi、0.5~40重量%のV及び/又はNb、10重量%以下のMo、5重量%以下のCr、3重量%以下のCu、3重量%以下のNi、20重量%以下のMg、0.01~7重量%のAl、13重量%以下のBa、0.01~7重量%のCa、13重量%以下のMn、8重量%以下のZr、12重量%以下のLa及び/又はCe及び/又はミッシュメタル、5重量%以下のSr、3重量%以下のBi、3重量%以下のSb、1.5重量%以下のTi、残部Fe並びに随伴不純物を含むフェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ(FeSiV及び/又はNb)合金に関する。本発明は、またFeSiV及び/又はNb合金の製造方法並びに鋳鉄での使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
15~80重量%のSi、
0.5~40重量%のV及び/又はNb、
10重量%以下のMo、
5重量%以下のCr、
3重量%以下のCu、
3重量%以下のNi、
20重量%以下のMg、
0.01~7重量%のAl、
13重量%以下のBa、
0.01~7重量%のCa、
13重量%以下のMn、
8重量%以下のZr、
12重量%以下のLa及び/又はCe及び/又はミッシュメタル、
5重量%以下のSr、
3重量%以下のBi、
3重量%以下のSb、
1.5重量%以下のTi、
残部Fe、並びに
随伴不純物を含む、フェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ(FeSiV及び/又はNb)合金。
【請求項2】
15~29重量%のSi、0.5~40重量%のV及び/又はNb、10重量%以下のMo、5重量%以下のCr、3重量%以下のCu、3重量%以下のNi、20重量%以下のMg、0.01~7重量%のAl、13重量%以下のBa、0.01~7重量%のCa、13重量%以下のMn、8重量%以下のZr、12重量%以下のLa及び/又はCe及び/又はミッシュメタル、5重量%以下のSr、3重量%以下のBi、3重量%以下のSb、1.5重量%以下のTi、残部Fe並びに随伴不純物を含む、請求項1に記載のFeSiV及び/又はNb合金。
【請求項3】
FeSiV及び/又はNb合金は、30~50重量%のSi、16~40重量%のV及び/又はNb、10重量%以下のMo、5重量%以下のCr、3重量%以下のCu、3重量%以下のNi、20重量%以下のMg、0.01~7重量%のAl、13重量%以下Ba、0.01~7重量%のCa、13重量%以下のMn、8重量%以下のZr、12重量%以下のLa及び/又はCe及び/又はミッシュメタル、5重量%以下のSr、3重量%以下のBi、3重量%以下のSb、1.5重量%以下のTi、残部Fe並びに随伴不純物を含む、請求項1に記載のFeSiV及び/又はNb合金。
【請求項4】
51~80重量%のSi、0.5~40重量%のV及び/又はNb、10重量%以下のMo、5重量%以下のCr、3重量%以下のCu、3重量%以下のNi、20重量%以下のMg、0.01~7重量%のAl、13重量%以下のBa、0.01~7重量%のCa、13重量%以下のMn、8重量%以下のZr、12重量%以下のLa及び/又はCe及び/又はミッシュメタル、5重量%以下のSr、3重量%以下のBi、3重量%以下のSb、1.5重量%以下のTi、残部Fe並びに随伴不純物を含む、請求項1に記載のFeSiV及び/又はNb合金。
【請求項5】
5~35重量%のV及び/又はNbを含む、請求項1、2及び4のいずれか一項に記載のFeSiV及び/又はNb合金。
【請求項6】
15重量%以下のMgを含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のFeSiV及び/又はNb合金。
【請求項7】
5重量%以下のMoを含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のFeSiV及び/又はNb合金。
【請求項8】
前記FeSiV及び/又はNb合金の融解温度の範囲は1060~1640℃である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のFeSiV及び/又はNb合金。
【請求項9】
前記FeSiV及び/又はNb合金は0.06~50mmの粒子又は塊の形状を有する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のFeSiV及び/又はNb合金。
【請求項10】
前記FeSiV及び/又はNb合金の粒子又は塊は、酸化ビスマス及び/又は硫化ビスマス及び/又は硫化アンチモン及び/又は酸化アンチモン及び/又は酸化鉄など他の金属の酸化物及び/又は硫化鉄などの他の金属の硫化物で被覆されている、又は混合している、請求項9に記載のFeSiV及び/又はNb合金。
【請求項11】
前記FeSiV及び/又はNb合金は鋳鉄製造に用いられる添加剤である、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のFeSiV及び/又はNb合金。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載のフェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ(FeSiV及び/又はNb)合金の製造方法であって、
融解状態のフェロシリコン合金を供給する工程、
酸化バナジウム含有原材料及び/又は酸化ニオブ含有原材料を融解フェロシリコン合金に添加する工程、
融解フェロシリコン合金と、酸化バナジウム含有原材料由来の酸化バナジウム及び/又は酸化ニオブ含有原材料由来の酸化ニオブとを混合し、反応させFeSiV及び/又はNb合金の融解物とスラグを形成する工程、
前記融解物からスラグを分離する工程、及び
融解FeSiV及び/又はNb合金を凝固する、又は鋳型に入れる工程、
を有する、フェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ(FeSiV及び/又はNb)合金の製造方法。
【請求項13】
融解フェロシリコン合金は還元溶鉱炉から直接供給され、フェロシリコンは従来の方法により原材料より製造されたままのものである、請求項12に記載のフェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ(FeSiV及び/又はNb)合金の製造方法。
【請求項14】
融解フェロシリコン合金は、フェロシリコン合金のチャージを再融解して供給される、請求項12に記載のフェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ(FeSiV及び/又はNb)合金の製造方法。
【請求項15】
酸化バナジウム含有原材料及び/又は酸化ニオブ含有原材料は、FeSiV及び/又はNb合金中に目標量(重量で)の元素のバナジウム及び/又はニオブが本質的に供給される量(重量で)添加される、請求項12乃至14のいずれか一項に記載のフェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ(FeSiV及び/又はNb)合金の製造方法。
【請求項16】
酸化バナジウム含有原材料は、酸化バナジウム(II)、酸化バナジウム(III)、酸化バナジウム(IV)、酸化バナジウム(V)及び/又は他のバナジウムの非主軸酸化物より選択される1種又は複数種の酸化バナジウム相である、及び/又は、
酸化ニオブ含有原材料は、酸化ニオブ(II)、酸化ニオブ(III)、酸化ニオブ(IV)、酸化ニオブ(V)及び/又は他のニオブの非主軸酸化物より選択される1種又は複数種の酸化ニオブ相である、請求項12乃至15のいずれか一種に記載のフェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ(FeSiV及び/又はNb)合金の製造方法。
【請求項17】
酸化バナジウム相は、酸化バナジウム(V)、V及び/又は酸化バナジウム(III)、Vである、及び/又は
酸化ニオブ相は、酸化ニオブ(V)、Nb及び/又は酸化ニオブ(III)、Nbである、請求項16に記載のフェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ(FeSiV及び/又はNb)合金の製造方法
【請求項18】
酸化バナジウム含有原材料は更に酸化バナジウムを含む産業廃棄物材料又は鉱石を含む、及び/又は、
酸化ニオブ含有原材料は更に酸化ニオブを含む産業廃棄物材料又は鉱石を含む、請求項16又は17に記載のフェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ(FeSiV及び/又はNb)合金の製造方法。
【請求項19】
スラグを改質する化合物をフェロシリコン合金及び酸化バナジウム及び/又は酸化ニオブの総量に対して0.5~30重量%の量で融解フェロシリコン合金に添加する、請求項12乃至18のいずれか一項に記載のフェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ(FeSiV及び/又はNb)合金の製造方法。
【請求項20】
スラグを改質する化合物はCaO及びMgOの少なくとも一種である、請求項19に記載のフェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ(FeSiV及び/又はNb)合金の製造方法。
【請求項21】
融解フェロシリコン合金は、
40~90重量%のSi、
0.5重量%以下のC、
0.01~7重量%のAl、
6重量%以下のCa、
1.5重量%以下のTi、
15重量%以下のMn、
10重量%以下のCr、
10重量%以下のZr、
15重量%以下のBa、
0.3重量%以下のP、
0.5重量%以下のS、
残部Fe、並びに
随伴不純物を含む、請求項12乃至20のいずれか一項に記載のフェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ(FeSiV及び/又はNb)合金の製造方法。
【請求項22】
前記製造方法は更に、酸化バナジウム含有原材料及び/又は酸化ニオブ含有原材料の添加前に、同時に又は後に、フェロシリコン合金及び酸化バナジウム及び/又は酸化ニオブの総量に対して10重量%以下の量でアルミニウムをフェロシリコン融解物に添加する工程を有する、請求項12乃至21のいずれか一項に記載のフェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ(FeSiV及び/又はNb)合金の製造方法。
【請求項23】
融解フェロシリコン合金及び酸化バナジウム含有原材料及び/又は酸化ニオブ含有原材料、及び添加されたアルミニウム及び/又はスラグを改質する化合物は機械的攪拌又はガス攪拌によって混合される、請求項12乃至22のいずれか一項に記載のフェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ(FeSiV及び/又はNb)合金の製造方法。
【請求項24】
スラグは、融解フェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ合金を鋳型に入れる前又は最中に分離される、請求項12乃至23のいずれか一項に記載のフェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ(FeSiV及び/又はNb)合金の製造方法。
【請求項25】
鋳型に入れ、凝固したFeSiV及び/又はNb合金はブロック状に形成される、若しくは砕かれて任意にサイズ分画に等級分けされる、又は凝集される、請求項12乃至24のいずれか一項に記載のフェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ(FeSiV及び/又はNb)合金の製造方法。
【請求項26】
バナジウム及び/又はニオブ含有鋳鉄の製造における添加剤としての、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のFeSiV及び/又はNb合金の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ合金、フェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ合金の製造方法並びにその合金の使用に関する。具体的には、鋳鉄の製造で添加剤として特に好適なフェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ合金に関する。
【背景技術】
【0002】
バナジウム及びニオブ金属は、凝固時に構造中に散布されるミクロン及びナノサイズの析出炭化物及び窒化物により強度を高め、焼き入れ性を高め、耐摩耗性を高める等の鋳鉄の性質を高める添加剤として知られている。この効果は析出強化と称される(J.V.Dawson、International Exchange Paper、 1982年、総説参照)。これらの小さい粒子はいわゆる転位ピン止めと呼ばれる、降伏まで負荷をかけられた時に材料に強度を加える冶金現象に貢献する。固体金属中に分散した微細な炭化物粒子は金属マトリックス構造とコヒーレンシーを形成し、材料に格子歪みを導入する。格子歪みと転位ピン止めとは、共に所望の強化効果を得るために貢献する現象である。バナジウム及びニオブはまた鋳鉄におけるパーライト促進剤でもある。
【0003】
バナジウムは慣習的に、融解した鉄にフェロバナジウム合金の形で添加される。最も一般的なものはFeV80(80%バナジウム)であるが、FeV60(60%バナジウム)又はFeV50等の他の等級の合金もまた使用される。フェロバナジウム合金は、鉄及びバナジウムに加えて通常少量のシリコン、アルミニウム、炭素、硫黄、燐、ヒ素、銅、マンガン、チタン、クロム及びその他の不純物を含む。
【0004】
ニオブは慣習的に、融解した鉄に、ニオブ含有量範囲が60~70%の様々な等級のフェロニオブ合金の形で添加される。フェロニオブは五酸化ニオブ(Nb)及び酸化鉄からアルミノテルミット法で製造され、そのまま又は電子ビーム融解で精製してから用いる。等級によってフェロニオブは3%以下のシリコン及び2.5%以下のアルミニウム、それらに加えて、少量の炭素、硫黄、燐、マンガン、チタン等を含む。
【0005】
フェロバナジウム合金及びフェロニオブ合金の従来の製造方法はシリコン還元及びアルミニウム還元による。どちらの方法においても還元は溶鉱炉で行われ、酸化バナジウム又は酸化ニオブはいずれもシリコン又はアルミニウムとの反応で還元される。前記製造方法は反応を実施するためのエネルギー消費量が高い、及び、最終的に処理過程のスラグ中にかなりの量の酸化バナジウム又は酸化ニオブが存在し、バナジウム又はニオブの収率が相対的に低いという欠点がある。フェロバナジウム及びフェロニオブ合金(FeV80及びFeNb66の固相線温度はそれぞれ1677℃及び1503℃である)は融解温度が比較的高い。結果として、合金は融解せず、溶解する必要がある。鉄融解物に加えた時の溶解時間は長く、そのためこれらの合金への添加は加熱した溶鉱炉内での添加に制限され、貴重なバナジウム単位又はニオブ単位が、より小さい粒子を用いる場合は特に、鉄ではなくスラグに入ることにつながる可能性があり、回収が減り、不安定になる。更に、鉄融解物は確実に合金を溶解するために過熱する必要がある、又は出湯前に溶鉱炉内により長く保持する必要があり、これにより鋳鉄製造の効率が下がる。更に、FeV80及び特にFeNb65の密度が高いことも欠点である。FeNb65は溶鉱炉の下部に落下し、融解物の攪拌が不十分であるとニオブの偏りにつながる可能性がある。
【0006】
したがって、鋳鉄の製造に用いる改良されたバナジウム及び/又はニオブ添加剤が望まれている。本発明の目的は上記で特定した従来技術の1つまたは複数の欠点を緩和する、修正する、又は取り除くことである。
【発明の概要】
【0007】
第1側面によれば、15~80重量%のSi、0.5~40重量%のV及び/又はNb、10重量%以下のMo、5重量%以下のCr、3重量%以下のCu、3重量%以下のNi、20重量%以下のMg、0.01~7重量%のAl、13重量%以下のBa、0.01~7重量%のCa、13重量%以下のMn、8重量%以下のZr、12重量%以下のLa及び/又はCe及び/又はミッシュメタル、5重量%以下のSr、3重量%以下のBi、3重量%以下のSb、1.5重量%以下のTi、残部Fe並びに随伴不純物を含むフェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ(FeSiV及び/又はNb)合金。
【0008】
第1側面の第1実施態様によれば、FeSiV及び/又はNb合金は、15~29重量%のSi、0.5~40重量%のV及び/又はNb、10重量%以下のMo、5重量%以下のCr、3重量%以下のCu、3重量%以下のNi、20重量%以下のMg、0.01~7重量%のAl、13重量%以下のBa、0.01~7重量%のCa、13重量%以下のMn、8重量%以下のZr、12重量%以下のLa及び/又はCe及び/又はミッシュメタル、5重量%以下のSr、3重量%以下のBi、3重量%以下のSb、1.5重量%以下のTi、残部Fe並びに随伴不純物を含む。
【0009】
第1側面の第2実施態様によれば、FeSiV及び/又はNb合金は、30~50重量%のSi、16~40重量%のV及び/又はNb、10重量%以下のMo、5重量%以下のCr、3重量%以下のCu、3重量%以下のNi、20重量%以下のMg、0.01~7重量%のAl、13重量%以下Ba、0.01~7重量%のCa、13重量%以下のMn、8重量%以下のZr、12重量%以下のLa及び/又はCe及び/又はミッシュメタル、5重量%以下のSr、3重量%以下のBi、3重量%以下のSb、1.5重量%以下のTi、残部Fe並びに随伴不純物を含む。
【0010】
第1側面の第3実施態様によれば、FeSiV及び/又はNb合金は、51~80重量%のSi、0.5~40重量%のV及び/又はNb、10重量%以下のMo、5重量%以下のCr、3重量%以下のCu、3重量%以下のNi、20重量%以下のMg、0.01~7重量%のAl、13重量%以下のBa、0.01~7重量%のCa、13重量%以下のMn、8重量%以下のZr、12重量%以下のLa及び/又はCe及び/又はミッシュメタル、5重量%以下のSr、3重量%以下のBi、3重量%以下のSb、1.5重量%以下のTi、残部Fe並びに随伴不純物を含む。
【0011】
第1側面の前記第1実施態様及び第3実施態様によれば、FeSiV及び/又はNb合金は、5~35重量%のV及び/又はNbを含む。
【0012】
以下の実施態様は第1側面の上記実施態様のいずれとも矛盾しない。
【0013】
いくつかの実施態様によれば、FeSiV及び/又はNb合金は、15重量%以下のMgを含む。
【0014】
いくつかの実施態様によれば、FeSiV及び/又はNb合金は、5重量%以下のMoを含む。
【0015】
いくつかの実施態様によれば、FeSiV及び/又はNb合金の融解温度の範囲は1060~1640℃である。
【0016】
いくつかの実施態様によれば、FeSiV及び/又はNb合金は0.06~50mmの整粒の粒子又は塊の形状を有する。
【0017】
いくつかの実施態様によれば、FeSiV及び/又はNb合金の粒子又は塊は酸化ビスマス及び/又は硫化ビスマス及び/又は硫化アンチモン及び/又は酸化アンチモン及び/又は酸化鉄など他の金属の酸化物及び/又は硫化鉄などの他の金属の硫化物で被覆されている、又は混合している。
【0018】
いくつかの実施態様によれば、FeSiV及び/又はNb合金は鋳鉄製造に用いられる添加剤である。
【0019】
第2の側面によれば、第1の側面及びその実施態様のいずれかに記載のフェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ(FeSiV及び/又はNb)合金の製造方法であって、製造方法は、
融解状態のフェロシリコン合金を供給する工程、
酸化バナジウム含有原材料及び/又は酸化ニオブ含有原材料を融解フェロシリコン合金に添加する工程、
融解フェロシリコン合金と酸化バナジウム含有原材料由来の酸化バナジウム及び/又は酸化ニオブ含有原材料由来の酸化ニオブとを混合し、反応させFeSiV及び/又はNb合金の融解物とスラグを形成する工程、
前記融解物からスラグを分離する工程、及び
融解FeSiV及び/又はNb合金を凝固する、又は鋳型に入れる工程と、
を有する。
【0020】
製造方法のいくつかの実施態様によれば、融解フェロシリコン合金は還元溶鉱炉から直接供給され、フェロシリコンは従来の方法により原材料より製造されたままのものである。
【0021】
製造方法のいくつかの実施態様によれば、融解フェロシリコン合金は、1種又は複数種のフェロシリコン合金のチャージを再融解して供給される。
【0022】
製造方法のいくつかの実施態様によれば、酸化バナジウム含有原材料及び/又は酸化ニオブ含有原材料は、FeSiV及び/又はNb合金中に目標量(重量で)の元素のバナジウム及び/又はニオブが本質的に供給される量(重量で)添加される。
【0023】
製造方法のいくつかの実施態様によれば、酸化バナジウム含有原材料は、酸化バナジウム(II)、酸化バナジウム(III)、酸化バナジウム(IV)、酸化バナジウム(V)及び/又は他のバナジウムの非主軸酸化物より選択される1種又は複数種の酸化バナジウム相である。
【0024】
製造方法のいくつかの実施態様によれば、酸化ニオブ含有原材料は、酸化ニオブ(II)、酸化ニオブ(III)、酸化ニオブ(IV)、酸化ニオブ(V)及び/又は他のニオブの非主軸酸化物より選択される1種又は複数種の酸化ニオブ相である。
【0025】
製造方法のいくつかの実施態様によれば、酸化バナジウム相は、酸化バナジウム(V)、V及び/又は酸化バナジウム(III)、Vである
【0026】
製造方法のいくつかの実施態様によれば、酸化ニオブ相は、酸化ニオブ(V)、Nb及び/又は酸化ニオブ(III)、Nbである
【0027】
製造方法のいくつかの実施態様によれば、酸化バナジウム含有原材料は更に酸化バナジウムを含む産業廃棄物材料又は鉱石を含む。
【0028】
製造方法のいくつかの実施態様によれば、酸化ニオブ含有原材料は更に酸化ニオブを含む産業廃棄物材料又は鉱石を含む。
【0029】
製造方法のいくつかの実施態様によれば、スラグを改質する化合物をフェロシリコン合金及び酸化バナジウム及び/又は酸化ニオブの総量に対して0.5~30重量%の量で融解フェロシリコン合金に添加する。
【0030】
製造方法のいくつかの実施態様によれば、スラグを改質する化合物は少なくともCaO及びMgOの少なくとも一種である。
【0031】
製造方法のいくつかの実施態様によれば、融解フェロシリコン合金は、
40~90重量%のSi、
0.5重量%以下のC、
0.01~7重量%のAl、
6重量%以下のCa、
1.5重量%以下のTi、
15重量%以下のMn、
10重量%以下のCr、
10重量%以下のZr、
15重量%以下のBa、
0.3重量%以下のP、
0.5重量%以下のS、
残部Fe並びに随伴不純物を含む。
【0032】
製造方法のいくつかの実施態様によれば、製造方法は更に、酸化バナジウム含有原材料及び/又は酸化ニオブ含有原材料の添加前に、同時に又は後に、フェロシリコン合金及び酸化バナジウム及び/又は酸化ニオブの総量に対して10重量%以下の量でアルミニウムをフェロシリコン融解物に添加する工程を有する。
【0033】
製造方法のいくつかの実施態様によれば、融解フェロシリコン合金及び酸化バナジウム含有原材料及び/又は酸化ニオブ含有原材料、及び添加されたアルミニウム及び/又はスラグを改質する化合物は機械的攪拌又はガス攪拌によって混合される。
【0034】
製造方法のいくつかの実施態様によれば、スラグは、融解フェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ合金を鋳型に入れる前又は最中に分離される。
【0035】
製造方法のいくつかの実施態様によれば、鋳型に入れ、凝固したフェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ合金はブロック状に形成される、若しくは砕かれて任意にサイズ分画に等級分けされる、又は凝集される。
【0036】
第3の側面によれば、バナジウム及び/又はニオブ含有鋳鉄の製造における添加剤としての、第1の側面及び第1側面の実施態様のいずれかに記載のフェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ合金の使用である。
【0037】
以下の詳細な説明により本発明を明らかにする。開示した詳細な説明及び具体例は本発明の好ましい実施態様の例示にすぎない。当業者は、詳細な説明における案内により、本発明の範囲内で変更及び修正がなされてもよいことを理解されたい。
【0038】
それゆえ本明細書に開示した発明は、記載した装置の特定の構成部分又は記載した方法の工程に限定されないことは理解されるべきである。なぜなら装置または工程は変更してもよいからである。また、本明細書で用いられた技術は特定の実施態様を記載することを目的としているにすぎず、限定することを意図していないことは理解されるべきである。なお、本明細書及び添付の特許請求の範囲に用いられる冠詞「a」、「an」、「the」及び「said」は、文脈によって明らかに異なる様に指示されていない限り、1つまたは複数の要素があることを意味することを意図している。したがって、例えば、「a unit」又は「the unit」という記載はいくつかの装置等を含んでよい。さらに、単語「comprising」、「including」、「containing」及び同様の表現はその他の要素または工程を除外しない。
【0039】
用語「随伴不純物」はフェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ合金又はフェロシリコン合金に存在する少量の不純物元素を示すことを理解すべきである。
【0040】
本文脈における用語「フェロシリコン合金」(「フェロシリコン」、「FeSi合金」又は単に「FeSi」とも称する)は、鉄または鉄源の存在下でシリカ又は砂をコークス(又はいずれかの他の、チャージ材料として用いる従来の炭素材)で還元することにより埋没アーク炉(SAF)で典型的に製造される、シリコン系合金を含む鉄であることを理解するべきである。市販の通常の調合物は15%、45%、65%、75%及び90%(重量で)のシリコンを含むフェロシリコンである。製造したままのフェロシリコン合金は典型的に約2重量%の他の元素、主にアルミニウム及びカルシウムを含み、しかしながら少量の炭素、チタン、銅、マンガン、燐及び硫黄も一般的に含む。本文脈のフェロシリコン合金はまた、例えば、マンガン及び/又はクロム及び/又はジルコニウム及び/又はバリウムを合金元素として含んでもよい、又は例えば、フェロシリコン並びにフェロシリコン-マンガン及び/又はフェロシリコンクロム及び/又はフェロシリコン-ジルコニウム及び/又はフェロシリコン-バリウムの混合物であってもよい。本文脈において、このような可能な合金は全て簡略化のため前記に示したように、フェロシリコン合金(「フェロシリコン」、「FeSi合金」又は単に「FeSi」)と称する。
【0041】
本文脈における用語「フェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ合金」(又は「FeSiV及び/又はNb合金」又は単に「FeSiV及び/又はNb」とも称する)はバナジウム又はニオブを含む、若しくはバナジウム及びニオブの両方を含むフェロシリコン合金であると理解すべきである。バナジウム及び/又はニオブに加えて第1側面で明示された他の元素もまた合金に存在してもよい。
【0042】
本文脈において元素の量の表示に用いる用語「以下」は元素が0重量%から指示した重量%値までの範囲で存在することを意味することを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明の1実施態様に記載の異なるFeSiV合金の、1400℃で鋳鉄融解物に溶解する時間の比較を示す図である。
図2】本発明の1実施態様に記載の異なるFeSiV合金及び標準的なFeV80合金の、1500℃で鋳鉄融解物に溶解する時間の比較を示す図である。
図3】本発明の1実施態様に記載の異なるFeSiNb合金及び標準的なFeNb65合金の、1500℃で鋳鉄融解物に溶解する時間の比較を示す図である。
図4】本発明の1実施態様に記載のFeSiNbV合金及びFeSiNbVMo合金並びに標準的なFeNb65合金及び標準的なFeV80合金の、1500℃で鋳鉄融解物に溶解する時間の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
(詳細な説明)
第1側面のフェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ合金は特に鋳鉄製造における添加剤としての使用に、バナジウム及び/又はニオブを含む鋳鉄製造に好適である。本発明の第一側面は15~80重量%のシリコン(Si)、0.5~40重量%のバナジウム(V)及び/又はニオブ(Nb)、10重量%以下のモリブデン(Mo)、5重量%以下のクロム(Cr)、3重量%以下のCu、3重量%以下のNi、20重量%以下のマグネシウム(Mg)、0.01~7重量%のアルミニウム(Al)、13重量%以下のバリウム(Ba)、0.01~7重量%のカルシウム(Ca)、13重量%以下のマンガン(Mn)、8重量%以下のジルコニウム(Zr)、12重量%以下のランタン(La)及び/又はセリウム(Ce)及び/又はミッシュメタル、5重量%以下のストロンチウム(Sr)、3重量%以下のビスマス(Bi)、3重量%以下のアンチモン(Sb)、1.5重量%以下のチタン(Ti)、残部鉄(Fe)並びに随伴不純物を含むFeSiV及び/又はNb合金に関する。
【0045】
本FeSiV及び/又はNb合金は特に鋳鉄製造における添加剤として好適である。
【0046】
更に、本発明のFeSiV及び/又はNb合金は従来のFeV80合金及びFeNb65合金に比べて融解温度が低く、融解鋳鉄に溶解する経路が異なる。潜在的な温度より低い融解温度及び異なる溶解経路は、融解鉄に溶解する割合がFeV80合金及びFeNb65合金に比べて著しく高いことにつながる。より低い融解温度及びより高い溶解率は融解鋳鉄に添加した時のエネルギー消費量の低下につながり、結果として融解物中にバナジウム及び/又はニオブがより良く散布され、本発明由来の合金の比較的低い密度もまた散布を向上させる可能性がある。更に、溶解率がより高いことはフェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ添加剤合金を鋳鉄製造過程のより遅くに添加できることを意味し、鋳造において過程をより柔軟にできることにつながる可能性がある。
【0047】
更に、本発明によるFeSiV及び/又はNb合金の密度はFeV80合金及びFeNb65合金の密度より低い。溶鉱炉の中又は取鍋の下部で添加された場合でも、合金の溶解が下部でのV及びNbの偏りにはつながらない。例えば、取鍋の下部で添加されたとき、本発明による合金片は鉄より密度が低く、溶解しながら上昇し始める。一方、例えば、FeNb65片は取鍋の下部に留まり、そこで溶解し、下部でニオブの濃度が高くなることにつながる。
【0048】
シリコンは鋳鉄製造において一般的な添加剤である。シリコンは鋳鉄中に1~4.3重量%の範囲で含まれる合金元素である。シリコンは鋳鉄(ねずみ鋳鉄で、圧縮されており、延性がある)の製造において重要な役割を果たしており、セメンタイトよりもグラファイトの核形成を助ける。シリコンはまた、強度、耐摩耗性、弾性及び耐酸化性を高めることが知られている。本FeSiV及び/又はNb合金中のシリコンの含有量は15~80重量%である。1実施態様ではシリコンの含有量は少なくとも15重量%、少なくとも30重量%又は少なくとも45重量%、例えば少なくとも51重量%または少なくとも55重量%である。1実施態様ではシリコンの含有量は75重量%以下、例えば65重量%以下、又は50重量%以下、又は29重量%以下である。
【0049】
本発明のFeSiV及び/又はNb合金は0.5~40重量%のV及びNbを含んでいる。Vのみ存在する場合は、0.5~40重量%の範囲で存在する可能性があることを意味する。Nbのみ存在する場合は、0.5~40重量%の範囲で存在する可能性がある。V及びNbが両方存在する場合は、合金中のV及びNbの総量が0.5~40重量%の範囲で存在する。V及びNbが両方存在する場合は、所定の範囲内でNbに対するVの割合がいかなる割合でも存在する可能性がある。1実施態様ではV及び/又はNbの含有量は5~35重量%である。バナジウム及びニオブは安定した窒化物及び炭化物を形成し、結果鋳鉄の強度をかなり高める。鋳鉄はまたパーライト促進、精製パーライトラメラ間隔又はマイクロアロイング元素(V、Nb)由来の制御されたセル構造により強化されてもよい。アニール加熱処理(典型的に1000~1100℃)中の時効硬化効果もまた第1炭化物溶解及び冷却時のナノ炭化物の再沈殿より得られてもよい。衝撃靭性、特にノッチの無い試料における衝撃靭性、鋳物の繰り返し荷重適用における疲労寿命特性、炭化物沈殿物由来の耐摩耗性、特にねずみ鋳鉄における耐摩耗性の向上はV及びNbの使用に関係するその他の改善である。オーステンパー処理鉄(ADI)は強度、摩耗特性及び疲労特性に優れた熱処理材料である。ADIの製造においてV及びNbなどの合金元素は焼き入れ性の向上のためしばしば適用される。
【0050】
FeSiV合金中のSiに対するV及びNbの範囲は、FeSiV及び/又はNb合金の原料である出発フェロシリコン合金中のSiの量しだいである可能性がある。例えば、FeSi50又はFeSi65合金は、例えば、FeSi75合金が出発合金である場合に比べてSiに対するV及びNbの範囲がより高い可能性がある。
【0051】
いくつかの実施態様において、FeSiV及び/又はNb合金は15~29重量%のSi、0.5~40重量%のV及び/又はNb、例えば、5~35重量%のV及び/又はNb又は9~30重量%のV及び/又はNbを、第1側面により上記で明示したその他の元素(10重量%以下のモリブデン(Mo)、5重量%以下のクロム(Cr)、3重量%以下の銅(Cu)、3重量%以下のニッケル(Ni)、20重量%以下のマグネシウム(Mg)、0.01~7重量%のアルミニウム(Al)、13重量%以下のバリウム(Ba)、0.01~7重量%のカルシウム(Ca)、13重量%以下のマンガン(Mn)、8重量%以下のジルコニウム(Zr)、12重量%以下のランタン(La)及び/又はセリウム(Ce)及び/又はミッシュメタル、5重量%以下のストロンチウム(Sr)、3重量%以下のビスマス(Bi)、3重量%以下のアンチモン(Sb)、1.5重量%以下のチタン(Ti)、残部Fe並びに随伴不純物)と共に含む。
【0052】
いくつかの 実施態様において、FeSiV及び/又はNb合金は30~50重量%のSi、16~40重量%、例えば、16~35重量%のV及び/又はNb又は16~30重量%のV及び/又はNbを、第1側面により上記で明示したその他の元素(10重量%以下のモリブデン(Mo)、5重量%以下のクロム(Cr)、3重量%以下の銅(Cu)、3重量%以下のニッケル(Ni)、20重量%以下のマグネシウム(Mg)、0.01~7重量%のアルミニウム(Al)、13重量%以下のバリウム(Ba)、0.01~7重量%のカルシウム(Ca)、13重量%以下のマンガン(Mn)、8重量%以下のジルコニウム(Zr)、12重量%以下のランタン(La)及び/又はセリウム(Ce)及び/又はミッシュメタル、5重量%以下のストロンチウム(Sr)、3重量%以下のビスマス(Bi)、3重量%以下のアンチモン(Sb)、1.5重量%以下のチタン(Ti)、残部Fe並びに随伴不純物)と共に含む。
【0053】
別の実施態様において、FeSiV及び/又はNb合金は、51~80重量%のSi、例えば、55~75重量%のSi、又は58~72重量%のSi、又は60~72重量%のSi、0.5~40重量%のV及び/又はNb、例えば、5~35重量%のV及び/又はNb又は9~30重量%のV及び/又はNbを、第1側面により上記で明示したその他の元素(10重量%以下のモリブデン(Mo)、5重量%以下のクロム(Cr)、3重量%以下の銅(Cu)、3重量%以下のニッケル(Ni)、20重量%以下のマグネシウム(Mg)、0.01~7重量%のアルミニウム(Al)、13重量%以下のバリウム(Ba)、0.01~7重量%のカルシウム(Ca)、13重量%以下のマンガン(Mn)、8重量%以下のジルコニウム(Zr)、12重量%以下のランタン(La)及び/又はセリウム(Ce)及び/又はミッシュメタル、5重量%以下のストロンチウム(Sr)、3重量%以下のビスマス(Bi)、3重量%以下のアンチモン(Sb)、1.5重量%以下のチタン(Ti)、残部Fe並びに随伴不純物)と共に含む。
【0054】
いくつかのSiに対するV及びNbの範囲は上記で明示した組成物で実現化できることを理解すべきである。
【0055】
FeSiV及び/又はNb合金は10重量%以下のMoを含む。いくつかの実施態様によるとFeSiV及び/又はNb合金は5重量%以下の又は3重量%以下の又は1重量%以下のMoを含む。モリブデンはまたオーステンパー処理鉄などのいくつかの等級の鋳鉄において使用される合金元素である。モリブデンは高温適用に焼き入れ性及び安定化構造を与える。ねずみ鋳鉄においてモリブデンは引張強度(鋳鉄中に0.5重量%で20%)及び硬度(鋳鉄中に0.5重量%で10%)高めると報告されている。モリブデンはパーライトを製錬する。
【0056】
FeSiV及び/又はNb合金は、5重量%以下のCrを含む。いくつかの実施態様によれば、FeSiV及び/又はNb合金は2重量%以下のCrを含む。Crは合金元素であり、引張強度及び硬度を高めると報告されている。いくつかの鋳鉄等級でバナジウム及び/又はニオブと共に使用される。
【0057】
FeSiV及び/又はNb合金は3重量%以下のCuを含む。いくつかの実施態様によれば、FeSiV及び/又はNb合金は1重量%以下の又は0.5重量%以下のCuを含む。銅はバナジウム及び/又はニオブにより促進される強い共晶炭化鉄の形成を防ぐために使用できる。
【0058】
FeSiV及び/又はNb合金は3重量%以下のNiを含む。いくつかの実施態様によれば、FeSiV及び/又はNb合金は1重量%以下の又は0.5重量%以下のNiを含む。ニッケルはバナジウム及び/又はニオブにより促進される強い共晶炭化鉄の形成を防ぐために使用できる。
【0059】
さらなる元素Mg、Al、Ba、Ca、Mn、Zr、La、Ce、Sr、Bi、Sb、Ti、残部Fe並びに随伴不純物の量に関する以下の開示は、特に指示の無いかぎり上記の実施態様の各々に適用される。これらの元素は一般的に鋳鉄の製造のための処理合金に使用される。
【0060】
FeSiV及び/又はNb合金は20重量%以下のMgを含む。いくつかの実施態様によれば、FeSiV及び/又はNb合金は15重量%以下のMg又は10重量%以下のMgを含む。いくつかの実施態様において15~35重量%の範囲のSiなどSiが低い濃度の合金では、Mgを含んでいなくともよい。マグネシウムは主に融解物を脱硫、および還元して、結果としてグラファイトの形状を薄片から団塊に変化させる団塊化処理において使用される。マグネシウムはまた接種剤に低濃度で使用される。鉄に対するマグネシウムの溶解度は有限であり、マグネシウムの合金化に充てるためフェロシリコン合金中に必要なシリコンの含有量には下限がある。
【0061】
FeSiV及び/又はNb合金は0.01~7重量%のAlを含む。いくつかの実施態様によれば、FeSiV及び/又はNb合金は0.01~5重量%又は0.05~5重量%のAlを含む。
【0062】
FeSiV及び/又はNb合金は13重量%以下のBaを含む。いくつかの実施態様によれば、FeSiV及び/又はNb合金は11重量%以下または8重量%以下の、例えば、6重量%以下のBaを含む。いくつかの実施態様において、FeSiV及び/又はNb合金は1~5重量%のBa及び11~40重量%のV及び/又はNbを含んでもよい。
【0063】
FeSiV及び/又はNb合金は0.01~7重量%のCaを含む。いくつかの実施態様によれば、FeSiV及び/又はNb合金は0.01~5重量%又は0.05~5重量%のCaを含む。
【0064】
FeSiV及び/又はNb合金は13重量%以下のMnを含む。いくつかの実施態様によれば、FeSiV及び/又はNb合金は8重量%以下または5重量%以下のMnを含む。いくつかの実施態様において、FeSiV及び/又はNb合金は13重量%以下、8重量%以下又は5重量%以下のMn及び10~40重量%のV及び/又はNbを含んでもよい。
【0065】
FeSiV及び/又はNb合金は8重量%以下のZrを含む。いくつかの実施態様によれば、FeSiV及び/又はNb合金は5重量%以下のZrを含む。
【0066】
FeSiV及び/又はNb合金は12重量%以下のLa及び/又はCe、及び/又はミッシュメタルを含む。いくつかの実施態様によれば、FeSiV及び/又はNb合金は7重量%以下のLa及び/又はCe、及び/又はミッシュメタルを含む。いくつかの実施態様によれば、FeSiV及び/又はNb合金は4重量%以下La及び/又はCe、及び/又はミッシュメタルを含む。ミッシュメタルは希土元素の合金であり、典型的には約50%のCe及び25%のLa、少量のNd及びPrを含む。最近ではより重い希土類金属はミッシュメタルから取り除かれることが多く、ミッシュメタルの合金組成は約65%のCe及び約35%のLa及び微量のNd及びPrなどのより重い希土類金属である。
【0067】
FeSiV及び/又はNb合金は5重量%以下のSrを含む。いくつかの実施態様によれば、FeSiV及び/又はNb合金は3重量%以下のSrを含む。
【0068】
FeSiV及び/又はNb合金は3重量%以下のBiを含む。いくつかの実施態様によれば、FeSiV及び/又はNb合金は1.8重量%以下のBiを含む。
【0069】
FeSiV及び/又はNb合金は3重量%以下のSbを含む。いくつかの実施態様によれば、FeSiV及び/又はNb合金は1.5重量%以下のSbを含む。
【0070】
FeSiV及び/又はNb合金は1.5重量%以下のTiを含む。いくつかの実施態様によれば、FeSiV及び/又はNb合金は0.5重量%以下のTiを含む。チタンは標準的に出発フェロシリコン合金中に少量存在する。チタンはまたFeSiV及び/又はNb合金製造中に添加される酸化バナジウム原料及び/又は酸化ニオブ原料に由来する可能性がある。チタンは硬い炭化物又は窒化物を形成する可能性があり脆性及び疲労応力の低下につながるため、いくつかの鋳鉄等級においては有害である。チタンはまた他の破壊元素に対する許容範囲を減少させる。したがって、FeSiV及び/又はNb合金中のTiの含有量は例えば0.1重量%以下又は0.05重量%以下など好ましくは低い。
【0071】
FeSiV及び/又はNb合金は少量のC、P及びSを含む。前記元素は標準的に製造したままのフェロシリコン中に少量存在する、又はFeSiV及び/又はNb合金製造中に添加される酸化バナジウム原料及び/又は酸化ニオブ原料及び/又はスラグを改質する化合物経由で添加される。推定量の前記元素は概して鋳鉄製造に重要ではない。上記の元素の内もっとも問題となる可能性があるのはPである。なぜなら最後に凝固する領域で見られる低融点ステダイトの形成につながるからである。ステダイトは凝固中にかなりの収縮を受け、収縮多孔及び強度低下につながる。
【0072】
FeSiV及び/又はNb合金は、前記の実施態様のいずれかによれば、都合がよく形状が塊状である。本文脈では用語「塊」はFeSiV及び/又はNb合金の、例えば砕いたFeSiV及び/又はNb金属の、粒子又は合金片を指す。FeSiV及び/又はNb合金塊は様々なサイズ等級で製造されてもよい。いくつかの実施態様によれば、FeSiV及び/又はNb合金は形状が0.06~50mmの整粒の粒子又は塊である。鋳鉄製造過程で用いられる一般的な整粒は約0.2mmから約50mmである。用語整粒(sizing)は塊がなんとか通り抜けるふるいの穴のサイズを指す。したがっていくつかの実施態様によれば、FeSiV及び/又はNb合金は形状が0.2~50mmの整粒の粒子又は塊である。平均サイズは一定の範囲内で変化してもよく、より小さい又はより大きいサイズのFeSiV及び/又はNb塊が適用によってありうることを理解すべきである。いくつかの実施態様によれば、FeSiV及び/又はNb合金は鋳塊又は紛状材料の凝集などのインサートの形である。
【0073】
いくつかの実施態様によれば、FeSiV及び/又はNb粒子は酸化ビスマス及び/又は硫化ビスマス及び/又は硫化アンチモン及び/又は酸化アンチモン及び/又は酸化鉄など他の金属の酸化物及び/又は硫化鉄などの他の金属の硫化物で被覆されたり、混合されることが出来る。
【0074】
FeSiV及び/又はNb合金の融解温度は、上記の実施態様のいずれかによれば、約1060から約1640℃又は約1610℃の範囲である。本発明のFeSiV及び/又はNb合金の融解温度が比較的低く、鉄融解物への溶解経路が異なることにより、鉄融解物に添加されたFeSiV及び/又はNb合金が比較的速く溶解する効果がある。発明者が行った試験によりサイズが約18mmの本発明のFeSiV(30重量%V)の塊は1400℃で50秒後に融解物に完全に同化したが、同じサイズのFeV80の塊は3分後まだ全然同化していないことが示されている。20mmの大きい塊のFeNb65の1500℃での同化時間はFeSiNb20に比べて2倍である。
【0075】
図1は、本発明による異なるFeSiV合金の、約1400℃で鉄融解物に溶解する時間を示す図である。図はFeSiV合金の整粒の違いに対する溶解時間を示している。この温度で7から18mmのサイズのFeV80の塊を約3分間監視したが全く溶解せず、したがって図に描かれていない。
【0076】
図2は、本発明による異なるFeSiV合金の約1500℃で鉄融解物に溶解する時間を、標準的な市販のFeV80合金と比較して示す図である。図はFeSiV合金及びFeV80塊の整粒の違いに対する溶解時間を示している。FeV80合金の溶解時間は鉄融解物に添加する塊のサイズが大きくなるにつれて、FeSiV合金と比較して、かなり長くなる。表3はFeSiV合金はFeV80と比較して、融解物に添加する際の整粒が両合金同じであるが、Vの収率がかなり高いことを示している。
【0077】
図3は、本発明による異なるFeSiNb合金の約1500℃で鉄融解物に溶解する時間を、標準的な市販のFeNb65合金と比較して示す図である。図はFeSiNb合金及びFeNb65塊の整粒の違いに対する溶解時間を示している。FeV80合金の溶解時間は鉄融解物に添加する塊のサイズが大きくなるにつれて、FeSiV合金と比較して、かなり長くなる。表6はFeSiNb合金はFeNb65と比較して、融解物に添加する際の整粒が両合金同じであるが、Nbの収率がかなり高いことを示している。
【0078】
図4は、本発明によるFeSiNbV合金及びFeSiNbVMo合金の約1500℃で鉄融解物に溶解する時間を、標準的な市販のFeV80合金及びFeNb65合金と比較して示す図である。図はFeSiNbV合金及びFeSiNbVMo合金及びFeNb65及びFeV80の、塊の整粒の違いに対する溶解時間を示している。FeV80及びFeNb65合金の溶解時間は鉄融解物に添加する塊のサイズが大きくなるにつれて、FeSiNbV及びFeSiNbVMo合金と比較して、かなり長くなる。
【0079】
上記実施態様のいずれかによるFeSiV及び/又はNb合金の製造方法は、融解状態のフェロシリコン合金を供給する工程、酸化バナジウム含有原材料及び/又は酸化ニオブ含有原材料を融解フェロシリコン合金に添加する工程、融解フェロシリコン合金と酸化バナジウム含有原材料由来の酸化バナジウム及び/又は酸化ニオブ含有原材料由来の酸化ニオブとを混合し、反応させFeSiV及び/又はNb合金の融解物とスラグを形成する工程、FeSiV及び/又はNb合金の前記融解物からスラグを分離する工程、第1側面に記載の元素の組成を調整する任意の工程及び融解FeSiV及び/又はNb合金を凝固する、又は鋳型に入れる工程と、を有する。
【0080】
以下のFeSiV及び/又はNb合金の製造方法の詳細な説明は本発明のFeSiV及び/又はNb合金の上記の実施態様のいずれにも適用される。
【0081】
融解フェロシリコン合金と酸化バナジウム及び/又は酸化ニオブとの反応は速く、高い生産性を可能とする。FeSiV及び/又はNb合金を製造する方法は融解フェロシリコンを保持する取瓶若しくはるつぼ又はいかなる種類の溶鉱炉を含む融解鍋などの同様の好適ないかなる容器で行われる。したがって、溶鉱炉を用いるなど外部のエネルギーを供給することによる加熱は必要ない。酸化バナジウム含有原材料及び/又は酸化ニオブ含有原材料を添加する前のフェロシリコン融解物の温度は約1400から約1700℃であるべきである。本発明のFeSiV及び/又はNb合金の製造方法は、従来のフェロバナジウム合金、FeV及びフェロニオブ合金、FeNbの製造方法と比較して、酸化バナジウム(例えば五酸化バナジウム)及び/又は酸化ニオブ(例えば酸化ニオブ)からFeSiV及び/又はNb合金への高いV及び/又はNb収率をもたらす。従来のFeV及びFeNb製造と比較して本方法は簡潔で費用効率が高い。
【0082】
融解フェロシリコン合金は還元溶鉱炉から、典型的には、フェロシリコン合金が従来の方法により原材料から製造されたままで中にある埋没アーク炉(SAF)又はバナジウム及び/又はニオブ以外の第1側面に記載の元素が還元溶鉱炉から直接供給されたフェロシリコン中に合金化される合金化場所から直接供給できる。その代わりに、溶解フェロシリコン合金は、できる限り精製した、又バナジウム及び/又はニオブ以外の第1側面に記載の元素と共にすでに合金化された、1種又は複数種のフェロシリコン合金のチャージを、又は製造されたままのフェロシリコン合金及びいずれかの好適な加熱手段によって融解状態にした凝固フェロシリコンを組み合わせて再融解することにより供給できる。
【0083】
製造方法のいくつかの実施態様によれば、出発フェロシリコン合金は異なる組成のフェロシリコン合金をいくつか混合した物でもよい。例えば、フェロシリコンとフェロシリコンマンガン又はフェロシリコンクロム又はフェロシリコンジルコニウム又はフェロシリコンバリウムとの混合物でもよい。
【0084】
製造方法によれば、酸化バナジウム含有原材料、例えばV及び/又は酸化ニオブ含有原材料、例えばNbを融解フェロシリコン合金に添加する。酸化バナジウム含有原材料及び/又は酸化ニオブ含有原材料はFeSiV及び/又はNb合金中に目標とする量(重量で)の元素のバナジウム及び/又はニオブを本質的に供給できる量(重量で)を添加してもよい。酸化バナジウム含有原材料、及び/又は酸化ニオブ含有原材料を添加する方法は重大ではなく、いかなる便利な方法で行ってもよい。
【0085】
酸化バナジウム含有原材料は、酸化バナジウム(II)、酸化バナジウム(III)、酸化バナジウム(IV)、酸化バナジウム(V)及び/又は他のバナジウムの非主軸酸化物などの1種又は複数種の酸化バナジウム相であってよい。酸化バナジウムは好ましくは、産業適用で最も使用されている酸化バナジウムである、酸化バナジウム(V)(V)及び/又は酸化バナジウム(III)(V)である。酸化バナジウム含有原材料はまた酸化バナジウムを含む産業廃棄物材料又は鉱石を含んでもよい。
【0086】
酸化ニオブ含有原材料は、酸化ニオブ(II)、酸化ニオブ(III)、酸化ニオブ(IV)、酸化ニオブ(V)及び/又は他のニオブの非主軸酸化物などの1種又は複数種の酸化ニオブ相であってよい。酸化ニオブ相は好ましくは産業適用で最も使用されている酸化ニオブである、酸化ニオブ(V)、(Nb)及び/又は酸化ニオブ(III)、Nbである酸化ニオブ含有原材料はまた酸化ニオブを含む産業廃棄物材料又は鉱石を含んでもよい。
【0087】
酸化バナジウム及び/又は酸化ニオブの還元反応は、一般的にスラグと称される、主に酸化アルミニウム、酸化シリコン及び酸化カルシウムを含む酸化化合物の形成につながる。反応中に形成されるスラグを改質するためにフェロシリコン融解物にスラグを改質する化合物を添加してもよい。スラグを改質する化合物はCaO及び/又はMgOであってよく、フェロシリコン合金の総量に対して、最終合金の約0.5~30重量%の量で添加してもよい。必要な量は、添加される酸化バナジウム及び/又は酸化ニオブの量を基にする。スラグを改質する化合物は酸化バナジウム含有原材料及び/又は酸化ニオブ含有原材料を添加する前又は最中に添加してもよい。スラグの組成を還元反応中にスラグと金属が良好に接触するように低粘性で低融点のスラグとなるよう改質する。加えて鋳型に入れる前に金属とスラグが良好に分離するように改質してもよい。反応中に製造された、及び添加されたスラグは両方とも、形成された廃棄物及び反応中に形成されたスラグ化合物のいかなるものも融解物の上に浮かぶスラグの層に集積するように、融解物の上に浮かぶ。
【0088】
FeSiV及び/又はNb合金の製造のための出発フェロシリコン合金の一般的な組成は、40~90重量%のSi、0.5重量%以下のC、0.01~7重量%のAl、6重量%以下のCa、1.5重量%以下のTi、15重量%以下のMn、10重量%以下のCr、10重量%以下のZr、15重量%以下のBa、0.3重量%以下のP、0.5重量%以下のS、残部Fe並びに随伴不純物である。
【0089】
製造方法のいくつかの実施態様によれば、出発フェロシリコン合金中のSiの含有量は70~80重量%である。製造方法のいくつかの実施態様によれば、出発フェロシリコン合金中のSiの含有量は60~70重量%である。製造方法のいくつかの実施態様によれば、出発フェロシリコン合金中のSiの含有量は40~55重量%である。
【0090】
製造したままのフェロシリコン合金は原材料から少量の、一般的には1.5重量%以下のAlを含む。本発明の出発フェロシリコン合金は2重量%以下の、例えば0.01~2重量%のAlを含んでもよい。酸化バナジウム含有原材料及び/又は酸化ニオブ含有原材料を融解フェロシリコン合金に添加する際に融解フェロシリコンに存在する金属のAlは酸化バナジウム及び/又は酸化ニオブの酸素と反応し、バナジウム及び/又はニオブに還元し、結果純粋なV及び/又はNbが得られ、発熱する。融解フェロシリコン合金中のSiもまたは酸化バナジウム及び/又は酸化ニオブの酸素と反応し、結果酸化バナジウムが元素Vに還元され、酸化ニオブが元素Nbに還元される。Siは本混合物ではAlより反応性が低いので、フェロシリコン合金中に存在する実質全てのAlは酸化バナジウム及び/又は酸化ニオブの酸素と反応し、結果製造されたFeSiV及び/又はNb合金中のAlは非常に少ない量となる。カルシウムもまたフェロシリコン合金中の一般的な元素であり、通常約1.5重量%以下の量である。融解フェロシリコン合金に存在するCaもまた酸化バナジウム及び/又は酸化ニオブの酸素と反応し、結果純粋なV及び/又はNbが得られ、発熱する。
【0091】
酸化バナジウム及び/又は酸化ニオブを還元するのに使用できるAlの融解物に含まれる量を増加するために、追加のアルミニウムを融解フェロシリコン合金に添加してもよい。これは特に、10重量%のV及び/又はNbを有するFeSiV及び/又はNb合金(FeSiV及び/又はNb10)から、FeSiV及び/又はNb20まで、FeSiV及び/又はNb30まで、FeSiV及び/又はNb40までも、などの多量のバナジウム及び/又はニオブを有する一方でFeSiV及び/又はNb合金中のシリコンの量は上記の範囲に保ったFeSiV及び/又はNb合金を製造する時に価値がある。追加のアルミニウムをフェロシリコン融解物に添加した場合、添加は酸化バナジウム含有原材料及び/又は酸化ニオブ含有原材料の添加の前、最中又は後に行ってもよく、好ましくは前又は最中である。金属のアルミニウムはフェロシコン及び酸化バナジウム及び/又は酸化ニオブの総量に対して約10重量%の以下、約5重量%以下、又は約1重量%以下の量で添加してもよい。
【0092】
融解フェロシリコン合金は好ましくは酸化バナジウム含有原材料及び/又は酸化ニオブ含有原材料の添加中、及び追加のアルミニウム及び/又はスラグを改質する化合物のいずれかの添加中、及び還元反応中、V及びNb酸化物と金属が確実に接触するように攪拌する。融解物は慣例的にこの分野で通常知られた機械的攪拌及び/又はガス攪拌で攪拌される。
【0093】
スラグは融解フェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ合金を鋳型に入れる前又は最中に分離してもよい。FeSiV及び/又はNb合金はこの分野で通常知られた方法に従って鋳型に入れられ、凝固する。鋳型に入れられ凝固した金属は砕かれ、様々な適用領域に適したサイズ分画に等級分けされる。鋳型に入れられ凝固したFeSiV及び/又はNb合金はまた、凝集しても、ブロックの形状でもよい。
【0094】
本発明のFeSiV及び/又はNb合金はバナジウム及び/又はニオブを含む鋳鉄の製造において添加剤として用いられてもよい。
【0095】
いくつかの実施態様によれば、FeSiV及び/又はNb合金はさらに追加の元素Mo、Cu、Cr、Ni、Mg、Al、Ba、Ca、Mn、Zr、La及び/又はCe及び/又はミッシュメタル、Sr、Bi、Sbと共に鋳造添加剤の製造のための標準的な手順に従って合金化してもよい。
【0096】
いくつかの実施態様によれば、10重量%以下のMo、5重量%以下のCr、3重量%以下のCu、3重量%以下のNi、20重量%以下のMg、0.01~7重量%のAl、13重量%以下のBa、0.01~7重量%のCa、13重量%以下のMn、8重量%以下のZr、12重量%以下のLa及び/又はCe及び/又はミッシュメタル、5重量%以下のSr、3重量%以下のBi、3重量%以下のSb、1.5重量%以下のTi、残部Fe並びに随伴不純物を含む鋳造添加剤もまた出発フェロシリコン合金として使用してもよい。
【0097】
粒状化された合金は、例えばコアードワイヤに詰め込まれてもよく、又は他の合金を混合して詰め込まれてもよい。追加の元素と合金化されたフェロシリコン系バナジウム及び/又はニオブ合金はプレコンディショナーとして、取瓶団塊化処理におけるカバー材として、団塊化剤として、被覆して、又は被覆しないでどちらででも砕かれた接種剤として、若しくは鋳塊又は粉状材料の凝集などのインサートとして使用されてもよい。いずれの種類のフェロシリコン系バナジウム及び/又はニオブ合金は、更に他の元素と合金化されている又は他の元素で被覆されている、若しくはされていなくてもコアードワイヤ内で使用されてもよい。
【0098】
15~80重量%のシリコン(Si)、0.5~40重量%のバナジウム(V)及び/又はニオブ(Nb)、10重量%以下のモリブデン(Mo)、5重量%以下のCr、3重量%以下のCu、3重量%以下のNi、20重量%以下のマグネシウム(Mg)、0.01~7重量%のアルミニウム(Al)、13重量%以下のバリウム(Ba)、0.01~7重量%のカルシウム(Ca)、12重量%以下のマンガン(Mn)、8重量%以下のジルコニウム(Zr)、12重量%以下のランタン(La)及び/又はセリウム(Ce)及び/又はミッシュメタル、5重量%以下のストロンチウム(Sr)、3重量%以下のビスマス(Bi)、3重量%以下のアンチモン(Sb)、1.5重量%以下のチタン(Ti)、残部Fe並びに随伴不純物を含むFeSiV及び/又はNb合金を添加する工程を含む鋳鉄の製造方法。前記のいかなる実施態様によるFeSiV及び/又はNb合金を添加する工程を含む、前記の鋳鉄製造方法。
【0099】
フェロシリコンを基にし、バナジウム及び/又はニオブを含む合金は鉄融解物のよるバナジウム及び/又はニオブの同化がより速く、そのため融点が潜在的に低く溶解経路が異なる合金の使用を鋳鉄過程のさらに下流にすることが出来、従来技術の解決策よりバナジウム及び/又はニオブが高回収であることは驚くべき発見であった。溶鉱炉から出湯された後にバナジウム及び/又はニオブを添加できる利点は、より少量の鉄を扱い等級間の移行が簡易にできる可能性、鉄融解物の過熱及び溶鉱炉内の清澄の汚染を回避する可能性、さらに元素として接種剤インストリーム内に添加された場合、合金化された鋳鉄片のバッチサイズに関して高い柔軟性がある可能性である。
【0100】
フェロシリコンを基にし、バナジウム及び/又はニオブを含む合金は、FeSiV又はFeSiNbV又はFeSiNb及び随伴不純物として、溶鉱炉又は長期の待ち時間の必要が無く鋳造過程の下流で必要な温度を超える高温の必要のない保持炉内へのチャージの一部として使用することが可能であり、又は過程のさらに下流で添加して使用することが可能である。さらに追加の元素と共に合金化された場合、フェロシリコン系バナジウム及び/又はニオブ合金はまた、溶鉱炉内で融解物を合金にするために使用され、プレコンディショナーとして、カバー材として又は取瓶処理における団塊化剤として、被覆して、又は被覆しないどちらででも砕かれた接種剤として、又はインサートとして使用されてもよい。いかなる種類のフェロシリコン系バナジウム及び/又はニオブ合金、さらに他の元素と合金化されている、又は他の元素で被覆されている、又はされていない合金は他の合金又は元素と混合されている、又はされていないコアードワイヤ中に使用されてもよい。
【0101】
これらの合金の他の利点はFeV80又はFeNb65に比べて密度が低いことである。実際に密度の高い合金は溶鉱炉又は取瓶の下部まで落ちる傾向があり、適切に攪拌していない場合は鉄融解物中の偏析につながる。
【0102】
これらの合金の他の利点はバナジウム及び/又はニオブの添加を他の必要な処理合金の添加と組み合わせる場合、過程で添加工程が一つ少ないことである。
【実施例
【0103】
実施例1 バナジウムを含むフェロシリコン合金の製造
本発明によるFeSiV合金の製造用の融解物を10個準備した。2つの部門の合金を製造した。第1部門はフェロシリコンバナジウム合金で、第2部門合金は鋳鉄融解物を処理するために一般的に用いられるいくつかの元素の添加とフェロシリコンバナジウム合金の利点の組み合わせたものであり、両部門とも本発明による。FeSiVは酸化バナジウムを用いる本文に記載の通りに製造した。他の合金は他の元素をFeSiVに添加した。2工程で行った。大きいバッチのFeSiVを製造し、鋳型に入れ、粗く砕き、小さいバッチでの他の元素の添加のために再融解した。
【0104】
以下の表1にFeSiVの3つの試験製造のための原材料のFeSi75(塊状)及びV(粉状)の量を示す。更に、スラグを改質するための石灰(CaO)の量及び系内のAl総量を記す。温度(T)はV添加前にFeSiV合金の融点以上に設定した。融解フェロシリコン合金はV、石灰及びアルミニウムの添加中攪拌した。製造された組成を表の右側に記す。出湯中にスラグと金属を分離することが製造したFeSiV合金の純度にとって重要である。
【0105】
【表1】
【0106】
以下の表2は鋳鉄融解物処理に一般的に用いられる追加の元素と共にバナジウムを含むフェロシリコン合金の組成を示す。1つのフェロシリコンバナジウム合金を上記の方法に従って最初に製造し、様々な元素を融解物中に合金化した。本発明に従って結果製造されたこれらのフェロシリコンバナジウム合金は簡易にするため「合金」と称す。
【0107】
【表2】
【0108】
実施例2 FeSiV合金とFeV80の溶解挙動の比較
FeSiV合金の、1400℃及び1500℃での融解鉄への溶解挙動をFeV80の溶解挙動と比較した。鉄融解物中の炭素とシリコンの濃度はそれぞれ3.6重量%及び2.2重量%であった。溶解時間は文献で既知の種々の方法で測定可能である。実施例ではロードセルとフェロ合金を繋いで重量の減量を測定した(Gourtsoyannisら、1984年)、又は一定の間隔で鋳鉄融解物の試料を取り出し、元素含有量を分析した(Argyropoulus、1983年)。参照文献の方法は鋼中への溶解時間の測定についての記述であるが、同じ原理を鉄融解物への溶解時間の測定に適用できる。
【0109】
1400℃での溶解時間を示す図1を参照する。1400℃で7~18mmのサイズのFeV80片を約3分間監視したが全く溶解せず、したがって図に描かれていない。したがって、FeSiV合金の溶解時間はFeV80よりずっと短い。
【0110】
図2を参照する。図2では20mm以下の塊のFeV80の測定された溶解時間はFeSiV18(約18重量%のバナジウムを含むFeSiV)の溶解時間の2倍長いことが示されている。より大きいサイズの塊では違いは更に大きくさえある。1500℃は溶鉱炉から出湯するときの標準的な温度であり、出湯の後の全ての過程は、より低い温度で、接種工程のため1300から1400℃である。
【0111】
実施例3 バナジウム収率
FeSiV合金は鋳鉄製造中の接種工程で使用した。融解物は誘導オーブンで加熱し、6つの注入取瓶に注ぐ前に団塊化剤で処理した。注入前に合金を注入取瓶の下部に加えた。全ての合金は1~3mmの同じサイズに砕いた。それぞれの取瓶に注いだ鉄の量は同じであった。注入取瓶に注ぐ直前の団塊化取瓶内の鉄の温度は1424℃であった。融解物は注入取瓶に1~5分間保持され、砂の鋳型に入れられた。注入の前にArcSpark-OES分光計での化学分析用に鋳貨を取得した。
【0112】
表3に示すように、FeSiV合金は1分後完全に融解物に同化し、バナジウムを全回収した、一方FeV80のからのバナジウムの回収率は5分後63%であった。
【0113】
【表3】
【0114】
実施例4 ニオブを含むフェロシリコン合金の製造
本発明によるFeSiNb合金の製造用の融解物を8個準備した。2つの部門の合金を製造した。第1部門はフェロシリコンニオブ合金で、第2部門合金は鋳鉄融解物を処理するために一般的に用いられるいくつかの元素の添加とフェロシリコンニオブ合金の利点の組み合わせたものであり、両部門とも本発明による。FeSiNbは酸化ニオブを用いる本文に記載の通りに製造した。他の合金は他の元素をFeSiNbに添加した。2工程で行った。大きいバッチのFeSiNbを製造し、鋳型に入れ、粗く砕き、小さいバッチでの他の元素の添加のために再融解した。
【0115】
以下の表4にFeSiNb合金の3つの試験製造のための原材料のFeSi75及びNb(細かい粉状)の量を示す。更に、スラグを改質するための石灰(CaO)の量及び系内のAl総量を記す。温度(T)はNb添加前にFeSiNb合金の融点以上に設定した。融解フェロシリコン合金はNb、石灰及びアルミニウムの添加中攪拌した。製造された組成を表の右側に記す。出湯中にスラグと金属を分離することが製造したFeSiNb合金の純度にとって重要である。
【0116】
【表4】
【0117】
以下の表5は鋳鉄融解物処理に一般的に用いられる追加の元素と共にニオブを含むフェロシリコン合金の組成を示す。Nbの目標含有量が30重量%の1つのフェロシリコンニオブ合金を上記の方法に従って最初に製造し、様々な元素を融解物中に合金化した。本発明に従って結果製造されたこれらのフェロシリコンニオブ合金は簡易にするため「合金」と称す。
【0118】
【表5】
【0119】
実施例5 FeSiNb合金とFeNb65の溶解性質の比較
FeSiNb合金の1500℃での融解鉄への溶解挙動をFeNb65の溶解挙動と比較した。鉄融解物中の炭素とシリコンの濃度はそれぞれ3.6重量%及び2.2重量%であった。
【0120】
図3に示すように、FeSiNb合金の溶解時間はFeNb65の溶解時間より短い。1500℃は溶鉱炉から出湯するときの標準的な温度であり、出湯後の全ての過程は、より低い温度で、接種工程のため1300から1400℃である。より低い温度では、様々な合金の中でFeNb65の溶解時間が長いことはより一層明らかである。
【0121】
実施例6 ニオブの収率
Nbは通常FeNbで、融点が高いため溶鉱炉への添加により鋳鉄に添加される。NbをFeSi合金の一部で用いる目的は融点のより低い合金を用いるためである。そうすることにより過程においてより後の添加が容易になる。これは鋳鉄製造中の接種工程でNbを含む合金を添加することにより試された。様々なNbを含有する合金の添加率は、鉄に対してNbを同じ量、本例では0.20重量%、提供するよう調整した。試行は、収率が低い温度でも問題ないことを検査するため1500℃と1440℃の2つの温度で行った。出湯温度が1500℃ということはNbを含む合金の溶解のためのピーク温度が約1420℃であることを意味する。一方出湯温度が1440℃ということはNbを含む合金の溶解のためのピーク温度が約1350℃であることを意味する。合金は注入取瓶の下部に添加され、鋳型に入れる前に1分間保持された。合金の整粒はどちらの試験でもすべての注入取瓶に対して同じ、1~3mmであった。
【0122】
1500℃の出湯温度で調査するために行った試行を下記表6に示す。
【0123】
【表6】
【0124】
試行はFeNb、FeSiNb30及びAlloy8を対象により低い出湯温度1440℃で繰り返した。試行は下記表7に示す。
【0125】
【表7】
【0126】
表6及び7の結果より示されるように、FeNb合金と比較してNbを含むFeSi合金ではかなりの高い収率が得られた。FeSi合金を基にしたNbを含む合金は出湯温度が1500℃で80%以上のNb収率が得られ、一方でFeNbでは8%の収率しか得られない。より低い出湯温度の1440℃でNbを含むFeSi合金はNb収率が約70%に減少するが、一方でFeNbでは16%の収率が認められる。
【0127】
実施例7 バナジウム及びニオブを含むフェロシリコン合金並びにニオブ、バナジウム及びモリブデンを含むフェロシリコン合金の製造
本発明によるFeSiVNb合金の製造用の融解物を1個準備した。以下の表8は原材料のFeSi75、V及びNbの量を示す。
【0128】
更に、スラグを改質するための石灰(CaO)の量及び系内のAl総量を記す。温度(T)はV及びNb添加前にFeSiVNb合金の融点以上に設定した。融解フェロシリコン合金はV、Nb、石灰及びアルミニウムの添加中攪拌した。製造された組成を表の右側に記す。出湯中にスラグと金属を分離することが製造したFeSiVNb合金の純度にとって重要である。
【0129】
FeSiVNbMo合金を得るためにバナジウム酸化物及びニオブ酸化物に加えてFeMo65を添加することにより、追加の合金を1つ作成した。FeMo65は65%重量%のMoを含有する。製造に用いた原材料の量とFeSiVNbMo合金の組成は表9に示す。
【0130】
【表8】
【0131】
【表9】
【0132】
実施例8 FeSiNbV合金及びFeSiNbVMo合金とFeNb65及びFeV80の溶解挙動の比較
1500℃の鉄浴中へのFeSiNbV合金及びFeSiNbVMo合金の溶解挙動をFeNb65及びFeV80の溶解挙動と比較した。鉄融解物中の炭素とシリコンの濃度はそれぞれ3.6重量%及び2.2重量%であった。図4を参照すると、FeSiNbV及びFeSiNbVMoの溶解時間がFeNb65及びFeV80の溶解時間より短いことは明らかである。
【0133】
実施例9 FeSiCr/FeSiMnからのFeSiVの製造
Mn又はCrの含有量が5重量%で、合金元素としてMn及びCrを含むFeSi合金から出発して、結果下記表10に示される組成のFeSiV合金となる。
【0134】
【表10】
【0135】
原材料としてFeSiMnを使用した、本発明によるFeSiV合金の製造のための更なる試行を準備した。以下の表11はFeSiVの2つの試作のための原材料であるFeSiMn及びVの量を示す。更に、スラグを改質するための石灰(CaO)の量及び系内のAl総量を記す。融解合金はV、石灰及びアルミニウムの添加中攪拌した。製造された組成を表11の右側に記す。
【0136】
【表11】
【0137】
実施例10 選択した合金の密度測定
表12は選択した合金の測定した密度を示す。表に見られるように、本発明のFeSiVNb合金の密度はFeV80及びFeNb65の密度よりかなり低い。
【0138】
【表12】
【0139】
当業者は本発明が上記の好ましい実施態様に限定されないことを理解されたい。同業者は更に添付の特許請求の範囲の範囲内で修正及び変更が可能であることを理解されたい。その上、開示及び添付の特許請求の範囲の研究から請求した発明を実施する際に、開示した実施態様に対する変更は当業者に理解され、行われてもよい。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-11-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
15~80重量%のSi、
5~35重量%のV及び/又はNb、
10重量%以下のMo、
5重量%以下のCr、
3重量%以下のCu、
3重量%以下のNi、
20重量%以下のMg、
0.01~7重量%のAl、
13重量%以下のBa、
0.01~7重量%のCa、
13重量%以下のMn、
8重量%以下のZr、
12重量%以下のLa及び/又はCe及び/又はミッシュメタル、
5重量%以下のSr、
3重量%以下のBi、
3重量%以下のSb、
1.5重量%以下のTi、
残部Fe、並びに
随伴不純物を含む、フェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ(FeSiV及び/又はNb)合金。
【請求項2】
15~29重量%のSi、5~35重量%のV及び/又はNb、10重量%以下のMo、5重量%以下のCr、3重量%以下のCu、3重量%以下のNi、20重量%以下のMg、0.01~7重量%のAl、13重量%以下のBa、0.01~7重量%のCa、13重量%以下のMn、8重量%以下のZr、12重量%以下のLa及び/又はCe及び/又はミッシュメタル、5重量%以下のSr、3重量%以下のBi、3重量%以下のSb、1.5重量%以下のTi、残部Fe並びに随伴不純物を含む、請求項1に記載のFeSiV及び/又はNb合金。
【請求項3】
FeSiV及び/又はNb合金は、30~50重量%のSi、16~35重量%のV及び/又はNb、10重量%以下のMo、5重量%以下のCr、3重量%以下のCu、3重量%以下のNi、20重量%以下のMg、0.01~7重量%のAl、13重量%以下Ba、0.01~7重量%のCa、13重量%以下のMn、8重量%以下のZr、12重量%以下のLa及び/又はCe及び/又はミッシュメタル、5重量%以下のSr、3重量%以下のBi、3重量%以下のSb、1.5重量%以下のTi、残部Fe並びに随伴不純物を含む、請求項1に記載のFeSiV及び/又はNb合金。
【請求項4】
51~80重量%のSi、5~35重量%のV及び/又はNb、10重量%以下のMo、5重量%以下のCr、3重量%以下のCu、3重量%以下のNi、20重量%以下のMg、0.01~7重量%のAl、13重量%以下のBa、0.01~7重量%のCa、13重量%以下のMn、8重量%以下のZr、12重量%以下のLa及び/又はCe及び/又はミッシュメタル、5重量%以下のSr、3重量%以下のBi、3重量%以下のSb、1.5重量%以下のTi、残部Fe並びに随伴不純物を含む、請求項1に記載のFeSiV及び/又はNb合金。
【請求項5】
15重量%以下のMgを含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のFeSiV及び/又はNb合金。
【請求項6】
5重量%以下のMoを含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のFeSiV及び/又はNb合金。
【請求項7】
前記FeSiV及び/又はNb合金の融解温度の範囲は1060~1640℃である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のFeSiV及び/又はNb合金。
【請求項8】
前記FeSiV及び/又はNb合金は0.06~50mmの粒子又は塊の形状を有する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のFeSiV及び/又はNb合金。
【請求項9】
前記FeSiV及び/又はNb合金の粒子又は塊は、酸化ビスマス及び/又は硫化ビスマス及び/又は硫化アンチモン及び/又は酸化アンチモン及び/又は酸化鉄など他の金属の酸化物及び/又は硫化鉄などの他の金属の硫化物で被覆されている、又は混合している、請求項8に記載のFeSiV及び/又はNb合金。
【請求項10】
前記FeSiV及び/又はNb合金は鋳鉄製造に用いられる添加剤である、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のFeSiV及び/又はNb合金。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載のフェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ(FeSiV及び/又はNb)合金の製造方法であって、
融解状態のフェロシリコン合金を供給する工程、
酸化バナジウム含有原材料及び/又は酸化ニオブ含有原材料を融解フェロシリコン合金に添加する工程であって、酸化バナジウム含有原材料及び/又は酸化ニオブ含有原材料は、FeSiV及び/又はNb合金中に目標量(重量で)の元素のバナジウム及び/又はニオブが本質的に供給される量(重量で)添加される工程、
融解フェロシリコン合金と、酸化バナジウム含有原材料由来の酸化バナジウム及び/又は酸化ニオブ含有原材料由来の酸化ニオブとを混合し、反応させFeSiV及び/又はNb合金の融解物とスラグを形成する工程、
前記融解物からスラグを分離する工程、及び
融解FeSiV及び/又はNb合金を凝固する、又は鋳型に入れる工程、
を有する、フェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ(FeSiV及び/又はNb)合金の製造方法。
【請求項12】
融解フェロシリコン合金は還元溶鉱炉から直接供給され、フェロシリコンは従来の方法により原材料より製造されたままのものである、請求項11に記載のフェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ(FeSiV及び/又はNb)合金の製造方法。
【請求項13】
融解フェロシリコン合金は、フェロシリコン合金のチャージを再融解して供給される、請求項11に記載のフェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ(FeSiV及び/又はNb)合金の製造方法。
【請求項14】
酸化バナジウム含有原材料は、酸化バナジウム(II)、酸化バナジウム(III)、酸化バナジウム(IV)、酸化バナジウム(V)及び/又は他のバナジウムの非主軸酸化物より選択される1種又は複数種の酸化バナジウム相である、及び/又は、
酸化ニオブ含有原材料は、酸化ニオブ(II)、酸化ニオブ(III)、酸化ニオブ(IV)、酸化ニオブ(V)及び/又は他のニオブの非主軸酸化物より選択される1種又は複数種の酸化ニオブ相である、請求項11乃至13のいずれか一種に記載のフェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ(FeSiV及び/又はNb)合金の製造方法。
【請求項15】
酸化バナジウム相は、酸化バナジウム(V)、V 及び/又は酸化バナジウム(III)、V である、及び/又は
酸化ニオブ相は、酸化ニオブ(V)、Nb 及び/又は酸化ニオブ(III)、Nb である、請求項14に記載のフェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ(FeSiV及び/又はNb)合金の製造方法
【請求項16】
酸化バナジウム含有原材料は更に酸化バナジウムを含む産業廃棄物材料又は鉱石を含む、及び/又は、
酸化ニオブ含有原材料は更に酸化ニオブを含む産業廃棄物材料又は鉱石を含む、請求項14又は15に記載のフェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ(FeSiV及び/又はNb)合金の製造方法。
【請求項17】
スラグを改質する化合物をフェロシリコン合金及び酸化バナジウム及び/又は酸化ニオブの総量に対して0.5~30重量%の量で融解フェロシリコン合金に添加する、請求項11乃至16のいずれか一項に記載のフェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ(FeSiV及び/又はNb)合金の製造方法。
【請求項18】
スラグを改質する化合物はCaO及びMgOの少なくとも一種である、請求項17に記載のフェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ(FeSiV及び/又はNb)合金の製造方法。
【請求項19】
融解出発フェロシリコン合金は、
40~90重量%のSi、
0.5重量%以下のC、
0.01~7重量%のAl、
6重量%以下のCa、
1.5重量%以下のTi、
15重量%以下のMn、
10重量%以下のCr、
10重量%以下のZr、
15重量%以下のBa、
0.3重量%以下のP、
0.5重量%以下のS、
残部Fe、並びに
随伴不純物を含む、請求項11乃至18のいずれか一項に記載のフェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ(FeSiV及び/又はNb)合金の製造方法。
【請求項20】
前記製造方法は更に、酸化バナジウム含有原材料及び/又は酸化ニオブ含有原材料の添加前に、同時に又は後に、フェロシリコン合金及び酸化バナジウム及び/又は酸化ニオブの総量に対して10重量%以下の量でアルミニウムをフェロシリコン融解物に添加する工程を有する、請求項11乃至19のいずれか一項に記載のフェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ(FeSiV及び/又はNb)合金の製造方法。
【請求項21】
融解フェロシリコン合金及び酸化バナジウム含有原材料及び/又は酸化ニオブ含有原材料、及び添加されたアルミニウム及び/又はスラグを改質する化合物は機械的攪拌又はガス攪拌によって混合される、請求項11乃至20のいずれか一項に記載のフェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ(FeSiV及び/又はNb)合金の製造方法。
【請求項22】
スラグは、融解フェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ合金を鋳型に入れる前又は最中に分離される、請求項11乃至21のいずれか一項に記載のフェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ(FeSiV及び/又はNb)合金の製造方法。
【請求項23】
鋳型に入れ、凝固したFeSiV及び/又はNb合金はブロック状に形成される、若しくは砕かれて任意にサイズ分画に等級分けされる、又は凝集される、請求項11乃至22のいずれか一項に記載のフェロシリコン-バナジウム-及び/又はニオブ(FeSiV及び/又はNb)合金の製造方法。
【請求項24】
バナジウム及び/又はニオブ含有鋳鉄の製造における添加剤としての、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のFeSiV及び/又はNb合金の使用。
【国際調査報告】