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特表2024-514542催幻覚剤の治療的投与のための経皮システム、製剤、および方法
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  • 特表-催幻覚剤の治療的投与のための経皮システム、製剤、および方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】催幻覚剤の治療的投与のための経皮システム、製剤、および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/70 20060101AFI20240326BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 31/4045 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 31/36 20060101ALI20240326BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240326BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20240326BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20240326BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20240326BHJP
   A61P 25/32 20060101ALI20240326BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240326BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240326BHJP
   A61J 1/05 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
A61K9/70 401
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/22
A61K31/4045
A61K45/00
A61K31/137
A61K31/4745
A61K31/36
A61P25/00
A61P25/04
A61P25/18
A61P25/24
A61P25/32
A61P3/04
A61P43/00 121
A61J1/05
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561002
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(85)【翻訳文提出日】2023-11-28
(86)【国際出願番号】 US2022022955
(87)【国際公開番号】W WO2022212789
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】63/169,171
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523374046
【氏名又は名称】ライフ チェンジ, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】コーチンキ, フランク
(72)【発明者】
【氏名】コナー, チャド
(72)【発明者】
【氏名】アラヤレス, ブライアン
【テーマコード(参考)】
4C047
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C047AA22
4C047CC04
4C047CC19
4C047GG32
4C076AA12
4C076AA73
4C076BB31
4C076CC01
4C076DD25Z
4C076DD59Q
4C084AA17
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA05
4C084MA17
4C084MA63
4C084NA05
4C084ZA01
4C084ZA08
4C084ZA12
4C084ZA18
4C084ZC37
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA13
4C086CB05
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA63
4C086NA10
4C086ZA01
4C086ZA08
4C086ZA12
4C086ZA18
4C086ZA70
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA09
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA37
4C206MA83
4C206NA10
4C206ZA01
4C206ZA08
4C206ZA12
4C206ZA18
4C206ZA70
4C206ZC37
4C206ZC75
(57)【要約】
長期の薬物送達期間中に活性剤またはその代謝産物の継続的なマイクロドーズ血漿レベルを提供するように被験体に催幻覚活性剤を経皮投与するための薬物送達システムを提供する。経皮薬物送達システムは、活性剤、可溶化剤タイプの透過促進剤と可塑剤タイプの透過促進剤との組み合わせ、およびpH安定剤を含む製剤を収容する薬物リザーバーを含む。pH安定剤は、活性剤が皮膚表面から血流まで皮膚を横切って輸送されるときに、システム-皮膚界面および/または皮膚内の製剤のpHを、活性剤のpKaの25%以内にする。製剤および使用方法も提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長期の薬物送達期間にわたって被験体の皮膚の局所領域を通過して前記被験体に催幻覚活性剤を経皮投与するための薬物送達システムであって、前記システムが、外面および底面を有し、かつ
(a)以下:
(i)約0.5重量%~約40重量%の、既知のpKaを有する前記催幻覚活性剤、
(ii)皮膚透過促進有効量の、溶媒タイプの促進剤および脂質破壊促進剤を含む促進剤組成物、および
(iii)pH調整有効量の、前記局所領域内のpHを前記pKaの25%以内に維持するpH調整剤;
を含む製剤を収容する薬物リザーバー、ならびに
(b)薬物投与中に前記システムの外面としての機能を果たす裏打ち層;ならびに
(c)前記被験体の皮膚の局所領域に前記システムを貼付するための手段
を含む、システム。
【請求項2】
前記薬物リザーバーがポリマーマトリックスを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ポリマーマトリックスが、前記被験体の皮膚の局所領域に前記システムを貼付するための手段としての機能を果たす皮膚接触粘着剤から構成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記被験体の皮膚に前記システムを貼付するための手段が、前記薬物リザーバーに積層され、薬物投与中の前記システムの底面としての機能を果たす皮膚接触粘着剤の層を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記薬物リザーバーが密閉パウチを含み、前記製剤が液体形態である、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記薬物リザーバーが、前記製剤を負荷した微孔性薬物リザーバーを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記製剤が、薬学的に許容され得る液体ビヒクルを追加で含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記催幻覚剤が極性分子を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記pH調整剤が前記局所領域内のpHを前記pKaの15%以内に調整する、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記催幻覚剤がセロトニン5-HT2A受容体アゴニストを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記セロトニン5-HT2A受容体アゴニストが、トリプタミン、フェネチルアミン、およびリゼルグアミドから選択される、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記セロトニン5-HT2A受容体アゴニストが、プシロシン、ブホテニン、N,N-ジメチルトリプタミン、およびリゼルグ酸ジエチルアミドから選択される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記セロトニン5-HT2A受容体アゴニストがプシロシンである、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記催幻覚剤が、3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン、3,4-メチレンジオキシアンフェタミン、および3,4-メチレンジオキシエチルアンフェタミンから選択される共感誘発性化合物を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
少なくとも1つの追加の活性剤をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記少なくとも1つの追加の活性剤が、抗炎症剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗がん剤、抗アポトーシス剤、神経保護薬、および抗酸化剤から選択される、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記少なくとも1つの追加の活性剤がカンナビノイドを含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
モノアミンオキシダーゼ阻害剤を、前記皮膚内の前記プシロシンの分解を阻害するのに有効な量でさらに含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項19】
前記少なくとも1つの追加の活性剤が、Antrodia camphorataマッシュルームで見出される化合物を含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項20】
前記少なくとも1つの追加の活性剤が、テルペンまたはテルペノイドを含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項21】
前記製剤が活性剤の安定薬を追加で含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
前記製剤が、粘度調整剤、乳化剤、可溶化剤、防腐剤、乳白剤、着色剤、香料、結晶化阻害剤、および刺激緩和添加物から選択される少なくとも1つの賦形剤を追加で含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項23】
前記長期の薬物送達期間が約6時間~84時間の範囲である、請求項1に記載のシステム。
【請求項24】
前記長期の薬物送達期間が約8時間~約24時間の範囲である、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記催幻覚活性剤が、前記長期の薬物送達期間中に0.5ng/ml~約5.0ng/mlの範囲の血中レベルを提供するのに有効な量で存在する、請求項1に記載のシステム。
【請求項26】
前記製剤が、約1.0重量%~約30重量%の前記催幻覚剤を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項27】
前記製剤が、約5.0重量%~約25重量%の前記催幻覚剤を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項28】
被験体に催幻覚活性剤を経皮送達するための表面投与可能な医薬製剤であって、前記製剤が、
(a)約0.5重量%~約40重量%の、既知のpKaを有する前記催幻覚活性剤;
(b)皮膚透過促進有効量の、溶媒タイプの促進剤および脂質破壊促進剤を含む促進剤組成物、および
(c)pH調整有効量の、前記製剤が表面適用される皮膚の局所領域内でpHを前記pKaの25%以内に維持するpH調整剤
を含む、医薬製剤。
【請求項29】
被験体の皮膚の局所領域を通過して前記被験体にプシロシンを経皮投与するための薬物送達システムであって、前記システムが、外面および底面を有し、かつ
(a)以下:
(i)約0.5重量%~約40重量%のプシロシン、
(ii)前記局所領域内をpH7.20~9.74の範囲に調整/維持する量の緩衝化剤;および
(iii)0.5重量%~15重量%のモノアミンオキシダーゼ阻害剤;
を含む製剤を収容する薬物リザーバー、ならびに
(b)薬物投与中に前記システムの外面としての機能を果たす裏打ち層
を含み、ここで
(c)前記薬物リザーバーは、前記被験体の皮膚に前記システムを貼付するための手段としての機能を果たす皮膚接触粘着剤から構成されるか、または
(d)皮膚接触粘着剤材料の層は、前記薬物リザーバーに積層され、前記被験体の皮膚に前記システムを貼付するための手段としての機能を果たす、
システム。
【請求項30】
前記製剤が、0.5重量%~15重量%のアスコルビン酸またはその薬学的に許容され得る塩基性付加塩をさらに含む、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
被験体の皮膚の局所領域を通過して前記被験体にプシロシンを経皮投与するための薬物送達システムであって、前記システムが、外面および底面を有し、かつ
(a)以下:
(i)2.5重量%~25重量%のプシロシン、
(ii)1.0重量%~15重量%の重炭酸ナトリウム、
(iii)1.0重量%~15重量%のアスコルビン酸、および
(iv)1.0重量%~15重量%のモノアミンオキシダーゼ阻害剤;
を含む製剤を収容する薬物リザーバー、ならびに
(b)薬物投与中に前記システムの外面としての機能を果たす裏打ち層
を含み、ここで
(c)前記薬物リザーバーは、前記被験体の皮膚に前記システムを貼付するための手段としての機能を果たす皮膚接触粘着剤から構成されるか、または
(d)皮膚接触粘着剤材料の層は、前記薬物リザーバーに積層され、前記被験体の皮膚に前記システムを貼付するための手段としての機能を果たす、
システム。
【請求項32】
催幻覚剤の継続的なマイクロドーズ送達に応答する疾患または障害を罹患している被験体を処置するための方法であって、請求項1~27および29~31のいずれか1項に記載の経皮送達システムを前記被験体の皮膚の局所領域に適用する工程、ならびに前記システムを長期の薬物送達期間を通じて適所に留置させる工程を含む、方法。
【請求項33】
前記疾患または障害が、神経因性疼痛;外傷痛;心的外傷後ストレス障害(PTSD);肥満;鬱病;不安;神経変性疾患;群発性頭痛;およびアルコール中毒症から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
催幻覚剤の継続的なマイクロドーズ送達に応答する疾患または障害を罹患している被験体を処置するための方法であって、請求項28に記載の製剤を前記被験体の皮膚の局所領域に適用する工程、および前記製剤を長期の薬物送達期間を通じて適所に被覆された状態で留置させる工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、一般に、薬物療法における催幻覚剤の使用に関し、より具体的には、種々の障害、疾患、および他の有害な状態の予防および処置のための催幻覚剤の経皮投与に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
近年、主にキノコから抽出された催幻覚剤の潜在的な治療上の使用についての研究が進められている。天然に存在する催幻覚剤の多くは、インドール系である(例えば、トリプタミン(5-ヒドロキシトリプタミン(セロトニン)が挙げられる)およびその誘導体)。インドールおよびトリプタミンの基本構造を以下に示し、式中、分子構造上の置換可能な位置を示すために、標準的なナンバリングシステムを使用している:
【化1】
【0003】
約600種の天然に存在するインドール化合物のうち、プシロシビンは、最も研究されているものの1つであり、多数の精神上の健康状態の処置および管理における魅力的かつ潜在的に強力な薬剤であることが特定されている。プシロシビンは、以下の分子構造を有する:
【化2】
【0004】
ジメチルアミノ官能基の存在と組み合わせたリン酸基の極性により、生理学的pHの環境下で分子を双性イオン性にする。
【化3】
【0005】
プシロシビンは、200種を超えるPsilocybe属のキノコ(P.azurescens、P.cyanescens、P.cubensis、およびP.semilanceataが挙げられる)で見出され得る。分類学的にこれらの種は全てその各々の種のメンバーと見なされているが(ほとんどがP.cubensisである)、外観、培養に必要な条件、および効力が劇的に異なり得る。例えば、Stamets,Psilocybin Mushrooms of the World(Ten Speed Press,1995)を参照のこと。これらのキノコは、多くの異なる精神活性剤、主にトリプタミンを含み、典型的には、プシロシビンは濃度が最も高い。他の催幻覚化合物(主に、プシロシンおよびベオシスチン)のレベルおよび比率は、種間で変動する。希少種のP.azurescensは、最高濃度のプシロシビンおよびプシロシンを含むので、Psilocybe属のキノコのうちで最強であり、一方、P.cubensisは、「マジックマッシュルーム」と一般に称される種である。
【0006】
プシロシビンの薬物動態学、薬理学、およびヒトにおける代謝は周知であり、十分に特徴づけられている。例えば、Bauer,’’The Pharmacology of Psilocybin and Psilocin,’’Psychedelic Science Review(March 13,2019);Passie et al.(2002),’’The pharmacology of psilocybin,’’Addiction Biology 7(4):357-64;Brown et al.(2017),’’Pharmacokinetics of Escalating Doses of Oral Psilocybin in Healthy Adults,’’Clin.Pharmacokinet.56(12):1543-54;およびDinis-Oliveira(2017),’’Metabolism of psilocybin and psilocin:clinical and forensic toxicological relevance,’’Drub Metab.Rev.49(1):84-91を参照のこと。プシロシビンは、学術的環境下で行われた第2相臨床試験で広く利用されている。プシロシビンおよびPsilocybe属のキノコ由来の他の薬剤の大きな影響としては、多くの(全てではないが)精神機能(知覚、気分、意欲、認知、および自己経験(self-experience)が挙げられる)の顕著な変質を特徴とする知覚、感情、思考、および自意識(sense of self)の変化が挙げられる。初期の臨床研究では、強迫性障害(OCD)、物質使用障害、鬱病、および不安の処置において予備的有効性が確立された。
【0007】
プシロシビンの臨床的安全性は、成人集団における単剤および補助療法の両方として広く研究されている。プシロシビンは、経口および/または静脈内送達を介して投与されており、オープンラベルおよび二重盲検の対照試験の両方で研究されている;IND番号129532(2018年12月17日)のUsona Institute治験薬概要書を参照のこと。前述の研究では、経口投薬量は、0.014mg/kgから0.6mg/kgまでの範囲であり(平均的なヒトについて約1mg~40mg)、この投薬量を単回用量で、または間隔を開けた複数回の用量に分割して投与した。プシロシビンの効果は、人格構造および状況などの他の要因がその全体的な効果を変化させるようであるが、用量依存性であることが示された。ほとんどの試験被験体が気分、知覚、思考、および自己経験の顕著な変化を経験するが、高用量では、強い不快気分および/または不安/パニックを特徴とする急性の薬物有害反応を生じ得る。
【0008】
多くの研究者がプシロシビンの潜在的な薬学的適用に興味を示しているにもかかわらず、プシロシビンを医薬品として首尾よく利用するには多数の障害がある。例えば、プシロシビンを患者に経口投与または静脈内投与した場合、有意な生理学的および心理学的な有害事象が生じ得る。Psilocybe属のキノコの経口投与は、例えば、重度の胃腸障害を引き起こし得る;Bauer(2019),前出を参照のこと。心理学的副作用に関して、プシロシビンは、個体によっては高用量でパラノイア、パニック、および精神疾患に至ることが周知である。いくつかの他の安全性に関連する問題もある。
【0009】
さらに、プシロシビンを経口投与または静脈内投与した場合、脳内で所望の治療効果を達成するためにはその活性代謝産物(プシロシビンの4-ヒドロキシアナログ(プシロシン))に変換されなければならない;双性イオン性プシロシビンは、水に極めて溶けやすく、血液脳関門または他の生理学的膜を通過することができない。プシロシビンと対照的に、プシロシンは血液脳関門を通過することができる。プシロシビンのCNSへの影響はプシロシンへの変換後のみ認められることが確認されている(例えば、Horita and Weber,’’Dephosphorylation of psilocybin in the intact mouse,’’Toxicology and Applied Pharmacology 4(6):730-737を参照のこと)。したがって、プシロシビンは、活性な分子形態であるプシロシンのプロドラッグである。
【化4】
【0010】
アルカリホスファターゼ(ALP)は、プシロシビンを脱リン酸化する(腸粘膜で起こる迅速な反応)主要な酵素である。他のホスファターゼは、腸、腎臓、および血液中のプシロシビンを脱リン酸化する。しかしながら、ALP濃度は、年齢、根底にある医学的状態、および/または継続中の医学的処置(例えば、化学療法)に応じて患者ごとに劇的に変動する。ALP濃度の変動性により、得られるプシロシン濃度も変動するであろう。従って、他者が意図するプシロシビンの投与では、治療効果が予測不可能で一貫性がなく、前述のような潜在的に危険な副作用も引き起こしていた。
【0011】
プシロシビンの経口投与は安全であると示唆する研究者もいたが、使用者は前述のような望ましくない全身性の反応および他の有害事象を訴えていた;最も重要な有害事象は、望ましくない「バッドトリップ」経験(すなわち、不快な向精神性効果)である。これは、投薬量および/または患者のALP濃度が非常に高い場合に起こり得る。別の頻繁に議論されていない重篤な病的状態は、セロトニン(5-HT)症候群(SS、セロトニン毒性または高セロトニン血症)であり、これは脳内での過剰なセロトニン作動活性に起因する。SSは、最も重要な神経毒性症候群のうちの1つであり、一般に、セロトニン作動性抗鬱薬の過剰摂取またはいくつかのセロトニン作動薬の間の相互作用に起因して発症する。毒性の程度に依存して、SSは、神経筋、自律神経、および精神症状という3つの特徴的な症状として臨床的に症状発現し、この症状は軽度から致死的までの範囲であり、薬物投与の数時間後以内に急速に発症し得る。SSの初期の症状としては、典型的には、頻拍、身震い、発汗、瞳孔散大、振戦、および反射亢進が挙げられる。セロトニン毒性が軽度から中等度に進行すると、高血圧症、発熱、および精神状態の変化(錯乱、軽躁病、不安、および激越など)を生じる。最後に、重度のSSの症例には、筋固縮、緊張過度、高熱、発作、および昏睡がある。
【0012】
前述の制限に対処するために代替の非経口投与経路を考慮する場合があり、低用量の薬物を継続的に投与して公知の有害作用を回避しようとする限りにおいて、経皮経路が特に興味深い。GI副作用が回避されるようにGI系が回避されると考えられ、より高い用量および/またはより高い患者のALP濃度に関連する心理学的および神経学的な副作用も回避されるであろう。しかしながら、プシロシビンは、皮膚を通過することができない。さらに、活性代謝産物であるプシロシンはヒドロキシルおよびアミノ官能基上に電荷が局在する極性分子であるので、これも経皮投与の候補としては不十分であると予想されるであろう。荷電分子(双性イオン、対イオンに関連するカチオンもしくはアニオン、または電荷が局在した極性分子であり得る)は、皮膚を通過しない傾向があることが経皮薬物送達分野で周知である。したがって、荷電分子は、一般に、経皮投与の候補とは見なされない。例えば、Tanwar et al.(2016),’’Transdermal Drug Delivery:A Review,’’Int.J.Pharm Sci Res 7(6):2274-90を参照のこと。
したがって、プシロシンなどの催幻覚剤を投与することができる方法が当該分野で必要であり、その後に、かかる化合物を、治療の状況において患者に安全かつ有効に投与することができる。本発明は、前述の当該分野のニーズに対処している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Tanwarら、Int.J.Pharm Sci Res(2016)7(6):2274~90
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の概要
プシロシビン(双性イオン)は、上で説明した通り、脳内で治療効果を達成するために血液脳関門を通過できない。荷電薬物が皮膚透過性をほとんど示さないか全く示さないということに限って言えば、プシロシビンの経皮投与可能性についても同じことが言える。小型で4-ヒドロキシル基上に電荷が局在しており、典型的に窒素原子上で電子の移行が認められるプシロシンは、経皮薬物送達の候補ではないことが同様に推測されるであろう。しかしながら、驚いたことに、プシロシンが経皮薬物送達のための実行可能な候補であるだけでなく、角質層および皮膚の上層を実際に通過することができるため、所望の治療効果を達成するために経皮投与することができることがここに見出された。
【0015】
本明細書中および特許請求の範囲に記載のプシロシンおよび他の催幻覚剤の経皮送達により、血中濃度レベルが制御され、それにより、濃度プロファイルの「ピークと谷(valley)」を回避しながら治療効果を得ることが可能である。ここで、高い「ピーク」は「バッドトリップ」経験に関連する場合があり、「谷」は、治療が全くないことを示す。さらに、望ましくない副作用の結果として治療の停止が示される場合、送達を直ちに停止するように経皮システムを除去することができる一方で、経口製品は一旦投与されると除去することができないか、あるいは注射は取り消すことができない。また、本明細書中に提供した経皮薬物送達は、胃腸管を回避するので、可変のアルカリホスファターゼレベルに起因する予想外の効果が回避される。このことは、高い薬物濃度に深刻な影響を受ける場合がある小児または高齢者の処置において特に重要である。
【0016】
本発明は、本明細書中に提供した経皮投与によって閾値下の用量(当該分野で「マイクロドーズ」とも称される)の催幻覚剤の継続的な送達が達成される場合に限り、経口経路または静脈内経路を介して投与した場合に望ましくない副作用が回避される、プシロシンおよび他の催幻覚剤を経皮投与するためのシステム、方法、および製剤を提供する。経皮薬物送達期間を通して催幻覚薬マイクロドージング(psychedelic microdosing)を提供することにより、本発明は、催幻覚薬マイクロドージングが所望の治療効果または他の効果(創造性の改善、活力レベルの上昇、気分の安定化、ならびに不安、鬱病、嗜癖、および他の状態の処置など)をもたらす任意の方法で有用である。
【0017】
催幻覚剤としては、セロトニン作動性催幻覚剤(例えば、プシロシンなどのインドールアルキルアミン化合物)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
1つの実施形態では、次いで、本発明は、被験体の皮膚の局所領域を通過して被験体に催幻覚活性剤を経皮投与するための薬物送達システムを提供する。このシステムは、外面および底面を有し、以下を含む:
【0019】
(a)以下を含む製剤を収容する薬物リザーバー:
【0020】
(i)約0.5重量%~約40重量%の、既知のpKaを有する催幻覚活性剤、
【0021】
(ii)皮膚透過促進有効量の、溶媒タイプの促進剤と脂質破壊促進剤との組み合わせを含む促進剤組成物、および
【0022】
(iii)pH調整有効量の、前述の局所領域内のpHを前述のpKaの25%以内に維持するpH調整剤;ならびに
【0023】
(b)前述の製剤に実質的に不透過性であってもなくてもよく、薬物投与中に前述のシステムの外面としての機能を果たす裏打ち層。
【0024】
また、システムは、システムを皮膚に貼付する手段を含み、ここで、裏打ち層は、その目的を果たす皮膚接触粘着剤であり得るか、皮膚接触粘着剤の層(例えば、縁部)などの追加の要素が薬物リザーバーに積層されており、薬物投与中にシステムを被験体の皮膚に貼付するのに役立つ。
【0025】
実施形態の1つの態様では、催幻覚活性剤は、極性および/またはイオン化可能な分子であり、pH調整剤は、局所領域内のpHをpKaの15%以内に維持するために選択され、いくつかの実施形態では、活性剤のpKaに近似するようにpHを維持する。製剤が、少なくとも一部が水性である液体ビヒクルを含むか、活性剤が血流に輸送される皮膚の水含有層内に存在し得るか、これらの両方である場合、このpH調整剤が薬物リザーバー中に存在し得る。
【0026】
別の態様では、経皮薬物送達システムは、薬物リザーバーが、活性剤の製剤の収容に加えて、システムを皮膚に貼付するのに役立つ皮膚接触粘着剤から構成されている単層の粘着剤システムを含む。システムは、貯蔵中および薬物送達前のシステムの底面を保護する除去可能な剥離ライナーを含む。
【0027】
さらなる態様では、経皮薬物送達システムは、一体型のマトリックスシステムを含み、ここで、この場合も薬物リザーバーはポリマーマトリックスを含むが、同様にシステムを皮膚に貼付する手段としては役立たない。むしろ、別個の皮膚接触粘着剤層が薬物リザーバーの皮膚側に積層される。
【0028】
別の態様では、薬物リザーバーは、システムが液体リザーバーシステムであるように活性剤を含む製剤を収容する密閉パウチを含む。1つのデザインにおいて、リザーバーは、外側の裏打ち層と熱シールした膜との間に配置され、ここで、熱シールした膜は、システムを皮膚に貼付するための皮膚接触粘着剤層に積層される。膜は、システムからの薬物の放出速度、システムからの促進剤の放出速度、またはこれらの両方を制御するように選択され得る。別のデザインでは、前述の実施形態におけるパウチの代わりに微孔性の非粘着性リザーバーを使用し、リザーバーを皮膚に直接接触させる。皮膚接触粘着剤層を、外側の裏打ち層と微孔性リザーバーとの間に組み込む。皮膚への粘着を容易にするために、微孔性リザーバーの表面積は、皮膚接触粘着剤層の表面積より小さく、それにより、皮膚接触粘着剤層がリザーバーの外縁部を超えて広がり、被覆されていない(すなわち、露出した)粘着領域がシステムを皮膚に貼付するために利用可能である。
【0029】
別の態様では、薬物リザーバー中の製剤は、粘度調整剤、乳化剤、可溶化剤、防腐剤、乳白剤、着色剤、香料、および刺激緩和添加物から選択される少なくとも1つの賦形剤を追加で含む。特に興味深い賦形剤は、製剤の安定薬であり、この安定薬は、アスコルビン酸またはアスコルビン酸塩などの活性剤の安定薬であり得る。
【0030】
さらなる態様では、経皮送達システムは、約6時間から約84時間の範囲(例えば、約8時間から約24時間の範囲の長期の薬物送達期間を通して、活性剤の持続放出を提供する。
【0031】
なおさらなる態様では、催幻覚剤は、長期の薬物送達期間中に0.5ng/ml~約5.0ng/mlの範囲の血中レベルを提供するのに有効な量で存在する。
【0032】
別の実施形態では、被験体の皮膚の局所領域にプシロシンを経皮投与するための薬物送達システムを提供し、前述のシステムは、外面および底面を有し、以下:
【0033】
(a)以下を含む製剤を収容する薬物リザーバー:
【0034】
(i)約0.5重量%~約40重量%のプシロシン、
【0035】
(ii)局所領域内をpH7.20~9.74の範囲に調整/維持する量の緩衝化剤;および
【0036】
(iii)0.5重量%~15重量%のモノアミンオキシダーゼ阻害剤;ならびに
【0037】
(b)薬物投与中に前述のシステムの外面としての機能を果たす裏打ち層
を含み、ここで
【0038】
(c)薬物リザーバーは、前述の被験体の皮膚に前述のシステムを貼付するための手段としての機能を果たす皮膚接触粘着剤から構成されるか、または
【0039】
(d)皮膚接触粘着剤材料の層は、前述の薬物リザーバーに積層され、前述の被験体の皮膚に前述のシステムを貼付するための手段としての機能を果たす。
【0040】
実施形態の1つの態様では、製剤は、貯蔵中および薬物送達前の酸素誘導性の分解および/または酸素誘導性の反応からプシロシンが保護されるような活性剤の安定薬(酸素捕獲剤が挙げられる)を追加で含む。活性剤の安定薬は、アスコルビン酸またはアスコルビン酸塩であってよく、典型的には、製剤の約0.5重量%~約15重量%を占める。
【0041】
実施形態の別の態様では、pH調整剤は、8.47であるプシロシンのpKaに近似するように活性剤の局所領域中のpHを変化させるために選択される。プシロシン製剤が、少なくとも一部が水性である液体ビヒクルを含むか、プシロシンが皮膚内に放出された後に皮膚の水を含む層内に存在し得るか、これらの両方である場合、プシロシンの局所領域は薬物リザーバー内に存在し得る。
【0042】
さらなる実施形態では、本発明は、被験体の皮膚の局所領域を通過して被験体にプシロシンを経皮投与するための薬物送達システムを提供し、前述のシステムは、外面および底面を有し、以下:
【0043】
(a)以下を含む製剤を収容する薬物リザーバー:
【0044】
(i)2.5重量%~25重量%のプシロシン、
【0045】
(ii)1.0重量%~15重量%の重炭酸ナトリウム、
【0046】
(iii)1.0重量%~15重量%のアスコルビン酸、および
【0047】
(iv)1.0重量%~15重量%のモノアミンオキシダーゼ阻害剤;ならびに
【0048】
(b)薬物投与中に前述のシステムの外面としての機能を果たす裏打ち層
を含み、ここで
【0049】
(c)薬物リザーバーは、前述の被験体の皮膚に前述のシステムを貼付するための手段としての機能を果たす皮膚接触粘着剤から構成されるか、または
【0050】
(d)皮膚接触粘着剤材料の層は、前述の薬物リザーバーに積層され、前述の被験体の皮膚に前述のシステムを貼付するための手段としての機能を果たす。
【0051】
前述の実施形態の態様では、催幻覚剤を被験体に投与するために使用される経皮システムにより、システムから放出されて皮膚を横切る活性剤の総フラックスJが得られ、総フラックスJは、システムフラックス、すなわちパッチフラックス(J)によって主に決定される。
【0052】
他の態様では、経皮送達システムは、パッチフラックスJで活性剤を放出し、活性剤は、皮膚フラックスJで皮膚を横切って輸送され、J:J比は約2:1~約100:1の範囲である。
【0053】
別の実施形態では、モジュラー経皮薬物送達システムを使用して、前述の製剤中の催幻覚活性剤を送達し、ここで、システムの構成要素は、Kochinkeに付与された米国特許出願公開第2020/0268681A1号(本明細書中で参考として援用される)に記載のものに類似している。
【0054】
別の実施形態では、本発明は、前述の製剤の経皮システムのうちのいずれかを被験体の皮膚の局所領域に貼付し、前述のシステムを長期の薬物送達期間を通じて適所に留置させることによって被験体に催幻覚剤を投与する方法を提供する。
【0055】
実施形態の1つの態様では、催幻覚活性剤を、継続的なマイクロドージングレベルで被験体に投与する。
【0056】
本発明の経皮システムを使用した継続的なマイクロドージングレベルでの被験体への催幻覚活性剤。
【0057】
さらなる実施形態では、本発明は、本発明の製剤を使用して継続的なマイクロドージングレベルで被験体に催幻覚活性剤を投与する方法を提供する。
【0058】
さらなる実施形態では、本方法は、本発明の経皮システムを使用して催幻覚剤を経皮投与することによって所望の有益な効果を提供するために被験体に催幻覚剤を投与する方法を提供する。
【0059】
別の実施形態では、本方法は、本発明の製剤を使用して催幻覚剤を経皮投与することによって所望の有益な効果を提供するために被験体に催幻覚剤を投与する方法を提供する。
【0060】
前述の実施形態の態様では、所望の有益な効果は、治療効果である。
【0061】
別の実施形態では、新皮質の5-HT2A受容体占有を所望のレベルまで増加させるために被験体に催幻覚剤を投与する方法を提供し、前述の方法は、以下の工程を含む:
【0062】
薬物送達期間を通して5-HT2A受容体占有の所望のレベルに相当する前述の薬剤またはその代謝産物の血漿レベルを提供するのに有効な様式で被験体に催幻覚剤を経皮投与する工程。
【0063】
実施形態の1つの態様では、催幻覚剤を、被験体の皮膚に経皮薬物送達システムを貼付することによって被験体に投与し、ここで、薬物送達システムは、パッチフラックスJで活性剤を放出し、活性剤は、皮膚フラックスJで皮膚を横切って輸送され、J:J比は、約2:1~約100:1の範囲である。
【0064】
実施形態の別の態様では、皮膚を横切る薬剤の皮膚フラックスJよりもむしろ、システムによって放出される薬剤のパッチフラックスJによって主に決定される総フラックスJを提供するように被験体の皮膚に経皮薬物送達システムを貼付することによって催幻覚剤を被験体に投与し、
【0065】
ここで、前述のシステムは、有効量の催幻覚剤;皮膚透過促進有効量の溶媒タイプの促進剤と脂質破壊促進剤との組み合わせ;およびpH調整剤を含む。
【0066】
本発明の例示的な実施形態のさらなる目的、利点、および顕著な特徴は、以下の説明から当業者に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1図1は、マクロドース送達を介して送達された活性剤またはその代謝産物の血漿濃度プロファイルの、マイクロドーズ送達を用いて認められたものとの比較を概略的に示す。
【0068】
図2図2は、本発明の活性剤の経皮投与のための簡潔な粘着剤システムを概略的に示す。
【0069】
図3図3は、本発明の活性剤の経皮投与のための一体型のマトリックスシステムを概略的に示す。
【0070】
図4図4は、液体リザーバーが熱シールした膜および密閉性の外側の裏打ち層によって封入された空洞を含む、本発明の活性剤の経皮投与のための液体リザーバーシステムを概略的に示す。
【0071】
図5図5は、微孔性リザーバーに送達されるべき活性剤を含む製剤が負荷される、本発明の活性剤の経皮投与のための液体リザーバーシステムを概略的に示す。
【0072】
図6図6は、実施例2および3で調製した経皮プシロシンシステムから経時的に放出された累積質量を示すグラフである。
【0073】
図7図7は、実施例2および3で調製した経皮プシロシンシステムを用いて得られた経時的な皮膚フラックスを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0074】
発明の詳細な説明
1.定義および用語:
【0075】
別段の定義がない限り、本明細書中で使用した全ての技術用語および科学用語は、本発明に属する当業者によって一般的に理解されている意味を有する。本発明を説明するために特に重要な具体的な用語を以下で定義する。
【0076】
他に文脈で明らかにされていない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲では、単数形「a」、「an」、および「the」には複数形が含まれる。したがって、例えば、「薬理学的に活性な薬剤」または簡潔に「活性剤」への言及には、単一のかかる薬剤が含まれ、2またはそれを超えるかかる薬剤も含まれる;「薬学的に許容され得る担体」は、薬学的に許容され得る担体の組み合わせを指し、単一の薬学的に許容され得る担体も指す;「製剤」および「ビヒクル」には、それぞれ、2またはそれを超える製剤およびビヒクルなどを含む。
【0077】
用語「活性剤」は、望ましい薬理学的効果、生理学的効果、精神活性効果、または他の有利な効果を示す任意の化合物、複合体、または組成物を指す。例えば、ある特定の実施形態では、活性剤は、有害な生理学的状態の処置において治療効果を発揮する薬理学的に活性な薬剤であり得る。また、この用語は、例えば、身体または身体の一部と相互作用して所望の状態が得られる薬剤を含む。また、ある特定の実施形態では、活性剤が有する効果が活性剤を投与される被験体に有益と考えられる限り、活性剤が薬理学的に活性な薬剤である必要もなければ、薬学的効果を有する必要もないと理解すべきである。
【0078】
活性剤について言及する場合、特定の化合物(例えば、プシロシン)または化合物クラス(例えば、催幻覚剤)のいずれに特定された場合においても、前述の薬剤について言及するために使用される用語は、特定の分子実体だけでなく、その薬学的に許容され得る、薬理学的に活性なアナログおよび誘導体(塩、エステル、アミド、プロドラッグ、結合体、活性代謝産物、水和物、結晶形態、鏡像異性体、立体異性体、ならびに他のかかる誘導体、アナログ、および関連する化合物が挙げられるが、これらに限定されない)も含むことが意図される。
【0079】
「催幻覚」活性剤は、この用語が本明細書中で使用される場合、被験体の知覚、感情、認知、および意欲に改変をもたらす傾向があり、高用量では幻覚誘発効果を引き起こし得る薬理学的に活性な薬剤を指す。本発明を用いれば、治療有効性を損なうことなく幻覚誘発効果および他の有害作用が回避される。本明細書中で投与される催幻覚活性剤は、Carhart-Harris(2018),’’The Entropic Brain-Revisited,’’Neuropharmacology 142:167-178によって定義された臨界域内またはそれをわずかに超えて、脳のエントロピーを増大させる。
【0080】
出願人は、「経皮」送達によって、経皮(または「経皮的(percutaneous)」)投与および経粘膜投与の両方(すなわち、皮膚または粘膜組織を通って血流に薬理学的に活性な薬剤が通過し、それにより、全身効果が得られる送達)が含まれることを意図する。「表面(topical)」送達は、一般に、皮膚表面、したがって皮膚の最上部領域への活性剤の送達を指し、薬剤が血流に浸透しないので、全身効果よりもむしろ局所効果が得られる。本発明のシステムは、体表に貼付される限りにおいて「表面に」適用されるが、活性剤および活性剤を含む製剤の構成要素(1またはそれを超える透過促進剤など)に応じて、薬物送達は、本明細書において一般に全身薬物送達が好ましいが、経皮または表面のいずれか、従って全身または局所のいずれかであり得る。したがって、本明細書中に別段の指定がない限り、「経皮システム」への言及は、経皮送達または表面送達のいずれかに使用することができるシステムを含み、「経皮送達」への言及は、経皮または表面薬物投与のいずれかに適合することができる方法を含む。
【0081】
本明細書中で使用される用語「処置すること(treating)」、「処置(treatment)」、および「治療の(therapeutic)」は、所望の薬理学的効果または生理学的効果を得るための被験体への医薬品または組成物の投与を指し、したがって、治療目的および/または予防目的のための投与を含む。状態を既に患っている被験体における状態の処置は、一般に、症状の重症度、数、および/または頻度の減少、症状および/または根本にある原因の排除、ならびに損傷の改善または矯正を含む。予防の文脈において、処置は、特定の状態を依然として患っていないが、特定の状態が疑われると同定されている(すなわち、発症リスクがある)被験体への医薬品または組成物の投与を指し、ここで、予防効果は、状態またはその症状の部分的または完全な防止を含む。
【0082】
活性剤、活性剤の組み合わせ、または医薬製剤の「有効量」、「治療有効量」、および「治療有効濃度」という用語は、無毒であるが、所望の結果を得るのに十分な量または濃度を指す。正確な必要量は、被験体の年齢、体重、および一般的な健康状態、処置される特定の状態、状態の重症度、特定の活性剤などの要因、そしてもちろん医師の判断に応じて、被験体ごとに変動するであろう。
【0083】
本発明のシステムおよび製剤中の催幻覚活性剤の有効量は、長期の薬物送達期間を通して活性剤の「マイクロドーズ(microdose)」が被験体に投与されるような量である。催幻覚剤の好ましい用量を指す本明細書中の用語「マイクロドーズ」は、「マクロドース(macrodose)」(すなわち、催幻覚体験をもたらす用量)未満の用量を指し、一般に、マクロドースの最大で約20%、または最大で約15%、または最大で約10%である。一般に、必ずではないが、マイクロドーズは、閾値用量(精神活性剤によって生じる精神的および/または身体的変化を被験体が経験する最低の用量を意味する)未満である。使用される特定の活性剤に応じて、マイクロドーズは、100mg未満、75mg未満、50mg未満、20mg未満、10mg未満、5mg未満、1mg未満、500μg未満、250μg未満、200μg未満、150μg未満、100μg未満、50μg未満、25μg未満、および20μg未満などであり得る。
【0084】
「薬学的に許容され得る」は、生物学的でもその他の点でも望ましくないわけではない材料を意味する(すなわち、前述の材料を、本明細書中に提供された薬学的組成物に組み込んでよく、いかなる実質的に望ましくない生物学的影響を引き起こすことも、組成物の他のいかなる成分とも有害な様式で相互作用することもない)。用語「薬学的に許容され得る」を使用して薬学的担体または賦形剤を指す場合、担体または賦形剤が毒性試験および製造試験の必要とされる基準を満たしており、そして/または米国食品医薬品局作成の不活性成分ガイドに収載されており、「一般的に安全と認められる」(「GRAS」)認証を受けていることを意味する。
【0085】
本明細書中で使用される場合、「被験体」または「個体」または「患者」は、治療を望む任意の被験体を指し、一般に、本発明にしたがって実施されるべき治療のレシピエントを指す。
【0086】
「薬物送達期間」は、活性剤が経皮システムまたは製剤から被験体の皮膚に送達される期間を指し、一般に、約6時間~約84時間(例えば、約8時間~約24時間)の範囲の長期間である。
【0087】
「必要に応じた添加物」または「必要に応じて存在する添加物」においてみられるような「必要に応じた」または「必要に応じて存在する」は、その後に記載される構成要素(例えば、添加物)が存在してもしなくてもよく、その結果、記載には構成要素が存在する場合および存在しない場合が含まれる。
【0088】
用語「実質的に」は、列挙した化学的または物理的な性質からわずかに逸脱する可能性を示し、実際の化学的または物理的な性質と列挙した化学的または物理的な性質の間の最大で約20%、または最大で約10%、または最大で約5%の相違を許容する。用語「実質的に同質の」は、例えば、材料内の任意の2つの不連続な領域が、材料の化学的または物理的な性質(構成要素の有無、粒径、構成要素の濃度、親水性もしくは親油性の程度、密度、または結晶化度など)に関して、最大で約20%、または最大で約10%、または最大で約5%異なる、材料全体が実質的に均一な2またはそれを超える構成要素の混合物の形態の材料を指す。
【0089】
同様に、用語「およそ」および「約」は、任意の文脈において、最大で約20%の変動の可能性を意味することが意図される。一般に、この用語は、最大で約10%、または最大で約5%の変動の可能性を意味する。
【0090】
化学的置換基および化合物の用語:
【0091】
本明細書中で使用される場合、語句「構造を有する」は、制限を意図せず、用語「~を含む」が一般的に使用される場合と同一の方法で使用される。
【0092】
本明細書中に記載の用語「アルキル」は、必須ではないが、典型的には1~約24個の炭素原子を含む分岐または非分岐の飽和炭化水素基を指す(メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、オクチル、およびデシルなど、ならびにシクロアルキル基(シクロペンチルおよびシクロヘキシルなど))。一般に、これも必須ではないが、本明細書中のアルキル基は、1~約18個の炭素原子、好ましくは1~約12個の炭素原子を含む。用語「低級アルキル」は、1~6個の炭素原子のアルキル基を意図する。好ましい低級アルキル置換基は、1~3個の炭素原子を含み、特に好ましいかかる置換基は、1個または2個の炭素原子を含む(すなわち、メチルおよびエチル)。「置換アルキル」は、1またはそれを超える置換基で置換されたアルキルを指し、用語「ヘテロ原子を含むアルキル」および「ヘテロアルキル」は、以下にさらに詳述するように、少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子で置換されたアルキルを指す。別段の指示がない限り、用語「アルキル」および「低級アルキル」には、それぞれ、直鎖、分岐鎖、環状、非置換、置換、および/またはヘテロ原子を含むアルキルまたは低級アルキルが含まれる。
【0093】
本明細書中で使用される用語「アリール」は、別段の指定がない限り、単一の芳香環、または互いに縮合しているか、直接連結しているか、あるいは(異なる芳香環がメチレン部分またはエチレン部分などの共通の基に結合するように)間接的に連結している複数の芳香環を含む芳香族置換基を指す。好ましいアリール基は、5~24個の炭素原子を含み、特に好ましいアリール基は、5~14個の炭素原子を含む。アリール基の例は、1つの芳香環または2つの縮合または連結した芳香環を含む(例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルアミン、およびベンゾフェノンなど)。「置換アリール」は、1またはそれを超える置換基で置換されたアリール部分を指し、用語「ヘテロ原子を含むアリール」および「ヘテロアリール」は、以下にさらに詳述するように、少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子で置換されたアリール置換基を指す。別段の指示がない限り、用語「アリール」には、非置換、置換、および/またはヘテロ原子を含む芳香族置換基が含まれる。
【0094】
用語「環式」は、置換されていても置換されていなくてもよく、そして/またはヘテロ原子を含んでいても含んでいなくてもよく、単環、二環、または多環であってよい脂環式または芳香族の置換基を指す。
【0095】
用語「脂環式」は、芳香族環状部分とは対照的に、脂肪族環状部分を言及するために従来の意味で使用され、単環、二環、または多環であってよい。
【0096】
「ヘテロ原子を含むアルキル基」(「ヘテロアルキル」基とも称される)または「ヘテロ原子を含むアリール基」(「ヘテロアリール」基とも称される)においてみられるような用語「ヘテロ原子を含む」は、1またはそれを超える炭素原子が炭素以外の原子(例えば、窒素、酸素、硫黄、リン、ケイ素、もしくはセレン、典型的には窒素、セレン、酸素、もしくは硫黄、好ましくは窒素もしくはセレン、または窒素およびセレンの両方)で置換された分子、連結、または置換基を指す。同様に、用語「ヘテロアルキル」は、ヘテロ原子を含むアルキル置換基を指し、用語「複素環式」は、ヘテロ原子を含む環式置換基を指し、用語「ヘテロアリール」および「ヘテロ芳香族(heteroaromatic)」は、それぞれ、ヘテロ原子を含む「アリール」および「芳香族」置換基などを指す。ヘテロアルキル基の例には、アルコキシアリール、アルキルスルファニル置換アルキル、およびN-アルキル化アミノアルキルなどが含まれる。ヘテロアリール置換基の例には、ピロリル、ピロリジニル、ピリジニル、キノリニル、インドリル、ピリミジニル、イミダゾリル、1,2,4-トリアゾリル、テトラゾリルなどが含まれ、ヘテロ原子を含む脂環式基の例は、ピロリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、ピペリジノなどである。
【0097】
「ヒドロカルビル」は、1~約30個の炭素原子、好ましくは1~約24個の炭素原子、より好ましくは1~約18個の炭素原子、最も好ましくは約1~12個の炭素原子を含む一価のヒドロカルビルラジカル(直鎖、分岐鎖、環状、飽和、および不飽和の種(アルキル基、アルケニル基、およびアリール基など)が含まれる)を指す。「置換ヒドロカルビル」は、1またはそれを超える置換基で置換されたヒドロカルビルを指し、用語「ヘテロ原子を含むヒドロカルビル」は、少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子で置換されたヒドロカルビルを指す。別段の指示がない限り、用語「ヒドロカルビル」は、置換され、そして/またはヘテロ原子を含むヒドロカルビル部分を含むと解釈されるべきである。
【0098】
「置換アルキル」、「置換アリール」、「置換ヒドロカルビル」などにおいて見られるような「置換された」は、前述の定義のうちのいくつかから示唆されるように、アルキル、アリール、または他の部分において、炭素(または他の)原子に結合した少なくとも1つの水素原子が1またはそれを超える非水素置換基で置換されていることを意味する。かかる置換基の例としては、さらなるヒドロカルビル基(例えば、C~C24ヒドロカルビル、C~C12ヒドロカルビル、C~Cヒドロカルビル、およびC~Cヒドロカルビル);官能基、例えば、ハロ、ヒドロキシル、スルフヒドリル、C~C24アルコキシ、C~C24アルケニルオキシ、C~C24アルキニルオキシ、C~C24アリールオキシ、アシル(C~C24アルキルカルボニル(-CO-アルキル)およびC~C24アリールカルボニル(-CO-アリール))、アシルオキシ(-O-アシル)、C~C24アルコキシカルボニル(-(CO)-O-アルキル)、C~C24アリールオキシカルボニル(-(CO)-O-アリール)、ハロカルボニル(-CO)-X(式中、Xはハロである)、C~C24アルキルカルボナト(-O-(CO)-O-アルキル)、C~C24アリールカルボナト(-O-(CO)-O-アリール)、カルボキシ(-COOH)、カルボキシラト(-COO-)、カルバモイル(-(CO)-NH2)、モノ-(C~C24アルキル)置換カルバモイル(-(CO)-NH(アルキル))、ジ-(C~C24アルキル)置換カルバモイル(-(CO)-N(C~C24アルキル))、モノ-(C~C24アリール)置換カルバモイル(-(CO)-NH-アリール)、ジ-(C~C24アリール)置換カルバモイル(-(CO)-N(アリール))、ジ-N-(アルキル)、N-(C~C24アリール)置換カルバモイル、チオカルバモイル(-(CS)-NH)、カルバミド(-NH-(CO)-NH)、シアノ(-C≡N)、イソシアノ(-N+≡C-)、シアナト(-O-C≡N)、イソシアナト(-O-N+≡C-)、イソチオシアナト(-S-C≡N)、アジド(-N=N≡N)、ホルミル(-(CO)-H)、チオホルミル(-(CS)-H)、アミノ(-NH)、モノ-(アルキル)-置換アミノ、ジ-(アルキル)-置換アミノ、モノ-(C~C24アリール)-置換アミノ、ジ-(C~C24アリール)-置換アミノ、C~C24アルキルアミド(-NH-(CO)-アルキル)、C~C24アリールアミド(-NH-(CO)-アリール)、イミノ(-CR=NH、式中、R=水素、アルキル、C~C24アリール、C~C24アルカリル、C~C24アラルキルなど)、アルキルイミノ(-CR=N(アルキル)、式中、R=水素、C~C24アルキル、C~C24アリール、C~C24アルカリル、C~C24アラルキルなど)、アリールイミノ(-CR=N(アリール)、式中、R=水素、C~C24アルキル、C~C24アリール、C~C24アルカリル、C~C24アラルキルなど)、ニトロ(-NO)、ニトロソ(-NO)、スルホ(-SO-OH)、スルホナト(-SO-O-)、C~C24アルキルスルファニル(-S-アルキル;「アルキルチオ」とも称される)、アリールスルファニル(-S-アリール;「アリールチオ」とも称される)、C~C24アルキルスルフィニル(-(SO)-アルキル)、C~C24アリールスルフィニル(-(SO)-アリール)、C~C24アルキルスルホニル(-SO-アルキル)、C~C24アリールスルホニル(-SO-アリール)、ホスホノ(-P(O)(OH))、ホスホナト(-P(O)(O-))、ホスフィナト(-P(O)(O-))、ホスホ(-PO)、およびホスフィノ(-PH);およびヒドロカルビル部分C~C24アルキル(好ましくはC~C18アルキル、より好ましくはC~C12アルキル、最も好ましくはC~Cアルキル)、C~C24アルケニル(好ましくはC~C18アルケニル、より好ましくはC~C12アルケニル、最も好ましくはC~Cアルケニル)、C~C24アルキニル(好ましくはC~C18アルキニル、より好ましくはC~C12アルキニル、最も好ましくはC~Cアルキニル)、C~C24アリール(好ましくはC~C14アリール)、C~C24アルカリル(好ましくはC~C18アルカリル)、およびC~C24アラルキル(好ましくはC~C18アラルキル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
さらに、前述の官能基は、特定の基が許容される場合、1またはそれを超えるさらなる官能基または1またはそれを超えるヒドロカルビル部分(上記で具体的に列挙されているものなど)でさらに置換されてよい。同様に、上記のヒドロカルビル部分は、1またはそれを超える官能基またはさらなるヒドロカルビル部分(具体的に列挙されているものなど)でさらに置換されてよい。
【0100】
用語「置換された」が可能な置換基のリストの前にある場合、この用語が前述の群のあらゆるメンバーに適用されることを意図する。例えば、語句「置換されたアルキル、アルケニル、およびアリール」は、「置換アルキル、置換アルケニル、および置換アリール」と解釈すべきである。同様に、用語「ヘテロ原子を含む」が可能なヘテロ原子を含む群のリストの前にある場合、この用語が前述の群のあらゆるメンバーに適用されることを意図する。例えば、語句「ヘテロ原子を含むアルキル、アルケニル、およびアリール」は、「ヘテロ原子を含むアルキル、置換アルケニル、および置換アリール」と解釈すべきである。
【0101】
2.概説:
【0102】
薬理学的に活性な薬剤の経皮投与は、種々の適応症に都合の良い投与経路である。前に説明したように、経皮経路を介した活性剤の送達により、体循環への治療剤の継続的な入力を可能にし、多数の薬物、特に催幻覚剤において問題のあるパルス状の投与ピークが排除される。
【0103】
経皮的吸収過程は、以下の通り説明されている:「薬物システムが表面に適用された場合、薬物が、その担体またはビヒクルから皮膚の表面組織、具体的かつ最も重要には角質層および皮脂で満たされた毛包脂腺管中に受動的に拡散する。正味質量の移動は、角質層および管の全層を通過して生きている表皮および真皮層(dermal strata)中まで続く。したがって、濃度勾配は、皮膚を横切って確立され、この勾配は、本質的に真皮層(dermal layer)中の皮膚の微小循環の外側の範囲で終了する。体循環は、薬物の「シンク」として作用し、薬物が毛細管に到達し、全身系に希釈される平面では薬物はゼロに近い濃度に維持される。いったん薬物が全身循環に入ると、薬物は非常に迅速に分布し、妥当な速度の全身代謝および排泄を与える(すなわち、一般に、全身の蓄積が存在する)。したがって、表皮には直接血液が供給されず、外面から微小循環までの濃度勾配が表皮を直接通過するという事実を理由として、いくつかの薬物は表皮濃度が比較的高い場合がある。」 Flynn et al.,Eds.,Modern Pharmacokinetics(Marcel Dekker,1979)at p.263。
【0104】
全身効果が達成されるように皮膚を通って治療剤を送達するために、皮膚の形態学的および物理化学的な性質を、考慮しなければならない。皮膚は、分子サイズ、親水性、親油性、および電荷に基づいてほとんどの分子に対して高い不透過性を示す。例えば、大型分子は、経皮投与が困難であり、前述のとおり、極性分子および荷電分子は、皮膚を通過しないので、経皮送達の最適な候補とは見なされない。
【0105】
前述の理由のために、全身送達のために皮膚を通っての活性剤の通過を促進するための種々の技術が採用されている。広く使用されており、本明細書中で採用されている1つのアプローチは、角質層のバリアドメイン中への薬物の分配を増加させることによって、皮膚を横切る薬物の透過を促進するための化学的な透過促進剤の使用である。浸透増強剤は、角質層の二重層および細胞間脂質の破壊の増加ならびに特定の薬剤の溶解度を向上させるための角質層の湿潤化の増加などのいくつかの作用機序を有する。極性荷電薬物の場合において、電気的促進技術(イオン導入法およびエレクトロポレーションが挙げられる)が使用されている;化学的促進剤を使用した受動的経皮送達は最適な結果を得られていない。
【0106】
1つの実施形態では、本発明は、催幻覚剤(イオン化可能な分子、イオン化された分子、および/または極性分子など)を経皮投与するためのシステム、製剤、および方法を提供し、ここで、前述の薬剤は、pH調整剤、2つの促進剤の組み合わせ、安定剤、必要ならば、必要に応じて薬学的に許容され得る液体ビヒクルと組み合わせられている。多数の催幻覚剤は、経口経路または静脈内経路を介して投与した場合に望ましくない副作用を有するにもかかわらず、本明細書中に提供した経皮投与によって閾値下の用量(当該分野で「マイクロドーズ」とも称される)の催幻覚剤の継続的な送達を達成する場合に限り、前述の催幻覚剤を、有意な有害作用を生じることなく本発明にしたがって投与することができる。経皮の文脈において、マイクロドーズ送達を達成することは、確実に活性剤の血中濃度を所定の上限(これを超えると有害作用が生じ得る)未満に維持することによって行われる。これは、システムへ組み込まれる薬物の量、すなわち、薬物の負荷度およびシステムと製剤の構成要素の両方の選択によって主に保証される。理想的には、薬物の皮膚を通ってのシステムから血流中まで総入力フラックスJは、皮膚ではなくパッチによって主に制御される。本発明は、皮膚が吸収することができるフラックスよりも遥かに小さなフラックスがパッチから得られる(すなわち、パッチは、皮膚への薬物の送達を制御し、皮膚は、透過抵抗に対してわずかな影響しか有さない)。
【0107】
は、(J×J)/(J+J)によって与えられ、式中、Jは、経皮システムまたは「パッチ」から(水中まで)の薬物のフラックスであり、Jは、皮膚を横切る薬物のフラックスであり、ここで、フラックスは、単位領域あたりの(システムからの)放出速度または(皮膚を通っての)輸送速度であると理解されるであろう。以下の例により概念が明確になる。
【0108】
(1)J=10J→J=(10J×J)/(11J)=10/11 J~J(皮膚-制御放出)
【0109】
(2)J=10J→J=(10J×J)/(11C)=10/11J~J(システム-制御放出)
【0110】
式2は、Jが、例えば、Jの10倍である場合、JはおよそJであることを示す。逆も同様に、システムからのフラックスが、皮膚が吸収することができるフラックスよりも遥かに大きい場合、血流中への総入力速度は皮膚によって決定される。式1は、JがJより遥かに大きい(例えば、10倍)場合、J~Jであることを示す。好ましいパッチ制御送達は、(a)皮膚の透過性を増大させることおよび(b)システムから皮膚への送達フラックスを制御するためのポリマーバリアの利用によって達成される。次に、この送達は、裏打ち材料に熱シール可能であり、かつ促進剤および/または薬物に対して好ましい透過性を有する液体リザーバーシステムのバリアまたは制御膜の選択によって達成される。例えば、溶媒-促進剤フラックスが皮膚を通過する薬物フラックスを決定する場合、液体-リザーバーシステムを構築するために、適切な酢酸ビニル含有量および厚さを有するエチレン-酢酸ビニル膜を選択することができる。例えば、ALZA/Ciba Geigy’s Estraderm(登録商標)は、体内へのエストラジオールフラックスを調整するためにこのエタノールフラックス制御を使用している。膜がエタノールに対して所望の透過性を有するが、薬物に対して大きすぎる透過抵抗を有する場合、薬物を粘着剤層に組み込むことができる。粘着剤層を、薬物輸送および/または溶媒促進剤に対する抵抗がないかほとんどないように選択することができる。粘着剤層が溶媒フラックスに対して抵抗を提供する場合、膜の特徴を透過抵抗が低くなるように調整しなければならない。また、粘着剤層は、可塑剤タイプの皮膚透過促進剤を含むことができるが、この促進剤は所望の速度で膜を浸透することができない場合がある。これらの可塑剤タイプの皮膚透過促進剤は、感圧粘着剤のその粘着性および凝集性を調整するために使用することができるように二重の機能を有する。
【0111】
本発明の経皮システムは、活性剤が「治療有効」量で(すなわち、その意図する目的を達成するのに有効な量で)含まれる製剤を含む。これは薬物送達期間中に活性剤が経皮システムから放出されて、皮膚に入って通り、最終的に血流に入り治療に有効な血中レベルの活性剤および/またはその活性代謝産物が得られることを意味する。好ましい投与様式は、前述から示唆されるように、少量の活性剤が、所望の薬理学的効果と相関する所定のフラックスで、経皮システムから皮膚に周期的に、好ましくかつより典型的には継続的に放出されるマイクロドーズを介する。これは、個体が催幻覚剤を経口で服用する場合、または全用量が個体の血流に実質的な即時放出をもたらすいくつかの他の様式において通常投与される「マクロドース」と対照的である。任意の特定の活性剤についての治療有効量の決定は、当業者の能力の範囲内にある。
【0112】
目的は、所望の治療効果に関連する所望の脳活動評点を達成することである。これは、Carhart-Harrisエントロピー脳仮説から得られる;Carhart-Harris(2018),前出を参照のこと。Carhart-Harrisは、我々の脳の状態を、例えば、fMRI、EEC、またはMEGによって決定される脳エントロピーの特異的な尺度の規模によって指標化することができることを前提としている。我々の通常の精神の意識状態では、Carhart-Harrisは、脳エントロピーが、多かれ少なかれ覚醒および意識に対応する「臨界域」と称されるある特定の範囲内にあり、脳活動のエントロピーまたは複雑性が、秩序が有りすぎることも無秩序すぎることもないことを示している。睡眠状態、鎮静状態、または麻酔状態にある場合、エントロピー脳活動は、臨界域の下方に低下する。しかしながら、標準的な「マクロドース」の催幻覚剤を服用した場合、エントロピーは、上方にシフトし、臨界域を超え、より高い「意識的な満足、精神の柔軟性、および情緒不安定」に向かうが、分析的および収束した思考は損なわれる。本発明にしたがう催幻覚剤の投与は、継続的なマイクロドージングによって脳の活動が臨界域内またはそれをわずかに上回って高められるが、超臨界域の上方の領域は回避される。
【0113】
催幻覚効果の強度が定量されている;Madsen et al.(2019),’’Psychedelic Effects of Psilocybin Correlate with Serotonin 2A Receptor Occupancy and Plasma Psilocin Levels,’’Neuropsychopharmacology 44(7):1328-1334を参照のこと。Madsenらは、ヒト被験体へのプシロシビンの経口投与後の催幻覚体験の主観的強度(Likertスケールを使用して評価)と、新皮質の5-HT2A-R占有%(陽電子放出断層撮影スキャンによって測定した場合の、ベースラインと比較した脳5-HT2A-R結合の変化%)と、血漿プシロシンレベルとの間の関係を決定した。研究者らは、5-HT2A-R占有%が催幻覚体験の重要な決定要因であること、さらに、血漿プシロシン濃度が新皮質の5-HT2A-R占有%と相関することを見出した(Madsen et al.の図3を参照のこと)。以下に詳述するように、本発明は、被験体の5-HT2A-R占有%のレベルを至適範囲に調整することが可能である。
【0114】
3.活性剤:
【0115】
本発明を使用して経皮投与される催幻覚剤は、一般に、セロトニン作動性催幻覚剤(セロトニン5-HT2A受容体アゴニスト)または共感誘発性催幻覚剤(empathogenic psychedelic agent)(セロトニン放出剤)である。
【0116】
セロトニン作動性催幻覚剤の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
【0117】
アルキル化トリプタミン、例えば、プシロシン、ブホテニン、N,N-ジメトキシトリプタミン(DMT)、ベオシスチン、アエルギナシン、5-メトキシ-DMT、5-ブロモ-DMT、N-メチル-N-エチルトリプタミン(NET)、N-メチル-N-イソプロピルトリプタミン(MiPT)、N-メチル-N-プロピルトリプタミン(MPT)、N,N-ジエチルトリプタミン(DET)、N-エチル-N-イソプロピルトリプタミン(EiPT)、N-メチル-N-ブチルトリプタミン(NBT)、N-プロピル-N-イソプロピルトリプタミン、N,N-ジプロピルトリプタミン、N,N-ジイソプロピルトリプタミン、N,N-ジアリルトリプタミン、N,N-ジブチルトリプタミン、N-エチルトリプタミン、N-メチルトリプタミン、トリメチルトリプタミン、α-メチルトリプタミン、α-エチルトリプタミン、α,N-DMT、α,N,N-トリメチルトリプタミン、エトシビン、メトシン、エトシン、メプロシン、ミプロシン、デプロシン、イプロシン、ダルトシン、ルシゲノール、プシロメトキシン、プシラセチン(O-アセチルプシロシン)、メタセチン、エタセチン、イプラセチン、およびその誘導体;
【0118】
ベンゾフラン、例えば、ジメメブフェ(dimemebfe)および5-メトキシ-N,N-ジイソプロピルベンゾフランエチルアミン;
【0119】
イボゴイド、例えば、イボガインおよびボアカンギン;
【0120】
リゼルグアミド、例えば、リゼルグ酸ジエチルアミド(LSD)、リゼルグ酸アミド、N1-メチル-リゼルグ酸ジエチルアミド、N-アセチル-リゼルグ酸ジエチルアミド、リゼルグ酸エチルアミド、リゼルグ酸メチルエステル、リゼルグ酸2,4-ジメチルアゼチチド;リゼルグ酸ピペリジン、N,N-ジメチル-リゼルグアミド、リゼルグ酸β-プロパノールアミド、リゼルグ酸1-ブタノールアミド、ならびに他のリゼルグ酸およびリゼルグアミド誘導体およびアナログ;および
【0121】
フェネチルアミン、例えば、メスカリン、ロフォフィン、イソメスカリン、シクロプロピルメスカリン、エスカリン、トリセスカリン、イソプロスカリン、メタアリルスカリン、ブスカリン、3-メトキシ-4-エトキシフェネチルアミン(MEPEA)、β-メトキシメスカリン、および2,5-ジメトキシ、4-置換フェネチルアミン。
【0122】
本発明による経皮投与可能な催幻覚活性剤の別の群は、エンパソーゲン(すなわち、セロトニン放出剤)であり、以下が挙げられる:
【0123】
置換アンフェタミンおよび置換メチレンジオキシ-フェネチルアミン、例えば、3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)、3,4-メチレンジオキシアンフェタミン(MDA)、2,3-MDA、5-メチル-MDA、3-メトキシ-MDA)、3,4-メチレンジオキシ-N-エチルアンフェタミン(MDEA)、3,4-メチレンジオキシ-N-ヒドロキシアンフェタミン(MDOH)、3,4-エチレンジオキシ-N-メチルアンフェタミン(EDMA)、p-メトキシアンフェタミン、およびp-メトキシメタンフェタミン;および
【0124】
置換カチノン、例えば、メチロン、エチロン、オイチロン、およびペンチロン。
【0125】
本発明を使用して投与することができる催幻覚剤のさらなる群は、N-メチル-D-アスパラギン酸受容体アンタゴニスト、特に、ケタミンである。
【0126】
別の実施形態では、本発明のシステム、製剤、および方法は、催幻覚性インドールアルキルアミンを経皮送達させ、ここで、用語「インドールアルキルアミン」は、催幻覚性インドールアルキルアミン自体を指し、その催幻覚性アナログまたは誘導体も指す。催幻覚性インドールアルキルアミンは、5-ヒドロキシトリプタミン(5-HTまたはセロトニン)のアナログ(気分および行動の両方に影響を及ぼす能力が周知のモノアミン神経伝達物質)である。本明細書中の使用に好適なインドールアルキルアミンの例は、式(I)の分子構造を有する催幻覚活性剤であり、
【化5】
式中、
【0127】
は、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、アミド、-L-Rから選択され、ここで、Lは、必要に応じて置換された、必要に応じてヘテロ原子を含む-(CH-であり、nは、1~6(両端の数字を含む)の範囲の整数であり、Rは、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、または5または6員の脂環式または芳香族N-ヘテロ環であるか、RおよびRが一緒になって少なくとも1つの窒素原子を含む環式基を形成し;
【0128】
は、Hであるか、Rと一緒になって環式基を形成し;
【0129】
、R、およびRは、HおよびORから独立して選択され、ここで、Rは、H、C~Cヒドロカルビル、またはホスホナトであるか、RおよびR、またはRおよびRが一緒になって環式基を形成する。
【0130】
より典型的には:
【0131】
は構造-(CH-Rを有し、ここで、nは、2~4(両端の数字を含む)の範囲の整数であり、Rは、アミノ、モノ(アルキル)-置換アミノ、およびジ(アルキル)-置換アミノから選択され;
【0132】
はHであり;
【0133】
およびRは、HおよびOHから独立して選択され;
【0134】
は、HおよびORから選択され、ここで、Rは、Hまたは低級アルキルである。
【0135】
1つの実施形態では、RおよびRの両方はHであり、Rは構造-N(R10)を有し、ここで、RおよびR10は、Hおよび低級アルキルから独立して選択され、その結果、化合物は、式(II)の構造を有する:
【化6】
【0136】
かかる化合物の1つの群では、RはHであり、式(II)のインドールアルキルアミンは、式(III)の構造を有する:
【化7】
式中、RはHまたはOHであり;nは、2~4(両端の数字を含む)の範囲の整数であり、RおよびR10は、前に定義のとおりである(すなわち、Hおよび低級アルキルから独立して選択される)。
nが2であり、RおよびR10はメチルである場合、式(III)のインドールアルキルアミンは、RがOHである場合はプシロシンであり、RがHである場合はN,N-ジメチルトリプタミン(DMT)であると認識されるであろう。
【0137】
およびRがHである場合、インドールアルキルアミンは、式(IV)の構造を有する:
【化8】
式中、Rは、HおよびOHから選択され、n、R、およびR10は、式(II)および(III)について定義のとおりである。式(II)のインドールアルキルアミンは、Rがヒドロキシルであり、nが2であり、RおよびR10がメチルである場合、ブホテニン(プシロシンの構造異性体)である。
【0138】
催幻覚性インドールアルキルアミンを、単剤療法として投与し得るか、1またはそれを超える他の活性剤と組み合わせて投与し得る。
【0139】
追加の活性剤:
【0140】
催幻覚剤と共投与される任意の追加の活性剤(複数可)は、催幻覚剤と同一の目的を果たし得るか、異なる目的を果たし得る。いくつかの場合、治療有効性に関して相乗作用が認められ得る。いくつかの場合、共投与される活性剤のうちのいずれか1つを用いて認められる副作用の軽減に関して相乗作用が認められ得る。いくつかの場合、相乗作用により、共投与される1またはそれを超える活性剤の投薬量が軽減される。
【0141】
併用療法の場合、追加の活性剤(複数可)を、同一の薬物送達システムに組み込んで同時に共投与し得るか、追加の活性剤(複数可)を、別個の経皮システムを使用するか、代替経路(例えば、経口または静脈内など)を介して投与し得る。したがって、「併用療法」を介した2またはそれを超える活性剤の共投与が同時に行われ得るか、2またはそれを超える活性剤が、異なる時間に逐次的に投与され得る。
【0142】
催幻覚剤と組み合わせて投与され得る追加の活性剤としては、鎮痛剤;麻酔剤;抗関節炎剤;抗がん剤(抗新生物薬が挙げられる);抗痙攣薬;抗鬱薬;抗糖尿病薬;下痢止め薬;抗ヒスタミン薬;高脂血症剤;血圧降下剤;抗感染症薬、例えば、抗生物質および抗ウイルス剤;抗炎症剤;抗片頭痛調製物;制吐薬;抗新生物剤;抗酸化剤;抗パーキンソニズム薬;解熱薬;鎮痙薬;抗不安薬;薬草医薬品;ホルモン分解薬(hormonolytics);筋弛緩薬;ステロイド;および精神安定薬が挙げられる。典型的には、好ましい追加の活性剤は、抗炎症剤、抗ウイルス剤、抗がん剤、抗アポトーシス剤、神経保護薬、および抗酸化剤から選択される。
【0143】
催幻覚剤と共に投与され得る目的の具体的な薬理学的に活性な薬剤クラスとしては、下記が挙げられるが、これらは例示であり、制限されない。
【0144】
モノアミンオキシダーゼ(MAO)阻害剤は、催幻覚剤と有利に共投与される活性剤のさらなるクラスの代表である。MAO阻害剤は、MAOによって代謝される催幻覚剤(例えば、プシロシビンおよびブホテニン)に関して特に興味深い。MAO阻害剤の例としては、非選択的MAO-A/MAO-B阻害剤、例えば、イソカルボキサジド、ヒドラカルバジン、フェネルジン、およびトラニルシプロミンなど;選択的MAO-A阻害剤、例えば、ビフェメラン、モクロベミド(moclobemnide)、ピルリンドール、およびトロキサトン;可逆的MAO-A阻害剤、例えば、ハルミン、ハルマリン、およびd-1,2,3,4-テトラヒドロハルミン;および選択的MAO-B阻害剤、例えば、ラサギリン、セレギリン、およびサフィナミドが挙げられる。任意のMAO阻害剤を、典型的には約0.5重量%~約15重量%の範囲の濃度(例えば、1.0重量%~約10重量%)で、MAO反応性活性剤と共に薬物リザーバーまたは別個の製剤に組み込むべきである。
【0145】
カンナビノイド:用語「カンナビノイド」は、アサ科植物のCannabis属(Cannabis sativa、Cannabis indica、およびCannabis ruderalisの各種が挙げられる)で見出される化合物、または、天然に存在するか化学合成されたその代謝産物、誘導体、もしくはアナログを指す。カンナビノイドは、広範な薬理学的有用性のうちのいずれかを有することが確立されており、前述のカテゴリーのうちの1つより多くに含まれる。
【0146】
本発明のシステム、製剤、および方法を使用して催幻覚剤と組み合わせて経皮投与することができるカンナビノイドの例としては、テトラヒドロカンナビノール(THC)、ドロナビノール(すなわち、純粋な異性体(-)-trans-Δ-THC)、カンナビクロマノン、カンナビクロメン(CBC)、カンナビクロメン酸、カンナビクロメバリン(CBCV)、カンナビクロメバリン酸、カンナビシトラン(CBT)、カンナビクマロノン(CBCON)、カンナビシクロール(CBL)、カンナビシクロール酸、カンナビシクロバリン、カンナビジオール(CBD)、カンナビジオールモノメチルエーテル、カンナビジオールジメチルエーテル、カンナビジオールジメチルヘプチル、カンナビジオールジメチルヘプチル-7-酸、ジメチルヘプチルペンチルカンナビジオール(DMHP-CBD)、カンナビジオール酸、カンナビジオールコール、カンナビジバリン(CBV)、カンナビジバリン酸、カンナビエルソイン(CBE)、カンナビエルソイン酸、カンナビフラン、カンナビゲロール(CBG)、カンナビゲロールモノメチルエーテル(CBGM)、カンナビゲロール酸、カンナビゲロール酸モノメチルエーテル、カンナビゲロバリン(CBGV)、カンナビゲロバリン酸、カンナビグレンドール、カンナビノジオール、カンナビノジバリン、カンナビノール(CBN)、カンナビノール酸、カンナビノールメチルエーテル、カンナビオルコール、カンナビリプソール、カンナビテトロール、カンナビトリオール、10-O-エチル-カンナビトリオール、カンナビバリクロメン、カンナビバリン、デヒドロカンナビフラン、1,2-ジヒドロキシヘキサヒドロカンナビノール、1,2-ジヒドロキシヘキサヒドロカンナビノールアセタート、ジメチルヘプチルピラン、イソテトラヒドロカンナビバリン、レボナントラドール、ナビロン、リモナバン、Δ-テトラヒドロカンナビノール酸、Δ-テトラヒドロカンナビオルコール、Δ-テトラヒドロカンナビオルコール酸、Δ-テトラヒドロカンナビバリン、Δ-テトラヒドロカンナビバリン酸、8,11-ジヒドロキシ-Δ-テトラヒドロカンナビノール、8,9-ジヒドロキシ-Δ6a,10a-テトラヒドロカンナビノール、Δ-テトラヒドロカンナビノール、Δ-イソテトラヒドロカンナビノール、Δ-テトラヒドロカンナビノール酸、10-オキソ-Δ6a,10a-テトラヒドロカンナビノール(OTHC)、HU-210(1,1-ジメチルヘプチル-11-ヒドロキシ-Δ-THC)、HU-331(3-ヒドロキシ-2-[(1R)-6-イソプロペニル-3-メチル-シクロヘキサ-2-エン-1-イル]-5-ペンチル-1,4-ベンゾキノン)、JWH-018(1-ペンチル-3-(1-ナフトイル)インドール)、および他のJWHカンナビノイド、例えば、JWH-073(John W.Huffman,Clemson University,Clemson,SC)、AM-2201(1-(5-フルオロペンチル)-3-(1-ナフトイル)インドール)および他のAMカンナビノイド(Alexandros Makriyannis,Northeastern University,Boston MA)、およびCP-55,940(2-((1S,2S,5S)-5-ヒドロキシ-2-(3-ヒドロキシプロピル)シクロヘキシル)-5-(2-メチルオクタン-2-イル)フェノール;Pfizer)が挙げられるが、これらに限定されない。鎮痛剤として、これらの化合物は、線維筋痛、関節リウマチ、急性炎症、およびがんに関連する神経因性疼痛または慢性疼痛の処置における使用が提案されている。例えば、A.Hazekamp(2010),’’Review on Clinical Studies with Cannabis and Cannabinoids,’’Cannabinoids 5(特集号):1-21を参照のこと。催幻覚剤と組み合わせて投与することができる他のカンナビノイドは、関連するテキスト、ジャーナル、および特許文献を参照すると当業者に明らかとなるであろう。例えば、Wurzerらの米国特許出願公開第2014/0271940A1号(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
【0147】
抗炎症剤:これらには、非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)、例えば、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ベノキサプロフェン、インドプロフェン、ピルプロフェン、カルプロフェン、オキサプロジン、プラノプロフェン、スプロフェン、アルミノプロフェン、ブチブフェン、フェンブフェン、アパゾン、ジクロフェナック、ジフェンピラミド、ジフルニサル、エトドラク、インドメタシン、ケトロラック、メクロフェナマート、ナブメトン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スリンダク、およびトルメチン;ならびにステロイド性抗炎症剤、例えば、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン-21-モノエステル(例えば、ヒドロコルチゾン-21-アセタート、ヒドロコルチゾン-21-ブチラート、ヒドロコルチゾン-21-プロピオナート、ヒドロコルチゾン-21-バレラート)、ヒドロコルチゾン-17,21-ジエステル(例えば、ヒドロコルチゾン-17,21-ジアセタート、ヒドロコルチゾン-17-アセタート-21-ブチラート、ヒドロコルチゾン-17,21-ジブチラート)、アルクロメタゾン、デキサメタゾン、フルメタゾン、プレドニゾロン、およびメチルプレドニゾロンが挙げられる。
【0148】
抗酸化剤:本明細書中で有用な抗酸化剤は、好ましくは、必ずではないが、天然に存在する化合物、化学合成された天然に存在する化合物、修飾された天然に存在する化合物、および/またはFDAまたは他の規制当局によって摂取しても安全であると承認を受けている化合物である生物活性抗酸化剤である。抗酸化剤としては、例示であり制限されないが、アスコルビン酸、ビタミンE(トコフェロールおよびトコトリエノール)、カロテノイド(例えば、ベータ-カロテン、リコペン、ルテイン、およびゼアキサンチン)、ユビキノール(補酵素Q)、グルタチオン、尿酸、およびリポ酸、ならびに合成抗酸化剤である没食子酸プロピル、第三級ブチルヒドロキノン、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、およびブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)が挙げられる。催幻覚剤と共に送達させることができる他の抗酸化剤については、Kebede et al.(2019),’’Application of Antioxidants in the Food Processing Industry:Options to Improve the Extraction Yields and Market Value of Natural Products,’’Adv.Food Tech.Nutr.Sci.Open J.5(2):38-49(その開示が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
【0149】
催幻覚剤と共投与することができる活性剤の別の群は、Antrodia camphorataマッシュルームで見出される化合物である。Antrodia camphorataの成分としては、テルペノイド、ベンゼノイド、リグナン、ベンゾキノン誘導体、および他の化合物が挙げられる。本明細書中で有用な具体的かつ代表的なAntrodia camphorata化合物は、以下のとおりである:
【0150】
テルペンおよびテルペノイド、例えば、フムレン(α-カリオフィレン)、ミルセン、ピネン(α-ピネンおよびβ-ピネンが挙げられる)、アントロシン、19-ヒドロキシラブダ-8(17)-エン-16,15-オリド、3β,19-ジヒドロキシラブダ-8(17),11E-ジエン-16,15-オリド、13-エピ-3β,19-ジヒドロキシラブダ-8(17),11E-ジエン-16,15-オリド、19-ヒドロキシラブダ-8(17)-13-ジエン-16,15-オリド、14-デオキシ-11,12-ジデヒドロアンドログラホリド、14-デオキシアンドログラホリド、ピヌソリジン酸、アントシンA、アントシンB(ザンク酸A)、アントシンC、アントシンD(ザンク酸F)、アントシンE、アントシンF、アントシンG、アントシンH(ザンク酸C)、アントシンI(ザンク酸B)、アントシンK、メチルアントシナートA、メチルアントシナートB、ザンク酸D、メチルアントシナートG、メチルアントシナートH、ザンク酸E、デヒドロエブリコ酸、デヒドロスルフレン酸、15α-アセチル-デヒドロスルフレン酸、エブリコ酸、スルフレン酸、ベルシスポン酸D、エブリコール(24-メチレンジヒドロラノステロール)、3β,15α-ジヒドロキシ-ラノスタ-7,9(11),24-トリエン-21-酸、3β-ヒドロキシ-ラノスタ-7,9(11),24-トリエン-21-酸、β-シトステロール、β-シトステノン、スチグマステロール、エルゴステロール、エルゴスタ-4,6,8(14)22-テトラエン-3-オン3、およびepi-フリーデリノール;
【0151】
ベンゼノイド、例えば、1,4-ジメトキシ-2,3-メチレンジオキシ-5-メチルベンゼン、1,4-ジメトキシ-2,3-メチレンジオキシ-5-ベンゾアート、1,6-ジメトキシ-2,3-メチレンジオキシ-4-安息香酸、アントロカンフィンA、アントロカンフィンB、2,3,4,5-テトラメトキシベンゾイルクロリド、アントロジオキソラノン、およびイソブチルフェノール;
【0152】
リグナン、例えば、(+)-セサミン、4-ヒドロキシセサミン、および(-)-セサミン;
【0153】
ベンゾキノン誘導体、例えば、5-メチル-ベンゾ(1,3)-ジオキソール-4,7-ジオン、2-メチオキシ-5-メチル(1,4)ベンゾキノン、および2,3-ジメトキシ-5-メチル(1,4)ベンゾキノン、
【0154】
コハク酸およびマレイン酸の誘導体、例えば、trans-3-イソブチル-4-[4-(3-メチル-2-ブテニルオキシ)フェニル]ピロリジン-2,5-ジオン、trans-1-ヒドロキシ-3-(4-ヒドキシフェニル)-4-イソブチルピロリジン-2,5-ジオン、3R,4S-1-ヒドロキシ-3-イソブチル-4-[4-(3-メチル-2-ブテニルオキシ)フェニル]ピロリジン-2,5-ジオン(アントロジンDまたはカンホラタイミドE)、cis-3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-イソブチルジヒドロフラン-2,5-ジオン、3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-イソルブチル-1H-ピロール-2,5-ジオン、3-(4-ヒドロキシフェリル)-4-イソブチルフラン-2,5-ジオン(アントロシンナモミンC)、3-イソブチル-4-[4-(3-メチル-2-ブテニルオキシ)フェニル]フラン-2,5-ジオン(アントロジンAまたはカンホラタ無水物A)、ジメチル2-(4-ヒドロキシフェニル)-3-イソブチルマレアート、3-イソブチル-4-[4-(3-メチル-2-ブテニルオキシ)フェニル]-1H-ピロール-2,5-ジオン(アントロジンBまたはカンホラタイミドB)、アントロシンナモミンD、3-イソブチル-4[4-(3-メチル-2-ニルオキシ)フェニル]-1H-ピロール-1-od-2,5-ジオン(アントロジンCまたは)カンホラタイミドC)、アントロシンナモミンA、3R,4S-1-ヒドロキシ-3-イソブチル-4-[4-(3-メチル-2-ブテニルオキシ)フェニル]ピロリジン-2,5-ジオン(アントロジンEまたはカンホラタイミドD)、およびアントロシンナモミンB;ならびに
【0155】
以下の群内に含まれないその他の化合物(2,2’,5,5’-テトラメトキシ-3,4,3’,4’-bi-メチレンジオキシ-6,6’ジメチルビフェニル、α-トコスピロB、オレイン酸メチル、アントロキノノール、アデノシン、コルジセピン、2,4,5-トリメトキシベンズアルデヒド、アントロキノノールB、4-アセチル-アントロキノノールB、2,3-(メチレンジオキシ)-6-メチルベンゼン-1,4-ジオール、および2,4-ジメトキシ-6-メチルベンゼン-1,3,ジオールが挙げられる)。
【0156】
Geethangili et al.(2009),’’Review of Pharmacological Effects of Antrodia camphorata and Its Bioactive Compounds,’’Evidence-based Complementary and Alternative Medicine 2011:1-17を参照のこと。
【0157】
別の実施形態では、上記のAntrodia camphorataマッシュルームの成分を催幻覚剤の代わりに使用し、単剤療法として投与する。これらの化合物は、現在のがん治療および免疫関連疾患の処置の代替法として同定されている。Antrodia camphorata成分のカンナビノイドとの共投与も想定される。
【0158】
Antrodia camphorataマッシュルームの構成要素、特にテルペノイドが、脂質破壊型の透過促進剤としての機能を果たし、本明細書中の可塑剤タイプの透過促進剤として有利に使用することができることにも注目すべきである。
【0159】
催幻覚剤と共投与することができる他の追加の活性剤としては、例として以下が挙げられる:
【0160】
抗菌剤:テトラサイクリン抗生物質および関連化合物(例えば、クロルテトラサイクリン、オキシ-テトラサイクリン、デメクロサイクリン、メタサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、およびロリ-テトラサイクリン);マクロライド系抗生物質、例えば、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、およびアジスロマイシン;ストレプトグラミン抗生物質、例えば、キヌプリスチンおよびダルホプリスチン;ベータ-ラクタム系抗生物質(ペニシリン(例えば、ペニシリンG、ペニシリンVK)、抗ブドウ球菌性ペニシリン(例えば、クロキサシリン、ジクロキサシリン、ナフシリン、およびオキサシリン)、広域ペニシリン(例えば、アミノペニシリン、例えば、アンピシリンおよびアモキシシリン、ならびに抗緑膿菌性ペニシリン、例えば、カルベニシリン)、セファロスポリン(例えば、セファドロキシル、セフェピム、セファレキシン、セファゾリン、セフォキシチン、セフォテタン、セフロキシム、セフォタキシム、セフタジジム、およびセフトリアキソン)、ならびにカルバペネム、例えば、イミペネム、メロペネム、およびアズトレモナムが挙げられる);アミノグリコシド抗生物質、例えば、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、およびネオマイシン;糖ペプチド抗生物質、例えば、テイコプラニン;スルホンアミド抗生物質、例えば、スルファセタミド、スルファベンザミド、スルファジアジン、スルファドキシン、スルファメラジン、スルファメタジン、スルファメチゾール、およびスルファメトキサゾール;キノロン抗生物質、例えば、シプロフロキサシン、ナリジクス酸、およびオフロキサシン;抗マイコバクテリア薬、例えば、イソニアジド、リファンピン、リファブチン、エタンブトール、ピラジナミド、エチオナミド、アミノサリチル酸、およびシクロセリン;全身性抗真菌剤、例えば、イトラコナゾール、ケトコナゾール、フルコナゾール、およびアンホテリシンB;ならびにその他の抗菌剤、例えば、クロラムフェニコール、スペクチノマイシン、ポリミキシンB(コリスチン)、バシトラシン、ニトロフラントイン、およびメテナミン。
【0161】
抗痙攣剤:アゼタゾラミド、カルバマゼピン、クロナゼパム、クロラゼパート、エトスクシミド、エトトイン、フェルバマート、ラモトリジン、メフェニロイン、メフォバルビタール、フェニロイン、フェノバルビタール、プリミドン、トリメタジオン、ビガバトリン、トピラメート、およびベンゾジアゼピン。
【0162】
抗不安薬および精神安定薬:ベンゾジアゼピン(例えば、アルプラゾラム、ブロチゾラム、クロルジアゼポキシド、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼパート、デモキセパム、ジアゼパム、エスタゾラム、フルマゼニル、フルラゼパム、ハラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、ノルダゼパム、オキサゼパム、プラゼパム、クアゼパム、テマゼパム、およびトリアゾラム)、ブスピロン、クロルジアゼポキシド、およびドロペリドール。
【0163】
抗がん剤および抗新生物剤:パクリタキセル;ドセタキセル;カンプトセシン、ならびにこれらのアナログおよび誘導体(例えば、9-アミノカンプトセシン、9-ニトロカンプトセシン、10-ヒドロキシカンプトセシン、イリノテカン、トポテカン、および20-O-β-グルコピラノシルカンプトセシン);タキサン(例えば、バッカチン、セファロマンニン、およびこれらの誘導体);カルボプラチン;シスプラチン;インターフェロンα-2a、インターフェロンα-2b、インターフェロンα-n3、およびインターフェロンファミリーの他の薬剤;レバミソール;アルトレタミン;クラドリビン;トレチノイン;プロカルバジン;ダカルバジン;ゲムシタビン;ミトタン;アスパラギナーゼ;ポルフィマー;アミホスチン;有糸分裂阻害剤(ポドフィロトキシン誘導体であるテニポシドおよびエトポシドが挙げられる);およびビンカ-アルカロイドであるビノレルビン、ビンクリスチン、およびビンブラスチン。
【0164】
抗ウイルス剤:これらとしては、抗ヘルペス剤、例えば、アシクロビル、ファムシクロビル、ホスカルネット、ガンシクロビル、イドクスウリジン、ソリブジン、トリフルリジン、バラシクロビル、およびビダラビン;抗レトロウイルス剤、例えば、ジダノシン、スタブジン、ザルシタビン、テノボビル、およびジドブジン;ならびに他の抗ウイルス剤(アマンタジン、インターフェロン-α、リバビリン、およびリマンタジンが挙げられる)が挙げられる。
【0165】
神経変性疾患を処置するための薬剤:アルツハイマー病およびハンチントン病を処置するための活性剤としては、ドネゼピル、フィゾスチグミン、およびタクリン(アルツハイマー病処置用)、ならびにフルオキセチンおよびカルバマゼピン(ハンチントン病処置用)が挙げられる。本明細書中で有用な抗パーキンソニズム薬としては、アマンタジン、アポモルヒネ、ブロモクリプチン、レボドパ(特に、レボドパ/カルビドパ併用)、ペルゴリド、ロピニロール、セレギリン、トリヘキシフェニジル、塩酸トリヘキシフェニジル、および抗コリン剤が挙げられる。ALSは、一般に、鎮痙薬(鎮痙剤)、例えば、バクロフェン、ジアゼパム、チザニジン、およびダントロレンで処置される。
【0166】
神経保護薬:グルタミン酸遮断薬およびNMDAチャネル遮断薬、例えば、硫酸マグネシウム;フリーラジカル捕獲剤、例えば、テンポール、ヒドロキシスチルベン、およびオキシレセルバトロール;COX-2阻害剤、例えば、フラボコキシド、バルデコキシブ、およびセレコキシブ;β遮断薬、例えば、プロプラノロール、メトプロロール、およびアテノロール;スタチン、例えば、アトルバスタチン、メバスタチン、ロスバスタチン、およびシンバスタチン;メラトニン;およびエリスロポエチン。
【0167】
アポトーシス阻害剤:これらは、アポトーシス過程を介して細胞の開始または進行を阻害する化合物であり、c-Myc、Bax、p53、tBid、およびBCLの阻害剤、ならびにカスパーゼ阻害剤およびアポトーシス経路に関与する他の酵素が挙げられる。アポトーシス阻害剤の例としては、以下が挙げられる:5-[(4-エチルフェニル)メチレン]-2-チオキソ-4-チアゾリジノン;4’-メトキシフラボン;4-[2-メチル-1-(1-メチルエチル)-1H-イミダゾール-5-イル]-N-[4-(メチルスルホニル)フェニル]-2-ピリミジンアミン;1H-ベンズイミダゾール-1-エタノール、2,3-ジヒドロ-2-イミノ-アルファ-(フェノキシメチル)-3-(フェニルメチル)-一塩酸塩;N-[4-[(4-アミノフェニル)チオ]フェニル]-4-[[(4-メトキシフェニル)スルホニル]アミノ]-ブタンアミド;2-ピリジン-2-イル-4H-1,3-ベンゾチアジン-4-オン;4-クロロ-3-[[(3-ニトロフェニル)アミノ]スルホニル]-安息香酸;コンブレタスタチンA4;環状ピフィスリン-α-臭化水素酸塩;ファセンチン;フェロスタチン-1;3-[6-[[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]アミノ]-4-ピリミジニル]ベンズアミド(GNF-2);2-(1H-インドール-3-イル)-3-ペンチルアミノ-マレイミド(IM-54);イスケミン(ischemin);リプロキスタチン-1;カルパイン阻害剤III;N-エチルマレイミド;4-クロロ-2-[3-(3-トリフルオロメチル-フェニル)-ウレイド]安息香酸;ネクロスタチン-1;および3-(5-フルオロ-1H-インドール-3-イル)-2-メルカプト-2-プロペン酸。
【0168】
4.薬物送達システム:
【0169】
催幻覚活性剤を、本明細書中に提供された表面適用される製剤または経皮薬物送達システムを使用して被験体に経皮的に送達する。前述で指摘した通り、投与される薬剤(またはその代謝産物)の所望の濃度は、システムからのフラックスが、システムから皮膚を通って血流に入る活性剤の総フラックスより優位である限りにおいて、経皮システムによって制御される。本発明のこの特徴は、長期にわたって制御された血中濃度レベルを容易にし、「ピーク」および「谷」を排除することができる。
【0170】
(a)表面適用される製剤:
【0171】
1つの実施形態では、経皮薬物送達システムは、例えば、意図する(または「定量」)用量の液体製剤を皮膚に適用するためのデバイスを使用して、皮膚に適用すべき活性剤を含む製剤を含む。例えば、ロールオン(roll on)タイプのアプリケーター(Baylyらに付与された米国特許第8,419,307号および同第9,289,586号に記載のものなど)を、定量スプレー式デバイスとして使用することができる。
【0172】
製剤は、催幻覚活性剤、皮膚透過促進剤の組成物、およびpH調整剤を含む。製剤を、被験体の皮膚の局所領域に適用して、典型的には6~84時間(例えば、8~24時間)の範囲の薬物送達期間にわたって送達すべき活性剤の用量を投与する。促進剤組成物の蒸発または吸収の際に、促進剤組成物の直接的な促進効果は止まる。次いで、適用領域上に残存しているか、皮膚内に既に存在する薬剤の輸送を、追加の活性剤の非存在下で促進剤組成物を再度適用することによって再活性化することができる。皮膚中および皮膚上に既に存在する薬物の送達を促進するために、この工程を継続する。
【0173】
製剤中の活性剤濃度は、各々の適用において単位用量の活性剤が提供されるように選択される。また、単位用量は、薬物送達期間中に活性剤またはその代謝産物が治療有効血中レベルで提供されるように選択される。
【0174】
この実施形態で使用される促進剤組成物は、溶媒タイプの皮膚透過促進剤と脂質破壊剤とも称される可塑剤タイプの皮膚透過促進剤との組み合わせを含む。
【0175】
溶媒タイプの促進剤としては、C~Cアルコール、例えば、エタノール、イソプロパノール、1,2-ブタンジオール、およびプロピレングリコール;エーテル、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(トランスクトール(登録商標)として購入可能)およびジエチレングリコールモノメチルエーテル;ケトン、例えば、アセトン;エステル、例えば、酢酸エチルおよびギ酸エチル;炭化水素溶媒、例えば、ペンタン;アミンおよび他の窒素化合物、例えば、尿素、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルホルムアミド(DMF)、2-ピロリドン、1-メチル-2-ピロリドン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、およびトリエタノールアミン;アルカノン、例えば、アセトン;有機酸、特にアスコルビン酸、クエン酸、およびコハク酸;ならびにスルホキシド、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびデシルメチルスルホキシド(C10MSO)が挙げられるが、これらに限定されない。かかる促進剤は、製剤中および皮膚中の活性剤の溶解度を増加させる;比較的迅速に皮膚に浸透し、溶解した活性剤を促進剤と共に皮膚中に運搬する溶媒引き込み作用をもたらす促進剤(エタノールなど)もある。
【0176】
可塑剤タイプの促進剤としては、例えば、界面活性剤、例えば、ラウリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、セチルトリメチル-アンモニウムブロミド、塩化ベンザルコニウム、ポロクサマー(例えば、Pluronic(登録商標)231、182、184)、およびポリソルベート(例えば、Tween(登録商標)20、40、60、80);ポリエチレングリコールおよびそのエステル、例えば、ポリエチレングリコールモノラウラート(PEGML);脂肪アルコール、脂肪酸、および脂肪酸のエステル、例えば、オレイン酸(OL)、オレイルアルコール(OA)、ミリスチン酸イソプロピル(IPM)、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、プロピレングリコールモノラウラート、プロピレングリコールジラウラート、グリセロールモノラウラート、ラウリルラクタート、ラウリン酸メチル;グリセロールリン脂質(レシチンが挙げられる);高級アルコール、例えば、2-フェノキシエタノール(PHE)、ウンデカノール、ヘキサノール、オクタノール、およびベンゾイルアルコール、およびサリチルアルデヒド(SA);テルペンおよびテルペノイド、例えば、イソメントン、フムレン、および他のテルペンおよびテルペノイド、例えば、Kang et al.(2013),’’Terpenes and Improvement of Transdermal Drug Delivery’’in Ramawat,eds.,Natural Products(Springer,Berlin)によって同定されたもの;植物油、例えば、ベニバナ油、綿実油、トウモロコシ油、アーモンド油、ヒマシ油、ホホバ油、亜麻仁油など;鉱油およびその構成要素;ならびに他の溶媒、例えば、イソメントン、米国特許第5,053,227号に記載のエーテル/エステル組み合わせ、および1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン(Azone(登録商標)))が挙げられる。
【0177】
製剤は、例えば、緩衝液系であり得るpH調整剤を追加で含む。好適な緩衝液系としては、リン酸緩衝液および重炭酸緩衝液などが挙げられる。また、pH調整剤は、活性剤に応じて、アスコルビン酸、クエン酸、ギ酸、または酢酸などの弱酸であり得る。pH調整剤の目的は、薬剤のpKaに近似するように、一般にpHをpKaの約25%以内にするように、典型的にはpKaの約15%以内にするように、活性剤の局所領域中のpHを維持することである。pKa8.47を有するプシロシンの場合、リン酸緩衝液、特にピロリン酸緩衝液が好適であり、重炭酸ナトリウムも同様である。また、ピロリン酸緩衝液は、pKa7.8を有するLSDおよびpKa8.4を有するDMTに好適なpH調整剤である。pKa9.67を有するブホテニンの場合、リン酸緩衝液を使用することもできるが、わずかにより高いpHを提供する緩衝液が好ましいかもしれない。
【0178】
pH調整剤は、活性剤のpKaに近づけることにより、極性またはイオン化可能な活性剤の、イオン化形態と平衡状態で存在する非イオン化形態の濃度を増加させる。製剤が前述の構成要素に加えて水性液体担体を含む場合、pH調整剤は、製剤のpHを活性剤のpKaに近似させて維持する。液体担体の非存在下での皮膚への到達の際に、pH調整剤が活性剤の領域中(すなわち、皮膚の種々の層内)のpHを薬物の非イオン化形態に有利に働くように維持すると認識されるであろう。
【0179】
製剤は、活性剤を安定化させるための安定剤を追加で含んでよく、それにより、保存および使用中の活性剤の分解または反応が防止される。例えば、プシロシンなどのいくつかの化合物は、フェノール性ヒドロキシル基が分子を不安定にし、ラジカル化およびオリゴマー化の影響を受けやすくするので、酸素の存在下で望ましくない反応を受ける;例えば、Lenz et al.(2020),’’Injury-Triggered Blueing Reactions of Psilocybe ’’Magic’’Mushrooms,’’Angew Chem Int Ed Engl 59(4):1450-1454を参照のこと。したがって、プシロシンおよび他の酸素反応性活性剤に好適な安定剤は、抗酸化剤である。かかる場合において製剤中に有利に組み込まれ得る抗酸化剤としては、先のセクションで同定されたものが挙げられる。好ましい抗酸化剤は、製剤においてさらなる目的(製剤の複雑さを軽減すること)を果たすものである。アスコルビン酸およびアスコルビン酸塩は、酸素捕獲剤としてだけでなく、pH調整剤および溶媒タイプの皮膚透過促進剤としても作用する限りにおいて、好適な酸化剤の例である。
【0180】
製剤は、典型的には、約0.5重量%~約40重量%の活性剤、より典型的には約1重量%~約20重量%(例えば、約1重量%~約10重量%)の活性剤を含み、一方、透過促進剤組成物は、典型的には、製剤の約1重量%~約30重量%、例えば、1重量%~約25重量%(5重量%~約25重量%など)を占める。促進剤組成物に加えて、液体ビヒクルも含まれ得る。送達されるべき活性剤および選択された促進剤組成物の構成要素に応じて、液体ビヒクルは、親水性または疎水性であり得る。
【0181】
また、製剤は、1またはそれを超える従来の添加剤(すなわち、賦形剤、例えば、粘度調整剤(すなわち、増粘剤または薄化剤(thinning agent))、結晶化阻害剤、乳化剤、可溶化剤、防腐剤、乳白剤、着色剤、および香料など)を含むことができる。さらに、医薬製剤は、特定の活性剤またはシステムの他の構成要素に起因し得る皮膚刺激または皮膚損傷の可能性を最小にするか排除するためのグリセリンなどの刺激緩和添加物を含み得る。
【0182】
1つの実施形態では、乾燥して皮膚上で皮膚を密閉するための薄膜となり、それにより皮膚の湿潤化を増大させる生体適合性ポリマーを製剤中に組み込む。かかるポリマーとしては、ポロクサマー(例えば、Pluronic(登録商標)ブロックコポリマー、BASF Corporationから入手可能)、アクリル酸ポリマーおよびコポリマー(例えば、ポリ(アクリル酸、例えば、商標名Carbopol(登録商標)でLubrizol Corporationから入手可能なもの)、化粧品として許容され得る薄膜形成ポリマー(以下が挙げられるが、これらに限定されない):スルホポリエステル、例えば、EastmanAQ(商標)ポリマーとして市販されているもの;シリコーン樹脂およびシリコーン樹脂ゴム、例えば、シクロペンタシロキサン、ジメチコン、およびポリプロピルシルセスキオキサンと必要に応じて混合されたトリメチルシロキシリケート、Dow Chemical Co.からDOWSIL(商標)樹脂および樹脂ゴムとして入手可能;シリコーンアクリラート;エチルセルロースポリマー;疎水性カルボキシル化アクリル酸コポリマー;ならびにデンプンおよび改変デンプン(例えば、NouryonのSTRUCTURE(登録商標)XL)などが挙げられる。
【0183】
別の実施形態では、製剤は、特異的活性剤の望ましくない分解または早すぎる分解を引き起こし得る任意の酵素の1またはそれを超える阻害剤(例えば、MAOによって代謝されるプシロシビン、プシロシン、およびブホテニンなどの薬物のためのMAO阻害剤)を含む。好適なMAO阻害剤は、先のセクションに例示されている。
【0184】
この実施形態の変形形態では、活性剤またはその画分を、リポソームまたはエソソーム(すなわち、ある特定の量のエタノールを含むリポソーム)内にカプセル化する。Nounou et al.(2008),’’Liposomal Formulation for Dermal and Transdermal Drug Delivery:Past,Present,and Future,’’Recent Patents on Drug Delivery&Formulation 2:9-18;Pilch et al.(2018),’’Liposomes with an Ethanol Fraction as an Application for Drug Delivery,’’Int.J.Mol.Sci.19:3806;およびSomwanshi et al.,’’Development and Evaluation of Novel Ethosomal Vesicular Drug Delivery System of Sesamum indicum L.Seed Extract,’’Asian J.Pharmaceut.12(4)を参照のこと。後者の2つの参考文献の開示は、薬物およびエソソーム分散物をそれぞれカプセル化するエソソームを開示するために本明細書中で参考として援用される。プロリポソーム(proliposome)、ニオソーム(niosome)、プロニオソーム(proniosome)、トランスファーソーム(transfersome)、およびプロトランスファーソーム(protransfersome)が類似の様式で使用され得るが、エソソームが一般的に好ましい。Modi et al.(2012),’’Transfersomes:New Dominants for Transdermal Drug Delivery,’’Am.J.PharmTech Res.2(3)を参照のこと。エソソームなどへの総催幻覚剤の画分(例えば、10重量%~90重量%、10重量%~85重量%、または20重量%~75重量%)の組み込みにより、皮膚に侵入後の活性剤の持続放出は、本来の薬物送達期間の終了であるものを超えて延長され、エソソームまたはリトソーム(lithosome)などに組み込まれる活性剤中の画分が大きいほど、薬物送達期間は長期になるであろう。
【0185】
投与される活性剤がプシロシンである場合、薬物の光感受性は、投与後に不透明な材料または金属化された材料で適用領域を被覆することによって相殺され、前述の材料は、皮膚接触粘着剤基部層に有するか、その縁部または周囲に有する薄膜または層であり得る。好適に不透明な布製品で事足り得る。酸素存在下での薬物の潜在的な化学的不安定性には、製剤に酸素捕獲剤(例えば、先のセクション中に追加の活性剤として記載のアスコルビン酸、酵素もしくは酵素の組み合わせ、多価不飽和脂肪酸、または抗酸化剤のうちのいずれか)を組み込むことによって対処する。
【0186】
この実施形態の変形形態では、活性剤を含む製剤を、定量経皮スプレーを使用して被験体の皮膚の領域に適用してもよい。製剤は、エアロゾル化デバイスを使用しない限り、ロールオン製剤と同一の構成要素から構成され、エアロゾル化デバイスの場合、構成要素は、上記から示唆される担体の代わりに揮発性ビヒクルに組み込まれる。
【0187】
1つの実施形態では、被験体に催幻覚活性剤を経皮投与するための表面投与可能な製剤は、以下を含む:
【0188】
(a)約0.5重量%~約40重量%の、既知のpKaを有する催幻覚活性剤;
【0189】
(b)皮膚透過促進有効量の、溶媒タイプの促進剤および脂質破壊促進剤を含む促進剤組成物;
【0190】
(c)pH調整有効量の、前述の製剤が表面適用される皮膚の局所領域内でpKaの25%以内にpHを維持するpH調整剤;および、必要に応じて、
【0191】
(d)安定剤。
【0192】
例えば、製剤は、以下を含み得る:
【0193】
(a)約1.0重量%~約25重量%の、既知のpKaを有する催幻覚活性剤;
【0194】
(b)皮膚透過促進有効量の、溶媒タイプの促進剤および脂質破壊促進剤を含む促進剤組成物;
【0195】
(c)pH調整有効量の、前述の製剤が表面適用される皮膚の局所領域内でpKaの15%以内にpHを維持するpH調整剤;および
【0196】
(d)約1.0重量%~約10重量%のアスコルビン酸またはその塩。
【0197】
(b)経皮パッチ:
【0198】
別の実施形態では、活性剤、溶媒タイプの促進剤/可塑剤タイプの促進剤の組み合わせ、およびpH調整剤を含む、活性剤を含む製剤は、層状経皮送達システム、すなわちパッチ内の薬物リザーバーに組み込まれる。経皮システムは、好ましくは密閉された、典型的には不透明なまたは金属化された裏打ち層を含み、ここで、裏打ち層は、被験体の皮膚へのパッチの適用後にシステムの外面としての機能を果たす。このタイプの裏打ち層は、パッチに光が侵入してプシロシンなどの感光性薬物が不安定化する可能性を防止する。保存中および使用前に、システムは、使用前に粘着性マトリックスの皮膚に面した側を被覆および保護する除去可能な剥離ライナーも含む。
【0199】
裏打ち層は、典型的には、必ずではないが、積層体のアセンブリ後の経皮システムの主要な構造要素であり、柔軟性、ドレープ性(drape)、必要に応じて、密閉性などの物理的特徴を有するデバイスが得られるように選択することができる。裏打ち層としての機能を果たすように選択された材料は、保存条件下で安定であり、材料に積層された粘着剤層の任意の成分に対して化学的に不活性であり、経皮薬物送達システム内に含まれる製剤および製剤の構成要素を吸収できないものであるべきである。バッキングは、好ましくは、組み立てられたシステムの上面の通過による薬物および/またはビヒクルの喪失を防止するための保護被覆材としての機能を果たす柔軟性のあるエラストマー材料の1またはそれを超えるシートまたは薄膜でできている。さらに、裏打ち材料は、適用時に被覆された皮膚領域が湿潤化されるような程度の密閉性がデバイスに与えられるように選択され得る。裏打ち層のために使用される材料は、組み立てられた経皮システムが、皮膚の輪郭に追従することができ、かつ関節または他の屈曲部、通常機械的歪みに供される領域などの皮膚領域上で快適に装着できなければならならず、さらに、皮膚の柔軟性または弾力性とシステムの柔軟性または弾力性との間の相違のためにシステムが皮膚から剥がれる可能性がほとんどないか全くない。
【0200】
裏打ち層に有用な材料の例は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエーテルアミド、およびエチレン-酢酸ビニルコポリマー(EVA)である。裏打ち層を、例えば、3M CorporationからScotchpak(商標)およびCoTran(商標)ブランド(ポリエステルフィルムバッキング(3M Scotchpak(商標)9754、9757および9758)、ポリエステルフィルム積層体バッキング(3M Scotchpak(商標)1012、9723、9730、9733、9735、および9738)、ポリウレタン不織布バッキング(3M CoTran(商標)9700)、ポリウレタン単層フィルムバッキング(3M CoTran(商標)9701)、およびポリエチレン単層フィルムバッキング(3M CoTran(商標)9718、9719、9720、および9722)が挙げられる)として商業的に入手することができる。
【0201】
裏打ち層は、一般に、約10ミクロン~約300ミクロンの範囲の厚み、好ましくは約15ミクロン~約250ミクロンの範囲の厚みであり、必要に応じて、着色されているか、金属化されているか、筆記に好適なつや消し仕上げにて提供され得る。
【0202】
(i)簡潔な粘着剤システム:
【0203】
1つの実施形態では、経皮パッチは、「粘着剤中薬物(drug-in-adhesive)」システムとも称される簡潔な粘着剤システムである。簡潔な粘着剤システムを図2に示し、ここで、薬物リザーバー1は、皮膚接触粘着剤(SCA)層を兼ねており、薬物送達中にシステムを皮膚に貼付するのに役立つポリマーマトリックスを含む。先のセクションに記載の製剤の構成要素を含む薬物リザーバーは、外側の裏打ち層3に直接積層されている。
【0204】
好適な皮膚接触粘着剤は、一般に、感圧接着剤(PSA)であり、好ましくは、粘弾性ポリマーを含み、例えば、ポリシロキサン(シリコーン)、ポリイソブチレン(PIB)、ポリアクリラート、ポリウレタン、およびPIB以外の粘着性ゴム、例えば、ポリスチレン-イソプレンコポリマー、ポリスチレン-ブタジエンコポリマー、およびこれらの混合物から選択され得る。エラストマーポリマーに加えて、PSA組成物は、粘着力を高める樹脂(tackifying resin)、充填剤、安定薬、および/または抗酸化剤、ならびに架橋剤も含むことができ、これらは全て、所望の程度の粘着性、引きはがし粘着力(peel adhesion)、皮膚粘着、および粘着強度(cohesive strength)が得られるように選択される。
【0205】
SCAリザーバーの皮膚接触面は、要素5として図2に記載の除去可能な剥離ライナーによって保存中および使用前に保護されている。剥離ライナーは、典型的には、シリコーンコーティング、フルオロシリコーンコーティング、または他のフルオロポリマーのコーティングで処理されたポリエステルまたは他のポリマーから構成される。市販の剥離ライナーを利用可能であり、例として、Syl-Off(登録商標)製品(Dow Corning Corporationから入手可能)、Tribex Corporationの製品、および3M Scotchpak(商標)の製品が挙げられる。このタイプの経皮薬物送達システムの例示として、Rastogi et al.(2012),’’Transdermal Drug Delivery System:An Overview,’’Asian J Pharmaceut.6(3):161-170の167ページ、図3(c)を参照のこと。Rastogiらの開示は、本明細書中で参考として援用される。
【0206】
(ii)一体型のマトリックスシステム:
【0207】
別の実施形態では、本明細書中で使用される経皮薬物送達システムは、一体型のマトリックスシステムであり、ここで再度、薬物リザーバーは、活性剤を含む製剤が負荷されたポリマーマトリックスではあるが、この場合、皮膚にシステムを貼付するための手段を兼ねていない。一体型のマトリックスシステムを、図3に示す。マトリックスリザーバー7は、皮膚接触粘着剤から構成されても、構成されなくてもよい。むしろ、別個の皮膚接触粘着剤層9は、薬物リザーバーの下側に積層される。この実施形態でマトリックスリザーバーとして好適なSCA以外の材料としては、ポリウレタン、アクリル酸ポリマーおよびコポリマー、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、および当業者に公知の他の材料が挙げられるが、これらに限定されない。Rastogi et al.(2012)は、167ページの図3(b)にこのタイプのマトリックスシステムを示している。図3では、好ましくは、密閉性の外側の裏打ち層を3に示し、剥離ライナーを5に示す。
【0208】
(c)液体リザーバーシステム(LRS):
【0209】
これらのタイプのシステムでは、先のセクションに記載の活性剤を含む製剤を、粘着性マトリックスタイプのリザーバーの代わりに、液体薬物リザーバーに組み込んでいる。本明細書中でLRS-m(m=膜)と命名し、図4に例示した第1の実施形態では、薬物投与のための経皮システムは、液体製剤を収容するためのパウチ、すなわち空洞の形態のリザーバー11を有し、ここで、リザーバーは、熱シールした下側の膜13と密閉性の外側の裏打ち層15との間に配置されている。放出「速度制御膜」としての機能を果たす熱シールした膜は、システムの底面としての機能を果たし、かつ薬物投与中の被験体の皮膚に粘着する皮膚接触粘着剤を含む下層17のすぐ内側に存在する。図4では、剥離ライナーを3に示す。この実施形態では、促進剤組成物および/または活性剤の放出速度を、患者への送達が皮膚ではなく経皮システムによって制御されるように膜によって制御することができる。膜透過性が溶媒タイプの促進剤のフラックスを制御し、次に、皮膚を通過する薬物のフラックスと相関するようにデザインされる場合、薬物を、薬物リザーバー内だけでなく粘着剤層内にも含めることができる。好適な膜材料としては、例として、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレンコポリマー、エチレンオキシドコポリマー、ポリアミド、セルロース誘導体、ポリウレタン、ポリエーテルブロックアミドコポリマー、およびポリ酢酸ビニルが挙げられる。いくつかの膜は、微孔性であり得る(例えば、微孔性のポリエチレンまたはポリプロピレンから製造されるもの)。
【0210】
図5に示した別の実施形態では、活性剤を含む製剤は、外側の裏打ち材料21に積層させた微孔性リザーバー19に組み込まれており、製剤は、前述同様に、好ましくは密閉されており、感光性薬剤への光の到達が防止されるように不透明であるかまたは金属化されている。これはLRS-b(バンドエイド)システムと呼ばれる。薬物/促進剤製剤を充填した微孔性リザーバーは、前述のように、保存中および使用前に剥離ライナー3で被覆されている。この場合、LRS-bは、被験体の皮膚への適用直前に活性剤を含む製剤を負荷することができる。
【0211】
LRS-mパッチおよびLRS-bパッチは、Rastogi et al.(2012)の167ページ図3(a)(ここでは、LRS-mシステムは、「リザーバーシステム」と称されている)および図3(d)(ここでは、LRS-bシステムは、「マイクロリザーバーシステム」と称されている)に例示されている。
【0212】
(d)モジュラー経皮送達システム:
【0213】
別の実施形態では、モジュラー経皮送達システムを使用して、活性剤を含む製剤を被験体の皮膚に送達する。好適なモジュラー経皮送達システムは、米国特許出願公開第2020/0268681A1号、同第2020/0146998A1号、同第2018/0311180A1号、同第2018/0311181A1号、および同第2018/0296498A1号(全てFrank Kochinkeに付与)(これらの開示全体が本明細書中で参考として援用される)に記載されている。これらのモジュラーシステムは、臨床供給品を生産するための大規模製造設定に対する必要を取り除く限り、異なる製剤を評価する場合の臨床試験で有利である。モジュラーパッチの構成要素を予め調製し、研究者、製造者、またはエンドユーザーによって組み立てて負荷させることができる。
【0214】
5.使用方法および適応症
【0215】
先に説明したように、本発明の目的は、マクロドースの投与の際に生じる可能性が高い望ましくない有害作用を生じることなく所望の治療効果を達成するために、被験体に催幻覚活性剤を投与することである。薬物マクロドースの投与を含む従来の即時放出送達を使用して得た血漿濃度プロファイルと比較した、本発明の経皮マイクロドージング法を使用して得た血漿濃度プロファイルを示す図1を参照のこと。
【0216】
1つの実施形態では、本発明は、5-HT2A-R占有%を約5%~約60%の範囲(例えば、約20%~約50%の範囲)のレベルに増加させるために、プシロシンなどの催幻覚剤を被験体に経皮投与する方法を提供する。催幻覚剤がプシロシンである場合、前述の5-HT2A-R占有%の範囲は、血漿プシロシン濃度を約1.0μg/L~約7.5μg/L(例えば、1.5μg/L~約5.0μg/L)の範囲にして維持するために活性剤を連続的に送達させる経皮システムを使用して達成される。
【0217】
本方法を、被験体における精神健康状態を処置するための使用方法において実施する。本明細書中で処置することができる精神健康状態の例としては、外傷性脳損傷および卒中、中等度外傷性脳損傷(mTBI)、オピオイド離脱症状、嗜癖、禁煙、注意欠陥多動障害(ADHD)、認知症、外傷後ストレス障害(PTSD)、自閉症スペクトラム障害(ASD)、社会恐怖、肥満、食欲不振 過食症、疼痛、躁病、全般性不安障害(GAD)、広場恐怖症、特定恐怖症、パニック障害、分離不安障害、急性ストレス障害、適応障害、反応性愛着障害、身体症状症、病気不安症、神経性食欲不振、神経性過食症、反芻性障害、レストレス・レッグ症候群、強迫性障害、産後鬱病、統合失調症、チック障害(トゥレット症候群が挙げられる)、気分変調(軽症慢性鬱病)、アルコール使用障害、季節性感情障害、大鬱病性障害(治療抵抗性鬱病)、身体醜形障害、アルツハイマー病または認知症における鬱病、レヴィ小体型認知症、パーキンソン病認知症、双極性障害1型および2型、脳震盪後頭痛、および末期患者における鬱病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0218】
別の実施形態では、本発明を使用して、被験体における炎症および/または自己免疫の状態を処置する。代表的なかかる状態としては、ニューロパシー、肉腫、パーキンソン病、パーキンソン病精神疾患、群発性頭痛、過敏性腸症候群、慢性閉塞性肺疾患、喘息、片頭痛、アテローム性動脈硬化症、アカラシア、アジソン病、成人スティル病、無ガンマグロブリン血症、円形脱毛症、アミロイド症、強直性脊椎炎、抗GBM/抗TBM腎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性血管浮腫、自己免疫性自律神経障害、自己免疫性脳脊髄炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患(AIED)、自己免疫性心筋炎、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性精巣炎、自己免疫性膵炎、自己免疫性網膜症、自己免疫性蕁麻疹、軸索および神経単位のニューロパシー(AMAN)、バロー病、ベーチェット病(Bechet’s disease)、良性粘膜類天疱瘡、水疱性類天疱瘡、キャッスルマン病(CD)、セリアック病、シャーガス病、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパシー(CIDP)、慢性再発性多病巣性骨髄炎(CRMO)、チャーグ-ストラウス症候群(CSS)または好酸球性肉芽腫症(EGPA)、瘢痕性類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素病、先天性心伝導障害、コクサッキー心筋炎、Crest症候群、クローン病、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、デビック病(視神経脊髄炎)、円板状狼瘡、ドレスラー症候群、子宮内膜症、好酸球性食道炎(EOE)、好酸球性筋膜炎、結節性紅斑、本態性混合性クリオグロブリン血症、エバンス症候群、線維筋痛、線維化肺胞炎、巨細胞動脈炎(側頭動脈炎)、巨細胞心筋炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、多発性血管炎を伴う肉芽腫症、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本甲状腺炎、溶血性貧血、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(HSP)、妊娠性ヘルペスまたは妊娠類天疱瘡(PG)、汗腺膿瘍(HS)(反対型ざ瘡)、低ガンマグロブリン血症、IGA腎症、IGG4関連硬化性疾患、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、封入体筋炎(IBM)、間質性膀胱炎(IC)、若年性関節炎、若年性糖尿病(1型糖尿病)、若年性筋炎(JM)、川崎病、ランバート・イートン症候群、白血球破砕性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、木質結膜炎、線状IgA疾患(LAD)、狼瘡、慢性ライム病、メニエール病、顕微鏡的多発血管炎(MPA)、混合性結合組織病(MCTD)、モーレン潰瘍、ムッハ・ハーベルマン病、多病巣性運動ニューロパシー(MMN)またはMMNCB、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、睡眠発作、新生児エリテマトーデス、視神経脊髄炎、好中球減少症、眼瘢痕性類天疱瘡、視神経炎、回帰性リウマチ(PR)、PANDAS、腫瘍随伴性小脳変性(PCD)、発作性夜間血色素尿症(PNH)、パリー・ロンベルク症候群、毛様体扁平部炎(周辺部ブドウ膜炎)、パーソネージ・ターナー症候群、天疱瘡、末梢神経ニューロパシー、静脈周囲脳脊髄炎、悪性貧血(PA)、POEMS症候群、結節性多発性動脈炎、多腺性症候群I型、II型、III型、リウマチ性多発筋痛、多発性筋炎、心筋梗塞後症候群、心膜切開後症候群、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、プロゲステロン皮膚炎、乾癬、乾癬性関節炎、赤芽球ろう(PRCA)、壊疽性膿皮症、レイノー現象、反応性関節炎、反射性交感神経ジストロフィ、再発性多発性軟骨炎、レストレス・レッグ症候群(RLS)、後腹膜線維症、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、シュミット症候群、強膜炎、強皮症、シェーグレン症候群、精子および精巣の自己免疫、スティッフパーソン症候群(SPS)、亜急性細菌性心内膜炎(SBE)、スザック症候群、交感性眼炎(SO)、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞動脈炎、血小板減少性紫斑病(TTP)、甲状腺眼症(TED)、トロサ・ハント症候群(THS)、横断性脊髄炎、1型糖尿病、潰瘍性大腸炎(UC)、分類不能結合組織病(UCTD)、ブドウ膜炎、脈管炎、白斑、およびフォークト・小柳・原田病が挙げられる。
【0219】
本発明のシステム、製剤、および方法を使用して処置することができる目的の具体的な適応症としては、以下が挙げられる:神経因性疼痛;心的外傷後ストレス障害(PTSD);肥満;鬱病および不安(終末期不安が挙げられる);外傷痛;神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病;群発性頭痛;およびアルコール中毒症。
【0220】
実験の部:
実施例1
プシロシンの調製
以下の製造方法によって、プシロシンおよびプシロシビンの同時抽出によって幻覚誘発性キノコからプシロシンを迅速に単離可能である。両方の化合物が酢酸に極めて溶けやすく、かつ妨害物質がごく少量しか抽出されないので、希酢酸を溶媒として使用する。酸抽出物の加熱によって、プシロシビンをプシロシンに完全に脱リン酸化する。塩基の添加後、pH7超でのプシロシンのいかなる分解可能性も回避するために、エーテルへの抽出を迅速に行なう。方法、抽出、および脱リン酸化工程により、少量のキノコ材料から合理的に純粋なプシロシンが生成される。
【0221】
プロトコール:
1.2~10gの乾燥キノコの代表試料を、乳鉢および乳棒によって微細な粉末にすりつぶす。
2.250mLビーカー中で粉末を100mLの希酢酸と混合する。氷酢酸を用いてpH4に再調整する。
3.1時間の静置後、ビーカーを、8~10分間または酸混合物の内部温度が70Cに到達するまで沸騰水浴中に入れる。
4.ビーカーを取り出し、流水下で室温に冷却する。
5.次いで、酸混合物を、ガラスウールを使用した吸引濾過によってキノコ粉末から分離する。
6.濾液を、濃縮水酸化アンモニウムを用いてpH8にし、2つの50mL部分のジエチルエーテルで迅速に抽出する。乳化を防止するために、浸透するよりもむしろ穏やかに撹拌すべきである。
7.エーテルを硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、加熱せずに窒素下で蒸発させる。
8.粗プシロシンは、緑がかった残渣として出現するであろう。クロロホルム/n-ヘプタン(1:3)から再結晶して白色結晶を得る。
【0222】
最適な治療効果に関連する新皮質の5-HT2A受容体占有レベルを確認するために、ヒトボランティアを用いて試験を行い、この試験では、本発明の経皮システム、製剤、および方法を使用してボランティアに催幻覚剤を経皮投与する。活性剤またはその代謝産物の血漿レベルを、定期的な時間間隔で決定し、各ボランティアによる主観的な薬物の経験と相関させる。好適な方法は、Madsen et al.(2018)が実施し、記載した評価の修正形態であり、経皮システムまたは製剤を経口薬物投与の代わりに使用する。至適血漿レベルおよび関連する5-HT2A受容体占有レベルを決定し、次いで、至適血漿レベルが達成され、かつ薬物送達を通しておよそ一定であるように薬物送達期間を通して活性剤放出を提供するように、経皮システムを作製する。以下の技術のいずれかまたは全てを使用することによってこれを実施することができる:製剤/リザーバー中の薬物負荷を増減させること;促進剤の量を増減させること;促進剤の活性剤に対する比を変化させること;異なる促進剤組成物およびpH調整剤を試験すること;粘度調整剤および活性剤の安定薬などの種々の必要に応じた賦形剤を組み込むこと;または所望の範囲に放出速度を増減する速度制御膜を使用すること。
【0223】
プシロシンの場合、具体的には、Madsenらの所見では、所望の5-HT2A受容体占有レベルと相関する至適血漿プシロシンレベルの同定のための出発点を提供している。本発明者らの試験によれば、プシロシンの皮膚フラックスは、1μg/cm/hr~10μg/cm/hrの範囲、平均5μg/cm/hrである。パッチ面積50cmの場合、1時間の入力あたりの用量は、50μg/hr/パッチから500μg/hr/パッチまでの範囲である。このパッチサイズでは、1時間あたりの入力の上限は、1mgの静脈内適用のものに近い。毎日用量は、1.2mg/日/パッチから12mg/日/パッチまでの範囲である。55μg/cm/hrの皮膚フラックスでは、1時間あたりの入力は、250μg/hr/パッチであり、毎日用量は6mg/日/パッチである。前述の送達プロファイルを達成するのに好適な経皮システムを、上記のように構築することができる。
【0224】
実施例2
経皮プシロシンシステムA
プシロシン(0.129g)を、3.043gのエタノールに添加した。次いで、このエタノール/プシロシン溶液を、3.034グラムのDuro-Tak(登録商標)87-4098粘着剤に添加した。バイアル中の最終混合物を、ローラー上に6時間置いた。
【0225】
溶液を、3M(登録商標)フルオロポリマー剥離ライナーフィルム9755上に注いだ。間隙幅330umのキャスティングナイフを使用して、プシロシンを含む粘着剤を均等に分配した。注型溶液を、6時間静置して乾燥させた。乾燥後、3Mポリエステルバッキングフィルム1109を、乾燥させた溶液の上部に配置した。表面積1cmのパッチを打ち抜き、in vitro拡散試験のために利用した。パッチの厚さは130μmであり、プシロシンの負荷は4.12%であった。
【0226】
注型粘着剤溶液は、乾燥後、およそ4重量%のプシロシンを有していた。重量は、例えば、2重量%から約15重量%まで変動し得ることに注目すべきである。使用したDuro-Tak粘着剤は、アクリラートコポリマー系粘着剤であったが、他の粘着剤、特にアクリラート粘着剤も使用することができる。
【0227】
患者1(男性、30歳)由来の皮膚を、フランツセルにおけるin vitro拡散研究のために使用した。1cmの円板を打ち抜いた。1cmのパッチを、1cm皮膚円板の上部に置いた;次いで、これを膜中に置いた。試料を、プシロシン拡散について試験するために1時間毎に採取した。レセプター媒体として使用した水の温度は32℃であり、PBS緩衝液を使用してpH7.4を維持した。流量.12mL/分を使用した。A1およびA2と命名した2回の試験を並行して行った。
【0228】
累積放出質量を、最初の6時間についての時間の関数としてプロットし、以下の実施例3の経皮システムについて得た結果と共に図6に示す。経時的な皮膚フラックスをプロットし、実施例3の経皮システムについて得たフラックスと共に図7に示す。
【0229】
実施例3
経皮プシロシンシステムB
パッチのプシロシン負荷が3.89%であったことを除いて、実施例2の手順を繰り返した。同一のプロセスを使用して累積放出質量および皮膚フラックスを評価し、各試験を2回行い、B1およびB2と命名した。経皮プシロシン試験A1、A2、B1、およびB2について得た結果を、上に示すように、それぞれ、図6および7に示す。
【0230】
各々の経皮システムは、図6に認められ得るように、約2時間の遅延時間を示した。図7は、フラックスがおよそ70μg/cm/hrで横ばいになることを示す。このデータから、実施例2および3の製剤パラメーターを用いて作製し、かつパッチサイズが約25cmである経皮システムが1日あたりおよそ42mgのプシロシンを送達させると推測することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】