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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】国際粗さ指数推定方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/30 20060101AFI20240326BHJP
   G01M 17/007 20060101ALI20240326BHJP
   G01B 21/00 20060101ALI20240326BHJP
   E01C 23/01 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
G01B21/30 102
G01M17/007 Z
G01B21/00 T
E01C23/01
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560758
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(85)【翻訳文提出日】2023-11-01
(86)【国際出願番号】 EP2022058405
(87)【国際公開番号】W WO2022207700
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】102021000007817
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518333177
【氏名又は名称】ブリヂストン ヨーロッパ エヌブイ/エスエイ
【氏名又は名称原語表記】BRIDGESTONE EUROPE NV/SA
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】ロレンツォ アレバ
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドロ ボルドリーニ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィットリオ ニコロシ
(72)【発明者】
【氏名】エミリアーノ アセンツィ
【テーマコード(参考)】
2D053
2F069
【Fターム(参考)】
2D053AA32
2D053FA02
2F069AA57
2F069BB24
2F069DD16
2F069GG04
2F069GG19
2F069GG41
2F069JJ04
2F069JJ25
2F069NN26
(57)【要約】
本発明は、予備ステップ(10)及びIRI推定ステップ(20)を含む国際粗さ指数(IRI)推定方法に関し、予備ステップ(10)は、既知のIRI値又は既知の道路プロファイルと関連付けられた1つ又は複数の道路又は道路セグメント上で、1つ又は複数の所与の一定速度で走行する1つ又は複数のモータ車両(40)で測定された第1の車両上下加速度値、測定された第1の上下加速度値の第1の車両ジオリファレンスデータ、及び測定された第1の上下加速度値と関連付けられた所与の一定速度を示す第1の車両速度データを収集すること(11)と;第1の車両上下加速度値の第1の二乗平均平方根値を計算すること(12)と;既知のIRI値/道路プロファイルと、第1の車両ジオリファレンスデータ及び速度データと、第1の二乗平均平方根値とに基づいて、所与の一定速度で、車両上下加速度の二乗平均平方根値とIRI値とを数学的に関連する1つ又は複数の車両伝達関数を判定すること(13)とを含む。IRI推定ステップ(20)は、所与の道路又は道路セグメント上で、走行速度で走行する所与のモータ車両(40)で測定された第2の車両上下加速度値を取得すること(21)と;第2の車両上下加速度値の第2の二乗平均平方根値を計算すること(22)と;予備ステップ(10)において判定された1つ又は複数の車両伝達関数と、第2の二乗平均平方根値及び所与のモータ車両(40)の走行速度とに基づいて、所与の道路又は道路セグメントのIRI値を推定すること(23)とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予備ステップ(10)及び国際粗さ指数推定ステップ(20)を含む国際粗さ指数推定方法であって、
前記予備ステップ(10)は、
・-既知の国際粗さ指数値又は既知の道路プロファイルと関連付けられた1つ又は複数の道路又は道路セグメント上で、1つ又は複数の所与の一定速度で走行する1つ又は複数のモータ車両(40)で測定された第1の車両上下加速度値、
-前記測定された第1の上下加速度値の第1の車両ジオリファレンスデータ、及び
-前記測定された第1の上下加速度値と関連付けられた前記所与の一定速度を示す第1の車両速度データ
を収集すること(11)と、
・前記第1の車両上下加速度値の第1の二乗平均平方根値を計算すること(12)と、
・前記既知の国際粗さ指数値/道路プロファイルと、前記第1の車両ジオリファレンス及び速度データと、前記第1の二乗平均平方根値とに基づいて、前記所与の一定速度で、車両上下加速度の二乗平均平方根値と国際粗さ指数値とを数学的に関連する1つ又は複数の車両伝達関数を判定すること(13)と
を含み、
前記国際粗さ指数推定ステップ(20)は、
・所与の道路又は道路セグメント上で、走行速度で走行する所与のモータ車両(40)で測定された第2の車両上下加速度値を取得すること(21)と、
・前記第2の車両上下加速度値の第2の二乗平均平方根値を計算すること(22)と、
・前記予備ステップ(10)において判定された1つ又は複数の車両伝達関数と、前記第2の二乗平均平方根値及び前記所与のモータ車両(40)の前記走行速度とに基づいて、前記所与の道路又は道路セグメントの国際粗さ指数値を推定すること(23)と
を含む、国際粗さ指数推定方法。
【請求項2】
前記国際粗さ指数推定ステップ(20)は、前記所与のモータ車両(40)の第2の車両ジオリファレンスデータ、及び前記所与のモータ車両(40)の前記走行速度を示す第2の車両速度データと共に前記第2の車両上下加速度値を取得すること(21)を含む、請求項1に記載の国際粗さ指数推定方法。
【請求項3】
前記予備ステップ(10)は、既知の国際粗さ指数値又は既知の道路プロファイルと関連付けられた1つ又は複数の道路又は道路セグメント上で、1つ又は複数の所与の一定速度で、全く同一の所与の車両タイプ及び/又は全く同一の所与の車両モデルの1つ又は複数のモータ車両を走行することを含み、
前記予備ステップ(10)において、
・前記所与の車両タイプ及び/又はモデルに関連する第1の車両上下加速度値、第1の車両ジオリファレンスデータ、及び第1の車両速度データは、収集され(11)、
・前記所与の車両タイプ及び/又はモデルに固有の1つ又は複数の車両伝達関数は、判定される(13)、
請求項1又は2に記載の国際粗さ指数推定方法。
【請求項4】
前記予備ステップ(10)は、既知の国際粗さ指数値又は既知の道路プロファイルと関連付けられた1つ又は複数の道路又は道路セグメント上で、1つ又は複数の所与の一定速度で異なる所与の車両タイプ及び/又は異なる所与の車両モデルの1つ又は複数のモータ車両を走行することを含み、
前記予備ステップ(10)において、
・前記所与の車両タイプ及び/又はモデルの各々に関して、それぞれの第1の車両上下加速度値、それぞれの第1の車両ジオリファレンスデータ、及びそれぞれの第1の車両速度データは、収集され(11)、
・前記所与の車両タイプ及び/又はモデルの各々に関して、前記所与の車両タイプ及び/又はモデルに固有の1つ又は複数のそれぞれの車両伝達関数は、判定され(13)、
前記国際粗さ指数推定ステップ(20)において、前記国際粗さ指数値は、前記予備ステップ(10)において判定された前記所与のモータ車両(40)の車両タイプ/モデルに固有の少なくとも1つの車両伝達関数を使用することによって、推定される(23)、
請求項1乃至3のいずれかに記載の国際粗さ指数推定方法。
【請求項5】
前記予備ステップ(10)において、
・前記第1の二乗平均平方根値の1つ又は複数の平均値は、計算され、
・前記1つ又は複数の車両伝達関数は、前記計算された平均値に基づいて判定される(13)、
請求項1乃至4のいずれかに記載の国際粗さ指数推定方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の前記国際粗さ指数推定方法を実行するように設計された、国際粗さ指数推定システム(30、30、30**)。
【請求項7】
・前記国際粗さ指数推定方法の前記予備ステップ(10)を実行するために使用される各モータ車両(40)に関して、
-前記モータ車両(40)に搭載されて設置され、
-前記モータ車両(40)のそれぞれの車両バス(41)に結合され、
-前記それぞれの車両バス(41)から、前記第1の車両上下加速度値と、前記第1の車両ジオリファレンスデータ及び速度データとを取得するように構成されている、
それぞれの第1の取得デバイス(31)と、
・前記国際粗さ指数推定方法の前記国際粗さ指数推定ステップ(20)に関与される各々の所与のモータ車両(40)に関して、
-前記所与のモータ車両(40)に搭載されて設置され、
-前記モータ車両(40)のそれぞれの車両バス(41)に結合され、
-前記それぞれの車両バス(41)から、前記第2の車両上下加速度値を取得するように構成されている、
それぞれの第2の取得デバイス(31)と、
・前記第1及び第2の取得デバイス(31)に接続され、前記第1及び第2の取得デバイス(31)から前記第1及び第2の車両上下加速度値と、前記第1の車両ジオリファレンス及び速度データとを受信する処理手段(32)であって、
-前記第1の二乗平均平方根値を計算し(12)、前記車両伝達関数を判定し(13)、
-前記第2の二乗平均平方根値を計算し(22)、1つ又は複数の国際粗さ指標値を推定する(23)
ように構成されている、処理手段(32)と
を含む、請求項6に記載の国際粗さ指数推定システム。
【請求項8】
前記処理手段(32)は、前記第1及び第2の取得デバイス(31)にリモートに接続され、前記予備ステップ(10)と前記国際粗さ指数推定ステップ(20)との両方を実行するように構成されている、クラウドコンピューティングシステム(32)を含む、請求項7に記載の国際粗さ指数推定システム。
【請求項9】
前記処理手段(32)は、
・前記第1の取得デバイス(31)にリモートに接続され、前記予備ステップ(10)を実行するように構成されている、クラウドコンピューティングシステム(32)と、
・前記国際粗さ指数推定ステップ(20)に関与される各々の所与のモータ車両(40)に関して、前記所与のモータ車両(40)に搭載されて設置され、前記それぞれの第2の取得デバイス(31)に接続され、前記国際粗さ指数推定ステップ(20)を実行するように構成されている、それぞれの電子制御ユニット(32**)と
を含む、請求項7に記載の国際粗さ指数推定システム。
【請求項10】
請求項1乃至5のいずれかに記載の前記国際粗さ指数推定方法の前記予備ステップ(10)と前記国際粗さ指数推定ステップ(20)との両方、又は前記予備ステップ(10)のみを実行するように構成されている、クラウドコンピューティングシステム(32)。
【請求項11】
モータ車両(40)に搭載されて設置されるように設置され、請求項1乃至5のいずれかに記載の前記国際粗さ指数推定方法の前記国際粗さ指数推定ステップ(20)を実行するように構成されている、電子制御ユニット(32**)。
【請求項12】
・処理手段(32、32、32**)にロード可能であり、
・ロードされたときに、前記処理手段(32、32、32**)に、請求項1乃至5のいずれかに記載の前記国際粗さ指数推定方法の前記予備ステップ(10)及び/又は前記国際粗さ指数推定ステップ(20)を実行するように構成させているような、1つ又は複数のソフトウェア及び/又はファームウェアコード部分を含む、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、自動車及び道路舗装モニタリング分野に関する。より具体的には、本発明は、国際粗さ指数(IRI)推定のための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
知られているように、道路舗装は、その上で走行するモータ車両(motor vehicle)の安全性及び快適性の要件を満たすために、実質的に規則的であり、少ない変形を伴う転動面を保証するように設計される必要がある。
【0003】
実際、道路舗装上の障害(ポットホール又は隆起など)に対する/へのモータ車両の車輪の衝撃は、車輪のタイヤ、特にカーカス(すなわち、ケーシング)への損傷を引き起こし得る。
【0004】
例えば、隆起及びポットホールのようなオブジェクト上で走行することは、個々のコードが損傷する原因となり得るので、典型的に、タイヤのサイドウォール上の外側の膨らみは、コードが、障害に対する/への衝撃に起因して、カーカス内部で損傷されたことを示す。
【0005】
損傷されたタイヤ(例えば、いくつかの損傷されたコードを有するタイヤ)が速やかに検出されず、したがって、速やかに修理/交換されない場合、前記損傷されたタイヤで走行し続けることによって、タイヤのカーカスを完全に損傷/破壊し、さらにはホイールリム及び/又はサスペンションを損傷するリスクがある(例えば、他の障害に対する/への損傷されたタイヤの更なる衝撃のケースにおいて)。
【0006】
今日、個々の道路の規則性/平滑性レベルの定期的なモニタリングは、主にメンテナンス作業の計画を立てる目的のために、時々実行される。典型的に、前記モニタリングは、国際粗さ指数(IRI)の計算に基づいており、国際粗さ指数(IRI)は、道路舗装の不規則性に最も一般的に使用される粗さ指数である。典型的に、IRIは、測定された縦断道路プロファイル(より具体的には、道路舗装の高さの縦断プロファイル)に基づいて、特に、クォータカー(quarter-car)車両数理モデルを使用することによって取得され、その応答は、勾配の単位(in/mi、m/kmなど)を有する粗さ指数を得るために累積される。
【0007】
残念なことに、IRI測定は、実際に、むしろ高価であり、企業によって管理される道路網全体で大規模に実行するのは難しい。
【0008】
したがって、自動車及び道路舗装モニタリング分野では、道路舗装の不規則性/凹凸の、より迅速且つより容易な検出のための革新的な技術ソリューションの必要性が顕著に感じられる。
【0009】
この点について、WO2020/225699A1(特許文献1)は、道路舗装の不規則性の認識のための方法及びシステムを開示する。
【0010】
特に、WO2020/225699A1は、
a)予備試験ステップが、
-試験が、空気入りタイヤに、モータ車両の異なる速度で異なる不規則性上で走行させ、且つ/或いは異なる不規則性に影響を与えさせるときに実施されるサブステップと、
-試験中、上下加速度(vertical acceleration)が、(好都合には、少なくとも10Hzのサンプリングレートで)取得されるサブステップと、
-実施された試験に関連する上下加速度の標準偏差を、道路舗装上の不規則性と関連付けるための少なくとも1つの第1のモデルの構築のためのサブステップと
を含み、
b)実際の認識ステップが、
-上下加速度が、(好都合には、少なくとも10Hzのサンプリングレートで)取得されるサブステップと、
-上下加速度のハイパスフィルタリングが、実装されるサブステップであって、ハイパスフィルタの最小フィルタリング閾値は、好ましくは0.1Hz以下であり、フィルタリングのサブステップは、2-25リニアメータ間、好ましくは5-10リニアメータ間の長さを有する可変長の道路舗装の基準セクション上で実施される、実装されるサブステップと、
-上下加速度が、高速フーリエ変換(FFT)によって処理されるサブステップと、
-処理された上下加速度の標準偏差が、関連する周波数でのFFTによって計算されるサブステップであって、関連する周波数は、好ましくは1.5Hz-3Hz間であるモータ車両のサスペンションシステムの振動周波数の第1の範囲を含む、計算されるサブステップと、
-前記第1のモデルと、関連する周波数でのFFTによって、処理された上下加速度の標準偏差との比較に基づいて、道路舗装上の不規則性の存在及び寸法を認識することと
を含む方法に関する。
【0011】
WO2020/225699A1によれば、好都合には、関連する周波数は、モータ車両のシャシ(chassis)の振動周波数の第2の範囲を含み、好都合には、ステップb)は、GPS信号によって、車両の位置に関する情報を取得し、車両の位置に依存して任意の不規則性を位置付ける更なるサブステップを含み、好都合には、ステップa)は、異なるタイプのモータ車両上の異なるタイプのタイヤを走行させ、且つ/或いは影響を与えさせることによって、試験を実施し、上下加速度の標準偏差をタイヤ及び/又はモータ車両のタイプと関連付けるために、多数のモデルを構築する更なるステップを含む。
【0012】
さらに、WO2020/225699A1によれば、好ましくは、ステップa)はまた、
・実施された試験中、車輪速度とモータ車両の速度とが、取得され、実施された試験に関連する正規化された車輪速度は、車輪速度とモータ車両のそれぞれの速度との間の比率によって計算されるサブステップと、
・正規化された車輪速度の標準偏差を道路舗装上の不規則性と関連付けるための少なくとも1つの第2のモデルの構築のためのサブステップと
を含む。
【0013】
最後に、WO2020/225699A1によれば、好ましくは、ステップb)は、
・前記モータ車両の車輪の操舵角が、取得されるサブステップと、
・前記モータ車両の車輪の操舵角が、FFTによって取得されるサブステップと、
・最小閾値が、FFTによって処理された車輪の操舵角の周波数コンテンツ内で判定されるサブステップと、
・車輪速度が、取得されるサブステップと、
・モータ車両の速度が、取得されるサブステップと、
・正規化された車輪速度が、車輪速度とモータ車両のそれぞれの速度との比率によって計算されるサブステップと、
・車輪速度又は正規化された車輪速度のハイパスフィルタリングが、前記最小閾値を適用するときに実施されるサブステップと、
・正規化された車輪速度の標準偏差が、計算されるサブステップと
を含み、
好都合には、道路舗装上の不規則性の存在を認識するサブステップは、関連する周波数でのFFTによって、第1のモデル、及び処理された上下加速度の標準偏差の比較と、第2のモデル、及び正規化された車輪速度の標準偏差の比較との両方を使用することを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】WO2020/225699A1
【発明の概要】
【0015】
以上を考慮して、本出願人は、概して、道路舗装の粗さの、より迅速且つより容易な定量化と、特に、従来のIRI測定よりも実施しやすく、より頻繁に実行され得るIRI様(IRI-like)推定とを可能にするための革新的な技術的解決策を開発しようとするために、詳細な研究を実行する必要性を感じ、それによって、本発明に帰着する。
【0016】
したがって、本発明の目的は、概して、道路舗装の粗さの、より迅速且つより容易な定量化を実装するための技術的解決策と、特に、従来のIRI測定よりも実施しやすく、より頻繁に実行され得るIRI様推定とを提供することである。
【0017】
この目的及び他の目的は、添付の特許請求の範囲において規定されるように、国際粗さ指数(IRI)推定のための方法及びシステムに関する本発明によって実現される。
【0018】
特に、本発明によるIRI推定方法は、予備ステップ及びIRI推定ステップを含み、予備ステップは、
・-既知のIRI値又は既知の道路プロファイルと関連付けられた1つ又は複数の道路又は道路セグメント上で、1つ又は複数の所与の一定速度で走行する1つ又は複数のモータ車両で測定された第1の車両上下加速度値、
-測定された第1の上下加速度値の第1の車両ジオリファレンスデータ、及び
-測定された第1の上下加速度値と関連付けられた所与の一定速度を示す第1の車両速度データ
を収集することと、
・第1の車両上下加速度値の第1の二乗平均平方根値を計算することと、
・既知のIRI値/道路プロファイルと、第1の車両ジオリファレンス及び速度データと、第1の二乗平均平方根値とに基づいて、所与の一定速度で、車両上下加速度の二乗平均平方根値とIRI値とを数学的に関連する1つ又は複数の車両伝達関数を判定することと
を含む。
【0019】
IRI推定ステップは、
・所与の道路又は道路セグメント上で、走行速度で走行する所与のモータ車両で測定された第2の車両上下加速度値を取得することと、
・第2の車両上下加速度値の第2の二乗平均平方根値を計算することと、
・予備ステップにおいて判定された1つ又は複数の車両伝達関数と、二乗平均平方根値及び所与のモータ車両の走行速度とに基づいて、所与の道路又は道路セグメントのIRI値を推定することと
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明のより良い理解のために、純粋に非限定的な実施例として意図される好ましい実施形態は、添付の図面(全て縮尺なし)を参照して、ここで説明され得る。
図1図1は、本発明の好ましい実施形態による、IRI推定方法の予備ステップ及びIRI推定ステップを概略的に示す。
図2図2は、本発明の好ましい実施形態による、IRI推定方法の予備ステップ及びIRI推定ステップを概略的に示す。
図3図3は、道路の異なるセグメントに関連するIRI値の例を示す。
図4図4は、異なる車両速度で、IRI値と、車両上下加速度の二乗平均平方根との例を示す。
図5図5は、車両伝達関数の例を示す。
図6図6は、道路又は道路セグメントの実際のIRI値と、本発明を実行することによって推定されたIRI値との比較の例を示す。
図7図7は、本発明の好ましい実施形態による、IRI推定システムを概略的に示す。
図8図8は、図7のIRI推定システムの処理手段を実装するための好ましい実施形態を概略的に示す。
図9図9は、図7のIRI推定システムの処理手段を実装するための好ましい実施形態を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の議論は、当業者が本発明を製造でき、使用できるように提示される。実施形態に対する様々な変更は、請求された本発明の範囲から逸脱することなく、当業者には容易に明らかであろう。したがって、本発明は、示され、説明された実施形態に限定されることを意図されないが、添付の特許請求の範囲において規定された特徴と一致する最も広い保護範囲が与えられるべきである。
【0022】
本発明は、予備ステップ及びIRI推定ステップを含む国際粗さ指数(IRI)推定方法に関する。
【0023】
この点に関して、図1は、本発明の好ましい実施形態による、IRI推定方法の予備ステップ(全体として10で示される)を概略的に示す。
【0024】
特に、予備ステップ10は、
・-既知のIRI値又は既知の道路プロファイルと関連付けられた1つ又は複数の道路又は道路セグメント上で、1つ又は複数の所与の一定速度で走行する1つ又は複数のモータ車両(内燃機関エンジンと適合され、且つ/或いはハイブリッド及び/又は電気タイプの、1つ又は複数の自動車及び/又はバス及び/又はトラック及び/又はバイクなど)で測定された第1の車両上下加速度値、
-測定された第1の上下加速度値の第1の車両ジオリファレンスデータ(すなわち、測定された第1の上下加速度値に対応する経時的な2次元/3次元(2D/3D)位置を示すデータ-例えば、グローバルポジショニングシステム(GPS)位置などの、全地球航法衛星システム(GNSS)受信機によって提供される位置)、及び
-測定された第1の上下加速度値と関連付けられた所与の一定速度を示す第1の車両速度データ
を収集すること(図1のブロック11)と、
・第1の車両上下加速度値の第1の二乗平均平方根値を計算すること(図1のブロック12)と、
・既知のIRI値/道路プロファイルと、第1の車両ジオリファレンス及び速度データと、第1の二乗平均平方根値とに基づいて、所与の一定速度で、車両上下加速度の二乗平均平方根値とIRI値とを数学的に関連する1つ又は複数の車両伝達関数を判定すること(図1のブロック13)と
を含む。
【0025】
図2は、本発明の好ましい実施形態による、IRI推定方法のIRI推定ステップ(全体として20で示す)を概略的に示す。
【0026】
特に、IRI推定ステップ20は、
・所与の道路/道路セグメント上で、走行速度で走行する所与のモータ車両で測定された第2の車両上下加速度値を取得すること(図2のブロック21)と、
・第2の車両上下加速度値の第2の二乗平均平方根値を計算すること(図2のブロック22)と、
・予備ステップ10において判定された1つ又は複数の車両伝達関数と、第2の二乗平均平方根値及び所与のモータ車両の走行速度とに基づいて、所与の道路/道路セグメントのIRI値を推定すること(図2のブロック23)と
を含む。
【0027】
好都合には、IRI推定ステップ20は、所与のモータ車両の第2の車両ジオリファレンスデータ(すなわち、所与のモータ車両の2D/3D位置(例えば、GPS位置)を示すデータ)、及び前記所与のモータ車両の走行速度を示す第2の車両速度データと共に第2の車両上下加速度値を取得すること(図2のブロック21)を含む。
【0028】
好ましくは、IRI推定ステップ20において、より正確なIRI推定を実現するために、予備ステップ10は、
・前記所与の車両タイプ及び/又はモデルに関連する第1の車両上下加速度値、第1の車両ジオリファレンスデータ、及び第1の車両速度データを収集し(図1のブロック11)、
・前記所与の車両タイプ及び/又はモデルに固有の1つ又は複数の車両伝達関数を判定する(図1のブロック13)
ように、既知のIRI値又は既知の道路プロファイルと関連付けられた1つ又は複数の道路又は道路セグメント上で、1つ又は複数の所与の一定速度で、全く同一の所与の車両タイプ及び/又は全く同一の所与の車両モデルの1つ又は複数のモータ車両を走行することを含む。
【0029】
好都合には、予備ステップ10は、
・前記所与の車両タイプ及び/又はモデルの各々に関して、それぞれの第1の車両上下加速度値、それぞれの第1の車両ジオリファレンスデータ、及びそれぞれの第1の車両速度データを収集し(好都合には、既知のIRI/プロファイルを有する単一の道路又は道路セグメント上で、一定速度で単一の車両タイプ/モデルの通過をクラスタリングする)、
・前記所与の車両タイプ及び/又はモデルの各々に関して、前記所与の車両タイプ及び/又はモデルに固有の1つ又は複数のそれぞれの車両伝達関数を判定する(図1のブロック13)
ように、異なる所与の車両タイプ及び/又は異なる所与の車両モデルの1つ又は複数のモータ車両を走行することを含む。
【0030】
したがって、IRI推定ステップ20において、好都合には、IRI値は、予備ステップ10において判定された所与のモータ車両の車両タイプ/モデルに固有の少なくとも1つの車両伝達関数を使用することによって、推定される(図2のブロック23)。
【0031】
より詳細には、予備ステップ10において、好都合には、第1の車両上下加速度値、第1の車両ジオリファレンスデータ、及び第1の車両速度データを収集する(図1のブロック11)サブステップは、車両テレメトリデータ取得を含むことができ、好都合には、車両は、予め規定された取得周波数f(VA)≧10Hz及びf(GPS)≧1Hzで車両の上下加速度VA及びGPS位置GPSを取得するデータロガーユニットを備え、テレメトリデータは、(例えば、2G、3G、4G又は5Gセルラ技術に基づく)ワイヤレス接続を介して、リモートコンピューティングシステム(例えば、クラウドコンピューティングシステム)に自動的に送信される。
【0032】
好都合には、予備ステップ10において、道路に関連するIRI値は、異なる道路セグメントに分割され、関連付けられ、前記IRI値は、標準化され、準拠した測定手順を介してIRI値を測定する外部エンティティによって提供される。この点に関して、図3は、前記道路の8つの異なるセグメントに分割され、関連付けられた道路の8つのIRI値の例を示す。
【0033】
さらに、好都合には、予め規定された期間(例えば、3ヶ月)は、車両テレメトリデータ取得のために考慮されることがあり、好ましくは、前記予め規定された期間は、IRI値の測定の日を含む。
【0034】
好都合には、予備ステップ10は、所与の速度範囲での道路セグメント上の車両の「良好な」通過を選択することをさらに含み、好都合には、車両の通過は、「良好」であるとみなされることがあり、したがって、車両が道路セグメントの長さの最低70%の間、一定速度で、道路セグメント上で走行する場合、更なる処理のために使用される。
【0035】
好都合には、GPSは、道路セグメント上の車両を位置決めするために使用される。
【0036】
好ましくは、通過中に測定されたVA値は、処理され、二乗平均平方根RMSVAは、計算され(図1のブロック12)、好都合には、平均RMSVA=average(RMSVA)は、以下を考慮することによって各道路セグメントに関して実施される:
・関与される車両の1つ1つに関して、
・あらかじめ規定された期間中の異なる瞬間、
・単一の道路セグメント上で、
・所与の速度で。
【0037】
好都合には、RMSVAは、道路セグメントの既知のIRI値と共にプロットされることができ、それによって、関連する数学的相関関係の特定を可能にし、それによって、好都合には、車両伝達関数IRI=F(RMSVA,速度)は、判定され得る(図1のブロック13)。この点に関して、図4は、異なる一定車両速度で、IRI-RMSVAグラフの例を示す。
【0038】
次いで、IRI推定ステップ20において、好都合には、逆計算は、実行され得る。実際、車両伝達関数、RMSVA、及び一般的な道路上の所与の車両の走行速度vが既知であると、推定されたIRI値を計算することが可能である(図2のブロック23)。
【0039】
この点に関して、図5は、車両伝達関数の例を示し、すなわち、以下である。
【数1】
【0040】
さらに、図6は、道路又は道路セグメントの実際のIRI値と、本発明によるIRI推定方法を実行することによって推定されたIRI値との比較の例を示す。
【0041】
本発明はまた、上記のIRI推定方法を実行するために設計されたシステムに関する。この点に関して、図7は、本発明の好ましい実施形態による、IRI推定システム30の機能アーキテクチャを、ブロックダイアグラムによって、概略的に示す。
【0042】
特に、IRI推定システム30は、
・内燃機関エンジンと適合され、或いはハイブリッド/電気タイプの、車又はバス又はトラック又はバイクなどの、モータ車両(図7には示されず)に搭載されて設置され、
・前記モータ車両の車両バス41(例えば、標準的なコントローラエリアネットワーク(CAN)バスに基づく)に結合され、
・前記車両バス41から、車両上下加速度と、車両ジオリファレンス及び速度データとを取得するように構成されている、
取得デバイス31を含む。
【0043】
好ましくは、それぞれの取得デバイス31は、
・予備ステップ10を実行するために使用され、前記モータ車両のそれぞれの車両バス41から、第1の車両上下加速度値と、第1の車両ジオリファレンス及び速度データとを取得する各モータ車両と、
・IRI推定ステップ20に関与され、前記所与のモータ車両のそれぞれの車両バス41から、第2の車両上下加速度値と、第2の車両ジオリファレンス及び速度データとを取得する各所与のモータ車両と
に搭載されて設置される。
【0044】
さらに、IRI推定システム30は、取得デバイス31に、有線又は無線方式で接続され、取得デバイス31から、第1/第2の車両上下加速度値と、第1/第2の車両ジオリファレンス及び速度データとを受信する処理手段32であって、
・第1の二乗平均平方根値を計算し(図1のブロック12)、車両伝達関数を判定し(図1のブロック13)、
・第2の二乗平均平方根値を計算し(図2のブロック22)、IRI値を推定する(図2のブロック23)
ようにプログラムされている処理手段32をさらに含む。
【0045】
図8及び図9は、処理手段32を実装するための2つの好ましい実施形態を概略的に示す。
【0046】
特に、図8を参照すると、第1の好ましい実施形態(全体として30で示される)では、処理手段32は、取得デバイス31にワイヤレスに且つリモートに接続されるクラウドコンピューティングシステム32によって実装/実行され(例えば、GSM、GPRS、EDGE、HSPA、UMTS、LTE、LTEアドバンスド、5Gなどの、1つ又は複数のセルラ技術を介して)、好都合には、予備ステップ10とIRI推定ステップ20との両方を実施するために使用されるクラウドコンピューティングシステム32によって実装/実行される。
【0047】
代わりに、図9を参照すると、第2の好ましい実施形態(全体として30**で示される)では、処理手段32は、モータ車両40に搭載されて設置された(自動車)電子制御ユニット(ECU)32**によって実装/実行され、好都合には、前記ECU32**は、特にIRI推定専用のECUであってもよく、或いはIRI推定も含むいくつかのタスク専用のECUであってもよい。
【0048】
好ましくは、クラウドコンピューティングシステム32は、予備ステップ10を実行するために使用され、ECU32**は、IRI推定ステップ20を実施するために使用される。特に、好都合には、それぞれのECU32**は、IRI推定ステップ20に関与され、それぞれの取得デバイス31から、第2の車両上下加速度値と、第2の車両ジオリファレンスデータ及び速度データとを取得する各所与のモータ車両40に搭載されて設置され得る。
【0049】
以上から、本発明の技術的利点及び革新的特徴は、当業者には直ちに明らかである。
【0050】
特に、概して、本発明は、道路舗装の粗さの、より迅速且つより容易な定量化と、特に、従来のIRI測定よりも実施しやすく、より頻繁に実行され得るIRI様推定とを実装することを可能にすることを指摘することが重要である。より具体的には、本発明によるIRI推定方法及びシステムは、道路網管理会社に、粗い(すなわち、より低い精度)が、より安く、より毛細管現象的で、より頻繁なIRI推定を提供することを可能にし、それによって、より安く、より毛細管現象的で、より頻繁な道路舗装モニタリングを可能にする。
【0051】
先に説明されたように、本発明は、コネクテッドフリートに属する車両の上下加速度を利用することによって、IRI値を推定することを可能にする。特に、本発明によるIRI推定方法及びシステムは、従来のIRI測定方法よりも高い頻度で、走行道路の粗いIRI値を判定するために、一定速度で、コネクテッド車両の上下加速度を使用することを可能にする。IRI推定は、より低い精度にもかかわらず、それでも、より安く、より毛細管現象的で、より頻繁な道路舗装モニタリングを実現するために有用であり、それによって、道路網管理会社が、特定の道路又は道路セグメントに関して、より正確なIRI測定を優先させ、そのメンテナンス作業を適切に計画し、且つ/或いは優先させることを可能にする。
【0052】
結論として、添付の特許請求の範囲に規定されるように、本発明の範囲内に入る多数の変更及び変形が本発明に行われ得ることは明らかである。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】