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特表2024-514571エチレンのエポキシ化のための調節剤及び触媒性能最適化
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】エチレンのエポキシ化のための調節剤及び触媒性能最適化
(51)【国際特許分類】
   C07D 301/10 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
C07D301/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561725
(86)(22)【出願日】2022-04-06
(85)【翻訳文提出日】2023-11-30
(86)【国際出願番号】 EP2022059114
(87)【国際公開番号】W WO2022214539
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】21167333.0
(32)【優先日】2021-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002105
【氏名又は名称】シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウェルズ,ギャリー・ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】イエイツ,ランドール・クレイトン
(57)【要約】
エチレンオキシド反応器システムにおけるエポキシ化触媒の選択性(S)を最大化するための方法であって、エポキシ化触媒及び塩化物含有触媒調節剤の存在下で、エチレン及び酸素を含む供給ガスをエチレンオキシドに、エチレンオキシド反応器システムにおいて変換するように構成されたエチレンオキシド生成システムから、測定された反応器選択性(Smeas)、測定された反応器温度(Tmeas)、及び1つ以上の稼働上のパラメータを受け取ることを含む、方法。エポキシ化触媒は、銀及び促進量のレニウム(Re)を含み、測定された反応器選択性(Smeas)、測定された反応器温度(Tmeas)、及び1つ以上の稼働上のパラメータは、エチレンオキシド生成システムによって生成されたリアルタイム及び経時的な履歴稼働データ点を含む。本方法はまた、(a)モデルを使用して、各時点について、最適調節剤レベル(Mopt)におけるエポキシ化触媒のモデル推定選択性(Sest)及びモデル推定温度(Test)を計算するためプロセッサを使用することを含む。モデル推定選択性(Sest)及びモデル推定温度(Test)は、当該時点における1つ以上の稼働上のパラメータのうちの少なくとも1つの稼働上のパラメータに基づいて決定され、少なくとも1つの稼働上のパラメータは、調節剤レベルを含まず、モデルは、エポキシ化触媒、エチレンオキシド生成システム、又は両方に関連する経験的履歴データに少なくとも部分的に基づく。本方法はまた、プロセッサを使用して、(b)時点の各々について、測定された反応器選択性(Smeas)とモデル推定選択性(Sest)との間の差(ΔS)、及び測定された反応器温度(Tmeas)とモデル推定温度(Test)との間の差(ΔT)を決定する、(c)曲線をデルタ選択性(ΔS)データ点に、対応するデルタ温度(ΔT)データ点の関数として適合させて、近似曲線を得る、(d)近似曲線並びにΔS(ΔSreal-time)及びΔT(ΔTreal-time)のリアルタイム値に基づいてリアルタイム相対有効調節剤レベル(RCleffreal-time)を得る、(e)リアルタイムRCleffに基づく実行可能な推奨を出力するためプロセッサを使用すること、を含む。本方法は、プロセッサを使用して、(f)実行可能な推奨をディスプレイ上に表示することを更に含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンオキシド反応器システムにおけるエポキシ化触媒の選択性(S)を最大化するための方法であって、
前記エポキシ化触媒及び塩化物含有触媒調節剤の存在下で、エチレン及び酸素を含む供給ガスをエチレンオキシドに、前記エチレンオキシド反応器システムにおいて変換するように構成されたエチレンオキシド生成システムから、測定された反応器選択性(Smeas)、測定された反応器温度(Tmeas)、及び1つ以上の稼働上のパラメータを受け取ることであって、前記エポキシ化触媒が、銀及び促進量のレニウム(Re)を含み、前記測定された反応器選択性(Smeas)、前記測定された反応器温度(Tmeas)、及び前記1つ以上の稼働上のパラメータが、前記エチレンオキシド生成システムによって生成されたリアルタイム及び経時的な履歴稼働データ点を含む、受け取ることと、
(a)モデルを使用して、各時点について、最適調節剤レベル(Mopt)における前記エポキシ化触媒のモデル推定選択性(Sest)及びモデル推定温度(Test)を計算することであって、前記モデル推定選択性(Sest)及び前記モデル推定温度(Test)が、前記時点における前記1つ以上の稼働上のパラメータのうちの少なくとも1つの稼働上のパラメータに基づいて決定され、前記少なくとも1つの稼働上のパラメータが、塩化物含有調節剤レベルを含まず、前記モデルが、前記エポキシ化触媒、前記エチレンオキシド生成システム、又は両方に関連する経験的履歴データに少なくとも部分的に基づく、計算することと、
(b)前記時点の各々について、前記測定された反応器選択性(Smeas)と前記モデル推定選択性(Sest)との間の差(ΔS)、及び前記測定された反応器温度(Tmeas)と前記モデル推定温度(Test)との間の差(ΔT)を決定することと、
(c)曲線をデルタ選択性(ΔS)データ点に、対応するデルタ温度(ΔT)データ点の関数として適合させて、近似曲線を得ることと、
(d)前記近似曲線並びにΔS(ΔSreal-time)及びΔT(ΔTreal-time)のリアルタイム値に基づいてリアルタイム相対有効調節剤レベル
【数1】
を決定することと、
(e)前記リアルタイムRCleff
【数2】
に基づく実行可能な推奨を出力することであって、前記推奨が、前記RCleffがそのリアルタイム値
【数3】
から定義による0.0の最適レベル又は同等の絶対調節剤レベル目標(Mopt)に変更されるように、調節剤レベル(M)のその最適値(Mopt)への目標変更(Mchange)を含む、出力することと、
(f)前記実行可能な推奨をディスプレイ上に表示することと、を行うためにプロセッサを使用することと、を含み、前記RCleffが、前記最適調節剤レベル(Mopt)に対する前記調節剤レベル(M)の比から1を引いた値であるように定義され、
RCleff=(M/Mopt)-1
前記調節剤レベル(M)が、前記エチレンオキシド反応器システムへの前記供給ガス中の塩化物種の総濃度若しくは加重総濃度、塩化物の補給供給速度、又は触媒塩化物化有効度値(Cleff)として定義され、これは、
【数4】
として計算され、
それによって、[MC]、[EC]、[EDC]、及び[VC]が、それぞれ塩化メチル(MC)、塩化エチル(EC)、二塩化エチレン(EDC)、及び塩化ビニル(VC)のppmv単位の濃度であり、[CH]、[C]、及び[C]が、それぞれ前記供給ガス中のメタン、エタン、及びエチレンのモルパーセント単位の濃度であり、前記調節剤レベル(M)をそのリアルタイムレベル(Mreal-time)からその最適レベル(Mopt)にし、前記RCleffを0.0のその最適レベルにするための推奨された変更が、百分率で表すと、
【数5】
として、又は調節剤レベルの同等増分変化として、又は同等に定義され、絶対推奨最適調節剤レベル目標(Mopt)が、
【数6】
として定義され、
前記リアルタイムRCleff
【数7】
が、
(i)(ΔSreal-time)及びΔT(ΔTreal-time)のリアルタイム値における前記近似曲線の傾きを決定し、前記傾きを前記エポキシ化触媒についての基準曲線と比較することによって、又は
(ii)前記近似曲線から、最大ΔS(ΔSopt)及び前記最大ΔSにおける対応するΔT(ΔTopt)を決定することであって、前記ΔSoptが、最適RCleffにおいて生じる、決定すること、
前記ΔSから前記ΔSoptを減算することによって相対選択性差(RSD)を、及び前記ΔTから前記ΔToptを減算することによって相対温度差(RTD)を計算すること、並びに前記RSD(RSDreal-time)及び前記RTD(RTDreal-time)のリアルタイム値を、前記エポキシ化触媒の基準曲線と比較すること、によって、又は前記方法(i)並びに(ii)の組み合わせによって決定され、
前記基準曲線が、以前の実験室試験、パイロットプラント試験、又は早期のプラント稼働から生成され、前記選択性偏差及び温度偏差対最適値を前記相対有効調節剤レベル(RCleff)に関連付けるか、又は前記温度偏差に対してプロットされた前記選択性偏差の前記プロットの前記傾きを前記相対有効調節剤レベル(RCleff)に関連付ける、方法。
【請求項2】
ΔS(ΔSreal-time)及びΔT(ΔTreal-time)の前記リアルタイム値における前記近似曲線の前記傾きが、通常基準境界内にあり、前記通常基準境界が、±1%/℃~±3%/℃の範囲内にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リアルタイムRCleff
【数8】
が、0又はその付近にあるときに前記最適RCleffにあり、0又はその付近が、±0.01~±0.05の範囲内にあり、前記エポキシ化触媒が、
【数9】
が正であり、かつ0又はその付近にないときに過剰調節されており、前記エポキシ化触媒が、
【数10】
が負であり、かつ0又はその付近にないときに過小調節されている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ΔS(ΔSreal-time)の前記リアルタイム値が、前記近似曲線の予測境界線内にあり、前記予測境界が、±0.1%~±0.5%の範囲内にある、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記RCleffが、そのリアルタイム値
【数11】
から0.0の前記最適レベルに変更されるように、調節剤レベル(M)のその最適値(Mopt)への目標変更(Mchange)を行うことを含む、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記エチレンオキシド反応器システムにおける前記リアルタイムRCleff
【数12】
が、前記最適RCleffにないか、又は前記最適RCleffの±0.01~±0.05の範囲内にないときに、警告をトリガすることを含む、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記1つ以上の稼働上のパラメータが、ガス毎時空間速度(GHSV)、圧力、前記調節剤レベル、供給ガス組成物、EO生成パラメータ、及びそれらの組み合わせを含み、前記EO生成パラメータが、生成ガスエチレンオキシド濃度、前記エチレンオキシド反応器システム内の反応器の入口から出口までに生成されたEOのモル数の変化、エチレンオキシド生成速度、前記反応器に装填された銀の質量当たりのエチレンオキシド生成速度、触媒質量当たりのエチレンオキシド生成速度、及び作業速度を含む群から選択される、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
1つ以上の有形の非一時的機械可読媒体であって、エチレンオキシド反応器システムにおけるエポキシ化触媒の選択性(S)を最大化するように構成され、かつ
(a)モデルを使用して、リアルタイム及び経時的な履歴点について、前記エチレンオキシド反応器システムを含むエチレンオキシド生成システムからの前記時点における少なくとも1つの稼働上のパラメータに基づいて、最適調節剤レベル(Mopt)における前記エポキシ化触媒のモデル推定選択性(Sest)及びモデル推定温度(Test)を計算することであって、前記モデルが、前記エポキシ化触媒、前記エチレンオキシド生成システム、又は両方に関連する経験的履歴データに少なくとも部分的に基づき、前記少なくとも1つの稼働上のパラメータが、塩化物含有調節剤レベルを含まず、前記エポキシ化触媒が、銀及び促進量のレニウム(Re)を含む、計算することと、
(b)前記時点の各々について、測定された反応器選択性(Smeas)と前記モデル推定選択性(Sest)との間の差(ΔS)、及び測定された反応器温度(Tmeas)と前記モデル推定温度(Test)との間の差(ΔT)を決定することであって、前記測定された反応器選択性(Smeas)、前記測定された反応器温度(Tmeas)が、前記時点において前記エチレンオキシド生成システムによって生成されたリアルタイム及び経時的な履歴稼働データ点を含む、決定することと、
(c)曲線をデルタ選択性(ΔS)データ点に、前記対応するデルタ温度(ΔT)データ点の関数として適合させて、近似曲線を得ることと、
(d)前記近似曲線並びにΔS(ΔSreal-time)及びΔT(ΔTreal-time)のリアルタイム値に基づいてリアルタイム相対有効調節剤レベル
【数13】
を決定することと、
(e)前記リアルタイムRCleff
【数14】
に基づく実行可能な推奨を出力することであって、前記推奨が、前記RCleffがそのリアルタイム値
【数15】
から定義による0.0の最適レベル又は同等の絶対調節剤レベル目標(Mopt)に変更されるように、調節剤レベル(M)のその最適値(Mopt)への目標変更(Mchange)を含む、出力することと、
(f)前記実行可能な推奨をディスプレイ上に表示することと、を行うための命令を含み、
前記RCleffが、前記最適調節剤レベル(Mopt)に対する前記調節剤レベル(M)の比から1を引いた値であるように定義され、
RCleff=(M/Mopt)-1
前記調節剤レベル(M)が、前記エチレンオキシド反応器システムへの前記供給ガス中の塩化物種の総濃度若しくは加重総濃度、塩化物の補給供給速度、又は触媒塩化物化有効度値(Cleff)として定義され、これは、
【数16】
として計算され、
それによって、[MC]、[EC]、[EDC]、及び[VC]が、それぞれ塩化メチル(MC)、塩化エチル(EC)、二塩化エチレン(EDC)、及び塩化ビニル(VC)のppmv単位の濃度であり、[CH]、[C]、及び[C]が、それぞれ前記供給ガス中のメタン、エタン、及びエチレンのモルパーセント単位の濃度であり、前記調節剤レベル(M)をそのリアルタイムレベル(Mreal-time)からその最適レベル(Mopt)にし、前記RCleffを0.0のその最適レベルにするための推奨された変更が、百分率で表すと、
【数17】
として、又は調節剤レベルの同等増分変化として、又は同等に定義され、絶対推奨最適調節剤レベル目標(Mopt)が、
【数18】
として定義され、
前記リアルタイムRCleff
【数19】
が、
(i)ΔS(ΔSreal-time)及びΔT(ΔTreal-time)の前記リアルタイム値における前記近似曲線の傾きを決定し、前記傾きを前記エポキシ化触媒についての基準曲線と比較することによって、又は
(ii)前記近似曲線から、最大ΔS(ΔSopt)及び前記最大ΔSにおける対応するΔT(ΔTopt)を決定することであって、前記最大ΔS(ΔSopt)が、最適RCleffで生じる、決定することと、前記ΔSreal-timeから前記ΔSoptを減算することによってリアルタイム相対選択性差(RSDreal-time)を、及び前記ΔTreal-timeから前記ΔToptを減算することによってリアルタイム相対温度差(RTDreal-time)を計算することと、前記RSD(RSDreal-time)及び前記RTD(RTDreal-time)のリアルタイム値を、前記エポキシ化触媒についての基準曲線と比較することと、によって、
又は前記方法(i)及び(ii)の組み合わせによって決定され、前記基準曲線が、以前の実験室試験、パイロットプラント試験、又は早期のプラント稼働から生成され、前記選択性偏差及び温度偏差対最適値を前記相対有効調節剤レベル(RCleff)に関連付けるか、又は前記温度偏差に対してプロットされた前記選択性偏差の前記プロットの前記傾きを前記相対有効調節剤レベル(RCleff)に関連付ける、1つ以上の有形の非一時的機械可読媒体。
【請求項9】
前記リアルタイムRCleff
【数20】
が、0又はその付近にあるときに前記最適RCleffにあり、0又はその付近が、±0.01~±0.05の範囲内にあると定義され、前記エポキシ化触媒が、前記リアルタイムRCleff
【数21】
が正であり、かつ0又はその付近にないときに過剰調節されており、前記エポキシ化触媒が、前記リアルタイムRCleff
【数22】
が負であり、かつ0又はその付近にないときに過小調節されている、請求項8に記載の1つ以上の機械可読媒体。
【請求項10】
前記RCleffがそのリアルタイム値から0.0の前記最適レベル、又は同等に変更されるように、調節剤レベル(M)のそのリアルタイムレベル(Mreal-time)からその最適値(Mopt)への目標変更(Mreal-time)を行うための命令、前記調節剤レベルの絶対目標最適調節剤レベル(Mopt)への変更を行うための命令を含む、請求項8又は9に記載の1つ以上の機械可読媒体。
【請求項11】
前記エチレンオキシド反応器システムにおける前記リアルタイムRCleff
【数23】
が前記最適RCleffにないか、又は前記最適RCleffの±0.01及び±0.05の範囲内にないときに、警告をトリガするための命令を含む、請求項8~10のいずれかに記載の1つ以上の機械可読媒体。
【請求項12】
システムであって、
エチレンオキシド生成システム内に配設され、エチレン、酸素、エポキシ化触媒、及び塩化物含有触媒調節剤を含む反応器であって、前記反応器が、前記エチレン及び前記酸素をエチレンオキシドに変換するように構成され、前記エポキシ化触媒が、銀及び促進量のレニウム(Re)を含む、反応器と、
ディスプレイと、
前記エチレンオキシド生成システムから、測定された反応器選択性(Smeas)、測定された反応器温度(Tmeas)、及び1つ以上の稼働上のパラメータを受け取るように構成されたデータ処理システムであって、前記測定された反応器選択性(Smeas)、前記測定された反応器温度(Tmeas)、及び前記1つ以上の稼働上のパラメータが、前記エチレンオキシド生成システムによって生成されたリアルタイム及び経時的な履歴稼働データ点を含み、前記データ処理システムが、プロセッサと、前記プロセッサによって実行されると、
(a)モデルを使用して、各時点について、最適調節剤レベル(Mopt)における前記エポキシ化触媒のモデル推定選択性(Sest)及びモデル推定温度(Test)を計算することであって、前記モデル推定選択性(Sest)及び温度(Test)が、前記時点における前記1つ以上の稼働上のパラメータのうちの少なくとも1つの稼働上のパラメータに基づいて決定され、前記少なくとも1つの稼働上のパラメータが、塩化物含有調節剤レベルを含まず、前記モデルが、前記エポキシ化触媒、前記エチレンオキシド生成システム、又は両方に関連する経験的履歴データに少なくとも部分的に基づく、計算することと、
(b)前記時点の各々について、前記測定された反応器選択性(Smeas)と前記モデル推定選択性(Sest)との間の差(ΔS)、及び前記測定された反応器温度(Tmeas)と前記モデル推定温度(Test)との間の差(ΔT)を決定することと、
(c)曲線をデルタ選択性(ΔS)データ点に、前記対応するデルタ温度(ΔT)データ点の関数として適合させて、近似曲線を得ることと、
(d)前記近似曲線並びにΔS(ΔSreal-time)及びΔT(ΔTreal-time)のリアルタイム値に基づいてリアルタイム相対有効調節剤レベル
【数24】
を決定することと、
(e)前記リアルタイムRCleff
【数25】
に基づく実行可能な推奨を出力することであって、前記推奨が、前記RCleffがそのリアルタイム値
【数26】
から定義による0.0の最適レベル又は同等の絶対調節剤レベル目標(Mopt)に変更されるように、調節剤レベル(M)のその最適値(Mopt)への目標変更(Mchange)を含む、出力することと、
(f)前記実行可能な推奨をディスプレイ上に表示することと、を行うように構成された命令を含む1つ以上の有形の非一時的機械可読媒体と、を含む、データ処理システムと、を含み、前記RCleffが、前記最適調節剤レベル(Mopt)に対する前記調節剤レベル(M)の比から1を引いた値であるように定義され、
RCleff=(M/Mopt)-1
前記調節剤レベル(M)が、前記エチレンオキシド反応器システムへの前記供給ガス中の塩化物種の総濃度若しくは加重総濃度、塩化物の補給供給速度、又は触媒塩化物化有効度値(Cleff)として定義され、これは、
【数27】
として計算され、
それによって、[MC]、[EC]、[EDC]、及び[VC]が、それぞれ塩化メチル(MC)、塩化エチル(EC)、二塩化エチレン(EDC)、及び塩化ビニル(VC)のppmv単位の濃度であり、[CH]、[C]、及び[C]が、それぞれ前記供給ガス中のメタン、エタン、及びエチレンのモルパーセント単位の濃度であり、前記調節剤レベル(M)をそのリアルタイムレベル(Mreal-time)からその最適レベル(Mopt)にし、前記RCleffを0.0のその最適レベルにするための推奨された変更が、百分率で表すと、
【数28】
として、又は調節剤レベルの同等増分変化として、又は同等に定義され、絶対推奨最適調節剤レベル目標が、
【数29】
として定義され、
前記リアルタイムRCleff
【数30】
が、
(i)ΔS(ΔSreal-time)及びΔT(ΔTreal-time)の前記リアルタイム値における前記近似曲線の傾きを決定し、前記傾きを前記エポキシ化触媒についての基準曲線と比較することによって、又は
(ii)前記近似曲線から、最大ΔS(ΔSopt)及び前記最大ΔSにおける対応するΔT(ΔTopt)を決定することであって、前記最大ΔSが、最適RCleffで生じる、決定すること、前記ΔSから前記ΔSoptを減算することによって相対選択性差(RSD)を、及び前記ΔTから前記ΔToptを減算することによって相対温度差(RTD)を計算すること、並びに前記RSD(RSDreal-time)及び前記RTD(RTDreal-time)のリアルタイム値を、前記エポキシ化触媒についての基準曲線と比較すること、によって、又は前記方法(i)並びに(ii)の組み合わせによって決定され、
前記基準曲線が、以前の実験室試験、パイロットプラント試験、又は早期のプラント稼働から生成され、前記選択性偏差及び温度偏差対最適値を前記相対有効調節剤レベル(RCleff)に関連付けるか、又は前記温度偏差に対してプロットされた前記選択性偏差の前記プロットの前記傾きを前記相対有効調節剤レベル(RCleff)に関連付ける、システム。
【請求項13】
前記リアルタイムRCleff
【数31】
が、0又はその付近にあるときに前記最適RCleffにあり、0又はその付近が、±0.01~±0.05の範囲内にあると定義され、前記エポキシ化触媒が、前記リアルタイムRCleff
【数32】
が正であり、かつ0又はその付近にないときに過剰調節されており、前記エポキシ化触媒が、前記リアルタイムRCleff
【数33】
が負であり、かつ0又はその付近にないときに過小調節されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記データ処理システムが、前記エチレンオキシド反応器システムにおける前記リアルタイムRCleff
【数34】
が前記最適RCleffにないか、又は前記最適RCleffの±0.01及び±0.05の範囲内にないときに、警告をトリガするように構成されている、請求項12又は13に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、エチレンのエポキシ化のための最大触媒選択性を決定することに関する。より具体的には、本発明は、リアルタイムで最大触媒選択性を達成する最適調節剤レベルを決定するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレンオキシド(ethylene oxide、EO)は、多種多様な化学物質及び生成物の生成における多用途な化学中間体としてのその使用について周知である、貴重な化学生成物である。例えば、EOは、多くの場合、エチレングリコールを生成するために使用され、エチレングリコールは、多くの多様な用途において使用され、とりわけ、自動車エンジン不凍液、油圧ブレーキ液、樹脂、繊維、溶媒、塗料、プラスチック、フィルム、家庭用及び工業用洗浄剤、薬学的調製物、並びに化粧品、シャンプーなどのパーソナルケア物品を含む、多様な製品において見ることができる。
【0003】
EOの商業生産において、エチレン(C)は、銀系エチレンエポキシ化触媒の存在下で酸素(O)と反応する。触媒性能は、選択性、活性、及び運転の安定性に基づいて評価することができる。「効率」としても知られるエチレンエポキシ化触媒の選択性(selectivity、S)は、エチレンエポキシ化触媒がエチレンを、競合する副生成物(すなわち、二酸化炭素(CO)及び水(HO)に対して、所望の反応生成物(すなわち、EO)に変換する能力を指す。
【0004】
活性は、エポキシ化反応の速度を指し、通常、エポキシ化触媒によるEOの所与の生成速度を維持するのに必要な温度(temperature、T)として記載される。エチレンエポキシ化触媒の安定性は、触媒の装填物が使用されている間に、すなわち、より多くのEOが経時的に生成されている間に、プロセスの選択性及び/又は活性がどのように変化するのかを指す。
【0005】
エチレンエポキシ化触媒の性能を改善するための様々なアプローチがあり、これには、選択性、活性及び安定性の改善が含まれる。例えば、「高選択性」触媒と呼ばれることが多いある特定の銀系エチレンエポキシ化触媒は、例えば、米国特許第4,761,394(A)号及び同第4,766,105(A)号に開示されているように、銀に加えてレニウム(Re)促進剤を含む。任意選択で、ある特定の銀系エチレンエポキシ化触媒はまた、アルカリ金属(例えば、セシウム及びリチウム)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)、遷移金属(例えば、タングステン)及び主族非金属(例えば、硫黄)などの1つ以上の追加の促進剤を含んでもよい。更に、触媒配合の改善の他に、選択性を改善するために反応器供給ガスに添加することができる、一般に反応改質剤とも呼ばれる触媒調節剤が見出されている。そのような調節剤は、EOの所望の形成と比較して、エチレン又はEOのCO及び水への望ましくない酸化を抑制する。
【0006】
高選択性銀エポキシ化触媒に好適な触媒調節剤は、例えば、塩化メチル、塩化エチル、二塩化エチレン又は塩化ビニルなどの有機ハロゲン化物である。
【0007】
しかしながら、触媒調節剤の添加は、一般に、高選択性銀エポキシ化触媒、すなわち、固体耐火性支持物上に銀(Ag)、レニウム(Re)及び1種以上のアルカリ金属促進剤を有する触媒の性能を改善するが、それにもかかわらず、これらの触媒は、経時的に劣化し、それらの活性は低下する。したがって、触媒が劣化するにつれて、エポキシ化反応温度は、エチレンオキシドの生成を所望のレベルに維持するために経時的に上昇する。
【0008】
更に、多くの高選択性銀エポキシ化触媒を使用する場合、例えば、欧州特許第0352850(A1)号、米国特許第7,193,094(B2)号、同第8,362,284(B2)号、国際公開第2010/123842(A1)号、米国特許第9,221,776(B2)号、及び同第10,208,005(B2)号で論じられているように、EO生成パラメータ、ガス毎時空間速度(gas hourly space velocity、GHSV)、反応器入口圧力、並びにO、C、CO、及びHOの反応器供給濃度などの稼働条件が変化するにつれて、反応器供給ガス(例えば、EO反応器に入る供給ガス)中の調節剤濃度を調整して、最大触媒選択性を維持しなければならない。
【0009】
調節剤を適用する場合、反応器供給ガス中の調節剤濃度は、触媒選択性が最大値に維持されるように、選択されるべきであることが一般に認められている。最適調節剤レベルを決定する基礎となる化学は、気相濃度よりもむしろ塩化物の表面濃度に依存する。塩化物の表面濃度は、吸着及び脱着現象の結果であり、これは、次に、多くの要因に依存する。重要な因子としては、調節剤種の気相濃度、触媒ドーパントの触媒表面濃度、塩化物を除去し得る炭化水素の気相濃度、反応温度、触媒表面被覆率に影響を及ぼす他の種濃度、及び数時間以上かかり得る塩化物吸着/脱着の動力学が挙げられる。
【0010】
EO触媒のオペレータは、触媒上に塩化物を導入し、そのレベルを制御するために様々な方法を使用する。調節剤レベル(M)は、塩化物の供給濃度を測定して変化させることによって、又は反応器への調節剤の新しい供給速度によって制御することができる。他の構造物は、触媒から塩化物を除去することができる炭化水素に関して塩化物レベルを正規化するために、調節剤レベルの制御に使用されてきた。
【0011】
国際公開第03/044002(A1)号及び同第2005/035513(A1)号に開示されているように、調節剤レベルを定義及び制御する別の方法は、炭化水素濃度の加重和に対する気相塩化物濃度の加重和の比を適用する有効塩化物レベルを使用することによって、表面塩化物レベルに対する炭化水素濃度の影響を考慮することである。これらのアプローチは、触媒表面上の平衡塩化物濃度に対する気相塩化物及び炭化水素濃度の変化の定常状態の影響を捕捉する。しかしながら、温度及び稼働条件の変化などの他の要因も、表面塩化物濃度及び最適調節剤レベルに影響を及ぼす可能性がある。
【0012】
調節剤レベル(M)を最適化するための既存の技術は、調節剤レベル(M)を周期的に徐々に変化させる(すなわち、段階的に変化させる)ことと、触媒の選択性及び活性応答を観察することと、を含む。最大選択性の点(Sopt)は、典型的には、この段階的変化の最適化の後に選択される。最大選択性(Sopt)の点が得られる調節剤レベル(M)は、「最適」調節剤レベル(Mopt)と呼ばれる。プロセスは、周期的に、又は稼働条件に著しい変化が生じたときに繰り返される。しかしながら、調節剤レベル(M)を段階的に変化させることは、EO生成システムのオペレータによって実行される手動プロセスであり、これは、退屈で非効率的であり得る。
【0013】
更に、調節剤レベル(M)の変化が、稼働条件の変化によって複雑化されるプロセスの全体的なノイズの外側にある触媒の選択性の改善を観察するのに十分であるかどうかを測定することは困難であり得る。
【0014】
調節剤レベル(M)の変化と触媒表面の完全平衡との間の遅延、及び触媒性能に対する影響もまた、課題を提示し得る。更に、供給ガス中の調節剤濃度又は正規化気相塩化物濃度の正確な測定は、特に工業プラント環境では困難である可能性があり、調節剤レベルの最適化の信頼性が低くなる。
【0015】
ある特定の既存の調節剤レベル最適化技術は、反応器供給ガス中の気相調節剤濃度又は炭化水素濃度の加重和に対する塩化物濃度の加重和の比を監視すること、及び最適レベルを温度に関連付けることを含む。例えば、米国特許第7,193,094(B2)号は、温度の変化と、供給ガス中に存在する炭化水素の有効モル量に対する供給ガス中の活性調節種(すなわち、塩化物)の有効モル量の比とに依存するプロセスを開示している。同様に、米国特許第9,221,776(B2)号は、最大触媒選択性(Sopt)を維持するために、温度の変化と調節剤の濃度の変化とを指数関数的関係を介して相関させる。例えば、米国特許第9,221,776(B2)号では、最大触媒選択性(Sopt)に影響を及ぼし得る他の要因を考慮することなく、温度が変化するたびに調節剤レベルが調整される。
【0016】
最適調節剤レベル(Mopt)を選択するこれらの方法は、工業用EOユニットにおけるそれらの適用性を低減する制限を有する。例えば、1つの制限は、この方法が気相塩化物の正確かつ精密な測定を必要とすることであり、これは、工業プラント環境では達成することが困難であり得る。また、気相塩化物濃度、又は国際公開第03/044002(A1)号、米国特許第7,193,094(B2)号、若しくは国際公開第2005/035513(A1)号に定義されるような正規化形態は、触媒性能を決定する表面塩化物レベルを常に示すわけではない。吸着及び脱着の動力学は、数時間から数日かかる場合があり、これは、触媒性能に対する効果に遅延があることを意味する。吸着及び脱着の動力学は、工業プラント環境における最適化を複雑にする。
【0017】
最後に、定常状態の温度及び炭化水素濃度であっても、最適な塩化物レベルに影響を及ぼす他の要因がある。非限定的な例として、非炭化水素種濃度(例えば、CO)及び触媒の使用年数などの因子は、温度に対するそれらの影響に加えて、触媒表面上の最適塩化物レベルに影響を及ぼし得る。
【0018】
米国特許第9,174,928(B2)号は、エチレンのエポキシ化のためのプロセスであって、
(a)始動後に、銀及びレニウム促進剤を含むエポキシ化触媒を、エチレンの第1の濃度、酸素の第1の濃度、2.0体積%未満である二酸化炭素の第1の濃度、及び塩化物調節剤の第1の濃度を含む供給組成物と接触させて、第1の稼働温度の所望の作業速度Wを達成することと、
(b)ステップ(a)に続いて、第1の稼働温度を第2の稼働温度に上昇させるように、所望の作業速度Wを維持しながら供給組成物を調整することであって、供給組成物を調整することが、
(i)エチレンの第1の濃度をエチレンの第2の濃度に減少させること、
(ii)酸素の第1の濃度を酸素の第2の濃度に減少させること、
(iii)二酸化炭素の第1の濃度を二酸化炭素の第2の濃度に増加させること、及び
(iv)塩化物調節剤の第1の濃度を塩化物調節剤の第2の濃度に減少又は増加させること、のうちの1つ以上を含む、調整することと、
(c)ステップ(b)に続いて、所望の作業速度Wを第2の稼働温度で維持するように、供給組成物を更に調整することであって、供給組成物を更に調整することが、
(i)エチレンの第2の濃度をエチレンの第3の濃度に増加させること、
(ii)酸素の第2の濃度を酸素の第3の濃度に増加させること、
(iii)二酸化炭素の第2の濃度を二酸化炭素の第3の濃度に減少させること、及び
(iv)塩化物イオン調節剤の第2の濃度を塩化物イオン調節剤の第3の濃度に増加又は減少させること、のうちの1つ以上を含む、調整することと、を含む、プロセスを記載している。
【0019】
米国特許第9,174,928(B2)号に記載されている方法は、エチレン濃度又は酸素濃度などの条件を変化させることによって、所与の作業速度に対する選択性を最大化する温度を得るための条件の修正に関するガイダンスを提供する。調節剤レベルもまた、最適選択性を維持するために変更される必要があるが、適切な最適レベルに関する特定のガイダンスは、この方法によって与えられていない。
【0020】
米国特許第8,362,284(B2)号は、所望のEO生成レベル又はいくつかの他の所望の目標を達成するために、温度又は調節剤の濃度に関連する塩化物化有効度パラメータ(Z)のいずれかの変化を決定することに焦点を当てたプロセスを開示している。しかしながら、この技術は、触媒運転における初期最適調節剤レベルを決定する方法を確立していない。
【0021】
むしろ、このアプローチは、最初に最適な稼働を仮定し、次に、条件変更後に塩化物が最適値に近いままであるかどうかを評価するだけであり、最適な塩化物レベルを再達成するために必要な変更に関するガイダンスを提供する。更に、この技術は、他のプロセス条件(例えば、GHSV、圧力、供給ガス組成物など)を実質的に固定したまま、一度に2つのパラメータ(すなわち、温度又はZ)のうちの1つのみを変化させる必要がある。通常の工業的EO生産では、これらの他の条件は、意図的な変化又はプロセス外乱のために経時的に変化することが多い。したがって、この技術は、通常のEO生成プラント稼働中に発生する外乱に対して堅固ではない。
【0022】
国際公開第2016/108975(A1)号は、EO生成速度などの稼働条件が変化するとき、塩化物最適条件対所定の最適条件の方向を推定する。他の技術と同様に、国際公開第2016/108975(A1)号は、稼働条件の変更前に触媒運転中の最適条件の知識を必要とする。更に、この技術は、短期間(例えば、7日間)にわたって収集されたデータの使用に限定される。この技術から得られる情報は方向性であるが(例えば、触媒が過剰調節されているか過小調節されているかを示す)、最大触媒選択性を達成するために、調節剤レベルを調節すべき大きさを提供しない。したがって、EO生成システムのオペレータは、最大触媒選択性を達成する調節剤レベルを見つけるために、指定された方向にその場限りで調節剤レベルを調整することに任されており、これは、堅固ではない。
【0023】
米国特許第9,892,238(B2)号は、プロセス入力-出力データに関する多次元プロセスデータドメイン内の一連のプロセスデータによって決定されるプロセスを監視するためのシステムを記載しており、システムは、
複数の履歴プロセスデータセットを取得するための手段と、
多変量データ分析を実行することによって、多次元プロセスデータドメインからより低次元のモデルデータドメインへの変換を取得するための手段と、
取得された変換を使用してプロセスを監視するために、現在のプロセスデータセットをモデルデータセットに変換するための手段と、
所定の時間量にわたって所定の閾値を超える残余を観測することに基づいて、多変量データ分析によってもはや捕捉されない、プロセスのプロセス特性の永続的な変化を検出する手段と、を含む。
【0024】
米国特許第9892238(B2)号のシステム及び方法は、通常稼働モードを、異常稼働モード又は以前に見られた稼働モードから区別するために、人工ニューラルネットと主成分分析との組み合わせを適用する。1つの例は、エチレンのエポキシ化のためのプロセスにおける触媒の過剰調節の検出である。しかしながら、過剰調節状態が検出されると、米国特許第9892238(B2)号は、プラントオペレータが最適条件に戻るための特定のステップを提供しない。プラントオペレータは、依然として、手動介入を適用して、システムを決定し、最適稼働条件に戻す必要がある。
【0025】
高選択性エポキシ化触媒の選択性に対する調節剤レベルの影響に起因して、現在の一連の稼働条件における銀系エチレンエポキシ化触媒の最大選択性(Sopt)をもたらす最適調節剤レベル(Mopt)をリアルタイムで正確かつ堅固に決定する調節剤レベル最適化技術を有することが望ましい場合がある。このようにして、最適調節剤レベル(Mopt)が見つかるまで調節剤レベルを段階的に変化させるのではなく、調節剤レベルを所与の量だけ自動的に又はオペレータによって調整して、最大触媒選択性(Sopt)を達成することができる。
【0026】
以下で更に詳細に説明するように、本開示は、既存の技術の制限を克服し、調節剤レベル最適化のための堅固で効果的な技術を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】米国特許第4,761,394号明細書
【特許文献2】米国特許第4,766,105号明細書
【特許文献3】欧州特許第0352850号明細書
【特許文献4】米国特許第7,193,094号明細書
【特許文献5】米国特許第8,362,284号明細書
【特許文献6】国際公開第2010/123842号
【特許文献7】米国特許第9,221,776号明細書
【特許文献8】米国特許第10,208,005号明細書
【特許文献9】国際公開第2003/044002号
【特許文献10】国際公開第2005/035513号
【特許文献11】米国特許第9,174,928号明細書
【特許文献12】国際公開第2016/108975号
【特許文献13】米国特許第9,892,238号明細書
【発明の概要】
【0028】
一実施形態では、エチレンオキシド反応器システムにおいてエポキシ化触媒の選択性(S)を最大化するための方法であって、エポキシ化触媒及び塩化物含有触媒調節剤の存在下で、エチレン及び酸素を含む供給ガスをエチレンオキシドに、エチレンオキシド反応器システムにおいて変換するように構成されたエチレンオキシド生成システムから、測定された反応器選択性(Smeas)、測定された反応器温度(Tmeas)、及び1つ以上の稼働上のパラメータを受け取ることを含む、方法が提供される。
【0029】
エポキシ化触媒は、銀及び促進量のレニウム(Re)を含み、測定された反応器選択性(Smeas)、測定された反応器温度(Tmeas)、及び1つ以上の稼働上のパラメータは、エチレンオキシド生成システムによって生成されたリアルタイム及び経時的な履歴稼働データ点を含む。本方法はまた、プロセッサを使用して、(a)モデルを使用して、各時点について、最適調節剤レベル(Mopt)でのエポキシ化触媒のモデル推定選択性(Sest)及びモデル推定温度(Test)を計算することを含む。モデル推定選択性(Sest)及びモデル推定温度(Test)は、当該時点における1つ以上の稼働上のパラメータのうちの少なくとも1つの稼働上のパラメータに基づいて決定され、少なくとも1つの稼働上のパラメータは、塩化物含有調節剤レベルを含まず、モデルは、少なくとも部分的に、エポキシ化触媒、エチレンオキシド生成システム、又は両方に関連する経験的履歴データに基づく。本方法はまた、プロセッサを使用して、(b)時点の各々について、測定された反応器選択性(Smeas)とモデル推定選択性(Sest)との差(ΔS)、及び測定された反応器温度(Tmeas)とモデル推定温度(Test)との差(ΔT)を決定することと、(c)曲線をデルタ選択性(ΔS)データ点に、対応するデルタ温度(ΔT)データ点の関数として適合させて、近似曲線を得ることと、(d)近似曲線並びにΔS(ΔSreal-time)及びΔT(ΔTreal-time)のリアルタイム値に基づいてリアルタイム相対有効調節剤レベル
【0030】
【数1】
を決定することと、(e)リアルタイムRCleff
【0031】
【数2】
に基づく実行可能な推奨を出力することと、を含む。リアルタイムRCleff
【0032】
【数3】
は、
(i)ΔS(ΔSreal-time)及びΔT(ΔTreal-time)のリアルタイム値での近似曲線の傾きを決定し、傾きをエポキシ化触媒についての基準曲線と比較することによって、又は
(ii)近似曲線から、最大opにおける最大ΔS(ΔSopt)及び対応するΔT(ΔTopt)を決定することであって、ΔSoptが、最適RCleffで生じる、決定すること、ΔSからΔSoptを減算することによって相対選択性差(relative selectivity difference、RSD)を、及びΔTからΔToptを減算することによって相対温度差(relative temperature difference、RTD)を計算すること、並びにRSD(RSDreal-time)及びRTD(RTDreal-time)のリアルタイム値を、エポキシ化触媒についての基準曲線と比較すること、によって、
又は当該方法(i)並びに(ii)の組み合わせによって決定され、基準曲線は、以前の実験室試験、パイロットプラント試験、又は早期のプラント稼働から生成され、選択性偏差及び温度偏差対最適値を相対有効調節剤レベル(RCleff)に関連付けるか、又は当該温度偏差に対してプロットされた当該選択性偏差のプロットの傾きを相対有効調節剤レベル(RCleff)に関連付ける。推奨は、RCleffがそのリアルタイム値
【0033】
【数4】
から定義による0.0の最適レベル又は同等の絶対調節剤レベル目標(Mopt)に変更されるように、調節剤レベル(M)のその最適値(Mopt)への目標変更(Mchange)を含み、
RCleffは、最適調節剤レベル(Mopt)に対する調節剤レベル(M)の比から1を引いた値であるように定義され、
RCleff=(M/Mopt)-1
調節剤レベル(M)は、エチレンオキシド反応器システムへの供給ガス中の塩化物種の総濃度若しくは加重総濃度、塩化物の補給供給速度、又は触媒塩化物化有効度値(Cleff)として定義され、これは、
【0034】
【数5】
として計算され、
それによって、供給ガスにおいて、[MC]、[EC]、[EDC]、及び[VC]は、それぞれ塩化メチル(methyl chloride、MC)、塩化エチル(ethyl chloride、EC)、二塩化エチレン(ethylene dichloride、EDC)、及び塩化ビニル(vinyl chloride、VC)のppmv単位の濃度であり、[CH]、[C]、及び[C]は、それぞれメタン、エタン、及びエチレンのモルパーセント単位の濃度であり、調節剤レベル(M)をそのリアルタイム調節剤レベル(Mreal-time)からその最適調節剤レベル(Mopt)にし、RCleffを0.0のその最適レベルにするための推奨される変更は、百分率で表すと、
【0035】
【数6】
として、又は調節剤レベルの同等増分変化として、又は同等に定義され、推奨される絶対最適調節剤レベル目標(Mopt)は、
【0036】
【数7】
として定義される。
【0037】
本方法は、プロセッサを使用して、(f)実行可能な推奨をディスプレイ上に表示することを更に含む。
【0038】
別の実施形態では、エチレンオキシド反応器システムにおけるエポキシ化触媒の選択性(S)を最大化するように構成され、(a)モデルを使用して、リアルタイム及び経時的な履歴点について、エチレンオキシド反応器システムを含むエチレンオキシド生成システムからの当該時点における少なくとも1つの稼働上のパラメータに基づいて、最適調節剤レベル(Mopt)におけるエポキシ化触媒のモデル推定選択性(Sest)及びモデル推定温度(Test)を計算するための命令を含む、1つ以上の有形の非一時的機械可読媒体が提供される。モデルは、少なくとも部分的に、エポキシ化触媒、エチレンオキシド生成システム、又は両方に関連する経験的履歴データに基づき、少なくとも1つの稼働上のパラメータは、塩化物含有調節剤レベルを含まず、エポキシ化触媒は、銀及び促進量のレニウム(Re)を含む。1つ以上の有形の非一時的機械可読媒体はまた、(b)時点の各々について、測定された反応器選択性(Smeas)とモデル推定選択性(Sest)との間の差(ΔS)、及び測定された反応器温度(Tmeas)とモデル推定温度(Test)との間の差(ΔT)を決定するためであって、測定された反応器選択性(Smeas)、測定された反応器温度(Tmeas)、及び1つ以上の稼働上のパラメータが、当該時点においてエチレンオキシド生成システムによって生成されたリアルタイム及び経時的な履歴稼働データ点を含む、決定するため、
(c)曲線をデルタ選択性(ΔS)データ点に、対応するデルタ温度(ΔT)データ点の関数として適合させて、近似曲線を得るため、
(d)近似曲線に基づくリアルタイム相対有効調節剤レベル
【0039】
【数8】
並びにΔS(ΔSreal-time)及びΔT(ΔTreal-time)のリアルタイムリアルタイム値を決定するため、
(e)リアルタイムRCleff
【0040】
【数9】
に基づく実行可能な推奨を出力するため、の命令を含む。リアルタイムRCleff
【0041】
【数10】
は、(i)ΔS(ΔSreal-time)及びΔT(ΔTreal-time)のリアルタイム値での近似曲線の傾きを決定し、傾きをエポキシ化触媒についての基準曲線と比較することによって、又は(ii)近似曲線から、最大ΔSにおける最大ΔS(ΔSopt)及び対応するΔT(Δopt)を決定することであって、ΔSoptは、最適RCleffで生じる、決定すること、ΔSからΔSoptを減算することによって相対選択性差(RSD)を、及びΔTからΔToptを減算することによって相対温度差(RTD)を計算すること、並びにRSD(RSDreal-time)及びRTD(RTDreal-time)のリアルタイム値を、エポキシ化触媒についての基準曲線と比較すること、によって、
又は当該方法(i)並びに(ii)の組み合わせによって決定され、基準曲線は、以前の実験室試験、パイロットプラント試験、又は早期のプラント稼働から生成され、選択性偏差及び温度偏差対最適値を相対有効調節剤レベル(RCleff)に関連付けるか、又は当該温度偏差に対してプロットされた当該選択性偏差のプロットの傾きを相対有効調節剤レベル(RCleff)に関連付ける。推奨は、RCleffがそのリアルタイム値
【0042】
【数11】
から定義による0.0の最適レベル又は同等の絶対調節剤レベル目標(Mopt)に変更されるように、調節剤レベル(M)のその最適値(Mopt)への目標変更(Mchange)を含み、
調節剤レベル(M)をそのリアルタイム調節剤レベル(Mreal-time)からその最適調節剤レベル(Mopt)にし、RCleffを0.0のその最適レベルにするための推奨される変更は、百分率で表すと、
【0043】
【数12】
として、又は調節剤レベルの同等増分変化として、又は同等に定義され、推奨される絶対最適調節剤レベル目標(Mopt)は、
【0044】
【数13】
として定義される。
【0045】
1つ以上の有形の非一時的機械可読媒体はまた、(f)実行可能な推奨をディスプレイ上に表示するための命令を含む。
【0046】
更なる実施形態では、エチレンオキシド生成システム内に配設され、エチレン、酸素、エポキシ化触媒、及び塩化物含有触媒調節剤を有する反応器を含むシステムが提供される。反応器は、エチレン及び酸素をエチレンオキシドに変換するように構成され、エポキシ化触媒は、銀及び促進量のレニウム(Re)を含む。システムはまた、ディスプレイ、並びにエチレンオキシド生成システムから測定された反応器選択性(Smeas)、測定された反応器温度(Tmeas)、及び1つ以上の稼働上のパラメータを受け取るように構成されたデータ処理システム。
【0047】
測定された反応器選択性(Smeas)、測定された反応器温度(Tmeas)、及び1つ以上の稼働上のパラメータは、エチレンオキシド生成システムによって生成されたリアルタイム及び経時的な履歴稼働データ点を含み、データ処理システムは、プロセッサと、プロセッサによって実行されると、(a)モデルを使用して、各時点について、最適調節剤レベル(Mopt)におけるエポキシ化触媒のモデル推定選択性(Sest)及びモデル推定温度(Test)を計算するように構成された命令を含む1つ以上の有形の非一時的機械可読媒体と、を含む。モデル推定選択性(Sest)及び温度(Test)は、当該時点における1つ以上の稼働上のパラメータのうちの少なくとも1つの稼働上のパラメータに基づいて決定され、少なくとも1つの稼働上のパラメータは、塩化物含有調節剤レベルを含まず、モデルは、エポキシ化触媒、エチレンオキシド生成システム、又は両方に関連する経験的履歴データに少なくとも部分的に基づく。1つ以上の有形の非一時的機械可読媒体はまた、プロセッサによって実行されると、(b)時点の各々について、測定された反応器選択性(Smeas)とモデル推定選択性(Sest)との差(ΔS)、及び測定された反応器温度(Tmeas)とモデル推定温度(Test)との差(ΔT)を決定する、(c)曲線をデルタ選択性(ΔS)データ点に、対応するデルタ温度(ΔT)データ点の関数として適合させて、近似曲線を得る、(d)近似曲線並びにΔS(ΔSreal-time)及びΔT(ΔTreal-time)のリアルタイム値に基づいてリアルタイム相対有効調節剤レベル
【0048】
【数14】
を決定する、(e)リアルタイムRCleff
【0049】
【数15】
に基づく実行可能な推奨を出力する、ことができる命令を含む。リアルタイムRCleff
【0050】
【数16】
は、(i)ΔS(ΔSreal-time)及びΔT(ΔTreal-time)のリアルタイム値での近似曲線の傾きを決定し、傾きをエポキシ化触媒についての基準曲線と比較することによって、又は(ii)近似曲線から、最大ΔSにおける最大ΔS(ΔSopt)及び対応するΔT(ΔTopt)を決定することであって、ΔSoptは、最適RCleffで生じる決定すること、ΔSからΔSoptを減算することによって相対選択性差(RSD)を、及びΔTからΔToptを減算することによって相対温度差(RTD)を計算すること、並びにRSD(RSDreal-time)及びRTD(RTDreal-time)のリアルタイム値を、エポキシ化触媒についての基準曲線と比較すること、によって、又は当該方法(i)並びに(ii)の組み合わせによって決定され、基準曲線は、以前の実験室試験、パイロットプラント試験、又は早期のプラント稼働から生成され、選択性偏差及び温度偏差対最適値を相対有効調節剤レベル(RCleff)に関連付けるか、又は当該温度偏差に対してプロットされた当該選択性偏差のプロットの傾きを相対有効調節剤レベル(RCleff)に関連付ける。推奨は、RCleffがそのリアルタイム値
【0051】
【数17】
から定義による0.0の最適レベル又は同等の絶対調節剤レベル目標(Mopt)に変更されるように、調節剤レベル(M)のそのリアルタイム値(Mreal-time)からその最適値(Mopt)への目標変更(Mchange)を含み、
調節剤レベル(M)をそのリアルタイム調節剤レベル(Mreal-time)からその最適調節剤レベル(Mopt)にし、RCleffを0.0のその最適レベルにするための推奨される変更は、百分率で表すと、
【0052】
【数18】
として、又は調節剤レベルの同等増分変化として、又は同等に定義され、推奨は、
【0053】
【数19】
として定義される絶対最適調節剤レベル目標(Mopt)を含む。
【0054】
1つ以上の有形の非一時的機械可読媒体は、プロセッサによって実行されると、(f)実行可能な推奨をディスプレイ上に表示することができる命令を更に含む。
【0055】
本開示の例示的な実装形態の追加の特徴及び利点は、以下の説明に記載され、一部は説明から明らかになるか、又はそのような例示的な実装形態の実施によって習得され得る。そのような実装形態の特徴及び利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘される手段及び組み合わせによって実現され、取得され得る。これら及び他の特徴は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲からより完全に明らかになるか、又は以下に記載されるような例示的な実装形態の実施によって習得され得る。
【図面の簡単な説明】
【0056】
本開示の利点は、以下の詳細な説明を読み、図面を参照することによって明らかになり得る。
図1】塩化物調節剤の手動実験室規模最適化についての、経時的な触媒選択性(S)及び触媒塩化物化有効度(Cleff)の代表的なプロットである。
図2】塩化物調節剤の手動実験室規模最適化についての、経時的な温度(T)及び触媒塩化物化有効度(Cleff)の代表的なプロットである。
図3図1及び図2のプロットからの定常点の組み合わせから得られる触媒塩化物化有効度(Cleff)の関数としての触媒選択性(S)及び温度(T)の代表的なプロットである。
図4図1図3のプロットから得られる相対有効調節剤レベル(RCleff)の関数としての相対選択性(relative selectivity、RS)及び相対温度(relative temperature、RT)の代表的なプロットである。
図5】異なる稼働条件及び使用年数での所与のエポキシ化触媒についての種々なオフライン実験室試験の編集についての、触媒塩化物化有効度(Cleff)の関数としての選択性(S)の代表的なプロットである。
図6】異なる稼働条件及び使用年数での所与のエポキシ化触媒についての種々なオフライン実験室試験の編集についての、触媒塩化物化有効度(Cleff)の関数としての温度(T)の代表的なプロットである。
図7】本発明の一実施形態による、適合した関係を有する、図5のプロットから得られるRCleffの関数としてのRSの代表的なプロットである。
図8】本発明の一実施形態による、適合した関係を有する、図6のプロットから得られるRCleffの関数としてのRTの代表的なプロットである。
図9】本発明の一実施形態による、図7及び図8の適合した関係から得られるRS及びRTをRCleffに関連付ける基準曲線の代表的なプロットである。
図10】本発明の一実施形態による、図9の適合された基準曲線を使用したRS対RTのプロットである。
図11】本発明の一実施形態による、拡張された範囲にわたる図9及び図10のプロットから得られるRCleffの関数としてのRS対RTのプロットの傾きの代表的なプロットである。
図12】点(0,0)の周りの図11のプロットの拡大図である。
図13】本発明の一実施形態による、最大触媒選択性を決定し、触媒調節剤レベルの調整に関する警告/推奨を提供するためのエチレンオキシド(EO)生成システムの概略図である。
図14】本発明の一実施形態による、図13のEO生成システムによって使用される方法のフローチャートであり、最大触媒選択性(Sopt)を決定し、触媒調節剤レベルの調整に関する警告/推奨を提供する。
図15】本発明の一実施形態による、図13のシステムのリアルタイム稼働データ及びモデルを使用した、操業日数の関数としての触媒選択性(S)及び温度(T)の代表的なプロットである。
図16】本発明の一実施形態による、図15の対象となる最近の期間におけるデータから得られるΔTの関数としてのΔSの代表的なプロットであり、曲線は、最適調節剤レベル(Mopt)の両側に存在するデータに適合されている。
図17】本発明の一実施形態による、過剰調節状態の警告を伴う、図16のプロットから得られる相対温度差(RTD)の関数としての相対選択性差(RSD)の代表的なプロットである。
図18】本発明の一実施形態による、図13のEO生成システムによって使用される決定木であり、リアルタイムで触媒調節剤レベルの調整に関する実行可能なガイダンスを提供する。
図19】本発明の一実施形態による、図13のEO生成システムによって生成された対応するΔTの関数としてのΔSの代表的なプロットであり、それによって、データは、最適調節剤レベル(Mopt)の片側に存在し、過小調節状態の警告を伴う。
図20】本発明の一実施形態による、図13のEO生成システムによって生成されるΔTの関数としてのΔSの代表的なプロットであり、それによって、リアルタイムデータ点は、予測境界線の外側にある。
図21】本発明の一実施形態による、図13のEO生成システムによって生成されたΔTの関数としてのΔSの代表的なプロットであり、それによって、データの傾向は、不明瞭である。
図22】本発明の一実施形態による、図13のEO生成システムによって生成されたΔTの関数としてのΔSの代表的なプロットであり、それによって、リアルタイム点における曲線の傾きは、通常基準境界の外側にあり、重度の過剰調節の警告を伴う。
図23】本発明の一実施形態による、図13のEO生成システムによって生成されたΔTの関数としてのΔSの代表的なプロットであり、それによって、リアルタイム点における曲線の傾きは、ほぼ0であり、ほぼ最適調節剤レベル(Moptを示している。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本開示の1つ以上の特定の実施形態が以下に説明される。記載されるこれらの実施形態は、本開示の技術の例である。更に、これらの実施形態の簡潔な説明を提供するために、実際の実装形態の全ての特徴を本明細書に記載しなくてもよい。任意のエンジニアリング又は設計プロジェクトにおけるように、任意のそのような実際の実装形態の開発において、実装形態毎に異なり得る、システム関連及びビジネス関連の制約への準拠など、開発者の特定の目的を達成するために、多数の実装形態固有の決定が行われることを理解されたい。更に、そのような開発努力は、複雑で時間がかかる可能性があるが、それにもかかわらず、本開示の利益を有する当業者にとって、設計、製作及び製造の日常的な仕事であることを理解されたい。
【0058】
本開示の様々な実施形態の要素を紹介するとき、冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、要素の1つ以上が存在することを意味することが意図される。「備える(comprising)」、「含む(including)」及び「有する(having)」という用語は、包括的であることが意図され、列挙された要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味する。更に、本開示の「一実施形態」又は「実施形態」への言及は、列挙された特徴も組み込む追加の実施形態の存在を除外するものとして解釈されることを意図しないことを理解されたい。
【0059】
定義
本明細書で使用される場合、用語「活性」、「触媒活性」などは、EOを作製するための触媒の生産性である。活性は、ある特定の量のEO生成物を製造するのに必要な温度を用いて定量化されることが多い。触媒の活性がより高い場合、所与のEO生成レベルに必要な温度は、より低い。逆に、活性がより低い場合、所与のEO生成レベルに必要な温度は、より高い。用語「反応器温度」、「触媒温度」、「温度」などへの言及は、本明細書において、触媒活性の測定基準として互換的に使用される。
【0060】
本明細書で使用される場合、用語「選択性」、「反応器選択性」、「触媒選択性」などは、エチレン(C)を、競合する副生成物(すなわち、二酸化炭素(CO)及び水(HO))に対して、所望の反応生成物であるエチレンオキシドに変換する触媒の能力を指し、反応器内で消費されたエチレンのモル数当たりの生成されたエチレンオキシドのモル数のパーセンテージとして表される。
【0061】
本明細書で使用される場合、用語「銀系エチレンエポキシ化触媒」、「エチレンエポキシ化触媒」、「エポキシ化触媒」、「高選択性エポキシ化触媒」などは、1~40重量%の範囲の銀と、エチレンオキシドへのエチレンのエポキシ化において使用される促進量のレニウムと、を含むアルミナ支持物上の触媒を指す。本明細書で使用される場合、レニウム(Re)の「促進量」という用語は、Reを含有しない触媒と比較した場合に、後に形成される触媒の触媒特性のうちの1つ以上における改善を提供するように効果的に作用するReの量を指す。触媒特性の例としては、選択性、活性及び安定性(すなわち、経時的な選択性及び活性の低下)が挙げられるが、これらに限定されない。個々の触媒特性のうちの1つ以上が「促進量」によって増強され得る一方で、他の触媒特性は、増強されてもされなくてもよく、又は減少されてもよいことが、当業者によって理解される。異なる触媒特性が異なる稼働条件で増強され得ることが更に理解される。例えば、1組の稼働条件で増強した選択性を有する触媒は、改善が選択性よりむしろ活性において示される異なる組の条件で稼働されてもよい。
【0062】
本明細書で使用される場合、用語「エチレンオキシド(EO)生成パラメータ」は、エチレンのエポキシ化のためのプロセス中にエチレンオキシドが生成される程度の尺度である。EO生成パラメータは、生成ガスエチレンオキシド濃度、反応器の入口から出口までに生成されたEOのモル数の変化、エチレンオキシド生成速度、反応器に装填された銀の質量当たりのエチレンオキシド生成速度、触媒質量当たりのエチレンオキシド生成速度(質量作業速度(mass work rate)(WRm)としても知られる)及び触媒体積当たりのエチレンオキシド生成速度(作業速度(work rate)(WR)としても知られる)を含む群から選択され得る。本発明において、好ましいエチレンオキシド生成パラメータは、作業速度であるが、本発明の範囲から逸脱することなく他のものを同様に選択することができる。本明細書で使用される場合、用語「作業速度」は、時間当たりの触媒体積当たりに生成されるEOの質量を示すことを意図しており、一般に、キログラム(kg)/触媒の立方メートル(m)/時間(h)、kg/mcat/hの単位で測定される。
【0063】
本明細書で使用される場合、「稼働条件」、「条件」などは、反応器入口圧力、供給ガス流量又はガス毎時空間速度(GHSV)、エチレン(C)、酸素(O)、二酸化炭素(CO)、エタン(C)、メタン(CH)及び水(HO)の供給ガス濃度、並びにEO生成パラメータを含むが、これらに限定されない測定された又は制御された変数の集合を指す。反応温度及び調節剤レベルは、用語「稼働条件」に含まれない。本明細書で使用される場合、用語「稼働上のパラメータ」は、上記の稼働条件に加えて、反応温度及び調節剤レベルを指す。
【0064】
本明細書で使用される場合、用語「リアルタイムデータ」、「リアルタイムデータ点」などは、稼働上のパラメータ及び測定された選択性の最新の利用可能なセットを指す。下付き文字「リアルタイム」が付された記号は、リアルタイム点における時間変動量の具体的な値を示す。リアルタイムデータの時間フレームは、瞬間平均、時間平均、シフト平均、又は日平均であり得る。本明細書で使用される場合、用語「履歴稼働データ」などは、リアルタイムデータの前に収集された、一連の稼働上のパラメータ及び測定された選択性を指す。
【0065】
本明細書中で使用される場合、用語「調節剤レベル」、「塩化物含有調節剤レベル」などは、どれだけの有機塩化物が反応器システム及び触媒に送達されているかを変化させるために変動されるプロセス変数を示すことが意図される。調節剤レベルは、供給ガス中の塩化物種の総濃度又は加重総濃度(すなわち、調節剤濃度)、塩化物の補給供給速度(すなわち、体積速度又は質量速度)、又は塩化物調節能力に対する炭化水素の影響を考慮に入れた触媒塩化物化有効度など、触媒の塩化物調節の定常状態レベルを直接又は間接的に示す任意の測定基準であり得る。非限定的な例として、調節剤レベルを定義する3つの特定の方法は、以下の通りである。
1)反応器供給ガス中の総加重調節剤濃度:
TotCl=0.1[MC]+[EC]+2[EDC]+[VC](式1)
2)触媒塩化物化有効度値(Cleff):
【0066】
【数20】
それによって、供給ガスにおいて、[MC]、[EC]、[EDC]、及び[VC]が、それぞれ、塩化メチル(MC)、塩化エチル(EC)、二塩化エチレン(EDC)、及び塩化ビニル(VC)のppmv単位での濃度であり、[CH]、[C]、及び[C]が、それぞれ、メタン、エタン、及びエチレンのモルパーセント単位での濃度である。
3)調節剤の補給供給速度。
【0067】
これらの調節剤レベル測定基準のいずれか、又は触媒の塩化物調節のレベルを表す他の測定基準を操作して、反応系中の塩化物全体を変化させることができる。
【0068】
本明細書で使用される場合、用語「相対有効調節剤レベル」(RCleff)、「相対調節剤レベル」などは、最適調節剤レベル(Mopt)に対する調節剤レベル(M)を指し、以下の式によって表される。
RCleff=(M/Mopt)-1(式3)
それによって、「M」は、調節剤レベルを指し、下付き文字「opt」は、塩化物最適化調節剤レベルを表す。
【0069】
式3は、調節剤レベル及びRCleffから塩化物最適化調節剤レベルを計算するために再配置されてもよい。
opt=M/(RCleff+1)(式4)
【0070】
調節剤レベルを塩化物最適化調節剤レベルに移動させるのに必要な変化(Mchange)は、百分率で表すと、式4の再配置を含む、以下の式によって与えられる。
change=(Mopt/M-1)100%=(1/(RCleff+1)_1)100%(式5)
【0071】
当該変化はまた、指定された百分率の変化(Mchange)に対応する調節剤レベルの同等増分変化として与えられてもよい。
【0072】
本明細書で使用される場合、用語「塩化物最適化調節剤」、「最適化調節剤」、「触媒調節剤の最適濃度」、「最適」などは、互換的に使用され、現在の稼働条件で最大触媒選択性(Sopt)をもたらす調節剤レベル(Mopt)を指す。本明細書で使用される場合、用語「過小調節された」は、供給ガス中の塩化物レベルが最適塩化物(すなわち、調節剤)レベル未満である触媒状態を示すことが意図される。本明細書で使用される場合、用語「過剰調節された」は、供給ガス中の塩化物レベルが最適塩化物(すなわち、調節剤)レベルを上回る触媒状態を意味することが意図される。
【0073】
「相対選択性」(RS)は、測定された選択性(Smeas)と最適調節剤レベル(Mopt)における選択性(Sopt)との間の差であり、それは、以下の式によって表される。
RS=Smeas-Sopt(式6)
【0074】
「相対温度」(RT)は、測定された温度(Tmeas)と最適調節剤レベル(Mopt)における温度(Topt)との差であり、以下の式で表される。
RT=Tmeas-Topt(式7)
【0075】
「デルタ選択性」(ΔS)は、測定された選択性Smeasと選択性のモデル予測値Sestとの間の差であり、以下の式によって表される。
ΔS=Smeas-Sest(式8)
【0076】
「デルタ温度」(ΔT)は、測定された温度(Tmeas)と温度のモデル予測値(Test)との差であり、以下の式で表される。
ΔT=Tmeas-Test(式9)
【0077】
モデルは、塩化物最適化選択性及び温度に対する供給ガス組成物(例えば、O、C、CO、C、CH、HO)、GHSV、圧力及びEO生成パラメータの変化の影響を予測する任意の好適なモデルであり得る。
【0078】
「相対選択性差」(RSD)は、以下の式によって表される。
RSD=ΔS-ΔSopt(式10)
ここで、ΔSoptは、ΔS対ΔTの近似曲線(例えば、図16参照)に沿った最大ΔS値であり、RSDは、最大選択性(Sopt)において0であるように定義される。
【0079】
「相対温度差」(RTD)は、以下の式で表される。
RTD=ΔT-ΔTopt(式11)
ここで、ΔToptは、ΔS対ΔTの近似曲線(例えば、図16参照)についての最大ΔS(すなわち、ΔSopt)に対応するΔTの値であり、RTDは、最適点において0であるように定義される。
【0080】
システム及び方法の利点
高選択性エポキシ化触媒(例えば、銀及び促進量のReを有するエポキシ化触媒)の調節剤レベルを最適化する最も一般的かつ基本的な方法は、EOプラントにおけるEO生成システムのオペレータが調節剤レベルを手動で段階的に変化させることである。当業者によって理解されるように、変動するシステム条件をもたらす要求に基づいて、通常のプラント稼働における稼働上の目的に多くの外乱及び変化がある。したがって、プラントにおいて調節剤(すなわち、塩化物)の関数として選択性及び温度を監視することは、調節剤レベル変化の真の影響から分離することが困難な条件変動に部分的に起因する望ましくないノイズをもたらすであろう。最大触媒選択性を正確かつ確実に決定するために、プラントの様々な稼働上のパラメータ(例えば、温度、EO生成パラメータ、ガス毎時空間速度、圧力、供給組成物、調節剤レベルなど)の影響を考慮すべきである。本明細書で開示される技術は、1つの稼働条件のみを変化させることに限定されず、他の全ての稼働条件は、実質的に一定のままである。本明細書に開示されるプロセス及び方法を使用することによって、稼働条件の変動を説明することができ、それによって、調節剤レベルの変化の影響をより確実に、より長い期間にわたって明確に観察することが可能になる。
【0081】
上述したように、触媒選択性を最適化するためのある特定の既存の技術は、温度の関数として、調節剤濃度の線形若しくはべき乗方程式最適曲線、又は炭化水素濃度の加重和に対する調節剤濃度の加重和の有効比を利用するために、工業用EOプラントにおける気相塩化物の正確な測定を必要とする。他の技術は、他のパラメータが一定のままである一方で、所望のEO生成パラメータ又は別の目標パラメータを達成するために、温度又は調節剤濃度などの1つのパラメータのみの変化を一度に決定する。
【0082】
しかしながら、既存の技術とは異なり、本発明では、驚くべきことに、触媒選択性を最適化するために、EOプラント環境において気相塩化物を正確に測定する必要がないことが見出された。むしろ、気相塩化物の分析に頼ることなく、塩化物供給速度を効果的に変化させることで十分である。具体的には、本明細書に開示される技術は、触媒性能自体を使用し、調節剤レベルの変更と触媒性能に対するその影響との間の遅延を説明する。これは、そうでなければ最適化を混乱させ得る、触媒表面上の塩化物平衡における遅延の潜在的な問題を回避する。
【0083】
更に、例えば7日を超えて収集されたEOプラント稼働の過去の稼働データ、及びオフライン触媒試験(例えば、実験室又はパイロットプラント試験)中に、又は過去のEOプラント稼働から収集された参照データを使用して、EO生成プラントの稼働条件(例えば、ガス毎時空間速度(GHSV)、EO生成パラメータ、供給ガス組成物、圧力)の変動を考慮することと組み合わせて、本明細書に開示される方法は、触媒選択性を最大化するための堅固で効率的かつ正確な方法を提供する。したがって、本明細書に開示されるのは、高選択性エポキシ化触媒に特異的であり、オフライン試験中に又は過去のEOプラント稼働から得られたモデル及び参照データを利用して、最大触媒選択性(Sopt)を達成する最適調節剤レベル(Mopt)をリアルタイムで正確かつ確実に決定するために、様々な潜在的に変動する稼働上のパラメータを考慮する技術である。
【0084】
特に、本発明は、概して、EO生成システムの稼働上の変化の存在下で触媒選択性を最大化する最適触媒調節剤レベルをリアルタイムで正確かつ確実に決定し、触媒性能が最適化されるように、調節剤レベルを調整するための実行可能なガイダンスを提供する堅固なシステム及び方法を対象とする。本明細書に開示されるシステム及び方法は、モデル及び決定木から得られた情報を、EO生成システムによって経時的に生成された経験的履歴データ、並びに触媒開発及び支援の間に、又は過去のEOプラント稼働から日常的に得られる触媒特異的な参照データと組み合わせて使用する。既存の調節剤最適化技術とは異なり、本明細書に開示されるシステム及び方法は、反応器又は供給ガス中の気相調節剤濃度を監視することに依存せず、これは、確実に得ることが困難であり得、触媒の表面上の触媒調節剤の濃度を表さない場合がある。むしろ、開示されたシステム及び方法は、触媒性能に対する触媒調節剤(すなわち、触媒の表面上)の全体的な影響に依存する。更に、本方法は、方向性アドバイスを提供するだけでなく、最適に達するのに必要な調節剤レベル変化の特定の大きさを提供する。例えば、モデルを使用することによって、そうでなければ最適な触媒調節剤レベルの決定を混乱させる可能性がある稼働条件(例えば、EO生成パラメータ、反応器供給ガス組成物、圧力又はガス毎時空間速度)における差からの変動が除去される。
【0085】
上述したように、ある特定のエチレンエポキシ化触媒は、エチレンオキシド(EO)を生成するために使用されるシステムの通常の稼働中に劣化に関連した性能低下に供される。触媒劣化は、経時的な触媒の活性及び選択性の低下によって観察される。したがって、減少した触媒活性を補償するために、エポキシ化が行われる反応器内の温度を上昇させる。反応器内の温度は、触媒劣化に伴って経時的に変化する。所与の触媒使用年数であっても、所望のEO生成パラメータ又は供給組成物などの条件が変化すると、温度要件も変化する。プラント稼働では、温度の低下に関連する変化と稼働条件の変化に関連する変化の両方は、一般的であり、調節剤レベルを最適化するために任意の方式で両方の種類の変化を考慮することが有利である。より長い稼働時間にわたる触媒劣化及び稼働条件の変化の影響を組み込むことにより、既存の技術と比較して正確性が改善される。本発明は、両方の種類の変化を考慮して、任意の触媒使用年数又は稼働条件において最大触媒選択性(Sopt)を達成する最適調節剤レベル(Mopt)をリアルタイムで正確かつ確実に決定する。
【0086】
基準曲線
最適調節剤レベル(Mopt)は、エポキシ化反応条件及び使用される触媒のタイプに依存する。促進量のレニウム(Re)を有する銀系触媒などの高選択性エポキシ化触媒は、特定の調節剤レベル(Mopt)において最大選択性(Sopt)を示す。したがって、触媒選択性を調節剤レベルの関数として表す曲線は、欧州特許出願公開第0352850(A1)号に開示されているように、選択性が触媒調節剤レベルの比較的小さな変化によりかなり変化することを示す、選択性の最大値を含む複雑な形状を有する。
【0087】
様々な反応条件下での高選択性エポキシ化触媒の挙動は、触媒開発及び評価中に又はEOプラント稼働から日常的に収集されるオフライン試験データを使用して生成される基準曲線から決定することができる。これらの基準曲線を使用して、最大触媒選択性をもたらす調節剤レベルを特定することができる。例えば、オフライン試験データを使用して、調節剤レベルに対する触媒性能関係を定義する基準曲線を得ることができる。これらの基準曲線は、本明細書に開示される技術と組み合わせて使用して、EO生成システムの稼働中にリアルタイムで触媒の相対有効調節剤レベル(RCleff)を効率的かつ効果的に決定することができる。
【0088】
本発明の説明を容易にするために、以下は、開示された実施形態によって使用される基準曲線がどのように得られるかの簡単な説明である。図1及び図2は、それぞれ、触媒選択性(%)及び温度(℃)の応答を示すプロット10及び12を示しており、これらは、一定稼働条件及び一定のEO生成パラメータでのEO生成システムについて、調節剤レベルを経時的に変化させたときのものである。プロット10及び12は、高選択性エポキシ化触媒(すなわち、レニウム促進剤を有する銀系触媒)の最適化中に得られたマイクロリアクタデータを使用して生成された。プロット10及び12は、マイクロリアクタ試験からのデータを使用して生成されたが、データはまた、商業的EOプラントにおいて生成されてもよいことを理解されたい。図1及び図2に示されるように、調節剤レベル(すなわち、触媒塩化物化有効度値、Cleff)は、1日当たり約1回手動で段階的に変化させた。触媒の選択性に対する各調節剤の段階的な変化の効果を安定化させるために一定の時間をとった。安定化されると、それぞれ選択性及び温度についての安定化されたデータ点14及び16が、各調節剤レベル18において抽出された。
【0089】
抽出された安定したデータ点14及び16を使用して、調節剤レベル18の関数としての触媒選択性及び温度に関する追加のプロットを生成してもよい。例えば、図3は、それぞれの抽出された安定したデータ点14及び16を用いて生成された調節剤レベル18の関数としての選択性及び温度のプロット20を示す。プロット20は、調節剤レベルが変化するにつれての高選択性エポキシ化触媒の挙動の傾向を示す。例えば、一定の目標EO生成パラメータで調節剤レベルが増加すると、触媒の選択性(例えば、データ点14)は、最大点34を通過し、温度(例えば、データ点16)は低下する。加えて、プロット20から、調節剤レベルが最適値(例えば、選択性最大点34又はその付近)、最適値より上(すなわち、過剰調節)、及び最適値より下(すなわち、過小調節)である性能が示される。図示されたプロット20において、抽出された安定したデータ点14及び16が最大点34の左側にある場合、触媒は、過小調節状態にあり、触媒の選択性を改善するために調節剤レベルを増加させることができる。逆に、抽出された安定したデータ点14及び16が最大点34の右側にある場合、触媒は、過剰調節状態にあり、触媒の選択性を改善するために調節剤レベルを減少させることができる。
【0090】
最大点34付近に傾向を集中させる、選択性及び温度それぞれについての抽出された安定したデータ点14及び16の代替の描写が、図4のプロット24に示されている。プロット24における相対選択性(RS)及び相対温度(RT)のそれぞれについてのデータ点36及び38は、抽出された安定した選択性及び温度データ点14及び16と、最適調節剤レベル(Mopt)における選択性及び温度の値との間の差を、それぞれ式6及び式7を用いてとることによって生成される。この特定のプロットでは、それぞれのデータ点36及び38は、式3を用いて得られた相対有効調節剤レベル26(RCleff)の関数としてプロットされている。RCleff26は、触媒が過剰調節又は過小調節される程度を示す。例えば、RCleff=-0.2は、20%過小調節された調節状態を示し、RCleff=+0.15は、15%過剰調節された調節状態を示す。
【0091】
図3及び図4に示される高選択性エポキシ化触媒に関連する選択性曲線は、所定の一連の反応条件について、最大触媒選択性を達成する最適触媒調節剤レベルを示す顕著な最大値(例えば、最大点34)を有する。加えて、最大選択性を達成するために必要とされる調節剤の量は、典型的には、触媒が劣化するにつれて、又は稼働条件が変化するにつれて、温度の関数として変化する。温度は、最適調節剤レベル(Mopt)の変化に大きく寄与するが、EO生成パラメータ、供給ガス組成物、及び他の稼働条件などの他の要因も、最適調節剤濃度の変化をもたらす。例えば、作業速度又は反応器入口COレベルが変化すると、最適調節剤レベル(Mopt)も変化する。
【0092】
したがって、これらの条件が変化するにつれて、最大の触媒選択性を維持するために、調節剤濃度を調整(すなわち、増加又は減少)する必要があり得る。
【0093】
図1図4は、所与の触媒タイプ、使用年数、及び一連の稼働条件に対する単一の最適化例の挙動を示す。しかしながら、同様の曲線は、種々な異なる触媒使用年数及び異なる稼働条件についての触媒開発及び評価の間に実験室で収集されたデータから生成され得る。例えば、図5及び図6は、それぞれ、選択性及び温度のプロット46及び48を、異なる使用年数及び広範囲の稼働条件、例えば、EO生成パラメータ、GHSV、O供給ガス濃度、C供給濃度、CO供給濃度、及び反応器入口圧力での所与の触媒に関連する様々な試験からのそれぞれのデータ50及び52の編集によって生成された触媒塩化物化有効度(Cleff)の関数として示す。それぞれのプロット46及び48に示されるように、選択性、温度、及び触媒塩化物化有効度の値は、非常に広い範囲にわたって変化する(例えば、10%を超える選択性、50℃超、及び触媒塩化物化有効度における10倍)。しかしながら、驚くべきことに、これらのデータ50及び52が相対的な用語(例えば、RS、RT、及びRCleff)で再プロットされる場合、広範囲の性能データは、図7及び図8に示されるように、はるかに狭い範囲に収まる。
【0094】
例えば、図7及び図8は、図5及び図6に示されるように、異なる条件での様々なオフライン実験室試験についての式3から計算されたRCleff26の関数としての、それぞれ式6及び7から計算された、パーセント(%)単位の最適値からの相対選択性(RS)偏差及び摂氏温度(℃)単位の最適点34と比較した相対温度(RT)の代表的な基準プロット56及び58である。定義により、RS及びRTは両方とも、0.0である最適RCleffにおいて0.0である。図示されるように、適合された選択性基準曲線60及び適合された温度基準曲線64は、それぞれ、検査された広範囲の実験データ62及び68を表すことができる。適合された基準曲線60及び64は、点(0.0,0.0)を通るように制約された、当業者に知られている広範囲の容易に利用可能な統計的曲線適合技術を使用して決定することができる。
【0095】
図7及び図8の代表的な基準プロット56及び58を生成するために、図5及び図6に示されるように、多種多様な実験室データ50及び52が収集されたが、これは、本明細書に開示される方法を実践するために必要ではないことが理解されるであろう。多種多様な稼働条件及び触媒使用年数にわたって収集された選択性及び温度データは、驚くべきことに、相対的な用語(RS及びRT対RCleff)でプロットされた場合、適合された選択性基準曲線上及び適合された温度基準曲線上に収まるので、代表的な基準プロットに到達するために、触媒開発中に実験室においてそのような広範なデータセットを生成する必要はない。例えば、EOプラントオペレータは、過小調節、最適調節及び過剰調節を包含する調節剤レベルの範囲にわたって単一のセットの選択性及び温度データを収集するような方法で、特定の一連の稼働条件で触媒実行の初期にEOプラントを稼働することができる。EOプラントオペレータは、これらのデータを使用して、触媒のその後の稼働中に使用するための代表的な基準プロットを生成することができる。
【0096】
図9は、図7及び図8に示される適合された基準曲線60及び64を再プロットした基準プロット70であり、関連する傾向を単一のプロットで示すために、基礎となるデータ点の全てがない。基準プロット70は、所与の相対選択性(RS)及び相対温度(RT)をRCleff26に関連付ける。このプロットでは、定義により、適合された選択性曲線60の最大値72は、RCleffが0である点で生じる。以下で更に詳細に説明するように、これらの曲線は、EO生成システムのリアルタイム稼働において調節剤レベルを最適化するための有用な基準として使用することができる。
【0097】
適合された基準曲線60及び64の代替の図が図10に示されており、これは、RS対RTとしてのデータのプロット73を示している。この図では、最大値72の左側のデータ点は、過剰調節されており、最大値72の右側のデータ点は、過小調節されている。曲線74に沿った各データ点は、図9から得られるように、それに関連するRCleffの値を有する。この描写における近似曲線74の傾き76の検査は、触媒調節の状態への貴重な洞察を提供し得る。データ点78などの最大値72の左側のデータ点については、線の傾き76は、正であり、これは過剰調節に対応する。データ点80などの最大値72の右側のデータ点については、線の傾き76は、負であり、これは過小調節に対応する。
【0098】
データ点が最大値72に近い場合、傾き76は、0に近くなり、これは最適な調節に対応する。このようにして、曲線74の傾き76を用いて、触媒の調節状態を決定することができる。実際には、所与のデータ点におけるRS対RT曲線74の傾き76は、適合された関数の導関数をとることによって決定することができる。
【0099】
図11は、図10の曲線74からの各データ点に関連付けられ、RCleffの広い範囲に及ぶRCleff26の関数としてのRS対RT曲線74の傾き
【0100】
【数21】
(例えば、傾き76)のプロット82を示している。図11では、-0.8(80%過小調節)から1.1(110%過剰調節)に及ぶRCleffの広い範囲にわたる傾き
【0101】
【数22】
の傾向が示されている。この範囲にわたって、傾向は、傾きが過剰調節された側で無限大に近づく不連続部86を提示し得る。しかしながら、通常のプラント稼働中の最適化のための関心範囲は、関心領域87によって示される最大値(すなわち、最大値72)のほぼ近傍の範囲である。一般に、関心領域87内の傾き76の範囲は、傾き76と相対有効調節剤レベル26との間に固有の1対1の関係が存在する通常基準境界88内にある。例えば、図示されたプロット82では、通常基準境界は、-2%/℃~+2%/℃である。しかしながら、通常基準境界は、特定の高選択性エポキシ化触媒に基づいて±1%/℃~±3%/℃の範囲であり得る。
【0102】
図12は、点0,0の周りの図11のプロットの拡大図であり、これは、約-0.5~約+0.3にあるRCleff26にある関心領域(例えば、図11の領域87)にわたるRS対RT曲線の傾き
【0103】
【数23】
に焦点を当てたプロット90を示す。この関心領域内では、傾き
【0104】
【数24】
とRCleff26との間に1対1の関係がある。実際には、傾き
【0105】
【数25】
の値は、通常基準境界88内にある場合、触媒挙動が通常範囲内にあるかどうかを決定するために評価されてもよい。傾き
【0106】
【数26】
が通常基準境界の外側にある場合(例えば、+2%/℃超又は-2%/℃未満)、触媒は、リアルタイムデータ点において非常に過剰調節されている(例えば、30%過剰調節)とみなされてもよく、以下で更に詳細に説明されるように、適切な是正措置が取られ得る。
【0107】
図7図12を参照して上述される基準曲線を生成するために使用されるデータは、開発又は支援のための触媒の試験中にオフラインで収集されてもよい。しかしながら、理解されるべきであるように、これらの同じ基準曲線は、商業プラント稼働中にも生成され得る。上述したように、基準曲線は、広範囲の条件にわたって触媒挙動をカバーすることができ、既存の技術と比較して、調節剤最適化のための効果的かつ効率的な方法を提供する。必要に応じて、異なる触媒タイプに対する追加の触媒特異的な基準曲線を利用し、適用することができる。
【0108】
本発明の特定の利点は、従来技術の教示に従って各稼働中にプラントにおける完全な最適化手順を必要とするのではなく、本発明は、実験室規模又はより小規模のパイロットプラント試験において事前に生成された基準曲線が、後続のより大規模な稼働における最適化手順に関する情報を与える際に利用されることを可能にすることである。そのような試験において生成された基準曲線の適用は、商業稼働中に実験を行うことに依存しなければならない場合、特に、そのような実験が、プラントにおける稼働条件又は温度の変化があるたびに商業稼働中に再実施されることが必要とされる場合よりも、高い効率及びより低いコストをプラントオペレータに提供する。所与の触媒組成物について実験室規模又はより小規模のパイロットプラント試験において事前に基準曲線を得ることによって、そのような曲線は、複数のプラントにわたるより大規模な稼働のための将来の触媒組成物の稼働において適用され得る。
【0109】
EO生成システム
上記を念頭に置いて、図13は、本発明の一実施形態による、開示されたプロセスを利用して、リアルタイムで最大触媒選択性のための最適調節剤レベルを決定することができるエチレンオキシド生成システム100を示す。
【0110】
図示の実施形態では、システム100は、エポキシ化反応器システム102、二酸化炭素(CO)分離システム104、エチレンオキシド(EO)分離システム106、及び制御システム108を含む。エポキシ化反応器システム102は、並列又は直列の1つ以上の反応器を含んでもよい。稼働において、エポキシ化反応器システム102は、エチレン124、触媒調節剤126、酸素(O)128及び再循環混合ガス流130を含む供給ガス120を受け取る。触媒調節剤126(例えば、塩化物含有調節剤)には、塩化メチル、塩化エチル、二塩化エチレン、塩化ビニル、及びそれらの組み合わせなどのC~Cクロロ炭化水素が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0111】
図13に示されるように、供給ガス120は、反応器入口132を介してエポキシ化反応器システム102に供給される。エポキシ化反応器システム102において、供給ガス120中のエチレン124及び酸素128は、エポキシ化触媒134の存在下で反応して、生成ガス138を生成する。生成ガス138は、EO、未反応エチレン124及び酸素128、触媒調節剤126、エポキシ化反応の様々な副生成物(すなわち、CO及び水(HO))、希釈ガス及び他の不純物の混合物である。本明細書に開示される反応器システム102におけるエポキシ化プロセスは、少なくとも部分的に、初期プラント設計、その後の拡張プロジェクト、原料利用可能性、使用される触媒のタイプ、プロセス経済性などに応じて、システム100を使用する異なるエチレンオキシドプラント間で大きく異なり得る広範囲の稼働条件下で実施されてもよい。そのような稼働条件の例としては、反応器入口圧力、反応器システム102を通るガス流(一般にガス毎時空間速度又は「GHSV」として表される)、供給ガス組成物、及びエチレンオキシド生成パラメータ(一般に作業速度に関して記載される)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0112】
所望の商業的エチレンオキシド生成速度を達成するために、エポキシ化反応は、典型的には、180℃以上、又は190℃以上、又は200℃以上、又は210℃以上、又は225℃以上の反応温度で実行される。同様に、反応温度は、典型的には、325℃以下、又は310℃以下、又は300℃以下、又は280℃以下、又は260℃以下である。反応温度は、180℃~325℃、又は190℃~300℃、又は210℃~300℃であってもよい。本明細書で使用される「反応温度」という用語は、触媒床温度を直接又は間接的に示す任意の選択された温度を指すことに留意するべきである。
【0113】
例えば、反応温度は、触媒床内の特定の位置での触媒床温度、又は1つ以上の触媒床寸法に沿って(例えば、長さに沿って)行われたいくつかの触媒床温度測定値の数値平均であり得る。代替として、反応温度は、例えば、触媒床の特定の位置でのガス温度、1つ以上の触媒床寸法に沿って行われたいくつかのガス温度測定値の数値平均、エポキシ化反応器の出口で測定されたガス温度、1つ以上の触媒床寸法に沿って行われたいくつかの冷却剤温度測定値の数値平均、又はエポキシ化反応器の入口若しくは出口、又は冷却剤循環ループで測定された冷却剤温度であり得る。反応温度を測定するために使用される周知のデバイスの一例は、熱電対である。
【0114】
本明細書に開示されるエポキシ化プロセスは、典型的には、1000~3000kPa、又は1200~2500kPa(絶対)の反応器入口圧力で実行される。反応器入口圧力を測定するために様々な周知のデバイスが使用され得、例えば、圧力を示す変換器、ゲージなどが用いられ得る。例えば、エポキシ化反応器の特定の種類、所望の生産性などを考慮して、好適な反応器入口圧力を選択することは、当業者の能力の範囲内である。
【0115】
エポキシ化反応器を通るガス流は、ガス毎時空間速度(「GHSV」)の単位で表され、これは、標準温度及び圧力(例えば、0℃、1atm)での供給ガス120の体積流量を、触媒床体積(すなわち、エポキシ化触媒134を含有するエポキシ化反応器システム102の体積)で除算した商である。GHSVは、供給ガス120が標準温度及び圧力(すなわち、0℃、1atm)であった場合に、供給ガス120が反応器システム102内の触媒体積を1時間当たり何回置換するかを表す。典型的には、気相エポキシ化プロセスでは、GHSVは、1時間当たり約1,500~10,000である。
【0116】
先に論じたように、反応器システム102におけるエチレンオキシドの生成速度は、典型的には、触媒の1単位体積当たりの1時間当たりに生成されるエチレンオキシドの量を指す作業速度などのEO生成パラメータに関して記載される。一般に、所与の一連の稼働条件については、それらの条件で反応温度を上昇させることは、作業速度を増加させ、エチレンオキシド生成の増加を生じる。しかしながら、この温度上昇は、多くの場合、触媒選択性を低減し、触媒の劣化を加速させ得る。代替として、エポキシ化触媒が、経時的に自然な触媒劣化を受けるにつれて、作業速度は、所与の反応温度について自然に減少する。そのような状況下では、作業速度を必要な値に維持するために、反応温度を上昇させる。典型的には、ほとんどのプラントにおける作業速度は、1時間当たりの触媒1m当たり約50~400kg(kg/m/h)、又は約120~350kg/m/hのエチレンオキシドである。本開示の利益を有する当業者は、例えば、プラント設計、機器の制約、エポキシ化触媒の使用年数などに応じて、供給ガス組成物、反応器入口圧力、GHSV、及び作業速度などの適切な稼働条件を選択することが可能であろう。
【0117】
上述のように、反応器システム102は、EO、未反応エチレン124及び酸素128、触媒調節剤126、エポキシ化反応の様々な副生成物(すなわち、CO及び水(HO))、希釈剤、並びに他の不純物の混合物である生成ガス138を生成する。生成ガス138は、反応器出口140を介してエポキシ化反応器システム102を出て、EO分離システム106に供給される。EO分離システム106において、EOは、任意の好適な分離技術によって生成ガス138から分離される。例えば、図示の実施形態では、水などの抽出流体142を使用して、生成ガス138からEOを分離することができる。抽出流体142は、生成ガス138からEOを除去して、EOを有するEO富化流体146を生成する。EO富化流体146は、第1の出口150(例えば、EO出口)を通ってEO分離システム106を出て、更に処理され、触媒又は非触媒加水分解を介してグリコール(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなど)などの生成物を提供するために使用されてもよい。未反応エチレン124及び酸素128、副生成物(CO及びHO)並びに他の希釈剤及び不純物を含むオーバーヘッドガス148は、第2の出口152を通ってEO分離システム106を出て、(例えば、再循環ガス流130を介して)反応器システム102に再循環される。圧縮機158又は他の適切なデバイスを使用して、システム100を通るオーバーヘッドガス148の輸送を促進することができる。図示の実施形態では、圧縮機158を出る第1の再循環ガス流160は、供給ガス120に送られる。第1の再循環ガス流160の一部162は、CO分離システム104に供給され、ここで、COが第1の再循環ガス流160から分離されて、CO164及び第2の再循環ガス流168が生成される。第2の再循環ガス流168は、第1の再循環ガス流160と組み合わされて、再循環混合ガス流130を生成し、これは、エチレン124、触媒調節剤126、及び酸素(O)128の新たな供給物と組み合わされて、供給ガス120を形成し、反応器システム102に供給される。このようにして、生成ガス138中の未反応エチレン及び酸素を反応器システム102に返すことができ、それによってEO生成システム100の全体的な効率が改善される。
【0118】
上述したように、触媒調節剤(例えば、調節剤126)は、EOの生成に使用される触媒(例えば、エポキシ化触媒134)の活性及び選択性を維持するのに重要な役割を果たす。促進量のレニウムを有する銀系触媒などの高選択性エポキシ化触媒を使用する場合、触媒の最大選択性は、供給ガス(例えば、供給ガス120)中の狭い調節剤レベル内で得られる。しかしながら、触媒選択性が最大(Sopt)である最適調節剤レベル(Mopt)は固定されず、反応温度及び稼働条件に基づいて変化する。触媒の性能が経時的に低下するにつれて、反応温度を上昇させて、触媒の性能を改善し、EO生成の一定速度を維持する。したがって、供給ガス120中の調節剤126のレベルは、典型的には、反応温度及び反応稼働条件、例えば、供給濃度又はEO生成パラメータ(例えば、作業速度)とともに調整されて、触媒134の稼働を最大選択性(Sopt)で維持する。以下で更に詳細に説明するように、本明細書に開示される技術は、リアルタイムデータ、モデルデータ、参照データ(例えば、図7図12の参照データ)及び経験的履歴データの組み合わせを使用して、最大触媒選択性(Sopt)を達成する最適調節剤レベル(Mopt)を決定する。本技術はまた、既存の技術と比較して改善された正確性及び信頼性を伴う、リアルタイムで調節剤126のレベルを最適調節剤レベル(Mopt)に調整するための実用的なガイダンスを提供する。
【0119】
図13のEO生成システム100は、システム100の1つ以上の稼働上のパラメータをリアルタイムで測定及び監視する、1つ以上のセンサ170及び/又は分析器システム172を含む。分析器システム172は、供給ガス120、生成ガス138、又は両方を分析する1つ以上の分析器を含み得る。例えば、稼働中、分析器システム172は、供給ガス120の一部176を受け取り、供給ガス120中の調節剤126(すなわち、塩化物)及び他の成分の濃度を測定する。ある特定の実施形態では、分析器システム172は、生成ガス138の一部178を受け取り、生成ガス138中のEO及び他の成分の濃度を測定することができる。分析器システム172は、ガスクロマトグラフ(gas chromatograph、GC)、質量分析計(mass spectrometer、MS)、又は供給ガス120及び/若しくは生成ガス138を分析するための任意の他の好適な分析ツール、並びにそれらの組み合わせを含んでもよい。図示の実施形態では、1つ以上のセンサ170が反応器システム102内に位置付けられ、反応器102に供給される冷却剤の温度及び/又は反応器102に沿った1つ以上の位置での反応ガス温度を監視することができる。センサ170は、1つ以上の反応器のシェル内、1つ以上の反応器自体内、冷却剤循環ループ内、選択された触媒管内、及びそれらの組み合わせ内に位置付けることができる。ある特定の実施形態では、センサ170は、反応器出口140に位置付けることができる。したがって、センサ170は、反応器102を出る生成ガス138の温度を測定及び監視することができる。生成ガス138の温度はまた、反応器システム102内の温度、したがって触媒134の活性に関する洞察を提供することができる。
【0120】
制御システム
センサ170及び分析器172からリアルタイムで収集されたデータを使用して、触媒134の性能、及び調節剤126のレベルが最大触媒選択性(Sopt)に対して最適であるか又は最適に近いかどうかを決定することができる。したがって、図示の実施形態では、センサ170及び分析器172は、リアルタイムデータ180を制御システム108に伝送し、ここで、データ180は、データ処理システム182において記憶及び処理されてもよい。制御システム108は、有線又は無線接続を介してリアルタイムデータ180を受け取ることができる。ある特定の実施形態では、制御システム108は、EOプラントから離れた遠隔位置に位置する。データ180は、反応器システム102の稼働に関連する複数の測定値(例えば、供給ガス120中の塩化物濃度又は調節剤126の添加速度、生成ガス138中のEO濃度、測定された選択性、反応温度、圧力、ガス毎時空間速度(GHSV)、供給ガス組成物、EO生成パラメータなど)を含むことができる。データ処理システム182は、データ180を使用して、オペレータが反応器システム102内の調節剤126のレベルにおいていくつかの手動ステップを実行することを必要とせずに、反応器システム102の稼働条件において触媒選択性(Sopt)を最大化する調節剤の最適レベル(Mopt)126をリアルタイムで決定することができる。加えて、以下で更に詳細に説明するように、データ処理システム182は、有利には、供給ガス120中及び/又は触媒134の表面上の調節剤126の濃度の正確かつ精密な監視に依存することなく、触媒134の最適調節剤レベル(Mopt)及び最大選択性(Sopt)を決定する。ある特定の実施形態では、信頼できる調節剤測定値が利用可能である場合、これらの測定値を本明細書に開示される方法と組み合わせて使用して、最適調節剤レベル(Mopt)を決定することができる。
【0121】
データ処理システム182は、マイクロプロセッサ(μP)184、メモリ186、記憶装置190及び/又はディスプレイ192を含んでもよい。メモリ186は、システム100を稼働させ、最大触媒選択性(Sopt)に対する最適調節剤レベル(Mopt)を推定し、最大触媒選択性を決定し、触媒の相対有効調節剤レベルを決定し、触媒性能に関連する警告をトリガし、最大触媒選択性を達成するために調節剤レベルを調整することを含み得る目標変更のための実行可能なガイダンス/推奨を提供するための、1つ以上のセットの命令を集合的に記憶する1つ以上の有形の非一時的機械可読媒体を含み得る。ある特定の実施形態では、1つ以上のセットの命令は、システム100に、推奨に基づいて、調節剤126のレベル(例えば、総加重調節剤濃度、補給調節剤供給速度、又は触媒塩化物化有効度値(すなわち、Cleff))を調整するように命令することができる。例えば、ある特定の実施形態では、制御システム108は、調節剤126の調節剤濃度又は供給速度を自動的に調整するための命令を受け取ることができるフィードバック制御要素196を含む。フィードバック制御要素196は、調節剤126の流れを制御する弁に信号198を送信し、それによって供給ガス120中の調節剤126の量を調整することができる。
【0122】
メモリ186は、システム100の稼働上のパラメータの変化を考慮するモデルを使用することによって、触媒134の最適化された性能を予測するための命令を含むことができる。有利には、このモデルは、供給物120中及び/又は触媒の表面上の調節剤126のレベルを必要としない。すなわち、モデルは、圧力、ガス毎時空間速度、EO生成パラメータ、供給ガス組成物、及び任意選択で触媒使用年数の変化が、最適調節剤レベル(Mopt)に対する触媒選択性及び温度に与える影響を推定する。したがって、モデル推定値に対する触媒の選択性及び温度の偏差は、相対有効調節剤レベルの変化に関連する。モデルは、好ましくは触媒使用年数の関数として、塩化物最適化選択性及び温度に対する供給ガス組成物(例えば、O、C、CO、C、CH、HO)、GHSV、圧力及びEO生成パラメータの影響を予測する任意の好適なモデルであってもよい。モデルは、触媒134に特異的であり、触媒供給業者によって提供され得る。したがって、一実施形態では、このモデルは、触媒を提供した触媒供給業者によって供給され、モデルは、本明細書に開示されるシステム及び方法に組み込まれる。別の実施形態では、EO生成システム100内の触媒134のオペレータは、プロセス稼働中に収集されたデータに基づいてモデルを開発してもよい。非限定的な例として、モデルは、経験的統計モデル、多変量モデル、動態モデル、ニューラルネットワーク、又はシステム100、触媒134、及び好ましくは触媒使用年数の稼働条件の影響を捕捉する任意の他の好適なモデルであってもよい。そのようなモデルの例は、「An Experimental Study of the Kinetics of Selective Oxidation of Ethene over a Silver onα-Alumina Catalyst」,PC Borman and KR Westerterp,Ind.Eng.Chem.Res,1995,34,49-58及び「Hybrid modeling of ethylene to ethylene oxide heterogeneous reactor」,G Zahedi,A Lohi,KA Mahdi,Fuel Processing Technology,2011,92,1725-1732において見ることができる。国際公開第2016/108975(A1)号は、段落[0077]~[0080]の実験1において、触媒モデルの例及びそれを生成する方法を実証する。ある特定の実施形態では、連続オンラインモデル再適合技術が使用され得る。非限定的な例として、連続オンラインモデル再適合技術は、モデルパラメータの加重再推定又は当業者によって理解される他の好適な再適合技術を含み得る。理解されるように、これらの技術は、対象となる高選択性エポキシ化触媒についての性能データの収集及び適合を通して当業者によって適用され得る。
【0123】
メモリ186は、モデル、決定木、及び触媒の相対有効調節剤レベル及び触媒の調節剤最適化性能を決定するため、並びに最大触媒選択性を達成するために調節剤レベルが調整されるべき方向及び量に関する実行可能なガイダンス/推奨を提供するために使用され得る任意の他の情報を記憶してもよい。メモリ186はまた、触媒性能、調節剤レベル、システム性能、及びシステム保守に関連するシステム100のオペレータのために表示する視覚化192を生成するための命令を記憶することができる。視覚化は、とりわけ、プロット、データ信頼レベル、警告、推奨、測定、及びシステムパラメータを含むが、それらに限定されない。
【0124】
データ180を処理するために、プロセッサ184は、メモリ186及び/又は記憶装置190に記憶された命令を実行することができる。例えば、命令は、プロセッサ184に、温度(すなわち、反応温度)又は供給組成物の変化の関数として、調節剤レベル(M)の変化を推定させ、観察された調節剤レベルを最適調節剤レベル(Mopt)及び基準曲線と比較させ、供給ガス120中の調節剤の濃度に依存することなく、触媒性能に対する調節剤レベルの影響を決定させることができる。本発明は、システム100の稼働のための普遍的な要件であり、供給ガス120中の塩化物濃度を正確に監視しなければならないことよりも容易である、塩化物(すなわち、調節剤)添加の速度を効果的に変化させることができることに依拠する。しかしながら、供給ガス120中の塩化物の正確かつ信頼できる濃度が測定される限り、この値は、触媒選択性に対する調節剤濃度の影響を決定するために使用され得る。ある特定の実施形態では、命令は、プロセッサ184に、データ前処理/クリーニングステップを適用させて、データを平均化又は平滑化し、外れ値を除去し、データ補完などを行わせてもよい。したがって、データ処理システム182のメモリ186及び/又は記憶装置190は、命令を記憶することができる任意の好適な製造品であってもよい。非限定的な例として、メモリ186及び/又は記憶装置190は、読み出し専用メモリ(read-only memory、ROM)、ランダムアクセスメモリ(random-access memory、RAM)、フラッシュメモリ、光記憶媒体、ハードディスクドライブ、クラウド記憶装置、又は他の記憶媒体であってもよい。
【0125】
データ処理システム182は、データ(例えば、測定値、プロット、稼働パラメータ、稼働条件など)を、EOプラントオペレータにとって容易にアクセス可能であり得る外部デバイス(例えば、遠隔ディスプレイ、携帯電話、タブレット、ラップトップ、電子データ管理システムなど)に伝送してもよい。ディスプレイ192は、システム100の稼働に関連する情報(例えば、触媒選択性プロット、温度プロット、作業速度プロット、調節剤濃度プロット、調節剤最適化ガイダンスプロット、警告、推奨、信頼レベル、システムパラメータ、又は任意の他の好適な情報及びそれらの組み合わせ)を表示することができる任意の好適なローカル又は遠隔電子ディスプレイであってもよい。ある特定の実施形態では、データ処理システム182は、最大触媒選択性(Sopt)のための最適調節剤レベル(Mopt)を決定するために、データ180(例えば、リアルタイムデータ)と組み合わせて、モデリング稼働から得られた情報、オペレータからのアドホックアサーション、経験的履歴データ(例えば、履歴稼働データ)、及び参照データ(例えば、触媒開発及び試験中に生成されたデータ)を使用することができる。一実施形態では、データ処理システム182は、クラウド、サーバ、及び/又はデータ処理システム182がアクセスを許可されている第三者システム上に記憶されたデータ(例えば、参照データ、経験的履歴データなど)を取り出すことができる。
【0126】
上述したように、システム100からのデータ180は、モデルと組み合わせて分析されて、供給ガス120中の調節剤濃度の正確な監視に依存することなく、触媒134の相対有効調節剤レベル(RCleff)及び性能を決定することができる。例えば、モデルは、システム100の稼働条件(例えば、EO生成パラメータ、圧力、ガス毎時空間速度(GHSV)、供給物組成など)が変化するにつれて、触媒の推定塩化物最適化選択性及び温度の変動を決定することができる。モデルはまた、長期低下又は触媒使用年数の効果を決定することができる。以下に更に詳細に説明するように、データ処理システム182に記憶されたモデルデータ及び参照データと組み合わせて、データ180の少なくとも一部を使用して、触媒の選択性及び活性に対する調節剤126のレベルの影響を決定する。上述したように、調節剤126の触媒表面濃度(被覆率)は、触媒性能に影響を与える。しかしながら、触媒の表面上の調節剤126の濃度を測定することは、実用的ではない。既存の技術は、供給ガス120中の調節剤126の濃度の測定に依存しており、これは、触媒134の表面上の調節剤126の濃度を必ずしも表すわけではない。したがって、供給ガス120中又は触媒134の表面上の調節剤126の測定された濃度に依存しないことによって、本明細書に開示される技術は、既存の技術と比較して、リアルタイムで任意の所与の一連の稼働条件下で最適調節剤レベル(Mopt)及び最大触媒選択性(Sopt)を決定するためのより堅固で、信頼性があり、かつ正確な方法を提供する。更に、開示された技術は、調節剤レベルを手動で段階的に変化させて、その最適値(Mopt)を見つける必要なく、最大触媒選択性(Sopt)を達成するために調節剤レベルを調整するための実行可能なガイダンス/推奨を提供する。
【0127】
最適調節剤濃度及び触媒性能に対するシステム100の稼働上の条件の変化の影響に関連する、リアルタイムで収集されたデータ180、システム履歴データ(すなわち、経験的データ)、モデルデータ、及び参照データを使用することによって、本明細書に開示される調節剤最適化技術は、特定のシステム及び触媒に合わせて調整され得る。本明細書に開示されるモデルは、エポキシ化システム100の稼働全体を通して得られた履歴データから、最大触媒選択性を提供する稼働上のパラメータ、特に調節剤レベルについて学習することができる。すなわち、モデルは、時間を経て(例えば、日、週、月、年)収集されたリアルタイムデータ180を使用することによって微調整されて、最大触媒選択性(Sopt)のための最適調節剤レベル(Mopt)の信頼できる正確な推定値を提供することができる。ある特定の実施形態では、触媒開発及び支援中の所望の触媒のオフラインマイクロリアクタ試験から、又はEOプラント稼働から得られた参照データは、モデルが推定値を微調整するために使用することができる履歴データの一部であってもよい。したがって、リアルタイムデータ180を履歴データ及び参照データ(例えば、図7図12の参照データ)と組み合わせることにより、所与のシステム及び触媒に対する触媒選択性を最大化する調節剤濃度調整を決定することが容易になる。したがって、開示されたシステム100は、調節剤濃度の監視に依存する既存の調節剤/触媒最適化技術の複雑さを軽減し、既存の技術と比較してリアルタイムの調節剤最適化の正確性及び信頼性が改善された堅固なシステムを提供する。
【0128】
最適調節剤レベル(Mopt)を決定する方法
システム100を使用して、触媒選択性(Sopt)(例えば、触媒134の選択性)を最大化する最適調節剤レベル(Mopt)を決定するための方法200が、図14に示される。方法200のある特定の態様の説明を容易にするために、図15図17が参照されるであろう。図示される方法200では、初期データのソースからの情報が収集され得る(ブロック204)。初期データのソースは、リアルタイムデータ(例えば、データ180)及び経験的履歴データを含み得る。ある特定の実施形態では、初期データのソースは、モデルデータ、オペレータからのアドホックアサーション、又はEO生成システムに関連する情報の任意の他の好適なソースを含んでもよい。経験的履歴データは、稼働中に経時的に生成されたEO生成システムに関連するデータ、及び/又はオフライン触媒開発及び支援若しくはEOプラント稼働中に得られた参照データ(例えば、図7及び図8の参照データ62、68)を含み得る。経験的履歴データは、とりわけ、調節剤レベル、供給ガス組成物、圧力、EO生成パラメータ及びガス毎時空間速度の変化に対する触媒選択性及び温度応答を含むことができる。経験的履歴データはまた、触媒選択性を最大化する調節剤レベルに関する情報、並びに所与の一連の稼働条件についての最適レベルを下回る及び上回る調節剤レベルに対する性能の依存性を含むことができる。データ処理システムは、変化について経験的履歴データを評価して、最良の分析パラメータを特定し、特定のシステムについての調整を可能にし、それによって最大触媒選択性のためのモデル推定の信頼性及び正確性を改善することができる。
【0129】
方法200はまた、クエリ208においてデータが安定しているか否かを判定する決定ステップを含む。クエリ208の前に、データ処理システムは、ブロック204において収集されたデータを前処理又はクリーニング(例えば、統計的クリーニング)し得る。限定ではないが、データ平滑化、異常除去、及び補完などの技術が、データをクリーンにするために使用されてもよい。触媒選択性及び温度における過度の偏差を伴うシステムの通常稼働以外の不安定又は異常な状態の包含は、傾向の誤った解釈をもたらし得る。したがって、クリーニングは、データ内の外れ値を除去することができる。更に、大きな条件差を有するデータをフィルタリングすることにより、傾向の抽出及び触媒性能の最適条件の特定を改善することもできる。例えば、ある特定の稼働条件(例えば、EO生成パラメータ、ガス毎時空間速度、圧力など)の現在のリアルタイム値が、通常稼働から著しく逸脱する場合、これは、潜在的に不安定な稼働を示すか、又はモデルが完全に捕捉し得ない条件における変動性を伴うデータの選択をもたらし得る。これらの影響を最小限に抑えるために、データ処理システムは、EO生成パラメータベースのフィルタ、時間ベースのフィルタ、又は任意の他の好適なフィルタを適用して、最も関連するデータ点を選択することができる。
【0130】
更に、データ処理システムは、全ての必要な入力データ(例えば、EO生成パラメータ、供給組成物、GHSV及び圧力)が利用可能であるかどうかを決定することができる。全ての必要な入力データが利用可能でない場合、データ処理システムは、任意の好適なデータ処理技術を使用して欠損入力データを推定するために補完を適用してもよい。したがって、データを前処理することは、本明細書に開示されるシステム及び方法を使用して決定される最適触媒調節剤レベルの全体的な正確性及び信頼性を改善し得る。
【0131】
クエリ208において、データ処理システムが、データが安定していない(すなわち、不安定である)と判定した場合、データ処理システムは、データ安定化を待つための警告を提供する(ブロック210)。したがって、データが安定するまで、データは、収集し続けられ得る。逆に、データが安定している場合、データ処理システムは、現在のリアルタイムデータ点に関して、経時的なモデル選択性(Sest)、モデル温度(Test)、デルタ選択性(ΔS)、及び対応するデルタ温度(ΔT)の推定に進む(ブロック212)。例えば、上述したように、データ処理システム(例えば、データ処理システム182)は、EO生成システム(例えば、EO生成システム100)の稼働中に経時的に収集されたデータ、参照データ(例えば、図7図12の参照データ)、及びモデルを記憶装置(例えば、記憶装置190)に記憶する。メモリ(例えば、メモリ186)は、プロセッサ(例えば、プロセッサ184)によって実行されると、経験的履歴データ、リアルタイムデータ、及び参照データを取り出し、モデル及びリアルタイムデータを使用して、経時的な触媒選択性及び温度の1つ以上のプロットを生成する命令を記憶する。
【0132】
図15は、ブロック212のふるまいに従って生成することができる、操業日数の関数としての触媒選択性及び温度(触媒活性の描写)の代表的なプロット216である。プロット216は、EO生成システムによって経時的に収集される、測定された触媒選択性データ218及び測定された温度データ220を含む。加えて、プロット216は、経時的なモデル推定触媒選択性(Sest)データ224及びモデル推定温度(Test)データ226を含む。プロット216は、それぞれのモデル推定データ224、226からの測定データ218、220の偏差を特定するために使用され得る。モデルは、調節剤最適化触媒性能を表すので、モデル推定データ224、226それぞれからの測定データ218、220の任意の偏差を使用して、最適値に対する調節剤レベルの偏差を抽出することができる。本明細書に記載される方法は、測定された選択性とモデル推定選択性との間(Smeas及びSest)、及び測定された温度とモデル推定温度との間(Tmeas及びTest)のデルタを適用するので、測定及び/又はモデル化における系統誤差は軽減され、その適用性に影響を及ぼさない。したがって、プロット216を使用して、システムの稼働中の触媒性能に関連するデータの傾向を特定することができる。
【0133】
ある特定の実施形態では、EO生成システムのオペレータは、追加の処理の対象となるプロット216に沿ったセクション230を選択することができる。セクション230は、測定データ218、220がそれぞれのモデル推定データ224、226から逸脱した部分を含み得る。測定データ218、220及びモデル推定データ224、226は、図14のブロック212に従って、現在のリアルタイムデータ点232までの触媒ランアップについての選択性(Smeas及びSest)及び温度(Tmeas及びTest)についての測定データ及びモデル推定値を含む。図15に示されるように、選択されたセクション230は、EO生成システムによって収集された最新のデータを含む。セクション230のために使用される時間枠は、リアルタイムデータ点を含み、触媒ランのかなりの部分、又は全体であってもよい。セクション230について考慮される典型的な時間枠は、関与する傾向の性質及びどの時間枠が最も明確な傾向を提供するかに応じて、1~2日から180日までの範囲であり得る。分析のために考慮すべき時間枠の選択は、国際公開第2016/108975(A1)号に記載されているものなどのある特定の既存の最適化技術よりもはるかに広い可能性がある。開示された分析において使用するために利用可能なより広い範囲のデータは、既存の技術と比較して、最適調節剤レベル(Mopt)を見つける能力を増加させ、改善する。
【0134】
図14に戻ると、ブロック212に従った選択性(Sest)及び温度(Test)のモデル推定に続いて、方法200は、最近のデータ及びリアルタイムデータ点についてデルタ選択性(ΔS)及び対応するデルタ温度(ΔT)を計算することを含む(ブロック234)。例えば、データ処理システムは、選択されたセクション(例えば、選択されたセクション230)から測定データ(例えば、測定データ218、220)及びモデル推定データ(例えば、モデル推定データ224、226)を抽出し、それぞれの測定データとモデル推定データとの間のΔS及び対応するΔTを決定する。データ処理システムは、式8に従って、各時点について、測定された選択性データ(Smeas)(例えば、測定データ218)とモデル推定選択性データ(Sest)(例えば、モデル推定データ224)との間の差をとることによってΔSを決定し、式9に従って、各時点について、測定された温度データ(Tmeas)(例えば、測定データ220)とモデル推定温度データ(Test)(例えば、モデル推定データ226)との間の差をとることによってΔTを決定する。
【0135】
また、ΔS及びΔTの値を更に処理して、最適調節剤レベル(Mopt)を推定してもよい。したがって、方法200は、RCleffレベルを決定するためにΔS及びΔT値の傾向を評価することを含む(ブロック236)。ブロック236のふるまいは、傾向を評価し、RCleffを決定するための様々な決定ステップを有する決定木を含む。したがって、ステップ236は、決定木236(図18)としてより詳細に示される。図16は、選択されたデータ(例えば、図15のセクション230におけるデータ)についてのΔS対ΔTのプロット238を、データを通して近似曲線とともに示す。選択性(ΔSopt)を最大化する近似曲線上の点は、最適調節剤レベル(Mopt)にある。ΔSoptに対応するΔS対ΔTの近似曲線上のΔTの値は、ΔToptである。
【0136】
図17は、式10及び式を使用して、それぞれのΔS及びΔTから、点294における適合された最適値ΔSopt及びΔToptを減算することによって、図16のデータを相対的な用語(例えば、相対選択性差(RSD)、相対温度差(RTD))で表すプロット240を示す。データをΔS対ΔTではなくRSD対RTDとしてプロットすると、その最大点が定義により(0,0)に固定されるように、得られた曲線が単純にシフトする。図16に示される実施形態では、データセット242は、選択された期間(例えば、選択されたセクション230)の間に収集されたデータの個々の日についてのΔS及びΔT値を表す。図17に示される実施形態では、データセット246は、選択された期間中に収集されたデータの個々の日のRSD及びRTD値を表す。プロット238、240に対して別の好適な時間頻度(例えば、日数の代わりに時間数)を使用することもできる。
【0137】
本明細書に開示されるモデルは、最適化された調節剤レベルにおける稼働条件の影響を推定する。したがって、これらの稼働条件における測定データとモデル推定データとの間の差(すなわち、ΔS及びΔT)は、図16及び図17に示されるように、触媒性能に対する稼働条件の影響を効果的に除去し、調節剤レベルの影響のみを残す。そのため、図16及び図17に示される傾向は、図10に示される適合された基準曲線の傾向に類似している。したがって、図16図10の基準曲線と比較して、触媒調節の方向(過小調節又は過剰調節)を推定することができる。RSD及びRTD(例えば、図17)を使用して、過小調節又は過剰調節の大きさも決定することができる。同様に、図16又は図17に示される曲線の傾きは、以下に更に詳細に説明され、実施例1、4、及び5に例示されるように、所与のリアルタイムデータ点
【0138】
【数27】
に対するRCleffを決定するために、図12の参照情報と同様に使用されてもよい。
【0139】
上述のように、本明細書に開示されるシステム及び方法はまた、履歴稼働データ、参照データ、及びモデルデータの組み合わせを使用して決定された最適点に対するEO生成システムの調節レベルに基づいて、警告及び/又は実行可能な推奨/ガイダンスを提供することを含む。したがって、図14に戻ると、方法200は、ブロック250に従って、警告及び/又は実行可能な推奨又は新しい調節剤レベルを制御システムに提供及び表示することを含む。データ処理システムは、満たされたときに、データ処理システムにそれぞれの推奨を出力させる、概説された一連の条件を有する1つ以上の決定木(例えば、決定木236)を使用することができる。
【0140】
触媒が過剰調節又は過小調節されている実施形態では、データ処理システムは、触媒性能が最適でないことを示す音声又は視覚警告を提供することができる。非限定的な例として、警告は、アラーム、ディスプレイ(例えば、ディスプレイ192、又は電話、ラップトップ、タブレットなどの他の遠隔ディスプレイ)上の通知、ライトの起動、ライト若しくはディスプレイの色変化(例えば、緑色から黄色又は緑色から赤色)、又はシステムが最適条件で稼働していないことをオペレータに警告する任意の他の好適な音声又は視覚警告、及びそれらの組み合わせであってもよい。このようにして、EO生成システムの稼働者は、触媒の性能を改善するために調節剤レベル(調節剤濃度、触媒塩化物化有効度値(Cleff)、又は調節剤供給速度)を調整する必要があるかどうかに関して通知/警告され得る。
【0141】
ある特定の実施形態では、データ処理システムは、最大触媒選択性を達成するために、調節剤レベルに対する推奨される調整(すなわち、目標変更)についての実行可能なアドバイスをオペレータに提供することができる。上述したように、データ処理システムは、触媒のオフライン試験中又は初期のEOプラント稼働中に得られた参照データ(例えば、それぞれ図7及び図8の参照データ62、68)と、EO生成システムの稼働中に生成されたリアルタイムデータ、モデル、及び履歴データから得られたΔS及びΔTデータと、を使用して、触媒がどれだけ過剰調節又は過小調節されているかを決定することができる。推奨は、ΔS及びΔTデータの全体的な分析の結果に基づく。データ処理システムは、実行可能な推奨を決定し、実行可能な推奨をディスプレイ上に表示することができる。例えば、データ処理システムは、触媒が過小調節されている場合には調節剤の流量(例えば、供給速度)を現在の流量に対して増加させ、触媒が過剰調節されている場合には調節剤の流量を現在の流量に対して減少させて、最適値に到達するために調節剤レベルを特定の方向に移動させることを推奨することができる。一実施形態では、データ処理システムは、調節剤レベル(M)を現在の調節剤レベルに対して特定の量(例えば、+10%、+20%、-10%、-20%など)だけ増加又は減少させることを推奨することができる。調節剤レベルが最適である実施形態では、データ処理システムは、現在の調節剤流量及び/又は相対調節剤レベルを維持する推奨を提供することができる。
【0142】
EO生成システムの稼働者は、最大触媒選択性を達成するために提供される推奨に従って、調節剤レベルを手動で調整してもよい。ある特定の実施形態では、調節剤レベルは、自動的に調整され得る。例えば、制御システム(例えば、図13の制御システム108)は、反応器システム(例えば、反応器システム102)に入る調節剤126の量を調整する計量デバイス(例えば、流量制御弁)に信号を出力してもよい。上述したように、方法200は、新しい調節剤レベル設定点を制御システムに提供することを含む。この実施形態では、制御システム(例えば、制御システム108)は、開示された方法及び分析によって決定される触媒の調節レベルに応じて、供給ガス中の調節剤の量が減少又は増加するように、調節剤の流量(例えば、供給速度)を調整する。システムは、オペレータが推奨をオーバーライド/バイパスすることを可能にするオーバーライド又はバイパス機能を含んでもよい。
【0143】
本明細書で開示される方法200は、反復的であり得る。EO生成システムの稼働上のデータが収集され、データ処理システムに記憶され続けるにつれて、システムの履歴データの量が増加し、モデルを微調整し、最大触媒選択性のための推定最適点の正確性を改善するために使用することができる。データ処理システムは、履歴データを連続的に評価して、正確で信頼できる傾向を提供するためにシステムの微調整を可能にする最良の分析パラメータを決定することができる。方法200のふるまいは、EO生成システムの稼働中、又は要求に応じて(例えば、オペレータによって開始されるか、又は例えば、EO生成パラメータの変化によって起動されるときに)、リアルタイムで連続的に繰り返されてもよい。
【0144】
上述したように、データ処理システムは、1つ以上の決定木を使用して、データ(例えば、データ点242及び246)を処理及び解釈して、触媒の調節状態を評価し、警告/推奨及び/又は新しい調節レベル設定点を提供する。例えば、図18は、RCleff
【0145】
【数28】
のリアルタイム値、及び本発明による適切な警告を決定するためにデータ処理システムによって使用され得る決定木236を示す。図示の実施形態では、データ処理が図14のブロック234に従って最近の細菌の履歴データ及びリアルタイムデータ点についてΔS及びΔTを決定すると、図18に示される決定木236は、クエリ284においてΔS及びΔT(又はRSD及びRTD)データに傾向があるかどうかを決定することを含む。例えば、図16に戻って参照すると、傾向は、曲線286を選択されたデータ点242に適合させることによって見ることができる。
【0146】
例えば、傾向を特定するために、データ処理システムは、データ点242を、下向きの凹みを有する多項式又は任意の他の好適な非線形表現に適合させることができる。曲線286を適合させるために、とりわけ、最小二乗回帰、非線形回帰、堅固回帰、加重回帰、及び制約付き最適化などの様々な技術を使用することができるが、これらに限定されない。傾向が特定されない場合、データ処理システムは、探索的調節剤ステップ(ブロック287)に進むための警告を提供する。以下の実施例3は、この決定木の結果の例示を提供する。
【0147】
ある特定の実施形態では、データ処理システムは、決定木236における後続のステップに進む前に、近似曲線286における信頼度を決定することができる。すなわち、データ処理システムは、曲線286がデータ点242に良好に適合しているかどうかをチェックすることができる。例えば、データ処理システムは、最小許容R又は調整されたRメトリックなどの定義された調整可能な閾値を使用して、曲線286の適合度を評価することができる。一実施形態では、データ処理システムは、リアルタイムデータ点288が近似曲線286に一致するかどうかをチェックすることができる。しかしながら、近似曲線286及び最適点294の信頼性(すなわち、良好さ)を保証するために、任意の他の好適な技術が使用されてもよい。
【0148】
近似曲線286は、最大又は最適点294を含む。最適点294は、測定された触媒選択性(Smeas)とモデル選択性(Sest)との間の差ΔSが最大になる点として定義される。この点の座標が最適点(ΔTopt,ΔSopt)である。ある特定の実施形態では、データ処理システムは、最適点294を正確に決定するのに十分なΔS及びΔTデータがあるかどうかも決定することができる。理解されるように、本明細書に開示されるシステム及び方法を使用して、モデル推定値(ΔSopt)(例えば、最適点294におけるΔSの値)に対する最大触媒選択性を決定することは、図16に図示されるプロット238における調節剤濃度の不在によって示されるように、精密又は正確な調節剤濃度を知ることに依存しない。すなわち、ある特定の既存の技術とは異なり、本明細書に開示される技術は、最大触媒選択性(Sopt)のための最適調節剤レベル(Mopt)を決定するために、信頼できる調節剤濃度分析に依存しない。図16に示されるように、選択されたデータ点242は、最適点294の両側290、292を包含し、選択された期間(例えば、セクション230)におけるデータ(例えば、データ218、220)が過小調節状態及び過剰調節状態の両方を表すことを示す。
【0149】
図18に戻ると、クエリ284に従った傾向の特定に続いて、決定木236は、クエリ298において、現在のリアルタイムデータ点(例えば、リアルタイムデータ点288)が予測境界線内にあるかどうかを判定することを含む。例えば、リアルタイムデータ点は、それが予測境界線内にあるかどうかを決定するために近似曲線と比較される。予測境界線は、データ内の典型的な広がりを表すことが知られている近似曲線から垂直に離れた(すなわち、y軸に平行な)固定範囲として、又は測定値の標準偏差若しくは適合の標準誤差を使用する統計的手段によって定義することができる。予測境界線は、近似曲線から垂直方向に約±0.1選択性%~約±0.5選択性%の範囲内、例えば、-0.5~+0.5の範囲内、又は-0.1%~+0.1%の範囲内であってもよい。例えば、図16に示されるように、リアルタイムデータ点288は、本質的に近似曲線286に沿っており、したがって、予測境界線内にある。リアルタイムデータ点が予測境界線の外側にある状況が実施例2(図20参照)において後に示される。
【0150】
図18の決定木236において、データ処理システムが、リアルタイムデータ点が予測境界線の外側にあると判定した場合、データ処理システムは、リアルタイムデータ点が予測境界線の外側にあることを示し、データの安定化を待つための警告を提供する(ブロック289)。しかしながら、データ処理システムが、リアルタイムデータ点が予測境界線内にあると決定すると、データ処理システムは、近似曲線の傾きを決定することに進む。したがって、決定木236は、リアルタイムデータ点についての近似曲線の傾き(例えば、ΔS対ΔT曲線286の傾き)を決定することを含む(ブロック300)。例えば、近似曲線を使用して、近似曲線の傾き
【0151】
【数29】
は、リアルタイムデータ点付近のグラフ分析によって、又は適合された方程式の導関数をとり、ΔTreal-timeのリアルタイム値で評価することによって決定され得る。図16を参照すると、曲線286の負の傾きに沿った(すなわち、最適点294の右側の)データ点242は、触媒選択性が最適ではなく、過小調節されていることを示す。すなわち、これらの点についての調節剤レベルは、最適調節剤レベルよりも低い。
【0152】
逆に、曲線286の正の傾きに沿った(すなわち、最適点294の左側の)データ点242は、触媒選択性が最適ではなく、過剰調節されていることを示す。すなわち、調節剤レベルは、これらの点について、最適調節剤レベルよりも高い。図16に示される実施形態では、リアルタイムデータ点288における近似曲線286の傾き302は、約+0.28%/℃であり、最適点294の左側にあり、過剰調節された触媒を表すことを意味する。
【0153】
傾きの決定に続いて、図18の決定木236は、クエリ304において、傾きのリアルタイム値が通常基準境界内にあるかどうかを判定することを含む。例えば、データ処理システムは、リアルタイム傾き値を図11に示される通常基準境界と比較する。非限定的な例として、通常基準境界は、約±1%/℃~約±3%/℃の範囲内である。図11のプロット82において定義されるように、傾き値の通常基準境界は、±2%/℃である。図16に示される実施形態では、現在のリアルタイムデータ点288における近似曲線286の傾き302は、約+0.28%/℃であり、これは、±2%/℃の通常基準境界内である。データ処理システムが、傾き値が通常基準境界内にないと判定した場合、データ処理システムは、触媒が過剰調節状態にあり、調節剤レベルを手動で低減するための警告を提供する(ブロック306)。
【0154】
しかしながら、データ処理システムが、(図16に示されるように)傾きが通常基準境界内にあると判定した場合、データ処理システムは、リアルタイム点における傾き及び基準曲線から、リアルタイム点
【0155】
【数30】
に対するRCleffの値を決定することに進む(ブロック310)。例えば、RClreal-timeを決定するための1つの方法は、リアルタイムデータ点における局所傾きを基準曲線と比較することを含む。この方法の説明を容易にするために、図12及び図16を参照する。図16に示すように、リアルタイムデータ点288における傾き302の値は、+0.28%/℃である。この値は、垂直座標において図12に示される曲線76上にプロットされ、+0.28%/℃の推定リアルタイム傾き値316に対応する。図12のプロット90から、推定されたリアルタイム傾き値316は、+0.080のRCleff26、又は8.0%過剰調節に対応することが決定される。
【0156】
リアルタイムRCleff
【0157】
【数31】
を決定するための第2の方法は、相対選択性差(RSD)又は相対温度差(RTD)を基準曲線60、64(図9)と比較することを含む。この特定の方法では、最適点が図16の近似曲線286に見られるので、データを更に分析して、式10及び式11を使用してRSD及びRTDを計算することも可能である。この計算は、図17に示されるように、RSD及びRTDの値が最適点(例えば、最大値294)で0であることを保証し、図9の基準曲線との比較を容易にする。例えば、図16のプロット238からのデータセット242内の点は、図17に示されるRSD対RTDのプロット240を生成するために、それぞれΔT及びΔSの値から最大値294(例えば、+2.49℃,+0.53%)におけるΔTopt及びΔSoptの値を減算することによって、データセット246として、図17のプロット240上の中央フォーマットで示される。プロット238、240の形状及び傾きは、同じである。しかしながら、最大値294は、(+2.49℃,+0.53%)の座標ではなく、(0℃,0%)の座標で生じる。稼働条件の影響を除去することに加えて、最大値294を(0,0)にセンタリングすることも、選択性及び温度に関する全体的なプラント測定バイアスの残りの影響を除去する。この分析は、調節剤レベルの影響のみを残し、データセット246内の点を図9に示される基準曲線と直接比較することを可能にし、相対有効調節剤レベルの決定を容易にする。
【0158】
図17に例示される実施形態に示されるように、最大値294を座標(0,0)にセンタリングすると、リアルタイムデータ点288のRTD及びRSD座標が(0.01℃,0.13%)(図16参照)から(-2.47℃,-0.4%)にシフトする。これらの座標値は、図9に示されるそれぞれの基準曲線60、64と比較される。例えば、比較は、最初にRTD値(例えば、-2.47℃)を使用して行われ、これは、調節レベルを推定するために使用される曲線60の側を決定する。図9では、RTD値は、基準曲線64上の点318(-2.47℃)に対応する。点318は、最大値72の右側(例えば、RCleff>0)にあり、過剰調節を示す。点318における対応するRCleffは、+0.117、又は11.7%過剰調節されていると推定される。
【0159】
リアルタイムデータ点(例えば、リアルタイムデータ点288)が過剰調節されているという知識を使用して、-0.4%のRSD値(図17のリアルタイムデータ点288)が、点320における基準曲線60の右部分(すなわち、最大値72の右側の部分)上のプロット70にプロットされる。点320は、0.112のRCleff、又は11.2%過剰調節に対応する。RTD値が最大値72の左側にあると判定された場合(過小調節)、基準曲線60の左側がRSD値をプロットするために選択される。
【0160】
したがって、図16及び図17に示される例では、リアルタイムRCleff
【0161】
【数32】
の3つの異なる推定値が得られる:(1)ΔS対ΔT傾きの値を使用し、図12の基準曲線76と比較して、RCleff=0.080を得る、(2)RTDの値を使用し、図9の基準曲線64と比較して、RCleff=0.117を得る、(3)RSDの値を使用し、図9の基準曲線60を比較して、RCleff=0.112を得る。全てのこれらの方法は、同じ方向の調節を提供し、約8.0%~約11.7%の過剰調節の範囲が推定される。ガイダンスとして提供するためのRCleffの特定の値を選択するために、様々な技術を使用することができる。この実施形態では、0.103に等しい3つのリアルタイムRCleff
【0162】
【数33】
値(例えば、0.080、0.117、及び0.112)の平均が、触媒の調節状態に関するアドバイスを提供するために使用される。ある特定の実施形態では、リアルタイムRCleff
【0163】
【数34】
を決定するこれらの3つの異なる方法のうちの1つのみが使用され得る。他の実施形態では、リアルタイムを決定するこれらの3つの異なる方法のうちの2つRCleff
【0164】
【数35】
を使用することができる。ある特定の実施形態では、EO生成システムのオペレータは、リアルタイムRCleff
【0165】
【数36】
を推定するためにどの方法を使用するかを選択してもよい。
【0166】
一実施形態では、図18のリアルタイムブロック310のふるまいによるリアルタイムRCleff
【0167】
【数37】
の分析及び推定に続いて、決定木236は、リアルタイムRCleff
【0168】
【数38】
の値を使用して、新しい目標調節剤レベルを制御システムに提供することを含む(ブロック314)。調節剤レベルを最適目標レベルに移動させるのに必要なパーセンテージ変化は、式5を使用して計算される。図16及び図17に示される例を参照すると、3つのリアルタイムRCleff
【0169】
【数39】
値を平均することによって得られる+0.103の平均推定リアルタイムRCleff
【0170】
【数40】
値に対して、1/(0.103+1)-1)100%(-9.3%の変化、又は9.3%の低減)の調節剤レベルの変化(Mchange)が、調節剤レベルを最適に戻すために推定される。この提案された調整を制御システムに提供して、調節剤レベルをその最適レベルに移動させることができる。ステップ314は、任意選択であり、本発明の範囲から逸脱することなく省略することができることに留意されたい。
【0171】
決定木236はまた、クエリ316において、リアルタイムRCleffの値
【0172】
【数41】
を評価して、それが0に近いかどうかを判定することを含む。この比較は、調節剤レベルが決定され制御される精度についてのプロセス知識を使用して行うことができる。いくつかのプラントでは、稼働はより広い精度限界を要求する場合があり、一方、より大きな制御を有する他のプラントでは、精度に対するより狭い限界が使用される場合がある。0に近い(すなわち、最適に近い)相対有効調節剤レベルは、±0.005~±0.06、より具体的には±0.01~±0.05、最も具体的には±0.02~±0.04である。例えば、0に近い(すなわち、最適に近い)相対有効調節剤レベルは、-0.06~+0.06の範囲内、-0.05~+0.05の範囲内、-0.04~+0.04の範囲内、-0.02~+0.02の範囲内、例えば、-0.01~+0.01の範囲内、又は-0.005~+0.005の範囲にあると考えられ得る。リアルタイムRCleffの値
【0173】
【数42】
がほぼ0のRCleffの範囲内にある場合、データ処理システムは、調節剤レベルがほぼ最適であるという警告を提供し、調節剤レベルを保持する(ブロック318)。
【0174】
しかしながら、リアルタイムRCleffの値
【0175】
【数43】
が範囲外である場合、クエリ316について「いいえ」の評価が決定される。したがって、データ処理システムは、クエリ320において、リアルタイムRCleffの推定値
【0176】
【数44】
が正であるか負であるかを判定することに進む。
【0177】
例えば、図16及び図17に示される実施形態を参照すると、リアルタイムRCleffの平均値
【0178】
【数45】
は、正(+0.103)であり、過剰調節状態を示す。リアルタイムRCleffの平均値
【0179】
【数46】
は、ブロック310のふるまいに従って決定された3つのリアルタイムRCleff
【0180】
【数47】
値0.080、0.117及び0.112を平均することによって得られる。図18に戻ると、データ処理システムは、触媒が過剰調節されているという警告を提供し、調節剤レベルを指定された量だけ、又は指定された目標まで減少させることを推奨する(ブロック324)。例えば、データ処理システムは、警告324(図17参照)において、調節剤レベルを9.3%減少させることを推奨してもよい。同等に、最適レベルに到達するための調節剤レベルのパーセンテージ変化を指定するのではなく、最適レベルのための絶対調節剤レベル目標(Mopt)を、調節剤レベルの当該パーセンテージ変化に対応して指定することができる。現在の例では、触媒塩化物化有効度(Cleff)が、触媒を最適化するために使用される調節剤レベルとして選択され、そのリアルタイム値が6.57(Mreal-time=6.57)である場合、式4を、0.103の推定されたリアルタイムRCleffとともに適用して、目標最適レベルを計算することができる。
【0181】
【数48】
【0182】
この変化は、調節剤レベルの9.3%の減少に相当する。
【0183】
同様に、現在の例において、補給調節剤供給速度が、触媒を最適化するための調節剤レベルとして使用され、そのリアルタイム値が2.56kg/hである場合、式4を、0.103のリアルタイムRCleffとともに適用して、目標最適レベルを計算することができる:
【0184】
【数49】
【0185】
この変化も、調節剤レベルの9.3%の減少に対応する。補給調節剤供給速度を介して最適調節剤レベル目標を特定するこの方法は、実際のプラント稼働の場合に時々あり得るように、気相塩化物濃度が容易に又は正確に測定可能でない場合に使用することができる。
【0186】
リアルタイムRCleffの値が負であり、過小調節状態を示す場合、データ処理システムは、触媒が過小調節されているという警告を提供し、調節剤レベルを指定された目標まで、又は指定された量だけ増加させることを推奨する(ブロック328)。データ処理システムによって出力された警告及び/又は推奨は、EO生成システム(例えば、システム100)のディスプレイ(例えば、ディスプレイ192)上に、その調節剤レベルが減少/増加されるべき量とともに表示され得る。
【0187】
本明細書に開示される方法は、気相調節剤濃度の精密又は正確な測定又は知識を必要とせず、むしろ、性能傾向及びモデル分析を使用して、調節剤レベルにおいて必要とされる変化の方向及び大きさを決定することに留意されたい。上述したように、供給ガス中の調節剤濃度測定に依存する技術は、正確な測定が困難であるため、また、触媒の表面上の調節剤濃度を必ずしも反映しないため、信頼できない場合がある。本発明は、触媒性能変化に対する調節剤レベルの影響を評価することによって、これらの制約を克服する。更に、ΔSをΔTの関数として、又はRSDをRTDの関数としてプロットすることにより、図15に示されるように、単一の傾向対2つの傾向における傾向を見ることができ、それによって、システムの利便性が改善される。
【0188】
以下に提供されるのは、図18の決定木236による他の潜在的なシナリオ及び警告を示す追加の例である。以下の例の説明を容易にするために、図19図23を参照する。
【実施例
【0189】
実施例1-リアルタイム点が過小調節されている、最適値の片側のデータ
図19は、選択された時間範囲におけるデータセット338のΔS対ΔTのプロット336を示す。データセット338は、リアルタイムデータ点342を含む。図示の例では、許容可能な近似曲線が生成され、傾向346が見られる。リアルタイムデータ点342は、それが予測境界線内にあるかどうかを判定するために評価される。図19に示されるように、リアルタイムデータ点342は、近似曲線346に近く、予測境界線内にある(例えば、約±0.1%~約±0.5%であり、例えば、当該予測境界線は、-0.5~+0.5の範囲内、又は-0.1%~+0.1%の範囲内にあってもよい)。したがって、データ処理システムは、近似曲線346の傾きを決定する。例えば、近似曲線346を使用して、リアルタイムデータ点342における曲線346の傾き350は、-0.36%/℃として決定される。この傾き値は、±2%/℃である通常基準境界(図11参照)と比較される。曲線346の計算された傾き値は、この範囲内にある。したがって、データ処理システムは、リアルタイムRCleffを決定することに進む。
【0190】
図示の例では、選択された時間範囲内のデータセット338は、近似曲線346の負の傾きの領域に沿ってのみ存在し、これは、データが最適値の過小調節側にのみ存在することを示す。
【0191】
更に、近似曲線346は、適合されたデータ範囲内に最大値を有さない。したがって、傾き350の値のみが、図12の基準曲線76を使用してRCleffを推定するために使用される。例えば、図12を参照すると、-0.36%/℃の計算された傾きは、曲線76上の点354に対応する。曲線76を使用して、推定されたリアルタイムRCleffは、-0.198、又は19.8%過小調節されていると決定される。調節剤レベルを最適目標レベルに移動させるのに必要なパーセンテージ変化は、式5を使用して計算される。
【0192】
したがって、調節剤レベルは、(1/(1-0.198)-1)100%又は24.7%増加されて、システムを最適調節剤レベルに戻す(例えば、図18のブロック314)。
【0193】
リアルタイムRCleffの値も、0に近いかどうかを判定するために評価される。例えば、約±0.02~約±0.04の典型的な範囲を使用すると、調節剤レベルの測定及び制御能力の知識に基づいて上述したように、リアルタイム点342の推定RCleffは、0に近くない。したがって、リアルタイム点342の推定RCleff値は、推定リアルタイムRCleffが正であるかどうかを判定するために更に評価される。この特定の例では、リアルタイムRCleffの値は、負(-0.198)である。したがって、データ処理システムは、過小調節の警告328を出力し、参照レベルを24.7%増加させることを推奨する。
【0194】
実施例2-リアルタイム点が予測境界線の外側にある
図20は、選択された時間範囲についてのリアルタイムデータ点364を有するデータセット362に対するΔS及びΔTのプロット360を示す。図示された例では、データセット362の許容可能な適合が生成され、傾向368(すなわち、近似曲線)が見られる。
【0195】
リアルタイムデータ点364を評価して、それが上曲線370及び下曲線372によってそれぞれ定義される予測境界線内に入るかどうかを判定する。上述したように、予測境界線幅は、約±0.1%~約±0.5%であり、例えば、当該境界線幅は、近似曲線368に対して-0.5~+0.5の範囲又は-0.1%~+0.1%の範囲であってもよく、データにおける典型的な変動性の知識に基づく。この特定の例では、現在のリアルタイムデータ点364は、予測境界線曲線370と372との間になく、これは、現在のリアルタイムデータ点364が、予測境界線曲線370と372との間にあるデータセット362内の他のデータと同じ傾向368に従わないことを示す。これは、システムがまだ安定化されていないことを示し得る。したがって、データ処理システムは、リアルタイムデータ点364が予測境界線の外側にあることを示す警告289を出力し、オペレータは、より明確な傾向が得られるまで安定化を待つべきである。
【0196】
実施例3-傾向が検出されない
図21は、リアルタイムデータ点402を有するデータセット404に対するΔS及びΔTのプロット400を示す。プロット400に示されるように、適合度又は範囲基準を満たす選択されたデータ枠に対して許容可能な傾向は見られない。したがって、この特定の例では、データ処理システムは、探索的調節剤の段階的な変化に進むように警告287を出力する。
【0197】
そのような探索ステップのサイズ及び方向は、EOプラントの制御及び測定能力(例えば、約3~5%の変化が典型的である)に基づいて、オペレータ又は制御システム(例えば、制御システム108)によって決定されてもよい。探索ステップは、利用可能なデータを拡張することを可能にし、触媒調節のより良好な評価を可能にする傾向を後で得る可能性を増加させる。
【0198】
実施例4-重度な過剰調節
図22は、リアルタイムデータ点416を有するデータセット412に対するΔS及びΔTのプロット410を示す。図示の例では、許容可能な適合が生成され、近似曲線418が決定される。リアルタイムデータ点416は、近似曲線の近く(例えば、近似曲線418の上/下の指定された範囲内、例えば、±0.3%内)にあり、予測境界線内にある。したがって、近似曲線418の局所傾き420は、グラフ分析を使用して、又は上述のように近似曲線418の導関数をとることによって、現在のリアルタイムデータ点416のΔTにおいて決定及び評価される。決定された傾き420の値は、+2.3%/℃である。この値は、±2%/℃である、図11に与えられた通常基準境界と比較される。傾き420の値を通常基準境界と比較することにより、値がこの範囲外であることが示される。したがって、プラント稼働は、対象となる通常範囲外であり、データ処理システムは、触媒が重度に過剰調節されている可能性が高い(例えば、30%を超えて過剰調節されている)という警告306を出力し、手動で調節剤レベルを低下させる推奨を提供する。オペレータは、推奨されるように調節剤レベルを調整し、システムが安定して、傾向がより明確な通常範囲に戻るのを待ってもよく、その後、特定の調節レベル目標を決定することができる。
【0199】
実施例5-最適値に近いリアルタイムデータ点
図23は、リアルタイムデータ点430を有するデータセット428に対するΔS及びΔTを有するプロット426を示す。図示される例では、許容可能な適合が生成され、傾向432が見られる。リアルタイムデータ点430は、傾向432(すなわち、近似曲線)に近く、予測境界線内にある(例えば、約±0.1%~約±0.5%内、例えば、-0.5~+0.5の範囲内、又は-0.1%~+0.1%の範囲内)。近似曲線432を使用して、リアルタイムデータ点430における曲線432の傾き440は、+0.02%/℃として決定される。傾き440の値は、図11に示される通常基準境界(例えば、-2%/℃~+2%/℃)と比較される。示されるように、曲線432の計算された傾き440は、通常境界内にある。
【0200】
したがって、リアルタイム点のRCleffの値は、傾き440を使用して推定され、図12の基準曲線76と比較される。推定された傾き440の値は、+0.02%/Cであり、図12の基準曲線76上の点442に対応する。基準曲線76を使用して、リアルタイム点に対する推定RCleffは、+0.011、又は1.1%過調整であると決定される。これは、±0.02~±0.04の通常範囲内であり、これは、RCleffについて0の測定及び制御ノイズ内であるとみなされる。
【0201】
したがって、データ処理システムは、触媒が最適値に近いことを示す警告318を出力し、調節剤レベルを維持することを推奨する。
【0202】
上述したように、本明細書に開示される技術は、信頼性のある堅固な方法で最大触媒選択性を達成するための最適調節剤レベルを決定するために使用され得る。このシステム及び方法は、参照データ、履歴データ及びモデルデータの組み合わせを使用して、精密かつ正確な調節剤濃度の監視に依存することなく、最適調節剤レベル及び触媒性能を決定する。開示されたシステム及び方法は、最大触媒選択性に到達するために調節剤レベルをどのように調整するかについての警告/推奨をリアルタイムで提供することができる。EO生成システムに特異的な履歴データ及び触媒特異的なデータを使用することによって、モデルは、微調整され、最適調節剤レベル及び最大触媒選択性の正確かつ信頼できる推定値を提供することができる。このようにして、最適値を決定するために調節剤レベルを段階的に変化させ、触媒表面上の調節剤の量を示さない可能性がある、気相調節剤濃度を監視することに依存する既存の技術に関連する欠点を軽減することができる。したがって、開示されたシステム及び方法を使用することによって、最大触媒選択性を達成する最適調節剤レベルの正確性及び信頼性は、最大触媒選択性を決定するために調節剤の濃度に依存する既存の技術と比較して改善され得る。
【0203】
更に、開示されるシステム及び方法は、最大触媒選択性を達成するために必要とされる調整の方向及び大きさの両方について、又は使用可能な傾向を得るためにより多くのデータが必要とされるかどうかについて、実行可能なガイダンス/推奨を提供する。
【0204】
本開示は、その趣旨又は本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化され得る。説明された実施形態は、全ての点で例示的なものに過ぎず、限定的なものではないと考えられるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
【国際調査報告】