(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】免疫寛容を増強するために高親和性IL-2受容体アゴニストと組み合わせて免疫抑制剤を含む合成ナノキャリア
(51)【国際特許分類】
A61K 45/06 20060101AFI20240326BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240326BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240326BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240326BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240326BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240326BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20240326BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240326BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240326BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240326BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240326BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240326BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20240326BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240326BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240326BHJP
A61K 31/436 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P29/00
A61P37/02
A61P37/08
A61P37/06
A61P43/00 121
A61K9/51
A61K39/00 G
A61K47/34
A61K47/10
A61K47/42
A61K47/36
A61K38/20
A61P43/00 111
A61K35/76
A61K48/00
A61K31/436
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562207
(86)(22)【出願日】2022-04-08
(85)【翻訳文提出日】2023-12-07
(86)【国際出願番号】 US2022024081
(87)【国際公開番号】W WO2022217095
(87)【国際公開日】2022-10-13
(32)【優先日】2021-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】511254321
【氏名又は名称】セレクタ バイオサイエンシーズ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】SELECTA BIOSCIENCES,INC.
【住所又は居所原語表記】65 Grove Street,Watertown,MA 02472,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キシモト,タカシ,ケイ
(72)【発明者】
【氏名】イリインスキー,ペトル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA65
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC03
4C076CC04
4C076CC07
4C076EE23
4C076EE24
4C076EE25
4C076EE26
4C076EE30
4C076FF70
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4C084AA13
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4C085GG01
4C086AA01
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4C086NA05
4C086NA13
4C086ZB01
4C086ZB07
4C086ZB08
4C086ZB11
4C086ZB13
4C086ZC01
4C086ZC41
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA13
4C087ZB01
4C087ZB07
4C087ZB08
4C087ZB11
4C087ZB13
4C087ZC01
4C087ZC41
4C087ZC75
(57)【要約】
免疫抑制剤と組み合わせて高親和性IL-2受容体アゴニストを投与するための方法および関連する組成物が開示される。提供される方法および組成物は、抗原特異的制御性T細胞を包含する制御性T細胞を増強するために使用されることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)免疫抑制剤(例として、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリア);
(b)高親和性IL-2受容体アゴニスト;および
(c)任意で、抗原
を含む、組成物。
【請求項2】
薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
抗原が合成ナノキャリア中に封入されている、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物を含む剤形。
【請求項5】
(a)免疫抑制剤(例として、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリア);
(b)高親和性IL-2受容体アゴニスト;および
(c)任意で、抗原
を、これを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項6】
免疫抑制剤および高親和性IL-2受容体アゴニストおよび任意で抗原が同時に投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
(a)、(b)および任意で(c)が、抗原特異的制御性T細胞(例として、CD4+)などの制御性T細胞(例として、CD4+)を増強するのに有効な量で投与される、請求項5~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
対象が、炎症性疾患、自己免疫疾患、アレルギーまたは移植片対宿主病を有するか、または有するリスクがある、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
対象が、対象に投与されているかまたは投与されることになる抗原に対する望ましくない免疫応答を有するかまたは有するリスクがある、請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
抗原が治療用高分子である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
対象が、対象が曝露されているかまたは曝露されることになる抗原に対する望ましくない免疫応答を有するかまたは有するリスクがある、請求項5~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
免疫抑制剤が、スタチン、mTOR阻害剤、TGF-βシグナル伝達剤、コルチコステロイド、ミトコンドリア機能の阻害剤、P38阻害剤、NF-κB阻害剤、アデノシン受容体アゴニスト、プロスタグランジンE2アゴニスト、ホスホジエステラーゼ4阻害剤、HDAC阻害剤またはプロテアソーム阻害剤を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法または組成物。
【請求項13】
mTOR阻害剤がラパマイシンまたはラパマイシン類似体である、請求項12に記載の方法または組成物。
【請求項14】
合成ナノキャリアが、脂質ナノ粒子、ポリマーナノ粒子、金属ナノ粒子、界面活性剤ベースのエマルジョン、デンドリマー、バッキーボール、ナノワイヤ、ウイルス様粒子またはペプチドもしくはタンパク質粒子を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法または組成物。
【請求項15】
合成ナノキャリアがポリマーナノ粒子を含む、請求項14に記載の方法または組成物。
【請求項16】
ポリマーナノ粒子が、ポリエステル、ポリエーテルに結合されたポリエステル、ポリアミノ酸、ポリカーボナート、ポリアセタール、ポリケタール、多糖、ポリエチルオキサゾリンまたはポリエチレンイミンを含む、請求項14または15に記載の方法または組成物。
【請求項17】
ポリエステルが、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸・グリコール酸共重合体)またはポリカプロラクトンを含む、請求項16に記載の方法または組成物。
【請求項18】
ポリマーナノ粒子が、ポリエステルと、ポリエーテルに結合されたポリエステルとを含む、請求項16または17に記載の方法または組成物。
【請求項19】
ポリエーテルが、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールを含む、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法または組成物。
【請求項20】
合成ナノキャリアの動的光散乱を使用して得られる粒径分布の平均が、100nmより大きい直径である、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法または組成物。
【請求項21】
直径が150nmより大きい、請求項20に記載の方法または組成物。
【請求項22】
直径が200nmより大きい、請求項21に記載の方法または組成物。
【請求項23】
直径が250nmより大きい、請求項22に記載の方法または組成物。
【請求項24】
直径が300nmより大きい、請求項23に記載の方法または組成物。
【請求項25】
直径が500nm未満である、請求項20~24のいずれか一項に記載の組成物の方法。
【請求項26】
直径が450nm未満である、請求項20~24のいずれか一項に記載の組成物の方法。
【請求項27】
直径が400nm未満である、請求項20~24のいずれか一項に記載の組成物の方法。
【請求項28】
直径が350nm未満である、請求項20~24のいずれか一項に記載の組成物の方法。
【請求項29】
直径が300nm未満である、請求項20~23のいずれか一項に記載の組成物の方法。
【請求項30】
直径が250nm未満である、請求項20~22のいずれか一項に記載の組成物の方法。
【請求項31】
直径が200nm未満である、請求項20または21に記載の組成物の方法。
【請求項32】
合成ナノキャリアのアスペクト比が、1:1以上、1:1.2以上、1:1.5以上、1:2以上、1:3以上、1:5以上、1:7以上または1:10以上である、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法または組成物。
【請求項33】
合成ナノキャリア中に含まれる免疫抑制剤の搭載量が、合成ナノキャリア全体にわたる平均で、1%~40%(重量/重量)である、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法または組成物。
【請求項34】
搭載量が1%~30%である、請求項33に記載の方法または組成物。
【請求項35】
搭載量が1%~25%である、請求項34に記載の方法または組成物。
【請求項36】
搭載量が2%~40%である、請求項33に記載の方法または組成物。
【請求項37】
搭載量が2%~30%である、請求項36に記載の方法または組成物。
【請求項38】
搭載量が2%~25%である、請求項37に記載の方法または組成物。
【請求項39】
搭載量が4%~40%である、請求項33に記載の方法または組成物。
【請求項40】
搭載量が4%~30%である、請求項39に記載の方法または組成物。
【請求項41】
搭載量が4%~25%である、請求項40に記載の方法または組成物。
【請求項42】
搭載量が8%~40%である、請求項33に記載の方法または組成物。
【請求項43】
搭載量が8%~30%である、請求項42に記載の方法または組成物。
【請求項44】
搭載量が8%~25%である、請求項43に記載の方法または組成物。
【請求項45】
高親和性IL-2受容体アゴニストが、野生型IL-2、IL-2ムテイン、IL-2模倣物またはIL-2融合タンパク質である、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法または組成物。
【請求項46】
免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアの投与の頻度、投与量、タイミングおよび/または様式が、本明細書に提供されるプロトコルのいずれか1つに従う、請求項1~45のいずれか一項に記載の方法または組成物。
【請求項47】
高親和性IL-2受容体アゴニストの投与の頻度、投与量、タイミングおよび/または様式が、本明細書に提供されるプロトコルのいずれか1つに従う、請求項1~46のいずれか一項に記載の方法または組成物。
【請求項48】
任意で含まれる抗原の投与の頻度、投与量、タイミングおよび/または様式が、本明細書において提供されるプロトコルのいずれか1つに従う、請求項1~47のいずれか一項に記載の方法または組成物。
【請求項49】
抗原が、ウイルスベクターなどの治療用ポリヌクレオチドなどの治療用高分子である、請求項1~48のいずれか一項に記載の組成物の方法。
【請求項50】
抗原がウイルスベクターである場合、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリア、高親和性IL-2受容体アゴニスト(例として、IL-ムテイン)およびウイルスベクターが、1ヶ月おきに、同時に投与される、請求項49に記載の方法または組成物。
【請求項51】
同時投与が少なくとも2回起こる、請求項50に記載の方法または組成物。
【請求項52】
免疫抑制剤を含む合成ナノキャリア、高親和性IL-2受容体アゴニスト(例として、IL-ムテイン)および/またはウイルスベクターの用量が、本明細書に提供されるそれぞれの用量のいずれか1つである、請求項50または51に記載の方法または組成物。
【請求項53】
免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアの用量が、本明細書において提供される用量のいずれか1つである、請求項50または51に記載の方法または組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年4月9日に出願された米国仮出願第63/173,333号;2021年8月3日に出願された米国仮出願第63/228,931号;2021年9月3日に出願された米国仮出願第63/240,749号;2021年11月2日に出願された米国仮出願第63/274,626号;2021年11月2日に出願された米国仮出願第63/274,706号;2021年11月2日に出願された米国仮出願第63/274,673号;および2022年1月28日に出願された米国仮特許出願第63/304,255号の、米国特許法119条(e)に基づく優先権の恩典を主張し、これらの各々の内容全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、少なくとも1つには、免疫抑制剤と組み合わせて高親和性IL-2受容体アゴニストを投与するための方法および関連する組成物に関する。本明細書において提供される方法および組成物は、非抗原特異的な様式および/または抗原特異的な様式で制御性T細胞(本明細書ではTregとも呼ばれる)の誘導、拡大増殖および/または持続性を増強するために使用されることができる。本明細書において提供される方法および組成物は、いくつかの態様において、制御性T細胞の抗原特異的免疫応答などの抗原特異的免疫応答を増強するために使用されることができる。したがって、方法は、いくつかの態様において、高親和性IL-2受容体アゴニストおよび免疫抑制剤と同時に、抗原の投与も包含することができる。いくつかの態様において、本明細書において提供されるキットなどの組成物は、それに対して抗原特異的免疫寛容原性免疫応答が望まれるなどの、抗原を包含することができる。本明細書において提供される方法および組成物は、抗原特異的制御性T細胞の生産もしくは発達、肝臓におけるCD8+T細胞数の低下ならびに/または肝臓および脾臓におけるCD4-CD8-二重陰性細胞数の増加などの免疫寛容原性免疫応答の発達への移行を可能にすることができる。本明細書において提供される方法および組成物は、抗原特異的制御性T細胞免疫応答などの免疫寛容原性免疫応答の生産および/もしくは増強から、または細胞傷害性T細胞活性の低下から利益を受ける対象に対して使用されることができる。
【発明の概要】
【0003】
発明の概要
望ましくない免疫応答は、治療用高分子、自己抗原もしくはアレルゲン、または炎症性疾患、自己免疫疾患、臓器もしくは組織の拒絶もしくは移植片対宿主病に関連する抗原などの特定の抗原への曝露によって引き起こされることができる。このような望ましくない免疫応答は、免疫抑制薬の使用によって軽減され得る。しかしながら、従来の免疫抑制薬は、広範に作用する。さらに、免疫抑制を維持するために、免疫抑制薬療法は、一般に、生涯にわたる問題である。残念なことに、広範に作用する免疫抑制剤の使用は、腫瘍、感染症、腎毒性および代謝障害などの重度の副作用のリスクも伴う可能性がある。
【0004】
したがって、制御性T細胞の生産および発達を誘導し、拡大増殖させ、CD8+T細胞数を減少させ、および/または二重陰性(DN)T細胞(例として、CD4-CD8-T細胞)を増加させることができる新規免疫寛容原性療法は、望ましくない免疫反応を抑制するのに有益であり得る。高親和性IL-2受容体アゴニストは、既存の制御性T細胞に優先的に結合し、および/または活性化することができるか、または特にそのように操作され得る。高親和性IL-2受容体アゴニストおよび免疫抑制剤での併用処置、いくつかの態様においては、投与された抗原の存在下でのまたは投与された抗原との前記併用処置は、例えば、既存の制御性T細胞を拡大増殖させることによって、ならびに/または抗原特異的であり得る制御性T細胞を誘導および/もしくは拡大増殖させることによって、改善された免疫寛容原性免疫応答を提供することができる。驚くべきことに、高親和性IL-2受容体アゴニストおよび免疫抑制剤での併用処置は、既存の制御性T細胞を相乗的に誘導および/もしくは拡大増殖させることができ、ならびに/または抗原特異的制御性T細胞を誘導および/もしくは拡大増殖させることができることが見出された。驚くべきことに、併用処置は、拡大増殖された制御性T細胞の持続性を延長させることが可能であることも見出された。さらに、驚くべきことに、併用処置は、抗原の存在下で抗原特異的制御性T細胞を相乗的に誘導および/または拡大増殖させることが見出された。
【0005】
一側面において、免疫抑制剤(例として、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリア)と高親和性IL-2受容体アゴニストとを含む組成物が提供される。いくつかの態様において、組成物は抗原も含む。いくつかの態様において、抗原および高親和性IL-2受容体アゴニストはそれぞれ、免疫抑制剤(例として、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリア)と共製剤化されていない。本明細書において提供される組成物のいずれか1つの一態様において、組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。
【0006】
本開示の一側面は、本明細書において記載される組成物のいずれか1つを含む剤形を提供する。
【0007】
別の側面において、免疫抑制剤(例として、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリア)を含む組成物および高親和性IL-2受容体アゴニストを含む組成物を、これを必要とする対象に投与することを含む方法が提供される。一態様において、方法は、抗原を含む組成物を対象に投与することをさらに含む。一態様において、免疫抑制剤(例として、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリア)および高親和性IL-2受容体アゴニストの投与は、その中に抗原が存在し、免疫寛容原性免疫応答が望まれる対象に対して行われる。
【0008】
本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、免疫抑制剤(例として、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリア)および高親和性IL-2受容体アゴニストは対象に同時に投与される。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、免疫抑制剤(例として、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリア)、高親和性IL-2受容体アゴニストおよび抗原は対象に同時に投与される。
【0009】
本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの一態様において、抗原は対象において望ましくない免疫応答を誘導する。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの一態様において、抗原は、それに対して免疫寛容原性免疫応答が所望される抗原である。
【0010】
本明細書において提供される方法のいずれか1つの別の態様において、投与は、既存のおよび/もしくは誘導された制御性T細胞などの制御性T細胞の増強された数(例として、パーセンテージ(または比)による)ならびに/または制御性T細胞の増強された持続性ならびに/または肝臓CD8+T細胞の低下された数ならびに/または(例として、肝臓および脾臓における)増加した二重陰性CD4-CD8-(DN)T細胞数をもたらすのに有効な量である。既存のおよび/または誘導された制御性T細胞は、いくつかの態様においては抗原特異的であり得る。
【0011】
本明細書において提供される方法のいずれか1つの別の態様において、対象は、炎症性疾患、自己免疫疾患、アレルギー、臓器もしくは組織の拒絶または移植片対宿主病を有するか、または有するリスクがある。本明細書において提供される方法のいずれか1つの別の態様において、対象は移植を受けたことがあるか、または受けるであろう。本明細書において提供される方法のいずれか1つの別の態様において、対象は、対象に投与されているかまたは投与されることになる抗原に対する望ましくない免疫応答を有するかまたは有するリスクがある。
【0012】
本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、抗原は、治療用高分子、自己抗原もしくはアレルゲン、または炎症性疾患、自己免疫疾患、臓器もしくは組織の拒絶もしくは移植片対宿主病に関連する抗原であり、または任意の1つのものである。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、治療用高分子は、治療用タンパク質または治療用ポリヌクレオチドである。
【0013】
本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、治療用タンパク質は、タンパク質補充またはタンパク質補給療法のためのものである。
【0014】
本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、治療用高分子は、注入可能または注射可能な、治療用タンパク質、酵素、酵素補因子、ホルモン、血液もしくは血液凝固因子、サイトカイン、インターフェロン、増殖因子、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体またはポンペ病に関連するタンパク質を含む。
【0015】
本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、治療用高分子は、ウイルスベクター(または本明細書ではウイルストランスファーベクターとも呼ばれる)などの治療用ポリヌクレオチドである。
【0016】
本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、免疫抑制剤は、スタチン、mTOR阻害剤、TGF-βシグナル伝達剤、コルチコステロイド、ミトコンドリア機能の阻害剤、P38阻害剤、NF-κB阻害剤、アデノシン受容体アゴニスト、プロスタグランジンE2アゴニスト、ホスホジエステラーゼ4阻害剤、HDAC阻害剤またはプロテアソーム阻害剤を含む。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、mTOR阻害剤は、ラパマイシンまたはラパマイシン類似体である。
【0017】
本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、合成ナノキャリアは、脂質ナノ粒子、ポリマーナノ粒子、金属ナノ粒子、界面活性剤ベースのエマルジョン、デンドリマー、バッキーボール、ナノワイヤ、ウイルス様粒子またはペプチドもしくはタンパク質粒子を含む。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、合成ナノキャリアは脂質ナノ粒子を含む。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、合成ナノキャリアはリポソームを含む。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、合成ナノキャリアは金属ナノ粒子を含む。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、金属ナノ粒子は金ナノ粒子を含む。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、合成ナノキャリアはポリマーナノ粒子を含む。
【0018】
本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、ポリマーナノ粒子は、非メトキシ末端プルロニックポリマーであるポリマーを含む。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、ポリマーナノ粒子は、ポリエステル、ポリエーテルに結合されたポリエステル、ポリアミノ酸、ポリカーボナート、ポリアセタール、ポリケタール、多糖、ポリエチルオキサゾリンまたはポリエチレンイミンを含む。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、ポリエステルは、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸・グリコール酸共重合体)またはポリカプロラクトンを含む。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、ポリマーナノ粒子は、ポリエステルと、ポリエーテルに結合されたポリエステルとを含む。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、ポリエーテルは、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールを含む。
【0019】
本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、合成ナノキャリアの動的光散乱を使用して得られる粒径分布の平均は、100nmより大きい直径である。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、直径は、110nm、120nm、130nm、140nmまたは150nmより大きい。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、直径は200nmより大きい。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、直径は250nmより大きい。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、直径は300nmより大きい。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、直径は500nm未満である。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、直径は450nm未満である。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、直径は400nm未満である。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、直径は350nm未満である。
【0020】
本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、合成ナノキャリアのアスペクト比は、1:1以上、1:1.2以上、1:1.5以上、1:2以上、1:3以上、1:5以上、1:7以上または1:10以上である。
【0021】
本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、合成ナノキャリアの集団全体にわたる平均での免疫抑制剤の搭載量は、0.1%~50%(重量/重量)である。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、合成ナノキャリア全体にわたる平均での免疫抑制剤の搭載量は、0.1%~30%(重量/重量)である。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、合成ナノキャリア全体にわたる平均での免疫抑制剤の搭載量は、0.1%~25%(重量/重量)である。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、免疫抑制剤の搭載量は、0.1%~10%(重量/重量)である。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、合成ナノキャリア全体にわたる平均での免疫抑制剤の搭載量は、1%~50%(重量/重量)である。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、合成ナノキャリア全体にわたる平均での免疫抑制剤の搭載量は、1%~30%(重量/重量)である。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、合成ナノキャリア全体にわたる平均での免疫抑制剤の搭載量は、1%~25%(重量/重量)である。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、免疫抑制剤の搭載量は、1%~10%(重量/重量)である。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、合成ナノキャリア全体にわたる平均での免疫抑制剤の搭載量は、2%~50%(重量/重量)である。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、合成ナノキャリア全体にわたる平均での免疫抑制剤の搭載量は、2%~30%(重量/重量)である。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、合成ナノキャリア全体にわたる平均で免疫抑制剤の搭載量は、2%~25%(重量/重量)である。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、免疫抑制剤の搭載量は、2%~10%(重量/重量)である。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、合成ナノキャリア全体にわたる平均での免疫抑制剤の搭載量は、4%~50%(重量/重量)である。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、合成ナノキャリア全体にわたる平均で免疫抑制剤の搭載量は、4%~30%(重量/重量)である。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、合成ナノキャリア全体にわたる平均で免疫抑制剤の搭載量は、4%~25%(重量/重量)である。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、免疫抑制剤の搭載量は、4%~10%(重量/重量)である。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、合成ナノキャリア全体にわたる平均での免疫抑制剤の搭載量は、8%~50%(重量/重量)である。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、合成ナノキャリア全体にわたる平均で免疫抑制剤の搭載量は、8%~30%(重量/重量)である。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、合成ナノキャリア全体にわたる平均で免疫抑制剤の搭載量は、8%~25%(重量/重量)である。
【0022】
本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの別の態様において、合成ナノキャリアは、ポリ(乳酸)ポリマー、および/またはポリエチレングリコールポリマーに結合されたポリ(乳酸)を含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1A-1B】
図1A~1Cは、脾臓T細胞中でのCD4(
図1A)、CD25(
図1B)およびFoxP3(
図1C)発現に対する、単独および組み合わせでのImmTORおよびIL-2ムテイン注射の効果を示す。
【
図1C】
図1A~1Cは、脾臓T細胞中でのCD4(
図1A)、CD25(
図1B)およびFoxP3(
図1C)発現に対する、単独および組み合わせでのImmTORおよびIL-2ムテイン注射の効果を示す。
【
図2A】
図2A~2Bは、脾臓CD8+(
図2A)およびCD4-CD8-(
図2B)T細胞数に対する、単独および組み合わせでのImmTORおよびIL-2ムテイン注射の効果を示す。
【
図2B】
図2A~2Bは、脾臓CD8+(
図2A)およびCD4-CD8-(
図2B)T細胞数に対する、単独および組み合わせでのImmTORおよびIL-2ムテイン注射の効果を示す。
【
図3A】
図3A~3Cは、肝臓T細胞中でのCD4(
図3A)、CD25(
図3B)およびFoxP3(
図3C)発現に対する、単独および組み合わせでのImmTORおよびIL-2ムテイン注射の効果を示す。
【
図3B-3C】
図3A~3Cは、肝臓T細胞中でのCD4(
図3A)、CD25(
図3B)およびFoxP3(
図3C)発現に対する、単独および組み合わせでのImmTORおよびIL-2ムテイン注射の効果を示す。
【
図4A-4B】
図4A~4Bは、肝臓CD8+(
図4A)およびCD4-CD8-(
図4B)T細胞数に対する、単独および組み合わせでのImmTORおよびIL-2ムテイン注射の効果を示す。
【
図5】
図5は、処置の4、7および14日後に測定時点を有する14日間の実験にわたる脾臓中のTreg数に対する、単独および組み合わせでのImmTORおよびIL-2ムテイン注射の効果を示す。
【
図6】
図6は、抗原に対して特異的なTregを誘導および拡大増殖させるために、IL-2ムテインをImmTORおよび抗原と組み合わせることの相乗効果を例示する概略図である。
【
図7】
図7は、ImmTOR、IL-2ムテインおよび/またはオボアルブミンを投与されたマウスの脾臓における総Treg数およびOVA特異的Treg数を示す。
【
図8】
図8は、0および56日目に投与されたImmTOR+/-IL-2ムテインありまたはなしでの、0および56日目でのAAV8ベクターの2つの用量の投与の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な説明
本発明を詳細に説明する前に、本発明は、特に例示された材料またはプロセスパラメータに限定されず、それ故、当然のことながら変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、本発明の特定の態様を説明することのみを目的としており、本発明を説明するための別の用語の使用を制限することを意図するものではないことも理解されたい。
【0025】
本明細書で引用される全ての刊行物、特許および特許出願は、上記または下記を問わず、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0026】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈上明らかに他の意味に解すべき場合を除き、複数の指示対象を包含する。例えば、「ポリマー(a polymer)」への言及は、2つ以上のそのような分子の混合物または単一のポリマー種の異なる分子量の混合物を包含し、「合成ナノキャリア(a synthetic nanocarrier)」への言及は、2つ以上のそのような合成ナノキャリアの混合物または複数のそのような合成ナノキャリアを包含し、「治療用分子(a therapeutic molecule)」への言及は、2つ以上のそのような治療用分子の混合物または複数のそのような治療用分子を包含し、「免疫抑制剤(an immunosuppressant)」への言及は、2つ以上のそのような材料の混合物または複数のそのような免疫抑制剤分子を包含するなどである。
【0027】
本明細書で使用される場合、「含む(comprise)」という用語または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などのその変形は、任意の列挙された整数(例として、特徴、要素、特性、性質、方法/プロセス工程または限定)または整数の群(例として、特徴、要素、特性、性質、方法/プロセス工程または限定)を包含するが、任意の他の整数または整数の群を排除しないことを示すように読まれるべきである。したがって、本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という用語は包含的であり、追加の列挙されていない整数または方法/プロセス工程を排除しない。
【0028】
本明細書において提供される組成物および方法のうちのいずれか1つの態様において、「含む(comprising)」は、「から本質的になる(consisting essentially of)」または「からなる(consisting of)」で置き換えられ得る。「から本質的になる」という語句は、本明細書では、指定された整数または工程の他に、特許請求される発明の特徴または機能に実質的に影響を及ぼさないものを要求するために使用される。本明細書で使用される場合、「からなる(consisting)」という用語は、列挙された整数(例として、特徴、要素、特性、性質、方法/プロセス工程または限定)または整数の群(例として、特徴、要素、特性、性質、方法/プロセス工程または限定)のみの存在を示すために使用される。
【0029】
A.序論
前述のように、現在の通常の免疫抑制剤は、広範に作用し、一般に免疫系の全体的な全身性下方制御をもたらす。本明細書において提供される方法および組成物は、より標的化された免疫効果、特に抗原特異的および/もしくは非抗原特異的な様式でのCD4+制御性T細胞などの制御性T細胞の生産および持続性の増強、ならびに/または細胞傷害性CD8+T細胞および/または二重陰性CD4-CD8-(DN)T細胞の制御を可能にする。驚くべきことに、記載されている方法を実施することによって、または本明細書において提供される組成物を投与することによって相乗効果が達成されることができることが見出された。例えば、驚くべきことに、高親和性IL-2受容体アゴニストおよび免疫抑制剤での併用処置は、全ての既存の制御性T細胞を相乗的に拡大増殖させることができることが見出された。驚くべきことに、併用処置は、拡大増殖された制御性T細胞の持続性を延長させることが可能であることも見出された。さらに、驚くべきことに、併用処置は、抗原の存在下で抗原特異的制御性T細胞を相乗的に誘導および/または拡大増殖させることが見出された。
【0030】
本明細書に記載されている方法および組成物は、肝臓におけるCD8+T細胞数の減少、ならびに肝臓および脾臓におけるDN T細胞の増加を生じさせることも見出された。本明細書に記載されているように、高親和性IL-2受容体アゴニストおよび免疫抑制剤での併用処置、いくつかの態様においては、投与された抗原の存在下でのまたは投与された抗原との前記併用処置は、改善された抗原特異的免疫応答を提供することができる。このような組み合わせは、抗原特異的であり得る誘導された制御性T細胞を拡大増殖させ、肝臓におけるCD8+T細胞を低下させ、ならびに/または肝臓および/もしくは脾臓におけるCD4-CD8-T細胞の数を増加させることができ、免疫応答の有効性および持続性を改善する。したがって、このような方法および組成物は、特定の抗原(例として、治療用高分子、自己抗原もしくはアレルゲン、または炎症性疾患、自己免疫疾患、臓器もしくは組織の拒絶もしくは移植片対宿主病に関連する抗原)に対して特異的な望ましくない免疫応答の減少をもたらすことができる。本明細書に記載されている方法および組成物は、特異的な抗原に対する寛容または抗原特異的免疫寛容原性免疫応答を提供し得る。
【0031】
ここで、本発明が、以下でより詳細に説明される。
【0032】
B.定義
「投与すること」または「投与」または「投与する」は、薬理学的に有用な様式で対象に材料を提供することを意味する。この用語は、いくつかの態様において、「投与させること」を包含することが意図されている。「投与させること」とは、直接的または間接的に、別の当事者に物質を投与させること、材料を投与することを促すこと、材料を投与することを奨励すること、材料を投与することを支援すること、材料を投与することを誘導することまたは材料を投与することを指示することを意味する。
【0033】
対象への投与のための組成物または剤形の文脈における「有効量」は、対象において1以上の所望の免疫応答、例えば、治療用高分子、自己抗原もしくはアレルゲン、または炎症性疾患、自己免疫疾患、臓器もしくは組織の拒絶もしくは移植片対宿主病に関連する抗原などの特定の抗原に対して特異的な制御性T細胞などの、CD4+制御性T細胞などの制御性T細胞の生産または発達の増強などの免疫寛容原性免疫応答の生成を生じさせる組成物または剤形の量を指す。したがって、いくつかの態様においては、有効量は、抗原特異的であってもよいまたは抗原特異的でなくてもよい、CD4+制御性T細胞などの制御性T細胞の数もしくはパーセンテージ(または比)の増加ならびに/または肝臓CD8+T細胞の数もしくはパーセンテージ(または比)の減少ならびに/または肝臓および/もしくは脾臓における二重陰性(DN)(CD4-CD8-)T細胞数の増加などの、1以上の所望の免疫応答を生じさせる本明細書において提供される組成物または組成物の組み合わせの量である。有効量は、in vitroまたはin vivo目的のためのものであり得る。in vivo目的の場合、その量は、臨床医が抗原(例として、治療用高分子、自己抗原もしくはアレルゲン、または炎症性疾患、自己免疫疾患、臓器もしくは組織の拒絶もしくは移植片対宿主病に関連する抗原)に対する望ましくない免疫応答を経験し得る対象に対して臨床的利益を有し得ると考える量であり得る。
【0034】
有効量は、望ましくない免疫応答のレベルを低下させることを伴うことができるが、いくつかの態様においては、望ましくない免疫応答を完全に防止することを含む。有効量は、望ましくない免疫応答の発生を遅延させることも伴うことができる。有効である量は、抗原特異的制御性T細胞(例として、CD4+)などの制御性T細胞(例として、CD4+)の生産もしくは発達もしくは持続性の増加、ならびに/または肝臓CD8+T細胞の数の減少、ならびに/または肝臓および/もしくは脾臓におけるDN T細胞数の増加を生じさせる、本明細書において提供される組成物または組成物の組み合わせの量でもあることができる。具体的には、生産または発達の増加は、このような細胞のパーセンテージ(または比)の数の増加であり得る。増加は、このような細胞の活動の増加でもあることができる。増加は、このような細胞の持続性の増加でもあることができる。有効量は、所望の治療エンドポイントまたは所望の治療結果をもたらす量でもあることができる。有効量は、好ましくは、抗原に対して対象中で免疫寛容原性免疫応答をもたらす。上記のいずれの達成も、日常的な方法によって監視されることができる。
【0035】
提供される組成物および方法のうちのいずれか1つのいくつかの態様において、有効量は、所望の免疫応答が対象中で少なくとも1週間、少なくとも2週間または少なくとも1ヶ月間持続する量である。提供される組成物および方法のうちのいずれか1つの他の態様において、有効量は、少なくとも1週間、少なくとも2週間または少なくとも1ヶ月間、測定可能な所望の免疫応答、例えば(例として、特異的な抗原に対する)免疫応答の測定可能な減少を生じさせる量である。
【0036】
有効量は、当然のことながら、処置されている特定の対象;症状、疾患または障害の重症度;年齢、身体的状態、サイズおよび体重を包含する個々のペイシェントパラメータ;処置の期間;同時療法の性質(存在する場合);医療従事者の知識および専門知識に属する投与の具体的な経路および類似の要因に依存するであろう。これらの要因は当業者に周知であり、日常的な実験のみで対処されることができる。一般に、最大用量、すなわち、健全な医学的判断に従った最高の安全用量を使用されることが好ましい。しかしながら、ペイシェントは、医学的理由、心理学的理由、または実質的に任意の他の理由のために、より低い用量または耐容され得る用量を主張し得ることが当業者には理解されよう。
【0037】
一般に、高親和性IL-2受容体アゴニスト、免疫抑制剤および/または抗原の用量は、高親和性IL-2受容体アゴニスト、免疫抑制剤および/または抗原の量を指す。あるいは、いくつかの態様においては、用量は、所望の量の免疫抑制剤および/または抗原(例として、合成ナノキャリアは、免疫抑制剤および/または抗原を含む)を提供する合成ナノキャリアの数に基づいて投与されることができる。「抗原特異的」とは、抗原もしくはその一部の存在から生じる、または抗原を特異的に認識するもしくは結合する分子を生成する任意の免疫応答を指す。例えば、免疫応答が抗原特異的抗体生産である場合、その抗原を特異的に結合する抗体が生産される。別の例として、免疫応答は、APCによって提示された場合に抗原提示細胞(APC)提示可能な抗原に結合する、CD4+制御性T細胞であり得る制御性T細胞の生産である。
【0038】
「免疫応答を評価すること」は、in vitroまたはin vivoでの免疫応答のレベル、存在または非存在、低下、増加などのあらゆる測定または決定を指す。このような測定または決定は、対象から得られた1以上の試料に対して行われ得る。このような査定することは、本明細書において提供されるまたはさもなければ当技術分野で公知の方法のいずれをも用いて行われることができる。査定することは、対象由来の試料中などの、特定の抗原に対して特異的な制御性T細胞などの、CD4+制御性T細胞などの制御性T細胞の数またはパーセンテージを評価することであり得る。
【0039】
「付着させる」もしくは「付着された」または「結合する」もしくは「結合される」(など)は、ある実体(例えば、部分)を別の実体(例えば、部分)と化学的に結び付けることを意味する。いくつかの態様において、付着させることは共有結合であり、これは、2つの実体間に共有結合が存在する状況で付着が生じることを意味する。非共有結合性の態様において、非共有結合性の付着は、電荷相互作用、親和性相互作用、金属配位、物理的吸着、ホスト-ゲスト相互作用、疎水性相互作用、TTスタッキング相互作用、水素結合相互作用、ファンデルワールス相互作用、磁気相互作用、静電相互作用、双極子-双極子相互作用、および/またはこれらの組み合わせを包含するが、これらに限定されない非共有結合性の相互作用によって媒介される。複数の態様において、封入は付着させることの一形態である。
【0040】
「自己免疫疾患」は、免疫系が対象自身の臓器、組織または細胞を認識することができず、それらが外来抗原であるかのように、対象自身の臓器、組織または細胞を攻撃する免疫応答を生じさせる疾患である。自己免疫疾患は当技術分野で周知であり、例えば、本明細書に完全に開示されているかのように参照によりその全体が組み入れられるThe Encyclopedia of Autoimmune Diseases,Dana K.Cassell,Noel R.Rose,Infobase Publishing,14 May 2014に開示されている。
【0041】
本明細書で使用される場合、「平均」は、特に明記しない限り、算術平均を指す。
【0042】
「共製剤化された」とは、示されている複数の材料が密接な物理的接触をしているか、または共有結合的もしくは非共有結合的に化学的に付着されている充填されたおよび完成された薬学的剤形を生産するように、示されている複数の材料が加工されていることを意味する。本明細書で使用される場合、「共製剤化されていない」とは、示されている複数の材料が、密接な物理的接触をしておらず、かつ化学的に付着されていないことを意味する。いくつかの態様において、本明細書に記載されている高親和性IL-2受容体アゴニスト、免疫抑制剤および/または抗原は、対象への投与前に共製剤化されていない。
【0043】
本明細書で使用される場合、「併用療法」という用語は、2つ以上の材料/作用物質の組み合わせの使用を含む療法を定義することが意図されている。したがって、本出願における「併用療法」、「組み合わせ」および「組み合わせでの」材料/作用物質の使用への言及は、同一の全体的な処置レジメンの一部として投与される材料/作用物質を指し得る。それ故、2つ以上の材料/作用物質のそれぞれの用法用量は異なり得、それぞれが同じ時間または異なる時間に投与され得る。したがって、組み合わせの材料/作用物質は、同じ薬学的製剤中(すなわち、一緒に)または異なる薬学的製剤中(すなわち、別々に)のいずれかで、逐次に(例として、前または後に)または同時に投与され得ることが理解されよう。同一の製剤中に同時にとは、単一製剤としてであるが、異なる薬学的製剤中で同時にとは、非単一である。併用療法における2つ以上の材料/作用物質のそれぞれの用法用量はまた、投与の経路に関して異なり得る。
【0044】
「同時に」とは、免疫応答または何らかの他の有益な効果の調節を提供するように、時間的に相関する様式で、好ましくは時間的に十分に相関する様式で2つ以上の材料/作用物質を対象に投与することを意味し、さらにより好ましくは、2つ以上の材料/作用物質は組み合わせて投与される。複数の態様において、同時投与は、指定された期間内、好ましくは1ヶ月以内、より好ましくは1週間以内、さらにより好ましくは1日以内、さらにより好ましくは1時間以内の2つ以上の材料/作用物質の投与を包含し得る。複数の態様において、材料/作用物質は同時に繰り返して同時に投与され得る;それはすなわち、1回より多くの同時投与である。
【0045】
「決定すること」または「決定する」とは、事実関係を確かめることを意味する。決定することは、実験を行うことまたは予測を立てることを包含するがこれらに限定されない、多数の方法で成し遂げられ得る。例えば、高親和性IL-2受容体アゴニスト、免疫抑制剤および/または抗原の用量は、試験用量から開始し、(アロメトリックまたはアイソメトリックスケーリングなどの)既知のスケーリング技術を使用して投与のための用量を決定することによって決定され得る。このようなものは、本明細書において提供されるプロトコルを決定するためにも使用され得る。別の態様において、用量は、対象において様々な用量を試験することによって、すなわち経験および指標となるデータに基づく直接的実験を通じて決定され得る。複数の態様において、「決定すること」または「決定する」は、「決定させること」を含む。「決定させること」は、直接的もしくは間接的にまたは明示的にもしくは黙示的に、を包含して、ある主体が事実関係を確認することを引き起こすこと、促すこと、奨励すること、支援すること、誘導することまたは指示することまたはその主体と協調して行動することを意味する。
【0046】
「剤形」は、対象への投与に適した媒体、キャリア、ビヒクルまたは装置中の薬理学的におよび/または免疫学的に活性な材料を意味する。本明細書において提供される組成物または用量のいずれの1つも、剤形であり得る。
【0047】
「用量」は、所与の時間、対象に投与するための、薬理学的におよび/または免疫学的に活性な材料の特定の量を指す。
【0048】
「封入する」とは、物質の少なくとも一部を合成ナノキャリア内に入れることを意味する。いくつかの態様において、物質は、合成ナノキャリア内に完全に入れられる。他の態様において、封入されている物質の大部分または全部は、合成ナノキャリアの外部の局所環境に曝露されない。他の態様において、50%、40%、30%、20%、10%または5%(重量/重量)以下が局所環境に曝露される。封入は、物質の大部分または全部を合成ナノキャリアの表面上に置き、物質を合成ナノキャリアの外部の局所環境に曝露させた状態にする吸収とは異なる。
【0049】
「制御性T細胞の数またはパーセンテージを増強する」とは、1以上の対象から試料を採取し、次いで、適切な試験方法を用いて試料をアッセイすることによって決定される、1以上の対象における該細胞の数または(ある種類の細胞の総数の)パーセンテージ(または比)を増加させることを指す。いくつかの態様において、本明細書において提供される方法を実施することによって、または本明細書に記載されている組成物の投与後に、特定の抗原に対して特異的な制御性T細胞などの、CD4+制御性T細胞などの制御性T細胞のパーセンテージは、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍または6倍またはそれを超えて増加する。
【0050】
CD4+制御性T細胞は、CD4+CD25+FoxP3+細胞として特徴付けられることができる。CD4+制御性T細胞の数またはパーセンテージは、本明細書に記載されているかまたは当技術分野で公知のあらゆる方法によって査定されることができる。例えば、対象の末梢血中のCD4+制御性T細胞は、対象から末梢血の試料を取得し、CD25、FoxP3、CCR4、CCR8、CCR5、CTLA4、CD134、CD39および/またはGITRを包含するがこれらに限定されない、CD4+制御性T細胞に関連する1以上の分子の遺伝子発現、タンパク質存在および/または局在化を査定することによって定量されることができる。上記分子のいずれもが、定量的RT-PCR、ノーザンブロッティング、マイクロアレイ、蛍光in situハイブリダイゼーションまたはRNAseqなどの転写分析によって査定されることができ、タンパク質は、ウェスタンブロッティング、免疫蛍光顕微鏡法、フローサイトメトリーまたはELISAによって検出されることができる。CD25、CCR4、CCR8、CCR5、CTLA4、CD134、CD39および/またはGITRなどの細胞表面分子は、フローサイトメトリー、細胞表面染色、免疫蛍光顕微鏡法、ELISAなどの方法によって評価されることができる。いくつかの態様において、CD4+制御性T細胞は、アネルギー表現型(例として、TCR刺激後の増殖の欠如)に基づいて検出される。いくつかの態様において、CD4+制御性T細胞は、活性化によって誘導される細胞死に対する耐性またはサイトカイン欠乏によって誘導される死に対する感受性に基づいて同定される。いくつかの態様において、CD4+制御性T細胞は、FoxP3をコードする遺伝子のメチル化状態に基づいて同定されることができ、例えば、CD4+制御性T細胞では、FoxP3遺伝子の一部が脱メチル化されていることが見出されており、脱メチル化されていることはPCRまたは他のDNAベースの方法などによるDNAメチル化分析によって検出され得る。CD4+制御性T細胞は、IL-9、IL-10またはTGF-βを包含する免疫抑制性サイトカインの生産に基づいてさらに同定または定量されることができる。抗原特異的CD4+制御性T細胞は、当技術分野で公知のあらゆる方法によって、例えば、特定の抗原が搭載された抗原提示細胞で、ex vivoで細胞を刺激し、CD4+制御性T細胞の活性化を査定することによって、またはCD4+制御性T細胞のT細胞受容体を評価することによって同定および定量されることができる。抗原特異的CD4+制御性T細胞の数またはパーセンテージ(または比)は、抗原または抗原を含有する産物への曝露後の活性化されたCD4+制御性T細胞の1以上の機能または活性を査定することによって間接的に定量され得ることができる。
【0051】
「生成させる」とは、免疫応答(例として、免疫寛容原性免疫応答)などの作用を自身で直接的にまたは間接的に生じさせることを意味する。
【0052】
「高親和性IL-2受容体アゴニスト」は、インターロイキン-2(IL-2)の高親和性受容体に高い親和性で選択的に結合し、野生型IL-2の高親和性IL-2受容体への結合によって引き金が引かれる生物学的プロセスと性質および強度が少なくとも類似する生物学的プロセスの引き金を引く分子を含む。アルファ(またはCD25)鎖、ベータ鎖およびガンマ鎖から構成される高親和性受容体ならびにベータおよびガンマ鎖のみから構成される低(または中程度)親和性受容体という、IL-2受容体の2つの主要な形態が存在する。本明細書に記載される高親和性IL-2受容体アゴニストは、低親和性受容体よりむしろ高親和性受容体を選択的に結合する。高親和性IL-2受容体アゴニストには、野生型IL-2、IL-2ムテイン、IL-2模倣物および前述のいずれかの融合タンパク質(IL-2融合タンパク質)が包含されるが、これらに限定されない。野生型IL-2は、低用量であり得、または特異的モノクローナル抗体(mAb)と組み合わせて服用され得、IL-2に結合されたmAbの複合体は高親和性IL-2受容体を選択的に結合する。
【0053】
本明細書で使用される場合、「低用量IL-2」は、臨床医が低いと考えるであろう野生型IL-2のあらゆる用量を指す。このような用量は、1以上の対象において決定され、処置を必要とする対象に適用されることができる。いくつかの態様において、用量は非ヒト試験対象において見られ、ヒト対象に外挿される。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つのいくつかの態様において、IL-2の低用量は、500万IU/m2未満、450万IU/m2未満、4IU/m2未満または3IU/m2未満である。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つのいくつかの態様において、IL-2の低用量は300,000IU/m2~3IU/m2である。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つのいくつかの態様において、低用量は超低用量である。本明細書で使用される場合、「IL-2の超低用量」は、臨床医が超低用量であると考えるであろう野生型IL-2の任意の用量である。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つのいくつかの態様において、IL-2の超低用量は300,000IU/m2未満である。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つのいくつかの態様において、IL-2の超低用量は200,000IU/m2未満である。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つのいくつかの態様において、IL-2の超低用量は50,000IU/m2~200,000IU/m2である。いくつかの態様において、IL-2の超低用量は100,000IU/m2である。
【0054】
いくつかの態様において、高親和性IL-2受容体アゴニストは、免疫抑制剤および任意で標的抗原と同時に投与される。このような投与は、既存のおよび/または標的抗原に対して特異的なTregを拡大増殖させることができる。理論に拘束されることを望むものではないが、高親和性IL-2受容体アゴニストおよび免疫抑制剤の使用は、抗原特異的Tregを包含し得る既存のTregの拡大増殖を相乗的に誘導および/または増強することができ、標的抗原などに対するより持続的な免疫寛容を提供することができる。
【0055】
本明細書において提供される高親和性IL-2受容体アゴニストのいずれもが、高親和性IL-2受容体アゴニストに結合されたmAbの複合体の形態であり得る。
【0056】
「対象を同定すること」は、臨床医が対象を本明細書において提供される方法または組成物から利益を得ることができる対象として認識することを可能にする任意の行為または行為の群である。好ましくは、同定された対象は、増強された抗原特異的CD4+制御性T細胞生産または発達または持続性などの増強された制御性T細胞生産または発達または持続性を必要とする対象などの、本明細書において提供される免疫寛容原性免疫応答を必要とする対象である。行為または行為の群は、自身で直接的にまたは間接的に、のいずれかであり得る。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、方法は、本明細書において提供される方法または組成物を必要とする対象を同定することをさらに含む。
【0057】
「炎症性疾患」は、対象自身の細胞または組織を攻撃する免疫系から生じるなどの異常な炎症によって特徴付けられる疾患または症状である。
【0058】
「IL-2融合タンパク質」は、野生型IL-2、IL-2ムテイン、IL-2模倣物などのIL-2分子またはその活性部分の、1以上の他のペプチドまたはタンパク質との融合の結果として生じる操作されたタンパク質を指す。このような他のペプチドまたはタンパク質は、抗体またはその抗原結合断片であり得る。他のペプチドまたはタンパク質は、融合タンパク質の循環半減期を延長するために使用され得るものなど、IgG抗体のFc部分でもあり得る。IL-2融合タンパク質には、IL-2および抗IL-2抗体または融合タンパク質、IL-2-CD25融合タンパク質などが包含され得る。
【0059】
「IL-2模倣物」は、本明細書で使用される場合、IL-2と同じ機能を発揮し、高親和性IL-2受容体を選択的に結合するように設計された操作されたタンパク質またはその機能的断片を指す。これらのタンパク質は、典型的には、IL-2の結合部位を再現するが、トポロジーおよび/またはアミノ酸配列がIL-2とは異なる。このようなIL-2模倣物の例は、Silva,DA.,Yu,S.,Ulge,U.Y.et al.De novo design of potent and selective mimics of IL-2 and IL-15.Nature 565,186-191(2019)https://doi.org/10.1038/s41586-018-0830-7に記載されている。
【0060】
「インターロイキン-2(IL-2)ムテイン」とは、IL-2の所望の特性を保持し、高親和性IL-2受容体を選択的に結合する、IL-2の生物学的に活性な誘導体を指す。この用語は、アミノおよび/またはイミノ分子のみを含む化合物を包含するがこれらに限定されない1以上のアミノ酸様分子を有するポリペプチド、アミノ酸(例えば、非天然アミノ酸などを包含する)の1以上の類似体を含有するポリペプチド、置換された結合を有するポリペプチド、ならびに当技術分野で公知の他の修飾、天然および非天然(例として、合成)の両方、環化、分岐分子などを包含する。この用語は、1以上のN置換グリシン残基を含む分子(「ペプトイド」)および他の合成アミノ酸またはペプチドも包含する。
【0061】
インターロイキン-2(IL-2)は、T細胞免疫および寛容において極めて重要な役割を果たすサイトカインである。免疫刺激中、IL-2は、抗原によって媒介される活性化後にCD4およびCD8 T細胞のエフェクターT細胞への分化を誘導する重要なサイトカインである。IL-2は、CD8 T細胞のメモリー細胞への分化も媒介する。しかしながら、IL-2は、制御性T細胞(Treg)の恒常性および拡大増殖を媒介する重要なサイトカインでもある。実際、IL-2が欠損しているマウスは、致死的な自己免疫症候群を発症する。エフェクターT細胞およびTregは、IL-2に対する異なる受容体を発現する。Tregは、3つのサブユニット、α(またはCD25)、β(またはCD122)およびγ(またはCD132)から構成されるIL-2に対する高親和性受容体を発現し、一方、メモリーT細胞は、βおよびγのみから構成される中間親和性受容体を発現する。活性化T細胞は抗原刺激後にCD25を発現することができるのに対して、Tregは高レベルのCD25を構成的に発現する。したがって、TregはIL-2に対して特に感受性である。
【0062】
IL-2は、IL-2ムテインを生産するように操作されることができる。IL-2ムテインは、IL-2のアミノ酸鎖中に変動(変異など)を導入することによって生産されることができる。このような変異は、IL-2鎖中で1つ(または少数)のアミノ酸が欠失され、置き換えられ(置換され)、または付加される点変異であり得る。例えば、T-regに選択的に結合し、T-regを活性化するようにIL-2ムテインを操作することが可能である。このようなIL-2ムテインは、野生型IL-2と比較して、IL-2受容体αサブユニットに対する改善された親和性ならびに/またはIL-2受容体βおよびγサブユニットに対する低下した親和性を有することができる。IL-2ムテインは、Treg細胞の拡大増殖を選択的に促進し、および/またはエフェクターT細胞に対するアゴニズムを低下させることができる(Front Immunol.2020 Apr 28;11:638.doi:10.3389/fimmu.2020.00638、Sci Immunol.2020 Aug 14;5(50):eaba5264.doi:10.1126/sciimmunol.aba5264、Front Immunol.2020 Jun 5;11:1106.doi:10.3389/fimmu.2020.01106、Trends Immunol.2015 Dec;36(12):763-777.doi:10.1016/j.it.2015.10.003、Semin Oncol.2018 Jan;45(1-2):95-104.doi:10.1053/j.seminoncol.2018.04.001、米国特許出願公開第2017/0037102号、J Immunol 2019 May 1;202(1 Supplement)68.20.doi)。IL-2ムテインには、PT101(Pandion Therapeutics/Merck-Fcタンパク質骨格に融合された操作されたIL-2ムテイン;J Immunol 2020 May 1;204(1 Supplement)237.16)、PT002(Pandion Therapeutics/Merck-腸内に局在化させるためのMAdCAM係留を有する操作されたIL-2ムテイン)、アスパラギン酸(D)残基によるアスパラギン(N)残基のアミノ酸位置88における置換からなる点変異に対応するN88D、ならびに2:1化学量論比のIL-2ムチエン(mutien)-Fv融合タンパク質IgG-(IL-2N88D)2(J.Autoimmun.2018 November 13;95:1.doi.org/10.1016/j.jaut.2018.10.017)、AMG 592(Amgen-IL-2ムテイン-Fc融合タンパク質)、RG7835(Roche-IL-2ムテイン-Fc融合タンパク質)が包含されるが、これらに限定されない。IL-2ムテインの他の非限定的な例には、R38A、F42A、Y45AおよびE62A変異を有するIL-2(J Immunol 2013 Jun 15;190(12):6230-8;doi:10.4049/jimmunol.1201895)、P85R IL-2バリアントFSD13(Cell Death Dis 9,989(2018).https://doi.org/10.1038/s41419-018-1047-2)、無アルファムテイン(OncoImmunology 2020 June 2;9:1;doi.org/10.1080/2162402X.2020.1770565)および他の構造的に修飾されたIL-2ムテイン(Front Immunol 2020 June 5;11(1106);doi.org/10.3389/fimmu.2020.01106、Protein Eng 2003 Dec;16(12):1081-7;doi:10.1093/protein/gzg111)ならびに(J Exp Med 2020 Jan 6;217(1):e20191247;doi:10.1084/jem.20191247、Nature 484,529-533(2012);doi.org/10.1038/nature10975、J Autoimmun 2015 Jan;56:66-80;doi:10.1016/j.jaut.2014.10.002)のものが包含されるが、これらに限定されない。
【0063】
「免疫抑制剤」とは、APCが免疫抑制効果(例として、免疫寛容原性効果)を有するようにさせ、またはTもしくはB細胞が抑制されるようにさせることができる化合物を意味する。免疫抑制効果とは、一般に、望ましくない免疫応答を低減し、阻害し、もしくは防止するか、または制御性免疫応答(例として、CD4+制御性T細胞などの制御性T細胞の生産または発達)などの所望の免疫応答を促進する、APCによるサイトカインまたはその他の因子の生産または発現を指す。APCが、このAPCによって提示される抗原を認識する免疫細胞に対して(免疫抑制効果下で)免疫抑制機能を獲得する場合、免疫抑制効果は提示された抗原に対して特異的であると言われる。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、免疫抑制効果は、好ましくは抗原の存在下で、免疫抑制剤がAPCに送達される結果であると考えられる。一態様において、免疫抑制剤は、APCに1以上の免疫エフェクター細胞における制御性表現型を促進させるものである。例えば、制御性表現型は、抗原特異的CD4+T細胞またはB細胞の生産、誘導、刺激または動員の阻害、抗原特異的抗体の生産の阻害、Treg細胞(例として、CD4+CD25highFoxP3+Treg細胞)の生産、誘導、刺激または動員などによって特徴付けられ得る。これは、CD4+T細胞またはB細胞の制御性表現型への変換の結果であり得る。これは、CD8+T細胞、マクロファージおよびiNKT細胞などの他の免疫細胞におけるFoxP3の誘導の結果でもあり得る。一態様において、免疫抑制剤は、APCが抗原をプロセシングした後にAPCの応答に影響を及ぼすものである。別の態様において、免疫抑制剤は、抗原のプロセシングを妨害するものではない。さらなる態様において、免疫抑制剤はアポトーシス性シグナル伝達分子ではない。別の態様において、免疫抑制剤はリン脂質ではない。
【0064】
免疫抑制剤には、スタチン;ラパマイシンまたはラパマイシン類似体などのmTOR阻害剤;TGF-βシグナル伝達剤;TGF-β受容体アゴニスト;トリコスタチンAなどのヒストンデアセチラーゼ阻害剤;コルチコステロイド;ロテノンなどのミトコンドリア機能の阻害剤;P38阻害剤;6Bio、デキサメタゾン、TCPA-1、IKK VIIなどのNF-κβ阻害剤;アデノシン受容体アゴニスト;ミソプロストールなどのプロスタグランジンE2アゴニスト(PGE2);ロリプラムなどのホスホジエステラーゼ4阻害剤(PDE4)などのホスホジエステラーゼ阻害剤;ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、プロテアソーム阻害剤;キナーゼ阻害剤;Gタンパク質共役受容体アゴニスト;Gタンパク質共役受容体アンタゴニスト;糖質コルチコイド;レチノイド;サイトカイン阻害剤;サイトカイン受容体阻害剤;サイトカイン受容体活性化因子;ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アンタゴニスト;ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アゴニスト;ヒストンデアセチラーゼ阻害剤;カルシニューリン阻害剤;ホスファターゼ阻害剤;TGX-221などのPI3KB阻害剤;3-メチルアデニンなどのオートファジー阻害剤;アリール炭化水素受容体阻害剤;プロテアソーム阻害剤I(PSI);およびP2X受容体遮断剤などの酸化されたATPが包含されるが、これらに限定されない。免疫抑制剤には、IDO、ビタミンD3、シクロスポリンAなどのシクロスポリン、アリール炭化水素受容体阻害剤、レスベラトロール、アザチオプリン(Aza)、6-メルカプトプリン(6-MP)、6-チオグアニン(6-TG)、FK506、サングリフェリンA、サルメテロール、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、アスピリンおよび他のCOX阻害剤、ニフルミン酸、エストリオールおよびトリプトリドも包含される。複数の態様において、免疫抑制剤は、本明細書において提供される作用物質のいずれをも含み得る。
【0065】
免疫抑制剤は、APCに対する免疫抑制効果を直接提供する化合物であり得るか、または免疫抑制剤は、免疫抑制効果を間接的に(すなわち、投与後に何らかの形で処理された後に)提供する化合物であり得る。したがって、免疫抑制剤には、本明細書において提供される化合物のいずれものプロドラッグ形態が包含される。
【0066】
本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つの態様において、本明細書において提供される免疫抑制剤は、合成ナノキャリアと共に製剤化される。好ましい態様において、免疫抑制剤は、合成ナノキャリアの構造を構成する材料に追加される要素である。例えば、合成ナノキャリアが1以上のポリマーから構成される一態様において、免疫抑制剤は、1以上のポリマーに追加されて、1以上のポリマーに付着されている(例として、結合されている)化合物である。別の例として、合成ナノキャリアが1以上の脂質から構成されている一態様において、免疫抑制剤は、同じく、1以上の脂質に追加されて、1以上の脂質に付着している。合成ナノキャリアの材料が免疫抑制効果ももたらすなどの態様において、免疫抑制剤は、免疫抑制効果をもたらす、合成ナノキャリアの材料に追加されて存在する要素である。
【0067】
他の例示的な免疫抑制剤には、小分子薬物、天然産物、抗体(例として、CD20、CD3、CD4に対する抗体)、生物製剤ベースの薬物、炭水化物ベースの薬物、ナノ粒子、リポソーム、RNAi、アンチセンス核酸、アプタマー、メトトレキサート、NSAID;フィンゴリモド;ナタリズマブ;アレムツズマブ;抗CD3;タクロリムス(FK506)などが包含されるが、これらに限定されない。さらなる免疫抑制剤が当業者に公知であり、本発明はこの点に関して限定されない。
【0068】
本明細書において提供される方法、組成物またはキットのうちのいずれか1つの態様において、免疫抑制剤はナノ結晶形態などの形態であり、免疫抑制剤自体の形態が粒子または粒子様である。複数の態様において、このような形態は、ウイルスまたは他の外来病原体を模倣する。多くの薬物がナノサイズ化されており、このような薬物形態を製造するための適切な方法は当業者に公知であろう。ナノ結晶ラパマイシンなどの薬物ナノ結晶は、当業者に公知である(Katteboinaa,et al.2009,International Journal of PharmTech Resesarch;Vol.1,No.3;pp682-694。本明細書で使用される場合、「薬物ナノ結晶」は、キャリアまたはマトリックス材料を包含しない薬物(例として、免疫抑制剤)の形態を指す。いくつかの態様において、薬物ナノ結晶は、90%、95%、98%または99%またはそれを超える薬物を含む。薬物ナノ結晶を製造する方法としては、限定されないが、粉砕、高圧均質化、沈殿、噴霧乾燥、超臨界溶液の急速膨張(RESS)、Nanoedge(登録商標)技術(Baxter Healthcare)およびNanocrystal Technology(商標)(Elan Corporation)が包含される。いくつかの態様において、界面活性剤または安定剤が、薬物ナノ結晶の立体的または静電的安定性のために使用され得る。いくつかの態様において、ナノ結晶またはナノ結晶形態の免疫抑制剤が、免疫抑制剤、特に不溶性または不安定な免疫抑制剤の溶解度、安定性および/またはバイオアベイラビリティを増加させるために使用され得る。
【0069】
「搭載量(lozd)」は、合成ナノキャリアに付着している場合、合成ナノキャリア全体中の材料の総乾燥レシピ重量を基準とした、合成ナノキャリアに付着されることができる免疫抑制剤および/または抗原などの分子の量(重量/重量)である。一般に、このような搭載量は、合成ナノキャリアの集団全体にわたる平均として計算される。一態様において、合成ナノキャリア全体にわたる平均での搭載量は0.0001%~99%である。別の態様において、搭載量は0.1%~50%である。別の態様において、搭載量は0.1%~20%である。別の態様において、搭載量は0.1%~25%である。さらなる態様において、搭載量は0.1%~10%である。なおさらなる態様において、搭載量は1%~10%である。別の態様において、搭載量は1%~25%または1%~30%である。別の態様において、搭載量は2%~25%または2%~30%である。別の態様において、搭載量は4%~25%または4%~30%である。別の態様において、搭載量は8%~25%または8%~30%である。なおさらなる態様において、搭載量は7%~20%である。さらに別の態様において、搭載量は、合成ナノキャリアの集団全体にわたる平均で、少なくとも0.1%、少なくとも0.2%、少なくとも0.3%、少なくとも0.4%、少なくとも0.5%、少なくとも0.6%、少なくとも0.7%、少なくとも0.8%、少なくとも0.9%、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%である。なおさらなる態様において、搭載量は、合成ナノキャリアの集団全体にわたる平均で、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%または20%である。上記の態様のいくつかの態様において、搭載量は、合成ナノキャリアの集団全体にわたる平均で、25%以下である。複数の態様において、搭載量は、当技術分野でその他知られているように計算される。前述の搭載量態様のいずれか1つの一態様において、前述の搭載量態様は免疫抑制剤の搭載量を指す。前述の搭載量態様のいずれか1つの別の態様において、前述の搭載量態様は抗原の搭載量を指す。このような態様の一態様において、(合成ナノキャリア中に抗原も含まれる場合)抗原の搭載量は1%~10%である。
【0070】
いくつかの態様において、免疫抑制剤の形態がそれ自体ナノ結晶性免疫抑制剤などの粒子または粒子様である場合、免疫抑制剤の搭載量は、粒子など中の免疫抑制剤の量(重量/重量)である。このような態様において、搭載量は、97%、98%、99%またはそれより多くに近づくことができる。
【0071】
「合成ナノキャリアの最大寸法」は、合成ナノキャリアの任意の軸に沿って測定されたナノキャリアの最も大きな寸法を意味する。「合成ナノキャリアの最小寸法」は、合成ナノキャリアの任意の軸に沿って測定された合成ナノキャリアの最も小さな寸法を意味する。例えば、回転楕円体の合成ナノキャリアの場合、合成ナノキャリアの最大寸法および最小寸法は実質的に同一であり、その直径のサイズである。同様に、立方体状の合成ナノキャリアの場合、合成ナノキャリアの最小寸法は、その高さ、幅または長さのうち最も小さなものであり、合成ナノキャリアの最大寸法は、その高さ、幅または長さのうち最も大きなものである。一態様において、試料中の合成ナノキャリアの総数を基準として、試料中の合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最小寸法は100nm以上である。一態様において、試料中の合成ナノキャリアの総数を基準として、試料中の合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最大寸法は5μm以下である。好ましくは、試料中の合成ナノキャリアの総数を基準として、試料中の合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最小寸法は、110nmより大きい、より好ましくは120nmより大きい、より好ましくは130nmより大きい、より好ましくは150nmよりさらに大きい。合成ナノキャリアの最大寸法および最小寸法のアスペクト比は、態様に応じて変動し得る。例えば、合成ナノキャリアの最大寸法対最小寸法のアスペクト比は、1:1から1,000,000:1、好ましくは1:1から100,000:1、より好ましくは1:1から10,000:1、より好ましくは1:1から1000:1、さらにより好ましくは1:1から100:1、さらにより好ましくは1:1から10:1まで変動し得る。好ましくは、試料中の合成ナノキャリアの総数を基準として、試料中の合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最大寸法は、3μm以下、より好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、より好ましくは800nm以下、より好ましくは600nm以下、より好ましくはさらに500nm以下である。好ましい態様において、試料中の合成ナノキャリアの総数を基準として、試料中の合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最小寸法は、100nm以上、より好ましくは120nm以上、より好ましくは130nm以上、より好ましくは140nm以上、より好ましくはさらに150nm以上である。合成ナノキャリア寸法(例として、有効直径)の測定は、いくつかの態様において、合成ナノキャリアを液体(通常は水性)媒体に懸濁し、(例として、Brookhaven ZetaPALS機器を使用する)動的光散乱(DLS)を使用することによって取得され得る。例えば、合成ナノキャリアの懸濁液を水性緩衝液から精製水中に希釈して、およそ0.01~0.1mg/mLの最終合成ナノキャリア懸濁液濃度を達成することができる。希釈された懸濁液は、DLS分析のための適切なキュベットの内部で直接調製され得、またはDLS分析のための適切なキュベットに移され得る。次いで、キュベットはDLSに配置され、調節された温度に平衡化され、次いで、媒体の粘度および試料の屈折率の適切な入力に基づいて安定で、再現性のある分布を獲得するのに十分な時間走査され得る。次いで、有効径または分布の平均が報告される。高いアスペクト比または非回転楕円体の合成ナノキャリアの有効サイズを決定するには、より正確な測定値を得るために、電子顕微鏡法などの増強技術が必要となり得る。合成ナノキャリアの「寸法」または「サイズ」または「直径」は、例えば動的光散乱を使用して得られる粒径分布の平均を意味する。いくつかの態様において、合成ナノキャリアの動的光散乱を用いて得られる粒径分布の平均は、100nmを超える、150nmを超える、200nmを超える、250nmを超えるまたは300nmを超える直径である。
【0072】
「非メトキシ末端ポリマー」は、メトキシ以外の部分で終わる少なくとも1つの末端を有するポリマーを意味する。いくつかの態様において、ポリマーは、メトキシ以外の部分で終わる少なくとも2つの末端を有する。他の態様において、ポリマーは、メトキシで終わる末端を有さない。「非メトキシ末端プルロニックポリマー」は、両末端にメトキシを有する直鎖プルロニックポリマー以外のポリマーを意味する。本明細書において提供されるポリマーナノ粒子は、非メトキシ末端ポリマーまたは非メトキシ末端プルロニックポリマーを含むことができる。
【0073】
「薬学的に許容される賦形剤」または「薬学的に許容されるキャリア」は、組成物を製剤化するために薬理学的に活性な材料と共に使用される薬理学的に不活性な材料を意味する。薬学的に許容される賦形剤は、糖類(グルコース、ラクトースなど)、抗菌剤などの防腐剤、再構成助剤、着色剤、生理食塩水(リン酸緩衝生理食塩水など)および緩衝液を包含するがこれらに限定されない、当技術分野で公知の様々な材料を含む。
【0074】
「プロトコル」は、対象に投与するパターンを意味し、対象への1以上の物質のあらゆる投薬レジメンを包含する。プロトコルは、要素(または変数)から構成され、したがって、プロトコルは1以上の要素を含む。プロトコルのこのような要素は、投薬量、投薬頻度、投与の経路、投薬期間、投薬速度、投薬間の間隔、前述のいずれかの組み合わせなどを含むことができる。いくつかの態様において、このようなプロトコルは、1以上の本発明の組成物を1以上の試験対象に投与するために使用され得る。次いで、プロトコルが所望のまたは所望のレベルの免疫応答または治療効果を生成するのに有効であったか否かを決定するために、これらの試験対象における免疫応答が査定されることができる。任意の治療効果および/または免疫学的効果が査定され得る。プロトコルの要素の1以上は、非ヒト対象などの試験対象において以前に実証されており、次いでヒトプロトコルに変換され得る。例えば、非ヒト対象において実証された投薬量は、アリメトリック(alimetric)スケーリングまたは他のスケーリング方法などの確立された技術を使用して、ヒトプロトコルの要素としてスケーリングされることができる。プロトコルが所望の効果を有したか否かは、本明細書中に提供される方法またはその他当技術分野で公知の方法のいずれを用いても決定されることができる。例えば、試料は、特異的な免疫細胞、サイトカイン、抗体などが低下されたか、生成されたか、活性化されたか否かなどを決定するために、本明細書において提供される組成物が特定のプロトコルに従って投与された対象から取得され得る。例示的なプロトコルは、本明細書において提供される方法または組成物を用いてCD+制御性T細胞などの制御性T細胞の増強された数またはパーセンテージ(または比)をもたらすことが以前に実証されたものである。免疫細胞の存在および/または数を検出するための有用な方法には、フローサイトメトリー法(例として、FACS)、ELISpot、増殖応答、サイトカイン生産および免疫組織化学法が包含されるが、これらに限定されない。免疫細胞マーカーの特異的染色のための抗体およびその他の結合剤は市販されている。このようなキットは、典型的には、細胞の不均一な集団からの所望の細胞集団のFACSに基づく検出、分離および/または定量を可能にする抗原用の染色試薬を包含する。複数の態様において、本明細書において提供される多数の組成物は、プロトコルが構成される要素の1つもしくは複数または全部もしくは実質的に全部を使用して別の対象に投与される。いくつかの態様において、プロトコルは、本明細書において提供される方法または組成物を用いて、CD4+制御性T細胞などの、既存のおよび/または抗原特異的制御性T細胞の発達または生産をもたらすことが実証されている。
【0075】
「提供すること」とは、本発明を実施するために、必要とされる物品または物品もしくは方法の群を供給する、個人が実行する行為または行為の群を意味する。行為または行為の群は、自身で直接的にまたは間接的に行われ得る。
【0076】
「対象を提供すること」は、臨床医を対象と接触させ、本明細書において提供される組成物を対象に投与させるか、または本明細書において提供される方法を対象に対して実行させる任意の行為または行為の群である。好ましくは、対象は、本明細書において提供されるような制御性T細胞の抗原特異的寛容および/または増強された生産もしくは発達もしくは持続性を必要とする対象である。行為または行為の群は、自身で直接的にまたは間接的に行われ得る。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、方法は、対象を提供することをさらに含む。
【0077】
「対象」は、ヒトおよび霊長類などの温血哺乳動物;鳥類;ネコ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマおよびブタなどの家庭用動物または家畜;マウス、ラットおよびモルモットなどの実験動物;魚;爬虫類;動物園および野生動物などを包含する動物を意味する。いくつかの態様において、対象は、炎症性疾患、自己免疫疾患、アレルギー、臓器もしくは組織の拒絶または移植片対宿主病を有するか、または有するリスクがある。他の態様において、対象は、移植を受けたか、または移植を受けることになる。さらなる態様において、対象は、治療用高分子などの、対象に投与されているかまたは投与されることになる抗原に対する望ましくない免疫応答を有するかまたは有するリスクがある。
【0078】
「合成ナノキャリア」とは、自然界では見られず、サイズが5ミクロン以下である少なくとも1つの寸法を有する個別の物体を意味する。アルブミンナノ粒子は、一般に、合成ナノキャリアとして包含されるが、ある態様においては、合成ナノキャリアはアルブミンナノ粒子を含まない。いくつかの態様において、合成ナノキャリアはキトサンを含まない。他の態様において、合成ナノキャリアは脂質ベースのナノ粒子ではない。さらなる態様において、合成ナノキャリアはリン脂質を含まない。
【0079】
合成ナノキャリアは、脂質ベースのナノ粒子(本明細書では脂質ナノ粒子、すなわち、その構造を構成する材料の大部分が脂質であるナノ粒子とも呼ばれる)、ポリマーナノ粒子、金属ナノ粒子、界面活性剤ベースのエマルジョン、デンドリマー、バッキーボール、ナノワイヤ、ウイルス様粒子(すなわち、主にウイルス構造タンパク質から構成されているが、感染性ではないか、または低い感染性を有する粒子)、ペプチドもしくはタンパク質ベースの粒子(本明細書ではタンパク質粒子、すなわち、その構造を構成する材料の大部分がペプチドまたはタンパク質である粒子とも呼ばれる。)(アルブミンナノ粒子など)、および/または脂質ポリマーナノ粒子などのナノ材料の組み合わせを使用して開発されるナノ粒子の1以上であり得るが、これらに限定されない。合成ナノキャリアは、回転楕円体、立方状、錐体形、長円形(oblong)、円筒形、環状体などを包含するがこれらに限定されない様々な異なる形状であり得る。本発明による合成ナノキャリアは、1以上の表面を含む。本発明の実施での使用に対して適合させられ得る例示的な合成ナノキャリアは、(1)Grefらの米国特許第5,543,158号に開示されている生分解性ナノ粒子、(2)Saltzmanらの米国特許出願公開第20060002852号のポリマーナノ粒子、(3)DeSimoneらの米国特許出願公開第20090028910号のリソグラフィで構築されたナノ粒子、(4)von Andrianらの国際公開第2009/051837号の開示、(5)Penadesらの米国特許出願公開第2008/0145441号に開示されているナノ粒子、(6)de los Riosらの米国特許出願公開第20090226525号に開示されているタンパク質ナノ粒子、(7)Sebbelらの米国特許出願公開第20060222652号に開示されているウイルス様粒子、(8)Bachmannらの米国特許出願公開第20060251677号に開示されている核酸が付着されたウイルス様粒子、(9)国際公開第2010047839号もしくは国際公開第2009106999号に開示されているウイルス様粒子、(10)P.Paolicelliらの「Surface-modified PLGA-based Nanoparticles that can Efficiently Associate and Deliver Virus-like Particles」Nanomedicine.5(6):843-853(2010)に開示されているナノ沈殿されたナノ粒子、(11)米国特許出願公開第2002/0086049号に開示されているアポトーシス細胞、アポトーシス小体もしくは合成もしくは半合成模倣物、または(12)Look et al.,Nanogel-based delivery of mycophenolic acid ameliorates systemic lupus erythematosus in mice」J.Clinical Investigation 123(4):1741-1749(2013)のものを含む。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、1:1以上、1:1.2以上、1:1.5以上、1:2以上、1:3以上、1:5以上、1:7以上、または1:10を超えるアスペクト比を有し得る。
【0080】
約100nm以下、好ましくは100nm以下の最小寸法を有する本発明による合成ナノキャリアは、いくつかの態様において、補体を活性化するヒドロキシル基を有する表面を含まないか、または補体を活性化するヒドロキシル基ではない部分から本質的になる表面を含む。好ましい態様において、約100nm以下、好ましくは100nm以下の最小寸法を有する本発明による合成ナノキャリアは、補体を実質的に活性化する表面を含まないか、または補体を実質的に活性化しない部分から本質的になる表面を含む。より好ましい態様において、約100nm以下、好ましくは100nm以下の最小寸法を有する本発明による合成ナノキャリアは、補体を活性化する表面を含まないか、または補体を活性化しない部分から本質的になる表面を含む。複数の態様において、合成ナノキャリアは、ウイルス様粒子を排除する。複数の態様において、合成ナノキャリアは、1:1以上、1:1.2以上、1:1.5以上、1:2以上、1:3以上、1:5以上、1:7以上または1:10以上のアスペクト比を有し得る。
【0081】
「抗原」は、免疫系の抗体または細胞によって外来物として認識され、免疫応答の引き金を引くことができる天然または合成の実体である。抗原は、ペプチド、タンパク質、多糖または脂質(例として、リポ多糖)の形態であり得る。いくつかの態様において、抗原は、正常な細胞代謝の結果として対象において生成される。いくつかの態様において、抗原は自己抗原または天然抗原であり、対象中の自己抗体(または免疫グロブリン)を刺激することができる。いくつかの態様において、抗原は自己免疫疾患の病因に関与する。抗原の非限定的な例には、タンパク質または酵素補充療法のために使用されるものなどの治療用高分子、食品(例として、ピーナッツ、乳製品など)または他の周囲に存在する物質(例として、花粉、ラテックスなど)に存在するものなどのアレルゲン、自己免疫疾患の場合の自己抗原、または炎症性疾患、自己免疫疾患、臓器もしくは組織の拒絶もしくは移植片対宿主病に関連する他の抗原が包含される。抗原は、対象が曝露されるものまたは投与されるものであり得る。抗原はまた、内因性抗原であり得る。
【0082】
「治療用高分子」は、対象に投与され得、治療効果を有し得る任意のタンパク質、炭水化物、脂質または核酸を指す。いくつかの態様において、治療用高分子の対象への投与は、望ましくない免疫応答をもたらし得る。いくつかの態様において、治療用高分子は、治療用ポリヌクレオチドまたは治療用タンパク質であり得る。他の態様において、治療用高分子は、注入可能または注射可能な、治療用タンパク質、酵素、酵素補因子、ホルモン、血液もしくは血液凝固因子、サイトカイン、インターフェロン、増殖因子、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体またはポンペ病に関連するタンパク質を含む。
【0083】
「治療用ポリヌクレオチド」は、対象に投与され得、治療効果を有し得る任意のポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドベースの治療を意味する。治療用ポリヌクレオチドは、細胞内で、細胞上でまたは細胞によって生産され得、また、無細胞を使用してまたは完全合成in vitro方法から取得され得る。したがって、対象は、前述のいずれかによる処置を必要とする任意の対象を包含する。このような対象には、前述のいずれかを受けることになる対象が包含される。
【0084】
「治療用タンパク質」は、対象に投与され得、治療効果を有し得る、任意のタンパク質またはタンパク質ベースの治療を意味する。このような治療には、タンパク質補充療法およびタンパク質補給療法が包含される。このような療法には、外因性または外来性タンパク質の投与、抗体療法および細胞または細胞ベースの療法も包含される。治療用タンパク質は、注入可能なまたは注射可能な、治療用タンパク質、酵素、酵素補因子、ホルモン、血液凝固因子、サイトカイン、増殖因子、モノクローナル抗体、抗体-薬物コンジュゲートおよびポリクローナル抗体を含むが、これらに限定されない。
【0085】
治療用タンパク質は、細胞内で、細胞上でまたは細胞によって生産され得、このような細胞から取得され得るか、またはこのような細胞の形態で投与され得る。複数の態様において、治療用タンパク質は、哺乳動物細胞、昆虫細胞、酵母細胞、細菌細胞、植物細胞、トランスジェニック動物細胞、トランスジェニック植物細胞などの中で、これらの上で、またはこれらによって生産される。治療用タンパク質は、このような細胞中で組換え生産され得る。治療用タンパク質は、ウイルスで形質転換された細胞の中で、ウイルスで形質転換された細胞の上で、またはウイルスで形質転換された細胞によって生産され得る。したがって、対象は、前述のいずれかによる処置を必要とする任意の対象を包含する。このような対象には、前述のいずれかを受けることになる対象が包含される。
【0086】
「望ましくない免疫応答」は、抗原から生じるもの、本明細書において提供される疾患、障害もしくは症状(またはその症候)を促進もしくは増悪させるもの、および/または本明細書において提供される疾患、障害もしくは症状の徴候であるものなどの、任意の望ましくない免疫応答を指す。このような免疫応答は、一般に、対象の健康に対して悪影響を有するか、または対象の健康に対する悪影響の徴候である。
【0087】
「ウイルストランスファーベクター」は、本明細書において提供されるような、導入遺伝子などの核酸を送達するように適合されたウイルスベクターを意味し、このような核酸を包含する。「ウイルスベクター」は、ウイルストランスファーベクターのウイルス成分の全てを指す。したがって、「ウイルス抗原」は、カプシドまたはコートタンパク質などのウイルストランスファーベクターのウイルス成分の抗原を指すが、ウイルストランスファーベクターが送達する導入遺伝子などの核酸またはそれがコードするあらゆる産物は指さない。「ウイルストランスファーベクター抗原」は、ウイルストランスファーベクターのウイルス成分ならびに導入遺伝子などの送達される核酸またはそのあらゆる発現産物を包含する、ウイルストランスファーベクターのあらゆる抗原を指す。導入遺伝子は、遺伝子治療導入遺伝子、遺伝子編集導入遺伝子、遺伝子発現を調節する導入遺伝子またはエクソンスキッピング導入遺伝子であり得る。いくつかの態様において、導入遺伝子は、治療用タンパク質、DNA結合タンパク質またはエンドヌクレアーゼなどの本明細書において提供されるタンパク質をコードするものである。他の態様において、導入遺伝子は、ガイドRNA、アンチセンス核酸、snRNA、RNAi分子(例として、dsRNAまたはssRNA)、miRNA、または三重鎖形成オリゴヌクレオチド(TFO)などをコードするものである。ウイルスベクターは、限定されないが、レトロウイルス(例として、マウスレトロウイルス、トリレトロウイルス、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳癌腫瘍ウイルス(MuMTV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)およびラウス肉腫ウイルス(RSV))、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、アルファウイルスなどに基づくことができる。他の例は、本明細書の他の箇所に提供されているか、または当技術分野で公知である。ウイルスベクターは、本明細書において提供されるもののいずれか1つなどの、ウイルスの天然のバリアント、株または血清型に基づき得る。ウイルスベクターはまた、分子進化を通じて選択されたウイルスに基づき得る。ウイルスベクターはまた、操作されたベクター、組換えベクター、変異体ベクターまたはハイブリッドベクターであり得る。いくつかの態様において、ウイルスベクターは「キメラウイルスベクター」である。このような態様において、これは、ウイルスベクターが、1つより多くのウイルスまたはウイルスベクターに由来するウイルス成分から構成されていることを意味する。
【0088】
C.組成物
多種多様な合成ナノキャリアが、本発明に従って使用されることができる。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、球体または球状体である。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、平坦であるか、または板状である。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは立方体または立方体状である。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは長円または楕円である。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、円柱、円錐または錐体である。
【0089】
いくつかの態様において、各合成ナノキャリアが同様の特性を有するように、サイズまたは形状に関して比較的均一な合成ナノキャリアの集団を使用することが望ましい。例えば、合成ナノキャリアの総数を基準として、合成ナノキャリアの少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%は、合成ナノキャリアの平均直径または平均寸法の5%、10%または20%以内に入る最小寸法または最大寸法を有し得る。
【0090】
合成ナノキャリアは、中実または中空であり得、1以上の層を含むことができる。いくつかの態様において、各層は、他の層と比較して固有の組成および固有の特性を有する。ほんの一例を挙げると、合成ナノキャリアは、コアが1つの層(例として、ポリマーコア)であり、シェルが第2の層(例として、脂質二重層または単層)であるコア/シェル構造を有し得る。合成ナノキャリアは、複数の異なる層を含み得る。
【0091】
いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、任意で、1以上の脂質を含み得る。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、リポソームを含み得る。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、脂質二重層を含み得る。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、脂質単層を含み得る。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、ミセルを含み得る。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、脂質層(例として、脂質二重層、脂質単層など)によって囲まれたポリマーマトリックスを含むコアを含み得る。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、脂質層(例として、脂質二重層、脂質単層など)によって囲まれた非ポリマーコア(例として、金属粒子、量子ドット、セラミック粒子、骨粒子、ウイルス粒子、タンパク質、核酸、炭水化物など)を含み得る。
【0092】
他の態様において、合成ナノキャリアは、金属粒子、量子ドット、セラミック粒子などを含み得る。いくつかの態様において、非ポリマー合成ナノキャリアは、金属原子(例として、金原子)の凝集体などの非ポリマー成分の凝集体である。
【0093】
いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、任意で、1以上の両親媒性実体を含み得る。いくつかの態様において、両親媒性実体は、増加された安定性、改善された均一性または増加された粘度を有する合成ナノキャリアの生産を促進することができる。いくつかの態様において、両親媒性実体は、脂質膜(例として、脂質二重層、脂質単層など)の内面と会合されることができる。当技術分野で公知の多くの両親媒性実体は、本発明による合成ナノキャリアを作製する上での使用に適している。このような両親媒性実体には、ホスホグリセリド;ホスファチジルコリン;ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC);ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE);ジオレイルオキシプロピルトリエチルアンモニウム(DOTMA);ジオレオイルホスファチジルコリン;コレステロール;コレステロールエステル;ジアシルグリセロール;ジアシルグリセロールスクシナート;ジホスファチジルグリセロール(DPPG);ヘキサンデカノール;ポリエチレングリコール(PEG)などの脂肪族アルコール;ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル;パルミチン酸またはオレイン酸などの界面活性脂肪酸;脂肪酸;脂肪酸モノグリセリド;脂肪酸ジグリセリド;脂肪酸アミド;ソルビタントリオレアート(Span(登録商標)85)グリココラート;ソルビタンモノラウラート(Span(登録商標)20);ポリソルベート20(Tween(登録商標)20);ポリソルベート60(Tween(登録商標)60);ポリソルベート65(Tween(登録商標)65);ポリソルベート80(Tween(登録商標)80);ポリソルベート85(Tween(登録商標)85);ポリオキシエチレンモノステアラート;サーファクチン;ポロキソマー;ソルビタントリオレアートなどのソルビタン脂肪酸エステル;レシチン;リゾレシチン;ホスファチジルセリン;ホスファチジルイノシトール;スフィンゴミエリン;ホスファチジルエタノールアミン(セファリン);カルジオリピン;ホスファチジン酸;セレブロシド;リン酸ジセチル;ジパルミトイルホスファチジルグリセロール;ステアリルアミン;ドデシルアミン;ヘキサデシルアミン;パルミチン酸アセチル;グリセロールリシノレアート;ステアリン酸(sterate)ヘキサデシル;ミリスチン酸イソプロピル;チロキサポール;ポリ(エチレングリコール)5000ホスファチジルエタノールアミン;ポリ(エチレングリコール)400モノステアラート;リン脂質;高い界面活性剤特性を有する合成および/または天然洗浄剤;デオキシコラート;シクロデキストリン;カオトロピック塩;イオン対形成剤;ならびにこれらの組み合わせが包含されるが、これらに限定されない。両親媒性実体成分は、異なる両親媒性実体の混合物であり得る。当業者は、これが界面活性剤活性を有する物質の例示的なリストであり、包括的なリストではないことを認識するであろう。本発明に従って使用される合成ナノキャリアの生産において、任意の両親媒性実体が使用され得る。
【0094】
いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、任意で、1以上の炭水化物を含み得る。炭水化物は、天然または合成であり得る。炭水化物は、誘導体化された天然の炭水化物であり得る。ある態様において、炭水化物は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、リボース、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース、セルビオース(cellbiose)、マンノース、キシロース、アラビノース、グルクロン酸、ガラクトロン酸(galactoronic acid)、マンヌロン酸、グルコサミン、ガラトサミン(galatosamine)およびノイラミン酸を包含するがこれらに限定されない単糖または二糖を含む。ある態様において、炭水化物は、プルラン、セルロース、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシセルロース(HC)、メチルセルロース(MC)、デキストラン、シクロデキストラン、グリコーゲン、ヒドロキシエチルデンプン、カラギーナン、グリコン、アミロース、キトサン、N,O-カルボキシメチルキトサン、アルギンおよびアルギン酸、デンプン、キチン、イヌリン、コンニャク、グルコマンナン、プスツラン、ヘパリン、ヒアルロン酸、カードランおよびキサンタンを包含するがこれらに限定されない多糖である。複数の態様において、合成ナノキャリアは、多糖などの炭水化物を含まない(または特異的に除外する)。ある態様において、炭水化物は、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトールおよびラクチトールを包含するがこれらに限定されない糖アルコールなどの炭水化物誘導体を含み得る。
【0095】
いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、1以上のポリマーを含むことができる。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、非メトキシ末端プルロニックポリマーである1以上のポリマーを含む。いくつかの態様において、合成ナノキャリアを構成するポリマーの少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%(重量/重量)が、非メトキシ末端プルロニックポリマーである。いくつかの態様において、合成ナノキャリアを構成するポリマーの全てが、非メトキシ末端プルロニックポリマーである。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、非メトキシ末端ポリマーである1以上のポリマーを含む。いくつかの態様において、合成ナノキャリアを構成するポリマーの少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%(重量/重量)が、非メトキシ末端ポリマーである。いくつかの態様において、合成ナノキャリアを構成するポリマーの全てが、非メトキシ末端ポリマーである。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、プルロニックポリマーを含まない1以上のポリマーを含む。いくつかの態様において、合成ナノキャリアを構成するポリマーの少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%(重量/重量)は、プルロニックポリマーを含まない。いくつかの態様において、合成ナノキャリアを構成する全てのポリマーは、プルロニックポリマーを含まない。いくつかの態様において、このようなポリマーは、コーティング層(例として、リポソーム、脂質単層、ミセルなど)によって取り囲まれることができる。いくつかの態様において、合成ナノキャリアの様々な要素は、ポリマーに付着されることができる。
【0096】
免疫抑制剤および/または抗原は、多数の方法のいずれによっても合成ナノキャリアに付着されることができる。一般に、付着することは、免疫抑制剤および/または抗原と合成ナノキャリアとの間での結合の結果であり得る。この結合は、免疫抑制剤および/もしくは抗原が合成ナノキャリアの表面に付着されること、ならびに/または合成ナノキャリア内に含有(封入)されることをもたらすことができる。しかしながら、いくつかの態様において、免疫抑制剤および/または抗原は、合成ナノキャリアへの結合ではなく、合成ナノキャリアの構造の結果として合成ナノキャリアによって封入される。好ましい態様において、合成ナノキャリアは本明細書において提供されるポリマーを含み、免疫抑制剤および/または抗原はポリマーに付着されている。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つのいくつかの態様において、免疫抑制剤および抗原の両方が合成ナノキャリアに付着されている場合、免疫抑制剤および抗原は合成ナノキャリアの同じ集団にまたは合成ナノキャリアの異なる集団に付着されることができる。
【0097】
免疫抑制剤および/または抗原と合成ナノキャリアとの間の結合の結果として付着することが起こる場合、付着することはカップリング部分を介して起こり得る。カップリング部分は、それを通じて免疫抑制剤および/または抗原が合成ナノキャリアに結合されるあらゆる部分であり得る。このような部分には、アミド結合またはエステル結合などの共有結合の他、免疫抑制剤を合成ナノキャリアに(共有結合的にまたは非共有結合的に)結合する別個の分子が包含される。このような分子には、リンカーもしくはポリマーまたはこれらの単位が包含される。例えば、カップリング部分は、免疫抑制剤および/または抗原が静電的に結合する荷電ポリマーを含むことができる。別の例として、カップリング部分は、カップリング部分が共有結合されているポリマーまたはその単位を含むことができる。
【0098】
好ましい態様において、合成ナノキャリアは、本明細書において提供されるポリマーを含む。これらの合成ナノキャリアは完全にポリマー性であり得、またはこれらの合成ナノキャリアはポリマーと他の材料との混合であり得る。
【0099】
いくつかの態様において、合成ナノキャリアのポリマーは会合してポリマーマトリックスを形成する。これらの態様のいくつかにおいて、免疫抑制剤および/または抗原などの成分は、ポリマーマトリックスの1以上のポリマーと共有結合で会合されることができる。いくつかの態様において、共有結合の会合は、リンカーによって媒介される。いくつかの態様において、成分は、ポリマーマトリックスの1以上のポリマーと非共有結合的に会合されることができる。例えば、いくつかの態様において、成分は、ポリマーマトリックス内に封入され、ポリマーマトリックスによって取り囲まれ、および/またはポリマーマトリックス全体に分散されることができる。これらに代えてまたはこれらに加えて、成分は、疎水性相互作用、電荷相互作用、ファンデルワールス力などによってポリマーマトリックスの1以上のポリマーと会合されることができる。多種多様なポリマーおよび多種多様なポリマーからポリマーマトリックスを形成する方法は従来から知られている。
【0100】
ポリマーは、天然または非天然(合成)ポリマーであり得る。ポリマーは、ホモポリマーまたは2つ以上のモノマーを含むコポリマーであり得る。配列に関して、コポリマーは、ランダム、ブロックであり得、またはランダムおよびブロック配列の組み合わせを含み得る。典型的には、本発明によるポリマーは有機ポリマーである。
【0101】
いくつかの態様において、ポリマーは、ポリエステル、ポリカーボナート、ポリアミドもしくはポリエーテルまたはこれらの単位を含む。他の態様において、ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸・グリコール酸共重合体)もしくはポリカプロラクトンまたはこれらの単位を含む。いくつかの態様において、ポリマーは生分解性であることが好ましい。したがって、これらの態様において、ポリマーが、ポリ(エチレングリコール)もしくはポリプロピレングリコールなどのポリエーテルまたはその単位を含む場合、ポリマーは、ポリマーが生分解性であるように、ポリエーテルと生分解性ポリマーとのブロックコポリマーを含むことが好ましい。他の態様において、ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)もしくはポリプロピレングリコールまたはこれらの単位などの、ポリエーテルまたはその単位を単独で含まない。
【0102】
本発明での使用に適したポリマーの他の例には、ポリエチレン、ポリカーボナート(例として、ポリ(1,3-ジオキサン-2オン))、ポリ無水物(例として、ポリ(セバシン酸無水物))、ポリプロピルフメラート(polypropylfumerates)、ポリアミド(例として、ポリカプロラクタム)、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリエステル(例として、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリラクチド-コ-グリコリド、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酸(例として、ポリ(β-ヒドロキシアルカノアート)))、ポリ(オルトエステル)、ポリシアノアクリラート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、ポリ尿素、ポリスチレンおよびポリアミン、ポリリジン、ポリリジン-PEGコポリマー、ならびにポリ(エチレンイミン)、ポリ(エチレンイミン)-PEGコポリマーが包含されるが、これらに限定されない。
【0103】
いくつかの態様において、本発明によるポリマーは、ポリエステル(例として、ポリ乳酸、ポリ(乳酸・グリコール酸共重合体)、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(1,3-ジオキサン-2オン));ポリ無水物(例として、ポリ(セバシン酸無水物));ポリエーテル(例として、ポリエチレングリコール);ポリウレタン;ポリメタクリラート;ポリアクリラート;およびポリシアノアクリラートを包含するがこれらに限定されない、21C.F.R.§177.2600の下で、米国食品医薬品局(FDA)によってヒトにおける使用が承認されているポリマーを包含する。
【0104】
いくつかの態様において、ポリマーは親水性であり得る。例えば、ポリマーは、アニオン性基(例として、ホスファート基、サルファート基、カルボキシラート基);カチオン性基(例として、第4級アミン基);または極性基(例として、ヒドロキシル基、チオール基、アミン基)を含み得る。いくつかの態様において、親水性ポリマーマトリックスを含む合成ナノキャリアは、合成ナノキャリア内に親水性環境を生成する。いくつかの態様において、ポリマーは疎水性であり得る。いくつかの態様において、疎水性ポリマーマトリックスを含む合成ナノキャリアは、合成ナノキャリア内に疎水性環境を生成する。ポリマーの親水性または疎水性の選択は、合成ナノキャリア内に取り込まれる(例として、付着される)材料の性質に影響を及ぼし得る。
【0105】
いくつかの態様において、ポリマーは、1以上の部分および/または官能基で修飾され得る。様々な部分または官能基が、本発明に従って使用されることができる。いくつかの態様において、ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)で、炭水化物で、および/または多糖類に由来する非環式ポリアセタールで修飾され得る(Papisov,2001,ACS Symposium Series,786:301)。ある態様は、Grefらの米国特許第5543158号またはVon Andrianらによる国際公開第2009/051837号の一般的な教示を使用して作られ得る。
【0106】
いくつかの態様において、ポリマーは、脂質または脂肪酸基で修飾され得る。いくつかの態様において、脂肪酸基は、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、またはリグノセリン酸の1以上であり得る。いくつかの態様において、脂肪酸基は、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、アルファ-リノール酸、ガンマ-リノール酸、アラキドン酸、ガドレイン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸またはエルカ酸の1以上であり得る。
【0107】
いくつかの態様において、ポリマーは、本明細書において「PLGA」と総称される、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)およびポリ(ラクチド-コ-グリコリド)などの、乳酸およびグリコール酸単位を含むコポリマー;ならびに本明細書で「PGA」と称されるグリコール酸単位を含むホモポリマー、および本明細書で「PLA」と総称される、ポリ-L-乳酸、ポリ-D-乳酸、ポリ-D,L-乳酸、ポリ-L-ラクチド、ポリ-D-ラクチドおよびポリ-D,L-ラクチドなどの、乳酸単位を含むホモポリマーを包含するポリエステルであり得る。いくつかの態様において、例示的なポリエステルは、例えば、ポリヒドロキシ酸;PEGコポリマーおよびラクチドとグリコリドのコポリマー(例として、PLA-PEGコポリマー、PGA-PEGコポリマー、PLGA-PEGコポリマーおよびこれらの誘導体を包含する。いくつかの態様において、ポリエステルは、例えば、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)-PEGコポリマー、ポリ(L-ラクチド-コ-L-リジン)、ポリ(セリンエステル)、ポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)、ポリ[α-(4-アミノブチル)-L-グリコール酸]およびこれらの誘導体を包含する。
【0108】
いくつかの態様において、ポリマーはPLGAであり得る。PLGAは、乳酸およびグリコール酸の生体適合性および生分解性コポリマーであり、PLGAの様々な形態は、乳酸:グリコール酸の比によって特徴付けられる。乳酸は、L-乳酸、D-乳酸またはD,L-乳酸であり得る。PLGAの分解速度は、乳酸:グリコール酸比を変えることによって調整されることができる。いくつかの態様において、本発明に従って使用されるPLGAは、およそ85:15、およそ75:25、およそ60:40、およそ50:50、およそ40:60、およそ25:75またはおよそ15:85の乳酸:グリコール酸比によって特徴付けられる。
【0109】
いくつかの態様において、ポリマーは、1以上のアクリルポリマーであり得る。ある態様において、アクリルポリマーは、例えば、アクリル酸およびメタクリル酸コポリマー、メタクリル酸メチルコポリマー、メタクリル酸エトキシエチル、メタクリル酸シアノエチル、メタクリル酸アミノアルキルコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミドコポリマー、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸無水物)、メタクリル酸メチル、ポリメタクリラート、ポリ(メタクリル酸メチル)コポリマー、ポリアクリルアミド、メタクリル酸アミノアルキルコポリマー、メタクリル酸グリシジルコポリマー、ポリシアノアクリラートならびに前述のポリマーの1以上を含む組み合わせを包含する。アクリルポリマーは、低含有量の第4級アンモニウム基を有する、アクリル酸およびメタクリル酸エステルの完全に重合したコポリマーを含み得る。
【0110】
いくつかの態様において、ポリマーはカチオン性ポリマーであり得る。一般に、カチオン性ポリマーは、核酸の負に帯電した鎖を凝縮および/または保護することが可能である。ポリ(リジン)(Zauner et al.,1998,Adv.Drug Del.Rev.,30:97;およびKabanov et al.,1995,Bioconjugate Chem.,6:7),poly(エチレンイミン)(PEI;Boussif et al.,1995,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,1995,92:7297)およびポリ(アミドアミン)デンドリマー(Kukowska-Latallo et al.,1996,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,93:4897;Tang et al.,1996,Bioconjugate Chem.,7:703;およびHaensler et al.,1993,Bioconjugate Chem.,4:372)などのアミン含有ポリマーは、生理学的pHで正に帯電し、核酸とイオン対を形成する。複数の態様において、合成ナノキャリアは、カチオン性ポリマーを含まないことがあり得る(または除外し得る)。
【0111】
いくつかの態様において、ポリマーは、カチオン性側鎖を有する分解性ポリエステル(Putnam et al.,1999,Macromolecules,32:3658;Barrera et al.,1993,J.Am.Chem.Soc.,115:11010;Kwon et al.,1989,Macromolecules,22:3250;Lim et al.,1999,J.Am.Chem.Soc.,121:5633;およびZhou et al.,1990,Macromolecules,23:3399)であり得る。これらのポリエステルの例は、ポリ(L-ラクチド-コ-L-リジン)(Barrera et al.,1993,J.Am.Chem.Soc.,115:11010)、ポリ(セリンエステル)(Zhou et al.,1990、Macromolecules,23:3399)、ポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)(Putnam et al.,1999,Macromolecules,32:3658;and Lim et al.,1999,J.Am.Chem.Soc.,121:5633)およびポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)(Putnam et al.,1999,Macromolecules、32:3658;およびLim et al.,1999,J.Am.Chem.Soc.,121:5633)を包含する。
【0112】
これらおよび他のポリマーの特性ならびにそれらを調製する方法は、当技術分野で周知である(例えば、米国特許第6,123,727号;同第5,804,178号;同第5,770,417号;同第5,736,372号;同第5,716,404号;同第6,095,148号;同第5,837,752号;同第5,902,599号;同第5,696,175号;同第5,514,378号;同第5,512,600号;同第5,399,665号;同第5,019,379号;同第5,010,167号;同第4,806,621号;同第4,638,045号;および同第4,946,929号;Wang et al.,2001,J.Am.Chem.Soc.,123:9480;Lim et al.,2001,J.Am.Chem.Soc.,123:2460;Langer,2000,Acc.Chem.Res.,33:94;Langer,1999,J.Control.Release,62:7;ならびにUhrich et al.,1999,Chem.Rev.,99:3181を参照されたい。)。より一般的には、ある種の適切なポリマーを合成するための様々な方法は、Concise Encyclopedia of Polymer Science and Polymeric Amines and Ammonium Salts,Ed.by Goethals,Pergamon Press,1980;Principles of Polymerization by Odian,John Wiley&Sons,Fourth Edition,2004;AllcockらによるContemporary Polymer Chemistry,Prentice-Hall,1981;Deming et al.,1997,Nature,390:386;ならびに米国特許第6,506,577号、同第6,632,922号、同第6,686,446号および同第6,818,732号に記載されている。
【0113】
いくつかの態様において、ポリマーは直鎖または分岐ポリマーであり得る。いくつかの態様において、ポリマーはデンドリマーであり得る。いくつかの態様において、ポリマーは互いに実質的に架橋されることができる。いくつかの態様において、ポリマーは架橋を実質的に含まないことができる。いくつかの態様において、ポリマーは、架橋工程を経ることなく本発明に従って使用されることができる。合成ナノキャリアは、前述および他のポリマーのいずれものブロックコポリマー、グラフトコポリマー、混和物、混合物および/または付加物を含み得ることがさらに理解されるべきである。当業者は、本明細書に列挙されているポリマーは本発明に従って有用であり得るポリマーの例示的なリストであり、包括的なリストではないことを認識するであろう。
【0114】
いくつかの態様において、合成ナノキャリアはポリマー成分を含まない。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、金属粒子、量子ドット、セラミック粒子などを含み得る。いくつかの態様において、非ポリマー合成ナノキャリアは、金属原子(例として、金原子)の凝集体などの非ポリマー成分の凝集体である。
【0115】
本発明による組成物は、防腐剤、緩衝剤、生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水などの薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて、免疫抑制剤および/または抗原などの要素を含むことができる。組成物は、有用な剤形に到達するために従来の薬学的製造および配合技術を使用して作られ得る。一態様において、免疫抑制剤および/または抗原を含む組成物などの組成物は、防腐剤と一緒に注射用の無菌生理食塩水中に懸濁される。
【0116】
複数の態様において、担体として合成ナノキャリアを調製する場合、合成ナノキャリアに成分を付着させる方法が有用であり得る。成分が小分子である場合、合成ナノキャリアの組み立ての前に成分をポリマーに付着させることが有利であり得る。複数の態様において、成分をポリマーに付着させ、次いで、合成ナノキャリアの構築においてこのポリマーコンジュゲートを使用するのではなく、表面基の使用を通じて成分を合成ナノキャリアに付着させるために使用される表面基を有する合成ナノキャリアを調製することも有利であり得る。
【0117】
ある態様において、付着は、共有結合リンカーであり得る。複数の態様において、本発明による免疫抑制剤は、ナノキャリアの表面上のアジド基の、アルキン基を含有する免疫抑制剤との1,3-双極子環化付加反応によって、またはナノキャリアの表面上のアルキンの、アジド基を含有する免疫抑制剤との1,3-双極子環化付加反応によって形成された1,2,3-トリアゾールリンカーを介して外部表面に共有結合的に付着されることができる。このような環化付加反応は、好ましくは、適切なCu(I)リガンドおよびCu(II)化合物を触媒活性を有するCu(I)化合物に還元するための還元剤とともにCu(I)触媒の存在下で行われる。このCu(I)によって触媒されるアジド-アルキン環化付加(CuAAC)は、クリック反応と称されることもできる。
【0118】
さらに、共有結合カップリングは、アミドリンカー、ジスルフィドリンカー、チオエーテルリンカー、ヒドラゾンリンカー、ヒドラジドリンカー、イミンまたはオキシムリンカー、尿素またはチオ尿素リンカー、アミジンリンカー、アミンリンカーおよびスルホンアミドリンカーを含む共有結合リンカーを含み得る。
【0119】
アミドリンカーは、1つの成分上のアミンとナノキャリアなどの第2の成分のカルボン酸基との間でのアミド結合を介して形成される。リンカー中のアミド結合は、適切に保護されたアミノ酸およびN-ヒドロキシスクシンイミド活性エステルなどの活性カルボン酸との従来のアミド結合形成反応のいずれを使用しても作製されることができる。
【0120】
ジスルフィドリンカーは、例えばR1-S-S-R2の形態の2つの硫黄原子間のジスルフィド(S-S)結合の形成を介して作製される。ジスルフィド結合は、チオール/メルカプタン基(-SH)を含有する成分の、ポリマーもしくはナノキャリア上の別の活性化されたチオール基とのチオール交換、またはチオール/メルカプタン基を含有するナノキャリアの、活性化されたチオール基を含有する成分とのチオール交換によって形成されることができる。
【0121】
トリアゾールリンカー、具体的には、
【化1】
の形態の1,2,3-トリアゾール(式中、R1およびR2は任意の化学的実体であり得る)は、ナノキャリアなどの第1の成分に付着されたアジドの、第2の成分に付着された末端アルキンとの1,3-双極子環化付加反応によって作製される。1,3-双極子環化付加反応は、触媒ありまたはなしで、好ましくは、1,2,3トリアゾール官能基を通じて2つの成分を連結するCu(I)触媒ありで行われる。この化学は、Sharpless et al.,Angew.Chem.Int.Ed.41(14),2596,(2002)およびMeldal,et al,Chem.Rev.,2008,108(8),2952-3015によって詳細に記載されており、しばしば「クリック」反応またはCuAACと称される。
【0122】
複数の態様において、ポリマー鎖の末端にアジド基またはアルキン基を含有するポリマーが調製される。次いで、このポリマーが使用されて、複数のアルキンまたはアジド基がそのナノキャリアの表面に配置されるように合成ナノキャリアを調製する。あるいは、合成ナノキャリアは、別の経路によって調製され、続いてアルキンまたはアジド基で官能化されることができる。成分は、アルキン(ポリマーがアジドを含有する場合)またはアジド(ポリマーがアルキンを含有する場合)基のいずれかの存在下で調製される。次いで、1,4-二置換された1,2,3トリアゾールリンカーを通じて成分を粒子に共有結合的に付着させる触媒ありまたはなしで、1,3-双極子環化付加反応を介して成分をナノキャリアと反応させる。
【0123】
チオエーテルリンカーは、例えば、R1-S-R2の形態の硫黄-炭素(チオエーテル)結合の形成によって作製される。チオエーテルは、1つの成分上のチオール/メルカプタン(-SH)基の、第2の成分上のハロゲン化物またはエポキシドなどのアルキル化基でのいずれかのアルキル化によって作製されることができる。チオエーテルリンカーは、マイケルアクセプターとしてマレイミド基またはビニルスルホン基を含有する第2の成分上の電子不足のアルケン基への、1つの成分上のチオール/メルカプタン基のマイケル付加によって形成されることもできる。別の方法では、チオエーテルリンカーは、1つの成分上のチオール/メルカプタン基の、第2の成分上のアルケン基とのラジカルチオール-エン反応によって調製されることができる。
【0124】
ヒドラゾンリンカーは、1つの成分上のヒドラジド基の、第2の成分上のアルデヒド/ケトン基との反応によって作製される。
【0125】
ヒドラジドリンカーは、1つの成分上のヒドラジン基の、第2の成分上のカルボン酸基との反応によって形成される。このような反応は、一般に、カルボン酸が活性化試薬で活性化される、アミド結合の形成と同様の化学を用いて行われる。
【0126】
イミンまたはオキシムリンカーは、1つの成分上のアミンまたはN-アルコキシアミン(またはアミノオキシ)基の、第2の成分上のアルデヒドまたはケトン基との反応によって形成される。
【0127】
尿素またはチオ尿素リンカーは、1つの成分上のアミン基の、第2の成分上のイソシアナートまたはチオイソシアナート基との反応によって調製される。
【0128】
アミジンリンカーは、1つの成分上のアミン基の、第2の成分上のイミドエステル基との反応によって調製される。
【0129】
アミンリンカーは、1つの成分上のアミン基の、第2の成分上のハロゲン化物、エポキシドまたはスルホン酸エステル基などのアルキル化基とのアルキル化反応によって作製される。あるいは、アミンリンカーは、シアノ水素化ホウ素ナトリウムまたはトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムなどの適切な還元試薬と第2の成分上のアルデヒドまたはケトン基での、1つの成分上のアミン基の還元的アミノ化によって作製されることもできる。
【0130】
スルホンアミドリンカーは、1つの成分上のアミン基の、第2の成分上のハロゲン化スルホニル(塩化スルホニルなど)基との反応によって作製される。
【0131】
スルホンリンカーは、ビニルスルホンへの求核試薬のマイケル付加によって作製される。ビニルスルホンまたは求核試薬のいずれかは、ナノキャリアの表面上にあり得、または成分に付着され得る。
【0132】
成分はまた、非共有結合コンジュゲーション法を介してナノキャリアにコンジュゲートされることができる。例えば、負に帯電した免疫抑制剤は、静電吸着を通じて、正に帯電したナノキャリアにコンジュゲートされることができる。金属リガンドを含有する成分は、金属リガンド錯体を介して、金属錯体を含有するナノキャリアにコンジュゲートされることもできる。
【0133】
複数の態様において、合成ナノキャリアの組み立て前に、成分は、ポリマー、例えばポリ乳酸-ブロック-ポリエチレングリコールに付着されることができ、または合成ナノキャリアは、その表面に反応性のまたは活性化可能な基を有するように形成されることができる。後者の場合、成分は、合成ナノキャリアの表面によって提示される付着化学と適合する基を用いて調製され得る。他の態様において、ペプチド成分は、適切なリンカーを使用してVLPまたはリポソームに付着されることができる。リンカーは、2つの分子を一緒にカップリングすることが可能な化合物または試薬である。一態様において、リンカーは、Hermanson 2008に記載されているようなホモ二官能性またはヘテロ二官能性試薬であり得る。例えば、表面にカルボキシル基を含有するVLPまたはリポソーム合成ナノキャリアは、ADHリンカーを有する対応する合成ナノキャリアを形成するために、EDCの存在下で、ホモ二官能性リンカーであるアジピン酸ジヒドラジド(ADH)で処理されることができる。次いで、得られたADHを連結された合成ナノキャリアは、ナノキャリア上のADHリンカーの他端を介して、酸基を含有するペプチド成分とコンジュゲートされて、対応するVLPまたはリポソームペプチドコンジュゲートを生産する。
【0134】
利用可能なコンジュゲーション方法の詳細な説明については、Hermanson G T「Bioconjugate Techniques」,2nd Edition Published by Academic Press,Inc.,2008を参照されたい。共有結合的付着に加えて、成分は、予め形成された合成ナノキャリアへの吸着によって付着されることができ、または合成ナノキャリアの形成中に封入によって付着されることができる。
【0135】
本明細書において提供される任意の免疫抑制剤は、提供される方法または組成物において使用されることができ、いくつかの態様においては、合成ナノキャリアに付着されることができ、または合成ナノキャリア中に含まれることができる。免疫抑制剤には、スタチン;ラパマイシンまたはラパマイシン類似体などのmTOR阻害剤;TGF-βシグナル伝達剤;TGF-β受容体アゴニスト;ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤;コルチコステロイド;ロテノンなどのミトコンドリア機能の阻害剤;P38阻害剤;NF-κβ阻害剤;アデノシン受容体アゴニスト;プロスタグランジンE2アゴニスト;ホスホジエステラーゼ4阻害剤などのホスホジエステラーゼ阻害剤;プロテアソーム阻害剤;キナーゼ阻害剤;Gタンパク質共役受容体アゴニスト;Gタンパク質共役受容体アンタゴニスト;糖質コルチコイド;レチノイド;サイトカイン阻害剤;サイトカイン受容体阻害剤;サイトカイン受容体活性化因子;ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アンタゴニスト;ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アゴニスト;ヒストンデアセチラーゼ阻害剤;カルシニューリン阻害剤;ホスファターゼ阻害剤および酸化されたATPが包含されるが、これらに限定されない。免疫抑制剤は、IDO、ビタミンD3、シクロスポリンA、アリール炭化水素受容体阻害剤、レスベラトロール、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、アスピリン、ニフルミン酸、エストリオール、トリポリド(tripolide)、インターロイキン(例として、IL-1、IL-10)、シクロスポリンA、サイトカインまたはサイトカイン受容体を標的とするsiRNAなども包含する。
【0136】
スタチンの例は、アトルバスタチン(LIPITOR(登録商標)、TORVAST(登録商標))、セリバスタチン、フルバスタチン(LESCOL(登録商標)、LESCOL(登録商標)XL)、ロバスタチン(MEVACOR(登録商標)、ALTOCOR(登録商標)、ALTOPREV(登録商標))、メバスタチン(COMPACTIN(登録商標))、ピタバスタチン(LIVALO(登録商標)、PIAVA(登録商標))、ロスバスタチン(PRAVACHOL(登録商標)、SELEKTINE(登録商標)、LIPOSTAT(登録商標))、ロスバスタチン(CRESTOR(登録商標))およびシンバスタチン(ZOCOR(登録商標)、LIPEX(登録商標))を包含する。
【0137】
mTOR阻害剤の例は、ラパマイシンおよびその類似体(例として、CCL-779、RAD001、AP23573、C20-メタリルラパマイシン(C20-Marap)、C16-(S)-ブチルスルホンアミドラパマイシン(C16-BSrap)、C16-(S)-3-メチルインドールラパマイシン(C16-iRap)(Bayle et al.Chemistry&Biology 2006,13:99-107))、AZD8055、BEZ235(NVP-BEZ235)、クリソファン酸(クリソファノール)、デフォロリムス(MK-8669)、エベロリムス(RAD0001)、KU-0063794、PI-103、PP242、テムシロリムスおよびWYE-354(Selleck、Houston、TX、USAから入手可能)を包含する。
【0138】
TGF-βシグナル伝達剤の例は、TGF-βリガンド(例として、アクチビンA、GDF1、GDF11、骨形成タンパク質、ノーダル、TGF-β)およびそれらの受容体(例として、ACVR1B、ACVR1C、ACVR2A、ACVR2B、BMPR2、BMPR1A、BMPR1B、TGFβRI、TGFβRII)、R-SMADS/co-SMADS(例として、SMAD1、SMAD2、SMAD3、SMAD4、SMAD5、SMAD8)およびリガンド阻害剤(例として、フォリスタチン、ノギン、コーディン、DAN、レフティ、LTBP1、THBS1、デコリン)を包含する。
【0139】
ミトコンドリア機能の阻害剤の例は、アトラクチロシド(二カリウム塩)、ボンクレキン酸(トリアンモニウム塩)、カルボニルシアニドm-クロロフェニルヒドラゾン、(例として、Atractylis gummiferaからの)カルボキシアトラクチロシド、CGP-37157、(例として、Mundulea sericeaからの)(-)-デグエリン、F16、ヘキソキナーゼII VDAC結合ドメインペプチド、オリゴマイシン、ロテノン、Ru360、SFK1および(例として、Streptomyces fulvissimusからの)バリノマイシン(EMD4Biosciences、USA)を包含する。
【0140】
P38阻害剤の例は、SB-203580(4-(4-フルオロフェニル)-2-(4-メチルスルフィニルフェニル)-5-(4-ピリジル)1H-イミダゾール)、SB-239063(トランス-1-(4ヒドロキシシクロヘキシル)-4-(フルオロフェニル)-5-(2-メトキシ-ピリミジン-4-イル)イミダゾール)、SB-220025(5-(2アミノ-4-ピリミジニル)-4-(4-フルオロフェニル)-1-(4-ピペリジニル)イミダゾール))およびARRY-797を包含する。
【0141】
NF(例として、NK-κβ)阻害剤の例は、IFRD1,2-(1,8-ナフチリジン-2-イル)-フェノール、5-アミノサリチル酸、BAY 11-7082、BAY 11-7085、CAPE(カフェイン酸フェネチルエステル)、マレイン酸ジエチル、IKK-2阻害剤IV、IMD 0354、ラクタシスチン、MG-132[Z-Leu-Leu-Leu-CHO]、NFκB活性化阻害剤III、NF-κB活性化阻害剤II、JSH-23、パルテノリド、フェニルアルシンオキシド(PAO)、PPM-18、ピロリジンジチオカルバミン酸アンモニウム塩、QNZ、RO 106-9920、ロカグラミド、ロカグラミドAL、ロカグラミドC、ロカグラミドI、ロカグラミドJ、ロカグラオール、(R)-MG-132、サリチル酸ナトリウム、トリプトリド(PG490)およびウェデロラクトンを包含する。
【0142】
アデノシン受容体アゴニストの例は、CGS-21680およびATL-146eを包含する。
【0143】
プロスタグランジンE2アゴニストの例は、E-プロスタノイド2およびE-プロスタノイド4を包含する。
【0144】
ホスホジエステラーゼ阻害剤(非選択的および選択的阻害剤)の例は、カフェイン、アミノフィリン、IBMX(3-イソブチル-1-メチルキサンチン)、パラキサンチン、ペントキシフィリン、テオブロミン、テオフィリン、メチル化キサンチン、ビンポセチン、EHNA(エリスロ-9-(2-ヒドロキシ-3-ノニル)アデニン)、アナグレリド、エノキシモン(PERFAN(商標))、ミルリノン、レボシメンドン(levosimendon)、メセンブリン、イブジラスト、ピクラミラスト、ルテオリン、ドロタベリン、ロフルミラスト(DAXAS(商標)、DALIRESP(商標))、シルデナフィル(REVATION(登録商標)、VIAGRA(登録商標))、タダラフィル(ADCIRCA(登録商標)、CIALIS(登録商標))、バルデナフィル(LEVITRA(登録商標)、STAXYN(登録商標))、ウデナフィル、アバナフィル、イカリイン(icariin)、4-メチルピペラジンおよびピラゾロピリミジン-7-1を包含する。
【0145】
プロテアソーム阻害剤の例は、ボルテゾミブ、ジスルフィラム、エピガロカテキン-3-ガラートおよびサリノスポラミドAを包含する。
【0146】
キナーゼ阻害剤の例は、ベバシズマブ、BIBW 2992、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標))、イマチニブ(GLEEVEC(登録商標))、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標))、ラニビズマブ(LUCENTIS(登録商標))、ペガプタニブ、ソラフェニブ、ダサチニブ、スニチニブ、エルロチニブ、ニロチニブ、ラパチニブ、パニツムマブ、バンデタニブ、E7080、パゾパニブおよびムブリチニブを包含する。
【0147】
糖質コルチコイドの例は、ヒドロコルチゾン(コルチゾール)、酢酸コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、酢酸フルドロコルチゾン、酢酸デオキシコルチコステロン(DOCA)およびアルドステロンを包含する。
【0148】
レチノイドの例は、レチノール、レチナール、トレチノイン(レチノイン酸、RETIN-A(登録商標))、イソトレチノイン(ACCUTANE(登録商標)、AMNESTEEM(登録商標)、CLARAVIS(登録商標)、SOTRET(登録商標))、アリトレチノイン(PANRETIN(登録商標))、エトレチナート(TEGISON(商標))およびその代謝産物アシトレチン(SORIATANE(登録商標))、タザロテン(TAZORAC(登録商標)、AVAGE(登録商標)、ZORAC(登録商標))、ベキサロテン(TARGRETIN(登録商標))およびアダパレン(DIFFERIN(登録商標))を包含する。
【0149】
サイトカイン阻害剤の例は、IL1ra、IL1受容体アンタゴニスト、IGFBP、TNF-BF、ウロモジュリン、アルファ-2-マクログロブリン、シクロスポリンA、ペンタミジンおよびペントキシフィリン(PENTOPAK(登録商標)、PENTOXIL(登録商標)、TRENTAL(登録商標))を包含する。
【0150】
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アンタゴニストの例は、GW9662、PPARγアンタゴニストIII、G335およびT0070907(EMD4Biosciences、USA)を包含する。
【0151】
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アゴニストの例は、ピオグリタゾン、シグリタゾン、クロフィブラート、GW1929、GW7647、L-165,041、LY 171883、PPARγ活性化因子、Fmoc-Leu、トログリタゾンおよびWY-14643(EMD4Biosciences、米国)を包含する。
【0152】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤の例は、トリコスタチンAなどのヒドロキサム酸(またはヒドロキサマート)、環状テトラペプチド(トラポキシンBなど)およびデプシペプチド、ベンズアミド、求電子性ケトン、フェニルブチラートおよびバルプロ酸などの脂肪族酸化合物、ボリノスタット(SAHA)、ベリノスタット(PXD101)、LAQ824およびパノビノスタット(LBH589)などのヒドロキサム酸、エンチノスタット(MS-275)、CI994およびモセチノスタット(MGCD0103)などのベンズアミド、ニコチンアミド、NADの誘導体、ジヒドロクマリン、ナフトピラノンならびに2-ヒドロキシナフアルデヒド(2-hydroxynaphaldehydes)を包含する。
【0153】
カルシニューリン阻害剤の例は、シクロスポリン、ピメクロリムス、ボクロスポリンおよびタクロリムスを包含する。
【0154】
ホスファターゼ阻害剤の例は、BN82002塩酸塩、CP-91149、カリクリンA、カンタリジン酸、カンタリジン、シペルメトリン、エチル-3,4-デフォスタチン、フォストリエシンナトリウム塩、MAZ51、メチル-3,4-デフォスタチン、NSC 95397、ノルカンタリジン、prorocentrum concavumからのオカダ酸アンモニウム塩、オカダ酸、オカダ酸カリウム塩、オカダ酸ナトリウム塩、フェニルアルシンオキシド、様々なホスファターゼ阻害剤カクテル、プロテインホスファターゼ1C、プロテインホスファターゼ2A阻害剤タンパク質、プロテインホスファターゼ2A1、プロテインホスファターゼ2A2およびオルトバナジン酸ナトリウムを包含する。
【0155】
本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つのいくつかの態様において、抗原も投与される場合、抗原は、免疫抑制剤が付着されている合成ナノキャリアにまたは免疫抑制剤に付着されていない合成ナノキャリアの別の集団に付着される(例として、それらの中に封入される)ことができる。他の態様において、抗原は、いずれの合成ナノキャリアにも付着されていない。これらの状況のいずれかのいくつかの態様において、抗原は、抗原自体またはその断片もしくは誘導体の形態で送達され得る。例えば、治療用高分子は、治療用高分子自体またはその断片もしくは誘導体の形態で送達され得る。
【0156】
治療用高分子は、治療用タンパク質または治療用ポリヌクレオチドを包含することができる。治療用タンパク質は、注入可能な治療用タンパク質、酵素、酵素補因子、ホルモン、血液凝固因子、サイトカインおよびインターフェロン、増殖因子、モノクローナル抗体、およびポリクローナル抗体(例として、補充療法として対象に投与される)、ならびにポンペ病に関連するタンパク質(例として、酸性グルコシダーゼアルファ、rhGAA(例として、MyozymeおよびLumizyme(Genzyme))を包含するが、これらに限定されない。治療用タンパク質は、血液凝固カスケードに関与するタンパク質も包含する。治療用タンパク質は、第VIII因子、第VII因子、第IX因子、第V因子、フォン・ヴィルブランド因子、フォン・ヘルデブラント因子、組織プラスミノーゲン活性化因子、インスリン、成長ホルモン、エリスロポエチンα、VEGF、トロンボポエチン、リゾチーム、アンチトロンビンなどを包含するが、これらに限定されない。治療用タンパク質は、レプチンおよびアディポネクチンなどのアディポカインも包含する。
【0157】
リソソーム蓄積症を有する対象の酵素補充療法において使用される治療用タンパク質の例は、ゴーシェ病の処置のためのイミグルセラーゼ(例として、CEREZYME(商標))、ファブリー病の処置のためのα-ガラクトシダーゼA(a-galA)(例として、アガルシダーゼベータ、FABRYZYME(商標))、ポンペ病の処置のための酸性α-グルコシダーゼ(GAA)(例として、酸性グルコシダーゼアルファ、LUMIZYME(商標)、MYOZYME(商標))、ムコ多糖症の処置のためのアリールスルファターゼB)(例として、ラロニダーゼ、ALDURAZYME(商標)、イデュルスルファーゼ、ELAPRASE(商標)、アリールスルファターゼB、NAGLAZYME(商標))、ペグロチカーゼ(KRYSTEXXA)およびペグシチカーゼを包含するが、これらに限定されない。
【0158】
酵素の例は、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、アスパラギナーゼ、ウリカーゼ、グリコシダーゼ、アスパラギナーゼ、ウリカーゼ、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、コラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ、ヘパリナーゼ、ヘパラナーゼ、リシンおよびリガーゼを包含する。
【0159】
さらなる治療用タンパク質は、例えば、Fc融合タンパク質、二重特異性抗体、多重特異性抗体、ナノボディ、抗原結合タンパク質、抗体断片および抗体薬物コンジュゲートなどのタンパク質コンジュゲート、抗体薬物コンジュゲートなどの操作されたタンパク質を包含する。
【0160】
治療用ポリヌクレオチドは、ペガプタニブ(ペグ化抗VEGFアプタマーであるMacugen)などの核酸アプタマー、アンチセンスポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(例として、抗ウイルス薬フォミビルセンまたはミポメルセン、コレステロールレベルを低下させるためにアポリポタンパク質BのメッセンジャーRNAを標的とするアンチセンス治療薬)などのアンチセンス治療薬;低分子干渉RNA(siRNA)(例として、極めて高い効力でRNAiを媒介する25~30塩基対の非対称二本鎖RNAであるダイサー基質siRNA分子(DsiRNA));またはde Fougerollesらの米国特許出願公開第2013/0115272号およびSchrumらの米国特許出願公開第2012/0251618号に開示されているものなどの修飾されたメッセンジャーRNA(mmRNA)を包含するが、これらに限定されない。治療用ポリヌクレオチドは、ウイルストランスファーベクターを包含するが、これに限定されない。
【0161】
本発明の側面に従って有用なさらなる治療用高分子は、当業者には明らかであり、本発明はこの点に関して限定されない。
【0162】
いくつかの態様において、抗原、高親和性IL-2受容体アゴニストまたは免疫抑制剤などの成分は、単離され得る。単離されたとは、当該要素がその本来の環境から分離され、その同定または使用を許容するのに十分な量で存在することを指す。これは、例えば、要素が、(i)発現クローニングによって選択的に生産され得ること、または(ii)クロマトグラフィーもしくは電気泳動によって精製され得ることを意味する。単離された要素は、実質的に純粋であり得るが、実質的に純粋である必要はない。単離された要素は、薬学的調製物中で薬学的に許容される賦形剤と混合され得るので、要素は、調製物の重量に対して小さなパーセンテージのみを占め得る。それにもかかわらず、要素が生体系内において随伴され得る物質から分離されている、すなわち他の脂質またはタンパク質から単離されているという点で単離されている。本明細書において提供される要素のいずれもが、組成物中で単離および包含され得るか、または単離された形態で方法において使用され得る。
【0163】
D.組成物を作製および使用する方法ならびに関連する方法
合成ナノキャリアは、当技術分野で公知の多種多様な方法を用いて調製され得る。例えば、合成ナノキャリアは、ナノ沈殿、流体チャネルを使用するフローフォーカシング、噴霧乾燥、シングルおよびダブルエマルジョン溶媒蒸発、溶媒抽出、相分離、粉砕、マイクロエマルジョン手順、微細加工、ナノ加工、犠牲層、単純および複合コアセルベーション、ならびに当業者に周知の他の方法などの方法によって形成されることができる。これらに代えてまたはこれらに加えて、単分散半導体、導電性、磁性、有機およびその他のナノ材料のための水性および有機溶媒合成が記載されている(Pellegrino et al.,2005,Small,1:48;Murray et al.,2000,Ann.Rev.Mat.Sci.,30:545;およびTrindade et al.,2001,Chem.Mat.,13:3843)。さらなる方法が文献に記載されている(例として、Doubrow,Ed.,「Microcapsules and Nanoparticles in Medicine and Pharmacy,」CRC Press,Boca Raton,1992;Mathiowitz et al.,1987,J.Control.Release,5:13;Mathiowitz et al.,1987,Reactive Polymers,6:275;ならびにMathiowitz et al.,1988,J.Appl.Polymer Sci.,35:755;米国特許第5578325号および同第6007845号;P.Paolicelli et al.,「Surface-modified PLGA-based Nanoparticles that can Efficiently Associate and Deliver Virus-like Particles」Nanomedicine.5(6):843-853(2010)を参照されたい。)。
【0164】
様々な材料が、C.Astete et al.,「Synthesis and characterization of PLGA nanoparticles」J.Biomater.Sci.Polymer Edn,Vol.17,No.3,pp.247-289(2006);K.Avgoustakis「Pegylated Poly(Lactide)and Poly(Lactide-Co-Glycolide)Nanoparticles:Preparation,Properties and Possible Applications in Drug Delivery」Current Drug Delivery 1:321-333(2004);C.Reis et al.,「Nanoencapsulation I.Methods for preparation of drug-loaded polymeric nanoparticles」Nanomedicine 2:8-21(2006);P.Paolicelli et al.,「Surface-modified PLGA-based Nanoparticles that can Efficiently Associate and Deliver Virus-like Particles」Nanomedicine.5(6):843-853(2010)を包含するがこれらに限定されない様々な方法を使用して、所望に応じて、合成ナノキャリア中に封入され得る。2003年10月14日に発行されたUngerの米国特許第6,632,671号に開示されている方法を包含するがこれに限定されない、合成ナノキャリア中に材料を封入するのに適した他の方法が使用され得る。
【0165】
ある態様において、合成ナノキャリアは、ナノ沈殿プロセスまたは噴霧乾燥によって調製される。合成ナノキャリアを調製する際に使用される条件は、所望のサイズまたは特性(例として、疎水性、親水性、外部形態、「粘着性」、形状などで)の粒子を得るために、変更され得る。合成ナノキャリアを調製する方法および使用される条件(例として、溶媒、温度、濃度、空気流量など)は、合成ナノキャリアに付着されるべき材料および/またはポリマーマトリックスの組成に依存し得る。
【0166】
上記の方法のいずれかによって調製された合成ナノキャリアが所望の範囲外のサイズ範囲を有する場合、合成ナノキャリアは、例えば、ふるいを使用してサイズ分けされることができる。
【0167】
合成ナノキャリアの要素(すなわち、成分)は、例として、1以上の共有結合によって合成ナノキャリア全体に付着され得、または1以上のリンカーによって付着され得る。合成ナノキャリアを官能化するさらなる方法は、Saltzmanらの米国特許出願公開第2006/0002852号、DeSimoneらの米国特許出願公開第2009/0028910号またはMurthyらの国際特許出願公開第2008/127532号から適合され得る。
【0168】
これらに代えてまたはこれらに加えて、合成ナノキャリアは、非共有結合相互作用を介して直接的または間接的に成分に付着されることができる。非共有結合性の態様において、非共有結合性の付着は、電荷相互作用、親和性相互作用、金属配位、物理的吸着、ホスト-ゲスト相互作用、疎水性相互作用、TTスタッキング相互作用、水素結合相互作用、ファンデルワールス相互作用、磁気相互作用、静電相互作用、双極子-双極子相互作用、および/またはこれらの組み合わせを包含するが、これらに限定されない非共有結合性の相互作用によって媒介される。このような付着は、合成ナノキャリアの外面または内面にあるように配置され得る。複数の態様において、封入および/または吸収は、付着の一形態である。複数の態様において、合成ナノキャリアは、同じビヒクルまたは送達系中で混合することによって抗原と組み合わされることができる。
【0169】
本明細書において提供される組成物は、無機または有機緩衝剤(例として、ホスファート、カーボナート、アセタートまたはシトラートのナトリウムまたはカリウム塩)およびpH調整剤(例として、塩酸、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム、シトラートまたはアセタートの塩、アミノ酸およびそれらの塩)、酸化防止剤(例として、アスコルビン酸、アルファ-トコフェロール)、界面活性剤(例として、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン9-10ノニルフェノール、デスオキシコール酸ナトリウム)、溶液および/または凍結/凍結乾燥安定剤(例として、スクロース、ラクトース、マンニトール、トレハロース)、浸透圧調整剤(例として、塩または糖)、抗菌剤(例として、安息香酸、フェノール、ゲンタマイシン)、消泡剤(例として、ポリジメチルシロゾン(polydimethylsilozone))、防腐剤(例として、チメロサール、2-フェノキシエタノール、EDTA)、ポリマー安定剤および粘度調整剤(例として、ポリビニルピロリドン、ポロキサマー488、カルボキシメチルセルロース)ならびに共溶媒(例として、グリセロール、ポリエチレングリコール、エタノール)を含み得る。
【0170】
本発明による組成物は、薬学的に許容される賦形剤を含み得る。組成物は、有用な剤形に到達するために従来の薬学的製造および配合技術を使用して作られ得る。本発明を実施する上で使用するのに適した技術は、Handbook of Industrial Mixing:Science and Practice,Edited by Edward L.Paul,Victor A.Atiemo-Obeng,and Suzanne M.Kresta,2004 John Wiley&Sons,Inc.;およびPharmaceutics:The Science of Dosage Form Design,2nd Ed.Edited by M.E.Auten,2001,Churchill Livingstone中に見出され得る。一態様において、組成物は、防腐剤と共に注射用無菌生理食塩水溶液に懸濁される。
【0171】
本発明の組成物は、任意の適切な様式で作られることができ、本発明は、本明細書に記載されている方法を使用して生産されることができる組成物に決して限定されないことを理解されたい。製造の適切な方法の選択は、関連している特定の部分の特性に注意を払う必要があり得る。
【0172】
いくつかの態様において、組成物は、無菌条件下で製造されるか、または最終的に無菌化される。これにより、得られた組成物は無菌および非感染性であることを確保することができ、したがって非無菌組成物と比較した場合に安全性を向上させることができる。これは、特に、組成物を受けている対象が免疫欠陥を有している、感染に罹患している、および/または感染にかかりやすい場合に、価値のある安全対策を提供する。いくつかの態様において、組成物は凍結乾燥され、活性を失うことのない長期間製剤戦略に応じて、懸濁液中にまたは凍結乾燥された粉末として保存され得る。
【0173】
本発明による投与は、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、経粘膜、経皮(transdermal)、経皮的(transcutaneous)または皮内経路を包含するがこれらに限定されない様々な経路によるものであり得る。好ましい態様において、投与は、投与の皮下経路を介する。本明細書で言及される組成物は、従来の方法を使用して、投与、いくつかの態様においては同時投与のために製造および調製され得る。
【0174】
本発明の組成物は、本明細書の他の箇所に記載される有効量などの有効量で投与されることができる。剤形の用量は、本発明に従って、様々な量の高親和性IL-2受容体アゴニスト、免疫抑制剤および/または抗原を含有し得る。剤形中に存在する高親和性IL-2受容体アゴニスト、免疫抑制剤および/または抗原の量は、高親和性IL-2受容体アゴニスト、免疫抑制剤および/または抗原の性質、成し遂げられる治療上の利益ならびに他のこのようなパラメータに従って変更されることができる。複数の態様において、剤形中に存在することになる高親和性IL-2受容体アゴニスト、免疫抑制剤および/または抗原の最適な治療量を確立するために、用量決定研究が行われることができる。複数の態様において、高親和性IL-2受容体アゴニスト、免疫抑制剤および/または抗原は、本明細書において提供される方法に従うなど、対象への投与時に抗原に対する免疫寛容原性免疫応答を生成するのに有効な量で剤形中に存在する。好ましい態様において、高親和性IL-2受容体アゴニスト、免疫抑制剤および/または抗原は、本明細書において提供されるように対象に同時に投与された場合などに、CD4+制御性T細胞などの制御性T細胞の生産または発達または持続性を増強するのに有効な量で剤形中に存在する。対象における従来の用量決定研究および技術を使用して、所望の免疫応答を生成するのに有効な高親和性IL-2受容体アゴニスト、免疫抑制剤および/または抗原の量を決定することが可能であり得る。剤形は、様々な頻度で投与され得る。さらなる態様において、高親和性IL-2受容体アゴニスト、免疫抑制剤および/または抗原は、肝臓における細胞傷害性CD8+T細胞の数を低下させるのに、ならびに/または肝臓におけるおよび/もしくは脾臓における二重陰性CD4-CD8-(DN)T細胞の数を増加させるのに有効な量で剤形中に存在する。
【0175】
本開示の別の側面はキットに関する。いくつかの態様において、キットは免疫抑制剤および高親和性IL-2受容体アゴニストを含む。いくつかの態様において、キットは抗原も含む。免疫抑制剤は、一態様において合成ナノキャリアに付着される。別の態様において、抗原は、いくつかの態様において、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアまたは他の合成ナノキャリアに付着され得る。免疫抑制剤、高親和性IL-2受容体アゴニストおよび任意の他の成分は、キット中の別々の容器内に含有されることができる。いくつかの態様において、容器はバイアルまたはアンプルである。いくつかの態様において、免疫抑制剤、高親和性IL-2受容体アゴニストおよび任意の他の成分は、免疫抑制剤、高親和性IL-2受容体アゴニストおよび任意の他の成分が、後の時点で容器に添加され得るように、容器とは別個の溶液内に含有される。好ましい態様において、免疫抑制剤、高親和性IL-2受容体アゴニストおよび任意の他の成分は、投与前に互いに共製剤化されていない。いくつかの態様において、免疫抑制剤、高親和性IL-2受容体アゴニストおよび任意の他の成分は、それらが後の時点で再構成され得るように、それぞれ別個の容器内で凍結乾燥形態である。いくつかの態様において、キットは、再構成、混合、投与などのための説明書をさらに備える。いくつかの態様において、説明書は、本明細書に記載されている方法の説明を包含する。説明書は、任意の適切な形態、例として、印刷された添付文書またはラベルであり得る。いくつかの態様において、キットは、免疫抑制剤、高親和性IL-2受容体アゴニストおよび任意の他の成分を投与するための1以上のシリンジまたはその他の手段をさらに備える。
【0176】
実施例
実施例1:ImmTORとIL-2ムテインの組み合わせ
肝臓および脾臓におけるFoxP3または他のTregマーカーの発現レベルに対するImmTOR(ラパマイシンを封入するポリマー(PLA/PLA-PEG)合成ナノキャリア)および/またはIL-2ムテイン(Khoryati,et al.Science Immunology|Report,5,eaba5264(2020))を注射することの効果を評価するために、マウスが使用された。動物は、1~4と付番された4つの群に分配された(群あたり3匹のマウス)。群1の動物は、300μgのImmTORの1回の後眼窩注射を受けた。群2の動物は、9μgのIL-2ムテインの1回の腹腔内注射を受けた。群3の動物は、9μgのIL-2ムテインの1回の腹腔内注射を受けた後、300μgのImmTORの1回の後眼窩注射を受けた。群4の動物は処置されず、フローサイトメトリーベースラインを定義するための対照としての役割を果たした。脾臓および肝臓の組織が採取され、処置の7日後にフローサイトメトリー測定のために加工された。
【0177】
脾臓T細胞
CD4+T細胞が、上記の4つの群からの動物の脾臓から採取された。対照群(群4)と比較して、CD25およびFoxP3発現の有意な上昇、それ故Treg数の上昇が、IL-2ムテイン注射(群2動物)で観察され、IL-2ムテイン注射がImmTOR注射と組み合わされた場合(群3動物)、特にFoxP3発現に関してさらに増強された(
図1Bおよび1C)。DN T細胞数は、対照群(群4)と比較して、IL-2ムテイン投与(群2)でわずかに増加した。
【0178】
肝臓T細胞
4つの実験群の全てからの動物の肝臓からCD4+T細胞が採取された。CD25発現およびFoxP3発現は、IL-2ムテインおよびImmTORの両方が注射された場合に(群3)、肝臓CD4 T細胞において有意に増加され、ベースラインと比較して肝臓Treg数の増加を指し示した(
図3Bおよび3C)。
【0179】
3つの処置群は全て、対照群と比較して肝臓CD8+T細胞の有意な減少を示し、ImmTORおよびIL-2ムテインの両方の下方制御効果を別々および組み合わせの両方で指し示した。群3は、それぞれ群1および2と比較してCD8+T細胞数のわずかな低下を示し、ImmTORおよびIL-2ムテインの両方の注入がCD8+T細胞レベルを低下させることにおいてより効率的であることを指し示した(
図4A)。群1(ImmTOR単独)および群3(組み合わされたIL-2ムテインおよびImmTOR)の両方が、ベースラインと比較して、肝臓DN T細胞数の顕著な増加を示した(
図4B)。
【0180】
実施例2:ImmTORおよびIL-2ムテインの組み合わせによるTregの持続的誘導
脾臓におけるCD4+CD25+FoxP3+Tregの数に対するImmTOR(ラパマイシンを封入するポリマー(PLA/PLA-PEG)合成ナノキャリア)および/またはIL-2ムテインを注射することの効果を評価するためにマウスが使用された。動物は、1~4と付番された4つの群に分配された。群1の動物は、300μgのImmTORの1回の後眼窩注射を受けた。群2の動物は、9μgのIL-2ムテインの1回の腹腔内注射を受けた。群3の動物は、9μgのIL-2ムテインの1回の腹腔内注射を受けた後、300μgのImmTORの1回の後眼窩注射を受けた。群4の動物は処置されず、フローサイトメトリーベースラインを定義するための対照としての役割を果たした。脾臓の組織が採取され、処置の4、7および14日後にフローサイトメトリー測定のために加工された。CD4+T細胞が、上記の4つの群からの動物の脾臓から採取された。
【0181】
処置後4日目に、IL-2ムテイン単独(群2)ならびにIL-2ムテインおよびImmTOR(群3)で処置された動物は、ベースラインと比較して、有意により高い数の脾臓CD4+CD25+FoxP3+Tregを有した。注目すべきことに、群2の動物は、ベースライン(CD4+細胞のうちの4%)と比較して、Treg数の6倍を超える増加(CD4+細胞のうちの27%)を伴う最も高い数を有したのに対して、群3の動物は、3.5倍の増加(CD4+細胞のうちの14%)を有した。IL-2ムテインは、全ての既存のTregを非選択的に拡大増殖させ、これは群2の動物における高いTreg数を説明する。処置後7日目および14日目に、群3の動物は最も高いレベルのTregを有し、3つの他の群の全てにおけるTreg数より有意により高かった。群2からの動物におけるTregレベルは、7日目にベースラインより高かったが、14日目にベースラインレベルに戻った。これらの結果は、ImmTORとIL-2ムテインとの組み合わせが、Treg数の堅固で持続的な増加を誘導する上でより効果的であることを示している。
【0182】
実施例3:ImmTORとIL-2ムテインの組み合わせの相乗的活性
マウスは、300μgのImmTORの1回の後眼窩注射、9μgのIL-2ムテインの1回の腹腔内注射および/または100μgのオボアルブミンの1回の腹腔内注射を受けた。
図7に示されているように、総脾臓Treg数およびオボアルブミン(OVA)特異的Treg数が測定された。他の実験群との比較のためのベースラインを定義するために、対照群は、ImmTOR、IL-2ムテインまたはオボアルブミンのいずれも受けなかった。
【0183】
結果は、ImmTORおよびオボアルブミンを受けた動物は、総脾臓Treg数の有意な増加を示さなかったにもかかわらず、ベースラインと比較して有意により高いOVA特異的Treg数を有したことを示す。これは、ImmTORとオボアルブミンの組み合わせの投与が、TregのOVA特異的Tregへの特殊化を誘導することを指し示す。ImmTORとIL-2ムテインのみの組み合わせは、総Treg数を増加させたが、OVA特異的Tregレベルに影響を及ぼさなかった。対照的に、IL-2ムテイン、ImmTORおよびオボアルブミンの組み合わせを受けた動物は、ベースラインと比較して有意により高いOVA特異的Tregおよび有意により高い総脾臓Treg数を示し、オボアルブミン抗原に対する免疫寛容原性応答を誘導する上でのIL-2ムテインおよびImmTORの相乗的活性を指し示す。
【0184】
実施例4:免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアの合成(予測的)
ラパマイシンなどの免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアは、当業者に公知のあらゆる方法を使用して生産されることができる。好ましくは、本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つのいくつかの態様において、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアは、米国特許出願公開第2016/0128986号および米国特許出願公開第2016/0128987号の方法のいずれか1つによって生産され、このような生産の記載された方法および得られた合成ナノキャリアは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。本明細書において提供される方法または組成物のうちのいずれか1つにおいて、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアは、このような組み込まれた合成ナノキャリアである。
【0185】
実施例5:テロジェニック(Terogenic)ナノ粒子へのImmTORとIL-2ムテインの組み合わせは抗原特異的制御性T細胞の大規模な拡大増殖を誘導する
mTOR経路の阻害剤であるラパマイシンを封入する生分解性ImmTORナノ粒子(ラパマイシンを封入するPLA/PLA-PEG合成ナノキャリア)は、AAVベクターの免疫原性を緩和し、再投薬を可能にする能力を有する。しかしながら、遅延した免疫応答は、特により高いベクター用量で、いくつかの動物中に抗AAV抗体の急増(breakthrough)をもたらすことができる。ImmTORの、制御性T細胞(Treg)選択的インターロイキン-2(IL-2)変異体分子(IL-2ムテイン)との組み合わせが調査された。抗原特異的Tregを誘導するImmTORとは異なり、Teg選択的IL-2ムテインは、全ての既存のTregを拡大増殖させることが示されている。
【0186】
ImmTORは、IL-2ムテインと相乗的に作用することが見出されている。IL-2ムテインと同じ日に投与されたImmTORの単回用量は、増加された総Tregをもたらした。しかしながら、抗原特異的Tregの拡大増殖が、総Tregの拡大増殖よりさらに望ましいことがあり得る。IL-2ムテインと組み合わされたImmTOR+抗原が抗原特異的Tregを誘導および/または拡大増殖させる能力を評価した。オボアルブミン特異的OTII T細胞が、オボアルブミンおよびImmTORおよび/またはIL-2ムテインでの処置の前に、マウス内に養子移入された。予想通り、ImmTOR+オボアルブミンは総Tregを拡大増殖させなかったが、Foxp3+OTII細胞のパーセンテージを約3%から15%に増加させた。IL-2ムテイン+オボアルブミンは、オボアルブミン単独で観察されたものと同様のより穏やかな増加をもたらした(約6%)。しかしながら、ImmTOR+IL-2ムテイン+オボアルブミンの組み合わせは非常に大きな相乗効果を示し、OTII細胞の約45%がFoxp3を発現した。
【0187】
ImmTORとIL-2ムテインの組み合わせが、同時投与されたAAV遺伝子治療ベクターに対する抗体応答のより持続的な阻害を可能にするかどうかを見るために、ImmTORとIL-2ムテインの組み合わせが試験された。マウスは、0および56日目に投与されたImmTOR+/-IL-2ムテインありまたはなしでの、0および56日目でのAAV8ベクターの2つの用量で処置された。IL-2ムテインでの処置は、抗AAV IgG抗体の穏やかな低下を示した(
図8)。ImmTOR処置されたマウスは、抗AAV抗体の用量依存的阻害を示し、ImmTORの治療用量(200μg)は、AAVの第2の用量の19日後、75日を通じて抗体の形成を阻害した。しかしながら、91日目までに、一部のマウスは抗AAV抗体の遅延した発達を示した。対照的に、ImmTOR+IL-2ムテインの組み合わせは、117日を通じて抗体形成を完全に阻害した。これらの結果は、ImmTORとIL-2ムテインとの組み合わせが、AAV遺伝子治療ベクターの免疫原性を軽減するためのより持続的な抗原特異的免疫寛容を提供することができることを示す。
【国際調査報告】