(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】デバイスのアクチュエータを自律的に駆動するための方法
(51)【国際特許分類】
B60W 30/08 20120101AFI20240326BHJP
B60W 30/10 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B60W30/08
B60W30/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561023
(86)(22)【出願日】2022-03-09
(85)【翻訳文提出日】2023-12-01
(86)【国際出願番号】 EP2022056097
(87)【国際公開番号】W WO2022214268
(87)【国際公開日】2022-10-13
(32)【優先日】2021-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ド, アン-ラン
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA11
3D241BA31
3D241BA49
3D241DC33Z
(57)【要約】
本発明は、自動車デバイス(10)のアクチュエータを自律的に駆動するための方法であって、前記アクチュエータは、前記デバイスの軌道への影響を有することを意図され、方法は、 - デバイスの軌道に関係するパラメータを取得するステップと、 - コンピュータ(13)が、コントローラであって、そのコントローラの出力についての少なくとも1つの飽和関数と関連付けられる、コントローラにより、前記パラメータの関数として、前記アクチュエータを駆動するためのセットポイントを算出するステップとを含む、方法に関係する。本発明にしたがえば、コントローラは、非線形セクタによって、前記少なくとも1つの飽和関数のモデルを満足させる。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車装置(10)のアクチュエータであって、前記装置(10)の経路に影響を及ぼすように構成されるアクチュエータを自律的に制御する方法であって、
- 前記装置(10)の前記経路に関係するパラメータ(β、r、Ψ
L、e
yL、δ、δ
ref)を取得するステップと、
- コンピュータ(13)を使用して、コントローラ(K)であって、前記コントローラ(K)の出力の少なくとも1つの飽和関数と関連付けられるコントローラ(K)により、前記パラメータ(β、r、Ψ
L、e
yL、δ、ρ
ref)に依存した前記アクチュエータの制御セットポイント(δ
ref)を計算するステップと
を含む、方法において、
前記コントローラ(K)が、前記少なくとも1つの飽和関数のモデリングがデッドゾーン非線形性を使用することを可能にすることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記装置(10)は、道路伝いに走行するように構成される、および、少なくとも1つの被操舵輪(11)を含む、モータ車両であり、前記アクチュエータは、前記被操舵輪(11)の操舵角度を制御するように構成され、前記制御セットポイント(δ
ref)は、前記被操舵輪(11)の前記操舵角度の飽和したセットポイントである、請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記飽和関数は、前記制御セットポイント(δ
ref)の振幅を制限するモデルを考慮し、形式:
ψ
1(x)=sat
η(Kx)-Kx
で表され、ここで、
Kは、前記コントローラであり、sat
ηは、振幅制限関数であり、xは、前記装置(10)の状態ベクトルである、請求項1または2に記載の制御方法。
【請求項4】
前記飽和関数は、前記制御セットポイント(δ
ref)における変動を制限するモデルを考慮し、形式:
ψ
2(x)=sat
v(A
1x+B
1sat
η(Kx))-(A
1x+B
1sat
η(Kx))
で表され、ここで、
Kは、前記コントローラであり、sat
vは、振幅制限関数であり、A1およびB1は、あらかじめ決定された行列であり、xは、前記装置(10)の状態ベクトルである、請求項1から3のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの飽和関数がどのようにモデリングされるかに依存して規定される少なくとも1つの多面体に配置された吸引ベイスン(ε)が与えられると、外乱の非存在下で、前記コントローラ(K)は、前記装置(10)の状態ベクトル(x)が、前記吸引ベイスン(ε)内にとどまる、および、あらかじめ決定された時間内に原点の方に漸近的に収束する、経時的に連続的な値を有するということを保証する、請求項1から4のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの飽和関数がどのようにモデリングされるかに依存して規定される、少なくとも1つの多面体に配置された吸引ベイスン(ε)を与えられると、外乱であって、前記外乱のエネルギーが、あらかじめ決定されたしきい値未満である、外乱の存在下で、前記コントローラ(K)は、前記装置(10)の状態ベクトル(x)が、前記吸引ベイスン(ε)内にとどまる、経時的に連続的な値を有するということを保証する、請求項1から5のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項7】
前記コントローラ(K)の前記出力が飽和していないとき、前記コントローラ(K)は、前記コントローラ(K)に付与されるH∞ノルムの合成が、あらかじめ決定されたスカラー未満であるということを保証する、請求項1から6のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項8】
前記パラメータのうちの1つ(p
ref)は、前記経路の曲率に依存する変数である、請求項1から7のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの飽和関数がどのようにモデリングされるかに依存して規定される、少なくとも1つの多面体に配置された吸引ベイスン(ε)を与えられると、前記吸引ベイスン(ε)は、Lyapunov関数(V(t))の、前記装置(10)に付与される外乱の、および、前記少なくとも1つの飽和関数に依存する項により規定される、請求項1から8のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項10】
前記コントローラ(K)が、最小化されることになる出力(z)が経路追従誤差(e
yL)および向首方向角度誤差(Ψ
L)に依存的である、前記装置(10)のモデリングを可能にする、請求項1から9のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項11】
最小化されることになる前記出力(z)は、形式:
で表され、
ここで、e
yLは、前記経路追従誤差であり、Ψ
Lは、前記向首方向角度誤差であり、α
ψは、経時的に変動する調整係数である、請求項10に記載の制御方法。
【請求項12】
- 前記装置(10)の状態ベクトル(x)の初期値が、第1のあらかじめ決定された空間(E
0)に属さないと直ちに、または、
- 前記初期値が、前記第1の空間(E
0)に属さず、前記状態ベクトル(x)の瞬時値が、第2のあらかじめ決定された空間(E
1)に属さないときに、
前記コントローラ(K)を非活動化することがもたらされる、請求項1から11のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項13】
自動車装置(10)であって、前記装置(10)の経路に影響を及ぼすように構成される少なくとも1つのアクチュエータと、前記アクチュエータを制御するためのコンピュータ(13)とを含む、自動車装置(10)において、前記コンピュータ(13)は、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法を実現するようにプログラムされることを特徴とする、自動車装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、自動車装置のための経路追従の自動化に関係する。
【0002】
本発明は、モータ車両運転者支援システムの背景状況において特に有利に適用可能であるが、本発明は、さらには、航空学またはロボティクスの分野に適用可能である。
【0003】
本発明は、自動車装置のアクチュエータであって、前記装置の経路に影響を及ぼすように構成される、アクチュエータを自律的に制御するための方法であって、
- 装置の経路に関係するパラメータを取得するステップと、
- コンピュータを使用して、コントローラであって、そのコントローラの出力の少なくとも1つの飽和関数と関連付けられる、コントローラにより、前記パラメータに依存して、前記アクチュエータの制御セットポイントを計算するステップと
を含む、方法に、より格別に関係する。
【0004】
本発明は、さらには、この方法を実現するように構成されるコンピュータを装備される装置に関係する。
【0005】
本発明は、モータ車両に、障害物回避経路に追従させることに、より格別に、ただし排他的にではなく、適用可能である。
【背景技術】
【0006】
モータ車両をより安全にするために、それらのモータ車両は、現時、運転者支援システムまたは自律運転システムを装備される。
【0007】
これらのシステムの中で、AEBシステム(AEBは、自動緊急ブレーキの略である)が特に知られており、これらのシステムは、モータ車両の従前のブレーキシステムに単純に作用することにより、車両により追従されている車線内に配置された障害物とのいかなる衝突も回避するように設計される。
【0008】
しかしながら、(例えば、何らかのマシンがモータ車両のまさに背後にあるならば)これらのAEBシステムが、衝突が防止されることを可能にしない、または、使用可能でない、状況が存する。
【0009】
これらの状況について、AESシステム(AESは、自動逃避操舵(Automatic Evasive Steering)の略である)が開発されており、これらのシステムは、車両の操舵に作用することによって、または、車両の差動ブレーキシステムに作用することによってのいずれかで、車両をその車両の経路から偏倚させることにより、障害物が回避されることを可能にする。障害物は、車両と同じ車線内に、または、近接する車線内にあることがあり、その近接する車線の事例において、この障害物は、短い時間において車両の経路を横切ることがあるということが検出されるということが留意されることになる。
【0010】
しかしながら、AESシステムは、制御可能性の見地において境界線である経路を車両に強いることがあり、そのことは、運転者が安全に車両の制御を取り戻すことを妨げる。
【0011】
そうして、文書FR3099450は、車両が、車両の運転者により、その運転者が回避処置中に制御を取り戻すことを望むことがあれば、制御可能のままであるように、制御セットポイントが生成されることを可能にするコントローラを使用することに本質がある解決法を開示している。このために、コントローラは、双曲線正接関数により、モータ車両に強いられる方向における変化の規模およびスピードを制限する。この解決法は、多くの構成において効果的であるが、その解決法は、一部の実例において改善され得る性能(すなわち、どれだけ良好に回避経路が追従されるかの見地における)を有し、なぜならば、使用されるLPVモデリング(LPVは、線形パラメータ変動の略である)は、保守的であり、飽和の典型的な特性を明示的に説明しないからである。
【発明の概要】
【0012】
従来技術の、前に述べられた欠点を直すために、本発明は、コントローラによって、前記少なくとも1つの飽和関数のモデリングがデッドゾーン非線形性を使用することを可能にする、序文において定義されたような制御方法を提供する。
【0013】
換言すれば、コントローラは、すべての状況における自動車装置の安定性のみではなく、さらには、状況が許せば直ちに良好な性能を保証することができるように、デッドゾーン非線形性を用いる手法を基にして合成される。
【0014】
そうして、本発明は、飽和関数をモデリングするための、より適切な技法を提供する。この技法は、文書FR3099450において説明される解決法に勝る多くの利点を有する。
【0015】
上記で述べられたように、本発明は、第1に、良好な性能が達成されるということ、すなわち、位置および向首方向が良好に追従されるということを確実にし、このことによって、車両が、障害物を回避するために計算される基準経路に、より大である正確さを伴って追従することを可能にする。
【0016】
請求される解決法は、いかなる外乱も、限度内に収められるエネルギーを有する限りにおいて、すなわち特に、追従されることになる経路が、容認可能な限度の中にとどまる曲率を有する限りにおいて、高い安定性をさらに確実にする。換言すれば、この解決法によって、計算される回避経路が車両により、動力学的に達成可能であるかどうかを迅速に決定することを、このことが真実であるときにのみAES機能を活動化するように行うことが可能になる。
【0017】
本発明は、安定性条件が、コントローラの合成中に、性能条件から分離されることをさらにもたらす。より正確には、線形モードにおいて(コントローラが飽和させられないとき)、コントローラは、性能を保証する(このことは、安定性を含意する)。飽和モードにおいて(コントローラが飽和させられるとき)、このコントローラは、閉ループ方式においてシステムを安定化することに努める。こうして、コントローラは、動作モードにかかわらず、同時に安定性および性能を保証することに常には努めず、このことによって、より良好な性能が、ある決まった動作モードにおいて獲得されることを可能にする。
【0018】
換言すれば、飽和の事例において、コントローラは、主に、システムの安定性を保証することに努める。飽和の非存在(統計的には概ね実情である)下で、そのコントローラは、さらには、性能を、すなわち、回避経路が良好に追従されるということを保証することに努める。そのコントローラによって、そうして、安定性が常に性能に優先した、従来技術において提案された方法を使用して獲得された結果よりも良好な結果を獲得することが可能になる。
【0019】
本発明にしたがえば、コントローラは、AES機能がトリガされる時間における車両の初期状態(初期向首方向、初期ヨーレート、その他)がゼロであるとしても機能し、このことは、車両が(例えば、その車両が、AES機能がトリガされるときに曲がり目内にあるので)すでに、ある決まった原動力を有するときに生起し、このことは、FR3099450において説明される解決法に関する事例ではない。この結果を達成するために、コントローラは、車両の初期状態を勘考して合成される。
【0020】
本発明は、車両の制御法則において使用される補正器のゲインの自動計算をさらにもたらし、このことによって、この制御法則の構想時間が減少されることを可能にする。
【0021】
提供されるコントローラは、車両に固有の制御可能性限界に関して最適および無矛盾であり、なぜならば、操舵角度に関する、および、操舵スピードに関する制約は、コントローラの合成において前もって考慮に入れられるからである。
【0022】
コントローラの堅実性は、(運転者による車両の制御可能性に関係付けられる)アクチュエータの飽和条件のゆえに、一部の障害物回避経路曲率について(この経路に追従するために要されるエネルギーが、限度内に収められたままであるということであれば)さらに保証される。
【0023】
説明の残部において明らかになることになるように、コントローラがとどまらなければならない安定性ゾーンを見積もるための方法は、ここでは、吸引ベイスン(basin of attraction)の見積もりからなる。この方法は、AES機能の活動化の時間における車両の初期状態が、ある決まった判定基準を満たすならば、安定性を保証する。
【0024】
本発明にしたがう方法は、車両安定性の、性能(良好に追従される経路)の、および、本発明の背景状況において使用されるデータの測定における遅延に対する許容性の見地において、良好な結果を産する。
【0025】
後に続くものは、本発明にしたがう方法の、他の有利および非制限的な特徴であり、これらの特徴は、個々に、または、任意の技術的に可能な組み合わせにおいて実現可能である。
- 装置は、道路伝いに走行するように構成される、および、少なくとも1つの被操舵輪を含む、モータ車両であり、前記アクチュエータは、前記被操舵輪の操舵角度を制御するように構成され、制御セットポイントは、前記被操舵輪の操舵角度の飽和したセットポイントである。
- 飽和関数は、制御セットポイントの振幅を制限するモデルを考慮し、形式:ψ
1(x)=sat
η(Kx)-Kxで表され、ここで、Kは、コントローラであり、sat
ηは、振幅制限関数であり、xは、前記装置の状態ベクトルである。
- 飽和関数は、制御セットポイントにおける変動を制限するモデルを考慮し、形式:ψ
2(x)=sat
v(A
1x+B
1sat
η(Kx))-(A
1x+B
1sat
η(Kx))で表され、ここで、Kは、コントローラであり、sat
vは、振幅制限関数であり、A1およびB1は、あらかじめ決定された行列であり、xは、前記装置の状態ベクトルである。
- 前記少なくとも1つの飽和関数がどのようにモデリングされるかに依存して規定される、少なくとも1つの多面体に配置された吸引ベイスンを与えられると、外乱の非存在下で、コントローラは、前記装置の状態ベクトルが、吸引ベイスン内にとどまる、および、あらかじめ決定された時間の中で原点の方に漸近的に収束する、経時的な連続的な値を有するということを保証する。
- 前記少なくとも1つの飽和関数がどのようにモデリングされるかに依存して規定される、少なくとも1つの多面体に配置された吸引ベイスンを与えられると、外乱であって、その外乱のエネルギーが、あらかじめ決定されたしきい値未満である、外乱の存在下で、コントローラは、前記装置の状態ベクトルが、吸引ベイスン内にとどまる、経時的な連続的な値を有するということを保証する。
- 最小化されることになる出力は、形式:
で表され、ここで、e
yLは、経路追従誤差であり、Ψ
Lは、向首方向角度誤差であり、α
ψは、経時的に変動する調整係数である。
- コントローラの出力の飽和の非存在下で、コントローラは、コントローラに付与されるH∞ノルムの合成が、あらかじめ決定されたスカラー未満であるということを保証する。
- 前記パラメータのうちの1つは、経路の曲率に依存する変数である。
- 前記吸引ベイスンは、Lyapunov関数の、前記装置に付与される外乱の、および、前記少なくとも1つの飽和関数に依存する項により規定される。
- コントローラによって、最小化されることになる出力が経路追従誤差および向首方向角度誤差に依存的である、前記装置のモデリングを可能にする。
- 制御セットポイントの計算における、経路追従誤差の重要度、および、向首方向角度誤差の重要度は、経時的に変動する。
【0026】
好ましくは、
○前記装置の状態ベクトルの初期値が、第1のあらかじめ決定された空間に属さないと直ちに、または、
○前記初期値が、第1の空間に属さず、前記状態ベクトルの瞬時値が、第2のあらかじめ決定された空間に属さないときに、
コントローラを非活動化することがもたらされる。
【0027】
コントローラを非活動化するこの方法は、安定性ゾーンに、および、車両の状態パラメータ(ドリフト角度、ヨーレート、向首方向角度、側方位置、操舵輪角度、操舵輪スピード、および、追従されることになる経路の曲率)に基づいて決定される。説述される非活動化条件によって、コントローラが正しく機能することになるということを保証すること、および、異常な状況(車両不安定性、センサ故障、アクチュエータ故障、予想されない車両/運転者挙動、その他のリスク)を診断することが可能になる。
【0028】
本発明は、さらには、自動車装置であって、前記装置の経路に影響を及ぼすように構成される少なくとも1つのアクチュエータと、上記で説明されたような方法を実現するようにプログラムされる、前記アクチュエータを制御するためのコンピュータとを含む、自動車装置に関係する。
【0029】
当然ながら、本発明の様々な特徴、変形例、および実施形態は、それらの特徴、変形例、および実施形態が相互に非両立または排他的でない場合に限って、様々な組み合わせにおいて互いと関連付けられることがある。
【0030】
非制限的な例として与えられる、添付される図面を参照して与えられる、後に続く説明によって、何から本発明がなるか、および、どのように本発明が実現されることがあるかが明確に理解されることを可能にすることになる。
【0031】
添付される図面において、次の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1A】道路上で走行している、および、本発明にしたがう方法を実現するように構成される、モータ車両の、上方からの概略視図である。
【
図2】障害物回避経路に沿って配置された4つの連続的な位置において示される、
図1Aにおけるモータ車両の概略眺望視図である。
【
図3】
図1Aのモータ車両を制御するために使用される閉ループ伝達関数を例示する概略図である。
【
図4】本発明の背景状況において使用されるコントローラの飽和多面体および吸引ベイスン、ならびに、外乱の非存在下での車両の状態における変動の1つの例を例示するグラフである。
【
図5】車両の状態における変動の例が、外乱の存在の事例において示されている、
図4のグラフと同様のグラフである。
【
図6】コントローラ性能への調整の影響を例示するグラフである。
【
図7】本発明にしたがう方法にしたがう車両を制御するためのアルゴリズムを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1Aは、従前から実情であるように、乗員室を規定するシャシと、2つの被操舵前輪11と、2つの非被操舵後輪12とを含むモータ車両10を示す。変形例として、これらの2つの後輪は、さらには、制御法則の適した修正を与えられて、操舵され得る。
【0034】
このモータ車両10は、前輪11の向きが、車両を転回させるように変化させられることを可能にする、従前の操舵システムを含む。この従前の操舵システムは、特に、旋回することを前輪11に行わせるためにリンクに接続される操舵輪を含む。検討される例において、そのモータ車両10は、さらには、前輪の向きが、操舵輪の向きに依存して、および/または、コンピュータ13から受信される要求に依存して変化させられることを可能にするアクチュエータを含む。
【0035】
加えて、おそらくは、モータ車両を減速することを、転回することをそのモータ車両に行わせながら行うように、前輪11の回転のスピードに(および、適切な場合、後輪12の回転のスピードに)異なって作用することを可能にする、差動ブレーキシステムを、このモータ車両が含むことがもたらされることになる。この差動ブレーキシステムは、例えば、車両の輪に対して配置される、制御される差動または電気モータを含む。
【0036】
この説明の残りにおいて、検討される操舵システムは、従前の操舵システムだけにより形成されることになる。変形例として、その検討される操舵システムは、従前の操舵システムの、および、差動ブレーキシステムの組み合わせにより形成され得る。
【0037】
コンピュータ13は、次いで、動力操舵アクチュエータを制御することを意図される。このために、そのコンピュータ13は、少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのメモリと、様々な入力および出力インターフェースとを含む。
【0038】
そのコンピュータ13の入力インターフェースのおかげで、コンピュータ13は、様々なセンサから入力信号を受信することができる。
【0039】
これらのセンサの中で、例えば、後に続くもの:
- 車両の、その車両の交通車線に関しての位置が決定されることを可能にする、前方カメラなどのデバイス、
- モータ車両10の経路上に配置された障害物20が検出されることを可能にする(
図2)、RADARまたはLIDAR遠隔センサなどのデバイス、
- 車両の側部の環境が観測されることを可能にする、RADARまたはLIDAR遠隔センサなどの少なくとも1つの側方デバイス、
- モータ車両10の(垂直軸の周りの)ヨーの観点での回転レートが決定されることを可能にする、ジャイロメータなどのデバイス、ならびに、
- 操舵輪の位置および角度スピードを検知するためのセンサ
が設けられる。
【0040】
そのコンピュータ13の出力インターフェースのおかげで、コンピュータ13は、動力操舵アクチュエータにセットポイントを送信することができる。
【0041】
そのコンピュータ13によって、そうして、車両に、障害物20が回避されることを可能にする回避経路T0(
図2を確認されたい)に追従することを強制することが可能になる。
【0042】
そのコンピュータ13のメモリのおかげで、コンピュータ13は、下記で説明される方法の背景状況において使用されるデータを記憶する。
【0043】
特に、そのメモリは、命令を含むコンピュータプログラムからなるコンピュータアプリケーションを記憶し、プロセッサによるそれらの命令の実行によって、コンピュータは、下記で説明される方法を実現することが可能になる。
【0044】
この方法を説明する前に、一部が
図1Aおよび
図1Bにおいて例示される、使用されることになる様々な変数が紹介されることになる。
【0045】
モータ車両の総合的な質量は、「m」と表象されることになり、kgで表されることになる。
【0046】
モータ車両の、そのモータ車両の重心CGを通って進む垂直軸を回っての慣性は、「J」と表象されることになり、N.mで表されることになる。
【0047】
車両の重心CGと前車軸との間の距離は、「If」と表象されることになり、メートルで表されることになる。
【0048】
重心CGと後車軸との間の距離は、「Ir」と表象されることになり、メートルで表されることになる。
【0049】
前輪のコーナリング剛性の係数は、「Cf」と表象されることになり、N/radで表されることになる。
【0050】
後輪のコーナリング剛性の係数は、「Cr」と表象されることになり、N/radで表されることになる。
【0051】
輪のコーナリング剛性のこれらの係数は、当業者によく知られている概念である。例として、前輪のコーナリング剛性の係数は、そうして、式Ff=2.Cf.αfにおける係数であり、ここで、Ffは、前輪の側方滑り力であり、αfは、前輪のコーナリング角度である。
【0052】
被操舵前輪がモータ車両10の長手軸A1に対してなす操舵角度は、「δ」と表象されることになり、radで表されることになる。
【0053】
radで表される変数δrefは、動力操舵アクチュエータに送信されるような、飽和した操舵角度セットポイントを指し示すことになる。
【0054】
radで表される変数δkは、不飽和の操舵角度セットポイントを表象することになる。この段階においては、飽和の概念が、必ずしも変数δkが考慮されないことがあるが、変数δrefが考慮されることになる、操舵角度および操舵スピード限界に関係付けられるということを、単に留意することになる。
【0055】
radで表される変数δsatは、半飽和の操舵角度セットポイントを指し示すことになる。その変数δsatは、不飽和のセットポイントδkから導出され、単に操舵角度において飽和させられる。飽和したセットポイントδrefは、この半飽和のセットポイントδsatを基にして計算されることになる。
【0056】
車両の基準フレームは、ここでは、その基準フレームの原点を、その車両の重心CGにおいて有することになる。その基準フレームの横座標Xvは、モータ車両10の長手軸A1に沿って向きを定められることになり、その基準フレームの縦座標Yvは、車両の左手側に、側方に向きを定められることになる。
【0057】
車両のヨーレート(その車両の重心CGを通って進む垂直軸を回っての)は、「r」と表象されることになり、rad/sで表されることになる。
【0058】
車両の長手軸A1と、回避経路T0(車両の所望される経路)に対する接線との間の相対的向首方向角度は、「ΨL」と表象されることになり、radで表されることになる。
【0059】
車両の前方に配置された標的距離「Is」における、モータ車両10の長手軸A1(重心CGを通って進む)と、回避経路T0との間の側方偏倚は、「yL」と表象されることになり、メートルで表されることになる。
【0060】
車両の前方に配置された標的距離「Is」における、モータ車両10の長手軸A1(重心CGを通って進む)と、回避経路T0との間の側方偏倚のためのセットポイントは、「yL-ref」と表象されることになり、メートルで表されることになる。
【0061】
経路追従誤差は、「eyL」と表象されることになり、メートルで表されることになる。その経路追従誤差は、側方偏倚セットポイントyL-refと側方偏倚yLとの間の差に等しいことになる。
【0062】
前に述べられた標的距離「Is」は、重心CGから測定されることになり、メートルで表されることになる。
【0063】
モータ車両10のコーナリング角度(モータ車両のスピードベクトルが、そのモータ車両の長手軸A1に対してなす角度)は、「β」と表象されることになり、radで表されることになる。
【0064】
モータ車両のスピードは、「V」と表象されることになり、m/sで表されることになる。
【0065】
定数「ξ」および「ω」は、車両の前輪の操舵角度の動的特性を表すことになる。
【0066】
定数「ωf」は、その定数自体としては、車両に付与される、不定の、限度内に収められる外乱「w」の動的特性を表すことになる。
【0067】
定数「g」は、m.s-2で表される、重力に起因する加速度であることになる。
【0068】
操舵スピードは、被操舵前輪の角度操舵スピードを指し示すことになる。
【0069】
本発明にしたがう方法は、車両が、自律モードにおいて、可能な限り正確に回避経路T0に追従することを可能にすることを意図される。この方法は、AES機能がトリガされ、回避経路T0が計算されているときに実現される。AES機能がトリガされ、回避経路T0が計算される様式は、厳密に言えば、本発明の主題ではなく、それゆえに、ここでは説明されないことになるということが留意されることになる。この方法は、連続的な「時間刻み」において、ループにおいて実現されることを意図される。
【0070】
経路追従は、自律的にコンピュータ13により実現されることを意図されるということ、ただし、その経路追従は、さらには、運転者が車両の制御を取り戻すことを可能にするように、任意の時間において中断される能力をもたなければならないということが、ここでは留意されることになる。その経路追従は、さらには、運転者が、操舵輪を握っているが、障害物を回避するために要されるトルクを操舵輪に働かせていないときに、運転者支援システムとして使用される能力をもたなければならない。
【0071】
本発明それ自体を実現するためにコンピュータ13により実行されることになる方法を説明する前に、この説明の第1の部分において、本発明が成し遂げられることを可能にした計算が説明されることが、どこにこれらの計算が由来するか、および、どの論拠にそれらの計算が基づくかが明確に理解されることを可能にするために行われることになる。
【0072】
具体的には、説明の第1の部分における意義は、コンピュータ13において実現されると、車両が、安定した、および効果的な様式においてその車両が回避経路T0に追従するように制御されることを可能にすることになる、コントローラが合成され得る、手立てを説明することである。
【0073】
ここでは、車両の動的挙動が、後に続く式Math 1によりモデリングされ得るということが検討されることになる。
[Math 1]
【0074】
このモデルは、改善された二輪モデルである。
【0075】
項ωfは、追従されることになる回避経路T0の曲率の変化のレートをモデリングするために使用される(その経路は、計算され、それゆえに、すでに知られている)。
【0076】
回避経路T0曲率項ρrefによって、そうして、車両の経路(およびそれゆえに、道路の曲率)が、車両の動的挙動のモデルにおいて考慮に入れられることを可能にする。
【0077】
しかしながら、このモデルは、そのモデル自体において、車両の前輪11の操舵角度および操舵スピードを制限しない。しかしながら、そのような制限は、車両の運転者が、任意の時間において車両の制御を取り戻すことができるということを確実にするために、特に重要であることが判明している。
【0078】
そのような制限は、操舵スピードの飽和による、後に続く式:
[Math 2]
を使用して、そして無論のこと、操舵振幅の飽和による、後に続く式:
[Math 3]
|δ
ref|≦η
を使用して具象され得る。
【0079】
式Math 2において、係数vは、超過されるべきでない操舵スピードを表す定数である。この定数は、計算により、または、試験車両に関して遂行される試験キャンペーンの終了においてのいずれかで規定される。例えば、その定数は、0.0491rad/sに等しく、この値は、操舵のギアリングレシオが16に等しいならば、操舵輪における0.785rad/s(すなわち、45°/s)に対応する。
【0080】
式Math 3において、係数ηは、超過されるべきでない操舵角度を表す定数である。この定数は、計算により、または、試験車両に関して遂行される試験キャンペーンの終了においてのいずれかで規定される。その定数は、例えば、0.0328radに等しく、この値は、現在の例において、操舵輪における0.524radに(すなわち、30°に)対応する。
【0081】
式Math 3により具象される制約によって、動力操舵アクチュエータにより働かされるトルクが、平均的な運転者がこのトルクについて手動で補償し得るように制限されることを可能にする。
【0082】
具体的には、操舵角度が大であるほど、動力操舵アクチュエータにより付与される力は大である。この制限は、そうして、ユーザが、あまりにも大である力に対抗しなければならないことなく、車両の制御を取り戻すことができることになるということを確実にする。この角度は、そうして、選定されるアクチュエータのタイプにより付与される力に依存することになる。
【0083】
前に述べられた値は、例として与えられ、変形例として、より低くあり得る(例えば、より大である快適性を確実にするために、25°/sおよび20°)ということが留意されることになる。
【0084】
本発明にしたがえば、突然のしきい値を強いることによってではなく、むしろ、セットポイント振幅およびセットポイント変動を徐々に飽和させることによって、被操舵輪11の操舵角度およびスピードを制限することが所望される。
【0085】
図3は、動力操舵アクチュエータを制御することを、その動力操舵アクチュエータが、前に述べられた制約を満たしながら、回避経路T0に追従するように行うために使用される制御アーキテクチャを示す。
【0086】
この図は、不飽和の操舵角度セットポイントδkが計算されることを可能にするコントローラKを示す。このコントローラKは、有利には、出力として、不飽和の操舵角度セットポイントδkを送り出す、ならびに、入力として、車両の状態に依存する状態フィードバック項(状態フィードバックブロックKpにより送り出される)、および、先立つ時間刻みにおいて計算された、飽和した操舵角度セットポイントδrefに依存する飽和補償項(飽和補償ブロックKawにより送り出される)を受け取る、加算器を含む。
【0087】
飽和補償項によって、非線形モードにおける、すなわち、動力操舵アクチュエータの制御が、振幅において、またはスピードにおいて飽和させられる事例における、コントローラの安定性が増大されることを可能にする。
【0088】
図3において示されるブロックSAT1は、不飽和の操舵角度セットポイントδ
kの振幅における飽和を例示する。そのブロックSAT1は、入力として、コントローラKの出力を受け取り、そのブロックSAT1は、出力として、半飽和の操舵角度セットポイントδ
satを送り出す。このブロックは、開ループモードにおいて動作するということが確認され得る。
【0089】
ブロックSAT2のセットは、半飽和の操舵角度セットポイントδsatのスピードにおける飽和を例示する。そのセットは、入力として、この半飽和のセットポイントを受け取り、そのセットは、出力として、飽和した操舵角度セットポイントδrefを送り出す。そのセットは、閉ループであるということが確認され得る。「擬似レートリミッタ」機能に対応する、ブロックSAT2のこのセットにおいて、加算器が、それゆえに、SAT2の入力において設けられ、その加算器によって、半飽和の操舵角度セットポイントδsatと、先立つ時間刻みの飽和した操舵角度セットポイントδrefとの間の差Δを計算することが可能になる。そのセットは、この差がパラメータλを乗算されることを可能にする乗算器ブロックと、飽和した操舵角度セットポイントδrefの微分が、式Math2により具象される限界を超過することを防止する飽和ブロックと、飽和した操舵角度セットポイントδrefが(Laplace変換によって)獲得されることを可能にする積分器ブロックとを含む。
【0090】
パラメータλは、ブロックSAT2のダイナミクスを表し(本出願において、λは、500に等しいと考えられることがある)、λが大であるほど、この擬似レートリミッタは、レートリミッタに類するように挙動する。
【0091】
図3において、ブロックP
sysは、車両のダイナミクス、および、動力操舵アクチュエータの挙動を説明する開ループシステムを表す。
【0092】
このブロックは、入力として、外乱w、および、飽和した操舵角度セットポイントδrefを受け取るということが確認され得る。そのブロックは、出力として、出力ベクトルyおよび誤差zを送り出す。
【0093】
1つの有利な特徴にしたがえば、最小化されることになるこの誤差zは、知られているように最小化されるべきである、経路追従誤差e
yLの、および、車両の長手軸A1と、回避経路T0に対する接線との間の相対的向首方向角度(下記で向首方向誤差Ψ
Lと呼称される)の関数である。次式を書き表すことが、そうして可能である。
[Math 4]
【0094】
この式において、項αψは、優先事項として最小化することが所望される誤差(向首方向角度誤差または位置追従誤差)が調整されることを可能にする調整係数である。どのようにこの調整係数の値が選定されるかが、この説明の残りにおいて確認されることになる。誤差zのこの出力選定によって、良好な位置追従、および、良好な向首方向追従の両方を保証することが可能になる。
【0095】
出力ベクトルyは、ここでは、予備状態ベクトルx
pに等しいと考えられ、その予備状態ベクトルx
pのすべての要素は、運転の間に測定可能または見積もり可能であり、その予備状態ベクトルx
pは、次式の形式において書き表され得る。
[Math 5]
【0096】
目標は、次いで、不飽和の操舵角度セットポイントδkが予備状態ベクトルxpを基にして計算されることを可能にする状態フィードバックレギュレータである、コントローラKの形式を決定することである。
【0097】
この状態ベクトルのパラメータのうちの1つ(状態変数ρref)は、回避経路T0の曲率に依存するということが留意されることになる。曲率の変化のレート(すなわち、微分)は、(回避経路T0が知られているので)知られていると想定される。変化のこのレートを車両のモデル内へと統合することにより、改良されたシステムが、それゆえに獲得され、そのシステムの曲率は、(コントローラKの入力である)状態となる。この手立てにおいて、曲率補償は、静的な、または、弱く変動する曲率を勘考する(フィードフォワードタイプの)より従前の方法が使用される場合にその曲率補償が達成されることになるよりも正確な手立てにおいて(曲率の変化のレートの知識によって)達成される。
【0098】
どのように、安定性の、および、性能の両方の見地において適しているコントローラKが決定されるかが理解されることを可能にするために、システムPsysであって、そのシステムが、飽和を伴わない(飽和した、および、不飽和の操舵角度セットポイントδref、δkが等しい事例)、開ループモードにおいて、すなわち、線形モードにおいて動作しているときの、システムPsysが、最初に説明されることになる。
【0099】
このシステムは、後に続く汎用的な形式において書き表され得る。
[Math 6]
【0100】
この式において、
- 項upは、ここでは、飽和した操舵角度セットポイントδrefに等しい、飽和した制御入力であり、
- 項uKは、ここでは、不飽和の操舵角度セットポイントδkに等しい、不飽和の制御入力であり、
- wは、限度内に収められることを想定される外乱であり、
- Apは、動的行列であり、
- Bpは、制御行列であり、
- Bwは、外乱行列である。
【0101】
これらの3つの行列は、後に続く形式において書き表され得る。
[Math 7]
[Math 8]
[Math 9]
【0102】
コントローラKであって、制御判定基準を満たす最適なゲインがそのコントローラKについて探し求められる、および、静的状態フィードバックレギュレータとして規定される、コントローラKは、そのコントローラK自体としては、次式の形式で表され得る。
[Math 10]
u
K=K.x
ただし、
[Math 11]
であり、xは、この説明の残りにおいて検討される、飽和した操舵角度セットポイントδ
refにより向上させられる状態ベクトルである。その状態ベクトルのパラメータは、状態変数と呼ばれることになる。
【0103】
項uKは、本出願において、不飽和の操舵角度セットポイントδkに等しいと考えられる。
【0104】
システムPsysは、飽和を伴う(飽和した、および、不飽和の操舵角度セットポイントδref、δkが等しくない事例)、閉ループモードにおいて、すなわち、非線形モードにおいて、今から説明され得る。
【0105】
式Math 6およびMath 10に基づいて、後に続くものが書き表され得る。
[Math 12]
【0106】
この式において、項x、A、B、A
1、およびB
1は、後に続くように規定され、
[Math 13]
[Math 14]
[Math 15]
であり、Iは、恒等行列であり、
[Math 16]
A
1=[0-λ]
[Math 17]
B
1=λ
である。
【0107】
式Math 2およびMath 3において規定されるような制御可能性制約を考慮に入れるために、不飽和の指令の入力の限界の超過を表す、2つの新しい飽和関数Ψ1(x)およびΨ2(x)が導入されている。
【0108】
参照される文書「Alessandra Palmeira、Joao Manoel Gomes da Silva Jr、Sophie Tarbouriech、I.Ghiggi。Sampled-data control under magnitude and rate saturating actuators.International Journal of Robust and Nonlinear Control、Wiley、2016、26(15)、3232~3252ページ」において開示される著述を基にして、デッドゾーン非線形性を使用するモデリングによって飽和関数をモデリングすることが、次いで努められる。
【0109】
2つの飽和関数Ψ1(x)およびΨ2(x)は、それゆえに、後に続くように規定され得る。
[Math 18]
ψ1(x)=satη(Kx)-Kx
[Math 19]
ψ2(x)=satv(A1x+B1satη(Kx))-(A1x+B1satη(Kx))
【0110】
これらの2つの式において、後に続くように規定され得る、sat
f0(f)と表象される飽和関数が使用される。
[Math 20]
【0111】
それゆえに、これらの2つの飽和関数Ψ1(x)およびΨ2(x)は、不飽和のモードにおいてゼロ値を、および、さもなければ非ゼロ値を有するということが留意されることになる。
【0112】
システムの制御可能性限界をモデリングするために、2つの多面体が規定され得るものであり、S1(x,η)と表象される、それらの多面体のうちの一方は、振幅における飽和の挙動をモデリングし、S2(x,Ψ1,v)と表象される他方は、速度における飽和の挙動をモデリングする。これらの2つの多面体は、後に続く形式においてモデリングされ得る。
[Math 21]
S1(x,η)={x∈Rn,|(K-G1)x|≦η}
[Math 22]
S2(x,ψ1,v)={x∈Rn,ψ1∈Rm,|(A1+B1K-G2)x+(B1-G3)ψ1(x)|≦v}
【0113】
これらのモデルは、行列G1、G2、およびG3を必然的に含む。これらの行列は、コントローラKと同じサイズである。それらの行列は、飽和制約の超過に関して許される偏倚を説明する。
【0114】
例示として、行列G1は、行列KにスカラーαKを乗算することの積に等しいと考えられ得る。次いで、式Math 21が、項(1-αK)を必然的に含む形式において書き直され得るものであり、そのことによって、次いで、許される超過が調整されることを可能にすることになる。この超過は、例えば、10%にセットされることがある。この超過をセットするために、道路試験を遂行することが勧められる。
【0115】
しかしながら、好ましくは、この行列G1は、行列Kの関数でないことになる。その行列G1は、道路試験によってではなく、例えば線形行列不等式に基づく方法を使用する計算によって、最適化されなければならないことになる。この手立てにおいて、先立つセクションにおいて説明されたもののような解決法の保守性は、回避されることになる。
【0116】
最初に、(式Math 12において規定されるような)閉ループモードにおけるシステムの動作中、状態ベクトルxおよび変数Ψ
1が、これらの2つの多面体において見いだされ、ゆえに、次式を書き表すことが可能であるということが想定され得る。
[Math 23]
【0117】
これらの2つの多面体は、ここでは、
図4および
図5において示されており、それゆえに、上記で十分に説明されたように、中でシステム安定性および性能が保証される2つの空間を表す。
【0118】
これらの図は、上記で説明された解決法を、その解決法をより分かりやすくすることを目指して単純化する、2次元におけるグラフを示すということが、この段階において留意されることになる。
【0119】
換言すれば、この2次元表現は、状態ベクトルxが、一方がこれらのグラフの各々の横座標を、および他方が縦座標を形成する、2つの状態変数のみを内包する場合に有効であるのみであることになる。
【0120】
実際には、ここでは、状態ベクトルは、8つの状態変数を内包する。本発明の表現は、それゆえに、8次元において描かれなければならないことになる。
【0121】
上記の式において説述された想定のもとで、後に続く不等式が、ここではより正確には正スカラー量である、すべての正対角行列U
1およびU
2について満足させられる。
[Math 24]
【0122】
これらのスカラー量U1およびU2は、ここでは、単純に、(Sプロシージャ(S-procedure)にしたがう)後続の計算をたやすくするために導入されるということが、ここでは留意されることになる。
【0123】
約言すると、式Math 21および22は、それらの式が式Math 23の主意において有効なままである限りにおいて、式Math 24がさらには有効であるということを確実にすることを可能にする、振幅および速度それぞれにおける飽和の2つのモデルである。
【0124】
これらのモデルは、次いで、コントローラKの、開ループシステムPの状態変数に関係付けられる、状態フィードバックの主ゲインKp、および、飽和補償ゲインKaw(または「アンチワインドアップゲイン」)を合成する(すなわち、最適化する)ために使用され得る。
【0125】
閉ループ式Math 12、および、
図3において示されるシステムPsysの表現によって、次式を書き表すことが可能である。
[Math 25]
【0126】
この式において、zは、当該のシステムの誤差であり、z=eyL+αL.ΨLである。
【0127】
行列Czが、次いで、後に続く手立てで表される。
[Math 26]
Cz=[0 0 αψ 1 0 0 0 0]
【0128】
外乱wが、次式を書き表すことが可能であるように、エネルギーにおいて制限される、すなわち、限度内に収められるということが想定される。
[Math 27]
【0129】
この想定は、経路の曲率(ここでは、外乱であると考えられる)、および、AES機能の活動化持続期間が、常に限度内に収められるという事実に関係付けられる。
【0130】
それゆえに、項wが回避経路の曲率を表す、式Math 27において、この曲率の最大値w
maxが知られる(なぜならば、車両の動的限界が知られ、それゆえに、車両が安全に追従することができる、および、それゆえに、経路計画中に強いられ得る、最大曲率が知られるからである)。それゆえに、パラメータσが、後に続くように規定され得る。
[Math 28]
【0131】
この式において、時間TAESは、一般的には1秒から3秒の間に含まれる、AES機能の最大活動化持続期間に対応し、特に、回避操縦の持続期間に対応する。
【0132】
強いることが所望される制御可能性限界、AES機能が達成することができる最も動的な基準経路の曲率であるw
maxを与えられると、この最大曲率は、最大操舵角度(制御可能性制約Math 3によりセットされる)に依存して見積もられ得る。それゆえに、次式を書き表すことが、そうして可能である。
[Math 29]
【0133】
この式において、項κは、後に続く手立てにおいて計算されるアンダーステア勾配である。
[Math 30]
【0134】
コントローラKについての最適な解決法を獲得するために、第1のLyapunov関数V(t)が、最初に、後に続く安定性条件について規定される。
[Math 31]
V(t)=xTPx
【0135】
任意選択で、第2のLyapunov関数Vγ(t)が、さらには、後に続く性能条件について規定され得る。
[Math 32]
Vγ(t)=xTPγx
【0136】
これらの2つの式において、行列PおよびPγは、正および対称であるように規定される。
【0137】
第1のLyapunov関数V(t)の利点は、その関数の1次導関数が厳密に負であるならば、そのことは、システムが外乱の非存在下で常に安定していることになるということを保証するということである。
【0138】
ここでの着想は、次いで、この微分された第1の関数を使用し、その微分された第1の関数から、外乱を考慮に入れる項、および、(式Math 24の主意における)飽和を考慮に入れる別の項を減算すること、ならびに、このセットが常に厳密に負であるということを確実にすることであり、そのことは、次式のように書き表され得る。
[Math 33]
【0139】
第1のLyapunov関数V(t)にかかわるこの条件は、外乱の存在または非存在を伴う、および、アクチュエータ飽和の存在を伴う、安定性を保証する。
【0140】
図4および
図5は、システムの安定性および性能を確実にする2つの多面体を示す。これらの2つの多面体に同時的に配置された空間が、次いで、探し求められることになる。例えば、そのことは、これらの2つの空間の交差の事柄であり得る。
【0141】
しかしながら、ここでは、この空間は、好ましくは、吸引ベイスンと呼称される楕円の形式においてモデリングされる。この吸引ベイスンεは、ここでは、次式の形式をとるように規定される。
[Math 34]
ε(P,μ)={x∈Rn,xTPx≦μ-1}
【0142】
Math 33により規定される第1のLyapunov関数V(t)にかかわる安定性条件に加えて、この吸引ベイスンが、(保証されるべき優先事項のままである)システム安定性を保証するために、振幅において、および、速度において、それぞれで飽和をモデリングする、2つの多面体S1およびS2内に含められなければならない。
【0143】
性能を保証するために、第2の空間が、さらには、第2のLyapunov関数Vγ(t)を基にして規定され得るが、別のモデル(下記で述べられることになるH無限大モデル)を使用することが、ここでは好ましい。
【0144】
吸引ベイスンεは、それゆえに、検討されるシステムの安定性空間(または不変空間)である。換言すれば、その吸引ベイスンεは、空間であって、状態変数(すなわち、状態ベクトルxの成分)の経路が、(システムが外乱およびアクチュエータ飽和を受けるとしても)それらの状態変数がこの空間内で初期化されているということであれば、内にとどまる、空間である。
【0145】
式Math 21、Math 22、およびMath 34を考慮に入れると、内にシステムの状態変数が置かれ得る空間が、
図4および
図5において概略的に示されている。
【0146】
これらの図から理解されることになるように、コントローラKは、次いで、3つの目標を満たすように合成される。
【0147】
第1の目標は、外乱の非存在下で、コントローラKは、閉ループシステムの状態変数の経路が、吸引ベイスンε内にとどまる(このことは、安定性を確実にする)、および、特にあらかじめ規定された時間内に、原点の方に漸近的に収束する(このことは、性能を確実にする)ということを保証するということである。
【0148】
図4において、外乱の非存在の事例が検討されている。この事例において、E
0と表象されるシステムの初期条件の空間、および、吸引ベイスンεの見積もりE
1は一致している。任意の初期状況からの状態ベクトルxの経路T1は、確かに、原点の方に収束するということが確認され得る。
【0149】
第2の目標は、外乱の存在下で、コントローラKは、閉ループシステムの状態変数の経路が、外乱wにかかわらず、その外乱wが(式Math 27の主意において)エネルギーにおいて制限されるということであれば、吸引ベイスンε内にとどまる(このことは、安定性を確実にする)ということを保証するということである。
【0150】
図5において、外乱が生出する事例が検討されている。この事例において、E
0と表象されるシステムの初期条件の空間は、必ず、吸引ベイスンεの見積もりE
1に内包される。状態変数の経路T2は、その経路T2が、空間E
0に内包される任意の初期状況から開始するときに、確かに、吸引ベイスンeの内側に内包されたままであるということが、その
図5において確認され得る。
【0151】
第3の目標は、線形モード(振幅およびスピードにおける飽和を伴わない)において、コントローラKが、次いで安定性に優先する、システムの性能を保証することを、そのことを、H∞ノルムの合成が、あらかじめ決定されたスカラー未満であるようになすことにより行うことである。
【0152】
この合成は、次式によって、項Fl(Psys,K)のH∞ノルムが最小であるようなものであるコントローラKを見いだすことに本質があるということが想起されることになる。
[Math 35]
z=Fl(Psys,K).w
【0153】
この式は、後に続く形式において書き表され得る。
[Math 36]
【0154】
γは、w->zの伝達関数のH∞ノルムであるということが、ここでは留意されることになる。
【0155】
この合成は、外乱wの良好な拒絶、および、(ゼロに近い誤差zを伴う)基準経路の良好な追従を含意する。
【0156】
実際には、これらの3つの目標を満たすために、いくつかの方法、例えば、Riccati方程式の解法に基づく方法、または、Youlaパラメトリゼーションを使用する方法が使用され得る。
【0157】
しかしながら、ここで使用される方法は、優先的には、線形行列不等式(LMI)に、保守性を減少する(LMI緩和)ために適用される、Finslerの補助定理の使用であり、このFinslerの補助定理は、特に、安定性(式Math 33)および性能(式Math 35)の両方に適用される。その方法は、そうして、LMI制約のもとでの凸最適化判定基準に基づいて実現される(使用される行列の項の線形性は、数学的問題が、あまりにも多い計算パワーが要されることなく求解可能であるということを確実にする)。
【0158】
目標は、より正確には、極選択によって、コントローラKにより規定される閉ループのゲインを最適化することである。
【0159】
あらかじめ規定された正の実数ε
1およびε
2について、最適化問題が実行可能であるようなものである、適切なサイズの行列R、
、Q、
、L
1、L
2、T
1、T
2、および、スカラーε
3が存するならば、3つの前に述べられた目標を満たすコントローラKが、それゆえに獲得される。
【0160】
これらの行列は、行列Pに依存して計算される(式Math 42を確認されたい)。
【0161】
ここで使用される行列不等式は、数において5つであり、γが最小化されることになる、後に続く不等式により規定される。
[Math 37]
0
[Math 38]
[Math 39]
[Math 40]
σ-μ≧0
[Math 41]
0
【0162】
これらの不等式において、形式
の行列は、形式
において書き表される。
【0163】
行列R、
、Q、
、L
1、L
2、T
1、T
2は、ここでは、後に続く形式で表される。
[Math 42]
【0164】
これらの式において、Jは、非特異行列である。
【0165】
コントローラKは、次式の式により規定される。
[Math 43]
K=R.Q-1
【0166】
車両のスピードVは、一定のままであると想定される(それゆえに、システムのすべての行列は、一定のままであると考えられる)。
【0167】
4つの不等式Math 37からMath 40によって、閉ループのダイナミクスが制限されたままであるということ、すなわち、システムが外乱の非存在または存在下で安定したままであるということを確実にすることが可能になる(最初の2つの条件は、それゆえに満たされる)。
【0168】
第5の式Math 41は、システムが外乱を受けるときの、および、制御Kの出力がまだ飽和させていないときの(振幅においても、スピードにおいても、すなわち、操舵命令δrefおよびδkが等しいときの)、閉ループシステムの(H∞ノルムの主意における)性能を保証する。この不等式は、第3の条件が満たされるということを確実にする。
【0169】
図6において示されるように、複数のタイプのコントローラKが、α
Ψの選定された値に依存して獲得され得る。
【0170】
この図において、αΨの値を調整することにより、コントローラKの性能を修正することが可能であるということが、そうして確認され得る。
【0171】
そうして、調整係数αΨによって、その調整係数が低い値を有するとき、位置追従誤差を最小化するコントローラKが獲得されることを可能にする(ゾーンZC1)。対照的に、その調整係数が高い値を有するとき、その調整係数によって、向首方向追従誤差を最小化するコントローラKが獲得されることを可能にする(ゾーンZC2)。これらの極端な値の間で、位置追従と向首方向追従との間の妥協点を達成することが可能である(ゾーンZC3)。
【0172】
回避の開始において、調整係数αΨは、位置追従誤差を最小化するために、および、車両が回避経路T0に正しく追従するということを確実にするために、(20よりも低い)低い値を有するように選定されることになる。
【0173】
回避の終了において(障害物が通り越されてしまうと)、調整係数αΨは、向首方向追従誤差を最小化するために、および、車両が道路に平行に正しく位置を定められることに復帰するということを確実にするために、(20よりも高い)高い値を有するように選定されることになる。
【0174】
そうして、例として、運転者が回避の終了において制御を取り戻すことを望むならば、調整係数αΨの高い値は、動力操舵アクチュエータに送信される飽和した操舵角度セットポイントδrefが、運転者が車両を安定化する助けとなることになるようなものである。
【0175】
やはり例として、運転者が回避の開始において制御を取り戻すことを望むならば、および、その運転者が(回避経路T0の主意において)予想されるよりもはるかに遠く障害物から離れて動くならば、回避の終了における調整係数αΨの高い値は、飽和した操舵角度セットポイントδrefが、車両を回避経路上へと不必要に引き戻さないことを、その回避経路がいずれにせよ大きい余裕分だけ超過されたということを考え合わせて行うようにうまくやり遂げる(そのことは、そのことが実情でないならば、運転者を潜在的に当惑させることになる)。
【0176】
この段階において、Finslerの補助定理(文書「Skelton,R.E.、Iwasaki,T.、およびGrigoriadis,K.M.(1998)。A Unified Algebraic Approach to Linear Control Design.Taylor and Francis、London」の意味合いの中での)が、保守性を減少するために線形行列不等式に適用されたということが留意されることになる。具体的には、2つの異なるLyapunov行列
および
(単一の共通の行列の代わりに)が、安定性および性能判定基準それぞれのために使用された。
【0177】
提供される方法は、それゆえに、任意の所与の時間において、合理的である(および、平均的な技量の運転者により制御可能である)様式において、および、アクチュエータにより達成可能である様式において、操舵輪角度を決定することにかけては効果的であることが判明した。
【0178】
線形行列不等式を求解する後、コントローラKは、後に続く式を使用して再計算される。
[Math 44]
K=R.JT
ただし、
[Math 45]
J=Q-1
【0179】
コントローラKが獲得されてしまうと、コンピュータは、後に続く算式により、不飽和の操舵角度セットポイントδkを計算するために使用され得る。
[Math 46]
δK=K.x
【0180】
車両の設計中に見いだされるコントローラKは、次いで、範囲のモータ車両10のコンピュータ13において実現され得る。
【0181】
この段階において、本発明を実現するためにこれらのモータ車両のうちの1つのコンピュータ13により実行されることになる方法が、
図7を参照して説明されることになる。
【0182】
コンピュータ13は、ここでは、この方法を再帰的に、つまりは、ステップごとに、および、ループにおいて実現するようにプログラムされる。
【0183】
このことを行うために、第1のステップにおいて、コンピュータ13は、AES機能(AESは、自動逃避操舵の略である)が活動化されるということ、および、障害物回避経路が計画されているということをチェックする。
【0184】
コンピュータ13は、次いで、従前の操舵システムのための制御セットポイント、つまり、この回避経路T0が可能な限り最も良好に追従されることを可能にする、飽和した操舵角度セットポイントδrefを規定することに努めることになる。
【0185】
そのように行うために、そのコンピュータ13は、後に続くパラメータ:
- 測定された操舵角度δ、
- 測定された操舵角度δの時間に関する微分、
- 先立つ時間刻みにおいて獲得された、飽和した操舵角度セットポイントδref、
- ヨーレートr、
- 相対的向首方向角度ΨL、
- 経路追従誤差eyL、
- 回避経路の曲率ρref、
- ドリフト角度β
を計算または測定することにより開始する。
【0186】
コンピュータ13は、次いで、そのコンピュータ13のメモリ内に記憶されるコントローラKを使用する。このコントローラKによって、それゆえに、第1のステップにおいて、不飽和の、および、飽和した操舵角度セットポイントδkおよびδrefの値を決定することが可能になることになる。
【0187】
コントローラKは、飽和関数を考慮に入れて合成され、ゆえに、セットポイントは、選定された飽和モデルに対して完璧に仕立てられるということが留意されることになる。
【0188】
飽和した操舵角度セットポイントδrefは、次いで、モータ車両10の輪を操舵することを目指して、動力操舵アクチュエータに送信されることになる。
【0189】
AES機能が活動化されてしまうと、障害が生出することが起こり得る(センサ故障、動力操舵システムの故障、Kコントローラにより管理され得ない車両および/または運転者挙動、その他)。この事例において、AES機能を非活動化することがもたらされる。
【0190】
用いられる総体的な制御戦略が、次いで、
図7を参照して説明され得る。
【0191】
第1のステップE1は、AES機能が活動化されるときの時点において生出する。
【0192】
この時間において、コンピュータ13は、状態ベクトルx(この初期時間において、x0と表象される)により規定される、車両の初期状態を取得する。
【0193】
第2のステップE2において、コンピュータは、コントローラKを使用して、および、追従されることになる回避経路を考慮に入れて、飽和した操舵角度セットポイントδrefを決定し得る。このセットポイントは、モータ車両10の動力操舵アクチュエータに送られ、その動力操舵アクチュエータは、車両が新しい状態ベクトルxにより規定され得るような手立てにおいて反応する。
【0194】
飽和した操舵角度セットポイントδrefを計算するための方法は、次いで、車両が可能な限り最も良好に回避経路に追従するように、規則的な時間刻みにおいて、ループにおいて繰り返される。
【0195】
並列で、およびここでは、各新しいループにおいて、コンピュータ13は、AES機能が非活動化されることを要する障害が生出したかどうかをチェックする。
【0196】
このことを行うために、ステップE3において、コンピュータは、2つの累積的条件が満たされるかどうかをチェックする。
【0197】
第1の条件は、初期状態ベクトルx
0が、システムの初期条件の空間E
0に属さないということである。第2の条件は、(当該の時間刻みの)状態ベクトルxが、吸引ベイスンεの見積もりE
1に属さないということである。これらの2つの条件は、後に続く手立てにおいて書き表され得る。
[Math 47]
【0198】
これらの2つの累積的条件が満たされるならば、システム不安定性のリスクが存し、ゆえに、ステップE4において、コンピュータ13は、AES機能を自動的に非活動化する。
【0199】
反対の事例において、ステップE5において、コンピュータは、障害物を回避するために、AES機能を活動化された状態に保つように判断する。
【0200】
それゆえに、コンピュータは、ステップE2に戻るように方法をループする。
【0201】
変形例として、コンピュータは、第1の条件のみを基にしてAES機能を非活動化し得るということが留意されることになる。具体的には、車両を、その車両が完全に安全に回避経路に追従するように制御することは可能でないことになるということは、この第1の条件が満たされるときには濃厚である。
【0202】
しかしながら、ここでは、第2の条件によって、AES機能を非活動化する前に、現実の車両制御不安定性の検出を待つことが可能になる。具体的には、初期状態ベクトルが空間E0の外側であるとき、車両制御が、例えば、一陣の風の作用のもとで、または、運転者が、操舵輪から手を離しておらず、回避に関与していることで、安定したままであることが可能である。
【0203】
新しい道路事態が生起するならば、現況の変化が、AES機能が再度活動化されることを要することになるということが、ここでは留意されることになる。AES機能が再度活動化されない事例において、ただし、様々な理由のために、プロセスが継続するならば、この新しい現況は、ステップE3においてコントローラKに影響力を及ぼすことになり、このことによって、潜在的に、AES機能の自動的な非活動化が結果的に生じる。
【0204】
本発明は、説明され示された実施形態に決して制限されず、当業者は、本発明にしたがう任意の変形例を、その実施形態に適用することができることになる。
【0205】
そうして、方法は、例えば航空学またはロボティクス(特に、ロボットが小さく、そのロボットの制御のうちの1つが飽和させられなければならないとき)における、個別の経路が追従されなければならない、他のタイプの分野に適用され得る。
【国際調査報告】