(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】化学反応を実行するための方法、および反応装置
(51)【国際特許分類】
B01J 19/00 20060101AFI20240326BHJP
C01B 3/34 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B01J19/00 301D
C01B3/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023561056
(86)(22)【出願日】2022-04-07
(85)【翻訳文提出日】2023-10-03
(86)【国際出願番号】 EP2022059330
(87)【国際公開番号】W WO2022214622
(87)【国際公開日】2022-10-13
(32)【優先日】2021-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521329305
【氏名又は名称】リンデ ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】523112002
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
(71)【出願人】
【識別番号】515345506
【氏名又は名称】サビック・グローバル・テクノロジース・ビイ ブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ツェルフーバー,マティウ
(72)【発明者】
【氏名】ホフシュテッター,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】コッヘンデルファー,キアラ・エンネ
(72)【発明者】
【氏名】シャストフ,アンドレイ
(72)【発明者】
【氏名】イェンネ,エリック
(72)【発明者】
【氏名】ハウナート,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴンソン,スコット・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ブロークイス,ロバート・アール
(72)【発明者】
【氏名】ウォード,アンドリュー・エム
【テーマコード(参考)】
4G075
4G140
【Fターム(参考)】
4G075AA03
4G075AA13
4G075BA05
4G075BD04
4G075BD13
4G075BD23
4G075CA02
4G075CA57
4G075DA02
4G075EA01
4G075EB01
4G075EC01
4G140EA03
4G140EA05
4G140EB12
(57)【要約】
本発明は、反応容器(1)に配置された反応管(2)が、反応容器(1)に配置された1つまたは複数の電気加熱素子(3)によって提供される輻射熱を使用して、反応期間中、400℃と1500℃との間の反応管温度レベルまで加熱される、反応装置(100~400)を使用して、化学反応を実行するための方法に関する。加熱素子(3)が設けられた反応容器(1)の少なくとも一部において、反応期間中、ガス雰囲気が提供され、このガス雰囲気は、規定された体積分率の酸素を有することが条件とされる。対応する反応装置(100~400)もまた、本発明の一部である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器(1)に配置された反応管(2)が、前記反応容器(1)に設けられた1つまたは複数の電気加熱素子(3)によって提供される輻射熱を使用して、反応期間中に、400℃と1500℃との間の反応管温度レベルまで加熱される反応装置(100~400)を使用して、化学反応を実行するための方法であって、前記反応期間中に、1つまたは複数の可燃性成分が、前記反応管(2)を通過し、前記方法は、前記電気加熱素子(3)が設けられた前記反応容器(1)の少なくとも一部において、前記反応期間中、または前記反応期間の一部の間に、ガス雰囲気が提供され、そのガス雰囲気は、500ppmと10%との間の体積分率の酸素を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記ガス雰囲気は、1,000ppmと5%との間、または5,000ppmと3%との間の体積分率の酸素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応容器(1)に前記ガス雰囲気を提供する、および/または、前記反応容器(1)から前記ガス雰囲気の少なくとも一部を除去するために使用される、1つまたは複数のガスまたはガス混合物の連続的または不連続的な供給が実行される、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記反応容器(1)に、大気圧未満の圧力レベルが提供される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記反応容器(1)に、超大気圧レベルが提供される、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記反応容器(1)の壁(1)は、前記反応容器(1)の内部空間の目視検査のための検査ポートを備えていないか、または、透明材料で気密に閉じられた前記反応容器(1)の内部空間の目視検査のための検査ポートのみを備えている、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ガス雰囲気を提供するために、1つ、2つ、またはそれ以上のガスまたはガス混合物が使用される、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
第1の体積分率の酸素を有する第1のガスまたはガス混合物と、前記第1の体積分率よりも低い第2の体積分率の酸素を有する第2のガスまたはガス混合物とを含む2つ以上のガスまたはガス混合物が使用される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のガスまたはガス混合物の少なくとも一部が、前記反応容器(1)の少なくとも第1の領域に供給され、前記第2のガスまたはガス混合物の少なくとも一部が、前記第1の領域から個別に、前記反応容器(1)の少なくとも第2の領域に供給される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記反応容器の第1の領域にガスまたはガス混合物が注入されていない間、前記反応容器の第2の領域に注入されるガスまたはガス混合物が使用される、請求項2から請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記加熱素子(3)は、少なくとも1つの前記第1の領域に配置され、前記反応管(2)は、前記反応容器(1)の少なくとも1つの前記第2の領域に配置される、請求項9または請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のガスまたはガス混合物の少なくとも一部と、前記第2のガスまたはガス混合物の少なくとも一部は、前記反応容器(1)の外側で混合され、混合された状態で前記反応容器(1)に供給される、請求項7から請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記反応期間中および/または反応期間の開始時に、実際の体積分率の酸素は、前記反応容器および/またはスタック、バイパス、または前記バイパスに接続されたパージラインのうちの少なくとも1つの領域において検出され、前記ガス雰囲気を提供するために使用される前記1つまたは複数のガスまたはガス混合物の供給は、前記検出に基づいて規制または制御される、請求項2から請求項12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ガス雰囲気を提供するために使用される、前記ガスまたはガス混合物、または、2つ以上のガスまたはガス混合物のうちの少なくとも1つが、前記反応容器(1)の内部への注入前に予熱される、請求項2から請求項13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
化学反応を実行するための反応装置(100~400)であって、反応容器(1)と、前記反応容器(1)に配置された反応管(2)と、前記反応容器(1)に配置された1つまたは複数の電気加熱素子(3)によって提供される輻射熱を使用して、反応期間中、400℃と1500℃との間の反応管温度レベルまで、前記反応管(2)を加熱するように構成された手段とを備え、前記反応装置は、前記反応期間中、または前記反応期間の一部の間、前記電気加熱素子(3)が設けられた前記反応容器(1)の少なくとも一部に、ガス雰囲気を提供するように適合された手段によって特徴付けられ、このガス雰囲気は、500ppmと10%との間の体積分率の酸素を含む、反応装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の前文にしたがって、化学反応を実行するためのプロセスと、対応する反応装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
化学産業における多くのプロセスでは、1つまたは複数の反応物質が、加熱された反応管を通過し、そこで触媒現象的に、または非触媒的に反応する反応器が使用される。加熱は、特に、化学反応が生じるために必要な活性化エネルギを超えるために、また、吸熱反応の場合には、化学反応に必要なエネルギを提供するために役立つ。反応は、全体的に吸熱的に進行することも、活性化エネルギを超えた後に発熱的に進行することもある。本発明は、特に、以下でさらに説明されるように、強力な吸熱反応に関する。
【0003】
そのようなプロセスの例は、水蒸気分解、様々な改質プロセス、特に水蒸気改質、乾式改質(二酸化炭素改質)、混合改質プロセス、アルカンの脱水素化プロセスなどである。水蒸気分解では、反応管は、反応器において少なくとも1つの逆屈曲部を有するコイルの形態で反応器を通って導かれるが、水蒸気改質では通常、逆屈曲部のない反応器を通過する管が使用される。本発明はまた、非常に短い滞留時間によって特徴付けられる、いわゆる「ミリ秒」またはシングルパス反応器と関連して使用され得る。
【0004】
本発明のさらなる用途は、一酸化炭素および水を形成する、二酸化炭素と水素との逆水性ガスシフト(RWGS)反応と、メタノールからホルムアルデヒドおよび水素への反応などの含酸素化合物の脱水素化と、ガス状の窒素および水素を得るアンモニアの分解と、当業者に知られているいわゆる液体有機水素キャリア(LOHC)の脱水素化と、(上記で使用した用語「改質」にまだ含まれていない限り)メタノールおよびグリセロールの改質とを実行するための反応器である。
【0005】
本発明は、そのようなすべてのプロセスと、反応管の実施形態とのために適している。単なる例示として、ウルマン工業化学百科事典の「エチレン」、「ガス生成」、および「プロペン」の記事、たとえば、2009年4月15日付けのDOI:10.1002/14356007.a10_045.pub2、2006年12月15日付けのDOI:10.1002/14356007.a12_169.pub2、および2000年6月15日付けのDOI:10.1002/14356007.a22_211である各出版物が参照される。
【0006】
対応する反応器の反応管は、慣例的に、バーナを使用して加熱される。この目的のために、反応管は、バーナも配置されている燃焼チャンバを通って導かれる。
【0007】
しかしながら、現在では、オレフィンなどの合成製品だけでなく、局所的な二酸化炭素の排出をゼロまたは削減して生成される合成ガスや水素の需要も高まっている。通常、化石燃料が使用されるため、燃焼反応器を使用するプロセスではこの需要を満たすことができない。他のプロセスは、たとえば、コストが高いなどの理由で実質的に除外される。
【0008】
したがって、対応する反応器におけるバーナを、電気加熱手段によって支持または交換することが提案されている。たとえば、知られているスター(ポイント)回路などで、反応管自体に電流が印加される直接的な電気加熱や、本明細書では詳細に説明されない他のタイプの加熱に加えて、特に、いわゆる間接的な電気加熱のための概念も存在する。これは、本発明の文脈でも使用される。特定のタイプの加熱や、プロセスにおいて実施される加熱概念に関係なく、適切に加熱される反応器は、「炉」とも呼ばれる。
【0009】
そのような間接的な電気加熱は、たとえば、言及された反応に必要な高温に加熱するのに適した、電気的に動作される輻射加熱素子(「輻射ヒータ」)を使用する、国際公開第2020/002326号公報において説明されているように実行でき、そのような加熱素子は、反応管と直接接触しないように、炉内に配置されている。熱伝達は、主にまたは排他的に輻射熱の形態で引き起こる。したがって、以下では、「間接加熱」、「輻射熱による加熱」などの用語が、同義的に使用される。対応する加熱素子の特性が、以下に説明される。
【0010】
本発明は、適切な加熱素子を使用して間接的に電気的に加熱される、説明されたタイプの反応器の有利な動作を可能にする措置を提供する目的を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2020/002326号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】DOI:10.1002/14356007.a10_045.pub2,2009年4月15日
【非特許文献2】DOI:10.1002/14356007.a12_169.pub2,2006年12月15日
【非特許文献3】DOI:10.1002/14356007.a22_211,2000年6月15日
【非特許文献4】J.Min.Metall.B55,2019,55
【非特許文献5】Surf.Coat.Technol.135,2001,291
【発明の概要】
【0013】
この背景に対して、本発明は、独立請求項の特徴を備えた、化学反応を実行するためのプロセスと、対応する反応装置とを提案する。本発明の実施形態は、従属請求項および以下の説明の主題である。
【0014】
本発明は、化学反応を実行するためのプロセスに関し、ここでは、反応容器に配置された反応管が、反応期間中、反応容器に配置された1つまたは複数の電気加熱素子によって提供される輻射熱を使用して加熱される反応装置が使用される。加熱は、特に反応管表面および/または反応管内において、400℃から1500℃の間、特に450℃から1300℃の間、さらには特に500℃から1,200℃の間、よりさらには特に600℃から1,100℃の間である、以下「反応管温度レベル」と呼ばれる温度レベルに達するように実行される。反応期間中、1つまたは複数の可燃性成分が反応管を通過する。反応管の温度は、焼成炉または他の電気加熱炉用に選択された温度と同一または同等になるように選択できる。相当な温度勾配が、対応する反応管(特にコーキングが増加する「低温」入口および「高温」出口)において常に発生するため、反応管の温度は、比較的広い温度範囲をカバーする。輻射加熱素子が使用される場合、上記の反応管温度レベルを提供するには、さらに高い加熱素子温度が必要である。
【0015】
本発明は、上述したように、特に、冒頭で述べられたように、水蒸気分解によるオレフィンおよび/または他の合成生成物の生成に関連して、または、水蒸気改質による合成ガスまたは水素の生成に関連して使用することができる。しかしながら、本発明は原理的に、供給混合物が、ガス状態で、外側から適切な温度レベルまで加熱された反応管を通過し、それによって反応する、すべてのタイプの反応に適している。
【0016】
反応管は、考えられるあらゆる手法で、特に1つまたは複数の反転点または逆屈曲部の有無に関わらず、反応容器を通って導かれる。特に、反応管は、垂直に配置された平面内に一列に配置され、平面の両側に配置された輻射加熱素子によって加熱できる。2つの平面間の中間領域における多列配置と、中間領域の外側からの対応する加熱も可能である。特に、反応管は、5から100mの長さ、および/または、20から200mmの直径を有する。さらに、個々の反応管は、単一の管と比較して管の直径が小さい、2つ以上の平行なストランドの部分において設計することができる。好ましくは、可能な限り高い、長さ固有の反応管壁面積を、この領域に提供するために、マルチストランド部分が、炉への入口の近くに配置される。この構成のさらに下流では、最初に、平行なストランドが、好ましくは、より大きな管直径を有する、共通のストランドへ組み合わされる。この例では、反応管は、2つ以上の平行なストランド、特に接続金具を含む接合部、および結合ストランドで構成される。逆に、原理的には、中間の分割部分と、必要に応じて追加の接合部分を備えた、反応管の端部または中間部分にマルチストランド設計を設けることも可能である。一般に、本発明の実施形態では、考えられるあらゆる方式で、管を分割したり、組み合わせたりすることができる。反応管には、反応のタイプに応じて、適切な触媒材料および/または不活性材料を充填することもできるし、空の形態で設けることもできる。
【0017】
本発明は、電気的に提供される輻射熱を使用した、反応管の加熱を提供する。しかしながら、これは、他のタイプの加熱に加えて、たとえば、熱を発生させるために、反応管自体が電気的抵抗として使用される直接加熱、誘導加熱、または、反応装置のさらなる反応容器内での、バーナを使用した加熱の使用を排除するものではない。いずれの場合も、輻射熱に加えて、適切な加熱素子によって提供される熱の一部も、反応管に対流的に伝達され得る。
【0018】
したがって、本明細書において、間接的な電気加熱の使用、つまり電気加熱素子によって提供される輻射熱の使用に対する言及がなされる場合、これは、追加の電気加熱または非電気加熱の存在を排除するものではない。特に、電気加熱、および特に、非電気加熱のタイプの寄与を、たとえば、電気の供給と価格の、または非電気エネルギ源の供給と価格の関数として、経時的に変化させることも想定され得る。
【0019】
本明細書において「反応容器」とは、外側から部分的に、または完全に断熱され、特に、言及された温度において耐熱性のある材料で内張りできる筐体を意味すると理解される。反応容器は、特に、断熱特性を有する(固体)壁によって、大部分、すなわち少なくとも90%、95%、99%、99.5%または99.8%が囲まれている。これらの壁は、金属シートなどの密着した、連続した、または不浸透性の裏層と、1つまたは複数の断熱層とを備え得る。反応容器が「断熱壁によって取り囲まれている」割合について与えられた数値は、これに関連して、特に、断熱特性を有する、すなわち、断熱材料で覆われているか、断熱材料から作られているか、断熱材料を含んでいる、固体構造物で構成される、反応容器のハウジング全体の割合として理解され得る。反応器ハウジングの開口部またはポートは、通常、完全には断熱されていないが、「大部分が囲まれた」反応容器について与えられた数値に含まれない場合がある。本明細書で理解されるように、「断熱性」であるとして提供される反応器壁の任意の部分は、2W/m2K未満、特に1.5W/m2K未満、1W/m2K未満、0.5W/m2K未満、または0.2W/m2K未満の熱透過率を有し得る。「熱透過率」という用語は、関連する図によって示される値が、固体構造における(特に、壁の内側と外側の輻射および対流の熱伝達成分を除く)伝導熱伝達係数(のみ)を指すことを表現するように意図されている。たとえば、上記で示したように、反応容器が、断熱壁によって少なくともx%囲まれている場合、これら壁面積のx%以下は、たった今示したような熱透過率を有するように構成され得る。上述したように、反応器ハウジングの開口部またはポートは、それに応じて断熱されていない可能性があり、したがって、熱透過率がより高くなるか、または、たとえば、恒久的な開口部の場合、熱障壁をまったく表さない可能性がある。断熱構成の反応器壁を設けるために、壁は、上述したように、限定されないが、セラミック繊維、熱反射金属箔、鉱物、および発泡ポリマ、またはそれらの任意の組合せなどの断熱材料で構成されるか、断熱材料を含むか、または断熱材料で被覆され得る。特に、存在する局所的な温度と、異なる熱抵抗とに対応して、異なる断熱材料が設けられ得る。
【0020】
上述したように、本発明は、正確に1つの反応容器を使用することに限定されず、特に、異なるように加熱される反応容器を備えた装置でも使用することができる。対応する反応容器、ガス供給デバイスを備えたそれらの機器、また適用可能な場合には、ガス抽出デバイス、およびスタックなどへのそれらの接続に関するさらなる詳細は、以下でさらに説明される。本明細書では、(出口)「スタック」および「チムニー」という用語は、同義語として使用され、両方とも、安全な出口位置、たとえば大気中への、好ましくは地面から十分な高さまでの流体接続を提供する(主)機能を備えた構造に関する。
【0021】
本発明の文脈では、反応容器は、気密であるように設計される必要はなく、すなわち、少なくとも完全に気密という訳ではない。本発明の実施形態によれば、反応容器は、特に、容器内の酸素レベルを実質的に制御できるように十分に気密であるように設けられる。本明細書では、上述したように、規定された酸素濃度は、加熱素子において特に有利であり、したがって、反応容器の気密性は、加熱素子の近傍で特に重要である。したがって、反応容器の壁は、加熱素子に近接して気密性が低くなるように設けられ得る。しかしながら、これは、本発明のすべての実施形態において提供される訳ではない。誤解を避けるために言うと、たとえこのガスが、反応容器の外側と内側との間、つまり壁を越えた、圧力差の影響下で流れるとしても、気密性は、意図的に導入されたガスには関係しない可能性がある。
【0022】
本明細書において「反応期間」とは、実行される反応が生じている間、および、反応に必要な反応物質が反応管を通過する間の期間、または対応する期間の一部を意味すると理解される。通常、反応期間中、可燃性成分、特に炭化水素は、プロセス供給ガスに含まれているため、反応管を通過する。再生期間または不活性化期間など、反応期間以外の期間では、そのような可燃性成分は通常、反応管を通過しない。
【0023】
一般に知られているように、説明されたタイプのプロセスは、特に、対応する反応期間後に反応管内に形成された堆積物が、たとえば酸素含有ガスまたはガス混合物による「焼き切り」によって除去されるデコーキング動作を含むこともできる。これは、触媒を使用しない純粋な気相反応の場合に特に当てはまる。対応するデコーキング動作の前に、通常、反応管は、反応物質を除去され、特に予備冷却、または後続する加熱が実行される。デコーキング動作のみならず、たとえば、(過剰な)冷却を避けるために純粋な蒸気を反応管に添加するスタンバイ動作(いわゆる「高温蒸気スタンバイ動作」)の対応する期間、および、冷却または加熱の期間も、本明細書で使用される理解では、反応期間の一部としてカウントせず、また、たとえば、メンテナンス期間、または触媒床が交換または再生される期間もカウントしない。
【0024】
本発明によれば、加熱素子が設けられた反応容器の少なくとも一部において、少なくとも前記可燃性成分が反応管を通過する反応期間中、または前記反応期間の一部の間、反応容器に、ガス雰囲気が提供される。ガス雰囲気は、特に、窒素または二酸化炭素などの1つまたは複数の知られている不活性ガス、またはアルゴンなどの1つまたは複数の希ガスに加えて、500ppmと10%との間、特に1000ppmと5%との間、または5,000ppmと3%との間に調整された体積分率の酸素を含む。本明細書では、酸素体積分率を調整する制御デバイスまたはシステムにおいて実施される(フィードバック)制御構造について、下限しきい値を規定するために下限値を使用することができ、上限しきい値を規定するために上限値を使用することができる。
【0025】
要約すると、本発明は、以下でさらに説明されるように、反応期間中、安全性と素子寿命との両方の基準が満たされる「スイートスポット」ウィンドウ内で酸素を制御することを含むガス雰囲気を提供することを提案する。反応期間以外の期間、すなわち、好ましくは可燃性成分が、反応管を通過しない期間では、このウィンドウの外側の酸素含有量を使用することができ、または他の実施形態では、同じ酸素含有量を使用することができる。
【0026】
本発明の実施形態により、体積分率の酸素含有量を、限界値内に維持することにより、一方では、対応する加熱素子の耐久性を増加させることができ、他方では、高レベルの動作安全性を確保することができる。
【0027】
対応する反応管の間接加熱のために使用される加熱素子は、通常、たとえば直線状、または他の形状のロッド、ワイヤ、またはストリップのような所与の形状の導電性の金属製または非金属製の加熱構造を備え、金属製の加熱構造は、特に、少なくとも元素Fe、Cr、およびAlを含む合金から形成できることが好ましい。代替的または追加的に、金属製の加熱構造は、少なくとも部分的に、ニッケルクロム合金、銅ニッケル合金、またはニッケル鉄合金から形成することもできる。
【0028】
反応管の間接加熱、特に水蒸気分解では、経済的動作のためには、高温での極めて高い熱流束密度が必要であるため、加熱素子または加熱構造を、その上限温度近くで動作する必要があることが知られている。しかしながら、まさにこの限界に近いところで、加熱素子および加熱構造は、炉の雰囲気に非常に敏感になる。特に、特定の最小酸素含有量は、加熱素子または加熱構造の急速または緩やかな劣化を、回避または遅らせるために有利である。たとえば、アルミニウムを含む金属製の加熱構造を使用すると、制御されない腐食や他の損傷メカニズムから材料を保護する、加熱構造の表面に存在する安定な酸化アルミニウム層を維持することができる。したがって、本発明は、適切な最小酸素含有量を使用することによって、加熱素子またはその加熱構造の長い耐久性を実現する。
【0029】
FeCrAlベースの加熱素子は、高温で高濃度の窒素と、低濃度の酸素とを含む雰囲気に曝されると損傷するため、そのような雰囲気では、空気中での許容最高動作温度と比較して、最高動作温度が低くなることが知られている。理論に拘束されることなく、この損傷は、素子表面上の保護酸化アルミニウム層の形成を妨げ、加熱素子の寿命を著しく低下させる腐食を引き起こす窒化物の形成に関連していると考えられる。そのような損傷が発生する程度と速度とは、加熱素子と接触している雰囲気における酸素および酸素含有種の濃度および加熱素子温度に関連する。たとえば、J.Min.Metall.B55,2019,55に文書化された研究は、99.996%の窒素雰囲気(酸素と水の不純物レベルが10ppm未満)で、FeCrAl材料を1,200℃に加熱すると、AlN相粒子からなる局所的な表面下の窒化領域の形成を通じて、腐食が進行することを示している。逆に、Surf.Coat.Technol.135,2001,291に文書化されているように、FeCrAl合金については、空気中、または2または10体積%の酸素を含むガス雰囲気中での酸化によって得られる酸化物スケール間に、顕著な形態学的差異はないことが観察された。
【0030】
再度、理論に拘束されることなく、また、本発明の範囲を限定することなく、加熱素子の加速劣化を阻止するために加熱素子の表面に必要な酸素濃度は、保護酸化層の厚さおよび品質を決定する、加熱素子の温度や、熱履歴などの、動作条件に依存すると考えられている。有利な状況では、劣化の加速を阻止するために、非常に低い酸素濃度(たとえば、100ppm)で十分であるが、加熱素子の表面が、窒化処理に対して、より影響を受けやすい状況を考慮して、また、結果として、酸素の濃度が局所的に目標濃度を下回る可能性がある炉内の酸素の不均一な分布を考慮して、炉雰囲気において、より高い酸素濃度を目標とすることが賢明である。したがって、炉または反応容器の雰囲気における酸素濃度の実質的な下限は、0.1体積%の酸素であると考えられるが、500ppmを選択することもできる。0.2体積%の酸素などの上限濃度値、または0.5体積%などのそれ以上の濃度値は、あまり好ましくない炉条件、またはより顕著な酸素の偏在分布において、追加の安全マージンを設けることができ、本発明にしたがって選択することができる。逆に、窒化物の腐食を阻止するための最小酸素濃度が満たされている限り、一般的な加熱素子材料の酸化速度は、酸素濃度とともに増加することが知られているため、加熱素子の近傍の酸素濃度が低いことが有益である可能性がある。最小酸素濃度は、温度および加熱素子の組成にも依存する可能性がある。
【0031】
本発明にしたがって提供されるガス雰囲気の提供は、言及された金属合金に関して有利であるが、原理的には、各場合において観察される損傷効果に関係なく、たとえばMoSi2またはSiCをベースとする他の材料に関して使用する場合にも有利である。
【0032】
許容される酸素の最大量を決定する際に考慮すべき重要な点は、供給ガスおよび生成ガスの可燃性限界である。すべての可燃性ガスの可燃性エンベロープには、一般に限界酸素濃度(LOC)と呼ばれる酸素濃度があり、それを下回ると可燃性混合物を形成できない。たとえば、25℃、1気圧におけるエチレンのLOCは、10%の酸素である。これら条件では、少なくとも10%の酸素を含まないエチレン、窒素、酸素の混合物は、自己伝播火炎を生成できない。文献データと温度調整手順とを組み合わせると、一般的な水蒸気分解温度である830℃におけるエタンおよびエチレンのLOCは、それぞれ4.1%および3.6%と推定できる。反応容器における酸素濃度がこれら限界よりも低い場合、コイルが破裂した場合でも可燃性混合物は形成されない。
【0033】
ナフサのような複雑な混合物について同じ限界を計算するにはいくつかの不確実性があるが、推定値は、ヘキサンのLOCに、4.2%を含んでいるので、エチレンが、最も低いLOCを有する反応物質/生成物であると予想される。830℃は、これらすべての炭化水素の自己発火温度を超えているが、たとえ自然発火があったとしても、LOC未満に保たれていれば、衝撃波の発生を阻止すると予想される。
【0034】
これら観察に基づいて、本発明による酸素レベルが提案される。
【0035】
一般に、本発明の文脈で使用される加熱素子は、たとえば、非導電性の耐熱材料(たとえばセラミック)から形成された基体を有することができ、その上に、またはその中には、たとえば、加熱ワイヤまたは加熱リボンの形態の加熱構造が、たとえば、曲がりくねって導かれる。あるいは、加熱素子に関連付けられたホルダを備えた1つまたは複数の直線状の、および/または、湾曲した加熱構造も使用することができる。たとえば、いわゆる加熱カートリッジを使用することができ、プラグインまたはバヨネット接続などによって適切な接続部に固定することができる。通常、多相交流(AC)、特に三相交流が加熱に使用され、加熱ワイヤは、対応する交流の相にグループで接続できるが、直流(DC)加熱も使用され得る。本発明は、対応する加熱素子の任意のグループ化、配置、および動作モードを可能にし、それらに限定されない。
【0036】
本発明の文脈では、対応する加熱素子を、特に反応容器の壁に配置でき、そこから反応管に熱を輻射することができる。これら壁は、直線的であっても、または、たとえば、放物面の形態で、湾曲していてもよい。これら壁は、任意の壁形状の組合せを有することができ、また、たとえば、互いに角度を付けて、または任意の角度で配置することができる直線的な壁部分を有することもできる。
【0037】
本発明によるガス雰囲気の提供により、加熱素子が配置されている領域に、言及された酸素含有量が確実に行き渡ることが保証される。
【0038】
本発明は、提案された酸素上限により、特に反応管への損傷(「コイル破裂」)の場合に、対応する反応容器の動作上の安全性を向上させるとの結果を得る。対応する損傷が発生した場合、1つまたは複数の反応管が、特に完全に切断される可能性があるが、本発明は、小規模な漏洩に対しても有利である。対応する損傷が発生した場合、可燃性ガスが突然または徐々に反応容器内に漏出し、反応容器は、断熱上の理由から大部分が密閉されている。
【0039】
そのような損傷は、従来の燃焼反応器では、少なくとも1つの反応容器が、もっぱら電気的に加熱される本発明による装置に比べてそれほど安全上の問題はない。なぜなら、燃焼反応器では、たとえば、炭化水素/蒸気混合物の形態で、反応管から漏出する可燃性ガスが、反応容器内または対応する燃焼チャンバにおいて生じる燃焼によって制御された方式で変換することができるか、または、排気ガス流中に安全に排出できるからである。さらに、すでに規則的に行われている燃料ガスの燃焼により、酸素含有量が大幅に減少するため、反応管を取り囲むガスチャンバは、すでに本質的に「不活性化」されている。対照的に、純粋な電気加熱の場合、対応する可燃性ガスが、反応容器内に蓄積し、たとえば、空気の通常の酸素含有量および自己発火温度を超える温度で爆発または爆裂限界に達する可能性がある。爆発や爆裂を伴わない燃焼の場合でも、完全燃焼または不完全燃焼により、エネルギが放出され、過熱する可能性がある。完全燃焼または不完全燃焼は、反応管から流出するガスの量とともに、特に望ましくない圧力上昇を引き起こす可能性がある。本発明は、ガス混合物の燃焼が反応器チャンバにおける低酸素濃度、したがって低酸素インベントリによって制限されるため、そのような圧力の上昇を低減する。
【0040】
したがって、本発明は、プロセスガス温度が、プロセスガスに含まれる成分の、特に炭化水素の自己発火温度に近いかそれを超える間接的な電気加熱反応器のために特に好ましい。
【0041】
提案された措置により、本発明は、加熱素子における保護酸化物表面の維持と、電気的にエネルギ入力が行われる高温反応容器の安全関連の保護に役立つ、調整された雰囲気を備えた格納容器を創出する。本発明の範囲内で、特に、対応して運転される反応容器の完全な電気加熱が設けられてもよく、すなわち、少なくともこの反応容器内の反応管の加熱は、電気加熱によって主にまたは排他的に実行されることが有利であり、ここで導入される熱量の、特にここで導入される全熱量の、少なくとも90,95または99%が、電気加熱手段によって実行される。本明細書では、1つまたは複数の反応管を通過するガス混合物を介した入熱は考慮されていないため、この割合は、特に、反応容器内で外側から1つまたは複数の反応管の壁に伝達される、または壁または触媒床における反応容器内で生成される熱に関連する。
【0042】
以下、「第1の実施形態のグループ」とも称される本発明の特定の実施形態では、ガス雰囲気を提供するために使用される1つまたは複数のガスまたはガス混合物を、反応容器に供給することができると同時に、ガス雰囲気の一部が、反応容器から排出される。これにより、特に、反応容器を通る連続的な流れが生じ、このようにして、たとえば、熱の蓄積またはガス成分の局所的な濃縮または減損も回避することができる。このようにして、それに応じて供給物を調整することにより、ガス雰囲気における酸素含有量を制御することが特に容易になる。
この第1の実施形態のグループでは、特に、スタック、たとえば非常用スタックとの接続を確立することができる、反応容器からの1つまたは複数の流出開口部(以下、簡略化のために部分的に単数形のみ使用される)は、恒久的に開いている。これは、流れ断面に存在する可能性のある狭窄を除いて、1つまたは複数の流出開口部が、反応容器への、または反応容器からの流体の流出または流入に対するいかなる機械的抵抗にも対抗しないことを意味する。したがって、1つまたは複数の開口部は、少なくとも反応期間中に密閉されない。
【0043】
この場合、スタック開口部、またはスタックへの接続部、または別の流出開口部は、反応管が損傷した場合に、過剰なガス、特に可燃性炭化水素を排出するのにも役立つ。この場合、スタックは、反応容器への(たとえば、自由対流による)の逆流を防ぐために、特にスタック壁の領域に、構造要素(いわゆる速度密閉またはコンフューザ)を有することができる。
【0044】
以下、「第2の実施形態のグループ」とも称される、他の実施形態では、反応容器からの1つまたは複数の流出開口部(以下、簡略化のために部分的に単数形のみ使用される)、特に、スタック開口部、またはスタックへの接続部は、たとえば、圧力フラップ、または破裂ディスク、または対応するバルブを介して流出開口部を閉じることによって、所定の圧力レベルを超えてのみ開くように設計することができる。この場合、流出開口部は、通常は閉じられており、すなわち所定の圧力レベル未満であるが、対応するスタック断面の解放によって、対応する圧力が増加した場合、過剰なガスの、または、特に、反応管に対する損傷時における可燃性炭化水素の、排出のために役立つ。この場合、所定の圧力レベルに達したときに、一時的または恒久的な開口部を設けることができる。本文脈では、「恒久的な」開口部は、特に不可逆的な開口部を意味すると理解され、したがって、この実施形態では、その後ガスを放出することによって、圧力が、所定の圧力レベルを下回った後に再密閉されない。一方、「一時的な」開口部の場合は、再閉鎖が行われる。
【0045】
所定の圧力レベルで開くために、1つまたは複数の流出開口部は、たとえば、バネまたは荷重特性によって規定された開放抵抗を有する1つまたは複数のバネ荷重式または荷重荷重式のフラップを有することができるので、対応する圧力、または、より正確には、開口部全体の圧力差においてのみ開く。長方形のダクト開口部に適したフラップ構成の例が、以下の
図6Aから
図6Dに関連して論じられる。フラップの回転軸が、ダクト壁からオフセットされている場合、フラップが開く圧力増加は、軸の両側の材料の厚さおよび/または密度を調整することによって整調できる。同様の構成を、円形のダクト開口部に使用できる。
【0046】
それ自体知られている破裂ディスクまたは(機械的)圧力リリーフバルブの、前述された使用に加えて、たとえば、センサによって圧力値を検出し、事前に規定されたしきい値を超えた場合、任意のタイプの開放機構、たとえば点火機構を、または、電気アクチュエータ駆動を、作動させることも可能である。これにより、必要に応じて短い応答時間内に、十分に大きな断面を有する開口部を作成することが可能になり、通常動作中は、説明された方式で、開口部を閉じた状態に保つことができる。
【0047】
この場合、すなわち第2の実施形態のグループでは、ガス雰囲気を除去するために、または反応容器をフラッシュするために、通常動作中に閉じられているスタック開口部を、スタック内へ対応するバイパスライン開口部を介してバイパスすることができる。このようにして、バイパスラインに流体技法デバイスを使用することにより、特に制御された、たとえば時間制御された取り出しが可能となる。
【0048】
一般に、反応器チャンバからのガスの取り出しは、ガス雰囲気の組成の変化および/または冷却をもたらすことが可能である。反応器チャンバから取り出されたガスは、ガス雰囲気を提供するために再び使用(リサイクル)されるために、冷却および/または再生することができる。冷却の過程で、熱統合を実行することができ、すなわち、特に熱交換器において、ガスから取り出した熱を、蒸気システムにおけるさらなる流れおよび/または蒸気に伝達することができる。
【0049】
ガス雰囲気を提供するために使用される1つまたは複数のガスまたはガス混合物を供給するために、供給ノズルまたは供給開口部の形態で設けられる、またはそのような手段を含むガス供給手段、ならびにそれに接続されるガスリザーバが、設けられ、使用される。これらは、特に、知られている流体技術の手段によって、制御可能であるように設計できる。
【0050】
供給および/または抽出は、特に、本発明にしたがって使用される第1および第2の限界値に準拠する所望の酸素含有量に基づく制御にしたがって、連続的または不連続的に実施することができる。
【0051】
言い換えれば、本発明の文脈では、ガス雰囲気を提供するために使用される1つまたは複数のガスまたはガス混合物の連続的または不連続な供給が、反応容器内に行われ、反応容器からのガス雰囲気の少なくとも一部の取り出しが、さらに行われ得、この場合、取り出しは、供給物と少なくとも部分的に同時に、または供給物から少なくとも部分的に遅れて行うことができる。
【0052】
本発明の範囲内で、反応容器内に、大気圧未満の圧力レベルを提供することができる。これは、特に、説明された方式で供給および取り出しを同時に行う場合に、特に、反応容器から(非常用)スタックへの、または第1の実施形態のグループに関連して以前に提供された他の措置への恒久的に開いた接続を備えた実施形態の場合に、供給および取り出しを調整することによって、行うことができる。この場合、スタックおよび反応容器内の温度が高く、その結果として、含まれるガス体積の密度が低下するため、反応容器内に静的な負圧が発生する。本文脈では、たとえば、対応する静的な負圧が形成されるまで、ドラフトを誘発する(「吸引」)ファンの使用も提供され得る。
【0053】
反応容器を大気圧以下の圧力レベルで運転することにより、恐らくは、有害、腐食性、または可燃性である、望ましくない成分の、反応容器からの流出を、常に確実に阻止することができる。しかしながら、空気または二次空気の流入が発生する可能性があるが、これは、十分に密閉された設計によって制限することができ、および/または、適切な制御によって補償することができる。
【0054】
したがって、反応容器を大気圧以下の圧力レベルで運転する場合、反応容器の壁は、反応容器への、制御されない空気、すなわち酸素の侵入を阻止するために、特に高い気密性を備えることが好ましい。実施形態では、炉壁は、炉内壁表面積当たり、および反応容器内部と(同じ高度における)周囲の外側雰囲気との間の(絶対値としての)平均圧力差当たりの相対的な空気侵入速度が、0.5Nm3/(h×m2×ミリバール)未満、0.25Nm3/(h×m2×ミリバール)未満、または0.1Nm3/(h×m2×ミリバール)未満の値に制限されるように構築され、ここで、Nm3は、0℃および大気圧における標準立方メートルである。本明細書において、炉の内壁表面積は、断熱材から内部ボックス体積内に突き出ている輻射加熱素子または他の構造の表面積を含まず、全方向(すなわち、側面、上部、底部)における内部ボックス体積を区切るサーマルボックスまたは反応容器断熱材の高温表面積の合計として規定される。これらの値は、反応容器内部で得られる酸素濃度を、規定された上限値未満に維持しながら、適度な不活性ガス供給速度を可能にする(ユーティリティ消費量と、スタックを通る対流熱損失とを最小限に抑える)ように選択される。好ましい実施形態では、反応容器の内部と、(同じ高度における)周囲の外側大気との間の(絶対値としての)平均圧力差は、主にスタック設計(たとえば、高さ、直径、断熱材)、およびオプションで、ファンまたは同様のデバイスの提供に応じて、10ミリバール未満、5ミリバール未満、または3ミリバール未満である。一般的な設計規則として、酸素上限の下限値が規定されている場合、および/または運転コストを最小限に抑える必要がある場合、および/または環境への反応容器の壁に対する絶対圧力差が増加する場合、反応容器壁の気密性は優先的に高められる。
【0055】
しかしながら、特に前述された第2の実施形態グループに関連して使用することができる代替例では、反応容器内に、超大気圧レベルを設定することもできる。したがって、説明されたように、反応容器へのスタック開口部が閉じられるか、または所定の圧力レベルを超える開口部のためにのみ形成される場合には、超大気圧レベルを提供できることが好ましい。
【0056】
特に、ガス雰囲気は、ガス雰囲気を提供するために使用される1つまたは複数のガスまたはガス混合物を、反応容器に供給することによって提供することができるが、先に説明した実施形態におけるように、ガス雰囲気の一部を反応容器から同時に除去しない。この場合、対応するガスまたはガス混合物は、超大気圧レベルまで注入することができるが、この圧力レベルは、言及され、上記で説明された流出開口部の開口圧力よりも低い。有利なことに、ガス雰囲気は、反応段階中、開始時のみ、または断続的に供給され、その後、さらなる措置を講じることなく維持できるため、対応する設計によって、特に必要なガス量の削減が可能になる。
【0057】
しかしながら、超大気圧レベルは、好ましくは、反応容器における対応する圧力レベルを確保する、適切に制御および/または寸法決定されたバイパスラインを設けることによって、ガス雰囲気の提供、および、反応容器からのガス雰囲気の一部の同時取り出しのために、ガスまたはガス混合物の供給を受ける実施形態でも設定できる。上記の説明を参照されたい。言い換えれば、供給されるガス量、および/または、流出開口部を介して流出するガス量が、それに応じて調整されるのであれば、恒久的に開いた流出開口部を、または、たとえば、調整可能な流量を有する流出開口部を備えた場合であっても、超大気圧レベルを、反応容器に設定することができる。
【0058】
特に、制御された供給によって、超大気圧レベルが反応容器に提供されると、酸素含有量を、無制御な方式で増加させる外気の流入を阻止することができる。この実施形態では、酸素含有量は、その後増加する可能性がないため、初期調整が実行された後の酸素含有量の測定は、不要であり得る。
【0059】
本明細書において、「大気圧以下の圧力レベル」という用語は、標準大気圧である101.325Pa未満の任意の圧力、特にこの圧力未満の、少なくとも10,50,100または200ミリバール低いことを指すものとする。同様に、「超大気圧レベル」という用語は、標準大気圧である101.325Paを超える任意の圧力、特にこの圧力より、少なくとも10,50,100または200ミリバール高いことを指すものとする。
【0060】
本発明の実施形態では、反応容器の壁は、大気に開放された反応容器の内部空間の目視検査のための検査ポートを備えていないか、または、透明材料、特に耐熱透明材料で、気密に閉じられた反応容器の内部空間の目視検査のための検査ポートのみを備えている。すなわち、本発明の実施形態では、特に、反応器内のガス雰囲気が、特に制御された方式で調整され得るように、(開放された)検査ポートの形態で、反応器壁に熱および/またはガスの漏れはない。実施形態では、ガラス張りで密閉された観察窓、すなわち、透明な材料によって気密に閉じられた反応容器の内部空間の目視検査のための検査ポートが設けられる。窓の外側には、窓が観察に使用されないときの熱損失を制限する、可動断熱カバーまたはブラインドが取り付けられていることが好ましい。本発明の実施形態では、反応管の観察を可能にするが、気密が維持される手法で、すなわち、透明な窓の後ろ、または反応器内に設置されるカメラを設けることができる。反応器内に設置されるカメラを設ける場合、任意のケーブルを、気密ポートを介して反応器壁を通過させることができる。
【0061】
本発明の実施形態では、特に電気加熱は、バーナと比較して、はるかに制御された方式で、熱が提供されるため、反応管の温度を監視する必要性を低減または不要にするため、反応器の壁における開放ポートを省略することができる。
【0062】
上記の説明を要約すると、ガス雰囲気は、反応容器からのガス雰囲気の一部の同時取り出しを実行することなく、または、反応容器からのガス雰囲気の一部の同時取り出しを実行しながら、ガス雰囲気を反応容器に設けるために使用される1つまたは複数のガスまたはガス混合物を注入することによって設けられ得る。
【0063】
単に明確化のために、大気圧以下の圧力レベルにおける動作は、特に、反応容器とスタック出口との間に、(比較的)大面積の接続があり(つまり、流量関連の圧力損失が低く)、十分に高いスタックが、高温の(すなわち、軽い)ガスで満たされている場合に実行できることが再度強調されるべきである。この場合、流れによって引き起こされる圧力降下は、スタックの高さにわたって生じる高温ガスと冷たい外気との間の測地圧力差よりも小さく、その結果、同じ測地高さにおいて、内側ガス雰囲気と外側雰囲気との間に、負の圧力差が生じる。また、上述したように、ブロワを使用して、大気圧以下の圧力レベルを設けることもできる。ブロワは、メインスタックラインおよびバイパスラインに設けることができる。
【0064】
逆に、特に、(通常運転中)反応容器とスタック出口との間の接続が、完全に閉じられているか、たとえばバイパスラインなどを介してサイズが縮小されている場合には、超大気圧レベルが発生し、高温ガスと冷たい外気との間の測地圧力差よりも、結果的に、スタックまたはバイパスラインの高さよりも、圧力損失が大きくなる。
【0065】
したがって、第1および第2の実施形態のグループでは、本発明は、反応容器における圧力レベルが、大気圧以下または超大気圧レベルで実行することができる。第1の実施形態のグループでは、出口開口部の寸法および位置を適切に決定すること、および/または、ブロワを使用することによって、大気圧以下の圧力レベルを設けることができることが好ましい。
【0066】
特に有利な実施形態によれば、本発明による方法は、ガス雰囲気を提供するために複数のガスまたはガス混合物を使用することを含み、これらは、第1の体積分率の酸素を有する第1のガスまたはガス混合物と、第1の体積分率よりも低い第2の体積分率の酸素を有する第2のガスまたはガス混合物とを含む。これらは以下で説明されるように使用できる。
【0067】
本発明の1つの実施形態では、第1のガスまたはガス混合物の少なくとも一部が、反応容器の少なくとも1つの第1の領域に供給される一方、第2のガスまたはガス混合物の少なくとも一部が、そこから個別に、反応容器の少なくとも1つの第2の領域に供給されるようにすることができる。この実施形態は、特に、局所的な要求に応じて特に有利な方式で、酸素含有量の空間分布を調整することを可能にする。また、第1および第2の領域への供給が同時に、特に、おのおのの場合に調整可能な量で行われるか、または同時に行われないようにすることもできる。たとえば、少なくとも一時的に、ガスまたはガス混合物は、たとえば、大気圧以下の圧力レベルにおいて、空気の取り込み(したがって酸素の流入)が非常に高く、窒素または別の不活性ガスのみが供給される場合には、これら領域のうちの1つの領域のみに供給することができる。たとえば、換気スロット、フラップ、または閉鎖可能な穴などの調整可能または調整不可能な流入開口部を介して、規定された空気の取り込みも確保できる。このようにして、流入する周囲空気の量を調整できるようにするために、対応する流入開口部は、特に可変数で、または調整可能な流れ断面で、開閉可能であるように設計することができる。したがって、流入の対応する調整は、本発明の意味において、ガス混合物、すなわち周囲空気のさらに規定された供給物として理解することができる。
【0068】
本文脈では、(以下で説明されるように、予混合されているか否かに関わらず)ガスまたはガス混合物を(たとえば、先に説明したように、反応器壁の特定の点にのみ設けられる供給手段、または、空気のための入口開口部によっても)、1つの領域のみに恒久的に供給することも可能である。対応する1つまたは複数の領域「への」供給は、対応するガスまたはガス混合物(または、それぞれの部分)が、たとえばその下方または側方である(1つまたは複数の)領域に到達するように行われ、その結果、反応容器における規定された流れによって、熱効果により、または単に流入衝撃により、ガスまたはガス混合物が、反応容器において流れる。これら領域内での供給も可能である。しかしながら、本発明の別の実施形態では、反応器内に漏れる空気の代わりに、清浄な「計器」空気が使用される。清浄な空気を使用する利点は、素子の寿命に影響を与える可能性のある塵、湿気、および考えられる汚染物質の侵入が少ないことを含む。
【0069】
特に、加熱素子は、反応容器の少なくとも1つの第1の領域に配置され、反応管は、少なくとも1つの第2の領域に配置され得る。説明されたガス供給または周囲空気の取り込みによって、特に、(説明した方式で劣化/損傷を回避するために)加熱素子の領域における酸素含有量の相対的な増加と、(漏れる可能性のある成分の反応変換を最小限に抑えるために)反応管の領域における酸素含有量の相対的な減少とを達成することができる。
【0070】
特に、第1の領域および第2の領域は、いかなる種類の分離デバイスによっても互いに分離されないため、そのような配置は、特に、対応する第1のガスおよび第2のガス、またはガス混合物が、対応する素子を通過して連続的に供給できる場合に使用することができる。この場合に生じる連続的な供給および取り出しによって、濃度勾配を維持できるが、断続的な供給は、むしろ、経時的に混合に至る可能性がある。したがって、本発明のこの実施形態は、連続的である場合に有利に使用される。
【0071】
先に説明した個別の供給物を用いる実施形態に加えて、またはその代わりに、第1のガスまたはガス混合物の少なくとも一部と、第2のガスまたはガス混合物の少なくとも一部とが、反応容器の外側で完全にまたは部分的に予混合され、完全にまたは部分的に予混合された状態で反応容器に供給される。そのような実施形態は、反応容器が連続的な流れを有していない場合に特に適している。この代替的な相互接続により、特に反応容器の底部および/または側壁および/または天井における分散計量の場合、大容量の反応容器内の濃度勾配を最小限に抑えることができる。前述された設計で可能となる、加熱素子の領域における目標酸素濃縮の利点は、この場合、より著しく均一な分布と、(たとえば、一部の加熱素子において局所的に酸素が少なすぎる、または反応管付近の酸素濃度が高すぎるなど)好ましくない局所的な不均衡のリスクの低減とのトレードオフとなる。
【0072】
たとえば、予混合ガスと非予混合ガスとの個別の供給のような、対応する措置の組合せも可能である。この場合、たとえば、窒素と空気との混合物を、反応容器の壁に供給できる一方、窒素を、反応容器の中心に供給できる。このように、加熱素子の近傍で適度な酸素濃縮を達成することができ、同時に、部分的な予混合によって濃度勾配を制限することができる。
【0073】
原理的には、本発明の様々な実施形態において、供給は、反応容器の様々な場所、特に複数の地点に対して行うことができる。
【0074】
第1のガスまたはガス混合物は、空気、空気と比較して酸素が濃縮または減損されたガス混合物、または酸素であり得るか、またはそれらを含み得、第2のガスまたはガス混合物は、空気と比較して酸素が減損されたガス混合物、窒素、二酸化炭素、または他の不活性ガスであり得るか、またはそれらを含み得る。原則として、第1のガスまたはガス混合物は、1%、5%、10%を超える体積分率で酸素を含み得る。知られているプロセス、たとえば空気分離を使用して、対応するガスまたはガス混合物を提供することができる。本明細書において「不活性ガス」という用語は、特に反応容器内に広がる条件下で、酸化反応において反応物質として関与しないガスを意味すると理解される。上述したように、特に第2のガスまたはガス混合物について、先に説明された組成を有する、1つのガスまたはガス混合物のみを供給することもできる。
【0075】
すべての場合において、反応容器の少なくとも1つの領域における実際の体積分率の酸素は、反応期間中および/または反応期間の開始時に検出することができ、ガス雰囲気を提供するために使用される1つまたは複数のガスまたはガス混合物の供給は、検出に基づいて、特に量の相対的および/または絶対的変化によって規制または制御することができる。検出は、特に、所定の周期で、または(擬似)連続的に実行することができる。
【0076】
反応容器を通る連続的な流れがある本発明の実施形態では、酸素含有量の検出は、反応容器からの排出口の下流で(たとえば、スタックまたはバイパスラインなどで)実行できることが好ましい。それに加えて、またはその代わりに、酸素含有量は、反応容器内の1つまたは複数の場所で測定することができる。たとえば、波長可変レーザダイオード、酸化ジルコニウムプローブ、ガスクロマトグラフィ、常磁性など、酸素含有量を測定する任意の適切な方法を使用することができる。
【0077】
反応容器を断続的に加圧する場合、酸素含有量は、対応するパージガス排出ライン、および/または、反応容器自体において同様に測定することができる。
【0078】
本発明のすべての実施形態において、酸素濃度が許容最大レベルを超えた場合、あらゆる種類の安全関連機能を開始することができる。酸素レベルが許容最小レベルを下回った場合、反応器内の所望の酸素含有量を再確立するための運転措置が開始され得る。低すぎる酸素濃度は、安全上の懸念とは見なされないが、上述したように、加熱素子の寿命に影響を与える可能性がある。
【0079】
反応管からのガスの、許容できない漏れも、特に反応容器における圧力測定センサを介して検出することができる。このようにして、たとえば、対応するスイッチング信号に基づいて、反応物質の注入を即座に阻止または停止することができる。
【0080】
反応管への軽度の損傷(急激なまたは測定可能な圧力上昇を伴わない漏れ)を検出するために、パージ流において、1つまたは複数の反応物質の(特に、一酸化炭素当量としての)含有量を連続的に測定することもできる。許容できない値によっても、反応物質の供給が急速に停止される可能性がある。
【0081】
適切な測定方法(たとえば、レーザ、ガスクロマトグラフィ)が使用される場合、たとえば、炭化水素またはその燃焼生成物の含有量は、記載されているすべての設計について、反応容器の領域において同じセンサを用いて、追加的または代替的に測定することもできる。
【0082】
本発明の実施形態では、反応管は、通常、かなりの量の蒸気を含んでいるため、特に、水分の存在によって、漏れ検出を実現することができる。
【0083】
したがって、より一般的には、本発明は、圧力および/または炭化水素の測定、および/または、水分の検出に基づいて、1つまたは複数の反応管からのガス漏れを示す値を判定することと、値が所定のしきい値を超えた場合、1つまたは複数の安全措置を開始することとを含み得る。
【0084】
さらに、特定の実施形態では、本発明は、反応容器内への自由流れに先立って、調整ガスの可能な予加熱を実行するための手段を提供する。そのような予加熱は、特に、反応器チャンバから取り出されたガスとの熱交換において実行することができる。
【0085】
言い換えれば、ガス雰囲気を提供するために使用されるガスまたはガス混合物、または2つ以上のガスまたはガス混合物のうちの少なくとも1つが、反応容器に供給される前に予熱され得る。本発明の実施形態は、特に、反応容器から出るガスとの熱交換を介して達成される予加熱を含む、廃熱回収を含み得る。
【0086】
特に、対応するガスまたはガス混合物を壁近くに注入する場合、たとえば、先ず、対応するガスまたはガス混合物を、コイルボックスの内部、すなわち反応容器を通る十分な長さにわたるパイプ通路を通してから、その後、注入デバイスに導くことによって、対応するガスまたはガス混合物を予加熱することが有利な場合がある。このようにして加熱素子の目標出力を損なう可能性がある、冷却調整ガスによる加熱素子の好ましくない冷却の発生を回避することができる。
【0087】
とりわけ、注入デバイスは、加熱されたパイプ通路の端に直接配置されるか、または、加熱された調整ガスが、まずコイルボックスからパイプライン(好ましくは、断熱されたパイプライン)に導かれて戻され、その後、外側からの注入デバイスとなることも可能である。あるいは、外部熱源を使用して、調整ガス(電気、蒸気、熱油、熱水など)を予熱することもできる。
【0088】
したがって、本発明の対応する実施形態において使用されるガス注入手段は、1つまたは複数の予熱デバイスと、1つまたは複数の注入デバイスとを備え得る。本文脈において、「注入」とは、特に、対応する注入デバイスを介して反応容器内にガスまたはガス混合物を放出することを指すように意図される。
【0089】
言い換えれば、本発明の特に好ましい実施形態では、反応容器の内部における、または反応容器の内部からの顕熱を、対応するガスまたはガス混合物に伝達するための手段が提供され得る。
【0090】
本発明はさらに、反応容器と、反応容器に配置された反応管と、反応容器に配置された1つまたは複数の電気加熱素子によって提供される輻射熱を使用して、反応期間中に、反応管を、400℃と1500℃との間の反応管温度レベルまで加熱するように適合された手段とを備える、化学反応を実行するための反応装置を提案する。反応装置は、反応期間中に、加熱素子が設けられた反応容器の少なくとも一部において、第1の限界値と第2の限界値との間に調整された体積分率の酸素を有するガス雰囲気を提供するように適合された手段によって特徴付けられ、第1の限界値および第2の限界値は、本発明にしたがって提案されるプロセスに関して上記で示したように選択される。
【0091】
特に、上記で説明された実施形態のいずれかのプロセスを実行するために設定され得る、対応する反応装置のさらなる実施形態のために、上記の説明が明確に参照される。
【0092】
本発明の特徴および利点、およびその有利な実施形態が、以下に再度説明される。
【0093】
ほぼ完全に密閉された反応容器を、特定のガス雰囲気で充填するという提案された概念により、酸素含有量を、外側の周囲空気と比較して低減することができる。本発明にしたがって利用できるように、1つまたは複数の反応管が故障した場合に流出する炭化水素の転化率と、それによる(反応投入熱の結果としての)追加の体積膨張率とは、酸素分圧と、第1の近似で相関する。この相関関係は、以下の表1に要約され、ここで、xO2は、酸素モル分率であり、Vreakは、反応に関連する体積慣性率である。以下に示す値は、例を表しており、一般的に有効な定量情報ではない。
【0094】
反応容器における最大酸素含有量(すなわち、特に本発明にしたがって使用される第2の限界値)は、特に、出口スタックの寸法決定に基づいて指定することができる。
【0095】
【0096】
反応容器における最大許容圧力pmaxは、それぞれのチャンバまたは周囲の格納容器の機械的安定性から決まる。これは、管の破裂または対応する他の安全関連事象の場合における圧力pboxと、少なくとも同じ高さである必要があり、関係するチャンバの体積VBox、出口スタックの直径Dstack、および酸素モル分率、
pmax≧pbox=f(VBox,Dstack,xO2)
に依存する。
【0097】
この要件は、出口スタックの寸法決定の設計基準となる。この関係は、
図5を参照して説明される。たとえば、破線51,52によって例示されるように、20ミリバールの最大許容圧力増加が基準として使用される場合、直径500mmのスタック(破線51)を使用できるようにするために、反応に関連した体積増加率は、最大約10m
3/秒となり、これにより、最大酸素含有量は約1%となる。これを逆に見ると、最大1%の酸素含有量を使用したい場合、少なくとも500mmのスタック直径を使用する必要がある。
【0098】
直径900mmのスタック(破線52)を使用できるようにするために、体積率が、約42m3/秒以下である必要があり、これは、約4%の最大酸素含有量となる。逆に、上記の説明と同様に、4%の最大酸素含有量が使用される場合は、少なくとも900mmのスタック直径を使用する必要がある。
【0099】
反応容器内の酸素含有量が少なくなるほど、体積の増加は小さくなる。したがって、追加の体積を消散する必要がある出口スタックの直径も小さくすることができる。酸素含有量を効果的に制限するための決定要因は、特に、反応容器内部における大気圧以下の圧力条件下で、酸素を含む空気の制御されない侵入を十分に阻止または最小限に抑えるために、環境に対して常に十分良好な密閉を行うことである。しかしながら、説明したように、この場合において、完全な密閉は必要ない。
【0100】
以下、本発明を、先行技術を参照し、先行技術と比較して本発明の実施形態を示す添付図面を参照してさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【
図1】
図1は、本発明の1つの実施形態による、化学反応を実行するための反応装置を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の1つの実施形態による、化学反応を実行するための反応装置を概略的に示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の1つの実施形態による、化学反応を実行するための反応装置を概略的に示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の1つの実施形態による、化学反応を実行するための反応装置を概略的に示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の1つの実施形態による、スタック寸法決定の基本原理を概略的に示す図である。
【
図6A】
図6Aは、本発明の実施形態による、圧力フラップ装置の例を概略的に示す図である。
【
図6B】
図6Bは、本発明の実施形態による、圧力フラップ装置の例を概略的に示す図である。
【
図6C】
図6Cは、本発明の実施形態による、圧力フラップ装置の例を概略的に示す図である。
【
図6D】
図6Dは、本発明の実施形態による、圧力フラップ装置の例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0102】
図面では、構造的または機能的に対応する要素は、同一の参照符号を用いて例示され、明確化のために繰り返し説明されない。以下でデバイスの構成要素が説明される場合、対応する説明は、おのおのの場合において、デバイスを用いて実行されるプロセスにも言及しており、またその逆も同様である。
【0103】
図1に例示され、全体を100で示す反応装置では、非常に簡略化された形態で例示され、上述したように設計された反応管2が、同様に上述したように設計された反応容器1に配置される。輻射熱を使用して反応管2を間接的に加熱する、同様に説明されたタイプの加熱素子3が、反応容器1の壁に配置される。
【0104】
例示される例では、ガス供給手段4が、反応容器3の底部に配置されており、これにより、本明細書において矢印4.1および矢印4.2を用いて例示されるように、異なる酸素含有量を有するガスまたはガス混合物を供給することができる。本明細書で例示される実施形態では、これらガスまたはガス混合物は個別に供給され、それにより、加熱素子3の領域に、より高い酸素含有量を提供するために、特に、ガスまたはガス混合物4.2よりも高い酸素含有量を有するガスまたはガス混合物4.1を、反応管2の領域に供給することができる。
【0105】
本明細書において、スタック6へ恒久的に開いたスタック開口部の形態であるガス抽出手段5によって、ガス供給手段4を介した同時供給により、前述された利点を有する、反応容器1を通る連続的な流れを達成することができる。これにより、周囲空気と比較して、スタックにおける高温ガス雰囲気の密度が低いため、反応容器1を大気圧以下の圧力レベルで運転することができる。空気の入口は、ラベル付けされていない曲線矢印で例示されている。
【0106】
図2に例示される反応装置200は、ガスまたはガス混合物4.1,4.2が、すでに外部で混合されてガス混合物4.3を形成し、それが、ガス供給手段4によって反応容器1へ供給されるという点で、本質的に異なる。
【0107】
また、前述されたように、図示された実施形態のすべては、一時的または恒久的に、単一のガスまたはガス混合物のみの供給によって動作できるか、または提供できる。
【0108】
図3に例示される反応装置300は、スタック開口部が、特定の反応容器圧力を超えた場合、破裂ディスク7によって、または、スタック断面を開くだけの他の適切な手段によって閉じられるという点で、前述された設計とは異なる。また、本明細書において5として示されるガス抽出手段は、スタック6へのバイパス接続を確立し、特に、適切に規制および/または寸法決定することができる。このように、説明された利点によって、反応容器1に、超大気圧レベルを設定することができる。反応容器1に、所望の酸素含有量を提供するために使用されるガスは、説明の目的のために、本明細書において破線矢印4.3で示されるように、予混合することができるか、または個別に供給することができる。反応容器1からの未確定のガス損失が、曲線矢印を用いて示されている。
【0109】
図4に例示される反応装置400のさらなる実施形態では、恒久的に開いたガス抽出手段を何ら備えていないため、ここでは、フロースルーを設定することができず、開始時または一定時間間隔で、反応容器1を適切なガス雰囲気で加圧できることが好ましい。以前と同様に、反応容器1は、特に超大気圧レベルで運転される。
【0110】
図5は、本発明の1つの実施形態によるスタックの寸法決定の基本原理を図の形態で概略的に示しており、ここでは、パーセントで示された酸素含有量が横軸に示され、反応に関連した体積不確実率(m
3/秒)が縦軸に示されている。グラフ51は、表1を参照して既に上記で説明された関係を表す。破線52は、500mmのスタック直径のための、20ミリバールの最大圧力増加に必要な値を示しており、破線53は、900mmのスタック直径のための、対応する値を示している。上記の説明が明示的に参照される。
【0111】
図6Aから
図6Dは、本発明の実施形態による圧力フラップ装置の例を概略的に示す。前述したように、フラップ装置は、反応器壁における長方形の開口部を閉じるように、または、部分的に閉じるように構成されるが、反応器壁における円形の開口部または異なる形状の開口部にも同様に、そのようなフラップ装置を設けることができる。
【0112】
いずれの場合も、フラップ装置は、第1のフラップ601および第2のフラップ602を含む。
図6Aに示す実施形態では、これらフラップ601,602は、閉状態において、規定されたガス流を可能にするために円形の開口部603を残すような形状であるが、
図6Bおよび
図6Dに示される実施形態によれば、同じ目的のために、スリット状の開口部604を残すサイズで、フラップ601,602を設けることもできる。
図6Cに示される実施形態では、同じ目的のために、さらなる開口部605が設けられる。
フラップ601,602は、反応器壁の一部にヒンジで接続され得、バネまたは重りで付勢された構成で設けられ得る。
図6Cおよび
図6Dに示される実施形態によれば、フラップ601,602自体は、606で示すように、ヒンジ、または他の実施形態では、所定の破断線またはノッチを設けられ得る。これら、または付勢バネや重りの力は、フラップ601,602が所定の圧力を超えて開くように構成され得る。
【国際調査報告】