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特表2024-514580グリコトキシン、グリコトキシンに結合した特定タンパク質、またはグリコトキシン-特定タンパク質複合体を含む神経変性疾患のバイオマーカー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】グリコトキシン、グリコトキシンに結合した特定タンパク質、またはグリコトキシン-特定タンパク質複合体を含む神経変性疾患のバイオマーカー
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20240326BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N33/50 Q
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562246
(86)(22)【出願日】2022-04-08
(85)【翻訳文提出日】2023-10-20
(86)【国際出願番号】 KR2022095081
(87)【国際公開番号】W WO2022216145
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】10-2021-0046500
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0144355
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】514140698
【氏名又は名称】カチョン ユニバーシティ オブ インダストリー-アカデミック コーオペレイション ファウンデイション
(71)【出願人】
【識別番号】523381631
【氏名又は名称】コリア ベテランズ ヘルス サービス
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム・ソンヨ
(72)【発明者】
【氏名】チャン・クンア
(72)【発明者】
【氏名】ソ・スンヨン
(72)【発明者】
【氏名】カン・ミンチョル
(72)【発明者】
【氏名】カン・ミンジュ
(72)【発明者】
【氏名】シム・キュファン
(72)【発明者】
【氏名】チョン・ダウン
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA13
2G045AA16
2G045AA25
2G045CA25
2G045CA26
2G045CB03
2G045CB07
2G045CB09
2G045CB11
2G045DA36
2G045DA44
2G045DA80
2G045FA11
2G045FB02
2G045FB03
2G045FB06
(57)【要約】
本発明は、グリコトキシン、グリコトキシンに結合した特定タンパク質、またはグリコトキシン-特定タンパク質複合体を含む神経変性疾患のためのバイオマーカーに関するものであり、詳細には前記バイオマーカーは、非侵襲的に迅速に皮膚表面から特異的な蛍光を測定し、認知低下の有無を初期に確認するために用いることができ、その後認知低下と確認された場合、皮膚、血液などの生体組織における前記バイオマーカーのmRNA発現量およびタンパク質量を測定することにより、アルツハイマー病などの神経変性疾患の予測、診断などに有用に活用される。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリコトキシン、グリコトキシンに結合した特定タンパク質、またはグリコトキシン-特定タンパク質複合体を含むことを特徴とする神経変性疾患の予測または診断用バイオマーカー。
【請求項2】
前記グリコトキシンが、ペントシジン(Pentosidine)、カルボキシメチルリジン((carboxymethyl)lysine,CML)、カルボキシエチルリジン((carboxyethyl)lysine,CEL)、ピラリン(pyrraline)、OMA(oxalic acid monolysinylamide)、イミダゾロン(imidazolones)、GLAP(glyceraldehydes-derived pyridinum compound)、GOLD(glyoxal-lysine dimer)、MOLD(methyl-glyoxal-lysine dimmer)、クロスライン(crossline)、FFI(2-(2-furoyl)-4(5)-(2-furanyl)-1H-imidazole)からなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1に記載の神経変性疾患の予測または診断用バイオマーカー。
【請求項3】
前記グリコトキシンが、ペントシジン、カルボキシエチルリジン(CEL)及びカルボキシメチルリジン(CML)、メチルグリオキサールヒドロイミダゾロン(methylglyoxal hydroimidazolones,MG-H1)からなる群から選択される少なくとも1つを測定することを特徴とする、請求項2に記載の神経変性疾患の予測または診断用バイオマーカー。
【請求項4】
前記特定タンパク質が、コラーゲン(collagen)、エラスチン(elastin)、ケラチン(keratin)、β-アミロイドβ種(amyloid β species)、タウ(tau)、α-シヌクレイン(alpha-synuclein)、およびTDP-43からなる群から選択されるいずれか1つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の神経変性疾患の予測または診断用バイオマーカー。
【請求項5】
前記コラーゲンが、コラーゲンXVII(collagen XVII)であることを特徴とする、請求項4に記載の神経変性疾患の予測または診断用バイオマーカー。
【請求項6】
前記神経変性疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性測索硬化症、ハンチントン舞踏病、脊髄小脳変性症、プリオン病、クロイツフェルトヤコブ病、前頭側頭型認知症、血管性認知症、レビー小体認知症およびパーキンソン病に伴う認知症からなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1に記載の神経変性疾患の予測または診断用バイオマーカー。
【請求項7】
生体組織または生体液から測定用サンプルを準備する工程、
前記測定用サンプルからグリコトキシン、グリコトキシンに結合した特定タンパク質またはグリコトキシン-特定タンパク質複合体を測定する工程を含むことを特徴とする、神経変性疾患の予測または診断方法。
【請求項8】
前記グリコトキシン、グリコトキシンに結合した特定タンパク質またはグリコトキシン-特定タンパク質複合体が、蛍光、遺伝子発現量およびタンパク質量を測定する方法の中のいずれか1つ以上によって測定することを特徴とする、請求項7に記載の神経変性疾患の予測または診断方法。
【請求項9】
前記グリコトキシン、グリコトキシンに結合した特定タンパク質またはグリコトキシン-特定タンパク質複合体が、ペントシジン、カルボキシエチルリジン(CEL)およびカルボキシメチルリジン(CML)、メチルグリオキサールヒドロイミダゾロン(methylglyoxal hydroimidazolones、MG-H1)からなる群から選択される少なくとも1つを測定することを特徴とする、請求項7に記載の神経変性疾患の予測または診断方法。
【請求項10】
前記グリコトキシンに結合した特定タンパク質が、コラーゲンであることを特徴とする、請求項7に記載の神経変性疾患の予測または診断方法。
【請求項11】
前記グリコトキシン、グリコトキシンに結合した特定タンパク質またはグリコトキシン-特定タンパク質複合体が、ペントシジン、カルボキシエチルリジン(CEL)またはカルボキシメチルリジン(CML)とコラーゲンXVIIの複合体を測定することを特徴とする、請求項7に記載の神経変性疾患の予測または診断方法。
【請求項12】
請求項1に記載のグリコトキシン、グリコトキシンに結合した特定タンパク質またはグリコトキシン-特定タンパク質複合体とメチルグリオキサールヒドロイミダゾロン(MG-H1)の蓄積比率を測定することを特徴とする、神経変性疾患の予測または診断方法。
【請求項13】
前記蓄積比率が、CEL/MGH1、CML/MGH1、ペントシジン/MGH1、コラーゲンXVII/MGH1、コラーゲンXVII-CEL/MGH1、コラーゲンXVII-CML/MGH1およびコラーゲンXVII-ペントシジン/MGH1からなる群から選択される1つ以上を測定することを特徴とする、請求項12に記載の神経変性疾患の予測または診断方法。
【請求項14】
前記蓄積比率が、[CEL/MGH1、CML/MGH1、又はペントシジン/MGH1の中のいずれか1つ]と、[ペントシジン、カルボキシエチルリシン(CEL)及びカルボキシメチルリジン(CML)からなる群から選択される1つ以上とコラーゲンXVIIの複合体]を測定することを特徴とする、請求項12に記載の神経変性疾患の予測または診断方法。
【請求項15】
前記蓄積比率が、CEL/MGH1またはコラーゲンXVII-CELであることを特徴とする、請求項12に記載の神経変性疾患の予測または診断方法。
【請求項16】
前記生体組織が、皮膚、指の爪、足の爪、または毛髪であることを特徴とする、請求項7に記載の神経変性疾患の予測または診断方法。
【請求項17】
前記生体液が、涙、唾液、尿、血液または脳脊髄液であることを特徴とする、請求項7に記載の神経変性疾患の予測または診断方法。
【請求項18】
前記生体組織が、前記測定用サンプルの準備が必要でない非侵襲的な皮膚自家蛍光(skin autofluorescence、SAF)を測定することを特徴とする、請求項7に記載の神経変性疾患の予測または診断方法。
【請求項19】
請求項1に記載のグリコトキシン、グリコトキシンに結合した特定タンパク質またはグリコトキシン-特定タンパク質複合体を測定することを特徴とする、神経変性疾患の予測または診断用キット。
【請求項20】
前記キットが、ペントシジン、カルボキシエチルリジン(CEL)およびカルボキシメチルリジン(CML)からなる群から選択される少なくとも1つを測定することを特徴とする、請求項19に記載の神経変性疾患の予測または診断用キット。
【請求項21】
前記グリコトキシンに結合した特定タンパク質が、コラーゲンであることを特徴とする、請求項19に記載の神経変性疾患の予測または診断用キット。
【請求項22】
前記キットが、ペントシジン、カルボキシエチルリジン(CEL)またはカルボキシメチルリジン(CML)とコラーゲンXVIIの複合体を測定することを特徴とする、請求項19に記載の神経変性疾患の予測または診断用キット。
【請求項23】
請求項1に記載のグリコトキシン、グリコトキシンに結合した特定タンパク質またはグリコトキシン-特定タンパク質複合体とメチルグリオキサールヒドロイミダゾロン(MG-H1)の蓄積比率を測定することを特徴とする、神経変性疾患の予測または診断用キット。
【請求項24】
前記キットが、CEL/MGH1、CML/MGH1、ペントシジン/MGH1、コラーゲンXVII/MGH1、コラーゲンXVII-CEL/MGH1、コラーゲンXVII-CML/MGH1、およびコラーゲンXVII-ペントシジン/MGH1からなる群から選択される1つ以上を測定することを特徴とする、請求項23に記載の神経変性疾患の予測または診断用キット。
【請求項25】
前記キットが、[CEL/MGH1、CML/MGH1、又はペントシジン/MGH1の中のいずれか1つ]及び[ペントシジン、カルボキシエチルリジン(CEL)及びカルボキシメチルリジン(CML)からなる群から選択される1つ以上とコラーゲンXVIIの複合体]を測定することを特徴とする、請求項23に記載の神経変性疾患の予測または診断用キット。
【請求項26】
前記キットが、CEL/MGH1またはコラーゲンXVII-CELであることを特徴とする、請求項23に記載の神経変性疾患の予測または診断用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリコトキシン(Glycotoxin)、グリコトキシンに結合した特定タンパク質、またはグリコトキシン-特定タンパク質複合体を含む神経変性疾患(neurodegenerative disease)のためのバイオマーカーに関するものであり、詳細には、前記バイオマーカーは、非侵襲的(noninvasive)である方法で迅速に皮膚表面から特異的な蛍光を測定し、認知低下の有無を初期に確認するために使用することができ、皮膚、血液、脳脊髄液などの生体組織から前記バイオマーカーのmRNA発現量およびタンパク質量を測定することにより、アルツハイマー病(Alzheimer's disease、AD)などの神経変性疾患の予測、診断などに有用に活用される。
【背景技術】
【0002】
近年、医学の発展により人間の平均寿命が延びており、老年人口が増加するにつれて新しい社会的問題が浮上している。特に、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(Parkinson's disease)などの老人性神経変性疾患は、神経系の致命的な機能障害として現れ、現在までこれを治療するための効果的な方法がない。
【0003】
特に、老人性神経変性疾患の中で最も一般的に現れているのがアルツハイマー病(AD)である。アルツハイマー病(AD)は、認知症を引き起こす最も一般的な退行性脳疾患であり、記憶力、思考力および行動上の問題を引き起こし、これは日常生活を妨げるほど深刻な記憶力およびその他の知的能力の喪失を示す。
【0004】
アルツハイマー病(AD)の原因と発症機序は正確ではなく、神経伝達物質であるアセチルコリン(acetylcholine)の合成の減少、β-アミロイドの沈着、およびタウタンパク質(tau protein)の過リン酸化による神経細胞の損傷が主な原因として知られている。
【0005】
このような神経変性疾患は、早期に発見して治療することが社会的費用を減らすことができ、早期診断の重要性が台頭している。しかし、これまでアルツハイマーの臨床的診断は、病歴と神経心理学的検査に主に依存しており、副次的な検査として磁気共鳴映像(MRI,Magnetic Resonance Imaging)や陽電子断層撮影(PET,Positron Emission Tomography)などの映像検査を行なう。しかし、MRIやPETは、脳映像撮影を通じて脳内アミロイドベータの蓄積レベルを確認することによってアルツハイマー病(AD)の診断に利用する方法で、高価な検査費用と汎用的適用が難しく、大多数の患者は検査を受けることが難しいという限界点がある。それで、アルツハイマー病(AD)などの神経変性疾患を迅速かつ便利に非侵襲的に診断できる方法が必要となった。
【0006】
人体内の最終糖化産物(advanced glycation end products,AGEs)は、糖とタンパク質側鎖の非酵素的反応(nonenzymatic reaction)から生じる。この過程は、シッフ塩基(Schiff base)を形成する還元糖とアミノ基の間の可逆的な反応から始まり、続いて共有結合アマドリ転位生成物(covalently-bonded Amadori rearrangement product)を形成する。アマドリ生成物が形成されると、その生成物はさらなる転位を経て最終糖化産物(AGEs)を生成する。
【0007】
また、最終糖化産物(AGEs)は、他の課程から形成することができる。例えば、最終糖化産物であるカルボキシメチルリジン(Nε-(carboxylmethyl)lysine)は、脂質過酸化(lipid peroxidation)と糖酸化(glycoxidation)反応の両方の生成物である。
【0008】
現在までに、数十の最終糖化産物が知られており、その例としては、ペントシジン(pentosidine)、カルボキシメチルリジン((carboxymethyl)lysine,CML)、カルボキシエチルリジン((carboxyethyl)lysine,CEL)、ピラリン(pyrraline)、OMA(oxalic acid monolysinylamide)、イミダゾロン(imidazolones)、GLAP(glyceraldehydes-derived pyridinum compound)、GOLD(glyoxal-lysine dimer)、MOLD(methyl-glyoxal-lysine dimmer)、クロスライン(crossline)、FFI(2-(2-furoyl)-4(5)-(2-furanyl)-1H-imidazole)などがある。
【0009】
一般に、最終糖化産物(AGEs)は、血糖の平均レベルに比例する速度で人体に蓄積される。最終糖化産物(AGEs)は正常な代謝作用および老化によって生成および蓄積され、年齢に比例して最終糖化産物(AGEs)の蓄積量が増加して体内に長く残留する。特に、糖尿病(Diabetes)による高血糖症(Hyperglycemia)が続くと、大量の最終糖化産物(AGEs)が体内に蓄積する。そのような最終糖化産物の体内蓄積は、膜タンパク質の翻訳後修飾(post-translational modification)を促進する。
【0010】
高血糖状態が持続すると、可逆的なアマドリ型の初期糖化産物が分解せずに再配列(rearrangement)し、コラーゲン(Collagen)のような寿命が長いタンパク質と交差結合(cross-link)して不可逆的な最終糖化産物(AGEs)が生成される。
【0011】
また、こうして生成された最終糖化産物は、コラーゲン(Collagen)、ラミニン(laminin)、フィブロネクチン(fibronectin)のような寿命の長い基質タンパク質と不可逆的な交差結合を成すだけでなく、細胞外基質タンパク質との交差結合、細胞最終糖化産物受容体との反応および細胞内タンパク質または核酸との最終糖化産物を形成して、糖尿病性合併症を誘発することが知られている。このような原因の1つは、通常、正常なコラーゲンの交差結合は、N末端とC末端の特定の部位でのみ起こるが、最終糖化産物によるコラーゲンとの交差結合は、すべての部位で無作為に起こるからである。
【0012】
このような不可逆的で長期間生存する最終糖化産物は、様々な疾患において決定的な役割を果たす。例えば、多くの糖尿病患者が合併症を予防できず、結局は失明、腎症、脳卒中、足部切断などの激しい苦痛を受けており、これは合併症の予防や治療が血糖濃度の調節だけで可能ではなく、既に蓄積された不可逆的で長期間生存する最終糖化産物を低減させなければならないことであることが分かる。
【0013】
また、最終糖化産物の形成は、フリーラジカル活性(free radical activity)の増加とタンパク質の構造および機能の変化を伴い、これは神経変性疾患の発症に寄与し得る。アルツハイマー病(AD)では、最終糖化産物は、アミロイドプラーク(amyloid plaques)および神経線維結び目(neurofibrillary tangles)などの病理学的堆積物(pathological deposits)で検出され、多くのアルツハイマー病(AD)の神経病理学的(neuropathological)および生化学的(biochemical)特徴を説明することができる。
【0014】
その他にも、最終糖化産物(AGEs)は、炎症(inflammation)、網膜症(retinopathy)、腎臓病(nephropathy)、アテローム硬化症(atherosclerosis)、脳卒中(stroke)、内皮細胞機能障害(endothelial cell dysfunction)、および神経変性疾患(neurodegenerative disease)を含むいくつかの病理学的状態と関連している。
【0015】
皮膚では、コラーゲンは最も一般的なタンパク質であり、容易に糖化過程を経て、それらは年齢とともに皮膚に蓄積する最終糖化産物(AGEs)の量とともに変化する。グルコースは、糖化として知られる非酵素的過程を通じてタンパク質と結合して共有付加物(adduct)を形成するようになり、そのようなタンパク質交差結合部分の一部は蛍光を帯びるようになる。
【0016】
皮膚コラーゲン最終糖化産物は、しばしば蛍光交差結合および付加物の形態をとり、皮膚組織に蓄積された最終糖化産物は、非侵襲的(noninvasive)皮膚自家蛍光(skin autofluorescence,SAF)を測定することにより、比較的簡単な非侵襲的評価を行うことができる。
【0017】
最近、カルボキシメチルリジン(CML)、ペントシジンなどの皮膚内蓄積量が糖尿病患者で正の相関性があり、糖尿病患者の最終糖化産物の測定を通じて糖尿病による最終糖化産物の蓄積も増加値を把握することにより、糖尿病合併症発症の有無を予測することができるという報告がある(Meerwaldt R, Graaff R, Oomen PH, et al. Simple non-invasive assessment of advanced glycation endproduct accumulation. Diabetologia. 2004;47:1324-1330)
【0018】
しかし、これまでに最終糖化産物を測定して神経変性疾患の発症の有無を診断できるかどうかについては、報告されていない。
【0019】
そこで、本発明者らは、非侵襲的な方法で最終糖化産物(AGEs)である皮膚内に存在するグリコトキシン、グリコトキシンに結合した特定タンパク質またはグリコトキシン-特定タンパク質複合体の特異的蛍光を測定したり、皮膚、指の爪、足の爪、毛髪、血液、脳脊髄液などの生体組織でmRNA発現量またはタンパク質量を測定することにより、アルツハイマー病(AD)などの神経変性疾患を診断できることを確認し、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、生体組織または生体液中でグリコトキシン、グリコトキシンに結合した特定タンパク質、またはグリコトキシン-特定タンパク質複合体を含むバイオマーカーおよびそれを用いて神経変性疾患を診断する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記目的を達成するために、本発明は、グリコトキシン、グリコトキシンに結合した特定タンパク質、またはグリコトキシン-特定タンパク質複合体を含む神経変性疾患を診断するためのバイオマーカーを提供する。
【0022】
また、本発明は、グリコトキシン、グリコトキシンに結合した特定タンパク質、またはグリコトキシン-特定タンパク質複合体を含むバイオマーカーを用いた神経変性疾患の診断方法を提供する。
【0023】
また、本発明は、グリコトキシン、グリコトキシンに結合した特定タンパク質、またはグリコトキシン-特定タンパク質複合体を含むバイオマーカーを用いた神経変性疾患診断キットを提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、グリコトキシン、グリコトキシンに結合した特定タンパク質またはグリコトキシン-特定タンパク質複合体を非侵襲的に皮膚において蛍光で測定するか、皮膚組織、血液などでmRNA発現量またはタンパク質量で測定することにより、アルツハイマー病(AD)などの神経変性疾患を簡単に診断することができ、これにより患者の適切な治療方向を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】アルツハイマー病モデルマウスにおける正常群(WT)および疾患群(5xFAD)の皮膚組織内の最終糖化産物のうち(a)ペントシジン(pentosidine)、(b)カルボキシエチルリジン(CEL)および(c)カルボキシメチルリジン(CML)の量をHPLC分析により確認した図である。
図2】アルツハイマー病モデルマウスにおける正常群(WT)および疾患群(5xFAD)の血漿内の最終糖化産物のうち(a)ペントシジン、(b)カルボキシエチルリジン(CEL)および(c)カルボキシメチルリジン(CML)の量をELISA分析により確認した図である。
図3a-c】アルツハイマー病モデルマウスにおける正常群(WT)と疾患群(5xFAD)の皮膚組織内(a)コラーゲン1mRNA発現量、(b)コラーゲン2mRNA発現量、(c)コラーゲン3mRNA発現量、(d)コラーゲン4mRNA発現量、(e)コラーゲン5mRNA発現量、および(f)コラーゲン6mRNA発現量を確認した図である。
図3d-f】アルツハイマー病モデルマウスにおける正常群(WT)と疾患群(5xFAD)の皮膚組織内(a)コラーゲン1mRNA発現量、(b)コラーゲン2mRNA発現量、(c)コラーゲン3mRNA発現量、(d)コラーゲン4mRNA発現量、(e)コラーゲン5mRNA発現量、および(f)コラーゲン6mRNA発現量を確認した図である。
図4】アルツハイマー病モデルマウスにおいて正常群(WT)と疾患群(5xFAD)の皮膚組織内のコラーゲン7mRNA発現量を確認した図である。
図5図5a及び図5bは、アルツハイマー病モデルマウスにおいて正常群(WT)と疾患群(5xFAD)の皮膚組織内のコラーゲンXVIIのタンパク質発現量を確認した図である。
図6】老化モデルマウスにおいて正常群(young)と老化群(old)の皮膚組織内のコラーゲンXVIIのmRNA発現量を確認した図である。
図7】正常群(HC)およびリン脂質低下群(CI)の血漿内(a)ペントシジン、(b)カルボキシエチルリジン(CEL)、(c)カルボキシメチルリジン(CML)、および(d)MG-H1の量を示す図である。
図8】正常群(HC)および認知低下群(CI)の血漿内のコラーゲンXVIIの量を示す図である。
図9】正常群(HC)および認知低下群(CI)の血漿内(a)メチルグリオキサール(Methylglyoxal、MGO)の量および(b)グリオキサラーゼ1(glyoxalase-1、GLO-1)酵素活性度(enzyme activity)を示す図である。
図10】アルツハイマー病モデル(5xFAD)マウスにおける新規物体に対する認知試験(Nover Object Recognition Test、NORT)の結果と皮膚組織内(a)ペントシジン、(b)カルボキシエチルリジン(CEL)、および(c)カルボキシメチルリジン(CML)含有量との相関関係を示す図である。
図11】アルツハイマー病モデル(5xFAD)マウスにおける新規物体に対する認知試験(Novel Object Recognition Test、NORT)の結果とコラーゲンXVIIのmRNA発現量との相関関係を示す図である。
図12】コラーゲンXVIIのmRNA発現量と皮膚組織内の(a)ペントシジン、(b)カルボキシエチルリジン(CEL)および(c)カルボキシメチルリジン(CML)含有量との相関関係を示す図である。
図13】正常群(HC)、糖尿病患者群(HCD)、認知低下群(CI)及び糖尿・認知低下群(CID)の皮膚自家蛍光(Skin autofluorescence、SAF)を示す図である。
図14】正常群(HC+HCD)と認知低下群(CI+CID)との間の皮膚自家蛍光による診断性能を示す図である。
図15】糖尿病のないグループにおける皮膚自家蛍光(SAF)と臨床指標との間の相関関係を示し、図15aはMMSE、図15bはクレアチニン、および図15cはCKD-EPI指標を示すものである。
図16a-c】糖尿病のあるグループにおける皮膚自家蛍光(SAF)と臨床指標との間の相関関係を示すもので、図16aはMMSE、図16bはクレアチニン、図16cはCKD-EPI、図16dはHbA1c、および図16eはHDL指標を示すものである。
図16d-e】糖尿病のあるグループにおける皮膚自家蛍光(SAF)と臨床指標との間の相関関係を示すもので、図16aはMMSE、図16bはクレアチニン、図16cはCKD-EPI、図16dはHbA1c、および図16eはHDL指標を示すものである。
図17】皮膚自家蛍光(SAF)とFDG-PETの間の相関関係を示す脳領域を可視化して示す図である。
図18】正常群(HC)および認知低下群(CI)の血漿内のコラーゲンXVIIと結合した最終糖化産物の量を示すものであり、図18aはペントシジン、図18bはカルボキシエチルリジン(CEL)および図18cはカルボキシメチルリジン(CML)である。
図19】正常群(HC)および認知低下群(CI)の血漿内のコラーゲンXVIIと結合した最終糖化産物の量と簡易精神状態検査(Mini-Mental State Examination, MMSE)結果との相関関係を示すもので、図18aはペントシジン、図18bはカルボキシエチルリジン(CEL)、図18cはカルボキシメチルリジン(CML)である。
図20】認知低下群(CI)血漿内のコラーゲンXVII、CEL及びCMLの発現態様を示す図である。
図21】正常群(HC)、糖尿病患者群(HCD)、認知低下群(CI)及び糖尿・認知低下群(CID)の血液中のカルボキシエチルリジン(CEL)とメチルグリオキサールヒドロイミダゾロン(methylglyoxal hydroimidazolones、MG-H1)の比率変化を示す図である。図21bは、正常群(HC)、糖尿病患者群(HCD)、認知低下群(CI)及び糖尿・認知低下群(CID)の血液中のカルボキシエチルリジン(CEL)とメチルグリオキサールヒドロイミダゾロン-1(methylglyoxal hydroimidazolones、MG-H1)の比率変化と臨床認知症尺度(Clinical Dementia Rating、CDR)を示す図である。図21cは、正常群(HC)、糖尿病患者群(HCD)、認知低下群(CI)及び糖尿・認知低下群(CID)の血液中のカルボキシエチルリジン(CEL)とメチルグリオキサールヒドロイミダゾロン-1(methylglyoxal hydroimidazolones、MG-H1)の比率変化と簡易精神状態検査(Mini-Mental State Examination、MMSE)結果との相関関係を示す図である。
図22a-c】正常群(HC)および認知低下群(CI)の血液中(a)CEL、(b)MG-H1、(c)CML、(d)ペントシジン、(e)CEL/MG-H1、(f)CML/MG-H1及び(g)ペントシジン/MG-H1のバイオマーカーとしての性能をROC曲線分析法により分析した図である。
図22d-f】正常群(HC)および認知低下群(CI)の血液中(a)CEL、(b)MG-H1、(c)CML、(d)ペントシジン、(e)CEL/MG-H1、(f)CML/MG-H1及び(g)ペントシジン/MG-H1のバイオマーカーとしての性能をROC曲線分析法により分析した図である。
図22g】正常群(HC)および認知低下群(CI)の血液中(a)CEL、(b)MG-H1、(c)CML、(d)ペントシジン、(e)CEL/MG-H1、(f)CML/MG-H1及び(g)ペントシジン/MG-H1のバイオマーカーとしての性能をROC曲線分析法により分析した図である。
図23a-c】正常群(HC)および認知低下群(CI)の血液中の(a)コラーゲンXVII、(b)コラーゲンXVII-CEL、および(c)コラーゲンXVIIとコラーゲンXVII-CELの性能をROC曲線分析法により分析したものであり、正常群(HC)および認知低下群(CI)の血液中(d)コラーゲンXVII/MG-H1、(e)コラーゲンXVII_CEL/MG-H1、および(f)コラーゲンXVII/MG-H1およびコラーゲンXVII_CEL/MG-H1の性能をROC曲線分析法(analysis)により分析したものである。
図23d-f】正常群(HC)および認知低下群(CI)の血液中の(a)コラーゲンXVII、(b)コラーゲンXVII-CEL、および(c)コラーゲンXVIIとコラーゲンXVII-CELの性能をROC曲線分析法により分析したものであり、正常群(HC)および認知低下群(CI)の血液中(d)コラーゲンXVII/MG-H1、(e)コラーゲンXVII_CEL/MG-H1、および(f)コラーゲンXVII/MG-H1およびコラーゲンXVII_CEL/MG-H1の性能をROC曲線分析法(analysis)により分析したものである。
図24】グリコトキシン(ペントシジン、CEL、CML、およびMG-H1)、グリコトキシン-タンパク質複合体(タンパク質-ペントシジン、タンパク質-CEL、タンパク質-CML、およびタンパク質-MG-H1)、およびコラーゲンXVII-CELの化学式および化学式とタンパク質との結合状態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、グリコトキシン、グリコトキシンに結合した特定タンパク質、またはグリコトキシン-特定タンパク質複合体を含むことを特徴とする神経変性疾患診断用バイオマーカーを提供する。
【0027】
グリコトキシンは、ペントシジン(Pentosidine)、カルボキシメチルリジン((carboxymethyl)lysine, CML)、カルボキシエチルリジン((carboxyethyl) lysine,CEL)、ピラリン(pyrraline)、OMA((oxalic acid monolysinylamide)、イミダゾロン(imidazolones)、GLAP(glyceraldehydes-derived pyridinum compound)、GOLD(glyoxal-lysine dimer)、MOLD(methyl-glyoxal-lysine dimmer)、クロスライン(crossline)、FFI(2-(2-furoyl)-4(5)-(2)-furanyl)-1H-imidazole)からなる群から選択される1つ以上である。
【0028】
イミダゾロンには、メチルグリオキサールヒドロイミダゾロン(methylglyoxal hydroimidazolones、MG-H1)がある。
【0029】
本発明において、グリコトキシンと最終糖化産物(advanced glycation end products)は、同じ意味である。
【0030】
本発明において測定されたCELは、総CEL値であり、これは単一のCEL(free CEL)、タンパク質結合CELのすべてを含む結果である。
【0031】
前記特定タンパク質は、コラーゲン(collagen)、エラスチン(elastin)、ケラチン(keratin)、β-アミロイドβ種(amyloid β species)、タウ(tau)、α-シヌクレイン(alpha-synuclein)、およびTDP-43からなる群から選択されるいずれか一つ以上である。
【0032】
前記コラーゲンは、コラーゲンXVIIAである。
【0033】
本発明の1つの実験例において、アルツハイマー病モデル(5xFAD)マウスの血漿及び皮膚組織内の最終糖化産物(AGEs)の測定結果、24週疾患群(5xFAD)の皮膚組織内ペントシジン、カルボキシエチルリジン(CEL)、カルボキシメチルリジン(CML)の量が有意に増加することを確認した(図1a~図1c)。
【0034】
一方、正常群(WT)及び疾患群(5xFAD)の血漿内のペントシジン及びカルボキシメチルリジン(CML)の量に有意な差はなく、カルボキシエチルリジン(CEL)の量は12週、24週疾患群(5xFAD)の両方で減少する傾向を示したが、2つのグループ間の差はなかった(図2a~図2c)。
【0035】
これは、代表的な神経変性疾患の一つであるアルツハイマー病(AD)で前記最終糖化産物(AGEs)が皮膚に蓄積されることを意味し、これらをバイオマーカーとして前記アルツハイマー病(AD)の診断、治療などに用いることができる。
【0036】
また、本発明の1つの実験例において、正常群(HC)およびリン脂質低下群(CI)の血漿内の最終糖化産物(AGEs)の測定結果、リン脂質低下群(CI)の血漿内ペントシジンおよびカルボキシエチルリジン(CEL)の含有量は、正常群(HC)と比較して増加した(図7a~7d)。これらの増加とは異なり、CMLはCI群では有意に増加しなかった。
【0037】
これは、認知低下疾患があると、血漿内のグリコトキシンであるペントシジンおよびカルボキシエチルリジン(CEL)の含有量が増加することを示している。したがって、これを標的とし、前記疾患の診断、治療などに利用することができる。
【0038】
一方、本発明の1つの実験例において、正常群(HC)及びリン脂質低下群(CI)の血液中のグリオキサラーゼ1酵素活性測定結果、リン脂質低下群(CI)の血漿内のグリオキサラーゼ1活性度は、正常群(HC)の活性もより小さかった(図9)。
【0039】
メチルグリオキサール(Methylglyoxal)の分解酵素である前記グリオキサラーゼ1の活性が認知低下患者においてより小さいということは、カルボキシエチルリシン(CEL)の前駆物質であるメチルグリオキサールが分解しにくいことを示し、これは認知低下患者において十分に分解していないメチルグリオキサールがカルボキシエチルリジン(CEL)により多く変換し得、その結果、認知低下患者におけるカルボキシエチルリジンの量が増加し得ることを示す。このような結果は、血漿内のカルボキシエチルリジン(CEL)が認知低下群(CI)で増加したことに相応する。
【0040】
本発明の1つの実験例において、アルツハイマー病モデル(5xFAD)マウスの皮膚組織内のコラーゲン1~6及び17のmRNA発現量測定結果、疾患群(5xFAD)皮膚内でのコラーゲン1、3、4及び5のmRNA発現は減少し、コラーゲン2および6のmRNA発現は有意な増加を示さなかった(図3a~図3f)。一方、疾患群(5xFAD)皮膚内のコラーゲンXVIIのmRNA発現が、有意に増加することを確認した(図4)。
【0041】
本発明の1つの実験例において、アルツハイマー病モデル(5xFAD)マウスの皮膚組織内のコラーゲンXVIIのタンパク質発現量測定結果、疾患群(5xFAD)皮膚内のコラーゲンXVIIIのタンパク質発現が有意に増加することを確認した(図5)。
【0042】
また、本発明の1つの実験例では、正常群(HC)および認知低下群(CI)の血漿内コラーゲンXVII含有量測定結果、正常群(HC)対比認知低下群(CI)における血液中のコラーゲンXVIIが、有意に増加することを確認した(図8)。
【0043】
これは、認知低下疾患があると、血液中のコラーゲンXVII含有量が増加することを示している。したがって、これを標的とし、認知低下疾患の診断、治療などに利用することができる。
【0044】
一方、本発明の1つの実験例において、老化マウスモデル(old)の皮膚内コラーゲンXVIIのmRNA発現量測定の結果、対照群(young)対比老化群(old)における皮膚内コラーゲンXVIIのmRNA発現量が減少した。(図6)。
【0045】
これは、コラーゲンXVIIが単に老化によって増加するのではなく、アルツハイマー病(AD)がある場合に増加することを示している。
【0046】
したがって、コラーゲンXVIIをバイオマーカーとして使用して老化によるものとは区別してアルツハイマー病(AD)の診断、治療などに利用できることを確認した。
【0047】
また、本発明は、生体組織または生体液において、グリコトキシン、グリコトキシンに結合した特定タンパク質、またはグリコトキシン-特定タンパク質複合体を測定する神経変性疾患の診断方法を提供する。
【0048】
前記グリコトキシン、グリコトキシンに結合した特定タンパク質、またはグリコトキシン-特定タンパク質複合体は、蛍光、遺伝子発現量およびタンパク質量を測定する方法の中のいずれか1つ以上によって測定されるものである。
【0049】
前記グリコトキシン、グリコトキシンに結合した特定タンパク質またはグリコトキシン-特定タンパク質複合体は、ペントシジン、カルボキシエチルリジン(CEL)およびカルボキシメチルリジン(CML)メチルグリオキサールヒドロイミダゾロン(methylglyoxal hydroimidazolones、MG-H1)、前記グリコトキシンに結合した特定タンパク質は、コラーゲン、エラスチン(elastin)、ケラチン(keratin)、β-アミロイドβ種(amyloid β species)、タウ(tau)、α-シヌクレイン(alpha-synuclein)およびTDP-43からなる群から選択することができ、好ましくはコラーゲンである。
【0050】
前記グリコトキシン、グリコトキシンに結合した特定タンパク質またはグリコトキシン-特定タンパク質複合体は、ペントシジン、カルボキシエチルリジン(CEL)またはカルボキシメチルリジン(CML)とコラーゲンXVIIの複合体を測定するものである。
【0051】
前記グリコトキシン(ペントシジン、CEL、CML、およびMG-H1)、グリコトキシン-タンパク質複合体(タンパク質-ペントシジン、タンパク質-CEL、タンパク質-CML、およびタンパク質-MG-H1)、およびコラーゲンXVII-CELの化学式および化学式とタンパク質の結合状態を図24に示す。
【0052】
また、本発明は、グリコトキシン、グリコトキシンに結合した特定タンパク質、またはグリコトキシン-特定タンパク質複合体とメチルグリオキサールヒドロイミダゾロン(MG-H1)の蓄積比率を測定することを特徴とする神経変性疾患の予測または診断方法を提供する。
【0053】
前記蓄積比率は、CEL/MGH1、CML/MGH1、ペントシジン/MGH1、コラーゲンXVII/MGH1、コラーゲンXVII-CEL/MGH1、コラーゲンXVII-CML/MGH1、およびコラーゲンXVII-ペントシジン/MGH1からなる群から選択される少なくとも1つを測定するものである。
【0054】
前記蓄積比率は、[CEL/MGH1、CML/MGH1、ペントシジン/MGH1又はコラーゲンXVII/MGH1の中のいずれか1つ]と[ペントシジン、カルボキシエチルリジン(CEL)及びカルボキシメチルリジン(CML)とからなる群から選ばれる1つ以上とコラーゲンXVIIの複合体]を測定するものである。
【0055】
前記蓄積比率は、前記バイオマーカーはCEL/MGH1またはコラーゲンXVII-CELである。本発明において、複合バイオマーカーは、グリコトキシン蓄積比率であるCEL/MGH1分析を行い、単一バイオマーカーは、コラーゲンXVII-CEL複合体を分析するものである。
【0056】
神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性測索硬化症、ハンチントン舞踏病、脊髄小脳変性症、プリオン病、クロイツフェルトヤコブ病、前頭側頭型認知症、血管性認知症、レビー小体認知症およびパーキンソン病に伴う認知症から選択されるいずれか一つ以上である。
【0057】
本発明の1つの実施例では、アルツハイマー病モデル(5xFAD)マウスに対する新規物体認識試験(Novel object recognition test、NORT)による認知低下評価結果を、本発明の前記バイオマーカーとの相関関係を比較した。
【0058】
その結果、前記疾患モデルマウスの認知能力が低下するほど、皮膚内のペントシジン、CEL、CMLの含有量が増加する傾向を示し、そのうちペントシジンおよびCELは、認知能力と高い相関関係を示した(図10a~図10c)。また、認知機能が減少するほど、皮膚内のコラーゲンXVIIのmRNA発現量が増加する傾向を示した(図11)。
【0059】
これにより、リン脂質低下とペントシジン、カルボキシエチルリジン(CEL)、およびコラーゲンXVIIの間に相関関係があることが確認された。
【0060】
本発明の1つの実験例において、正常群(HC)および認知低下群(CI)の血漿(plasma)内のコラーゲンXVIIと結合した最終糖化産物の量を測定した結果、正常群(HC)に対する認知低下群(CI)において、血液中のコラーゲンXVIIと組み合わせたCELが有意に増加したことを確認した(図12a~図12c)。
【0061】
また、本発明の1つの実験例において、認知低下群(CI)の血漿(plasma)内のコラーゲンXVIIとCELの発現態様を確認した結果、コラーゲンXVIIとCELが複数のタンパク質サイズ位置のうち、同じタンパク質サイズ位置(~70kDa)で検出され、これは、CELが血液中に存在するとき、コラーゲンXVIIに結合して最終糖化産物を形成していることを示す(図20)。
【0062】
これは、前記認知症などの認知低下疾患があると、血液中に増加したコラーゲンXVII含有量が、他の最終糖化産物よりもCELとのみ選択的に結合していることを示す。したがって、これを標的とし、前記疾患の予測、診断などに利用することができる。
【0063】
前記生体組織のグリコトキシン、グリコトキシンに結合した特定タンパク質、またはグリコトキシン-特定タンパク質複合体を測定することは、皮膚自家蛍光(Skin autofluorescence、SAF)を測定することである。
【0064】
前記皮膚自家蛍光(SAF)は、正常群と認知低下群(CI)を区別することができる。
【0065】
本発明の1つの実施例では、非侵襲的方法を介して正常群(HC)、糖尿病患者群(HCD)、認知低下群(CI)および糖尿病認知低下群(CID)における本発明のバイオマーカーに特異的な皮膚自家蛍光(Skin autofluorescence、SAF)を測定した。
【0066】
その結果、皮膚自家蛍光(SAF)は、正常群(HC)に比べて糖尿病認知低下群(CID)、認知低下群(CI)及び糖尿患者群(HCD)で増加し、認知低下群(CI)及び糖尿患者群(HCD)それぞれと比較して、糖尿病に伴う認知低下群(CID)でさらに増加した(図13)。
【0067】
皮膚自家蛍光(SAF)測定値の増加は、糖尿病の主要指標となり得るが、本発明では糖尿のない認知低下群(CI)でも皮膚自家蛍光(SAF)測定値が増加することを確認した。これは、皮膚自家蛍光(SAF)測定値が、糖尿病とは無関係に認知低下と関連していることを意味する。特に糖尿と認知低下の両方がある群(CID)では、糖尿と認知低下の相互作用により皮膚自家蛍光(SAF)測定値が最も高いものと解釈が可能である。
【0068】
高血糖症状のない認知低下群すなわちCI群でも高いレベルでSAF値が増加することを見ると、皮膚内のグリコトキシンの増加は、アルツハイマー病を含む退行性脳疾患自体の画期的なマーカーになり得ることを示した。また、糖尿病を伴う認知低下患者で最も高いSAF値を示したため、糖尿病のある患者の中でも皮膚内のグリコトキシンを通じて退行性脳疾患の診断可能性を示した。
【0069】
また、MMSE、クレアチニンおよびCKD-EPI指標と高い相関関係があり、HbA1c指標とは相関関係が見られないというデータから、糖尿病のない対象者(HCおよびCI)における皮膚自家蛍光(SAF)の結果は、認知低下群のみに特異的に増加したため、糖尿病とは独立したものであることが確認できた(表3)。すなわち、皮膚で測定されるSAF値の増加は、アルツハイマー患者のような認知低下で独占的に影響を及ぼすバイオマーカーであり、糖尿病がある場合、さらに加速化すると判断される。したがって、本SAFは、糖尿病とは異なり、初期認知低下の程度を予測するために使用できる独立した診断マーカーであり得る。
【0070】
本発明の1つの実験例において、認知低下に影響を及ぼす変数を分析した結果、単変量(Univariate)では皮膚自家蛍光、糖尿、グルコースがそれぞれ認知低下に影響を及ぼすことが確認された。その中で皮膚自家蛍光がオッズ比(odds ration)が最も高かった(表4)。この結果を通じて、皮膚自家蛍光の程度が、認知低下を判断する非常に重要な役割を果たす核心因子であることをもう一度検証することができた。
【0071】
本発明の1つの実験例では、皮膚自家蛍光とMRI(magnetic resonance imaging)結果を数値化した分析値の相関関係を分析した。Allは、全てのグループ(HC、HCD、CI、CID)を含む分析結果を示し、DM(diabetes mellitus)か否かに応じてNon-DM(HC+CI)とDM(HCD+CID)に分けて分析した。
【0072】
その結果、すべてのグループで分析した場合、脳室周囲白質病変(periventricular white matter hyperintensities,PVWMH)を除くすべての結果で有意な統計値を示した(表5)。
【0073】
この結果から、皮膚自家蛍光が脳の実質的な変化を十分に反映していることが分かる。すべての実験グループにおいて、皮膚自家蛍光は、脳萎縮(brain atrophy)と白質病変(white matter hyperintensity)と高い相関関係を示した。また、糖尿の有無によって、皮膚の自家蛍光が脳の変化を反映することが異なっていた。
【0074】
本発明の1つの実験例において、Non-DM(HC+CI)群で脳のグルコース代謝を確認できるFDG(18F-フルデオキシグルコース)-PET(ポジトロンエミッショントモグラフィー)と皮膚自家蛍光との相関関係を可視化した。
【0075】
その結果、脳のグルコース代謝の減少と皮膚自家蛍光増加の相関関係が、頭頂葉(parietal cortex)と後帯状回(posterior cingulate gyrus)で強く現れた。
【0076】
頭頂葉の代謝の減少は、MRI(magnetic resonance imaging)における萎縮の結果と一致して、皮膚の自家蛍光が脳の変化を示すことをもう一度確認することができた。特に、後帯状回の場合、FDG-PETにおけるアルツハイマー病の診断に最も重要な部位として知られている。したがって、皮膚自家蛍光と後帯状回のグルコース代謝減少の相関関係は、皮膚自家蛍光が脳の変化の中でもアルツハイマー病による変化を反映することを意味する。
【0077】
前記生体組織は、皮膚、指の爪、足の爪、または毛髪からなる群から選択されるいずれか1つ以上である。
【0078】
前記生体液は、涙、唾液、尿、血液または脳脊髄液である。
【0079】
前記生体液のグリコトキシン、グリコトキシンに結合した特定タンパク質、またはグリコトキシン-特定タンパク質複合体の測定は、血液からの遺伝子発現量およびタンパク質量を測定することである。
【0080】
また、本発明は、生体組織または生体液において、グリコトキシン、グリコトキシンに結合した特定タンパク質またはグリコトキシン-特定タンパク質複合体を測定する神経変性疾患診断用キットを提供する。
【0081】
キットに使用することができるグリコトキシンは、ペントシジン(Pentosidine)、カルボキシメチルリジン((carboxymethyl)lysine,CML)、カルボキシエチルリジン((carboxyethyl) lysine,CEL)、ピラリン(pyrraline)、OMA((oxalic acid monolysinylamide)、イミダゾロン(imidazolones)、GLAP(glyceraldehydes-derived pyridinum compound)、GOLD(glyoxal-lysine dimer)、MOLD(methyl-glyoxal-lysine dimmer)、クロスライン(crossline)、FFI(2-(2-furoyl)-4(5)-(2)-furanyl)-1H-imidazole)からなる群から選択される1つ以上である。
【0082】
イミダゾロンには、メチルグリオキサールヒドロイミダゾロン(methylglyoxal hydroimidazolones、MG-H1)が含まれる。
【0083】
前記グリコトキシンに結合した特定タンパク質は、コラーゲン、エラスチン、ケラチン、ケラチン、β-アミロイドベータ種、タウ、α-シヌクレイン、およびTDP-43からなる群から選択されるいずれか一つ以上である。コラーゲンは、コラーゲン17Aを含む。
【0084】
グリコトキシンまたはグリコトキシンと結合したタンパク質は、単独で使用することもでき、組み合わせて使用することもできる。
【0085】
詳細には、前記キットは、非侵襲的(noninvasive)方法で迅速に皮膚表面から特異的な皮膚自家蛍光(skin autofluorescence、SAF)を測定したり、または皮膚、血液、脳脊髄液などの生体組織からの前記バイオマーカーのmRNA発現量またはタンパク質量を測定することによって、神経変性疾患を予測または診断することができる。
【0086】
前記神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性測索硬化症、ハンチントン舞踏病、脊髄小脳変性症、プリオン病、クロイツフェルトヤコブ病、前頭側頭型認知症、血管性認知症、レビー小体認知症およびパーキンソン病に伴う認知症から選択されるいずれか一つ以上である。
【0087】
キットは、グリコトキシンの中でもペントシジン、カルボキシエチルリジン(CEL)、カルボキシメチルリジン(CML)を用いて診断することができる。
【0088】
グリコトキシンと結合したタンパク質の中では、特にコラーゲンを用いて診断することができる。
【0089】
ペントシジン、カルボキシエチルリジン(CEL)、カルボキシメチルリジン(CML)、コラーゲンは単独で使用することもでき、組み合わせて使用することもできる。
【0090】
コラーゲンは、単独で使用することができ、ペントシジン、カルボキシエチルリジン(CEL)またはカルボキシメチルリジン(CML)と結合した複合体として使用することができる。
【0091】
特に、コラーゲンXVIIと結合したCELが有意に増加することを確認した(図18および図19)。
【0092】
また、CEL/MG-H1+CEL-COL17Aは、90%以上の精度を示した。
【0093】
皮膚で測定されるSAF値は、アルツハイマー患者などの認知低下で糖尿病がある場合、さらに増加する。したがって、本SAFは、初期認知低下の程度を予測するために使用することができる。
【0094】
より選択性と敏感度が高いのバイオマーカーの核心因子を導出するために、認知低下患者の血液中のメチルグリオキサール由来の最終糖化産物であるカルボキシエチルリジン(CEL)とメチルグリオキサールヒドロイミダゾロン(MG-H1)を測定し、その蓄積比率を分析した。
【0095】
その結果、CEL/MG-H1の比率は、正常群(HC)に比べて認知低下群(CI)、糖尿患者群(HCD)および糖尿・認知低下群(CID)で増加し、糖尿患者群(HCD)に比べて認知低下群(CI)および糖尿病・認知低下群(CID)で特に増加した(図21a)。
【0096】
また、臨床認知症尺度(Clinical Dementia Rating、CDR)および簡易精神状態検査(MNI-Mental State Examination、MMSE)を介してアルツハイマー重症度によって群を分類した場合、CDR値が増加するほどまたはMMSE値が減少するほどCEL/MG-H1の比率は、比例的に増加した(図21bおよび21c)。これは、認知症などの認知低下疾患があると、血液中のCEL含有量が増加し、MG-H1の含有量が減少することを示す。
【0097】
したがって、本発明者は、CEL、MG-H1それぞれの数値で分析するのではなく、CEL/MG-H1比率で計算する値が差別的に大きな差が出たため、本発明者は、CEL/MG-H1比率が前記疾患の診断、治療などの性能優秀性が非常に高いという事実を発見した。
【0098】
本発明の1つの実験例では、正常群(HC)及び認知低下群(CI)の血液中のCEL、MG-H1、ペントシジン及びMG-H1の診断性能と各バイオマーカーの組み合わせによる診断性能の向上を分析した。その結果、CEL、MG-H1、およびペントシジン単独よりは2つのバイオマーカーを組み合わせた場合、AUC値が大幅に高くなり、この過程でCEL/MG-H1が最も優れた診断性能の優秀性を示した。MG-H1/CELも類似の診断性能を示した(図22a~図22g)。
【0099】
また、単一のバイオマーカーキットの中では、コラーゲンXVII-CELが唯一AUC値が0.8を超え、これにより認知低下があると判断することができる。MGH1を分母で他のバイオマーカーと組み合わせた場合に、CEL/MGH1とコラーゲンXVII-CEL/MGH1がAUC値が0.8を超え、これにより認知低下があると判断することができる(図23a~図23f)。
【0100】
したがって、コラーゲンXVII-CELとMG-H1の両方を含む複合バイオマーカーキット(composite biomarker kit)を適用した場合、認知低下の診断性能が優秀であることを確認した。
【0101】
特に複合バイオマーカーキット(composite biomarker kit)は高い精度を示し、認知障害患者でアルツハイマー病の有無とその他の認知障害を引き起こし得る全身身体障害(うつ病、慢性疾患合併症、薬物副作用)などを鑑別する目的で活用が可能である。
【0102】
(実施例)
以下、本発明の実験例によりさらに詳細に説明する。
【0103】
[実施例1]アルツハイマー病モデル(5xFAD)マウスの血漿および皮膚組織における最終糖化産物(AGEs)の測定
【0104】
血漿および皮膚組織内最終糖化産物(AGEs)の測定は、以下のように行った。5xFADは、ヒトAPP(Swedish mutation:K670N/M671L、Florida mutation:I716V、London mutation:V717I)およびPS1(M146L、L286V)遺伝子を発現する5xFAD形質転換マウスのアルツハイマー病モデルである。B6SJLマウス(雌)と5xFADマウス(雄)を繁殖(breeding)して産んだ産子(wild type,5xFAD)を使用した。マウスの飼育は12時間間隔で明/暗を調節し、室温22±2℃、湿度50±10%のレベルに維持し、水と飼料を自由に与えた(AD libitum)。
【0105】
12週と24週が経過した後、正常群(WT)および疾患群(5xFAD)マウス皮膚組織を粉砕してクロロホルム(Sigma):メタノール(Sigma)=2:1で混合した溶液を常温(25℃)で12時間処理した。コラゲナーゼ(Sigma C0773)を280Uの濃度で処理した後、37℃で撹拌し、24時間反応させた。2ulのクロロホルムと2ulのトルエンを入れて微生物汚染を防止した。上清およびペレットまたは血液に6N HCl 1mlを加えた後、ヒートブロックで110℃で24時間加水分解させた。加水分解後、Savant Concentratorで溶液を蒸発させた後、1mlの蒸留水を入れた。溶液中のコラーゲン濃度は、Hydroxyproline AssayおよびELISA KIT(STA-675)によって測定した。
【0106】
Monnier等の方法(Monnier.V.et al.Diabetes.48(4):870-880.1999)によりHPLC分析(表1)して血漿および皮膚組織内のペントシジンを測定した後、Hydroxyproline Assayを通じて、コラーゲン量を定量した後、ペントシジン/コラーゲン量で定量した。また、皮膚加水分解物中のカルボキシエチルリジン(CEL)、カルボキシメチルリジン(CML)をELISAキットを通じて測定した。
【0107】
【表1】
【0108】
その結果、24週疾患群(5xFAD)の皮膚組織内ペントシジン、カルボキシエチルリジン(CEL)、カルボキシメチルリジン(CML)の量が有意に増加することを確認した(図1a~図1c)。
【0109】
一方、正常群(WT)及び疾患群(5xFAD)の血漿内のペントシジン及びカルボキシメチルリジン(CML)の量に有意な差はなく、カルボキシエチルリジン(CEL)の量は12週、24週疾患群(5xFAD)で全て減少した(図2a~図2c)。
【0110】
これは、代表的な神経変性疾患の一つであるアルツハイマー病(AD)において、最終糖化産物(AGEs)が皮膚に蓄積されたことを意味する。
【0111】
したがって、皮膚に蓄積された最終糖化産物をバイオマーカーとして、前記アルツハイマー病(AD)の診断、治療などに用いることができる。
【0112】
[実施例2]アルツハイマー病モデル(5xFAD)マウスの皮膚組織におけるコラーゲン1~6および17のmRNA発現量の測定
【0113】
皮膚組織内の遺伝子発現を観察するために、リアルタイム定量的RT-PCR法を行った。正常群(WT)マウスとアルツハイマー病モデル(5xFAD)マウスの皮膚組織を破砕し、Trizol溶液(Invitrogen,UK)を用いてRNAを抽出し、全RNAをNanoDrop ND-1000(NanoDrop,米国)で定量した。逆転写酵素(TaKaRa、日本)を用いてcDNAを合成した。合成したcDNAにプライマー(表2)を加え、リアルタイムPCR反応器(ABI Prism 7900HT Sequence Detection SyJPem,Applied BiosyJPems,米国)を用いてリアルタイムPCR反応(real-time PCR reaction)を行い、コラーゲン1~6(図2a)および17(図2b)の遺伝子発現レベルを測定した。
【0114】
その結果、疾患群(5xFAD)皮膚内でコラーゲン1、3、4および5のmRNA発現が減少し、コラーゲン2および6のmRNA発現は、有意な増加を示さなかった(図3a~図3f)。一方、疾患群(5×FAD)皮膚内のコラーゲンXVIIのmRNA発現が有意に増加することを確認した(図4)。
【0115】
これは、コラーゲンXVIIをバイオマーカーとして使用して、アルツハイマー病(AD)などの神経変性疾患の診断、治療などに利用できることを示している。
【0116】
【表2】
【0117】
[実施例3]アルツハイマー病モデル(5xFAD)マウスの皮膚組織におけるコラーゲンXVIIのタンパク質発現量の測定
【0118】
タンパク質発現量を確認するために、皮膚組織を破砕してlysis bufferで溶解し、12,000rpmで10分間遠心分離後、上清を採取した。Bradford法でタンパク質濃度を測定した後、30μgのタンパク質を取り、SDS-PAGEs(Sodium Dodecyl Sulfate-PolyAcrylamide Gel Electrophoresis)を行った後、ニトロセルロース膜に転移させた。前記膜をTBS-T(0.05%Tween 20)に溶解した5%[w/v]スキムミルクでブロックし、抗体(コラーゲンXVII、α-Tubulin)反応によって測定した。
【0119】
その結果、疾患群(5×FAD)皮膚内のコラーゲンXVIIのタンパク質発現が有意に増加することが確認された(図5aおよび図5b)。
【0120】
これは、コラーゲンXVIIをバイオマーカーとして使用して、アルツハイマー病(AD)などの神経変性疾患の診断、治療などに利用できることを示す。
【0121】
[実施例4]老化マウスモデル(old)の皮膚内のコラーゲンXVIIのmRNA発現量の測定
【0122】
老化マウスモデルにおいて、皮膚内のコラーゲンXVIIのmRNA発現量を測定した。
【0123】
その結果、対照群(young)と比較して老化群で皮膚内のコラーゲンXVIIのmRNA発現量が減少した(図6)。
【0124】
これは、コラーゲンXVIIが老化によって増加するのではなく、アルツハイマー病(AD)がある場合に増加することを示している。
【0125】
したがって、コラーゲンXVIIをバイオマーカーとして使用して老化によるものとは区別してアルツハイマー病(AD)の診断、治療などに利用できることを確認した。
【0126】
[実施例5]正常群(HC)および認知低下群(CI)の血漿内最終糖化産物(AGEs)の測定
【0127】
正常人および認知低下患者の血液を採取し、遠心分離して上清液である血漿(plasma)を得た後、HPLC分析を用いて血漿中のペントシジン、カルボキシエチルリジン((carboxyethyl)lysine、CEL)および カルボキシメチルリジン((carboxyethyl)lysine、CML)の量を測定した。HPLC分析条件は、前記表1と同一にした。
【0128】
その結果、認知低下群(CI)の血漿(plasma)中のペントシジン、カルボキシエチルリジン(CEL)およびカルボキシメチルリジン(CML)の含有量が正常群(HC)と比較して増加した(図7a~図7d)。
【0129】
これは、認知低下疾患があると、血漿内のグリコトキシンであるペントシジン、カルボキシエチルリジン(CEL)およびカルボキシメチルリジン(CML)の含有量が増加することを示す。したがって、これを標的とし、前記疾患の診断、治療などに利用することができる。
【0130】
[実施例6]正常群(HC)および認知低下群(CI)の血漿内コラーゲンXVII含有量の測定
【0131】
正常人および認知低下患者の血液を採取し、遠心分離して上清液である血漿を得た後、これをヒトコラーゲンXVII ELISAキット(CSB-EL005724HU)を用いて、血漿内のコラーゲンXVIIの含有量を測定した。本実験方法は、製造者のプロトコルに従って行った。
【0132】
その結果、正常群(HC)に対する認知低下群(CI)において、血液中のコラーゲンXVIIが有意に増加することを確認した(図8)。
【0133】
これは、認知低下疾患があると、血液中のコラーゲンXVII含有量が増加することを示している。したがって、これを標的とし、認知低下疾患の診断、治療などに利用することができる。
【0134】
[実施例7]正常群(HC)および認知低下群(CI)の血液中のグリオキサラーゼ1酵素活性の測定
【0135】
グリオキサラーゼ(Glyoxalase;GLO)は、メチルグリオキサール(Methylglyoxal; MG)の代謝に直接的に関与するタンパク質である。メチルグリオキサールは、CELの前駆体であり、最終的にGLO酵素によってD-ラクテートに変わる。
【0136】
正常人および認知低下患者の血液を採取し、遠心分離して上清液である血漿を得た後、ELISAアッセイ(QuantiChrom(商標)、DGLO-100)を介して血液中のグリオキサラーゼ1活性を測定した。
【0137】
その結果、認知低下群(CI)の血漿内のグリオキサラーゼ1活性度は、正常群(HC)の活性度よりも低かった(図9a及び図9b)。
【0138】
メチルグリオキサール(Methylglyoxal)の分解酵素であるグリオキサラーゼ1の活性が認知低下患者でより小さいことは、カルボキシエチルリジン(CEL)の前駆物質であるメチルグリオキサールが分解しにくいことを示している。
【0139】
これは、認知低下患者において十分に分解していないメチルグリオキサールがカルボキシエチルリジン(CEL)により多く変換され、その結果、認知低下患者におけるカルボキシエチルリジンの量が増加し得ることを示している。このような結果は、前記実験例5の結果である血漿内カルボキシエチルリジン(CEL)が認知低下群(CI)で増加したことと相当する。
【0140】
[実施例8]アルツハイマー病モデル(5xFAD)マウスに対する新規物体認識試験(Novel Object Recognition Test,NORT)による認知低下と本発明のバイオマーカーとの相関関係の比較
【0141】
アルツハイマー病モデル(5×FAD)マウスに対して新規物体認識試験(Novel Object Recognition Test、NORT)を実施した。前記試験のためにマウス(5×FAD)を行動観察室に移して5分間適応させた後、3分の露出施行では、箱に同じ物体2個(1セット)を30cm間隔で置いた後、動物が3分間物体を探索する時間を 測定した。1日後の引き出し施行では、同じ箱に露出時、啓示した物体1個と新たに代置した物体1個を用意しておき、動物が探索する時間を測定した。
【0142】
探索時間は(新規物体に関心を示す時間-慣れた事物に関心を示す時間)/(新規物体に関心を示す時間+慣れた事物に関心を示す時間)として算出して示した。算出された値は、認識指標(recognition index)で表し、この値が低いほど認知能力が減少したことを示す。
【0143】
その結果、前記マウスの認知能力が低下するほど、皮膚内のペントシジン、CEL、CMLの含有量が増加する傾向を示し、そのうちペントシジン(p=0.0133)およびCEL(p=0.008)は、認知能力と高い相関関係を示した。一方、CML(p=0.1166)は、認知能力と低い相関関係を示した(図10a~図10c)。
【0144】
また、認知機能が減少するほど、皮膚内のコラーゲンXVIIのmRNA発現量が増加する傾向を示した(図11)。
【0145】
これは、認知低下とペントシジン、カルボキシエチルリジン(CEL)とコラーゲンXVIIの間に相関関係があることを確認した。
【0146】
[実施例9]認知低下患者の血中コラーゲンXVIIと結合した最終糖化産物の測定
【0147】
[実施例9-1]正常群(HC)および認知低下群(CI)の血漿内のコラーゲンXVIIと結合した最終糖化産物の量
【0148】
正常人および認知低下患者の血液を採取し、遠心分離して上清液である血漿を得た後、これをヒトコラーゲンXVII ELISAキット(CSB-EL005724HU)およびペントシジン、CELおよびCML抗体を用いて血液中のコラーゲンXVIIに結合した最終糖化産物の量を測定した。この実験方法は、コラーゲンXVII捕捉抗体がコーティングされたプレートと血液を培養し、血液中のコラーゲンXVIIを捕捉抗体と結合させた。その後、固定コラーゲンXVIIに検出抗体であるペントシジン、CEL、およびCML抗体を結合させて基質酵素反応を起こして色変化を生じさせ、これを光学密度値で測定した。
【0149】
その結果、正常群(HC)対比認知低下群(CI)において、血液中のコラーゲンXVIIと結合したCELが有意に増加することを確認した(図18a~図18c及び図19a~図19c)。
【0150】
[実施例9-2]認知低下群(CI)血漿内のコラーゲンXVIIとCELの発現様相
【0151】
また、血液中に存在するコラーゲンXVIIタンパク質とCELをウェスタンブロット実験方法で確認した。
【0152】
血液中のタンパク質を8%アクリルアミド(Acryl amide)で作ったゲルに注入し、100ボルトの電圧で1時間電気泳動させた。電気泳動してサンプルを注入したゲル上に膜を載せ、4℃の状態で電気泳動80ボルトの電圧で1時間電気泳動させた。サンプルが移った膜をPBSで洗浄した後、5%のスキムミルクを用いて常温で1時間放置した後、10分ずつ3回PBSで洗浄した後、一次抗体(Primary antibody)、すなわち抗コラーゲンXVII抗体と抗CEL抗体を5%スキームミルクに混合した液体に膜を浸漬した後、4℃の状態で12時間放置した。12時間後、膜をPBSで10分ずつ3回洗浄した後、二次抗体(Secondary antibody)、すなわち抗ウサギ(anti-rabbit)、抗マウス(anti-mouse)抗体を5%スキームミルクに混ぜた液体に入れて1時間の間常温に放置した。再び膜を10分ずつ3回洗浄した後、ホースラディッシュペルオキシダーゼと反応させた後、フィルムに示した。
【0153】
その結果、コラーゲンXVIIとCELが、複数のタンパク質サイズ位置のうち、同じタンパク質サイズ位置(~70kDa)で検出され、これは、CEが血液中に存在する時、コラーゲンXVIIに結合しての最終糖化産物を形成していることを示す(図20)。
【0154】
これは、前記認知症などの認知低下疾患があると、血液中に増加したコラーゲンXVII含有量が、他の最終糖化産物よりもCELと選択的に結合していることを示す。したがって、これを標的として、前記疾患の予測、診断などに利用することができる。
【0155】
[実施例10]非侵襲的な方法による本発明のバイオマーカーに特異的な皮膚自家蛍光(SAF)測定
【0156】
[実施例10-1]正常群(HC)、糖尿病患者群(HCD)、認知低下群(CI)および糖尿病認知低下群(CID)の皮膚自家蛍光(Skin autofluorescence、SAF)
【0157】
皮膚自家蛍光(SAF)は、特定の最終糖化産物(AGEs)の蛍光シグナルを検出することができるAGEs Reader(DiagnoOptics Technologies BV)によって測定し、すべての測定は、肘の下の10~15cmの間の腕のボラー(volar)側で行った。皮膚表面の1cmに蓄積した最終糖化産物(AGEs)レベルを測定することができる。
【0158】
測定対象は、正常群(HC)、糖尿患者群(HCD)、認知低下群(CI)および糖尿病認知低下群(CID)を対象とし、測定値は420~600nmの間のnm当たりの放出光強度(emitted light intensity)の平均値を300~420nmの間のnmあたりの励起光強度の平均値で割って計算し、任意単位(AU)で表した。
【0159】
その結果、皮膚自家蛍光(SAF)は、正常群(HC)に比べて糖尿病認知低下群(CID)、認知低下群(CI)及び糖尿患者群(HCD)で増加し、認知低下群(CI)及び糖尿患者群 (HCD)と比較して糖尿病認知低下群(CID)でさらに増加した(CID対CI、P=0.019;CID対HCD、P=0.000)(図13)。
【0160】
皮膚自家蛍光(SAF)測定値の増加は、糖尿病の主要指標となり得るが、本発明では糖尿のない認知低下群(CI)でも皮膚自家蛍光(SAF)測定値が増加することを確認した。これは、皮膚自家蛍光(SAF)測定値が、糖尿病とは独立的に認知低下と関連していることを意味する。特に糖尿と認知低下の両方がある群(CID)では、糖尿と認知低下の相互作用により皮膚自家蛍光(SAF)測定値が最も高いものと解釈が可能である。
【0161】
糖尿病のないCIでは、高レベルのSAF値が増加し、皮膚内のグリコトキシンがアルツハイマー病を含む退行性脳疾患の画期的なマーカーになり得ることを示した。さらに、糖尿病群の中でも認知低下が一緒にある場合には、最も高いSAF値を示したため、糖尿病のある患者の中でも皮膚内のグリコトキシンを通じて退行性脳疾患の診断可能性を示した。
【0162】
[実施例10-2]正常群(HC+HCD)そして認知低下群(CI+CID)間の皮膚自家蛍光による診断性能の測定
【0163】
皮膚自家蛍光値で正常群(HC+HCD)と認知低下群(CI+CID)をどの程度区別できるかを確認するためにROC(Receiver Operating Characteristic)曲線分析を行った。ROC曲線分析法は、検査の有用性の判断、検査の精度の評価、または診断のカットオフポイントの設定に使用される。
【0164】
その結果、AUC(Area Under the ROC curve)値が、0.763(値が1に近いほど診断性能が高い)に準拠した水準の診断性能を示し、感度(sensitivity)と特異度(specificity)がそれぞれ68.1%と76.7%と示された(図14)。
【0165】
わずか12秒以内に認知低下の有無を確認することができ、認知低下患者を非侵襲的かつ迅速に区別できる指標として活用することができる。特に糖尿病とは独立的に認知症を診断するのに十分に活用可能である。
【0166】
[実施例10-3]糖尿病のないグループにおける皮膚自家蛍光(Skin autofluorescence,SAF)と臨床指標の間の相関関係
【0167】
SAFと他の臨床変数との関連は、糖尿病の有無によって分けられた2つのグループで行った。
【0168】
糖尿病のない被験者(HCおよびCI)から臨床認知症尺度(Clinical Dementia Rating、CDR)、簡易精神状態検査(Mini-Mental State Examination,MMSE)および血液検査(グルコース、HbA1c、総コレステロール、トリアシルグリセロール、HDL、LDL、クレアチニンおよびCKD_EPI数値測定)結果と皮膚自家蛍光(SAF)の相関関係を分析した。
【0169】
その結果、皮膚自家蛍光(SAF)は、糖尿病のない対象(HCおよびCI)の認知低下(MMSE、ρ=-0.241、P=0.009)および腎機能指標(クレアチニン:ρ=0.322、P=0.000およびCKD-EPI:ρ=-0.310、P=0.000)と高い相関関係があった。一方、血液検査中の糖尿病の代表的な指標であるHbA1c(β=-0.120、P=0.281)との相関関係は見られなかった(図15及び図16)。
【0170】
【表3】
【0171】
前記MMSE、クレアチニンおよびCKD-EPI指標と高い相関関係があり、HbA1c指標とは相関関係が見られないというデータから、糖尿病のない対象者(HCおよびCI)における皮膚自家蛍光(SAF)の結果は、認知低下に特異的で糖尿病とは独立的なものあることを確認した(表3)。
【0172】
[実施例10-4]糖尿病のあるグループにおける皮膚自家蛍光(Skin autofluorescence、SAF)と臨床指標の間の相関関係
【0173】
糖尿病を有する被験者(HCDおよびCID)からの簡易精神状態検査(Mini-Mental State Examination,MMSE)および血液検査(グルコース、HbA1c、総コレステロール、トリアシルグリセロール、HDL、LDL、クレアチニンおよびCKD_EPI数値測定)および皮膚自家蛍光(SAF)の相関関係を分析した。
【0174】
その結果、皮膚自家蛍光(SAF)は、糖尿病のない対象者(HC及びCI)の認知低下(MMSE、ρ=-0.241、P=0.009)とは高い相関関係を有した。血液検査のうち腎機能指標であるクレアチニン(ρ=0.322、P=0.000及びCKD-EPI:ρ=-0.310、P=0.000)と高い相関関係を示し、糖尿病の代表的な指標であるHbA1c及びHDLとは相関関係を示さなかった。
【0175】
その結果、皮膚自家蛍光(SAF)は、糖尿病を有する対象者(HCD及びCID)の認知低下(MMSE、ρ=-0.200、P=0.046)とは、相関関係が糖尿病のない対象者(HC及びCI)と比較して相対的に低かった。一方、血液検査のうち腎機能指標であるクレアチニン(ρ=0.288、P=0.003及びCKD-EPI:ρ=-0.310、P=0.000)と高い相関関係を示し、糖尿病の代表的な指標であるHbA1c(ρ=0.198、P=0.045)およびHDL(ρ=-0.231、P=0.029)と低い相関関係を示した(図16a~図16e)。
【0176】
これは、糖尿病のない対象者(HCおよびCI)では、HbA1cとHDLよりは認知低下が皮膚自家蛍光(SAF)と相関関係を示したため、このグループは、糖尿病とは別の機序を通じて皮膚自家蛍光(SAF)が増加することが分かった。
【0177】
これは、糖尿病患者(HCDおよびCID)では、認知低下よりも糖尿病が皮膚自家蛍光(SAF)と相関関係を示したため、このグループは、糖尿病に関連する機序によって皮膚自家蛍光(SAF)が増加することが分かる。また、糖尿・認知低下の両方を有する対象者(CID)では、皮膚自家蛍光(SAF)が、糖尿・認知低下の両方の側面から共に影響を受け、そのうち糖尿の影響がより大きいことを確認した。
【0178】
[実施例11]認知低下に影響を及ぼす変数の分析
【0179】
認知低下に影響を及ぼす変数を分析するために、皮膚自家蛍光レベル、いくつかの臨床指標、および血液検査結果の相関関係を分析した。単変量(Univariate)は、認知低下に影響を与える変数を一つずつ別々に分析し、多変量(multivariate)はすべての指標を全て入れて各変数の影響力を考慮した後、認知低下に影響を及ぼす変数を選び出した。
【0180】
その結果、単変量(Univariate)では、皮膚自家蛍光、糖尿病、グルコースがそれぞれ認知低下に影響を及ぼすことが確認された。その中で皮膚自家蛍光がオッズ比(odds ration)が6.711と最も高かった。臨床指標との多変量分析では、皮膚の自家蛍光と喫煙の有無が認知低下に影響を及ぼすことが示された。血液検査を追加して分析したところ、SAFと喫煙の有無、そして総コレステロールが認知低下に影響を及ぼした(表4)。
【0181】
全ての分析結果において、皮膚自家蛍光値が、認知低下に最も大きな影響力を及ぼすことが確認された。この結果を通じて、皮膚自家蛍光が、認知低下に重要な役割を果たす因子であることをもう一度検証した。
【0182】
【表4】
【0183】
年齢、教育、SAF、グルコース、HbA1c、クレアチニン、CKD-EPI、総コレステロール、トリアシルグリセロール、HDLコレステロールおよびLDLコレステノールは、連続変数(continuous variable)で定義された。男性の性別、現在喫煙者、DM、高血圧、冠状動脈心臓病、慢性腎臓病、狭心症、および心房細動は、カテゴリー変数(categorical variable)で定義された。
【0184】
a年齢、男性、教育、現在喫煙者、SAF、DM、狭心症、冠状動脈心臓病、慢性腎臓病、狭心症および心房細動は、変量(variate)として含まれた。
【0185】
b年齢、男性、教育、現在喫煙者、SAF、グルコース、HbA1c、クレアチニン、CKD-EPI、総コレステロール、HDL、LDL、トリアシルグリセロールは、変量として含まれた。
【0186】
[実施例12]皮膚自家蛍光とMRI分析結果のオッズ比(odds ration)分析
【0187】
皮膚自家蛍光とMRI(magnetic resonance imaging)結果を数値化した分析値の相関関係を分析した。Allは、全てのグループ(HC、HCD、CI、CID)を含む分析結果を示し、DM(diabetes mellitus)か否かによってnon-DM(HC+CI)とDM(HCD+CID)に分けて分析した。
【0188】
その結果、全グループで分析した場合、脳室周囲白質病変(periventricular white matter hyperintensities、PVWMH)を除くすべての結果で有意な統計値を示した。non-DMの場合、海馬萎縮(hippocampal atrophy,HA)と頭頂萎縮(parietal atrophy,PA)の両方で強い統計的意味を示した。DMグループの場合、PAにおける統計的なHAでは、皮膚自家蛍光との相関関係が弱まったことを確認した。 Fazekas(パジェカ)スケールの場合、non-DMよりもDMでより強い相関関係を有した(表5)。
【0189】
この結果は、皮膚の自家蛍光が脳の変化を十分に反映していることを意味する。すべてのグループにおいて、皮膚自家蛍光は、脳萎縮(brain atrophy)と白質病変(white matter hyperintensity)の相関関係を示した。また、糖尿の有無によって、皮膚の自家蛍光が脳の変化を反映することが異なっていた。non-DMでは、主にアトロピを大きく反映し、DMではアトロピーの反映が弱くなったのに対し、WMHの相関関係が高まった。
【0190】
【表5】
【0191】
a年齢、性別、SAF、DMは、変量として含まれた。
【0192】
b年齢、性別、SAFは、変量として含まれた。
【0193】
[実施例13]皮膚自家蛍光とFDG-PETの相関関係分析
【0194】
non-DM(HC+CI)グループで脳のグルコース代謝を確認できるFDG(18F-フルデオキシグルコース)-PET(ポジトロンエミッショントモグラフィー)と皮膚自家蛍光の相関関係を可視化した。DMグループの場合、FDG-PETに異常な影響を及ぼすため、今回の分析から除外した。
【0195】
その結果、自家蛍光の増加とグルコース代謝の減少に相関関係がある部分を明暗の差として表示し、濃い黒色ほど高い相関関係を有していることを意味する。図17のように、脳のグルコース代謝の減少と皮膚の自家蛍光増加の相関関係が頭頂葉(parietal cortex)と後帯状回(posterior cingulate gyrus)で強く現れた。
【0196】
頭頂葉の代謝の減少は、MRI(magnetic resonance imaging)における萎縮の結果と一致して、皮膚の自家蛍光が脳の変化を示すことをもう一度確認することができた。特に、後帯状回の場合、FDG-PETにおけるアルツハイマー病の診断に最も重要な部位として知られている。該当の結果は、皮膚自家蛍光の増加に伴って頭頂葉(parietal cortex)と帯状回(posterior cingulate gyrus)に脳病変の発生に影響を及ぼし、グルコース代謝が減少することが分かる。また、自家蛍光と帯状回(posterior cingulate gyrus)のグルコース代謝減少の相関関係は、皮膚自家蛍光が脳の変化の中でもアルツハイマー病による変化を反映することを意味する(図17)。
【0197】
[実施例14]認知低下群患者の血液中のメチルグリオキサール由来最終糖化産物であるカルボキシエチルリジン(CEL)とメチルグリオキサールヒドロイミダゾロン(MG-H1)の蓄積比率分析
【0198】
正常人および認知低下患者の血液を採取し、遠心分離して上清液である血漿(plasma)を得た後、ELISAアッセイを用いて血液中のCELおよびMG-H1の量を測定した。本実験方法は、製造業者のプロトコルに従って行った。その後、血液に蓄積された各最終糖化産物の比率を比較して示した。
【0199】
その結果、CEL/MG-H1の比率は、正常群(HC)に比べて認知低下群(CI)、糖尿患者群(HCD)および糖尿・認知低下群(CID)で増加し、糖尿患者群(HCD)に比べて認知低下群(CI)および糖尿病・認知低下群(CID)でさらに増加した(図21a)。
【0200】
また、臨床認知症尺度(Clinical Dementia Rating、CDR)および簡易精神状態検査(MNI-Mental State Examination、MMSE)を介して、アルツハイマー重症度に従って群を分類した場合、CDR値が増加するほどまたはMMSE値が減少するほどCEL/MG-H1の比率が増加した(図21bおよび21c)。
【0201】
これは、前記実験例7の結果(図9a及び図9b)と類似の傾向を示すものであり、認知症等の認知低下疾患があると血液中のCEL含有量が増加しMG-H1の含有量が減少することを示す。したがって、CEL、MG-H1、CEL/MG-H1を標的とし、前記疾患の診断、治療などに用いることができる。
【0202】
[実施例15]認知低下患者の血液中のコラーゲンXVII-CEL、CEL/MG-H1およびMG-H1/CELの蓄積比率の分析
【0203】
[実施例15-1]正常群(HC)および認知低下群(CI)の血液中のコラーゲンXVII-CEL、CEL/MG-H1およびMG-H1/CELの蓄積比率分析
【0204】
バイオマーカーの診断値の精度を評価するために、ROC(Receiver Operator Characteristic)曲線からAUC(Area under the Curve)を分析した。カットオフ値は、Youden指数が最大となる地点の感度と特異度によって求めた。各バイオマーカーで測定されたサンプル数が異なるため、独立的に分析した。
【0205】
その結果、CEL、MG-H1、CML、およびペントシジン単独バイオマーカーのAUC値は、それぞれ0.690、0.755、0.516、0.683となったが、CEL/MG-H1を適用した複合バイオマーカーキット(composite biomarker kit)は、最も高い精度でAUC値が0.806となり、カットオフ11.53で感度と精度がそれぞれ84.3%、65.7%となった。CML/MG-H1とペントシジン/MG-H1も多少診断性能がCEL/MG-H1に比べて低下したAUC値が0.695、0.765で、カットオフ1.81、11.73の場合、感度は60.8、64.7%、そして精度は73.1、83.6%と出た(図22a~図22f)。
【0206】
前記の結果は、ROC曲線分析法に基づくものであり、カットオフは、感度と特異度が最高のポイントで選んだ。CEL/MG-H1を適用した複合バイオマーカーキットのカットオフを11.53にとり、これより高い数値を認知低下、低い数値を正常認知と判断したとき、感度と精度がそれぞれ84.3%、65.7%となった。他のカットオフよりも11.53が最も高い感度と精度を有するため、これに基づいて11.53より高い数値の場合は認知低下と判断することができる。
【0207】
また、単一バイオマーカーの中では、コラーゲンXVII-CELが唯一、AUC値が0.8を超えた。カットオフ数値を0.86とし、これより高い数値を認知低下、逆に低い場合、正常な認知と判断したとき、感度と精度がそれぞれ84.3%、65.7%となった。他のカットオフより0.86が最も高い感度と精度を有するため、これに基づいて0.86以上の場合、認知低下があると判断することができる。
【0208】
MGH1を分母として他のバイオマーカーと組み合わせた場合、CEL/MGH1とコラーゲンXVII-CEL/MGH1がAUC値が0.8を超えた。それで、カットオフを0.7839とし、これより高い数値を認知低下、低い場合は正常認知と判断したとき、感度と精度がそれぞれ70.6%、93.7%となった。他のカットオフよりも0.7839が最も高い感度と精度を有するため、これに基づいて0.7839より高い数値である場合、認知低下と判断することができる(図23a~図23f)。
【0209】
したがって、コラーゲンXVII-CELとMG-H1の両方を含む複合バイオマーカーキット(composite biomarker kit)を適用した場合、認知低下の診断性能に優れることを確認した。
図1
図2
図3a-c】
図3d-f】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16a-c】
図16d-e】
図17
図18
図19
図20
図21
図22a-c】
図22d-f】
図22g
図23a-c】
図23d-f】
図24
【配列表】
2024514580000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-10-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織または生体液から測定用サンプルを準備する工程、
前記測定用サンプルからグリコトキシン‐特定タンパク質複合体を測定する工程を含むことを特徴とする、神経変性疾患の診断を補助する方法であって、
前記グリコトキシンが、カルボキシエチルリジン(CEL)、カルボキシメチルリジン(CML)、およびメチルグリオキサールヒドロイミダゾロン(methylglyoxal hydroimidazolones、MG-H1)からなる群から選択される1つ以上であり、前記特定タンパク質は、コラーゲンXVII(collagen XVII)であることを特徴とする、方法
【請求項2】
前記神経変性疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性測索硬化症、ハンチントン舞踏病、脊髄小脳変性症、プリオン病、クロイツフェルトヤコブ病、前頭側頭型認知症、血管性認知症、レビー小体認知症およびパーキンソン病に伴う認知症からなる群から選択されるいずれか1つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の方法
【請求項3】
生体組織または生体液から測定用サンプルを準備する工程、
前記測定用サンプルから、CML、CEL、CML-特定タンパク質複合体、またはCEL-特定タンパク質複合体の中から選択される1つとメチルグリオキサールヒドロイミダゾロン(MG-H1)の蓄積比率を測定する工程を含み、前記特定タンパク質が、コラーゲンXVIIであることを特徴とする、神経変性疾患の診断を補助する方法。
【請求項4】
前記蓄積比率が、CEL/MG-H1またはコラーゲンXVII-CELであることを特徴とする、請求項に記載の法。
【請求項5】
前記生体組織が、皮膚、指の爪、足の爪、または毛髪であることを特徴とする、請求項1または3に記載の法。
【請求項6】
前記生体液が、涙、唾液、尿、血液または脳脊髄液であることを特徴とする、請求項1または3に記載の法。
【請求項7】
前記生体組織が、前記測定用サンプルの準備が必要でない非侵襲的な皮膚自家蛍光(skin autofluorescence、SAF)を測定することを特徴とする、請求項1または3に記載の法。
【請求項8】
前記生体液中の遺伝子発現量およびタンパク質量を測定することを特徴とする、請求項1または3に記載の方法
【請求項9】
請求項1に記載の方法に使用するための神経変性疾患の予測または診断用キットであって、
グリコトキシン、グリコトキシンに結合した特定タンパク質またはグリコトキシン‐特定タンパク質複合体を測定することを特徴とし、
前記グリコトキシンが、カルボキシエチルリジン(CEL)、カルボキシメチルリジン(CML)、およびメチルグリオキサールヒドロイミダゾロン(methylglyoxal hydroimidazolones、MG-H1)からなる群から選択される1つ以上であり、特定タンパク質は、コラーゲンXVIIであることを特徴とする、神経変性疾患の予測または診断用キット。
【請求項10】
前記キットが、ルボキシエチルリジン(CEL)またはカルボキシメチルリジン(CML)とコラーゲンXVIIの複合体を測定することを特徴とする、請求項に記載の神経変性疾患の予測または診断用キット。
【請求項11】
請求項3に記載の方法に使用するための神経変性疾患の予測または診断用キットであって、CML、CEL、CML-特定タンパク質複合体、またはCEL-特定タンパク質複合体の中から選択される1つとメチルグリオキサールヒドロイミダゾロン(MG-H1)の蓄積比率を測定することを特徴とする、神経変性疾患の予測または診断用キット。
【請求項12】
前記キットが、CEL/MG-H1及びコラーゲンXVII-CEL/MG-H1らなる群から選択される1つ以上を測定することを特徴とする、請求項11に記載の神経変性疾患の予測または診断用キット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
図1】アルツハイマー病モデルマウスにおける正常群(WT)および疾患群(5xFAD)の皮膚組織内の最終糖化産物のうち(a)ペントシジン(pentosidine)、(b)カルボキシエチルリジン(CEL)および(c)カルボキシメチルリジン(CML)の量をHPLC分析により確認した図である。
図2】アルツハイマー病モデルマウスにおける正常群(WT)および疾患群(5xFAD)の血漿内の最終糖化産物のうち(a)ペントシジン、(b)カルボキシエチルリジン(CEL)および(c)カルボキシメチルリジン(CML)の量をELISA分析により確認した図である。
図3a-c】アルツハイマー病モデルマウスにおける正常群(WT)と疾患群(5xFAD)の皮膚組織内(a)コラーゲン1mRNA発現量、(b)コラーゲン2mRNA発現量、(c)コラーゲン3mRNA発現量、(d)コラーゲン4mRNA発現量、(e)コラーゲン5mRNA発現量、および(f)コラーゲン6mRNA発現量を確認した図である。
図3d-f】アルツハイマー病モデルマウスにおける正常群(WT)と疾患群(5xFAD)の皮膚組織内(a)コラーゲン1mRNA発現量、(b)コラーゲン2mRNA発現量、(c)コラーゲン3mRNA発現量、(d)コラーゲン4mRNA発現量、(e)コラーゲン5mRNA発現量、および(f)コラーゲン6mRNA発現量を確認した図である。
図4】アルツハイマー病モデルマウスにおいて正常群(WT)と疾患群(5xFAD)の皮膚組織内のコラーゲン17mRNA発現量を確認した図である。
図5図5a及び図5bは、アルツハイマー病モデルマウスにおいて正常群(WT)と疾患群(5xFAD)の皮膚組織内のコラーゲンXVIIのタンパク質発現量を確認した図である。
図6】老化モデルマウスにおいて正常群(young)と老化群(old)の皮膚組織内のコラーゲンXVIIのmRNA発現量を確認した図である。
図7】正常群(HC)およびリン脂質低下群(CI)の血漿内(a)ペントシジン、(b)カルボキシエチルリジン(CEL)、(c)カルボキシメチルリジン(CML)、および(d)MG-H1の量を示す図である。
図8】正常群(HC)および認知低下群(CI)の血漿内のコラーゲンXVIIの量を示す図である。
図9】正常群(HC)および認知低下群(CI)の血漿内(a)メチルグリオキサール(Methylglyoxal、MGO)の量および(b)グリオキサラーゼ1(glyoxalase-1、GLO-1)酵素活性度(enzyme activity)を示す図である。
図10】アルツハイマー病モデル(5xFAD)マウスにおける新規物体に対する認知試験(Nover Object Recognition Test、NORT)の結果と皮膚組織内(a)ペントシジン、(b)カルボキシエチルリジン(CEL)、および(c)カルボキシメチルリジン(CML)含有量との相関関係を示す図である。
図11】アルツハイマー病モデル(5xFAD)マウスにおける新規物体に対する認知試験(Novel Object Recognition Test、NORT)の結果とコラーゲンXVIIのmRNA発現量との相関関係を示す図である。
図12】コラーゲンXVIIのmRNA発現量と皮膚組織内の(a)ペントシジン、(b)カルボキシエチルリジン(CEL)および(c)カルボキシメチルリジン(CML)含有量との相関関係を示す図である。
図13】正常群(HC)、糖尿病患者群(HCD)、認知低下群(CI)及び糖尿・認知低下群(CID)の皮膚自家蛍光(Skin autofluorescence、SAF)を示す図である。
図14】正常群(HC+HCD)と認知低下群(CI+CID)との間の皮膚自家蛍光による診断性能を示す図である。
図15】糖尿病のないグループにおける皮膚自家蛍光(SAF)と臨床指標との間の相関関係を示し、図15aはMMSE、図15bはクレアチニン、および図15cはCKD-EPI指標を示すものである。
図16a-c】糖尿病のあるグループにおける皮膚自家蛍光(SAF)と臨床指標との間の相関関係を示すもので、図16aはMMSE、図16bはクレアチニン、図16cはCKD-EPI、図16dはHbA1c、および図16eはHDL指標を示すものである。
図16d-e】糖尿病のあるグループにおける皮膚自家蛍光(SAF)と臨床指標との間の相関関係を示すもので、図16aはMMSE、図16bはクレアチニン、図16cはCKD-EPI、図16dはHbA1c、および図16eはHDL指標を示すものである。
図17】皮膚自家蛍光(SAF)とFDG-PETの間の相関関係を示す脳領域を可視化して示す図である。
図18】正常群(HC)および認知低下群(CI)の血漿内のコラーゲンXVIIと結合した最終糖化産物の量を示すものであり、図18aはペントシジン、図18bはカルボキシエチルリジン(CEL)および図18cはカルボキシメチルリジン(CML)である。
図19】正常群(HC)および認知低下群(CI)の血漿内のコラーゲンXVIIと結合した最終糖化産物の量と簡易精神状態検査(Mini-Mental State Examination, MMSE)結果との相関関係を示すもので、図18aはペントシジン、図18bはカルボキシエチルリジン(CEL)、図18cはカルボキシメチルリジン(CML)である。
図20】認知低下群(CI)血漿内のコラーゲンXVII、CEL及びCMLの発現態様を示す図である。
図21図21aは、正常群(HC)、糖尿病患者群(HCD)、認知低下群(CI)及び糖尿・認知低下群(CID)の血液中のカルボキシエチルリジン(CEL)とメチルグリオキサールヒドロイミダゾロン(methylglyoxal hydroimidazolones、MG-H1)の比率変化を示す図である。図21bは、正常群(HC)、糖尿病患者群(HCD)、認知低下群(CI)及び糖尿・認知低下群(CID)の血液中のカルボキシエチルリジン(CEL)とメチルグリオキサールヒドロイミダゾロン-1(methylglyoxal hydroimidazolones、MG-H1)の比率変化と臨床認知症尺度(Clinical Dementia Rating、CDR)を示す図である。図21cは、正常群(HC)、糖尿病患者群(HCD)、認知低下群(CI)及び糖尿・認知低下群(CID)の血液中のカルボキシエチルリジン(CEL)とメチルグリオキサールヒドロイミダゾロン-1(methylglyoxal hydroimidazolones、MG-H1)の比率変化と簡易精神状態検査(Mini-Mental State Examination、MMSE)結果との相関関係を示す図である。
図22a-c】正常群(HC)および認知低下群(CI)の血液中(a)CEL、(b)MG-H1、(c)CML、(d)ペントシジン、(e)CEL/MG-H1、(f)CML/MG-H1及び(g)ペントシジン/MG-H1のバイオマーカーとしての性能をROC曲線分析法により分析した図である。
図22d-f】正常群(HC)および認知低下群(CI)の血液中(a)CEL、(b)MG-H1、(c)CML、(d)ペントシジン、(e)CEL/MG-H1、(f)CML/MG-H1及び(g)ペントシジン/MG-H1のバイオマーカーとしての性能をROC曲線分析法により分析した図である。
図22g】正常群(HC)および認知低下群(CI)の血液中(a)CEL、(b)MG-H1、(c)CML、(d)ペントシジン、(e)CEL/MG-H1、(f)CML/MG-H1及び(g)ペントシジン/MG-H1のバイオマーカーとしての性能をROC曲線分析法により分析した図である。
図23a-c】正常群(HC)および認知低下群(CI)の血液中の(a)コラーゲンXVII、(b)コラーゲンXVII-CEL、および(c)コラーゲンXVIIとコラーゲンXVII-CELの性能をROC曲線分析法により分析したものであり、正常群(HC)および認知低下群(CI)の血液中(d)コラーゲンXVII/MG-H1、(e)コラーゲンXVII_CEL/MG-H1、および(f)コラーゲンXVII/MG-H1およびコラーゲンXVII_CEL/MG-H1の性能をROC曲線分析法(analysis)により分析したものである。
図23d-f】正常群(HC)および認知低下群(CI)の血液中の(a)コラーゲンXVII、(b)コラーゲンXVII-CEL、および(c)コラーゲンXVIIとコラーゲンXVII-CELの性能をROC曲線分析法により分析したものであり、正常群(HC)および認知低下群(CI)の血液中(d)コラーゲンXVII/MG-H1、(e)コラーゲンXVII_CEL/MG-H1、および(f)コラーゲンXVII/MG-H1およびコラーゲンXVII_CEL/MG-H1の性能をROC曲線分析法(analysis)により分析したものである。
図24】グリコトキシン(ペントシジン、CEL、CML、およびMG-H1)、グリコトキシン-タンパク質複合体(タンパク質-ペントシジン、タンパク質-CEL、タンパク質-CML、およびタンパク質-MG-H1)、およびコラーゲンXVII-CELの化学式および化学式とタンパク質との結合状態を示すものである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0196
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0196】
頭頂葉の代謝の減少は、MRI(magnetic resonance imaging)における萎縮の結果と一致して、皮膚の自家蛍光が脳の変化を示すことをもう一度確認することができた。特に、後帯状回の場合、FDG-PETにおけるアルツハイマー病の診断に最も重要な部位として知られている。該当の結果は、皮膚自家蛍光の増加に伴って頭頂葉(parietal cortex)と帯状回(posterior cingulate gyrus)に脳病変の発生に影響を及ぼし、グルコース代謝が減少することが分かる。また、自家蛍光と帯状回(posterior cingulate gyrus)のグルコース代謝減少の相関関係は、皮膚自家蛍光が脳の変化の中でもアルツハイマー病による変化を反映することを意味する(図17)。
【国際調査報告】